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国民健康保険料より安い? 高い? 「国民健康保険組合」の費用・加入条件などの特徴を解説

「国民健康保険組合」の概要

日本の医療保険は、大きく職域保険と地域保険に分けられます。

職域保険としては、

__●民間の会社員を対象とした「健康保険」

●公務員や船員などを対象とする「共済組合」や「船員保険」__

などがあります。

地域保険としては、

__●市区町村が運営主体の「国民健康保険」(以下、「国保」という)

●特定の職種ごとに設立された「国民健康保険組合(以下、「国保組合」という)__

があります。

個人事業主やフリーランスの方の多くが加入している医療保険制度は、国保です。市区町村が運営する国保は、居住地で加入資格が得られますが、国保組合は、地域だけでなく、職業や業種によって加入資格が得られる点が大きな特徴です。

国保組合には、医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、理・美容師、建設業界、食品業界など、さまざまな業種の国保組合があります。

一般的に国保の保険料は地域によって負担額に差がありますが、所得が多くなるほど負担も大きくなります。

ところが国保組合に加入した場合は、次項でご紹介するメリットのように、国保よりも保険料が安くなるケースがあります。業種や条件が合えば、国保組合への加入を検討してみてもいいでしょう。

なお、法人事業所の事業主や従業員の場合、健康保険が強制適用となるため、国保組合には加入できません。

「国民健康保険組合」のメリットとは

国保は前年の所得で保険料が決まるため、収入が多ければ多いほど保険料も高くなります。

一方、国保組合に加入すれば、収入に関係なく保険料が一定になることが最大のメリットといえます。

例えば、Webデザイナーやグラフィックデザイナー、イラストレーター、コピーライター、カメラマンなどを対象にした、「国保組合」のひとつである「文芸美術国民健康保険」(以下、「文美国保」という)に加入すれば、負担額は以下のようになります。

__●組合員 1人月額 2万1100円

(医療分 1万6400円 後期高齢者支援金分 4700円)

●家族 1人月額 1万1600円

(医療分 6900円 後期高齢者支援金分 4700円)

●介護保険料 1人月額 5200円

(満40歳から64歳までの被保険者)__

「文美国保」に加入するには、特定の団体に所属する必要があり、「文美国保」の保険料に加盟団体の入会金・会費を足した金額と、国保の保険料を比較するといいでしょう。

家族や、満40~64歳までの介護保険被保険者の人数によっては、一般の「国保」の方が「文美国保」よりも保険料が安くなる場合もあります。ただ、単身者であれば「文美国保」の方が安くなる可能性が高いといえます。

個人事業主やフリーランスの場合、毎年の収入が一定していないこともあるため、保険料が一律の「国保組合」に加入していれば、支出面で安心といえるでしょう。

「国民健康保険組合」のデメリットとは

国保組合のデメリットについて解説します。

被扶養家族の保険料もかかる

会社の健康保険や協会けんぽの場合は、被保険者の扶養家族には保険料がかかりませんが、国保組合には「被扶養者」という概念がなく、家族も被保険者として保険料がかかります。

家族の人数によっては、一般の国保の方が保険料が安くなる可能性があります。

減免措置がない

収入が少ない場合でも保険料は固定のため、国保のように減免などの措置はありません。収入が少ない場合は、国保の方が保険料が安くなる可能性もあります。

加入条件が厳しめ

文美国保の場合、

__●日本国内に住所がある

●Webデザイナーやグラフィックデザイナー、イラストレーター、コピーライター、カメラマンなどのクリエーティブ職に従事するフリーランスである

●日本ネットクリエイター協会、日本イラストレーション協会などの、組合加盟の各団体の会員である__

の条件を満たす必要があります。

また、後期高齢者の方(75歳以上の方、または65歳以上75歳未満で広域連合より認定を受けている障害者の方)は加入できません。なお、加盟団体に入るには、入会金や毎年の会費の支払いも必要になります。

まとめ

国民健康保険組合の概要、メリット・デメリットについて解説しました。

収入に関わらず保険料が一定なのは、個人事業主やフリーランスの方にとって大きなメリットになりますが、

__●家族の人数分の保険料が必要

●収入が少なくても国民健康保険のような減免制度がない

●加盟団体の入会金・年会費を払う必要がある__

などのデメリットもあり、保険料が一概に安くなるとはいえません。

国民健康保険組合加入を希望する場合、メリットとデメリットを比較して選択することをおすすめします。

出典

文芸美術国民健康保険組合

厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

「国民年金保険料」は高くなっている?保険料ともらえる年金の推移を解説!

国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満全員が加入する

国民年金は、日本国内居住の20歳以上60歳未満の方は全員加入します。学生や専業主婦(夫)などで一定の要件を満たせば保険料の納付は免除されることもありますが、制度への加入は必須です。

会社員は基本的に厚生年金にも加入しており、国民年金をベースに年金が上乗せされています。会社員は国民年金と厚生年金両方に加入しているイメージです。年金への加入は、図表1のように第一号被保険者から第三号被保険者までに区分され、受け取る年金や支払う保険料が異なります。

【図表1】

筆者作成

原則65歳から年金を受け取るが、変更も可能

年金は原則65歳から受け取りますが、受取開始時期を60歳~75歳に変更できます。受取開始時期を早くすれば毎年の受給額は減り、遅くすれば受給額は増えます。

例えば、受給開始を75歳からにすれば、毎年の年金受給額84%の増額が可能です。

国民年金保険料の計算方法

毎年納める国民年金保険料は、年によって変動します。平成16年度に決まった保険料額に対して、物価や賃金の伸びに応じて保険料を調整しています。

具体的な保険料の計算式は以下の通りです。

毎年度の国民年金保険料額=平成16年に決められた保険料額×保険料改定率(*1)

*1 保険料改定率=前年度保険料改定率×物価変動率×実質賃金変動率

国が厳密な計算の上で制度を運営しているため、将来年金がもらえなくなるという考え方はあまり現実的ではありません。

国民年金保険料と年金額の推移

直近10年の国民年金保険料と年金額の推移を解説します。まず、国民年金保険料の推移は図表2の通りです。

【図表2】

日本年金機構「物価変動率等で計算された実際の保険料額」を基に筆者が作成」

図表2の通り、保険料は増加傾向にあります。

直近10年の国民年間受給額は図表3の通りです。保険料を満額納付した際に、65歳から受給できる年金を示しています。図表3の通り、受給年金額は大きく変動していないことがわかります。

【図表3】

「小田原市HP よくある質問と回答 質問:老齢基礎年金の金額を教えてほしい(過去の年金額も教えてほしい)」における回答の表『老齢基礎年金(満額)の推移』および「日本年金機構HP 令和4年4月分からの年金額等について」を基に筆者作成

年金の上乗せを自分で作ろう

国民年金の仕組みや推移について解説しました。また、年金に頼るだけでなく、自分で老後に備えることも必要です。

iDeCoやつみたてNISAなど、老後資金を用意するお得な仕組みを国が用意しているので、ぜひ利用を検討してみてください。

老後を見据えて、若いうちからコツコツ資金を準備することがポイントです。

出典

日本年金機構 国民年金はどのような人が加入するのですか。

日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給

日本年金機構 国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?

日本年金機構 国民年金保険料の推移

令和4年4月分から年金額等について

小田原市 老齢基礎年金の金額(満額)を教えてほしい(過去の金額も教えてほしい)。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

こんな夫婦が「老後破産」に陥る!どんな共通点がある?

老後資金は現役時代からコツコツと貯めねば老後破産する恐れがある。家計を守っていくためには、夫婦で話し合ったり協力したりすることが大切といえよう。老後破産しやすい夫婦の特徴にはどのようなものがあるのだろうか?実例を交えて見ていこう。

■老後資金はどうする?夫婦の金銭感覚の違いに要注意

家計を守っていくためには、夫婦で話し合ったり協力したりすることも大切だ。ただ、なかにはそれがうまくいかず、金銭感覚の違いが浮き彫りになって離婚にまで発展してしまう家庭もある。Sさんの例を見ていこう。

●老後が不安な妻、楽観的な夫

Sさんは節約や貯金に対する意識が高く、老後が不安でコツコツと貯蓄に励んでいる。

一方の夫は、基本的にお金に無頓着な浪費家タイプ。貯金は苦手で、手元に現金があるとつい気が大きくなって知人や友人におごるなどして使ってしまう。最近ではSさんが知らないうちに、友人に教えてもらった競馬にもお金を使い始めたようだ。

夫婦共働きで人並み以上の世帯年収があったSさん夫妻は、いわゆる「夫婦別財布」で、これまでお互いの支出や貯金額をなんとなくしか把握してこなかった。

しかし、妊娠をきっかけに「もっとお金のことをちゃんとしよう」と思ったSさんは、今後は自分が家計管理を主に担当して、お小遣い制にしようと夫に提案した。すると、思いがけず夫の猛反対にあってしまう……。

風水的に金運ダウン?玄関に置くべきではないモノ3選

■銀行員は見た!老後破産する夫婦としない夫婦の決定的な違い

「老後資金は足りるのだろうか……」、このように不安に思っている人も多いだろう。老後資金を現役時代から計画的に準備しなければ、老後破産してしまう恐れがある。老後破産する夫婦としない夫婦の決定的とは?

●お金に関してオープンに会話できているか

お金に関してオープンに会話ができない夫婦は老後破産しやすいといえる。収入や貯蓄がどれくらいあるかお互いに理解できていないと、期待しすぎて、蓋をあけたら全然貯蓄できていないというケースも考えられる。

●老後の年金額を理解しているか

夫婦合わせてどれぐらいの年金をもらえるか把握しているだろうか。老後の収入を把握しておくことは非常に大事だ。

年金を多く見積もりすぎ、老後生活がはじまってから年金だけでは足りないことに気付くようでは、老後破産に陥ってしまう。

マイナンバーカードを保険証代わりにすると損?知っておきたい3つの注意点

●浪費癖があるか

老後の収入は年金に限られる人が大半だろう。収入が限定されるため、浪費癖がある方は注意が必要だ。

文/編集・dメニューマネー編集部

阿川佐和子さん 介護の悩みを周囲に話した方がいい理由「やっぱり我慢して喋らないよりも…」

作家の阿川佐和子さんが4日、NHK「あさイチ」(月~金曜前8・15)に生出演。「介護の悩みを周囲に話した方がいい」と思う理由を語った。


 番組では「阿川佐和子さんと考える“仕事”と“介護”」と題して、親の介護について職場で相談ができない人の悩みや、介護と仕事の両立などを取り上げた。

 認知症の母親を介護した経験をもつ阿川さんは、「私は更年期障害の状況とか、今介護が大変だとか。そういうのをどっちかというとお喋りだから言う方で」とした上で、「そうすると若い人たちは実感がないから“あ、そういうものなんですか。

どうすればいいでしょうね”っていう風になると思うけど。だんだん話していれば巻き込んでいけるし」と話した。

 さらに、介護の悩みを周囲に話した方がいいと思う理由については「中には“私も(同じ)経験をしたことがある”とか言う人たちもいると、そこで共通認識、やり取りできるから私はやっぱり我慢して喋らないよりも、“大変なのよ!”っていう風にした方がいいと思いますけどね」と語った。

貯金がなくて老後が不安…知っておいて損しない、老後に役立つ公的制度を解説

老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金

年金収入を含めた所得額が一定の基準額以下の年金受給者を対象に、生活を支援するために年金に上乗せして支給される「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」(以下、年金生活者支援給付金)があります。

年金生活者支援給付金を受け取るには、下記の3つの要件をすべて満たしている必要があります。

__●65歳以上で老齢基礎年金を受けている

●世帯全員の市町村民税が非課税となっている

●前年の年金収入を含む所得額の合計が88万1200円以下__

支給される金額は国民年金の保険料納付済期間などに応じて計算され、令和4年度は月額5020円(納付免除期間に基づく場合は1万802円)が基準となっています。

また、対象と見込まれる方には年金生活者支援給付金請求書が送られてくるため、申請する場合は必要事項を記入して、最寄りの年金事務所に提出します。

老後に受け取れる年金が老齢基礎年金のみで収入が少なく、年金生活者支援給付金の対象となる場合、申請手続きをすることで不足する収入をカバーできます。

高齢者住宅リフォーム補助金

老後は、自身や家族の介護が必要になることもあります。在宅介護のために、高齢者が居住する住宅でバリアフリー化などのリフォーム工事が必要となる場合、自治体による補助金を受けられることがあります。

対象の要件や補助金額などは自治体で異なることもありますが、例えば神奈川県横須賀市では、65歳以上の方が居住している、または所有者であるなど条件を満たす住宅の場合、対象のリフォーム工事費用について、一律10万円を補助する制度が用意されています。

住宅のリフォームを行うには、それなりにお金がかかることが想定されるため、特に老後で取り崩せる貯金が少ないケースでは、こういった制度を利用して負担を減らすことができます。

生活困窮者自立支援制度

「生活困窮者自立支援制度」とは、生活の困りごとや不安や悩みの相談をはじめ、就労支援や家計改善のアドバイスなど、日常生活で困窮する方を支援する制度です。

老後の生活で経済的に困難な状態に陥ったときに、申請できる公的制度の紹介を受けられたり、住居を失う恐れがある場合は一定の条件の下、家賃相当額の支給を受けることもできます。

詳細については、お住まいの自治体へお問い合わせください。

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、同一世帯での、国民健康保険の自己負担額と介護保険の利用者負担額の1年間(8月から翌年7月)の合計が自己負担限度額を超えた場合、超えた分の金額が支給される制度です。

例えば住民税非課税世帯では、医療保険や介護保険で支出した年間の自己負担額のうち、限度額となる31万円を超えた部分について、支給を受けることができます。

高額医療・高額介護合算療養費制度の適用には申請が必要です。自治体によっては、該当する可能性が高い方に申請を勧めるお知らせが届くこともありますが、不明点などについては、お住まいの市区町村役場へご相談ください。

生涯現役支援窓口

老後のお金に関する不安は、働くことでもある程度は解消できます。

ハローワークでは、再就職を目指す高齢者の中でも、65歳以上の方を重点的に支援する「生涯現役支援窓口」を設置しています。

主な特徴として、高齢者の採用に意欲的な求人の紹介やニーズに応じた情報提供、高齢者に合わせた求職活動の指導や職場見学といった各種サービスが行われています。

貯金が少なく、年金収入だけでは生活が不安定な場合、老後もこういった支援を受けて働くことも必要となるでしょう。生涯現役支援窓口の設置場所など、詳しくはハローワークのホームページをご確認ください。

老後の不安は公的制度を頼ることで解消できる場合もあります

老後の備えが不十分であったり、現役時代より収入が減少して生活が困難な状況になったりした場合、公的制度による支援を受けられることがあります。

また現在、老後の生活に不安を感じている人は、今からでも貯金などの準備をできるだけ進めるとともに、老後に頼れる制度についても知っておくようにしてください。

出典

[日本年金機構 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要

](https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/shienkyufukin/rourei.html)

[日本年金機構 年金生活者支援給付金

](https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/shienkyufukin/20190805.html)

[日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について

](https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202204/040103.html)

[横須賀市 横須賀市の高齢者住宅リフォーム補助金

](https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4821/sumai/documents/koreisya_chirashi.pdf)

[厚生労働省 生活困窮者自立支援制度

](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html)

[厚生労働省 お金、仕事、住宅など、生活に関するお悩みはこちらの窓口にご相談ください。

](https://www.mhlw.go.jp/content/000936284.pdf)

[横浜市 高額医療・高額介護合算療養費制度

](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/kogaku/high-cost-kaigo.html)

[厚生労働省 「生涯現役支援窓口」のご案内

](https://www.mhlw.go.jp/content/000913336.pdf)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

「老後破産」しないための5つのルールって?

退職後の生活はどんなイメージ?

定年退職をすると、大きく支出が減ると思っている人は多いようです。 でも、本当にそうでしょうか? 身についた生活の質というのはなかなか落とせないものです。今の生活費の、少なくとも7割くらいはかかると考えましょう。

また、最近は晩婚カップルも多いですし、子どもが成人する前に定年を迎える人も珍しくありません。住宅ローンが終わっていなかったり、賃貸だと、現役時代と生活費が変わらない場合もあります。

さらに、「人生100年時代」といわれる今、長生きは幸せなことではありますが、「老後、貯金が底をついてしまったらどうしよう」という不安は、若い人でもお持ちです。老後安心して暮らすために、今からできることがあります。ぜひ、次のことを実行して老後破産を回避しましょう!

ルール1. 自分がもらえる年金額を知る

50歳以上の人は、ねんきん定期便やねんきんネットを確認することで、自分が将来どのくらいの年金がもらえるのか、おおよそ知ることができます。

50歳未満の人は、その時点までの加入実績に基づいた金額が記されています。これから働き続ければ、年金額は増えますので、いたずらに不安にならないことですが、受給金額を知る簡易的な方法をお教えしましょう。老齢厚生年金は、「ねんきん定期便の金額+60歳になるまでの年数×年収×約0.0055」で計算します。

老齢基礎年金は、1年保険料を納めると2万円増えると考えます。年金受給が20年以上後なら、厚生年金(サラリーマン)で現役の平均手取り年収の0.3倍程度と考えましょう。

ルール2. 老後に使える生活費がどのくらいなのかざっくり知る

50歳未満の人は、図にある「人生設計の基本公式」を使って計算することで、老後の生活費がどのくらいになるか考えてみてください(「老後生活費率」は現在の生活費の何割で生活をするのかを仮定して計算します)。

人生設計の基本公式(出典:記事「あなたの必要貯蓄率は?人生の中での「お金」の考え方」)© All About, Inc. 人生設計の基本公式(出典:記事「あなたの必要貯蓄率は?人生の中での「お金」の考え方」)

この式で求められる「必要貯蓄率」は、生涯の平均手取り年収をベースに算出していますので、時々の必要貯蓄額は、「現在の手取り収入×必要貯蓄率」として、手取り収入の変化と共に変化していくと考えて構いません。これが、人生設計の基本公式の基本的なアプローチです。

たとえば、「必要貯蓄率=20%」の人が、現在の手取り年収220万円なら、「220万円×20%=44万円」となり、毎月、約3.6万円の貯蓄が必要になります。手取り年収が400万円になれば、「400万円×20%=80万円」で、毎月6.6万円の貯蓄が必要です。

その時々の手取り収入に対して「必要貯蓄率」を守っていけば、老後の生活費は、たとえ100歳まで生きたとしても確保できることになります(老後年数を100歳までとして計算した場合)。

▼50歳以上の人は、「老後設計の基本公式」で計算!

50歳以上の人は、「老後設計の基本公式」を使ってください。積み上げた貯蓄から、老後、毎年取り崩せるお金はいくらかを計算できる式です。60歳時点を想定して計算します。

「老後設計の基本公式」© All About, Inc. 「老後設計の基本公式」

「未年金年数」というのは、年金をもらわない期間です。65歳から受給するとすれば、「未年金年数」は、60歳からの5年間になります。「保有資産額」は、例えば、今後運用が上手くいって資産額が増えれば、プラスに反映します。

大体の老後生活費の目安がつけば、いたずらに不安を持つこともなくなりますし、対策も講じられます。皆さんもぜひ、計算して見てください。

少々厳しい老後が想定されるならば、働く期間をもう少し伸ばし、年金受給を70歳まで繰り下げることをご検討されるとよいでしょう。繰下げ請求は、月単位で行うことができ、1カ月繰り下げると0.7%増加します。

増額率=(65歳到達月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007

たとえば、年金額120万円の人が、70歳まで繰り下げると42%増えて約170万4000円になり、これが一生涯受け取れます。早く死亡して年金を受け取れないと損と考える人もいますが、年金は損得ではなく、長生きしたときの大きな助けになるのだと考えるべきです。

ルール3. 効率的な置き場所でお金を増やす

年金だけで生活費をカバーするのは難しいならば、不足分をこれから作っていかなければなりません。個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISA、NISAなど税制優遇の大きい場所で、効率的にお金を増やしていきましょう。

ほぼ全ての国民が使うことができるiDeCoは、掛金が全額、所得控除され、さらに住民税の負担減にもなります。運用益は非課税です。受け取り時も、現在のところ、公的年金等控除や退職所得控除の優遇があります。

お金にも働いてもらい、将来インフレになっても購買力を減らさないようにお金を増やしていきましょう。今、拠出する毎月の1万円は、老後に使えるお金を毎月1万円増やすことになるのです。

ルール4. 退職までに住宅ローンを終わらせる

住宅ローンの支払いが定年後も続くという人も少なくありません。そして、退職金を、住宅ローンの大きな返済資金源と考えている人が多いのですが、これはとても危険です。退職金は、リタイアメント後の生活費として考えましょう。

ルール5. 不要な保険は解約する

人生の中で、何度か生命保険の保険金額を減らす、または解約するタイミングがあります。家を買ったときは、多くの人が機構団体信用生命保険特約制度(団信:加入者に万一のことがあった場合、残りの住宅ローンがなくなる保障制度)に加入するので、その分、必要保障額は少なくなります。

また、子どもの独立は、ひとまず親としての責任が終わったということで、必要保障額が減少します。必要がなくなれば躊躇せずにやめましょう。

ある程度預貯金があれば、医療保険の必要性も低くなります。もしものためにお金を使うより、その分を、老後資金として、貯蓄、運用する方が将来のために役に立ちます。

今、外貨建て保険やトンチン保険などが熱心に販売されていますが、高コストの商品がほとんどです。お金を効率的に増やしていくには、ふさわしくありませんので、慎重に考えましょう。

文:岩城 みずほ(ファイナンシャルプランナー)

慶應義塾大学卒業。フリーアナウンサー、セミナー講師、生命保険会社勤務を経て、2009年にFPとして独立。30~40代の教育費を含む家計の見直し、資産運用の相談を多く受けている。DCプランナー・日経新聞読み方講師としても活躍。

摂食障害やうつ病になった場合、障害年金は申請できる?

心の病は長引くことがある?

厚生労働省が発表している「病院報告(令和4年1月分概数)」によると、精神病床における平均在院日数(入院から退院までの期間の平均)は299.8日となっており、一般病床の平均在院日数である17.2日よりも圧倒的に長くなっています。

会社員などの方であれば、病気やけがで連続した3日間を含む4日以上の、給与が支払われない休業をした場合、直近1年間の標準報酬月額を基に算定した金額が最大で1年6ヶ月、健康保険から傷病手当金として支給されます。

一方、個人事業主の方などが加入している国民健康保険には、傷病手当金がないので注意が必要です。

うつ病などで長期の治療を経ても十分に回復せず、日常生活や仕事に支障が生じる状況が続いた場合は、精神の障害がある方として障害年金を受給できる可能性があります。

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類がありますが、以下でそれぞれの受給要件や年金額について確認していきます。

障害基礎年金の受給要件

障害基礎年金の受給要件として、国民年金加入期間のほか、20歳未満または日本在住の60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があることが必要です。

また障害基礎年金は、障害認定日に障害等級表の1級または2級に該当している方が対象です。

障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月が過ぎた日、または1年6ヶ月以内に病気やけがが治った(症状が固定された)日のことをいいます。

保険料の納付についての要件もあり、初診日の前日時点に、初診日が含まれる月の2ヶ月前までの被保険者期間で、国民健康保険料の納付済期間と免除期間を合計した期間が3分の2以上を占めている必要があります。

ただし、2026年3月末までは、初診日が65歳未満であれば、初診日が含まれる月の2ヶ月前までの1年間で保険料の未納がなければ、保険料の納付要件は満たしたことになります。

障害厚生年金の受給要件

障害厚生年金の受給要件は、厚生年金保険の加入期間中に障害の原因となった病気やけがの初診日があることです。

保険料の納付要件は前述の障害基礎年金と同じですが、障害厚生年金では障害の状態について、障害認定日に障害等級表の1級から3級に該当している方が対象となります。

なお、初診日から5年以内に症状は治ってはいる(症状が固定されている)ものの、障害厚生年金の受給対象となる状態より軽い障害が残っており、障害等級表で定められた障害状態である場合には、障害手当金(一時金)が支給されます。

障害基礎年金の受給額

障害基礎年金の受給額(令和4年度)は以下のとおりです。

__1級:97万2250円+子の加算額

2級:77万7800円+子の加算額__

__子の加算額:2人までは1人につき22万3800円、3人目から7万4600円

子の要件:18歳になった年度末までの方、および20歳未満で障害等級1級・2級に該当する方__

障害厚生年の受給額

障害厚生年金の受給額(令和4年度)は以下のとおりです。

__1級:報酬比例部分の年金額×1\.25+配偶者加給年金額

2級:報酬比例部分の年金額+配偶者加給年金

3級:報酬比例部分の年金額(最低保障額 58万3400円)__

__障害手当金(一時金):報酬比例部分の年金額×2(最低保障額 116万6800円)

配偶者加給年金額:22万3800円(65歳未満の生計を維持する配偶者がいる場合に加算)__

なお、障害厚生年金の1級・2級に該当する方は、障害基礎年金も合わせて受給できます。

障害年金の認定基準

日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」には、精神の障害として「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」「気分(感情)障害」「症状性を含む器質性精神障害」「てんかん」「知的障害」「発達障害」が記載されています。

障害の程度についておおまかにいうと、上記のうちで日常生活に常に援助が必要な状態を1級、日常生活に著しい制限を受ける状態を2級、労働に著しい制限を受ける状態を3級としています。3級に該当しない場合で労働に制限を受ける状態は、障害手当金の対象になる可能性があります。

摂食障害で障害年金は受け取れるのか

摂食障害は、前述した障害認定基準にその病名の記載がないため、障害年金支給の対象にはならないと考えられます。

しかし、摂食障害の原因として前述した障害があるケースでは、対象になる可能性があります。

障害年金の認定は線引きがあいまいなこともあるため、日本年金機構の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を参考にするとともに、医師や社会保険労務士などの専門家に、自身の状態が障害年金の対象になるのか否かを相談する必要もあるでしょう。

うつ病で障害年金は受け取れるのか

厚生労働省のホームページによると、うつ病は気分障害の1つとされています。

気分障害は前述の障害認定基準に記載されているため、一定の条件を満たせば障害年金を受け取れる可能性があります。

まとめ

ここまで解説したとおり、精神障害のすべてが障害年金の対象になるとは限りません。また、自身が加入している年金制度や障害の程度によって、受給できる障害年金の種類と受給額が変わります。

制度の内容を把握し、受け取り損ねがないように気をつけましょう。

出典

厚生労働省 病院報告(令和4年1月分概数)

日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 8節/精神の障害

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイト うつ病

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイト 摂食障害

日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版

日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン

執筆者:遠藤功二

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

年払いだと5%も割安に! プロが伝授「得する保険の入り方

保険とは、万が一に備えて入るものだが、「入り損」という結果になることが多いのも事実。そこで、「保険は損するもの」という視点で考えた、保険のプロの“結論”を伝授。保険は「入り方」がすべてです――!

 

保険金を受け取るということは何らかの不幸やトラブルが起きたということです。どんなに高額な保険金を受け取っても、それに見合うものではありません。いちばんいいのは、何も起きないこと。この場合、支払った保険料は掛け捨てになることもあります。つまり、得する保険というのはもともとないのです」

 

こう話すのは、長年ムック『よい保険・悪い保険シリーズ』の監修者を務め、“保険のプロ”として知られる長尾義弘さん。

 

「ただ、ここだけの話ですが、お得に保険に加入する方法というのはあるんです」

 

そんな“保険のプロ”だけが知っている得する入り方を、長尾さんに伝授してもらおう。

 

【入り方・1】保険料は年払いにする

 

「保険料には通常、月払い、半年払い、年払いの3通りがあります。年払いにして、いっぺんに1年分をまとめて払うと、3~5%保険料が割安に。一度に支払う金額が高額になるので厳しい家庭も多いでしょうが、可能なら年払いがおすすめです」(長尾さん・以下同)

 

【入り方・2】保険料はクレジットカード払いにする

 

「さらに保険料を銀行の口座引き落としではなくクレジットカード払いにすれば、カードのポイントがつきます。還元率のよいカードで年払いにするのがもっともお得な支払い方でしょう」

 

【入り方・3】生命保険・地震保険の税金控除を忘れない

 

税金の申告をする際に、生命保険と地震保険に加入していれば、年間に支払った保険料に応じた額の所得控除が受けられる。

 

「会社員・公務員の人は、勤務先から年末調整の書類を渡されるので、これに記入して提出すればOKです。自営業の人などは毎年、確定申告をしないといけません。ちなみに’12年1月以降に契約した生命保険では、年間8万円を超えて支払うと、4万円の所得控除が受けられます」

 

地震保険の場合は、保険料が5万円以下の場合は全額、5万円を超える場合は5万円が控除される。

 

「どちらも申告しないと損になりますので、年末調整時や確定申告時に忘れないように注意してください」

 

【入り方・4】無料の付帯サービスをフル活用せよ

 

「保険会社ではいざというときの保険金だけでなく、じつはさまざまな無料サービスを提供しています。サービス名や内容は保険会社によって異なりますが、多くの保険会社が実施しているサービスが次のようなものです。とくに『24時間電話健康相談サービス』は深夜に急に子どもや高齢者の具合が悪くなったときなどに対処法を教えてくれたり、誤飲したときの対処法なども電話で相談できるのでたいへん便利。ほかにも『介護相談』や『人間ドック』の割引に加えて、スポーツクラブやレジャー施設の割引などの優待サービスを行っている保険会社もあります。自分の契約している保険の付帯サービスを確認して、積極的に活用しないと損ですよ」


■保険に加入すると受けられる「無料サービス」一覧

 

〈多くの保険会社が付帯〉

24時間電話健康相談サービス:深夜や土日でも相談ができるので利用価値が高い。
セカンドオピニオンサービス:がんだけでなく、ほかの病気でも受けることが可能。

 

〈保険会社により付帯しているサービス〉

ドクターオブドクターズネットワーク:日本全国の名医を紹介してくれるサービス。なかなか受診できない名医を紹介してくれる場合もある。
メンタルヘルスサービス:心理カウンセラーが電話や面談で、精神的な悩み、心の問題について、相談に応じてくれる。
介護相談:介護の悩みを電話や面談で相談できる。
人間ドック:人間ドックを利用するときに割引が受けられる。
スポーツクラブ・レジャー施設の優待サービス:各施設を利用するときに優待割引が受けられる。

 

【入り方・5】持病がないうちに加入する

 

「持病とひと口に言っても、心臓病から高血圧や糖尿病、高コレステロールで薬を処方してもらっているといったものまでさまざま。がんなどの病気は予期できませんが、40代で体重が増加しているなど、高血圧や糖尿病の予備群という自覚があったら、診断される前に保険に加入することで、保険料を安くすることができます」

 

もしこうした生活習慣病と診断されると、一般的な生命保険や医療保険に加入しにくくなり、「持病があっても入れます」とうたっている引受基準緩和型保険に加入しなければならなくなる。

 

「最近は引受基準緩和型保険で保険料が比較的安いものも出ていますが、それでも通常の医療保険などと比べて1.5倍ほど割高。健康なうちに加入するほうがいかに得かわかると思います」

 

【入り方・6】出産を希望している人は妊娠前に加入する

 

「最近は“妊婦さんでも入れる”保険というのが発売されていますが、出産時のリスクをふまえて、通常の医療保険は妊娠がわかると加入することが難しくなります。これから出産を計画している女性は、実際に妊娠がわかる前に医療保険に加入しておくことで、出産前後の思わぬ医療費の出費に備えることができます。そしてもう出産は考えないという時期に解約してはいかがでしょうか」

 

【入り方・7】禁煙を2年間してから加入する

 

「近年、死亡保険や医療保険には『リスク細分型保険』といって、健康であれば、保険料が割引になるサービスがあります。『健康』の条件は保険会社で異なりますが、代表的なものを見ると、非喫煙で血圧、BMIが基準内であれば、保険料が半額になる商品も。非喫煙の条件は通常、禁煙期間は2年間(1年間という保険もある)。がんばって禁煙を2年間できれば、契約内容は同じで安い保険料で加入することができ、お得です」

 

こんなにあった得する保険の入り方。ぜひ保険の新規加入や見直しの際に活用してみよう。

 

【PROFILE】長尾義弘

ファイナンシャル・プランナー。「お金」をテーマに幅広く執筆し、『NEWよい保険・悪い保険2022年版』(徳間書店)の監修などで活躍

【在職老齢年金】4月の年金制度改革で「47万円」がポイントに 支給停止基準緩和の詳細と計算式を解説

60歳以降も会社員などで厚生年金に加入しながら、老齢厚生年金を受給している方がいらっしゃいます。

このように厚生年金に加入しながら受給する老齢厚生年金在職老齢年金といい、 給与や賞与の額と年金の受給額の合計が一定以上になると、全部または一部の年金が支給停止となるのです。

2022年4月からの年金制度改革による法改正により、60歳から65歳未満の在職老齢年金の支給停止になる基準が変更になりました。

今回は、この年金制度改革での見直しにより有利になった在職老齢年金について、分かりやすく解説していきます。

2022年4月から在職老齢年金がどのように変わったのか

在職老齢年金は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が一定額を越えると、年金額の一部または全額が減額されます

2022年3月までの在職老齢年金の支給停止基準は、60歳から65歳未満の在職老齢年金と、65歳以上の在職老齢年金で計算の仕組みが異なっていました。

もちろん、65歳以上の在職老齢年金の支給停止基準よりも、60歳から65歳未満の在職老齢年金の支給停止基準の方が厳しかったのです。

しかし、2022年4月からの年金制度改革により、60歳から65歳未満の在職老齢年金の支給停止基準が、65歳以上の在職老齢年金と同じになりました。

すなわち、現在の在職老齢年金の支給停止基準は、年齢にかかわらず同じです。

在職老齢年金の支給停止基準額の計算式

在職老齢年金は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額に応じて、年金額が以下のように支給停止されます。

老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下の場合

年金額は減額されず、老齢厚生年金は全額支給されます。

老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超える場合

支給停止額(月額) = (基本月額+総報酬月額相当額-47万円) × 1/2

支給停止基準額の基になる基本月額とは、老齢厚生年金の年額を12で割った金額です。(加給年金は除く)

総報酬月額相当額とは、 標準報酬月額に、直近1年間の賞与額を12で割った額を足した金額です。

このように、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下なのか、47万円を越えるかによって、老齢厚生年金が減額されるのか、減額されずに全額受給できるかが変わってきます。

厚生年金に加入しながら、老齢厚生年金を受給している方が、年金額を減額されないためには、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を越えるかがポイントになります。

そのため、合計額が47万円を越えないように働くのも、1つの方法です。

制度改正で年金額が増えた人も多い

2022年4月からの年金制度改革による法改正により、年齢により異なっていた在職老齢年金の支給停止になる基準がなくなりました。

このことにより、60歳から65歳未満で在職老齢年金を受給していた方は、支給調整される基準がゆるやかになったため、年金額が増えた方も多くいるのです。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)

「老後貧乏」に陥らないために!大事な考え方3つ

老後貧乏に陥らないためには、どのような考え方を持つとよいのでしょうか。今回は、運用のノウハウやお金の貯め方ではなく、考え方についてお話しします。

その1:お金が足りないことをポジティブにとらえる

30代、40代の人たちが将来、受け取ることのできる公的年金は、減ってしまう傾向にあります。それゆえ、セカンドライフの生活資金を公的年金だけに頼るのはNG。年金が足りないと思うと、不安が募る人も多いのではないでしょうか。

まずは毎年、誕生月には「ねんきん定期便」が送られてくると思いますので、最低限、確認してください。「ねんきん定期便」に書かれている金額ではまったく足りないと思うかもしれませんが、いくらもらえるのかがわかります。年金の不足分を貯めればいい、とポジティブにとらえることが大切です。

また、住宅ローン等の負債があり、将来お金が足りなくなりそうという不安がある場合は、今のうちに、どうすればいいのかを考えておきましょう。なるべく早く完済する方法を考え、必要以上に借り入れを増やさないことが大事です。負債額が減ってくると不安も減ってきて、前向きに考えることができるようになります。

その2:健康を意識した生活を送る

リタイアメントプランなどを立てて、将来に備える人は少なくありません。ただし、その中で金額として見積もりにくいのが病気にかかってしまったときの出費です。

よく、「イザというときのためにお金を貯めている」という人がいますが、貯まったお金を切り崩すのには勇気が必要になってきます。若いときよりも年齢を重ねた方が病気になるリスクは高まってきますが、将来の病気にかかるお金を意識してしまい、「いま」を楽しめないのはナンセンスではないでしょうか?

病気などのイザに備えるためには、医療保険や介護保険を活用して保険で安心を買うのも一つの方法だと思います。

保険はできるだけシンプルにする風潮がありますが、必要以上に減らすのは危険です。医療保険に入れば、死亡時や病気、ケガしたときに保障が得られます。老後の医療費を保険でカバーするとしても、その保険料は「いまを楽しむための投資」と考えればいいのではないでしょうか。

そして、健康を意識した生活を送りましょう。食生活を見直すことも大切ですが、長く続けられるスポーツを始めるのもいいかもしれませんね。

趣味にお金を使うのは無駄に思えるかもしれませんが、健康維持のためのスポーツへの費用なら、病気にかかってからお金を使うよりも楽しんで使えますし、長い目でみると有意義な投資になるハズです。

その3:将来に備えた人間関係を構築する

お金を持っていても、老後貧乏になってしまうケースは考えられます。それはネットワーク、人間関係がまったく構築されていない場合です。

年齢を重ねるとできることは限られてしまいますし、誰かに頼りたいことも増えてきます。もちろん、近くに家族が住んでいれば助けてもらえるかもしれませんが、近くにいないときには、自分で考えて行動しなければなりません。

男性で多いのですが、現役のときには仕事関係の人としかつきあわず、セカンドライフを迎えたときには、自分の周りには頼れる人や仲良く過ごす人が1人もいない……というような人は要注意です。

お金と人間関係は、遠いように思うかもしれませんが、サービスはお金で買える時代とはいえ、長年のつきあいのある人たちに助けてもらうのとは意味が違ってきます。また、友達同士や気心の知れた相手、普段からつきあいがある人と、さまざまなことを経験をすることで、セカンドライフが豊かになるものです。

年齢を重ねるほどに、友達作りは難しくなります。今のうちから仕事以外でつきあいのできる人を作ってみましょう。

文:飯田 道子(ファイナンシャルプランナー)

金融機関勤務を経てFP(CFP、1級FP技能士)を取得。独立系FPとして、各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などを行っている。金運アップやポジティブお金など、カラーセラピーと数秘術を取り入れたアドバイスも得意。

定年退職後の生命保険、どうやって考える? 想定すべきリスクとは

定年退職後に生命保険を見直すべき理由

定年退職後には、収入の減少や子どもの独立などライフスタイルが大きく変わります。また、年齢を重ねて健康面で変化を迎えるときでもありますので、これまでとは異なる生命保険で、健康面のリスクに備えておきたいものです。

ここでは、老後を迎える前に知っておきたい、定年退職後に生命保険を見直すべき理由について紹介します。

入院受療率が上がる

定年退職後は加齢によって体力が落ち、病気やけがのリスクが高いです。厚生労働省の「平成29年(2017)患者調査」によると、65歳から入院受療率が上がり、そのなかでも75歳からは急激に上がることが分かります。

入院によって金銭的負担が大きくなってしまうと、生活を圧迫してしまうこともあります。万が一のリスクに対応できるよう、老後の入院費などをカバーできる生命保険で備えておきましょう。

介護で公的保険を超える負担も想定される

定年退職後しばらくすると、介護が必要になることも想定しておいたほうがよいでしょう。

日本では40歳に達したときから介護保険への加入が義務付けられていて、必要に応じて給付を受けられます。しかし、公的介護保険は現物給付であり、介護の度合いによって負担割合や支給限度額が定められています。もし公的介護保険以外の介護サービスを平行して利用するならば、負担が高額になることも少なくありません。

そのような介護の負担に備えられるよう、介護への備えができる保険への加入を検討してみてください。

定年退職後のリスクと必要となる生命保険の内容とは

定年退職後には現役で働いていたころとは異なる内容の、さまざまな健康上のリスクが想定されます。老後に健康上のリスクとなりやすい内容に合わせて生命保険を見直して、対策するのが望ましいです。

ここでは、定年退職後に多くの人に起こることが想定されるリスクと、老後のリスクに対応できる生命保険について見ていきましょう。

入院や手術に備える生命保険

上記のとおり、厚生労働省の「平成29年(2017)患者調査」で、定年退職する年齢のころに入院受療率が上昇することから、病気やけがのリスクが上がることが分かります。

70歳以上になると健康保険の負担割合が下がりますが、入院が長引くなどの理由から、負担が大きくなることも多いでしょう。また、入院に必要な費用のなかには、差額ベッド代など健康保険の対象とならないものもあります。

このような公的保障で賄えない部分を補い負担を少なくするために、生命保険で備えておきましょう。

介護や認知症への補償を想定した生命保険

高齢になると介護が必要になることや認知症になってしまうリスクもあるでしょう。そうなった場合、想像以上に負担が大きくなることも多いので、介護が必要となるときのために備えておきましょう。

ただし介護や認知症に備える保険は、加入できる年齢の上限に気をつけてください。

死亡保障は死亡後に必要な金額を賄える金額に見直す

定年退職後には、子どもが就職して子育てが一段落している人も多いです。そのため、現役世代のような高額の死亡保障は必要ありません。そこで、死亡保障を下記の支出に対応できる金額に抑えられるよう見直しましょう。

__●葬式代

●配偶者や家族の生活費

●相続対策(相続税など)__

死亡保障の金額を下げれば、保険料の負担を抑えられるので、その分介護や医療への備えに回すということもできます。

定年退職後の生命保険は老後に必要な内容に見直そう

定年退職後に生命保険の見直しが必要な理由は2つあります。1つは高齢になると入院受療率が上がる点、もう1つは介護で負担が大きくなることが想定される点です。

どちらも公的な保険は利用できますが、カバーしきれない部分もあります。そこで、いざというときに備えられるよう、早めに生命保険を見直すとよいでしょう。

生命保険を見直す際、入院費の備え、介護や認知症への備えができるものを選ぶとともに、死亡保障の見直しも必要です。自身の葬式代や家族の生活費、相続対策に必要な支出をカバーできるよう、金額を見直してみましょう。

出典

厚生労働省 医療費の自己負担 医療費の一部負担割合について

厚生労働省 第67回 社会保障審議会介護保険部会資料 参考資料1 利用者負担

厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料

厚生労働省 平成29年(2017)患者調査の概況 受療率

公益財団法人生命保険文化センター 公的介護保険で受けられるサービスの内容は?

協会けんぽ 高齢受給者証

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

年金の額が同じでも、住む場所によって手取りが変わるって本当?

年金の平均受給額

厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度の老齢厚生年金(厚生年金)の平均受給額は月14万6145円です(国民年金含む)。

また、老齢基礎年金(国民年金)受給者の平均受給額は5万6358円でした。近年の老齢厚生年金(国民年金含む)の平均受給額は、図表1のとおりです。

【図表1】

出典:厚生労働省 令和元年度、令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

上記のとおり、老齢厚生年金の平均受給額は14〜15万円程度になります。

年金から引かれるもの

老齢厚生年金や老齢国民年金の振り込まれている金額は、額面から住民税や国民健康保険料などの税金や保険料が天引きされた金額です。

年金は老後生活を支える大切な収入となりますので、年金からどのような税金・保険料が天引きされるのか把握しておく必要があります。ここでは、年金から引かれる税金や保険料について見ていきましょう。

所得税

次のような場合、年金に対して所得税がかかります。

__

・65歳未満で年金収入が108万円以上ある

・65歳以上で年金収入が158万円以上ある

__

基礎控除(48万円)と公的年金等控除(65歳未満、130万円未満:60万円、65歳以上、330万円未満:110万円)があるからです。そのため、65歳未満の場合は年金が月額9万円、65歳以上の場合は月額13万5000円までの方は所得税がかかりません。

住民税

65歳以上で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は住民税が天引きされます。

住民税は、所得割額と均等割額で構成されており、年金収入から公的年金等控除額や社会保険料控除額などを差し引いた金額に住民税率を掛けて、調整控除額を引いて所得割を求めます。均等割は一律の金額です。

国民健康保険料

65歳以上75歳未満で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は国民健康保険料が天引きされます。

国民健康保険料は、医療分(基礎賦課額)、支援分(後期高齢者支援金等賦課額)、介護分(介護納付金賦課額)を合算して算定される仕組みです。所得割額と均等割額で構成されており、計算方法や料率は市区町村で異なります。なお、75歳以上になると後期高齢者医療保険料へと移行します。

介護保険料

65歳以上で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は介護保険料が天引きされます。

65歳以上の方は第1号被保険者です。介護保険料は、基準額に所得で段階的に設定された割合を乗じ、算定します。段階や基準額などは市町村ごとに条例で定められています。例えば、東京都大田区では、1〜17段階まであり、基準額×0.25〜3.55が介護保険料です。

後期高齢者医療保険料

後期高齢者医療制度は、75歳以上の方や一定の障害がある65歳以上の方を社会全体で支える仕組みです。

75歳以上または65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度に該当し、老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて年間の受給額が18万円以上の場合は、後期高齢者医療保険料が天引きされます。

後期高齢者医療保険料は所得割額と均等割額で構成されています。東京都内の所得割額は所得金額×9.49%、均等割額は被保険者1人あたり4万6400円です。

住む場所で社会保険料が異なるため年金手取り額も変わる

老齢厚生年金や老齢基礎年金は額面から税金や社会保険料が天引きされます。

まず、住民税は住んでいる場所により異なる場合があります。国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料も、住んでいる場所によって料率や基準額が異なります。そのため、年金の額面は同じでも、住んでいる場所によって手取り額に差が生じます。

社会保険料が安い地域に住めば、年金の手取り額を増やすことが可能です。これから引っ越しの予定があり場所が決まっていない方は、このことを参考にしてみてください。

このように、住んでいる市町村によって年金の手取り額が異なるということを知っておくのもよいでしょう。

「親の老後資金が不安!」40~50代の子どもが知っておくべき「公的制度と備え」について

65歳以上の貯蓄金額の平均

厚生労働省の国民生活基礎調査(令和元年)によると、1000万円以上の貯蓄がある高齢者世帯は、全体の33.8%でした。一方、貯蓄がない、もしくは100万円未満であると答えた人の割合は、全体の20.9%に上ります。高齢者世帯の5分の1は、老後の資金が不足しているといえるでしょう。

老後の生活資金が厳しい場合の公的制度

老後の生活資金が不足する場合は、公的制度を利用することも検討しましょう。高齢者が受けられる公的制度は、主に生活保護制度と高額医療・高額介護合算制度の2つあります。

生活保護制度

生活保護制度は、生活するお金に困っている人に対して支援を行うことで、「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」(厚生労働省)ための国の制度です。生活保護を受けるためには、貯蓄がある人や不動産や土地を持っている人は、まず売却して生活費を賄わなければいけません。ほかにも、扶養義務者になる子どもからの援助が受けられる場合は、受給の対象外になります。

生活保護制度の扶助内容は、困っている内容に応じて、生活費が不足する場合の生活扶助や、賃料の支払いの困った場合の住宅扶助などがあります。制度を利用するためには一定の基準を満たす必要があります。利用を検討している方は、住んでいる地域の福祉事務所で一度、相談してみましょう。

ただし、生活保護を受けていると入居できる老人ホームが限られてくるほか、年金を受給している場合は生活保護が減額されるなどの制約があるため注意しましょう。

高額医療・高額介護合算制度

医療費や介護費が負担になっている場合は、高額医療・高額介護合算制度が利用できるかもしれません。これまでは医療費の自己負担上限枠と介護費の自己負担上限枠がそれぞれ別に設定されていたのに対し、合算することで利用者の負担を軽くできるのが特徴です。

医療保険者と介護保険者の双方が、自己負担額の比率に応じて費用を負担します。介護保険者は市町村にあたるため、自治体の保険年金課保険係に相談してみましょう。

親が老後の資金不足にならないための対策

老後資金が尽きないよう、事前に備えて欲しいと考える人も多いでしょう。親の老後資金が不安な場合、老後を迎える前に行える対策例を紹介します。

任意後見制度を利用

今は親が元気だが将来に不安があるという方は、「任意後見制度」の利用を検討しましょう。任意後見制度とは、現在は判断能力に問題ないものの、将来的に認知症や障害など自己判断能力が低下したときに備えて、代わりに契約行為などを行う人を選任しておく制度です。親が健康なうちに任意後見人指名することで、親が認知症になったときに銀行管理や不動産売却、遺産分割などを行えるようになります。

親が任意後見人を選任することで、事前に親の財産を把握でき、老後、判断能力の低下した親が財産を使い込まないよう管理できます。また、資金が足りないときは資産の売却を行うことができます。

介護施設への入所手続きや病院の入院手続き、介護保険の契約などは、本人または任意後見人である必要があります。事前に任意後見人を選任しておくと安心です。

資産運用をすすめる

年老いた親が生活資金不足に陥る前に、少しでも早く資金の用意を進めておきましょう。貯蓄だけでなく、iDeCo(イデコ)や投資信託など、資産運用の話をするのも有効です。始める年齢が遅ければ遅いほど、リスクの小さい商品を選ぶことになるため、なるべく早く資産運用を始めましょう。

老後資金について話し合って備えよう

40代、50代の方にとっては、親が老後に直面する問題が深刻化してきます。中でも生活資金は、子どもである自身の生活にも関わってくるため、事前の対策や公的制度を把握しておくことが重要です。一度親と話し合い、対策を練っておきましょう。

出典

厚生労働省 国民生活基礎調査(令和元年)の結果から グラフでみる世帯の状況

厚生労働省 生活保護制度

厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について

厚生労働省 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)

執筆者:丸山希

2級ファイナンシャルプランニング技能士

“幸福な80代”を迎えるために「老後資金1000万円」を確保する方法

 転倒による骨折や配偶者の介護──たとえ健康な体を保つために努めていても、いつ何が起きるかわからないのが80代だ。日本の平均寿命の最新の統計を見ると、女性は87.74才、男性も81.64才と過去最高を更新している。人生100年時代を考えると、「先立つもの」が強い味方になるだろう。

【表】歳を重ねるほど経験を生かして稼げるバイト一覧

 人生の終盤の過ごし方「ラストプランニング」の専門家として多くの高齢者の相談に乗るファイナンシャルプランナーの岡本典子さんが言う。

「幸福度の低い80代に共通するのは強い不安感です。老いや孤独への不安は解決が難しいですが、経済的な悩みであれば老後資金を備えておくことで解消できますし、経済的な不安がなくなることで老いへの不安が軽減される人も少なくない。80代をどう過ごすかは人それぞれでしょうが、最低でも80才時点で、夫婦でいざというときのために1000万円の老後資金を確保しておきたい」

 ファイナンシャルプランナーの澤木明さんも「80才時点で、1人あたり1000万円の預貯金が目安」と話す。

「2019年に金融庁が、65才時点で2000万円必要だと発表しましたが、この金額には介護資金は含まれていません。80才になれば、介護費用を考えておく必要があります。在宅と特別養護老人ホームなら1000万円が目標です。実際、私は母の介護費用に1000万円かかりました。これくらいの預貯金があれば子供に負担をかけず、自分も安心して過ごすことができます」(澤木さん)

第二の財布が心の安定を作る

 確かに、1000万円の貯蓄があればゆとりある心で80代を迎えられるだろう。しかし、そこに至るまでの長く険しい道のりはどうしたら乗り越えられるのか。岡本さんは「貯蓄体質」の大切さを力説する。

「少額であっても、毎月一定の額を貯金することから始めてほしい。現役時代から毎月天引きで積み立てていくのが理想ですが、55才から始めたとしても20年間しっかり貯蓄すれば75才時点でまとまった額が手に入ります。投資であれば最長20年までの運用益が非課税になる『つみたてNISA』がおすすめです」(岡本さん・以下同)

 岡本さんは定額の積み立てと並行して、普段の収支は2つの口座に分けて管理することを推奨する。

「『毎月の収支用』と『いざというときの備え用』の2口、口座を作ってください。年金などの収入や、食費や光熱費などの支出は、前者の口座でしっかり管理する。それとは別に、若い頃から貯めてきた金融資産や退職金は“第二の財布”として運用する。病気の治療費や家のリフォーム代、家電の買い替え費用や趣味に使うお金などは、ここから出してください。この口座を充実させることで、気持ちに余裕が生まれます。いざというときに自由に使えるお金があるという安心感が、心の安定につながるのです」

老後に収入を増やすための“ちょい働き”

 資産の運用と並行して、収入を増やす方法も模索したい。澤木さんは老後の“ちょい働き”をすすめる。

「60才から70才までアルバイトをして月8万円、年収100万円近く稼ぐことができれば、10年で約1000万円を貯めることができます。コンビニやレストラン、ファストフード店など高齢者を積極的に採用している職場は少なくない。働くことで貧困を防げるうえ、人と接するので孤独にもならない。生活のリズムもできて健康にもいい。人生の3大不安要素である貧困・孤独・病気を解消できます」(澤木さん)

 実際に、仕事を持っている高齢者ほど幸福度が高いという研究データもある。

 自身のスキルを生かし、仕事を通じて社会貢献することは80才を超えてからの人生に大きな影響を与える。そのことを身をもって体現するのが、87才で現役最高齢アナウンサーの押阪忍さんだ。

「家で原稿を読んでくるから、スタジオに入ったら即本番。それがぼくのプロ意識です」

 明朗な声でそう話す押阪さんは、74才で大腸がん、82才で腹部大動脈瘤と2度の大病を経験したが、見事回復し、メインパーソナリティーを務めるラジオ番組『ワンポイント・フィットネス』は、今年30周年を迎える。

「特にがんになったときはショックを受けましたが、早く仕事に復帰したい一心で、“何くそ、負けないぞ”と思いながら懸命に治療しました。仕事のスケジュールに穴をあけたくなかったから、がんも大動脈瘤も、手術をしてすぐに復帰しました」(押阪さん・以下同)

 87才の現在も、一日でも長く現役を続けるために、食や運動にも気を配っている。

「1日3食摂りますが、油っこいメニューは控えて、腹八分目を心がけています。たんぱく質を摂取するために1日1回は豆腐を食べるようにしています。散歩は毎日コツコツと、1日3000歩を目標にしています。植物が好きなので、道ばたに咲いた花を見るのが何よりも楽しい。皆さんも少しの時間でもいいから外に出て、四季に触れてみてください」

 仕事のための努力によって「80才の壁」を越えることができるのだ。

※女性セブン2022年6月2日号

50、60代からの老後資金準備。「出費のコントロール」で差がつく

老後の暮らしで不安なことは? と聞かれて、「お金」と答える方も多いのでは? 50~60代にもなると、すぐ目の前に迫りつつある老後のお金問題…。まずはどんなことから手をつけたらいいのでしょうか? 今のうちからやっておきたいことを、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに聞いてみました。

老後のためのお金の使い方。出費をコントロールする習慣を

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老後のお金を計画的に使うためにも、習慣づけておきたいのが出費の記録。

「家計簿は手間」という人へのおすすめが、畠中さんが考案された「貯金簿®」です。また、老後の思わぬ“落とし穴”になりがちな特別支出に関しても計画的に備えましょう。

●貯金簿®で資産を管理する

出費の管理に、今すぐ始められて老後もずっと役に立つのが下の表の「貯金簿®」。

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「貯金簿とは預貯金や投資商品、住宅ローンの残高などを一覧にしたもの。3か月に一度、残高を更新して、増えていればOK、減っていればすぐ出費を見直す対策がとれます。貯蓄の増え具合で準備できる老後資金を予想したり、リタイア後は減り具合に敏感になって老後破産を防ぐ効果も」

●特別支出の使いすぎを防ぐ

年金生活はボーナスがないため、固定資産税などの特別支出は貯蓄から出すことになります。

「無計画に使うと貯蓄がどんどん減ってしまうので、今から特別支出を記録して必要な額を把握して。義理だけのお中元やお歳暮は退職を機にやめるなど、出費を見直すことも大切です」

【見落としがちな特別支出と備え方】

<医療費>先進医療希望の人は、費用準備がマスト

高齢になると発症しやすいのが白内障や歯槽膿漏など。多焦点レンズの手術やインプラントの費用を見積もって準備しておくと安心。

<家電・クルマの買い替え>買い替え時期を予想し、計画的に備える

家電は種類ごとに購入年と金額をリスト化し、クルマは何歳まで乗るかを考えて逆算して、それぞれの買い替え時期と必要な資金を予想。

<住宅リフォーム>リフォームする場所ごとに予算を立てる

キッチンやトイレの取り換え、一軒家なら外壁の補修なども必要に。いつ頃、いくら必要か見積もって備えておくと安心。

<介護>自宅か施設か、方針を決めて介護に備える

最期まで自宅か、高齢者施設に移るか、方針を決め、必要な費用を準備。施設入居希望なら、元気なうちに見学に行くのもおすすめ。

<子どもへの援助>子ども1人あたりの額を決めておく

結婚や家の購入で援助するなら、1人あたりいくらと決めて備えて。無計画な援助で子ども同士に差が出ると、トラブルになるので注意。

●住宅ローンの残債はどうするべき?

残債が多い人は、退職金で完済すると老後資金が乏しくなりがち。

「退職前に、繰り上げ返済や返済額増額で軽減しましょう。月の貯蓄額が5万円なら、老後資金の貯金は2万円に、残り3万円は繰り上げ返済用の貯金や返済額の増額に回して」

お金の管理は苦手…という声もありますが、使えるお金を知っておくことと、いざというときの備えだけは万全にしておくと、老後の安心感が違います。今回の記事を参考に、ぜひ家計の見直しをしてみてください。

こんな人は要注意!「老後破産」に陥りやすい人の特徴

「老後破産」しやすい人の特徴とは?

“老後資金は、最低でも3000万円必要”――。そんな定説が語られていますが、必要な額は人によってさまざま。老後を考えるには、まず自分にとっての必要額をざっくり見積もることが大事です。

ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに、シンプルな見積もり方法から「老後破産」を防ぐスキルまで、老後の描き方を指南してもらいます。

* * *

――“まとまった老後資金が貯められそうもない”と不安に陥る人にとって、「老後破産」は現実味を帯びた言葉となっています。実際、「老後破産」しやすい人には、どういった特徴があるのでしょうか?

畠中さん:まず、「3000万円以上の貯金がないから老後破産する」ということではありません。逆に、3000万円から5000万円くらいの貯金は、ちょっとのミスでお金が底をつくということもあり得ます。子どもや孫にどんどんと使ってしまう人などはその典型ですね。

逆に、老後資金はそんなに貯まっていなくても何とかなる人は、柔軟に老後を考えられる人です。コンパクトな暮らしに移行するには、これまでと価値観を変える必要がありますが、こだわりが強すぎると難しい。

住む場所にしても、“この家以外絶対にダメ”とか“介護は絶対家じゃないと”など譲れないことが多い人は、お金があっても駄目になることもあります。

――「老後破産」を避けるには、柔軟性をもって現実に対応していく力が必要だということですね。そのほか、踏まえておくべきスキルがあれば教えてください。

畠中さん:自分に合った情報を集めるスキルも欠かせません。料理ができない人が良い素材ばかりを集めたところで宝の持ち腐れになるのと同じで、自分の力量に見合った情報をキャッチする。

今はインターネットでいくらでも情報が得られる便利な社会ですが、だからこそ情報の海で溺れている人も少なくありません。

とにかくたくさんの情報を持ってきたものの、逆にどうしたらいいか分からなくなってしまうというのは、特に若い方に多くみられます。自分に必要な情報を的確に取りに行くという能力は、特に老後には重要です。

どう暮らしたいか、どこまで許容できるのかを決めておく

――“一般的な例”ではなく、“自分に見合った情報”をキャッチするスキルを身に付ける。そのためには、自分の状況をしっかり把握して、どんな風に暮らしていきたいかをイメージしておかなくてはいけませんね。

畠中さん:だからこそ、まずは自分の暮らしで“いくら赤字が発生するのか”を算出しておくことが大事なんですね。そして、どう暮らしたいか、自分はどこまで許容できるのかを決めておく。そうなれば取捨選択もしやすいですし、持っているお金が少なくてもなんとかなるケースが多いんです。

どうしたいのか選べないという人は、“どっちが嫌か”で考える。人は「どっちがいいですか?」と聞くと決めきれないけれど、「どっちが嫌ですか?」と聞くとすんなりと決められるものです。

――今後、さらなる高齢化社会が進み、生涯未婚者も増えていくといわれます。“超高齢化社会&おひとり様増加”で、時代のニーズに合ったサービスも出てくるでしょうか。

畠中さん:もちろんそう思いますよ。いつの時代も、その時代背景に合った現実的なサービスが生まれています。

例えば、私が初めて高齢者施設の見学を行ったのは、2002年です。当時は、入居費用が高額で家を売らないと入りにくかったのですが、今は入居一時金ゼロのプランを提示しなければいけないことになっているので(東京は例外規定)、家を売らなくても入れるところだらけに変わっています。

さらに数十年後には、その時代に生きる人に合わせた価格帯に変わってくるでしょうね。ですから、今の制度だけで全てを考えて不安になりすぎないことです。

葬儀にしても、ずいぶん変わりました。一般的な葬式代は平均200万円といわれていますが、なかなか準備できない人もいます。

例えば、「サン・ライフ・ファミリー」や「あんしん少額短期保険」のような少額短期保険会社なら、自分の葬儀まで行ってくれる契約が可能ですし、金額に応じた葬儀をしてくれる。こうしたサービスなども知っておくと、おひとり様で老後を迎えるにしても安心ですよね。

自分がどう生きたいのか、そしてどういう最期を迎えたいのかまでイメージして調べておけば、かかるお金も分かるし、必要なお金も分かります。

教えてくれたのは……畠中雅子さん

ファイナンシャル・プランナー。大学時代からフリーライターとして活動し、出産後にマネー分野を専門とするライターとなりFP資格を取得。新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載やレギュラー執筆を持つとともに、セミナー講師、講演などを行う。「教育資金作り」「生活設計アドバイス」「住宅ローンの賢い借り方、返し方」「オトクな生命保険の入り方と見直し方」などのテーマを得意としている。

生涯独身で過ごすために必要な金額は?住宅、医療、施設…生活費以外に備えておくべきこと

ファイナンシャルプランナーとして活動する中で、お客様から「もう、このまま独身かもしれないので……」といった相談を受けることが多くなりました。ライフプランのモデルが身近にいないこともあり、誰に相談したらよいかわからないそうです。生涯独身で過ごすことを考えると、高齢者向けの施設や高齢者医療費など、将来に向けてそれなりの準備が必要となりそうです。

増加している未婚率

では実際、どれくらいの方が生涯独身で過ごすのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所が発表している「人口統計資料集(2022)」より、未婚率の推移をみていきましょう。

男性は、1980年に2%台になってから加速度的に上昇傾向となり、2020年には28.25%と4分の1を超えています。女性は男性よりも低いものの、2000年に5%台になってから上昇を続け、2020年の生涯未婚率は17.81%と約2割という結果になっています。男女とも1970-1980年頃に増加がはじまり、2000-2010年頃に急増しました。

また、同研究所の「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、25~34歳男女の独身理由として、「適当な相手にめぐり合っていない」「必要性を感じない」があげられたほか、経済的な理由も多く見受けられました。

未婚率の増加は経済の潮の変わり目や、女性の社会進出など多様な生き方の選択肢が増えていることの現れかもしれません。

生涯独身で過ごすための計画の立て方

あくまでも参考にはなりますが、総務省の「家計調査年報(家計収支編)2020年」によると、2020年の単身世帯における月の生活費は、150,506円というデータがあります。いつまでどのように働くかにもよりますが、65歳から90歳まで同じ生活水準を維持しようとすると、約4,500万円の資金が必要となります。国からの受け取れる年金は一人ひとり違うので、手持ちの資産と老後のためにいくら不足しているかを計算し、生活を維持していけるよう計画を立てましょう。

老後の生活を考える上で、固定費としての支出も大きく、住み替えなども難しくなってくる住まいの確保は、慎重に検討すべき項目のひとつになります。また、再雇用や年金の受け取り方法、セカンドライフに入ってから亡くなるまでのライフイベントや、病気で入院したり、介護施設に入るなど不測の事態への備えを盛り込むべきです。

住宅購入を検討する場合は、病気や介護で一時的に働けなくなったことを想定し、頭金を払っても1〜2年は収入が減っても対応できるよう、数百万円単位で貯金が残るか、また返済期間中も将来必要な資金に向けての貯蓄を続けられるか、定年時に退職一時金で完済もしくは、65~70歳まで働くことができるかなどを踏まえてマネープランを検討していきましょう。

「殖やすお金」はどう作る?

最近、資産を運用して「殖やす」ことに目を向けた資産形成に注目が集まっています。急速な少子高齢化の進行により、年金、医療、介護等の社会保障制度が薄くなっていくなか、自助努力の準備はかかせません。

投資を検討する上で考慮すべきことは、「最終的にいくら手元に残るのか?」です。殖やすことはもちろん、手数料や税金など手元から離れていく内容についても理解しておくことがポイントになります。そこで、運用で得た利益に対して税金がかからない「つみたてNISA」を選択肢としてご紹介します。

株や投資信託など、お金に働いてもらったことで得られる利益からは、通常20.315%の税金が引かれます。低金利のため、あまり意識することはないかもしれませんが、預貯金の利子からも20.315%の税率が引かれています。例えば、普通預金口座で10円利息が付いたとしても、約2円引かれて、手残り約8円となります。それに対してつみたてNISA口座は、得た利益に対して税金がかからない非課税口座となります。

参考までに実際に運用したら、税金はどのくらい引かれてしまうものなのか、グラフにまとめました。

生涯独身で過ごすために必要な金額は?住宅、医療、施設…生活費以外に備えておくべきこと
© MONEY PLUS生涯独身で過ごすために必要な金額は?住宅、医療、施設…生活費以外に備えておくべきこと

筆者作成

増えた分以上に引かれることはありませんが、せっかくリスクを取って得られた利益から、増えれば増えた分だけ多くの税金が引かれてしまいます。つみたてNISA口座は、年間40万円、月約3.3万円の積立ができ、最長20年が非課税期間となり、税金が引かれませんので、効率よくお金を残せることになります。

貯蓄から資産形成へ

超低金利環境が長引いた結果、預金では資産が増えることはなく、欧米諸国との金融資産格差が大きく拡大してしまいました。下図は、米国、英国、日本における個人の金融資産残高の推移になります。過去20年でこれほどまで差がついてしまいました。

出所:金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」説明資料(平成29年2月3日)より
© MONEY PLUS出所:金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」説明資料(平成29年2月3日)より

資産が増えないことは、国民生活が豊かにならないうえに、財布のヒモがしまることで経済全体を停滞させる要因となります。そこで、先述のNISAやiDeCoといった税制優遇制度を通して「お金が手元に残りやすい仕組み」を準備することで、預貯金に偏っている家計資産が投資性の資産に動いていくことが期待されています。

しっかりライフプランを考え、実現のために資産形成を進めていけば、例えライフプランと違う選択をすることになった場合でも、それに合わせて計画を立て直すこともできます。どのように生きていきたいかで選択肢はさまざま、備えあれば憂いなしですね。

女性の老後リスク「少ない年金」「長生き」「介護」。老後生活安定のため<年金増額>を実現する3つのポイントとは

厚生労働省の発表によれば、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳。その男女差は6.10年となり、前年より0.06年広がりました。つまり、女性の多くは「おひとり様」になる可能性が高いと言えるのかもしれません。しかし老後を支える柱の一つ「年金」の受給額を考えれば、男性より少ないケースも見られ、女性ほど老後資金は不足しがちとも言えます。お金にまつわる情報を発信しているファイナンシャルプランナー・長尾義弘さんによれば、年金の受給額を増やすために気を付けるべきポイントが3つあるそうで――。

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【図】長寿時代に合った老後資金準備法は「貯蓄」「年金」、どっち?

老後のお金に関しては女性のほうが高リスクと言えるワケ

「人生100年時代」と言われ、みんな長生きをする時代になりました。この傾向は女性も男性も一緒です。

しかし、老後に関しては、女性のほうがより問題は大きいといえます。なぜなら、男性に比べて多くのリスクが待ち受けているからです。

主な要因として、次の3つがあげられます。

●年金が比較的少ない

●男性より長生き

●健康寿命と寿命の差が大きい

もちろん、これらは男性にも降りかかってくる問題ではあります。ですが、リスクが高いぶん、女性はいっそう念入りに準備しておく必要があるのです。

こうしたリスクに対処するためのキーワードは「お金」です。備えが足りないと、長い老後を苦しい状態で過ごすことになりかねません。

リスク(1)受け取れる年金額がそもそも少ない

高齢になれば年金がもらえます。では、いったいどのくらいの額を受け取れるのでしょうか。

女性の厚生年金の平均受給額は約11万円です。それに対して男性は約17万円。約6万円もの開きがあることに驚いたかもしれません。

その理由は、出産や育児のために、女性は仕事に就いている期間が短いことがひとつ。さらに、そもそも男性に比べて平均賃金が低いのです。厚生年金の受給額は加入期間や収入によって変わりますから、受け取る年金が少なくなってしまうわけです。

さらに、ずっと専業主婦だった人は基礎年金だけになります。基礎年金の受給額に男女格差は少ないものの、女性の平均受給額は約5万円です。

夫婦の年金を合わせればなんとか生活できますが、一人になったあとはかなり厳しいと思います。というのも遺族年金は、夫の年金が丸ごと入ってくるわけではないからです。

一般的に女性の年金は少ないのが現状です。「年金があるから老後は大丈夫」などと思っていると、痛い目に遭うかもしれません。

リスク(2)男性より長生きする確率が高い

2020年の平均寿命を見ると、男性は81.64歳、女性は87.74歳です。女性のほうが6年ほど長く生きています。これが何を意味するかわかるでしょうか。

『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(著:長尾義弘/河出書房新社)
© 婦人公論.jp『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(著:長尾義弘/河出書房新社)

生きていれば、必ずお金がかかります。どんなに切り詰めても、支出を0円にはできません。つまり、男性よりも長生きするぶん、多くのお金が必要になってくるのです。

夫婦二人で歩んできても、最後は女性が一人暮らしになる可能性は高いでしょう。一人になったあとは、あなたが自分で生活を支えていかなければならないのです。

シングルだから関係ない? いいえ、長生きリスクはどなたにも当てはまります。

2060年には、女性の平均寿命が91歳まで延びるとも予測されています。「女性は100歳まで生きることが当たり前」の時代は、すぐそこまで迫っています。100歳まで生きるとなったら、それだけ生活費もかさむでしょう。

高齢単身者の平均的な生活費は、月に約15万円と言われています。それを何十年分も用意しなければならないのです。

リスク(3)平均寿命と健康寿命の差が12年もある

「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか。これは健康上の理由で何らかの制限を受けることなく、日常生活が送れる時間をいいます。

図1:女性の老後に待ち受けている大きなリスクとは?(図:『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』より)
© 婦人公論.jp図1:女性の老後に待ち受けている大きなリスクとは?(図:『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』より)

人生の最後まで健康でいられればいいのですが、そううまくいくとは限りません。実際、健康寿命と平均寿命の間には差があります。男性は約9年、女性は約12年です。

12年、もしくはそれ以上の年月を、不具合を抱えながら過ごさなければならないのです。

また、男性に比べ、女性は高齢になるほど認知症を発症するリスクが高くなることがわかっています。つまり、介護の可能性も高まるわけです。

介護が必要になった場合は公的介護保険が使えますから、介護サービスは原則1割の自己負担で受けられます。それでも、介護のための自己負担は確実に増えます。調査によれば、介護にかかる費用の総額は約800万円ともいわれています。

さらに、有料老人ホームへの入居を希望すれば、自己負担はもっと大きくなるでしょう。なお、特別養護老人ホーム(特養)など公共の老人施設は、要介護の条件があります。

豊かな老後を送るためには年金が有効

女性の老後がいかにリスクに満ちているか、おわかりいただけましたか。こうした不安を軽くするためには、お金の備えが最強の武器となります。

「わかった。できるだけ老後資金を貯めるわ!」

その姿勢はとても大事です。

しかし、十分に使っても余りが出るほど、潤沢に貯められるケースは少ないのではないでしょうか。

仮に1500万円の老後資金があったとしても、毎月6万円ずつ取り崩せば、21年で底をつきます。65歳から使いはじめたら86歳まで。平均寿命にも届きません。おまけに、あなたはもっと長生きするかもしれないのです。何千万円貯めればいいのかと思うと、気が遠くなるでしょう。

そこで考えたいのが年金です。

老後生活のなかで、もっとも大きな収入は公的年金です。しかも、生きている限り、ずっと受け取ることができます。100歳だろうが110歳だろうが、年齢制限はありません。長生きする可能性の高い女性にとって、これは最大のメリットです。

たとえば、65歳からの年金が毎月10万円だとすると、100歳までに4200万円を受け取れます。おそらく老後資金より年金の受給額のほうが多くなるでしょう。

年金の受給額を増やすには

すべてを自分で準備する必要はないのです。年金で足りない分を、貯めていた老後資金で補うという考え方をします。したがって、年金の受給額は多いに越したことはありません。

「女性は受給額が低いんでしょ。だったら、年金なんて当てにならないじゃない!」と思われるかもしれません。それはこのまま何も手を打たなければ、の話です。

やり方しだいで、年金の受給額を増やすことができます。その大きな柱は次の3つです。

●給料を上げる!

●長く働く!

●受け取る時期を遅らせる!(繰下げ受給をする)

年金は老後生活の要です。しくみを知って上手に活用し、受給額を増やしましょう。それが安定した暮らしにつながっていくはずです。

※本稿は、『私の老後 私の年金 このままで大丈夫なの? 教えてください。』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

老後資金問題で投資人口が増加!最低限知っておくべきことは【お金のプロに聞く】

近年、投資をする若年層が増えています。20224月からの高校の学習指導要領にも家庭科の授業などで、投資について学ぶ必要性が触れられています。子どもも大人も投資について知っておく時代に突入したと言えるかもしれません。初心者でもできる投資の始め方とは?ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢先生にお伺いしました。 

誰でも始めやすいのは「つみたてNISA」

投資と言われても、なにから始めればいいのかわからない人も多いと思います。初心者にもわかりやすい選択肢のひとつとして挙げられるのは「つみたてNISA」です。

 

2018年からスタートしたつみたてNISAは、年間上限40万円まで非課税で投資ができる制度です。さらに投資したお金を最長20年間、非課税で運用することができます。

 

もちろん投資は預貯金とは異なり、景気や物価に合わせて額面が変わります。そのため元本が増えることもあれば、減るというリスクも。つみたてNISAも元本保証はありませんが、20年という長い期間で運用するため、短い運用期間よりはリスクが少なくなると考えられます。

なぜならば投資においては足元では上がり下がりを繰り返しながら、長期で見たときには成長を期待する先に対してお金を投じるからです(逆に期待をしていない先の投資商品は買ってはいけない)。待てる期間が長いほど、利益が出るタイミングで売却できる可能性が高まります。

また月100円から積立ができるため、「最初から大きな金額を投資するのは不安…」という人でも安心して始められるのもメリットのひとつです。

さらにつみたてNISAで購入する投資信託は、日本にある約6000本の商品から金融庁が定めた「手数料が安い、長期での運用ができる」といった条件を満たした銘柄約200本まで絞られています。そのため投資に明るくない人でも、選びやすくなっています。

老後2000万円問題とコロナ禍で投資人口が増加

そもそもなぜ、若年層から投資が注目され始めたのでしょうか?

事の発端は、2019年に話題となった「老後2000万円問題」だと考えられます。これにより、老後までに2000万円を準備しなければという認識が広まり、対策の必要性を考え始めた人が増えました。ただ、こうした老後資金不足については、従来から繰り返し指摘はされていました。日々が忙しいと必要性はわかっていてもなかなか取り組めないという人も多かったかと思います。

そのような状況のなかで、2020年からコロナ禍がスタート。おうち時間が増えたことで時間に余裕ができた人たちが、真剣に投資について実行に移し始めたのです。実際に2021年はつみたてNISAの加入者が、例年よりも増加しました。

また、若年層が気軽に始められる取扱手数料が少額なオンライン証券の拡大や、少額から資産運用が始められるスマホアプリの増加もその一因と言われています。

すぐに使わないお金を投資にまわす

では今後、私たちは老後のためにどのように投資していくのが良いのでしょうか?

金融商品には下記の3つの要素があります。

  • 流動性…現金化や引き出しなど換金しやすいもの
  • 安全性定期預金や、債券など元本や利子の支払いが確実なもの
  • 収益性株式や投資信託のようにリスクはあるが収益も期待できるもの

金融商品ごとに得意、不得意な部分があるため、目的に合わせた商品を選ぶことが大切です。そのため手元のお金をすべて投資するのではなく、使い道を分けて考えることが重要です。

  1. 1. すぐに使う生活費36か月分(子どもがいる場合1年分)のお金
  2. 2. 10年間は使わないけれど、10年後確実に進学や自宅購入などで使うお金
  3. 3. 10年以上使わないお金

1は手元に置いておくべきお金で、流動性が高い預貯金などで保有することが向いています。2は安全性が高い商品と相性が良く、財形住宅貯蓄や定期預金、こども保険(学資保険)などの貯蓄機能のある保険なども候補になります。ただ、今は歴史的な低金利の水準で、1の予算と2の予算を明確に分けるのが、やや難しいかもしれません。

そして3にあたる老後資金などは、収益性が高い投資などと相性が良いとされています。つみたてNISA以外にも税制優遇口座(利益に対する税金が非課税になるなどの特徴をもった口座)を利用できる制度があります。年間上限120万円、最長5年間非課税で幅広い株式や投資信託を選択できる「一般NISA」、任意加入の私的年金制度である「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などです。

投資と聞くと足りない準備資金を補うものという印象があるかもしれませんが、それは少し違います。投資の結果によっては増えるとは限らず、減ることもあるからです。ただ、すべての性質を得意とする金融商品が存在しないため、長期間使わない可能性がある予算を、流動性や安全性のみに強みがある金融商品で、すべて保有しておくことは不利かもしれません。

投資は、金融商品の得意・不得意を踏まえて、得意とする目的の予算を担当してもらうよう、性格が違う形の商品に換えて保有していく取り組みだと考えると、もう少し肩の力が抜けるかもしれません。

PROFILE 風呂内亜矢さん

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子 

人生100年!お金に困らない老後を送るためにどうする?

人生100年時代に突入。老後の未来予想図を考えてみましょう

今の高齢者ですら90歳超の人は珍しくありません。これから順次、高齢者の仲間入りをしていく60歳以下の人たちは、90歳超、100歳超は当たり前という前提でマネープランを考えたほうがいい時代になりました。

人生が100年以上になると、マネープラン的に次のような問題が生じます。

▼1. 現役引退後(セカンドライフ)の期間が長くなる老後の生活費の柱は公的年金ですが、給付額は徐々に下がり、年金開始年齢も遅くなりそうです。

ということは、セカンドライフが長くなるほど、老後資金として準備する必要な金額が増えることになります。定年延長や定年後の継続雇用、高齢者の働く場が充実してきているので働き続けて収入を得られますが、何歳まで働けるかは不透明です。

▼2. 入院が増えるので医療費がかさむ年をとるほど、病気やケガで入院する確率が高くなり、しかも、入院日数も長くなりがちです。

しかし、公的健康保険の財政は厳しく、これからの高齢者に対する手厚い給付は望めません。というより、現役世代の負担を少しでも軽くするには、手厚い給付を望んではいけません。つまり、長生きするほど、かかる医療費も増えるということです。

▼3. 最後の数年は重い介護状態になる可能性がある80歳を過ぎると程度の違いはあっても介護が必要になることが多く、最後の数年は寝たきりや認知症など要介護度が重くなる可能性があります。

医療技術が進歩して、認知症や寝たきりなど要介護の重度化を防げるようになればいいのですが、現段階では未知数です。ですから、介護費用の準備が必要になります。

これからの老後資金で必要なこと

これまでの老後資金は、主に生活費、リフォーム代や住み替え費用などの住宅関連費用、子どもの結婚・住宅取得の援助資金、死亡整理金(お葬式代・お墓代・相続費用など)で構成されていました。

しかし、これからは、住宅関連費用、死亡整理金は変わらないかもしれませんが、長生きする分の生活費、健康維持費用(サプリメント代やスポーツクラブの利用料など)、医療費、介護費用を考慮しなくてはいけなくなります。

生活費の柱になる公的年金の給付額は、少な目に見積もるのが無難で、その他の費用はいくらかかるか予想できません。

結果、老後資金としていくら用意しておけば妥協できるかわかりません。子どもの結婚・住宅取得の資金援助や、日常の生活費の援助をする余裕は、もはや、ないと思ってください。つまり、老後資金の構造が変わってきたということです。

サバイバルしていくためのマネープランとは?

生きていれば必ず訪れる老後。お金がないと老後生活は送れないことがわかったと思います。では、長くなりそうな老後を生き抜くには、どんなマネープランを考えればいいのでしょう? 筆者なりに考えてみました。

▼1. 現役時代に稼いでひたすらお金を貯める共働きや副業をするなどでお金を稼ぎ、節約も実行してお金を貯めましょう。貯めたお金に働いて稼いでもらう資産運用もしたほうがいいと思います。ただし、働きすぎて体を壊したり、節約のしすぎで生活や人間関係に支障をきたさないよう、やりすぎには要注意です。

なお、この方法の欠点は、日本の政治家と官僚が経済のかじ取りを間違えてハイパーインフレを招いたときです。せっかく貯めたお金の価値が急落するので、努力が水の泡になる危険性があります。

▼2. 生涯現役で仕事をする 長生きすると、生涯現役というわけにはいかないかもしませんが、生涯現役を目指して60歳を過ぎても体が動くうちは働き続ける覚悟を持ちましょう。

そのために、資格があったほうが定年後にも働きやすいなら、若いうちから資格を取っておくなど、老後も意識したキャリアプランを実行しましょう。

▼3. 働かなくてもお金が入ってくるようにする最後の数年間は働くことはままならない状況になる可能性が高いので、働けなくてもお金が入ってくるようなしくみを作れたら作っていくといいでしょう。

たとえば、稼いだお金で不動産を購入して賃料が入るようにする、何かの商売を起業して自分が働かなくてもお金が入ってくるようにする、本の執筆やCD、アプリの作成などの権利収入が得られるものを作るなどが考えられます。

やれることは並行して実行を

この3つのうちのどれかに絞るのでなく、やれることは並行して実行しましょう。どの方法にもリスクがあるので、それをヘッジする意味で1つに絞らないほうがいいからです。この他に、思いついたことがあれば実行を。

今や、1つの仕事で生涯を過ごせる収入を確保するのは難しいと思えるからです。つまりは、収入源をたくさん用意しておくということで、いわゆる複数の仕事を持つ「複業」のススメです。

そして、政治に関心を持つことも大切なことです。老後の生活は、年金にしても医療にしても介護にしても、社会保障に負うところが多く、その内容をよくするのも悪くするのも政治にかかっているからです。

特に、20代・30代の人は、政治に関心を持たないと、50年・60年後の皆さんの老後をどうされてしまうかわからないことを肝に銘じておいてください。

※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆

大損する前に知っておきたいサラリーマンが「入るべき保険」と「逃げるべき保険」

「仕事がデキない」「残業だらけ」「上司とソリが合わない」「転職したい」「老後のお金が不安」といった、人生100年時代を生きるサラリーマンの悩みを、まるごと解決してくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。


〈結論〉・保険は高い買い物。むやみに入らない

・サラリーマンが入るべき保険は3つだけ

1.扶養家族がいる→掛け捨ての生命保険

2.マイホームがある→火災保険

3.マイカーがある→自動車保険(対人・対物無制限)

・「がん保険」「養老保険」「外貨建て保険」「貯蓄型生命保険」「学資保険」は不要


マモル:サラタメさん、保険ってめちゃくちゃいっぱいあるから迷いますよね~。最近、友達から紹介された、めっちゃデキる感じの営業マンに生命保険提案してもらってて、それくらいは入ろうかなと。

サラタメ:いや~、入らなくていいと思いますよ! 保険に月3万円とか払っている人、けっこういますけど、それって30年間払い続けたら合計1080万円ですからね……。

マモル:たしかにそう考えると、人生の中でもトップクラスの大きなお買い物ですね……。

サラタメ:というか、マモルさんって独身で、持ち家もないし、車も持ってなかったですよね。だったら、入るべき保険なんて特にないですよ!

マモル:え、そうなんですか!? でも、もしボクに万一のことがあったら、実家の父は! 母は! 未来の妻とベイビーちゃんは! どうなっちゃうんですか!?

サラタメ:あらら、デキる営業マンにそう言われたんですね(笑)。大丈夫です! 国の社会保険がちゃんとありますので、マモルさんは民間の保険には入らず、貯金しとけばOKですよ!

それでもサラリーマンが入るべき3つの保険(条件付き)

サラタメ:サラリーマンが入るべき保険、結論この3つです。


1.扶養家族がいる場合 → 掛け捨ての生命保険

2.マイホームがある場合 → 火災保険

3.マイカーがある場合 → 自動車保険(対人・対物無制限)

基本的にすべて、ネット保険でOKです。


さわやかで人当たりのいい保険営業マンから入りたくなる気持ちもわかりますが、ぶっちゃけ損です。私たちが支払う保険料に、デキる営業マンの人件費も上乗せされているので、お得に済ませたいなら、ネット保険一択月々5000~1万円程度でも十分な保障を得られます。

サラタメ:裏を返せば、右の3条件に該当しない人は、保険不要ってことです!「安心」「家族」を駆使した巧みなセールストークに、くれぐれも惑わされないようご注意ください。


民間の保険がいらない理由

 結論! 日本国民なら原則みんな入っている「社会保険」が、ほぼカバーしてくれるからです。


前に挙げた3つの保険は、いずれも「社会保険」だけではカバーしきれないリスクに対応しています。

マモル:社会保険! 毎月給料から4万円くらい天引きされている、あの憎いヤツ!

サラタメ:そうです! なかなかバカにならない額を持っていくだけあって、病気・ケガ・死亡・失業・介護など、かなり手厚くサポートしてくれるんですよ!


〈社会保険の手厚いサポート例〉

・病院に行っても、個人負担は3割だけ

・病気やケガで休んでも、月収の約3分の2が最大1年6ヵ月もらえる

・高額治療を受けても、大半は健康保険から払い戻される

・育休中も、最初の半年は月収の約7割、その後半年は約5割もらえる


このように国の社会保険には手厚いサポートがあるので、プラスαの準備は貯金で十分。

民間の保険は、あくまでビジネスでやっているもの。人件費・広告費・手数料・会社の利益など、多くのムダが含まれていることを認識しましょう。


不要だけど入ってしまいがちな保険!

万一のための「がん保険」


▼社会保険の「高額療養費制度」があるので、不要です。

高額療養費制度により、負担額はかなり抑えられます。

たとえば年収500万円の人なら、100万円の医療費がかかった場合でも、約9万円のみの負担。ですから、ある程度貯金しておけば問題ありません。

「先進医療」は適用外ですが、先進医療を受けるのは全国民の約0.02%。また適用外ということは、「評価療養(まだ国として評価している段階の治療法)」ということなので、治る確率が高い高度な治療とは限りません※。

※出所:ダイヤモンド・オンライン「『先進医療は300万円もかかる』は本当? 医療保険商品『先進医療特約』の濡れ手で粟」(2014年9月11日)


老後のために

「養老保険」「外貨建て保険」「貯蓄型生命保険」


▼投資と保険はしっかり分けるべきなので、不要です。

この手の保険は、投資機能も含まれ、満期になったら少しお金を増やして戻してくれます。なんだかいい話のようですが、どの会社も、投資の運用効率が悪いです。投資をしたいなら、積立投資(P574)を自分でやったほうがよっぽど得。保険会社に任せて、みすみす手数料を取られる必要はありません。


子どものために「学資保険」

▼ほぼ意味がないので、不要です。

別に大きな損はしません。ただ、10~20年という長期間、途中解約できず、解約すると元本割れになる。そんなに長期間の縛りが続くわりに、お金は2~5%ほどしか増えません。いつでも使える貯金、もしくは、もっと増やしたいなら積立投資をしたほうが得です。


〈まとめ〉・保険は高い買い物。むやみに入らない

・サラリーマンが入るべき保険は3つだけ

1.扶養家族がいる→掛け捨ての生命保険

2.マイホームがある→火災保険

3.マイカーがある→自動車保険(対人・対物無制限)

・「がん保険」「養老保険」「外貨建て保険」「貯蓄型生命保険」「学資保険」は不要

老後に必要なお金は「700万円から1500万円が大多数」ってホント?

老後のお金不安を解消するために、今からできることは?

漠然とした老後不安を解消するには、“年金でまかなえない金額”を正確に割り出すことが大事だというのはFPの畠中雅子さん。どうやって割り出せばいいのか、平均額はどれくらい? 気になる老後のお金問題についてアドバイスをもらいました。

――老後のお金不安を解消するために、今からできることはありますか?

畠中雅子さん:皆さんが老後を不安視する気持ちはわかりますが、やみくもに心配していても不安が増殖するだけで何も解決しません。まずは、“自分が将来いくらもらえるのか”と“自分が暮らしていくにはいくら必要なのか”を割り出す作業から始めましょう。もしかしたら、不安に感じる理由は、必要額を多めに見積もりすぎているせいかもしれません。

50歳以降になると、ねんきん定期便の掲載内容が変わり、将来もらえる年金の見込み額がわかるので、老後の生活が予測しやすくなります。例えば月額15万円の人なら、自分の生活費と照らし合わせて、その範囲でまかなえるのか、あるいはどれくらい不足するのかを計算してみる。特別支出もきちんと予算を立てましょう。

地方だと車がないと生活できませんし、自宅を持っていれば固定資産税もかかります。自分の暮らしにとって必要不可欠なお金はそれぞれ違いますから、それもきちんと予算に含めること。

これからは、女性の2人に1人が90歳を迎える時代になるので、夫婦の場合、妻が90~95歳まで生きることを前提に、だいたい65歳から25~30年間の生活費と特別支出を割り出しましょう。その他、医療費と、介護に備えて、夫婦ならプラス500万円ぐらいあるといいです。

実際にそれらを足した場合、実は年金プラス1000万円ぐらいですむケースが多いんです。平均すると、700万円から1500万円の間で落ち着く場合がほとんど。特に、今の若い世代は贅沢をしないので、15万円あれば暮らせるという人も少なくないのではないでしょうか。

――そうなのですね。少し前まで老後2000万円不足するといわれていましたが、それでも足りないと不安を覚える人が大半ではないでしょうか。

畠中さん:もちろんリッチな老後を過ごしたい人にとっては、それでは足りないかもしれませんが、自分にとって必要最低限の老後資金を知っておくほうが現実的だと思います。老後は個々の問題。大事なのは、年金でまかなえないリアルな金額はいくらなのか。それがわからないと、2000万円でも足りないと思うでしょうし、人によっては1億円でも不安なのではないでしょうか。

若い世代はコツコツ貯金、50代以降はダウンサイジングを

――実際、自分にとっての必要額がわからないと、目標設定もできませんね。

畠中さん:皆さん、「老後に必要なお金はいくらだと思いますか?」と聞くと、3000万円とか5000万円という方が多いのですが、「ではその内訳は?」と尋ねると、ほとんどの人が答えられない。漠然としているから不安なんです。

自分にとっての老後資金を正確に割り出し、そこまでは頑張って貯金する。あとは、余裕資金として運用するのもいいと思います。ただし、老後資金を運用頼みにするのはリスクを伴うのでやめましょう。

若い世代は、自分にできる貯金をコツコツとやること。今の貯金額より1~2割ほど多めに貯金することをまずは目標にしてください。毎月2万円貯められる人なら2万2000円や2万4000円を目指す。1000円単位で貯金や運用に回せる金額を増やす努力で十分です。

50代以降は、バブルを経験して贅沢を知っている世代でもあるので、価値観を変える練習が必要かもしれません。暮らしをダウンサイジングしていくことを意識していくのも大事ですね。

――コロナ禍で、自分にとって本当に必要なもの、そうでないものが見えてきたという人も多いと思います。暮らしをダウンサイジングするシミュレーションにもなりますね。

畠中さん:コロナの影響で「必要だと思っていたけれど、なくても大丈夫だな」という費目に気づいた人もいると思います。我が家も外食が非常に多かったのですが、少し良い素材を買って家で食べるほうが意外と満足度が高いことに気づきましたし、いろいろと断捨離するきっかけになりました。リモートワークでおうち時間が増えた今、生活設計を見直したり、老後について考えてみてはいかがでしょうか。

教えてくれたのは……畠中雅子さん

大学時代にフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て1992年にファイナンシャルプランナーになる。新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などを行う。教育資金アドバイスを行う「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスを行う「高齢期のお金を考える会」、ひきこもりのお子さんの親亡き後の生活設計を考える「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。著書・監修書は70冊を超える。

取材・文:西尾英子

自営業者が亡くなったときの「保険手続」、残された家族がすぐやること

大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。

また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。

本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。

この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています。刊行を記念して、本書の一部を特別に公開します。

自営業者が亡くなったときにすること
 国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合には、死亡した日から14日以内に「国民健康保険資格喪失届(国民健康保険被保険者異動届)」を故人の住んでいた市区町村役場に提出しなければいけません。

 届出ができる人は、世帯主もしくは同一世帯の人(委任状があれば、代理人でも可能)です。手続には次のものが必要になります。

◦国民健康保険証

◦死亡を証明する書類(戸籍謄本や死亡届のコピーなど)

◦窓口で手続をする人の本人確認書類(運転免許証など)

◦印鑑(認印でOKです)

 亡くなった加入者本人の保険証は市区町村役場に返却します。また、世帯主が亡くなった場合で、同一世帯に加入者がいる場合には、保険証の世帯主欄を変更する必要がありますので、加入者の保険証を持参してください。

 なお、国民健康保険資格喪失届は、郵送でも手続することが可能な市区町村もありますので、事前に市区町村に確認しましょう。

 保険証の世帯主欄を変更するためには、世帯主の変更届を行いましょう。世帯主の変更をすると、新しい世帯主宛に郵送で、新しい保険証が送られてきます。

 ちなみに、会社員等が加入している健康保険では、被保険者は本人のみで、その家族は被扶養者と呼ばれます。一方、国民健康保険では、家族1人1人が被保険者となります。ただし、届出や保険料の納付は、世帯ごとに世帯主が行うことになります。

 これは、世帯主が健康保険に加入している場合であっても同様です。世帯主の変更届は早急に済ませるようにしましょう。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」ーー相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を編集・抜粋したものです)

退職した後の「健康保険の支払い」はどうすれば安い?

会社退職後の健康保険、入り方は3種類

退職後の健康保険は、大きく分けて次の3種類から選択することになります。

・家族の扶養に入る「被扶養者」

・今までの会社の保険を継続する「任意継続」

・市区町村で加入する「国民健康保険」

「被扶養者」は保険料がかからない

家族が会社勤めしていれば、扶養に入ることができる場合があります。扶養に入ることができれば保険料負担がありませんから、真っ先に検討するとよいでしょう。

ただし、扶養に入るためには、今後の年収見込みが130万円未満(60歳未満の場合、60歳以上は180万円未満)であることが必要になります。

ここで注意が必要なのは、扶養の範囲は「所得」ではなく「収入」である点です。営業収入や老齢年金、個人年金などをはじめ、非課税所得である遺族年金や障害年金のほか、雇用保険の給付もここに含まれてしまいます。

一般的に「雇用保険をもらうと扶養には入れない」といわれることがありますが、厳密には雇用保険の日額が60歳未満は3611円(130万円÷360日)、60歳以上は5000円(180万円÷360日)未満で、ほかに収入がなければ扶養に入ることができます。

退職後雇用保険をもらう人は、扶養に入れなかった場合の健康保険料の負担についても押さえておきましょう。手続きはお勤めしている家族の会社経由で行います。

「任意継続」は今までの会社の健康保険をそのまま継続できる

任意継続をするための条件は、以下の2つです。

・退職後の時点で2カ月以上継続して健康保険に加入していたこと

・退職後20日以内に加入の申し出をすること

保険料は、原則として今まで天引きされていた額の倍になります。これまで会社が半分負担してくれていた分を自分で払うということですね。

ただし、退職まで加入していた健康保険が協会けんぽだった場合、退職時の標準報酬月額(保険料の計算ベースとなる給料)が30万円(協会けんぽに加入する人の平均)より高かった人は30万円で計算された保険料になります。

ちなみに、この30万円というのは、加入している人全体の標準報酬月額の平均が用いられています。退職まで健康保険組合に加入していた場合も同じような仕組みがありますが、こちらの場合は健康保険組合が規約で定めれば、加入者の平均より高い額を計算に使ったり、退職時の標準報酬月額をそのまま使ったりすることもできるので、必ず退職する前に加入している健康保険組合に確認しましょう。

手続きは、退職後20日以内にこれまで加入していた健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)に任意継続したい旨の申し出を行います。任意継続は2年間が原則ですが、脱退の申し出をすれば、申し出が受理された月までで辞めることもできます。

また、1日でも保険料の支払いを滞納すると、その時点で失効となってしまいます。2年たったら任意継続は終了し、その後は国民健康保険に加入することになります。

「国民健康保険」は誰でも加入できる

国民健康保険は、ほかに健康保険制度に加入していない人は誰でも加入することができます。

保険料の計算方法は市区町村によって若干異なりますが、前年所得で計算された所得割額に、世帯でいくらの平等割、一人当たりいくらの均等割、資産の額に応じた資産割などが加算されて算出されます。

限度額がありますので、前年所得が高い人がべらぼうに高額の保険料を取られるということはありません。また、リストラなどにより失業を余儀なくされた人などについては軽減がある場合もありますので、市区町村の窓口に確認してみましょう。

渋谷区ホームページより© All About, Inc. 渋谷区ホームページより

画像は、東京都渋谷区の国民健康保険料の計算方法をホームページで確認し、まとめたものです。渋谷区の場合は世帯単位の資産割や平等割はないようですね。

手続きは、前の会社の健康保険を抜けたことを証明する書類をもって市区町村役場の窓口で行います。

結局どうするのがいいの?

3種類のどれに入っても、もらえる給付内容はほぼ同じです。したがって、入れる中で「どれが一番安いか」という観点で選択をすることになります。

保険料が最も安いのは、負担のない被扶養者です。家族の扶養に入れる場合は、扶養に入るのが一番よいといえそうです。特に60歳未満の人が配偶者の扶養に入れば、国民年金についても保険料負担がいらない第3号被保険者となれるので、一石二鳥です。

雇用保険を一定金額以上もらう場合や、家族がお勤めをしていない場合など扶養に入れないときには、任意継続と国民健康保険を天秤にかけることになります。

どちらが安くなるかは人それぞれなので、

・任意継続の保険料額(原則として今までの健康保険料の倍。標準報酬月額が高い人は計算方法が異なる場合あり)

・前年所得による国民健康保険料額

を調べて、安い方を取るということになります。

任意継続の保険料額については、退職前に加入していた健康保険(健康保険組合または協会けんぽ)に確認してみてください。

国民健康保険料額については、お住まいの市区町村に問い合わせをすれば教えてもらえます。その際には前年の源泉徴収票などを手元に用意して問い合わせるとスムーズです。市区町村のホームページなどに計算方法が掲載されていることもありますので、チェックしてみるのもよいでしょう。

金額の比較をするときは、退職後1年目と2年目の収入見込みを立てて比較しましょう。

国民健康保険については、退職後1年目の所得が少なければ2年目の保険料はガクンと下がることになるので1年目は任意継続が安く、2年目は国民健康保険が安いということもあります。その場合はいったん任意継続をして、国民健康保険の方が安くなるタイミングで切り替え、ということになりますが、一度脱退した任意継続に復帰することはできないので注意が必要です。

もう一つ注意しなければならないのは、扶養している人がいるかどうかです。

任意継続の場合は配偶者や子どもなどを扶養に入れることができます。扶養に入れた人の保険料負担は、これまでの会社の健康保険同様ありません。

一方、国民健康保険は扶養という考え方がないので、家族一人一人について保険料がかかります。自分一人だけなら国民健康保険の方が安いけれど、家族を入れると任意継続の方が安くなるケースもありますので注意しましょう。

ちなみに、任意継続の扶養に入れた60歳未満の配偶者は、国民年金については第3号被保険者にはなれず、第1号被保険者として保険料がかかりますので、こちらにも注意しましょう。

なお、在職中に加入していたのが健康保険組合の場合、組合によっては条件を満たせば「特例退職被保険者」という制度が活用できる場合があります。対象となる組合は少数で、内容もそれぞれですが、任意継続や国民健康保険よりも有利なことも多いようです。該当する方はチェックしてみることをお勧めします。

文:綱川 揚佐(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、年金アドバイザー)

金融機関在職中に1級FP技能士を取得後、社会保険労務士や年金アドバイザーも取得。年金記録確認第三者委員会勤務を経て、社会保険労務士・FP事務所を開業。法人向けの労働相談や、多数の年金相談業務等を行う。

50代で老後資金をあまり準備できない人が、老後貧乏にならないコツ

日々の生活に追われてしまい、老後資金の準備があまりできない人もいます。老後貧乏にならないようにするためには、どのようなことに注意していけばよいのでしょうか? 老後貧乏にならない3つのコツを解説します。

【1】老後に、どのような金銭的なリスクがあるのか把握する

たとえば住宅ローンがある人で、定年退職後にも返済が続いている場合には、老後破綻する可能性が高くなります。その他にも、両親の介護など、金銭的な負担をしなければならないといったことがあるかもしれませんね。

考えておくべきなのは、老後、自分に降りかかるかもしれない金銭的なリスクにはどのようなものがあり、そのリスクを軽くするためには、どのように行動すればよいのかを知っておくことです。

子どもに援助してもらう、収入があるうちに思い切って住み替える、相続人がいないなら、リースバックを利用して住みながら一時金を得るなどが考えられますよね。

両親の介護については使える公的制度の漏れはないのかをチェックし、兄弟姉妹がいるときには、全員で負担することを今のうちに考えておいてください。

【2】老後に入る前に、少しずつでも貯金する

貯金がまったくないから、老後は絶望的だと思ってしまっている人もいます。ただ、現役時代からあきらめてしまうのはナンセンス。今50歳だとしたら、毎月5000円だけ貯めても年間で6万円貯金することができます。

65歳から年金を受給開始する人であれば、15年間で、90万円貯めることができます。これが1万円なら、倍の180万円です。まさに、継続は力なり。毎月積立をして、余裕があるときにはさらに上乗せをして、200万円を目指してみましょう。

200万円あっても仕方ない……と思うかもしれませんが、今まで貯金「0円」だった人が200万円ものお金を貯められたことは、素晴らしいことなのです。がんばる価値は大いにあります。

また、貯金を意識することで、自然に無駄遣いがなくなったり、節約するマインドが生まれたりしてきますので、当初の目標以上の効果が得られますよ。

【3】少しでも長く働く

セカンドライフは悠々自適に暮らしたいという人もいるかもしれませんが、貯金がある・なしにかかわらず、生きがいを求めて働き続ける人は多くなっています。働いて収入が得られれば、場合によっては年金も繰り下げ受給することも可能になり、結果、年金受給額を増やすことになります。

今は、60歳代の求人もありますので、その気になれば仕事は見つけられます。もちろん、自営するのもアリです。

「攻撃は最大の防御」という言葉がありますが、お金にも直結します。できるだけ長い期間働いて、貯める機会を増やすことが大切なのです。

文:飯田 道子(マネーガイド)

生前贈与や遺言…親の老後とお金のためにしておくべきこと。

親の老後とお金の問題解決には、親とのコミュニケーションと、知識の両方が必要。今から準備しておきたいことをファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんに聞きました。

Q1.相続については兄妹でもよく話しています。 親が生前贈与について関心があるようですが、メリットは?

自分の存命中に子どもや孫に資産を贈与する「生前贈与」。原則60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与する場合に選択可能となる

「相続時精算課税制度」を使えば、贈与の際にかかる税金を、相続時まで持ち越して精算できる。国としては、現役世代への資産移転を促す意味もある。

実は日本の相続税の課税件数は約8%と少ないが、資産家は「相続税対策」として生前贈与を行うケースもある。例えば、一人あたり年間110万円の贈与税の基礎控除額を毎年子や孫に贈与するといった方法だ。

しかし、内藤さんは注意を促す。

「想定外の長寿で、老後資金が足りなくなることも考えられます」

また、ネットなどに散見される相続対策のテクニックも、現時点で有効なだけで、将来的には無効になる可能性もある。無理は禁物だ。

Q2.定期預金や証券など、 親の財産については親しか把握していません。 今後、親がしておくべきお金にまつわる “棚卸し”があれば教えてください。

親が亡くなった後、あちこちに分散している遺産の把握に遺族が四苦八苦するのは「相続あるある」だ。

「特に今の親世代は、銀行の破綻が懸念されていた時代を生きてきているので、多くの金融機関に預金を分散させている人も多いはずです」

資産運用が趣味という高齢者も増えている。ネット銀行やネット証券となると、把握はさらに困難だ。

「相続は先の話としても、年齢とともに多数の口座の管理は難しくなります。親自身もそれに気づいているはずなので、銀行なら2〜3行というように、管理できる数に徐々に減らしていきましょう」

どこと取引があるかは金融機関から届く郵便物でも把握できる。郵便物の整理を手伝って話のきっかけを作り、解約作業を手伝ってもいい。

「そうしたコミュニケーションは、親の経済状況を何となく知ることもでき、困りごとに気づきやすくなるというメリットもあります」

Q3.兄弟姉妹で揉めないためにも、 遺言って必要でしょうか。 正直子どもからは言い出しづらいです。

相続の際、遺言がない場合は誰がどの財産を相続するかは、遺族間で話し合う。

「遺言を書くかはその人の価値観。でも遺族が困らないよう、財産リストは作成しておくとよいでしょう」

遺言では、具体的な遺産を誰に相続させるかといった内容が法定相続分に優先する。例えば遺族が配偶者と子ども2人の場合、配偶者2分の1、子ども4分の1ずつ、が法定相続分だ。

ただ、遺言書での配分に偏りがある場合、法定相続人は、法定相続分の半分を「遺留分」として請求できる(故人の兄弟姉妹を除く)。

遺言には、自分で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」がある。

前者には書き方を誤って法的に無効となる、しまい込んで発見されない、というリスクもある。後者には費用が発生するが、確実に遺言が残せる。作成には2名の証人が必要だが、公証役場で紹介してもらうことも可能だ。

内藤眞弓 さん (ないとう・まゆみ)

ファイナンシャルプランナー

生命保険会社を経てファイナンシャルプランナー(FP)に。独立系FP会社「生活設計塾クルー」のメンバーとして相談業務を行う。

『クロワッサン』1062号より

保険金を受け取れないリスクを回避する、生命保険の加入有無を調べる手順とは

もし家族に万が一や、認知症などで意思疎通ができなくなったら……考えたくはないことですが、そんな時のために「残された家族に少しでも」と、生命保険に加入されている人は少なくありません。

生前から自身の加入保険を家族に共有していれば問題になることはないでしょう。しかし近年、一人暮らしのまま亡くなってしまうケースや、人によっては家族に加入を隠したいというケースもあり、その保険の存在を家族が知らないことがあります。

そんな状況で万が一などが起きてしまった場合、どのように対応すればよいのかを解説します。

どれくらいの人が生命保険に加入している?

「公益財団法人 生命保険文化センター」が公表をしている「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、「疾病入院給付金の支払われる生命保険の加入率は73.1%」とあり、10人中、約7人がなにかしらの保険に加入していることになります。

10年以上前であれば、満期保険金などを受け取るタイミングで、元本よりもかなり増えて戻ってくる「お宝保険」といわれるような商品が数多く存在していました。

私自身、「保障の中身を見てほしい」と相談されることがあるのですが、たまにこの「お宝保険」を持っている人に会うことがあります。そんな時は「これだけは絶対に解約しないで最後まで持っていてください!」とお伝えするくらい、利率が良いのです。今では到底考えられないくらいの利率が保険証券に記載されています。

そんなこともあり、60代以上の世代であれば「保険に入っていないことの方が稀」と考えるのが自然だったのでしょう。

実際、どのようにすれば加入有無を調べることができるのか

生命保険は「請求」をしてはじめて保険金や給付金を受け取れる商品です。しかし、どの保険会社に加入しているのかがわからなければ請求すらできません。そこで知っておいてほしいのが、「生命保険契約照会制度」です。

今までは災害時に保険証書を紛失した場合等に限って照会が可能な制度でした。しかし、2021年7月からは親族等が申し出れば、一般社団法人生命保険協会を通じて、生命保険協会に加盟しているすべての生命保険会社に対し、保険契約の有無を一括で照会できるようになりました。

保険契約者、または被保険者が次のような状態になった際に利用できます。

・死亡した場合

・認知判断能力が低下した場合

・災害で死亡、または行方不明になった場合

照会の費用は1件につき3,000円(税込)で、申請方法はオンラインまたは郵送です。なお、災害時は無料で、電話で申請を行うことができます。

利用する際の注意点は?

申請後、利用料金の支払いが確認できてから2週間程度で、生命保険会社ごとに契約の有無が開示されます。ただし、あくまで「契約の有無」が開示されるだけなので、詳細な保険契約の内容は、各保険会社へ個別に確認する必要があります。

また、仮に契約があったとしても全ての契約が開示されるわけではなく、すでに給付金の支払いが開始している年金保険や、保険金が据え置かれているものについては照会の対象にならない点も注意が必要です。

なお照会ができ、保険会社に保険金や給付金を請求するにあたっても、公的書類や医師による所定の診断書等の取得、またその費用を負担する必要があります。そのため、「生命保険証券を探す」「生命保険会社から定期的に送付される通知物がないかどうか」「預金通帳の保険料の口座振替履歴等を確認する」など、まずはご自身でできることがないかを確認し、それでも難しい場合に利用を検討するのが無難かもしれません。

※一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度のご案内」

本来の気持ちを汲み取るために

「万が一」の時のため、残された家族の負担が少しでも軽くなるようにと加入している生命保険。それが、残された家族の手を、意図せず煩わせてしまうこともあるかもしれません。対応方法を知っていれば、本来の気持ちを汲み取ることができるかもしれませんね。

公的年金だけでは赤字? 年金に頼らない「老後貯金」の方法

老後用の貯蓄をするなら、どんな金融商品を使う?

人生100年時代。公的年金の給付水準は下がっていくと予測されており、老後資金の準備は必須です。

準備の方法としては、おもに会社が制度を導入していれば利用できる「財形年金貯蓄」と「個人型確定拠出年金制度(以下「iDeCo」とする)」が、まずは挙げられるのではないでしょうか。

会社が導入しているならば「財形年金貯蓄」で積み立てを

まず老後貯金の貯め方として、初心者にも始めやすいのが、「財形年金貯蓄」。会社員の福利厚生としての財形貯蓄制度のひとつで、会社が導入していれば利用できます。55歳未満の会社員が利用でき、60歳まで原則として引き出すことはできません。毎月一定額を、給与天引きすることで貯蓄していきます。

メリットとデメリットは以下になります。

▼財形年金貯蓄のメリット・財形年金貯蓄と、同じく財形貯蓄制度のひとつである財形住宅貯蓄の両方を使う場合、両方で積み立てた貯蓄と利息の合計550万円までに対する利息が非課税になります

・財形貯蓄制度を利用する上で、別途手数料がかかるということはありません

▼財形年金貯蓄のデメリット・60歳になる前に解約した場合は、利息や差益に課税されるので注意

・勤務先によって、預貯金、保険、投資信託等、運用する金融商品のラインナップが違いますが、選択した金融商品によっては元本割れする可能性もあります

iDeCoは60歳まで引き出せませんが、定期預金や年金保険などの元本保証型も選ぶことができ、節税メリットが大

一方、iDeCoは、会社員や公務員、自営業者、学生、専業主婦など現役世代の原則20歳以上60歳未満(2022年5月以降は国民年金に加入している65歳未満)のほぼすべての人が加入できる制度です。10年以上加入すると60歳以降70歳(2022年4月以降は75歳)までの間に一時金や年金で受け取ることができます。2021年12月時点の加入者は227万5454人(参照:iDeCo公式サイト「業務状況」)です。

iDeCoは投資信託で運用するものと考えがちですが、運用商品には元本確保型(定期預金や年金保険など)もあります。税金の優遇があるため金融商品の中でも、メリットはピカイチです。「老後貯金」準備に役立ちそうですね。

ただし、掛金の額や口座を設ける金融機関によっては、優遇措置があってもさまざまな手数料負担から元本を割り込む可能性がありますので、加入する前に金融機関の取扱金融商品・手数料・サポートサービスの内容を比較し、検討することがとても重要です。

また、iDeCoは、月5000円から積み立てができますが、60歳まで原則として引き出しができないので、イザというときのお金は普通預金や定期預金できちんと準備しておく必要があります。手元のお金が心もとない人は、ある程度お金が貯まってから、iDeCoを検討してもいいと思います。

では、iDeCoのメリット・デメリット・注意点をご紹介します。

▼iDeCoのメリット・拠出した掛金は全額を小規模企業共済等掛金控除として所得控除を受けることができる……例として考えると、所得税と住民税合わせて30%の人が2万円/月を拠出すると、所得税+住民税が7万2000円軽減するということです(復興特別所得税は考慮せず)

・運用中の利益は非課税です

・受け取りは、一時金、年金、一時金+年金の3つ。一時金での受け取りは「退職所得控除」、年金受け取りは「公的年金等控除」が受けられます

▼iDeCoのデメリット・引き出しは原則60歳以降。急にお金が必要になっても中途引き出しは原則不可

・運用結果は自己責任。運用次第で掛金割れ(=元本割れ)の可能性があります

▼iDeCoの注意点加入から受け取りに至るまで次のような手数料がかかります(※すべて税込み)。

・加入・移換時手数料(初回1回のみ):2829円

・移換手数料:他社へ資産を移す時にかかる費用。金融機関によって異なる。4400円程度が多い

・掛金拠出時にかかる口座管理手数料:事務手数料(国民年金基金連合会に年間1260円)、資産管理手数料(信託銀行に年間792円)、運営管理機関手数料(金融機関により異なる)

・年金の受け取り時にかかる給付事務手数料:送金1回あたり440円

・還付時(掛金の払い戻し時)にかかる事務手数料(還付金から控除):国民年金基金連合会に1048円、事務委託先金融機関に440円、運営管理機関手数料(金融機関により異なる)

専業主婦は、そもそも課税所得がないので所得控除は活用できず、上記の手数料負担が重くのしかかります。加入するメリットがあるか、じっくり考えましょう。

60歳以降、iDeCoの受け取るときの出口戦略にも注意

iDeCoは、受け取り方によっては税金や手数料の負担が大きくなることがあります。例えば、一時金で受け取る場合、退職所得控除枠はその前年から遡って19年以内(2022年4月から)に受け取った退職一時金との合算になります。年金受け取りでは公的年金等として課税対象になるだけでなく給付手数料が毎回必要です。効率よく受け取るためには60歳前に老後の生活資金繰りを試算し、公的年金の繰り下げ受給を含めた出口戦略が必要です。

もし、会社に制度があれば「マッチング拠出制度」を活用すると効率よく老後貯金ができる

最後に「マッチング拠出制度」にも触れておきます。iDeCoは、個人が加入する確定拠出年金です。一方、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が加入し企業が掛け金を拠出します。企業型DCに併せて、加入者が掛金を上乗せして拠出できる「マッチング拠出制度」を導入している企業もあります。

その場合は、企業の掛金の額によりますがiDeCoに加入するよりも、「マッチング拠出」制度を利用したほうがいいのではないでしょうか。iDeCoでは必要な手数料が不要となりお得だからです。

つまり「マッチング拠出制度」を利用すると定期預金や年金保険など元本確保型商品で運用する場合は、iDeCoより効率よく老後貯金できますよ。

文:大沼 恵美子(マネーガイド)

あなたは「金持ち老後」?「貧乏老後」? 決定的な違い

現役時代の収入や資産がたくさんあったはずなのに、老後は家計に苦しむ人がいる一方で、現役時代の収入や資産は多くないのに、老後は余裕を持って生活できている人もいます。金持ち老後・貧乏老後、その特徴について解説します。

貧乏老後の特徴その1

貧乏老後の特徴の1つ目としては、「受け取る年金額が少ない」です。老後の生活の収入源は年金のみという人も多いでしょう。この年金額が絶対的に少ないとなると、安定した生活設計が難しくなります。

生涯受け取ることができる年金は、老後の生活設計に一番重要な収入となります。年金額が少ないと、老後の生活はかなり厳しいものになるでしょう。

貧乏老後の特徴その2

貧乏老後の特徴の2つ目は、「老後は○○すべき」と思っている人です。現役時代はしっかり働いたので、老後生活を思いっきり満喫して楽しい時間にしようと考えていると、思わぬ落とし穴にはまりますよ。

例えば、「老後のために自宅は大規模リフォームをしないといけない」「元気なうちは年に2回は海外旅行をするのが当たり前」「趣味は2つ以上持ち、毎週習いに行くべき」……など。現役時代にできなかったあれこれを、リタイア後にやるべきと思い込んでいると、思わぬ出費が続き貯蓄が底をついてしまうという事態もあり得ます。特に、現役時代に高収入だった人が陥りやすいので注意しましょう。

貧乏老後の特徴その3

貧乏老後の特徴の3つ目は、「老後も一定の高額支出が続く」場合。

一番厳しいのが賃貸住宅の場合。生涯、家賃を支払い続けることは、毎月の支出を大きく増やすことになってしまいます。マイホームの場合でも、住宅ローンの返済が続く人は注意が必要。また、リタイア後も子どもの学費を負担したり、子どもの生活費を援助するなどの出費が続くと老後の生活費は厳しいものになるでしょう。

金持ち老後の特徴その1

一方、金持ち老後の特徴として1つ目は「上乗せ年金が充実していること」です。

公的年金が高額であればひとまず安心ですが、さらにその上乗せとして企業年金や個人型確定拠出年金「iDeCo」などで、しっかりと老後資金を準備していると、公的年金の受給開始を遅らせ、繰り下げ受給として年金受給額を増やすことができます。

例えば、2022年4月から75歳まで年金受給を繰り下げることが可能になりますが、75歳まで繰り下げると84%も年金額が増えます。人生100年時代といわれる今、年金をいかにたくさん受け取れるかが金持ち老後への第一歩です。

金持ち老後の特徴その2

金持ち老後の特徴の2つ目は「生活費の大半は年金でまかなえる」こと。生活費が年金でまかなえるとなれば、基本的には老後のために貯めた資金は減らないことになります。これは大きな安心ですよね。現役時代に準備した老後資金を、医療費や介護費用などのイザという時のためにとっておくことができます。

また、使い過ぎには十分に注意が必要ではありますが、旅行に行くなどのレジャー費も計画的に使いやすくなります。とても、充実した老後生活が送れるのではないでしょうか? 生活費を抑えて年金の金額内におさめるのが大切です。

金持ち老後の特徴その3

金持ち老後の特徴3つ目は「第2の収入があること、または、潤沢な老後資金があること」です。公的年金以外にも収入があると、生活設計がガラリと変わります。例えば、年金を受給しながらでも少しずつ働くと、家計の赤字を防いだり、レジャー費用にまわしたり、また、さらに貯蓄ができるかもしれません。健康面で働ける間は働くというのは、金持ち老後への近道といえるでしょう。

また、賃貸不動産を所有して家賃収入が得られる、保有している株からの配当金があるなどの場合は、体力や健康面での心配をすることなく収入を得ることができます。また、老後の資金をたっぷり貯められた人も、間違いなく「金持ち老後」となるでしょう。

貧乏老後にならずに、金持ち老後になるために一番大事なこと

このように、貧乏老後と金持ち老後には、それぞれ特徴があります。貧乏老後にならずに、金持ち老後になるために一番大事なことは「老後の生活を予測し、身の丈に応じた生活設計をする」ことです。

老後の収入の大きな柱になる年金収入を知り、少なければ繰り下げ受給などを駆使して少しでも年金額を増やす。生涯受け取れる年金収入を確保することは、人生100年時代といわれる今、安定した老後の生活設計には欠かせません。

また、いくら年金収入が多くて老後資金がたっぷりあっても、支出が多ければ一気に貧乏老後となります。それを防ぐためには、やはり支出のコントロールが大切です。日々の支出はもちろん、旅行や趣味などの特別支出まで計画的に管理できると、手持ちの老後資金を減らすことなく、医療費や介護費用が必要になったときも安心して暮らせる金持ち老後になることでしょう。

文:福一 由紀(マネーガイド)

終身保険、定期保険、医療保険…FPが指南する「保険の見直し」のポイント

 マイホームに次いで「人生で2番目に高い買い物」と言われる生命保険。年輩者向けの商品も続々と登場しているが、人生の備えはどこまで必要なのか。万が一のためとはいえ、「よくわからないから」と加入済みの保険を放置するケースも目立つが、それでは家計を圧迫するばかりだ。


【一覧】終身保険、医療保険…他、保険の種類別「見直しポイント」

 では、見直すべき保険商品とは何か。ファイナンシャルプランナー(FP)の長尾義弘氏はこう指摘する。

「保険は“めったに起こらない事態”が発生した際に生じる、大きな経済的損失を補填することが目的です。まずはその目的に適っているかを考えていけばいいでしょう」(長尾氏)

 そうした視点に基づいて、主な商品の見直しポイントを見ていこう。

【終身保険】

 いつ死亡しても保険金が受け取れる保障が生涯続くため、保険料は総じて高い。

「“葬儀代として200万円程度は用意しておきたい”と考え終身保険に加入する方が少なくありませんが、受け取る保険金よりも支払う保険料のほうが高くつく場合がほとんどです」とFPの横川由理氏は言う。

「代表的な商品で試算すると、60歳男性が200万円の終身保険に加入して終身払いを選んだ場合、85歳までの保険料は200万円以上になってしまう。途中で解約しても、解約返戻金はそれまでに払い込んだ保険料の半分以下になることがほとんどです。葬儀代を残すのであれば、保険ではなく貯蓄で備えるのがいい」

 金利が高いとして「外貨建て終身保険」を勧められることもあるが、「外貨への両替手数料などが高く、為替変動リスクもあるので、“安心のため”に加入する保険ではない」と横川氏は指摘する。

【定期保険】

 同じ死亡保障でも、「10年間」「70歳まで」というように、一定期間を保障する「定期保険」は当初の保険料は安いものの、更新のたびに保険料が上がるケースがほとんどだ。長尾氏はこう指摘する。

「子育て中など大きな保障が必要となる期間は加入のメリットがありますが、ライフステージ別のリスクに応じて見直しが必要。子供の独立や、配偶者の年金受給開始が解約のタイミングとなります」

 定期保険には被保険者の死後、保険金を遺族年金のように毎月受け取る「収入保障保険」などがある。

「たとえば『70歳まで毎月15万円』の契約なら、被保険者が60歳で死亡したら10年間、65歳なら5年間、遺族が毎月15万円の保険金が受け取れる。受給総額は被保険者が長生きするほど減りますが、死亡時の経済リスク低減に伴い保障額も減る合理的な保険と言えるでしょう。その分、保険料は定期保険の3分の1ほどで済みます」(長尾氏)

【医療保険】

 入院日数に応じて給付金や一時金が支払われるが、「基本的に医療費の多くは公的保険でカバーできる」と前出の横川氏は言う。

「高額療養費制度により、月収50万円までの人なら、たとえ医療費が100万円かかっても自己負担は9万円弱で済みます。近年は入院日数も減っており、貯蓄があれば高額な医療保険にあえて入る必要はないと言えます」

 また、「がん保険」も保障内容を精査したい。

「2000年以前に契約した古いがん保険は、通院治療で給付金が出ないケースがある。抗がん剤や放射線治療が対象外のこともあるので、注意が必要です」(横川氏)

【介護保険】

 公的介護保険で賄えない費用を補うための保険商品も増えつつある。

「ただ、若いうちから入る必要性は低く、介護リスクを意識する70歳頃から検討しても良いと思います。高齢になるほど保険料は上がりますが、単体で加入するよりも、医療保険に介護特約を付けたほうが安くなる場合があります」(長尾氏)

【養老保険・個人年金保険】

 公的年金で不足する老後資金を補う保険には、「個人年金保険」のほか、満期までに死亡しても生きていても保険金が受け取れる「養老保険」がある。80歳まで加入できる商品もあるが、横川氏はこう指摘する。

「将来の貯蓄と考え加入する方が多いのですが、現在は低金利で保険料のほうが高くつきます。たとえば60歳男性が10年満期、保険金200万円の養老保険に加入すると、代表的な商品で満期までの保険料は約224万円になってしまいます」(横川氏)

※週刊ポスト2022年3月18・25日号

年代別に考える!「老後不安」を解決する方法

老後不安を解決! 30代から60代までの年代別・ライフプランの立て方

ご存じのとおり、日本人の平均寿命は伸び続けています。私たちはすでに「人生100年時代」を生きているのかもしれません。

寿命が伸びた分、必要なお金も増えました。65歳で退職して、老後は年金と退職金で生活する……こうしたロールモデルは今後通用しないでしょう。それぞれが将来のことをイメージしながら、ライフプランを考える必要があります。

本稿では、30代から60代までを年代別に分けて、ライフプランの立て方を提案します。どんな人生を送りたいかイメージしながら、一緒に考えてみましょう。

30代:半年分の生活費を確保余裕資金で投資も

まずは30代。仕事にも慣れ、過去の経験や勉強してきたことが実を結び出す、そんな頃合いかもしれません。結婚や子育てをしている人もいるでしょう。住宅を買う人もいるかもしれませんね。さまざまなイベントがあります。

独身のとき、あるいは結婚して子どもが生まれる前は、お金を貯めやすい時期です。将来の自分にお金を渡すつもりで、貯金しておきましょう。

貯金の目標額は、まずは半年分の生活費。半年分の生活費があれば、急なトラブルに備えることができます。お金の余裕と時間があると、冷静に対策を考えることもできます。

ある程度貯金できたら、それとは別のお金、余裕資金で投資を始めてもよいでしょう。後述しますが、投資は運用期間が長いほど有利になる傾向があります。

40代:長く働くには転職やスキルアップを考える

40代は、引き続き仕事や子育てに忙しい人も多いでしょう。

仕事面では、社会に出て20年以上経ち、このまま今の会社にいてもよいのだろうか、このまま同じ仕事を続けるのだろうか……とキャリアについて悩む人もいるかもしれません。

転職や再就職を考える際は、20代・30代で積み上げてきた自分の「できること」を棚卸してみましょう。同じ分野でキャリアアップを目指すのか、違う分野へキャリアチェンジするのか……。できれば60代以降も働くことを視野に入れながら考えるとよいかもしれません。

家計の面では、40代で貯金が少ない人は要注意です。収支のバランスが崩れている可能性があります。月々の収入と支出を把握して、お金の使い道を把握しておきましょう。気が早いかもしれませんが、60代以降の生活費を意識して、少しでも貯蓄額を増やしたり、資産運用したりしておくと安心です。

また、今後の住まいのことも考えておきたいところです。購入か賃貸かの選択は迷うところですが、ローンを組むことを考慮すると40代で決断しておくとベターです。

50代:少しずつ退職後のことを考えて

50代は、子育ても終わり、仕事もいったん落ち着く頃合かもしれません。管理職として、若手をサポートする役目を担ったり、一線から少し離れたポジションにつく人もいるでしょう。

この時期から、退職後のことを具体的に考え始めましょう。自分にはどの程度の生活費が必要か、貯金はいくらできそうか、年金はいくら受け取れるか……など確認します。

将来受け取れる年金額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認できます。年金予定額が分かれば、現在の支出と照らし合わせてみましょう。65歳以降の生活がより具体的にイメージできます。

60代:家計のダウンサイジングの検討を

最後に60代です。60代は、仕事面ではペースダウンするケースが多いと思われます。一方で、趣味や好きなことに使える時間が増える時期でもあります。

現状、65歳をめどに退職することが多いですが、この先、70歳を超えても働くことも考えられます。セカンドキャリアとして続けられそうな仕事を、趣味や好きなことから探してみるのもよいかもしれませんね。

60歳以降は収入が減る可能性が高くなります。60代の前半で、家計のダウンサイジングをしておきましょう。年齢を重ねると、これらの見直しがおっくうになってしまいがち。元気なうちに早めに対処しましょう。

また、この60代になると、親の介護をする人が増えます。介護が必要になっても、できれば仕事は続けましょう。一度辞めてしまうと、再び働くことが難しくなるかもしれません。介護保険制度も上手に活用しましょう。

対策しつつ、できるだけ働くつもりで

70代以降は、年金や貯金を使いながら過ごす期間になるでしょう。もちろん、働ける人や働きたい人は、大いに働きましょう。年金以外の収入源があれば、家計は安定します。退職したあとも、収入が支出を上回る状態がベストです。

身もふたもない話になってしまいますが、老後の対策として一番有効なのは「寿命が延びた分、長く働く」ことです。国も、高齢者に働いてほしい、そして税金や保険料を納めてほしい、と考えています。高齢者が働きやすい、働くと有利になるような制度が作られることは間違いないでしょう。

とはいっても、「そもそも高齢者に仕事はあるのか」という問題があります。人によっては、ないかもしれませんし、そもそも健康でないと働けません。そこで、今から運用で資産を増やしたり、年金を増やしたり、いくつかの対策をとっておくと安心です。

30代の項目で投資について述べましたが、仮に、毎月3万円ずつ投資信託を購入し、年間の平均利回りが5%だった場合。30年後には約2500万円になります。その内訳は、積み立てたお金が約1080万円で、運用益が約1500万円(複利計算で税金は考慮していません)。運用益が元本を超えていますね。

上記のような運用益を元本に加える「再投資型」の運用は、期間が長いほど、大きな効果を生みます。投資は、時間のある若い人ほど有利です。

投資を始めるなら、「つみたてNISA」「NISA」「iDeCo」といった税制優遇されている制度を活用しましょう。※元本保証ではありません

参考本:『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』

執筆協力:ファイナンシャルライター 瀧 健

文:井戸 美枝(マネーガイド)

身近な人が亡くなったら、生命保険金はどう受け取る? NG行動も解説!

大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。

また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。

本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています。刊行を記念して、本書の一部を特別に公開します。

生命保険金の受取手続、注意点を解説!

 生命保険金の受取手続について解説します。

 生命保険は相続が開始した日の翌日から3年を経過すると時効となり、請求ができなくなってしまう可能性があります。早めに受け取りの手続を済ませましょう。

保険証券を確認

 生命保険の手続はまず、「故人は生命保険に加入していたのか?」、「どの保険会社の、どの保険に加入していたのか?」といった、生命保険の情報を収集することから始めます。

 生命保険に加入すると、保険証券をはじめとした、保険の内容がわかる書類が契約者に渡されます。このような書類がある場合には、保険会社や保険金額、受取人等の詳細が容易に把握できます。見つからない場合は、思い当たる生命保険会社に直接問い合わせをして確認しましょう。

 生命保険の内容が確認できたら、次は実際に保険会社に、「生命保険金の請求」を行います。生命保険金の請求は受取人本人が行うのが原則です。

 しかし受取人が認知症で意思能力がなく、自ら手続を行えないような場合には、親族が代わりに行うことができます。生命保険金の請求手続は次の通りです。

生命保険金の請求手続

①保険会社に相続があった旨を伝える

②保険会社から「保険金の請求書」が送られてくる(訪問や郵送)

③必要事項を記載した「保険金の請求書」と、その他必要書類を保険会社に送る

④保険会社が内容を確認し、不備がなければ指定の口座に保険金が振り込まれる

受け取りに必要な書類

・死亡診断書のコピー

・受取人の本人確認書類

 保険会社によって多少異なりますが、基本的には上記書類が必要です。必要書類等を保険会社に送ったら、保険金は5営業日ほどで振り込まれることが一般的です。

 ただし、特別な死亡理由(自殺など)の場合には、保険金を支払うかどうかの審査が必要となるため、振込まで非常に長い期間(数ヵ月~数年)かかることがあります。

生命保険金と相続税、NG行動

 生命保険金は、被保険者の死亡により支給されることから、相続税との関係も重要です。

 生命保険金を取得した際、その受取人が相続人である場合には「500万円×法定相続人の数」までは非課税とされています。

 ここでのポイントは、受取人が相続人であることに限定されている点です。よくある失敗例として、孫を保険受取人としている場合、基本的に孫は相続人ではないので、保険金は非課税になりません。

 相続税のかからないご家庭であれば実害はありませんが、かかるご家庭においては税負担が重くなりますので注意しましょう。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」ーー相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を編集・抜粋したものです)

「国の制度があるから保険はいらない?」高額療養費制度の注意点を実例から考える

皆さんは、医療保険に加入していますか?

最近では「高額療養費制度」や「傷病手当」などの国の制度があるので、わざわざコストを払って民間の保険に加入する必要はない。もしくは、民間保険は無駄、といった内容が書かれた本も出ていたりもします。

では本当に保険に加入する必要はないのでしょうか。

実際の例を交えながら、高額療養費制度の「気を付けなければならない点」を考えます。

実際に民間の保険にどのくらいの人が加入しているのか

「公益財団法人 生命保険文化センター」が公表をしている「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると

・疾病入院給付金の支払われる生命保険の加入率は73.1%

・民間の介護保険・介護特約の加入率は12.3%と前回に比べ2.4ポイント増加(平成19年以降増加傾向)

データを見ると10人中、約7人が医療保険加入していることになり、また介護保険(特約)も加入者の増加がみられます。理由として考えられるのが下記のようなデータです。

・自分自身に関する不安

1.「自分が病気や事故にあうこと」58.6%

2.「自分の介護が必要となること」46.1%

3.「老後の生活が経済的に苦しくなること」43.8%)

・家族に関する不安

1.「家族の者が病気や事故にあうこと」54.3%

2.「親の介護が必要となること」39.6%

3.「家族の者が死亡するようなことが起 こること」37.6%

参考「生活上の不安項目」公益財団法人 生命保険文化センター

ご自身、家族、いずれの場合も、病気や介護が原因で経済的な負担(もしくは結果として経済的な負担)が増えることを不安に感じられているようです。

100万円の医療費がかかった場合、実際の自己負担額はいくら?

もし、この制度があるから医療・介護保険はいらない、というのであれば、なぜこれだけの方が保険に加入されているのでしょう。もちろん、制度のことを知らない、よくわからないことも理由のひとつです。慣習的に保険に入っている、よくわかっていないだけの人もいるかもしれません。

では本当にすべての医療費をカバーできるのか、もしくは、どれだけ負担額を減らすことができるのか「高額療養費制度」から見ていきます。

高額療養費制度って?

「高額療養費制度」とは、窓口負担3割の額が収入区分で決められた上限を超えた場合に、その超えた分の医療費が還付される制度です。

© MONEY PLUS

多くの事例で紹介されるのが区分【ウ】の場合です。

収入の全国平均が500万円※1、一番高い東京の平均を見ても620.4万円※1ですので、これを例として出すのは至極当然です。

ここだけ見れば「医療費が100万かかるような大きな病気をしたとしても、実際の負担額は10万円以内だから保険に入るのはもったいない!」という話の流れも大枠では間違いとは言えません。

※1参考 厚生労働省 賃金構造基本統計調査(2019年)

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本当に「高額療養費制度」で自己負担は抑えられる?

今度は実例を踏まえつつ、この制度の「気を付けなければならない点」を見ていきます。

先輩だったTさん。関西出身、頭の回転も速く、人当たりもよいので国内外問わず多くの友人がいます。営業成績も常にトップでした。彼は会社を辞め、自分で会社を立ち上げつつ、別の同期の会社の役員も掛け持ち、独立してからも業績をうなぎ上りに挙げていました。

ところがある時突然、SNSに「これから入院・手術する。退院までに約1か月かかる」と投稿して連絡を絶ったのです。今まで病気の気配すらなかった人なのに。

そして1か月と少し経った頃「この国の制度はなんやねん!しっかり稼いで普段一番税金納めてんのに、なんの恩恵も受けれてない」と新たな投稿が。よくよく話を聞いてみると、高額療養費制度の対象にならなかった、とのことでした。

仕事を掛け持ち、自身の会社の業績もよいので給料も高く、上記表の区分としては【ア】に当たります。

実際に病院で医療費としてかかった額は84万円。ただし、そのうち保険外8万円だったので、対象となる医療費は76万円、それなりの額になりました。3割負担分は22.8万円です。

しかし、今回の件を計算式に当てはめると

25万2,600円+{(76万 – 84万※)×1%} ≧ 22万8,000円

※このカッコ内が0未満の場合は0として計算

となり、自己負担額は【ア】の上限25万2,600円には届かず、全額自己負担。さらに保険適用外の治療費は基本自費となりますので、その分8万円を加えた30万8,000円を医療費として支払ったのです。

© MONEY PLUS

彼はいわゆる医療保険には加入していませんでした。ですので、今回の治療はすべて自己負担、貯蓄から支払ったことになります。バリバリに仕事ができる人です。この悔しさを糧に復帰後、早々に支払った医療費以上の成果を出したのは想像に難くありません。

ポイント(1):制度があるから大丈夫、ではない

さて、この事例をどのように思われるでしょうか。

だから医療保険に入りましょうと言うつもりはありません。

伝えたいのは「制度があるから保険はいらない」と安易には考えないでほしい、ということです。制度があるのは事実ですが、それが適用される条件をまず理解することが大切です。

ポイント(2):上限は毎月リセットされる

区分【ア】でいえば基本の上限は25万2,600円です。

ただし、これは年間の上限ではなく「ひと月当たりの上限」であることも大事なポイントです。

今回のTさんは入院、手術、治療が1か月のうちに終わりました。仮にこれが2か月にわたっていた場合、計算は各月毎のため、さらに高額療養費の対象になりにくく、加えて事務手続きも月毎に必要となります。治療による身体的な負担もある中で、書類を複数回準備するのはかなりの手間といえます。

ポイント(3):同月内でも複数の医療機関にかかった場合には注意を

治療自体は同月内に収まったとしても、複数の医療機関を使った場合はどうなるでしょう。

単純に医療費だけを合算すれば上限を超え、還付を受けられそうであったとしても、各医療機関の医療費の合計が2万1,000円以上のもの(70歳以上の方は受診者別、入院・通院別で全部の自己負担額)しか合算できないので、その場合も高額療養費の対象とならない可能性があります。

© MONEY PLUS

上記の医療費自己負担額合計は9万5,000円です。【ウ】区分の場合、単純に計算式に当てはめると

9万5,000円÷0.3=31万6,667円(10割医療費)

8万100円+(31万6,667円- 26万7,000円)×1%=8万597円<9万5,000円

となり1万4,403円が還付されそうですが、合算対象の合計は7万5,000円となり還付される金額はありません。

自分で判断できる知識を身につけよう

全ての保障を自分で準備するのではなく、国の制度を活用するのはとても賢い方法です。だからこそ、周りで言われていることを鵜呑みにするのではなく、まずはその制度をしっかり理解することが重要です。

さらに、その制度を踏まえたうえで、ご自身のライフイベントにアクシデントが起こった場合に想定できる影響をシュミレーションし保険を取り入れるかどうか、また取り入れるのであればどの程度の保障が必要なのかを“判断が出来る知識”を持てることが一番の安心(=保険)、なのかもしれませんね。

社会保険の保険料と保険給付には、漏れや誤りが生じやすい年齢がある

広い意味での社会保険には、会社員が加入する「労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金保険」だけでなく、自営業者やフリーランスなどが加入する「国民健康保険、介護保険、国民年金」も含まれます。 

会社員が加入する社会保険のうち、労災保険に関する保険料は、勤務先が全額を負担するため、給与明細の中を見ても、労災保険の欄はありません。

一方で雇用保険(雇用保険二事業の保険料を除く)、健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料は、勤務先と従業員が折半して負担します。

 

これらの保険料は給与の金額を元にして算出するため、給与の金額に増減があった場合には、保険料の金額が変わる場合が多いのです。

給与から控除される保険料の種類が変わるタイミング

また次のようなタイミングでは、給与から控除される保険料の種類が変わるのです。

40歳:介護保険に加入する年齢】

40歳からは介護保険の第2号被保険者になるため、原則として40歳に達した月の翌月以降の給与から、介護保険の保険料が控除されます。

65歳:介護保険の被保険者の区分が変わる年齢】

65歳からは介護保険の保険料が年金から控除される、または納付書を使って自分で納付する、介護保険の第1号被保険者に変わるのです。

 そのため原則として65歳に達した月の翌月以降の給与からは、介護保険の保険料は控除されなくなります

70歳:厚生年金保険に加入する年齢の上限】

厚生年金保険に加入する年齢の上限は70歳になるため、原則として70歳に達した月の翌月以降の給与からは、厚生年金保険の保険料は控除されなくなります

75歳:健康保険に加入する年齢の上限】

健康保険に加入する年齢の上限は75歳になるため、原則として75歳の誕生日が属する月の翌月以降の給与からは、健康保険の保険料は控除されなくなります

 以上のようになりますが、法律上は誕生日の前日に歳をとるため、40歳、65歳、70歳に達した月とは、誕生日の前日が属する月になるのです。

例えば21日生まれの方は、131日に40歳になるため、介護保険の保険料は3月以降の給与からではなく、2月以降の給与から控除される点に、注意する必要があります。

 節目年齢になる時は保険料の控除の誤りに注意する

勤務先が給与計算ソフトを導入しており、かつ従業員の生年月日などを正しく入力している場合、新たに介護保険の対象になった方などを、給与計算ソフトが抽出してくれます。

 そのため給与から控除された保険料が本来より多い、または本来より少ないという誤りは起きにくいのですが、給与計算ソフトの抽出機能を使いこなせていない場合があります。

 また給与計算ソフトを導入していない小規模の会社では、社会保険事務の担当者が介護保険の対象になった方などを、自力で抽出する必要があるため、注意不足などで見逃してしまう場合があります。

 こういった理由があるため、40歳、65歳、70歳、75歳といった節目年齢になる時は、保険料の控除の誤りが生じやすくなるのです。

国民年金の被保険者の種別が変わる時は納付漏れが生じやすい

国民年金の被保険者の種別は3つに分かれており、第1号被保険者に該当する自営業者やフリーランスなどは、自分で保険料を納付します。

 一方で厚生年金保険に加入する会社員は、老齢基礎年金の受給資格を満たしている65歳以上の方を除き、第2号被保険者になります。

 ただ給与から控除されている厚生年金保険の一部は、国民年金の保険料として使われているため、自分で保険料を納付する必要はありません。

 また第2号被保険者の配偶者のうち、年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方は、所定の届出をすると第3号被保険者になります。

 この第3号被保険者の保険料も、厚生年金保険の保険料から賄われているため、自分で保険料を納付する必要はありません。

 しかし例えば夫が次のような状態になった時に、妻が60歳未満だった場合、国民年金の被保険者の種別は第3号から第1号に変わるため、これ以降は自分で保険料を納付する必要があるのです。

60歳で定年を迎えて再雇用された後は、勤務日数や労働時間が短くなったので、厚生年金保険に加入しなくなった(これ以降は第2号被保険者でなくなります)

 ・60歳以降も厚生年金保険に加入しているが、65歳からは第2号被保険者でなくなった(厚生年金保険の保険料に変動はありません)

 こういった理由があるため、妻が夫よりも年下で、国民年金の被保険者の種別が第3号だった場合、夫が6065歳になったタイミングは、国民年金の保険料の納付漏れが生じやすくなります。

制度内容や手続きが複雑な「高年齢雇用継続給付」

60歳以上65歳未満の間に給与が低下し、所定の支給要件を満たした場合、次のいずれかの高年齢雇用継続給付が、雇用保険から支給されます。

(1) 高年齢雇用継続基本給付金

60歳以降も以前と同じ会社で働いている方、または雇用保険の基本手当を受給しないで、すぐに再就職した方を対象にした制度になります。

 高年齢雇用継続基本給付金が支給されるのは、60歳以上65歳未満の各月の給与が、60歳に達した時点の給与の月額と比較して、75%未満に低下した場合になります。

 また支給要件を満たす場合、最大で各月の給与の15%が、最長で65歳に達する月まで支給されるのです。

ただ高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上必要になるだけでなく、60歳以降も一般被保険者として、雇用保険に加入していることが求められます。

 (2) 高年齢再就職給付金

雇用保険の基本手当を100日以上残して、再就職した方を対象にした制度になります。

高年齢再就職給付金が支給されるのは、60歳以上65歳未満の各月の給与が、基本手当の基準になった賃金日額を30倍した額と比較して、75%未満に低下した場合になります。

また支給要件を満たす場合、最大で各月の給与の15%が、次のような期間に渡って支給されるのです。

【基本手当の支給残日数が100日以上200日未満】

再就職した日の翌日から、1年が経過する日が属する月

【基本手当の支給残日数が200日以上】

再就職した日の翌日から、2年が経過する日が属する月

ただ高年齢再就職給付金を受給するには、基本手当の算定基礎期間が5年以上必要になるだけでなく、60歳以降も一般被保険者として、雇用保険に加入していることや、再就職手当を受給していないことが求められます

以上のようになりますが、いずれの支給申請手続きも、勤務先がやってくれるはずです。 

しかし高年齢雇用継続給付は制度内容や手続きが複雑なため、60歳以降に支給要件を満たした従業員を、社会保険事務の担当者が見逃してしまう場合があります。

また社会保険事務の担当者が2か月ごとの支給申請手続きを、忘れてしまう場合があります

こういった理由があるため、60~65歳は高年齢雇用継続給付の受給漏れに、注意する必要があるのです。