この記事は、厚生労働省ウェブサイト「梅毒に関するQ&A」http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/qanda2.htmlから引用しています。
【梅毒の発生状況について】
日本では1948年から梅毒の発生について報告の制度*がありますが、報告数は、年間に約11,000人が報告された1967年以降、減少傾向にあります。
*1999年に制度の変更がありました。
近年では2013年に1,228例、2014年に1,671例、2015年に2,697例の報告があり、報告数が増加傾向にあり、引き続き注意が必要です。
<参考> IASR 2015年2月http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/iasr/36/420j.pdf
◆Q1 梅毒とはどのような病気ですか?
A1 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。
早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。
出典:「梅毒に関するQ&A」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/qanda2.html
疲れや仕事のストレスで体調を崩し、熱っぽいだるさや、首周り・耳の下・太ももの付け根などにあるリンパ節に腫れやしこりを感じた経験はありませんか? 疲労が重なり帯状疱疹(たいじょうほうしん)になる人もいるようです。
もちろん明確な理由があっての発熱、だるさであればいいのですが、原因不明で体調不良になっている場合は要注意です。もしかしたら、HIV感染が無症候期(潜伏期)を終えて、今まさにエイズを発症させようとしているサインかもしれません。
そこで今回は、国立感染症研究所のホームページ情報を参考に、エイズ発症直前の諸症状をまとめたいと思います。
■潜伏期間が終わりエイズが発症するサイン4つ
HIVに何らかの形で感染すると、ウイルスが血液の中に侵入し、時間をかけて人の免疫システムを破壊していきます。HIVとはウイルスの名前で、そのウイルスに感染するとエイズが発症します。
ご存じの通り、エイズが発症する前には数年から10年近くの潜伏期間がありますが、その潜伏期間が終わりに近付くと、
(1) 発熱
(2) けんたい感
(3) リンパ節の腫れ
(4) 帯状疱疹(帯状ヘルペス)
が目立ち始めるといいます。帯状疱疹とは、皮膚にチクチクとした痛みが起こり、数日後に帯状の赤いぶつぶつが出る病気です。
単なる疲れや免疫力が低下しただけでも起こるのですが、HIV感染が進み免疫力の低下が続いてエイズ発症間近になった場合も、帯状疱疹が確認されるといいます。
■こんなシチュエーションに心当たりがある方は急いで検査を!
とくに、今まで心配な性交渉を持った経験のある人、風俗サービスを定期的に利用していた、あるいは利用していたパートナーを持った経験のある人で、帯状疱疹など原因不明の体調不良が目立つ場合は、要注意かもしれません。
エイズを発症させてからでは、治療の幅が狭まってしまいます。まずは体調不良の診察目的で病院に出掛けて、HIV感染の可能性を医師に打ち明けてみてください。
以上、後期HIV感染を経てエイズの発症が近付いた時期に出る諸症状をまとめましたが、いかがでしたでしょうか? 発熱やけんたい感、帯状疱疹は単なる疲れや不規則な生活が引き金となって起こる場合もありますが、エイズ発症が迫ったサインであるとも覚えておきましょう。
検査して感染していないと分かればスッキリするのですから、ぜひとも一度保健所(無料)か病院、有料の検査キットでチェックしてみてくださいね。
女子高生とクラミジア
今や性感染症性感染症は他人事ではありません。感染したことに気づかずに複数の相手と行為に及んでしまい、病気を伝染させてしまうこともあります。老若男女を問わず感染は広がっており、日本の女子高生は世界トップクラスの感染率となっているのが現状です。
たとえコンドームをつけたとしても、キスやオーラルセックスで感染する性感染症もあるため、感染を防ぐのは決して簡単ではありません。
■日本で一番感染者が多い性感染症「クラミジア」とは
クラミジアは日本で一番感染者が多いと言われている性感染症で、その数100万人以上ともいわれています。感染して放置すると男性は前立腺炎 や 血精液症、女性は不妊症や子宮外妊娠の原因になります。
この病気の怖い点は自覚症状がでにくいところにあるので、関係ないと思っている人も一度検査をしてみるといいかもしれません。
■クラミジアの検査・治療方法
クラミジアを病院で検査を行うときは、男性は入道の細胞をこすり取り、女性は子宮頸管の分泌物を採取して検査を行います。血液検査で「抗体」があるかどうかを検査することもできますが、現在はかかっていなくとも、過去に感染の経験があると「陽性」という結果がでてしまいます。
検査の結果「陽性」と判断されると、抗生物質を約1週間服用します。治療後に再検査を行って「陰性」と判断されると完治です。決まったパートナーがいるなら2人で完治しなければ、再度感染する恐れがあります。検査・治療は2人で行うことをお勧めします。
■高校生のクラミジア感染
冒頭で記載した通り、日本の高校生、特に女子高生は、世界でもトップクラスの感染率となっています。日本性教育協会(JASE)が高校生を対象にクラミジア感染について調査したところ、男子高校生の6.7%、女子高生の13.1%が感染していることが判明しました。
年齢別には1年生の女子高生は感染率17.3%、経験人数が5人以上と答えた女子高生の約30%が感染しているとのことです。
この結果は先進国の中でも最も高い感染率であり、日本の女子高生は世界でもトップクラスで性感染症にかかっているとも言えます。
■クラミジアの予防
クラミジアを予防する方法で性交渉(キス、オーラルを含む)を一切絶つという方法があります。しかし、これは現実的ではありません。不特定多数の人と関係を持つと当然感染する危険も高まるので、パートナーを限定してコンドームをすることも有効です。
もちろんそれだけで感染を防げるわけではありません。放置すると他の病気を誘発する可能性もあるので、定期的な検査をおすすめします。
みんな「性病をうつされる」可能性がある!
最近、性病にかかる人がとても増えています。その理由は「かかっても自覚症状が出にくいから」。 自分が病気であることを知らずにパートナーとセックスして、その結果パートナーにもうつしてしまうことが少なくないのです。
あなたが彼からうつされる可能性もありますが、逆にあなたが彼にうつすことだってあるかもしれません。 あなたのためにも彼のためにも、「彼や夫がかかるかもしれない性病」についてきちんと知っておきましょう。
今いちばん増えている「クラミジア感染症」
今、日本でいちばん多いといわれている性病は「性器クラミジア感染症」。 感染力がとても強い病気で、オーラルセックスでもうつってしまいます。男女問わず、この病気はかかっていても症状が出にくいのが特徴です。
残念なことに、風俗で安易なオーラルセックスサービスをする店が増えたことが、最近この病気が増えてきた原因のひとつともいわれています。
検査にかかる費用はだいたい3千~5千円程度。治療にもだいたいこれと同額程度がかかります。3割負担ならもっと安くなるでしょう。
自覚症状が確実に出る「淋病」と「梅毒」
根本的な治療が難しい病気として知られているのが「尖圭コンジローマ」。これは性器のあちこちにイボができてしまう病気です。 また、恐ろしい病気として知られている「HIV感染症」も、現在の医学では完治させることはできません。
HIV感染症に関しては、医療が進んで“死に直結する病気”ではなくなってきたものの、発症を抑えるためには一刻も早い治療が必要です。
ケンカの種になりそうな話題だけれど…
男性は女性と違って、性感染症への感覚が違います。 女性の場合は「自分のためじゃなく、将来の赤ちゃんのために予防したい・治療したい」と考える人が多いですが、男性はそうではありません。
生物学上の感覚の差はどうしようもない部分はありますが、それでも夫婦や恋人である以上、あなたにも彼にもお互いの身体を守る責任があります。
ですから、感情的なことは置いておいて、「性感染症になったらどうするか」ということを、一度冷静に話し合っておきましょう。あまり気持ちいい話題ではないけれど、ふたりの愛を確認できる、いいチャンスにもなるかもしれません。
性感染症なんて私には関係ない、なんて思っていませんか?
そんなことはありません。予防のためには「セックスのときにコンドームを絶対忘れない」というのが第一ですが、でも、たとえセックスしていなくてもかかってしまう性感染症は意外にたくさんあります。
ここでは、性感染症について簡単に解説します。
◆みんな誰でもかかる可能性がある、それが性感染症
性感染症には何だか恥ずかしいイメージがありますから、話を聞くことさえ抵抗があるという人もいるかもしれませんが、大切な自分の身体を守るために、正しい情報をきちんと知っておきましょう。
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◆「妊娠しにくいカラダ」になってしまうことも・・・
性感染症がなぜ怖いのかというと「多くの性病は不妊や早産につながる可能性が高いから」。 性感染症にかかったからといってすぐ不妊になるわけではありませんが、症状が進んで卵管や腹膜に炎症を起こってしまうとやっかいです。
いざ「赤ちゃんが欲しい!」と思っても、実際に妊娠できるまでにかなりの苦労することになります。 特に女性の場合は症状が出にくいので注意が必要。心当たりがあるなら即病院へ行きましょう。
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◆セックス以外でうつる性感染症もけっこうあります
冒頭にも書いたように、性感染症の中にはセックス以外が原因で起こるものも少なくありません。
たとえば原虫が原因で起こる「膣トリコモナス症」という性病は、タオルや下着、浴槽や便器を通じてうつることがありますし、カビの一種である「性器カンジダ症」はもともと人間の体内にある菌が原因で起こります。
また、クラミジアや淋菌以外の菌で起こる「非クラミジア・非淋菌性尿道炎」は、大便の拭き方や生理用品の取り扱いが原因になることもあるのです。
ちなみに日本でいちばん多いといわれているのが「性器クラミジア感染症」。確かにこの病気はセックスが感染ルートになることがほとんどですが、オーラルセックスや肛門性交でもうつってしまいます。
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◆「いつもと違う」と感じたらとにかく病院へ
性病の検査にはだいたい3千~5千円ほどかかるのが一般的。治療にかかる金額もだいたいこれと同額程度です。ただしこれは全額負担の場合ですから、3割負担ならもっと安くなります。
しつこいようですが、性感染症は誰でもかかる可能性がありますから、不正出血やおりもの、かゆみなど「何だかおかしいな」と思ったら即病院へ行きましょう。
思い切って病院にいくのはちょっと抵抗があるかもしれませんが、あなたの身体を守れるのはほかの誰でもない、あなただけなんです。あとになって後悔しないためにも、今のうちに自分の身体ときちんと向き合っておきましょう。
ムレムレの革靴の中で水虫が猛威をふるう季節。原因の白癬(はくせん)菌が爪の中に住み着くと、塗り薬では治らない。
治療の基本は飲み薬だが、持病薬との飲み合わせで薬が飲めない、効果が不十分などの場合、レーザー治療という方法もある。自費になるが選択肢の1つだ。
【爪の色や形に注目】
水虫は、皮膚の角質層や爪に多く含まれるケラチンというタンパク質を栄養にして生きている。爪水虫になると、爪が白癬菌の貯蔵庫になるので、足水虫が治らないばかりか、家族などにもまき散らす。
順天堂大学講師で皮膚科「パレスクリニック」(東京・竹橋)の春山喜一院長が説明する。
「塗り薬を使っているのに治らない、治ってもぶり返す。そんなガンコな足水虫に悪戦苦闘していたら、足爪に注目してください。爪甲(そうこう)の白~黄色の濁りや形の変形があれば爪水虫の可能性があります」
爪水虫自体にはかゆみなどの自覚症状がないので、気づかず放置している人が多いという。
【薬が使えない選択肢】
爪水虫の疑いがあれば、皮膚科で感染を調べてもらうことが重要になる。検査は爪を削って顕微鏡で見るだけ。10分程度で結果が分かる。
「爪は硬いので、外用薬を塗っても爪の中まで効力が届きません。ですから爪水虫の治療は、通常、抗真菌作用のある経口薬を3カ月から半年かけて飲む内服薬が使われていて、有効率は80%ほどです。
しかし、中には併用禁忌の持病薬を常用していて内服薬が使えない人、また肝機能障害や腎機能障害などの副作用を起こす可能性があり、通常は月1回の血液検査を行うので内服薬を使うのを嫌う人もいます。
当院では、そのような患者さんを対象にレーザー治療を行っています」
ただし、爪水虫のレーザー治療は欧米では認可されている治療法だが、国内では認可されていないので治療費は保険がきかず自費になる。
【有効率は内服と同じ】
レーザー治療は、「YAG(ヤグ)レーザー」という種類のレーザーを爪の外から照射する。所要時間は爪1本につき5-10分ほどだ。
「美容皮膚科のアンチエイジング治療に使われているレーザーで、皮膚や爪でも7-8ミリの深さまで届きます。このレーザーの熱で爪の中にいる白癬菌を蒸散させます。爪がかなり厚い人は、爪を少し削ってから照射する場合もあります」
これを1-2カ月に1回、5-6回を目安に繰り返す。費用は施設によって価格差が大きく、治療する爪の本数によっても異なるが、同院の場合でいえば1回の治療で1万円前後が必要だ。
「有効率は内服治療と同じで80%ぐらい。レーザー治療の特長はほとんど副作用がないので副作用を気にすることなく、基本的にはすべての爪水虫に適応できる点です」
《爪水虫の症状の特徴》
★爪が白、黄色、茶褐色などに濁っている
★爪がボロボロと欠ける
★爪が厚くなる
★爪には、かゆみや痛みなどの自覚症状はない
6月29日は、48年前、最初で最後の来日を果たした「ビートルズの日」。先月、元メンバーのポール・マッカートニー(71)の公演が中止になり、入院中に腸捻転の手術を受けていたことが分かった。腸捻転とは、どんな病気なのか。
【S状結腸に多い】
腸捻転は、何らかの原因で腸がねじれてしまい、腸の通過障害を起こす病気。それほど発症頻度は高くないが、高齢男性に起こりやすいといわれている。消化器外科専門医で山村クリニック(東京・茗荷谷)の山村進院長が説明する。
「大腸はある程度固定されていますが、圧倒的に多いのはS状結腸に起こる腸捻転です。この部分は固定されてなくブラブラしているので、便秘で便がたまるとその重さで、腸管へ扇状に延びる血管が走っている腸間膜の根元を支点にしてクルリとねじれてしまうことがあるのです」
高齢者は大腸の動きが弱いため便秘を起こしやすく、腸壁も薄くなるので便がたまりやすい。男性は骨盤が狭く、ねじれた腸が自然に戻るスペースが少ないので、女性より起こりやすいと考えられている。
【致命的なケースも】
S状結腸の腸捻転は、腹部の膨満感と嘔吐(おうと)、便秘が主症状になる。
「腸がねじれて血流が止まると、激しい腹部の痛みなどの虚血性の症状が現れます。ただし、高齢者は痛みを感じない人も多い。重症のケースで、血流障害から腸管が壊死(えし)したり、腸管が破裂して腹膜炎を起こすと致命的となる場合があります」
嘔吐や腹痛などの激しい症状が出ていなくても「便秘をしていておなかが張るのに、おならがまったくでない」、そんな異変があれば早期発見のキーワードになる。検査は普通の腹部X線で、すぐに診断がつくという。
【まずは内視鏡で戻す】
腹膜炎や腸管壊死を起こしていないS状結腸の腸捻転の治療は、まず大腸内視鏡を使った減圧・整復が行われる。
「内視鏡の吸引機能でねじれた腸内の内容物を吸い取り減圧し、それからS状結腸を元の位置に戻します。成功率は76-90%で多くは内視鏡で治ります。一方、腹膜炎や腸管壊死を起こした場合の緊急手術症例では手術死亡率(3-27%)が高くなります」
ただし、1度内視鏡で治しても、のびのびになっている腸管の再発率は高い。手術リスクが高くなければ、引き続き根治手術が検討される。
「根治手術は、腸管を20-30センチ切って短くします。高齢者は開腹手術より、術後の負担が少なく、回復が早い腹腔鏡下手術が推奨されます。術後の再発率は5%以下と報告されています」
《S状結腸の腸捻転の特徴》
★高齢男性に起こりやすい
★症状として、腹部膨満感、嘔吐、便秘、激しい腹痛などが現れる
★大腸内視鏡の処置で治るが再発が多い
★根治手術をすれば再発率が5%以下になる
頭痛(片頭痛)持ちの人は、梅雨の時季になると頭痛の頻度が増える。気圧変化が誘因になるからだ。しかし、中には肩や首のこりから起こる緊張型頭痛と思い込んでいる人もいる。自分の頭痛のタイプをよく知っておくことが大切だ。
【天気予報より当たる】
片頭痛は、脳血管が拡張し、炎症が生じて起こると考えられている。痛みの特徴は、こめかみの血管が脈打つように痛み、体を動かすと痛みが悪化する。頭痛に詳しい「山王クリニック」(東京・品川)の山王直子院長が説明する。
「片頭痛を持つ患者さんは、『天気予報より当たる』という人が多い。それは雨が降る前になると気圧変化で血管が拡張するからと考えられています。他にも、ストレス、寝不足、寝すぎ、飲酒など。女性の場合は月経が誘因になります」
寝だめをしようと、平日より長く寝る土日に限って頭痛がする「週末頭痛」の人は、片頭痛の疑いが強いという。
【予兆は肩や首のコリ】
片頭痛は体質的なもので、親にあると半数ぐらいが遺伝する。しかし、内科を受診しても肩・首の筋肉や神経の緊張で起こる緊張型頭痛と診断されたり、自分で「肩こりのせい」と思い込んでいる人も少なくない。
「片頭痛のほとんどの人は頭痛がする前に肩や首がこる予兆があります。緊張型頭痛とは対処法がまったく逆なので、混同しないことが重要です。よく片頭痛の前兆にあげられる『視界にチカチカした光が見える』ケースは、むしろ少数です」
対処法は、片頭痛では痛むこめかみをアイスノンやペットボトル飲料などを当てて冷やすのが基本。緊張型頭痛の場合は、逆にお風呂などで温まると痛みが楽になる。自分の慢性頭痛はどのタイプなのか、頭痛外来の専門医にきちんと診断してもらうことが大切だ。
【薬物乱用に注意】
片頭痛の治療は、生活指導で誘因を避け、頭痛が起きたときに使う薬や予防薬が処方される。
「片頭痛が起きたときには、脳血管の拡張と炎症を鎮めるトリプタン製剤を使います。症状に合わせて内服、注射、点鼻薬があります。頭痛頻度が多い人には予防薬としてカルシウム拮抗(きっこう)薬や抗てんかん薬などがあり、頻度や程度を軽くすることができます」
市販の鎮痛薬を使ってもいいが、月10日以上飲むと「薬物乱用頭痛」を起こす場合があり、薬を止めない限り頭痛が治まらない。上手な頭痛の管理法を専門医に指導してもらった方がいい。
「片頭痛の人は若い時から頭痛持ちを自覚していると思いますが、普段と違う痛みを感じたり、急に頭痛が増えたら要注意です。脳腫瘍や脳血管障害など他の病気の疑いがあるので、必ず早めに受診してください」
《片頭痛の特徴》
★仕事や日常生活に支障をきたす頭痛
★体を動かすと痛みが悪化する
★吐き気やおう吐を伴う
★光がまぶしい
★音や匂いに敏感になる
★入浴すると悪化する
緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が高まり、視神経が圧迫されて損傷する病気。
10年ぐらいかけて視野(見える範囲)が狭くなり、放置すると失明に至る。目の痛みなどが現れる急性緑内障でなければ、通常、初期ではほとんど自覚症状がない。健診での早期発見が重要だ。
【8割が未治療でいる】
失明原因第1位(全体の約25%)の緑内障の発症頻度は、40歳以上では約20人に1人。しかし、眼科を受診している人は約20%にすぎない。井上眼科病院(東京・お茶の水)の井上賢治院長が説明する。
「人は中心視野を使って両目でカバーし合って物を見ているので、初期の段階で視野の欠損に気づく人はほとんどいません。初期のうちに早期発見できるのは検査だけです。会社の健診の眼底検査で異常を指摘されたら、必ず精密検査を受けてください」
一度障害された視神経は元には戻らない。どれだけ早く治療が開始できるかが、失明を免れるポイントになるという。
【家族歴はリスク高い】
目の中は「房水(ぼうすい)」という液体が酸素や栄養を運んでいる。房水は毛様体という部分で作られ、シュレム管という部分で排出されている。流れが途中で妨げられたり、排出口が目詰まりすることで眼圧が上昇するのが緑内障の病態だ。
「しかし、日本人の緑内障の7割は眼圧が正常範囲でも発症する『正常眼圧緑内障』です。これは同じ眼圧でも発症する人、しない人がいるわけですから、視神経が眼圧に対して体質的に弱い眼であることから発症すると考えられています」
緑内障の危険因子のひとつが家族性。国内の疫学調査では、兄弟に緑内障患者がいると3・7倍、両親では2・2倍、いとこでは2・9倍リスクが高いという報告もある。
「家族内に緑内障患者さんがいる人は、40歳を過ぎたら年1回の定期検診をお勧めします」
【点眼薬で眼圧管理】
発見された場合、治療は進行を止める、遅らせることが目標になる。まずは眼圧を下げる点眼薬が第一選択肢になる。
「点眼薬は、房水の産生量を減らしたり、房水の排出を促進させたりするなど作用機序の違うものが数種類あります。持病によっては使えない薬もあり、まず1種類で様子を見て、途中で薬を変更したり、2-3種類を併用してもらう場合もあります」
点眼薬で眼圧コントロールが十分でない場合には、房水の流れや排出を促進させるレーザー治療や手術が検討される。
「検査だけでなく、日常ではカレンダーのマス目などを片目ずつ見て、視野や見え方に異常がないか確認することも早期発見につながります」
《緑内障を調べる主な検査》
★眼圧検査…目の表面に測定機器や空気をあてて測定する
★眼底検査…視神経が障害されていないか眼底を検査する
★視野検査…見える範囲を検査し視野欠損の有無を判定する
★三次元眼底解析検査(OCT)…断層撮影で網膜の厚みなどを測定する
子作りまで可能になった「エイズ」治療の最前線――菊地正憲(下)
かつて「死に至る病」の象徴だったエイズだが、現在、20歳のHIV感染者の平均余命は40~50年ほどまで延びている。その背景にあるのは「科学の発展」と「治療法の変化」。ジャーナリストの菊地正憲氏が、エイズ治療の最前線に迫った。
「HIV感染症は今や医学的には管理可能な慢性疾患になった」
と明言するのは、年間約50人の新規感染者・患者を診察する横浜市立市民病院の立川夏夫医師。
「定期的にインシュリンを打たないといけない糖尿病患者に比べて、エイズを発症していないHIV感染者は闘病がずっと楽です。糖尿病は進行するとカロリーコントロールを毎日やらないといけない。HIV感染者は1日1錠飲めば通常の生活が送れるのです」
90年代前半には、エイズを発症した患者に対して、あまり長い余命が望めなかった。そこで、「貯金があるなら、人生の記念に旅行にでも行ったらどうか」と勧めていたのが通例という。しかし、普通の人とほぼ同じ余命が望めるようになった今は、「年金に入っているか」、「仕事は辞めないように」などと助言するようになった、と話す立川医師。
そして、薬でウイルス量を大幅に減らし、他者に感染しないようにできることから、今では、夫、妻のどちらかが感染者であっても、子供を持つことも可能になったという。
薬を飲んでいれば天寿を全うできるまでに至ったため、研究者は更なる高みを目指している。
薬である限り、飲み忘れの心配は常にある。患者は皆、ピルケースを携帯し、時計などのアラームを利用して備えているが、例えば、急な出張で手元に薬がないという状況もあり得るのだ。
注射方式への転換、医療費は
そこで、次のステップとして、より簡便な注射方式への転換が模索されているという。立川医師が続ける。
「注射自体の痛さや注射量の問題がなければ、服薬から替わる可能性があります。開発は順調に進んでおり、近く1カ月に1回の注射で済む方法が、欧米で認可されるのではないでしょうか」
ひとつだけ心配なのは、これだけ進歩的な治療が生まれれば、それに伴って、医療費も高額になるのではないかということ。しかし、HIV感染症の診療を行う東京都新宿区の「しらかば診療所」の井戸田一朗院長は説明する。
「医療費助成制度などを利用すれば、概ね年間2万~4万円で済みます。今は中・低所得者であっても、安心して治療できる体制になっています」
エイズを発症すれば、障害者認定を得られるケースがほとんどだ。そうなれば、医療費助成を受けられる。また、高額療養費制度も活用できるのだ。
根治は可能か
いかがだろうか。
順調そのものに見えるエイズ治療。今後の課題は何だろうか。ウイルスの増殖を抑えることに成功している今、注目は、予防の可能性、そして完治薬の開発である。
日本のエイズ治療の中核施設である国立国際医療研究センター病院の潟永(がたなが)博之医師は、この2点について次のように説明する。
「ワクチンはまだ完成には至っていませんが、海外では抗HIV薬を予防薬として内服し、効果が認められつつあります。いずれ、ワクチンは出来ると期待しています。一方で、根治については、まだ目途が立っていません」
一方、立川医師は、将来的に感染後の治癒を目指す最新治療として、HDAC阻害剤という薬がいま注目されていると説明した。
「ウイルスの遺伝子は、体内のリンパ球に入り込むとしばらくは眠っているのですが、いずれは絶対に起きる。この時に抗HIV薬が効きやすいのです。HDAC阻害剤は、この眠っているウイルスを起こして、殺すという薬です。優秀な叩く薬はあるのに、起こす薬はなかったので、画期的なアプローチです」
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啓発の必要性
現在、世界のHIV感染者数は3670万人で、新規感染者数は年間180万人。国内の累計感染者・患者(発症者)数は2万7000人以上とされ、ここ10年間は毎年1500人前後の新規感染者・患者が報告されている。性的接触により感染する例がほとんどで、累積の感染者・患者のおよそ9割は男性。特に男性の同性愛者に多いといわれる。
先の井戸田院長によると、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、〈2020年の時点で、世界中のHIV陽性者の90%が検査を受けてHIVに感染していることを知り、うち90%がHIV治療を受け、さらにそのうちの90%が治療の効果で体内のウイルス量が十分に抑制されている状態〉を目指しているという。
達成されれば、2030年までに、エイズが「公衆衛生上の問題ではなくなる」水準にまで達するという。
日本は現在のところそれぞれ85・6%、82・8%、99・1%と推測される。検査や治療開始の点ではやや目標を下回っており、その数値の底上げが課題だ。
立川医師は、
「若い人にももっと関心をもってほしい」
と強調した。
「最近、私のところには20代ぐらいの若い感染者の来院が目立っています。あまりエイズの知識が伝わっていないとも感じるのです。マスコミの報道も以前と比べれば、ずいぶん減りました。とにかく少しでも気になることがあれば、検査してほしい。保健所では検査を無料で受け付けていて、匿名でも受けられる。通常約2週間後には確定結果が出ます。検査キットを通販で購入し、自分で検体を採取して返送する方法もあります」
もっとも、
「課題は他科の医療機関との連携。口腔疾患やがんなど、HIV感染に関連した病気も多いのですが、なお診療に抵抗を抱く医師も少なくないのです。感染者の側も、そうした医療機関には行きにくくなる。医療機関として感染を理解して受け入れて、各々の得意分野で医療を提供してもらえればと願っています」(井戸田院長)
薬の進歩に比べれば、まだまだ意識の変化は遅れているのが現状か。
医療問題を軸に議員活動を展開する川田龍平・参議院議員(41)氏は、エイズ問題についてのより一層の啓発の必要性も訴えた。
「社会には偏見や差別がまだ残っており、苦しむ感染者も多い。特に余命が延びた分、高齢の感染者が、介護などを他の人と同様にきちんと受けられるかといった問題も生じてきています。感染をこれ以上、増やしてはいけないのです」
これも医学の進歩ゆえに生じる課題だろう。
「死の病」だった時代から30年。エイズ治療は新たな局面を迎えているのである。
菊地正憲(きくち・まさのり)
1965年北海道生まれ。國學院大学文学部卒業。北海道新聞記者を経て2003年にフリージャーナリストに。徹底した現場取材で政治・経済から歴史、社会現象まで幅広いジャンルの記事を手がける。著書に『速記者たちの国会秘録』など。
子作りまで可能になった「エイズ」治療の最前線――菊地正憲(上)
世界中に掲げられたレッドリボン。12月1日、世界エイズデー恒例の光景である。昨年、2017年はエイズ治療薬が世に出て30年。医療は急速な進化を遂げ、「死の病」は、子作りも出来るまでにコントロール可能な病となった。ジャーナリスト・菊地正憲氏による、治療最前線。
***
. 10年間の国会議員生活で、質問は200回超、政府に出した質問主意書は、2017年だけでも17件。
かつて“死の影”を背負っていたその青年は、いま壮年の域に差し掛かり、国会議員として旺盛に活動している。その背中に“暗さ”はまったく感じられない。
「20年以上前は、複数の薬を1日5回も飲んでいました。また、吐き気や下痢、腎臓結石といった副作用にかなり悩まされていましたね。歩くことですら一苦労でした」
と振り返るのは、川田龍平・参議院議員(41)。
川田氏は幼いころに血友病の治療のために使用した非加熱血液製剤によりヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した。薬害エイズ訴訟で被害者救済のシンボルとなったのは、広く知られている。
「しかし、今では薬が飛躍的に進歩して、1日わずか1回で済みます。副作用もなくなり、逆に体調が良すぎる時などは、出張などで飲み忘れてしまいそうになるぐらいです。実は、妻との間に子供を持とうと一時は不妊治療もしていました。以前では考えられなかったことですよ」
今は残存するHIVの増加を抑えるというより、その数を懸命に減らしている状態という。血液中の免疫細胞の数は普通の人と変わらないレベルだ。
もう1人、別の患者の“実感”を聞いてみよう。
HIV感染者(陽性者)たちで作るNPO法人「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」。
代表を務める高久陽介さん(41)は言う。
「10年前は副作用がほぼ毎日襲ってきて、仕事も手に付かないほどでしたが、今は信じられないほど生活が楽になりました」
同性愛者の高久さんは2001年1月、都内の保健所での検査で感染が見つかった。当時のパートナーからは、事前に感染者であることが告げられていた。もっとも、「自分が(感染者に)なるという心配はあまりしていなかった」と言うが。
「長く生きられるか、勤めていた会社の人に理解してもらえるか、治療費はどれぐらいか……。いざ感染者になってみると、不安を感じるようになりました」
服薬を始めて間もなく、吐き気や下痢のほか眩暈、発疹、さらには不眠といった副作用が出た。出勤も辛くなってきたため、「迷惑をかけてはいけない」と、直属の上司に感染を明かした。
「幸い、上司は理解してくれて、体調が良くない時に遅い時間の出社を認めるなどの配慮をしてくれました。でも、特別扱いされているという負い目もあり、同僚の視線が気になりました」
ところが、そんな生活も、12年に新薬に変えてから一変した。1日2回、計3錠の服薬内容は変わらないものの、副作用がなくなり、免疫細胞の数も正常に戻った。
今は退社し、「ジャンププラス」の活動に専念する。啓発活動や会報の発行、陽性者からの相談などに忙しい日々を送る。
「HIV陽性者のひとりとして、これからは穏やかに、健康に長生きするのが目標。同年代のほかの人と全く同じなのです」
と言う。
「エイズパニック」
かつてエイズは「死に至る病」の象徴だった。
この病は、HIVに感染することから始まる。すると、血液中の免疫細胞「CD4陽性リンパ球」の数が、ウイルスの攻撃により減少し、免疫力が低下していく。その結果、感染症やがんを発症した人を「エイズ(後天性免疫不全症候群)患者」、感染しているものの未発症の人を「HIV感染者(陽性者)」と呼ぶ。発症すると、カポジ肉腫やカンジダ症、ニューモシスチス肺炎といったさまざまな病気に罹患しやすくなる。HIVに感染後、治療しなければ、数年から10年程度の潜伏期間を経た後、確実にエイズを発症し、その後2~3年で死に至る。
この病が世の中に知られるようになったのは、1980年代前半。81年に、米国で同性愛者の男性がエイズ患者として初めて症例報告された。日本では85年、最初のエイズ患者が見つかり、87年には神戸市内で初の女性患者が確認された。マスコミもこぞって報道し、「エイズパニック」と呼ばれる社会現象にまでなった。
しかし、それから30年経った今、冒頭のように、エイズ治療は驚くほど様変わりしている。
その進歩は、「科学の発展」と「治療法の変化」による。
当初、治療法がまったくなかったこの難病に対して、ウイルスを抑制する抗HIV薬が発売されたのは、87年のこと。エイズ研究の草分けのひとりである満屋裕明氏(現・国立国際医療研究センター研究所所長)が「アジドチミジン」という薬に抗HIV作用があることを発見したのが始まりだ。これにより、患者の余命は延びた。
しかし、問題もあった。
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平均寿命70歳
日本のエイズ治療の中核施設である国立国際医療研究センター病院の潟永(がたなが)博之医師は、次のように解説する。
「初期の薬剤開発は、とにかくウイルスの増殖を抑制することに集中していました。HIVは突然変異しやすいため、薬に耐性を持つことがある。簡単に耐性ウイルスが出現しないよう、タイプの違う複数の薬を同時に服用する必要がありました」
「多剤併用療法」という治療法である。その結果、1日に茶碗1杯分と言われるほど、何十錠もの薬を飲む必要があった。それだけ負担が重ければ、「飲み忘れ」や「さぼり」が生まれてくる。すると、薬が効かない耐性ウイルスが出現してくる……。
「これが非常に厄介で、一度現れてしまうと完全な薬効が得られず、本人のウイルス量が抑えられないばかりか、感染者がさらに増えることにもなりかねない。薬はできるだけ飲みやすくした方がよいのです」
メーカーは必死の開発を続けた。そして、必要な成分を複数配合し、効き目の長い合剤の開発に成功。30年弱をかけて、13年、最少で1日1回1錠の服用で済むようにしたのだ。
「生涯にわたって毎日、必ず服薬してHIVの増殖を抑制することが最重要。製薬メーカーが錠数を減らして飲みやすいものを開発したのです。1つの錠剤に複数の薬が入った合剤になっています。いったん発症しても、適切な服薬治療によって免疫機能が戻る人も多いのです」
現在の基本の処方は、主力のキードラッグ1つを選び、さらに補助的な2つの薬を選ぶという、3つの薬の組み合わせとなっている。
薬剤開発の進歩は、患者の負担を軽減した。かつての薬剤に見られたような重篤な副作用も少なくなった。
これらによって、薬を飲んでさえいれば、エイズを発症させないことが可能になった。今では20歳のHIV感染者の平均余命は、40~50年ほどまで延びた。つまり、HIVに感染しても、きちんと治療すれば、発症しないまま平均して60~70歳までは生きられるようになったのである。
ちなみに、現在、最も耐性ウイルスが出現しにくいと言われているのは、同じく満屋氏の開発した「ダルナビル」と、日本の製薬メーカーが関わった「ドルテグラビル」の2つの薬とか。日本の研究は、まさに世界の最先端をいっているのである。
「国内で患者が相次いで確認されはじめて大騒動になったころから考えれば、隔世の感がありますね」
と潟永医師は続ける。
「私が20年ほど前にエイズの診療をしていた病院には、眼科がありませんでした。そこで担当していた患者さんが網膜剥離を起こしたのですが、付近の病院で眼の手術をしてもらおうとしたら、どこも診療拒否なのです。仕方がないので、伝(つて)を頼って遠くの病院にその状態の悪い患者さんを連れて行きました。その病院で、他の患者さんの手術が終わった夕方にようやく手術をしてもらった、ということもありました」
偏見も今以上に強かった時代、患者発見から日が浅い未知のウイルスに対し、医師でさえどう対処してよいか分からなかった。そこから考えれば、治療の進歩は目を見張るべきものがある。
***
(下)へつづく
菊地正憲(きくち・まさのり)
1965年北海道生まれ。國學院大学文学部卒業。北海道新聞記者を経て2003年にフリージャーナリストに。徹底した現場取材で政治・経済から歴史、社会現象まで幅広いジャンルの記事を手がける。著書に『速記者たちの国会秘録』など。
今年3月に国内初となる「便失禁診療ガイドライン」(日本大腸肛門病学会)が発行された。国内の便失禁の推定患者は500万人だが、8割の人が受診していない。その理由として、「はずかしい」「年だから仕方がない」「どこを受診してよいか分からない」などであきらめ、ナプキンや尿漏れパッドを使ってしのいでいる人が多いという。治療すれば症状が改善されることを認識しておこう。
【専門医が少ない】
便が漏れてパンツを汚してしまう「便失禁」。病院を受診する患者の7~8割は女性だが、疫学調査では有症率に男女差はなく、20~65歳で4%、65歳以上では7・5%と高齢になるほど起こりやすい。指扇病院(埼玉県)・排便機能センター長の味村俊樹副院長はこう話す。
「肛門科や消化器科へ行っても、便失禁を専門的に診療できる医師はまだ少ない。しかし、ガイドラインができたことで多くの施設で初期診療ができるようになると期待しています」
これまでも医学部の教科書には、便秘の項目はあっても便失禁の解説はなかったという。
【加齢で肛門ゆるむ】
便失禁には、「切迫(せっぱく)性便失禁」「漏出(ろうしゅつ)性便失禁」の2つのタイプがあり、両症状を併せもつ「混合性便失禁」もある。
「原因として最も多いのは、加齢による内肛門括約筋の機能低下。その他に、肛門の手術や出産による肛門括約筋や関連する神経のダメージ、脊髄損傷などによる神経への影響、過敏性腸症候群などがあるが、複数の原因が複合して起こる場合が多い」
いま困っていれば治療の対象。知らないうちに便が漏れたり、便失禁に不安をもつ人は受診してもらいたいという。
【重症なら外科治療も】
初期診療では、大腸内視鏡検査などで他の疾患の鑑別をし、問診で便失禁の重症度を評価。治療(初期保存的療法)は、薬物療法と食事・生活・排便習慣の指導が中心になる。それでも改善が不十分であれば「専門的診療」へ移る。
「直腸肛門機能検査などでさらに詳しく調べ、専門的保存療法を行います。内容は、弱った骨盤底筋を鍛える『骨盤底筋訓練』、骨盤底筋の活動をモニタリングしながら訓練をする『バイオフィードバック療法』、『アナルプラグ(肛門タンポン)』などがあります」
この保存療法でダメなら外科治療もある。小型の刺激装置をおしりに埋め込み、継続的な電気刺激で症状の改善を図る「仙骨神経刺激療法」だ。
「患者さんの半数は初期保存的療法でコントロールが可能。専門的保存療法でも9割は満足のいく改善が期待できます」
専門的診療のできる施設は「おしりの健康.jp」のホームページで検索できる。
《便失禁の種類と症状》
★切迫性便失禁(約15%)
便意は感じるが、排便を我慢できずにトイレに着く前に便が漏れてしまう
★漏出性便失禁(約50%)
便意がなく、気づかないうちに便が漏れてしまう
★混合性便失禁(約35%)
切迫性便失禁と漏出性便失禁の両方の症状がある
梅毒の感染が全国に広まっている。統計を取り始めた1999年以降、患者数は最も多く、すでに今年は4500人を超えている。国立感染症研究所によると、東京や大阪など大都市圏で患者が多いのは従来通りだが、今年は岡山や熊本、広島など地方で急増しているのが特徴的だ。特に増加しているのが20代の女性で、男性は20~40代が多い。
患者の年齢分布などを考えると、主に性風俗産業に従事している女性と、その相手となる男性のあいだで感染が広がっていると考えられる。だが、それ以外にも若者の性に関するモラル低下も大きな原因となっているようだ。実際にコンドームを使わずに性行為をする人が増えていることや、キスなどオーラルセックスを気軽に相手としてしまうことで、思わぬ感染につながるケースも多いという。
「梅毒はトレポネーマという種類の菌が粘膜などを通して入り込み感染するので、感染ルートは“性的接触”が主になりますが、まれに風呂やサウナなどで感染することもあるので、タオルなど直接肌に触れる物を他人と共有することは避ける必要があります」(都内のクリニック医師)実際に梅毒に感染した場合、進行状況によって第1~4期に分けられる。
【第1期】
感染してから3カ月くらいまで。感染場所に小さなしこりのようなものができるが、痛みなどを感じることは少なく、感染したこと自体分かりにくい場合が多い。
【第2期】
トレポネーマが増殖し、体中のさまざまな部分に血液を通して回っていく。プツプツとした発疹ができるが、この段階ではまだ体調に大きな変化があるわけではない。これらの症状は3カ月から3年ほど続き、自然に消えた後は、無症状が続く。
【第3期】
皮下組織に大きなしこりができる。治療薬もあるので、ここまで病状が進行することはめったにないが、放っておくと神経麻痺や大動脈炎などの症状が出ることもあり、注意が必要。
【第4期】
心臓、血管、神経、視力などに重い障害が出るが、現在ではここまで移行することはほとんどない。かつては“不治の病”といわれた梅毒だが、現代では検査方法の発達や専用の治療薬もあるので、治療や予防も比較的簡単に行える。まずは、感染する可能性の高い性交渉時に、必ずコンドームを使用することを心掛けることが大切だと言えよう。
梅毒に感染したことがきっかけでエイズウィルス(HIV)やクラミジアの感染経路にもなりやすくなる。少しでも感染が疑われる症状が表れたら、他人にうつしてしまう前にかならず病院に足を運ぶことが重要だ。
睡眠を健康的にとるための「睡眠指針」(厚労省)が11年ぶりに改定された。世代別に必要となる睡眠時間の目安などが示されているが、指針には出てこない快眠の条件がまだある。枕が合っていないと不眠の原因になるので注意しよう。
【原因は睡眠姿勢】
毎晩、何気なく使っている枕だが、睡眠の質を大きく左右する。全国でも珍しい「枕外来」をもつ16号整形外科(神奈川県)の山田朱織院長が説明する。
「睡眠姿勢が悪いと、首の神経を圧迫したり、血液循環やリンパ液の流れが悪くなり、不眠や体調不良(肩こりや腰痛など)の原因になります。その睡眠姿勢は、7割が枕、3割は寝台によってほぼ決まります」
つまり、枕が体に合っていないと、寝つけない、夜中に目が覚めてしまうなどの睡眠障害を引き起こす。心身がリフレッシュされず、鬱病などの精神疾患に関わる場合もあるという。これではいくら適切な睡眠時間をとっても台無しだ。
【枕は寝返りが重要】
快眠できる睡眠姿勢を整えてくれる枕のキーワードは「寝返り」。無意識の就寝中に、あおむけと横向きの寝返りが最小限のエネルギーで自然に打てる枕が、その人の体に合った理想の枕になる。
「快眠枕の3大ポイントは、(1)高さ(2)硬さ(3)形状-です。高さは、横向きで寝たときにおでこ、鼻、胸の中心の体軸が一直線になること。
その高さが一晩中維持できるように、硬さは沈んでも5ミリ以内。形状は、真っ平が最もエネルギー消費が少なく楽に寝返りが打てます」
低反発ウレタンのような素材は柔らかくて気持ちいいが、頭が沈み込み固定されるので寝返りの邪魔をする。羽毛やソバガラ、プラスチックチップなども、常に高さが一定ではないので本来、枕には適さないという。
【対策は自家製枕】
そう考えると、市販されている枕選びは結構難しい。山田院長は、患者に自分で作る「玄関マット枕」を勧めている。
「使うのは玄関マット(毛足が短いもの)と、タオルケットやバスタオルです。玄関マットを折って土台にし、その上にタオルケットを使って高さを調節します。
首に当たる部分は直角になるようにそろえます。のどや首筋に圧迫感がなく、スムーズに寝返りが打てるようにミリ単位で微調整してください」
そもそも枕は、その人の体形の変化に合わせて定期的なメンテナンスが大切になるという。自家製枕であれば、それも簡単に修正ができる。
「人生の3分の1は睡眠です。人はその時間を使って心身を回復させています。睡眠を治療として有効に使うためにも、体に合った枕が非常に大切になります」
HIVに感染した献血者の血液が検査をすり抜け、輸血された人が感染した問題。他のウイルスでも同じような感染は起こるのか。検査の現状を検証する。
【『深・裏・斜』読み】
病気や事故の手術の際、患者に輸血する血液を提供する「献血」。11月、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した献血者の血液が、日本赤十字社の安全検査をすり抜けて輸血され、その後患者に感染したことが分かった。
B型肝炎など他のウイルスも検査対象となっているが、今回のような感染は起こりうるのか。献血に対する検査の現状と安全対策を検証した。(道丸摩耶)
◆検査対象は6種
東京都江東区の日赤関東甲信越ブロック血液センター。関東甲信越地方の1都9県で献血された血液の検査と、血液製剤の製造を行う全国最大の施設だ。献血者の36%に当たる年間約190万人分の血液を取り扱っている。
検査は大きく分けて2段階。最初の検査では、血液を媒介して感染するHIV▽B型肝炎▽C型肝炎▽成人T細胞白血病の原因であるHTLV-1▽妊婦が感染すると死産の恐れがあるヒトパルボウイルス(リンゴ病)▽梅毒-の6種の感染の有無を調べる。
ここで感染の可能性があるとされた血液は除かれ、残りの血液は第2段階の検査に回される。感染初期は血中のウイルス量が少なく、通常検査では検出できないことがあり、B型肝炎、C型肝炎、HIVの3種のウイルスについては、
ウイルス特有の遺伝子の一部を人為的に増やし、検出しやすくする検査を行う。NAT(核酸増幅検査)と呼ばれるこの検査では、現在は20人分の血液をまとめて実施しているが、来年からは1人ずつにしてさらに検出感度を上げる。
ただ、NATは3種だけでも、1600人分の検査に4時間40分かかる。そのため「性行為で感染する恐れのあるウイルスを選んでいる」(鈴木雅治・同センター検査副部長)という。
◆無制限にやれず
ここまで安全に気を配っていても感染を完全に防ぐことはできない。
厚生労働省によると、平成23年には検査をすり抜けた血液製剤の輸血によりB型肝炎に感染した例が13件起きた。
検査項目にないウイルスなどが見つかることもある。今年8月には、献血者の中に、重い心臓病などを引き起こす「シャーガス病」に感染した人がいたことが判明。この献血者の血液を輸血された人への感染はなかったが、こうした事態が起こりうる恐れは常にある。
ならばなぜ、6種に絞って検査するのか。厚労省血液対策課は「血液で感染する病気は多いが、技術的にも時間的にもコスト面からも、検査を無制限にはやれない」とする。
6種は血液感染の割合が高いうえ、日本人の有病率が高かったり感染すると重い症状を引き起こしたりする感染症だ。
ただ、状況が変われば検査項目が変わる可能性もある。「海外で新たに流行している感染症など、さまざまな情報を集めながら定期的に厚労省の専門家会議で検討している」(同課)という。
さらに、検査項目外の感染症を予防するため、さまざまな病原体を死滅させる不活化技術の導入も検討されている。病原体混入のリスクは減るものの、血液に薬剤を入れることにより、品質変化が起きる可能性もあり、慎重に検討している。
東京慈恵会医大付属病院輸血部の田崎哲典診療部長は「日本の血液製剤は非常に安全性が高い。とはいえ輸血は感染症以外にもさまざまなリスクがあり、100%の安全はあり得ない。患者への正確な情報提供も大切だ」と話している。
■リスク排除 問診が重要に
現在、必ず検査が行われている感染症は6種だが、それ以外の感染症のリスクを排除するためにも、問診が非常に重要となる。
献血を希望する人は、半年以内に不特定の異性や男性同士の性的接触があったかなどの質問に回答する。3日以内に抜歯など出血を伴う歯科治療を受けた場合や、1カ月以内にピアスの穴を開けた場合などは、ウイルス感染の可能性があるため献血できない。
これ以外にも、例えば今年初めて献血者から確認されたシャーガス病は中南米で流行しており、日赤は中南米出身者や長期滞在者は申告するよう呼びかけている。
また、クロイツフェルト・ヤコブ病予防のため、欧州の流行地域に滞在していた人は、献血を断られる場合もある。
HIVについては特に厳重で、半年間の性的接触について複数回の問診が行われる。献血時に感染の不安を言い出せなかった人のために、後から匿名でかけられる無料電話も設けている。
規制緩和により、4月から薬局などでの自己採血検査が正式に解禁された。今後、スクリーニングの簡易検査として普及が期待されるのが、発症しても症状のない糖尿病の検査。早期発見のために、街角検査を上手に活用しよう。
【過半数が未治療】
地域の薬局を訪れ、自分で指先に微小の針を刺して血液を採り、薬剤師が専用の解析装置にかけてHb(ヘモグロビン)A1c値から糖尿病の疑いを判定してくれる。
この仕組みを普及させようと筑波大学が中心となり、2010年から「糖尿病診断アクセス革命」というプロジェクトが進められてきた。代表を務める同大内分泌代謝・糖尿病内科の矢作直也准教授が、糖尿病検査の現状を説明する。
「厚労省の調査では、糖尿病が強く疑われる人は950万人。うち5-7割が治療を受けていない。40歳以上では特定健診が制度化されたが、受診率は全国平均で40%前後です。
糖尿病を発症していても気づかないまま、何年も放置して進行させている相当数の人が見逃されているのです」
糖尿病を放置して怖いのは、3大合併症を引き起こすこと。(1)手足のしびれや痛みが現れる「神経障害」(2)失明原因第2位(年間約3000人)の「糖尿病性網膜症」(3)透析導入原因第1位(年間約1万7000人)の「糖尿病性腎症」だ。
「3大合併症だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、閉塞(へいそく)性動脈硬化症などの原因にもなります。糖尿病の放置は、生命を左右する大病へのカウントダウンが始まっていることを意味するのです」
【直近の平均値が出る】
糖尿病の診断は、採血による血糖検査(別項の3種類)とHbA1c検査で行う。血糖検査だけなら別の日に2回、血糖検査とHbA1c検査の組み合わせなら1回でも基準を超えれば糖尿病と診断される。
「HbA1c検査がスクリーニングに適しているのは、直前の食事の影響を受けず、過去1-2カ月の平均的な血糖値の高さが調べられるからです。
ただし、簡易検査はあくまで『疑いを調べる検査』です。糖尿病の疑いが分かったら、必ず医療機関で血糖検査を加えた本検査を受けることが重要です」
毎年、きちんと会社の健診を受けていない。かといって平日に半日潰して病院へ行く時間が取れない。そんな人には街角の薬局や駅前などの催事スペースで、10分ほどで済む簡易検査が受けられればありがたい。
「プロジェクトでは、東京都と徳島県の20薬局で試験的に無料の簡易検査を行ってきました。今年度から日本薬剤師会を中心に薬局を健康情報拠点にしようとする流れがあるので、簡易検査が受けられる薬局は今後、どんどん増えていくはずです」
絶対にお世話になりたくない、そして他人に知られたくないのが「性病」だ。歓送迎会などが多いこの季節、お酒の勢いでついつい風俗に突撃しちゃうことも多いので要注意だ。
以下の症状が出ていたら、すでにもらっている可能性が高い。性病治療・性病検査専門の「池袋 山の手クリニック」の山口眞澄先生に解説いただいた。
・痒(かゆ)い、痛い
「腫れて痒いのはカンジダの可能性がありますね。腫れて痛いんだったらヘルペスの可能性があります。おしっこをするときに痛みがあるのは尿道炎かもしれません。となると、淋病にかかっている可能性が高いです」
・発疹、膿(うみ)が出る
「アトピーとか皮膚の弱い人は別にして、発疹があったら尖圭(せんけい)コンジローマや梅毒疹っていうことが考えられます。おちんちんの先から膿が出ていたら淋病やクラミジアだと思いますね。
淋病の場合は、濃い色の膿が出てくるんですけど、クラミジアの場合は、サラサラした感じの膿です。たまに、ふたつ同時に感染することもあります」
・自覚症状がまったくないけど?
「クラミジアは自覚症状がほとんどないこともあって、風俗などでよく遊んでいる男性の15%くらいはかかっているという話もあります。痒くないから大丈夫だと思っていると、知らない間に奥さんや彼女にうつしていたということにもなりかねません」
・一緒に住んでいる家族にもうつしてしまう?
「たまに、お父さんが淋病で、膿がついてるタオルを子供が使って感染したということがあるんです。
だから、尿道から膿が出てるときにタオルを使うとまずいですね。熱湯で消毒するか、捨てるかしたほうがいいです。
お風呂はいっしょに入っても大丈夫ですよ。淋菌もクラミジアも梅毒も熱に弱いので、よっぽど濃厚な接触をしない限り問題ないです。ひとつの鍋を一緒に食べても、HIVも梅毒も、すべてにおいて問題ないです」
・エイズをはじめ、性病にかかる人は減っている?
「逆ですね。日本ではじわじわ増えてますよ。ちなみに先進国でエイズが増加しているのは日本だけです。淋病やクラミジアもうちの医院では増えてますね」
・その理由は?
「やっぱりオーラルセックスだと思いますよ。オーラルセックスってコンドームを使わないじゃないですか。それが原因だと思います。だから、先輩から誘われて、風俗に行くのであれば、フェラをされる前に自分からコンドームをつけて、ディープキスやクンニはがっつりしないようにしたほうがいいですね。
お酒を飲んだ後は、本能丸出しになるから、そういうことも忘れがちでしょうけど、ぜひ、覚えておいてもらいたいです。
そして、もし、感染したかなと思ったら、できるだけ早く病院に行くことをオススメします。梅毒は放っておくと命の危険もある病気です。恥ずかしがらずに、ぜひ、診察してもらってください」
上記にちょっとでも当てはまるという人は、今すぐ病院へ。
世界保健機関(WHO)がいま、世界的な蔓延を警告する病気、それが「淋病」である。
「終末論的な幻想ではないが、一般的な感染症や軽傷が致死的となるポスト抗生物質時代が21世紀に到来する可能性は非常に高い」
「抗生物質の開発や生産、処方の方法を変えなければ、世界は公衆衛生の実現手段を失い、その影響は壊滅的になる」
WHOのケイジ・フクダ事務局長補は記者会見でこう述べた。
「終末論的な幻想」「影響は壊滅的」……およそ国連機関の幹部の言葉とは思えないおどろおどろしい文言だが、それが大げさではない状況にある。
この4月30日に発表された「抗菌薬耐性:2014年世界報告」は254ページにわたり、従来の抗生物質では死滅しない「超強力な細菌(スーパーバグ)」に関する調査結果や医療の状況などについて報告した。それによれば、世界の国々で抗生物質が効かない耐性を持った黄色ブドウ球菌や大腸菌などが出現し、警告レベルに達しているという。
いままで抗生剤を飲んでいれば治っていた結核、大腸炎、肺炎などの感染症が“不治の病”に逆戻りする。江戸時代のコレラの大流行を描いたTVドラマ『JIN―仁―』(TBS系)のように、150年前と同じ深刻な状況が再び訪れる可能性があるのだ。
淋病研究の権威で、元・産業医科大副学長の松本哲朗氏(現・北九州市役所保健福祉局医務監)はいう。
「淋病に抗生物質が効かなくなりつつあります。最初はペニシリンが効かない耐性菌ができ、それ以降、さまざまな抗生物質が開発されては効かなくなった。日本においてセフィキシムは、決められている投与量では効く人と効かない人が半々という状況なので、現在は注射剤のセフトリアキソンという抗生剤が主に使われています。
しかし、このセフトリアキソンも、4年前に日本で完全に耐性をもつ菌が発見され、世界の医療関係者に衝撃が走ったのです」
「最後の切り札」ともいえるセフトリアキソンにも耐性をもつ「スーパー淋病」がすでに誕生しているのである。しかも、世界で初めてこのスーパー淋病が発見されたのは日本だった。
その耐性菌を発見したのが、保科医院(京都市)の保科眞二医師である。
「京都市内のファッションヘルスに勤める女性(当時31歳)の定期検診で、咽が淋菌に感染していることがわかり、セフトリアキソンを投与したところ、菌が消えなかったのです。
それで菌を採取したのち、もう一度、投与したところ、菌が消えた。ただ、咽頭淋菌は、当医院の調査によると25%は自然になくなっていくので、抗生剤が効いたのか、自然になくなったのかは定かではありません」
採取した淋菌を解析したところ、セフトリアキソンに対する非常に強い耐性をもっていることが判明したのだ。世界にショックを与えた、スーパー淋病発見の瞬間である。
日本で確認されているスーパー淋病の事例は、今のところ京都の1件のみだが、海外ではヨーロッパとオーストラリアで発見され、増加しつつある。もちろん、日本は1件だけだから安心だとはいえない。
「女性の場合、症状が出にくいので、他で耐性菌が生まれ、感染に気づかないままもっている人がいるという可能性は考えられます。それが広がらないかどうか、心配されるところです」
松本氏はそう警告する。海外で性的な接触をした人が日本に持ち込んでしまったり、海外の保菌者が日本に旅行に来て持ち込む可能性も十分にあるのだ。
スーパー淋病に効く新たな抗生物質の開発が望まれるが、「今のところ、セフトリアキソンにかわる有効で使いやすい抗生剤は存在しない。製薬会社や国の研究機関も含めて、新しい抗生物質の開発スピードが鈍っているというのが厳しい現実」(松本氏)だという。
耐性菌と新薬のイタチごっこはこれまでずっと続いてきたが、いよいよ限界。そのためWHOも異例の警告に踏み切ったのだ。
今年に入り「はしか(麻疹)」が急増中。国立感染症研究所のまとめでは、患者数はすでに昨年1年間(232人)を上回り、4月20日時点で300人。流行すると5-6月がピークになる。過去に発症歴やワクチン接種歴が不明な人は要注意だ。
【輸入症例から拡大】
はしかは、麻疹ウイルスの空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で人から人へ感染する。急増の理由について、感染研・感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長が説明する。
「発端は、昨年秋以降にフィリピンを含めたアジアの国々で流行し、現地で感染して帰国した輸入症例が増えたことです。その後は、国内で海外渡航歴のない人に2次感染、3次感染で広がり、患者数が急増していると考えています」
実際、感染したウイルスの遺伝子型を調べると、大半が海外で流行しているB3型が占めているという。感染しても症状が現れるまで潜伏期間が10-12日ある。GW後のこれからが感染リスクが高まる恐れがある。
【死因は肺炎と脳炎】
初期症状は、風邪と似ていて38度台の発熱と鼻水、せきといったカタル症状から始まる。3-4日続くと少し熱が下がり、口の中の奥歯付近の頬(ほお)粘膜に小さい白い斑点(コプリック斑)がいくつもできる。
その翌日、再び39-40度の高熱と発疹が全身に広がり、ひどいカタル症状が4-5日続き、その後、回復期に入るという経緯をたどる。
「最初のカタル期が最も他人にうつしてしまう期間です。怖いのは発症者の約30%が合併症を併発すること。2大死因は、合併症の約半数を占める肺炎と1000人に約1人の割合で見られる脳炎です。はしかは大人も子供も関係なく、健康な人がかかっても重症化する病気です」
約28万人の発症が推計された2001年の大流行時には21人の死亡者が報告されており、直近では07-09年に毎年1-2人が死亡している。
【発症歴ない人は注意】
麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、季節性インフルエンザの6倍。特効薬はなく、発症したら自然治癒を待つしかない。しかし、過去に1度発症している人は免疫ができるので生涯発症することはない。感染リスクの高い人は、過去に発症歴がない人だ。
「発症を防ぐのはワクチン接種しか方法がありません。過去に1回接種していれば95%以上、2回接種していれば99%以上防げます。
今年の発症者の半数は予防接種を受けていない人、4分の1が受けたかどうか分からない人です。発症歴も予防接種歴もあいまいな人は、まず最低1回は受けてもらいたいと思います」
ワクチン接種代は自費で1万円前後になる。国では来年度までに国内のはしかを排除することを目標にしている。
《はしかの症状》
・38-40度台の発熱が1週間以上続く
・カタル症状(鼻水、せき、目の充血、目ヤニなど)
・コプリック斑(口腔粘膜の白い斑点)
・全身の赤い発疹
温泉法で定める注意書きや効能などの掲示内容が32年ぶりに改正され、温泉の効能が期待できる症状に、新たに「自律神経不安定症(失調症)」などが追加された。お風呂の温度は自律神経に影響を与える。家庭でも上手に調節すれば効能が期待できそうだ。
【お湯の温度で切り替える】
内臓、内・外分泌腺、血管や汗腺は、脳の指令を受けずに独立して働いている。その働きを制御しているのが自律神経。相反する働きの交感神経と副交感神経の絶妙なバランスで各器官がコントロールされている。
自律神経がうまく働かない自律神経失調症に、なぜ、温泉がいいのか。自律神経に詳しい東京有明医療大学教授で東洋医学研究所附属クリニックの川嶋朗医師が説明する。
「温泉というより、お湯の温度が自律神経に大きく影響を与えるのです。自律神経は40℃を境に切り替わる。40℃以上は交感神経が優位に、体温より高い40℃以下は副交感神経が優位になる。
だから、日本温泉気候物理医学会のデータでも、朝は高めの温度、夜は低めの温度に調節している湯治場は名温泉旅館としての評価が高いのです」
朝は交感神経を優位にさせてスッキリ目覚めさせる。夜は副交感神経を優位にさせて寝つきをよくさせる。その湯治場の心遣いが、うまく働いていなかった自律神経の切り替えを促し、自律神経失調症を改善させる効能になっているという。
「熱いお風呂は交感神経が優位になるため、血管が収縮する上に長く入っていられないので、体の深部まで温まりにくい。夜、自宅でお風呂に入るときは40℃以下で30分ぐらいかけてゆっくり温まり、上がったら早く寝てもらうことを勧めます」
【鬱にも効能が期待】
今回、温泉の適応症には不眠症や鬱状態なども追加されている。睡眠には体の深部が温まっていることも大切になる。
「入眠時は生理的に、体の深部の血液を手足に流して、体温を下げながら眠りにつきます。寝る直前の体温が低いと、それがスムーズにいかない。手足が冷えていると、寝付けないのはその(体温が逃げない)ためです」
脳内物質のセロトニンやドーパミンを作る代謝が悪い鬱状態も自律神経が関係しているという。
「人の自律神経はストレスなどで交感神経優位の極致に至ると、180度ひっくり返って、副交感神経優位の極致に置き換わる。それが鬱です」
そのため昼間はヤル気がなくなり、夜は強い不安から交感神経が優位になって眠れない。鬱状態の場合も、体を温めて代謝を上げ、夜の睡眠障害を改善することが大切になる。温泉やお風呂を上手に使って、心身の体調管理に役立てよう。
《自律神経失調症の特徴と症状》
【特徴】検査しても異常が認められず、原因不明のさまざまな症状(不定愁訴)が現れる
【症状】めまい、動悸(どうき)、頻脈、発汗、血圧の激しい上下、立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、倦怠(けんたい)感、冷え症、下痢や便秘、不眠など
山中伸弥・京大教授(50)のノーベル賞受賞で注目のiPS細胞は、再生医療の分野における“切り札”といわれる。その最先端の臨床研究が、神戸市の先端医療センター病院と理化学研究所で共同で始まる。
対象としているのは、50歳以上に急増している目の病気「加齢黄斑変性」だ。失明原因の第4位。放置すると急速に視力が低下するので、早期発見が重要。年1回の眼底検査と定期的な簡易チェックを心がけよう。
■滲出(しんしゅつ)型は失明の恐れ
見ているものの中心が「ゆがむ」「暗い」「欠けている」ように、見えるのが症状の特徴だ。
駿河台日本大学病院の眼科教授、湯澤美都子院長は、「目の網膜の中心部分に、色や形を識別する視細胞がたくさん集まる直径6ミリの『黄斑(おうはん)』という範囲があります。そこに加齢に伴う病変が及ぶと症状が現れてくるのです」と説明する。
網膜組織が虫食い状に萎縮してくる「萎縮型」は、長年かけて緩やかに視力が低下するので問題にされない。だが、怖いのは網膜の下から新生血管が発生する「滲出型」。黄斑に延びると、急速に悪化して社会的失明(矯正しても視力0・1以下)に至る恐れがあるという。
■男性は女性の3倍
1998年と2007年に行われた国内の大規模調査(久山町研究)の推定では、50歳以上の加齢黄斑変性の患者数は9年間で倍増して69万人。滲出型と萎縮型の割合は約3対1。滲出型の男性の発症頻度は女性の約3倍だ。
「原因ははっきり解明されていないが、体質的になりやすい人が加齢と長年の生活要因で誘発されると考えられています。危険因子には、喫煙、太陽の青色光が挙げられています」
発症の前段階には網膜に白色の蓄積物と色素ムラが現れるので、年1回、眼底検査を受けていればリスクは分かるという。予防は禁煙、サングラスや帽子の着用。サプリメントでは、ビタミンA、C、E、ルティンなどのカロテノイド、亜鉛などの摂取が推奨されている。
■治療目的は現状維持
治療対象になるのは滲出型。黄斑の中心にあり、最も視細胞が密集する“中心窩(か)”に新生血管があるかないかで治療法が分かれるという。
「中心窩から離れた場所にあれば、レーザー光線で新生血管を焼きつぶす『レーザー光凝固』を行います。ただ、周りの正常組織も焼いてしまうので、視野に見えない部分ができる。治療の目的は、いかに中心窩を保つか」
では、新生血管が中心窩にある場合はどうか。
「第1選択肢は、抗VGEF薬を硝子体内に注射して新生血管の発生発育を阻止する『眼内注射』。1カ月に1回、計3回行い、その後も必要があれば追加します。
第2選択肢は光を感じやすくする薬を腕から注射して、特殊なレーザー光線を当てて新生血管を詰まらせる『光線力学療法』。眼内注射との併用療法もあります」
眼内注射は早期に受けるほど視力維持の効果は高い。早期発見が肝心だ。
《加齢黄斑変性の症状》
★「変視症」:ものがゆがんで見える
★「中心暗点」:視野の中心が暗い、欠けて見える
★「視力低下」:見たいものがはっきり見えない
《簡易自己チェック法》
老眼鏡などで矯正した状態で、カレンダーや方眼紙など格子状のものを片方の目で順に見て、見え方に異常がないかを確認する
今度の4連休に海外へ出かける人も多いだろう。飛行機での長時間移動で注意したいのがロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)。旅行中に異常はなくても、帰国後の病気の発症に関係する場合もあるので注意しておこう。
【足の鈍い痛みに注意】
この病気は、同じ姿勢で長時間座り続けることで、足の血流が停滞し、深部の静脈に血の塊(血栓)ができて発症する。血栓がはがれ血流に乗り、肺の血管に詰まると胸痛や呼吸困難を起こして死亡する恐れもある。
日本旅行医学会認定医で「かみや町駅前クリニック」(東京都港区)の原野悟院長が説明する。
「症状は左足に現れやすく、最初は鈍い痛みやはれなどが起こります。それを姿勢による疲れのせいと軽く考えてしまいがちなので要注意です」
さらに進行した状態になると、片脚にかなり強い痛みが現れるので、この時点で異変に気づくことが多いという。
【機内は砂漠より乾燥】
一般的には6時間以上のフライトで起こりやすいといわれるが、6時間以下でも足を動かさない同じ姿勢が長ければ危険性は高まる。また飛行機に限らず、自動車でも条件が重なれば同じだ。
「特に飛行機で警告されるのは、脱水が起こりやすい環境だからです。
機内の酸素は薄く、湿度は5-15%とサハラ砂漠より乾燥していて、脱水から血が固まりやすい。自動車でも持病などで血が固まりやすい人が、十分な水分摂取をせずに車中泊をすれば発症率は高まります」
もともと足の血流が悪い下肢静脈瘤(りゅう)や血液に粘りが出る糖尿病などの持病がある人はハイリスク。黄体ホルモンの分泌が多くなる妊婦や避妊薬を飲んでいる女性も血液が固まりやすいという。
【帰国後2週間は用心】
飛行機内の予防策として、日本旅行医学会では別項のような7つの策を提唱している。座席ではベルトをゆるめ、足の上下運動。歩くために少し離れたトイレに行く。トイレを遠慮しがちな高齢者や女性は通路側の席を取るなどが大切だ。
「発症まで時間を要するので、多くのケースは到着間際や到着した空港で症状が現れる。
治療は、血管内カテーテルで血栓溶解剤の注入などを行うが、6時間以上経過すると組織が変性して出血を起こす危険性があります。足の痛みやはれは早めに空港医務室に申し出ることが重要です」
旅行中に発症がなければ、それで安心というわけでもない。症状の現れない小さな血栓ができている場合もあるからだ。
「小さな血栓の核ができると、その後、成長しやすい。リスクの高い人は帰国後、2週間ぐらいは心筋梗塞や脳梗塞の発症に注意してください」
《飛行機内での7つの予防策》
(1)2-3時間ごとに歩く
(2)座ったままでカカトやつま先の上下運動と腹式呼吸を1時間ごとに3-5分行う
(3)水分をこまめに取る
(4)ゆったりした服装
(5)足を組まない
(6)睡眠薬は使用しない
(7)座席は通路側に座る
月24日に、「若年層で梅毒患者が増加している」という国立感染症研究所の発表がありました。平成22年には621人だった患者数が、平成25年には1,226人と、2倍近くに増加。特に25歳から29歳の若年層の増加が目立つそうです。
さて、この「梅毒」ですが、どんな性病なのか皆さんご存じですか? 東京・新橋にある性病科クリニック『あおぞらクリニック』の内田千秋院長に、「梅毒」について聞いてみました。
■梅毒はかつては死の危険もある怖い病気だった!
――「梅毒患者が増えている」と国立感染症研究所が発表しましたが、この梅毒というのはそもそもどんな病気なのでしょうか?
内田院長 梅毒は、「スピロヘータ」という細菌の感染による性病です。基本的には性交渉で感染するもので、あとは母子感染することもあります。
――感染すると、どんな症状が出るのでしょうか?
内田院長 梅毒には第1期、第2期、第3期、第4期と4つの症状の時期がありまして、感染初期の第1期や第2期だとしこりや発疹などの症状が出ます。第3期、第4期になると、腫瘤などが発生し、第4期では死亡することもあります。
ただ、第3期や第4期は現代の日本ではまずないですね。
――なるほど。歴史上の人物も「梅毒で死亡した」という話もありますね。この梅毒患者ですが、男性と女性ではどちらがなりやすいのでしょうか?
内田院長 統計では、4:1で男性の方が多いようです。国立感染症研究所の発表でも、「男性同士の性的なコミュニティ」での感染を疑う話が出ています。
――男性同士の性的接触での梅毒感染が多いのですね……。ちなみに梅毒の検査はどんなことをするのですか?
内田院長 梅毒は血液を採取しての検査です。もし感染しても、投薬で簡単に治すことができますが、できるだけ早く見つけて治療することが大事ですよ。
年々増加している梅毒患者。可能性は低いとはいえ、死ぬかもしれない病気ですから男性も女性も自覚症状が出る前に検査しておくのがいいかもしれませんね。
『あおぞらクリニック』HP
http://www.aozoracl.com
睡眠障害に含まれる「金縛り」について取り上げたい。よく霊的体験に関連づけられることが多いが、医学的には寝不足や睡眠の質が悪いと起こりやすい。怖がらずに自分の睡眠習慣を振り返ってみよう。
■脳は起き、身体は眠る
金縛りの医学的名称は「反復孤発性睡眠麻痺(マヒ)」という。
スリープ&ストレスクリニック(東京・大崎)の林田健一院長は、「レム睡眠に伴う“寝ぼけ”の一種」とこう説明する。
「睡眠は、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を90分周期で繰り返している。レム睡眠時は脳が起きている状態に近く、夢はこのときに見ます。
一方で、脳から身体への指令は遮断されているので動かすことはできません。そのレム睡眠時に目を覚ましてしまうと、いわゆる金縛りの状態になるのです」
身体が動かないのは“半起き状態”の数秒から数分。完全に覚醒すれば金縛りが解けるのだ。
■睡眠の質が悪い状態
金縛りは、レム睡眠が分断されたときに起こるので、物音や明かりなど寝室環境も影響する。が、そもそも睡眠中に目が覚めてしまう背景には、睡眠の質に問題があるので要注意という。
「寝不足や徹夜など不規則な睡眠は、寝てすぐにレム睡眠が出やすいので、眠りしなに金縛りが起こりやすい。飲酒もレム睡眠の発現に悪影響します。金縛りがあったら睡眠の質が悪い状態と思った方がいい」(林田院長)
レム睡眠の障害でいえば“悪夢”も同じ。夢を見るのはレム睡眠時なので、うなされて目が覚めれば金縛りも起こりやすい。霊的体験に結び付けられやすいのは、その辺に理由がありそうだ。
■頻発は病気の疑い
ただし、ほとんどの人は金縛りを経験する機会はそれほど多くないはず。林田院長は「あまり頻繁に起こる人は、『ナルコレプシー』という病気の症状のひとつとして現れている可能性も考えられます」と指摘する。
ナルコレプシーは、寝不足でもないのに慢性的な強い眠気や居眠りに悩まされる睡眠障害。大笑いしたり驚いたときに身体の力が抜ける「情動脱力発作」「金縛り」、眠りに入ると鮮明な夢を見る「入眠時幻覚」が特徴的な症状だ。
この場合の金縛りや入眠時幻覚も、眠るとすぐにレム睡眠が出てきてしまうことが原因だ。
林田院長は「昼間の眠気が強く、金縛りを頻発する人は受診した方がいいでしょう。通常の睡眠時に時々起こる金縛りであれば、神経質にならないで規則正しい睡眠を心がけていれば自然と起こらなくなるはずです」とアドバイスする。
春は、さまざまな要因からせき症状が現れやすい。花冷えによる風邪、花粉症、黄砂、PM2・5などの原因が重複する場合もあり、治療法や対策が異なる。新年度の仕事のストレスも免疫力を低下させるので体調管理に注意しよう。
【花粉の破片が漂う】
花粉症といえば、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが典型だが、せきの原因にもなる。日本呼吸器学会指導医で寺尾クリニカ(東京・新宿)の寺尾一郎院長が説明する。
「花粉症で鼻汁がのどに流れると、喉頭を刺激してせきを誘発させます。また、スギ花粉の飛散ピーク後期になると、路上に蓄積した花粉が細かく粉砕されて空気中に漂う。それを吸い込むことで、のどや気管に炎症が起こるのです」
スギ花粉の直径は30-40マイクロメートル。通常、多くは鼻腔(びくう)粘膜に捕えられるが、粉々になった花粉の破片はのどの奥まで入り込んでいくという。
【黄砂の襲来も】
中国大陸内陸部の砂漠から偏西風に乗って飛来する黄砂も4月にピークを迎える。
アンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどの大気汚染物質を取り込んだ黄砂の大きさは直径4マイクロメートル付近。直径2・5マイクロメートル以下の物質になると微小粒子状物質「PM2・5」と総称される。
「大気汚染物質を吸着した黄砂は、せきぜんそくの原因の1つとして疑われています。
せきぜんそくは発熱などの症状は伴わず、空せきが続く。血液検査ではアレルギー反応があり、呼吸機能検査は正常だが、末梢(まっしょう)気管支が炎症を起こして狭窄している状態です。風邪薬やせき止めは効かず、治療は吸入ステロイド薬を使います」
風邪の後に続いて起こることが多いので、せきが長引く場合は疑った方がいい。自然治癒することもあるが、再発を繰り返すと約30%がぜんそくに移行するので要注意だ。
【ストレスが誘発】
新年度の職場環境の変化や多忙による精神的ストレスもせき症状に関係する場合があるという。
「会社に行くとせきが出て、家では出ない。検査をしても異常がない。ストレスに弱い人の中には、自律神経の不調からせきが出る人がいます。その場合、皮膚のかゆみも伴う傾向がみられます」
気温や天候の変化が激しいこの時期に、過度なストレスが加わると免疫力が一層低下して、風邪以外の感染症にもかかりやすくなる。長引くせきは、マイコプラズマ肺炎・気管支炎や結核などの特徴でもあるので、早めに受診して原因をハッキリさせることが大切だ。
「せき症状を引き起こす要因が多いこの季節は、特に自己診断は禁物です。空気中を漂う10マイクロメートル以下の浮遊粒子状物質の対策は、家庭内では空気清浄器を上手に使うのがいいでしょう」
《春にせき症状が出やすい要因》
◆スギ花粉の破片の吸入
◆大気汚染物質を吸着した黄砂やPM2.5の吸入
◆過度のストレスにより自律神経の不調から誘発
◆寒暖差やストレスによる免疫低下で感染症にかかる
4月9日は「子宮頸がんを予防する日」でした。年間罹患(りかん)者数約9800人、年間死亡者数約2700人の子宮頸がんは、原因がハッキリと解明されている数少ないがん。高い確率で予防できるので、妻や彼女、娘に定期検診の大切さを呼びかけよう。
【女性の8割に感染歴】
原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の性交感染。150種類以上の型がある中、約15種類の高リスク型HPVが子宮頸がんを誘発する。東京医科大学病院・産科婦人科の寺内文敏教授(婦人科腫瘍専門医)が説明する。
「HPVは、性交経験のある女性の8割、男性の6割は感染歴をもつ。しかし、感染してもほとんどの人は1-2年のうちに自己免疫で排除されます。
女性では10%が、そのまま持続感染し、うち1割が最短5年以上かけて前がん状態の『異形成』になります」
異形成になってもがんに進むのはごく一部。「軽度」「中等度」「高度」の3段階あり、軽度や中等度では元に戻ることもあるので経過観察をすることが多いという。
【症状なく、検診が重要】
予防では、この異形成の段階を早く見つけることが重要。高度異形成やがん細胞が表層にとどまる上皮内がんに進んでも、ステージ0期に該当し、部分切除などの子宮を残す治療で済むからだ。
「異形成や早期がんの段階ではほとんど症状がなく、不妊治療や妊娠でたまたま見つかる人も多い。
性交する年齢になったら年1回ぐらい『細胞診』を受けていれば進行して手遅れになることは防げます。検診が一番の予防になります」
細胞診は、子宮頸部(子宮の入り口)をブラシで擦って細胞を採取して調べる検査で、軽度異形成から分かるという。
「結果が異形成であれば精密検査。正常に見えても少しでも疑わしい場合は、ウイルスの遺伝子検査で高リスク型に感染していないか確認することが重要になります」
【学会はワクチン推奨】
ワクチン接種もあるが、有効なのは最も多い16型と18型のウイルス(全体の70%)で、すべての高リスク型の感染が防げるわけではない。
また、接種後に体の痛みが現れる副作用(複合性局所疼痛症候群など)の報告が続いたことから、厚労省は小学6年から高校1年の女子に対する定期接種を積極的に勧めることを一時的に差し控えている。
「欧米の検診受検率(約80%)に比べて日本は低い(約30%)ので、日本婦人科腫瘍学会ではワクチン接種を推奨しています。
子宮頸がんの発症が20代後半-30歳で急増しているので、それを考えてワクチン接種を考えてもらいたい。予防接種を受けないのなら、必ず定期的に検診を受けてもらいたいと思います」
《子宮頸がんの症状》
【前がん状態やステージ0期】
・無症状のケースがほとんど
【進行してから現れる症状】
・月経時以外の不正出血
・性交時の出血
・おりものが茶褐色になる
・下腹部痛(子宮の収縮による)
主に性行為で感染する感染症「梅毒」の昨年の患者数が、現行の統計法になった平成12年以降、初めて1000人を上回ったことが6日、分かった。過去には大流行も引き起こした病も、現在は抗生物質で治療可能。
そのため「過去の病気」と思われがちだが、ここへ来て若年層を中心に感染者がじわじわ増加中だ。専門家は「早めに治療を受け、感染拡大を防いでほしい」と話している。
国立感染症研究所(東京)によると、25年に梅毒と診断された人は前年比351人増(1.4倍)の1226人(速報値)。22年の621人から3年連続で増加している。男性が989人と8割を占め、特に25~39歳と若年層での感染が目立つ。
感染研細菌第1部の大西真部長は「増加の原因は不明だが、患者の多くは男性同士の性的接触の経験を持っている。こうしたコミュニティーに梅毒が入り込んでいる可能性がある」と指摘する。
梅毒は梅毒トレポネーマ菌が性行為などによって皮膚や粘膜の傷口などから侵入することで感染する。皮膚が赤くなったり、リンパ節が腫れたりすることから始まり、現代ではまれだが進行すると脳や神経が侵され死亡することもある。
感染初期の発疹などの皮膚病変から移りやすく、治ったように見えても再び皮膚に異常が出ることもある。大西部長は「早期に治療することが感染拡大の予防となる。ためらわずに病院で検査を受けてほしい」と呼びかけている。
4月4日は「歯周病予防デー」。歯肉の腫れや出血から始まる歯周病。痛みがないので放置している人が多く、手遅れになると歯を失う。
歯周病で失われた歯の土台を取り戻す再生治療の現状を東京医科歯科大学歯学部附属病院・歯周病外来の和泉雄一教授に聞いた。
【歯がグラつく前に】
歯周病は進行すると歯を支えている歯槽骨が徐々に失われて、歯肉が下がり、歯の根元が長くなる。健康な元の状態に戻す再生治療はどの段階まで有効なのか。
「歯と歯槽骨の間に少し空間ができている程度や、歯が前後左右に少し動き始めた段階ならまだ間に合います。歯が上下に動くほど進行していると再生はかなり厳しくなります」
歯周病治療では、歯周ポケットの深さが5ミリ程度を超える場合、歯肉を切開して歯の根の方に付着しているバイオフィルムや歯石を除去する歯周外科手術の適応になる。再生治療はその手術の過程に行う。間に合うなら同時にやった方が歯を残せる可能性は高くなる。
【幹細胞を活性化】
再生治療には、いくつかの方法があるが、今のところ保険適用になっているのは「GTR法(組織再生誘導法)」のみ。治療費は歯1本、手術代と材料費で約5000円(3割負担)だ。
「歯と歯槽骨の間にある歯根膜の中には幹細胞があり、その細胞を活性化させて歯槽骨などの歯周組織を再生させる方法です。外科手術で傷んだ組織を取り除き、そこにできた空洞にポリ乳酸やコラーゲンの膜を挿入し、歯肉を縫合します」
通常の外科手術だけでは空洞に歯肉が入り込み、歯槽骨などの再生を妨げてしまう。そこを人工膜で覆い、再生のためのスペースを作っておく。膜は吸収されるので、後で取り除く必要はない。約2週間で抜糸。半年から1年半で歯槽骨などの歯周組織が再生するという。
【最新の方法が続々】
大学病院の先進医療(材料費自費)や歯科医院の自由診療で行われている「バイオ・リジェネレーション法」もある。
「外科手術の過程で、欠損部分に歯周組織の再生を促す『エムドゲインゲル』というタンパク質を注入する方法です。GTR法より簡単で、同等かそれ以上の再生効果が期待できます」
現在の歯周病治療で受けられる再生治療はここまでだが、次なる方法も控えている。ひとつは、人工的に作った細胞増殖因子を注入する方法で高い再生効果が確認されている。患者の歯根膜細胞を培養したシートを挿入する方法は臨床研究中。
「バイオフィルムや歯石を取り除く際にエルビウム・ヤグレーザーを使うと、さらに再生能力が高まります。再生治療は適応に限りがあるので、早めに歯周病専門医(日本歯周病学会HP掲載)に相談してください」
【歯周病の主な再生治療の方法】
◆GTR法(組織再生誘導法) ⇒保険適用
◆バイオ・リジェネレーション法(エムドゲイン) ⇒先進医療か自由診療
◆人工的な細胞増殖因子を注入する治療 ⇒認可申請準備中
◆自己培養歯根膜シートや骨膜シート、骨髄間葉系幹細胞を使った治療 ⇒臨床研究中
スギ花粉の飛散が始まるシーズン。花粉症で困るのは、鼻や目の炎症だけではない。花粉症の種類によっては、口やのどに症状が現れることも。特定の果物・野菜を食べると口の中が“かゆい、腫れる”。花粉症の正体を調べることが肝心だ。
【口・のどに出る花粉症】
毎年、スギ・ヒノキ花粉の飛散ばかり注目されるが、関東では同時期に“ハンノキ”花粉も飛散する。てっきりスギ花粉症と思っていたら、知らずにハンノキ花粉症にかかっている場合がある。そんな人は、花粉症で発症する“口・のどの食物アレルギー”にも要注意。
国立病院機構相模原病院・アレルギー科の福冨友馬医師が説明する。
「カバノキ科のハンノキやシラカバの花粉症があると、口腔(こうくう)アレルギー症候群(OAS)が出る可能性があります。リンゴやモモなどを食べると唇が腫れたり、のどがかゆくなる症状です。軽症だと気づかない人も多いはず」
【類似の抗原に反応】
しかし、カバノキ科花粉症の人のすべてに起こるわけではない。地域差も大きく、ハンノキ花粉症の併発頻度は関東南部の都市部で12-13%程度とみられている。
「特定の果物・野菜に反応するのは、その食品にカバノキ科花粉のアレルゲン(抗原)と似たタンパク質が含まれるから。体の免疫機能が交差反応を起こすのです」
実は、大人に起こる果物・野菜アレルギーのほとんどは花粉症が原因のケース。「花粉食物アレルギー症候群」と呼ばれている。
最も多いカバノキ科以外の花粉症でも、別表のような交差反応が起こりやすいという。
【予防は己を知ること】
鼻や目の花粉症なら飛散時期が過ぎれば治まる季節性だが、食物ではそうはいかない。症状が強ければ常に要注意だ。
「症状は15分以内に現れる。重症では、のどが腫れて呼吸困難になったり、アナフィラキシーショックを起こし生死に関わる場合もあります。大切なのは検査で自分のアレルギーをハッキリさせて、反応する食品をよく理解しておくことです」
大豆類でも、発酵している納豆やみそはアレルゲンが破壊されるので反応しない。一気におなかに流し込んでしまう豆乳では、アレルギーで腹痛や下痢が起こることも。
リンゴはダメでも、加熱したアップルパイや加工品なら食べられるケースもある。生で新鮮なほど反応しやすく、症状の程度はさまざま。
「対処法は合わない食品を避けるしかない。検査は、皮膚にアレルゲンを垂らして針でひっかく“プリックテスト”でないと正確な診断は難しい。アレルギー科の専門医に調べてもらってください」
春は気候の変化で自律神経が乱れやすく、環境変化のストレスなどから「めまい」を感じやすい。中でも耳から起こるめまいで最も多い(20-40%)のが「良性発作性頭位めまい症」。怖い病気ではないが、きちんと診断してもらうことが大切だ。
【耳石がはがれ発症】
日本めまい平衡(へいこう)医学会認定の「めまい相談医」で、東京逓信病院・耳鼻咽喉科の八木昌人部長が説明する。
「鼓膜の奥の内耳には、体の水平方向の傾きを感知する卵形嚢(のう)、垂直方向の傾きを感知する球形嚢、回転を感じる三半規管があります。
卵形嚢や球形嚢には傾きを知るための耳石(じせき)器があって、その耳石がはがれて砂のようなものが三半規管の方へ入り込んでめまいを引き起こす。これが良性発作性頭位めまい症の発症メカニズムです」
耳石がはがれる原因には、加齢や外傷、過去の内耳の病気、内耳の変化などが考えられているが、はっきりした原因は分かっていないという。
【頭の位置の変化で起こる】
めまいは、メニエール病や突発性難聴でもみられる回転性めまいが起こるが、特徴がある。
「頭の位置を動かした時にめまいが起こる、長くても1分以内に治まる点が、他の回転性めまいが現れる内耳疾患との大きな違いです。耳鳴りや難聴も伴いません」
めまいにより嘔吐(おうと)や吐き気を伴う場合もあるが、良性疾患なので通常、生命にかかわるようなことはない。ただし放置すると、なかなか治らない。
「めまいが起こる頭の位置が自分で分かってくると、その頭位を取らないようにクセがついてきます。すると耳石がいつまでも三半規管にとどまり治りが悪い。逆に積極的にめまいが起こる頭位を取った方が慣れてきて治りが早いのです」
【治療はエプリー法】
診断には、寝た時の頭の位置と起きた時の位置で、無意識に起こる眼球の動きを調べる眼振検査が必須。病気の種類で眼球の動きのタイプが異なるという。
「治療は頭の位置を動かして耳石を三半規管の外へ追い出す『エプリー法』という理学療法を行います。1度で治る割合は6-7割。それを覚えて、再発したら自分でやってもらいます」
めまいが強い場合、抗めまい薬などの薬剤も処方されるが、あくまでも症状に対する補助療法になる。再発率(約30%)は高く、ストレスや疲れは再発の引き金になるので一度、経験した人は日頃の体調管理が大切だ。
「めまいが起こる病気には脳卒中など怖い病気が隠れている可能性もあります。自己診断せずに、必ず専門医に診てもらってください」
【良性発作性頭位めまい症の特徴】
・回転性のめまいが起こる
・頭を動かした時に誘発される
・寝ていて、動き始める時にめまいが起こることが多い
・1分以内に治まることが多い
・吐き気や嘔吐を伴うこともある
・再発率が高い
風邪や身体の痛みが慢性的に続き薬を飲んでも治らない方は、HIV感染の疑いがあるかもしれません。
日本は発展途上国でないにも関わらず、HIV感染者は年々増加、あるいは横ばい傾向であり、自分は感染している可能性がないとは言いきれません。
HIV感染の症状はとても風邪とよく似ているので、風邪だと思い放置しておくと、気付いた時には症状が進行し手遅れになる可能性があります。逆に言えば、初期段階で、感染している事に気づけば、治療方法が沢山あります。
風邪とHIV感染の見分け方を含めて、HIV感染の症状をアメリカの健康情報サイト『Activebeat』をもとに12個、紹介します。
■HIV感染の症状12個とは
(1)熱がある
薬を飲んでも下がらない微熱が続きます。また、血中にウイルスが入ってきた事により、夜中に熱によって汗がでる症状があります。
(2)喉の痛みがある
HIV感染の初期状態で、喉の痛みがでてきます。慢性的に喉の痛みがある人は、口腔カンジダ症や口腔内潰瘍なども引き起こしている可能性もあります。
(3)身体の痛み
身体の筋肉に痛みがでてきます。HIVウイルスがリンパ節に侵入し腫れあがる事や、リウマチの炎症により、このような症状がでてきます。関節炎を引き起こす場合もあります。
(4)乾燥した咳が続く
乾燥した咳が続く事もHIV感染の初期症状です。風邪との違いは、抗生物質や咳止めの薬を飲んでも効果がないという事です。症状が悪化すると肺炎にまでなるので、咳が続く場合は病院へ行きましょう。
(5)リンパ節の腫れ
HIV感染者の67%がリンパ節の腫れを初期症状で経験しています。主な箇所は、首、脇の下、曾けい部です。普通ではないほど腫れあがるのが特徴です。
(6)頭痛
慢性的な頭痛がするのも特徴です。HIV感染者の2人に1人は頭痛を経験しています。
(7)体重が減る
体重減少はHIV感染者の特徴であり”AIDS wasting”と呼ばれています。この体重減少の特徴は、吐き気、下痢、嘔吐による体重の減少で、自分の体重の10%以上も減少してしまいます。
(8)疲労感がある
休息をいくらとっても全く緩和しないほどの慢性的な疲労感がある人が多いですが、HIVが進行してからこの症状がでてくる人もいます。
(9)皮膚発疹がある
発疹はHIV感染の一般的な症状のひとつで、”HIV rash”と呼ばれており、感染者の85%にみられる症状です。発疹は赤く腫れあがり、かゆみみがあったり、皮がむけたりします。特に、生器や顔などの温かく湿った部位では、水ぶくれとなる事もあります。
(10)夜に汗をかく
眠っている最中、大幅に体温が上がったり下がったりします。体温調節をするため、汗を大量にかき、起きた時にはびしょぬれ状態になっています。
(11)口にヘルペスができる
HIV感染をしていなくても、ヘルペスはできる方も多いと思いますが、HIVに感染した場合は頻繁にできやすくなります。
(12)何の症状も全くない
一番危険な状況は全く、これらの症状がない人です。自覚も関心もない人達が一番感染の危険が高く、知らないうちにHIVを拡げてゆきます。
いかがでしたか? 当てはまった症状が多い方は一度検査をしてみて下さいね。初期の段階で気付く事ができれば、病状を悪化させずに、通院しながら普通に生活する事ができます。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対しては、これまでにも抗HIV薬により配偶者などからの感染を防ぐための対策が取られていましたが、高い確立で有効性が認められていたものの、完全にHIV感染を防げるものではありませんでした。
でも今回、米アメリカ疾病管理予防センター(CDC)など複数の研究機関による実験で、注射によるHIVワクチンの接種により100%のHIV感染防止効果が確認できたとのこと。
現在はサルによる実験段階ですが、今年後半には米コロンビア大学にて人間による臨床実験が開始されるそう。
アフリカなどのHIV患者の人口が高い地域のひとびとや、配偶者がHIV感染者の人などは、毎日の経口薬服用により感染を防止してきていましたが、有効な人も90%前後に限られるなど、完全な予防薬には至っていなかったのが問題としてありました。
また、「感染した配偶者に薬の服用を知られたら怒られる」という状況や、「毎日薬を飲んでいることで他人に既に感染していると誤解されたくない」との思いも、薬の服用をめぐる問題となっていたようです。
でも今回の薬が一般に普及するようになれば、こうした問題も改善。何よりもかなりの高確率でHIV感染を阻止できるとあれば、待望のワクチンの登場です。でも、今後人間での臨床試験を重ね、広く出回るまでにはまだ数年以上はかかるとのこと。
一日も早くワクチンが普及することを願ってやみません。
参考:Could an HIV vaccine be on the horizon? New jab could protect against infection for up to three months
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2573722/Could-HIV-vaccine-horizon-New-jab-protect-against-infection-three-months.html
そろそろ「目のかゆみ」「充血」「流涙」の3大症状に悩まされる時期。スギ花粉の飛散によって現れる目の症状は「季節性アレルギー性結膜炎」。特にコンタクトレンズの使用は花粉が吸着し悪化しやすい。早めの対策をとっておこう。
【目の洗浄には注意】
鼻はマスクである程度までは花粉の侵入を防げるが、目の防御はゴーグルでも着けないと、なかなか難しい。かゆみが強く出る人は、つい水などで目を洗いたくなると思うが要注意だ。
清澤眼科医院(東京都江東区)の清澤源弘院長が忠告する。
「目を洗うことは、市販の洗浄液を使う場合でも勧められません。目の表面は3層構造の涙で覆われ目を守っています。その構造が壊れてしまうと、外からの刺激に弱くなり、余計に目のトラブルの原因になります」
応急で何かセルフケアをするなら、流水で顔を洗う方がまだいいという。
【症状が出る前に治療】
花粉症の対応でよくないのは、症状が出てから医療機関を受診すること。症状が悪化すると薬が効きづらくなる。目も鼻と同じで、症状が出る前から治療を始める初期療法が大切だ。
「治療では、主に2種類の抗アレルギー点眼薬を使います。メディエーター遊離抑制薬は、症状を引き起こすヒスタミンを増やさない薬で、効果が出るまで2週間ぐらいかかります。症状がなくても今から使った方がいい。ヒスタミンH1拮抗(きっこう)薬は、ヒスタミンの働きを直接阻止するので、症状が強い時に使います」
この2つの作用を持つ最新の点眼薬もある。「自分は市販薬でいい」という人も、症状があればきちんと診断してもらうことが大切だ。
「目がかゆい、赤いから花粉症とは限らない。コンタクトレンズに関係した感染症なら、抗生物質でないと治りません」
【せめて1日使い捨て】
コンタクトレンズ使用者の花粉症対策は、レンズ管理が最も大切になる。眼科では、基本的にシーズン中のメガネ使用を勧めている。
「それでもコンタクトを使う方は、2週間使い捨てタイプであれば1日使い捨てタイプに替えるように指導します。レンズに花粉が吸着しやすく、擦り洗いしても完全に除去しきれない場合も多いからです」
1日の使用時間もできるだけ短くすること。費用面などから、どうしても2週間使い捨てタイプを使う場合には、洗浄・消毒・保存剤は「MPS多目的洗浄液」よりも強力な「過酸化水素」を使う方が理想的だ。
「花粉症だけでなく、レンズの汚れはまぶたの裏にブツブツができる巨大乳頭結膜炎の原因にもなります。この時期は通常以上にレンズの扱いには注意してください」
《コンタクトレンズ使用者のスギ花粉飛散時期の注意点》
●基本的にはメガネ使用が望ましい
●コンタクトレンズを使用する場合、使い捨てワンデータイプが最適
●最長でも12時間以上連続使用しない
●洗浄・消毒・保存剤には過酸化水素タイプを使った方が花粉除去率が高い
今冬、続いた記録的な大雪では、手袋も靴もグチャグチャにぬれてしまった人が多かっただろう。そんな状況では「しもやけ」が起こりやすい。暖房器具や防寒具の乏しかった昔の病気に思われがちだが、最近、発症が増えている。高齢者や糖尿病の人は、重症化しやすいので要注意だ。
【気温差大きいと増加?】
「しもやけ」は俗称で、医学的病名は「凍瘡(とうそう)」。寒さのために血行が悪くなり起こる炎症のひとつだ。
やえす日本橋ヒフ科(東京・八重洲)の矢野正一郎院長が説明する。
「1日の気温差が大きかったり皮膚表面の温度が低いと起こりやすい。近年、冬場に気温差の激しい日が多いのが、発症増加の要因だと思われます。若い世代にはしもやけを知らない人もいて、子供が発症して何だか分からず受診されるケースも多いです」
血管が細く、冷気にふれやすい手足に最も多く起こるが、耳たぶや鼻先にもできやすい。
【高齢者、糖尿病は要注意】
患部は、むくんだように皮膚が赤く腫れ、むずがゆい、痛い(ジンジンする)、熱いなどの症状が現れる。急に高温で温めると、痛みやかゆみが強くなるのも特徴だ。
「特に、雪や雨で手袋や靴下をぬれたまま着けていると、気化熱で皮膚表面の温度が下がるのでよくない。ぬれたら早くしっかり拭いて乾かし、冷やさないことが一番の予防にも治療にもなります。つま先がきつい靴も足指が血行不良になるので、発症の原因になります」
悪化したしもやけを放置したまま皮膚が乾燥すると、ひび割れを起こし、今度は「あかぎれ」に進展する場合もある。かゆいからと、掻き過ぎるのもよくない。
「血行が悪い高齢者や糖尿病の人は重症化しやすく、掻き壊すと傷が潰瘍になってなかなか治らないこともあるので要注意です」
【ビタミンEが効く】
重症化対策には血流を良くするケアが大切だ。患部の手足をぬるま湯につけて、ゆっくり温めながら軽くマッサージをする。ビタミンEには末梢(まっしょう)血管の血流改善作用があるので、配合されている保湿クリームを塗るほか、サプリを飲むのも有効だ。
「医療機関の治療でもビタミンEの内服や軟膏(なんこう)を処方します。症状が強い場合には、即効性のあるステロイド軟膏を短期間で使用します」
しもやけは遺伝的素因も関係するといわれるので、できやすい人は冬場にビタミンEを多く含む小麦やアーモンド、ほうれん草、抹茶などを積極的に摂っておくといい。
「膠原(こうげん)病など、似た症状が出る他の病気もあります。春になって暖かくなっても、しもやけが治らないようなら必ず受診をしてください」
【しもやけの予防】
・外出時は手袋や厚手の靴下でしっかり防寒をする
・手足を冷やしたら、ぬるま湯につけてゆっくり温める
・手袋や靴下がぬれたら、早く取り換える
・手足にビタミンE配合の保湿クリームを塗る
・つま先のきつい靴は避ける
この時期に欠かせない暖房グッズ。冷えた布団を暖めてくれる湯たんぽや電気あんかは気持ちイイ。しかし、使い方が悪いと気づかぬうちに“やけど”する。見た目や痛みは軽くても、思いのほか傷は深く、治りが悪い。早めの受診が肝心だ。
【低温・長時間で発症】
通常のやけどは瞬時に気づくが、低温やけどは起きても熱さを自覚できないのが特徴だ。
獨協医科大学越谷病院・皮膚科の片桐一元(かずもと)教授は「オーブンの弱火でじっくり焼くようなもの」と説明する。
「細胞内のタンパク質は42℃ぐらいから変性すると言われる。44℃で6時間ぐらい、43℃でも10時間以上接触していればやけどを起こします」
原因は、湯たんぽ、電気あんか、使い捨てカイロ、ホットカーペットなど。ストーブでは、15センチ離れて57℃、20センチ離れて約45℃での発症が報告されている。
【就寝時の使用に注意】
最も要注意なのは、就寝時に使う“湯たんぽ”。お湯が熱過ぎたり、カバーになる袋の生地が薄過ぎたり。タイマーがないので起こりやすい。
「布団をかけるので、足が湯たんぽに触れていると密着・圧迫させてしまう。圧迫すると血流も悪くなる。皮膚近くの血流は冷却機能も果たしているので余計に悪い」
湯たんぽは事前に布団の中に入れて、寝る時は取り出す。もしくは60℃ぐらいのお湯で厚手の袋に入れ、足が触れないように使うのがいい。
「ホットカーペットでは睡眠薬などを服用して寝てしまうと起こる可能性がある。貼るタイプの使い捨てカイロも固定されるので要注意です」
【完治まで2カ月以上】
時間をかけてジワジワ熱せられる分、皮膚組織の損傷は深くなる。
「一見、赤みや水ぶくれ程度で軽症に見えます。痛みも強くない。でも、実際の熱傷は深い。すでに皮膚組織が死んでいるので急いで水で冷やしても意味がありません」
放置すると細菌感染して化膿(かのう)する恐れがある。見た目で“軽いやけど”と思っても、早く受診することが大切になる。
治療は、抗生物質の内服、患部には殺菌と死んだ組織を溶かす“ゲーベンクリーム”を塗る。
「1カ月以上、通院を続け、壊死(えし)組織をハサミで切除していく。その後、肉芽が出始めたら細胞を増殖させるスプレー薬を治るまで毎日吹き付けてもらいます」
治療期間は平均75日。皮膚表面はきれいになるが、やけどの痕(あと)は残るという。
「特に糖尿病の悪い人は足に傷ができると治り難く、潰瘍や壊疽(えそ)の原因になる。この時期の低温やけどには十分気をつけてください」
暖房器具は注意事項を守って、安全に使おう。
【低温やけどの原因と症状】
《原因》暖房器具など45℃前後の低い温度のものにあたり続けることで、熱いと感じないままやけどする。
《症状》赤くなるだけのこともあるが、濃赤色、白色、黒色の場合は熱傷が深いことが多い。深くても痛みは少ないことが多い。
慢性胃炎に対してピロリ菌除菌治療が保険適用になって丸1年。クリニックによっては除菌をする人が4-5倍増えている。ピロリ菌が起こす胃炎は、胃がんの発生母地になる。
特に鳥肌状胃炎は、スキルスがんなどの悪性度の高い胃がんになりやすいので要注意だ。
【ピロリ菌で鳥肌に】
鳥肌状胃炎とは、胃の内視鏡検査をすると胃の下半分の粘膜に皮膚の鳥肌のようにブツブツとした均一な顆粒(かりゅう)状の隆起が密集して見られるものをいう。
日本消化器学会指導医で「奥田クリニック」(東京都北区)の奥田武志院長が説明する。
「従来は若年女性(平均30歳前後)に圧倒的に多いと言われていましたが、今は男性に見つかることも珍しくありません。ピロリ菌感染による、ひとつの特殊型の慢性胃炎です」
病理検査(生検)をすると、なぜか、他の胃炎では見られないリンパ球の固まりが確認できるという。
【がんの確率60倍高い】
症状は、胃のもたれ感や鈍痛、むかつき感など通常の慢性胃炎と同じで、特有の症状はない。発症頻度は1000人に約2人といわれ低いものの、怖いのは他の慢性胃炎よりもがんに移行しやすく、しかも悪性度の高いがんになりやすい点だ。
「胃がん病変には、比較的悪性度の低い分化型と、進行が速く転移しやすい未分化型があります。通常、多くの胃がんは萎縮性胃炎などの分化型胃がんの前がん病変から発生しますが、鳥肌状胃炎は若い世代から発生するスキルスがんなどの未分化型胃がんになりやすいのです」
同じピロリ菌保有者でも、鳥肌状胃炎のある人はない人に比べ、胃がんになる確率が60倍高いという報告もあるという。
【除菌後もフォロー】
治療はピロリ菌感染による他の慢性胃炎と変わらず、検査(呼気、血液、便、尿のどれか)でピロリ菌の有無を確認した上で除菌治療になる。
「除菌は、1種類の『胃酸の分泌を抑える薬』と2種類の『抗菌薬』の3剤を1日2回、7日間服用します。終わったら、4週間以上あけてから除菌できたかどうか再度検査(呼気)をする。耐性菌が増えているので、必ず検査で除菌を確認することが重要です」
一次除菌の成功率は70-80%。失敗しても二次除菌(成功率80-85%)まで保険適用で治療できる。これまで3剤1セットになった除菌薬は1種類しかなかったが、今月下旬、もう1種類が発売される。新薬の特徴は、すべて小さな錠剤で飲みやすいところだ。
「鳥肌状胃炎の人は除菌後もフォローが大切です。胃がんの最高リスク群に入るので、毎年1回は内視鏡検査が必要になります」
スギ花粉が飛散を始めるシーズンがやってきた。症状が出る前の今頃から薬を飲み始める(初期療法)と、飛散がピークを迎えても症状を軽く抑えることができる。
だが、それでも毎年つらい状態なら、花粉症を根治する「舌下減感作(ぜっかげんかんさ)療法」を検討してみてはどうか。
【改善率は70%】
舌下減感作療法は、スギ花粉症への抵抗力を強くするために花粉エキスを舌下に投与して免疫を作る療法。国内では大学病院や一部のクリニックで行われている。
専門外来をもつ都筑メディカルクリニック(横浜市)の斉藤正峰院長が説明する。
「まずは内服薬や点鼻・点眼薬による対症療法をやって、それでもつらい症状が取れない重症の患者さんに行う治療法です。治療期間が3年、現時点では保険適用外で費用もかかるので軽症の人では続かない。改善率は一般的に70%といわれています」
同院の過去約500症例の治療成績では、6割が完治、3割は症状がかなり軽減、1割は効果が出ないという。
【濃度を徐々に上げる】
重症の花粉症の場合、鼻や目の症状よりも、強い全身症状によって生活に支障が出てくる。
「倦怠(けんたい)感が強く、布団から出られない人もいます。眠気の副作用が少ないとされる第二世代の抗ヒスタミン薬を飲んでも、眠気が強く出て、かえって悪くなる。こういう人は時間をかけて舌下減感作療法で治すしかありません」
原因がスギ花粉かどうかは血液検査、皮下テストで確認する。治療の手順は、重症度に合わせて濃度を調節した花粉エキスを処方してもらう。それを1日3回、目薬を点眼する要領で舌の下に垂らし、2分間待った後に飲み込むだけ。
「1日目から4日目まで1摘ずつ増やしながら4摘になったら維持する。そして、月1回の通院ごとにエキスの濃度を上げていきます」
副作用は少なく、あっても舌のシビレ感や軽い花粉症の症状ぐらいだ。
【根治はぜんそく予防にも】
治療効果は、翌年のスギ花粉シーズンに判断して、継続を検討する。早い人では、3-4カ月で症状が出なくなる人もいるという。
「1年で症状が出なくなって止めてしまうと、4、5年後、再発しやすい。データでは3年続けると効果が一生持続すると報告されていて、根治には少なくても3年は必要です」
花粉エキス代は、同院の場合で月約2万円。スギ花粉症にしか効果がないので、高いか安いかは患者次第だ。
「WHOがこの療法を推奨しているのは、花粉症はぜんそくの予備軍とされているからです。花粉症の根治は、将来的なぜんそく発症の予防になります」
関節が腫れて痛みを発する関節リウマチ。寒い冬は症状が悪化しやすい。朝起きて、1時間以上も手がこわばるようなら要注意。適切な治療を受けなければ関節の変形をきたす。早期の診断と治療開始が重要だ。
【自己免疫で骨を破壊】
関節リウマチでは、最初に体のどこの関節から腫れてくるか人によって異なるが、頻度が高いのは手指や手首の関節だ。
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの田中栄一講師が説明する。
「関節の中は滑膜(かつまく)と呼ばれる薄い膜に包まれています。この滑膜に炎症が起こり、滑膜組織が増殖し、さまざまな物質が産生され、軟骨や骨が破壊されていきます。本来は細菌やウイルスから自分を守ってくれる自己の免疫システムの異常が原因とされています」
関節リウマチに罹りやすい体質や要因があり、それにウイルスや化学物質、妊娠・出産、ケガや強度のストレスなどの因子が複雑にからみ合って発症すると考えられている。最近では喫煙も危険因子とされている。
【早期に急速に進行】
国内患者数は60-70万人と推定され、男女比は女性の方が3-4倍多い。発症のピークは40代で、30-50代での発症が7割を占める。
「症状の特徴は、手指や手首を中心とする多関節にわたる関節の腫れであり、左右対称に起こるのが典型的です。関節の腫れがあることが診断するにあたっての大事な症状になります」
関節の破壊は、発症後1-2年で急速に進むことが多いという。
「一般的には一旦、関節の変形が起こってしまうと、適切な治療をしても手術以外では、元に戻すことはできないとされています。ですから早期の診断と治療開始が極めて重要になります」
【診断や治療は進歩】
早期に診断するための検査方法も進歩していて、関節超音波検査や抗CCP抗体測定(血液検査)などが行われる。「治療は10年前と比較したら、かなり進歩しました。抗リウマチ薬のひとつである『メトトレキサート』や、生物学的製剤(現在、日本では7種類が投与可能)の使用がこの進歩に大きく貢献しました」
ただし、生物学的製剤は、有効性が期待できる半面、副作用のリスクや経済的な問題もある。使用開始にあたっては専門医とよく相談することが大切だ。
「関節リウマチの診断や治療は明らかに向上していますので、疑わしい症状がある時は、早めに専門医に受診することをお勧めします」
【関節リウマチを疑う症状】
・起床後、手のこわばりが1時間以上続く
・手指や手首など、体のどこかの関節が腫れて痛い
・関節の腫れが左右対称で現れた
・関節の腫れが移動する、または増えてきた
動悸(どうき)、息切れ、めまい…。現代人なら誰もが経験のある何気ない症状の陰に、命を脅かす恐ろしい病気が隠れていることがある。「年のせい」と甘く見ていると痛い目に遭う。長生きしたければ、早目早目の対策が不可欠だ。
■土井秀嗣さん(57歳=仮名)のケース
いまのマンションに住んで20年。駅まで15分ほど歩きますが、20年も住んでいるので慣れっこになっていました。
ところが少し前から、この距離が体にこたえるようになってきたんです。しかも急速に…。仕事で疲れた夜だけでなく、朝会社に出かけるときにも、駅に着く前に息切れがする。電車に乗って落ち着くと、ドキドキと動悸がするのを感じるんです。
この“動悸”は夜寝るときにもあって、ベッドに入って電気を消したあとも、自分の心臓の音が聞こえるくらいハッキリ感じる。年齢的にもメンテナンスが必要かと考えて、病院に行きました。
心電図を撮って、聴診器で心臓の音を聴いた医師が「弁膜症の可能性がある」という。
そこで検査入院をして心エコーと血管内に細い管を入れて内部を見るカテーテル検査をしたところ、左心室から大動脈に通じるところの弁が壊れていることがわかったんです。心臓から血液を送り出す機能が大幅に低下しているとのことで、手術を受けることになりました。
痛みもなく、自覚症状と言っても動悸や息切れくらいしかなかったのに、よもや心臓の手術を受けることになるとは驚きました。
壊れた弁を取り除き、代わりに人工的に作った弁を設置するという手術を受けて、無事成功。術後10日ほどで退院し、自宅で数日休んだのちに、仕事に復帰しました。好きなゴルフはしばらく禁止されていますが、命が助かったんだからそれくらい我慢できます。
些細(ささい)な症状からこんな大病が見つかったことで、あれ以降体調管理には気を使っています。薬もきちんと飲んでいるし、食生活も野菜中心に変えました。変な言い方ですが、病気をしたおかげで長生きできそうな気がしています(笑)。
■専門医はこう見る
埼玉東部循環器病院(埼玉県越谷市)心臓血管外科部長・田中佐登司医師
全身の臓器から静脈を経て心臓に戻ってきた血液は、右心房から右心室に送られ、一旦肺に行った後、再び心臓に戻って、左心房から左心室を経て、全身に送られていきます。
この時、心臓の内部での流れを制御するために各部屋の出入り口に「弁」が設けられています。
加齢や動脈硬化などが原因となって、この弁が故障したり、本来の役割が果たせなくなるのが「心臓弁膜症」。心臓のポンプ機能が低下して、放置すると不整脈や心不全、多臓器不全などを招いて死に至る重大疾患です。
症状としては土井さんの感じた動悸や息切れなどがありますが、中には「めまい」を訴える人もいます。
いずれも忙しいサラリーマンが見逃してしまいがちな症状ですが、循環器系の治療を専門とする医療機関で検査をすれば、早期発見、早期治療が可能なので、思い当たる症状があれば、早目に受診すべきです。
動脈硬化や糖尿病などのリスクを抱えている人は、定期的に心臓ドックを受けるなどして、重症化を防ぐ取り組みが必要です。
それまで元気だった人が、突然の全身けいれんに見舞われ、揚げ句に意識をなくしたりすれば、周囲の人は驚くというもの。じつはこれ、「髄膜腫」という脳にできる腫瘍の一種の症状の可能性がある。早めに見つけられれば、手術で取り除くことが可能なのだが…。
■井上貴代子さん(52歳=仮名)のケース
数カ月前から疲れがたまっていたようで、朝起きると時々頭痛に気づくことがあったんです。しばらくすると治まるので、そんな時はじっとしてやり過ごしていたのですが、そんなことがたびたび繰り返されるようになっていたある夜のこと。
主人と、たまたま遊びに来ていた妹と3人で食事を済ませて、ソファに座ってテレビを見ていたら突然左手が震え出して、その後の記憶がない。気付いたら救急隊の人に囲まれていたんです。
何だかよくわからないまま救急車に乗せられて病院に到着し、すぐに検査。CTスキャンで頭の画像を撮り、そのまま入院となりました。
妹に聞くと、ソファの上で突然左手を震わせると、次第にけいれんが全身に広がり、そのうちに意識を失っていたそうです。けいれんは1分ほどで止まったものの、あまりに突然のことだったので、驚いた夫が救急車を呼んで、病院に運ばれてきたとのこと。
翌朝、検査結果を見た脳神経外科の先生に下された診断は「髄膜腫」でした。前頭葉に直径4・5センチの腫瘍があり「要手術」という。
あまりに突然のことに驚きましたが、私のけいれんを目の前で見ていた夫と妹は口をそろえて「手術で治るのなら受けるべきだ」と言います。夜来のことで、少しずつ状況が理解できた私も、MRI写真を見ながら説明を受け、先生と話し合って手術を受けることに決めました。
手術は無事成功し、術後は抗てんかん薬を処方されていますが、発作はありません。
いま思えば、「朝起きたときの頭痛」という症状も、この腫瘍のせいだったのでしょう。手術から2年経って、腫瘍の再発もなく、まずは一安心。でも、私以上に安心しているのが夫と妹。この2人に心配をかけたくないので、月に一度の病院通いは欠かせません。
■専門医はこう見る
日本医科大学武蔵小杉病院(川崎市中原区)脳神経外科講師・太組一朗医師
髄膜とは頭蓋骨の中で脳を覆うように保護している膜のこと。ここにできる腫瘍が髄膜腫で、いわゆる脳腫瘍の一種です。
この腫瘍が成長していくと、できた場所にもよるが、正常な脳を押し込むように広がっていく。この時に脳全体に影響がおよび、朝起きがけの頭痛や、けいれん発作のような症状が出ることがある。
髄膜腫は基本的に良性腫瘍なので、小さいうちに切除できれば多くの場合ハッピーエンドです。
しかし早期特徴的な症状があまりないので、心配な症状がある人は脳ドックの受診などが理想的。けいれん発作や意識を失うような経験をしたら、一度はMRI検査を受けておくべきです。最近は術後の見た目についても、きれいに手術してくれる病院が増えてきました。
術前術後は抗てんかん薬でけいれん発作を抑えて、年に一度は画像検査を受けて再発の有無を確認することも大切です。