ダイエットを成功させるには、どうすればいいのか。高タンパク・低カロリー食レストラン「筋肉食堂」を運営する谷川俊平さんは「食べないのに太るのではなく、食べないから痩せない。カラダづくりで最も効率が良いのは、適切に食べて筋肉をつけ、代謝のいい体をつくることだ」という――。
※本稿は、谷川俊平『食べる筋トレ。 』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
痩せるために最も効率がいいたった1つのこと 「痩せよう」と決意したとき、あなたはまず何から始めるだろうか?
多くの人はこう考えるはずだ。
甘いものを食べるのをやめよう。
今日から野菜しか食べないようにしよう。
夕食はそのまま脂肪になるから、今日から夕食を抜こう。
週に一度、断食をしよう。
たしかに、食べる量を減らせば、体重は減る。一見、ダイエットに成功したように見えるだろう。
しかし、その先のことを考えたことがあるだろうか。
一時的なダイエットに成功したあと、あなたは元の食生活に戻るはずだ。
ところが、一定期間食事の量を減らしたことにより、あなたの体は劇的に代謝が落ちている。
つまり、食事を減らすダイエットをすると、それ以前よりも脂肪が蓄積しやすい体になってしまうのだ。
私のところにはよく、「食べてないのに太るんです」「ものすごく我慢して食事を減らしているのに、見た目が変わらないんです」という人が相談にやってくる。
そんな人に、私は必ずこう言う。
食べてないのに太る?
食べないから痩せないんだ!
細身の体を目指すにしても、マッチョを目指すにしても、体を変革するには、まず筋肉をつける必要がある。
実は、痩せるためにいちばん効率がいいのは、筋肉をつけることなのだ。
代謝のいい「超高級スポーツカー」へ生まれ変われ あなたは、日々三度の食事をとるとき、空腹感を覚えているだろうか。それとも、食事の時間だからと、なかば義務的に食べているだろうか。
毎日パソコンとにらめっこをして、運動はほぼゼロ、という生活を送る現代人は多いと思う。このような生活をしていると、昼休みにお腹が空かないという人もかなりいるはずだ。昼休みにおにぎりを2個も食べれば、夜まで持つという人も多いことだろう。
これは車にたとえれば、少しのガソリンでいつまでも走れる軽自動車のようなものだ。
自分の体がそんな軽自動車状態だとしたら、これからは高級車に生まれ変わるというイメージを描いてほしい。それも、1台何千万円もするような、ポルシェやフェラーリなどの超高級スポーツカーだ。
これらの車は、エンジンが大きくて排気量が多い。ちょっとアクセルを踏み込むだけで一気に加速する。人間で言えば代謝がいい状態だ。つまり、代謝のいい体を目標にするということだ。
代謝とは、簡単に言えば食べたものをエネルギーに変える力のこと。
たとえば、毎日野球部で汗を流している高校生は代謝がいいので、おにぎりを2個食べても1時間後には「なんか腹減ったな」と言い出す。フェラーリやポルシェも、「あれ、このあいだ給油したばっかりなのに、もうガソリンないの?」と驚くほど燃費が悪い。燃料をすぐに使いきってしまうのだ。
みなさんの多くは、デスクワークが中心で、あまりお腹が空かない軽自動車状態だと思う。本当はお腹が空いていないけれど、食事の時間がきたから食べるとか、ストレス解消のために必要以上に食べるという人が多いのではないだろうか。
運動習慣のない人は、体は疲れていないのに、脳は食べ物を欲する。だから食べるのだが、食べたものがエネルギーとして使いきれないので、脂肪として体に蓄積されてしまう。
だが、筋肉をつけていけば、エネルギーをちゃんと燃やすことのできる体になって、健康な空腹感を覚えるようになる。
それが代謝のいい体になるということだ。
「寝ているだけで痩せる」 では、私たちの体はどこでこの代謝を行っているか、ご存じだろうか。
実は、これは筋肉で行われている。だから筋肉量の多い人はそのぶん代謝が盛んになるので、太りにくく痩せやすいのだ。
ここまで読んで、「筋肉をつけて代謝がよくなると、同じ運動をしてもそれだけ多くのエネルギーを燃やすことができる」ということがおわかりいただけたと思う。
これは運動時に限ったことではない。
あなたは、「基礎代謝」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
最近は、体重計などにも基礎代謝を測定できる機能があるため、ご存じの人が大半だろう。
私たちの体は、運動しているとき以外にも、心臓を動かしたり、胃や腸で食べたものを消化したり、呼吸をしたり、体温調節をしたりといった、生命維持活動にもエネルギーを使っている。
この生きていくために最低限必要なエネルギー量を「基礎代謝」と呼ぶ。
筋肉がつくと、基礎代謝が上がる。つまり、寝ているときでもより多くのカロリーを消費することができるようになるのだ。
「寝ているだけで痩せる」
筋肉をつけ、基礎代謝を上げると、こんな夢のようなことが可能になるのだ。もちろん、「私は痩せたいのではなく、筋肉をつけて体を大きくしたいんだ」という人もいるだろう。実はこの場合も、代謝をよくするのが早道だ。
いままで食が細くて量を食べられなかったという人も、筋肉をつければ代謝が上がるのでお腹が空きやすくなり、どんどん食べられるようになる。食が進めばどんどんトレーニングをして、さらに体を大きくできるようになる。
筋肉をつける→代謝が上がる→食べられる量が増える→より重量を挙げられるようになる→より筋肉がつくという、理想的なサイクルがまわり始めるのだ。
つまり、体を大きくするにせよ、スリムになるにせよ、筋肉をつけて基礎代謝を上げることが大事だということだ。
「昼はドンブリ、夜はラーメン」という罠 では、具体的に何を食べればいいか、それはズバリ、タンパク質だ。
まず、日本人はタンパク質の摂取量が圧倒的に足りない。
人間が1日に必要とするタンパク質は、体重1キロにつきおよそ1グラムだと言われている。しかし、これは厚生労働省が約20年前に発表した「これくらいとっていれば健康に害はないですよ」という必要最低限の量である。
実は、筋肉量を増やし、代謝を上げたいなら、その2~2.5倍とらなければいけない。体重60キロの人なら120グラムから150グラムだ。
具体的に言うと、鶏ムネ肉1枚に含まれるタンパク質がおよそ40グラムだから、毎日3枚強は食べなくてはいけないということになる。
しかも最近は2倍どころではなく、もっと必要だという説も出てきている(ただし、どれだけ食べてもいいわけではなく、3.3倍を超えるとそれ以上の効果が見込めなくなると言われている)。
ところが、多くのビジネスパーソンは、時間に追われて、「朝はパンとコーヒー、昼はドンブリもの、夜はラーメン」というような、炭水化物中心の食生活を送っている。
これでは、タンパク質の摂取量が足りなすぎる。炭水化物で腹を膨らませていると、タンパク質が入る余地がなくなる。これだけは絶対に避けなければならない。
「食べる筋トレ」は夢の投資だ ただし、“タンパク質中心の食事”にもデメリットはある。それは、食費がかさむことだ。
実は、タンパク質は「カロリー単価」が高い。ドンブリものや麺類などの炭水化物と比べると、肉や魚などのタンパク質で同じカロリーを摂取するには、1.5倍から2倍のお金がかかるのだ。
たとえば、ファストフードや牛丼チェーンでランチをすませるなら500円以下でOKだが、コンビニでサラダチキンを買って、牛乳を買って、茹で卵を買って……、というように単品でいろいろ買っていくと、あっという間に1000円はオーバーしてしまうだろう。
だが、この出費は「投資」と考えてほしい。
ビジネスに携わる人にはご理解いただけると思うが、何かを獲得するためには、投資が必要だ。
株で利益を出そうとするときには、最初にまとまったお金が必要だし、人材を育てる際にも教育投資が必要。それをすっ飛ばして即戦力の経験者を獲得しようとするなら、採用費や高い年俸を用意しなければならない。
商品の生産量を増やし、売上を上げたいなら、設備投資が必要だ。
これと同じように、体を変革して人生を変えるには、それなりの投資額が必要なのだ。
もちろん、「投資」というからには、それなりのリターンがある。
筋肉をつけると、理想的なカラダが手に入るのはもちろん、集中力が上がったり、思考力が上がったりするので仕事にもいい影響がある。その結果、報酬が上がる可能性もある。
また、見た目が変わることで、「この人は自分を律することができる」というまわりの人からの「信頼」を獲得できたり、異性から人気が出たりと、人間関係にも好影響が期待できる。
こう考えると、投資額に見合う十分なリターンが期待できるのではないだろうか。しかも、「食べる筋トレ」のいいところは、株式投資などと違って、しっかり取り組めば「確実に」リターンを享受できるという点だ。
世の中、「絶対に儲かる投資」は存在しない。そんなものは詐欺だ。
しかし、正しく食べるものに投資すると、100%見返りを受けることができる。こんな素晴らしい投資は、他には存在しないのではないだろうか。
---------- 谷川 俊平 (たにがわ・しゅんぺい) 「筋肉食堂」マネージャー 1983年大分県生まれ。福岡大学スポーツ科学部卒業。大学卒業後、アスリートや芸能人が数多く通うスポーツジム「TOTALWorkout」で、トップアスリートや歌手、俳優などのボディメイクを10年間担当する。数多くのクライアントと接するうち、体づくりには、食事の改善が欠かせないことに気づく。それがきっかけとなり、2015年、おいしい料理をお腹いっぱい食べて体づくりをする高タンパク・低カロリー食レストラン「筋肉食堂」をオープン。