近年増加しているアトピー性皮膚炎。その患者数は51万人にのぼります(2017年厚生労働省データ)。子どもの病気と思われがちですが、大人になるまで再発を繰り返したり、大人が発症したりする場合もあります。
主症状であるかゆみを伴う湿疹がひどくなるとQOL(生活の質)を著しく低下させるという問題がありますが、近年新たな治療法が開発され、適切な治療を行うことでよい状態を維持できるようになってきました。
2021年9月16日、歌舞伎役者の片岡愛之助さん(以下、愛之助さん)がアトピー性皮膚炎啓発アンバサダーに就任。その発表会で、皮膚の「良い状態」を“たもつ”エキスパート、タモツさんにふんした動画が公開されました。
◇治療のゴールは? 川島眞・東京女子医科大学名誉教授が解説
アトピー性皮膚炎の治療のゴールは「よい状態をキープする=保つ」ことです。
ここ10年ほどで、病態に対する考え方や治療法は変化しました。アトピー性皮膚炎には▽皮膚の炎症▽かゆみ▽バリア機能の低下(外界からの刺激や侵入物に弱い状態)――という3つの病態があります。従来はそれぞれ別の治療法でアプローチしていました。
たとえば皮膚の炎症にはステロイド外用薬(塗り薬)やカルシニューリン阻害外用薬を、かゆみには抗ヒスタミン薬(飲み薬)、バリア機能の低下には保湿剤、という方法です。
しかし近年、3つの病態に関連するサイトカイン(細胞同士の情報伝達に使われるタンパク質)の解明などが進みました。積極的に新しい治療法を取り入れることで、以前よりも容易に「よい状態」を保つことが可能になっているのです。
◇片岡愛之助さん アンバサダー就任への思い
私自身、歌舞伎役者として活動するなかで、よい皮膚の状態をキープすることを常々心がけてきました。ただ、それは簡単なことではありません。肌の状態が悪いと化粧がうまくのりません。
ですから普段からスキンケアには気を使っていますね。舞台後は刺激の少ない方法で化粧をしっかりと落とし、さらに保湿して肌を守ることを意識しています。
アンバサダー就任に際しては、自分と同じようにアトピー性皮膚炎で悩んでいる方々に向けて情報を発信する大切さを感じています。啓発動画の撮影では、「タモツさん」を演じました。
すごい勢いで人に迫るシーンがあって、演じるのは少し大変でしたね。ドラマ「半沢直樹」で演じた黒崎駿一のイメージが残っているのか、最近はそういう勢いのある役柄のオファーが多いです。
◇片岡愛之助さんと川島眞先生のトークセッション
Q 愛之助さんから川島先生に質問はありますか?
片岡愛之助さん:子どもの頃からアトピー性皮膚炎で悩んでいました。私の場合は塗り薬に頼りがちでしたが、今はほかの治療法もあるのですか。
川島眞先生:現在でも、アトピー性皮膚炎の治療の基本はあくまで塗り薬です。ただ、塗り薬ではすぐによくならない患者さんもいらっしゃいます。たとえば1日2回薬を塗る必要があるとしても、全身に皮疹が出ているような場合、薬を塗ること自体がストレスになりうるのです。
そういう方に何かよい治療法ができないかと思っていたのですが、近年はアトピー性皮膚炎の炎症を抑えられる新たな薬(内服薬や注射薬)が登場しました。それを使うと、塗り薬を控えて治療を行うことが可能です。そのような薬を活用することで、現在は以前よりも簡易によい状態を維持することができるようになりました。
Q 日常的な肌のケアについてのアドバイス(アトピー性皮膚炎の場合)
川島眞先生:「正しい洗顔(洗浄)と保湿」は、スキンケアの基本中の基本ですね。アトピー性皮膚炎の場合、皮膚がとても敏感な状態になっています。お化粧をする人は特に気を付けたほうがよいでしょう。正しい洗顔(洗浄)と保湿は、バリア機能を補強することにもつながります。
Q 愛之助さんが普段、健康を保つために行っていることは?
片岡愛之助さん:仕事で体を動かすので、基本的な体力を維持することを心がけています。ジョギングやウオーキングでリフレッシュしながら運動するようにしていますね。ジムは週に1~2回、多くて3回ほど行きます。こういった定期的な運動を行うことで、心身の健康を保つよう意識しています。
川島眞先生:アトピー性皮膚炎には肉体的・精神的なストレスが大きな関わりを持ちます。大人の場合には仕事上のストレスも重なって病気の状態を悪化させる可能性があり、注意が必要です。ストレス解消はとても重要なポイントですね。心身の状態を良好に保つためにも、定期的な運動習慣はとても大事だと思います。
Q アトピー性皮膚炎の症状に悩んでいる方へ
川島眞先生:皮膚の病気というのは軽視されてしまう場合があります。たとえば病院に行かず、市販されている薬を使っているケースが見受けられますね。あるいは悩んだ結果、怪しい民間療法に飛びついてしまい大変な思いをされている方もいらっしゃいます。
ある程度症状が続いている場合は、なるべく早めに皮膚科を受診してほしいです。今は治療法も増えており、患者さん一人ひとりに合った治療が見つかる可能性があります。一緒に方法を考えましょう。
片岡愛之助さん:1人で悩まずによいドクターを見つけて相談し、「2人3脚」で乗り越えていくことが大事なのですね。とても勉強になりました。
◇治療法が進歩するアトピー性皮膚炎 1人で悩まないで
アンバサダー就任発表会では、任命証の贈呈式や、愛之助さんが「タモツさん」として登場する動画(https://www.youtube.com/watch?v=pUi8qIlb80s)も公開されました。
「患者さんの自由研究が、予想をはるかに突き抜けた完成度です」
「あとがきにある医療リテラシーの高さは、小学生とは思えないレベル…」
ほむほむ@アレルギー専門医さん(@ped_allergy)がTwitterで紹介した、小学生によるアトピー性皮膚炎の自由研究が「大人も舌を巻くクオリティだ」と注目を集めています。「ぼくをなやますこのかゆみ、どうやってつき合う?てっていかいぼうだ!オー!!」と勇ましく幕を開ける全46ページ(と、参考・引用文献リスト2ページ)。
皮膚の仕組みやアトピー性皮膚炎が起こるメカニズムと病態、治療に使われるステロイド剤の種類などをおさらいしつつ、自身が取り組む「舌下免疫療法」についても経験を踏まえて調べ上げ、イラストや画像を交えてわかりやすくまとめてあります。
■基本を押さえつつ、小学生ならではの視点も
まず目を引くのは、学生の論文かと見紛うほどきちんと章立てされた目次。しかも「アトピーせい皮ふえんって何だろう」「アトピーせい皮ふえんの原いん」といったタイトルが並ぶ中に、「ぼくのアレルギー人生」「ぼくの使っているステロイドざい」「(舌下免疫療法の)ぼくの毎日の記ろく」などもあり、実際にアトピー性皮膚炎を抱える小学生ならではの視点が盛り込まれていることが窺えます。
医学的根拠の乏しいサプリメントや水、代替医療などを患者に勧める悪徳商法「アトピービジネス」を取り上げた一節もあり、ほむほむ@アレルギー専門医さんも「ここに踏み込むとは…やるなあ…」と驚きの声を漏らしているほど。研究の最後にある「『知ること』がぼくの心を強くしてくれた」という言葉には、思わずグッときてしまいます。
■「調べていると、終わりがなくなってしまう」
6月から実に3カ月もの時間をかけてこの研究を完成させたのは、都内在住のOくん。小学3年生です。
――アトピー性皮膚炎の自由研究をしようと思ったのはなぜですか?
「自分がアレルギー体質で、自分の体についてもっと知りたくなったからです。そして、舌下免疫療法をはじめたのだけど、どんなものかよくわからなかったから、それについても知りたくなったので調べました」
――研究ではどんなことに苦労しましたか?
「調べていると、さらにわからないことが出てきてしまって、終わりがなくなってしまったことと、とにかく字をたくさん書いたことが大変でした」
――逆に、研究を通して楽しかったことや嬉しかったことはありますか?
「アレルゲンなどの絵を描くことが楽しかったのと、自分の体が今どんな状態なのかわかったことが嬉しかったです」
――研究したことで、普段の生活や心掛けで何か変わったことはありますか?
「仕組みが理解できたので、かゆいときには『あ、今ヒスタミンが放出されているんだな』など、体の中で自分が描いたヒスタミンのキャラクターが放出されている様子を想像して、笑ってしまいます。そして、薬をぬったり飲んだりするとき、『よろしく!』と思うようになりました」
■専門医も「大人顔負けの医療リテラシー」と驚き
ほむほむ@アレルギー専門医こと小児アレルギー科医の堀向健太先生に「専門医の目から見て、この研究のどういうところに感心したのか、あらためて教えてください」と連絡すると、次のような返信をいただきました。
「感心したことはたくさんあるのですが、
①構成がしっかりしていること
②情報元(出典)を明らかにして掘り下げていること
③(Twitterで公開した部分にはありませんが)自分自身でも体験して、治療への前向きな気持ちを新たにしていること
…は特筆すべきことだと思います」
「そして『知ることがぼくの心を強くしてくれた』という言葉は、医療リテラシーとして、大人もなかなか至ることができない境地でしょう。『弟のスキンケアはぼくにおまかせ!』という言葉も、自分自身だけでなく、家族へ気持ちを広げていることが嬉しいなあと思います」
「いつも待ち時間が長い外来ですが、いずれ卒院できることを目標に一緒に頑張っていきたいです。アトピー性皮膚炎を抱えている多くの人や、舌下免疫療法に躊躇しているご家族に力を与えてくれる自由研究だと思います。100点満点です!!!」
Oくんに、堀向先生のTwitterでたくさんの人に見られた感想を訊ねました。
「とにかくびっくりしました。たくさんの人が応援してくれて嬉しかったです」
(まいどなニュース・黒川 裕生)
ベランダで家庭菜園をしたり、室内で観葉植物を育てていると、どうしても悩まされるのがコバエなどの害虫問題。
殺虫剤や農薬を使うのも家庭菜園の場合は抵抗もありますよね。なかなか難しい問題です。
そこで今回は、虫を寄せつけない基本のお世話と害虫が嫌うハーブについて紹介します。
虫を寄せつけないためには、毎日のお世話が大切
コバエなどの害虫の発生を防ぐには、植物の基本的なお世話が重要なポイントです。下記のポイントは、基本的なこととして特に気をつけたいことです。
水受け皿の水はこまめに捨てる
鉢の下に水受け皿を置いている場合、水を貯めないようにしましょう。害虫は湿気や水垢、ヘドロがあるところで繁殖します。水やりをすると、すぐに水受け皿に水が貯まりますので、水を速やかに捨てることを習慣にできたらいいですね。
大きい植物や重い鉢で移動が難しい場合は、乾いたスポンジや雑巾で受け皿の水をしっかり吸い取り、水気を残さないよう注意します。
水やりの回数を減らす
水やりは、土全体が完全に乾いてからするようにしましょう。適切な水やりにもつながります。水やりの回数が多いと土が常に湿った状態なるので、害虫の繁殖に適した状態になってしまいます。
土表面が白っぽくなり、指で触れても土がつかない状態が水やりの適切なタイミングです。
肥料は化成肥料を使う
有機肥料には害虫を寄せつけてしまう成分が入っています。肥料を与える時は化成肥料にするだけでも害虫対策になります。
こまめに収穫して風通しをよくする
鉢が増えたり、植物自体が成長すること自体は嬉しいことですね。見た目も豪華になります。
しかし、葉が増えたり、鉢が増えて混み合ったりすると通気性が悪くなり、害虫が繁殖しやすい環境になってしまいます。
前述したポイントにもあるように、適度に乾燥させることも必要になりますので、こまめに収穫したりして通気性を確保しましょう。
虫を寄せつけない!おすすめハーブ5選
殺虫剤や農薬を使わなくても、コバエなどの害虫よけに役立つのがハーブです。害虫はハーブが放つ匂いが苦手。害虫によって苦手なハーブは異なりますが、元気なハーブから漂う香りが害虫を近づけないことにつながります。
殺虫することはできませんが、近くに置いたりすることで忌避効果が期待できます。見た目もおしゃれになりますし、有効なハーブを上手に使ってみるのもよいかもしれませんね。ここではホームセンターなどで手に入りやすい、おすすめのハーブを紹介します。
ハーブはとても繁殖力が強いので、鉢栽培の場合は野菜や観葉植物と同じ鉢に植えず、別の鉢で育てて近くに置くことをおすすめします。
ペパーミント(ハッカ)
コバエ等の害虫に忌避効果を発揮する強く爽やかな香りのハーブ。この強い匂いが虫を寄せ付けないと言われています。丈夫で育てやすいので、ハーブ初心者にもおすすめです。
タイム
料理に使われることも多く、スープなどの香り付けに使われます。殺菌・防腐効果が強く、虫よけにも効果が期待できます。こちらも、初心者でも手軽に育てられる植物です。
ローズマリー
肉料理に使われることの多い、独特な強い香りのハーブで害虫忌避効果もあると言われています。手でちょっと触っただけで匂いがうつるほど強い匂いで、衣類の防虫剤として使われることもあります。可憐な小さな花が咲く様子もかわいらしいですね。
ラベンダー
リラックス効果の高い香りとして、アロマでも人気のあるラベンダー。実は抗菌作用や害虫忌避効果もあるハーブです。美しい紫の花が楽しめるので、一緒に育てることで菜園も華やかになるでしょう。
ゼラニウム
独特の香りを放つゼラニウムも虫よけとしてよく使用されているハーブです。最近は花の種類も豊富でかわいらしい品種も増えてきました。とても丈夫で繁殖力も旺盛。見た目にも楽しませてくれることでしょう。
暑くてジメジメする夏は害虫が繁殖しやすく、活動がもっとも活発になる時季。どこから侵入してきたのか、いつの間にか家の中に大量発生しているなんてことも…。ここでは、そんないや~な虫の対策法をご紹介します。
夏のいや~な虫対策(※写真はイメージ)
家に寄せつけない!便利グッズも!夏のいや~な虫を撃退
害虫を撃退するため、虫対策のエキスパートである虫博士の亀崎さんに、虫の特性から気をつけること、最新の害虫グッズまで、夏を快適に乗りきる方法を教えてもらいました。
●いや~な虫の侵入経路は意外なところにあった!?
夏になると、どこからともなく発生する家の中の害虫ですが、じつは外出先で私たちの衣服や持ち物などにくっついて、私たち自身が家に持ち込んでいるケースが多いと、虫博士こと亀崎さんは指摘します。
「たとえば、屋外で長い時間を過ごしたときは玄関前で、服やバッグを払い落とす習慣をつけましょう。また、ダンボールに潜んで侵入するケースも増えています。一般的に害虫は繁殖力が高いので、少なくとも2週間に一度は、部屋のすみずみまで観察し、掃除をするようにしましょう。とくに注意したいのが、キッチンの流し台の下。ここに食品を放置するのは絶対にNGです」
亀崎さんによると、この時季、気をつけたいのは下記の害虫たち。その生態と対策法をしっかり学んでおきましょう。
【おもな害虫の種類と特徴】
・衛生害虫
衛生環境を悪化させたり、毒をもっていたり、人に対して害を与えるゴキブリやダニ、ノミ、蚊、ハエのこと。
・食品害虫
米や小麦粉、乾麺、ビスケットなど保存している食物につくシバンムシやメイガ、コクゾウムシなど。
・不快害虫
いやなにおいを発するカメムシをはじめ、ムカデ、ナメクジなど、人に不快感を与える害虫のこと。
●ESSE読者アンケートで決定!夏のいや~な虫ランキング
アンケートでは虫による被害報告も多数! ESSE読者がもっとも悩んでいたのはこれ。
1位:蚊
睡眠を妨害されたり、刺されてかゆい思いをしたり、夏のいやな虫No.1!
2位:コバエ
生ゴミをちょっと置いていただけで大量発生…と、後悔する被害者多し。
3位:ゴキブリ
突然現れて飛びかかるなど、ゾッとするような体験談が多かったのが印象的。
4位:ダニ
5位:カメムシ
いや~な虫の疑問&悩みを虫博士がズバリ解決!便利グッズも紹介
読者アンケートでは、さまざまな害虫に苦しめられた恐怖体験が多数寄せられました。なかでも多かった「きちんと対策しているのになぜ?」に、虫博士が答えます!
●人の血を吸うのは蚊のメスだけ。なかには感染症を媒介するものも!
蚊の生態:世界には約3000種類の蚊がおり、日本に生息するのは約130種類。ベランダの水やプランターの水受け皿、さらにあき缶に残った水分に卵を産んで繁殖。
水のある場所ならどこでも大好き
・マンションの高層階は蚊がいないと聞いていたのに、わが家に飛ぶ蚊はどこから来ている?(R.Sさん) ・夜になるとプーンと現れる蚊。昼間はどうしているの?(R.Yさん) ・屋外にいる蚊と家の中にいる蚊は違うの?(M.Sさん)
夕方から夜に活動するアカイエカは玄関から人と一緒に侵入します。
蚊は日中、屋外で活動するヤブ蚊と、昼間は壁や暗いところにじっとしていて、夕方から活動を始めるアカイエカがいます。侵入経路で多いのは、窓のあけ閉めや人について玄関から入ってくるケース。高層階でも出現するのは、人が運んでいることが多いので注意が必要です。
【対策法】
・水がたまるベランダはこまめに掃除。忌避剤も積極的に活用! ・外出したあと、家に入る前に服やバッグはブラシではらう ・窓のあけ閉めは最小限に
・洗濯物につくカメムシなどに注意 ・ヤブ蚊やクロゴキブリに注意 ・ゴミ箱はコバエなどに注意 ・水受け皿は蚊などに注意 ・ダンボールはゴキブリなどに注意
【あなたを狙う「有毒」動物】#1
暑い日が続いています。日暮れ時、近所の公園で夕涼み、といきたいところです。しかし待ってましたとばかりに「蚊」が襲ってきます。虫よけスプレーはむせるから嫌いだし、蚊に刺されるのはもっとイヤなので、とぼとぼと引き返すしかありません。
ところがベンチに目をやると、元気なお年寄りたちが涼しい顔で、思い思いに寝転んだり雑談したりしています。すでにワクチン接種は終わっていて、コロナの心配が小さくなったのは分かりますが、いくら年寄りだからといって、蚊は手心を加えてはくれないはず。あるいは「老人の血は不味くて喰えない」と敬遠されているのでしょうか。
しかしそういえば、昔から「年寄りは蚊に刺されても痒くならない」と言われていたのを思い出します。じつはこれ、都市伝説などではなく本当の話です。体質にもよりますが、一般に高齢者の多くは、蚊による痒さをあまり感じなくなっているのです。加齢で神経が鈍っているからとか、そういったことではありません。もっと深い、免疫学的な理由があるのです。
蚊に刺されて腫れたり痒くなったりするのは、医学的には蚊刺症(ぶんししょう)と呼ばれています。蚊は吸血のために人を刺すわけですが、蚊の針(口吻)はたいへん細いため、そのままでは途中で血が固まって、詰まってしまいます。そのため針を肌に突き刺すと、最初に血液凝固を防ぐ成分を唾液に混ぜて打ち込んできます。血液をサラサラにして、吸いやすくするためです。ところが人体のほうが、この唾液に対するアレルギー反応を起こすので、蚊刺症の症状が現れるのです。
■赤ちゃんは蚊に刺されても腫れも痒みもない
アレルギーの正体は免疫反応です。蚊の唾液に対する免疫反応には、4段階あることが分かっています。蚊との付き合いの長さに伴って、段階を踏んで反応が変化していきます。
第1段階は生まれたばかりの赤ちゃんです。まだ刺されたことがないので、体内には蚊の唾液に対する免疫がありません。そのため乳幼児は蚊に刺されても、アレルギー反応が出ません。腫れも痒みもないのです。
しかし何度も刺されていくうちに、次第に免疫が形成されていきます。幼稚園に上がるまでには、T細胞やマクロファージと呼ばれる免疫細胞が、蚊の唾液成分を認識できるようになり、刺された箇所に集まって炎症反応を起こすようになります。ただし、刺されてもすぐには痒くなりません。反応が起こるまでに1日から2日ほどの時間がかかります。そのため遅延反応とか遅発反応と呼ばれています。子供のころは、まだ大半がこの段階にとどまっています。 また体質によっては、数日から数週間にわたって、腫れと痒みがぶり返すことがあります。ただしあまり続くようなら、「蚊刺過敏症(蚊刺過敏症)」という難病の可能性がありますから、医者に診てもらったほうがいいでしょう。
■蚊に刺されるほど遅延反応が弱まる
小学校に上がるころまでには、蚊の唾液に対するIgEと呼ばれる抗体が作られるようになります。蚊に刺されてIgEが反応すると、皮膚の中にあるマスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる細胞からヒスタミンなどが分泌され、痒みと腫れを引き起こします。仕組みとしては、花粉症などと同じです。ただし反応する相手(アレルゲン)が違っているわけです。
この反応は、刺されてから数分以内に起こるので、即時反応と呼ばれています。即時反応は30分もすれば治まりますが、1日か2日後には遅発反応も起こります。つまり即時と遅延の連続技で、一刺しで二度痒い思いをするわけです。
さらに年齢が上がって、蚊に刺された累積回数がどんどん増えてくると、次第にT細胞やマクロファージが慣れてきて反応しなくなり、遅延反応が弱まっていきます。そして即時反応だけになるのです。体質や、いままでにどれだけ刺されたかにもよりますが、だいたい50代から60代になるころには、遅延反応はなくなるようです。それでも即時反応は残っていますから、刺された直後から30分ぐらいは、痒さや腫れが続きます。
それを過ぎると、いよいよ最終段階です。体内では、蚊の唾液に対するIgGと呼ばれる抗体が作られるようになっています。IgGは強力な抗体で、蚊に刺されると、即時反応よりも早く唾液成分と反応して中和してしまいます。そのため即時反応がほとんど起こらず、痒みや腫れが生じなくなるのです。高齢者の多くがこの段階に達しているため、夕涼みの公園で蚊に刺されても、平気でいられるのです。
ちなみに私は還暦を少し超えており、すでに遅延反応はなく、即時反応だけが残っています。しかし刺された直後はかなり痒いので、まだIgG抗体が少ないのかもしれません。しかしあと何年かすれば、公園の先輩たちの仲間入りができるかもしれません。ただしそのためには、毎年十分に蚊に刺され続けるという、苦しい修行を積む必要があるので、どうしたものかと思案に暮れているところです。
(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)
痛みやかゆみといった症状がみられず、気づきにくい爪水虫。放っておくと爪が分厚く変形し、爪切りも使いにくく、歩くと痛みを感じるようになる。基本的に市販薬では治せないので、早めに皮膚科を受診しよう。
夏にかけて気温や湿度が上がっていく時期、水虫に悩まされる人が増えてくる。水虫は白癬(はくせん)菌というカビが皮膚に感染して繁殖する病気。爪にできる水虫(爪白癬)は厄介だ。完治させるのが難しい。
爪水虫の患者は想像以上に多い。日本臨床皮膚科医会によると、日本では10人に1人はいるという。この数字に基づけば日本で患者は1000万人を超えるはずだが、実際に治療を受けているのはそこまで多くない。医療機関を受診する人が少ない理由のひとつに痛みやかゆみがなく、気づきにくい点が挙がる。
「足の水虫でも、かゆみを感じる人は1割程度しかいない。特に高齢者では同年代に爪水虫が増えてくるため、爪が濁っても単なる老化現象と思っている人が多い」。東京医科大学皮膚科の原田和俊主任教授はこう指摘する。
爪水虫はもともと水虫になっていて、そこから白癬菌がうつるケースが多い。目立つのが爪の先端から白癬菌が侵入するタイプ。爪の根元や表面から菌が入る場合もある。発症すると爪が白や黄色に濁り、分厚く変形してしまって爪切りで形を整えるのが難しくなる。歩くときも靴に当たって痛み、高齢者ではこれが転倒の原因にもなるという。
特に糖尿病の人は要注意。原田教授は「小さな傷から壊疽(えそ)を起こしやすく、足を切断しなければならなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らす。
背中やお尻など体の他の部分に白癬菌が感染し、いわゆる「たむし」になることもある。牧田総合病院(東京・大田)皮膚科の北見由季部長は「たむしで受診した方を調べてみると、爪水虫があったという例は多い」と指摘する。生活圏に白癬菌をばらまいてしまい、同居する家族にうつす可能性が高くなる。
「現時点では爪水虫を治す市販薬はなく、処方薬を使うことになる」と原田教授。爪が厚くなった、色が濁ってきた、先端がはがれるなど、爪水虫が疑われる場合には早めに皮膚科を受診しよう。
住環境が住人の健康にもたらす影響は大きい。特に梅雨入りして湿度が高くなるこれからの季節は、カビやダニの増殖が問題視される。カビの胞子は主に呼吸器症状に影響し、ダニはアレルギーを引き起こす恐れがある。
カビやダニが発生しやすい家には以下のような特徴がある。「住まいの権」代表で住環境アドバイザーの上郡清政さんが指摘する。
「まず、外出先から帰ってきたら、玄関のにおいをかいでください。空気の入れ替えが不充分で湿度が高い家はカビの繁殖が考えられ、特有の嫌なにおいがするはずです。
次は廊下とトイレです。スリッパを履いて歩いたとき、スリッパの裏が床にペタペタと張りつくような音がする場合は要注意。その音は、湿度の高さが原因で床の汚れに雑菌が生え、それがはがれるときの音です。スリッパの裏にネチャつきを感じる場合、家全体がカビやすい状況だと推測できます」(上郡さん・以下同)
結露のリスクをチェックする際は、窓を見てほしい。ガラスが結露しやすい窓は、窓枠にカビが生えている危険がある。
「住宅の中で、いちばん熱の出入りが激しいのが窓ガラスです。結露してカビが生えていれば、当然ダニも繁殖していると考えるべきです。中でも、特に外気との温度差が激しく、湿気も多い浴室の窓は問題。できれば浴室には窓をつけず、強弱が調節できる換気扇のみがあればいい」
浴室の換気は、入浴中は「弱」で稼働させ、最後の人の入浴が終わったら「強」にして2時間くらい乾燥させる。その際、浴室のドアは1cm程度しか開けないこと。開けすぎると、浴室にこもった湿気が脱衣所まで広がるため効率が悪くなるうえ、脱衣所がカビやすくなる恐れがある。
換気の問題は立地条件も大きく影響
換気の基本は、家の中の各部屋の空気がごちゃ混ぜになるのを避けることだ。空気の「入口」と「出口」を設けることを意識し、ドアと対角線上の窓を開けたり、階段の下と上の窓を開け、階段を「煙突」のように使うのもいい。
「換気を適切に行うことで、湿度が高くてカビやダニが繁殖しやすい家であっても、改善のきっかけとなります。新築やリフォームを検討している場合は、部屋の中に『排気口』を、廊下側に『給気口』を設置するといい。さらに、冷暖房器具は部屋ではなく廊下に備え、家全体の温度差をコントロールする家づくりを意識しましょう。部屋にエアコンがないことで、冷房の風を直接体に浴びることが避けられ、体調を崩しにくくなります」
換気の見直しは家の中だけの話ではなく、立地条件も大きく影響する。
目の前に隣家の壁があるような家は、空気が循環しづらく、湿気がこもりやすい。かといって、交通量の多い大きな通りに面している家は、通気はいいものの、騒音問題で窓を閉め切ってしまいやすい。
騒音の問題は、健康に暮らす上で重要なポイントとなってくる。東京都立大学名誉教授で医師の星旦二さんが言う。
「収入がアップして引っ越しを決めた人が、いまより騒がしく治安の悪い場所に移り住むことはない。『社会移動』といいますが、騒音もなく、治安のいい場所に移り住めば安眠できます。なかなか気づきにくいですが、こうした積み重ねが50年後の生存率に差をつけるのです」
立地条件が悪い場所ほど、隙間が少なく、断熱性能の高い最新の「高気密高断熱」の住宅が理想。快適に過ごせる家になる。
※女性セブン2021年6月3日号
健康で長生きするための最も大切な条件は「平和」、それに次ぐのは「住宅」だという。人によっては生まれてから死ぬまで暮らすことになる「家」は、ダイレクトに住人の健康を左右する。あなたの家は、巣ごもりできる家か──。
近畿地方が平年より21日早く梅雨入りした。これは、1951年の統計開始以来最速。そのほかの地域も記録的な早さで入梅している。連日のように雨が続く梅雨は、気持ちが晴れなかったり、洗濯物が乾きにくく家事が滞るという問題もあるが、何より困るのが湿気だ。
湿度が高くなるこれからの季節は、カビやダニの増殖が危ぶまれる。全国の戸建住宅の環境状態を調査する秋田県立大学教授の長谷川兼一さんが言う。
「『ドライ』の反対で、ジメジメしている状態のことを『ダンプ』といいます。結露が発生し、カビが生え、室内の環境が汚染された状態を、国際的に『ダンプネス』と呼びます。
カビの胞子は主に呼吸器症状に影響し、ダニはアレルギーを引き起こす恐れがあります。
世界でもダンプネスの問題は重要視されており、日本での冬場の調査ではありますが、調査した戸建住宅の1割から2割程度にダンプネスの問題が確認できた。健康に影響している可能性があります」
東京都立大学名誉教授で医師の星旦二さんも続ける。
「何十年も暮らすことになる住宅の環境は、人間の寿命を左右する最も大きな要因です。ダニやカビまみれの家に住んでいては、健康で長生きすることは難しいでしょう」
新型コロナウイルスは、感染すると重い肺炎に転じることもある。いま、カビやダニが原因で呼吸器の病になることは命の危険につながるのだ。
しかし、100才を超える長寿の人が多く、世界から注目を集める沖縄でも、住まいによる健康被害が無視できないという。星さんが話す。
「沖縄では、閉塞性肺疾患による死亡率が数年前から急増しており、いまでは他県の約3倍にものぼります。
『食の欧米化が原因』などといわれていますが、もともと、風通しのいい伝統的な家に住んでいたのに、近年、台風に備えた鉄筋コンクリート造りの頑丈な住宅が普及した結果だと指摘する意見もある。高温多湿の沖縄で鉄筋コンクリート造りの家は、カビの発生リスクが高すぎます」
そう語る星さん自身、住宅により家族の健康状態が変化した経験がある。
「約20年前、新築した一戸建てのわが家は、雨もり、寝室の結露、断熱材のカビなど『欠陥住宅』と呼べる家でした。
その家で生活を始めてから、妻は高血圧で悩むようになりました。2014年に思い切って改築したところ、室内のガラスに結露はほとんど見られなくなり、何より、改築からわずか2か月で妻の血圧が170から130mmHgまで下がったのです」
毎日暮らしているからこそ気づきにくいが、住まいは私たちの健康に必ず影響を及ぼしている。
5月に入ると、コンクリート壁などを動く赤い点を目にすることが多くあります。これは体長1mmほどの小さな赤い虫で、ダニの一種です。1980年代以降よく見るようになりましたが、実はこの赤い虫については謎が多いのです。
「小さな赤い虫」の問い合わせが5月に集中
「小さな赤い虫はタカラダニというダニです。タカラダニ類は日本で4属13種が報告されていますが、人家付近で一番多く見られるのはカベアナタカラダニです。北海道から沖縄まで分布しています。
コンクリートや岩石、煉瓦など乾いた場所を好み、建物壁面によく見られ、花粉や昆虫を摂食する雑食性のダニです」と言うのは、アース製薬研究部生物研究課の有吉立課長です。
この時期、アース製薬はタカラダニについて問い合わせが増えるそうです。
「毎年、5月になると、小さな赤い虫について問い合わせが集中しますが、5月を過ぎると問い合わせがパタッと止まります」(同社お客様相談室・川人展子次長)
真夏になると消えるタカラダニ
タカラダニの問い合わせが5月に集中するのはなぜでしょうか。
「カベアナタカラダニは毎年春先に卵が孵化し、5月になると成ダニが出現します。成ダニは産卵後に死亡し、7月になると死に絶えるので、見られるのは5~7月の期間限定です」(有吉課長)
産卵場所は、屋上や地上敷地の壁面の隙間・割れ目です。このような狭い空間は温度や湿度の変化が少なく、アリやクモなどの外敵から身を守れます。卵のまま夏・秋・冬を越して翌年の春先に孵化するそうです。
タカラダニが分布を広げているワケ
最近になってタカラダニをよく見かけるようになったような気がします。「カベアナタカラダニは外来種説があって、そのため最近よく見るようになったのかもしれません。
それに加えて、都市化が進みコンクリートやアスファルトで他の虫が住みにくくなる一方で、そういったところが平気なタカラダニが分布を広げるようになったのではないかと推測されます」(有吉課長
人を刺すことはないの?
タカラダニは人を刺したり噛んだりすることはありませんが、潰すと赤い体液が皮膚につき、場合によっては皮疹を生じることがあるそうです。大阪府池田保健所衛生課によると、コンクリートの建物の外壁やベランダ、屋上などで大量発生した場合は、ホースの水で洗い流すとよいそうです。
また、小さいため、窓や扉が閉まっていてもほんのわずかな隙間があれば室内に侵入することもあるようです。
「タカラダニはベランダなどから家の中に入ってくることがあります。さまざまな害虫を駆除する総合駆除タイプの『不快害虫用エアゾール』を使用するのがオススメです。待ち伏せ効果が1ヵ月持続するタイプなら直接噴霧しなくても家に侵入することを防げます」(同社ブランドマーケティング部・渡辺優一シニアマネージャー)
ちなみにタカラダニという名前は、子どもたちがセミを捕っていたとき、セミの体に赤い小さな虫がたくさんついていると金持ちになれるといって喜んだのが由来と言われています。
紫外線が本格的に気になる季節になってきましたね。日々日焼け止めのお世話になっている人も少なくないと思います。
でも、「そういえば、この使い方ってどうなんだろう?」ってふと疑問に思うことありませんか? そこで今日は、『日焼け止めについてのちょっとした疑問』についてお答えしていきましょう。
◆日焼け止めと虫よけ剤、どっちを先につける?
最近は特に蚊よけ剤を必ずつけるという人も多いと思いますが、では、日焼け止めと蚊よけ剤、どっちを先に塗るのがいいのでしょう?
最近は日焼け止めも蚊よけ剤も、液状からシートタイプまでいろいろなタイプが登場していますからよけいやっかいですよね。
…結論からいうと、メーカーでもコレという明確な回答はないようです。
ただ、蚊よけ剤にしても日焼け止めにしても、シートタイプのものを使う場合は、先に何かを塗っておくとシートで拭き取ってしまうことになるので、その場合は「シートタイプのものが先+あとから液状もしくはスプレー状のものを使う」というのがいいでしょう。
蚊よけ剤も日焼け止めもシートタイプは使わない、つまりスタンダードな液状日焼け止めとスプレータイプの蚊よけ剤を使う、という場合は、「出かける準備をしているときに日焼け止めを塗り、蚊が気になる箇所に行く直前に蚊よけ剤を使う」のがベスト。
なぜなら蚊よけ剤は、日焼け止めに比べると効果が短時間しか持続しないからです。
アウトドアで長時間過ごすときは、とにかく日焼け止めよりも蚊よけ剤をマメに吹きかけるのが鉄則。もちろん日焼け止めも2~3時間ごとに塗り直す必要があります。そのときは蚊よけ剤も上からつけ直しましょう。
重ね塗りが面倒くさいという人は、蚊よけの効果のある成分が含まれた日焼け止めがおすすめ。数は多くありませんが、自然派コスメのブランドから何種類か発売されています。また、服に貼るシールタイプやブレスレットタイプの虫よけを使うのも手。
◆スプレーやパウダー、日焼け止めにもいろいろあるけど…
最近は、いわゆる液状の日焼け止めに加え、パウダータイプやスプレータイプの日焼け止めもありますよね。形状が違うとそれぞれ特徴が違うって知っていましたか?
まずはスプレータイプの日焼け止め。これは背中や腰の後ろなど、手がなかなか届かないところに塗るのにはとっても便利。海外旅行やレジャーでは大活躍します。
ただ、スプレータイプのものは、肌に刺激になる可能性のある「紫外線吸収剤」が使われていることが多いのです。紫
外線吸収剤が使われていないものもありますが、まだまだ少数。敏感肌の人は買うときにパッケージの裏などを見てチェックしたほうがいいかもしれません。
いっぽうでパウダータイプの日焼け止め。いわゆる普通のフェースパウダーと同じ感覚で使えるので、これもとても便利ですね。
ただ…紫外線防止効果の数値が高いものが多いというのは事実ですが、単品使いはおすすめできません。
液状のものに比べるとどうしても効果が弱いからです。パウダータイプの日焼け止めはあくまで「塗るタイプの日焼け止めを補強するもの」と考えましょう。液状の日焼け止め、もしくは日焼け止め効果のある下地と組み合わせて使うのがベストです。
◆最近話題の「飲む日焼け止め」って本当に効くの?
最近は「飲む日焼け止め」といわれるサプリメントもチラホラ話題になっていますよね。国内産のものも少数ながらありますが、圧倒的に有名なのは海外産のもの。
メーカーによって差はあるものの、内容としては主に紫外線を浴びることによって体内で発生する活性酸素を消去することをうたっています。特にスペイン産の「ヘリオケア」というサプリメントは多くの皮膚科や美容クリニックなどでも取り扱いがありますから、効果はそれなりにあると考えてよさそうです。
ただ、こういったサプリメントを飲んでいるからといって日焼け止めを塗らなくていいかというと、そんなことはありません。パウダータイプの日焼け止めと同様、あくまで「塗るタイプの日焼け止めを補強するもの」と考えましょう。
ただ、実際に飲んでいる人に聞いてみると、「海外旅行のときに飲んだ」「夏場にジョギングする前飲む」などなど、アウトドア時の日焼け止めにプラスアルファとして使っている人が多いようです。
ですから、普段使いするというよりは、いつもより日焼けしてしまいそうなシーンのときに頼る、というのがいいでしょう。ただし妊娠中・授乳中の人や、他の薬を飲んでいる人、持病がある人はやめておいたほうが無難。
◆自分の性格やライフスタイルに合う方法を見つけよう
百害あって一利なしの紫外線ですが、この時期はうまくつき合っていくしかありませんよね。
対策方法はいろいろありますが、毎日きちんと続けられるかどうかが結局のところいちばん大切。なかには「ベタベタ塗るのもあれこれ飲むのもイヤだから、帽子と日傘とサングラスでがんばる」という人もいるかもしれません。
とにかく一刻も早く自分のライフスタイル&性格に合う日焼け対策を見つけ出して、上手に夏を乗り切りましょう。
身近なモノで、雑菌がもっとも多く汚いのは何だと思いますか? きっと多くの方が、「トイレの便器や床」と答えるかもしれません。ところが、私たちの身の回りには、じつはトイレよりも雑菌にまみれたものがたくさん……。今回は、そんな驚愕の汚い10のモノを一挙公開!
■ その不潔さはトイレ以上!?身近に潜む雑菌まみれのモノとは……
1. 台所のスポンジ
家庭内でもっとも汚いといわれているのが、スポンジです。その雑菌レベルは便座の20万倍ともいわれ、スポンジの表面は2.5?あたり約1000万もの菌に汚染されているというデータも……。 さらに雑菌の他、カビや大腸菌、黄色ブドウ球菌なども繁殖する可能性があり、食中毒の原因になることも考えられるので注意が必要です。月に2~3回は新しいスポンジに交換するようにしましょう。
2. まな板
まな板の上は、なんと便座の200倍もの菌がいるといわれています。 特に、肉も野菜も同じまな板を使っている人は要注意。肉は菌が繁殖しやすいので、別々に使うようにしましょう。また、肉用は使用後よく洗浄するだけではなく、できれば漂白も行い、菌が繁殖しないようにすれば安心ですね。
3. お金
紙幣1枚には、なんと平均2万6千もの細菌が付着しているのをご存知でしたか? さらには、食中毒菌の一種セレウス菌が付着していたお札や、付着したインフルエンザウイルスが最長17日間生き続けたというデータもあるほど、恐ろしいほど汚いのです。
4. スマホ
ありとあらゆる場所や場面で使い、耳や顔に当てている時間も長いスマホ。こうした使用環境により、顔の皮脂や手の汚れ、置いた場所の菌などが付着することで、じつは相当な菌の温床に……。その細菌の数たるや、トイレの10倍以上。恐ろしいですね~。
5. 水道の蛇口
結論から申しますと、お風呂場の蛇口は便座の約20倍、キッチンの蛇口は約40倍の細菌が繁殖しています。シンクを掃除する際は、蛇口も併せてピカピカにしてください。
6. パソコンのキーボード
トイレの5倍もの菌が繁殖しているようですよ。熱を帯びやすいパソコン。どうやらその暖かい環境が菌にとっては好都合のようなのです。特にノートパソコンのキーボードは細菌にとって、居心地バツグンの温度になりやすく、さらに手の皮脂と相まって増殖していく危険性がアップ。こまめに、クリーニング用のスプレーで掃除をしましょう。
7. マットレス
ヒフ細胞の死骸、チリやダニの糞の影響で、その重さは10年で2倍になるといわれています。こまめに、掃除をしてください。
8. ハンドバッグやポーチ
特に汚くしているつもりはなくても、刻一刻と菌は繁殖しています。特に化粧ポーチなどに、裸のままブラシ類を入れている方などは要注意。
9. レストランのメニュー
レストランのメニューは多くの人たちが触れているモノでありながら、こまめにキレイにしているレストランはほとんどないでしょう。それゆえ、トイレの100倍以上、細菌が存在しているのですよ!
10. カーペット
どこで何を踏んだかわからない足の裏が行ったり来たり。その上、食べ物のカス、ペットの毛、ほこりやダニの死骸が沈んでいたりして……。その汚さは、トイレの4000倍。
■ 医師からのアドバイス
いかがでしたか? 身近に潜む汚いモノ。これらの細菌から身を守るためにも、手をキレイにすることが有効です。何かに触れた後は、石鹸やアルコール手指消毒剤を使って常に清潔にキープしておけるといいですね。
コロナ禍が、もう1つの禍を招いている。家族が寝静まった深夜。東京都文京区の閑静な住宅街に住むAさんは嫌な予感に苛まれていた。誰もいないはずのキッチンからカサカサと音がする。まさか……でもアイツが活発になるのは暖かくなってから。冬の名残のあるこの時期はまだ早いのでは?
頭の中ではそう否定しても、耳に残るカサカサ音。朝になってキッチンに足を踏み入れてもなんだか憂鬱だ。ドラッグストアへ殺虫剤を買いに行くと、店員が「最近は、殺虫剤が効かないタイプもいるんスよね」と怖いことを言う。Aさんの予感は的中していた。寒さに弱いアイツ=ゴキブリが活発に動いていたのだ。
虫ケア用品メーカー最大手のアース製薬に、ゴキブリの生態を知り尽くす女性がいる。実験用に害虫を育て管理する飼育員・有吉立さんが、こう話す。
「通常、ゴキブリは寒さに弱いため、冬の間は活動量が低下。おとなしく春を待つ習性なのですが、今年はコロナ禍でわれわれもリモートワークが増え、外出の自粛もあり、在宅時間が増えましたよね。その間、自宅は暖房や加湿器で、室温25℃前後、湿度は40〜50%にキープされ、人はもちろんゴキブリにとっても快適な環境が続いてしまった」
自宅での食事が増えたことで生ゴミも多く出る。ゴキブリたちも“食事”に困らない。まさに彼らにだけ“春が来た”状態なのだ。
この状況は数字にも表れている。害虫駆除サービスなど生活に関する出張・訪問サービスを提供する「くらしのマーケット」では、昨夏1か月間のゴキブリ駆除依頼が前年同月比で238%も増加したという。都内のある駆除業者はこう語る。
「夏に限った話じゃありませんよ。ゴキブリ駆除バブルは続いています。この冬もやつらは“休眠”することなく活発に動いていますから、駆除の依頼は安定してあります。今後、春になるにつれ、ますますやつらの姿を見ることになる。ゴキブリの恐怖はこれからが本番でしょう」
害虫駆除業者を困らせるゴキブリも増えている。駆除業者フリーマンの福永隆さんが言う。
「殺虫剤などが効かないゴキブリが増えているんです。ゴキブリは学習・進化するので、だいたい全体の3%くらいは毒素が効きません。彼らにとってすみやすい環境の変化になり、さらに生命力を上げ、毒素が効かない強化型と呼ばれるタイプが増える可能性も否定できませんよ」
※女性セブン2021年3月25日号
真菌(カビ)が引き起こす皮膚真菌症は、誰もがかかりやすい病気です。代表的な水虫は、患者が日本人の5人に1人と言われています。放置すると慢性化する恐れがあり、予防と治療を徹底することが重要です。(村上和史)
慢性化のおそれ
皮膚に付くカビは、表面の角質をエサにし、温度25~30度、湿度約65%以上のじめじめした環境を好みます。皮膚がこうした状態だとカビは繁殖し、角質に深く侵入しようとします。その際の免疫反応により、水ぶくれができたり腫れたりします。梅雨に発症しやすいとされていますが、暖房や加湿器を使う冬も注意が必要です。
水虫(足白癬(はくせん))は、カビの一種の水虫菌(白癬菌)が原因です。温泉施設のバスマット、居酒屋のサンダルなど、不特定多数の人が利用するものに付着していて、足の裏や指の間に感染します。 水虫になると、足の皮膚が白くふやけたり、赤くなってむけたりします。足の裏やかかとが硬くなり、痛みやかゆみが出る人もいます。放置すると、症状が慢性化し、治りにくくなります。
水虫菌が足の爪と皮膚の間に入り込むと、爪水虫(爪白癬)を発症し、爪全体や一部が変形します。かゆみは少ないですが、放っておくと水虫を再発させたり、家族に感染させたりします。 皮膚真菌症は、胸の下側やわき、脚の付け根などにも起こります。カンジダ菌が炎症を引き起こします。汗の量が多い人は、皮膚の表面に常在するマラセチア菌により、胸や背中に症状が出ます。
いずれも、赤いぶつぶつができ、かゆみや痛みを伴います。ただ、無症状の人も多くいます。 この病気は、患部とその周囲に抗真菌薬を塗って治療します。水虫の場合、症状が治まるまでに1か月以上、再発を防ぐためには1か月半~2か月以上、薬を使い続けます。 爪水虫では、半年程度、薬を飲み続ける必要があります。最近は、副作用が少ない塗り薬も登場し、治療に使われています。
糖尿病患者は注意
糖尿病で神経障害を併発している人が水虫や爪水虫になると、要注意です。症状が悪化して患部が化膿(かのう)してしまっても痛みに気づかないことがあるからです。 最悪の場合、足が腐る「壊疽(えそ)」になり、切断しなければならなくなることもあります。糖尿病患者らを対象に足の健康をチェックする「フットケア」に取り組む医療機関も増えており、対応してくれます。
皮膚真菌症を予防するには、蒸れやすい部位を丁寧に洗い、よく拭いて乾かすのが効果的です。水虫菌は、足に付いて12~24時間で角質に侵入するとされています。1日1回は足を洗いましょう。 関西労災病院(兵庫県尼崎市)皮膚科部長の福山国太郎さんは、「水虫には市販薬もありますが、使い方を誤ると治りません。再発や家族に感染させる恐れがなくなるまできちんと治療するには、医師に診てもらう必要があります。薬の塗り方などの指導も受けられるので、気軽に皮膚科を受診してください」と話しています。
真菌(カビ)が引き起こす皮膚真菌症は、誰もがかかりやすい病気です。代表的な水虫は、患者が日本人の5人に1人と言われています。放置すると慢性化する恐れがあり、予防と治療を徹底することが重要です。(村上和史)
慢性化のおそれ
皮膚に付くカビは、表面の角質をエサにし、温度25~30度、湿度約65%以上のじめじめした環境を好みます。皮膚がこうした状態だとカビは繁殖し、角質に深く侵入しようとします。その際の免疫反応により、水ぶくれができたり腫れたりします。梅雨に発症しやすいとされていますが、暖房や加湿器を使う冬も注意が必要です。
水虫(足白癬(はくせん))は、カビの一種の水虫菌(白癬菌)が原因です。温泉施設のバスマット、居酒屋のサンダルなど、不特定多数の人が利用するものに付着していて、足の裏や指の間に感染します。 水虫になると、足の皮膚が白くふやけたり、赤くなってむけたりします。足の裏やかかとが硬くなり、痛みやかゆみが出る人もいます。放置すると、症状が慢性化し、治りにくくなります。
水虫菌が足の爪と皮膚の間に入り込むと、爪水虫(爪白癬)を発症し、爪全体や一部が変形します。かゆみは少ないですが、放っておくと水虫を再発させたり、家族に感染させたりします。 皮膚真菌症は、胸の下側やわき、脚の付け根などにも起こります。カンジダ菌が炎症を引き起こします。汗の量が多い人は、皮膚の表面に常在するマラセチア菌により、胸や背中に症状が出ます。
いずれも、赤いぶつぶつができ、かゆみや痛みを伴います。ただ、無症状の人も多くいます。 この病気は、患部とその周囲に抗真菌薬を塗って治療します。水虫の場合、症状が治まるまでに1か月以上、再発を防ぐためには1か月半~2か月以上、薬を使い続けます。 爪水虫では、半年程度、薬を飲み続ける必要があります。最近は、副作用が少ない塗り薬も登場し、治療に使われています。
糖尿病患者は注意
糖尿病で神経障害を併発している人が水虫や爪水虫になると、要注意です。症状が悪化して患部が化膿(かのう)してしまっても痛みに気づかないことがあるからです。 最悪の場合、足が腐る「壊疽(えそ)」になり、切断しなければならなくなることもあります。糖尿病患者らを対象に足の健康をチェックする「フットケア」に取り組む医療機関も増えており、対応してくれます。
皮膚真菌症を予防するには、蒸れやすい部位を丁寧に洗い、よく拭いて乾かすのが効果的です。水虫菌は、足に付いて12~24時間で角質に侵入するとされています。1日1回は足を洗いましょう。 関西労災病院(兵庫県尼崎市)皮膚科部長の福山国太郎さんは、「水虫には市販薬もありますが、使い方を誤ると治りません。再発や家族に感染させる恐れがなくなるまできちんと治療するには、医師に診てもらう必要があります。薬の塗り方などの指導も受けられるので、気軽に皮膚科を受診してください」と話しています。
本格的な秋の訪れを感じるようになり、肌寒い日も増えた。季節の変わり目には気温や湿度の低下によって、肌も敏感になりがちだ。特に秋は“秋の肌枯れ”ともいわれるほど夏のダメージが遅れてやってくる要注意な時期。実際、2018年にドクターシーラボが行った調査によれば、「秋冬に肌トラブルを起こしたことがある」と回答した人は約7割に及んだ。加えて、いまは“マスクによる肌荒れ”の可能性もある。
あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんは「今年の秋は、例年よりも肌の不調を感じやすい」と指摘する。
「これまでと違って、マスクをつけて過ごさなければいけないので注意が必要です。ただでさえ空気が乾燥するうえに、マスクの刺激が加わって肌トラブルが起きやすくなることが懸念されます」
一口にトラブルといってもさまざま。前出のドクターシーラボの調査によれば、最も多いのは「かゆみ」で、悩んでいる人は8割以上もいるという。
多くの場合、肌のかゆみは一時的な肌荒れや不調のことが多い。しかしその陰に、命にかかわる病が潜んでいることがある。
誰でも皮膚にかゆみを感じることはあるが、その原因のほとんどは、体に合わない化粧水などを使っていることで起きる“慢性的な炎症”だ。
柴さんは「皮膚や髪につけるものをすべて疑う」と話す。
「シャンプーや洗顔フォーム、ファンデーションなどのコスメが原因で、炎症を起こしているケースがほとんどです」(柴さん)
これからの時期は乾燥しやすくなるため、症状が肌に出やすい。亀谷診療所院長で総合診療医の亀谷学さんが言う。
「皮膚が乾燥すると、皮膚の表面が傷つき肌の感覚が過敏になり、かゆみを感じやすくなります。水仕事をする女性は、乾燥に洗剤の刺激が加わり、皮膚は肥厚し、強いかゆみを訴える手湿疹になることがあります。アトピー性皮膚炎も乾燥によって悪化します」
虫刺されかと思ったら肝機能が低下していた
単なる乾燥や“顔や体につけるもの”に原因が見いだせなければ、いよいよ体の内部からくる病気を疑うべきだ。皮膚そのものに原因があるのではなく、臓器に生じる不調や病が、皮膚に表れることがあるからだ。
黄疸とかゆみは肝臓病か
きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんが最初に挙げるのは、肝臓の病気だ。
「かゆみが兆候となる病気で特に多いのが、肝臓疾患です。ウイルス性の肝炎や肝硬変、お酒の飲みすぎによる肝機能の低下など肝臓になんらかの異常があることが疑われます」
かゆみの原因は、「ビリルビン」と呼ばれる赤血球の主要構成物質だ。
「肝臓の働きが弱まると、血液に含まれる『ビリルビン』の濃度が上がり、かゆみを引き起こすことがわかっています。
ビリルビンは古くなった赤血球が分解される過程で生まれる物質で、通常は肝臓で処理されて体外に排出されます。しかし、肝臓の処理能力が低下すると、排出されずに体内にたまるため、血中のビリルビンが増えてかゆみを感じるのです」(菊池さん)
そのかゆみが肝臓疾患由来かどうかを見分ける1つのサインは「黄疸(おうだん)」だ。
「肝臓、胆嚢、膵臓などのがんや、肝炎、肝硬変、胆管炎などで黄疸が出ると、激しいかゆみを訴えることがあります。皮膚が黄色くなるのは柑橘類の食べすぎでも起きますし、良性である体質性黄疸でも白目が黄色くなりますが、病的かどうかは血液検査などでわかります」(亀谷さん)
ただし黄疸が出ていなくても、かゆみが肝臓疾患のサインだったというケースがある。柴さんが言う。
「虫に噛まれたような発疹が全身にできたので、ダニが原因だと思ってくん煙をたいていた人がいました。ですが検査してみると結節性痒疹という病気で、肝臓の機能低下が原因でした。
ほかにも、血液検査では肝臓の数値に異常がなくても、実は脂肪肝で、肝臓に負担がかかっていたというケースもあります」
自宅にダンボール箱を放置している人は要注意。ゴキブリの巣窟になっているかもしれない。
「ダンボール箱に幼虫が潜んでいたり、卵が生みつけられていたりすることがあるのです」
そう話すのは、アース製薬研究開発本部生物研究飼育課課長の有吉立さん。
有吉さんが所属する研究所では、商品開発や研究目的用に約100種類の害虫を飼育。ゴキブリは32種類飼育している。
「ゴキブリの害は、屋内外を行き来して食中毒菌を家の中に持ち込んだり、アレルギーの原因になることです。また、経済的被害もあります」(有吉さん=以下同)
実際にあったケースで、ゴキブリが電話機の中に多数住みつき、異常をきたしたことも……冷蔵庫、電子レンジ、テレビなど家電周辺は温かくてゴキブリが好む環境なのだ。
「ゴキブリは背面と腹面がつくところが好きで、家庭に多いクロゴキブリの成虫になると7ミリから1センチぐらいがちょうどいい隙間。そういう意味でも、家電や家具の間は好まれます」
■ペットの水入れやエサ入れも大好き
家庭内でゴキブリが住みつきやすいのは、他にどういう場所か?
「温かくて、暗くて狭く、水、エサがたくさんあるところ。ひとかけらのお菓子がゴキブリにはご馳走になりますし、水一滴も、人間でいうビールジョッキ1杯分くらいの魅力があります」
一見きれいな台所も、シンクの水滴、空のビール缶や酒瓶、食べカスがついた布巾、結び目が緩いゴミ袋などが、ゴキブリを引きつける。水がたまった観葉観賞植物の受け皿、ペットの水入れやエサ入れも、ゴキブリが好む。さらに、クロゴキブリは屋内外を行き来するため、風呂場の窓や換気扇、排水口などから進入し、住みつくこともある。
対策として、まず見つけたらゴキブリ駆除スプレー。ゴキブリはバックができないので、進行方向の少し先を狙うといい。次に「ブラックキャップ」などの毒餌剤を置く。屋外用もあるので、一戸建てではゴキブリが侵入してきそうな場所、例えば、風呂場の窓の近くなどに置くのもいい。
さらに卵を孵化させないためにくん煙剤・くん蒸剤を使用する。
「ゴキブリを1匹見つけたら100匹潜んでいる、とよく言われますが、クロゴキブリのメスは一生に平均24個の卵鞘(らんしょう)を20個程度、生みますので、あながち嘘ではありません。くん煙剤・くん蒸剤は、ポイントとして2回使用。1回では成虫は駆除できても、卵は生き残る。2~3週間後に再度使用すると、卵からかえった幼虫も駆除できます」
ゴキブリは夏に卵を生み、秋以降休眠する。卵を翌年に持ち越さないために、くん煙剤・くん蒸剤をやるなら、今だ!
昨年4月、10年ぶりとなるアトピー性皮膚炎(AD)の新薬「デュピルマブ」が登場した。注射薬なので2週間おきに通院して受ける必要があったが、今年5月から「在宅自己注射」も使えるようになった。どんな薬なのか。東京逓信病院・皮膚科の三井浩部長が説明する。
「ADの治療薬では初の『抗体医薬』になります。抗体医薬は病気の原因物質を抑える『抗体』を、バイオ技術を用いて人工的に作り出した薬です。また、この抗体は化学合成したものではなく、生物が産生するタンパク質などを利用しているので『生物学的製剤』とも呼びます」
かゆみを伴う湿疹を繰り返すADの治療は、薬物療法、スキンケア(保湿剤)、アレルギー物質(アレルゲン)の除去が基本になる。薬物療法は炎症を抑える「ステロイド」や「タクロリムス」の塗り薬を使うのが標準治療。それでも効果が十分でない難治性には、免疫抑制剤の「シクロスポリン」の内服薬が併用されてきた。
国内のAD患者は年々増加していて推定50万人、そのうち難治性の患者は2万人くらいいるとされる。新薬のデュピルマブの対象は15歳以上で症状が重く、標準治療を6カ月以上行っても効果が不十分な場合に標準治療に併用できる。
「シクロスポリンは体の免疫システムを広く抑制し、腎機能障害などの副作用の心配もあり、連続服用は3カ月間に限られます。デュピルマブは免疫システムのうちADに関わる部分だけをピンポイントで抑制します。ですから副作用には結膜炎や頭痛などがあげられていますが、重篤な症状は出にくいのです」
新薬を注射する部位は、二の腕の外側やヘソ周りを除いた腹部など。1本300ミリグラムを初回は2本、2回目以降は1本を2週間ごとに注射する。
効果のメカニズムはこうだ。ADは、皮膚から体内に侵入したアレルゲンに生体が反応して、免疫細胞が過剰に増える。免疫細胞から産生されるタンパク質が、皮膚にあるさまざまな細胞の受容体と結合することで炎症反応が起こる。新薬は、その中でも特に重要な受容体をブロックするのだ。
「効果は治療開始から2週間目くらいから実感できるようになってきます。炎症とかゆみが軽減し、皮膚の保湿因子が増えるので肌がもちもちしてきます。保湿や標準治療をきちんと続けていないと効果は落ちますが、まったく改善しない人はほとんどいません」
注意が必要なのは、ぜんそくの治療を受けている人。新薬はぜんそくにも効くが、それによってぜんそくの薬を中断すると、急激にぜんそくが悪化する場合があるという。新薬のネックは薬剤代が高いこと。注射1本の薬価は8万1640円で、この1~3割が保険での支払金額になるが、自己注射をすれば負担が減るケースもある。(新井貴)
先月、都内在住の50代男性が「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染したと東京都が発表。2013年1月に日本で初めて報告されて以降、西日本を中心に猛威を振るっている感染症で、この男性は関東で初の患者。私たちは何を知っておくべきか?
■飼い猫や飼い犬が媒介になることも
SFTSはマダニを媒介とするウイルス感染症だ。男性は、長崎県を旅行中にマダニに噛まれて感染したとみられている。
この感染症は、致死率が高い。今年5月29日までに患者数は421例報告されており、死亡例は66例。しかしもっと多いのではないかと専門家は指摘する。国立感染症研究所獣医科学部の前田健部長も、「後の追跡調査でSFTSと判明したものも含めると、低く見積もっても致命率は25%を超えるのではないか」と言う。
SFTSは、予防のワクチンや薬もなければ、確立された治療法もない。つまり対策の重要なポイントは、感染リスクをいかに下げるか。ひとつは、マダニが多く生息する野山に行く時は、肌の露出を極力少なくする。マダニ用の虫よけ剤を活用する。国立感染症研究所のホームページからパンフレット「マダニ対策、今できること」をダウンロードできるので、参考にするといい。
そしてもうひとつ重要なのが、「ペットのマダニ対策」だ。ペットから飼い主、獣医師、動物看護師が感染したケースが報告されている。
「人間と同様に、猫や犬もSFTSを発症することが、2017年、世界で初めて日本で確認されたのです。猫の致命率は人間以上で、60%。猫は発症すると動かなくなるほど弱ってしまう。唾液や糞尿など体液にはSFTSのウイルスが多数いるため、飼い主は看病している間に、獣医師や動物看護師は治療中に、感染するリスクがあるのです」(前田部長=以下同)
■感染動物が急激に増加
猫や犬の感染が判明したのは17年だが、動物の間で急速にSFTS感染が拡大していることは、前田部長らの調査ですでに確認されていた。「私が西日本のある地域のアライグマを07年から調べたデータがあります。それまではSFTS感染のアライグマはほとんどいませんでしたが、14年には30%が感染、15年以降は50%以上が感染していました」
現段階では、SFTSの感染は西日本に集中しており、人間のSFTSの感染者が多い地域と、猫や犬の感染が多い地域とはほぼ重なっている。散歩や外に遊びに行ったペットについてマダニが運ばれてくることもあれば、ペットから人間に感染することもある。「だから猫や犬の飼い主にぜひ行っていただきたいのは、マダニの予防薬をペットに投与すること。獣医師に相談すれば、処方してくれます」
人間のマダニ予防ワクチンや薬はないが猫や犬にはあるのだ。内服薬、滴下薬などさまざまなタイプがあり、月単位で効果が持続する。100%予防できるわけではないものの、愛するペットの命を守れる可能性が高まり、ひいては、飼い主、獣医師、動物看護師の命を守ることにもつながる。
なお、現在は西日本中心だが、アライグマの感染拡大スピードの速さを見ると、いつ東日本に脅威がやってきてもおかしくない。
■人間で発症が疑われるのは?
感染者のほとんどが高齢者。症状は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、下痢、食欲不振などだ。「SFTSの症状は多くの病気に見られるものですが、スムーズに治療に結びつけるため、これらの症状があり、2週間以内に『マダニに刺された』『弱った動物と接触した』のいずれかに該当するなら、必ず医師に伝えるようにしてください」(前田部長)
◆ブーム到来のハッカ油とは、そもそも何?
人気のハッカ油(薄荷油)の成分や効果、便利な使い方について解説します!「ハッカ」って昔の飴のイメージ程度の印象かもしれませんが、意外に日々の生活に使える万能アロマなんです! 中には局方(薬グレード)のものもあり有能なのがわかります。天然100%ハッカ油の魅力と活用法をお伝えします。
ハッカ油とは、いわゆるアロマテラピーで使うエッセンシャルオイル(アロマオイル/精油)と同じものです。つまり油脂ではなく、植物から香り成分を抽出したもの。そのため香りが強く、揮発性が高い性質があります。アロマテラピーをご存じであれば、ラベンダーやイランイランといったエッセンシャルオイル同様に使えばOK。
一般にアロマ専門ショップで売られているエッセンシャルオイルは色のついた遮光性のビンに入っているのですが、ハッカ油は透明なガラス瓶に入っているものも多いようです。でも、中身はエッセンシャルオイルなので、日光に当てず箱に入れるなどして保管するといいでしょう。エッセンシャルオイルは紫外線、熱、水気に弱く、劣化の原因になります。
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◆原料の和ハッカについて
さてハッカ油の原料について説明しましょう。ハッカ=ミントですが、ハッカは交雑しやすい性質があるので、細かく分類するとたくさんの種類があります。ガムや歯磨き粉のフレーバーで目にするペパーミント、スペアミントが代表的ですが、ご紹介しているハッカはこの2種とは異なり和名を「和ハッカ(ワハッカ)」とか「和種ハッカ(ワシュハッカ)」といいます。
・和ハッカの学名……Mentha arvensis
・ペパーミントの学名……Mentha piperita
・スペアミントの学名……Mentha spicata
いずれもシソ科で、乾燥した葉っぱを水蒸気蒸留法という方法で香り成分が抽出されます。
.
◆かつて北海道が一大産地だった
和ハッカはかつて北海道の北見市で世界市場の70%以上を生産していたのをご存知ですか。気候風土が栽培に適していることからハッカ産業が栄えました。
和ハッカからは主としてハッカ脳を析出することを目的としていました。ハッカ脳とはエッセンシャルオイル(精油)をじっくり時間をかけて冷却して得られた、メントール成分の結晶です。無色で針状をしていて、メントール分が約99%含まれます。昔から湿布や軟膏に使用されており、現在も化粧品や食品へも活用されています。
ハッカ油はハッカ脳の副産物として生産されていたのですが、1950年代から輸入品の進出や合成品が出回りはじめ、産業は一時衰退しました。
ですが現在では北見市をはじめ北海道では和ハッカが特産品として作られており、特に最近はデパートの催事なでの直売、テレビなどメディアで取り上げられ、再び脚光を浴びるようになってきています。
◆ハッカ油の香り
和ハッカはセイヨウハッカ(ペパーミントやスペアミント)と比較してメントールが多く含まれます。そのためメントールの際立った爽快感が香りの特徴。でも、きついというよりは和種らしく日本人の好むさっぱりとした軽やかな香り。苦手な人は少ないアロマの1つです。ちなみにスペアミントはメントールよりカルボンという成分が特徴で、甘い香りがします。
◆ハッカ油を使う前に確認しましょう
■中身を確認する
ハッカ油は比較的、アロマ専門ショップではないところから売られていることも多いアロマの1つ。買う前に不安であれば、中身がエッセンシャルオイル(精油)100%かどうかを確認するといいでしょう。アロマオイルという名前の場合は、類似品(フレグランスオイルやポプリオイル)であることも多いです。
■肌への使用は薄めて使う
ハッカ油を肌につける方法がネットに書かれていることもあるようです。もちろんそれは可能ですがエッセンシャルオイルは原液のまま(ビンから出して薄めずに)肌につけることはあまりしません。考え方はいろいろですが、濃度が高いので薄めて肌に塗るのが一般的です。特に肌が弱い方、子どもなどは必ず薄めましょう。
■分量に気を付けて
香りがとても強いうえ、ハッカ油の性質としてはメントール系の香りがすーすー鼻に届きやすいので、分量に加減が必要です。目から涙が出たり、くしゃみが出る人もいます。
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◆ハッカ油の使い方
フレッシュな心地よいハッカの香り。いずれの季節にも使えますが、暑い夏、湿度の高い梅雨時に特におすすめです。すべて1滴と書いてあるものは、ドロップ栓から振らずにしずくとして落ちてくるオイルの分量の1滴を0.05mlとして表記しています。
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◆ハッカ油を肌につけてクールダウン!
■さっぱり、ひんやり、ハッカ風呂
湯を張ったバスタブにハッカ油を多くても1~2滴ほど入れます。すーっとして体感温度が下がったように感じます。湯上りもさっぱり感があります。ッカ油のお風呂を実践するときは、身体をつける前にお湯をよくかき混ぜること。そしてハッカ油を入れすぎないことです。例えば5滴ほど入れると入れ過ぎ。スースーし過ぎて寒いほどです。気を付けましょう。一緒に天然塩(大さじ1杯ほど)を入れるとさらにさっぱりします!
■身も心もクールダウンなボディースプレー
夏は汗によって肌のコンディションも悪くなりがち。私もよく汗で肌がかゆくなって、かいてしまって傷になったりします。そんなとき使えるボディースプレーです。
【材料】
・ハッカ油:2~3滴
・グリセリン:3~5ml
・水(精製水や市販の飲用水):15ml
グリセリン(薬局で売っています)にハッカ油を入れてかき混ぜ、そこに水を加えれば完成です。スプレー容器に入れて完成です。
携帯するととっても便利! メイクをしている女性ならデコルテ、首筋、脇にスプレーすると、さっと汗がひいて、デオドラント効果も期待できます。私はデコルテにたっぷりスプレーしてミニタオルで軽く押さえておきます。汗、たばこ、体臭が気になる男性にもとてもおすすめです。季節問わず気分転換にもなるので、仕事中の休憩タイムにも活躍します。
■ヘアトニックや帽子にも
さきほどのレシピの、グリセリンを無水エタノールに代えればヘアトニックになります! ハッカ油は1滴です。汗をかいたあと頭皮にスプレーすると、肌に乗せたときひやっとして気持ちがいいです。帽子にスプレーしてからかぶってもにおいがこもらず快適。
■日焼け後の肌にハッカタオルで冷湿布
ほてった肌に冷たいハッカタオルを乗せるとクールダウンになります。洗面器に水を入れてハッカ油を1滴、タオルを湿らせます。お客さまにハッカ油の香りの冷たいおしぼりを作っておくと喜ばれます。冷蔵庫に入れておけばさらにひんやり感が増します。冷蔵庫に入れても違和感のない香りです。日焼けにはラベンダーもおすすめなので、ブレンドすればさらに効果的。目の刺激にならないように気を付けましょう。
◆ハッカ油で心地よい空間を作り暑気払い
■寝苦しい夜に涼やかさをプラス
ディフューザーに入れて部屋に香りを広げれば寝苦しい夜も快適です。また、ハッカ油スプレーをコットンやティッシュにしゅしゅっとして、それをクーラーの近くや扇風機の前にセット。ひんやりとした香りと冷感によってクールな涼風になります。芳香浴にもなり、お部屋がハッカの香りに包まれて、暑気払いにもなります。
■ハンカチに1滴眠気覚まし
ハッカ油はほぼ透明です。色がつかないので安心してハンカチに1滴落として香りを吸い込みましょう。オフィスでの眠気覚ましにも活躍します。
■イライラを切り替える香り
イライラしているときにもおすすめです。運転時の集中力UPや車内芳香にも使えます。
これはペパーミントのデータ ですがまったく香りがないときと比較してペパーミントの香りを30秒ほど吸い込むと小学生の気分に好影響を与え、計算ミスが減少する傾向があることが示唆されました。メントールが影響していると思われるので、ハッカ油も活用できます。.
◆ハッカ油はアウトドアにも活躍、虫よけ日焼け後のケア
■虫よけスプレー
メントールは虫が嫌う成分といわれます。キャンプ、登山、夏祭り、公園など虫の多い場所に出る時に試してみてください。
【材料】
・ハッカ油:4~5滴
・無水エタノール:5ml
・水(精製水や市販の飲用水):15~20ml
無水エタノールにハッカ油を入れてかき混ぜ、そこに水を加え、スプレー容器に入れて完成です。ベビーカー、帽子、かばん、靴下、衣類、また網戸や玄関先などにスプレーします。肌につけてもOKです。肌の弱い方は調整してください。
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◆添加物グレードのものはハッカティーやまな板の殺菌に
メーカーによっては食品グレード(食品添加物)のハッカ油もあるようです。株式会社北見ハッカ通商のものは食品添加物。そのグレードのものに限ってこんな活用もできます。
■ハッカの香りのアイスティー
つまようじの先にほんの少量、ハッカ油を付けたものをアイスティーに入れてかき混ぜます。ミント類は消化器系の不調におすすめです。飲む場合は必ずごく少量にしてください! また子ども、妊婦さんにはこの方法はおすすめしません。
■まな板を清潔を保つ方法
O-157が流行した当時、ミントの殺菌力が話題になりました。0.04%ほどで大腸菌が滅菌したという結果もあります。家庭での衛生管理にハッカ油でまな板をきれいに保ちましょう。ハッカ油は42~43℃の湯で香りが飛びます。キッチンでも問題なく使えるでしょう。
【使い方】
・水:100ml
・ハッカ油:1滴
この2つをよく混ぜたものをまな板にスプレーして洗い流します。
※家庭で清潔感を保つための方法です。食中毒を防止するための方法ではありません。
いかがでしたか? ハッカ油(薄荷油)の使い方について解説しました。一家に1本、様々な用途に活用してみてくださいね。
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中野 智美(アロマテラピーガイド)
アトピー患者をつなぐ専用アプリ
増え続ける、医療系スマホアプリ。
体調を記録する日記型のものや、手当の方法などが検索できる辞書型のもの、さらには医師に相談できるチャット型のものなど、そのタイプは様々だ。そんな中、iPhone用“アトピー見える化アプリ”「アトピヨ」が注目されている。
「アトピー性皮膚炎」は、成長とともに症状が治まる患者もいる一方で、大人の患者も多く、完治は難しい疾患といわれ、患者数は45万6000人以上とされている。そのうちの36%が0~19歳、44%が20~44歳と、比較的若い世代に多い。(厚生労働省「平成26年度 患者調査」)
皮膚の激しいかゆみや乾燥、出血などを伴い、かゆみによって十分な睡眠がとれなかったり、不安や抑うつ症状などに悩まされる患者も多いという。
この「アトピヨ」は、アトピーの症状を画像で共有できる無料アプリ。
ユーザー登録は匿名ででき、年齢やアトピー歴、治療法や処方されている薬、悩みなどをプロフィールに書きこめるようになっている。
ユーザーは患部の写真を投稿して「治療日記」のように使ったり、他のユーザーの写真を見て参考にできるだけでなく、ユーザー同士がコメント機能を使って治療のアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることもできる。
写真で治療経過が見えるようにした“アトピー専用アプリ”は日本初だということで、現在、2000回以上ダウンロードされているのだ。SNS上ではユーザーのリアルな声とともに、「悩みを共有する人がいると安心できる」「アトピー以外の病気にも応用できそう」との声が挙がっている。
このアプリを開発したのは、本業は会計士のRyotaro Ako(リョウタロウ・アコウ)さん。
なぜ、全くの“畑違い”のアプリを開発したのだろうか?お話を伺うことができた。
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開発者は「元アトピー患者」
――「アトピヨ」開発のきっかけは?
3年前に家族で熱海の古い旅館に宿泊した時に、ハウスダストアレルギーで救急車で運ばれたことがありました。部屋の中の古いソファーや布団で子供たちが遊び始めた結果、顔や腕などの上半身が赤く腫れ上がり、動悸も強くなり、深夜に救急車を呼ぶことになってしまいました。ステロイド注射で何とか症状は治まったものの、アレルギー疾患から逃れられない自らの体質を改めて自覚しました。
そこから、患者会でボランティアを始めたり、環境アレルギーアドバイザーの資格を取得したり、自分なりにアレルギーの勉強を積み重ねてきました。そして2017年からプログラミングの勉強を始めました。「TechAcademy」というオンラインスクールに通い、7ヶ月かけて「アトピヨ」アプリを開発・リリースしました。
――「アトピーに特化したアプリ」を作ろうと思ったのはなぜ?
私自身もアレルギー体質ですが、今日本人の2人に1人がアレルギーを持っていますので、アレルギー疾患の中で何かやりたいと思っていました。
その中でもアトピーというのは、
(1)人目に触れるという点で精神的にも辛いもの
(2)喘息や鼻炎は辛い時もありますが、平常でいられる時間もあります。アトピーはほぼ24時間かゆみが続き、睡眠や日常生活の質が大きく損なわれる
(3)最近の研究で、アレルギーマーチ(アレルギー疾患の連鎖)のはじめにあるのがアトピーや肌荒れで、そこから食物アレルギーなど他のアレルギー疾患に連鎖していくことが分かってきた そこで、アトピーが一番重要性が高いのではないかという問題意識がありました。
実はAkoさん自身も、アトピー・喘息・鼻炎という3種類のアレルギーに悩まされた経験がある「患者」なのだという。
アトピーは幼少期に完治したということだが、その経験を生かしてアトピヨを開発したのだ。
アトピヨの大きな特徴は、医師と患者が繋がるのではなく、患者同士が繋がることができる、ということ。
ユーザーの間では、自分が普段していない治療法に対する質問コメントなどが多いという。
治療法ごとの“実施前後の画像とコメント”が有益な情報
――「アトピヨ」を使っているのはどんな人が多い?
アプリユーザーの3分の2が女性です。特に20代~40代の女性が多いです。これは、女性のほうが見た目を気にする傾向があることと、アトピーは、幼児期の発症率がかなり高く(厚労省の資料によれば12%前後)、お子さんのアトピーに困っているママに使っていただいているからだと思っています。
――「患者が一番欲しい情報」はどんなもの?
アトピーの治療法ごとの実施前後の画像とコメントです。アトピーの方は、なかなか治療結果が出ず、改善と悪化を繰り返して悩んでしまう時期があったりします。その際に、この治療方針でやっている他の人はいつ頃良くなったのだろう、とか、他の治療方針でやっている人はどうなんだろうといった部分が最も知りたい部分になると思います。
――「患者同士がつながる」ことはどんな意味がある?
医者と患者が繋がることは「治療」が一番の目的だと思っています。患者同士が繋がることは「治療」ではないが、治療をサポートするものと思っています。慢性疾患や重度の疾患となると、治療期間が長期にわたります。その間に、本人は、病院以外にも普段の生活があります。この普段の生活をサポートするのが、「患者同士の繋がり」であると思っています。
従来から、難病には患者会という形で、相談したり、お互いを励まし合うネットワークがありました。この「患者同士の繋がり」の一つの形が患者SNSであると思っています。また、この患者SNSを含めた「患者同士の繋がり」は、医療や製薬と緊密に連携してこそ、より効果を発揮するものだと思っています。
多くの人が見るインターネット上では、相談したくてもなかなか患部の写真を公開しづらい…という人も多いはずだ。 同じ症状を抱える患者同士、かつアプリという小さな空間だからこそ、気兼ねなく公開・相談できる安心につながっているのだ。
また、インターネット上には様々な相談サイトがあるが、たとえば文字だけで「肌がカサカサして…」「傷がジュクジュクして…」と説明しても、完璧には伝わらないだろう。実際に写真を見て意見を交換できることで、より正しく、より欲しい情報を得ることができるのだ。
プライバシーにも配慮
そして、アトピヨのもうひとつの大きな特徴が、こうした患者の心情に寄り添ったプライバシーへの配慮だ。
投稿した写真はアプリ内にのみ保存され、スマホ内のアルバムには残らないのだという。
――「撮った写真が残らない」ことのメリットは?
アトピヨ内のカメラから撮った写真は、クラウド上に保存され、アプリからのみ見られるようにしています。スマホのアルバムには、旅行やカフェなどの画像も多いです。そうしたプライベートの画像を友人に見せるとき、患部の画像を間違って見せないように配慮しました。また、アプリ内で、部位などのカテゴリーごとに整理されて保存されますので、スマホ内の写真のフォルダ整理が不要というメリットもあります。
――ユーザーからの反響は?
一番衝撃的だったのが、約1,500件(11月18日現在)の投稿画像があるのですが、そのうちの2件は、肌の画像に「死にたい」というコメントがありました。幸いにも、この投稿に対しては、辛い気持ちが分かる同じ患者側からすぐにコメントでフォローがされ、本人も前向きになることが出来ていました。
アトピーは、人目に触れる病気であるため、そのメンタル面の影響が周りが思っている以上に深刻です。この様な病気で辛い気持ちや悩みを気兼ねなく吐き出し、患者同士がお互いをサポートする場としての患者SNSアプリの必要性を再認識することになりました。
また「仕事から帰る電車で乾燥が辛くて辛くて…早くこのアプリやりたかった!みなさんとコミュニケーション取れることでかなり頑張れてます!ありがとうございます!」といったコメントもありました。医師と患者という基本的な関係に加えて、同じ患者同士で本音で気軽に話してサポートできるということが、前向きに病気の治療に向かい合う上でとても大事なものだと考えています。
――今後「アトピヨ」に追加したい機能や、今後の展望について教えてください。
非公開機能を年内に追加する予定です。
今は、投稿した画像は、匿名でアプリ内の全員に共有されます。それによって、お互い励ましたり、アドバイスをもらえたりというメリットがあります。しかし、アトピーを自分のペースで治療し、その管理用にアプリを使いたい、もしくは、顔の症状を出すのは匿名でも抵抗があるといった声も多くいただきました。そこで、公開・非公開をカテゴリーごとに選択できるような機能設定を追加する予定です。
今後の展望につきましては、大きく3つあります。
1つ目が医療機関との連携です。具体的には、ご本人の同意の上、経過画像を医療機関に提供することで、対面診療やオンライン診療のサポートとなることです。2つ目が製薬会社との連携です。アトピーは今年新薬が出たのですが、こういった新薬を出す際の治験サポート面ですとか、毎日の薬の使用状況を提供するといったことを考えています。
3つ目がAI(人工知能)の活用です。約1,500件(11月18日現在)の投稿画像があるのですが、この画像が増えた段階で、アトピーと他の皮膚疾患と区別することや、アトピーの症状ごとに有効な治療法や薬の傾向を出すことにAIを活用することを考えています。
当事者にしかわからない悩みや辛さを共有できるアプリ。今後、アトピーに限らず、ひとりで悩む患者が相談できる場所が増えることを期待したい。
アトピー性皮膚炎の重症例に対する新薬「デュピルマブ(一般名)」が4月に発売され注目が集まっている。一方で、「何をやっても良くならないと受診する患者さんの中には、薬を正しく塗れていない方がかなりいます」と言うのは、多摩ガーデンクリニック・武藤美香院長(皮膚科・アレルギー専門医)だ。
アトピー性皮膚炎の治療は、①ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を中心とした薬物療法②保湿・スキンケア③悪化因子の検索と、食事や環境、睡眠や生活習慣を整え、皮膚に刺激を与えない――などが基本だ。
間違った塗り方でよく見られるのが、まず「使用量が少ない」。
「ステロイド外用薬や保湿剤の使用量の目安は、成人の人さし指の先から第1関節の長さまで出した量で、成人の手のひらの面積約2倍分に塗れます。目の前で見せると“そんなに?”と驚かれる人も珍しくありません」(武藤院長=以下同)
次に、「塗る範囲・塗り方の間違い」。
「患部全てに塗る必要がありますが、ごく一部のひどい部分にしか塗っていない。擦り込むように塗るのも駄目。患部に刺激を与え、炎症部位に薬が十分行き渡らない。そっと薬で表面を覆うように塗る」
そして、「ステロイド外用薬の使用を不適切に勝手にやめてしまう間違い」も。ステロイド外用薬に対する誤った認識や不安感からだ。本来は重症でないアトピー性皮膚炎が、重症化しているケースも少なくない。
「慢性化していない状態であれば、正しい塗り方を会得すれば、たいていは1週間程度で症状が軽減。作用の弱い薬へと替えられ、最終的には保湿剤中心で対応できる患者さんも多い」
■早期治療で慢性化を防ぐ
特に乳幼児の湿疹は、アレルギー体質(アトピー性皮膚炎約10倍、食物アレルギー約20倍)のリスクとなるため、早期治療が望ましい。
「年齢を問わず早く皮膚炎を抑えることは重要。間違った治療法を長年続け皮膚炎が慢性化してしまうと、皮膚が硬くなって薬が浸透しにくくなる。弾力性のある健康な皮膚を取り戻すために年単位の治療が必要になるケースもあります」
6月22~24日に開催された日本アレルギー学会では「重症アトピー性皮膚炎でもデュピルマブ投与開始後2週時点から、かゆみが有意に改善する症例が多い。“かいて症状を悪化させる”という悪循環を断ち切れる。重篤な副作用が少ない」「アトピー性皮膚炎治療薬として7種類の新薬が治験中や承認申請済みで、今後、治療の選択肢が増える見通し」などの報告が寄せられた。
武藤院長は、自身もアトピー性皮膚炎経験者。中学の時に重症化。医大生の時にコントロールする術を身に付けた。大きかったのは、治療への主体性。知識を身に付け、最適なものを自分で選べるようになった。
「保湿の重要性を痛感しました。高校生までは処方されるがままに尿素系保湿剤を使用していましたが、尿素系保湿剤は皮膚のバリアー機能を壊すと知り、肌のバリアー機能に必須の成分、セラミド入りの医薬部外品保湿剤に替えたのもこの頃。これによって、症状が劇的に改善しました」
残念なことに、アトピー性皮膚炎に対して尿素系保湿剤をいまだに処方している医師もいる。もし「正しい薬の塗り方」をしているのに、アトピー性皮膚炎に悩み続けているなら、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医や日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を一度受診した方がいいかもしれない。
デュピルマブの製造販売元「サノフィ」の調査によると、重篤な薬剤過敏症の報告は治験403例ではゼロ、市販直後1カ月間の推定約400例では1例。その1例もアドレナリンの使用なく回復している。
この季節、蚊、蜂、ムカデなどに刺されて困る時期ですね。当院にも、患者さんが来院されることがあります。蚊に刺された場合は、市販のかゆみ止めを塗り込んで、局所を冷やすのがいいでしょう。当たり前のようですが、これが基本です。局所の炎症が強く、かきむしって細菌感染などおこすと厄介なことになることもあります。かゆくても、かかないでください。
蜂に刺された場合は、まずその場から逃げましょう。蜂は敵を見つけるとマーキングをする習性があるとされています。他の蜂がそのマーキングに引き寄せられ、2次被害を引き起こす可能性があるのです。山や野原に遊びに行く場合、黒い洋服や強い香水などはつけない方がいいです。洋服や香りに蜂が引き寄せられますから。
現場から逃げたら、毒を冷水で洗い流します。ミツバチなどは針が残っていることが多く、除去する必要があります。怖いのは、刺されて30分から1時間くらいで起こるアナフィラキシーショックです。強い気分不良、呼吸困難等が認められた場合はすぐに救急車を呼んでください。一般的に2回目以降に刺された人になるように言われていますが、当てはまらないことがあります。
ムカデの場合は少し厄介です。かまれた場合、毒を洗い流すべきですが、冷水や40度以下のお湯で洗い流すと毒の特性で痛みが増すケースがあります。できれば43度以上で、やけどをしない程度のお湯で5分ほど洗い流してください。
蜂、ムカデに刺された場合に毒を口で吸いだすことはやめてください。危険な行為です。洗い流すか、専用の吸引機がありますので、それで吸い出すのがより良い方法です。その後、可能であれば、抗ヒスタミン剤の内服、ステロイド剤を塗布するのがいいでしょう。症状が改善されず、痛みやしびれなどの症状が残るなら病院(皮膚科)に行くことをお勧めします。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。
◆あせもやアトピー悪化など、肌トラブルが増加する夏
夏は紫外線による肌ダメージが気になる季節ですが、汗が原因の肌トラブルも増える時期です。特に肌荒れしていたり、アトピーやアレルギー体質だったりする場合、元々の症状が悪化しがち。アトピーのある人の約8割が、夏に症状が悪化するとも言われています。
特に汗のたまりやすい肘の内側や膝の裏などは、肌荒れ、かゆみ、発疹などが起こりやすい部位です。関節の内側は皮膚と皮膚が接触しやすく、汗ばむと汗も乾燥しにくいためでしょう。一方で、なぜ体温を調節し、体調を守るために大切なはたらきを持つ「汗」が、皮膚に悪影響をもたらしてしまうのか、説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
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◆汗が原因で肌荒れやかゆみが起きる原因
汗は自分の皮膚から分泌されるものにもかかわらず、汗そのものが肌荒れを悪化させてしまうことがあります。これは以前から、医師の中では経験的には知られており、汗の何らかの成分が本人の皮膚にアレルギーを引き起こし、その結果として肌荒れが悪化するのだろうと考えられていました。一般の方でも、汗はそのままにするとあせもなどの原因になってよくないことは、経験的にご存じだと思います。
最近の研究では、ヒトの汗を詳細に分析したところ、普通に人の皮膚に広く付着しているある種のカビによって作り出されたタンパク質が含まれていることが明らかになってきました。このカビによってできたタンパク質が汗に溶け込んで体内に入ってしまうことでアレルギー反応が起き、結果として肌症状が悪化することも分かってきています。
つまり、汗が原因にも思える夏の肌荒れの悪化の背景には、汗だけでなく、皮膚に普段から潜んでいるカビも関係しているようだということが分かってきているのです。
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◆夏のシャワーの正しい使い方……こまめに
夏の肌荒れ悪化の原因の一つが、汗や皮膚のカビによる「アレルギー」であるならば、その基本的な対応法は他のアレルギーと同じく、原因となるアレルゲン(アレルギーの原因物質)を除去し、触れないようにすることが一番です。しかし、普段から皮膚にいるカビを完全に除去することは不可能ですし、夏にまったく汗をかかないようにすることも現実的ではないでしょう。現実的に対応できる有効な方法として挙げられるのがシャワーです。
これまでも、夏はこまめにシャワーで汗を流すことが肌のダメージ予防に重要だということは、経験的には知られていました。医療現場においても、シャワーをこまめに使うように勧めただけで症状が改善する患者さんがいたためです。暑い屋外から帰宅した時や、体を動かして汗をかいた時など、面倒がらずにこまめにすぐにシャワーをあびて汗を流すようにすることは、アレルギー症状に対する「アレルゲンの除去」に当たり、効果的です。
特に小さいお子さんはたくさん汗をかきますので、夏に肌荒れが悪化しやすくなります。幼稚園や保育所、学校から帰ったらまずはシャワーをざっと浴びるようにします。その都度石鹸を使う必要はありませんので、こまめにシャワーを浴びて汗を流すことが大切です。
◆夏におすすめのシャワーの浴び方…「手軽に、こまめに」
1日何度もシャワーを浴びるのは面倒に感じるかもしれませんが、肌荒れが悪化してしまうとかゆみなどの不快症状を我慢しなくてはいけなくなりますし、元の状態に落ち着かせるまでに手間も時間もかかります。予防が第一で、少し手間に感じても悪化させない工夫をすることがポイントです。普段は基本的には湯船の入浴を勧めていますが、夏は毎回温まりすぎて汗をかいてしまうのを避けたい方も多いと思いますので、湯船よりもずっと手軽なシャワーもどんどん活用して、肌ダメージを事前に予防しましょう。
たまに水道水の塩素が気になるという方もいらっしゃいますが、基本的には普段のシャワーヘッドのままで構いません。もしどうしても気になるという方は、最近は塩素除去機能がついたシャワーヘッドなども市販されていますので、活用してみるのもよいかもしれません。注意点としては、シャワーの場合でも湯温は42度以上にしないこと。アトピーを始め、かゆみがある場合、熱い湯を浴びることでかゆみの原因物質であるヒスタミンが作られることが分かっています。
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◆夏バテ予防・疲労回復も兼ねられる夏の正しい入浴法
夏の肌トラブルの予防には、以上のようなこまめなシャワー浴をお勧めしますが、シャワーだけではどうしても疲れが溜まってきてしまいます。それでなくても「夏バテ」してしまう方も多い季節。蒸し暑い外気とクーラーの効いた室内での大きな温度差により、自律神経の乱れが原因での体調不良も起こりやすくなります。こまめに汗を流すだけならシャワーで十分ですが、できれば1日1回は湯船を使った入浴がやはりお勧めです。
夏場のおすすめの入浴法は
● 37~38℃前後の、体温と同じ程度の不感温浴
● 炭酸系入浴剤の併用
● 20分間の全身浴
の3つがポイント。
「不感温浴」とは、体温と同じ温度での入浴方法です。最も体に負担のない入浴温度で、この温度が自律神経のうちの交感神経の興奮を抑えます。入浴による体温上昇も少なく、湯上がり後に汗だくになることもありません。ここに炭酸系入浴剤を加えれば、ぬるい湯であっても炭酸の血管拡張作用によって、全身の血液の流れが良くなり、栄養分を血液が全身の細胞に運んでくれるので、より疲労を回復させてくれます。
毎日は無理でも、せめて週末だけでも湯船を使って入浴すると、疲れの取れ方が違います。普段のスキンケアにはシャワーを、夏バテを含めた疲れ予防、疲労回復には湯船を使った入浴をそれぞれ活用し、快適に猛暑を乗り切りましょう。
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早坂 信哉(温泉療法専門医)
◆水虫とは……足の指の間や足裏に発生しやすい白癬菌感染症
「水虫」とはカビである真菌に分類される「白癬菌感染症」のこと。 皮膚があるところなら、どこにでも発生します。意外と知られていませんが、水虫は頭のてっぺんから足の指先まで生じる可能性があります。典型的な好発部位は、足の指の間です。一般的には「足裏」と言いますが、足底も水虫の好発部位です。
頭の水虫も珍しくありません。まれに特殊なタイプの真菌がみられることがあり、特に柔道選手の間で流行しています。柔道選手からはTrichophyton tonsuransという特殊な白癬菌が検出されることが多く、内服薬での治療が必要となります。
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◆水虫の原因・感染経路……マットやタオルなどでも感染
白癬菌はカビの一種で、湿度の高い環境でしか増えないため、足に感染している場合がほとんど。しかし、時に頭部、そけい部、体幹などの部位でも感染がみられることがあります。
物を介した場合を含め、家族、他人などとの接触で感染します。例えば風呂場の足拭きマット、タオル、サンダルなどに白癬菌が残っていた場合、それらと接触して、洗い流さないまま経過し、湿度が高いと水虫が発生します。特に靴の中は湿度99%以上という環境なので、白癬菌が定着する可能性が高い部位です。
◆水虫の症状……無症状のもの、痒み・痛みがあるもの
無症状、痒み、痛み、二次感染などがあります。本来白癬菌は皮膚の外層にある角質に定着するものなので、角質に留まる限り症状はありません。外観は水疱や白く浮いた円形の角質などがみられます。白癬菌や周囲の炎症が真皮(皮膚の真中の構成成分)に達すると、痒み、痛みを生じます。
水虫が深い潰瘍を形成した場合、皮膚のバリアー機能が破綻して、細菌感染を合併することがあります。この場合潰瘍周囲に発赤、激痛など強い炎症症状が発生します。二次感染と呼ばれる状態。この状態まできたら病院をすぐに受診する必要があります。
◆水虫の診断法・検査法……症状に気づいたら皮膚科受診を
皮膚科で感染部位から皮膚の検体を採取して顕微鏡診断で菌糸を発見し、水虫と診断します。注意しなければならないのは「偽陰性」といって、水虫なのに検査の結果が陰性となる場合がよくあること。特に抗真菌剤を開始したあとは検査は陰性にでることが多いので注意が必要です。
◆水虫の予防法・対処法
▼感染しにくい環境づくり
まず、水虫が皮膚に定着しない環境をつくることが大切。湿度を抑え、真菌が発育しないような努力をしましょう。革靴を長時間はいていると革靴内の湿度は99%以上になるため、白癬菌が発達しやすくなります。可能な限りサンダルや運動靴に履き替えるのも効果的です。濡れた靴は履き替える、同じ靴を毎日使用しないなど、様々な方法があります。同じ理由で、靴下もなるべく吸湿性のよい綿の厚手のものを選ぶのがお勧めです。
▼他人との接触後の洗浄
公衆浴場、温泉、プールなど、他人と接触する場所に行った場合は、24時間以内に体を洗い流すようにしましょう。
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▼外用薬・病院の活用
現在さまざまな坑真菌薬が、市販されています。もし水虫になってしまった場合、自宅で治療することも可能です。
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◆水虫の診断法……水虫と思っても3割は違う病気とも
しかし、水虫と思って皮膚科を受診した方の3割が、水虫以外の病気が原因だったというデータもあります。接触性皮膚炎(自分で使用していた薬に対するアレルギー)、細菌感染、あせもなど、水虫に似た様々な病気があります。水虫の外用薬を開始する前に、必ず皮膚科で白癬菌を顕微鏡で確認する必要があります。受診当日に診断はつきます。
また薬局で入手可能な外用薬も種類が増加した現在では、薬局と病院の薬剤の差はほとんどありません。ただし自分で治療した場合は100%自己負担となりますが、病院では30%の負担です。水虫の治療は時間がかかること、完治するには大量の外用薬が必要なことから、費用も大きくなります。診断と費用の2つの観点から病院での治療をお勧めします。
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◆病院で受けられる水虫治療法
薬の剤形もクリーム、ローション、軟膏、スプレーなどいろいろなものが入手できます。皮膚の状態に応じて剤形は専門医が選択します。外用薬として、1日1回の使用で十分な効果のあるエクセルダーム、ニゾラール、アトラント、アスタット、ルリコン、ゼフナート、ペキロン、ボレー、ラミシールなどを使用します。
内服薬は角質が厚い部位、頭部白癬、外用薬で治療に反応しない白癬に使用します。費用が高いのが欠点ですが、外用薬に比較して短期間で治療効果を発揮します。イトリゾール、ラミシールがあります。両方とも肝障害のある方には使用できません。イトリゾールですが、他の薬物との相互作用が多く高血圧、精神疾患、不整脈などで特定の薬を内服している方には使用が難しい場合があります。ラミシールでは薬物相互作用が少ないので、私の場合はこの薬をメインに処方しています。
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◆水虫治療の注意点・治りかけからの再発防止に大切なこと
角質の新陳代謝は部位や角質の厚さで異なるので、長期間の治療が必要となります。最低でも皮膚症状が消失しても1カ月は治療を継続する必要があります。角質が特に厚い部位では、6カ月程度の治療期間となることも。難しい場合、内服治療に切り替えることで治療が成功する場合があります。
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井上 義治(形成外科医)
被災地でも危惧される大型ダニ
「フジロック・フェスティバル」は終了しましたが、いわゆる『夏フェス』は、まだまだ各地で開催されます。会場が自然に囲まれたロケーションもあるでしょう。また、この季節は山や河川にレジャーに出かけることも多いと思います。そうした場所の草むらに、「殺人ダニ」とも呼ばれるダニが潜んでいることがあります。それが「マダニ」です。 「殺人ダニ」と呼ばれる所以は、「マダニ」に噛まれたことで感染症になり、死亡してしまう例が、ここ数年相次いだからです。
「ダニ」と聞くと、家の中の畳やカーペットに住む、目に見えない小さな生物を連想しますが、「マダニ」はそれとはまったく別の種類の生き物です。家ダニより、ずっと体が大きく、通常時でも3mm~4mm程度、小型のテントウムシぐらいの大きさです。北海道から南西諸島まで、日本全国に生息しています。主に、山中の茂み、裏山や畑、河川近辺に生息しますが、郊外の住宅地や都市部の草かげにも潜んでいます。草むらがあるところなら、どこにでも生息しているのです。 「マダニ」の活動は、気温が高いと活発化することから、今後は豪雨被災地での「マダニ」発生も危惧されています。
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強力に食いつき、1週間にわたって吸血
「マダニ」の最大の特徴は、とりついた相手(宿主)から吸血すること。 「マダニ」は、草むらの葉陰で、動物や人を待ち伏せしています。葉っぱに潜みながら、体温、振動、二酸化炭素、匂いなどで宿主を感知するのです。そして、宿主(人間やイヌ・ネコ等)が直接植物に触れたときに、うまく乗り移って寄生します。 このとき、「マダニ」はノミのようにジャンプしたりはしません。そのため、気が付かないうちに衣類や肌に付着していることがあります。
宿主の体表に乗り移れた「マダニ」は、まずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。わきの下、足首、膝の裏、髪の毛の中などが吸血ポイントです。ポイントを選んだ「マダニ」は、鋭い歯で咬みつきます。さらに、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込み、セメント物質を分泌して固着するのです。ちょっとやそっとでは取れません。そうして、宿主から1週間以上の時間をかけてゆっくりと、そしてたっぷりと血を吸い上げていきます。
吸血で肥え太り、ついには宿主の体で交尾も!
寄生から日が経つにつれ、「マダニ」は吸った血でどんどん大きくなっていき、ついには風船のようにパンパンに膨れ上がります!
何と、体重は100倍以上に。全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。1週間以上にわたる吸血を済ませたあとは、一度宿主の体から外れ、脱皮の時間を設けます。その後、再び別の宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた脱皮。このサイクルを3回繰り返し、3度目の吸血の際には、宿主の体の上で交尾を行うのです。
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無理に引きはがすのは絶対NG!
ちょっとゾっとしてしまいますが、「マダニ」の唾液には麻酔物質が含まれており、吸血されていても、気付かないことが多いようです。 血を吸ってどんどん大きくなっていく過程で、寄生されていることに気付くようです。ただし、寄生に気付いても「マダニ」を無理にひきはがすことは止めて下さい。 無理に引き抜こうとすると、「マダニ」の頭部や差し込まれている突起物が体内に残ってしまいます。
「マダニ」の体が一部でも残ると、後に炎症や感染症をきたすことがあります。これが怖いのです。また、「マダニ」を強く掴むことで、「マダニ」の体液が逆流、自分のからだに「注射」することになりかねません。こちらも感染症のリスクが高まってしまいます。
では、「マダニ」の寄生に気づいたら、どうすればいいでしょうか。 「マダニ」専用のピンセットも売られていますが、一番確実なのは病院にいくことです。最寄りの皮膚科を受診し、除去してもらいましょう。ただしメスを入れて切開することもあります。
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感染したペットに噛まれて感染も!
通常はウイルスを保有している「マダニ」に咬まれて感染しますが、感染患者の血液・体液との接触感染、<ヒト‐ヒト感染>も報告されています。さらに16年、50代の女性が、「SFTS」に感染した野良猫にかまれたことで「SFTS」を発症し、数日後に死亡するという例が報道されました。自分自身はマダニに噛まれていなくても、「SFTS」を発症している動物の体液に触れることで、人にも感染することが確認されたのです。厚労省でも、ペットが体調を崩したら動物病院を受診するように注意喚起しています。
温暖化などの気候変動、自然環境の変化によって、「マダニ」の生息域が広がりつつあり、世界各国で警戒が呼びかけられています。20cm以上の草があれば、「マダニ」がいる可能性は十分にあります。これから秋にかけて、草むら等に近づく際には、肌の露出を避けましょう。長袖・長ズボンを着用し、帽子や手袋なども利用しましょう。また、帰宅時には衣類をチェックし、家の中に「マダ」ニを持ち込まないことも大切です。人間だけでなく、ペットのイヌやネコにも寄生しますので、同様の注意が必要です。
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千春皮フ科クリニック院長 渡邊千春(医学博士)
よみうり子育て応援団[子育てQ&A]
もうすぐ夏休み。屋外のレジャーで気をつけたいのが虫刺されです。子どもが蚊に刺された時の対処法を、兵庫医科大准教授で皮膚科医の夏秋優さんに聞きました。
蚊のかゆみ とびひ注意
蚊に刺された後は、かゆみや腫れが出ます。これは、蚊が吸血する時、人間の皮膚に注入される唾液成分に対して起きるアレルギー反応です。症状は個人差が大きいですが、大人は刺された直後にかゆくなり、1~2時間で治まる「即時型反応」が一般的。一方、乳幼児は刺された直後は無症状で、翌日以降にかゆみなどが現れる「遅延型反応」が多いです。
子どもは成長過程で繰り返し蚊に刺され、遅延型から即時型に移行します。小児期から青年期は両方の反応が出ることが多く、刺された直後にかゆくなっていったん治まり、翌日からまたかゆくなります。子どもで注意したいのが、刺された場所をかき壊してしまうこと。かき傷に細菌が入り、「とびひ(伝染性膿痂疹 )」になることがあります。とびひは菌が付いた手などを介して他の部位や他人にもうつってしまいます。
爪で「バツ印」は皮膚を傷つける
かゆみを抑えるなどして、かき壊しを防ぐことが大事。直後に出るかゆみは保冷剤などで冷やしたり、メントール成分が含まれる市販薬を使用したりするとよいでしょう。かゆい所に爪で「バツ印」をつけるのは、皮膚を傷つけることになるので避けましょう。翌日以降のかゆみはステロイドが入ったものがよく効きます。かき壊しの予防として、ばんそうこうを貼るのも効果的です。症状がひどい時は皮膚科を受診してください。
予防策として蚊が多い場所では肌の露出を避け、イカリジンやディートといった成分を含む虫よけスプレーを活用しましょう。ただし、ディートは子どもへの使用回数制限があるので注意が必要です。蚊の発生源対策も重要。わずかな水たまりでも蚊が育つので、家の周りのバケツや植木鉢の皿にたまった雨水は、こまめに捨ててください。
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兵庫医科大准教授 夏秋優
なつあき・まさる 兵庫医科大講師やカリフォルニア大サンフランシスコ校皮膚科研究員を経て、2000年から現職。虫による皮膚病が専門で、新聞やテレビなどへの出演も多い。各地で講演会も行う。
■皮膚のバリア機能、保湿で守る
列島各地で厳しい暑さが続き、「汗だくになって肌のかゆみが止まらない」という人もいるのでは。「たかが、あせも」と軽視するのは禁物だ。
皮膚には防御壁(バリア)のように外界の刺激やウイルスなどから体を守る役割がある。多摩ガーデンクリニック(東京都多摩市)の武藤美香院長(皮膚科)は「汗などによって皮膚トラブルを繰り返すとバリア機能が損なわれ、アトピー性皮膚炎などの皮膚病や食物アレルギーのリスクが高まり、やがて皮膚がんなどの腫瘍や感染症に対する抵抗力も弱まってしまう恐れがあります」と警鐘を鳴らす。
発汗で起こる肌のかゆみは「あせも」のほかに「汗かぶれ」の可能性もあるという。
武藤院長によると、あせもは、急激に大量の汗をかき、汗が皮膚に出る通り道(汗腺)が詰まり、汗が皮膚の内側にたまって炎症を起こした状態。見た目は肌に点々と赤いプツプツが出る。一方、汗かぶれは、乾燥したり下着や衣服で擦れたりして皮膚のバリア機能が低下したところに、汗の刺激成分が侵入して炎症を起こす。肌の赤みが面状に広がるのが特徴だ。
「汗かぶれのほうが注意も必要。バリア機能の障害が深刻であるケースがよく見受けられる」という。
いずれも対処法は「冷やす。かゆみを鎮める市販薬を塗る。皮膚科を受診」。かゆさを和らげようと「かく、たたく、熱いシャワーに当てるといった行為は全てNG」。炎症が悪化し、かえってかゆくなる。
症状が治まれば予防に努めることが大事だという。「汗かぶれの場合、重要なのは保湿です。乾燥した皮膚では正常なバリア機能を保てません。ドライスキンの方は夏でも保湿剤が必要です」とアドバイスする。
アトピー性皮膚炎の重症例に対する新薬「デュピルマブ(一般名)」が4月に発売され注目が集まっている。一方で、「何をやっても良くならないと受診する患者さんの中には、薬を正しく塗れていない方がかなりいます」と言うのは、多摩ガーデンクリニック・武藤美香院長(皮膚科・アレルギー専門医)だ。
アトピー性皮膚炎の治療は、①ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を中心とした薬物療法②保湿・スキンケア③悪化因子の検索と、食事や環境、睡眠や生活習慣を整え、皮膚に刺激を与えない――などが基本だ。
間違った塗り方でよく見られるのが、まず「使用量が少ない」。
「ステロイド外用薬や保湿剤の使用量の目安は、成人の人さし指の先から第1関節の長さまで出した量で、成人の手のひらの面積約2倍分に塗れます。目の前で見せると“そんなに?”と驚かれる人も珍しくありません」(武藤院長=以下同)
次に、「塗る範囲・塗り方の間違い」。
「患部全てに塗る必要がありますが、ごく一部のひどい部分にしか塗っていない。擦り込むように塗るのも駄目。患部に刺激を与え、炎症部位に薬が十分行き渡らない。そっと薬で表面を覆うように塗る」
そして、「ステロイド外用薬の使用を不適切に勝手にやめてしまう間違い」も。ステロイド外用薬に対する誤った認識や不安感からだ。本来は重症でないアトピー性皮膚炎が、重症化しているケースも少なくない。
「慢性化していない状態であれば、正しい塗り方を会得すれば、たいていは1週間程度で症状が軽減。作用の弱い薬へと替えられ、最終的には保湿剤中心で対応できる患者さんも多い」
■早期治療で慢性化を防ぐ
特に乳幼児の湿疹は、アレルギー体質(アトピー性皮膚炎約10倍、食物アレルギー約20倍)のリスクとなるため、早期治療が望ましい。
「年齢を問わず早く皮膚炎を抑えることは重要。間違った治療法を長年続け皮膚炎が慢性化してしまうと、皮膚が硬くなって薬が浸透しにくくなる。弾力性のある健康な皮膚を取り戻すために年単位の治療が必要になるケースもあります」
6月22~24日に開催された日本アレルギー学会では「重症アトピー性皮膚炎でもデュピルマブ投与開始後2週時点から、かゆみが有意に改善する症例が多い。“かいて症状を悪化させる”という悪循環を断ち切れる。重篤な副作用が少ない」「アトピー性皮膚炎治療薬として7種類の新薬が治験中や承認申請済みで、今後、治療の選択肢が増える見通し」などの報告が寄せられた。
武藤院長は、自身もアトピー性皮膚炎経験者。中学の時に重症化。医大生の時にコントロールする術を身に付けた。大きかったのは、治療への主体性。知識を身に付け、最適なものを自分で選べるようになった。
「保湿の重要性を痛感しました。高校生までは処方されるがままに尿素系保湿剤を使用していましたが、尿素系保湿剤は皮膚のバリアー機能を壊すと知り、肌のバリアー機能に必須の成分、セラミド入りの医薬部外品保湿剤に替えたのもこの頃。これによって、症状が劇的に改善しました」
残念なことに、アトピー性皮膚炎に対して尿素系保湿剤をいまだに処方している医師もいる。もし「正しい薬の塗り方」をしているのに、アトピー性皮膚炎に悩み続けているなら、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医や日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を一度受診した方がいいかもしれない。
【Q】虫に刺されると症状が強く出ます。患部が腫れたり、かゆみが数週間続くような虫刺されは何が原因で、対策はどうすればいいのでしょうか? (20代・女性)
【A】蚊、ブヨ、ダニ……。虫に刺されて皮膚が赤くなったり、かゆくなったりするのは全てアレルギー反応です。虫は人間を刺す時、血を吸いやすくするため唾液を注入します。
その唾液が人にアレルギー反応を引き起こす。人の皮膚の中からヒスタミンという化学物質が出て、かゆみを感じる神経を刺激し、皮膚がかゆくなるのです。
虫刺されで患部が腫れあがり痛みを伴うようなひどい症状になる人と、全く症状が出ない人の差は分かっていません。アレルギー反応が強く、蚊でも腫れてしまう人もいます。
虫刺されに弱い人はまず、虫刺されの予防を。虫よけスプレーや携帯用の蚊取り線香のようなものを外出時に持参してください。
次に、「かかない」ことがとても重要。かゆみが増しますし、菌が入って腫れるリスクが高まります。医師にステロイドが入った薬を処方してもらい、刺されたらすぐに塗るのもいい。市販の塗り薬にもステロイドが入ったものもありますが、効果が不十分で、とりあえずのかゆみは抑えられても、炎症は抑えられないかもしれません。
何日も続くかゆみや腫れを放置すると、黒くなり痕やシミになることも。虫に刺された部分がしこりとなり、長期間ずっとかゆくなる可能性もあります。さらには、そのしこりが湿疹のように広がることもあるため、かゆみや腫れがある場合は放置せず、皮膚科の受診をお勧めします。
なお、虫よけスプレーは肌に直接スプレーするのではなく、着用している衣類にスプレーしても効果が期待できる製品もあります。漂う香りで虫を避けられます。
(世田谷そのだ皮膚科・園田広弥院長)
日本人の暮らしが西欧化してきたことにつれ、近年、日本でもアトピー性皮膚炎の増加が目立ってきています。ここではアトピー性皮膚炎の症状、原因、検査方法など、基礎知識についておさらいしてみましょう。
◆アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎とは、全身のあらゆるところにかゆみのある湿疹ができる皮膚の病気です。
単にアトピーと呼ばれることもありますが、正確にはアトピー性皮膚炎といいます。良くなったり悪くなったりを繰り返し、皮膚がひどく乾燥したり、外部からの刺激に敏感になり、より症状が悪化してしまうことも特徴の1つです。
◆アトピー性皮膚炎の主な症状って?
アトピー性皮膚炎の主な症状としては、かゆみがでる、湿疹が体の部位に左右対称に出る、乳幼児は2か月以上、大人では6か月以上の症状が出る、などがあります。
また、症状が出た時の皮膚は、カサカサしていたり、ジュクジュクしていたりするのも特徴です。
◆アトピー性皮膚炎の原因は?
子どもと大人とではアトピー性皮膚炎の原因は異なります。
子どもは卵、牛乳・乳製品、大豆、小麦、米、エビ・カニ、魚、ソバなどの食べ物、大人はダニ、ハウスダスト、カビ・真菌、細菌、花粉、ペット、ホルムアルデヒドなどの化学物質が原因でなることが多いと言われています。
そのほか、ストレスや不規則な生活、不衛生な生活環境、睡眠不足など、本来持っている体質的なアレルギー以外の環境要因や生活習慣も関係します。
◆アトピー性皮膚炎の検査方法はあるの?
アトピー性皮膚炎の検査方法としてよく行われるのは、主に次の3つがあります。
●血液検査 採血をしてアトピー性皮膚炎の原因を探ります。血液検査では、主に好酸球の数、IgE値、特異的IgE、LDH(lactatedehydrigenase)、TARCの数値などを調べます。
●皮膚検査 原因と思われるアレルギー物質を皮膚に入れたり貼ったりして、その後の状況からアレルギーを判断します。
●負荷試験 原因と思われるアレルギー物質を摂取して、湿疹がでるかどうかという検査です。症状が強く出ることがあるので、外来よりは入院での検査になることがあります。
なお、アレルギーの数値は年齢と共に変化しますので、繰り返し検査することをオススメします。
◆知っておきたいアトピー性皮膚炎の合併症は?
アトピー性皮膚炎には、白内障、網膜はく離、ヘルペスウイルス感染症、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)、円形脱毛症などの合併症があります。
「いつもの痒みだ」「ただの水疱だ」と思っていても、放置すると症状を悪化させ、治療に時間がかかるようになりますアトピー性皮膚炎を治療していく上で合併症を防ぐことは非常に大切ですので、ちょっとでもおかしいと思ったら、すぐに医師に相談しましょう。
もうすぐ夏の到来とともに、悩ましい蚊の季節がやってきます...!改めて蚊について学び、今年は対策万全で臨んでみてはいかがでしょうか?蚊の科学を説明します。
まず、なぜ蚊に刺されるとかゆくなるのでしょう?英リバプール大学の熱帯医学を研究するMartin Donnelly博士は、「蚊は、血を吸い込む時に血液が凝固しないよう唾液を血中に入れる。
その唾液に含まれるたんぱく質や酵素が「かゆみ」を引き起こす」のだと説明しています。
そして肝心の「刺されるワケ」は?米ライフ情報誌「Mental Floss」誌のまとめたところによると、蚊に喰われやすい要因の85%は遺伝と臭いの組み合わせによるものなのだとか。
人体は、約500の異なる化合物を生成していて、それが皮膚から空気中に発散されています。
蚊は、これらの多くを触角で感知することができ、これまでの研究によると、蚊は汗、乳酸、尿酸、そしてオクテノールという成分に誘引されることが分かっています。
人によっては、これらの成分をより多く発しているそうで、屋外での運動が多い人は乳酸の生成がより多い傾向にあるのだとか。
また、蚊は体温の高い人を好むことから、運動後などはよりターゲットになり易くなります。古い汗も好むため、例えば汗をかいてその後一日シャワーを浴びずに居た人などは、刺されやすくなることに。
血液型も、やはり蚊に刺されやすくなる要素の一つ。調査によると、O型はB型の2倍喰われやすくなる一方、A型はそのB型よりも喰われにくいとのこと。
85%の人は、こうした血液型を示す成分を発しているため、残りの15%の人より蚊に喰われやすくなることになります。
呼吸時に吐き出しているい二酸化炭素も重要な要素で、血を吸う雌の蚊はこの目に見えないガスを頼りに獲物を探します。なんと約50メートル離れたところからでもこの二酸化炭素を察知することができるのだとか。
やはり体の大きい人、そして妊婦さんが排出量が多いために狙われやすくなります。
お酒を飲んだ時にも息の二酸化炭素が増えますが、特にビールは元々含む炭酸のため、飲んだ後は余計に蚊に刺されやすくなります!
これからアウトドア活動が楽しい夏が近づいてきますが、せっかくの楽しいイベントも翌日に虫刺されまみれでは残念。虫除け対策を万全にして臨みましょう...!
ブーツの季節は、足がむくみ、ムレやすくなるものですが、この時期誰にも相談できず一人で足の病気に悩んでいる女性もいます。そう、水虫です。
ここでは、女性に増えている水虫について簡単に解説します。
◆水虫はおじさんの病気じゃない?
水虫というと何となくオジサンの病気と思われがちで、年齢に関係なく女性が患っているとものすごく恥ずかしい気分になります。臭い・汚い・不潔・感染するなど、そんなイメージの強い病気だからでしょう。
しかし実際には、水虫は女性の間でも珍しいことではありません。ある統計によると女性の約70%が水虫の経験がある、あるいは水虫の可能性について悩んだことがあるそうです。
男女比率でいえば3:1の割合、つまり水虫患者の約30%程が女性であることが分かっています。
◆水虫ってなに?
では、そもそも水虫とは何なのでしょうか。水虫とは勿論虫の一種ではなく、白癬菌と呼ばれるカビの一種。特に水虫の90%はヒト好性菌と呼ばれる人から人へと感染する種類のものです。
白癬菌は、人の毛や爪、角質などに含まれるケラチンが大好物で、角質層などに寄生して住み着きます。
白癬菌が住み着いた角質や爪が体から剥がれ落ちてスリッパや絨毯、畳、タオルなどにくっつくと、それを媒介にして他の人にも感染してしまうのですが、新しい宿主を見つけた白癬菌は、2~3日かけて角質層内へ侵入し、高温多湿という環境になった場合にその中で増殖し始めます。
◆水虫はどうやって発症するの?
これらのことからも分かるように、水虫は足だけでなくケラチンが存在する高温多湿の環境であればどこにでも発症する恐れがあります。
例えば爪水虫と呼ばれる爪に寄生するもの、ぜにたむしと呼ばれる動物から感染し、顔や体のいたるところに感染するもの、しらくもと呼ばれる頭に円形に脱毛巣を作るものなど実に様々です。
◆水虫の予防方法
しかしいずれにしても、女性の場合なら特にできる限り水虫を予防したいものですし、もし罹ってしまったのなら誰にも気づかれず素早く治したいものです。
例えば、家族の中に感染者がいる場合、スリッパやバスマットを共有しないのは勿論のこと、定期的に部屋を掃除して、剥がれ落ちた水虫菌を除去するようにしましょう。
加えて白癬菌が角質層内へ入り込む前に洗い流せば感染しませんから、毎日お風呂やシャワーで体や足を良く洗い、湿気ないように通気性を良くしておきましょう。
毎日同じ靴を履いたり蒸れやすいブーツなどを長時間履き続けたりすると湿気の原因になるため、できるだけ避けたいものです。
もし水虫になってしまったのなら、市販の薬を定期的に塗ることで治療は可能ですが、爪水虫に関しては自宅での完治は不可能です。爪の色が黄褐色に濁ったり、爪の変形や割れに気づいたなら、すぐに皮膚科で診てもらいましょう。
夏場によく目にするゴキブリはこの季節になるとあまり見かけなくなるが、涼しくなって“消滅”したと思うのは大間違い。『ゴキブリ取扱説明書』(ダイヤモンド社刊)の著者で、30年以上、ゴキブリを研究する青木皐(あおき・のぼる)さんが解説する。
「ゴキブリはもともと熱帯や亜熱帯に生息する生物なので高温多湿を好みますが、実は秋冬にも私たちの身の回りに潜んでいます。夏に家屋に侵入したゴキブリは寒くなると活動が鈍り、物陰にじっと潜むため、秋冬は見かけなくなるだけなのです」
日本の家庭でよく見かけるのはクロゴキブリ(体長30~40mm)とチャバネゴキブリ(体長11~15mm)の2種類。ゴキブリの生態に詳しいアース製薬広報室の野崎秀之さんは「家電まわり」に注意を促す。
「この時期、狭く暖かい場所を好むゴキブリにとって、電気熱で温められる場所は格好のすみか。冷蔵庫の裏側やコンセントの内部などにじっと潜んでいます」(野崎さん)
ゴキブリは私たちに不快感だけでなく実害を与える。
「ゴキブリは食中毒を起こすサルモネラ菌や赤痢菌などの病原菌を運搬する。また、糞や死骸はアレルギーの原因にもなります」(青木さん)
それゆえ大の嫌われ者であるゴキブリ。前出の野崎さんは、「今の時期こそ対策が必要」と強調する。
「ゴキブリは家屋の中で冬を越します。これからの時期に家の中にいるゴキブリを徹底的に叩けば、来春のゴキブリ発生の抑制が期待できます」
では、具体的に何をすればよいのか。ゴキブリは人間の残飯だけでなく、紙やホコリ、さらに髪の毛やフケまで何でも食べる。当たり前のことだが、家を清潔に保つことがゴキブリ対策の基本だ。
「ゴキブリのエサや潜伏場所を減らすため、食べカスや生ゴミはすぐ処分し、家の隅々まで日々の掃除を心がけることが何より大事です」(野崎さん)
この時期、寒さを嫌うゴキブリはあの手この手で家の中に「侵入」しようとする。侵入経路を防ぐことが重要だ。
「ゴキブリは換気扇や窓と窓枠のほんのわずかな隙間などから侵入します。排水パイプやエアコンホースの壁の隙間も要注意。隙間を網などで覆ったり、侵入経路にあらかじめ 『待ち伏せタイプ』の殺虫剤を塗布すると効果的です」(野崎さん)
一筋縄ではいかない、こんな意外な侵入経路も。
「生まれたてのゴキブリは体長わずか1mmほど。飲食店でゴキブリの幼虫が上着やカバンに付着し、知らないうちに自宅まで連れて帰るケースが多い。帰宅時は家の外で上着やカバンをパッパッと払ってから屋内に入りましょう」(青木さん)
日本人の4人に1人が患っているというダニによる通年性アレルギー性鼻炎。ダニからアレルギー成分(アレルゲン)を抽出して作られた錠剤を毎日摂取して体を慣れさせる「舌下免疫療法」の適用対象が今年2月、12歳以上から5歳以上に拡大された。くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらず、抗ヒスタミン剤などによる薬物療法が効きにくい子どもにとっては朗報だが、副作用も少なくなく、主治医とよく話し合って始めることが必要だ。
「前はくしゃみが止まらず、毎日、学校にポケットティッシュを10個は持って行っていたけど、今は1個で十分足りる。やって良かった」。2016年8月から舌下免疫療法を続ける福岡市の女子中学生(14)は話す。
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舌下免疫療法を続ける14歳
幼い頃から鼻水やくしゃみ、目のかゆみがひどく、ダニやハウスダストによるアレルギー性鼻炎と診断された。抗ヒスタミン剤やステロイド点鼻薬などを併用しても効いている実感はなく、授業に集中できず、夜は眠れないこともしばしばだった。
当時の適用対象の12歳になって舌下免疫療法を始めると、半年で鼻水が減り始めた。最近は、ダニの死骸が増える秋口など季節の変わり目を除いて症状は落ち着いている。
最初は副作用もあった。毎晩、錠剤を口に含んだ後の30分間は、喉がいがいがしたり、口の中が腫れぼったくなったり。それでも「いつか鼻炎が治るなら」と続けると、半年ほどで違和感は消えた。あと数年は服用を続ける予定だ。
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唯一の根治療法「舌下免疫療法」
季節性の花粉症と異なる通年性アレルギー性鼻炎の原因の多くはダニの死骸やふん。こまめに掃除や換気をしても治らず、重症者は薬物療法も効かない。アレルゲンを繰り返し摂取して体質を変える免疫療法は、唯一の根治療法だ。従来は皮下注射で、頻繁な通院や痛みに耐えなければならず、受けられる人が限られていた。
2015年、鳥居薬品と塩野義製薬は錠剤を発売。誤飲の恐れから12歳以上が対象だったが、安全性が確認された今年2月、厚生労働省が対象拡大を容認。5歳から治療が可能になった。
これまでに3万6千人が治療始める
両社によると、九州では400余りの医療機関で実施。血液検査などでダニアレルギーと判明し、副鼻腔(びくう)炎など他の病気がないことが確認できれば医師の説明を受けて始められる。
初回の診察時に1錠を服用。院内で30分ほど様子を見て、異常がなければ3日~1週間分が処方される。次回から処方量が増え、慣れれば1カ月ごとの通院で済む。
服用方法は、舌の下に錠剤を置き、飲み込むのを1~2分間我慢した後、唾液と一緒に飲み込む。5分間は飲食やうがいを控える。薬代は3割負担で月1500~2千円。3年以上服用すると7割の患者に効果があるとされる。
鳥居薬品によると、これまでに約3万6千人が治療を始め、呼吸困難などの重いアナフィラキシー症状が出たとの報告は3件。そこまで重篤ではないが、治療開始後は多くの人が服用直後にのどのかゆみや口に異物感が出る。それも大半が数カ月から半年ほどで感じなくなるという。
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アトピーは悪化の恐れも
アレルギー疾患が専門の国立病院機構福岡病院(福岡市南区)では約70人が舌下免疫療法を受けている。うち今春から始めた12歳未満は約10人。多くは薬物療法で改善せず、生活に支障がある人たちだ。
耳鼻咽喉科の押川千恵医師によると、これまでに治療を始めた患者の3分の2は、半年ほどで鼻水やくしゃみが減ったり、合併しているアレルギー性ぜんそくや結膜炎が改善したりと、何らかの効果が得られているという。「アレルギー性鼻炎の子どもは増えている。早期治療は鼻炎改善だけでなく、成長するにつれてぜんそくや花粉症を発症する『アレルギーマーチ』を防ぐ効果も期待できる」と対象拡大を歓迎する。
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同病院ではアナフィラキシーなどの重篤な副作用は出ておらず、副作用で治療を中断した人はいない。ただ、重症の気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎を合併している人は悪化の恐れがあり、慎重な判断が必要という。
押川医師は「子どもは主治医に十分相談した上で、夏休みなどの長期休暇中に治療を始めると、保護者が体調の変化に気付きやすく、通院もしやすい」とアドバイスしている。
小児ぜんそくの発症原因とされ、夏場にかけて繁殖がピークを迎える室内のダニ。兵庫県西宮市が約40年前からダニを研究し続けていることをご存じだろうか。駆除するための掃除機のかけ方を全国に先駆けて考案し、市民には無料でダニの生息を調べる検査を行う。梅雨時期からの早めの対策が重要とされており、同市環境衛生課に撃退法を聞いた。(斉藤絵美)
害虫対策を行う同課には昔、ゴキブリやネズミなどの駆除相談が多かったが、1980年ごろからかゆみを与える害虫の相談が殺到。職員がダニの専門家がいる大阪の研究所で研修を重ねるなどして、ダニ調査に力を入れてきた。
ダニは温度25~28度、湿度60~80%の場所を好み、梅雨明けから増殖する。室内のダニの約7割を占めるチリダニ類は、人や動物を刺すことはないが、アレルギー疾患の原因物質とされる。ツメダニ類に刺された際はかゆみが出ることもある。
撃退法として、同課が推奨するのは掃除機がけ。現在ではダニやほこりを吸い取る布団掃除機が市販されているが、同市は35年前に掃除機による駆除を提案。最も効率よく除去する方法を調査し、1平方メートル当たり20秒間、丁寧に掃除機をかける方法を「西宮方式」と名付け、市民や医療関係者らに発信してきた。
日光干しや洗濯では、ダニのえさとなる人のあかやふけ、食品のくずなどは除去できるが、中心温度が50~60度にならないと死滅しないため、最終的には掃除機での除去が有効。ぜんそくなどの症状がある場合は、寝室は1日1回、それ以外の部屋でも週1度の掃除を勧める。症状が落ち着けば、頻度を減らしてもいいという。
同課は市民を対象に、掃除機で集めたごみを送ってもらい、無料でダニの種類を調べる検査を行っている。2017年度には30件の依頼があった。希望者は同課(TEL0798・35・0002)まで。
◆「こんな人が蚊に刺されやすい」のウソ・ホント
不思議なことに、同じ場所に居ていても蚊に刺されやすい人と刺されない人が居ます。「O型は蚊にさされやすい」、「ストレスと関係がある」など、その要因が都市伝説化しているものもあります。今回は「蚊に刺されやすい ウソ・ホント」を医学的観点から考えてみました。
▼Q1.O型は蚊に刺されやすいってホント?
答えは、「本当ですが理由は不明」です。
害虫防除技術研究所の白井良和先生は、2004年のJournal of Medical Entomologyで蚊はO型の血液型を好むと報告しています。蚊に刺される頻度がO型で83.3%、A型で46.5%と、O型の血液型の人が刺されやすい事が判りました。
蚊の腸内の吸った血液型を調べるとO型、B型、AB型、A型の順に多かったとの報告もあります。残念ながら、理由については不明です。O型の人の体温や二酸化炭素、汗などが、他の血液型と若干異なる可能性があるのかもしれません。とはいえ、A型の人が蚊に刺されないわけではありません。
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▼Q2.肥満は蚊に刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
理由は、肥満の方は体表面積が広く、その分蚊に刺される範囲も広いということなので、確率的に刺されやすいと言うことです。また、肥満の人は汗をかきやすいので、蚊が対象を発見しやすいということもあるでしょう。
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▼Q3.妊婦は蚊に刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
理由は肥満の方と同じく、妊婦も体表面積が広くなるためです。それに加えて、妊娠後期では肺がお腹で圧迫され、呼吸数が多くなり、その分二酸化炭素を発しやすくなることも挙げられます。また、体温も高めであり、そのことでも蚊を引きつけてしまいます。
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▼Q4.ストレスのない人は刺されやすいってホント?
答えは、「ウソ」です。
ストレスがあるかないかでは関係ありません。しかし、ストレスによって汗をかいている場合は、蚊を引きつける可能性があります。
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▼Q5.子どもは刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
子どもは体温が高く、代謝がさかんであること、そして汗をかきやすいことから、蚊を引きつけてしまいます。
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▼Q6.アルコールを飲むと刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
飲酒することで、皮膚の血管が拡張します。すると、体温が上昇しますので、蚊を引きつけてしまいます。またここでも、汗をかくことでさらに引きつけてしまいます。
▼Q7.黒い服を着ていると刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
イエカは、夜行性のため、暗い色を好むと言われています。そのため、黒い服は蚊を引きつけてしまう可能性があります。
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▼Q8.日焼けしている人は刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
カは、白と黒の色を感知し、黒色を好むと言われています。そのため、日焼けしている人に蚊を引きつけてしまう可能性があります。
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▼Q9.運動している人は刺されやすいってホント?
答えは、「本当」です。
運動していると、汗をかきます。汗がカを引き寄せますし、運動によって、二酸化炭素の排出も増えますので、よりカを引き寄せることになります。
上記で挙げたいくつかの内容から考えて、蚊に刺されやすくなる主な要素は、汗・体温が高い・体表面積が広い・黒色の4点にまとめられます。つまり、これらの対策がそのまま蚊の対策につながると言えるでしょう。では、これまでの要素を踏まえ、蚊に刺されないための対策をご説明します。
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◆まずは蚊について知ろう
蚊は、ハエ目カ科の昆虫です。見たことがあるかもしれませんが、オス・メスともに長い口吻を持っています。主食は本来、花のミツや草の汁などで、動物の血ではありません。人を刺す蚊としては、イエカとヤブカがあります。イエカは夜行性で春と秋に活発で、ヤブカは夏です。
血を吸うのは、産卵期のメスだけです。卵を発達させるために必要なタンパク質を得るために、動物の血液が必要なのです。動物を探す時に、蚊は汗・体温・二酸化炭素などを感知して寄ってきます。
蚊は血を吸う時に、対象に唾液を送り込んでくるのですが、これには刺した時に痛みを感じさせない麻酔作用や、血が空気にふれて固まるのを防ぐ作用がある色んな成分が含まれています。この唾液腺物質が、刺された後の腫れや痒みを引き起こします。
血を吸ったメスの蚊は主に水中に産卵します。卵は、乾燥した場所でも何年も生き続けることができるため、周期的に水が貯まるようなところであれば孵化してしまいます。卵から数日で幼虫「ボウフラ」になり、1週間でさなぎとなって3日で成虫になります。成虫の寿命は1ヶ月です。
気候が熱帯に近いアフリカなどでは、1年中、蚊が生存しますが、幸い、日本では現時点では夏に多く、冬に少ない状態です。
◆身の回りの蚊を減らそう
蚊への対策として、まず身の回りの蚊自体を減らすことを考えましょう。ボウフラは水の中で生息し、蚊へと成長するため、自分の身の回りに水を溜めておかない事が大切です。雨水などが溜まった容器はそのままにしないようにしましょう。
また、屋内であれば蚊の侵入を防ぐために、網戸に虫よけスプレーをかけましょう。もちろん、屋外に出る時にも蚊に刺されないように、虫よけスプレーが必要です。さらに、先ほどご説明した条件に当てはまる方は、汗対策・体温対策・体表面積対策・色対策が重要になります。
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◆汗対策・体温対策
体温が上がると、汗をかきやすくなります。そのため、体温対策と汗対策は同じです。汗をかいたらなるべく早めに拭きとったり、可能であれば、洗い流すことが肝心です。制汗スプレーを上手に使うとよいでしょう。 蚊がいるような環境ではなかなか難しいとは思いますが……理想としては、汗をかかないような冷房のある環境がいいでしょう。
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◆体表面積対策
なんといっても痩せることです。できれば、本格的な夏までに痩せるといいでしょう。痩せるためには食事と運動が大事ですが、運動では汗をかき、蚊を集めてしまいます。本来であれば季節が良く、涼しい時期に運動しておき、少しでも体重を減らしておくことが理想です。 代謝が良いと体温を上げますので、代謝のよくなる肉食系は避け、野菜系を入れるようにしましょう。
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◆黒い服を避ける、肌の露出を減らす
蚊は足を刺しやすいので、できるだけ足を露出させない方がいいでしょう。また、イエカは暗い色を好むため、明るい色の服を着ましょう。今から痩せるのは難しいので、今年よく刺された人は、来年までにバランスの良い食事と運動で体重を減らす対策を考えておきましょう。……私もちょっと痩せようと思って、5kg程度の減量しました。
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹がでる慢性疾患で、改善したり悪化したりを繰り返します。顔を含む全身に湿疹が出ますが、特に両腕のヒジの内側、両ヒザの裏側など、屈曲しているところに症状が出やすい特徴があります。なかなか治らないため、長年この疾患に悩まされている人も多いでしょう。ここでは、アトピー性皮膚炎治療の最新事情について見ていきます。
◆肌を乾燥させないことが対策の第一歩
患者さんの多くはアレルギー体質で、皮膚のバリア機能が低下しています。こうした「体質的要因」と、刺激となる「環境要因」とが重なって症状は現れますが、原因の特定が難しいのもアトピー性皮膚炎の特徴です。
最近注目されているのは「肌の乾燥」です。乾燥肌によって皮膚のバリア機能が弱り、保湿力が落ち、汗や微生物など皮膚への刺激物が侵入しやすくなって、かゆみやかぶれを誘発します。さらに、かゆさで皮膚をかいてしまうとバリアが剥がれ、さらに刺激物が入りやすくなって炎症が起き、かゆみが増す──という悪循環が生じます。常に皮膚がしっとりとするように、ローションなどを塗って、しっかりと保湿をすることが重要だと、実験的研究からもわかってきました。
◆プロアクティブ療法とは?
早期に診断・治療を始めることが重要です。疑わしい症状が出たら、皮膚科を受診して治療を受けましょう。症状が出ているときは、まずは炎症を抑えるため適切な薬が使われます。医師の考え方や症状によって薬の種類や処方量はさまざまで、症状が強い場合はステロイド剤が使われることもあります。最新の治療法に「プロアクティブ療法」があります。
発疹が消えてもまだ治っていないと考え、しばらくの期間はステロイド外用薬やタクロリムス軟膏などの抗炎症外用薬の塗布を中止しない方法です。症状が治まったら保湿剤に切り替える従来の方法よりも、再発を抑える効果があり、注目されています。
◆スキンケアで注意すること:アトピー性皮膚炎の予防
皮膚を清潔に保つことは大切ですが、洗う際に皮膚を強くこすらないように注意しましょう。石けんやシャンプーなどは洗浄力の強いものは避け、低刺激のものを選びます。また、洗った後は十分にすすぐことが大事です。
入浴剤の類は使わないほうがいいでしょう。また、熱いお湯はかえってかゆみを増してしまいますので避けましょう。入浴後には保湿剤を使用して、皮膚をしっとりした状態に保ちます。 皮膚の掻き壊しを避けるために、ツメは短く切っておきます。肌の乾燥を防ぐため、就寝時は長袖長ズボンを着用します。手足に湿疹が出ている人は手袋や靴下を着けてもいいでしょう。普段着も刺激の少ない素材の服を選びたいところ。
化学繊維はかゆみの原因になります。冬はウールなどセーターの下に綿のシャツなどを着ると、肌への刺激が避けられます。衣類を洗う洗剤も、界面活性剤の含有量が少ない低刺激のものを使用しましょう。
キッシング・バグ(サシガメ)という虫の糞を介して感染するシャーガス病。全米で30万人以上が感染しているといわれています。しかし、多くの人が自分が感染していることに気づいていないそうです。この病気を「新しいエイズ」と呼ぶ専門家もいます。
アメリカ熱帯医学会に集まった研究者たちは、もし早期発見できれば、シャーガス病は治せる病気であると言います。しかし、この病気は症状が出ないことがあったり、治療薬が足りていないことも指摘しました。
アメリカ疾病予防管理センターによれば、吸血性のキッシング・バグの糞の中に、トリパノソーマという寄生虫がいます。キッシング・バグが吸血した時に落とした糞が、皮膚を擦るなどして出来た傷から人間の体内に入ることで、感染します。
シャーガス病の初期症状は、発熱、疲労、体の痛み、発疹、下痢や嘔吐などです。そして、まぶたが紫色がかって腫れます。
病気が進行すると、心臓麻痺や死につながる合併症を引き起こします。そこまで進行してしまうと、薬では治せません。
このように、始めは無症候性で、病気が進行してしまうと致命的になることから「新しいエイズ」と呼ばれています。
アメリカ疾病予防管理センターは、シャーガス病に感染している大部分の人が、アメリカ合衆国に入国する前に、メキシコや南アメリカで感染していると考えています。
保険は不測の事態に備えて加入するものだが、あれもこれもと特約をつけていくと月々の保険料がけっこうかさむものである。そのせいか、「掛け捨てはもったいない」と考える人は少なくないようだ。
確かに掛け捨ての場合、平穏無事に過ごせれば戻ってくるものはない。そのため、積立型のほうが魅力的に見えるのだろうが、よくよく理解して入らないと痛い目を見ることになる。とりわけ注意が必要なのが「アカウント型保険」だ。
このアカウント型の商品には、「ライフアカウントL.A.」(明治安田生命)、「ライブワン」(住友生命)などがある。
アカウント型保険は、保障と積立(アカウント部分)の2段構造になっている。毎月の保険料が、それぞれに振り分けられる仕組みだ。アカウント部分に積み立てられたお金は、保障の見直しに充ててもいいが、引き出して旅行や養育費など好きなように使えるのが特徴である。
保障がありお金も貯まる、自由に引き出して使える、ということで、アカウント型保険はいいことづくめに思えるかもしれない。ところが、専門家が常にワースト1に挙げるほど、とんでもないシロモノなのだ。
●積立が、ほとんど増えていかない仕組み
アカウント型保険は、正式には「利率変動型積立終身保険」という。この名称は一見すると終身保険のようだが、実は終身保険ではない。更新型の定期保険と積立を組み合わせたもので、保険料払込期間が終わったあとに終身保険を購入する権利があるというだけである。
では、アカウント型保険の実態とは、どういうものなのだろうか。主契約はアカウント部分で、医療保障や死亡保障など、保障に関する部分はすべて特約。期限が来れば更新しなければならず、そのたびに保険料は上がっていく。
値上がりした分をアカウント部分から充てることも可能なので、実際にはそれほど負担が大きくはならないことも多い。だが、確実に積立は減っていくのである。
しかも、この積立がクセモノだ。仮に1万5000円の保険料を払ったとしても大半が保障部分に回ってしまい、積立はせいぜい1000円余りといった具合なのだ。将来のために貯蓄をと思っても、とてもアテにはできないことがわかるだろう。
保険料の払い込みが終了すれば、その時点で一切の保障もなくなる。医師の診査がなくても終身保険に加入できる権利だけは持っているとはいえ、新たに購入しなければならない。
この時、積立金を利用することはできるのだが、実際に貯まっているお金は微々たるもの。さらに高額な保険料を支払わなくては、終身保険には加入できないのだ。
オイシイ部分ばかりに気を取られてしまうが、素人が手を出すには複雑すぎるのがアカウント型保険。どんなに誘われても加入しないほうが賢明だ。必要最低限の保険に掛け捨てで入り、残りを自分で貯蓄したり運用したほうが、ずっとメリットは大きいといえるだろう。
■冬でも感染ご用心
マダニが媒介する「日本紅斑熱(こうはんねつ)」の患者が今年初めて200人を超え、感染症法が施行された平成11年以降で最多となったことが11日、国立感染症研究所のまとめで分かった。
昆虫やダニなどの節足動物が媒介する感染症では今夏、デング熱の国内感染者が160人確認された。
デング熱は蚊の活動が低下して流行が終息。日本紅斑熱もマダニの活動が活発で人の野外活動が多い時期の感染が多いが、冬季の感染もあり、注意が必要だ。
日本紅斑熱は「リケッチア・ジャポニカ」という細菌を持つマダニに刺されることで感染し、発熱や頭痛、発疹などの症状が出る。抗生剤で治療が可能だが、治療が遅れると四肢の末端が壊死(えし)して切断しないといけなくなったり、多臓器不全などにより死亡したりすることもある。
北米や地中海沿岸地域などでは同じような感染症が知られていたが、昭和59年に国内でも確認され、日本紅斑熱と呼ばれるようになった。
感染者は年間10~20人ほどだったが、平成20年に100人を超え、今年は2日までに211人と初めて200人を超えた。患者は和歌山県32人▽広島県29人▽三重県28人-など西日本に多い。
関東でも千葉県で3人、神奈川県で1人が感染した。新潟県では初めて患者が確認された。
患者が増えた理由について、国立感染症研究所の安藤秀二室長は「医師の認知度の向上と確実に診断できるようになったことが大きく、報告数が増えた」とする。
それでも「検査できる機関が限られることから検査をしなかったり、医師が症例を見た経験がないため他の疾患と間違えられたりする例もあり、実際にはさらに多くの患者がいるとみられる」という。
マダニによる感染症では昨年、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が国内で初めて確認された。10月15日までに累計104人の患者が報告されており、30人が死亡。SFTSも日本紅斑熱も予防接種はなく、予防法はマダニに刺されないことしかない。
安藤室長は「日本紅斑熱は温かい地方などでは冬も感染者が出る」として、冬季も注意が必要と話している。