l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■日本の病院の実力・セカンドオピニオン


【日本の名医】てんかんを外科的な視点から検証したい 朝霞台中央総合病院 脳卒中・てんかんセンター長 久保田有一さん

忙しい毎日を送っていると、人間の感情の原点がどこにあるのか-に思いをはせる機会もなくなる。しかし、それを考え、追求し続ける医師がいる。

 朝霞台中央総合病院「脳卒中・てんかんセンター」のセンター長を務める久保田有一医師は、「幸せ」や「悲しみ」といった人間の持つ感情の発生の仕組みに強い興味を持ってこの道に進んだ脳神経外科医だ。中でも得意とするのが「てんかん」の診断と治療である。

 「てんかんは、人間がかかり得るあらゆる疾患の中でも、“不思議”が最も多い」と久保田医師が語るように、この病気には数多くの謎が残されている。それは病気のメカニズムというよりも、病気(発作)に伴って患者が体験する“現象”だ。

 「てんかん発作経験者のすべてではないのですが、発作の直前に特有の音、匂い、味を感じる人がいます。また、デジャブ(既視感)や幻想を見る人もいる。しかも、発作前に見る幻想は、凡人の発想を超越する芸術性を持っていることが多いのです。この不思議を追求したいと考えました」

 てんかんは多くの場合、精神科、神経内科などの内科系の診療科が担当するが、久保田医師は「あくまで外科的視点から検証したい」との姿勢を崩さない。

 もちろん、医学者としての興味だけでなく、臨床医として患者に寄り添う思いは人一倍強い。単に診療に取り組むだけでなく、患者の就職支援のような、社会生活のサポートにも力を入れるなど、一般的な脳神経外科医とは異なる立ち位置で、患者と病気を見つめる。

 「てんかん治療が目指すのは、発作を止めることではない。人間らしい生活を送ることがゴールなのです」

 患者との信頼関係を何より重視しつつ、「不思議の巣窟」に向けた久保田医師の探索は続いていく。 

 ■久保田有一(くぼた・ゆういち) 1973年、静岡市生まれ。98年、山形大学医学部卒業後、東京女子医科大医学部脳神経外科入局。国立精神神経センター、米・クリーブランドクリニック、仏・ティモン病院などに勤務の後、2012年から現職。木曜午後は東京女子医科大学病院で「てんかん外来」を担当。医学博士。趣味は登山とピアノ演奏。

【日本の病院の実力】筑波大附属病院けやき棟 最先端機器と設備を導入!地域の高度医療拠点

ここ数年、大学病院などでは新棟の建設が進み、完成した建物には最新鋭の設備が整い、患者がより快適に受診できるように工夫されている。

 単に新しい医療機器の導入やアメニティの充実だけでなく、地域の中核病院としての機能をより高めることに貢献。医療連携が従来以上にスムーズになり、高度医療を地域の誰もが受けられる。

 そんな最先端の高度医療と地域連携拠点として、現在注目を集めているのが、昨年12月にオープンした筑波大学附属病院けやき棟だ。地下1階・地上12階建てで、屋上には救急搬送用のヘリポートを完備。

遠方からの搬送もスムーズに行えるだけでなく、地上1階の救急部に隣接する駐車スペースには、救急車4台が止まることができる。

 搬送された重症の患者を診る2階の集中治療室フロアは、とにかく幅広く、最新の医療機器を配備。3階には手術室がズラリと並ぶ。

日本初の移動式のMRI装置を導入した「MRI手術室」をはじめ、手術用寝台で血管造影を行えるハイブリッド手術室など、高度な手術への対応力抜群の16室の手術室を設置した。

 また、放射線部にはМRI装置3台のほか、標準の64列をはるかに超える256列マルチスライスCTを導入された。

 「今年は筑波大学が開設されて40年、昨年病院が開院して35周年を迎えました。これまでも高度な医療を提供し、地域の医療機関に人材派遣するなど、連携を強化してきました。広域な高速ネットワークを充実させ、まんべんなく県内に高度な医療を広げる。

そのため、筑波大学附属病院がより設備を充実させ、最先端医療を常にご提供できる体制は不可欠。それが、けやき棟の完成で実現できると思います」と、五十嵐徹也病院長(65)。

 母子周産期から子ども、大人までの急性期の疾患を診断・治療する体制はけやき棟で整った。さらに、同病院では、陽子線治療やホウ素中性子捕捉療法といった新しい放射線治療法や、生活支援ロボットなど、国内でも珍しい未来型医療の研究開発も進めている。

 一般の人にも理解しやすいように、1階の「けやきプラザ」に展示も実施。このスペースは、地域のコミュニティースペースとしても活用されている。

加えて、大震災などの災害に強い免震構造、病院機能を3日間維持できる自家発電設備室を配置するなど、地域の災害にも適応できる機能を持っている。

 「高度な医療や快適なアメニティを持つことで、多くの方が集まる場となるでしょう。最先端の研究も行えば医療に関わる人々も集まり、ここで新たな医療も生まれる。相乗効果でアップする仕組みを作っているところです」(五十嵐氏)

 民間の力も活用しながら、次世代の地域医療を担うため、進化し続けている。
<データ>2011年病院実績

・外来患者数36万9905人・入院患者数25万2662人

・手術総数1万4303件・病院病床数800床(けやき棟611床)

〔住所〕〒305-8576 茨城県つくば市天久保2の1の1
 (電)029・853・3900

日本の病院の実力】筑波大附属病院 内分泌代謝・糖尿病内科 世界最先端の脂肪酸研究で生活習慣病に新アプローチ

一般的に太り過ぎはよくないと言われる。内臓脂肪と生活習慣病が伴えば、メタボリックシンドロームで心筋梗塞など動脈硬化のリスクが高まるのは周知のこと。一方、肥満でも、生活習慣病がなく健康な人もいる。

 それに関与している可能性があるのが「脂肪酸の質」。オーケストラにたとえれば、脂肪酸を作る遺伝子の指揮者として、脂肪の量を調節するのが転写因子SREBP-1。楽団のメンバーで、脂肪酸の質を左右するのが酵素Elov16。

 これらの研究で世界を牽引(けんいん)し、国内でも共同研究を含めた新たな成果を上げ続けているのが、筑波大学附属病院内分泌代謝・糖尿病内科。

最先端の研究に加え、臨床ではチーム医療を構築し、専門性の高い独自の医療を提供。毎年11月には、世界糖尿病デーイベントの開催で糖尿病予防を啓蒙(けいもう)するなど、地域医療にも貢献している。

 「肥満が関わる慢性の病気はたくさんあります。教育入院などでしっかり生活習慣を指導し、適切な薬物治療を施すと、多くの場合は血糖や血中脂質は改善します。が、退院後に患者さんご自身が、コントロールを持続するのは簡単ではありません。

脂肪酸の質の研究によって、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、脂肪肝炎など、生活習慣病全体の治療となる新しいアプローチの可能性がわかってきました。将来的には創薬や新たな食事療法の開発に生かせると思っています」

 こう話す同科の島野仁教授(53)は、脂肪酸研究の第一人者。米国留学中に、コレステロールの研究で1985年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した2人の博士の下で、脂質の転写因子の研究を進め、帰国後、

その1つのSREBP-1とさまざまな生活習慣病との関連を解明。さらに脂肪酸組成を管理するキイ分子Elov16を発見した。

 Elov16を欠損させたノックアウトマウスは、意外なことに、栄養過多で肥満になっても糖尿病や動脈硬化にならない。ただし、脳にも影響があり、行動や食物の好みに変化も見られるようだという。

 「SREBP-1にアプローチして身体の脂質を量的に管理し、Elov16を調節して脂質の質を善玉に変える新たな方法で、肥満の人を生活習慣病から守ることが可能になります。

ただし、言葉にするほど単純な仕組みではない。Elov16の欠損は、脳だけでなく別の臓器にも悪影響を与えることがあるからです」(島野教授)

 昨年10月公表の群馬大学との共同研究成果では、Elov16欠損のマウスが、肺の膨らみを維持させる脂質の異常により、肺線維症になりやすいことも突き止めた。脂肪酸の質に関するメカニズムは、さまざまな病気に関わるのだ。

 「現在も多くの研究を手掛けていますが、まだ解明すべきことは多い。世界で活躍しようという気概のある若い医師や研究者の育成にも力を入れています」と島野教授。

 世界最先端の研究で、医学の進歩を加速させるべく尽力中だ。 

 <データ>2012年実績
・新規外来患者数376人
・入院患者数359人
・糖尿病患者数2073人
・脂質異常症患者数430人
・高血圧患者数1465人
・病院病床数800床
〔住所〕〒305-8576 茨城県つくば市天久保2の1の1
 (電)029・853・3900

日本の病院の実力】肝がん 予後治療に尽力する世界のリーダー「日本赤十字社医療センター」

国内で年間3万3000人以上の命を奪っている肝がん。肝臓は消化管からの血液が流入している場所だけに、原発性の肝がんだけでなく、転移性肝がんも多い。

しかし、肝臓の手術は難しく治療によって予後が大きく左右される。その外科的治療で世界に名をはせているのが、日本赤十字社医療センターだ。

 「標準治療では適応できない難しい症例の患者さんが集まっています。そういう方の予後をいかに確保するか。365日24時間、そのことを考えています」

 こう話す幕内雅敏院長は、肝胆膵外科における世界のリーダー。80年代に手術中にエコーを用いた「幕内術式」を世界で初めて開発し、安全性の高い手術を実現している。

また、93年に世界初となる成人生体肝移植を手掛け、海外の科学雑誌で紹介された。それまで大人から大人への肝臓の部分移植は、ドナーの危険が高いといわれていたが、これを実現したことで、多くの人の命が救われるようになった。

 幕内院長が現在まで手掛けた成人生体肝移植は、500例以上。「手抜きはできない」という真摯な姿勢で、“365日24時間”ドクターであり続け、肝切除や生体肝移植など長時間に及ぶ手術を今も行っている。

 加えて、2007年に就任した病院長としての手腕も発揮。同センターは、地域がん診療連携拠点病院であるだけでなく、救命救急センター、総合周産期母子医療センターなど、さまざまな機能を持っている。来年1月4日からは、同施設内の新病院に移転し、さらなる医療の充実を目指す。

 「新病院は、患者さんにとってはより利用しやすくなるでしょう。しかし、医療というのは、設備ではなく人材が最も大切。肝臓の手術は難しいのですが、日本はもとより世界中から医師がここに勉強に来ています」

 こう話す幕内院長が憂えているのは、日本全体の医療における外科医不足。救急救命医、産婦人科のみならず、外科医も近い将来激減するといわれているのだ。幕内院長のもとには、若い外科医が集まっている。とはいえ、全体的な底上げがなされないと、将来外科手術に支障が出かねない。

 「20年前に比べて外科の専門医を希望する人は3分の1に減っています。使命感だけでは、ハードな仕事に若い人は就かないでしょう。医療システムを変える必要があると思っています」

 “患者のために”を考え続ける幕内院長の取り組みに、終わりはない。

<データ>2008年実績

★がん手術件数942件

★肝切除172例

★膵頭十二指腸切除(PD)19例

★分娩件数2516件

★取扱救急患者数2万6480人

★病床数708床(2010年1月からの数)

〔住所〕〒150-8935東京都渋谷区広尾4ノ1ノ22
(電)03・3400・1311

【日本の病院の実力】アレルギー&免疫疾患で最先端の研究!★千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科

人間にとって細菌などの外敵から身を守るために欠かせない免疫機能。本来の働きから逸脱すると、皮膚や粘膜などに激しい炎症を引き起こすだけでなく、臓器や組織を破壊して命に関わることもある。

 しかも、花粉やハウスダストなどの外因(抗原)によって症状が出る「アレルギー疾患」の種類は幅広く、膠原(こうげん)病に代表される自分の組織に免疫反応が起こる「自己免疫疾患」もさまざまだ。

 近年、吸入ステロイドという薬で気管支喘息(ぜんそく)はコントロールしやすくなり、関節リウマチでは炎症に関与する蛋白(たんぱく)を狙い撃ちにする生物学的製剤により、症状が軽減もしくは全く出ないという人もいる。

しかし、それは免疫機能に関わる疾患の全体から見ればごく一部であり、いずれも症状を抑える対処療法だけに、完治に至るケースはまだ少ない。

 そんなアレルギー疾患や自己免疫疾患に対して、最先端の研究を行っているのが千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科だ。2008年から「免疫システム統御治療学の国際教育研究拠点」というグローバルCOEプログラムも推進し、世界的な教育と研究の場にもなっている。

 「免疫機能に関わる多くの病気は、原因がまだわかっていません。その原因究明の研究を進めています。そして、新しい薬が登場する中、患者さんごとにいかに投与することで症状がコントロールできるのか、個別化医療を目指す研究にも力を入れています」

 こう話す同科の中島裕史教授(48)は、自身が小児喘息だった経験から、長年免疫疾患の研究を行っている。千葉大大学院の遺伝子制御学では、20人以上の専門の医師たちの研究をけん引し、原因究明と個別化医療への道を切り開く。

 「もともと『免疫の千葉大』と言われるほど、諸先輩方が免疫学に力を入れてきました。それは今でも受け継がれ、小児科や耳鼻咽喉科、皮膚科など、他科でも免疫疾患に力を入れています。

トータル的な診断と治療、そして基礎研究により、一人でも多くの人の命を救い、QOL(生活の質)の向上に役立ちたいと思っています」(中島教授)

 免疫系の疾患は複雑だ。一般的に知られる花粉症の抗ヒスタミン薬は、気管支喘息には役に立たない。

また、関節リウマチの生物学的製剤を他の自己免疫疾患へ応用する研究も進められているが、一部の関節リウマチ患者が劇的に症状が改善するのと比べて、まだ決定打とはいえない。暗中模索の状態だが、中島教授は決して諦めない。

 「免疫疾患の克服のためメンバー全員が一丸となって日々努力しています。10年後には、より良い医療が提供できるようになるでしょう」と中島教授。その夢へ向けて邁進(まいしん)中だ。

 <データ>2011年度実績
・年間延べ患者数約1万8000人
・年間入院患者数約180人
・気管支喘息患者数約200人
・膠原病患者数(関節リウマチを含む)約1700人
・病院病床数835床
〔住所〕〒260-8677 千葉県千葉市中央区亥鼻1の8の1 
(電)043・222・7171

【日本の病院の実力】がん研有明病院 泌尿器科 難治性高い泌尿器がん治療で世界トップクラスの生存率

泌尿器のがんは、前立腺がん、ぼうこうがん、腎がん、精巣がんなど種類が多い。

 臓器ごとに病態も異なり、進行しやすいものから、精巣がんのように全身転移でも治療が可能、あるいは、定期的な検査のみで経過を見る前立腺がんの進行の遅いものなど、さまざま。

治療法も、手術や放射線療法、化学療法、ホルモン療法といろいろあるだけでなく、手術や放射線療法についても、医療機器の進歩で道具も多岐に渡る。

 そんな泌尿器がんで、的確な診断と病態に合わせた適切な治療に取り組み、特に難治性の高いがんの予後改善に挑んでいるのが、がん研有明病院泌尿器科。

進行した膀胱がんに対しては、独自開発のゲムシタビン、エトポシド、シスプラチンの3剤併用療法(GEP療法)と手術を組み合わせた治療を2000年から実施。世界的にトップクラスの治療成績(生存率)を実現している。

 「早期の段階であれば、膀胱がんも比較的予後は良い。さらに、膀胱全摘だった病態も、今では手術に放射線療法や化学療法を組み合わせた膀胱温存術が可能な場合も出てきた。

しかし、進行したがんは再発率が高く予後も悪い。治療後の再発をいかに防止するか。そのためにGEP療法と、膀胱を広い範囲で摘出する手術を組み合わせ、積極的な治療に取り組んでいます」

 こう話す同科の米瀬淳二部長(52)は、泌尿器がん治療のエキスパート。内視鏡を用いた傷の小さい「ミニマム創内視鏡下手術」など低侵襲の治療も行う。

 泌尿器は性機能や排尿機能の神経に関わるだけに、機能温存にも尽力。ただし、難治性のがんに対しては生存率向上を念頭に、放射線療法、化学療法、手術を組みわせた集学的な治療を徹底して行っている。

 「内視鏡や放射線などのいわば道具は、たくさん開発されていますが、新しい方法を取り入れながらも、きちんと治すことが大切。ハイリスクな病態を見極め、そのがんをいかに封じ込めるか。その方法を常に考えています」(米瀬部長)

 前立腺がんは、進行が遅いものから早いものまである。前立腺がんの腫瘍マーカーPSAだけでは判別はできず、一般的に細胞の一部を採取する生検が実施される。

がん研有明病院では、多部位生検に加え、MRI所見を参考にした狙撃生検を追加することで精度の高い診断を行う。

 現在、世界的にも、前立腺がんに対する過剰な診断や治療を行わない流れになっているだけに、的確な診断方法の構築は功を奏す。

 「ローリスクの前立腺がんなら、治療を行わない『PSA監視療法』も適用になります。的確な診断ができれば治療の選択肢は広がる。泌尿器がん全般に言えます。

患者さんには早期受診で早期発見・早期治療を心掛けていただきたいが、難治性がんには、まだまだ取り組むべきことは多い。より効果的な治療法を行いたい」と米瀬部長。

 その取り組みは終わりなき道だ。 

<データ>2012年実績(新患数)
・前立腺がん335人
・ぼうこうがん180人
・腎がん76人
・腎盂尿管がん63人
・精巣がん32人
・病院病床数700床
〔住所〕〒135-8550 東京都江東区有明3の8の31 
(電)03・3520・0111

【日本の病院の実力】理想チーム医療実現「脳卒中」 荏原病院・総合脳卒中センター  

最近の脳卒中の急性期治療では、診断・治療だけでなく、早期のリハビリも不可欠である。そのため、脳外科やリハビリ科など、他科との連携によるチーム医療も広まりつつある。

しかし、ひとつの科が突出しているケースもあり、チーム医療の実践は容易ではない。このような状況で、理想的なチーム医療を実現しているのが、東京都保健医療公社荏原病院の総合脳卒中センターだ。

 神経内科の田久保秀樹部長、長尾毅彦医長、脳神経外科の土居浩部長、放射線科の井田正博部長、リハビリテーション科の尾花正義医長が中心になり、診療科の垣根を取り払い、脳卒中の急性期医療に取り組んでいる。

 「もともと私たちは、1994年に病院が改築したときから、脳卒中の急性期治療に取り組むことを目的として、チーム医療を行ってきました。医局も他科の医師と共通で、それぞれの専門医がタッグを組みやすい体制なのです」と長尾医長。

 荏原病院は都立病院として120余年の歴史を誇るが、都内の脳卒中急性期医療の中核を担う病院として94年に新スタートを切った。関東以北では、脳卒中の治療で、脳神経外科が中心になっている医療機関が多いが、荏原病院は神経内科が中心的役割を担う。

 「内科と外科でひとつの病気を診るのは当たり前です。脳卒中に対する内科は、神経内科。海外でも一般的なことですが、日本ではまだ神経内科に対する認識が低いのが残念です」(長尾医長)

理想的なチーム医療として、入院科を問わず、理想的な脳卒中の診断・治療を行える体制作りをしてきた。また、早期のリハビリテーションを行う療法士、脳卒中の原因となる基礎疾患を治療する内科医とも連携し、総合的に患者を診るようにしている。

 「早期の診断技術やリハビリテーションも、脳卒中の患者さんの治療効果や予後を左右します。いろいろな専門医が力を出し合うことで、患者さんの早期の回復と、社会復帰の後押しも実現できると思っています」(長尾医長)

 都立系の病院としては、最初に高解像度の最新式MRI(磁気共鳴画像診断装置)を導入し、24時間体制で救急医療現場でも活用。緊急MRI検査による詳細なデータに基づく診断・治療で定評がある。

 そして、2005年11月には、新たに「脳卒中専門病棟」8床を設置。これを機に総合脳卒中センターを開設した。

 「総合脳卒中センターになっても、実施している医療は従来と変わりません。私たちは、米国のCSC(総合脳卒中センター)を目指しているのです。その意気込みを名称にこめました」(長尾医長)

 高い志を持ち脳卒中に挑み続ける。

 【データ】

 2008年度実績

 (総合脳卒中センター受入患者数)

 ●脳梗塞246人

 ●脳内出血80人

 ●くも膜下出血18人

 ●脳卒中専門病棟(SU)8床

  /普通病床430床

 【住所】

 〒145-0065
 東京都大田区東雪谷4の5の10
 TEL03・5734・8000

【日本の病院の実力】進行性、転移性に効果のある膵がん治療を「千葉徳洲会病院」

がんの中でも難治性の高いひとつされている膵(すい)がん。胃や腸の後ろ側に位置しているため、超音波などの検査での早期発見が難しく、見つかったときには進行しているケースが少なくない。

そのため、胃がんや大腸がんなどと比べて罹患率は低いのに、国内で年間2万5000人以上が亡くなっている。

 そんな膵がんをはじめ、進行した肝がんや転移性肝がんなどに果敢に挑んでいるのが、千葉徳洲会病院肝胆膵外来である。内科と外科がタッグを組み、一般的な標準治療では手に負えない難しいがんに対して治療を行っている。

 「膵がんは手術を行っても、再発する率が高い。私たちは、さまざまな治療を積極的に取り入れ、患者さんの予後に貢献したいと思っているのです」とは、同病院の浅原新吾副院長。

 今年3月には、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授が開発した膵がん患者へのペプチドワクチン療法の臨床研究に参加した。膵がんの細胞に発現するペプチドというたんぱく質の断片を用い、そのワクチン注射で免疫に抗体を作らせ、膵がんを攻撃させる治療法だ。

 「他の治療法がなく、余命数カ月と申告された患者さんで、参加希望された30人の方に行いました。腫瘍マーカーが下がった方、あるいは、腫瘍が小さくなった方もいます」(浅原副院長)

 医学が進歩しても、いまだにがんを完全に封じ込めることはできない。浅原副院長は、10年間在籍した癌研有明病院時代から、肝胆膵がんの治療でそれを痛感してきた。だからこそ、効果のある治療を模索し続けている。

 「私たち民間の医療機関は、研究よりも臨床に力を入れています。その中で、患者さんに効果のある治療は、できるだけ取り入れたいと思っているのです」(浅原副院長)

 進行した肝がんや転移性肝がんには、他の医療機関ではあまり行われていない「一時的肝動脈化学塞栓療法」を実施。でんぶんと抗がん剤を用いた治療法で、一時的に動脈をふさぐことで、肝がんへの栄養補給が遮断され、少ない副作用でがん細胞を死滅させることが可能という。

 「一時的肝動脈化学塞栓療法は、転移性肝がんに保険適用の治療法です。手術不能や術後再発の肝がんに対しても効果を上げています。胃がんの転移性肝がんでは、6割が縮小しています。しかし、実施しない医療機関が多いのです」(浅原副院長)

 治療困難な患者が集まる中、浅原副院長の「救いたい」思いは募るばかり。そのために、今後も力を尽くし続ける。(安達純子)

〈データ〉

2008年実績

★原発性肝がん内科的治療86件

★転移性肝がんに対する一時的肝動脈化学塞栓療法61件

★膵臓がん内科的治療12件

★膵・胆道がんによる閉塞性黄疸治療(PTBD、ERBD)101件

★病床数304床

〔住所〕〒274-8503千葉県船橋市習志野台1の27の1
TEL047・466・7111

【日本の病院の実力】千葉大医学部附属病院 「快適受診」へ患者の満足度を調査!★千葉大医学部附属病院

がんなどの病気やケガなどを抱えた患者は、心が不安定になりがち。高度な医療を受けようと大きな病院で待たされているときも、気持ちは落ち着かず、ちょっとした医療従事者の言葉やしぐさに傷つくことがある。

 しかし、大学病院のように最先端の医療を提供しているところでは、受診患者数も多く、医療従事者も目いっぱい働いている状態。それでも、患者が快適に受診できるように努力しているのが、千葉大学医学部附属病院だ。

 同病院は、がん診療連携病院などの指定を受け、昨年5月には、全国で5機関しか認定されていない「臨床研究中核病院」に選定された。国際水準の質の高い臨床研究や難病の治験などを推進している。

 その一方で、2006年から毎年2月に外来患者と入院患者のアンケートによる「満足度調査」をスタートした。

 「友人や家族に勧めたいか」の問いに、2009年度に「勧めたい」と答えた外来患者は46・7%、2011年には63・1%にアップ。入院患者も76・1%から81・3%に上昇。診療科の医師や看護師の対応への満足度も上がった。その理由はどこにあるのか。

 「2004年に再開発事業がスタートして、新しい病棟などの建物が順次完成しています。また、受付などの態勢を新たにして、スタッフがより働きやすい環境にしました。患者さんからお褒めの言葉もいただき、相乗効果でスタッフのモチベーションはアップしていると思います」と、病院長補佐兼事務部長の手島英雄氏(50)。

 10階建ての「ひがし棟」の最上階には、個室の特別室C(2万1000円)~S(5万2500円)の計17室と緩和ケア5床の専用フロアを配置し、Cタイプは一番人気となっている。

 2009年に改修した「みなみ棟」の小児病棟では、同大教育学部の協力を得て、医師や看護師、スタッフなどが壁一面にオリジナル主人公「ぴなこちゃん」をモチーフにした絵を描いた。学内でコンクールを行い、優秀作品で絵本も作り、入院する子供たちや家族に無償提供している。

 「大学の総力を結集して、患者さんに元気を送っています。1階の廊下には、病院では珍しいディズニー原画のレプリカを飾って好評です。内庭にはクリスマスイルミネーション、季節ごとのイベントなど、心温まるアメニティーを常にご提供できればと思っています」と、医事課長の阿尾守己氏(54)。

 現在、外来棟の建て替えが進み、検査棟も新しくなり、2020年には再開発事業が終了予定。建物だけでなく、中身も日々進化中だ。

 「医療のご提供やスタッフなどの総合力は、日本一のひとつと自負しています。好印象度100%を目指します」と手島氏。そのための取り組みは、今後も続く。(安達純子) 

<データ>2011年度実績
・外来延べ患者数47万6874人・1日平均外来患者数1954人
・入院延べ患者数27万606人・1日平均入院患者数739人
・病院病床数835床
〔住所〕〒260-8677 千葉市中央区亥鼻1の8の1
(電)043・222・7171

【日本の病院の実力】理想は「がんのよろず相談」 帝京大学医学部附属病院帝京がんセンター

がん告知は患者にとって大きな負担となる。

 病気に対する不安や恐怖だけでなく、社会生活を維持できるかなど人生に影を落とす。しかし、従来は相談できる場所もわからず、孤独な闘いを強いられた人も多い。

そんな状況を一変させるべく、2008年に地域がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて設立されたのが、帝京大学医学部附属病院帝京がんセンターだ。

 院内がん登録をまとめ、化学療法を行い、がん相談支援室や緩和ケアチームによって患者をサポートしている。つまり、包括的にがん患者の診療・支援ができる体制づくりを実現した。

 「1人の患者さんに対して、院内のそれぞれの科の連携を良くするだけでなく、地域の連携も強めています」とは、江口研二センター長。

 現在、各診療科が集まって症例と治療法を検討する定期カンファレンスを実施しているのはもとより、化学療法についても、医師個人の考えではなく、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を行う委員会を発足させた。

また、昨年4月からは、痛みなど患者の療養に大きな支障となっているケースについて、地域ぐるみでサポートできる緩和ケアチームの活動を開始。患者のさまざまな相談に乗るがん支援相談室も設置した。

 「がん患者さんの中には、ひとつの診療科では対応できない症例もあります。その方々が行き場を失うようなことは避けなければなりません。相談支援を充実させることは、不可欠といえます」

 こう話す江口センター長は、患者から直接相談されるケースも多い。しかも、他の病院で検査結果を聞いた患者が、「どうしたらよいのでしょう」という話だ。

一般的に診療した医師が別の病院を紹介するケースは珍しくはないが、第三者的な立場で江口センター長は相談に乗っていた。理想は、「がんのよろず相談」という。

そのために、ひとつの治療に秀でた医師だけでなく、あらゆるがんに精通し、横の連携を取れる「がんの総合内科医」を養成している。

 「生活習慣病では、地域の医療機関から大学病院に紹介された患者さんは、その後、地域の医療機関に戻って診療を受けられる仕組みがあります。しかし、がんにはそれがない。

患者さんにとっては、地域で支える仕組みも必要です。そのため、全国のがん医療を地元で支える『コミュニティー オンコロジスト』を養成したい」(江口センター長)

 がん患者を支える取り組みは今後も続く。

 〈データ〉2009年実績

 (5月~12月末まで)

 ★外来化学療法のべ2510件

 ★がん相談支援のべ2171件

 ★院内がん登録室登録件数1282件

 ★腫瘍内科初診患者数201人

 ★腫瘍内科病床数20床/外来化学  療法20床

 〔住所〕〒173-8606 東京都板橋 区加賀2の11の1
TEL03・3964・1211

セカンドオピニオン 「セカンド医師・病院」の選び方

セカンドオピニオン(SO)の重要性が叫ばれて久しい。古くは医師が権威として存在し、患者が診断や治療方針に口出しすることは難しかったが、時代の流れとともに「複数の選択肢から治療法を検討したい」という患者のニーズが高まってきた。

 主治医との折衝後はSO先の医師や病院を選ぶことになるが、「病気の有無、病名の診断」に疑問がある場合、再診察する病院や医師を自分で選ぶ必要がある。どのように「セカンド医師・病院」を選べばよいのか?

 そもそも、良い医師や病院の情報はどうすれば入手できるのか? それには、全国にある「患者会」を探して入会するのが最善の選択肢となるという。

「とくにがんの場合は病院や発症部位・種類ごとに全国3000もの患者会があります。実際にがんを経験し、勉強している患者に話を聞けば、病院や医師についての有益な生の情報を入手できます」(がん難民コーディネーターの藤野邦夫氏)

【日本の病院の実力】脳疾患 顔面神経温存率100%を実現「虎の門病院」

脳の病気はいろいろだ。血管が詰まる脳梗塞、血管にこぶができる脳動脈瘤、良性でも命を脅かす脳腫瘍など、いずれも治療には高い技術が求められる。

そんな脳疾患の治療で高い評価を得ているのが、虎の門病院脳神経外科。脳腫瘍の手術実績は日本一。間脳下垂体腫瘍の開頭せずに行う治療では、世界屈指の実力を誇る。

 「脳の病気は多彩なだけに、血管内治療や間脳下垂体腫瘍治療の部門を分け、専門性を高めています。その間を埋めているのが脳神経外科。それぞれの部門が信頼関係を築き、連携の強いのも特徴です」

 こう話す同科の臼井雅昭部長は、脳腫瘍のエキスパート。中でも、聴神経腫瘍の治療でずば抜けた技術力を発揮している。

一般的に、聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍なのだが、聴神経は顔面神経のそばにあり、外科的治療によって腫瘍を取り除くと、耳が聞こえなくなるだけでなく、顔面麻痺といった後遺症が残る。

しかし、臼井部長は、モニターを用いた手術方法で、顔面神経の温存率100%の実績を実現。

 「脳腫瘍は、良性であっても命にかかわるだけに、切除して命を助ければいいというのは、医師のおごりだと思います。治療によって麻痺などが生じて、その後の生活に支障が出るのを避けなければなりません。だからこそ、専門性を高める必要がある」(臼井部長)

 そんな同病院には、他病院から紹介された複雑な症例も集まっていた。患者のQOL(生活の質)を維持するために、どのような治療が適切なのか。良性腫瘍や脳血管疾患では、経過を見守りながら治療のタイミングを図ることも大切。専門分野に分かれても、独断で決めずに横の連携によってカバーしている。

 取材した日も、脳神経血管内治療科から臼井部長へ、カテーテル治療ではなく外科的治療が必要ではないかと、患者に関する相談の電話が入った。医師の信頼関係で築く最善治療の選択。それが、実績に結びついている。

 「私たちは、脊髄動静脈瘻(ろう)という動脈と静脈がつながって脊髄の虚血を起こす疾患も、整形外科の医師と連携して治療しています。その他に神経内科との協力体制も築いているのが強みといえます」(臼井部長)

 あらゆる角度から脳疾患を診る体制を作った臼井部長は、脳卒中センターを作りたいと思っている。今でも、救急患者を受け入れる体制はあるが、「充実させたい」という。「病院の評価は術数ではない」と断言する臼井部長は、患者にベストな治療を行うために今も奔走中だ。

<データ>2009年実績

★年間手術数(血管内/間脳下垂体を含む)660件

★脳腫瘍92件(内、聴神経腫瘍42件)

★血管障害34件

★下垂体部腫瘍(開頭以外)320件

★血管内治療111件

★病床数890床(内、脳外科関係45床)

〔住所〕〒105-8470東京都港区虎ノ門2の2の2(電)03・3588・1111

【日本の病院の実力】腰痛、椎間板ヘルニアなどに特化 板橋中央総合病院

つらい自覚症状はいろいろあるが、厚労省『平成19年国民生活基礎調査』によれば、男性の第1位は「腰痛」。中でも、足の激痛やしびれを伴う椎間板ヘルニアは代表的な脊椎脊髄の病気だ。

その痛みを取る、あるいは、根治的な治療で定評を持つのが、板橋中央総合病院脊椎脊髄センター。患者の増加に伴い2008年に同病院の整形外科からスタッフを専従させて新たにスタートした。

 「患者さんは痛みを早くなんとかしてほしいと希望されます。それに応えると同時に、迅速に行う適確な診断も必要。椎間板ヘルニアと思われていても、別の病気が潜んでいることがあるからです。それらのことが、センターの開設でより行いやすくなりました」

 こう話す中小路拓センター長は、都内では6人しかいない日本整形外科学会認定の脊椎内視鏡下手術・技術認定医の1人。椎間板から飛び出して神経を圧迫しているヘルニアを除去するには、腰の後ろを7センチほど切開する手術が一般的だ。

それを15ミリの小さな切開で内視鏡を挿入して腰椎の隙間から治療を行う。入院期間は4日程度。手術後の痛みも少なく、高齢者でも行えるのも利点といえる。 

その治療を行える数少ない医師の一人である中小路センター長だが、内視鏡手術にのみこだわっているわけではない。痛みを取るため、「持続硬膜外ブロック」という治療も積極的に行っている。5日間ほどの入院による疼痛の集中治療だ。

 「患者さんは歩けないほど痛くても必ずしも手術を望むわけではありません。『持続硬膜外ブロック』は根本的治療ではありませんが、ほとんどの患者さんの痛みは軽快し、約半数の人は、その後の再発もなく手術を行わずに済んでいます。

これは、患者さんを紹介してくれる診療所の先生方と“病診連携”の体制を取っているからこそ、行える治療法ともいえます」(中小路センター長)

 痛みの取れた患者は、再び診療所で定期的に状態を診てもらう。異変があれば、また脊椎脊髄センターを受診する仕組み。このような医師同士の連携は、信頼関係があるからこそ築かれたものだ。

その連携によって、椎間板ヘルニアの影に潜む解離性動脈瘤や脊髄変性疾患など、別の病気がセンターで見つかることもしばしば。腰の痛みは多様で、原因疾患を見極める診断技術も、センターでは確立している。

 そんな中小路センター長の夢は、「当院は臨床研修指定病院なので、脊椎外科専門医を少しでも多く育て、地域医療に貢献したい」。日々の診断・治療に加え、一人でも多くの専門医を育てるためにまい進中だ。(安達純子)

〈データ〉2009年実績

★整形外科手術総数608件

★脊椎外科手術115件(内視鏡を用いた腰椎椎間板ヘルニア摘出術18件)

★持続硬膜外ブロック30件

★病床数579床〔住所〕〒174-0051東京都板橋区小豆沢2の12の7
TEL03・3967・4275

【日本の病院の実力】「乳がん」内視鏡手術や凍結治療で世界トップに 亀田総合病院

乳がんで亡くなる人は年間1万1000人以上。乳がん罹患者はその3倍以上になり、30代から増加するといわれる。がんに加えて、乳房を切除するという精神的な苦痛は、家族にも暗い影を落とす。

そんな苦痛を緩和すべく、乳房の傷を最小限に抑えた内視鏡手術や凍結療法で、世界のトップに君臨しているのが亀田総合病院乳腺科だ。

 「小さな傷できちんとがんを治すのが内視鏡手術の目的です。従来から乳房温存療法はありましたが、それに適用されない患者さんも多い。美しい形を残しながら治療を行うことは、とても重要だと思っています」と同科・福間英祐部長。

 内視鏡手術は、1980年代に消化器系疾患を中心に広まった。しかし、内視鏡を使うには、消化器のような「腔(くう・空洞)」がないと難しい。その後、心臓や腎臓にも内視鏡手術は行われたが、乳房には乳腺が詰まっているため、腔を作る技術がなかった。

このような状況で、福間部長は美容外科で行われている豊胸術に着目。脇の下と乳輪の横の2カ所に穴を開け、腔を作る技術を新たに開発した。そして、95年には世界に先駆けて乳腺内視鏡手術を実施。通算手術数は世界一を誇る。

 「国内外のたくさんの医師に指導していますが、見よう見まねでは会得できない高度な技術のため、広く普及するにはまだ時間がかかるでしょう」(福間部長)

 加えて1センチ以下の乳がんに対しては、特殊な針を刺してマイナス168度で凍結する「凍結療法」を2009年から実施。通院で行えるのも利点だ。

 「これまで早期がんを発見しても、それに見合う治療がなかった。凍結療法は、その問題を解消できます」(福間部長)

 一般的には、早期がんでも、乳房を傷つけ、放射線治療なども必要。福間部長は、「命を守る」「乳房の形を守る」「仕事の継続など社会的な立場を守る」「ホルモン療法などで妊娠の機会を失うことを防ぐ」を信条に、新たな治療を開発してきたという。

 また、MRIの画像診断件数も日本一。診断と治療の選択肢をたくさん持ち、最適なものを提供するためにチーム体制も整えてきた。都内4カ所の医療施設と提携し、患者の通院にも配慮した体制作りを実現している。

そんな福間部長の夢は、「乳がんを治すだけなく、予防や美容にも力を入れたい」。今年11月開催の国際乳房腫瘍形成学会の会長を務め、乳房の再建の重要性を訴える。また、年内には、脂肪の幹細胞を用いた新たな乳房再建術にも着手する予定。新たな取り組みは今後も続く。(安達純子)

〈データ〉2009年実績

★乳がん手術件数324件(内内視鏡手術271件)

★非切除凍結療法14件

★内視鏡下乳房再建70件

★病床数925床

〔住所〕〒296-8602 千葉県鴨川市東町929(電)04・7092・2211

【日本の病院の実力】世界初の大動脈弁形成術を確立 東邦大学医療センター大橋病院

★自己心膜を使用した弁形成で血栓による脳梗塞など解消

心臓病の中でも高齢化に伴い増加しているのが、心臓弁膜症の一つである大動脈弁狭窄症。弁が石灰化して固くなり十分に開かなくなる状態だ。その結果、心肥大や胸痛、失神を起こし、心不全に至ることもある。

従来から、人工的に作った弁(人工弁)に置き換える手術は行われているが、人工弁には血栓がつきやすい。

血栓による脳梗塞や肺梗塞を防ぐため、血液をサラサラにするワーファリンという薬を一生飲み続けるが、脳出血・消化管出血など出血の合併症にも注意が必要だ。加えて、妊娠する可能性がある女性には原則として使用できない。

また、患者は、摂取できる食品が制限されるなど不都合があった。

 それらを解消する新たな治療法として、「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」を2007年に日本で初めて実施したのが、東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科だ。

 「患者さんから、異物である人工弁を入れずに治療してほしいという要望が多々あり、それに応える方法がないかと考えたのです」

 こう話す尾崎重之教授は、患者自身の心臓を包む心膜で大動脈弁を作ることを思いついた。そして、大動脈弁の形にも着目。正常な3枚の弁は、お椀状の立体的な形をしておりそれぞれの大きさが違う。

 人工弁は、大きさが3つとも同じで本来の弁とは本質的に異なる。そこで尾崎教授は、それぞれの弁の大きさ(交連部間距離)の長さを簡単に測れる「弁尖(べんせん)サイザー」という道具と、それに合わせて「自己心膜から弁を作るテンプレート」を考案。どの医師でも容易にできる世界初の大動脈弁形成術を確立させた。

 「患者さんにとっては人工弁を使用しない分、医療費が安くなり、ワーファリンを飲まずに済むため運動制限や食事制限もありません」(尾崎教授)

 3年間で累計174人がこの治療を受けているが、再手術をした人はゼロ。1年間に1%程度の再手術が行われる人工弁と比較すると好成績。また、88歳といった高齢者にも適応できる治療法であり、循環器学会で発表したところ大反響を呼び、少しずつ普及も始まっている。

 「私たちは、QOL(生活の質)をより高められる治療法と『からだにやさしい』手術を目指しています。そのための新たな治療法を開発することも、使命なのです」(尾崎教授)

 次の目標は「成長する弁」の開発。牛の心膜から細胞を取り除くと、枠組みだけのような状態になり、その枠に合わせて人間の細胞が再生される仕組み。身体の成長に合わせて弁も成長し、耐久性にも優れたものと期待されている。新たな世界初の治療法が、産声を上げるのは間近といえそうだ。

<データ>2009年実績

★自己心膜を使用した大動脈弁形成術66件

★人工心肺を使用しない冠動脈バイパス術35件

★僧帽弁形成術32件

★大動脈瘤「腹」18件/「胸」20件

★病床数468床

 [住所]〒153-8515東京都目黒区大橋2の17の6
TEL03・3468・1251。

【日本の病院の実力】カテーテル治療は全国2位の実績…千葉西総合病院

心筋梗塞や狭心症では、一般的に、大腿部の血管から細い管を通して行うカテーテル治療が行われている。この治療で関東1位、全国2位の実績を誇るのが千葉西総合病院。

 「県外の患者さんは約7割で、全国のみならず海外からも来院されています」とは、心臓センター長も兼任する三角和雄院長。米国の医師格付け機関の「ベストドクター」に4年連続選出された実力を持ち、最先端技術を積極的に導入している。

 そのひとつが、ロータブレーター。動脈硬化が進むと、血管内にはコレステロールなどが石灰化した塊ができ、血流が悪くなる。その塊をカテーテルの先端に工業用ダイヤモンドでできた専用器具を付け、高速回転させながら削り取る新しい技術がロータブレーターだ。この治療実績は年間600件以上。

「透析中の患者さんなど、心臓の血管が固すぎて、バルーンによるカテーテル治療やバイパス手術ができない人がいます。そういう方々も、この治療で改善できます」(三角院長)

 さらに、血管内のエキシマレーザー治療、血管内腔の再狭窄を防ぐ薬剤溶出ステント(DES)術も行っている。加えて、昨年11月には、世界で8台しかない最新のフィリップス社製不整脈対応型256列マルチスライスCTという画像診断機器をアジアで初めて導入した。

従来のマルチスライスCTの検査は1分程度かかったが、256列マルチスライスCTはわずか3~5秒の検査時間。血管の詳細情報を得ることができるため、無駄なカテーテル検査を減らせるそうだ。

 「256列マルチスライスCTやロータブレーター、エキシマレーザーを組み合わせることで、心臓の冠動脈だけでなく首の頚動脈、閉塞性動脈硬化症といった脚の血管も、一度に治療することができます」(同)

 最先端技術の導入は、患者の身体負担を軽減するのが狙い。

 そんな三角院長は、「救急診療も断らない」という強い理念を持ち、心臓血管外科や小児科なども充実させてきた。そして、2011年には、608床の高度な医療設備を誇る新館を完成させる予定。そこには、最新設備で治療もできるドクターズヘリも完備するそうだ。

 「遠くからの車の搬送では時間がかかる。最新設備は、全て必要に応じて導入しているのです」(同)

 1人でも多くの命を救うために、三角院長の取り組みは続く。

【データ】2007年実績

 心カテーテル治療2133件▽ステント使用1961件(DES使用率81%)

 心臓手術290件▽バイパス手術93件▽胸部大動脈瘤・大動脈解離146件

 病床数408床

 〔住所〕〒270-2251 千葉県松戸市金ヶ作107の1 
TEL047・384・8111

【日本の病院の実力】進行がん治療、目指すは「早い」「うまい」「安い」 癌研有明病院

早期段階で見つかれば予後の良い胃がんや大腸がんだが、健診の進んだ今でも、進行した状態で見つかるケースは多い。その治療で、国内第1位の実績を誇り、世界トップの実力を持つのが、癌研有明病院消化器センターだ。

15室の手術室で年間約7500件の手術が行われ、緩和ケア病床25床も完備。そのため、難しい症例の患者が全国各地はもとより、世界各国からも集まっている。

 「私たちが目指しているのは、牛丼の吉野家のキーワードのように、『早い』『うまい』『安い』。がんの治療でも、重要です」とは、消化器外科部長の山口俊晴副院長。胃がんの名医だ。

 「早い」は、1週間以内の診断と2週間以内に治療を開始。「うまい」は、最高の手術手技、最高の内視鏡技術、最新の薬物治療。「安い」は、安全な検査と治療、安心できる医療のこと。

 それらを実現するには、患者を中心としたチーム医療が欠かせない。外来や病棟を共有し、医師チームや看護師チームの合同カンファレンスで情報交換を密にしている。また、5年ほど前から、大きな病院でありがちな大勢で患者を見て回る総回診は止めた。

 「チーム医療で大切なのは、機能的、合理的で、なおかつ、透明性が高いことです」(山口副院長)

 透明性を高めて安全性を確保するために、日本初の設置で、他病院の手本となっている「キャンサーボード」が重要。同センターのキャンサーボードは、消化器センターのスタッフのみならず、症例によっては呼吸器科や乳腺科、放射線科などの医師も集まり、難しいケースの治療方針を決定する。

それは、単に幅広い意見を集約するというのではなく、ここでの決定は拘束力を持ち、各診療科が勝手に変更はできない。監査機関の役割も担っているのだ。

 「複雑な症例の患者さん自身に、いろいろな治療法を説明して選択してもらうのは難しい。患者さんをよく理解し、病状や社会的な条件などをかんがみて、大勢の専門医がベストな治療法を選ぶ。このキャンサーボードの決定過程を患者さんに説明すると、喜ばれることも多い」(山口副院長)

 医師が集まって知恵を出し合う機会が多いだけに、新しい治療法も生まれやすい。たとえば、胃がんに対して、内視鏡と腹腔鏡をドッキングさせた新たな治療法「LECS」なども行っている。

 最先端医療を提供する山口副院長の夢は、「国内だけでなく海外からの患者さんも、より多く受診できるようになれば」という。世界の頂点としての取り組みに終わりはない。

 〈データ〉2009年実績

 ★胃がん手術617件(内腹腔鏡手術294件)

 ★大腸がん手術543件(内腹腔鏡手術354件)

 ★食道がん手術84件

 ★肝、胆、膵手術344件

 ★病床数700床

 〔住所〕〒135-8550東京都江東区有明3の8の31
TEL03・3520・0111

【日本の病院の実力】順天堂大学医学部附属順天堂医院食道・胃外科 最先端の食道がん医療で世界を牽引

わずか4ミリの薄い壁に生じる食道がんは、再発・転移を起こしやすい。

 5年生存率(TNM分類第6版)は、粘膜の表面にがんがとどまるステージIの全国集計で65%。粘膜の下に到達し、リンパ節転移も1-2個見られるステージIIBになると34%に下がり、

さらに進行したステージIIIは20%。頸部へのリンパ節転移も見られるステージIVになると6-14%で、非常に厳しいものとなる。

 そんな現状を独自の高度な医療技術で打開しているのが、順天堂大学医学部附属順天堂医院食道・胃外科。ステージIIBの5年生存率は65%、ステージIII50%、ステージIVは44%と、驚異的な数字を実現している。

 食道手術総数が全国トップレベルというだけでなく、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的な治療で、世界も牽引(けんいん)中だ。

 「食道がんの治療は、5年生存率だけでなく、術後の合併症の施設間格差も非常に大きい。私たちは、合併症を1%前後に抑えながら、進行がんに対しては集学的な治療を行うことで、5年生存率の引き上げを実現しています。

食道がん手術の技術レベルの高さがなければ、化学療法や放射線療法の集学的治療も成り立たないともいえます」

 こう話す同科の梶山美明教授は、3000例以上もの手術経験を持つ食道がん手術のスペシャリスト。食道という臓器は頸部、胸部、腹部へと伸びるが、それぞれの食道と付随するリンパ節を取り除く「3領域リンパ節郭清(かくせい)手術」を梶山教授は得意とする。

 しかし、3領域の食道やリンパ節は、たくさんの臓器や血管、神経に囲まれ、特に頸部では、声に関わる反回(はんかい)神経まひ、胸部では肺の合併症、さらに縫合不全といったことも、一般的には起こりやすい。

 「外科医が高い技術レベルを持って、ひとつひとつ丁寧に行えば、80代の進行がんの方にも、合併症を防ぎながらの手術は可能です。きちんと医師が勝負を挑んでいるのか。

患者さんも手術に対して、覚悟をするわけですから、私たちはそれに常に応える必要があると思っています」

 梶山教授は、早期がんに対する内視鏡による治療も、全て同科で請け負っている。食道がんは、早期がんに見えても、リンパ節転移をしていることがあるなど、非常に病態が難しい。だからこそ、早期がんから進行がんまで、全ての食道がんに立ち向かうべく体制を整えているのだ。

 「常に新しいエビデンス(科学的根拠)を作ろうとしています。そうでなければ進歩はあり得ない。新たな手術前の放射線療法と抗がん剤治療の効果検証も、論文を発表したばかりです。

他の臓器へ再発転移した食道がんに対しても、全身的な治療の開発を行いたい」と梶山教授。

 100%の治療の確立を目指し、食道がんと闘っている。 

<データ>2012年度実績
・手術総数356件

・食道手術総数234件(食道がん手術138件)
・胃十二指腸手術総数213件(胃がん手術133件)
・病院病床数1020床
〔住所〕〒113-8431 東京都文京区本郷3の1の1 
(電)03・3813・3111

【日本の病院の実力】帝京大医学部附属病院・眼科 斜視手術は日本トップ、目の腫瘍には先進医療

眼の病気は山ほどある。加齢に伴い水晶体が濁る白内障、網膜や視神経の細胞が死滅あるいはダメージを受ける糖尿病網膜症や緑内障、視力の低下や失明に関わる病気だけでなく、左右の黒目が異なる方向を向く斜視(しゃし)、機能障害でまぶたがうまく開かなくなる眼瞼下垂(がんけんかすい)など広範囲に渡る。

 そんな眼の病気に対し、一般的な診断と治療だけでなく、特殊な技術を用いた医療の提供で全国的に名をはせているのが、帝京大学医学部附属病院眼科。斜視を治す手術は全国1位の実力を誇り、眼瞼下垂の治療や眼の形成手術も得意としている。さらに、遺伝的な難病疾患を始め、眼のがんに対して眼を残す治療など、守備範囲は広い。

 「眼の病気というのは、治療が確立されていない難病もたくさんあります。

判別が難しい病態もあり、正しい診断法や新たな治療法の開発、さらには、メカニズムを明らかにする基礎研究にも取り組まなければなりません。そういった特殊な病気も含めて、私たちは技術力を集結し向上に努めているのです」

 こう話す同科の溝田淳主任教授(56)は、網膜色素変性症や難治性視神経症など、視覚系難病の診断と治療を得意としている。

例えば、網膜色素変性症は、遺伝的な病気で、眼から入ってきた映像を脳へ伝える視細胞が変性していく。失明の原因となる病気だが、有効な治療法は今のところない。

 「一般的に、網膜色素変性症はひとつの疾患として解釈されますが、人によって視細胞、あるいは、色素上皮細胞など、たくさんの原因があります。

網膜電図検査(ERG)などを用いて、詳細な診断を行った上で、進行を遅らせることでQOL(生活の質)は維持できます。完治はしなくても進行を食い止めることも、重要です。そういった診断法や治療法の開発に取り組んでいます」

 溝田教授は、長年、眼腫瘍(がんしゅよう)の診断と治療も行ってきた。中でも、眼の中にできる悪性黒色種は、眼球を取り除くのが一般的治療法。しかし、義眼を避けて眼球を残したいと願う患者はいる。

そんな人々のため、約15年前から放射線医学総合研究所とタッグを組み、重粒子線がん治療装置を用いた新たな治療法を確立した。

 現在、先進医療として、全国の眼の悪性黒色種の年間患者数約3分の1に対して行うほど治療実績を積み重ねている。

 「重粒子線治療を行うマーキング手術は、私が最も多く手掛けています。10年経っても1・0の視力を維持できる症例もあります。転移に関しては、眼球摘出術と変わらない結果を得られています」

 特殊な治療にも取り組む姿勢で「ひとつでも新たな治療法を見つけ、次のステップに進む。その繰り返しです」。

 眼の難病治療の未来の扉を開けるため、尽力中だ。  

<データ>2012年度実績
・手術総数2958件
・白内障手術1378件
・斜視手術624件
・網膜硝子体394件
・眼瞼下垂126件
・病院病床数1154床
〔住所〕〒173-8606 東京都板橋区加賀2の11の1
(電)03・3964・1211

【日本の病院の実力】帝京大医学部附属病院・眼科 斜視手術は日本トップ、目の腫瘍には先進医療

眼の病気は山ほどある。加齢に伴い水晶体が濁る白内障、網膜や視神経の細胞が死滅あるいはダメージを受ける糖尿病網膜症や緑内障、視力の低下や失明に関わる病気だけでなく、左右の黒目が異なる方向を向く斜視(しゃし)、機能障害でまぶたがうまく開かなくなる眼瞼下垂(がんけんかすい)など広範囲に渡る。

 そんな眼の病気に対し、一般的な診断と治療だけでなく、特殊な技術を用いた医療の提供で全国的に名をはせているのが、帝京大学医学部附属病院眼科。斜視を治す手術は全国1位の実力を誇り、眼瞼下垂の治療や眼の形成手術も得意としている。さらに、遺伝的な難病疾患を始め、眼のがんに対して眼を残す治療など、守備範囲は広い。

 「眼の病気というのは、治療が確立されていない難病もたくさんあります。

判別が難しい病態もあり、正しい診断法や新たな治療法の開発、さらには、メカニズムを明らかにする基礎研究にも取り組まなければなりません。そういった特殊な病気も含めて、私たちは技術力を集結し向上に努めているのです」

 こう話す同科の溝田淳主任教授(56)は、網膜色素変性症や難治性視神経症など、視覚系難病の診断と治療を得意としている。

例えば、網膜色素変性症は、遺伝的な病気で、眼から入ってきた映像を脳へ伝える視細胞が変性していく。失明の原因となる病気だが、有効な治療法は今のところない。

 「一般的に、網膜色素変性症はひとつの疾患として解釈されますが、人によって視細胞、あるいは、色素上皮細胞など、たくさんの原因があります。

網膜電図検査(ERG)などを用いて、詳細な診断を行った上で、進行を遅らせることでQOL(生活の質)は維持できます。完治はしなくても進行を食い止めることも、重要です。そういった診断法や治療法の開発に取り組んでいます」

 溝田教授は、長年、眼腫瘍(がんしゅよう)の診断と治療も行ってきた。中でも、眼の中にできる悪性黒色種は、眼球を取り除くのが一般的治療法。しかし、義眼を避けて眼球を残したいと願う患者はいる。

そんな人々のため、約15年前から放射線医学総合研究所とタッグを組み、重粒子線がん治療装置を用いた新たな治療法を確立した。

 現在、先進医療として、全国の眼の悪性黒色種の年間患者数約3分の1に対して行うほど治療実績を積み重ねている。

 「重粒子線治療を行うマーキング手術は、私が最も多く手掛けています。10年経っても1・0の視力を維持できる症例もあります。転移に関しては、眼球摘出術と変わらない結果を得られています」

 特殊な治療にも取り組む姿勢で「ひとつでも新たな治療法を見つけ、次のステップに進む。その繰り返しです」。

 眼の難病治療の未来の扉を開けるため、尽力中だ。  

<データ>2012年度実績
・手術総数2958件
・白内障手術1378件
・斜視手術624件
・網膜硝子体394件
・眼瞼下垂126件
・病院病床数1154床
〔住所〕〒173-8606 東京都板橋区加賀2の11の1
(電)03・3964・1211

【日本の病院の実力】聖路加国際病院 感染症科 抗菌薬の早期・適正使用へ効果的なガイドライン作成

冬場は風邪の季節。身の周りには、体内での増殖を狙うウイルスや細菌などがウヨウヨ存在する。細菌に関しては、1928年、抗生物質ペニシリンが発見され、感染症の時代は終わったとまで言われたほど、抗菌薬は医療に貢献してきた。

 ところが、細菌類は次々に薬剤に対する耐性を獲得し、多剤耐性菌となり、免疫力が低下した人々を襲うようになっている。それは、院内感染に加え、市中にも蔓延(まんえん)。

たくさん存在する感染症を的確に診断し、適正な薬の使用で早期に封じ込めることが、現在、世界的にも求められている。

 そんな感染症の診断、治療、院内体制で、世界的にもトップレベルの実力を持つのが聖路加国際病院感染症科。独自のシステムを構築し、外来患者から入院患者まで幅広い医療を提供している。

 「これまで日本の教育では、呼吸器内科は肺に関わる感染症のように、縦割りで、他の臓器の感染症に関する知識が乏しかった。しかし、感染症は種類が多く全身に関わります。

また、薬剤の投与が不適切であれば、感染症は治癒せず、多剤耐性菌を新たに作ることにもなる。だからこそ、迅速かつ的確、早期に診断し、抗菌薬の適正使用を行う体制は、非常に重要だと思っています」

 こう話す同科の古川恵一部長(60)は、感染症の診断と治療のスペシャリスト。米国で感染症の臨床研究を行い、帰国後の96年、現職となって以来、これまでにない感染症に対する独自の医療システムを構築した。

 研修医にもわかるような「主な感染症に対する抗菌薬治療のポイント」といったガイドラインを作り、「主な感染症に対する抗菌薬」リストも策定。いかに適正に抗菌薬を使用すべきか、科を問わず、理解できるようにオリエンテーションなども行う。

救急外来にグラム染色などの細菌検査設備を整え、すぐに診断できるようにもし、研修医全員がその方法を学んでいる。

 「むやみに抗菌薬を投与するのではなく、細菌学的検査結果が出る前に、ある程度原因菌を推測して目安をつけ、抗菌薬を早期の段階から適正使用することと、原因菌に合った治療を行うことで、重症の感染症の患者さんも救うことができます。

幸い当院には、他科との壁がない。どの科に対しても、感染症患者のコンサルティングを行うことができます。主治医とともに入院患者さんを受け持つなど、理想的な体制が整っています」(古川部長)

 外来患者の中には、マラリアなど海外で感染した人もいる。輸入感染症の診断と治療も、古川部長は得意。加えて院内感染症、市中感染症までもカバーし、その技術と知識を若い医師の育成にも生かしている。

 「感染症を専門とする医師は、全国的に少ないのですが、当院を巣立った医師たちが少しずつ専門医療を広めてくれています。後進の育成にさらに力を入れたい」と古川部長。

 1人でも多くの感染症患者を救うべく奮闘中だ。 

<データ>2010年度実績
・感染症入院患者数277人
・他科との連携入院患者数年平均500人
・初診患者数4700人 ・病院病床数520床
〔住所〕〒104-8560 東京都中央区明石町9の1
(電)03・3541・5151

【日本の病院の実力】杏林大学医学部付属病院もの忘れセンター “認知症”早期発見に尽力★杏林大学医学部付属病院もの忘れセンター

国内では65歳以上の1割以上が認知症、あるいはその予備軍と言われる。記憶が欠落する認知症は、本人の自覚は難しく、家族が気づいたときには症状が進んでいることも多い。

どこの病院へ行けば良いのか、在宅介護はどうすればよいのか、さらには、本人が「病院へ行きたくない」と拒む場合はどうするか。家族には悩ましい。

 そんな患者と家族をサポートするために、全国でも珍しい取り組みを行っているのが杏林大学医学部付属病院「もの忘れセンター」だ。

 地域の専門病院や診療所、行政と関連する在宅介護支援センターなどが、約4年前に「三鷹・武蔵野認知症連携を考える会」を結成。中心となり動いたのが、同病院センター長の神崎恒一教授(52)。複数の機関の情報共有をスムーズに行うため、6つに分けた「もの忘れ相談シート」を新たに開発し、成果を上げている。

 「認知症は、早期に発見して医療機関や福祉が介入することで、徘徊(はいかい)や暴力などの、家族を悩ませる症状を食い止めることが可能です。各機関がシートを用いて情報を互いにやり取りし、情報共有を確実にすれば、早期発見と介入ができます」

 こう話す神崎教授は、長年高齢者の全身を診る高齢医学について研究し、診療に携わる。

 一般的に高齢者は生活習慣病、心臓病やその他の血管障害、運動器障害など、数多くの持病を抱える。複数の医療機関を受診し、たくさんの薬を処方されるケースがありがち。医療機関の情報共有がない場合、同じような薬が重複されることも。その解消にも、シートの情報共有は有効だ。

 「ご高齢の方は、身体の不調があると内に引きこもり、認知症がひどくなってしまうことがあります。心と身体のつながりは深く、悪循環を断ち切るためにも、各機関と情報連携を行って体操や趣味の活動に参加するなど、日中の活動性を高くすることが大切です」

 体調管理や薬の整理は診療所が行い、高度な医療が必要なときには専門病院、引きこもりの抑止や介護の介入は福祉など、情報共有による連携が行われている。

 さらに患者の家族の不安を解消するため、小グループの勉強会も実施。医師に言えない不安や悩みも、勉強会で解消できるようにしている。

 このような地域ぐるみで支援する新システムは、非常に注目されており、他の地域や医療機関からの見学もあるという。

 「ご家族の方に安心感を持っていただくことはとても大切です。地域によって医療機関や福祉の状況は異なりますが、その地域に合わせた連携システムを作ることで、高齢者医療は大きく変わると思います。

多くの若い医師にも、もっと高齢医学を学んでほしい。そういう教育システムも作りたい」と神崎教授。

 超高齢化社会で医療は行き詰まると言われる現状を打破し、新たな未来を築くために尽力中だ。

<データ>高齢診療科2010年度実績
・年間延べ患者数7926人績
・新規入院患者数401人績
・もの忘れセンター新規患者数633人(軽度認知障害136人、アルツハイマー型認知症116人、脳血管性認知症85人など)績
・病院病床数1153床

〔住所〕〒181-8611 
東京都三鷹市新川6の20の2(電)0422・47・5511

【日本の病院の実力】国立がん研究センター東病院血液腫瘍科 国内初ATL治療法確立へ2薬併用の臨床試験を開始

ウイルスに関連した病気は山ほどある。中でも「成人T細胞性リンパ腫・白血病(ATL)」は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の感染が原因で、先進諸国の中では日本での発症が多い。

 もちろん、HTLV-1に感染した誰もが、この血液のがんを発症するわけではない。感染から40~80年の歳月を経て、キャリアの3~5%がATLになる。

 発症パターンは幾つかあり、急激に病状が進行して悪化するタイプには、現在、強力な化学療法や、ドナーの造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植が行われている。

 昨年には「ポテリジオ」というがんを狙い撃ちにする新たな分子標的薬も登場。ただし、いずれの治療にも強い副作用が伴うため、進行の緩やかなATL患者には、病状が急変するまで注意深く経過観察を続け、悪化した段階で化学療法を行う「無治療経過観察」が標準治療となっている。

 この状況を一変させ、世界に先駆けた国内初の治療法の確立に向け、旗手役となっているのが国立がん研究センター東病院血液腫瘍科。昨年9月、長崎大学から着任した同科の塚崎邦弘科長(53)が、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)リンパ腫グループの代表として、先進医療B制度により、ATLに保険適用のない抗ウイルス薬の「インターフェロンα」と抗HIV薬「ジドブジン」を用いた臨床試験を先月、スタートさせた。

 「従来の治療法では、強い作用の治療法か、もしくはゼロ(無治療経過観察)という状態でした。それを改善するために、進行の遅いタイプの患者さんに対して、臨床試験をスタートさせたのです。

海外では16人のこのタイプのATL患者さんがこの併用療法を続けると、長年にわたり悪化しないという報告が過去にありました。

しかし、先進諸国では患者数の多い日本が、世界に先駆けて大規模な臨床試験を行う必要がある。結果として、新たな治療法が患者さんに役立てばと思っています」(塚崎科長)

 臨床試験では、進行の遅いタイプのATL患者に対し、まずは国立がん研究センター中央病院と東病院で、投与する人とそうでない人をランダムに分けて実施。2例について安全性を確かめた上で、全国約40カ所のJCOG参加医療機関で合計74人に対する臨床試験を行う。

 「2つの薬は、これまで単独使用で治療効果の実績はありますが、併用療法は国内では初めての試み。患者さんのご協力を得て、慎重に進めているところです」

 こう話す塚崎科長は、長年ATLの研究を行ってきた。母乳によって母親から乳児に移る垂直感染の予防や、2011年にスタートした妊婦健診も後押し、治療のみならず予防への道筋もつけた。

そして、新薬「ポテリジオ」の効果の検証も行う。「予防策がきちんと行われれば、国内のキャリアは増えません。そして、新たな治療法を確立し、生命予後を改善することで、ATLを封じ込めたいと思っています」と塚崎科長。

 世界初の治療の実現に向けて尽力中だ。 

<データ>2011年実績(新規患者数)
・リンパ腫140人
・白血病および骨髄異形成症候群16人
・多発性骨髄腫および形質細胞腫15人
・病院病床数425床
〔住所〕〒277-8577 千葉県柏市柏の葉6の5の1 
(電)04・7133・1111

【日本の病院の実力】肝がん 予後治療に尽力する世界のリーダー「日本赤十字社医療センター」

国内で年間3万3000人以上の命を奪っている肝がん。肝臓は消化管からの血液が流入している場所だけに、原発性の肝がんだけでなく、転移性肝がんも多い。しかし、肝臓の手術は難しく治療によって予後が大きく左右される。その外科的治療で世界に名をはせているのが、日本赤十字社医療センターだ。

 「標準治療では適応できない難しい症例の患者さんが集まっています。そういう方の予後をいかに確保するか。365日24時間、そのことを考えています」

 こう話す幕内雅敏院長は、肝胆膵外科における世界のリーダー。80年代に手術中にエコーを用いた「幕内術式」を世界で初めて開発し、安全性の高い手術を実現している。また、93年に世界初となる成人生体肝移植を手掛け、海外の科学雑誌で紹介された。

それまで大人から大人への肝臓の部分移植は、ドナーの危険が高いといわれていたが、これを実現したことで、多くの人の命が救われるようになった。

 幕内院長が現在まで手掛けた成人生体肝移植は、500例以上。「手抜きはできない」という真摯な姿勢で、“365日24時間”ドクターであり続け、肝切除や生体肝移植など長時間に及ぶ手術を今も行っている。

 加えて、2007年に就任した病院長としての手腕も発揮。同センターは、地域がん診療連携拠点病院であるだけでなく、救命救急センター、総合周産期母子医療センターなど、さまざまな機能を持っている。来年1月4日からは、同施設内の新病院に移転し、さらなる医療の充実を目指す。

 「新病院は、患者さんにとってはより利用しやすくなるでしょう。しかし、医療というのは、設備ではなく人材が最も大切。肝臓の手術は難しいのですが、日本はもとより世界中から医師がここに勉強に来ています」

 こう話す幕内院長が憂えているのは、日本全体の医療における外科医不足。救急救命医、産婦人科のみならず、外科医も近い将来激減するといわれているのだ。幕内院長のもとには、若い外科医が集まっている。とはいえ、全体的な底上げがなされないと、将来外科手術に支障が出かねない。

 「20年前に比べて外科の専門医を希望する人は3分の1に減っています。使命感だけでは、ハードな仕事に若い人は就かないでしょう。医療システムを変える必要があると思っています」

 “患者のために”を考え続ける幕内院長の取り組みに、終わりはない。(安達純子)

<データ>2008年実績

★がん手術件数942件

★肝切除172例

★膵頭十二指腸切除(PD)19例

★分娩件数2516件

★取扱救急患者数2万6480人

★病床数708床(2010年1月からの数)

〔住所〕〒150-8935東京都渋谷区広尾4ノ1ノ22(電)03・3400・1311

【日本の病院の実力】肺がん「縮小手術」での新境地開拓 大阪府立成人病センター   

国内で年間約6万7000人もの命を奪う肺がん。この治療で全国トップクラスの実績のみならず、世界に先駆けて新たな治療法に取り組んでいるのが大阪府立成人病センター呼吸器外科である。肺がんそのものだけでなく、他の臓器がんの肺転移についても、国内の単一施設としては治療実績第1位を誇る。

 「当センターはチームワークが完璧。技術レベルの高さと症例数で専門医を目指す医師が集まり、ここから育った医師たちが地域の病院でネットワークも作っています」とは、同センター児玉憲副院長。

 進行した肺がんに対しては、手術、抗がん剤、放射線を駆使して治療を行い、早期の肺がんや転移性肺がんで局所にとどまっている場合は、肺の部分切除を行っている。

 1980年代に児玉副院長が高出力のレーザーメスを用いた手術法を考案。安全な縮小手術を可能にし、「肺がん外科治療の新たなページを開いた」といわれたほどだ。

 「できるだけ小さな傷口で済む手術法は、患者さんの負担を軽減することになります。しかし、再発しては意味がない」

 90年代には、海外での大規模比較試験で縮小手術は再発リスクが高いとの報告がなされた。そのころ、同センター呼吸器外科では、再発防止の新たな治療法を開発。部分的に切除した肺の切り口の細胞をその場で調べる「術中迅速肺切離面洗浄細胞診」である。肺の切り口にがんが残っていないかを調べることで、取り残しをなくし、再発を防ぐ。この世界に先駆けた縮小手術法は、同科の強みといえる。

 「最近は画像診断機器の発達で、1センチ未満の小さな肺がんを見つけることができます。進行が遅い早期がんに対しても、縮小手術をすることで予後が良いことも確認しています」(児玉副院長)

 一般的に、肺がんは進行した状態で見つかりやすいといわれるが、2000年~09年の同科の患者は、およそ半数はリンパ節転移のないIA期肺がんで、その半数以上は2センチ以下の早期がん。そのがんの性質に合わせて治療を行い、完治を目指している。

 「肺がんは手ごわい敵です。がんの病態によって、縮小手術や拡大手術、放射線、抗がん剤などの治療を単独あるいは組み合わせて行うオーダーメード医療が不可欠といえます。患者さんによって、薬の効きやすさなどを調べて情報を保管し、それを治療に生かしています。将来は、採血をしただけで抗がん剤の効果や副作用の出やすさがわかるようになるでしょう」(児玉副院長)

 今年創立50周年の節目を迎え、病院の建て替えも決まった。新たな医療の構築に拍車が掛かることを期待したい。

 【データ】2008年度実績

 ★肺がん手術212件

 ★術中死亡0件

 ★転移性肺腫瘍56件

 ★術中肺切離面洗浄細胞診1131件(97年以降累計)

 ★病床数500床(呼吸器科60床)

 〔住所〕〒537-8511大阪府大阪市東成区中道1の3の3
TEL06・6972・1181

【日本の病院の実力】千葉県済生会習志野病院 日本人向け人工関節考案

高齢化社会に伴い股関節やひざ関節などの関節痛に悩む人が増えている。そんな関節障害に対して、独自の日本人向け人工関節を考案し、国内外に名をはせているのが千葉県済生会習志野病院千葉関節外科センターだ。

 「日本人は、股関節が浅く大たい骨がねじれているなど、世界の中でも珍しい骨格の特徴があります。そのため、従来のように諸外国で作られた人工関節を用いると、合わないことが多い。日本人に合った治療を行うために、人工関節の開発が不可欠だったのです」とは、同センター長を兼務する原田義忠副院長。

 ハーバード大学に留学中、人工関節の研究をしながら日本との違いを痛感した。そこで、帰国後、千葉大医学部准教授時代の1997年から、東京医科歯科大学や大阪大学、ヒューストン大の工学博士とのプロジェクトを発足し、日本人向けの人工関節を作り上げたという。すでに厚労省の承認も取り、臨床現場で幅広く活用されている。そして、今も次世代の人工関節をプロジェクトで考案中だ。

 「畳や正座といった日本人の生活様式で、人工関節を違和感なく使えるようにしています。日本人の医師と海外の工学博士がタッグを組んだのは初めてのこと。患者さんのQOL(生活の質)の向上をさらに上げることができるでしょう」

 こう話す原田副院長は、人工関節だけにこだわっているわけではない。関節鏡による治療や骨切り術による関節温存術も積極的に行い、その治療にも定評がある。

 「患者さんへのオーダーメード医療を心がけています。関節の故障は、高齢者の方ばかりではありません。若い方でも骨格の歪みやスポーツなどの影響、リウマチ疾患で関節を痛めます。患者さんとは長いおつき合いになりますが、私一人で患者さんを一生涯診ることはできません。そのため後輩の育成にも力を入れています」(原田副院長)

 股関節の治療は、一つ間違えると患者がうまく歩けなくなるなど、大きな支障を及ぼす。それを避けるには、外科医の手腕が問われる。原田副院長は、積極的に後輩の指導をすることで技術レベルの向上を図っているのだ。また、原田副院長の専門は股関節だが、千葉関節外科センターには、肩・上肢、下肢、スポーツグループのそれぞれ専門医がいるという。

 「次世代の医師へタスキを渡すために、もっと人材育成を強化したいと思っています。そして、世界トップレベルの技術を維持したい」(原田副院長)

 日本人特有の関節障害を封じ込めるために、今後も力を尽くすだろう。

〈データ〉2009年実績

★人工股関節113例

★人工股関節再置換術11例

★関節鏡による手術28

★寛骨臼回転骨6例

★内反骨切り術8例

★病床数45床

〔住所〕〒275-8580千葉県習志野市泉町1の1の1
TEL047・473・1281

【日本の病院の実力】心臓病 所沢ハートセンター「心カテーテル治療」では関東5指

国内で年間18万人以上もの命を奪う心臓病。心筋梗塞や狭心症などの発作がひとたび起こると、医療機関での迅速な治療を受けることが不可欠。しかし、大きな総合病院では、数の限られたICU(集中治療室)を脳神経外科など他科も使用しているため、循環器救急のために絶えずベッドを空けておくのは難しい。そんな状況を打開すべく、2005年に開院したのが所沢ハートセンターだ。

 「CCU(冠疾患集中治療室)や空きベッドの管理をして多くの患者さんを救命したかったのですが、以前勤務していた総合病院では名ばかりの心臓病センターで困難でした。循環器専門施設であれば、CCUや検査機器なども自由に使えます。専門の看護師や技師の体制も整えやすい。それで、開院することにしました」とは、桜田真己院長。

 同センターでは、24時間体制で患者を受け入れ、心筋梗塞や狭心症、心不全、不整脈などの循環器の病気を専門に治療している。心臓の冠動脈画像を外来で10分足らずの検査で映し出すマルチスライス(64列)CTなどの検査機器も充実。開院直後から患者は増加し、心臓の血管に細い管を入れて血流をよみがえらせる「心カテーテル治療」では、関東で5本の指に入るほどの実力を誇る。

 「対応が遅れると危険な患者さんを検査技師さんやナースが臨機応変に対応してくれますので、タイミングを逃さず治療できるのが利点です」

 こう話す桜田院長は、循環器専門施設の開院というひとつの夢を果たし、次なる目標に向かって突き進んでいた。そのひとつが、アンチエイジングセンターの開設。循環器疾患の早期発見・予防に特化して、2年後の開設を目指している。

 「心筋梗塞や狭心症は、動脈硬化が原因です。血管の内皮機能を調べる検査を導入していますが、若い人でも機能が落ちている人が多い。早期発見し予防する手段を考えています」

 もうひとつ、足の閉塞性動脈硬化症では、新たなレーザーを用いた治療法を開発した。20年前から研究を続けてきたそうで、今春には臨床試験をスタートさせる予定だ。

 「従来から用いられている血管を広げる金属のステントでは、足のように血管が外圧を受けやすい箇所では、ステントがつぶれやすいといった欠点がありました。それを解消したい」

 この治療法は、世界に発信できるメード・イン・ジャパンとして、初お目見えするという。循環器疾患を減らすため、桜田院長の取り組みに終わりはない。

 〈データ〉2009年実績

 ★心カテーテル治療818例

 ★ペースメーカー治療48例

 ★下肢動脈治療66例

 ★病床数19床

 〔住所〕〒359-1142埼玉県所沢市上新井2の61の11
 TEL04・2940・8611

【日本の病院の実力】脳疾患 顔面神経温存率100%を実現「虎の門病院」

脳の病気はいろいろだ。血管が詰まる脳梗塞、血管にこぶができる脳動脈瘤、良性でも命を脅かす脳腫瘍など、いずれも治療には高い技術が求められる。そんな脳疾患の治療で高い評価を得ているのが、虎の門病院脳神経外科。脳腫瘍の手術実績は日本一。間脳下垂体腫瘍の開頭せずに行う治療では、世界屈指の実力を誇る。

 「脳の病気は多彩なだけに、血管内治療や間脳下垂体腫瘍治療の部門を分け、専門性を高めています。その間を埋めているのが脳神経外科。それぞれの部門が信頼関係を築き、連携の強いのも特徴です」

 こう話す同科の臼井雅昭部長は、脳腫瘍のエキスパート。中でも、聴神経腫瘍の治療でずば抜けた技術力を発揮している。一般的に、聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍なのだが、聴神経は顔面神経のそばにあり、外科的治療によって腫瘍を取り除くと、耳が聞こえなくなるだけでなく、顔面麻痺といった後遺症が残る。しかし、臼井部長は、モニターを用いた手術方法で、顔面神経の温存率100%の実績を実現。

 「脳腫瘍は、良性であっても命にかかわるだけに、切除して命を助ければいいというのは、医師のおごりだと思います。治療によって麻痺などが生じて、その後の生活に支障が出るのを避けなければなりません。だからこそ、専門性を高める必要がある」(臼井部長)

 そんな同病院には、他病院から紹介された複雑な症例も集まっていた。患者のQOL(生活の質)を維持するために、どのような治療が適切なのか。良性腫瘍や脳血管疾患では、経過を見守りながら治療のタイミングを図ることも大切。専門分野に分かれても、独断で決めずに横の連携によってカバーしている。

 取材した日も、脳神経血管内治療科から臼井部長へ、カテーテル治療ではなく外科的治療が必要ではないかと、患者に関する相談の電話が入った。医師の信頼関係で築く最善治療の選択。それが、実績に結びついている。

 「私たちは、脊髄動静脈瘻(ろう)という動脈と静脈がつながって脊髄の虚血を起こす疾患も、整形外科の医師と連携して治療しています。その他に神経内科との協力体制も築いているのが強みといえます」(臼井部長)

 あらゆる角度から脳疾患を診る体制を作った臼井部長は、脳卒中センターを作りたいと思っている。今でも、救急患者を受け入れる体制はあるが、「充実させたい」という。「病院の評価は術数ではない」と断言する臼井部長は、患者にベストな治療を行うために今も奔走中だ。

<データ>2009年実績

★年間手術数(血管内/間脳下垂体を含む)660件

★脳腫瘍92件(内、聴神経腫瘍42件)

★血管障害34件

★下垂体部腫瘍(開頭以外)320件

★血管内治療111件

★病床数890床(内、脳外科関係45床)

〔住所〕〒105-8470東京都港区虎ノ門2の2の2(電)03・3588・1111

【日本の病院の実力】千葉大学医学部附属病院・脳神経外科 新しい脳腫瘍の治療法「内視鏡下頭蓋底手術」で注目

さまざまな医療分野で活用されている内視鏡は、脳腫瘍の治療でも応用され始めている。

 脳の中心部に過剰に脳脊髄液がたまる水頭症の治療や、脳内血腫の除去に有用とされる。また、脳の下に位置してホルモンをつかさどる下垂体、あるいは、鼻腔とその奥にある頭蓋骨底部に位置する頭蓋底(ずがいてい)部疾患の治療では、鼻の穴から内視鏡を挿入し、頭を開くことなく手術が可能。

 そんな「内視鏡下頭蓋底手術」は、世界的にも注目を集める新しい治療法で、脳神経外科と耳鼻咽喉科がタッグを組み、普及に努めているのが千葉大学医学部附属病院脳神経外科だ。

 「下垂体腫瘍では、従来、顕微鏡を用いた手術が盛んに行われていました。10年ほど前に神経内視鏡によって、より低侵襲で患者さんの回復も早い手術を行えるようになり、治療の普及に努めているところです。

私たちは、もともと耳鼻咽喉科医と協同作業で治療を行っておりました。その重要性を痛感しています。それを世界にも広めたい」

 こう話す同病院脳神経外科の佐伯直勝教授(62)は、下垂体腫瘍や頭蓋底手術のエキスパート。開頭手術はもとより、顕微鏡を用いた手術、さらには神経内視鏡手術へと、常に新しい技術の向上に貢献。

国内のみならず、イタリアの内視鏡頭蓋底カンファレンスに4年連続、講師で招かれるなど、世界的にも名をはせる。

 「医療器具の進歩だけでなく、画像診断の医療機器も発達したことで、新たなアプローチ法を生み出すことができるようになりました。脳神経外科と耳鼻咽喉科の高い知識と技術を駆使することで、これまで低侵襲の治療が困難だった頭蓋底の病気に対しても、治療が行えるようになったのです」(佐伯教授)

 水頭症に対する神経内視鏡手術は、同科の村井尚之講師が得意とするなど、脳神経外科領域のスペシャリティーの高い医師をそろえているのも特徴。

佐伯教授は、後進の育成に力を注ぎながら、アジア諸国の医師への技術の普及など、国際貢献にも積極的だ。特殊な治療法としてではなく、安全で確実な神経内視鏡手術を幅広く普及させるために尽力している。

 「神経内視鏡手術の未来は、ロボットを用いた手術にもつながるでしょう。しかし、下垂体腫瘍などの頭蓋底疾患は、患者さんの数が他の病気と比べて少ないため、専用の新たな医療機器はなかなか開発されないのが現状。とはいえ、そこで止まっていては進歩しません。

耳鼻咽喉科との協調も含め、持てる力を発揮することで、患者さんにとって有益となる新しい治療法が生まれると思っています」と佐伯教授。

 常に挑戦者として壁を乗り越え、新たな治療法を広めるために邁進(まいしん)中だ。 

 <データ>2012年実績
 ・手術総数335件
 ・脳腫瘍136件
 ・神経内視鏡45件
 ・血管障害23件
 ・病床数29床(病院病床数835床)
 〔住所〕〒260-8677 千葉県千葉市中央区亥鼻1の8の1
 (電)043・222・7171

【日本の病院の実力】声を甦らせるための診断・治療、リハビリまでの技術確立 国内唯一「声」の医療機関★国際医療福祉大学東京ボイスセンター   

声を出す器官の声帯は、1~1・5センチの大きさで、1ミリ以下のごくわずかな変化によっても、声の質に影響を及ぼす。原因としては、声帯ポリープや喉頭がん、けいれん性音声障害などさまざまだが、喉頭疾患や音声障害の診断と治療で国内ナンバーワンの実力を誇るのが、国際医療福祉大学東京ボイスセンター。

2001年に国内唯一のボイスセンターとして開設され、国内外から患者はもとより、技術習得を目指す若い医師たちが集まっている。

 「米国では、各地にノドの診療を専門に行うボイスセンターがありますが、日本にはありませんでした。喉頭疾患は、耳鼻咽喉科疾患の1割にも満たないため、日本では専門機関が作られなかったのです。そこで、治療の研究や教育を考えて開院しました」と話すのは、同大教授の福田宏之センター長(72)。約50年前、慶應義塾大学医学部で開発された喉頭顕微鏡下手術を進歩させた喉頭疾患治療の第一人者である。

 「声帯ポリープは、がんと異なり命に関わる病ではありません。しかし、声を職業としている人にとっては、治療がその後の人生を左右しかねず、常に高い技術力が求められています」(福田センター長)

 歌手、アナウンサー、能・狂言などの文化継承者、キャビンアテンダントや学校の先生など、声が重要になる職業は多く、わずかでも声に変化があれば仕事ができなくなりかねない。その原因を突き止め、元通りの声を甦らせるための診断・治療、リハビリまでの技術を確立している。

 また、声帯に細かい腫瘍が生じる喉頭乳頭腫、声帯にでんぷん質がたまる喉頭アミロイドーシスなど、他の病院では稀といわれる病気の患者も多い。これらの病気は、進行すると気道が閉塞されるため、適確な治療が予後のカギになる。そんな難治性疾患にも、福田センター長は新たな治療を模索し続けていた。さらに、「委縮した声帯の治療も、まだ確立されたものがない。それをなんとかしたい」という。

 福田センター長の治療への情熱は常に注がれている。他の病院でレーザー治療を受け、物理的性質が変わった声帯を元に戻す「瘢痕(はんこん)切除」や、性同一性障害の人の性差ある声を性に伴う声にすることなどにも取り組んでいる。

 「専門医療機関だからこそ、研究できる課題は多い。将来、一人でも多くの患者さんの役に立てればと思う」と福田センター長。新たな治療の確立に向けてまい進中だ。(安達純子)

 <データ>2009年実績(新患数)

 ☆声帯ポリープ治療数88人

 ☆声帯結節200人

 ☆反回神経麻痺54人

 ☆喉頭がん24人

 ☆病床数75床

医療法人財団順和会 山王病院内。
〔住所〕〒107-0052東京都港区赤坂8の10の16
(電)03・3402・3151

【日本の病院の実力】「肝がん」早期発見&治療で医学界をリード 近畿大学医学部附属病院  

ウイルス性肝炎の影響で増え続けている肝がん。その治療では、特殊な針を刺してがんを焼灼するラジオ波焼灼療法や、がんにつながる血管を塞ぐ肝動脈塞栓術などが広く普及しているが、かつては外科的手術しか根治できなかった。

また、血管が張り巡らされた巨大な臓器ゆえに、早期の肝がんを見つけるのも困難。それを打破したのが、近畿大学医学部附属病院消化器内科だ。肝がんの早期発見と治療において、世界に先駆けた方法を開発し、リーダーとして君臨している。

 「最先端医療を行えば行うほど、問題点がはっきりと見えて、ふとアイデアが浮かぶのです」

 こう話す同科の工藤正俊教授は、これまで数々の診断法や治療法を生み出し、標準技術として世に広めている。たとえば、肝硬変が進んだ状態の肝がんを手術で切除する場合には、正常な肝機能をできるだけ残す必要がある。

どこまで切除できるのか。その肝機能の予備力を診断できる方法を見いだし、1989年にノーベル医学賞につながる米国核医学会バーソン・ヤロー賞を受賞した。

 また、99年には日本初のラジオ波焼灼療法を成功させ、これまで3000例以上に行っている。肝動脈塞栓術は4000例以上。肝がんの早期発見法として、2007年には新たな造影超音波検査法も開発した。

 「5ミリ程度の肝がんは、超音波だけでは見つかりにくい。07年に承認された造影剤を2回用いると、再発したがんだけでなく、小さながんも100%見つかる」(工藤教授)

 微小の肝がんを見つける方法はそれまでなかっただけに、学会で発表したところ大反響を呼んだという。今では、その造影剤を使える医療機器があれば、どこの病院でも行える検査法となっている。

新たに見いだした検査法や治療法を瞬く間に広めてしまう“工藤マジック”。昨年には、北米肝臓学会で日本人としては20年ぶりに講演を行うなど、国内外での活動で休む暇もないほど。しかし、工藤教授は、「診断も治療も現状に満足していない」ときっぱりいう。

 「今取り組んでいるのは、肝がんに対する分子標的薬です。がん細胞内のシグナル伝達を遮断する化学療法で、余命数カ月の肝がん患者さんを助けることができる。効く人と効かない人を見極めているところです」

 治療や診断で壁にぶつかっても、元気になった患者の笑顔を支えに、乗り越え続ける。肝がんで亡くなる人がゼロになるまで、工藤マジックに終わりはない。

<データ>2008年実績

★ラジオ波焼灼療法405件

★肝動脈塞栓療法332件

★動注化学療法102件

★造影超音波検査620件

★インターフェロン治療(新規導入件数)251例

★病床数985床

〔住所〕〒589-8511大阪府大阪狭山市大野東377の2
(電)072・366・0221

【日本の病院の実力】心臓病 イムス葛飾ハートセンター   

高齢化や生活習慣によって狭心症や心筋梗塞などの心臓病は増加傾向。いつ何時発症するかわからない。そんな患者を救うために昨年3月にオープンしたのが、イムス葛飾ハートセンター。葛飾区、江戸川区、足立区を含めた東京北東部100万人の医療圏をカバーし、365日24時間体制で治療を行い、関東でトップテンに入る実力を誇る。

 「1人でも多くの患者さんを救うには、適確な診断と治療により、患者さんが早く元気に退院することが望ましい。その体制づくりを1年かけて行いました」とは、吉田成彦院長。

 もともとこの医療圏は、2000年に心臓血管外科と循環器内科を設置した新葛飾病院が担っていた。それまでカバーする基幹病院がなかったため患者は急増。そこで、急性期の患者の診断・治療を行いやすくするため、イムス葛飾ハートセンターが独立して開設された。

手術室2室、カテーテル室2室を設置し、救急車の搬送受け入れだけでなく、病院との連携によりドクターカーで患者を迎えに行くこともあるという。それも、東京に限らず福島県や北関東に及ぶ。

 「遠方の患者さんは、病院との“病病連携”。開業医の先生との“病診連携”もあります。連携があるからこそ、患者さんをスムーズに受け入れることができています」(吉田院長)

 さらに、ベッド数が50床の小規模ながら20人の医師が常勤。一般的に外科医不足が危惧されているが、若い医師も心臓血管外科技術を学ぶために集まっている。それでも吉田院長は、「循環器内科医をもっと増やしたい」という。

なぜなら、目指すは患者中心の医療だからだ。たとえば、狭心症や心筋梗塞では、血管カテーテル治療と手術の2つの選択肢がある。どちらの治療が良いのか、今も医師同士の活発なコミュニケーションで選択し、チーム医療を実現している。それをより強化したいというのである。

 「私たちの強みは患者さんを中心としたチーム医療。医師や看護師は、患者さんを家族のように思い、事務職のスタッフは1分1秒でも早く受診できるようにする。4月からまたスタッフが増えますが、それをより徹底したい」

 こう話す吉田院長は、母親が狭心症を患っていたことから心臓血管外科医を目指した。それだけに、患者に対して「家族のように」との思いは強い。そして、1人でも多くの心臓病の人を救うために、「将来的には病床数を増やせれば」という。取り組みは今後も続く。

<データ>2009年実績(2009年3月~12月)

★心臓手術総数449件

★冠動脈バイパス術158件

★血管カテーテル治療499件

★病床数50床

〔住所〕〒124-0006東京都葛飾区堀切3の30の1
(電)03・3694・8100

【日本の病院の実力】理想は「がんのよろず相談」 帝京大学医学部附属病院帝京がんセンター 

がん告知は患者にとって大きな負担となる。

 病気に対する不安や恐怖だけでなく、社会生活を維持できるかなど人生に影を落とす。しかし、従来は相談できる場所もわからず、孤独な闘いを強いられた人も多い。

そんな状況を一変させるべく、2008年に地域がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて設立されたのが、帝京大学医学部附属病院帝京がんセンターだ。

 院内がん登録をまとめ、化学療法を行い、がん相談支援室や緩和ケアチームによって患者をサポートしている。つまり、包括的にがん患者の診療・支援ができる体制づくりを実現した。

 「1人の患者さんに対して、院内のそれぞれの科の連携を良くするだけでなく、地域の連携も強めています」とは、江口研二センター長。

 現在、各診療科が集まって症例と治療法を検討する定期カンファレンスを実施しているのはもとより、化学療法についても、医師個人の考えではなく、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を行う委員会を発足させた。

また、昨年4月からは、痛みなど患者の療養に大きな支障となっているケースについて、地域ぐるみでサポートできる緩和ケアチームの活動を開始。患者のさまざまな相談に乗るがん支援相談室も設置した。

 「がん患者さんの中には、ひとつの診療科では対応できない症例もあります。その方々が行き場を失うようなことは避けなければなりません。相談支援を充実させることは、不可欠といえます」

 こう話す江口センター長は、患者から直接相談されるケースも多い。しかも、他の病院で検査結果を聞いた患者が、「どうしたらよいのでしょう」という話だ。一般的に診療した医師が別の病院を紹介するケースは珍しくはないが、第三者的な立場で江口センター長は相談に乗っていた。

理想は、「がんのよろず相談」という。そのために、ひとつの治療に秀でた医師だけでなく、あらゆるがんに精通し、横の連携を取れる「がんの総合内科医」を養成している。

 「生活習慣病では、地域の医療機関から大学病院に紹介された患者さんは、その後、地域の医療機関に戻って診療を受けられる仕組みがあります。

しかし、がんにはそれがない。患者さんにとっては、地域で支える仕組みも必要です。そのため、全国のがん医療を地元で支える『コミュニティー オンコロジスト』を養成したい」(江口センター長)

 がん患者を支える取り組みは今後も続く。

 〈データ〉2009年実績

 (5月~12月末まで)

 ★外来化学療法のべ2510件

 ★がん相談支援のべ2171件

 ★院内がん登録室登録件数1282件

 ★腫瘍内科初診患者数201人

 ★腫瘍内科病床数20床/外来化学  療法20床

 〔住所〕〒173-8606 東京都板橋 区加賀2の11の1
TEL03・3964・1211

【日本の病院の実力】脳疾患 顔面神経温存率100%を実現「虎の門病院」

血管が詰まる脳梗塞、血管にこぶができる脳動脈瘤、良性でも命を脅かす脳腫瘍など、いずれも治療には高い技術が求められる。そんな脳疾患の治療で高い評価を得ているのが、虎の門病院脳神経外科。脳腫瘍の手術実績は日本一。間脳下垂体腫瘍の開頭せずに行う治療では、世界屈指の実力を誇る。

 「脳の病気は多彩なだけに、血管内治療や間脳下垂体腫瘍治療の部門を分け、専門性を高めています。その間を埋めているのが脳神経外科。それぞれの部門が信頼関係を築き、連携の強いのも特徴です」

 こう話す同科の臼井雅昭部長は、脳腫瘍のエキスパート。中でも、聴神経腫瘍の治療でずば抜けた技術力を発揮している。一般的に、聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍なのだが、聴神経は顔面神経のそばにあり、外科的治療によって腫瘍を取り除くと、耳が聞こえなくなるだけでなく、顔面麻痺といった後遺症が残る。しかし、臼井部長は、モニターを用いた手術方法で、顔面神経の温存率100%の実績を実現。

 「脳腫瘍は、良性であっても命にかかわるだけに、切除して命を助ければいいというのは、医師のおごりだと思います。治療によって麻痺などが生じて、その後の生活に支障が出るのを避けなければなりません。だからこそ、専門性を高める必要がある」(臼井部長)

 そんな同病院には、他病院から紹介された複雑な症例も集まっていた。患者のQOL(生活の質)を維持するために、どのような治療が適切なのか。良性腫瘍や脳血管疾患では、経過を見守りながら治療のタイミングを図ることも大切。専門分野に分かれても、独断で決めずに横の連携によってカバーしている。

 取材した日も、脳神経血管内治療科から臼井部長へ、カテーテル治療ではなく外科的治療が必要ではないかと、患者に関する相談の電話が入った。医師の信頼関係で築く最善治療の選択。それが、実績に結びついている。

 「私たちは、脊髄動静脈瘻(ろう)という動脈と静脈がつながって脊髄の虚血を起こす疾患も、整形外科の医師と連携して治療しています。その他に神経内科との協力体制も築いているのが強みといえます」(臼井部長)

 あらゆる角度から脳疾患を診る体制を作った臼井部長は、脳卒中センターを作りたいと思っている。今でも、救急患者を受け入れる体制はあるが、「充実させたい」という。「病院の評価は術数ではない」と断言する臼井部長は、患者にベストな治療を行うために今も奔走中だ。

<データ>2009年実績

★年間手術数(血管内/間脳下垂体を含む)660件

★脳腫瘍92件(内、聴神経腫瘍42件)

★血管障害34件

★下垂体部腫瘍(開頭以外)320件

★血管内治療111件

★病床数890床(内、脳外科関係45床)

〔住所〕〒105-8470東京都港区虎ノ門2の2の2(電)03・3588・1111

【日本の病院の実力】脳疾患 顔面神経温存率100%を実現「虎の門病院」

血管が詰まる脳梗塞、血管にこぶができる脳動脈瘤、良性でも命を脅かす脳腫瘍など、いずれも治療には高い技術が求められる。そんな脳疾患の治療で高い評価を得ているのが、虎の門病院脳神経外科。脳腫瘍の手術実績は日本一。間脳下垂体腫瘍の開頭せずに行う治療では、世界屈指の実力を誇る。

 「脳の病気は多彩なだけに、血管内治療や間脳下垂体腫瘍治療の部門を分け、専門性を高めています。その間を埋めているのが脳神経外科。それぞれの部門が信頼関係を築き、連携の強いのも特徴です」

 こう話す同科の臼井雅昭部長は、脳腫瘍のエキスパート。中でも、聴神経腫瘍の治療でずば抜けた技術力を発揮している。一般的に、聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍なのだが、聴神経は顔面神経のそばにあり、外科的治療によって腫瘍を取り除くと、耳が聞こえなくなるだけでなく、顔面麻痺といった後遺症が残る。しかし、臼井部長は、モニターを用いた手術方法で、顔面神経の温存率100%の実績を実現。

 「脳腫瘍は、良性であっても命にかかわるだけに、切除して命を助ければいいというのは、医師のおごりだと思います。治療によって麻痺などが生じて、その後の生活に支障が出るのを避けなければなりません。だからこそ、専門性を高める必要がある」(臼井部長)

 そんな同病院には、他病院から紹介された複雑な症例も集まっていた。患者のQOL(生活の質)を維持するために、どのような治療が適切なのか。良性腫瘍や脳血管疾患では、経過を見守りながら治療のタイミングを図ることも大切。専門分野に分かれても、独断で決めずに横の連携によってカバーしている。

 取材した日も、脳神経血管内治療科から臼井部長へ、カテーテル治療ではなく外科的治療が必要ではないかと、患者に関する相談の電話が入った。医師の信頼関係で築く最善治療の選択。それが、実績に結びついている。

 「私たちは、脊髄動静脈瘻(ろう)という動脈と静脈がつながって脊髄の虚血を起こす疾患も、整形外科の医師と連携して治療しています。その他に神経内科との協力体制も築いているのが強みといえます」(臼井部長)

 あらゆる角度から脳疾患を診る体制を作った臼井部長は、脳卒中センターを作りたいと思っている。今でも、救急患者を受け入れる体制はあるが、「充実させたい」という。「病院の評価は術数ではない」と断言する臼井部長は、患者にベストな治療を行うために今も奔走中だ。

<データ>2009年実績

★年間手術数(血管内/間脳下垂体を含む)660件

★脳腫瘍92件(内、聴神経腫瘍42件)

★血管障害34件

★下垂体部腫瘍(開頭以外)320件

★血管内治療111件

★病床数890床(内、脳外科関係45床)

〔住所〕〒105-8470東京都港区虎ノ門2の2の2(電)03・3588・1111

「7つのポイント」で選ぶ抗がん剤治療のいい病院

手術や放射線治療と同じように、抗がん剤治療も患者が医療機関を選ぶ時代になってきた。

 ここでは、いい抗がん剤治療を受けられる病院選びのポイントを七つ示した。

「(1)外来で抗がん剤治療が受けられる」
「(2)がん薬物療法専門医(中略)チームワークがとれている」
「(3)患者の希望を聞き、適切な方法を提案してくれる」、とくに再発がんや進行がんでは重視したい項目だ。
「(4)治療に腫瘍内科医がかかわる」ことも大事なポイントだ。

腫瘍内科医とはその名のとおり、がん治療に詳しい内科医だ。海外では抗がん剤治療のほか、全身管理や治療方針を決定するなど、がん治療のキーパーソンとなっている。また、その患者に合ったがん医療をコーディネートする役割も担う。

 そして、この腫瘍内科医の役割を主に担っているのが、日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」だ。近畿大学病院腫瘍内科教授の中川和彦医師は言う。

「腫瘍内科ができたのは最近のことで、以前はその臓器を担当する外科医が抗がん剤治療も担当していました。いまもその流れは続きますが、近年は抗がん剤治療の進歩などもあり、専門性が増したことから、腫瘍内科に任せる医療機関も出てきています」

 現在、抗がん剤治療を腫瘍内科医が担当する場合、「主治医としてかかわる」パターンと、「主治医はがんのある臓器を専門にする外科医や内科医で、腫瘍内科医が一緒にかかわる」パターンがある。

 理想は腫瘍内科医が主治医となり、必要に応じて臓器専門の外科医や内科医が一緒に治療をすることだが、腫瘍内科医の数は限られている。それがむずかしい場合でも、後者のように腫瘍内科医が抗がん剤治療にかかわっていたほうがよい。

「抗がん剤治療に詳しい医師がいる医療機関とそうでないところとでは、抗がん剤治療の質が大きく違ってきます。抗がん剤治療は1回の通院で終わるものではなく、長期間付き合う必要のある医療です。そういうことも考えて、ご自身や家族でしっかり信頼できる医療機関を選んでください」(中川医師)

 手術と抗がん剤治療を別の医療機関で受けることは、めずらしいことではない。遠方で手術を受けた場合は、自分の住む地域に条件を満たした医療機関があるか、手術を受けた施設の腫瘍内科医やソーシャルワーカーに聞いてみるのも手だ。別の医療機関にいる腫瘍内科医に、セカンドオピニオンをとってもよいだろう。

 では、外科医の考えはどうなのか。消化器外科医から腫瘍内科医になった県立広島病院(広島市)臨床腫瘍科主任部長の篠崎勝則医師は、外科医から腫瘍内科医への橋渡し的な役割も果たす。

自身はがん薬物療法専門医の資格を持つが、資格がないまま抗がん剤治療を実施する外科医を多く知る。

「実は“専門の臓器については手術も、抗がん剤治療も詳しくありたい”と思って、抗がん剤治療を学んでいる外科医もいます。

しかし、抗がん剤治療の質を上げたり、充実したチーム医療の体制を整えたりするための時間が、外科医にはありません。結果的に、そこまで気配りができないのが現状です」(篠崎医師)

 このほかには、治療が長期間にわたることを考えると、「(5)自宅との距離が近いなど、苦痛なく通院できる」「(6)スタッフが寄り添ってくれる」医療機関を選ぶことも大切だ。

「(7)治験
をやっている」病院も、いい抗がん剤治療を受けるための参考になる。治療とは臨床試験のことで、新薬の有効性や副作用の状況を試験し、保険適用にするかを検討するためのものだ。

自分のがんに該当する治験があり、条件が当てはまっていたら、その治験に参加することができる。

 治験を実施するためには、施設環境やスタッフ数など、いくつかの基準を満たさなければならない。つまり、治験を受ける・受けないは別としても、抗がん剤治療を受ける施設としては、合格点をもらっていると考えていいだろう。

【日本の病院の実力】腰痛、椎間板ヘルニアなどに特化 板橋中央総合病院

つらい自覚症状はいろいろあるが、厚労省『平成19年国民生活基礎調査』によれば、男性の第1位は「腰痛」。中でも、足の激痛やしびれを伴う椎間板ヘルニアは代表的な脊椎脊髄の病気だ。その痛みを取る、あるいは、根治的な治療で定評を持つのが、板橋中央総合病院脊椎脊髄センター。患者の増加に伴い2008年に同病院の整形外科からスタッフを専従させて新たにスタートした。

 「患者さんは痛みを早くなんとかしてほしいと希望されます。それに応えると同時に、迅速に行う適確な診断も必要。椎間板ヘルニアと思われていても、別の病気が潜んでいることがあるからです。それらのことが、センターの開設でより行いやすくなりました」

 こう話す中小路拓センター長は、都内では6人しかいない日本整形外科学会認定の脊椎内視鏡下手術・技術認定医の1人。

椎間板から飛び出して神経を圧迫しているヘルニアを除去するには、腰の後ろを7センチほど切開する手術が一般的だ。それを15ミリの小さな切開で内視鏡を挿入して腰椎の隙間から治療を行う。

入院期間は4日程度。手術後の痛みも少なく、高齢者でも行えるのも利点といえる。 その治療を行える数少ない医師の一人である中小路センター長だが、内視鏡手術にのみこだわっているわけではない。

痛みを取るため、「持続硬膜外ブロック」という治療も積極的に行っている。5日間ほどの入院による疼痛の集中治療だ。

 「患者さんは歩けないほど痛くても必ずしも手術を望むわけではありません。『持続硬膜外ブロック』は根本的治療ではありませんが、ほとんどの患者さんの痛みは軽快し、約半数の人は、その後の再発もなく手術を行わずに済んでいます。

これは、患者さんを紹介してくれる診療所の先生方と“病診連携”の体制を取っているからこそ、行える治療法ともいえます」(中小路センター長)

 痛みの取れた患者は、再び診療所で定期的に状態を診てもらう。異変があれば、また脊椎脊髄センターを受診する仕組み。

このような医師同士の連携は、信頼関係があるからこそ築かれたものだ。その連携によって、椎間板ヘルニアの影に潜む解離性動脈瘤や脊髄変性疾患など、別の病気がセンターで見つかることもしばしば。腰の痛みは多様で、原因疾患を見極める診断技術も、センターでは確立している。

 そんな中小路センター長の夢は、「当院は臨床研修指定病院なので、脊椎外科専門医を少しでも多く育て、地域医療に貢献したい」。日々の診断・治療に加え、一人でも多くの専門医を育てるためにまい進中だ。(安達純子)

〈データ〉2009年実績

★整形外科手術総数608件

★脊椎外科手術115件(内視鏡を用いた腰椎椎間板ヘルニア摘出術18件)

★持続硬膜外ブロック30件

★病床数579床〔住所〕〒174-0051東京都板橋区小豆沢2の12の7
TEL03・3967・4275

【日本の病院の実力】末期患者の「組織縮小、進行抑制」 表参道吉田病院ヨシダクリニック・東京

手術、化学療法(抗がん剤)、放射線治療に続く「第四のがん治療」として注目される免疫治療。九州・熊本で、いち早くこのがん免疫治療に取り組んだのが表参道吉田病院だ。

 同院総院長の吉田憲史医師は、九州大学医学部を卒業後、熊本大学大学院でがん転移の抑制メカニズムや免疫細胞治療の研究を行う一方、臨床においてもその知識を生かしたがん治療に取り組んできた。

 中でも同院におけるがん治療の柱となるのが「活性化自己リンパ球・NK細胞免疫治療」。患者の血液から免疫細胞であるリンパ球を取り出し、増殖活性化させて再び患者の体内に戻すという治療法。勢力を取り戻した免疫細胞が、体内でがん組織を攻撃するというものだ。

 患者自身のリンパ球を使うためアレルギーや副作用等の危険性もない。安全で苦痛のない治療法として、近年全国でこれを導入する医療機関が増えている。

 そんな中で同院の最大の特徴は、診断、採血、リンパ球の増殖活性化、患者への再注入、そしてその後のフォローアップまでの全工程を、すべて院内で完結するという点だ。

 熊本の本院には大学の研究施設レベルのCPC(細胞加工センター)を持ち、専門スタッフが免疫細胞の増殖作業に当たっている。

 これについて吉田医師は、「免疫細胞の増殖活性化の速度は個体差がある。毎日見比べることで患者の体に戻すベストのタイミングを探ることができる」と、この工程を外部機関に出さずに、自院で行うことへのこだわりを見せる。

 主として手術や化学療法など従来のがん治療ができなくなった患者を対象としているため、状況的に厳しい段階で治療を始めることが多いこの治療だが、それでも同院のデータを見ると、全体の47%に「がん組織の縮小」または「進展の抑制」が見られている。普通であれば「あきらめる段階」の患者を対象としての数字だけに、この治療にかかる期待の大きさも頷ける。

 同院では東日本エリアの患者のために東京・中央区にサテライト機関「ヨシダクリニック・東京」を開設。ここで採血した患者の血液はその日のうちに熊本に空輸。本院と同じ工程で免疫細胞の増殖工程を経て、再注入の際は再び東京のクリニックに空輸されてくる。

 最近は韓国や台湾など海外からの受診者も増加。がんの脅威に国境はない。「第四のがん治療」に、国際的なニーズは今後さらに高まりそうだ。(長田昭二)

<データ>2009年実績

★外来患者数2万3188人、入院患者数1322人

★活性化リンパ球がん免疫治療受診者数94人(肺がん21例、乳がん14例、前立腺がん3例、胃がん5例、食道がん4例、大腸がん9例、肝がん3例、その他のがん35例)

★病床数122床(東京は無床)

■本院/熊本市北千反畑町2の5(電)096・343・6161

■分院/東京都中央区日本橋蛎殻町1の29の9

(電)03・3663・6688

【日本の病院の実力】脳卒中 埼玉医科大学国際医療センター脳卒中センター  

脳卒中には、血栓が詰まる、脳動脈瘤の破裂、脳内出血と原因はいろいろある。それを素早く確認して適切な治療を行うことが不可欠。そのために、理想的な医療技術と環境を整え、国内外のお手本になっているのが、2007年4月にスタートした埼玉医科大学国際医療センター脳卒中センターだ。脳血管内治療の実力は関東トップを誇る。

 「患者さんをなるべく傷つけない低侵襲治療を安心かつ安全に実現するには、人材育成に加えて環境整備も必要です。丁度、センターを新たに設立する機会があったので、その理想を形にしました」

 こう話す脳血管内治療科の石原正一郎診療科長(脳神経外科教授)は、同センターの設計を手掛けた。たとえば、手術室。マルチCTスキャン装置、脳血管造影装置、脳外科用顕微鏡を配し、脳血管内手術と開頭手術が必要に応じて行える「統合型手術室」で、患者はベッドから移動することなく検査や治療を受けられる。

 また、救急車が横付けされる1階の救命救急センター内にも、血管内治療室を設置。脳血管造影検査はもとより、くも膜下出血などの救急患者に対する治療も迅速に行えるようにした。さらに、病棟、外来、読影室、カンファレンスルームで、医師や看護師、技師などのスタッフが、いつでも手術状況を見ることができる工夫も。

 「クオリティーを上げるにはマンパワーも必要。手術をしていない医師やスタッフも、常に状況を把握することで、日頃から迅速な判断ができます。また、手技を検証することは、技術レベルの向上に役立つのです」

 こう話す石原科長は、かつて埼玉県内における脳血管内治療の少なさを解消したいと考えていた。医師もいない、医療施設も整っていない。もちろん患者は治療を選ぶことは不可能だ。それを同センター設立で一気に解消した。

 「地域のニーズに応えた医療の提供は非常に大切なことです。私はそれを医師である父から学びました」(石原科長)

 1960年代、まだ専門の皮膚科医がほとんどいなかった新宿区に皮膚科専門クリニックを開業した父親は、地域の人々から感謝された。その姿勢を心に刻み、脳血管内治療で石原科長は貫いていた。しかし、夢はグローバル。

 「地域医療といっても、私たちが取り組んでいることは最先端医療。海外でも、日本のクオリティーの高さを広めたい」

 情熱と高い志で誰もが認める世界トップの診断・治療を目指している。

〈データ〉

2009年実績

★脳血管造影検査700件

★脳血管内手術件数259件

★脳動脈瘤119件

★脳血管拡張術/ステント66件

★脳動静脈奇形38件

★病床数600床

〔住所〕〒350-1298埼玉県日高市山根1397の
1TEL042・984・4111

【日本の病院の実力】心臓病 イムス葛飾ハートセンター  

齢化や生活習慣によって狭心症や心筋梗塞などの心臓病は増加傾向。いつ何時発症するかわからない。そんな患者を救うために昨年3月にオープンしたのが、イムス葛飾ハートセンター。葛飾区、江戸川区、足立区を含めた東京北東部100万人の医療圏をカバーし、365日24時間体制で治療を行い、関東でトップテンに入る実力を誇る。

 「1人でも多くの患者さんを救うには、適確な診断と治療により、患者さんが早く元気に退院することが望ましい。その体制づくりを1年かけて行いました」とは、吉田成彦院長。

 もともとこの医療圏は、2000年に心臓血管外科と循環器内科を設置した新葛飾病院が担っていた。それまでカバーする基幹病院がなかったため患者は急増。そこで、急性期の患者の診断・治療を行いやすくするため、イムス葛飾ハートセンターが独立して開設された。手術室2室、カテーテル室2室を設置し、救急車の搬送受け入れだけでなく、病院との連携によりドクターカーで患者を迎えに行くこともあるという。それも、東京に限らず福島県や北関東に及ぶ。

 「遠方の患者さんは、病院との“病病連携”。開業医の先生との“病診連携”もあります。連携があるからこそ、患者さんをスムーズに受け入れることができています」(吉田院長)

 さらに、ベッド数が50床の小規模ながら20人の医師が常勤。一般的に外科医不足が危惧されているが、若い医師も心臓血管外科技術を学ぶために集まっている。それでも吉田院長は、「循環器内科医をもっと増やしたい」という。なぜなら、目指すは患者中心の医療だからだ。たとえば、狭心症や心筋梗塞では、血管カテーテル治療と手術の2つの選択肢がある。どちらの治療が良いのか、今も医師同士の活発なコミュニケーションで選択し、チーム医療を実現している。それをより強化したいというのである。

 「私たちの強みは患者さんを中心としたチーム医療。医師や看護師は、患者さんを家族のように思い、事務職のスタッフは1分1秒でも早く受診できるようにする。4月からまたスタッフが増えますが、それをより徹底したい」

 こう話す吉田院長は、母親が狭心症を患っていたことから心臓血管外科医を目指した。それだけに、患者に対して「家族のように」との思いは強い。そして、1人でも多くの心臓病の人を救うために、「将来的には病床数を増やせれば」という。取り組みは今後も続く。

<データ>2009年実績(2009年3月~12月)

★心臓手術総数449件

★冠動脈バイパス術158件

★血管カテーテル治療499件

★病床数50床

〔住所〕〒124-0006東京都葛飾区堀切3の30の1
(電)03・3694・8100

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