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【日本の病院の実力】耳原総合病院外科 最先端の腹腔鏡下手術で鼠径ヘルニアの再発防ぐ

国内男性のおよそ3割に発症すると言われる脱腸。正式名称は「鼠径(そけい)ヘルニア」と言い、脚のつけ根の鼠径部周辺で、皮下の筋肉から腹膜や腸の一部が飛び出す病気である。

腹壁の弱い部分と、筋力の低下により、腹圧をかけたときに飛び出しやすいが、繰り返し起こると指で押しても引っ込まず、痛みなども伴うようになる。

 治療法は手術しかない。近年、飛び出す部分の皮下に、特殊なメッシュで補強する手術が盛んに行われている。

その一方で、腹部に5ミリ程度の3つの小さな孔を開けて、内視鏡などが先端についた医療機器を用い、内側からメッシュで補強する腹腔鏡下ヘルニア手術が注目の的だ。欧州では2009年にヘルニアに関する治療ガイドラインに収載された。

 そんな腹腔鏡下ヘルニア手術に力を注いでいるのが耳原(みみはら)総合病院外科。ヘルニア専門外来を3年前に設置し、治療の普及にも尽力している。

 「腹腔鏡下ヘルニア手術では、内視鏡によって、おなかの内側からヘルニアの様子が確認できます。確実に再発を予防する治療を行えるのが利点。

しかし、腹腔鏡下ヘルニア手術は、国内では鼠径ヘルニア手術の約10%程度と推計されており、まだ少ない。一般の方々にも、新たな治療法があることを知ってもらいたいと思っています」

 こう話す同科の山口拓也部長(46)は、20年以上も前から大腸がんなどの消化器疾患で、腹腔鏡下手術を行ってきた。一方で、鼠径ヘルニアの治療では、さまざまなメッシュが開発される中、最先端の治療にも取り組んでいる。

 腹腔鏡下ヘルニア手術を行うようになったのは、欧州でのガイドライン収載が決まってから。ヘルニア手術には、たくさんの方法があり、そのひとつとして腹腔鏡下ヘルニア手術も加えた。

 「患者さんに喜んでもらえて、痛くなく、最高の治療結果を得られることを常に考えています。腹腔鏡下ヘルニア手術は、原則的には2泊3日の入院治療ですが、他の治療法と比べて痛みが起こりにくい。

『おおきに』と患者さんに笑顔で言われると、導入して良かったとつくづく感じます」(山口部長)

 病態によって最適な治療法を行えるように、たくさんの治療法の選択肢を持っているのが強み。ただし、新しい治療法を導入するに当たっては、慎重な姿勢も崩さない。個人に合わせたオーダーメード医療として、本当に最適な方法なのか。その考えが頭から消えることはない。

 「新しい治療法は、客観的に見てどれもが患者さんに大きなメリットをもたらすとはいえません。良い治療法は、歴史的に見ても存続する。そんな治療法を探し、若い医師を育て、患者さんもハッピーになれる医療を提供していきたいと思っています」と山口部長。

 歴史的な治療法にこだわりながら、最新の治療法に挑んでいる。 

<データ>2012年実績
・手術総数540件
・腹壁/ヘルニア手術113件
・鼠径ヘルニア腹腔鏡下手術54件
・病院病床数386床
〔住所〕〒590-8505 大阪府堺市堺区協和町4の465
 (電)072・241・0501

【日本の病院の実力】東京厚生年金病院旅行外来 海外の感染症情報などを渡航者へ提供★東京厚生年金病院旅行外来

近年は、出張や駐在で渡航する人も多い。

 しかし現地には、コレラや狂犬病など命に関わるさまざまな感染症が存在する。さらには心筋梗塞などの病気を患ったとき、あるいは、生活習慣病などの持病を抱えているときに、どの医療機関を受診すれば良いかなど、渡航期間が長くなればなるほど、事前準備は欠かせない。

 そんな渡航者を支え続けているのが、東京厚生年金病院旅行外来である。2002年に開設され、渡航前のワクチン接種や帰国後の治療はもとより、渡航先で発症しやすい病気や医療機関の情報提供など、トータルケアを行う国内では数少ない特殊外来だ。

 「海外で年間500~600人の日本人が亡くなり、その約6割は病気によるものです。感染症の有無や現地の医療機関の情報だけでなく、食生活での注意点など、渡航時に知っておくべきことはいろいろあります。総合的な情報を含め、渡航に関わる医療を提供できる体制を整えています」

 こう話す同外来責任者の溝尾朗部長(49)は、日本旅行医学会理事。シンガポール日本人会診療所での3年間の診療経験を生かし、旅行外来を開設した。

 国内には、マラリアなどの感染症を専門とする医師はいるが、各国の現地医療などに詳しい医師はまだ少ないそうだ。そこで、溝尾部長は時間を見つけては、出張などで日本人が多く行く場所へ出向き、自ら医療機関や食生活事情などをチェックしている。

 「大都市には、日本人や外国人向けのクリニックはあるのですが、これから発展するような都市にはない場合もあります。医療機関のサービスや利用法も異なり、実際に行ってみないとわからないことは多い。それを踏まえた上で、現地でどのようにすれば良いのか、情報提供をしているのです」(溝尾部長)

 逆に、外国人が日本へ来たときにも、病気になって戸惑うことは少なくない。加えて、日本の高度な医療を受けたいが、どうしたら良いのかわからないという人もいる。言葉が通じず、医療事情がわからないのは、渡航する日本人も、日本へ来る外国人も変わらない。

 そんな人々のサポートも溝尾部長は行っている。問診がスムーズに行えるように現在、7カ国語に対応したアプリケーションソフト「ドクターパスポート」を株式会社マイスと共同開発中だ。

 「現地視察を通して、各国の医療機関との連携を深めています。できれば、アジアを中心とした世界ネットワークを広げ、旅行医学の交流を深めたいと思っています。そのためにも、国内の大学に旅行医学講座を作ってもらいたい。日本にはまだないのです」

 世界的に見て遅れ気味ともいえる日本の旅行医学。それを発展させるために尽力中だ。 (安達純子)

<データ>過去10年実績

・延べ外来患者数約2000人(内訳/渡航先アジア52%、北米18%、アフリカ9%、目的では長期旅行や駐在40%、短期旅行や出張31%、留学17%、旅行後12%)

・病院病床数520床

〔住所〕〒162-8543 東京都新宿区津久戸町5の1(
電)03・3269・8111

【日本の病院の実力】治療法を進歩させ国際的情報発信拠点に 東京慈恵会医科大学森田療法センター  

パニック障害や強迫性障害などの神経症治療のひとつ「森田療法」は、1919年に慈恵医科大精神神経科の森田正馬教授が創始し、今や日本だけでなく海外へも広がっている。

 その治療を進歩させ、国際的な情報発信拠点となっているのが、東京慈恵会医科大学附属第三病院にある同大学森田療法センター。2007年に設備をリニューアルし、神経症のみならず、気分障害(うつ病)に対しても、森田療法で効果を上げている。

 「治りにくいうつ病の中でも、社会復帰を焦って調子を崩すケースと、回復を待って休息しているだけではよくならいないケースがあります。どちらも発症から2年以上の経過をたどる人が約15%おり、そのような方々に森田療法を実施しています」とは、同センター長の中村敬副院長(55)。精神神経科の教授であり、森田療法だけでなく、うつ病治療も専門としている。

 森田療法の基本は入院治療。臥褥期(がじょくき)、軽作業期、作業期、社会復帰期の4期に分け、通常は3カ月程度の治療が行われる。「あるがまま」の自分を受け入れ、日常生活の作業や動植物の世話などを通して、「よりよく生きる」ための力を呼び戻す。

 また、医師や臨床心理士の面談だけでなく、日記を使った指導により、治療後も入院時の体験を振り返ることで再発防止にも役立つという。

 一方、外来治療を希望する患者のために、中村副院長が指揮をとり、昨年4月、「外来森田療法のガイドライン」を日本森田療法学会で作成した。従来、国内外のそれぞれの医師が、独自に行っていた外来診療をガイドラインで統一したのである。

 「当センターは、入院と外来の統合した診療を目指しています。また、自助グループの『生活の発見会』とも協力し、患者さんの性格や環境に合わせた治療の幅を広げています」(中村副院長)

 ストレス過多の時代。自殺者は年間3万人を超え、70万人以上が引きこもり、心の病で苦しむ人も増加の一途をたどっている。うつ病も、従来のタイプとは異なる「現代的なうつ病」が増え、抗うつ薬が効かずに長引く人もいる。そんなうつ病に対しても、中村副院長は、森田療法を応用し、治療の研究を進めている。

 「新しい病態に対して、森田療法がさらにパワーアップして活用されるようになるのが夢」と中村副院長。

 診療、研究、教育を柱に、よりよい治療法を模索し、現代の心の病に挑み続けている。(安達純子)

<データ>2009年実績

☆1日平均患者数約120人

☆初診患者数1764人

(神経症43.7%、気分障害20.8%)

☆入院森田療法による神経症の改善率は平均64.2%(累計)

☆入院森田療法による気分障害の改善率73.9%(07年以降の累計)

☆森田療法専門病棟20床

〔住所〕〒201-8601東京都狛江市和泉本町4の11の1
(電)03・3480・1151

【日本の病院の実力】前立腺がん 放射線科とタッグ組み近代泌尿器科学をけん引★東京慈恵会医科大学付属病院 頴川晋主任教授

泌尿器科の病気は、前立腺がんや腎がんなどの悪性腫瘍のみならず、前立腺肥大症や尿路結石症などの良性疾患や婦人科系統の病気もある。さらに成人のみならず小児の疾患も加わり幅が広い。

 そんな泌尿器科の治療を長年リードしているのが東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科だ。1922年に国内初となった大学泌尿器科独立講座を開講し、これまで国内の主要大学や基幹病院の責任者を多数輩出するなど、日本の近代泌尿器科学をけん引してきたという。

 現在も、トップランナーとして走る姿勢は変わらない。高い技術を要する腹腔鏡手術を幅広く実施し、放射線科とタッグを組んだ放射線療法のひとつ「密封小線源挿入治療」なども積極的に行っている。

 「目標は、世界のトップレベルとされる施設と肩を並べること。私たちは高度な技術を持っていると自負していますが、それをオリンピックの金メダリストのように、海外の人々にも認められるようにしたいと思っています」

 こう話す頴川晋主任教授(53)は、腹腔鏡手術の名手であり、放射線治療も得意としている。そして、2004年の教授就任以来、腫瘍科学、内視鏡手術、神経泌尿器科学、小児科学、婦人科学の5つの柱を伸ばし、最先端の医療の提供に取り組んできた。論文も海外で発表すること多数。

 一方、頴川教授は、日本泌尿器科学会理事として、日本の泌尿器科医学の振興にも力を注ぐ。

 「ひとつの施設の取り組みだけでは、マンパワーに限界があります。クオリティーの高い医療を提供しているといっても、それだけでは世界からは認められない。そのため、他施設との共同研究により、オールジャパンとして世界に発信する臨床計画を立てています」(頴川教授)

 たとえば、現在、全国の11施設の大学病院と共同で行っているのが、前立腺がんに対する密封小線源挿入治療の治験。金属カプセルに入った低線量の放射線物質を前立腺がんに留置して治療する方法で、現在、さまざまな医療機関で行われている。ただし、適用範囲はまだあいまいなところがある。そのため、世界に先駆けて、中間リスク群や高リスク群に密封小線源挿入治療の適用を広げる研究を進めている。

 「この治療の適用外となる根拠を検証することは、世界初のスタディーです。将来的には教科書を書き換えたいと思います」と頴川教授。世界トップの座を目指してまい進中だ。(安達純子)

<データ>2009年実績

★前立腺全摘除術136件 (腹腔鏡手術116件)

★腎摘除術48件 (腹腔鏡手術31件)

★腎尿管全摘除術11件 (腹腔鏡手術9件)

★膀胱全摘除術19件 (腹腔鏡手術12件)

〔住所〕〒105-8461東京都港区西新橋3の25の8
(電)03・3433・1111

【日本の病院の実力】★脳卒中ホットライン開設や24時間MRI 神戸市立医療センター中央市民病院

脳の血管が詰まる、破けるといった脳卒中では、初期治療が患者の予後を左右する。いかに脳へのダメージを少なくして患者を救うか。そのためには、高度な医療設備や技術、そして専門の医師らスタッフの充実が欠かせない。

 そんな脳卒中治療で、全国1位の実力を誇るのが神戸市立医療センター中央市民病院脳卒中センターだ。約10年前から救急救命体制などを強化し、神戸市の基幹病院としての役割を果たしている。

 「私は走りながら考えるタイプ。患者さんを治し、人を教育し、施設を発展させるために取り組んだ結果が、今の脳卒中センターの姿です」とは、脳神経外科部長を兼務する坂井信幸センター長(54)。脳血管内治療の名医だ。

 2001年、当時就任した菊池晴彦病院長(現・地方独立行政法人神戸市民病院機構理事長)の後を追って、国立循環器病センターから移り、脳卒中治療を発展させるために力を尽くしてきた。 救急患者により迅速に対応すべく、02年には脳卒中ホットラインを設置し、04年には24時間対応のMRI(磁気共鳴画像診断)を開始。同時に神経内科とタッグを組んだ脳卒中センターを開設するなど、「医師としての親」と慕う菊池理事長のリーダーシップの下で、坂井センター長は最大限の力を発揮してきた。

 気がつけば、患者数は急増し、それに伴い最先端の医療機器や新薬の研究も増え、若い医師も集まる一大拠点にまで発展したという。 

 「脇目も振らずに取り組んできましたが、最近は、持続的に施設を発展させるためにどうすれば良いのか、考えるようになっています。大きな車輪を暴走しないようにコントロールするのも、私の役割です」(坂井センター長)

 24時間体制で患者に質の高い医療を提供するには、マンパワーは欠かせない。今や20人の医師をはじめ看護師や技師など、“ビッグチーム”となったスタッフを取りまとめるのも、坂井センター長の仕事のひとつだ。一人ひとりが充実して仕事ができるように、「オン・オフタイプ」を区切れるような体制も整えてきたという。チームを一糸乱れることなく進化させる。それができるのは、「仲間作りが上手い」と評判の坂井センター長の人柄にもよるだろう。

 「患者さんも、スタッフも、自分の関わった人たちがみんな幸せになることが夢ですわ」

 こう話す坂井センター長は、チーム発展のため、次世代のリーダーの育成にも力を入ていた。(安達純子)

<データ>2009年実績

★脳血管内治療総数934件(内訳/手術総数601件 血管内治療総数336件)

★脳動脈瘤手術133件

★脳動脈瘤血管内治療158件

★病床数845床

〔住所〕〒650-0046兵庫県神戸市中央区港島中町4の6
(電)078・302・4321

【日本の病院の実力】「肺がん」術式よりも中身にこだわる手術道 神奈川県立がんセンター

がんによる死因第一位を独走する肺がんに対しては、外科的治療、化学療法、放射線治療といった総合的な治療が力量を左右する。加えて、高齢者の患者も多いため、最近では、肋骨の間から胸腔鏡を入れ、

より傷口が小さい手術を実施する医療機関も増えた。そんな肺がん治療で定評を持つのが、神奈川県立がんセンター呼吸器科だ。

 「手強い肺がんに挑むときに、小さい傷口にこわだっているわけではありません。肺がんをきちんと取ることが安全と確実につながる。それを実現するときに、傷口が小さく出血が少なく、丁寧でスムーズに行えればベストでしょう」

 こう話す呼吸器外科の中山治彦部長(53)は、国立がんセンター(現国立がん研究センター)呼吸器外科などで腕を磨いた名医。今年4月から医療技術部長を兼任している。

 肺がん患者は高齢者も多く、肺気腫など肺のトラブルを併発していることもしばしば。肺の動脈ももろく、傷つけてしまうと大出血に見舞われるなどのリスクがある。そんなハイリスクな人々に対しても、「手術可能」と判断すれば、中山部長は果敢に挑む。胸腔鏡下手術では、視野が狭く、医療器具の操作も難しい。その治療のみならず、肺の状態によって、手術と胸腔鏡を併用した治療も行っている。術式よりも、「がんを確実に取る」という中身にこだわる“手術道”を実践しているのだ。そのため、他の病院で「手術ができない」といわれた患者も、数多く受診している。

 「安全で確実な手術のためには、手術中に何が起こりうるかを考え、それを防いで回避すればいい」という中山部長。経験に裏打ちされた技術と“予見”で、患者の命を守っている。

 それは、外科医だけの実力にとどまらない。手術中に「リンパ節を取らなくていい」と判断できる病理の医師をはじめ、内科、放射線科の医師も、“眼力”を持った治療を行っているという。しかし、チームで挑む肺がんは、国内で年間約6万7000人もの命を奪う強敵だ。現状をより打開するには、日進月歩の知識と技術を会得するための勉強も欠かせない。

 「経験も大切ですが教育も大事。若い医師が、手術前のシミュレーションをきちんとできるように教えることも、安全で確実な手術につながります。患者さんが安心して治療を受けられるように、もっとたくさんの若い医師を育てたい」

 中山部長の取り組みは続いている。(安達純子)

<データ>2009年実績

★肺がん手術211例

(内訳/完全鏡視下手術30例、胸腔鏡併用下手術181例)

★呼吸器グループ新規患者数828人

★病床数415床

〔住所〕〒241-0815神奈川県横浜市旭区中尾1の1の2
(電)045・391・5761

【日本の病院の実力】口腔がんで最先端医療!患者の命と生活守る★昭和大学歯科病院口腔がんセンター

舌や歯茎などの口の中に生じる「口腔がん」は、早期発見であれば90%以上の人は完治可能といわれている。ところが、国内での早期発見率はおよそ2割。がんの前段階の組織の変性は、口内炎と間違われるだけでなく、痛みを伴わないため放置されがちだという。

 進行した口腔がんでは、手術に加えて、化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療が行われている。しかし、手術では、腫瘍の周辺組織も大きく切除しなければならず、歯や歯茎、顎の骨などを失った患者は、そのままでは会話も食事もできないなどで、QOL(生活の質)の低下は免れない。

 そんな口腔がんをいかに早期発見するか。そして、進行がんに対してどのようにアプローチし、患者のQOLを維持するか。この最先端の診断、治療、再建を行っているのが、昭和大学歯科病院口腔がんセンターだ。

 「進行した口腔がんは患者さんの食べる、あるいは、話すといった楽しみを奪うだけでなく、呼吸すらもできなくなることがあります。

さらに命を奪われることもある。だからこそ、一般歯科医の先生方と協力して、早期発見に努めるだけでなく、あらゆる最先端の医療技術を駆使して、患者さんの命とQOLを守るために、最善のことをしたいのです」

 こう話す同センター長の新谷悟教授(50)は、大学時代に祖母を舌がんで亡くしたことを機に、口腔がんへ立ち向かう決心をした。愛知県がんセンター頭頸部外科などで技術を学び、愛媛大学医学部歯科口腔外科時代には、新たな検査方法や傷口の小さな低侵襲の治療法、さらには、再建方法などの研究を進めた。

その手腕から2006年に現職となり、今年4月に同センターが開設されたのである。

 新谷教授は顎や首の切開法にも、傷跡が目立たないようにこだわっている。一般的な手術では傷跡も大きく首の筋肉も傷つけられるため、術後にアゴがゆがんでしまいがちだが、それを回避する独自の手術法も開発した。

 「現在、唾液によって早期がんを見つける早期診断法を研究しています。また、治療では、口腔がんのリンパ節転移を見極めるため、乳がんなどで広く行われているセンチネルリンパ節生検の応用も行っています。そのための迅速診断法も確立しました。

しかし、患者さんを守るためにまだやるべきことは多い」(新谷教授)

 進行がんで顎の骨を切除した場合の新たな再建法も実施。切除した骨を温熱処理して、骨の中に潜むがん細胞を一掃した上で、腸骨(ちょうこつ)から採取した組織を注入して骨を元の位置に戻し、顎の骨を再生させる。

そんな新たな方法を次々と打ち出しているため、他の医療機関で治療を受けた人が、再建に訪れることも珍しくはない。

 「何よりも大切なのは早期発見&早期治療です。欧米では国が口腔がん検診を勧めたことで、進行がんの患者さんが減少しました。日本でも何とかしたい。10年後には口腔がんの患者さんの8割は早期がんになればと思っています」と新谷教授。口腔がんを完治できる人を増やすべく、今も尽力している。(安達純子)

 <データ>2010年度実績
 ☆口腔外科手術総数439例(主な内訳)・悪性腫瘍59例・良性腫瘍34例・奇形/変形症133例・嚢胞45例・炎症37例・外傷21例・その他110例
 ☆病院病床数22床
 〔住所〕〒145-8515東京都大田区北千束2の1の1 
 (電)03・3787・1151

【日本の病院の実力】★肝がん 手術ができない場合の“強力な武器” 関東中央病院

肝がん治療のひとつ「ラジオ波焼灼療法」は、特殊な針を肝がんに刺して高周波を発生させ、熱によってがん細胞を死滅させる。現在、多くの医療機関で実施されているが、関東で2位、全国でも4位の治療実績を誇るのが、関東中央病院消化器内科だ。

C型肝炎などによる原発性の肝がんだけでなく、大腸がんや胃がんなどから肝臓に転移したがんに対しても、ラジオ波焼灼療法を積極的に行っている。

 「転移性の肝がんに対する治療は、基本的には手術と抗がん剤が柱になります。しかし、高齢や身体状態によって手術が難しいケースも多い。また、患者さんご自身が、『手術を受けたくない』ということもあります。その場合のひとつの手段として、『ラジオ波焼灼療法』を行っています」

 こう話す小池幸宏医長(46)は、東京大学大学院医学研究科時代からこの療法に取り組み、2001年に関東中央病院に赴任以降は、先頭に立って治療を行っている。

 そもそもラジオ波焼灼療法が適用される原発性肝がんは、「大きさが3センチ以下で3個以内」。3センチ程度のがんであれば、治療は12分程度で済み、入院も5日間という短期間が可能。C型肝炎による肝がんの場合は、ラジオ波焼灼療法後のインターフェロン治療で再発を防ぎ、効果を上げているという。また、再発した原発性肝がんでも、ラジオ波焼灼療法のみならず、がんに栄養分を送る血液を遮断する「動脈塞栓術」、化学療法などを総合的に実施。

 その一方で、受診してくる患者は、原発性肝がんのみならず転移性の肝がんも多い。手術ができない、化学療法の効果も期待できない人にも、小池医長は、可能な限りラジオ波焼灼療法を実施している。

 「完治は難しくても、延命することで、その間、新たな抗がん剤といった治療法が登場する可能性があります。ラジオ波焼灼療法を行った方がプラスになるならば、私は適用外でも行うべきだと考えています」と小池医長。

 セクション内も縦割りではないため、転移性肝がんの治療にも取り組みやすいそうだ。その結果、他の病院から紹介されてくる患者も増えている。ただし、一縷の望みを抱き遠方から訪れる患者を診るたびに、小池医長は、「転移性肝がんに対するラジオ波焼灼療法を行う医療機関がもっと増えればと思う。ひとつの強力な武器ですから」。患者の治療の選択肢を増やすため、小池医長は若手の育成にも尽力中だ。(安達純子)

<データ>2009年実績

★ラジオ波焼灼療法263件

(内訳/原発性肝がん146件 転移性肝がん117件)

★肝動脈塞栓術53件

★化学療法導入58件

★常時50人程度入院

〔住所〕〒158-8531 東京都世田谷区上用賀6の25の1
(電)03・3429・1171

【日本の病院の実力】不整脈治療のエキスパートが4人…横須賀共済病院

脳梗塞のリスクは健康な人と比べて2~7倍も高く、心不全の原因ともなりうる心房細動。心臓上部の心房が電気的に細かく興奮し、震えるようになるため、心房内の血液がよどみ、血液の塊(血栓)が形成される。それが流れて脳の血管に詰まると脳梗塞を発症。

この心房細動の治療として、心臓の電気活動を正常に戻す心筋焼灼術(カテーテル・アブレーション)で、日本トップクラスの実力を誇るのが横須賀共済病院循環器センターだ。

 「かつて心房細動による不整脈の治療は、薬の投与しかありませんでした。しかし、薬はおよそ半数の人にしか効果はありません。その改善をしたかった」と語る同・高橋淳センター長は、仏ボルドー大学で心房細動に対する心筋焼灼術を学び、1998年に日本でこの治療法を初めて行った第一人者である。

 心筋焼灼術は、カテーテル先端についた電極により心房細動を引き起こす原因となる心筋を焼くことで、乱れた電気信号を正常に戻す。心筋細胞の電気信号が乱れるのは一個所にとどまらず、その個所を的確に探し当て、心筋をきちんと焼くには高い技術が求められる。

 「一般的に行われている発作性の心房細動に対する心筋焼灼術は、病院施設にもよりますが、成功率は約6~7割。私たちは9割以上を実現しています。慢性心房細動も含めて根治を目指しているのです」(高橋センター長)

高齢化社会とともに不整脈患者は増加中だ。しかし、不整脈は自覚しにくく、脳梗塞や心筋梗塞で倒れて、初めて心房細動が生じていたことがわかるケースも珍しいことではない。

そんな不整脈の現状について改善すべく、同センターではインターネットのホームページで病状の説明や、治療法、実績などを積極的に公開。慢性で治りにくい不整脈にも果敢に挑み、独自に有効な治療法を研究し続けている。

同時に、高橋センター長は、後輩の指導にも力を注ぎ、現在、同センターの不整脈治療のエキスパートは4人。カテーテル治療室も3つ設置することで、全国から訪れる患者の治療に当たっている。その一方で、狭心症や心筋梗塞などの治療も充実させているという。

 「不整脈も含め循環器疾患全般の治療を行えるようにし、治療の選択肢をたくさん持っていることが、私たち循環器センターの強みといえます」(同)

 地域に根ざした急性期の治療から治療の難しい不整脈までカバー。「循環器疾患は、医師が努力すればするだけ患者が救われる」との信念を持ち、たゆまない努力を続けている。

 【データ】2008年実績

 カテーテルアブレーション総数804例…うち心房細動アブレーション総数616例

  ▽発作性心房細動406例(1回のアブレーションで根治80%、2回のアブレーションで根治90%)

  ▽慢性心房細動210例(1回のアブレーションで根治60%、2回のアブレーションで根治80%)

 病床数 735床

 〔住所〕〒238-8558

 神奈川県横須賀市米が浜通1の16
 TEL046・822・2710

【日本の名医】ペイン、スポーツ、漢方を取り入れ診療★寺田クリニック(東京都豊島区)院長 寺田壮治さん(55)

池袋から西武池袋線各駅停車に乗って一駅。椎名町駅から徒歩3分の、昔ながらの商店街の先にある寺田クリニックは、「町の診療所」といった風情が漂う地域密着型診療所。一般内科のクリニックとして、周辺住民の健康管理に貢献する一方で、ペインクリニック、スポーツクリニック、そして東洋医学の側面からも複合的に医療展開するという特徴をもった医療機関だ。

 「自分の興味のある分野を追求していったらこうなったんです。勉強はあまり好きではないんですが、自分の興味のあることなら継続して勉強しますからね」と笑いながら話す寺田壮治院長。

 医学部でも「全身管理と救急蘇生を身に付けたかった」と麻酔科を専攻し、大学病院の勤務医時代には手術麻酔の他にあらゆる診療科で経験を積んだ。もともと開業するつもりだった寺田医師にとって、その「広く浅く」の経験は今も大いに役立っている。

 寺田医師が展開するスポーツクリニックは、アスリートだけを対象とするものではなく、受診者に占める割合は「一般の人のほうがはるかに多い」という。

 寺田医師の診察に基づいて作成される「運動処方箋」から、運動の強度、種類、時間、頻度を患者個別のニーズに合わせて設定し、運動療法士の指導の下でエクササイズをしていく。

 「例えば、さまざまな要因で関節の可動域が狭まってしまったケースなどは、個人差はあるものの、ご本人が驚くほど可動域を広げることも可能。日常生活で感じていた不便が一気に解消することも珍しくありません」

 そう語る寺田医師のもう一つの売りが、東洋医学からのアプローチだ。症状を“気”の状態から分析し、その人に合った漢方薬を併用することで、治療やエクササイズの効果を高める取り組みを実践する。

 「一人の医師がペインクリニック、スポーツクリニック、漢方の3つを複合的に取り入れているケースは少ないようです」と語る通り、その診療を求めて遠くは北海道や北陸、関西からも患者がやって来る。寺田院長の“興味”が多くの患者の医療ニーズと重なることは間違いない。(長田昭二)

 ■てらだ・しょうじ 1957年東京都豊島区生まれ。83年獨協医科大学を卒業。日本大学医学部附属板橋病院麻酔科勤務後、94年に寺田クリニックを開設。日本医師会認定健康スポーツ医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本エアロビック協会公認スポーツドクター。医学博士。趣味はフラメンコ、タンゴ、モータースポーツ。

【日本の病院の実力】“前立腺肥大症”で最先端の治療技術!★関東中央病院泌尿器科

加齢とともに男性が悩まされやすい病気のひとつに「前立腺肥大症」がある。前立腺は、膀胱の真下に尿管を囲むように位置し、若い人ではクルミ大だが、前立腺の細胞が肥大することで夏ミカン大以上になることは珍しくない。そのため、尿道が圧迫され、残尿感や頻尿などの自覚症状が現れるが、治療の第一選択肢は薬物療法になる。

 薬では自覚症状の改善が見られず、QOL(生活の質)が著しく低下するときには、肥大した前立腺を取り除く治療を実施。その方法として、およそ半世紀前から行われているのが、内視鏡を用いて前立腺の肥大した部分を削り落していく「TURP」。ただし、前立腺には血管が網の目のように張り巡らされているため、約10%程度は輸血が必要になる。

 一方、米国ではレーザーで肥大した前立腺を焼いて取り除く「蒸散術(PVP)」が主流。しかし、さまざまなレーザーを用いた蒸散術では大きく肥大した前立腺に対しては不向きなどのデメリットがある。

 そんな従来法を一変させる治療法として、ホルミウムレーザーを用い、ミカンの房のように前立腺をくり抜く「ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)」が1998年に登場した。その最先端治療を行い、世界泌尿器内視鏡学会でもその手技の講師を務め、高い技術レベルを誇るのが関東中央病院泌尿器科だ。

 「ホルミウムレーザーを用いると、止血をしながら前立腺の肥大した組織をくり抜くことができるので、治療後の患者さんの回復もTURPに比べて早い。また、新しい治療法と言っても保険適用です。しかし、前立腺をキレイにくり抜くには、それなりの技術が必要なため、世界はもとより国内でも、まだ普及していないのが現状です」とは、同科の大森洋平医長(37)。

 1998年にニュージーランドの医師がHoLEPについて論文発表し、日本でも少しずつ実施されるようになってから、その技術を積極的に学んできた。「当院では、安全かつスムーズに良い治療を提供すべく、みんなで日々励んでいます」

 こう話す大森医長は、内視鏡による治療を得意としている。腎臓に生じた結石も、尿管に沿って腎臓の入り口へと挿入する「軟性鏡」を用い、最新の医療機器で結石を粉砕して回収する「経尿道的尿路結石破砕術」を実施。この治療法も、まだそれほど多くの医療機関で行っているとは言いがたい。さらに、大森医長は、小さな孔で手術を行う腹腔鏡下手術についても、熱心に学ぶ。

 「今後、患者さんにとって低侵襲で回復の早い治療法は、どんどん取り入れていくべきだと思っています。そのためにも、まず、日本でHoLEPをもっと普及させたい。世界でもトップレベルの技術を日本は持っているので、従来の治療法に風穴を開けることができればと思っています」と大森医長。その夢に向けてまい進中だ。(安達純子)

<データ>2011年実績
☆前立腺肥大症治療総数73件
☆前立腺肥大症に対するHoLEP治療73件
☆腎/尿路結石治療総数143件
☆ESWL61件
☆経尿道的尿路結石切除術64件
☆病院病床数470床
〔住所〕〒158-8531東京都世田谷区上用賀6の25の1
 (電)03・3429・1171

国内で年間約7000人の命を奪っている「膀胱(ぼうこう)がん」は、男性患者の割合が女性の4倍と高く、肺がんと同様に喫煙との関係が取り沙汰されている。膀胱がんには、臓器の奥に広がる筋層浸潤性がんと、組織の表面に広がる筋層非浸潤性がんがあり、後者がおよそ7割を占め、適切な治療を行い、再発しなければ比較的予後の良いがんである。

食道がんや胃がんでは、がんが粘膜の下の方まで進行していると、多くの場合、手術の適応になる。臓器の一部あるいは全部を切除し、がんの進行度合いによってはその周辺のリンパ節も取り除く。

治療ガイドラインで定められている治療法で広く普及しているものの、新たな検査方法が確立されれば、どこまで切除すべきかが客観的かつ科学的に示され、より正確な治療法が確立されることになる。

 そんな胃がんや食道がんが、最初に転移しやすいのはセンチネルリンパ節という部分。現在、先進医療として、「センチネルリンパ節生検」という検査方法が行われている。

 がん病巣の近くに特殊な色素やラジオアイソトープを注入して、がんが最初にリンパ節に到達するセンチネルリンパ節を同定し、転移の有無を顕微鏡で調べる。この検査は、すでに乳がんやメラノーマ(皮膚がん)に対しては、広く行われている。それを食道がんや胃がんへ応用するために、世界に先駆けて1998年から研究を進めているのが慶應義塾大学病院一般・消化器外科だ。

 先進医療の検査はもちろんのこと、小さな傷口で手術を可能とした腹腔鏡を用いた低侵襲の治療でもパイオニアである。

 「胃がんや食道がんに対して、センチネルリンパ節生検を行うと、取り残しや余分な組織の切除を省くことができるなど、さまざまなメリットがあります。

ただし、その検査に基づく治療で、本当に従来の手術と同じ生存率を確保できるか。その見極めの研究を行っています」と副病院長と腫瘍センター長を兼務する同科の北川雄光教授(51)は言う。

 北川教授は、胸腔鏡・腹腔鏡手術のスペシャリストだ。食道がんや胃がんでも、患者にメリットがあれば胸腔鏡・腹腔鏡による手術を積極的に行っている。

また、胃の良性腫瘍の胃GISTや、機能障害の一種・食道アカラシア、逆流性食道炎の手術では、全国に先駆けてヘソのひとつの穴から行う「単孔式腹腔鏡下手術」を導入。熟練した技術とチームワークで、低侵襲で確実に治療できる最先端技術を研究している。

 「胃がんや食道がんに単孔式腹腔鏡を応用するには、医療機器の進歩を待たなければなりません。また、将来的には、腹腔鏡下手術と内視鏡の治療を組み合わせることで、臓器の温存がこれまで以上に可能になると思います。しかし、それにもまだ数年かかるでしょう」(北川教授)

 腹腔鏡下手術でセンチリンパ節生検を行い、転移が見られなければ、内視鏡による治療で臓器を温存する。それは、これまで内視鏡の治療では、再発するのではないかと考えられた症例に対して、手術によって胃を部分切除するだけでなく、胃を残すという選択肢も広がることになる。

 「今後、医療機器などがさらに発達することで、治療方法や検査方法の選択肢は増えるでしょう。しかし、手術で治るがんは再発させてはいけません。それを追求するために取り組むべきことはまだ多い」と北川教授。確実に治るがんを増やすために、今も力を注ぎ続けている。

 <データ>2011年実績
☆胃がん治療総数379件
☆胃がん手術件数158件
(内腹腔鏡下手術82件)
☆食道がん治療総数182件
☆食道がん手術件数50件
☆センチネルリンパ節生検64件
☆病院病床数1059床
〔住所〕〒160-8582東京都新宿区信濃町35
 (電)03・3353・1211

【日本の病院の実力】膀胱がん、前立腺がんで最先端治療の病院★埼玉医科大学国際医療センター泌尿器腫瘍科

国内で年間約7000人の命を奪っている「膀胱(ぼうこう)がん」は、男性患者の割合が女性の4倍と高く、肺がんと同様に喫煙との関係が取り沙汰されている。膀胱がんには、臓器の奥に広がる筋層浸潤性がんと、組織の表面に広がる筋層非浸潤性がんがあり、後者がおよそ7割を占め、適切な治療を行い、再発しなければ比較的予後の良いがんである。

 一般的に、筋層非浸潤性がんに対しては、内視鏡を用いて膀胱の内側から電気メスにより膀胱がんを切除する「TUR」と呼ばれる治療法が行われる。

 ところが、その治療を受けた後に約50%の人は再発するという。しかも、再発したがんは、TURでは治らない筋層浸潤性がんになることもあり、その場合は膀胱全摘術に加えて尿路再建も必要になってくる。

 そんな状況を一変させるため、現在、治験が進められているのが「蛍光膀胱鏡」の併用。見えない膀胱がんも的確に切除する治療法だ。

最近開発された5-アミノレブリン酸という薬剤を用いて、蛍光内視鏡で画面に映し出された膀胱に青い光を当てると、腫瘍部分が真っ赤に発光する。子どもが見ても腫瘍の有無は一目瞭然。肉眼では見えない膀胱がんの取り残しも防ぐことができ、再発予防にも役立つ。

 通常の白い光を使った膀胱内視鏡では全体の約3分の1が見落とされるが、約10%程度にまで減らすことができるそうだ。そんな最先端治療を含め、膀胱がん、前立腺がん、腎細胞がんの治療で定評を持つのが、埼玉医科大学国際医療センター泌尿器腫瘍科だ。

 「100年以上も前から光力学的診断の概念はありましたが、当初は腫瘍を光らせる薬剤の毒性が強く、有効性もよくありませんでした。その弱点を克服した新たな診断補助薬がようやく開発されたのです。

すでに米国では一昨年から膀胱がんの診断に使用されており、日本でもやっと治験が開始されました」とは、同科の上野宗久教授(55)。長年、泌尿器腫瘍の治療に取り組むエキスパートである。

 膀胱がんに限らず、前立腺がんに対しても、全国的に珍しい4種類の放射線治療を行うなど、さまざまな取り組みを行っている。そのひとつが、膀胱がんに対する新たな「蛍光膀胱鏡」を併用したTURだ。今年2月から埼玉医科大学を含めた全国5施設で治験がスタートし、現在まで安全かつ順調に進行中である。

 「おそらく治験は年内に終了し、解析にも時間はかからないでしょう。外国ではすでに臨床応用されていますので、数年後には保険診療が可能になると思います」(上野教授)

 膀胱がんの再発防止に対する新たな取り組み。その先には、光力学的治療で光とアミノレブリン酸を応用し、膀胱がんを死滅させる方法もあるという。

 「理論上は可能ですが、既存の治療法を凌駕する結果になるかはわかりません。いずれにしても、より良い最新医療の研究を今後も行っていきたい」と上野教授。強敵のがんに立ち向かうために、今も力を注ぎ続けている。

<データ>2010年度診療実績
☆膀胱がん172件
☆前立腺がん280件
☆腎細胞がん94件
☆病院病床数600床
〔住所〕〒350-1298埼玉県日高市山根1397の1
 (電)042・984・4111

【日本の病院の実力】難易度高い“膵がん”で高度な診断・治療★防衛医科大学校病院 肝・胆・膵外科

国内で年間2万8000人以上の命を奪っている「膵(すい)がん」は、胃や大腸などの他の臓器と違い、腫瘍の発見が遅れがちで、また悪性度が高いため最も治療が困難ながんといわれている。

 一般的に診断後の手術適用は2割程度にとどまり、その手術も、膵臓が他臓器や太い血管、幾つもの神経に隣接しているため非常に難易度が高い。一歩間違えば患者は術中に命を落とし、一見うまくいったかに見えた術後にも激しい下痢や栄養不良に悩まされるといったことも起こる。膵がん患者の命とQOL(生活の質)をどう守ればよいのか。

 そんなハイクオリティーの診断と治療を行っているのが、防衛医科大学校病院の肝・胆・膵外科だ。国立がんセンターやがん研有明病院時代から、肝・胆・膵外科の手術で高い評価を得ている山本順司教授(55)が2008年4月に赴任して以来、治療数を右肩上がりに伸ばし続けている。

 「膵がんは、診断された時点で局所に腫瘍が留まっていることが少なく、転移しているゆえに、いわば全身病といえます。しかも、膵がんには有効な抗がん剤が少なく、また他のがんで効果のある分子標的薬も有効ではありません。そのため、手術によって患者さんにメリットがあれば、あらゆる技術を駆使して行うことを心掛けています」と山本教授は言う。

 進行した膵がんに対して、患者に残されたわずかな希望をどう後押しするか。3次元画像による手術計画を立てながら患者のリスクとベネフィット(治療を受けることで得る患者の利益)に思いを巡らす。長年、そのせめぎ合いの中で山本教授は安全で確実な方法を模索し、常に持てる全ての技を駆使して難易度の高い手術に挑んできた。

 最近は高齢の患者も多く、合併症を持つ人も珍しくはない。難易度に加わる患者の合併症。しかし、山本教授はその中から治療への道を切り開く。

 「総合病院ゆえに他科と連携し、合併症を持つご高齢の患者さんでも安全に治療することが可能になっています。それが専門病院とは異なる強み。また、海外などでは新たな抗がん剤治療で膵がんの予後が良くなったとの報告もあります。総合的な医療で1人でも多くの患者さんを救いたい」

 こう話す山本教授は、大腸がんなどによる転移性肝がんや原発性肝がん、胆管がん、胆嚢がんの手術も積極的に行っている。決して技におごることなく、患者に対して真剣に向き合う。そして、「正直が一番」と笑顔を見せる。

 「今の願いは、若い医師が肝・胆・膵外科手術を受け継いでくれることです。外科医を志望する若い人が減る中で、特に私たちの分野は敬遠されがちです。しかし、世界に誇れる外科治療技術を日本は持っています。それをぜひ受け継いでもらいたい。そのための教育にも力を入れています」

 治療困難ながんを治療可能に。山本教授の努力は尽きることがない。

<データ>2011年度
腫瘍切除実績
☆根治手術件数148例
☆膵がん31例
☆転移性肝がん32例
☆原発性肝がん27例
☆胆嚢がん6例
☆胆肝がん13例
☆病院病床数800床
〔住所〕〒359-8513埼玉県所沢市並木3の2
 (電)04・2995・1511

【日本の病院の実力】腰痛引き起こす脊椎、頚椎の治療で定評!★杏林大学医学部付属病院脊椎・脊髄外科センター

多くの人を悩ます腰痛。青壮年では、背骨の間の椎間板が突出することで痛みが生じる「椎間板ヘルニア」が多く、中高年になると神経の通る背骨の脊柱管が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症」、さらに高齢者では骨がスカスカになる骨粗鬆(こつそしょう)症によって背骨が押しつぶされる「脊椎圧迫骨折」の頻度が増えるなど腰痛を引き起こす原因はいろいろ。

 しかも、背骨の中には中枢神経の脊髄があり、痛みだけでなく手足のしびれなど麻痺(まひ)も伴い、適切な治療を受けないと歩行困難や寝たきりに結びつく。ただし、脊髄などの神経を傷つけずに行う手術には高い技術レベルが求められる。首の頚椎(けいつい)にしてもしかり。

 そんな脊椎や頚椎の診断と治療で定評を得ているのが、杏林大学医学部付属病院脊椎・脊髄外科センターだ。先進医療のレーザーによる椎間板減圧術、内視鏡を用いた傷口の小さな低侵襲手術や、術中CTナビゲーションシステムを用いた最先端の3次元画像装置などレベルの高い医療を提供している。

 「CTやMRIなどの画像はあくまでも診断の補助に過ぎません。まず患者さんの困っている症状を詳細に評価して、次いでMRIなどを参考にし、必要により神経根ブロックや脊髄造影を行うことで患者さんの症状と画像所見をマッチングさせます。

どの部位が痛みの原因なのか、手術が必要かどうか、必要ならどういった手術が適切かを常にチームで考えているのです。より安全かつ正確に手術を行うことで、ご高齢の患者さんでも安心して手術を受けられる体制を整えています」

 こう話す同センター長の市村正一教授(57)は、日本脊椎脊髄学会脊椎脊髄外科指導医で、頚椎疾患に関する一般人向けや医療従事者に対する学会のガイドブックやガイドラインの策定にも携わっている。

 患者数が年々増加している脊椎・脊髄疾患は、日本では伝統的に整形外科が治療しているが、患者から「手足がしびれて痛いときにどこに受診すればよいのかわからない」といった声が聞かれ、2009年10月に同センターを立ち上げたという。一般の人にわかりやすくするだけでなく、地域の医療機関との連携を強めた病診連携にも力を入れている。

 「ご高齢で手足の痛みやしびれがある場合、それが寝たきりの状態に結びつきかねません。早く症状を取り除くことが、ご本人にとっても、またご家族にとっても大切です。現在、麻酔などの医療技術が発達し、ご高齢の方でも元気に回復されています。90歳を超える方の脊椎手術もまれではありません」(市村教授)

 また、骨粗鬆症外来も開設しており、脊椎圧迫骨折に対しては、金属の支えを入れるインスツルメンテーション手術だけでなく、バルーンを用いて椎体にセメントを注入する最新の治療法も導入。常に新しい取り組みも行っている。

 「若手医師の育成にも力を入れています。多くの人が喜びを感じてくれる医師を育てたい」と市村教授。そのためにまい進中だ。

<データ>2011年度実績
☆脊椎手術総数263件
(主な内訳)
☆腰部脊柱管狭窄症101件
☆腰椎椎間板ヘルニア60件
☆頸椎疾患55件
☆脊髄腫瘍8件
☆病院病床数1153床
〔住所〕〒181-8611東京都三鷹市新川6の20の2 
(電)0422・47・5511

【日本の病院の実力】口腔がん5年生存率80%…東京医科歯科大附属病院

食事や会話などで人間にとっては欠かせない口の役割。そこに発症する口腔がんは、舌や歯肉、舌と歯肉の間など幾つもの種類があり、治療の第一選択肢は手術である。この治療で日本トップクラスの実力を誇るのが、東京医科歯科大学歯学部附属病院顎口腔外科だ。

 5年生存率も2001年~08年集積結果を見ると、早期の口腔がんはもちろんのこと、進行したステージIIIで88.2%、ステージIVでも79.7%を実現している。

 「一般的にステージIVの手術可能な口腔がんの5年生存率は、およそ50%。私たちが、80%近くの実績を持つのは、事前のきめ細かい検査と診断に基づき、チーム医療で治療方針をきちんと立てて取り組んでいるからこそだと思います」と、同科の小村健教授はいう。

 口の中にできるがんは、表面は小さくても、アゴの骨などへの進行、首のリンパ節への転移など、見た目よりも深刻なことが少なくない。そのため、CT(コンピュータ断層撮影)スキャン、MRI(核磁気共鳴画像法)、PET(ポジトロン断層法)などの検査機器を駆使し、がんの全貌を捉え治療に臨む。

 「口腔がんの治療を登山にたとえるならば、我々は検査によっていつも精密な地図を持って治療に当たってます。どのルートで登るのがよいのか、地図があるからこそわかるのです」(小村教授)

手術もきめ細かい。舌やアゴの骨の一部など、がんを残さずに摘出した後は、その部分の再建を行う。腹部や腕などの皮膚や筋肉、脂肪、骨を用い、顕微鏡を見ながらミリ単位の血管までもつないでいく。

 「がんの摘出手術は、高山の8合目にたどり着いたのと同じ。頂上まで行くには、再建によって患者さんの術後のQOL(生活の質)を確保しなければなりません」(同)

 たとえば、アゴの骨を再建しても歯はない状態。これでは以前のような食事はできない。しかし、院内のインプラント・口腔再生医学分野と協力することで、歯も蘇らせることができる。それが、歯科学全般を得意とする同病院の強みだ。

 「1本の髪の毛が入っただけでも、違和感があるほど口の中は敏感。しかし、進行した口腔がんが見つかるケースがまだ多い。日頃から口の中の状態にもっと関心を持っていただきたい」

 総合力を活かして口腔がんに取り組む小村教授だが、その願いは早期発見早期治療に尽きる。

 【データ】2008年実績

 ■口腔がん137人・良性腫瘍54人・5年生存率(2001年~08年集積結果)=ステージI…98.4%、ステージII…93.2%、ステージIII…88.2%、ステージIV…79.7%

 ■病床数 60床〔住所〕〒113-8549 東京都文京区湯島1の5の45 
 TEL03・3813・6111

【日本の病院の実力】膠原病(エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症)の治療で全国トップの実力!★東京医科歯科大学医学部附属病院・膠原病・リウマチ内科

本来、細菌などの外敵に攻撃を仕掛ける免疫機能が、自らの体内組織を攻撃し、関節や筋肉、内臓などに症状を引き起こす「膠原病(こうげんびょう)」には、さまざまな病態がある。

その代表格は、患者数が約100万人と最も多い関節リウマチだが、それ以外にも、全身の臓器に炎症を引き起こす全身性エリテマトーデス、筋力低下や皮膚の炎症が特徴の皮膚筋炎など、その多くは国の特定疾患に指定され、早期診断や治療が難しいとされている。

 しかし、ここ10年で関節リウマチの治療は劇的に変化した。症状を悪化させる情報伝達物質が特定され、それを狙い撃ちにした生物学的製剤が2003年に承認されたことで、およそ50%の人は、進行を止めるだけでなく、早期発見により症状が全く出なくなる人もいる。さらに、かつては50%の生存率と言われた全身性エリテマトーデスは、現在、薬の組み合わせによって生存率が約98%に上がった。

 そんな膠原病の診断と治療、さらには最先端の新薬の研究で、全国トップの実力を誇るのが、東京医科歯科大学医学部附属病院膠原病・リウマチ内科だ。

 「関節リウマチの患者さんの中には、薬を止めても再発せずに、完全に治ってしまう人も出始めています。しかし、原因が解明されていないため、100%封じ込める方法はまだありません。

さらには、患者さんの少ない他の膠原病の薬の開発も、加速させる必要があります。そのためにあらゆる努力を私たちは惜しみません」

 こう話すのは病院長を兼務する同科の宮坂信之教授(64)。日本リウマチ学会理事長を務め、膠原病の早期発見&治療などの最先端の研究で、長年けん引し続けている。

 「膠原病にはたくさんの種類があり、ひとつひとつの病気の患者さんの数が少ないために新薬の開発も遅れがちです。しかし、慢性の病気ゆえに治療ができないと患者さんのQOL(生活の質)はどんどん落ちていきます。

それを食い止めるために取り組んできたことが、現在、少しずつ実を結び始めているのです」(宮坂教授)

 一般的に、新薬開発の中心は欧米諸国で、日本で承認されるまでに5~10年遅れる「ドラッグラグ」が問題になっている。ドラッグラグの解消のため、同科では積極的に治験などを実施。その結果、症状が出ない「寛解(かんかい)」の状態になる膠原病の患者が増えてきたという。

 「今後5年間で、さらに治療は向上するでしょう。最終的には原因を解明し、予防ができるようになればと思っています」と宮坂教授。原因解明の微かな光もつかみ、それを大きく広げるために、今も力を注ぎ続けている。

<データ>2010年度実績
☆月間外来患者数約2200人
(外来通院患者数の主な内訳)
☆関節リウマチ約1000人
☆全身性エリテマトーデス約200人
☆多発性筋炎/皮膚筋炎約80人
☆シェーグレン症候群約80人
☆病院病床数800床
〔住所〕〒113-8519東京都文京区湯島1の5の45 
(電)03・3813・6111

【日本の病院の実力】“骨軟部腫瘍”治療で世界トップの水準!★がん研有明病院整形外科

骨、筋肉、脂肪など身体を支えるさまざまな組織にも腫瘍はできる。それらを総称して「骨軟部(こつなんぶ)腫瘍」という。その多くは良性であり、簡単な手術をするか、経過観察するだけでことが足りる。

 一方、放置すると死に至る悪性のものを「肉腫」と呼ぶが、国内のがん患者全体の1%以下と発症頻度が低いだけに、診断と治療をトータルで行える医療機関は極めて少ない。

また、骨の肉腫の場合は、レントゲン撮影でも異常を発見できるが、筋肉や脂肪などにできる軟部肉腫は、レントゲンなどの画像検査で特徴がなく診断が困難である。

 そんな骨軟部腫瘍の診断と治療で世界の頂点を極めているのが、がん研有明病院整形外科だ。「迅速細胞診」という診断技術を駆使し、9割以上の患者で、受診したその日に良性か悪性かの診断をつけ、素早く治療スケジュールを決定するのが特徴である。

 「骨軟部腫瘍は、身体を支える骨や筋肉、脂肪などの組織を模倣して増殖し、さまざまな発育様式を示すため診断が難しい場合が多い。

当科には遠方から来られる方が多いので、即日に診断するというのはとても大事なことだと思っています。それが専門病院としての使命ともいえる」とは、同科の松本誠一部長(60)=写真。

 骨軟部腫瘍は、全身のいろいろなところに発症する。しかも、大事な血管や神経の近くということもあり、がんをどこまで取り除くか、さらには、切除後の皮膚や骨などの再建をどうするのか。

 加えて、患者の年齢も乳幼児から高齢者まで幅広い。1例ごとに異なる治療法が要求されるので、診療技術を身につけるのには長い研修期間が必要とされる。そのため、世界的にも専門医が少ない状況が続いている。

 「夢は骨軟部腫瘍の治療を総合的に行えるようなセンターを作ることです。現在は外科治療が中心ですが、新たな薬剤が登場すれば、もっと治療も行いやすくなるでしょう。また、若い医師の育成も、症例が多く集まるセンター化によって円滑になると思います」(松本部長)

 現在、いろいろな施設に分散している患者をセンターに集めれば、患者も迷うことなく、そこで的確な診断と治療を受けることが可能になる。同科には、毎年各大学から研修にくる若手医師を含め、現在9人の医師がセンター化に向けて力を注いでいる。

 「骨軟部腫瘍の患者さんの中には、まれな病気になったということで、ひどく落ち込む方がいます。そんな方々に笑顔を取り戻していただきたい。

私たちは、診断から治療終了までをなるべく短い期間で行うように努力しています。その一方で、短期間に良好な人間関係を構築しなければならないという難しい問題もあります。

診断と治療の技術レベルの向上だけでなく、患者さんとの意思の疎通も重要なのです。そのための若い医師の教育も必要不可欠といえるのです」と松本部長は言う。

 まれな病気になっても、患者が安心して治療を受けられるために、今もまい進中だ。

<データ>2010年度実績
☆手術総数369件(内悪性腫瘍手術148件)
☆骨原発悪性腫瘍26例
☆軟部肉腫108例
☆骨良性腫瘍87例
☆病院病床数700床
〔住所〕〒135-8550東京都江東区有明3の8の31 
(電)03・3520・0111

【日本の病院の実力】世界でトップの実績「重粒子線がん治療」★放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院  

医学の進歩は、年間30万人以上もの命を奪うがんに対しても、果敢に挑戦し続けている。がんの治療の柱は、手術、抗がん剤、放射線だが、放射線を進化させた「重粒子線がん治療」が、今、注目の的だ。

 この新しい治療法は、一般的な放射線治療で用いるX線やガンマー線ではなく、巨大な加速器を用い、炭素の原子核を光の約8割の速度にエネルギーを高めて照射し、がん細胞のみを死滅させる。

その医療用重粒子加速装置を世界で初めて建設し、1994年から治療を行っているのが、放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院だ。治療実績は、もちろん世界でトップである。

 「がん細胞のみを標的として、正常な細胞にダメージを与えずに、照射回数も少ない治療が行えます。1期の肺がんは、1日1回の照射で済みます。患者さんにとって負担の少ない治療法ともいえるでしょう」とは、放射線医学総合研究所の辻井博彦理事=写真。

 治療設備は、120メートル×65メートルと巨大だ。広い設備の中で重粒子が加速され、患部に照射される。照射時間はわずか2-3分程度。ただし、がんの種類によって照射回数は異なる。

一般的な放射線治療で30回以上の照射が必要な前立腺がんも、重粒子線がん治療では16回。患者への負担が少ないのが特徴だ。

 適用は、手術が難しいケースも含め、肺がん、肝がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性黒色腫、骨軟部肉腫、直腸がんの手術後再発など。その症例は、15年間で5000例を超えるそうだ。

 「すべてのがんに適用するものではありませんが、1カ所にとどまっているような局所進行がんに威力を発揮します。たとえば、頭頸部がんは、顔の変形なしに治療が可能です。

切らずに治す選択肢の一つとしての役割も、重粒子線がん治療にはあるのです」

 こう話す辻井理事は、1989年に世界で初めて深部がんに対して、水素の原子核・陽子を高エネルギーで加速した陽子線治療を行ったことのある放射線治療の権威。

手術や抗がん剤、放射線といった従来の治療では難しい症例を数多く診てきた。そういう人々を救うべく重粒子線がん治療でも世界をリードし続ける。

 「患者さんにとってベストな治療は何か。受診された患者さんは、それを知る良い機会にもなっていると思います」(辻井理事)

 03年10月から重粒子線がん治療は、先進医療として認められた。がん治療のひとつの選択肢として道が開けている。その普及に向けて、今後も力を発揮し続けるだろう。

【データ】2009年7月までの実績(累積登録患者数)

★総数4818人(先進医療2284人)

★前立腺がん811人

★肺がん545人

★頭頸部がん530人

★骨軟部腫瘍477人

★肝臓がん282人

★病床数100床

〔住所〕〒263-8555千葉市稲毛区穴川4の9の1
(電)043・206・3306

デキる女性はケアしてる!初対面の印象をダウンさせる要因トップ3とは?

 新入社員はもちろん、異動や転職の多いこの時期は、社内外問わず初対面の人と接する機会もぐっと増えてますよね。仕事でもプライベートでも、はじめて合う人には好印象を与えて、その後のコミュニケーションを円滑にしたいものです。

 そんななか、ちょっと気になるデータがありました。デオドラントブランド「エージーデオ24」が、特設コンテンツ「SEARCH THE SMELL」の公開開始にあわせて、「ニオイと印象」をテーマに、20~40代の働く男女500名を対象とした意識・実態調査をおこないました。

 その結果、「初対面の印象をアップさせる要因になりやすいと思うもの」という問いには「表情が明るい」(75%)「服装に清潔感がある」(47%)「言葉遣いが丁寧である」(47%)といった回答が上位に。

 その一方で「初対面の印象をダウンさせる要因になりやすいと思うもの」については、「不快なニオイがする」(66%)、「言葉遣いが悪い」(54%)、「髪がぼさぼさである」(38%)がTOP3となりました。

 嗅覚(ニオイ)、聴覚(言葉遣い)、視覚(髪)と、ネガティブな印象を与え得る要素は実に様々。なかでも「不快なニオイ」については、およそ7割の人が印象ダウンの要素と認識しているようです。


 確かにビジネスシーンの中にも、ニオイに気づかれやすい瞬間ってありますよね。例えば上着を脱いだ瞬間や、名刺交換で距離が近づいたとき、あるいはエレベーターの中で密着した際などは、ふとした時にニオイが気になるものです。

 一度ニオイが気になりだすと、どんなに見た目や性格がよくても一気にイメージダウンに。また、だらしない、清潔感がないなどの生活習慣へのイメージにも直結するため、「仕事ができない人」などのネガティブなイメージが増幅する可能性があり、注意が必要です。

 働く女性にとってはファッションやメイク、ヘアスタイルと同様に気をつけたい、春からのニオイケア。朝晩は肌寒くても、日中は気温が高くて汗をかいてしまうこともあるので、いつでもケアアイテムを持ち歩くことをおすすめします。

【日本の病院の実力】昭和大学病院-腕の運動機能再生

骨や関節、神経にかかわる整形外科領域は、守備範囲が広く、以前と同じ運動機能を蘇らせるために、繊細な技術を求められる。その治療で、国内外に名をはせているのが昭和大学病院整形外科だ。

 WBCやオリンピック出場の野球やサッカー選手、プロテニスプレーヤー、アイスホッケーなどのナショナルチームのチームドクターも務めている。

 「昭和大学医学部整形外科学教室は、1928年に開講しました。歴史と伝統を重んじるだけでなく、時代に見合った新たな最先端医療も、常に模索し続けています」

 こう話す昭和大学病院整形外科の稲垣克記主任教授は、肘や手など上肢の名医。世界ナンバーワンの実力を持つ米国メイヨー・クリニックに留学し、肘の人工関節の新たなデザインと治療法を開発し、世界にその名を知らしめている。メイヨーエルボークラブという世界トップレベル30人のドクターとして選ばれたほどの実力だ。

 「人工関節は、デザインや素材で術後の運動機能が大きく左右されます。また、安定性も非常に大切。その研究をメイヨー・クリニックでできたことは、とてもいい経験になっています」

 稲垣教授のつけた道筋により、今では毎年、同科の医師が、メイヨー・クリニックへ留学しているという。もちろん、同科は、上肢だけでなく下肢の治療も得意。専門の医師が、最先端医療も含めた治療に当たっている。上肢も下肢も、治療実績は国内有数。

 「後輩の育成に力を入れていますが、まだ取り組むべきことはたくさんある」

 稲垣教授は、1999年に帰国した後、日本では数少ない指の人工関節の治療にも着手した。関節リウマチや変形性関節症、外傷などで手指の関節が変形していると、日常生活にも支障が生じる。これが手術によりきれいに変形が矯正され、元のように指を動かせるようになるほど、成果を上げているそうだ。しかし、稲垣教授の夢に終わりはない。

 「テニス肘や五十肩は、治るまでに半年から1年程度の時間がかかっています。腱の再生に時間がかかるからです。近い将来には、それを再生療法により、少しでも早く治しスポーツ復帰や社会復帰をしていただきたいと思っています」

 新たな再生療法は、骨や軟骨の再生も飛躍的に向上するといわれている。動かなくなった腕や脚を

蘇らせるために、稲垣教授の熱い取り組みは今後も続く。(安達純子)

【データ】

2009年整形外科外来診療部実績

★1カ月の外来受診患者数3859人(7月の新患数640人)

★1日平均患者数151人(リハビリを含まず)

★平均入院患者数85人(リハビリを除く)

★年間手術件数1000件(他院での手術実績を除く)

★全病床数1052床

〔住所〕〒142-8666 東京都品川区旗の台1の5の8 
 電話03・3784・8000

【日本の病院の実力】がんの痛みの改善へ 先進医療にも積極的★杏林大学医学部付属病院・放射線腫瘍科

がん治療の3本柱のひとつ、放射線療法は、頭頸部がんや前立腺がんなどで、治療の第一選択肢となっている。それを後押ししたのはコンピューターによる治療装置の進化だ。

 かつては低エネルギー放射線のみで、深部のがん細胞を死滅させることが難しかっただけでなく、皮膚への副作用も強く生じた。ところが、近年、高エネルギー放射線に加え、エネルギーの種類も変えることができる「リニアック」(直線加速器)が普及。

コンピューターと組み合わせた3次元照射で、正常な組織に対して線量を下げることが可能な「強度変調放射線治療(IMRT)」など、さまざまな放射線治療技術が登場している。

 装置の進化によって治療法が増えれば、当然のことながら、治療対象となる疾病の種類も広がる。各種の治療装置および照射法を操りながら、いかに完治への道を開くか。そんな最先端の放射線治療を提供しているのが、杏林大学医学部付属病院放射線腫瘍科だ。

 「私自身は、機械に頼りすぎない医療の提供をモットーにしています。がんは転移があるため全身疾患と考えられます。放射線腫瘍学の医師は、全身を診る必要性があり、自分の目で見て触診し、病態を的確に把握することが重要と考えています。それを若い医師にもっと伝えたい」

 こう話す同科の高山誠教授(62)は、放射線治療のエキスパート。東京慈恵会医科大学卒業後の研修医時代に、将来的な重要性を考えて、当時、医師の数の少なかった放射線治療の道を選んだ。

 頭頸部がんや前立腺がんなどの原発性がんだけでなく、がんの骨転移など転移性がんも対象で、守備範囲は幅広い。

全身の病気を知った上で、身体の外からの外部照射治療はもとより、小線源という細くて小さな放射性物質を患部に置き、内部照射する密封小線源療法などに加え、先進医療にも積極的だ。

 「治療法の種類が増えると、がん告知された患者さんは選択に戸惑うことが多くなります。どんなに最先端の治療であっても、患者さんにとって納得できない治療は、決していい治療法にはなりません。だからこそ十分に患者さんと向き合うことを大切にしているのです」(高山教授)

 一昨年からは、がんの骨転移に対し、ストロンチウム-89という放射性同位元素を注射、痛みを緩和する「ストロンチウム内用療法」をスタートさせた。ストロンチウム-89は体内でがんによって破壊された骨に集まり、患部で放射線の一種を発することで、骨転移の症状を改善し痛みを緩和する仕組みだ。

 高山教授は、原発性がんも、転移がんも、それにともなう痛みも、放射線治療によって改善すべく力を注いでいる。

 「近年、放射線治療はがん治療において機能温存という観点から注目を集めています。しかしながら放射線治療を担う放射線治療専門医の数は、全国で1000人弱に過ぎません。さらに専門医を増やすことに貢献できればと思っています」

 その取り組みは今も続いている。

<データ>
・放射線治療新規患者数515人
・密封小線源治療36人
・ストロンチウム内用療法9人
・病院病床数1153床
〔住所〕〒181-8611 東京都三鷹市新川6の20の2
 (電)0422・47・5511

【日本の病院の実力】慶大病院予防医療センター 「ワンランク上」の人間ドック提供★慶大病院予防医療センター

がんなどの病気を早期発見・早期治療するため、人間ドックは国内で多くの人に活用されている。補助金を出して受診を促進する企業もあるが、個人的に医療機関を選ぶケースも珍しくない。

 選び方としては、手ごろな価格に注目する人がいる一方で、検査内容や医師の技量など質にこだわる人も。さらに万が一、病気が見つかったときのことを考え、その後の治療体制なども、選ぶ基準となりえる。

 そんなニーズに応えるべく、病院に新しく3号館(南棟)を併設したのを機に、今年8月から「ワンランク上」の人間ドックをスタートさせたのが、慶應義塾大学病院予防医療センター。

 3階の専用フロアには、広々とした廊下と検査ブースがあり、プライバシーにも配慮している。検査ゾーンのメーンラウンジスペースには、検査前後にゆっくりと心身を休める大きなソファを配置。

ホテル並みのデラックスな雰囲気を醸し出している。さらにハードの充実ばかりにこだわっているわけではない。

 「すでに多くの医療機関で人間ドックが実施される中、私たちがこだわっているのは検査の質です。最先端の高度な医療機器を多数そろえ、それを最大限活用できる専門医師や技師がいるのが特徴。

さらに、病院の特徴でもある専門性も加えたプログラム内容にすることで、各々のニーズに合わせた検査を選んでいただけるようにしました」

 こう話す慶應義塾大学病院予防医療センター長の杉野吉則教授(63)は、内視鏡検査やX線検査のエキスパート。

 一般的に最先端の医療機器をそろえていても、画像をチェックするのは医師の目であり、その専門性と技術力の高さによって、早期発見の検査力は左右される。その見落としをなくすべく、熟練した専任の医師を配置し、難しい症例には、慶應義塾大学病院各科の専門医がサポートする仕組みを作った。

 「まずは標準の人間ドック(8万4000円~)をお勧めしておりますが、PET-CT検査を含むスーパーがん検診ドック(22万500円)を希望される方もいます。ご夫婦で検査を受けられるケースもあります。またオプションとしては、中高年の方々が気になる病気に焦点を当てました。女性の方にもご好評をいただいています」(杉野教授)

 オプションの専門ドックには、「脳ドック」「心臓・血管ドック」「レディースドック」「メタボリックシンドローム・腎臓ドック」「アンチエイジングドック」「運動器ドック」などがある。何よりも、早期発見後の治療には、慶應義塾大学病院の各診療科がついて心強い。

 「治療方法だけでなく、検査技術も日進月歩で進化しています。常に技術力を向上させ、より良い予防医療を提供します」と杉野教授。

 ワンランク上の人間ドックは現在も日々進化中だ。

<最新データ>

・使用装置…CT装置(64列)2台、MRI装置2台、PET-CT装置2台など、さまざま

・標準ドック価格8万4000円~(標準4コース、専門ドック8種。オプション検査多数)

・病院病床数1044床

〔住所〕〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
(電)03・6910・3533

【日本の病院の実力】「がん」ピンポイントで放射線治療★横浜市立大学附属病院

京浜急行の金沢八景駅からシーサイドラインに乗り換え約10分、海の眺めを楽しんでいると、駅前に約8000坪の敷地に建つ病院が現れる。高度で先進的な医療と難治性の疾患を扱う公立大学法人「横浜市立大学附属病院」だ。

 市内中心部の浦舟町にある病院から、1991年に機能分担したもので、かつてはハマっ子から「十全病院」と呼ばれ、親しまれてきた、2004年に法人化され、医学部では、研修医を主に神奈川県内の病院に輩出して、地域医療にも貢献している。

 07年には、地域がん診療連携拠点病院に指定された。今田敏夫病院長は、「難治性のがんや合併症、高齢の患者などが送られてくるので、どうしても集学的な治療でがんを治していくことが大事になってきます。

実際には、放射線、化学療法、手術を組み合わせた治療を行っています」と説明するように、ガン診療に力を入れる。昨年10月には、がん治療のための高度放射線治療装置を導入した。

 その1つが「定位放射線治療法」(SRS/SRT)。多方向からピンポイントで集中的に放射線を当てるため、正常な組織への悪影響が少なく、脳腫瘍や肝臓がん、肺がんなど、3センチ程度までの腫瘍に優れた治療効果を発揮する。

 もう1つは、「強度変調放射線治療法」(IMRT)。がんの形に合わせて、放射線の当て方をコンピューターで解析できるため、前立腺がんの治療に有効で、副作用が軽減できるようになった。

 また、外来化学医療センターでは、抗がん剤治療を外来で組み合わせて行っている。

 さらに、ほとんどのがんの早期発見に有効とされるPETとCTの装置を組み合わせたPET-CTを設置。PETの情報をCTの輪切りの画像の上に重ね合わせ、より正確な診断が立体的に特定できるようになった。

 「患者の75%は、横浜市内の病院等から来られる方です。ただ、小児科は、治療の難しいリュウマチ性疾患を扱っていて、新しい薬の治験施設でもあるので、全国から患者さんが集まってきます」

 この8月からは、股関節のリュウマチ手術の際、CTで3次元画像を構築。位置関係を正確に診断して、筋肉を切らずに治療できるようになり、従来、数カ月かかったリハビリが、2週間ほどで退院できるようになった。

 11年には、臨床に近い基礎研究・開発を手がけていこうと、「先端理化学研究センター」の建設を進めている。

 「その中で、再生医療として、人工耳を作ったりしています。ここは大学病院なので、質の高い医療人を育てていくのが使命。医師や看護師、薬剤師、臨床工学士を教育し、輩出して、医療の質を高めることで地域に貢献したいと思っています」

 これからも、先進医療をリードし、地域に役立つ病院であり続けることだろう。(池上正樹)

【データ】

2008年度

★外来患者数 467994人

★入院患者数 202393人

★平均在院日数 172日

★手術件数 4768件

★病床数 623床(一般577床)

〒236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3の9 
(電)045・787・2800

【日本の病院の実力】関節リウマチ治療「病診連携」で成果 自治医科大学附属さいたま医療センターアレルギー・リウマチ科

近年、治療法が劇的に変化した病気のひとつに関節リウマチがある。関節が破壊される自己免疫疾患で、かつては、激しい症状と関節の変形に伴いQOL(生活の質)を著しく低下させた。

 しかし、1999年に承認された免疫抑制剤・メトトレキサートが治療の第一選択肢となり、2003年以降は、ピンポイントで炎症の悪役を抑え、症状を改善する生物学的製剤が次々に登場。

早期の発見&治療によって進行を抑えるだけでなく、完治への道も開いた。早期に診断して治療開始を早めるべく、10年には世界的な新たな診断基準も導入されている。

 ただし、首都圏では比較的、多いリウマチ専門医だが、地域によってはゼロというところもある。

専門医のいる大きな病院に患者が集中すれば、待ち時間は長くなり、診断や治療もスムーズとはいかない。診断や治療の難しい患者は大病院、診断と治療法が確定し、症状が安定した患者は診療所へ-。

 この「病診連携」の新たなシステムを構築し、成果を上げているのが自治医科大学附属さいたま医療センターアレルギー・リウマチ科だ。

 「関節リウマチは、病状に合わせた適切な薬の選択で、多くの人がほぼ症状のない寛解(かんかい)に到達します。専門医への受診が集中する傾向にありますが、専門医の絶対数は足りない。私たちが診断と治療を行う患者さんの数には限界がある。

そこで、病診連携の新システムを作り、患者さんにも安心してご自宅近くの診療所で、継続的な治療を受けられる体制を整えました」

 こう話す同科の寺井千尋教授(60)は、関節リウマチを含む膠原(こうげん)病の診断&治療のエキスパート。東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターを経て08年から、現職に。診察室のキャパシティー以上に受診者が殺到した。

 重症な患者もいるだけに、診療には限界がある。そこで、寺井教授が、勉強会や講演会などで地道に地域の診療所の医師たちに働きかけ、病診連携への協力を得ることに。

 「現在はおよそ40施設の先生方に協力してもらっています。ただ、当科へ受診した患者さんの中には、別の診療所へ移ることに不安を感じる人もいます。それを払拭するために、独自の病診連携ファイルを作りました」(寺井教授)

 厚さ10センチほどのファイルを開くと、地図と診療所の位置がシールでわかり、診療所ごとの紹介は医師の大きな顔写真つき。待合室には病診連携を勧めるポスターが貼られ、症状が落ち着いたら自宅近くの診療所へ、患者にも浸透しつつある。

 「病診連携を強化しつつ、当科の診療キャパシティーを広げ、さまざまな研究も進め、地域に貢献したい」と寺井教授。

 モデルケースにもなりうる病診連携で、膠原病の患者をひとりでも多く救うべく、力を注いでいる。 

 <データ>2012年実績

 ・新規外来患者数約600人

 ・リウマチ初診患者数約120人

 ・年間受診者数約8000人

 ・病院病床数608床

 〔住所〕〒330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1の847 
(電)048・647・2111

【日本の病院の実力】受け継がれる予防医学の考え「北里研究所病院」

健診結果をその日のうちに

健康診断というと、一般的には健診機関で行われ、結果が後日、まとめて送られてくる。しかし、急性期病院でありながら、すべての項目の健康診断を1度に迅速に受けられるよう「予防医学」にいち早く取り組んできたのが、北里研究所病院だ。

 受診者は、レントゲン、超音波、血液など、いずれの検査でも基本的に、その日のうちに結果がわかり、医師から説明も受けられる。また、異常が見つかった場合には、その場で2次健診の予約をしたり、すぐ専門医に診てもらったりできるというのが特徴だ。

 「患者さんの病気を治療することも大事ですが、病気にならないような地域の検診や、健康増進するための身体機能強化といった予防医学を重要視しているのです」と紹介するのは、同病院の山田好則院長。

 その核になるのが、人間ドックを行う「予防医学センター」だ。さらに、病気になる前の状態を高める「メディカルフットネスセンター」もある。

 1892年、細菌学者の北里柴三郎氏は、予防衛生活動の大切さを訴え、「私立伝染病研究所」を創立。その流れの中で、予防医学の考えが、一貫して受け継がれてきた。

 「『みなさまを笑顔と暖かい思いやりでお迎えする』という理念も、創立以来受け継がれてきたものです。病院の玄関を入ると、総合サービス室で看護師ら担当者が患者さんをお迎えし、迷わないようご案内して、お帰りになるまでの間、職員1人1人が思いやりを持つよう心がけています」

 診療方法も、従来の主治医を頂点とする「縦割り医療」とは違う。

 例えば、「栄養サポートチーム」は、医師、栄養士、看護師、薬剤師らで構成され、週に1度、病院中の入院患者の栄養状態をチェック。主治医とは別に、患者に合った栄養面のサポートを行う。同じく「感染対策チーム」も、週に1度、病棟を回り、発熱や感染した傷の措置など、患者に近い視点から、主治医らに進言するのが役割。他にも「化学療法チーム」など、職種の垣根を越えた横からの「チーム医療」を目指している。

 また、診療科の垣根を越え、様々な医師の関わる「肝臓病センター」、「胃腸センター」や「頭痛センター」、「腫瘍センター」などを設置。集学的治療とともに、セカンドオピニオンなどにも対応する。外科でも「人工関節センター」や「内視鏡手術センター」など、質の高い手術ができるよう機能的に集約している。

 「現在、病院は機能が分けられ、患者さんが動かなければいけない。だから、がん難民も生まれる。当院で治療や手術をした患者さんなどに、がんの再発が起きた後も地域と連携して、緩和ケアや在宅医療にも力を入れています」

 予防医学から生涯ケアまで、患者にベストを尽くす医療の姿がそこにはあった。(池上正樹)

【データ】 2008年度

★病床 294床

★外来患者 30万4500人

★入院患者 8万400人

★平均在院日数 12.9日

★手術数 2700件

住所 〒108-8642 東京都港区白金5の9の1
TEL03・3444・6161

【ベストセラー健康法】速読で脳トレ 目のストレッチでスッキリ&認知症予防

  コレステロールは存在悪、食塩をとりすぎると血圧が上がる、砂糖ほど体に悪いものはない-。多くの人が持っている「医学常識」を真っ向から否定し、96歳まで元気で過ごした物理学者の名著が復刻した。

 分子生物学に基づく「分子栄養学」を提唱した物理学者の三石巌氏。重度の糖尿病を負いながら、カロリー制限などは一切行わず、それでも合併症を起こすことなく、95歳で亡くなる2週間前までゲレンデに立ち、スキーを楽しんでいたという。

 そんな三石氏がかつて著した「医学常識はウソだらけ」の図解版が上梓された。

 『医学常識はウソだらけ 図解版~分子生物学が明かす「生命の法則」』(祥伝社刊)がそれだ。

 還暦の年に「目のかすみ」を訴えて病院を受診したところ、「白内障です。2、3年で見えなくなります」と告げられた著者は、物理学者として栄養学に着目し、ビタミンCを大量摂取することで白内障の進行を食い止めた経験を持つ。

 「医者が目を向けない角度からアプローチして勉強していけば、人体のしくみについて従来とは異なる結論が導き出せる」と考えた著者は、医学の世界で“常識”とされていることを徹底的に検証したところ、数多くの“科学的非常識”を導き出す。

 たとえば「食塩をとると高血圧になる」という医学の常識は、「食塩摂取量の多い地域で高血圧の人が多い」という疫学調査の結果から導き出された統計的な現象であり、これだけを信じることはナンセンスだという。確かに食塩の過剰摂取が血圧を高める理論は間違いではないものの、それで高血圧になる人は高血圧患者の中でも少数派で、それよりもカリウムの摂取不足に目を向けるべき-というのが著者の持論。多少の食塩を摂取したとしても、それに見合った量のカリウムをとっていれば、高血圧になることはない-と著者は断じる。

著者の意見が、後に「医療の常識」になっていったものもある。「かぜで薬を飲むべきではない」などはまさにその代表的なものだ。

 最近でこそ、「かぜを引いたら病院に来るよりも、家で安静に寝ているべき」という医師が増えているが、以前はかぜ程度の患者にも簡単に抗生物質を処方する医者が多かった。そのため、本当に抗生物質が必要な肺炎などになったときに抗生物質が効かない体質の患者を作り出してしまったのだ。

 「かぜのウイルスと闘うのは、糖とタンパクの複合体であるインターフェロン。だからインターフェロンを作るのに必要なタンパク質とビタミンCを多くとり、体を温めてインターフェロンを作りやすい環境を整えるべき」と訴える。

 本書では、こうした「医療の常識」の非常識性を、図解とともに分かりやすく解説。読むそばから納得できるだけでなく、日常生活で取り入れたい健康法も自然に身についていく。

 「重要なポイントを厳選してイラストを付けたので、イラストを見るだけでも役に立ちます。『お酒を百薬の長にする上手な飲み方』は私も実践してます」と語るのは、編集を担当した祥伝社書籍編集部の萩原貞臣氏。

 時には常識を疑ってみることが、真の健康を手にする上では重要なのだ。 (竹中秀二)

 ■間違いだらけの「医学常識」
・食塩をとりすぎると高血圧になる
・バターやラードは体に悪い
・卵はコレステロールの元
・玄米は体にいい
・貧血には鉄分が一番-など


【日本の病院の実力】「気胸」治療で世界をリード■日産厚生会玉川病院気胸研究センター  

肺の一部が破れて胸腔内に空気がたまる「気胸」。たまった空気で肺が押しつぶされ、激しい痛みが伴い呼吸ができなくなる。従来、若い男性に発症が多いとされたが、肺がん、肺胞が破壊される肺気腫、結核などさまざまな肺の病気に伴い引き起こされるという。

 このような気胸は、再発しやすく難治性の高い状態が少なくない。その治療で、日本のみならず世界をリードしているのが、日産厚生会玉川病院気胸研究センターである。

 「気胸の治療では、胸腔内の空気を抜いて肺を膨らませるだけでなく、再発予防も重要です。

病変の数や性質によって治療が異なる。それに応じた治療法を私たちは確立しているのです」とは、呼吸器外科部長でもある同センターの栗原正利センター長。内視鏡の一種「胸腔鏡」を駆使し、気胸における独自の診断と治療法の研究を行っている。

 「気胸は、肺の病気から結果として起こる症状のひとつともいえますが、これまで研究があまり行われてきませんでした。昔ながらの胸腔内の空気を抜く治療が一般的で、適応できない患者さんがたくさんいます。それを何とかしたい」(栗原センター長)

 高齢者の気胸は肺気腫と合併しているため難治性が高く、放置すれば感染を起こし死に至るケースが多い。治療できても寝たきりになるなど、生活の質が低下する。また、女性に多い原因不明の気胸などもある。いずれも気胸の原因を突き止め、再発阻止が必要だ。

 同センターでは、気胸に結びつく肺胞ののう胞からの空気漏れを見つけるため、胸腔内に造影剤を入れる「胸腔造影検査」を実施している。他の施設ではほとんど行われていない。

 また、通常は水平のスライスで画像を映し出すCT検査も、タテ切り画像を加えて立体的に正確に診断。さらには、胸腔鏡検査など、細かい診断法を開発してきた。その上で、症状に合わせた胸腔内治療を実施。約20年間で気胸の受診患者は7000人を超え、年間350人~400人が治療を受けている。国内屈指の治療数だ。

 「このセンターは、重症の難治性気胸患者さんにとって“最後の砦”。私たちは、その希望に応えるためにいろいろな治療法を考え続けているのです」(栗原センター長)

 世界でも類を見ない気胸専門のセンター。ここでの検査法や治療法は世界に発信され、新たな治療への道が開かれている。

 「普及することで気胸治療のレベルが全体的に上がることを願っています」(栗原センター長)

 増加する難治性の気胸を封じ込めるため、今後も、闘い続ける。(安達純子)

 ■日産厚生会玉川病院気胸研究センター

 【データ】2008年実績

 ★呼吸器外科手術数354件

 (内訳)胸腔鏡下肺切除325例/胸腔鏡下横隔膜切除16例/その他13例

 ★気胸来院患者数約350人

 ★全病床数350床(内気胸研究センター病床数は約20床)

 〔住所〕〒158-0095 世田谷区瀬田4の8の1
TEL03・3700・1151

日本の病院の実力】伊藤病院…「橋本、バセドー、腫瘍」高度な専門治療

雑誌の医療特集で“専門性”を打ち出す時に必ず紹介されるのが、東京・表参道にある伊藤病院だ。国内唯一の「甲状腺疾患だけを診る専門病院」として、その知名度は全国規模だ。

 甲状腺とは、のどの下部にある、蝶が羽を広げたような形の小さな器官。新

陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンを分泌するこの器官に起きる病気には、大きく分けて橋本病(甲状腺機能低下症)、バセドー病(甲状腺機能亢進症)、そして甲状腺腫瘍の3つがある。伊藤病院では診療対象をこれら甲状腺疾患のみに絞り込むことで、きわめて高度な診断と治療を実現している。

 現在の院長、伊藤公一医師は三代目。甲状腺疾患の専門医になることを義務付けられて生まれてきたようなものだが、「家業ととらえているので苦痛に感じたことはありません」と、診療と病院運営のかじ取りに積極的な姿勢を見せる。

 伊藤医師が院長に就任する直前に、現在の病院建物が完成した。この時にアイソトープ治療という腫大した甲状腺を縮小させる放射線治療ユニットを増設したが、その設置費用だけで建物全体の建築費の約三分の一に上ったという。およそ一般的な民間病院では考えられない専門性へのこだわりだ。

 設備面だけではない。スタッフも医師、看護師、検査技師のすべてが甲状腺疾患のスペシャリスト。

 「外科、内科ともに、甲状腺疾患に興味を持った医師が学閥の壁を超えて集まっている。特に22人の常勤医のうち8人が女性医師という点も特徴。甲状腺疾患は圧倒的に女性患者が多いので、女性医師ならではのニーズが今後も高まるはず」と伊藤医師。

 年間1700件に上る手術でも専門性は活かされる。

 「甲状腺の近くには反回神経という発声に関係する重要な神経が走っているので、甲状腺の解剖に熟知した外科医が執刀しないと危険。甲状腺手術の症例の少ない大学病院からの紹介患者も珍しくありません」

何をおいても大学病院が一番と考えがちな日本人の認識を覆す現象が、ここでは日常的に起きているのだ。

 6年前には名古屋の中心地に「大須診療所」というサテライトクリニックを開設。中部エリアの患者の受療環境も格段に向上させた。

 病院開設から72年にわたって築き上げてきた「甲状腺一筋」の専門性は、大きな信頼となって患者を引き付ける。(長田昭二)

【データ】

2008年実績

★外来患者数26万8134人

★入院患者数2113人

★手術件数1711件(甲状腺がん959例▽バセドー病170例▽良性甲状腺腫瘍494例▽副甲状腺腫瘍65例▽その他の甲状腺疾患23例)

★病床数60床

東京都渋谷区神宮前4の3の6(
電)03・3402・7411

【日本の病院の実力】高レベル脊髄外科実践「慶応義塾大学病院」  

厚労省の調べでは、国民の自覚症状で最も多いのは腰痛と肩こり。いずれも身体の運動器の不調である。加齢とともに骨や関節が変形する、あるいは、骨粗しょう症による骨折、がんの発症など、高齢化社会の進行で運動器の病気は深刻さを増している。

 それらの治療や臨床研究で“日本のリーダー”と称され、世界的にも実力を誇っているのが慶應義塾大学病院整形外科だ。

 「1922年の開講以来、900人以上の優れた医師を輩出してきました。整形外科の領域は幅広いのですが、あらゆる分野で最高のスタッフをそろえています」

 こう話す同科の戸山芳昭教授は、脊椎(せきつい)・脊髄(せきずい)外科の権威。しかし、ひとつの病気に固執はしない。科内を脊椎・脊髄グループ、上肢グループ、下肢グループ、骨・軟部腫瘍グループ、スポーツクリニックに分け、専門的な治療を行っている。さらに、戸山教授が力を入れているのが、基礎研究である。

 「大学病院の役割として、患者さんのための心と技術を持った医師を育てるだけでなく、サイエンスも必要。そのためには、臨床に役立つ基礎研究も重要なのです」(戸山教授)

 もともと初代学部長の北里柴三郎博士が、臨床と基礎研究の両輪を掲げていた。しかし、日々受診する多くの患者に目を向けると、どうしても臨床へ比重が傾きがち。基礎研究がなければ、新たな治療は生まれにくい。そこで、1998年に就任した戸山教授は、“両輪”の歯車を円滑に回せるように努力してきた。

 結果として、さまざまな基礎研究による最先端医療を実現している。そのひとつが、損傷した脊髄の再生。事故などで脊髄損傷すると車いすの生活を余儀なくされてしまう。従来、再生法はなかった。

ところが、脊髄の神経を新たに形成できる「神経幹細胞移植」を世界に先駆けて動物実験レベルで成功。臨床への応用の期待を高めている。

 ただし、戸山教授の取り組みにはまだ先がある。

 「臨床と基礎研究の融合だけでなく、予防医療にも力を入れています。運動器の病気は、寝たきりなどの生活に結びつき、要支援・要介護の大きな原因になっているのです。このような状況で、整形外科の役割は大きい」(戸山教授)

 2011年には新たに予防医療センターを開設する予定という。総合的な視野に立ち、最高レベルの医療を提供しながら、今後も力を尽くし続けるだろう。(安達純子)

【データ】

2008年整形外科手術実績

★脊椎/脊髄合計450件(脊髄腫瘍・脊髄疾患110件、側弯症80件、頚髄症50件、腰ヘルニア15件、腰部脊柱管狭窄症120件など)

★上肢合計416件(肩43件、肘53件、手320件など)

★下肢合計487件(股194件、膝148件、足145件)

★骨/軟部腫瘍合計202件(原発性骨腫瘍44件、軟部腫瘍81件など)

★全病床数1056床

〔住所〕〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
 (電)03・3353・1211

【日本の病院の実力】集中検査で外来日数を削減「東海大学医学部付属病院」

厚労省の調べでは、昨年がんで亡くなったのは約34万人。およそ半数は、消化器系のがんである。高齢化社会に伴い食道や胃、大腸などのがんが複数見つかるなど、専門領域を超えた治療が求められるケースも少なくない。

そんながんの治療で定評を持つのが、東海大学医学部付属病院消化器センターだ。

 2006年1月に新病院が完成したのを機に、消化器内科と消化器外科が総合的に診療できる「センター」を開設したという。

 「加齢に伴い複数の臓器に原発性のがんが生じるだけでなく、心臓疾患を併発しているなど、他の臓器の病気を抱えている人が多くいます。

総合的に効率よく診れる仕組みを作りました」とは、東海大学医学部付属病院消化器外科の幕内博康教授=写真。第6代病院長を08年3月まで6年間務め、その後も本部長として病院運営に携わっている。

 「ハード面とソフト面を充実させることで検査を集中して行い、手術入院までの外来日数を減らすなど、効率化を実現しています。大切なのは、単に病気を治せばいいということではありません。ご高齢の患者さんが、いかにいい時間を長く過ごせるか。それを考える必要があるのです」

 こう話す幕内教授は、食道がんの世界的な権威だ。食道がんの手術は、胸部や腹部そして頸部を開く大手術だが、幕内教授の手術は平均5時間台で輸血もなし。新たな治療の開発を日々行い、進行した食道がんでも5年生存率65%を実現している。

また、一般的に病院全体の入院日数は平均20日程度だが、ここでは平均11日程度。結果として全国から患者が集まり、病院全体の稼働率も約98~99%になっている。

 「最新の建物でシステムを構築し、診療科をセンター化して潤滑に診療が行えるようにしました。が、もうひとつ、病院運営では、優秀な医師を集めることも重要だと思っています」(幕内教授)

 消化器センターには、幕内教授のみならず、胃の生越喬二教授、肝胆膵の今泉俊秀教授、大腸の貞廣荘太郎教授と、それぞれの領域のスペシャリストがズラリ。一般的にいわれる外科医不足とは対極にある医療体制を整えている。

 「外科だけでなく、あらゆる科で優秀な医師を集めています。だからこそ、1つのがんにとどまらず、併発している他の病気についても、効率よく診療が行えるのです」

 幕内教授の診療への情熱は冷めることがない。その姿を見ながら医師やスタッフも尽力していた。

 患者の人生に“いい時間”を取り戻すために、今後も力を注ぐだろう。

(安達純子)

【データ】2008年実績

★1日の平均外来患者数約2850人

★1日平均入院患者数約795人

★平均入院在日数約11.6日

★食道がん手術数92件

★胃がん手術数121件

★大腸がん手術数185件

★肝胆膵がん手術数130件

★全病床数804床

〔住所〕〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143 
(電)0463・93・1121

【日本の病院の実力】心臓血管外科でトップクラスの実績★自治医科大学附属さいたま医療センター

心筋梗塞など心臓と血管にかかわる病気は、迅速な治療を要するだけでなく、手術においてはわずか1ミリの狂いが、患者の命を左右する。患者も医師も、試練の瞬間だ。そんな治療で、埼玉県下において最も多くの実績を誇るのが、自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科。

 2008年の1年間で683例の手術を実施。手術中の死亡例は全国平均をはるかに下回る。しかも、今年の冠動脈バイバス手術では、定時手術での死亡例はゼロの高成績を上げるなど、質の高さも日本でトップクラス。

そんな同科を率いるのが、来年5月開催の第38回日本血管外科学会学術総会長を務める安達秀雄教授

「私たちのミッションは2つあります。ひとつは、最高の治療成績で患者さんを救うこと。そして、もうひとつは、次世代を担う心臓血管外科医の育成です」

 高い技術力を若手医師にしっかり伝承する。それは、決して楽なことではない。

 なにしろ現在、国内では外科医不足が深刻化している。心疾患は、国内死因の第2位を占めているが、医師は年々減少傾向。24時間の緊急対応で仕事がハードな割には、医療報酬は少なく、場合によっては訴訟トラブルにも見舞われかねないからだ。しかし、安達教授は首を横に振る。

 「心臓血管外科は、深刻な状態の患者さんが多いだけに、治療後に笑顔で握手をして退院されたときの喜びは大きい。そこにやりがいを感じている医師は、たくさんいます。その医師たちが、力を発揮できる環境をいかに整えるかが大切なのです」

 約20年前に同センター設立時に心臓血管外科が開設されて以来、診療内容を拡充してきたという。

 専属ICUチーム(集中治療専門医集団)を作り、救急部や手術室、病棟なども広げてきた。治療数は年々増加し、優秀な医師たちを輩出。同科から、さいたま赤十字病院、湘南鎌倉総合病院、横須賀うわまち病院などへ心臓血管チームを派遣しているほどだ。

 「若手外科医が希望を持って心臓血管外科の修練に励み、大きく成長できる施設を作る必要があります。そのために、年間1000例以上の手術を行えるようにしたい」(安達教授)

 センターのさらなる拡充、そして、地域医療の連携をより深めつつ、関連施設の強化を図る。安達教授のミッションは、「志を高く!」持ちながら現在も進行中である。(安達純子)

【データ】

2008年実績

★虚血性心疾患139件

★心臓弁膜症154件

★胸部大動脈疾患109件

★腹部大動脈瘤90件

★慢性/急性動脈閉塞症45件

★下肢動脈瘤28件

★シャント造設術58件

★その他60件

★全病床数608床

〔住所〕〒330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1ノ847
(電)048・647・2111

【日本の病院の実力】最新の医療機器で地域医療の充実に寄与★新百合ヶ丘総合病院

診断や治療で用いられる医療機器は、近年目覚ましい進化を遂げている。

 例えば、「PET-CT」という検査機器は、陽電子(ポジトロン)を含む薬剤により、肉眼では見えないがんの活動性がわかるPET(ポジトロン断層法)と、がんの位置や形状がわかるCT(コンピューター断層撮影)を組み合わせたのが特徴。

2つの医療機器の特性をドッキングさせることで、早期がんの発見はもちろん、治療後の判定や転移の有無、細胞の悪性度の推測などが短時間で判明する。

 一方、がんの位置や状態がわかっても、場合によっては手術が不可能ということもある。従来の放射線治療では、広範囲に放射線が照射されるため、周囲の組織への影響も免れない。

それを回避するため、病巣だけに集中照射する「サイバーナイフ」も普及している。手術不要で切らずに治すことができるため、注目度が非常に高い。

 そんな最先端医療機器の最新バージョンを揃えているのが、今年8月に開院した新百合ヶ丘総合病院だ。最新の医療機器の充実度は国内トップクラス。笹沼仁一院長(50)が説明する。

 「当院は、川崎市北部の不足病床を補い、地域医療の充実と救急医療体制に寄与するため、川崎市の公募によって選ばれて開院しました。目的を果たすには、医療機器の充実と優秀なスタッフは不可欠といえます。身体になるべく負担のかからない低侵襲治療や、早期発見などの診断を多くの方々にご提供できるように、日々努力しているところです」

 川崎市の公募には、複数の医療機関が名乗りを上げたという。その中で、医療法人社団三成会が、福島県で最先端医療を提供し、東京都中野区での新たな医療施設の展開などの実績が認められ、選ばれた。

 公募ならば補助金もありそうだが、公的な資金援助は一切なく、道路から病院設備、最先端のロボット手術などの医療機器や世界高水準の診断機器など、真新しい最先端の医療機器を揃えた。

 意気込みは並々ならぬものがあり、脳神経センターや心臓・循環器センターなどの22のセンターによって、チーム医療を提供する体制も整え、現在、患者数が右肩上がりになっているという。

 「私たちは、常に地域医療に貢献してきた実績があります。それを川崎市北部にも実現したい。救急医療はもちろん、がんなどの専門医療にも力を入れることで、年齢や性別問わず誰もが利用しやすい病院にしたい。多くの方に、『あの病院は良い』と言っていただくことが、希望です」と笹沼院長は熱く語る。

 その志の実現に向け、待合室や病棟などのアメニティーの充実にも力を入れるなど、進化中だ。

<データ>
開院後の月平均実績
・外来患者数8000人
・入院患者数4500人
・救急搬送患者数350人
・病院病床数377床
〔住所〕〒215-0026 神奈川県川崎市麻生区古沢都古255 
(電)044・322・9991

【日本の病院の実力】「関節トラブル」人工関節置換術で高い技術★湘南鎌倉人工関節センター  

老化や病気などで起こる関節のトラブル。中でも股関節は、変形性関節症や関節リウマチ、骨とう壊死などによって破壊されると、歩行困難に陥るだけでなく、激痛に悩まされることになる。そのようなときに行われるのが、人工関節に置き換える人工関節置換術。この治療で、全国3位の実績を誇るのが、湘南鎌倉人工関節センターだ。

 単に手術数が多いだけでなく、その術式の評価も高い。一般的には、術後の傷が15~20センチに及ぶが、同センターの場合は6~8センチ程度。「手術後の傷が小さい」「筋肉や腱などへのダメージが少ない」「痛みが少ない」のが特徴で、高齢者でも入院から1~2週後には、歩いて退院している。

 「従来、日本では股関節の人工関節置換術を行うと、2、3カ月の入院を余儀なくされていました。40代、50代の働き盛りの方は、非常に困るでしょう。欧米では短期入院が当たり前。日本も世界標準にすべきだと思うのです」とは、同・平川和男センター長

米国留学の経験を持つ平川センター長は、人工関節手術後の早期退院・早期社会復帰を願い、試行錯誤を続けてきた。その理想を実現させるため、欧米諸国のドクターとプロジェクトを組み、新たな術式や医療器具などの開発をして、2004年に同センターを設立。

日本初の人工関節に特化した医療施設だ。最先端医療として臨床研究も実施している。結果として、全国各地から受診する患者が後を絶たない。

 「全ての患者さんが、人工置換術に適応するとは限りません。適合と限界を見極めることも、非常に大切です。患者さんには、時間をかけて人工関節治療を十分に理解していただいています。セカンドオピニオンのご相談も応じています」(平川センター長)

 他の病気を抱える患者に対しては、提携している湘南鎌倉病院と連携して治療に当たる。専門特化の医療施設とはいえ、患者の全身疾患にも配慮。「患者さん第一」の医療を目指す平川センター長は、細部に至るまで手を抜くことはない。そんな医療技術を学ぼうとする医師も増えている。

 「小さな傷の手術は、当然のことながら、高い技術レベルが求められます。見よう見まねでは、患者さんに悪影響を与えかねない。腕の良い医師を育てるのも、私の使命だと思っています」(同)

 世界最高水準の治療を日本に広めるために力を尽くしている。

 【データ】
 2008年度実績
 ●人工関節置換術(股関節)486件
 ●人工関節置換術(膝)214件
 ●人工関節再置換術(股関節)18件
 ●人工関節再置換術(膝)4件
 ●その他24件
 ●病床数19床

【住所】
〒247-0061 神奈川県鎌倉市台5の4の17 
TEL0467・47・2377

【日本の病院の実力】9割以上が肛門温存「直腸がん」 国立がんセンター東病院

厚労省の「平成20年人口動態」によれば、1年間で34万人以上ががんで亡くなっている。医学の進歩により、早期発見・早期治療により予後が良いがんもあるのだが、がんの初期段階は無症状のことが多い。

また、多少の違和感があっても、忙しいと病院に行く時間がないということもある。結果として、進行したがんが見つかることが多い。

 このような状況を打開すべく、日本がん医療の最高峰・国立がんセンター東病院が、今年10月から第2および第4日曜日に、新規患者の休日外来をスタートさせた(要予約)。

 「若い人は検診率が低く、平日には病院を受診しにくい。症状が出たときには、進行していることが多いのです。早期発見と早期治療への道を開きたかった」と、同病院大腸骨盤外科・齋藤典男病棟部長はいう。

 病院内には、がん治療のスペシャリストがズラリ。連日、患者の治療に追われる中、休日外来には問題点も多かった。しかし、1年前に齋藤部長がワーキンググループを立ち上げ、実現に向けて奔走したのである。

 「大腸がんも、早期発見・治療ならば、早い時期(ステージ)の5年生存率は約95%で予後はいい。放置しておくと、進行して治療も難しくなってしまう。休日外来が早く気づくきっかけになればと思います」

 こう話す齋藤部長が属する大腸骨盤外科は、直腸がんの治療を熱心に行っている。

 かなり進行した直腸がんでは、肛門や膀胱などの他臓器をも含めた切除が必要となることも多い。だが、肛門や排尿および性機能を失うことは、患者のその後の生活に大きな影響を及ぼす。そのため、最先端の外科的研究を駆使した機能温存や臓器温存に取り組んでいる。

 「東病院は臨床開発センターの位置づけもあり、将来的に標準治療となりえる新たな治療の確立に力を注いでいます」(齋藤部長)

 肛門を残す「肛門括約筋部分温存術による究極的肛門温存手術」では、従来、人工肛門の適応だった人にも、肛門温存が可能になっている。治療実績はもちろん日本で第1位。直腸がんの約9割以上は、人工肛門を避けることが可能になっているそうだ。

 「温存する治療を行った後に、再発しては意味がありません。それを防ぐ治療には、やはり研究と技術の構築が不可欠です。私たちは、そのために日々努力しています」(齋藤部長)

 セカンドオピニオンの相談も多いことから、休日外来でも実施するという。日本トップの実力と実績で、患者の命を救うべく、今後も力を注ぎ続けることだろう。(安達純子)

【データ】2008年実績

★大腸がん手術380例

(内訳)

・結腸がん150例

・直腸がん230例

・究極的肛門温存術255件(2000年より現在までの累計)

★全病床数425床

〔住所〕〒277-8577 千葉県柏市柏の葉6ノ5ノ1 
TEL04・7133・1111

【日本の病院の実力】久里浜アルコール症センター

酒は飲んでも飲まれるなというが、アルコール依存症患者は年々増え続けている。10年前と比べて約2割も増加。しかし、ひとたび脳の中にアルコールに対する依存が形成すると、治療は難しい。

そんなアルコール依存症に対して、日本最大の治療・研究・研修機関となっているのが、独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターである。

 1963年に日本初のアルコール専門病棟を設立。1989年には、世界保健機関(WHO)により、日本で唯一のアルコール関連問題研究・研修センターとして指定された。

 「アルコール依存症の治療の第一歩は、患者さんが病気を認め、断酒を決断できるかどうかにあります。私たちは、集団療法に基づく『久里浜方式』を確立し、全国の専門治療施設で採用されています」と、同センターの樋口進副院長

久里浜方式とは、患者の自主性を尊重した開放治療、グループ治療であり、精神科と内科が連携し、性別や病状、患者の希望に合わせた複数のプログラムを構築している。

アルコールに関する入院施設は4病棟。高齢男性アルコール依存症病棟や女性アルコール依存症治療プログラム(西上病棟)など、性別や年齢で病棟を分けているのもここならでは。

 「最近増加している女性や、高齢者に専用の治療プログラムや病棟を備えているのは、全国でも類はありません」

 2000年には、中年男性アルコール依存症病棟で、新たなプログラムとして認知行動療法を取り入れるなど、治療法も進化させているのが特徴。常勤医師18人、精神科レジデント7人、非常勤医師4人、常勤臨床心理士5人(非常勤2人)、常勤ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)7人(非常勤2人)、常勤作業療法士7人と、豊富なスタッフで質の高い医療の提供を行っている。

 「アルコール依存症は、進行すれば生存率を低下させる病気です。早期発見・早期治療が欠かせません。しかし、予備軍を探すために“久里浜式スクリーニングテスト”を実施していますが、近年、増加傾向にある。多くの人に、もっとアルコール依存症のことを知っていただきたい」と樋口副院長。

 疫学調査も積極的に行い、孤独のうちに深みにはまるアルコール依存症患者を見つけ出し救う。そのために、今後も尽力することだろう。

 【データ】2007年実績

 ▼外来新患者数/アルコール依存症1176人

 ▼1日平均入院患者数/同166人

 ▼平均在院日数/同78日

 ▼新患者の紹介率49%

 ▼病床数332床

 【住所】〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5の3の1 
 TEL046・848・1550

【日本の病院の実力】北里大学病院耳鼻咽喉科 喉頭がん「亜全摘術」で再発防いで声も残す

男性の発症数が多い喉頭(こうとう)がんは、ノドの声帯に生じやすい。声枯れなどが初期症状だが、かつては声帯を含めた広い範囲を切除する全摘出術が行われ、声は失われた。

 また、ノドの空気の通り道として人工的な気管孔(きかんこう)をつけるため、水が入らないように風呂に肩まで浸かれないなど、QOL(生活の質)の低下に結びついた。

 そんな状況を変えるべく、近年、放射線治療や声帯の部分切除が実施されているが、再発のリスクは免れない。自前の声を残し、QOLを向上させ、なおかつ、再発リスクを抑える。

その新たな手術方法として登場したのが「喉頭亜全摘術」。1997年に国内で初めて北里大学病院耳鼻咽喉科が実施し、普及に努めている。同科の中山明仁准教授(50)は、この治療のスペシャリストだ。

 「患者さんの中には、声を失うことは死に匹敵すると考える人がいます。特に欧米ではその傾向が強く、フランスでは以前から特別な手術方法が開発されていました。再発を防ぎながら声を残す。『喉頭亜全摘術』を国内でもできるようにしたいと思ったのです」

 こう話す中山准教授は、90年代初頭、早期の喉頭がんに対する放射線療法や化学療法など最先端の治療法を米国で学んだ。しかし、再発すれば全摘出術が適用になる。

 「声帯に生じた喉頭がんは、転移しにくい。かつて放射線治療後に再発した病期I期の患者さんに全摘出術を行ったところ、あまりの腫瘍の小ささに強い衝撃を覚えました。何か別の選択肢がないかと痛感したのが、喉頭亜全摘術に取り組むきっかけです」

 単身、パリの権威の門をたたき、日本人として初めて喉頭亜全摘術を学んだ。

 全摘出術では、ノドの上の部分の喉頭蓋(こうとうがい)から声帯のある甲状(こうじょう)軟骨、さらにその下の輪状(りんじょう)軟骨も全て取り除いてしまう。

 ところが、喉頭亜全摘術では、声帯と甲状軟骨は取るものの、喉頭蓋、輪状軟骨、その間にある声帯を動かす披裂(ひれつ)軟骨を残し、上下を合体させる。すると、がんのある声帯を全て切除しても、披裂軟骨と喉頭蓋によって声が出るようになるのだ。

 中山准教授が国内で行った1例目の患者は、80代になった今も元気。永久気管孔も不必要なため、温泉にもゆっくり浸かれるという。

 「術後1カ月ほどで普通に話せるようになります。ただし、食べ物が気道の方に入りやすくなるため、もう1カ月ほどかけて誤嚥(ごえん)を防ぐためのリハビリを行います。当院は、優秀な若手医師や看護師などのスタッフにも恵まれているのが強みです」

 喉頭亜全摘術は、2009年、頭頸部がんの診療ガイドラインにも収載された。しかし、この治療には高いレベルの技術力が必要なだけに、まだ十分に浸透していない。

 「技術を継承する若い医師の育成にも力を入れています。喉頭がんの患者さんも、医者から全摘と言われても、声を残す手術ができないか問いかけてほしい」と中山准教授。

 さらなる亜全摘の普及を目指し、前進中だ。 

<データ>2012年度実績
・初診患者数145人
・喉頭がん患者38人
・下咽頭がん患者28人
・喉頭亜全摘術累計107人
・病院病床数1033床
〔住所〕〒252-0375 神奈川県相模原市南区北里1の15の1 
(電)042・778・8111

【日本の病院の実力】肺がんの的確治療で定評!各担当者が1つに★がん研有明病院呼吸器センター  

国内で年間7万人以上の命を奪う肺がんは、CT(画像診断)検診などの普及により、比較的早期の段階で見つかるケースが増えてきた。

しかし、手術による肺がんの切除率は4割を切っており、肺がん全体としては治癒率が低いのが現状である。しかも、肺がんの種類はいろいろあり、遠隔転移もしやすいことから治療体系は複雑だ。

 いかに早く確実に診断し、適切な治療方針を決定するか。そのために、治療に関わる呼吸器内科医・外科医、放射線治療医に加え、診断に関わる病理部や細胞診断部との連携も不可欠となる。

 そんな総合力を発揮し、適格な診断と治療を行っているのが、がん研有明病院呼吸器センターである。治療方針を決定するため、毎週、呼吸器外科・内科、放射線治療部、病理部、細胞診断部、さらに看護部のメンバーも集まる「キャンサー・ボード」を実施。肺がんの進行度と全身状態から検討して最適な治療法を決めてから、患者に説明している。

 「肺がんにはさまざまな組織型と進行の程度があり、患者さんの年齢や身体状態も異なります。一人の医師が迷いながら治療方針を決めるのではなく、肺がんの診断・治療に関わる専門のスタッフが集まり、多角的な視野から客観的に治療方針を決定しているのです。

この体制は、前呼吸器外科・内科の両部長の時代に築き上げられたものであり、私たちはそれをさらに院外にも開かれた検討会にすることを目指しています」とは、同センター長を務める呼吸器外科の奥村栄部長(54)。

 現在、呼吸器内科の西尾誠人部長とタッグを組み、週1回のキャンサー・ボードで、他の医療機関の医師の相談にも応じる体制を整えた。だが、残念ながらまだ浸透しておらず、院外の検討症例はごくわずかという。

 「開かれた呼吸器センターを目指し、院外の医師の参加も受け入れていますが、まだ数件しかありません。

それをもっと広げたい。また、他施設の医師の手術見学はいつでもOKです。私たちも他施設の手術手技の良いところは吸収し、技術レベルの向上に努めています」(奥村部長)

 一方、呼吸器内科では、新たな分子標的治療薬の臨床試験を多数実施中だ。

その効果だけでなく、がん研の研究所で耐性発現の研究も進行中。さらに東大で開発された、がん細胞を光らせる蛍光物質を用いて、肉眼では見えないがんの広がりが、実際のがん組織で有効であるかどうかの共同研究も進めている。

 「がん研には、研究所が併設されており、お互いが密に連携を取りながら新しいがん治療に向けた取り組みを行っています。遠からず、見えなかったがん細胞が見えやすくなり、薬の効き方なども今以上に効果的になるでしょう。その状況に早く到達できればと思います」と奥村部長。

 難敵の肺がんを撲滅するために、がん研全体で尽力中だ。(安達純子)

<データ>2011年実績

・症例総数355例

・肺がん切除術225例(うち約4割は胸腔鏡下手術)

・転移性肺腫瘍79例

・縦隔腫瘍15例

・病院病床数700床

〔住所〕〒135-8550 東京都江東区有明3の8の31
(電)03・3520・0111

【日本お病院の実力】「ダヴィンチ」駆使し傷小さく 泌尿器科手術のQOL向上★聖路加国際病院

がんなどの手術では、身体になるべくキズをつけず、臓器周辺の神経や筋肉などの損傷も極力少なくする方向へ進みつつある。そのため、腹部に数カ所の穴を開けて行う「腹腔鏡下手術」が広がっている。

 ただし、先端にカメラや電気メスなどがついた細長い棒のような医療器具は、扱う医師の技術や経験が不可欠。その熟練技をさらに進化させるべく、3次元モニターや360度自由自在に医療器具の先端を動かせるロボット手術「ダヴィンチ」を導入する医療機関も増えてきた。

 そんな腹腔鏡下手術やダヴィンチ手術を駆使し、泌尿器科領域で適用拡大を行っているのが、聖路加国際病院泌尿器科。

 単に体に負担の少ない手術を行うだけでなく、QOL(生活の質)を高めるべく、国内では珍しい米国の男性性機能クリニックをモデルとした専門外来「メンズヘルス」も今年9月にスタートした。男性更年期障害などの治療のみならず、泌尿器科疾患の術前術後のケアを行うのも特徴だ。

 「ダヴィンチ手術は、腹腔鏡下手術の延長線上にありますが、より精細な治療を行えるのが利点です。先端の器具を自在に動かせるため、細い血管や神経、尿道などを縫合する上でも、非常に行いやすい。QOLをなるべく損なわないような治療が可能となります。トータルでクオリティーの高い医療を提供したいと思っています」

 こう話す同科の服部一紀医長(51)は、腹腔鏡下手術の名手。欧米で普及するダヴィンチ手術にも早い段階から着眼し、昨年9月に導入した。今年4月から前立腺がんにおける前立腺を全部取り除く手術が保険適用になったが、他の治療でも適用できると考えている。

 そこで、今年5月から腎がんの部分切除にもダヴィンチ手術を開始した。

 「近年、腎臓はなるべく残した方が、予後は良いとの報告があります。腎臓を全摘する場合は、腹腔鏡下手術でも行いやすいのですが、腎部分切除術の場合は、腎臓の裏側などがんの位置によっては難しい。開腹手術が適用になります。ダヴィンチ手術であれば、医療器具の先端が自在に動かせるため、部分切除を行いやすい」

 術後も順調なケースが多いようだ。

 「ご希望される方に治療を行い、良好な結果を得ています。費用は自費診療(70万円)で値段変更もあるため、受診をご希望される方は、あらかじめご確認いただければと思います」

 さらに、来年には膀胱(ぼうこう)がんの膀胱全摘術にも、ダヴィンチ手術を開始する予定。術後の尿失禁などのケアのため、メンズヘルス外来でのサポートだけでなく、人工括約筋埋め込み術なども提供している。

 「泌尿器科疾患の中でも、がんのように手術が必要な症例を数多く扱っています。高いクオリティーの手術に加え、放射線腫瘍科や腫瘍内科と協力し、多彩な症例に適切な治療を行えるのが強み。トータルケアをご提供できるプログラムをさらに強化したいと思っています」と服部医長。

 その取り組みに終わりはない。

<データ>2011年実績
・前立腺全摘術103件(内ダヴィンチ手術73件)
・HoLEP(レーザー)手術160件・腎部分切除術23件(内ダヴィンチ手術7件)
・腎摘除術7件(内腹腔鏡下手術5件)・腹腔鏡下副腎摘除術10件・病床数520床
〔住所〕〒104-8560 東京都中央区明石町9の1 
(電)03・3541・5151

【日本の病院の実力】東京医科大学病院・呼吸器内科 COPDの混合剤治療を独自の診断法で後押し

国内患者数が潜在的な人も含め約500万人以上といわれる、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)。

 長年の喫煙習慣などが原因で、気管支から枝分かれした細気管支の壁が厚くなって、空気の通りが悪くなる。あるいは、空気交換の要となる小さなぶどうの房のような肺胞が破壊され、呼吸困難を引き起こす。息切れや長引くせき、たんが出るのも特徴だ。

 症状が悪化すると日常生活もままならず、かつては酸素吸入療法に頼らざるをえなかった。患者の行動範囲は狭まり、QOL(生活の質)は低下。しかし近年、新たな薬の登場により、重症は中等度へ、中等度は軽症への道が開かれつつある。

 そんな最先端治療と独自の診断法で、世界トップレベルの医療を提供しているのが東京医科大学病院呼吸器内科だ。

 「長時間作用の薬として、気管支をダイレクトに拡張する『β2刺激薬』、作用機序が異なる『抗コリン薬』が10年ほど前に登場し、COPDの治療は大きく変わりました。

現在は、貼るタイプやミスト状の吸引タイプなどもあり、今秋には薬剤をミックスした混合剤の吸引薬も登場予定です。薬を的確に組みわせることで、飛躍的にQOLの向上をもたらすことができようになっています」

 こう話す同科の瀬戸口靖弘教授(58)は、長年、呼吸器疾患の臨床研究を行い、世界的にも新しい研究成果を挙げ続けている。そのひとつが、COPDに対する薬剤を組み合わせた治療法。新たな混合剤導入への道を切り開いた。

 それを後押ししたのが、瀬戸口教授が10年ほど前から研究している診断法「呼吸気道抵抗測定器(IOS)」。昨年、保険適用になった診断法だ。

 「従来の肺活量の測定法や、画像診断などでは、COPDの詳細な病状を把握することはできませんでした。IOSのデータを詳しく解析することで、薬剤の効き方も分析できます」

 独自のIOS分析法を見いだし、新たな治療法だけでなく、オリジナルの栄養療法なども導入。そんなCOPDプログラムの構築の一方、原因不明と言われる間質性肺炎の診断と治療にも力を入れている。

 間質性肺炎は、炎症によって肺の組織が線維化し、命に関わる病気である。瀬戸口教授の研究で画期的なのは、家族性間質性肺炎に関わる遺伝子異常の発見だ。

 「サーファクタントプロテインCという遺伝子異常があると、風邪をひくなど、ちょっとしたきっかけで、間質性肺炎を引き起こすことがわかりました。遺伝子を特定し、原因を明らかにすることで、予防や新たな治療法の扉が開きます」

 これまで治療で効果の低かった肺疾患に対して挑み続けている。

 「将来は壊れた肺を蘇らせる再生医療も行いたい」

 治療法開拓の夢をひとつひとつ現実のものとすべく力を注いでいる。 

<データ>2012年実績
・初診患者数759人
・外来患者数1万3284人(内訳と割合)COPD40%、間質性肺炎20%、肺がん15%、ぜんそく18%、肺炎4%、希少肺疾患を含む肺疾患3%
・病院病床数1015床
〔住所〕〒160-0023 東京都新宿区西新宿6の7の1
 (電)03・3342・6111

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