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夫の言葉に導かれ だいたひかるさん「乳がん闘病」を語る

 自分の知る限り、“がん家系”ではありませんでした。だから「乳がん」と診断されたときは、本当に自分の身に起こったことなのか、にわかには理解できませんでした。でも、後で「どんな人ががんになりやすいのか」と自分なりに調べたら腑に落ちることばかり。ジャンクフードに浸り、運動不足で、アルコール好き……。そのころは、毎日ワインを2本ぐらい飲んでいて、医師から「アルコールを抜かないと麻酔が効かない」と言われたほどでした。だから、手術前は肝臓を慎重に調べられたんです。変な話、「乳がんだけでした」と医師に言われたときはホッとしました(笑い)。

 乳がんがわかったのは、不妊治療を始めて2年が経過した2016年初頭です。38歳で結婚したので、妊娠を最優先に考えて結婚後すぐに不妊治療を始めました。でも、なかなか子供ができずにいよいよ体外受精をすることになったのです。16年1月2日は、受精卵を子宮に戻すという移殖の日の予定でした。数日休みをもらって万全の態勢だったのに、予定より早く生理が始まってしまい、移殖が中止になったのです。

 ぽっかりできた休みに、その年、唯一残っていた乳がん検診のクーポン券を使うことにしました。すぐに予約が取れて受診したら、触診でいきなり「右しこり」と言われたんです。「え?」と思っていると、次はマンモグラフィー検査で「乳がんの可能性が十分にある」と告げられました。さらに細胞を採って調べることになり、「検査結果はご主人と一緒に来てください」と言われ、完全にコーナーに追い詰められた感覚でした。

■医師に思わず「オススメはなんですか?」

 結果は「右乳房の乳がんステージⅡA」との診断。後にリンパ節にも転移していることがわかり、最終的には「ステージⅡB」でした。しこりは約3センチと大きかったものの、早期に近かったので乳房は3分の1温存できるとのことでした。ただ、「温存すれば再発のリスクが残る」とか、再建手術がうんぬんという説明も同時にされたため、それがまるでお経のように感じられて……。結局、私が主治医に言えたのは「オススメはなんですか?」という変な質問だけ。主治医は「(右乳房)全摘です」と言い、夫も賛成したのでオススメを選択しました。

 悩まなかったといえばウソですけれど、「命か胸か」と言われたら答えはおのずと出ていました。右胸がなくなるのは寂しかったですが、ものは考えようです。心が傷つかない方法をいろいろ考えて、そのときは「小学生に戻ったと思えばいいや」と自分を納得させました(笑い)。

 入院は2月下旬。手術を受けた夜、背中が痛くて何度もナースコールをしたときも、「もしここが野戦病院だったら、ナースコールなんてないんだ」と妄想して、自分の幸せを噛みしめました。翌日からは、もう歩いてレントゲン室に行ったり、数日後にはドレーン(排液管)を付けて仕事をしたり、家が近かったので毎日、夕飯を作りに帰ったりもしました。

 ただ、手術より悩んだのは、その後に始まる抗がん剤治療でした。医師から「抗がん剤は子宮にもダメージがあって、そのまま閉経してしまうかもしれない」と言われたので、本当は嫌だったんです。毛が抜けるのなんてどうでもいいけれど、子供を産みたいという思いが最後まで決断を鈍らせました。でも、「子供が生まれても、君がいなくなったら意味がない」と夫に言われ、4月から半年間の抗がん剤治療を受けました。

 ご多分に漏れず脱毛はしましたが、イメージしていたよりも吐き気は軽く、味覚障害もありません。薬はどんどん進化しているんですね。

■がんを経験して一つ個性が増した

 ツライとき、夫が「君はいま、人間の深みを増しているんだよ」と素敵なセリフで励ましてくれたので、私もその気になって「この際、がんがどんなものか見渡してやろう」と思いました。

 また、治療を共にする友達をたくさんつくって話を聞いてみると、乳がん患者は思った以上に多いし、早期で見つかれば世間がイメージしているほど大変じゃないし、治療をしながら仕事をしている人もたくさんいるんです。だから「がんは個性」で、私は一つ個性が増したと思っています。芸人として個性が薄かったから、ちょうどよかった(笑い)。

 他にも新しい発見がいっぱいありました。たとえば、抗がん剤治療中は化粧乗りが人生で一番よかったこと(笑い)。毛という毛が抜けたから、“薄付き”で最高でした。手術も抗がん剤も初めは怖いけれど、人ってだんだん慣れるんですね。そういうことも発見でした。

 いまさらですが、笑いの大切さを知ったのも病気のおかげです。苦しいからこそ笑いに救われる。「お笑い」ってすてきな仕事だなと改めて思いました。

▽1975年、埼玉県生まれ。美容学校を卒業して、美容師として数年間勤めた後、98年に深夜番組「ブレイクもの!」(フジテレビ系)で5週勝ち抜き、芸能界デビュー。02年にはピン芸人コンクール「R-1ぐらんぷり」の初代優勝者となる。乳がん治療を経て、16年12月に活動を再開した。

乳がん発見にもメリット 「ホルモン補充療法」最新事情

更年期障害の治療「ホルモン補充療法(HRT)」は、乳がんリスクを上げるのか? 湘南記念病院乳がんセンター長の土井卓子医師が調査した。

 更年期障害で苦しむ妻の姿に胸を痛めている男性も多いのではないか? 症状を和らげる効果の高い治療としてHRTがあるが、「乳がんのリスクを上げるのでは」という議論があり、治療をためらう人もいる。

 2008年に埼玉医大が初めて日本人女性を対象とした調査結果を発表。全国7施設の多施設共同研究として、乳がん患者とそうでない患者を比較(全対象者のうちHRT歴がある人は7.4%)したところ、「HRTは乳がんの発症リスクを高めない」との結果が出た。

 ただ、HRTの普及率は日本で2~3%(欧米では40%)と少なく、それ以外の研究が行われていないのが現状だ。

 一方、湘南記念病院では、「HRTを受ける場合、マンモグラフィー(マンモ)と超音波の乳がん検診が必須」としている提携クリニックがあるため、HRT歴のある女性受診者が多い。それが、今回の土井医師の調査につながった。ちなみに「必須」としている医療機関はごく少数だ。

 同病院で13年7月~16年11月に乳がん検診を受けた女性2229人のうち、「HRT歴がない」人は1058人しかいない。ドック型の乳がん検診は年齢制限がなく、HRTの対象ではない20~30代も含まれているうえ、一般的なHRTの普及率を考慮すると極めて少ない数字だ。

「7月の乳がん学会での発表に向けて解析を行っている最中ですので、これが結論にはなりませんが、乳がんの発見率を単純比較すると、HRT歴のある人が1.7%、ない人が0.57%でした」

 発見率は「対象者のうち、乳がん患者が何人いたか」を示しているだけなので、「HRTを受けると、乳がんの発症率が高くなる」という証明にはならない。しかし土井医師は、この結果からHRTが乳がんの発見・治療にとってメリットにつながると指摘する。

■更年期障害のつらさを抱えているなら

 まずは、早期発見のチャンスを得られる。提携クリニックが「HRTを受ける場合、マンモと超音波が必須」としているため、今回の調査対象者には、「HRTを受けなければ、乳がん検診も受けていなかった人」が含まれている。乳がんを早期発見するチャンスを逃していた可能性のある人もいたということだ。

「乳がんは早期発見すれば、予後が良くなります。HRTがそれに一役買っている」

 次に、マンモも超音波も受けることで、乳がんの見落としを避けられる。そもそも、日本では乳がん検診の普及率が低く、しかも一般的な乳がん検診には超音波はなく、マンモだけという場合がほとんど。最近はこれが問題視されている。マンモでは発見しづらいタイプの乳腺組織があるからだ。

「理想は、マンモと超音波の両方を毎年受ける。せめて、2年に1回は超音波を加える。HRTによって、マンモと超音波を受けるようになれば、乳がんの見落としのリスクも減るでしょう」

「マンモでは発見しづらいタイプの乳腺組織」とは、高濃度乳腺のこと。若年者では高濃度乳腺が多数を占め、加齢によってそうでなくなってくるが、HRTをしていると年を取っても高濃度乳腺に属する人がいる。より、マンモと超音波の検査が必要になる。

 研究の解析中ということもあり、はっきりした結論はまだ出せないものの、土井医師は言う。

「HRTによって、医学管理(定期的な検査など)の徹底と、乳がんの早期発見が期待できる。更年期障害のつらさを抱えているなら、前向きに検討すべきと考えます」

遺伝性が高い「乳がん」「卵巣がん」発症の可能性と予防策は?

がんは、日本人2人に1人が罹患します。
その中に、遺伝的要因が強く影響して発症するがんが存在するといいます。

「がんは遺伝する」は本当か?

よく「ガン体質は遺伝する」「家族にがん患者がいたら要注意」などといいますよね?がんは「遺伝要因」と「環境要因」の2つが複雑に関係して発症しますが、遺伝性が高いがんとしては「乳がん」「卵巣がん」「大腸がん」が知られています。では、「遺伝性」とは、具体的には何が遺伝するのでしょうか?誰もが、がん抑制遺伝子を持っていますが、遺伝性腫瘍のほとんどは、このがん抑制遺伝子の生まれつきの異常、変異が原因です。遺伝性乳がん・卵巣がんの8割は同じ原因遺伝子によるもので、BRCA1、BRCA2という2つです。

遺伝子変異があると、発症リスクは何倍に?

遺伝子変異は、親から子供へ、性別に関係なく50%の確率で遺伝します。では、実際にはどれくらいの発症リスクがあるのでしょうか?BRCA1、BRCA2に変異があると、乳がんは41~90%、卵巣がんは8~62%が発症します。これは一般のリスクのそれぞれ最大10倍、62倍になります。

また、乳がんの場合、家族歴があると、乳がんになる可能性は2~4倍。これは、母親が乳がんを発症した場合には、娘の発症リスクは一般のリスクの約2倍に、母親と姉が発症した場合には、妹の発症リスクは一般のリスクの約4倍になるとされていることを示します。また、卵巣がんに至っては、3~10倍となっています。

もう一方の乳房も、がんになるリスクが高い

遺伝性乳がんと、普通の乳がんとの違いはあるんでしょうか?
遺伝性乳がんの特徴としては、次のようなものがあります。

・20代後半~30代でも乳がんを発症
・片方に乳がんを発症後、もう一方の乳がんを発症する頻度が有意に高い
・同時に卵巣がんを発症or今後発症する可能性が高い
・ホルモン療法や分子標的薬が不適用となるケースが多い
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男性に遺伝した場合は?

では、BRCA1、BRCA2の変異が男性に遺伝した場合はどうなんでしょうか? 遺伝性乳がんは女性だけではなく、男性にも発症し、乳がんの発症は6%となり、前立腺がんやすい臓がんの発症リスクが一般におけるリスクよりも少し上昇します。

自分の遺伝子に変異があるか知る方法

自分に遺伝子変異があるかどうかはどうやってわかるんでしょうか?BRCA1、BRCA2の遺伝子の異常を調べる「遺伝子検査」というがあります。今では多くの大学病院等で受けられますが、日本では自費診療となります。費用は、医療施設によって違いますが、おおよそ20~30万円前後と思われます。検査は採取した血液約10~15mlを用いて行い、血液中の白血球細胞からDNAを抽出して調べます。
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遺伝情報の取り扱いは慎重に!

遺伝情報の取り扱いには特別な配慮が必要です。検査結果が陽性の場合、家系に共通の情報となり、親・兄弟、子供が同じ遺伝子変異を共有している可能性が50%あります。叔父や叔母、従姉妹なども共有している可能性があります。もちろん、遺伝子変異を受け継いでいたとしても、必ずがんを発症するわけではありません。あくまでも発症リスクが高くなるということです。とはいえ、結婚・出産等で悩むケースもあるので、検査後のフォローも含めた、遺伝カウンセリングの体制が整った施設で受けてください。

「予防的切除」で遺伝性乳がんに先手!

遺伝子検査の結果が陽性だった場合は、40歳以下であっても、その時点から乳腺科でマンモグラフィーやMRI検査を受けるとよいでしょう。

先手を打つやり方もあります。
アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、遺伝子検査の結果、BRCA1の異常が確認され、乳がんになる可能性は90%近くと診断されました。また彼女は、母親が56歳で乳がん・卵巣がんで、母方の祖母が40歳台で乳がんで亡くなっていました。そこで、2013年に両乳房および卵巣と卵管の「予防的切除術」に踏み切りました。

まだ発症していない健康な乳房を予防的切除するのは勇気がいりますが、乳房を切除することで、遺伝性乳がんの発症リスクを約90%低下させることができるとのアメリカのデータもあります。日本でも、慶応病院やがん有明病院をはじめ、予防的切除術が可能な病院はあります。

「予防的切除」のデメリット

将来、必ず乳がんになるとは限らない健康な体に、メスを入れることになりますので、精神的・身体的負担は小さいものではありません。また閉経前の女性が切除する場合が多いのですが、卵巣も切除する場合、人工的な閉経状態となるので、更年期障害に似た症状が出る可能性があります。
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「予防的切除」にかかる費用は?

では、遺伝子検査~予防的切除までにかかる費用はどれくらいでしょうか?乳房を予防的切除した場合、多くは乳房の再建手術も行います。日本で乳がん発症の予防を目的とする乳房切除と乳房再建は保険適用とはなっていません。 国内で予防切除している病院の1つでは、「両乳房で約75万円、シリコン製の人工乳房による再建手術も含めると約180万~200万円」となるそうです。

施設によっても異なりますが、遺伝子検査の費用も含めると、200~250万円程度だと思われます。決して安い費用ではありません。かし、がんになった場合にかかる医療費の総額も大きく、多くは社会保障費で賄われます。そうした観点から、今後は保険適用の検討もあってもいいのでは、と思います。

高山哲朗先生 監修
平成14年 慶應義塾大学医学部卒業。
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院を経て、平成24年 わたクリニック副院長。
医学博士
日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長

「豊胸手術後は乳がん検査できない」は「都市伝説」。専門医に聞く

「豊胸手術をしていると、乳がん検査ができない?」 宇多田ヒカルさんのツイートを発端に、豊胸手術とマンモグラフィー検査の関係が話題を呼んでいます。

<久しぶりにマンモグラフィー検査をすることにしたら、事前に「豊胸手術等はしていませんよね?」と確認された。豊胸してるとマンモ出来ないらしい。おっぱい大きくなっても乳がん検診出来なくなるとか代償がデカ過ぎる。そういう事情も了承の上で豊胸する人はするんだろうか。>

豊胸手術によって検査ができなくなることはあるのでしょうか。がん発見が遅れるリスクは。バストの専門医に詳しく聞きました。
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マンモグラフィーって?

マンモグラフィー検査とは、触診や超音波検査で見つけにくい早期の乳がんを発見するための検査。一般的には、乳房を2枚の板で挟み込み、上下から押しつぶすようにしておこなうため、乳房にシリコンバッグを入れている場合は破損の恐れがあります。 宇多田さんの投稿に対し、「全然知らなかった」「死を覚悟して美を選ぶなんて」などさまざまな反響が。実際に「豊胸をしている場合はお断りしています」と検診時に聞いた、という証言もありました。.

専門医は「都市伝説」

「豊胸後はマンモグラフィー検査はできない」。これは事実なのでしょうか? 「都市伝説です。豊胸後もマンモグラフィー検査はできますし、検診の精度が下がることもありません」バスト専門「ナグモクリニック」の南雲吉則総院長は、BuzzFeed Newsの取材にそう話します。マンモグラフィー検査には、豊胸手術などで胸にシリコンバッグを入れている人にも対応する手法が存在します。筋肉の上の方をはさみ、表面の乳腺を検査する「プッシュバッグ」と呼ばれるやり方です。

南雲医師は「昔から一般的に使われていますが、技師の技量や知識によるため、実施していないケースがあるのは事実」と現状を話します。「この手法でシリコンバッグに破損が生じることはほとんどありませんが、万が一、検査後に別の理由であっても破損があった場合、マンモグラフィーを要因にされる可能性がないとは言えません」

「検査する側として、リスクを回避すべく断っている病院はあるようです」実際、ナグモクリニックのWebサイトでは、乳がん検診やマンモグラフィー検査を案内するページがあります。同院には、豊胸手術を終え「他の病院には行きにくい」「何か言われたり、拒否されるのでは」と不安を覚えて検査にやってくる人も少なくないそうです。

乳がん治療は抗がん剤がベストとは限らない?「サブタイプ」で変わる治療法

小林麻央さん、最近ではだいたひかるさんと、今年は乳がんに関連するニュースを目にすることが多い年でした。「がん治療と言えば手術と薬物治療」「薬物治療と言えば抗がん剤」と、つい思いがちですよね。実は乳がんの場合、抗がん剤以外にも、その「サブタイプ」によって、副作用が少なく効果の高い薬物治療が適用出来ます!

乳がんの3つの薬物治療法

乳がんの手術後、多少でも転移による再発の可能性が考えられる場合には、薬物療法を行います。がんの薬物治療というと、すぐに抗がん剤を連想しますが、乳がんの場合は抗がん剤以外にも、ホルモン療法薬、分子標的薬という治療薬があるのです。

ホルモン療法は、がんの増殖を促す女性ホルモンが働かないようにする治療法。
また分子標的薬は、がん細胞の増殖・転移等に関わる標的分子に作用します。
そしてどの治療法が適用となるかは、乳がんの「サブタイプ」で決まるのです。

治療方針を決定づける乳がんの「サブタイプ」

「サブタイプ」とは、手術前後に行われる病理検査で、がん細胞の表面にあるタンパク質を調べて分類したもの。このサブタイプ分類は、乳がんの治療方針を立てる上でとても重要です。
その分類には、 3つの指標が使われます。

1、ホルモン受容体の陽性・陰性
2、HER2タンパクの陽性・陰性
3、増殖のスピード

これらの組み合わせによって、大きく5つのサブタイプに分類できます。サブタイプによって、ホルモン療法や抗がン剤療法、分子標的療法などの薬物療法が選択されます。
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がんの“エサ”と取り込む“手”を封じる「ホルモン療法」

乳がん細胞の多くは女性ホルモンである「エストロゲン」を“エサ”にして増殖することがわかっています。がん細胞が“エサ”である「エストロゲン」を取り込むための「手」をホルモン受容体といいます。ホルモン受容体と、ホルモンは鍵穴と鍵のような関係で、鍵にあたるエストロゲンが受容体にくっつくと、乳がん細胞が分裂・増殖することがわかっています。そこで、“エサ”とそれを取り込む“手”を封じ込めようというのが、ホルモン療法です。

方法としては、卵巣からのエストロゲン分泌そのものを抑えるやり方と、「鍵穴」であるエストロゲン受容体に先回りして「鍵」であるエストロゲンがくっつけないよう「鍵穴」をブロックしてしまうやり方があります。

HER2タンパク陽性だと増殖・転移スピード早い

10~20%の乳がん患者さんのがん細胞では正常細胞に比べ「HER2」というタンパクが過剰発現、つまり陽性であることがわかっています。「HER2タンパク」は、がん細胞に「増殖しろ」という指令を出します。つまり、増殖スピード・悪性度が高く、転移や再発を起こしやすくなります。
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HER2たんぱく陽性ガンには「分子標的薬」

分子標的治療薬は、HER2タンパクだけを狙い撃ちします。代表的な分子標的薬はトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)で、HER2タンパクに結合することで増殖を抑えます。これまで、HER2陽性乳がんは予後不良でしたが、現在は分子標的薬の使用で、予後は改善が得られています。3番目の指標である増殖のスピードは、Ki-6という増殖能を表す値で示されます。Ki-6の値が高いと、乳癌の増殖スピードが速くなり、悪性度も高くなります。

「サブタイプ」によって薬物治療法が変わる

以上、3つの指標の陽性・陰性等によって、上記の一覧に従い、治療法が選択されるのです。ルミナールA型は、乳がん全体の60~70%を占める最も多いタイプです。副作用が最も少ないホルモン療法薬を中心とした治療を行うので、過剰な治療を回避することができます。HER2型に適用の分子標的薬も、発熱や悪寒、頭痛等の副作用が見られることがありますが、脱毛、骨髄抑制等はほとんど見られません。一方、乳がんの12~15%であるトリプルネガティブ型は、ホルモン療法も、分子標的治療薬も効果がありません。効果が期待できるのは、「抗がん剤」のみです。
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副作用は少なく、効果は高い

では、抗がん剤以外の薬物療法の効果はどうなんでしょうか?「ホルモン療法薬は、抗がん剤より治療効果が弱い」という誤解が一部にあるようです。しかし実際は、ホルモン受容体陽性の乳がんなら、一般に抗がん剤よりホルモン療法のほうが効果的だとされています。またHER2たんぱく陽性の乳がんに、分子標的薬トラスツズマブを抗がん剤と併用することで、死亡リスクが3割以上低減することが明らかになっています。
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治療期間は「ホルモン療法」では10年に及ぶことも

ホルモン療法の継続期間は少なくとも5年。10年程度継続する場合もあります。また、分子標的薬は通常、3週間に1回、1年間投与します。いずれも長期間の治療になります。治療にかかる費用ですが、例えばトラスツズマブは、1回当たりの費用が約11.5万円です。ただし、保険適用もあり、高額療養費制度もありますから、患者さんの負担はそこまで高いものにはなりません。

12月21日放送「ホウドウキョク×FLAG9 <ニュースなヤマイ>」より

子宮頸がんワクチン非接種でも、「副作用」と同じ症状が一定数

子宮頸(けい)がんワクチン接種後に体の痛みや歩行障害など原因不明の副作用疑い例が相次ぎ、国が定期接種の積極的な勧奨を中止した問題で、厚生労働省研究班(主任研究者=祖父江友孝・大阪大教授)は、接種歴がなくても同様の症状を訴える女子が10万人あたり20・4人と一定数いるとの推計をまとめた。

 26日に開かれる厚労省の有識者検討会に報告する。安全性を検証する基礎データが示されることで、同検討会で勧奨再開の是非をめぐる議論が本格化する。

 調査は、全国の200床以上の全病院と、199床以下の病院の約半数などを対象に実施。小児科や神経内科など計1万8302診療科を昨年7~12月に受診した12~18歳で、関節痛や歩行障害、疲労感など約20の症状の一つ以上が3か月以上続き、通学や就労に影響がある患者を調べた。詳細な情報を収集できた女子患者365人のうち、ワクチン接種歴ありは118人、なしは110人、不明は137人だった。

 こうした情報などから、原因不明の痛みなどの症状を持つ患者数を推計したところ、ワクチンを接種していない女子では10万人あたり20・4人、接種した女子では同27・8人だった。

 今回の調査は、勧奨再開の是非を議論する有識者検討会の「ワクチンを接種しない人で、同様の症状を訴える患者がどれだけいるのかデータが必要」との意見を受けて実施した。ただ、厚労省は「年齢によって接種率が大きく違うなどの制約があり、単純な比較はできない。ワクチンと症状の因果関係を示す調査ではない」としている。
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子宮頸がんワクチン

 2009年に発売されたグラクソ・スミスクライン社の「サーバリックス」と、11年発売のMSD社の「ガーダシル」がある。子宮頸がんの原因ウイルスの感染を防ぐ。定期接種の対象は小6~高1の女子で、3回接種が必要。国内ではこれまでに、約339万人が接種して、その効果で将来、子宮頸がんによる死亡が3600~5600人減ると推計されている。一方、国の追跡調査で、接種後に重い症状を訴えている患者が186人判明。患者が損害賠償を求めて、国と製薬会社を提訴した。

勧奨の是非、丁寧な議論を

 子宮頸がんワクチンの積極的勧奨中止から3年半。勧奨再開の是非の議論がようやく本格化する。

 ワクチンを接種していない人への調査は、副作用の検証として国際的に実施されている手法だ。今回の調査では、接種しない人にも症状を訴える人が一定数いることが分かったが、接種の有無で症状の出る割合に違いがあるかどうかまでは明確に示せなかった。

 「これが調査の限界」(厚労省幹部)という中、今後も、不十分なデータをもとに議論を行わざるを得ないのが現状だ。

 現実に、原因不明の痛みなどの症状に苦しむ患者がおり、勧奨の再開を議論するのであれば、科学的なデータを集めるだけでなく、患者の診療体制整備なども必要だ。

 世界保健機関(WHO)からは「弱い根拠で、安全で有効なワクチンを接種しないことは実害をもたらす」と日本を批判する声明も出ているが、国民の理解を得られるような丁寧で慎重な議論が求められる。

 (医療部 中島久美子)

がん死者20%減、国の目標ならず 乳がん・子宮頸がんは増加

 平成27年までの10年間にがんによる75歳未満の死亡率を20%減らすという国の目標が達成できなかったことが21日、厚生労働省の協議会で報告された。国立がん研究センターが人口動態統計を基に高齢化などの影響を取り除いた死亡率を計算。27年は人口10万人当たり78人と、10年前(17年)の92人から15・6%減にとどまった。

 がんセンターによると、75歳未満のがん死亡率は長期的に減少傾向で、肝臓がんによる死亡者は17年から半減、胃がんも3割ほど減った。一方、大腸がんや肺がんは減少率が鈍化しており、乳がんと子宮頸(けい)がんは逆に増加。特に子宮頸がんは増加が加速している。

 国は目標達成が困難との予測を受け昨年、がん対策加速化プランを策定。がん対策基本法が今月、改正されたことも踏まえ、29年度から始まる次期基本計画の見直しを進めている。

働く女性のがんへの不安 今これだけはしておきたい

乳がんであることを明かした、フリーアナウンサーの小林麻央さん(33歳)。闘病中の日々をつづったブログが日本中の関心を集めるなか「若くても乳がん検診を受けたほうがいい?」と感じている人も多いだろう。一方、自治体の乳がん検診は40歳以上が対象。40歳未満の人はどうすればいいのだろうか。

「焦る必要はありません」。こう話すのは、がん経験者の就労支援や復職に向けたコンサルティングを行うキャンサー・ソリューションズを立ち上げた桜井なおみさん。「不安になるのは分かります。しかし、一度検診を受けて『異常なし』と判断されたら安心し、その後はケアしない。それでは逆効果です」

 自治体の検診対象が40歳以上なのは、40歳未満は乳腺が発達しているため、マンモグラフィーによる検診では乳がんが見つかりにくいこと、40歳未満の乳がん発症率は全体の6%未満[注1]と低いことなどが理由だ。

 ただし、乳がんには遺伝性のものもある。50歳以下で乳がんを発症した近親者が複数いるなど、一定条件を満たした場合は、近くの乳腺外科医がいる病院へ相談するのがいいとされる。桜井さんもこの条件に当てはまったこと、職場の検診が当時は35歳からだったことから、35歳で初めて検診を受け、37歳で乳がんが見つかった。自身の経験から「大切なのは継続的に検診を受けること」と感じている。

桜井さんは“お金の準備”も必要と言う。「一般的にがんの治療は10年スパンで考える必要があります」。桜井さんの場合、乳がんが見つかった1カ月後に手術を受け、抗がん剤治療やホルモン療法と続き、トータルで7年かかった。診断から手術までの期間で、たまっていた有給休暇40日分を使いきり、その後、傷病手当金制度を利用して7カ月間の休職を経て、復職したものの、以前と同様に仕事を続けるのが難しく離職。無職となったときもあった。「高額療養費制度を使っても、治療の自己負担は月8万円強[注2]。働かないとすぐに貯金はなくなります」

 がんを経験した人の未婚率は一般平均と比べ2~3倍高い(グラフ参照)。「働き続け、収入を得ることが重要なのです」。桜井さんは別の企業へ再就職。その経験から、がん経験と就労との両立を支援するキャンサー・ソリューションズを開始した。「治療を続けながら仕事を辞めない方法がいくらでもある社会にしたい」

 まず会社の就業規則や国の社会保障制度を調べておくこと。もしがんに罹患し、治療にめどが立ったら「病状だけでなく、どんな仕事をどれだけできるかを伝えて。仕事をして社会とつながる価値は大きいから」とアドバイスしてくれた。 [注1]国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービスの統計データより算出 [注2]高額療養費制度の自己負担額は所得により異なる。

桜井さんが語る もしもの“がん”に備えるためのポイント

1.検診は会社や自治体のものを継続的に受ける
 「日本乳癌学会のガイドラインに沿った検診ができる専門医や認定施設で継続的に受けて」

2.就業規則を知る
 病気の際の休暇制度を調べる。「治療後、復職するためにもきちんと制度を理解しておきましょう」

3.がん保険などで、お金を準備する
 「手術や治療に必要なお金は、がん保険の保険金額がひとつの目安。保険加入も有効だと思います」

4.治療方針を即断・即決しない
 「がんと診断されたら、誰でもすぐに冷静な判断はできない。落ち着いて調べる時間をつくりましょう」

【自分が、身近な人ががんと言われたら】
国立がん研究センター「がん情報サービス」をチェック

 桜井さんがすすめるのが、「国立がん研究センターがん対策情報センター『がん情報サービス』」。「乳がんに限らず、がんに関する最新の情報や病院、治療方法の説明が、素人にも分かりやすくまとめられています。困ったらこのページを参照してから、医師に相談しましょう」http://ganjoho.jp/public/index.html

●桜井なおみさんキャンサー・ソリューションズ社長 社会福祉士/技術士
東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社で、都市整備や環境学習などの業務に従事。2004年、37歳で乳がんに罹患。その後、働き盛りでがんに罹患した自らの経験も生かし、小児がんを含めた患者・家族の支援活動を開始し、現在に至る。NPO法人HOPEプロジェクト理事長、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事、キャンサー・ソリューションズ代表取締役社長。

若い女性にも舌がんが増加! 子宮頸がんを上回る口腔がん・咽頭がんの死亡率


子宮頸(けい)がんに比べ、口の中にできる口腔(こうくう)がんの認知度はまだまだ低い。しかし近年、口腔がん(咽頭がん含む)の死亡者数は増加していて、死亡率は子宮頸がんを上回ったという。口腔がんの撲滅委員会を立ち上げ、12月17日開催の「オーラルケア・フォーラム2016」で講演する、東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座の柴原孝彦教授は、警鐘を鳴らす。

*  *  *
 柴原教授のもとに、アイミさん(当時29歳、仮名)が訪れたのは、2015年夏のことだった。

 その2週間前、アイミさんは舌の裏のできものが気になり、近所の歯科医院を受診していた。できものは小指の先に満たないほどの大きさで痛みはないが、こすれたりしてしゃべりづらさがあり、なかなか治らなかったという。近所の歯科医院に紹介され、柴原教授のもとで検査を受けたところ、初期の舌がんと診断された。たった2週間で、できものは親指の頭ほどの大きさになっていた。

 国立がん研究センターの統計によると、舌がんを含む口腔がん・咽頭がんの死亡者数は年々増加傾向にあり、2012年には7000人を超えた。2013年の統計では、舌がんを含む口腔がん・咽頭がんの死亡率は46.1%で、がんのなかでは10番目に高かった。これは、同年の子宮頸がんの死亡率24.7%(16位)、乳がん19.3%(19位)を上回る数字だ。「口腔がんの死亡率が増加しているのは、先進国では日本だけです」と、柴原教授は憂う。

 口腔がんはこれまで、喫煙率が高く飲酒量の多い、生活習慣がよくない中高年の男性に多いといわれてきた。、ところが、日本癌治療学会がんの診療ガイドラインによると、口腔がんの罹患(りかん)者の男女比は変化してきていて、近年は男女比3:2と、女性の比率が高まっているという。なかでも、若い女性に口腔がんが増えていると、柴原教授は指摘する。
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「口腔がんが若年化してきていることは間違いありません。私の患者さんでは男性で19歳、女性で22歳が最年少です。最近、16歳の女子高校生に舌がんが見つかったという報告もありました。数十年前では考えられないことです」(柴原教授)

 口腔がんが若い人たちに増えている理由は、まだ明らかになっていない。ただ、遺伝的な要因ではないと、柴原教授は考えている。後天的に“慢性的に”“物理的な”刺激を受けてがんが発生するというのだ。

 口腔がんは次のような原因で発生するとみられる。放置した虫歯のとがった部分や、歯並びの悪さ、合わない入れ歯で舌や頬の裏側が傷つく状態が続くと、赤や白の潰瘍やびらんができはじめる。これらの異変や初期の口腔がんは、一見すると口内炎のようにもみえるが、痛みがないことが多いため、放置されがちだという。進行してしこりになり、食事や発声に違和感が出て初めて、歯科医師の診察を受けることが少なくない。

 アイミさんは、手術で舌を約3分の1切り取った。手術は成功で、術後1週間ほどで食事も会話も問題ないところまで回復できた。しかし、手術5カ月後に頸部(けいぶ)リンパ節への転移が発覚。その後、がんは全身に転移し、亡くなった。

 柴原教授はいう。「口腔がんは胃がんなどとは違って、自分の目で確認できます。週に1回でもいいので、歯磨きのついでに自分の口の中を観察して、異変に気づいてください」

1.虫歯や入れ歯の不具合を放置しない
2.口の中のセルフチェックを習慣にする
3.異常(赤と白の色調変化、しこり)を見つけたらすぐに歯科医院で診察を受ける

「この3つを守って、初期のうちに口腔がんを発見、治療しましょう。わが国の全口腔がん5年生存率は56%と低いのですが、初期であれば5年生存率は90%を上回るという報告もあります」(柴原教授)

 口腔がん撲滅委員会では、年に1回の口腔がん検診を推奨している。検診を実施している医療機関は、委員会のホームページで検索できる。

マンモだけ? 次の乳がん検診は「乳腺濃度」も要チェック

 乳がん検診で「マンモグラフィー」(乳房エックス線撮影)を受けるなら、「乳腺濃度」もチェックしなければ意味がない。

「乳がん検診でマンモグラフィー(マンモ)を受けていたのに、進行した乳がんが見つかった」

 そんな話を聞いたことがある人は少なくないのでは? そういう時、「やっぱり乳がん検診は役に立たない→検診なんて受けなくていい」と考えがちだ。しかし、その“見落とし”は「乳腺濃度」をチェックしていなかったことが原因かもしれない。

■高濃度の人は見落とされている可能性も

 乳腺は、乳汁を分泌する器官と乳汁が通る器官で構成されており、一般的に若い間は発達して高濃度。30代後半以降、個人差はあるが徐々に脂肪に変わる。発達している順から、「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」に分かれる。

「乳腺が高濃度、あるいは不均一高濃度の場合、マンモを受けても乳がんが見つかりにくい。進行がんであっても『異常なし』になることもあります」

 こう指摘するのは、日本乳癌学会乳腺専門医で、濱岡ブレストクリニック院長の濱岡剛医師。日本人は高濃度、あるいは不均一高濃度の乳腺が多く、その率は「10人いれば半数以上」(濱岡医師)だという。しかも、年齢を重ねても高濃度の人も珍しくないので、マンモしか受けていなければ、本当の意味での「異常なし」ではないかもしれないのだ。

 乳がんも他のがんと同様に、早期発見・早期治療が生存率に寄与することは言うまでもない。早期に発見できれば治療の選択肢は多く、胸にどこまでメスを入れるか、胸をどこまで取るかも変わってくる。

■年1回は超音波検査を

 濱岡医師は、「乳がん検診で理想的なのは、マンモに加え、乳がんの早期発見につながるもう一つの検査法である『超音波検査』を受けること」と言う。

 諸事情で両方が無理なら乳がんの早期発見に、よりつながりやすい超音波を毎年受け、マンモを2年に1回受ける。それも無理ならせめてマンモで乳腺濃度をチェックする。そして、高濃度や不均一高濃度と言われたら超音波を受ける。そうでないと、せっかく検診を受けているのに、乳がんが発見されないままに終わる可能性があるのだ。

「『高濃度』から『脂肪性』のどれに該当するかは、乳腺専門医であればマンモの写真から一目瞭然です」

 ところが、残念ながら、マンモを受けても乳腺濃度を知らされていない人が圧倒的に多い。乳がん検診の報告書に、乳腺濃度についての項目がないからだ。

 乳がんには腫瘍(しこり)で発見されるものや、石灰化で発見されるものなどがある。そのため、乳がん検診を受けた時の報告書には、「腫瘍」「石灰化」「随伴するその他の所見(局所的非対称性陰影、構築の乱れ~乳腺のゆがみ~など)」の項目がある。しかし、これらに問題がなければ、たいていは乳腺濃度の情報はもたらされず、「異常なし」と告げられる。本気で乳がんの早期発見を考えるなら、マンモを受けた時、自分から「乳腺濃度はどうですか」を聞く。必須ポイントだ。

■理想は「両方」

「乳がん検診で一番の誤解は、『マンモを受けていれば万全』という考え方です」(濱岡医師)

 マンモは国が推奨する乳がん検診。厚労省は「40歳以上の女性は原則としてマンモを2年に1度受ける」とガイドラインで提言しており、自治体で補助が出るのもそれに該当している場合だ。しかし、マンモは石灰化に起因する乳がんの発見を得意とし、超音波は腫瘍から生じる乳がんの発見が得意。腫瘍からの乳がんが圧倒的に多いので「どちらか1つ」なら超音波だが、それだけでは石灰化からの乳がんは見落としてしまう。「両方が理想」なのはそういう事情からだ。

祖母も、母も、乳がんになりました。私も乳がんになるのでしょうか?

今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。

がんは遺伝する?
それともしない?

Q 祖母も、母も、乳がんになりました。私も乳がんになるのでしょうか?

A がんの原因は、遺伝もありますが、生活習慣や食生活、その他の外的要素もあります。親ががんになったら、必ず、子どももがんになるわけではありません。ただし、がんによっては遺伝子の影響があるものがあり、その代表的なものが大腸がんや乳がんです。

女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、がんのリスク回避のために乳腺切除と卵巣摘出をしたことが話題になりましたが、遺伝子が原因となるがんがあるということが広く知られたケースです。

 逆に、肺がんや前立腺がんなどは遺伝の影響があまりないといわれています。しかし、部位に関係なく、親兄弟の中で35歳より若い時点でがんになった人がいる場合には、早めに健診を受けてみましょう。

Q なぜ、人は、がんになるの?

 がんは、診断されたら最後、必ず死をもたらす不治の病から、治療の仕方によっては死の原因とはならずに済む、もしくは治る可能性もある病気になりました。

 とはいえ、がんの種類や進行度によっては、確実に効果が得られるとされる治療法がまだないものもあり、ご自身ががんと診断されたり、大切な家族や友人ががんになったりするのがショックなことであるのには変わりありません。

 では、なぜ人間の細胞はがんになっていくのでしょうか。

 がんは、遺伝子(DNA)の異常によって起こる病気です。DNAは細胞の設計図で、正常な働きを持つ細胞の作り方が書かれていますが、時に何らかの理由で設計図通りに正しく作られない細胞が生じます。例えてみれば工場で同じ製品をずっと作っていると、そのごく一部に規格外のものが出てしまうことがあるようなものです。

 大抵の場合、規格外の不良品は、出荷前の検品によってはじかれるので、世の中に出回ることはありません。ところが、一定の割合で規格外の製品が出てしまう以上は、作られた数に比例して規格外の製品の数は増えます。

 これと同じように、人間の細胞も長く生きれば長く生きるほど、細胞を作り変える数が多くなるので、ときどき、外部からの刺激などによって、設計図通りにコピーできず、DNAに傷がついてしまうことがあります。

規格外の細胞が増えていくことを
「がん化」という

 DNAの損傷そのものが大きかったり、傷を修復する働きをするDNAが十分に働かなかったりなどの不利な要件が重なったりすると、修復されないまま、DNAに傷ついた異常細胞が生き残ってしまうことがあります。

 その異常な細胞が異常なまま無秩序に増殖することを「がん化」といいます。しかも、がん化した細胞は、周囲の組織へと広がったり(浸潤)、違う臓器に飛んで行ったり(転移)します。

 このようにDNAに損傷を受けた細胞が無制限に増えたり、体のほかの場所に転移したりするなどの性質を持つようになり、そのような細胞が増えていくのが、がん(悪性腫瘍)です。

 こうした修復ミスは、どの細胞でも起こる可能性があるので、基本的にすべての臓器、組織にがんは発生する可能性があります。

がんになった細胞は
「打たれ弱い」面もある

 がんになった細胞は、体内で勢いよく増える性質はあるものの、一方で、「打たれ弱い」面もあります。がん細胞にダメージが加わった時に、それを修復する能力は正常細胞よりも弱いのです。細胞が増えるどの過程で、がんが発生するかというメカニズムはかなり解明されています。現在開発されている放射線や抗がん剤の治療はこれらの性質をうまく利用し、がんの細胞が増えるポイントを阻害して増殖を抑えるものがほとんどです。

 放射線と抗がん剤、あるいは抗がん剤の中でも薬の種類によって、細胞の増殖を抑えるポイントが異なるので、これらを組み合わせることによって、より確実にがん細胞を死滅させ、治療効果を上げることは広く行われています。

A がんは、DNAの異常によって起こる病気。誰でもがんになる可能性がある。

私が『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を
出版した理由

 はじめまして。「がん」の治療にあたっている内野と申します。

 現在、最も多い死因は「がん」となり、2人にひとりは生涯のうちに何らかのがんにかかるといわれています。

 日々、患者さんとお話しさせていただいている中で、女医で話やすいからか、治療そのものだけでなく、それにまつわるさまざまな悩みをおうかがいします。

 たとえば「治療の用語の意味がよくわからなかった」、「痛みや辛いことなど、正直に伝えたほうがいいのか」、さらに「仕事やお金の心配がある」などです。医師側もゆっくりと説明する時間が取れないこともあり、がん治療に対する知識を補うもの、そして「こんなこと先生に聞いていいのかな」と迷ったときに活用できるような本があれば…と思いからできたのがこの本です。

 通常、がん治療は、担当の医師が病気の症状を書いた「病状説明書」を渡して、それをもとにがんの進行具合、推奨される治療方法、治療のスケジュールなどを説明します。ですから、治療中の疑問や辛いことなど何でも、まずは担当の医師に相談して解決していただきたいのですが、それだけでは不安なときなどにはぜひ、この本をぜひ活用してほしいと思います。

内野三菜子(うちの みなこ)
東京都出身。国立国際医療研究センター国府台病院 放射線治療室長。聖マリアンナ医科大学放射線科、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科を経て、カナダ・トロントのプリンセスマーガレット病院放射線腫瘍科にて、日本人初のクリニカルフェローとなる。並行してトロント大学オンタリオ教育研究所(大学院)医学教育学にて修士号取得。帰国後、国立国際医療研究センター病院を経て、現職。日本医学放射線学会専門医(放射線治療)、がん治療認定医

小林麻央さん服薬中止から考える 抗がんサプリメントの効果と注意点

2016年11月30日(水)に公開された乳がんで闘病中のフリーアナウンサー小林麻央さんのブログでは、体調不良の原因を特定するため少しの期間、薬とサプリメントの服薬を中止することが語られておりました。がん治療で服用するサプリメントとは一体どのようなものなのでしょうか。今回は抗がんサプリメントの概要から種類、使用上の注意点などを医師に解説していただきました。

抗がんサプリメントとは

がんの増殖を抑えたり、抗がん作用があるとうたっているサプリメントのことです。免疫増強作用や、抗酸化作用を売りにしているものなど、様々な種類があります。

抗がんサプリメントの種類

市販されているものの中には、以下のような成分が入っているものがあります。

◎ビタミンC,E
抗酸化作用のある代表的なビタミンです。

◎食物繊維
腸内環境を整えます。

◎マルチビタミンミネラル
栄養の補充になります。

◎ラクトフェリン
腸内環境をととのえ、免疫力のアップにつながります。

◎カロテノイド
抗酸化作用があると言われています。

抗がんサプリメントの効果

治療薬ではなくあくまでもサプリメントであるので、その効能ががんに対して本当にどこまであるのかは実際のところ明らかではない部分が多いです。インターネットの宣伝などは派手に行っていますが、あまりインターネットの記事などに惑わされないようにした方がよいでしょう。購入したい場合は製造しているメーカーに問いあわせたり、主治医に相談してみるなどで情報をとり、自分で判断していく必要があります。

抗がんサプリメントの副作用

サプリメントによる副作用はしばしば報告されていることです。サプリメントは薬ではないからといって安全とは限りません。サプリメントの成分も肝臓や腎臓で代謝されることが多く、その場合、過度に負担がかかると肝障害、腎障害に繋がる場合もあります。また、売りにしている成分以外にも様々な成分が含まれていることが多いため、例えば、脂溶性ビタミンなどの過剰摂取になってしまう場合もありえます。サプリメントを多用する場合には、含まれている成分を確認するようにしてください。

抗がんサプリメントの注意点

サプリメントを使いたいという場合、今行っている治療に影響がないかどうかを主治医に確認してください。また、どこまで有効であるかは不透明な部分もあるので注意しましょう。まずは病院で行っている治療が基本となりますので、治療を放棄してサプリメントのみに頼ったりなど、しないようにしてください。

最後に医師から一言

がんに効くとうたっているサプリメントは沢山ありますが、まずは病院の治療が基本となります。また、サプリメントで栄養素を補うという考え方も悪くはありませんが、食事がしっかりと摂れる方であれば食事からとる栄養が基本となりますので、バランスよく食べるようにしましょう。

薬で乳がん治療、英国で治験へ 手術なし、英国医師ら神戸の病院視察

過酸化水素(オキシドール)を用いて、手術なしでの乳がん放射線治療に取り組む神戸市中央区の神戸低侵襲がん医療センター(KMCC)で1日、英ロンドンの王立マースデン病院放射線科医のジョン・ヤーノルド氏(68)ら6人が治療風景を視察した。英国での公的保険適用に向けた臨床試験(治験)を準備中のヤーノルド氏は「乳房を守り大きな効果を出せる治療法。世界に広めたい」と話した。

 兵庫県立加古川医療センター(加古川市)の小川恭弘院長(64)が開発した「酵素標的・増感放射線療法(KORTUC)」。オキシドールから作った薬を患部に注射し、効果を妨げるがん細胞内の酵素を分解してから放射線治療を行う。

 小川院長が高知大教授だった2006年から治療を始めた。これまでにKMCCでの33人をはじめ、全国10カ所余りの病院で700人以上に実施。薬物治療と併用し、9・5センチ大のがんが消えた人がいるほか、肝臓やすい臓など別のがん治療でも利用されている。

 ヤーノルド氏らは薬の作製や、患者に注射する様子などを見学。英では来月にも治験を始め、5年後の公的保険適用を目指す。

 小川院長は「日本では研究費の問題などで治験は始まっていない。英国で効果を証明してもらい、日本、世界の患者に届けたい」と強調した。

乳がんとは違う良性のしこり“嚢胞” 怪しいと思ったら検査に行こう!

乳房を触ってみたら怪しいしこり…。しかも痛みがある…。でもそんな症状でも、
乳がんではないと診断される場合もあります。 それが「嚢胞(のうほう)」です。そもそも嚢胞とは? 乳がんとの違いは? さらに実は「嚢胞」の中に乳がんが隠れているケースも…。 意外と知らない「嚢胞」についてご紹介します。

要チェック項目
□嚢胞は、乳がんと見分けがつきにくい良性の「しこり」 □基本的には放置しても大丈夫 □ただし「嚢胞内乳がん」という恐ろしい病気もあるので注意が必要

乳腺の病気は乳がんだけではない
乳腺とは母乳を作る働きを持つ臓器のことです。その乳腺の内側もしくは外側に見られる変化や症状は、以下のように実はよく知られている乳がんだけではないのです。

嚢胞
女性ホルモンの分泌量が多すぎて乳腺から分泌物が出ていかないとそのままたまっていってしまいます。この乳腺に液体がたまった状態のことを「嚢胞」といいます。しこりや痛みが見られます。

乳管乳頭腫
乳頭から分泌液が出てくる症状です。 ほかにも細かく分類すると10種類以上あるといわれていますが、いずれにしても「嚢胞」はその中の1つです。しかし、一般では乳がんと見分けがつかないのが通常です。

嚢胞をもっと詳しく知ろう

手触り
良性の嚢胞の場合は、丸みを帯びて、比較的弾力があると言われています。

大きさ
ある程度大きくなると、触っても「しこり」として気づくことがあります。アズキの粒くらいになるともいわれています。


1個だけできるとは限りません。乳房に何か所もできる人もいます。その場合は「のう胞症」と呼ばれます。

嚢胞が見られる年齢
40代から50代前半から見られ始めると言われています。

痛み
生理の前後にかかわらず、痛みがあったり、時にはなくなったりします。また押したときに痛みを感じることもあります。

嚢胞の検査と治療

嚢胞は痛み、しこりといった乳がんにも見られる症状があるので、医師もまず乳がんを疑います。

問診から始まり、詳しい検査へ

最初の問診から始まり、視診などである程度の見当をつけ、疑わしい所見があればマンモグラフィー、レントゲン、エコー検査などを行います。 マンモグラフィーでは引っかかるものの、その後のエコー検査で「嚢胞」とわかる場合もありますが、細胞検査を行うこともまれにあります。

治療は
原則として経過観察になり、治療の必要はありません。ただし痛みが強い場合は、ホルモンを抑制する薬を処方することもあります。

さらに見分けがつきにくい「濃縮嚢胞」

嚢胞は時間経過とともにさらに分泌物が濃縮されていき、エコー検査でも「腫瘍」のように見えてしまうケースもあります。 これが「濃縮嚢胞」です。 場合によっては「カテゴリー3」といって、良性だが悪性も否定できないという診断をされ、さらに詳しい細胞診に回されてしまう場合があるのです。 しかし、本当の悪性腫瘍、つまり乳がんと濃縮嚢胞は、乳腺エコーの熟練検査技師であれば見分けがつきます。しかし、専門医ではなく、市や区が行っている乳がん検診にその精度の高さは求められません。

本当は怖い「嚢胞に隠された病気」

こうして比較的心配のいらない「嚢胞」は、どんなに分泌物が出ても、癌にはなりません。 また、必ずしも「嚢胞」ができやすいからといって乳がんになりやすいわけではないと言われています。 しかし、この「嚢胞」の中に、乳がんができているケースもあるのです。

しこりの中に血液が認められる場合

細胞診の結果、嚢胞の中に血が混じっていたりする場合は、のう胞の内部にがん組織がある可能性を考えなければなりません。 しかし、そのままの状態では治療できないので、のう胞を切除して中を調べることで「がん化」しているか確定することができます。 それが良性であれば特別問題はありませんが、万が一悪性だった場合は適宜、放射線治療などを受けることになります。

「嚢胞」と診断されたあとも気をつけたい

嚢胞と一度診断されたあとも健診は受けましょう。何度か「嚢胞」と診断されあと、しばらく検査の必要はないと決めつけ、セルフチェックも怠っていた挙げ句、実はその後、それとは別に乳がんを患っていたというケースも報告されています。 つまり医師から「嚢胞」と言われたとしても、今後、乳がんにならないと保証されたわけではありません。定期検診は引き続き行くようにしたほうが良いでしょう。

受け続けないとわからない、本当のこと

最近は女性の一生を通じてみると12人に1人程度が乳がんにかかる時代。 もし「嚢胞」と一度診断された方も、自己検診は続けてください。 中には、それによって再びクリニックを受診することで、結果、乳がんが見つかる場合もあります。 当然、早期治療も可能になり、命を落とさずに済むようになるのです。 もちろん、健診を「一度受けた」からもう大丈夫なのではなく、「受け続けて」いただくことが大切です。 (監修:Doctors Me 医師)

「乳がんステージ4」患者の現役新聞記者が小林麻央の生き方に共感するワケ

 今、「乳がん」は日本人女性の12人にひとりがかかると言われています。

 芸能人の公表も続き、とりわけ最近、小林麻央さんのブログに関心が集まっています。骨と肺に転移していることや、ステージ4であることが明かされた際は、メデイアも大きく反応しました。「がん」「転移」「ステージ4」。いずれも重く、深刻な響きです。

 かく言う私も「ステージ4」の乳がん患者です。

 告知された時は、すでにリンパ節と骨の多くに転移していました。胸の腫瘍は一度に計測できないほど大きく、転移で頭の骨も溶けかけている状態でした。「首の骨がいつ折れてもおかしくない」。医師にそう言われ、体を起こすことも歩くこともできませんでした。手術はできず、休職をして抗がん剤治療を受けました。

 それから8年。私は今、記者として普通に仕事をし、夜は好きなワインを飲み、休みには海外にも出かけます。病気が分かる前より心も体も元気かもしれません。決して奇跡が起きたわけではなく、また特別な治療を受けたわけでもありません。

「がんステージ4=末期=死」。ひと昔前はそれが常識だったでしょう。しかしがん医療は進歩し、そのおかげで今、私は元気に生きています。もちろん、抗がん剤は効果も副作用も人それぞれです。治療の効果が少なく、副作用が重い人も少なくありません。「100人のがん患者がいれば、100のがんがある」。まずはそのことを、多くの人に知っていただきたいと思います。

 女性が胸を失う。その悲しみは計り知れません。

 乳がんは、初期の段階で適切な治療を受ければ、治る可能性が高いがんです。多くの場合、胸を部分的に切除する「乳房温存術」も可能です。ところが、たとえ小さな腫瘍でも、広がり方や位置によっては、乳房を全て摘出しなければならない場合があります。

 昨年、ステージ3の乳がんが分かり、全摘手術を受けた北斗晶さんも、記者会見で「胸がないのを見るのは、何より勇気が必要だった」と正直な気持ちを明かしました。私が取材をした全摘後の患者さんは、「異形のものになり果てた」と、その悲しみの深さを語ってくれました。

 残念ながら、今のところ「胸を切らずに治す」という治療法は一般的ではありません。とはいえ「乳房再建術」の進歩は、ひとつの希望といえるでしょう。かつては、お腹や背中の組織を移植する「自家組織」による再建のみが保険適用だったのが、近年、シリコンを使う 「インプラント」による再建も適用になり、より自分に合った方法が選べるようになりました。

 もちろん、再建すれば全ての問題が解決するというわけではありません。外見も感覚も、完全には元に戻らないため、「性」の悩みなどを抱える人も少なくないようです。そして体の一部を失うのは乳がんだけではありません。咽頭がんなど、のどのがんでは「声」を失う可能性があります。大腸がんでは人工肛門(ストーマ)となる場合もあります。

がんと向き合うということ

 人は、ある日突然、がん患者になります。治療や暮らし、将来のこと。さまざまな場面で価値観や人生観が問われます。「自分にとって大切なものが何か」。それを教えてくれるのが、がんという病気なのかもしれません。

「乳がんステージ4」の5年生存率は33パーセント程度(2001年から05年に診断された症例)で、他のがんに較べて進行が遅く、抗がん剤も効きやすいと言われています。とはいえ初期で治療を終えても、10年以上経ってから転移再発する場合があります。

三輪さんが執筆した『乳がんと生きる』(毎日新聞生活報道部)*画像をクリックするとAmazonの購入ページに進みます

 ステージ4患者の私は今、胸とリンパ節からは画像上、がんが見えない状態です。でも、骨にはまだ腫瘍が残り、いつ肺や肝臓に転移しても不思議ではありません。あとどのくらい生きられるのか。それは神のみぞ知る、です。

 ひとつ言えるのは、残りの命の長さがどうであれ、その時間を大事にできるかどうかは本人次第ということです。まず必要なのは、誤った情報に惑わされず、医師と良い関係を保ちつつ、適切な治療を受けること。

 そのうえで「最善を期して最悪に備える」のがより良い道でしょう。言葉で言うのは簡単ですが、もちろん厳しく、険しい道のりです。

 それでも、生き生きと日々を重ねるがん患者はたくさんいます。私がお会いした中には、がんの中でも難治と言われるすい臓がんステージ4で、取材後ほどなく亡くなった女性がいます。「週末は、ひとりでバスツアーに行くの」。お会いした時、楽しそうにそう話してくれました。どれほどの葛藤を経たうえでの笑顔だったのだろう。同じ患者の私にも想像できません。

 でも言葉の端々に、最後まで自分らしく生きようという強い意志が感じられました。小林麻央さんのブログからも、自らの病から目をそらさず、これからの時間をより輝かせたいという気持ちが痛いほど伝わってきます。

 最後まで悔いなく生きるには。その問いは、がん患者はもちろん、全ての人に投げかけられています。

<著者プロフィール>三輪晴美(みわ・はるみ)◎1964年大阪府生まれ。1989年毎日新聞社に入社し、事業部に所属。1992年から出版局に勤務し雑誌や書籍の編集に携わる。2008年11月乳がんが見つかり、治療のために休職。2009年11月職場復帰。以後、2016年現在も治療を継続中。2014年4月から生活報道部記者。

若い女性に多い子宮頸がん「性交渉そのものが感染の原因。コンドームでは防げない」

 '98年に放送されたドラマ『GTO』。反町隆史演じる教師・鬼塚を下着姿で誘惑する生徒役でブレイクした希良梨。昨年、芸能界に復帰した際、19歳で子宮頸がんを発病したことを公表した。

19歳で子宮頸がんを発病したことを公表した希良梨

 そもそも、子宮がんには“子宮頸がん”と“子宮体がん”の2種類がある。子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるのが子宮頸がん、子宮の奥の子宮体部にできるのが子宮体がんだ。

 一般的ながん年齢といえば40歳以上だが、菊池がんクリニックの菊池義公先生によると、

「子宮頸がんは20~30代の女性に多いです。50歳以上になると子宮体がんが増えてきます」

 年に1万人を超える女性がかかっているという子宮頸がん。乳がんなどとは違い、原因が明らかだ。

「ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因です。HPVは性別を問わず、人が日常的に持っている日和見菌のようなもの。性交渉によって男女間を行き来していますが、感染しただけではがんにはなりません。半年から1年で自然とウイルスがいなくなることがほとんどです。何年も“感染し続けること”で、子宮頸部に異常が起こり、がん化します」

「検診さえ受ければすぐわかるのに」

 自覚症状はなく、数年前にワクチン接種が積極的に行われたが、重大な副反応もあり、現在、厚生労働省は推奨していない。初期段階で見つけるには?

「検診しかありません。

綿棒のようなもので子宮頸部の細胞を取るだけなので、痛みはほとんどありません」

 ところが、欧米の受診率が90%であるのに対し、日本ではたった20%。

「検診さえ受ければすぐわかるし、治る。なのに、恥ずかしがって受診しない。これが現実です。がんが子宮頸部の周囲に広がると全摘出になり、妊娠ができなくなります。最近では頸部切除という、子宮を残す手術も増えてはきましたが」

 早期発見であれば、子宮の入り口を円錐形に切除するだけですみ、妊娠も可能。希良梨も現在は、結婚して2人の子どもがいるという。

 がんが小さければ小さいほど手術にかかる入院の日数も少なくてすみ、費用も保険適用の範囲で行うことができる。

 予後は比較的よく、早期であれば9割の人が治るという。がんが広がった場合、子宮全摘出手術後の5年生存率は50%だ。

 性交渉経験がある女性なら、誰もが可能性のある子宮頸がん。コンドームを使ったら予防になる?

「なりません。性交渉そのものが感染の原因だからです。性交渉がなくなって10年以上経過しても子宮頸がんにならなければ、その後はかからないでしょう」

<この先生に聞きました>菊池義公先生
菊池がんクリニック院長。前・防衛医科大学校産科婦人科学講座主任教授。婦人科がんの治療と研究のスペシャリスト。特に、新しい分子標的薬による治療では、多くの成果を上げている。

■ 乳がん 遺伝子により84%罹患 約22万円のがん遺伝子検査は「想像以上にセンシティブ」

2013年にハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー(41才)が、乳がん予防のために両乳房を切除したと公表した。アンジーが健康な乳房を切除・再建したことをきっかけに、米国で予防的切除をする女性が急増。日本にも大きな影響を与えた。

 ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の院長・島田菜穂子さんが振り返る。

「『母が今、乳がんで治療中なのですが、私も検査をしたほうがいいのでしょうか?』などと、がんと遺伝に関する相談が一気に増えました」

 さらに2015年、アンジーは卵巣と卵管を摘出したと発表。“乳がんに加えて卵巣がんも遺伝する”――それは衝撃をもって、常識のように女性たちの胸に刻まれたのだ。

 実際のところ、がんは生まれつきの遺伝子や、たばこ、運動不足といった生活習慣・環境的要因、偶然が重なって、誰にでも発症しうる病気だ。しかし、特定の遺伝子に異常があると、高い確率で発症する。国立がん研究センター中央病院遺伝子診療部門の吉田輝彦さんが解説する。

「たとえば、乳がん・卵巣がんの中で遺伝が原因のものは罹患者全体の5~10%だといわれています。その中で誰もが持っているBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に異常がある『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群』の人は、生涯で乳がんにかかる割合が56~84%、卵巣がんで40~60%と高確率になります」

 通常、乳がんになるのが11人に1人、卵巣がんは90人に1人といわれているので、それに比べると「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」の人はかなり罹患リスクが高い。アンジーは遺伝子検査の結果、BRCA1遺伝子異常が見つかった。実際、母親は乳がんと卵巣がんに罹り56才で死去。祖母と叔母もがんで亡くなっている。

 もし、自分がこのタイプのがんだったら、娘は? 姉妹は? と考えて悩んでしまうのは当然のこと。フリーアナウンサー・小林麻央(34)も悩んだ。彼女はブログにこう書いていた。ここで言う「姉」とはフリーアナウンサーの小林麻耶(37)のことである。

《乳がんを経験していた母は、ずっと胸のうちで『私のせいではないか』と自分を責めていました。そして、妹も乳がんとなると、姉は、相当不安があったと思います。私は、娘のことも、とても心配で、私のせいで将来もし、と苦しい気持ちになりました》

 そして、検査を受けることを決意する。しかし、麻央も受けた遺伝子検査は一般的ながん検診と違って、気軽に受けられる検査ではない。また、最近よく広告などでも見かけるようになった唾液を使った簡便なものとは全く別のもので、実際の検査までハードルが高く設定されている。

 検査を受ける場合、まずは専門機関でカウンセリングを受ける。血縁に乳がん罹患者が3人以上いるなど家族歴を確認して、遺伝子異常の可能性が低ければ検査の必要はないと判断されることもある。また、検査は成人であれば本人の同意でできるが、基本的な前提として、「遺伝子」というナイーブな問題になるため、家族の充分な理解が必要になる。

日本人要注意!乳がん検診「高濃度」通知を 「異常なし」でも安心できず

 自治体の乳がん検診で行われる「マンモグラフィー(乳房エックス線検査)」では日本人に多い高濃度乳房のがんを見落としやすいとして、全国32の患者団体や代表が、「乳がん検診の結果通知の方法を見直してほしい」との要望書を厚生労働省に提出した。患者団体による要望書の提出は初めて。

 NPO法人「乳がん画像診断ネットワーク」の増田美加副理事長によると、日本人は乳腺の密度が高い高濃度乳房の女性が多い。乳腺密度が高いとエックス線でがんが見えにくいため、超音波検査を組み合わせることで精度が高まる。しかし、多くの自治体では、受診者が高濃度乳房であるかを通知していないという。

 患者団体には「マンモを毎年受けていたのに、進行した乳がんと診断された」との声も届くという。増田さんは「高濃度乳房と知らされていれば、精密検査を受け早期発見につながったかもしれない」と訴える。

 国は40歳以上の女性に2年に1回のマンモ検診を受けるよう推奨。超音波検査はがんでないのにがんの疑いがあるとする「擬陽性」が多いとされており、死亡率を減らす効果もまだ認められていないため、自治体の標準的な乳がん検診としては推奨されていない。

 国立がん研究センターによると、乳がんは日本人女性に多いがんの1位で、患者も増加傾向だ。最近ではフリーアナウンサーの小林麻央さん(34)が乳がんで闘病中であることを公表するなど、若年層での罹患も珍しくない。

 自身も乳がんになった増田さんは「検診は100%ではなく、全部が見つけられるわけではない。だから定期的に受けてほしい」と語る。その上で、「マンモ健診で『異常なし』との結果が返ってきても、自分の乳房のタイプを聞いてほしい。もし高濃度だったら、擬陽性のリスクなどを理解したうえで、超音波検査を受けてほしい」と呼びかけた。

ピンクリボン「乳がん」男も知っておくべき基礎知識(2)

 遺伝以外の後天的要素としては、まず過度の飲酒や喫煙が問題となるのは他のがんや生活習慣病と同じ。他にも乳がんの要因としては巷間さまざまな言説が伝えられる。 「うちの嫁はどこで聞いてきたのか“小麦と乳製品は体に悪い”“大豆イソフラボンが予防になる”と、ここ数年で食卓に並ぶのは豆腐や納豆ばかり。

たまにはパンやうどんも食べたいんだけど…」(57歳・自営業)乳製品、小麦に砂糖の3食材は、乳がん発症リスクを高める“白い三悪”と呼ばれることがある。食生活が欧米風に変化するにつれて日本での乳がん発症が増加したことがその裏側にあるようだが、ただし、これらの因果関係は科学的に立証されていない。

 一方、大豆イソフラボンについては近年の研究で発症軽減に一定の効果が認められている。とはいえ、サプリメントなどで大量摂取すればさらに予防効果が高まるというわけでもないようで、「なるべく大豆食品の摂取を心掛けるという程度で十分」(医療ジャーナリスト)とのこと。

 「妻は“ブラジャーで締め付けるのがダメ”と言って50代にしてノーブラ生活。家の中ではともかく、外出時はちょっと考えてほしいんだけど」(55歳・会社員)ブラジャーで締め付けると血流が滞り、発症リスクが高まるのは確かなようだ。ただ、最近は締め付けない高機能ブラもあるので、そちらで対応することも一考すべきだろう。

 「アラサーの嫁はウソかホントか“若いうちの肥満は乳がん発症を抑える”と言って、ここ数年は食っちゃあ寝ての繰り返し。体重もかつてから20キロ増で、今では乳がんよりも生活習慣病が心配です」(36歳・サービス業) “閉経前の肥満はリスク低下、閉経後の肥満はリスク上昇”とする説は、閉経後の肥満が特にリスクを高めることからの誤解。閉経前の肥満であっても平均値の女性よりリスクは高いとの研究もある。

 他にも「子だくさんだと乳がんにならない」「巨乳よりも貧乳がなりやすい」「毎日揉まれているとならない」等々が聞かれるものの、いずれも俗説で科学的根拠は薄いようだ。また「乳がんのしこりは痛みがない」「硬いしこりは危ないが軟らかければ問題ない」等、症状に関してもさまざまに言われるが、これは個々人によって大きく異なるもの。俗説をうのみにすることなく、検診受診こそが一番のリスク軽減策であることを心得たい。

 しかし、その検診も万能ではない。 「乳房のしこりに気付いて受診したところ、結果は問題なし。それでも気になったので別のところで再検査をしたら、結局、初期の乳がんでした」(39歳・主婦)実は日本人女性の中には、体質的な原因から一般的なマンモグラフィー(乳部エックス線)検査だけでは、がんが発見しづらい人もいる。

特に若い人は乳腺が発達しており、発症個所によっては見落とされてしまう場合もある。小林麻央や北斗晶も、最初に同検査を受診した時点では問題なしとされていたという。マンモグラフィー以外でも、超音波検査や触診など別の有効な検査方法があるので、しこりや乳頭からの異常分泌などの具体的な兆候を感じたときには、不安が解消されるまでさまざまな検査を併用してみることが大切だ。

 検査の結果、単なる思い過ごしであったとしても何ら恥ずかしいことではない。またこのとき、一般的な産婦人科よりも乳腺専門医で受診する方が精度が高いことは知っておきたいポイントだ。

ピンクリボン「乳がん」男も知っておくべき基礎知識(1)

 歌舞伎俳優・市川海老蔵(38)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央(34)が始めた乳がん闘病ブログが話題となっている。他にも著名人では北斗晶が現在闘病中。南果歩、生稲晃子、麻木久仁子らも過去に発症したことを公表している。
 
乳がん罹患数は年々増え続け、今では一生のうちにこれを患う日本人女性が12人に1人にも上るとの統計もある。また昨年度の同病による死亡者数は過去最高の1万3584人。1980年頃と比べると3倍以上も増えている。

 乳がんは早期発見と適切な治療によって大幅に治癒率が高くなり、このために重要なのが定期的な検診受診ということになる。
 だが現状、日本において成人女性の検診受診率は40%前後で、これは先進諸国の中でも極端に低い数字。80%以上の女性が受診するアメリカと比べて半分以下というのだから、いかに乳がんに対する認識が遅れているかが分かるだろう。

 乳がんの正しい知識を広める啓発キャンペーンとしては、世界規模で行われるピンクリボン運動がある。日本でもその一環として毎年10月1日を「ピンクリボンデー」と定め、この日には東京スカイツリーや姫路城など全国各地の名所旧跡がピンクにライトアップされる。

 「妻が具合悪そうにしていたのを知りながら、更年期の症状か何かだろうと高をくくっていたのが間違いでした。乳がんと分かったときにはすっかり病状が進行していて、そこからわずか半年足らず、46歳の若さで亡くなってしまったのです」(49歳・会社員)日々の仕事に追われて奥さんの体調にまで気が回らなかったというだけでなく、乳がんという病気自体への認識も不足していた。

 「普段、私や子どもたちの体調を気遣いながら自分のことは二の次で、きっと身体の不調も我慢していたのでしょう。私がそこに気付いて早い段階で検診を勧めていれば助かったかもしれないのに…」(同)月日とともに後悔の念は強まるばかりだという。
 女性特有の病気ということで、男性からするとどこか口にしづらい部分もあるかもしれない。

しかし、妻や恋人、あるいは娘がこれにかかったときには、そうも言ってはいられない。まさかのときに悔いることのないように、男性の側も乳がんについて知っておくことは大切だ。まず、どういう人が乳がんにかかりやすいのか。 「他のがんと比べて特徴的なのは“遺伝性乳がん”というものが存在する点です。血縁者に乳がん患者が複数いる場合、これを疑う必要があります」(がん専門医)

 乳がん患者全体のおよそ5~10%が遺伝性のものだといわれている。2013年、米女優アンジェリーナ・ジョリーが乳房切除したのも、遺伝的に乳がんリスクが高いと診断されたためだった。この手術により、以前に発症率87%とされたリスクが5%にまで低下したという。

 「がんにかかっていないうちに乳房切除するとなれば、保険が利かず金銭負担は多大になるため、一般の方がそこまでする必要はないでしょう。しかし、その代わりとして定期検診受診は絶対に怠るべきではありません」(同)

ステージIV明らかにした小林麻央 QOLのための手術内容

《娘も息子も、思いっきり楽しんで参加していて、本当に嬉しかったです。幼稚園のママとの再会には涙があふれてしまいました。》(ブログより。《 》内、以下同)

 連日の雨がようやくやみ、肌寒い曇り空となった10月10日、都内の私立幼稚園で運動会が行われた。黒いワンピースに細身のジーンズ、黒いスニーカーで現れたのは小林麻央(34才)だった。

 「姉の麻耶さん(37才)が前を歩き、その後ろを麻央さんと娘さんが手をつないで歩いていました。麻央さんの足は細く、長袖からのぞく手のひらも少し筋張っていましたが、顔は満面の笑みで、歩き方もしっかりしていた。運動会を本当に楽しみにしていたことが伝わってきました」(幼稚園関係者)

 乳がんとの厳しい闘いを続ける麻央にとって、この日は待ち望んだ一日だった。運動会の後には、麻耶や子供らと一緒に蕎麦店を訪れた。リラックスした表情の麻央は、「久しぶりにこんなに楽しい食事ができたね」と頬を緩めたという。

 その1週間前、麻央は重大な告白をしていた。

 《私は、一般的には、根治は難しい状態と言われるかもしれません。(略)私はステージ4だって治したいです!!》

 自らのがんが「ステージ4」であることを明かした発言の衝撃は大きく、多くの人々が言葉を失った。

 ステージとは「がんの進行度合」を表す。乳がんの場合、最も軽いステージ0、Iから最も重いステージIVまでの5段階がある。また、がんの治療を始めた人のなかで5年後、10年後に生存している人の割合を示す「5年生存率」「10年生存率」という数字も公表されている。

麻央のステージIVとは、乳がんが骨、肺、肝臓など他部位へと転移が広がった状態を指している。一般に「末期がん」「遠隔転移乳がん」と呼ばれる。事実、彼女はブログで骨と肺にがんが転移したと明かしている。

 グランドハイメディック倶楽部理事で、元国立がんセンターがん予防・検診研究センター・センター長の森山紀之さんが説明する。

 「転移とは、がん細胞が血流やリンパの流れに乗って移動し、骨や臓器に取りついて増殖することです。乳がんの場合、乳房から心臓が近いので、どこにでも転移しやすい。なかでも可能性が最も高いのは骨で、患者の3割は最初の転移が骨で見つかります。腰骨に転移すると腰痛、胸骨は背中、骨盤は腰の骨周辺が痛くなる。

 最初は軽い痛みですが、段々と強くなります。とはいえ、骨転移があっても命に別状はない。乳がんは肺への転移が多いのも特徴です。肺の転移が進行して胸の痛みや血痰、胸水などの症状が出て、呼吸機能が落ちれば、生存率は低くなります」

 治療法は、ステージIIIまでは手術が一般的だが、転移のあるステージIVでは手術の効果が限られる。そこで、抗がん剤治療やホルモン療法が中心となる。

 麻央は10月1日のブログで「QOL(生活の質)のための手術」を受けたことを明かしている。麻央の知人が語る。

 「麻央さんは、左乳がんと脇の下のリンパ節を取り除く手術を行ったそうです。がんをすべて除去する『根治手術』ではなく、痛みを軽減するための手術でした。2時間以上のオペでしたが、麻央さんの状態は良好で、その後、一時退院までできるようになりました。海老蔵さんと子供たちと久々に家族水入らずの時間を過ごせたそうです」

 術後、麻央はブログでこう心境を綴った。

 《先生方が大きな手術にチャレンジして下さったことは、大いに大いに喜んで、心からの感謝をしています。(略)奇跡はまだ先にあると信じています》

9月1日に「なりたい自分になる」と題してブログを開設してから、麻央はほぼ毎日更新を続けている。常に前向きに自らを語る彼女に多くの人が勇気づけられ、共感の輪が広がっている。彼女のブログは初日だけで3000万PVを記録した。

 「麻央さんの開設したアメブロはPVごとに広告料が発生します。コンスタントに1日1000万PVを超える麻央さんのブログの広告収入は、通常であれば月1000万円ほどになるはずです」(広告代理店関係者)

 がんとの闘いには経済的負担という現実がある。

 「今、麻央さんは都内の大学病院に入院していますが、セキュリティーなどを考慮して1泊数十万円するVIPルームを使っています」(前出・知人)

 高額な治療代を含め、多くのがん患者にとって家計の不安も大きいのである。

乳がんの自己検診は意味がない? 海外で推奨されない理由

■もしかして日本だけ? 乳がん早期発見のための検診
日本では乳がん予防法、早期発見の方法として自己検診が薦められており、筆者自身も2003年頃に自己検診法の記事を書いたこともあるのですが、実は現在、乳がんの自己検診法は海外では薦められていません。その理由について解説したいと思います。

■乳がんの自己検診には意味がない?
2016年現在、日本では多くの人がご存知の乳がんの自己検診については、

・死亡率を下げるという明らかな証拠がない
・乳がんの自己検診によって不必要な検査(良性の腫瘍の生検など)が増える

ということで、米国国立がん研究所(NCI:National Cancer Institute)、米国対がん協会(ACS:American Cancer Society)、米国予防医療専門委員会(U.S. Preventive Services Task Force)、コクランライブラリー(Cochrane library:イギリス)などの、医療関係者が信頼している団体は、こぞって「現在では推奨しない」というスタンスを取っています。

これは主に2つの大規模で(全部で388,535人の女性)、かつ質の高い調査の結果(ロシアと上海からの地域住民ベースの研究。2002年と2003年に相次いで論文が発表されました)、自己検診している人とそうでない人で乳がんの死亡率について比べた結果、死亡率は変わらないのに不必要な検査が増えた、という研究結果によるものです。つまりデメリットの方がメリットより多いので推奨しないということです。

ちなみに、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、研究にも質の高いものとそうでないものがあります。質の高い研究で、かつ人数が多いものの結果は、なかなか覆しづらいと考えられています。上記の研究はそれにあたるため、多くの信頼性の極めて高い団体が「推奨しない」というスタンスをとっているのです。また、これも専門的な話になりますが、「検診の有効性」は「死亡率」のことになります。その他の指標(発見率など)は調べる集団によって動いたりするので、「検診の有効性」としては不十分と考えられています。

■自分の正常を知っておくことは大事
とはいえ、こういった団体も、自己検診は「死亡率の低下」というメリットは確認されていないものの、自分の「正常な状態」というものを知っておくのはよいことで、なにか普段と違ったことがあれば相談すること、というスタンスは変わりません。

実はこの「なんとなく変」という感覚、医療従事者としてはすごく大事だと思っています。例えば筆者が研修医のころ、腰痛で受診された患者さんを、先輩の先生が「なんか変だから」という理由で詳しい検査を行い、通常のよくある腰痛ではなく、「大動脈解離」という放っておくと死にいたることもある病気が発見されたことがあります。筆者が「なんでわかったんですか?」と聞くと、先輩は「なんとなく、痛がり方が普通じゃないから」と答えました。それくらい、「普通と違う」ということはそれだけで重要な情報なのです。

自分の体のことだとわかりにくいかもしれませんが、例えば自分の状態を自分ではっきり言葉で表せない小さいお子さんでも、毎日みているお母さんが、「何か違う」「元気がない」と思って病院に連れてゆくことはありますよね。その結果、実際に熱があったり病気だったりすることもままあります。そして、大抵小児科の先生も「いつもみてるお母さんがそういうなら、なにか違うんだね」と、その情報を重要視してくれますよね。それと同じです。

定期的な自己検診は、がんの死亡率といった意味では有効ではないとしても、乳がんにかぎらず、自分の体の「正常」を知っておくことは必要だと思います。

女性に身近な疾患「子宮筋腫」 30歳以上の3割発症

子宮筋腫について、倉敷成人病センター(岡山県倉敷市)の羽田智則産婦人科副部長に寄稿してもらった。

 子宮筋腫は女性の身近な疾患で、30歳以上の女性の約30%に認められると言われています。子宮はニワトリの卵くらいの大きさで、胃や腸と同じように伸び縮みできる筋肉(平滑筋)でできています。この平滑筋の細胞の一部が突如として細胞分裂を繰り返し腫瘍(こぶ)を形成します。

現在でも筋腫の発生や増大過程で未解明な部分もありますが、女性ホルモン・遺伝的な要因・初経年齢の早さ・未産・肥満などさまざまな要因が関与していると考えられています。無症状であることも多いですが、過多月経・不正性器出血・月経困難症・圧迫症状などの原因ともなります。

 子宮筋腫は図1のように位置によって分類されます。子宮の外側にある漿(しょう)膜下筋腫や筋肉の中にある筋層内筋腫は小さければ症状は出にくいですが、子宮の内側に飛び出す粘膜下筋腫では1センチでも過多月経になることもあり注意が必要です。特に過多月経や不正性器出血を繰り返すと輸血が必要になるような重症貧血となることもあります。

診断は主に超音波検査やMRI検査で行われます。基本的には良性疾患であり、経過観察で十分なことも多いのですが、表にある症状を伴う場合は時に治療が必要になります。

 近年の晩婚化にともない、子宮筋腫を合併した妊娠・不妊症・不育症も増えており、悩ましい疾患です。筋腫があったまま妊娠することで流早産・胎児発育不全・分娩時異常出血などのさまざまなリスクが増えることが知られています。

 治療方法は多数あり、症状・挙児希望・子宮温存の有無により方針が決まります。図2に示すとおり、挙児希望があれば、子宮筋腫だけを核出し、子宮を残します。術後に妊娠が望めますが、癒着胎盤・産後出血などのリスクも少ないながらあり、帝王切開での分娩(ぶんべん)をお勧めすることが多いです。

術後に再発する可能性もあり、将来的に再度の治療が必要となることもあります。子宮摘出は子宮筋腫の根治的な治療です。月経は無くなるため貧血になることもなく、将来子宮がんになる心配もなくなります。閉経前では卵巣を温存するので、子宮摘出をしても急に更年期障害が生じることはありません。これらの手術は現在では腹腔(ふくくう)鏡や子宮鏡といった低侵襲の手術で行われることが増えてきています。

 挙児希望が無くても子宮温存を希望される場合にはUAE(子宮動脈塞栓術)やMEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)などの方法もありますが、全ての子宮筋腫において可能というわけではありません。

 薬物療法としてのGnRHアゴニスト療法は女性ホルモンの分泌を抑える治療で一時的に筋腫を少し縮小できますが、更年期症状や骨塩量低下の副作用があり、原則6カ月しか使用できません。

 子宮筋腫と思われていたものの中にまれに肉腫という悪性のものもあり、肉腫を疑った場合には手術が基本となります。肉腫は摘出しないと最終的に判断できません。閉経すると筋腫は若干縮小しますが、閉経しても筋腫が大きくなる、または出血が続く時などには肉腫の可能性を考える必要があります。

 いずれにせよ子宮筋腫は治療の必要性も含め個々の症例で判断する必要があります。

 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 はだ・とものり 山梨県立吉田高校、慶応義塾大学医学部卒。慶応義塾大学病院勤務などを経て2007年7月より現職。日本産科婦人科学会専門医・指導医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・評議員・幹事。

子宮筋腫の治療薬について

子宮筋腫には筋腫を縮小する薬が用いられることがあります。主に、手術前に筋腫を縮小して内視鏡手術が選択できる状態にすることや閉経まで筋腫を取らず、手術を回避することを目的に投与されます。薬を使用できる期間や副作用などについて説明します。

子宮筋腫の代表的治療薬Gn−RHアナログとは

子宮筋腫の代表的な治療薬「Gn−RHアナログ」は、点鼻薬と注射、2種類の方法があり、一時的に子宮筋腫を小さくする事ができます。しかし、筋腫が完全になくなってしまうことはないと考えられています。

術前投与することで筋腫を縮小する「投げ込み投与」や閉経前の「逃げ込み療法」としても効果を発揮します。注射薬は1か月に一度注射、点鼻薬は1日2〜3回点鼻します。また、Gn−RHアナログ以外に男性ホルモンのように作用する薬「ダナゾール」を使用することもあります。

薬を使用できる期間

Gn−RHアナログ、ダナゾールを使用できる期間は約半年です。ダナゾールは使用量を減らし、少し長く使用することもあります。

薬による副作用について

Gn−RHアナログなどの薬の副作用として、更年期のような症状が現れることがあります。頭痛、肩こり、ホットフラッシュ、寝汗、イライラ感、うつ気分など。これらの症状が出てきた場合、症状に合わせて薬が処方されます。また、肝機能の低下や体重の増加、茶色の色素沈着、粘膜下筋腫の場合は出血が止まらなくなることもあります。また、骨粗しょう症になる可能性が高くなることがあります。

薬による副作用を予防する方法

薬による副作用の予防法も考えられています。治療中や治療後に骨粗しょう症用の薬を内服することや、食事に関する注意、日光浴しながらの運動などが推奨されます。

「術前投与」と「逃げ込み投与」とは

「術前投与」は「投げ込み投与」ともいわれ、手術の前に薬を服用し、筋腫の大きさを10cm以下にします。筋腫を縮小することで開腹手術を避け、内視鏡下手術ができる可能性が高まります。また、筋腫が小さくなることで手術時間が短縮でき、出血量を減少させることも期待できます。

「逃げ込み投与」は、閉経が近い、50歳前後の人に適応されます。薬を服用することで筋腫の成長を止め、筋腫が小さくなっていく閉経を待ち手術を回避します。

Gn−RHアナログ以外の薬を使った治療法

症状に合わせてお薬を用いる方法もあります。不正出血があるとき、月経が長引く場合にはホルモン剤を中心に投与し、出血を止めます。貧血がある場合は増血剤を使用し、痛みがあるときには鎮痛剤を用います。

40代じゃ遅い? 初めて乳がん検診を受けた年齢ランキング

小林麻央さんが乳がんにより闘病中であることが報じられ、世間に大きなショックを与えました。

命の危険にさらされることはもちろん、場合によっては治療で乳房を失ってしまうこともあり、乳がんは女性にとって無視することのできない病気です。

早期発見できれば治癒率は高いと言われる乳がん。

検診を受けた方がいいと分かっていても、つい後回しにしてしまったり、いざ検査となると怖くなってしまったりすることもありますよね。

そこで、パピマミ読者のみなさまに「乳がん検診を初めて受けたのはいつですか?」 というアンケートを実施しましたので、みなさんの回答を見ていきたいと思います。

●乳がん検診を初めて受けたのはいつですか?

・1位:30〜34歳……30%(145人)
・2位:25〜29歳……19%(93人)
・3位:35〜39歳……16%(75人)
・4位:40〜44歳……15%(73人)
・5位:20〜24歳……12%(59人)
・6位:45〜49歳……3%(14人)
・7位:10代……2%(8人)
・8位:50〜54歳……1%(7人)
・9位:60歳〜……1%(4人)
・10位:54〜59歳……1%(3人)

※有効回答者数:481人/集計期間:2016年9月23日〜2016年9月26日(パピマミ調べ)

●半数近くの人が30歳前後で初めて受診

『若いとがんの進行も早いと聞いて、若いからこそやらなければいけないと思い受診しました』(30代女性/主婦)

『「あのときやっておけば良かった」と後悔しないように、できるだけ早く受けた方がいいと思います』(20代女性/事務職)

もともと乳がんは40代後半から50代にかけて発症することが多い病気とされていましたが、近年、20代から30代の若い女性の発症率も高まっており、若いからといって安心できるものではありません。

乳がんで闘病中の小林麻央さんも現在34歳ということで、同年代の女性にとっては決して他人事とは言えないはずです。

芸能人が乳がんにかかったという報道を目にすることも増え、今回の結果からも、若いころから危機感を持っている女性が増えている ことが伺えます。

●40歳前後での初受診が3割

『検査と聞くとどうしても腰が重くなってしまって、後回しにしてしまいますね』(40代女性/主婦)

『40過ぎるとまわりの人もみんな受け出して、私もそろそろかなと思って受けました。補助があるので、金銭的な負担もなくなるというのが大きいですね』(40代女性/パート)

国の指針では、40歳以上の女性を対象に2年に1回の受診 が勧められており、40代を目安に積極的に受診する人が多いようです。

40歳をすぎると自治体による費用負担があり、安価に検診を受けることができるため、それがきっかけとなるのでしょう。

もし全額自己負担となると、マンモグラフィ検査と超音波検査で1万円を超える費用 が必要となるため、40歳未満での検診に気後れする人もいるはずです。

●10代から20代前半で受けたという人も

『私の母親が若くして乳がんになったので、自分もその可能性があると思って受けました』(20代女性/大学生)

家族に若くして乳がんになった人がいるなどの場合、遺伝性乳がんの可能性があり、発症リスクが高くなる と言われています。

そのため、かなり早期から乳がん検診を受けることもムダとは言えないでしょう。

しかし、若い人の場合、乳腺密度が高いこともあり、マンモグラフィ検診では病変を見つけにくい といったこともあります。

早期の検診が自分に必要かどうかは、医師によく相談するようにしましょう。

いかがでしたか?

早期発見が自分の命を助けることになると頭では分かっていても、検査に痛みがあることや乳房という場所柄、あまり積極的に受けたいものとは言えない乳がん検診。

本格的な検診ではなくても、セルフチェックでしこりやへこみがないか確認することはできます。

小さな変化があったときにすぐに気づけるよう、危機感を持ち日頃から観察することが、結果として自分の命を守ることにつながる のではないでしょうか。

赤ワインもNG?アルコールを1日3杯飲むと乳がんリスクが30%増

「赤ワインならばいくら飲んでも健康にいい成分がたくさん含まれているから大丈夫」と思っている方、どうやらNGのようです。無料メルマガ『Dr.ハセのクスリとサプリメントのお役立ち最新情報』に、「赤ワインを含むすべてのアルコール類を大量に飲むと、乳がんにかかりやすくなる」という研究結果が紹介されています。「適量」を心がけたいものですね。

お酒の飲みすぎは、乳がんのリスクを高める

9月24日で、女優の川島なお美さんが乳がんで亡くなってから1年になります。ワイン好きとしても知られ、日本ソムリエ協会認定のワインエキスパートとしても活躍されていました。

さて、お酒を飲みすぎると体に悪いことは、みんな知っています。でも、赤ワインだけは別で、「飲んでも大丈夫」と信じている人も多いようですが、「それは適量を飲む場合だけですよ」というお話です。

今までも、アルコールを飲みすぎると、乳がんのリスクが高まることが報告されていたのですが、アルコールの種類にかかわらず、大量に飲むと乳がんに罹りやすくなるということです。これは、カリフォルニア州オークランドのカイザーパーマネンテのYan Li博士らが、スペインで開かれたヨーロッパがんカンファレンス)で報告したものです。

● Wine, Beer, Spirits Boost Breast Cancer Risk Equally

研究は健康診断を受けた7万人の女性の飲酒習慣を調べ、乳がんになる頻度と比較したもので、このうち2,800人がその後に乳癌と診断されたそうです。

その結果、飲酒量の少ない人(1日1杯未満)に比べて、1日1~2杯の飲酒をする女性は乳癌リスクが10%高くなっており、さらに1日3杯以上飲む人は30%もリスクが高いことがわかりました。

通常の場合、乳癌に罹るのは8人中1人だそうですが、1日3杯以上飲酒した人では、このリスクが6人中1人にまで増加しているとの事です。

また重要な点として、アルコールの種類に関わらずリスクの増大は同程度で、ワイン、ビール、蒸留酒の間に差はないとされています。

心疾患の予防効果としては、赤ワインは白ワインよりも効果が強いのですが、乳がんに関しては赤ワインの効果は特になかったことになります。

また、赤ワインに含まれる抗酸化物質レスベラトロールは、前立腺癌リスクを大幅に低下することがわかっていますが、その結果とも矛盾するように思われます。

他の研究者によると、レスベラトロールの効果以上に、アルコールが強い発癌性を示すからではないかということですが、赤ワインの種類によってもレスベラトロールの量が異なりますのでハッキリとはいえないようです。

いずれにせよ、赤ワインの効果をあまり過信せず、ほどほどに飲まれるのが良いようですね。

私の子宮は残せるの…?いよいよ迎えた子宮頸がん手術後の検査結果説明日

これまでの私は、いかにして自分に偶然子宮頸がんが発覚し、気分のアップダウンを繰り返しながら手術を迎えたかを書きました。

発覚編:ある日、突如宣告された「子宮頸がんの疑い」。離婚や死も覚悟した手術までの涙の日々

手術前編:子宮を諦めきれるか…決心がつかないまま「子宮頸がん」の手術日に。同病の方の優しい励ましに涙…


手術は麻酔等々も含め1時間で終了。気付いた時には私は既に病室におり、口には酸素マスクが付いていて、身体からも、色々な管や装置が延びていました。麻酔の影響で40度超の熱が出ており、しんどくて朦朧としていましたが、手を握った主人と目が合い、涙が流れつつ、その時はまたすぐ眠りに落ちました。

その後再び麻酔から覚めてしばらくすると、まだ熱は高いながらも看護師さんに助けられ、座る練習、立つ練習、次いで歩く練習が始まり、数時間かけて、管や装置が取れていきました。

半日後には柔らかいごはんも出されましたが、人工呼吸器の管が通っていた為に声は出しにくく、しばらくはかすれたささやき声での発話しかできませんでした。

翌朝、熱はまだ38度以上ありましたが、手術した個所の内診の結果は順調なので退院して自宅安静をとのこと。

担当医師からは、今回手術自体は成功したという内容に続き、「あとは取った病理の検査結果次第となり、1週間後に結果が出るので来院を」と伝えられました。

『検査結果』…それはつまり、私の子宮や今後の人生をも左右するもののことです。それを聞いて身体を固くする私を察し、夫がかわりに先生にお礼を言って、荷物をまとめて退院手続きをしてくれました。

タクシーで退院後、帰宅当初は時々下腹部の鈍痛を感じていましたが、処方された抗生剤を飲んで寝ていたらその痛みと熱は2日ほどで消え、表面上はほぼ通常の生活に戻ることができました。

しかし、数日後に聞く『検査結果』についての恐怖感だけはどうしても消えません。熱が下がったら再び昼も夜もインターネットを検索しまくり、結果大丈夫だった方(=転移や浸潤が一切なかった方)、再手術で子宮摘出となった方、子宮とその周辺臓器まで広範に摘出することになった方、抗がん剤治療をした方、癌を知りながら治療や手術を待って出産を優先した方、既に子宮に宿っていた子供を諦めた方など、色々な方の記事やブログを読み漁りました。

私の場合、子宮は残せるのだろうか…いつか子供は産めるのだろうか…それとももう手遅れだったのだろうか…。そう考えるにつけ子供がほしい気持ちが以前にも増して高まり、不安感に押しつぶされそうになりましたが、そんな私に夫や親友はただだまって寄り添ってくれ、それが本当に有り難かったです。

そしていよいよ検査結果説明当日。夫に付き添われ、私は待合室でまた体を固くして順番を待ちます。

名前が呼ばれ、入室。この時の心臓はもう鼓動の限界値を超える寸前だったのではと思います。でも、入室一番、先生の笑顔。「手術お疲れ様。大丈夫、浸潤していなかったし、だから転移の可能性もないよ」と。

そう、私には浸潤も転移もなかったのです。取った病巣はやはり癌になってしまっていましたが、幸い上皮内に留まっていたとのこと。そして思っていたよりは病巣の広がりは深めで奥に数センチ切ったけれど、それで病巣は完全に取り切れており、これで手術は終了。子宮摘出も、抗がん剤での治療も必要ないとのことでした。

そして、何より嬉しかったのは、続いて言われた「傷が完治すればいつでも妊娠していいですし、基本的には妊娠出産にもほぼ影響ないでしょう」とのお言葉。

子供が産める…そう思うだけで、涙が止まらなかったことを覚えています。

ただ、完治と言われても、一度罹患した身としては、やはり再発の恐怖は頭から拭えません。

なので、この手術の傷が治った後は、もうとにかく早く妊娠出産したい、一日も早くそうしなければと思うようになりました。

ここから私の長~い長~いベビ待ち年月(=妊活生活)が始まるわけですが。

兎にも角にも、これが、子宮摘出や離婚、死まで覚悟した私の30歳初頭のお話しなのでした。

~次回、不妊治療 病院求めて放浪記編に続く

ある日、突如宣告された「子宮頸がんの疑い」。離婚や死も覚悟した手術までの涙の日々

自慢じゃないですが、お嫁には絶対行き遅れると思っていたワタクシ。

30歳目前で迎えた自身の結婚はまさに奇跡で、主人が若かったこともあり、「赤ちゃんはもう少し先でいいよね」としばらくの二人生活を満喫していたのでした。

ところがそんなある日、突如として私は、子宮喪失、離婚、そして死をも覚悟するような、まさに奈落の底に突き落とされるような事態に遭遇したのです。

その発端は、偶然お知り合いになった婦人科専門の女医さんに「婦人科検診を受けたことがないなんてありえない!女性の身体をナメちゃダメよ」と強く言われたことでした。

実は、20代を「仕事命」に過ごしてしまった私。

自治体から毎年来ていた婦人科検診のお知らせも「仕事を休めない」と捨て続け、会社での検診も、男女共通の最低限分しか受診せず。結果、女性特有の検診類を一切受けたことがないまま、30歳を迎えていたのです。

で、その先生の強い勧めもあり、ほどなく子宮がん検診を初受診。すると数日後に先生から急ぎの電話が来て、紹介状を書くので、すぐに大学病院に行くようにと言うのです。

その時の紹介状上の病名はまだ「高度異形成」というもの。そんな病名は初耳な上に自覚症状も全くなかった私は、何それ?と大した危機感も感じていませんでしたし、当然、妊娠出産に影響があるかもなんて思ってもみませんでした。

ところが、紹介された大学病院で詳しい検査(液体を塗布して病変を染め出すコルポ診や、そこをパンチ状の器具で数ミリ取って調べる組織診)をしたところ、なんと病名がいきなり「子宮頸がんの疑い」に。

しかも、癌になっている可能性が高いので、すぐに手術をしたほうが良いとのこと(「高度異形成」=細胞が癌になる手前の前癌状態だったのでした)。

さらに脳天を突いたのは、「恐らくそこまではいっていないと思うが、万一癌が進んでいたら、最悪の場合、子宮摘出になる可能性も出てくる、それは、手術で見た状況や摘出した組織を検査して判断する」との医師の言葉…。

もう、本当に、ウソでしょ…の一言でした。

当然ながら頭は真っ白。そこからは連日連夜、一人眠れずインターネットを検索する日々を過ごしますが、心理的なショックもあり、考えは悪い方悪い方へと進みます。

後日、権威の先生が家族に詳しく説明して下さったのですが、「子宮頸がんの原因ウィルスには大多数の大人がかかっていて、誰でも子宮頸がんになりうる」というのが正しい知識なのだそうです。しかし当時はまだ子宮頸がんの予防接種や啓蒙が進んでいなかった頃、子宮頸がんは「遊び人がなりやすい病気だ」と誤解しており、そのことも私を悩ませる一因でした。

第一、この年齢での罹患率は10万人にたった16人。なのに「ナゼ、私?」、「ナゼ、まだ子供も産んでいない今…?」。さらに万一子宮摘出になって子供が産めなくなったら、孫を心待ちにしている主人の両親には何て言おう?万一離婚と言われても、文句は言えないんだろうな…そして私は生涯再発に怯えながら生きていくんだろうな…等々。

そして、手術までの私は、気分のアップダウンを繰り返します。悪い日には「あぁ私、死んじゃうのかな…子供産みたかったな…でも産んでから死んじゃったら子供や主人が悲しむかな…じゃぁこのまま静かにいなくなった方がいいのかな…」等と考える一方で、心配して周囲が泣いてくれたり、何度も「大丈夫だから」と繰り返されたりすると、表面上は何とか「ありがとう」と返しつつも、心の中では「私は死ぬつもりなんかないのに、まるで死んじゃうみたいな扱いしないでよ」「素人なのに簡単に大丈夫って言わないでよ」と思ったり…。

今思えば、それらは全て、極限の不安や精神の不安定さから来る被害妄想だったのですが、その時の私には、やはり物事を素直に受け止めるのすら難しかったのだと思います。当時は、「励ましや突然の連絡もいらない。急に会いたいとか言わないで。とにかくそっとしておいて」というのが本音だったのでした。

心の支えになったのは、やはり主人の言葉です。「万一子供ができなくなっても気にするな、二人で一緒に生きていこう」と言ってくれて、どれほど心が軽くなったことか。

そうして毎日涙を流すうちに少しずつ冷静さを取り戻し、ほどなく私は入院・手術を迎えます。

~次回、子宮頸がん 手術編に続く…

【子宮頸がんワクチン特集】ワクチンで防げる悲劇を見過ごしていいの?

◎第2弾 子どもにワクチンを打つ小児科医の立場から 長崎大学小児科学教室主任教授(感染症学) 森内浩幸

 つい最近まで、世界中で5歳の誕生日を迎えることなく死んでいく子どもが年間1000万人もいました。そのうちの約4分の1に当たる260万人の命はワクチンで予防できる感染症によるものでした。子どもだけではありません。ワクチンによって予防できる病気で死んでいく大人も毎年200万人近くいて、その死因の第2位はB型肝炎に続く肝硬変と肝がん(年間約60万人)、そして第3位はヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん(年間約30万人)でした。つまり、子どもの時にワクチンを接種することで、大人になって発症するがんを防ぐこともできるのです。

 いずれにせよ、私たちはこれらの病気がワクチンによって防ぐことができることを知っています。必要とされる子どもたち、少女たち、大人たちへワクチンを接種してあげさえすれば、こんなにも多くの人たちが死なないで済むのに、それに目をつぶって知らぬ顔でいることは許されません。それは恐るべき規模の大量殺りくに「不作為」という形で加担しているのと同じです。

◆ワクチンで救われてきた子どもの命

 日本でも私が生まれた頃には、破傷風やジフテリアで死ぬ子が毎年それぞれ数千人、麻疹や百日 咳ぜき で死ぬ子が毎年それぞれ1万人以上いました。消えてしまったように思っているこれらの病気が、ワクチンを 止(や)めたとたんに舞い戻って来ることを、世界は 途轍(とてつ)もなく高い授業料(多くの犠牲者)を払って経験してきました。

 日本における実例の一つは百日咳です。ワクチン接種後に2人の子どもが亡くなったという報告を受け、「百日咳なんて過去の病気だからワクチンなんかいらないのに、そのワクチンが2人の子どもの命を奪った」と 誹(そし)られ、中止に追い込まれました。その結果は、年間の患者数が数百人まで減っていたのに1万人を超えるようになり、百日咳による死亡者がゼロになっていたのに中止した3年間で113人もの命が奪われました。

 しかも、ワクチンのせいと言われてきた副作用の多くは、実は 濡(ぬ)れ 衣(ぎぬ)や単なる紛れ込みです。上述したように、古いタイプの百日咳ワクチンは脳症を起こし、下手すると命に関わることがあると言われてきましたが、そういう「百日咳ワクチン後脳症」の患者さんたちのほとんどは、実は遺伝性のてんかんであることが後に判明しました。ワクチンとは関係なかったのです。

 欧米でかつて「MMRワクチン(はしか、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチン)によって自閉症が増える」という報告が出ましたが、実はこのデータは全くのでっち上げであることが判明し、論文は撤回され、著者は医師免許を剥奪されています。

 日本では慣れていなかった同時接種がおっかなびっくり行われるようになってすぐ、接種後の突然死がいくつも報道されてちょっとした騒ぎになったのを覚えていますか? でもそれは、「乳幼児突然死症候群(乳児の死因の第3位で、全く健康だった子が突然死んでしまう)」等の紛れ込み(たまたまワクチン接種後のタイミングで起こってしまったこと)を見ていたに過ぎなかったのです。

 もちろん、ワクチンによる重い副作用がゼロだと言うわけではありません。でもそれは雷に当たるよりも億万長者になるよりも 稀(まれ)なことなのです。一般にワクチン副作用と称されているものの多くは、本当のところワクチンのせいではないのです。

 しかしながら、このワクチンの副作用と称されているものは、ニュースでは非常に大きく取り上げられます。一方、ワクチンが数多くの命を救うことは全くニュースになりません。おそらくその理由の一つは、「犬が人を 咬(か)んでもニュースにならないが、人が犬を咬んだらニュースになる」という報道の原理が働くからです。珍しいことだからニュースになり、当たり前すぎることにはニュースの価値がありませんから。しかしそのようなニュースが繰り返し目に飛び込み耳に入るようになると、「近頃は、犬に咬みつく人が増えているんだって」というメッセージが、疑いようのない事実として浸透していくのです。

◆HPVワクチンとは何を防ぐのか

 さて、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの話です。ヒトパピローマウイルスにはたくさんの種類があり、一部のものは、子宮 頸(けい)がんや、性器や肛門の周りにイボを作る病気「 尖圭(せんけい)コンジローマ」を起こします。

 今使われているワクチンは2種類あって、どちらも子宮頸がんを最も起こしやすい16型と18型を防ぐことができます(1種類はさらに尖圭コンジローマを起こす6型と11型も防ぎます)。16型と18型で子宮頸がんの約3分の2を引き起こしますが、特に比較的、若年で発症するのはこの二つの型が主体です。

 私は厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会によるワクチン評価に関する小委員会の中で、これらのワクチンの「ファクトシート(医学的事実を集積し詳細に検討してその有効性と安全性を評価した報告書)」の作成に関わりました。

 世界中で相当数のデータが集積されており、その有効性や安全性のデータから本当に期待できるワクチンです。小児科医であり、特に感染症を専門にしている立場から、強く推奨すべきワクチンの一つであると評価しています。

 しかし今、このワクチンは日本において(世界中で日本だけにおいて)、積極的な勧奨中止という判断の下、せっかく定期接種に加えられたというのに接種率はほぼゼロになってしまいました。なぜでしょう? それは、国内で338万人の少女に接種した後、体のいろんな部位の痛みだとか、体が勝手に動く不随意運動だとか気分不良だとか様々な訴えを持つようになったことが問題視されたからです。

 厚労省の副反応検討部会の資料によりますと、上述の様々な症状が続いている子が186名、これに未確認分を推定して加えると276名、これは接種者の0.008%に相当します。仮にこれが全て本当にワクチンのせいで起こったとして、ではワクチンを接種したらどうなるのか考えてみましょうか? 子宮頸がんの 罹患(りかん)率や死亡率、子宮頸がんのうちワクチンによって予防できる割合を計算に入れると、接種者338万人のうち2万5千人がワクチンによって子宮頸がんを免れ、7000人が死なずに済むのです。

 そして副作用と言われているものは、本当にそうなのでしょうか? この年頃の女の子によく見られる不定愁訴(原因不明の体調の悪さ)を、ワクチンのせいと思い込んでいるのではないでしょうか?

 名古屋市の調査では、ワクチン接種後に起こるとされる様々な症状の出現率が、ワクチン接種者と未接種者との間で違うかどうかを、3万人の規模で解析しています。その結果、接種者の方が未接種者よりも多く訴える症状は何一つありませんでした(注:2015年12月に出された中間報告では上記のような解析結果を出していながら、本年6月の最終報告では生データの提示だけ行って、解析を行わないという不可解な対応を取っています)。つまりワクチンによってそういう症状が出ることは、仮にあったとしても極めて稀であると言えます。

 誤解してほしくないのは、これらの症状で苦しんでいる子どもたちがワクチンのせいであろうとなかろうと、しっかりと向き合い、その苦しみを除くために努力すべきだということです。これまでこのような不定愁訴で苦しむ子どもたちは、しばしばまともに相手にされてきませんでした。そしてそのことがこの子たちの苦しみを増幅させてきたのです。それについても、私たち医療従事者は深く反省する必要があります。

乳房再建に2つの選択肢 人工物or自家組織どちらが安全か

妻や恋人のことを考えると、乳がんは男性にとって「知らなくても済むこと」ではない。今回は「自家組織による乳房再建」について、第一人者に話を聞いた。

 乳がんで乳房を全摘した時、検討されるのが乳房再建だ。自分の組織(自家組織)、あるいは人工物(インプラント)を用いる2つの方法がある。すべて自費だった人工物が2013年に保険適用になったことで、温存にこだわらずに全摘を選ぶ人が増えている。

 では、自家組織と人工物ではどちらにメリットが多いのか。

 横浜市大付属市民総合医療センター形成外科・佐武利彦部長は、自家組織の主な利点を①温かく柔らかいので自然の乳房に近い②人工物で起こりうる感染や破損がない③時間の経過による変化が少ない。人工物は徐々に上に移動して乳房の左右非対称が目立ってくる場合がある④違和感が少ない。人工物では痛みなどを感じる場合がある――を挙げる。

■人工物の場合はメンテナンス必須

 人工物で再建した患者を10年間追跡した海外のデータでは、「術後、再手術を受けた人」が54・6%。そのうち「再建した乳房から人工物を抜去した人」は32・8%と、3人に1人いた。抜去の理由は、破損、大きさや形の変化、左右非対称などだ。

「人工物を体内に入れることで起こる避けようがない結果で、医師の腕とは関係ない部分がある。だから、人工物は入れたら完成で終わりではなく、メンテナンスしていく必要があります」

 自家組織ならメンテナンスは不要。人工物より自家組織の方がいいと、素人目には感じる。しかし、がん拠点病院でも自家組織で乳房再建を積極的に行うところは少なく、人工物がほとんどだ。自家組織の手術は高い技術力を要し、手術にかかる手間も人工物より増えるからだ。

 自家組織の乳房再建法には「皮弁法」と「脂肪移植」がある。

「皮弁法」は血流の保たれた状況で皮膚や脂肪を移植する。かつては筋肉ごと取っていたが、合併症が起こりやすい。そこで筋肉を取らずに残し、皮膚や脂肪に血液を運ぶ細い血管(穿通枝)も含めて皮膚と脂肪だけを採取し、移植する。結果、「温かく柔らかい乳房」が実現する。「穿通枝皮弁」と呼ばれる。

 採取する皮膚や脂肪は下腹部からが一般的だが、佐武部長は患者の希望に合わせて部位を選び、下腹部、背部、太もも、でん部など13カ所から選択している。

「脂肪移植」は、下腹部や大腿部などから吸引した脂肪組織をパスタ状に細かく精製し、細い注射器の針につけて1本ずつ移植する。皮弁法は皮膚や脂肪を採取するのでその箇所に傷がつくが、脂肪移植では目立つ傷ができない。

■自家組織による再建にもリスクがある

 皮弁法か脂肪移植かは、乳がんの手術状況や胸の形などさまざまな要素から適応が変わる。ただ、いずれにしろ、自家組織には人工物にはないリスクがある。

「皮弁法は、血管が詰まり脂肪が壊死する危険があります。すると、せっかく再建した乳房を抜去しなくてはならない。医師の経験数、技術力、医療機関の術後の管理能力が問われます」

 脂肪移植でも、脂肪の壊死が問題になる。患者の胸の形などから、脂肪注入の量、回数をその都度変えなくてはならない。複数回する場合、佐武部長は半年ほどスパンを置くというから、脂肪移植を3回行うとすれば1年半かかる。また、脂肪移植は保険も適用されない。

「自家組織と人工物にはそれぞれのメリット、デメリットがある。乳房再建は全摘後すぐに受けなくても、時間が経ってからでも可能です。だから焦らず、まずはどういう乳房をつくりたいかをイメージし、主治医に伝えるべきです」

遺伝性乳がん・卵巣がん、データ登録開始…発症状況把握のため

 遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)の発症状況を把握するため、患者や親族に関するデータを登録する制度を日本乳癌(にゅうがん)学会などが作った研究団体が始めた。約40の医療機関で登録を進める。集めたデータは患者の治療や情報提供のほか、医療体制の整備に役立てる。

 HBOCはBRCA1、2という遺伝子の変異が原因で発症するがん。乳がんの場合、毎年約9万人の新規患者の5~10%がHBOCに該当するといわれているが、国内の詳しい実態は分かっていない。患者に遺伝子変異があるのが分かると親族にも影響が及ぶため、検査や遺伝カウンセリングの体制整備が始まっている。

 登録は、HBOCと診断された匿名化した患者の手術や抗がん剤などの治療歴のほか、親族のがんの情報を集め、データベースに入力する。各データは、年1回更新。昨年度までに遺伝子変異がある約250人が試験的に登録された。

卵巣腫瘍のひとつ、卵巣のう腫とは

卵巣が腫れる状態の「卵巣のう腫」といいます。自覚症状はないため、検診で偶然見つかることも考えられる病気です。年齢にかかわらず注意したい「卵巣のう腫」の疑問にお答えしましょう。

卵巣のう腫とは

「卵巣のう腫」とは、「卵巣の中に液体成分が溜まって腫れている状態」を総称してそう呼びます。のう腫のサイズは、ピンポン大からグレープフルーツ大までさまざまです。治療が必要でないタイプもありますが、通常は、経過観察として定期的な検査が必要です。症状に応じて、手術をする場合もあります。

ほとんどが良性

子宮筋腫と並んで、女性の生殖器に多く発生する腫瘍で、ほとんどが良性です。ただし、手術で腫瘍を摘出し、顕微鏡で調べる病理検査をしてみなければ、正確に良性であるとの断言はできません。

自覚症状

卵巣のう腫は、他の卵巣腫瘍と同様に、初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、子宮がん検診や、内科受診などで偶然見つかることが多いといわれています。しかし、のう腫がこぶし大以上にまで大きくなると、下腹部に膨満感が出ることもあるので、注意が必要です。

好発する年代

一般的に、腫瘍は中高年以降に多く発生しますが、卵巣のう腫は10代や20代にも多く、幅広い年齢の女性が発症する可能性があります。

卵巣のう腫の種類

卵巣のう腫は、袋状の腫れものの中に分泌物などがたまり、その中身によって、以下の4種類に分類されます。

・機能性のう腫

排卵日の頃に腫れ、自然に消失するという一時的なもので心配はいりません。

・単純性のう腫

丸い袋のように見える良性ののう腫で、中には水が入っています。5〜6cmまでの小さなものだと手術は不要ですが、定期的な経過観察は必要です。

・皮様(ひよう)のう腫

良性ですが、毛髪や歯、脂肪などができる腫瘍。小さいと無症状ですが、大きくなると下腹部に不快感や痛みを覚えます。経過観察が必要で、最終的には手術が必要になることもあります。両方の卵巣にできたり、再発したりすることもあります。

・子宮内膜症性のう腫

子宮内膜症が原因になってできるのう腫。子宮内膜症は、子宮内膜が子宮の内側以外のところに飛び、そこで増殖する病気ですが、その病気が卵巣にもでき、生理のたびに卵巣からも出血し、出口がないために卵巣内に変色した茶色のドロドロの血液がたまります。そのため、「チョコレートのう腫」とも呼ばれています。毎月の生理のたびにのう腫も徐々に大きくなり、性交時や生理のときに痛むことがあります。

卵巣のう腫の原因

卵巣のう腫の原因は、まだよくわかっていません。

唯一、原因がわかっているのが「チョコレートのう腫」で、子宮内膜症が卵巣内に発症したものです。

ひとくちに「卵巣がはれる病気」といっても、種類は多く、症状も治療もケースバイケースです。そういう意味で、素人判断は避けて、気になることがあれば、専門医に相談しましょう。

乳がん、ホルモン療法の影響 化粧やパック、マッサージ効果的

乳がんのホルモン療法中の生活への支援について、おおもと病院(岡山市)のがん看護専門看護師の森川華恵さんに寄稿してもらった。

 乳がんは、局所療法である手術や放射線療法に加え、全身療法である薬物療法を組み合わせて治療する場合が多いです。他臓器への転移がないと画像などで診断されていても、病理結果によって、既に起こっているかもしれない微小転移を根絶し、乳がんを完全に治すことを目指して治療します。

 薬物療法には、ホルモン(内分泌)療法や化学療法、分子標的療法の3種類があります。単独で行うこともあれば3種全てを併用することもあります。今回は、ホルモン療法中の生活支援についてお示しします。

 ホルモン療法とは、乳がん細胞の増殖に必要なエストロゲンの合成を抑制したり、エストロゲン受容体をブロックして、エストロゲンとがん細胞が結合できなくすることです。

 治療のメリットは、他の薬物療法に比べると、副作用症状の出現が少ないことです。デメリットは、治療期間が長いことやホルモン療法中は妊娠できない、ホルモンの依存性がない約3割の乳がん患者さんには、治療効果が期待できない―などです。

ホルモン療法による影響

 抗ホルモン剤の副作用によるホルモンバランスが崩れることで、ほてりやのぼせ、発汗、関節痛や手のこわばりなど、更年期障害様の症状が出現することがあります。これらの症状は、薬に体が慣れるとともに、治ることもあります。また、卵巣機能の低下による月経の消失、膣(ちつ)内の乾燥など膣内環境の変化や性欲の低下などを自覚している場合もあります。

 さらに、骨密度の低下や、子宮内膜がんもわずかな頻度で高めると報告があるため、骨密度検査や婦人科検診を定期的に年に1回程度受けることを推奨しています。子宮内膜がんになる確率は、乳がんの再発・転移を予防する効果に比べると少ない確率です。不正出血などある時は、すぐに主治医に相談しましょう。

ホルモン療法中の生活

 食生活、運動、生活のリズムを整えることなども、治療による副作用の改善策です。そして、閉経後は、脂肪組織がエストロゲン様作用をするため、体重のコントロールが重要になります。

 治療中の生活の工夫は、ホットフラッシュの症状があるときは、簡単に着脱できるカーディガンやスカーフ等の活用や綿素材などの吸湿性のある素材の衣服を身につけるとより快適に過ごせます。また、治療中エストロゲンが抑えられることで、肌が紫外線の影響を受けやすくなります。紫外線から肌を守ると、シミや肌荒れを防ぎやすいです。低刺激の日焼け止めクリームやつばの広い帽子、日傘などを上手に活用しましょう。

 さらに、明るめにお化粧をするなどして、生き生きした表情になれたり、パックやマッサージをし、肌の血液循環を良くすると、顔色も良くなり、保湿作用で肌荒れを防止でき、自分らしさを保てたり、リラックス効果も高まるでしょう。

 ホルモンバランスが崩れるとイライラしたり、落ち込んだりすることがありますが、散歩や軽い運動をするなど体を動かす、好きなことをするなど、気分転換やリラックスするのも効果的です。

 膣内の乾燥に関しては、できるだけ個包装の水溶性の潤滑ゼリーを使用するなど対策があります。

 閉経後の乳がんのホルモン療法では、関節のこわばりを感じている方は比較的多いようです。患者さんにお尋ねすると、「起床時に手をさすると治るからこれくらいならと様子を見ている」とよく聞かれます。

 このように、いくらかの工夫をしながら、仕事や家事などそれぞれの役割を自分らしく果たし、折り合いをつけながら生活の一部に治療を組み込み、治療継続している患者さんが多いのです。家族を含む「社会」との関わりの中で生活することが大切で、そのような前向きな行動が周囲に与える影響も大きいと思われます。

      おおもと病院(086―241―6888)
 もりかわ・はなえ 広島県・英数学館高、吉備国際大看護学科卒。2004年おおもと病院に入職。岡山大大学院博士前期課程修了。2012年がん看護専門看護師。

夜の間食で「乳がんの再発リスク」が36%高まる…!? 米調査で判明

夜食はダイエットの最大の敵。とは言え、ときには口寂しくなってつい何かを食べたくなったり、と夜の誘惑に駆られてしまうものです。しかし、夜の“絶食時間”が短くなることで、乳がんの再発リスクが上がるということが、アメリカの最新調査でわかったのです。

小林麻央さんが33歳という若さで乳がんになっていることが明らかとなり、乳がんへの予防や自己検診の大切さは、もはやアラサー女性には欠かせないことになりつつあります。そこで知っておきたいのが、乳がんリスクが高まる要因がどんなところにあるかということです。今回は乳がんの再発リスクが上がるという調査をご紹介しましょう。

■夜の“絶食時間”が13時間未満だと乳がん再発リスクUP

夕食を午後7時に摂り、朝食を朝8時に摂っている人の場合、夕食後から翌朝の朝食まで13時間の間、食べ物を摂らない“絶食時間”があることになります。そんな夜の“絶食時間”に注目したのが、今回紹介するアメリカの調査。

米カリフォルニア大学の研究チームは、乳がんの早期ステージであると診断された、27~70歳の女性2,400名のデータを1995年から2007年まで分析。毎晩“絶食時間”が13時間未満である女性は、7年間の追跡調査において乳がんの再発リスクが36%も上がることがわかったのです。

「血糖値が上がることはがんのような腫瘍の栄養になり得るし、さらに睡眠時間が短かったり質がよくない人は、がんのリスクが高まるであろうと考えられる」とこの研究チームは言及しています。さらに今回の調査で、夜の”絶食時間”が長くなるほど、ヘモグロビンA1cレベルが下がるということもわかっており、それが乳がんリスクの上昇を回避できる要因であると考えられます。

今回の調査では、午後8時以降に合計25kcal以上何かを食べた場合について、食事を摂ったとみなしており、調査対象の女性たちが夜間食事を摂らなくなる時間は平均で12.5時間でした。

■健康的な食生活ががん予防につながる

この研究を行った研究者は「人は日が明るいうちは食べものを食べようとするもので、そんな自然のリズムに逆らうと、体内時計に影響を及ぼし、メタボなどの不健康を引き起こす」と指摘しています。1日3回正しいリズムで、栄養バランスのとれたメニューを適量、摂っていくことが健康的な食生活の基本であり、それががんなどの予防にもつながるということです。さらにストレスを溜めない生活や、質の高い睡眠をしっかりとる生活スタイルも欠かせませんね。

ちなみに上述した調査において、夜の“絶食時間”が長いことは、今回の調査期間において、乳がんによる死亡リスクには影響はみられなかったことがわかっています。

乳がんの小林麻央 全摘出しなかったのはなぜなのか?

会見に挑んだ歌舞伎役者・市川海老蔵(38才)の顔は神妙だった。「麻央から聞いて途方に暮れました」、「進行具合に関してはかなりスピードの速いもので、なかなか大変なもの」、「比較的深刻な状況」──。

1年9か月前に人間ドックで発覚した妻・小林麻央(33才)の乳がん。突然の発表と、病状について語られた内容に世間からは驚きと心配の声があがった。

「比較的深刻」とはどの程度なのか。抗がん剤治療を続けているものの、手術にいたっていないと海老蔵が発言したことで、「乳房を全摘出していない、切っていないということは、見つかった時点でもう手術できないほど進行していたのではないか」という憶測の声もあがった。しかし、ある関係者はこう言う。

「“切らない”と決めたのは麻央さんや海老蔵さん、家族で話し合ってのことだったという話も聞きました。乳がんが発覚した時点では摘出手術は可能で、医師からも抗がん剤治療と手術を勧められたそうです。

ただ、切らずに温存する治療法もないわけではない。そしていろいろ調べるうちに切らずに治す方がリスクが低いのではないかと思うようになったのではないでしょうか。できる限り乳房を切りたくないという女性としての思いもあったかもしれません」

 現在の医学の“常識”でいえば、乳がん治療はまず手術をすることが第一に検討され、その次の段階として、抗がん剤投与やホルモン治療といった薬物療法や、放射線治療などが行われる。

手術には、患部のみ部分切除して乳房そのものは温存する部分切除か、乳房全体を切除する全摘出がある。その内容は進行度合いや乳がんのタイプによって異なる。乳腺外科「ベルーガクリニック」の富永祐司院長が解説する。

「基本的に、ステージ0の乳がんなら切除手術を受けるだけです。乳がんの大きさが2cm以下で、かつリンパ節に転移していないステージIなら、手術をした後に抗がん剤など薬物療法を行います。

転移が考えられる進行がんの場合は、まず抗がん剤治療を行いがんを小さくしてから手術する場合もあります」

“子宮頸がん予防啓発”を目的とする 高崎美スタイルマラソン2016エントリー開始

健康で元気な証を象徴するオレンジ色のアイテムを身につけて、高崎市内を思いきり駆け抜けよう!

「高崎美スタイルマラソン」は、大会を通じて子宮頸がんの予防や健康の大切さを感じてほしいという、「子宮頸がん予防啓発」を目的として始まった大会。2012年に1回目が開催されてから、参加者が年々増加しており、「防げるがん」である子宮頸がんの予防啓発の輪がますます広がっている。

また5回目を迎える今年の大会の注目ポイントは、大会初となる高崎市の市街地を走るコースでの開催となる点だ。さらに、今年から2.7kmと10kmの高崎市民の部には男性ランナーの参加も可能になったため、これまで以上に大きな盛り上がりをみせること間違いなし。

会場では、子宮頸がん予防の大切さを啓発するさまざまなイベントも開催。例年どおり、今年も子宮頸がん検診バスを設置する予定だ。女医さんによるがん検診(事前予約制)がワンコインで受けられるのもうれしい。健康で元気な証を象徴するオレンジ色のアイテムを身につけて、高崎市内を思いきり駆け抜けよう!

【大会概要】
●第5回 子宮頸がん予防啓発マラソン 高崎美スタイルマラソン2016
[開催日]10月10日(月・祝)
[開催地]群馬県高崎市
[種目/定員]美スタイルマラソンの部(高校生以上の女性限定)10km/500名、街なかジョギング(男女・小学3年生以下は保護者のエントリーが必要)2.7km/200名、高崎市民の部(高校生以上の男女)10km/300名
[参加費]美スタイルマラソンの部 4000円(高校生1000円)、街なかジョギング 2500円(高校生以下1000円)、高崎市民の部 3000円(高校生1000円)
[申し込み期間]6月20日(月)~ 8月31日(水) ※定員になり次第、締め切り
[大会ウェブサイト]http://bistyle-run.com/

【INFORMATION】
高崎美スタイルマラソン実行委員会
TEL:070-4420-4111(8:00~17:00 水・日・祝日除く)

聖路加、昭和、聖マリアンナ 関係者は乳がん医療の3Sと呼ぶ

両胸にがんが見つかり、「全摘手術」と「再建手術」を選択したノンフィクション作家の島村菜津さん(49才)。先日、厚労省により、この7月から再建手術に使用する一部シリコンの保険適用が発表されたが、島村さんは保険適用前に全額自己負担で行った。

いわゆる“温存手術”が主流の日本で、なぜ彼女は再建手術を選択したのか。過渡期にある乳がん治療の“現在”を追う。

 * * *

 私の受けた同時再建は、聖路加国際病院が1998年から採用した新しい取り組みの“恩恵”だった。前任の乳腺外科部長・中村清吾医師が考案した、「外部の形成外科との提携」である。

 普通に考えれば、乳房再建は形成外科の仕事で、がん治療に携わる外科医(乳腺外科)の管轄外である。だが患者にしてみれば、一度手術を終え、傷が癒えるのも早々、また切って再建というのでは、心身ともに消耗する。そこで、がん腫瘍の摘出と同時に、エキスパンダーを入れてしまうのだ。

 エキスパンダーとは、シリコンが収まるように胸の皮膚を伸ばすためのもの。聖路加の院内にも形成外科医はいるが、乳房再建を専門としているわけではない。

 そこで、外部の専門医と提携することで、同時再建という選択肢をどの患者にも選ぶ機会が生まれたわけだ。こうした乳腺外科と外部の形成外科の提携の仕組みは、同病院だけでなく、昭和大学病院(東京)や聖マリアンナ大学病院(神奈川/聖路加と合わせて、関係者は乳がん医療の3Sと呼ぶ)などを中心に、今まさに全国に広がりつつあるそうだ。

 乳房再建には、大きく分けて2つの方法がある。腹部や背中の組織(脂肪や筋肉など)を使って乳房を作る方法と、シリコンなど人工物を埋める方法だ。

 後者の場合、これまでは、手術を終え、その傷が癒え、再発のリスクが下がるのを数年でも待ったうえで、再建を始めるという「二期再建」が主流だった。しかし、聖路加国際病院で乳腺外科の部長を務め、私の切除手術の執刀も行った山内英子さんは、これからは同時再建の可能性を話しておくことが大切だと言う。

「私は、患者さんが手術して乳房がない状態で目覚めることのストレスや恐怖を忘れてはいけないと思うんです。

がんを治すことが先決で、そんなことまで考えさせるのは酷だと言う医師もいる。でも、ある時、小さな男の子を抱えたシングルマザーの患者さんが、“経済的に無理だ”と同時再建を諦めてしまった。

『本当にいいの?』と聞くと、『もう言わないでください』と涙をにじませる。そこで形成外科医に相談したら、医療ローンという手があると教えてくれた。その彼女が、(同時再建を)『やってよかった』と言ってくれた」

 さらに、こう続けた。

「それに、一度胸がぺったんこになると、女性って逞しいから、“これでよかった、大丈夫よ”と自分に言い聞かせるようなところがある。その、一度リセットした気持ちを再び、再建に向かわせるのは、エネルギーがいると思う」

 私の場合、乳管からがん組織がはみ出した浸潤部分は小さくても、しこりは大きく、片方は“がんの芽”ともいわれる石灰化が分散していた。温存はしづらい状況だったのだ。

 そのうえ、手術当初、「私も今年49才だし、再建はもういいかな」と思っていた。切除したままにしようと思ったのだ。ところが、旦那に「好きな温泉に行けないよ」と言われて思い直した。鄙びた湯治場で、おばあさんたち相手に毎度、解説することを想像するだに面倒で身悶えしそうだ。

 そういった諸々の理由で、私は全摘・同時再建を選択したわけだが、だからといって、これを勧めるつもりなど毛頭ない。

 なぜなら実感としては、乳房への感

性も、がんの性格も、個人差が大きい。乳がんの症状もケース・バイ・ケースで、自分の体験や卑近な事例を、第三者に応用することは難しい病気だからだ。その意味では、温存にしろ、全摘・再建にしろ、患者の数だけの治療法があっていいのだと思う。

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乳がん手術後のサポート 生活や仕事とのバランス重要

 おおもと病院(岡山市北区大元)の森川華恵・がん看護専門看護師に、乳がんの手術後の生活への支援について寄稿してもらった。

 乳がんの治療は、他のがんに比べ長期にわたります。また、治療後も定期的に経過を見ていくことや、治療しながら自分らしい日常生活を送るために、生活を支える正しい情報や知識を得ることが必要です。

 治療は入院や通院で行います。そして、がん治療は日々進歩しており、選択肢が広がっています。しかし、複数の治療を組み合わせて行うことが多く、どの治療を選べば良いか分らないと困惑しておられる場面に遭遇することもあります。さらに、家庭、職場、地域でさまざまな役割を担っている年代の患者さんが多く、家族や周りの人々への影響や不安も少なくありません。そのため、生活や仕事などとどのようにバランスを取っていくかが重要になります。

 治療では場合により、手術や薬物療法による乳房の変化や脱毛などのためにボディーイメージの変化や一時的に外見が変わってしまったり、セクシュアリティーに影響するなどということがあります。以下、手術後の生活への支援について述べます。

元の生活をめざして

 乳がんの手術療法後に、腕がこわばる、動かしにくいなどの症状がでる場合があります。手術目的で入院時、「手術後、手が上がらなくなりますか? よくそう聞くのですが…」と不安そうに患者さんから聞かれることがあります。確かに、リハビリテーションをせずそのままにしておくと、筋肉や関節がこわばってますます動かしにくくなるかもしれません。

 そうならないために、医療者は手術後のリハビリテーションやリンパ浮腫予防について説明し、術後の合併症を最小限にとどめ、患者さんが日常生活に戻れるように支援しています。それによって、術後に挙上困難を訴える患者さんに出会うことはほとんどありません。

 一方で、細心の注意を払いながら生活をしていても、リンパ浮腫や蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こして来院される患者さんもいらっしゃいます。これらは、手術数カ月後あるいは10年以上たってからも起こすことがあります。

 具体的には、患肢(手術をした方の上肢)の保護、創部の清潔保持やリンパ浮腫予防のための日常生活の注意点、自己マッサージの方法、リンパ浮腫を起こした時の症状や対処法についてお話しします。そして、自己検診の方法や婦人科検診(年に1回)受診の必要性についてなど、それぞれの患者さんの生活スタイルに合わせて説明しています。

 退院後の生活は、ちょっとした動作が疲れやすいなど、手術前の体調と違うこともあります。疲れを感じる時は休息をとり、家族など周囲の人の協力を得ながら、焦らず少しずつ元の生活に戻していくと良いです。

乳房の補整について

 乳がんの手術後には、乳房の形の変化がみられます。このことに関しては、補整下着やパッドの紹介を行っています。

 下着選びのポイントは締め付けすぎないことです。手術直後は、乳房や手術創をやさしく保護できるものを紹介します。元通りの下着をそのまま使えるように工夫できることも伝えたりしています。補整パッドについても、市販のパッドを紹介したり、市販のものを工夫して使用する方法、タオルハンカチなどの形を整えて補整する方法など、さまざまです。各患者さんに合わせてそれぞれの希望に沿った工夫策をともに考え、アドバイスしています。さらに当院では、希望により手作りパッドの指導を行いながら患者ケアもしています。

 最近では、再建手術を受けることも可能になっています。再建手術は、当院で行う場合と専門の病院にご紹介する場合があります。気になる方は、医療者に相談をしてみましょう。

おおもと病院(086―241―6888)
 もりかわ・はなえ 広島県・英数学館高、吉備国際大看護学科卒。2004年おおもと病院に入職。岡山大大学院博士前期課程修了。2012年がん看護専門看護師。

婦人科検診の内容とは? 内診って痛いの?

■婦人科検診の内容や服装、頻度などを知っておこう
お住まいの自治体からがん検診のクーポンが届いた、もしくは会社の健康診断などで婦人科検診を受ける方に向けて、事前に知っておくといいことを解説します。

婦人科検診の中でも、とくに内診は「怖い」「痛そう」というイメージが強いかもしれません。しかし、重大な病気を予防したり早期発見したりするには大事な検査。なるべくストレスなく検診を受けるコツをお伝えしたいと思います。

■婦人科で受けられるのは主に「がん検診」
婦人科で受けられる検診は、女性特有のがん検診が中心です。具体的には次の3つが挙げられます。

・子宮頸がん検診
・子宮体がん検診
・卵巣がん検診

触診による「乳がん」の検診が含まれていることもありますが、触診のみの検診はあまり意味がありません。乳がん検診は、マンモグラフィーまたは超音波検査が必要です。

会社の健康診断など、検診センターで行う場合は、婦人科検診と乳がん検診を合わせたメニューで「女性検診」として行っている場合もあります。

■婦人科検診では内診やエコー検査などを行う
一般的に「婦人科検診」と呼ばれるものは、「内診」「クスコ診」「細胞診」を行う検診です。検診のメニューによっては、経膣エコー検査(超音波検査)がセットになっていたりオプションで選べるようになっていたりします。

●内診
膣の中に指を入れてお腹を上から押さえて子宮の大きさや可動性、「押した時の痛み」がないかどうか、また卵巣の腫れなどがないかを調べます。

●クスコ診
「クスコ」という検査器具を膣内に入れて内部を観察します。子宮の出口にポリープなどがないか、膣の壁に異常がないか、おりものに異常がないかを目で見て確認します。

●細胞診
子宮の出口側(頸部)や子宮のお部屋の中(内膜)の細胞をブラシなどでこすり取って顕微鏡で調べる検査です。子宮頸がんや子宮体がんの有無を調べます。通常の検診メニューに含まれている「子宮がん検診」は子宮頸部の細胞診のみのことがほとんどです。

●経膣超音波検査(エコー検査)
細い超音波の機械を膣から入れて子宮や卵巣を映し出す検査です。子宮の形や大きさ、卵巣の腫れの有無などを確認します。

子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮奇形・子宮内膜ポリープ・子宮内膜症・卵巣嚢腫・卵巣がんなど、超音波検査でチェックできる病気は多いので、できれば検診時に一緒に受けておくことをおすすめします。

■処女でも婦人科検診は受けられる? 内診は痛い?
いずれの検査も、性行為の経験がないならば、行うのは困難です。性行為の経験がない方は、子宮頸がんの検診は必要ないため、通常、内診は行いません。性行為の経験があれば、内診は問題なく行えることがほとんどです。

まれに、緊張が強すぎたり膣の壁が固くなっていたりして、痛みを感じる方がいらっしゃいます。緊張してお尻を持ち上げてしまうと、内診が難しくなり、かえって痛みを伴いやすくなってしまいます。できるだけお腹とお尻の力を抜いて、ため息をつくように口から「ふ~」っと息を吐くのが、内診時の痛みを軽減するコツです。

また、検査に用いるクスコにはサイズがあるので、痛みが心配な場合はあらかじめ医師に「小さめのクスコで検査をお願いします」と伝えるのもよいでしょう。

■生理中は婦人科検診を避けるべき?
月経中に検診が行えないわけではありませんが、特に細胞診は出血がある時期は避けた方がベターです。

細胞をこすり取る時に血液がたくさん混ざってしまうと、顕微鏡で見ても正確な検査が行えず、「再検査をしてください」という結果が返ってくることがあります。二度手間にならないためにも、検診はできるだけ月経の時期を避けて受けるようにしましょう。

また月経中だと、おりものの状態も正確に見ることができません。月経不順で検診の時期に月経が当たるかどうかが読みにくいなら、月経が来たらその10日後くらい、つまり月経直後に当たる時期に検診を入れておくと、出血中に当たるリスクが少なくなります。

■婦人科検診にはどんな服装で行くといいか
よく、検診時の服装について聞かれますが、検診センターなどで受ける場合は専用の検診着に着替えるので何を着て行っても問題ありません。

婦人科クリニックなどで検診を受ける場合は、ショーツの脱ぎ着がしやすいと楽なので、オーバーオールなどつなぎの服は避けたほうがいいでしょう。スカートなら、裾をたくし上げるだけでいいので、ショーツを脱いだ時の恥ずかしさが気になるという人はあまりタイトすぎないスカートにしておくと無難です。

■検診後に出血することもある? 入浴は可能?
細胞診を受けた後は多少、出血する場合があります。たいていは1~2日で止まりますのであまり心配はありません。

入浴については、子宮頸がんの検査だけなら検査当日でも可能です。子宮体がんの検査をした場合は、検査当日はシャワーのみにしておく必要があります。

なお、婦人科検診を受ける頻度は、基本的には年1回です。何も症状がなくても、1年に1回は検診を受けるようにしましょう。

【レポート】「乳がん」について知っておきたいこと ‐ 基礎知識と誤解

●「若い人が乳がんになると進行が速い」のは本当なのか

「2人に1人が生涯でがんになる」といわれる現代。中でも、日本人女性の12人に1人が発症するという「乳がん」は、どの女性でもかかるリスクがある病気と言えるだろう。あなたのそばにも、周りに公表せずに闘病をしている人や、仕事の合間を縫って通院治療をしている人、そして、がんになった家族のサポートを懸命にしている人がいるかもしれない。

今回は、胸部・乳腺外科の法村尚子医師に、乳がんの検診方法や治療について、誤解しがちな点を中心にお聞きした。乳がんについて臆測で語らないためにも、正しい知識をおさえておこう。

――乳がんの検診方法について教えてください。

日本では乳がんが年々増加し、女性のがんの第1位になっています。現在、40歳以上の女性を対象に集団検診としてマンモグラフィーによる乳がん検診が行われています。しかし、一部の乳がんではマンモグラフィーで写し出せない場合があることも知られており、マンモグラフィー検診を受けていれば万全ということではありません。

特に、閉経前の乳腺が発達している人では、マンモグラフィーのみで乳がんを見つけるのが難しいことがあります。その場合、乳腺が発達していても対応できる超音波検査も追加したほうがいいときもあります。ただし、超音波検査は小さな石灰化像を呈するようなタイプの乳がんを見つけにくいという弱点もあり、超音波検査のみでもまた万全ではありません。

――「若い人は進行が速い」というのは本当なのでしょうか?

結論から述べると、「がんを発症した年齢によって、進行具合に違いが出る」ということはありません。一般的に、乳がんは進行速度が緩やかといわれていますが、その速度は乳がんのタイプによっても違います。大まかには、ホルモンの受容体と「HER2」というタンパク質の受容体の有無によってタイプを分けます。

乳がんの多くは遺伝に関係なく罹患しますが、5~10%は遺伝性であるといわれています。ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが告白して日本でも話題になったので、聞いたことがある人も多いかと思います。若い人が乳がんになった場合、この遺伝性であることも多く、特にBRCA1という遺伝子が関わっている乳がんは、予後が悪いといわれている「トリプルネガティブ」というタイプであることが多いため、この場合は進行が速いこともあります。ただし若くして乳がんになっても、予後の良いタイプであった場合は進行は緩やかです。

他の側面として、40歳未満の女性に対する検診体制が確立されていないため、見つかったときには進行してしまっていることも少なくありません。また、若い人の乳房は乳腺が発達していて乳房の張りが強く、触診でもしこりがわかりづらいことや、まだ若いため、"乳がんになるなんて思ってもいない"という若年層の乳がんに対する意識の低さなども、発見の遅れに関係しているのかもしれません。さらに、若い人はがんになること自体がまれですので、身近に若くしてがんで亡くなった人がいると印象に残りやすいことも考えられます。

――「トリプルネガティブ」について詳しく教えてください。

ホルモン受容体も、HER2タンパク質の受容体もないタイプの乳がんのことを「トリプルネガティブ」と言います。乳がんのタイプの中でも予後不良といわれています。ホルモン受容体を持つタイプに適するホルモン療法や、HER2受容体を持つタイプに適する抗HER2療法が使えないため、トリプルネガティブ乳がんは他のタイプの乳がんと比べて治療法の選択肢が少なく、抗がん剤治療が主になります。しかし最近では、他のタイプより抗がん薬がよく効くともいわれています。

●抗がん剤の適応とストレスの影響、家族のサポートのあり方とは
――抗がん剤の効果はどのくらいの期間ではかるものですか? 適応がないケースもあるのでしょうか?

約3カ月を目安に効果を見ます。適応がないケースは基本的にありませんが、乳がんのタイプによって効果のある治療が異なるため、それぞれに適した薬物療法(抗がん剤治療、その他ホルモン療法、抗HER2療法など)を選ぶ必要があります。

――一般的な進行乳がんの治療では、抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術する場合もありますか?

しこりが大きいがんや、皮膚に浸潤している場合など、そのままでは手術が難しい進行乳がんの場合には、手術の前に抗がん剤治療を行う場合があります。診断時にしこりが大きいために乳房温存手術が難しい場合でも、手術の前に抗がん剤治療を行うことでしこりを小さくできれば、乳房温存手術ができる可能性も高くなります。ただし近年は、検診率が上がるにつれ、進行がんで見つかるケースが少なくなり、それとともに手術の前に抗がん剤治療を行うことも減ってきています。

――乳がんの発症や再発にストレスは影響しますか?

ストレスが乳がんの発症リスクや再発リスクを高めるということはありません。しかし乳がん患者さんの中には、ストレスを感じながら生活をされている人も多いと思います。特に、若い年齢で乳がんになった患者さんは、同世代で病気になっている人も少なく、孤立感を味わっている人も多いことでしょう。

――周りの家族はどのようにサポートをしていけばいいのでしょうか?

周りのご家族は、"何かしてあげなくてはいけない"という気持ちでいっぱいになりますよね。そして、患者さん本人に何もさせないくらい、何でもしてあげようと必死になっている人を見かけます。高いサプリメントや「がんに効く」といわれるあらゆるものを必死で探して勧める人もいます。お気持ちはわかりますが、それは患者さんにとっては、病人ということを思い知らされているようでつらいときもあります。思いやりは持ちつつも普段どおりに接してあげてください。つらそうなときには、話を聞いて共感してあげてください。そばにいるだけでいいのです。

――ありがとうございました。

※写真と本文は関係ありません

○取材協力: 法村尚子(ノリムラ・ショウコ)

胸部・乳腺外科
2005年香川大学医学部医学科卒。現在、高松赤十字病院胸部・乳腺外科副部長。乳腺外科を中心に女性が安心して受けられる医療を提供。また、En女医会に所属し、ボランティア活動や各種メディアにて医療情報を発信している。
資格 乳腺専門医、外科専門医、がん治療認定医等

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。

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