あなたの健康はお金で買えますか・・・?
fc2ブログ

がん電話相談から 膵臓がん再発、治療選択肢なくならないか不安

Q 65歳女性です。平成22年に膵臓(すいぞう)がんで膵頭部を含め約3分の2を切除する手術を受けました。令和2年12月に再発
し化学療法を開始したものの、翌年10月に脾臓(ひぞう)に転移していることが判明したため、現在は2番目の化学療法を受けています。しかし化学療法はやがて効かなくなるそうなので、重粒子線治療や最近の先進治療も受けたいと考えています。

A 手術ができない膵臓がんで病変が限られた1カ所の場合、放射線治療や粒子が大きい重粒子線治療は選択肢の一つです。ただ通常、がんが多発し転移した場合には適応になりません。

Q 免疫チェックポイント阻害薬という新しい治療法もあると聞きました。

A 基本的に免疫チェックポイント阻害薬は膵臓がんに効きにくいのですが、遺伝子パネル検査やMSI検査で遺伝子異常が見つかり、合う薬があれば治療の選択肢は増えるので検査は受けてもいいでしょう。しかし、膵臓がんの場合、それぞれ検査をしても、適応になる可能性は低く、大きな期待はできません。やはり化学療法の効果を高めることを考えるのがよいでしょう。これまでどんな抗がん剤を使いましたか。

Q 最初の化学療法はゲムシタビンとナブパクリタキセル(商品名・アブラキサン)の併用療法でした。約10カ月後に転移が分かったためフォルフィリノックス療法に変わりましたが、それも効果がなくなってきているといわれています。

A フォルフィリノックスはフルオロウラシル(同・5FU)、イリノテカン、オキサリプラチンという3つの抗がん剤を併用する、膵臓がんに効果のある点滴静脈注射タイプの化学療法です。現在どれくらいの頻度で受けていますか。

Q 1カ月に1回です。

A なるほど。標準的な投与方法は2週間に1回ですが、相談者さんはこの治療の副作用に耐えられず間隔を空けた方がよいと医師が判断したのでしょう。この場合、フォルフィリノックスの3つの薬剤それぞれの治療強度(薬の効き目)がそれぞれ中途半端ですので、本来の治療効果が上がりにくくなります。フォルフィリノックス療法の3つの抗がん剤のうちイリノテカンやオキサリプラチンを除き、副作用に耐えられる2剤併用や1剤単独治療にするなどで効果を引き出す方法がいくつかあります。「好中球(細菌などと戦う細胞)減少症」と呼ばれる副作用で標準的な投薬ができない場合は他の製剤の併用も検討します。

Q 主治医からは、経口タイプの抗がん剤もあるといわれました。

A その経口薬はテガフールなど3つの成分を配合したティーエスワン(TS1)のことでしょう。テガフールは服用後に体内でフルオロウラシルに変化するためフォルフィリノックスの代替治療法の一つといえます。フルオロウラシル系の単剤での治療にすることにより、その部分の治療強度を上げられます。このほかに使える抗がん剤として、2年前に承認されたばかりの点滴静脈注射タイプのリポソーム型イリノテカン(同・オニバイド)とフルオロウラシルの併用療法があります。成分はイリノテカンと同じですが、イリノテカンに比べ腫瘍などの病変に到達しやすく、到達後も病変にとどまる効果が高いとされています。

回答はがん研有明病院・消化器センター肝・胆・膵内科副医長、春日章良医師が担当しました。「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は、毎週月曜~木曜日(祝日除く)午前11時~午後3時に受け付けます。今週は17日のみ受け付け、15日、16日は休みとなります。電話は03・5531・0110、無料。相談はカウンセラーが受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します

がんばりすぎてしまう人必見! すぐに病院に行くべき「心の限界」のサインとは?

仕事や人間関係で悩むとき、「心の限界」サインをきちんとキャッチできているだろうか。限界を超えてがんばりすぎると、メンタルが壊れてしまうこともある。そう語るのは、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』著者・わび氏だ。心を病まないための自衛術を学んでほしいと上梓した本書の発売を記念し、今回は、『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』著者のバク@精神科医氏と特別対談を実施。仕事や人間関係で病まないコツを、徹底的に語り合ってもらった。(取材・構成/川代紗生)

「当たり前にできていたこと」ができなくなったら即病院へ
──今回は、「病まないコツ&逃げるべきサイン」についてお二人にお聞きしたいと思います。がむしゃらにがんばりすぎてしまうと、なかなか自分の心が限界であることに気がつけなかったりしますよね。お二人は、「心の限界」を見極めるための判断基準は、何か持っていますか。

わび:私は「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせるようになったら、それは休むべきサインだと思っています。大丈夫かどうかを確認するのは、少なからずダメージを負っているときです。

 本当に大丈夫な人は、大丈夫かどうかなんて気にしません。

バク:そうですね。「まだ大丈夫」って今が辛いからこそ言い聞かせている言葉ですからね。めちゃくちゃ健康なときに「今、私、息してる」と思いながら呼吸しないじゃないですか。

「まだ息してる、大丈夫」とわざわざ心の中で言うのは、息苦しい中で無理して呼吸しているからですよね。

「まだ大丈夫」「まだいける」と思いながら作業しているとき、たとえば書類あと1枚書けば休める、とかなら最後までやり切ったらいいと思うんですけど、そうじゃないのなら、いったん休まないともたないですよね。

──しんどくなってしまっても、「自分の心が弱いだけなんじゃないか」と感じてしまい、「精神科に行って治療する」という選択肢が浮かばない人も多いと思います。「会社を休んで病院に行くべきかどうか」の判断は、どのようにすればいいのでしょう? たとえば、全然笑わなくなったとか、突然涙が出てくるとか?

バク:それはもう重症ですよ! すぐに病院に行ってください。

 私ものべ2万人以上の患者さんを診てきましたが、その上で心から伝えたいのは、「ふだん何も考えずにできていたことができなくなったら、即病院」でOK、ということ。

 たとえば会社に行くにしても、それまでパッと朝の支度をできていたはずが、「ああ、朝か、起きるのめんどくさいな」「朝ごはんどうしよう。抜くか……でも抜いたらまずいよなあ」とか、ゴチャゴチャ考え出すようになったら、かなりまいっている状態だと思いますよ。

わび:それ、なんとなくわかる気がします。

 私が自衛隊にいたとき、大事な決断をする前に、いつも唐揚げを食べる先輩がいたんですよ。

 理由を聞くと「好きなものがマジでうまいなら、判断力は正常だろ?」と言っていました。逆に、好きなものがおいしくないときは、心身が弱っていて、判断力が低下している証拠だそうです。これは割とわかりやすい目安ですよね。

バク:「おいしいものをちゃんとおいしいと思えるか」は、たしかにわかりやすいですね。

 いずれにせよ、普通の病院に行くのと同じ感覚で診断を受けてほしいですね。

「精神科なんて行きづらい……」という人もいますし、事情があって精神科に行く勇気が出ないという方ももちろんいらっしゃると思いますが、症状によっては薬を飲んだり、カウンセリングしたりすることで改善される場合も多いので。

自分を助けられるのは自分しかいない
──上司に怒られすぎて心を病んでしまう人もいるかと思います。「怒られているうちが花」という言葉もありますが、上司からの叱責やアドバイスは、どのように受けとめたら良いでしょうか。

バク:まず前提として、職場関係で上司に怒られてメンタルを病んだとして、それで「怒られている人が悪い」っていうパターンはほとんどないと思うんです。

 わびさんの本にも書いてありましたが、部下が効率よく働けるようにするのが上司の仕事。反射的に、感情的にわっと怒ってくるやり方って、全然建設的じゃないんですよね。「怒る」と「叱る」を混同している時点で、その人の言うことは聞かなくていいと思います。

 感情を乗せずに、「君がやったミスはこういうもので、連発するとこういう被害が起こる可能性がある。それはわかる?」というように、具体的に指摘する。こういうやり方は「叱る」だし、それは聞く価値があるんですよ。

 そこまで冷静に、相手の理解度を確認しながら指摘するには、自分が誰よりも全体像を把握しておく必要がありますから。

わび:私もまったく同意見ですね。行動につながるような具体的な方法が出てくるのなら、それは聞いてもいいけれど、感情的な表現しかできてないなら、受け流していい。

 私は嵐の中4km泳いだり、雪の中100km歩いたり、山の中に1ヵ月近く籠ったり、自衛隊でいろんな経験を積んできました。過酷な状況を何度も乗り越えてきましたが、パワハラで簡単にぶっ壊れました。他人からの理不尽な攻撃などでメンタルをやられそうになったら、「心が折れる前に逃げる」が正解だと思います。

バク:うんうん。心が折れる瞬間って、いつやってくるか本当にわからないですからね。

 よく「〇〇さんは同じような状況でも大丈夫だったよ」と根性論でなんとかしようとする人がいますが、人それぞれ置かれた環境がちがうので、まったく同じ出来事に遭遇しても、みんなに同じ症状が現れるとはかぎらないんですよ。

 他人が我慢しているからといって、自分も我慢しないといけないというのは間違いです。

 この記事を読んでくださっている読者の方には、他人と比較して落ち込んだり、自分と同じ環境ではない他人と自分を同じ目線で見たりするのはやめましょう、とお伝えしたいですね。しんどいことから逃げることは恥ずかしいことでもなんでもなく、立派な防衛手段のひとつですから。

わび:私もパワハラで倒れる前までは、「いつか、きっと誰かが助けてくれる」と、自分で逃げることをせずに、誰かが助けてくれるんじゃないかと希望を抱き続けていました。でも、結局誰も助けてくれなかったんですよね。

 激務とパワハラに悩まされ、私が弱っていくにつれて、徐々に周りから人がいなくなっていきました。

 もちろん、励ましてくれる人もいて本当にありがたかったんですが、やっぱりメンタルのどん底から這い上がるには、自分で動かないとどうにもなりません。

 私が今、毎日を幸せに過ごせているのは、思い切って環境を変えたからでした。他人を救ってくれる神様みたいな人なんて、いないと思ったほうがいい。自分の武器をしっかり磨いて、いざというときにいつでも逃げられる準備をしておく。

 自分を助けられるのは、自分の人生を変えられるのは、結局自分だけなんですよね。

歯ぎしりが招く口腔トラブル 知覚過敏、片頭痛、肩こりになる人も

 夜、隣で眠っている夫、妻や子供の歯ぎしりがうるさくて眠れないという人は多いだろう──。眠っている間にギリギリと上下の歯をこすり合わせる歯ぎしりのことを「グラインディング」という。実はこのほかにも、上下の歯をカチカチと鳴らす「タッピング」、歯を食いしばる「クレンチング」と、歯ぎしりには大きく3種類ある。一説では、なんと9割の人が睡眠中だけでなく、起きている間も歯ぎしりをしているという。つまり、あなたも無意識に歯ぎしりをしている可能性が高いのだ。

 なぜ人は、起きているときも歯ぎしりをするのか。その原因は明らかになっていない部分が多い。幸町歯科口腔外科医院院長の宮本日出さんが解説する。

「起きている間の歯ぎしりは、歯並びやかみ合わせが悪いことや、スマートフォンやパソコンの使いすぎで姿勢が悪くなっていること、長時間ほおづえをつくことなど、さまざまな原因が考えられています。現状では、歯ぎしりによって無意識にストレスを解消しようとしているという説が最も有力です。

 本来、噛むという行為は、ものを食べるためだけではなく、敵を攻撃するための手段でもあります。人間は、歯ぎしり、つまり噛むことで、ストレスという敵に対処しているのではないかと考えられています。

 そしていま、このコロナ禍のストレスにより、歯ぎしりをする人が増えているという報告が世界各国で上がっています」

 イライラしているときや集中しているときなどに無意識に歯を食いしばってしまうのも、心身のストレスを軽減しようという本能なのだ。

 青木歯科院長の青木聡さんも、理想的な歯ぎしりなら、むしろ心身によい影響を与えると語る。

「歯ぎしりは、必ずしも“悪癖”ではありません。歯ぎしりをすることでストレスホルモンが減少するほか、ストレスなどが原因で起こる胃潰瘍などの面積が減少することが、動物実験で明らかになっています。脳にかかっている負担を、体の末梢を使って解消しているのです」(青木さん・以下同)

 しかしその一方で、習慣化すると危険な「悪い歯ぎしり」も少なくない。

食事中以外は歯と歯は離す
 奥歯をこすり合わせるような歯ぎしりは、好ましい歯ぎしりとは言えない。

「悪い歯ぎしりの大きな要因の1つが、かみ合わせの悪さです。かみ合わせが正常であれば、歯ぎしりをしたときの圧力は犬歯を中心にかかり、奥歯に力がかかることを防ぐことができます。一方、かみ合わせが悪いと、奥歯だけに圧力がかかったり、あごを痛めたりするのです。

 一見、歯並びがよくても、かみ合わせは悪いことがあるので注意してほしい。かみ合わせは見た目の歯並びとは別ものなのです。

 試しに、上下の歯を軽く合わせた状態で、下あごを左右に動かしてみてください。このとき、犬歯ではなく奥歯が強くぶつかり合うようなら、かみ合わせが悪い可能性が高く、悪い歯ぎしりをしているかもしれません」

 奥歯は、上下にかかる力には強いが、左右にかかる力には弱いため、奥歯をこすり合わせる「悪い歯ぎしり」を繰り返していると、歯が異様にすり減ったり、知覚過敏を起こしたりと、さまざまな口腔トラブルを招く。

「悪い歯ぎしりや食いしばりをしすぎると、噛む筋肉も酷使することになるため、それが片頭痛や肩こりにつながる人もいます」

 本来、日中で上下の歯が触れ合っていてよいのは、食事の時間のみ。平均して、1日あたりわずか17.5分間だ。それ以外は、上下の歯の間には1〜2mmほどの隙間があるのが正常だ。

 宮本さんによれば、起きている間に無意識に歯を触れ合わせてしまう「TCH(歯列接触癖)」は、睡眠中の歯ぎしりよりもやっかいだという。

「睡眠中の歯ぎしりは、力の制御ができていないため、50〜100kgもの圧力がかかっているといわれています。その分筋肉が疲れるので、睡眠中に歯ぎしりをしている時間は平均して1.4分間です。

 一方、TCHは無意識に軽い力で噛んでいるので、平均して1日157.2分間にもなる。その負担は、強く食いしばるような歯ぎしりの20倍以上です。

 TCHが多い人は、顎関節症になるリスクが2倍になるという報告もあります」(宮本さん・以下同)

 TCHが多いと、「歯を食いしばること」そのものがクセになってしまい、特にストレスを感じていなくても、歯を触れ合わせたり、強く食いしばるようになってしまう。睡眠中の歯ぎしりも起こりやすくなり、常に口やあご周りの筋トレをしているような状態になる。

 すると、顔のゆがみ、ほおのだるさやえら張りなどが起こる。

 そして、さらにかみ合わせが悪くなり、悪い歯ぎしりや食いしばりが習慣になってしまうのだ。

※女性セブン

脳を知る 最もありふれた頭痛 緊張型頭痛を知っておこう

脳神経外科の外来では、頭痛が原因で多くの患者さんが受診されます。たとえ軽い頭痛でも、しばらく続けば「脳に何か悪いものがあるのではないか?」といった不安が生じてしまいがちです。しかし安心してください。

脳に何か悪いものがあるために起こる頭痛(二次性頭痛)は、脳には何も悪いものはないけれど頭痛だけが起こる病気(一次性頭痛)よりはるかに少ないのです。二次性頭痛を起こす代表的な病気は、くも膜下出血と脳腫瘍ですが、これらの患者数は年3万人といわれています。一方、一次性頭痛の患者数は約4000万人にのぼるといわれており、圧倒的に多いことがわかります。

一次性頭痛のうち最も多い病気が緊張型頭痛で、2200万人(15歳以上の国民の22%)といわれています。次いで多いのが片頭痛で、840万人(同8・4%)です。今回はこの最も頻度の多い、ありふれた頭痛ともいえる緊張型頭痛について解説します。

緊張型頭痛の緊張とは筋肉の緊張を意味します。すなわち頭の周囲や首の筋肉が過剰に緊張することが原因で起こる頭痛を総称しています。実際首や後頭部、こめかみ部などを指で押さえてみると筋肉が部分的に硬くなり痛みを感じる部分が認められます。つまり、頭頚部の筋肉が肩こりのように「凝っている」状態なのです。どうしてこのように筋肉が緊張するのかははっきりとわかっていませんが、精神的ストレスや不安、頚椎の変形や姿勢の異常などが複合的に関連していると思われます。

痛みの特徴は、両側の頭部に締め付けるような、あるいは重りを乗せたような痛みです。痛みの程度は強いものではなく、頭が重いと表現する人もいます。吐き気や嘔吐もなく、痛みのために日常生活が制限されることもないのですが、だらだらと一日中、毎日痛みが続くこともあるのでとてもうっとうしく、不安にも感じます。

短期間に自然に治ることも多いのですが、悪循環に陥ると治りにくくなります。通常病院に受診するのはそんな場合です。治療としては普通の痛み止めがよく効きますが、慢性化した頭痛では頓服で1、2回痛み止めを飲んでも、薬が切れるとまた痛くなります。したがって数日間は薬を続けて飲み、痛みの悪循環を断ち切る必要があります。ただしあまり長期にわたって習慣的に飲み続けると、今度は薬が原因で頭痛が起こり、治りにくくなるので注意してください。

頭痛のなかで最も多い緊張型頭痛。ありふれた頭痛ですが正しい知識が必要です。

(済生会和歌山病院副院長 兼脳神経外科部長 小倉光博)

高齢者の約1%、30万人が発症する「てんかん」 新薬登場で改善へ

 てんかんの発症率は100人に1人で、高齢になって初めて発症するケースも多い。一方、近年は新薬が次々と登場している。

 脳は通常、神経細胞が電気信号を発して情報をやりとりしている。この電気信号が一斉かつ過剰に発生(電気的興奮)すると、その部位の機能が乱れ、けいれんや意識障害などからだの異常が起こる。これを繰り返すのがてんかんだ。

 脳を路上に例えると、あちこちに会話中の人がいて、一部でデモが起こっているようなものだ。頭への外傷や感染症、脳血管障害、先天性の脳の病変などが主な原因だが、はっきりしていないケースも多い。

 3歳以下の乳幼児と60代以上の高齢者に発症年齢のピークがある。高齢者に多いのは、脳血管障害など脳の病気が増えてくるためだ。福岡山王病院脳・神経機能センター神経内科の赤松直樹医師はこう言う。

「65歳以上の約1%、30万人あまりがてんかんを発症していると推測されます。これは患者全体の約3分の1に相当します。介護老人保健施設などでは発症する率が高い。高齢社会ですから、今後てんかんと診断される患者さんはさらに増えるでしょう」

 高齢で発症するてんかんは、電気的興奮の場所が脳の一部に限定される「部分てんかん」のうち、側頭葉に焦点(発生源)がある「側頭葉てんかん」というタイプが多い。症状の特徴は「複雑部分発作」だ。

 複雑部分発作とは、日常生活の中で意識が数秒から数分間、突然、消失してしまう症状だ。意識のない間も目を開けたまま、口をもぐもぐしたり顔を触ったり、時には歩きだすこともあり、これは「自動症」と呼ばれる。転落や台所でのやけど、運転中の事故などの危険もある。

「発作時の記憶は患者さんにはありません。もうろうとしている様子から認知症と間違えられることもあります。高齢で発症するてんかんは、発作を起こすエネルギーが他のてんかんに比べ弱いため、抗てんかん薬が効きやすい。発作が治まりさえすれば普段どおりの生活ができますので、おかしいと思ったら早めに受診してほしいですね」(赤松医師)

 福岡県に住む田中健二さん(仮名・69歳)は2年前、自宅でけいれんを起こし、救急搬送先でてんかんと診断された。抗てんかん薬を飲み、けいれんは落ち着いたが、意識の混濁が続いているので入院となった。

 その後、もうろうとした状態で病院内を歩き回り、押さえようとすると暴れる行為を繰り返したため強制退院となった。田中さんは困った家族に連れられて、赤松医師の元にやってきた。

「問診のほか脳波測定などをして、高齢発症の『側頭葉てんかん』と診断しました。前の病院では詳しい診断がついていなかったため、このタイプのてんかんに合う薬が処方されていませんでした。そこでラモトリギンを飲んでもらったところ、発作はぴたっと治まりました」(同)

 田中さんは発症前の状態に戻り、認知機能の低下などもなく、元気に過ごしているという。

 高齢発症の側頭葉てんかんに効果的なほかの新薬は、レベチラセタム(2010年発売)の錠剤が知られている。これら2剤は他の薬と一緒に飲んではいけないなどの相互作用が少なく、持病のある高齢者には使いやすい。

 抗てんかん薬は、電気的興奮にかかわるさまざまな部位に作用して発作を抑える。新薬は作用する部位が既存の薬と違うことから、これまでの薬で効かなかった人にも効果が得られる可能性がある。16年5月に登場したペランパネルもその一つだ。

「臨床試験で投与した難治性部分てんかんの患者さんは、この薬を従来の薬と併用することで、連日起こっていた発作がほぼゼロになりました。さまざまな新薬の登場により、今後、薬で改善する患者さんが増えると考えています」(同)
おススメサイト!
最新記事
★★互助会推薦★★
QRコード
QR
カテゴリ
ランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ