あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■これで私は助かった・自律神経・結核
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昼休みに仕事する人が自律神経を乱す「腸的」理由 ご飯後やる気が出ない時の「とっておきの対処」

せっかくのお昼休みなのに午前中の仕事をダラダラ続けていませんか? 実は自律神経にはリズムがあって、身体をアクティブに動かす交感神経の働きは昼12時にピークを迎えます。この時間帯に自律神経を整えることで、腸内環境も整い、午後も高いパフォーマンスで仕事ができるのです。

今回は、『「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』の著者で、自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に「腸と自律神経を整える昼休みの過ごし方」を聞いてみました。

前回:『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』

食事間隔は6時間空けると腸内環境が整う

 ――お昼休みになっても、食欲もなければ、周りの人も働いていて休みにくい雰囲気だし、仕事もキリがいいところまで進めないと気持ち悪いから休まず仕事を続けてしまうことがあります。

 小林弘幸先生(以下、小林):それは頑張っていますね、といいたいところですが、午後も高いパフォーマンスで仕事をしたいなら、その習慣はやめたほうがいいですよ。午後も頭はベストな状態で仕事を続けるためにも、まずは自律神経のリズムを理解することが大切です。

 ――自律神経にリズムなんてあるんですか?

 小林:ありますよ。自律神経の1日のリズムの中で、交感神経の働きがピークを迎えるのが12時ごろ。その時間帯に、副交感神経の働きも高めて、自律神経を整えておくことが、午後もしっかり働ける心と体をつくるためには重要です。

 ――へぇ〜。お昼の12時は、自律神経にとって大切な時間なんですね。

 小林:腸は、食事と食事の間に食べたものを消化・吸収して、最後に、腸内環境を整えるためにお掃除をしてくれます。おなかが減ると、グーと鳴るのは、腸管が大きく収縮して腸内環境を整えるためにお掃除をしている音。「食べ物を受けつけてもいいよ」とサインを送ってくれています。そのタイミングで食事をすると、腸がしっかり働いてくれますよ。

 腸内環境を整える食事の間隔は、日中だと6時間が理想です。その6時間の間に、食べたものを消化・吸収して、最後に腸管が大きく収縮して殺菌作用のある消化液が増加。腸に残った悪玉菌を処理してくれます。

 ――おなかが鳴ると恥ずかしいから鳴らないでほしいと思っていましたが、食事をとったほうがいいよ、とサインを出してくれていたんですね。

 小林:腸をしっかり動かすことで、全身の血流が良くなり、脳にも新鮮な酸素や栄養が運ばれます。結果的に、頭が整理されて、午後もスッキリした気分で仕事ができるのです。

 ――お昼休みに食事をとることは、大切なんですね。

 小林:ここで、忘れてはいけないポイントがあります。食事のとり方によっては、交感神経が一気に高まるということです。

 ――腸を刺激して副交感神経を高めようとしているのに、一気に交感神経が高まるなんて……。どうすればいいんですか?

 小林:食事をとるときは、過剰に交感神経が上がらない食べ方が大切。それは、ゆっくり、よく噛んで、食べ過ぎないようにすることです。

 ――食事の基本ですね。なんだか子どもに戻った気分です。

 小林:「しっかり噛む」習慣は自律神経を整えるだけでなく、唾液量が増え抗ウイルス・抗細菌成分が増えて免疫力が上がる、脳内のヒスタミン分泌が活発になり満腹中枢を刺激するため過食を防止する、表情筋がほぐれることで副交感神経が高まりストレスが軽減されるなど、さまざまな効果があります。

 仕事に追われて焦るあまり、昼食は食事の基本が疎かになりがちです。お昼によく、ごはんをかき込むように食べている人がいますが、これだと消化をするために働く副交感神経は上がりにくくなります。ゆっくりよく噛んで食べることで唾液の分泌も増え、消化・吸収をサポートします。さらに、顔の筋肉もほぐれてリラックスでき、噛むという一定のリズムも副交感神経を高めてくれます。

 ――ゆっくり、よく噛むことでそんなに効果があるんですね。

 小林:また食べ過ぎも要注意。消化・吸収に大量の血液が使われ、脳への血流量が減ってしまいます。腹6〜8分目までにしておきましょう。

 ――わかりました、気をつけます。

 小林:ゆっくり食事をとるために、「ながら食べ」をやめることもおすすめです。仕事仲間と一緒に食べるランチは楽しいひとときですが、ときにはおしゃべりしたり、スマホを眺めたりせず、自分の目の前にある食べ物の色、形を眺め、1口ずつ口にして、食べ物の形や食感、味わいの変化を楽しむ。噛み終わったらゆっくりのみ込み、2口目へ。ちょっとした瞑想が充実のランチタイムにしてくれますよ。

ランチ後2時間の仕事は「捨ててもいい」

 ――ランチタイムは充実したものの、その後、頭がボーッとして仕事に集中できないことがあって悩んでいます。

 小林:もしかしたら、お昼ごはんを食べ過ぎているのかもしれませんね。麺やお米などの炭水化物がメインの食事は、交感神経を急激に高める作用があります。食後はその反動で、副交感神経が一気に高まるため、体は急ブレーキ状態になり、疲れを感じたり、眠くなったりします。

 ――そういえば、会社の近くにあるイタリアンのお店に行った日は、とくにボーっとしてしまう気がします。

 小林:自律神経を整えるためにも、たまには、美味しいものを楽しむことは大切です。ただ、外食は、自分で食事の量をコントロールできない分、食べ過ぎるリスクがあります。食べ過ぎると、集中力を欠いてしまう恐れがあることも意識しておくといいですよ。炭水化物は体に欠かせない栄養素ですが、しっかりとるのは1日1回に抑えることがおすすめです。

 ――気をつけます。でも……。たまには、気分転換に外で食事をとりたいときもあるんですけど。午後の仕事のことを考えると、外で食事をとらないほうがいいということですか?

 小林:いえ、たまには気分転換も必要ですからね。集中力が切れてやる気が起きないときの過ごし方を知っておくといいですよ。

 ――なんだろう……。知りたいです!

 小林:昼食後の2時間は「捨ててもいい」と割りきって過ごすのです。

 ――えっ! 勤務時間中に「捨ててもいい」なんて、怒られそうです。

 小林:サボるのではなく、効率的に働くために捨てるのです。昼食後は、食べ物の消化にエネルギーを使うため、脳にあまり血液が行き届かず、注意力が散漫になったり、眠くなってしまったりするもの。そんな時間に、無理やり仕事をしても、かえって効率が悪くなります。さらに、つねに気を張るのは、自律神経にとってもいいことではありません。

お昼のあとの2時間は単純作業にあてるといい

 ――そうなんですか?

 小林:集中しているときは、交感神経が上がってアドレナリンが分泌されます。さらに、神経伝達物質のドーパミンが大量も分泌され、脳の中枢神経が強化されます。その結果、神経伝達物質アドレナリンが分泌されて集中力が向上します。でも、その状態が長時間続くと体と心は疲弊します。朝から夕方まで、ずっと100%集中するなんて疲れてしまうし、そもそも不可能です。自律神経の乱れも大きくなってしまいます。アドレナリンには血小板の働きを活発にして、血液をドロドロにさせてしまう作用も。イライラしたり怒りっぽくなったりするというデータもあります。

 ――なるほど……。安定したパフォーマンスを出すために「捨ててもいい」時間をつくる、と考えるんですね。

 小林:そうです。「捨ててもいい」時間をしっかり意識することは大切です。捨てるといっても、何もしないわけではありません。お昼休みのあとの2時間は、単純作業にあてることがおすすめです。資料整理や身の回りの片づけなど、集中しなくてもいい作業を見つけて、「捨ててもいい」時間にすると決めておくといいですよ。1つずつやるべきことを書き出して、時間を決めて淡々とこなすと仕事が進みます。

 ――なるほど。ただ、働き始めてすぐだと、自分で時間をコントロールしたり、仕事の内容を選んだりすることが難しいです。

 小林:それであれば、交感神経の助けを少し借りましょう。やる気を出すためには、自分では多少苦手だと思っていることをして交感神経を少しずつ上げていくといいですよ。たとえば、自分が抱えている案件について、上司に相談するのもおすすめです。相談する内容を考えたり、コミュニケーションをとったりすることで交感神経が高まり、集中力を上げることもできます。

 ――試してみます。でも、さすがに毎日相談には行けないので、他の方法も教えてもらえませんか?

 小林:椅子に座ったままできるストレッチも効果的です。椅子に座ったままで、腕を上げて手首を頭の上で交差させ、そのまま息を吸いながら上体を上に伸ばします。その後、体を左右に倒していきます。呼吸を意識しながら左右に10回ほど繰り返すと、交感神経が活発になっていきますよ。

前回:『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』

自律神経の乱れの原因かも!? ストッキングで“肩こり”解消、簡単トレ

肩が凝っている人は、筋肉がコチコチで肩甲骨が動きにくい状態。肩甲骨が動くようになれば、血行も良くなり、凝りにくくなる。整形外科医でカイロプラクターでもある竹谷内康修さんが、“パソコン肩”に効くメソッドを教えてくれました。


パソコン肩…前のめりになってパソコンを長時間使っていると、猫背になって肩が前に丸まってしまう。すると肺が圧迫されるため十分に呼吸ができず、自律神経のバランスが乱れるなど様々な不調の原因になることも考えられる。

パソコン肩に効くメソッド

STEP1:ゆるめる(緊張した筋肉をゆるめるメソッド)

【10秒キープ×3回/左右を替えて同様に】首の後ろ側のストレッチ

まずはストレッチで、首から肩にかけての肩甲挙筋と背中にある僧帽筋の上部をほぐす。ここがほぐれると、肩甲骨が動きやすくなり、肩こりの解消に。1~3を各3回、左右を替えて同じように行って。

© ananweb 提供

1.背すじを伸ばして椅子に座り、左の手で座面のサイドを持つ。顔は真っすぐ前を向き、リラックスしてスタンバイ。

2.首を前に倒したあと、右に傾ける。真横ではなく、斜め前に倒すのがポイント。目線は、右斜め前の床に向けること。

3.首を2の状態にしたまま、右手を頭の左側に当てる。首をさらに右斜め前にゆっくりと倒し、そのまま10秒キープ。

© ananweb 提供

【ここを伸ばす】

右手を頭の左側に当て、斜め前に倒す。耳の後ろから肩にかけての筋肉が、グッと伸びるのを感じて。

STEP2:安定させる(体を支える筋肉を鍛えて悪い姿勢を防ぐメソッド)

【5秒キープ×5回/左右を替えて同様に】腕の上下運動

肩が丸まり、胸が縮んだ状態を正しい姿勢に戻すトレーニング。肩甲骨まわりの筋肉を鍛えることで、猫背によって広がってしまった左右の肩甲骨の間を縮め、肩を後ろに引けるようにする。左右5回ずつ行うのがおすすめ。

© ananweb 提供

1.足を肩幅に開いて立ち、ストッキングの端を左右の手に1回ずつ巻きつける。ヒジは90度に曲げ、両手の間隔は体の幅に。

2.右手はそのまま、左腕を伸ばして左手を斜め上に。手は頭より少し後ろにして、目線は左手に。そのまま5秒キープ。

【ここを鍛える】

上げた手と同じ側の肩甲骨を、内側に寄せるイメージで。肩甲骨まわりの筋肉に意識して力を入れよう。

編集部選:パソコン肩にいいアイテム。

高周波で血管を広げて凝りを治療する。

© ananweb 提供

肩や腰の凝りを改善する医療機器として認証された、業界唯一の家庭用高周波治療器。高周波パルスが血管を広げて血流を改善することで、こわばった肩や腰をケア。装着方法は、付属のテープ、ストラップ、アタッチメントの3パターンで家事や仕事をしながら使える点が便利。軽量&コンパクトなので、携帯も楽。高周波治療器コリコランEW‐RA500(2個入り)調査価格¥22,000前後(パナソニック TEL:0120・878・697)

気持ちがシャキッとする姿勢サポート下着。

© ananweb 提供

背中側に配置したクロスパネルの効果で、正しい姿勢作りをサポート。身につけると自然と背すじを伸ばしてくれる。通気性の良いメッシュや体の動きに合わせた裁断、ノンワイヤー設計で着心地が抜群なのも嬉しいポイント。姿勢が崩れた時に違和感が出る設計にしている、という徹底ぶりも頼もしい。常に正しい姿勢を意識できる。トゥシェアクティバランスノンワイヤーブラジャーブラック¥2,310(グンゼ TEL:0120・167874)

竹谷内康修さん 竹谷内医院院長。整形外科医、カイロプラクター。著書に『頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える』(徳間書店)ほか。

クロスバックトップス¥4,900 パンツ¥6,900(共にYES/KIT)

※『anan』2021年11月10日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・松木育未(LIGHT management) 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)

「自律神経失調症」って、結局どうすればいいの?体と心を整える4つのコツ【専門家監修】

メンタル不調の原因について調べていると、よく見かけるのが「自律神経」の文字。ストレスと関係があって、調子が崩れると「自律神経失調症」になるらしい……という、なんとなくのイメージはありますよね。ですが、そもそも「自律神経」って何なのでしょうか? 自律神経失調症にならないためには、具体的にどう生活したらいいのでしょう?

そんな疑問を解消すべく、自律神経失調症の原因・症状・予防策などについて、産業保健師の劉 詩卉(りゅう しひ)先生にお話を伺いました。

Q.そもそも「自律神経」って何ですか?
自律神経系(以下、自律神経)とは、体内環境を調節する役割(体温や心拍数・呼吸数の調節など)を担う神経系です。脳内の視床下部という場所でコントロールされていて、体性神経系(感覚神経、運動神経)とは異なり、自分の意識とは関係なく内臓や血管などに働きかけます。

自律神経は、「交感神経」「副交感神経」という2つの神経がバランスを取り合うことで機能しています。車の部品に例えると、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキに似ています。

危険に立ち向かうときや「何かを頑張るぞ」というときは、興奮を司る交感神経が優位になります。反対に、休むときや体力を温存すべきときは、リラックスを司る副交感神経が優位になります。

自律神経は、ストレス対応の司令塔のような役割も担っています。

たとえばレーシングゲームでミスをしそうになったとき、心臓がバクバクしたり、反対にスッと冷静になったりしますよね。これは、自律神経が「ミスをしそうな状況」というストレスに対処している証拠です。

危険を回避するために、脳がアクセルを踏んで心拍を上げたり、ブレーキを踏んで冷静になったりする。その脳の働きをコントロールするのが、自律神経です。

Q.では、「自律神経失調症」とは何ですか?
自律神経失調症とは、自律神経の2つの機能(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、心身に悪影響を及ぼしている状態のことです。ストレスを上手に受け流してくれる自律神経ですが、対処できるストレス量には限界があります。あまりにも大きなストレスを受けたり、本人がストレス反応を無視してガマンし続けてしまったりすると、自律神経がアクセルとブレーキをうまく調節できなくなってしまうのです。

このときに生じる不調が「自律神経失調症」です。

誤解されやすいのですが、「自律神経失調症」には確立した疾患概念や診断基準があるわけではありません。自律神経のバランスが大きく崩れて正常な働きができなくなっている状態を表す、非常に広い定義に使われる病態名として、医療機関から一般まで広く用いられています。

■自律神経失調症の症状と、早めに気づくポイント
Q.自律神経失調症になると、どんな症状が現れますか?
自律神経失調症の症状は人によってさまざまですが、主に、

・慢性的な倦怠感や疲労感
・めまい
・頭痛
・動悸や息切れ
・食欲不振
・不眠
・集中力や決断力の低下

といったものが挙げられます。放置すれば「うつ」を招くケースもあるため、バランスが崩れやすい時期を知っておき、早めに気づいて対処することが肝心です。

Q.「バランスの乱れ」に早めに気づくポイントは?
自律神経のバランスが乱れているときは、心身に次のようなサインが現れます。

◆自律神経が乱れているサイン
・休んでも疲れが取れない
・いつもなんとなくだるい
・眠りが浅い
・食欲が減っている など

このほかにも、「何かおかしいな」「いつもとちょっと違うな」と感じたときは要注意です。また誰にとっても自律神経が乱れやすい「要注意のタイミング」もいくつかありますので、ご紹介しておきましょう。

■要注意のタイミング(1)気候の変化
自律神経は体温調節にも関わる器官です。温度や湿度が急激に変化する「季節の変わり目」には負荷が増えます。とくに気をつけたいのが「冷え」です。体が冷えると生命維持に支障が出るため、温めようとして交感神経が優位になります。この状態が続きすぎると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。

冬はもちろん、夏の冷房にも注意しましょう。冷えた室内で仕事をする際は、はおり物や飲み物で体を温めたり適度に立ち上がって体を動かしたりと、工夫してみてくださいね。

■要注意のタイミング(2)環境の変化
自分を取り巻く環境に大きな変化があったときも、自律神経のバランスが崩れやすくなります。たとえば、春から新生活を始めた人。職場で人事異動があった人。自分の立場は変わらなくても、新入社員が入ってくるなど周囲に変化があった人。こうした変化は、無自覚であっても自律神経に大きな負担をかけています。

とくに今年はコロナ禍による生活の変化も重なり、例年よりもいっそう注意が必要です。

自律神経に負担をかけるのは、ネガティブな変化だけではありません。結婚や昇進といったポジティブな変化も、じつはストレスになります。お祝い事がストレスだなんて意外かもしれませんが、新しい物事にはワクワクと不安の両方を感じるものです。自分を取り巻く環境が変わったときは、それがどんな変化であれ「自律神経に負担がかかりやすくなっている」という心構えをしておきましょう。

■要注意のタイミング(3)生理周期による変化
女性の場合、生理周期でも自律神経に乱れが生じます。この理由は、生理に関わるホルモンの分泌が自律神経をコントロールしている脳の部分のすぐ近くで行われるためです。生理でホルモンバランスが崩れやすい時期は、「自律神経も乱れやすくなる」と意識しておきましょう。

■自律神経失調症にならないために…今すぐ始める4つの習慣
自律神経は、自分の意志ではコントロールできません。交感神経と副交感神経をバランスよく動かすためには、生活習慣や行動を工夫する必要があります。

具体的には、次のような習慣を心がけましょう。

(1)意識して「副交感神経」を優位にする

環境に変化があったときは、緊張やプレッシャーから交感神経が優位になりがちです。そこで、自律神経のバランスを取り直すために「副交感神経が優位になること」を生活に取り入れていきましょう。具体的には、リラックスする時間を意識して作ります。時間を決めて趣味に没頭したり、好きな香りの入浴剤でバスタイムを楽しんだり、呼吸法や瞑想法を試したり、など。

オススメなのは「吐くこと」を意識した呼吸法を取り入れることです。人間は、息を吸うときに交感神経が、吐くときに副交感神経が優位になります。

▼呼吸法のコツ

息を吐くとき、長く細く「ふーっ」と吐き出すように意識します。息をたくさん吐けば吸う息も自然と深くなります。そのまま何度か深呼吸を繰り返すうちに、体も心もリラックスしてくるでしょう。

また、「マインドフルネス」の実践もオススメです。マインドフルネスとは「今ここ」に意識を集中させるための瞑想法で、副交感神経を優位にする効果も期待できます。

▼マインドフルネスの手順

1.床でも椅子でも、リラックスできる場所に座る。
2.目を閉じて(または半目で)、ゆっくりと深く呼吸を繰り返す。
3.呼吸だけに意識を向ける。他のことに気がそれたら、また呼吸に意識を向け直す。

瞑想というと難しそうに聞こえますが、実際の手順はこれだけです。毎日寝る前に5分間、試してみてくださいね。

(2)生活にメリハリをつける

薄暗い部屋で1日中ダラダラと過ごす……といったメリハリのない生活も、自律神経の乱れに繋がります。

・朝起きたらカーテンを開けて光を取り入れ、交感神経を目覚めさせる
・日中はよく動き、よく休む
・夜は暗めの部屋でゆったり過ごし、副交感神経のスイッチを入れる

というように、メリハリを意識して1日のリズムを作っていきましょう。

(3)テレワークでも始業・終業時間を守る

自宅で働くテレワークでは、仕事とプライベートの境目があいまいになってしまいがち。これはまさにメリハリのない状態で、自律神経の働きを妨げてしまいます。家で仕事をする際も、始業時間と終業時間をきちんと決めて守りましょう。1日の仕事を終えたら頭をプライベートモードに切り替え、リラックスできる時間を過ごしてくださいね。

(4)コロナ禍でも、できる範囲で「今までどおり」を取り戻す

コロナ禍の影響で、「長年の趣味や習慣が急にできなくなってしまった」という人も多いのではないでしょうか。急激に起きたこの変化は、やはり大きなストレスになっているはずです。そこで、できる範囲で工夫して「今までどおりの習慣」を生活に取り入れてみましょう。

たとえば、職場で人と接するのが好きだった人は、テレワークでも「チャットツールを通して積極的にコミュニケーションを取ってみる」。旅行が趣味という人は、「散歩に行ける範囲で、まだ行ったことのない場所に足を運んでみる」など、少し考えてみると、近い行動はできるもの。

今までと全く同じことはできなくても、続けてきた趣味や習慣に「できるだけ近い行動」を探して実行することで、自律神経のバランスはぐっと保たれやすくなります。

■誰もがバランスを崩しやすい今だからこそ、意識していこう
コロナ禍、そして春の新生活。大きな変化とストレスが重なり、今は誰もが自律神経のバランスを崩しやすくなっています。「いつもと違うな、おかしいな」と感じたら、自律神経が乱れ始めたサインかも。早めにバランスを整えていきましょう。

文・構成/豊島オリカ
取材協力/株式会社エムステージ

自律神経の名医 こってりラーメンを食べ続けても健康な理由

 全身のほとんどの器官を支配し、体調の良し悪しに多大な影響を及ぼす「自律神経」。その研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、最新刊『不摂生でも病気にならない人の習慣~なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?~』の中で、自身の健康管理に関する数々の“過ち”を告白している。「我慢は万病のもと」と提唱する、小林教授が同書に込めた思いとは?

 所得格差に地域格差、教育格差に情報格差など、現代社会はさまざまな分野で「格差」が拡大しています。残念ながら、その流れは医療や健康面にも及んでおり、新たな社会問題となりつつあります。

 しかし、医療格差や健康格差の場合、収入や地域などの外的要因に関係なく、自身の肉体や健康に関する正しい情報や知識、いわゆる「ヘルス・リテラシー」を高めることによって、いつでも誰でも、「下流」から「上流」へと駆け上がれるものです。

 それにもかかわらず、日本人、とりわけ壮年期のビジネスパーソンは、いまなおヘルス・リテラシーが低いままです。1960年代に「モーレツ社員」という流行語が生まれましたが、会社のために粉骨砕身で働くことが美徳とされ、そのような企業文化はまだまだ根強く残っています。

 ここ数年、「働き方改革」の大号令がかかったこともあり、ようやくビジネスパーソンたちの健康に対する意識も高まってきました。

 ところが、「人生100年時代」という言葉の流行も重なり、医療や健康に関する玉石混淆の情報が、影響力のあるテレビや新聞、雑誌などで一気に溢れ返るようになったのです。ネット上では、医師などの監修を受けない、かなりきわどい健康情報サイトも増えています。

 そして、残念なことに、ヘルス・リテラシーが低いままだと、メディア側の興味を煽る巧みな技術によって、誤った、もしくは自分には不適切、不適当な情報を信じ込み、かえって体調を悪化させることにもなりかねないのです。

 例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも「健康にいい」と医師たちが太鼓判を押し合っています。いったいどうしたらいいのでしょうか。

 答えはひとつです。私たち自身がヘルス・リテラシーを磨き、自分にとって相応しいか相応しくないか、自分でジャッジできる判断力を身につけるしかないのです。

 医師の情報とはいえ、不特定多数の人に向けて発しているわけですから、自分に合っているかどうかは自分で判断するしかありません。病院で受診した時のような気持ちになってはいけません。

◆「超こってりラーメン」だって食べていい

 自律神経の専門家だからといって、私自身が健康管理を徹底できているかと聞かれれば、答えは「いいえ」です。人間ですから、過ちも犯します。

「これ、健康に良くないよなあ……」と思いながら、背脂たっぷりの「超こってりラーメン」が無性に食べたくなり、有名店に並んで食べることもあります。

 先日も、焼き肉店で7人前の肉を平らげてしまいましたし、昼からステーキ500グラムを一気に食べる、なんていう日もあります。なるべく無駄な飲み会には参加しないように心がけていますが、つい深酒してしまう日もあります。

 野菜も苦手で、最近まで食べられませんでした。怒ると自律神経のバランスが崩れてしまうことがわかっていても、ちょっと前までは、スタッフに怒鳴ってばかりいました。

 人生は反省の連続です。肉体や精神に悪いことに囲まれて生きている現代人は、反省するために生きているようなものかもしれませんね。でも、私は健康です。なぜか。

 それは背脂たっぷり系のラーメンを食べた後の正しいリカバリーの方法を知っているからです。深酒をした翌朝の正しい過ごし方を理解しているからです。「怒った後の対処法」や「怒らないための処方箋」を学んだからです。だから健康を害してしまう前に、立ち直ることができます。これがヘルス・リテラシーの力なのです。

 ダイエットもそうですが、健康に気を遣う生活が長続きしないのはなぜでしょうか。巷に溢れている健康情報を眺めてみると、「○○をしなさい」「××をしてはいけない」というものが、非常に多いように思います。

 一見、こうしたアプローチは正しいように見えますが、度が過ぎると、実はマイナスです。例えば、「背脂たっぷり系のラーメンが食べたい!」と心身から欲しているのに、「健康に悪いから我慢しろ」とやってしまうと、多大なストレスがかかってしまうのです。

 ストレスは心身に悪影響を与えます。特に自律神経のバランスを乱す大きな要因で、結果的に、食べた時よりも、我慢して食べなかった時のほうが体調を崩してしまう、という事態になりかねないのです。

 自分を律するばかりが健康な生活ではありません。「ダメな自分」を受け入れ、それを補う知恵を学んでおくことが重要なのです。

※小林弘幸・著『不摂生でも病気にならない人の習慣~なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?~』より抜粋

簡単!自律神経も整う、正しい姿勢の作り方

◆「あごを引いて胸を張る」だけではダメ?

多くの方が憧れるセレブ女優。ドレスもヒールも綺麗ですが、やはり一番の美しさを引き立たせるのは「姿勢」です。いい姿勢を作るために「あごを引いて胸を張りなさい」という合言葉をよく耳にします。子供の頃、耳にタコができるほど親によく聞かされたという方もいるでしょう。

確かに、猫背で顔が前に突き出したような方にとっては適切な修正方法だと思います。しかし、この表現には問題点がひとつあります。それは、どこまであごを引くのか?どこまで胸を張るのか?ということです。つまり、方向は示されていますが、程度が示されていません。大切なのはその方にとって適切な修正方向であるか、程度であるかということです。
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◆万人に共通する体の一点である“頭頂”

「あごを引いて胸を張る」だけでは、程度が分からないと言いました。そして、個性があるので万人に共通な修正は難しいのではないかと思ってしまいます。しかし実は、姿勢を正す際に意識すべき、万人に共通する“体の一点”があるのです。

それは、「頭頂」です。これは1点しかありませんし、誰もが持っているところですね。テーブルに置いてあるチェーンのネックレスを想像してみて下さい。ネックレスを真っ直ぐに連ねさせるためにはどうしたらいいでしょうか? 一番簡便な方法は、端を持ってただ上に持ち上げること。重力線が垂直であるため、これだけですべて一直線に連なるはずです。

ヒトも重力下で存在しているため、重力の法則に必ず従います。というより、重力下で一番効率的な体のこなし方を進化の中で作ってきたという方が適切でしょう。つまり、重力に勝つために、重力方向に頭頂を合わせてきたのです。重力は常に私たちを押し潰そうとしています。その力に抵抗するには、真逆の方向に体を位置させることが最適だということです。

◆頭頂はどこ?

さて、いい姿勢は頭頂が作るということは分かりました。しかし、頭頂の正しい位置はそもそもどこ?ということになります。 旋毛(つむじ)と言いたいところですが、旋毛は2つある人もいますし、正中(体の真ん中)にないことが多いですね。前から見たときの頭の左右傾斜は耳の高さや、顎の位置で分かりやすいと思います。難しいのは横から見たときの上下位置です。

頭頂を知るのに、簡単な方法があります。それは、遠くを見ることなのです。

この時には少しあごが上がりますよね。この状態だと、上下の歯は接触することはありません。2~3mm隙間ができます。これが顎関節としての正常な位置です。顎関節の正常な位置は、頭部の正しい位置とも言えます。関節にとって楽な位置は、正しい姿勢の基準になるのです。つまり、上下の間に隙間ができるところが頭の上下の真ん中となります。この正しい頭部の位置での頭頂が、正しい姿勢の真ん中なのです。

ここを意識すると、あごや胸という部位を意識しなくても、勝手に体はいい姿勢になります。そもそも、ヒトが進化の中で、わざわざあごや胸を意識して何かすることはないと思います。考えてから姿勢をとるようでは大変ですよね。ですから、遠くを見るという行為そのものがいい姿勢を作るというのは実用的であり、かつ自然なのです。

◆理想の姿勢は、鳩尾(みぞおち)が引き上がるイメージ

鳩胸(はとむね)、鳩尾(みぞおち)となぜかヒトの胸は鳩に例えられます。みぞおちは語源が「水が落ちる」ですから、当て字ということになります。

胸を張るというと、みぞおちを開くというイメージが強いかと思います。そのために、多くの方は肩甲骨を背骨方向に寄せるでしょう。確かに胸は張りますが、背中も反ってしまうので、胸椎の自然な湾曲が減少してしまいます。これではいい姿勢どころか逆に腰への負担が増加してしまいます。また、お腹も伸びてしまい、これも腰への負担を高めます。

先ほどご紹介した、頭頂を持ち上げた感覚にすると、胸は開かずに持ち上がります。「開く」と「持ち上がる」は大きな違いです。持ち上がる時には、鳩尾が「引き上がる」イメージになります。重力に負けない動きですね。その際肩甲骨は寄せず、胸の前に呼吸が入るような感じになります。また、同時にお腹が引き上がっていると、正しい引き上がりと判断できます。お腹は引き上がると薄くなり引き締まります。ポッコリお腹の改善にも効果的ですね。
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◆姿勢と自律神経の関係

肋骨は肺などの臓器含め体の前にあるので、それだけでも重さが前にかかって体を前に倒そうとしています。頭頂を伸ばすと、自然と胸が持ち上がります。これによって肺は楽に広がりやすくなり、自然と胸式呼吸になります。よく健康のためには腹式呼吸が大事と言われます。しかし、実際は自律神経の影響で、胸式と腹式は循環しています。いい姿勢をとるときには交感神経が優位になり、胸式呼吸になります。リラックスすると副交感神経が優位になり、腹式呼吸になります。

つまり、いい姿勢とは基本的には交感神経の影響があるのですね。だらだらした生活をしていると、いい姿勢にもならないということが分かります。そして生活に張りがあると、いい姿勢になるとも言えます。皆さんの生活はいかがでしょうか?
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◆キーポイントは「遠くを見る」こと

以上見てきたように、正しい姿勢は「遠くを見る」がキーポイントです。都市では、ビルが乱立し仕事はそのビルの中。携帯やPCは目の前……。遠くを見る機会が本当に減っています。ときどき夕日を見たり、星を眺めたりして、本来の姿勢を取り戻しましょう。
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中村 尚人(理学療法士)

自律神経失調症では、肩こりや頭痛、めまい、のぼせ、倦怠感、瞼が重いなどチェックシートと対処法

原因がはっきりしない体調不良を指す「自律神経失調症」

病院で検査を受けても異常が見つからないのに、肩こり、頭痛、めまい、さらに腰痛、胃腸の不調、動悸などの様々な不調が続くことがあります。色々な診療科で検査を受けても原因がわからない場合、自律神経系のバランスを崩している可能性が考えられます。

体のあちらこちらに不調が生じていたり、何となく調子が悪い日が続いていたりする人は、自律神経系が乱れ「自律神経失調症」の状態になっているかもしれません。まずはセルフチェックをしてみましょう。


自律神経失調症の症状・セルフチェック
今、あなたが困っている症状に当てはまるものはないか、下記の項目をチェックしてみましょう。

□ 肩こり、頭痛、めまい、腰が不安定な感じがする
□ 倦怠感があり、身体に力が入らないように感じることもある
□ まぶたが重く感じ、目が開けにくい・目の疲労が強い
□ 息苦しく、口の中がカラカラに渇く
□ 耳鳴りがする。耳が詰まったように感じる
□ 喉が詰まるような感覚がある・飲み込むときに異物感がある
□ 動悸や胸の圧迫感
□ 急にのぼせてしまうことがある
□ 暑くなくても汗が出る・暑くても汗が出ない
□ 無気力、イライラ、不安感などがあり、精神的に不安定になっている
□ 胃がムカムカする・胃がパンパンに張っている感じがする
□ 便秘・下痢など腸が不調
□ 大量に水分を摂っていないのに、すぐにトイレへ行きたくなる
□ 手足がしびれたり、ムズムズしたりと、異常な感覚がある

いかがでしたか? なんとも、とらえどころの無い全身の不調であることに、改めて気が付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。複数当てはまる人は、身体のいたるところに病気を抱えているのかもと不安になるかもしれませんが、自律神経系の乱れが調整されると、複数の症状が落ち着いてくる場合があります。

自律神経失調症の原因は?
チェック項目を見ても分かる通り、症状は多岐に渡っています。とても不思議に思うかもしれませんが、それは、生きていくために身体機能を保つという、重要な役割を自律神経系が担っているためです。内臓の働きや呼吸・体温調整など、いつも当たり前のように機能していることに関わっています。

意識しなくても働く自律神経系には、交感神経(活動的)と副交感神経(リラックス)があります。バランスがとれ機能することで、私たちは日々の生活を過ごすことが出来ます。

ところが、体質的な問題や、生活習慣の乱れ、精神的ストレス、性格的な問題などが影響して、自律神経系のバランスを乱すと、チェック項目に挙げたような、様々な症状に見舞われることへ繋がるかもしれないのです。

自律神経失調症の対策法
自律神経失調症に見られる症状が表れた場合、何か心当たりがないか考えてみましょう。

「最近、忙しくて睡眠不足になっていないか? 」「緊張を強いられる場面が多くないか? 」「将来に不安を感じていないか?」「生活環境に変化がないか? 」など。もし心当たりがあれば、それらを自覚し生活のリズムや考え方を変えることで、症状が和らぐこともあります。

しかし、それでも症状が変わらない場合は、内科や心療内科などで、疾患の有無を検査し、疾患が無ければ症状に対してのお薬の処方が必要になるかもしれません。また代替医療やヨガなどの軽い運動、身体をリラックスさせる体操などで効果がみられることもあります。

それぞれの対策法として、食生活からアプローチしたい方は、「自律神経バランスを整える食事方法」記事を。入浴や呼吸法などを試したい方は、「自律神経バランスを整える入浴方法」「呼吸を変えて自律神経の乱れを整える」記事を。軽い運動で改善したい方は、「ヨガやストレッチで自律神経の乱れを整える」「夜のウォーキングで自律神経バランスを整える」などをあわせてご覧ください。
自律神経失調症にはなるべく早めの対処を
また、現時点では「自律神経失調症」であっても、この状態が続くと、将来的に本当に身体的な疾患に繋がる可能性も、ないとは言えません。早いうちに、環境的、心理的なストレス要因を自覚して、身を守れるように対応できることが、自律神経失調症から脱出する近道であると思います。

今すぐ診断!「自律神経失調症」チェックと対処法

◆原因がはっきりしない体調不良を指す「自律神経失調症」

病院で検査を受けても異常が見つからないのに、肩こり、頭痛、めまい、さらに腰痛、胃腸の不調、動悸などの様々な不調が続くことがあります。色々な診療科で検査を受けても原因がわからない場合、自律神経系のバランスを崩している可能性が考えられます。

体のあちらこちらに不調が生じていたり、何となく調子が悪い日が続いていたりする人は、自律神経系が乱れ「自律神経失調症」の状態になっているかもしれません。まずはセルフチェックをしてみましょう。
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◆自律神経失調症の症状・セルフチェック

今、あなたが困っている症状に当てはまるものはないか、下記の項目をチェックしてみましょう。

□肩こり、頭痛、めまい、腰が不安定な感じがする
□倦怠感があり、身体に力が入らないように感じることもある
□まぶたが重く感じ、目が開けにくい・目の疲労が強い
□息苦しく、口の中がカラカラに渇く
□耳鳴りがする。耳が詰まったように感じる
□喉が詰まるような感覚がある・飲み込むときに異物感がある
□動悸や胸の圧迫感
□急にのぼせてしまうことがある
□暑くなくても汗が出る・暑くても汗が出ない
□無気力、イライラ、不安感などがあり、精神的に不安定になっている
□胃がムカムカする・胃がパンパンに張っている感じがする
□便秘・下痢など腸が不調
□大量に水分を摂っていないのに、すぐにトイレへ行きたくなる
□手足がしびれたり、ムズムズしたりと、異常な感覚がある

いかがでしたか? なんとも、とらえどころの無い全身の不調であることに、改めて気が付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。複数当てはまる人は、身体のいたるところに病気を抱えているのかもと不安になるかもしれませんが、自律神経系の乱れが調整されると、複数の症状が落ち着いてくる場合があります。

◆自律神経失調症の原因は?

チェック項目を見ても分かる通り、症状は多岐に渡っています。とても不思議に思うかもしれませんが、それは、生きていくために身体機能を保つという、重要な役割を自律神経系が担っているためです。内臓の働きや呼吸・体温調整など、いつも当たり前のように機能していることに関わっています。

意識しなくても働く自律神経系には、交感神経(活動的)と副交感神経(リラックス)があります。バランスがとれ機能することで、私たちは日々の生活を過ごすことが出来ます。

ところが、体質的な問題や、生活習慣の乱れ、精神的ストレス、性格的な問題などが影響して、自律神経系のバランスを乱すと、チェック項目に挙げたような、様々な症状に見舞われることへ繋がるかもしれないのです。

◆自律神経失調症の対策法

自律神経失調症に見られる症状が表れた場合、何か心当たりがないか考えてみましょう。

「最近、忙しくて睡眠不足になっていないか? 」「緊張を強いられる場面が多くないか? 」「将来に不安を感じていないか?」「生活環境に変化がないか? 」など。もし心当たりがあれば、それらを自覚し生活のリズムや考え方を変えることで、症状が和らぐこともあります。

しかし、それでも症状が変わらない場合は、内科や心療内科などで、疾患の有無を検査し、疾患が無ければ症状に対してのお薬の処方が必要になるかもしれません。また代替医療やヨガなどの軽い運動、身体をリラックスさせる体操などで効果がみられることもあります。
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◆自律神経失調症にはなるべく早めの対処を

また、現時点では「自律神経失調症」であっても、この状態が続くと、将来的に本当に身体的な疾患に繋がる可能性も、ないとは言えません。早いうちに、環境的、心理的なストレス要因を自覚して、身を守れるように対応できることが、自律神経失調症から脱出する近道であると思います。

※参考
・「自律機能生理学」金芳堂(著 東京都老人総合研究所副所長 佐藤昭夫、筑波技術短期大学教授 佐藤優子、東京女子医科大学 五嶋摩理)
・「自律神経失調症」高橋書店(監修 自治医科大学付属大宮医療センター 井出雅弘) 
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思春期によくある「起立性調節障害」 家族はどう向き合う?

朝起きられず、学校も休みがちに……。自律神経系のアンバランスによって、しばしば思春期に発症する「起立性調節障害」。もし我が子が診断されたら?

 起立性調節障害の専門外来を持ち、数多くの子どもたちの治療に当たってきた、もりしたクリニックの森下克也氏に起立性調節障害の適切なサポートについて伺った。

■本人が自分のストレスに気づくことが大切

起立性調節障害の子どもに話を聞くと、「学校に行きたくない」と言う子はまずいません。「しかし、その裏にはしばしば「行きたくない」気持ちが潜んでいます。

学校のある日の朝に症状がひどくなるようなら、何かストレスを感じていないか気にかけ、どうすればよいか一緒に考えてあげてください。本人が自分のストレスや悩みに気付き、向き合うことが症状の改善につながります。
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■叱っても放置してもダメ 「逃げ癖」も怖い

「起きなさい!」「怠け者!」などと叱り飛ばしていると、症状の悪化を招くばかりか、子どもの自立心の芽を摘むことになります。一方、「調子が悪いなら寝ていていいよ」と放置していると、子どもは無意識のうちに病気を利用するようになります。

すると、病気が治りにくくなるばかりか、目の前の課題を乗り越える力が育たなくなります。一番の問題は、病気を理由に「逃げ癖」がついてしまうことなのです。
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■具体的な目標を持たせ、長い目で見る

起立性調節障害をもつ子どもたちの多くは、「このままではいけない」と思いつつ、悶々(もんもん)としながら日々を過ごしています。受験や、留年や退学といった事態に直面して初めて、動き出すきっかけをつかめる子が多いようです。

具体的な目標ができたり、自分の在り方に自信を持てたりすると、表情もはつらつとしてきて「もう大丈夫」と思えます。

思春期の子どもは、自立心が育ちきっていない「未熟さ」ゆえに、心身に現れるさまざまな症状に負けてしまいがちです。自立心の成長には時間がかかります。

「今は仕方がない。でも、いつかは自分で動き出さなければいけないときが来るんだよ」などと声をかけて、本人が自立心を育て、この先もさまざまな課題と向き合っていけるよう、子どもを信じ、長い目で見守ってあげてください。

急激な気圧の変化が自律神経に影響!対策は「●●をよくすること」

今年の立春は2月4日でした。とはいえ、まだまだ全国的に寒さの厳しい日が続くようですが、春の訪れを祝う行事も各地で行われているようです。

旧暦では正月にあたる立春は1年がスタートとする祝日。今年2015年の立春は満月でもあり、占星術や風水でもなにかと縁起のよい日のようです。

そんな、めでたい春の訪れの時期ですが、気をつけなければならないのが「気圧の変化」による心身の不調です。

◆変わりやすい天候=気圧の変化が自律神経に影響
2/4の時点では、本州には低気圧による大雪の予報が出ていますが、これから気候が暖かくなるにつれて、低気圧と高気圧が交互にやってくる季節になっていきます。

この時期には春一番に代表されるような「春の嵐」や雨の日が増え、全国的に天候が不安定になることも多いようです。
こうした気圧・気候の急激な変化の影響を受けるのが、交感神経・副交感神経といった自律神経です。

一般的に、高気圧のときは緊張をつかさどる「交感神経」が優位になり、低気圧のときはリラックスに深く関わる「副交感神経」が優位になるとされていますが、自律神経が気圧の変化に過敏に反応することで、ホルモンの分泌などにも影響をあたえ、頭痛・だるさなどの体調不良や肌荒れを引き起こすともいわれているのです。

また、この時期にはスギ・ヒノキの花粉が飛散しはじめることも、アレルギーを持つ人にとっては不調の原因に。これは、くしゃみ・鼻水・目のかゆみといった花粉症の症状だけでなく、「花粉による肌荒れ」を起こす場合もあるので注意が必要です。

◆対策は「血流をよくすること」
気圧の変化による心身の不調を軽減するには、身体をあたためて血流をよくすることが一番です。身体をあたためることは血流の改善につながるだけでなく、皮脂の分泌もうながすため、肌荒れの予防にもなるのです。

逆に、血流が滞って「冷えた状態」の身体は気圧の変化の影響を受けやすく、頭痛や肌荒れなどさまざまな不調を引き起こしやすいともいえます。

これからの季節にそなえて、白湯などのあたたかい飲み物をこまめに飲む、手首・足首・首といった「首」のつく場所をあたためる、根菜など食物繊維を多く含む食品で「腸内環境」を整える、などの方法で気圧の急激な変化にも負けないカラダづくりをおこなっておくとよいでしょう。

【これで私は助かった!】おしっこが赤い…“膀胱がん”の場合も

ある日突然おしっこに血が混じって出てくれば、大抵の人は驚く。しかし、ただ驚くだけではいけない。積極的に検査を受けることで、命を脅かす危険な病気を撃退することが可能なのだ。今回はそんな「膀胱がん」のお話です。

 ■山口聡さん(57歳=仮名)のケース

 自宅では「便器の周りが汚れる」と女房に怒られるので、恥ずかしながらおしっこをするときも便器に座ってしていたんです。だから自分のおしっこの色をしみじみと見るのは、自宅以外のトイレ。最初に異変に気付いたのも居酒屋のトイレでした。

 おしっこの色がなんとなく赤いんです。紅茶のような色合いです。でも、その時は酔っていたし、居酒屋のトイレが暗かったこともあって、あまり気にしていませんでした。

 翌日会社のトイレでおしっこをしていたら、昨夜より鮮明に赤い。鉄さびのようなドス黒い赤で、「これはえらいことだ!」となりました。

 会社近くの病院の泌尿器科を受診して症状を話すと、内視鏡による検査を受けることになりました。そして検査の結果、驚いたことに「膀胱がん」と診断されたのです。

 血尿が出たのだから何かの病気だとは予想していましたが、それ以外に痛みなどの症状はなかったので、がんと聞いたときは本当に驚きました。

 ただ、組織検査の結果、「表在性」といって、がんが筋層にまで達していないことがわかったので、おなかを切らずに内視鏡でがんの部分を削り取ることができました。

 驚いたのはそのあとです。再発予防のため、膀胱の中にBCGを注入する治療が行われたのです。BCGなんて、結核予防のために子供にうつワクチンだと思っていたのですが、よもや 膀胱がんの再発予防に効果があるとは知りませんでした。

 でも、おかげで術後2年が過ぎた今も再発も転移もなく、先生からも「たぶんこのまま行けるでしょう」と明るい見通しが示されています。

 あれ以来「汚れるよりも安全第一」と、家でも立ちションを実践していますが、女房も文句を言わなくなりました(笑)

 ■専門医はこう見る

 日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟医師

 膀胱がんの最も特徴的な症状が「血尿」です。色の出方はさまざまですが、明らかに普段と違って赤っぽい色の尿が出たら要注意です。普段から自分の尿を観察している人であれば、1リットルのおしっこに1ccの血液が混じっただけでも「おや?」っと感じるものです。なので、日頃からおしっこの色には注意をしておくべきでしょう。

 山口さんもそうですが、早期の膀胱がんであれば、内視鏡手術が可能です。そして、術後にBCGを膀胱に入れて再発を防ぐ方法も、一般的な治療法といえるでしょう。

 ご存じのようにBCGは結核を予防するワクチンですが、これを膀胱内に投与すると、「細菌」の存在を確認した免疫細胞が攻撃をかけ、もし取り残したがん細胞などが残っていても、一緒に攻撃してくれるのです。

 通常は週に1度の投与で6~8週間続けますが、その後は3~4カ月に1度の検査で状況確認。2年経っても再発転移がなければ一安心、5年経ってOKなら無罪放免となります。

 そのためにも、術後のフォローアップは面倒がらずに続けてください。

【これで私は助かった!】便が細くなったら“大腸がん”の可能性  女性にも多い若い人は遺伝

成人男性で全長約1・5メートルといわれる大腸。その中でも肛門に近いほどがんができやすく、直腸とS状結腸のがんだけで、大腸がんの半分以上を占めている。そこに発生するがんを早期で見つけるには、微妙な変化を見逃してはならない。

 ■上田信二さん(45)=仮名)のケース

 父も祖父も胃がんで死んでいるので、私も胃には注意をしていました。35歳の時から毎年胃カメラ検査を受けて、そのたびに胃や食道に“荒れ”があることは指摘されていましたが、がんを疑うような病変が見つかることはなく、最近は少し安心する気持ちもわいてきていたところでした。

 大腸内視鏡検査も過去には受けたことがありますが、麻酔を使った無痛検査だったのに、あとでお腹が張って苦しい思いをしたことから、リピーターにはなれなかったんです。

 異変に気付いたのは、年に一度の胃カメラ検査の時。問診で医師が発したひと言でした。

 「特に問題はありませんか? 血便が出たり、便が細くなったり…」

 血便は気付きませんでしたが、少し前から便は細くなっていたんです。直径にして鉛筆より少し太い程度の柔らかい便が続いていました。

 そのことを話すと、胃だけじゃなく大腸の検査も勧められ、受けることになり、検査の結果、S状結腸に明らかに異変が見つかったのです。紹介された市民病院で精密検査をしたところ、約5センチのS状結腸がんであることがわかりました。

 2週間後の開腹手術で腫瘍はきれいに摘出できました。医師の話では「見た限り転移もなさそうだ」とのことで、まずはひと安心。手術後には万一、取り残したがん細胞があった時に備えて、抗がん剤を使った補助療法も受けました。5年後の今も、経過は順調です。

 あの時「便の細さ」を訊かれなければ、取り返しのつかない状況に至っていたはず。結果として、胃がんを見つけに行ってS状結腸がんが見つかった-という形になりましたが、定期的な検査の大切さを痛感しました。

 ■専門医はこう見る

 小林医院(大阪市鶴見区)院長・小林経宏医師

 大腸がんというと「血便」を頼りにする人がいますが、シグナルはそれだけではありません。「下痢と便秘を繰り返す」という症状もあるし、今回の上田さんのように「便が細くなる」という症状から見つかるケースも、決して珍しいことではありません。

 大腸にがんができて便が細くなるのは、がんによって大腸の一部が狭窄しているから。便が細いと、痔のある人には好都合ではありますが、決して喜んでばかりはいられないのです。

 上田さんは腹腔鏡ではなく開腹手術でがん組織を摘出されたようですが、手術は、がんの場所、大きさ、周囲の臓器への浸潤、リンパ節転移などから、総合的に判断してベストな方法を選ぶことが大切です。

 「腹腔鏡で取れるうちは大丈夫だが、お腹を開くとなるとかなり危ない状況」と考えている人もいますが、無理して腹腔鏡手術にこだわるより、状況によっては開腹手術で確実にがんを切除したほうがいいケースもある。予後が良好であることを考えると、手術した外科医の判断が的確だったといえるでしょう。

 消化器系のがんに不安のある人は、胃だけではなく大腸にも目を向けて、定期的な検査を受けることをお勧めします。

【これで私は助かった!】胆のうポリープ放置したら“がん”に!

「定期的な検査」といわれても、何かと理由を付けてサボってしまいがちなサラリーマン。しかし、これを怠ると、取り返しのつかないことになるかも…。胆のうポリープがある人は、半年に一度の超音波検査をお忘れなく。

 ■山下守夫さん(57歳=仮名)のケース

 身長165センチで体重が80キロと今でもメタボ体質は変わっていませんが、以前は90キロを超える肥満体でした。健診のたびに悪玉コレステロールと中性脂肪は基準値を上回り、肝機能も「やや高め」で推移していました。

そのたびに治療を受けるよう指導はされるのですが、仕事の忙しさもあって、ついつい見て見ぬふりをしていました。

 3年前に超音波検査で胆のうにポリープがあることは知っていました。でも直径が1センチにも満たない小さなもの。先生も「良性だと思うけれど、その内また検査をしましょう」といった程度の話だったので、つい放置していたんです。

 ところが1年後、同僚ががんで亡くなったことから、急にポリープのことが不安になりました。以前の先生の所には顔を出しづらかったので、違うクリニックに行って、「1年前に胆のうポリープが見つかった」と自己申告しました。

 すぐにエコーで確認すると、直径2・5センチのポリープが見つかりました。この1年で倍以上に成長していたのです。

 医師の「悪性の可能性がある。手術すべき」との言葉を聞き、同僚のこともあったので、手術を受けることにしました。

 手術といっても開腹はせず、腹腔鏡で胆のうを切除するもの。創口も小さく、1泊入院するだけの短期滞在型手術でした。

 術後の組織検査の結果、医師の予想通りポリープは「がん化」していました。医師からは「あのまま放置していたら1、2年の命だったね」と言われてゾッとしたものです。

 その時の反省から生活習慣を見直し、10キロ以上の減量を達成。せっかく拾った命なので、このままメタボを脱却して長生きしたいと思います。

 ■専門医はこう見る

 医療法人社団涼友会(東京都新宿区)理事長・執行友成医師

 胆のうポリープは(1)形(2)数(3)大きさ(増殖のスピード)(4)できた場所-の四つを複合的に勘案して診ていく必要があります。見つかった時に小さかったからと言って、決して安心することはできません。

 特に(2)の「増殖のスピード」は重要で、ポリープの大きさが2センチを超えたら、がんを疑ってかかるべき。この大きさになると、山下さんのように「取ってみたらがんだった」というケースは珍しくありません。

 とはいえ、胆のうポリープには自覚症状はなく、また早期では血液検査でも反応しにくい。となると、「定期的な検査」に頼らざるを得なくなります。

 私は、胆のうポリープがある人には、半年に一度の超音波(エコー)検査を実施しています。半年ごとにポリープの変化を見ていれば、がん化などの「万一の事態」にも対応できます。

CTやMRIのような大掛かりなものではなく、外来で簡単にできる検査なので、本当に長生きしたいのであれば、きちんと受けるべきでしょう

【これで私は助かった!】“動悸”を侮るな!脳梗塞のリスクも

「たかが動悸」などと侮ってはいけない。その先に脳梗塞という重大疾患が控えているかもしれないのだ。心臓の症状が脳の病気を呼び起こす、そのメカニズムはこうだ。今回は「心房細動」の物語。

 ■福井真一さん(54歳=仮名)のケース

 数日前から妙に動悸がするので、気になっていたんです。翌月から大きなプロジェクトが始まることもあり、どうせなら時間があるときに診てもらおうと思って、会社の診療所に行ったら、心電図を撮ってくれました。

 すると、明らかに波形がおかしい。その医師は消化器が専門なので、近くの循環器専門病院に紹介されると、その日のうちに診てくれました。

 検査の結果「心房細動」と診断され、ワーファリンという薬を飲むことになりました。

 その後数日で動悸は消えたのですが、あとで聞くとワーファリンが心房細動を治したのではなく、心房細動は自然に治っただけとのこと。そしてワーファリンは当分飲み続けるように言われました。

 症状が消えたのに薬は飲み続ける-。聞けば、脳梗塞を予防するために必要な処置なんだそうです。ワーファリンは血液をサラサラにして、血栓ができなくなるようにする薬。

心房細動の人の心臓には“血のよどみ”ができやすく、ここでできた血の塊が何かの拍子に血流に乗ると、脳に飛んで血栓になる危険性があるとか。私にはその意識はなかったのですが、意外にも「死の一歩手前」まで行っていたというのです。

 よもや動悸が脳梗塞につながる症状とは知りませんでしたが、医師によれば「あのまま放置していたらどうなっていたかわからない」とのこと。忙しくなる前に受診しておいてよかったと、胸をなでおろしています。

 ■専門医はこう見る

 JR東京総合病院(東京都渋谷区)心臓血管外科部長・鎌田聡医師

 心房細動とは、心臓の上部だけが震えるような現象を起こす不整脈のこと。本来心臓は上部(心房)と下部(心室)が交互に収縮することでポンプの役割を果たすのですが、心房細動になると上下の動きがシンメトリーではなくなります。そのため血液の出力が5-10パーセントほど低下します。

 心房細動の典型的な症状は「動悸」です。心房細動だけで命を落とすことは考えにくいものの、「震え」が速すぎたり、逆に遅すぎると意識を失うこともあるので要注意。

 福井さんも言うように、心房細動になると心内血栓といって心臓の中で血の塊ができやすく、それが血流に乗って行った先で詰まると命に関わる状態を引き起こします。

 心臓を出た血流の60パーセントが脳に行くので、確率としては「脳梗塞」のリスクが高いのですが、それ以外にも腸や脚などの血管で血流不全をおこす可能性があります。予防するにはワーファリンのような抗凝固剤を使った治療が不可欠です。

 心房細動がひどい時には、心臓の内側から電気の流れを止める「アブレーション」という血管内治療を行うこともありますが、福井さんは治まっているようなので、経過観察でよさそうです。ただし、ワーファリンは医師の指示に従って使い続けてください。

【これで私は助かった!】お腹に痛み…検査したら“急性心筋梗塞”

命に関わる重大疾患だからといって、必ずしも、のた打ち回るような激痛や苦痛を伴うとは限らない。同じ病気でも症状の出方は人によって異なる。症状が軽いからといって、甘く見るのは危険なのだ。

 ■湯川誠一さん(54)=仮名=のケース

 実は、病院に連れて行かれた時のことはハッキリ覚えていないんです。家で晩酌しながら夕食をとり、ソファに横になってテレビを見ていたことは覚えています。

 何となく胸というかお腹の上のあたりが痛むような感じがして、気分が悪くなってきました。飲み過ぎたわけでもなく、カゼでも引いたのかと考えていたことは覚えているのですが…。

 家内の話では、お腹が痛いと言うので、近所に住む弟と2人で私を車に乗せて、市民病院に連れて行ったんだそうです。

 病院では「症状は大したことがないようだが、意識障害があるようなので、とりあえず入院して翌日詳しく検査をしましょう」ということになり、入院に向けたスクリーニングをしていたら、心電図に異常が見つかったのです。

 心筋梗塞の時に見られる特徴的な波長があることから、さらに検査を重ねた結果、急性心筋梗塞と診断を受けて急遽、循環器科に回され、緊急のカテーテル治療(血管内治療)を受けることになりました。

 治療は成功し、どうにか事なきを得て2週間後に退院。すぐに仕事にも復帰し、半年経つ今では、そんな大病を経験したとは思えないほど元気に過ごしていますが、あれが心筋梗塞の症状だったとは、今でも信じられない思いです。

 特に太っているわけでもなければ、タバコだって吸ったことがありません。何より心筋梗塞は「胸に焼け火箸を突っ込まれたような激痛」を伴うと聞いていただけに、あんな穏やかな心筋梗塞もあるのか-と、今でも不思議な気分です。

 ■医師はこう見る

 佐久総合病院(長野県佐久市)北澤彰浩医師

 本当に命拾いをしたケースと言えます。ご本人も話している通り、心筋梗塞というと胸に激痛を伴うことが多く、経験者は「人生で経験したことのない強烈な痛みだった」と口を揃えて言うものですが、中には今回の「マイルドな症状」のケースもあります。

 湯川さんがラッキーだったのは、「大したことはなさそうだから」と自宅に帰されるのではなく、とりあえず入院する処置が取られたこと。そ

れによって入院のために必要な情報を得るための検査が行われ、その中の心電図検査で心筋梗塞を見つけることができたのです。

今回のように軽い意識障害がある程度であれば、「一過性の意識障害でしょう」と翌日の受診を約束させられ自宅に帰されることもあるケースです。この点は非常に運が良かったし、病院側の判断に拍手を送りたい。

 病気に「必ず」はありません。心筋梗塞だから必ず激痛が起きる、心筋梗塞になる人は必ず太っているかタバコを吸っている-と決めてかかると、早期発見を遅らせて取り返しのつかない事態を招きかねません。

この点は十分に気を付けてほしい。

 それからもう一つ。今回、弟さんの車で病院に搬送されていますが、意識障害がある場合は緊急性が高いことが多いので、救急車を呼ぶことに躊躇する必要はありません。堂々と119番に電話してください。

【これで私は助かった!】“痔”の症状に隠れていた直腸がん

小さい病気が大きな病気の症状を隠すことがある。些細(ささい)な症状も見逃さず、疑ってかかることが早期発見には大切なのだ。今回は“痔(じ)”の症状に隠れていた“がん”の話-。

 ■山崎純一さん(55歳=仮名)のケース

 若い頃から“痔主”でした。大学時代にイボができてからは、ストレスがかかると脱出するのが毎度のことで、そのこと自体には慣れっこになっていたんです。

 しかも、時折硬い便が出ると切れることもあり、そんなときは出血と痛みが重なるので、集中力も出ません。

内痔核と裂肛という二重苦に苦しみながらも、長年の付き合いで手術を受ける気にもなれず、結果として放置し続けていました。

 ところが1年前、硬い便が出たわけでもないのに出血があったんです。切れ痔の時はウォシュレットでお湯を当てると痛みを感じるのですが、この時は痛くない…。なんとなく嫌な予感がしました。

 子供の頃に私をかわいがってくれた叔父が大腸がんで亡くなってから時間がたっていなかったこともあり、不安になった私は、病院に行きました。

「がんかもしれない」と言うのは大げさなような気がして恥ずかしかったので、「切れ痔」ということにして…。

 大腸内視鏡検査の結果は「早期の直腸がん」。自分でも「これまでの出血とはちょっと違う」という思いがあったのですが、やはりショックでした。

 すぐに入院し、腹腔鏡による手術を受けました。手術は成功し、転移もないようで、当面は安心してよさそうです。

医師からは「痔の人は血便や肛門からの出血になれているので早期発見が難しい。

ラッキーだった」と言われましたが、本当に運が良かったと思います。私自身、叔父の件がなければがんを疑うことはなかったはず。天国の叔父が救ってくれたんだろうと、心の中で感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 キッコーマン総合病院(千葉県野田市)院長・久保田芳郎医師

 「痔だと思っていたらがんだった」というケースは少なくありません。また山崎さんの主治医が言うように、痔の症状ががんの症状を隠し、がんの発見を遅らせることもよくあることです。

会社の健診や人間ドックで受ける便潜血検査で陽性になっても、「俺は痔だから」と自己判断して再検査を受けずに、がんを見逃す人もいます。

 そしてもう一つ、出血という自覚症状で直腸がんが見つかった場合、進行がんであるケースが多いため、その意味でも腹腔鏡手術で処置できた山崎さんは本当にラッキーなケースだったといえるでしょう。

 近年はウォシュレットの普及で、トイレットペーパーに血が付いて気付く-というケースも減っています。

便利さと裏腹に直腸がんや大腸がんの早期発見が難しい環境になりつつあるのです。それだけに「便の目視」を心がけることは大切です。

 血便は、出血の場所によって色や形状に特徴があります。

胃や十二指腸のような上部消化管からの出血では便が黒くなり、大腸や直腸など出血部位が肛門に近くなるほど、血の色が赤くなる傾向があります。

 いずれにしても、血便という症状は腸管で何かが起きていることを示唆しているわけで、無視するのは危険です。痔の人もそうでない人も、積極的に大腸内視鏡検査か注腸検査を受けましょう。

【これで私は助かった!】腹痛から“膵臓がん”見つかり命拾

見つかったときには手遅れだった-。がんの中でもこのケースが非常に多いのが「膵臓(すいぞう)がん」だ。早期発見の難しさはトップクラス。生還が最も難しい病気なのだが…。

 ■浜岡祥司さん(54歳=仮名)のケース

 膵臓がんが助かりにくいということは知っていました。だから自分が膵臓がんだと分かったときは観念しました。はっきり言って諦めていましたよ。

 きっかけは腹痛。それも「なんとなく痛い」という不快感に近いもの。胃薬を飲んでも効かず、酒の飲み過ぎだと思っていたんです。以前は会社でも一、二を争う大酒飲みでしたから。

 それでも1カ月も症状が続くと不安になってきて、そこでようやく病院を受診。症状を話すと胃カメラと超音波検査を受けることになりました。

 胃カメラでは異常はなかったものの、超音波の画像で膵管の微妙な広がりが写っていた。精密検査に進んで、CTとMRI検査の結果は「ステージIIの膵臓がん」。膵頭部に直径1センチほどのがんがあったのです。

こんな僅かな病変からがんが見つかるとは驚きました。

 すぐに入院して、膵頭部と十二指腸を切除する手術が行われ、トータル1カ月ほどで退院。その後もがんが取り切れていない場合を想定して1年間の抗がん剤治療を受けました。

 抗がん剤の副作用は多少出たものの、副作用を止める薬を一緒に服用していたので、想像していたよりは軽く済みました。

 抗がん剤治療が終わってからも、定期的に検査は受けていますが、5年半が過ぎた今も転移や再発はナシ。

医師の指示に従って、お酒はやめました。膵臓がんになって助かっただけでも命拾いなのに、それをみすみす捨てるようなことはできませんからね。

 ■専門医はこう見る

 北里大学北里研究所メディカルセンター病院(埼玉県北本市)外科部長・八十川要平医師

 膵臓がんが助かりにくいがんなのは事実です。よく「膵臓がんは背中が痛くなる」と言いますが、これはがんが脊椎の神経に浸潤して起きる症状。

「黄疸(おうだん)」も同様で、膵がんに伴う自覚症状の多くは、がんがかなり進行していることを示唆します。

 早期で手がかりとなる症状というと、浜岡さんのような「上腹部の痛み」が挙げられますが、これも必ず出るわけではありません。つまり、自覚症状をアテにしていたのでは、なかなか完治は期待できないがんなのです。

 浜岡さんは「幸運」が重なったケースといえます。

超音波画像の微妙な病変に気付いたのは医師や検査技師の技術が高かったから。この時点でがんが、一般的に「助かる見込みがある」とされる1センチ以下だったこともラッキーでした。

 オマケに膵臓がんの手術は食道がんと並んで難易度の高い手術。執刀する外科医には高い技術が求められます。その意味では、病院選びも重要なテーマとなります。

 こうした難関をクリアして初めて克服できる可能性が出てくる-というのが膵がんなのです。

 ただし、ハイリスクな人はいます。喫煙者、飲酒量の多い人、糖尿病の人-。

特に中高年になって初めて糖尿病を指摘された人は要注意。これらに当てはまる人は、日頃から微妙な症状に注意して、年に一度の健診やドックを欠かさないことが重要です。

【これで私は助かった!】“糖尿病”の早期治療で九死に一生!

重大疾患に関与する症状は色々あるが、中には症状を示さない病気もある。その代表的な病気が「糖尿病」。何も言わず、苦痛を訴えることなく、弱っていく膵臓。気付いた時には取り返しのつかない事態に陥っているのだ。

 ■岡田亮介さん(35)=仮名=のケース

 学生時代はサッカー部。体力だけは自信があります。ストレスはあるものの、若い頃と食欲は変わらず、カゼ一つ引いたこともありません。

それが、会社の健診で受けた血液検査で、「ヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)」が9・0と出たのです。

5・8以上は糖尿病の危険性大(今年4月からは「国際標準値・NGSP」という基準に変わり、6・2以上だと糖尿病が疑われる)というのに、はるかに上回る数値です。

「要入院」を言い渡され、2週間の教育入院を経験しました。

 3食ともカロリー制限食ですが、10日もすると慣れました。

それより驚いたのが、いきなりインスリン注射を始めたことです。「インスリン注射は最後の手段」と思ってたのでびっくりしました。

 医師の説明では、糖尿病の早期でインスリンを使うことで、膵臓の機能回復を助け、いずれはインスリンを使わなくてもよくなるケースもあるとのこと。

「打ち始めたら死ぬまで続ける治療」と思い込んでいたので、拍子抜けした気分でした。

また、インスリン注射は思ったより痛みも少なく、打ち方も簡単でした。

 退院後もインスリン注射、食事療法、運動療法を続けていたら、3カ月後にはHbA1cが7台まで低下。

インスリン量もどんどん減り、半年経った現在は6台前半で推移しており、医師からも「もうすぐインスリンはやめられるだろう」と励まされています。

 知らずに放置していたら、壊疽(えそ)や失明、果ては動脈硬化から命を落とす危険性さえあっただけに、運よく見つかり、的確な治療を受けられたことに感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 池田病院(兵庫県尼崎市)院長・池田弘毅医師

 岡田さんのように若い頃に激しいスポーツをしていた人も糖尿病には注意が必要です。

学生時代と比べて運動量が減っているのに、食べる量は減りにくい。岡田さんも「食欲は変わらない」と言っているように、肥満になりやすい環境が整ってしまうのです。

 しかも糖尿病の場合、自覚症状がないこともあり、自分では病気にかかっている気がしないまま、水面下で静かに病気が進行してしまうことになりかねないのです。

 ただ、岡田さんの受けた治療は的確なものであり、特に高血糖による悪循環を断ち切るために、早期の段階でインスリン注射を始めたのは、適切な治療だと言えます。

 高血糖状態が持続しているとわかったら、まずは疲弊している膵臓の機能を回復させる必要があります。そのためにはインスリンを投与することで膵臓を休ませることが大事。

これに食事療法や運動療法、さらに適切な薬物療法を組み合わせることで状態は好転し、体重が減ればそれだけ膵臓への負担も軽減でき、結果としてインスリンから離脱できることも多いのです。

 岡田さんのように、「インスリン注射は最後の手段」と思い込んでいる人は少なくありません。

より早期からのインスリン治療が、血糖を改善するのみならず、糖尿病自体の状態も改善し、インスリンから離脱できることもあることを、多くの人に知ってほしいですね。

【これで私は助かった!】“甲状腺がん”をあなどるな!

ネットで見つけた「甲状腺がんは安全ながん」という表現。しかし、それを過信して病院に行かないのは自殺行為だ。安全か否かは医師が判断するもの。自己診断ほど怖いものはない。

 ■津山潔さん(42歳=仮名)のケース

 首に「しこり」を見つけたのは3年半ほど前のこと。のど仏の下を指で触ると、硬いかたまりがありました。直径1センチほど。ちょうど枝豆かピーナツくらいの大きさで、ゴツゴツしていました。

 インターネットで調べると、そこは甲状腺のある場所。甲状腺という名前は聞いたことがあるものの、何をする臓器なのかは知りませんでした。

 ネットの文面を読むと、要は「元気の素になるホルモンを出す臓器」。どうやら、このしこりは、甲状腺の腫瘍のようで、悪性なら甲状腺がんですが、ネットの情報では甲状腺がんは女性に多い病気という。

忙しい時期でもあったので、その時は病院に行きませんでした。

 ところが、かたまりは徐々に大きくなり、気付いてから1年ほど経つと、2センチほどに成長していました。

あらためてネットを見ると、「甲状腺がんは女性に多いが、男性に起きると予後が悪い」という記述がありました。怖くなって専門病院を受診。そこで超音波と細胞診検査を受け、下された診断は“がん”でした。

 それは甲状腺がんの中でも「乳頭がん」とよばれるもの。場所と大きさから、このまま放置すると“発声”に影響が出る危険性があるとのことで、すぐに手術を受けることになりました。

 おかげさまで手術は成功。転移などの不安もなく、主治医が一番心配していた“発声機能”へのダメージも回避できました。

 ネットでは「甲状腺がんは安全ながん」という情報が多いようですが、がんである以上簡単には安心はできません。ネット情報だけに頼ることの危険性を、身を持って痛感した次第です。

 ■専門医はこう見る

 伊藤病院(東京都渋谷区)院長・伊藤公一医師

 甲状腺がんには4つのタイプがあります。乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がんです。このうち、日本人の甲状腺がん全体の90パーセント以上を占めるのが乳頭がん。

津山さんの話にもあるように、乳頭がんの多くは安全性が高いがん。それだけに、早期発見、早期治療が重要になります。

 津山さんの場合でも、がんが小さいうちに手術をしたほうが、よりストレスの小さな治療で済んだはずです。また頻度は低いものの、甲状腺がんにも危険ながんはあります。

特に未分化がんは、人間の体にできるすべてのがんの中でも、最も予後の悪いがん。

乳頭がんや濾胞がんも、肺や骨などに転移すれば一気に危険性は高まる。つまり、「甲状腺がんなら何でも治りやすい」と安易に考えるのは危険なのです。

 津山さんは、もう少しで発声機能に障害が及ぶところでした。

これは、がんと甲状腺の裏側を走る“反回神経”の距離が近かったため。がんが、この神経に直接浸潤すると、声が嗄(か)れたり、出にくくなることがあります。

のどを酷使する仕事でもないのに「声がれ」の症状があり、耳鼻咽喉科で診ても喉頭に問題がないような場合は、甲状腺がんの存在を視野に入れるべきでしょう。

【これで私は助かった!】“糖尿病”の早期治療で九死に一生!

重大疾患に関与する症状は色々あるが、中には症状を示さない病気もある。その代表的な病気が「糖尿病」。何も言わず、苦痛を訴えることなく、弱っていく膵臓。気付いた時には取り返しのつかない事態に陥っているのだ。

 ■岡田亮介さん(35)=仮名=のケース

 学生時代はサッカー部。体力だけは自信があります。ストレスはあるものの、若い頃と食欲は変わらず、カゼ一つ引いたこともありません。

それが、会社の健診で受けた血液検査で、「ヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)」が9・0と出たのです。

5・8以上は糖尿病の危険性大(今年4月からは「国際標準値・NGSP」という基準に変わり、6・2以上だと糖尿病が疑われる)というのに、はるかに上回る数値です。「要入院」を言い渡され、2週間の教育入院を経験しました。

 3食ともカロリー制限食ですが、10日もすると慣れました。それより驚いたのが、いきなりインスリン注射を始めたことです。「インスリン注射は最後の手段」と思ってたのでびっくりしました。

 医師の説明では、糖尿病の早期でインスリンを使うことで、膵臓の機能回復を助け、いずれはインスリンを使わなくてもよくなるケースもあるとのこと。

「打ち始めたら死ぬまで続ける治療」と思い込んでいたので、拍子抜けした気分でした。また、インスリン注射は思ったより痛みも少なく、打ち方も簡単でした。

 退院後もインスリン注射、食事療法、運動療法を続けていたら、3カ月後にはHbA1cが7台まで低下。

インスリン量もどんどん減り、半年経った現在は6台前半で推移しており、医師からも「もうすぐインスリンはやめられるだろう」と励まされています。

 知らずに放置していたら、壊疽(えそ)や失明、果ては動脈硬化から命を落とす危険性さえあっただけに、運よく見つかり、的確な治療を受けられたことに感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 池田病院(兵庫県尼崎市)院長・池田弘毅医師

 岡田さんのように若い頃に激しいスポーツをしていた人も糖尿病には注意が必要です。

学生時代と比べて運動量が減っているのに、食べる量は減りにくい。岡田さんも「食欲は変わらない」と言っているように、肥満になりやすい環境が整ってしまうのです。

 しかも糖尿病の場合、自覚症状がないこともあり、自分では病気にかかっている気がしないまま、水面下で静かに病気が進行してしまうことになりかねないのです。

 ただ、岡田さんの受けた治療は的確なものであり、特に高血糖による悪循環を断ち切るために、早期の段階でインスリン注射を始めたのは、適切な治療だと言えます。

 高血糖状態が持続しているとわかったら、まずは疲弊している膵臓の機能を回復させる必要があります。そのためにはインスリンを投与することで膵臓を休ませることが大事。

これに食事療法や運動療法、さらに適切な薬物療法を組み合わせることで状態は好転し、体重が減ればそれだけ膵臓への負担も軽減でき、結果としてインスリンから離脱できることも多いのです。

 岡田さんのように、「インスリン注射は最後の手段」と思い込んでいる人は少なくありません。

より早期からのインスリン治療が、血糖を改善するのみならず、糖尿病自体の状態も改善し、インスリンから離脱できることもあることを、多くの人に知ってほしいですね。

【これで私は助かった!】“甲状腺がん”をあなどるな!

ネットで見つけた「甲状腺がんは安全ながん」という表現。しかし、それを過信して病院に行かないのは自殺行為だ。安全か否かは医師が判断するもの。自己診断ほど怖いものはない。

 ■津山潔さん(42歳=仮名)のケース

 首に「しこり」を見つけたのは3年半ほど前のこと。のど仏の下を指で触ると、硬いかたまりがありました。

直径1センチほど。ちょうど枝豆かピーナツくらいの大きさで、ゴツゴツしていました。

 インターネットで調べると、そこは甲状腺のある場所。甲状腺という名前は聞いたことがあるものの、何をする臓器なのかは知りませんでした。

 ネットの文面を読むと、要は「元気の素になるホルモンを出す臓器」。

どうやら、このしこりは、甲状腺の腫瘍のようで、悪性なら甲状腺がんですが、ネットの情報では甲状腺がんは女性に多い病気という。

忙しい時期でもあったので、その時は病院に行きませんでした。

 ところが、かたまりは徐々に大きくなり、気付いてから1年ほど経つと、2センチほどに成長していました。

あらためてネットを見ると、「甲状腺がんは女性に多いが、男性に起きると予後が悪い」という記述がありました。

怖くなって専門病院を受診。そこで超音波と細胞診検査を受け、下された診断は“がん”でした。

 それは甲状腺がんの中でも「乳頭がん」とよばれるもの。

場所と大きさから、このまま放置すると“発声”に影響が出る危険性があるとのことで、すぐに手術を受けることになりました。

 おかげさまで手術は成功。転移などの不安もなく、主治医が一番心配していた“発声機能”へのダメージも回避できました。

 ネットでは「甲状腺がんは安全ながん」という情報が多いようですが、がんである以上簡単には安心はできません。ネット情報だけに頼ることの危険性を、身を持って痛感した次第です。

 ■専門医はこう見る

 伊藤病院(東京都渋谷区)院長・伊藤公一医師

 甲状腺がんには4つのタイプがあります。乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がんです。

このうち、日本人の甲状腺がん全体の90パーセント以上を占めるのが乳頭がん。
津山さんの話にもあるように、乳頭がんの多くは安全性が高いがん。

それだけに、早期発見、早期治療が重要になります。

 津山さんの場合でも、がんが小さいうちに手術をしたほうが、よりストレスの小さな治療で済んだはずです。また頻度は低いものの、甲状腺がんにも危険ながんはあります。

特に未分化がんは、人間の体にできるすべてのがんの中でも、最も予後の悪いがん。

乳頭がんや濾胞がんも、肺や骨などに転移すれば一気に危険性は高まる。
つまり、「甲状腺がんなら何でも治りやすい」と安易に考えるのは危険なのです。

津山さんは、もう少しで発声機能に障害が及ぶところでした。
これは、がんと甲状腺の裏側を走る“反回神経”の距離が近かったため。

がんが、この神経に直接浸潤すると、声が嗄(か)れたり、出にくくなることがあります。

のどを酷使する仕事でもないのに「声がれ」の症状があり、耳鼻咽喉科で診ても喉頭に問題がないような場合は、甲状腺がんの存在を視野に入れるべきでしょう。 

【これで私は助かった!】動悸、息切れで検査したら…心臓弁膜症だった  

動悸(どうき)、息切れ、めまい…。現代人なら誰もが経験のある何気ない症状の陰に、命を脅かす恐ろしい病気が隠れていることがある。

「年のせい」と甘く見ていると痛い目に遭う。長生きしたければ、早目早目の対策が不可欠だ。

 ■土井秀嗣さん(57歳=仮名)のケース

 いまのマンションに住んで20年。駅まで15分ほど歩きますが、20年も住んでいるので慣れっこになっていました。

 ところが少し前から、この距離が体にこたえるようになってきたんです。しかも急速に…。仕事で疲れた夜だけでなく、朝会社に出かけるときにも、駅に着く前に息切れがする。

電車に乗って落ち着くと、ドキドキと動悸がするのを感じるんです。

 この“動悸”は夜寝るときにもあって、ベッドに入って電気を消したあとも、自分の心臓の音が聞こえるくらいハッキリ感じる。年齢的にもメンテナンスが必要かと考えて、病院に行きました。

 心電図を撮って、聴診器で心臓の音を聴いた医師が「弁膜症の可能性がある」という。

そこで検査入院をして心エコーと血管内に細い管を入れて内部を見るカテーテル検査をしたところ、左心室から大動脈に通じるところの弁が壊れていることがわかったんです。

心臓から血液を送り出す機能が大幅に低下しているとのことで、手術を受けることになりました。

 痛みもなく、自覚症状と言っても動悸や息切れくらいしかなかったのに、よもや心臓の手術を受けることになるとは驚きました。

 壊れた弁を取り除き、代わりに人工的に作った弁を設置するという手術を受けて、無事成功。

術後10日ほどで退院し、自宅で数日休んだのちに、仕事に復帰しました。好きなゴルフはしばらく禁止されていますが、命が助かったんだからそれくらい我慢できます。

 些細(ささい)な症状からこんな大病が見つかったことで、あれ以降体調管理には気を使っています。

薬もきちんと飲んでいるし、食生活も野菜中心に変えました。変な言い方ですが、病気をしたおかげで長生きできそうな気がしています(笑)。

 ■専門医はこう見る

 埼玉東部循環器病院(埼玉県越谷市)心臓血管外科部長・田中佐登司医師

 全身の臓器から静脈を経て心臓に戻ってきた血液は、右心房から右心室に送られ、一旦肺に行った後、再び心臓に戻って、左心房から左心室を経て、全身に送られていきます。

 この時、心臓の内部での流れを制御するために各部屋の出入り口に「弁」が設けられています。

 加齢や動脈硬化などが原因となって、この弁が故障したり、本来の役割が果たせなくなるのが「心臓弁膜症」。心臓のポンプ機能が低下して、放置すると不整脈や心不全、多臓器不全などを招いて死に至る重大疾患です。

 症状としては土井さんの感じた動悸や息切れなどがありますが、中には「めまい」を訴える人もいます。

 いずれも忙しいサラリーマンが見逃してしまいがちな症状ですが、循環器系の治療を専門とする医療機関で検査をすれば、早期発見、早期治療が可能なので、思い当たる症状があれば、早目に受診すべきです。

 動脈硬化や糖尿病などのリスクを抱えている人は、定期的に心臓ドックを受けるなどして、重症化を防ぐ取り組みが必要です。

【これで私は助かった!】腹痛から“膵臓がん”見つかり命拾い

見つかったときには手遅れだった-。がんの中でもこのケースが非常に多いのが「膵臓(すいぞう)がん」だ。早期発見の難しさはトップクラス。生還が最も難しい病気なのだが…。

 ■浜岡祥司さん(54歳=仮名)のケース

 膵臓がんが助かりにくいということは知っていました。だから自分が膵臓がんだと分かったときは観念しました。はっきり言って諦めていましたよ。

 きっかけは腹痛。それも「なんとなく痛い」という不快感に近いもの。胃薬を飲んでも効かず、酒の飲み過ぎだと思っていたんです。以前は会社でも一、二を争う大酒飲みでしたから。

 それでも1カ月も症状が続くと不安になってきて、そこでようやく病院を受診。症状を話すと胃カメラと超音波検査を受けることになりました。

 胃カメラでは異常はなかったものの、超音波の画像で膵管の微妙な広がりが写っていた。精密検査に進んで、CTとMRI検査の結果は「ステージIIの膵臓がん」。膵頭部に直径1センチほどのがんがあったのです。こんな僅かな病変からがんが見つかるとは驚きました。

 すぐに入院して、膵頭部と十二指腸を切除する手術が行われ、トータル1カ月ほどで退院。その後もがんが取り切れていない場合を想定して1年間の抗がん剤治療を受けました。

 抗がん剤の副作用は多少出たものの、副作用を止める薬を一緒に服用していたので、想像していたよりは軽く済みました。

 抗がん剤治療が終わってからも、定期的に検査は受けていますが、5年半が過ぎた今も転移や再発はナシ。医師の指示に従って、お酒はやめました。膵臓がんになって助かっただけでも命拾いなのに、それをみすみす捨てるようなことはできませんからね。

 ■専門医はこう見る

 北里大学北里研究所メディカルセンター病院(埼玉県北本市)外科部長・八十川要平医師

 膵臓がんが助かりにくいがんなのは事実です。よく「膵臓がんは背中が痛くなる」と言いますが、これはがんが脊椎の神経に浸潤して起きる症状。「黄疸(おうだん)」も同様で、膵がんに伴う自覚症状の多くは、がんがかなり進行していることを示唆します。

 早期で手がかりとなる症状というと、浜岡さんのような「上腹部の痛み」が挙げられますが、これも必ず出るわけではありません。つまり、自覚症状をアテにしていたのでは、なかなか完治は期待できないがんなのです。

 浜岡さんは「幸運」が重なったケースといえます。超音波画像の微妙な病変に気付いたのは医師や検査技師の技術が高かったから。この時点でがんが、一般的に「助かる見込みがある」とされる1センチ以下だったこともラッキーでした。

 オマケに膵臓がんの手術は食道がんと並んで難易度の高い手術。執刀する外科医には高い技術が求められます。その意味では、病院選びも重要なテーマとなります。

 こうした難関をクリアして初めて克服できる可能性が出てくる-というのが膵がんなのです。

 ただし、ハイリスクな人はいます。喫煙者、飲酒量の多い人、糖尿病の人-。特に中高年になって初めて糖尿病を指摘された人は要注意。これらに当てはまる人は、日頃から微妙な症状に注意して、年に一度の健診やドックを欠かさないことが重要です。 

【これで私は助かった!】孫が気づいた足の斑点…実はがんだった!

足の裏にできた黒い斑点。よもやこれが命を脅かす存在になろうとは。大人になってからできたホクロ、しかもどんどん大きくなるホクロには、くれぐれもご注意を…。

 ■高橋素彦さん(65歳=仮名)のケース

 最初の異変は2年前の夏。風呂上りに足の爪を切っていたら、右足の裏に黒い斑点のようなものが見えたんです。直径3ミリくらい。痛くも痒くもないので、その時は特に気にしなかったんです。

 数カ月後、同じ右足の裏を見ると、前よりも明らかに斑点が大きくなっていました。この年齢で新しいホクロができるなんて…と不思議には思いましたが、それもすぐに忘れてしまいました。

 ところが昨年の正月に孫が遊びに来て、「おじいちゃんの足にゴミが付いてる!」って言うんです。これはホクロだと教えたのですが、見ていた娘が「悪い病気だといけないから、お医者さんに診てもらったら?」と心配する。私もどんどん大きくなる“ホクロ”の存在が不気味に思えて、正月明けに病院の皮膚科を受診しました。

 発症時期、色調や大きさの変化などを確認し、足の裏を拡大鏡で見たその医師の判断は「要組織検査」。そしてその結果は悪性黒色腫、つまり皮膚がんだったのです。

 ホクロやゴミと間違われていた足の斑点が、よもやがんだとは驚きでした。でも、まだ早期なので何とかなるだろうという医師の指示に従い、入院して手術を受けました。患部からがん組織を切除し、自分の太ももから皮膚の一部を移植しました。

 あわせて「DAV療法」という悪性黒色腫に有効な3種類の抗がん剤を同時に注射する治療法を、1カ月ごとに休薬しながら3クール受けました。

 術後の経過は順調で、まもなく丸2年が過ぎようとしていますが、再発や転移もなく、安心しています。

 今思えば、孫が「ゴミだ!」と騒がなければ放置していたはずの皮膚がん。孫に命を救ってもらったようで、かわいさもひとしおです。

 ■専門医はこう見る

 東邦大学医療センター大橋病院(東京・目黒区)皮膚科教授・向井秀樹医師

 若い頃からあるホクロが年齢とともに大きくなることはありますが、60歳を過ぎて新しいホクロが突然できることはまずありません。見覚えのない新しい斑点やホクロを見つけたら要注意です。

 特に大人にできるホクロには「7ミリルール」というのがあり、このサイズを超えると悪性化の兆候が明らかになるのです。

もちろん、7ミリ以下でもこの年齢で急速に成長するというだけで十分に怪しいので、積極的にがんを疑ってかかるべきでしょう。早期で治療を始められれば治せるケースもありますが、タイミングを逸してしまうと予後は厳しくなります。

 放置するとホクロがさらに成長して盛り上がり、表面が崩れて潰瘍となり、出血が始まります。

 がん組織がリンパ腺に浸潤すると、肺や肝臓、時には脳、目、口腔などに転移。

ひどい場合は全身の皮膚に黒いしこりができることもあります。逆に早期で見つけられれば、手術と化学療法を柱にした治療法が確立されているので、「ホクロくらい」とばかにしないで、早めに皮膚科医に相談することをお勧めします。

【これで私は助かった!】“動悸”を侮るな!脳梗塞のリスクも

「たかが動悸」などと侮ってはいけない。その先に脳梗塞という重大疾患が控えているかもしれないのだ。心臓の症状が脳の病気を呼び起こす、そのメカニズムはこうだ。今回は「心房細動」の物語。

 ■福井真一さん(54歳=仮名)のケース

 数日前から妙に動悸がするので、気になっていたんです。翌月から大きなプロジェクトが始まることもあり、どうせなら時間があるときに診てもらおうと思って、会社の診療所に行ったら、心電図を撮ってくれました。

 すると、明らかに波形がおかしい。その医師は消化器が専門なので、近くの循環器専門病院に紹介されると、その日のうちに診てくれました。

 検査の結果「心房細動」と診断され、ワーファリンという薬を飲むことになりました。

 その後数日で動悸は消えたのですが、あとで聞くとワーファリンが心房細動を治したのではなく、心房細動は自然に治っただけとのこと。そしてワーファリンは当分飲み続けるように言われました。

 症状が消えたのに薬は飲み続ける-。聞けば、脳梗塞を予防するために必要な処置なんだそうです。ワーファリンは血液をサラサラにして、血栓ができなくなるようにする薬。心房細動の人の心臓には“血のよどみ”ができやすく、ここでできた血の塊が何かの拍子に血流に乗ると、脳に飛んで血栓になる危険性があるとか。私にはその意識はなかったのですが、意外にも「死の一歩手前」まで行っていたというのです。

 よもや動悸が脳梗塞につながる症状とは知りませんでしたが、医師によれば「あのまま放置していたらどうなっていたかわからない」とのこと。忙しくなる前に受診しておいてよかったと、胸をなでおろしています。

 ■専門医はこう見る

 JR東京総合病院(東京都渋谷区)心臓血管外科部長・鎌田聡医師

 心房細動とは、心臓の上部だけが震えるような現象を起こす不整脈のこと。本来心臓は上部(心房)と下部(心室)が交互に収縮することでポンプの役割を果たすのですが、心房細動になると上下の動きがシンメトリーではなくなります。そのため血液の出力が5-10パーセントほど低下します。

 心房細動の典型的な症状は「動悸」です。心房細動だけで命を落とすことは考えにくいものの、「震え」が速すぎたり、逆に遅すぎると意識を失うこともあるので要注意。

 福井さんも言うように、心房細動になると心内血栓といって心臓の中で血の塊ができやすく、それが血流に乗って行った先で詰まると命に関わる状態を引き起こします。

 心臓を出た血流の60パーセントが脳に行くので、確率としては「脳梗塞」のリスクが高いのですが、それ以外にも腸や脚などの血管で血流不全をおこす可能性があります。予防するにはワーファリンのような抗凝固剤を使った治療が不可欠です。

 心房細動がひどい時には、心臓の内側から電気の流れを止める「アブレーション」という血管内治療を行うこともありますが、福井さんは治まっているようなので、経過観察でよさそうです。ただし、ワーファリンは医師の指示に従って使い続けてください。

【これで私は助かった!】ぎっくり腰と思ったら…解離性大動脈瘤

「腰痛で死ぬところだった…」。といってもぎっくり腰でショック死しかけたというのではない。腰痛と思っていたら、じつは動脈が裂けて瘤ができていたのだ。これが破裂したら本当に命取りになる。寸でのところで食い止めた人の報告だ。

 ■茂本勝昭さん(56歳=仮名)のケース

 夜中に突然背中の下のあたりに激痛が走ったんです。最初はぎっくり腰かと思ったのですが、寝ている最中にぎっくり腰になるとは思わなかったので、不思議でした。

妻が車で救急病院に連れて行くというのですが、とても車の座席に座れる痛みではない。近所の手前、躊躇(ちゅうちょ)はしたものの、救急車をお願いしました。

 市民病院で整形外科の医師が当直だったので、そこに担ぎ込まれたのですが、どんな姿勢をとっても痛みが引かない。加えて次第に血圧も下がってきたので、造影CTを撮ったら、下行大動脈の内膜が剥がれて“瘤”ができていたんです。

 すぐに循環器科の医師が呼ばれて緊急入院。集中治療室で面会謝絶、絶対安静を言い渡されました。トイレもベッド上で行う生活が1カ月近くも続きました。その後の安静状態を確保した上での薬物治療が功を奏して緊急開腹手術は免れることができましたが、医師から「知らずに放置していたら、動脈瘤が破裂して病院にたどり着く前に死んでいた」と言われてゾッとしました。

 後日、血管内にステントグラフトと呼ばれる金網で血管壁を内側から保護し、裂けた血管の中や瘤の中に血液が流れ込まないようにする血管内手術を受け、いまは通常の生活を送っています。

 それにしても、ぎっくり腰のつもりで病院に行って、動脈の治療を受けるとは驚きました。そして何より、「腰痛」という症状から解離性大動脈瘤を見つけ出して循環器の専門医を呼び出してくれた整形外科医の眼力には本当に敬服しています。

 ■専門医はこう見る

 総合新川橋病院(川崎市川崎区)整形外科・平出敦夫医師

 大動脈のうち「下行大動脈」とよばれる血管は、背中から腰の近くを走っているので、そこに解離がおきると「背部痛」や「腰痛」という症状が出ることがあります。

 一般的な腰痛発作とは質の異なる激痛となることが多く、茂本さんのように「どんな姿勢をとっても痛みが引かない」という点が最大の特徴です。逆にぎっくり腰や椎間板ヘルニアのような腰痛には、「痛みが和らぐ姿勢」があるので、受診時の医師にはその違いを見極める診断力が求められることになるのです。

 もう一つ解離性大動脈瘤の症状の特徴として、「痛む個所が移動していく」というものがあります。これは血管の解離(裂け目)が進んでいることを示しており、より緊急性が高い状態といえます。こうした状態に血圧の低下などが重なって見られるときには、躊躇せずに救急車を呼ぶべきです。

 一方、椎間板ヘルニアに代表される慢性の腰痛は、身体の動きに伴った鈍い痛みが特徴です。このように、原因がハッキリしているときは、救急ではなく通常の外来を受診してください。もちろん救急車は使わずに…。

【これで私は助かった!】飛行機の長旅で胸に痛み!肺血栓塞栓症だった  

飛行機に乗るときは、落ちる心配よりも自分の血管の心配をすべきだ。水も飲まずに長時間じっとしていれば、血液がドロドロになるのは自明の理。これが冠動脈で詰まれば狭心症や心筋梗塞、肺に飛べば肺血栓塞栓症。いずれも命取りだ。

 ■野本肇さん(44歳=仮名)のケース

 海外出張で2週間ほどアメリカに行ってきたときのこと。ニューヨークを拠点として、国内のあちこちに出張していました。かなり遠方への出張もあり、一日の大半を飛行機かレンタカーの中で過ごす毎日。すべての日程を終えて成田行きの飛行機に乗ったときにはヘトヘトでした。

 NYから成田までは14時間ほど。とにかく疲労が激しく、窓際の席だったこともあり、食事以外はほとんど眠り続けました。たまに目が覚めたらビールを飲んでまた眠る-の繰り返しです。

 異変は成田に着いてからのこと。入国手続きのあたりから何となく息苦しくなり、胸が痛むような症状が出始めたんです。迎えに来た妻の運転する車の中でそのことを話すと、「恐いから病院に寄ろう」と言います。

でも激痛ではないので、私は一度家に戻って様子を見てもいいと思ったのですが、次第に息苦しさが増してきたので、妻の意見に従って病院に直行。検査の結果、「肺血栓塞栓症」と診断され、すぐに血管内治療で血栓を取り除く処置が取られました。

 幸いにも私の場合は血栓が小さく、症状も小さかったのですが、それだけに見逃したら危険でした。放置して大きな血栓が飛んだら、命を落としていたはずです。医師から「命拾いをしたね」と言われて、冷や汗が流れました。

 その一件以来、当面飛行機を使う出張は見合わせていますが、新幹線の中でも、ビールを飲まずに水を飲み、通路側の席を予約して1時間ごとにデッキに出て屈伸運動をするように心がけています。

 ■専門医はこう見る

 大阪厚生年金病院(大阪市福島区)鈴木夕子医師

 以前は「エコノミークラス症候群」という名前で知られた病気ですが、席種に関係なく起こり、また入院中の患者のような「寝たきり状態」の人にも多く発生する病気なので注意が必要です。

 最近は震災の影響で「車の中での生活を余儀なくされている人」にもリスクが高いことから話題になりました。

 身動きのとりにくい環境下で、十分な水分摂取ができないことで、脚の静脈の血流がうっ血し、血栓ができる(深部静脈血栓症)。この血栓が血管壁から剥がれて血流に乗って流れていき、心臓を通り過ぎて肺の血管で詰まると「肺血栓塞栓症」となります。

 治療法は野本さんが受けたカテーテル治療の他、血栓溶解剤の投与や外科的手術などがありますが、いずれも早期診断が求められるので、病院に直行した奥さんの判断は正解です。

 今回は小さな血栓だったので事なきを得ましたが、血栓ができるリスクを持っていることがわかったので、今後も長時間の移動の際にはいま実践されていること以外にも、弾性ストッキングというふくらはぎを締め付けるストッキングの着用や、脚をまっすぐのばして血栓ができにくいようにするなどの工夫が重要です。

【気になるこの症状】腫れ、痛み、骨破壊 早期治療開始が重要な関節リウマチ

関節が腫れて痛みを発する関節リウマチ。寒い冬は症状が悪化しやすい。朝起きて、1時間以上も手がこわばるようなら要注意。適切な治療を受けなければ関節の変形をきたす。早期の診断と治療開始が重要だ。

 【自己免疫で骨を破壊】

 関節リウマチでは、最初に体のどこの関節から腫れてくるか人によって異なるが、頻度が高いのは手指や手首の関節だ。

 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの田中栄一講師が説明する。

 「関節の中は滑膜(かつまく)と呼ばれる薄い膜に包まれています。この滑膜に炎症が起こり、滑膜組織が増殖し、さまざまな物質が産生され、軟骨や骨が破壊されていきます。本来は細菌やウイルスから自分を守ってくれる自己の免疫システムの異常が原因とされています」

 関節リウマチに罹りやすい体質や要因があり、それにウイルスや化学物質、妊娠・出産、ケガや強度のストレスなどの因子が複雑にからみ合って発症すると考えられている。最近では喫煙も危険因子とされている。

 【早期に急速に進行】

 国内患者数は60-70万人と推定され、男女比は女性の方が3-4倍多い。発症のピークは40代で、30-50代での発症が7割を占める。

 「症状の特徴は、手指や手首を中心とする多関節にわたる関節の腫れであり、左右対称に起こるのが典型的です。関節の腫れがあることが診断するにあたっての大事な症状になります」

 関節の破壊は、発症後1-2年で急速に進むことが多いという。

 「一般的には一旦、関節の変形が起こってしまうと、適切な治療をしても手術以外では、元に戻すことはできないとされています。ですから早期の診断と治療開始が極めて重要になります」

 【診断や治療は進歩】

 早期に診断するための検査方法も進歩していて、関節超音波検査や抗CCP抗体測定(血液検査)などが行われる。「治療は10年前と比較したら、かなり進歩しました。抗リウマチ薬のひとつである『メトトレキサート』や、生物学的製剤(現在、日本では7種類が投与可能)の使用がこの進歩に大きく貢献しました」

 ただし、生物学的製剤は、有効性が期待できる半面、副作用のリスクや経済的な問題もある。使用開始にあたっては専門医とよく相談することが大切だ。

 「関節リウマチの診断や治療は明らかに向上していますので、疑わしい症状がある時は、早めに専門医に受診することをお勧めします」

 【関節リウマチを疑う症状】
 ・起床後、手のこわばりが1時間以上続く
 ・手指や手首など、体のどこかの関節が腫れて痛い
 ・関節の腫れが左右対称で現れた
 ・関節の腫れが移動する、または増えてきた

【これで私は助かった!】歯医者で命拾い!早期の舌がん見つかる

歯の治療に行ってがんが見つかるなんて、なかなか考えにくい。しかし、口の中の小さな異変に一番気づきやすいのは歯科医師だ。歯の治療や健診で歯科を受診することは、「口の健康」を考える上でも重要なのだ。

 ■曽我肇さん(59歳=仮名)のケース

 若い頃から年に一度は歯科健診を受けていました。いま通っている歯科医院は妻が見つけてきた所。40代半ばの先生が一人で切り盛りするクリニックです。説明が非常に丁寧なので、「歯のかかりつけ医」として通院するようになりました。

 ずいぶん前に右下奥の歯に入れた“かぶせ物”が合っていないようで、気になっていたんです。気が付くと舌でその部分を擦るのが癖になっていました。

 しばらくすると食事中にそのかぶせ物が取れたので歯科医院を受診したら、舌の右裏側に、1センチほどの口内炎のようなものがあると指摘されました。それにしては痛みもなく、その時は気にしていなかったのですが、翌週受診すると、「舌の裏側の病変が僅かに大きくなっているようだ」と言うんです。

 心配なので口腔外科で診てもらってほしいとのことで、大学病院の口腔外科に紹介状を書いてくれました。

 大学病院に行って、組織検査や画像診断の結果は「きわめて早期の舌がん」。いまなら手術で取り切れるとのことで、すぐに入院して手術を受けることになりました。

 手術は無事に成功し、術後1週間で退院。しばらくは痛みが残ったものの、1カ月もすると普通に食事もとれるようになりました。自分では少し舌足らずなしゃべり方になった気がするものの、周囲の人は「気にならない」と言います。

 心配したリンパ節転移もなく、今後も定期的な検査は必要ですが、執刀医は「まあ大丈夫でしょう」と言っており、自分としても安心しています。

 それにしても、自分でも気づかないような舌の裏の小さな病変を見つけ、躊躇(ちゅうちょ)せず大学病院に送ってくれた歯科の先生には、本当に感謝しています。

 あの時に見過ごされていたら、今ごろは生きていなかったはず。歯医者さんで命拾いをするとは、思ってもみませんでした。

 ■専門医はこう見る

 片平歯科クリニック(東京・渋谷区)院長・片平治人歯科医師

 舌がんや歯肉がんなどの「口腔がん」の診断と治療は口腔外科や耳鼻咽喉科の領域ですが、その病変を一番発見しやすいのは、日頃から口腔内を診ている歯科医師なのです。

 しかも、がんを疑って受診する患者を診るのではなく、歯科治療の際に見つけることから、がんであっても「早期」、あるいは「前がん病変」の段階で発見できることも珍しいことではありません。

つまり、定期的に歯科健診を受けることは、単に虫歯予防、歯周病予防だけでなく、口腔がんの早期発見の意味でも重要な役割を担っているということができるのです。

 特に近年は、「歯周病と糖尿病や動脈硬化」などに代表される、歯科疾患と全身疾患の関連性が指摘されるようになり、歯科と医科が連携して全身を診ていく必要性が叫ばれています。

 今回の曽我さんは偶然、別の治療の際に舌がんを見つけましたが、この“偶然”の機会を増やすためにも、年に一度と言わず、最低半年に一度は歯科健診を受けられることをお勧めします。

【これで私は助かった!】おしっこが赤い…“膀胱がん”の場合も

ある日突然おしっこに血が混じって出てくれば、大抵の人は驚く。しかし、ただ驚くだけではいけない。積極的に検査を受けることで、命を脅かす危険な病気を撃退することが可能なのだ。今回はそんな「膀胱がん」のお話です。

 ■山口聡さん(57歳=仮名)のケース

 自宅では「便器の周りが汚れる」と女房に怒られるので、恥ずかしながらおしっこをするときも便器に座ってしていたんです。だから自分のおしっこの色をしみじみと見るのは、自宅以外のトイレ。最初に異変に気付いたのも居酒屋のトイレでした。

 おしっこの色がなんとなく赤いんです。紅茶のような色合いです。でも、その時は酔っていたし、居酒屋のトイレが暗かったこともあって、あまり気にしていませんでした。

 翌日会社のトイレでおしっこをしていたら、昨夜より鮮明に赤い。鉄さびのようなドス黒い赤で、「これはえらいことだ!」となりました。

 会社近くの病院の泌尿器科を受診して症状を話すと、内視鏡による検査を受けることになりました。そして検査の結果、驚いたことに「膀胱がん」と診断されたのです。

 血尿が出たのだから何かの病気だとは予想していましたが、それ以外に痛みなどの症状はなかったので、がんと聞いたときは本当に驚きました。

 ただ、組織検査の結果、「表在性」といって、がんが筋層にまで達していないことがわかったので、おなかを切らずに内視鏡でがんの部分を削り取ることができました。

 驚いたのはそのあとです。再発予防のため、膀胱の中にBCGを注入する治療が行われたのです。BCGなんて、結核予防のために子供にうつワクチンだと思っていたのですが、よもや 膀胱がんの再発予防に効果があるとは知りませんでした。

 でも、おかげで術後2年が過ぎた今も再発も転移もなく、先生からも「たぶんこのまま行けるでしょう」と明るい見通しが示されています。

 あれ以来「汚れるよりも安全第一」と、家でも立ちションを実践していますが、女房も文句を言わなくなりました(笑)

 ■専門医はこう見る

 日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟医師

 膀胱がんの最も特徴的な症状が「血尿」です。色の出方はさまざまですが、明らかに普段と違って赤っぽい色の尿が出たら要注意です。普段から自分の尿を観察している人であれば、1リットルのおしっこに1ccの血液が混じっただけでも「おや?」っと感じるものです。なので、日頃からおしっこの色には注意をしておくべきでしょう。

 山口さんもそうですが、早期の膀胱がんであれば、内視鏡手術が可能です。そして、術後にBCGを膀胱に入れて再発を防ぐ方法も、一般的な治療法といえるでしょう。

 ご存じのようにBCGは結核を予防するワクチンですが、これを膀胱内に投与すると、「細菌」の存在を確認した免疫細胞が攻撃をかけ、もし取り残したがん細胞などが残っていても、一緒に攻撃してくれるのです。

 通常は週に1度の投与で6~8週間続けますが、その後は3~4カ月に1度の検査で状況確認。2年経っても再発転移がなければ一安心、5年経ってOKなら無罪放免となります。

 そのためにも、術後のフォローアップは面倒がらずに続けてください。

【これで私は助かった!】頭痛の正体は上咽頭がん!耳鼻科の先生に感謝

頭痛や鼻づまりといった「珍しくない症状」が、じつは命に関わる重大疾患のシグナルであることもある。いちいち気にしすぎるのもよくないが、気にしなければ早期発見は難しい。ここに病気治療の難しさがある。

 ■丸山敬造さん(71歳=仮名)のケース

 若い頃から姿勢が悪く、緊張型頭痛という肩こりから来る頭痛に悩まされていました。

ところが、それとは少し質の違う頭痛を感じるようになったんです。以前から高血圧の治療でかかっていた近所の内科医院で相談すると、いわゆる「痛み止め」が処方されたのですが、ほとんど効果はありませんでした。

 そうこうするうちに花粉症シーズンを迎え、毎年その時期だけかかる耳鼻咽喉科を受診。その時に医師との何気ない世間話の中で頭痛の話をすると、「念のため」と、鼻の検査を兼ねて頭部MRIを勧められたのです。

頭痛の原因がわかるかもしれないし、何よりその手の大掛かりな検査を受けたことがなかったこともあり、受けてみたところ、鼻の奥に広がっているがんがあることがわかりました。上咽頭がんです。

 がんは「斜台」とよばれる頭蓋骨の底の部分を侵して、その向こう側の脳に達しようとしていました。

 地域の基幹病院に送られて精密検査の結果、手術はせずに放射線と抗がん剤による治療が行われることになりました。

 がんがあることがわかってから気付いたのですが、少し前から「鼻づまり」という症状もありました。でも、まさかそれががんによるものとは思わず、「カゼが治りきらないのだろう」程度の軽い気持ちだったのです。

 幸運にも治療は成功し、がんはほぼ無力化することができました。あの嫌な頭痛も治まり、定期的な検査は必要ですが、2年たった現在も再発や転移は見当たりません。

 それにしても、あの時耳鼻科の先生と世間話をしなければ、いまごろは命を落としていたことでしょう。画像検査を勧めてくれた耳鼻科の先生には本当に感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 福内ペインクリニック頭痛外来(東京・新宿区)院長・福内靖男医師

 上咽頭がんは比較的予後の悪いがんで、特徴的な自覚症状もないことから早期で見つけることが難しいがんの一つです。

 がんが脳神経まで到達してダメージを及ぼしていると、頭痛、めまい、難聴、視力の低下や視野の欠損、鼻づまり、味覚障害、嚥下困難などが見られることがあります。

 しかし、長く通院している患者さんならまだしも、頭痛や鼻づまりなどの症状だけで、すぐにこの病気を見つけ出すのは困難といえるでしょう。その意味で、丸山さんが耳鼻科医に相談する機会に恵まれたことは、非常にラッキーだったといえます。

 いわゆる片頭痛の「拍動性の痛み」や、緊張型頭痛の「ハチマキを締め付けられるような痛み」など、頭痛持ちの人が普段感じる症状とはタイプの異なる症状を感じたときは要注意。

 また、そうした異質な痛みが長期間にわたって持続し、徐々に増強する。そして「従来は効果があった薬」が効果を示さない時は、上咽頭がんに限らず、何かしら別の原因が生じていることを疑うことも大切です。

【これで私は助かった!】歯科治療後の高熱…細菌性心内膜炎を疑え!

雑菌はさまざまな経路で体内に侵入してくるが、意外な経路もある。例えば歯科治療だ。虫歯治療や抜歯の際に、歯肉や歯の髄から細菌が入り込み、全身に回って悪さをすることがある。

その代表的な例が「細菌性心内膜炎」。早期発見のポイントは、歯科治療後の高熱だ。

 ■寺田真一さん(32歳=仮名)のケース

 歯科医院で親知らずを抜いた1週間後、突然38度台の熱が出たんです。抜歯直後も発熱がありましたが、その後平熱に戻っていたので、それとは関係なくかぜを引いたのかと思っていました。

 内科の診療所で抗生物質が処方されましたが、1週間経っても熱が下がらない。それどころか血尿まで出てきたので、驚いて再度受診したんです。

 すると先生は「もしかしたら…」と、聴診器で心臓の音を聴き、「雑音が聴こえる」とのことで超音波検査を受けました。

 すると、心臓の僧房弁という、血液を送り出す弁が機能不全を起こしていて、菌のかたまりが付いていることがわかったのです。発熱はかぜではなく、繁殖した菌に対しての炎症反応によるものだったわけです。

 病名は「細菌性心内膜炎」。すぐに病院に送られて入院し、1カ月間にわたって点滴による抗生物質の投与が続きました。

 点滴を入れて2日後には熱は下がりましたが、その後も少しずつ抗生物質の量を減らしながら、血中の菌の量や炎症反応の有無を調べる治療が続き、ようやく退院できたのは40日後でした。

 入院が長期化しましたが、早い段階で診断が付いただけでもラッキーでした。心臓の異常に気付かずに放置したり、別の治療を続けていたら、僧帽弁が壊れて心不全を起こしたり、壊れた弁が脳に飛んで脳梗塞を起こす危険性もあったのです。

 きっかけは、抜歯の際の雑菌混入。私の場合は今後も同じことを繰り返す危険性があることがわかったので、今後歯科を受診する際には必ず事前に抗生物質を服用するように注意されています。

 ■専門医はこう見る

 三好クリニック(東京・港区)院長・三好俊一郎医師

 抗生物質で熱が下がらない時、薬の種類を変えてさらに経過観察をすることが多いのですが、この医師はすぐに心臓の音を確認しています。これで弁の異常を疑うことができるのです。

 心臓の弁が機能不全を起こしていると、その部分で血液が逆流し、菌の温床となります。菌が増殖すると炎症反応が起き、その一環として熱も出るのです。

 この「細菌性心内膜炎」で入院すると、内服薬とは桁違いの量の抗生物質が点滴で投与されます。経口だと腸内細菌も死んでしまうので、下痢を起こしやすくなるのですが、点滴だと腸に影響なく大量投与ができ、安全かつ効果的に菌を減らしていくことができるのです。

 歯科治療の際に体内に菌が入り込む危険性は以前から指摘されており、歯科医師の中にも予防のために、歯科治療前後の抗生物質投与や、心臓に基礎疾患を持つ人には、歯科治療前に循環器科の受診を勧める人もいます。

 歯科治療に限らず、「血を見る治療」の際には、菌が侵入する危険性があるので、直後の発熱には十分な注意が必要です。

【これで私は助かった!】ぎっくり腰と思ったら…解離性大動脈瘤

「腰痛で死ぬところだった…」。といってもぎっくり腰でショック死しかけたというのではない。腰痛と思っていたら、じつは動脈が裂けて瘤ができていたのだ。これが破裂したら本当に命取りになる。寸でのところで食い止めた人の報告だ。

 ■茂本勝昭さん(56歳=仮名)のケース

 夜中に突然背中の下のあたりに激痛が走ったんです。最初はぎっくり腰かと思ったのですが、寝ている最中にぎっくり腰になるとは思わなかったので、不思議でした。

妻が車で救急病院に連れて行くというのですが、とても車の座席に座れる痛みではない。近所の手前、躊躇(ちゅうちょ)はしたものの、救急車をお願いしました。

 市民病院で整形外科の医師が当直だったので、そこに担ぎ込まれたのですが、どんな姿勢をとっても痛みが引かない。加えて次第に血圧も下がってきたので、造影CTを撮ったら、下行大動脈の内膜が剥がれて“瘤”ができていたんです。

 すぐに循環器科の医師が呼ばれて緊急入院。集中治療室で面会謝絶、絶対安静を言い渡されました。トイレもベッド上で行う生活が1カ月近くも続きました。

その後の安静状態を確保した上での薬物治療が功を奏して緊急開腹手術は免れることができましたが、医師から「知らずに放置していたら、動脈瘤が破裂して病院にたどり着く前に死んでいた」と言われてゾッとしました。

 後日、血管内にステントグラフトと呼ばれる金網で血管壁を内側から保護し、裂けた血管の中や瘤の中に血液が流れ込まないようにする血管内手術を受け、いまは通常の生活を送っています。

 それにしても、ぎっくり腰のつもりで病院に行って、動脈の治療を受けるとは驚きました。そして何より、「腰痛」という症状から解離性大動脈瘤を見つけ出して循環器の専門医を呼び出してくれた整形外科医の眼力には本当に敬服しています。

 ■専門医はこう見る

 総合新川橋病院(川崎市川崎区)整形外科・平出敦夫医師

 大動脈のうち「下行大動脈」とよばれる血管は、背中から腰の近くを走っているので、そこに解離がおきると「背部痛」や「腰痛」という症状が出ることがあります。

 一般的な腰痛発作とは質の異なる激痛となることが多く、茂本さんのように「どんな姿勢をとっても痛みが引かない」という点が最大の特徴です。

逆にぎっくり腰や椎間板ヘルニアのような腰痛には、「痛みが和らぐ姿勢」があるので、受診時の医師にはその違いを見極める診断力が求められることになるのです。

 もう一つ解離性大動脈瘤の症状の特徴として、「痛む個所が移動していく」というものがあります。

これは血管の解離(裂け目)が進んでいることを示しており、より緊急性が高い状態といえます。こうした状態に血圧の低下などが重なって見られるときには、躊躇せずに救急車を呼ぶべきです。

 一方、椎間板ヘルニアに代表される慢性の腰痛は、身体の動きに伴った鈍い痛みが特徴です。このように、原因がハッキリしているときは、救急ではなく通常の外来を受診してください。もちろん救急車は使わずに…。

【これで私は助かった!】子供が視力検診で集中力がない…弱視の恐れも

出産直後の赤ちゃんの目はほとんど見えないが、次第に鮮明になって8歳くらいで視力が完成する。この「視力の成長」が不完全な状態が「弱視」だ。事が幼児期の問題だけに、親や周囲が気付かないと、その後の人生にも大きな影を落とすことになる。

 ■成瀬篤夫さん(仮名)のケース

 次女が3歳児検診で視力を測った時、妻が「上の子より明らかに集中力がない」と洩らしたのがきっかけでした。絵本を読んでいても30秒とじっとしていられないんです。

歩き出してからも、お姉ちゃんの時より転ぶ回数が明らかに多い。視力は右が0・5で左は0・8でしたが、妻の発言から眼科受診を勧められ、再検査の結果「弱視」と診断されました。

 よく見えるほうの目をパッチで隠して、見えにくいほうの目だけでぬり絵をしたり絵本を読んだりする訓練を1日のうち数時間程度行い、常にメガネをかけます。子供にメガネは気の毒でしたが、当人は面白がってすぐに慣れました。

 治療を始めて半年もすると、両目の度数はほぼ揃ってきたのですが、そこでメガネをやめると元に戻る危険性が高いとのことで、メガネはそのままにしました。

 中学に入る頃にはメガネがトレードマークになっていて、本人に外す気がない。そのまま大学も出て就職。「メガネ美人」などとおだてられて5年前に結婚。今は1歳の女の子の母親です。

 いま彼女の視力は両方とも2・0。弱視は克服できています。

 ■専門医はこう見る

 総合新川橋病院(川崎市川崎区)眼科・河西雅之医師

 視力の発達を障害する原因として先天的な白内障などによるものと、強い屈折異常や斜視によって脳が正常に画像処理ができていない弱視があります。成瀬さんのお嬢さんは後者の弱視ですね。

 弱視の治療は開始時期が早ければ早いほど治療成績も高まります。その意味で、3歳児検診で見つけられたのは、非常に理想的なケースと言えるでしょう。

 特に幼児の場合、「自分の目が見えにくい」という意識がありません。本人にとっては、その視力が当たり前なので、特に不満もないのです。それだけに周囲がよく観察していないと見過ごしてしまいがちです。

 成瀬さんのお嬢さんが受けた治療は標準的なもので、特にメガネは重要です。元が軽い遠視だと、思春期の頃にメガネを外せるケースもありますが、多くは大人になってから目が疲れやすくなるので、可能な限りそのままメガネを使い続けることが推奨されます。

とりわけ女の子の場合、メガネをかけることにご両親として気掛かりな点があるようですが、最近はファッション性に優れたメガネも多いので、昔に比べて拒否反応を示す人は減ってはいます。

 いずれにしても、将来のことを考えて、眼科医と十分に話し合って治療方針を決めていくことが大切です。

【これで私は助かった!】動悸、息切れで検査したら…心臓弁膜症だった  

動悸(どうき)、息切れ、めまい…。現代人なら誰もが経験のある何気ない症状の陰に、命を脅かす恐ろしい病気が隠れていることがある。「年のせい」と甘く見ていると痛い目に遭う。長生きしたければ、早目早目の対策が不可欠だ。

 ■土井秀嗣さん(57歳=仮名)のケース

 いまのマンションに住んで20年。駅まで15分ほど歩きますが、20年も住んでいるので慣れっこになっていました。

 ところが少し前から、この距離が体にこたえるようになってきたんです。しかも急速に…。仕事で疲れた夜だけでなく、朝会社に出かけるときにも、駅に着く前に息切れがする。電車に乗って落ち着くと、ドキドキと動悸がするのを感じるんです。

 この“動悸”は夜寝るときにもあって、ベッドに入って電気を消したあとも、自分の心臓の音が聞こえるくらいハッキリ感じる。年齢的にもメンテナンスが必要かと考えて、病院に行きました。

 心電図を撮って、聴診器で心臓の音を聴いた医師が「弁膜症の可能性がある」という。そこで検査入院をして心エコーと血管内に細い管を入れて内部を見るカテーテル検査をしたところ、左心室から大動脈に通じるところの弁が壊れていることがわかったんです。心臓から血液を送り出す機能が大幅に低下しているとのことで、手術を受けることになりました。

 痛みもなく、自覚症状と言っても動悸や息切れくらいしかなかったのに、よもや心臓の手術を受けることになるとは驚きました。

 壊れた弁を取り除き、代わりに人工的に作った弁を設置するという手術を受けて、無事成功。術後10日ほどで退院し、自宅で数日休んだのちに、仕事に復帰しました。好きなゴルフはしばらく禁止されていますが、命が助かったんだからそれくらい我慢できます。

 些細(ささい)な症状からこんな大病が見つかったことで、あれ以降体調管理には気を使っています。薬もきちんと飲んでいるし、食生活も野菜中心に変えました。変な言い方ですが、病気をしたおかげで長生きできそうな気がしています(笑)。

 ■専門医はこう見る

 埼玉東部循環器病院(埼玉県越谷市)心臓血管外科部長・田中佐登司医師

 全身の臓器から静脈を経て心臓に戻ってきた血液は、右心房から右心室に送られ、一旦肺に行った後、再び心臓に戻って、左心房から左心室を経て、全身に送られていきます。

 この時、心臓の内部での流れを制御するために各部屋の出入り口に「弁」が設けられています。

 加齢や動脈硬化などが原因となって、この弁が故障したり、本来の役割が果たせなくなるのが「心臓弁膜症」。心臓のポンプ機能が低下して、放置すると不整脈や心不全、多臓器不全などを招いて死に至る重大疾患です。

 症状としては土井さんの感じた動悸や息切れなどがありますが、中には「めまい」を訴える人もいます。

 いずれも忙しいサラリーマンが見逃してしまいがちな症状ですが、循環器系の治療を専門とする医療機関で検査をすれば、早期発見、早期治療が可能なので、思い当たる症状があれば、早目に受診すべきです。

 動脈硬化や糖尿病などのリスクを抱えている人は、定期的に心臓ドックを受けるなどして、重症化を防ぐ取り組みが必要です。

【これで私は助かった!】無痛検査でスキルス胃がん発見!九死に一生

早期診断、早期治療の普及により、以前に比べて死亡率が減少している胃がん。しかし、それは統計上の話であって、がんにかかれば命の保証はない。今回はそんな胃がんの中でも最もタチの悪い「スキルス胃がん」から生還した人の物語。

 ■白川勉さん(30歳=仮名)のケース

 私の場合は本当に偶然が重なったとしか言いようがありません。

 仕事の付き合いで酒を飲むことが多く、その上にプライベートでもほぼ毎日飲んでいました。学生時代からタバコも切らしたことがなく今、思えばいつがんになってもおかしくない生活だったと思います。

 それでも少々飲み過ぎた時期があり、胃のもたれや痛みを感じるようになりました。会社の先輩に相談すると、胃カメラ検査を受けたほうがいいと言われたのですが、それを父に話すと「お前みたいな若造ががんになるはずがない。受けるだけ無駄だ」と笑われました。

 しかし、先輩は20代で胃がんにかかって命を落とした知り合いがいたと言って強く勧めます。無痛検査なら苦しまずに受けられると言うので、先輩の顔を立てるつもりで受けてみたんです。

 受けてみて驚いたことが二つあります。一つは本当に苦しくなかったこと。そしてもう一つが、胃がんが見つかったことです。しかも「スキルス胃がん」という、胃がんの中でも非常に治療成績の悪いタイプのがんです。

 ネットで調べて愕然とし、一度は諦めかけたのですが、検査をした医師の紹介で大学病院に行き、かなり大掛かりな手術を受けたところ、助かることができたのです。

 執刀医も、私の運の良さを繰り返し強調するばかりで、自分の手術のウデよりも、胃カメラで早期発見してくれた医師の眼力に感心していました。

 手術を受けて4年が経ちますが、再発転移はありません。もちろん酒もタバコもやめましたが、面白いのは、会社の仲間たちまで、そろってタバコをやめてしまったのです。

 「胃カメラなんて必要ない」と笑っていた父が、今では毎年、春になると私と一緒に胃カメラの検査を受けています。お腹に大きな手術痕ができましたが、それを見るたびに、命の大切さと早期発見の重要性をしみじみ実感しています。

 ■専門医はこう見る

 渡辺七六クリニック(東京都渋谷区)院長・渡辺七六医師

 胃がんにはいくつかタイプがありますが、中でもスキルス胃がんの予後の悪さは突出しており、白川さんが一度は諦めかけたのも頷ける話です。

 そんなまさに“崖っぷち”から白川さんが生還できたのは、彼自身が「素直だった」ことが大きな要因といえます。彼のお父さんがそうだったように、20歳代の若さで胃がんになるなんて、普通は考えません。

それでも、先輩の勧めに従って検査を受け、がんが見つかった後も医師の紹介する大学病院で手術を受けた-。ある意味「素直にレールに乗った」ことが、彼を生還させたと言えるでしょう。

 実際問題として、この若さで胃がんが見つかることは稀です。しかし、だから放置していいというものでもないのです。

 血便などの明らかな症状が出てからでは取り返しのつかないことも少なくありません。喫煙や飲酒などのリスクがあり、しかも気になる症状がある時は、年齢に関係なく一度は検査をしておくべきです。

「カサンドラ症候群」とは? 夫の“発達障害”に悩む妻が増加中

夫の言動に不満を抱かない妻などいないだろう。ただ、その言動の原因が先天的な脳の病気にあるとしたら──。ここ数年で知られるようになった「大人の発達障害」。「知的障害や言語障害を伴わない自閉症」と定義されるアスペルガー症候群を代表とする自閉症スペクトラム障害(ASD)などがその一例だ。そんな夫と暮らす妻たちが抱える状況や心身の不調を指す「カサンドラ症候群」という言葉がインターネット上などを中心に広まっている。
 
 こうした状況のなか、同じ悩みを抱える、ASDの人のパートナーである妻たちが支え合う「自助グループ」も生まれつつある。東京都多摩市を中心に活動する「ハーンの妻達」は、代表のSORAさん(53)自身、ASDの夫(58)がいる。11年前、ASDの長男と同じ医療機関で診断された。

 夫はお金の管理ができず、自分の会社を二つ倒産させ、SORAさんが働いて家計を支えた。女性問題を起こしたことも。

「夫に悪気はなく、反省もしない。苦労の連続でたくましくならざるを得ず、女性としての幸せと自信を失っていきました」

 ASDへの認知や理解が進むのはいいが、周りから「障害者の夫に理解がない妻」と見られるのではないかと、誰にも打ち明けられない。そんな孤立感がパートナーを苦しめ、心身をむしばんでいく。

「同じ立場の人たちが集まって、自分だけじゃないと知り、気持ちを切り替えられる居場所があれば」と13年に自助グループを立ち上げ、参加者は現在までにのべ200人を超えた。悩みを打ち明け相談する情報交換会のほか、心身の不調を未然に防ぎ、妻が自分の力で回復する方法を考える体験型のワークショップがメーンだ。「夫婦関係を立て直したい」「つらいけれど何とかしたい」という妻たちが多く集う。

「ASDはわかりにくい障害。夫が自覚をしないまま、対応の仕方がわからない妻が全部を背負うには限界がある。夫婦が向き合って解決に向かうために、第三者の介入が必要だと思う」(SORAさん)

 専門外来を持つ昭和大学附属烏山病院(東京都世田谷区)の加藤進昌病院長も言う。

「ASDは先天的な障害で治ることはない。だが障害を本人が受け入れ、基本的な会話のルールや家族や社会との適切な向き合い方を学習、体験すれば、コミュニケーションが円滑になる可能性はある」

 昭和大学附属烏山病院では診療の場に家族を同席させ、対処策を助言することも。またASDの診断を受けた人対象の「発達障害専門プログラム」を実施している。1年かけてコミュニケーションを学んだり自己理解を深めたりし、生活や仕事をしやすくするのが目的。だが、同院のように大人のASDを対象とした医療施設や支援体制はまだ数少ない。

 発達障害の夫(52)との波乱の家庭生活を赤裸々につづり、シリーズ累計10万部を突破したコミックエッセー『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』の作者・野波ツナさんが訴える。 「ASDへの理解が広まってほしいと願うと同時に、家族も何らかの困りごとを抱えている状況にも目を向けてほしい」

自閉症の人生:それはあなたが考えているものとは違う

Doctor Stu's Science Blog:コーヒーカップがカチンと鳴る音が、時計台が鳴る音より大きい世界を想像してみてください。道行く人のつぶやきが、ワールドカップの歓声より大きいところを想像してください。

あるいは、電気スタンドが太陽より明るかったり、腐った魚の匂いが一日中つきまとったりするのを...。これが感覚過敏の世界です。
自閉症にはさまざまな種類がある

自閉症の人生がどんなものか、ちょっと想像できないでしょう。「自閉症」と聞くと、1980年代の映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたキャラクターを思い出すかもしれません。

彼は社会的ひきこもりで、知的には天才でした。あるいは、叫んだり、体を揺すったり、頭を振り続けている哀れな子どもをイメージするかもしれません。

過度に単純化されたこうしたステレオタイプは、自閉症がいかに多様性に富んでいるかを示しています。自閉症とはひとつの状態ではありません。状態の「スペクトル」なのです。

これが、自閉症が「自閉症スペクトル障害(ASD)」と呼ばれようになった理由です。英国では100人に1人がASDと診断されています。つまり、あなたの知り合いでの中にも自閉症の人がおそらくいます。たとえあなたが気づいていないかったとしても。

自閉症の人は馬鹿ではありません。ちょっと見ただけでは自閉症の人を見分けることはできないでしょう。自閉症は「隠れた能力障害」とも呼ばれます。この症状をよく表している言葉です。

自閉症の人の中には、学習障害やコミュニケーション障害を抱えてる人もいます。しかし、高い知性を持ち、仕事で成功している人もいます。映画みたいな特殊な能力を持った人は非常にまれです。

ASDのすべての人に共通することは、社会生活の困難さです。人の言葉を文字通りに受け取ってしまったり、しぐさの意味を理解できなかったり、場の雰囲気が読めなかったりします。

自閉症の人の多くが、世界を全く違ったように経験しています。「感覚過敏」に苦しむ人たちもいます。すべての感覚が極限まで敏感になり、ちょっとした音、目に入る情景、匂いが、苦痛に満ちた大混乱を引き起こします。

子どもが自閉症的「かんしゃく」を起こすのは、注意を引くためではありません。突如として苦痛の固まりとなった世界から、なんとか逃れようとする痛ましい試みなのです。

彼らが見ている世界は違うと認め、尊重する

自閉症は、一生にわたる症状です。治療法も原因もわかっていません。

しかし、自閉症の人たちが生きやすくなるために、私たちができることはたくさんあります。アスペルガーと呼ばれるタイプの自閉症をもつルーシーという女性の例を見てみましょう。

彼女は、学問的な才能に恵まれた女性です。厳格な日課を持ち、興味の対象は限定され、身体的に不器用で、社会的困難を抱えています。ある日、彼女は病院を訪れました。

看護師による問診を受けたあと、「外で座ってお待ちください。医師がすぐに参ります」と告げられました。

ルーシーさんはその言葉を文字通り受け取りました。数時間後、病院の守衛が発見したとき、彼女は待合室ではなく、病院の外にある公園のベンチに座っていました。

ルーシーさんの事例が示すように、自閉症の人に対して、シンプルで明確な言葉を使えば、誤解の多くは避けられます。彼らは、無口で、無作法で、思いやりのない人間に見えるかもしれません。

しかし、大抵は、社会のエチケットが身についていないだけです。

パニック的な攻撃性、暴言、異常な行動は、恐怖というよりは痛みの表現です。自閉症の人にとって、世界を別の視点で見ることは大変難しいことです。そ

して、私たちができる最良のことは、世界を別の視点で見ることです。自閉症の人が生きている世界は、私たちが感じている世界とは違うことを認め、そのことを尊重するのです。

「自閉症」と診断されたら?対処法は治療法はどんなのがあるの?

脳の発達障害から起こる「自閉症」。現在、自閉症の詳細なメカニズムは解明されていないため、根本的原因を取り除く手術や具体的治療法はありません。

では、自閉症と診断されたら、その後どのような治療を受けるのでしょうか?
ここでは、自閉症の対処法・治療法を紹介します。

◆社会生活を送るためのトレーニング

自閉症の主な症状のひとつ、「コミュニケーション能力の欠如」については、社会生活を送る上でハンディキャップとなります。コミュニケーション能力のレベルを向上させる対策として、自閉症の症状をトレーニングで目立たなくさせる方法がとられています。

繰り返してしまう反復行動や自分のパターンをやめさせたり、社会のルールを教えます。

小さな目標を少しずつクリアしていきます。専門の精神科医などの指導のもと、親や家族が愛情を持って根気良く日々を積み重ねていくことが何よりのトレーニングとなります。
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◆薬物治療は慎重に

自閉症の症状の中で、「多動性」や「儀式的行為」、「自傷行為」などの症状を緩和させるために、薬物治療が用いられます。投与期間は、数か月~数年間にわたることがあります。

ただ、小さい子どもには、薬の分量や副作用が異なるため、慎重に使用されなければなりません。また、薬物治療をしても、自閉症そのものを治すわけでなく、あくまで補助的な治療、症状を緩和する意味合いで使用されます。
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◆症状によっては改善の可能性も

IQ70以上の高機能自閉症アスペルガー症候群の場合、知的レベルが一定なので、5~7歳までに言語でコミュニケーションできるように成長していれば、社会生活を送る上でのハンディキャップは軽減される可能性もあります。

また、幼児期に自閉症と診断されても、成長するにつれて症状が改善される場合があります。ただ、環境や行動の変化になかなか対応できないなど、改善されにくい症状もあります。
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◆誤解される病気を支えるのは家族

自閉症の子どもは、一見健康に見えるため、周囲から「しつけがなってない子」と誤解されてしまうこともあります。
自閉症を取り巻く環境は、少しずつ改善されてきてはいるものの、正しい理解を得るにはまだまだ時間を要するのも事実です。

そんな厳しい現実の中で、自閉症の子どもが社会生活に適応していくためには、家族や周囲の協力が必要不可欠です。
ママをはじめ、自閉症の子どもを持つ家族は強いストレスを抱え、孤立してしまうこともあります。

専門の小児科医や精神科医を見つけ、自閉症とはどのような病気なのかをきちんと理解し、コミュニケーションをとる努力を積み重ねていくことが大切です。

いまだメカニズムが解明されていない「自閉症」。原因と症状って?

首がすわって、腰がすわり、つかまり立ちをして、やがて歩き出す。

子どもの体の成長を目にすることはうれしいものです。でも、言葉やコミュニケーション能 力の遅れは、その子の個性なのか、それとも何かの病気なのか、判断が難しいもの。

「もしかして自閉症かもしれない」と心配するママもいるでしょう。
ここでは、自閉症の原因と症状を紹介します。

◆自閉症は出生前から

自閉症はその言葉から、何かのトラブルがきっかけで自ら心を閉ざしてしまったという印象を持たれがちですが、自閉症は先天的な病気です。現在、自閉症の病気発症のメカニズムは解明されていませんが、脳機能の違いが原因と考えられています。

出生後に何か大きなショックを受けて、自分の殻に閉じこもっているという間違った解釈をされることもありますが、幼少期の体験や親の子どもへの接し方とは無関係です。
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◆症状の特徴

自閉症の主な症状は、「対人交渉の質的問題」と「コミュニケーションの質的問題」、そして「イマジネーション障害」です。通常3歳までに顕著に表れます。 抱っこされたい素振りも見せず、目で合図を送らない、笑わないといった兆候があります。

日本自閉症協会によると国内の自閉症患者数は約36万人。男性に多く、女性の約4倍を占めます。軽度の症状の患者まで含めると、「100人に1人はいる」という説もあります。

◆対人交渉の質的問題

自分と相手の関係を正しく理解できず、不適切な行動をとります。人見知りせずに、誰にでも平気で抱っこされたり、両親や家族が自分にとって大切な存在だと理解できません。反対に、ママだけに極端に依存する子などもいます。
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◆コミュニケーションの質的問題

言葉を発しても意味のない言葉使いやオウム返しをします。言葉の発達の遅れよりも、言葉の偏りや奇妙さが自閉症の診断のポイントとなります。
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◆イマジネーション障害

環境の変化や相手に合わせて臨機応変に対応することが苦手なので、自分の行動パターンが変わることに強く固執します。特定の動作を繰り返したりするのも特徴です。不測の事態が起きるとパニックを起こしてしまうこともあります。
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◆厳しく叱る前に

自閉症の重傷度を定める上で指標となるのが、知的レベル。約8割近くの自閉症患者の知的レベルはIQ70以下。ただ、計算や記憶など特異な分野で能力が高 く、症状が軽度の自閉症もあります。

近年は早期発見から、知的障害を伴わない高機能自閉症「アスペルガー症候群」の報告が増えています。一見正常に見えるため、家族でも自閉症だと気付かずに、厳しくしつけをしてしまう恐れがあります。

ひとりひとりの個性があるように、その子に合った成長のスピードがあります。でも、もしママが少し心配な様子が見て取れたら、小児科医に相談しましょう。

パニック障害体験談■ 医師の診断とその後の症状

特定の場所やシチュエーションの中で突然不安な気持ちになったり、体調に変化が出るなどして、その場から逃げだしたくなったりします。例えば電車の中や自動車の運転中等、拘束された環境で症状が出やすくなります。

私がパニック障害と診断されたのは2年前でした。

■ 経験したパニック障害の症状への道のり

◎ キーンという耳鳴り、耳閉感

はじめは聞こえたり消えたりの繰り返しでしたが、ついに四六時中症状がでるようになってしまいました。

◎ ふわっとするめまい

いつもエレベーターか小型の船に乗っている感じでした。

◎ 自動車の運転が怖くなる

耳の不快感、めまいから、自動車の運転が怖くなってしまいました。

◎ 買い物に出掛けたくなくなる

レジで並ぶのが辛く、買い物中、急な腹痛、動悸に見舞われてしまいました。

◎ 医師の診察中にパニック発作

呼吸が苦しくなり、手が震え、動悸に見舞われるようになり、ここで診断がつきました。

・自動車の運転ができなくなってしまいました。

・「こんなはずではないのに」という気持ちから、毎日泣いてばかりいました。

耳鼻咽喉科及び脳神経外科にて頭部MRIの診断は異常はありませんでした。突発性難聴でもありませんでした。内科にて心電図をとりましたが、異常はありませんでした。

◎ ふりかえると……

耳鳴りを経験する半年ほど前から就活をしていました。結婚後ということで正社員では採用が決まらず、毎日ハローワークのウェブサイト、派遣会社のウェブサイトをチェックしていました。大変焦っていたのは確かです。

気のおけない人達との飲み会で突然不安感に見舞われ、呼吸しづらくなってしまい、途中で失礼したのもその頃でした。

■ 医師の診断とその後の症状

診断されたクリニックが内科だった為、主人のすすめでその後メンタルクリニックで診察を受けなおしました。困った症状を訴えているその最中にも呼吸が苦しくなったり、手が震えたりした為、診断がつきました。

はじめのクリニックで処方された抗不安薬を服用していましたが、メンタルクリニックでセロトニンをコントロールする目的でセロトニン再取り込み阻害薬である抗うつ薬(ルボックス)を処方されるも体に合わず、丸2日間起き上がれない等不具合が出ました。

現在は抗不安薬と漢方薬で精神神経症状の様子を見ている状況です。メンタルクリニックには月1回受診しています。少しずつ行動範囲を広げるべく、努力中です。

余談になるかも知れませんが、月経困難症(傷みがひどい)のため、経口避妊薬で月経をコントロールしています。

自動車の運転も、長距離でなければ気にならなくなりました。毎日スーパーのチラシをチェックして買い物にも行けるようになりました。レジで並ぶのも気になりません。

■ おわりに

◎ 異変にきづいたらどうする?

「めまいが続く」「眠りに異変が出てきた」「耳鳴りが続く」等、いつもと違う体の異変に気づいたら、早めにメンタルクリニック等、こころの状態を診てくださる方に相談するのがいちばんです。

◎ やっぱり、食事、運動、休養に留意する

仕事漬けで食事がおろそかなのに、運動が好きでジム通い……が筆者の若い頃の日常だった気がしています。長い間、自分が知らないうちに自分を傷つけていたのでは?と考えています。

バランスのよい食事を欠食せず、軽く汗ばむくらいの運動をし、ぐっすり眠る。これができればいつの間にか心から笑える日が来る!と信じて日々過ごしています。

◎ ストレス対策を見つけておく

ストレスフルの状態が普通になっている方、多くないでしょうか? 交感神経優位になっていませんか?自分に合った、ストレスの解消方法を見つけておき、できるだけ早くケアする事をおすすめします。

参考までに筆者は、腹式呼吸をゆっくり行うようにしたら、少しずつですが、落ち着いてきた気がしています。

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