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マイナ保険証で初診21円増 4月から患者負担、反発の声も/とにかく金取ることしか考えない自公政権


 マイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」を4月から病院などで使った場合、患者が窓口で支払う医療費が増える。3割負担の人は初診時に21円、再診時に12円上乗せされる。マイナ保険証は政府が昨秋に本格導入したものの普及が遅れており、取り組みを促すために対応病院の診療報酬を引き上げるからだ。唐突な患者へのしわ寄せに反発の声も上がっている。

 マイナ保険証は政府のカード普及策の一つで、患者の健康情報を治療に生かす「データヘルス」の基盤に位置付ける。医療機関で機械に読み取らせれば本人確認ができ、薬の処方歴や特定健診の結果を見て治療に生かせる。

マイナ保険証導入と患者の負担増© KYODONEWS マイナ保険証導入と患者の負担増

米、低身長症の子どもの成長促す薬を承認

米食品医薬品局(FDA)は低身長症の最も多い原因である軟骨無形成症の子どもの成長を促す薬を初めて承認した。

 今回承認されたのは米製薬企業バイオマリン(BioMarin)が開発した「Voxzogo(別名ボソリチド)」。成長板と呼ばれる骨の末端近くにある軟骨の部分がまだ存在し、骨が成長する可能性がある5歳以上の軟骨無形成症の子どもへの治療に使われる。

 軟骨無形成症は、軟骨から骨への変化を妨げる遺伝性の骨系統疾患。成人になった軟骨無形成症の人の身長は平均120センチほどだ。

 米国立衛生研究所(NIH)によると、軟骨無形成症は呼吸障害をはじめ、脊椎側弯症や肥満、繰り返し起こる耳の感染症といった健康上の問題の原因となり得る。

 FDAによると、Voxzogoの安全性と有効性は1年かけて調べられ、同薬を注入された子どもの身長は平均で1.57センチ伸びた。主な副作用は注射部位の反応、嘔吐(おうと)、重篤な可能性のある血圧低下だった。

 欧州委員会(EC)がVoxzogoの使用を承認。

すぐ怒鳴る人を実はまるで恐れなくてもいい理由 行為から他者の本質を見極めることの大切さ

大きな声で怒鳴りつける人を恐れる必要はありません。怒鳴る人たちは、自分の地位が脅かされることが怖くて、大きな声を出して威圧するという実力行使に及んでいるだけだからです。

本当に優れた人は、怒りを爆発させて相手を自分の言う通りに強制したりしません。

「当たり前」と言われ、強いられたルールには疑問を持つことが必要です。名目だけの言葉が一人歩きして、実際にはどのようなことか、誰も分かっていない場合も多いのです。大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏による新刊『怒る勇気』より一部抜粋・再構成してお届けします。

対話を拒む人を理解する

 対話が成立するためには対等であることが前提である。しかし、親子関係、教師と学生(生徒)、さらに上司と部下の関係は対等とは考えない人は多い。対等とは考えない人は力で抑圧しようとする。そのために怒りをぶつけてくるので、反論したくてもできない、心ならずも従ってしまうということはある。

 対人関係の上に立とうとする人は劣等感を持っている。誰かが自分の上になることはもとより、自分と並ぶことも我慢ができず、いつ何時その地位から蹴落とされるかもしれないと戦々恐々としているのである。

そのような人は、自分の地位を脅かされないために力を行使しなければならないと考え、大きな声を出して叱りつけるのである。

 本当に優れた人であれば、自分が優れていることを誇示したりしない、怒りを爆発させたりはしない。そうするのは、自分が無能であることを見透かされたくないからである。

仕事を例にしていえば、本来の仕事の場ではなく、つまり、第一の戦場ではなく、第二の戦場へと部下を呼びつけて、仕事とは関係のないことで部下の価値を貶めることで、自分の価値を相対的に高めようとするのである。

 このことがわかっていれば、怒りを爆発させる親や教師、上司を恐れる必要はない。もしも親や教師、上司が怒りを爆発させても、感情には注目せず、何を語っているかだけに注目し、もしも間違ったことをいっているのであればそれを正せばいいだけである。

 大阪大学で開かれた「平和のための集中講義」において、奥本京子はこういった(「単眼複眼」『朝日新聞』2003年5月23日夕刊)。

 「2人1組になり、1人が自分の片手を固く握ってください。もう1人は、それを開いてみてください」

 教室の中がざわめいた。しばらくして奥本は言った。

 「『手を開いてください』って、言葉で言った人いますか」

 奥本はいう。「なぜ力ずくでほどこうとしたのでしょう。平和的手段で紛争を超えるには、対話して相手と関わることや相手への想像力、創造力が必要なのです」。

 このエピソードから知られるように、対話をすることで問題を解決することなど思いもよらない人は多い。

必ずしも物理的な力を使うことでなくても、問答無用で叱ったりするなど、感情的になって相手を圧倒しようとすることはあるだろう。このような仕方での解決は、たしかに簡単で即効性はあるように見える。

 しかし、それが一時的な解決でしかないことは、日常の場面でいくらでも見ることができる。それに対して、対話による問題解決は、手間も時間もかかる。

自明性を疑うところに対話が成り立つ

 私の理解では、哲学者であるソクラテスが生涯をかけて行った対話、そしてソクラテスの精神を継承する人が行うべき対話は、既成の価値観を追認することなく、社会や文化の価値観を徹底的に疑うためである。

このことは必ずしも絶対的な価値があることを否定するためではない。しかし、価値あることとされていることであっても、最初から自明のものとして与えられているものは何もない。

 それゆえ、どんな問題についても、自明なことは何もないと考えて、言葉(ロゴス)を尽くして議論する必要がある。それなのに、当然のことだ、論じるまでもないといって、言葉を封じる人がいれば、これに断固抵抗しなければならない。

 村上春樹が、河合隼雄との対談の中で、超常現象というようなものは、小説の中では書くが、現実生活では基本的には信じていないといっている。

そんな村上が、戦車や砲弾、飯盒(はんごう)、水筒などがそのまま残っているノモンハンの戦場跡に行き、迫撃砲弾の破片と銃弾をホテルの部屋に持ち帰ったところ、夜中に目が覚めた時、部屋が歩けないくらいに大揺れしていたという経験を河合に語った。

この揺れは真っ暗な中を這うようにして行ってドアを開けて廊下に出たら、ピタッと静まった。

 「これはぼくは、一種の精神的な波長が合ったみたいなものだろうと思ったのです。それだけ自分が物語のなかでノモンハンということにコミットしているから起こったと思ったのですね。

それは超常現象だとかいうふうに思ったわけではないですけれども、なにかそういう作用、つながりを感じたのです」(河合隼雄・村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』)

 この話を聞いた河合は言った。

 「そういうのをなんていう名前で呼ぶのか非常にむずかしいのですが、ぼくはそんなのありだと思っているのです。

 まさにあるというだけの話で、ただ、下手な説明はしない」(前掲書)

 また『源氏物語』の中にある怨霊などの超自然性について、そういったものは現実の一部として存在したものか、とたずねる村上に、河合は「あんなのはまったく現実だとぼくは思います」(前掲書)と答えている。

 こんなふうに「そんなのあり」といって片付けてしまえば、どんな話もそこで終わってしまう。これは言論(ロゴス)の封じ込めにほかならない。流行りすたりがあるがスピリチュアルな現象に関心が向けられることがある。霊的な現象については、それについて議論することなく、ただ「ある」といっているように見える。

ここには死を前にしてなお徹底的に魂の不死について議論したソクラテスたちはいない。生と死の絶対の断絶を説かない人の言葉は無批判に受け入れられる。

 例えば、キューブラー・ロスは「死とはこの人生からべつの存在への移行にすぎない」といっている(『永遠の別れ』)。死んでも無になるわけではなく、今生きているのと変わりがないといわれたら、死を恐れなくていいと思う人がいるかもしれない。

今、苦しくてもあの世では救われるというのも同じである。誰も生きて死を経験することはできないのだから、死が生とは絶対的に違うものであるとは考えないで生の延長と考えてしまうと、苦しみから逃れるために自らの命を絶とうと思うかもしれない。

言葉がシンボルたるがゆえの可能性と危険性

 今あげたような事柄についてなら、無批判に受け入れない人も多いかもしれない。しかし、国を愛することはこの国に生まれたものとして当然のことだといわれた時、そのことを自明のこととして受け入れないということには、抗しがたい力が働くことがある。

しかし、ある国に生まれたからといって、自分が生まれ育った国を必ず愛せるわけではないし、強制されて愛するものではないだろう。国を愛せるにはそもそも愛するとはどういうことか考えなければならない。

 フロムは、愛は技術であり、技術であるならば、知識と努力が必要だといっている。ところが、多くの人は、愛をこのようなものとは考えない。愛は対象の問題であると考える。即ち、愛するのは簡単だが、愛する、あるいは愛されるにふさわしい相手がいないというわけである(フロム『愛するということ』)。

その点、国を愛するのは、対象がはっきりしている。したがって、国を愛することはたやすいことであり、当然のことであると考える。そうなのだろうか。

 ここでそのようなことは当然のことであるとして自分で考えることを止めるとする。巧みな仕方で説得されて、考えることを止めるということもあるだろう。

ともあれ、いつの間にか、言葉の本当の意味を考えようとはしないで、言葉に麻痺してしまった人は、その言葉が対応する事実を確かめなくなってしまう。そして、いわば名目としての言葉だけが一人歩きし、本来、名目でしかなかった言葉が、実在の仮象を与えられる。

言葉はサインとしてもシンボルとしても機能する

 言葉にはサインとして機能する場合とシンボルとして機能する場合がある(藤沢令夫『イデアと世界』)。前者は、言葉と事物との二項関係であり、言葉と事物は直結する。他方、後者では言葉と事物は直結せず、想念や観念が介在するという意味で、言葉、事物、観念(想念)の三項関係である。

 言葉はサインとしての機能を超える。シンボルとなることで初めてオノマ(名前)だけでなく、ロゴス(理)となることができる。このシンボルとしての言葉においては、言葉と事物は直結しない。言葉を聞いた時にわれわれが理解するのは事物そのものではなく、互いの考えである。

想念や観念が介在し、三項関係が成立する。サインとしての言葉の場合は、それが指示する言葉が対応するが、シンボルとしての言葉は事物や状況から独立した領域を持ちうる。

 だから、追い詰められれば人は噓をつくこともでき、小説家は創作することができるのだが、シンボルとしての言葉が三項関係であることの問題は、現前する事物や状況とは関係なく、言葉だけがいわば一人歩きし、言葉が実体化することだ。

 「愛」というものはない。実際には「愛する」という行為しかない(フロム『生きるということ』)。愛国心や正義という言葉も、それがどういう行為なのかが検証されることなく、強制され、愛国心や正義という言葉のためにどれほど多くの人が殺されてきたことか。

周囲が驚く「冷静なあの人」がなぜ!? 理知的な人がまさかの愚行に走るワケ【公認心理師が解説】

「冷静なあの人がなぜ!?」―理知的な人がまさかの愚行に陥る理由

理知的な人はストレスに遭遇したとき、原因やプロセスを分析し、理論的に捉えて処理する傾向があります。その一方で、理性に頼りすぎるあまり、素直な感情を抑圧してしまう可能性もあります。

すると、ストレスには冷静に対処できても、抑圧した感情は解消されず、何かのきっかけにその感情が噴出してしまうことがあります。そして周りが驚くような愚行に陥り、結果的に失態を犯してしまうことがあるのです。


理屈で自分を守っていると、素直な感情は抑圧されたままになる
たとえば、恋心を抱いて異性にアプローチしたところ、まったく相手にされずに遠まわしに断られてしまったとします。こうしたときに理屈に頼る人のなかには、「恋愛に振り回されるなんて、時間の無駄」「どうせ異性は“外側”しか見ていない」などと理屈で自分を納得させて、失恋のストレスから逃れようとすることがあります。

理屈で自分を守っていれば、傷つくリスクを回避することができます。しかし、「あの人が好きだ」「恋愛をしたい」といった素直な感情は満たされず、抑圧されたままになります。

その結果、たとえば酒席で理性の抑制が外れたときに、恋愛への欲求が過激な形で噴出し、セクハラ的な行為が生じてしまったり、自分が優位な立場に立ったときに、支配的な形で恋愛欲求を満たそうとしたり……こういった事態が生じてしまうことがあります。


感情と理性のバランスを取り、双方を素直に表現していますか?
物事を理性で捉えて処理することは、社会で生きる上では必要な作業です。しかし、そればかりに頼っていると満たされない感情が思いがけない形で噴出し、後悔してしまうこともあります。

大切なのは、感情と理性のバランスを取り、双方を素直に表現すること。ストレスに遭遇したときには素直な感情と向き合い、理性を使って対処方法を考えていくことです。

先の例で考えれば、失恋のショックを受けたときに、理屈を使って素直な感情から逃げないことがまず大切です。

振られた悲しさと、まずはじっくり向き合ってみること。「胸がじんじん痛くなる」「眠れないほどつらくなる」こういった素直な心の動きを、ゆっくり味わってみることです。自然な感情に向き合うと、あるがままの自分を認めることができます。すると、心の傷は穏やかに癒されていきます。


心の傷が癒えたら、理性で合理的な対策を考える
心の傷が癒えてきたら、次に必要なのが理性で合理的な対策を考えることです。

同じ状況で同じ感情を味わった人の体験談を読んだり、その後の対処法を調べるなどして、失恋から立ち直る方法を考えてみましょう。自分磨きに励んだり、コミュニケーション方法を工夫したりして、自信を持って恋愛にアタックできる自分づくりを始めてみるのもいいでしょう。

心の傷が癒えた後に理性の力を上手に使えば、ストレス対処力は向上し、次に同じようなストレスに遭遇したときのダメージを最小限に抑えることができます。そして、同じ轍を踏まないための効果的なアプローチも考えることができるのです。

特に、日頃から理屈で自分を守ろうとしている人は、自然な感情を抑圧し、頭のなかだけで物事に対処しようとする傾向が強いのかもしれません。 感情と理性のバランスを大切にし、双方を素直に表現することができれば、つらいときにも慌てずに乗り越えていくことができます。

まずは、何かのストレスに遭遇したときに、自分の感情をじっくり見つめていくことから始めてみませんか?

▼大美賀 直子プロフィール公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。

「脳に直接電流を流した」彼に起こった衝撃の結果 米国で巨額投資進む「ブレインテック」の現在地

個人差こそあれ、一般には加齢とともに衰えるとされる私たちの記憶力。これをITのような技術の力で補強することは可能だろうか?

 アメリカ国防総省の「マッドサイエンス部門」とも呼ばれるDARPA(国防高等研究計画局)は今から数年前、人間の脳に電気刺激を与えて記憶力を強引に高める臨床試験を実施した。

 その被験者となったのは、あらかじめてんかんを治療するために手術で脳内に複数の電極を埋め込まれた男性患者。これらの電極に外部から微弱な電流を流して脳を刺激すると、てんかんによるけいれんなどの症状を抑えることができる。

 このような治療法は「脳深部刺激療法(DBS)」と呼ばれ、てんかん以外にもパーキンソン病など不随意運動を伴う病気に向けて、すでに世界で16万人以上の患者に適用されている。

電極を「記憶力の強化」に転用

 DARPAでは、この男性患者の承諾を得て、本来ならてんかん治療に使われるべき脳内の電極をあえて「記憶力の強化」に転用する実験を行った。

 この臨床試験では、まず患者に「スーツ」「かたつむり」「ジュース」「飛行機」など、互いにまったく無関係の12個の英単語をパソコン画面上で見せてから消した。その後、それらの中で記憶している単語を発音してもらったところ、最初は3個しか思い出せなかった。

 ところが、この患者の脳に電極を通じて電気刺激を与えたところ、12個の単語をすべて思い出して発音することができた。

 この患者は「(脳に電気刺激を受けた後は)頭の中に鮮明な絵が描かれたように(すべての単語を)見ることができた」とする驚くべき体験談を語っている。

 DARPAがこうした奇妙な研究を行ったのは、アメリカの退役軍人を想定してのことだ。アフガン/イラク戦争などによる負傷で記憶障害に陥った兵士らに向けて、記憶力を取り戻す研究の一環として実施された。

 しかし、この種の技術、いわゆる「ブレインテック(脳の技術)」が適用されるのは軍事用途に限らない。DARPAによる実験のベースとなった脳深部刺激療法は、パーキンソン病や重度の鬱病をはじめ広範囲の神経疾患に向けて、すでに世界全体で年間11億ドル(1200億円以上)もの市場規模に達している。

 さらに「EEG(脳波)」や「EMG(筋電信号)」、あるいは「fMRI(機能的核磁気共鳴)」など本来医療用に開発された脳科学の技術が、最近ではビデオ・ゲームなどのエンターテインメント、睡眠改善のようなヘルスケア、さらには広告宣伝や購買分析、マーケティングをはじめ広範囲のビジネスに応用され、今後大きな成長が見込まれている。

ブレインテックでも事業を展開するイーロン・マスク

 このように将来性豊かなブレインテックに狙いを定めて新事業を始めたのが、電気自動車メーカー「テスラ」や宇宙開発企業「スペースX」の最高経営責任者イーロン・マスク氏だ。

 いわゆるシリアル・アントレプレナー(連続起業家)としても知られるマスク氏が2016年、アメリカ・サンフランシスコで立ち上げた会社がニューラリンクだ。同社はブレインテックの中でも、とくに「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」と呼ばれる高度技術の開発・商用化を手掛けている。

 BMIとは、脳とロボット・アームやコンピューターなど各種マシン(機械)を接続し、脳から直接マシンを操作する。あるいは脳とコンピューターなどとの間で直接情報をやり取りする技術。「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」と呼ばれることもあるが、本稿ではBMIで統一する。

 BMIには「侵襲型」と「非侵襲型」の2種類がある。

 侵襲型とは手術を必要とするBMIだ。人間の頭蓋骨にドリルで穴を開け、そこから脳にスパイク信号(電気信号)の読み取り装置を装着する。これとコンピューターなどのマシンを有線または無線で接続して情報をやり取りする。

 一方、非侵襲型とは手術を必要としないBMIだ。ヘルメットやゴーグルなどウエアラブル端末を頭部に被ることによって、外部から脳内のスパイク信号を読み取る。この情報をコンピューターやスマホに入力して、これらの端末を操作するのだ。

 これらBMIの歴史は意外に古くまでさかのぼり、すでに1960年代には各国の大学や国立研究所などを中心に地道な研究が始まっていた。それは基本的に、脳卒中などの病気や脊髄損傷などの怪我で四肢の麻痺した人たちに向けて、脳からロボット・アームを操作するなど新たなリハビリ手段の開発を主な目的としていた。

 これら基礎研究の成果をベースに、マスク氏のニューラリンク社も(少なくとも当面は)肢体麻痺の患者らに向けて侵襲型BMIの事業化を目指している。ただし、今のところはブタやサルなどを使った動物実験の段階だ。今年4月にはマカクザルの脳に「リンク」と呼ばれる読み取り装置を埋め込み、このサルが脳から念じるだけでコンピューターを操作してピンポン・ゲームを遊ぶ様子を公開した。

 これまで大学などで開発されたBMI技術とニューラリンクのそれとの違いは、後者がブルートゥースを使った無線方式であることだ。これにより(従来の有線方式に比べて)外見上の違和感がなくなり活用の自由度が増すなど、BMIの実用化(商品化)に向けて大きな一歩を踏み出すと期待されている。

 すでにニューラリンクはアメリカのFDA(食品医薬品局)など規制当局に人間の患者を対象にした臨床試験の許諾を申請中と見られるが、これまでのところ当局から許可は下りていない。

 理由の1つは患者の健康上の懸念だ。ニューラリンクが開発した技術では患者の脳内に半導体チップを埋め込むため、それによる発熱が脳細胞を傷つけるなどの危険性が指摘されている。 

マスク氏の奇想天外なビジョンに規制当局は困惑

 こうした懸念と共に、規制当局を不安にさせているのがマスク氏の日ごろの言動だ。ここ数年のAI(人工知能)ブームの中で、私たちの仕事がAIに奪われる雇用破壊やシンギュラリティ(AIが人類の知能を超える技術的特異点)などのAI脅威論が取り沙汰されている。

 そうした中でマスク氏は「今のペースでAIが進化すれば、いずれ人類はAIの支配下に置かれてしまう」との不吉な予言をしばしば口にしていた。このAIに立ち向かうため、人類の側でも何らかの対策を講じる必要がある。その手段がBMIであるというのだ。

 マスク氏の考えでは、脳内に埋め込まれたチップによって私たち人間は脳から念じるだけでスマホなどIT端末に文字を入力するなどの操作を高速かつスムーズに行えるようになる。また脳とコンピューターやインターネットを直結して、サイバー空間から脳に直接情報をダウンロードすることもできる。いずれは脳から脳へと直接コミュニケーションする「テレパシー」のような能力も育む。

 果てしない進化を遂げるAIの脅威に対向するためには、人類の側でもここまで自らを強化しなければならない――このようなビジョンを国際会議などでマスク氏はたびたび公言していた。ニューラリンクはそのために創業されたという。もちろん当初は(前述の)医療用の研究開発から着手するのだが、マスク氏が本当にやりたいのは、どうやらBMIでAIに立ち向かうことのようなのだ。

 こうしたマスク氏の奇想天外なビジョンをアメリカの規制当局は持て余している。ニューラリンクが申請する臨床試験への許可がなかなか下りないのはそのためだ、と見られている。

 しかしそんな懸念とは裏腹に、BMI開発への投資はうなぎのぼりだ。今年7月、ニューラリンクは中東の投資会社やグーグル傘下のベンチャーキャピタルなどから2億ドル余り(200億円以上)を調達した。BMI業界全体では今年前半だけで、昨年通年の3倍以上となる3億5000万ドル以上の資金が注ぎ込まれている。

 これを追い風に、欧米や日本、中国をはじめ世界中の企業が続々とこの分野に参入。その多くは非侵襲型のBMIを開発し、たとえば脳波の技術で「ゲームを操作する」「睡眠を改善する」「集中力を高めて仕事の生産性を上げる」など、さまざまなアプリケーションの商品化を図っている。

 これらの中で一際注目を浴びているのが、最近社名を「メタ」と変更したフェイスブックの取り組みだ。同社は2017年ごろからゴーグルなど非侵襲型BMIの開発を進め、その一環として「脳から念じるだけで毎分100単語のテキスト(文字情報)」をスマホに入力する技術開発を進めてきた。

 この分野で先頭を走るアメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校と共同研究も実施。この研究チームは今年7月、脳卒中で身体麻痺と失語症に陥った男性患者が言いたいことを脳から念じるだけでコンピューター画面に表示する侵襲型BMI技術を公開した。

「脳からの文字入力」計画を突如中止したワケ

 フェイスブック(メタ)はこの技術を非侵襲型に応用して、(前述の)「脳からの文字入力」技術を実現する計画だった。ところが今年7月、同社は自社ブログでこの計画を突如中止したことを明らかにした。

 理由の1つは技術的な限界だ。非侵襲型のBMIでは、脳から頭蓋骨を透過して外に漏れ出てきた脳内信号をウェアラブル端末で受信してスマホなどの操作に充てるが、このような信号はノイズが多すぎて文字入力のような高い精度が要求されるアプリには不向きなのだ。

 これと並んで、新たなプライバシー侵害の懸念も中止の一因として考えられている。その背景には、ここ数年で急激に高まった巨大IT企業への不信感がある。

 2018年、フェイスブックから推計8700万人分のデータが英国の政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカに不正流出していたことが明らかになり、ここからEUの「GDPR(一般データ保護規制)」など、個人情報の管理・保護を強化する規制へとつながっていった。

 そうした中、プライバシーの「最後の砦」とも言える脳内情報までフェイスブックなど巨大IT企業に明け渡すことは危険極まりないとの見方が出ている。これに配慮する形で、フェイスブックは「脳からの文字入力」計画の中止に踏み切ったようだ。

 一方、南米チリでは今年10月、憲法を改正して「ニューロライツ(脳内の人権)」条項を追加。「AIや神経科学の発達により、脳内のプライバシーや自己同一性、思想の自由などが侵されることを防ぐ」と保障している。

 つい数年前までBMIは近未来のSF技術と見られていたが、今や一部の国では憲法改正でそれに対処するなど、かなり差し迫った事態にまで発展しているようだ。

生活保護受給者は“テキトーに生きてきたんだろ”とSNSで…取材で見えてきた「医療現場でのフクザツなまなざし」

「私には会わないほうがいい」アルコール依存、がん、生活保護…“守備範囲が異様に広い”ナゾの職業・MSWが放った一言 から続く

 新型コロナウイルス感染症により、かつてなく注目が集まった医療現場。月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の「 ビターエンドロール 」では、病院に勤務し、病気や障害によって生活に問題を抱える人の社会福祉支援を行う医療ソーシャルワーカーの活躍が描かれる。

  前編 では、著者の佐倉旬氏と担当編集者の真並紗樹子氏が、取材の中で出会った医療ソーシャルワーカーや「断酒会」への参加を通じて自覚した偏見を、創作に生かすまでの矜持について伺った。

 佐倉氏は「なんにでも怒っているし、怒って描いていたい」と話す。後編では、佐倉氏の作品の根底にある怒りや願いに触れていこう。

◆ ◆ ◆

「“本当に困ってる”って何?」SNSでの発信を見て…

――第3話、生活保護の回で「“本当に困ってる”って何?」というセリフに、ドキッとしました。今回インタビュアーをしている私自身は普段看護師として病院で働いているので、患者さんが困っていると訴えることが「本当」かどうかジャッジしようとする風潮、確かに医療の中にあるなって。

佐倉 医療ソーシャルワーカーさんの直面する問題を調べていくと、自己責任論みたいな話も絡んできます。

 SNSで、生活保護の方に「テキトーに生きてきたから悪いんだろ」と言っている人もいます。

 それを一概に、「そんなこと言うな」って責めることは絶対にできないと思ったけれど、でもそれではいけないとも思う。答えは分からないけど描こう、入れようという気持ちはありました。

 社会って、毎日24時間、健康体で、8時間勤務ができて、朝から夜まで働けて、元気で家事ができて、という人を想定して作られている。そこから一歩外れてしまうと、一気に生きることが困難になる。普通の生活っていうけど、「普通」って厳しくないですか。

 私は今健康体なので、世の中でいう普通の枠組みで、下駄を履いている状態で生活をしていると思っています。でも、いろんな例を見た時に、いつ自分が病気になるか分からないし、何かのきっかけで自分が普通の枠から外れてしまった時に、生きられないと辛い。

 病気や障害を抱えて、いわゆる「普通」でいられない理由がある人が、あまり心配なく過ごせる社会は、結局皆が生きやすい社会だと思います。社会変わっといてくれよって気持ちはありますね。

 あとは私、感動ポルノが苦手なので、多分それが出ているのかな。

「分かるよ」というレッテル貼り

――確かに。登場人物の動きに関しても、医療モノの漫画は、読み手の感動を優先して、現実にはあり得ない行動を取ってしまうものが圧倒的に多いと思うのですが、「ビターエンドロール」は、あくまで診療報酬の範囲内で登場人物が動いていて、決して出しゃばらないところが印象的でした。

佐倉 フィクションを作る、物語を作るって、物語を消費することにも近いと思います。

 どれだけ物語を気持ちよく消費するかを考えたら、それこそ感動ポルノ的なものに近付けていった方が、「ああなんていい話なんだ、感動した」で終われると思うんですけれど、でもそれが嫌なんです。

――その「嫌」の根源は何なんでしょう。

佐倉 例えばプライベートで誰かと喋ってて、なんか、「あっ分かるよ君ってそういう人だからね」みたいなこと言われた時、めっちゃ腹立つんですよね。

「あー分かる、分かるよ」って、簡単にそう言うのは、ある意味、それ以上分かろうとはしていないってことだと思います。簡単に「分かる」って思うためには、例えば「アルコール依存症ってこうですよね」とレッテル貼りをすることになると思うので。

 でもそうすると、個人の細かいことを置き去りにして「病気」という箱に仕舞ってしまう。たくさん置きざりにしたものがあるのに、「ああ、こういうことなんだ、めでたしめでたし」とされると、それが腹立つのかな。

男社会から排除されそうな主人公にしたかった

――いま、「腹立つ」がキーワードになっているように思いますが、作中で主人公はむしろいつも号泣していますよね。号泣している設定はどこから?

佐倉 今の社会で男の人が感情を表現していくのってまだ足りてないなと思うところがあって。

 感情を表現するにしても、ここまでなら許されるだろうという規範が、どうしても男性の中にあるんじゃないかなと。自分が男性の主人公を描くなら、そういった規範に沿う人じゃなくて、むしろ男性社会だったら排除されそうな人の方が良いと思ってこうしました。

 前に知人にそれを言ったら、「でもそういう主人公、新しくないよ」と言われてしまって、それを言われた時は最初、あっ新しくないのか、じゃあやる意味はないのかな、と少しへこんだんですけれど、その後、でもまだ足りてないからいいじゃんって思って。

依存症、生活保護…バッシングを受ける可能性

――依存症や生活保護といったテーマを扱うことで、バッシングを受ける可能性もあるかと思うのですが、その辺りに関してはどうお考えでしょう。

真並 今読んでくださっている方々は、割とこういった題材に関心がある層なので、テーマに対する反発は受けていないですね。でも、もっといろんな人が手に取ってくれるようになると、そういう声ももしかしたら入ってくるかもしれないと思っています。

佐倉 そんなに簡単に人の考え方を変えられるとは思ってないけれど、1回読んだものって、本人が望んでいなくても、多少は血肉になってしまうじゃないですか。

 誰かが、私の本を読んでバッシングをしたとしても、その後、その人が手に取る何十冊のうち、「自己責任論って本当に正しいのかな」という本の割合が増えていったら、その人の考え方の振り切れ具合が、中庸くらいにはなるんじゃないかなって思います。そのたくさんの中の1冊になれたら良いなと。

「その人が、そうなってしまったのはなぜ?」

――今、連載が続いている中ではありますが、「ビターエンドロール」全体を通して社会に伝えたいメッセージは?

佐倉 それ、私は先に真並さんに喋ってもらいたい。

真並 私自身は今のところ幸運に、健康に働けている立場の人間なんですけれど、でも周りや自分の身内を見る中で、何か病気や怪我で躓いたり、世間でいうマイノリティ側になった時、生きるのが大変だということは感じていて。何とかしないといけないって思いながらも、じゃあ自分が日々、何ができるのかはよく分からない、と思っている人って、私を含めて多いと思います。

 作品に共通して、当事者の方のことだけでなく、常に周りの人達の理解が必要なこと、周りは何ができるか、という点も取り入れているので、考えるきっかけになっていく本になっていけばいいな、と思いながら作っています。

佐倉 私は、怒っている人達、社会的に声を上げている人達のことを、今までは傍から見ているだけに近かった。今回、自分自身も見つめる契機になる本が出せて良かったと思っています。なんにでも怒っているし、これからも怒って描いていたい。

 他人の状況や人生に、思いを馳せる感じですかね。もし、何か困った状況に在る人をみた時、「その人の問題だから」で済ますのではなく、「その個人がそうなってしまったのはなんでなんだろう?」という問いかけを、なるべく丁寧に積み重ねていきたいです。

「医療ソーシャルワーカー」の存在は、調べる中で知ったと話す佐倉氏・真並氏。ふたりの言葉には、他者への真摯な愛情に裏付けられた怒りと、社会への切実な願いが籠る。

 続く #3 では、「ビターエンドロール」2話を特別公開する。

ファストフード店が多い地域では糖尿病の人が多い 米国医師会誌に論文

【役に立つオモシロ医学論文】

糖尿病の発症率には地理的な格差が知られています。過去の研究では、居住地の近隣に運動に適した環境や健康的な食材を入手しやすい環境があると、糖尿病を発症しにくい可能性が報告されていました。しかし、これまでに報告されている研究の多くが、都市部での調査結果であり、郊外や農村部など、都市部以外の地域に一般化できるかどうかはよく分かっていませんでした。

そんな中、食環境(近隣の食料品店やレストランなどの店舗数)と、糖尿病の発症リスクの関連性を検討した研究論文が、米国医師会誌のオープンアクセスジャーナルに2021年10月1日付で掲載されました。

この研究では、米国の退役軍人データベースから糖尿病を発症していない約410万人(平均59歳、男性92%)が対象となっています。地理情報システムを用いて、研究参加者が居住している近隣のファストフード店、そしてスーパーマーケットの店舗数が調査され、糖尿病の発症リスクとの関連性が検討されました。なお、研究結果に影響し得る年齢、性別、所得水準などの因子で統計的に補正して解析しています。

中央値で5.5年にわたる追跡調査の結果、食環境におけるファストフード店の数が10%増加すると、都市部、郊外、農村部いずれにおいても糖尿病の発症リスクが1~2%増加しました。一方で、スーパーマーケットでは店舗数が10%増加すると、郊外と農村部において糖尿病リスクが1~3%低下しました。

食環境が直接的に糖尿病のリスクを高めているわけではないと思いますが、論文著者らは「ファストフード店の数を制限し、スーパーマーケットを増やすことが、糖尿病患者を減らすことにつながるかもしれない」と結論しています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)

要注意です「手足口病」が流行の兆し 大人が感染すると…

緊急事態宣言が明け、人の動きが活発化するなか、「手足口病」が流行の兆しをみせています。乳幼児に多い病気ですが、大人が発病すると重症化しやすく注意が呼び掛けられています。

「手足口病」にかかったという的場未侑さん(25):「こっちがましな方、ましになった方。こっちがちょっとひどい方」 指先、そして手のひらにも見える赤い発疹の痕、そのかゆみと痛みは想像を絶したといいます。

「手足口病」にかかったという的場未侑さん:「温かいものが触れないんですよ。皮膚がめくれている感覚。寝ようと思ってもかゆいし、寝る前って体温高くなるから、ぬくぬくしてきたらかゆくなってきてイライラして寝られなくて」 乳幼児を中心に手足や口の中に発疹ができる感染症「手足口病」が流行の兆しを見せています。

国立感染症研究所によると、近年、手足口病は1年ごとに増大と減少を繰り返し、今年は8月中ごろからじわじわと報告者が増えています。

日暮里医院・石山敏也医師:「例年見ていると前回は2019年に大流行したので隔年で流行する2年おきに流行する。主に(症状)は皮膚症状、発疹が強く出て場合によっては、爪がはがれたり本当に痛みを強く伴うことがあげられる」 例年であれば7月ごろにピークを迎えるのですが、なぜ今年はずれているのでしょうか。

日暮里医院・石山敏也医師:「手足口病の原因となるウイルスが、コロナが落ち着いたことによって、少し猛威をふるい始めてきている可能性はある」 感染者の9割は子どもで、大人がかかることはまれだと話しますが、大人が感染した場合、重症化しやすいともいわれています。 2歳の子どもから飛沫(ひまつ)感染したという夫婦は、手足の痛みを訴えます。

“2歳の子どもから感染”妻(27):「(手足口病に)かかったら本当にしんどいので大変だと思う。手の指と足の甲、足裏に水ぶくれがたくさんできている状態なので歩くのも痛いです」 飛沫感染や接触感染などが感染経路という手足口病。

日暮里医院・石山敏也医師:「『手足口病』にはワクチンが存在しないので予防するしかないんですけど、コロナが落ち着いてきている今でも引き続き、手洗い、うがい、マスク、そういったところを徹底していくことが大切」

「サウナで倒れるおじさん」は他人事じゃなかった…全国のサウナ施設を回る中年男性を襲った悲劇

 一度しかない人生、いくつになっても挑戦したい——。その気持ちは大切だが、「衰えた挑戦者」が若かりし頃と同じ感覚でいると思わぬ大ケガに繫がるもの。今回は、ある中年男性のリアルな失敗談を紹介。

さらに、『大人養成講座』や『大人力検定』の著者で大人のありかたに詳しい石原壮一郎氏に、中年が“新しい挑戦”をする際に意識するべきことを聞いた。

◆全国のサウナ施設を旅して回る中年男性を襲った悲劇

 空前のサウナブームの到来を受け、今や各地の入浴施設では、サウナ室に入りきれない男たちが全裸で列をなすありさま。昨年1月にサウナの快楽に覚醒した蒸しンゴさんも、その熱にほだされ、今や週2~3で蒸される日々だ。

「ドラマ『サ道』を見てハマりました。サウナ→水風呂→外気浴を1セットとして、これを繰り返すうちに“ととのう”わけですが、あのフワフワと宇宙空間にいるような快感がヤミツキに。今年は北海道から九州まで旅して有名店を回り、50万円程を使いましたね」

 だが、好事家たちが快感を追うあまりにムチャなプレイにのめりこむのと同様、蒸しンゴさんも危ない領域に突入したことがある。

◆弾丸サ旅で“おかわり”。ととのい後、三途の川寸前に…

「その日は、夜行バスで弾丸サ旅(サウナ旅)に行き、朝から『神戸クアハウス』で5セットほど汗を流しました。そして神戸牛をたらふく食べ、お目当ての『神戸サウナ&スパ』へハシゴしたんです。

国内屈指の設備を誇る名店ですから、こちらも気合十分。案の定、めちゃくちゃ気持ちよくて何セットも繰り返し入ったんですが……」

 こうして大いにととのった蒸しンゴさんだったが、脱衣所で突然、足がつり始めたという。

「連れの友人に異変を伝えようとしても声が出せず、その後、体がだんだん痺れてきて金縛り状態になって本当に怖かった。友人が気づいて介抱してくれましたが、もし一人なら死んでいたかも」

◆「サウナで倒れるおじさん」は他人事じゃない

 この日は大阪の有名サウナにも寄る予定だったが、さすがに断念。

「長時間移動の疲れやサ旅の高揚感で冷静さを失っていました。年齢も考えず何度も入りたいという欲が出て、水分補給をおろそかにしていたんでしょう。

ほかのサウナ施設で救急搬送されるおじさんを見て内心軽んじていたけど、もう他人事じゃない。今では水だけでなく、塩分やミネラルを含むスポーツドリンクも常備、万難を排してサウナに入っています」

 血管の収縮を促すサウナは心筋梗塞などのリスクもある。自身の体を過信してはいけない。

◆中年が新しい挑戦をする上で注意点は?

いくつになっても“挑戦したい”という気持ちはわかるが、中年ともなれば、残酷すぎる現実が待ち受けていることもあるのだ。大人のありかたに詳しい石原壮一郎氏に、中年が意識するべきことを聞いた。

「中年になってから何か新しいことに挑戦する上では、謙虚な心が必要です。すでにそのジャンルには、長くコツコツやってきた人がいるわけですから、そこで新参者がいい勝負をできると考えるのが間違い。

若い頃に比べれば物覚えが悪くなったり、注意されるとすぐに反発心が湧いてきたりする中年は、新しいことを始める上ではそもそも不利だらけです」

 だが、40代ともなれば、社会に出てから20年以上。積み上げてきた人生経験は大きな武器だろう。

「ある特定の業界や職種で経験を積んだり地位が高まっても、ひとたびその得意分野から外れればタダのおじさん。なのに、自分はどこででも通用するはずだと思ってしまう自己評価の高さと、無自覚に進行している体力や反射神経の衰えのギャップで失敗するんです」

◆「やらない後悔よりやった後悔」は成功者の言葉なんです!

また、多くの人間は自分の人生にロマンやドラマを求めるが、これも失敗の大きな要因だ。

「自分に潜在していた思わぬ才能が開花するようなドラマ的展開は、誰しも夢見がちですが、その結果、『どこにもいない自分探し』に精を出してしまう。『やらない後悔よりやった後悔』という、人生一発逆転のロマンをあおる言葉も危険。これはごく一部の成功者が言っているだけなので要注意です」

 かといって、中年は何もするなというのでは、あまりにも酷な話。石原氏は中年の挑戦における注意点を教えてくれた。

「今まで知らなかったカルチャーや、交流がなかったタイプの人たちとの接触を楽しむことを主眼にしましょう。また、自分が培ってきた得意分野に軸足を置いて、そこから180度ではなく、60度くらいの振り幅での転身にとどめれば、大ケガはしにくい」

 挑戦するマインドは持ちつつ、謙虚に生きるのが中年の美学だ。

【蒸しンゴさん】

神奈川県在住の会社員。6年前から銭湯巡りを趣味として、サウナにハマったのはここ2年。都内のサウナ施設はほぼ制覇

【石原壮一郎氏】

’63年生まれ。編集者を経て『大人養成講座』(扶桑社刊)でデビュー。以後『大人力検定』(文藝春秋)などビジネスから恋愛まで大人の振る舞いに関する著書多数

取材・文/沼澤典史(清談社)

危ない怪しいマイナカード交付、5000万枚突破=「最大2万円付与」で普及促進へ―政府

 マイナンバーカードの交付枚数が5000万枚を超えたことが18日、分かった。政府は19日策定予定の経済対策に、1人当たり最大2万円相当のポイントを付与する新たな「マイナポイント」制度を盛り込む方針で、普及に弾みをつけたい考えだ。

 交付枚数は16日時点で約5003万枚で、普及率は39.5%。政府は2022年度末までに、ほぼ全ての国民が取得することを目指している。 

医薬品、緊急承認制度創設へ 有効性「推定」で使用可

日本の薬事承認制度© KYODONEWS 日本の薬事承認制度

 政府は、新型コロナウイルス感染症拡大などの緊急時に、未承認のワクチンや医薬品を国内で迅速に使えるようにするため、安全性だけを確認し、有効性は推定できれば承認する「緊急時薬事承認」制度を創設する方針を固めた。感染症の流行拡大を速やかに防止する狙い。12月中に制度の詳細を決め、来年の通常国会に関連法案を提出する。政府関係者が17日明らかにした。

 新型コロナの治療薬やワクチンの国内実用化が海外に比べ、遅くなったとの指摘があったことが背景。従来、薬の安全性と有効性の二つの要件をそれぞれ確認していた。

不妊治療の保険適用、検討開始 対象治療の議論本格化 厚労省

 厚生労働省は、夫婦らが不妊治療を続ける中で医療機関で必要な情報提供をされたり、カウンセリングなどの指導を受けたりした場合に、公的医療保険の対象に含める検討を始めた。妊娠への効果は必ずしも明らかではないが、治療の長期化などで心理的ストレスを受けることが多く、現場での活用状況を踏まえて議論する方針だ。

 不妊治療は、来年4月に保険対象が拡大される見通し。17日の中央社会保険医療協議会(中医協)で日本生殖医学会がまとめたガイドラインを基に、対象となる治療方法の考え方が示され、議論が本格化する。

 厚労省が公表した不妊治療の実態調査結果によると、不妊治療の当事者の治療開始時の不安として「妊娠・出産できるか」と7割弱が回答。約2割が「仕事との両立」、約1割が「家族や友人などからの反応」など、周囲の環境に対しても不安を抱いている。また、5~6割が「神経過敏に感じた」「絶望的だと感じた」など、何らかの心理的ストレスを感じたことがあるという結果も出ている。

 日本産科婦人科学会は不妊治療を実施する医療機関が、夫婦らが納得して不妊治療を受けるための説明をし、不妊の悩みの相談に応じるコーディネーターや、生殖医学や心理学などの知識があり、夫婦をサポートするカウンセラーと連携することが望ましいとしている。また、日本生殖医学会のガイドラインでは、患者への情報提供や心理的支援について「実施を推奨する」としている。

【精神科医が教える】「約束を守れない人」の特徴

感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

お構いなしにドタキャンする人

きょうのひとことは、

「自分の言動の一致率を高めよう」

あなたが思う「誠実な人」って、どんな人でしょうか?

いろいろと考えられますが、大切な要素の1つは、「いったことを守る」ことだと思うんです。

逆に考えてみると、誠実でない人というのは、いったことを守らないことが多いです。きちんと考えもせず、適当なことを、その場のノリでいいがちだったりするんですね。

そもそも、「いったことを守ろう」という意識が薄かったりもします。「ちょっとぐらい守らなくても平気だろう」という認識がどこかにある人は、実現の可能性が低いことでも平気でいってしまう癖がついてしまっている面もあります。

本人に悪気がないのかもしれませんが、悪気がないからこそタチが悪いともいえるでしょう。いずれにしても、「誠実な人」とは、みなされないですよね。

日ごろの行いから、「あの人は、いったことを守れない人だ」ということを周りの人たちが学習してしまうわけです。そういう人は、“言葉の重み”を自ら軽んじてしまっていることになるので、周りの人にもなんとなく「軽い人」という認識が浸透してしまいがちです。

以前、ある人に「できないことをいうのよくないよね」みたいな話をしたことがあるんです。そうしたら、その相手が「そんなことをいったら、なんにもできなくなるじゃないか!」と急にスイッチが入って怒りはじめました。

ちょっと驚いたのですが、その場では相手の反応を受け止めて、「そうなのかな」「自分が厳しすぎるのかな」なんて思いました。

その後、気づいたのですが、じつはその人自身ができないことをいうタイプの人だったんです。おそらく、自分が責められているかのように感じたから、ちょっとキレ気味に反応したのでしょう。

そうした経験を踏まえて、あらためて考えてみたのですが、やはり「いったことを守る」つまり言動を一致させることは、大切なことだと思うのです。

ただし、ここが大切なポイントなのですが、言動を一致させるためにストイックにならなければならないというわけではありません。

なぜかというと、言動というのは、いくらでも調整ができるからです。「なにかしたいな」と思っても、それが実際には「できない」「できなそう」なのであれば、そのことを含めて、正直に相手に伝えればいいのです。

「これからこうしようと思うけれど、できないかもしれないね」みたいに、正直に表現するということがあってもよいのです。場合によっては、小さな成功体験を積み重ねて目標を達成するために、「これはいつまでにやり遂げます」みたいに宣言することがあってもいいでしょう。

いずれにしても、日ごろから自分の発言の信憑性が、なるべく高まることを意識することは大切です。

また、実際にできそうなことを含めて正直に話していれば、自分はどれくらいのことならできるのかを認識できるようになってきます。自分の実力以上のことを自分に課すのではなく、自分の実力を受け止めて言動できるようにもなるでしょう。

その点、言葉が軽い人というのは、自分の力を適切に把握できていなくて、気持ちが大きくなったりして計画も甘くなりがちです。正直に話すことを心がけていると、それが防げるという効果もあるということです。

わかりやすいのは、約束事です。言動を一致させられる人は、普段から約束事を守ります。

たとえば、会議の開始時刻に遅刻しない。事前に予定していた仕事の納期に遅れない。結果として遅れたとしても、事前に正直に進捗状況を報告しながら「納期に遅れるかもしれない」ということを相手に伝えて、問題が生じないように配慮する。

そうした当たり前のことをできるからこそ、信頼を得られるのです。言動を一致させる人は、前もってわかっている約束事があるのなら、当たり前のように仕事を早く終わらせるように動いたり、そもそも約束を守れそうな日だからこそ予定を入れるわけです。

一方、言動が一致しない人というのは、普段から約束事を守れないことが多いです。会議に平気で遅れてきたり、前もって約束していた飲み会も、「仕事が忙しい」とかいってお構いなしに遅刻した末に「ごめん、仕事が長引きそうだから、今日はムリだわ」とかいってドタキャンしたり。

言動が一致しない人は、約束を守ろうという概念がゆるくて、仕事が長引きそうだとかで約束を守れなさそうであっても、お構いなしに約束事を入れてしまいがちなんですね。

そうなると、やはり周りの人も「約束を守れない人」「言動が一致しない人」ということを学習してしまって、信頼を失ってしまうことになります。

もし約束事を入れるならば、確実に仕事が終わりそうな時刻にするとか、仕事を終らせる自信がないのであれば、そもそも予定を入れないというふうにすれば、信頼を得られるようになるでしょう。

きょうのひとことは、

「自分の言動の一致率を高めよう」

でした。

参考になったかしら?

白血病、高齢者に少量で効果 佐大の木村教授ら研究

慢性骨髄性白血病の治療薬「ダサチニブ」(商品名スプリセル)=佐賀大学の木村晋也教授提供© 朝日新聞社 慢性骨髄性白血病の治療薬「ダサチニブ」(商品名スプリセル)=佐賀大学の木村晋也教授提供

 慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬「ダサチニブ」(商品名スプリセル)について、70歳以上の高齢者に標準的な投与量とされる量の5分の1で十分な効果が得られたとする研究結果を、佐賀大学医学部の木村晋也教授の研究グループがまとめた。安価で副作用の少ない治療が期待できる結果と評価でき、英医学誌「ランセット血液学」に掲載された。

 木村教授によれば、CMLは、赤血球や白血球などをつくる造血幹細胞が、がんになる病気。日本には約1万5千人の患者がいるとされる。2001年の治療薬「イマチニブ」(商品名グリベック)の発売までは骨髄移植以外に有効な治療法がなく、移植を受けないほとんどの患者が数年以内に死亡していたという。

 診断当初からイマチニブを継続的に服用すれば、多くの場合、CMLで死亡することはなくなったとされるが、一部の患者でイマチニブが効かなくなったり、副作用が激しくなったりして服用が続けられない患者もいたという。

 そこで09年に製造販売を承認された治療薬がダサチニブだった。ダサチニブはイマチニブよりも効果が高いことが報告され、CMLの治療薬として認知されるようになった。ただ、イマチニブと同様に副作用はある。特に70歳以上の患者には、薬の使用説明書に明記される標準的な1日100ミリグラムを服用すると、正常な血液細胞が大幅に減少するなどの重い副作用が出ることが多かったという。このため各医師の判断で患者の状態を見ながら投与量を減らす治療が続けられる一方、年齢によってどれだけ投薬量が減らせるかなどの詳細な研究はなかった。

 そこで、木村教授や岩手県立中央病院血液内科長の村井一範医師らが全国25の医療機関と連携し、16年11月~20年11月、70歳以上でCMLと診断されたばかりの患者52人(平均年齢77・5歳)を対象に投与量を5分の1の1日20ミリグラムに減らす臨床試験をした。投与を始めて1年後、約6割、31人が白血病細胞の数が0・1%以下となった。1日100ミリグラムを服用した場合に劣らない効果だったという。

 70歳以上の患者が5分の1の投与量の薬で十分な効果がみられた理由については、高齢者の方が若い年齢層に比べ一般的に薬に対する解毒作用が弱く、結果として少量でも効きやすいことが挙げられるという。投与量を減らすことで血小板や白血球などの正常な血液細胞が減る副作用を減らすことができ、薬代を減らす効果も見込めるという。

 木村教授は「多くの高齢者に効果があったことはうれしい。海外でも効果が確認されれば世界的な治療の方法の見直しにつながる」と話す。

 慢性骨髄性白血病で1日100ミリグラムを服用し、甲状腺機能に副作用が出たという愛媛県今治市の里田守さん(44)=現在50ミリを服用=は「長期間服用する大切な薬。他の世代を含め、どれだけ減薬できるのか、今後の研究を期待したい」。(林国広)

 ●白血病治療に詳しい近畿大学医学部長の松村到教授の話 慢性骨髄性白血病の治療は、できるだけ早く白血病細胞を大きく減らすことが大事だ。今回の試験は、診断から早い段階で薬を減らしても十分な効果があることを示す一方で、副作用を減らせることがはっきりしたことに意義がある。この薬の新しい投与方法の可能性が示唆されたといえる。

人には聞けない、おならの悩みをお医者さんに質問!「1日何回までが正常?」「我慢し過ぎは危険?」

聞きにくいけど気になる! おならに関する疑問と悩み

「我慢するとお腹が張って痛い」「緊張している時にかぎって……」など誰しも一度は直面するおならの悩み。

ここでは、All About編集部が実施したアンケートを元に、「人には聞けないおならの悩み」についてお答えします。

おならは1日何回までが正常? 1日何回我慢してる?

まずは「普段、1日に何回おならが出ますか?」という質問に関するアンケート結果です。

普段、1日に何回おならが出ますか© All About, Inc. 普段、1日に何回おならが出ますか

最も多いのは1~5回で、全体の約6割が当てはまる結果となりました。

次に、1日に我慢するおならの回数を示します。

1日にどの程度おならを我慢しますか© All About, Inc. 1日にどの程度おならを我慢しますか

結果は1~5回が約8割という結果に。0回と回答した割合は14%にとどまり、8割以上の人は1日のうちに最低1回は我慢を強いられていることがわかりました。

おならやげっぷは生理現象とはいえ、場所によっては、マナーとして我慢を強いられることがあります。おならを我慢すると、消化管内のガスが多い状態になり「お腹の張り」「気分が悪い」「息苦しさを感じる」「体臭、口臭が気になる」などと感じることがあります。

そもそもおならの原因は、口や鼻から取り込んだ空気と、腸内細菌が食物を処理したときに発生するガスです。窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、硫化水素などがその成分。臭いにおいの元になるのは、硫化水素やインドール、スカトールです。においの元になるガスは悪玉菌によって産生されることが多いです。

「おならは何回までが正常?」「体への影響は?」おならに関するよくある疑問

続いて、おならに関する、人に聞きにくい悩みにQ&A形式でお答えしましょう。

Q1. おならの回数が多い気がします。何回が正常でしょうか?

A1. 成人のおならの平均回数は約7~20回といわれていますので、アンケートの「出ている回数」と「我慢している回数」を合わせると平均回数といえるかもしれません。回数が多いのは、それだけガスが多いということ。ガスを減らすためには、空気の取り込みを少なくすることです。

早食いを避け、ゆっくりと噛んで食べるようにします。食物繊維の取り過ぎも原因になりますので、水溶性食物繊維を意識するなど、食物繊維の摂取量を調節しましょう。

Q2. 緊張したときにかぎっておならが出る原因は?

A2. 緊張すると、唾などを飲み込む回数が増え、同時に空気を取り込んでお腹が張り、おならが出ることがあります。またストレスで腸内環境のバランスが崩れて、腸の動きが悪くなり、空気が溜まりやすくなることでおならが出やすくなります。

自律神経を整える意味で、心身のリラックスを心がけましょう。規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な睡眠で、緊張したときにも対応できるようにしておきたいものです。

Q3. おならを我慢すると、お腹が張って痛いです。我慢しすぎは体に悪影響ですか?

A3. おならを我慢すると、空気が腸内にとどまることになります。腸内のガスが血液に溶け込み、全身にめぐることになります。口臭や体臭の悪化になります。

できるだけ我慢しないようにしたほうがいいかもしれません。また、消化管のガスを減らすためには、口や鼻からの空気の飲み込みを減らすことが重要。早食いを避け、便秘をしないように腸内環境を整える生活を意識しましょう。

Q4. おならでわかる健康上の危険サインはありますか?

A4. においが臭い場合は、動物性タンパク質の摂取過剰による腸内環境の悪化があります。腸内環境の悪化は、消化管の病気を引き起こしたり、脳腸相関から精神にも影響します。また、おならの原因となる便秘も消化管の病気を引き起こすことがあります。

動物性タンパク質は適度に摂取し、乳酸菌の摂取などで善玉菌と呼ばれる腸内細菌を増やして腸内環境を整えます。便秘予防には水分摂取、適度な食物繊維摂取、適度な運動などを心がけましょう。

※アンケートは全国各地221名を対象に実施

※男女比:男性 68名/女性 150名/回答しない 3名

※年齢比:10代 1名/20代 44名/30代 60名/40代 64名/50代 39名/60代 12名/70代 1名

※アンケート実施期間2021年3月12~15日

▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

【プロテインの落とし穴】減量中の人は注意!管理栄養士が教える、プロテインの選び方と活用方法

原料のためにプロテインを取り入れているという人から、

「よく分からないけど味で選んでた」

「よく分からないけどいいって聞いたから」

そんな声を聞くことが多いです。プロテインの特性をしっかり理解して、賢く取り入れていくポイントを伝えていきますので、生活に生かしていただければと思います。

そもそもプロテインは必要?

プロテイン=たんぱく質です。

そのため、たんぱく質を多く含む肉や魚や卵や大豆製品をしっかり食べていれば、プロテインをあえて摂る必要はないです。

一般の方であれば、体重1kgに対して1g

アスリートであれば、体重1kgに対して1.2〜2g

と言われています。それを超えてしまうようであれば、余計なエネルギーを摂ることにも繋がるので気をつけましょう。

また、食事をプロテインに置き換えてダイエットする方も多いですね。もちろんカロリーをグッと抑えることができるのでメリットはあると思いますが、プロテインだけだと他のビタミンやミネラルなど様々な栄養素が不足します。一時的に体重は減ったとしても、リバウンドの原因や、疲れやすさにも繋がります。管理栄養士の立場からすると、高たんぱく質、低脂質な食品を選択しながら、食品で減量していくことがおすすめしたいのですが、自炊が難しい場合もあると思いますので、そのような時にプロテインを取り入れてみてください。

・朝、食べる時間がない人

・昼食の量を確保するのが難しく、欠食が目立つ人

・夕食が遅く、分食(補食)をしたいなと考える人

などはプロテインをうまく使用すると良いでしょう。

プロテインの選び方

プロテインの種類は、大きく分けると3つあります。

ホエイプロテイン

牛乳を原料としたプロテインです。吸収速度が速いことが特徴です。一般的に販売されている多くは、ホエイプロテインになります。

カゼインプロテイン

ホエイプロテインと同様、牛乳から作られるプロテインです。吸収速度がゆっくりで、腹持ちが良いのが特徴です。

ソイプロテイン

大豆を原料としたプロテインです。大豆に含まれるイソフラボンが摂取できます。食物繊維が豊富なため吸収速度が遅くなります。

では、減量を目的にするならば、どのようなプロテインがいいのでしょうか。

どのようにダイエットするかにもよるので、ぜひ以下を参考にしてください。

目的に合わせた活用例

運動し筋肉量を増やしながら身体を引き締めたい(減量したい)

ホエイプロテインをおすすめします。

運動しながら筋肉を増やしていくためには、身体への吸収がよく、たんぱく質合成を助けてくれるホエイプロテインがベスト。

選ぶ上で、しっかり栄養成分表を確認しましょう。同じホエイプロテインという表示でも、糖質が10g以上あるものもあれば、糖質が2〜3g程度のものまで様々です。運動後のエネルギー源として、プロテインで糖質とたんぱく質を一緒に摂りたい場合はいいかと思いますが、そうでない場合(たんぱく質のみをしっかり摂りたい場合)は、糖質が少ないものを選ぶのが良いでしょう。

食事メインで減量したい

腹持ちのいいソイプロテインやカゼインプロテインがおすすめです。ソイプロテインもカゼインプロテインも、吸収がゆるやか。食事の置き換えや間食などで摂ってくと、腹持ちもよくストレスなく減量がしやすいですし、たんぱく質もしっかり摂れます。

プロテインを活用する上で、知っておいてほしいこと

プロテイン=痩せる!

そう思っている方も多いですが、決してそうとは言い切れないです。摂りすぎてしまえば太る素になります。食事やプロテインでのたんぱく質摂取量は、1回あたり約20~30gが目安。お肉や魚などの食品でたんぱく質を摂れていれば、そこにプラスして摂る必要はありません。1日に必要なたんぱく質の量をチェックして、食事で補えない分をプロテインで摂取するのが望ましいです。

また、今回紹介したプロテイン以外にも、えんどう豆、卵白もしくは全卵、ライスなどを原材料としたものも出てきています。細かく見ていけば様々な違いはありますが、原材料に何が使用されているか、どんな食材でたんぱく質を摂りたいのかなどを検討していくといいでしょう。乳糖が苦手な方であれば、ソイプロテインやえんどう豆のプロテイン(ピープロテイン)を選べばいいですし、乳糖が苦手だけど動物性たんぱく質からたんぱく質を摂って筋肉を効率よく増やしたいということであれば、卵白もしくは全卵の原材料であるプロテインが良いかもしれません。

自分の食生活、目的に応じてプロテインを選び、正しく取り入れていきましょう!

佐藤彩香:管理栄養士、予防医学士。企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。実践型の栄養サポートを行い、プロアスリートからスポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。現在はパーソナル栄養サポート、専門学校非常勤講師、セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら「あなたのかかりつけ栄養士」として活動している。

コーヒー、起きてから1時間以内はNG?1日4杯までは健康に良いことが判明

 最近は少し暖かくなってきたとはいえ、まだまだ朝は寒く寝起きはつらいですよね。そんな時、「朝に温かい1杯のコーヒーがあれば、なんとか起きられる」という方も多いのではないでしょうか。

 確かに、コーヒーには朝の目覚めを促進させるカフェインが多く入っているので、目覚めには有効です。ただし、少しだけ飲む時間に注意しなければ、知らない間にあなたの目覚めが悪くなっている可能性があります。

 まず、人は目覚めると体温が上昇し、覚醒ホルモンである「コルチゾール」が分泌されて体が自然に覚醒状態に入っていきます。

 もう少し正確にいうと、実は目覚める前から睡眠ホルモン(メラトニン)が減少し、コルチゾールが増えて起きる準備が始まっています。そして、今回のテーマであるコーヒーを飲むとコルチゾールの分泌を促進してくれるので、目覚めがさらに良くなるのです。

これだけを聞くと「やっぱりコーヒーは目覚めに良い」ということになります。ところが、起きて1時間以内にコーヒーを飲むと、自然にコルチゾールを分泌する能力が低下して、コーヒーを飲まないと目覚めにくくなってしまいます。したがって、朝目覚めてから1時間以内はコーヒーに頼らないのが賢明のようです。

反対に1時間を超えると「コーヒーを飲むゴールデンタイム」になり、朝の覚醒が長く続くので、おすすめの時間帯になります。ちなみに、「コーヒーを飲むゴールデンタイム」は午後にももう1回あります。それは、“午後の眠気”から覚める14時から16時の間です。この時間にコーヒーを飲むと夕方と夜の前半までは覚醒状態が持続します。

 ぜひコーヒーをうまく活用して、午前も午後もスッキリした状態で仕事ができることを願っております。

コーヒーは体に悪い?1日4杯までは死亡リスクを低減させる効果

ところで、よく「コーヒーは目覚めには良いが、体に悪いのではないか」という質問を頂きます。これはおそらく以前、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機構(IARC)が、コーヒーを「ヒトに対する発がん性が疑われる」というカテゴリーに分類していたことが原因だと思われます。

 しかし、今ではIARCは「発がん性を示す証拠はない」と、先の見解を否定しているだけでなく、さまざまな信用できる研究機関が「コーヒーは健康に良い」とのデータを公表しています。

わかりやすい事例として、日本の国立がん研究センターがホームページで出しているデータでは、コーヒーは1日4杯までなら「飲めば飲むほど良い」ことがわかってきています。

 がんに関してはさほど効果はないものの、4大死因である「心疾患」については、コーヒーを1日3~4杯飲むことで死亡リスクが0.64まで低下します。同じく4大死因である「脳血管疾患」「呼吸器系疾患(肺炎など)」も、1日3~4杯飲むことで、同様に4割くらい死亡リスクを低減させるという、驚くべきデータが出ています。

 ですから、コーヒーは1日4杯までで、時間帯に気をつければ健康にも良く、最強の覚醒ツールとして活用できるというわけなのです。

【精神科医が教える】一緒にいて心が落ち着く人の特徴

感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

突拍子もないことをいうと……

きょうのひとことは、

「一緒にいて落ち着く人」

一緒にいて落ち着く人っていませんか?

恋人、友人、同僚、家族など、いろいろな関係性がありますが、一緒にいて落ち着く人というのは、「想定できる人」なんですね。

たとえば、会社の会議での議論なら、相手が「なにをいうかわからない」「思ってもいないことをいわれる」ということが大切になります。自分にはない発想や意見を交わしながら、組織の生産性を高められるからです。もし想定内の似通った意見ばかりだと、議論の発展性を欠いてしまいます。

ところが、これがプライベートになると、ちょっと違ってきます。

プライベートでは議論を戦わせるというよりも、「ゆっくりしたい」「落ち着きたい」「癒されたい」という思いのほうが強いわけです。ですから、「突拍子もないこと」や「思いもよらないこと」をいわれたら、落ち着かなくなります。

つまり、想定できないことをいう人と一緒にいると、心が落ち着かないわけです。

一緒にいて落ち着く人というのは、突拍子もないことをいわない人、突然思いもよらないことをいわない人なんです。こうした配慮がある人というのが、一緒にいて落ち着く人の定義なんだと思うんです。

もしあなた自身が一緒にいて落ち着く人になりたいのであれば、思いつきで突拍子もないことをいわないことが第一です。やりたいこととか変えたいことがあるとすれば、思いつきでいうのではなく、ある程度自分のなかで考えをまとめたうえで、話を小出しにしてみることです。

わかりやすい例でいうと、いきなり家族に「引っ越ししよう」といい出したら驚きますよね。もし引っ越ししたいと思ったら、なぜ引っ越ししたいのか、どのへんに引っ越ししたいのか、引っ越しするとどんなメリットがあるのか、といったことをある程度自分のなかでまとめてから、家族に「引っ越しするのも楽しそうじゃない?」みたいに、まずは思っていることのほんの一端だけ伝えてみるのです。

突然、なにをいうかわからない人と一緒にいると、相手は癒されない。まずは、この発想を持つことです。

伝えなくてはいけないことであっても、頭ごなしにいうのではなく、ある程度の雰囲気づくりをして、できるだけ自然の流れのなかで伝えてあげる。そういう配慮のある人が、一緒にいて落ち着く人になるでしょう。

ものすごくシンプルにいうと、「相手の立場になって発言する」ということが大切です。

独善的な正論をかざして一方的な意見を突然いい出すような相手は、一緒にいて落ち着きません。そのことが相手の労力を強いることであれば、自分だけでなく相手を巻き込むことになるわけですから、「いつなにをいわれるかわからない」ということになって落ち着きません。

これから起きることを想定させてあげるという配慮があると、一緒にいて落ち着く人に近づけるんじゃないかと思います。

きょうのひとことは、

「一緒にいて落ち着く人」

でした。

参考になったかしら?

腸内細菌が免疫チェックポイント阻害薬の効果をアップさせる可能性【がんと向き合い生きていく】

【がんと向き合い生きていく】第254回

「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と、いろいろながんに対して効果のある「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)」との関係が注目されています。がん患者にICIが効くかどうか、患者の便の細菌を調べることで分かるのではないかというのです。

まだ研究段階での途上の話ですが、便を調べてみて、腸内に多様な菌種が存在する場合はICIの有効性が高いこと、そしてもし抗生剤を投与していた場合はそれによって腸内フローラが変化し、ICIの効果が減弱するのではないか--といった報告がなされています。

また、腸内フローラそのものよりも、その代謝産物が血中で免疫細胞に作用することでICI効果が高められる可能性も指摘されています。つまり、腸内フローラとICI治療との関係が少しずつ分かってきているのです。

腸内細菌は、菌種ごとの塊となって腸の壁に隙間なく張り付いていて、腸内フローラを形成しています。およそ1000種類、100兆個で1.5~2キロもの細菌が腸内に共生しているといわれます。細菌叢は口腔内でも形成されていますが、口腔内には酸素が存在するため、好気性の細菌が大半を占めています。腸内フローラでは嫌気性菌が中心です。

腸内フローラの主たる形成パターンは、離乳期から小学校低学年の時期につくられるといわれていますが、生涯を通じて変わらないものではなく、環境因子や年齢とともに変化します。しかし、個人個人で特異的なものであり、簡単には変化しないことも分かっています。

健康な人の腸内フローラは、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が20%、悪玉菌が10%、残りの70%は日和見菌で形成されています。日和見菌というのは、状況によって善玉を助けたり悪玉を助ける働きをする菌種です。

善玉菌は乳酸や酢酸などをつくり出し、腸内を酸性にすることにより悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒の原因菌や病原菌による感染の予防、発がん性を持つ腐敗産物の産生を抑制する腸内環境をつくります。また、善玉菌は腸内でビタミンB群、ニコチン酸や葉酸などを産生し、体の免疫機能を高めたり血清コレステロールを低下させる効果も報告されています。

体の健康には、腸内にビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌がしっかり存在することが大切で、善玉菌を増やすオリゴ糖や食物繊維を十分に摂取することが健康維持に役立ちます。

■大腸がんにも関係

がんに関しては、ある特定の腸内細菌が大腸がんの腫瘍微小環境(腫瘍=がん細胞の周囲を囲む微小環境で、免疫細胞、線維芽細胞、リンパ球などの正常細胞や生体分子などから構成される)の腫瘍免疫応答を制御している可能性があると報告されていて、腸内フローラをコントロールすることで、がんの治療効果を上げることが出来るのではないかと期待されています。

免疫細胞は「骨髄」の中で生まれて血液やリンパ液を通り全身を巡っていますが、その免疫細胞の約70%は「腸」に存在しています。消化管は口から肛門までひとつなぎになっているので、細菌やウイルスなどの外部から入り込む異物と関わることが多い場所です。中でも、さまざまなものを吸収する腸は、有害な物質を体に侵入させないために免疫細胞が豊富に存在していると考えられています。骨は体を支えるだけではなく、また腸は栄養を吸収するだけではないのです。

われわれの免疫システムには、異物を排除するための「アクセル」と「ブレーキ」が備わっています。異物と戦うために働くアクセルに対し、ブレーキは異物を排除する働きが強すぎて自分の体を傷つけてしまわないようにするためにあります。このブレーキの働きが、逆に免疫細胞からがん細胞を保護している=免疫細胞ががん細胞を攻撃しないようにさせてしまっているのです。

そんなブレーキを抑えて、免疫システムががん細胞を攻撃するように働かせる薬がICIです。がんに対する免疫療法として登場したICIは、もしかすると腸内フローラをコントロールすることで、効果を高めることが出来るようになるかもしれません。

(佐々木常雄/東京都立駒込病院名誉院長)

がん患者1700人治療医師がYouTubeで語る真実 「標準治療」にまつわる誤解はなぜ多いのか

 日本人の2人に1人が、がんと診断される時代。そんな身近な病気であるにもかかわらず、我々はがん治療について、多くを知らないどころか、たくさんの間違ったイメージを持っていたりする。

 『がん防災チャンネル』というYouTubeチャンネルがある。宮崎善仁会病院の消化器内科・腫瘍内科の医師で、現役のがん治療医である押川勝太郎さんが開設したこのチャンネル。ほぼ毎日更新される動画では、がんやがん治療についての考え方などが紹介されている。

 そのチャンネル名が表すように、押川医師はがんを“災害のようなもの”だと捉えている。平時には「自分だけは大丈夫」と思っていても誰もが被害に遭う可能性がある災害に、「自分だけはかからない」と思いがちながんをなぞらえているのだ。

 「がんを宣告されると、誰もが頭が真っ白になり、『まさか自分が……』と思います。これは仕方がないことです。でも、正しい知識があれば、がんと診断されて動揺しても対処ができます。つまり、がんは災害と同じで備えが大切なんです」(押川さん)

 がんになると人は不安にかられ、自分を救ってくれるような情報を求めてしまう。それは人間の心理であり、防ぎようがないことだ。ただ、そのときに病気や治療のことをネットで検索しまくることは、決して勧められたものではないという。

ネット上のがん情報のほぼ半分は「正確ではない」

 「ネット上に載っているがん情報の、ほぼ半分が正確ではないという調査(※)もあります。しかし、一般の人にはそれを見極める知識や技術が備わっていません。その結果、自由診療を謳うクリニックの治療法がまるで“最先端のよい治療”のように思えてしまう。しかし、日本には、保険診療の範囲で行える現段階で最も有効とされる治療がある。それをなんとなくでもいいので、“がんにかかる前”に頭に入れておくことが、がんに対する備え、がん防災につながります」(押川さん)

 がん治療で誤解されやすいものの1つに「標準治療」がある。その名前のため、「一般的」や「普通の」といったニュアンスで捉えられがちだが、「標準治療とは、大勢(数百人~数千人)の臨床試験の結果を客観的に評価して、“現段階で最も有効性のある治療”と認定されたもの」と押川さんは説明する。

 標準治療は見方を変えると、国が認めた“推奨治療”だ。国が国費(健康保険料)を払っても問題ないとお墨付きを与えた、安全かつ効果のある治療といえる。

 標準治療は一般的にこんな感じで決まっていく。あるがんに対して、Aという治療薬が開発されたとしよう。そのAが本当に効くのかを調べるために、無治療のグループとA薬を使ったグループで臨床試験を行い、効果を比較する。その結果、A薬を使ったグループのほうが有効ならA薬がそのがんに対する標準治療となる。

 さらに、医学が進歩してBという新薬が登場したら、今度はA薬のグループとB薬のグループで臨床試験を行い、有効性を比較する――。このようなプロセスを積んでできあがったのが、標準治療なのだ。

 当然ながら、がんの種類や進行度、がんの特性(遺伝子の変異など)によっても標準治療は変わるし、時代とともに進化していく。また標準治療は必ずしも1つではないことも多く、患者の体力や希望なども考慮されている。

 「大事なのは標準治療をどう利用して、患者さんの状態や希望に添ったものにカスタマイズするか。どの治療が適切なのかを考えるのが私たちがん治療医の役割ですし、それこそが本当の意味でのEBM(Evidence-Based Medicine・科学的根拠に基づいた医療)といえます」(押川さん)

標準治療にある落とし穴

 ただ、標準治療にも落とし穴がある。その1つが、がんになったら誰もが標準治療を受けられるとは限らないという点だ。

 「臨床試験は薬の有効性を検証するための試験です。つまり、膨大なコストをかけて薬を開発した製薬企業からしたら失敗したくない。しかも、臨床試験で見るのは有効性だけではありません。安全性という意味から副作用もしっかり検証します。その結果、臨床試験の被験者は、副作用が起こりにくいとされる“比較的若くて持病が少なく、体力のある患者さん” が好まれて選ばれやすい。そこを忘れてはなりません」

 押川さんによると、特に問題なのは年齢だという。高齢者がかかりやすいがんでは、治療ガイドラインが定めた標準治療のレジメン(治療計画)がそのまま使える患者は、治療によっても異なるが、6~9割程度。比較的エリートな患者でなければ受けられない治療なのだ。

 ただ、年齢という因子には抗えないが、ほかのファクターは自分次第で変えることができるともいえる。まずは日常活動度が高いことが、がんと診断されたときに標準治療を受けられる大事な条件になる。

 「ですので、まずは、体力を付けておくこと。実は元気な人ほどがん治療はうまくいき、副作用も軽くなる傾向があります。治療によって体力が落ちることも多いので、それを見積もっても元気でいることはとても大事です」(押川さん)

 体力を付けるためには、当たり前のことながら、バランスのよい食事と定期的な運動を日課とすることも大切。治療中や治療後に体が動かせないと筋力が落ち寝たきりになりやすい。それを防ぐためにも運動で筋力をつけておきたいところだ。

 ちなみに、標準治療には抗がん剤治療も含まれるが、抗がん剤というと「ゲーゲー吐く、きつい治療」と思っていないだろうか。押川さんは「それは昔の話」と一蹴する。

 「実は、がんの薬物治療の進化は免疫チェックポイント治療薬や分子標的薬のような治療薬の進歩もありますが、それより大きいのは副作用を抑える薬が発展したことでしょう。脱毛などはまだ防げませんが、吐き気止めも今では予防的に使えるものが4種類あり、さらに3種類以上の吐き気止めが自分で加減していけるものになっています。おかげで、昔から使われている抗がん剤でも昔みたいに苦しい目に遭うことはなくなりました。実際、がん患者さんの副作用でキツいと考えているのは、吐き気などよりもメンタル面です」(押川さん)

 副作用対策はがん治療を継続するためにも欠かせない。その対策法が日々進化していることは、がん患者にとっては希望にもつながるのではないだろうか。

医師とのコミュニケーションが最大の課題

 ところで、標準治療にしろ、抗がん剤の副作用対策にしろ、自分にとってベストながん治療を受けるために必要なのは、医師と良好なコミュニケーションをとることだ。実はここが今、日本のがん治療における最大の問題点だと、押川さんは考えている。

 「医師は1日に何十人もの患者さんを外来で診ています。診察室に入ってきた患者さんの顔を見て、電子カルテを見れば、どんな患者さんだったか思い出しますが、1人ひとりのことを詳細に覚えているわけではありません。また、副作用などは血液検査や診察でわかるものもありますが、多くはご自身しかわからない自覚症状です。“医師にお任せ”ではなく、しっかり状態を訴えなければ、必要以上に強い治療をしてしまったり、副作用対策が遅れて治療の継続が困難になったりすることもあります」(押川さん)

 医師とのコミュニケーションはビジネスでたとえれば、「クライアントにプレゼンするイメージに近い」という。手短に、相手にわかりやすく自分の現状を説明し、理解してもらう。あくまでも治療の主役は自分で、医師は二人三脚で走るパートナーという考え方が重要だ。

 「医師はがんの専門知識はありますが、自分の体や心の状態を一番知っているのは自分です。今はがんになっても6割の人が治ります。がん治療に人生のすべてをかけるのではなく、生活、仕事、家庭、がん治療どれも大事にしながら、両立させる。そのためには医師を上手に“活用”することが大事なのです」(押川さん)

 『がん防災チャンネル』では、適切ながん治療の情報を伝えているだけではない。押川さんが日々がん情報を発信する最大の目的は、患者に希望を持ってもらうこと。そして、がん患者は決して「かわいそうな存在」ではないと、自覚してもらうことだ。

 そのためにも、がんにかかる前からがんという病気、そして治療について正しい情報を得てほしい。「備えあれば憂いなし」という言葉は、がんにも当てはまるのだ。

(構成:ライター安里和哲)

“朝食論争”で新たな研究成果「食べないと筋肉量にも影響」 名古屋大学の研究グループ

健康のためには朝食は食べたほうがいい? 抜いたほうがいい? いわゆる「朝食論争」について、名古屋大学の研究グループが「朝食を食べないと体重が増え、筋肉量は低下する」という新たな研究結果を発表しました。名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループは、朝食を与えたマウスと朝食を抜いたマウスの体重や筋肉量を比較しました。 その結果、朝食を抜いたマウスのグループは体重の増加のほかに、筋肉量も低下していたことが新たに分かりました。 朝食を抜いたことで、筋肉部分の体内時計に異常が生じたと考えられるということです。 小田准教授は、「日本をはじめとする先進国では、若い人の3割ほどが朝食を食べていない。今回の研究で、朝食はメタボリックシンドロームの予防のほか、運動機能の低下の予防にもつながることが明らかになった。朝食は健康のために最も重要な食事だ」としています。 研究成果は、イギリスの栄養学の査読付き科学雑誌に掲載されました。

若さの秘訣は”背中”にあり 背中が硬いと老けて見える7つの理由を人気トレーナーが解説

 自分の目でチェックしづらいため、「背中」に無頓着な人は多い。実際、ほとんどの人が日常生活の中で背中まわりの筋肉を使っていないため、背中は気づかぬうちに硬くこり固まり、余分な脂肪がつきやすい。「老けた」印象を最も与えやすいのが背中だという。背中が硬いと何が起こるのか――人気トレーナーに解説いただいた。

その後ろ姿、何才に見える?
© 介護ポストセブン 提供その後ろ姿、何才に見える?

背中が硬いと老けて見える7つの理由

 女性がきれいになるためには「姿勢」がいちばん大切、そして、その要が「背中」だとパーソナルトレーナーの玉置達彦さんは力説する。

「やせたい、美しくなりたいと思うと、自分の目ですぐに確認できる“ぽっこりお腹”や“くびれ”など、気になる部分のみを鍛えがちですが、本当にきれいなプロポーションを求めたいなら、背中を鍛えて正しい姿勢作りを心がけた方が近道です」(玉置さん)

 背中の筋肉は、ものを引っ張ったり、腕を後ろに動かすときに使われるが、日常生活では手を前に出して行う動作が多いため、意識して使わないでいるとどんどん衰え、背中の老化が進むという。

 また、パソコンやスマホと向き合う時間が長いほど、猫背になって首が前に出てしまい、その姿勢のまま背中の筋肉が硬くなってしまう。こうした状態が続くと悪い姿勢が定着してしまい、歩く姿を後ろから見ると、実年齢よりも10才以上老けて見えることがある。

 実際のところ、背中が硬くなると…

【1】猫背になり、老けて見える

【2】フェイスラインがあいまいになり、たるむ

【3】肩まわりの動きや血流が悪くなり、二の腕が太くなる

【4】胸の筋肉が縮こまり、バストが垂れる

【5】わきに“ハミ肉”がつく

【6】お腹の表面の筋肉が縮み、インナーマッスルがゆるんで、お腹ぽっこり、くびれなし

【7】お尻が垂れる

 といった具合に、硬い背中が“老け見え”をどんどん加速させるのだ。

横から見ると…
© 介護ポストセブン 提供横から見ると…

 理学療法士でストレッチ系YouTuberのオガトレさんによると「腰痛や肩こりに悩む人の背中は、本人が意識している以上に硬く、ガチガチに固まっている場合が多い」と言う。

「背中を意識してストレッチ&筋トレをすれば、2週間ほどで上半身の動きがスムーズになり、やわらかくなったと実感できるはずです。肩や首こり、腰痛などの悩みも軽減すると思います」(オガトレさん)

 背中の筋肉は大きいため、やわらかくほぐれれば全身の血流が促進されて、代謝がアップし、ダイエット効果も期待できるという。また、背中の筋肉は首を支えているので、鍛えることで首が正しい位置に整い、すっきり小顔になる。わきのハミ肉やぽっこりお腹も正しい位置に整えば、くびれの出現も夢ではない。さぁ、若見えを目指し、背中筋ケアを始めよう!

 背中を鍛えるトレーニングは、順次お届けする予定だ。

教えてくれた人 パーソナルトレーナー 玉置達彦さん

『STELLA GYM』代表。運動が苦手な人でも続けられる筋トレメソッドで、数多くの有名芸能人を指導。著書に『背中から見た目印象を変える13の「背活」メソッド』(主婦の友社)などがある。

理学療法士 オガトレさん

公立の急性期病院でリハビリ業務に従事した後、訪問リハビリ、フィットネスジムの責任者を経て、チャンネル登録者数98.5万人のストレッチ系YouTuberに。「体が硬くて困っている人をゼロにしたい」を信念に動画を配信中。

取材・文/山下和恵 イラスト/藤井昌子

※女性セブン2022年3月10日号

便検査が膵臓がんの発見に役立つ?

膵臓がんの早期発見の鍵が便の中に隠されていることが、ハイデルベルク大学病院(ドイツ)のEce Kartal氏らの研究で示唆された。この研究では、糞便検体から検出された複数の種類の微生物が膵臓がんに強く関連していることを確認。糞便の検査によって発見が難しい膵臓がんの発症リスクの高さを予測できる可能性が示された。この研究結果は、「Gut」に3月8日発表された。


Kartal氏らは、136人のスペイン人から採取した唾液と糞便の検体を用いて、細菌叢の機能を調べるショットガンメタゲノム解析と、菌種を推定する16S rRNA解析を行った。136人のうち57人には膵管腺がん(PDAC)、29人には慢性膵炎があり、残りの50人は健康な人であった。


その結果、糞便検体から、PDAC患者に特徴的な27種類の微生物が特定され、これらの微生物パネルを用いることによって84%の精度でPDAC患者を検出できることが示された。このパネルに、PDAC進行のモニタリングに使用されている腫瘍マーカーである糖鎖抗原19-9(CA19-9)を組み合わせると、PDACの検出精度は94%まで上昇した。

さらに、この微生物パネルを、44人のPDAC患者と32人の非PDAC患者で構成された76人のドイツ人の集団で検証するとともに、5,792人分の検体に基づく25件の研究から得られた公表データを用いた検証も行った。これらの検証においても、この微生物パネルが正確にPDACを検出する方法となり得ることが確認された。

ただしKartal氏は、「慢性膵炎や2型糖尿病などのPDACのリスク因子を有する集団や、肝臓病や他の種類のがんなどが関連する症状を呈する集団などでは、われわれのモデルによってPDACを誤りなく予測することはできない」としている。

米国がん協会(ACS)によると、膵臓がんはがんの中では比較的まれで、全てのがんに占める割合は約3%である。また、そのほとんど(約95%)をPDACが占めている。非営利団体PanCAN(Pancreatic Cancer Action Network)のチーフ・サイエンス・オフィサーを務めるLynn Matrisian氏は、「現時点では、膵臓がんを早期発見する手立てはない。

そのため、多くはがんが進行してから初めて発見され、そのときには治療選択肢が限られてしまっていて、生存率も低い。膵臓がん患者には時間的な余裕はないため、膵臓がんを発見するための新規で優れた方法につながる革新的な研究は、どのようなものでもわれわれに勇気を与えてくれる」と期待を示す。

一方、Kartal氏は、「糞便検査による膵臓がん検診の実現に向け第一歩となる結果ではあるが、確固たる検診あるいは診断の方法に結び付けるには、さらなる検討が必要」と述べる。また、この方法の利点として、非侵襲的かつ迅速に行うことができ、費用も比較的低く抑えられることを挙げている。

ACSのチーフ・メディカル・アンド・サイエンティフィック・オフィサーであるWilliam Cance氏は、今回の報告について、「極めて革新的な知見だ。また、膵臓がんの早期診断の実現への希望を与えてくれる研究結果だ」と評価する。

一方、Kartal氏らの研究に関する付随論評の執筆者の一人で、米フロリダ大学のChristian Jobin氏は、「膵臓がんを発見するための強力なツールを生み出すには、この微生物パネルに他の方法を組み合わせる必要がある」と話している。(HealthDay News 2022年3月9日)

https://consumer.healthday.com/b-3-9-could-stool-t...

傷ついた腸管の再生助ける幹細胞発見、大腸がん治療へ応用も…九州大チーム

傷ついた腸管の再生を助ける幹細胞を新たに発見したと、九州大生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らの研究チームが21日、発表した。大腸がんの新たな治療法開発などへの応用が期待されるとしている。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 発表によると、腸管は高度な再生力を持つため、臓器の維持・再生の仕組みを研究する上で注目されてきた。ただ、再生を担う細胞の実体やメカニズムは不明だったという。

 研究チームはマウスを使った実験により、病気や投薬などで腸管の幹細胞が傷ついた際、特定の遺伝子を含む別の細胞が幹細胞に変化することを確認した。この幹細胞が腸管の再生に重要な役割を果たすことが分かったという。中山主幹教授は「胃など他の臓器の細胞の変化も今後、明らかにしていきたい」としている。

がん電話相談から 心不全で乳がん再発予防の治療が受けられない

Q 61歳女性です。別の疾患の経過観察で定期的に受けていた磁気共鳴画像装置(MRI)検査で昨年6月、左乳房にがんが見つかり、ステージⅠでした。8月に乳房温存術で直径1・7センチのがんを切除。翌月から再発を防ぐため抗がん剤パクリタキセルとハーセプチン(分子標的薬、一般名・トラスツズマブ)による治療を始めましたが、ハーセプチンの副作用で心不全が起きたため使用を中止。循環器科を受診し、今も心不全の薬を使っています。

がん電話相談から 心不全で乳がん再発予防の治療が受けられない
© 産経新聞がん電話相談から 心不全で乳がん再発予防の治療が受けられない

パクリタキセルは予定通り12回の投与が終わったものの、ハーセプチンや放射線による治療が受けられなくなってしまいました。乳がんが再発しないか心配です。

A 病理検査結果によると、HER2陽性、ホルモン受容体陽性とのことですが、がんの増殖能力を示すKi67値は10~15%と、HER2陽性にしてはかなり低く、ホルモン療法の効果が高いと考えられます。ホルモン療法はきちんと受けていますか。

Q 1月からアナストロゾールの内服を始めました。5年間続けると言われています。でも、これだけでは不安です。ハーセプチンによる治療は当初、1年間続ける予定だったのです。

A 治療法の選択では、プラス(効果)とマイナス(副作用)のバランスをどう判断するかが大事です。HER2陽性ですので、本来であれば、ハーセプチンは1年間使うことが推奨されますが、ハーセプチンの副作用で心不全を起こしていますので、再びハーセプチンを使うことによるマイナスも考慮する必要があります。ハーセプチンを使うことで再発を免れる可能性が相当に高いのであれば、心不全が悪化する危険があっても、ハーセプチンを使うことをすすめますし、がん研有明病院の循環器内科の医師も、慎重に管理すれば投与は可能と言っています。

しかし、リンパ節転移もないステージIで、ハーセプチンを使わなくてもホルモン療法の効果が十分に期待できるので、ハーセプチンによるプラスよりもマイナスの方が上回ってしまうと思います。

Q 放射線治療も同じですか。

A プラスとマイナスのバランスを考えるのは同じです。乳房温存術後ですので、本来は、局所再発を防ぐために、乳房に放射線治療を行うのが標準ですが、心臓に影響を与えるマイナス面も考えられます。そのバランスは微妙で、医師によって意見が分かれるところですが、放射線治療を行わないという判断も妥当だと思います。

Q 再発のリスクを考えると乳房全摘術を受けなかったことが悔やまれます。

A 乳房を温存できてよかったのではないでしょうか。局所再発の可能性は少しありますが、慎重に経過をみればよいかと思います。今から再手術をして、乳房全摘をするという選択肢もありますが、失うものはあっても、プラスはあまりないように思います。

いずれにしても、すべての医療行為について、プラスとマイナスのバランスを考え、担当医とよく話し合い、納得して選択することが重要です。

■連携進む腫瘍学

高野医師によると、近年、がんの学問分野である「腫瘍学(オンコロジー)」と、他の学問分野の連携が進んでいるという。心臓病、腎臓病、糖尿病など、がん以外の病気も抱えながらがんの治療を行う場合や、がんの治療に伴う副作用で心臓や腎臓などの機能が低下するような場合があり、腫瘍の専門家だけでなく、心臓、腎臓、糖尿病などの専門家と連携しながら治療する場面が増えている。今回相談例にあった、がん治療に伴う心不全の管理は、「腫瘍循環器学(オンコカーディオロジー)」の重要なテーマだ。(構成・佐藤健二)

回答は、がん研有明病院乳腺内科部長、高野利実医師が担当しました。

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月曜~木曜日(祝日除く)午前11時~午後3時に受け付けます。03・5531・0110、無料。相談はカウンセラーが受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

知らなきゃダメ!「銀行の預金がおろせない」考えられる3つの理由と対応策

多くの人は「銀行に預けておけば大丈夫」と思っています。

自分名義の口座に預けておけば、好きなときに好きなだけおろして使うことができるとも思っているかもしれません。

しかし、自分名義の口座や自分が堂々と使えるはずの口座であっても、ある日突然預金がおろせなくなることがあるのです。

今回は、「預金がおろせない理由」と「対応策」についてお話しします。

例え配偶者や親の口座であっても故人名義の預金はおろせない

これは、筆者が銀行で実際に目にしたことです。

銀行の窓口で、60代の男性が通帳を持って窓口担当者ともめていました。

耳をすませてみると、客である男性は「僕がこの場で正直に言わなければよかったということ? それは変だよね」と言っています。

筆者はピンときました。

この男性は、自分の親が亡くなり親の口座からお金を引き出そうとしたのです。

そのときに、窓口担当者が本人確認を行い、口座名義人と窓口に来ている人が一致しないことに気がついたのです。

最近の銀行はとても厳しく、例え本人名義の口座であっても一定金額以上の預金を引き出すときには窓口で自動車免許証などを使って本人確認をします。

口座名義人と窓口に来ている人が違う場合は、もちろん理由を聞きます。

そこで男性は「この口座名義には私の親ですが、亡くなったため私がおろしにきました」と言ったのでしょう。

「口座名義人が亡くなった」と聞いた段階で、銀行はその口座を凍結します。

銀行が故人の口座を凍結する理由は、故人であっても口座名義人の財産を守り、正当な相続人に引き継がせるためです。

例え、配偶者や子どもたちであっても正式な手続きを踏むまでは口座は凍結されます。

窓口に来ていた男性が「正直に言わなければよかったのですか」と質問していました。

窓口担当者は、ただひたすら「申し訳ありません」と答えるだけでした。

ここまでの話を聞くと「それなら黙って故人になりすましておろしてしまえばいい」と思うかもしれません。

年齢や顔が似ている親族がいれば「なりすまし」は可能かもしれません。

しかし、相続人の中で「何かが変だ」と思う人がいた場合は大変です。

実は、各相続人(財産を相続する人)は他の相続人に相談なしで非相続人(故人)の預金口座の入出金履歴をみることができます。

「なりすまし」で銀行からお金をおろせたとしても、その後に不正に引き出しをしたことが発覚したときには大きなトラブルになるでしょう。

口座名義人が亡くなったときには、相続人を探し出し遺産分割協議書(実印押印)を作成し、非相続人の生まれたときから最後までの戸籍謄本や除籍謄本や改製原戸籍謄本、非相続人が最後に住んでいた住民票、相続人全員の戸籍謄本と住民票、を用意して銀行に提出します。

遺産分割協議書に使用した印の印鑑証明も必要です。もしも遺言書があれば、遺言書に従います。

故人名義の口座は凍結されますが、きちんと手続きを行えば引き出すことができるようになります。

払うべきものを払っていないと自分名義の口座でもお金はおろせない

自分名義の口座であるにもかかわらず、お金がおろせなくなることもあります。

例えば、払うべきお金を払っていなかったときには「差押」でおろせなくなるのです。

差押といえば「税金や住民税の不払い」をイメージするかもしれません。

しかし、意外と多い差押が「養育費の未払い」です。養育費の未払いが大きな問題としてニュースで取り上げられています。

養育費の未払いで子どもが困ることがないように「差押」があるのです。

養育費の未払いにより強制執行が行われれば、銀行口座だけでなく給与も差し押さえられる可能性が高いです。

昔は、差し押さえる銀行口座がわからなければ強制執行ができませんでしたが、法改正によって口座がわからなくても調べることができるようになりました。

つまり、税金や養育費のように「払うべきお金」を支払っていない場合は、自分名義の口座であってもお金がおろせなくなるのです。

払うべきお金の未払いで一度でも口座が差押されてしまうと、お金がおろせないだけでなく社会的にもマイナスの影響が大きくなります。

とくに養育費の未払いは、給与も同時に差し押さえられることがほとんどのため、会社にも居づらくなるでしょう

対応策は「払うべきお金はきちんと払う」ということしかありません。

一度に引き出す金額が大きいとおろせない可能性大

これも筆者の実体験です。

筆者の親が人ごみを避けるために、当面の生活費として100万円をまとめておろしに銀行に行きました。

窓口で手続きをしていると「100万円を引き出す目的は」と聞かれたそうです。

「とくに決まっていないです」と答えたところ、窓口担当者の顔色が変わり「このお金を引き出してどうするつもりですか」「少しずつおろしたらどうですか」と言われました。

つい親は「自分のお金を何に使おうが勝手でしょ」と思い、「とにかく100万円をおろしたい」と言ってしまったのです。

しばらく窓口担当者と押し問答になり、ついには警察が呼ばれてしまいました。

親は急に怖くなり、銀行から筆者に電話をしてきたのです。

電話の向こうからは、おびえた親の声と警察の声が聞こえ、まもなく警察が電話を変わりました。

筆者は警察から「あなたは誰ですか」と聞かれ「娘です」と答えました。

すると「多額のお金を引き出そうということで我々は来ています。あなたはどこに住んでいる人ですか」と強い口調で再び質問されました。

筆者は「私を振り込め詐欺師だと疑っている」と感じ、怒りが込み上げてきました。

つい「銀行の窓口で高齢者を目の前にして多額のお金を引き出そうとしていると大きな声で話す方が危険でしょ」と言いました。

続けて「場所を選んで話をしてください」とも言ってしまったのです。

警察の方も、あまりの迫力に「これは本当の娘だ」と信じてくれたようです。

結局、お金をおろして警察に守られながら帰宅することができました。

その後、筆者も同じような経験をしました。

警察を呼ばれることはありませんでしたが、使用目的をこまかく聞かれました。

銀行の立場になれば、あとから「どうしてあのときに気がつかなかった」と責められることがないように念には念を入れているのでしょう。

むしろ、簡単に多額の現金をポンポン出してくれる銀行の方が心配なのかもしれません。

対応策は、やはり必要なときに適度な金額をおろして使うことではないでしょうか。

銀行の預金がおろせない理由には根拠があります。

故人名義の口座からお金がおろせなくなる理由は、故人の財産を守るためです。

口座が差し押さえられてお金がおろせなくなる理由は、払うべき義務を果たさせるためです。

そして自分の口座から多額のお金がおろせない理由は、その人のお金を守るためです。

理由と対応策を知り、正しい方法でお金を守っていきましょう。(執筆者:クリエイティブな節約家 式部 順子)

精神疾患と診断された人が「薬漬け」の異常な現実 向精神薬の強制投与は過度に鎮静化させる「拘束」

本人の意思を無視した長期強制入院、病院への強制移送、身体拘束、薬漬け……、日本の精神科病院を取り巻く現状は、世界標準からかけ離れた異常な点ばかりだ。そんな日本の精神医療の抱える現実をレポートした、本連載「精神医療を問う」全15回に大幅加筆した書籍、『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』が3月11日に当社から刊行された。

連載内では盛り込めなかった、当事者たちの切実な声から明らかになった日本の精神医療が抱える深い闇の実態を、さらにお伝えしたい。

患者に薬を飲まない自由はないのか

 精神科病院では、うつ病薬や睡眠薬など脳の中枢神経に作用する向精神薬が処方される。その副作用や依存で苦しむ人は多いが、患者自身へインフォームドコンセント(医療行為に関する十分な説明と患者の同意)はおろそかにされている。

 精神科病院で手足や胴体を縛る身体拘束とほぼセットで患者に投与されるのが、向精神薬だ。病院が身体拘束を行う場合は家族の同意を得る必要がある。しかし、向精神薬はたとえ大量に投与する場合でも、本人や家族に同意を求めることすらない。「病院の秩序のため」「家族のため」と言われ、患者は薬を半ば強制的に投与される。

 患者を過度に鎮静化して無抵抗にするという点で、向精神薬は身体拘束と同じだ。その意味で、向精神薬の投与は「化学的拘束」とも言われる。入院中、患者は看護師の前で薬を飲み、しっかり飲んでいるか確認される。口を開いて飲み込んでいるかまで見られることもある。

 精神障害のある当事者と支援者で作る「YPS横浜ピアスタッフ協会」に所属する堀合研二郎さんは、「医療者側が薬物療法以外の選択肢を持っていないため、それに頼りがちになっている」と訴える。堀合さんは、20代のとき統合失調症と診断され、向精神薬の副作用に苦しんだ経験がある。

 「最低限の量と最低限の副作用で日常生活を送るのがいちばんいいが、基本的にその薬が効く場合は最大量まで増量される。そして飲まなくなったら、同じ状態になると脅される」

 堀合さんは、症状が安定していた時期にもかかわらず、医師に薬を飲んでいないという疑いをかけられ、再び入院をさせられた経験がある。「処方された薬を飲むしかないため、患者側には自由はない」と堀合さん。

 「患者は、何かしらの心理的な要因や環境的な問題があって苦しんでいる。しかし、医師はそちらへの働きかけをしないまま、薬によって解決しようとする。副作用が出るとそれをやめて別の薬は出してくれるが、その薬にも副作用がある。医師は病気の再発を防ぐことを優先して減薬しようとしない。もっと個々人の副作用や当事者の生活に目を向けてほしい」(堀合さん)

 アスペルガー症候群と診断され、10代のときから向精神薬を飲み続けている21歳の加藤詩織さん(仮名)は、薬の量を減らせないことが悩みだ。年々薬の量は増えているが、薬を飲んでも眠れない日が続き、昼頃までだるさが残る。これまで摂食障害と自傷行為で、精神科病院に3度入院した。その後、薬の量を減らしたくても減らせないという。

 「飲むのを勝手にやめたときもあったが、主治医に『自分で服薬の管理ができないなら、入院して薬を飲む習慣をつけることになる』と言われた。入院はもう嫌だからまた飲むしかありません」(加藤さん)

医師の処方にチェック機能が働かない

 精神科の薬物投与は1人の医師によるもので、そこにチェック機能が働きにくい。本来ならば、薬剤師が医師の処方に対して疑問点や不明点を確認する「疑義照会」がチェック機能になるはずだ。しかし、「疑義照会は形骸化している」と複数の医師や薬剤師が口をそろえる。

 医師がピラミッドの頂点にいる医療界では、その力関係から薬剤師が医師の処方に口を出すことははばかられるからだ。医師同士であっても、互いの処方をチェックすることはない。

 「精神科の処方は医師1人ひとりによる名人芸になりやすい。薬物治療のガイドラインすら守らない医師もいる。しかも、医療従事者と患者には情報の非対称性がある。患者は症状に苦しんでいるため、薬について調べる余力がない」(前出の堀合さん)

 堀合さんが参加する「抗精神病薬と社会」研究会では、薬を強制しない精神医療のアプローチについて議論している。同研究会は、カナダ・ケベック州で普及している精神科治療薬を自律的に服薬するためのアプローチ「GAM」(ギャム:Gestion autonome de la medication)を研究し、それを応用した方法を当事者や研究者、医師や薬剤師が中心になって日本への導入の可能性を検討している。

服薬の経験がトラウマに

 同研究会の主催者の1人で、精神医学の哲学を研究する石原孝二・東京大学大学病院総合文化研究科教授は、精神医療では患者へのインフォームドコンセントが軽んじられていると指摘する。

 「医療保護入院(本人の同意なしに強制入院させる制度)は入院の強制であって、治療の強制ではないはずだ。しかし、なぜか治療までもが強制になっている」(石原教授)

 研究会のメンバーで、18歳のときに統合失調症と診断されたことがある大矢早智子さん(仮名)は、10年以上経ってから統合失調症ではなかったのではないかと告げられた。女性は、「当時、統合失調症と言われたことや、薬を何のために飲むのか知らされないまま飲んでいたことが、今のトラウマになっている」と話す。

 「飲みたくないと言うと、『病識がない』(自分の病気のことがわかっていない)とされてしまうことが多い。飲まなければ、病状が悪化したと見なされてしまうこともある」(大矢さん)

 こうした医療側の論理によって、精神疾患と診断された人は薬を「飲みたくない」「減らしたい」という意思すら否定されていく。病院への収容か、処方された薬を飲むか。そこには本人の意思が置き去りにされたままだ。

「緊張する場面」で不安を和らげる7つのポイント 過去の経験から負のサイクルに陥ってしまう

 こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

 昨今、人と直接会う機会が減り、話すこと自体も減っている方も多く、いざ言葉を交わそうとする際に「思うように声が出ない」「言葉が出てこない」というご相談も増えています。そんな中、人前で話す、プレゼンするという場面では、必要以上の緊張を強いられます。朝のミーティングでのひと言さえもプレッシャーに感じる人もいます。そのようなときに少しでも緊張を和らげる方法をお伝えしたいと思います。

緊張のサイクルに陥らないために

 緊張には、自律神経の働きが深く関わっています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、通常は、この2つがバランスよく働いています。しかし、不安を感じたりプレッシャーやストレスがかかったりすると交感神経の活動が優位になります。すると、「筋肉が緊張して震える」「顔が赤くなる」「心臓がドキドキして脈が早くなる」「急激に汗をかく」といった身体反応として現れます。

 そして、緊張しやすいという自覚がある方は、過去の経験から「また緊張するのでは」と、緊張を恐れ、以下のような負のサイクルに陥ってしまう傾向があります。

1)「緊張して失敗したらどうしよう」「恥をかいたら嫌だ」と強く感じる

2)緊張を隠すために、無理に平静を装ったり愛想笑いをしたりなど、安全行動を取ろうとする

3)緊張を隠せているのか不安になり、よけいに自分に意識が向く

4)さらに不安になって、手汗や震え・顔が赤くなるなどの身体の反応が強く出る

5)1に戻る

このような緊張のサイクルに陥らないために意識するポイントを7つ挙げたいと思います。

1)「緊張は必ずしも悪いことではない」

 まずは緊張を「悪」と捉えないことが大切です。完全にリラックスしているよりも、適度な緊張感がパフォーマンスの向上につながります。「緊張している、不安」ではなく、「よい緊張感を持てている」という意識に変えてみましょう。

2)「誰でも緊張する」

 人前で話したり注目を集めたりするときは、誰でも緊張するもの。堂々と聴衆の前で話しているようにみえる人も内心は緊張しているものです。中には平常心でいられる人もいるとは思いますが、それはごく少数派です。そのことを理解しておくと、少し気が楽になると思います。

3)「緊張を隠さなくていい」

 「緊張してもよい」と開き直ってしまうのも1つの手です。緊張を無理に隠そうとせずに、「人前で話すのは、とても緊張します」と相手に素直に伝えることで楽になることもあります。場合によっては場が和んで緊張した空気がとけたり、真面目な人という好印象を得られ、プラスの効果につながることも多いです。

意識を自分からそらす

4)「緊張しやすい場面では自分以外に注意を向ける」

 緊張すると、つい自分にばかり意識が向きがちです。普段以上に自分の心音が大きく聞こえたり、手の震えや顔のこわばりが気になってしまうかと思います。そんなときは、自分自身から意識をそらして、景色や目の前にある物、視界に入るほかの人に意識を向けるようにしてみましょう。ただ見るだけでなく、絵を描くつもりで細部をじっくり観察します。音に敏感な方は、周囲の音、例えば「風の音」「車の音」などに意識を向けるのもよいと思います。意識を自分からそらすことで緊張が和らぎやすくなります。

5)「深呼吸」

 緊張しているときは、呼吸が浅くなっています。深い呼吸をすることで、副交感神経の働きが高まり、過剰になった交感神経が落ち着きます。深呼吸を何度か繰り返すことで、心臓のドキドキや汗、手の震えといった緊張による身体反応を和らげる効果が期待できます。

6)「緊張する明確な理由がある場合は対策を」

 例えば、「十分な準備ができていない」「話す順番を整理できていない」「練習不足で不安がある」など、緊張する理由が自分で明確にわかっている状況もあるかと思います。自分に自信が持てないと、「失敗したらどうしよう」「ミスしてしまうかも」という意識が働くため、どうしても緊張度が高くなります。このようなタイプの緊張を防ぐには、事前にしっかり準備しておくことが大切になります。「これだけやったのだから大丈夫」と思うことができれば、緊張の緩和につながります。

7)「成功イメージを持つ」

 不安を覚える方の多くは、失敗するイメージを描きがちです。イメージの与える影響は大きく、現実化につながることも。難しいかもしれませんが、「はきはき話している自分」などの成功イメージを思い浮かべましょう。イメージするのが難しければ、動画などでスピーチやプレゼンといった自分の状況にあっているものを検索し、自分がよいなと感じるものを見ることもお勧めです。

 緊張は誰でも感じるもの、過度に恐れないようにすることが大切です。今回お伝えした「緊張を和らげるためのポイント」を緊張してしまいそうな場面の前に意識してみてください。徐々に不安を緩和することができるようになると思います。

貧血予防の食材・レバー 「食べるアメリカ人を見たことない」の証言も

 日本では「健康にいい」とされているのに、海外では危険と指摘されている食品があるという。たとえば、健康食品の代名詞である「青汁」。日本人に不足しがちなミネラルやビタミンが豊富に含まれ簡単に補給できると人気の青汁だが、海外ではリスクが指摘されている。アメリカ在住の内科医、大西睦子さんが解説する。

【写真】アルツハイマーのリスクが高まる可能性があると指摘される食べ物

「サプリメント大国のアメリカにも『グリーンパウダー』と呼ばれる類似品がありますが、健康への悪影響が懸念されています。青汁はビタミンKを多く含むので、血液中のカリウム濃度が高まり、腎臓が悪い人は心臓に深刻な問題を引き起こす可能性があるからです」

 臓物の中でも最も栄養価が高く、貧血予防の食材としておなじみの「レバー」も、海外では日本ほど身近な食材ではない。

「レバーには、鉄分、ビタミンB12、ビタミンA、銅など多くの必須栄養素が非常に豊富に含まれています。ですが、牛レバー100g中、ビタミンAは1日の推奨摂取量の6倍以上、銅が7倍と多すぎることが問題。ビタミンAは脂溶性ビタミンで体内に蓄積されるため、過剰に摂取すると中毒症状など不調をもたらす可能性がある。具体的には視力障害、骨痛や骨折のリスクの増加、吐き気や嘔吐などです。

 また、銅の過剰摂取で銅中毒になると、アルツハイマー病のリスクが高まります。少なくとも私の周りでレバーを食べるアメリカ人を見たことがありません」(大西さん・以下同)

 日本人が昔から食べてきた健康的な食品といえば魚も外せない。

「魚は良質なたんぱく質源で、オメガ3系脂肪酸を含有するため、血中のコレステロール値低下、心血管疾患やがん予防など、よい効果があると報告されています」

 しかし、魚の種類によっては健康被害を引き起こす。老若男女が大好きな赤身魚「まぐろ」はメチル水銀の含有量が指摘されている。

「メチル水銀は、オメガ3系脂肪酸の健康効果の一部に対し、逆効果となる働きをすることが報告されています。また、神経毒性があり、母体を通じて胎児に影響するとも。米国国民栄養調査のデータによると、米国では胎児の7.8〜15%に過剰なメチル水銀のリスクがあり、控えることが推奨されています」

 魚を食べることは健康にいいが、海洋汚染が世界的問題となっている中、安全性には気をつける必要がある。さらに生魚には寄生虫であるアニサキスの危険もある。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長の下方浩史さんはいう。

「日本人が好きな“天然もの”の魚にはアニサキスがいます。アニサキスは養殖魚にはほぼいないので、安心して生で食べたいなら天然より養殖を選ぶこと」

※女性セブン2022年3月31日号

「肉を食べまくる老人」ほど幸せで長生きする理由 食べまくってエベレストに登頂した80歳も

なぜ肉を食べる老人ほど幸せで長生きいしやすいのか? 精神科医の和田秀樹氏による新刊『70歳が老化の分かれ道』より一部抜粋・再構成してお届けします。

80代になっても元気でいるためには、70代の生活で気をつけるべき2つのポイントがあります。それは、活動意欲を維持するということと、運動機能を維持するということの2つです。

 病気を患って急に老け込むということがありますが、そうではない場合、老化は意欲の低下によって加速します。何事にも関心がもてない、身体を動かすのがおっくうだ、人にも会いたくないし、外にも出たくないといった不活発な傾向が70代ともなると自然と強まってきます。

 この意欲の低下を防がないと、日常の活動レベルはどんどん落ちていき、運動機能も脳機能も一気に老け込んでいくことになるのです。だから、70代になっても意欲レベルをなるべく維持することが、元気でいるためには必要なのです。

 また、運動機能においても、70代のまだ身体の動く時期にどのように過ごすかで、80代以降の機能が決まってくると言えます。70代に、自分で意識して適切な運動を心がけることが重要となってくるのです。

高齢者の多くが「タンパク質不足」

 それでは、具体的にどのようなことをしたらいいのでしょうか。まず、意欲の低下を防ぐ意味で、みなさんにお勧めしたいのは、「肉を食べる」ということです。

 高齢になると、肉を控えた野菜中心の食事が身体にいいと考えている人も多いですが、それは間違っています。実際、現役のころと比べ、かなりあっさりとした食事を毎日とっている人もいます。そういった事情もあってか、実は、70歳以上の日本人の5人に1人が、タンパク質不足だと言われています。

 日本人の食生活も欧米化してきたと言われていますが、それでも1日当たり80グラムほどしか肉を食べていません。一方、アメリカ人は300グラムほど食べています。アメリカ人ほど食べろとは言いませんが、まだまだ、日本人には肉が不足しているのです。そしてその傾向は、高齢者ほど強くなります。

 歳をとると意欲レベルが低下してくる理由にはいくつかありますが、そのひとつが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの減少です。セロトニンは別名「幸せ物質」とも言われ、人に幸福感をもたらすものです。何気ない瞬間に「ああ、幸せだなあ」と感じるときがありますが、そのような感情をもたらす物質です。

 このセロトニンが減少してくると、日々の幸福感は薄れ、はつらつとした感情や若々しさ、活動する意欲が低下してしまいます。気分が沈んだり、イライラしたり、感情が不安定になり、うつ病のリスクも高まってきます。

 このセロトニンは年齢とともに次第に減少していくので、高齢になればなるほど、意欲も低下し、うつ病になる人も増えるのです。

肉がセロトニンの生成を促進する

 しかし、セロトニンの減少には、高齢になっても、生活習慣を改善することで対抗することができます。その最たるものが、肉を食べることです。セロトニンの材料となるのがトリプトファンというアミノ酸ですが、それが多く含まれているのが肉なのです。肉を積極的にとることで、セロトニンの生成が促進され、意欲低下の抑止に働くのです。

 また、肉には、コレステロールもたくさん含まれています。コレステロールは動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクになるという理由から悪者として見られていますが、日本の高齢者にとっては必ずしも忌避すべきものではありません。

 心疾患が死因のトップであるアメリカであれば、コレステロールが悪者とみられるのもわかりますが、日本では心筋梗塞の10倍の人ががんで亡くなるという疾病構造の違いがあり、心疾患で亡くなる人はOECD諸国のなかでも格段に少ないのです。動脈硬化を気にするよりも、コレステロールを減らすことによってもたらされる男性ホルモンの減少のほうを恐れるべきです。

 コレステロールは男性ホルモンの原料になります。そのため、コレステロール値を薬で抑制することで、EDになることはよくあることです。男性ホルモンのなかでも特にテストステロンは「意欲」と関係しています。性機能の面だけでなく、他者への関心や集中力などを司っています。男性ホルモンが減少すると、活動意欲が低下して、元気のない老人になってしまうのです。ついでに言うと、記憶力も低下します。

 しかし、肉を食べ、コレステロールをよくとっていれば、男性ホルモンの低下にも対抗することができます。さらには、セロトニンを脳に運ぶ役割も、コレステロールが果たしていると言われています。つまり、肉を食べることは、セロトニンと男性ホルモンの生成を促進し、人の「意欲」を高め、活動レベルを維持することにたいへん効果的なのです。

 肉が嫌いであったり、体調の問題で食べられないのなら無理をすることもありませんが、健康のために節制して肉食を遠ざけているのであれば、そのようなことは今日からやめることをお勧めします。日本の高齢者の食生活を見ていると、自ら進んで「しょぼくれた老人」になろうとしているように、私には思えてしまいます。

 80歳のときに3度目のエベレスト登頂に成功したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんは、80歳を過ぎても、500グラムのステーキを平らげているそうです。特殊な例ではありますが、高齢になっても、アスリートとしての能力を維持できている理由のひとつに、肉を食べる習慣があるのだと私は思います。

ちょっとしたことにイライラしてしまうのは疲れのサイン? ストレスがたまったときの対処法

心身に余裕がないと、ちょっとしたことでイライラしてしまいがち。そんなときは、どうしたらいいのでしょうか。イライラしてしまう気持ちとの向き合い方やストレス解消法のヒントについて紹介します。

イライラしながら仕事をしない!

イライラしているのに、「でも、これはやっておかなくては!」と仕事(家事)をしてしまう人がいます。そんなときは、まずイライラを解消しましょう。なぜなら、イライラしながら何かをやっても、良い結果になりにくいからです。

抱いている思いによって、言葉や行動が変わります。つまり、イライラしながら、人に優しい言葉をかけたり、幸せになれるような行動をとったりすることはできないのです。気分を落ちつけてから仕事をしたほうが、効率も良くなります。

では、ストレス解消するには、どうしたらいいのでしょうか?

イライラした気持ちを吐き出す

ストレスがたまったときは、まず「イライラしている気持ち」を吐き出してしまったほうがいいです。よく、ストレスが溜まっていても、それを「ない」ものとしてごまかしてしまう人がいますが、あるものをないものにして、我慢し続けてしまうと、心が病んでしまう場合があるので気を付けなくてはいけません。

もし、親身になって相談に乗ってくれるような人がそばにいる場合は、そういう相手に話すと、気持ちは随分スッキリします。ただ、毎回愚痴を聞いてもらっていては、相手を疲れさせてしまうので、自分1人でも解消できる方法を持っておくことが大切です。

イライラした気持ちを吐き出したいときは、誰にも見せないようなノートに思いを書きつづるといいでしょう。書くことで、自分の本心に気づけたり、頭の中が整理できたりするものです。

自分を喜ばせるようなことをする

イライラしているときは、自分を喜ばせるようなことをして、気を紛らわせることも大切です。

例えば、

・おいしいものを食べる

・気分が上がる音楽を聴く

・好きな映画を観る

・リラックスできる場所でお散歩する

・趣味を堪能する

・好きな人やペット、推しの芸能人の写真を眺める

・好きな人に電話やLINEをする

といった方法もいいでしょう。

オフィスで仕事をしている時にイライラしてしまった場合は、お気に入りのコーヒーショップで、いつもよりもちょっと奮発したメニューをテイクアウトして、自分の機嫌をとるのもいいでしょう。コーヒーの香りは、ストレス解消に役立つこともあるので、一石二鳥です。

疲れをとることが大切

疲れているとイライラしやすいので、疲労がたまっているときは、ゆっくりお風呂に浸ったり、早めに寝たり、優先的に疲れをとることが大切です。特に、日頃から睡眠不足の人は、極力、寝る時間を作るようにしましょう。寝ることで、心と体を休め、リセットできるからです。

忙しすぎて体を壊しそうなときは、仮病を使ってでも会社を休んだほうがいい場合もあります。無理して仕事をするよりも、きちんと休んで、心と体を充電させた上で働いたほうがうまくいくことは多いでしょう。

私たちは幸せになるために生きているので、目先のことばかりに振り回されず、「長い目で見て幸せになれる行動」を選択する必要があります。それを理解していたら、体を壊してまでするべき仕事などないことも分かるでしょう。

根本的な原因を解消する

イライラしていることの根本的な原因を解消しないと、何度も同じところでストレスをためてしまいます。まずは心と体を休め、健全な思考を持てるようになりましょう。その上で、「どうしたら問題を解決できるのか」を冷静に考えるのです。

ただし、そこにある原因は「自分自身の在り方」である場合も。例えば「こうでなくてはならない」と固定概念を抱いていたり、理想が高すぎたりすると、その通りにならなかったときにイライラしてしまいます。

そんなときは、「柔軟性を持つこと」「寛容になること」はもちろんのこと、うまくいかなかったことに執着するとイライラし続けてしまうので、「手放せるようになること」が大切です。

また、うまくいかなかったことでも、そこから学べることがあったり、何かしら自分にとってプラスになったりすることが必ずあります。だから、「物事の良い部分に目を向けられる癖」をつけるといいでしょう。

イライラしていると損するのは、自分自身です。だから、自分の機嫌をとれるようになって、いつでもニュートラルな状態でいられるよう心掛けましょうね。

乳がん手術後の生活の質を上げる「乳房再建術」 2つの主な方法とその費用

厚生労働省の「がん罹患数予測(2021年)」によれば、女性の9人に1人が乳がんになると予測されている。治療は手術が中心となるので、全摘術で乳房を失い、喪失感に襲われる人や、乳房部分切除術(温存術)を受けた後の陥没やゆがみに悩む女性は多い。乳房は女性にとって特別なものだけに、失うことで心のバランスを崩すケースも少なくないという。

【図解】乳房再建の主な方法

 そうした悩みを軽減するものの1つに「乳房再建術」がある。がん自体の治療ではないが、心身のケアや治療後の生活の質を上げるために効果的で、乳がん手術をした患者の約4割が行っているというデータもある【*】。

【*東京・がん研有明病院の2015年時のデータより(乳がん手術数962、再建術数358)。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2017」より】

再生医療なら片方で70万円以上

 手術には自家組織によるものとインプラントによるものがあり(下記詳述)、全摘術を受けた場合や、遺伝性乳がん卵巣がん症候群患者が乳房切除術を受けた場合は、いずれも保険適用となり、高額療養費制度も活用できるため、費用は8万~10万円ほどに抑えられる。

 とはいえ、保険適用内の治療法の場合、インプラントなら10年をめどに、中身を入れ替える手術が必要だったり、自家組織なら、大きな傷痕が残るなどのデメリットもある。

 入れ替えの必要もなく、傷痕も少なく、かつ自然な形の乳房を希望する場合は、腹部や太ももなどから吸引して培養した脂肪幹細胞を乳房に注入する乳房再建術もある。この方法は体から脂肪を抜く場合も、それを乳房へ移す際も切開手術を行わないので、体への負担は少なくて済むうえ、乳房部分切除術を受けた後の陥没やゆがみも、解消されるという。

 しかし、こうした再生医療を行える医療機関は限られており、保険適用外なので、治療費は全額自己負担となり、片方で70万円以上となる。NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長・看護師の賢見卓也さんが言う。

「どの治療法にしても、大切なのは乳房再建術を希望することを、治療前に主治医に伝えておくこと。それによって切除の仕方が変わったりするからです」

乳房再建の主な方法

●自分の体の一部を使う方法

【1】は背中の皮膚、脂肪、広背筋を血管がつながったままの状態で胸部に移動して再建する方法。背中は脂肪が少ないので、比較的小さい乳房の人に向く。

【2】は腹部の皮膚や脂肪を血管付きで採取し、胸部の血管と皮弁(移植する組織や臓器)の血管をつなぐ再建術。腹部は比較的脂肪が豊富なので、乳房の大きな人向き。

●シリコンインプラントを使う方法

【1】乳がん切除後、1回目の手術でティッシュエキスパンダー(組織拡張器)を入れて皮膚を伸展させる。

【2】3~6か月後、2回目の手術で、ティッシュエキスパンダーを取り出して、その空間にシリコンインプラントを入れる。この際に生じたくぼみに、患者の腹部あるいは太ももより吸引した脂肪を注入することもある。

取材・文/上村久留美 イラスト/成瀬瞳

※女性セブン2022年3月31日号

「父の他界後、母が認知症のため遺産分割できない」ケースが増加 事前の対策が肝に

親が高齢になると、急な入院や施設への入所時など、親に代わって手続きをすることが増えるが、親名義の銀行口座からお金を引き出すのは意外とハードルが高い。


窓口で身分証明書を提示させられるだけでなく、「本当に預金を下ろすのを子どもに頼んだのか」と、親本人に電話で確認を取られるなど、煩雑な手続きが必要になるのだ。なかには、結局、子どもが一時的に費用を立て替えざるをえなくなる、というケースもあるという。

「親御さんが認知症になったら、もっと大変になります。『預貯金を引き出せない』といったトラブルのほかにも、『親名義の自宅や株式を売れない』という事態が起こる恐れもあります。『うちの親は元気だからまだ大丈夫』と先延ばしにしないで、元気なうちから対策をしておくことが大切。認知症対策は『財産凍結』の対策でもあるのです」

こう語るのは、『親の財産を“凍結”から守る認知症対策ガイドブック』(日本法令)の著者で、司法書士法人ミラシア、行政書士法人ミラシア代表社員の元木翼さん。

2025年には高齢者の「5人に1人」がなるといわれている認知症。それにともなう「財産凍結」について元木さんが解説する。

「高齢者が保有している財産が、本人の判断能力の低下によって使えなくなる、動かせなくなることを、財産の『凍結』といいます。具体的には、預貯金の引き出しができなくなるほか、定期預金の解約、株式や投資信託などの売却も難しくなります。不動産の売却やリフォームも同様です。こうした凍結は認知症に限らず、脳梗塞や事故の後遺症などによって判断能力を失ってしまったケースでも起こりえます」

■認知症の母親は遺産を相続できるのか?

「父が亡くなり相続手続きを進めようとしたら、母が認知症のため遺産分割協議ができず、相続手続きが止まってしまったーー」

こんな財産凍結のトラブルも最近増えているという。

「相続の手続きは、原則として相続人全員で行わなければなりません。たとえば、両親と長男、次男の4人家族で、父が遺言書や家族信託の準備をしないで他界したとします。そのときに相続人の1人である母が認知症で判断能力がない場合、遺産分割協議ができなくなってしまいます。そうしたケースでは、成年後見制度の『法定後見』を利用し、認知症の母に代わる『後見人』を、家庭裁判所に選んでもらう必要があります。そして、その後見人が代理人として参加することで、ようやく遺産分割協議ができるようになります」

そう話すのは司法書士法人ミラシアの司法書士、永井悠一朗さん。

ただし、法定後見を利用すると、親族ではなく専門家が後見人に選ばれる可能性がある。

後見人はあくまで母の財産を守ることが役割なので、母の法定相続分(2分の1)を確保しようとするのが原則。もし、「子どもが法定相続分よりも多く財産を相続し、そのお金で母の面倒を見る」といったプランを考えていたとしても、そのとおりにいくとは限らないので注意が必要だ。

「父が認知症の母の面倒を見ているような老々介護のご家族も多いと思います。こうしたご家庭では、父が先立つケースを想定して、遺言書や家族信託で備えておきましょう。ご家族によって抱えている事情は千差万別です。法定相続分どおりに相続を進めることが家族にとって必ずしも正解とは限りませんから」(永井さん)

日本人の平均寿命は女性のほうが長い。父が亡くなった後、残された母が認知症になっても生活できるよう、対策を講じておこう。

【PROFILE】

元木翼

司法書士、行政書士。司法書士法人ミラシア、行政書士法人ミラシア代表社員。相談業務や講演活動のほかメディアにも多数出演。近著に『親の財産を“凍結”から守る認知症対策ガイドブック』(日本法令)がある

永井悠一朗

司法書士。専門は相続、遺言、後見、家族信託。これまで100件以上の家族信託の組成に携わる

【頭の体操】ヒゲを剃るタイミング

夏休みのある日、マエヤマさんが再就職の面接のために鼻の下にたくわえた自慢のヒゲを剃っている。 面接の日はまだ1週間も先なのだが、「いやぁ、明日、子供たちと海水浴に出かけるものですから、いま剃っておかないと、しばらく剃れなくなりますからね」と言っている。いったいどういうことなのだろう。

↓(答えは下にあります)

<解答>

日焼けしたあとで剃ると、ヒゲを剃ったあとが白く残ってしまうから。

推理には、原因から結果を考える前向きな推理と、その逆の後ろ向きの推理があり、当然前者のほうが馴染みやすい。しかし、この問題の場合、それでは解答にたどり着けないであろう。

■「頭の体操」BEST (全2巻)

1966年の発売以来、シリーズ累計1200万部のベストセラーとなった『頭の体操』。その全23集、総数約2000問の中から、究極の100問をセレクト。さまざまなタイプの問題を解くたびに、思考力がつき、創造性が生まれる。日本人の脳を刺激し続けてきた名著が、2分冊になって登場!

職場やママ友…「過干渉な人」に多いタイプは?疲れない人間関係のコツ【精神科医に聞く】

必要以上に関わってくる過干渉な人たち。職場やママ友との人間関係で、やることなすこと口を出されたり、管理されたり…と困っていませんか?


相手に悪気がない場合でも、受け手側からすれば精神的に疲れてしまうことも…。対処法について、産業医・精神科医として活躍する井上智介先生に聞きました。

過干渉な人の心理とは?

そもそも、人を管理したり、指示をしたりするタイプは、心配性な人が多いですが、職場やママ友などの関係性によって、これらの性質は少し異なってきます。

 

たとえば職場においては、相手が自分の指示通りに動くか、失敗しないかどうかが気になり、確認ばかりしてしまうからこそ、過干渉になりがち。

 

上司や先輩など自分より上の立場にいる人に多く、心配性に加えて、相手のことを信頼できないという心理も大きく影響しています。

 

一方、子育てに関して過干渉な人は、自分の子育てに自信がないタイプが多い傾向があります。

 

親しいママ友をはじめ、周囲に対して干渉することで、自分の子育ての不安を解消したり、承認欲求を満たしたりしているケースは少なくありません。

 

子育てには正解がない。だからこそ、自分のやり方が間違っていないか確認したい、ひいては自分が誰かの役に立っていることを実感したいという心理が働きやすいのです。

「心配性タイプ」には「信頼関係」を築いてかわす

職場でよくいる過干渉な人は、仕事を確実に進められるという点では良い側面もあります。

 

一方で、度重なる確認に巻き込まれて精神的に疲弊してしまうと、元も子もありません。

細かな相談と報告が安心につながる

そもそも相手は、任せた仕事に対し、心配な気持ちで過干渉な行動をしています。対処法としては、細かく言わなくても大丈夫、と安心してもらえるような行動がポイントになります。

 

過干渉な人に信頼してもらうためには、「普段から早いタイミングで相談や報告をする」ことが欠かせません。

「東大医学部に入るのは超高血圧になるのと同じで、褒められることではない」養老孟司

解剖学者の養老孟司さんが『子どもが心配 人として大事な三つの力』(PHP新書)という本を出した。養老さんは「『バカの壁』で訴えた都市化の問題が行き着くところまできて、子どもが次々と死ぬ社会になってしまった。この社会のおかしさを、一度立ち止まって考えてほしい」と語る。前後編の特別インタビューをお届けする――。(前編/全2回)(構成=ノンフィクション作家・山田清機)

日本は「児童虐待社会」

たまに東京にいくと、夜の9時ごろ、地下鉄で子どもが走り回っているのです。こっちは爺さんですから叱ろうかと思ったんですが、思い直した。

おそらくこの子たちは、学校が終わった後に塾か習い事に行っていたのではないか。夕飯を食べたのかどうかはわからないけれど、こんな時間になってやっと解放されて、だからこうして地下鉄で走り回っているのではないかと。

こうした場面に遭遇すると、つくづく日本社会は「児童虐待社会」だと思います。

実際、日本は子どもの自殺が大変に多い国です。令和3年版の自殺対策白書(厚労省)によれば、わが国の10~39歳の死因の第1位は自殺です。G7の中でも15~34歳の死因の第1位が自殺である国は日本だけ。つまり、国際的に見ても際立って異常な状態にあるのです。

僕が子どもの頃は、もちろん病気や事故で亡くなる子どもはいましたけれど、学齢期の子どもが自殺するなんていうことはまずなかった。そんなことがあれば「異常な事件」として扱われたと思いますが、いまや、子どもの自殺は普通の出来事になってしまった感があります。

かつて日本は子どもの天国だった

昔は、いまに比べれば生活がはるかに不便で、その分人手がたくさん必要でした。だから僕だけでなく、子どもたちはみな家事を手伝わされたものだけれど、その代わり、塾もなければ、習い事もなかった。家の手伝い以外に子どもがやらなくてはいけないことなんて、何もなかったんです。何もやることはなかったけれど、子どもたちはみんな生き生きとしていました。

僕の子ども時代よりもさらに昔、明治維新の前に日本にやってきた欧米人が書き残した記録を読むと、「日本の子どもは勝手気ままで幸せそうだ。そして、大人も子どもも笑っている」なんてことが書いてある。

欧米人は大人と子どもの世界をはっきりと区別しますから、大人と子どもが一緒になって笑っている日本の社会が、いかにも不思議なものとして映ったのでしょう。いずれにせよ、かつての日本では、大人と子どもが屈託なく笑い合って暮らしていたわけです。

でも、いまはあまり笑っていないんじゃないですかね。

果たしていまの日本に、学校が終わった後、友だちと一緒に野山を駆けずり回ったり、何も考えずに、ただぼんやりと風景を眺めて過ごしている子どもがどれほどいるでしょうか。地方に行ったからといって、そういう子どもに出会えるわけではないのです。

こうした状況は、いまに始まったことではありません。すでに昭和30年代の終わりごろから、都市化が進み、子どもの遊び場も、遊ぶ時間も一貫して少なくなっている。その結果として、生き生きとした子どもの日常が日本社会から失われてしまったのです。

子どもの自殺について、明らかに社会に問題がある。僕は、そう考えています。

東大理三に入る人は明らかに異常

いかに日本社会が異常な状況にあるかは、大学入学共通テストの当日、東大の前で刺傷事件を起こした高校生のことを考えればよくわかります。

彼は東大の理科三類(医学部進学コース)に入らないと生きる意味がないと考えていたわけですが、これを血圧検査に当てはめて考えてみましょう。

現代の血圧検査では、まずはたくさんの人の血圧を測定して統計を取り、正常値と異常値(高血圧、低血圧)の範囲を決めて、被検者の血圧が正常の範囲にあるのか異常の範囲にあるのかを判定します。

統計に使う測定データの人数が十分に多ければ、血圧の分布はベルカーブ(正規分布)を描きます。ちょうど、教会の鐘(ベル)のような形になるわけです。

そして、このベルカーブのうち、最も人数の多い中央値(ベルの中心)から左右両方にそれていって、95%までに入る範囲を「正常値」とし、そこから先の2.5%+2.5%=5%を「異常値」としています。

血圧の測定では最高血圧と最低血圧の両方を測りますが、最高血圧で言えば、高いほうの異常値は140以上、低いほうの異常値は100以下。つまり140を超えれば高血圧、100を下回れば低血圧と判定されるのです。いずれも、「全体の中では大きく外れていますよ、だから異常ですよ」ということを意味しています。

では、東大理三はどうなのかといったら、偏差値は80を超えており、合格者数は100人ぐらいしかいない。つまり、ベルカーブでいえば最も右の端に位置しているわけで、血圧測定に倣っていえば、完全なる異常値です。

日本にはびこるおかしなダブルスタンダード

ところがどういうわけでしょうか、頭の評価に関しては「全体の人数の中で大きく外れている方がよい」ということになっている。体の評価では異常とされることが、頭の評価だと正常どころか、むしろよいことだとされているのです。

僕の常識に照らしたら、人間そんなもんじゃないだろうと。頭の評価と体の評価が異なるなんていうことは、普通に考えればまったくおかしなことです。頭に関してだって、ベルカーブの右端は、当然、異常なはずです。異常で病気だから、東大理三(医学部)に入るんでしょうと。

だけど、現代の日本では体よりも頭のほうが偏重されているから、東大理三は素晴らしいということになってしまう。日本社会にはこうした、おかしなダブルスタンダードがいくつも存在しています。おそらく刺傷事件を起こした高校生は、このダブルスタンダードの存在によって精神が混乱してしまったのではないでしょうか。

「いい人生ってどういう人生ですか?」

少し前のことになりますが、子どもの質問に大人が真面目に答えるというテレビ番組に出演する機会がありました。すると、ある子どもからこんな質問がきたのです。

「いい人生ってどういう人生ですか?」

僕はびっくりしてしまった。

長ければ100年にもおよぶ人生には、当然、紆余(うよ)曲折があり、いい時もあれば悪い時もある。とてもひと言で説明できるものではありません。昔だったら、こんな事を大人に質問しようものなら、「生意気なことを言うもんじゃない」と一喝されたでしょう。

しかしこの子は、いい人生とは何かを言葉で聞きたかったわけです。言葉で聞くことによって疑問を解決したかった。別のときに高校生から「なぜ、死んではいけないのですか?」と聞かれたこともありました。

この子たちの頭の中に、世の中には言葉では説明できないことがあるということが入っていないのです。言葉ですべて説明できると思っているのが「情報化」で、頭の世界が大きくなり過ぎている結果だと思います。

言葉で説明できないことがある

僕は大学で解剖を教えていました。

授業はほとんど実習です。講義なんて、年に一度しかなかった。人の体や生死のことは、口でしゃべって教えられることじゃないからです。

仏教でいうところの「四苦」。つまり、「生老病死」、生きて、老いて、病気を得て、死ぬということは、自然なことで、誰も予定してやっているわけではありません。だけど、親たちは子どもの進路についてだけは予定を決めて、あっちにいけ、こっちにいけとやっている。

そこで育った子どもたちは、子ども時代に味わう喜びを先送りさせられています。

子どもを楽しませることなんて、本来はとても簡単なこと。しかし、多くの大人たちはその簡単なことすら、手を抜いてやろうとしない。だから、子どもたちは、これから先も人生は灰色で楽しいことなど何もないと思って、自殺してしまうのでしょう。

都心部では中学受験が過熱して、受験準備が低年齢化していると聞きます。こういうところに「児童虐待社会」の姿がくっきり浮かび上がっていると、僕は思うのです。(後編につづく)

---------- 養老 孟司(ようろう・たけし) 解剖学者、東京大学名誉教授 1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士。解剖学者。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。95年、東京大学医学部教授を退官後は、北里大学教授、大正大学客員教授を歴任。京都国際マンガミュージアム名誉館長。89年、『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞。著書に、毎日出版文化賞特別賞を受賞し、447万部のベストセラーとなった『バカの壁』(新潮新書)のほか、『唯脳論』(青土社・ちくま学芸文庫)、『超バカの壁』『「自分」の壁』『遺言。』(以上、新潮新書)、伊集院光との共著『世間とズレちゃうのはしょうがない』(PHP研究所)、『子どもが心配』(PHP研究所)など多数。

「免疫力」、あなたは高い? 低い? 自分の数値を測れるのか、医師に聞く


 新型コロナウイルスに感染しないためには、「3密を避ける」「ワクチン接種を受ける」「手洗いの励行」などの対応がありますが、同時に免疫力を高める必要があるとされています。「免疫力が高いと病気になりにくい」とはよく聞きますが、現在の自分の免疫力が高いのか低いのか理解している人は、ほとんどいないのではないでしょうか。自らの免疫力を何らかの数値などで知ることはできるのか、内科医の市原由美江さんに聞きました。


【画像】こんな食事が理想!とNG! バランスのよい食事と悪い食事の例

客観的な数値で表すことはできない

Q.そもそも「免疫力」とは何ですか。また「免疫力を高める」とは、どういうことでしょうか。

市原さん「免疫力とは、体内で発生したがん細胞や体の外から侵入してくる細菌、ウイルスなどの病原体を常に監視して攻撃する、健康を保つための自己防衛システムです。バランスのよい食事と規則正しい生活で免疫力が高まり、病原体などに対抗する防御力がパワーアップし、より病気にかかりにくくなります」

Q.新型コロナウイルスによる感染症を重症化させないためには、免疫力が大切だといわれますが、自らの免疫力がどれくらいなのか理解している人はほとんどいないと思います。免疫力を知ることは可能なのでしょうか。

市原さん「自分の免疫力を具体的に知ることは難しいと思います。例えば、自分が風邪にかかりやすい、あるいはかかりにくいと思っているとしても、それはあくまで自分の印象であって客観性がないからです。免疫力の指標となり得るものがないため、客観性がなく、評価は難しいでしょう」

Q.免疫力を何らかの数値で知ることはできない、ということでしょうか。

市原さん「一部の医療機関で、免疫力を測る検査が自由診療(健康保険が適用されない診療)で行われています。しかし、それは一般的ではなく、あくまで参考程度と考えるべきでしょう。

ただ、客観的な数字で表すことはできないものの、あくまで『自分の印象』にはなりますが、過去の自分と比較することはできます。『前よりも風邪をひきやすくなった』『ひきにくくなった』などと、免疫力の変化を感じることはできると思います」

Q.「免疫力を高めるため」の方法や食べ物の情報が世の中にあふれていますが、情報が多いことで逆にどれを信じればよいのか、分からなくなっている人も多いと思います。

市原さん「不規則な生活や肉体的・精神的ストレスで自律神経が乱れることによって、免疫力は下がります。そのため、規則正しい生活をしてストレスをなるべく与えないようにすることで免疫力の低下を防げます。東洋医学では冷えが免疫力を下げると言われており、冷えにも注意が必要です。

また、体の中の免疫細胞の約60%が腸の中に存在するため、腸内環境を整えることで免疫力は上がります。そのためには、先述の規則正しい生活に加えて、乳酸菌やビフィズス菌と一緒に食物繊維をたくさん摂取することも大切です。

『免疫力を上げてウイルスなどの感染を予防できる』とうたうサプリメントや特定の食品、グッズなどが販売されているようですが、現在のところ、直接的な効果が実証されているものは存在しません。そのような情報に振り回されず、基本的なことを徹底するしかありません」

Q.結局、免疫力を高められる確実な方法は「バランスのよい食事と規則正しい生活」に尽きるということでしょうか。

市原さん「その通りです」

オトナンサー編集部

手を洗うとき、育ちがわかる!育ちがいい人は決してやらないこと

婚活成功者続出! 難関幼稚園、名門小学校合格率95%!「にじみでる育ちのよさ」と本物の品が身につくと話題のマナー講師、諏内えみさんの『「育ちがいい人」だけが知っていること』。内容は、マナー講師として活動される中で、「先生、これはマナーではないのですが……」と、質問を受けることが多かった、

明確なルールがないからこそ迷ってしまう、日常の何気ないシーンでの正しいふるまいを紹介したもの。マナー本や、通常のマナースクールでは、ルールではないからと省かれ、個人の常識に委ねられていますが、正解がわからないともやもやしますし、自信を持ってふるまえません。しかも、「育ちがでる」と言われてしまう部分ばかりですから、尚更気になりますよね! 今回はその中から、化粧室での育ちがいい人のふるまいについて紹介していきます。

洗面台は、使ったら軽くふく

お化粧室や、洗面所、バスルームなど、とくに水回りといわれる場所を使ったときには、出るときに振り返って、元の状態に戻っているかをチェックしましょう。

洗面台に水滴や髪の毛が残っているだけで、清潔感が失われてしまいます。

使用後に、サッとひと拭きするだけで、次の方が気持ちよく利用できますね。

また、お化粧室では、次のことに注意しましょう。

ふたをしめるトイレットペーパーの切り口はきれいにトイレットペーパーを三角に折らない電気をつけっぱなしにしないスリッパはきちんとそろえて戻す最後に振り返り確認する 


このわずか数秒の心配りができるかどうか、水回りを美しく使えるか否かで、あなたの育ちや品が伝わります。

『「育ちがいい人」だけが知っていること』では、普段の生活の中で「育ち」が出てしまうポイントや、どうふるまうのが正解か? というリアルな例を250個も紹介しています。誰にも指摘されたことがないのに、実は「あの人は、育ちが……」なんて周囲の人から思われているとしたら、本当に恥ずかしいですよね! 今さら聞けないことばかりですから、ぜひ参考にしてみてくださいね!

【精神科医が教える】我慢して辛くなったあなたへ

感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

「いい我慢」「残念な我慢」

たった1つの違いとは?

きょうのひとことは、

「我慢するのは自分の意志があるときだけ」

いろいろと我慢することってありますよね?

自分のために、自分の意志で我慢する。あるいは、ここで我慢すれば、その先にある果実を得られるから、自分の意志をともなって我慢する。

たとえば、遊びたい気持ちを我慢して受験勉強をして、その先にある志望校合格を目指す。あるいは、アスリートがオリンピックのメダル獲得を目指して、厳しいトレーニングメニューをこなす。

こういう本人の意志がともなうのは、いい我慢です。

もちろん、自分の意志があろうがなかろうが、我慢しなくてはならないこともあります。それは、法律や規則です。

お金が欲しいから我慢せずに強盗するとか、違法薬物を我慢せずに乱用するなんてことは、当然、犯してはならないこと。そういうことを除外して、自分に意志のない我慢は、悪い我慢なのです。

仕事でもプライベートでも納得していないのに我慢することは、けっこうあると思いますが、その我慢は基本的には不毛なことです。

誤解を恐れずにいうと、「気が引けるから」とかいう理由で、他人に配慮して我慢する必要もありません。

なにをいいたいのかというと、自分の納得感をともなうときだけ我慢することを基本にすると、もっとラクに有意義に生きられるということなんです。

たとえば、相手が嫌なことをしてきたのだけれど、人間関係もあるから我慢する。あるいは、ちょっと我慢すれば、相手が察して嫌な行為をやめてくれるかもしれないから我慢する。

こういう我慢は、不毛だということです。

明らかに相手に問題があって我慢を強いられる状況なのであれば、遠慮なく相手に指摘したり、相手に直接いえないのであれば、しかるべき相談窓口に駆け込む。

嫌なことを我慢して、自分の行動を遮るようなことをしても、ものごとは改善しません。むしろ、悪い方向に向かってしまうことが多いでしょう。

少なくとも自分の納得感がともなっていればいいのですが、納得してないのになんとなく理不尽だと思っているけれど我慢するなんてことは、この際、キッパリやめることをおすすめします。

納得感がともなわない我慢でも、なにかにつながることがあるかというと、そういうケースは少ないでしょう。むしろ、本来やるべきことをやる自分の意欲が削ぎ落とされかねません。

不満が溜まっているけれど、我慢しよう。そんなふうに目に見えない「自分の殻」を自ら硬く強化してしまうようなところがあります。そうすると、生きづらさを感じるようになりかねません。

自分が叶えたい目標があるから、遊びたい気持ちを我慢して勉強する。いまの仕事で成果を出したいから、たいへんだけど目の前の仕事を頑張りたい。こういう自分の納得感がともなう我慢ならいいということです。

人生は限られていますから、時間はなにより大事です。だから、大切な時間は、より素敵なことに向けたほうがいいわけです。

そういう本質的な視点からしても、納得感をともなわない我慢に費やす時間というのは、とてももったいないことです。

納得感のともなわない我慢は一切しない。それくらい割り切ってもいいと思います。

きょうのひとことは、

「我慢するのは自分の意志があるときだけ」

でした。

参考になったかしら?

がん「自由診療」最新事情 免疫療法、点滴療法、温熱療法…その価格と治療内容

がんが見つかった場合、まずは公的医療保険適用の標準治療を受けるのが一般的だ。これらの治療は本来は高額だが、保険と高額療養費制度により患者の負担額は軽く済む。


【一覧】保険会社200人が明かす「入りたくない医療保険・がん保険」ランキング

 最初の治療法として選ぶべきは、エビデンスがある保険適用の標準治療だが、思うように効果が出なかったり、経過観察中、再発を恐れて“ほかに治療法はないか”と高額な自由診療を選択する人も少なくない。NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長・看護師の賢見卓也さんは、こう話す。

「自由診療の治療法だけに期待しすぎない、頼りすぎない、標準治療をしてくれている主治医とよく相談する──この3つのルールを守り、財力や体力、時間に余裕があれば、試す価値はあると思います。特に主治医との連携が大切。患者さんが勝手なことをすると、治療方針が揺らぐだけでなく、主治医との信頼関係も崩れてしまいます」

 そのうえで標準治療の効果をさらに高めるため、自由診療による治療法を試す人もいるだろう。では、どのような治療法があるのか。最新情報を紹介する。

がん免疫療法:免疫力を強化するものとがんの妨害を防ぐもの

 人の体内には、病原菌や異常な細胞を認識し、それらを攻撃することによって体を病気から守る免疫のシステムが備わっている。一方で、自分の細胞を攻撃したり、過剰な免疫が働いたりしないようブレーキの機能も持っている。

 がん免疫療法とは、この免疫システムに働きかける治療法で、2種類に大別される。

 1つは、がん細胞に対する免疫の攻撃力を強化する方法で、「樹状細胞ワクチン療法」「NK細胞療法」「6種複合免疫療法」などが挙げられる。

 もう1つは、がん細胞が免疫の働きにかけているブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにする方法。皮膚がんや肺がんに適用される「オプジーボ」に代表される「免疫チェックポイント阻害薬」がこれだ。

 2種類の治療法はいずれも高額だが、後者の「免疫チェックポイント阻害薬」は保険適用となり、また高額療養費制度も使えるので、金額面の負担は軽減される。

 前者の免疫の攻撃力を強化する方法は、患者自身の免疫細胞を培養、あるいは、がん細胞を特異的に認識して攻撃するよう強化する方法で、自身の細胞を用いた治療のため、副作用がほとんどないのがメリットの1つだ。がんの治療はもちろん、再発予防として選択する患者も多いという。

 とはいえ、ほとんどの治療法に保険が適用されないため、1クール(4~5か月)180万円以上かかる(医療機関によって異なる)。しかも1クールで終了するとは限らないことを覚えておきたい。

 実際にこうした治療法を取り入れている「三番町ごきげんクリニック」院長の澤登雅一さんはこう話す。

「私は長年、がんの標準治療を行ってきましたので、標準治療のよい部分は充分に理解しています。しかし、治療効果だけでなく、副作用や栄養管理など、不充分と感じる点もありました。そこで、標準治療と併用することで、より効果的に標準治療を受けられるようなサポートができればと考えるようになりました」(澤登さん・以下同)

 免疫を上げることでほかの治療との相乗効果が期待できる可能性が高いため、標準治療と自由診療の併用が基本だと考えた方がいいという。

「がんと診断されたら、標準治療を受けることが大前提です。クリニックには、標準治療を受けたくないという理由で受診される人もいらっしゃいますが、効果を期待できる治療を受けられる患者さんには、標準治療を受けるよう交通整理をすることも私たちの仕事です。その上で、主治医の了解のもと、副作用対策や相乗効果を期待して、標準治療以外の治療を併用することをおすすめしています」

 主治医の承諾を受けて、連絡を取りながら治療を進められるのがベストというわけだ。とはいえ、高額を支払ってがん免疫療法を行っても、効果の出方は患者によって違うという。

「私たち医師は、治療効果を出すべく最善を尽くしていますが、それでも効果が見込めないケースはあります。その場合、治療を行わない、あるいは、よいタイミングでほかの治療を選択することも必要です」

 治療を変更する可能性も考え、1クール分の治療費をまとめて請求する病院ではなく、受けた治療に対してその都度、費用を支払うシステムの病院を選ぶのも、自由診療を行う病院選びの基準になる。

●ガンマ・デルタT細胞:抗がん剤との併用で効果に期待

 ガンマ・デルタT細胞とは、がん細胞を直接攻撃する免疫細胞の1つで、患者から採取した血液中のガンマ・デルタT細胞を体外で増殖させてから、再び点滴注射で患者の体内に戻す治療法だ。

「ガンマ・デルタT細胞は、多彩な受容体(刺激を受け取り、それを情報として利用できる構造)を持っていて、がん細胞の表面に発現するさまざまな分子をいち早く認識して、樹状細胞などの指令なしにがん細胞を攻撃できるメリットがあります。しかも近年、その殺傷力が非常に強いこともわかってきています」

 抗がん剤治療などと組み合わせて行うことで、がん細胞への殺傷力をより高められると期待されているという。

 ただし、このガンマ・デルタT細胞はT細胞の中の数%でしかなく、培養が難しいというデメリットも。

●アルファ・ベータT細胞療法:体力を失っていても免疫細胞を増やせる

 免疫細胞には、直接がんを攻撃するタイプとがん細胞を発見して攻撃するように指令を出すタイプがあり、前者がNK(ナチュラルキラー)細胞とT細胞だ。

 このT細胞の一種がアルファ・ベータT細胞で、この細胞を増やすことで免疫力を強化するのが、「アルファ・ベータT細胞療法」だ。

 治療は患者から血液を採取し、2~3週間かけて血液中のアルファ・ベータT細胞を培養して増やす。その後、数百倍から数千倍に増えたアルファ・ベータT細胞を生理食塩水とともに点滴で患者に戻す方法がとられるという。

「がんを発症している人の多くは、健康な人と比べて免疫細胞の数が減少傾向にあります。しかし、アルファ・ベータT細胞は、免疫細胞の中でも比較的増殖しやすいので、免疫機能が低下して、血液中のT細胞が少ない患者さんでも受けられる、というメリットがあります」

 また、免疫力を総合的に高めるので、抗がん剤治療の副作用の軽減にもなるという。

●NK細胞療法:免疫のパトロールと攻撃力を強化する

 血液中に10%ほどあるNK細胞は、強い殺傷力を持つ免疫細胞の1つ。NK細胞は常に体内をパトロールしていて、がん細胞やウイルスに感染した細胞など、異常な細胞を発見すると攻撃する。

「NK細胞療法」とは、患者の血液からNK細胞を採取し、増殖、強化した細胞を点滴注射で戻すというもの。

「がん細胞には、がんだけが出している目印(がん抗原)があり、がんを死滅させる力の強いキラーT細胞は、その目印を認識して攻撃を仕掛けるのですが、なかにはその目印を隠しているがん細胞もあります。そうすることでキラーT細胞の攻撃を逃れようとするわけです。

 そこで、これをサポートするのがNK細胞です。NK細胞は、目印を隠したがん細胞も、速やかに認識して攻撃します。

 キラーT細胞の司令塔として働く樹状細胞を増殖させる『樹状細胞ワクチン療法』(以下で詳述)と併用すると、より高い効果が期待できます」

●樹状細胞ワクチン療法:殺傷力の強いキラーT細胞を操る

 樹状細胞にはがん細胞を殺す能力はないが、殺傷力の強いキラーT細胞にがんの目印(抗原)を伝えて、攻撃の指示を与える役割を担っている。

 治療の流れは、患者の血液から樹状細胞のもととなる「単球」を取り出してがんの抗原を教え、どの抗原を攻撃すべきかを指示できる樹状細胞に育ててから患者の体に戻す。

「樹状細胞にがんの抗原を教えるには、手術で切除した患者さんのがん細胞のほか、人工抗原を用いる方法があります」

 この「樹状細胞ワクチン療法」は近年進化しており、現在では、「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」の研究が進められているという。

「これまでの人工抗原は、がん細胞に多く発現しているものの、正常細胞にも発現するものだったため、正常細胞にもダメージを与えるデメリットがありました。しかし、ネオアンチゲンは、がん細胞にしか発現しない抗原なので、正常細胞が攻撃されないで済みます」

●6種複合免疫療法(BASIC):6種の免疫細胞を一斉に強化する

「免疫細胞は互いに連携しながら働いているので、患者さんの免疫力を高めるには、キラーT細胞、NK細胞、ガンマ・デルタT細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞(免疫を活性化させる)、NKT細胞(免疫の活性化や調整を担う)の、6種の免疫細胞の働きを一斉に高める必要があります」

 そこで開発されたのが、6種の免疫細胞を同時に培養、活性化させるこの療法だ。

「私たちの体は、もともと備わっている自然免疫と、病原体や毒素などの異物と接触することで後天的に獲得した獲得免疫に守られています。この免疫療法は、前者の自然免疫を強化します。

 手術などでがん細胞を除去しても、小さながん細胞が残っている場合も。それが血液やリンパの流れにのって転移することもあるので、その予防に検討していただきたい治療法です」

 がん細胞の増殖や薬の副作用で弱った免疫力の回復を目的としているため、標準治療を終えた後の選択肢となるだろう。

●6種複合免疫療法(CSC):がん細胞の親玉・がん幹細胞も攻撃

「6種複合免疫療法(BASIC)」に「樹状細胞ワクチン療法」を付加したのが、6種複合免疫療法(CSC)だ。

「これは自然免疫と獲得免疫の両方を強化します。『樹状細胞ワクチン療法』に使う人工のがん抗原は、WT1ペプチドといい、これはすべてのがん細胞に発現するがん抗原の1つなので、さまざまな種類のがん治療に使えます。WT1ペプチドは、正常細胞にはほとんど発現しないので、正常細胞へのダメージも最小限に食い止められます」

 しかも6種複合免疫療法(CSC)では、がん細胞だけでなく、がん幹細胞まで攻撃できるという。

「がん幹細胞とは、高い増殖力を持つがん細胞の親玉のようなもので、この幹細胞が死滅しない限り、がんは完治しません」

 そのため、この療法はがん治療を受けている人にすすめたいという。こちらも標準治療との併用が基本。医師と相談しつつ進めよう。

【※「三番町ごきげんクリニック」では、上記すべての治療法を行っているわけではなく、同仁がん免疫研究所と共同で「6種複合免疫療法(BASIC)」と「6種複合免疫療法(CSC)」を行っている】

高濃度ビタミンC点滴療法:抗酸化作用でがん細胞を封じ込める

 ここまでは免疫療法を中心に紹介してきたが、その他の治療法も紹介しよう。

「がんに対するビタミンCの研究は、1970年代から行われていましたが、実際に『高濃度ビタミンC点滴療法』が広く行われるようになったのはごく最近のこと。2005年に、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から、ビタミンCががん細胞に効くメカニズムを示す論文が発表されてからです。その後、海外を中心に多くの臨床試験が行われています」

 ビタミンCを大量に静脈内に投与すると、体内に過酸化水素が誘導され、強い酸化作用によってがん細胞が死滅する一方、過酸化水素を分解する酵素をもつ正常細胞はダメージを受けないことが示されたのだ。

「海外の臨床試験により、抗がん剤治療と併用すると副作用が軽減することも報告されていますし、放射線照射による皮膚の黒ずみも回復が早くなります」

 澤登さんは、自由診療は標準治療との併用が効果的とするが、この療法の場合、単独でがんに効く症例もある。

「たとえば、リンパ腫や白血病などの血液疾患、KRASとBRAFの遺伝子変異が認められる大腸がんには、高濃度ビタミンCの効果が期待できるという論文もあります。この遺伝子変異は、日本人の大腸がんの患者さんの3~4割に見られます。また、子宮頸がんの一歩手前の状態である細胞の異形成にも効果があるようです」

 高濃度ビタミンC投与により、がんの新生血管が減少し、増殖を抑制したという報告もある。

「がん組織には、新しい血管をどんどん作り、その血管からの栄養で増殖していく性質がありますが、私たちが行った研究では、ビタミンCにはこの血管新生を阻害する働きがあることがわかりました」

 1回の「高濃度ビタミンC点滴療法」にかかる時間は1~2時間で、費用は2万円~。病状にもよるが、週に2回から始めて、週に1回、2週間に1回というように回数を減らしつつ、1年以上通う人が多いという。

温熱療法:熱に弱いがん細胞の性質を利用した治療法

 がん細胞は、42.5℃以上で死滅するとされ、温熱療法は、その性質を利用している。東京ユニリバースクリニック院長の西田陽司さんが解説する。

「正常細胞に熱を加えると、周辺の血管が拡張することで血流量が増えて放熱するのですが、がん組織の血管はほとんど拡張できず、そのため熱を逃すこともできず死滅してしまうのです。さらに体を温めると免疫細胞も活性化するので、がん細胞にとって居心地の悪い環境となります」

 主な温熱療法には「ハイパーサーミア」があり、これは、手術や放射線療法などとの併用に有効性が実証され、1990年に電磁波による局所温熱療法として保険適用された。しかし、1時間も同じ姿勢を維持しなければならず、患者の身体的負担が大きいという。そこで以下の方法も紹介する。

●ラドン温熱療法:低線量の放射線による療法

「ラドン温熱療法」とは、低線量の放射線を体内に取り入れることで、さまざまな健康効果を引き出そうというもの。

「人工的な高線量の放射線は、体に悪く、逆にがんを引き起こしかねないともいわれていますが、自然の鉱石から発せられる低線量の放射線は、体にいいとされています」(西田さん・以下同)

 治療法としては、自然の鉱石から発せられるラドン(低線量の放射性気体)の蒸気を体内に取り入れるのだという。

「具体的には、カプセルの中でミストを浴びます。この方法はラドン温泉と同じ原理。秋田や鳥取、山梨などのラドン温泉地域の住民は、がんによる死亡率が低いというデータもあるんです」

 この療法には、鎮痛効果やデトックス効果もあるという。

「がん治療には体内にため込んだゴミを出すデトックスも必要。そのため私のクリニックでは、温熱療法と併せて、ケトン食(糖質制限食の一種)や解毒効果のある食材などを取り入れるための食事サポートも行っています」

●GKO温熱療法:特殊な周波数のマイクロ波を照射

「GKO温熱療法」は、上記「ラドン温熱療法」に、SHTと呼ばれる温熱機器を用いた療法を併せて行う。それぞれの治療時間は20分ほどだという。

「この療法には、がん抑制、免疫向上、鎮痛、デトックス、ホルモンバランスの調整などの効果が期待できます」

 SHTは、患部に直接、マイクロ波を当てる機械だ。

「特殊な周波数のマイクロ波を患部に照射することにより、体内にあるがん病巣の温度をわずか数秒で42~44℃にまで上げられます。ただ、すべてのがんに効くというわけではなく、熱の届きにくい子宮や卵巣、また、腹水がたまっている患者さんの場合は、治療が困難となります」

 1回の治療費は約1万~3万円。通常は1週間に2回ほどの治療から始め、病状によって少しずつ回数を減らしていくわけだが、開始から3~4か月後の確認が、効果を判断するひとつの目安になるという。

取材・文/上村久留美

※女性セブン2022年3月31日号

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