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自由診療歯科医が教える歯のケア(2)磨きすぎは歯をダメにする

 健康で長生きしたいのなら、理にかなった生活習慣を身につける必要がある。ならば体が変化した今と若い頃とでは生活習慣や治療法を見直すことは当然だ。自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」の木村陽介院長に「歯磨き」時の歯ブラシ選びについて聞いた。

「磨く」という以上、力を込めてゴシゴシ洗い、勢いよく水ですすぐのは当たり前だ。そう考えている人もいるだろう。しかし、そのやり方は間違いで60歳を越えたらより注意すべきだ。

「力を込めて歯磨きをすることで歯がダメになるからです。年を取ると歯肉がやせて歯茎が下がり、歯を支える力が弱くなります。若い頃と同じように力を込めた歯磨きをすると、この状態に拍車をかけることになります。歯肉が傷つくと歯肉が退縮して歯茎が下がってしまうのです」

 一度下がってしまった歯茎は元には戻らない。また、磨き過ぎでエナメル質が傷つくと、その下にある象牙質が露出して知覚過敏や虫歯になりやすくなる。

「とくに露出した歯の根っこはエナメル質と比べて虫歯になる確率は3倍になるといわれていますので注意が必要です。歯と歯茎の境目にできてくるくぼんだ欠損のことを『くさび状欠損』と言います。

『歯頚部』とも言い、エナメル質と呼ばれる歯の硬い層から象牙質と呼ばれる軟らかい層に移行する部分にあたります。かみ合わせの悪さや過度な強い咬合力だけでなく過度な歯磨きを続けることでできるといわれています」

 ではどうするのか? 単に力を込めて歯磨きすることをやめればいいだけだが、若い頃から続けてきた歯磨きの加減を急に変えるのは難しい。ただでさえ歯列の乱れや歯肉がやせて歯茎が下がった中高年の歯磨きは、磨き残しが起きやすく大変だ。そこで注目したいのが高性能の電動歯ブラシ。

「高性能の電動歯ブラシは丸形ブラシが左右に回転して汚れをかき落とす『回転式』と細長ブラシが高速振動する『音波振動式』があります。私が薦めたいのは音波振動式で、音波振動と超極細毛で人間の手では届かないところの汚れや取れない汚れをしっかり除去してくれます。

しかも歯に強く押し付けようとすると動きを止める機能がついている。それでいて、手で行う歯磨きと同じく、歯と歯の境目は斜め45度の角度で毛先を当てるのは同じです」

 機種によってはスマートフォンと連動し、専用アプリで歯磨きの状態を視覚化して確認できるものもある。

歯周病治療 良いかかりつけ医の条件は「歯磨き指導」を徹底しているか否か

 歯周病は歯を失う原因1位であるばかりでなく、新型コロナに感染すると死亡リスクが健康な人の約9倍も高い、ということも明らかになった。

 それなのに厚労省の歯科疾患実態調査によると、50代以上の半数が歯周病になっている。原因の一つが、歯周病に関する誤解が多いことだろう。

「液体ハミガキ、うがい薬で歯周病は予防できる?」
「歯肉マッサージで歯周病は治る?」
「虫歯がないから、歯周病も心配はない?」

 実はこの3つは全て間違い。最も効果的な歯周病対策は、かかりつけ歯科医を持ち、正しい治療と予防を知ることだ。

歯周病の基本と2つの注意点

 歯と歯肉の間にある歯肉溝(歯周ポケット)は、健康な状態で深さ1~2mm程度。ここに細菌の膜=バイオフィルム(プラーク)が入り込み、炎症が起きて歯周病になる。

 初期の歯周病は「歯肉炎」と呼び、この段階で正しい治療とケアを行なえば完治できる。

 しかし、痛みなどの自覚症状がないまま進行して、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまうことも多い。歯周ポケットが6mm以上、重度の「歯周炎」に進行してしまうと、完治は難しいという。

 歯周病治療では、2つの注意点を挙げたい。

 歯周病の診断は、歯周ポケットの深さを測る「プロービング」検査が基本(別掲図1)。だが、正確な「プロービング」ができない歯科医や歯科衛生士が少なくない。

 正確な測定には、一定の圧をかけなければならないが、強く力を入れ過ぎると患者から痛みなど苦情が出る可能性がある。そのため、弱い力でプロービングしてしまうというのだ。あまりに優しすぎるプロービング検査は、注意したほうがいい。

 もう一つの注意点は、歯科医院での治療だけでは、歯周病は決して良くならないこと。

 歯周ポケットの中に入り込んだバイオフィルムや歯石は、歯科医院で専門器具を使用して除去する必要がある。しかし、このスケーリング・ルートプレーニング(通称SRP)だけで安心してしまうと、歯周病はすぐに再発してしまう。

 本当に大切なのは毎日のセルフケアだが、ライオンの調査では、実に8割の人に磨き残しが多いことが分かっている。

 磨き残しを評価するのが「プラーク付着率」。これを定期的に歯科医院でチェックすることで、セルフケアの弱点が見えてくるはずだ。

 例えば、右利きの人は、磨きづらい右側裏にプラークが残る傾向がある。それを自覚してセルフケアをすると、かなり改善されるはずだ。

歯周病かかりつけ医を見つける3か条

【1】正しいセルフケアを徹底的に教えてくれる
 鍵を握るのは歯科衛生士。歯ブラシの選び方から使い方まで、指導する範囲は広い。

 熱心に指導してくれる歯科衛生士と出会うと、飛躍的にセルフケアの質が向上して、歯周病が改善するはずだ。これまでの取材経験でも、素晴らしい歯科医院には必ず優秀な歯科衛生士がいた。

【2】診断と対策(治療)を歯科医が丁寧に説明してくれるか

 治療でいくつか選択肢がある場合、各々のメリットとデメリットを示してくれる歯科医を選びたい。

【3】安易に抜歯を勧めない

 歯周病で歯が揺れたら、すぐに抜歯を勧める歯科医が今もいる。そんな歯科医は、かかりつけに選ばないほうがいい。

 ケースバイケースだが、しっかりとした歯周治療で改善する場合もあるし、現在では歯周組織を再生する技術が普及してきたので、歯の揺れは改善する可能性がある。

取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)

気をつけたい生活習慣「食事中のスマホいじり」「寝る直前の歯磨き」なぜダメか

© SmartFLASH

食事中のスマホいじりは要注意

「コロナ禍後もリモートワークが定着し、一日の大半を椅子に座っている、という人も多いかもしれません。しかし、座りすぎは万病の元です」

そう語るのは、アンチエイジング研究の第一人者でもある、医師でハーバード大学医学部・ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行氏。

環境の変化や「健康によいと聞いたから」などの理由で、いつの間にか身についた生活習慣は多い。しかしそれが、逆に健康を脅かすとしたら……。そんな、すぐにでもやめるべき生活習慣について、名医たちに解説してもらった。

【座りすぎ】

「足は『第二の心臓』とも呼ばれます。足を動かさないと血流が悪くなり、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性が高くなります。また長時間、椅子でパソコンやスマホを見ていると、前かがみになり、いわゆる “IT猫背” になりがちです。すると、横隔膜周辺が圧迫され呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが乱れてしまうのです」(根来教授)

自律神経の乱れは、血圧の上昇や睡眠の質の低下、うつ状態の原因となることもある。

「なるべく、途中で軽めの運動をしたり、腹式呼吸をしたりと、血流をよくして自律神経のバランスを保てるようにしてください」(根来教授)

【一日に水を2リットル飲む】

ネットなどでは便秘、むくみ、冷え性防止として、水を一日2リットル飲むのが効果的、という記事をよく目にする。

「前提として、一日に必要な水分量は人それぞれ違います」と語るのは、お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長。

「季節や、その日の運動量によっても変わるでしょう。また、水分は食事にも含まれています。何がなんでも2リットルと思わないほうがいいでしょう」

根来教授も、水分の過剰摂取は、腎臓に負荷がかかる場合があるとして、注意を促す。

「飲んだ水がそのまま細胞にいきわたるわけではないことを知っておきましょう」

【朝、起きてすぐ運動する】

目覚ましの音とともに飛び起き、まずは体操。非常に健康的なイメージだが……。

「ヒトは睡眠中、副交感神経が優位な状態で体が “回復再生モード” になっており、筋肉への血流も低下しています。起きてから徐々に交感神経が優位となっていき、筋肉へ血液がいきわたるのですが、起きてすぐはまだ血流は不十分で、筋肉もほぐれていません。このとき強い負荷をかけると、思わぬ怪我につながる可能性があります」(根来教授)

体がしっかり目覚めてから運動する際も、白澤院長からこんなアドバイスが。

「手軽な運動として、ウオーキングをする人は多いと思います。より効果を上げるため、おすすめはコースに階段を入れること。理想は『古い神社の階段』。幅が一段ごとに少しずつ違うので、脳にもいい刺激となります。早歩き、大股でウオーキングすると、さらに効果がアップします」

【食事中のスマホいじり】

家でも外でも見慣れた光景となったスマホ片手の食事だが、「スマホめしはNG」と語るのが、アルツハイマー病治療の権威でもある白澤院長。

「食事よりもスマホのほうに意識が集中することで、咀嚼の回数が減ることが問題です。消化によくないだけでなく、咀嚼には認知機能を保つ働きがあることが、研究で明らかになっているからです。よく噛んで食事をするのは、いわば『脳のジョギング』のようなものなのです。理想は、ひと口につき咀嚼30回ですが、 “スマホめし” はそれを妨げる行為です」

根来教授も、姿勢の観点からスマホめしにNGを出す。

「前かがみの姿勢になりやすいので、呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが崩れがちになります。また咀嚼の回数が減ると満腹中枢が満たされず、カロリーオーバーとなる可能性も高くなります」

【寝る直前の歯磨き】

口をスッキリさせようと、就寝直前に歯を磨く人は多い。しかし根来教授は「あまりよい行為ではない」と指摘する。

「口腔内を刺激することで、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌を抑制してしまうからです。せっかく分泌されているメラトニンを抑制してしまうと、睡眠の質を低下させてしまうことになります」

せめて、睡眠の1時間前までには歯磨きをすませるべきだという。

コロナが収束に向かいつつある今、健康のためにさらなる「新しい生活習慣」を身につけよう。

たかつきみほ

2月14日生まれ 埼玉県出身 T161・B80W60H83 ミスFLASH2021審査員特別賞 現在はグラビアを中心に女優としても活動。今秋からYouTube「みほりんのウマ好きちゃんねる」で競馬予想にも挑戦中! 最新情報は、公式TikTok(@mihorintakatuki7)、公式Twitter(@AMar1n)、公式Instagram(@mihorintakatuki7)にて

モデル・高槻実穂

写真・岩松喜平

耳の不調を招く5つのタイプと対処法 専門医が教える

写真はイメージ© 日刊ゲンダイ ヘルスケア 写真はイメージ

耳の聞こえが悪くなる「難聴」は、中年以降に急増する。それは耳も他の臓器と同じように、糖尿病や高血圧などの持病によってダメージを受けるからだ。しかし、悪い生活習慣や持病が直接、耳を悪くするわけではない。近年の研究によって、耳に直接的に最もダメージを与えるのは「音」であることが分かっている。音によってダメージを受けた耳が、悪い生活習慣や持病があるためにうまく自己修復されず、難聴が進行してしまうのだ。

そのため、WHO(世界保健機関)は、スマホのイヤホンなどで聴く音が難聴の原因になると、世界中に警鐘を鳴らしている。埼玉医科大学客員教授(耳鼻咽喉科)で、「川越耳科学クリニック」(埼玉県川越市)の坂田英明院長が言う。

「WHOとITU(国際電気通信連合)は、2018年に1週間当たりに許容できる音の大きさと聴取時間の関係を示すガイドラインを公表しています。スマホを使ってイヤホンやヘッドホンで音楽を聴いたり、ゲームを楽しんだりするときの音量は、最大ボリュームの60%未満。実際に楽しんでいい聴取時間は、1日60分未満で週4日まで。これが、耳を守るために私たちが持つべき意識と行動になります」

しかし、「耳鳴り」「難聴」「めまい」などの耳のトラブルは、発症の原因が分かるものと、よく分からないものがある。原因が分かるのは「慢性中耳炎」「突発性難聴」「メニエール病」「前庭神経炎」などの耳の病気によって起こるものになる。

ただし、実際にはそのような病気が見つかるケースは、さほど多くない。むしろ圧倒的に多いのは、原因不明の耳鳴り、難聴、めまい。原因がよく分からないことが、耳の不調を難治化させてしまう大きな理由という。

「とはいえ、原因不明の場合でも耳の不調には、年齢や生活習慣、体質が深く関わっているので、ある程度は要因を推測することができます。耳の不調を招く要因にはさまざまなものが考えられますが、中でも重要なのは『冷え』『加齢』『メタボ』『むくみ』『酸欠』の5タイプといえます」

それぞれ特徴がある。

●冷えタイプは「冬に症状が悪化しやすい」「手足が冷えやすい」など。

●加齢タイプは「50歳以上である」「ストレスを感じることが多い」「疲れやすい」など。

●メタボタイプは「高血糖・高血圧・高脂血である」「運動不足である」など。

●むくみタイプは「顔や手足がむくむことが多い」「水分を多く取りがち」など。

●酸欠タイプは「血液検査で貧血と診断された」「呼吸が浅い・速い」「よく首や肩がこる」など。

慢性的な耳トラブルに悩まされている人は、専門医の治療を受けるとともに、並行して自分のタイプに合わせたセルフケアに取り組んでみるといいという。

「冷えタイプ」「加齢タイプ」「酸欠タイプ」に該当すると思われる場合には、主に耳の血流が悪くなっていることが多い。耳トレーニングとして、次のような耳周囲のマッサージを習慣にしよう。

呼吸法は1日3セット行う

■側頭筋ほぐし

人さし指と親指の間に耳たぶが収まるように指を軽く広げて、こめかみに手を置いたときに、人さし指から小指の下に広がっているのが「側頭筋」。ここの奥深くは、悪玉物質がたまりやすいエリア。そこをマッサージすることで血流が良くなり、悪玉物質の排出が促される。

《基本姿勢》正面を向いて、両手の指を頭の横側に当てる。

①人さし指と中指の腹でこめかみを押して、円を描くようにグルグルとマッサージする。②両手の指を耳の真上に移動して、人さし指と中指の腹でグルグルとマッサージをする。③両手の指を耳の後ろの生え際に移す。うなじに向かって3センチずつずらしながら、人さし指と中指の腹でグルグルとマッサージする。

①~③を各20秒くらいかけて、10回グルグルとマッサージする。

■4・4・4呼吸

米国の心理学者が仏教的な瞑想法を再定義した「マインドフルネス」を応用した呼吸法。自律神経が整い、血流が促される。

《基本姿勢》立った姿勢で胸を張り、背筋を伸ばす。全身をリラックスさせ、目を閉じる。

①「1、2、3、4」と頭の中で4つ数えながら、鼻から息を吸う。②そのまま息を止め、「1、2、3、4」と頭の中で数える。③「1、2、3、4」と頭の中で4つ数えながら、口から息を吐く。

①~③を4~5回繰り返して1セット。1日3セット程度行う。

次回は「耳スクワット」を紹介する。

「歯科検診」をサボり続けたあとに起きる、5つの“怖い”こと【歯科医が解説】

年に1度では不十分? 歯科検診を受ける意味

一般的な歯の定期検診は、半年もしくは1年程度のサイクルで行うよう指示されるケースが多いようです。しかし歯周病や、虫歯のリスクが高い人の場合、このサイクルは少し不安。もっと短い期間で定期的にチェックした方がいい場合があります。

こまめな定期検診をすすめられた人でも、数回検診に行くうちに、いつの間にか検診に行かなくなってしまうこともあるようです。歯の定期検診はなぜ大切なのでしょうか? 定期的な検診を受けなかった歯によく見かけるトラブルを、ランキング形式で解説します。

第5位:歯ぐきの炎症による発赤

こまめな定期検診は、磨き残しをチェックする絶好の機会です。毎日のブラッシングで磨き残された部分には、プラークが蓄積していきます。たとえ硬い歯石になっていない状態でも、プラークは周囲の歯ぐきに炎症を起こしてしまうのです。

ブラッシングを数年に渡って完璧に行うことはかなり難易度が高いため、検診のたびに磨き残しの部分のチェックを行うことが大切です。特に歯並びが悪い部分で歯ブラシの入りにくい所などを中心に、プラークが残って炎症を起こしているケースをよく見かけます。

第4位:ブラッシング不足による歯石

プラークの蓄積が長期間にわたると唾液の成分によって石灰化が起こり、プラークが歯石に変わります。

歯石が硬くなるとブラッシングでは取り除くことができなくなり、そのうえ歯石の表面にプラークが付着して固まっていくため、雪だるま式に成長していきます。歯石があるとその周囲は常に炎症を起こした出血しやすい赤い歯ぐきになっています。

この炎症を放置すれば、歯の周囲の骨が溶けて、さらに歯石が歯の根の奥に入り込んで歯周病が進行します。歯石は磨き残したプラークが固まったものですが、ブラッシングでコントロールできるのがプラークまでとすれば、歯石になった部分はできるだけ早めに取り除くことが重要になります。

歯石除去は、歯ぐきの状態をリセットするために役立っているのです。

第3位:噛み合わせが原因の歯のぐらつき

定期検診の項目の中で、自分ではどうすることもできないことのひとつに噛み合わせの調整があります。

歯の噛み合わせは、噛む力やアゴの動き、歯の形、生えている場所など、複雑なバランスの中に成り立っています。このバランスは、一生同じ状態であることは稀で、多くの場合、歯の磨耗や、アゴの動きの変化などでバランスが崩れてしまいます。

するとどこか1本の歯に負担がかかるようになってその歯がしみたり痛くなったりすることになります。

しかも虫歯や歯周病を悪化させる要因のひとつでもあるため、噛み合わせが変化すると歯磨きをしっかりしていたとしても、1本だけ歯周病が悪化することもあります。

噛み合わせの調整は、歯の一部をわずかに削ることになりますが、0.1mm以下の調整で、違和感やしみる歯が改善することがあるほど微妙です。そのため、定期検診のたびに少しだけ修正を繰り返すことは、歯の寿命の延伸に役立つことになります。

第2位:歯に物が挟まったままの虫歯

噛み合わせが変化するのと同じように、実は歯も少しずつ移動することがあります。歯を固定する骨の量が減ってしまい、噛み合わせの負担に歯が負けるような状態の時は移動が起こります。

そのため、ゆるくなった歯の隙間に食べ物が挟まることもあります。そして噛むたびに押し込まれて、しかも取り除こうとしても簡単には取れなくなることも……。

最初は気になっていてもだんだん慣れてしまい、取るのが面倒になり、そのままになっている人は意外に多いのです。

挟まった状態を放置したことで、深い虫歯になり、神経を取ったりかぶせ物になったりするケースも多いため、定期検診をスルーしても物が挟まる時はすぐにチェックしてもらうことが大切です。

第1位:維持管理していた歯が寿命に……

最も残念な結果になるのが、定期検診を行なっていれば、もう少し延命できていたはずの歯が、ダメになって抜歯になる状態にまで悪化しているケースです。

歯周病や虫歯などがかなり悪化した状態を治療して一度回復した歯でも、定期検診がなければ維持できないケースはたくさんあります。特に抜歯せずにギリギリで残したような歯は、定期検診スルーのダメージを受けやすく、抜歯しかできない状態にまで悪化していることもあります。

基本的にそれまで指示されていた定期検診期間が長い人は、自己管理で維持しやすい環境にあるとも考えられるため、1度ぐらい先送りしてもそれほど大きな問題は起こらないと思います。

しかし、1~3カ月程度のスパンの定期検診が指示されている場合には、それだけ維持管理の重要性が高くなっていると考えた方がよいでしょう。定期検診を受けないことで、貴重な歯の寿命を早めてしまうリスクが急激に高まってしまうのです。

全身の健康状態も左右する歯の健康を守るために、数カ月に1度は検診のための時間を作ることをお薦めします。

▼丸山 和弘プロフィール1995年より臨床一筋の現役歯科医師。歯科大学卒業後、仙台市東邦歯科診療所を経て地域密着型の歯科医師に。小さな子どもの虫歯予防から歯のホワイトニング、お年寄りの入れ歯の相談まで、数多くの症例と日々向き合いながら、虫歯、親知らず、口内炎、歯周病など、歯の健康を守るための情報を数多く発信している。

歯をいつも噛み締めている人に現れる取り返しのつかない「ある症状」

歯が痛む、眼が見えにくい――。しかし「命に関わることではないから」と治療を後回しにしてしまったり、いい加減な医者に当たって後悔したりという経験はないでしょうか。その症状、真剣に向き合わないと、歯を失ったり、失明したりするかもしれません。「プレジデント」(2021年12月3日号)の特集「歯と眼の大問題 一挙解決ノート」より、記事の一部をお届けします。

毎回1時間磨いてくれたら、歯周病は治る

歯を失う原因のひとつとして古くから知られているのが「歯周病」だ。その歯周病の有病率は30代以上という現役のビジネスパーソンを含めた年代で、7割とも8割とも言われている。そうしたなか、歯周病の治療で歯科クリニックに通う人も少なくないのだが、小西歯科医院院長の小西昭彦氏は次のように忠告する。

「歯周病の有病率が7割、8割と言うのは、少しだけ歯石がついているというごく軽度のものを含めた数字で、それほど心配するような状態ではありません。歯周病には『歯肉炎』と『歯周炎』があります。このうち、怖い歯周病は歯を支えている骨をとかしてしまう歯周炎で、歯石が少しついているからといって、あわてて取る必要はありません。歯周病の原因は細菌の塊であるプラークで、そのプラークを取り除くブラッシングが重要になるのです」

つまり、本気で歯周病を治したいと思うのなら、患者自身が主体的に取り組むしかないのだ。そのうえで小西氏が強調するのが、「医患共同作戦」の下で進める「自覚」「自助」「自立」の重要性なのである。自覚は、先ほどの小西氏のコメントにあるように、プラークを取ることが大切だと十分に理解することである。次の自助が毎日のブラッシングになるわけだが、闇雲に磨けばいいわけではない。歯科医、歯科衛生士の指導を受け、自分に合ったブラッシングを行っていく必要がある。

「人によって歯並びが違えば、手先の器用さも違います。プラークのつき方を見ながら的確なブラシの当て方などを指導していきます。重度の歯周病でコロッケを食べることもできなかった人が、朝、昼、晩に1時間ずつ、歯磨き粉を付けないブラッシングを1年間続けたところ、歯周病が治り、いまでは普通に食事をして自立できるようになった症例もあります」(小西氏)

歯根破折を起こす歯牙接触癖

それと歯科の治療で患者自身が主体的に取り組まないと治らないのが、睡眠時の歯ぎしりや噛みしめなどによって異常な力が歯に加わることだ。激しい歯の痛みだったり、ひどいときには歯根破折を起こしたりする。通常、歯痛の対処に困ると、歯科医は神経を抜いてしまうことがある。しかし、過剰な力が加わって起こる痛みであれば、「力」という根本的な原因が解消されないままであり、不必要な介入を行ったことで、逆に歯を痛めてしまうことになりかねない。

「本来、人はモノを食べるときと唾液を飲み込むとき以外、上と下の歯は離れているもの。しかし、現代人は様々なストレスを受けて無意識のうちに、上下の歯を軽く接触させている状態が多くなっています。これを『歯牙接触癖』と言い、睡眠時の歯ぎしりや噛みしめを誘発してしまう可能性が指摘されています。この癖を解消するためには、上下の歯が接触していないかチェックすることを常に心がけ、接触しているときは口の周りの筋肉の力を抜き、唇を閉じて鼻から息を大きく吸って、『ハッ、ハッ、ハー』と吐き出します。これを繰り返すことで、歯を離すことを習慣づけていきます」(小西氏)

残念ながらこうした指導は保険の点数が低いこともあって、積極的に取り組む歯科医が少ないのが現状だ。また、マウスピースの装着も治療法の1つだが、あくまでも対症療法であり、一部分の歯に加わる異常な力を分散させているのにすぎない。歯牙接触癖を治すのには、患者自身の日頃の心がけが何よりも大切なのだ。

一方、眼科での治療、とりわけ緑内障の薬物治療では、処方された目薬を毎日決められた回数、きちんと点眼することが大切になる。北あやせよつば眼科院長の玄真氏は、「月1回の診察の際に検査をすると、一向に症状が改善しておらず、よく聞くと点眼していなかったということが少なからずあります。なかには半年間、通院してこられない患者さまもいます」と言う。本当に症状を改善したいのなら、患者自身が主体的に治療に取り組まなければならないのは、眼科も歯科も同じ。このことを肝に銘じておきたい。

---------- 小西 昭彦(こにし・あきひこ) 小西歯科医院院長 1952年、東京生まれ。80年、日本歯科大学歯学部卒業。85年、東京都新宿区に小西歯科医院を開業し、現職に就く。著書に『歯科治療の新常識』『歯周病は怖くない』など。 ----------

---------- 玄 真(げん・まこと) 北あやせよつば眼科院長 順天堂大学医学部卒業。1999年、眼科専門医の資格を取得。2010年4月、加平よつば眼科を開院。新たな医療の充実を図るため、15年3月に北あやせよつば眼科を開院。 

歯を白くする「ホワイトニング」は体や歯に害はないのか? 中高年男性の希望者も増加中

近年、健康意識の高まりから口腔ケアへの関心も強くなり、歯を白くする「ホワイトニング」が注目されている。女性だけでなく、中高年男性が施術を受けるケースも増えているという。歯へのダメージはないのか。小林歯科医院副院長の小林友貴氏に聞いた。

ホワイトニングとは、歯を削らずに専用の薬剤を使い、さらにレーザーを当てて科学的に歯を漂白する施術だ。

学術的に効果が認められている薬剤を使用する施術を行えるのは、歯科医師または歯科衛生士の資格を持つ者に限られるが、基本的には美容目的で「治療」には当たらないため、健康保険の対象にはならない。

大きく2つの方法があり、歯科医院での施術は「オフィスホワイトニング」、歯科医の指導の下で本人が自宅で行う方法は「ホームホワイトニング」と呼ばれる。

費用は全額自己負担でまちまちだが、前者は3万~7万円ほどでメンテナンスのために定期的な通院が必要になる。後者は総額2万~3万円程度が一般的だ。

「歯が着色する原因は大きく2つあります。1つ目は加齢によって歯の表面を覆っている半透明で白色のエナメル質が摩耗し、内部の黄色っぽい象牙質が透けて見えやすくなるため。2つ目はステインによる着色で、飲食物に含まれる色素がエナメル質の中に浸透して沈着することで起こります。

ホワイトニングは、エナメル質の中に浸透した着色物質を、薬剤が分解されて生じるフリーラジカルで分解し、歯を白くします。着色物質は高分子構造の有機質で、高分子であるほど色が濃くなり、低分子になると色が薄くなります。

フリーラジカルは、その高分子の着色物質と結合して分解し、低分子にして無色化するのです。また、薬剤から生じたフリーラジカルはエナメル質の微細構造を変化させるため、屈折率が変わって白く見えるようになります」

ホワイトニングの薬剤には、主に過酸化水素や過酸化尿素が使われる。過酸化水素は口腔内で最終的に酸素と水に分解され、体内に入っても害はない。過酸化尿素は口腔内で尿素と過酸化水素に分解され、同じく健康に害はないという。

■知覚過敏が起こりやすくなるケースも

では、歯に悪影響はないのか。

「ホワイトニングで使われる薬剤は、着色物質の有機質だけに作用するため、歯に対する影響はないといわれています。ただ、薬剤が歯の内部に浸透して神経に強い刺激を与え、知覚過敏を起こしやすくなるケースがあります。

日本人の歯はエナメル質が薄いケースが多いのでなおさらです。また、歯の表面のエナメル質は、ペリクルと呼ばれる薄い膜によって覆われていて、外の刺激から保護されています。薬剤によってそのペリクルが剥がれてしまい、外部からの刺激を受けやすくなることも考えられます」

「オフィス」でも「ホーム」でも、実際にホワイトニングを行った患者さんからの訴えで一番多い症状は知覚過敏だという。

「ホワイトニングの影響で知覚過敏になってしまった場合、長くても数カ月程度で改善しますが、中には慢性化してしまう場合もあります。悪化すると歯の神経の炎症=歯髄炎に発展するケースもあるので、症状が出たら早い段階で歯科医に相談してください」

また、痛みはなくても虫歯があったり、歯にヒビが入っている状態でホワイトニングを行うと、薬剤が歯の内部に入り込んで神経の炎症が一気に進行してしまう危険もある。ホワイトニングを検討している人は、まず虫歯がないかどうかを歯科医院でしっかり確認し、虫歯があれば治療してから施術を受けることが重要だ。

今なお存在するインプラント手術のリスク 顎骨壊死の合併症が起きることも

 歯周病や虫歯が進行して歯を失った時、チタン製のフィクスチャー(ボルト状人工歯根)を顎の骨に埋め込むのがインプラント治療だ。強く噛むことが可能で、一般の人には天然歯と見分けがつかない。

 以前はインプラント手術で死亡事故が発生したり、顎の神経を損傷するなどの重大な事故があった。現在では、手術前にCT検査を行なうなどの対策が取られ、“インプラント治療は安心安全になった”と宣伝するクリニックも多い。

 しかし、インプラント治療の第一人者・小宮山彌太郎氏(ブローネマルク・オッセオインテグレイションセンター院長)は、重大なリスクが今も存在すると話す。

「年配の患者さんで、骨粗鬆症の治療薬・ビスフォスフォネート(通称・BP製剤)を使っている人が多くいます。この薬の服用中にインプラント手術を行なうと、稀に顎骨壊死の合併症が起きることがあるのです。

 一定の期間、BP製剤を休薬することで合併症を回避できますが、患者自身がBP製剤の服用を把握していない場合があるのです」

 以前のBP製剤は錠剤だったが、最近は注射で投与されるようになった。そうなると、お薬手帳にも記載されないので、患者自身が把握できていないのだ。

 顎骨壊死の治療経験がある歯科口腔外科医によると、顎の骨が崩れるように壊死した患者は強烈な腐敗臭と激しい痛みに苦しむという。

 こうした悲劇を回避するために、小宮山氏はインプラント手術などの外科処置に先立ち、必ず医科の主治医との連携を密にして、その指示に従うべきと話す。

「顎骨壊死はBP製剤だけでなく、他の薬剤によっても起こり得ます。

 インプラント治療に限らず、歯科治療で観血的な(出血を伴う)処置が必要な時は、患者の主治医と連絡をとって、どのような薬を服用しているかなどの確認が必要です。私たちはこれを『対診』と呼んでいますが、必要性を理解していない歯科医もいますので、患者さんから注意してほしいと思います」

耳掃除は「百害あって一利なし」? 耳鼻科医が思う適切な頻度は

耳掃除が好きな人は少なくないでしょう。耳かき派、綿棒派など、人によってその方法や頻度はさまざまです。耳の専門家である耳鼻科医は耳掃除をどう考えているのでしょうか。AskDoctorsでアンケート調査を行った結果をご紹介します。

耳鼻科医の3割が「耳掃除は不要」と回答
耳鼻科医141名に、耳掃除が必要かどうか、必要な場合はどれくらいの頻度で行ってよいかをアンケート調査を行った結果はグラフの通りです。

耳掃除は「百害あって一利なし」? 耳鼻科医が思う適切な頻度は
一番多く選ばれた選択肢は「する必要がない」で、全体の34%(48人)が選択しました。それぞれの選択肢を選んだ理由について、コメントも寄せられています。

【毎日してもいい を選択した耳鼻科医の意見】
・耳掃除自体は悪くないと考えるが、耳垢を奥に押し込んでしまったり、あるいはひっかきすぎて傷ができるまで耳掃除をしたりしないようには指導している。(50代、男性)

・耳掃除をする場合は入浴後に耳かきではなく綿棒で、外耳道の水分を吸い込ませるように取り除く程度で、外耳道内を引っ掻きすぎないように指導する。(50代、男性)

【週1~2回してもいい を選択した耳鼻科医の意見】
・何事も適度な回数・強さのバランスが必要。(40代、男性)

【月1~3回してもいい を選択した耳鼻科医の意見】
・いじりすぎはよくないと思います。(50代、男性)

・耳垢が自然に排泄される人は掃除の必要なし。しかし、耳垢が排泄されない人もいる。やり過ぎはよくないが、やらなさすぎもよくないと思う。(50代、男性)

・やりすぎると皮膚の防御機能が衰える。(50代、男性)

【数か月に1回でいい を選択した耳鼻科医の意見】
・過度な耳掃除は百害あって一利なし。(60代以上、男性)

・耳掃除が好きな人が多すぎる。綿棒を耳の中にいれると、耳垢が奥へ入ってしまい、どんどんたまるだけ。(60代以上、女性)

・私の妻を含め、触りすぎの人が多い。(50代、男性)

【する必要はない を選択した耳鼻科医の意見】

・自浄作用があるので、基本的にはしなくてよいです。気になる人は、手前に見えているところだけ行うか、耳鼻科で掃除してもらった方が良いと思います。(20代、女性)

・多くは耳掃除をしなくても(病的なほどの)耳垢がたまることはないと思われます。耳垢がたまりやすい方もいますが、そのような方の耳垢は自分で取ろうとしても取れません。そのような方は定期的に耳鼻科で除去するべきです。結論として全ての人は自分で耳掃除をするべきではなく、耳掃除は百害あって一利なしです。(40代、男性)

・耳掻き棒や綿棒で耳掃除をすると、耳垢を奥へ押し込む、外耳道を傷つけ病気の原因になる、鼓膜に穴が開く事故の原因になる。一切いじらなければ耳垢はたまらない。(60代以上、男性)

・下手に耳掃除をするから耳垢は貯まる。何もしないのが一番良い。(60代以上、男性)

耳垢について、誤解していませんか?
耳鼻科医の回答を見て、「必要ないと言われても、耳の中がかゆいから耳掃除は必要なのでは?」「耳垢がたまるから定期的に耳掃除をしたほうがいい」という感想を持った人もいるかもしれません。

しかし、そもそも「耳垢」には耳の穴の皮膚を保護する役割があり、アンケート調査の医師コメントにもあるように自然に排泄されるため、基本的にわざわざ取り除く必要のないものです。

日本耳鼻咽喉科学会はホームページ内のQ&Aで、耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であり、入浴後にぬれた耳を軽く拭う程度が無難と掲載しています。

日本耳鼻咽喉科学会 静岡県地方部会では、「耳のそうじは本当に必要なの?」という動画を制作し、小中学生やその保護者、教員向けに耳垢ができる仕組みや、耳掃除について分かりやすく解説しています。

動画では、耳掃除をしない人の耳の中を5カ月間撮影し続けた写真も紹介。耳掃除がやめられないという人は一度ご覧になってみてください。

※日本耳鼻咽喉科学会 耳垢Q&A
※日本耳鼻咽喉科学会 静岡県地方部会制作動画「耳のそうじは本当に必要なの?」

※この記事は、2021年7月29日~30日にエムスリー株式会社が運営する医療従事者専用ポータルサイト「m3.com」にて、医師会員を対象に実施したアンケート調査の結果に基づいて制作したものです

コロナ禍の食生活で虫歯進行「高濃度フッ素ハミガキは毒」の誤解も

 年をとって改めて自分の歯を鏡で見ると、若い頃よりも、歯が“長くなった”という印象を抱く人も多いのではないだろうか。加齢によって歯肉が下がってしまったのである。

 虫歯治療の権威である東京医科歯科大学の前副学長・田上順次氏(現・徳真会先端歯科センター長)によると、これまで歯肉に隠れていた部分は虫歯のリスクが高い。これはシニア世代に特有の「根面う蝕」と呼ばれる虫歯だ。

 その予防には高濃度のフッ素入りハミガキが有効だとされているが、一部に「フッ素は体に毒」だと信じ込む人もいるようだ。これについて田上氏に聞いた。

「根面の部分は象牙質になっているので、虫歯になりやすいのです。そこにフッ素を塗布したり、普段から高濃度フッ素入りハミガキペーストでケアすることが必要です。

 フッ素の安全性は世界中で確認されていますし、市販の高濃度ペーストをたとえ飲み込んでも、中毒や副作用になる恐れはありません」

 副学長時代も一般外来を担当してきた田上氏。現在も民間のクリニックで診療を続けているが、コロナ禍で気になることがあるという。

「最近診た患者の中には、虫歯が一気に進行している人がいました。テレワークの推奨で在宅勤務になり、普段よりも頻繁におやつを口にしている影響かもしれません。

 糖分や飲み物で口腔内が酸性になると、『脱灰』と言って歯の表面が溶け出します。これを食い止めるのが唾液の成分で、『再石灰化』と言います。ただし、頻繁におやつ等を食べると、『再石灰化』の時間がなくなって、虫歯が進行してしまうのです」

“ダラダラ食い”の習慣を見直し、時間を決めて食べるようにする、おやつや酸性飲料を飲んだ後は必ず歯を磨くか水で口をすすぐなどの対策をとったほうがいい。

レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)

「よく噛む」の誤解 強く噛んで負荷を与えても歯は丈夫にならない

 新型コロナウイルスの感染拡大による“受診控え”の影響は、歯周病や虫歯などの歯科治療にも及ぶ。ワクチン接種を終えて通院を再開するうえでは、歯を守る最新常識を知っておく必要がある。

「“よく噛む”ことを、“力を込めて強く噛む”と誤解している人が多い。それは完全に間違いです」

 こう指摘したのは、北海道大学歯学部教授の菅谷勉氏。正直に言えば、筆者も強く噛むことは歯に刺激を与えて丈夫にすると思っていたのだが、そうではないらしい。

「強く噛む」ことが歯を失う原因に

 永久歯の抜歯原因として、歯周病、虫歯に次ぐ第3位が「歯根破折」だ(8020推進財団調べ)。

 歯根にヒビが入ってしまうと、抜歯になるケースが多い。歯科医曰く、歯根破折はホープレス(治療しても希望が持てない)と考えられているからだ。

 歯根破折の原因の一つとして、不必要に強く噛むことが関係していると菅谷氏が指摘する。

「よく噛むというのは、回数を多く噛むという意味です。モノをかみ砕くのに、そんなに強い力はいりません。それなのに、上下の歯を接触させて、ぎゅっと力を入れてしまう人が多いですね。骨と違って負荷を与えることで歯が丈夫になることはないので、やめたほうがいい」

 菅谷氏によると、繰り返し負荷がかかると、疲労性の歯根破折が起きやすいという。

 就寝中に無意識の状態で歯を食いしばるケースも同様に、歯根破折の原因になると言われている。この場合、就寝中に「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを装着することで解決できることもある(保険適用)。

歯根破折には「抜歯」しか選択肢がない?

 菅谷氏は歯根破折を接着で治す指導者として知られる。一般的にはホープレスとされる歯根破折だが、ヒビを接着させて回復できるケースもあるという。

「歯根破折の接着療法は、歯根をいったん抜いて接着させてから戻す方法と、根管から接着剤を流し込む方法の2つがあります。

 難易度は決して高いとは思いませんが、ヒビが入っている歯を抜く時に相応のリスクがあります。接着してから10年以上も経過している患者もいる一方、1年もたない場合もあります」

 治療成績が患者によって異なることもあり、歯根破折の接着療法は保険適用になっていない。

根尖病巣があると「抜歯」しかない?

 歯根の先端に膿などが溜まる「根尖病巣」があると、抜歯を勧める歯科医も多い。骨が吸収されて(溶けて)しまうからだ。

 しかし、抜歯する前に検討してもらいたいのが、根管治療である。

「根尖病巣は、根管の中を通る神経が死んで根管に細菌が増殖していることが多いですね。この場合、根管治療で細菌をきれいに除去すると、根尖病巣が消えて溶けた骨も回復する場合があります」(菅谷氏)

根管治療には「マイクロスコープ」が必須?

 歯を守る“最後の砦”のような根管治療だが、最近はマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使う根管治療をアピールする歯科医が増えてきた。

「シンプルな形状をした根管なら、従来の肉眼や拡大鏡でも十分な治療が可能です。ただし、マイクロスコープの治療は情報量が圧倒的に多いことも確かです。根管は複雑に癒合していたり、枝分かれしているものもあるので、そうしたケースはマイクロスコープのほうが良い結果を期待できるでしょう。

 ちなみに、根管治療の専門医はマイクロスコープを持っていないと申請できません」(菅谷氏)

レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)

「歯科医院7万軒」は多い?少ない?数字をイメージしやすくするコツとは

「数字はファクト。ビジネス文書で相手に説得力や納得感を与える大きな武器になる」 ――。とはいえ、やみくもに数字を入れれば文章が分かりやすくなるというわけではない。数字の使い方には“コツ”がある。

日経新聞記者として30年のキャリアを持つ白鳥和生氏の著書『即! ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術 数字・ファクト・ロジックで説得力をつくる』(‎CCCメディアハウス)から一部抜粋・再編集し、「特別なセンスはいらない」という具体的な数字の使い方について解説する。

読む人によって

「伝わりやすい数字」は違う

 ビジネス文章に説得力を持たせる「近道」は、数字を使うことです。数字を使うことで、誤解なく情報が共有でき、正確な共通認識が生まれます。「なるべく早く」と言われても、人によっては認識に開きがあるはずです。「3日後」「1週間後」などと数字を使えば間違いは起きません。

『ファクトフルネス』は、思い込みにとらわれず、数字と事実で真実を見極めようとする態度の重要性を説きました。ベストセラーになったのは、同書の主張に納得感があったからでしょう。説得力のある主張は読む人や聞く人に納得感を与え、人を動かす“武器”になります。

 数字は客観的事実(ファクト)であり、相手に文句を言わせないパワーを持っています。

 さらに納得感や説得力を高めるためには、相手(読み手や聞き手)が持つ「ものさし」を利用することです。だれでも育った背景や学んだ分野によってそれぞれの判断基準を持っています。言い換えれば、その人がピンとくる指標や単位を使うことで「伝わる文章」に仕上げるのです。

 農業を営んでいる人なら「1反」の広さはわかるかもしれませんが、住宅関係の人なら300坪といった方がわかりやすい。平方メートルなら991.74平方メートル。小中学生なら学校のプール(25メートル)6個分、畳600枚分といったらよいかもしれません。

 ビジネスでは、動いて欲しい相手が重視している指標で伝える工夫が求められます。

 数学が苦手な人は多いでしょう。数字を扱うといっても特別なセンスは必要ありません。かくいう私も、中学校で習う一次関数や連立方程式も危うい感じです。

 数学はなぜ苦手意識を持たれやすいのでしょうか。それは、見えないものを扱っているからです。数字は数の概念をシンボルにしたもので、数には実際に触れることはできません。だからこそ、身近なものに結びつけてリアリティを持たせることが大切です。

 数字はたくさん見比べてみる必要があります。「100%の利用者が『満足』と回答」「広告費に換算すると1億円」など、とてつもなく大きな経済効果に対しては批判的に見ることも大事です。話題づくりのために経済効果の数字を作っている、などと客観的に見るのです。

 マスコミに出てくる数字は結果のみです。どうしてこの数字が出てきたのかというプロセスにも注目してみれば、このデータはおかしいなどということがわかるようになるはずです。

受験数学とは違う「仕事の数字」

理系・文系も関係なし!

 ビジネスの世界では、「文系だから数字に弱いのは仕方ない」という言い訳は通用しません。それに、「理系だから数字に強い」というのも本当でしょうか。

 あえて言えば、数学と数字は違います。受験数学とは違う「仕事の数字」を使いこなせているかが重要になります。仕事の数字とは、例えば売上高、営業利益や売上高営業利益率、原価率、値入率、粗利益率、損益分岐点、市場占拠率(シェア)といったものが考えられるでしょう。

 家具専門店チェーン、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は、為替相場など景気予測に長けていることで知られます。成果を上げている経営者、現場リーダーは目のつけどころが違い、数字を生かす勘所を知っています。

 理系、文系というのも関係なしです。なぜなら、足し算、引き算、かけ算、割り算の四則演算だけを理解しておけば、数字力は鍛えられるからです。

 特に威力を発揮するのは割り算です。

 売り上げ100億円の会社が2社あったとします。一方は社員1万人、もう一方は100人だとすれば、社員1人当たりの売り上げは全然違います。

 総額に意味がない場合もあり、「1人当たり」「1個当たり」に直してみてはじめて意味が出てきます。

 物事の実態がリアルにつかめないときは、とりあえず割ってみる。そういう感覚を持つことが本書で言っている数学的思考です。

比較するクセをつけよう

その数字は「東京ドーム何個分?」

 もう一つ重要なのは、比較をするクセをつけることです。

 例えば、日本に歯科医院は何軒あるか。答えは約7万軒ですが、7万という数字だけでは、これが多いのか少ないのかさっぱりわかりません。しかし、約5万5000店というコンビニエンスストアの店舗数や、約2万4000局という郵便局の数が頭にあると、いかに歯科医院が多いのかがつかめます。

 比較を容易にするために、基準となる常識的な数字は覚えておきたいものです。日本のGDP(国内総生産)は約550兆円。1兆円という数字は、GDPのおよそ550分の1であり、これはなかなかのスケールを持っていることがわかります。

 このように大きな数字を知っていることは、プレゼンなどでも効果があります。「日本の生産年齢人口は7600万人ですから、したがって……」「ウォルマートの売上高60兆円と比較すると……」などと説明すれば、「すごいな、コイツ」と納得してもらえるかもしれません。

 文章を書いていると独善的な世界に入り込んでしまう傾向がある人は、意識的に数字を取り入れてみることをおすすめします。数字の持つ客観性や迫力は多くの人を納得させますし、独善的な印象が軽減できます。

 例えば、(1)具体的な数字(売上高、建物の高さ、敷地面積など)、(2)ランキングや希少性(日本一、世界初、県に1店舗しかないなど)、(3)割合(前年比、目標比、利益率、業界内シェアなど)。感覚的にイメージさせたい場合は、よく知られているものと比較するのもよいでしょう。「東京ドーム○個分」などが代表例です。

 もちろん、多くの数字を覚える必要はありません。日本と米国、中国など主要国の人口や面積、GDP、平均年収、平均寿命など、大まかな数字が頭に入っているだけでかなり説得力が増します。ビジネスパーソンなら同業他社の売り上げや利益は知っていてほしいものです。各事業の市場規模もインプットしておくべきでしょう。

受け手の想像力をかき立てる言葉で

「半額バーガー」「超減塩」

 必ずしも数字に置き換えられない感覚的な言葉を扱わなくてはならないときでも、できるかぎり「具体化」します。

 実感を伴わせるのが難しい場合もあります。そんな時は、光景が浮かぶ言葉を数字から導き出すのも一つの手です。具体的な数字の代わりに、受け手の想像力をかき立てる言葉で表現するのです。状況が目に浮かぶようなフレーズに言い換え、「自分の身に起こったら、どうする?」と思わせることで説得力を高める手法です。

 2020年で発売55周年を迎えたキッコーマン食品の「減塩しょうゆ」。塩分の摂取を控えたい層に受け入れられている商品です。20年春に通常の濃口しょうゆに比べて塩分を66%カットした「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」を追加発売しました。同社の減塩しょうゆでは過去最高の食塩分カット率。「超減塩」というネーミングが、もっと減塩したい高齢者層にヒットしました。

 同じ年の夏にヒットしたキリンビールの「麒麟特製レモンサワー」も特別感のあるネーミングで、家飲み需要を取り込みました。古い話で恐縮ですが、日本マクドナルドがバブル崩壊後に展開した「半額バーガー」も同様の事例です。

コロナで歯科治療控え 歯周病対策に高価なハミガキペーストは有効か

 ようやく、新型コロナウイルス第5波収束の兆しが見えてきた。しかし、今なお感染対策の一環として、歯科治療の受診を控えている人が少なくないようだ。歯周病治療を中断したまま、この1年余りを自己流で凌いできた人もいるだろう。

 では、「歯周病対策」を謳った高価なハミガキペーストを使っていれば、進行を防げるのだろうか? 歯周病治療の指導者として知られる、元東北大学臨床教授で弘岡歯科医院(スウェーデンデンタルセンター)院長の弘岡秀明氏がいう。

「歯周病に効きそうなハミガキペーストは、様々な種類が売られていますが、これまでの臨床研究で大きな差はないことが分かっています。歯周病による歯肉の腫れを緩和する、という製品もありますが、あくまで対症療法であり、歯周病を治すことはできないでしょう」

 去年、米・ニューヨークタイムズ紙が、〈新型コロナの感染リスクが最も高い職業は、歯科医と歯科衛生士〉という記事を掲載した。

 これが日本でも報道されて、歯科治療の“受診控え”が起きたといわれる。だが、これまで歯科クリニックで新型コロナのクラスターが確認されたのは、たった1件のみ。歯科治療でコロナ感染する可能性は極めて低いといえるだろう。

 これからは、受診控えで歯周病が進行してしまうリスクを心配すべきではないか、と弘岡氏は指摘する。

「すでに歯周病になっている人や過去に治療を受けた人も、定期的にポケット内からバイオフィルムを取り除くスケーリング&ルートプレーニング(通称SRP)が必要です。これは患者自身で行なうことは不可能です。また、歯周病の診断は歯周ポケットの深さを測定することが必要です。歯周病の人はそろそろ通院の再開を検討したほうがいいと思います」

 歯周病を早期発見、早期治療するポイントをいくつか挙げてもらった。

・ブラッシング時の出血

・歯肉の腫れ

・歯が動揺する

・マスク装着時の口臭

 こうした症状に気づいたら、日本歯周病学会、または日本臨床歯周病学会の専門医がいるクリニックを早めに受診する必要がある。

「歯周病は新型コロナだけでなく、糖尿病や心疾患などにも影響していることが分かってきました。全身状態を左右する大変な病気であると考えてもらいたいです」(弘岡氏)

レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2021年10月8日号

「いま私、人生2回目の矯正中です」眞鍋かをりと考える、生活の質を上げる歯科矯正

大人になってから歯列矯正治療を2回行っているという眞鍋かをりさん。審美とかみ合わせの両方の悩みを解決し、ステキな笑顔で矯正歯科医の桃沢先生と対談していただきました。様々な治療方法から矯正費用の相場まで、お役立ち情報満載です。

[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]

眞鍋 かをり さん(タレント)
タレント。J.S.A.認定ワインエキスパート。CPA認定チーズプロフェッショナル。テレビ、雑誌の連載などで活躍する一方で、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」で食とワインにまつわる授業の講師を担当している。

桃沢 尚 先生(もも矯正歯科)
北海道大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野を修了し、歯学博士を取得。東京都品川区の「もも矯正歯科」で院長を務める。日本矯正歯科学会認定医。

chapter01 眞鍋かをりと歯科矯正治療
桃沢先生:
眞鍋さんは、矯正歯科治療の経験がおありですよね? 矯正をしようと思ったきっかけは何でしたか?

眞鍋さん:
実は人生で2回矯正治療をしていて、今2回目の最中なんです。1回目は30歳のときで、歯並びと見た目をよくしたくて矯正しました。

桃沢先生:
どのような矯正治療方法でしたか?

眞鍋さん:
下の歯の裏側にワイヤーをつけました。上の歯は前歯4本を削って、歯にかぶせるものを作ってもらいました。この前歯4本はそのときに入れた歯なのですが、色も自然で気に入っています。

桃沢先生:
キレイに審美治療ができていますね。

眞鍋さん:
ありがとうございます。

桃沢先生:
2回目の矯正をしようと思われたのはなぜでしょうか?

眞鍋さん:
虫歯の治療に通っていた歯医者さんで、かみ合わせを相談したのがきっかけでした。1回目の矯正で見た目はキレイになったのですが、見た目を優先してしまったぶん、実は奥歯がかみ合っていなかったらしいんです。それで、根本的な治療をすると全体的にキレイになるし、問題も解消するよ、と言われて。もう1年半以上前からマウスピースを使うインビザライン矯正をやっています。

chapter02 かみ合わせの重要性
桃沢先生:
かみ合わせについて歯医者さんで指摘されたということでしたが、ご自身では不具合を感じられていましたか?

眞鍋さん:
そうですね。口を開けるときに、まっすぐ開かなかったんです。左右どちらかにずらしてから開けているような感覚がありました。鏡で確認すると、少しずれてるなと思うときがあり、それがすごくイヤでした。先生には、下の歯並びのアーチが丸くなくて、舌が収まりきってないとも言われました。それがだいぶ改善されたのが、自分の中で大きい変化でしたね。

桃沢先生:
見た目も大事なのですが、おっしゃるとおり、かみ合わせが悪いとご本人がすごくつらいんですよね。一見キレイに見えても、かみ合わせに問題がある場合はありますから。患者さんに見た目の問題以外のお話をすると、驚かれる方が多いですよ。

眞鍋さん:
わかります。私も驚きました。

桃沢先生:
かみ合わせ問題はけっこう難しいんです。かみ締めたときの歯の状態というのも大事ですが、顎の関節の状態も大事です。たとえば出っ歯の方は、無意識に顎を出して噛んでしまうことで、顎の関節に悪影響を及ぼすこともあります。

眞鍋さん:
私、かみ合わせの治療を始める前に、先生に「首や肩も変わってきますよ」と言われました。やはり、歯のかみ合わせが全身に影響するということですよね。

桃沢先生:
そうですね。顎関節症の影響で肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。首のあたりの筋肉が緊張して、炎症が起きることもけっこうあります。

眞鍋さん:
私の場合、かみ合わせが悪いがゆえに、下の顎が奥に入ってしまっていたようで。治療後は顎が少し出てくるので、若干面長な印象になると言われたのも、衝撃でした(笑)。「今の顔とは少し印象が変わっても大丈夫ですか」と聞かれましたが、かみ合わせがいいほうがいいので、矯正することにしました。バランスは前よりよくなったなと思うので、最後までがんばります。

■check sheet 眞鍋さんのセルフチェック

眞鍋さんの回答
Q1.どこでかんだら良いのか分からないと感じる。
いいえ

Q2.奥歯でかみ締めたときに前歯がかみ合わない。
いいえ

Q3.口を大きく開けたときに人差し指から薬指を縦にして入らない。
いいえ

Q4.口を大きく開けたときに顎の痛みや音・引っかかりがある。
いいえ

Q5.歯ぎしりや食いしばりの癖がある。
はい

Q6.耳の穴の手前に人差し指から薬指までの腹を添え、強めに押し当てたときに痛みを感じる。
いいえ

Q7.エラより少し上のあたりに人差し指から薬指までの指の腹を添え、強めに押し当てたときに痛みを感じる。
いいえ

Q8.口を大きく開けた後に力を抜き、歯が当たらない状態を5分ほど保持する。 その後、ゆっくり自然に顎を閉じたときに、普段のかみ合わせと異なる、もしくは、どこかの歯だけが先に当たる。
いいえ

■結果
「はい」が 0 個
→かみ合わせと顎の状態に問題を認めません

「はい」が 1 ~ 4 個
→大きな問題はありませんが、今後も顎の状態は注意してください

「はい」が 5 ~ 8 個
→かみ合わせと顎の状態に問題を認めますので、専門歯科医院への受診をおすすめします

眞鍋さん:
実際に私もセルフチェックをやってみたのですが、矯正をしているので当てはまる項目は1個だけでした。矯正前の私のように、かみ合わせがおかしいなと思っている方に、どのような治療方法があるのか教えていただけますか。

桃沢先生:
はい。こちらのセルフチェックは、歯だけにフォーカスしていません。顎の動き、筋肉への影響などもチェックしていますので、普段自分が気付かないこともあると思います。かみ合わせの欄に“はい”が多い方は咬合に問題があるかもしれません。矯正の方法としては、表側に針金をつける、裏側に針金をつける、歯茎の骨にチタン製のネジを入れて歯を引っ張るなどがあります。補助装置もいろいろあります。大事なのは、どこに歯を持っていくか。その設計図どおりに歯を動かせる装置であれば、基本的にはどの装置を使われてもいいと思います。ただ、装置によっては発音に影響したり、見た目に影響したりと、特徴があります。患者様の性格やライフスタイルに合わせて選ばれたらいいと思います。

眞鍋さん:
私はマウスピースを使うインビザラインで矯正していますが、これならやれるなと思いました。マウスピースを固定するために歯に突起を着けるのですが、この程度だったら大丈夫だなと。

桃沢先生:
マウスピース型の装置は、患者さんが装着してくれないと歯が動かないので、がんばってください。

眞鍋さん:
そうなんですよね。1日に20時間以上装着するって、確固たる意志が必要だなと思いました。

桃沢先生:
その代わり、自分の努力がダイレクトに治療結果や治療期間に影響してくるので、やりがいがあると思います。

眞鍋さん:
2週間に1回、マウスピースを変えていくのですが、最初はきつくてガチガチに感じていたものが、2週目になるとすごくゆるくなってくる。そこで、本当に歯が動いているんだなと実感できます。全40プレートあって、30まできたときは感動しました。

桃沢先生:
インビザラインはグラフィックのシミュレーションと歯並びを比較できるのもおもしろいですよね。シミュレーションどおりに動いていることをチェックできるのは患者さんの励みになりますね。

眞鍋さん:
はい。費用はかかりましたが、どんどんよくなっていくのは嬉しいです。審美治療って自己負担なので、高額になることが多いと思うのですが……。ワイヤー矯正やマウスピース型矯正の相場ってあるものなんでしょうか?

桃沢先生:
地域によっても少し違うと思うんですが、表側のワイヤー矯正でいうとだいたい80万円から100万円くらいでしょうか。インビザラインは少し幅があって、60万円から100万円くらい。裏側のワイヤー矯正は技工料がすごくかかるので、110万円から130万円くらいかかるところが多いです。

眞鍋さん:
なるほど。だいたいの相場がわかっていれば、極端に安いと何かおかしいかも? と思った方がいいですね。少し幅があるにしても、参考になりました。

chapter03 今からでも遅くない! 大人になってから始める歯科矯正治療
眞鍋さん:
マスクをする日常となり、歯科矯正を受ける人が多くなっていそうですが、実際いかがですか?

桃沢先生:
増えていると思います。マスクをしているので表側のワイヤー矯正でもいいという方もいらっしゃいますよ。

眞鍋さん:
矯正治療は、大人になってからでも遅いということはないんですよね?

桃沢先生:
はい。早期治療で子どものときに矯正を勧める先生もいらっしゃいますが、私はどちらかというと、自分の価値観で歯をどうしたいかを考えるようになってからでもいいと思っています。

眞鍋さん:
先生が特におすすめする矯正方法というと、何になりますか?

桃沢先生:
治療前に患者さんとじっくり話をして、ゴールを設定してから、治療方法を決めるので一概には言えません。シミュレーション含めてしっかり精密に検査して決めていくことが大事ですね。フェイスラインをどうするかというのも正解がないんです。患者さんのキャラクターや年齢によっても治療方法を模索して、満足がいくゴールを目指したいですね。眞鍋さんは矯正治療を経験されて、改めて感じたことはありますか?

眞鍋さん:
本当に大きな変化があったなと、改めて感じます。顔のバランスが変わったことによって気分も変わりました。生活の質も思っていた以上に変わりました。きちんと口を開けてモノが食べられるって、こんなに心地がいいんだって。大きめのハンバーガーを大きな口を開けて食べられるようになったときは驚きました。首や肩といった全身のバランスも、すごく整ってきたと思うんです。矯正してよかったですし、もっと早くやればよかったなって思っています。

桃沢先生:
これから30年後、40年後、50年後と、年齢を重ねられても、やっぱり矯正してよかったなと感じると思います。

眞鍋さん:
私は素晴らしい先生に出会えて満足できていますが、よい矯正歯科の選び方があれば教えてください。

桃沢先生:
わかりやすいポイントとしては、日本矯正歯科学会の認定医や専門医の資格を取っている先生をおすすめします。大学の歯学部を卒業後に、大学病院の矯正診療科に5年以上在籍をしていないと取得できない資格ですので、さまざまな症例に対応できる技術があるという指標になります。医院のホームページを見れば認定医かどうか書かれているので、チェックしてみてください。

眞鍋さん:
私を担当してくれた先生がおっしゃっていたんです。「歯はダイヤモンドよりも価値のあるものだから」って。自分の歯って、欲しくても買えないし、やっぱりちゃんと手をかけてあげないとすごくもったいないと。今、そのとおりだなと実感しています。

桃沢先生:
よかったですね。大人になってからでも矯正治療は可能ですから、気になる方は専門医のいる歯科医院に行ってみてください。まずは相談してみましょう。

編集部より
審美面でも、健康面でも、歯並びとかみ合わせは非常に大事。セルフチェックを行い、当てはまる項目が多かった方は、矯正という治療方法を検討してみては?

つい忘れてしまい…「歯ブラシ」を交換するタイミングはいつか?

望ましい状態の歯ブラシ(左)と交換時期の歯ブラシ(岡井有子さん提供)© オトナンサー 提供 望ましい状態の歯ブラシ(左)と交換時期の歯ブラシ(岡井有子さん提供)

 歯の健康を守るために欠かせない「歯ブラシ」。1日に数回、毎日使うため、少しずつブラシの毛が傷んでいくものですが、交換のタイミングや頻度について迷う人もいるのではないでしょうか。ネット上では「つい交換するのを忘れてしまう」「毛が明らかに開いたら交換しているけど遅いかな」「磨き心地が悪くなるまで使っている」など、交換タイミングは人によってさまざまなようです。

 お口のトラブルを防ぐためにも知っておきたい、歯ブラシの交換タイミングについて、こどもと女性の歯科クリニック(東京都港区)院長で歯科医師の岡井有子さんに聞きました。

1カ月に1回は交換を

Q.歯ブラシの適切な交換のタイミング・頻度はどれくらいでしょうか。

岡井さん「歯ブラシの交換時期は基本的に、1カ月に1度程度です。歯ブラシを選ぶ目安として、(1)毛がたくさん植わっている(2)毛にコシがある(3)子ども用であれば、毛が短い。大人用であれば、子ども用の2倍程度の毛の長さである(4)硬めの毛が植わっていること――が挙げられます。歯磨きには、硬めでコシのある毛が適しているので、コシがなくなってくると清掃性が悪くなります。

歯ブラシの毛が広がって、柄の幅からはみ出しているようなら、1カ月たっていなくても交換時期だと考えましょう。歯科医師から見ると、1カ月より、もっと短いスパンで歯ブラシを交換している人はとてもきれいに歯を磨けている印象があります」

Q.適切な交換タイミングを過ぎた歯ブラシをそのまま使い続けると、歯や歯茎にどのような影響があると考えられますか。

岡井さん「虫歯や歯周病を予防するために最も大切なケアは、ご自宅での歯磨きです。交換時期を過ぎた歯ブラシを使い続けると当然ながら、虫歯や歯周病のリスクが高まります。本来、適切な時期に交換した歯ブラシを使っていれば、歯と歯茎の境目がしっかり磨けますが、毛が広がった軟らかい歯ブラシだと、歯と歯茎の境目が全く磨けなくなります。それにより、歯周病や虫歯のリスクが大幅に高まるのです」

Q.歯ブラシの交換頻度には、毛の硬さ(かたい、ふつう、やわらかい)による違いはみられるのでしょうか。

岡井さん「『かたい』ものは汚れが落ちやすい一方で、歯と歯茎の境目を磨くと知覚過敏になりやすいです。『ふつう』のものは『かたい』ものに比べて汚れが落ちにくいのですが、歯と歯茎の境目を磨くのには適しています。『やわらかい』ものは汚れが落ちにくいものの、歯茎のマッサージには効果的といえます。

毛が軟らかいタイプの歯ブラシの方が傷みやすく、交換頻度も高くなります。ちなみに、私は硬めの歯ブラシで歯と歯の間を磨き、普通の硬さの歯ブラシで歯茎の際を磨くことをおすすめしています」

Q.「歯ブラシを毎回、丁寧に洗っているから、そんなに傷んでいない」という場合も、やはり、先述の適切なタイミングで交換すべきでしょうか。あるいは、丁寧に扱えば、使用期間を延ばせることもあるのでしょうか。

岡井さん「たとえ、丁寧に洗っても歯ブラシの毛は傷みます。また、細菌が繁殖する可能性もあるので、やはり、最低でも1カ月程度での交換をおすすめします」

Q.あまり長く使っていないのに歯ブラシがすぐ傷んでしまう場合、その理由としてどのようなことが考えられますか。

岡井さん「歯磨き時の力の強さに問題があるのだと考えられます。適切な力の強さは、爪の生え際に歯ブラシを当てたときに痛くない程度です。ペングリップで持つのが正しい持ち方です。歯ブラシがいつもすぐに傷むという人は、磨くときの力の入れ方や歯ブラシの持ち方を見直してみましょう」

オトナンサー編集部

歯科医が警鐘、チョコレートより虫歯になりやすい「危険なこと」とは? 覚えておきたい虫歯予防の鉄則

虫歯予防法の進化……プラーク除去だけで虫歯予防は難しい?
なぜ虫歯ができるのかがより詳しく明らかになるにつれ、虫歯予防の方法も時代とともに変わってきました。
■以前の虫歯予防……食後3分以内の歯磨きでプラーク除去を重視

以前は虫歯予防法として、虫歯の原因となる歯の表面に付着したプラークをどれだけ取り除けるのかに重点がおかれていました。

プラークは虫歯菌などの塊です。プラークが歯の表面に付着して表面に穴を開け、それを放置すると歯にも穴が開き、虫歯になるためです。原因となるプラークをなるべく早く歯ブラシでブラッシングして機械的に除去すべきで、それも、できれば食後3分以内に早めに除去すべきと考えられていました。

■近年の虫歯予防……プラーク除去に加えて口内のpHを考慮

近年の虫歯予防法では、従来のプラーク除去法に加え、口腔環境の時間的経過や変化をふまえて行なう方法が推奨されています。食事をすると口内や歯の表面のpHが変化するため、このpH変化を虫歯予防に役立てようというものです。歯磨きも食事の後すぐではなく、1時間程度してからのほうがベターと考えられています

虫歯予防に最適な口腔のpH環境は? 酸性・アルカリ性の歯への影響
口内のpH環境は、唾液の中和成分の働きで常に中性付近を保とうとします。ごく簡単に言うと、pHが酸性になると歯の表面からミネラル分が溶け出して歯を溶かします。アルカリ性になるとミネラル分が沈着して歯石が増えます。
このようにどちらか一方的に傾いてしまうと問題が起こってしまうので、時間とともに唾液が自然に中和してくれる仕組みになっています。さらに酸性状態から中性に戻ろうとする場合には溶けた歯の再生が行なわれます。ちなみにエナメル質が溶けるのは、pH5.5以下がおおよその目安といわれています。

酸性で歯が溶けるといっても1日単位では歯の表面がわずかに脱灰される程度。全く心配はいりません。しかし長期間に渡って中性に戻れないような状態が続くと、歯の表面が酸で徐々に溶かされてしまう酸蝕症になります。酸蝕症はプラークが付着していなくても歯が溶けてしまう状態なのです。

食後の口内環境は酸性のダブルパンチ
酸蝕症は、酸性の食品を口にすることによって直接的に歯が溶かされてしまう状態です。でも大事なことを忘れてはいけません。それは虫歯の原因になるプラークです。実はプラークも栄養源となる糖などを元に酸を産生します。この酸で歯に穴をあけて虫歯を作っていくのです。
このため食事の後は食品自体のpHと糖などを分解してプラークが作り出す酸によって、歯には過酷な酸性環境に陥りやすくなります。すぐに唾液が中和を開始しますが、一度酸性に傾いた状態を中性まで回復するには数時間必要と考えられています。

特にプラーク内部は中和成分である唾液がなかなか入り込むことができないため、酸性状態が続きやすく、プラークが歯に付着していると虫歯になりやすいといわれるのはこのためです。

再石灰化が妨害される! チョコレートより危険な「だらだら食べ」
「唾液」の力によっておこなわれる再石灰化とは、酸性環境で歯の表面から溶け出してしまったミネラルが補充されて、歯が再生されることです。それは食事と食事の間隔が長いほどしっかりと行なわれますが、再生にかかる具体的な時間は、まだしっかりとしたエビデンスがありません。
チョコレートを食べても再生までの時間をしっかり与えれば、問題は起こりませんが、食後の酸性ダブルパンチがいつまでも続くような、ジュースや甘い物、スナックなどの「だらだら食べ」は、歯に酸のダメージが蓄積されてしまいます。しかもだらだら食べたあとに歯磨きをすると、酸によって柔らかくなっている歯を歯ブラシの毛先で傷をつけるトリプルパンチとなります。

科学的にも効果の高い虫歯予防法として、目で確認できるプラーク除去のほかに、口内の酸の影響についてもイメージすることをおすすめします。

▼丸山 和弘プロフィール1995年より臨床一筋の現役歯科医師。歯科大学卒業後、仙台市東邦歯科診療所を経て地域密着型の歯科医師に。小さな子どもの虫歯予防から歯のホワイトニング、お年寄りの入れ歯の相談まで、数多くの症例と日々向き合いながら、虫歯、親知らず、口内炎、歯周病など、歯の健康を守るための情報を数多く発信している。

虫歯がないのに歯が痛い、頬がズキズキする!?「副鼻腔炎」の意外な症状【耳鼻科医が解説】

歯の痛み、頬の痛みの原因は鼻? 意外と知らない副鼻腔炎の症状

虫歯はないはずなのに歯が痛かったり、ぶつけたわけでもないのに頬がズキズキと痛んだり……。こうした症状が続くと何科に行くべきか悩まれるかもしれませんが、耳鼻科で解決することは少なくありません。

これらはいずれも「副鼻腔炎」によくある症状だからです。一般的に蓄膿症と呼ばれることもある副鼻腔炎ですが、黄色く色のついた、ドロドロした、時にニオイを伴う鼻水が出る病気だと思われている方が多いでしょう。

しかし実際には、特徴的な鼻水以外にも以下のような症状がしばしば現れます。

・頭痛

・発熱

・歯の痛み

・頬の痛み

・ニオイが分かりにくい

これらの症状があり副鼻腔炎だと診断がつけば、治療により早期改善が見込めます。

副鼻腔炎の鼻水の特徴・副鼻腔炎ではない鼻水との違い
様々な症状があるものの、特に特徴的なのはやはり鼻水です。副鼻腔炎の鼻水は、先述の通り黄色くドロドロしているのが特徴で、ニオイを伴うこともあります。一方で、花粉症などを始めとするアレルギー性鼻炎の鼻水は、透明でサラサラしています。

医学的な知識がなくても簡単に見分けることができそうですが、2つを合併する場合もあります。

副鼻腔炎の診察の流れ……鼻鏡、レントゲン・CT検査
上記のような症状で副鼻腔炎が疑われる場合、耳鼻科を受診しましょう。まずは診察で鼻鏡で鼻内を観察します。場合によっては内視鏡を使って観察を行います。

この段階で副鼻腔炎と診断することもありますが、鼻内の中鼻道という場所から排膿があったり、頭痛や頬痛があれば、必要に応じてレントゲンまたはCT検査を行って確定診断をすることもあります。

副鼻腔炎を疑っている方、確定診断され不安になっている方へ
ドロドロした鼻水が2週間続いていて、歯の痛みや頬の痛みなどが強いような場合、一度耳鼻科を診察されることをおすすめします。自然治癒を待つより、耳鼻科を受診し早期治療を受けた方が早く治ります。

また、耳鼻科で相談されるときは中鼻道という場所から膿が出ていないか聞いてみてください。この場所から排膿があれば、副鼻腔炎の疑いが高いからです。

▼坂田 英明プロフィール日本耳鼻咽喉科学会専門医。東京大学医学部客員研究員、埼玉県立小児医療センター副部長、目白大学保健医療学部教授を経て、現在川越耳科学研究所クリニック院長。患者さん自らが医療に受け身になるのではなく、能動的に判断、行動して生活できるよう、日々の健康に関する情報発信を行っている。

【歯科医師に聞く】歯周病と診断された…歯を失わないために必要なことを教えて!

歯を失う原因の第1位である歯周病。むし歯と違って自覚症状に乏しいため、かかっていることすら知らずに生活している人も多いといわれています。そんな、国民病ともいえる歯周病への正しい対処法を、「歯周病治療専門クリニックSPIDO」の辻先生に教えていただきました。

[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]

【この記事の監修歯科医師】
辻 翔太先生(歯周病治療専門クリニックSPIDO 院長)
大阪大学歯学部卒業。同大学附属病院で臨床経験を積んだ後に渡米し、歯周病、インプンラントの専門的な治療に従事。帰国後の2019年、大阪府大阪市に「歯周病治療専門クリニックSPIDO」開院。アメリカ歯周病学会認定歯周病専門医、アメリカ歯周病学会ボード認定歯周病専門医。歯周病に関する著書・寄稿多数。

なにはなくとも歯科医院でチェック
編集部:
歯周病にかかると、歯を失うこともあるのですよね?

辻先生:
はい。歯を支える顎の骨が溶けてしまうわけですから、やがて抜けてしまうでしょう。歯周病は自覚症状が出づらい病気なので、「見つかったときには、時すでに遅し」の傾向があります。したがって、個人的には、がんに近いような印象をもっています。

編集部:
歯を失わないためには、なにが必要でしょうか?

辻先生:
「定期的なメインテナンスで、歯周病の早期発見に努める」。これに尽きると思います。ただし現状は、むし歯や知覚過敏のような「痛みを伴う主訴」で来院され、そこで初めて歯周病に気付くケースがほとんどです。ですから、口内炎や違和感などなんでもいいので、まずは歯科医院の門をくぐっていただくことですね。

編集部:
歯周病は「治すことができない」と聞きます。

辻先生:
自費診療を含めれば治療可能な病気ですが、健康保険診療の範囲だと難しい場合もあると思います。それ以上、病気の進行をとどめる程度の処置しかできない場合もあります。さらに、健康保険診療の立て付け上、「1つの歯ぐきにつき1カ所」以上検査するというルールになっています。

世界的なスタンダードからしたら“1つの歯ぐきにつき6カ所”の検査が必要なので、見逃しを生じさせているのかもしれません。根本治療に関しては、保険か自費かの治療方法も含め、「医師による差」が生じやすい印象です。

編集部:
「治すことができない」ではなく、「そこまで手が回らない」ということですか?

辻先生:
言い方の難しい部分ですが、当院のような「歯周病しか取り扱っていない専門歯科医院」が現時点で皆無であることは確かです。保険診療は低コストな反面、じっくり時間をかけて取り組めない側面があります。このような理由から、「医師による差」が大きくなってしまうのでしょう。

編集部:
ちなみに、初期か重篤かの境目って自分でわかりますか?

辻先生:
素人による誤った判断が怖いので、ここは歯科医師に任せていただきたいところです。「自分は歯周病にかかっていない、かかるはずがない」という誤解ですら、頻繁に生じています。歯周病は“骨が溶ける病気”ですから、見た目からは判断しづらいはずです。自覚症状の有無に関係なく、「歯科医師に自分の歯と歯ぐきをみせる」ことが重要です。

歯周病が重篤化するほど治療費は高くなる
編集部:
定期的なメインテナンスって、痛くないですか?

辻先生:
ここでいう「メインテナンス」とは、治療後のことですよね。健康か、治療を経て健康な状態になったのであれば、痛くはありません。一方で、歯周病によって炎症が起きている患部に検査用の針などを当てられると、やはり痛みます。

編集部:
治療中の痛みはどうでしょうか?

辻先生:
歯ぐきの奥までしっかり洗わないといけませんから、痛みが出ないように局部麻酔をして治療します。また、重篤なケースでは、歯ぐきを開けておこなう再生治療が必要になります。いずれにしても、痛みを感じないようにする局所麻酔を用いますので、ご安心ください。

編集部:
そのような場合に、保険は効くのでしょうか?

辻先生:
最初におこなわなければいけない初期治療は保険の対象に含まれます。3割の自己負担として、おおむね1回2000円です。他方、歯周病の再生治療は、使う材料によって保険診療と自費診療に分かれます。一般に、重篤化すればするほど自費の可能性が高まるとお考えください。やはり、歯周病になる前の歯肉炎の段階で治療をはじめるべきでしょう。

編集部:
再生治療の方法は、どの歯科医院でも一緒ですか?

辻先生:
まずは、再生治療を扱っているかどうかですね。扱っていたとしても、組織の再生に使う材料が、医師の選択により変わってくると思います。昔からの定番を重視するのか、臨床例こそ少ないものの最新の材料を選ぶのか、といった違いです。新しい材料のネックは、副作用・合併症などの長期的な観察が十分にはできていないことでしょう。

編集部:
歯科医院の選び方についてアドバイスがあれば教えてください。

辻先生:
「写真や動画を撮っている歯科医院」を推奨します。もしかすると、ご自身の成果を発表するための準備かもしれません。「自らの治療内容を他人の目にさらせられる」覚悟があるとするなら、信頼してもいいのではないでしょうか。

最も身近にあった「必要なこと」
編集部:
自宅でやるセルフメインテナンスの質も問われそうですね。

辻先生:
いわゆる「染め出し液」を有効活用していただきたいですね。赤い液体で、口に含むと、歯の汚れのある部分が赤く反応します。ブラッシングがきちんとできているかどうかの客観的な判断材料になるでしょう。通販などでの入手が可能です。

編集部:
避けるべき「あるある」があったら、教えてください。

辻先生:
歯磨きの際、やみくもにゴシゴシこすることでしょうか。ブラッシング圧が強すぎると、かえって歯ぐきを傷めつけかねません。歯ブラシを、ジャンケンのグーで握るのではなく、ペンのように3本の指でもち、適度な力で歯磨きをしてください。なお、歯磨き粉の種類は問いません。適切な歯磨きができているかどうかを重視します。

編集部:
逆に、取り入れた方がいい習慣はありますか?

辻先生:
好ましい生活習慣の全てでしょうか。歯周病と生活習慣病は、大きく関わっています。バランスの良い食事、十分な睡眠、飲酒や喫煙習慣の見直しなど、良い生活習慣を心がけることがそのまま歯周病予防になると言ってもいいでしょう。

編集部:
最後に、読者へのメッセージがあれば。

辻先生:
歯周病は、「生活習慣の不規則な方に多い」という印象があります。歯や歯ぐきだけに着目していても、防ぎきれないのではないでしょうか。ぜひ、専門的な知見を有する医師と、さまざまな観点から話し合ってみてください。それが、「歯を失わないために必要なこと」だと思います。

編集部まとめ
どうやら、歯周病と診断されてからできることは少なそうです。むしろ、「どれだけ早く、歯周病と診断されるか」が重要なのではないでしょうか。顎の骨が溶け出してからでは遅すぎます。1本でも多くの歯を守るためにも、「歯周病は誰もがかかる国民病」という意識で、予防に努めてください。仮にインプラントなどで補てつしようとしても、溶けた顎の骨では、「ヌカにクギ」となってしまいます。

【口内炎】は飲み薬で治すことができる!

口内炎の飲み薬はビタミン剤

口内炎を治す薬には、いくつか種類がありますが、飲み薬の場合は、ビタミンB2やB6を配合した「ビタミン剤」が用いられることが多いようです。ビタミンB2やB6は、どちらも皮膚や粘膜の健康維持に欠かせないビタミンで、不足すると、口内炎ができやすくなります。

ただしビタミン剤は、体に取り込まれてから、全身に作用するので、口内炎に直接作用するわけではありません。また、ビタミン剤で効果があるのは、ビタミン不足が原因の口内炎だけです。ビタミン剤を飲んでも、口内炎が改善しないという人は、ほかの原因で口内炎になっている可能性が高いので、治療法を変えてみましょう。

ビタミン剤で効果がないなら

口内炎は、何らかの原因で口腔内に細菌やウイルスが増殖し、炎症を起こすことで発症します。このため、口内炎を治すためにいちばん大切なのは、口の中を清潔に保つことです。

口内炎を早く治したいのなら、食後の歯磨きを徹底し、雑菌が繁殖するのを防ぎましょう。また、殺菌効果があるうがい薬やアルコールフリーのマウスウォッシュなどを使って、口の中を定期的に殺菌するのも効果的です。うがいは、毎食後だけでなく、起床直後や帰宅後、寝る前などにもすると良いでしょう。

そして、うがいをするときは、喉でうがいをするのではなく、口内炎の患部を洗浄するような感じで、ブクブクうがいをすること。1回につき、20秒ほどのブクブクうがいを、3回繰り返し行うのがオススメです。

ただし、口の中に傷がある場合は、殺菌成分が細胞にダメージを与えてしまい、傷の修復を遅らせる可能性があります。うがい薬やアルコールフリーのマウスウォッシュでうがいした後は、水でもう一度うがいをし直したほうが良いでしょう。

セルフケアを行っても、口内炎がなかなか改善しないという場合は、ほかの病気の可能性もあります。一度、耳鼻咽喉科などの病院に行って、医師に相談してみましょう。

歯科医が教える「歯周病を予防する歯磨き」 歯間ブラシの併用も

 電動歯ブラシは「手で磨くより早く、効率的に歯の汚れを落とせる」メリットがあるとされるが、電動歯ブラシを使ってさえいれば歯や口腔の健康を維持できるわけではない。中には歯周病を悪化させてしまうケースも報告されている。

 日本歯周病学会のホームページにある「歯周病Q&A」コーナーには、〈電動と普通の歯ブラシはどちらが歯周病にかかった歯には良いのでしょうか?〉との設問がある。

 回答欄には、〈電動歯ブラシだけでお口の中を隅々まで磨くのは難しいですし、長期に使用することにより歯が余分に磨り減ってしまう可能性があります〉とあり、電動歯ブラシのリスクが指摘されている。

 では、歯周病予防や治療の基本となる「正しい歯磨き」はどんな方法か。日本歯周病学会元副理事長で日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座教授の沼部幸博氏がアドバイスする。

「歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を入れ、力を入れずに1か所で20回くらい、左右に小刻みに振動させます。この時、力が入りすぎないように歯ブラシはグーで握らず、ペンのように持ち、細かく力をコントロールします。歯周病の患者さんは、歯茎が腫れている場所と腫れていない場所、歯間の隙間が多い場所と少ない場所があるので、特に注意が必要です」

 歯ブラシのサイズや硬さはどう選ぶべきか。

「サイズは前歯2本分相当のものであれば問題ない。ブラシの硬さは歯茎が傷ついてすり減らないよう、健康なら『普通』を、歯周病がある場合は『やわらかめ』を勧めます」(同前)

 キーデンタルクリニックの小林保行院長は、歯ブラシに加え「糸状のデンタルフロスや歯間ブラシの併用が必要」と強調する。

「歯ブラシで磨けるのは7割と言われ、プラーク(歯垢)を取り切るにはデンタルフロスや歯間ブラシの併用が不可欠です。欧米に比べ、日本では男女ともに使用率が非常に低い。歯ブラシで完璧に磨いたつもりでも、フロスを使うとプラークが残っています。少なくとも、1日1回はフロスや歯間ブラシをしてください」

 ただし、歯間ブラシはサイズがいくつにも分かれており、合わないものを無理に使うと歯と歯の間の歯茎が傷ついて下がってしまうリスクがある。適正は「スカスカでも太すぎでもなく、軽く抵抗を感じながら入るくらいのサイズ」(沼部教授)だという。

 さらに、電動歯ブラシを使う際の注意点として小林院長が掲げるポイントは次の4つだ。

(1)歯にぶつかったりしないよう、スイッチは口に入れてからONにする
(2)電動歯ブラシはどのタイプもパワーがあるので、軽く当てる
(3)当てる角度は歯に対して90度、歯と歯茎の間は45度
(4)手でゴシゴシ動かさず、当てるだけ

 また、電動歯ブラシを使う際は、歯磨き粉選びも大きなポイントとなる。

「電動歯ブラシで研磨剤入りの歯磨き粉を使うと歯が削れて知覚過敏を引き起こす恐れがあります。歯周病が進行し歯茎が下がると、硬いエナメル質で覆われていない歯根部分がどんどん削れてしまう。電動歯ブラシ時はジェルタイプを潤滑剤のような感じで使うとよいでしょう。量は米粒大で十分です」(小林院長)

 加えて、電動歯ブラシのブラシ部分は「最低でも2~3か月に一度は交換しないと清潔が保てないうえ、毛先が開くことでブラシが口内で暴れ、歯肉を傷つける可能性がある」(同前)という。

 道具は正しく使ってこそ、効果を発揮するのだ。

歯科技工士が証言 歯科医が撤去した銀歯を再利用する例も

歯科治療には欠かせない、クラウン(被せもの)や入れ歯などを製作するのが「歯科技工士」だ。重要な役割を担っているにもかかわらず、低収入、長時間労働を強いられ、その結果、銀歯の精度が低下して虫歯の温床となる等、患者にも多大な影響が及んでいる。

 今回、東京、名古屋、大阪、神戸、福岡の歯科技工士から話を聞いたところ、共通して歯科医の理不尽な要求や、パワハラまがいの言動も挙った。

 技工指示書に疑問点があったので、歯科医に質問したところ、「機嫌悪くなって、『そんなの知るか! 出て行け!』って言われたことがあります。トラブルがあったわけでもないのに、その仕事は全部お返ししました」(神戸の歯科技工士)という。

 最も多かったのが、『再製』と呼ばれる作り直しを無料で要求されるケースだ。

「技工士を歯科医の奴隷と勘違いしている歯科医がいます。“クラウンの装着に失敗したから、やり直して下さい。再製です”とある歯科医が要求してきました。2回作ったら私らの利益はゼロです。そう言っても“他のラボは黙って作り直してくれる”って。腹に据えかねて“お前らの犬ちゃうぞ!”とケンカして関係は切れました」

 銀歯の場合、技工の精度が低かったり、長期間の経過で脱落するケースがある。そうした銀歯が、患者には知らされないまま“再利用”されているとの驚くべき証言もあった。

「歯科医が撤去した銀歯を集めて、技工所で溶かして再利用させるケースは沢山ありますよ。これは溶かした時に、とても臭い匂いが発生するんです。高温だから、雑菌はなくなるだろうけれど、私はやりたくはない。先生としては、保険で同じ額が請求できるから、金属代が丸々浮いて儲かる。本当はダメなはずですけど、業界の暗黙の了解です」(50代歯科技工士)

 保険の銀歯に使用されている金銀パラジウム合金は、価格が高騰して10年前の2倍になっている。これに目をつけた一部の歯科医が、許されざる不正行為を行なっているとの証言も複数得られた。

「技工指示書では金銀パラジウムと記入して、ニッケルクロム合金を使って銀歯を作らせる歯科医がいます。金銀パラジウムで保険の請求をするので、安いニッケルクロムとの差額が儲けになるわけです。可哀想なのは気づいていない患者さんです」(匿名・歯科技工士)

 クラウンの場合、診療報酬が定めた金銀パラジウム合金の材料料は4930円。一方、ニッケルクロム合金はわずか100円なので儲けは大きい。この手口については大阪、兵庫、九州で同様の証言があった。

 忘れてならないのは、ニッケルクロム合金の銀歯が、患者に様々な不利益をもたらす可能性だ。

 ニッケルクロム合金は、普通の銀歯に見えるが、極めて固く、噛み合わせの歯に悪影響を及ぼす可能性があり、ほとんど使用されていない。発がん性を指摘する専門家もいるし、異種金属によって発生するガルバニー電流の原因にもなる。こうした不正は一部の歯科医だと考えられるが、今も続いていることは確かだ。

「保険の不正請求になる行為なので、加担したくないが、仕事が切られるので断れない」(40代歯科技工士)

歯の磨きすぎは逆効果? 歯周病予防には「弱い力でマッサージ」が重要

 幼い頃、学校で「1日3回、3分間、食後3分以内に、しっかり歯を磨きましょう」と教わった人は多いだろう。関西在住の平尾美恵さん(仮名・42才)もその1人だ。虫歯予防のため、子供のときから歯磨きを熱心に行ってきたという平尾さんだが、40代になってから、歯の不調に悩むようになったという。

「年齢とともに歯茎がやせてきたので、それまで以上に時間をかけて歯を磨くようにしていたんです。子供の頃、『歯と歯茎の間をしっかり磨きましょう』と習ったので、歯の根元は特に丁寧に磨いていました。ところが、ある日、チョコレートを食べたら激痛が走ったので虫歯になったと思い、歯医者へ駆け込んだんです。しかし医師から『歯磨きのしすぎ』と注意されて混乱してしまいました」

 一体、どういうことなのか疑問に感じてしまうが、実は、大人の歯のトラブルではよくあること。さらに、その異変は思いがけない重大な病気へと転じる恐れがある。

歯周病予防は磨くよりマッサージ

 まず、問題なのは、正しい知識を持たないまま、「歯は、磨けば磨くほどいい」と勘違いしていることだ。神奈川歯科大学教授で、『ボケたくなければ「奥歯」は抜くな』(青春新書)著者の山本龍生さんが指摘する。

「よくある間違いは、歯ブラシを左右に大きく動かす磨き方です。これを続けていると、歯茎に強い負担がかかり、歯茎がやせて歯の根元が露出してしまう。歯茎がやせるのは加齢だと思っている人が多いですが、原因の大部分は間違った歯磨きによる圧力です」

 歯は、人体で最も丈夫な組織だ。それは、表面を強固なエナメル質が覆っているためだが、歯根にはエナメル質がない。エナメル質よりも柔らかい「象牙質」でできているため、力を入れて歯ブラシで磨くと削れてしまうことがある。

 圧力に加え、磨き方のクセも歯茎がやせる原因になると話すのは、山田歯科医院院長の山田豊和さんだ。

「『必ず奥歯から磨く』という患者さんは、片方の奥歯だけ象牙質が削れていました。磨き始めの場所がいつも決まっている人は、そこが削れてしまうことがある。磨き始めは歯磨き剤の濃度が濃く、研磨剤の影響で、すり減りやすいのです」

 誤った歯磨きは取り返しのつかない健康被害につながる。

「力任せのブラッシングが歯茎を傷つけ、歯茎が下がるにつれて歯根が露出し、象牙質が削れた状態を『楔状欠損』といいます。これは『象牙質知覚過敏症』を招き、ひどい場合は神経を取ることになります」(山田さん)

 歯の神経を取ると、象牙質の代謝ができなくなるため歯に栄養が行き届かず、もろくなって、将来的に抜歯につながる可能性が高くなる。

 歯は、失えば失うほど認知症や寝たきりになるリスクが高まることが医学的に立証されており、歯を抜くことは健康寿命を縮めることに等しい。

 では、どんな歯磨きが正しいのだろうか。

「毛先の硬さが『ふつう』の歯ブラシを使って、やさしくブラッシングするのが基本。歯に対してブラシを真横にし、細かく動かすのが正しい歯磨きのやり方です。歯磨き剤に含まれる研磨剤は歯を削ってしまう原因になるので、磨き終わった後の仕上げにつける。その際、歯磨き剤は高濃度フッ素が入ったものでなければ、虫歯予防になりません。おすすめは、寝る前にフッ素入りのマウスウオッシュを使うことです」(山本さん)

 また、山田さんはこうアドバイスする。

「やみくもにブラッシングするのではなく、手鏡で汚れを確かめながらじっくり磨きましょう。最近は電動歯ブラシも人気ですが、結局磨ける部分は手磨きと変わりません。

 さらに、虫歯予防のためには食生活の改善も重要です。砂糖を摂りすぎている人は、どれだけ歯磨きしても虫歯になりやすく、逆に、砂糖を摂らない人は磨き残しがあっても虫歯になりにくい傾向があります」

 若いうちは主に虫歯で歯を失うが、年齢を重ねると歯周病の方が問題になってくる。全国抜歯原因調査(’18年)の結果を見ると、50代以降の抜歯原因は、虫歯より歯周病の方が多数を占めるようになる。

「テレビCMなどの影響で、『歯ブラシが歯周ポケットの奥まで届く』というイメージを持っている人が多いですが、歯と歯茎の間にある歯周ポケットの溝は狭くて深く、歯ブラシで磨くことは不可能です。

 歯周病菌は血中の鉄分をエサにしているため、歯茎からの出血を止めると歯周病菌が大幅に減ることがわかっています。磨こうとするのではなく、歯ブラシの毛先をあてて弱い力で歯茎をマッサージすると、歯茎の細胞分裂が2~2.5倍ほど活発になって歯茎の出血が止まる。それが歯周病の改善につながるのです」(山本さん)

 逆にいえば、歯周ポケットをきれいにしようとしてゴシゴシ磨いていると、歯茎を傷つけて出血する原因となり、歯周病菌も増やしてしまうことになる。

 歯周病菌は心臓疾患や脳血管疾患、心筋梗塞、糖尿病といった全身疾患の割合を増加させるほか、認知症のリスクを高めることも近年の研究で明らかになっている。

 力任せの歯磨きは、虫歯以上のリスクがあることを覚えておきたい。

歯垢除去率アップ! 今人気の「歯間ブラシ・デンタルフロス」おすすめ3選!

「歯間ブラシ・デンタルフロス」は、歯磨きだけでは落としきれない歯間の汚れを除去してくれる便利なアイテム。

面と歯ぐきの間にできるスペースは人によって異なり、ここのスペースが狭い人には「デンタルフロス」、広い人には「歯間ブラシ」がおすすめと言われています。それぞれさまざまなタイプの製品が展開されているため、自分に合った商品が選べます。

 本記事では「歯間ブラシ・デンタルフロス」のおすすめ商品を紹介していきます。

●おすすめ1:クリニカ アドバンテージ デンタルフロス Y字タイプ
 「クリニカ アドバンテージ デンタルフロス Y字タイプ」は、初めての方にも使いやすいY字型のデンタルフロス。挿入しにくい奥歯の歯間にもラクに入って歯垢(プラーク)を落とします。洗って繰り返し使える高強度フロスが採用されています。

●おすすめ2:REACH リーチデンタルフロス ワックス
 「REACH リーチデンタルフロス ワックス」は、歯間に入りやすいワックス加工の定番フロスで、極細繊維が優しくきれいに歯垢を除去します。フロス初心者の方や、歯間がせまい方におすすめの商品です。

●おすすめ3:オーラルケア フロアフロス
 「オーラルケア フロアフロス」は、歯周病予防のための歯ぐきに優しいデンタルフロス。 歯肉に痛みを与えることなく縁下(歯ぐきよりも下の部分)のプラークを残さずからめ取ります。だ液の水分や摩擦によって繊維がフワッと広がるように加工されていることが特徴です。

フッ素の虫歯予防効果は有効 正しい歯磨き・すすぎ方は

中高年世代はすでに治療済みの歯が何本もある。それでも「予防歯科」を始める意味はある、ということを説明しておきたい。

 こんな研究がある。日本ヘルスケア歯科学会の岡恒雄氏は、60歳から79歳までの患者を対象に、定期的なメンテナンスを受けた群と、メンテナンスを受けなかった群に分けて、10年間に失った歯の数を検証した。

 60代では、両者にほとんど差はなかったが、70代のメンテナンス群は、1.1本喪失に対して、非メンテナンス群は4.4本と、実に約4倍の差が出た。つまり、中高年世代にとっても、予防歯科は効果を期待できるのだ。ただ、同学会・代表の杉山精一氏は、こんな言い方をする。

「予防歯科という言葉だけが一人歩きしている感があります。予防歯科とは何なのか、という定義づけはされていません。

 虫歯には、食習慣、プラークコントロール(*注)、唾液、いろんな要因が絡んでいますから、歯科医と一緒に、どこに要因があるか考えて対応することが大事です」

【*注/歯磨きやフロスなどで、プラーク(歯の表面に強固に付着しているネバネバした虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊)の増殖を抑えること】

◆中高年世代に忍び寄る「根面う蝕」リスク

 歳を重ねることで、新たに生まれるリスクについて知っておきたい。若い時よりも歯が長くなった、と感じることはないだろうか?

 それは、強いブラッシングや加齢によって歯肉が下がってしまったことが原因。本来、歯肉に隠れている歯の根面は「象牙質」なので、虫歯になりやすい。ここが虫歯になることを「根面う蝕」という。

「根面は、pH6.5くらいで脱灰(溶ける)しますので、虫歯ができやすい。対策は、基本的にブラッシングと歯間ブラシ。そして、フッ素入り歯磨き剤で、フッ化物をきちんと供給して、再石灰化を促すことです」(杉山氏)

 フッ素による虫歯予防の有効性は、科学的にも立証されている。ただし、「急性中毒、発がん、ダウン症」等の原因だとして抵抗感を示す人もいるが、因果関係を証明するものはない。

「歯科医でも、フッ素を使うのはよくないと考えている人がいます。でも、フッ素入り歯磨き剤の効果は大きい。もちろん過剰使用はダメで、用法・用量を守れば安全です」(杉山氏)

 歯磨き後は、しっかり口をゆすぐのが常識だったが、現在メーカーでは、フッ素成分を口中に残すために、1回だけ軽くゆすぐように指導している。

 患者自身が常に最新の知識を学ぶことが、歯を守るためには必要なのだ。

●レポート/ジャーナリスト・岩澤倫彦(『やってはいけない歯科治療』著者)

知ってる?過食症と虫歯の深い関係

遺伝的・体質的要因で虫歯になりやすい人がいる一方、病気など後天的な理由で歯が弱くなってしまう人もいます。

過食症もその原因の1つ。一見、過食と虫歯は関係がないように思えますが、実は深い関係があるのです。

◆嘔吐の繰り返しが歯を弱くする

過食症とは正しくは「神経性大食症」と呼ばれ、自分の意志では暴食をコントロールできない精神疾患です。患者の多くは、食べた後にそれをなかったことにしようとして下剤の使用や嘔吐を繰り返します。

この、暴食後の代償行為として嘔吐を繰り返すタイプの人は、徐々に歯を弱めることになります。嘔吐する際に胃から逆流する胃液は、pH1.0の強酸性の液体だからです。

繰り返し嘔吐することで、胃液により歯のエナメル質が徐々に溶かされて弱くなってしまうのです。

胃液に限らず例えば酸っぱい食べ物や飲み物など酸性の強い食品を継続的に摂取し続けることでもこのような症状が起こるのですが、これを「酸蝕歯」と呼びます。

◆ひどい場合は抜歯になることも

酸蝕歯では、エナメル質が溶けることで歯の表面の凹凸がなくなったり、歯が薄くなって黄ばんだりします。黄ばむのは、エナメル質の下の層にある象牙質が透き通って見えてくるためです。

酸蝕歯が進行すると冷たいものが歯にしみる知覚過敏になったり、細菌感染しやすくなって虫歯になったりします。ひどい場合には歯を抜かなければならなくなることさえあるので、早めに歯科医で治療を受けることが大切。

まだ歯への影響が小さい段階なら、歯を強くする薬剤を塗布して症状を軽減させます。

歯への影響が大きい場合には、虫歯の治療と同じようにレジンという接着性の素材を歯のエナメル質が溶けた部分に埋め込んで充填します。

◆歯についた酸を洗い流す

とはいえ、過食症が原因で酸蝕歯になった場合、歯科医で治療しても効果は限定的です。根本原因となっている過食症を治さない限り、再び酸蝕歯になってしまうからです。

過食症は難病の1つと見なされているとおり、簡単に治癒できる疾患ではありません。専門家の助けを借りて治療に専念することが必要です。

過食症が改善するまでは、やはり嘔吐を繰り返してしまうことが予想されます。

その場合にできる対策としては、吐いた後口を水ですすぎ、歯みがき粉をつけないで歯をみがくことです。これで歯の表面についた胃酸を洗い流すことができます

知らないとダメ!インプラント自慢医師の危険

「インプラントがうまい」と自慢する歯医者は大間違い

 これまで『週刊ポスト』では、ジャーナリスト・岩澤倫彦氏による歯科治療のタブーに斬り込むシリーズ記事を度々掲載してきたが、全国の歯科医たちから賛否両論が噴出している。

 そこで今回は、編集部や筆者に意見を寄せた、あるいはネット上で記事の批評を掲載していた歯科医を緊急取材。論争テーマへの率直な意見と、歯科業界の実状を本音で語ってもらった。

それによって、見えてきた問題の核心とは──。ここでは高額治療で知られるインプラントについての見解を聞こう。

 その前に、今回、本シリーズへの見解を聞いた歯科医を紹介する。

 東京の小林優氏(村岡歯科医院・院長)は、歯を残す決め手となる根管治療のエキスパート。最新鋭のマイクロスコープなどを駆使、海外の歯科医との交流も深い。

記事の主旨に一定の理解を示しつつも「歯科医の多くが、一生懸命にやりたくてもできないほど追い詰められている時代」と語る。

 広島の三好龍治氏(三好デンタルオフィス・代表)は、自分自身が受けたい治療を目指した完全自由診療のクリニックを経営する。「かなり正確なことが書かれています。歯科医療、歯科医師に対する不信感が爆発する日が近いと感じます」と連載記事を評す。

 低く抑えられた診療報酬、歯科医の過剰状態という悪条件が重なり、歯科医院の経営は厳しい時代になっている。こうした中で目立つようになってきたのが、「格安」を売りにしたインプラントセンターの存在だ。

 東京・京橋でクリニックを経営する小林氏は意外な事実を証言した。

「私のクリニックに来ている患者で、インプラント治療を受けて経過のよい人は一度も見たことがありません。レントゲンには必ずインプラント歯周炎などが確認できます。

 ある女性患者は某インプラント学会の理事であり認定医の歯科医に手術を受けましたが、インプラント義歯が外れてしまう。それを相談しても、取り合ってもらえないそうです。

 別の患者は、義歯とインプラントの接着セメントが歯茎まではみ出して、歯肉炎になっていました。

 それに人間の歯と顎の骨の間には、歯根膜というクッションのような層があります。しかしインプラントはチタン製ボルトを直接骨に打ち込むので、噛んだ時の強い衝撃をそのまま受けることになります。インプラント治療は完成された治療技術とはいえないと思います」

85才でちくわが噛めない人の生存率は何パーセント?【歯学部教授が解説】

100才以上が8万人を突破した日本では、歯を守ることが社会的な課題となっている。なぜなら歯を失ったまま義歯をつけていない人が認知症になるリスクは、歯が20本以上ある人の1.9倍も高いのだ。健康長寿のためには、きちんと噛める歯が不可欠。そのために知っておくべき最新情報とは──


A子さんが 思い知らされた「噛めなくなる未来」とは…

 東京都在住のA子さん(46才・パート主婦)は、年明けに緊急事態宣言が再発出されたことで、昨年春から気になっていた、ぐらつく歯の痛みを放置し、がまんしていた。「歯痛は命にかかわる病気ではないので不要不急と思い、通院も自重していました。ただ、その後のチャンスに行かなかったのが痛恨のミス。あのとき、早めに診てもらっていたら‥‥」(A子さん・以下同)


 その後、3月に会社の歯科検診を受けたところ、虫歯と歯周病が進行していた。「抜かざるを得ない歯が数本あり、歯周病も進行していたのですが、私は顎の骨が小さくてインプラントが難しいらしく、最初は部分入れ歯にすることになりました。このまま歯周病が悪化すると、50才手前で総入れ歯にしないといけない可能性もあると言われて目の前が真っ暗に。噛めなくなったらどうしよう…」

85才でちくわが噛めない人の5年後の生存率は?

 15年間にわたり「咀嚼(そしゃく)力と寿命の関係」を追跡調査(2002~2017年)した疫学調査(※1)では、次のような結果が報告されている。


85才の時点で、『こんにゃくとちくわを噛んで食べられない』と、回答したすべての男性を追跡調査したところ、5年半後には生存率が0%でした。きちんと噛めないと栄養にも偏りが出て、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)と寿命に、いかにマイナスかがわかります」

 そう鶴見大学歯学部教授の花田信弘さんは説明する。

「噛む力」と「顎の丈夫さ」が重要

「実は、8020運動(※2)の目標値は2016年に達成され、歯は本数よりも“噛む力”が次なる課題となりました。下グラフのように、60代の4人に1人が以前よりも噛めなくなり、政府目標を下回っています。そのまま噛む力が弱くなり、85才でこんにゃくやちくわが噛めなくなって、寿命が縮む人がいる一方、入れ歯で板チョコを噛み割れる117才の女性もいます。その違いは、噛む力のほか、歯の根を支える顎の丈夫さにあるのです」(花田さん・以下同)

85才でちくわが噛めない人の5年後の生存率は0%! なんでも噛んで食べられる人の割合の表

合わない義歯も食べられなくなる原因に

 花田さんによると、上の歯よりも下の歯の根を支える土台となる下顎が重要だという。「骨は使うことで造骨細胞が活性化します。そのため、よく合った入れ歯や、歯根膜を残した歯で噛むことが骨の維持にきわめて重要です。合わない義歯であまり噛まずにいると、顎の骨が徐々に溶けて平らになり、顎骨骨折が起こる。すると、食べられなくなってしまいます」


 人生100年時代。健康で生き生きと年を重ねるために、歯を守る知識を得ておこう。

(※1)岩手県歯科医師会と鶴見大学の共同研究。岩手県内の85才343人(男性138人、女性205人)を15年間追跡調査した。

(※2)80才で20本の自分の歯を残すことを目標とする「8020推進財団」が、1989年に始めた運動。

教えてくれた人

花田信弘さん/鶴見大学歯学部 探索歯学講座教授

口腔衛生研究の第一人者。3DSという除菌治療法を開発。歯科大学などで客員教授や非常勤講師を務める。

インプラント・ブリッジ・入れ歯のメリットとデメリット|歯をなくしたときの3大治療法を医師が解説

もしも虫歯や歯周病になってしまったら、どのような治療法があるのか。そして、いよいよ歯を失ってしまった場合には、どんなカバーリング方法があるのだろうか。保険適用でできること、保険適用外の自由診療でできることなど、「きちんと噛んで食べる」ための気になるポイントを整理してみよう。


歯をなくしたら「ブリッジ・入れ歯・インプラント」どれがいい?

 歯を失う主な原因は歯周病、虫歯、破折(はせつ)の3つ。

歯を失う主な原因の表

歯を失う原因のトップ3で84%を占める。このうち破折は虫歯が進行して神経を取る治療(根管治療)を行った後などに起こりやすい。

「トップの歯周病対策は、自宅での歯磨きや歯間フロスとともに、3か月に1度、予防歯科で定期健診をしてもらう、この合わせワザが効果的です」(花田さん・以下同)

 疾病保険としてスタートした日本の公的医療保険は、これまで予防目的の歯科治療は適用外だった。だが2020年4月の診療報酬改定で、歯科での歯周ポケットのメンテナンスやPMTCと呼ばれる歯科衛生士によるクリーニング、フッ素塗布なども保険適用に。おかげでいまや、3割負担で受診できる。

歯周病菌を一掃する口腔内除菌法「3DS」

「歯周病は、歯周ポケットが4mmより深い中度で歯槽骨が半分近く溶け始め、7mm以上の重度で歯槽骨が半分以上溶けて歯が支えられなくなります。これを防ぐには歯周ポケットの奥深くまでクリーニングする必要があります」

 ただ、歯周ポケット内でバイオフィルムを完全除去するのは難しく、歯周病菌が残留する可能性もある。そこで注目なのが、花田さんらが開発したのが写真の「3DS」だ。

歯周病菌を一掃する最新口腔内除菌法「3DS」

「3DS」の費用はクリニックで異なるが、5回通院で10万円程度(保険適用外)。写真提供/鶴見大学歯学部

「これは、オーダーメードのマウスピースの内側にジェル状薬剤を塗り、歯のクリーニング後、約1時間、歯に装着していることで歯周病菌を一掃する最新口腔内除菌法です」

 現在、この方法は、鶴見大学歯学部附属病院・3DS除菌外来ほか、全国の歯科医院で導入され始めている。

抜かない&削らない最新の「MI治療」

いまの虫歯治療は、歯を抜かずに、できるだけ削らない、MI治療が主流です。歯面に白い斑点ができる初期虫歯(C1)は、コーティング材を染み込ませる治療で充分です。C2まで進んだ虫歯の場合は、虫歯を溶かす薬剤を塗布して治療します。C3以上は根管治療が必要で、神経を取るか温存するか、常に可能性を探っていきます」(田名網さん・以下同)

 下の写真は、抜歯をすることが多い根尖性歯周炎が、丹念な根管治療を行うことで治癒し、抜歯を免れた例だ。

MI治療による虫歯治療の例

MI治療による虫歯治療の例

虫歯が悪化して根の先にできた根尖性歯周炎の膿だまりが、下写真では消滅。MI治療による根管治療によって、歯を抜かずに済んだ。 写真提供/ジャパンデンタルクリニック

「根管治療も、虫歯を削る際も、患部をマイクロスコープで拡大し、必要最小限の削り方で虫歯を除去します。保険適用外の薬剤やセメントを充填・密封するのが最新虫歯治療のポイントですね」

 丁寧に、必要最小限の削り方をするMI治療は、保険適用外の場合も多いので事前に確認を。

虫歯の進行【C1~4】と治療法

【C1】エナメル質と呼ばれる歯の表面部分が黒ずんでいたり、穴が空き始めている状態。

 痛みなどの症状はない。悪い部分だけを削って歯科用プラスチックなどを詰めて治療。

エナメル質と呼ばれる歯の表面部分が黒ずんでいたり、穴が空き始めている状態。

【C2】エナメル質の内側の象牙質まで進行している虫歯。

 徐々に症状が表れて、冷たいものや甘いものがしみるようになる。虫歯の部分を削って詰め物で修復する。麻酔を使う場合も。

エナメル質の内側の象牙質まで進行している虫歯。

【C3】歯の奥の神経まで虫歯が進行。

 熱いものがしみたり、ズキズキと激しく痛むようになる。神経を取り、充填剤を詰めてふたをする治療が一般的。最近は神経を取らない治療法も。

歯の奥の神経まで虫歯が進行。

【C4】歯が溶けてなくなり、歯根まで虫歯が進行。

 神経が死んで痛みを感じなくなることもあるが、歯根に膿がたまると痛む場合も。抜歯がほとんどだが、保存治療も進んでいる。

歯が溶けてなくなり、歯根まで虫歯が進行。

 虫歯は初期段階で治療すれば歯へのダメージも最小限に抑えられる。定期的に歯科医院へ通って虫歯の原因となる歯石などを除去するのがおすすめだ。

歯を失ってしまったときの3大治療法

 コロナ禍で歯医者控えをした人の中には、虫歯を放っておいてボロボロになってしまった、という人も少なくない。

「歯科治療には、虫歯や歯周病、事故などで歯が欠けたり、歯がなくなった部分を、人工物で補う“補綴(ほてつ)”という治療法があります。わかりやすく説明すると、詰め物やかぶせ物などをする審美セラミック治療や、入れ歯、インプラントなどの総称です。その中でも、失った歯をカバーするために、入れ歯やインプラント、ブリッジをすることが多いですね」(永田さん・以下同)

 3大治療(ブリッジ、入れ歯、インプラント)それぞれの構造と特徴は、下の図を参考にしてほしい。噛む力を長持ちさせるには、しっかりとした知識を持つ専門医に相談するのがおすすめだ。歯の状況や予算に合わせて、自分に最適な方法を見つけよう。

【ブリッジ】

 抜けた歯のスペースに、橋をかけるように両隣の歯を土台として、人工歯をかぶせる方法。保険適用治療と自由診療の両方が選べる。

抜けた歯のスペースに、橋をかけるように両隣の歯を土台として、人工歯をかぶせる「ブリッジ」

【入れ歯】

 取り外し可能な人工歯で補う方法。隣の歯に金属のフックをかけて一部分を補う部分入れ歯と、すべての歯を補う総入れ歯がある。保険適用もあり。

取り外し可能な人工歯で補う方法。「入れ歯」

【インプラント】

 失った歯の根元にある顎の骨に、ネジのような器具を使って人工歯を埋め込む方法。素材はプラスチックやセラミック、金合金など。自由診療。

失った歯の根元にある顎の骨に、ネジのような器具を使って人工歯を埋め込む方法。「インプラント」

3大治療のメリットとデメリット

【ブリッジ】違和感なく噛めるが、両サイドの歯を削る必要がある

3大治療法である「ブリッジ」の治療例

写真提供/永田歯科医院

 写真の症例は、かぶせる歯が、底面の歯肉から離れている離底型のブリッジ例。奥歯の銀歯と前歯を支柱にしてブリッジをかけている。ブリッジ部分の歯の表面はプラスチックを使用し白い歯に。

「このメリットは、固定式なので義歯でも違和感なく噛めること。デメリットは、ブリッジをかけるために両サイドの歯を削らなくてはいけないこと。材料は保険適用の3割負担で2万円ほど」(永田さん・以下同)。

【入れ歯】手術の必要はないが、噛む力が弱く、違和感がある

<Before>

入れ歯の治療例

写真提供/永田歯科医院

<After>

入れ歯の治療例 治療後

写真提供/永田歯科医院

 ビフォー写真でもわかるように、ほとんど歯のない人が、上の歯は保険適用、下の歯は自由診療で総入れ歯にした症例。

「入れ歯のメリットは手術の必要がなく、多くの義歯を一度に入れられること。デメリットは噛む力が弱いことと、違和感があることなど。料金は総入れ歯の場合、保険適用で約1万5000円。自由診療は素材によって異なりますが、35万円からが相場です」。

【インプラント】しっかりと強く噛めるが自由診療で高額に!

<Before>

インプラントの治療例 ビフォー

写真提供/永田歯科医院

<After>

インプラント治療例 アフター

写真提供/永田歯科医院

 Afterは、上の歯を欠損した人が、すべてきれいな歯並びのインプラントで補った例。

「インプラントのメリットは、隣の歯を削らずに単独で固定できることと、しっかりと強く噛めること。また、見た目も噛み心地も自然です。デメリットは手術が必要で、治療期間が長く、3か月から3年かかることも。自由診療で治療費が高額になり、右の例で270万円。1本なら35万円くらいから」。

入れ歯選びは「3大要素」を重視することが大切!

「補綴をする場合、方法によって噛み合わせの具合が変わるなど、注意点がいくつかあります」(永田さん・以下同)

 まず、自分の歯の噛み合わせを100とした場合、ブリッジは80、インプラントは200。しかし、入れ歯は保険適用で10、自由診療で30程度。

「保険適用の入れ歯では装着時に金属フックが見えるのを気にして、最初から自由診療の入れ歯にしようとする人がいます。ただ、どんな入れ歯を作っても、自分の歯のようには噛めません。入れ歯選びでは、【1】汚れない、【2】壊れない、【3】動かない、この3要素を重視することが大切です

禁煙者はインプラントに出来ない場合がある

 また、骨再生手術を行う場合、喫煙者や糖尿病の人、骨粗しょう症の薬をのんでいる人などは骨がうまくくっつかず、インプラントにできない場合もある。顎を守るためにも、禁煙するのがよさそうだ。

教えてくれた人

花田信弘さん/鶴見大学歯学部 探索歯学講座教授、

口腔衛生研究の第一人者。3DSという除菌治療法を開発。歯科大学などで客員教授や非常勤講師を務める。

耳かきの正しい頻度は?医師語る「耳を傷つけるNG習慣」

「耳の入口から2.5センチほど奥にある鼓膜までが外耳、鼓膜から1センチほど奥にある空間が中耳、さらに奥にある部分が内耳になります」

そう耳の構造を教えてくれるのは、『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版)の著書もある、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授の肥塚泉先生。内耳は、鼓膜からの振動を電気信号にして、脳に伝える。内耳にある蝸牛という器官は、マイクのようなもの。そして前庭神経は、体の平衡感覚を保つために存在している。

「三半規管は3つの半円の管からできており、内部はリンパ液で満たされ、その流れ方で垂直方向、水平方向の回転運動を感じ取ります。三半規管の下部にある耳石器には、カルシウムでできた無数の『耳石』が詰まっており、耳石が動くことで私たちは上下、前後、左右の動きや傾き、重力を認識します」

ふだん私たちがまっすぐ歩けているのは、“健康な耳のおかげ”といってもいいのだ。しかし、ふだんの生活を送っていくうえで、知らない間に耳を傷つけていることも……。そこで、肥塚先生が、「やってしまいがち」なNG習慣を教えてくれた。

■無理な耳かきは外耳炎に。目安は2週間に1回!

気持ちよくて、つい奥のほうまでガリガリとやってしまうのが耳かき。

「耳の内部は、骨の上に、薄い皮膚があるだけ。とがっていたりする硬い耳かきでは、すぐに傷つき、外耳炎を引き起こしてしまいます」(肥塚先生・以下同)

また、外耳の形は人それぞれで違っている。中耳までくねくねと蛇行している人は、耳かきを入れても側面に当たりやすく、傷つける可能性が高い。

「耳鼻科を受診し、自分の耳の形を知っておくことも必要でしょう。そもそも、耳あかは自然と外に押し出されます。もし耳かきをするなら、2週間に1度くらい、耳穴から1センチくらいまでの範囲を綿棒でやさしく掃除しましょう」

■音楽を聴くときは、なるべくヘッドホンで

「知っておいてほしいのは、耳も臓器の1つだということです。アルコールを飲みすぎると肝臓が傷むのと同じように、大きな音は耳に負担がかかり、将来の難聴のリスクとなりえます」

外出時に音楽を聴く際には、耳に当てるヘッドホンタイプと、耳に入れるイヤホンタイプを使うのが一般的。

「同じ性能なら、ヘッドホンタイプのほうが耳に優しいといえます。それは、ヘッドホンのほうが耳をすっぽりと覆うため、消音性に優れているためです。周囲がうるさければ、より大きな音を出さなければならず、騒音を音楽でかき消すことになる。イヤホンタイプであっても、ノイズキャンセラー機能がついたものを使用して“適音”を心がけましょう」

「耳が遠くなる」など、加齢に伴う耳の機能の低下は治すことは難しい。そのため補聴器に頼ることになるが……。

「『補聴器適合に関する診療情報提供書』がなく、補聴器の販売店に行くと、必要以上の最高級品を提案され、高額になるケースも聞きます。まずは『補聴器相談医』の認定を受けている耳鼻咽喉科医に相談しましょう」

■鼻をかまずにすすると、中耳炎になる可能性も

「中耳と鼻は、耳管でつながっています。つまり、鼻をすすることで、鼻水に含まれたウイルスや菌が中耳に入り、中耳炎を起こすことが考えられます」

花粉症の人は鼻水に悩むこの季節。鼻はすすらず、かむようにしよう。

「歯垢が多いと、がんで死亡するリスクが79%も上がる」―歯磨きのススメ

「食事の後は、歯を磨きましょう」子どものときからよく言われるこのフレーズ。でも、朝寝坊したり、ついつい面倒くさかったり……。社会人になっても、歯磨きの習慣がきちんと身に付いていない人は、意外に多いもの。

そこで、フランスの健康情報サイト『TopSante』のジャーナリスト、マリーロール・マクーク氏が、歯磨きの大切さを説明!さまざまな研究から、歯磨きの重要さが証明されています。

歯と歯茎の間に歯肉炎が起こりやすいのは知られていますが、アメリカのコロンビア大学の研究から、歯周病の原因となる細菌が歯肉の炎症から体内に侵入し、動脈壁で炎症を起こす原因となることが証明されおり、歯周病になると心血管疾患のリスクも上がることが分かっています。

また、スウェーデンのヘルシンキ大学とカロリンスカ研究所が行った研究からは、口の衛生状態が悪く歯垢(しこう)が多いと、がんで死亡するリスクが79%も上がることが明らかになっています。

さらに、カナダの糖尿病協会からは、歯茎が重大な炎症を起こしていると、糖尿病になるリスクが上がるという研究結果もあり、口内を衛生に保つことは、病気予防に役立つことが、各研究から分かっています。

他にも、歯磨きを怠ると、病気だけではなく口臭の原因にもなってしまいます。健康でおいしく食事を食べるためにも、歯磨きはとても大切!定期的な歯科検診はもちろん、検診時に正しい歯磨きの仕方を医師に聞くなどして、正しい歯磨き方法を身につけたいですね!

銀歯治療は時代遅れ 再び虫歯になるリスク高く、歯の寿命も短くなる

「緊急事態宣言が解除されたから、久しぶりに歯医者さんに行かなくちゃ……」。『女性セブン』3月18日発売号に掲載された『「85才でちくわが噛めない人の5年後の生存率0%」に震える!』にはこんな声が多数寄せられている。「咀嚼力と寿命」についての疫学調査をもとに、虫歯や歯周病が全身の疾患と関係するという事実を報じた同記事は大きな反響を生んだ。

 しかし、手近な歯科医院に飛び込めばいいというわけではない。『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著書があるジャーナリストの岩澤倫彦さんは警鐘を鳴らす。

「歯科医療の技術がめざましく進歩する一方で、歯科医の技量や知識、治療方針には大きな差が生じています。つまり、歯科医によっては時代遅れの処置をされてしまう可能性すらあるのです」

 口腔内を治療して体にダメージを受けないためには、どうすべきなのだろうか。

成人の7割に銀歯が入っている

 まず知っておきたいのは歯の治療についての悩みを抱えているのは、圧倒的に女性が多いということ。

「よく歯科治療について相談がありますが、大半は女性からです。特に中高年以上の女性は、歯科医から『あなたにはこの治療がいい』と言われると、疑問があっても尋ねたり断ったりできないまま治療を受けてから後悔する傾向が強い。一部には患者を言いくるめ高額な治療に誘導して利益を上げる歯科医も存在するので注意が必要です」(岩澤さん)

 そのうえ、体質においても女性は歯にトラブルをかかえやすい要因がある。岡田やよい歯科健診クリニック院長の岡田弥生さんが解説する。

「注意すべきは閉経前後です。女性ホルモンの分泌量の減少に伴い、唾液量も減ってしまう。唾液には酸性に傾いた口の中を中和したり、再石灰化の際に必要となるカルシウムなどを補給したりして口腔内を健康に保つ働きがあるため、唾液が減ることで虫歯や歯周病にかかりやすくなります」

 そんなリスクにさらされる中で虫歯になってしまった場合、まず選択肢として浮上するのが患部を削って詰め物をする治療だ。なかでも一般的なのは銀歯治療。日本の成人の7割が銀歯を保有しているという調査結果もあるほどだが、岩澤さんは「銀歯は先進国では時代遅れ」と断言する。

「いまだに銀歯治療を行っているのは先進国で日本くらい。なぜなら詰め物をするために土台となる歯の健康な部分も削らなければならないからです。そのうえ、精度が低い銀歯の場合、隙間から虫歯の原因菌が侵入し、再度虫歯になることも非常に多い。つまり治療したことによってかえって、歯の寿命が短くなるリスクもあるのです。

 ほかに選択肢のなかった昭和の時代なら銀歯が最善の選択だった可能性もありますが、令和のいま、あえて選ぶメリットはほぼないといっても過言ではありません」

 悪影響は口腔内にとどまらない。

「銀歯の原材料であるパラジウムなどの金属に体が反応してアレルギーを起こし、さまざまな不調が出てくることがすでに30年ほど前、旧厚生省の調査で判明しました。女性の場合、体調が思わしくないときは更年期障害でなく、銀歯による金属アレルギーの可能性もあります」(岩澤さん・以下同)

 頭痛や肩こりなど「更年期に伴う不調」だと思っていた諸症状が、10年以上前に埋め込んだ銀歯を除去したことで治まったというケースもあり軽視はできない。また、こうした不調は免疫力の低下にもつながる。

 デメリットがある銀歯に代わって台頭しているのが「コンポジット・レジン修復」という治療法だ。

「プラスチック系素材のレジンは、歯の色に近い乳白色のペースト。虫歯部分だけを削ってから接着剤を塗りレジンを充填、ライトで紫外線を当て硬化させます。小さな隙間にも入り込んでピッタリと接着されるこの治療法は、歯を削る量が最小限で済むのがメリット。1980年代にレジン治療はすでにありましたが当時は『欠ける』『割れやすい』と敬遠されました。その後、レジンの素材が改良されて、銀歯と同等の耐久性が科学的に証明されています」

 レジンで治療した歯は天然の歯とほとんど見分けがつかず、銀歯のような金属アレルギーのリスクもない。患者にとってメリットが大きい治療にもかかわらず、普及が遅れたのには理由がある。

「レジン修復は手間と時間がかかるのに保険点数が低く、歯科医院の利益が少ない。一方、銀歯治療はレジン修復より保険点数が高く、歯型を取った後の作業を歯科技工士に任せられるため、効率的です。つまり、レジン修復より銀歯の方が歯科医にとって負担が少ないうえ、儲かる治療だったのです」

 現在は銀歯の材料となるパラジウムなどの金属価格が高騰するなど、一概にはいえなくなっているものの、患者にとってデメリットの多い治療に押しやられていたことは否定できない。

正しい歯医者選び ホームページの情報活用と「最低3軒は回るべし」

 できることならば、一生自分の歯で食事をしたいものだ。そのためのきちんとした治療を受けようと考えたとき、どうやって歯科医を選べばいいのだろうか。

『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著書があるジャーナリストの岩澤倫彦さんは「ホームページから得られる情報は多い」と話す。

「歯科医の経歴から、感染対策をしているかどうかまで、しっかり記載があるところは信頼できます。大学病院などの組織で臨床経験を積んだ歯科医は技術的に信頼できる可能性が高いでしょう。というのも歯科医は医師と違い、病院などでの治療経験が少ないまま開業する人も多く、“自己流”になりがちだからです」

 また、「インプラントの手術数が多い=腕利き」というわけではないようだ。

「一般的な外科手術であれば、たくさんの数をこなした医師の方がスキルが高い。ところがインプラントの場合は、それだけ歯を残そうとしていない可能性があります。顕微鏡を使った根管治療などで抜歯をせずに済む場合があるからです。『インプラントをたくさん手がけている』と自慢げに語る歯科医は、患者の歯を残そうとしてこなかったのかもしれません」(岩澤さん)

 ホームページである程度絞り込んだら、あとは足を踏み出すしかない。岡田やよい歯科健診クリニック院長の岡田弥生さんは「いい歯科医を探すには最低3軒は回るべし」と進言する。

「口の中の状態を見てほしい、といって3軒くらい歯科クリニックを訪れて比較してほしい。そのとき治療をせかそうとする歯科医ならばやめた方がいい。歯科衛生士や受付などのスタッフの入れかわりが激しいところも問題がある可能性が高い。

 反対に、ブラッシング指導までしっかり行う歯科医ならば信頼できる。病院を移動するときは症状の説明をスムーズにするためレントゲンを撮っておいてもらいましょう」

 足を運んで信頼できそうな歯科医が見つかり、ひとたび通う医院が決まったら、なるべく1つのところをかかりつけとして治療を受けた方がいいようだ。歯の保存修復学を専門とする長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の准教授・久保至誠さんはこう言う。

「歯科医の目線で言うと、自分が治療した歯は何かトラブルでもない限りやり直しませんが、ほかの歯科医が処置した歯については再治療の基準が低くなる傾向にあります。つまり、転院するとまた削る歯が出るなど治療が増えてしまうことも起きがちなのです。だから歯科医は変えない方がいい」(久保さん)

 85才になったとき、好きなものをなんでも自分の歯で食べるために、いまから頼れる「かかりつけ」を探したい。

なぜ「噛み合わせの悪さ」が腰痛を招くのか、歯科医が解説

「関節や肌の老化には気づくのに、“口の老化には無頓着”な人が多い」と警鐘を鳴らすのは歯科医。噛み合わせのずれは、さまざまな不調の原因だと話すーー。

「肩が上がらない、手先がしびれる、腰が痛い……。一見、“老化のせい”とも思えるようなこれらの症状は、“噛み合わせのずれ”が原因になっているかもしれません。『年を取ってきたからしかたない』とあきらめていた人も、噛み合わせを正すことで不調が改善されるケースは多くあるのです」

そう話すのは、桜通り歯科クリニック・院長の松浦敦さん。クリニックの壁には、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手をはじめ、トップアスリートのサインがズラリと並ぶ。

同クリニックでは、一般的な歯科診療のみならず、噛み合わせと体のつながりを重視した治療を行っているという。そもそも、なぜ噛み合わせのずれがおこるのだろうか。松浦さんが続ける。

「原因のひとつは、歯の経年劣化です。長年の生活により歯が削れることで噛み合わせがずれだし、あごや頭蓋骨の位置がゆがんできます。この“ゆがみ”によって、体のバランスが崩れ、さまざまな不調が起こるのです。噛み合わせを改善し、体のバランスを正常化すれば、体の可動域も広がり血流もよくなる。歯とは関係なさそうな不調も改善されるのです」

とくに、過去に歯の治療をしてジルコニアなどの硬い素材をかぶせている人は噛み合わせがずれやすい傾向にあるという。まわりの歯が削れてもそこだけは劣化していないため、どんどん噛み合わせが悪くなっていくのだ。

さっそく、自分の噛み合わせがずれていないか、次のセルフチェック法を実践してチェックしてみよう。

【「噛み合わせのずれ」セルフチェック法】

□ 舌をべーっと出したとき、舌が左右どちらかに曲がっている
□ 口を大きく開けたときに、口蓋垂(のどちんこ)が左右どちらかに引っ張られている
□ 顔の前に指1本立てて、それを見つめながら顔だけ左右に向けたとき、向きづらい方向がある

「当てはまる人は、噛み合わせのずれによってあごの位置がずれたり、頸椎がねじれたりしていることが考えられます」

松浦さんは、噛み合わせのずれが起きるもうひとつの原因についてこう続ける。

「それは、スマホやパソコンなどの長時間利用です。じつは、“目の使い方”と噛み合わせのずれには大きな関係があります」

スマホを使っているときは首が前傾しやすく、視線が画面だけに固定される。すると首の後ろの筋肉が緊張し、奥歯に圧力がかかるのだという。

「奥歯だけに圧力がかかると、噛み合わせはずれていきます。最近では、スマホを見ながら一人で食事をするという人も増えてきていますから、噛み合わせの異常は高齢者だけの問題だけではないのです」

奥歯に圧力がかかることで、胃腸や心臓の働きを支配する「舌咽神経」や「迷走神経」にも悪影響が……。

「これらの神経は、喉の入口から下に向かって走っています。奥歯に圧力がかかって喉周辺の筋肉が緊張すると、胃腸や血圧などにも異変が生じます。ちょっと歩いただけで息切れがしてしまう、血圧が安定せず高低差が激しい……そういった症状も、噛み合わせのずれが関係していることが考えられます」

なぜ「噛み合わせの悪さ」が腰痛を招くのか、歯科医が解説

「関節や肌の老化には気づくのに、“口の老化には無頓着”な人が多い」と警鐘を鳴らすのは歯科医。噛み合わせのずれは、さまざまな不調の原因だと話すーー。

「肩が上がらない、手先がしびれる、腰が痛い……。一見、“老化のせい”とも思えるようなこれらの症状は、“噛み合わせのずれ”が原因になっているかもしれません。『年を取ってきたからしかたない』とあきらめていた人も、噛み合わせを正すことで不調が改善されるケースは多くあるのです」

そう話すのは、桜通り歯科クリニック・院長の松浦敦さん。クリニックの壁には、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手をはじめ、トップアスリートのサインがズラリと並ぶ。

同クリニックでは、一般的な歯科診療のみならず、噛み合わせと体のつながりを重視した治療を行っているという。そもそも、なぜ噛み合わせのずれがおこるのだろうか。松浦さんが続ける。

「原因のひとつは、歯の経年劣化です。長年の生活により歯が削れることで噛み合わせがずれだし、あごや頭蓋骨の位置がゆがんできます。この“ゆがみ”によって、体のバランスが崩れ、さまざまな不調が起こるのです。噛み合わせを改善し、体のバランスを正常化すれば、体の可動域も広がり血流もよくなる。歯とは関係なさそうな不調も改善されるのです」

とくに、過去に歯の治療をしてジルコニアなどの硬い素材をかぶせている人は噛み合わせがずれやすい傾向にあるという。まわりの歯が削れてもそこだけは劣化していないため、どんどん噛み合わせが悪くなっていくのだ。

さっそく、自分の噛み合わせがずれていないか、次のセルフチェック法を実践してチェックしてみよう。

【「噛み合わせのずれ」セルフチェック法】

□ 舌をべーっと出したとき、舌が左右どちらかに曲がっている
□ 口を大きく開けたときに、口蓋垂(のどちんこ)が左右どちらかに引っ張られている
□ 顔の前に指1本立てて、それを見つめながら顔だけ左右に向けたとき、向きづらい方向がある

「当てはまる人は、噛み合わせのずれによってあごの位置がずれたり、頸椎がねじれたりしていることが考えられます」

松浦さんは、噛み合わせのずれが起きるもうひとつの原因についてこう続ける。

「それは、スマホやパソコンなどの長時間利用です。じつは、“目の使い方”と噛み合わせのずれには大きな関係があります」

スマホを使っているときは首が前傾しやすく、視線が画面だけに固定される。すると首の後ろの筋肉が緊張し、奥歯に圧力がかかるのだという。

「奥歯だけに圧力がかかると、噛み合わせはずれていきます。最近では、スマホを見ながら一人で食事をするという人も増えてきていますから、噛み合わせの異常は高齢者だけの問題だけではないのです」

奥歯に圧力がかかることで、胃腸や心臓の働きを支配する「舌咽神経」や「迷走神経」にも悪影響が……。

「これらの神経は、喉の入口から下に向かって走っています。奥歯に圧力がかかって喉周辺の筋肉が緊張すると、胃腸や血圧などにも異変が生じます。ちょっと歩いただけで息切れがしてしまう、血圧が安定せず高低差が激しい……そういった症状も、噛み合わせのずれが関係していることが考えられます」

「大人女子の口内ケア」やめたほうがいい習慣7つ【歯科医師が警鐘】|CLASSY.

1日中マスクをしていて隠れている「口の中」のケア、今までよりおろそかになっていませんか?口内環境は免疫力やアンチエイジング、ダイエットにも大きく関係しています。「口の中」をキレイにすることのメリットを、今こそしっかり知っておきましょう。

「口の中」をキレイにする方法を具体的にレクチャーします

食習慣とオーラルケアは毎日のことだからこそ、意識してしっかり継続することが重要です。朝起きてから夜寝るまで、歯科医師のお墨付きツールを味方にしてキレイな口の中をキープするルーティンを身につけましょう。

起きてから寝るまでの生活習慣でNG例7つ

NG1.朝起きてから歯を磨かない 起床後すぐにうがい&舌磨きを!理想は朝食前後に歯磨きすることですが、それが大変なら食前にうがい&舌磨き、食後に歯磨きを。朝は寝ている間に増えた雑菌が口内で繁殖しているので、起きたら絶対にうがいだけはしてください。マウスウォッシュを使っても、水だけでも大丈夫です。その際、一緒に舌磨きもしましょう。

NG2.朝食にスムージーを摂る 朝食はスムージーより野菜スティックを。朝食は美容のためにスムージーという方も多いかもしれませんが、口内の健康に欠かせないだ液はしっかり噛むことで出てくるので、固形物、繊維質をしっかり噛んでほしいです。噛むという動作で得られるメリットは大きく、脳への刺激のほか歯茎や顔周りの血流を促進してくれる効果も。

しっかり噛むことはとても大事なので、歯科医としては同じ野菜やフルーツを摂るならスムージーにせずそのまま食べてほしいですね。私は毎朝、生野菜を食べています。固形物を食べると舌の汚れがはがれおち、だ液が口の中を洗浄してくれるので口臭だけでなく虫歯や歯周病の予防にもなります。朝は野菜ジュースやスムージーだけという人は口臭に要注意です。

NG3.お茶や水で口臭を消そうとする 食後にキシリトール100%ガムを噛むと◎。ガムを噛むならぜひキシリトール100%使用のものを。タイミングとしては食後がベストです。ガムを噛んでだ液を出すことで、口の中に残った残留物も流してくれます。また、口が乾燥してきたなと思った時もキシリトールガムを。口臭は水やお茶を飲んでも消えないので、だ液を出すことがポイント。口の乾燥からくる口臭にはガムでだ液の分泌を促して、口の中の雑菌をはらう必要があります。甘味料としてキシリトールを100%使用し、歯にくっつきにくいガムベースを採用。歯科専売品。歯科専用キシリトール100%ガム35g<左>クリアミント<右>マスカット各¥250※参考価格(オーラルケア)

NG4.舌の筋肉を動かさないでいる 舌を動かすトレーニングに挑戦を!簡単な口のエクササイズをするだけで、だ液が出やすくなります。舌の筋肉を動かして鍛えるエクササイズをぜひ習慣にしてください。滑舌がよくなる効果も。やり方は(1)舌で唇を一周なめる。(2)舌をベーっと強く前に出す。(3)舌を左右に動かす。(4)舌で上あごを弾くようにして音を鳴らす。

NG5.ジムでスポーツドリンクを飲む

ジムでのスポーツドリンクはやめたほうがいいかもしれません。運動時やジムでの水分補給にはお茶やお水を。注意したいのが砂糖の入ったスポーツドリンクです。こまめに飲み続けることで砂糖が口の中に残り続け、虫歯のリスクを上げてしまいます。同じ理由で気をつけたいのがお菓子のだらだら食べ。砂糖がずっと口の中に残っている状態は避けましょう。特にキャラメルなど粘着性の高いお菓子は要注意。甘いものを食べたり飲んだりしたら、すぐに水やお茶を飲むように心がけて。砂糖の入ったものを食べてはいけないわけではありませんが、食べる頻度にはくれぐれも気をつけて。

NG6.長時間ワインだけを飲み続ける ワイン、ジュース、お酢は飲み方に注意!酸の強い飲み物は、酸蝕症といって歯を溶かしてしまう恐れがあるので要注意。飲んではいけないわけではなく、飲み方に気をつける必要があるということを認識して。たとえば、ワインだけを長時間飲み続けるのは歯によくない飲み方です。ワインを飲むなら食事をしながら飲んだり、チーズを一緒に食べたりするのがお勧めです。

NG7.極度の糖質制限をするダイエット ダイエット中の口臭にも注意です。ダイエットにより食事の回数が減るとだ液の分泌も減り、汚れもたまりやすくなるので口臭の原因になります。また極度の糖質制限をすることで発生するケトン体が口臭となることも。ダイエットで美しくなることはいいことですが、口臭のリスクを上げていることがあるので気をつけて。

お話を伺った先生
歯科医師・歯学博士森下真紀先生 歯科医師・歯学博士・株式会社日本歯科総合研究所代表取締役社長。東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。在学時、英国キングスカレッジ歯学部留学、東京医科歯科大学大学院にて博士号取得。「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションとして掲げ、多数のメディアに出演。著書『世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか』(ダイヤモンド社)も話題。 イラスト/二階堂ちはる 撮影/五十嵐 洋取材/加藤みれい 取材協力/グラントウキョウスワン歯科・矯正歯科

光をあてて歯周病を治す? 最新の光殺菌療法とは

■抗生物質やレーザーとは違う! 新しい殺菌システム
成人の80%が患うといわれる歯周病。一般的に歯周病治療としては歯石取りなどが行われますが、歯周ポケット内には、機械的に取り除かききれない細菌などが存在していることも多くあります。

これらを普通の消毒薬で殺菌しようとすると、薬剤が触れた関係のない部分にまで薬の効果が働いてしまいます。消毒効果の高い薬を使うと、細菌だけでなく健康な組織にもダメージを与えてしまうことがあるのです。今海外で行われている「光殺菌療法」は、専用の薬剤と、光をあてる照射器の2つをセットで使用し、細菌のみを選択的に殺菌できる治療法です。

光殺菌療法で使用する薬剤は、組織や細菌につけただけでは消毒効果はありません。薬剤に含まれる染色剤が細菌のみに働きかけ、光が照射された時に初めて反応が起こり、活性酸素が発生して細菌を破壊するというシステムです。細菌が原因で起こる歯ぐきや顎の骨などを溶かす原因物質なども破壊することができるため、歯ぐきや骨が減少するのを止める効果もあります。これらの反応は細菌のみに起こり、健康な組織などは影響を受けません。

歯周ポケット内に残っている細菌を炎症が起きないレベルの量になるようコントロールしたり、増えすぎた細菌を少しでも減少させたりすることに役立ちます。さらにインプラント周囲炎やメンテナンス時に利用することもできます。歯周病の場合には歯石取りなどを行った後の歯ぐきに利用するとより良い効果が発揮されるようです。

これまでのレーザー治療や抗生物質を利用した治療と違ったアプローチで細菌を死滅させる画期的なシステムと言えそうです。

■光殺菌療法のメリット・デメリット
それではこの最新の治療法のメリット、デメリットはなんでしょうか?

●メリット
・副作用がない
消毒薬や抗生物質ではなく、光からのエネルギー利用するため、副作用がないと言われています。

・連用しても耐性菌が作られない
抗生物質ではないため、効果が発揮されるのは瞬時で、時間がかかりません。そして、たとえ繰り返しの使用になったとしても、耐性菌が作られる心配がありません。さらに抗生物質による耐性菌も破壊することができます。

・簡単で痛みが出にくい
歯周ポケットに薬剤を入れて1分程度の光をあてるだけなので、簡単で刺激が最小限ですみます。

・歯周病だけでなく虫歯などの細菌にも効果がある
難治性の根の治療や、インプラント周囲炎、大きな虫歯の治療時など、口の中の細菌が原因する部分にはほとんど使えます。

・余分なダメージを与えない
同じ光でも高出力のレーザーのような高エネルギーは発生しないため、歯ぐきや歯の内部の神経などの温度上昇が起こらないため、健康な部分には、ダメージを与えません。

●デメリット
・薬剤が触れないと効果がない
抗生物質のように血液中に溶け込んで全身くまなく細菌をやっつけるような働きはありません。細菌に薬剤が触れなければ、光を当てても何も起こません。

・光が届かないと効果がない
薬剤は光が届いて初めて活性化して細菌を破壊します。そのため必要な場所に必要なだけ光が届くように専用のチップが用意されています。

・保険適応ではない
最先端の治療のため、保険が適応されません。

■通常の治療のオプションとして使うのがベスト?
例えば歯周病であれば、毎日のしっかりしたブラッシングと機械的な歯石の除去。虫歯治療であれば、虫歯に感染した部分を機械的に取り除くことが治療の基本になります。光殺菌療法はこれらの基本治療にプラスして利用するスタンスになると思います。

特に有効だと思われるのは、難治性の歯周病やインプラントの周囲炎など、取り除くことが困難な細菌コントロールです。どうしても機械的に取り除くことができない歯周病菌などの影響で、ときどき腫れたりすることはよくあります。この時、腫れと同時に顎の骨も溶かされるスピードが増加してしまうため、短時間で細菌量を減少させることは骨が溶けることを減らす効果が期待できます。

現在は、機材や薬剤を海外から輸入して使用しなくてはならない治療法ですが、おおむね1本あたり1000~5000円程度で治療を受けることができるようです。保険が適用されない新しい治療の割には、それほど高額ではない治療費ともいえますので、歯周病で悩まれている方は検討してみるのもよいかもしれません。

菌が増え始める春こそ大掃除に最適 先手のカビ対策が可能に

桜の開花前線は順調に北上し、時には汗ばむほど気温が上昇する季節になった。

春の気配を楽しみながらも、気にかけたいのは気温の上昇と比例して増殖する「菌」のこと。大阪府立公衆衛生研究所勤務で、近畿大学農学部環境管理学科の坂上吉一教授は、この時期の菌対策の重要性を指摘する。

「菌が増えるには温度と湿度の上昇が影響します。また、菌が増えるには栄養源も必要です。布製品などの『汚れ』の原因となる、人間のフケ、汗、あか、髪の毛などの有機化合物がそれにあたります。

春は新陳代謝も高まることから、汗やあかなど、菌の栄養も増える季節です。これらの汚れや細胞が菌の温床となり、春に菌は増えていくと考えられます。

最近は、日本人の除菌に対する意識がとても高まっているように思いますが、ぜひ、『春も菌対策は必要』ということを新たな常識として、覚えておいてください」

 直接肌に触れるものや、これから暑くなると気になる「臭い」の元になる菌が潜んでいるのが、カーテン・ソファ・クッション・ベッド・布団といった布製品。衣類と違い、こまめに洗うことが難しいアイテムも少なくない。家

事・掃除ガイドの著書やアドバイザーとして活躍する藤原千秋さんは、「GWに春の大掃除を!」をオススメしている。

「春の大掃除は、寒さや冷たさの負担がないので、やっていて気持ち良いですよね。花粉の飛散も落ち着いてくる時期ですので、大掃除には最適です。江

戸時代の資料にも、大きな商家の大掃除は年に3回で、暮れの12月13日前後、あとは5月と8月という記録が残っています。春の大掃除の習慣を現代でもオススメしたい理由は、『先手のカビ対策』ができるため。

 カビは湿度が高くなる梅雨から夏にかけて増殖するため、その時期のケアが最も重要と思われる人もいるかもしれませんが、それでは遅いのです。

カビが増殖してしまうと、除去するのに大きな手間がかかったり、変色が残ったりする恐れがあります。

一方、カビが増殖する前に除菌した上で、週に1回くらい除菌・消臭スプレーを繰り返しておけば、梅雨時期のカビをグッと抑えることができます。

さらにカビはニオイの元にもなりますが、こうしたニオイも早めの対策で抑え込むことができ、気兼ねなくお客様や友達をさわやかに、家へ迎え入れることができます」(藤原さん)

 温度や湿度が高くなる前、早めの「汚れ落とし」と「除菌・消臭スプレー習慣」を推奨する藤原さんに、具体的なケアについてアドバイスしてもらった。

【医師に聞く】見た目の異常はないのに舌がピリピリと痛む…考えられる病名は? 受診先はどこ?

舌は通常なら痛くありません。しかし、傷やできものなどがないにも関わらず、しびれたような違和感を覚えるとしたら。「斎田デンタルクリニック院長」の斎田先生によると、その名も「舌痛症(ぜっつうしょう)」という“不思議な”病気があるそうです。受診先も含めて、詳しい話を伺いました。

舌ではなく、「心」の問題かもしれない
編集部:
舌の状態はなんともないのに、慢性的な痛みが続きます。

斎田先生:
調べてみないとわかりませんが、「舌痛症」と呼ばれている病気かもしれませんね。1日2時間以上の痛みが3カ月以上続いている場合で、原因となる病変などを特定できないと、舌痛症と診断されます。

編集部:
隠れたできものや腫瘍などではないのですか?

斎田先生:
もちろん、その可能性はあります。ただし、腫瘍や前がん病変なら“そうだとわかる”ので、舌痛症には含まれません。問題は、器質的な病変がないにも関わらず痛みを生じさせているケースです。「どうして痛いのだろう」と、不安が次々に高じてしまいます。

編集部:
そうなると、痛みの原因ってなんでしょうか?

斎田先生:
舌痛症は原因が解明されていませんが、中高年のうつ病や神経症などの「精神科領域の疾患」が関係しているかもしれません。女性かつ、更年期以降の患者さんが多いことも特徴で、当院比にすると、約9割といったところでしょうか。ある種の更年期障害とする見方もあります。

編集部:
舌痛症の症状は、「痛み」のほかにもありますか?

斎田先生:
やけどのような「しびれる感覚」や「味覚の変化」、「乾き」などを訴える患者さんもいらっしゃいます。捉え方は人それぞれですが、舌の先や横側に表れることが多いようです。こうした主訴は、リラックスしているときほど強く表れ、なにかに集中していると気にならなくなります。

受診先としては、まず歯科口腔外科を
編集部:
診断が難しそうですが、どのように診ていくのですか?

斎田先生:
さまざまな病気を除外診断していきます。例えば、舌の不随意運動が起きていないかどうか、入れ歯や詰め物などが当たっていないかどうか、粘膜疾患が診られないか、血液検査で異常値が出ていないかなどですね。これらのいずれにも該当しないと、舌痛症の可能性が高まります。

編集部:
血液検査は意外です。どのような観点なのでしょう?

斎田先生:
鉄分や亜鉛などが足りていないと貧血を起こし、それが原因で痛むことも考えられます。また、口腔カンジダ症のような菌による感染症も、血液検査で判明します。

編集部:
精神疾患なら、受診先は「精神科」ということになりますよね?

斎田先生:
入口としては、お口の粘膜疾患が扱える歯科口腔外科で構わないと考えます。ほかのお口の病気かもしれませんし、ストレスなどの環境要因を伺い、変えることで改善する場合もあります。いよいよもって舌痛症が疑われたら、血液検査のできる総合病院や、程度によっては心療内科をご紹介しています。

編集部:
一部で、耳鼻咽喉科の受診を推奨しているのはどうしてでしょう?

斎田先生:
詳しくはわかりませんが、甲状腺の異常でも舌の痛みが出るからでしょうか。しかし、最も怖いのは「舌がん」の可能性です。その点でも、口腔がん全般に詳しい歯科口腔外科の受診を推奨します。

ポジティブな思考が症状を軽減する
編集部:
ところで、舌痛症の治療は可能なのでしょうか?

斎田先生:
入れ歯が当たっているケースのような、器質要因なら治療は可能です。また、前述した環境要因へのアプローチで解決する場合もあります。しかし、1カ月ほど向き合ってみて改善しないようなら、心療内科での治療が必要とされるでしょう。

編集部:
その場合、回復までに時間がかかりそうですが?

斎田先生:
1年程度の通院が必要となるかもしれません。認知行動療法などにより、「病気と向かい合える心構え」を培うことになると思います。「どうして私だけが」などのネガティブ思考から、「こうやって乗り越えていこう」というポジティブ思考への切り替えが求められますね。

編集部:
もし我慢できるレベルなら、いずれ自分で克服できますか?

斎田先生:
ご自身でポジティブ思考へもっていけるかどうかです。通例なら、病変が認められないので、むしろ「不安になる」と思われます。また、口内炎のお薬を服用するような間違った方向に進みかねませんので、早々に受診してください。

編集部:
最後に、読者へのメッセージがあれば。

斎田先生:
舌にかかわらず、「痛みはなにかしらのサイン」ですから、決して放置しないようにしてください。医師として懸念するのは、やはり「口腔がんの可能性」です。実際、痛みの自覚が半年前からあって、調べてみたら舌がんのステージ4だったというケースもありました。命に直結しかねませんので、きちんと調べましょう。

編集部まとめ
心因性の原因で舌が痛むこともありえるのですね。ストレスからくる頭痛や胃痛もありますから、「そういうことが起こりえる」ということを知っておきましょう。その際、舌がんや器質的疾患の可能性もありますから、ファーストチョイスとしては、歯科口腔外科を受診するといいでしょう。迷っている半年が余命を決定づけた場面も、実際にあったそうです。

【この記事の監修医師】
斎田 尚貴先生(斎田デンタルクリニック 院長)

鶴見大学歯学部卒業。鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座入局。歯科口腔外科を中心に一般歯科クリニック勤務。2020年、神奈川県横浜市に「斎田デンタルクリニック」開院。患者さん一人ひとりに治療説明をして向き合い、合意の上で精度の高い治療の提供を心がけている。日本口腔外科学会口腔外科認定医、厚生労働省認定歯科臨床研修指導医。日本口腔インプラント学会会員。

[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]

歯科医はなぜ、手袋や機器を使い回すのか

医療部 渡辺理雄
 なぜ手袋や、歯を削るドリルを取り付ける「ハンドピース」と呼ばれる金属製の柄を患者ごとに交換しない歯科医がいるのでしょうか。 たとえば、肝炎ウイルスやHIV(エイズウイルス)に感染していることがわかっている患者さんが歯科治療を望んで、ある歯科医院に予約の電話をしてきたとしましょう。どうしたらよいでしょうか。

1.ほかの患者がいなくなる診療が終わる時間帯に来てもらう
2.普段とは異なる特別な感染対策を準備して迎える
3.感染対策が万全の大病院の歯科に紹介する

 今の教育内容からすると、上記の三つはどれも「正解」ではありません。

 ここで望ましい対応は、普段から全ての患者で十分な院内感染対策を行い、感染症患者を分けることなく、いつも通りの治療を行うことです。日本歯科医学会の指針が、治療が終わるたびにハンドピースを取り外して滅菌したり、すべての患者ごとに手袋を交換したりするよう定めているのは、そのためです。

 このように、感染症患者かどうかに関係なく、血液、唾液などはすべて感染性があるとして取り扱う方法を「スタンダード・プレコーション(標準予防策)」といいます。1996年ごろにアメリカで提唱されました。しかし、それ以前に歯学部で教育を受け、卒業後に最新の医療知識を取り入れていない一部の歯科医では、スタンダード・プレコーションの必要性を感じずに、まったく実践していない人がいるものと思われます。

 ハンドピースなどを患者ごとに交換しない理由としてもう一つ考えられるのは、やはりコストです。

 ハンドピースは精密機器で、一本10万~20万円もするとされています。患者ごとに交換して滅菌するとなると、多くのハンドピースをそろえたほうがよく、その分費用がかかります。また滅菌は、高温の蒸気発生装置に入れて行いますが、これが機器を傷め、使える製品寿命が短くなるという歯科医もいます。院内感染対策をしっかりやろうとすれば、1人当たりの患者にかかる費用は、ある程度必要になるのは確かです。

 ハンドピースの使い回し問題の新聞報道を受ける形で、歯科の院内感染対策の費用について、塩崎厚生労働相は7月3日、来年春の診療報酬改定に向けて国の中央社会保険医療協議会で検討していく、と述べました。歯科の診療報酬が上がれば、その分、院内感染対策に振り向ける分も出てくると思います。患者が窓口で支払うお金も増えますが、すべての歯科医院でしっかり院内感染対策を行ってもらえるなら、相応の負担増も許されると思います。

 しかし同時にスタンダード・プレコーションを研修などで多くの歯科医に知ってもらい、実践してもらう必要もあると思います。次の機会には、院内感染対策を行っているかどうかの目安になる歯科医選びのポイントを説明します。

渡辺理雄(わたなべ・みちお)
2008年12月から医療部。脳卒中、リハビリテーション医療などを取材している。

歯科医はなぜ、手袋や機器を使い回すのか

医療部 渡辺理雄
 なぜ手袋や、歯を削るドリルを取り付ける「ハンドピース」と呼ばれる金属製の柄を患者ごとに交換しない歯科医がいるのでしょうか。 たとえば、肝炎ウイルスやHIV(エイズウイルス)に感染していることがわかっている患者さんが歯科治療を望んで、ある歯科医院に予約の電話をしてきたとしましょう。どうしたらよいでしょうか。

1.ほかの患者がいなくなる診療が終わる時間帯に来てもらう
2.普段とは異なる特別な感染対策を準備して迎える
3.感染対策が万全の大病院の歯科に紹介する

 今の教育内容からすると、上記の三つはどれも「正解」ではありません。

 ここで望ましい対応は、普段から全ての患者で十分な院内感染対策を行い、感染症患者を分けることなく、いつも通りの治療を行うことです。日本歯科医学会の指針が、治療が終わるたびにハンドピースを取り外して滅菌したり、すべての患者ごとに手袋を交換したりするよう定めているのは、そのためです。

 このように、感染症患者かどうかに関係なく、血液、唾液などはすべて感染性があるとして取り扱う方法を「スタンダード・プレコーション(標準予防策)」といいます。1996年ごろにアメリカで提唱されました。しかし、それ以前に歯学部で教育を受け、卒業後に最新の医療知識を取り入れていない一部の歯科医では、スタンダード・プレコーションの必要性を感じずに、まったく実践していない人がいるものと思われます。

 ハンドピースなどを患者ごとに交換しない理由としてもう一つ考えられるのは、やはりコストです。

 ハンドピースは精密機器で、一本10万~20万円もするとされています。患者ごとに交換して滅菌するとなると、多くのハンドピースをそろえたほうがよく、その分費用がかかります。また滅菌は、高温の蒸気発生装置に入れて行いますが、これが機器を傷め、使える製品寿命が短くなるという歯科医もいます。院内感染対策をしっかりやろうとすれば、1人当たりの患者にかかる費用は、ある程度必要になるのは確かです。

 ハンドピースの使い回し問題の新聞報道を受ける形で、歯科の院内感染対策の費用について、塩崎厚生労働相は7月3日、来年春の診療報酬改定に向けて国の中央社会保険医療協議会で検討していく、と述べました。歯科の診療報酬が上がれば、その分、院内感染対策に振り向ける分も出てくると思います。患者が窓口で支払うお金も増えますが、すべての歯科医院でしっかり院内感染対策を行ってもらえるなら、相応の負担増も許されると思います。

 しかし同時にスタンダード・プレコーションを研修などで多くの歯科医に知ってもらい、実践してもらう必要もあると思います。次の機会には、院内感染対策を行っているかどうかの目安になる歯科医選びのポイントを説明します。

渡辺理雄(わたなべ・みちお)
2008年12月から医療部。脳卒中、リハビリテーション医療などを取材している。
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