Q 65歳女性です。平成22年に膵臓(すいぞう)がんで膵頭部を含め約3分の2を切除する手術を受けました。令和2年12月に再発
し化学療法を開始したものの、翌年10月に脾臓(ひぞう)に転移していることが判明したため、現在は2番目の化学療法を受けています。しかし化学療法はやがて効かなくなるそうなので、重粒子線治療や最近の先進治療も受けたいと考えています。
A 手術ができない膵臓がんで病変が限られた1カ所の場合、放射線治療や粒子が大きい重粒子線治療は選択肢の一つです。ただ通常、がんが多発し転移した場合には適応になりません。
Q 免疫チェックポイント阻害薬という新しい治療法もあると聞きました。
A 基本的に免疫チェックポイント阻害薬は膵臓がんに効きにくいのですが、遺伝子パネル検査やMSI検査で遺伝子異常が見つかり、合う薬があれば治療の選択肢は増えるので検査は受けてもいいでしょう。しかし、膵臓がんの場合、それぞれ検査をしても、適応になる可能性は低く、大きな期待はできません。やはり化学療法の効果を高めることを考えるのがよいでしょう。これまでどんな抗がん剤を使いましたか。
Q 最初の化学療法はゲムシタビンとナブパクリタキセル(商品名・アブラキサン)の併用療法でした。約10カ月後に転移が分かったためフォルフィリノックス療法に変わりましたが、それも効果がなくなってきているといわれています。
A フォルフィリノックスはフルオロウラシル(同・5FU)、イリノテカン、オキサリプラチンという3つの抗がん剤を併用する、膵臓がんに効果のある点滴静脈注射タイプの化学療法です。現在どれくらいの頻度で受けていますか。
Q 1カ月に1回です。
A なるほど。標準的な投与方法は2週間に1回ですが、相談者さんはこの治療の副作用に耐えられず間隔を空けた方がよいと医師が判断したのでしょう。この場合、フォルフィリノックスの3つの薬剤それぞれの治療強度(薬の効き目)がそれぞれ中途半端ですので、本来の治療効果が上がりにくくなります。フォルフィリノックス療法の3つの抗がん剤のうちイリノテカンやオキサリプラチンを除き、副作用に耐えられる2剤併用や1剤単独治療にするなどで効果を引き出す方法がいくつかあります。「好中球(細菌などと戦う細胞)減少症」と呼ばれる副作用で標準的な投薬ができない場合は他の製剤の併用も検討します。
Q 主治医からは、経口タイプの抗がん剤もあるといわれました。
A その経口薬はテガフールなど3つの成分を配合したティーエスワン(TS1)のことでしょう。テガフールは服用後に体内でフルオロウラシルに変化するためフォルフィリノックスの代替治療法の一つといえます。フルオロウラシル系の単剤での治療にすることにより、その部分の治療強度を上げられます。このほかに使える抗がん剤として、2年前に承認されたばかりの点滴静脈注射タイプのリポソーム型イリノテカン(同・オニバイド)とフルオロウラシルの併用療法があります。成分はイリノテカンと同じですが、イリノテカンに比べ腫瘍などの病変に到達しやすく、到達後も病変にとどまる効果が高いとされています。
回答はがん研有明病院・消化器センター肝・胆・膵内科副医長、春日章良医師が担当しました。「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は、毎週月曜~木曜日(祝日除く)午前11時~午後3時に受け付けます。今週は17日のみ受け付け、15日、16日は休みとなります。電話は03・5531・0110、無料。相談はカウンセラーが受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します
仕事や人間関係で悩むとき、「心の限界」サインをきちんとキャッチできているだろうか。限界を超えてがんばりすぎると、メンタルが壊れてしまうこともある。そう語るのは、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』著者・わび氏だ。心を病まないための自衛術を学んでほしいと上梓した本書の発売を記念し、今回は、『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』著者のバク@精神科医氏と特別対談を実施。仕事や人間関係で病まないコツを、徹底的に語り合ってもらった。(取材・構成/川代紗生)
「当たり前にできていたこと」ができなくなったら即病院へ
──今回は、「病まないコツ&逃げるべきサイン」についてお二人にお聞きしたいと思います。がむしゃらにがんばりすぎてしまうと、なかなか自分の心が限界であることに気がつけなかったりしますよね。お二人は、「心の限界」を見極めるための判断基準は、何か持っていますか。
わび:私は「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせるようになったら、それは休むべきサインだと思っています。大丈夫かどうかを確認するのは、少なからずダメージを負っているときです。
本当に大丈夫な人は、大丈夫かどうかなんて気にしません。
バク:そうですね。「まだ大丈夫」って今が辛いからこそ言い聞かせている言葉ですからね。めちゃくちゃ健康なときに「今、私、息してる」と思いながら呼吸しないじゃないですか。
「まだ息してる、大丈夫」とわざわざ心の中で言うのは、息苦しい中で無理して呼吸しているからですよね。
「まだ大丈夫」「まだいける」と思いながら作業しているとき、たとえば書類あと1枚書けば休める、とかなら最後までやり切ったらいいと思うんですけど、そうじゃないのなら、いったん休まないともたないですよね。
──しんどくなってしまっても、「自分の心が弱いだけなんじゃないか」と感じてしまい、「精神科に行って治療する」という選択肢が浮かばない人も多いと思います。「会社を休んで病院に行くべきかどうか」の判断は、どのようにすればいいのでしょう? たとえば、全然笑わなくなったとか、突然涙が出てくるとか?
バク:それはもう重症ですよ! すぐに病院に行ってください。
私ものべ2万人以上の患者さんを診てきましたが、その上で心から伝えたいのは、「ふだん何も考えずにできていたことができなくなったら、即病院」でOK、ということ。
たとえば会社に行くにしても、それまでパッと朝の支度をできていたはずが、「ああ、朝か、起きるのめんどくさいな」「朝ごはんどうしよう。抜くか……でも抜いたらまずいよなあ」とか、ゴチャゴチャ考え出すようになったら、かなりまいっている状態だと思いますよ。
わび:それ、なんとなくわかる気がします。
私が自衛隊にいたとき、大事な決断をする前に、いつも唐揚げを食べる先輩がいたんですよ。
理由を聞くと「好きなものがマジでうまいなら、判断力は正常だろ?」と言っていました。逆に、好きなものがおいしくないときは、心身が弱っていて、判断力が低下している証拠だそうです。これは割とわかりやすい目安ですよね。
バク:「おいしいものをちゃんとおいしいと思えるか」は、たしかにわかりやすいですね。
いずれにせよ、普通の病院に行くのと同じ感覚で診断を受けてほしいですね。
「精神科なんて行きづらい……」という人もいますし、事情があって精神科に行く勇気が出ないという方ももちろんいらっしゃると思いますが、症状によっては薬を飲んだり、カウンセリングしたりすることで改善される場合も多いので。
自分を助けられるのは自分しかいない
──上司に怒られすぎて心を病んでしまう人もいるかと思います。「怒られているうちが花」という言葉もありますが、上司からの叱責やアドバイスは、どのように受けとめたら良いでしょうか。
バク:まず前提として、職場関係で上司に怒られてメンタルを病んだとして、それで「怒られている人が悪い」っていうパターンはほとんどないと思うんです。
わびさんの本にも書いてありましたが、部下が効率よく働けるようにするのが上司の仕事。反射的に、感情的にわっと怒ってくるやり方って、全然建設的じゃないんですよね。「怒る」と「叱る」を混同している時点で、その人の言うことは聞かなくていいと思います。
感情を乗せずに、「君がやったミスはこういうもので、連発するとこういう被害が起こる可能性がある。それはわかる?」というように、具体的に指摘する。こういうやり方は「叱る」だし、それは聞く価値があるんですよ。
そこまで冷静に、相手の理解度を確認しながら指摘するには、自分が誰よりも全体像を把握しておく必要がありますから。
わび:私もまったく同意見ですね。行動につながるような具体的な方法が出てくるのなら、それは聞いてもいいけれど、感情的な表現しかできてないなら、受け流していい。
私は嵐の中4km泳いだり、雪の中100km歩いたり、山の中に1ヵ月近く籠ったり、自衛隊でいろんな経験を積んできました。過酷な状況を何度も乗り越えてきましたが、パワハラで簡単にぶっ壊れました。他人からの理不尽な攻撃などでメンタルをやられそうになったら、「心が折れる前に逃げる」が正解だと思います。
バク:うんうん。心が折れる瞬間って、いつやってくるか本当にわからないですからね。
よく「〇〇さんは同じような状況でも大丈夫だったよ」と根性論でなんとかしようとする人がいますが、人それぞれ置かれた環境がちがうので、まったく同じ出来事に遭遇しても、みんなに同じ症状が現れるとはかぎらないんですよ。
他人が我慢しているからといって、自分も我慢しないといけないというのは間違いです。
この記事を読んでくださっている読者の方には、他人と比較して落ち込んだり、自分と同じ環境ではない他人と自分を同じ目線で見たりするのはやめましょう、とお伝えしたいですね。しんどいことから逃げることは恥ずかしいことでもなんでもなく、立派な防衛手段のひとつですから。
わび:私もパワハラで倒れる前までは、「いつか、きっと誰かが助けてくれる」と、自分で逃げることをせずに、誰かが助けてくれるんじゃないかと希望を抱き続けていました。でも、結局誰も助けてくれなかったんですよね。
激務とパワハラに悩まされ、私が弱っていくにつれて、徐々に周りから人がいなくなっていきました。
もちろん、励ましてくれる人もいて本当にありがたかったんですが、やっぱりメンタルのどん底から這い上がるには、自分で動かないとどうにもなりません。
私が今、毎日を幸せに過ごせているのは、思い切って環境を変えたからでした。他人を救ってくれる神様みたいな人なんて、いないと思ったほうがいい。自分の武器をしっかり磨いて、いざというときにいつでも逃げられる準備をしておく。
自分を助けられるのは、自分の人生を変えられるのは、結局自分だけなんですよね。
夜、隣で眠っている夫、妻や子供の歯ぎしりがうるさくて眠れないという人は多いだろう──。眠っている間にギリギリと上下の歯をこすり合わせる歯ぎしりのことを「グラインディング」という。実はこのほかにも、上下の歯をカチカチと鳴らす「タッピング」、歯を食いしばる「クレンチング」と、歯ぎしりには大きく3種類ある。一説では、なんと9割の人が睡眠中だけでなく、起きている間も歯ぎしりをしているという。つまり、あなたも無意識に歯ぎしりをしている可能性が高いのだ。
なぜ人は、起きているときも歯ぎしりをするのか。その原因は明らかになっていない部分が多い。幸町歯科口腔外科医院院長の宮本日出さんが解説する。
「起きている間の歯ぎしりは、歯並びやかみ合わせが悪いことや、スマートフォンやパソコンの使いすぎで姿勢が悪くなっていること、長時間ほおづえをつくことなど、さまざまな原因が考えられています。現状では、歯ぎしりによって無意識にストレスを解消しようとしているという説が最も有力です。
本来、噛むという行為は、ものを食べるためだけではなく、敵を攻撃するための手段でもあります。人間は、歯ぎしり、つまり噛むことで、ストレスという敵に対処しているのではないかと考えられています。
そしていま、このコロナ禍のストレスにより、歯ぎしりをする人が増えているという報告が世界各国で上がっています」
イライラしているときや集中しているときなどに無意識に歯を食いしばってしまうのも、心身のストレスを軽減しようという本能なのだ。
青木歯科院長の青木聡さんも、理想的な歯ぎしりなら、むしろ心身によい影響を与えると語る。
「歯ぎしりは、必ずしも“悪癖”ではありません。歯ぎしりをすることでストレスホルモンが減少するほか、ストレスなどが原因で起こる胃潰瘍などの面積が減少することが、動物実験で明らかになっています。脳にかかっている負担を、体の末梢を使って解消しているのです」(青木さん・以下同)
しかしその一方で、習慣化すると危険な「悪い歯ぎしり」も少なくない。
食事中以外は歯と歯は離す
奥歯をこすり合わせるような歯ぎしりは、好ましい歯ぎしりとは言えない。
「悪い歯ぎしりの大きな要因の1つが、かみ合わせの悪さです。かみ合わせが正常であれば、歯ぎしりをしたときの圧力は犬歯を中心にかかり、奥歯に力がかかることを防ぐことができます。一方、かみ合わせが悪いと、奥歯だけに圧力がかかったり、あごを痛めたりするのです。
一見、歯並びがよくても、かみ合わせは悪いことがあるので注意してほしい。かみ合わせは見た目の歯並びとは別ものなのです。
試しに、上下の歯を軽く合わせた状態で、下あごを左右に動かしてみてください。このとき、犬歯ではなく奥歯が強くぶつかり合うようなら、かみ合わせが悪い可能性が高く、悪い歯ぎしりをしているかもしれません」
奥歯は、上下にかかる力には強いが、左右にかかる力には弱いため、奥歯をこすり合わせる「悪い歯ぎしり」を繰り返していると、歯が異様にすり減ったり、知覚過敏を起こしたりと、さまざまな口腔トラブルを招く。
「悪い歯ぎしりや食いしばりをしすぎると、噛む筋肉も酷使することになるため、それが片頭痛や肩こりにつながる人もいます」
本来、日中で上下の歯が触れ合っていてよいのは、食事の時間のみ。平均して、1日あたりわずか17.5分間だ。それ以外は、上下の歯の間には1〜2mmほどの隙間があるのが正常だ。
宮本さんによれば、起きている間に無意識に歯を触れ合わせてしまう「TCH(歯列接触癖)」は、睡眠中の歯ぎしりよりもやっかいだという。
「睡眠中の歯ぎしりは、力の制御ができていないため、50〜100kgもの圧力がかかっているといわれています。その分筋肉が疲れるので、睡眠中に歯ぎしりをしている時間は平均して1.4分間です。
一方、TCHは無意識に軽い力で噛んでいるので、平均して1日157.2分間にもなる。その負担は、強く食いしばるような歯ぎしりの20倍以上です。
TCHが多い人は、顎関節症になるリスクが2倍になるという報告もあります」(宮本さん・以下同)
TCHが多いと、「歯を食いしばること」そのものがクセになってしまい、特にストレスを感じていなくても、歯を触れ合わせたり、強く食いしばるようになってしまう。睡眠中の歯ぎしりも起こりやすくなり、常に口やあご周りの筋トレをしているような状態になる。
すると、顔のゆがみ、ほおのだるさやえら張りなどが起こる。
そして、さらにかみ合わせが悪くなり、悪い歯ぎしりや食いしばりが習慣になってしまうのだ。
※女性セブン
脳神経外科の外来では、頭痛が原因で多くの患者さんが受診されます。たとえ軽い頭痛でも、しばらく続けば「脳に何か悪いものがあるのではないか?」といった不安が生じてしまいがちです。しかし安心してください。
脳に何か悪いものがあるために起こる頭痛(二次性頭痛)は、脳には何も悪いものはないけれど頭痛だけが起こる病気(一次性頭痛)よりはるかに少ないのです。二次性頭痛を起こす代表的な病気は、くも膜下出血と脳腫瘍ですが、これらの患者数は年3万人といわれています。一方、一次性頭痛の患者数は約4000万人にのぼるといわれており、圧倒的に多いことがわかります。
一次性頭痛のうち最も多い病気が緊張型頭痛で、2200万人(15歳以上の国民の22%)といわれています。次いで多いのが片頭痛で、840万人(同8・4%)です。今回はこの最も頻度の多い、ありふれた頭痛ともいえる緊張型頭痛について解説します。
緊張型頭痛の緊張とは筋肉の緊張を意味します。すなわち頭の周囲や首の筋肉が過剰に緊張することが原因で起こる頭痛を総称しています。実際首や後頭部、こめかみ部などを指で押さえてみると筋肉が部分的に硬くなり痛みを感じる部分が認められます。つまり、頭頚部の筋肉が肩こりのように「凝っている」状態なのです。どうしてこのように筋肉が緊張するのかははっきりとわかっていませんが、精神的ストレスや不安、頚椎の変形や姿勢の異常などが複合的に関連していると思われます。
痛みの特徴は、両側の頭部に締め付けるような、あるいは重りを乗せたような痛みです。痛みの程度は強いものではなく、頭が重いと表現する人もいます。吐き気や嘔吐もなく、痛みのために日常生活が制限されることもないのですが、だらだらと一日中、毎日痛みが続くこともあるのでとてもうっとうしく、不安にも感じます。
短期間に自然に治ることも多いのですが、悪循環に陥ると治りにくくなります。通常病院に受診するのはそんな場合です。治療としては普通の痛み止めがよく効きますが、慢性化した頭痛では頓服で1、2回痛み止めを飲んでも、薬が切れるとまた痛くなります。したがって数日間は薬を続けて飲み、痛みの悪循環を断ち切る必要があります。ただしあまり長期にわたって習慣的に飲み続けると、今度は薬が原因で頭痛が起こり、治りにくくなるので注意してください。
頭痛のなかで最も多い緊張型頭痛。ありふれた頭痛ですが正しい知識が必要です。
(済生会和歌山病院副院長 兼脳神経外科部長 小倉光博)
てんかんの発症率は100人に1人で、高齢になって初めて発症するケースも多い。一方、近年は新薬が次々と登場している。
脳は通常、神経細胞が電気信号を発して情報をやりとりしている。この電気信号が一斉かつ過剰に発生(電気的興奮)すると、その部位の機能が乱れ、けいれんや意識障害などからだの異常が起こる。これを繰り返すのがてんかんだ。
脳を路上に例えると、あちこちに会話中の人がいて、一部でデモが起こっているようなものだ。頭への外傷や感染症、脳血管障害、先天性の脳の病変などが主な原因だが、はっきりしていないケースも多い。
3歳以下の乳幼児と60代以上の高齢者に発症年齢のピークがある。高齢者に多いのは、脳血管障害など脳の病気が増えてくるためだ。福岡山王病院脳・神経機能センター神経内科の赤松直樹医師はこう言う。
「65歳以上の約1%、30万人あまりがてんかんを発症していると推測されます。これは患者全体の約3分の1に相当します。介護老人保健施設などでは発症する率が高い。高齢社会ですから、今後てんかんと診断される患者さんはさらに増えるでしょう」
高齢で発症するてんかんは、電気的興奮の場所が脳の一部に限定される「部分てんかん」のうち、側頭葉に焦点(発生源)がある「側頭葉てんかん」というタイプが多い。症状の特徴は「複雑部分発作」だ。
複雑部分発作とは、日常生活の中で意識が数秒から数分間、突然、消失してしまう症状だ。意識のない間も目を開けたまま、口をもぐもぐしたり顔を触ったり、時には歩きだすこともあり、これは「自動症」と呼ばれる。転落や台所でのやけど、運転中の事故などの危険もある。
「発作時の記憶は患者さんにはありません。もうろうとしている様子から認知症と間違えられることもあります。高齢で発症するてんかんは、発作を起こすエネルギーが他のてんかんに比べ弱いため、抗てんかん薬が効きやすい。発作が治まりさえすれば普段どおりの生活ができますので、おかしいと思ったら早めに受診してほしいですね」(赤松医師)
福岡県に住む田中健二さん(仮名・69歳)は2年前、自宅でけいれんを起こし、救急搬送先でてんかんと診断された。抗てんかん薬を飲み、けいれんは落ち着いたが、意識の混濁が続いているので入院となった。
その後、もうろうとした状態で病院内を歩き回り、押さえようとすると暴れる行為を繰り返したため強制退院となった。田中さんは困った家族に連れられて、赤松医師の元にやってきた。
「問診のほか脳波測定などをして、高齢発症の『側頭葉てんかん』と診断しました。前の病院では詳しい診断がついていなかったため、このタイプのてんかんに合う薬が処方されていませんでした。そこでラモトリギンを飲んでもらったところ、発作はぴたっと治まりました」(同)
田中さんは発症前の状態に戻り、認知機能の低下などもなく、元気に過ごしているという。
高齢発症の側頭葉てんかんに効果的なほかの新薬は、レベチラセタム(2010年発売)の錠剤が知られている。これら2剤は他の薬と一緒に飲んではいけないなどの相互作用が少なく、持病のある高齢者には使いやすい。
抗てんかん薬は、電気的興奮にかかわるさまざまな部位に作用して発作を抑える。新薬は作用する部位が既存の薬と違うことから、これまでの薬で効かなかった人にも効果が得られる可能性がある。16年5月に登場したペランパネルもその一つだ。
「臨床試験で投与した難治性部分てんかんの患者さんは、この薬を従来の薬と併用することで、連日起こっていた発作がほぼゼロになりました。さまざまな新薬の登場により、今後、薬で改善する患者さんが増えると考えています」(同)
■休日、何をしたらよいのかわからない……どうリフレッシュすべき?
産業医の仕事を通じてビジネスパーソンと話をしていると、よく出てくる質問があります。
「先生、気分転換が大切ということはわかるのですが、リフレッシュのためにどんなことをしたら良いですか? 私、無趣味でして……」
どうですか? みなさんの中にも当てはまる方がいるのではないでしょうか?
リフレッシュの必要がないくらいに仕事が大好きという人はともかく、ほとんどのビジネスパーソンにとってリフレッシュは重要です。しかし、リフレッシュほど何気なく無意識にやってしまうと効果が出ないものはありません。無趣味なビジネスパーソンでも気軽にできるリフレッシュ法を実践して、メリハリのある生活を送りましょう。
■ストレスを「良いもの」と考えることもリフレッシュの1つ
「ストレスは避けて、なるべくリフレッシュを心がけた方がよいですよね?」
世の中でストレスがこれだけ悪者扱いされると、ストレス解消の手段としてのリフレッシュが非常に良いものと考えられます。「リフレッシュする」ということは、一言でいうと「思考をリセットする」作業のことです。上手にリフレッシュできる人は仕事と遊びの切り替えがスマートで、できるビジネスパーソンの代表例とされています。しかし、趣味がない自分は上手にリフレッシュできないのではと考える人も多く、前述の質問になるわけです。
そもそも、なぜリフレッシュが必要なのかと言えば、「うまくいっていない時にリフレッシュすることで、ものごとがうまくいく」という前提があるからです。月曜から金曜まで、アタマの中で仕事のことばかり考えている人も多いでしょう。強いストレスを抱えると視野が狭くなり、ものごとの捉え方や考え方に偏りを生み出します。そうなると本来解決できる課題も解決できないと思い込むようになり、ますますストレスを感じるサイクルに入ってしまいます。
このような悪いサイクルを遮断するのが、リフレッシュの役割です。リフレッシュすることでアタマをリセットし、より広い視点からものごとを捉えられるようになることで、解決できないと思っていた問題が意外と簡単に解決されることがあるのです。
みなさんも、もうダメだと思ったまま週をまたいでしまった案件が、週明けになるとあっさり解決できた経験などが一度や二度はあるのではないでしょうか?
ストレスは、避けるとより感じやすくなるものです。ストレスを上手に受け入れながら、過剰な場合はリフレッシュするという手段でバランスよく回していくことが大切です。
■リフレッシュで大切なのは、「夢中になって」「意識する」こと
「リフレッシュって、やっぱり旅行したり、好きなアイドルのコンサートに行ったりですよね?」
では、無趣味な人は本当にリフレッシュできないのかというと決してそうではありません。休日に自宅で簡単にできるリフレッシュ法を知れば、月曜からの仕事もうまくいくはずです。それでは、どんなものがリフレッシュに相当するのでしょうか? また、無趣味なビジネスパーソンが一人でもできるようなリフレッシュ法はあるのでしょうか。
リフレッシュに関して、重要なキーワードは2つです。
ひとつ目のキーワードは、「夢中になること」です。人は夢中になると、今まで囚われるように考えていたことから別のことでアタマを満たし始めます。とにかく没頭して夢中になり、もともと囚われた対象から「時間的・距離的・思考的」にどれだけ離れられるかが重要となります。旅行は時間的、距離的に離れることができ、リフレッシュになりますし、コンサートに行くことも時間的、距離的、思考的に離れることができるため、とても有効なリフレッシュになります。
もうひとつの重要なキーワードは、「意識すること」です。効果的なリフレッシュ法を達成するためには、無意識に実践するのではなく、「意識して」リフレッシュ法を行うことが重要です。何となくやっている、気がついたらやっているでは、効果は半減です。「昨日まで仕事のことをいっぱい考えて、乗り越えてきたけど、あの問題が残っているな。来週からどうしよう……」と頭をよぎったならば、それをきっかけに「問題を解決するためにも、土日は○○をしてリフレッシュしよう」と切り替えを意識することが重要です。このように意識的にリフレッシュすることで、アタマも「リフレッシュした!」という状態になり、行ったことに対して満足感が高まります。
■ひとりでもできるオススメのリフレッシュ法は「掃除」と「片づけ」
それでは、無趣味なビジネスパーソンができる休日の簡単なリフレッシュ法をご紹介します。
リフレッシュ法というと、みんなで集まって話をしたり、スポーツをしたりというイベント的なものを想像しがちですが、身の回りの家事も非常に効果的です。
料理、掃除・片づけ、洗濯、買い物といった行動は、とてつもなく効果の高い身近なリフレッシュ法なのです。家事の中でも割と簡単にできるのが、「掃除・片づけ」。生活する場が片づく、汚かった場所がキレイになるというのは、気持ちの整理にも有効ですし、何より片づける・モノを捨てる・キレイにするという行為には、「捨てるか? 捨てないか?」という選択が含まれるため、集中する(夢中になる)ことができます。だからこそ、「掃除・片づけ」はリフレッシュにもってこいなのです。もちろんアタマを使うという意味では、料理も同じです。何から切って、何を炒めてという作業は、その動作に夢中になれるのでリフレッシュに最適です。
とは言うものの、部屋全体の掃除は面倒だという方もいるでしょう。めんどくさくて片づけなかったから今まで汚かったわけですから、それはそうですよね。そのような場合、ある区画(台所、トイレ、窓ガラス、化粧台など1つだけ)を自分で決めて、そこだけを徹底的に集中してキレイにすることで、リフレッシュにつながります。
家事のように自分一人で行うリフレッシュは、とても気軽にできる方法です。生活する環境に変化をつけることで、リフレッシュにつながるのです。まずは、小さな片づけから始めてみるとよいでしょう。
■リフレッシュの基本……「カラダとココロとクチに変化をつける」
自宅でできるその他のリフレッシュ法として効果的なものは、自分のカラダとココロとクチに変化をつける方法です。
●カラダに変化をつける方法
・自宅で筋トレ、ストレッチを行う(身体的な波を発生させる)
●ココロに変化をつける方法
・読書や映画、テレビを見て笑う、泣く(感情的な波を発生させる)
●クチに変化をつける方法
・家族や友人に電話をする、話しかける
カラダとココロに変化をもたらすものは家事同様一人でできるので、簡単に実践できます。しかし、ここで注意したいのは、前述したとおり「リフレッシュするぞ!」というマインドでこれらに臨んで欲しいのです。繰り返しになりますが、何となく惰性でやってしまうとリフレッシュ効果は半減します。筋トレやストレッチもテレビを見ながらではなく、意識を集中させ、アタマを使って実践することが大切です。
■究極のリフレッシュ法は、睡眠・食事・セックスの基本的欲求にあり
そして多くの人が意外に忘れがちかもしれませんが、究極のリフレッシュ法は、基本的欲求を満たすことであることは言うまでもありません。基本的欲求とは、睡眠欲、食欲、性欲の3つです。
なかでも睡眠は、極めて重要な位置づけです。イライラしていたが寝たらスッキリしたという経験は誰しもありますよね。睡眠の質を高め、睡眠時間をしっかりと取ることで、リフレッシュ効果は極めて高いものとなります。朝起きた時に、「しっかり寝たぞ!」という熟睡感を得られる時間が、最適な睡眠時間です。
食事もリフレッシュには最高です。食事をするという毎日のルーティンに少しだけ変化を加えてみると良いでしょう。例えば、焼きそばを作って食べる時に、焼きそばから出てくる湯気や香りに注目したり、一気に食べるのではなく麺一本だけ箸でつまんでみて唇に当ててみたり、舌の上で絡めてみたりしてください。何事も意識を向ける、集中して実践することが大切です。いつも以上に、様々な気づきが得られる食事になることで、リフレッシュ効果が高まるでしょう。
セックスは、交感神経の後に発生する副交感神経の波によって安らぎを得ることができます。また、行為の最中は意識を集中させているためリフレッシュにつながりますし、相手とのコミュニケーションも発生するため効果は増大します。
■休日のリフレッシュは、誰でも簡単にできるもの
今回は、これといった趣味のない人でも簡単にできるリフレッシュ法をご紹介しました。繰り返しますが、「夢中になること」と「意識すること」はリフレッシュの際に、とても重要なポイントです。家事、食事、読書などを行う際に、いつもと違う意識を向け、夢中になるだけで、いつもの行動がリフレッシュ法に変わるわけです。日常の中でも意外と多くのリフレッシュ法があるのだと気づかされると思います。「趣味がないから上手にリフレッシュができない……」などと思い込まず、ぜひ、今日からできることを実践してみてください。
■日本でもついに配信開始! 大人気の「ポケモンGO」とは
全世界で大フィーバーを起こしているスマートフォン用アプリ「ポケモンGO」。その配信が、ついに日本国内でも始まりました(2016年7月22日)。同7月に海外でリリースが始まって以来、全世界でダウンロードされており、アメリカではすでに6500万人もの利用者がいると言われています。
「ポケモンGO」とは位置情報を活用することで、現実世界でポケモンを捕まえ、交換やバトルができるというゲームです。公式サイトで「モニターの中だけで完結せず、プレイヤーは実際に家の外に出てポケモンを探したり、他のプレイヤーと出会ったりしながら楽しむことができ」ると説明されている通り、街に出ないと楽しむことができないアプリになっている点が、従来のゲームとの大きな違いです。
医師としても、このような遊び方をする「ポケモンGO」は、多くの現代人が抱えているさまざまな健康問題を解決してくれる可能性がある素晴らしいアプリだと思っています。まず、外に出て歩くということだけでも、運動量の増加に直結します。これだけでも、多くの人が抱えている運動不足解消に一役買ってくれるに違いありません。
■歩くことが促されるだけでも、健康効果は絶大!
私自身、診察中にいろいろな患者さんからお話を伺いますが、最近は食事には気をつけている人が増えてきたと感じる一方、運動不足については自覚しているものの改善されていない人が多いままだという印象をもっています。最近の携帯電話やスマホは歩数計が付いていることが多いので、たまに患者さんに見せてもらうのですが、デスクワーカーの人たちの場合、一日に2000歩から3000歩くらいしか動いていないことも少なくありません。
運動不足解消の第一歩は「歩く」こと。楽しみながら歩くことができるゲームなら、運動不足な現代人を家の外に連れ出し、自然と運動不足の解消に導いてくれるのではないでしょうか。
「ポケモンGO」で期待できる健康効果を5つお教えしましょう。
■「ポケモンGO」で期待できる5つの健康効果
●1.肥満予防になる
肥満はあらゆる病気の前兆となることはよく知られていることです。とくに血管の老化である「動脈硬化」とは密接な関わりがあり、内臓脂肪型肥満は脳梗塞や心筋梗塞のリスクとなり得ます。私たちは自然に肥満になってしまうわけではありません。ダイエット法は数ありますが、要は「取るカロリー」と「出すカロリー」のどちらが多いかで、肥満になるかどうかが決まるのです。ということは、とてもシンプルな方法ながら「ポケモンGO」を手にして街中を歩くことは出すカロリーを増やすことにつながり、肥満予防になることが期待できます。
●2.骨粗しょう症予防ができる
実は私たちが寝たきりになってしまう原因の一つに「骨折」があります。特に女性に多いのですが、年齢を重ねると私たちの骨は脆く弱くなる「骨粗しょう症」になりやすく、ちょっとしたケガでも骨折をしてしまうのです。意外と知らない方も多いのですが、骨粗しょう症の大きな原因の一つが運動不足。そして骨を丈夫にするためには「体重を骨にかけること」がポイント。ですから、日常生活に「ポケモンGO」を取り入れ、歩いて運動量を増やすことができれば、将来の骨粗しょう症を予防することにつながります。
●3.筋肉量がアップする
私たちが転倒して怪我をしてしまう多くの原因は、運動不足に伴う筋力低下です。現代社会はエスカレーターやエレベーター、公共交通機関などの発達により歩かなくても済む生活になっています。ですから、積極的に「歩く」ことをしないと筋力低下はどんどん進行してしまい、転倒しやすくなってしまうのです。筋力をアップさせると消費カロリーが増え、太りにくくなるというメリットもあります。また、歩くことによる筋力UPはヒップアップにもつながるので、デニムの似合うスタイルにもつながります。
●4.「やる気」が出る・うつ状態の改善につながる
毎日が忙しく、「なんだかもうやる気が起きない……」という人にも、とにかく歩くことをオススメしています。というのも、私たちの脳というのは体に刺激が入ることでスイッチが入り、初めて動き出すのです。このことを心理学用語では「作業興奮」といいます。例えばおっくうに感じていた部屋の片づけをしぶしぶ始めてみたら、だんだんと止まらなくなって徹底的にやってしまった経験はありませんか? これが作業興奮というものなのです。つまり、やる気というものはじっとしていて突然出現することはまずありません。具体的に体を動かして行動を起こすことで、初めてやる気が湧くものなのです。
ですから、「ポケモンGO」を起動して歩き出すことで、自然と「やる気」に満ち溢れた生活につながると期待できます。実は、抗うつ薬よりも適度な運動をした方がうつ病が改善したという研究結果もあります(参照:「PubMed(海外サイト)」)。今回のゲームの流行によっても、実際に海外のユーザーから抑うつが改善したという報告が多数挙げられているようです。
●5.睡眠の質が上がる
最近は、「よく眠れない」といって病院にいらっしゃる方も多いです。実は不眠の大きな原因の一つとして問題となっているのも「運動不足」。多くの人が日中に体が疲れるくらいの運動量を確保できていないことが多く、そのために寝付きが悪くなったり、途中で起きてしまったり……という不眠に悩まされています。ですから、「ポケモンGO」で遊ぶことで疲れを感じるくらい歩くようになれば、運動不足による不眠は必ず改善していくはずです。
■さらに健康的に「ポケモンGO」を楽しむための4つのコツ
●1.歩く姿勢をちょっと意識する
スマホを見ながら歩くと、うつむき加減の猫背で歩くことになってしまうのでやめましょう。周囲を見ない「ながら歩き」になる時点でそもそも危険です。
まずはマリオネット人形のように頭を糸で引っ張られているような意識で立ってみましょう。そしてかかとから足の親指に体重が移動することを意識しながら歩くといいでしょう。そして、腕の振りは大きめに。もし、長時間歩いて、膝や足首や股関節が痛む場合は靴の中のインソールを変えると改善することがありますが、痛みが続くときは整形外科などを受診してください。歩き姿勢を意識するだけで、余計な負担をかけずに運動量をあげることができます。
●2.脈拍と速度を意識する
慢性的な運動不足なら、お散歩感覚でゆっくりウォーキングを楽しむだけでも効果があります。しかし、せっかくですからさらに運動不足を改善するような歩き方をするのもよいでしょう。ポイントは「脈拍数」です。どのくらいの脈拍数を目指すかというと、歩き慣れていない時は、年齢を元に算出された最大心拍数のだいたい60%くらいのペースで歩いてください。
計算式は「最大心拍数(回/分)=220-年齢」です。
40歳の人だと、180×0.6=108回/分、60歳の人だと160×0.6=96回/分くらいの脈拍になるようなスピードで歩きましょう。歩くことに慣れてきたら、徐々に脈拍数を上げていき、最大心拍数の80%くらいのスピードでも歩けることを目指しましょう。
●3.外に出る前と帰ってからは軽くストレッチをする
今までほとんど運動していない人がいきなり張り切って歩き出すと、怪我につながることがあります。軽くでもよいのでストレッチを行い、筋肉や腱を伸ばして関節の動く範囲を広げましょう。とくに股関節や膝関節や足首のストレッチが有効です。運動が終わった後にもストレッチをすることで、緊張した筋肉をほぐれ、翌日に疲れが残りにくくなります。
●4.片手にスマホでも、心にマナーを忘れずに!
「ポケモンGO」が世界中で大ブームになっている一方で、さまざまなトラブルも報告されています。大人だけではなく子どもも夢中になるゲームですので、まずは私たち大人が率先してマナーを守り、子どもたちの見本となるような行動をしましょう。
内閣サイバーセキュリティセンターのツイッターが、「ポケモンGO」を遊ぶ時の注意点(https://twitter.com/nisc_forecast/status/755720522546106369)をまとめてくれていますので参考にしてください。
また、歩きスマホをしなくても十分に楽しめる「Pokémon GO Plus」というデバイスが発売されるようですので、これにも注目しています。公式サイトによると、「Bluetooth Low Energyを用いてスマートフォンと連携し、近くにポケモンがいる等のゲーム情報を、ランプと振動で知らせます。また、ボタンを押すことでポケモンを捕まえる、等の基本操作を行うことも出来ます」とのことで、これならスマホ画面を見ずに、楽しく歩くことにもっと集中できそうです。
「ポケモンGO」は従来のゲームとは異なり、健康に対する素晴らしい効果を秘めた優良アプリだと思っています。健康効果を考えると、子ども向けというよりも、実は大人に楽しんでもらいたくなるアプリとも言えます。普段ゲームをされない方も、子供さんやお孫さんと一緒に楽しんでみてもよいかもしれません。
「正しく歩く」ことは健康への第一歩。世界が夢中になっている「ポケモンGO」と街へ出て、健康的な生活を手に入れましょう!
中高年は夏のトイレで強くいきんではいけない。屋外では大量の汗をかいて脱水状態になって便が硬くなるうえ、冷房の効いた室内では体が冷えて血行が悪くなり、食欲低下などで腸の働きが低下して便秘になりやすい。そこで無理して排便しようといきむと、脳や心臓などの血管に急な血圧がかかり、重大病を招きかねない。
中原和幸さん(52歳=仮名)が亡くなったのは2年前の7月末。技術開発型の企業の役員だった中原さんは、会社のボウリング大会後の飲み会に参加。トイレで倒れているのを発見され、病院に運ばれたものの、助からなかった。脳梗塞だった。
「当日は花火大会の影響で病院搬送に時間がかかったのが悔やまれます。ビール片手に陽気に振る舞っていた中原さんは、血圧が高く、普段から利尿剤も飲んでおられました。汗をたくさんかく夏は便秘気味で困る、とこぼしていました」(会社関係者)
便秘とは「3日以上排便がない状態か毎日排便があっても残便感がある状態」をいう。「平成25年度国民生活基礎調査」によると、男性は50代から、女性は20代から急に便秘が増える。別の調査では60代半ばの半数は下剤を常用しているという。
便秘と脳梗塞とは一見無関係に見えるが、そうではない。鹿児島赤十字病院の研究報告では、便秘の男性は便秘のない男性よりも心血管イベントのリスクが高いことが報告されている。
大阪大学医学部公衆衛生学教室の研究では、排便回数が「2、3日に1度がやっと」という男性は、「毎日排便する」男性よりも心血管死や脳卒中死リスクが高かった。しかも、下剤を使っている人は脳血管が詰まる虚血性脳卒中との関連が強く、使っていない人との比較では女性で1.45倍、男性で1.37倍も高かった。
■水分を多めに摂って便秘対策
とくに夏は脳梗塞に注意が必要だ。寒さで血管がこわばる冬に多いイメージがあるが、国立循環器病研究センターの調査では、1年間で夏が最も多いという。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授が言う。
「中高年は高血圧などの生活習慣病やこれによる動脈硬化症に加え、精神的なストレスや運動不足など、心血管イベントのリスクをいくつも持っています。こういう人が便秘になって必死で排便しようといきめば、血圧が上昇し、血管や心臓に負担をかけます。その結果、脳梗塞や脳出血といった脳卒中や心筋梗塞を起こすのです。とくに夏場は脱水で血液が詰まりやすいうえ、エアコンによる冷えで血管が縮まって血流が滞り血栓ができやすい。脳梗塞には気をつけなければなりません」
実際、トイレで軽くいきむだけで最大血圧が60~70㎜Hg以上、強くいきむと100㎜Hgもアップするといわれている。しかも、便秘で腸内細菌のバランスが壊れ、TMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)が増えると、動脈硬化が進むことがわかっている。
「TMAOは、細胞膜の主成分であるレシチンと呼ばれるリン脂質のひとつが、腸内細菌叢によって代謝されてできたものです。TMAOの血中濃度が高いと、悪玉LDLコレステロールが動脈壁マクロファージに取り込まれ動脈硬化巣ができます。すなわち、心血管イベントのリスクが高くなったということです」(東丸教授)
では、便秘による心疾患イベントを避けるにはどうすればいいのか? サラリーマンの病気に詳しい弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。
「朝起きたら水を1杯飲むほか、日中も水分を多めに摂取しましょう。睡眠をしっかりとり、体をひねるストレッチで腸を動かすことも大切です。食物繊維のほか、ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品を積極的に取り、腸内環境を整える必要があります。また、つま先立ちして肛門括約筋を刺激するのも便秘解消の役に立ちます」
水素が発生するというパック型入浴剤を使用し、やけどを負ったなどとするケースが計9件あったことが21日、国民生活センターの調べで分かった。入浴剤が水に反応して高温になったことが原因とみられ、同センターは使用する際、入浴剤に直接、触れないよう注意を呼びかけている。
この入浴剤はケースに入れて使用するもので、水素が血行改善につながるなどとして、インターネットや都内のドラッグストアなどで販売されている。
同センターによると、平成23~28年に、同種の入浴剤に関する報告が9件あり、うちやけどが3件。今年1月には当時7歳の女児が入浴剤を浴槽の中に入れた直後に拾い上げ、左手にやけどを負ったとする報告が1件寄せられた。
同センターが同種の入浴剤6製品で実験したところ、いずれも湯につけた直後から入浴剤の表面温度が90度程度まで上昇した。
また、入浴剤を湯に入れ、すぐに取り出した場合には、入浴剤から蒸気が発生。ケースの周りでも最高80度程度まで上昇し、入浴剤に直接触れなくてもやけどを負う恐れがあることも判明した。
いずれの商品も入浴剤本体に注意表示などがないことから、同センターは製造販売事業者に適切な表示や、商品改善を行うよう要望。消費者に対しては、入浴剤に直接触れないようにすることや、湯に入れた後はしばらくの間、取り出さないよう呼びかけている。
■詰め替えボトルは衛生的? 大事なのは洗い方よりも乾燥過程
近年、エコや経済的な観点から、最初に買ったボトルを再利用して、中身を入れ替えるタイプの商品が増えています。お風呂でのボディソープ、シャンプー、リンスはもちろん、化粧水やクリーム、キッチンの食器用洗剤、洗濯時の衣類用洗剤。醤油を小分けして使うための醤油注ぎや、飲み物を分けて持ち歩く水筒なども、中身を詰め替えて使い続ける点では似ています。
中身が口に入れるものかどうかで、取り扱い時の感覚はだいぶ変わってくるようですが、ボディソープなどを含む洗剤の場合は、仮に中に少し有害な雑菌などが混ざっていても、泡をすすぎ流す過程で薄まるため、医師としては正直あまり心配はいらないのではないかと思います。
醤油注ぎや水筒は、洗浄後にしっかり乾燥させる人の方が多いでしょう。実は細菌の繁殖を防ぐという点では、この「乾燥」という過程が重要。細菌が増殖するには、水分、養分、温度が必要なので、水分をしっかり乾燥させていれば、細菌の増殖は防げるのです。
■乾燥させなければ大差なし? 洗浄回数による細菌数の違い
しかし毎日使う製品の場合、中の水分を軽くふき取るとしても完全に乾燥させるのは難しいものです。多くの人がしていそうな「洗浄はするが乾燥は完璧にしない」状態は危険なのか、考えてみましょう。容器をすすいでも、いったん水を出しても少しの水分は内側に残ります。同じく雑菌も付着している可能性がありますが、何度かすすぐとそれらの数はかなり減っていきます。
例えば、500ml入りの容器の水をざっとすすいだとき、雑菌が含まれているかもしれない水分が中に5ml残ると仮定しましょう。ここにさらに清潔な水を入れて、捨てる作業を繰り返したとします。同じ動作を3回繰り返すと、5/500×5/500×5/500=1/1000000となり、百万分の1になります。もしも液体を入れていた容器中に微生物が増えていた場合、残っていた微生物の数も百万分の1になります。
しかし微生物は最初の数から増えていく特徴もあります。上記の手順で微量の微生物と水分が容器内に残っていて、2時間で2倍に増えていくと仮定しましょう。2時間後に2倍、4時間後に4倍、6時間後に8倍……と考えると、20時間後には約1000倍、40時間後には1024×1024で約1000000倍となります。
つまり詰め替えから2日間で1000000倍になるということです。2時間という仮定が短いと考えて、細菌の増えるスピードを4時間で2倍として考えても、8日後には結局1000000倍になってしまう計算です。容器を3回すすいでごく微量の微生物が残っていたとしても、一定時間すれば細菌はどうしても増殖してしまうのです。
ただ、詰め替え容器の細菌が原因での事故のニュースなどを聞かないことからもわかる通り、実際は洗浄しても洗浄しなくても詰め替えてから一定時間すれば大差なく、実際の人体への重大な影響はないと考えられます。
■しっかり衛生的に保ちたい人は2つ以上の容器の準備を!
それでもやはり気になる人は、上記のすすぎ作業に加えて、冒頭で書いたような乾燥の手順を加えましょう。菌数はさらに減らすことができます。毎日使うものは完全乾燥を待つのは不便なので、容器を2つ用意して、洗浄後に完全に乾燥させる時間を作れるようにすることが大切です。 念には念を入れたい方は、窓際や屋外で太陽光線に当ててしっかり乾燥させましょう。
■人体への影響は? 詰め替えボトルに雑菌が混入した場合
上記の菌の数以上に気になるのは、菌の種類かもしれません。毒性の強い菌の場合、数が少なくても感染したら一大事です。しかし実際のところ、家庭内の詰め替えボトルにこれらが混入する可能性はほとんどないと考えられます。例えば、キッチン、洗面台、浴室にもともと住みついている微生物は、病原性があまり強くありません。「弱毒菌」と呼ばれる菌か、私たちの皮膚にいる「常在菌」です。これらの菌は病原性が弱いのはもちろん、侵襲力も強くありません。
詰め替え時に容器内に混入したからといっても、日常的に身のまわりで共存できている菌に過ぎません。自宅の環境にいる菌の大部分は自分が持ち込んだ菌なので、恐ろしい病原性はないと考えてよいことになります。
ただし例外があります。それは指に傷がある時です。血液によって皮膚の常在菌が変化してしまうことがあります。なかでも黄色ブドウ球菌は血液が大好きな菌です。シャンプー・リンス中では、栄養状態が悪くて増殖しにくいとされていますが、最近の製品は、アミノ酸やいろいろな天然物の抽出成分が添加してあって栄養豊富です。
もしも混入すると増殖する可能性は十分あります。指に傷がある時は、念のために詰め替え作業を避けた方がよいでしょう。黄色ブドウ球菌は花粉症の人では鼻水に混入している可能性が高い菌です。花粉症の人は花粉症の時期には、詰め替え作業を避けた方がよいでしょう。
老化現象が加齢によるものか、薬の副作用によるものかを見極めるのは難しいが、厚労省の調査では、75歳以上で7種類以上の薬を飲んでいる人の割合は24.8%(2018年)。4人に1人がそれだけの多剤併用になっている。
処方された薬の効能と副作用をよく知らずに飲み続けていると、知らぬ間に体に不調をきたしてしまうリスクが考えられるわけだ。
『週刊ポスト』は、医薬品類の承認審査や安全対策を担うPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている医薬品の添付文書から、副作用に「緑内障」「視力低下」の記載がある薬をリストアップし、専門家の協力のもと、中高年が服用する機会の多い分類の薬について表にまとめた。
抗コリン薬の副作用には「緑内障」の記載がある。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師はいう。
「抗コリン薬とは、自律神経の副交感神経の働きを抑える薬です。たとえば排尿する時には自律神経が働くので、それを抑制するために頻尿治療によく使われます。その結果、交感神経が優位になるため、それが目にも影響して瞳孔が開きやすくなる。瞳孔が開いたままになると眼圧が高くなって、緑内障につながる可能性があります」
副作用に「緑内障」の記載がある薬には、抗うつ剤や抗精神病薬もある。銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏はいう。
「同様に自律神経に作用する抗うつ剤も、目に作用して眼圧が高くなることがあります。眼圧は眼球内の液体が出たり入ったりすることで一定に保たれていますが、抗うつ剤によって瞳孔が開いたままになるとその逃げ道が塞がって眼圧が高くなり、結果として緑内障を引き起こす可能性があります。
体に異変を感じたら、自分でPMDAのホームページから添付文書を閲覧することができます。医薬品によって『緑内障の悪化』『急性緑内障』などと表記に多少の違いがあるかもしれませんが、いずれも同じような副作用を指していると考えていいでしょう」
以前よりも明らかに「目がかすむ」などの自覚症状があれば、今飲んでいる薬の副作用を調べてみてもいいだろう。
薬を服用していて体調に異変を感じたら具体的にはどうすればいいのか。
「医師によっては細かい副作用を知らずに処方するケースもあります。また、処方された薬の用量が少なくても飲み続けていると、歳を重ねるにつれて薬の成分が排出されにくくなり、体に溜まって副作用につながることがあります。なので、“ずっと処方されてきたから大丈夫”と過信することにも注意が必要です。
とはいえ、自分で調べることも重要ですが、自己判断で薬を止めるのは危険。まずはかかりつけの医師、そして薬剤師にお薬手帳を見せるなどして相談することが大切です。特に薬剤師は複数の病院でたくさんの薬を処方されていたとしても、お薬手帳を見て総合的に飲み合わせなども判断してくれます。同時に何種類も薬を飲んでいるなら、一度相談してみることを検討したい」(一石氏)
副作用が疑われたら、まずは専門家の助けを得ることが肝要だ。
歳を重ねるごとに薬の数は増えがちだが、注意したいのが様々な「副作用リスク」だ。当然、どの薬にも効能とともに副作用はあるが、飲み続けることで体を「老化」させるリスクがある薬もある。
『週刊ポスト』は、医薬品類の承認審査や安全対策を担うPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている医薬品の添付文書から、副作用に「認知機能障害」の記載がある薬をリストアップ。専門家の協力のもと、中高年が服用する機会の多い分類の薬について表にまとめた。
「物忘れが増えた」「ボンヤリする」という認知機能の低下が、薬の副作用によって生じることがある。副作用欄には「認知機能障害」といった記載がある。銀座薬局代表薬剤師の長澤育弘氏はいう。
「失禁などを抑える頻尿治療薬の『抗コリン薬』は脳内の神経伝達に影響を及ぼし、それが認知機能低下につながる可能性は否定できません。ただし、薬の副作用と認知機能低下の因果関係を証明するのは難しい。
認知症と認知機能障害は異なり、認知症は常に認知機能が低下していて進行していく症状。対して認知機能障害は、統合失調症などのように精神疾患の一つと考えられています」
認知機能障害の原因が薬の副作用にある場合、「薬剤性認知機能障害」といい、疑いがあるなら医者や薬剤師に相談することが必要だ。
薬を服用していて体調に異変を感じたら具体的にはどうすればいいのか。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師はいう。
「医師によっては細かい副作用を知らずに処方するケースもあります。また、処方された薬の用量が少なくても飲み続けていると、歳を重ねるにつれて薬の成分が排出されにくくなり、体に溜まって副作用につながることがあります。なので、“ずっと処方されてきたから大丈夫”と過信することにも注意が必要です。
とはいえ、自分で調べることも重要ですが、自己判断で薬を止めるのは危険。まずはかかりつけの医師、そして薬剤師にお薬手帳を見せるなどして相談することが大切です。
特に薬剤師は複数の病院でたくさんの薬を処方されていたとしても、お薬手帳を見て総合的に飲み合わせなども判断してくれます。同時に何種類も薬を飲んでいるなら、一度相談してみることを検討したい」
副作用が疑われたら、まずは専門家の助けを得ることが肝要だ。
食品が肌に与える影響についてはさまざまな見解がある。チョコレートを食べ過ぎるとニキビが増えるという人がいれば、いや、それはまったく関係ないと言う人もいる。
自然療法医でスキンケア専門家のニグマ・タリブは、クリニックに患者さんが入ってくるなり、顔の老化の具合を見ただけでその人がどんな食生活を送っているかがわかるという。
つまり、その人の肌状態は、消化器官の健康状態と関わっているという考え方で、アレルギーのある食品や飲料を摂取すると、胃腸が受けたストレスが顔のある特定部分に反応するというもの。下
のイラストを見て習慣を改めようと思うかどうかは、あなたの判断にお任せするとして、コーヒーを飲むと目の下にクマができる、ワインを飲むと頬に赤みが出るなどと思い当たる節があったら、彼女の理論は興味深いかも。
シュガーフェイス(糖分顔)
特徴
額のシワや小ジワ、目の下のたるみ、やつれた印象、顔中に広がる痛そうな膿疱性のニキビ、薄くなってきた皮膚、肌の色の灰色っぽく、あるいは青白っぽくなる、薄くなってきた眉。
原因
胃腸内のバクテリアを破壊し、吹き出物を誘発する。フェイス・マッピング(顔の特定部分と内蔵の特定部分との関連を示す古代の考え方)によると、消化器官の管は額と結びついているため、額に乾燥した部分やニキビができやすい。インスリンが急上昇すると、眉の成長を部分的にコントロールしている副腎にプレッシャーを与えるため、眉が薄くなったり、まばらになったりする。
ワイン顔
特徴
目と目の間の目立つシワや赤み、目のたるみ、毛穴の広がり、肌が乾燥し頬のまわりに小ジワがある、頬や鼻の赤み、深いほうれい線。
原因
アルコールは肌を乾燥させ、小ジワやシワを悪化させる。フェイス・マッピングによると、眉間は肝臓の健康と関わっており、シワが多くできやすい。アルコールは毛細血管を拡張し、頬の赤みを引き起こす。
グルテン顔
特徴
むくんで赤みのある頬、顎のまわりの色素沈着やシミ。
原因
グルテンによる炎症反応が増えることにより、皮膚の膨張や紅潮が引き起こされる。グルテンに反応すると、免疫機能が反応して生殖バランスに影響を与え、特にアゴのあたりにホルモンの作用による吹き出物ができる。
乳製品顔
特徴
まぶたの腫れ、目の下のクマやむくみ、アゴの白い吹き出物や腫れ物。
原因
よくある乳糖アレルギーが免疫機能を破壊し、さらに体内の炎症反応を引き起こす。足首を捻挫した時に腫れるように、目元が腫れたり、むくみがより目立つようになる。ミルクに含まれるエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが皮膚細胞の増殖過多を引き起こし、それが毛穴を詰まらせて皮脂を固め、吹き出物の原因となる。
......じゃ、ランチはブロッコリーにでもする?
時差ぼけ、夜勤、不眠症などの理由で毎日寝る時間も起きる時間もバラバラ。そんなとき、なんとなく気分が悪かったり何かに集中できないと感じたりしたことはないだろうか?
私たちの体は、「概日(がいじつ)リズム」と呼ばれる睡眠と覚醒のサイクルを繰り返す体内リズム、つまり体内時計を毎日24時間周期で刻んでおり(※1)、不規則な睡眠はこのリズムを狂わせる。そんなとき、ブルーライトや昼寝の時間を注意するなどの対策をすることで、一度狂ってしまった体内時計をリセットし調整することができるのだ。
□体内時計をリセットするための5つの方法
Google検索で「体内時計」と入力すると、予測変換でまず「体内時計 英語」と出てくる。そしてその次には「体内時計 リセット」と表示される。かなりの人が体内時計をリセットする方法について興味を持ち検索していることがうかがえる。
今日は起床・睡眠時間がバラバラで体内のリズム、つまり体内時計が乱れがちという方に、米モンテフィオーレ・メディカルセンターのMichael Thorpy医師が推奨する5つの方法について紹介したい(※2)。
1. ブルーライトを制限する
スマートフォンやパソコンなどの画面から発せられるブルーライトは、概日リズムに従って自然に起こる眠気を妨げる。最低でも寝る1時間前にはこうした電気機器の使用を控えるか、画面の光度を下げるべきだ。
2. 長時間の昼寝を控える
お昼過ぎに昼寝は体内時計を維持するという観点ではオススメできない。ひどい眠気のせいで何もできない場合には、短時間の仮眠はむしろ仕事の効率の改善などにも繋がるのであながち悪いとも言えない。ただし昼寝時間は20分以内に。短時間眠ることで、「睡眠慣性」と呼ばれるボーっとした状態を防ぐことができる。この睡眠惰性は、昼間に深い睡眠をとることによって発生する(※3)。
3. 眠れなかったら無理に寝ようとしない
ベッドに入ったもののなかなか眠れない……。20分たってもそんな状態であれば無理に寝ることを諦め、自然に眠くなるまで何か別のことをする。眠れないのにベッドでがんばり続けると、「ベッド=眠れない場所」と脳が覚えてしまうのだという。
4. 毎日同じ時間に起きる努力をする
寝る時間は日によってまちまちでも、朝起きる時間はコントロールできる人が多いのではないだろうか。どれだけ眠くてもこの時間には起きる。これさえ決めておけば、体が自然と毎日の睡眠リズムをつくってくれる。
5. 睡眠に適した環境を整える
ベッドルームの騒音をシャットアウトし、部屋の温度を睡眠に最適な19~20度に保つ。寝る前にはカフェインを控え、昼間なら適度に激しい運動を、寝る前ならヨガなどリラックスできる運動がよりよい睡眠に適している。
今回紹介した体内時計リセット法を試しても、今まで体が従ってきたリズムはなかなか変えられないかもしれない。最初はつらいかもしれないが、これらのことに気を付けていれば、次第に早寝早起きの健康的な生活習慣に変化していくことだろう。
最近、嬉(うれ)しい連絡がありました。以前にこのコラムでも紹介したことがある患者さんの血糖コントロールが改善傾向にあるそうなのです。ご本人は、「あたしゃね、そんなに食事の内容を気にしてないんだけどねェ」と、いたってマイペースなのですが……。
もしかすると、これまでの私の栄養指導の半分は忘れてしまっているかもしれません。それでもご本人の大好物である「コロッケサンド」を控え、食事の初めに野菜や海草を食べるなど、アドバイスのいくつかを続けてくださっているようです。
先日、その患者さんから果物をお裾分けしていただきました。「親戚からたくさんもらって、食べきれないから持っていってちょうだい」とのこと。確かに、柑橘(かんきつ)類やりんごが段ボール箱いっぱいに詰まっていて、一人では食べ切るのは大変です。
ご家族の命日に合わせて、仏壇にお供えするためのものだそうです。私もこの患者さんの居間でお仏壇に手を合わせてから、ありがたく頂戴しました。
「ビタミン類がたっぷりで体にいいから」と、毎日たくさんの果物を食べている方がまれにいらっしゃいます。糖尿病や中性脂肪が高めの方でも、甘いお菓子やおせんべいなどは気が引けるけれど、「果物ならいくら食べても大丈夫!」と、安心して召し上がっている場合があります。
果物にはその名の通り「果糖」という種類の糖がたくさん含まれています。この果糖は、小腸で吸収されると肝臓へ運ばれ、エネルギーを作るのに使われるのですが、余ってしまった分は、「グリコーゲン」という物質に変えられて貯蔵されます。
しかし、肝臓に貯蔵できる量には限界があるので、それを超えると、今度はブドウ糖に変えられて血液の中に放出されるか、「中性脂肪」に変換されてしまいます(注1)。
つまり、必要なエネルギー以上の果物を食べてしまったら、巡り巡って「血液中の糖や油」になってしまうということです。
ごはんやパン、麺などの主食やおやつ類はあまり食べていないのに血糖コントロールが悪い方に、「もしかして、果物がお好きですか?」と尋ねると、「どうしてわかるの?」と驚かれることがあるのですが、その仕組みを説明すると納得されます。
私たちの体は、血糖値が高くなったら、ホルモンを分泌して一定の基準値にまで戻してくれる働きがあります。このため、血糖値の急上昇があまりに頻繁に繰り返されると、ホルモンを出している膵臓(すいぞう)ががんばり過ぎて疲弊していきます。
やがて機能が衰え、十分なホルモンを出せなくなった状態が糖尿病です。したがって、普段から血糖値は急激に上げ過ぎないようにすることが大切です。
果糖の影響で血糖値を急上昇させやすい果物を食べる時には、「量を決めること」がポイントです。例えば、みかんなら2個、りんごや梨は1/2個、いちごやぶどう、さくらんぼは10粒程度、グレープフルーツなどの大きめの柑橘類は1/2個などです。体格や年齢、活動量によっても変わりますが、だいたいの目安は「片手に1杯」といったところでしょうか。
「でも、果物が大好きだから、もっと食べたい!」
「うちは果物農家だから、そんなもんじゃ済まないよ!」
そう言われる方もいらっしゃるでしょう。だったら一日の食事全体を見渡して、「今日は果物をたくさん食べちゃったから、芋類のおかずはやめておこう」とか、「麺類を半玉にしておこう」など、炭水化物の摂取量を調整して、摂取する糖質量を減らせばいいのです。
血糖値の急上昇を抑えるためには、海藻、こんにゃく、きのこをメインにした料理を1品加えるのもおすすめです。
我が家では、最近「めかぶ」が流行(はや)っております。春から初夏にかけて、東北のスーパーには緑鮮やかな「三陸産めかぶ」が出回ります。うちの娘たちが、このネバネバ&コリコリ食感を気に入り、食事の初めに前菜替わりに食べています。
ところで、夕飯が近づくと「お腹すいた! なんかちょうだい! 味見させて!」と、子どもがキッチンに来ることがあると思います。そんなとき、飴(あめ)やチョコレートを渡してしまったりしていませんか? その一粒の飴が血糖値を上げてしまい、肝心の食事をしっかり食べられなくしてしまうことがあります。
これは子どもに限ったことではありませんが、食事の直前に「ちょっと小腹がすいたな」と感じたら、血糖値が急上昇しにくい海藻かこんにゃくでしのぐのがお勧めです。
好きなものはつい食べ過ぎてしまうのは私自身も常に感じていることですが、訪問先でこんな事例がありました。
ある70代男性のHさん。かなりの偏食のため「栄養失調状態」になっていました。徐々に体力も落ち、いよいよ自分で立ち上がることができなくなっていました。そこで私が食生活について聞いてみると、「野菜ばかり食べ、肉や魚は残してしまう」とのこと。どうして野菜ばかりを食べるのかを聞いてみると、「とにかく野菜が好き」だとおっしゃいます。
そこで質問を変えました。「以前、どんなお仕事をされていたのですか?」と聞くと、「八百屋だよ。元気だった頃はね、毎日市場に行って、競りで野菜を仕入れていたよ」と。
「なるほどなぁ」と納得です。
来る日も来る日も真剣に野菜と向き合ってきたHさんの人生を垣間見たような気がしました。それなら「野菜より肉を食べましょうね」などとはアドバイスせず、Hさんが愛してやまない野菜をたっぷりと食べられるおかずやスープを提案しました。
肉団子の野菜あんかけや、野菜たっぷりの豚汁などで、たんぱく質源になる食材をさりげなく献立に加えていただくよう提案したところ、みるみる栄養状態が良くなっていくのがわかりました。貧血も改善し、自力で家の中を移動できるまでに体力が回復したのです。
「野菜が好き」「果物が好き」など、個人の嗜好(しこう)は食生活を豊かにしてくれます。日々の工夫で好きなものを食べ続けられるような「ゆるっと食事療法」を提案していきたいと改めて思った出来事でした。
注1 「はじめてのカーボカウント2版」(中外医学社 坂根直樹・佐野喜子編著)
◇塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ) 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士
1978年、大阪市生まれ。
2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。
普段よりも多くの勉強時間がとれる夏休み。でも、長い時間机に向かっていると、どうしても集中力が途切れがちに…。気分転換や勉強後のごほうびとして“おやつ”を活用する人も多いでしょう。
とはいえ、暑いからといってかき氷など冷たいものばかり食べていると、調子を崩してしまうことも。そこで今回の記事では、体によくて勉強がはかどる“おやつ”をご紹介します。
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レモンやオレンジの香りで、気持ちをリフレッシュ!
一般的に柑橘系の香りには気分転換やリフレッシュの効果があるとされています。そこでレモンやオレンジなどを、おやつにとり入れてみるのもよい方法です。例えば冷たい飲み物であれば、レモネードがおすすめ。
ミネラルウォーター(もしくは炭酸水)にレモン汁、はちみつ、砂糖を混ぜ合わせてつくることができます。レモンスライスを浮かべると、より爽やかになります。
また、「アイスティーにレモンの輪切りを浮かべる」「ヨーグルトやアイスクリームにオレンジをひと切れ添える」など、“ちょい足し技”にもチャレンジしてみましょう。
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梅干しに含まれるクエン酸は、食欲アップ&疲労回復に効果あり!
夏バテ解消にもおやつを活用できます。梅干しに含まれているクエン酸は、胃腸の働きを活発にするため、食欲増進につながります。また、クエン酸は疲労回復を助ける効果があります。
コンビニには、いろいろな種類の干し梅のお菓子が売っているので、好みのものを探してみましょう。クエン酸はレモンやグレープフルーツ、パイナップル、キウイフルーツなどにも多く含まれています。「梅干しがニガテ…」という人は、これらのフルーツを加工したお菓子を探してみては?
また、勉強で目が疲れてしまうという人は、眼精疲労に効果があるブルーベリーを試してみましょう。生のブルーベリーを買ってくるのもよいですが、ブルーベリージャムをクッキーやスコーンに添えたり、ヨーグルトに混ぜたりしたほうがお手軽です。
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ショウガのお菓子でリラックス。ぐっすり眠って疲れをとろう!
暑い夏は、寝苦しく睡眠不足に陥りがち。そこで、快眠のためにショウガを使ったおやつを試してみましょう。ショウガに含まれるショウガオールという成分は、中枢神経の興奮を沈めるので、リラックス効果があります。ショウガの砂糖漬けやショウガ飴は市販のものがありますし、ショウガ入りのクッキーを手づくりしてもよいでしょう。
また、ショウガは血流をよくして、体をじわじわと温める効果があります。クーラーが効きすぎて体が冷えてしまい調子が悪くなりがちな人は、ショウガをとることで予防にもつながります。
外出中は特にトイレに行きづらい場合も多く、つい我慢しがちですが、我慢することで体に与える影響は甚大なものがあるそうです。膀胱炎だけじゃない、おしっこを我慢すると危険な理由をご紹介します。
お酒を飲むとトイレの回数が増えるという人も多いと思いますが、お酒の席で盛り上がっているのに20分おきぐらいにトイレに行きたくて困っちゃう場合もありますよね。
それは、脳が「おしっこをすると気持ちがいいから、どんどん出せ!」と指令を出すことが原因で起こるということですが、もし、脳の指令を無視して我慢してしまったらどうなるのでしょうか?
ある医師の話によると、一晩中たくさんお酒を飲み、排泄を我慢し続けたある患者さんは、その後正常に排泄をすることができなくなり、一日に4回から6回のカテーテル挿入によって排泄をしなければならなくなってしまいました。
ちょっとおしっこを我慢したせいで、更につらい思いをすることになるなんて……きっと思いもよらなかったでしょう。
もちろん、これは最悪のケースなので、スポーツをしている時や映画を見ている時などの日常生活で数時間、排泄をしなくても大丈夫なこともあります。
しかし、特に水分を多くとるシチュエーションでは脳の指令を無視することで、排泄の機能が正常に働かなくなってしまうことがあるということは覚えておいたほうがよさそうです。
なにか作業に熱中しているときや、たくさん水分・お酒を摂取したときには、たとえ腰を上げるのが面倒でも意識的にトイレに行くようにしたほうがいいかもしれません。
雨の日や湿気でムシムシ暑いとき、やる気を失ってしまってはいませんか? 実は、気圧と自律神経には大きな関わりがあります。曇りや雨のような天気で低気圧になると副交感神経が優位になり、身体はリラックスしようとするのです。
つまり、身体はゆっくりしたいと副交感神経が優位になっているのに、実際は動かなければいけないことに対して「嫌だな……憂鬱だな……」と感じやすくなるのです。なので、日中、身体が動き始めるときに活発になる交感神経を優位にすれば、億劫な落ち込む気持ちを抑えられることに繋がります。
そこで今回は、心理美容家として活動する筆者が、“交感神経を優位モードにするための3つのこと”をご紹介します。
■1:カフェイン入りの飲み物を飲む
カフェインを摂取すると目が覚めるというのは、覚醒作用によるものですが、実は、このおおもとになっているのが、交感神経刺激作用です。なので、雨の日でも気分を上げたいときには、カフェインを摂取すると有効に働きます。
だる重いときにやる気を出したいなら、アイスコーヒーや、栄養ドリンクを適量飲んでみましょう。くれぐれも飲み過ぎには気を付けてくださいね。
■2:朝風呂に入る
朝、お風呂に入ると、すっきりして目も覚めますよね。これだけでも交感神経は刺激されるのですが、42度ぐらいの温度であれば、さらに効果的です。
逆に、40度を下回る湯温だと、副交感神経にスイッチが入ってしまうので要注意です。
湯船につからなくても、シャワーだけでもいいので、リラックスモードからやる気モードに切り替えたいときには朝風呂がおすすめです。
■3:香辛料やスパイスたっぷりの食事を摂る
香辛料やスパイスたっぷりのカレーや中華料理などを食べると、交感神経が優位になり、刺激になります。
速やかに活動的な交感神経に切り替えたいときは、朝にカレーライスを食べてみるのもおすすめですよ。
雨の日に引きこもりがちになるのは、決して怠け体質になってしまったというわけではなく、ごく自然なこと。ぜひ、上記の工夫を取り入れて、雨の日も快適に過ごしてみてくださいね。
早朝に目が覚めて、眠り直したいのに眠れない。若い頃のように長時間眠りたい……。加齢とともに表れる睡眠の悩みを抱えている中高年は多い。全国で睡眠セミナーを開催している作業療法士の菅原洋平氏に解決策を聞いた。
人間は、年を取ると睡眠時間が短くなる。中高年になると基礎代謝が低下して、日中のエネルギー消費量も少なくなる。そのため、体が必要とする睡眠時間も短くなっていく。また、年を重ねて過去の経験が増えていくと、睡眠中に脳が行っている「記憶を定着させる作業」に費やす時間も短くなる。その分、長い睡眠時間が必要なくなる。
男性の場合、55歳を境にこうした睡眠の変化が表れる。55歳を越えたら、睡眠時間が短くても問題ないし、若い頃のように長時間眠れないのも当たり前なのだ。しかし、そうはいっても「やっぱりぐっすり眠りたい」と悩んでいる中高年は多い。解決策はあるのか?
「睡眠を考えるとき、重要な要素が3つあります。①質(深く眠れているか)②日中に眠くならないか(睡眠時間が足りているか)③満足度(本人が納得できているか)です。①と②に問題がない場合でも、本人が納得していない③の状態だと、〈あなたはしっかり眠れていますよ〉といくら説明しても、睡眠の悩みは解決しません。逆に、③さえ満たされていれば、①と②が不十分でもトラブルは解消されます」
中高年の睡眠の悩みは、いかに③満足度を高めるかが重要なのだ。
睡眠の満足度が低い人は、他人と比較して自分は劣っていると感じているケースが多い。睡眠に対する感覚はあいまいで、実際は他人と自分を比べて優劣は決められないのに、いたずらに焦って悩んでいるという。
「ただ、いくら他人と比べないようにとアドバイスをしても、自分の〈考え方〉を変えることは難しい。そこで、まずは〈行動〉を変えてもらいます。行動を変えると考え方も変わり、満足度が高まるのです」
変えるべき行動は3つ。①早い時間にベッドに入らない②夜中に目覚めても時計を見て時刻を確認しない③早く起きたからといって早く行動を始めない。これを2週間続けると、考え方が変わり、睡眠の満足度も高くなるという。
「身体的な障害ではなく、睡眠に悩んでいる中高年に質問をすると、①〈長時間寝たいと思っているから、早くベッドに入ろうとしていませんか?〉②〈夜中に目覚めてしまったことを確認するために、時計を見ていませんか?〉③〈早く目覚めて時間を持て余してしまうから、早く行動を始めていませんか?〉の3つにイエスと回答する人がほとんどです。
ぐっすり眠りたいからと行っている行動が、かえって満足度を下げてしまっていることに気が付いていない。そこで、まずは行動を変えてもらいます」
■15分眠れなかったらベッドを出る
少しでも長く寝ようとして早い時間にベッドに入ると、逆に寝付けなくて焦り、どんどん眠れなくなっていく。15分眠れなかったら、ベッドから出る。軽くストレッチなどをしながら、眠くなったらベッドに入るようにすればいい。
夜中に目覚めて時計を確認する行動は、覚醒のリズムを早めてしまう。
「脳は、起床する3時間前から覚醒を促すホルモンのコルチゾールを分泌し始めます。夜中に目覚めたときに時計を確認して〈3時に起きてしまった〉という行動を繰り返すと、脳には〈3時に起床する〉というプログラムが組まれ、それに合わせて、コルチゾールの分泌を開始してしまうのです」
早く起き過ぎてしまう人は、睡眠を促すホルモンのメラトニンの分泌が前倒しになっている。
「メラトニンは網膜が光を感知した時点で分泌がストップします。早すぎる時間に目覚めてそのまま日光を浴びてしまうと、脳はその時間が〈朝〉だと認識して、メラトニンの分泌リズムを早めてしまう。早く起きすぎてしまったらベッドから出て、自分が起きたい時間まで、暗い中で過ごす。目標の時間になったら、カーテンを開けて照明をつけるようにしてください」
睡眠で悩んでいる中高年は、まずは3つの行動を変えるべし。
夏は気分が開放的になるせいか、さまざまな誘惑に負けて「またやってしまった」と後悔することが多くあります。たとえば、暑気払いという名の飲み会で陥りやすい暴飲暴食。寝苦しさを言い訳に続けてしまう夜更かし。不規則な生活は体調不良や夏バテをまねく大きな原因となるので、できれば避けたいですよね。
では、こうした夏の悪習慣をどうすればやめることができるのか。習慣化コンサルタントの古川武士さんに聞いてみました。
古川武士(ふるかわ たけし)/習慣化コンサルタント
関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約2万人のビジネスパーソンの育成と約500人の個人コンサルティングの現場から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、オリジナルの習慣化理論・技術をもとに個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援を行っている。
主な著書に「マイナス思考からすぐに抜け出す9つの習慣」などがあり、全10冊、計30万部を超え、中国・韓国・台湾など海外でも広く翻訳され読まれている。
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1. 自分の欲求や行動を分解して悪習慣のパターンを把握する
古川氏:暴飲暴食や夜更かしをどのようにやめるか。「明日からやめる」と決心して実現できれば何も言うことはありませんが、人の心理や行動はそれほど単純ではありません。起こした事実ではなく、その欲求がどこから生まれてくるのかをしっかり抑えておかないと対処法を見つけることはできません。
そこで、なぜしてしまうのか、自分の行動パターンを冷静に考えて書いてみましょう。
暴飲暴食の場合...
仕事上のストレスのせいか、飲み会や家飲みでついつい羽目を外して飲み過ぎ、食べ過ぎている。
夜更かしの場合...
多忙な毎日で自分の時間が取れない不満足感からか、翌日も仕事だとわかっていても、テレビを視たり、スマホアプリで楽しんで夜更かしをしている。
こういったことは誰にでも経験があることかと思いますが、ここで重要なのは、悪習慣を引き起こす「原因」、「誘発する要因」を把握して、どうすればやめることができるかを導き出すことです。
2. 悪習慣の根本にある発生原因を探る
古川氏: 欲求は精神的なメリットを受けたいと思うことで行動に表れます。前述の例のように、仕事のストレスから逃避したい、忘却したいから暴飲暴食をしてしまう。夜更かしも1日の満足感が足りないから、自分の時間をコントロールしながら自由を満喫して心を満たしているわけです。
しかし、ストレスや不満足感は、暴飲暴食や夜更かしを引き起こす原因ではあものの、自分が抱えている解決すべき問題です。そこで次のステップへ進みます。
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3. 誘発要因を減らして、プラスに転じる行動に替える
古川氏:ストレスや不満足感を解消するために暴飲暴食や夜更かしをしていることがわかりました。解消法を変えれば悪習慣をやめるきっかけとなるかもしれないので、悪習慣の誘い水となる誘発要因を探してみましょう。
前述の例であれば、暴飲暴食が飲み会と飲食物、夜更かしはテレビやスマホが誘発要因となります。どちらも、手っ取り早く快楽物質のドーパミンを脳で分泌できるので、ついついやってしまうわけです。
そこで、誘発要因を減らす方法、悪習慣と同じような心理的メリットが得られる代替行動を探します。
たとえば、飲食はやめるわけにはいかないので、帰宅途中にスポーツジムで汗を流してストレスを発散。飲み会の参加率を下げてみる。自宅で食べ過ぎてしまう場合は、口寂しさを紛らわすためにガムを噛んで欲求を満たすことなどが考えられます。
また、夜更かしの場合は、テレビやスマホに没入して自分の時間を満喫するのではなく、いつもより早めに入浴して、バスタブにゆっくり浸りながら読書などでくつろいだ時間を過ごし、寝るモードへと移行していくのも1つの方法です。
悪習慣を誘発するマイナス要因を健康的な好循環に替えるプラス要因に替えて、欲求に振り回されないようにすれば、暴飲暴食や夜更かしをやめることができると思います。
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4. 欲求をコントロールする主導権を取り戻す3つの習慣
古川氏:しかし、悪習慣の原因はわかっても、誘発要因をプラスの行動に代替できないという人もいるでしょう。そんなときは、欲求をコントロールして自己規律を取り戻し、好循環のスパイラルを生み出す、3つの習慣のどれか1つを生活のなかに取り入れてみてください。
早起き
早起きは三文の得と言われるように、人より早く起きて活動することで自己肯定感が上がり、1日を前向きに過ごすことができます。
運動
自分で決めたルールやルーチンに沿って続けていくことで、自己管理能力と自信が高まり、悪習慣の欲求を抑えることができます。
片付け
お寺でお坊さんが朝に必ず雑巾がけをするように、部屋の片付けをすると心が整い、カラダも目覚め、1日の主導権、欲求をコントロールすることができます。
この3つの習慣は、いずれも気持ちをポジティブにリフレッシュさせてくれるので、欲求に歯止めをかける規律が生まれます。欲求を好循環にコントロールするためにぜひ取り入れてみてください。
夏は楽しむことを優先して自己管理が緩んでしまいがちですが、自己回復できる備えがあれば、楽しみつつも規律を乱さない健康的な毎日が送れるはずです。今回は暴飲暴食、夜更かしを例に挙げましたが、4つのステップはほかの悪習慣にも当てはまることなので、ぜひ参考にして夏を楽しんでください。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)や子どもの夏風邪「ヘルパンギーナ」が流行の兆しをみせている。国立感染症研究所(感染研)のまとめによると、おたふく風邪は前回流行した2010年に次ぐ高水準にあるという。子どもに多い病気だが、軽く見てはいけない。大人がかかると重い合併症を発症する危険性がある。
感染研の集計によると、6月20~26日は1医療機関あたりのおたふく風邪の患者報告数が1.13人。宮崎(3.03人)を筆頭に佐賀(2.91人)、鹿児島(1.95人)、福岡(1.76人)と九州全域に広がっているほか、大阪(1.72人)、神奈川(1.22人)、埼玉(1.44人)など大都市圏でも目立っている。おたふく風邪は4~5年周期で流行を繰り返し、今回は2010年に次ぐ高い水準だという。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。
「以前は秋から春先に流行する病気でしたが、いまは季節に関係なく流行する傾向にあります。原因菌であるムンプスウイルスは、くしゃみやせきなどを介して広がります。そのため、学校で集団感染しやすいのです。18日前後の潜伏期があり、最初は首に痛みが出ます。その後、耳の付け根から顎にかけて耳下腺が腫れ、1週間から10日程度うまく噛めない、飲み込めない、会話ができないという症状が出ることがあります」
この間、発熱し、頭痛や嘔吐、腹痛を訴えるケースが多い。
■無精子症も
患者の9割が15歳未満の子どもだが、大人がかかると重症化するだけに注意が必要だ。
「人によっては40度を超える高熱になることがあり、それがもとでさまざまな重い症状が出る場合もあります。小児ではほとんどない合併症ですが、精巣炎や睾丸炎により、15歳以上の男性に精子が全く作れない非閉塞性無精子症のリスクがあります。女性は卵巣炎になることも。ウイルス性髄膜炎も注意したい。
脳や脊髄の周りにある保護膜が炎症を起こす病気で、おたふく風邪を発症した人の数%に起こるとされています。心筋炎、膵炎、難聴、甲状腺炎、溶血性貧血などにも気を配るべきです」
こうした合併症だけでなく、糖尿病の発症リスクをアップさせることも忘れてはならない。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・西蒲田)の辛浩基院長が言う。
「突然、膵島細胞が破壊されて、インスリンが全く出なくなる1型糖尿病は、その多くが自分で自分を攻撃する自己免疫疾患だといわれています。しかし、その中には発症前に上気道炎などの感染兆候が見られるものがある。そのため、昔からウイルスが糖尿病発症にかかわっていると疑われているのです」
実際、ウイルス感染で亡くなった小児の膵島を調べたところ、コクサッキーB群ウイルス、サイトメガロウイルス、先天性風疹などのウイルスが検出されている。
「他に、風疹ウイルス、EBウイルス、ロタウイルスなどが1型糖尿病に関連するといわれ、おたふく風邪の原因菌であるムンプスウイルスもそのひとつだとされています」(辛院長)
徐々に血糖値が上がり、症状がじわじわ表れる2型と違って、1型糖尿病は数カ月で悪化する。
「中には1週間で症状が劇的に変化する『劇症1型糖尿病』にかかる人もいます。そうなると、数時間で多尿、嘔吐、腹痛などの症状が表れ、進行すると昏睡や意識障害が出て死亡することもあります」(辛院長)
子どもの夏風邪といわれる「ヘルパンギーナ」の患者数も10年ぶりの高水準。手足口病やウイルス性胃腸炎の流行もこれからが本番だ。これらの中には2型糖尿病を含め、重篤な合併症を引き起こすものがある。子どもの感染症を甘くみてはいけない。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)や子どもの夏風邪「ヘルパンギーナ」が流行の兆しをみせている。国立感染症研究所(感染研)のまとめによると、おたふく風邪は前回流行した2010年に次ぐ高水準にあるという。子どもに多い病気だが、軽く見てはいけない。大人がかかると重い合併症を発症する危険性がある。
感染研の集計によると、6月20~26日は1医療機関あたりのおたふく風邪の患者報告数が1.13人。宮崎(3.03人)を筆頭に佐賀(2.91人)、鹿児島(1.95人)、福岡(1.76人)と九州全域に広がっているほか、大阪(1.72人)、神奈川(1.22人)、埼玉(1.44人)など大都市圏でも目立っている。おたふく風邪は4~5年周期で流行を繰り返し、今回は2010年に次ぐ高い水準だという。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。
「以前は秋から春先に流行する病気でしたが、いまは季節に関係なく流行する傾向にあります。原因菌であるムンプスウイルスは、くしゃみやせきなどを介して広がります。そのため、学校で集団感染しやすいのです。18日前後の潜伏期があり、最初は首に痛みが出ます。その後、耳の付け根から顎にかけて耳下腺が腫れ、1週間から10日程度うまく噛めない、飲み込めない、会話ができないという症状が出ることがあります」
この間、発熱し、頭痛や嘔吐、腹痛を訴えるケースが多い。
■無精子症も
患者の9割が15歳未満の子どもだが、大人がかかると重症化するだけに注意が必要だ。
「人によっては40度を超える高熱になることがあり、それがもとでさまざまな重い症状が出る場合もあります。小児ではほとんどない合併症ですが、精巣炎や睾丸炎により、15歳以上の男性に精子が全く作れない非閉塞性無精子症のリスクがあります。女性は卵巣炎になることも。ウイルス性髄膜炎も注意したい。
脳や脊髄の周りにある保護膜が炎症を起こす病気で、おたふく風邪を発症した人の数%に起こるとされています。心筋炎、膵炎、難聴、甲状腺炎、溶血性貧血などにも気を配るべきです」
こうした合併症だけでなく、糖尿病の発症リスクをアップさせることも忘れてはならない。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・西蒲田)の辛浩基院長が言う。
「突然、膵島細胞が破壊されて、インスリンが全く出なくなる1型糖尿病は、その多くが自分で自分を攻撃する自己免疫疾患だといわれています。しかし、その中には発症前に上気道炎などの感染兆候が見られるものがある。そのため、昔からウイルスが糖尿病発症にかかわっていると疑われているのです」
実際、ウイルス感染で亡くなった小児の膵島を調べたところ、コクサッキーB群ウイルス、サイトメガロウイルス、先天性風疹などのウイルスが検出されている。
「他に、風疹ウイルス、EBウイルス、ロタウイルスなどが1型糖尿病に関連するといわれ、おたふく風邪の原因菌であるムンプスウイルスもそのひとつだとされています」(辛院長)
徐々に血糖値が上がり、症状がじわじわ表れる2型と違って、1型糖尿病は数カ月で悪化する。
「中には1週間で症状が劇的に変化する『劇症1型糖尿病』にかかる人もいます。そうなると、数時間で多尿、嘔吐、腹痛などの症状が表れ、進行すると昏睡や意識障害が出て死亡することもあります」(辛院長)
子どもの夏風邪といわれる「ヘルパンギーナ」の患者数も10年ぶりの高水準。手足口病やウイルス性胃腸炎の流行もこれからが本番だ。これらの中には2型糖尿病を含め、重篤な合併症を引き起こすものがある。子どもの感染症を甘くみてはいけない。
病院ランキングや名医ガイドのたぐいが相変わらず人気を集めている。だが、『一流患者と三流患者』を書いた米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター永代教授の上野直人氏は、こうした風潮に異論を唱える。
同氏は、最高の医療を保証するのはランキングでもブランドでもなく、患者自身がいかに医療に参加するかの「患者力」だと力説する。
■一流と二流、三流の違いは
──タイトルの「一流患者」「三流患者」とは?
医者と一緒に考え、治療を選択し、納得のいく治療を選び取れる患者さんを一流患者としました。それに対し、医者の言うことはすべて受け入れ、自ら考えることなしに一言「お任せします」の患者さんを二流患者、文句ばかりで病院との信頼関係を作れないモンスター患者を三流患者としました。最低限のことしか病院から引き出せず、本人が損するタイプです。
あえて一流、三流と呼びますが、その意図は患者間に優劣をつけることではなく、自分の患者力がどのレベルにあるかを見直して、よりよい医療を受けられるよう、スキルを上げることです。
──「お任せします」はもう通用しない?
自分の身を守るためにも、二流患者の物言わぬスタンスは、ぜひ改めてほしいです。新しい治療法や薬が出て治療の選択肢が増え、医療はどんどん高度化、細分化している。医者は膨大な情報と日々格闘しており、正直手いっぱいです。医者も人間。国家試験は医療従事者として最低限の能力を保証するものであって、運転免許証を持っていても自動車事故が起きてしまうのと同じ。
丁寧な運転の人もいれば暴走癖の人もいる。この医者は大丈夫か、本当に自分のことを考えてくれているか、患者はつねに質問をぶつけて突っつくことが大切です。医者との会話で医者を試す、といってもいい。
この治療法でいいか、ほかの治療法はないか、組み合わせはどうか。自分の生き方に合った最適な治療を医者から引き出していくのです。
みんな遅かれ早かれ病院の世話になるときがやってくる。病気に向き合う準備を先延ばしにせず、たとえば風邪を引いて受診するときなど、今から練習を始めてほしいのです。
少し前に、糖質を摂らずにいられなくなることを意味する「糖質中毒」という言葉が話題になった。しかし医学博士である『脂質中毒』(岡部 正 著、アスコム)の著者は、同じように「脂質中毒」も恐ろしいものなのだと主張している。
たとえば、「長生きする人は、毎日肉を食べている」というような話を聞くことがある。たしかに健康に生きるためには、適度に肉を食べることは必要だ。しかし、毎日肉を食べるということは、肉に含まれる脂質も相当食べているということにもなる。
肉を食べて脂質を摂取することが習慣になると、あなたの味覚が変化して、知らず知らずのうちに脂質を求めるようになってしまいます。
そうすると、もっと脂質が欲しくなり、肉などの脂っこいものや乳製品を摂るようになります。このくり返しが、さらに味覚を変化させ、いっそう脂質が欲しくなる。そして、いつしか脂質を摂取することが快感になり、さらに脂質が欲しくなる……。
これが、「脂質中毒」なのです。(本書「はじめに」より)
こう聞くと「肉類や油料理はそこまで好きじゃないから大丈夫だろう」と思われるかもしれない。だが、そういう方であっても、ましてや脂肪を摂ることを意識して避けている人でさえ、いつの間にか脂質中毒になっていたというケースがよくあるのだという。
そればかりか、糖質制限をしている人が、脂質を摂りすぎて脂質中毒になってしまったということも珍しくないようだ。
脂質中毒になれば当然ながら、がんによる死亡リスクが高まり、心血管病も発症しやすくなる。さまざまな病気の原因となる肥満を誘発することにもなるため、健康は確実に損なわれるだろう。
だからこそ脂質中毒を避けるべきなのだが、そうならない方法、なったとしても抜け出す方法はあると著者は断言する。それらを実践していけば、最悪の状況は回避できるのだと。
本書ではその方法が明かされているわけだが、それらは決して困難なものではない。それどころか、ちょっと生活習慣を変えるだけで効果が期待できそうなことばかりだ。2つをご紹介しよう。
最低ひと口5回噛むことを目安に
体に脂肪をため込んでしまう最大の理由は「食べすぎ」。消費カロリー以上にカロリーを摂ってしまうから、人は太るのだ。それはよく知られた話だが、脂質についてもあてはまるという。1日の摂取脂質量を超えた脂質を食べてしまうから、脂質から離れられなくなってしまうというわけである。
なお、食べすぎてしまう理由のひとつに「早食い」がある。脳(視床下部)の満腹中枢が「おなかいっぱいになった」と信号を出し始めるのは、食事を始めてから約20分後。つまり20分以内に食事を済ませてしまうと、胃が満腹になっているにもかかわらず、それ以上食べすぎてしまう危険があるということだ。
しかも満腹感を得る前に食事を終えているわけなので、さらに追加でデザートを食べたり、お菓子に手が伸びたりしてしまうようなことも考えられる。
だが、ここには見逃すべきでない重要なポイントがある。
裏を返せば、今より少しだけゆっくり食事をすれば、食べすぎを抑えることができるのです。私のクリニックでは「ひと口10回噛むこと」を推奨しています。それでも億劫ならば、ひと口5回でもいいので、ゆっくり噛んで味わってみてください。(本書89ページより)
意外に少ない気もするが、ひと口5回味わうようにすれば、咀嚼しているあいだは次のおかずに箸が伸びるようなことはなくなる。そのため、次から次へと食べるような習慣がなくなっていくわけだ。そしてそうなったら、噛む回数を少しだけ増やしてみればいいのである。
朝と昼をクリアできれば夜は脂質を食べてもOK
食事は、1日の総摂取カロリー量と、1日の摂取脂肪量を調整することが大切。なお著者によれば、朝と昼にカロリーや脂質の量を抑えることができたなら、夜は脂質を摂っても大丈夫なのだという。
とはいえ、せっかく脂質を制限しているのだから、揚げ物よりは焼き物や煮物、肉類にしても脂質の少ない赤みにした方がよりよいようだ。
私は、朝食は軽めにして、昼は必ず納豆かヨーグルトを一品加え、夜には炭水化物をほとんど食べずに、たんぱく質を摂るという日々を過ごしています。
逆に、朝や昼に脂質を摂りすぎた人でも、夕食で1日のカロリーや脂質の量を調整すれば問題ありません。(本書100ページより)
なお、夕食をいっさい食べないというダイエット法もあるが、著者はすすめていないのだという。効果は絶大かもしれないが、無理をしすぎた食事制限は長く続かないからだ。
せっかく努力して痩せたとしても、やめた途端にリバウンドしてしまうのでは意味がないというわけだ。いいかえれば、自分が続けられる小さな努力を続けることこそが、健康維持のためには大きな意味を持つのである。
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。
食生活の変化がないのに、長期的におならのにおいが変わったら、病気の可能性を疑う必要があるかもしれません。また、おならが「腐った玉ねぎみたいなにおい」になるのは、大腸がんの特徴だという話もあるようです。
今回は、おならのにおいと病気の関係について、医師に詳しい話を聞いてみました。 そもそも、おならはどういうメカニズムで出るのですか 個人差はありますが、一般的な成人は一日5~20回くらいのおならをすると考えられています。
【おならが出るメカニズム】
食べたものは、胃を通って小腸にいたりますが、この際に、小腸の上の部分で消化・吸収されなかった食べ物のカスは、小腸の終わりの部分や大腸に達します。これが、腸内に住んでいる細菌の働きによって分解され、そのときガスが発生します。
このガスは大体、腸管内で吸収されますが、一部はそのまま腸管内に残り、これがおならとして肛門から排出されます。
どういうとき、おならに変化が起こるのですか?
その日食べた食物、あるいは体調や病気によって、おならの回数やにおいに変化が起こります。
たとえば、胃腸や肝臓、すい臓などの病気や、抗生物質などを服用したあと、腸内細菌のバランスが乱れてしまったとき、普段よりも強いにおいのおならが出ることが多いと考えられます。 おならの「腐った玉ねぎのようなにおい」は大腸がんの特徴と聞きましたが…。
「腐った玉ねぎのようなにおい」と表現されるのは、おならに含まれる「メタンチオール」と呼ばれる物質のためかと思われます。
ある研究によると、大腸がんの患者さんのおならには、健康な方の10倍ものメタンチオールが含まれていたという報告があったそうです。
腐った玉ねぎのようなにおいが直ちに大腸がんに通じるわけではありませんが、特に食生活に変化がないのに、しばらくそのようなおならが続いている、ということであれば、注意が必要でしょう。 「腐った玉ねぎのようなにおい」するとき、体内でどんな変化が起きているからですか?
腐った玉ねぎのようなにおいは、大腸がんの患者さんすべてのおならからするわけではなく、あくまで研究段階の話です。大腸がんで腐った玉ねぎのようなにおいがする場合も、がんのある部位の組織の破壊などがかかわっている可能性はありますが、なぜ大腸がんなどでメタンチオールが増えるのかについては、はっきりとはわかっていないようです。
気になった場合、何科で、どのような検査を受ければよいですか?
おならのにおいの変化が気になった場合、行くべき医療機関は、病院の消化器内科です。
病院では、診察を受け、必要に応じて血液検査などを行い、さらに下部内視鏡検査(大腸カメラ)をうけるのが、最も確実な方法と思われます。
最後に医師からアドバイス
おならが食べたものや体調によって異なるにおいがするのは、誰でも経験済みのことかとは思います。しかし、自分で「腐った玉ねぎのようなにおいかも…」と思ったり、家族に強いにおいを指摘されたら、念のため、まずは病院で検査を受けてみましょう。
もちろん、おならのにおいだけでなく、便に血が混じるようになったり、便が細くなったりという変化を感じたら、大腸がんを疑い、きちんと診察・検査を受けることが重要です。
何もやる気が起きないほど疲れがひどい...それには意外な原因があるんです
休み明けの月曜日の朝、本当は体も心もスッキリしているはずなのに、なんだか疲れがとれてない…。そんな方はもしかしたらこんなことが影響しているのかもしれません! 誰だって週の始まりは元気でいたいですよね。ぜひ、参考にしてみてください。
休み明けも疲れがとれない4つの原因
(1)食生活の乱れ
栄養の偏った食事、朝食を食べない、夜8時以降に夕食を食べる、よく噛まない早食い、お酒の飲み過ぎなど、食生活の乱れは疲労に繋がるといわれています。このような食生活は内臓への負担が大きいとされ、体の疲れに影響しているのだとか。
(2)体内時計の乱れ
人間には体内時計が備わっているといわれ、意識しなくても日中は体と心が活動状態に、夜間は休息状態に切り替わります。体内時計は、朝日光を浴びることで切り替わり、一定のリズムを刻むのだそう。そして、夜更かしや朝寝坊などによって体内時計が乱れてしまうと、疲労の原因になり得るのだそう。
(3)過剰なストレス
ストレスが蓄積されると、自律神経が刺激され、興奮作用のあるホルモンであるアドレナリンが分泌されます。そうすると、体が緊張した状態になってしまい、血圧や血糖値などが上昇し、寝つきの悪さに繋がってしまうといわれています。
(4)運動不足
習慣的に運動をしていないと、少しのエネルギーを消費しただけで疲れやすくなります。運動不足は、全身の持久力、筋肉の持久力、筋力などあらゆる体力要素の低下に繋がるのだそう。
あなたの疲れの原因がわかりましたか?
今日からでも原因を取り除き、月曜日の朝をすっきりと迎えましょう!
うだるような暑さ、飲食店や喫茶店のおしぼりで思わず顔を拭いて、気持ちをすっきりさせたくなる人はいるだろう。だが、それは危険かもしれない。マナーの問題はさることながら、中には雑菌だらけのおしぼりもあるからだ。
“おしぼりで顔を拭く”ことは「おじさんくさい」「品がない」など、マナー違反の行動としていつも賛否両論になるテーマ。過去のアンケート調査(「20代女子に“キモい”判定される40男の言動」)では、女性のおよそ半数が“おしぼりで顔を拭く”行為をNGマナーと認定していた。
危険なのはそれだけではない。夏場で、厚生労働省の衛生基準を満たしていない貸おしぼりには1枚あたり10万を超える細菌がいるとも言われ、過去の東京都福祉保健局の調査では、約6割のおしぼりが基準値を超えていたことがある。日本では各自治体が抜き打ち調査を行ない、定期的な行政指導をしているほどの問題だ。
もちろん現在は、この状況は改善されているだろう。しかし、管理が徹底されている今でも、雑菌の繁殖したおしぼりで顔を拭いてしまったがために目が腫れた男性の被害報告もある。「ひんやりしたおしぼりを出されて顔を拭いたら、目の周りが荒れて腫れた状態に…おしぼりから妙な臭いがしていた記憶はあるので、やっぱり顔を拭かないほうがよかったと後悔しています」(30代・不動産)
◆机に素手でおしぼりを広げる居酒屋も
業者への管理は徹底されている。
洗濯して使い回す「貸おしぼり」には衛生面で厳しい基準があり、変色や異臭がないことはもちろん、大腸菌群、黄色ブドウ球菌が検出されず、1枚あたりの一般細菌数が10万個を超えないことが望ましいなどの衛生基準が、厚労省の「環境衛生指導基準157号」で定められている。この指導基準に合格した工場から厳格に管理・出荷されており、品質をクリアした貸おしぼりの包装フィルムには「衛生マーク」の使用が認められるのだ。
だが、業者の徹底した管理もムダになる場合がある。飲食店の大半が衛生管理を徹底するなか、焼き鳥系の居酒屋で働いた経験のある女性は、衛生面の杜撰さに驚いたと話す。
「わたしが働いていた居酒屋では、おしぼりを加温かごにキッチリ詰めるために、バイトにおしぼりを素手で机の上で広げさせて、巻き直してぎちぎちに詰めていました。雑菌が繁殖しておしぼりが臭うなんてことがあったら、いくら料理が美味しくてもお店の評判はよくならないですよね」(20代・居酒屋アルバイト)
次は韓国の事例だが、過去にソウル市内の飲食店54か所のおしぼり・ウェットティッシュを調べた結果、6割を超える34か所から許容値を超える各種有害物質が検出されたことがある。ひどいところでは許容基準値の880倍を超える一般細菌が検出され、こうした問題を補完するために使用される使い捨てウェットティッシュからは、おしぼり以上に細菌が繁殖していることが確認された
おしぼりの衛生管理は、どのようにするのが適切なのだろうか?
◆介護現場もおしぼりは雑菌まみれに
全国おしぼり協同組合連合会によると、おしぼりの消毒方法としては、さらし粉、次亜塩素酸ナトリウムの遊離250ppmの水溶液中に3分間以上浸す「塩素剤等による消毒」や、80℃以上の熱湯に10分以上浸すか、100℃以上の蒸気に10分間以上触れさせる「熱湯等による煮沸消毒」が推奨されている。
もちろん、飲食店にとっておしぼりの不衛生さは命取りになるとの声もある。
「管理の悪い店で臭うおしぼりが出ると帰りたくなる」(20代男性・飲食業)、「おしぼりや美容院のタオルが臭うともう二度とその店の利用はやめる」(30代女性・アパレル)、「スナックで出してくれる温かいおしぼりが雑菌繁殖していて、手を拭くと臭ったからもう行きたくない」(40代男性・金融)
こうした懸念は飲食店にとどまらず、介護施設などでも問題となっている。
40代女性の介護職員は「わたしが働く特別養護老人ホームにはウォーマーがありましたが、高温で長時間温めると雑菌が繁殖するようで、監査で衛生的に問題ありと判断され使えなくなりました」と語る。患者の清拭に日常的に使っているおしぼりは、熱やアルコールに強く、洗濯しても容易に排除できないバチルス・セレウス菌によって、院内感染の原因となることがある。この菌は環境中に広く分布し、穀物や野菜などに付着し、おしぼりや雑巾にも生息することから、食中毒の原因菌として知られ、芽胞を作るので通常の消毒では殺菌できないのだ。
“おしぼりで顔を拭く”ことには、思いのほか危険を孕んでいるようだ。
一般的な健康診断で行われる尿検査で、たんぱく尿(+)または微量たんぱく尿(±)だった人は、尿たんぱくが陰性(-)だった人に比べ、その後にがんで死亡するリスクが高いことが、特定健診を受けた日本人を対象に行われた研究で分かりました。
■微量たんぱく尿とがんの発症・死亡リスクとの関係は不明だった
慢性腎臓病が進行すると、感染症や貧血、骨の病気などの合併症のリスクが上昇することは知られています。がんのリスクも高まるとする報告もあります。しかし、腎臓病と診断されてはいないが健康診断でたんぱく尿が指摘された人、特に結果が(±)〔微量たんぱく尿〕という結果を受け取った人の、その後のがんの発症・死亡リスクについて検討した研究はほとんどありませんでした。
そこで奈良県立医科大学腎臓内科の松井勝氏らは、日本の7都道府県の住民の中から、2008~2011年に特定健診を受けた成人を対象として、たんぱく尿、特に微量たんぱく尿とがんによる死亡の関係を検討することにしました。対象は、尿検査の結果が記録されているなどの条件を満たした37万7202人です。年齢の中央値は64歳で、44%が男性でした。
検査紙を用いた尿検査の結果が、(-)は陰性、(±)は微量たんぱく尿、(1+)は軽度たんぱく尿、(2+)以上は中等度から重度のたんぱく尿としました。37万7202人のうち、3万2051人(9%)が微量たんぱく尿、2万2765人(7%)が軽度以上のたんぱく尿(1万5297人が軽度たんぱく尿、7468人が中等度から重度のたんぱく尿)という判定を受けていました。
2014年までの中央値3.7年の追跡で、5979人が死亡しており、うち3056人ががんによる死亡でした。がん死亡率は1万人-年[注1]あたり21.7でした。
[注1]人-年:観察した人数とそれぞれの年数を掛け合わせたもの。10人を1年間、もう10人を2年間観察した場合は、30人-年となる。
■たんぱく尿の程度が高くなるほどがん死亡リスクは上昇
尿検査で陰性だった人たちを参照群とすると、がんで死亡するリスクは、たんぱく尿の程度が高くなるにつれて有意に上昇していました(表参照)。陰性者に比べ、微量たんぱく尿の人のがん死亡リスクは1.16倍、軽度たんぱく尿の人では1.47倍、中等度から重度のたんぱく尿の人では1.61倍になっていました。
年齢、性別や、喫煙習慣、飲酒習慣の有無、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病の有無に基づいて対象者を分類し、同様の分析を行いましたが、どの分類群においても、結果は上記と同じ傾向を示しました。
続いて、たんぱく尿患者では、どの部位のがんによる死亡リスクが高いのかを調べたところ、軽度たんぱく尿と中等度~重度のたんぱく尿の人では、血液がん、泌尿器がん、消化器がんのリスクが有意に高くなっていました。また、微量たんぱく尿の人においてリスク上昇が有意だったのは血液がんで、血液がんによる死亡リスクは、陰性の人に比べ1.59倍でした。
このように、軽症から重症のたんぱく尿のみならず、微量たんぱく尿もまた、がん死亡リスクの有意な上昇と関係することが示されました。健康診断の結果において、尿たんぱくが(±)という指摘は軽視されがちですが、何らかの病気が隠れていることを示している可能性があります。放置せず、かかりつけ医などに相談したほうがよさそうです。
論文は、2021年8月19日付のScientific Reports誌電子版に掲載されています[注2]。
[注2]Matsui M, et al. Sci Rep. 2021 Aug 19;11(1):16890.
[日経Gooday2022年1月25日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
一般的な健康診断で行われる尿検査で、たんぱく尿(+)または微量たんぱく尿(±)だった人は、尿たんぱくが陰性(-)だった人に比べ、その後にがんで死亡するリスクが高いことが、特定健診を受けた日本人を対象に行われた研究で分かりました。
■微量たんぱく尿とがんの発症・死亡リスクとの関係は不明だった
慢性腎臓病が進行すると、感染症や貧血、骨の病気などの合併症のリスクが上昇することは知られています。がんのリスクも高まるとする報告もあります。しかし、腎臓病と診断されてはいないが健康診断でたんぱく尿が指摘された人、特に結果が(±)〔微量たんぱく尿〕という結果を受け取った人の、その後のがんの発症・死亡リスクについて検討した研究はほとんどありませんでした。
そこで奈良県立医科大学腎臓内科の松井勝氏らは、日本の7都道府県の住民の中から、2008~2011年に特定健診を受けた成人を対象として、たんぱく尿、特に微量たんぱく尿とがんによる死亡の関係を検討することにしました。対象は、尿検査の結果が記録されているなどの条件を満たした37万7202人です。年齢の中央値は64歳で、44%が男性でした。
検査紙を用いた尿検査の結果が、(-)は陰性、(±)は微量たんぱく尿、(1+)は軽度たんぱく尿、(2+)以上は中等度から重度のたんぱく尿としました。37万7202人のうち、3万2051人(9%)が微量たんぱく尿、2万2765人(7%)が軽度以上のたんぱく尿(1万5297人が軽度たんぱく尿、7468人が中等度から重度のたんぱく尿)という判定を受けていました。
2014年までの中央値3.7年の追跡で、5979人が死亡しており、うち3056人ががんによる死亡でした。がん死亡率は1万人-年[注1]あたり21.7でした。
[注1]人-年:観察した人数とそれぞれの年数を掛け合わせたもの。10人を1年間、もう10人を2年間観察した場合は、30人-年となる。
■たんぱく尿の程度が高くなるほどがん死亡リスクは上昇
尿検査で陰性だった人たちを参照群とすると、がんで死亡するリスクは、たんぱく尿の程度が高くなるにつれて有意に上昇していました(表参照)。陰性者に比べ、微量たんぱく尿の人のがん死亡リスクは1.16倍、軽度たんぱく尿の人では1.47倍、中等度から重度のたんぱく尿の人では1.61倍になっていました。
年齢、性別や、喫煙習慣、飲酒習慣の有無、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病の有無に基づいて対象者を分類し、同様の分析を行いましたが、どの分類群においても、結果は上記と同じ傾向を示しました。
続いて、たんぱく尿患者では、どの部位のがんによる死亡リスクが高いのかを調べたところ、軽度たんぱく尿と中等度~重度のたんぱく尿の人では、血液がん、泌尿器がん、消化器がんのリスクが有意に高くなっていました。また、微量たんぱく尿の人においてリスク上昇が有意だったのは血液がんで、血液がんによる死亡リスクは、陰性の人に比べ1.59倍でした。
このように、軽症から重症のたんぱく尿のみならず、微量たんぱく尿もまた、がん死亡リスクの有意な上昇と関係することが示されました。健康診断の結果において、尿たんぱくが(±)という指摘は軽視されがちですが、何らかの病気が隠れていることを示している可能性があります。放置せず、かかりつけ医などに相談したほうがよさそうです。
論文は、2021年8月19日付のScientific Reports誌電子版に掲載されています[注2]。
[注2]Matsui M, et al. Sci Rep. 2021 Aug 19;11(1):16890.
[日経Gooday2022年1月25日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
冬に悩まされるのは、冷え性だけではない。気温の低下や空気の乾燥により、肌荒れが起こりやすくなる。特にシニアは、肌が乾燥することで「かゆみ」に悩まされることも多い。かゆみの原因と対処法を専門医に取材した。冬の乾燥した時期になると、腕や足、腰回りがかゆくなることはないだろうか。
実は筆者も、そんな「乾燥による肌のかゆみ」に悩まされる一人だ。特に症状が出やすいのが、わき腹とすねの部分。冬に寝るとき、以前はスウェットの下に保温インナーをはき、さらに足元を電気毛布で温めていたが、しばらくすると両足のすねがかゆくなり、たびたび起きてしまうようになった。インナーの素材が肌に合わなかったこと、電気毛布の熱で肌が乾燥したことが原因と考えられ、それらを取り換えると症状は改善したが、ひどいときはすねの皮膚が鱗のようにガサガサになってしまい、かなりつらかった記憶がある。
こうした乾燥による肌のかゆみは、高齢になるほど症状が出やすいようだ。
有料老人ホームで介護福祉士をしていた30代女性は、「冬になると、肌のかゆみを訴える利用者が少なくなかった」と話す。
「夜寝ている間に、無意識に体をかいてしまうんでしょうね。ベッドに剥がれ落ちた表皮が粉をまいたように落ちていることもありました。手の甲やすねをかきむしって出血してしまう方もいて痛々しかったです」
◆60歳超えると肌の乾燥が進む
横浜市にある野村皮膚科医院院長の野村有子医師は、「空気の乾燥だけではなく、加齢とともに肌の水分が失われてかゆみが出ることも多い」と話す。
「『老人性乾皮症』といって、肌がカサカサに乾燥して鱗状になったり、粉が吹いたりします。軽度の段階ではむずがゆいくらいですが、重度になると肌が炎症を起こしてただれたり、ジュクジュクとした湿疹になってしまうこともありますね。そうなると市販薬では手に負えず、病院で適切な治療を受ける必要があります」
そもそも肌が乾燥すると、なぜかゆみを生じるのだろうか。
「通常、皮膚には、アミノ酸などの天然保湿因子や、セラミドといった脂質があります。さらに汗と皮脂が混じり合ってできた皮脂膜で、皮膚が覆われています。これらが肌のバリアーとなって、体内から水分が蒸発するのを防いだり、外部からの刺激が神経を刺激しないように守っているのです。ところが、汗や皮脂の分泌、アミノ酸やセラミドの生産量は、加齢とともに減っていきます。すると、肌が乾燥してバリアー機能が弱くなり、外からの刺激に対して神経が過敏に反応するようになってしまうのです」
男女ともに60歳を超えると、バリアー機能の衰えが進み、かゆみが出やすくなる。また、乾燥性のかゆみには季節も大いに関係があるという。
「特に今のような冬場は要注意です。皮膚が乾燥しない湿度は50~60%と言われていて、40%を下回ると、乾燥してかゆみが出やすくなります。また、寒さで血流が悪くなり、新陳代謝が下がることでも肌の乾燥は進みます」
症状が出る部位は、すねが圧倒的に多い。また、腕や腰回り、背中など、皮脂の分泌腺が少ない部分はかゆみが出やすいそうだ。塗り薬やかゆみ止めの飲み薬もあるが、治療の基本は、生活の中から「肌を乾燥させる要因」を取り除いていくことになる。
「まず見直したいのが入浴方法です。特に高齢男性は、肌が赤くなるまでガシガシと体を擦って洗う方が多いのですが、これだと皮脂が落ちてしまう。ナイロンタオルやたわしは使わず、素手か柔らかいガーゼで撫でるように洗ってください。ボディーソープも『低刺激性』のものを選ぶとよいでしょう」
石鹸の泡を洗い流すときも、シャワーを勢いよく当て続けると水圧で皮脂が流れ落ちてしまう。肌が乾燥しているときは、弱めの水圧でさっと流すか、掛け湯をするとよいそうだ。
「湯船に入るのは、肌の水分が保たれやすくなるのでお勧めです。お湯の温度は40度前後が理想的。42度を超えると、肌のかゆみセンサーがオンになると言われているため、熱すぎるお湯は逆効果となります。一時的にかゆみが止まるかもしれませんが、皮脂も落ちてしまいますし、体が火照って余計にかゆくなってしまいます」
◆肌着は綿製品 湿度は40%以上
また、入浴後は、すぐに保湿剤を塗ると効果的だ。
「ただし肌に傷がある場合は、成分に尿素が含まれているとかゆくなる場合があります。無香料で低刺激性のものが安心でしょう」
入浴以外にも、衣食住を見直すことで、乾燥によるかゆみを改善することができる。
「肌に触れる衣服は、素材が重要です。化学繊維や裏が起毛になっているものは、熱がこもりやすく刺激が強いため、かゆくなりやすい。肌着は、できるだけ綿かシルクを選ぶことをお勧めします」
食事は、アミノ酸の減少を補うため、良質なたんぱく質を多くとることを心掛けたい。
「冬は鍋料理がいいですね。いろんな食材と一緒に水分がとれて、湯気で加湿もできます。お酒は、血行が良くなるとかゆみが出る場合もあるので、ほどほどにしておきましょう」
また、部屋で過ごすときは加湿器を使い、湿度が40%を下回らないようにしたい。
「特に冬の間は、電気毛布やホットカーペットで皮膚が乾燥しがち。寝るときもつけっぱなしにせず、寝る前に布団を温めておいて、就寝中は消すようにしてください」
これらの生活習慣と適切な治療を続ければ、「乾燥によるかゆみは必ず治る」と野村医師は話す。
だが、かゆみの裏側に別の病が潜んでいる場合もあり、油断は禁物だ。
「乾皮症が原因だと思いきや、実際は肝臓や腎臓が悪かったという例もあります。肝硬変や腎不全、がん、悪性リンパ腫なども、かゆみの症状が出ることがある。保湿をしたり薬を塗ったりしてもかゆみが引かない場合は注意が必要です。患部だけでなく、体全体をトータルで見ないと原因を見落としかねないため、安心はできません」
「ただの肌荒れ」と自己判断せず、かゆみが続くときは医師に相談しよう。(ライター・澤田憲)
歯周病は、中年以降の日本人では80%がかかっている病気です。初期は目立った症状がなく、ゆっくり進行するため、「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれ、日本人が歯を失う最も大きな原因となっています。
しかし安心してください。歯周病は正しい知識さえあれば防ぐことができる病気なのです。それなのに、世の中には歯周病の専門家から見て、首をかしげたくなるような不正確な情報が蔓延(まんえん)しているといいます。
そこで、歯周病の原因・治療・予防についての研究や歯科医師の教育を行っている日本歯周病学会と、日本臨床歯周病学会が全面的に協力し、歯周病に関する“正しい”知識の普及を目的とした初の書籍、『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』(朝日新聞出版)を発売。歯周病になりやすい人はどんな人なのか? 歯周病リスクチェック表とともに、本書から特別に紹介します。
* * *
同じようにブラッシングをしていても、歯周病になりやすい人とそうでない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。
歯周病の発症や悪化にかかわる要因は(1)口の中の細菌の攻撃力、(2)患者自身の抵抗力、(3)生活習慣(環境)の3つに大きく分けることができます。
まず「(1)細菌」について考えてみましょう。歯周病のおおもとの原因は、口の中の歯周病菌です。口の中には、良いものも悪いものも含めて一般的に培養できるものは400~500種類ほど、培養できない細菌も入れれば700種類ともいわれる細菌が棲んでいます。この中に、より多くの種類の「歯周病菌」が揃っている人のほうが、リスクが高い可能性があります。
また、「レッドコンプレックス」と呼ばれる悪性度の高い3種類の歯周病菌を全部持っている人もリスクが高いとされています。とくにきわめて悪性度の高い「P.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)」を持っていると、歯周病は5倍進みやすいといわれています。
「(2)患者自身」にかかわる要因として、わかりやすい例が糖尿病の人です。どんなに歯周病菌が強力に攻撃してきても、外敵に対抗する体力や免疫力が高ければやっつけることができますが、糖尿病で免疫力が低下している人は、歯周病を発症しやすく、悪化しやすいことがわかっています。
また年齢が高くなればなるほどリスクは高まり、女性は思春期や妊娠中、更年期など、ホルモンが変動する時期は症状が悪化しやすくなります。あまり多くはありませんが、遺伝的に歯周病になりやすい人もいます。
さらに大きな影響をおよぼしているのが、生活習慣などの「(3)環境」です。ストレスや肥満、運動不足などさまざまですが、とくに「タバコ」は吸えば吸うほど歯周病にかかりやすくなることが明らかになっています。タバコのニコチンに含まれる有害物質は免疫機能や細胞の働きを阻害して歯周病の進行を早め、治りにくくしてしまいます。有害物質の影響で歯肉の血行が悪くなっていることも、歯周病の悪化に拍車をかける原因といえるでしょう。
■歯周病リスクチェック
「歯周病になりやすい危険度」を3段階に分けて示しました。チェック項目のいずれにも該当しない人は、今のところ歯周病になる心配はほぼありません。危険度が低、中、高と上がるにつれ、さらに当てはまる項目が増えるにつれ、歯周病になる可能性は高まります。チェックをして、まず自分がどの程度歯周病になりやすいのか、自覚してください。
危険度【低】
※1つでも当てはまれば…危険度は低いですが「歯周病になる可能性がある」と自覚を。定期健診を受けましょう
□ 40代である
□ 思春期の女性
□ 妊娠中
□ 家族に喫煙者がいる
□ 運動不足だ
□ しばしば深酒する
危険度【中】
※1つでも当てはまれば…「歯周病になりやすい」状態。早めに歯科医院を受診してください
□ 50代である
□ 肥満
□ ストレスをためやすい
□ 親が歯周病だ
□ 骨粗しょう症である
□ 甘いものが大好き
危険度【高】
※1つでも当てはまれば…歯周病になっている可能性が高いので、すぐに歯科医院へ。放置すれば重症化する危険があります
□ 60代以上である
□ 習慣的に喫煙している
□ 毎日ブラッシングをしていない
□ かかりつけ歯科医院はない
□ 長期間歯の定期健診を受けていない
□ 更年期である(女性)
□ 糖尿病患者である
□ 歯ぎしりするクセがある
□ 親が40代にして総入れ歯
夏のリフレッシュと言えばプール。だが、今回はプールに行くのが怖くなるような報告である。2009年に行われた調査では、5人に1人のアメリカ人が、プールの中で尿をしたことがあると答えている。これに驚いてはいけない。
日本での調査では、40代男性の57%、20代女性の49%がプールで尿をしたことがあると答えているのである。
この行為は衛生的な問題だけでなく、健康への被害すら及ぼすかもしれないという研究結果が出ている。
□「プールでおしっこ」の危険性 尿・汗・塩素が作る危険な物質
プールの中には、殺菌のために塩素が入っている。プール独特のにおいのあれだ。ただし、この「塩素と汗、それから尿酸が混じると、非常に怖い副産物ができ上がる」 ということが実験により分かっている。それによりできた副産物は、消毒作用のある塩化シアンやトリクロラミンといわれる物質だ。殺菌力があるならいいじゃないか、と思われた方がいるかもしれないが、話はそう簡単ではない。
塩化シアンは強い刺激性があり、息苦しさを誘発するが、これを吸い込むと心血管系・肺・中枢神経に悪影響を及ぼし、命にかかわる場合もある。トリクロラミンは急性肺障害を引き起こす物質である。
屋内プールの中にある尿素の90%は人の尿由来であるという。つまり、プールで尿をすることで、命にかかわるような危険な物質が生まれる可能性があるのである。
□メダリストのフェルプス氏も誤解している「プールでおしっこは汚くない」!?
パドゥー大学のBlatchley博士は、今回の発見は水泳者たちの行動を変えるためのチャンスだと語る。
アメリカでは、一般的にプールの中での小便はある程度許されるという誤解があるらしい(※1)。日本人ではそうではないと思いたいが、最初にあげた調査結果を見る限り、許されると思っている人は多いのかもしれない。
通算18個の金メダルを獲得し、史上最強のスイマーともいわれる競泳選手マイケル・フェルプス氏は「(競泳選手は)みんなプールで用を足していると思うよ。塩素で消毒されるから汚くはない」と述べている(※2)。
しかしこれは完全なる誤解だ。
□プールを安全な場所にするためにおしっこはNG!
アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によると、レクリエーションの現場で発生した水に関係する病気は、20年間の間で増えている。
細菌性の下痢が最も多くみられる病気であり、大腸菌やクリプトスポリジウムが原因となることが多い。2013年、CDCはアメリカの半分以上のプールで大腸菌が存在すると発表した。
□安全なプール利用のために気をつけるべきこと
CDCは、
・下痢をしているときは泳がない
・泳ぐ前に石鹸とともにシャワーを浴びて、しっかりと洗い流す
・60分ごとにトイレ休憩を作る
・トイレに行った後しっかり手を洗う
ということを勧めている。
□「プールでおしっこ」は危険! ルールを守ってフェアプレーを
身近なところに潜むさまざまな危険。常識やエチケットを守れない人が増えると、プールに入るのも命懸けになってしまう。「プールでおしっこは危険」を頭に入れてプールを楽しんでいただきたい。メダリストを目指すスイマーも、プール内のルールを守って、「フェアプレー」で頑張ってほしい。
キレイ好きにとっては生活から欠かすことのできない洗剤や消臭剤、防虫剤などなど。「ベランダに干した洗濯物の柔軟剤の香りが強すぎると隣の奥さんから嫌みを言われた」(31歳・女性)といったトラブルはまだかわいいほうで、使いすぎはアレルギーやアトピーなどの重大な健康被害を引き起こす。なにしろ、これらは立派な化学物質だからだ。
室内に飛散した化学物質は、呼吸によって体内に取り込まれる。
「家庭用品から出る化学物質の量などたかが知れていると思うかもしれませんが、ヒトは1回の呼吸につき約500mlの空気を取り込みます。1分間なら約9リットル。そう考えれば“チリも積もれば”という言葉に現実味が感じられるはず」と話すのは、化学物質問題に詳しい農学博士の川上裕司氏。
「防虫剤や消臭剤はすべて毒」という決めつけはナンセンスだが、やたら頼るのはNGというわけだ。
「妻は蚊の『プゥーン』という羽音を聞くたびにパニック並みの大騒ぎ。虫の侵入に過敏なので、部屋ごとに電気蚊取り器を置き、24時間稼働させている」(40歳・男性)。
これには川上氏も苦言を呈す。
「畳に刺すタイプの『ダニアース』の使いすぎで中毒を起こした例を知っていますが、殺虫剤は化学薬品の中でも毒性が強い。電気蚊取りで使われているピレスロイド系殺虫剤は、人間への毒性は弱いほうですが、それでも部屋ごとに置くのはやりすぎです。蚊を駆除するだけなら、就寝前の1~2時間つけておき、就寝時には消しましょう」
衣類用の防虫剤も、思っている以上に人体への影響大。
「防虫効果の高いパラジクロロベンゼン系の製品は、本来、気密性の高い容器に入れて使うものです。それを、毎日のように開ける引き出しやウオークインクローゼットなどで大量に使うのは、吸い込む量が増えるので心配。特にこれからの季節、気温が高くなると揮発性も高まりますからね」
その上、現代の住宅は気密性が高いので、化学物質が部屋の中にこもりやすい。
「布用除菌・消臭スプレーのCMの、『干すより清潔』みたいな印象に踊らされるのは危険! 使いすぎていいことはひとつもありません。あとは“換気”を忘れずに」
<やりすぎ厳禁ワースト5>
1位:部屋ごとに虫除け剤を置く
2位:ウオークインクローゼットに防虫剤を多用
3位:除菌消臭剤を数時間おきにプシュー
4位:液体洗濯用洗剤を目分量でドバドバ
5位:洗濯のたびに漂白剤を使用
【川上裕司氏】
農学博士。エフシージー総合研究所・暮らしの科学部部長。東京家政大学大学院非常勤講師。生活環境に関わる有害物質や有害生物研究の第一人者
高血圧だと診断され、処方された薬を飲み続けているが、できれば薬に頼らず血圧を下げたいと考える人もいるだろう。その一方で現在飲んでいる薬を「すべてやめるのは不安」という人も少なくないはず。降圧剤で数値をコントロールしている場合、一度にやめると急な血圧上昇などのリスクが伴う。
高血圧治療を専門に行なう坂東ハートクリニック(徳島県)の坂東正章院長は、「正しいプロセスを踏めば、降圧剤は減量することが可能だ」と指摘する。薬の種類や量を減らし、副作用などのリスクを避けて身体への負担を少なくする最良の降圧剤選びはどうすれば実現できるのか。坂東医師が言う。
「それぞれの基礎疾患を考慮し、採血検査や患者さんとの問診の結果を参考に薬を調整します。特段の合併症がない患者さんに対して処方頻度が高く、かつ効果的な降圧剤はノルバスク(カルシウム拮抗薬)だと考えています。動悸や顔の火照りといった副作用が出なければ、基本的にはこの薬の服用を続けるのがいいでしょう」(以下「 」内のコメントは坂東医師)
カルシウム拮抗薬は長く使われている種類の降圧剤で、医師も患者も投与により血圧の降下を認識しやすいという。ただ、その効果には個人差がある。坂東医師は、ノルバスクで効果が出にくい場合は「減らして増やす」処方をする。
「一つの薬を最大量まで使用せず、半分の量で効果がない時は、ほかの作用機序の薬を加えると効果的なことがあります。その際は新たに加える薬も設定されている容量の半量程度にしています。
例えばノルバスクの量を半分にして、プロブレス(ARB)を少量追加すると、血圧がよく下がることがあります。患者さんに投与してどのように反応するかを確認していくことが必要です」
同じカルシウム拮抗薬でより効果が強いアダラートCRも選択肢だが、注意が必要だという。
「ノルバスクより降圧効果が強い反面、動悸や顔の火照りの頻度が高いため、私は最初からはこの薬は使用しません」
一方、降圧作用は少し弱いが、副作用の少ないカルシウム拮抗薬もある。
「アテレック、カルブロックなどは腎保護作用があり、動悸や顔の火照りといった副作用が少ないとされています。私の感覚ではノルバスクに比べるとやや降圧効果が低い印象を持っていますが、腎機能が低下した患者さんには使用しています」
薬の選び方は人それぞれ
坂東医師は、薬の種類を変えたり、量を減らす際には体調や数値の変化をしっかりチェックすることを推奨する。
「カルシウム拮抗薬は“万能”な薬ですが、心筋梗塞後や心機能の低下が見られれば、心筋機能の保護を考えて臓器を守る作用があるとされるARBの開始を検討します。ただし、強い腎機能障害がある時は高カリウム血症などを起こす恐れがあると指摘されているため、最初からARBを使用することはありません。
一つの方法ですべての患者さんに適応できるわけではなく、患者さんの諸臓器の機能や電解質の状態を確認して投薬内容を決めていきます」
坂東医師によれば、降圧剤を減らしていくうえでは患者自身にも「自宅で正確に血圧を測る」「降圧の目標数値を教えてもらう」などが求められる。その際に大事になるのが、適切に血圧を計測することだという。
「降圧の経過を見るうえでも正しい計測をしなければいけませんが、間違った測り方をされている方が実に多いのが現状です。
自宅で計測した家庭血圧が実態に近い数字とされますが、その際も座って正しい姿勢で測ることが必要です。誤差が少ない上腕式血圧計で、朝なら起床後排尿して朝食前、夜なら就寝前の排尿後に測りましょう。よくあるのが、挿入式血圧計を使用し、『今日の私の血圧はどうだろうか?』と前のめりの姿勢になるケースです。前屈みは避け、数値は結果が出てから落ち着いて確認してください」
医師の指導により、家庭血圧が120台前半で維持できるようになれば、「通院の必要なし」と判断できるという。
高血圧は大動脈解離やくも膜下出血、心筋梗塞など突然死を招く病の“引き金”になるリスクもある。今の身体に最適な選択肢は何か、薬を選ぶ際にも自らが責任を持って検討していきたい。
※週刊ポスト2023年3月24日号
楽しいイベントが多い夏ですが、外出先でトイレを気にしている人も多いんだとか。正露丸で有名な大幸薬品がおこなった調査によると、約8割の人が「夏は他の季節よりお腹を下しやすい原因の誘惑に負けやすい」と感じているそうです。
冷房の効いた部屋で冷たい物を摂りすぎたり、扇風機を回しっぱなしで寝てしまっていたら、お腹が冷えて下痢を引き起こしそうですよね。東洋医学では、だるさ、疲れがとれない、下痢、お腹が冷たいなどの症状が出る「脾気虚(ひききょ)」というものがあり、梅雨から夏にかけて増えるとされているので、クーラーがない2,000年前の人も、夏は下痢をしやすかったのかもしれません。
そこで今回は、夏に下痢が増える理由と対策について、東洋医学的に解説いたします。
■冷えただけじゃない?夏に下痢が増える理由
東洋医学でいう「脾(ひ)」は脾臓(ひぞう)のことではなく消化機能全般のことを指します。吸収した栄養を気・血・水に変えて全身に運び、老廃物を外に出す働きがあります。この「脾」には湿を嫌う性質があるため、梅雨から夏にかけての多湿の季節は調子が悪くなりやすいんです。
脾の調子が悪くなり消化が遅くなると、運ぶ力が弱くなって身体の中からも湿が発生してしまいます。この増えすぎた湿がそのまま腸に運ばれてしまうことで、下痢になると考えられるのです。
また、強いストレスがかかると胃潰瘍になるように、精神的なストレスも脾に影響します。
イライラや落ち込みに影響されやすい「肝」は、「脾」の機能を調節する働きがあるため、脾のバランスも崩れてしまって食欲不振、吐き気、下痢などになってしまいます。
■下痢を引き起こす「脾気虚」の対策は?
脾気虚は、肌がくすむという女性にとって残念な特徴も。冷房の温度に気をつけるだけでなく、こんなことにも気をつけましょう。
●脾の元気を補う食材を意識する
消化機能全般を助けてくれる「健脾(けんぴ)」という働きを持つ食物があります。
黄色くて甘いものが多く、穀類、イモ類、豆類をよく噛んで食べると助けになります。
●胃腸に負担をかけない
消化機能が落ちているので揚げ物・刺激物はNG。
未消化で腸に運ばれ下痢をひどくしてしまうので、胃腸の調子が悪い時は避けましょう。
●冷たいものは避ける
なるべく温める調理法を選択しましょう。冷奴も電子レンジで温奴にするなど工夫をしてみて。
●余分な水分を排出する
余分な水分は身体を冷やす元になります。「利湿(りしつ)」という、身体の余計な水分を排出してくれる食材で水はけをよくしましょう。夏に多いウリ系の食材はほぼ利湿。きゅうり、ゴーヤ、ズッキーニなどを献立に取り入れて。
●くよくよ考えない
精神的なストレスが影響している人は便秘と下痢を繰り返す傾向にあります。楽しいストレス解消法を自分なりに見つけてリフレッシュを。香りの良い食材(芳香性のある食材)は気の巡りを良くしてくれるのでストレスが高い人にオススメです。
海やBBQ、ビアガーデンなどの夏のイベントを、下痢の心配なく楽しむために普段から「脾」の調子を整えておくと安心です。夏も元気に過ごせるように参考にしてくださいね。
植毛はどこで受けられる?
自毛植毛は、後頭部などの毛髪を薄毛の部分に移植する「医療行為」なので、医師以外の者が行うことは法律で禁止されています。しかし、これは見方を変えれば、医師免許さえ持っていれば誰でも施術を行えるということにもなります。
ただし、植毛は形成外科医の専門分野なので、施術を行う医師には高い技術が必要となります。また、さまざまな状況に合わせて的確な診断や処置が行えるように、皮膚や毛髪について熟知していることも求められます。最近では、日本でも徐々に自毛植毛を取り扱うクリニックが増えてきていますが、できれば植毛分野に精通している「植毛専門のクリニック」を選ぶことをおすすめします。
良いクリニックの選び方
自毛植毛では、自分の頭皮を切り取ってドナーとして使いますし、手術の費用も安くはないため、手術の結果に満足できずやり直しをするとなると、身体的にも経済的にも大きな負担がかかります。ですから、後悔することがないように、事前のクリニック選びは慎重に行いましょう。良いクリニックを選ぶために気を付けたいポイントは、以下のとおりです。
●植毛方法
植毛の方法にはさまざまなものがあります。確実な効果があるのかどうか(定着率、移植できる髪の本数)、どんなメリットやデメリットがあるのか、自然な仕上がりになるのかなどを、実際にクリニックに問い合わせたり、カウンセリングを受けたりして確認するようにしましょう。
●担当医やスタッフの質
植毛手術の結果は、実際に手術を担当する医師の技量に大きく左右されます。植毛専門の医師であるか、実績がどれぐらいあるのか、スタッフも習熟しているのかなどを確認しましょう。
●インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントとは「正しい情報を得たうえでの合意」という意味です。医師が患者に対して治療の目的や方法、効果、危険性、起こりうる副作用、術後の経過予想や治療にかかる費用などについて十分にわかりやすく説明し、そのうえで治療の同意を得ることを言います。わからないことがあれば、あやふやにせずにしっかり尋ねましょう。信頼できるクリニックであれば、そういった質問にもていねいに答えてくれるはずです。また、ろくに説明もせずに手術を強引に勧めるようなクリニックは、避けるようにしましょう。
クリニックを選ぶときは、複数のクリニックで実際にカウンセリングを受けてみて、比較検討することが大切です。
日本人は刺し身が大好き。ヒラメ、サンマ、サケ…どれも 美味(おい)しそうですね。でも、そんな身近な魚にも寄生虫がいるってこと、あなたは知っていましたか? 今回は、魚と寄生虫のお話をしましょう。
◆日本の魚の安全性
かつては、魚の食中毒といえば「ビブリオ菌」が定番でした。ビブリオは塩分が好きな菌なので、海の魚による食中毒が多くみられていたのです。しかし、そのような菌による食中毒も、捕った魚を真水で洗ったり、早急に冷凍して運んだりなどの対策によって、今の日本では激減しています。日本は、世界で最も安全に生魚を食べられる国です。その証拠に、「お 寿司(すし)」が大流行となっている世界各国では、今も生魚による食中毒が次々と発生しています。
◆ヒラメの刺し身と寄生虫
では、日本の魚なら絶対に大丈夫なのでしょうか。実は、魚による寄生虫の感染は、今も時々話題になったりしています。たとえば「クドア・セプテンプンクタータ(読んで舌をかまないように)」という寄生虫。これは、最近話題になっている寄生虫で、ヒラメに寄生していることが多いということがわかっています。
幸い、症状は起こしても軽度の食中毒症状くらいですむことがほとんどです。クドア・セプテンプンクタータは、マイナス20℃で4時間以上の冷凍、あるいは75℃以上の温度で5分以上加熱することで防ぐことができます。つまり、一度冷凍処理をしたものであれば、刺し身でも大丈夫というわけです。しかし、ヒラメの刺し身は冷凍処理をすると味が落ちるとのこと。なかなか対応が難しいところですが、現場の努力によって、この寄生虫による食中毒の報告も徐々に減ってきているようです。
この寄生虫についての詳しい情報は、こちらのページをごらんください。
『クドア・セプテンプンクタータ』東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/29.html
◆サンマと寄生虫
このクドアよりも、さらに有名な寄生虫が「アニサキス(読みやすい!)」です。魚は必ずしも「新鮮=安全」とは限りません。昔は生食しなかった魚を、「新鮮」だからと生で食べる人も増えています。たとえばサンマといえば、かつては焼き魚の代名詞のような存在でした。しかし最近は、都会のお店でもサンマを刺し身で食べる機会が増えています。そして、このサンマの刺し身による「アニサキス症」も多くみられるようになってきているのです。
◆痛いアニサキス
アニサキスの幼虫をもった魚を食べたとしても、人の体内では成虫にならずに排泄されてしまうのがふつうです。しかし、まれに胃の壁に入ることで、強い腹痛を起こすことがあり、これがけっこうやっかいもの。あまりにも痛むので、救急外来で胃潰瘍、胆石症、虫垂炎などと間違えられることもあるほどなのです。
◆アニサキスって、どんなヤツ?
「アニサキス」は、長さ2~3cmの白い幼虫として、サバ、サケ、サンマ、ホッケ、タラ、ニシン、イカ、イワシなど、いろいろな種類の魚に寄生しています。まずは、どんな魚にアニサキスが住んでいるのかを確認してみましょう。
『魚種別アニサキス寄生状況について(平成24年4月から平成26年3月まで)』
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/anisakis/tyousa2.html
よ~くみると、内臓の表面か筋肉に、小さく「とぐろ」を巻いて住んでいるのがみつかります。けっこう一般的にみられるので、よく探せばみなさんでも発見できるかもしれません。アニサキスについての詳細はこちらをごらんください(アニサキスの写真もあります)。
『アニサキス』東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/01.html
◆天然・新鮮にある落とし穴
基本的に加熱すれば死んじゃいます。また、マイナス20度で48時間冷凍しても死んでしまうので、冷凍して運ばれてくるものであれば生食でもリスクは少なくなります。また、アニサキスは、養殖魚ではほとんどみられません。「天然物で冷凍なし、おまけに内臓つき」っていうのがヤバいパターン。水槽で天然のサバが泳いでいて、それをとって新鮮な刺し身をご提供。「天然、新鮮」は美食のキーワード。でも、そこには寄生虫がいるかもしれません。
◆サケと寄生虫
次は、すごく長い「日本海裂頭条虫(にほんかいれっとうじょうちゅう…こいつは漢字の名前です)」という寄生虫をご紹介しましょう。長いのは名前ではありません。なんと成長すると体長5~10mにもなる、キシメンのような平たく長い虫です。キシメンとちがって無数の節があり、頭の方は細くなって吸盤がついています。トイレで肛門部から出てぶら下がっているのに気がつくことが多く、引っ張っても途中の節で切れてしまいます。そして、この寄生虫の頭が残っていれば再び成長してしまうのです。
では、ここでも写真つきの情報をごらんください(食事中の方はご注意を!)。
『日本海裂頭条虫』東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/musi/03.html
◆サナダムシ・ダイエット
この虫は、一つ一つの節に雌雄両性の生殖器をもっています。つまり一節一節の単独で多くの卵を産むことができるのです。そして、人の体から川へ流れた卵は、サケやマスなどの魚の肉に入り、それを食べた人の腸の中で再び長い成虫に育ちます。
「サナダ虫」という名前は、このような長い虫を総称した呼び名で、真田 紐(ひも)という伝統的な織物に似ていることから名付けられました。お 腹(なか)にこんなに長い寄生虫がいれば、きっと虫が栄養を吸収してくれるだろうと、あえて寄生虫をお腹で育てようとする「サナダムシ・ダイエット」が話題になったこともありました。その効果は不明ですが、そんな勇気があるのなら、ふつうにダイエットすることをおすすめします。
「扇風機は体に悪い」「夜、寝るときにつけっぱなしにすると危険」という都市伝説はウソ? ホント? 猛暑の暑さ対策や熱中症予防に欠かせない扇風機の噂を医師が徹底検証。 医学的にオススメしたい健康的な扇風機の活用法をご紹介します。
■扇風機にあたりすぎて死ぬことってあるの?
心地よい扇風機の風……。でも、「夜寝るときにつけっぱなしにすると、知らないうちに体温が下がりすぎて低体温死する」「あたりすぎは体に悪い」という話もあるようです。
結論から言うと、日本では健康な人が扇風機の風を浴び続けても、体温が命を脅かすほど下がることはありません。
西洋医学とは哲学が異なりますが、東洋医学では体を冷やすことは悪いこととされています(悪いの意味は曖昧ですが……)。風を送って温度を下げる、冷ますという場合、実際に温度はどこまで下がるでしょうか? 気化熱を考えない場合、コーヒーなどの熱い飲み物はだいたい室温と同程度までは下がると考えられます。
ある温度と湿度で水蒸気が水になる温度を「露点温度」と呼びます。露点温度で身近なのは、雷雨時にガラスの内側に水滴が結露する現象です。気化熱を利用している場合、露点温度に達すると気化が止まるので、温度低下も止まります。扇風機を使っても、通常結露は起きていませんね。理論上は湿度計の湿球温度までが下がる温度だと考えられます。つまり、温度と湿度によりますが、扇風機を使えば室温よりも数度低い温度まで、皮膚温を下げることが可能です。湿度が高い日本の夏、扇風機の風だけで体温がどんどん下がり続けて死亡するような現象は起きません。
■都市伝説? 扇風機による突然死(FAN DEATH)の正体
また、体温と関係なく、扇風機にあたっている最中の突然死が気になっている人もいるようです。
一人暮らしの人が真夏の風呂上がりにビールや酎ハイを飲み、扇風機にあたっているときに突然死……。「亡くなった方の部屋では扇風機が動いたままだった」といった報道があると、扇風機使用中の突然死で、扇風機にも原因かのように思われてしまうかもしれません。
しかし、突然死の季節別・地域別の統計については結論を出すのが難しい面があります。全ての突然死に対して、必ずしも解剖が実施されるわけではなく、推定の部分が多いからです。夏という気候自体にも突然死のリスクは潜んでいます。例えば、夏の暑さはビールを美味しくしてくれますが、アルコールには利尿作用もあります。それでなくても脱水症をおこしやすい季節です。それによって脳梗塞が多いという傾向もあります。また、飲酒は脈拍数を増加させて不整脈を誘発することもわかっています。入浴が血圧は変動を与えるのも確かです。
「夏の風呂上がり、飲酒中に扇風機にあたりながら突然死」というのは、医学的に考えると扇風機のせいというよりも、実際には上記のような他の原因の方が考えられると思います。
■寝るときの扇風機のつけっぱなしは、腹痛・下痢の原因にも……
東洋医学的な用語で「寝冷え」という言葉があります。実は西洋医学では「寝冷え」という病気や症状はないのですが、消化器系の症状については西洋医学的解釈が可能です。眠ると体全体での熱産生が落ちます。血流の分布も変わり、皮膚への血流が増加します。つまり体全体として冷えやすい状態となります。
冷えやすい状態で血流が変化すると、消化器系の血流も変化します。生理的な変化ですが、血流の変化は腹痛や下痢などを起こす機能性胃腸症に近い状態を引き起こす可能性があります。同様に、冷たい食べ物、かき氷などを食べても機能性胃腸症に似た状態が起きる可能性があります。
その意味では、夜寝るときに扇風機をつけっぱなしにして体全体を冷やし続けるのは、胃腸の健康のためには注意が必要かもしれません。
■暑い室内でも体温よりマシ? 体温で温まってしまう周りの空気
夏の外気は、体温よりも高い可能性があります。直射日光に曝されたアスファルトやコンクリートの上では、体温よりも高い空気が滞留しているかもしれません。汗の気化には湿度も関係しますが、体温より空気の温度が高いと、せっかくの気化熱を割り引いても、ひどい熱気として感じることになります。
一方で、温度のコントロールがしやすいのは室内です。よほど日当たりがよく密閉された空間でない限り、夏場でも室内の温度は体温よりは低いことが多いです。しかし、体温よりも温度が低く、空気の流れのない場所では、自分自身の皮膚が周囲の空気を温めてしまうことになります。
温まってしまう空気と周りの空気を簡単に入れ替えられるのが扇風機です。風を作って送ることで体が体温よりも冷たい空気と接することができ、快適な環境を作ることができます。
■扇風機2台使い&換気扇活用で、効率よく体感温度を下げられる
建物の構造によっては窓を開けられないこともありますが、外気温が室温よりも涼しい場合、外の空気を上手に取り入れない手はありません。室温や外気温が40度を超えるような場合は別ですが、「外気温<室温<体温」が成り立つ場合、2台の扇風機を使うことで、より効率よく室内を涼しくすることも可能です。
まず、室内の熱気を外に出すために、1台の扇風機を窓を開けて外向きに使います。扇風機は羽の後ろの空気を吸い込んで前方に送り出す構造です。別の窓を開けておいて空気の通り道を作ります。さらにもう1台の扇風機で、体に風を送ります。ヒートアイランドが起きているような地域では難しいですが、涼しい外気を取り入れつつ、体温を下げることができます。自宅のようにキッチンがある室内なら、換気扇を使って熱気を外に出しながら扇風機を使うと、上記の扇風機の2台使いと同様の効果が得られます。
■扇風機はエアコンと一緒に使うのがポイント
エアコンからの冷気は冷やしたい空間に届くとは限りません。溜まった冷気を拡散させるのに扇風機は役に立ちます。エアコンの吹き出しから遠い場所に冷気を送ることも可能です。熱帯夜の場合、エアコンと扇風機を併用すれば、温度設定を数度上げることができるので、節電効果も期待できます。
都心ではヒートアイランド現象があるので、団扇と浴衣による夕涼みは死語となって夜もエアコンが必要な状態です。自然の風ではありませんが、扇風機を使って風による気化熱で体温を冷やすほうがよいといえそうです
高血圧は国内で最も多い生活習慣病で、患者数は4,300万人にものぼります。急に血圧が上がっても自覚症状がないことも多いですが、血圧の急上昇を繰り返すと脳卒中や心筋梗塞、虚血性障害などの原因になるため注意が必要です。そこで今回は急に血圧がったときの症状や対処法、病院を受診するべきケースについて解説します。
目次
急に血圧が上がった時の症状
急に血圧が上がる原因
激しい運動・運動不足
精神的ストレス
寒さ
塩分の過剰摂取
多量の飲酒
喫煙
血圧が高い時の過ごし方
ベルトを緩めてゆっくり横になる
6~8時間の睡眠時間を確保する
部屋では靴下やスリッパを履く
病院を受診するべき症状
1日に何度も血圧が上がる
血圧160/100mmHg以上が続く
血圧180/120mmHg以上になったら危険
急に血圧が上がった場合は循環器内科・内科の受診を
急に血圧が上がった時の症状
高血圧とは、血圧が以下の数値になった場合に診断されます。
収縮期血圧(上の血圧):140mmHg以上
拡張期血圧(下の血圧):90mmHg以上
上記の両方を満たす場合
少し血圧が上がったくらいでは自覚症状が出ないことがほとんどですが、急激に血圧が上がったときは以下のような症状が現れることがあります。
めまい・ふらつき
頻尿
頭痛
吐き気
動悸
肩こり
手足のしびれ・むくみ
下肢冷感(足の冷え)
背中の痛み
息切れ・呼吸困難
高血圧によって合併症のリスクが高まっているときは症状が現れやすくなります。しかし、上記のような症状は血圧と関係なくても出てくることがあるため、自覚症状がないまま脳卒中や心筋梗塞などの病気にかかってしまうこともあります。
急に血圧が上がる原因
血圧は一定ではないため少しの刺激ですぐに変動しますが、急に血圧が上がった場合は以下のような原因が考えられます。
激しい運動・運動不足
激しい運動をすると一時的に血圧が上がりますが、ほとんどの場合は楽な姿勢で休めば血圧が下がるため、問題ありません。
一方、運動不足でも血圧が上がる点に注意が必要です。適度な運動は余分な塩分を体外に排出する効果があるため、運動不足になると血圧が上がってしまいます。血圧の上昇をおさえるには、ウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動を中強度(息が軽く上がり、ややきついと感じる程度)で行うと効果的です。運動時間は1日30分以上、もしくは週に3時間以上取り入れましょう。
精神的ストレス
精神的ストレスと血圧は深い関係があります。何らかのストレスを受けて緊張状態になると交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上昇します。たとえば、以下のような要因で血圧が上がりやすくなります。
寒暖差ストレス
環境の変化
緊張状態になりやすい性格(完璧主義、競争心が強い、不安が強いなど)
また、自宅でリラックスしているときに血圧を測ると正常なのに、病院で測ってもらうと緊張やストレスで高血圧と診断されてしまうこともあります。そのため、日頃から自分の血圧の変動をよく掴んでおくことが大切です。
寒さ
寒さを感じると血管が収縮するため、血圧が上がりやすくなります。たとえば、以下のような状況で血圧が上がりやすくなります。
暖かい部屋から寒い屋外に移動したとき
就寝中に尿意を感じて起きたとき
早朝に起きたとき
冷たい水や氷を触ったとき
冬は血圧が上がりやすく、高血圧の方は夏と冬の血圧差が10mmHg程度あることも少なくありません。
塩分の過剰摂取
日本人は塩分摂取量が多くなりがちですが、塩分を過剰摂取すると血圧が上昇します。血液中の塩分濃度が増えると、体が血液の濃度を一定に保とうとして水分を増やします。その結果血管にかかる圧力が上昇し、血圧も上昇するという仕組みです。
日本高血圧協会が作成した「高血圧治療ガイドライン2019」によると、高血圧の治療改善には、1日の食塩摂取量を6g未満にすることが推奨されています。
【減塩する工夫】
ドレッシングや調味料を使い過ぎない・低塩の調味料を使う
めん類の汁は残す(汁をすべて残せば2~3g減塩可能)
外食や加工品を控える(塩分過多になりやすい)
3食バランスの取れた野菜中心の食事を心がける
過食を避ける
多量の飲酒
アルコールを飲んですぐは血圧が下がりますが、継続して一定量以上摂取すると血圧が上昇します。1日に摂取するアルコール量は男性20~30mL、女性10~20mL/日以下に抑えることが重要です。
【アルコール20~30mLの目安】
日本酒:1合
ビール中瓶:1本
焼酎:半合
ウィスキー・ブランデー:ダブル1杯
ワイン:グラス2杯
また、お酒は毎日飲むのではなく週に2回以上の休肝日を取ることで高血圧の予防につながります。
喫煙
たばこに含まれるニコチンには交感神経を刺激する作用があるため、喫煙すると血圧が上がります。また、喫煙すると動脈硬化や心筋梗塞、狭心症のリスクも高まってしまいます。もともと高血圧の方が喫煙すると非常に危険なため、禁煙はもちろん受動喫煙も避ける必要があります。
血圧が高い時の過ごし方
ここでは、血圧が高いときの対処法や血圧上昇をおさえる方法を紹介します。
ベルトを緩めてゆっくり横になる
急に血圧が上がったときは、まずは心身ともにゆっくり休むことが大切です。ベルトをきつく締めると腹部が締め付けられ、血圧が上がりやすくなってしまいます。そのため、ベルトをつけている場合は緩めて横になり、静かな部屋でゆっくり休養しましょう。
6~8時間の睡眠時間を確保する
充分に睡眠時間が取れていなかったり、睡眠の質が低下したりしている場合は血圧が上がりやすくなります。適切な睡眠時間は個人差がありますが、厚生労働省は6~8時間の睡眠を推奨しています。睡眠時間が5時間未満の方は高血圧になりやすいため、注意が必要です。
部屋では靴下やスリッパを履く
冬の時期に裸足で過ごしていると、冷たい床に触れたときに血圧が急上昇してしまうことがあります。そのため、部屋では靴下やスリッパを履き、足元が冷えないように工夫しましょう。暖房や電気カーペットを使用するのも良いですね。トイレや廊下など、冷えやすい場所は特に血圧が上がりやすいため、注意してください。
病院を受診するべき症状
一時的に血圧が上がっても、安静にすれば下がってくるようであればすぐに病院を受診する必要はありません。しかし、以下のような症状がある場合はできるだけ早めに病院を受診しましょう。
1日に何度も血圧が上がる
血圧の急上昇を1日に何度も繰り返すと、脳卒中や心筋梗塞などの発病リスクが上がってしまいます。この場合は循環器内科や内科を受診しましょう。
早朝高血圧(モーニングサージ)
明け方から起床時に血圧が急上昇するのが早朝高血圧です。朝、血圧が上がるのは正常な現象ですが、早朝高血圧の場合、急激に上昇してしまいます。また、日中は下がってしまうので、自分で測定しないとわからないため、見過ごされやすいです。モーニングサージが高齢の人や動脈硬化が進んでいる人などに起きると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしやすくなってしまいます。
血圧160/100mmHg以上が続く
血圧160/100mmHg以上が続く場合は、ほかの症状がなくても早めに病院を受診しましょう。このとき、血圧を記録しておいたメモなどを持参すると診察の際に役立ちます。急に血圧が上がっても自覚症状がないことも多いため、定期的に血圧測定をする習慣をつけることが重要です。
血圧180/120mmHg以上になったら危険
血圧が180/120mmHg以上になったら解離性動脈瘤や心不全、心筋梗塞、狭心症などの危険性があります。すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
急に血圧が上がった場合は循環器内科・内科の受診を
普段は血圧が高くない場合でも、急激な血圧上昇を繰り返すと血管が損傷してしまうことがあります。以下のような症状がある場合は高血圧緊急症の恐れがあるため、早急に循環器内科や内科を受診しましょう。
血圧の急激な上昇を何度も繰り返す
1日に何度も血圧の上昇を感じる
血圧160/100mmHg以上が続く
また、減塩や運動習慣、ストレスの発散など、日頃から血圧が上がりにくい生活習慣を取り入れることも非常に重要です。
大塚 亮
《略歴》
1996年大阪市立大学医学部卒業、淀川キリスト教病院等で研修。2002年大阪市立大学大学院医学研究科循環器病態内科学修了
2002年Columbia Presbyterian Medical Center, Adult cardiology2005年大阪市立大学医学部附属病院循環器内科 博士研究員
2008年大阪市立大学医学部附属病院循環器内科 病院講師2010年西宮渡辺心臓脳・血管センター 画像診断部部長
2014年当院の非常勤勤務から院長となる。
《資格》日本循環器学会認定 循環器専門医
《所属学会》日本内科学会
日本循環器学会日本心臓病学会
プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。食生活部門の第3位は――。(初公開日:2021年8月10日)健康を守るためには、どんな食事をとればいいのか。『長生きしたけりゃ小麦は食べるな』(アスコム)を出した医師の本間良子さんは「小麦の食べ過ぎは病気リスクを高める恐れがある。体調不良が続いている人は、まずは3週間、ふだんの食事から小麦を抜いてほしい」という――。
「小麦」を中心にした食生活は健康に大きな影響をおよぼす
疲れが抜けない、体が重だるい、慢性的な便秘や下痢、頭痛や関節痛、肌荒れ、生理不順……。こんな不快な症状が気になって病院へ行っても、「とくに大きな異常はないですよ」といわれる人は少なくないと思います。
そうして、なんとなくやり過ごしてきた不快な症状の原因が、実はあなたが毎日食べている「小麦」だという可能性があると知ったら、どうでしょうか?
毎朝食べている食パン、昼ごはんに食べるうどん、パスタ、そばなどの麺類、おやつの菓子パンやスナック類、そして、夕食のカレーやシチュー、ピザ、餃子。ごくありきたりのふだんの食事に、不快な症状の根本的な原因があるかもしれないのです。
まず、次のチェックリストをやってみてください。
□しつこい倦怠感を感じる
□朝から元気が出なくてなかなか仕事に向かえない
□ちょっとしたことにイライラしてしまう
□顔や手足がむくみやすい
□肩や背中がこっている
□昼食後(15~16時頃)、よくぼんやりする
□夜になると目が冴えて寝つけない
□朝起きるのがつらくてなかなか起き上がれない
□お腹の調子があまりよくない(慢性的な便秘・下痢など)
□お腹まわりやお尻の脂肪が気になる
□風邪がなかなか治らない
□いつまでも咳が続く
□肌荒れ(アトピー性皮膚炎)がひどい
□生理不順がひどい
□人名や昨日食べたものなどが思い出せない
□ネガティブな考えにとらわれてしまう
3つ以上チェックがついた人は、いますぐ「小麦」をやめる食生活を強くおすすめします。パンや麺などの「小麦」を中心にした食生活は、あなたが思っているよりも健康に大きな影響をおよぼしているからです。
小麦の摂取過多が体調不良を引き起こす
「でも、私は小麦アレルギーがないから大丈夫」
そう思って、毎日小麦を食べている人はたくさんいます。いわゆる「小麦アレルギー」は、小麦を摂取すると体の各所でアレルギー反応を起こす症状です。たしかにあてはまる人は多くはありません。
しかし、私は「グルテン不耐症」の人は、日本にはたくさんいるのではないかと見ています。グルテン不耐症とは、小麦の消化・吸収がうまくいかず、体の中に炎症を引き起こしやすくなる症状のことです。「グルテン」は小麦のたんぱく質です。
グルテン不耐症には、生まれつきの遺伝的な要素も関係していますが、それよりも、小麦をたくさん摂りすぎているせいで、グルテンに敏感になってしまう人がたくさんいるのが現状です。つまり、知らず知らずのうちに、体が許容できる範囲を超えた小麦を食べてしまっている可能性があるのです。
では、小麦を食べると体の中でどのようなことが起こるのかを見ていきましょう。
危険にさらされる腸内環境
小麦のタンパク質「グルテン」は、分解されにくいという特徴があるので、腸の中にとどまります。そのうえ、腸の粘膜に「くさび」のように入り込んでしまいます。これは便としても出ないし、栄養としても吸収されません。すると、粘膜が炎症を起こし、体の不調や肥満などにつながります。
さらに、大きな問題があります。グルテンを構成するタンパク質のひとつ「グリアジン」が「ゾヌリン」という物質を分泌させることです。ゾヌリンは細胞と細胞のあいだを開く性質を持っていて、本来はとても重要な働きをする物質です。
ゾヌリンが腸で分泌されると、しっかりと閉じられている腸の細胞と細胞のあいだが開き、食べもの(栄養素)の吸収がよくなります。
ところが、小麦を毎日食べ続けていると、ゾヌリンが大量に分泌されて、腸の細胞と細胞のあいだが開きっぱなしになってしまうのです。グリアジンが腸壁の細胞に結合して刺激し、ゾヌリンを分泌し続けるためです。
すると、どうなるでしょうか? まるで玄関が開けっぱなしの家に悪者が次々と侵入してくるような状態になります。
「腸もれ」を発端に、体のあちこちで炎症が起きる
このように、腸壁の細胞と細胞のあいだが開き、ごく小さな隙間ができてしまった状態を「リーキーガット」といいます。英語でガットは「腸」、リーキーは「もれる」を意味します。日本語に訳すと「腸もれ」です。
小さいとはいえ、隙間は隙間。腸壁に隙間ができると、そこから腸内にいる細菌や毒素、未消化の食べものなどが体内へどんどん「もれ出て」いきます。すると、「これは大変だ!」と免疫システムが働いて、抗体がつくられ、異物を攻撃しはじめます。
もちろん、このとき免疫機能が働くことは、とても大切な体の機能です。しかし、開きっぱなしのドアから次々と入ってくる毒素や異物と戦っていると、過剰な攻撃となって、まわりの腸壁の細胞まで傷つけてしまいます。
こうなってしまうと、腸内環境はますます乱れ、しかも乱れの原因となる毒素をどんどん体内に取り込んでしまうという悪循環ができあがります。
グルテンは、体のいたるところに炎症が起きる原因となり、さまざまな不調を招いているのです。それこそ、腸が炎症すれば下痢や便秘になるし、脳や神経が炎症すれば認知症の原因となります。
まずは3週間、「脱小麦」生活を試してみる
日々の不快な症状が気になっても、なんとなくやり過ごしている人は多いと思います。その不快な症状の原因が、実は毎日食べている「小麦」かもしれないと知って、驚かれているかもしれません。
私のクリニックではグルテン不耐症の人を対象に、まずは3週間の「脱小麦」生活をしていただきます。たった3週間、小麦を抜いただけで、みなさん驚くほど体調が改善します。
「小麦を食事から抜くなんて大変そう」と思われるかもしれませんが、「脱小麦」のやり方はとてもシンプルです。
「脱小麦」生活のコツ
①まずは1週間、ならし運転で「脱小麦」生活を体験する
②「小さい小麦」は無視。主食の「大きい小麦」だけをやめる
③米粉などを「代用」して、好きな食べものをあきらめない
④平日だけ「脱小麦」。休日は心のリセットをする
⑤症状の変化を記録して、モチベーションをキープ
ふだんの食事から3週間、小麦を抜くだけです。大切なのは、無理をすることなく続けていくこと。3週間続けているうちに、あれほどしつこかった不快な症状が軽くなって、体調がよくなり始めたことを実感できるはずです。
本書には、「小麦」が招く不調の原因についてもっと詳しい解説や、「脱小麦」の食生活をすすめるうえでの具体的なアドバイスなどを載せています。ぜひ本書を参考にしながら、「脱小麦」生活を実践してみてください。
---------- 本間 良子(ほんま・りょうこ) スクエアクリニック院長 米国発達障害児バイオロジカル治療学会フェロー。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学病院総合診療内科入局。副腎疲労の夫をサポートした経験を活かし、米国で学んだ最先端医療に基づく栄養指導もおこなう。また、日本で唯一、副腎疲労、グルテンフリー外来を開設している。