あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■がんへの備え・治療費など
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医師が教える健康常識「癌になりにくい入浴法とは…」

医学の常識は日々動いている。極端なケースでは、昨日までの常識が、今日から非常識になることも。

そこで、健康常識をアップデート。胃腸とアンチエイジングの第1人者、栃木市の江田クリニック院長・江田証先生に、最新の知見を解説してもらった。

湯船につかると、「ヒートショック・プロテイン」(HSP)というタンパク質が作られる。“熱い”というショック(ストレス)によって増えるタンパク質なので「Heat Shock Protein=熱ショックタンパク質」と名づけられている。

HSPは、いろいろなストレスによって細胞のタンパク質が傷ついたとき、修復したり、免疫力を高めたりする重要な役割を果たしている。

がんの温熱療法は局部を高熱にするもので、これは家庭ではできないが、お風呂の入り方で同じような予防効果が期待できる。そこで、がんになりにくい入浴法を紹介しよう。

〈1〉入浴前にコップ1杯の水を飲み、水分補給をする。

〈2〉40度の湯温に20分間程度つかる。

〈3〉高齢者や持病のある人は、半身浴で湯温40~42度、20~30分の入浴でOK。

〈4〉入浴後に、体温38度になることを目安にする(体温計を口に入れて測る)。

逆にいえば、シャワーだけで湯船につからない人はがんになりやすい、とも。あくまでも無理のない範囲で湯船につかって、しっかり体を温めたい。毎日が無理なら週2~3回でもOKだ。

日焼けしてがん、本当になる? 「ほくろ」と「皮膚がん」の見分け方

世界的人気俳優、ヒュー・ジャックマンが、昨年11月と今年5月の2度にわたり鼻にできた基底細胞がんを摘出。北京で行われた映画『X-MEN:フューチャー&パスト』のプレミアでは、将来的な再発の可能性と日焼けを予防することの大切さを語った。

しかし、よく聞く話ではあるが、本当に日焼けをしてがんになることがあるのだろうか。国立がん研究センター皮膚腫瘍科の高橋 聡医師に聞いてみた。

「紫外線を浴びて日焼けすると、皮膚細胞のDNAが傷つきます。本来、細胞にはそれらを正常に修復する機能がありますが、長年の蓄積で傷の“修復ミス”のようなことが起こり突然変異することがあるんです。

その変異が、たまたまがんの遺伝子とかがんに関係する遺伝子だった場合は、どんどん増殖を始めて皮膚がんを引き起こします」

皮膚がんのリスクが高い人は大きく3タイプ。【長く紫外線を浴びてきた高齢者】、紫外線の影響を受けやすいとされる【日焼けして肌が赤くなるタイプの人】、そして先天性異常などの【特殊な病気を持つ一部の人】。

このほか日焼けオイルや日焼けサロンを頻繁に利用したり、日焼け止めなしで過度に肌を焼いたりする行為も危険因子となりうるという。

「大人になってできた黒、茶、赤色のほくろのようなものが、徐々に大きくなったり、ジュクジュクしたり、出血するなどの症状が出てきた場合は皮膚がんの可能性があります。

皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)は、初期は良性のほくろやシミと見分けがつきづらいのですが、形がいびつであったり、境界が不明瞭だったり、色ムラがあったりするので大きくなるようなら注意が必要です」

突然できた黒い“できもの”が6~7mmの大きさになったら皮膚科で受診することが望ましい。たとえこれより小さくとも、気になる色素斑があれば遠慮せずに病院を訪れてほしいと高橋医師は強調する。

「早期発見が大事なので、気になることがあれば皮膚科専門医に相談してください。また、今は肌に異常がなくとも、将来的な皮膚がんのリスクを減らすためにはとにかく予防することが大切です。

夏はどうしても日に焼けてしまうので、毎日塗れとは言いませんが、少なくとも海水浴やアウトドアに出かける際には、男性でも日焼け止めを塗りましょう」

小麦色の肌が“健康的”な男性の証だったのは過去の話。屋外で活動する機会が増えるこれからの季節に、日焼け止めはマストアイテムといえそうだ。

【がんへの備え】小切開生かす3D技術 前立腺がん編(4)「最先端手術」

前立腺がんの全摘手術を行う場合、開腹、腹腔鏡下、腹腔鏡下小切開、ロボット手術と、いくつも方法がある。東京医科歯科大学附属病院・泌尿器科では、最先端の腹腔鏡下小切開手術を標準にしている。どんな術式なのか、木原和徳教授に聞いた。

 従来の腹腔鏡下手術はおなかに小さな孔(あな)を数カ所開け、そこから内視鏡や器具を挿入して、モニター画面を見ながら手術をする。

 それを3D内視鏡にし、自由自在に動く多関節の鉗子(かんし)の付いたロボットアームを遠隔操作して腹腔鏡下手術をするのがロボット手術だ。とにかく手術しやすく、米国では前立腺がんの8割がロボット手術で全摘手術が行われている。

 しかし、木原教授らが開発し、多数の例に行ってきた腹腔鏡下小切開手術は、ロボット手術にはない利点を持っている。

 「腹腔鏡下小切開の場合、開ける孔は摘出する前立腺サイズの4センチ前後、1カ所だけです。

それに腹腔鏡下やロボット手術は炭酸ガスでおなかを膨らませてスペースを作って手術をしますが、腹腔鏡下小切開は炭酸ガスを使いません。高齢で心臓や呼吸機能などに合併症を持っている人でも負担が少なく、リスクが低いと考えられます」

 また、腸を包む腹膜の外だけを操作して、腹膜に傷をつけないため、術後、腸の癒着による腸閉塞(へいそく)を起こす心配がないのも腹腔鏡下小切開のメリットだ。

 同科では現在、さらに「ロボサージャン」という最先端技術を用いた腹腔鏡下小切開手術を行っている。執刀医全員が、ヘッドマウントディスプレイという装置を頭にかぶり3D画像を見ながら手術をする。術者自身をロボット化するイメージだ。

 「ヘッドマウントディスプレイには、目の前に画面があり、立体視、拡大視ができ、超音波画像などを映すこともでき、多画面で見たり、画面のサイズも変えることができます。

そのまま視線を下に向ければ、手元のようすも俯瞰(ふかん)できます。その画面を見ながら、手持ちロボット様先端器具を使って手術します」

 この最先端技術で腹腔鏡下小切開手術をすることで、侵襲が少ないだけでなく、安全性がさらに向上し、緻密な手術ができることから、尿失禁の原因になる括約筋のダメージを極力抑えたり、勃起神経温存の成功率も高めることが期待できる。

 次回は、前立腺を摘出しない部分治療を解説してもらう。

【がんへの備え】悪性度評価「グリーソン・スコア」 前立腺がん編(3)「治療の選択」

 前立腺のPSA検査(採血)でがんの可能性があり、組織を取る針生検でがんが確定した場合、治療法はどのような選択肢があるのか。東京医科歯科大学附属病院・泌尿器科の木原和徳教授に聞いた。

 ◇ 

 前立腺がんは、小さく前立腺内にとどまっている「限局がん」、前立腺の被膜を破っている「局所進行がん」、リンパ節や骨など他の場所に転移している「転移がん」に分けられる。

 「すでに転移のあるがんでは、ホルモン(内分泌)療法が唯一、有効な治療法になります。皮下注射や内服で行われることが多く、睾丸摘除も選択肢です。非転移がんでは適応となる治療法がたくさんあるので、リスク分類を参考にしながら治療法を選択します」

 リスク分類で、病期のT1~2は限局がん、T3は局所進行がんを意味する。PSA値は診断されたときの数値だ。

 「グリーソン・スコアは重要で、顕微鏡で見たがんの悪性度を数字で示したものです。針生検で取った多数のがん組織を悪性度が高くなるにつれ1~5で評価し、原則として最も悪性度の高い場所と、最も面積の広い場所の2カ所の数字を足したものがグリーソン・スコアです」

 大まかにいえば、低リスク群は「おとなしいがん」、高リスク群は「タチの悪いがん」、中リスク群はその中間になる。一般に低リスク群は、無治療でPSA検査などによる経過観察が推奨され、中・高リスク群は手術による前立腺全摘や放射線治療が推奨される。

 手術には開腹、腹腔鏡下、腹腔鏡下小切開、ロボット手術などの方法がある。放射線治療では、体の外から照射する外照射、前立腺内に放射性物質を埋め込む小線源療法、粒子線治療(重粒子線や陽子線)がある。凍結療法や超音波を利用したHIFU(ハイフ)という治療法もある。

 「世界の基本的な考え方では、積極的な治療が必須となるのは、グリーソン・スコアが8以上の非高齢の高リスク群です」

 高リスク群の治療の選択肢には、前立腺全摘やホルモン療法と放射線治療の併用が推奨されている。また、ホルモン療法は状況により、すべてのリスク群で使われることがある。

 「5年生存率でいえば、前立腺がんの場合、転移がなければ9割以上は亡くなることはありません。治療法はそれぞれの副作用や合併症と、年齢や体の状態などを考慮しながら最終的に患者さんに選択してもらいます」 

【がんへの備え】MRI画像併用で精度上げる★前立腺がん編(2)「標的生検」

前立腺がんの検査では、採血によるPSA検査と直腸診を行う。疑いがあれば前立腺に針を刺して組織を取る針生検で確定診断をする。

東京医科歯科大学附属病院・泌尿器科では、MRIと超音波(エコー)の画像を融合した「ターゲット(標的)生検」を実施している。その最先端の生検法を木原和徳教授に説明してもらった。

 ◇ 

 針生検は、入院して局所麻酔で行う。肛門から棒状の超音波発振器を挿入し、前立腺の断層画像を見ながら針を刺して10~20カ所前後の組織を採取する。

針を刺すルートは、肛門と陰のうの間から刺す「経会陰生検」と、直腸面から刺す「経直腸生検」の2種類があるが、同科では現在、経会陰生検を行っている。

 「PSA検査でがんの可能性が増す4~10ng/mlのグレーゾーンの人に生検をして、実際、がんが見つかる確率は約30%。ですから、当院では疑いがあればすぐ針生検ではなく、可能な限りMRI画像を撮ります。

世界的にも不必要な針生検を防ぐことが課題になっているので、MRIでがんが疑われる場合に針生検を推奨し、なければ定期的にPSA測定やMRI検査でフォローアップしていきます」

 MRI画像があると、針生検に非常に役立つ。MRIとエコーの画像を融合させて、がんが疑われる部分1カ所につき集中して4本生検する。これがターゲット生検だ。

それ以外の正常に見える場所には10~18本の生検。すべて経会陰生検のみで採取する。従来のエコー画像だけで見当をつけて行う生検よりも、精度の高い診断ができるという。

 また、ターゲット生検だけでも豊富な情報が得られるという。

 「経会陰式で採取するのは、直腸から針を刺す生検では細菌による感染のリスクがあるからです。近年、世界的に問題となっていて、激しい前立腺炎から、まれに敗血症で命に関わることもあります。経会陰式だけで正確な診断が得られるのもターゲット生検のメリットです」

 針生検で分かるのは、がんの有無、悪性度、大きさ、前立腺内での広がり。これらの情報に検査時のPSA値や直腸診の所見を加えて、リスク分類を判定して、治療法を選ぶ指標にする。

 「前立腺がんは通常、進行が遅いので、発見された時点で急いで治療法を決める必要はありません。早期がんで低リスク群であれば、治療をせずにPSA値を見ながら経過観察をする待機療法も選択肢のひとつです」

 次回は、リスク分類と治療法を説明してもらう。

がんでも長生きするには「余命宣告に惑わされない」

がん患者を50年以上診て、著書『がん「余命宣告」でも諦めない』で複数の長期生存者を紹介している帯津良一医師は、生き続けるための大切な要素の一つを“朗らかさ”だと指摘する。

「どなたも物事にあまり動じず、長く悩まないという共通項があります。気持ちで負けず、その一方で『いつ死んでもいいぞ』と一日一日を攻め抜く姿勢。大事なことです」

 もう一つ、帯津医師は「余命宣告に惑わされないことも重要な秘訣」と訴える。たいていの医師は、細かく調べず経験から割り出しているに過ぎない。だから患者が数字にとらわれすぎないことが、免疫力低下を防ぐポイントになるという。

 その二つを実践しているのが東京都のオオタケンジさん(仮名・82歳)だ。9年前に結腸がんの末期と告げられた。肝臓や肺などに転移しながらも在宅で治療を続け、免疫力を高める代替医療も少しやっている。この9年間、ほぼまったく変わらない日常を淡々と送る。

 例えば一日をこんなふうに過ごす。

 午前8時に起床。NHKの朝ドラを見ながらパンやチーズの朝食をとるほか、妻の特製ニンジンジュースを飲む。正午にはヨーグルトに果物、麺類などでランチタイム。午後はテレビを見たり昼寝をしたり。合間に家から徒歩20分の図書館に行き、夕方は「50年来の日課」という近所のサウナへ。

 オオタさんは若いころから多趣味だったが、肝転移した75歳のときに初めて携帯を購入。メールのやりとりをマスターして、定期検査の結果を3人の子どもたちに「変化なし」などと送信できるようになった。

77歳でカルチャーセンターの太極拳や哲学を受講し、家族を驚かせた。好きな芝居にもまめに通い、今も美術館に足を運ぶ。

 昨夏、図書館帰りに熱中症で救急車で運ばれ、11月以降、抗がん剤はやめた。今年5月、右肺にがんが増え続けているにもかかわらず、腫瘍マーカーは下がっていた。主治医は「本人の免疫機能ががんを抑え込んでいるとしか思えない」と首をひねる。

 こうした長期生存者がなぜ現れるのか。

 癌研病院(当時)などで緩和ケア医として15年以上働いてきた行田泰明さん(53)は以前から「がんになっても長生きはできる」と唱えてきた。

「がん細胞には顔つきがあって、進行の速さや部位によって違う。まずは早期に正しく診断されることが大事なんです」

 そんな行田さんに今年2月、がんが見つかった。部位は消化器で、手術をした。合併症などを経て近々退院する。

「がんとわかって決めたことは三つ。私が看取ってきた千人以上の方々から学んだもので、自暴自棄にならない、八つ当たりしない、最後まで闘う。なのに自分は手術後は落ち込んで、笑えなかった。でも『頑張って』という言葉は、とてもうれしく感じました」

 行田さんには、当事者になって初めて気づいたことがある。“わらをもすがる”切実な思いが生きる力になっている。

「病も生の“一部”なんですよね」

「7つのポイント」で選ぶ抗がん剤治療のいい病院

手術や放射線治療と同じように、抗がん剤治療も患者が医療機関を選ぶ時代になってきた。

 ここでは、いい抗がん剤治療を受けられる病院選びのポイントを七つ示した。「(1)外来で抗がん剤治療が受けられる」「(2)がん薬物療法専門医(中略)チームワークがとれている」

「(3)患者の希望を聞き、適切な方法を提案してくれる」、とくに再発がんや進行がんでは重視したい項目だ。「(4)治療に腫瘍内科医がかかわる」ことも大事なポイントだ。腫

瘍内科医とはその名のとおり、がん治療に詳しい内科医だ。海外では抗がん剤治療のほか、全身管理や治療方針を決定するなど、がん治療のキーパーソンとなっている。また、その患者に合ったがん医療をコーディネートする役割も担う。

 そして、この腫瘍内科医の役割を主に担っているのが、日本臨床腫瘍学会が認定する「がん薬物療法専門医」だ。近畿大学病院腫瘍内科教授の中川和彦医師は言う。

「腫瘍内科ができたのは最近のことで、以前はその臓器を担当する外科医が抗がん剤治療も担当していました。

いまもその流れは続きますが、近年は抗がん剤治療の進歩などもあり、専門性が増したことから、腫瘍内科に任せる医療機関も出てきています」

 現在、抗がん剤治療を腫瘍内科医が担当する場合、「主治医としてかかわる」パターンと、「主治医はがんのある臓器を専門にする外科医や内科医で、腫瘍内科医が一緒にかかわる」パターンがある。

 理想は腫瘍内科医が主治医となり、必要に応じて臓器専門の外科医や内科医が一緒に治療をすることだが、腫瘍内科医の数は限られている。それがむずかしい場合でも、後者のように腫瘍内科医が抗がん剤治療にかかわっていたほうがよい。

「抗がん剤治療に詳しい医師がいる医療機関とそうでないところとでは、抗がん剤治療の質が大きく違ってきます。

抗がん剤治療は1回の通院で終わるものではなく、長期間付き合う必要のある医療です。そういうことも考えて、ご自身や家族でしっかり信頼できる医療機関を選んでください」(中川医師)

 手術と抗がん剤治療を別の医療機関で受けることは、めずらしいことではない。

遠方で手術を受けた場合は、自分の住む地域に条件を満たした医療機関があるか、手術を受けた施設の腫瘍内科医やソーシャルワーカーに聞いてみるのも手だ。別の医療機関にいる腫瘍内科医に、セカンドオピニオンをとってもよいだろう。

 では、外科医の考えはどうなのか。消化器外科医から腫瘍内科医になった県立広島病院(広島市)臨床腫瘍科主任部長の篠崎勝則医師は、外科医から腫瘍内科医への橋渡し的な役割も果たす。

自身はがん薬物療法専門医の資格を持つが、資格がないまま抗がん剤治療を実施する外科医を多く知る。

「実は“専門の臓器については手術も、抗がん剤治療も詳しくありたい”と思って、抗がん剤治療を学んでいる外科医もいます。

しかし、抗がん剤治療の質を上げたり、充実したチーム医療の体制を整えたりするための時間が、外科医にはありません。結果的に、そこまで気配りができないのが現状です」(篠崎医師)

 このほかには、治療が長期間にわたることを考えると、「(5)自宅との距離が近いなど、苦痛なく通院できる」「(6)スタッフが寄り添ってくれる」医療機関を選ぶことも大切だ。

「(7)治験をやっている」病院も、いい抗がん剤治療を受けるための参考になる。治療とは臨床試験のことで、新薬の有効性や副作用の状況を試験し、保険適用にするかを検討するためのものだ。

自分のがんに該当する治験があり、条件が当てはまっていたら、その治験に参加することができる。

 治験を実施するためには、施設環境やスタッフ数など、いくつかの基準を満たさなければならない。つまり、治験を受ける・受けないは別としても、抗がん剤治療を受ける施設としては、合格点をもらっていると考えていいだろう。

がんを患った医師が語る「いい病院」の条件

自ら胃がんと前立腺がんに侵された経験を持つ東京医療保健大学副学長、前NTT東日本関東病院副院長・外科部長の小西敏郎医師(66歳)に「いい病院」「いい医師」の条件を聞いた。

*  *  *

 医師の中には「不養生」を自慢する人もいますが、僕はNTTの社員でしたから、がん検診は欠かさず受けていました、60歳のときに受けた診察の後、1週間後に病理の医師から連絡が来ました。そ

のとき、「これはがんだ」とピンときましたね。と同時に、もし進行がんだったら、広範囲にがんがあったら……と、頭が真っ白になりました。

 担当の消化器内科医から病状の説明を受けると、直径4ミリほどの早期胃がん。内視鏡治療を受けました。治療を担当することになったのは、医師になって4年目のレジデント(研修医)。

「ええ!?」と思いましたが、聞くと当院でいちばん内視鏡治療の実績があるとのこと。僕は外科医の一人として、医師の年齢より腕や実績、それに症例数を信用する。だから全面的にその医師にお任せしました。

小さな早期の胃がんを見つけてくれたのも、彼でしたから。結果、治療はうまくいき、回復も順調。今まで再発もありません。

 前立腺がんが見つかったのは、その2年後です。こちらも検診で見つかりました。開腹手術を受けました。早期だったこともあり、がんは完全に取りきれた、と。再発は心配していません。

 どちらも自分が勤めていた病院で治療を受けましたが、主治医には、「患者さんにやっているのと同じ治療をしてほしい」とお願いしました。

僕は消化器外科医としてこれまで2500例以上の手術で執刀してきましたが、必ず「僕や家族だったら、この治療を受ける」というやり方で治療してきた。だから、それを主治医にもお願いしたのです。

 病気になって気づいたのは、医師にとっての「たいしたことはない」は、患者にとっては「たいしたこと」だということです。

 実は、前立腺がん手術を受けた翌日、熱が37.4度出ました。38〜39度の熱なら合併症の疑いがあるので、気をつけますが、37度程度なら順調に回復しても出るもの。

だから、それまで患者さんには「たいした熱ではないから、我慢して」と突っぱねていました。

 しかし、自分が37.4度になってみると微熱でもつらい。それがよくわかりました。我慢をさせてしまった患者さんには本当に申し訳なかったと思っています。

 僕がいい病院の条件に挙げたいのは、医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフの質がいいか、チーム医療が成り立っているか、です。

先ほどの、術後に熱が出た件でも、ベッドサイドにいる看護師が患者のつらさをくみ取ってそれを担当医に伝えなければ、適切な対応もできません。

 チーム医療の質は外来でもわかります。「スタッフ同士のコミュニケーションが取れていない」とか、「看護師が医師に遠慮している」とか、そういう雰囲気があったらダメ。

いくら名医がいる病院でも、チーム医療は成り立たない。別の病院を受診することをお勧めします。

 もう一つ大事なのは、目の前の医師を信じること。がんの種類や進行度によっては、治療法が一つしかない場合もあれば、複数の中から選択できる場合もある。まさに後者の代表的なものが前立腺がんでしょう。

僕は医師として知識もあったし、専門医から意見を聞く機会もあった、しかし、やはり最終的には主治医を信頼し、開腹手術を受けることにしました。

 信頼できる医師に出会うのは簡単ではないかもしれません。しかし、かかりつけの医師に相談したり、セカンドオピニオンを取ったりして、自分で治療について理解して判断するための行動を起こすことが大事なのです。

闘病経験者がまとめた「がんになってからの心得10カ条」

がんを宣告され、しかも末期と言われ、絶望しない人はいないはずだ。しかし、そこから長く命をつないでいく人たちが、確かにいる。

 肺腺がんを患う青木晴海さん(58)だ。08年、咳が続くので総合病院を受診すると、肺からリンパ節への転移がわかった。専門病院で手術したが、がん細胞は大動脈と肺動脈に浸潤していて取れず、そのまま胸を閉じた。

 青木さんは情報学が専門の大学講師で、「アサーティブな考え方」を学生たちに教えてきた。それは自分の気持ちを大事にし、相手との関係をより良くするため、率直に「ことば」で伝えることだという。

「自分の研究テーマを、病床で実践した形になりました」(青木さん)

 手術の影響で、青木さんは声を出せなくなった。切開した場所が声帯の動きをつかさどる反回神経に近く、麻痺が起きたのだ。

「医師に『あきらめてください』と言われたけど、私にとって声がでないのは、がんになったことより重大事でした」

 入院しているにもかかわらず、声帯専門科がある別の病院を探し出し、「リハビリに通いたい」と、かすれ声で主治医に訴えた。了承を得てリハビリを続けた5カ月後、声を取り戻すことができた。

 放射線と抗がん剤治療を受けながら、09年2月、大学に復帰。その1年後、肝臓転移が見つかった。働きながら抗がん剤治療に通って5カ月後、肝臓のがんは縮小していた。

 その時、主治医から分子標的薬の治療を受けないか、と強くすすめられた。

「このまま穏やかな維持療法で仕事を続けていきたいと思っていたので戸惑いました」(青木さん)

 もはや完治は難しい。それなら、がん細胞の活動を抑えられるよう、全身を良い状態に保つことこそ大切ではないか。未知の薬を体内に入れればバランスを崩しかねない――どうしても折り合えず、11年3月、青木さんは転院した。

 新しい主治医は、青木さんと話し合いながら、抗がん剤を投与するペースを決め、昨年6月以降は治療を休止した。今は定期検査を受けながら働いている。幸いにも、がんは大きくなっていない。

「患者の願いは一日も長く生きること。その病院や主治医が、自分を長く生かしてくれるのかは、感覚でわかるものだと思います」

 青木さんは前の病院で2度カルテ開示を求め、自分の治療経過をつかんでいる。医師に任せっぱなしにしたくないからだ。下記の10カ条は、自身の闘病体験をまとめた『生きのびるためのがん患者術』(岩波書店)から抜粋した“患者の心得”だ。青木さんが言う。

「治療の主役は私たち、つまり患者なんです」

がんになってからの心得10カ条
・ 告知をしっかり受け止め、「自立心」を持つ
・ 自分の気持ちを言葉で医療スタッフに伝える
・ 検査や治療内容を日付順に記録、カルテや画像も入手する
・ 複数の医師に相談する
・ 抗がん剤の効果とリスクを確認する
・ 心置きなく頼める友人に支えてもらう
・ 重要な決定の時は友人や家族を「記録係」に
・ がんばる自分にご褒美をする
・ 病気のこと以外にも関心を持つ
・ がんの話題は情報源に気を付ける
※青木晴海さんの著書『生きのびるためのがん患者術』をもとに作成

【がんへの備え】骨折に気配り コルセットや杖を使用

前回、骨転移の対応には多くの診療科が関わって医療チームを作り、情報の共有が大切であることを順天堂大学病院・腫瘍整形外科医の高木辰哉准教授に説明してもらった。引き続き、治療とリハビリのポイントを聞いた。

 ◇ 

 骨転移は身体の中心部に近い骨に発生しやすく、特に脊椎(背骨)や骨盤、大腿(だいたい)骨は体重を支える部位なので痛みや骨折が起こりやすい。

 「治療目標は、第一に疼痛のコントロールによる日常生活動作(ADL)の維持と骨折や脊髄損傷を防ぐことです。それから退院後の患者さんのニーズやリスク管理を考えた装具装着やリハビリを行います」

 痛みの緩和には、鎮痛薬や麻薬の投与と同時に放射線治療が行われることが多い。放射線治療はがんの進行も抑えるので、骨折や脊髄圧迫による麻痺の予防にもなる。

 「薬による進行の抑制には、ビスホスホネートや抗RANKL抗体の投与(注射)を行います。ただし、この薬の副作用に顎骨の壊死(えし)があるので、虫歯などがないか事前に歯科医による口腔チェックが大切になります」

 薬による治療や放射線治療でも改善が難しい場合には、手術で骨を固定するなどの外科治療も検討される。全身の状態や骨転移の数、進行度などを考慮して治療法が選択される。

 「痛みや骨折の恐れがあれば、ADLに必要なリハビリもできません。骨転移は通常多発性で、脊椎にも四肢にも転移していることが多い。

どの部位が最も危険なのか、どんな動作や荷重に気をつけたらいいのかバランスを意識した判断が必要です。可能なら整形外科医が評価を行い、リハビリ医や理学療法士と相談しながらリハビリを進めていくのが理想です」

 治療の状況に合わせながら、ADLが楽にできるようにコルセットや杖を使用する。荷重制限や危険動作の回避など、実際の生活における動きのポイントを理学療法士から指導を受けながら、リハビリを通して習得していく。

 「車いすの移乗や歩行器などを使った歩行訓練をするにしても、その患者さんが実際に住んでいる家の構造や、どういった生活を送りたいかのニーズによってもリハビリ内容は変化します。

骨転移を完全に治すことはできませんが、退院後のQOL(生活の質)を高めるためにも多くの診療科が連携した医療チームで対応することが大切なのです」

がん予防に「和食信仰」の落とし穴 食生活気にする人ほど陥りやすい?

がんになってもいたずらに恐れる必要はない時代が来ているのはわかった。それでも罹患しないに越したことはない。予防医学の最前線はどうなっているのだろう。「○○が、がん予防にいい」と聞けば、飛びつきたくなる気持ちもわかる。だが、そこには誤解も多い。正しい知識こそががんを防ぐというのは、国立がん研究センター社会と健康研究センター・センター長の津金昌一郎氏。

「がんは老化現象のひとつであり、長生きすればするほど発生しやすくなる、高齢者にとってはありふれた病気ともいえるのです。それでも、がんになる人とならない人がいるのは遺伝的要因より環境的な要因、つまり生活習慣の違いが大きい」

 1990年から現在まで、国立がん研究センターが中心となって、食生活や生活習慣、健康状態との関連を追跡調査した「多目的コホート研究」が行われてきた。さらにその他のデータも組み合わせて導き出されたのが、日本人ならではのがん予防法だ。

「がん予防として科学的根拠(エビデンス)をもって認められているのは、『非喫煙、節酒、塩蔵品を控えるなど食生活の見直し、活発な身体活動、適正なBMI』という五つの生活習慣です。仮に五つすべてを実践できなくても、一つ実践するごとに、男性では14%、女性では9%ずつ、がんの発生リスクが低下することがわかっています」(津金氏)
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 生活習慣の中でもっとも注意すべきなのはたばこ。40~69歳の男女9万人を対象に8年間追跡したコホート調査では、喫煙者は非喫煙者よりも肺がんリスクが4~5倍、何らかのがんにかかるリスクは1.5~1.6倍高いという結果が出た。一方で、禁煙した人を対象に、たばこをやめてからの年数で肺がんの発生率を調べてみたところ、やめてから時間が経つほどリスクは低くなり、20年以上になると、非喫煙者とほぼ同等になることがわかった。

「長年吸っているからいまさらやめてもムダ、ということはありません。一般的に、喫煙者は非喫煙者より寿命が約10年短いといわれていますが、禁煙すれば、寿命も延び、発がんリスクも下がる。喫煙者はなるべく早く禁煙に取り組むことです」(同)

 また、周囲の人々の発がんリスクも確実に高めてしまう「受動喫煙」も問題だ。日本では、受動喫煙と関連する病気の死亡者数が年約1万5千人。だが、屋内禁煙の法制化も含め、先進国の中で対策がかなり遅れていることを津金氏は懸念する。

「喫煙していない女性約3万人を13年間追跡したわれわれのコホート調査では、非喫煙者に多い肺腺がんを始め、すべてのタイプの肺がんのリスクは、夫が非喫煙者の場合と比較すると、夫が喫煙者の妻の発がんリスクは約1.3倍でした。喫煙者が多く集まる居酒屋や喫茶店などにいる人々、そこで働く人々も、リスクは高くなります」

 飲酒の影響はどうか。

 適量の飲酒は、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の予防効果が期待できる半面、食道がんや大腸がん、女性では乳がんのリスクを高めることは確かである。

 がん発生との関連が特に深いのは、お酒の種類ではなく、飲酒の「量」だ。アルコールを分解する過程で、アセトアルデヒドという物質が生成されるが、このアセトアルデヒドには発がん性があることが確認されている。欧米人に比べて、その処理能力が低い日本人は、飲酒によるダメージを受けやすいため、過剰飲酒をするとDNAの修復がうまくいかなくなり、がんになりやすいという説もある。

 とはいえ、日本人の喫煙率(量)や飲酒率(量)は減っており、健康志向の高まりから、運動習慣やBMI値などへの意識も変わってきた。昭和のころに比べ、がん予防法にのっとった生活習慣ができている人も増えている。だが、日本人の食生活には意外な落とし穴がある。

「イソフラボン含有量が多い豆腐や納豆などの大豆食品、食物繊維の多い野菜や根菜の煮物などは、がん予防効果が期待できる和食。食生活を気にしている人ほどそうした和食信仰に陥りがちですが、実は伝統的な日本食には塩分過多という欠点がある。たとえばファミレスでみそ汁や塩鮭、漬物などの朝定食を食べると摂取する塩分は約10グラム。これをハンバーグライスにすると3グラム程度になります」(津金氏)

 過剰な塩分摂取は胃がんや脳卒中のリスクを高めることが明らかになっている。ちなみにWHO(世界保健機関)が推奨する塩分量は1日5グラム未満だが、和食が根づいている日本人には難しい数字。減塩と食物繊維を意識して、バランスのいい食事を心がけることが大切だ。

 その中には、肉食も含まれる。

「食の欧米化、特に赤肉(牛肉、豚肉、羊肉)が大腸がん増加の要因と考える人もいますが、多くの日本人は欧米人ほど赤肉を食べていない。むしろ昔は少な過ぎて脳出血や感染症などで命を失っていたと考えられます。われわれのコホート研究からは、大腸がんや心筋梗塞のリスクを大きく上げずに、脳卒中のリスクを下げる飽和脂肪酸の摂取量の目安は、1日20グラム。これはコップ1杯の牛乳と2日に1回150グラム程度の赤肉で取れる量です。野菜や魚だけでなく、肉も食べる。理想の食事は、欧米化された日本食です」(同)

 また、一時期大々的にメディアに取り上げられた「コーヒーの抗がん作用」。津金氏は1日3~4杯のコーヒー摂取はベネフィット(利益)ありと見る。

「肝臓がんや子宮体がんのリスクを下げるというエビデンスはかなりそろってきました。インスタントコーヒーや缶コーヒーでも同様です。ただ、クリームや砂糖の量は控えめに」(同)

がんの専門家の予防策 「休肝日はなし、つまみは発酵食品」

誰もが予防したいがん。とはいえ、専門的な知識がないとどうにもならないのも事実。では、がんの専門家はどういう予防策をとっているのだろうか?

 『がんの嫌がる食事』(創英社/三省堂書店)などの著書がある日本薬科大学学長の丁宗鐵(てい・むねてつ)さんは、こんな予防策を実践している。

「ビタミンと発酵パワーが同時に摂れる漬物はがん予防の必須食。歯が悪くてもジュースにすれば摂取しやすいので、水で洗って塩分を1/3にした漬物に、100%果汁ジュースを合わせて飲みます。

ジュースを豆乳ヨーグルトにすると、ビシソワーズスープのような味わいになりますよ」

 また、お酒は飲み続けているという。

「酒も決まった時間に決まった量を飲み、消化吸収のリズムを一定にすることが大切なので、若い頃からお酒が好きな私は、今も毎晩嗜んでいます。

寝る1時間くらい前にブランデー、焼酎、泡盛などの蒸留酒を選びグラス1杯。つまみはクリームチーズの粕漬けなどの発酵食品ですね」

日本人は4割 「酒で顔が真っ赤になる人」は癌になりやすい

お酒を飲むと、顔が真っ赤になる人がいる。こういう人は、たとえ仕事の付き合いで酒を酌み交わした方がいい場であっても、極力避けるべきだ。重大病のリスクが高くなる。杏雲堂病院肝臓内科・小尾俊太郎科長に聞いた。

 体内に入ったアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解され、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に分解される。

「ところが、これらの酵素の活性度(働き)は遺伝で決まっていて、日本人は、酵素の活性度が低い人が多いのです」

 すると、アルコールやアセトアルデヒドの分解が遅く、体内に長くとどまる。少量のアルコールで顔が赤くなったり、悪酔いしたり、二日酔いがひどくなったりと、いわゆる“酒が弱い”のは、そのためだ。

■口腔、咽頭、食道が危ない

「問題は、アルコールとアセトアルデヒドは発がん性の物質なので、がんのリスクを高めること。ADHとALDHの活性度が低い人が飲酒習慣を持つと、口腔、咽頭、食道がんのリスクが高くなることが研究で明らかになっています」

 ところで、同じ酒が弱いケースでも、「ほんの少し飲んだだけで気分が悪くなる下戸」と、「飲めるけど弱い人」がいる。

「アセトアルデヒドを分解する酵素ALDHは6種類あり、お酒を飲んだ時に主に働くのはALDH2です。ALDH2の遺伝子には、活性型遺伝子『N型』と非活性型遺伝子『D型』があります。

人間は両親からひとつずつ遺伝子を受け継ぐので、N型とD型との組み合わせでアルコールの分解能力が変わります」

 N型+N型なら、お酒を普通に飲める。N型+D型なら、飲めるけど弱い。D型+D型なら、下戸だ。

「がんのリスクと関連付けて考えると、要注意なのはN型+D型の人。遺伝子のひとつが非活性型遺伝子であるD型なので、アルコールの分解能力が低い。

それなのに、最初から下戸であることを自覚しているD型+D型の人と違って、アルコールを摂取する機会を持ちやすい」

■今は平気な人が、将来NGのケースも

 N型+D型の中には、最初の頃は飲むとすぐに顔が真っ赤になったり、悪酔いしたりしていたのが、年月とともに次第に顔が赤くなりにくくなったり、飲める量が増えてきたりして、〈自分は飲めるタイプだ〉と勘違いしている人もいる。あなたはどうだろう?

 ALDH2の活性を調べる簡便な検査には、アルコールパッチテストがある。アルコールを皮膚に塗り、赤くなるかどうかを見る方法だ。しかし、わざわざ受けにいかなくても、自分がどのタイプかを知る方法がある。

「『飲酒開始から1~2年間』と『現在』のどちらかで、グラス1杯のビール程度で顔が赤くなるかどうか?

 現在は顔が赤くならなくても、飲酒開始から1~2年間で赤くなっていたら、アルコールやアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が低い(N型+D型、あるいはD型+D型)と考えた方がいいでしょう」

“N型+D型とD型+D型”の人は、日本人の4割を占めるという。かなりの数だ。自分もその中に入っているかもしれない。

がんの手術後は「リンパ浮腫」に注意しよう

がんの手術後に起こりやすい「リンパ浮腫」は、一度発症すると完治しにくく、継続した治療が必要となる。国立がん研究センター中央病院 看護師の八多川淳子(はたがわ・じゅんこ)さんにリンパ浮腫について詳しく聞いた。

* * *

「リンパ管」に何らかの障害が起こり、リンパ液の流れが滞って、腕や脚などがむくんだ状態を「リンパ浮腫」といいます。

リンパ管は、血管と同じように私たちの体内に張り巡らされており、その中をリンパ液が、リンパ管の各所にあるリンパ節を経由しながら流れています。

リンパ液には、たんぱくや脂肪、水分のほか、ウイルスや細菌を攻撃するリンパ球なども含まれています。

リンパ管は、血管と同じように私たちの体内に張り巡らされており、その中をリンパ液が、リンパ管の各所にあるリンパ節を経由しながら流れています。

リンパ液には、たんぱくや脂肪、水分のほか、ウイルスや細菌を攻撃するリンパ球なども含まれています。

リンパ管やリンパ節が手術などによって損なわれると、リンパ節の脇にリンパ管の脇道ができて、代替して働くようになります。

しかし、その脇道は細く働きが弱いため、負担が大きくなり過ぎると、流れが滞ってリンパ液が皮膚の下にたまり、むくみが起こるようになるのです。

進行すると、腕の場合は「力を入れにくい」「重いものを持つのがつらい」「文字を書きにくい」など、脚の場合は「歩きにくい」「膝を曲げにくい」「階段の上り下りがつらい」など、日常生活に支障が出ることがあります。

起こりやすい部位

リンパ浮腫のほとんどが、がんの手術や放射線治療を受けたリンパ節の近くに起こります。

例えば、[1]乳がんの手術でわきの下のリンパ節を切除した場合には手術した側の腕や背中に、[2]子宮がん、卵巣がん、前立腺がん(※)などの手術で骨盤内のリンパ節を切除した場合には脚などに、起こりやすくなります。

同じような手術を受けても、リンパ浮腫が起こるかどうかや、その程度は人によって異なります。これは、リンパ管の脇道の発達の程度やリンパ液の量、生活習慣によって腕や脚にかかる負担などに個人差があるためと考えられます。

また、発症する時期にも個人差があります。最も多いのは治療後2〜3年たってから発症するケースですが、治療直後に発症したり、5〜10年後に発症するケースもあります。

リンパ節を切除したりした場合には、リンパ浮腫が起こる可能性は常にあることを知っておくことが大切です。

※ リンパ浮腫の患者さんの多くが女性だが、前立腺がん、皮膚がん、整形外科系のがんなどで、リンパ節を切除した場合は、男性にも起こることがある。

■『NHKきょうの健康』2013年11月号より

【がんへの備え】誤嚥性肺炎を防ぐために

食道がんはリンパ節に転移しやすく、手術でのどのリンパ節を取ることが多い。そのため、物を飲み込む嚥下(えんげ)機能に障害が起こりやすい。亀田総合病院・リハビリテーション科の宮越浩一部長に、術後の嚥下訓練を聞いた 食道がん手術で起こりやすいのは喉頭の障害。食べ物は食道へ、空気は気管へ導く交通整理をしている部分になる。

 「食道を切除する再建手術では首、胸、腹部を切開し、いったん肺を潰すので呼吸機能が著しく低下します。その、せきが上手にできない状態に嚥下障害が加わると、食べ物が気管に入っても吐き出せない。嚥下リハビリの目的は、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を防ぐことにあります」

 手術で喉頭のすぐ横に広がるリンパ節を取ると、炎症や癒着から、のどで交通整理している喉頭蓋(がい)というフタが動くスピードや可動域が低下する。さらに手術でリンパ節の近くを走る反回神経を触ることが嚥下障害の原因になる。

 「反回神経は、物を飲み込む時には閉じている声帯を動かしている神経で、手術で触ることで一時的にマヒを起こす。喉頭蓋と声帯という2つのバリアがうまく働かなくなるために誤嚥をしやすくなるのです」

 まず訓練の前に口腔ケアが大切になる。嚥下訓練には、いくつも方法があり、患者の状態に合わせて行われる。『頭部挙上訓練』は、仰向けに寝て肩を床につけたまま頭を足の指が見えるまで上げる動作を繰り返す。

首の筋肉を増強し、再建した食道の入口部の開大を改善する目的で行われる。

 「反回神経マヒがあると声枯れが現れます。声門の閉鎖が不十分の場合には、息を「ん」とこらえて唾液を飲み込み、開放と共に強く息を吐く『息こらえ嚥下』や、両手で壁などを押しながら強く発声する『プッシングエクササイズ』などの声門の閉鎖を促進させる訓練をします」

 『アイスマッサージ』という訓練もある。冷水に濡らした綿棒で舌やのどを刺激して嚥下を誘発する。食事前のウオーミングアップにも用いられている。

 「術後、2週間ぐらいからとろみをつけた食事ができる人が多くなりますが、早まらないことが大事です。適切な時期に食事を再開する見極めが重要で、喉頭内視鏡できちんと飲み込みができているかを確認してから食事を始めます。

自覚症状のない膵臓(すいぞう)がん。症状や糖尿病との関係は?


膵臓がんは発生率、死亡率とも高い方ではありませんが、それでも年間およそ28,000人の方が膵臓がんで亡くなっているという統計データがあります。
ここでは、膵臓がんとはどのような病気なのかについて、簡単に解説してみます。

◆膵臓がんはどんな病気?

膵臓とは胃の裏側にある臓器で、膵臓から出る管(膵管)は、肝臓や胆のうから出て来る管と繋がっています。食事をするとその栄養分は分解され、たんぱく質・脂肪や炭水化物などから糖分が生成されます。

糖分は血液中を流れ全身の臓器を動かすエネルギー源となり、血液中を流れる糖分を血糖と呼びますが、人の体の中で唯一、この血糖を下げる働きを持つ“インスリン”というホルモンは、膵臓からしか分泌されません。膵臓には身体の状態を保つとても重要な役割があるのです。

膵臓がんはもっとも自覚症状が現れにくいがんの1つで、さらには周りの臓器への転移(がん細胞が他の臓器へ飛び、そこで増殖すること)を起こしやすいという特徴もあります。つまり症状が出た時には、すでに治療法が限られてしまうことが多いがんでもあるのです。
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◆膵臓がんになりやすい人は?

膵臓がんになりやすい因子としては、糖尿病である、肥満である、慢性的に膵炎(膵臓の炎症)を起こしている、喫煙歴がある、などです。

しかしそれ以外の因子、例えば遺伝的なもの、食生活、生活習慣などいくつか考えられるものもありますが、これらについては、まだよく分かっていません。

実際の患者さんの統計データからは、発生率は高齢になるほど高くなり、死亡率は男性の方が女性より高い(およそ1.7倍)ことが分かっていますが、その要因 については、まだ研究段階にあります。
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◆膵臓がんの症状

膵臓がんは、自覚症状が最も現れにくいがんの1つです。実際に病院を受診した人の症状としては、胃のあたりや背中の重苦しさ、食欲がない(減った)、何となくおなかの調子が悪いなど、とても漠然としたものが多いようです。

これらの症状は膵臓がん以外でも起こりますし、これだけで膵臓がんを疑うことは非常に難しいといえます。

他にも膵臓がんと強い関連を持つ症状として、黄疸があります。黄疸は身体全体や白目が黄色くみえる症状で、黄疸が出ると、身体全体の痒みが出たり、尿の色が濃くなることがあります。

しかしこれも膵臓がんに限定されたものではなく、例えば肝臓がんや胆のうがんでも、黄疸が出ることがあります。

◆膵臓がんの調べ方

膵臓がんであることを調べるためには、問診や血液検査の他、腹部超音波検査(エコー)、腹部のCTやMRIといった画像検査が必要になります。

また超音波 装置のついた内視鏡を胃へ挿入し、胃の中から超音波を当てることで膵臓を詳しく見る「超音波内視鏡検査」というものもありますが、これは装置がある病院でしか検査ができません。

他には、内視鏡を胃から十二指腸まで入れて、そこに細いチューブ(カテーテル)を入れて膵臓まで送り込み、そこから造影剤を入れてX線撮影を行う「内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)」という検査もあります。

比較的患者さんの負担が少ない「MRI胆管膵管造影」という検査も広く行われるようになってきました。
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◆膵臓がんの治療方法

膵臓がんの治療には、手術療法、化学療法、放射線治療などがあります。
比較的早いうちに発見され、がんが膵臓の中だけにとどまっている場合は、手術療法でがん細胞を切除するのが一般的です。

進行してくると、手術療法と化学療法を組み合わせて行ったり、さらに放射線療法を組み合わせて行うこともあります。がんが広い範囲まで拡がっている場合は、化学療法のみを行うこともあります。

膵臓がんは早期発見が難しく、見つかった時にはすでにかなり進行していることもあります。

【がんへの備え】ハフィングや体位ドレナージ リハビリ編(12)「排タン訓練」

食道がんの再建手術は、首、胸(脇下)、腹部の3カ所を切開し、片肺を潰して食道を取り出すので術後の呼吸器合併症が起こりやすい。呼吸リハビリでは、前回取り上げた呼吸訓練と同時に、排タン訓練も大切になる。引き続き、亀田総合病院・リハビリテーション科の宮越浩一部長に説明してもらった。

 ◇ 

 食道がんの呼吸リハビリの目的は、潰れた肺(無気肺)の回復と肺にタンが溜まることで起こる肺炎の予防。タンが溜まりやすくなるのは、術後の呼吸機能の低下に加え、食道周囲のリンパ節切除も関係する。

 「食道がんのリンパ節郭清(かくせい)では、食道と気管に沿って走る縦隔リンパ節を切除するので、気管・気管支の血流障害が起こり、気管自体が異物を排出しようとする粘膜の繊毛運動が低下してしまうのです」

 呼吸リハビリでは、術前から機器を使って呼気量を増やす訓練や腹式呼吸を習得するなどの呼吸訓練を行う。さらに術後早期に自主的にタンが排出できるように排タン訓練も並行して行う。

 「普通にせきをすればタンが吐き出せると思われますが、術後は肋骨(ろっこつ)に沿って胸部を切開しているので、痛くてなかなかせきができない。それを我慢してできるように、排タン法のコツを事前に覚えてもらいます」

 せきを上手にしてタンを効率よく出すためには、まず胸の傷口を手やクッションで押さえて保護をする。最初に口を閉じてせき払いをし、それから口を開いてせきをする。

 「喉元にタンを上げるために『ハフィング』という排タン法がよく用いられます。最初に何回か深呼吸してから、鼻から大きく息を吸い込み止める。その後、口を開いて「はっ!」と声を出さずに強く速く息を吐き出します。2~3回やってタンが喉元にきたらせきをして排出します」

 術後、寝た姿勢で長くいるとタンが肺の背側に溜まって排出しにくくなる。できるだけ翌日には座位や立位で上体を起こし、可能であれば病棟内歩行を開始する。

 「術後の早期離床は、横隔膜が下がり、肺の拡張を助ける意味でも非常に重要になります。ベッドに横になっているときは、体を横向きにしたり、うつぶせに寝たりしてタンが排出されやすい体位に変換する『体位ドレナージ』も上手に排タンするポイントになります」

 次回は、食道がん手術後の誤嚥性(ごえんせい)肺炎を防ぐ、嚥下リハビリを取り上げる。

男性1位、女性2位と死亡者数が多いがん肺がん。どんな病気か知っておこう!


歌手の森進一さんが肺がんの切除手術を受けていたことを告白して話題となりました。現在の日本の死因の第1位は“がん”ですが、ここ数年は大腸がんとともに肺がんも急増しています。ここでは、肺がんとはどのような病気なのかについて、簡単に解説してみます。

◆肺がんはどんな病気?

肺の最も重要な働きは、外の空気から酸素を取り込み、炭酸ガス(二酸化炭素)を外へ送り出すことです。肺がんとは肺にがんが出来る病気で、“大腸がん“とともに、ここ最近の日本では患者数が急増しています。

肺がんになった人の数は、男性では胃がんに次いで2位、女性では乳がん、大腸がん、胃がんに次いで4位となっています。ところが”がんによる死亡者数“で見た場合、男性では1位、女性でも大腸がんに次いで2位になっています。患者数の割合に比べると、死亡者数が多いがんであることが分かります。

肺がんであっても、早期発見・早期治療を行うことで、およそ80%は治るといわれています。しかし発見が遅れるほど5年生存率(何らかの治療をしてから5 年間の間にどれだけ生存しているか)は急激に下がり、男性ではワースト1位、女性ではワースト2位、というデータもあります。
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◆肺がんはどんな病気?

肺の最も重要な働きは、外の空気から酸素を取り込み、炭酸ガス(二酸化炭素)を外へ送り出すことです。肺がんとは肺にがんが出来る病気で、“大腸がん“とともに、ここ最近の日本では患者数が急増しています。

肺がんになった人の数は、男性では胃がんに次いで2位、女性では乳がん、大腸がん、胃がんに次いで4位となっています。ところが”がんによる死亡者数“で見た場合、男性では1位、女性でも大腸がんに次いで2位になっています。患者数の割合に比べると、死亡者数が多いがんであることが分かります。

肺がんであっても、早期発見・早期治療を行うことで、およそ80%は治るといわれています。しかし発見が遅れるほど5年生存率(何らかの治療をしてから5 年間の間にどれだけ生存しているか)は急激に下がり、男性ではワースト1位、女性ではワースト2位、というデータもあります。

◆肺がんになりやすい人は?

肺がんの発症リスクとしては、女性よりも男性の方が、若年者よりも高齢者の方が患者数は多いという特徴があります。

しかし最も重要なのは、喫煙歴です。喫煙者は非喫煙者と比べて、男性では4.5倍、女性でも3倍のリスクがあります。もしタバコを吸わずにいたら、男性の肺がん患者さんのおよそ7割は、肺がんにならずに済んだかもしれないともいわれています。

喫煙者本人だけではなく、受動喫煙となってしまう家族なども肺がんのリスクは高くなります。喫煙は肺がんだけではなく、高血圧・動脈硬化・心臓疾患・歯周病との関連も深いものですので、今すぐ禁煙することをオススメします。

また肺を汚してしまう原因として、アスベストや排気ガスなどもあります。近年注目されているPM2.5も肺がんの原因になることが分かってきました。
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◆肺がんの症状

肺の入り口である“肺門部”というところにがんが出来ると、咳や痰が増えます。

しかしこれはどのような呼吸器の病気でもみられる症状ですので、これだけで肺がんに気付くことはまずありません。

この状態が進行すると、気管支(口から肺に続く空気の通り道)が狭くなり、喘息のようなヒューヒューという音が聞こえるようになります。

さらに進行すると、肺の一部が機能しなくなり(無気肺)、空気の入替が上手く行われなくなるため呼吸器、特に肺の感染症を起こしやすくなります。

その代表が肺炎です。 肺がんは他の臓器への転移もよく見られます。中でも肋骨や神経に転移すると強い痛みが出ますし、食道に転移すると食事がのどを通らなくなります。

声帯に転 移すれば声がかすれてきますし、上半身にある太い静脈に転移すると上半身のむくみ・息切れ・めまい・頭痛などが起こります。肺がんの症状は、千差万別なのです。

◆肺がんの調べ方

まずはスクリーニングといわれる「より精密な検査を受ける必要性のある人を見つけ出す検査」として、胸部単純X線撮影、喫煙歴のある人を対象にした喀痰細 胞診などがありま す。その他、希望すればヘリカルCTと呼ばれる、身体を断面だけではなくらせん状に切り取って撮影される検査もあります。

ここまでで肺がんが疑われた場合、気管支鏡検査(気管支鏡という器械を使って、気管支の内側から肺門周囲を直接観察する)、穿刺吸引細胞診(皮膚の上から 細長い針を刺して、異常が疑われる部分の組織を直接採取して行う)などが行われます。

◆肺がんの治療方法

肺がんの治療はその進行度やがんの出来方により違いがあります。
ごく初期でがんの拡がりが限定されている場合は、外科手術でがん細胞とその周りの組織を切除するのが一般的です。

少し進行度が高くなると、外科手術の他に化学療法や放射線療法といった別の治療方法を組み合わせて行うことになります。
さらに進行している場合は手術は行わず、化学療法と放射線療法を行う他、痛みや他の苦痛を軽減するような“生活の質の向上”を目的とした治療が優先されることもあります。
いずれにしても、肺がんは別の臓器への転移や、一度治ったように見えても再発することが多いがんです。

化学療法1つをとっても、2つ以上のお薬を組み合わせたり、いくつかの治療法を組み合わせて行うのが一般的です。

今の自分の状態がどうなのか、治療の目的は何か、治療を受けるとどうなるかなど、主治医と十分に相談しながら、治療方法を選択する必要があります。

【がんへの備え】ハフィングや体位ドレナージ リハビリ編(12)「排タン訓練」

食道がんの再建手術は、首、胸(脇下)、腹部の3カ所を切開し、片肺を潰して食道を取り出すので術後の呼吸器合併症が起こりやすい。

呼吸リハビリでは、前回取り上げた呼吸訓練と同時に、排タン訓練も大切になる。引き続き、亀田総合病院・リハビリテーション科の宮越浩一部長に説明してもらった。

 ◇ 

 食道がんの呼吸リハビリの目的は、潰れた肺(無気肺)の回復と肺にタンが溜まることで起こる肺炎の予防。タンが溜まりやすくなるのは、術後の呼吸機能の低下に加え、食道周囲のリンパ節切除も関係する。

 「食道がんのリンパ節郭清(かくせい)では、食道と気管に沿って走る縦隔リンパ節を切除するので、気管・気管支の血流障害が起こり、気管自体が異物を排出しようとする粘膜の繊毛運動が低下してしまうのです」

 呼吸リハビリでは、術前から機器を使って呼気量を増やす訓練や腹式呼吸を習得するなどの呼吸訓練を行う。さらに術後早期に自主的にタンが排出できるように排タン訓練も並行して行う。

 「普通にせきをすればタンが吐き出せると思われますが、術後は肋骨(ろっこつ)に沿って胸部を切開しているので、痛くてなかなかせきができない。それを我慢してできるように、排タン法のコツを事前に覚えてもらいます」

 せきを上手にしてタンを効率よく出すためには、まず胸の傷口を手やクッションで押さえて保護をする。最初に口を閉じてせき払いをし、それから口を開いてせきをする。

 「喉元にタンを上げるために『ハフィング』という排タン法がよく用いられます。最初に何回か深呼吸してから、鼻から大きく息を吸い込み止める。

その後、口を開いて「はっ!」と声を出さずに強く速く息を吐き出します。2~3回やってタンが喉元にきたらせきをして排出します」

 術後、寝た姿勢で長くいるとタンが肺の背側に溜まって排出しにくくなる。できるだけ翌日には座位や立位で上体を起こし、可能であれば病棟内歩行を開始する。

 「術後の早期離床は、横隔膜が下がり、肺の拡張を助ける意味でも非常に重要になります。

ベッドに横になっているときは、体を横向きにしたり、うつぶせに寝たりしてタンが排出されやすい体位に変換する『体位ドレナージ』も上手に排タンするポイントになります」

 次回は、食道がん手術後の誤嚥性(ごえんせい)肺炎を防ぐ、嚥下リハビリを取り上げる。

突然ガンに…心の辛さを癒す3つ

毎日、仕事に趣味にと多忙な生活を送っている私たち、体は丈夫だから病気とは無縁、なんて思っている人も多いでしょう。

でも、そんな日々の中で突然「がん」を宣告されたら......。

統計によるとがん罹患率は30代後半から急増するのです。そのアラサー、アラフォー世代の女性に一番多いのは乳がんで、実に14人に1人の割合で乳がんにかかっているのです。

周囲には公表しなかった......

乳がんに限らず、がんの初期は自覚症状があまりないので、調子が悪くなってからでは手遅れ、なんていうことも。

私は毎年乳がん検診をうけていますが、3年前の検診で、1.4cmの乳がんがみつかり、手術、化学療法、放射線療法をこなし、現在はホルモン剤による投薬治療(5年うち2年目)中です。

がんを宣告されたとき、会社を興したばかりだったので一瞬、目の前が真っ暗になりましたが、体はどこも痛くも痒くもないので、そのまま仕事は続行、手術入院の10日間(リンパ転移がなければ入院期間は4日間)のみおとなしくしていた、という次第でした。

その後の化学療法、放射線治療も今は通院治療なので、周囲の人に「がん宣告」をしないまま、治療を終えることができました。

がん治療というと、とんでもなく重篤なイメージですが、たとえば化学療法にしても、副作用対策が色々あって、よく言われる吐き気は感じることもなく、脱毛を最小限に食い止める対策もあるのです。

おかげで部分かつらのみで済みました。そんな副作用と仕事の日々を中心に、このたび私は朝湖ともこという筆名で『どうしよう? 私、がんになっちゃった』という本を電子出版いたしました。

傷ついた心を癒すには

なってしまったらどうするか、私の場合効果的だったのは、

1.普段から没頭できる趣味を持っておく
2.自分を病人と思わない
3.家族以外には内緒にして、できるかぎり平常通り働く

これらが、体以上に傷ついた心を支えてくれました。近年、がんを克服しての生存率は増加の傾向にあるそう。なので、がんにかかっても悲観的にならず、いつもどおり働きながら治療していきたいものです。

『どうしよう? 私、がんになっちゃった!』【Kindle版】
著者:朝湖ともこ
出版社:東洋出版
価格:267円

[資料参照:がん情報サービス]

癌の初期症状?首筋や足の付け根にできるしこりの正体

気になるしこりは癌の初期症状?

医師として仕事をしていると、診察室意外でもちょっとした健康上の相談をされることがよくあります。

その代表が、「先生、ここにしこりがあるように思うのですが、何でしょうか?」というもの。「ひょっとして、悪いできものでしょうか?」と不安げに聞いてこられます。

今回は、「もしかして癌の初期症状では……」と心配される人も多い、首筋やわきの下、足の付け根のしこりについて解説しましょう。

よくあるしこりはリンパ節の腫れ

日常生活の中で、ふとした時に触れるちょっとしたしこり。入浴中に体を洗っていて気づく人が多いようです。場所として多いのは、首筋や足の付け根。大きさは1~2cmのものが圧倒的に多いようです。

乳がんのセルフチェック法としても「しこり」の有無の確認が進められていますが、首筋や足の付け根にできるしこりの多くは、リンパ節が腫れているだけのものがほとんど。

「リンパ節」とは血液とともに全身を巡っているリンパ液の関所のようなところ。リンパ節そのものは全身にあるのですが、体表に近い部分にあるのが首筋や足の付け根なのです。

リンパ節が腫れても、通常は大きさも小さくほとんど触れませんが、これらの体表に近い部位のリンパ節が腫れると、首を傾けたり仰向けになったりしたときなどに触れやすくなります。

また、わきの下や顎の下側など、少し奥まったところのリンパ節の腫れに気づくケースもあるようで、「しこり=癌?」と心配される方も少なくありません。

リンパ節が腫れる原因

リンパ節は、もちろん癌との関連で腫れることもありますが、決して多くはありません。リンパ節の腫れの場合にまず考えられるのは、体内で起こっている炎症に対する私たちの体の正常な反応ということです。

リンパ液は、体内に菌が入ってきたときに免疫反応でこれらをやっつけるような働きをします。その結果炎症がおこります。

リンパ節はそのための司令塔的な役割も担いますが、活動しているときに腫れるので体表から触れるようになります。

風邪などでノドの粘膜が腫れている時には首筋のリンパ節が腫れますし、虫歯や歯周病で口の中に炎症が有るときには顎の下のリンパ節が腫れることがあります。また、足に怪我や炎症が有るときには足の付け根のリンパ節が腫れることがあります。

リンパ節の腫れの見分け方

リンパ節が腫れている場合には、私たちは「大きさの変化」と「硬さ」と「可動性」に着目して、悪性か心配ないものかを見分けます。

ただの炎症反応で腫れている場合は、炎症のピークを過ぎれば必ず小さくなっていきます。硬さは、比較的弾力性のある硬さで、外から触るとぐりぐり動くことが多いです。

逆に、大きさがだんだん大きくなっていく、弾力があまりない硬さである、そして外から触ってもあまり動かないという場合には、炎症以外の原因で腫れている場合もあり、その原因の一つとして癌も挙げられます。

また、同じ炎症でも、炎症の原因が癌にともなっておこる細菌感染などの場合もあることは、可能性としては考えておかなくてはなりません。

このように、リンパ節の腫れに気づいた場合でも基本的には心配することはありません。しかし、大きさが変わらない場合や硬さが気になる時には自己判断をせずに、一度医師の診察を受けることをお勧めします。

もしかして「がん」? 医師が疑う初期症状とは

■医師が「がん」を疑うのはどんなとき?

 私は現在、患者さんのご自宅や施設へ出向く訪問診療と、街のクリニックでの外来診療を行っています。大学病院や公立病院で外科医として勤務していた時と比べると、比較的高齢の患者さんが多く、また、病状も安定している方がほとんどです。

 「先生の顔を見ると、元気が出ます」という、医者冥利に尽きるような一言を聞くことは、医師を志した私の原点に響くことでもあり、外科医時代とはまた違った喜びがあります。

薬の内容も、それほど特殊なものは多くなく、ちょっとした世間話をして、体調をお尋ねし、血圧測定や聴診を行います。そして、前回の処方をチェックして、お薬を新しく処方するという、比較的穏やかな診療風景です。

 しかし、そんな穏やかな診療の中でも、「あれ?」と思うことがあります。詳しく調べてみて、がんが発見された方もいます。

つまり、特別専門的な検査をしなくても、「がんでは?」と思う症状があるのです。医師である私たちが、どんな点を日常的にチェックしているのかを、お話しましょう。

■体重減少

 がんを疑わせる症状の代表である、体重減少。もちろん、「最近、食事には気をつけています」「頑張って運動しているんです」「ダイエット中です」という場合は別です。

いつもと変わらない生活をしているのに体重が減っていく場合は、がんの可能性を考えたときに、少し気になる現象です。

 特に、1~2カ月で10~15%以上の体重減少(60kgの方の場合、6~9kg)が見られる場合は、やはり注意が必要です。洋服のサイズが合わなくなったり、ズボンやスカートがぶかぶかになるなどの自覚があり、周囲の方も気づくような状態になります。

 がんが体の中にあると、エネルギー消費の増加に加え、がんのできた部位によっては、食欲が低下することもあり、いつも通りの生活をしているつもりでも、体重が減少してしまうのです。

■便の異常

 日本では、消化器のがん、すなわち、胃がんや大腸がんが多いですが、これらのがんの症状の多くは、便の異常となって表れます。

□色調の異常

 これは、がんからの出血によるものですが、胃や十二指腸のがんでは、便は黒色に、大腸のがんでは、暗赤色から暗紫色になってきます。

肛門に近い直腸のがんでは、鮮血色の下血が見られることもありますが、これらは痔の症状として、見過ごされることもあります。もちろん、頻度としては痔が多いのですが、前述の体重減少の傾向がある場合は、詳しく調べる必要があります。

□便通の異常

 長引く下痢や、頑固な便秘といった便通異常は、大腸のがんに関する注意信号です。もちろん、下痢や便秘も一般的な症状です。しかし、通常の下痢止めや便秘薬が効かない、もしくは、下痢や便秘を繰り返すといった症状の場合には、やはり注意が必要です。

■進行する貧血

 何となく体がだるい、息切れがする、めまい・ふらつきがあるといった症状は、通常の肉体疲労や、がん以外の疾患でも見られる症状です。

貧血の症状としても多いです。ただし女性の場合は、多かれ少なかれ、貧血があることがほとんどなので、一回だけの血液検査や健康診断の結果だけで判断することはできません。

 重要なのは、進行する貧血です。たとえば生活習慣病でかかっている医療機関の3カ月ごとの血液検査で、ヘモグロビン値が、13mg/dlから、10mg/dlに下がるなど、7~8割以上の低下が見られる場合は要注意。

 出血の原因は、消化器系(胃がんや大腸がん)のこともあれば、泌尿器系(腎がんや膀胱がん)、婦人科系(子宮がんや卵巣がん)のこともあります。

 進行する貧血は、自覚症状のみではわかりづらいので、医療機関での血液検査が必要です。もし、貧血かな?と思っても自己判断せず、やはり採血して調べておくのがよいでしょう。

■虫の知らせも大切に 気になるときは健康診断・人間ドック

 最後に紹介するのは少し非科学的な内容になってしまうのですが、虫の知らせを大切にしている医師も多いと思います。「何となく気になる……」というケースで、調べてみたら早期のがんが見つかったというケースは、医師の多くが経験していることではないかと思います。

 これは患者さんも同じ。今回、ご説明したような症状に加え、ちょっと心配だなぁと思われたときには、会社や自治体の健康診断をきちんと受ける、また、場合によっては、人間ドックを受けてみるといった行動を起こすことも大切です。

 自己判断での心配しすぎもよくありませんが、何か気になることがあれば、まずは、お近くの内科の先生の診察をお受けになってみて下さいね。

「がんで死ぬのが最高の死にかた」なのはなぜか? パターナリズム医療の終焉

 自分や家族に医療が必要になったとき、望ましい医療を受けるには、患者自身が賢くなるほかない。患者のニーズは多様になり、医師も多様化している。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、終末期のニーズについて提言している。

 患者にも医療の知識が増え、自分で判断できることが増えてきました。特に終末期医療では、その傾向が強いように思います。

 どのような終末期を迎えるかは、先進国が抱える共通の課題です。

 2014年12月31日に英国医学誌(The BMJ)の元編集長であるリチャード・スミス氏が「がんで死ぬのが最高の死にかた」という文章を発表し、話題を集めました。BMJは世界的な医学雑誌で、その編集長であったスミス氏は、世界で最も影響力がある医師の一人です。

 スミス氏は自殺を除く死にかたを、突然死・がん・認知症・臓器不全に分類しました。最悪の死にかたと断じたのは「認知症を抱え、長い時間をかけてゆっくり死ぬ」ことです。

 日本でも同様に考える人が出始めています。当研究所に勤務する50代の女性は、独身で、80歳代の母親と二人住まいです。彼女は「今はがん検診を受けているが、母親を看取ったら止めるつもり」と言います。彼女はがんで死ぬメリットを「診断されてから死亡するまで時間的余裕があり、会うべき人に会い、遺言や遺産分けを準備することができる」と説明します。彼女にとって、がんは尊厳を維持しながら、一生を終える手段なのです。

 がんで死ぬことには問題もあります。それは痛みです。

 スミス氏への反論の大半は「膵臓がん患者の痛みに配慮したことはあるのか」など、痛みに関するものでした。

 日本はがんの疼痛対策後進国です。世界保健機関によると、日本は処方すべき医療用麻薬の約16%しか処方していません。多くのがん患者が痛みをこらえながら亡くなっているという状況は、早急に是正されるべきものです。

 どのような終末期を迎えるかは、どのように尊厳を持って生きるかです。医師が患者を導く「パターナリズム」の医療は終わり、患者中心の医療が求められています。医師には何ができるのか、我々医師も自らの価値観の変更が求められているのです。

※『病院は東京から破綻する』から抜粋

「運動はがんの進行を抑える」 ウソ・ホント?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。 
【問題】「今年こそ運動を」と思っている人もいるでしょう。そこで運動の効果についてクイズです。ウオーキングなどの適度な運動は、がんの進行を抑える。これはホント? ウソ?

(1)ホント
(2)ウソ
正解は、(1)ホント です。

がんは長年、日本人の死因第1位の座を独占し続けています。多くの人にとって最も怖い病気でしょう。

 では、がんだと宣告されたら、私たちはどうしたらいいのでしょうか。もちろん、医師と相談しながら、積極的に治療に取り組むことになりますが、自分でできることもあります。そのひとつが「運動」です。

 がんといえば重病です。運動なんかしていいの? と思われるかもしれません。確かに症状や進行度にもよりますが、「運動できる人はしたほうがいい」というのが最近の定説になっています。

 報告されているエビデンス(科学的根拠)をいくつか紹介しましょう。1つは、大腸がんと診断され、転移のない男性668人を20年間観察した研究です。20年間で258人が死亡し、うち88人は大腸がんが原因でした。「1週間の運動量」を見ると、運動量が多いほど死亡率が低く、最も運動量が多かったグループは、まったく運動しなかった人たちに比べて大腸がんによる死亡リスクが47%も下がっていたそうです[注1]。

 前立腺がん患者を追跡調査した米国ハーバード大学の研究でも、「週3時間以上のウオーキング」をしている人たちのがん再発・転移、死亡のリスクは57%下がっていたそうです[注2]。

 ドクターランナー(事故に備えて選手と一緒に走る医師)として多くの市民マラソン大会やトライアスロン大会に出場している、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック(神奈川県横須賀市)院長の奥井識仁さんは、「運動によって大腸がんや前立腺がんの進行は抑えられます。実際、米国にはランニングやウオーキングでがんを抑えようという患者のサークルがいくつもあります」と話します。

 奥井さん自身も、長いこと前立腺がんと運動の研究を続けています。

[注1] Arch Intern Med. 2009 Dec 14;169(22):2102-8.
[注2] Cancer Res.2011 Jun 1;71(11):3889-95.

 前立腺がんと診断された患者102人(平均74.8歳)に、ホルモン治療と併行してウオーキングを指導しました。8年間で48人が死亡、うち20人(41.7%)は前立腺がんが原因でしたが、「1カ月に120km以上のウオーキング」をしている人たちは、死亡率が半分に抑えられたそうです。

 「雨の日も風の日もやる必要はありません。1日6km、月20日を目安に指導しています」(奥井さん)

■筋肉の成長に男性ホルモンが使われる?

 では、なぜ運動によって前立腺がんの進行が抑えられるのでしょうか? 奥井さんはテストステロン(主要な男性ホルモン)が筋肉で消費されるからではないか、と考えています。

 前立腺がんはテストステロンをエサにして増殖する性質を持ちます。そのため、治療はテストステロンの分泌を抑えることが基本になります。運動によってテストステロンが筋肉で使われると、前立腺がんのエサになる量が減るのではないか、というのが奥井さんの仮説です。「大腸がんの場合も同じく、運動でIGF(インスリン様成長因子)が筋肉で使われることが、がんの進行を抑える大きな要因になっているように思います」(奥井さん)

 これらはまだ解決しないといけない問題が多くあります。運動とがん抑制の関係については、いまだにメカニズムがほとんど分かっていないためです。「もっと多くのサンプルを集めて、日本全体で考えていくべきテーマだと思います。米国のように、がん生存者が積極的に治療データを後世の研究のために残して、日本のがん治療に役立てるシステムが必要です」と奥井さんは話します。

「がん家系」に属するかどうか、判別する3つのポイント

医学の進歩で遺伝子分野の研究が進み、病気は「遺伝」が原因となるのか、それとも生活習慣などの「環境」が引き起こすのかという課題でも研究が進んでいる。

 最も気になるのは、日本人の死因トップである「がん」と遺伝の関係だ。日本人はよく「がん家系」という言葉を使うが、実際にはどれだけ遺伝の影響があるのか。国立がん研究センター中央病院遺伝子診療部門長の吉田輝彦氏が解説する。

「そもそもがんになる主な原因は、老化によりDNAに傷がつく加齢要因と、親から原因遺伝子の変異を受け継ぐ遺伝要因などです。がんになる遺伝子変異を親から受け継いでいると生活習慣や年齢にかかわらず、がんを発症することがあります。全患者のうち、こうした遺伝要因でがんになるのは5%程度と言われています」

 わずか5%、とあなどってはいけない。注意すべきは遺伝しやすいがんと、そうではないがんがあることだ。

「遺伝しやすいがんの代表は、全大腸がんの約5%を占める『遺伝性大腸がん』です。『MSH2』や『MLH1』などの遺伝子の変異を親から受け継いでいると、どれほど生活環境がよくて健康でも、80歳までに82%の人が大腸がんを患うという米国のデータがあります。同様に、乳がんや前立腺がんなども遺伝性のがんとしてよく知られている」(吉田氏)

 とくに前立腺がんは遺伝要因が強いと言われる。父親が前立腺がんだった場合、子の発症リスクは1.65~3.77倍、兄弟の場合は2.57~3倍あり、家族の既往歴は前立腺がんの重要なリスクファクターとなっている。

 前立腺がんは初期段階なら自覚症状がほとんどなく、がん細胞が膀胱や尿道を圧迫して排尿に障害が出るなど自覚症状が出た段階では、約50%の人がすでに骨やリンパ節に転移してしまっていることが多い。転移前のステージ3なら5年生存率は90%以上と言われているので、家族が前立腺がんを罹患しているなら、早めに検査を受けることが推奨される。

 逆に遺伝リスクが少ないとされるがんの代表は、肺がんと胃がん、肝がんだ。肺がんは喫煙、胃がんはピロリ菌感染、肝がんはアルコールやウイルス感染といった環境要因の影響が大きいとされる。

 そこで気になるのは、自分が遺伝しやすい「がん家系」に属するかどうかだろう。それを判別するには主に「3つのポイント」がある。

「父方もしくは母方の血縁者において、【1】どちらかの血縁者に集中して同じ種類のがんが多発する。【2】若年でがんを発症した人がいる。【3】男性の乳がんなど、めずらしいがんを発症した人がいる。以上のいずれかが当てはまると、がん家系が疑われます」(吉田氏)

【医者のがん体験克服記】「完治」にこだわらず上手にがんと付き合う 「治る」という言葉の意味

 がんに関する正しい知識と情報をお伝えする前に、一言お断りしておきたいことがあります。それは「治る」という言葉の意味についてです。

 多くの人は、病気が治るというと「完治」するということを想像するのではないでしょうか。つまり、その病気とは今後まったく関係がなくなるという意味です。しかし、世の中の病気で、完治するものなどほとんどありません。

 インフルエンザや結核、感染症なら、原因となるウイルスや細菌を退治してしまえば完治します。しかし、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病は、病気をコントロールすることはできても、完治することはありません。

 高血圧や糖尿病になったら一病息災を心がけ、定期的に病院に通って検査を受けたり、医者から処方されたクスリを飲みながら暮らしていくわけです。実際、私は高血圧なので、もう20年以上、そうした暮らしをしています。

 そう考えますと、がんも完治にこだわる必要はないのではないでしょうか。高血圧や糖尿病と同じように病気と付き合っていくという点では、がんもまったく同じことのような気がしています。

 私は67歳のときにがんになり、今年の1月に72歳になりました。私はこの5年半、がんという病気と上手に付き合うことで暮らしてきました。当然のことですが、QOL(生活の質)を落とさなくてはならないこともありました。

 しかし、あと10年、ひょっとしたら20年、これ以上はQOLを落とさないで、楽しく暮らしていくことができたら、それは天寿をまっとうしたといえるのではないかと考えています。そういう意味で、がんは治る病気になったのです。 (山野医療専門学校副校長・中原英臣)

【がんへの備え】胃がん 生存率左右する「早期」と「進行」の差★胃がん編「手術治療」

胃がんが見つかった時の分かれ道は、早期がんか進行がんか。胃が残せるか、残せないかだけでなく、生存率も大きく違う。治療法はどのように決定されるのか、がん研有明病院・消化器センターの山口俊晴センター長に聞いた。

 がんが胃粘膜にとどまる“早期がん”と、がんが筋層より深い“進行がん”は、別の病気と思っていい。それほど違う。

 「今、早期がんと進行がんの割合は半々。5年生存率は早期がんが98%ぐらい、進行がんは60%ぐらい。早期胃がんは、もう治るがんなのです」

 そのため早期がんでは、体の負担が少ない治療法が検討される。

 「内視鏡で治せる胃がんは“リンパ節転移のない早期がん”に限られる。隆起型の粘膜がんで、サイズが2センチ以下。組織型が分化型なら、リンパ節転移はほとんどない」

 内視鏡治療の対象にならない早期がんの場合には、開腹による縮小手術、もしくは腹腔鏡手術という選択肢になる。

 「腹腔鏡手術は5~10ミリの小さな孔を、おなかの左右に計4~5カ所開けて器具を入れ、モニターを見ながら手術をします。傷が小さく、術後の痛みも少ない。

回復が早く、早くから食事が摂れること、入院期間が短いなどが利点です」

 胃の切除範囲やリンパ節の一部を取る部分は、基本的に腹腔鏡手術も開腹手術も変わらない。

 しかし、早期がんと言っても、胃の切除範囲が小さいとは限らない。がんのできた場所によって違ってくる。

 「がんが胃の出口寄りであれば3分の2ぐらいの切除で済むが、入り口に近い所だと早期がんでも全摘する場合がある。切除範囲は進行度ではなく、胃がんの広がり具合で決まります。

胃がんは出口寄りにできやすいので、ほとんどの手術症例は半分以上取ることになる」

 一方、進行がんは再発の恐れがあるので、胃、リンパ節をより広範囲に切除する。開腹手術が標準治療になる。

 「現時点では、進行がんに腹腔鏡手術はすすめられない。リンパ節を深い所まで取るので、確実に取り切るには技術と時間が必要。それに開腹と同等の治療成績が出せるか分かっていません」

 進行がんの治療では再発予防のため、手術後に“術後補助化学療法”を行う。抗がん剤を基本1年間飲み続ける。

 次回は、その有効性を取り上げる。

癌のリスクがアップする危険すぎる夜更かし生活

◎癌細胞を狙い撃ちする特殊部隊を育成せよ

 前回は、健康な人でも1日に約5000個の癌細胞ができているというお話をしました。その癌細胞を、毎日5000勝0敗の確率でやっつけてくれているのが、日々体内で作られる免疫細胞です。

 中でも重要な免疫細胞が「Tリンパ球」になります。このTリンパ球には、癌細胞だけを狙い撃ちする「特異免疫細胞」と、風邪やインフルエンザなど様々な病原体から体を守る「非特異免疫細胞」の2種類があります。

いわば癌というテロ組織専門の特殊部隊と、その他幅広い業務を受け持つ町のおまわりさんのような関係で、両者は協力しながら外敵を防ぎます。

 これらの免疫細胞が、病気や癌に罹りにくい体質づくりをするうえで重要な役割を担っているのです。では、このTリンパ球を強化するにはどうすればよいのでしょうか。

そもそもTリンパ球は「メラトニン」というホルモンが、胸骨の後ろ・心臓の前にある胸腺を刺激することで生成されます。

つまり『メラトニン→胸腺→Tリンパ球』という生産ラインを強化することで、免疫力を高めることができるのです。

◎7時に起きて12時に寝る。この生活で免疫力を強化

 強化に必要な第一歩は、メラトニンを分泌させることです。これは、体内時計によって睡眠中に脳から分泌されるので、睡眠の取り方が重要になります。ポイントは次の3点。(1) ゴールデンタイムは22~2時。

この間に熟睡すること。(2) 7時までに起きる。するとメラトニンスイッチはオンされ、15~16時間後に分泌され始めます。もし朝寝坊して10時以降に起きてしまった場合には、残念ながらその夜メラトニンは分泌されません。

しかし、がっかりする必要はありません。翌日から「早起き早寝」するように心がければいいのですから。(3) 真っ暗にして寝ること。テレビやパソコン、携帯電話の光(ブルーライト)など光の刺激により分泌されなくなってしまいます。

いくらゴールデンタイムに寝ても脳は休めず、メラトニンは出てきません。この時間、恋人からのメールには注意が必要ですね(笑)。

 睡眠時間は7時間前後がベストです。つまり、遅くとも12時には寝て、7時に起きるのが理想的なのです。

 夜更かしや朝寝坊でメラトニンの分泌が不十分だと、Tリンパ球の生産ラインは極端に低下します。すると癌細胞に対する監視力が5000勝0敗でなくなる危険性がでてきます。

その長年の蓄積が、やがて癌という形に姿を変えてしまうのです。

 働き盛りの皆さんは、毎日7時間の睡眠を取るのは難しいかもしれません。しかし睡眠の3つのポイントを実行することで、40代でも免疫力を強化することができるのです。

齋藤真嗣・医師
さいとうまさし/1972年生まれ。ニューヨーク州医師。専門は、腫瘍内科・感染症。著書に70万部超の『体温を上げると健康になる』。毎週月~金5:55~6:00、TOKYO FM『明日に架ける橋~健康スイッチ~』に出演中。

【がんへの備え】合併症防止へ術前から開始 リハビリ編(11)「食道がんの呼吸訓練」

食道がんの手術は、胃がんや肺がんよりも術後の呼吸器合併症が起こりやすく、予防のためにも呼吸リハビリが大切になる。亀田総合病院・リハビリテーション科の宮越浩一部長に、周術期(手術前後)の呼吸訓練の内容を聞いた。

 ◇ 

 「食道を摘出して胃を伸ばしてつなげる食道の再建手術では、頸部(首)、胸部、腹部の3カ所を切開します。

長時間に及ぶ全身麻酔や手術の侵襲によって、術後は呼吸機能が著しく低下して、タンの排出力が弱くなる。そのため肺炎や無気肺が起こりやすいのです」

 肺にタンが溜まると、細菌感染しやすく肺炎の原因になる。無気肺とは、肺に空気が入っていない状態。手術では右脇下の胸部を切開し、一旦、肺を潰して、そこから食道を取り出す。

術後、肺がきちんと膨らまず、無気肺のままではタンが排出できない。するとタンが気道をふさいで無気肺が治らない悪循環を起こす。

 「食道がんの呼吸リハビリは、1日も早い無気肺の回復と肺炎の防止が主な目的で、術前から始めます。呼吸は肋骨(ろっこつ)の胸郭筋肉の動きでしていて、そこを切開するので術後は筋肉が利きにくくなる。

それに、痛くて胸をうまく動かせない。術前から呼吸筋力をつけておき、胸の動きをよくしておくことが大切になります」

 術後の傷の痛さをこらえてリハビリをするためにも、患者自身が事前にリハビリの必要性、目的を十分認識しておくことも大切になる。

呼吸訓練は「インセンティブ・スパイロメトリー」という機器を使ったトレーニングや腹式呼吸の習得などを行う。

 「スパイロメトリーはホースをくわえて息をゆっくり吸い込みます。最大の吸気量で目盛りが止まるので、術前は、その数値を増やすように訓練していきます。術後は、術前の数値を目標に練習していきます」

 腹式呼吸も深呼吸の練習になる。おなかの横隔膜を使って呼吸をすることで、胸郭筋による呼吸よりも傷の痛みが少なく、楽に呼吸ができるという。

 「食道切除再建術の呼吸器合併症の発症率は平均30%といわれます。

肺炎を起こせば高齢者では、入院期間が長引いて筋肉の萎縮や関節が固くなるなどの廃用症候群を起こしたり、死因にもつながるので、術前からの呼吸リハビリが非常に重要になります」

 次回は、呼吸訓練と同時に行われる排タン訓練を説明してもらう。

【がんへの備え】飲み込みパターン覚え込む リハビリ編(10)「舌がんの嚥下障害」

舌がん治療で舌を大きく切除した場合、正しく発音がしにくい構音障害と共に、ものを飲み込む機能が低下する。嚥下(えんげ)障害のリハビリについて、静岡県立静岡がんセンター・リハビリテーション科の田沼明部長に説明してもらった。

 ◇ 

 飲み込む力が弱いと、食べ物が気管に入って誤嚥性肺炎が起こりやすくなる。嚥下機能は退院までに回復させなくてはいけない重要な働きだ。

 「嚥下の流れには段階があり、食べ物を噛みながら、舌が内側から支えて飲み込みやすい形状に整える。それをのどへ送り込むまでが舌のメーンの役割になり、舌がんではここに障害が起こります。

咽頭(いんとう)がんの場合には、その先に障害が起こるので、がんの場所によって嚥下障害は内容が異なります」

 舌がんの場合、飲み込みのパターンを覚えるのが非常に大事になってくる。食べ物をのどへ送りやすい姿勢をとるのもひとつの方法だ。

 「舌がんでは『うなずき嚥下』がよく用いられます。噛んだ食べ物をのどへ落とし込むためにあごを上に向けます。ただし、このままだと食べ物が気管に入りやすい姿勢なので、食べ物がのどに入ったらあごを引くというやり方です」

 最初、このような方法で嚥下の練習をしていると、徐々にのどや舌根の筋肉が鍛えられて、飲み込みが改善されていくという。

 通常、ものを飲み込むときは、舌を上あごに着けて口腔内圧を高めて飲み込みやすくしている。再建した舌のボリュームが足りず、舌が上あごに着きにくい場合には、舌接触補助床を上あごに装着して舌が上あごに着きやすくする方法もある。

 「リハビリを進めるには、そもそも食形態が大切です。硬い物は食べられませんから、とろみのついた液体状の物からスタートして、まず食べやすい物から食べることが練習の基礎になります」

 どういう食形態がいいかは、嚥下造影検査で飲み込みの状態を確認しながら検討していく。舌がんで舌を大きく切除した場合、最初のうちは食品をミキサーにかけてとろみをつけた「ミキサーとろみ」が主な食形態になるという。

 「舌を半側以上切除した患者さんの嚥下リハビリでは、おかゆレベルのものを食べられるようにするのが目標になります。肉をそのまま食べるのは難しいですが、魚や野菜は軟らかくすれば食べられるようになることが多いです」

【がんへの備え】口腔がんの中で最も頻度が高い舌がん リハビリ編(9)「構音訓練」

 口腔がんの中で最も頻度(50~60%)が高い舌がん。治療で舌を切除すると、発声はできても正しい発音ができない構音障害が起こる場合がある。どんなリハビリをするのか、静岡県立静岡がんセンター・リハビリテーション科の田沼明部長に聞いた。

 ◇ 

 舌の切除で起こる構音障害は、ロレツが回わっていない発音になる。

 「舌の可動部の半側に満たない部分切除の場合は、あまり問題にならないことが多いのですが、可動部の半側以上の切除になると構音障害が起きてきます」

 舌を切除した部分は、おなかの腹直筋などの筋肉を取ってきて再建手術が行われる。ただ付けるだけで神経はつながらないため、元のように自由自在には動かない。

そのためロレツの回らない発音になる。特に日本語の音は舌先で作られる「サ行」「タ行」「ラ行」「ヤ行」が多く、舌先がうまく動かないと発音に大きな問題が出てくるという。

 「舌がんの構音リハビリは、残存舌の機能を高めるために出しやすい音や舌の動作が簡単な音から訓練を開始していきます。具体的には、発音の時の舌や唇の形の図を使ったり、鏡を使ったりして視覚的に覚えて正しい音に近づけていきます」

 訓練は、ひとつの音から始めて、音が出せるようになったら単語文、会話へと進めていく。それでも出しにくい音があれば代償的な方法を習得する。対象とする音に近い音を出す訓練をして、言葉の意味が通じるようにカバーする。

 「発話スピードのコントロールも大切です。単語文は大丈夫でも会話になると聞き取れない場合がある。手術前と同じスピードで話してしまうからです。文節で区切るなど、工夫してゆっくり話すように指導します」

 再建した舌のボリュームの変化も、その後の発音に大きく関係する。「タ」の音のように、舌を上あごに接触させて発音する音が多いからだ。

 「再建した部分は縮むので、最初から大きめのサイズで付けます。しかし、予想以上に縮むと舌が上あごに届かなくなるケースも出てきます。その場合には、上あごに『舌接触補助床』を装着して、舌を上あごに接触しやすいようにして構音を改善させる方法もあります」

 舌が上あごに接触できないと、正しい音が作れないだけでなく、口腔内圧が高められないので食べ物の飲み込みもしにくくなる。次回は、舌がんの嚥下(えんげ)リハビリを解説してもらう。

40代男性の死因2位「癌」との付き合い方【がんへの備え】

昨年12月、初期の胃ガンであることが発覚し、大きな話題となった宮迫博之。彼もまた、アラフォー世代。40男なら誰もが重大な病に罹る可能性がある。他人事ではない――。

◆初期ガンを見つけるには最低年に1度は検診を

 40歳にもなると、どこがどうというわけではないが、体調がイマイチと感じる機会が増える。だが、「俺も年を取ったなぁ」などと遠い目になっている場合ではない。

医師であり、医療ジャーナリストでもある森田豊氏は「“なんとなく不調”を放置しておくと、命に関わる可能性もある」と警告する。

「激しい頭痛や腹痛、下痢、嘔吐といった明らかな症状があれば、誰しも病院に行こうと決断します。でも軽い症状だと、『病院に行くほどでもない』『いつものことだから我慢しよう』と、病気の兆候を見逃してしまう。

放置すれば病気は進行し、寿命を縮めたり、長期にわたって生活の質を著しく下げてしまうことになりかねません」

 さらに、病気の中には兆候がほとんどないものもある。

「40代前半男性の死因2位に挙がっている、ガンが典型例です。早期発見できれば完全に治せる場合が多いのですが、初期のガンは自覚症状がほぼないんです」

 症状が出る頃にはかなり進行しているというわけだ。

「40歳を過ぎた人で、1年以上ガン検診を受けていない人は、誰しも早期ガンの可能性があると思ったほうがいい。最低でも年1回は受けておきたいですね。特に40代に多い、胃ガン、大腸ガン、肺ガンの検診は必須です」

◆40代前半男性の死因(40~44歳)

●1位 自殺

●2位 悪性新生物(ガンなど)

●3位 心疾患

●4位 不慮の事故

●5位 脳血管疾患

出典:厚生労働省 平成23年人口動態統計

【森田 豊氏】
医療ジャーナリスト・医学博士。診療科を問わないさまざまな病気の概説や、医療にかかわる問題に取り組んでいる。『「病院に行くほどではない」と放っておくと、大変なことになる!』(扶桑社)など著書多数

衝撃! 一般的な健康診断や人間ドックでは初期がんは見つからない? 本当に正しいがんの見つけ方

日本人の半分以上がかかるという「がん」。多くの人ががんに苦しめられているにもかかわらず、これほど多くの治療法や予防法などさまざまな情報があふれている病気もないだろう。なぜがんにかかる? 本当に良い治療法とは? がんを恐れる理由をまとめれば、このふたつに絞られると言っても過言ではない。しかし、こんなシンプルな質問になかなか的確な答えを見つけられずに右往左往する人は多い。
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 この答えに的確に応えてくれる医師がいる。がん専門医の水上治氏だ。水上氏は、外科、消化器科、終末医療など細部に分かれているがん治療を統合的に診断し、患者の立場に立った医療を提供している。この度、『難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください! 』(水上治、大橋弘祐/文響社)という、がんの基本的情報から、最前線治療までを分かりやすく網羅した書籍を出版した。
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■会社の健診で初期がんは見つからない

 この書籍を読んでショックを受ける人は多いだろう。まずなにより、会社や自治体で実施されている一般的な健康診断や人間ドックでは、初期のがんを発見できないということだ。例えば会社の健診で多い、バリウム検査。これは潰瘍型の胃がんがあると、へこんでいるため、そのくぼみにバリウムが溜まる。胃のシワにバリウムをこびりつかせて、X線で撮影する検査だ。
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 しかし、初期の胃がんは凹凸がなく、ただ「赤くなっている」だけのものもある。するとバリウムが通り過ぎてしまい、見過ごすこともあるという。同様に肺のX線検査や、大腸の潜血検査だけでは見逃すことも多いという。“がんは恐ろしいことに症状が出てから病院に行くとほとんど進行がん。だから定期的に検診を受けるしかない。でも、日本のがん検診の受診率は極端に低い” 水上氏は、がんは見つかってからでは遅いという。そのため、「初期のがん」を発見するための「専用の検査」を受けなければいけない。これには、残念ながら自費で検査を受けるしかない。

 しかし、自費の診療には様々な種類がある。またそんなに予算を潤沢にかけられる人もいないであろう。そこで水上氏は次の3つを重点的に検査を受けるとよいという。 日本人を死に至らしめる三大がんは、男女ともに、「肺がん・胃がん・大腸がん」だ。この3つの検査をすることで、死因となる約4~5割のがんの早期発見をできることになる。初期がんに有効な検査は次のようなものだという。
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がんの検査方法と予算の目安
・肺のCT検査 1~1.5万円
・胃の内視鏡検査 1.5~3万円
・大腸の内視鏡検査 1.5~2.5万円
・肝臓、胆のう、すい臓、腎臓の超音波検査 3000~5000円
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 50歳までは2年に1回。50歳からは、1年に1回、3大がんの検査に、肝臓などの超音波検査を受けておけば、だいたいのがんは網羅できる。
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■治療は最初の一歩が大事!

 しかしこのように、検査を受けたからと言って、安心できないのががんである。「どんなに細かく検査してもがんを発見できないこともある」と専門医の水上氏は言う。ではがんを発見してしまったらどうすればいいのか。“がんと診断されたら、セカンドオピニオンは必ずもらったほうがいい。なぜなら、がんは最初の治療をしてしまうと、後戻りがほとんどできないから” がんの治療法は主に「手術」「放射線治療」「抗がん剤」の3つ。それぞれにメリットデメリットがあり、どれも治療を進めてしまったら別の治療法に乗り換えることは難しい。だから最初の治療は慎重に選択した方が良いという。
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■目の前の医者がすべてではない

 では何が最良の治療法なのか。水上氏はこんなことも言っている。“欧米では最初のがん治療は6~7割は放射線治療をするけど、日本人は2~3割しかいない…手術をすすめられたら、放射線医にセカンドオピニオンをもらう。逆に放射線をすすめられたら外科医にセカンドオピニオンをもらうこと。最初の診断とセカンドの意見があまりに違って迷うならサードオピニオンをもらうこと”日本の医学界では、外科医が力を持っていることが多く、悪気なしにすぐ手術をすすめることが多いのだという。だがここで疑問に思うこともあるだろう、進行がんの場合、一刻も早く手術した方がいいのではないかと。
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 ここも水上氏は、冷静な判断のヒントをくれる。「よほど進行したがんでないかぎり、1か月くらい待っても大丈夫」とのこと。がんと告知されてもパニックにならず、いくつもの手段を模索し、納得のいく治療をするべきだと説く。2017年現在は、上記の3つの治療法が主流だが、本書では「免疫療法」という第4の治療法も紹介している。本書にも書いてあるとおり、「絶対に治る」「これだけすれば」というような治療法や予防法はありえない。将来のがんを恐れている人にまず必要なのは正しい知識だ。水上氏からがん治療のリテラシーを学んでみてはどうだろうか。

よく効いて副作用も軽い…C型肝炎治療の“最強兵器”とは?

肝臓がんの原因で最も多くを占めているのが、ウイルス性のC型肝炎だ。国内の推計感染者数は150万~200万人。慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓がんへと進行する。

このC型肝炎の新薬が昨年保険適用になり、治療成績がぐんと上がった。杏雲堂病院肝臓内科・小尾俊太郎部長にC型肝炎治療の最先端を聞いた。

「昨年認可されたシメプレビル(プロテアーゼ阻害剤)は、C型肝炎を引き起こすウイルスに直接作用して増殖を抑える薬です。

これまで使われていたPEGインターフェロンとリバビリンの2剤に、シメプレビルを加えた3剤の併用治療が、現段階でのC型肝炎治療の“最強兵器”です」

 基本的に「シメプレビル1日1回+リバビリン1日2回+PEGインターフェロン1週間に1回」を12週続け、その後、「リバビリン1日1回+PEGインターフェロン1週間に1回」を12週の合計24週。

従来のリバビリンとPEGインターフェロンの2剤併用が基本48週だったので、治療期間は半分に減った。

「C型肝炎ウイルス(1型高ウイルス量)の初回治療の場合、2剤併用の著効率は57%でしたが、3剤併用は89%と高くなりました。

また、2剤併用でウイルスが一時消えたが、また出てきたいわゆる“再燃”に対する3剤併用による再治療の著効率は90%です」

 初めてC型肝炎のインターフェロン治療が登場した25年前、著効率はわずかに7%だった。ところが、今では89%(初回治療の場合)まで上昇。3年前に登場したテラプレビル(初代プロテアーゼ阻害剤)と比較しても、副作用が軽減されているのも特徴だ。

■値段は1錠で約10万円

 しかし、C型肝炎ウイルスに感染している患者すべてに、新薬を用いた3剤併用治療が適しているかというと、そうではないと小尾部長は言う。 「冒頭で3剤併用治療が現段階での最強兵器と言いましたが、実はもっと強力な薬が臨床試験中で、この数年のうちに認可される見込みなのです」

 2組ある。まず、「アスナプレビルとダクラタスビル」の組み合わせ。次に、「ソフォスブビルとレディパスビル」の組み合わせだ。3剤併用と何が違うか? まず、インターフェロンを使わない。そのため、副作用が格段に軽減される。

 次に、著効率が3剤併用に増して高い。
「特にソフォスブビルとレディパスビルでは、98%の著効率が得られています。しかも、耐性ができにくい薬だという点が非常に大きい」

 新薬シメプレビルは耐性ができやすい。そのためシメプレビルを用いた3剤併用で効果が見られなかった場合、ウイルスが耐性を獲得して、打つ手がなくなってしまう。

「初回や再燃の患者さんは90%近い著効率なのでまだいいですが、2剤併用で無効だった患者さんが3剤併用療法を行っても、著効率は50%という結果が出ています。2人に1人は効果がないばかりか、耐性の問題もあります。

だから、発がんのリスク判定をして、治療が待てるのか否か判断すること。さらに3剤併用療法を行うとした場合、勝算がどれほどかを判断することが重要です」

 発がんのリスク判定は、肝炎の進行度で見る。肝炎の進行度は、肝臓の硬さからF1~F4の4段階に分けられ、数字が大きくなるほど肝炎が進行しているということで、F4は肝硬変だ。主治医とよく相談してリスク判定を行い、ベストの治療を受けるべきだ。

 小尾部長は、「臨床試験中のソフォスブビルとレディパスビルは、今後C型肝炎ウイルスを絶滅させられるほどの力を持ったスーパー最強兵器」だと言う。

ただし、値段も“最強”。現時点で薬1錠1000ドル、約10万円。C型肝炎治療が進歩していることは絶対に間違いないが――。

【がんへの備え】前処置後の寝たきり、筋萎縮防ぐ リハビリ編(6)「造血幹細胞移植」

急性白血病や悪性リンパ腫などの血液腫瘍では、造血幹細胞移植という治療が行われることがある。どのようなリハビリの必要性があるか、埼玉医科大学国際医療センター・心臓リハビリテーション科の牧田茂教授に説明してもらった。

 ◇ 

 がん診療連携拠点病院である同院では、3年前から造血器腫瘍科での細胞移植患者へのリハビリを開始。年間15例前後の全員に行っている。

 「血液腫瘍で標準的な治療(抗がん剤や放射線)を行っても再発する可能性が高い場合には、造血幹細胞移植(骨髄、臍帯血、末梢血幹細胞移植)を行います。

造血幹細胞移植は、超大量の抗がん剤投与や全身放射線照射をする『前処置』により、腫瘍細胞を根絶するのが目的です」

 前処置を行うと副作用で骨髄の血液を作る能力も同時に破壊されるので、その後に造血幹細胞を輸注して造血能を回復させる。造血幹細胞を移植して、生着するのは約3週間後。移植から2~3カ月後に退院、というのがおおまかなスケジュールだ。

 「造血幹細胞移植の入院期間はトータル3~4カ月になりますが、リハビリは入院時から始まり、退院まで一貫して行われます。

特に前処置から移植細胞が生着するまでは免疫がない状態になるので、患者さんは無菌室で4~8週間過ごすことになります。どうしても活動量が落ち、精神面でも問題が出てくるのでキメ細かいリハビリの介入が重要になってきます」

 実際、前処置が始まると、治療の副作用による吐き気や倦怠(けんたい)感、食欲不振による栄養状態の低下、睡眠障害、隔離されることによるストレスや意欲低下で昼間でも寝たきり状態になりやすい。

筋肉の萎縮や関節が固まって動かせなくなるなどの廃用症候群を防ぐのがリハビリの大きな目的だ。

 「入院時のリハビリで、前処置までにできるだけ体力を向上しておきます。それでも前処置が始まると、体が思うように動かなくなるので、無菌室でも状態を見ながら少しずつでも自主トレをしてもらいます。

リハビリ継続の重要性を治療に入る前から十分認識してもらうことが大切です」

 ただし、通常のリハビリと違って骨髄抑制時のリハビリは、血小板や好中球などの血液細胞の数値に注意して行わなければいけない。次回は、具体的なリハビリ内容や骨髄抑制時の注意点などを解説してもらう。

【がんへの備え】胃がん予防のポイントは? 禁煙、減塩、ピロリ菌除菌

ピロリ菌で胃粘膜が萎縮すると、がんができる素地になる。ただし、すべての人が胃がんになるわけではない。何が違うのか。がん研有明病院・消化器センターの山口俊晴センター長に、胃がんを防ぐ生活のポイントを聞いた。

 ◇ 

 胃がんが親から子供に遺伝することはないが、がんになりやすい体質は遺伝する。そこに生活中の発がん因子が加わるとリスクが高まる。

 「特に胃がんの場合は食べ物の刺激が一番大きな発がん因子になる。しかし、“おこげ”など食品に含まれる発がん物質は微量。何トンも何年も食べ続けなければ起こらない。それよりも毎日、味付けに使う“塩分”を減らすことが大切です」

 胃がんは、東北地方の日本海側に多い。秋田県が最も多いが、隣の岩手県は少ない。その差は、しょっぱい物をよく食べる食生活の違いだという。

 食べ物の“熱”も発がん因子になる。

 「熱で有名なのは“茶がゆ”。毎日のように朝から熱い茶がゆを食べる。すると、その熱の刺激で、がんができやすいと言われています」

 だからといって悪い食生活をしていても20代で胃がんになることはあまりない。他にも発がん因子には、タバコや自然界の放射線の刺激もある。そのさまざまな刺激をトータルしたダメージが、ある一定量までたまるとがんが発病するという。

 「問題は、その満期がどれぐらいなのか。人によって個人差があります。人の体には刺激で遺伝子が傷ついても治す能力がある。でも、その修復能力が弱いと、比較的少ない量の蓄積でもがんになるのです。強い人はがんになりにくい」

 ヘビースモーカーでも長生きできる人は、修復能力が高いからだ。

 とはいっても、修復能力の強さは現時点では調べることができない。避けられる刺激を避けることが予防の心得になる。

 食事で言えば、しょっぱい食べ物はできるだけ控える、ひどく熱い状態の食べ物を胃袋に入れない。

 「特にリスクのウエートが大きく、最優先するのは発がん物質を多量に含んだタバコを止めること。むやみにこの食べ物が悪いとか気を使う必要はない。胃がんの防止法(別項)は明らか。中でも最も大事なのは、禁煙と減塩、ピロリ菌除菌の3つです」

 次回は、胃がんの治療法を取り上げる。

【胃がんの予防法】
★塩分の少ない食事
★野菜、果物を含むバ ランスの良い食事
★熱いまま食べない
★アルコールは適度に
★タバコはやめる
★ストレスはためない
★ピロリ菌の除菌

【がんへの備え】腕や脚のむくみにはドレナージ法 リハビリ編(5)「リンパ浮腫の体験談」

がん体験者の就労支援会社「キャンサー・ソリューションズ」(東京都千代田区)の代表を務める桜井なおみさんは、10年前に乳がんを患った。前回は、今でも続けている肩関節のリハビリについて説明してもらった。

しかし、乳がんで必要になるリハビリは、それだけではない。術後から1年ぐらいしてリンパ浮腫に悩まされたという。

 「本当は肩関節と同じで、リンパ浮腫も予防のリハビリをやることが大切ですが、病院で指導されなかったので、やっていませんでした」

 乳がんで脇下のリンパ節を取ると、リンパ液の流れが滞って腕がむくむリンパ浮腫が起こりやすくなる。ヘソから下の手術では脚のリンパ浮腫が起こりやすく、発現時期や程度など、人によって現れ方が違うという。

 「むくむと腕や手が動かしにくく、シビレが出てきます。放置するとパンパンに腫れるので、見た目も悪く、外出できない人もいます。そうなったら戻すのが大変なので、早く『リンパ浮腫外来』に行くことを勧めます。元に戻るのには1カ月半ぐらいかかります」

 リンパ節を取ったら、できるだけ重い物を持たない。また、感染を起こしやすいので、虫刺されや日焼けなどに注意し、スキンケアを心がける。予防・治療のリハビリでは、リンパ液の流れを活性化させるリンパドレナージの方法を指導される。

 「腕の場合は、リンパ液の流れに合わせて、指先の方から肩の方へ向かってさするようにマッサージします。寝る時は枕などを使い、腕を心臓より高い位置にする。

寝返りで腕が体の下に挟まれないように布団などで支えを作るなど工夫する。バンデージ包帯などで圧迫する方法もあります」

 乳がんの手術をした当時、会社員だった桜井さんは、夕方になるとパソコンのマウスを持つ腕がむくんで動かなくなり困ったという。今では、予防のためのリハビリを毎日欠かさず、デスクにはアームサポートを設置して腕にかかる負担を減らしている。

 「リンパ浮腫は早期発見も大切です。脚なら靴がきつくなりますが、腕はなかなか気づきにくい。Tシャツの左右の袖の隙間幅を確認したり、浮腫であれば腕の皮膚を押すとへこんだままになるので、チェックのひとつの目安になると思います」

 腕のリンパ浮腫だけでなく、脚では、立ち仕事と座り仕事で予防や治すリハビリのやり方が異なってくる。桜井さんは「がんリハビリの普及が、がん体験者の離職予防につながる」と話す。 

【がんへの備え】動作、心身、言語障害に連携して対応 リハビリ編

がん患者にリハビリを行うには緊密なチーム医療が大切になる。どんなスタッフが関わり、どんな手順で行うのか。「厚労省委託事業がんのリハビリテーション研修委員会」委員長で、慶應義塾大学病院・リハビリテーション科の辻哲也准教授に解説してもらった。

 ◇ 

 国内には多くのがんセンターがあるが、リハビリ科を設置する施設が増えたのは、ここ5-6年。2010年4月の診療報酬改定で「がん患者リハビリテーション料」が新設されたからだ。

 「がん患者リハビリ料を算定できる要件は、その病院に規定の研修を修了したスタッフがいること。研修はひとつの病院から4人1チームで参加します。

リハビリ専任の医師と看護師。それから理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の中から2人。現場では、これらのスタッフがリハビリチームの核となります」

 PTは、座る、立つ、歩くなどの身体の基本的な機能回復を目的に運動療法や物理療法などを行う動作の専門家。OTは、食事、入浴、更衣など日常生活で必要な機能回復を目的に心と身体のリハビリを行う専門家。

STは、言葉の障害に対するコミュニケーション能力の回復や摂食・飲み込みなどの問題に対応する。

 「他にも関連スタッフは、精神腫瘍科医や臨床心理士、形成外科医、義肢装具士。リハビリには体力維持が大切なので栄養サポートチームとして、薬剤師、管理栄養士、歯科医や歯科衛生士なども関わってきます」

 手順はリハビリ医が主治医から依頼を受け、問題点を整理し、治療方針の決定、目標を設定してプログラムが処方される。その計画に基づいてPTやOTなどが患者にリハビリを提供する。

 「訓練室でできても病棟で反映されていなければ意味がないので、看護師による病棟でのリハビリ看護が非常に重要になります。病棟で実際にしている『ADL(日常生活動作)』が訓練の成果として高く評価されます」

 しかし、リハビリ科を持つ全国の病院のすべてが、がんリハビリのチーム医療体制を整備しているわけではない。まだ少ないのが現状だ。「既定の研修を修了したスタッフが在籍する医療機関は、全国に773施設(昨年6月現在)。

うち、がん診療連携拠点病院は256施設で、全国のがん拠点病院の約64%にあたります。これらの施設では、ある一定以上のがんリハビリを受けることができます」

 所在は、がん拠点病院内の相談支援センターに問い合わせてみよう。

中村勘三郎さん がん検診したことで死期が早まったとの意見も

近著『医者に殺されない47の心得』が108万部のベストセラーになっている医師の近藤誠さんは、25年間、独自のがん治療法を訴え続けてきた。

「初期であろうと末期であろうと、がん患者はなるべく臓器を温存したほうが生活の質も上がり、むしろ寿命が延びる」──それが近藤医師の考え方だ。さらに、がん検診について、すればするほど、がん患者にされてしまう。

誤診や、検診による大量の被ばくにも大きな問題がある。がん検診をしても寿命は延びない、とその不必要性を説く。

「がん検診をすると、患者にされてしまう可能性があるので注意が必要です。例えば日本では、胃がん細胞が上皮内にとどまった状態の非浸潤がんでも、がんと診断されます。

しかし欧米では、周囲の健康な組織までがん細胞が浸み出すように増殖した浸潤がんのみをがんと定義しています。欧米では認められていない8~9割の症状を、日本ではがんと言っているのです」(近藤医師、以下「」内同じ)

 がんと診断されると、医師の勧めで手術や抗がん剤を施されることが極めて多い。また、がん検診は誤診も問題にされてきたが、近年は「検診自体に意味がない」というのが世界の医療の潮流だという。

「がん検診したグループとしないグループの死亡率には、変化がないというデータが出ています」

 CTやPET検診は放射線の被ばく量が多く、それが発がんの引き金になるという指摘もある。

 中村勘三郎さん(享年57)は自覚症状がない状態で人間ドックに入り、食道がんが見つかった。すでにリンパ節への転移があったが、食道全摘手術を選択。誤嚥により肺炎を併発、亡くなった。

「検査でがんとわかり、手術を行ったことが死期を早めた」というのが近藤医師の意見だ。
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