あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■今日のストレス明日の病気・胸焼け
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【今日のストレス 明日の病気】季節性鬱病 食欲と眠気の秋!? 原因は日照時間

春眠暁を覚えず-とはいうが、秋になると眠くなる人がいる。「季節性鬱(うつ)病」とよばれるこの病気、一般的な鬱病とは様子が異なるようだ。とはいえ、鬱病であることには変わりない。それが新たなストレスを生み出すことにもなる。

 Yさん(43)はこの数年、秋になると気分がふさぎ込む。物思いにふけるというなら「秋だからね」と理解もできるが、そんなレベルではないようだ。どんなに寝ても眠気が取れず、昼間は甘いものが手放せなくなる。当然体重も太るので不健康だ。それがストレスとなり、またヤケ食いに走る。

 Yさんのこうした症状は毎年10月頃に始まり、春の訪れを感じる頃には治まっていく。秋冬限定の鬱症状なのだ。

 じつはYさん、この症状が「季節性鬱病」という病気によるものだということを知っている。昨年の今頃、あまりに調子が悪いので内科を受診して診断されたのだ。

 それにしても聞きなれない病名だ。千葉県野田市にあるキッコーマン総合病院院長代理の三上繁医師に解説してもらおう。

 「秋から冬にかけて発病し、春になると自然に治る鬱病です。普通の鬱病が不眠と食欲不振を招くのに対して、“季節性”は過眠と食欲増進という逆の症状を示すことが多いのが特徴。特に炭水化物や甘いものを欲しがる傾向が強く、Yさんのように冬だけ太る人が少なくない」

 なぜそんなことになるのか。三上医師が続ける。

 「日照時間が短くなるこの時期は、脳内のセロトニンの分泌量が低下し、“冬眠モード”に切り替わるのです。ところが“夏モード”になじんでいる体がこの変化についていけなくなると、そのひずみが“鬱症状”を引き起こす-と考えられています」

 一番の治療法は日光浴。特に屋外での運動が効果的だが、重症の人には、高照度光療法という医学的アプローチもあるという。

 夕方になると自らオフィスの窓際に陣取り、目に涙を浮かべて西日を浴びるのが日課のYさん。どうせなら頑張って早起きして、朝日を浴びたほうが健康的だと思うのだが…。 (長田昭二)

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【今日のストレス 明日の病気】メニエール病 耳鳴り伴うめまいうつ症状の併発も

 「ストレスでめまいなんて当たり前じゃないか!」と怒ってはいけない。1日や2日のめまいならいざ知らず、何日も続けば、それが元で働けなくなることもあるのだ。こうなると立派な病気。「メニエール病」が最たる例だが…。

 Mさん(35)の悩みは“めまい”。数カ月前から仕事が忙しくて、早出と残業の連続。土日返上で働いているうちに、目の前がグルグル回る症状に襲われるようになった。

 2週間を過ぎても症状は続き、いつも耳鳴りを伴い、最近は聞こえも低下してきたので病院を受診。検査の結果「メニエール病」と診断された。

メニエール病とは、耳の入り口から外耳、中耳と続く一番奥の「内耳」という場所で、内リンパ液という液体が過剰にたまることで起きる病気。なぜこのリンパ液が増えるのかは分かっていないが、その要因の1つとして「ストレス」の存在が指摘されているのだ。

 横浜市立みなと赤十字病院耳鼻咽喉科部長で、めまいに関する著書も多い新井基洋医師に聞いた。

 「めまいは軽視できない症状。1カ月以上続くとうつ症状が併発することも珍しくなく、生活時間帯に発症すると仕事もできないことにもなります。きちんとした治療を受けるべきです」

 メニエール病は国の「難病指定」を受けている病気だが、症状を軽快させる工夫はあると新井医師は言う。それは「水をたくさん飲むこと」だ。

 内耳のリンパ液が過剰になって病気が起きているのに、水を飲むなんて逆じゃないか-と考えてしまいそうだが、新井医師はこう説明する。

 「水をたくさん飲むと、内リンパ液をためる働きを持つ抗利尿ホルモンの分泌が抑えられ、脳は貯水をしなくていいと判断する。結果として内耳の水ぶくれが治まっていくのです」

 男性なら1日に1・5リットル、女性でも1・2リットルの飲水が目標だ。早めに「めまい外来」などの専門外来を受診して、適切な治療を受けることが重要だ。

 「めまいくらい…」なんて甘く見ていると、エライ目に遭いますよ。 

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【今日のストレス 明日の病気】リストラ、子供や夫婦の将来… 不安で“不眠”に!

心配事で眠れない-。誰にも経験のあることだが、それにだって限度がある。何カ月も睡眠不足が続けば、あちこちに影響が出るのも当然のことだ。放置することなく、早目の診断、治療が必要なのだが…。

 Kさん(50)は加工食品メーカーに勤めるサラリーマン。会社はこのご時世、ご多分に漏れず業績が悪く、いつ自分のクビが飛んでもおかしくない状況だ。

 高卒で入社して以来、この道一筋で生きてきた。いまさら他の仕事に就いても、やっていける自信などない。それでも確実に忍び寄るリストラの影に、眠れない夜を過ごしているのだ。

 半年ほど前から眠れなくなり、かかりつけの内科医に相談すると睡眠導入剤を処方された。

 しかし、大学と高校に通う2人の子供や、自分たち夫婦の将来を考えると目は冴えるばかり。連日午前3時や4時まで悶々と過ごすことになる。

 当然、日中は眠くて仕方ない。集中力が落ちてミスも起きる。リストラ対象だけにヒヤヒヤものなのだが、夜、布団に入るとまた眠れない。睡眠不足が蓄積されていく…。

 「単なる睡眠不足ではなく、“うつ”による症状を疑うべきでしょう」と語るのは、本紙月曜連載「心の健康相談室」でおなじみ、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師。続けて解説する。

 「強いストレスで交感神経が刺激され、副交感神経が支配する眠りに入るのを妨げているものと思われます。体は眠りを欲していても、一種の興奮状態にあるのでなかなか眠れないのでしょう」

 睡眠導入剤が効かないことについても山本医師は、「うつによる不眠には、睡眠導入剤だけでは効果が不十分のことがある。原因に沿った治療が必要なので、心療内科や精神科などで、うつに対する全般的な治療を受けたほうがいい」と指摘する。

 体は疲労困憊なのに眠れずに、さらに疲労を重ねていくという悪循環。放置すれば自殺という最悪の結末だってありえないことではない。悪い流れを断ち切るためにも、まずはメンタルの専門医に相談すべきなのだ。

【今日のストレス 明日の病気】下肢静脈瘤 ボコボコのふくらはぎ立ち仕事の人は要注意

ふくらはぎに静脈が浮き上がる「下肢静脈瘤(りゅう)」。脚がむくんだり、重く感じられるなど、不快な症状に悩まされることになる。そして、毎度おなじみストレスは、こんな脚の症状まで引き起こすというのだから恐ろしい…。

 Yさん(54)はそば屋の経営者。本店と支店の2店舗を構え、忙しい日々を送っている。社長とはいえ、そばも打てばレジにも立つ。零細企業の社長は大変なのだ。

 当然ストレスも多い。店の経営や家計の不安もさることながら、妻が更年期を迎えたようで、不機嫌が慢性化しているのだ。家に帰っても会話もない。最近は店が終わると1人行きつけの居酒屋に行っては痛飲する。

 そんなYさんのふくらはぎに「瘤(こぶ)」ができた。痛くはないが、気味が悪い。「何だろう?」と妻に見せたら、「病気じゃないの?」と心配してくれた。まだちょっとだけ愛が残っていたようだ。

 「病院行ったら?」

 わずかばかりの愛情が発した妻の言葉に従って病院を受診すると、即座に「下肢静脈瘤です」と診断された。本当に病気だったのだ。

 「下肢静脈瘤とは、脚から心臓に向けて血液を押し上げていくための“弁”が機能不全に陥り、静脈内で血液が鬱滞(うったい)する病態。血管が皮膚の表面に浮き上がったり、脚が重く感じられるなどの症状が出ます」と語るのは、新宿血管外科クリニック院長の阿部吉伸医師。その背景にストレスの存在を指摘する。

 「ストレスがかかると血圧が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなるため、静脈の“弁”が壊れやすくなるのです。

また、精神的な抑鬱で飲酒過多や喫煙量が増えると脱水から血液がドロドロになりやすく、これも下肢静脈瘤の原因になる。ストレスと静脈瘤は、意外に関係が深いんですよ」

 レーザーで血管をふさぐ治療法が主流だが、早期であれば脚を強く締め付けるストッキングで症状を抑えることも可能だ。

 「Yさんのような立ち仕事の人は、特にリスクが高いので要注意です」(阿部医師)

 手術を受けることになったYさんを、奥さんも心配している。病気の不安よりも、奥さんが親切にしてくれることがうれしくて、そばを打ちながら鼻歌なんか歌っているらしい…。ヘンな人だ。 (長田昭二)

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【今日のストレス 明日の病気】貧血 自律神経が十二指腸に損傷 鉄分を正常に吸収できない

毎月生理が訪れる女性に「貧血」が多いことは、お父さんだって知っている。しかし、精神的なストレスがかかると貧血のリスクが高まることは、知らないだろう。じつはこれ、女性でも知っている人が少ないようだ。

 OLのJ子さん(34)は、日頃から貧血によると思われる症状に悩んでいる。慢性的に疲れが抜けない。化粧でごまかしてはいるが、じつは顔色もよくない。朝、起き抜けの“めまい”はほぼ必発で、大人になってから「スッキリした目覚め」の経験など記憶にない。

 女性なので生理に伴う貧血は十分考えられるし、彼女自身その対策には余念がない。好きではないが2日に1度はひじきの煮物を食べ、3日に1度はレバーを食べる。それ以外にもサプリメントで鉄分を補給するなど、かなりの「鉄子」っぷりだ。

 それでもストレスがたまると貧血症状は顕著になる。耳鳴り、頭痛、動悸(どうき)、息切れ…。同僚の男性社員も心配はしているのだが、変に心配して声をかけてセクハラ認定を受けるのも怖い。皆、遠巻きに見守るばかりだ。

 「長く続くストレスが貧血を増悪させる可能性は、確かにあります」と語るのは、湘南東部総合病院院長の市田隆文医師。その仕組みを解説してもらう。

 「急性胃炎での出血による貧血もあるが、慢性のストレスで自律神経のバランスが崩れると、“腸”がダメージを受けます。胃や大腸が不調をきたすことは知られていますが、じつは十二指腸も損傷を受けている。そして、口から摂取した鉄分の大半を吸収するのが、この十二指腸なのです」

 ストレスで十二指腸の働きが弱くなり、鉄分を正常に吸収できなくなった結果、貧血を招くこともあり得るという。J子さんのケースがまさにそれなのだ。

 市田医師が付け加える。

 「むやみにサプリメントなどで過剰に鉄分を補給すると、肝臓に負担がかかって肝障害の原因になる危険性が高まる。とくにC型肝炎の場合は肝硬変やさらに発がんのリスクが大きくなるので、注意が必要です」

 J子さんがまずすべきことは、ストレスを解消して、十二指腸の吸収を回復させること。そうすれば、自然に鉄分も補充され、貧血も治まっていくはずだ。その日が1日も早く訪れることを、同僚一同が首を長くして待っている。 

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【今日のストレス 明日の病気】ビタミンB群欠乏症 急激ストレスで脳酷使 豚肉が精神的抑鬱状態に効く

 疲れが取れない、集中力が出ない、眠れない…。サラリーマンには当たり前の症状だが、どれもストレスが関係している。しかも、ある栄養成分を補充することで、ウソのように改善することもあるというのだ。

 Hさん(31)は、大手不動産会社の財務部に勤務する経理マン。学生時代から成績優秀で、会社に入ってからも周囲から一目置かれる存在だ。

 ところが、そんな彼に不幸が襲う。父親が心筋梗塞で急死したのだ。故郷に帰って葬儀を済ませ、落ち込む母を慰めながら、今後のことを妹と話し合った。母も心配だが、相続やら何やら、面倒なことがすべて長男のHさんの身に降りかかってきた。

 元来、仕事や学業には積極的になれる彼も、それ以外のことには興味が湧かない。東京に戻ってからも「実家のこと」がストレスとなって苦しむようになった。

 寝つきが悪くなり、寝ても夢を見るので眠りが浅い。悪夢を見ることも増え、眠ることが怖くなってしまった。仕事にも集中できず、ミスが増えた。食欲も出ず、休んでも疲労が取れない。どうすればいいのか…。

 「ビタミンB群欠乏症の可能性があります」と語るのは、「新宿溝口クリニック」院長の溝口徹医師。急激なストレスで脳を酷使すると体内のビタミンB群が大量に消費され、Hさんのような症状が出ることが多いという。

 「健康な人の睡眠は、たまに“いい夢”を見る程度。眠るたびに夢を見たり、頻回に悪夢を見るようであれば、精神的な抑鬱状態と考えるのが自然でしょう」

 サプリメントでビタミンB群を補充すれば次第に回復していくが、溝口医師は「豚肉を食べるのが一番です」と話す。豚肉はビタミンB群の宝庫。食事からビタミンB群を取るなら、豚肉の右に出るものはないという。

 そういえば最近、食欲不振で食事ものどを通らない日々を送っていたHさん。今夜あたり、トンカツでもショウガ焼きでもいいから、豚肉を食べてみましょうよ。まずは自分の元気を取り戻すことが先決。天国のお父さんもきっと心配してますよ。 

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【今日のストレス 明日の病気】心筋梗塞は「90分」が生死分ける 忙しくても健康管理を

メタボを放置すると、いずれ大変なことになる-。それは分かっていても、なかなか真剣に対処できないのが世のサラリーマンだ。しかし、放っておいたときに大きなストレスに襲われると、取り返しのつかないことにもなりかねない。

メタボは早めに治しましょう。

 Sさん(48)は典型的な“メタボ体質”。168センチの身長に対して体重は81キロ。BMI(肥満指数)は28・7と、基準値の25を大きく上回っている。

 加えて健診のたびに高血圧を指摘され、中性脂肪や悪玉コレステロールも高値安定だった。

 それでも彼が健康管理に真剣にならずにいられたのは「仕事が忙しい」という大義名分があったから。

 化学原料の商社に勤める彼はこの数年、まともに有給休暇を取ったことがない。海外出張が多く、長期出張から帰国したら、そのまま会社に戻り、何日も自宅に戻らないこともあった。

 そんな生活に嫌気がさし、2年前には妻も出ていった。自暴自棄になり、「健康管理などクソくらえだ」とうそぶいていた彼の心臓を、悲劇が襲う。

 会社で残業中に強烈な胸の痛みに襲われ、救急車で病院へ。検査の結果は「心筋梗塞」。急遽(きゅうきょ)心臓カテーテル治療が行われ、一命は取り留めたものの、落命してもおかしくない状況だったのだ。

 「もともと動脈硬化があるところにストレスかかると、血圧が急激に高まったり、血管がけいれんすることで心筋梗塞を招くことがある。

メタボの人にとって、ストレスが“トリガー”の役割を果たすことがあるのです」と語るのは立川相互病院副院長で循環器内科医の田村英俊医師。過労死の多くはSさんと同じケースをたどるのだとか。

 「Sさんは運よく助かりましたが、発作から90分以内に治療ができるかどうかが生死を分けることになる」と田村医師。周囲に人がいる会社で発作が起きたから救急車を呼べたが、誰もいない自宅だったら、孤独死する可能性が高かったのだ。

 退院したSさんは、さすがに反省したらしく、真剣にダイエットに励んでいる。体重も徐々に下がりだし、見た目にもスリムになった。

 「痩せると俺も意外にイケるクチだよな…」

 鏡に向かってつぶやくSさん。イケるかどうかは知らないが、早く新しい女房をもらったほうがいいですよ、心臓のためにも。 

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【今日のストレス】歯の痛み 酷暑要因で歯ぎしり虫歯でなく“摩耗痕”

「歯の痛み」といえば、普通は虫歯を疑うものだ。しかし、虫歯じゃなくても歯が痛くなることがある。精神的な抑圧状態が続くと、なぜか歯が痛くなる人がいる。その不可思議なメカニズムをひもとくと…。

 Wさん(33)は1週間ほど前から歯に痛みを感じるようになった。右の奥から3-4本目あたりが痛い。

初めは市販の痛み止めでしのいでいたが、妻から「子供じゃないんだから歯医者さんに行ってきなさい!」と叱られて、渋々会社の近所の歯科医院を受診した。

 ところが、虫歯は見つからなかった。見つかったのは、「ファセット」とよばれる“病態”だった。

 「ファセットとは、歯にできる“摩耗痕”のこと。強い歯ぎしりをしている人に見られます」と語るのは、Wさんを診察した東京・大田区にある平和島駅前歯科医院の下山忠明院長。Wさんの歯痛の原因を、ストレスではないかと推測する。

 「精神的なものも含めさまざまなストレスにより、夜間睡眠中に無意識のうちに食いしばったり、歯ぎしりをする人がいます。これが原因で歯に痛みが生じているのでしょう」

 ファセットは歯科医が口の中を見ればひと目でわかるという。ほんのわずか(歯を研磨する程度)の咬合調整でかみ合わせが改善し、症状も改善していくことが多いが、ひどい時には睡眠中にマウスピースを装着することで歯を保護することもある。

 ちなみにWさんの歯痛は、下山院長ご推察の通り、ストレスだった。しかし、そのストレスは小欄でよくある会社や家庭でのゴタゴタではない。彼のストレスは「熱帯夜」だったのだ。

 少々メタボ気味のWさんは汗っかき。彼にとってこの夏の酷暑は耐え難い苦しみだ。

ところが彼の奥さんは大のクーラー嫌い。うだるような暑さの寝室で、スヤスヤ眠る女房を尻目に、深夜までうちわを駆使してわずかな涼を求めるメタボ亭主。美しい夫婦愛ではあるが、そのストレスが回り回って“歯”に現れたというのだから哀れな話だ。

 Wさんは眠れぬ深夜、自分の歯の保護のために「ストップ・ザ・温暖化」を真剣に考えているという。いつか環境庁から表彰されるといいのだが。 

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【今日のストレス】新プロジェクトで疲労→“戦闘ホルモン”が作用し血糖値上昇!

医者の言うことを聞かずに不摂生を続けて病気が悪化したなら自業自得だ。

しかし、言いつけ通りに清く正しく生活してきたのに、数値が悪化したのでは、神も仏もあったものではない。でも、時にストレスはそんないたずらをする。

 Yさん(50)は、数年前から糖尿病の治療を受けている。ただ、根がまじめで、医師の言いつけを順守する。

外食は極力避け、妻の作る和食中心の質素な食事に終始する。酒も飲まず、朝は欠かさずウオーキング。誰の目にも「健康的な生活」を実践してきた。

 ところが最近、どういうわけだか血糖値が高い日が続いている。

 思い当たることと言えばストレスが浮かぶ。最近スタートしたある作業で、得意先から無理難題を押し付けられている。何しろまじめなYさんは、無理とわかっていても手を抜けない。見た目は健康的でも、精神的には疲弊しきっているのだ。

 「ストレスは血糖値を高める大きな要因の1つ」と指摘するのは、大阪市淀川区にある糖尿病専門医院「ふくだ内科クリニック」院長の福田正博医師。そのメカニズムをこう解説する。

 「人間の体はストレス状態に陥るとアドレナリンが分泌され、体を守ろうとする。この時、別名戦闘ホルモンと呼ばれるアドレナリンは、血圧や心機能を上げて、肝臓を刺激しブドウ糖を血中に放出し筋肉にエネルギーを送ろうとする。

糖尿病状態でインスリンの作用不足のために血中の糖が筋肉に取り込まれにくいので、結果として血糖値が上昇するのです」

 ストレスがかかると飲酒量が増えたり、甘い物に手が出がち。これも血糖値を悪くする大きな原因。だが、糖尿病患者としては優等生のYさんのように、仕事のストレスそのもの以外に血糖値上昇の理由は見当たらないケースもよくあるという。

 「高血糖が続くようなら一時的にインスリンを投与し、膵臓(すいぞう)を休ませることも視野に入れて考えますが、まずはストレスをなくすべき。現代社会ではなかなか難しいですけどね」と福田医師。

 始まったばかりのプロジェクトは秋まで続く。それまでYさんの膵臓(すいぞう)はもつのだろうか…。

【今日のストレス 明日の病気】急性大動脈解離 カッとなって血圧上がり血管壁が裂け胸に激痛が

ストレス症状というと、胃痛や下痢、肩こりや頭痛など、「つらいけれど、死ぬことはない」というものが多い。しかし、中には生命の危険に直結するストレス症状もあることを忘れてはいけない。

 Tさん(52)は会社の部長職。その日は朝から会議に出ていたが、昼少し前に“異変”は起きた。

 興奮すると激高するタイプのTさん。その時も議論が白熱し、声も大きくなり始めていたときに、突然椅子から落ちてうずくまった。胸が猛烈に痛いのだ。

 尋常ならざる様子を見たスタッフが救急車を呼び、病院に担ぎ込んだ。

 緊急CT検査の結果「急性大動脈解離」と診断され、すぐに心臓血管外科に運ばれ手術が行われ、どうにか一命をとりとめることができたのだが…。

 そもそも急性大動脈解離とはどんな病気なのか。大森赤十字病院心臓血管外科部長の田鎖治医師に解説してもらう。

 「一言でいえば、大動脈の血管壁が裂けてしまう病気です。

先天的な要因から起きることもありますが、多くは高血圧と動脈硬化が原因。そこに強い精神的なストレスが加わると交感神経が刺激され、一気に血圧を高めて血管壁が裂けてしまうことがあるのです」

 何とも恐ろしい話だが、症状に特徴はあるのだろうか。田鎖医師が続ける。

 「この病気には、心臓に近い上行大動脈から裂ける“A型”と、心臓から比較的離れた大動脈で裂ける“B型”の2種類があり、それぞれ症状に特徴がある。

A型は最初に胸に激痛が走り、徐々に痛みが背中に向けて移っていくのに対して、B型は最初に背中が痛くなり、その後腰に向けて移動していくことが多い」

 TさんはA型だった。

 田鎖医師によると、裂けるだけ裂けてしまうと、まれに痛みが治まることがあるという。しかし、治療を受けずに48時間放置したときの死亡率は50%。様子を見ている余裕などないのだ。

 幸いにも職場復帰を果たしたTさん。医師の言いつけに従って、「怒らない、怒鳴らない、興奮しない」の「三ない運動」を実践しているとか。

 それがストレスにならなければいいのだが。

【今日のストレス 明日の病気】オジサンの肌トラブル「脂漏性皮膚炎」 睡眠不足などが引き金

“老い”を感じる瞬間は色々あるが、睡眠不足によるダメージの強さも中高年にはつらいものがある。しかも、影響が“皮膚”に出ることも。今回はそんなオジサンの肌のトラブル・脂漏性皮膚炎についての物語。

 今回の主人公はTさん(47)。会社が早期退職者を募る情報もある中、いつ自分の肩がたたかれるのかと戦々恐々の毎日だ。

 家に帰れば女房は、そんな疲れ切った亭主の相手をするのはうんざりと言わんばかりに冷たい対応。最近はTさん、寝室からも締め出されて、リビングの隅に布団を敷いて寝させられている。

 床暖房もない冷たいフローリングの上に横たわり、夜な夜な涙を流す。眠れない夜が続く。

 そんな彼に新たな悩みが加わった。顔が赤くなり、おでこや鼻の周りの皮膚の表面がポロポロと落ちるようになった。席に座っておでこを擦ると、机の上にフケのような皮膚のかけらが舞い落ちる。

ふと気づくと、嫌悪感をあらわにした女子社員が見つめている。彼女の口が「うわっ、きったね~!」と動いたのがわかる。読唇術などできなくても、わかる…。

 「恐らく脂漏性皮膚炎でしょう」と語るのは、虎の門病院皮膚科の大原國章医師。中高年の男性に多い症状という。

 「皮膚に付着する常在菌が悪さをして炎症を起こす病気。普段は免疫系の働きで問題は起きないが、ストレスで免疫力が落ちると炎症を起こすことがある。睡眠不足は発症要因の中でもメジャーな部類ですよ」

 抗炎症薬で炎症を抑えたり、常在菌を攻撃することで菌が悪さをできないようにすることもある。

 「まずは強力な薬を使ってガツンとたたくのがコツ。弱い薬を細々と使っても、燃え盛る火事にコップの水をかけるようなもの。かゆいから掻く、掻いて悪化、悪化してまた掻く、という悪循環を断ち切ることが、まずは先決です」

 皮膚の症状の悪循環も断ち切りたいが、その元のストレスの負の連鎖も断ち切りたい。しかし、残念ながらその兆候は見られない。女子社員の冷たい視線にさらされ、今日もTさんの机の上には、おでこの皮膚が舞い落ちる。ハラハラと…。

【今日のストレス 明日の病気】仕事が忙しくなるとつい…「ドカ食い」に注意

腹が減っては戦はできぬ-とはいうが、腹がいっぱいになっても戦にも行かずに寝ていれば、そりゃ太るのも無理はない。しかし、なんでストレスがたまると食べたくなるんでしょうね…。

 フリーライターのAさん(47)は、以前から太り気味だった。しかし6年前、一念発起でマラソンを始めたことからウエートロスに成功。80キロ台中盤だった体重は、「もう少しで60キロ台」とまでに減少した。

 ところが、彼には悪い癖がある。仕事が忙しくなると、いわゆる「ドカ食い」をするのだ。

 朝から深夜まで仕事をして、寝る前に缶の発泡酒を1本飲む。それくらいは世間も許してくれるだろう。しかしそれではおさまらない。夕食の残りがあればチンして食べる。それがなければカップラーメンを作って食べる。

それもなければ、ご飯を炊いたりスパゲティを茹でたり…。深夜に手の込んだ料理をする中年男は不気味だ。さっさと寝たほうがいい。

 「ストレスがたまると、食欲が出るのは仕方のないこと」と話すのは千葉県野田市にあるキッコーマン総合病院院長の久保田芳郎医師。その背景には血糖値とホルモンが関係しているという。

 「ストレス状態が続くと副腎から副腎皮質ホルモンが出てストレスと闘おうとします。これが長期に及ぶと副腎皮質ホルモンが枯渇してしまい、免疫力が低下してくる。

一方、ストレスがあると副腎髄質からはアドレナリンが分泌され、エネルギー代謝に影響して血糖値は低下。体は血糖値を上げようとして食欲が高まるのです」

 ストレスによる欲求とはいえ、そこで我慢できない心の弱さが、肥満へと後戻りさせるのだ。

 「できれば我慢すべきですが、どうしても食べたいのであれば、血糖値が上がるのを待ちながら、ゆっくり食べること。そうすればあまり量を食べないうちに満腹感が訪れて、食べ過ぎることはありません」(久保田医師)

 Aさんと付き合いの長い仕事関係者は、彼の体形で「今、忙しいか、そうでないか」の見分けがつくという。ずいぶんわかりやすい体質だが、決して羨(うらや)ましくはない。

【今日のストレス 明日の病気】狭心症の男性が口論、心臓発作の引き金に!

短気は損気-というが、腹を立てるのと引き換えに命を失うほど大きな損はない。ストレス解消の方法は人それぞれだが、ケンカでの発散は、やめたほうがよさそうだ。 

 Kさん(54)には、少し前から会社の階段を駆け足で登った時に胸が詰まるような感じがあった。しかし、すぐに症状は収まるので、仕事の忙しさも手伝って「見て見ぬふり」を決め込んでいた。

 その日も夜の9時過ぎまで会議が長引き、デスクに戻ってからも同僚と議論は続いた。話し合いは平行線をたどり、次第にエスカレート、最後には口論にまで発展する。

 Kさんは熱くなると止まらなくなるタイプ。両手で机をたたきながら激高したその時、突然、胸に激痛を感じてうずくまった。異変を察した同僚がすぐに救急車を呼び、病院へ。心電図や血液検査の結果、「急性心筋梗塞」と診断された。

 「狭心症の人がストレスを引き金に急性心筋梗塞に至る典型的な例」と説明するのは、東京・葛飾区のイムス葛飾ハートセンター・田鎖(たぐさり)治院長。

 「急激なストレスは自律神経に作用して血圧を高める。加えて消化器系の吸収が悪化するため、血中コレステロールも上昇する。もともと狭心症なら、悪化して急性心筋梗塞になるリスクは高まる。以前から労作時の胸の症状が見られただけに、狭心症だった可能性は大きい」

 すぐに心臓カテーテル治療が行われた。発症から処置室に入るまでにかかった所要時間は1時間15分。

 「心筋梗塞の治療は時間との勝負。発症から6時間以内の治療完了が理想だが、早ければ早いほど治療成績はよくなる」(田鎖医師)。Kさんのケースは理想的だった。

 カテーテルで冠動脈の狭窄を確認し、その場でバルーンを膨らませて血管を拡張。血流が再開すると、再狭窄を防ぐステント(金網)を装着して治療は無事に終了した。

 10日ほどのリハビリを経て退院したKさんは、2週間の自宅療養を経て職場復帰を果たした。

 これで一件落着と言いたいところなのだが、一つ問題が残った。Kさんの口論相手である。自分のせいで相手を死のふちに追い込んだことを気にして、憔悴(しょうすい)している。次は彼の心臓が心配だ。

【今日のストレス 明日の病気】発熱 解熱剤が効かずに仮病扱い 真面目な人に出やすい症状

人間に起き得るストレス症状はさまざまあるが、ただでさえ暑いこの時期に勘弁願いたいのが「発熱」だ。電力不足のご時世に、その“熱源”を有効利用できないものだろうか-。

 「発熱」「微熱」などという症状は、うら若き乙女がかかってこそ美しいもの。たとえ若くても男の熱は暑苦しいだけで、周囲の同情は得られない。Iさん(24)はまさに、そんな悲劇の主人公。

 どういうわけだか、彼は仕事が忙しくなると熱が出る。大した熱ではない。37度をちょっと上回る程度なのだが、平熱が35度台前半の彼にとって、この体温はそれなりの苦痛を伴う。

 初めは心配していた同僚も、仕事が立て込むたびに赤い顔をしてふさぎ込む彼に、最近はあきれ顔。あちこちから「都合よく熱を出せるものだ」とか「仮病だろう」というささやき声も聞こえてくる。彼に罪がないだけに気の毒なのだが…。

 そんなIさんに「ストレスで発熱することは実際にあります」と助け舟を出すのは、千葉県野田市にあるキッコーマン総合病院の三上繁院長代理。その仕組みはこうだ。

 「人はストレスを感じると交感神経の働きが活発になり、体温が上がるようにできています。つまり、感染症などによる発熱とはメカニズムがまったく異なる。抗炎症剤や解熱剤を飲んでも、ストレス性の発熱には効果はありません」

 当然、医療機関で血液検査などを受けても異常は見つからない。では、どこで判断するのか。

 「炎症による発熱時には悪寒が走りますが、ストレスが原因だとこれがない。また、炎症性の発熱が長引くと食欲不振で眠くなるが、ストレス性の時には逆の症状になることが多い。これも仮病扱いされる原因です」

 対処法はあるのか。三上医師は「この症状がストレスによるもの」という事実を受け入れ、適度に休息を入れることで状況は改善するという。

 「根がまじめな人に出やすい症状。仕事に対して7割程度の力で取り組む姿勢を持つだけでもだいぶ違います」

 一見ペースダウンに見えても、熱で休むよりいい。「これも治療だ」と割り切ることが、克服への第一歩なのだ。

【今日のストレス 明日の病気】ぼうこう炎 性交時での感染が多く女性の方がリスク高い

男性より女性のほうがリスクの高い病気はいくつかあるが、その代表格とされるのがぼうこう炎だ。

ぼうこうの痛みや悩みに対する意識には男女間での温度差が大きく、よほど気を使ってあげないと、もうサセてもらえなくなる。デキる男は、女性のぼうこうを気遣うものなのだ。

 中小企業の経営者・Yさん(60)は、見た目も性格も豪放磊落(らいらく)。顔はつねにオレンジ色に上気し、目はギラギラと怪しい光を放っている。

地声もデカく、豪快な笑い声は安普請の社屋を揺るがす。実際に見たわけではないのだが、毎晩鶏のモモ肉を貪(むさぼ)り食っているようなイメージの人だ。

 もちろんアッチのほうもお強い。EDとは無縁で、60の大台に乗った今も、薬ナシで連投可能。夫婦円満で結構なことなのだが…。

 「女房がね、ヤッた後でアソコが痛えって言ってね、ヤラしてくんねえんだよ」

 何とも下品な表現ではあるが、奥さんをいたわるYさんのやさしさが伝わってくる(こないか?)。

 この状況を専門医はどう見るか。岡山市北区にある「よこやま腎泌尿器科クリニック」院長の横山光彦医師に解説してもらう。

 「おそらく、ぼうこう炎だと思われます。男性に比べて女性は尿道が短いので、バイ菌がぼうこうに到達しやすい。Yさんの年齢から察すると、奥さんは更年期の可能性がある。そんなストレスから抵抗力が下がると、膣のバリア機能が低下して、炎症を起こしやすくなるのです」

 横山医師によると、ぼうこう炎の症状は、頻尿や排尿後の痛み、残尿感など。原因はいろいろと考えられるが、性交時に感染することが非常に多いという。

 「多くは抗生物質で治りますが、抵抗力が下がれば再発を繰り返すこともある。特にストレスはためないように注意すべきだ」と横山医師は呼びかける。

 「早く治んねえかなぁ…」と心配そうな表情を見せるYさん。風俗や浮気に走らないところは立派だが、ハナクソをほじるのはやめなさい。そんな汚い指で触ったら、治るぼうこう炎も治らなくなりますよ。

【今日のストレス 明日の病気】斜頸 首が回らない原因は借金苦による心身症

 「借金で首が回らない」という表現があるが、今回は「借金したくて首が回らなくなった人」のお話。中小企業の経営者にとって、これは決してひとごとではない。いつ病院に行っても恥ずかしくないよう、首を洗って待っていたほうがいいかも…。

 Hさん(64)は社員15人ほどの医療品問屋の社長さん。温厚で実直な人柄で、取引先にも、従業員からも慕われている。

 そんなHさんの「首」に、ある朝、異変が起きた。目が覚めた瞬間から動かなくなってしまったのだ。寝違えたのかと思ったが、丸1日経っても治らない。仕方なく整形外科を受診して、いろいろと調べてもらったが、骨にも筋肉にも異常は見当たらなかった。

 医師から「ストレス性のものかもしれない」と紹介状を持たされて受診したのが、本紙毎週月曜連載「ドクター山本の心の健康相談室」でおなじみ、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師だった。

 「斜頸(しゃけい)という症状で、首を左に傾けた状態で固まっていました。いろいろと話を聞く中で、会社経営が非常に厳しい状況だという悩みが出たんです。不眠傾向もあるようなので、精神安定剤と睡眠導入剤を処方して様子を見ることになりました」(山本医師)

 その後も首は曲がったままで、人に呼ばれると体ごと向きを変えて返事をしなければならない。実直な性格ゆえ、生返事ができない彼にとって、何ともつらい日々が続いていた。

 そんなある日、1本の電話が状況を一変させる。受話器を置いて2-3分後、気付いたら首が縦横自由にグルグル回るようになっていたのだ。

 「電話の相手は銀行。難航していた融資話にOKが出たというのです。つまり彼の斜頸は、心因的な症状だったのです」

 そう語る山本医師は、こう解説する。

 「精神的抑圧が身体的症状を引き起こす“心身症”の一種です。Hさんの場合は首に出ましたが、肩や腰など全身のどこに起きても不思議ではない。今回はそこに目を付けて心療内科に紹介した整形外科医のファインプレーです」

【今日のストレス 明日の病気】急性ストレス反応 情緒不安定から強烈な吐き気 寝て体力回復を

夫婦が離婚したとき、ストレスで受ける精神的・身体的ダメージは男性のほうが大きい。頭を切り替えて人生を楽しむ女性を横目に、男性はいつまでもふさぎ込む。落ち込みたくて落ち込んでいるわけではないのに、その姿がさらに女性の反感を買うようで。

 Aさん(48)は離婚した。原因は妻の浮気。しかも浮気相手はAさんもよく知る人物だった。芸能界でも最近似た話があったようだが、この道ではAさんのほうが先輩だ。

 浮気がバレてからの妻の行動は早かった。発覚した週末には家を出て、不倫相手の家に転居。Aさんの留守中に少しずつ荷物を運び出し、2カ月後には離婚届を突き出した。あまりにスムーズな流れに、Aさんは茫然(ぼうぜん)としたまま署名なつ印し、気付いたときにはバツイチになっていた。

 以来Aさん、情緒不安定が続いている。突如襲いかかる不安と寂しさは、集中力の欠如、頭痛、下痢、食欲不振、吐き気、不眠、そして言い知れぬえん世観をもたらす。特に「吐き気」は強烈で、実際に吐いてしまうことが何度もあったという。

 たまりかねて心療内科を受診すると、「急性ストレス反応による神経衰弱状態」と診断された。

 「離婚、しかも配偶者の浮気が原因という、人生でそう経験することのないショッキングな出来事に立て続けに見舞われたら、おかしくなるのも当然」と語るのは、東京都新宿区にある吉村クリニック院長で心療内科医の吉村英樹医師。続けてこう説明する。

 「急性ストレス反応の症状の出方は人さまざま。Aさんの場合は消化器症状が強く出ていますが、胃や腸は内臓の中でも特にストレスに弱い。ヤケ酒に走ると、さらに症状を悪化させるだけ」

 吉村医師は、「寝るのが一番」と指摘する。

 「起きていれば嫌なことを考えてしまう。睡眠導入剤を使ってでも寝て、体力を回復させるべき。補助的に精神安定剤や漢方薬などを使うこともあるが、早く次の恋愛を始めるのが最良の薬です」

 Aさんは今日も涙目で吐き気をこらえている。

 「吐くとさっき飲んだ胃薬も出ちゃってもったいないから…」

 何とも気の毒な人だ。大丈夫。きっとそのうちにいいことありますよ。

【今日のストレス 明日の病気】奥歯の痛み 歯ぎしりで象牙質露出 知覚過敏状態

ビールを飲みながら奥歯でピーナツをかんだ瞬間、激痛が走った-。せっかくのリラックスタイムにも関わらず、全身から冷や汗が湧き出てくる。じつはそんな奥歯の痛み、原因に精神的な悩みが隠れていることがあるのだ。奥歯の痛みは、睡眠中に作られているという…。

 その痛みをUさん(33)が初めて感じたのは、会社で昼食の仕出し弁当を食べていたときのこと。最後に梅干しを奥歯で噛んだ時、「ズッキーン!」という衝撃が走ったのだ。

 「すわ、虫歯か?」と歯科医院に駆け込み、診察を受けると、上下の奥歯が擦り切れていた。歯科医師から下された診断は「歯ぎしりによる歯の摩耗」。歯の表面を覆うエナメル質が削られ、知覚過敏になっていたのだ。

 「精神的なストレスから睡眠中に食いしばったり歯ぎしりをしたりして、奥歯が削られてしまうことがある」と語るのは、東京都調布市にある「松浦歯科クリニック」院長の松浦敬史歯科医師。これを放置すると、内部の象牙質が露出してしまい、激痛に拍車がかかることになるという。

 しかし、そもそも人はなぜストレスがかかると歯を食いしばるのか。松浦院長はこう説明する。

 「諸説ありますが、最近の学説では、食いしばることでストレスを解消しようとしているのではないか-といわれています。グッと食いしばったあとの解放感は、スポーツの後の爽快感に似ていなくもない。無意識のうちに、奥歯を鍛えようとして、逆に痛めつけているわけです」

 この場合、睡眠中に歯ぎしり防止用のマウスピースで、歯を保護することになる。しかし、これは対症療法であって、元のストレスを解消しない限り、歯ぎしりや食いしばりを本質的に止めることはできない。

 「比較的神経質なタイプに多い症状」と松浦院長が指摘する通り、Uさんも繊細な神経の持ち主。それだけに日頃たまったうっぷんが、深夜に奥歯への重圧となってあらわれるのだろう。

 苦虫をかみつぶすような表情でマウスピースをかみつぶすUさん。やはり本質的な解決にはなっていないようだ。

【今日のストレス 明日の病気】浅い眠りに苦しむ人々 体内時計の調節が必要だが、まず医師に相談

精神的なストレスが不眠を引き起こすことは知られている。その一方で、いったんは眠れてもすぐに起きてしまう-という人もじつは多いのだ。深い眠りにつけずに苦しむ人々…。その悩みは果てしなく深い。

 OLのK子さん(32)は、長く付き合っていた同じ職場の男性と別れたばかり。周囲もそれを知っていて、気を使ってくれるだけに居心地が悪い。

 彼女のストレス症状は「眠り」に現れた。といっても、眠れないのではない。ベッドに入って明かりを消して、目を閉じていると眠りに入ることはできる。ところが、変な時刻に目が覚めてしまい、そこから先は眠れなくなってしまうのだ。

 「変な時刻」とは午前2時とか3時とか…。結果として寝不足となった彼女の肌は荒れ放題。目の下は黒ずみ、その上のくぼみの奥からのぞく目には生気のかけらもない。

 「統計上も不眠の訴えは男性よりも女性に多い。特にストレスからの不眠によく遭遇する」と語るのは、東京都中央区にある「トルナーレ内科外科」の松浦裕史院長。続けてこう解説する。

 「ストレスが自律神経に働きかけることが原因。その結果、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて不眠という症状になる。変な時刻に目が覚めてしまうのは、体内時計が狂っていることが考えられます」

 体内時計の調節には、毎朝早起きして朝日を浴びることを習慣づけるのが効果的。しかし、彼女の場合は早起きどころの騒ぎではない。まずはぐっすり眠ることが何より先決だ。

 「カウンセリングで話を聞いてもらうことでスッキリして改善する人もいます。しかし、それで効果が見られないときは、睡眠導入剤や抗不安薬で、深い眠りを確保することも考えるべきです。いずれにしても、1度医師に相談することをお勧めします」(松浦医師)

 いまは幽霊みたいだが、「元は美人だった」と周囲の評価も高いK子さん。元カレを見返すためにも、まずはぐっすり眠って英気を養いましょう。 

【今日のストレス 明日の病気】ドライマウス、セールストークに支障 口臭も放置すると口内がただれ出血

よく使われる表現に「緊張で唾をゴクリと飲み込む」というのがある。しかし実際にはそれほどの緊張ではないのかもしれない。本当に緊張の極みに立つと、口の中は乾燥する。飲み込む唾などありゃしない…。

 営業職のHさん(29)は、根っからのアガリ症。最近は後輩を引き連れて得意先回りをしているのだが、その後輩からショッキングなことを言われて落ち込んでいる。

 「先輩、口臭がひどいっスよ」

 自分でも気づいていた。しかし客先、特に重要な得意先になればなるほど緊張してしまう。

 Hさんの場合、緊張は「口の渇き」という症状となってあらわれる。舌の表面は干上がったダムのよう。唇の裏は歯の表面にへばり付き、引っかかってしゃべりにくい。

 そして何より気になるのが口臭だ。先方が出してくれるお茶を飲めばいいのだが、相手が「どうぞ」と言わないのに口を付けるわけにもいかない。緊張を隠そうとしゃべればしゃべるほど聞き取りにくくなり、一帯には口臭が漂う。

 「ドライマウスを放置すると、口臭の他にも口内のただれやひび割れ、出血を引き起こすこともあります」と語るのは、JCHO大阪病院内科の鈴木夕子医師。そのメカニズムをこう解説する。

 「緊張やストレスがかかると、脳の視床下部から唾液の分泌を抑えるホルモンが出ます。一時的なものなら構いませんが、常態化すると問題が出る。3カ月以上続くと“ドライマウス”と診断されることになります」

 解決策は「ストレスを避ける」に尽きるが、Hさんの場合はそうもいかない。そこで鈴木医師がアドバイスする。

 「手っ取り早いのはペットボトルのスポーツドリンクを持ち歩き、こまめに口を潤すこと。それ以外にもあめやガム、梅干しなども効果的。逆に避けたいのはパンやクッキーのような水気を吸い取る食品の摂取。

また同じ水分でもカフェイン入りや炭酸系の飲み物はドライマウスを助長させてしまうことがあるので控えたほうがいいでしょう」

 鈴木医師によると、大きなストレスが背景にある場合は、抗鬱剤を服用することで改善することもあるとか。

 訪問先の会社から出てくるたびに「俺、臭う?」と後輩に尋ねるHさん。かなりストレスが大きそうだ。一度心療内科を受診したほうがいいですよ。

【今日のストレス 明日の病気】「ストレスと便秘」後編 女性に多い腸内悪化…うつ発症も

前回は「下痢」について書いたが、今回は反対の「便秘」。出るべきものが出ないと機嫌も悪くなり、そのストレスがまた便秘を招く。まさに悪循環。負の連鎖を断ち切るのに役立つのが、あの“菌”というが…。

 今回の主人公は、埼玉県に住む主婦のB子さん(37)。2年前に結婚し寿退社。今のところ子供はおらず、できる気配はない。というより、作る気配がないのだ。

 2つ年下の亭主は、以前からフワフワしたところはあったのだが、結婚から半年もしないうちに浮気が発覚。早速、離婚を視野に入れた話し合いが持たれたが、夫とその両親がそろって頭を下げたことから、この時ばかりは和解した。

 ところが、どうやらここに来て、またもや亭主の動きが怪しい。

 それまでめったになかった泊まりがけの出張が多くなった。しかも、生き先が前橋とか宇都宮とか、日帰りで行ける所ばかり。出張旅費も精算しておらず、自腹で泊まっているのが見え見えだ。

 ケータイを盗み見れば一発で悪事露見となりそうだが、彼女にとってはそれも怖い。2度目となると、今度は本当に離婚になる可能性が高い。

 今さらバツイチとなって婚活する気力もない。知らぬフリを決め込んでいたほうがいいのか…と悩むうちに、彼女の腸は排便機能を停止してしまった。

 3日4日は当たり前。1週間もロクに出ないことさえある。出るのはオナラとため息ばかり。

 「ストレス性の腸の不調は、男性は下痢、女性は便秘が圧倒的に多い」と語るのは、「脳はバカ、腸はかしこい」(三五館、1260円)という著書もある人間総合科学大学教授の藤田紘一郎医師。

 「腸内細菌のバランスが崩れていることが考えられます。B子さんにとって“いい腸内細菌”が少ないと、腸の状態が悪くなり便秘を引き起こすだけでなく、幸福感をもたらす神経伝達物質を作る機能も低下するので、“うつ”になる危険性も高まります」

 そう語り、乳酸菌を摂取し、腸内環境を向上させることを勧める。

 「マウスの実験では、同じストレスを受けても、腸内細菌が豊富だとストレス反応が抑えられると分かっています。まずは積極的に乳酸菌を摂取して、腸の健康を取り戻すことが先決です」

 アホな亭主とかしこい腸。どっちを大切にすべきかは明白ですよ。

【今日のストレス 明日の病気】低血糖、打ち上げ後トイレで失神 お酒の飲み過ぎにご用心

酒を飲んで気持ちよく酔っ払っていたら、いつの間にか意識をなくしていた。暖かくなるこの時期だからよかったものの、冬場だったら凍死していたかも。特に糖尿の気(け)があるお父さんはお気を付けいただきたい。

 Uさん(53)はこの2カ月ほど、不眠不休の忙しさだった。

任されていたプロジェクトもようやく一段落となり、仲間うちでのささやかな打ち上げに参加。解散後は行きつけの小料理屋に立ち寄って、静かにウイスキーの水割りを飲んでいた。

 日付が変わる頃に店を出た。大通りに出てタクシーをつかまえようと思ったが、外は意外に寒かった。

急な尿意を催して、公園の公衆トイレに入ったところまでは覚えている。いや、排尿しながら「やれやれ…」とため息をついたのも覚えている。

 しかし、次の記憶は救急隊に呼びかけられているところだった。

 じつはUさん、トイレの中で倒れているところを、たまたまUさんのあとにトイレに入ってきた人に発見され、その人が救急車を呼んだのだ。病院に担ぎ込まれて、いろいろと調べた結果、下された診断は「低血糖」というものだった。

 「急激に血糖値が下がることで、吐き気や徐脈、発汗、動悸などさまざまな症状を示すことがあります。ひどい時には意識が遠のいたり、Uさんのように失神してしまうことも」と語るのは、

千葉県野田市にあるキッコーマン総合病院院長の久保田芳郎医師。糖尿病の人が薬を服用した後に低血糖の症状を引き起こすことがあることは知られているが、

それ以外にも一過性の高血糖に反応してインスリンが過剰に分泌されたときや、アルコールが原因で血糖値が急速に低下することもあるという。

 「先に挙げた症状から低血糖が疑われたときは、あめでも砂糖でも何でもいいから、急いで糖分を摂取すること。低血糖を経験したことのある人は、同じことを繰り返さないためにも、暴飲暴食、特にアルコールの過剰摂取を避け、睡眠と休養を十分にとることが重要です」(久保田医師)

 事件以来、Uさんは、奥さんからビニールの小袋に入れられた角砂糖を持たされ、スーツのポケットに入れている。周囲からは「猿回しの猿だね」と陰口をたたかれているが、行き倒れになるよりははるかにマシですよ。 

【今日のストレス 明日の病気】ランナーに増える“疲労骨折”!無理して走ると逆効果

相変わらずのマラソンブーム。本来健康にいいはずのランニングだが、それには限度がある。無理して走り過ぎると、逆に健康を害することも…。今回はそんな「行き過ぎランナー」が疲労骨折をするまでの物語。

 Aさん(47)は走歴5年のオヤジランナー。ダメ元で応募した東京マラソンに当選したことをきっかけに走り出した、典型的なにわかランナーだ。

 しかし、“にわか”も5年続くと立派な趣味だ。当初84キロもあった体重は、今では60キロ台前半で推移し、それに応じてタイムも徐々に短くなってきている。

 今年は奮発して暮れのホノルルマラソン参加を決めたAさん。夏から走り込み強化に努め、9月の総走行距離は220キロを超えた。ちょっと無理し過ぎだが、当人は「走らないとストレスになるんですよ」と、アスリート気取りだ。

 そんなAさんの左の足の甲に痛みが出た。症状は「走ると痛い」から「歩くと痛い」に進展し、一週間後には「何もしなくても痛い」に増悪。整形外科を受診し、エックス線検査を受けたところ、足の中指の中ほど、

甲のあたりの骨が“コブラの頭”のように膨らんでいるのが見えた。診断は「疲労骨折」だ。

 「ランニングブームを背景に、患者は増える一方です」と語るのは東京・板橋区にある「常盤台らいおん整形外科」院長の小崎直人医師。「走らなければ…」という強迫観念を背負い込むタイプに多く見られると警鐘を鳴らす。

 「エックス線で骨が膨らんで見えた時点でしっかり休養を取れば、1カ月程度の安静でランニング再開も可能ですが、無理して走り続けるとポキンと折れてしまい、こうなると2-3カ月は走れなくなります」

 超音波治療で治療効果を高めることは可能だが、それでも無理は禁物。小崎医師は、走り過ぎだけでなく、ランニングフォームに問題があることも多いと指摘する。いずれにしてもホノルルマラソンまで2カ月を切っている。

30万円近い旅行代金は払い込み済み。出場できるのか、あきらめなければならないのか…。彼のストレスは貯まるばかりだ。

【今日のストレス 明日の病気】骨盤疼痛症 尿道の奥がうっすら痛み残尿感や違和感の症状も

「骨盤の痛み」と聞くと「前立腺がんか?」と驚く人もいるだろう。しかし、必ずしもがんとはかぎらない。

ストレスが原因で骨盤内に痛みや不快感を催すことがあるのだ。ストレスは人の感覚を敏感にする。そこからさまざまな「痛み」も生まれてくるというのだが…。

 今回の主人公は、市役所勤務のMさん(44)。長らく総務課に勤務していたが、昨年の異動で税務に転属してきた。

以前は直接市民と接することの少ない部署だったので、内向的な性格のMさんもストレスを感じることはなかったが、今は違う。朝から晩まで市民と顔を合わせる毎日。

なかにはモンスターチックな人もいて、内気なMさんはアップアップだ。

 そんな彼が異変に気付いたのはひと月前のこと。尿道の奥のほうにうっすらとした痛みを感じたのだ。それまでそんな部分を意識したことさえないだけに、痛みの震源地が分からない。

ネットで調べて「泌尿器科の領域だろう」とアタリをつけて受診すると、骨盤疼痛(とうつう)症という診断が下された。

 「精神的なストレスから起こることもある症状の1つ。痛みの他に残尿感や違和感程度の症状を示すこともある」と話すのは、兵庫県丹波市にある松下泌尿器科医院院長の松下全巳医師。そのメカニズムを解説する。

 「ストレスは神経の“閾値(いきち=刺激の最小値)”を変動させ、それまで気付かなかった痛みや違和感を持つことがある。

何らかの病気を疑って前立腺やぼうこうを調べても異常がなく、しかもストレスがかかっているときにこの診断が下りることが多い」

 松下医師によると、前立腺肥大症の治療に用いられるα-1ブロッカーという薬が効果を示すことも多いというが、根本のストレスが解消されなければぶり返すことも少なくない。

 Mさんは治療を始めてまだ1週間。効果の検証はこれからだが、検査で悪い病気が見つからなかったことでの安心が大きく、症状はすでに解消に向かっているという。

 それにしても、ストレスで頭やおなかが痛くなるという話はよく聞くが、「尿道の奥のほう」まで支配下に置いているとは…。ストレス、恐るべし。

今日のストレス 明日の病気】緊張状態で始まる「空せき」 解消できなければ心療内科的な治療が必要

“あがり症”の人にとって、人前でのスピーチほどつらいものはない。しかし、役職が上がれば、どうしてもその機会は増えてくる。そんな緊張状態で始まる“空せき”。ただでさえつっかえつっかえのスピーチにせきが混ざるから、何を言っているのかわからない…。

 Kさん(38)は昨年から部門のマネジャーに昇格した。日本的にいえば「課長」だ。部下は10人。小なりといえども管理職となり、意気揚々のはずだったのだが、出足からつまずいた。

 昇進直後に部下が結婚し、披露宴で乾杯の音頭を取ることになったのだ。しかし、人前で話すのが大の苦手なKさん。

開会前からせきが止まらなくなった。水を飲んでもむせてしまい、テーブルは水だらけ。わずか1分ほどのスピーチもせきがひどくて収拾がつかず、乾杯用に持っていたグラスからこぼれたビールでマイクの周りはビチャビチャだ。

 以来、前にもましてスピーチ嫌いになったKさんだが、今年中に結婚を予定する部下が4人もいる。それを考えただけでせきが出る-。

 「心因性の咳嗽(がいそう、せきのこと)ですね」と語るのは、JCHO大阪病院内科医の鈴木夕子医師。ストレスが引き起こすせきなので、病院で検査をしても明らかな異常は見つからない。しかし、見つける手掛かりはあると鈴木医師は言う。

 「起きているとき、特に仕事中にせきが止まらなくなるものの、夜間や就寝中には止まるのが特徴。気管支炎や肺炎であれば、夜間でも就寝中でも関係なくせきが出るので、ここが重要なポイント。


加えてストレス性のせきは、乾いた“空せき”なので、たんを伴うCOPD(慢性閉塞性肺疾患)とも区別がつきやすい」(鈴木医師)

 対策は「原因となっているストレスを取り除くことに限る」というから、これが一番難しい。ストレス発散がうまくいかない場合は、心療内科的な治療が必要になることもあり、Kさんもその公算が大きそうだ。

 「6月には結婚式が2回もあるんです」と、せき込みながらも器用にため息をつくKさん。そんな上司にスピーチを頼まなければならない部下たちのストレスは、大丈夫だろうか…。

【今日のストレス 明日の病気】過呼吸症候群の処置「ペーパーバッグ法」今はNG 息を吐くことに意識を向けて

新入社員が闊歩(かっぽ)するこれからの時期。新人には新人のストレスもある。「これも社会人の証し」などと言ってもいられない。的確に見抜いてやらないと、自分のクビが危ういぞ。

 1年前、ある大手企業の新人研修でのこと。新入社員同士のY子さんとK子さんが口論になった。Y子さんは入社試験でトップクラスの成績。

一方のK子さんは学生時代から弁論部で活躍した才女。最初は議論だったのだが、双方熱くなるうち口論に発展していく。するとY子さんは言葉が出なくなり、呼吸が荒くなっていったのだ。

 「息が苦しいと言い出したので119番通報しました。救急車が到着する頃には顔面蒼白(そうはく)で息も絶え絶えでした」と語るのは、その場にいた別の同僚。

 搬送先の病院では血液検査やエックス線検査をしたが特に問題はなく、「過呼吸症候群」という診断が下された。

 慶應義塾大学病院救急科の林田敬医師が解説する。

 「強いストレスを受けた時に出る症状の1つで、若い女性に比較的多い。呼吸が荒くなると苦しさを感じ、苦しいから吸おうとするが、思うように吸えなくてパニックに陥る。

呼吸困難以外にも、頭痛やめまい、手先や口のまわりのしびれ、さらには失神などの症状を示すこともあります」

 この時、体内では二酸化炭素が減っているので、以前は紙袋で口をふさぐ「ペーパーバッグ法」という処置が取られることがあったが、今はNGだ。

 「紙袋で口をふさぐと、低酸素で脳症を起こすリスクがあるのです。それよりも、患者は“息を吸いたいのに吸えない”ということでパニックになっているので、『ゆっくりでいいから息を吐きなさい』と誘導するほうが効果的。

症状がひどい時には抗不安薬などを投与することもありますが、“息を吐くこと”に意識を向けられれば、快方に向かっていきます」

 一晩入院したが翌日には帰宅。その後研修にも復帰した。K子さんとも仲直りし、今では一緒に食事に行く間柄だ。

 気の毒なのが、研修の責任者だった当時の人事部長。管理責任を問われて飛ばされてしまった。今となっては彼のストレスが心配だ。出向先の子会社で、呼吸困難になっていないだろうか…。

【今日のストレス】“更年期”に起こる悪循環 ホルモン補充で意欲戻る 男性性腺機能低下症

医療の世界でよく使われる言葉に「不定愁訴(しゅうそ)」がある。「どこがどう」とハッキリ言えないけれど調子が悪い-という時に使う用語だ。ストレス症状の多くがこのタイプなのだが、中には「男性ホルモン」を介在するものもあるという。

 Eさん(54)は、言いようのない不調に悩んでいる。まさに不定愁訴だ。

 「不眠や性欲低下は顕著です。たまにその気になってもED(勃起不全)で先に進まないことも…」と、コメントも歯切れが悪い。知人の勧めで泌尿器科を受診。血液検査の結果は「男性性腺機能低下症」だった。

 「早い話が“男性更年期”です」と語るのは、大阪市淀川区の「しもがき泌尿器科クリニック」院長、下垣博義医師。

 「男性ホルモンは加齢により年々減少します。ただ、精神的なストレスがかかると余計にホルモン量が低下し、ストレスへの抵抗力をさらに弱める悪循環に陥るのです」

 確かにEさん、今は出世コースから外れて、首を洗いに会社に行くような毎日。元気を出せと言うほうが無理なのだ。

 しかし、治療法はある。男性ホルモン補充療法だ。

 「ホルモン剤には注射薬とクリーム製剤の2種類があり、注射薬には健康保険が適用されることもある。クリーム製剤は陰嚢に塗ると効果があると言われていますが…」と下垣医師。

 注射薬によるホルモン補充療法を始めて2カ月になるEさん。まだ強い手応えはないが、以前よりは何事にも意欲が出てきた気がするという。

 下垣医師も「効果の出方は個人差があり、半年から数年と、長期的に見ていく治療法」と言うから、焦りは禁物だ。

 もう一つ、下垣医師が注意するのが「鬱症状」だ。男性ホルモン減少を疑って受診する人の中には、ホルモン低下を伴わない鬱病であることもある。見誤ると自殺の危険性さえ生じるという。

 「男性更年期の症状は広範囲ですが、精神症状が出た時は、早めに心療内科の助けを求めるべき」と警鐘を鳴らす。

 症状の出方がハッキリしないだけに、医師にも相談しにくい男性性腺機能低下症。そんな病気があることをまず知っておくことが大切だ。

【今日のストレス明日の病気】「ストレスと下痢」前編 腸内細菌の改善が効果的!

数あるストレス症状の中でも、一番の代表格と言える「下痢」。月曜の朝ともなると、おなかの弱いサラリーマンや学生で駅のトイレは長蛇の列。間違って急行や快速に乗ろうものなら、おなかのほうが超特急に…。

     ◇

 Aさん(32)は自他ともに認める“下痢男”。急な残業になっては腹が下り、上司に叱られたと言ってはトイレに駆け込み、彼女とケンカしたと言ってはおなかがピーピーに…。いずれもストレス性の下痢だ。

 まあ、わかりやすいと言えばわかりやすいのだが、当人にとっては深刻な問題。そこでAさんなりに考えた末に、「ここは一つ、腸内細菌の改善に取り組んでみよう」との結論に至った。

 早速ヨーグルトやらキムチやらを大量購入して日々摂取に勤しんでいるのだが、ひと月たった現在も、あまり効果が見られない。

 「腸内細菌の改善に目を付けたのは大正解。ただ、自分の体に合った乳酸菌を選ぶ必要があります」と語るのは、「B型はなぜか、お腹が痛い」(三五館、1050円)という本の著者で、人間総合科学大学教授の藤田紘一郎医師。

 「人間はそれぞれが持つ乳酸菌のタイプがあり、それに合った乳酸菌が腸に入ってくると効果的な作用を示します。Aさんが摂取した乳酸菌は、彼のおなかのタイプとは合っていない可能性が高いでしょう」

 藤田医師によると、たとえ乳酸菌のタイプが異なっても、それが害になることはないという。

ただ、タイプの適合する乳酸菌を摂取すると、腸内環境が劇的に改善されるだけでなく、腸から脳に送られるセロトニンなどの神経伝達物質が増えるので、幸福感がもたらされてストレス状態から抜け出すことが容易になるという。

 「同じ摂るなら、乳酸菌生成エキスがオススメ。これは新しく乳酸菌を補充するのではなく、すでに腸に棲んでいる乳酸菌を増やしてくれるので、タイプが合わないということがありません」

 加えて納豆の摂取を推奨する。

 「納豆には有名な納豆菌の他に、土壌菌とほぼ同じ成分が含まれています。実はこれが腸内細菌の中では最も数の多い菌なので、これを増やすことで腸内環境のバランスが整いやすくなります」

 いつもストレスに攻撃されるばかりの腸だが、いたわれば、逆にストレスが遠ざかっていく不思議な関係。Aさんの駅のトイレ通いも、なくなるといいのだが。(長田昭二医師)

【今日のストレス明日の病気】歯医者での「オエッ」予防には鎖骨と鎖骨の間のツボが効く 嘔吐反射

歯医者さんで治療中に「オエッ」となった経験を持つ人はいるだろう。実はあの症状、ストレスで起きやすくなるようだ。そして、あるツボを押すことで、和らげることもできるとか…。

 Jさん(40)は、何事にもきちょうめんで、健康管理にも積極的。かかりつけの歯科医院を持ち、3、4カ月に一度は自主的に歯科検診を受診している。

 そんな彼が、最近あることに気付いたという。

 「仕事に余裕があるときはそうでもないのですが、仕事や人間関係などでストレスがある時に歯医者さんに行くと、ちょっと鏡を口に入れただけで『オエッ』となるんです。一度始まると止まらなくなり、歯医者さんもやりづらそう。申し訳ないと思うと余計に『オエッ』となる…」

 歯科医師の側から見ても、ストレスと「オエッ」は関係があるという。東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長が解説する。

 「『オエッ』となることを嘔吐(おうと)反射といいます。これは口から異物が入らないようにするための生体反応ですが、精神的な抑圧でこの反射が強くなることがあるのです」

 仕組みはこうだ。口腔(こうくう)には知覚神経の末しょう組織が集中している。精神的なストレスで交感神経が異常に緊張すると、神経が一層敏感になり、普段は反応しない刺激にも過剰に反応してしまうのだ。

 「治療に差支えがある時は、表面麻酔薬をのどに噴霧したり、治療前に精神安定剤を投与するなどの方法もありますが、ツボを刺激するだけで反射が収まるケースもあります」と片平院長。どこにそんなツボがあるのだろう?

 「“天突”というツボで、のど仏の下の、鎖骨と鎖骨の間のくぼみです。ここを指で数秒間押し続けると、それまでひどかった嘔吐反射が和らぎ、スムーズに治療ができることが少なくありません。

なるべく麻酔薬を使いたくない人などにはおススメです」と片平院長。

 ただし、これは反射を和らげる方法であって、吐き気を止めるものではない。酔って気持ちが悪い時にそんなところを押したら“ダム”が決壊するのは必至だ。使い方を間違えないように。

【今日のストレス明日の病気】不眠は危険、布団に入って30分でダメなら薬を使おう

何かと疲れがたまっている日本のサラリーマン。疲労回復には良質の睡眠が最良の手段であることはわかっていても、疲れているからこそ眠れない-という人もいる。この悪循環、何とかならないものなのか…。

 とあるIT企業勤務のUさん(35)は同期の星。頭がいいだけでなく仕事もできることから、若い頃からエース中のエースと目されていた。

 ところが、そんな逸材も、ダメな上司が上に来るとバランス感覚を失うらしい。

 2年前からUさんの直属の上司となった男が、親会社から舞い降りてきたデキ損ない。上からの指示を部下たちに押し付けるだけで、フォローも何もしようとしない。

それでも優秀なUさんのおかげで、ここまでは大きな事故もなくやって来られたのだが、当のUさんがパンク寸前なのだ。

 「眠れないんです。睡眠時間が2-5時間という日が何日も続く。昼間は眠くて仕方ないのに、夜になると眠れない。週末の夜にようやく眠れそうになったと思ったら、突然上司からケータイに電話が来たりして…」

 この話を聞いて「今すぐ休養が必要です」と警鐘を鳴らすのは、東京都新宿区の吉村クリニック院長で心療内科医の吉村英樹医師。特に「仕事ができるタイプ」は注意が必要だと呼びかける。

 「優秀な人は多少無理な要請にも応えられてしまうので、相手は次も無理難題を吹っかけてくる。要領がよければ聞き流せることも、真面目なだけに正面から受け止めてしまい、結果としてストレスに押しつぶされてしまうのです」

 吉村医師によると、不眠以外にも腰痛や頭痛などの症状を併発するようになると、非常に危険な状態に陥るという。

 「睡眠導入剤と少量の抗鬱剤を使うなどして、まずは睡眠を確保すべき。並行して会社から完全に切り離したところに身を置くことが、根本的な回復には不可欠です」

 吉村医師によれば、睡眠は布団に入って30分が勝負とのこと。暗い部屋で目を閉じて、30分経っても眠れない時は、頑張り過ぎずに薬を使う方がいいという。

 会社で頑張っているんだから、布団に入ってまで頑張る必要はないんですよ。

【今日のストレス 明日の病気】鬱による頭痛 患者が原因を認めれば治療で症状は治まるが…

ストレスで肩が凝って頭が痛くなる-という人の話はこのコーナーでもたびたび登場する。しかし、元は同じストレスでも、別のルートから頭痛を引き起こすこともある。「鬱」だ。若いサラリーマンにも珍しくないこの手の頭痛。メンタルヘルスの早めの介入が得策だ。

 Tさん(33)は、ちょっとストレスがかかると頭が痛くなる。頭痛といっても、片頭痛や緊張型頭痛のようなはっきりした痛みではなく、「何となく痛い」「頭が重い」「だるさの延長」といった表現が似合う痛みであり、早い話が「不定愁訴」だ。

 症状が出るのは、仕事が忙しい時や失敗が続いた時、あるいはプライベートで不調に陥った時など。つまりストレスに起因する頭痛なのだが、本人がそれを認めようとしないところが、話をややこしくさせる。

 この状態について、日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科講師の太組(たくみ)一朗医師は、次のように説明する。

 「精神的なストレスがどのようなメカニズムで頭痛を引き起こしているのかは不明ですが、ストレスで鬱になり、それによる症状の一つとして頭痛が現れるのは、よくあることです」

 しかし厄介なのは、多くの場合、患者自身がそれを認めたがらないという点だ。

 「MRIで調べても異常が見当たらなければ、普通ならそれで安心するものですが、このタイプの人はかえって不安を大きくしたりする。頭痛薬を飲めばとりあえず頭痛は消えるのに、なぜか薬を嫌がるのも、このタイプに共通する特徴です」(太組医師)

 Tさんもまさに同じ。受診した脳外科医に説得されて精神科を渋々受診。カウンセリングを受けて軽い抗鬱薬を服用したところ、比較的簡単に症状は消えていった。ということは、やはり鬱による頭痛だったのだ。

 現代において、鬱は珍しい病気ではない。その可能性が指摘される時は、怖がらずに積極的にメンタルヘルスの専門医に相談することが、治癒への近道なのだが…。

【今日のストレス 明日の病気】「口が臭う」彼氏の一言で“自臭症”に

かつて、孫に「おじいちゃんの口、クサ~い」と言わせる残酷なCMがあった。そんなことを言われて、喜んで入れ歯洗浄剤を買いに行く人格者なんて、そうはいない。強いストレスで病んでしまうのが関の山だ。 

 Y子さん(33)の悩みは“口臭”。付き合っている彼氏に「口が臭う」と指摘されたのだ。

 発端は週末に彼の部屋にお泊りした翌朝のこと。相応のスキンシップを楽しまれて就寝。幸福感に満たされたまま彼の胸の中でお休みになり、翌朝、目を覚ましたところで、宣告を受けた。そりゃ、傷つかないわけがない。

 以来、狂ったように歯と舌をブラッシング。日に何度も糸ようじで歯間をゴシゴシしたり、ジャンボサイズの洗口剤を買ってきても、あっという間に無くなるほどの消費量を誇るようになった。

 そこまでやっても人と会話する時は、つい一定の間隔を開けてしまったり、風邪を引いているフリをしてマスクをしたり…。

 ところが、定期歯科健診で受診した歯科医に相談すると、歯周病などの異常はないとのこと。

 東京・渋谷区にある「片平歯科クリニック」の片平治人院長は「自臭症ですね」と分析する。

 「口臭には生理的な口臭、病的な口臭、今回のケースのような心因性の口臭があります。Y子さんが彼氏に指摘されたのは、生理的な口臭で“モーニングブレス”と言われるもの。夜間は唾液の分泌量が減って細菌が増えることで発生する臭いです」

 自臭症とは、実際には臭っていないのに、常に口臭を発していると思い込んでしまう状態。会話中の相手の“鼻をいじる”などの無意識の動作が自身の臭いのためかと気になってしまうのだ。

 「自分の口臭のせいで周りに迷惑をかけているという強迫観念が生まれ、対人恐怖症で日常生活に破綻をきたすこともあります」

 Y子さんの場合は、彼氏の失言が影響していることは明らか。

 「モーニングブレスは誰だって臭います。なのに、それを指摘されたことで、ある種のコンプレックスを持ってしまい、必要以上に気にする人がいる。Y子さんもそのケースと思われます」

 片平院長によると、「口臭が気になる」と自ら申告して来る人の多くは、検査をしても異常が見つかることは少ないという。繊細な人ほど気にするものなのだ。

 Y子さんは口臭を気にするあまり、ため息すらつけないでいる。彼氏の罪は大きい。

【今日のストレス 明日の病気】ストレス性頻尿、会議や打ち合わせの警戒心“尿意のループ”を生み出す

前回、「慢性非細菌性前立腺炎」による頻尿の話を書いたが、今回は心因性の頻尿の物語。どうやら人は、ストレスを抱えると、何かと“おしっこの悩み”も背負い込むらしい。電車やバスに乗るのも一苦労だ。

 Tさん(36)は毎朝、自宅の最寄り駅から会社近くの駅まで片道40分の道のりを、各駅停車で通勤している。快速や急行も走っているのに、あえて各停を使う理由は「いつ尿意が襲って来るか、わからないから」。

 実際、わずか40分の間に2~3回の“トイレ下車”がある。彼にとって「トイレのない環境」に身を置くことは、耐え難い苦痛となっている。

 会社でも同様。自分のデスクでパソコンに向かって仕事をしている分には、いつでもトイレに行けるから安心。だが、ひとたび長時間に及ぶ会議や得意先を交えた打ち合わせとなると、事態はにわかに緊迫する。

特に自身が”お客さん”として出向く得意先での打ち合わせの時などは、生きた心地がしなくなるというから、かなりの重症のようだ。

 「カルテ上では“ストレス性頻尿”という病名になりますが、確かにかなり重症ですね」と語るのは、川崎市宮前区にあるK-クリニック院長で泌尿器科専門医の河上哲医師。

尿意に対する極度の警戒心が大きなストレスとなり、それが恐れている尿意を作り出す-という悪循環になっているのだろうと指摘する。

 「50歳以上であれば前立腺肥大症による症状ということも考えられます。その場合はα1ブロッカーなどの治療薬で改善されますが、Tさんはまだ若いので、心因性の頻尿が疑われます」

 河上医師によると、「自分はこういう状況になるとトイレに行きたくなるんだ」という思い込みが強すぎて生じるストレスが、本当に尿意となって現れることがあるという。

 「精神的な要因だけが原因で起きる尿意であれば、抗不安薬などの心療内科的アプローチが必要になるケースも少なくありません」(同)

 会社帰りに居酒屋で「自慢じゃないけど、途中駅のトイレの場所と混み具合はすべて頭に入っている」と自慢するTさん。本当に自慢にならないから、そんなこと言うのは、よしなさい。 

【今日のストレス 明日の病気】過緊張で起きる“目の筋肉痛”眼精疲労 50代以上は要注意

パソコンから目を離し、眉間を軽く揉む-。どのオフィスでも見られる光景だが、これが悪化すると頭痛や吐き気を催すことがある。「眼精疲労」の前触れだ。眼精疲労はストレスと表裏一体。あなたの目の疲れは大丈夫?

 Jさん(53)はIT企業の部長。会議に出る時以外は基本的にパソコンか書類を見ている。時々、上を向き、指で目の縁を抑えるしぐさをする。そうすると気持ちいいのだが、頭の中では「こんな俺って柳葉敏郎みたいだろ?」という邪念がみなぎっている。

 しかし最近、そんなポーズだけでは目の疲れが癒えなくなってきた。パソコンから壁のカレンダーに目を動かすと、ピントが合うまで、かなりの時間を要するようになった。しかも頭痛を伴う。

 「もしや?」と眼科医院を受診し、検査の結果下された診断は、予想通り「眼精疲労」だった。

 「眼精疲労とは、目の焦点を合わせる毛様体という筋肉が過緊張することで起きる症状。早い話が“目の筋肉痛・筋肉疲労”です」と語るのは、東京都台東区の吉野眼科クリニック、吉野健一院長。

 近視の人には起きにくく、正視から遠視にかけての人に起きやすい。50歳以降は特に要注意。

 「近くを見る時に毛様体は緊張するので、日頃、遠くを眺める仕事の人には起きにくい。逆にパソコンや書類を凝視している人は、毛様体が常に緊張状態なのでハイリスクです。

また、50代以上は焦点の調節能力が下がるので症状が出やすい。眼精疲労とストレスは、発生環境が重なるので、ストレスフルな人は気を付けてほしい」

 治療法はメガネやコンタクトレンズによる視力矯正、ビタミンB12や調節まひ作用を持つ点眼薬の使用、さらには血流改善とエネルギー代謝改善作用を持つ経口薬の服用などがある。

 一方、眼精疲労はドライアイとも関係が深い。

 「ドライアイになると角膜表面の鏡面が乱れて見づらくなる。ピントを合わせようと目が懸命に努力するので眼精疲労になりやすい」(吉野医師)

 当人は気付いていないだけで、目は涙ぐましい努力をしているのです。

【今日のストレス 明日の病気】ドライアイ、むやみな目薬使用は禁物! 最近はスマホ凝視も一因

冬は何かと乾燥する季節。しかし、世の中には湿度に関係なく乾燥する人もいる。特に“目の乾燥”を訴える人は多い。国民病になりつつある「ドライアイ」とストレスの関係を、あなたは知っていますか?

 Yさん(40)の悩みは目の乾き。特に会社に行くと、その症状が顕著になるという。

 自腹で加湿器を買って、デスク近くに置いたりしてはいるが、劇的な症状改善は見られない。目は常にかゆみを帯び、パソコンの文字もかすんで見える。Yさんの言葉を借りれば、「砂漠の中を歩いているような、あるいは、きなこのプールを泳いでいるような感覚」に襲われる。

 「典型的なドライアイの症状」と話すのは、東京都渋谷区にあるみさき眼科クリニックの石岡みさき院長。会社で症状が出やすい理由を語る。

 「最大の原因はパソコン。通常、人間は1分間に20回の瞬きをしますが、パソコンを凝視していると、6回程度にまで減ってしまう。これで一気に目が乾いてしまうのです」

 加えて、ストレスの存在も指摘する。

 「原因はわかっていないものの、ストレスがドライアイを悪化させることは確か。職場が変わったり、極端に忙しい状況が続いたりした時に、症状を悪化させることは珍しくありません」

 ドライアイの治療法はいくつかあるが、むやみに目薬をさすのは禁物。特に、市販の目薬には防腐剤が入っている物もあるので、かえって症状を悪くする危険性もある。眼科で処方される目薬を使うべきだろう。

 症状のひどい場合には、まぶたの内側にある「涙の排水口」をふさぐ治療が行われることもある。いずれにしても素人判断は禁物。眼科医の診断を仰ぐのが先決だ。

 「最近はパソコンだけでなく、スマホの影響でドライアイになる人が激増しています」と石岡医師は警鐘を鳴らす。

 その昔、関口宏の奥さんが歌った「涙のかわくまで」という名曲があったが、平成の今となっては、こうした色気のある歌詞は成り立たない。悲しくてナミダが出てくる…。

【今日のストレス 明日の病気】「高尿酸血症」の健診結果を10年放置…ついに痛風が発症!

尿酸値が高くても、すぐに症状が出るわけではない。でも、放っておけば、いずれ痛風となって涙を流すことになる。しかも、尿酸値を高める要因は、有名なプリン体だけではない。ストレスも大きな発症要因なのだ。

 中間管理職のCさん(39)は、普通の会社でいえば「課長代理」といった役職。仕事は忙しく、この10年はまともに有給を使ったこともない。そして、ご多分に漏れず、上と下に挟まれて苦労している。何事にも、きまじめな性格の彼に、心の安らぎは皆無となっている。

 会社の健診は毎年受けているが、10年前から高尿酸血症と指摘されるようになる。

 「気にはなるけれど痛みもないし、何より忙しいので…」と、見て見ぬふりを決め込んでいた。

 ところが先日、ついに恐れていた症状が出た。

 「左足の親指の付け根に激痛が起き、見ると赤く腫れ上がっている。半日だけ会社を休み、すぐに病院に行きました」

 自分でも覚悟していたというが、医師の診断は予想通り“痛風”。その日から投薬治療が始まった。

 「高尿酸血症だけでは痛みは出ませんが、その状態が続くと、血中から洩れた尿酸が関節などに結晶となってへばり付く。何かの拍子にそれが剥がれると、痛風発作という激痛になります」と語るのは、藤田保健衛生大学医学部講師の田中郁子医師。続けてストレスとの関係を解説する。

 「原因は明らかになっていませんが、精神的ストレスが血中の尿酸値を押し上げるのは事実です。Cさんの場合、ベースに高尿酸値状態があったのに治療を受けず、そこに仕事の忙しさや人間関係の抑圧などのストレスが加わり、さらに尿酸値を高めて痛風に至ったと思われます」

 治療を始めてからは症状は治まっているというCさんだが、田中医師は「10年かかってできた痛風は、10年かけて治す覚悟が必要。さらに放置すると、今度は腎機能が低下して人工透析に移行する危険性もあります」と警鐘を鳴らす。

 今年40代に突入するCさん。最もストレスのかかる年代をどう切り抜けるのか。上司と部下が冷ややかに注目している。

【今日のストレス 明日の病気】ストレスは「バセドー病」の大敵 異常な発汗症状気遣い職場の同僚は“冷や汗”

精神的なストレスは、普段はない症状を引き起こすだけではない。日頃はコントロールできている病状を、悪化させることもある。代表的なのが「バセドー病」。異常な発汗や急激なウエートロスに要注意だ。

 精密部品メーカーの総務部に勤めるY子さん(29)は、4年前にバセドー病と診断された。

 免疫系などのトラブルにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が異常に活発化することでさまざまな症状が出る病気。Y子さんも、暑くないのに汗をかく、食べても食べても体重が減る、という特徴的症状から検査を勧められ、バセドー病と診断された。

 よく、「バセドー病は眼球が飛び出す」と思っている人がいるが、必ずあらわれる症状ではない。この病気の症状は多様で、動悸(どうき)、発熱、下痢、倦怠(けんたい)感など、数多くある症状の中の一つに過ぎない。Y子さんも目の症状はなかったが、逆に“汗”はひどかった。

 会社では薄いグレーの制服を着るのだが、ひとたび発汗が始まると、はっきり色が変わってしまう。椅子も汗で塗れてしまうので、自分専用のクッションを敷き、背もたれにはバスタオルをかけたりしていた。

それでも治療を始めてからは抗甲状腺薬が効果を発揮し、症状は抑えられている。コントロールがうまくいっていたのだ。

 ところが、忙しくなったり、同僚と意見が合わないなどのストレスがかかると、途端に制御不能に陥り、湯上がりのように火照ってしまう。

 「ストレスはバセドー病の大敵です」と語るのは、東京・原宿にある甲状腺疾患専門病院「伊藤病院」の伊藤公一院長。続けてこう解説する。

 「ストレスが引き起こすのではなく、もともとバセドー病がある人にとってストレスが悪化の因子になってしまうのです。そのメカニズムはまだ解明されていませんが、治療中の人は特に注意が必要です」

 最近は周囲も病気を理解し、なるべくY子さんには無理な頼みごとをしないようにしているとか。そのストレスで周囲は冷や汗。冬だというのにこの職場では、常に誰かが汗をかいていることになる。職員一同が願うのは、Y子さんの一日も早い完全回復だ。

【今日のストレス明日の病気】激務と歯周病菌が引き金となった「歯性高血圧症」 動脈硬化から心筋梗塞も

近年、歯周病と全身疾患の関係が解明されてきた。歯周病は、単なる「歯茎の病気」ではなく、深刻な重大疾患を引き起こす危険性があるのだ。しかも、背景にストレスが介在することもあるというから恐ろしい…。

 事の始まりは「のぼせ」だった。Uさん(43)は激務の中、風呂上りでもないのに顔がほてって、頭がボヤッとした感じがあった。

内科医院を受診すると、「高血圧症」との診断。メタボでもない自分が高血圧だなんて考えたこともなかったが、実際に血圧は上が160、下が95と高値を記録。立派な高血圧だった。

 ちょうどその時期、歯茎から出血があったので歯科治療を受け始めていたが、実はこの歯茎の出血と高血圧が、裏でつながっていたのだ。

 「歯性高血圧症ですね」と語るのは、歯科治療を担当した東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長。次のように解説する。

 「忙しさで歯みがきがおろそかになることに加え、ストレスや睡眠不足で免疫力が下がると歯周病のリスクが高まる。悪玉細菌が歯周ポケットを介して血管に入り込み、動脈に定着する。その結果、動脈硬化から高血圧症を引き起こすのです」

 事実、Uさんが初めて片平院長を受診した時は、歯茎の出血だけでなく強い口臭もあったという。細菌検査をすると、Uさんの口の中からは歯周病原因菌が多数見つかった。

 「ストレスが強かったようで、激しい歯ぎしりの痕跡も見られた。自律神経の乱れが続いたことも高血圧の一因」と片平院長が言うように、当時のUさんは精神的に追い詰められていた。

 そこで片平院長は「3DS」という歯周病菌の除菌を目的としたマウスピースを使った治療と生活習慣指導を行った。

 その後、Uさんの忙しさも落ち着き、ストレスは大幅に低下。治療の成果も相まって、血圧も少しずつ安定していった。しかし、気付かずに放置すれば、いずれ狭心症や心筋梗塞などを引き起こしていた危険性は大きい。

 誰もがUさんのように助かるとは限らない。歯茎の出血や口臭は、重大疾患に気付くきっかけとなることを、まずは覚えておくべきだろう。

【今日のストレス明日の病気】ストレスから深刻な「ED」 気持ちが立たぬ38歳男が最後にすがったのは…

やりたい時にできないのがED。しかし、中には「やりたい」という意欲さえ湧かない人もいる。勃つとか勃たないという問題以前のストレス症状。そんなお父さんの心の闇を照らすのは、意外にも“あの薬”だった…。

 Sさん(38)の妻は5つ上の姉さん女房。新卒で入った会社の先輩OLだった、なかなかの美人である。「カワイイ後輩クン」として仕事の手ほどきを受けているうちに、あちこちほどかれて、あっという間にそういう関係になってしまった。

 彼女に押し切られるようにして結婚。それでも「キレイな奥さん」と周囲に羨ましがられ、まんざらでもなかったが…。

 それから十余年。子供はいないが外見上は仲もよく、理想的な夫婦に見える。しかし、Sさんには悩みが残った。

 40歳を過ぎて、妻のなお崩さない性への積極姿勢や、仕事の忙しさでイライラが募るSさん。頑張っても性欲が湧かない。会社に行けば若くてピチピチのOLがウジャウジャ。どうしても比較してしまうのだ。

 それでも心優しい彼は、ひそかに泌尿器科を受診して、勃起補助薬を手に入れてきた。なのに、である。期待するような効果が得られない。

 「かなり深刻なストレスですね」と同情するのは、埼玉県久喜市にある重城泌尿器科クリニック院長の重城裕医師。次のように分析する。

 「勃起という現象には“やりたい”という気持ちに反応して体内に生じる一酸化窒素が重要な役割を持っています。これなしで勃起補助薬を飲んでも、効果は期待できません。Sさんの場合はその気がないので、十分な量の一酸化窒素が出ていないのです」

 問題はもっと根源的なところにあるということだが、解決策はあるという。

 「漢方薬です。体力があるにも関わらず、イライラや不安感が強い場合は、紫胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という精神鎮静作用のある薬を使い、ある程度、落ち着いたらコトに臨む。その時に勃起補助薬を使えばうまくいきます」

 ここで漢方薬が登場するとは思わなかったが、助けてくれるなら西も東も関係ない。Sさんは「漢方薬って苦いから苦手」と苦渋の表情だが、良薬は口に苦し。美人の嫁さんをニガすなよ。

【カラダの不思議】ストレスのほとんどは「人間関係」が原因?

日々の仕事の中で感じるストレスの正体。実はほとんどが、人間関係だと聞く。それってホント?

 「『うつ』の捨て方 考え方を変えるために考える」(編著/弘文堂)を持つ、医療法人社団榎会・榎本クリニックの深間内(ふかまうち)文彦院長に聞いた。

 「『雑用ばかりやらされる』『社長のワンマン企業で社員の意見が通らない』『上司が嫌い』など、仕事の悩みは人それぞれだと思いますが、それらは『ストレスの原因』ではありません。

かといって、その人自身に問題があるわけでもありません。ストレスの本当の原因は『人間関係』です」

 でも、「雑用ばかりなのが嫌なだけ」、「仕事が忙し過ぎて辛いだけ」などという人もいそうだけど…。

 「例えば、雑用ばかりやらされているときや、莫大(ばくだい)な量の仕事を抱えて忙し過ぎるとき、周囲の人たちが常に感謝してねぎらってくれていたとしたら、どうでしょうか。

きちんと評価、感謝されていれば、つまりは『人間関係』がうまく回っていれば、精神的なストレスは違ったんじゃないでしょうか」

 実は、被災地へのボランティアなどを見ても、現地で行うほとんどが単純作業であり、「雑用」に近いものだという。

 「それにもかかわらず、ボランティアの人たちはわざわざ休日に交通費も自腹で何時間もかけて被災地まで行きます。心がきれいだからということもあるでしょうが、『困っている人を助けたい』思いがあるからこその行動ですよね。

そして、被災者から感謝され、『自分を誇らしく思える、好きになれる』ことが大きいはずです」

 同じように「退屈な書類整理」も、誰からも感謝されずねぎらってもらえない場合は、ストレスが大きく、感謝されて褒められる場合はストレスが小さくなるそうだ。

 「ポイントは、『仕事内容』でも『人間』でもなく、人と人との『関係性』です。自分がストレスと感じていた仕事や人物は、自分とどういった人間関係ができていなかったために生じているかを考えてみましょう」

 そして、少しでも関係性を良くする行動を具体的に考え、始められたら、ストレスは軽減されるそうだ。お試しあれ。

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