あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■乳がん・子宮頸がん・卵巣のう腫・子宮内膜症
fc2ブログ

性交渉で感染するHPV原因の子宮頸がん 年間15000人発症

昨年末、プロ野球DeNA中畑清監督(59才)の愛妻・仁美さんが子宮頸がんのため59才で他界したニュースは、子宮頸がんを若い人の病気で、命を落とすことはないものだと思っていた多くの人に驚きをもって受けとめられた。

 子宮頸がんとは、性交渉で感染したヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で、子宮の入り口である頸部にできるがん。HPVに感染しても体の免疫力によってほとんどが排除されるが、ウイルスが長らえた場合、まれにがんとなる。

20~30代の女性に多いが、年間に1万5000人もが発症しているというデータもあり、40代以降も油断は禁物だ。「こころとからだの元氣プラザ」の産婦人科医・小田瑞恵さんはこう説明する。

「初期段階では自覚症状がありませんが、早期発見ですぐに治療を始めれば、ほぼ100%治ります」

 ワクチンが開発され、子宮頸がんの予防は新たな時代に突入。日本では2009年に認可され、摂取が可能になった。

「ワクチンで予防できるのは子宮頸がんの約7割。必ず検診を受けるのが大切です」(小田さん)

※Dr.アルなび 医師のアルバイト情報サイト
※Dr.転職なび 医師の転職情報サイト▽勤務時間のご希望がある方

乳がんの“サブタイプ”って? 「顔つき」「性格」見極め治療

岡山赤十字病院 「顔つき」「性格」で治療分かれる

 遺伝性乳がんには生まれながらの「性質」がある。一方、乳がんの多くを占める遺伝しないがんでも、遺伝子の変異によって、後天的にさまざまな「顔つき」や「性格」を持つ。近年、がん細胞の遺伝子を調べ、それぞれの顔つきや性格に合わせて治療することが欠かせなくなっている。

 直接遺伝子を検査したり、免疫学の手法で遺伝子がつくるタンパク質を調べたりして、乳がん細胞の特徴を五つのタイプに大別することができる=表参照。「サブタイプ」と呼ばれるこの分類は、乳がんの「人種」のようなものだ。

 他のがんと同様、乳がんの治療でも、手術、薬物療法、放射線治療が3本柱になる。岡山赤十字病院(岡山市)乳腺・内分泌外科の吉富誠二部長は「サブタイプが特に重要になるのは薬物療法を行う時」と説明する。

 乳がんの病期は、しこりを確認できないほど極めて早期の「0期」、しこりの大きさが2センチ以下にとどまっている「I期」から、次第に腫瘍が大きくなり、骨、肺、肝臓、脳など乳房から離れた臓器にも転移した「IV期」まで、5段階に分けられる。

 薬物療法は早期がんを手術した後、再発・転移を防ぐために行われる。また、ある程度進行した病期で、そのままでは手術が困難な場合でも、薬物療法で腫瘍が小さくなれば、手術できるようになる。

 「がん細胞の顔つきや性格が異なれば、当然、効く薬も違う。サブタイプを見極めることで、その人に最も適した薬を使うことができる」と吉富部長は強調する。

 サブタイプは、がん細胞が「エストロゲン」「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンの影響を受けて増殖するかどうか▽増殖に関与するタンパク質「HER2(ハーツ―)」が過剰に発生しているかどうか▽がん細胞の増殖能力を示すタンパク質「Ki(ケーアイ)67」が多いかどうか―という三つの要素で決まる。病変組織を採取して検査し、10日から2週間ほどで分かる。

 サブタイプの「顔つき」によって、薬物治療の選択が変わる。日本人の乳がんでは、約70%が女性ホルモンが増殖に深く関わる「ルミナールタイプ」とされる。このタイプはホルモンの働きを弱めるホルモン剤治療がよく効く。

 しかし、このタイプの中でも、「顔つき」は優しげなのに「性格」は意地悪で、どんどんがん細胞が増殖するものもいる。その場合、ホルモン療法に加えて抗がん剤治療を行う。

 HER2が陽性の患者も約20%いる。こちらは「ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)」など、HER2を狙い撃ちする分子標的薬の治療効果が高く、抗がん剤と組み合わせる。

 2種類の女性ホルモンの影響を受けず、HER2も陰性の乳がんは「トリプルネガティブ」と呼ばれ、10~15%を占める。こわもての「顔つき」をしていて、ホルモン療法や分子標的薬はあまり効果が期待できない。それでも「性格」が悪くなければ、抗がん剤治療が効く場合がある。

 岡山赤十字病院は今年4月、乳腺・内分泌外科や放射線科、形成外科といった各診療科の枠を超えて連携する「乳腺センター」を開設し、チーム医療体制を強化した。センター長を務める吉富部長は患者を対象とした相談・勉強会を年4回のペースで開き、療養生活をサポートしている。

 乳がんをサブタイプで分類する時代になっても、患者それぞれの体力や併存疾患などの個人差を考慮し、治療を進めることが大切だ。吉富部長は「一人一人の希望やQOL(生活の質)を踏まえ、一緒になって納得できる治療を考えていきたい」という。

 ■岡山赤十字病院(岡山市北区青江、086―222―8811) 乳腺外来の受付時間は火、木曜日の午後0時半~3時半。一般外来でも火、水、金曜日午前中は乳腺疾患に対応している(受付時間は午前8時~11時半)。

おおもと病院 根治目指すには手術を

 がんゲノム医療が普及すれば、メスを使う手術は過去のものになってしまうのだろうか。

 「そんなことはない」。年間約140件の乳がん手術を手掛けるおおもと病院(岡山市)の村上茂樹副院長は、自信を持って否定する。

 根治を目指すには、やはり「取れるものは取り、薬や放射線で目に見えない微小転移をたたく」のが基本だ。そのためにも、早期発見、早期治療の重要性は変わらないと言う。

 手術の方法は大きく2通り。がん病巣周辺を切除しながら乳房をできるだけ残す「乳房温存手術」と、病巣ごと乳房の大部分を切り取る「乳房切除術」に分かれる。

 温存手術は原則、大きさが3センチ以下のがんが対象となる。温存した乳房内に微小ながん細胞が残ってしまう可能性があり、再発を予防する目的で放射線治療が欠かせない。がんの広がりが大きい場合は切除術を行う。適応をきちんと見極めれば、どちらの手術を選んでも生存率は変わらないとされる。

 一時は見栄えのよい温存手術が主流になっていたが、最近は全国的に切除術を選択する患者が増えている。患者自身が再発のリスクを心配することや、切除術と同時にシリコンなどの人工乳房を使って再建する手術が進歩し、2013年から一部が保険適用となったことも、その傾向を後押ししている。おおもと病院の場合も、昨年は温存手術と切除術の割合がほぼ半々だった。

 女性は約11人に1人が生涯のうちに乳がんにかかる。早期発見できた場合の5年生存率は95%以上の高さにもかかわらず、年間約1万4000人が亡くなる。

 村上副院長は、定期的に乳がん検診を受診するとともに、イラストの方法を参考に自己検診に取り組むよう訴える。

 「日ごろから自分で乳房を触って確かめてほしい。『いつもと違うな』と思ったら、すぐに医療機関に相談して」と呼び掛けている。

 ■おおもと病院(岡山市北区大元、086―241―6888) 診療時間は月~土曜日の午前9時~正午(受付時間は11時まで)。

危険な遺伝性乳がん・卵巣がん  発症率高める遺伝子変異

長く日本人の死因の1位を占めているがんは、体を構成する無数の細胞の一つで起きたコピーミスで生まれたがん細胞が体内で免疫などの自己防衛機能の監視をかいくぐりながら増殖して腫瘍を形成、発病する。しかし、一部には特定の遺伝子変異が親から子へと伝わり、その変異が臓器におけるがんの発病リスクを高くする「遺伝性悪性腫瘍」も存在する。20~30代の発病が多い「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」(HBOC)=用語説明参照=も、その一つだ。

 HBOCの中でも患者が比較的多いのが、「BRCA」と呼ばれる遺伝子の変異。この遺伝子は、分裂の際にコピーされるDNAに傷が付いた場合に傷を修復するためのタンパク質を生成させてコピーミスを抑制する遺伝子だ。このBRCA遺伝子に変異があると、修復機能が大きく低下してDNAのコピーミスを起こしやすくなる。特に危険性が高いのが、乳腺や卵巣の細胞だ。ハリウッド映画で活躍している女優のアンジェリーナ・ジョリーさんも、このBRCA変異があったことで知られている。

◇急上昇するがん発症率

 順天堂大学医学部付属順天堂病院でゲノム診療センター長を務める新井正美准教授は、「がん研有明(ありあけ)病院」の遺伝子診療部で長年、がん患者や家族らの相談に応じる「遺伝カウンセリング」を担ってきた。現在は、同病院の遺伝子専門外来で診察にも携わっている。新井准教授は「海外の研究では、HBOCを起こす遺伝子変異を持つ人は400人から500人に1人。確率は低いように見えるが、ほかの遺伝性疾患と比べるとかなり高い」と指摘する。中でもBRCA変異が確認された場合、乳がんの発病率が9%から70%に、卵巣がんは1%から40%へと大幅に上がってしまい、特別な対策が必要になる、と言う。
.
 ◇予防手術選んだジョリーさん

 対策としては、より間隔を狭めた上で複数の方法を組み合わせた検診を続けて早期発見・治療を目指すのが一般的だ。がんが発病する乳房や卵巣を発病前に切除する予防手術という選択肢があるが、健康保険は適用されない。予防手術は、ジョリーさんが2013年に左右の乳房で受けたことで大きな話題になり、知られるようになった。ジョリーさんは15年にも、卵巣と卵管でも同様の予防手術を受けている。

 ジョリーさんの母と伯母は、乳がんと卵巣がんで死亡している。さらにジョリーさん自身もBRCA変異があることが判明していて、医師から発病リスクが乳がんで9割近く、卵巣がんで5割と告げられていたという。

 ◇より厳しい卵巣がん

 乳がんでは、有効な検診方法が確立されている。平均的に乳がんの発症率のピークは40代だが、変異があるとより若い20~30代でも発病率が高くなる。このため検診も、この年齢からマンモグラフィと超音波エコーなど複数の検査手段を組み合わせ、回数を増やして実施することが勧められている。

 しかし、同じBRCA変異の影響を受けるのに、有効な検診方法が確立されていないとされている卵巣がんの場合は「出産希望の有無や、卵巣切除による悪影響を考慮しながら、予防的手術を勧めることがある」と、新井准教授は厳しい状況を説明する。手術後には女性ホルモンが欠乏し、骨粗しょう症やさまざまな更年期障害に悩まされてしまうケースがある。
.
 ◇カギは血縁者のがん

 乳がんを早期に発見できたとしても問題は残る。現在は、腫瘍を含む乳房の一部だけを切除する温存手術を選択する患者が多い。しかし、HBOCの場合は再発の確率が高いため、乳房全体を切除する全摘手術を余技なくされることも多い。新井准教授は「手術後の経過観察の頻度や精度も高くして、再発に備える必要がある」と説明する。

 BRCA変異の遺伝子検査を受けるタイミングも重要になる。早期発見を考えれば若い方がよいが、遺伝子情報をどこまで知るかは一定の判断力が求められるし、費用もかかる。新井准教授は「一番分かりやすいのは、血縁のある家族に乳がんや卵巣がんを発症した人が複数いた場合だ。また現在では、BRCA異常のある乳がんを対象にした化学療法もあるので、乳がんや卵巣がんが発見された時点も一つのタイミングと言える。がんの悪性度の評価や治療法の選択にも大きく影響するからだ」と語る

 ただ、HBOCは患者本人にとどまらない問題という面も見逃せない。血縁親族もBRCAである可能性が50%あるからだ。「直接的な表現をすれば、姉妹や娘、いとこやめいにも乳がんや卵巣がんになるリスクが高い可能性がある。これをどう伝えるか、あるいは伝えないのか、医師側としては非常に微妙な問題に直面させられる」

 ◇家族への情報提供が重要

 このため、事前に専門の医師などによる丁寧な遺伝子カウンセリングを受け、家族とも話し合うことが欠かせないだろう。遺伝子検査で何が分かり、何が分からないか。そしてその確度はどの程度なのかはもちろん、判明した問題がどのような影響を、どの範囲に与えるかまで、十分に理解してもらうことが重要だからだ。

 BRCA変異自体の治療はできない。結果としてこの変異があった親族一人ひとりが、患者と同じように「乳がんや卵巣がんになりやすく、重症化しやすい」という問題を一生抱えていくことになる。「こんな事実を『知りたくなかった』と考える人が出ても不思議はないだろうが、検診の徹底による早期発見・治療につなげられるなど、メリットも大きい」と新井准教授は理解を求める。世界保健機関(WHO)も「(遺伝的情報を)家族に伝えるのは道徳的義務だ」とのコメントも発している。ただし、その前提として、医療側ががんの告知と同様の慎重な対応と情報提供が求められることは間違いない。

 ◇用語説明 「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」(HBOC)

 特定の遺伝子に変異や組み替えが生じていることで、乳がんや卵巣がんを発症しやすい遺伝的な体質。遺伝子異常は遺伝するため、家系的に発病率が高くなる。乳がんで全体の約5%、卵巣がんで約10%を占めるほか、比較的若い年齢に発病する事例が多い。一度治療が成功しても、繰り返しがんを発病する可能性が高くなる。(時事通信社 喜多壮太郎・鈴木豊)

更年期女性にホルモン補充療法 気になる乳がんリスクは?

頭痛や肩凝り、腰痛などを女性が度々訴えるようなら、もしかしたら更年期に関係する不調かもしれない。40代以降だけではなく、30代でも可能性がある。

■「専門医」が更年期治療を勧める理由

「更年期の不調といえば、ホットフラッシュやイライラ、うつなどがよく知られますが、実際の症状は非常に多岐にわたります。それが適切に診断されていない。不調に悩む患者さんに更年期障害の治療を勧めると、症状が一気に良くなるケースは珍しくありません」

 こう話すのは、湘南記念病院乳がんセンター長の土井卓子医師だ。土井医師の専門は乳腺外科で、更年期障害の治療にあたる婦人科とは異なるが、“女性を診る科”ということもあり、婦人科と連携して、更年期障害の治療の普及に力を入れている。

 その土井医師が、日本で初めてともいえるホルモン補充療法(HRT)と乳がんに関する大規模調査結果を発表した。

HRTは、女性の更年期障害の治療のひとつ。その効果は大きいが、「乳がんリスクを上げるのでは?」という懸念から治療を受けない人は多い。特に日本では顕著で、普及率は2~3%(欧米では40%)。日本人女性を対象にしたHRTと乳がんに関する調査は過去に埼玉医大が実施し、「HRTは乳がんの発症リスクを高めない」との結果が出ているものの、普及率の低さからそれ以外の研究が国内で行われていなかった。

「一方、湘南記念病院には、『HRTを受ける人はマンモグラフィー(マンモ)と超音波の乳がん検診が必須』とする提携クリニックがあり、HRT経験者が多数集まる。それによって、今回の調査が可能になりました」

 土井医師は、過去5年間の乳がん検診受診者を対象に調査を実施。対象人数は2966人。HRT歴がある人は811人で、27.3%を占めた。前出の埼玉医大の調査は全国7施設の共同研究で、HRT歴の比率は7.4%。湘南記念病院1施設でHRT歴27.3%というのは、いかに多いかが分かるだろう。

■マンモグラフィーと超音波検査を毎年受けることが大前提

 土井医師の調査で明らかになった結果は、次の3つだ。

①HRTが長期に及ぶと「高濃度乳腺」の比率が高くなる。高濃度乳腺とは、マンモで発見しづらいタイプの乳腺組織で、乳がんの発症リスクをやや上げる。

②HRT歴群の73%は継続5年以上であり、“長期”とは5年以上。

③乳がんの発症リスクをやや上げるものの、HRTをきっかけにマンモと超音波を毎年受ければ、乳がんの発見のチャンスが増え、乳がんの早期発見につながる。

 HRT群の乳がん発見率は、非HRT群の2倍だったが、これは①と③の両方が関係していると考えられる。

 土井医師は「発症リスクと死亡リスクは違う」と強調する。

「重要なのは、早期発見です。乳がんは早期発見すれば命を落とす危険は極めて低くなる。HRTでやや発症リスクが上がっても、HRTで乳がん検診を確実に受けるようになれば、早期発見のメリットを得られる。更年期障害のつらさを抱えているなら、マンモと超音波を毎年受けることを大前提に、HRTを検討すべきでしょう」

一般的な乳がん検診はマンモだけなので、「マンモと超音波を毎年」ということを忘れずに。高濃度乳腺はマンモだけでは見逃される可能性がある。この際、大切なのは、更年期障害の知識を十分に持つ乳腺外科医と婦人科医を受診することだ。乳がんが専門の乳腺外科医の中には、更年期障害を深く知らず、「マンモだけでいい。そもそもHRTは不要。更年期障害は我慢すればいい」という考えの医師もいる。

早期乳がんの再発予防に抗がん剤治療の追加は必要か?

 早期乳がんの治療を決める上で検討したい検査がある。「オンコタイプDX乳がん再発スコア検査」だ。残念ながら保険適用ではないため40万~45万円かかる。しかし今回、あるタイプの早期乳がん患者にこの検査が役立つことが、大規模前向き臨床試験で明らかになった。この結果は今年6月の米国臨床腫瘍学会で発表された。

 浜松オンコロジーセンターの渡辺亨院長が説明する。

「早期乳がんは腫瘍が大きくなく、脇の下のリンパ節転移がないか、転移の数が限られている状態です。早期乳がんは手術で腫瘍を取り除いた後、再発防止のためにホルモン療法や抗がん剤投与が行われます」

 術後、どの治療をするか? 当然ながら再発防止率が最も高い治療を選びたい。そこで行われるのが、タイプ分けだ。

 乳がんは女性ホルモンが関係して増殖するので、ホルモンの作用を抑えるホルモン療法が効く。

 しかし、すべての乳がんがこのタイプとは限らず、ホルモン受容体が陽性か陰性かで調べる。

 また、HER2というタンパク質が多く含まれる乳がんは、このHER2タンパク質を標的とする分子標的薬がよく効き、抗がん剤と一緒に使用する。

 しかし、やはりすべての乳がんがこのタイプではなく、HER2が陽性か陰性かで調べる。

 ホルモン受容体とHER2それぞれの、陽性あるいは陰性を組み合わせるので、全部で4タイプに分かれる。

「このうち全体の7割を占める最も多いタイプが、ホルモン受容体陽性で、HER2陰性のタイプ。ホルモン療法は行いますが、これだけでいくのか、抗がん剤を組み合わせるのか、2つの選択肢があります」

 というのも、ホルモン受容体陽性はさらにルミナルA、Bの2つに分けられ、がん細胞の増殖能力が低いものをルミナルA、高いものをルミナルBとし、ルミナルAは抗がん剤の効き目が弱くて、ルミナルBは抗がん剤の効き目が強いからだ。

「ルミナルAとBはスパッと分けられるわけではなく、ホルモン療法だけでよいか、抗がん剤を加える必要があるかを的確に判断することは、今までできませんでした」

 つまり、はっきりとルミナルAならホルモン療法、はっきりルミナルBなら抗がん剤追加となるが、どちらがいいとも言えない中間帯があり、“抗がん剤が本当に必要かは分からないが、副作用に耐えながら抗がん剤治療も受ける”といった状況だった。冒頭の大規模前向き臨床試験では、その“中間帯”の治療に答えが出た。

■確証を持って治療に進める試験結果

 試験に使用されたオンコタイプDX乳がん再発スコア検査は、独自の計算式などで乳がんの再発リスクの高さを0から100で示す。これを「再発スコア(RS)」といい、数字が大きいほどリスクが高い。

 大規模前向き臨床試験でまず明らかになったのは、①RSが小さい(0~10)とホルモン療法だけでOK②RSが大きい(26~100)とホルモン療法に抗がん剤も追加。

 そして、中間帯のRS11~25を「ホルモン療法だけ」と「抗がん剤追加」に分けて調べたところ、全ての評価項目で結果は同じだった。要は、ホルモン療法に抗がん剤を追加してもしなくても、再発リスクは変わらない。RSが中間であれば、抗がん剤の副作用に耐えなくてもいいのだ。

 世界的に広く利用されている診療ガイドライン「NCCN」では、すでにオンコタイプDX乳がん再発スコアの使用を「強く考慮」としている。日本で実施経験のある医療機関は全国300以上だが、高額な検査ということもあり、普及まで時間がかかりそうだ。

乳がんの予防切除受けるべき? 川崎医大病院、冷静にリスク考えて

がんは遺伝子の病気―。そう聞くと、「うちの家族や親戚ががんにかかったことがある。“がん家系”の私にも遺伝するのでは?」と不安になるかもしれない。

 米国の人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが数年前、健康な乳房を両方とも切除したというニュースを覚えているだろうか。ジョリーさんは家族を乳がんで亡くしており、自分の遺伝子を調べると、将来同じように乳がんを発症するリスクが高いことが分かった。切除手術はその予防が目的だった。

 だが「ほとんどのがんは遺伝しない」。川崎医科大学附属病院(岡山県倉敷市)遺伝診療部副部長の升野光雄・川崎医療福祉大学教授(臨床遺伝専門医・指導医)はそう話す。

 遺伝が要因となるがんはごく一部。遺伝性乳がんはその中で最もよく知られているが、それでも乳がん全体のうち、遺伝性のものは「約7~10%」にとどまる。遺伝学的検査を受けるかどうかを含め、冷静に考える必要がある。

 遺伝性乳がんの多くは、「BRCA1」と「BRCA2」という遺伝子のいずれかに生まれつき変異がある。ジョリーさんは「BRCA1」に病的変異が見つかった。

 BRCAは細胞ががん化するのを抑える働きをしており、病的変異があれば、その働きが不十分になってがんになりやすい。BRCAの変異がある女性が生涯に乳がんになるリスクは、正常な女性の6~12倍とされ、卵巣がんの発症率も高まる。

 BRCAの変異は親から子へ、性別に関係なく2分の1の確率で受け継がれる。BRCAの変異を持つ男性も乳がんのリスクが上昇し、前立腺がんや膵臓(すいぞう)がんにもなりやすいとされる。

遺伝性のがんの特徴は、両親から受け継いだ1対の遺伝子(二つ)のうち、片方に病的変異がある(受精卵の段階で)こと。残りの遺伝子にも病的変異が生じた時にがんを発症すると考えられている。生まれつき変異を持っているので、一般のがんよりも若くして発症しやすい。乳がんなら片側の乳房に何個も腫瘍ができたり、発症した側の乳房を切除しても反対側にできたりする。

 BRCAの変異は採血による遺伝学的検査で診断できる。3週間ほどで結果が出る。

 病気に関連する遺伝子の変異(病的変異)が見つかったらどうすればよいのか。「BRCAの変異があっても全員ががんになるわけではない。がんになりやすい“体質”が遺伝するのだと思ってほしい」と升野教授は言う。

 長年にわたって乳がんを診てきた園尾博司病院長は「ジョリーさんのように予防的に切除手術を受ければ、確かに発症リスクは激減する」と説明する。

 もちろん、切除手術を受けないという選択も尊重される。園尾病院長はその場合、「発症リスクが高いため、定期的な検診が欠かせない」とフォローする。

 新たな遺伝性乳がん治療の道も出てきた。今年7月、国内初の遺伝性乳がんに対する分子標的薬「リムパーザ」(一般名オラパリブ)が保険適用となった。BRCAの変異があるがんを細胞死に導く、新しい作用のある薬だが、今のところ他の化学療法が効かず、手術もできない患者、または再発した患者に限られる。効果を確認した上で、適応拡大が期待される。

 遺伝性乳がんの診療には、遺伝に関する専門的な知識や経験が求められる。川崎医科大学附属病院は遺伝学的検査や診断、治療に適した拠点病院として、4月に「遺伝性乳癌(がん)卵巣癌総合診療基幹施設」の認定を受けた。岡山県内では岡山大学病院を含め2施設だけだ。

 園尾病院長は「遺伝性乳がんに対して診療科や職種を超えたチーム医療体制をつくり、患者さんに安心してもらえる治療に取り組んでいきたい」と話す。

認定遺伝カウンセラー 医師と別の立場で援助

 遺伝性のがんは本人だけの問題ではない。遺伝子の変異が子孫に伝わる可能性がある。

 血縁者にどう説明すればいいのか…。遺伝性乳がんの場合、乳房の予防切除手術を受けた方がいいのか…。不安や疑問を持つ患者・家族に科学的根拠に基づく情報を分かりやすく伝え、治療の選択をサポートする専門職「認定遺伝カウンセラー」がいる。

 認定遺伝カウンセラーは、臨床遺伝専門医と連携しながらも独立した立場にある。日本認定遺伝カウンセラー協会副理事長を務める山内泰子・川崎医療福祉大学医療福祉学部准教授は「私たちは患者・家族の権利を最優先に、場合によっては医師とは別の立場から、どうするのがいいのか一緒になって考える」と強調する。

 川崎医科大学附属病院では、山内准教授を含む2人の認定遺伝カウンセラーが遺伝カウンセリングを担当する。1回1~2時間程度、じっくり時間をかけて疑問や相談者の気持ちを聴き、がんの遺伝学的検査や予防・治療法などについて説明する。「検査を受けるかどうかは、本人が納得して決断することが大切」と山内准教授は言う。

 認定遺伝カウンセラーのカリキュラムを学ぶ養成課程は全国15の大学院に開設され、中国四国地方では唯一、川崎医療福祉大学大学院にある。認定試験に合格した資格取得者は全国226人、岡山県内3人。がんゲノム医療の普及とともに、今後さらに役割は重要になる。

 山内准教授は「遺伝に関するさまざまな相談に対応する。気になることがあれば、ちゅうちょせず連絡してほしい」と呼び掛ける。

 ■川崎医科大学附属病院(倉敷市松島、086―462―1111) 遺伝診療部では遺伝カウンセリングを木曜日午後、完全予約制で行っている。医療保険は適用されず、料金(初回7560円、2回目以降2160円)は全額自己負担となる。

“乳がんのしこり”を再現したサンプル開発 実際に触ってみてわかったこと

年々増える乳がん

人口動態統計で今や、日本人女性の11人に1人がなると言われている、乳がん。 厚労省のデータによると、乳がんによる女性の年間死亡者数は年々増えており、今からおよそ20年前の1995年は7,763人だったのに対し、2017年では14,285人と、わずか20年で2倍に迫る数にまで増えているのだ。(厚生労働省「人口動態統計」)

近年も、2017年には小林麻央さんが34歳、今年8月には漫画家のさくらももこさんが53歳という若さでこの世を去った。乳がんは早期に発見できれば、9割が助かると言われているにもかかわらず、死亡率が上昇している理由のひとつが、検診率の低さ。受診率を海外と比べても、トップはアメリカだが、日本は約45%と先進国では最下位。

身近な病気と感じてはいるものの、定期的な健診を受けたくても仕事が忙しく、なかなか病院に行けない…という人もたくさんいるだろう。そんな時には、自分で胸部に触れてしこりがないか探す「セルフチェック」が有効だ。
.
「消しゴムくらい…」ってどのくらいの硬さ?

しかし、いざ「セルフチェック」をしようとインターネットで調べてみると、「硬い消しゴム」や「石」「ビー玉」「梅干しの種」など、しこりには色々な表現がある。消しゴムや石は硬さを想像しやすいが、皮膚や脂肪を通して触った時にどんな手触りがするのか、という所まではわかりにくいのではないだろうか。

20代女性の筆者も、一度「これが噂に聞く“消しゴムくらいの硬さ”のしこり?」と思い、青ざめつつ乳がん検診を受けたものの、結果は全くの思い込みで「これは“消しゴム”ではなかったのか…」と首をひねりながら帰路に就いたことがある。そんな中、ティ・アール・エイ株式会社から、乳がんの“しこりの感触”を再現した「Mamion(マミオン)」が発表された。

このマミオンは、乳がんの直径1センチのしこり、2センチのしこりの2種類を再現したもの。
人差し指・中指・薬指の3本でふくらみを押さえて、円を描くようにクルクルと触ることで、しこりが指に触れる感覚を覚えることができるという。 乳がんには0から4までのステージ(進行度)があり、そのうちステージ1にあたる「しこりの大きさが2センチ以下、リンパ節への転移がない」状態で発見されれば、10年生存率は約90%だという。マミオンでしこりの感触を覚えてセルフチェックすることで、乳がんをごく初期段階のうちに発見することができる、というわけだ。

マミオンは「乳がんの早期発見を実現し、少しでも多くの命を救う手助けをする」ことを目標としていて、その認知度を上げるためにクラウドファンディングサイト「Ready For」にてプロジェクトを公開。公開から2週間で81%の達成率となっている。(11月13日現在。公開は11月27日(火)23:00まで・目標金額30万円)

なぜ今回、このような企画を立ち上げたのか。
マミオンの開発に携わった、ティ・アール・エイ株式会社の山中氏にお話を聞くことができた。

医師の指導のもと、皮膚やしこりの感触を再現

――マミオンを作るきっかけは?

弊社では主に機械部品やガジェット関係を取り扱っておりましたが、近年では健康分野のマーケットに注目しており、「人々が健やかに過ごせる製品を開発したい」という社長の想いから、第1弾として2016年にSleepion(スリーピオン)という睡眠導入家電を開発しました。 第2弾としてMamion(マミオン)が開発されたのですが、きっかけは2017年頃より著名な有名人が乳がんで亡くなる報道を聞き、30代前半という自分と同世代の方も命を落としていることが他人事と思えず、乳がんについて調べ始めたことでした。

――「マミオン」という名前の由来は?

Sleepionの「ion」の部分と、ラテン語の乳房を意味する「マンマ」を組み合わせてアレンジした名前です。

――こだわったポイントは?

人間の皮膚をリアルに再現することにこだわりました。 皮膚やしこりの感触につきましては、川崎医科大学付属病院長よりご指導いただき、納得頂くまで何度も試行を重ねて製造しました。乳がんによる著名人の訃報のニュースに触れ「実際のしこりの感触がわかる物があれば良いのに」と考えていた中で「乳がん触診シミュレーターの開発をしてはどうか」という話が持ち上がり、マミオンの開発につながったのだという。

それでは、分かりづらい「しこりの硬さ」はどのように再現されているのだろうか。
さっそく、サンプル品を送っていただき、実際に触ってみた。
.
実際に触ってみた

表面を触ってみると、ツルツルとしつつも指が滑ってしまうようなプラスチック感はなく、しっとりとしたマットな質感。商品紹介によると、表面としこり部分は合成樹脂、中身はTPSというゴムに近い性質の素材でできているそうだが、素材の違いから表面と中身は硬さが微妙に違っていて、肌のハリや脂肪のやわらかさはとてもリアルに再現されているように感じた。

しこりに触れようとすると指からズルリと逃げてしまうため、しこりそのものの硬さは表現しにくいが、薄い粘膜で包まれた消しゴムのような、わずかに弾力のある硬さを感じることができた。1センチのしこりの方は、指をそろえて軽く押し込むとほとんどわからない程度の微かな感触があり、円を描くようにクルクルと押し込むと、ようやく「コロコロ」とした指ざわりが感じられた。一方、2センチのしこりは指を軽く当てただけで「何かあるぞ」と感じられ、クルクルと押し込むと「グリグリッ」と大きい手ごたえがはっきり伝わってきた。

――しこりを例えた表現は色々あるが、マミオンで再現したものが乳がんの硬さ?

しこりの硬さについては、川崎医科大学付属病院長のご指導をもとに決定しております。悪性(がん)をイメージして製造していますが、必ずしも「このしこりの硬さだから悪性」と断定できる訳ではありません。マミオンはあくまで「マミオンに隠されたしこりと同様の感触がある場合、信頼のある病院へ受診して下さい」と促すきっかけになるよう、開発させて頂いた製品になります。

実際にマミオンに触ってみた感想は、「2センチのしこりはサンプルがなくても気付けるかもしれないが、1センチのしこりは自分では気付けないかもしれない」ということ。特に、表面を軽く触っただけでは1センチのしこりにはほとんど気付くことができないため、ぜひ多くの女性にサンプルに触ってほしい、と思ったのだが、実は開発には女性からの反対もあったという。

――開発にあたり、社内の反響は?

元々ガジェットや機械部品を取り扱っている会社なので、なぜ乳がん触診シミュレーターを開発するのかと最初は反対されました。デリケートな見た目から特に女性社員には反対されましたが、いかに乳がん触診シミュレーターが人々の命を助けるきっかけになるかということを説明し、納得してもらい、最終的には製造することが出来ました。完成後は、見た目に不快感が少なく持ち運びしやすいサイズ感なので使いやすそうと評判です。

――使用してもらいたいのはどんな人?

特に年齢制限はありませんが、乳がん発生率の高い30~60代女性の方々を中心にお使い頂ければと思います。マミオンは今回、認知度向上のためのクラウドファンディングを行っているが、プロジェクトの成立・不成立に関わらず、今後一般販売をする予定だという。(定価29,800円)

がん細胞は、場合によっては1ヶ月の間に急速に大きくなる場合もあるため、最低でも「月1回以上」のセルフチェックが推奨されている。けっして他人事ではない乳がん。まずは「セルフチェック」を習慣づけることから始めてほしい。

毎月1度の乳がん自己検診 異常感じたら医療機関受診を

乳がん看護認定看護師で、おおもと病院(岡山市北区大元)の大久保茂美・総看護師長に、乳がんの早期発見につながる検診の重要性について寄稿してもらった。

 日本では乳がんが年々増加しており、女性のがんの第1位になっています。その半面で、乳がん検診の受診率は20~30%と低い状況にあります。乳がんは「早期に発見すれば適切な治療により治癒を見込めるがんである」と言われています。

つまり、早期発見が重要で、そのためには定期的に乳がん検診を受けることをお勧めします。「忙しい」「平日は時間が取れない」という方には、日曜日(日程は限定)に乳がん検診が受けられるような取り組みをしている医療施設もあります。

 「マンモグラフィーは痛い」「恥ずかしい」などの理由で乳がん検診は気が進まないという方は、「友達と誘い合わせて行く」「女性の医師や技師が対応してくれる医療機関を探してみる」など、なにかしらきっかけを見つけて「検診」への一歩を踏み出していただきたいと思います。

70代以上の方も

 乳がんの罹患(りかん)率は30代後半から増加しますが、20代でも発症する方はおられます。特に多い年代は40~60代と言われていますが、70代以上の方の乳がんも少なくありません。

以前、街で一般の方に「乳がんの自己検診の体験」をしていただこうと声をかけた際に、「私の年齢でも乳がんになりますか」と言われ、少し驚いたことがありました。

その方の年齢をはっきりとはお聞きしませんでしたが、「ある程度の年齢になると乳がんにはならない」という認識の方もいることにその時気づきました。

 現在、マンモグラフィー検診の対象は40歳以上です。乳がんになりやすいと言われている40~60代の方だけでなく、70代以上の方も定期的に乳がん検診を受けることをお勧めします。

毎月1度の自己検診

 乳がんは「自分で発見できる数少ないがんの一つ」と言われています。「たまたま触ったらしこりに気づきました」「テレビで乳がんのことをやっていたので、自分でも触ってみたら気づきました」など、自分でしこりに気づいた乳がん患者さんのお話を何度か聞いたことがあります。

「しこり」があっても乳がんでない場合も多くあります。また、自己検診をしていれば必ず乳がんを見つけられるというわけではありませんが、定期的に乳房をチェックして、自分の乳房の状態を知っておくこと、変化に早く気づくことが大切だと思います。

乳がん検診と自己検診で乳がんから自分を守りましょう

 乳がん検診を受けて異常なしと言われている方でも、次の検診まで大丈夫とは限りませんし、マンモグラフィーも万能ではありません。自己検診で乳房の変化や異常を感じたら医療機関を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。

 マンモグラフィー検査は乳がんによる死亡の危険性を減らすことが証明されていますが、マンモグラフィーで映し出せない乳がんがあるのも確かです。

 「自己検診で異常がなかった人も、乳がん検診を受けましょう」「乳がん検診で異常なしと言われた場合も、自己検診は続けましょう」と日本乳癌(がん)学会のガイドラインでも勧められています。定期的な自己検診と定期的な乳がん検診で、乳がんから自分を守りましょう

 おおくぼ・しげみ 倉敷古城池高、岡山県立短大看護科卒。1988年からおおもと病院に勤務、2006年から乳がん看護認定看護師として活動。14年から総看護師長。

子宮筋腫についての2つの誤解。あなたは大丈夫?

ちょっとした思い込みで、取り返しのつかないことになってしまうことってありますよね。
特に病に関する誤解は避けたいもの。子宮筋腫について、こんな誤解をしている女性がいます。

「子宮筋腫って、大きくなるとがんになるんですよね」

子宮筋腫は良性の腫瘍ですので、大きくなってもがんになることはありません。その昔、「切らないとがんになる」と患者を脅かし、子宮筋腫の手術を勧める悪徳医者がいたのです。筋腫ががんになるという誤った情報が流布する一因になりました。

次に、こんな思い込みをしている女性もいます。

「私の母もお祖母ちゃんも子宮筋腫で手術した。子宮筋腫の家系だから私もなるのかも。なったら切ったほうがいいのかな」

実は、子宮筋腫ができる原因はまだ解明されていません。なので、遺伝性かどうかもわからないのです。だからもし子宮筋腫が見つかっても、「やっぱり家系だ。切ったほうがいいかな」などと思う必要はないのです。

切らないと不妊症になる?

そもそも子宮筋腫は、それほど珍しい病変ではありません。いちばん多いのは40代ですが、30代にも増えていると言われています。痛みなどの自覚症状がなく、知らないうちにでき、知らないうちに小さくなって終わりというパターンも多いです。

そのため子宮筋腫は、子宮がん検診を受けたときに発見されることが多いです。自覚症状はないのに検診で発見された場合、治療には注意が必要です。検診に付随するリスクに詳しい医師・近藤誠先生は次のように言います。

「特に20代、30代の女性は気をつけてください。『切らないと将来不妊症になるかもしれない』などと言って手術を勧める医者がいるのです。近年は超音波を使って簡単に検診できるので、気軽に検診を受けて、筋腫を発見される女性が増えています。痛みなど自覚症状がない限り、検診には近づかないほうが無難です」

治療が必要な場合も手術は極力避ける

とはいえ、不正出血の量が多かったり、痛みがひどくなったりする場合は、医者に診てもらったほうがいいでしょう。その場合も、まずは手術以外の治療法を検討してください」と近藤先生は言います。なぜでしょうか。

「どんな手術でも、手術後の弊害があるからです。お腹を開けると当然、子宮や卵巣、小腸、大腸など内臓を覆っている薄い膜----腹膜も切ることになります。切られても再生しますが、そのとき臓器にあちこち癒着することがあります。小腸に癒着すると小腸を締めつけてしまうので便秘になりがちです。ひどい癒着だと小腸が詰まって腸閉塞という恐ろしい状態になります」

手術後に便秘がひどくなった、と訴える女性は少なくありません。では、どんな治療がいいのでしょう? 手術を避けた治療法に「動脈塞栓術」があります。これは子宮筋腫に栄養を送っている鼠径部の動脈をふさぐ方法。栄養源を絶たれて、筋腫が縮小するのです。

「比較的新しい治療法です。後遺症が少なく、施術は局所麻酔で済むので身体への負担が少ない点では評価できます」と近藤先生。ただ「放射線を被ばくするので、将来の発がんが心配、というデメリットもあります」とも。

とにかく子宮筋腫はがんにならず、遺伝もしません。たとえ検診で子宮筋腫を見つかっても、あせって手術することはないことを覚えておきましょう。

乳がん切らずに治療 薬物療法の「目的」と「種類」

「がん」の治療は腫瘍を切除する手術だけでなく、薬物や放射線を組み合わせて行う集学的治療が効果的であることは、どの臓器においても確認されています。中でも乳がんは治療に使用できる薬剤が最も多いといってよいでしょう。今回は乳がんに対する薬物療法の「目的」と「種類」に分けて解説します。

 (1)乳がんになるとなぜ薬物療法をするのか?(表1)

 がん細胞は発生してから徐々に増殖(進行)し、周りの組織へ直接広がり(浸潤)、また血液やリンパの流れに入ることで全身に広がっていきます(遠隔転移)。手術や放射線は治療を行った部位(局所)のみには有効ですが、血流やリンパ流の中に潜んでいる細胞(微小転移)までは治療できません。さらに、遠隔転移がある場合は既に全身にがん細胞が広がっている状態とされています。

 ▽目的1 乳がんの治癒(再発・転移を防ぐ術後補助薬物療法)

 手術によりきれいに腫瘍が切除されたら完治かというと、そうとはいえません。検査では検出できない微小転移が血液やリンパの流れの中に存在し、術後数年の間に増殖して肺や骨、肝臓などに遠隔転移として発見されるからです。術後転移を防ぐためには薬剤を投与して微小転移を治療する必要があります。

 ▽目的2 腫瘍を極力小さくして切除範囲を小さくする(術前薬物療法)

 乳がんの診断時に明らかにリンパ節に転移があったり腫瘍が大きい場合、(1)腫瘍を小さくして切除範囲を小さくする(2)抗がん剤の効果を確認する(微小転移は見えないが、切除していない乳腺の腫瘍に対する効果は確認できる)―という理由から術前薬物療法が提案されることがあります。

 ▽目的3 がんによる症状の緩和と延命

 遠隔転移が見つかった場合、治癒するのは困難です。ただ、薬剤によりがん細胞の量が減ればその分、骨転移の痛みや肺転移の息苦しさなど乳がんによる症状を和らげる(症状緩和)ことができ、さらにがん細胞の増殖を抑えることで、その分命を長らえる(延命)ことができます。遠隔転移に対する治療は薬物療法が主で、基本的には効果がある限り継続投与します。

 補助薬物療法は「治癒」を目的としているので、副作用がきつくても限られた期間決められた薬剤を頑張って最後までやりとげることが推奨されます。それに対して遠隔転移の治療の場合、症状を緩和し、生活の質を一日も長く保てるようにすることが目標であり、薬剤の種類や投与量は患者さんの状態に合わせて変更されることもあります。

(2)乳がんに対して効果のある薬剤

 乳がんに効果があることが明確に証明されている薬剤には以下の三つがあります。どの薬剤が効きやすいかは手術や針生検による組織検査から分かります。近年はそれらの性質により乳がんを四つのタイプに分けて区別することが多くなりました(表2)。薬剤の効果だけでなく、再発しやすさや再発時期、転移してからの生存期間もタイプによって違ってきます。

 A 内分泌療法(ホルモン療法)

 組織検査でエストロゲンレセプター(ER)が陽性であった場合効果があります。体内の女性ホルモンであるエストロゲンの刺激によって増殖するタイプの乳がんです。エストロゲンの刺激をブロックする抗エストロゲン剤やエストロゲンの体内の量自体を減らすアロマターゼ阻害剤が内分泌療法剤です。副作用として更年期障害のようなほてりや関節痛などがあります。

 B 分子標的療法(抗体療法)

 細胞表面にHER2(ハーツー)という部位をもち、そこからの刺激で増殖するがん細胞です。この薬剤はそのHER2に作用し、増殖を邪魔します。従来このタイプのがんは悪性度が高いがんと言われていましたが、近年分子標的薬剤がたくさん開発され、いずれも非常に高い効果が得られています。副作用は抗がん剤に比べて非常に少なく、脱毛もないが心臓の機能が低下することがあるのでそこだけは注意が必要です。

 C 抗がん剤

 多くの臨床試験により効果が確認されている抗がん剤にアンスラサイクリンとタキサンがあります。術後薬物療法として使用されるのはその2種類です。効果を予測する因子として近年、Ki67というがん細胞の細胞分裂の程度を示す因子が利用されます。Ki67が高い場合は抗がん剤の効果も高いです。転移の治療ではさまざまな抗がん剤が使用できます。副作用もそれぞれ異なっており、脱毛のない薬剤もあります。通常いずれも入院は必要なく外来での治療継続が可能です。

(3)乳がんに対して薬物療法を行うかどうかどうやって決めるのか?(図1)

 術後補助療法の場合、「どの程度再発・転移する可能性があるか?」また転移の治療の場合、「どの程度の生存期間が望めるか?」ということは治療を決定するのに非常に重要な情報です(リスク)。さらに「薬剤の費用や副作用の頻度・種類」も重要です(ハーム)。そして、その薬剤を行うことで「どの程度再発を減らすことができるか?」また「どの程度生存期間が延長できるか?」という利点(ベネフィット)が判断の基準となります。自分のリスクを把握した上でハームとベネフィットを天秤(てんびん)にかけ、薬物療法を行うかどうか、またどの薬剤にするかを選択します。

(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科助教 枝園忠彦)

乳がん、広がる一括治療…診療科の垣根越えチーム


全国の医療機関で、乳がんの診断、治療から乳房再建までを一括して行う「ブレストセンター」を設置する動きが広がってきた。診療科の垣根を越えて医師・看護師がチームを組み、治療効果を上げるとともに患者の負担も軽くするのが狙いだ。乳がん患者の増加で、2013年に乳房再建の保険適用の範囲が広がったことが背景にあるという。

■手術、同じ日に

 大阪府四條畷市の女性(50)は14年夏ごろ、近くの病院で乳がんの診断を受け、右乳房の全摘を勧められた。「ショックだった。女性として終わった感じがした」

 しかし、同年11月にブレストセンターを新設した関西医大滝井病院(大阪府守口市)を紹介され、乳腺外科で乳房を摘出し、続いて形成外科で自らの腹の脂肪を血管ごと胸に移植する自家再建術を受けた。手術は16時間に及んだが、女性は「手術後、ほとんど元のままの胸を見た時は、本当にうれしかった」と話す。

 同病院は両科のほか、専門知識を持つ看護師らが協力。再建後は形が固定するまで専門の下着が必要で、「下着外来」も設けて患者に合った下着も作っている。

 センター設置後、2月末までに261件の乳がん手術を実施、このうち約6割が再建術を伴う。以前は診療科の縦割りで、摘出と再建の手術を同じ日にするのは難しかった。形成外科の田中義人医師は「きれいな乳房再建には摘出段階から連携が必要だ」という。

■全国10か所以上

 日本の先駆けは、05年に開設した聖路加国際病院(東京都)。現在、昭和大病院のブレストセンター長で、日本乳癌(がん)学会理事長の中村清吾氏が初代センター長を務めた。1990年代後半、米国で複数の専門医が一緒に乳がん患者を診療する様子を見て、センターを計画。現在は、8診療科約30人の医師がチームを組み、年間約900件の手術を行う。患者らの心をケアする精神腫瘍科もある。

 読売新聞の調べでは、北海道や東京都、神奈川県、大阪府、九州などの医療機関に少なくとも10か所以上のブレストセンターが設置されている。14年4月にセンターを開設した、札幌医大病院(札幌市)は15年の乳がんの手術数は128件で、06年の66件と比べほぼ倍増した。

 中村理事長は「昔に比べ、今は様々な治療、再建法ができた。患者個々に適した医療がどこで効率的に受けられるか、学会として患者目線で分かるようにしていきたい」と話す。

乳首にしこり?男子中学生の7人に1人が経験する『女性化乳房症』

「あれは中二のある日のことです。お風呂に入って体を洗っていたら、乳首の辺りに直径1センチ大のしこりを見つけたんですよ。押したらちょっと痛くて、でも気になるほどではない。しかし、しばらく経っても痛みは引かず、むしろ少し張ったような感じになりました。

その当時、乳がん検診のマンモグラフィーが検査として一般化してきた頃で、テレビでも取り上げられてたこともあり、想像力豊かな僕は『ひょっとしてこれは乳がんなのでは?』と考えました。

しかし、パソコンがリビングに家族用のしかなかったので調べられず...。『自分はこのまま死ぬのか』と思っていました。かなり深刻にです。

結局、しこりは一年後にはなくなりました。あれは一体何だったんでしょうか?」(20代・男性)

男性の中には「胸がふくらんだ」と訴える人が一定数いて、それは『女性化乳房症』と言われる。原因は女性ホルモンの過剰分泌で、薬剤性、肝硬変の影響(肝臓で分解されるはずの女性ホルモンが分解されないため)、そして思春期の第二次性徴の影響があるそうだ。

上記の例は思春期における『女性化乳房症』の典型例だ。一見、珍しいように思える話だが、じつは少なくない男性が経験していることが、しらべぇの調査で判明した。

■なんと7人に1人が経験アリ?
全国の男性681人に尋ねたところ、「思春期に、しこりなどで乳首が痛くなったことがある」と答えたのは全体の14.5%。珍しいエピソードに思えた女性もいるかもしれないが、じつはこんなにも多くの男性が経験していたらしい。

■乳首エピソードには事欠かない中学生
しこりではないものの、乳首に関する体験談は、取材班に多数寄せられた。いずれも、中学生~高校生初期の話だという。

「体育の余業でマラソンをした時、なぜか乳首が痛くて仕方がなかった。化学繊維のせいかと思って服を変えたけどダメで、乳首に絆創膏を貼って走ってた」(25歳・PR会社)

「人並み以上に刺激に敏感な乳首だったのか、中学生の頃、勉強しながらずっと乳首を掻いてました。すると、血が出るくらいになってえぐれて取れそうになった経験あり」(27歳・男性)

女性化乳房症との関係性は不明だが、他の年代に比べても、敏感になっているのかもしれない。

■対策は必要なの?
都内クリニックに勤務する医師(20代男性)に確認したところ、思春期の女性化乳房症は、幸い半年~1年ほどで解消されるため、放置しても構わないそうだ。

ただし、男性もごくまれに乳がんを発祥する可能性もあり(女性の1/100程度)、その場合は女性よりも進行がはやいと言う。

年齢的なことを考えると、男子中学生が乳がんになる可能性は低いと考えられるが、どうしても気になる人は、それで安心できるのなら検査に行ってみるといいだろう。

【抗がん剤の「やめどき」】(下)抗がん剤のやめどきを「自己決定」できる力が大切

長尾和宏医師の話題の新刊『あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか? 抗がん剤10の「やめどき」』を記念したトークイベントの模様をお届けする第3回。お相手は、胃がんステージIV・腹膜播種で手術を行い、余命半年という宣告を受けた四十代女性の渡邊こずえさん。

抗がん剤治療はある時までが「延命」であっても、ある時からは「縮命」となる。自分にとってベストな「やめどき」を、どう探せばいいのかを多くのがん患者を在宅医療で支えている長尾医師が町医者の立場で指南する。

長尾 「8コースまで抗がん剤治療を受けられて、一カ月前に抗がん剤をやめられた渡邉さん。抗がん剤をやめられてから、体調に変化はありましたか」

渡邉 「はい。元気になりました。まず、食欲が戻ったのです。一番悩まされていた下痢の症状も良くなりました」

長尾 「今日の打ち合わせを先日喫茶店で行ったときも、ふつうにナポリタンを完食されていましたね」

渡邉 「そうです。胃を全摘しても、普通のものが食べられるようになります。脂こってりの博多ラーメンだって食べられますよ」

長尾 「そして渡邊さんがとてもラッキーなのは、腸閉塞の症状が一度もないこと。腹膜播種になると、腸閉塞が起こりやすい。ずっと下痢状態が続いているということで、その難を逃れているのかもしれないですね」

渡邉 「二カ月くらい前までは、抗がん剤投与中は、一日二十時間は横になり、残りの四時間はトイレにこもるという日もあったので、長尾先生がおっしゃるように、私は『やめどき』をちゃんと見極められたのかな、と思っています」

長尾 「では、抗がん剤治療をしたことに対しては、後悔はありますか?」

渡邉 「ありません! 私はそもそも、手術が終わった際に、余命半年という告知を受けました。もともと医療に関しての好奇心もありましたから、自分の身体で試せるものは何でも試そうという気持ちが強くありました。もしも、最初から抗がん剤治療を受けていなかったら、今ここにはいなかったかもしれない。とにかく

、試せるものは試してみて、「つらくなったらいつでもやめよう」という気持ちもあったので。おかげさまで、副作用がつらいときにサポートしてくれる、長尾先生のようなクリニックのお医者様も相談にのってくれましたし。

抗がん剤が効く、効かないに個人差があるのは知っています。でも私は、今こうして笑っていられるのは抗がん剤治療ありきだと思っています」

長尾 「そのお考えが大切なのです。私が新刊でお伝えしたかったのは、まさにその事。抗がん剤も胃ろうも、言ってみれば延命治療なのです。延命治療とはつまり、いつか終わりがくるもの。つまり、あるタイミングからは無駄に患者さんの体力を奪う、縮命治療になり得ることがある。

その延命と縮命の言わば分水嶺というのは、個人によって大きく違うのです。だからこそ、『自己決定』をする力が大切。こちらが『やめます』と言わないと、ベストな時期にSTOPできません。病院から「もう抗がん剤はできません」と言われたときは、すでに体力も奪われ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が相当に落ちている時なのです」

渡邉 「そう思います。だけど私がここまで自己決定ができるようになったのは、長尾先生の先の本『「平穏死」10の条件』を治療中に読んでいたからです。いくら延命治療の拒否を望んだとしても、そのタイミングを逸してしまえば、「生」の総決算はできなくなる」

長尾 「そしてそのタイミングは、人によって違う。だから僕は、抗がん剤治療においても、10の「やめどき」を提案してみた。ここで少し、具体的に「やめどき」について紹介しましょう」

<やめどき1>迷った挙句、最初からやらない。

これも自己決定のひとつです。悩みに悩んで、「やっぱりどうしてもやりたくない」という結論が出たのであれば、その決断を医師が否定することはできません。

<やめどき2>抗がん剤開始から、二週間後。

これが副作用の最初のターニングポイントになります。副作用の自覚症状があらわれてくるときです。結婚にも成田離婚があるように、抗がん剤もとりあえず一度目の副作用を経験してみて、「やっぱりやめます」と主治医に伝えるという道もあるのです。

<やめどき3>体重の減少。

もちろん個人差はありますが、私が多くの患者さんを診てきた経験上、抗がん剤治療開始時より15パーセント前後減少してしまったときは、抗がん剤の「やめどき」です。

<やめどき4>セカンドラインを勧められたとき。

がんという病はしぶとく、最初はある程度効果のあった抗がん剤も、しばらくすると耐性ができて効かなくなってきます。したがって、ファーストライン(最初の抗がん剤治療)が効かなくなってくると、病院は当然のようにセカンドライン(二番目の抗がん剤治療)を勧めてきます。

しかし、ファーストよりもセカンドのほうが、延命効果の期待値は低くなる。そして、セカンドよりもサードのほうが…というように。ご自身の年齢や生き方にあわせて、セカンドラインを考え、「やめどき」を探る、という手もあります。

 このように、私は新刊にて、10の「やめどき」を提案しました。どこでやめるのか?は、身体の状態や検査の数値だけで判断するものではなく、ご自身の生き方や、抱えているお仕事、家族とのかかわり方などすべてを鑑みて決めるべきなのです。

そして、その相談にのり、長期間の闘いを全力でサポートし、患者さんの心の揺れに付き合うのが私の仕事だと考えています。患者さんの治療に対する考えは、朝令暮改でいいのです。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 1958年香川県生まれ。
1984年東京医科大学卒業、大阪大学第二内科に入局。1995年兵庫県尼崎市で「長尾クリニック」を開業。複数医師による365日年中無休の外来診療と24時間体制での在宅医療に従事。昨年『胃ろう、抗がん剤、延命治療いつやめますか?「平穏死」10の条件』がベストセラーとなり、本業の傍ら終末期の在り方についてのオピニオンリーダーとして各メディアで活躍中。医学博士、日本尊厳死協会副理事長、関西国際大学客員教授、日本慢性期医療協会理事、日本ホスピス在宅ケア研究会理事、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本禁煙学会専門医、日本在宅医学会専門医、日本内科学会認定医。

乳がんになりやすい人・なりやすい習慣

年間1万人が命を落とすとされている乳がん。その数は年々増加中ですが、そもそもなぜ増えているのでしょうか。それは女性のライフスタイルと大きく関わっているといわれます。今回は「どんな人が乳がんになりやすいの?」「どんな習慣はなりやすいの?なりにくいの?」についてお話します。

乳がんになりやすい要因は?…年齢・遺伝・エストロゲン・肥満

年間1万人が命を落とすとされている乳がん。その数は年々増加していますが、そもそもなぜ増えているのでしょうか? それは女性のライフスタイルと大きく関わっているといわれます。

どんな人、どんな習慣が乳がんになりやすいのかについて解説します。

■年齢
日本人女性の乳がん発生率は30代から上がり、40代後半から50代前半がピークになります。30代でも頭の片隅に置いておくことは必要ですが、特に40歳以上は要注意です。

■遺伝的素因
乳がんにかかったことがある家族がいる方や、片方の乳房を乳がんで手術した方などがこれに当たります。またいわゆる遺伝的素因とはちょっと違いますが、乳房に放射線を多く浴びたり、過去に良性の乳腺疾患にかかったことがあるなど、なんらかの形で遺伝子変異を起こしやすい環境にいた方も気をつけてください。

ちなみに乳がんの発生にはBRCA1、BRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が関わっているといわれており、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、ご自身のBRCA1の遺伝子異常を知ったことで両乳房を切除したことは記憶に新しいところですね。

■エストロゲン
乳がんの発生にはエストロゲンが多く関わっているといわれます。というと難しく聞こえますが、『エストロゲンにさらされている期間』=『生理がある期間』と大雑把に考えていただければいいと思います。

そうすると初産の年齢が30歳以上の方、出産経験のない方(=妊娠している間は生理はないですよね)、初潮年齢が早かった方、閉経年齢が遅かった方、ホルモン補充療法を長期間続けている方、経口避妊剤を長期間使用した方は少し注意が必要ということになります。

■肥満
意外かもしれませんが閉経後の肥満の人も注意が必要です。これは、閉経後は脂肪組織のなかでエストロゲンが作られるからです。太っていると、その分エストロゲンが多くなるので乳がんになりやすいといわれています。ただし、閉経前の肥満は逆に乳がんのリスクを下げるといわれています。女性の体は閉経前と閉経後でかなり変わることの一例です。

こう考えると女性の社会進出、少子化、早い初潮年齢、どれをとっても、乳がんの危険因子が最近増えていますよね。乳がんの発生が年々増加しているのもうなずけます。その他、出生時体重が重い、高身長などの方も注意が必要なことがわかっています。

次に、習慣について見ていきましょう。


乳がんと習慣の関係……
運動・喫煙・アルコール・食事・夜間勤務・イソフラボンなど
■乳がんになりにくい習慣
•授乳:長期授乳は予防に効果的
•運動:閉経後の運動には乳がんの予防効果があると考えられています
•食事:野菜、果物、食物繊維、緑茶、イソフラボンなどが予防要因として注目されていますが、現時点ではまだ根拠不充分

■乳がんになりやすい習慣
•喫煙:リスクを上げる可能性が高いです
•アルコール:ほぼ確実にリスクを上げます
•食事:閉経後の脂質の取りすぎはリスクを高める可能性があります
•夜間勤務:リスクを上げる可能性があります

夜間勤務はちょっと不思議な感じがしますが、夜中に光を浴びると、メラトニンという生体の時間リズムの調節に関わっているホルモンの分泌が抑制され、それに伴って卵巣からのエストロゲンの分泌が亢進し、乳がんリスクが高くなるという仮説があります。

「乳がんが予防できる」と言い切れない理由
ちなみに、「可能性が高い」とか「ほぼ確実」とか、はっきり言えないの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、それはその疑問の通り、そこまでしか言えないのです。 「医学的に効果がある」という場合には、適切な方法で効果を調べた論文をいくつも検討して、その結果を総合する必要があります。ひとつの論文の結果だけでは言い切ることはできません。

さらに、例えばアメリカやヨーロッパの結果が、人種が違う日本を含めたアジア圏では当てはまらないこともあります。医療関係者でない方とお話していてなんとなく感じることがありますが、「医学的に効果がある、科学として証拠がある」というためには、一般の方が思う「証拠」や「データ」よりも、はるかに厳密で、かつ多くの人々の膨大な労力(検証作業)と時間が必要とされていると思います。

ですので、余談ですが、情報過多の現在の情報取捨選択法として、もしひとつの論文を根拠に何かを言いきっている場合は、参考だけにして聞き流しておくことをお勧めします。現時点では、一定の年齢以上では検診を受ける、喫煙・アルコールを控える、閉経後は適度な運動習慣で体重をコントロールする、ということが一番予防に重要といえそうです。

良性のものから「がん」まで…子宮の病気にはどんなものがある?

ひとくちに子宮の病気といっても、良性の筋腫からがんまで様々。月経の状態や不正出血などの症状で気づくこともありますが、検診で定期的にチェックすることが大事です。ここではどのような病気があるのか、確認してみましょう。

◆子宮筋腫

子宮の筋肉の壁にできる良性の「こぶ」。小さいものも含めれば、30歳以上の女性の3人に1人は筋腫が見つかるほどメジャーな病気です。大きいものは触っただけで分かりますが、通常は超音波検査で診断します。

治療は漢方やピルによる薬物治療や手術がメイン。筋腫に栄養を与えている血管を詰まらせたり、高周波の超音波を筋腫に当てて小さくしたりする最新の治療も登場してきています。
.
◆子宮内膜症

本来なら子宮の中にだけにあるはずの「子宮内膜」が、卵巣や子宮の筋層など、他の臓器にも発生してしまう病気。はっきりとした原因は解明されていません。よくある自覚症状は、ひどい月経痛や排便時・性交時の引きつれるような痛み。超音波検査やMRIで診断をしていきますが、内膜症だと確定するには腹腔鏡検査が必要です。

治療はピルや黄体ホルモン療法による薬物治療と手術がメインになります。
.
◆子宮頸がん(けいがん)

20代の女性がかかるがんの中で一番多いのが、この子宮の出口のがん。1年間で約1万6000人が新たにこのがんになっています。まだ初期の上皮内がんを含めれば1年間で2万3000人。早くからセックスするようになるにつれて、若い人に増えているのが特徴です。診断は細胞診、つまり子宮頸がん検診を受けるしかありません。

治療はがんの進み具合によって、レーザー蒸散・円錐切除のみで済む場合と、手術や放射線治療や化学療法が必要になる場合があります。

◆子宮体がん

40~50代に多い子宮の奥のがん。お産をしなくなり食生活が欧米化したことによって急激に増えてきています。診断は子宮の奥のがん検診。頸がんの検査と違って、子宮の奥まで検査器具を入れて細胞を擦り取るので少し痛みをともないますが、この検査をしなければ診断することはできません。

治療はホルモンの大量投与または手術が基本です。手術の後に化学療法や放射線治療を追加することもあります。
.
◆子宮奇形

子宮の形が本来と異なるものを全てこう呼びます。正常な子宮は長ナスのような形をしていますが、子宮が途中で2つに分かれてハート型になっていたり、1つのはずが2つあったりすることがあります。超音波検査で偶然見つかることがほとんどです。

症状がなければ治療の必要はありませんが、不妊や流産の原因になっている時は、手術で余分な壁を取り除いたり、2つある子宮を1つに合わせたりして、正常な形に整えます。
.
清水 なほみ(産婦人科医)

◆子宮腺筋症

子宮内膜症が子宮の筋肉の壁に出来た状態。筋腫と違ってはっきりとした「こぶ」はなく、子宮の壁が全体的に厚ぼったくなります。診断は超音波検査やMRIなど。治療は、痛みや出血を抑えるだけの対症療法・内膜症に対する薬物治療・手術のいずれかになります。
.
◆子宮頚管ポリープ

子宮の出口にできた良性のポリープ。子宮がん検診などで指摘されたことがある方は結構いらっしゃるかもしれません。腟の奥=子宮の出口を見たらすぐに診断できます。

症状がなければそのままでも構いませんが、治療する場合は外来で簡単に切り取ることができます。ポリープの根元をつまんで捻じ切るだけなので、麻酔をかけなくてもよいくらい痛みも少なく出血もわずかで済みます。
.
◆子宮内膜ポリープ

子宮のお部屋の中にできたポリープ。超音波検査や子宮鏡検査で診断します。ほとんどが良性ですが、たまにポリープ状に発育する子宮体がんもあるので、細胞の検査で悪いものでないかの確認は必要ですね。

ホルモン剤で小さくするだけのこともありますし、不妊の原因になっている時は、子宮鏡と呼ばれる器具で子宮の中を見ながら、ポリープを切り取る手術を行います。

女性なら知っておきたい!子宮全摘出について

ドラマ、フラジャイルで「子宮全摘をしなければならない」と不安になる女性が登場しました。

この"子宮全摘術"、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。子宮を持っている以上、病気によって子宮全摘が必要となってしまうこともあります。

今回は女性として知っておきたい、子宮全摘術についてお伝えしたいと思います。

子宮全摘手術はどのような病気によって行われるの?

子宮全摘手術とは、文字通り子宮を取ってしまう手術です。
卵巣やリンパ節も一緒にとることもあれば、単純子宮全摘術とよばれるような、子宮のみを摘出することもあります。

子宮全摘術をする可能性のある病気は以下のような子宮に関わるものです。
・子宮筋腫
・子宮頸がんや子宮体がんなどの子宮がん
・卵巣がん
・子宮腺筋症
・子宮内膜症

どのような治療方法になるかは、症状や病気の広がり具合などに応じて行われます。(つまり、上記の病気にかかっても子宮を全摘出しなくていい場合もあります。)

病気になったら、絶対摘出しなきゃいけないの?

今後の出産のために、できるだけ子宮を残せる場合もあります。
たとえば子宮に癌があってもステージや悪性度、本人の希望などに応じて円錐切除などの方法で治療することもあります。場合によっては、全摘せずに治療できます。

出産を希望する場合、子宮筋腫などのケースでも核出術という方法などで、まずは様子を見ることもあります。その後、病状などに応じて出産後や出産希望がなくなってから全摘を行うなど様子をみて治療します。

一方で妊娠前であっても、病状が悪ければ子宮を全摘を行うこともあります。

また、出産時に子宮内反症や子宮破裂などが起こったときは、母体の出血多量を防ぐために子宮全摘が必要となることもあります。

子宮全摘手術した身体の変化は…?

子宮全摘後に大きく変化することは、生理がなくなり、妊娠・出産ができなくなるという点です。

膣は残っているため、性交は可能です。子宮頸部も摘出している場合は感覚などに変化が起こることもあります。

子宮の摘出を行い、卵巣は残すこともあります。
この場合、女性ホルモンの分泌に影響はありません。基本的にホルモンバランスの崩れによる更年期症状などは起こりません。

しかし、「広汎子宮全摘術」と呼ばれる卵巣や卵管なども合わせて取る手術では、女性ホルモン分泌に影響があります。
ホルモンの分泌低下によって動悸やほてり、イライラなどさまざまな更年期症状などが起こることがあるため、ホルモン補充療法が行われることもあります。

また、手術後は身体の中も変化します。
手術によってできた傷を治すために組織の癒着が起こります。このため、場合によっては排尿の際に違和感などがでることもあります。

子宮全摘を避けるための予防は…

子宮全摘を避けるためには、病気の早期発見や治療が大切です。

妊娠や出産の適齢期である20代~30代の女性に起こりやすいのが、子宮頸がんです。
子宮頸がんは、異形成から進行していくことが多いです。早い段階での発見により、子宮全摘や命の危険を避けることができます。そのため、だいたい2年に1回の子宮頸がん検診を忘れず受けることが大切です。

また、子宮内膜症や子宮筋腫も早期治療で子宮全摘術を避けることができます。
月経過多や生理痛がひどい症状がある場合は、早めに婦人科に受診するといいですね。

【医師からのアドバイス】

定期健診は自治体から案内が送られることもあります。
まずは女性として子宮全摘術する可能性があることを自覚し、病気の予防について知っておきたいですね。

(監修:Doctors Me 医師)

15人に1人発症! 乳がんを予防する5つの生活習慣

いまや女性の15人に1人が乳がんを発症しています(国立がん研究センターの調査による)。30代後半から、40~50代の女性に多い病気ですが、中には20~30代前半でかかる女性も。そこで今回は、乳がんに関する基礎知識と、乳がんを予防するための生活習慣について、専門家の先生に教えていただきました!

今回のお悩み

乳がんが心配です!


体調不良で胸の調子が悪かったりすると乳腺が硬く、「乳がん……?」と不安になったりする。乳がんを予防するための食習慣が知りたい。

(30歳女性/不動産/事務系専門職)

乳腺が硬くなる理由は?
乳房には15~20の腺葉にわかれ、さらに多数の小葉に枝わかれした、乳腺といわれる組織があります。腺葉からは乳管が放射線状に出ていて、お乳を産生して運ぶ役目を果たしています。乳がんはこの乳腺から発生します。

この乳腺から発生する、乳がんと間違えやすい病気はいくつかあります。まず、女性ホルモンの働きで乳腺にむくみや腫れが起きて、正常な乳腺がしこりのように硬くなったり、痛みが出たりするのが特徴の乳腺症です。治療の必要はありませんが、触っただけでは乳がんとの判別が難しい場合もあるため、しこりや痛みを感じたら、必ず乳腺科を受診して確認することが大切です。

もうひとつは、主に授乳中の人に多い、乳頭から細菌が侵入して起こる乳腺炎です。授乳中でなくても、乳頭が陥没している人の場合、乳頭に老廃物がたまり、そこに感染が起きて膿がたまったり(乳輪下膿瘍)、乳腺炎に波及したりすることもあります。

一方、乳がんでもしこりができることがありますが、痛みがある場合とない場合とがあります。乳がんが乳腺の中で成長し、さらに乳腺の中だけでなく乳房の皮膚近くにまで達すると、見た目でわかるひきつれやくぼみができることがあります。また、しこりではなく、乳頭や乳輪の湿疹や分泌物、ただれが起きたり、乳がんの細胞が皮膚内のリンパ管などへ波及し炎症を起こす(炎症性乳癌)と、乳房の皮膚がオレンジの皮のように厚くなり、毛穴が目立ったり全体に乳房の皮膚が硬くなることもあります。

乳がんといってもさまざまな症状が起こるので、いつもとは異なる症状や変化に気づいたときには、自分で診断したり決めつけたりするのではなく、早めに乳腺科を受診して詳しく調べることが大切です。

ただし、乳がんが乳房の中に発生しても、初期段階ではしこりが小さかったり、痛みがなかったりするなど、自覚症状がないことも少なくありません。乳がんを確実に防ぐ方法はないため、心配な症状がなくても、1年に1度は検診に行き、乳房の健康を定期的に確認しておくことが、もっとも有効な予防策です。乳がんは早期発見することで、命を守ることができるだけではなく、女性にとって大切な乳房や将来の夢を守ることができるのです。


乳がんを予防する生活習慣
誰にとっても、乳がんを100%防ぐこと(=予防)は残念ながら不可能です。そのため、できるだけ乳がんにかかるリスクを少なくなるように心がけることが必要です。もっとも大切なことは定期的な乳がん検診ですが、日常生活のなかで自分でできることとして、下記を心がけてみてもいいでしょう。

1.イソフラボンを摂取する
イソフラボンを含む大豆製品を積極的に食べましょう。乳がんは女性ホルモンのコンディションに大きく左右される病気ですが、イソフラボンは女性ホルモンが過剰なとき、あるいは足りないときに、ベストバランスに整える働きを持っています。

2.生活リズムを正す
私たちの身体のリズムやバランス(=恒常性)が正しく保たれることは、さまざまな病気のリスクを下げるために大切。特に乳がんは女性ホルモンと密接な関係があります。規則正しい暮らしをして、睡眠や食事などバランスよく十分にとることで、女性ホルモン環境を整えましょう。1日3食、早寝早起きという基本的な健康習慣をキープすることが大切です。

3.ストレスをためない
音楽を聴いたり、お香を焚いたりするなど、リラックスした時間を過ごしましょう。ストレス過多になったり、ストレス解消できずにいると、脳の機能を抑制し、ホルモンをコントロールする力も衰えてしまいます。忙しい現代社会ではストレスはつきもの。ストレスをためない、あるいはストレスと上手に付き合うことが大切です。

4.定期的に運動する
日々の生活に適度な運動を取り入れましょう。欧米では、閉経した女性のうち、コンスタントに運動している人は運動していない人と比べて、乳がんにかかる率が低いというデータも出ています。若いうちから運動の習慣を持っておくと、将来的にも安心です。

5.自分の胸に興味を持ち、慈しむ
好きな香りのボディクリームなどを塗りながら、あるいはゆっくりバスタイムを楽しみながら自分の胸にふれて、見て観察する習慣を持ちましょう。病院で検診して、正常が確認できたら、その状態を触って覚えておくことをオススメします。定期的に自己触診をすることで、普段と比べておかしいところがあれば、すぐに発見することができます。

どれも明日からでも簡単にできる心がけなので、乳がんを予防するために、実行してみてくださいね!

子宮頸管ポリープの症状・検査・治療法・妊娠への影響

【産婦人科医が解説】子宮頸管ポリープは、診断後、その場で切除可能な病気です。不正出血やおりもの異常が見られますが、痛みなどの症状はなく、健診で発見されることもしばしば。妊娠中にポリープが見つかると、大切な妊娠に悪影響を及ぼすこともあります。面倒だから、恥ずかしいからと躊躇わず、積極的に受診しましょう。子宮頸管ポリープの症状や検査・治療方法、妊娠への影響について詳しく解説します。

子宮頸管ポリープとは

ポリープとは、粘膜が増殖してできたキノコ状のやわらかい突起のことをいいます。子宮にできるポリープは子宮頸管ポリープと子宮内膜ポリープがありますが、そのほとんどは子宮頸管ポリープです。子宮頸管ポリープは治療後も再発する恐れがあるため、ポリープを切除した後も定期的な検診が必要。子宮頸管ポリープの原因や症状、検査、治療方法について解説します。

30~40代の女性に多い子宮頚管ポリープ……特徴・大きさ

子宮頸管ポリープとは、子宮と腟を結ぶところの子宮頸管の粘膜が増殖し、子宮口からはみ出して腟の方に垂れ下がったようになるものです。30~40代で、多産をされた女性に多く見られます。ポリープは、ほとんどの場合1つですが、複数できることもあり、大きさは米粒(2~3mm)~親指大(1cm程度)くらいになることもあります。

子宮頸管ポリープの症状・原因……自覚症状がないことも

痛みはありませんが、簡単に出血するようになります。子宮頸管ポリープは組織がもろく軟らかいため、性交時や激しい運動の後などに不正出血したり、おりものが増え、血が混じることもあります。しかし、症状がないことも多く、健診で見つかることが多い病気です。原因はよくわかっていませんが、女性ホルモンの影響や、細菌が感染して炎症を起こすことが関係していると考えられています。

子宮頸管ポリープの診断・検査方法

膣鏡や子宮鏡などを用いて診察、診断します。子宮口は簡単に目で見える部分ですので、診断も簡単。特に子宮がん検診では、子宮口を観察するため、症状のないポリープが見つかることがよくあります。 子宮がん検診で頸管ポリープが見つかると、びっくりされる方がいらっしゃいますが、頸管ポリープがガンなどの悪性に変化することはほとんどありませんので、心配ありません。今後妊娠を考えている方は、妊娠前に見つかったらラッキーです。ポリープの切除は簡単にできますので、早めに治してしまいましょう。妊娠してポリープが見つかると、妊娠に悪影響を及ぼすことがありますので、妊娠前に婦人科検診を受けることをお勧めします。

子宮頸管ポリープの治療方法・再発リスク

原則的には切除して、組織検査で悪性かどうかを検査します。症状がなく、悪性の可能性が無い場合は経過をみることもあります。切除する場合、根元が細いものであれば、外来で鉗子という器具でたいした痛みもなく取ることができます。また、根元が太いものであっても、手術は簡単で短時間で終わります。手術室で施術するのは、切除する際出血を伴うためです。妊娠を考えている方は、ポリープが妊娠に悪影響を及ぼすことがありますので、妊娠前に切除した方がよいでしょう。

子宮頸管ポリープを取り除いてもまた繰り返しできてしまうことは、よくあります。原因である炎症が改善されていなかったり、切除したときに根っこが残っていたりするのが理由です。ポリープを切除し治療した場合でも、定期健診を続けることが必要です。

妊娠中の子宮頚管ポリープ治療は慎重に

前述の通り、妊娠を確認する時の診察では子宮口を観察しますが、この時にポリープが見つかることがあります。症状のないポリープは、妊娠に影響することはほとんどありませんので、流産の可能性のある時期は様子をみて、胎盤が完成する妊娠4ヶ月以降に切除することがあります。しかし、妊娠に悪影響を及ぼしそうな場合、妊娠週数に関わらず治療したほうがよいでしょう。

なお、妊娠中に発見された頸管ポリープの治療は、切除することにより妊娠子宮に影響を与え、流産や破水を誘発するリスクがあるという否定的な考え方もあれば、ポリープ自体が出血や感染の原因になるため予防的に切除したほうがよいという肯定的な考え方があり、悩ましいところです。ポリープと妊娠の状態、妊娠への影響について医師とよく相談し、方針を決める必要があります。

これだけは知っておきたい女性に多い5つの病気

【医師が解説】女性の社会進出や妊娠・出産回数の減少により、女性特有の病気の内訳は変化しています。例えば、乳がん患者さんの数は1970年代の約3倍。その死亡者数は2013年の調査でも約13000人以上に上っています。子宮内膜症や子宮筋腫など、最低限知っておきたい女性に多い病気について解説します。

知っておきたい女性特有の病気とは

忙しくてついつい見逃してしまうことの多い「女性の病気」。女性の社会進出や、妊娠・出産回数の減少に伴い、女性特有の病気の内訳もだんだん変わってきています。たとえば乳がん患者さんの数は1970年代の約3倍。その死亡者数はなんと2013年の調査でも13000人に上っています。 特に30歳を過ぎたら体の状態に注意が必要。これだけは知っておきたい女性の病気を5つ紹介します。

年々ひどくなる生理痛が特徴の「子宮内膜症」

子宮内膜症という病気を簡単に解説すると「子宮内膜という子宮の内腔を覆っている赤ちゃんのためのベッドとなる膜が、子宮の中以外で増えてしまう病気」です。 一番多いのは30代の女性ですが、20代くらいから注意が必要。月経のある女性のうち10人に1人は子宮内膜症とも言われています。

エストロゲン(女性ホルモン)依存性の病気なので、妊娠・出産経験が少なく、初潮年齢が早いなど、月経がある数が多ければ多いほど発育してしまいます。ですから、患者数も急増かつ若年化しています。昭和40年代に比べると患者数は3倍にも増えていると言われています。

また、環境ホルモン(ダイオキシン)の影響も言われています。ダイオキシンは体のなかで女性ホルモンと似た働きをするため、子宮内膜症が増える原因になると言われています。子宮内膜症の一番の特徴は「年々ひどくなる生理痛」。9割の方に月経痛があるといわれます。*1鎮痛剤が効かなくなるほどひどくなることもあります。また、「性交痛」や「不妊」なども特徴のひとつです。

子宮内膜症については、「子宮内膜症・子宮腺筋症」に詳しくまとめてありますので、よろしければご覧下さい。

*1厚生省心身障害研究:リプロプロダクティブヘルスからみた子宮内膜症の実態と対策に関する研究
参考文献 婦人科学 第9版 (金芳堂 杉山 陽一著)

子宮にコブができてしまう「子宮筋腫」
子宮内膜症と並んで「ひどい月経痛」をおこす原因疾患の代表選手が「子宮筋腫」。とても簡単に言ってしまうと「子宮の内外にできる良性の腫瘍(コブ)」です。良性ということは命には関わりませんので、その点は安心してください。30代女性の4人に1人が子宮筋腫を持っています。心強いような、困った事のような気もしますが、とにかく、よくある病気ということです。

しかし、本来なら無いものがあることに変わりはなく、コブがある場所によって、いろいろな症状を引き起こします。「ひどい月経痛」「月経血の量が多い」「貧血」などが代表的な症状。一方であまり症状がないこともあります。子宮筋腫の大きさは大豆くらいの小さいものから大人の頭になるくらいまで、大きさはまちまちです。数も1個から20個くらいまでと様々です。

ちなみに子宮筋腫もエストロゲン依存性です。ですから、子宮内膜症との合併も多く、子宮内膜症の4~5割に子宮筋腫が合併しているのです。 治療は大きく分けると、手術と手術をしない経過観察やホルモン療法がありますが、これはケース・バイ・ケースです。医師とよく相談してください。子宮筋腫については、「子宮筋腫」に詳しくまとめてありますのであわせてご覧下さい。

肥満気味、妊娠・出産未経験者は要注意の「乳がん」
乳がんもエストロゲン依存性の病気です。エストロゲンは女性ホルモンで大変重要なホルモンなのですが、こう書いてくるとだんだん悪者のように感じられてしまうかもしれません。しかし、そういうわけでもないのです。ただ単に、現代女性は今までよりもエストロゲンにさらされる時間が増えているため、エストロゲンがあることで多くなる病気が増えていると考えられます。

昨今、乳がんも急増しています。年齢的には40~50代がピークですが、乳がんになりやすい人は「肥満」「家族に乳がんの人がいる」「エストロゲンにさらされている期間が長い(初潮年齢が早い、妊娠・出産回数が無い、少ない)」などの特徴があります。乳がんについて詳しくは「乳がん」サイトをご覧下さい。

卵巣の中に分泌液がたまって腫れてしまう「卵巣嚢腫」

20代から要注意の「沈黙の臓器」卵巣の病気。進行するまで分かりにくいのが特徴ですが、「ひどい生理痛」「なんとなくお腹が重い」「腰痛」などの症状をおこすこともあります。右のイラストを見てください。向かって右側が正常な卵巣。左側が卵巣嚢腫のある卵巣です。卵巣嚢腫とは「卵巣の中に分泌液がたまって腫れてしまうもの」で、イメージとしては、ぶよぶよした水風船みたいなものですね。たまる液体の種類によって皮様のう腫、偽ムチンのう腫、しょう液性のう腫の3種類に分けられます。

治療は、大きく分けて経過観察と手術の2通りですが、大雑把に言って、鶏の卵以上くらいの大きさになると手術することが多いようです。ちなみに卵巣嚢腫の早期発見には、検診が一番です。 卵巣嚢腫については、「卵巣のう腫・卵巣腫瘍・卵巣がん」に詳しくまとめてありますので、宜しければご覧下さい。

年齢に関わらず性体験がある女性は注意すべき「子宮頸がん」

子宮には頸部と体部があります。入り口の部分にできるのが子宮「頚」がん。もともと日本人は子宮頸がんのほうが多く、子宮頸がんと子宮体がんの割合は9:1くらいでした。ところが最近は子宮体がんがだんだん増えてきています。

子宮頸がんは40歳代に最も多いのですが、たとえ10代でも安心はできません。
それは、子宮頸がんを引きおこす原因にヒトパピローマウイルス(HPV)という”イボ”をつくるウイルスの一種がかかわっている可能性が高いからです。HPVは性交渉によって感染するといわれているので、性体験がある場合、年齢に関わらず誰でも注意が必要ということです。ちなみに子宮頸がんはここまでに取り上げてきた病気と違って、出産回数が多い方がなりやすいのも特徴です。あとは性体験の回数が多い場合も注意が必要です。

ちなみに病気が進行すると生理でもないのに出血が見られる「不正出血」や、「性交渉のあとに血が出る」なんてことがありますが、最初は無症状。

がんを発見するためにはめん棒やブラシで子宮頸部を軽くこすって、がん細胞がいないかどうかたしかめる「細胞診」という簡単な検査があります。麻酔も要らない簡単な検査で、企業の場合は健康診断に入っていることもあります。産婦人科ならどこでも大丈夫なので、できれば1年に1回は受けるようにしましょう。またHPVに感染しているかどうかは保険適応外ですが、おりものをしらべる検査を受けることもできます。

がんは進行すればしただけ子宮や周りの臓器を広く手術でとらなければならなくなりますので、早期発見を目指しましょう。 子宮頸がんについては、「子宮がん (子宮体がん・子宮頸がん)」に詳しくまとめてありますので、あわせてご覧下さい。

子宮が大きくなる!? 子宮腺筋症の症状・治療法

◆子宮腺筋症とは……子宮内膜が子宮の筋肉に入り込んで起こる

子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)とは、月経時に出血する部分である「子宮内膜」が、子宮の筋肉に何らかの原因で入り込むことで、子宮が腫大してしまう病気です。 年齢的に30代後半の女性に多くみられますが、最近は20代であっても腺筋症になる女性が増えています。最も多い自覚症状は月経痛。それ以外に月経量が多くなる過多月経、腰痛、貧血などがあり、不妊・流産の原因になることもあります。

以前は、子宮以外にできる内膜症を外性子宮内膜症と呼び、子宮にできる腺筋症は内性子宮内膜症と呼んでいましたが、現在では独立した病名となっています。このように、子宮腺筋症は子宮内膜症と同じような性質を持った病気なのです。

子宮腺筋症の症状や治療、対処法について解説します。

◆子宮腺筋症の症状……月経痛・貧血・腰痛、不妊の原因にも

最近、欧米や日本など先進国で子宮腺筋症や子宮内膜症で悩んでいる女性が増加しています。これらの病気は大変治りにくく、さらに進行してゆく病気で、知らない間にじわりじわりと悪化し、最終的には月経以外にもほとんど毎日耐え難い痛みに悩まされるようになることもあります。

子宮腺筋症も子宮内膜症も激しい月経痛や下腹痛、腰痛を起こすだけでなく、不妊症の原因にもなります。子宮腺筋症では月経量が多くなり、貧血になります。

癌のような悪性の病気ではありませんが、女性をしつこく悩ます病気で、しかも治療しても再発しやすい病気です。子宮腺筋症も子宮内膜症も、閉経以前の女性ホルモンが分泌されている間は症状が持続したり、悪化することが多いのですが、閉経を迎えると症状が軽快します。
.
◆子宮腺筋症は早期診断に難渋……発見が遅れ悪化することも

初潮後、思春期の女性が経験する月経痛は、病気ではなく元からある痛みであることがほとんどで、大部分は20歳頃までにだんだん軽くなり、25歳くらいで消失します。しかし、その後25~30歳頃に再び月経痛が始まり、だんだん月経痛がひどくなることがあります。このような痛みは子宮腺筋症や子宮内膜症、子宮筋腫などの病気が原因で起こることが多いのです。子宮腺筋症と子宮筋腫の違いは後述します。

ところがほとんどの女性は婦人科を訪れることなく、薬局で買った鎮痛剤を飲んで痛みを抑えて仕事を続ける生活を送っています。このような生活を何年間も続けている間に子宮腺筋症や子宮内膜症、子宮筋腫はじわりじわりと悪化します。

そして結婚後なかなか妊娠できないという理由で婦人科を訪れたときに、これらの病気が発見されることが少なくありません。一方、独身女性の場合は婦人科受診がさらに遅れることが多く、これらの病気の早期診断ができず、病気がかなり進行してから初めて発見されることが多いです。

◆子宮腺筋症と子宮筋腫との違い……ともに子宮が大きくなる病気

子宮腺筋症と子宮筋腫とは症状が似ており、ともに子宮が大きくなる病気です。子宮筋腫が正常の子宮の部分と筋腫の部分がはっきり区別できるのに対し、子宮腺筋症では子宮の筋肉にばらまかれたように病変がみられるのが特徴です。子宮を残す手術を予定する場合は両者の区別が重要になります。多くの場合、エコー検査やMRIで両者の区別は可能です。
.
◆子宮腺筋症の治療・対処法……経過観察の場合も

子宮腺筋症の治療法は、症状の程度や子宮の大きさ、そして妊娠・出産の希望の有無によって相談します。症状が軽い場合は、定期的な婦人科受診だけで様子をみることもありますが、多くは月経痛が強いので、痛み止めの飲み薬を使って症状がよくなるかを確認します。また、内診とエコー検査で子宮内膜症や子宮筋腫の合併がないか確認します。症状が強い場合や大きさが徐々に増大する場合には治療を行います。

■子宮全摘出・子宮腺筋症核出術
以前は、子宮を摘出する子宮全摘出という手術がよく行われていました。それは腺筋症の好発年齢が30代後半と、ある程度高齢ということもあり、すでに子供が数人いたり、閉経を目の前にしているなど、子宮を摘出しても良い人が多かったことがあります。しかし、最近は20代でも子宮腺筋症にかかる人が多くなり、子供を産みたいと希望する人への新しい治療が求められています。そこで、腺筋症が子宮の一部に限局している場合、子宮腺筋症の部位を子宮筋腫のように核出手術する方法を行うことがあります。

ただし、子宮筋腫はつるんとむけるように取り除くことが可能ですが、子宮腺筋症の場合は、ある程度の病気の部分を摘出できますが、病巣の一部を取り残してしまいがちになります。また、この手術はまだ開発途上で、行っている施設は限られています。

■子宮動脈塞栓術
子宮動脈塞栓術という方法もあります。もともとは子宮筋腫の治療に開発されたもので、子宮に繋がる動脈の血行を一定時期止め、それにより子宮腺筋症の細胞や筋腫を死滅させようとするものです。ただし、これも治療後の妊娠に関する安全性が確立している方法ではありません。

■薬物療法
手術希望がない場合には、薬物による治療を行います。からだを閉経の状態に近づけて、女性ホルモンを下げて腺筋症の縮小を図ります。更年期の方はそのまま閉経に持ち込むことを狙いますが、更年期前の方では治療後に腺筋症が再び増大することが多く、腺筋症の進行を一時的に抑える治療です。

また、ピルすなわち経口避妊薬を子宮腺筋症の治療に使用する方法もあります。ピルを使うと月経痛が軽くなり、月経の出血量が減少しますが、投与を止めると腺筋症は治療前の病態に戻ってしまいます。これも腺筋症自体を治す薬ではありません。

■黄体ホルモン放出子宮内システム
最近では、黄体ホルモン放出子宮内システム「ミレーナ」の有用性が検討されています。ミレーナは子宮内に装着されたあと5年間、付加された黄体ホルモンが子宮の中で少しずつ放出されます。この黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、子宮内膜はうすい状態となり、痛みは著しく改善され、月経量も減少し、子宮腺筋症の縮小効果があります。

ただし、この効果が恒久的に5年間持続するのかについては、疑問の余地があります。また、6ヶ月以上経過しても効果がみられないときは、他の治療に切り替えるまたは他の治療法を追加したほうがよいでしょう。

◆20代・30代の若い女性のための子宮腺筋症対処法

子宮腺筋症はだんだん悪化する進行性の病気ですので、年々病気が拡大悪化して最終的には治療しても治りにくくなります。従って治療にあたって一番大切なことは早期受診、早期診断、早期治療、さらに付け加えると、早期妊娠の4つになります。

■進行を防ぎ、早期に婦人科受診を
25歳過ぎの女性で月経痛が次第に強くなってきたら、自分で購入した鎮痛剤で痛みをごまかすのを止めて、婦人科の診察を受けるべきです。なぜ早期受診が必要かというと、受診しないで月経時に鎮痛剤だけを服用しているうちに、腺筋症がじわりじわりと進行、悪化するからです。

早期診断が大切なのは、子宮腺筋症は進行性の病気なので早期に診断しないと病気が悪化して治療しても治りにくくなり、治療後も再発しやすくなるからです。経痛、過多月経、貧血、腰痛、性交痛のどれか一つでもある25歳以上の女性は早めに婦人科の診察を受けましょう 診断は、内診とエコー検査により大体可能ですが、さらにMRIを行えば充分です。また、血液検査でCA125が異常高値の場合、腺筋症か内膜症の可能性が高くなります。ただし、この値が正常値だからといって腺筋症と内膜症を否定はできません。

■妊娠は子宮腺筋症治療の1つ
子宮腺筋症や子宮内膜症にかかると不妊症になることが多くなります。その一方、妊娠するとホルモンの関係から腺筋症と内膜症は改善ないし治ります。さらに、この病気は再発しやすく治りにくい病気ですので、「子供はまだ早い」などと言う理由だけで妊娠を先延ばしにすると、将来の妊娠の可能性を大きく下げてしまい、いざ欲しいと思ったときには不妊症ということになりかねません。

妊娠は最高の腺筋症治療の一つです。将来子供がほしいと思っているのであれば、結婚したらすぐ、または治療が一段落したら、再発する前に、早めに妊娠を目指すほうが賢明です。 最近は、子宮腺筋症になる年齢はだんだん若くなってきています。たとえ20代であっても、子宮腺筋症になる人は増えています。一番楽しみたい若い時期、仕事が軌道にのりはじめる大切な時期を、この病気で犠牲にせざるをえないのはとても悲しいことです。

そのため、定期的に、また、いつもと少しでも違うことがあったら、早めに婦人科に行ってみましょう。婦人科の定期検診は40代になったら、というのではなく、20代でも30代でも早めに行くようにしましょう。

乳がん早期発見のために。自分でチェックする3つの方法「胸に痛みがない生理の3日後以降に行う」

胸のチェックなんて誰も考えたことがないかもしれません。でもこれを定期的に行うと乳がんの早期発見にもつながりますし、自分で触って確かめるだけなので、痛みも伴いません。自分でできるセルフチェックの仕方を簡単にお教えします。

だいたい2、3カ月に一度行う事を心がけ、胸に痛みがない生理の3日後以降に行う事をお勧めします。

1.お風呂前のチェック
ブラジャーをしたまま左胸を右手でブラジャーのパットを引き上げ、左手で円を描く様にして異常がないか確かめます。まずは軽く胸の表面を触り、その後ちょっと強めに押しながら胸の深部を触れ、何もないか確かめます。

胸全体をくまなくチェックしましょう。胸の上の方まで触ったら、次は鎖骨の方まで触り、その後、腋(わき)に向けて手をずらし、腋(わき)の方までチェックします。右側の胸も同様に行って。

2.バスルームで鏡を見ながらチェック
お風呂に入った後裸で鏡の前に立ちます。まずは真正面から胸をチェックし、次は横に立って胸に色、サイズ、形、へこみ、陥没乳首などの異変がないかチェックします。腰に手を当て、胸の筋肉を動かす様に肩を前に突き出し、次は頭の上に手を置いて、異変はないかチェックします。

3.寝た状態でチェック
左向きに寝転び、足はかるく曲げた状態で、肩を後ろに突き出す様に寝ます。右手で右胸を触り、お風呂前にしたチェックと同様に、異常がないかチェックします。左胸も同様に行います。

形に異変があったり、しこりを見つけたら迷わず病院に行きましょう。少しでも早期発見できれば怖い病気ではないはずですので、怖がらずセルフチェック、してみませんか?

日本人女性の“乳がん”は発見しづらい!?  医師が語る「マンモグラフィ」の限界

乳がんは早期発見、早期治療が大事です。例えば、ごく早期に発見できれば、5年生存率(5年後も生きている割合)は95%。そう考えると検診は間違いなく重要です。ただ、検診も万能ではありません。今回は乳がん検診で知っておいたほうが良いことを取り上げます。

■乳がんで亡くなる人を唯一減らせる検診方法「マンモグラフィ」の限界
公的な乳がん検診のうち、乳がんによって亡くなる方を減らせることが分かっている唯一の方法は「マンモグラフィ」です。

そこで日本では40歳以上の女性に対して2年に1回のマンモグラフィを用いた検診を行っていますが、日本人女性、特に若い人では乳腺の密度が濃すぎてがんを発見しにくい(dense breast)という欠点があります。

具体的には、マンモグラフィ画像で、乳首から枝のように広がり、白く見えるのが乳腺です。がんは白く見えますが、もし乳腺の密度が濃ければ乳房全体が白くなるのでがんを見つけにくくなりますし、逆に乳腺が密集した正常な部分とがんとの見分けもしづらくなります。

つまり、若くて乳腺が密なほど、がんが発見できない確率も、がんでないものをがんの疑いありと診断してしまう確率も高くなってしまうのです。

■マンモグラフィは何歳から定期的に受けるのが一番適切なのでしょうか?
若すぎればあまり検診として効果がないことや、年をとれば乳腺密度が薄くなって(乳腺は母乳を作るところですので)がんを発見しやすくなるので利益が高いことは想像していただけると思います。実際、多くの研究の結果では、50歳以上はマンモグラフィを用いた検診の利益の方が不利益よりも大きいと考えられています。

また、40歳代に対しても利益があることは明らかなのですが、不利益も結構あるので(例えばどうしてもがんを見逃さないようにしようとすると、がんでないものをがんの疑いありと診断して不必要な精密検査が増えることになるなど)、検診として行うべきかどうかについて各国でも意見が分かれています。

アメリカを例にとってみましょう。米国予防医学専門委員会(US Preventive Services Task Force, USPSTF)が2009年に「40歳代の女性に対しては、マンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診を行うことを推奨しない」という声明を発表しました。

しかし、米国対がん協会(American Cancer Society, ACS)は、40歳代に対しても引き続きマンモグラフィによる乳がん検診を行うという意見を表明、さらに米国立がん研究所(National Cancer Institute, NCI)は中立的立場という三者三様の立場をとっています。

40歳以上ではマンモグラフィ自体が検診として有用なのは間違いないですが、一度受けてみて乳腺が濃いなど自分の乳房がマンモグラフィ自体に向いていなければ、自費になりますが超音波検査などを組み合わせたり、もしくは切り替えたりするなど、医師と相談しながら自分に合った方法を探すのが一番理想的だと思います。

■新しい検診方法の研究が進行中! マンモグラフィと超音波検査
現在マンモグラフィと超音波検査を組み合わせることで、乳がんの診断の精度を上げられるのではないか、ということを調べる質の高い研究が日本で進行中です。2015年時点では、少なくともがんを発見することに関してはマンモグラフィだけよりも超音波検査を組み合わせた方が発見しやすい、ということがわかってきています。

しかし、まだ超音波検査+マンモグラフィの検診がより乳がんで亡くなる方を減らすことに役立つ、という結論はでていないので、超音波検査は公的な検診には含まれていません。今後の日本発の研究で、より日本人に適した検診方法がわかってくるといいですね。

■中間期乳がんって? 検診を受けているのに検診以外でがんが見つかる
毎年検診を受けていても、そこでは指摘されないのに、次の検診までの間に見つかってしまう乳がんがあります。これを中間期乳がんと呼んでいます(おそらく元プロレスラーの北斗晶さんの場合はこのタイプの乳がんと思われます)。検診を受けていながら乳がんが見つかる人の3割くらいがこのタイプといわれ、それほど珍しくないケースです。

「検診の見落とし?」と思われるかもしれませんが、実は見落としの方が少数派。また、見落としといっても乳腺の密度が濃かったり、乳がんが小さいなど、診断が難しい場合に起きることが多いのです。

ということは、検診を受けているにも関わらず検診以外で見つかる「中間期乳がん」の大部分は進行が早く急激に大きくなる、ということを意味するので、一般的には検診で見つかる乳がんよりもあまりタチがよくない、と考えられています。

ただ、それでも、この中間期乳がんと全く検診を受けていない人の乳がんの予後(病気の経過や死亡など結果)を比べると、今のところあまり変わらないという報告がでてきています。中間期乳がんがあるからといって、検診に意味がないことはないと思います。

検診は大事ですがいくつかの落とし穴があることを知っておきましょう。でも、心配しすぎてもしょうがないので、できることからやっていくということが大事ですよね。

子宮頸がん・子宮体がんの早期発見のためにできること

【産婦人科医が解説】女性に特有の「子宮頸がん」「子宮体がん」。どちらも子宮のがんですが、それぞれの原因や発症しやすい年齢、予防法は異なります。不正出血、おりもの異常、閉経後の出血など、子宮頸がん、子宮体がんの可能性がある、注意すべき初期症状について解説します。

同じ子宮がんでも全く別物? 子宮頸がんと子宮体がん

女性特有の臓器である子宮。大きくは、子宮の入り口部分の「子宮頸部」と、子宮の奥の「子宮体部」の部位に分けられます。子宮にできるがんを一般的に「子宮がん」と総称しますが、それぞれの部位にできる「子宮頸がん」と「子宮体がん」は、発症する場所の違いだけでなく、発症しやすい年齢や原因、予防法が異なるため、別のがんと考えるほうがよいでしょう。

年齢別にみると、子宮頸がんの罹患率は20代から急激に増加して、40歳前後で横ばいになります。近年は、若年層での患者数が増加傾向にあります。一方の子宮体がんは、40~50代の閉経前後の年代でもっとも多く発症します。以前は、子宮がんの85%以上は子宮頸がんが占めていましたが、最近では子宮体がんの比率が増加し、また死亡率も上がっています。これは、食生活の欧米化により、動物性脂肪の摂取量が増えたことが関係しているのではないかといわれています。また、妊娠・出産経験がないことは子宮体がんのリスクを高めますので、未妊未産の女性が増えたことも子宮体がんの増加と関連している可能性があります。

子宮頸がんも子宮体がんも、全般的に自覚症状がほとんどありません。早期発見のいちばんの近道は、定期的な検診を受けることといわれていますが、その他にも発見の手がかりになる小さなサインはあります。それぞれのがんについて、詳しくみていきましょう。

子宮頸がんの自覚症状は「不正出血」「おりもの」から

子宮頸がんの多くは、性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因で発症します。HPV自体は、じつはありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性の約8割が一生に一度は感染するといわれるほど。性行為によって感染しても、多くの場合は潜伏感染となり細胞に変化は引き起こしません。とはいえ、一度でも性交渉をもったことがある人なら、年齢に関係なく子宮頸がんのリスクがあるといえます。

子宮頸がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。比較的早い段階で現れる症状としては、性交時の接触出血が挙げられます。子宮頸がんは腟の奥にできるので、性交による刺激で出血を起こすことがあるためです。また、ピンク色や茶褐色のおりもが見られたときも、注意が必要です。

がんが進行すると、月経以外の「不正出血」が多くなり、悪臭を伴う茶褐色のおりものが頻繁に見られるようになります。そのほか、月経時の出血量が増える、月経期間が長くなる、などの症状が現れることもあります。その後、下腹部や下肢のむくみや痛み、貧血など、明らかな異常を知らせる症状が現れるころには、がんはかなり進行していると考えられます。

ふだんとは違う「不正出血」が見られたら、それは子宮頸がんの予兆かもしれません。できるだけ早めに婦人科を受診するようにしましょう。またそれ以前に、予防ワクチンの接種や20歳以上からの定期検診を受けるようにするなど、事前の対策をする方法もあります。

閉経後の不正出血は子宮体がんの初期症状の可能性も

子宮体がんは子宮内膜にできるがんで、子宮内膜がんとも呼ばれます。女性ホルモンのバランスの変化により、内膜の細胞が増えすぎることで子宮体がんになりやすくなります。40~50代の閉経前後に発症しやすく、「妊娠・出産をしたことがない人」「月経不順の人」「閉経が遅い人」「乳がんのホルモン治療を受けている人」「肥満の人」などは、子宮体がんのリスクが高くなるといわれます。

子宮体がんの前触れとして、もっとも分かりやすいのが、やはり「不正出血」です。閉経後に不正出血が続くときは、早めに婦人科を受診するようにしてください。また、子宮体がんの場合は、がんになる前の「子宮内膜増殖症」の段階でも不正出血がみられることがあるので、早期発見につながります。ほかにも、おりものが増えるなどの症状も手がかりになります。また閉経前であっても、月経不順がある場合は注意が必要です。

子宮体がんも、いちばんの予防と対策は、検診を受けることです。検診では、子宮の奥まで細長い器具を入れて細胞を採取するので、多少の痛みを伴いますが、早期発見・早期治療のメリットは大きなものです。発生リスクが高い年齢、環境にある人は、定期的に検診を受けるのがよいでしょう。また、月経不順がある場合はピルで定期的な月経を来させることで、子宮体がんのリスクを減らすことができます。月経不順を放置せず、適切な治療を受けることも子宮体がん予防につながります。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

「子宮頸がん・子宮体がん」早期発見のためにできること

◆同じ子宮がんでも全く別物? 子宮頸がんと子宮体がん

女性特有の臓器である子宮。大きくは、子宮の入り口部分の「子宮頸部」と、子宮の奥の「子宮体部」の部位に分けられます。子宮にできるがんを一般的に「子宮がん」と総称しますが、それぞれの部位にできる「子宮頸がん」と「子宮体がん」は、発症する場所の違いだけでなく、発症しやすい年齢や原因、予防法が異なるため、別のがんと考えるほうがよいでしょう。

年齢別にみると、子宮頸がんの罹患率は20代から急激に増加して、40歳前後で横ばいになります。近年は、若年層での患者数が増加傾向にあります。一方の子宮体がんは、40~50代の閉経前後の年代でもっとも多く発症します。以前は、子宮がんの85%以上は子宮頸がんが占めていましたが、最近では子宮体がんの比率が増加し、また死亡率も上がっています。

これは、食生活の欧米化により、動物性脂肪の摂取量が増えたことが関係しているのではないかといわれています。また、妊娠・出産経験がないことは子宮体がんのリスクを高めますので、未妊未産の女性が増えたことも子宮体がんの増加と関連している可能性があります。子宮頸がんも子宮体がんも、全般的に自覚症状がほとんどありません。早期発見のいちばんの近道は、定期的な検診を受けることといわれていますが、その他にも発見の手がかりになる小さなサインはあります。それぞれのがんについて、詳しくみていきましょう。
.
◆子宮頸がんの自覚症状は「不正出血」「おりもの」から

子宮頸がんの多くは、性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因で発症します。HPV自体は、じつはありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性の約8割が一生に一度は感染するといわれるほど。 性行為によって感染しても、多くの場合は潜伏感染となり細胞に変化は引き起こしません。とはいえ、一度でも性交渉をもったことがある人なら、年齢に関係なく子宮頸がんのリスクがあるといえます。

子宮頸がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。比較的早い段階で現れる症状としては、性交時の接触出血が挙げられます。子宮頸がんは腟の奥にできるので、性交による刺激で出血を起こすことがあるためです。また、ピンク色や茶褐色のおりもが見られたときも、注意が必要です。

がんが進行すると、月経以外の「不正出血」が多くなり、悪臭を伴う茶褐色のおりものが頻繁に見られるようになります。そのほか、月経時の出血量が増える、月経期間が長くなる、などの症状が現れることもあります。その後、下腹部や下肢のむくみや痛み、貧血など、明らかな異常を知らせる症状が現れるころには、がんはかなり進行していると考えられます。

ふだんとは違う「不正出血」が見られたら、それは子宮頸がんの予兆かもしれません。できるだけ早めに婦人科を受診するようにしましょう。またそれ以前に、予防ワクチンの接種や20歳以上からの定期検診を受けるようにするなど、事前の対策をする方法もあります。

◆閉経後の不正出血は子宮体がんの初期症状の可能性も

子宮体がんは子宮内膜にできるがんで、子宮内膜がんとも呼ばれます。女性ホルモンのバランスの変化により、内膜の細胞が増えすぎることで子宮体がんになりやすくなります。40~50代の閉経前後に発症しやすく、「妊娠・出産をしたことがない人」「月経不順の人」「閉経が遅い人」「乳がんのホルモン治療を受けている人」「肥満の人」などは、子宮体がんのリスクが高くなるといわれます。

子宮体がんの前触れとして、もっとも分かりやすいのが、やはり「不正出血」です。閉経後に不正出血が続くときは、早めに婦人科を受診するようにしてください。また、子宮体がんの場合は、がんになる前の「子宮内膜増殖症」の段階でも不正出血がみられることがあるので、早期発見につながります。ほかにも、おりものが増えるなどの症状も手がかりになります。また閉経前であっても、月経不順がある場合は注意が必要です。

子宮体がんも、いちばんの予防と対策は、検診を受けることです。検診では、子宮の奥まで細長い器具を入れて細胞を採取するので、多少の痛みを伴いますが、早期発見・早期治療のメリットは大きなものです。 発生リスクが高い年齢、環境にある人は、定期的に検診を受けるのがよいでしょう。また、月経不順がある場合はピルで定期的な月経を来させることで、子宮体がんのリスクを減らすことができます。月経不順を放置せず、適切な治療を受けることも子宮体がん予防につながります。
.
清水 なほみ(産婦人科医)

胸のしこりは悪性?良性?「乳がん」の見分け方

◆良性の胸のしこりで最も多い「乳腺症」とは

乳がんは、セルフチェックでの発見が可能な数少ないがんのひとつです。そのポイントとなるのが、しこりの有無。ただし、胸にしこりができる病気は乳がんだけではありません。

乳がんと混同されやすいしこりの代表例が、生殖年齢の女性に多い「乳腺症」です。性ホルモンの不均衡によって、乳腺にしこりができたり、痛みが生じたりするもので、病気というよりは加齢による生理的な現象ととらえることもできます。また、「乳腺線維腺腫」は若い女性にもよくみられる疾患で、乳房内の線維組織と乳腺が増殖することによって、胸にしこりができます。いずれも、良性のしこりで、命にかかわるものではありません。

気をつけたいのは、乳がんによってできたしこりを、これらの良性のしこりと混同してしまい、乳がんの発見が遅れてしまうこと。実際に、「乳腺症と思っていたら、実は乳がんだった」という例は少なくないのです。

はっきりとした診断には検査が必要ですから、何よりも大切なのは、早い段階で本人が変化に気づいて乳腺外科で精密検査を受けること。乳がんは早期に発見すれば、負担の少ない治療で完治が可能です。乳がんの症状、良性疾患との違いをよく理解したうえで、セルフチェックを習慣にしてください。
.
◆悪性のしこりの特徴・乳がんのしこりの見分け方

では、乳がんとそれ以外の病気とで、しこりにはどのような違いがあるのでしょうか。医師が触診の際にチェックしているのが、「しこりの硬さ」、「しこりの境目」、そして「しこりが動くかどうか」です。

乳がんのしこりには、「硬くて表面がでこぼこしている」、「しこりの形が整っておらず、境目がはっきりしない」、「指で押しても動かない」という特徴があります。また、乳がんの場合には、しこりの大きさが周期的に変動するようなことはなく、進行していなければ、触れたことで痛みが生じることもほとんどありません。

これに対して乳腺症は、しこりが乳がんよりも柔らかく、生理前に張りや痛みが生じるなど、月経周期と連動しています。一方、乳腺線維腺腫のしこりは弾力性があり、押すとよく動きます。また、しこりとそうでない部分との境目がはっきりしているのも特徴です。したがって、たとえば触れたときにゴムのような感触がある、指で押してズレるような感覚がある場合などは、乳がんのしこりではない可能性が考えられます。

とはいえ、セルフチェックだけで安易に「良性」と判断するのは危険です。おかしいなと思ったら、必ず乳腺外科を受診してください。

◆乳がん早期発見のために月に1度のセルフチェック習慣を

最後に、乳がんのセルフチェックのポイントを説明します。

まずは鏡の前に立ち、乳房の状態をチェックします。左右の乳房の形や大きさに変化はないか、皮膚がへこんでいたり、引きつれていたりしないか、乳首がへこんだりただれたりしていないか、自分の目でよく確認してください。最初は両腕を下げた楽な姿勢で行い、次に両腕を上げたばんざいの姿勢で、同じことを確認していきます。

次に、仰向けになり、指で触ってしこりの有無を確認します。仰向けに寝るのは、乳房が全体に広がって発見しやすくなるためです。背中の下にタオルや座布団などを入れると、よりわかりやすくなります。右の乳房をチェックするときは、右腕をばんざいするように頭の上へあげ、左手の指の腹を使って、外側から内側へゆっくりと滑らせるように、まんべんなく触ります。これを左右、同じように行います。

最後に、起き上がって脇の下に腫れがないかを確認。さらに、乳頭を軽くつまんで分泌物が出ないかを確認したら、終了です。 生理前や生理中は乳房が張っているため、生理後4~5日目を目安に、月に1回行うといいでしょう。こまめにチェックをしていれば、小さな変化にも気づきやすくなります。セルフチェックと合わせて、年に一度の定期検診も忘れずに受けて、自分の体を乳がんから守るよう心がけましょう。
.
清水 なほみ(産婦人科医)

無症状の場合も…検査で「子宮腟部びらん」と言われたら?

◆検査で「子宮腟部びらん」と言われたら……

婦人科の診療時、「子宮腟部びらんと言われたことがあるのですが……」と不安そうに仰る患者さんがいます。しかし、結論から言うと、子宮腟部びらんは病気ではないため、心配する必要はありません。びらんは特に症状を伴わない限り、病気とはみなされず、炎症を合併しておりものの増加や、性交時出血を繰り返さない限り、治療の対象にもならないのです。子宮腟部びらんの原因や症状、治療方法について詳しく解説します。
.
◆子宮腟部びらんとは

子宮腟部とは、子宮の下端である頸部が腟内に突出した部分のこと。びらんとは、表皮が欠損した状態で、ただれていることをいいます。すなわち、真の「子宮腟部びらん」とは、子宮腟部表皮が欠損し、ただれた状態を指します。この状態は外傷や炎症などによって一時的に生じることがありますが、極めて稀です。

その一方で、一般的に子宮腟部びらんという場合には、子宮腟部にただれが起きているわけではありません。子宮頸部の粘膜部分が子宮口より外側に外反し、その部分が肉眼的にびらんのように赤く見えるため、子宮腟部びらんと呼んでいるにすぎないのです。この状態は、とくに閉経前の女性では多く認められ、生理的なもので病的なものではありません。子宮腟部びらんは、成熟女性の80%程度に見られます。しかし、この部分は子宮頸がんが発生する部分であり、子宮頸がん検査を行なっていない場合は「がん」の検査が必要となります。
.
◆子宮腟部びらんの原因は?病的なものではなく生理的なもの

月経が始まる前の思春期以前では、子宮腟部は重層扁平上皮という皮膚と同じ組織に覆われています。月経が始まり思春期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の作用によって子宮腟部が膨らみ、内側の円柱上皮と呼ばれる部分が外側にめくれてくるのです。子宮頸管の円柱上皮は毛細血管が際立ち赤くただれているように見え、これを「びらん」といいます。

びらんのほとんどがこのようにしてできるのですから、びらんは病的というより生理的といえます。したがって、更年期以降に女性ホルモンが減少すると、この赤く見えるところは次第に頸管内に退縮していき、子宮腟部は再び重層扁平上皮に覆われびらんもなくなります。

◆子宮腟部びらんはほぼ無症状だが、おりもの増加等も

びらんを持っていても、ほとんどの女性が無症状で過ごすことができますが、以下のようにおりものの増加や出血症状に悩まされることがあります。

■感染症によるおりものの増加
分泌物の多いびらん面が大きいと、それだけでおりものが増えます。また、びらんの部分は感染に対しても抵抗力が弱くなるため炎症を起こしやすく、子宮頸管炎などの感染症が起こりやすくなり、黄色のおりものが著しく増えて不快なものになります。

■性交時の刺激による出血
びらんは刺激に対する抵抗力が弱く、タンポンの使用や性交時の接触による刺激で出血しやすいのも特徴のひとつです。
.
◆子宮腟部びらんの治療法

子宮腟部びらんは子宮頸がんの初期と見分けがつかないこともあるため、診断の際は必ずがん検診を受けて「がん」かどうか確かめます。検診の結果、良性だった場合やびらんが大きくなかった場合など、特にひどい症状がなければ治療の必要はありません。ただし、おりものの症状が気になるときや、性交の刺激による出血を繰り返している場合には治療をおすすめします。治療する場合には、以下のように2段階で考えます。

1. びらんがあると炎症が強くなり、おりものが多くなったりします。そのため、まずはびらんそのものの治療をするのではなく、腟の洗浄や、抗生物質の腟錠を使うことによって炎症をとり症状を落ち着かせます。2. 1の治療でも症状がよくならない場合には、びらんそのものを治療します。冷凍療法やレーザー療法、電気凝固法などによりびらんを取り除き、そのあとに健康な上皮が形成されるのを待つ方法です。いずれも治るまでには1~2カ月を要し、完全治癒のためには治療を繰り返し行う場合があります。
.
◆子宮腟部びらんと子宮頸がん……肉眼的には形状に類似点も

子宮腟部びらんは、医療側では重要な意味を持っています。産婦人科では、子宮腟部の観察をよく行ないますが、びらんは初期の子宮頸がんと肉眼的に似ているため、細胞診で「がん」でないことを確かめなければなりません。したがって、診察した後のカルテ記載事項のひとつとして、びらんの情報は大きな意味があるのです。そのため、診察でびらんがあった場合、特に治療の必要がなくても、患者さんに子宮腟部びらんがあることを伝える産婦人科医は多いようです。

一方で、患者さん側は、たとえびらんがあっても症状がなければ、全く意識する必要はありません。説明してきたように、子宮腟部びらんは単に子宮腟部の状態を表している言葉であって、病名ではないのです。どうぞご安心下さい。
.
藤東 淳也(産婦人科医)

予防は難しい? 「乳がん」になりやすい人の生活習慣

■乳がんになりやすい要因は?…年齢・遺伝・エストロゲン・肥満

年間1万人が命を落とすとされている乳がん。その数は年々増加していますが、そもそもなぜ増えているのでしょうか? それは女性のライフスタイルと大きくかかわっているといわれます。

どんな人、どんな習慣が乳がんになりやすいのかについて解説します。

■年齢
日本人女性の乳がん発生率は30代から上がり、40代後半から50台前半がピークになります。30代でも頭の片隅に置いておくことは必要ですが、特に40歳以上は要注意です。

■遺伝的素因
乳がんにかかったことがある家族がいる方や、片方の乳房を乳がんで手術した方などがこれに当たります。またいわゆる遺伝的素因とはちょっと違いますが、乳房に放射線を多く浴びたり、過去に良性の乳腺疾患にかかったことがあるなど、なんらかの形で遺伝子変異を起こしやすい環境にいた方も気をつけてください。

ちなみに乳がんの発生にはBRCA1、BRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が関わっているといわれており、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、ご自身のBRCA1の遺伝子異常を知ったことで両乳房を切除したことは記憶に新しいところですね。

■エストロゲン
乳がんの発生にはエストロゲンが多く関わっているといわれます。というと難しく聞こえますが、『エストロゲンにさらされている期間』=『生理がある期間』と大雑把には考えていただければいいと思います。…そうすると初産の年齢が30歳以上の方、出産経験のない方(=妊娠している間は生理はないですよね)、初潮年齢が早かった方、閉経年齢が遅かった方、ホルモン補充療法を長期間続けている方、経口避妊剤を長期間使用した方は少し注意が必要ということになります。

■肥満
意外かもしれませんが閉経後の肥満の人も注意が必要です。これは、閉経後は脂肪組織のなかでエストロゲンが作られるからです。太っていると、その分エストロゲンが多くなるので乳がんになりやすいといわれています。ただし、閉経前の肥満は逆に乳がんのリスクを下げるといわれています。女性の体は閉経前と閉経後でかなり変わることの一例です。

こう考えると女性の社会進出、少子化、早い初潮年齢、どれをとっても、乳がんの危険因子が最近増えていますよね。乳がんの発生が年々増加しているのもうなずけます。その他、出生時体重が重い、高身長などの方も注意が必要なことがわかっています。

■乳がんと習慣の関係…運動・喫煙・アルコール・食事・夜間勤務・イソフラボンなど

■乳がんになりにくい習慣
・授乳:長期授乳は予防に効果的
・運動:閉経後の運動には乳がんの予防効果があると考えられています
・食事:野菜、果物、食物繊維、緑茶、イソフラボンなどが予防要因として注目されていますが、現時点ではまだ根拠不充分

■乳がんになりやすい習慣
・喫煙:リスクを上げる可能性が高いです
・アルコール:ほぼ確実にリスクを上げます
・食事:閉経後の脂質の取りすぎはリスクを高める可能性があります
・夜間勤務:リスクをあげる可能性があります

夜間勤務はちょっと不思議な感じがしますが、夜中に光を浴びると、メラトニンという生体の時間リズムの調節に関わっているホルモンの分泌が抑制され、それに伴って卵巣からのエストロゲンの分泌が亢進し、乳がんリスクが高くなるという仮説があります。…

■「乳がんが予防できる」と言い切れない理由

ちなみに、「可能性が高い」とか「ほぼ確実」とか、はっきり言えないの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、それはその疑問の通り、そこまでしか言えないのです。

「医学的に効果がある」という場合には、適切な方法で効果を調べた論文をいくつも検討して、その結果を総合する必要があります。ひとつの論文の結果だけでは言い切ることはできません。

さらに、例えばアメリカやヨーロッパの結果が、人種が違う日本を含めたアジア圏では当てはまらないこともあります。医療関係者でない方とお話していてなんとなく感じることがありますが、「医学的に効果がある、科学として証拠がある」というためには、一般の方が思う「証拠」や「データ」よりも、はるかに厳密で、かつ多くの人々の膨大な労力(検証作業)と時間が必要とされていると思います。

ですので、余談ですが、情報過多の現在の情報取捨選択法として、もしひとつの論文を根拠に何かを言いきっている場合は、参考だけにして聞き流しておくことをお勧めします。現時点では、一定の年齢以上では検診を受ける、喫煙・アルコールを控える、閉経後は適度な運動習慣で体重をコントロールする、ということが一番予防に重要といえそうです。

乳がん予測、血液検査で 最大確率80%、27年にも実現 NEDO

独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、血液検査だけで乳がんになりやすい体質かどうかを調べる技術を実用化することが22日、分かった。

平成27年にも診断を受けられるようにする方針で、発病の防止や早期治療に役立てる。NEDOによると、こうしたがん発症の予測診断は世界初という。

 国内で年間6万人弱が発症する乳がんは、早期発見で命が助かる見込みが極めて高い病気。腫瘍の大きさが2センチ以下程度の発症初期の「第1期ステージ」で治療を進めれば、5年生存率は90%以上といわれる。

しかし、胸の触診などが求められる検査は敬遠されがちで、発見と治療が遅れるケースも目立つ。

 NEDOが実用化する予測検診は、山口大学大学院医学系研究科の末広寛准教授と東洋紡に委託して共同研究を進めてきた。

 研究チームは、女性の体内に乳がんを発症する遺伝子の働きを強めて発症リスクを高める別の遺伝物質があることを発見。

一般的にがん遺伝子があるだけでは発症しないが、この物質ががん遺伝子に近づくほど、がんになりやすいことを突き止めた。乳がんになりやすい体質になった場合でも、運動不足を解消するなどの生活習慣の改善で、発症リスクを下げることが期待できる。

 検査では少量の血液を採取して、がん遺伝子とDNAの近付き具合を診断して、発症リスクの有無を調べる。乳がんが発症するかどうかが最大80%の確率で分かるという。

来年3月までに20歳以上の約1千人の女性に検査を行い、その後の経過も観察し詳しいデータをまとめる。これまでがんができているかを血液から調べる検査はあったが、予測診断はなかった。

 最近では、乳がんのリスクが高いと診断された米人気女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが発症を防ぐため乳房を切除したことを5月に公表し、乳がん予防に関心が高まっている。

 乳がんの血液検診が実用化されれば、国内だけでなく海外からも診断を求める女性が増え、医療産業の裾野を広げることも期待されている。

日本女性が一番なりやすい“乳がん” きちんと知りたい5つの知識

患者数が増え続けている、といわれる乳がん。ニュースやネットでもよく目にし、どうしても気になる存在。ただ漠然と怯えているのはダメ。女性なら誰でもなる可能性のある病気を、きちんと知って冷静に考えよう。

乳がんはどこにどのようにできるの?

乳がんは胸にできる悪性の腫瘍で、日本女性が一番なりやすいがん。乳腺の量が多いところに腫瘍ができやすく、乳がんの約90%は乳腺の中の乳管から発生し、乳管内に広がったり、乳管の外に出て他の組織に転移したりする。カラダの表面に近い場所にできるので、がんを発見しやすいともいわれ、早期発見がとても多い。

乳がん検診は若いうちから受けるべき?

若年性乳がんがメディアなどで話題になるけれど、実際、35歳未満の若い年齢での乳がんは全体の約2.7%と少数。通常乳がん検診は40歳以上からが基本。もし、近親に乳がんを発症した人が複数いたり、若い年齢で乳がんになった人がいれば、30歳くらいから年に1度の検診を。ただ、若くてもしこりを感じたら必ず受診して。

乳がんは遺伝するって本当ですか?

乳がんの中には「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれるものがあり、乳がん、卵巣がん全体の5~10%は遺伝性であるとされる。遺伝子検査をすれば分かるので、早期発見や予防といった適切な医療が可能になると話題に。ただ、過度な心配がストレスになる場合もあるので、カウンセリングでしっかり相談を。

妊娠、出産をしていないと乳がんになりやすい?

エストロゲンには乳がん細胞の増殖作用があるため、出産で生理がない期間が長いほど、エストロゲンの分泌が少なく、乳がんの発症率も低くなると考えられる。ただ他にも、アルコールの摂取量が増えれば乳がん発症リスクは上がるし、肥満の人もリスクは高い。やみくもに不安を抱かず、生活習慣の改善から見直していこう。

【リスクを知っておくことも必要かも】
自分が乳がんになるとは全く思っていなかった、という漫画家の水谷緑さん。芸能人の乳がんのニュースを見て、何の気なしに受けた検診で初期の乳がんであることが判明した。32歳だった。

「先生に検査結果を聞いている間も、頭がついていかず、パニック状態でした。幸い初期だったので治療は思っていたよりスムーズでしたが、心への影響は相当なもの。異様にテンションが高ぶったり、全方位に怒りをぶつける状態になったりと、怒りや悲しみに翻弄され続けた日々でしたね」

この夏、治療が終わった直後から書き綴った、乳がんの闘病コミックエッセイが発売されたばかり。病状や治療、水谷さん自身が感じたことなどがリアルに描かれ、戸惑いや理不尽な出来事に対する怒りがストレートに伝わってくる。

「35歳未満の乳がんの発症率は本当に少ないので、必要以上に不安を持つことはないと思います。ただ、私もそうでしたが“病気は誰にでも起こりうるし、女性には女性なりのリスクがある”ということは知っていた方がいい。そして、乳がんは初期に発見した方が断然治療はスムーズなので、検診料は安心料と思って定期的に受けてみるのもいいかも、と思います」

水谷 緑さん 漫画家。緩和医療の漫画を『本当にあった愉快な話 芸能ズキュン!』(竹書房)で12月から連載予定。近著に『32歳で初期乳がん 全然受け入れてません』(竹書房)が。※『anan』2018年9月19日号より。イラスト・かざまりさ 取材、文・板倉ミキコ

放置するとガンに!? 20代女性にも増えている「子宮筋腫」の知

最近はガンを公表する芸能人も多くなり、検診での早期発見が大切だと多くの人に認知されてきています。

女性の場合だと婦人科系の病気は特に気になりますよね。その中でも幅広い年齢に多いと言われている『子宮筋腫』はご存じでしょうか。

なんとなく言葉は聞いたことあるけれど、そんなに心配していないという方は少なくないはず。

そこで今回はその『子宮筋腫』について、ご紹介します。特に2〜30代の成人女性で今から妊娠を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

●月経がある女性には誰にでもなりうる『子宮筋腫』

日本産科婦人科学会によると、

**********

子宮筋腫は良性の腫瘍ですから、それ自体が生命を脅かすものではありません。しかし放置しておきますと10kgを超えるような大きさまでになることもあります

**********

との記述があります。

主に筋腫が発見されるのは30~40歳代の約20~30% で、40歳代を超えるとこの数値が約半数にも上がります。しかし、自分はまだ20代だからと侮ってはいけません。

現代の日本では初経の低年齢化や欧米の食事文化がどんどん根づいてきてますので、筋腫を発症する時期が20代の女性にも増えてきています 。

生命の危機はなくとも、放置して巨大化すれば問題も起きてくるわけです。

●月経の変化や貧血症状には要注意!

筋腫ができていると月経の量がグンと多くなります。また、それに伴って生理痛も悪化します。

筋腫のできた場所にもよりますが、小さくても症状が強く現れるものや大きくても症状がほとんどないこともあります。

出血量が増えることによってめまいなどの貧血症状も見られます。さらに、筋腫が妊娠の妨げになっていることもあります。

筋腫が邪魔して受精卵が着床しづらくなったり、たとえ妊娠したとしても早産のリスク がつきまといます。

●定期検診は必ず受けましょう!

まだ妊娠を経験していない女性にとっては婦人科はとても抵抗のある場所だと思います。

しかし、子宮筋腫が怖いのはどんどん大きくなる可能性があるということです。

大きくなれば悪性腫瘍の可能性も出てきますので、薬物治療である程度小さくすることも可能ですが、放置していると最終的には子宮を全摘出しなければいけない 状態にまでなってしまいます。

若いからこそ定期検診は怠らずに行きましょう。小さければ経過観察として特に治療をしなくて済むことも多いです。

----------

いかがでしたでしょうか。

筋腫が見つかるのは妊婦検診やたまたま行った検診時が特に多いようです。そういった機会のなかった方はぜひ一度は検診を受けてみてください。

また、若いころに筋腫があると診断を受けてから、経過観察中の方がそのまま放置して、症状が現れだしたときには筋腫が巨大化していたという話もよく聞きます。

今健康であるうちに一度受診してみてはいかがでしょうか。

30歳以上の女性3人に1人が…子宮筋腫の診断法

子宮筋腫は子宮の筋肉の壁にできる良性の腫瘍(コブ)。悪性腫瘍である子宮がんとは別のもので、小さいものも含めると30歳以上の女性の3人に1人は発見される子宮の病気の中では最もメジャーなものです。
.
◆子宮筋腫の原因

筋腫ができる原因ははっきりと解明されていません。母親や叔母、姉妹に筋腫があるという人に見つかることが割と多いため、何らかの遺伝的要素はあるのではないかと言われています。
.
◆子宮筋腫の症状

筋腫ができる場所や大きさによって症状の出方は異なります。

■自覚症状がないケース
全く症状がなく、検診でたまたま筋腫が発見される人も少なくありません。特に最近は超音波検査が普及してきたので、触っただけでは発見できなかった小さな筋腫も早期発見できるようになってきました。

■過多月経・過長月経
子宮筋腫で自覚症状がある場合に一番多いのは、過多月経や過長月経。筋腫が子宮の内側に飛び出していたり、子宮を引き伸ばして変形させてしまうため、出血量が増えるのが原因。ひどいとナプキンが1時間持たなかったり、貧血が進みすぎて輸血が必要になることも。月経の量が多く期間も長いため、貧血になってしまうケースもあります。

月経量は人と比べることができないため、本当は過多月経なのに自分では異常に気づかず放置してしまうこともあるようです。健康診断で貧血を指摘されたことがある人は、一度は婦人科で筋腫がないかチェックしてもらった方がいいでしょう。

■下腹部のしこり
筋腫が握りこぶし以上の大きさになると、自分で触っても下腹の辺りにできたしこりがわかることがあります。

■頻尿・排尿異常・便秘
子宮筋腫がさらに大きくなると、圧迫による症状が出ることも。子宮の前には膀胱があるので筋腫が膀胱を圧迫してトイレが近くなったり、逆に尿がスムーズに出せなくなってしまいます。周りの腸を圧迫すれば便秘になります。

■腎臓の腫れ
尿管が圧迫されると、「水腎症」と言って腎臓が腫れてしまうこともあります。ただし、ここまでひどい症状が出るのは筋腫が相当大きくなってから。通常はそんなに大きくなる前に何らかの治療を勧められることが多いでしょう。まれに、妊婦さんのようなお腹になって初めて婦人科を受診し、お臍の高さを超えるくらい大きな筋腫が発見される患者さんもいらっしゃいます。その場合も、本人は何となく太ったという程度の自覚症状しかない場合もあるのです。大きくなると手術による体の負担も大きくなります。

たとえ症状がなくても、年に1回は超音波検査を受けるようにして下さい。

◆子宮筋腫の診断法

筋腫の診断は主に超音波検査。膣から超音波の機械を入れて子宮や卵巣を直接写し出していくので、1cm未満の小さな筋腫まで発見することが可能。 「粘膜下筋腫」といって筋腫が子宮の外側に飛び出しているように見える場合、正確な位置や飛び出し方を確認するために「子宮鏡検査」を行うこともあります。子宮鏡は細いカメラを子宮の出入り口から挿入し、子宮内を観察することができる検査。粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープが疑われる時に外来で行います。

また筋腫が大きい場合やたくさんある場合、サイズや位置関係をより正確に把握するためにMRI検査を追加することも。MRI検査は主に手術をすることを前提に詳しい情報を得る目的で行うことが多いです。これらの検査結果や症状の有無などを合わせて治療法を相談していきます。 清水 なほみ(産婦人科医)

乳房再建術はここまできた! 人工乳房、インプラントも保険適用

昨年、タレントの北斗晶さん(48)の闘病で注目された乳がん。日本では約6万人の患者がいるとされる。近年はがんを取り除くために乳房の摘出手術を受けた後、人工乳房(インプラント)を入れる再建術も保険適用となり、乳房を無理に温存せず、「全摘出+再建術」を選ぶ患者が増えている。現状と課題などを専門医に聞いた。

 ■喪失感に配慮

 乳房再建を専門的に行っているブレストサージャリークリニック(東京都港区)には、全国から1日40~50人の患者が相談に訪れる。愛知県から来た女性は「主治医から自家組織での再建を何度も勧められるが不安だ」と訴えた。

 日本の医療現場では長年、乳がんそのものの治療に重点が置かれ、乳房再建にまで目が行き届かない面もあった。

だが、乳房を失う女性の喪失感や温泉を楽しめないといった生活の不便さなどが配慮されるようになり、患者自身の背中やおなかの筋肉、脂肪などを移植して乳房をつくる自家組織による再建が平成18年、健康保険の適用対象となった。

 自家組織による再建は血の通った乳房ができる一方、背中やおなかにも傷痕やへこみができてしまうなど患者の肉体的・精神的負担が大きいという課題があった。こうした中、自由診療だったインプラントの改良が進み、25年から人工乳房による再建も保険適用になった。

 同クリニックの岩平佳子院長によると、自費で100万円以上かかっていた治療費のハードルが下がり、人工乳房を選ぶ人が増えているという。

 ■体への負担少なく

 人工乳房による再建のステップはまず、大胸筋の下に皮膚を伸ばすためのティッシュエキスパンダーと呼ばれる組織拡張器を入れ、生理食塩水を注入して胸を膨らませる。その状態で8カ月程度かけて皮膚を伸ばした後、エキスパンダーとインプラントを入れ替える=イラスト参照。

 メリットは自家組織での再建に比べ、体への負担が大幅に少ないこと。がんが局所再発した場合にも皮膚や大胸筋にできるため、大胸筋の下に入れるインプラントがエコーなどの検診に支障をきたすことはない。

 ■技術の差

 ただ、感染症や血腫などの合併症が起きるリスクはある。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS)のまとめによると26年には、エキスパンダー挿入中の合併症が4750例中312例、インプラントでは4254例中89例あった。

 岩平院長は「早期に対応すれば合併症の重症化は防げる。異常を感じたらすぐに専門医を受診することが大切」と話す。

 保険が適用されてから日が浅く、医療機関による技術やアフターケアには差があることも課題の一つだ。岩平院長は「医師も患者も『再建して終わり』ということではなく、長期的に考え、フォローできる姿勢を持つことが必要」と訴えている。

 JOPBSのホームページ(http://jopbs.umin.jp)では、治療のガイドラインや学会の認定施設、認定医を確認できる。

 ■手術後のサポート下着も充実

 乳がんの手術後につける専用のブラジャーも充実してきた。手術直後は胸が動くことで起きる内出血などを防ぐため、乳房を固定し、激しい運動などを避ける必要がある。

 下着メーカーのワコール(京都市南区)では40年以上、乳がん手術を受けた女性のためのシリーズ「リマンマ」を販売。全国に6カ所に相談室を設け、患者に合わせた商品をそろえる。再建後の段階や肌触りなどのニーズに合わせて選ぶことができ、3万人以上の女性が利用しているという。

 海外でも米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが2013年、がん予防のために両乳房を切除・再建し、話題を呼んだ。

 母親を乳がんで亡くした英国のデザイナー、ステラ・マッカートニーさんは自身のブランドから昨年9月、専用のブラジャーを発売している。

予防は難しい? 「乳がん」になりやすい人の生活習慣

年間1万人が命を落とすとされている乳がん。その数は年々増加中ですが、そもそもなぜ増えているのでしょうか。それは女性のライフスタイルと大きくかかわっているといわれます。

今回は「どんな人が乳がんになりやすいの?」「どんな習慣はなりやすいの?なりにくいの?」についてお話しします。

■乳がんになりやすい人 年齢・遺伝・エストロゲン・肥満

□年齢
日本人女性の乳がん発生率は30代から上がり、40代後半から50台前半がピークになります。30代でも頭の片隅に置いておくことは必要ですが、特に40歳以上は要注意です。

□遺伝的素因
乳がんにかかったことがある家族がいる方や、片方の乳房を乳がんで手術した方などがこれに当たります。またいわゆる遺伝的素因とはちょっと違いますが、乳房に放射線を多く浴びたり、過去に良性の乳腺疾患にかかったことがあるなど、なんらかの形で遺伝子変異を起こしやすい環境にいた方も気をつけてください。

ちなみに乳がんの発生にはBRCA1、BRCA2と呼ばれる遺伝子の変異が関わっているといわれており、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、ご自身のBRCA1の遺伝子異常を知ったことで両乳房を切除したことは記憶に新しいところですね。

□エストロゲン
乳がんの発生にはエストロゲンが多く関わっているといわれます。というと難しく聞こえますが、「エストロゲンにさらされている期間」=「生理がある期間」と大雑把には考えていただければいいと思います。

そうすると初産の年齢が30歳以上の方、出産経験のない方(=妊娠している間は生理はないですよね)、初潮年齢が早かった方、閉経年齢が遅かった方、ホルモン補充療法を長期間続けている方、経口避妊剤を長期間使用した方は少し注意が必要ということになります。

□肥満
意外かもしれませんが閉経後の肥満の人も注意が必要です。これは、閉経後は脂肪組織のなかでエストロゲンが作られるからです。太っていると、その分エストロゲンが多くなるので乳がんになりやすいといわれています。ただし、閉経前の肥満は逆に乳がんのリスクを下げるといわれています。女性の体は閉経前と閉経後でかなり変わることの一例です。

こう考えると女性の社会進出、少子化、早い初潮年齢、どれをとっても、乳がんの危険因子が最近増えていますよね。乳がんの発生が年々増加しているのもうなずけます。その他、出生時体重が重い、高身長などの方も注意が必要なことがわかっています。

■こんな習慣は乳がんになりやすい? なりにくい? 運動・喫煙・アルコール・食事・夜間勤務・イソフラボンなど

□なりにくい習慣
・授乳:長期授乳は予防に効果的
・運動:閉経後の運動にはおそらく確実に乳がんの予防効果があると考えられています
・食事:野菜、果物、食物繊維、緑茶、イソフラボンなどが予防要因として注目されていますが、現時点ではまだ根拠不充分

□なりやすい習慣
・喫煙:リスクを上げる可能性が高いです
・アルコール:ほぼ確実にリスクを上げます
・食事:閉経後の脂質の取りすぎはリスクを高める可能性があります
・夜間勤務:リスクをあげる可能性があります

夜間勤務はちょっと不思議な感じがしますが、夜中に光を浴びると、メラトニンという生体の時間リズムの調節に関わっているホルモンの分泌が抑制され、それに伴って卵巣からのエストロゲンの分泌が亢進し、乳がんリスクが高くなるという仮説があります。

□「予防できる」と言い切れない理由
ちなみに、「可能性が高い」とか「ほぼ確実」とか、はっきり言えないの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、それはその疑問の通り、そこまでしか言えないのです。

「医学的に効果がある」という場合には、適切な方法で効果を調べた論文をいくつも検討して、その結果を総合する必要があります。ひとつの論文の結果だけでは言い切ることはできません。

さらに、例えばアメリカやヨーロッパの結果が、人種が違う日本を含めたアジア圏では当てはまらないこともあります。医療関係者でない方とお話ししていてなんとなく感じることがありますが、「医学的に効果がある、科学として証拠がある」というためには、一般の方が思う「証拠」や「データ」よりも、はるかに厳密で、かつ多くの人々の膨大な労力(検証作業)と時間が必要とされていると思います。

ですので、余談ですが、情報過多の現在の情報取捨選択法として、もしひとつの論文を根拠に何かを言いきっている場合は、参考だけにして聞き流しておくことをお勧めします。

現時点では、一定の年齢以上では検診を受ける、喫煙・アルコールを控える、閉経後は適度な運動習慣で体重をコントロールする、ということが一番予防に重要といえそうです。

・参考文献:乳癌診療ガイドライン2013

無症状の場合も? 不妊症とも関係がある「子宮筋腫」とは。

現在、不妊に悩むかたが増えています。不妊には様々な原因がありますが、子宮筋腫もそのひとつに数えられます。特に、子宮筋腫が原因の不妊は増えてきているといわれているのです。

今回は、子宮筋腫と妊娠の関係について、医師に聞いてきた話をお伝えしたいと思います。

子宮筋腫とは?

子宮筋腫とは、子宮を構成する筋肉からできる良性の腫瘍のことをいいます。

子宮筋腫は、
・生理の出血量が多い
・生理痛がひどい
・腰痛
・下腹部痛や腹部の圧迫感
などの症状があります。

筋腫が大きい場合、まわりの臓器が圧迫されることによって便秘や頻尿になることもあります。しかし、無症状のことも多く、健康診断で初めて発見されることもあります。

子宮筋腫が原因で妊娠できないのはどうして?

症状や経過によっては子宮動脈塞栓術や手術、内服療法などによって治療をすることが望ましいのですが、経過を見ていくだけでよいことも多いです。しかし妊娠をするためには子宮筋腫が邪魔をすることがあります。

1. 着床しづらい
妊娠に至るためには、しっかりと排卵され、健康な卵子と精子が出会って受精をし、その受精卵が子宮内膜に着床をする必要があります。子宮筋腫があると子宮は筋腫によってひきのばされたり、凸凹といびつな形になっているため、受精をしても、受精卵が着床しにくくなります。着床をしなければ妊娠は成立しません。また、着床したとしても初期のうちに気づかずに流産してしまうこともあります。

2. 子宮が硬くなる
妊娠すると、子宮はやわらかくなりだんだん大きくなっていくのですが、子宮筋腫がある場合には、子宮は硬くなって、大きくなりにくかったり子宮が収縮しやすくなっています。そのため、ちょっとした刺激によって子宮が収縮し、結果流産してしまうということもあるのです。

子宮筋腫があっても妊娠、出産をされるかたもたくさんいらっしゃいます。しかし子宮筋腫があって、その他に不妊の理由がはっきりしないかたや「不育症」という何度も流産になってしまう症状があるかたが、筋腫を取り除く治療をすることで、妊娠、出産に至る場合も多いのです。

加齢によって子宮筋腫は増える?

子宮筋腫による不妊の増えた原因には、妊娠・出産の高齢化があるといえます。

子宮筋腫は、加齢によって頻度は増え、40代では3分の1の女性にあるともいわれるほどです。そのため、高齢になってからの妊娠は、排卵機能の低下などに加えて、子宮筋腫による不妊の影響も受けやすいのです。

また、子宮筋腫は、女性ホルモンの影響を受けて成長します。月経の開始年齢が低年齢化し、女性ホルモンの影響を長期間にわたって受けるようになったのも、子宮筋腫が増えている原因とも考えられています。

医師からのアドバイス

妊娠するためには、子宮筋腫の有無や状態を確認することも大切です。筋腫の状態をよく理解し、不妊の原因となっている可能性が大きければ、手術の方法など含め、専門医としっかりと相談したうえで、治療を受けるといいでしょう。

1日1時間のウォーキングで、乳がんリスクが14%減-アメリカ研究

最新の研究で、週に7時間以上運動する50歳以上の女性は、乳がんになるリスクが低いことが分かりました。

アメリカがん協会の調査によると、週に7時間以上ウォーキング、エアロビクス、ダンスなどをする女性と、週に3時間以下しか運動しない女性を比較すると、前者はその後15年の間に乳がんにかかるリスクが14%低いことが分かりました。

ランニングや水泳、テニスといったより激しい運動の場合は、リスクは25%減と、より効果的だそうです。

この調査は、50歳から74歳の閉経後の女性70,000人を対象にしたもの。運動時間以外の要素、例えば「体重」「1日に座って過ごす時間の長さ」「ホルモン療法の経験があるか」といったファクターは、乳がんのリスクとは無関係という結果が出たそうです。

同協会のアルパ・パテル博士は、「乳がんの予防には運動が効果的とはいえ、どのくらい運動すればいいのかということについては、これまではっきりとしたデータは発表されていませんでした。

この研究結果は、運動時間や内容の目安を定める大きな発見です」と語っています。

この研究が50歳以上の女性を対象にしているとはいえ、もっと若い世代にも類似の効果が得られることは十分に考えられます。

ダイエットのためだけでなく、将来のがん予防のためにも運動は大切。ウォーキングなら、それほど難しくはないのではないでしょうか。

駅のエスカレーターの代わりに階段を使ったり、一駅歩く、散歩する習慣をつけるなど、小さな努力を積み重ねていきたいところです。

1日1時間のウォーキングで、乳がんリスクが14%減-アメリカ研究

最新の研究で、週に7時間以上運動する50歳以上の女性は、乳がんになるリスクが低いことが分かりました。

アメリカがん協会の調査によると、週に7時間以上ウォーキング、エアロビクス、ダンスなどをする女性と、週に3時間以下しか運動しない女性を比較すると、前者はその後15年の間に乳がんにかかるリスクが14%低いことが分かりました。

ランニングや水泳、テニスといったより激しい運動の場合は、リスクは25%減と、より効果的だそうです。

この調査は、50歳から74歳の閉経後の女性70,000人を対象にしたもの。運動時間以外の要素、例えば「体重」「1日に座って過ごす時間の長さ」「ホルモン療法の経験があるか」といったファクターは、乳がんのリスクとは無関係という結果が出たそうです。

同協会のアルパ・パテル博士は、「乳がんの予防には運動が効果的とはいえ、どのくらい運動すればいいのかということについては、これまではっきりとしたデータは発表されていませんでした。

この研究結果は、運動時間や内容の目安を定める大きな発見です」と語っています。

この研究が50歳以上の女性を対象にしているとはいえ、もっと若い世代にも類似の効果が得られることは十分に考えられます。

ダイエットのためだけでなく、将来のがん予防のためにも運動は大切。ウォーキングなら、それほど難しくはないのではないでしょうか。

駅のエスカレーターの代わりに階段を使ったり、一駅歩く、散歩する習慣をつけるなど、小さな努力を積み重ねていきたいところです。

12人に1人が乳がんに罹患 定期的な自己検診を心掛けて

日本では乳がんが年々増加し、女性が罹患(りかん)するがんの第1位です。年間に乳がんに罹患する人数は、1975年は人口10万人あたり20人でしたが、2011年は124人と、この35年間で約6倍に増加しており、女性の12人に1人が乳がんに罹患します(図1)。

 乳がん検診の目的は、早期発見と早期治療により死亡率を減少させることで、検診の方法には「自己検診」「視触診による検診」「マンモグラフィー検診」「超音波検診」などがあります。厚生労働省の調査班報告書では、40~74歳ではマンモグラフィー単独検診を、あるいは40~64歳ではマンモグラフィーと視触診の併用をすすめています。

自己検診について 

 乳がんは自分で発見できる数少ないがんの一つであり、定期的な自己検診を心がけましょう。自己検診のポイントは、「みる」「さわる」「つまむ」です。

 【みる】鏡に向かい両腕を自然に下げたり上げたりして乳房の変形や左右差がないかをチェックします(図2a)。

 【さわる】立った状態、寝た状態で4本の指の腹で軽く押さえながら乳房を円を描くようにくまなく触り、しこりがないかをチェックします

 【つまむ】最後に乳頭をかるくつまみ、乳頭からの分泌液がないかをチェックします。血液の混じった分泌液(通常は褐色)を認めた場合は、受診が必要です。

視触診による検診について     

 医師による乳房の視診と触診を行います。安くて簡便であるため、日本では1987(昭和62)年から導入されましたが、検診精度が医師の技量に左右されるなどの問題があります。また、マンモグラフィーの導入により手で触れないがんの診断ができるようになりましたので、マンモグラフィー検診との併用をおすすめします。

マンモグラフィー検診について   

 マンモグラフィーは板と板の間に乳房を挟んで圧迫し、薄く伸ばした状態でレントゲン撮影する方法です。手で触れない段階で乳がんが発見される場合があり、40歳以上の女性では死亡率が低下することが示されています。しかし40歳未満の女性に対する効果は明らかでありません。

 欠点は、検査に多少の痛みを伴うこと(個人差があります)、少ないながら被曝(ばく)するという点です。マンモグラフィーの被曝による発がんリスクの増加は極めて少なく、死亡率低下効果が示されている40歳以上であれば、マンモグラフィーによる利点が欠点を大幅に上回ると考えられています。

 しかし、全ての乳がんがマンモグラフィーで発見できるわけではありません。特に乳腺組織の発達している若い女性では、乳がんの発見が難しくなります。また、マンモグラフィー検診で精密検査が必要と判定された場合でも、実際に乳がんが発見されるのは50人に1人程度です。

超音波検診について 

 超音波プローブ(探触子)を乳房に直接あてて、乳房内を観察する方法です。マンモグラフィーのような痛みや被曝がなく、乳腺組織の発達した女性でも、乳がんが発見できる場合があります。

 最近日本で行われた研究から、40歳代の女性では、マンモグラフィーに追加して超音波検診を行うことで、より多くの乳がんが発見できることが報告されました。一方、本当はがんではないのに精密検査を受けなければいけない危険性も増加します。超音波検診による死亡率の低下効果は、現在のところ不明です。

その他の検診について 

 その他の検診方法として、造影剤を用いたMRI(核磁気共鳴画像法 magnetic resonance imaging)があります。

 造影MRIは乳がんの検出率が最も高い検査方法ですが、造影剤の注射が必要なこと、高額なこと、時間と手間がかかることから一般検診には不向きです。このため造影MRIは乳がんの危険性が極めて高い女性(遺伝性乳がん、頻回のエックス線検査や放射線療法など小児期に胸部への被曝歴のある女性)にのみ行われます。(岡山大学病院乳腺・内分泌外科講師平成人)

 たいら・なると 岡山・関西高、山口大医学部卒。四国がんセンターを経て2008年から岡山大病院勤務。医学博士。日本乳癌学会乳腺専門医。

子宮頸部の「風邪」のようなもの? 8割の女性が1度は感染する「HPV」のリスク

■HPVへの感染は子宮頸部の「風邪」のようなもの?
子宮頸がん検診で異常が出ると、しばしば質問されるのがHPV(ヒトパピローマウイルス)感染との関係です。子宮頸がんの原因のほとんどは、HPVへの感染なので、細胞に異常が出ているということはHPVに感染している可能性が高いと言えます。

感染しているかどうかは、HPV検査をすればすぐにわかります。

患者様が一番気にされるのは、どこから感染したものなのか、そして今後「消えてくれるのか」ということです。HPVは性交渉によって感染するものなので、今までの性交渉の誰かから感染したものということは言えますが、誰からなのかを特定することは困難ですし、また特定することにメリットもありません。

一度感染すると体から完全にいなくなることはないので、HPVを「退治する」ことを考えるのはあまり意味がないことと言えます。

HPVは性交渉の経験がある女性の約8割が一生に一度は感染することがあるくらい、ある意味ありふれたウイルスです。診療の現場では、わかりやすくするために「子宮頸部の『風邪』みたいなものだ」とご説明しています。感染機会を持つところから、がんになるまでの経緯を風邪に例えると理解しやすいのです。

■HPVに感染している人との性交渉=風邪をひいている人との接触
風邪をひいている人のそばにいたからと言って全員にその風邪がうつるわけではありません。でも、手洗いやうがいやマスクなどでできるだけ感染しないように予防はします。

HPVに感染している人と性交渉を行っても必ず感染するとは限りませんが、ワクチンやコンドームでの予防は大事です。

■HPVへの感染=風邪がうつる
予防をしていても風邪がうつることはあります。でも、ほとんど症状が出ないこともあれば、軽い症状で終わることもあります。

HPVへ感染しても、ただウイルスが「感染している」というだけで細胞に何も変化が起きない場合もあります。HPV感染が「性感染症(STD)」ではなく「性感染(STI)」と言われるのは、感染したこと自体はまだ「病気」とは言えないからです。

■HPVが細胞に変化を引き起こす(異形成)=風邪症状が出る
風邪がうつった人の一部は、しっかり風邪症状が出ることがあります。でも、早めの治療を行ったり、自分の免疫力を高めればすぐに症状は改善し、重篤な病気を引き起こすまでには至りません。

感染したHPVが細胞に変化を引き起こしてくるとがんの手前の「異形成」という状態になります。

この段階ではまだ「がん」ではないので、変化が軽い「軽度異形成」や「中等度異形成」であれば、自分の免疫力を高めてウイルスの活動を抑えることで、細胞が正常化していくことが期待できます。変化の強い「高度異形成」であっても、円錐切除という手術(早期治療)で完治できます。

■HPVによる細胞の変化がさらにひどくなってがんになる=風邪をこじらせて肺炎になる
本来、風邪は早めの治療できちんと対応すれば重篤な状態になることはありません。自然に治るものです。でも、対応が遅れたり極端に免疫力が下がったりしていると、「こじらせた」状態になって肺炎などの重篤な状態につながる場合があります。

「異形成」の状態がさらに進むと「上皮内がん」を経て「浸潤がん」へと進行していきます。この状態にまで進んでしまうと、大掛かりな手術や放射線治療などが必要になってきます。

HPVに感染した人の約1000人に1人が、何もしなければがんまで進行していきます。この状態まで進行しきる前に「早期治療」できるタイミングを見逃さないようにするのが、検診の役割なのです。

子宮頸がんは、ワクチン接種と適切な検診で必ず予防できるものです。1年に1回は自分の体と向かい合う日を作って、定期的な検診を受けるようにしましょう。

さくらももこさんの命を奪った乳がんを早期発見する方法

【Dr.中川のみんなで越えるがんの壁】

 視聴率はアニメ歴代1位の39・9%で、テーマソングの売り上げは164万枚。平成を代表する漫画「ちびまる子ちゃん」で知られる漫画家さくらももこさんの命を奪ったのは、乳がんでした。享年53。早すぎる最期に、悲しみの声が上がっています。

 しかし、日本の乳がんの現状を突きつけた最期ともいえます。

 一般に、がんは細胞の老化とともに発症するため、年齢を重ねるにつれて患者が増えます。ところが、乳がん細胞を増殖させるのは女性ホルモンなので、生理がある時期ほどリスクが高い。40代から50代に乳がん発症のピークがあるのは、そのためです。

 現状を突きつけたというもうひとつの理由が、少子化。妊娠から出産、授乳している2年ほどの間は生理が止まるため、乳がんリスクが低下。授乳そのものが乳がん予防効果を持つことはほぼ確実視されていますから、子宝に恵まれた女性はそれだけ乳がんリスクが低いといえます。

 2017年は約8万9100人の女性が乳がんと診断され、約1万4400人が亡くなりました。死亡者数はこの30年で3倍で、今では11人に1人の女性が乳がんになる計算です。

 47都道府県でみると、乳がんが最も多いのは東京で、最少の鹿児島の2倍以上。東京の出生率が全国最低であることに関係があると思います。閉経後の肥満と運動不足も乳がんのリスク要因で、これらも東京の患者数を押し上げている可能性が高いでしょう。

 先ほど、肥満がリスクのひとつと書きましたが、肥満大国の米国では、この30年で乳がんによる死亡率が3割も減少しました。逆に日本は3割近く上昇しています。日本のメタボ化が進んだとはいえ、米国ほどではありません。なぜかというと、意識の差です。

 乳がんは、腫瘍が2センチ以下で、リンパ節への転移がなければ、9割は完治します。早期発見ほど治癒率が高く、比較的タチのいいがんです。その点で乳がん検診の受診率を見ると、米国は85%ですが、日本は半分以下の4割。この差が、死亡率の差につながっているとみられます。

 早期発見のカギがマンモグラフィーで、厚労省は2年に1回の受診を推奨。ただし、日本人を含む東洋人は、8割がデンスブレストと呼ばれる高濃度乳腺で、マンモで見つけにくいタイプ。これには、超音波が有効です。さらに、毎年検診を受けても見つけられないほど進行が速いタイプが2割あります。

 そこで、ベターな早期発見方法は、2年に1回の「マンモ検診+超音波検査」と毎月の自己触診です。自分の乳房の感触を覚えておき、変化があれば迷わず専門医を受診すること。触診の日は毎月決まった日がよく、生理がある方なら、出血が止まって4、5日目がいいでしょう。

 マンモは放射線です。進行が遅い8割の方が毎年受けると、過剰検診による被曝の問題があります。検診は2年に1回のマンモと超音波で、毎月の自己触診が無難。50代でパートナーの女性を失うのは、男性にとってもショックが大きいこと。定期的な“ダブルチェック”で乳がんが早期に見つかることは、決して少なくありません。

(中川恵一/東大医学部附属病院放射線科准教授)

乳がん新検査「痛み・圧迫感ない」 神戸大など開発、実用化目指す

ごく弱い電波を発信する機器で乳房の表面をなぞるだけで、乳がんを立体的に確認できる画像検査法を、神戸大や兵庫県内の医療機関などによる研究グループが開発した。乳がん検診で使われる従来のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)のように圧迫感や痛みがなく、がんを見つけにくい体質の人にも有効という。数年後には検診での実用化を目指す。(佐藤健介)

 乳がんは女性がかかるがんで最も多く、2016年には国内で約1万4千人が命を落としている。人気漫画「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんも今月15日、乳がんのため53歳で亡くなった。 早期発見で9割以上が治るとされ、国は40歳以上の女性を対象に、2年に1回のマンモグラフィー検査を受けるよう呼び掛けている。だが、厚生労働省が16年に実施した国民生活基礎調査によると、受診率は全国で44・9%にとどまる。

 マンモグラフィーは撮影する乳房を板で挟んで圧迫するため痛みを感じ、エックス線被ばくのリスクもある。また、日本人女性の約4割を占めるとされる「高濃度乳房」の人は、乳腺や乳房を支える靱帯(じんたい)が密集して全体が真っ白に見え、同じように白く写るがんが見落とされやすいという。

 一方、電波は乳房の主成分の脂肪は通過するが、血液中の水分には跳ね返る。この性質に着目した研究グループは、がん付近の血管で反射した電波の波形を解析し、数秒程度でがん組織の立体画像を作ることに成功した。 グループによると、新しい検査法は痛みを伴わず、がんを鮮明に識別できる。エックス線を使わず、アレルギー反応などの副作用がある造影剤も必要ない。

 グループは神戸大病院(神戸市中央区)など4医療機関で、これまでに高濃度乳房を含む乳がん患者や健康な人ら約240人を測定。マンモグラフィーや組織の一部を採取する検査など従来の診断と照らし合わせても、結果が合致したという。今後、さらにデータを積み重ね、メーカーや関係機関の協力を得て検査機器を製品化したい考え。

 グループの木村建次郎神戸大教授(物理化学)は「森の中から目的の木1本を瞬時に探すような技術だ」と話す。測定した医療機関のうち、岡本クリニック(同市中央区)の岡本交二院長は「マンモグラフィーの痛さなどを敬遠する人はたくさんいるはず。機器が開発されれば、検診のハードルが下がり、生存率向上が期待できる」とその意義を強調する。

おススメサイト!
最新記事
★★互助会推薦★★
QRコード
QR
カテゴリ
ランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ