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自閉症の女の子は男の子よりも症状を隠すのが上手


広く知られるようになった「自閉症」。あなたは自閉症についてどれほどの知識がありますか?

自閉症とは社会性に乏しく、他人とコミュニケーションを取る能力が極めて低い症状のことをいいます。子どもが自閉症になるケースも多く、それを小児自閉症と呼びます。

ロンドンカレッジ大学の研究によると、女の子の方が男の子よりも自閉症の症状を隠すのが上手で、周りが彼女が自閉症だと気づく確率は男の子のそれと比べてかなり低いことがわかりました。

研究では3500人以上の子どもを対象に1990年代に行われたものを再検証しました。子どもに4つの感情を表現してもらいます。

怒った顔、悲しい顔、幸せな顔、怖い顔です。絵を見たり、特定の指示に合わせてこれらの表情を作るのですが、自閉症の子どもは悲しい顔をするべき時に、ニコニコ笑ってしまうケースなど、指示をきちんと受け止められないケースが多かったそうです。

しかし、その中でも女の子の方が男の子よりも上手に指示に従うことができることが明らかになりました。

研究に従事したコターリ博士は、男の子はその表情で自閉症であるかないかの判断が比較的簡単だが、女の子の方がうまく相手とコミュニケーションができてしまうので、たとえ自閉症でもそうではないと判断されるケースが多いと述べています。

気をつけないと自閉症で苦しんでいる子どもを問題ないと判断してしまうことになってしまいます。

私たちの身近にも自閉症のお子さんを抱えている方がいるでしょう。自閉症を抱える子どもの親になるということは、私たちが思う程簡単なことではないのです。

当事者ではない私たちが、子どもたちの行動だけを見て、自閉症だとかそうではないとか簡単に判断しないように注意したいですね。

視線を合わせない自閉症の特徴、乳幼児期から確認 FC2 Analyzer



FC2 Analyzer他人と視線を合わせないという自閉症の特徴は、乳幼児期の段階から確認できるかもしれないとする米研究チームの論文が、6日付の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。今回の研究では、生後2か月という早期からこの特徴が確認された。

 目を合わせることを避ける傾向は、長らく自閉症の特徴の一つと認識されてきたが、これを早期診断の手段とする可能性は追究されてこなかった。

 研究チームは視線追跡技術を用いて、乳幼児110人を誕生から2歳になるまで調査した。保育士に扮した俳優が、ゲームをしながら話しかけるビデオを見せて、視聴している乳幼児たちが俳優の目を見ているかどうかを観察した。その結果、13人が後に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された。

 ASDと診断された子どもたちについて、論文の共著者で米エモリー大学(Emory University)医学部のウォーレン・ジョーンズ(Warren Jones)氏はAFPの取材に対し「2歳になるまでに、母親の目を見る度合いが着実に減っていった」と説明した。この兆候は生後6か月以内でも確認され、生後2か月でみられた乳児もいたという。

 今回の研究では、視線を避ける傾向が人間の発達の早い段階で表れるということに加え、ASDの子どもは最初から他人と目を合わせないのではなく、徐々に視線を合わせる回数が減っていくことも突き止めた。

「この2つの要素により、将来的にASDの治療は、初期段階から介入する方法へと劇的に変わる可能性がある」と、米マーカス自閉症センター(Marcus Autism Centre)の所長で論文共著者のアミ・クリン(Ami Klin)氏は語る。 

 自閉症の治療法はないが、これまでの研究から早期の行動療法によって自閉症の子どもたちの学習能力やコミュニケーション能力、社会性などが向上することが分かっている。

 世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によると、ASDと診断される子どもは160人に1人の割合だという。

侮れない“古くて新しい病気”「結核」を疑う4つの初期症状(1)


 日本の新規結核羅患率は、人口10万人当たり16.1人(2014年・厚労省調べ)で、実は10人以下の欧米先進国に比べ患者数は多く、世界の中では依然として“結核の中蔓延国”とされている。

 2013年10月、東京・八王子の40代の男性教諭が肺結核の発病に気づかず授業を続けていたため、他の教諭や生徒など15人が結核に感染した。

また同月、滋賀医大に勤める30代の女性看護師が患っていることも判明。さらに徳島県の開業医が発病していることも分かり、改めてその脅威を知らされる事態となった。

 そもそも、なぜ結核は発生してしまうのか。
 東京医療センター呼吸器科の外来担当医は、こう説明する。

 「結核とは、“結核菌”という細菌が引き起こす“おでき”のようなものと考えていいでしょう。最初は炎症から始まり、患った場所が肺であれば肺炎のような症状が出ます。さらに悪化すると組織がダメになって化膿に似た状態になります。

肺結核では、この状態がかなり長く続き、レントゲンなどに映る影の大半がこの時期の病巣です。その後、組織がドロドロに溶けて咳やクシャミと一緒に気管支を通って肺の外へ出され、病巣は空洞になる。

ポッカリと空いた空洞なので、空気も肺からの栄養も十分にあり、結核菌には絶好の住家となって、菌がどんどん増殖するのです」

 そして担当医はさらに、その怖さを説く。
 「増殖した菌は肺の他の部分に飛び火したり、リンパや血液の流れに乗って他の臓器に対し悪さを始めることもあります。

こうして、結核は肺全体、全身に拡がり、最後には肺の組織が破壊され、呼吸困難や他の臓器不全を起こして命の危機を招くことになります。ですから、咳や痰やクシャミが2週間以上続いたら、まず医療機関に診てもらうことが大事です」

 このように、結核が厄介なのは全身の至る所に病を作るという点だ。冒される臓器としてはリンパ節が最も多く、特に多いのが首の脇が腫れるもので、昔は“瘰癧”と呼ばれた。

また、骨や関節にもできる。中でも背骨の脊椎カリエス、腎臓の腎結核が多く見られ、腎結核の場合は膀胱などを巻き込むこともよくあるといわれる。

 「その他、咽頭、腸、腹膜、眼や耳、皮膚、生殖器にまで広がることもあり、中でも最も怖いのは、脳に至ることです。結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、脳を包んでいる膜(髄膜)にたどり着き、そこに病巣を作る。

現在では、全身に結核菌がばら撒かれる粟粒結核の場合、早く発見できれば助かりますが、髄膜炎では治療が少しでも遅れると3分の1近くが命を落とし、治っても脳に重い後遺症が残る可能性があるのです」(健康ライター)

 また、あるベテランの医療ジャーナリストはこう語る。
 「結核で多くの人が亡くなっていた時代、死因は肺の大部分が結核菌に破壊されるケースと、腸の結核で栄養が取れずに死亡するケースとで、ほぼ半々でした。

それが特効薬『ストレプトマイシン』などが登場し、結核菌による炎症の発達を止める効果を上げ、その後の病気の進行を抑えて治療への道筋をつけたのです」

侮れない“古くて新しい病気”「結核」を疑う4つの初期症状(2)


しかし一方で、WHO(世界保健機関)が2013年に推定した資料によれば、世界で860万人が毎年新たに発症し、年間130万人が死亡。さらに結核治療薬が効きにくい多剤耐性結核の推定患者数は45万人で、年間約17万人が命を落としているという。

 結核感染者全体が減少傾向にある中で、この多剤耐性結核菌による死亡者だけが4年前より2万人以上増えているのだ。

 「そのためWHOは、“多剤耐性結核菌への対応の不備は、公衆衛生上の危機に当たる”として警告、治療薬の供給体制などを緊急に整える必要があると強調しています。

日本でも死亡原因で1位から後退したとはいえ、新規の患者は年間約3万人。これは、WHOが警告しているように抗生物質が効かず、治療法がない感染が拡大しているからだと思います。

ハイリスク集団として、結核の“高蔓延国”からさまざまな目的で日本に入ってくる外国人にも目を向けなければならなりません」(前出・医療ジャーナリスト)

 日本における結核の現状は、全国に蔓延していた時代から、都市部を中心とした高齢者に集中する時代に変わってきた。

 「現在の高齢者は、若い頃に結核流行時を経験している人が多い。“一度患うと感染しない”といった説もあるようですが、体力や免疫力が低下したときに、眠っていた菌が再び目を覚まして発病するとも言われている。

逆に、若い世代は未感染のため菌を吸い込むと感染しやすく、比較的早い時期に発病します。ましてや、2万人を超えたとされるHIV感染者ともなると、体力が落ち込んでいるために結核菌に侵されやすく、命取りになる可能性が高くなります」(同)

 専門家の間では、「HIVと結核の合併は今後、大きな問題となる危険性を孕んでいる」と警戒感が強まっている。

 では、どうしたら結核から逃れられるのか。重要なポイントは、
 (1)睡眠を十分にとる。
 (2)適度な運動をする。
 (3)好き嫌いなくバランスの取れた食事を摂る。

 そして、次のような症状がある場合、専門医を受診すべきだという。
 (1)2週間以上の長引く咳。
 (2)痰が出る。
 (3)微熱が長引く。
 (4)倦怠感が長く続く(体がだるく活力がない)。
 (5)体重の減少。

 東京社会医学研究センターの大畑保氏は、次のように指摘する。

 「抗生物質が効かない結核が増え始め、感染の拡大につながっていることに加え、注目すべきは若い医師が結核を見逃してしまうケースが多々あること。日本では結核患者数が減ったことで、疑わない医師が増えているのです。

また、めったに診ないので経験が積めない。結核は検査しても見つけにくいこともあるし、症状が風邪に似ているために放置される場合もありますので注意が必要です」

 “古くて新しい病気”とも呼ばれる結核。その落とし穴が、意外にも身近に存在することを意識しなければならない。

【これで私は助かった!】ボケかなと思ったら“肝性脳症”だった!重大疾患の前兆を見逃すな  


人間、年を取ると色々な症状が出てくるもの。まして多少の痴呆がある人は、周囲がよほど注意していないと、その症状がボケなのか、あるいは内臓疾患によるものなのかの区別がつきにくい。高齢者に多い「肝性脳症」も、そんな病気の一つだ。

 ■豊岡一志さん(仮名)のケース

 父(79)は若い頃は大酒飲みで、60代前半で肝機能障害を指摘されました。5年前には肝硬変と診断され、それ以降は年齢的な衰えから量は減ったものの、毎晩何かしらのアルコールを口にしない日はありませんでした。

 最近は痴呆が出始め、コミュニケーションはおおむね問題ないものの、物忘れは顕著になりました。昔のことは覚えているのに、新しい知り合いや、昨日や今日の出来事をきれいに忘れる感じです。

 そんな数カ月前のこと、父が母に反抗するようになったのです。酒好きでも優しい性格で、特に母を怒鳴りつけたりすることは絶対になかった父が、声を荒らげて母を怒鳴りつけたり、口答えをするようになったのです。私も私の女房も驚きましたが、母は冷静でした。

 「これはボケじゃない。何かおかしい!」

 そう感じた母は、父が肝硬変の治療で通院しているかかりつけ医に相談。医師も不審に思い、脳のMRIなどの検査をしたところ、「肝性脳症」であることがわかったのです。

 少し前に腹水がたまり出したので利尿剤を使っていたのですが、それが効きすぎていたらしく、尿として排出されるべき老廃物が脳に流れてトラブルを起こしていたというのです。

 たまたま早期で見つかったからよかったものの、放置すれば昏睡(こんすい)に陥り、そのまま肝不全で命を落とすこともあると聞き、冷や汗が出てきました。

 ひと月ほど入院して点滴治療を受けた父は、痴呆の症状はそのままですが、以前の「母には優しい父」に戻っていました。

 怒鳴りつけられながらも、「ボケとは違う」と感じて医師に相談した母の冷静さに、夫婦の絆を感じさせられた思いです。

 ■専門医はこう見る

 キッコーマン総合病院(千葉県野田市)院長代理・三上繁医師

 肝硬変になるとアルブミンという血清タンパクの濃度が低下します。すると血液が薄まって水っぽくなり、血管壁を通過して外に漏れ出してしまいます。この現象が脚などで起きると「むくみ」、おなかで起きると「腹水」となります。

 肝硬変の人でアルブミンの値が落ちてくると、余計な水分を体内にためないようにするため利尿剤を使うことがありますが、その効果が強すぎると、血中の不要な物質が蓄積されて、その一部が脳にも流れていく。

そこで脳がダメージを受けるのが「肝性脳症」です。

 初期症状としては「ちょっとリアクションがおかしい」「話がかみ合わない」といった感じで、これは痴呆の症状に似ています。

これが進展すると命に関わる状態になるので、豊岡さんのお母さんが見抜いたのは見事としか言いようがありません。

 もう一つ特徴的な症状に「羽ばたき震戦」といって、手の先がピクピクと震えるものがあります。

 肝機能が悪い人が利尿剤を使った後、急に性格が変わったり、手の先の震えが見られる時は、すぐに主治医に相談して下さい。特に痴呆の症状がある人は、その判別が難しいので、注意深い観察が不可欠です。

【これで私は助かった!】大疾患後の後遺症はあきらめずに解消!


運よく重大疾患から逃れることができても、直後に別の重大疾患が控えていることは珍しいことではない。中でも「後遺症」が残った時は、簡単にあきらめるのではなく、できることから解消していく姿勢が重要だ。

 ■杉山哲哉さん(61)=仮名=のケース

 58歳の時、自宅でくつろいでいる時に脳梗塞で倒れ、病院に担ぎ込まれたんです。

発症から血栓溶解剤を投与するまでの時間が短かったことと、リハビリがうまくいったこともあり、会話に多少不自由な点は残ったものの、概ね滞りなく日常生活を送ることができるまでに回復しました。

 ただ、一つ気になっていたことがあったんです。それは「食事の時に、何となく飲み込みにくい」という点。といっても、飲み込めないわけではなく、「スムーズではない」といった感じ。

時々むせることはありましたが、「脳梗塞をやったんだから、まあこんなものなのだろう」という“あきらめの気持ち”があったのは事実です。

 ところが、次第にこの症状がひどくなり、人前で食べるのが恥ずかしくなってきました。主治医に相談すると耳鼻咽喉科の医師を紹介され、検査の結果、のどの知覚が低下していて、「嚥下障害」があることがハッキリしました。

 そこで、飲み込むことの訓練をすることになったのですが、せっかく脳梗塞から生還したのに、また別のリハビリをしなければならないことが情けなくなり、最初はあまり真剣になれなかったんです。

ところが、一つコツをつかむと、意外にあっさり飲み込める。というより、むせる、吐き出す-という「失敗」がないことがうれしくなって、次第に耳鼻科に通うのが楽しくなってきました。

 今では人前での食事も恐くなくなり、食べる量も増えてきました。見た目にも健康そうに見えるようで、数年前に大病したことがウソのような気さえしています。

 ■専門医はこう見る

 山川耳鼻咽喉科医院(東京都港区)院長・山川卓也医師

 嚥下障害のきっかけはさまざまで、のどの骨の形の変形や、神経の病気が原因で「飲み込み」が悪くなることもあります。

 嚥下機能が低下することで受けるダメージは想像以上に大きく、食べることへの意欲の低下が食欲不振を招き、栄養状態を悪化させます。

そうして免疫力が低下したところで飲み込みに失敗すると、誤嚥(ごえん)性肺炎を招いて生命の危険さえ背負い込むことにもなりかねません。

事実、寝たきりの高齢者の場合、死因のかなりの割合を誤嚥性肺炎が占め、その大元に嚥下障害があることは珍しいことではないのです。

 ですから「飲み込みにくい」「食べる時に困難感が生じる」場合は、早めに対策を講じるべきです。

 嚥下障害の改善策はさまざまで、その人の症状に応じた対応が求められますが、放置して治ることはありません。あごを落とす姿勢を取る、首のポジションを変える。

のどの片側の機能が落ちている時は、麻痺している側の声帯を指で押さえることで飲み込みやすくなることもあります。

 また、舌の知覚が落ちて嚥下機能が落ちている時には、氷をなめることで舌の知覚を取り戻す訓練もあります。

 人間にとって「食べること」は生きるための基本中の基本。この行為に自信や興味を無くすことは、生きることへの意欲を無くすことに直結します。少しでも違和感があるなら、耳鼻咽喉科に相談されることをお勧めします。

【これで私は助かった!】飛行機の長旅で胸に痛み!肺血栓塞栓症だった  


飛行機に乗るときは、落ちる心配よりも自分の血管の心配をすべきだ。水も飲まずに長時間じっとしていれば、血液がドロドロになるのは自明の理。これが冠動脈で詰まれば狭心症や心筋梗塞、肺に飛べば肺血栓塞栓症。いずれも命取りだ。

 ■野本肇さん(44歳=仮名)のケース

 海外出張で2週間ほどアメリカに行ってきたときのこと。ニューヨークを拠点として、国内のあちこちに出張していました。かなり遠方への出張もあり、一日の大半を飛行機かレンタカーの中で過ごす毎日。すべての日程を終えて成田行きの飛行機に乗ったときにはヘトヘトでした。

 NYから成田までは14時間ほど。とにかく疲労が激しく、窓際の席だったこともあり、食事以外はほとんど眠り続けました。たまに目が覚めたらビールを飲んでまた眠る-の繰り返しです。

 異変は成田に着いてからのこと。入国手続きのあたりから何となく息苦しくなり、胸が痛むような症状が出始めたんです。迎えに来た妻の運転する車の中でそのことを話すと、「恐いから病院に寄ろう」と言います。

でも激痛ではないので、私は一度家に戻って様子を見てもいいと思ったのですが、次第に息苦しさが増してきたので、妻の意見に従って病院に直行。検査の結果、「肺血栓塞栓症」と診断され、すぐに血管内治療で血栓を取り除く処置が取られました。

 幸いにも私の場合は血栓が小さく、症状も小さかったのですが、それだけに見逃したら危険でした。放置して大きな血栓が飛んだら、命を落としていたはずです。医師から「命拾いをしたね」と言われて、冷や汗が流れました。

 その一件以来、当面飛行機を使う出張は見合わせていますが、新幹線の中でも、ビールを飲まずに水を飲み、通路側の席を予約して1時間ごとにデッキに出て屈伸運動をするように心がけています。

 ■専門医はこう見る

 大阪厚生年金病院(大阪市福島区)鈴木夕子医師

 以前は「エコノミークラス症候群」という名前で知られた病気ですが、席種に関係なく起こり、また入院中の患者のような「寝たきり状態」の人にも多く発生する病気なので注意が必要です。

 最近は震災の影響で「車の中での生活を余儀なくされている人」にもリスクが高いことから話題になりました。

 身動きのとりにくい環境下で、十分な水分摂取ができないことで、脚の静脈の血流がうっ血し、血栓ができる(深部静脈血栓症)。この血栓が血管壁から剥がれて血流に乗って流れていき、心臓を通り過ぎて肺の血管で詰まると「肺血栓塞栓症」となります。

 治療法は野本さんが受けたカテーテル治療の他、血栓溶解剤の投与や外科的手術などがありますが、いずれも早期診断が求められるので、病院に直行した奥さんの判断は正解です。

 今回は小さな血栓だったので事なきを得ましたが、血栓ができるリスクを持っていることがわかったので、今後も長時間の移動の際にはいま実践されていること以外にも、弾性ストッキングというふくらはぎを締め付けるストッキングの着用や、脚をまっすぐのばして血栓ができにくいようにするなどの工夫が重要です。

【これで私は助かった!】“若年性アルツハイマー”早期発見&対応が大事!


老後の不安の代名詞ともいえる「認知症」。しかし、この病気が襲うのは、老後ばかりとは限らない。働き盛りの背後に忍び寄る若年性アルツハイマーには、早期発見と的確な対応が不可欠だ。

 ■石川精一さん(56)=仮名=のケースM

 大手精密機器メーカーの基幹工場で総務部に務める石川さんは、安全管理の指導を担当するセクションの課長代理。真面目一徹で、支店内の各部門からの信頼も厚い。

 そんな石川さんに異変が起きたのは2年前のこと。毎月、彼が責任者としてまとめている月報に、ミスが目立つようになってきたのだ。

 自分では何度も確認したつもりなのに、ミスがなくならない。そのうち、自分の仕事に自信を無くして、ふさぎ込むようになってしまった。産業医が「うつ症状が見られる」と判断し、心療内科を受診したが改善しないまま半年が過ぎた。

 産業医は月に一度、石川さんと顔を合わせているのに、どうも話が噛み合わない。そこで「念のため」と頭部のMRIを撮ってみたところ、海馬にアルツハイマーの所見を確認。若年性アルツハイマーだったのだ。

 認知症に詳しい内科医に紹介され、病気の進行を遅らせる薬を処方。事態を知った会社では、関係する職員に事情を説明し、石川さんの勤務が続けられるサポート体制を敷くことになった。

 こうした取り組みが総合的に効果を発揮し、石川さんは徐々に明るさを取り戻し、病気は緩やかに進行してはいるものの、業務に支障が出ることも、石川さんがふさぎ込むような事態も回避することができている。

 家族は「定年まで勤められるかどうかはわからないが、早期で認知症を発見し、温情ある措置を講じてくれた会社に感謝しています」と話している。

 ■専門医はこう見る

 クリニックうしたに(宮崎市)院長・牛谷義秀医師

 認知症というと高齢者の病気と思われがちですが、実際には若い世代でも一定数の患者がいます。ただ、若いということで認知症を疑わず、うつやストレス性の症状と判断されて、正しい治療が受けられないケースも決して少なくありません。

 そんな中で、石川さんの若年性アルツハイマーを疑い、画像診断をした産業医の判断は見事と言えます。

 サラリーマンにおける認知症の初期症状としては、「それまでできていた仕事ができなくなる」という特徴的な傾向が見られます。去年より今年、先月より今月、確実に仕事の質が低下しているようなら要注意。それまで当たり前のようにこなしてきた仕事が、何日かかっても終わらないような状況が見られたら、年齢に関係なく認知症を視野に入れて考えるべきでしょう。

 もし認知症と診断された時は、周囲の理解と情報の共有化が重要になってきます。周囲が仕事を分担してサポートするだけでなく、組織として見守るという姿勢が不可欠です。

 その上で、仕事が不可能となった場合も、障害年金的な公的扶助の制度があるので、家族が会社と連携しながら「それからの人生設計」を考えていく必要があります。

 認知症と診断された時点で人生を悲観するのではなく、「この時点で何をすべきか」を考えることが大切。そのためにも「早期発見」は意味のあることなのです。

【これで私は助かった!】血液検査で肝機能が低下…がん見つかる


「沈黙の臓器」と言われる肝臓。病気になっても症状を出さずに頑張り続け、いよいよ症状が出た時には手遅れになっていることの多い重要臓器だ。そんな肝臓のがんの前段階には、慢性肝炎と肝硬変があるのだが…。

 ■平野幹夫さん(56)=仮名=のケース

 きっかけは市の健診で受けた血液検査でした。30年前に脱サラして以降、健康診断なんて受けたことがなかったのですが、結果としてそのツケが回った形になってしまいました。

 他の項目は問題なかったのですが、肝機能だけが悪かったので、病院で詳しく調べてもらうと、2センチほどのがんが見つかったのです。

 肝臓に刺した電極の先からラジオ波を流す治療でがんは焼灼(しょうしゃく)したのですが、これで私がC型肝炎に感染していたことが判明したのです。

 実際にはC型肝炎が慢性化し、その後、肝硬変に移行したのちに、がんができていたのでした。

 そこでがん治療のあとに、抗ウイルス薬による薬物治療が始まりました。発熱や倦怠感などの副作用が出て、治療から逃げ出したくなることもありましたが、なんとか頑張って続けた結果、ウイルスを消すことに成功しました。

 しかも、肝硬変ということで諦めていた肝機能の方も、どういうわけか少しですが改善してきたのです。

主治医によると、肝硬変まで進んでいても、治療をきちんと受けて節制をすると、少しは肝臓が柔らかくなることがあるそうで、自分の体のことながら、勉強になりました。その後も定期的に検査を受けていますが、これまでのところ、がんの再発はありません。

 自分の健康に目を向けなかったことの代償として、今では私が、周囲の友人に会うたびに「健診を受けろ」と勧めて歩いています。

 ■専門医はこう見る

 キッコーマン総合病院(千葉県野田市)院長代理・三上繁医師

 肝炎ウイルスに感染していることがわかっていれば、定期的なチェックを受けることになります。そうでないと感染に気付くきっかけがなく、平野さんのようなケースをたどることがあります。

 そんな中で、早期がんで見つかり、治療が奏功してがんも、またC型肝炎ウイルスの排除も成功したとのこと。非常にラッキーなケースと言えるでしょう。

 C型肝炎ウイルスへの感染源は、医療環境が不衛生だった時代の注射、手術、輸血、あるいは医療機関以外でのイレズミなどが主たるルートです。

 感染すると急性肝炎を発症します。この時の症状の出方は個人差が大きく、高熱から感染がわかることもあれば、比較的症状が軽いと「カゼ」と間違えて、そのまま治療が受けられないこともあります。

 こうなると、その先で肝炎ウイルスへの感染を知るチャンスはなかなかなく、平野さんのように病気が進んでから肝機能の低下を招き、初めて気付くことにもなりかねません。今、50歳代以上で、先に挙げたような感染リスクの経験を持つ人は、十分な注意が必要です。

 ただ、病気が見つかってからの平野さんの対応は見事です。抗ウイルス薬の治療は人によって副作用が強く出ることがあるのも事実ですが、見事に克服されたようです。

 これからも定期的な検査の受診を怠らず、がんの再発予防に留意してください。

【これで私は助かった!重大疾患の前兆を見逃すな】腰を曲げた方がラク…脊柱管狭窄症かも


長く歩けない、腰が曲がってきた-。いずれも「年のせい」と考えてしまいがちだが、こうした症状の背景に「脊柱管(せきちゅうかん)狭窄症」という疾患が隠れていることがある。早めに治療することで「健康な腰」を取り戻すことも可能なのだ。

 ■山本善治さん(60=仮名)のケース

 私の場合、腰が曲がるというより、曲げたほうがラク-というのが本当のところでした。ゴルフが唯一の趣味だったのに、この1年ほどは腰の痛みに加えて、300メートルも歩くと脚にしびれや痛みが出るようになってきたこともあって、ゴルフから遠ざかっていました。

 そんな時、会社の同僚から「一度病院で検査したほうがいい」と勧められたんです。彼は長く腰痛に苦しんでいましたが、椎間板ヘルニアの手術を受けたところ、それまでの痛みがウソのように消えてしまったという経験の持ち主。私も治療前後の彼を知っているだけに、彼の忠告には説得力がありました。

 整形外科を受診し、MRIで 腰の画像を撮ったところ、私の痛みは脊柱管狭窄症によるものということがわかったのです。

 脊椎を形成する椎体という骨の穴が小さくなり、中を通る神経が圧迫されて痛みが出ているという。私の場合は内視鏡手術で改善が見込めるとのことなので、手術を受けることにしました。

 手術は全身麻酔で1時間半ほど。術後の痛みはほとんどなく、手術翌日から歩くことができました。1週間で退院し、その後は外来通院。リハビリで簡単な体操指導を受けながら、1カ月後には普通にゴルフができるまでに回復していました。

 痛みが消えてしまうと、それまでの苦痛がいかに煩わしいものだったかがよくわかります。それはゴルフだけでなく、仕事をしていても集中力がまるで違うので、手術後は仕事がはかどるんです。

 今では周囲で腰痛に悩んでいる人がいると、同僚がそうしてくれたように、私も「検査したほうがいいよ」と勧めて歩いています(笑)。

 ■専門医はこう見る

 麻生総合病院(川崎市麻生区)脊椎脊髄病腰痛センター長・森下益多朗医師

 脊柱管狭窄症の早期に出る症状は、脚のしびれや痛み、まっすぐ歩けない、腰をかがめるとラクになる-というもの。いずれも「年のせい」で片付けられやすい症状なので、放置して悪化させてしまう人も少なくありません。その意味で、山本さんはお友達の勧めで治療の機会を得ることができたのだから、ラッキーだったといえます。

 脊柱管狭窄症は、早期であれば手術によって生活の質を大幅に向上させることが可能です。山本さんのように、あきらめていたスポーツを再開できた人も大勢います。

 一方で、放置して悪化させてしまうと、単なる痛みやしびれ以外にもさまざまな神経症状が出る危険性があります。頻尿や残尿感、ひどい場合は大便を漏らしたり、反対に排泄ができなくなる「排尿、排便障害」を引き起こすこともある。こうなると手術をしても劇的な改善は難しい。早めの診断と治療が不可欠です。

 山本さんが受けた内視鏡手術は、手術のキズ口も小さいので入院期間が短く、術後の回復も早いというメリットがあります。ただ、脊椎疾患での内視鏡手術ができる医師が日本ではまだ多くないので、病院のホームページなどで調べてから受診するといいでしょう。

【これで私は助かった!重大疾患の前兆を見逃すな】“喘息”を甘くみてはダメ!命落とすことも


がんや心臓病、脳卒中と較べると、何となく軽く考えられがちな「喘息」。しかし、いまも日本では毎年2000人が喘息発作で命を落としている。呼吸困難の末の死ほどつらい最期もない。甘く見るのは禁物だ。

 ■永井伸一さん(仮名=55)のケース

 若い頃から「喘息持ち」で、過去にはかなり深刻な発作も経験しました。しかし、治療がうまくいったこともあり、近年は小さな発作はあるものの、いわゆる「大発作」に見舞われることはなくなっていたんです。

 馴れというのは恐ろしいものです。昔あれほど苦しんだはずなのに、しばらく遠ざかっていることで根拠のない自信が湧いてきて、処方されている吸入薬の使用をサボることが増えていたんです。

 サボっても大きな発作が起きないことから、いま思えば愚かなことなのですが「治ったのか?」とさえ考えるようになっていました。

 そんなある日の明け方、久しぶりに大発作が来ました。慌てて隣で寝ている妻を叩き起こしたのですが、過去の私の大発作を見て知っている彼女は「比較的軽い症状」と判断したのです。

 これはあとで聞いた話ですが、以前私が繰り返していた大発作の時は本当に苦しそうに呼吸をしていたのに比べてこの時は呼吸が小さく、「ゼーゼー」言うこともないので、大したことはないと思ったというのです。

 でも実際にはその逆で、肺に空気を吸い込めないから呼吸が小さくなっていたのです。冗談ではなく、本当にこのまま死んでいくのかと思うほどの苦しみでした。

数分後、顔色が青くなってようやく異変に気付いた妻が救急車を呼び、何とか助かったのですが、「それほど苦しそうに見えなかった」という妻の言葉を聞いて、あらためて恐怖を感じたものです。

 私の病気を知っている妻だから救急車を呼んでくれましたが、事情を知らない人しかいない時ならどうだったわかりません。以来、私は「喘息発作で呼吸ができません。救急車を呼んでください」と書いた紙を肌身離さず持ち歩いています。もちろん吸入薬もサボることはなくなりました。

 ■専門医はこう見る

 大阪厚生年金病院(大阪市福島区)内科・鈴木夕子医師

 気管支喘息の「大発作」が継続する状態を「喘息重積発作」と呼び、放置すると致死的状況に至る重大な局面です。救急車で病院に運び込まれても、診断が遅れたり的確な治療がされなければ命の保証はありません。

 喘息という病気はきちんと治療をすれば必ず治る病気なのに、喘息発作で死亡する人が絶えないのは、患者や家族が正しく病気を理解せず、「甘く見る」ことに根源的な問題があるのです。永井さんのような「喘息のベテラン」でさえこうした経験をするのですから、この問題は非常に根深いものと言えるでしょう。

 周囲で喘鳴(呼吸に伴うゼーゼー、ヒューヒューという音)が小さい、咳や痰を伴う、顔色や手先が青くなったり冷たくなる-などの症状を伴う喘息発作を起こしている人がいたら、躊躇せずに救急車を呼んでください。そして喘息持ちの人は永井さんのように「緊急医療カード」を身に付け、周囲に状況を知らせる工夫をすべきです。

 助かるはずの年間2000人を確実に助けるためにも、患者と周囲の理解が重要なのです。

【これで私は助かった!】子供が視力検診で集中力がない…弱視の恐れも


が完成する。この「視力の成長」が不完全な状態が「弱視」だ。事が幼児期の問題だけに、親や周囲が気付かないと、その後の人生にも大きな影を落とすことになる。

 ■成瀬篤夫さん(仮名)のケース

 次女が3歳児検診で視力を測った時、妻が「上の子より明らかに集中力がない」と洩らしたのがきっかけでした。絵本を読んでいても30秒とじっとしていられないんです。歩き出してからも、お姉ちゃんの時より転ぶ回数が明らかに多い。

視力は右が0・5で左は0・8でしたが、妻の発言から眼科受診を勧められ、再検査の結果「弱視」と診断されました。

 よく見えるほうの目をパッチで隠して、見えにくいほうの目だけでぬり絵をしたり絵本を読んだりする訓練を1日のうち数時間程度行い、常にメガネをかけます。子供にメガネは気の毒でしたが、当人は面白がってすぐに慣れました。

 治療を始めて半年もすると、両目の度数はほぼ揃ってきたのですが、そこでメガネをやめると元に戻る危険性が高いとのことで、メガネはそのままにしました。

 中学に入る頃にはメガネがトレードマークになっていて、本人に外す気がない。そのまま大学も出て就職。「メガネ美人」などとおだてられて5年前に結婚。今は1歳の女の子の母親です。

 いま彼女の視力は両方とも2・0。弱視は克服できています。

 ■専門医はこう見る

 総合新川橋病院(川崎市川崎区)眼科・河西雅之医師

 視力の発達を障害する原因として先天的な白内障などによるものと、強い屈折異常や斜視によって脳が正常に画像処理ができていない弱視があります。成瀬さんのお嬢さんは後者の弱視ですね。

 弱視の治療は開始時期が早ければ早いほど治療成績も高まります。その意味で、3歳児検診で見つけられたのは、非常に理想的なケースと言えるでしょう。

 特に幼児の場合、「自分の目が見えにくい」という意識がありません。本人にとっては、その視力が当たり前なので、特に不満もないのです。それだけに周囲がよく観察していないと見過ごしてしまいがちです。

 成瀬さんのお嬢さんが受けた治療は標準的なもので、特にメガネは重要です。元が軽い遠視だと、思春期の頃にメガネを外せるケースもありますが、多くは大人になってから目が疲れやすくなるので、可能な限りそのままメガネを使い続けることが推奨されます。

とりわけ女の子の場合、メガネをかけることにご両親として気掛かりな点があるようですが、最近はファッション性に優れたメガネも多いので、昔に比べて拒否反応を示す人は減ってはいます。

 いずれにしても、将来のことを考えて、眼科医と十分に話し合って治療方針を決めていくことが大切です。

【これで私は助かった!】不妊の診察のはずが…脳に腫瘍みつかる


病気に気付くきっかけはさまざまで、別の病気や症状で病院を受診したことから意外な病気が見つかることもある。今回は「不妊」という症状から「脳の病気」が見つかったという女性の話。

 ■広瀬由美子さん(33歳=仮名)のケース

 27歳で結婚して、2年間頑張ったのですが子宝には恵まれませんでした。特に後半は生理不順が続いたり、赤ちゃんを産んだわけでもないのにおっぱいが出たり、最後には生理が完全に止まってしまったりと、明らかにおかしな状態でした。

 不安になって産婦人科を受診。血液検査の結果、ホルモンの値に異常が見つかりました。プロラクチンというホルモンの値が異常に高く、これが不妊の原因になっている可能性が出てきたのです。

 医師が、「念のため脳の写真を撮りましょう」と言うのです。ホルモン異常で生理不順になるのはわかりますが、なぜ脳の写真を撮るのか不思議でしたが、指示に従って頭のMRI検査を受けると 驚いたことに脳の下垂体に腫瘍が見つかりました。

 放置すると危険だというので、脳神経外科で手術を受けました。手術は成功し、入院は10日ほどで済みました。その後はホルモン剤など何種類かの薬を飲んでいますが、生理も戻ってプロラクチンの値も正常範囲内に収まるようになりました。

 1年後、待ちに待った妊娠が分かり、翌年無事に女の子を出産。現在も母子ともに健康に過ごしています。

 ■専門医はこう見る

 中崎クリニック(横浜・神奈川区)院長・中崎浩道医師

 不妊から下垂体腫瘍が見つかるケースは意外に少なくありません。不妊治療が専門の医師であれば、ホルモンの値から判断して、早い段階で下垂体腫瘍を疑います。

 プロラクチンは本来、妊娠や出産時に多く分泌されて、生理を止めたり、母乳の分泌などに関与します。

つまり、妊娠前にはあまり必要のないホルモンなのですが、下垂体に腫瘍ができると、妊娠前でもこれが異常に分泌されて、広瀬さんのような症状を引き起こすことになるのです。

 下垂体は数種のホルモンを分泌する器官なので、腫瘍化する細胞の種類の違いによりホルモン異常もいろいろで、中でもプロラクチン産生、腫瘍末端肥大症(巨人症)、クッシング病が有名です。

また下垂体の近くを視神経が走っており、腫瘍がここに影響すると視野が欠損したり、腫瘍からの出血で失明する危険性もあります。

 プロラクチン産生腫瘍の場合、腫瘍が小さければ手術も難しいものではなく、予後も比較的良好な病気です。術後は妊娠、出産も可能です。そのためにも早期での発見が重要。2年以上の不妊が続くときは、まず産婦人科や不妊外来を受診されることをお勧めします。

【これで私は助かった!】“マイコプラズマ肺炎”に注意!集団感染の危険性も


冬は感染症のリスクが高まる。移したり移されたり-。お歳暮と違って、病気のやり取りは迷惑なだけだ。今回はそんな感染症の代表格で現在大流行している「マイコプラズマ肺炎」についてのお話です。

 ■望月圭介さん(35)=仮名=のケース

 初めは咳から始まったんです。といっても“から咳”で、痰を伴うような重いものではなかったので、あまり心配していませんでした。ちょうどその頃は仕事上の小さなミスが重なって、ストレスもたまっていたんです。恐らくそうした疲れによるものだろうと、甘く見ていたんです。

 ところがその翌日の朝、高熱が出たんです。38度を超える熱なんて過去にあまり経験がなく、さすがに会社を休んで病院に行きました。

 症状を話すとエックス線撮影をすることになり、それも医師の指示で最優先の超特急で検査が行われたのです。有難い半面、「重病なのか?」と不安もわきました。

 エックス線画像を見て医師は「やっぱり肺炎ですね」とつぶやき、すぐ入院の手続きを取るように言われました。

 たしかに症状はつらかったけれど、まさか入院するとは思いませんでした。躊躇したものの、医師に強く勧められて、そのまま入院。その後は1日1回の抗生物質の投与をするだけで、あとは安静を保つだけ。徐々に回復し、1週間後には退院して職場復帰も果たすことができました。

 退院する時に医師から、「望月さんの病気はマイコプラズマ肺炎といって、人に移す危険性のあるタイプの病気。入院しないで、中途半端な状態で会社に行っていたら、集団感染の感染源になっていたかもしれませんよ」と言われて、ゾッとしたものです。

 そして、直後にプロ野球選手がこの病気に集団感染したというニュースを知って2度ビックリ。あの“から咳”で周囲に感染を拡大させてなかっただけでも、ラッキーだったと思っています。

 ■医師はこう見る

 神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)呼吸器科医長・萩原恵里医師

 マイコプラズマ肺炎は、小児を含む比較的若い人(10~30代が中心)に多く見られる感染症。初期症状は咳と熱で、特に望月さんに見られた“から咳”は特徴的な症状の1つです。

 原因となるマイコプラズマは、私たちの周囲に普通にいる微生物。感染力は決して強いわけではありませんが、感染した人の免疫力に反応して発症するので、免疫力の高い、若くて元気な人でも症状が強く出るケースがあります。

 通常は症状の出方やエックス線画像など、マイコプラズマ肺炎を予想させるいくつかの要因が重なったところで、治療を始めます。基本は抗生物質の投与と安静で、1週間から10日程度で軽快していきます。

 この時、発症早期と回復したあたりで血液検査をして、マイコプラズマの抗体価が上昇していることが確認できると、最終的な確定診断ができます。ただ、実際には診断時には病気も治っていることがほとんど。望月さんが退院間際に詳細な説明を受けたのも、そうした状況によるものと思われます。

 かぜと間違えて放置すれば重症化することもある上、会社や家庭内で感染を拡大する危険性もあったことを考えると、すぐに入院処置が取られたことは、結果的に良かったと言えるでしょう。

 これからの時期、咳が出たり、している人を見かけたら、十分な注意が必要です。

【これで私は助かった!】“糖尿病”の早期治療で九死に一生!


重大疾患に関与する症状は色々あるが、中には症状を示さない病気もある。その代表的な病気が「糖尿病」。何も言わず、苦痛を訴えることなく、弱っていく膵臓。気付いた時には取り返しのつかない事態に陥っているのだ。

 ■岡田亮介さん(35)=仮名=のケース

 学生時代はサッカー部。体力だけは自信があります。ストレスはあるものの、若い頃と食欲は変わらず、カゼ一つ引いたこともありません。それが、会社の健診で受けた血液検査で、「ヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)」が9・0と出たのです。

5・8以上は糖尿病の危険性大(今年4月からは「国際標準値・NGSP」という基準に変わり、6・2以上だと糖尿病が疑われる)というのに、はるかに上回る数値です。「要入院」を言い渡され、2週間の教育入院を経験しました。

 3食ともカロリー制限食ですが、10日もすると慣れました。それより驚いたのが、いきなりインスリン注射を始めたことです。「インスリン注射は最後の手段」と思ってたのでびっくりしました。

 医師の説明では、糖尿病の早期でインスリンを使うことで、膵臓の機能回復を助け、いずれはインスリンを使わなくてもよくなるケースもあるとのこと。「打ち始めたら死ぬまで続ける治療」と思い込んでいたので、拍子抜けした気分でした。また、インスリン注射は思ったより痛みも少なく、打ち方も簡単でした。

 退院後もインスリン注射、食事療法、運動療法を続けていたら、3カ月後にはHbA1cが7台まで低下。インスリン量もどんどん減り、半年経った現在は6台前半で推移しており、医師からも「もうすぐインスリンはやめられるだろう」と励まされています。

 知らずに放置していたら、壊疽(えそ)や失明、果ては動脈硬化から命を落とす危険性さえあっただけに、運よく見つかり、的確な治療を受けられたことに感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 池田病院(兵庫県尼崎市)院長・池田弘毅医師

 岡田さんのように若い頃に激しいスポーツをしていた人も糖尿病には注意が必要です。学生時代と比べて運動量が減っているのに、食べる量は減りにくい。岡田さんも「食欲は変わらない」と言っているように、肥満になりやすい環境が整ってしまうのです。

 しかも糖尿病の場合、自覚症状がないこともあり、自分では病気にかかっている気がしないまま、水面下で静かに病気が進行してしまうことになりかねないのです。

 ただ、岡田さんの受けた治療は的確なものであり、特に高血糖による悪循環を断ち切るために、早期の段階でインスリン注射を始めたのは、適切な治療だと言えます。

 高血糖状態が持続しているとわかったら、まずは疲弊している膵臓の機能を回復させる必要があります。そのためにはインスリンを投与することで膵臓を休ませることが大事。これに食事療法や運動療法、さらに適切な薬物療法を組み合わせることで状態は好転し、体重が減ればそれだけ膵臓への負担も軽減でき、結果としてインスリンから離脱できることも多いのです。

 岡田さんのように、「インスリン注射は最後の手段」と思い込んでいる人は少なくありません。より早期からのインスリン治療が、血糖を改善するのみならず、糖尿病自体の状態も改善し、インスリンから離脱できることもあることを、多くの人に知ってほしいですね。

【これで私は助かった!】肛門から出血…“結腸がん”からの生還


火のないところに煙は立たないとはいうが、異常のないところに出血はしないのが人間の体。「これくらいの出血」と甘く見ていると、命を失いかねない事態に至ることもあるのだ。今回は「S状結腸がん」から生還した人のストーリー。

 ■遠山真一さん(54)=仮名=のケース

 きっかけは「肛門からの出血」でした。いぼ痔を持っているわけではないのですが、子どもの頃から便秘になると出血することがあり、この時も切れ痔だろうと思っていたのです。

 ただ、切れ痔の時は排便時やシャワートイレを使った時に痛みを感じるのが常だったのですが、この時はそうしたことがなくて、何となく嫌な予感がないわけではなかったのですが、あまり深刻に考えたくなかったので、敢えて無視することにしたです。

 ちょうどその時期に会社の健診があり、便潜血検査で陽性反応が出ました。私は「切れ痔のせい」と思っていましたが、医師から強く勧められたので、大腸内視鏡検査を受けたのです。

 すると、直腸からS状結腸にかけていくつかのポリープが見つかり、その中に「顔つきの良くないポリープ」があるという。今度は市民病院を紹介されて、内視鏡による手術を受けることになったのです。

 ただの痔だと思っていたものが大ごとになってしまい、さすがに戸惑いましたが、なってしまったものは仕方ありません。手術は無事終わり、ポリープもすべてきれいに切除できました。

 その時点では悪性か否かは不明でしたが、その後の組織検査で、やはりがんであることが判明。結果として命拾いをした形となりました。

 変に「肛門からの出血」に慣れていたことが災いしたのですが、たまたま会社の健診があったので助かりました。医師からは、今後は年に一度は大腸内視鏡検査を受けるように言われており、その必要性を強く感じているところです。

 ■医師はこう見る

 マリーゴールドクリニック(東京都港区)院長・山口トキコ医師

 肛門からの出血を「痔のせい」と決めつけるのは危険です。まずは医師の診断を受けて、ハッキリさせることが重要です。

 確かに痔による出血であるケースは少なくありません。しかし、「痔だと思う」と言って受診した人の中から、一定の割合でがんが見つかるのも事実。自己判断はリスクが大きすぎます。

 腸管の中でも、肛門に近い直腸やS状結腸からの出血は比較的鮮やかな血が出るので、ご本人が気付くこともあります。こうした症状の場合は、触診や大腸内視鏡検査で確認します。

 直腸付近の異常であれば、いぼ痔の有無はハッキリするし、がんがある場合も医師が指で触って確認できることが少なくありません。遠山さんの場合はS状結腸に複数のポリープが見つかったとのことですが、肛門疾患や消化器科の医師であれば、ポリープの形状からある程度の悪性度を推察することができます。遠山さんを診た医師の言う“顔つき”がそれです。

 S状結腸がんも直腸がんも、進行した状態だと大掛かりな手術になりますが、早期なら内視鏡手術で切除可能。ほんの数日の入院で済んでしまいます。そのためにも早期発見が重要であり、出血のような症状を見逃さないことが不可欠です。

 もう一つ、近年の洋式便器とシャワートイレの普及で、自分の便を見ない人が増えており、これもがんの発見を遅らせる要因となります。排便は重大疾患の発見につながる最初の糸口でもあります。必ず一目確認する癖を付けたいものです。

自律神経が乱れると、 あらゆる不調があなたを襲う…


自律神経が乱れると、 あらゆる不調があなたを襲う……動悸、めまい、頭痛、下痢、便秘、倦怠感、憂鬱症状……。

自律神経の乱れによって引き起こされる症状は、多岐にわたります。最大の特徴は、自覚症状があるにも関わらず、病院で検査をするも、異常が見当たらないということ。原因として考えられているのは、 ストレス、生活リズムの乱れ、環境の変化、女性ホルモンの影響などといわれています。

そもそも、自律神経というのは、交感神経と副交感神経の2つの神経からなります。

交感神経とは?:
「走る」「息をする」「勉強する」「食べる」「緊張する」など、 活発に行動するときに強く働く神経のことです。

副交感神経とは?:
「睡眠中」「リラックスしている状態」など、安静時に強く働く神経のことです。

自律神経失調症のひとつ「過敏性腸症候群」に注意!
この自律神経の乱れともっとも密接な関係にある臓器が胃腸。

本来、胃腸というのは副交感神経が優位なときに強く働きます。つまり、体の機能が正常であれば胃や腸が活発になるのは、睡眠中など安静にしているときということ。

ところが、強いストレスを受けると、安静時ではなく活動中(本来交感神経が優位でなくてはならないとき)に副交感神経が優位になってしまうことがあるのです。それが、胃腸の不調に繋がっているといわれています。

例えば、出勤時の電車の中や会議、といった心理的ストレスがかかると腹痛や下痢になる……といった話をよく耳にすると思います。それは、ストレスにより自律神経の機能が乱れたことで、引き起こされているのです。

この状態が、慢性的に続いてしまったケースが近年増加傾向にある「過敏性超症候群」。特徴は、精密検査をしても、身体的にはまったく異常が見当たらないのに、下痢や便秘といった不快な症状が1ヶ月以上も続くことです。

治療としては、習慣や食生活、心理的な治療を組み合わせた、総合的な対処が必要になります。

最近では内服薬などもありますが、大切なのは一人ひとりの事情を鑑みた総合的なケア。その中でも特に重視されているのが、心理的ストレスを和らげること。趣味や運動などを通して、日常の中でこまめに気分転換するようにしましょう。

過敏性腸症候群と似たような症状は、他の病気でも現れます。下痢や便秘が続く、という人はまずは精密検査を行いましょう。自己診断はせず、医師の診断のもと適切なケアを行ってください。

【これで私は助かった!】高血圧を甘く見てはダメ!突然死も!重大疾患の前兆を見逃すな


高血圧を持病にする人は少なくない。その「仲間の多さ」から危機感を持ちにくいことも事実。しかし、この病態はあらゆる血管障害の土台となる。甘く見ていると、突然死を引き起こすことにもなりかねない。

 ■高村勲さん(50)=仮名=のケース

 以前から会社の健診で血圧が高めだとは指摘されていましたが、あまり気にしていませんでした。程度の差はあれ、「高血圧」って珍しい病気じゃないし、サラリーマンなら病気の一つや二つくらい持っていて当たり前と思っていたんです。今思うと、本当に恥ずかしい話です。

 ちょうどその時期は大きなプロジェクトが佳境を迎えていて、残業が続いていました。ただ、私自身は仕事が趣味みたいなところがあって、残業や休日出勤をストレスと感じることはなかったのですが、体はストレスと思っていたようです。

 夕方4時頃、会議を終えて自分の席に戻り、パソコンを立ち上げたところで「ドカン!」と来ました。頭をハンマーで殴られたような衝撃があり、頭を抱え込む以外、何もできないのです。

痛みはそれまで人生で経験したことのない激痛。とにかく何もできません。

 近くにスタッフはいるのですが、私の席は位置的にうずくまるとパソコンの画面の陰になる場所で、気付かれにくい。「助けてくれ」どころか「おい」と簡単な言葉を発することすら、できません。「ウー、ウー」と唸るのが精一杯でした。

 後で聞くと、すぐスタッフが異常に気付き、救急車を呼んでくれたそうですが、私は「なぜ気付かないんだ…」と途方に暮れるほど長い時間が過ぎたような気がしました。

 救急車で病院に搬送され、検査の結果「クモ膜下出血」。それでも血管内治療ができそうだとのことで、すぐに手術室に入り、血管内の破裂した動脈瓜生内にコイルを充てんする治療が行われました。

 手術は成功し、半年ほどのリハビリを受けましたが、幸いにも処置が早かったことから大きな後遺症は残らず、今は元気に仕事に復帰しています。救急車を待つ間、本気で死を覚悟しただけに、今元気でいることがうそのようです。

それからというもの、血圧を下げることに真剣に取り組んでいますが、もっと早くこの危険に気付いていれば-と後悔し、反省する毎日です。

 ■医師はこう見る

 東京共済病院(東京都目黒区)脳神経外科・渡邊玲医師

 クモ膜下出血は脳の動脈瘤が破裂して血管から脳内に血液が流れ出る病気。死に直結する重大疾患で、十分な注意が必要です。

 症状は高村さんのような「ハンマーで殴られたような激痛」が典型的ですが、必ずしもそうとは限りません。出血が微小な場合、もっと弱い頭痛程度しか感じないこともあります。

 ただ、経験した患者の話を総合すると、片頭痛や緊張型頭痛、また、かぜを引いて熱が出た時のような頭痛とは明らかに異なる質の痛みだったと言います。

従って高村さんのような激痛であればもちろんですが、比較的弱い頭痛であっても、それまでに経験のないタイプの頭痛に見舞われた時は要注意と考えるべきでしょう。

 脳動脈瘤は、破裂する前に処置をしておけばクモ膜下出血を防ぐことができます。しかし、脳動脈瘤があるだけでは症状はありません。脳ドックなどで画像診断をしない限り、未破裂脳動脈瘤を見つけることはできないのです。

 高血圧を指摘されている人は留意し、ドックなどを利用して積極的に予防に努めることをお勧めします。

【これで私は助かった!】頭痛の正体は上咽頭がん!耳鼻科の先生に感謝   


頭痛や鼻づまりといった「珍しくない症状」が、じつは命に関わる重大疾患のシグナルであることもある。いちいち気にしすぎるのもよくないが、気にしなければ早期発見は難しい。ここに病気治療の難しさがある。

 ■丸山敬造さん(71歳=仮名)のケース

 若い頃から姿勢が悪く、緊張型頭痛という肩こりから来る頭痛に悩まされていました。ところが、それとは少し質の違う頭痛を感じるようになったんです。以前から高血圧の治療でかかっていた近所の内科医院で相談すると、いわゆる「痛み止め」が処方されたのですが、ほとんど効果はありませんでした。

 そうこうするうちに花粉症シーズンを迎え、毎年その時期だけかかる耳鼻咽喉科を受診。その時に医師との何気ない世間話の中で頭痛の話をすると、「念のため」と、鼻の検査を兼ねて頭部MRIを勧められたのです。

頭痛の原因がわかるかもしれないし、何よりその手の大掛かりな検査を受けたことがなかったこともあり、受けてみたところ、鼻の奥に広がっているがんがあることがわかりました。上咽頭がんです。

 がんは「斜台」とよばれる頭蓋骨の底の部分を侵して、その向こう側の脳に達しようとしていました。

 地域の基幹病院に送られて精密検査の結果、手術はせずに放射線と抗がん剤による治療が行われることになりました。

 がんがあることがわかってから気付いたのですが、少し前から「鼻づまり」という症状もありました。でも、まさかそれががんによるものとは思わず、「カゼが治りきらないのだろう」程度の軽い気持ちだったのです。

 幸運にも治療は成功し、がんはほぼ無力化することができました。あの嫌な頭痛も治まり、定期的な検査は必要ですが、2年たった現在も再発や転移は見当たりません。

 それにしても、あの時耳鼻科の先生と世間話をしなければ、いまごろは命を落としていたことでしょう。画像検査を勧めてくれた耳鼻科の先生には本当に感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 福内ペインクリニック頭痛外来(東京・新宿区)院長・福内靖男医師

 上咽頭がんは比較的予後の悪いがんで、特徴的な自覚症状もないことから早期で見つけることが難しいがんの一つです。

 がんが脳神経まで到達してダメージを及ぼしていると、頭痛、めまい、難聴、視力の低下や視野の欠損、鼻づまり、味覚障害、嚥下困難などが見られることがあります。

 しかし、長く通院している患者さんならまだしも、頭痛や鼻づまりなどの症状だけで、すぐにこの病気を見つけ出すのは困難といえるでしょう。その意味で、丸山さんが耳鼻科医に相談する機会に恵まれたことは、非常にラッキーだったといえます。

 いわゆる片頭痛の「拍動性の痛み」や、緊張型頭痛の「ハチマキを締め付けられるような痛み」など、頭痛持ちの人が普段感じる症状とはタイプの異なる症状を感じたときは要注意。

 また、そうした異質な痛みが長期間にわたって持続し、徐々に増強する。そして「従来は効果があった薬」が効果を示さない時は、上咽頭がんに限らず、何かしら別の原因が生じていることを疑うことも大切です。

【知りたくもない!?カラダの不思議】年をとると目が小さく見えちゃうのはなぜ?


テレビを観ているときに、ときどき「この女優さん、老けたなぁ。昔はもっと目がパッチリ大きかったのに」なんて思うことがある。有名人、一般人にかかわらず、また、男女を問わず、トシをとると目が小さくなったように見える人がいるけど、これってなぜなのか。

 東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)眼科医長、東京女子医科大学眼科教授を経て、目黒区で土坂眼科医院を開院している土坂寿行院長に聞いた。

 「目の大きさとは、眼球そのものの大きさも影響しますが、実は見た目の問題で、ほとんどまぶたの形で決まります。

眼球の大きさは近視の度によりますが、まぶたの形は個人差が大きいですね。高齢になって、目が小さくなる原因は、上まぶたが下がってくるからです」

 近視と目の大きさが関係しているのは、なぜ?

 「近視とは眼球が縦方向に長くなるために、網膜の手前で像を結んでしまう状態です。近視の度が強い人は眼球が大きく、その分、眼球が前方に押し出されて、目は大きく見えるのです」

 もちろん一重二重の問題もある。外見上、二重の人の場合、まぶたの際のしわが目の縁に見えるので、目は大きく見えるのだが…。

 「上まぶたには眼瞼挙筋(がんけんきょきん)といって、まぶたをあげる筋肉がありますが、高齢になるとこの筋肉が衰えて、上まぶたが十分に上がらなくなる。このために目が小さく見えるのです」

 要するに一種の加齢現象なので、残念ながら、これを防ぐ予防法はないそうだ。

 「二重の手術をすれば目は大きく見えますが、高齢の方がこのような手術を受けることはまずありません。それより、極端にまぶたが下がって視力が悪くなるので、このときは手術をしてまぶたを持ち上げます」

 ちなみに、ハードコンタクトレンズを数十年という単位で使用すると、眼瞼挙筋の腱の部分を障害して、まぶたが上がりにくくなり、眼瞼下垂という合併症を起こすことがあるそうだ。

この場合、レンズの中止や、ときには手術も必要となるため、必ず眼科の受診を!

【1分で判明!病気チェック】環境の変化で…放置すると“うつ病”に「適応障害」


「いまの職場の状況を考えると“頭が痛い”」と嘆いているようなら要注意。皇太子妃雅子さまの診断発表で広く知られるようになった病気だ。が、職場環境が変わりやすいサラリーマンなら誰が罹ってもおかしくない。我慢のし過ぎは禁物だ。

 【職場環境の変化から1カ月以内に発症】

 症状は“軽症うつ病”に似ていて区別がつきにくい。が、決定的な違いは発症の原因となっているストレス(出来事や生活の変化など)が自分でハッキリと分かっていることだ。

 それが職場であれば、内勤と外勤の異動などの「環境の変化」。昇格して部下ができる、降格して後輩と肩を並べるなどの「立場の変化」。異動や転勤して特定の人と反りが合わない、転職で希望の職種に付けなかった場合などのケースがある。

 「とくに公務員はまったく業務内容が違う課に異動することがあるので多い。また40代以上ではパソコン操作が強いストレスになる場合もある」と話すのは、日本精神神経科学会理事を務める「池上クリニック」(川崎市)の池上秀明院長。

 その環境や業務内容にうまく適応できない、なじめないことで1カ月以内に症状が現れる。

 【「異常なし」でも安心できない】

 チェックリストは典型的な症状だが、「抑うつ気分」など“心の症状”だけが出ることもあれば、「頭痛」や「下痢」など“身体の症状”だけが強く出るケースもある。

 とくに身体症状だけだと、精神科・心療内科以外の診療科を受診しても「異常なし」を告げられる。不定愁訴から自律神経失調症や更年期障害などと診断され、見逃されているケースも少なくないので要注意だ。

 「放置したままでは本格的な“うつ病”に移行する。診断基準では症状が6カ月を超える場合や原因を取り除いて6カ月以内に治らない場合には本格的なうつ病と考えられます」

 性格的には、真面目で我慢強い人ほど罹りやすいといわれる。

 【原因の除去は難しい】

 治療で処方される抗うつ薬や抗不安薬を服用していれば症状は軽減する。が、あくまで対症療法なので、根本の原因である“環境”を変えなければ完治することは難しく、症状の再発、うつ病への移行は止められない。

 だが、原因が職場にあるような場合には、いくら診断書を提出して担当医が説明しても、1人の社員の病状に合わせて会社側が人事を見直したり、早急に対応して動くことは現実的には難しい。また、それで確実に治るとも言い切れない。

 「結局、うまく休養を取り、精神的疲労を癒やしながら様子を見ていくしかない。が、会社にはこの病気を十分理解してもらうことが非常に大切になる」と池上院長。

 組織で働く限り、誰にでもリスクはつきまとう。たまには、心の健康管理にも目を向けよう。

 ★「適応障害」チェックリスト

 □憂うつである(抑うつ気分)

 □やる気が起きない

 □現状の生活に嫌気がさした

 □職場が合わないと思っている

 □職業選択を間違えたと感じる

 □思うように仕事が進まない

 □頭がぼんやりする

 □頭痛がする

 □吐き気がする

 □体がだるい(倦怠感)

 □下痢が続いている

 何かハッキリとした気にかかるストレスがあって、1カ月以内に該当する複数の症状が現れたら疑いがある

 *池上クリニック(川崎市)/池上秀明院長作成

【1分で判明!病気チェック】環境の変化で…放置すると“うつ病”に「適応障害」


「いまの職場の状況を考えると“頭が痛い”」と嘆いているようなら要注意。皇太子妃雅子さまの診断発表で広く知られるようになった病気だ。が、職場環境が変わりやすいサラリーマンなら誰が罹ってもおかしくない。我慢のし過ぎは禁物だ。

 【職場環境の変化から1カ月以内に発症】

 症状は“軽症うつ病”に似ていて区別がつきにくい。が、決定的な違いは発症の原因となっているストレス(出来事や生活の変化など)が自分でハッキリと分かっていることだ。

 それが職場であれば、内勤と外勤の異動などの「環境の変化」。昇格して部下ができる、降格して後輩と肩を並べるなどの「立場の変化」。異動や転勤して特定の人と反りが合わない、転職で希望の職種に付けなかった場合などのケースがある。

 「とくに公務員はまったく業務内容が違う課に異動することがあるので多い。また40代以上ではパソコン操作が強いストレスになる場合もある」と話すのは、日本精神神経科学会理事を務める「池上クリニック」(川崎市)の池上秀明院長。

 その環境や業務内容にうまく適応できない、なじめないことで1カ月以内に症状が現れる。

 【「異常なし」でも安心できない】

 チェックリストは典型的な症状だが、「抑うつ気分」など“心の症状”だけが出ることもあれば、「頭痛」や「下痢」など“身体の症状”だけが強く出るケースもある。

 とくに身体症状だけだと、精神科・心療内科以外の診療科を受診しても「異常なし」を告げられる。不定愁訴から自律神経失調症や更年期障害などと診断され、見逃されているケースも少なくないので要注意だ。

 「放置したままでは本格的な“うつ病”に移行する。診断基準では症状が6カ月を超える場合や原因を取り除いて6カ月以内に治らない場合には本格的なうつ病と考えられます」

 性格的には、真面目で我慢強い人ほど罹りやすいといわれる。

 【原因の除去は難しい】

 治療で処方される抗うつ薬や抗不安薬を服用していれば症状は軽減する。が、あくまで対症療法なので、根本の原因である“環境”を変えなければ完治することは難しく、症状の再発、うつ病への移行は止められない。

 だが、原因が職場にあるような場合には、いくら診断書を提出して担当医が説明しても、1人の社員の病状に合わせて会社側が人事を見直したり、早急に対応して動くことは現実的には難しい。また、それで確実に治るとも言い切れない。

 「結局、うまく休養を取り、精神的疲労を癒やしながら様子を見ていくしかない。が、会社にはこの病気を十分理解してもらうことが非常に大切になる」と池上院長。

 組織で働く限り、誰にでもリスクはつきまとう。たまには、心の健康管理にも目を向けよう。

 ★「適応障害」チェックリスト

 □憂うつである(抑うつ気分)

 □やる気が起きない

 □現状の生活に嫌気がさした

 □職場が合わないと思っている

 □職業選択を間違えたと感じる

 □思うように仕事が進まない

 □頭がぼんやりする

 □頭痛がする

 □吐き気がする

 □体がだるい(倦怠感)

 □下痢が続いている

 何かハッキリとした気にかかるストレスがあって、1カ月以内に該当する複数の症状が現れたら疑いがある

 *池上クリニック(川崎市)/池上秀明院長作成

【これで私は助かった!】頭痛の正体は上咽頭がん!耳鼻科の先生に感謝


頭痛や鼻づまりといった「珍しくない症状」が、じつは命に関わる重大疾患のシグナルであることもある。いちいち気にしすぎるのもよくないが、気にしなければ早期発見は難しい。ここに病気治療の難しさがある。

 ■丸山敬造さん(71歳=仮名)のケース

 若い頃から姿勢が悪く、緊張型頭痛という肩こりから来る頭痛に悩まされていました。ところが、それとは少し質の違う頭痛を感じるようになったんです。以前から高血圧の治療でかかっていた近所の内科医院で相談すると、いわゆる「痛み止め」が処方されたのですが、ほとんど効果はありませんでした。

 そうこうするうちに花粉症シーズンを迎え、毎年その時期だけかかる耳鼻咽喉科を受診。その時に医師との何気ない世間話の中で頭痛の話をすると、「念のため」と、鼻の検査を兼ねて頭部MRIを勧められたのです。

頭痛の原因がわかるかもしれないし、何よりその手の大掛かりな検査を受けたことがなかったこともあり、受けてみたところ、鼻の奥に広がっているがんがあることがわかりました。上咽頭がんです。

 がんは「斜台」とよばれる頭蓋骨の底の部分を侵して、その向こう側の脳に達しようとしていました。

 地域の基幹病院に送られて精密検査の結果、手術はせずに放射線と抗がん剤による治療が行われることになりました。

 がんがあることがわかってから気付いたのですが、少し前から「鼻づまり」という症状もありました。でも、まさかそれががんによるものとは思わず、「カゼが治りきらないのだろう」程度の軽い気持ちだったのです。

 幸運にも治療は成功し、がんはほぼ無力化することができました。あの嫌な頭痛も治まり、定期的な検査は必要ですが、2年たった現在も再発や転移は見当たりません。

 それにしても、あの時耳鼻科の先生と世間話をしなければ、いまごろは命を落としていたことでしょう。画像検査を勧めてくれた耳鼻科の先生には本当に感謝しています。

 ■専門医はこう見る

 福内ペインクリニック頭痛外来(東京・新宿区)院長・福内靖男医師

 上咽頭がんは比較的予後の悪いがんで、特徴的な自覚症状もないことから早期で見つけることが難しいがんの一つです。

 がんが脳神経まで到達してダメージを及ぼしていると、頭痛、めまい、難聴、視力の低下や視野の欠損、鼻づまり、味覚障害、嚥下困難などが見られることがあります。

 しかし、長く通院している患者さんならまだしも、頭痛や鼻づまりなどの症状だけで、すぐにこの病気を見つけ出すのは困難といえるでしょう。その意味で、丸山さんが耳鼻科医に相談する機会に恵まれたことは、非常にラッキーだったといえます。

 いわゆる片頭痛の「拍動性の痛み」や、緊張型頭痛の「ハチマキを締め付けられるような痛み」など、頭痛持ちの人が普段感じる症状とはタイプの異なる症状を感じたときは要注意。

 また、そうした異質な痛みが長期間にわたって持続し、徐々に増強する。そして「従来は効果があった薬」が効果を示さない時は、上咽頭がんに限らず、何かしら別の原因が生じていることを疑うことも大切です。

【これで私は助かった!】手術しても頭に痛み…脳脊髄液減少症を併発


一つの症状に対して、原因疾患も一つとは限らない。複数の病気が複合的に一つの症状を起こしていることもある。今回は「頭痛」から始まった奇跡の生還の物語。

■野口朋広さん(39歳=仮名)のケース

 頭全体を支配する痛みが始まったのは2年前のこと。頭痛薬を飲んでも効かないし、日に日に痛みが強まってきたので病院の脳神経外科を受診。検査の結果「慢性硬膜下血腫」と診断されました。

 脳と頭蓋骨の間に血がたまる病気で、放置すれば死に至ることもあるが、手術をすれば治るとのこと。そこですぐに入院し、手術を受けることになりました。

 手術は無事成功し、術後は痛みも消えて喜んでいたのですが、3日後に痛みが再発。検査すると血腫が再発しているとのことで再手術。しかし終わると数日でまた痛み…。

 3回目の再発時に、主治医は「別の原因を考えたほうがいいかもしれない」と言って、別の病院の脳神経外科を紹介されました。行った先は東京・乃木坂の山王病院。

脳神経外科の高橋浩一先生の下で検査を受けたところ、「脳脊髄液減少症」を併発していることがわかったのです。

 脊髄から何らかの理由で脊髄液が漏れ出す病気で、これが脳の状態を悪化させているとのこと。そこで私自身の血を抜いて、背中の脊髄周囲にある“漏えい部”に注入し、脊髄液の漏れをふさぐ治療を受けました。

 この処置の後に元の病院で4回目の手術を受けたところ、今度は完全に症状が消え、それ以降再発もなくなりました。

 頭の痛みから始まった治療で、よもや背中に処置をされるとは思ってもみませんでしたが、それで完治したのだから、やはり脊髄液の漏れが原因だったのでしょう。

 人の体は意外なところでつながっていることを、自分の身をもって勉強した次第です。

■専門医はこう見る

 山王病院(東京・港区)脳神経外科・高橋浩一医師

 硬膜下血腫の再発を繰り返す人から脳脊髄液減少症が見つかるケースは少なくありません。ただ、脳脊髄液減少症という病気そのものの認知度が低いため、医師がその疑いを持たないケースがあることも事実です。

 脳脊髄液が減少すると、頭蓋の中の脳の位置が全体的に下がってきて、血腫ができやすくなる。野口さんも言う通り、慢性硬膜下血腫の手術そのものは決して難しいものではないので、それで何度も再発する場合は、他に原因があることを疑うべきなのです。

 脳脊髄液減少症は、造影MRIで診断できる場合があります。

野口さんの受けた治療は「ブラッドパッチ法」といって、その名の通り、患者自身の血液で脊髄液の漏れをふさぐ治療法。日本ではまだ健康保険が適用されておらず、そのため国内でこの治療を行っている医療機関は限られます。

最初にかかった医師が脳脊髄液減少症についての情報を持っていないと、なかなか診断にさえ結びつかないケースが出てくるのが実情です。

 一方の硬膜下血腫は、初めは頭痛から始まり、進行すると意識が遠のいたり“ボケ”に似た症状が出て、最終的には呼吸機能などが悪化して死亡する重大疾患。手術が簡単だからといって、再発を放置するのは危険です。

 硬膜下血腫を繰り返す場合は、自分から他の病気の存在を疑ってみるべきでしょう

【これで私は助かった!】定期検査で長生き!肺がん見つかり早期手術


前回、肺がんの中でもタバコに影響されやすい扁平上皮がんのケースを紹介したが、今回はもう一方の「腺がん」。喫煙の有無に関係なく発生するという、恐ろしい存在なのだが…。

 ■藤川百合子さん(54)=仮名=のケース

 7年前に乳がんが見つかり、手術をしました。ステージIIでしたが、がんはきれいに切除でき、リンパ節転移もありませんでした。術後も定期的に検査を受けていますが、先生も「ほぼ大丈夫でしょう」と言うので、安心していたんです。

 ところが、3年前に定期検査を受けたところ、CT画像で胸に影が写ったんです。同じ胸でも今度は肺です。精密検査の結果、肺の中葉に直径3センチほどの腺がんがあることがわかりました。一度は助かったと思っていただけにショックでした。

 それでも紹介された呼吸器外科の先生が、「直径3センチほどなので、手術で何とかいけると思います。我々も頑張りますから藤川さんも頑張りましょうよ!」と気合を入れてくれたのが、とても励みになりました。

 手術は胸腔鏡というカメラを使って行うもので、傷跡もほとんどわからない小さなもの。前回の乳がんの手術もそうでしたが、最近の手術は本当に見た目にはわからない程度の傷で済んでしまうのが不思議で、この年になっても、女性としてはありがたいことです。

 がんはきれいに切除できて、その後は補助療法で2年ほど抗がん剤を服用していましたが、それも終わり、今は3カ月に一度の定期検査に行くだけです。

今回も術後の経過は良好で、乳がんともども、どうにか克服できそうな気がしています。

 タバコも吸わない私が、よもや肺がんになるとは思っていませんでしたが、考えようによっては乳がん術後の定期検査をちゃんと受けていたおかげで早期発見できたわけで、何が幸いするかわかりません。

 二度も救われた命ですから、これからも定期検診をきちんと受けて、長生きしてやろうと思っています。

 ■医師はこう見る

 群馬大学附属病院(群馬県前橋市)呼吸器外科講師・清水公裕医師

 肺がんは、腺がんも扁平上皮がんも、早期では特徴的な症状が出ることは、ほとんどありません。つまり肺がんを症状のみを頼りに早期で見つけることは、非常に難しいことなのです。

 エックス線検査で見つかることもありますが、がんの性状やできた場所によっては見つけることが難しく、CTでしか見えない肺がんも少なくありません。

そのため、今回のように別の病気の治療や、治療後の経過観察での肺のCT撮影で、偶然写りこんで見つかることが時々あります。

 藤川さんがラッキーだったのは、肺のがんが「手術可能」な段階で見つかったこと。手術ができるということは、根治の可能性があることを示唆します。

しかも胸腔鏡で切除できたのは、比較的早期の肺がんであり、加えて胸腔鏡手術が可能な専門施設で治療を受けられたことも、技術的な面で幸運だったと言えるでしょう。

 世間には、タバコを吸わなければ肺がんにはならないと思い込んでいる人がいますが、誤りです。特に腺がんは、非喫煙者にも普通にできるがんで現在、増加の一途を辿っています。

特に、日本人を含めたアジア圏の女性に多く、今後も、高齢化とともに増加することが予測されます。

 今回のように定期的な肺の検査を受ける機会が無い人は、きちんと検診を受ける以外に、早期発見への有効な手立てがないのが実情です。通常の検診はもちろん、人間ドックでも肺のCT撮影をオプションで選ぶなど、積極性な検査の受診が重要です。

【これで私は助かった!】40代で肺がん…血の混じった痰で発見  


がんも早期で見つければ治せる時代になった。しかし、必ずしも早期で見つけられるとは限らない。特に肺がんは早期で症状が出にくく、よほどのことでもない限り、症状を頼りに早期がんを見つけるのは困難なのだ。

 ■下村亮介さん(44)=仮名=のケース

 きっかけは「咳」でした。風邪かな、とも思ったのですが、熱も出ないので様子を見ていました。すると湿った咳が2日ほど続いたところで、血の混じった痰が出たのです。それも鮮やかな赤ではなく、どす黒く明らかに不健康な痰でした。

 そこで会社近くの病院に行って検査を受けると、「がんの疑いがあるから」と大学病院に紹介状を書かれたのです。

 高校時代からタバコを吸っていたので、いずれ肺がんになる覚悟はあったのですが、まさかこの年齢で来るとはショックでした。そして、大学病院に紹介された時点で、半ば諦めてもいました。

 大学での精密検査の結果はやはり“クロ”で、扁平上皮がんという喫煙由来の可能性が高い進行度II期の肺がんとのこと。目の前が真っ暗になりましたが、先生が「ダメ元で手術をしてみよう」と言うので、賭けてみることにしたのです。

 2カ月ほど抗がん剤治療を受けて、がんを小さくしてから手術を受けました。幸いにもがん組織は取り切れたのですが、再発転移の危険性は残ります。

術後2年間再発を予防するための補助療法として経口の抗がん剤を飲んでいましたが、今はそれもやめて、術後4年目。月に一度の検査を続けていますが、ありがたいことに今のところ再発・転移は確認されていません。

 もちろんタバコは止めました。というより、がんと宣告された時点で、吸う気が失せてしまったのです。ならば、がんになる前に止めるべきだったのですが、そこが愛煙家の弱いところです。

 先生からは、あと1年再発がなければ完治と言われていますが、一度は諦めた命です。これからは用心に用心を重ねて、健康第一で生きていこうと思っています。

 ■医師はこう見る

 広島大学病院(広島市南区)呼吸器外科教授・岡田守人医師

 下村さん自身も考えている通り、非常にラッキーなケースと言えます。まず、早期の肺がんを「症状」から見つけるのは非常に困難なので、これを頼りにするのは危険です。

咳や血痰から肺がんが見つかった場合、ほとんどが進行例のため、半分以上が手術不能です。

 また、タバコと関連がある扁平上皮がんは、中枢型が多く、エックス線の画像で見ても位置的にちょうど心臓と重なってしまうので、見つけにくいという点もネックです。早い話が、タバコは吸わないに越したことはないということです。

 肺がんの8割以上は扁平上皮がんと腺がんの2つのタイプが占め、喫煙の影響を受けやすい扁平上皮がんに対して、腺がんは喫煙の有無に関係なくできるがん。

そして近年、比較的若い女性を中心に増加傾向です。以前はこの2つのタイプはほぼ同頻度だったのに、今では腺がんが圧倒的に多いのです。

 下村さんのように、喫煙者は常に肺がんを意識していますが、そうでない人はあまり肺がんについて心配しない傾向にあり、これもまた早期発見を遅らせる原因となります。

面倒がらずに、定期的な健診は欠かさず受けるようにしましょう。

【これで私は助かった!】“眼精疲労”が引きこもりにつながる


いわゆる“引きこもり”の原因はさまざまだが、「目の症状」が元で、外部との接触を避けるようになるケースもあるという。今回はそんな「眼精疲労」が招いたケースだ。

 ■寺岡真さん(23)=仮名=のケース

 せっかく入った大学でしたが、どうにも興味が持てませんでした。無理して授業に出ても、次第に目が疲れて焦点が合わなくなる。常に頭が重く気分が悪く、吐いてしまうことさえありました。

 特に目の疲れがひどく、眼科に何度か行きましたが検査の結果、「異常なし」だったり、「ドライアイ」だったり。点眼薬をもらっても大して効果はなく、次第に眼科にも学校にも足が遠のくようになりました。

 結局、大学は中退し、1年半ほど“引きこもり”の状態だったのですが、父親が同僚から紹介された眼科医がいるから、もう一度だけ診てもらおうというので、仕方なく受診しました。

 すると今度の先生は、「メガネが合っていない」と言い、メガネの処方箋を書いてくれたんです。メガネなんてショップで作るものだと思っていたので、眼科医が処方することに驚きました。

 その処方箋通りのメガネをかけて、出された昼用と夜用の2種類の点眼薬を使っていたら、見る間に視界がクリアになり、ほんの1-2週間で、長く続いていた頭の重さ感がウソのように消えたんです。

 それまで目が疲れるのでテレビなど絶対に見なかったのですが、久しぶりにテレビを見る気になり、しかも全然疲れない。本当に驚きました。

 精神的にも元気になってきたので、今年の春から理美容の専門学校に通い始めました。つらかった大学時代とは正反対の、楽しい学生生活を満喫しています。

 ■医師はこう見る

 梶田眼科(東京都港区)院長・梶田雅義医師

 寺岡さんのようなケースは、意外に少なくありません。眼精疲労に詳しい医師でないと、正確な診断や治療に行きつかないこともあり、ドライアイや、ひどい時には「気のせい」と言われ、放置するうちに悪化してしまうことがあるのです。

 寺岡さんの場合は眼精のバランスを崩すところまで進行してしまったようです。

 目の症状というのは自分にしか、わからないもの。その症状や不快感を周囲、特に医師に理解してもらえないと、精神的な不安が自律神経にダメージを及ぼしてしまうのです。その意味で、最後に正しい診断と治療技術を持った医師に巡り合えたことは幸運だったと言えるでしょう。

 眼精疲労の原因は、目の内にある水晶体を支える毛様体という筋肉が疲弊して、ピントの調節機能が低下した状態。そこで、夜間は毛様体筋を休ませ、日中は活動性を高める点眼薬を使うことで、機能回復を図る治療が行われます。

 寺岡さんはメガネを換えたようですが、もしかしたら隠れ斜視(斜位)があったのかもしれません。これに気付かず、合わないメガネをかけ続けていると、外眼筋も常に頑張っていなければならなくなり、眼精疲労が回復に向かうことはないのです。

 眼精疲労はさまざまな要因で引き起こされますが、最近はスマートフォンが引き金になるケースが増えています。スマホは画面にタッチして操作する構造上、従来の携帯電話に比べ画面の位置が目に近く、それだけ毛様体筋と外眼筋の負担を大きくしています。

 眼精疲労を「単なる目の症状」と軽く考えていると、深刻な精神症状を引き起こすことにもなりかねないだけに、十分な注意が必要です。

イライラの原因!?「自律神経が乱れる」朝のNG行動5つ


自律神経を整えることが、キレイの秘訣であることはみなさんご存知ですよね。自律神経が乱れてしまうとホルモンバランスが崩れたり、代謝が悪くなったり、イライラしやすくなったりします。

でも、現代の女性は交感神経が優位になりがちで、自律神経が乱れてしまっている方が多いのが事実。今回は、朝にやりがちな自律神経を乱してしまうNG行動を確認していきましょう。

■1:朝起きてすぐカーテンを開けない

朝起きたらまず何をしますか? カーテンを開けずに支度を始めてしまっている方、要注意です。太陽の光を浴びることで、体は一日のスタートだと認識します。こうして体に一日のリズムを刻みこむことで、自律神経が整いやすくなるのです。

前日に寝るのが遅くなってしまったとしても、毎朝同じ時間に起きて光を浴びることが重要です。カーテンを開けて、太陽の光を浴びながら伸びをする習慣をつけると、自然と朝の憂鬱さも軽くなります。ぜひ行ってみてください。

■2:朝バタバタ支度をする

できるだけ出発ギリギリまで寝ていたい方も多いと思います。でも実は、これも自律神経を乱してしまうNG行動。

バタバタ準備をして焦ることで、交感神経が優位になります。朝余裕をもってのんびり支度をするのが、交感神経を刺激しないコツです。ゆったり支度をしてコーヒーを飲んだり、本や新聞などを読む時間を作るのがベスト。

ほんの10分早く起きるだけでも朝の時間に余裕ができるはず。明日から10分早起きしてみませんか?

■3:朝食を食べない

朝、昼、晩の3回の食事をとることで、体内にリズムが生まれます。自律神経を整えるためには、一定のリズムのある習慣が大切なのです。また、朝食を食べることで腸を目覚めさせ、腸がきちんと働き、腸内環境がよくなることにもつながります。

朝なかなかしっかり食事をとれないという方は、とにかく固体のものを食べるように心がけましょう。りんごやバナナといったフルーツは、食べやすくてヘルシーなのでおすすめです。

■4:駅までダッシュ

家を出てからも、バタバタしてしまうのは交感神経を優位にしてしまうことに。毎朝駅までダッシュしている方は気を付けましょう。

自律神経は一定のリズムを感じることで整います。ゆっくり一歩一歩リズムを感じながら歩くことも、自律神経を整えるコツです。毎朝走ったり、走って疲れたら歩いたりするのは、自律神経が乱れるもとに。

電車の時間や出勤時間、登校時間に余裕をもって出かけるようにしましょう。

■5:ヨガは夜しかやらない

ヨガを行っている方はご存知のとおり、ヨガには自律神経を整える効果があります。夜しかヨガをやらないという方は、ぜひ朝にも行ってみてください。朝に自律神経を整えると、すっきりと一日をスタートでき、その良い状態が一日中続きます。

ヨガをやったことがない方も、簡単な1ポーズでもよいので挑戦してみてくださいね。自律神経を整えるには朝の習慣が重要です。ぜひ明日の朝から気を付けて、美しい体を目指しましょう。

実はカラダ冷えてます!夏こそ乱れがちな「自律神経をキリッと整える」2つの方法


外は暑いので露出多めのファッションになるものの、室内に入ればエアコンが直撃で寒い…。こんな環境下で夏場は自律神経が乱れ、実は「夏冷え」が加速してしまいがち。

さらに今年は冷夏が予想されるだけにノースリーブなどを例年の感覚で着ていると不調に陥ってしまう心配が! そこで本日は、夏冷えの実態とその撃退方法をお伝えしたいと思います。

■夏冷えのメカニズムとは?

そもそも「冷え」とは、脳内の自律神経から「体温を調節して!」の指令が送られない事が原因。過度のストレスや生活習慣に乱れによって自律神経のバランスが崩れてしまう事によりこのような不調が起きてしまうと考えられています。

冬ならば温めれば何とかしのげるものの、夏冷えの場合は体温調節ができない上に、冷たいものを多く摂取してしまうため、余計に自律神経が乱れ「冷え」を加速してしまう結果に。そこが夏冷えの恐ろしいところなのです。

■夏冷えが及ぼす体への影響

冷えて体温が下がっているところに冷たいものを摂取すると、低体温となり免疫系が弱くなってしまうそう。すると、あらゆる部分の動きが鈍くなってしまうため、ちょっとした事でも疲れを感じやすくなってしまうとか。

さらには、くすみがひどい肌荒れ、中々完治しないむくみ、頭痛や肩こり、胃の働きが悪くなるなど様々な不調が現れてしまいます。

■今すぐできる夏冷えの撃退法

本格的な夏が到来する前から自律神経を整える事が絶対必須! 夏冷えは、とにかく生活習慣を改めてあげる事が大切です。ちょっと気合を入れれば、今までにない夏キレイなアナタになれるかも! そこで今スグできる簡単夏冷え撃退法をお伝えします。

●ウォーキングで血の巡りがグングン良くなる!

全身の血流を良くし、冷えを改善させるために最も効果的なのは「ウォーキング」。実はこれって意外とできていない方が多いんですよ! 歩く目安は、1日10分~20分程度でOK。

足に合ったスニーカーで背筋を伸ばしお腹・骨盤は引き上げるように意識します。そして、リズムを刻むようにマイペースに歩く事がポイントです。

●38~39度のお風呂でストレスもすっきり!

冷えを感じている女性はシャワーで済ませている人が多いそう。体を芯から温める事はもちろんの事、しっかり浸かる事で自律神経を整える事ができます。38~39度のぬるめのお湯にゆったりと身を委ねてリラックスする時間を作ってあげましょう。

冷えが改善されるだけでなく、脳内のストレスホルモンもリリースされます。

なんとなく体調が優れないからと病院で検査をしても何の問題もないタイプの方に多く見受けられるのが、夏冷えの症状。見逃さずにしっかり向き合う必要がありますね!

佐世保高1殺害「保護処分」に…少女が抱えていた「自閉症スペクトラム障害」とは


長崎県佐世保市で起きた女子高生殺人事件。クラスメイトを16歳の少女が殺害したセンセーショナルな事件は世間を騒がせ、話題になりました。13日、長崎家裁は加害者少女へ「保護処分」を決定。16歳の誕生日を迎える直前の犯行だったこともあり、この判定には賛否両論が起こっています。

加害者である少女には重度の「自閉症スペクトラム障害(ASD)」などの障害があったとされています。あまり聞きなれない言葉ですが「自閉症スペクトラム障害」とは何なのでしょうか?

◆自閉症スペクトラム障害(ASD)って?

ASDは社会的コミュニケーション障害と、興味の限局が症状の特徴です。場の空気が読めず、抽象的な質問に対して答えられない、質問の意図が理解できないなどといった日常的にコミュニケーションに支障をきたします。

また、自分の興味のある分野で安心し、強いこだわりを持ちます。狭い興味の範囲内で行動することがよくあり、そこから抜けられず、些細な言動に引っかかり相手を深く追求するといったこともままあります。

また、自閉症スペクトラム障害は、同じ発達障害である注意欠陥・多動性障害(ADHD)と見分けがつきにくいといわれています。

姜昌勲医師は、かつてはアスペルガー症候群と呼ばれた知的障害を持たない自閉症スペクトラム障害(ASD)と、注意欠陥・多動性障害(ADHD)との共通点や違いを次のように指摘しています。

●会話にまとまりがない
注意欠陥・多動性障害の患者はぽんぽんと会話が飛ぶのに比べて、自閉症スペクトラム障害の患者は、ひとつの話題を深く掘り下げてこだわって話す傾向があります。

●同じ話を何度もする
注意欠陥・多動性障害の患者が、同じ話を何回もしたのを忘れているのに対し、自閉症スペクトラム障害の患者は、過去のネガティブな経験やトラウマにこだわり、何回も同じことを話す傾向があります。

●空気が読めない
自閉症スペクトラム障害の患者は、相手の意図していることが読めず、自分ルールにこだわります。自分の決めた基準に従って行動する特徴があるのに比べ、注意欠陥・多動性障害は自分の欲求に衝動的ですぐに行動する傾向があります。

●不注意
自閉症スペクトラム障害の患者は、自分で決めたことを最優先するので、柔軟性をもとめられても適応できません。そのため、周りとすれ違いが起こってしまい、ミスを引き起こします。一方、注意欠陥・多動性障害は見落としや詰めの甘さなどからミスを起こします。

総じて、自閉症スペクトラム障害の患者のほうが表情に変化が少なく、何を考えているのかわからないことが多いようです。

自閉症スペクトラム障害は、協調性や対人スキル、柔軟な対応など複数のスキルをもとめられる職種には向いていません。

一方で、特定の分野に対して強いこだわりを持つ自閉症スペクトラム障害を持つため、研究者や学者、芸術方面の職種が向いているようです。加害者の少女が、この特性をポジティブな方向で活かせなかったのは、とても残念です。

<参考資料>
*1)姜 昌勲『大人の発達障害 診断マニュアル』中外医学社
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52069875.html

監修:山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

見た目年齢を加速!? 老け顔の原因=自律神経の乱れが引き起こす3つのトラブルをチェック!


突然ですが、みなさまは「自律神経」という言葉を聞いたことはありますか? よく耳にする言葉だけれど、詳しい働きはよくわからないという方も少なくないはずです。

実は心や体だけではなく、お肌の状態にも大きな影響を及ぼす自律神経。肌トラブルや肌老化とも深い関わりがあるのです。お肌がキレイな人は自律神経のバランスが整っているといわれています。

今回は自律神経とお肌の関係をチェックしていきましょう!

◇ 自律神経ってなに? 乱れると、どんな影響があるの?

自律神経とは、血行や代謝、呼吸、体温を維持するなど、私たちが生きているうえで欠かせない生命を維持する機能をコントロールしている神経のことです。「

頑張るぞ!」と心身を活発モードにする“交感神経”と、「ゆっくりのんびり」なリラックスモードにする“副交感神経”の2種類があります。

活発モードの交感神経が働くと、集中力や判断力、瞬発力が高まって仕事や家事がはかどる一方で、交感神経が優位になりすぎると血管を収縮して血行が悪化。頭痛や肩こり、疲れなどの不調を引き起こします。

また過度の緊張状態が続くことで、イライラしたり怒りっぽくなることもあります。

◇ 心身だけじゃない! お肌にも悪影響を与えます

ストレスだってお肌には悪影響ですよね。自律神経の乱れは心身の不調だけではなく、お肌の状態とも深い関係があります。

血流が悪くなったり、お肌の新陳代謝が低下したり、腸の働きが悪くなって便秘気味になったり……。

その結果、ニキビや肌荒れ、シミ、シワなどのエイジングサインなど、さまざまなお肌トラブルや肌老化を引き起こす原因になります。

◇ 自律神経の乱れが起こす、3つのトラブルとは?

1.血流悪化→くすみ・クマ・黒ずみ
自律神経が乱れると、毛細血管が収縮して血の巡りが悪くなります。その結果、お肌の透明感が失われたり、クマやくすみ、黒ずみの原因に。

2.肌の新陳代謝ダウン→シミ・シワ・ニキビ痕
自律神経の乱れにより、肌細胞の生まれ変わりターンオーバーがスムーズにいかなくなると、シミやシワが増えやすくなります。ニキビができたあとに、ニキビ痕として残りやすくなることも。

3.便秘気味になる→ニキビ・吹き出物
腸は、リラックスモードの副交感神経にコントロールされているため、自律神経のバランスが崩れると動きがわるくなり便秘がちに。すると老廃物が体に溜まり、有害物質が腸から吸収されて全身をまわるため、ニキビや吹き出物ができやすくなります。

最近、イライラすることが増えた、よく眠れない、お肌の調子が悪い。その原因は自律神経の乱れによるものかも。次回はその原因をご紹介します!

当事者が書いた「自閉症の気持ち」が世界でベストセラーに! その奇跡の物語とは?


5月27日放送の『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)第7話において、物語のクライマックスとなっていたのは、サヴァン症候群を伴う自閉症スペクトラムの少年が、文字盤を使って「自分の気持ち」を倫太郎医師に伝えるシーンでした。

感情表現や行動が一般的な子供と大きく異なるため、こうした自閉症スペクトラムの児童の気持ちは、家族をはじめとする周囲の人々に理解されにくいケースも多いようです。

しかし、そんな自閉症を取り巻く社会の状況に一石を投じた一冊の本があります。それは自閉症の当事者によって書かれた「自閉症の取り扱い説明書」とでも呼べるような画期的な本でした。

◆世界でベストセラーになった『自閉症の僕が跳びはねる理由』
その本のタイトルは『自閉症の僕が跳びはねる理由~会話のできない中学生がつづる内なる心~』。著者である東田直樹さんは、本のサブタイトルにある通り「会話のできない重度の自閉症」と子供のころに診断されました。

しかし、やがて東田さんは訓練により文字盤を使ったコミュニケーションができるようになり、その後はパソコンで原稿も書けるようになったそうです。

東田さんはこの本が出版された2007年当時は中学2年生でしたが、現在では雑誌『ビッグイシュー日本版』での連載「自閉症の僕が生きていく風景」や、エッセイ・絵本・詩集など多くの著作を持つ作家として活躍しています。

また、この本はイギリス、アメリカ、カナダなど世界20か国以上で翻訳・出版されており、ベストセラーになっているとのことです。

◆イギリスのベストセラー作家との奇跡的な出会い
『自閉症の僕が跳びはねる理由』を最初に海外に紹介したのは、ハリウッドで映画化もされた『クラウド・アトラス』などの著作を持つイギリスのベストセラー作家デイヴィッド・ミッチェル氏でした。

自閉症児の父親でもあるデイヴィッド氏は、子供の心が理解できないことで長年悩んでいたそうです。

そんなある日、デイヴィッド氏は『自閉症の僕が跳びはねる理由』を偶然読むことになります(デイヴィッド氏が日本に長く住んだ経験を持ち、日本語が読めたということも、奇跡のひとつといえるかもしれません)。

東田さんの著作を読んで、「まるで息子が自分に語りかけている」ように感じたデイヴィッド氏は、やがて日本人である妻とともにこの本の英訳を決意したそうです。

東田さんとデイヴィッド氏の奇跡的な出会いによってさまざまな国の言葉に翻訳された『自閉症の僕が跳びはねる理由』が、世界各地にいる自閉症の当事者とその家族に希望を与えていく様子は、NHKが制作したドキュメンタリー番組『君が僕の息子について教えてくれたこと』にも記録されており、現在はDVDも発売されています。

◆質問形式で「自閉症の心の中」を説明
東田さんの著作に話を戻すと、『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、「いつもおなじことを尋ねるのはなぜですか?」「すぐにどこかへ行ってしまうのはなぜですか?」といった自閉症についての50以上の質問に、著者が「当事者の立場から」回答する形で書かれています。

デイヴィッド氏のように「自閉症の子供の気持ちがわからない」と悩んでいたり、「自閉症についてもっと知りたい」と考えたりしている人にとっては、この本は自閉症(と呼ばれる人)に対する見方や接し方を変化させる「奇跡の一冊」になり得るのかもしれません。

井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。

「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」という言葉をご存じですか? これは重い自閉症から「自閉の傾向はあるが社会的にはほとんど問題なく生活できる」という人までをスペクトラム(連続体)の中で捉える概念のことです。


長年「スーパーフード」といわれてきたブロッコリー。その発芽野菜であるブロッコリー・スプラウトは、もっと魅力的でした。

今回は、その健康成分と効果について、最新の研究結果をご紹介します。

一番効果があるとされるのが、ブロッコリー・スプラウトに多く含まれる抗酸化物質のスルフォラファンです。ただ、ブロッコリー自体には、この成分はほとんどありません。

イギリスのロンドン・ロイヤル・ベターナリー大学では、マウスの実験から、関節炎の痛みを和らげる効果が期待できるとしています。

◆がん予防の効果が期待される
ミシガン大学の製薬研究者、ドウシン・サンさんは、がんの予防や治療にも効果があるといいます。

今は動物実験の段階で、人間への効果は確認されていませんが、がん細胞の成長を妨げ、解毒作用のある酵素を作る可能性があるそうです。

がん予防を期待するなら、かなりの量をとる必要があるので、茹でるか蒸すかがお勧めです。新鮮なラディッシュとあわせると、最強のスルフォラファンコンボになります。

◆自閉症にも改善効果が
アメリカ疾病管理予防センターでは、自閉症の治療にスルフォラファンを使う研究も行っています。

研究にあたったケネディ・クリューガー研究所のアンドリュー・ツィマーマン博士によると、スルフォラファンを投与した44人中26人に、「攻撃性が減る」「社会適応性が高まる」など大きな効果があったそうです。

投与をやめると、患者は元の状態に戻ったそうです。

◆スルフォラファンのさまざまな効果
スルフォラファンには、他にもいろいろな効果があります。

花粉症の抑制、ピロリ菌の除菌、悪酔いの軽減(アセトアルデヒドの代謝を促進)、内臓脂肪の蓄積の抑制などです。

ぴりっとした風味のもとであるミロシナーゼは熱に弱いのですが、スルフォラファンは熱に強いので、加熱調理もOK。サラダやつま以外にも、ブロッコリー・スプラウトを活用してみませんか?

参考:
『ABCNews』http://abcnews.go.com/Health/broccoli-sprouts-true-disease-fighting-super-food/story?id=30615273
『村上農園』http://www.murakamifarm.com/about/functional/sulforaphane/

ADHD、アスペルガーと呼ばない!「自閉症スペクトラム障害」という新たな定義とは?


「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」という言葉をご存じですか? これは重い自閉症から「自閉の傾向はあるが社会的にはほとんど問題なく生活できる」という人までをスペクトラム(連続体)の中で捉える概念のことです。

2013年に、米国精神医学会が定める世界的な精神医学の診断基準「DSM」において、アスペルガー症候群や自閉症が「自閉症スペクトラム障がい」に含まれる形に改訂されたことから、日本でもこれに習い「アスペルガー症候群」という分類名は使用されなくなるのではないかと言われています。

◆ASDと自閉症の違いとは?
自閉症スペクトラム障がい(以下ASD)の最大の特徴は、これまで個別の障がいとされてきた「自閉症」「アスペルガー症候群」「非定型広汎性発達障がい」「小児崩壊性障がい」などを分類せず、すべてを包括してASDと定義することにあります。

また、自閉症の診断基準として採用されてきた「社会性」「コミュニケーション」「想像力」の3分野の診断領域を、「社会的コミュニケーション」と「限定した興味と反復行動」の2つに絞ったことも大きな特徴といえるでしょう。

◆これまでの定義の「曖昧さ」の改善が目的
ASDという診断基準が採用された理由として、これまで日本で採用されてきた「知的障がいを伴わない自閉」傾向にある人も「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」という2つの分類に分けられていましたが、患者の障がいをこの2つに分類することがとても難しいという指摘もあります。

また、「非定型広汎性発達障害(=特定の難しい広汎性発達障害)」に関しても、その診断基準が非常に曖昧なため、「精神面で問題がある」とされる子どもの多くがこの障がいに分類されてしまうという懸念も、新たな定義が導入された理由のようです。

◆障害・非障害の間に境界線を引かない
ASDという概念が導入されたことにより、「発達障害」は大きく分けて学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム障害(ASD)の3つにカテゴライズされることになりました。

ASDにおいては、自閉的な傾向を連続体として捉えることから、「障害・非障害の間に境界線を引かない」画期的な診断基準という見方もあるようです。

しかし、そのために「ややこだわりが強い」「ひとりでいるのが好き」「物事に熱中しやすい」などといった、いわば「誰にでもある」ような特徴にもASDという診断がされてしまう可能性も指摘されており、ASDという名称の使用には慎重さも求められています。

【これで私は助かった!】五十肩と思ったら“腱板断裂”で手術!


どんな病気も自己診断は危険だが、どうせなら重いと見積もった方が安全だ。「どうせすぐに治る」と思い込むと、意外な大手術に発展することがある。今回は「腱板(けんばん)断裂」のお話。

 ■佐藤雅之さん(53)=仮名=のケース

 最初は「痛み」ではなく「違和感」でした。右の肩が、なんとなくしっくりとしない、関節の落ち着きが悪い-といった感覚でした。ところが次第にハッキリとした痛みに発展していき、好きなゴルフができなくなったんです。夜

寝ている間などには特に痛みを強く感じるようになり、次第に右の腕だけが上がらなくなってきました。

 今、思えば、この時点で素直に病院に行けばよかったのですが、周囲のゴルフ仲間が「四十肩だな。俺もやったよ」とか、「もう50代なんだから五十肩だ」と言って心配しなくていいと思った。

聞けばみんな、放っておいたら自然に治ったというのです。そこで四十肩、五十肩の先輩たちの助言に従って、湿布を貼っておとなしくしていました。

 ところが痛みが出てから3カ月が過ぎても、痛みは増すばかり。そこで病院の整形外科を受診し、MRIで肩を撮影した結果「腱板断裂」だとわかったのです。

 しかも驚いたのは、手術を受けることになったこと。それでも医師は、「まだ内視鏡で手術ができる段階でよかった。

もう少し放置していたら、断裂部が拡大し、大きく切開して行う大手術だったんですよ」と言います。あの時は『四十肩だ』と笑っていた仲間を恨みましたね」。

 それでも手術は成功し、3週間後には退院。その後もリハビリを続け、主治医からゴルフ再開の許しが出たのは半年後のことでした。

 しかし、あの“違和感”がこんな病気の前兆だったとは驚きです。自己診断、素人判断の恐ろしさを痛感し、仲間ともども反省をしている次第です。

 ■医師はこう見る

 麻生総合病院(川崎市麻生区)スポーツ整形外科部長・鈴木一秀医師

 中年期に起きる肩の症状を、四十肩や五十肩と思い込んで、放置するうちに悪化するケースは、意外に少なくありません。

 特に腱板断裂は、外傷により発症するというイメージが強いため、40-50代で疑う人は少ないのです。

 佐藤さんのケースは、肩の腱板という、肩甲骨から上腕骨を支える4つの筋の集まりの一部が断裂していたようです。

腱板というのは、いわゆる「インナーマッスル」のことで、これが切れると関節での上腕骨頭の収まりが悪くなり、腕を上げることが難しくなります。

 内視鏡で手術ができたということは、主治医が言っているように「重症になる前」だったということ。

そのまま悪化していたら、修復できないため、肩を大きく切開して、筋移行や筋膜移植などを選択しなければなりません。その意味で、早めに診断で下りて良かったと言えるでしょう。

 佐藤さんが経験した「夜間の痛み」や「動作時の痛み」、「挙上障害」は、腱板断裂の特徴的な症状なので、こうした痛みがある時は、医師の診断を仰ぐべきです。

 なお、「四十肩」「五十肩」と呼ばれる病気は、正式には「肩関節周囲炎」と言い、状態にもよりますが、自然に治っていくものもあります。

 しかし、腱板断裂との判別は素人にはまず無理なので、痛みがある、腕が上がらない、などの症状があったら、一度は受診しておいたほうがいいでしょう。

昼休みに仕事する人が自律神経を乱す「腸的」理由 ご飯後やる気が出ない時の「とっておきの対処」


せっかくのお昼休みなのに午前中の仕事をダラダラ続けていませんか? 実は自律神経にはリズムがあって、身体をアクティブに動かす交感神経の働きは昼12時にピークを迎えます。この時間帯に自律神経を整えることで、腸内環境も整い、午後も高いパフォーマンスで仕事ができるのです。

今回は、『「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』の著者で、自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に「腸と自律神経を整える昼休みの過ごし方」を聞いてみました。

前回:『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』

食事間隔は6時間空けると腸内環境が整う

 ――お昼休みになっても、食欲もなければ、周りの人も働いていて休みにくい雰囲気だし、仕事もキリがいいところまで進めないと気持ち悪いから休まず仕事を続けてしまうことがあります。

 小林弘幸先生(以下、小林):それは頑張っていますね、といいたいところですが、午後も高いパフォーマンスで仕事をしたいなら、その習慣はやめたほうがいいですよ。午後も頭はベストな状態で仕事を続けるためにも、まずは自律神経のリズムを理解することが大切です。

 ――自律神経にリズムなんてあるんですか?

 小林:ありますよ。自律神経の1日のリズムの中で、交感神経の働きがピークを迎えるのが12時ごろ。その時間帯に、副交感神経の働きも高めて、自律神経を整えておくことが、午後もしっかり働ける心と体をつくるためには重要です。

 ――へぇ〜。お昼の12時は、自律神経にとって大切な時間なんですね。

 小林:腸は、食事と食事の間に食べたものを消化・吸収して、最後に、腸内環境を整えるためにお掃除をしてくれます。おなかが減ると、グーと鳴るのは、腸管が大きく収縮して腸内環境を整えるためにお掃除をしている音。「食べ物を受けつけてもいいよ」とサインを送ってくれています。そのタイミングで食事をすると、腸がしっかり働いてくれますよ。

 腸内環境を整える食事の間隔は、日中だと6時間が理想です。その6時間の間に、食べたものを消化・吸収して、最後に腸管が大きく収縮して殺菌作用のある消化液が増加。腸に残った悪玉菌を処理してくれます。

 ――おなかが鳴ると恥ずかしいから鳴らないでほしいと思っていましたが、食事をとったほうがいいよ、とサインを出してくれていたんですね。

 小林:腸をしっかり動かすことで、全身の血流が良くなり、脳にも新鮮な酸素や栄養が運ばれます。結果的に、頭が整理されて、午後もスッキリした気分で仕事ができるのです。

 ――お昼休みに食事をとることは、大切なんですね。

 小林:ここで、忘れてはいけないポイントがあります。食事のとり方によっては、交感神経が一気に高まるということです。

 ――腸を刺激して副交感神経を高めようとしているのに、一気に交感神経が高まるなんて……。どうすればいいんですか?

 小林:食事をとるときは、過剰に交感神経が上がらない食べ方が大切。それは、ゆっくり、よく噛んで、食べ過ぎないようにすることです。

 ――食事の基本ですね。なんだか子どもに戻った気分です。

 小林:「しっかり噛む」習慣は自律神経を整えるだけでなく、唾液量が増え抗ウイルス・抗細菌成分が増えて免疫力が上がる、脳内のヒスタミン分泌が活発になり満腹中枢を刺激するため過食を防止する、表情筋がほぐれることで副交感神経が高まりストレスが軽減されるなど、さまざまな効果があります。

 仕事に追われて焦るあまり、昼食は食事の基本が疎かになりがちです。お昼によく、ごはんをかき込むように食べている人がいますが、これだと消化をするために働く副交感神経は上がりにくくなります。ゆっくりよく噛んで食べることで唾液の分泌も増え、消化・吸収をサポートします。さらに、顔の筋肉もほぐれてリラックスでき、噛むという一定のリズムも副交感神経を高めてくれます。

 ――ゆっくり、よく噛むことでそんなに効果があるんですね。

 小林:また食べ過ぎも要注意。消化・吸収に大量の血液が使われ、脳への血流量が減ってしまいます。腹6〜8分目までにしておきましょう。

 ――わかりました、気をつけます。

 小林:ゆっくり食事をとるために、「ながら食べ」をやめることもおすすめです。仕事仲間と一緒に食べるランチは楽しいひとときですが、ときにはおしゃべりしたり、スマホを眺めたりせず、自分の目の前にある食べ物の色、形を眺め、1口ずつ口にして、食べ物の形や食感、味わいの変化を楽しむ。噛み終わったらゆっくりのみ込み、2口目へ。ちょっとした瞑想が充実のランチタイムにしてくれますよ。

ランチ後2時間の仕事は「捨ててもいい」

 ――ランチタイムは充実したものの、その後、頭がボーッとして仕事に集中できないことがあって悩んでいます。

 小林:もしかしたら、お昼ごはんを食べ過ぎているのかもしれませんね。麺やお米などの炭水化物がメインの食事は、交感神経を急激に高める作用があります。食後はその反動で、副交感神経が一気に高まるため、体は急ブレーキ状態になり、疲れを感じたり、眠くなったりします。

 ――そういえば、会社の近くにあるイタリアンのお店に行った日は、とくにボーっとしてしまう気がします。

 小林:自律神経を整えるためにも、たまには、美味しいものを楽しむことは大切です。ただ、外食は、自分で食事の量をコントロールできない分、食べ過ぎるリスクがあります。食べ過ぎると、集中力を欠いてしまう恐れがあることも意識しておくといいですよ。炭水化物は体に欠かせない栄養素ですが、しっかりとるのは1日1回に抑えることがおすすめです。

 ――気をつけます。でも……。たまには、気分転換に外で食事をとりたいときもあるんですけど。午後の仕事のことを考えると、外で食事をとらないほうがいいということですか?

 小林:いえ、たまには気分転換も必要ですからね。集中力が切れてやる気が起きないときの過ごし方を知っておくといいですよ。

 ――なんだろう……。知りたいです!

 小林:昼食後の2時間は「捨ててもいい」と割りきって過ごすのです。

 ――えっ! 勤務時間中に「捨ててもいい」なんて、怒られそうです。

 小林:サボるのではなく、効率的に働くために捨てるのです。昼食後は、食べ物の消化にエネルギーを使うため、脳にあまり血液が行き届かず、注意力が散漫になったり、眠くなってしまったりするもの。そんな時間に、無理やり仕事をしても、かえって効率が悪くなります。さらに、つねに気を張るのは、自律神経にとってもいいことではありません。

お昼のあとの2時間は単純作業にあてるといい

 ――そうなんですか?

 小林:集中しているときは、交感神経が上がってアドレナリンが分泌されます。さらに、神経伝達物質のドーパミンが大量も分泌され、脳の中枢神経が強化されます。その結果、神経伝達物質アドレナリンが分泌されて集中力が向上します。でも、その状態が長時間続くと体と心は疲弊します。朝から夕方まで、ずっと100%集中するなんて疲れてしまうし、そもそも不可能です。自律神経の乱れも大きくなってしまいます。アドレナリンには血小板の働きを活発にして、血液をドロドロにさせてしまう作用も。イライラしたり怒りっぽくなったりするというデータもあります。

 ――なるほど……。安定したパフォーマンスを出すために「捨ててもいい」時間をつくる、と考えるんですね。

 小林:そうです。「捨ててもいい」時間をしっかり意識することは大切です。捨てるといっても、何もしないわけではありません。お昼休みのあとの2時間は、単純作業にあてることがおすすめです。資料整理や身の回りの片づけなど、集中しなくてもいい作業を見つけて、「捨ててもいい」時間にすると決めておくといいですよ。1つずつやるべきことを書き出して、時間を決めて淡々とこなすと仕事が進みます。

 ――なるほど。ただ、働き始めてすぐだと、自分で時間をコントロールしたり、仕事の内容を選んだりすることが難しいです。

 小林:それであれば、交感神経の助けを少し借りましょう。やる気を出すためには、自分では多少苦手だと思っていることをして交感神経を少しずつ上げていくといいですよ。たとえば、自分が抱えている案件について、上司に相談するのもおすすめです。相談する内容を考えたり、コミュニケーションをとったりすることで交感神経が高まり、集中力を上げることもできます。

 ――試してみます。でも、さすがに毎日相談には行けないので、他の方法も教えてもらえませんか?

 小林:椅子に座ったままできるストレッチも効果的です。椅子に座ったままで、腕を上げて手首を頭の上で交差させ、そのまま息を吸いながら上体を上に伸ばします。その後、体を左右に倒していきます。呼吸を意識しながら左右に10回ほど繰り返すと、交感神経が活発になっていきますよ。

前回:『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』

自律神経の乱れの原因かも!? ストッキングで“肩こり”解消、簡単トレ


肩が凝っている人は、筋肉がコチコチで肩甲骨が動きにくい状態。肩甲骨が動くようになれば、血行も良くなり、凝りにくくなる。整形外科医でカイロプラクターでもある竹谷内康修さんが、“パソコン肩”に効くメソッドを教えてくれました。


パソコン肩…前のめりになってパソコンを長時間使っていると、猫背になって肩が前に丸まってしまう。すると肺が圧迫されるため十分に呼吸ができず、自律神経のバランスが乱れるなど様々な不調の原因になることも考えられる。

パソコン肩に効くメソッド

STEP1:ゆるめる(緊張した筋肉をゆるめるメソッド)

【10秒キープ×3回/左右を替えて同様に】首の後ろ側のストレッチ

まずはストレッチで、首から肩にかけての肩甲挙筋と背中にある僧帽筋の上部をほぐす。ここがほぐれると、肩甲骨が動きやすくなり、肩こりの解消に。1~3を各3回、左右を替えて同じように行って。

© ananweb 提供

1.背すじを伸ばして椅子に座り、左の手で座面のサイドを持つ。顔は真っすぐ前を向き、リラックスしてスタンバイ。

2.首を前に倒したあと、右に傾ける。真横ではなく、斜め前に倒すのがポイント。目線は、右斜め前の床に向けること。

3.首を2の状態にしたまま、右手を頭の左側に当てる。首をさらに右斜め前にゆっくりと倒し、そのまま10秒キープ。

© ananweb 提供

【ここを伸ばす】

右手を頭の左側に当て、斜め前に倒す。耳の後ろから肩にかけての筋肉が、グッと伸びるのを感じて。

STEP2:安定させる(体を支える筋肉を鍛えて悪い姿勢を防ぐメソッド)

【5秒キープ×5回/左右を替えて同様に】腕の上下運動

肩が丸まり、胸が縮んだ状態を正しい姿勢に戻すトレーニング。肩甲骨まわりの筋肉を鍛えることで、猫背によって広がってしまった左右の肩甲骨の間を縮め、肩を後ろに引けるようにする。左右5回ずつ行うのがおすすめ。

© ananweb 提供

1.足を肩幅に開いて立ち、ストッキングの端を左右の手に1回ずつ巻きつける。ヒジは90度に曲げ、両手の間隔は体の幅に。

2.右手はそのまま、左腕を伸ばして左手を斜め上に。手は頭より少し後ろにして、目線は左手に。そのまま5秒キープ。

【ここを鍛える】

上げた手と同じ側の肩甲骨を、内側に寄せるイメージで。肩甲骨まわりの筋肉に意識して力を入れよう。

編集部選:パソコン肩にいいアイテム。

高周波で血管を広げて凝りを治療する。

© ananweb 提供

肩や腰の凝りを改善する医療機器として認証された、業界唯一の家庭用高周波治療器。高周波パルスが血管を広げて血流を改善することで、こわばった肩や腰をケア。装着方法は、付属のテープ、ストラップ、アタッチメントの3パターンで家事や仕事をしながら使える点が便利。軽量&コンパクトなので、携帯も楽。高周波治療器コリコランEW‐RA500(2個入り)調査価格¥22,000前後(パナソニック TEL:0120・878・697)

気持ちがシャキッとする姿勢サポート下着。

© ananweb 提供

背中側に配置したクロスパネルの効果で、正しい姿勢作りをサポート。身につけると自然と背すじを伸ばしてくれる。通気性の良いメッシュや体の動きに合わせた裁断、ノンワイヤー設計で着心地が抜群なのも嬉しいポイント。姿勢が崩れた時に違和感が出る設計にしている、という徹底ぶりも頼もしい。常に正しい姿勢を意識できる。トゥシェアクティバランスノンワイヤーブラジャーブラック¥2,310(グンゼ TEL:0120・167874)

竹谷内康修さん 竹谷内医院院長。整形外科医、カイロプラクター。著書に『頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える』(徳間書店)ほか。

クロスバックトップス¥4,900 パンツ¥6,900(共にYES/KIT)

※『anan』2021年11月10日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・松木育未(LIGHT management) 取材、文・風間裕美子

(by anan編集部)

「自律神経失調症」って、結局どうすればいいの?体と心を整える4つのコツ【専門家監修】


メンタル不調の原因について調べていると、よく見かけるのが「自律神経」の文字。ストレスと関係があって、調子が崩れると「自律神経失調症」になるらしい……という、なんとなくのイメージはありますよね。ですが、そもそも「自律神経」って何なのでしょうか? 自律神経失調症にならないためには、具体的にどう生活したらいいのでしょう?

そんな疑問を解消すべく、自律神経失調症の原因・症状・予防策などについて、産業保健師の劉 詩卉(りゅう しひ)先生にお話を伺いました。

Q.そもそも「自律神経」って何ですか?
自律神経系(以下、自律神経)とは、体内環境を調節する役割(体温や心拍数・呼吸数の調節など)を担う神経系です。脳内の視床下部という場所でコントロールされていて、体性神経系(感覚神経、運動神経)とは異なり、自分の意識とは関係なく内臓や血管などに働きかけます。

自律神経は、「交感神経」「副交感神経」という2つの神経がバランスを取り合うことで機能しています。車の部品に例えると、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキに似ています。

危険に立ち向かうときや「何かを頑張るぞ」というときは、興奮を司る交感神経が優位になります。反対に、休むときや体力を温存すべきときは、リラックスを司る副交感神経が優位になります。

自律神経は、ストレス対応の司令塔のような役割も担っています。

たとえばレーシングゲームでミスをしそうになったとき、心臓がバクバクしたり、反対にスッと冷静になったりしますよね。これは、自律神経が「ミスをしそうな状況」というストレスに対処している証拠です。

危険を回避するために、脳がアクセルを踏んで心拍を上げたり、ブレーキを踏んで冷静になったりする。その脳の働きをコントロールするのが、自律神経です。

Q.では、「自律神経失調症」とは何ですか?
自律神経失調症とは、自律神経の2つの機能(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、心身に悪影響を及ぼしている状態のことです。ストレスを上手に受け流してくれる自律神経ですが、対処できるストレス量には限界があります。あまりにも大きなストレスを受けたり、本人がストレス反応を無視してガマンし続けてしまったりすると、自律神経がアクセルとブレーキをうまく調節できなくなってしまうのです。

このときに生じる不調が「自律神経失調症」です。

誤解されやすいのですが、「自律神経失調症」には確立した疾患概念や診断基準があるわけではありません。自律神経のバランスが大きく崩れて正常な働きができなくなっている状態を表す、非常に広い定義に使われる病態名として、医療機関から一般まで広く用いられています。

■自律神経失調症の症状と、早めに気づくポイント
Q.自律神経失調症になると、どんな症状が現れますか?
自律神経失調症の症状は人によってさまざまですが、主に、

・慢性的な倦怠感や疲労感
・めまい
・頭痛
・動悸や息切れ
・食欲不振
・不眠
・集中力や決断力の低下

といったものが挙げられます。放置すれば「うつ」を招くケースもあるため、バランスが崩れやすい時期を知っておき、早めに気づいて対処することが肝心です。

Q.「バランスの乱れ」に早めに気づくポイントは?
自律神経のバランスが乱れているときは、心身に次のようなサインが現れます。

◆自律神経が乱れているサイン
・休んでも疲れが取れない
・いつもなんとなくだるい
・眠りが浅い
・食欲が減っている など

このほかにも、「何かおかしいな」「いつもとちょっと違うな」と感じたときは要注意です。また誰にとっても自律神経が乱れやすい「要注意のタイミング」もいくつかありますので、ご紹介しておきましょう。

■要注意のタイミング(1)気候の変化
自律神経は体温調節にも関わる器官です。温度や湿度が急激に変化する「季節の変わり目」には負荷が増えます。とくに気をつけたいのが「冷え」です。体が冷えると生命維持に支障が出るため、温めようとして交感神経が優位になります。この状態が続きすぎると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。

冬はもちろん、夏の冷房にも注意しましょう。冷えた室内で仕事をする際は、はおり物や飲み物で体を温めたり適度に立ち上がって体を動かしたりと、工夫してみてくださいね。

■要注意のタイミング(2)環境の変化
自分を取り巻く環境に大きな変化があったときも、自律神経のバランスが崩れやすくなります。たとえば、春から新生活を始めた人。職場で人事異動があった人。自分の立場は変わらなくても、新入社員が入ってくるなど周囲に変化があった人。こうした変化は、無自覚であっても自律神経に大きな負担をかけています。

とくに今年はコロナ禍による生活の変化も重なり、例年よりもいっそう注意が必要です。

自律神経に負担をかけるのは、ネガティブな変化だけではありません。結婚や昇進といったポジティブな変化も、じつはストレスになります。お祝い事がストレスだなんて意外かもしれませんが、新しい物事にはワクワクと不安の両方を感じるものです。自分を取り巻く環境が変わったときは、それがどんな変化であれ「自律神経に負担がかかりやすくなっている」という心構えをしておきましょう。

■要注意のタイミング(3)生理周期による変化
女性の場合、生理周期でも自律神経に乱れが生じます。この理由は、生理に関わるホルモンの分泌が自律神経をコントロールしている脳の部分のすぐ近くで行われるためです。生理でホルモンバランスが崩れやすい時期は、「自律神経も乱れやすくなる」と意識しておきましょう。

■自律神経失調症にならないために…今すぐ始める4つの習慣
自律神経は、自分の意志ではコントロールできません。交感神経と副交感神経をバランスよく動かすためには、生活習慣や行動を工夫する必要があります。

具体的には、次のような習慣を心がけましょう。

(1)意識して「副交感神経」を優位にする

環境に変化があったときは、緊張やプレッシャーから交感神経が優位になりがちです。そこで、自律神経のバランスを取り直すために「副交感神経が優位になること」を生活に取り入れていきましょう。具体的には、リラックスする時間を意識して作ります。時間を決めて趣味に没頭したり、好きな香りの入浴剤でバスタイムを楽しんだり、呼吸法や瞑想法を試したり、など。

オススメなのは「吐くこと」を意識した呼吸法を取り入れることです。人間は、息を吸うときに交感神経が、吐くときに副交感神経が優位になります。

▼呼吸法のコツ

息を吐くとき、長く細く「ふーっ」と吐き出すように意識します。息をたくさん吐けば吸う息も自然と深くなります。そのまま何度か深呼吸を繰り返すうちに、体も心もリラックスしてくるでしょう。

また、「マインドフルネス」の実践もオススメです。マインドフルネスとは「今ここ」に意識を集中させるための瞑想法で、副交感神経を優位にする効果も期待できます。

▼マインドフルネスの手順

1.床でも椅子でも、リラックスできる場所に座る。
2.目を閉じて(または半目で)、ゆっくりと深く呼吸を繰り返す。
3.呼吸だけに意識を向ける。他のことに気がそれたら、また呼吸に意識を向け直す。

瞑想というと難しそうに聞こえますが、実際の手順はこれだけです。毎日寝る前に5分間、試してみてくださいね。

(2)生活にメリハリをつける

薄暗い部屋で1日中ダラダラと過ごす……といったメリハリのない生活も、自律神経の乱れに繋がります。

・朝起きたらカーテンを開けて光を取り入れ、交感神経を目覚めさせる
・日中はよく動き、よく休む
・夜は暗めの部屋でゆったり過ごし、副交感神経のスイッチを入れる

というように、メリハリを意識して1日のリズムを作っていきましょう。

(3)テレワークでも始業・終業時間を守る

自宅で働くテレワークでは、仕事とプライベートの境目があいまいになってしまいがち。これはまさにメリハリのない状態で、自律神経の働きを妨げてしまいます。家で仕事をする際も、始業時間と終業時間をきちんと決めて守りましょう。1日の仕事を終えたら頭をプライベートモードに切り替え、リラックスできる時間を過ごしてくださいね。

(4)コロナ禍でも、できる範囲で「今までどおり」を取り戻す

コロナ禍の影響で、「長年の趣味や習慣が急にできなくなってしまった」という人も多いのではないでしょうか。急激に起きたこの変化は、やはり大きなストレスになっているはずです。そこで、できる範囲で工夫して「今までどおりの習慣」を生活に取り入れてみましょう。

たとえば、職場で人と接するのが好きだった人は、テレワークでも「チャットツールを通して積極的にコミュニケーションを取ってみる」。旅行が趣味という人は、「散歩に行ける範囲で、まだ行ったことのない場所に足を運んでみる」など、少し考えてみると、近い行動はできるもの。

今までと全く同じことはできなくても、続けてきた趣味や習慣に「できるだけ近い行動」を探して実行することで、自律神経のバランスはぐっと保たれやすくなります。

■誰もがバランスを崩しやすい今だからこそ、意識していこう
コロナ禍、そして春の新生活。大きな変化とストレスが重なり、今は誰もが自律神経のバランスを崩しやすくなっています。「いつもと違うな、おかしいな」と感じたら、自律神経が乱れ始めたサインかも。早めにバランスを整えていきましょう。

文・構成/豊島オリカ
取材協力/株式会社エムステージ

自律神経の名医 こってりラーメンを食べ続けても健康な理由


 全身のほとんどの器官を支配し、体調の良し悪しに多大な影響を及ぼす「自律神経」。その研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、最新刊『不摂生でも病気にならない人の習慣~なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?~』の中で、自身の健康管理に関する数々の“過ち”を告白している。「我慢は万病のもと」と提唱する、小林教授が同書に込めた思いとは?

 所得格差に地域格差、教育格差に情報格差など、現代社会はさまざまな分野で「格差」が拡大しています。残念ながら、その流れは医療や健康面にも及んでおり、新たな社会問題となりつつあります。

 しかし、医療格差や健康格差の場合、収入や地域などの外的要因に関係なく、自身の肉体や健康に関する正しい情報や知識、いわゆる「ヘルス・リテラシー」を高めることによって、いつでも誰でも、「下流」から「上流」へと駆け上がれるものです。

 それにもかかわらず、日本人、とりわけ壮年期のビジネスパーソンは、いまなおヘルス・リテラシーが低いままです。1960年代に「モーレツ社員」という流行語が生まれましたが、会社のために粉骨砕身で働くことが美徳とされ、そのような企業文化はまだまだ根強く残っています。

 ここ数年、「働き方改革」の大号令がかかったこともあり、ようやくビジネスパーソンたちの健康に対する意識も高まってきました。

 ところが、「人生100年時代」という言葉の流行も重なり、医療や健康に関する玉石混淆の情報が、影響力のあるテレビや新聞、雑誌などで一気に溢れ返るようになったのです。ネット上では、医師などの監修を受けない、かなりきわどい健康情報サイトも増えています。

 そして、残念なことに、ヘルス・リテラシーが低いままだと、メディア側の興味を煽る巧みな技術によって、誤った、もしくは自分には不適切、不適当な情報を信じ込み、かえって体調を悪化させることにもなりかねないのです。

 例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも「健康にいい」と医師たちが太鼓判を押し合っています。いったいどうしたらいいのでしょうか。

 答えはひとつです。私たち自身がヘルス・リテラシーを磨き、自分にとって相応しいか相応しくないか、自分でジャッジできる判断力を身につけるしかないのです。

 医師の情報とはいえ、不特定多数の人に向けて発しているわけですから、自分に合っているかどうかは自分で判断するしかありません。病院で受診した時のような気持ちになってはいけません。

◆「超こってりラーメン」だって食べていい

 自律神経の専門家だからといって、私自身が健康管理を徹底できているかと聞かれれば、答えは「いいえ」です。人間ですから、過ちも犯します。

「これ、健康に良くないよなあ……」と思いながら、背脂たっぷりの「超こってりラーメン」が無性に食べたくなり、有名店に並んで食べることもあります。

 先日も、焼き肉店で7人前の肉を平らげてしまいましたし、昼からステーキ500グラムを一気に食べる、なんていう日もあります。なるべく無駄な飲み会には参加しないように心がけていますが、つい深酒してしまう日もあります。

 野菜も苦手で、最近まで食べられませんでした。怒ると自律神経のバランスが崩れてしまうことがわかっていても、ちょっと前までは、スタッフに怒鳴ってばかりいました。

 人生は反省の連続です。肉体や精神に悪いことに囲まれて生きている現代人は、反省するために生きているようなものかもしれませんね。でも、私は健康です。なぜか。

 それは背脂たっぷり系のラーメンを食べた後の正しいリカバリーの方法を知っているからです。深酒をした翌朝の正しい過ごし方を理解しているからです。「怒った後の対処法」や「怒らないための処方箋」を学んだからです。だから健康を害してしまう前に、立ち直ることができます。これがヘルス・リテラシーの力なのです。

 ダイエットもそうですが、健康に気を遣う生活が長続きしないのはなぜでしょうか。巷に溢れている健康情報を眺めてみると、「○○をしなさい」「××をしてはいけない」というものが、非常に多いように思います。

 一見、こうしたアプローチは正しいように見えますが、度が過ぎると、実はマイナスです。例えば、「背脂たっぷり系のラーメンが食べたい!」と心身から欲しているのに、「健康に悪いから我慢しろ」とやってしまうと、多大なストレスがかかってしまうのです。

 ストレスは心身に悪影響を与えます。特に自律神経のバランスを乱す大きな要因で、結果的に、食べた時よりも、我慢して食べなかった時のほうが体調を崩してしまう、という事態になりかねないのです。

 自分を律するばかりが健康な生活ではありません。「ダメな自分」を受け入れ、それを補う知恵を学んでおくことが重要なのです。

※小林弘幸・著『不摂生でも病気にならない人の習慣~なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?~』より抜粋

簡単!自律神経も整う、正しい姿勢の作り方


◆「あごを引いて胸を張る」だけではダメ?

多くの方が憧れるセレブ女優。ドレスもヒールも綺麗ですが、やはり一番の美しさを引き立たせるのは「姿勢」です。いい姿勢を作るために「あごを引いて胸を張りなさい」という合言葉をよく耳にします。子供の頃、耳にタコができるほど親によく聞かされたという方もいるでしょう。

確かに、猫背で顔が前に突き出したような方にとっては適切な修正方法だと思います。しかし、この表現には問題点がひとつあります。それは、どこまであごを引くのか?どこまで胸を張るのか?ということです。つまり、方向は示されていますが、程度が示されていません。大切なのはその方にとって適切な修正方向であるか、程度であるかということです。
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◆万人に共通する体の一点である“頭頂”

「あごを引いて胸を張る」だけでは、程度が分からないと言いました。そして、個性があるので万人に共通な修正は難しいのではないかと思ってしまいます。しかし実は、姿勢を正す際に意識すべき、万人に共通する“体の一点”があるのです。

それは、「頭頂」です。これは1点しかありませんし、誰もが持っているところですね。テーブルに置いてあるチェーンのネックレスを想像してみて下さい。ネックレスを真っ直ぐに連ねさせるためにはどうしたらいいでしょうか? 一番簡便な方法は、端を持ってただ上に持ち上げること。重力線が垂直であるため、これだけですべて一直線に連なるはずです。

ヒトも重力下で存在しているため、重力の法則に必ず従います。というより、重力下で一番効率的な体のこなし方を進化の中で作ってきたという方が適切でしょう。つまり、重力に勝つために、重力方向に頭頂を合わせてきたのです。重力は常に私たちを押し潰そうとしています。その力に抵抗するには、真逆の方向に体を位置させることが最適だということです。

◆頭頂はどこ?

さて、いい姿勢は頭頂が作るということは分かりました。しかし、頭頂の正しい位置はそもそもどこ?ということになります。 旋毛(つむじ)と言いたいところですが、旋毛は2つある人もいますし、正中(体の真ん中)にないことが多いですね。前から見たときの頭の左右傾斜は耳の高さや、顎の位置で分かりやすいと思います。難しいのは横から見たときの上下位置です。

頭頂を知るのに、簡単な方法があります。それは、遠くを見ることなのです。

この時には少しあごが上がりますよね。この状態だと、上下の歯は接触することはありません。2~3mm隙間ができます。これが顎関節としての正常な位置です。顎関節の正常な位置は、頭部の正しい位置とも言えます。関節にとって楽な位置は、正しい姿勢の基準になるのです。つまり、上下の間に隙間ができるところが頭の上下の真ん中となります。この正しい頭部の位置での頭頂が、正しい姿勢の真ん中なのです。

ここを意識すると、あごや胸という部位を意識しなくても、勝手に体はいい姿勢になります。そもそも、ヒトが進化の中で、わざわざあごや胸を意識して何かすることはないと思います。考えてから姿勢をとるようでは大変ですよね。ですから、遠くを見るという行為そのものがいい姿勢を作るというのは実用的であり、かつ自然なのです。

◆理想の姿勢は、鳩尾(みぞおち)が引き上がるイメージ

鳩胸(はとむね)、鳩尾(みぞおち)となぜかヒトの胸は鳩に例えられます。みぞおちは語源が「水が落ちる」ですから、当て字ということになります。

胸を張るというと、みぞおちを開くというイメージが強いかと思います。そのために、多くの方は肩甲骨を背骨方向に寄せるでしょう。確かに胸は張りますが、背中も反ってしまうので、胸椎の自然な湾曲が減少してしまいます。これではいい姿勢どころか逆に腰への負担が増加してしまいます。また、お腹も伸びてしまい、これも腰への負担を高めます。

先ほどご紹介した、頭頂を持ち上げた感覚にすると、胸は開かずに持ち上がります。「開く」と「持ち上がる」は大きな違いです。持ち上がる時には、鳩尾が「引き上がる」イメージになります。重力に負けない動きですね。その際肩甲骨は寄せず、胸の前に呼吸が入るような感じになります。また、同時にお腹が引き上がっていると、正しい引き上がりと判断できます。お腹は引き上がると薄くなり引き締まります。ポッコリお腹の改善にも効果的ですね。
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◆姿勢と自律神経の関係

肋骨は肺などの臓器含め体の前にあるので、それだけでも重さが前にかかって体を前に倒そうとしています。頭頂を伸ばすと、自然と胸が持ち上がります。これによって肺は楽に広がりやすくなり、自然と胸式呼吸になります。よく健康のためには腹式呼吸が大事と言われます。しかし、実際は自律神経の影響で、胸式と腹式は循環しています。いい姿勢をとるときには交感神経が優位になり、胸式呼吸になります。リラックスすると副交感神経が優位になり、腹式呼吸になります。

つまり、いい姿勢とは基本的には交感神経の影響があるのですね。だらだらした生活をしていると、いい姿勢にもならないということが分かります。そして生活に張りがあると、いい姿勢になるとも言えます。皆さんの生活はいかがでしょうか?
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◆キーポイントは「遠くを見る」こと

以上見てきたように、正しい姿勢は「遠くを見る」がキーポイントです。都市では、ビルが乱立し仕事はそのビルの中。携帯やPCは目の前……。遠くを見る機会が本当に減っています。ときどき夕日を見たり、星を眺めたりして、本来の姿勢を取り戻しましょう。
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中村 尚人(理学療法士)
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