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就寝中にこむら返りが起きる理由 足の疲労だけが原因ではない【健康の「素朴な疑問」】

足の疲労だけじゃない(C)PIXTA© 日刊ゲンダイ ヘルスケア 足の疲労だけじゃない(C)PIXTA

【健康の「素朴な疑問」】#22

【Q】寒くなると突然朝方に足がつって目が覚めます。肉離れを起こしたような激しい痛みです。運動して足が疲れているわけでもありません。病気なのでしょうか?

【A】足がつることを一般的には「こむら返り」、医学的には「腓腹筋けいれん」と呼びます。こむらとはふくらはぎ=腓腹筋を指すからです。ふくらはぎは第二の心臓と呼ばれ、足先に下りてきた血液を心臓に押し戻すポンプのような働きをしていて、絶えず伸び縮みしています。そのため、けいれんしやすいのです。なかには足の裏や指がつる人もいます。

足がつる原因は過度の疲労のほかに下肢静脈瘤や血管炎、甲状腺機能低下症や糖尿病、肝硬変などの病気や高血圧症やぜんそくなどの薬などがあります。

就寝中の場合は、加齢に伴う筋肉量の減少、筋肉疲労の蓄積、動脈硬化、睡眠時の発汗による電解質(ミネラル)の消費、冷えによる血流の低下などが考えられます。

睡眠中のこむら返りを回避するためには、先述したように、病気や薬が関係している場合は、まずはそれを改善することです。ですから、長期間頻繁に足がつるようなら、かかりつけの医師に相談する必要があります。

なお、高齢者は夜間頻尿が気になるのか、寝る前に水分をとらないよう心がけている場合が少なくありません。しかし、心筋梗塞や脳梗塞などを予防するためにも、寝る前にコップ1杯程度の水分を取るとよいでしょう。また、寒くなったら足を締め付けないレッグウオーマーを使用するのもよいと思います。

また、漢方薬「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」の服用も効果的です。足がつった時や“足がつりそうだ”と感じたときなどに、すぐ服用するのも手です。

ただし、だるさ、かゆみ、発疹などの副作用も発症しやすいので、服用する際は医師と相談することです。

(弘邦医院・林雅之院長)

世間のイメージは間違いだらけ?腰痛に関する「6つの誤解」を専門医が解明

腰痛 誤解 吉原先生© KARADAs 提供 腰痛 誤解 吉原先生
(画像はイメージです/PIXTA)

「腰痛」は日常生活において身近な症状です。しかし、身近な症状だからこそ世間には「都市伝説」のような誤った情報が溢れていると、アレックス脊椎クリニック院長の吉原潔氏はいいます。腰が悪い人は重いものを持ってはいけない、天気が悪いと腰痛が悪化しやすい、などの説は本当なのでしょうか、みていきましょう。

目次

  1. ときには医師も間違える…正しい「腰痛」の対処法
  2. 誤解1.腰が悪い人は重いものを持ってはいけない
  3. 誤解2.腰が悪い人は体をそらしたり、ひねってはいけない
  4. 誤解3.急に腰が痛くなったらまず冷やす
  5. 誤解4.腰が痛い人は痛みが取れるまで安静に
  6. 誤解5.天気が悪いと腰痛が悪化しやすい
  7. 誤解6.腰痛でコルセットをつけると筋肉が弱る

ときには医師も間違える…正しい「腰痛」の対処法

ミドル・シニア世代のみならず、デスクワークなどで若い世代にも身近な体の不調である「腰痛」。インターネットの普及もあり、世間には「腰痛」に関するさまざまな説が存在します。

しかし、世間では「当たり前」とされていても、医師の視点から見た場合「間違い」である情報があります。また、ときには医師も誤って指導している場合があるため、以下では腰痛に関する「6つの誤解」を検証、解明していきます。

誤解1.腰が悪い人は重いものを持ってはいけない

腰痛患者さんに「重いものは持たないほうがいいですよね?」とよく聞かれます。それに対して医師も「無理して重いものを持たないほうがいいですね」と指導することが多いかと思います。

患者さんはそれを「やっぱり腰が痛いうちは重いものを持ってはいけないのだ」と少し誤って納得してしまうのです。実は「持ってはいけない」のではなく、「無理をしてはいけない」だけなのです。

実際に、重いものとは何㎏以上と具体的な数値などあるはずもなく、人によって異なります。

もしも重いものを持つことに不安があるなら、軽いものから始めて、徐々に重量を増して慣らしていけばよいと思います。

重いものを持たない・持てないと逃げるのでなく、持てるような体を徐々に作っていただきたいものです。また、なるべく体に密着させて持ち上げると、重心の移動がないので、同じ重さでも軽く感じられます。

誤解2.腰が悪い人は体をそらしたり、ひねってはいけない

これも多くの方が誤解しています。トイレで用をたしてお尻を拭くときには、体をそらしたり、ひねったりしませんか。自転車に乗る時にも、少しはひねらないと乗れませんね。

したがって厳密な意味では、多少は腰をそらしたり、ひねったりしない限り、日常生活はできないのです。

そうなると、「重いもの」の場合とまったく同じで、徐々に慣らして行き、そらしたり、ひねったりが無理なくできるようにするべきだと思います。

「そらしたり、ひねってはいけない」と指導する医師もいますが、あくまでも「無理せず行う」「適度に行う」ということが大切で、「〜しない」というのは誤りです。

誤解3.急に腰が痛くなったらまず冷やす

急に腰が痛くなることをぎっくり腰といいますが、ぎっくり腰の原因はさまざまです。にもかかわらず、筋肉の微細な損傷・断裂などとの「思い込み」が強く、急性期には冷やすと記載されている書物やインターネットサイトが後をたちません。

腹痛のときにお腹を冷やして対応することがないように、同じ胴体である腰や背中も、冷やして対応する必要はありません。

よっぽど強くぶつけて腰が腫れているなら別ですが、ぎっくり腰は必ずしも外傷とは限らないのです。したがって、あわてて冷やす必要はありませんし、もちろん、温める必要もありません。

温めるや冷やすに関連して、湿布について触れておきます。多くの人は「冷湿布は冷やす、温湿布は温める」と誤解しています。

実際は、湿布に含まれる成分によって皮膚が刺激されて、冷たい感じや温かい感じがするだけで、際立った温度変化はありません。使い捨てカイロを触れば温かいですが、温湿布の上に手を当てても温かく感じることはないのです。

実は、冷湿布や温湿布というのは30年以上昔の分類で、現在の湿布は痛み止め(NSAIDs)を含んだものが主流です。

誤解4.腰が痛い人は痛みが取れるまで安静に

「急性腰痛に関しては、安静よりも活動性維持のほうが有用である」と腰痛診療ガイドライン(医者向けの専門書)に書いてあります。

いきなり起こった腰痛(急性腰痛症・ギックリ腰)で、痛みのため動きがとれずに、当日、もしくは翌日くらいまで安静にせざるを得ない状況はやむを得ません。

しかし、いつまでも安静にして休んでいないで、可能なかぎり普段の生活に近付けていくという営みは、とても大切です。

一方で、歯を食いしばって痛みに耐えながら普段と同じように生活して、かえって痛みが増してしまうのもよくありません。あくまでも、「じっと安静にしているよりは、少しずつ動いてください」ということであって、決して無理を強要するものでないことにご注意ください。

3ヵ月以上腰痛が続いている慢性患者さんでは、むしろ腰痛は動かして治すと考えなくてはいけません。これもガイドラインに強く推奨すると明記されています。

すなわち長引く腰痛患者さんでは、安静にしてよくなるのを待っていてもダメで、徐々に動かしていかないと筋肉が弱っていくだけなのです。

誤解5.天気が悪いと腰痛が悪化しやすい

腰痛に限らず、昔から天候と痛みには相関関係があるといわれています。自分の痛み具合で、天気予報が可能という人もいます。

しかし、温度、湿度、気圧など様々な観点から研究がなされましたが、これを統計学的に証明した研究報告はいまのところありません。

誰でも、天気がよければ気分も晴々するけれども、天気が悪いと気持ちがダウンすることが多いのではないでしょうか。通り雨の瞬間だけ痛くなり、雨が止むと痛みが取れることもないように思います。

ただ、逆の立場から、天候と腰痛は関係ないと証明した研究もありません。もしも、気持ちの切り替えで痛みが変わるなら、気持ちはいつも前向きに持っていたいものですね。

誤解6.腰痛でコルセットをつけると筋肉が弱る

腰痛でつらいときにコルセットをつけると、多くの場合、動きが楽になります。痛みに応じて日常生活を送るために、痛みの強い時期にはコルセットを装着するのがよい方法だと思います。

しかし、コルセットをつけると筋肉が弱るので、つけたくないという人が後を絶ちません。コルセットで痛みが軽減するならば迷わず使いましょう!

コルセットの有無にかかわらず、姿勢を保つために腹筋や背筋は絶えず働いているのです。したがってコルセットをつけたからといって、大きく筋肉が弱ることはありません。

実際、コルセットをつけても、前屈や後屈はもとより、体をひねることも可能ですよね。「痛いのに筋肉が弱るからといってコルセットをしない」よりも「コルセットをしないせいで痛くて体を動かせない」ほうがよっぽど筋肉が弱ります。

ましてギックリ腰のような急性の腰痛で、短期間のコルセット着用ならば、筋力が弱ることはまずないでしょう。

長期間(主に3ヵ月以上)のコルセット着用は、確かに問題があります。それはコルセットをつけていることが問題なのではなく、3ヵ月もの長い期間にコルセットを外せるように腹筋や背筋を鍛えてこなかったことに問題があるのです。

腰痛の人は症状が軽減したら、腹筋や背筋を鍛える必要があることを忘れないでください。

吉原 潔(よしはら・きよし)

日本医科大学卒業、医学博士。

大学病院にてスポーツ医学、人工関節、脊椎内視鏡手術など多岐にわたり研鑽し、帝京大学溝口病院で整形外科講師として教鞭をとる。

スノーボードFISワールドカップ医事主任を歴任、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。

医師でありながらフィットネストレーナーの資格も持ち、自らの筋トレ・ウエイトコントロールの体験を元に、患者のリハビリ指導やボディメーキングのアドバイスも行っている。

日本整形外科学会専門医、

日整会内視鏡下手術技術認定医、

日本内視鏡外科学会技術認定医、

日本脊椎脊髄病学会指導医、

脊椎脊髄外科専門医、

日本スポーツ協会公認スポーツドクター、

全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会公認パーソナルフィットネストレーナー(NESTA)、

食生活アドバイザー

●アレックス脊椎クリニックHP

リハビリや体操で硬くなった関節包を外側から引き伸ばす【五十肩を徹底解剖する】

【五十肩を徹底解剖する】

五十肩とくくられて語られることの多い中高年の肩痛のなかでも、頻度が高いものが凍結肩。通常は薬とリハビリで良くなりますが、なかには難渋することも。今回は凍結肩の手術治療についてお話しします。

リハビリでは、自分での体操や、リハビリの先生による治療で、凍結肩の主な原因となる、硬くなった「関節包」という肩の靱帯を外側から引き伸ばし肩が自由に動くようになることを目指します。

しかし、標的となる肩の靱帯は、体の表面から大まかに数えて皮膚↓皮下脂肪↓筋肉↓骨および骨に付着する靱帯と最深部に位置するため、漫然と外から動かすだけでは、時間を浪費するだけでいつまでも治らないことがあります。

そこでリハビリの代わりに、手術で肩関節の奥底でこびりついた靱帯を切り離し、一気に関節の動きを取り戻すのです。

ただ、目標となる靱帯までたどり着くためには、皮膚表面に大きな切開創をあけ、順に深くまで切り開いていかなければなりません。これでは目的は達せても周りの損傷も大きく、見た目のキズあとも目立つことでしょう。

この問題を克服するため、手術は関節鏡と呼ばれる内視鏡を用いて行います。1センチほどのキズを肩の前後に2~3カ所つくり、そのキズ孔から医師の目の代わりとなる内視鏡を、別の孔からハサミなどの道具を挿入して行います。

局所麻酔では深部まで届かないので全身麻酔を用います。通常1~3日程度の入院で行いますが、出血もわずかで30分程度で済むだけでなく、長い間苦労しても動かなかった肩が手術終了直後にはまっすぐ天井に向かって伸びるくらいにまで回復しています。表面のキズ孔自体はひと針ほど縫いますが、その保護は絆創膏を貼る程度で十分です。手術翌日にはシャワーも可能で、約1週後の抜糸後には肩まで湯船につかれます。

内容にもよりますが、家事や仕事復帰は体調次第で退院したその日から許可しています。また早期からリハビリを再開し、広がった肩が再度硬くならないようにします。

この手術を関節鏡下関節授動術といいます。次回は凍結肩に対する非観血的関節授動術について紹介します。

(安井謙二/整形外科医)

左側の背中の痛みの原因は?受診する診療科についても解説

背中の中でも左側が痛くて気になる、といった人は多いのではないでしょうか。この記事では左側の背中の痛みの原因や病気との関連性について解説します。また、痛みが引かない時に受診する診療科についても取り上げています。背中の痛みの原因がわからない、もしかして何かの病気なんじゃないかと考えると不安、といった人は参考にしてください。

目次

  1. 左側の背中の痛みの原因は?
  2. 左側の背中の痛みを感じる病気
    1. 背中の痛みとすい臓の関係
  3. 背中の痛みが取れない場合
    1. 市販薬を使う
    2. 肩甲骨のストレッチ
  4. 背中の痛みは何科を受診する?
  5. まとめ

左側の背中の痛みの原因は?

左側の背中の痛みの原因は、ストレスやストレッチ・マッサージのしすぎなどさまざまなものが考えられます。

例えば、ストレスは、体の働きをコントロールする自律神経の働きに影響を与えるため、ストレスによって自律神経が乱れることで背中に痛みが現れる人もいます。

また、マッサージは適度な量・強さであれば血流を良くしてくれるため、体にとってはいいものですが、しすぎることで痛みを感じる可能性があるため注意しなければなりません。マッサージが強すぎて、筋肉を傷つける可能性も考えられます。

左側の背中の痛みを感じる病気

運動などによって背中を酷使したわけでもないのに、背中に痛みや違和感がある場合、病気が原因となっている可能性があります。例えば、背中の左側が痛い場合は、以下のような部位の病気が考えられます。

  • すい臓
  • 心臓
  • 脊椎

すい臓は背中側にある臓器であるため、すい臓が何かしらの病気になると、背中に痛みを感じるようになります。すい臓の主な病気としては、急性すい炎や慢性すい炎、すい臓がんなどが挙げられます。特にすい臓がんは進行が早く、神経や血管に広がっていくことで背中に痛みが出ることが良くあります。

また、胃の病気で背中側に痛みを感じることも珍しくありません。例えば潰瘍が胃の背中側にできることで、背中が痛むケースもあります。胃潰瘍以外にも、胃炎や胃がん、胃ポリープなどが原因で背中側が痛くなることもあります。

心臓に関しては、心臓での痛みが放散痛となって背中で痛みを感じることがあります。放散痛とは、心臓の病気を抱えている人が心臓から離れている場所で感じる痛みのことです。狭心症や心筋梗塞などによって発生することがあります。

肺は、ちょうど背中のあたりにある器官です。そのため、病気に伴い背中が痛くなる可能性があります。具体的には、肺気胸や肺気腫、肺がん、肺炎などがあげられます。

脊椎は首や背中の骨で変形やヘルニア等による症状が現れる可能性もあります。

背中の痛みとすい臓の関係

先ほども触れているように、すい臓は胃の裏の背中側にある臓器で、バナナのような形をしている点が特徴です。すい臓に病気があると、お腹のあたりから背中にかけて痛みを感じるようになります。

背中が痛いからといって、必ずしも膵臓の病気であるとは断言できませんが、検査をしないことにはその可能性は否定できません。

病院を受診すると、すい臓だけでなく胃や十二指腸などの病気の可能性も考慮するため、胃カメラや腹部のエコー、採血検査などが行われるケースもよくあります。

背中の痛みが取れない場合

ここでは、背中の痛みがなかなか取れない場合にできる対処法について解説します。簡単にできるものもあるため、参考にしてください。

市販薬を使う

背中の痛みが続く場合、市販の鎮痛剤を服用することで、痛みを抑えられる可能性があります。ただし、薬の効果はあくまでも一時的であるため、服用後しばらくして再び痛みを感じるようであれば病院の受診を検討してください。また、薬の服用のし過ぎにも注意しなければなりません。鎮痛剤を頻繁に服用していると、胃潰瘍や腎障害といった副作用を引き起こす恐れもあります。

肩甲骨のストレッチ

すい臓や胃、心臓、肺などの病気ではなく、スポーツなどで背中周辺を使用したことが原因で背中が痛んでいるケースもあります。そのような場合は、肩甲骨周りのストレッチを行ってみてください。例えば、肩甲骨をほぐすように大きく腕を回すだけでも、痛みが改善されることがあります。また、お風呂に入り血流をよくすることも大切です。お風呂に入る際は、肩までお湯に浸かることを意識してください。

背中の痛みは何科を受診する?

背中に痛みを感じる場合、痛みの種類や原因によって受診する診療科は異なります。

まず体を動かす時に背中の痛みが発生する人は、背中の筋肉や周辺の骨に異常がある可能性があるため、整形外科を受診してみてください。スポーツなど、筋肉痛になる原因に覚えがある場合は、すぐに病院に行かず一度様子を見てもいいでしょう。

筋肉痛とは違った痛みである、背中の痛み以外にも頭痛や腹痛、胸の痛みなどがあるといった場合は、内科を受診してください。痛みの原因によっては、循環器科、呼吸器科の可能性もありますが、自分では判断できないため、まず内科を受診しましょう。万が一診療科が違っていたとしても、適切な診療科を教えてもらう・紹介してもらうことができます。

なお、受診する際は、以下の点を具体的に伝えられるようにしておきましょう。診察がよりスムーズになります。

  • 痛みはいつからあるのか
  • どういった痛みなのか
  • 痛みが発生するタイミング
  • 薬の服用の有無

など

まとめ

今回は、左側の背中の痛みの原因について解説しました。痛みの原因は背中の筋肉の使い過ぎによる筋肉痛や、ストレス、そのほかの部位の病気などさまざまです。痛みがいつまでたっても引かない、背中以外の場所も痛いといった場合は、早めに病院を受診してみてください。
水井陸

略歴

平成7年 北里大学医学部卒。形成外科・一般外科・麻酔科等を経て、横浜市立大学医学部整形外科入局。大学病院・国立病院・共済病院他、さまざまな病院に勤務。

日本整形外科学会認定専門医

日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

日本整形外科学会認定リウマチ医

日本体育協会認定スポーツドクター

身体障害者福祉法指定医

義肢装具等適合判定医

みずい整形外科HPイシャチョククリニックページ

朝夕3分でOK!腰痛を改善させる「おしり歩き」

■ポイントは骨盤。ゆがみを整えよう

実はこのゆがみを正す動きが「おしり歩き」に凝縮されているのだ。激しい運動をして調整する必要はない、と竹内氏は説明する。

「近年、骨盤の中の仙腸関節の働きが体のバランスを整える重要な役割を持つことがわかってきています。仙腸関節は骨盤のなかでも体の中心をつかさどる重要な箇所。

腰痛をはじめ、肩こりやうつなども、体の中心である仙腸関節の筋肉が硬くなるなど、正しく働かないことから起こると考えられる。ですからこの仙腸関節を柔らかくする動きをすることで不具合も改善するというメカニズムです」

仙腸関節を柔軟にし、骨盤を正しい位置に戻すことが大切。それができるのが、おしり歩きなのだ。

「おしり歩きでは、体の動きの中心である仙腸関節と股関節が動くことによって筋肉と靱帯も刺激され次第に柔らかくなっていく。右足と右肩、左足と左肩を同時に動かすので肩甲骨も刺激され肩こりも改善します。

継続しても改善しない場合は内臓疾患が潜んでいる場合があるので医療機関の受診をすすめています」

■腰痛を治す「おしり歩き」

【1】両手両足を伸ばして座る

おしり歩きに十分なスペース(約180cm・1畳分)を確保し、両手両足を伸ばして座る。背筋を伸ばし、顎を上げる。

【2】左手と左足を一緒に前に出す

腰が曲がりすぎないように気を付けながら、左手左足を同時に前に出そう。

【3】右手と右足を一緒に出す

次に右手と右足を思いっきり前に出そう。勢いをつけて動かせば、肩甲骨にも刺激が。繰り返して端っこまで進んだら、こんどは後ろ向きにおしり歩きをしよう。

実践するに当たり、竹内氏はこうアドバイスしている。

「できるだけ背筋をピンと伸ばし、顎は上げる。この正しい姿勢で行うことが大事。目安は畳1枚分程度を前に進み、進み切ったら同じ姿勢で後ろに戻るだけです」

ちなみに「おしり歩き」をする際、尾骨が硬く突き出ていて引っかかるくらいの人は、気が強すぎてストレスをためるタイプという。

「おしり歩きで、尾骨を『たたく』感覚で歩くと腰痛だけでなく、温厚になり気持ちも楽になります」 腰痛持ちの人は今日から実践してみてほしい!

安静時は痛みがあり痛くて夜も眠れない場合は「凍結肩」の可能性大【五十肩を徹底解剖する】

写真はイメージ© 日刊ゲンダイ ヘルスケア 写真はイメージ

【五十肩を徹底解剖する】

一般的に中高年の肩の痛みを「五十肩」と呼んでいますが、その中でも頻度の高い「凍結肩」について紹介します。これは明らかな原因がなく文字通り地面が凍結して固まったかのように著しい肩の可動域制限と痛みをきたす状態を指します。

肩関節は、二の腕の骨である上腕骨と、背中につく肩甲骨で構成されており、肩関節の中心には肩の可動性と安定性をつかさどる関節包という靱帯があります。私たちがバンザイしたり、ボール投げができるなど肩が自在に動くためには、この関節包がみずみずしく伸縮性に富んでいることが大事ですが、凍結肩では主に関節包に問題が生じています。

五十肩で来院された患者さんが、「手を膝の上に置いているような安静にしている時でも肩の痛みがある(安静時痛)」「痛くて夜も眠れない(夜間痛)」といった話をされると、まず凍結肩を疑います。

肩のレントゲンはスクリーニングとして必須ですが、骨の形は正常で特に異常はみつかりません。その上で、肩の可動域を調べます。①気をつけの姿勢から前方向へバンザイをしても水平程度しか上がらず、②小さく前へならえの姿勢から、肘を胴体につけたまま手を外側に開こうとすることがほぼできず、③気をつけの姿勢から背中に手を回してもベルトにも届かない--こういうとき、凍結肩と診断します。

凍結肩には、炎症期(疼痛期)、凍結期、解凍期と3つの時期があります。

患者さんが安静時痛・夜間痛を訴える場合、炎症期と判断しています。主な原因は、関節包が炎症を起こし、まるで火事を起こしたかのように真っ赤にただれているためです。風邪をひいて喉が痛いとき、鏡で喉の奥をのぞくと赤く腫れているのと同じ状態です。

凍結期では、伸縮性を持つ関節包が、火事が鎮まった後に残るススのように変化し、肩関節の中心の骨の間にベタッとこびりついた瘢痕になっています。火種はなくなったので安静痛・夜間痛はなくなりますが、可動域制限がひどいことと、動かしたときに生じる痛みが中心になります。

解凍期は、凍結期で制限された可動域が徐々に回復する時期を指します。

次回は凍結肩の各時期における考え方、治し方について紹介します。

(安井謙二/整形外科医)

“ぎっくり腰”になる人…共通している「誤った」体の使い方

突然腰に鋭い痛み…「ぎっくり腰」になってしまうと日常生活に支障をきたし、「なぜこんなことに」と原因を探っても自分ではなかなか思い出せないことがあります。

今回は、まほろば鍼灸整骨院院長の山田真氏が「ぎっくり腰」になりやすい人の体のクセとその対策について解説します。

目次

  1. 「前屈」でわかる体の歪み
  2. ぎっくり腰予防には「まずしゃがむ」
  3. 子供を抱き上げる際ぎっくり腰になってしまったAさんの例

「前屈」でわかる体の歪み

私は、患者さんを診る際必ず体の動きをチェックします。いわゆる「動診」です。

動診をすることで、体の誤った使い方や歪みがわかるだけでなく、日常生活の習慣や体の癖が見えてくるからです。

患者さんの動診をしているとき、多くの方に見られる気になる動きがあります。

それは、「前屈」です。いわゆる前にかがむ動作で、日常生活でも頻繁に行う動作のひとつです。患者さんの多くが「腰から」前屈をします。「何がいけないの?」と不思議に思うかもしれませんが、じつはこれが誤った体の使い方で、腰に負担をかけているのです。

これには背骨の構造が大きく関与しています。

背骨は、頚椎(けいつい)が7個、胸椎(きょうつい)が12個、腰椎(ようつい)が5個と細かく分かれています。つまり、背骨は細かく連続して動けるように構造されているのです。

前屈をする際の理想的な動きは、まず頭から前方に倒し、それから背中の上部、中部、下部と少しずつ倒していき、最後に腰、股関節を曲げていくという動きです。こうすることで、各背骨の関節がそれぞれ円滑に動き、その周囲の筋肉も無理なく動くことができます。

これができる方の前屈の姿勢は、背中全体が綺麗な曲線を描いて丸くなっています。これは、すべての背骨の骨がそれぞれムラなく少しずつ動いている証拠です。

しかし、腰から曲げて前屈する方は、腰周辺のそれぞれの関節をひとつずつ動かすのではなく体を腰から急激に曲げるため、動き過ぎている関節と動いていない関節のムラが激しくなっています。

この場合、前屈の姿勢は腰周辺の一部が大きく曲がり、それ以外の箇所は平らな状態です。このようにムラのある状態ですと、当然その周辺の筋肉にも緊張のムラができてしまいます。

金属を例にすると、アルミなどの薄い金属の板を1ヵ所だけ折り目をつけて曲げ、繰り返し何回も同じ箇所で曲げていくと金属疲労を起こし、やがて折り目の箇所で折れてしまいます。

人の体も同様です。普段腰から急激に曲げるように前屈をし続けると、やがて腰に負担がかかりひどい腰痛を起こしてしまうのです。

このような事態にならないためにも、普段から前屈をする際は、頭から曲げていき背中の上部から順に少しずつ曲げていき、最後に腰、股関節という具合に動かすように意識しましょう。そうすることで腰だけに負担が生じることが無くなり、関節、筋肉共にムラなく使えるようになります。

ぎっくり腰予防には「まずしゃがむ」

下にある荷物を持ち上げようとするときの動きにも注意が必要です。誤った体の使い方で、ぎっくり腰になる人が非常に多いのです。

下にある荷物を持ち上げようとするときにも前屈の動作が関与します。

ぎっくり腰になる方は、腰を曲げた状態で前屈をして、荷物を一気に持ち上げようとします。腰に負担がかかった状態で、さらに荷物の重さが腰にかかるため、腰周辺の筋肉が荷物の重さを支えられなくなり、ぎっくり腰を引き起こしてしまうのです。

腰の負担を軽くするためには、まずしゃがみましょう。しゃがんで下半身の強い筋肉を使って荷物を持ち上げるようにしましょう。そうすることで腰の負担はだいぶ軽減されます。

つい横着をして、しゃがまずに荷物を持ってぎっくり腰になってしまう人が非常に多いので、皆さんも十分気をつけてください。

子供を抱き上げる際ぎっくり腰になってしまったAさんの例

似たような状況でぎっくり腰になるケースは、小さなお子さんをもつお母さんによくみられます。

当院にも最近、このケースで30代の女性患者Aさんが来院されました。

Aさんにぎっくり腰の原因を聞くと、「お子さんを自転車の後部座席に乗せようと抱き上げた瞬間に腰に激痛が走った」とのこと。お子さんを抱き上げた状況を詳しく聞くと、「しゃがまずに中腰の状態で抱き上げた」ということでした。

ぎっくり腰を何度も経験している人は、日頃の体の使い方が深く関係しています。

荷物なのか、お子さんなのかという違いはありますが、どちらの場合も腰の筋肉だけを使って重さを持ち上げようとしたために腰に負担がかかり、ぎっくり腰が起きています。

重いものを持ち上げるときは、必ずいったんしゃがんで下半身の強い筋肉を利用してから持ち上げるようにしましょう。

以上のように、普段のなに気ない体の使い方で不調をまねくことがあります。体の構造を理解したうえで、なるべく体に負担がかからないよう意識しましょう。
山田 真(やまだ・まこと)

柔道整復師、はり師、きゅう師。まほろば鍼灸整骨院院長 美骨痩身サロンBELUNA代表。 1972年生まれ、神奈川県横浜市出身。明治大学商学部、明治東洋医学院専門学校柔整学科、森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科卒業。

「幸せは健康の上に成り立つ」という信条の下、大学卒業後は健康関連事業で人の生活に貢献している明治乳業株式会社(現 株式会社明治)に入社。入社4年を経過した頃、自分の独自色を活かして人の健康に貢献できないかと考え、脱サラして柔道整復師の資格取得を目指す。

7年間修業した後、2009年大阪府吹田市に、まほろば鍼灸整骨院を開院。開院後、施術回数は16万回を超えるが、足元から全身につなげていく施術をおこない、足指を正しく使えるように調整したところ、患者さんの様々な不調が劇的に改善。遠方からも評判を聞きつけて多数の患者さんが来院。

現在、来院する患者さんは筋肉の痛みだけではなく、内臓の不調、アトピー、頭痛、耳鳴り、めまい、姿勢矯正、産後骨盤矯正、発達障害、慢性疲労、自律神経失調症など多岐にわたる。2021年4月に『「足指」の力 体の不調がスッと消える3分つま先立ち体操』を出版。まほろば鍼灸整骨院Facebook

辛い腰痛は【伸ばして、温め、流す】深層筋から伸ばしてラクになる!スッキリストレッチ

冬場に腰痛が悪化する5つの原因とは?

・冷え

・血行不良

・水分不足

・運動不足

・長時間の同じ姿勢

等です。寒くなると筋肉量が少なく代謝の低い女性は冷える人が多くなります。

冷えや運動不足から血行不良に繋がり、長時間の同じ姿勢から固まった体は腰痛悪化の負のループが起こりやすくなります。

水分不足は体が固くなり眠くなりやすく、ダルくもなるのでそうなればますます動くのがおっくうになるもの。

冬場は隠れ脱水症状の方も少なくないので要注意です。

常温の水や白湯を積極的に飲み、今回ご紹介の伸ばす、温め、流すが叶うストレッチを取り入れてみて下さい。

スッキリ感が多く、体が軽くなるストレッチの条件

今回のストレッチでは骨盤周りから股関節、腰部、背部、腕、首と広範囲で伸びていきます。

私たちの体は縦、横、斜め、等様々なラインに筋肉がある為、ターゲットとなる部位が多いほどストレッチで得られる効果やスッキリ感は増します。深層筋から伸ばせるストレッチは、その上にある表層筋も伸びる為、連動する筋肉の相乗効果で多くの筋肉の活性化が期待できます。

効果的なストレッチのポイントは【深層筋から多くの部位を伸ばす!】ですが、深層筋から伸ばすためには土台が大切なんです。

上半身のストレッチを座って行う場合に床にぴったり付けておくと深層筋が伸びやすくなる土台は座骨です。

座骨© 座骨 座骨

座骨を安定させるという事は、ストレッチの際にマットや床に座骨をぴったりと着けて浮かせないということです。

土台を安定させることで坐骨神経を始め骨盤や股関節、背部の深層筋からたっぷり伸びるので、効果的かつ気持ちよさが抜群なストレッチが出来上がります。

あぐらで前にある足とは逆方向に体を倒すことがベースの姿勢が特徴的な今回のストレッチでは、側面から背中半分が伸びて座骨から手の指先までスーッとスッキリします。

たっぷりと伸びた背面は温まり、血行促進に繋がり冷えを緩和してくれます。

寒い季節に腰痛が悪化する原因を取り除き、改善へと導いてくれる簡単なのに効果的なストレッチのご紹介です。

やり方

Step1

右の足を前にするあぐら姿勢で座ります。左の踵は手前です。左右の踵の位置は縦にそろえておきましょう。

上半身を左の膝の方へ引っ張り、左手を左ひざの前へつきます。その上に右の手を添えたら右側のお尻から背面にかけて伸びているのを感じます。

この時に左右の座骨は動かさないように安定させておきましょう。

 

Step2

左手の上に添えている右の腕を床側から右のウエストを通り、右肩の高さまで上げます。

通ったところを戻り右耳の横まで右腕を戻します。この時に手の指先は遠くを通るようにしましょう。

これを10セット行ったら、スタートの手を合わせる姿勢で止まり一呼吸し上体を真ん中に移動させ背中や頭を真っ直ぐに戻します。

逆側も同じことを繰り返します。

miyuki

ピラティスインストラクター/ダンスインストラクター。12歳からクラシックバレエやジャズダンスを始め、その後モダンダンス、Hip Hop、ラテンダンス等を学ぶ。 ダンス旅行で訪れたNYでピラティスに出会い、帰国後ピラティスインストラクターのライセンスを取得。指導歴は18年。FTP認定マットピラティスインストラクター/ダイエット指導士/からだスキャンセルフマッサージ/ZUMBA Basic1/RYT200(ヨガ)など資格を多数所持。元モデル・レースクィーンとして活動した経験もあり。

【首こりは伸ばさず「縮める」が正解?】ガチガチの首がラクになる首こりほぐしのコツ

首のコリは放置すると危険

首の痛みの原因は様々。首の筋肉のこりが直接首の痛みを引き起こしていることもあれば、肩こりが首に広がっていたり、目の疲れ・頭の疲れが首の痛みとなって現れることもあります。すべての筋肉は複雑に絡み合い協力しあって動いているため、1つの原因を特定するのは困難。

まだ首の違和感しか感じていない方でも、そのまま首の筋肉の緊張を放置しておくと、頭痛や眼精疲労、肩こりや背中の痛みを引き起こしていしまう恐れもあります。

また、脳からの指令を全身に伝える神経が首の後ろを取っていることも良く知られていますが、首のコリによりその神経の働きにも良くない影響があるとも言われています。首に違和感を感じたら、放置せずに丁寧にケアしていきましょう。

首の緊張には「ゆるめる」が効く?

首のコリの原因の第1位は、なんといってもパソコン仕事や携帯操作ではないでしょうか。下を向く姿勢で長時間いることで、首が頭の重さを支えるために首の後ろ側の筋肉がずっと前に引っ張られている状態で緊張しているため、筋肉が硬くなったり疲労がたまったりしてしまいます。

この引っ張られている状態、過緊張状態の筋肉をほぐすのに、さらに引っ張るようなストレッチをするのは逆効果なこともあります。首のストレッチをするときに違和感を感じるという方や、ストレッチしたくても痛くて首が動かせないという方は、まずは首の筋肉をゆるめて負担を軽減。その上でさらにゆるめるような動きをしてあげましょう。

1分でできる首ゆるめ

床に座った状態、または椅子に座った姿勢でも行うことができます。リラックスできる姿勢で行いましょう。

やり方

1.両手を体の後ろの床につき、脚はラクな姿勢に(膝を立てるのがオススメ)

2.腕によりかかるように脱力し、首をすくめるような姿勢に

3.首回りの筋肉をゆるめた状態で軽く首を回す(頑張って大きく回そうとする必要はなし!)

4.次に右の腕に体重をかけて、首もそちらに傾ける。反対も同じように行い左右に揺れるように体重と首をゆらゆらと動かす

5.最後に肩を耳に近づけるようにきゅーっと力を入れて、吐いて肩の力を抜き、一気に脱力

頑張って回そう、動かそうとすると筋肉に余計な力が入ってしまうこともあるので、だらだらと重力に任せて動くようにしていきましょう。「頑張らない」で脱力すると、首回りのコリだけでなく、気持ちもリラックスしやすくなりますよ!

伊藤香奈

股関節ヨガインストラクター。会社員歴20年の長年の座り仕事&長時間通勤で、股関節と腰の痛みに悩まされる。解剖学とヨガ・ストレッチ・筋膜リリース・骨格調整などを学び自らの痛みを克服した経験をもとに、オリジナルメソッド「股関節ヨガ」を考案。「立つ・歩く・家事をする・仕事をする」といった日常の動きが楽になるほか、股関節が整うことで、美脚・美尻・むくみ解消・ボディメイクの効果や便秘解消といった女性に嬉しい効果もあると人気が広まっている。

「肩こり」を侮ってはいけない 頚椎症を解決する4つの簡単体操

首・肩の筋肉は一体となって収縮し、重い頭を支えている。

この筋肉の収縮が過剰になったり長時間続いたりすると、首や肩にこりを感じ、やがて首の痛みが生じたりスムーズに動かせなくなったりすることがある。スマホやパソコンの操作を日常的に長時間行っている人は、経験することの多い症状だろう。

しかし、「たかが肩こり」と侮ってはいけない。放置すると、首の骨や軟骨が変形して神経の圧迫を招き、腕の痛みやしびれなどを引き起こす。

さらに進行すると、手足のマヒや内臓の機能低下など、症状の重症化を招くこともある。こうした肩こりから始まる一連の症状を「頚椎症」と呼ぶ。

「最新版 首を伸ばして自分で治す! 頸椎症」(宝島社)の著者で、整形外科「竹谷内医院」(東京都中央区)の竹谷内康修院長が言う。

「首や肩、腕に痛みやしびれが生じて整形外科などに行くと、たいていはレントゲンを撮り、特に異常がなければ痛み止めの飲み薬や湿布薬を処方されます。しかし、これでは原因の根本的な解決にならず、やがてぶり返したり、悪化したりします。頚椎症の治療で大切なのは、筋肉の緊張を適切に緩和すること。ですから、首や肩のこりが慢性化したら『頚椎症の初期症状』と捉え、ストレッチなどの運動療法で筋肉の緊張を和らげることを始めるべきです」

頚椎症の症状が「ひとつながり」であることから、竹谷内院長は頚椎症を次のような0~4のステージに分類している。《ステージ0》頚椎症予備群。首・肩のこりや痛みはないが、首や肩の筋肉に張りが出て、首の動きが悪くなり始めている。

《ステージ1》痛むほどではないが、首や肩にこりがあるのを自覚している。

《ステージ2》筋肉のこりが高じて首や肩が痛い。寝違えを起こしやすい。

《ステージ3》腕にまで痛みやしびれが起きている。たいてい左右どちらかの一方の腕に起こる。

《ステージ4》両方の腕や足にしびれが起こる。加えて、触れても皮膚の感覚がなかったり手や腕のマヒを伴ったり、握力も低下する。手先を使う細かい作業がしにくい。

症状は、必ずしも0から4への順番で表れるわけではない。上位から急に表れることもある。現在は低いステージにいても、放置すれば将来的にステージ3や4に移行する恐れがあるのだ。

「頚椎症は、症状が表れた後も何のケアもしなければ、時間とともに悪化していく一方です。そこで頚椎症を改善するための『かんたん体操』を考案し、実際に患者さんにも指導しています。体操はステージごとに異なりますが、いずれも全部で4つの体操を連続して行うことを1セットとして毎日実践します」

ここでは全ステージ共通の2種と、ステージ0~2で行う2種の体操を紹介する。

《全ステージ共通》

■背骨伸ばし

①背もたれの高い(肩甲骨の半ばよりも高い)椅子に座る②背骨の丸みの頂点が支点になるように、タオルを丸めて背中に挟む③首の後ろで両手を合わせる④可動域いっぱいまで、ゆっくり背中を反らせる⑤反らしたところから、さらに最大限背中を反らし切る。1~2秒キープし、ゆっくり姿勢を戻す。これを10回行う。

■首倒し

①リラックスして椅子に座り、左手で椅子のヘリを持つ。猫背にならないように注意②首を右斜め前に倒す③右手を左耳の後ろ辺りに当てる。右手で頭を右斜め前に押し、10秒キープ。左右を変えて、反対側も同様に行う。10秒キープ×3回を左右行う。

《ステージ0~2》

■チンタック

①背筋を伸ばして椅子に座り、顎の先端に人さし指を添える②首の前側の筋肉に力を入れ、首が反らないよう、顎を指で押して、頭の位置を後ろにスライドさせる。最大限後ろに引いたところで1~2秒キープする。これを10回1セット行う。

■首反らし

①椅子に座り、左手で椅子のヘリを持つ。右手を左の肩から鎖骨の部分に当て、上から押さえる②その状態でゆっくり真上を向く③首を右に倒す。左前側の首筋の伸びを意識しながら、よく伸びたところで10秒キープ。このとき肩と鎖骨が上がらないようにする。反対側も同様に行う。1回10秒×3回を左右行う。

次回は、頚椎症を改善する生活マニュアルを解説してもらう。

「腰痛を絶対に放置してはいけない」痛みの専門医がそう断言する"医学的な理由"

腰痛には、絶対に放置していけないタイプがある。横浜市立大学附属市民医療センターペインクリニック内科の北原雅樹医師は「眠れないほど腰や背中が痛む、やたらつまずく、急に体重が減る。これらの症状があったら今すぐ病院に行ってほしい」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)

「たかが腰痛」その油断が命取りになる

腰痛に悩まされている日本人は2800万人に上ると推定されています。これは4人に1人が何らかの腰痛の症状を持っていることになります。腰痛人口は他の病気やケガよりも多く、まさに国民的な症状だと言えます。

最新の厚生労働省『国民生活基礎調査』(2019年版)によると、病気やけがの自覚症状を持つ人のうち、腰痛を訴える人が男性は1位、女性は肩こりに次いで2位となりました。一方の通院率は男性では6位、女性では5位という結果になりました。このデータからも、日本人の多くが腰痛に悩まされている実態が分かります。

腰痛と言えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(きょうさく)などが知られています。ところが、そのようなケースは実は少ないのです。原因が特定できる「特異的腰痛」は15%。残りの85%は「非特異的腰痛」と呼ばれる原因不明の腰痛です。医師にも原因が分からないのです。

本稿は、意外と知られていない腰痛を取り上げます。最初は「絶対に放置してはいけない腰痛」がテーマです。腰痛の原因は腰ではなく、実はがんや大動脈瘤などの命に関わる病気がかくれている恐れがあります。

「急性の腰痛」と「慢性の腰痛」

腰痛は、2種類あることをご存じでしょうか。眠れないほどの痛みがある「急性の腰痛」と、長引く「慢性の腰痛」です。

絶対に放置してはいけない腰痛は「急性の腰痛」です。大きく2つあります。1つはがんや大動脈瘤などの原因がある「二次性の腰痛」。これは命の危険も伴いますから、痛みが強かったら、直ちに医者に行き精査・治療をしてください。

もう1つは、ごくたまに起こるギックリ腰で「急性一過性」と呼ばれます。普段は腰の痛みなど気にしなくても大きな問題にならないことが多いですが、このギックリ腰だけは初期対応をしっかりすることが肝要です。その意味で、放置せずすぐに医者に診てもらうことが大切になります。

長引く慢性の腰痛も大きく2つのタイプがあります。1つはいつも何となく腰痛がある人のギックリ腰で「慢性腰痛の一過性増悪」と呼ばれます。急性、慢性合わせてギックリ腰への対処は極めて重要です。

もう1つは、いわゆる「慢性腰痛」で原因は複雑で多くの人が苦しんでいます。「急性痛と慢性痛の違い」は(図表1)をご覧ください。本稿では命に関わる急性の腰痛とギックリ腰について解説します。

急性腰痛の原因は分かりやすいです。主な原因は、骨折などのケガや病気、身体が傷ついたり腫れたりすることです。痛みは身体に対する警告システムです。何かがおかしいと知らせ、身体に有害なことが起こらないようにするのです。

CT検査などで診断することが有用です。手術などの治療で傷や腫れが治るとともに痛みも消えてゆきます。薬物治療が顕著に効くことも特徴です。

急性腰痛は“命の危機”を知らせるアラーム

「寝ていても目が覚める」ほどの痛みが急性の腰痛です。安静にしていられないというのは極めて危ない状態です。痛みで七転八倒するというのは、痛みに耐えかねて、楽な姿勢を探しているからです。慢性の腰痛のほとんどは寝ているときには痛みません。痛くて目が覚めるのではなく、目が覚めた時に痛むのが慢性の腰痛です。

もしも熟睡しているときに足の裏に画びょうを突き刺したら、飛び起きますよね。急性の腰痛はそれ以上の痛みで、全身麻酔などをかけないと眠れないような強い痛みです。

一方、慢性の腰痛では、痛みの刺激自体は画鋲(びょう)の針1本分もないことが多く、ごく少量の睡眠薬で痛みを忘れ、眠れます。そのような小さな刺激でも慢性腰痛の方々が苦しむのは、大げさに反応したり、我慢が足りなかったり、ということでは決してありません。痛みの刺激自体がそれほどではなくとも、脳が痛みを増幅し意識を集中させるためです。

急性の腰痛は何らかのインパクトがあって始まります。椎体(ついたい)骨折でなければ悪性腫瘍(がん)、大動脈瘤、骨粗しょう症などが疑われます。一刻の猶予もありません。

すい臓がんや腎臓がんは、これらの臓器が背中に近いところにあるため背中に痛みが出ます。胃がんや肝臓がんではお腹に痛みが出ます。大動脈解離、大動脈瘤などの大動脈系の病気は、大動脈が脊椎のそばに位置するため初期症状が胸背部や腰背部の痛みとなって現れます。

これらはすぐに医者に行き精密検査をして原因を突き止めて、必要な治療をすべきサインです。

薬で痛みをごまかしてはいけない

腰椎(ようつい)がやられると、腰だけではなく下半身全体、広範囲に神経症状が出ます。足の力が弱くなったり、足がしびれたり、膝が崩れたり、ひんぱんに足のつま先がテーブルの脚にぶつかったり、つまずいたり、尿漏れなどの膀胱・直腸障害といった神経所見があることも、腰痛に何か危険な原因があるというサインになります。

特に40歳以上になって、急に背中やお腹が痛くなった、ダイエットをしているわけでもないのに急に体重が減った、疲れやすくなった、微熱が続くなど、今までになかったことが起こる、これは臓器の異常のサインです。

厄介なことに、すい臓がんや腎臓がんは痛みそのものが出にくいケースもありますので、なおさら体重の減少を見逃してはいけません。腰痛が始まったのと前後して急に体重が減った時は、問答無用、待ったなしで医者に行って画像診断を含む精密検査を受けましょう。

いつもの筋肉痛だから「そのうち治るだろう」と放置したり、「数時間は効くから少しはラク」と言って、ドラッグストアで買った痛み止めの薬でごまかしたりなど、素人判断は禁物です。

痛み止めは、原因のある臓器の異常に効く場合があります。だからといって痛み止めの長期に及ぶ多用は、危険な症状の早期発見を阻害します。

手遅れを招かないためにも“その場しのぎ”を続けてはいけません。ましてやマッサージや自己流ストレッチなどで痛みを和らげるレベルを超えていると見るべきでしょう。

北原式 すぐに医者に行くべき急性の腰痛を見極める6つのポイント

1.眠れないほど腰や背中が痛む。

2.やたらつまずく(下半身の神経所見がある)。

3.急に体重が減った。

4.とても疲れやすくなった。

5.今までになかった痛みである。

6.痛み止めが有効で、多用するとしばらくは耐えられる。

すい臓がんで命を落としたある50代女性のケース

ある50代女性の症例を紹介します。初診の時、女性は「明け方にみぞおちの奥から背中に突き抜けるような痛みにうなされて目が覚める」「体重が少し減少している」とおっしゃいました。

明らかにすい臓がんの痛みの特徴で、「これはまずい」と思い、すぐに大きな病院でのMRI撮影をお勧めしました。すると末期のすい臓がんが判明し、もはや手遅れで、3カ月後に亡くなりました。

女性は「痛みで目が覚める」「体重減少」という危険な、特徴的な2つのサインを2年間放置していたそうです。近隣クリニックでの毎年の血液検査とレントゲンで異常がなかったためでした。しかし、すい臓がんは血液検査とレントゲンではわからない腫瘍なのです。本当に残念な自己判断でした。

悪いことは重なります。女性はもともと腰痛持ちで、「痛みで目が覚める」というアラームも、これまでの腰痛の延長の症状と思ってしまいました。「体重減少」というアラームも、やせ型でしたので気にしませんでした。

さらに悪いことに、痛み止めで何とかしのいでいました。ロキソプロフェンを1日6錠飲み続けたのです(筆者註:1日3錠以上の服用は危険です)。飲むと3、4時間は楽になり、ごまかしながら日々を過ごしていらっしゃったのです。

一時しのぎであればまだしも、長く続けると真の原因がごまかされてしまいます。悪性腫瘍を疑うには遠回りする条件がそろってしまっていました。薬の副作用として胃粘膜の糜爛(びらん)(=ただれること)も起っていました。

早めにキャッチして画像診断、早期発見、早期治療していれば、もう少し長く生きられたのではないか、夫婦の念願であった「日本一周ドライブ」の夢もかなったはずだ――。60代の夫は無念そうに涙を流していたことを今でも忘れられません。患者の医療リテラシーとともに、かかりつけ医の総合診療能力の向上も1つの課題と感じさせられました。

発見が難しく遅れることが多いすい臓がんですが、早期発見、早期治療ができていればもう少し長く生きられたかもしれません。長く天寿を全うするためには、死に至る腰痛のサインには即時対処する大切さが浮き彫りになります。

ギックリ腰は48時間“だけ”絶対安静

絶対に放置してはいけない腰痛。二つ目はギックリ腰です。

ギックリ腰が起ったら、24~48時間は徹底的に安静、ひたすらに寝ましょう。温めないほうが良いので、シャワーのみにして、風呂も控えましょう。トイレ以外はじっとしているのです。捻挫したら冷やして安静にしますよね。それと同じです。

こじらせるよりは仕事も休んだほうがいいでしょう。痛みがこじれてその後の仕事や生活の大いなる負債(=厄介な慢性腰痛)を抱え込むよりは、たったの2日間です。休んでください。眠れなかったら軽い睡眠薬を飲んでもいいでしょう。

「痛みが残っているのに48時間でいいの?」と疑問に思うかもしれません。現在は、さまざまな臨床研究で「ギックリ腰の急性期を過ぎたら、じっと横になって寝ているよりも、体を動かしたほうが、むしろ痛みを感じなくなる」「安静にしてるより、外に出て人と接し、情報に触れるほど、痛みを感じにくくなる」ことがわかってきました。

しかし、多くの医者は、「痛いうちは炎症が治まっていないから、痛みが治まるまでじっとしているように」という誤った指導を続けています。

以前、ある会合で田村憲久(たむらのりひさ)元厚生労働大臣に、「ギックリ腰は最初の48時間は安静にしますが、そのあとは痛くてもゆっくりと動かしたほうが早く回復するというのが、今や世界の常識です」とお伝えしたところ、「そんな大切なことを大臣時代に誰も教えてくれなかった!」と大きな声を出して驚いていました。

慢性痛対策議員連盟の野田聖子会長も隣席していましたが、「私も知りませんでした」とおっしゃっていました。厚生労働関連のトップの方々でも知らないのですから、いわんや一般の人たちに正しい情報が伝わるはずもありません。いまだに誤解が続いているのが今の日本の痛み治療の現状です。

ごくたまに起こる「急性一過性」のギックリ腰も、いつも何となく腰痛がある人の「慢性腰痛の一過性増悪」のギックリ腰も、どちらもギックリ腰への対処は極めて重要です。複雑にこじれた慢性の腰痛への道を水際で食い止めたいからです。長すぎる安静時間はNGです。

ギックリ腰からの回復と予防のためには

絶対安静の後は、少しずつ激痛が走らない程度にストレッチを始めます。ギックリ腰には「マッケンジー体操」が効果的です。腹ばいになって腕を伸ばし上体を反らすストレッチで、「現代人は椅子に座っているが多く、前屈の姿勢によって腰を痛めている」ので、「後屈の姿勢をとるストレッチで、固まった筋肉を柔らかくする」ものです。

寝る時の姿勢は、仰向けではなく横向きで、軽く足を曲げてエビのように丸まって寝るのが腰への負担が少ないと言われています。

どんな人がギックリ腰になりやすいか、それは今でも解明されていません。朝、あわただしくシャワーを浴びているとき、立ったままギックリ腰になり動けなくなった事例もよくあります。

運動の有無や体型、筋肉量、性別さまざまな人がなりますが、高齢者よりも働き盛りの年齢が多い傾向があります。また再発するとクセになりやすい傾向もあり、1回目の発症で徹底的に治すことが大切です。経験上、何事も慌てないこともお勧めします。

ギックリ腰の予防にはオーストラリアで始まった「ノーリフト運動」も効果的です。重いものを持たないように気をつけて、腰痛の発生を防ぐことを推奨しています。

人間は移動できればいいという考えもありますが、自分の筋肉を増やすことは長い人生、ギックリ腰予防だけではなくいろいろな意味で大切です。ただ、今は筋力アップをさせる器具も販売されていますが、筋肉がアンバランスになってしまうので頼りすぎには注意が必要だと思います。

次回は、腰痛編第2回、長引く慢性の腰痛の真の原因について解説します。

(詳しく知りたい方はこちら)

・慢性痛に関する医療者(患者・家族)向けYouTubeチャンネル「慢性の痛み講座 北原先生の痛み塾」(毎週水曜日に更新)

第29回:慢性痛と検査

*MRIから腰部脊柱管狭窄症を指摘され、それが腰痛の原因だ、と説明される患者さんがいます。慢性痛における画像診断の位置づけについてお話ししています。

第57回:慢性痛講座 神経痛概論

第58回:神経痛概論② 神経痛の診断基準ほか

第59回: 神経痛各論 坐骨神経痛ほか

*腰痛の原因として、坐骨神経痛や腰部脊柱管狭窄症という病名をつけられる人が結構います。そのような、「神経痛」の診断がしっかり行われていないことについて、指摘しています。

・慢性痛についての総合的情報サイト「&慢性痛 知っておきたい慢性痛のホント

*私が一般の方向けに総合監修しています。動画「あるペインの少女クララ」は必見です。

(注1)本稿での解説は、世界最高峰の痛みの研究組織、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターでの5年間の留学時代に習得し、日本帰国後に臨床に応用し多くの症例を積み重ねたうえで多少改変した、痛みの専門医として有効性が高いと感じる個人的見解、私論であります。意見には個人差がありますので、あくまでも主治医の先生と相談のうえ、どの治療を選択するかは自己責任としてくださいますよう、お願い申し上げます。

(注2)私の在籍する横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック内科では、現在、神奈川県内の患者さんのみ受け付けています。全国各地からのお問い合わせは「慢性の痛み政策ホームページ」の全国の▼集学的痛みセンターの一覧をご参照ください

(注3)厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」の電話相談窓口は▼こちらです

---------- 北原 雅樹(きたはら・まさき) 横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科診療教授 1987年東京大学医学部卒業。1991〜1996年、米国ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターに臨床留学。帝京大学溝口病院麻酔科講師、東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、麻酔科准教授を経て、2017年4月から横浜市立大学附属市民総合医療センター。2018年4月から現職。専門は難治性慢性疼痛の治療。複雑な要因が重なる痛みの「真犯人捜しの名探偵」。西洋のリハビリと東洋の鍼を融合したトリガーポイント療法「IMS」を日本に導入した。日本麻酔科学会指導医、日本ペインクリニック学会専門医、日本疼痛学会、日本運動器疼痛学会所属。公認心理師の資格を持つ。著書に『肩・腰・ひざ…どうやっても治らなかった痛みが消える! 原因解明から最新トリガーポイント治療法のIMSまで』(河出書房新社)、『慢性痛は治ります! 頭痛・肩こり・腰痛・ひざ痛が消える』(さくら舎)、『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム、共著)などがある。

腰痛の危険度セルフチェック。原因や症状、対処法・治療の注意点

腰痛の原因

日本整形外科学会の調査によると、日本で腰痛の人は約3000万人いると推計されています。
一口に腰痛といっても、その原因はさまざまあります。腰痛を原因別に分類すると、腰部脊柱管狭窄(さく)や椎間板ヘルニアなど腰の神経の障害によるもの、内臓の病気、重い脊椎の病気、などがあります。しかし原因を特定できる腰痛は全体の約15%です。残りの約85%は原因を特定しにくい非特異的腰痛で、一般に腰痛症や坐骨神経痛などと診断されます。

腰痛の分類

原因を特定できる腰痛のうち、腰痛全体の約10%を占めるのが、腰部脊柱管狭窄椎間板ヘルニアなど腰の神経の障害により起こるものです。

また全体の約2%は、内臓の病気による腰痛だと考えられます。内臓からの神経の多くが腰に伸びているため、慢性すい炎腎う腎炎尿路結石、慢性の十二指腸潰瘍、子宮内膜症などで腰痛が起こることがあります。

腰痛を起こす重い脊椎の病気には、化膿(のう)性脊椎炎、がんの骨への転移、背骨の圧迫骨折などがあり、腰痛全体の約1%の患者さんがいると考えられています。

腰痛全体の85%を占める非特異的腰痛の多くは、腰の椎間関節や筋肉などに原因があるといわれていますが、原因を特定するには、腰のある箇所の神経をまひさせて痛みが取れるかどうかを確認する検査を何か所も行う必要があるため、原因の特定までは行わず、痛みをとる治療が優先されます。

腰痛の危険度チェック

多くの腰痛は、急いで受診する必要のないものですが、なかには放置すると危険な腰痛もあるので、下記にあるチェック表で腰痛の危険度を調べてみましょう。

腰痛の危険度チェック

腰痛 危険度チェック
(1)じっとしていても痛む
(2)背中が曲がってきた
(3)お尻や脚が痛む・しびれる
(4)脚のしびれにより長く歩けない
(5)体を動かしたときだけ 腰だけ痛む

「腰痛 危険度チェック」表の(1)~(5)のうち、(1)の「じっとしていても痛む」に当てはまる場合、重い脊椎の病気や内臓の病気の可能性が考えられるため、危険度は大です。

(2)の「背中が曲がってきた」に当てはまる場合、骨粗しょう症によって背骨がつぶれる圧迫骨折が起きている可能性があります。骨粗しょう症は、骨の中がスカスカになる病気で、閉経後の女性に多く起こります。50歳過ぎから背中が曲がってきたら要注意です。

(3)の「お尻や脚が痛む、あるいはしびれる」、(4)の「脚のしびれにより長く歩けない」いずれか1つでも当てはまる場合、腰部脊柱管狭窄椎間板ヘルニアなど、腰の神経の障害が原因で症状が起こっている可能性があります。これらの病気は進行することがあるため要注意です。

(1)~(4)の項目に1つでも当てはまる場合は、一度医療機関を受診することがすすめられます。
(5)の「体を動かしたときだけ腰だけ痛む」のみ当てはまる場合、腰の椎間関節や筋肉などが原因の腰痛である可能性が高く、その場合、当面の危険はありません。ほとんどの腰痛は1か月以内に痛みがなくなる心配のないものです。ただし、症状が悪化した場合や、3か月以上症状が続く慢性腰痛の場合は、整形外科を受診することがすすめられます。

腰痛の症状をうまく伝えることが鍵!的確な診断を得るためのコツ

腰痛にはさまざまな原因があります。病院の整形外科など医療機関を受診する際、正しく症状を伝えられないと、的確な診断を得られないことがあります。きちんと具体的に症状を伝えることは、医師が正確な原因を探り、適切に治療方針を立てることに役立ちます。そこで、受診の流れと、症状をうまく伝えるためのコツをご紹介します。

受診の流れ

受診の流れ

腰痛で、医療機関の整形外科を受診した場合、まず行われるのは、痛みの状況などを医師に伝える「問診」。その後、医師が患者さんの身体を見て異常の有無を調べる「視診」や、身体を動かして痛みの起こり方や関節の動きを調べる「触診」による「診察」が行われます。医師は、これらの結果により、おおよその原因を絞り込みます。

続いて、「検査」を行います。検査は、主にエックス線やMRIで骨や神経の様子を画像で調べる「画像検査」や、必要に応じて「血液検査」などが追加されます。そして、必要があれば「精密検査」や「再診」を行い、最終的には医師が「診断」を行い、「治療」となります。

的確な診断を得るために

症状を伝える5つのコツ

より的確な診断を得るためには、問診のときに、自分の症状をきちんと医師に伝えることが大切です。

症状をうまく伝える5つのコツ

「いつから」
いつから痛むのか、日ごとに痛みは強くなっているのか、あるいは同じ痛みが続いているのかなどを伝えます。

「どこが」
腰のどのあたりが痛むのか、腰だけでなく背骨やお尻、脚も痛むのかなどを伝えます。

「どんなふうに」
激しい痛みが続くのか、それとも弱い痛みなのか、痛みの強さはどの程度か伝えてください。

「どんなときに」
腰を曲げると痛い、歩くと痛い、安静にしていても痛いなど、痛みが誘発する動作を伝えてください。

「その他の症状」
例えば、脚やお尻のしびれ、麻痺(まひ)、発熱、尿や便がでにくいなど、腰痛とともに他の症状がある場合は、それも必ず伝えてください。

画像診断できる腰痛、できない腰痛

医療機関を受診して行う、エックス線やMRIなどの「画像検査」。腰痛は「画像で診断できる腰痛」と「画像で診断できない腰痛」に大きく分けることができ、画像検査によって原因を特定できることがあります。

腰痛のタイプ

画像診断できる腰痛のタイプ

画像診断できるタイプ

画像で診断できるタイプには、「がん」「化膿性脊椎炎」「椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄」「圧迫骨折」「終板の障害」などがあります。

がん

がんの骨転移

ごくまれに、がんが原因で腰痛が生じていることがあります。腰痛を引き起こす「がん」には、「骨のがん」「がんの骨転移」「すい臓がん」「大腸がん」などがあります。
もしも、問診と痛みの症状で、すい臓や大腸のがんが疑われた場合は、内臓を撮影して、がんがないかどうか確かめる必要があります。腰痛の診断では、がんを見逃さないことが、最も重要です。

多くの腰痛は、安静にしていると痛みがないのですが、がんが原因の場合、「安静にしていても痛む」という特徴があります。

化膿性脊椎炎

可能性脊椎炎

化膿性脊椎炎は、細菌が骨の中に侵入し、脊椎を化膿させる病気です。進行すると、血液の中に細菌が入り込んで「敗血症」を発症し、命に関わることがあります。化膿性脊椎炎の場合も、「安静にしていても痛む」という特徴があります。

椎間板へルニア

椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニア

腰椎と腰椎の間でクッションの役割をしている軟骨状の組織「椎間板」にひびが入り、中心にある「髄核」が飛び出して、背中側にある「神経」に炎症などを引き起こすのが椎間板ヘルニアです。

椎間板ヘルニアは、20~40代の若い世代に多く発症します。一般に、椎間板ヘルニアの症状は、「腰痛」から始まり、その後、お尻から脚にかけて痛みやしびれが生じます。椎間板ヘルニアは、「前かがみの姿勢」になると腰の痛みと脚のしびれが強くなるのが大きな特徴です。

腰部脊柱管狭窄

腰部脊柱管狭窄
腰部脊柱管狭窄

腰部脊柱管狭窄は、腰椎の後ろ側にある神経が通るトンネル「脊柱管」が狭くなり、中を通る神経が圧迫される病気です。

腰部脊柱管狭窄は、40代後半から発症し、高齢になるほど発症しやすくなります。症状としては、腰痛のほかに、お尻から脚にかけてのしびれや痛み、歩いていると症状が強くなって歩けなくなる「間欠跛行(かんけつはこう)」などがあります。腰部脊柱管狭窄の特徴は椎間板ヘルニアと正反対です。前かがみになると楽になり、体を後ろに反らすと、しびれ・痛みが強くなります。

圧迫骨折

圧迫骨折

骨粗しょう症によって、骨がスカスカになり、押しつぶされるように骨が変形してしまうのが「圧迫骨折」です。骨粗しょう症による圧迫骨折は、70歳以上の女性に多く起こります。圧迫骨折では症状が出ないこともありますが、お尻から脚にかけて、しびれや痛みが出ることがあります。身長が4cm以上低くなり、背中が丸くなっているなら、圧迫骨折の可能性があります。

終板の障害

終板の障害
終板の障害

「終板の障害」は、最近、注目されているタイプです。腰椎と椎間板が接している部分が終板です。終板には神経や血管が多く通っています。ここに細菌が感染したり、アミロイドという物質がたまったりして、むくみが生じることで、痛みが起きると考えられています。

ただし、まだわかっていないこともあります。前かがみで「腰痛」が出るけれども、お尻から脚にかけての「しびれや痛み」が起こらないことが特徴です。

画像で診断できない腰痛まとめ(関節、筋肉、ストレスなど)

画像診断できないタイプ

画像診断ができないタイプには、「椎間関節」「仙腸関節」「筋肉」が原因の腰痛、「心理的要因」による腰痛などがあります。

椎間関節による腰痛

椎間関節による腰痛

椎間関節は、腰椎の後ろ側にあって、上下の腰椎をつないでいる関節です。椎間関節に負担がかかると、炎症が起こったり、軟骨が擦り減ったりして、腰痛が起こると考えられています。

症状としては、腰の痛み、太もも外側の痛み、脚のしびれが起こります。椎間関節は腰椎の一番後ろにあるので、体を後ろに反ると圧迫されて、痛みが強くなるという特徴があります。

仙腸関節による腰痛

仙腸関節による腰痛
仙腸関節による腰痛

仙腸関節は、骨盤の真ん中の骨「仙骨」と骨盤の両側の骨「腸骨」の間の関節です。激しい衝撃を吸収する役割を担っていると考えられています。

椎間関節と同様に、炎症が起こったり、軟骨が擦り減ったりして、痛みが起こると考えられています。仙腸関節は腰の下の方にあるので、下の方に腰痛があって「長い時間 椅子に座っていられない」場合には、仙腸関節による腰痛の可能性があります。

筋肉による腰痛

筋肉による腰痛

腰にある筋肉のうち、「脊柱起立筋」とその奥にある「多裂筋」が、筋肉による腰痛に深く関係しています。特に、高齢になると、これらの筋肉が弱くなるため、筋肉の腰痛を起こしやすくなると考えられています。うつ伏せに寝て、体を後ろに反らすことができなかったら、背中の筋肉が、弱くなってきている可能性があります。

心理的要因

私たちの脳には、腰痛などの「痛みを和らげる働き」が備わっています。しかし、家庭や職場でのストレスなどがあると、この「痛みを和らげる働き」が機能しなくなってしまい、慢性的な痛みを感じるようになってしまいます。

「朝方に腰痛を強く感じる」という人は、心理的要因が関係している可能性があります。というのも、一般的に腰に異常がある人の場合は、腰を使えば使うほど痛みがひどくなってくるため、「夕方」に痛みが強くなる傾向にあります。これに対して、心理的要因のある人は、朝から午前中にかけて、意欲低下や抑うつ気分が強く現れ、腰痛が強くなり、午後から夕方にかけては、その症状が軽減するという傾向にあります。

ストレスやうつなどの心理的要因が痛みを招く「慢性腰痛」はこちら

危険ではない腰痛の対処法

病院に行くほどではない腰痛の場合は、次のような対策をとると効果が期待できます。

●適度な運動を行う
ウォーキングのような適度な有酸素運動を毎日行うと、脳の血流がアップし、脳の中で痛みを抑える物質が増えてきます。

●できる範囲で通常の生活を続ける
普段どおり仕事や家事をして、できる範囲でいつもどおりの生活を続けます。

●ストレス対策を行う
自分が楽しいと感じることを行うと、脳の血流がよくなって痛みを抑える物質が増え、痛みを抑えることができます。たとえば好きな音楽を聴いたり、好きな映画を観たり、アロマオイルなど好きな香りを楽しんだり、生活の中にリラックスできる時間をつくることがおすすめです。

解説いただいた専門家

変形性膝関節症の痛みがラクになる!改善率8割の『痛みナビ体操』

 年齢とともに関節の痛みに悩まされる人は多くなる。骨の関節部分に起こる「変形性関節症」になると、変形した骨が神経を圧迫して痛みを引き起こす。特にこの病気がひざに起こり悪化すると、歩くことさえ困難になってしまう。


 この「変形性膝関節症」の痛みを取り、症状を改善する秘策がある。改善率はなんと8割という。

『痛みナビ体操』と名付けられた運動法だ。


「自分にあった、たった一つの体操を実践するだけで効果を期待できる」と話す、開発者のお茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック銅冶英雄医師にやり方を教えてもらった。


誰にでも起こる病気。痛み止めが手放せなくなる前に

 変形性膝関節症は骨や軟骨の老化で、年を取ると誰にでも起こる病気です。男性よりも女性に多く見られます。原因は肥満、O脚、足を酷使するスポーツや力仕事をやっていたなど。ひざに負担がかかる生活をしていた人に特に起こりやすいのです。また、遺伝が原因のこともありますし、事故などで半月板を損傷した人も注意が必要です。]


 症状としては、最初は立ち上がる時や歩きはじめなど、足に負荷がかかるタイミングに痛みを感じる程度ですが、進行すると歩行時にも痛みが目立つようになり、最終的にはひざの痛みがずっと続くようになります。


 関節に炎症が起こると、ひざの内部に水が溜まることもあります。ひざの筋肉を鍛えようとして無理に歩くと、変形性膝関節症はどんどん悪化します。病院で痛み止めを飲めば一時的には楽になりますが、やがて薬が手放せなくなってしまうのです。


2つの体操から、どちらか一つを選ぶ

 今回お教えするのは2つの体操ですが、自分で試してみてどちらか1つを選んでください。 ひざを伸ばして痛みが和らぐなら『ひざ伸ばし体操』が、曲げた方が楽だと感じたら『ひざ曲げ体操』が適しています。痛みが強まる体操は、関節をさらに傷めてしまいますので行わないでください


【ひざ伸ばし体操】

(1)楽に足を乗せられる程度の高さの、イスか踏み台を用意します。グラつかずしっかりと固定できる物です。


(2)痛みがある方の足のかかとを台に乗せ、ひざを伸ばします。ひざに両手の手のひらを当ててゆっくり押します。膝が伸びきったと思ったところで2秒ほど止め、押している力を抜きます。これを10回繰り返します。


 1日4~5回行うのが理想です。

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【膝曲げ体操】

(1)膝を90度の角度で曲げた状態で足を乗せられる、イスか踏み台を用意します。しっかりと固定できる物です。


(2)痛みがある方の足を台に乗せ、体重を前に移動させて膝を曲げていきます。自分で限界だと思うところまで膝を曲げたら、そのまま2秒ほど止め、元の体勢に戻ることを10回繰り返します。

 1日4~5回行うのが理想です。


 この2つの体操では、画像診断で骨が変形していると認められた人でも、その進行度に関係なく改善が見込めます。私のクリニックの患者さんでは、膝の痛みに悩んでいた93歳の女性も症状が改善し、日常の動作が楽にできるようになった例もあります。


 ただし、人工関節を入れた方には効果はないので、注意してください。

食べ物では「糖」をとらない事が大切!

 食生活に気を付けることも大切です。

 まず、『糖』を控えることです。その理由は『糖化』を防ぐため。糖化とは糖とたんぱく質が結合して起こる化学反応のことで、進行すると骨や軟骨を支えているコラーゲンが傷んでしまいます。砂糖や人工甘味料などの入った食品を避けることはもちろんですが、米や小麦といった炭水化物も糖化の元凶となります。


 糖化が起こると、いくつかの段階を経て最後にはAGE(終末糖化産物)という、強力な悪玉物質になります。AGEはコラーゲン同士を結び付けている「橋」のような組織を変質させてしまい、柔軟性や丈夫さを失わせてしまうのです。この物質は、体内で分解されないだけでなく排泄されにくいという、やっかいな性質も持っています。


 糖は人間にとって必須ではないのです。「脳にはブドウ糖が必要」と思う方もいると思いますが、『ケトン体』という物質があれば問題ありません。ケトン体の方が、脳の神経細胞に適切な働きをしてくれるのです。ケトン体は脂肪の燃焼によって生まれますから、糖をとらなくても肉や魚を食べていれば十分です


 もう一つ重要なことがあります。それは「無理をしないこと」。

 膝に痛みがあるのに「健康のために」とウォーキングを続けている人がいますが、これは膝の関節に悪い刺激を与え、関節症を悪化させることになります。「痛みナビ体操」を実践して、痛みがなくなってから再開しましょう。


 足の痛みがなくなって自分で動くことができれば、要介護状態になることを回避できます。整形外科で「軟骨がすり減っている」「骨が変形している」「痛み止めを飲むしかありません」と言われた人も、あきらめずに『痛みナビ体操』を試してみてください。


銅冶英雄:お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長。1994年、日本医科大学卒業。2006年、千葉大学大学院修了。千葉大学附属病院、成田赤十字病院、国立がんセンター中央病院、千葉リハビリテーションセンターなど勤務。2001年に米国ウィスコンシン医科大、2007年に豪州パース病院へ留学。2010年に、お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニックを開院。著書に『3万人のひざ痛を治した!痛みナビ体操 “国民病”の変形性膝関節症激痛・はれ・きしみ改善率84%!』(アチーブメント出版)、『腰の脊柱管狭窄症が革新的自力療法痛みナビ体操で治った!手術を回避!長く速く歩けた!笑顔が戻った!』(わかさ出版)など多数。




腰痛を防ぐ、ふくらはぎのストレッチ。

撮影/岩本慶三 文/石飛カノ モデル/北川リサ スタイリング/高島聖子 ヘアメイク/村田真弓

背骨に限らず、骨は筋肉によって支えられています。その筋肉が固まれば、背骨に歪みが生じます。

その歪みがさらに不調を呼び……。ストレッチで筋肉をほぐし、背骨を健康に。

鍼灸師であり指圧師の石垣英俊さんに教わります。

ふくらはぎの血行を促し、腰痛を防ぐ。

椅子に座っている時間が長い現代人は、ふくらはぎの筋肉が硬くなりがち。ふくらはぎの血行が悪くなることで太もも裏や臀筋が硬くなり、腰痛を引き起こすことも。

また、ふくらはぎの筋肉の左右差が大きいと重心が不安定になり、歩行がアンバランスな状態に。その結果、背骨への負担が増して、やはり腰痛が引き起こされるリスクが増す。ふくらはぎの深層のヒラメ筋をしっかりストレッチ。

© クロワッサン オンライン

左足を一歩前に出し、右膝を床につけて両手を左膝の上に置く。背すじはまっすぐ。

 ↓

© クロワッサン オンライン

右脚の膝から下を内側にずらして、足の裏を外側に向ける。膝の位置は動かさずに。

© クロワッサン オンライン

【正面】右脚の膝から下だけを内側にずらす。

 ↓

© クロワッサン オンライン

上体を前に倒して体重を左足に乗せる。3〜5呼吸キープ。反対側も行う。

© クロワッサン オンライン

【正面】背すじを伸ばしたまま体重を左足にかける。

© クロワッサン オンライン

教えてくれたのは

石垣英俊 さん (いしがき・ひでとし)

鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師

静岡県出身。臨床家の父親に鍼灸治療を師事。体の痛みや不調に悩んでいる人へ、よりよい施術、環境、アドバイスを提供すべく研鑽を積んでいる。神楽坂ホリスティック・クーラ(R)代表。著書多数。

『Dr.クロワッサン 痛みとコリをすっと消す、自分でできる整体』(2020年4月28日発行)より。

【ひざの痛みに潜む怖い病】働き盛りの女性に発症しやすいといわれるが、60代以降の男性にも増えている関節リウマチ

 コロナ自粛の緩和が進み、屋外で身体を動かす機会も増えてきた。しかし、外出したくても膝が痛み、思うようにならないという人がいる。膝(ひざ)痛は加齢に伴い生じやすいが、単なる老化ではなく病気が潜む場合もあるので注意が必要だ。東邦大学医療センター大森病院人工関節治療センターの中村卓司センター長が5回にわたって最新治療を解説する。

 加齢と関係の深い膝痛の病気といえば「変形性膝関節症」だろう。膝関節の太ももの大腿骨(だいたこつ)とすねの脛骨(けいこつ)の表面を覆う軟骨がすり減り、ひざの動きをサポートする半月板や、関節と骨をつなぐ靱帯に炎症が起こって痛みを引き起こす。進行すると骨同士がぶつかって変形し、歩行困難にもつながる。原因は、老化や運動不足に伴う筋力低下などに関わる。

 「60代を過ぎれば膝が痛むのは『年のせい』と考えられがちです。しかし、変形性膝関節症とは限りません。手術が必要で当センターを受診された方の中には、関節リウマチの人もいるのです」と中村医師は警鐘を鳴らす。

 関節リウマチ(別項参照)は、自己免疫疾患で30~40代などの働き盛りの女性に発症しやすい病気と一般的にいわれる。患者数は女性の方が男性よりも約4倍も多い。ところが、近年、60代以降の関節リウマチが増加中だ。

 「1960年代の発症平均年齢は37・5歳で、80年代は46歳、今世紀になって50歳を超えました。10年前には59・9歳になり、平均年齢が上ると同時に、男性の患者さんも増えているのです」

 厚労省の資料によれば、2015年のリウマチ患者の発症平均年齢は男性で約56歳、患者の平均年齢は66歳。つまり、50代で発症して60代で関節リウマチの治療を受ける人は、決して珍しくはないのだ。

 しかし、「50代を過ぎた男性が関節リウマチになる」という事実が、一般的にあまり浸透していない。そのため、膝に痛みを抱えて近くのクリニックへ受診すると「変形性膝関節症」と診断されてしまうことがある。

 「変形性膝関節症の初期症状や中等症では、痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法などが勧められます。関節リウマチは、それらの治療では治りません。結果として、関節の変形が進んでしまうことがあるので注意していただきたいのです」

 原因が異なれば、当然治療も異なる。その違いを簡単にいうと、変形性膝関節症は膝の炎症を抑えて痛みを取り除く、あるいは、変形した関節を手術で治す。一方、関節リウマチは自己免疫疾患で滑膜(かつまく=関節軟骨の周辺に付着する膜)に炎症が起こるため、まず自己免疫の暴走を止めて炎症を抑えることが治療の主軸になる。

 「変形性膝関節症の治療を受けて1カ月経っても痛みが軽減しない、逆に痛みなどがひどくなる場合は別の病気を疑ってください。そのひとつに関節リウマチがあることを覚えておきましょう」と中村医師は話す。 (取材・安達純子)

【関節リウマチとは】

 自分の持つ免疫が関節を包む滑膜を敵と誤認し、攻撃して炎症を起こす自己免疫疾患。滑膜の炎症によって、初期段階では、指の関節などの小さな関節の痛みや朝のこわばりなどが生じやすい。進行すると関節が破壊される一方、炎症は全身に及ぶ。今世紀になって生物学的製剤が次々と登場し、痛みや炎症が抑制される「寛解」になる患者が増えた。30~40代の働き盛りの女性に発症しやすいが、近年60代以降で発症する男性患者も増加傾向にある。

 ■中村卓司(なかむら・たかし) 東邦大学医療センター大森病院人工関節治療センターセンター長、整形外科准教授。1993年東邦大学医学部卒。米国留学などを経て、2012年から現職。関節疾患の診断・治療を得意とし、日本関節病学会評議員、日本人工関節学会評議員、日本リウマチ外科学会理事などを兼任している。

寒くなる時期、「ぎっくり腰」が増えるのは本当? 原因や対処法、医師に聞く

秋冬は腰を痛めやすい?© オトナンサー 提供 秋冬は腰を痛めやすい?

 朝晩の気温が下がり、ようやく、秋らしい気候になりました。肌寒い季節になってくると、腰に痛みを感じたり、「ぎっくり腰」になったりするなど腰の不調を訴える人が増えるようです。ネット上でも「冬場の朝にぎっくり腰になったことがある」「秋冬は毎年、腰の調子がよくないです」「夏から秋への変わり目のときはいつも注意している」など季節の変化に合わせて、特に腰をいたわる意識を持つ人が少なくありません。

 気温が低下する秋冬の時期、ぎっくり腰のリスクが上がるというのは本当なのでしょうか。お茶の水セルクリニックの寺尾友宏院長(整形外科)に聞きました。

「急性腰痛症」、原因はさまざま

Q.そもそも、ぎっくり腰とは何でしょうか。

寺尾さん「体を動かしたときに急激な強い痛みが腰に生じ、その痛みがしばらく続くものがぎっくり腰で、正式には『急性腰痛症』といいます。原因はさまざまで、筋肉の痛みや『椎間関節』という背骨の関節に由来するものなどもありますが、椎間板に傷が入ることで生じるケースが多いと思います。

椎間板には『線維輪(せんいりん)』という硬い部分と『髄核(ずいかく)』という軟らかい部分とがあり、線維輪に傷が入ると強い痛みが出ます。動作によって髄核の圧が上がると、その影響で線維輪に亀裂が入り、強い痛みが生じるのです。外からは見えない傷が体内にできるイメージです。亀裂が入った瞬間、ぎっくり腰として痛みを感じる場合が多いです」

Q.夏から秋への変わり目、冬場など気温が低くなる時期にぎっくり腰を起こしやすくなるのは事実でしょうか。

寺尾さん「統計的なデータは不明ですが、寒くなってくると、ぎっくり腰が多くなるように思います。寒くなると筋肉も硬くなるため、背骨の動きが悪くなる可能性があります。そして、背骨の動きが悪くなると椎間板などにかかる負担も大きくなるため、ぎっくり腰になりやすいのではないでしょうか。

また、寒いために腰を屈(かが)めた姿勢になりがちだと、その結果として、椎間板の圧力が上がり、ぎっくり腰になることも考えられます」

Q.ぎっくり腰に限らず、「毎年、寒い時期になると腰の調子が悪くなる」という人もいるようですが、実際のところはどうでしょうか。

寺尾さん「寒くなると、腰も関節も調子が悪くなる人は実際に多いです。寒くなりきったときより、寒くなりつつあるタイミングの方が痛みが出やすいように感じます。寒いと痛みのセンサーも敏感になる傾向にあるため、痛みが強くなる可能性もあるでしょう。

また、多少の痛みがあっても、明るい気分のときはあまり気にならない面があります。一方で、寒い時期は気分が落ち込みやすくなり、気分が落ち込むと痛みを強く感じやすくなるため、『調子が悪い』と感じやすい側面もあると思います」

Q.ぎっくり腰を起こしてしまったときの注意点や対処法はありますか。医療機関を受診した方がよい目安も教えてください。

寺尾さん「初期は安静にするのがよいです。ただし、その時期は3日程度までで、それ以降は痛みが我慢できる範囲で動いていた方が早く治るといわれています。秋冬に限らず、痛みのない時期にストレッチ用のポールなどを使って、しっかりと背骨をストレッチしておくのがよいと思います。

ただし、腰痛に伴って、座骨神経痛やまひのような症状(足の指が動かしづらく、力が入りにくいなど)が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。神経にダメージが加わっている可能性があります。神経のダメージは深くなり過ぎると治らなくなってしまうことがあるため、早急に対処が必要です」

Q.ぎっくり腰は再発しやすいのですか。また実際、秋冬に再発する患者さんは多いのでしょうか。

寺尾さん「線維輪にできた傷が完全に修復できずに残ってしまうことがあり、そのような場合は傷が広がりやすいため、再発しやすいです。ぎっくり腰は体の使い方の影響で発症するため、猫背になっていたり、腹筋に力が入らない状態で立っていたりといった、姿勢に悪い癖がある人は再発しやすいでしょう。

また、長時間座ったままでいるのもよくありません。立っている姿勢よりも、座っている姿勢の方が背骨への負担が大きくなる傾向にあるため、長時間、同じ姿勢で座っていると腰への悪影響が生じやすくなります。基本的に、20分以上同じ姿勢でいると悪影響が大きいといわれているので、時々、姿勢を変えたり、伸びをしたりすることが大切です。

なお、秋冬に再発する人が実際に多いかどうかは不明ですが、寒さの影響で動作が悪くなった結果、繰り返し、症状が出てしまう可能性はあると思います」

Q.気温が低い時期、ぎっくり腰を起こさないために望まれる意識・行動とは。

寺尾さん「普段以上にストレッチを心掛けることです。基本的に体は動かしていた方が調子がよくなります。寒い季節になると活動レベルが下がりやすいため、普段以上に体をしっかり動かしていくのが望ましいでしょう。寒いからといって、部屋に閉じこもり過ぎるのはNGです」

オトナンサー編集部

“手指がしびれる”病気をスマホゲームで早期発見…研究者「専門医の診察と同等以上の精度」

スマホゲームで手指がしびれる病気を診断

指がしびれ、箸などを持つことや服のボタンをかけることが難しくなる…。こんな症状が現れる”手根管症候群”という病気はご存知だろうか?

有病率はおよそ4%という報告もあり、中高年女性が発症しやすいという。この病気を早期発見できるスマホゲームを東京医科歯科大学と慶應義塾大学の研究チームが開発した。

【画像】ゲームのプレをもっと見る

どんなゲームかというと、画面中央のうさぎのキャラクターを親指で操作し、うさぎの周囲に表示される野菜(ニンジン、大根、ナス)を取っていくものだ。

なお操作する際、親指以外の指はスマホの背面のバンドに固定する。

30秒~1分程度プレイし、ゲーム中の親指の動きや軌跡のデータを収集してそれをもとに判断。「おつかれさまでした!」と表示されるとゲームは終了となり、手根管症候群の可能性についてはデータなどを分析した後に伝えられる。

”手根管症候群”は初期の症状を自覚しにくいことから受診と治療が遅れてしまうことが多く、病気が進行すると日常生活に支障をきたすこともあるという。また、これまでの神経伝導速度検査でも正確な診断が可能だったが、高価な機器と専門的な技術が必要なため、十分に普及していなかった。

そんな中で、このようなスマホアプリのゲームで手軽に診断できるとなると、早期発見が期待でき、医師の負担も軽減されるかもしれない。

では、アプリの診断精度はどれくらいなのか? また、スマホの使いすぎはこの病気の一因となるのか?

研究に携わった東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科、運動器機能形態学講座、講師の藤田浩二氏に話を聞いてみた。

手を酷使すると発症しやすい

――手根管症候群とは、どんな病気?

手首にある手根管というトンネルの中で、正中神経という神経が圧迫されることで生じる整形外科の病気です。症状として親指から薬指にかけての痛みとしびれ、親指の筋力低下を引き起こします。手指の病気の中では頻度の高い病気となります。

――病気が進行するとどうなる?

進行すると痛みとしびれが悪化します。さらには親指の付け根にある母指球という筋肉が萎縮し、対立運動という親指に特徴的な運動が困難となります。対立運動は物を摘まんだり、掴んだりする動作に必要です。具体的にはボタンを留めたり、字を書いたりするような細かい動作が行いにくくなってしまい、日常生活に支障を来します。

――スマホを使うことが原因となることもある?

はい、仕事などで手を酷使すると発症しやすくなるため、スマートフォンも使いすぎてしまうと発生の一因となる可能性はあります。発症する明確な機序はまだ解明されていませんが、手を酷使することの他に手の外傷、加齢、透析、女性ホルモンの変化といった要素が発症に関与していると考えられています。

――どんな治療をするの?

基本的には鎮痛薬やビタミン薬などの内服による対症療法を最初に行います。その他、装具による安静や手根管内への注射を行うこともあります。それらの保存治療を行っても改善がなく、進行してしまった場合には、手根管開放術という手術を行うことになります。さらに重症例で、親指の対立運動が障害されている場合には、母指対立再建術という手術も追加で行うこともあります。

整形外科医の診察と同じ以上の精度

――なぜ、スマホゲームを作ることにした?

手根管症候群は進行してしまうと日常生活に支障を来し、手術も必要となるため、早期に診断を行うことが望ましいと考えます。しかし、実際には、症状が進行するまで患者さんが受診されない、あるいは受診しても整形外科の専門医以外の医師が診察し、手根管症候群の診断が行われずに経過を見られてしまうことがよくあります。

そこで、自宅など専門医のいない環境でも簡便に検査できるツールの開発を目指し、スマートフォンに注目しました。現在、手根管症候群が好発する中高年の方にもスマートフォンは普及しているため、スマホゲームであれば自宅などで多くの方がプレイすることが可能であり、ゲームの結果から手根管症候群に特徴的な動きを抽出することができれば、スクリーニングとして有用であると考えたことが、今回の研究のきっかけです。

※スクリーニングとは、疾患を持っている可能性がある人を選び出すこと

――このゲームの診断精度はどれくらい?

症状のない被験者15人と手根管症候群患者36人のデータに適用して精度を検証した結果、感度94%、特異度67%、AUC「0.86」という結果でした。これらの結果は、整形外科の専門医が診察時に行う身体診察と同等以上の精度となります。

※感度とは、病気のある被検者が検査を受け、陽性の結果が出る割合

※特異度とは、病気のない被検者が検査を受け、陰性の結果が出る割合

※AUC(Area Under the Curve)とは検査方法の評価項目の一つ、0から1の値をとり、1に近い程、精度の良い検査となる

他の病気の鑑別も目指し、研究を拡張する予定

――すでに我々もダウンロードして使える?

まだ一般の方がダウンロード可能な状態ではございません。今後、皆さんがダウンロードして使えるように実装を進めていく予定です。

――今後、どう利用していく予定?

実装に向け、今後は実際に自宅などの病院外で利用してもらうことでデータ数を増やし、大規模なスクリーニングが可能か検証することを予定しています。さらには、手指の症状が出る他の病気のデータも収集し、他の病気との鑑別も可能となることを目指して、研究を拡張する予定です。

現在は実装に向け、検証中ということだ。他の病気も、もしかしたらスマホゲームで診断できる未来が、近づきつつあるのかもしれない。

肘を押すだけ肩コリ和らぐ! 仕事中にコソッとできる「肩コリ解消」ツボ

今回は、肩こりがツライという方におすすめのツボを教えていただきます。丁寧なツボの場所と押し方(ここ重要)が、もふねこ教授ならでは! 東洋医学を専門としているもふねこ教授に詳しく講義していただきます。女性特有のお悩みを、ツボで即解決! 

肩こりのツボ

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【もふねこ教授の肉球ツボ講座】vol. 13

もふねこ教授です。最近めちゃめちゃ肩こりが気になるニャー! 書き物が多いし、もともと猫背だし。みなさんも携帯の小さい画面を見たり、パソコンの前で長く座って作業したり、冷房の中で長く過ごしたりして、きっと首や肩がバリバリこってるんじゃないかニャ? コロナで自由に行けないところも多くて、そのストレスもあるかも。ひどい人は肩こりが強くなると頭痛や吐き気などの症状も出てきますからね。というわけで今日の授業は肩こりのツボだニャ!

こっている場所だけじゃなく曲池のツボ押しも

肩こりなんだから、もちろん首や肩のこっている部分を押したりもんだりしてもいいんです。たとえば今まで紹介してきたツボだと、風門とか風池とか、けっこう効くと思います。でも、肩のあたりは手が届きにくい場所も多いし、人前で何度もやってると何だかちょっと、ね。

そんな時は、こっている場所から離れたところにある、手の届きやすいツボも使ってみましょう。ひとつ選ぶとしたら曲池(きょくち)のツボがオススメ。肘を曲げると内側から肘のほうに向かって、皮膚の谷間というか、スジができますよね。その先端が曲池です。

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曲池のツボを押さえるときは、反対側の手で肘を包み込むようにして支え、親指でギューッと押さえます。曲池は、ツボをさがすときの肘を曲げた状態で押さえてもあまり効きません。場所を確認したら、肘を少し伸ばしてから押さえてみてください。ほら! ズーンとくるでしょう? 10秒くらい押さえたら今度は反対の曲池を、といった具合で交互に何回かやってみてください。押さえながら首を前後左右に曲げてストレッチしてみてもいいかも。

作業継続時間と姿勢の見直しも

パソコンばかり見てる人は、1時間したら必ず席を立って伸びをしたり、肩を回したり、遠くを見たりしてくださいね。あと、姿勢は重要です。首を突き出してディスプレイを見てませんか? 猫背は猫背なりに姿勢を正してみましょう。

オフィスで作業している人は、変な姿勢でパソコンを打っていたら注意するように同僚にお願いしておきましょう。あ、もちろん鍼灸治療やあんま・マッサージ・指圧(もちろん国家資格を持ったプロによる施術)はオススメです! でも、血圧や内臓の異常による肩こりの可能性もゼロではないですから、アラサーになったら定期的な健康診断は必ず受けましょう。

そういえば最近わたしも、のびのび~ってストレッチするの忘れてたニャー。パソコンから目を離して空を見上げると、いつのまにか秋の気配……。トンボを目で追いかけると眼球の体操になるニャ。あ、オニヤンマ! 王者の風格。ちょっと観察してきますから今日の授業はこのへんで。またニャーーッ!!

もふねこ教授 プロフィール

某大学で東洋医学を担当しているリアル教授。実はキャリアも知名度も抜群。

犬養ヒロ

漫画家・イラストレーター。犬猫鳥魚と暮らす動物好き。

「マンガとエビデンスでわかるプラセボ効果」/メディカ出版

「マンガ 鍼灸臨床インシデント 覚えておきたい事故防止の知識」/医道の日本社

文 もふねこ教授 原案・イラスト 犬養ヒロ

テレワークで首肩腰の不調に…「買ってよかった」健康アイテムは?

 テレワークが普及し、自宅で仕事をする機会が増えたことで、「腰が痛い」「肩こりになった」など、カラダへの負担を感じる人もいるかもしれない。オフィスと違って、元々、机や椅子などが仕事仕様になっていないため、仕事が長引くと今まで以上にどっと疲れを感じることも……。在宅勤務でも少しでも快適に仕事を続けるためには、どのような対策が考えられるだろうか。テレワークを続ける人たちに、「買ってよかった」と満足している健康アイテムについて聞いた。

着座姿勢をサポートする「ランバーサポート」

 自宅でのパソコン作業が続き、腰痛の悪化に悩まされていたという女性・Aさん(30代)。今年から取り入れたのは、ランバーサポートだ。

「コロナ禍以前から腰痛に悩まされていましたが、テレワークが続いてますます悪化しています。友人に相談したら、ゲーミングチェアが良いと勧められましたが、いきなり高額でサイズの大きな椅子を買うのは気が進まず……。インテリアとも相性が悪いので、どうしたものかと悩んでいました。

 通っているマッサージの先生に相談すると、『それならランバーサポートはどう?』と教えてもらったのです。ランバーサポートとは、椅子に座った時に猫背にならないよう、着座姿勢をサポートするための背もたれのクッションのこと。腰の部分に固定して使うので、家で使っている椅子に装着するだけでOK。インナーマッスルを鍛えていない自分でも、腰が支えられるので長時間の着座でも疲れにくくなった気がします」(Aさん)

坐骨神経痛の腰痛緩和に「骨盤ベルト」

 一方、自宅でのテレワークにくわえ、外出先でノートパソコンを使用する機会も多いという女性・Bさん(30代)は、こう語る。

「昨年末頃から腰回りの不調と、首肩凝りに悩まされていましたが、コロナ禍で自粛生活を続けていたこともあり、整体やマッサージに行く時間を取れずにいました。今年、ようやく整体に行けたのですが、先生から『これは坐骨神経痛だね、そのうちギックリ腰になるよ』と言われて……。『足を組み続けているから、骨盤が歪んでいる。だから首と肩こりも治らない』と説明されました。

 整体の先生から、腹圧が低い人には骨盤ベルトが良いと勧められて、ネットで安価なものを購入してみたのです。実際にバンドを巻いて生活するようになったら、だいぶ腰痛も緩和されてきました。軽くて持ち歩きにも便利なので、外出先でも使用しています」(Bさん)

足首のむくみ対策に「フットレスト」

 また夏場のテレワークは冷気が足元に溜まり、むくみを感じやすいもの。女性・Cさん(20代)が取り入れたのはフットレスト(足置き)だ。

「もともと冷え性がひどかったのですが、昨年からテレワークが続いて、一層足先の冷えとむくみが酷くなっていました。長時間座っているので、鼠蹊部が圧迫されるためか、太もも周りの血流が悪く脂肪もつきやすくなった。足の置き場に困ってしまい、椅子のうえであぐらをかいてやりすごすほどでした。

 今年に入ってから足ツボマッサージのグッズを探しているときに、フットレストの存在を知りました。足を普段より高い位置に置くことができるので、足首のむくみは軽減された印象です。またしっかりと足裏が地面につくことで、腰痛予防にもなるようです。とても良い買い物をしたと思い、職場の仲間にもフットレストを紹介しています」(Cさん)

椅子とデスクの高さを整える「チェアパッド」

 机に対して、椅子の高さが相対的に低いことが、腰痛の原因になる場合もあるという。ライターの女性・Dさん(30代)が重宝しているのは、椅子の高さを調整できるチェアパッド。

「作業用のデスクに対して椅子が低かったのか、いつも肩が上がってしまい、緊張が取れない状態が続いていました。知人に紹介された低反発で厚みのある座面クッション(チェアパッド)を通販サイトで購入してから、デスクと椅子のバランスが整い腰痛と肩こりがかなり軽減されました。座面クッションには真ん中に穴が空いているものが多く、とくに痔の症状に悩まされている人にもいいと思います」(Dさん)

 テレワークで不調を感じている人たちは、こうした声を参考に、自分の症状に合った健康アイテムを試してみてほしい。

肩こり、頭痛、抜け毛も…不調の原因はメガネかも?自覚症状チェック【専門医監修】

 40代中盤から始まると言われていた老眼だが、デジタル機器の影響で20~30代の人も増えていると専門家はいう。老眼は誰にでも起こることで決して恥ずかしい事ではない。むしろそのまま放置している方が問題なのだ。そこで専門家の実体験を元に自分に合ったメガネをすることの大切さを解説する。

合わないメガネは全身の不調と老化を招く
「パソコン、タブレット、スマホなど中近距離を見続けるデジタル機器の登場で、目の負担が増えています」

 と、語るのは眼科医の梶田雅義さん。

 下にある「こんなサインを自覚したら眼科へ!」の項目に1つでも該当する場合は、老眼鏡がそろそろ必要。現状メガネをしている人は、メガネが合わなくなっている可能性が高い。

「老眼は誰にでも起こることで、恥ずかしいことではありません。よくないのは、老眼を放置してきちんと対処しないことです。

 私自身、若い頃は視力2.0でしたが、試験などの際には肩こりで苦労しました。

 30代からは眼精疲労がひどく、35才で初めて遠近両用メガネを作って以来、肩こり知らず。50代までに遠近両用メガネを4回作り替え、数年前に最新デザインの遠近両用メガネに替えてからは、遠くも近くも快適に見えるので目の疲れや肩こりも生じていません」(梶田さん・以下同)

こんなサインを自覚したら眼科へ!
 下の項目に1つでも当てはまれば、眼科に行くことをおすすめする。

□ スマホや新聞などの小さい文字を、手元から離して読むようになった

□ パソコンの画面を長時間見ていると目が疲れやすくなった

□ 夕方になると、いろいろなものが見えにくく感じるようになった

□ 読書が億劫になったり、手元の作業に集中できなくなった

□ 近くを見てから遠くを見るとすぐにピントが合わないことがある

□ 肩こり・頭痛が以前よりひどくなった

□ 資料などを読んでいて、気がつくと眉間にしわが寄っている

□ メガネをはずした方が、文字が読みやすくなった(近視の場合)

「頑張って」と「快適に」見える事はまったく違うこと
 メガネの精度は日進月歩で、遠近両用の累進レンズも老眼には有効だ。若い頃に視力がよくて老眼になった人は、遠くは見えるため、単焦点の老眼鏡をかけたりはずしたりしがちだが、この場合、裸眼でも1mくらいの距離は見えるが、目が疲れることがある。その点、遠近両用などの累進レンズを使えば1mくらいの距離を長時間見ていても疲れず、しかもしっかり見える。

「頑張って見えることと、快適に見えることは、まったくの別物です。本当に自分の目に合ったメガネなら、目の筋肉を使いすぎずに見ることができ、眼精疲労も肩こりも頭痛も起こりにくいのです」

きちんと検査して合うメガネを作る方が費用対効果もいい
 また、『あなたの眼鏡はここが間違っている』(講談社)などの著者で、眼鏡スタイリストの藤(とう)裕美さんは、メガネ選びについてこう指摘する。

「メガネは医療器具なのに、雑貨感覚で安い簡易老眼鏡を買う人が少なくありません。費用対効果でいえば、合わないメガネを使って目薬やマッサージで浪費するより、ちゃんと視力検査をして、合うメガネを新調する方がリーズナブル。

 人生の半分以上を老眼とつきあうのですから、なんとなく遠くが見えるメガネを作ったりせず、自分の生活スタイルを眼鏡店で伝えて、メガネを作ることが大切です」

合わないメガネはボケや転倒リスクも助長する可能性が
 合うメガネを作らず、合わないメガネをかけ続けると、どんな悪影響があるのか?

「眼精疲労や頭痛、肩こりを引き起こすほか、自律神経失調症、うつ病、更年期障害の原因になることもあります。

 最近は“スマホ斜視”という新しい目の病気が若者に増えています。高齢者の場合は、合わないメガネをかけ続けたことで視覚刺激が少なくなり、ボケが進むリスクがある。さらに、合わないメガネで1.5m前後の視界がしっかり確保できないと、歩行の際につまずくなどして転倒し、骨折するリスクが増大する恐れもあります」(梶田さん)

 見えづらさが原因で、読書や映画鑑賞が億劫になれば、好奇心が減退してボケが進む心配もある。この際、いまのメガネを見直してみよう。

教えてくれた人
梶田雅義さん/眼科医

東京・芝浦の『梶田眼科』院長。「目の調節機能(ピント合わせ)の適切な補助は自律神経を安定させる」という独自の考えから、遠近両用レンズを使った調節機能の補助を軸とした治療を行う。

眼鏡スタイリスト/藤裕美さん

10年間、メガネのセレクトショップで勤務後ドイツに渡り、メガネブランド『FROST』で1年間働く。2019年から東京・桜新町に自身の眼鏡店『tö』を営業中。

取材・文/北武司 イラスト/尾代ゆうこ

片足立ちが苦手な人は腰痛になりやすい?「中臀筋」を使ったおすすめヨガポーズ

中臀筋とは

中臀筋を鍛えるヨガポーズ

ストレッチも忘れずに

四十肩予防にも有効。ストレッチ本のベストセラー漫画家が教える「腕ねじねじメンテ」

(イラストレーション/崎田ミナ)


腕ねじねじメンテ

好きな種目を好きなときに、でOK。

教えてくれた人

【たった20秒】肩こり&二の腕の脂肪もスッキリ!一石二鳥の簡単ストレッチ&ツボ

肩こり改善に効果的!ほぐすべき場所はどこ?

肩こりを改善するためには、肩に繋がる部分を広い範囲でほぐすことがおすすめ!肩こりを楽にするのはもちろん、血流の悪さからくる頭痛などの不調、滞りからくる老廃物、脂肪の蓄積を防ぐことにも効果的!特に胸の筋肉「大胸筋」、肩の可動域を広げる「肩甲骨」のストレッチを取り入れるといいでしょう。どちらも腕の動きに関わる部分なので、二の腕の引き締め効果も期待できますよ!

肩こり・二の腕すっきり!セルフストレッチ

大胸筋・肩甲骨にアプローチする2つのストレッチとポイントをシェアします。痛みがある時は無理にやらず、心地よい広がりや伸びが感じられたらそのままキープしましょう。

1.胸・腕を大きく広げよう!大胸筋のストレッチ

やり方 1.楽な場所で座り、肘を伸ばして両手を肩の高さで広げる。 2.手の平を正面に向け、手の甲で後ろに押すようにして更に肩や胸を開く。 3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。© やり方 1.楽な場所で座り、肘を伸ばして両手を肩の高さで広げる。 2.手の平を正面に向け、手の甲で後ろに押すようにして更に肩や胸を開く。 3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。 やり方 1.楽な場所で座り、肘を伸ばして両手を肩の高さで広げる。 2.手の平を正面に向け、手の甲で後ろに押すようにして更に肩や胸を開く。 3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。

1.楽な場所で座り、肘を伸ばして両手を肩の高さで広げる。

2.手の平を正面に向け、手の甲で後ろに押すようにして更に肩や胸を開く。

3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。

マイナスイオンたっぷりの自然の中をイメージ。胸や腕が大きく広がる感覚を大切に、深呼吸します。耳と肩の距離が近くなったり、肩が詰まったり、呼吸が深まらない時は腕の位置を少し下げてみましょう。余分な力が抜けて心地よくストレッチできますよ!

2.脇・二の腕を伸ばそう!肩甲骨のストレッチ

やり方 1.壁の横に少し離れて立ち、壁側の腕の肘を曲げて壁に着ける。 2.壁に身を委ねるように重心をかけ、脇を壁に寄せながら広げる。指先を肩甲骨に近づけてストレッチを深め、二の腕を伸ばす。 3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。 4.反対側も同様に行う。© やり方 1.壁の横に少し離れて立ち、壁側の腕の肘を曲げて壁に着ける。 2.壁に身を委ねるように重心をかけ、脇を壁に寄せながら広げる。指先を肩甲骨に近づけてストレッチを深め、二の腕を伸ばす。 3.深い呼... やり方 1.壁の横に少し離れて立ち、壁側の腕の肘を曲げて壁に着ける。 2.壁に身を委ねるように重心をかけ、脇を壁に寄せながら広げる。指先を肩甲骨に近づけてストレッチを深め、二の腕を伸ばす。 3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。 4.反対側も同様に行う。

1.壁の横に少し離れて立ち、壁側の腕の肘を曲げて壁に着ける。

2.壁に身を委ねるように重心をかけ、脇を壁に寄せながら広げる。指先を肩甲骨に近づけてストレッチを深め、二の腕を伸ばす。

3.深い呼吸を繰り返し20秒キープする。

4.反対側も同様に行う。

壁に寄り掛かるようにしてストレッチを深めましょう。肩甲骨を腰の方に下ろして力を緩めながら行うことがポイント。立つ位置を変えたり、脇と壁の距離を調節したり、反対側の手を壁に置くことで軽減することも可能です。心地よい位置を選んでやってみて!刺激が強すぎると感じる時は、手のひらから肘まで壁に着け、肘を伸ばしたままゆっくりストレッチしましょう。

押すだけでOK!肩こりに効果的なツボ

今回紹介した2つのストレッチは強度を加減しながらできますが、痛みがあってストレッチをするのが困難な場合は、無理に動かさず、他の方法でセルフケアをしましょう。肩こりやそこから起きる頭痛などの不調、腕の痛みなど、症状を和らげる効果のある万能なツボを紹介します。20秒押すだけ!分かりやすい場所にあるのでぜひ試してみましょう。

曲池(きょくち)は肘を曲げた時にできるしわの先端(肘側)にあります。自律神経を整える効果もあるので万能のツボと言われています。反対の手の親指でゆっくり押して刺激しましょう。© 曲池(きょくち)は肘を曲げた時にできるしわの先端(肘側)にあります。自律神経を整える効果もあるので万能のツボと言われています。反対の手の親指でゆっくり押して刺激しましょう。 曲池(きょくち)は肘を曲げた時にできるしわの先端(肘側)にあります。自律神経を整える効果もあるので万能のツボと言われています。反対の手の親指でゆっくり押して刺激しましょう。

曲池(きょくち)は肘を曲げた時にできるしわの先端(肘側)にあります。自律神経を整える効果もあるので万能のツボと言われています。反対の手の親指でゆっくり押して刺激しましょう。ポイントは、程よい強さ、痛気持ちいい程度の力で押すこと。力加減を調節しながらやってみて!

まとめ

肩こりが改善されると、そのほかの不調が楽になったり、気になっていた体の部分がスッキリしたり、二次的な効果も期待できます。今回は二の腕にフォーカスしましたが、体は全部繋がっているので、そこだけにとどまりません。今回紹介したストレッチやツボを参考に、これからどんな変化が起きるか…楽しみながら続けていきましょう。

須藤玲子

2005年にホットヨガと出会い、その後様々なスタイルのヨガを経験。会社員を経てヨガインストラクターになる。現在は、都内を中心にフィットネスクラブ、ホットヨガ、ヨガスタジオ、オフィス出張など多くの場でレッスンを実施。リストラティブヨガからパワーヨガまで、静と動のバランスを大切にヨガの指導を行う。ヨガと同様にアロマを伝える活動も行なっている。RYT200取得/フェイシャルヨガTT/骨盤底筋トレーニングヨガTT/リストラティブヨガTT/NARDアロマアドバイザー/yuica日本産精油スペシャリスト

「腰痛持ちなら、内もも鍛えて」 整骨院院長オススメの「ギックリ腰の予防体操」が家でできてありがたかった

 多くの人が苦しむギックリ腰。テレワークの導入により家でパソコンを前に仕事をする人も増えたが、一方で、長時間座っているために腰痛に悩んでいるという人も多いのではないだろうか。ギックリ腰はどのような原因でなってしまうのか、その予防法などについて、神戸市須磨区・須磨パティオにある「ゆう鍼灸整骨院」院長の井手久貴さんに話を聞いた。

【写真】「ヒップアップ+内モモ筋運動」両モモでボールを挟む姿勢を、真横から

「ギックリ腰は正式には『急性腰痛』と呼ばれ、急激に発症する動けなくなるような腰痛全般を指します。様々な原因がありますが、だいたい全身の疲労がピークに達したときに起きやすく、おなか周りの前後左右の深層にある背骨を支える筋力のアンバランスにより引き起こされていると考えられています」(井出さん)

 ゆう鍼灸整骨院ではギックリ腰に対して、次のような処置を行っているという。

「私は筋力が弱っていることを『さぼり』、筋肉が緊張していることを『がんばり』と呼んでいます。例えば腰が丸くなっている人は、腰を反らす背中側の筋力がさぼり、一方で体を前方から支える股関節周囲の筋肉ががんばっている状態となります。筋肉が疲労を起こすので、結果として股関節周囲の痛みが出ます。逆に反り腰の人は、体前面の股関節周囲の筋肉がさぼり、腰を反らす筋肉が優位になりがんばるので、結果として背中側の腰痛となります。当院では独自の『ゆう式さぼり筋運動療法』を行っていますが、これはさぼり筋を鍛え、がんばり筋をゆるめるという運動療法です」

 痛みがある場合、腰と離れた手足の関連する筋肉を動かして腰のさぼり筋を刺激し、早い人だと即座に痛みが半減することもあるとのこと。また、痛みがとれた後でも継続して施術を行うと、反り腰や丸腰に改善がみられるそうだ。

 井手さんに、自宅で簡単にできる腰痛予防の体操についても聞いた。

「腰が丸くなると脚はガニ股になるのですが、これは腰と内モモの筋肉は同時に筋力低下する(さぼる)ということなんです。ですので、内モモの筋肉を鍛えると腰痛予防に効果的です。以下の運動をすれば、ギックリ腰予防をしながらヒップアップ効果も期待できます」

●ヒップアップ+内モモ筋運動
・仰向けで寝た状態で膝を立てて、両モモでボールを挟む(ボールがなければ枕などでも代用可)
・お尻を持ち上げると同時に両モモでボールをギュッと挟む
・しっかりお尻を上げたまま5秒間キープ
・これを10回ほど続けて行う

 来院者で1番多い症状はやはり腰痛だそうで、2番目に膝痛、その次は首・肩関節痛。その他、スポーツによる関節・筋肉痛で来る人もいるが、「ゆう式さぼり筋運動療法」はそのすべてに適応可能だという。痛みの施術だけでなく、O脚やガニ股、ぽっこりおなかなどのプロポーションも変化させることができ、さらにはスポーツ選手のパフォーマンスアップにもなるという。

捻挫したら「RICE処置」を…直後から1~2日継続 治り早まる

教えて!

  Q  駅の階段を踏み外して、左足首をひねっちゃった。1時間くらいしたら痛くなってきて……。

  ヨミドック  患部が赤っぽく腫れて、熱感もありますね。内出血で周辺が紫色だ。骨折の有無をレントゲン検査で確かめてください。ただ、立てるし、歩けるから、骨折ではなく捻挫でしょうね。

  Q  捻挫なら大丈夫だ。

  ヨ  捻挫とは、不自然にひねることで、骨を互いに結び、その連結を補強している靱帯(じんたい)が損傷してしまうことです。関節周辺の血管が切れて、内出血を起こします。痛むのは、炎症や傷の刺激で発痛物質が作られるから。まずは応急処置をするべきでした。

  Q  応急処置?

  ヨ  「RICE処置」と呼ばれる方法があります。

 REST(患部の安静)、ICING(冷却)、COMPRESSION(圧迫)、ELEVATION(挙上、患部を高くする)――の四つの頭文字を取ったものです。

 まずR。患部を動かさないこと。次にI。すぐ氷で冷やします。ビニールの袋などに氷を入れて患部を包むとよいでしょう。冷やし過ぎると凍傷になるので、数十分したら間をあけます。

  Q  あとの二つは?

  ヨ  3番目のC。冷却しつつ圧迫です。内出血を抑えるため、包帯やテープを強めに巻きます。こちらもやり過ぎると、血液の流れが悪くなり、神経が過度に圧迫されるので要注意。強く締めつけたまま寝ないでください。

  Q  なるほど。

  ヨ  最後のE。患部を心臓より高い位置にあげることも大切です。こうすることで、腫れの原因になっている水分が吸収されます。

 RICEを、けがの直後から1~2日続けると、治りは格段に早まります。

  Q  そうだったのか。でもぼくの捻挫は、激痛はないから、軽いよね?

  ヨ  すぐに軽症とは言えません。痛みを感じにくい靱帯もありますから。多くの場合、1~2か月で痛みや腫れはとれますが、油断は大敵です。つい動いてしまい、結果的に、靱帯に二次的な傷ができることもあります。さあ、理解が深まったところで、整形外科か接骨院などを訪ねて診てもらいましょう。

ひざが痛いときは「温める」それとも「冷やす」? 東大教授が正しい対処法教えます

あやふやなひざ痛対策を東大教授が一刀両断!(イラスト:なとみみわ)

東大教授が本気で教える「ひざの痛み」解消法(監修:福井尚志、深代千之/中央公論新社)

ダフリ、引っかけ…右肩痛が引き起こすミスと改善法

右肩痛がスイングに与える悪影響とは?

ストレッチ1

ストレッチ2

ストレッチ3

ストレッチ4

マッサージ

【10カウントで腰痛を和らげる】硬いお尻と股関節が原因?ほぐして伸ばす寝たままストレッチ

腰痛と股関節・お尻の関係

股関節は、骨盤や大腿骨と繋がるところにあります。そしてお尻の筋肉は、股関節周辺の骨と繋がっており、お尻と股関節はセットで働いています。歩いている時など、股関節が動いている時にお尻を触ってみると、お尻の筋肉も一緒に動いていることに気づくでしょう。また、股関節には太い血管やリンパ節があり、循環のための重要な場所でもあります。座りっぱなしなど股関節が動かないままでいると、巡りが悪くなるだけでなく、繋がっているお尻の筋肉も硬くなります。そして「歩く」「立つ」など日常のちょっとした動きの中でも、他の部分に負担がかかるように…。腰の痛みやだるさはここから起こるのです。

腰痛予防・改善!10カウント簡単ストレッチ

腰痛が悪化しないように、また、座りっぱなしが続く人は不調がなくても、予防のためのケアを始めましょう。寝たまま10数えるだけ!だれでも手軽にできるストレッチです。

股関節を動かしてほぐすストレッチのやり方

1.腰や背中の力を抜き、両ひざを抱えて仰向けになる。 3.ゆっくりカウントしながら10回股関節を回す。 3.同様に逆回りも行う。© 1.腰や背中の力を抜き、両ひざを抱えて仰向けになる。 3.ゆっくりカウントしながら10回股関節を回す。 3.同様に逆回りも行う。 1.腰や背中の力を抜き、両ひざを抱えて仰向けになる。 3.ゆっくりカウントしながら10回股関節を回す。 3.同様に逆回りも行う。

1.腰や背中の力を抜き、両ひざを抱えて仰向けになる。

3.ゆっくりカウントしながら10回股関節を回す。

3.同様に逆回りも行う。

ポイント

股関節を中心にして膝で左右対称の円を描きます。最初は小さな動きでOK!スムーズに動けるようになったら2~3セット繰り返してもいいでしょう。また、手を外してもっと大きく動かすのもおすすめです。

お尻をじっくり伸ばすストレッチのやり方

1.腰や背中の力を抜き、両膝を抱えて仰向けになる。膝下を天井方向へ。 2.右側のイラストのように両膝を曲げて左右の脇の下に下ろし、手で足先を掴んで足首が90度になるようにかかとを突き出す。 3.そのままキープしてゆっくり10カウント数え、お尻の筋肉を緩めてじっくり伸ばす。© 1.腰や背中の力を抜き、両膝を抱えて仰向けになる。膝下を天井方向へ。 2.右側のイラストのように両膝を曲げて左右の脇の下に下ろし、手で足先を掴んで足首が90度になるようにかかとを突き出す。 3.そのま... 1.腰や背中の力を抜き、両膝を抱えて仰向けになる。膝下を天井方向へ。 2.右側のイラストのように両膝を曲げて左右の脇の下に下ろし、手で足先を掴んで足首が90度になるようにかかとを突き出す。 3.そのままキープしてゆっくり10カウント数え、お尻の筋肉を緩めてじっくり伸ばす。

1.腰や背中の力を抜き、両膝を抱えて仰向けになる。膝下を天井方向へ。

2.右側のイラストのように両膝を曲げて左右の脇の下に下ろし、手で足先を掴んで足首が90度になるようにかかとを突き出す。

3.そのままキープしてゆっくり10カウント数え、お尻の筋肉を緩めてじっくり伸ばす。

ポイント

ヨガのハッピーベイビーポーズをイメージ。腰が浮いたり、肩や首に力が入ったり、呼吸が苦しく感じる時、足に手が届かない場合は、足首やふくらはぎ、腿裏を抱えましょう。左側の図のように膝を伸ばしてもOK!心地よくお尻の伸びる体勢を探してみましょう。

毎日じっくりケアしよう!

いかがでしたか?簡単な動きでもゆっくりじっくり行うこと、毎日継続して行うことで、固まりやすい股関節やお尻も柔らかくなってきます。血液やリンパなど体液の循環が整い、腰回りの血流も改善されるでしょう。腰痛はもちろん、冷えやむくみなどその他の不調も徐々に和らいでくるはずですよ!

須藤玲子

2005年にホットヨガと出会い、その後様々なスタイルのヨガを経験。会社員を経てヨガインストラクターになる。現在は、都内を中心にフィットネスクラブ、ホットヨガ、ヨガスタジオ、オフィス出張など多くの場でレッスンを実施。リストラティブヨガからパワーヨガまで、静と動のバランスを大切にヨガの指導を行う。ヨガと同様にアロマを伝える活動も行なっている。RYT200取得/フェイシャルヨガTT/骨盤底筋トレーニングヨガTT/リストラティブヨガTT/NARDアロマアドバイザー/yuica日本産精油スペシャリスト

デスクワーク中の姿勢が大きな血管を圧迫する?しなやかな血管を維持するためにできること

血管の病気だけではない!血管が固まることで起こる不調

血管が細くなり、血流が低下することで引き起こされる病気の代表は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などが代表的ですが、これらは一部にすぎません。

血管の病気以外にも基本的にはどの臓器も血流が阻害されれば老化し、様々な病気の原因になります。そしてもちろん病気だけでなく血流の悪さは肌や筋肉などもかためてしまいます。

血管には様々な太さや働きが違うものがあり、身体の中心部には大きな血管が走り、手先や足先など末端に向かうほど細い毛細血管が走っています。この毛細血管の長さは血管全体の約95%を占めており、全身に張り巡らされていて身体の隅々まで栄養を届けています。

末端といえば皮膚にも毛細血管が栄養を届けていますが、加齢ととも血管自体も硬くなり、硬くなるだけでなく、毛細血管自体がどんどん減ってしまうためお肌にツヤや潤いがなくなっていきます。

誰でも加齢とともに老化していきますが生活習慣や運動の仕方などによって血管の老化スピードは変わっていきます。健康に美しく年を重ねていくためにも血管に厳しいライフスタイルから血管にやさしいライフスタイルに変えていきましょう。

デスクワーク中に腰が丸まると腹部に圧迫が。大きな血管を阻害しない姿勢作りを
骨盤内には大きな血管(大動脈や大静脈)が走っています。デスクワークの際に腰が丸まった状態で長時間動かないなど腹部に圧迫のかかる姿勢は、股関節周辺の筋肉や臓器を圧迫するだけでなく、血流にも大きく影響を与えます。

デスクワーク中に時間を決めて立ち上がって肩や股関節を動かしたり、お尻を左右にゆすって座面に座骨を立てるなどは最低限、意識的に行ってほしいです。

腰が丸まっているとついつい背筋で胸をぐっと張るように姿勢を正しがちですが、それだと疲れてすぐに前の姿勢に逆戻りしてしまいます。

座骨を立てるように意識することで骨盤の後傾しすぎ(稀に前傾しすぎている場合も)をリセットし、百会(耳と鼻から頭のてっぺんに向かっていったところの交点)を天井に吊られるように意識すると、肩や背中を過剰にりきませずに背骨の近くやお腹の内側の筋肉で身体を支えやすくなります。姿勢が悪くなったときや姿勢を正したいと感じたときは思い出してみてくださいね。

血管をゆるめる8分目の呼吸
ストレスが血管や心臓を緊張状態にしてしまいます。まず自分でできることとしては、イライラしたときなどは意識的にゆったり呼吸をしてみましょう。

いつもよりもゆっくり吐いて、ゆっくり吸く。そして吐き切ろう、吸い切ろうとするとりきみやすいので8分目くらいの力で行うように意識してみましょう。それだけでもストレスによる興奮状態が少し緩和できます。

先ほど紹介した座位の姿勢の作り方は横隔膜(胸とお腹を隔てている呼吸をするときに一番多く働く呼吸筋)の働きもよくなるので、呼吸の質を高めることにもつながります。

良質な睡眠が良質な血管をつくる
続いて睡眠の質を見直してみましょう。

睡眠は脳と身体を休めることで蓄積されたダメージをリセットし、自律神経やホルモンのバランスを整えるために行われる重要な生命活動が睡眠です。睡眠不足や睡眠の質の低下は血管や心臓に負担が大きく動悸などにもつながります。

わたしも実は一時夜型の生活になったことがありますが、その時は睡眠時間が足りているはずなのに眠くなることが多く、疲れがとれないと感じる日もありました。生活の中で睡眠の質を高めていく工夫を実践していくことで、しっかり疲れをとることができるようになりました。

睡眠の質を高めるために特に気を付けていることとしては「寝る前3時間は食べない」「入浴は夜、洗髪は朝行う」「寝室にスマホやパソコンを持ち込まない」「起きたらまず朝日を浴びる」「軽く汗ばむ程度のヨガやウォーキング」というシンプルなものばかり。

睡眠の質が低下していると感じている方はぜひ実践してみてください。

来月はテレワーク中に実践してほしい、血管をしなやかに血流を改善するためのおすすめのセルフケアや呼吸法、ヨガポーズなどを紹介していきます。

仁平美香

WAY-TOKYOヨガ&ボディケアサロン主宰 パーソナルヨガおよびグループレッスンの他、オイルマッサージ、指圧整体等を様々な年代のクライアントに提供。ヨガ講師(WomensAwarenessYoga、月経血コントロールヨガ、産後、マタニティヨガ等、講師養成スクールにて講師育成を行うほか、イベントやレギュラークラスで指導中)、栄養士。女性のためのヨガ協会代表。「カラダをゆるめてこころを整えるはじめての月経血コントロールヨガ」「医師もすすめる血管美人ヨガ」等8冊の著書がある。雑誌・WEB等コラム連載&監修多数。

つまずくのは老化現象?【40代・50代のための抗加齢エクサ】脚力と腹筋を鍛える片足立ち運動

何もないところでつまずくのはなぜ?

加齢による筋力の衰えは下半身から始まると言われています。下半身を安定させる働きがある大殿筋、股関節の動きをサポートする腸腰筋や太腿の大腿四頭筋、腿裏のハムストリングスなど、下半身には体を支えるための大きな筋肉がたくさんあります。これらの筋肉には、歩く、走る、立つ時など、体を支えながら脚を動かす役割があります。筋力が低下すると、自然に歩幅や脚の上げ下ろしの幅が狭くなり、太腿を引き上げる動きや、足を蹴り出す動きがスムーズにいかなくなり、バランスを崩しやすくなるのです。そのまま運動不足が続くと老化が加速し、何もないところでつまずいて転んでしまうことも…。

つまずき防止!アンチエイジングエクササイズ

40代50代になっても、筋肉は使えばちゃんと働いてくれます。バランスと筋力UPを目指し、アンチエイジングに役立つエクササイズを始めましょう。下半身が安定すると、バランスを崩して脚がもつれたり、転んだりするこことも少なくなりますよ!

1.足を腰幅にして立つ。下腹部を引きこんで背筋を自然に伸ばす。 2.腿が床と平行、角度は90度を目安にして膝を曲げ、片脚をすっと引き上げる。 3.そのままゆっくり呼吸を繰り返し、30秒キープする。 4.更にそこから膝を小さく上下に動かし、腿上げを10回!終わったら時間をかけてゆっくり脚を下ろす。 5.反対側も同様に行う。© 1.足を腰幅にして立つ。下腹部を引きこんで背筋を自然に伸ばす。 2.腿が床と平行、角度は90度を目安にして膝を曲げ、片脚をすっと引き上げる。 3.そのままゆっくり呼吸を繰り返し、30秒キープする。 4... 1.足を腰幅にして立つ。下腹部を引きこんで背筋を自然に伸ばす。 2.腿が床と平行、角度は90度を目安にして膝を曲げ、片脚をすっと引き上げる。 3.そのままゆっくり呼吸を繰り返し、30秒キープする。 4.更にそこから膝を小さく上下に動かし、腿上げを10回!終わったら時間をかけてゆっくり脚を下ろす。 5.反対側も同様に行う。

やり方

1.足を腰幅にして立つ。下腹部を引きこんで背筋を自然に伸ばす。

2.腿が床と平行、角度は90度を目安にして膝を曲げ、片脚をすっと引き上げる。

3.そのままゆっくり呼吸を繰り返し、30秒キープする。

4.更にそこから膝を小さく上下に動かし、腿上げを10回!終わったら時間をかけてゆっくり脚を下ろす。

5.反対側も同様に行う。

ポイント

軸になる脚の筋力も鍛えられるエクササイズです。骨盤が傾いてグラグラしないように、軸を安定させて行います。バランスがとりにくい時は壁やテーブルに手をついてやってもOK!徐々に回数を増やしてみてもいいでしょう。

気になる下腹部も同時にひきしめよう!

今回紹介したエクササイズは、地味な動きですが、筋力が衰えていると意外ときつく感じるかもしれません。まずは1週間、頑張って続けてみましょう。腿を上げる動きは下腹部の筋肉も使うため、お腹の引き締めにも効果的です。ポッコリお腹が気になる人は、お腹の力で腿を引き寄せる意識をしてみるといいでしょう。できる範囲で膝を高く引き上げると更に効果大です!次第に脚の動きが楽になり下腹部もスッキリ!ちょっとした段差や何もないところでつまずくことも減るはずです。老化は避けられないものですが、ケアをすれば速度をゆるめることは可能ですよ!

須藤玲子

2005年にホットヨガと出会い、その後様々なスタイルのヨガを経験。会社員を経てヨガインストラクターになる。現在は、都内を中心にフィットネスクラブ、ホットヨガ、ヨガスタジオ、オフィス出張など多くの場でレッスンを実施。リストラティブヨガからパワーヨガまで、静と動のバランスを大切にヨガの指導を行う。ヨガと同様にアロマを伝える活動も行なっている。RYT200取得/フェイシャルヨガTT/骨盤底筋トレーニングヨガTT/リストラティブヨガTT/NARDアロマアドバイザー/yuica日本産精油スペシャリスト

知ってる?骨折リスクは2.5倍…お酒弱い人は骨粗しょう症になる傾向

《酒に弱いと骨折リスクが高まる》。そんな見出しが新聞各紙に躍ったのは3月末のこと。「酒と骨折リスク」研究を発表したのは、慶應大学などの研究チーム。3月27日付のイギリスの科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』で発表し、世界的に注目されているという。

さっそく研究について同チームの慶應大学医学部整形外科特任準教授・宮本健史さんに解説してもらった。

「もともと私たちは近年、大腿骨近辺の骨折が増加していることに注目していました」(宮本さん・以下同)

’14年には大腿骨近辺を骨折した人は約19万人にもなったという。なんと、1日平均520人が太ももを骨折していることになる。

「大腿骨近辺の骨折は手術が必要となることも多いうえ、回復にも時間がかかります。とくに高齢者の場合は骨折をきっかけに認知症になったり、回復しないまま寝たきりの生活が続いたりと、介護問題にまで及ぶのです。

骨折後1年以内に亡くなる人も少なくありません。調査をすると、骨折をした人たちは高齢者が多く、とくに閉経後の女性が多いことがわかりました。

この条件は骨粗しょう症のリスクの高い人に当てはまるのですが、骨折する人の多くが、自分が骨粗しょう症だという自覚がない場合も少なくありません。ちなみに女性は70代後半になると、2人に1人が骨粗しょう症になります」

’14年時点で日本の骨粗しょう症患者数は推定1,300万人に上っていた。さらに研究を続けていくと、“飲酒”という要因も浮かび上がってきたという。チームは大腿骨骨折をした92人の中高年女性(44〜101歳)と、骨折していない中高年女性たちの遺伝情報を解析。

すると骨折した92人の約6割が“ある遺伝子の働きが弱い人”だったのだ。そして遺伝子の働きが正常な人たちに比べると、骨折リスクは約2.5倍も高くなることがわかったという。

「お酒を飲むと体内でアルコールが分解されて、二日酔いの原因ともいわれるアセトアルデヒドという物質になります。しかし遺伝子『ALDH2』が変異して、働きが弱くなっている人は、うまくアセトアルデヒドを分解できないのです。そのためアセトアルデヒドが血液中に流れ出て、血管を拡張し、顔を赤くしたりします」

アセトアルデヒドは体内にたまると、骨の基となる骨芽細胞の成長を妨げるため、骨折しやすくなる。チームはマウスの細胞でも実験したが、骨芽細胞にアセトアルデヒドを加えると、細胞の働きが弱まったという。

「変異したタイプの『ALDH2』を持つ人は、日本人をはじめ、韓国や中国沿岸部など東アジアに多いですね。欧米人に比べて東アジアの人たちがお酒に弱いのは、そのためです」

お酒に弱くて、すぐに顔が赤くなる人は、骨粗しょう症になりやすく、骨折もしやすい……。それなら、飲酒しなければ、アセトアルデヒドも発生しないし、骨に影響もないのでは?

「実は、飲酒していなくても、通常の食事に含まれるアルコール分の分解過程で、アセトアルデヒドが生じており、本人も気が付かないうちに骨折のリスクが高まっているのです。実際に今回の調査でも、骨折したグループで、遺伝子の変異があった人には、飲酒の習慣がありませんでした」

一般的に骨粗しょう症の危険度をはかるチェックリストには、《1日に(日本酒で)3合以上飲む人》といった項目がある。今回の研究結果とは逆のように思えるが?

「たしかにお酒に強い人は、弱い人に比べればリスクは低いということになりますが、『だから、たくさん飲んでも大丈夫!』ということではないのです。過度の飲酒が、骨粗しょう症や骨折のリスクを高めることは間違いありません」

飲んでも飲まなくてもリスクが高いなんて……。

「また喫煙は、骨をもろくさせ、骨粗しょう症リスクを高めます。お酒に弱いのにたばこを吸うのはもってのほかです。とくに下戸の人は、禁煙したほうがよいと思います」

長引く腰痛の救世主?週に1回・40分の「リングフィット」が鎮痛薬より有効との研究が発表

長引く腰痛、つらいですよね。新型コロナの感染拡大後、新たに4人に1人が腰痛を発症しているとの調査結果も出ています(1)。

この4月「腰痛持ちの人に、リングフィットアドベンチャーをやってもらったところ、痛み止めの薬を処方するより、痛みが改善する人が多かった」という研究が発表(2)され、話題になっています。

概要と、研究を行った清水啓介さんへのインタビューは下記の記事にまとまっているので、ぜひご一読を。

(以下引用)

任天堂「リングフィット」が腰痛などに効果 論文が学術誌に掲載、研究者「稀有な治療デバイス」 J-CASTニュース2021年05月12日20時24分

(以上引用)

リングフィットアドベンチャー(以下、RFA)と言えばご存知、2019年発売で大ヒットした、Nintendo Switch専用フィットネスソフト。リングのようなコントローラーを傾けたり引っ張ったりしつつ、ゲームを進めていくものです。

まあフィットネスをすれば体も鍛えられるだろうし、改善は当たり前じゃない?とも思いますが、論文を読んでみると、ゲームをやったのは「週に1回・40分」だけです。しかもゲームをした人を調べても、「筋肉が増える」などの変化は見られなかったそうです。ではなぜ、痛みが改善したのでしょうか?

興味を持って論文を読んでみたところ、「痛みへの自己効力感」というキーワードが注目されていることが分かりました。実はこれ、長引く痛みのコントロールにとても大事な要素だとして、最近注目されているものなんです。

週に1回・40分の「リングフィット」で腰痛が改善

論文によれば、研究の対象は3か月以上にわたって腰痛に悩み、これまで他の医療機関で治療を受けても改善のなかった40人。参加者たちは20人ずつ2つのグループに分けられ、片方は週に1回、40分間ゲーム(アドベンチャーモード30分+腰痛改善プログラム10分)を、もう一方は、一般的な治療(鎮痛薬の処方)を受けました。

およそ2か月(8週間)続けた後で、それぞれのグループの人に腰痛の状態を報告してもらったところ、鎮痛薬の処方を受けたほうは痛みに変わりがなかったのですが、週に1回RFAをしたグループは、有意に改善していました。

(10段階のVASスコアで7.42→4.81)

ゲームをしたほうが、お薬より良い結果!と言われると、驚きますよね。

先述した通り、RFAをやったのは週に1回、40分だけです。汗を流して気持ちよくはなりそうですが、体を鍛える効果がすごく見込めるかというと疑問もありますよね。実際に研究チームが調べたところ、前後で筋肉量の変化などはなかったそうです。

もちろん体を動かしたことで血行の改善などがあったのかもしれませんし、論文ではRFAにはヨガセッションがあり、そこで呼吸に関するアドバイスが繰り返し行われたことで、リラックス効果が得られ、痛みが軽減された可能性にも言及しています。

とはいえやっぱり、体が鍛えられたわけでもないのに痛みが改善したというのは不思議なことでもあります。その理由のひとつとして研究グループが目を付けたのは、「痛みへの自己効力感」というキーワードでした。

「痛みがあっても○○できる自信」が痛みに与える影響とは

「痛みへの自己効力感」とは、ざっくり言えば「痛みがあっても特定の活動ができるという自信」のことを指します。

たとえば朝起きて、多少の腰痛があったとき。「まあ、そのうち治まるだろうし、大丈夫」と思って仕事を始める人もいます。一方で、「どんどん痛みが強くなるかもしれないし、大事をとろう」と仕事を休む人もいます。後者のほうが「痛みへの自己効力感が低い」状態です。

自己効力感が低いと、痛みを強く感じたり、長引いてしまったりすることが報告されています。メカニズムが完全に分かっているわけではないのですが、日常生活で大事をとりすぎて運動不足になってしまったり、不安がちな考え方が痛みを感じる脳のメカニズムに影響したりするのではないか?と言われています。

先ほどの研究で、週に1回RFAを行ったグループに、この「痛みへの自己効力感」を調べるアンケート調査(PESQ)を行うと、以前と比べて点数が高まっていました(19.71→30.13)。一方でお薬を処方されたグループに変化はありませんでした。

ゲームをすることを通じて「痛みがあっても動ける」という経験をしたり、「痛みがあっても動ける方法はないだろうか?」と試行錯誤をしたりしたことによって、自信がついた(自己効力感が高まった)のではないか?と考えられます。

痛みがあって動けないと思い、不安を抱えている人に「まずは運動してみよう」と働きかけても、なかなか一歩が踏み出せなさそうですよね。でも「楽しい最新のゲームをやってみよう!」という風に言われると、ちょっと心が動くかもしれません。

しかもRFAなどのゲームには、「もっともっと続けたい!」と思わせるような様々な工夫が随所に埋め込まれています。そういった特徴が、腰痛に悩んでいた人に体を動かすことの喜びを思い出させ、自己効力感を高め、ひいては痛みの改善につながったのかもしれません。

薬だけじゃない痛みへの対策 「ゲーム」の可能性

3か月以上長引く痛み、いわゆる「慢性痛」に悩む人は、日本だけで2000万人いるという調査もあります。世にたくさんの鎮痛薬は販売されており、飲み薬や注射、シップなど種類も豊富です。これだけ薬がたくさんあるのに、なんで治療できないの?と不思議に感じてしまいますよね。

最近の研究で、人が痛みを感じる仕組みは複雑で、まだ解明されていないメカニズムがたくさんあることが分かってきました。例えばスポーツに夢中になっているときはそれほど感じない痛みが、休んでいるときには耐えがたく感じられる、なんて経験は誰にでもありますよね。

痛みが長引く背景には、単にどこが傷ついたり炎症が起きていたりなど単純な理由だけではなく、本人の精神状態や痛みの捉え方、さらには環境や周囲の接し方など様々な要素が複雑に絡んでいると考えられています。

もちろん、だからといって薬や手術に意義がないわけではありません。薬や手術、さらにはカウンセリングや周囲の接し方の改善も含め、その人その人で違う痛みの背景を解きほぐすために、多様な手段があることが大事なのです。

その意味で、RFAなどの「エクサゲーミング(体を動かすことを目的としたデジタルゲーム)」が、痛みへの新たな治療の選択肢になりうるという今回の論文の示唆する点は、とても意義があるものだと感じました。

(念のためですが、いま痛みを抱えている人が自己判断でお薬を中断したりすることは危険です。ゲームをやってみようかな?と思った方は、かかりつけの医師など専門家に相談のうえで始めてください)

【備考】

論文の中で、著者たちは任天堂を含むゲーム関連を含む企業からの資金提供などは受けていないと宣言しています。またこの記事である市川衛自身も、執筆にあたって、いかなる関連の企業・組織から金銭的なものを含む利益の提供を受けていません。

(以下引用)

【参考文献】

(1)株式会社ヒュノプス プレスリリース

(2)Effects of Nintendo Ring Fit Adventure Exergame on Pain and Psychological Factors in Patients with Chronic Low Back Pain

Games Health J. 2021 Apr 22. doi: 10.1089/g4h.2020.0180.

(以上引用)

2021年5月16日の市川衛さんのYahoo!ニュース個人掲載記事「長引く腰痛の救世主?週に1回・40分の『リングフィット』が鎮痛薬より有効との研究が発表

【季節の変わり目は「ぎっくり腰」に要注意】腰背部筋肉の緊張をじんわ~り緩める「陰ヨガポーズ」

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「ぎっくり腰」の原因と対策は?

初夏は、汗ばむほど夏の日差しかと思えば、朝夕の風はまだ冷たかったりと気温が不安定な季節。手首、首筋、足首などに風が当たると思った以上に身体が冷えてしまい「腰痛」や「ぎっくり腰」を起こしやすい季節でもあります。

季節的な影響だけではなく、「腰痛」「ぎっくり腰」が起きる要因のひとつに、ハムストリングスの固さがあげられます。坐骨を下方に引き下げ骨盤を後ろに傾ける状態にしてしまい、本来の背骨の腰部のカーブをなくしてしまう。それによって背骨の健康的な動きが妨げられてしまうからです。

ハムストリングスとは

①半腱様筋

②半膜様筋

③大腿二頭筋(長頭・短頭)

の総称。骨盤の坐骨から脛骨・腓骨にわたる筋肉。内転筋群とは恥骨から大腿骨後部にわたって存在する10もの内転筋の総称。どちらも股関節をつなぐ筋肉群で、骨盤の動きに大きく関係します。

背骨

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ハムストリング

イラストAC© イラストAC イラストAC

内転筋群

イラストAC© イラストAC イラストAC

じっくりと時間をかけて、無理なくストレッチする陰ヨガで、柔軟な股関節と、のびやかなハムストリングスを手に入れて背面の緊張を取り除き、「腰痛」や「ぎっくり腰」が起こらないように対策していきましょう。

ドラゴンフライ(とんぼ)ポーズ

①脚を開いて、床に座ります。この時、骨盤を立てるように、股関節をしっかりと曲げて座ります。

骨盤を立てることを忘れずに© 骨盤を立てることを忘れずに 骨盤を立てることを忘れずに

②股関節からしっかり骨盤を立て、前傾にして前屈します。

骨盤を立てにくい人は、ブロックをお尻の下に© 骨盤を立てにくい人は、ブロックをお尻の下に 骨盤を立てにくい人は、ブロックをお尻の下に腰が丸まらない範囲でOK© 腰が丸まらない範囲でOK 腰が丸まらない範囲でOK

③膝をまげて、前屈します。簡単バージョンでなく、機能的に股関節で上体を前屈させることで、ハムストリングスに効果があります。

膝を曲げて股関節から上体を起こします© 膝を曲げて股関節から上体を起こします 膝を曲げて股関節から上体を起こします前屈は、腰が丸まらない範囲でOK© 前屈は、腰が丸まらない範囲でOK 前屈は、腰が丸まらない範囲でOK

④こぶしをおでこの下におき、頭を支えます。両頬杖をついてもOK。

こぶしをおでこに© こぶしをおでこに こぶしをおでこに両頬杖でも© 両頬杖でも 両頬杖でも

<バリエーション①>

ヨガボルスター、または大きめのクッションに上半身を預けます。リラックスして脱力することで、深層筋膜が伸びるように意識しましょう。

大きめのクッションを使ったバージョン© 大きめのクッションを使ったバージョン 大きめのクッションを使ったバージョン

ヨガボルスターとブロック両方を使ってもOK。上半身にリラクゼーションを感じましょう。

ブロックを足すのもおすすめ© ブロックを足すのもおすすめ ブロックを足すのもおすすめ

<バリエーション②>

どうしても股関節から前屈できない方、あるいは、疲労感がひどく、脚の疲れを取りたい方は壁を使うと良いでしょう。背中はリラックスしながら、重力に任せて、力を抜いて開脚します。

骨盤を立てにくい人は、ブロックをお尻の下に© 開脚が苦手な人は壁を使いましょう 骨盤を立てにくい人は、ブロックをお尻の下に

<バリエーション③>

壁を使う場合は、片脚ずつ開脚してもOK。

片脚ずつ行って心地よさを探ります© 片脚ずつ行って心地よさを探ります 片脚ずつ行って心地よさを探ります

もしくは上半身の位置を変えてみてもOK。上半身を少し壁に寄せて、脚のかかとを低く置いていきます。

上半身の位置を変えてみて© 上半身の位置を変えてみて 上半身の位置を変えてみて

陰ヨガは、じっくりと時間をかけて1呼吸ずつ丁寧に行うヨガです。ゴールはあなたの身体とお友達になって、身体の心地よさを探求してみること。目を閉じて五感を使って「自分だけの心地よさ」を味わってみてくださいね。

※現在、通院中、医療機関の専門医にかかっている場合は、ご担当の専門家の許可を得て、安全にヨガを行ってください。

西川尚美

西川尚美プロフィール2004 サンディエゴでヨガと出会い2010より指導。都内スタジオで陰ヨガクラスを担当。現在オンラインクラスでブレスワーク、陰ヨガ、瞑想、指導者養成講座を開講している。2010年よりインサイトヨガのサラパワーズ氏、2012年より陰ヨガ創始者ポール・グリリー氏に師事。毎年渡米し講座を受け続けている。2020よりマインドフルネス陰ヨガ指導者養成講座開講スタート、現在毎月開講中。YYTT500、全米アライアンス認定講師 RYT500、介護予防運動指導員2013 「朝ヨガ夜ヨガ」宝島社出。2015 DVD「陰ヨガ for Beaty & Healing 」デンシティ社blog https://ameblo.jp/happy-naoyoga/、Twitter @nao92122、Instagram naomi.nishikawa、HP https://www.naominishikawa.com/、Mail to naomiyinyoga@gmail.com★マインドフルネス陰ヨガ指導者養成講座 基礎102.06毎週土曜日 02/22〜26 5日間連続コース基礎1 募集中

情報デトックスは散歩中に。 オイシックスCEOが「足病専門医」にハマる理由

「米国では一般的な“足病専門医”が、日本に少ないのはなぜですか?」

対談は、オイシックス・ラ・大地の取締役社長髙島宏平氏のそんな質問で始まった。対談相手は、全国でも珍しい足病専門の病院「下北沢病院」の理事長、久道勝也医師だ。

足病とは、骨折や捻挫、傷、血流、むくみ、しびれ、爪や皮膚、靴のトラブルから、糖尿病など全身疾患の一症状まで、足にまつわるさまざまな疾病のこと。日本では、例えば骨折なら整形外科、爪のトラブルなら皮膚科などを訪ねるのが一般的で、「足をひとつの臓器と考えて」(久道医師)、ワンストップでどんな足のトラブルでも解決してくれる専門医は、下北沢病院以外ほとんどないという。

一方、例えばアメリカでは、ポダイアトリーと呼ばれる足病医が約1万5000人いると言われ、「日本で言う歯医者のような存在になっている」そう。G7諸国のなかでも、足病医療が存在していないのは、日本だけと言われる。その理由を、久道医師はこう話す。

「はっきりした答えはないものの、古くから靴を履き、足の存在に注目してきた欧米と違い、日本人は足と歩行についての文化がなかったからだと言われています。わらじや草履、下駄などを履いていたということはわかっていても、どんな風に歩いていたかという記録はほとんどないのです」

オイシックス社長は、「散歩で思考をダイエット」する

この日、髙島氏と久道医師との対談が実現したのには、大きく2つの理由があった。ひとつは、後述するように、髙島氏が経済同友会の「負担増世代が考える社会保障改革委員会」の委員長に就任したことだが、もうひとつは髙島氏が持っていた足についての興味だ。とくに趣味のサッカーで、10年前に膝の靱帯を断絶して以来、自身の足に強い関心を持つようになった。

「久道先生も言うように、私も足は重要な“臓器”という実感を持っています。ただしこの10年で整形外科を中心にさまざまな病院を受診したものの、問題が解決されないということも多かった。専門医の存在にもとても興味がありました」(髙島氏)

コロナ以降、髙島氏には足にまつわるもうひとつの趣味もできた。散歩だ。緊急事態宣言の合間で会食が復活したころ、密もある公共交通機関を使うことを避けて、1時間くらいの距離なら歩いて帰宅するようになったのがきっかけ。その頃たまたま『天才たちの日課』(メイソン・カリー著)という本を読み、キエルケゴールからウッディ・アレンまで、「天才たちはみんな歩行中に発想をしている」ことにも興味を持った。

そうして今では散歩が、会食で出会った人たちの言葉や、学んだことを思い出して、一人でじっくり体に入れる、なくてはならない時間になっている。

「例えば1時間かけて歩いて帰宅するなら、前半はそうした学びをまとめる作業。後半は考え事をすることが多い。アイデアを出すというより、日々分刻みで入ってくる膨大な情報を頭のなかで整理し、自分にとって必要なもの以外は削り落としていく。思考をダイエットしている感じですね」(髙島氏)

「記憶装置」としての歩行
久道医師によると散歩はまさに考えたり覚えたりするのに最適な時間。まずジムのエクササイズと違って、段差があったり、人とぶつかったりと、さまざまな刺激を受けて脳の活性化につながる。また歩行することによって、感覚器が集中したつま先などからの刺激が、脳の「海馬」にある短期記憶中枢を刺激。さらにその隣にある「扁桃核」という情報を選別する部分が連携して、必要な情報だけをサクサク記憶の棚に放り込む。

髙島氏の「思考のダイエット」は、まさに散歩時にぴったりの作業ということになる。東証一部への上場市場変更を果たすなど、オイシックス・ラ・大地のここ数年の成長は、髙島氏の散歩と無関係ではないかもしれない。

「記憶装置」としての歩行

「ソクラテスなど古代ギリシャの哲学者が、歩きながら発想していたのも有名です。また印刷物がなかった時代、膨大な情報を記憶するために、歩きながら暗記したという記録もある。通り過ぎた場所に紐付けて暗記する、記憶装置としての歩行ですよね。昔の人は歩いていると記憶しやすい脳になることを、本能的に知っていたのでしょう」(久道医師)

そうしてますます重要になってきた歩行機能を支える足の健康をキープするため、この日髙島氏は、下北沢病院で用意する「足の見えるか検診」の一部を受診。腹痛で病院を受診する人は多いが、足の痛みでわざわざ受診する人は少ないだろう。

そんなふうに軽く見られがちな足のトラブルを致命傷に発展させないため、皮膚や爪、臭いのトラブルから、動脈硬化や静脈の異常、靴のサイズ、歩行バランス、可動域、筋力、骨密度など、足のさまざまなポイントをチェックする検査となっている。

久道医師による髙島氏の診断は、「靱帯もよくなって、シリアスなトラブルは見当たりません。ただし、目で見えない程度の扁平(足の裏のアーチが潰れる状態)があったので、アキレス腱のストレッチをおすすめします」だった。

扁平足は、着地のショックを吸収する際に足が必要以上に変形してしまうため、大きな足のトラブルにつながることも少なくない。アキレス腱を鍛えることで、強靱なアーチをキープすることも夢ではないそうだ。扁平足も加齢で進むことがあるというが、歩行は、人の老化とも結びつけられることが多くなった。

「人生最後の三段階」は「歩けなくなる」ことから

「人生最後の三段階」。老年医学の常識として、そんな言葉があるという。まず健康寿命の衰えを告げる第一段階が、「歩けなくなる」こと。続いて「トイレに行けなくなる」のが第二段階。そして「食べられなくなる」第三段階がくると、いよいよ寿命は終焉を迎える。

つまり老化のスタートは足。ここに防波堤を作って歩けなくなることを予防すれば、健康寿命は大きく伸びると考えられている。

米国から考える経済効果
今回髙島氏が、下北沢病院を訪れた、2つめの理由がこれだ。40代の髙島氏は、昨年経済同友会の「負担増世代が考える社会保障改革委員会」の委員長に就任。Oisixをはじめとした食のサービスで健康社会を目指すほか、自身が興味を持っていた足の健康を守ることで生まれる健康社会の可能性を、委員会で議論しているところだという。

「歩行速度の低下と認知症の発症リスクの関連性を示す研究もある。また足がダメになった瞬間に、人は突然衰え始めることもいわれている。これを逆手に取ることで、医療や介護の領域で何かできるのではないかと思っています」(髙島氏)

ここで「日本の医療の未来が見えるかもしれない」と久道医師が紹介したのが、足病医療先進国と言えるアメリカと、日本のさまざまなデータの比較だ。

「アメリカのデータを見ると、足の健康を促進することの経済効果が、想像以上に莫大だということがわかります」(久道医師)

NY州、足病医全面導入で「医療費削減年間2500億円」を見込む

例えば米国では、糖尿病に関連する医療費のうち、なんと3割が足の医療によるもの。患者の経済的負担もさることながら、繰り返す入院や、動けないことによる経済損失も、治療費以上に国の損失になっていると言われる。

またアメリカでは、高齢者のけがによる死因の第一位は「転倒」。足にトラブルがあると転倒を起こしやすいほか、不適切なフットケアは歩行の機会を減らし、肥満や関節痛を引き起こすことも。さらにここから、心肺機能の低下や認知機能の低下などを起こす、負のスパイラルを生むこともあるという。

「東京と近い環境のニューヨーク州(人口1940万人)では、足病医を全面的に導入し、足を起点に診療した場合の経済効果を推計。足の切断を回避するなどで糖尿病の入院率が37%減るほか、1万8000人分の腰痛・足痛の痛み止め薬がカットされたり、高齢者の転倒による救急治療費や入院費が削減されるなどして、年間2500億円もの医療費削減につながるといわれています」(久道医師)

日本でも国交省が、1日1500歩の歩行が、年間1人3万5000円の医療費抑制につながると発表しているほか、日本のとある町で、正しく爪を切る方法や、足にあった靴を選ぶ方法などのフットケアの啓蒙をおこなったところ、これだけで医療費が年間数万円単位で削減できたという例もあるそうだ。

医療費の多くが治療のために使われ、予防医学が弱点といわれる日本。髙島氏は言う。

「足病のような、予防、未病領域の医療のルールをどう定めていくかが今後の課題になる。弊社には食についてのデータがあるように、各民間企業や久道先生のような医療機関が持っている、歩き方や睡眠、排泄などのデータを、どうやって医療に活用していくかもポイントになるでしょうね」

とくに日本ではコロナ以降、中年世代の歩行数の減少が顕著で、十数年後、足の老化が早まると危惧されている。足から始まる医療費削減に期待大だ。

肩こりの原因は全身マッサージで症状悪化を招くこともあると専門家が警鐘

「手もみ」「リラクセーション」「オイルトリートメント」。街を歩けば、マッサージの看板が目白押し。その店舗数はコンビニの2倍にのぼるという。リモートワークでこり固まった肩をほぐすのは至福のとき、のはずだった。しかしその先には思わぬ地獄が待っていることも…。マッサージが原因で症状が悪化することがあると専門家は警鐘を鳴らす。


肩こりは「国民病」

 肩に手をかけながらため息をつくのは、都内在住の会社員・山口加奈さん(52才・仮名)。「以前から肩がこることはあったけれど、テレワークが増えてからはひどくなる一方で、体じゅうがガチガチです。たまには“自分へのご褒美”でマッサージに行きますが、1日もたたないうちに元通り。最近、体が硬いからか寝付きも悪くなったし、夜中に首や肩のこりがつらくて起きてしまうことも。どうしたものかと悩み中です」


女性は男性よりも肩回りの筋肉が少ないうえ、冷えやすい体質も相まって肩こりになる人が多い。2019年に実施された国民生活基礎調査の結果をひもといても、日常生活で自覚するけがや痛みなどの症状のなかで、女性は肩こりを訴える人が最も多かった。柔道整復師で100万人以上に施術してきた、さかいクリニックグループ院長の酒井慎太郎さんは肩こりを「国民病」だと断言する。


「いわば日本は“肩こり大国”。農耕文化の歴史が長かったため、肩に負担がかかる前かがみの姿勢が体になじんでいる。うなずいたりお辞儀をしたりする習慣も、同様に肩に重圧がかかりやすい。アメリカ人が日本に来たら肩がこったという例も耳にするほどです。これらに加えて、近年はパソコンやスマホの普及でさらに前かがみになることが増えたうえ、テレワークで姿勢が悪くなって、体の痛みを抱えている人は増加する一方です。何才であっても人間の体は、2か月悪い習慣が続けばあっと言う間にこり固まってしまう。その証拠に、肩こりや腰痛で悩んで来院する患者数は、20代も70代も変わりません」(酒井さん)

体のさまざまな場所から肩こりは引き起こされる

●眼精疲労…目を酷使することで毛様体筋がこり固まり、肩こりの原因になる。

●ストレートネック…ストレートネックの場合、常に首の筋肉が緊張状態にあるため、肩に多大な負担がかかる。

●腕の酷使…パソコン作業などによって腕の筋肉がこり固まると肩に支障が。

●わきの下の収縮…わきの下の筋肉の収縮により、肩から胸にかけてついている筋肉がこり固まる。

●腸内環境の悪化…腸内環境が悪化すると血流が悪くなり、筋肉が硬くなりやすくなる。

無資格で知識のない人の施術を受けるのは危険

つらい体のこりを緩和するために多くの人がまず思い浮かべるのは、患部をもみほぐすマッサージだろう。家電量販店では何種類ものマッサージ器が販売され、街中には「リラクセーション」「手もみ」などの看板があふれている。しかし、柔道整復師で整体院「和-KAZU」院長の迫田和也さんはマッサージで体をもんでも根本的な解決にはならないと指摘する。


「そもそも肩こりや腰痛は“生活習慣病”です。虫歯や糖尿病などと同じで、治療をして終わりではなく、同時に生活習慣や体のくせを改善して予防しなければ、またすぐに元に戻ってしまいます」とはいえ、根本的な解決にはならなかったとしてもマッサージでこりをほぐしてもらうのは快適だ。しかし、それによって症状が悪化する場合すらある。理学療法士の財前知典さんが解説する。


「マッサージによってこり固まった一部の筋肉をほぐしても、ほぐれた筋肉が体を支えるためさらに緊張状態が強くなり、さらなる肩こりにつながることがあります。また、一部の筋肉だけが大きくゆるむことで体のバランスが崩れ、ゆがみが生じるケースもある。強いもみほぐしによって、筋肉が傷つく場合もあります。


実際、私のところには、マッサージを受けて痛みがひどくなったと駆け込んでくる人もいる。そもそもマッサージは医療行為ではないため、施術者によって知識や腕に偏りがあることも問題です」「マッサージ」と一口に言っても有資格者が施術を行うところもあれば、無資格で知識がない人が行っていることもある。肩こりが治らないからとマッサージに駆け込むのは、慎重になった方がいいだろう。

教えてくれた人

酒井慎太郎さん/柔道整復師・さかいクリニックグループ院長。迫田和也さん/柔道整復師・整体院「和-KAZU」院長。財前知典さん/理学療法士。

5秒で簡単!肩こり度チェック|人差し指の形でこりやすい人・こりにくい人がわかる

マッサージしてもなかなか楽にならない、やっかいな肩こりに、どう対峙するべきか。理学療法士の財前知典さんは、自分が肩こりになりやすい体質かどうかを見極めることから始めるのを推奨する。まずは、簡単にできる肩こり度のチェックをしてみよう!


5秒でできる!肩こり度チェック法

「実際は肩がこっているのに自覚がない人も多く、気がつかないうちに体が蝕まれていくパターンも多い。人差し指の形で肩こりになりやすいかどうかがすぐにわかるため、まずはこの方法で確かめてみてください。手のひらを上に向け、人差し指を丸めたときに、すき間ができず、ほかの指もまっすぐ伸びている場合は肩がこりづらく、健康な状態です。しかし、しっかり握れず、ほかの指もまっすぐに伸ばせない場合、重篤な状態であるサインになります(下図参照)」

中指薬指小指を伸ばして人差し指を丸めた時に人差し指が手のひらにつかない手と、つく手の2例イラスト

イラスト上→「こりやすい人」。人差し指をしっかり丸められず、ほかの指もまっすぐに伸ばせない場合、肩こりが重篤な状態であるサイン。イラスト下→「こりにくい人」。人差し指を丸めたときに、すき間ができず、ほかの指もまっすぐ伸びている場合は肩がこりづらく、健康な状態。自分が「こりやすい」体質だとわかったら、早速対策を取っていきたい。

「こりやすい」体質の人は…姿勢の改善を

 酒井さんは、いちばん重要なのは姿勢の改善だと主張する。

「いすに座るときは、深く腰掛けるのがポイントです。それによって骨盤を立てることができるので、脊椎の動きに大きく関連する『仙腸関節』がゆるみ、肩の筋肉がほぐれることにつながります」

首や肩に負担をかけないパソコン作業の座り姿勢

「低すぎるいすはNG。座ったときに、ひざの角度が90度より少し開くくらいの高さがベストです。

 骨盤を立てたら、あごを引いてください。腰がすっと伸びて首への負担も減り、体が楽になります。

 パソコン作業をするときは、うつむいた姿勢で肩に負担をかけることがないように、画面を目線と同じ高さに持ってきてください。マウスをなるべく外側に置いて使うと、肩が開きやすく巻き肩になりづらいためおすすめです」 (酒井さん)肩こりはお風呂で体を温めて、血行を改善するのも有効だ。「入浴時はしっかりと首までつかってほしい。これから暖かくなると、シャワーだけという人もいますが、こりを改善するにはしっかり首筋まで温めることが大切です」(酒井さん)

マッサージで根本的な解決はできない

 マッサージによってこり固まった一部の筋肉をほぐしても、ほぐれた筋肉が体を支えるためさらに緊張状態が強くなり、さらなる肩こりにつながることがあるという。また、一部の筋肉だけが大きくゆるむことで体のバランスが崩れ、ゆがみが生じるケースや、強いもみほぐしによって、筋肉が傷つく場合もあるというから注意が必要だ。


 マッサージで一部の筋肉をほぐすことが根本的な解決にならないのは、多くの場合、体のこりは実際にこっている部分以外の箇所に原因があることも理由になる。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長で整形外科医の戸田佳孝さんが解説する。「たとえば肩こりは、慢性的な猫背によって頭の重さを首の骨だけで支えきれないために起きているケースが多い。


あごを引いて背筋を伸ばした姿勢を保つことができていれば、頭の重さは頸椎の真上にくるため首の骨で支えられますが、パソコンやスマホなどを触るとき、どうしても頭やあごが前に出てしまう。すると頭を後ろに引こうとして肩の筋肉に負担がかかり、常に筋肉が緊張状態でこってしまうのです」柔道整復師で整体院「和-KAZU」院長の迫田和也さんも肩こりの原因は猫背にあると声をそろえる。「デスクワークなどで猫背や前のめりの姿勢が続くと、肩から胸にかけてついている筋肉がこり固まり、わきの下の筋肉が収縮して硬くなります。


 つまり、痛むのが肩ではあっても、筋肉がこり固まっている本当の“患部”は胸のまわりやわきの下だということ。ここの筋肉をほぐさなければ肩は楽になりません。このように体の痛みの原因はほとんどが“そこ”にはない。肩こりと並んでつらさを訴える人の多い腰痛も、腰そのものに原因があるのではなく股関節が硬くなり、太ももやお尻が張っていることが原因であるケースが多く見受けられます」

「目」からくる肩こりは手術で改善するケースも

 目からくる、こりもある。吉祥寺森岡眼科院長で眼科医の森岡清史さんは、まばたきが減ると肩がこると主張する。「まばたきの回数が減ると、まぶたの筋肉が動かないため、目の筋肉は常に緊張状態にさらされます。顔の筋肉は肩とつながっており、おでこから頭皮、首、肩へと緊張が伝わり、肩こりが誘発されると考えられます。


実際に眼瞼下垂になるとまぶたが下がって、まばたきの回数が減りますが、私の経験では、眼瞼下垂の手術を受けた9割以上の人の肩こりが治っています

 つまり、スマホやパソコンを凝視してまぶたが緊張することで、肩こりを発症している可能性があるということ。

眼鏡を上げてスマホを見つめる女性

スマホの長時間使用などで目を酷使してまばたきが減ることは、肩こりの原因に(写真/PIXTA)

「巻き肩」でさまざまな不調に…

 気をつけるべきことはまだある。体の内部の不調や大きな病気が原因でこりが生じる事例もある。さかいクリニックグループ院長の酒井慎太さんが指摘する。「肩こりになる人の多くは、ストレートネックで肩が内側に入ってしまう、“巻き肩”の状態です。巻き肩になることによって胸骨の関節も詰まり、内臓や肺が圧迫されます。


 そのため、逆流性食道炎や喘息になりやすい。さらに肩こりが長く続けば、吐き気や耳鳴り、顎関節症、気分障害などの症状がある自律神経失調症や、ひどい場合は脳梗塞を発症するケースすらあります」


 ほかにも体がこり固まることで血流が悪くなり、腸内環境が悪化したり血圧に影響があったりするケースもある。また、当初は軽い肩こりだったはずが、長期間放置してしまった結果、重篤な状態になる事例も存在する。戸田さんが解説する。


「ひどい肩こりだと思って放置していると、頸椎椎間板ヘルニアを発症することがあります。肩だけでなく手や足にしびれを感じたり、運動麻痺を感じたりすることがあるならば、頸椎の部分で手や足の神経が圧迫されている可能性が。頸椎は頭を支えているため、肩こりになるような姿勢を続けていると、椎骨の間にある椎間板が押しつぶされてしまって、ひどい場合は半身不随になることもあります」

 早速、生活習慣を改めたい。

教えてくれた人

理学療法士・財前知典さん、柔道整復師で整体院「和-KAZU」院長・迫田和也さん、吉祥寺森岡眼科院長 眼科医・森岡清史さん

【体が硬い人ほど効く「ボール」を使ったほぐし方】たった30秒!癒着がはがれる「筋膜リリース」

筋肉同士の癒着をほどき本来の動かしやすさに

長時間座りっぱなしや運動不足になりがちな現代人は、筋肉を動かしていないぶん固まりやすく、筋肉を覆う筋膜が癒着していることも。そこで、いきなり運動やストレッチをするよりも、まずは筋膜をゆるめることで可動域も柔軟性もUPすると廣田先生。

「筋膜リリースは、筋肉の境目や腱などをほぐすことにより、くっついた筋膜の癒着をほどくのが目的。それにより、一つひとつの筋肉がスムーズに動かしやすくなり、柔軟性が高まるんです。今回は股関節の可動域を司る、太腿の前、後ろ、内側、お尻の筋膜をゆるめる方法をご紹介します。さらに筋膜がゆるんだあと、股関節の動きに関わるインナーマッスルのストレッチと筋トレを行うと、より効果的に可動域を広げることができます!」

お尻をリリース

大臀筋と中臀筋の境目をほぐす

しゃがんだ状態から立ち上がるとき、お尻の筋肉は使われますが、現代生活ではあまり行われなくなった動き。そのため、お尻は弱化して股関節の動きを妨げる結果に。大臀筋と中臀筋の癒着をゆるめると、股関節まわりの動きも良くなります。

ボールを使って

境目ラインに沿ってボールを移動

仙骨の横から大転子に向かうラインが、大臀筋と中臀筋の筋膜が重なり合う境界線。そこにボールを当てて揺らすことでほぐします。

横向きで左足首を右膝にかけたら、仙骨の横から大転子までの斜めのライン=境目ラインをイメージし、ライン上でボールを小刻みに揺らす。反対も。

30秒 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION)© 30秒 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION) 30秒 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION)

タオルでもOK!

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これでもOK!

脚を4の字にするのが辛い人は、膝を揃えたまま大転子にボールを当ててほぐしてもOK。

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POINT

お尻が伸びた状態で刺激するほうがリリース効果は高まるので、脚はなるべく4の字に。

大臀筋と中臀筋の境目は仙骨の横から大転子に向かう、点線で示した斜めのライン。まず仙骨の横からスタート。

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仙骨の横にボールを当てて30秒揺らしたら、斜め下にずらして同様に30秒揺らす。

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さらに大転子に近づくライン上に、斜め下にボールをずらしたら、同様に30秒揺らす。

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腿の付け根の外側にある大転子の下にボールを当てて30秒揺らし、仙骨の横まで戻る。

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手を使って

ボールがなくても、同じ境目ラインを指で押しながら揺らしてもゆるみやすい!

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仙骨の横を親指で押しながら2〜3回揺らして。強めに押すと効果的。

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ボールと同様、仙骨の横から大転子に向かう斜めラインに沿って指をずらして押し揺らす。

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大転子付近を押すときは、人差し指など押しやすい指に替えてもOK。 仙骨〜大転子までを5往復。

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ボールや手がキツいときはローラーでもOK!

ローラーの凸凹を境目ラインに当て、体を上下に揺らしてほぐしながら、境目ラインを往復。反対も。

3〜5往復 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION)© 3〜5往復 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION) 3〜5往復 photo by Nobuhiro Miyoshi(RELATION)

POINT

境目ラインに対して垂直になるようにローラーを当てるのがコツ。ボールや指同様、なるべくピンポイントで刺激して。

教えてくれたのは...廣田なお先生

ヨガインストラクター。美筋ヨガインストラクター。「ほぐす+のばす+鍛える」を組み合わせた「美筋ヨガ」は、しなやかなボディを目指す女性に大好評。「美筋ヨガ」オンラインサロン主宰。TVや雑誌、ラジオにも多数出演する。

ヨガジャーナル日本版編集部


【道具はいらない】場所を選ばずできる!肩こりをラクにする「道具のいらない筋膜リリース」のやり方

筋膜とは?筋膜リリースとは?

筋膜とは筋肉をつつみこんでいる膜のこと。内臓や骨ともつながっており、全身に張り巡っている重要な組織です。筋膜によって、体内の組織が本来のあるべき位置に収まり、安定して動きやすい体が作られています。ところが、筋膜は柔らかい組織のため、時に他の組織にくっついたり絡まったりすること(癒着)があります。

この癒着が凝りや痛みを引き起こし、肩こりなどの不調に繋がります。また、筋肉の動きが悪くなり、柔軟性が高まらない原因にもなるのです。筋膜リリースとは、筋膜を柔らかくほぐし、癒着を解いて正常な状態に戻すことです。筋肉がほぐれることで、肩こりをはじめ、様々な部分の凝りや痛みが解消され、体を楽にしてくれます。また、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を大きくする効果もあるので、筋膜リリースはヨガの前にもおすすめです。

道具を使わない筋膜リリース

道具がないときには自分の手を使って筋膜リリースが可能です。肩こり解消におすすめの筋膜リリースのやり方とポイントを紹介しましょう。コツをつかめば、いつでもどこでも、誰でも簡単にできますよ!

肩こりを解消する筋膜リリースのやり方

1.手で肩や首をさすり、硬くなっている部分を確認する

2.硬くなっている部分の周辺をメインに、指先で皮膚をつまんで軽く引き上げる

3.指を移動させ、癒着を引きはがすイメージでまんべんなくほぐす

硬くなっている部分の周辺の皮膚を指先でつまんで引き上げる photo by Adobe Stock© 硬くなっている部分の周辺の皮膚を指先でつまんで引き上げる photo by Adobe Stock 硬くなっている部分の周辺の皮膚を指先でつまんで引き上げる photo by Adobe Stock

ポイント

凝りがひどい部分は筋膜が硬くなっており、皮膚をつまみにくいこともあります。痛くてつまめないことすらあるかもしれません。無理に引っ張ろうとせず、最初は優しくつまんであげましょう。段々ほぐれてくると柔らかくなってきます。力加減を調節して、痛みがなくなったら徐々に強めてみるといいでしょう。肩だけでなく、首の後ろや鎖骨、腕までしっかりほぐすことがポイントです。めぐりがよくなり、スッキリして肩が軽くなりますよ!

筋膜リリースでセルフケアをしよう

いかがでしたか?筋膜は「第二の骨格」と言われるほど、体にとって非常に大切な組織です。座りっぱなしで運動不足の人をはじめ、ストレスで緊張が続いている人、逆に運動のしすぎで体の一部に負担がかかっている人は、知らず知らずの間に筋膜と周りの組織が癒着している可能性があります。今回紹介したやり方を参考にして、道具がなくても手でつまんでほぐす方法で、筋膜リリースをやってみましょう。つまみにくい部分は握りこぶしでさすってほぐすのもいいでしょう!いつでもどこでも、自分の手がフォームローラーやボールの代わりになっていい仕事をしてくれますよ!

須藤玲子

2005年にホットヨガと出会い、その後様々なスタイルのヨガを経験。会社員を経てヨガインストラクターになる。現在は、都内を中心にフィットネスクラブ、ホットヨガ、ヨガスタジオ、オフィス出張など多くの場でレッスンを実施。リストラティブヨガからパワーヨガまで、静と動のバランスを大切にヨガの指導を行う。ヨガと同様にアロマを伝える活動も行なっている。RYT200取得/フェイシャルヨガTT/骨盤底筋トレーニングヨガTT/リストラティブヨガTT/NARDアロマアドバイザー/yuica日本産精油スペシャリスト

腕が重く感じる人は要注意!PC姿勢が肋骨を圧迫しているかも?【腕肩・胸郭の柔軟性を高める陰ヨガ】

© AdobeStock

腕が重く感じる人は要注意!呼吸も浅くなっている!?

毎日テレワークでPCに向かっていると腕が重く感じる…。そんな自覚がある人は、総じて呼吸が浅くなっている傾向があります。テレワーク → 猫背 → 肩甲骨が背中に固着 → 腕、肩、上体の重さが肋骨が圧迫 → 肋骨が動けない → 呼吸が浅くなるという流れが出来やすくなるためです。

こういった症状に自覚がある方は、肩・胸周りを柔らかく伸ばしていきましょう。胸周りの柔軟性を「胸郭コンプライアンス」といいます。胸郭とは胸椎と肋骨から構成され、トップアスリートにとっても胸郭の柔軟性は、パフォーマンスを左右する要素として重視されています。さらに「肺胸郭コンプライアンス」とは、肺や胸郭の膨らみやすさを表すもの。この値が低いと肺や胸郭が膨らみにくいといえ、正常値よりも低下したり、増加したりすると、肺線維症、無気肺、肺水腫、胸郭変形、胸水のような病気にもつながっていきます。

そして、呼吸の動きに肺や胸周りの柔軟性はとても重要。未病のうちに呼吸を改善していきましょう。今回は、腕の重さによりコッってしまった肩回りと、この胸郭をストレッチする陰ヨガポーズをご紹介します。ねじり要素のある陰ヨガポーズで、腕の上部の筋肉である、三角筋や烏口腕筋、棘上筋を伸ばし、圧迫して、筋肉の柔らかさを取り戻し、血流を改善しましょう。

胸郭とは胸椎と肋骨から構成されます。特に大切な部分です/pixabay© 胸郭とは胸椎と肋骨から構成されます。特に大切な部分です/pixabay 胸郭とは胸椎と肋骨から構成されます。特に大切な部分です/pixabay

「腕肩・胸郭をストレッチする」陰ヨガポーズやり方

①    膝を広くして、正座になります

膝の広い正座になります© 膝の広い正座になります 膝の広い正座になります

②    左側に上半身をよせ、右の腕と肩を床におろします。この時に、肩が床におりにくい場合は、骨盤をかかとから浮かせてみましょう。そして、右脚太腿内側(内転筋)がストレッチするまで肩の位置を調整します。

左側に上半身を傾ける© 左側に上半身を傾ける 左側に上半身を傾ける

③    左の腕を背中に回し、右の腰に置きます。肩峰から首の付け根、僧帽筋上部や、斜角筋、肩甲挙筋が伸びている状態になります。視線は床に伸ばした手の先か、天井を向きます。1分から5分、力を抜いて、ポーズを行います。

手を天井方向へ上げて© 手を天井方向へ上げて 手を天井方向へ上げて背中に斜めに手を下げます© 背中に斜めに手を下げます 背中に斜めに手を下げます

④   身体の内側の感覚に注目して、今何が起こっているか、を感じ続けます。気持ちの良い時間まで伸ばします。途中で限界がきたら、すぐにポーズを止めましょう。

⑤   反対側も同様に行います。

左側も同様に行います© 左側も同様に行います 左側も同様に行います

楽しく陰ヨガポーズを行うアドバイス

1分で足りない場合は時間を長くしましょう。5分で足りない気がしても、一度5分でポーズをやめて、休みしましょう。

いつでもヨガポーズは自分の為に行うものです。自分の身体のメッセージを聞いてあげましょう。身体のメッセージはとても大切です。ヨガは身体と親しむためのものです。我慢大会になってしまってはヨガとはいえません。温かな呼吸を体中に広げるようにゆったりと行ってみてくださいね。

西川尚美

西川尚美プロフィール2004 サンディエゴでヨガと出会い2010より指導。都内スタジオで陰ヨガクラスを担当。現在オンラインクラスでブレスワーク、陰ヨガ、瞑想、指導者養成講座を開講している。2010年よりインサイトヨガのサラパワーズ氏、2012年より陰ヨガ創始者ポール・グリリー氏に師事。毎年渡米し講座を受け続けている。2020よりマインドフルネス陰ヨガ指導者養成講座開講スタート、現在毎月開講中。YYTT500、全米アライアンス認定講師 RYT500、介護予防運動指導員2013 「朝ヨガ夜ヨガ」宝島社出。2015 DVD「陰ヨガ for Beaty & Healing 」デンシティ社blog https://ameblo.jp/happy-naoyoga/、Twitter @nao92122、Instagram naomi.nishikawa、HP https://www.naominishikawa.com/、Mail to naomiyinyoga@gmail.com★マインドフルネス陰ヨガ指導者養成講座 基礎102.06毎週土曜日 02/22〜26 5日間連続コース基礎1 募集中

骨粗しょう症を防ぎ“死ぬまで歩く”ための50歳からの4習慣

延びていくご長寿人生を謳歌するためには“強い足腰”が欠かせない。骨がもろくなる「骨粗しょう症」の予防は、女性ホルモンの分泌量が減少し始める閉経前後から!

「骨粗しょう症の患者の約80%が女性です。若いころの過度のダイエットなど生活スタイルの影響もあると思いますが、私の病院に相談に来られる方も増えていて、今日も58歳の方を診察したところ、骨年齢は80歳という結果でした」(矢吹先生)

こう語るのは「ゆりクリニック」(東京都港区)の矢吹有里先生(48)。骨は古い細胞を壊す「骨吸収」と新たに骨を作る「骨形成」をバランスよく繰り返すことによって、骨密度を維持している。しかし……。

「閉経を機に、骨吸収を抑制している女性ホルモンのエストロゲンが低下すると、10年ほどの期間で急激に骨密度が下がります。骨密度は20歳ごろにピークを迎えて、その後ゆっくりと下がっていくのですが、80%以上が正常で、それが70%未満になると、骨粗しょう症と診断されます」(矢吹先生)

矢吹先生は、50歳になったら、すべての女性が骨の状態を調べてほしいと提案する。では、骨密度が低下した場合は、どのような治療を受けるのだろうか。

「症状の進行を止める薬物治療がメインとなります。たとえば、骨吸収を抑制するビスホスホネート製剤には、毎日服用するもの、月イチでよいもの、年に1度約15分の点滴で効果があるものなど、いくつか種類があります」(矢吹先生)

とはいえ、つえやシルバーカー(高齢者用の押し車)が必要になる生活は少しでも遅らせたいもの。

「50歳からでも間に合います。毎日の食事や運動など、これまでの生活スタイルを改善して、骨粗しょう症を予防しましょう」(矢吹先生)

そこで、矢吹先生と管理栄養士のコーゲヨーコさんに、具体的な4つの対策を教えてもらった。
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