アルコールに関する相談が増加 コロナ禍が長引き、アルコール依存症の治療を行う医療機関には数多くの相談が寄せられてきました。私が勤める久里浜医療センターでも、アルコールに関する電話相談はコロナ前に比べ1.5倍に増加しました。たとえば次のような相談です。
仕事がなくなってしまったので、その分お酒を飲むようになった。
テレワークで家にいるため、昼間からお酒を飲んでしまう (「顔が赤い」と会社から注意されたという人もいます)。
主婦の方で、ご主人と子どもさんが家にずっといて、それがストレスで飲むようになった。
退職をした方で、コロナで外出や趣味の活動がしにくくなり、飲酒量が増えた。
特に女性の相談が目立ちます。本人だけでなく家族からの相談もよくあります。
この先、仕事や暮らしはどうなってしまうのかという不安、自由に遊びに行けない状況などからストレスが大きくなり、それを解消させようとお酒の量が増えてしまうことが心配されます。 環境の変化も影響しているようです。ステイホームで在宅時間が増えました。コロナで職を失って一日中家にいるようになった人もいます。アルコール依存症は失業率とともに上下すると言われています。
アルコール消費量全体はコロナの流行以降減りました。飲食店が営業を自粛し外で飲む機会が減ったからだと思われます。 しかし心配なのは“家で飲み過ぎてしまうこと”です。外で飲んでいれば、周りの人が飲み過ぎを注意してくれる、終電だから帰らないといけないといったことがあります。しかし家ではそうしたブレーキが効きにくくなります。
お酒は人間関係を円滑にしたり食事をより楽しめるようにしたりと、いい面もたくさんあります。しかし家で一人で飲んでいる場合、負の側面が強くなってしまう恐れがあるのです。
ストロング系に注意 家でお酒を飲むときに注意してほしいことがあります。さまざまなお酒が販売されているなか、最近ストロング系と呼ばれる缶入りチューハイが人気です。これまでと違う「飲み過ぎのリスク」が指摘されています。
「ストロング系」と呼ばれるのは、アルコール度数が9%など従来より高いからです。たとえばアルコール度数9%の場合、350mL1缶で純アルコール量はおよそ25g。これはビールなら大瓶1本のアルコール量に相当します。日本酒なら1合を超える量です。
厚生労働省「健康日本21」は「節度ある適度な飲酒量」を1日当たり20gとしています。ストロング系(9%以上)だと1缶でそれを上回ってしまいます。さらに、40g以上だと「生活習慣病のリスクが高まる」とされています。 しかもこれは男性の場合です。女性はさらにアルコールの影響を受けやすいため、男性の半分程度の量を目安にしたほうがいいでしょう。
しかもストロング系は、度数が高いわりに「飲みやすい」「安い」という特徴もあります。 甘く口当たりをよくしているため飲みやすいようです。そのため思いがけず飲み過ぎてしまう心配があります。安いことが手伝って飲む量が増える可能性もあります。
大切なのは、度数(%)だけでなく1缶に含まれるアルコールの量を知ることです。ビールや日本酒と比較しながら、しっかりチェックしてください。
アルコール依存を防ぐコツ 家で飲む量が増えてきたという人に、飲み過ぎないコツをまとめました。
ノンアルコール飲料を先に飲む。水でもかまいません。 食事のときに飲む。 ゆっくり時間をかけて飲む。一口飲んだあと、容器をいったん下に置くだけでも効果があります。 なるべく薄いお酒を飲む。 飲まない時間帯を決めておく。 飲酒以外でリラックスできる方法を1つでも2つでも見つけて実践することもおすすめします。たとえば料理や読書など。バルコニーや庭に出て運動するのもいいでしょう。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年11月号に詳しく掲載されています。
樋口 進(ひぐち・すすむ)国立病院機構 久里浜医療センター 院長
アルコール依存症は厄介な病気だ。その真実を最も伝えられるのは当事者の肉声だろう。本人や家族へのインタビューを中心に、アルコール依存症克服の困難さと回復への手がかりを考える。(佐賀由彦) ◇赤裸々な体験談 多くの本人や家族がインタビューに応じてくれた。2時間を超えて語る人もいた。インタビューが始まる前、本人である1人の男性に、「中島らもの『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫)を読んだことがありますか?」と尋ねたことがある。同作品は、アルコール依存症であった作家本人の実体験を基にした私小説である。 筆者の問いに男性は、「私の現実は、あんなに甘いものじゃありません」と答えた。インタビューが始まると男性の答えの意味が分かった。当事者から語られる赤裸々な体験談は、人それぞれ異なるが、いずれも想像を超えた壮絶さに満ちていた。 ◇断酒か減酒か インタビューに応じてくれた本人たちは断酒の日々を重ねている人たちだ。家族は本人たちと絶縁した人たちだ。 現在は、「断酒以外にアルコール依存症からの回復はあり得ない」とされていた治療に、「減酒」の考え方が加わっている。アルコール依存症治療で有名な国立病院機構久里浜医療センターが、2019年に「減酒外来」を開設するなど、減酒を治療の選択肢として提示する医療機関も出始めた。しかし、減酒はあくまでも、比較的軽症な依存症や断酒に導くプロセスに有効とされる治療法だ。 アルコールが原因となり、自身の心身面や家族・社会関係に深刻な問題が発生している場合は、やはり断酒が唯一のゴールとなる。それは、生き延びるためのゴールでもあり、記事に登場する本人たちは、断酒するしか選択肢がなくなった人たち、つまり「飲んだら終わり」な人たちだと言える。 ◇秀逸な定義 どんな人たちが「アルコール依存症」と診断されるのか。厚生労働省では「長期間多量に飲酒した結果、アルコールに対し精神依存や身体依存をきたす精神疾患」(e-ヘルスネット)としている。その他、さまざまな定義があるが、ここでは、作家のなだいなだ氏の定義を推奨する。 精神科医でもあったなだ氏は、亡くなった年に発行された書籍で、アルコール依存症患者を「さまざまな理由から、非常に難しいものである断酒をしなければならないところに追い込まれた人たち」と定義した(なだいなだ・吉岡隆『アルコール依存症は治らない《治らない》の意味』(2013年、中央法規)。言い得て妙な定義だと思う。 アルコールをなぜ飲み始め、どのように酒害地獄の扉が開き、いかにして地獄の深みにはまっていったのかについては、おいおいつづっていくこととして、連載の第1回目は、各インタビューの終盤に、本人たちが語った「飲まない今だから語れること」を紹介する。 ◇後悔する人 アルコール依存症になれば、家族関係に大きなきしみが生じる。離婚や別居に至るケースは数多く、子どもがいれば、その心に深い痛手を負わせることになる。それに気づいた親は深い後悔に沈む。 高校卒業後に就職して飲み始め、25歳で結婚、31歳で娘を出産した女性がいる。45歳で離婚。子どもは引き取ったが離婚後も酒を飲み続けた。悪戦苦闘の果てに断酒に至った今、自分の子育てを振り返る。 「娘の成長過程で一番大切な時に、いつも入院していました。高校入学の時、社会人になる時、結婚の時、出産の時。飲まなくなったある日、娘から言われました。『飲んでいるお母さんを見ている私は、どんなにみじめだったか。私、お母さんに甘えたかった…』。ごめんなさいとしか返す言葉がありません」 15歳から本格的に飲み始めた男性は、一人前の大人になった気分になれる酒を手放せなくなった。大学時代は、コンパや飲み会にと率先して仲間を誘って飲んでいた。卒業後は会社帰りに毎日飲み、28歳で結婚、翌年には戸建て住宅を構え、息子も2人できた。34歳で独立し、事業は好景気の波にも乗り、好調だった。 ところが、過度のアルコール飲酒とともに事業は傾き、家庭は荒れ、離婚して息子たちは妻に引き取られた。まさしく生死の境目をさまよった後に酒を断った。やはり、子どもたちへの思いは募る。 「酒を飲むために子どもの貯金箱の金を盗んだ私です。酒をやめるきっかけは、自分の無力さを知ったことだけど、やめ続けている大きな力は、子どもたちへの償いのためかもしれません。子どもたちは機能不全の家庭で育ちました。痛んでいるはずです。でも、あれだけつらい思いをさせたのに、子どもたちは酒を飲まない私にやさしく接してくれます。 なぜなのか…。その答えを見つけること、子どもたちの痛みや悲しみをもっと深く身体に刻むこと、これからの私の仕事です」 ◇しらふで見る世界 アルコールの底なし沼から、なんとかはいずり上がって来た人たちは、しらふであることのありがたみをしみじみと味わっている。3人の男性はそれぞれにこう語る。 「今は、しらふの頭のなかで、悩んだり、苦しんだり、悲しんだりできる…。それが喜びです。飲まないから、悩み、苦しみ、悲しさが本物なんです」 「自分の中にコンプレックスとか、解決の難しい問題がたくさんあって、それを忘れさせてくれたのが酒でした。酒に逃げていたんです。でも、酔いがさめれば元に戻ります。飲まない今は、苦しいこともあるけれど自分で解決しようと思うようになりました」 「私は、しらふの『アル中』として生きていこうと思いました。なぜなら、しらふの方が、生きていくのが楽だと気づいたからです」(了) 佐賀由彦(さが・よしひこ)ジャーナリスト 1954年大分県別府市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。フリーライター・映像クリエーター。主に、医療・介護専門誌や単行本の編集・執筆、研修用映像の脚本・演出・プロデュースを行ってきた。全国の医療・介護の現場(施設・在宅)を回り、インタビューを重ねながら、当事者たちの喜びや苦悩を含めた医療や介護の生々しい現状とあるべき姿を文章や映像でつづり続けている。アルコール依存症当事者へのインタビューも数多い。
「いろんな病院に診断書をもらっても、アルコール依存症というのは出ていないんです。(中略)書いてくださったほうが何とか僕らも納得できるんです」 謝罪会見でそう語ったのは、TOKIOのメンバーである松岡昌宏。「山口達也はアルコール依存症なのではないか」――そんな憶測が飛び交っていることを受けての発言だった。 アルコール依存症患者などの診察を行っている新宿東口ハートクリニックの中田貴裕院長はこう語る。 「いわゆる“酒好き”なのか、アルコール依存症なのかという判断は非常に難しいです。一度に大量のお酒を飲めば依存症、というわけではない。いちばんのポイントは、自分でコントロールできないほど飲酒が習慣化してしまっているということです」 中田院長のもとにも、「自分は依存症かもしれない」と相談に来る人たちが後を絶たないという。 「酔って暴力を振るってしまった、自暴自棄になって飲んでしまう……そのような相談に来る人たちも、『アルコール依存症』と決めつけることはできません。多くの場合、自覚症状はほとんどなく、家族や親しい友人などが見抜いてあげる必要があるのです」 では、気づいてあげるべき“危険なサイン”とは何があげられるのだろうか。中田院長が続ける。 「代表的なものは、“隠れて飲む”ということでしょう。飲んだ空きビンなども、こっそりと自分で片づけてしまっている。ですから、なかなか気づけない場合も多いのです。もう一つは、“ごまかし”。あきらかに酔っていても、『酔っていない』と反論するケース。認知症患者が『忘れたの?』と聞かれても、『いや忘れてない!』と答えるのと似ていますね」 精神科医の香山リカさんは、「記憶をなくす」というのがひとつのサインだと語る。 「酔うと性格が豹変したり、昼間から飲んでしまう人もそうですね。アルコール依存症は、うつ病と合併しやすいのが特徴です。飲んでいないときはうつ状態で、そのストレスを解消するために飲むという悪循環に陥って、自殺してしまうケースもあるほどです」 もし夫や子どもが、アルコール依存症になってしまったら……。何か有効な対処法はあるのだろうか。 「依存症の人が自分で飲酒量を減らす、というのはとても難しいこと。最近では、飲みたいという欲求そのものを抑える薬が出ていますが、これは本人が自分の意思で飲まなければ意味がありません。つまり、“断酒教育”が必要です。 しかし、ひとりでやめられないという人は、断酒の意志を確立するため、断酒会への参加が有効といえるでしょう」(香山さん)
「いわゆる“酒好き”なのか、アルコール依存症なのかという判断は非常に難しいです。一度に大量のお酒を飲めば依存症、というわけではない。いちばんのポイントは、自分でコントロールできないほど飲酒が習慣化してしまっているということです」 そう語るのは、アルコール依存症患者などの診察を行っている新宿東口ハートクリニックの中田貴裕院長。中田院長のもとには、「自分は依存症かもしれない」と相談に来る人たちが後を絶たないという。 「酔って暴力を振るってしまった、自暴自棄になって飲んでしまう……そのような相談に来る人たちも、『アルコール依存症』と決めつけることはできません。多くの場合、自覚症状はほとんどなく、家族や親しい友人などが見抜いてあげる必要があるのです」(中田院長) もし夫や子どもが、アルコール依存症になってしまったら……。何か有効な対処法はあるのだろうか。精神科医の香山リカさんは、次のように話す。 「依存症の人が自分で飲酒量を減らす、というのはとても難しいこと。最近では、飲みたいという欲求そのものを抑える薬が出ていますが、これは本人が自分の意思で飲まなければ意味がありません。つ まり、“断酒教育”が必要です。しかし、ひとりでやめられないという人は、断酒の意志を確立するため、断酒会への参加が有効といえるでしょう」(香山さん) 本誌は、32年間にわたり断酒会に所属している元患者に話を聞くことができた――。 「アルコール依存症になったことで、夫とは離婚し、親からの信用をなくしました。母親らしさも女らしさも、そして人間らしさも……」 こう語るのは、千葉県断酒連合会に所属し、女性だけの断酒会『アメシストの会』にも参加する宮田由美子さん(68)だ。「アルコール依存症は、誰にでもなる可能性がある」と彼女は言う。 「私自身、生い立ちが特別なわけではありません。ごく普通の家庭で、ごく普通の青春時代を送りました」 社会人になり飲む機会が増えたが、最初は「いい飲みっぷり」とおもしろがられた。 「母からは『外で飲むのはみっともないから家で飲みなさい』と言われるようになり、毎日缶ビールを買って、晩酌するようになったんです」 会社では酒で失敗するようなことはなかったが、専業主婦になってからは、家にいる時間と比例してさらに酒量が増えていった。ついには妊娠しても、酒をやめられず、1日の半分以上の時間は酔っている状態が続き、冷静な判断などできなくなっていった。 「お酒のニオイをさせたまま、目をうつろにして、酒を買いに行っていましたが、そんな姿を人に見られても、抵抗がまったくなかったんです」 子どもの遠足に、氷とウイスキーを入れた水筒を持っていったことも。 「自分のウエディングドレスを持って、近所に『これから私の結婚式なの』と言い回ったこともあったようです。だんだんと、そんな異常な行動が増えていきました」 両親や夫は、専門施設に宮田さんを入院させた。当時はまだアルコール依存症の治療プログラムが確立されておらず、単に部屋に閉じ込められ、酒を飲まない毎日を3カ月ほど送るだけだったという。 「体調はよくなりましたが、頭の中で飲みたい気持ちが残っていました。退院して1~2週間は飲まずに我慢できても、家には小さな子どもしかいない。飲酒を止めてくれるものがまたなくなった……」 3度目の入退院の後、夫とは離婚。宮田さんは生活保護を受けながらギリギリの生活をしていたが、それでも酒代が減ることはなかった。 「家事なんてできる状態ではなかったし、子どもも“飢えなければいい”くらいにしか考えませんでした。天井からお金が降ってくる幻覚が見えて、ありえないはずのお札を握りしめてお酒を買いにいこうと家族を振り切ったことを覚えています」 駆けつけた救急隊員に対しても、宮田さんは暴れた。「俺たちの税金で、酒を買っているひどい女だ」と話す幻聴まで聞こえたという。 「入院は5回目。振り返ると、大事なものは、みんななくし、残っているのは自分の命と、子どもたちだけでした。こんなことを繰り返していたら、もう子どもたちも失ってしまう――。そう思って断酒会への入会を決意しました」 それまで酒に酔っていたときの自分に向き合えずにいたが、宮田さんは断酒会に出席するようになり、他人の体験談を通して、どれだけ大切な人たちを傷つけてきたのかを思い知らされた。 「入会していちばんよかったのは、体験を語ることで、気が楽になったこと。隠れてお酒を飲んでいたときのように、人に嘘をつかなくてもよくなった。じつはその後ろめたさに苦しんでいたんでしょう」 ちょっとでも嫌なことがあれば“いまお酒が飲めたら”という思いが一瞬頭をよぎる。だが、宮田さんはこの32年間、一滴の酒も口にしていないという。子どもを思う母の心が、彼女を酒から遠ざけている。 前出の香山さんは、「女性のアルコール依存症患者も増えている」と語る。 「人間関係の割り切れないストレス、嫁姑、ご近所付き合い……女性にはそういう割り切れないものがついてまわる。自分に責任を感じて、内にストレスをためがちな人は依存症に陥りやすいですから、注意が必要です」
© 産経新聞社 【たばこと健康】男性とパターンが異なる女性の生涯喫煙率 私の勤務する高崎健康福祉大学(以下、本学)では、平成17(2005)年から毎年学生を対象に禁煙アンケートを実施してきた。質問内容は、本人の喫煙状況、家族などの喫煙状況、喫煙に関連する疾病の認知度などである。今回は、それらのデータを利用して学生の親世代の喫煙率について考えてみたい。対象期間は平成18年を基準とし、4年ごとの12年間とした。
対象期間における本学学生の父親と母親の喫煙率を表の1行目と3行目に示す。また、学生の親は50代が多いと考えられることから、比較のため、同じ年の全国の50代の男女の喫煙率(データ出典は厚生労働省・国民健康栄養調査)を、表の2行目と4行目に示した。
本学学生の父親の喫煙率および全国50代男性の喫煙率は、対象期間を通して低下を続け、12年間で共に10ポイント以上低下している。一方、母親と50代女性の喫煙率は必ずしも、そうした変化をたどっていない。母親の喫煙率は基準年の4年後の22年には低下したが、8年後には増加し、最終年の30年は基準年と同じ9%であった。全国の50代女性の喫煙率は22年、26年と連続して上昇し、30年には低下したものの基準とした18年よりも1ポイント高かった。
© 産経新聞社 【たばこと健康】男性とパターンが異なる女性の生涯喫煙率 なぜ女性の喫煙率は男性のような減少傾向を示さないのだろうか? 理由を探るため、対象期間の各年に50代であった女性の世代(以下、群という)の喫煙率をそれぞれの10年、20年、30年前にさかのぼって調べた結果をグラフに示す。なお、厚生労働省国民健康栄養調査データは平成元年以降に限られるため、昭和63(1988)年以前の喫煙率はJT全国喫煙率調査のデータを利用した。
平成18年に50代であった群の喫煙率を30年前(20代)から10年ごとに追うと、この群は年とともに喫煙率が低下し、50代では20代の約3分の2になっていた。同様に30年に50代の群の喫煙率も20代から50代にかけて10年ごとに低下し、30年間で約3分の2に減少していた。
ところが、22年と26年に50代であった2つの群の喫煙率は、様相が異なっている。20代で16%以上あった喫煙率が、10年後の30代には、ともに11%へと低下した。しかし、10年後の40代になると、上昇して13・5%を超え、50代に再度低下するというパターンを示している。
ちなみに、男性の喫煙率についても同様に30年間の動向を調べてみたが、20代が最も高く、年を経るにつれて順次低下するというパターンが、すべての群に共通していた。
40代で女性の喫煙率が増えるという現象は、ライフサイクルに関係があるのかもしれない。独身の20代では喫煙しても、30代の妊娠・出産期には禁煙する。子育て中は禁煙していたが、子どもが親の手を離れる40代で喫煙を再開するとの推測も成り立つ。しかし、これですべての群の説明はできないので、さらに追求する必要がある。
今回示したように、女性の喫煙率の動向には、男性の場合とは異なった傾向が認められる。その理由はまだ説明しきれないが、喫煙の動機や背景を把握したうえでの、きめ細かな禁煙支援が必要と考える。
(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)
アルコールを飲んだ翌日に、具合が悪くなるのはよくあること。さらに二日酔いに効くとされる方法にはたいてい、科学的な裏付けがないという。お酒は翌日に頭痛や吐き気を引き起こす可能性があるだけでなく、不安やうつ病といった精神の健康状態に影響する恐れもある。 でももし飲んでいる最中におかしいと感じたら? もしくは二日酔いが異常にひどかったら? これらのサインがある人は、アルコールに対するアレルギーか、アルコール不耐性症かもしれない。 アルコールアレルギーの症状ってどんなもの? アルコールは依存症以外にも、アルコールに含まれる亜硫酸塩やヒスタミンへの反応、既存のアレルギー症状の悪化、ぜんそく症状の誘発など、さまざまな形で体に悪影響を及ぼす可能性がある。 「本当にアレルギーが原因で、アルコールに対する反応が起きる可能性は低いのです」と説明するのは、イギリスのアレルギー関連情報サイト「アレルギーUK」でアドバイザーを務める看護師のホリー・ショーさん。 「本来のアレルギーは、免疫システムが食品やそのほかの物質に不適切に反応した場合に発生します。アルコールの場合は、たいてい亜硫酸塩やヒスタミン(一部の飲み物に含まれる)に対する過敏が原因ですが、それらは非アレルギー性のものです」 では、アルコールアレルギーのサインっていったい? 皮膚や呼吸器、循環器系に症状が現れる可能性があるとショーさんは言う。「赤い発疹や目、唇、顔の腫れ、呼吸困難、胃のむかつき、低血圧によるめまいや失神を伴うこともあります」と彼女は付け加える。「アレルギー疾患は遺伝によるものかもしれませんが、家族歴のない人にも起こり得ます」 顔が赤くなるのはアルコールアレルギーのサイン? 「もし酒を飲んで顔が赤くなるなら、アルコール過敏症か不耐性症かもしれません」と言うのは、家庭用品のレビューサイト「キッチン・ホーム」の栄養士、ジェイド・テイラーさん。「アルコールを摂取すると、ほてりが起こって顔が赤くなる可能性があります。これは、体が摂取された物質をスムーズに消化できていないサインです」 すべてのアルコールには “エタノール” と呼ばれる物質が含まれていて、アルコールを摂取すると、体はエタノールをほかの物質に変換したり、代謝で体の外へ排出しようとする。 「アセトアルデヒドはこの過程で生成される代謝物で、非常に有毒です。通常(とくに適量であれば)体は問題なくアルコールを代謝できるのですが、アルコール不耐性の人の場合、アルコールを分解する代わりにアセトアルデヒドが蓄積してしまうのです」 過剰なアセトアルデヒドは、病気、不整脈、前述のような顔のほてりを引き起こすおそれがある。 アルコール不耐性症の原因は遺伝のケースもあると、テイラーさんは語る。もしくはヒスタミン(息切れを引き起こす可能性がある)や、一部の酒に含まれる亜硫酸塩が原因かもしれないとショーさんは言う。検査が必要かどうかは、医師に判断してもらおう。原因が明らかでないうちは、アレルギー反応が起こるドリンクは飲まないのがベスト。 アルコールに対するアレルギー反応とひどい二日酔いの違い 飲酒により起こる症状と、アルコールに対するアレルギー反応はまったく異なる、とショーさんは説明する。 「アルコールを過剰に摂取すると、意識状態の変化、胃の不調による嘔吐や吐き気を引き起こすおそれがあります。またビール、シードル、蒸留酒のようなヒスタミンを含むアルコール類は、くしゃみ、鼻水、呼吸困難、胸焼け、頭痛など、アレルギーと勘違いされそうな症状を起こすことがあります」 さらに食事中にアルコールを摂取すると、食べ物に対する真のアレルギー反応に気づかない可能性がある、とショーさんは付け加える。「飲酒しながら食べると、食べ物の吸収増加や誤飲が原因で、食べ物による誘発性のアレルギー反応が起こるリスクが高まります」 アルコールアレルギーと湿疹の間に関連性はある? 「アルコールによって、じんましんなど肌の状態が悪化することもあります」と語る、看護師のショーさん。アルコールを飲んだあと、赤い発疹やかゆみを伴う発疹が現れることがあります。アルコールを飲むと顔が赤くなる人がいますが、これはアレルギー反応ではありません」 ぜんそくについては? 飲酒によって呼吸に影響が出るというぜんそく持ちの人もいるけれど、ショーさんによると、これは多くのアルコール飲料に含まれる亜硫酸塩が原因だそう。 「ぜんそく患者など、気道の敏感な人がアルコールに含まれる亜硫酸塩を摂取すると、喘鳴(ぜんめい)を起こす可能性があります」とショーさん。 「アルコールに含まれる亜硫酸塩の量は製品によって異なりますが、二酸化硫黄は法律でラベルに表示することが義務付けられている14の主要な食物アレルゲンの1つです」 アルコールアレルギーかどうかの検査はできる? 治療法はあるの? アレルギーがあるかどうか心配な場合は、かかりつけの医師に相談してみよう。 「本質的にアルコールアレルギーではないけれど、飲酒によって不快な症状が起きるのには、さまざまな理由が考えられます」とショーさんは言う。 「アレルギー検査が必要かどうか、または問題が非アレルギー性の原因かどうか、医師が診断してくれます(たとえば、ヒスタミン不耐性や亜硫酸塩感受性の検査は、今回の場合役に立たないなど)」 アレルギーのベストな治療法は、アレルギー反応を引き起こす物質を可能な限り避けること。「フードやドリンクの材料、成分ラベルのチェックも、できることの1つです」とショーさんは語る。「アルコールを避ける場合は、マリネやソースなど、アルコールが入っている可能性のある食品にも注意してください」とも。 original text : Lucy Abbersteen & Jennifer Savin translation : Mutsumi Matsunobu ※この記事は、海外のサイト『コスモポリタン』で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
酒類、タバコ、コーヒー、お茶は「嗜好品(しこうひん)」と言われます。生命を維持するのに必要な食品とは違って、おもに「楽しみ」としてとるのが嗜好品です。 なかでも、タバコとコーヒーは相性がいいようで、喫煙所では、必ず缶コーヒー片手に煙をくゆらせる姿が見受けられます。実際、喫煙者に聞くと「この2つは欠かせないでしょ」との回答。このコンビが好まれるのは、どうしてなのでしょうか? ◆疲労回復と興奮剤 脳内のドーパミンが双方から刺激される! 脳疲労を癒し、瞬時に元気にしてくれるのが「嗜好品」です。タバコはニコチンに薬理作用があり、少量では興奮、多量だと鎮静の、両方の作用があります。 コーヒーにはカフェインが含まれ、眠気が覚め、頭が冴え、やる気と元気が出る興奮作用があります。 また、缶コーヒーには製品によって原材料に砂糖が使用されているものも多く、白砂糖を摂取するとすぐに酵素によってブドウ糖に分解され、血液によって脳に運ばれ、エネルギー源となります。 ですから、タバコとコーヒー(とりわけ砂糖の入った缶コーヒーなど)は、互いの相乗効果で、瞬時にして疲れを取り去り、元気でやる気にさせ、気分を向上させてくれるのです。 タバコとコーヒーの相性が良いと感じるのはこのためと言えるでしょう。「脳内快楽物質」と呼ばれるドーパミンの働きによるからです。 ◆あなたの脳はどんな状態? 仕事では、厳しいノルマを課せられながらもスピードと効率を高めるよう駆り立てられるる私たち。仕事で多忙なスケジュールをこなしながら、家庭でも父親や母親としての責任を果たそうと頑張っています。 また、インターネットではさまざまな通信機能が発達し、なかなかonとoffの切り替えができなくなってきています。1日でさまざまなことをしなければならず、生活時間も乱れがちに。脳が慢性の疲労状態に陥っていることも少なくないでしょう。 ◆脳疲労のセルフ・チェック □ イライラしたり、怒りやすくなっている □ 夜型の生活が中心で、朝、起きるのが辛いと感じている □ 夜中や夜明け前に目が覚めることが多い □ コーヒーやお茶を飲まないと、一日が始まらない □ 頭にどんよりと雲がかかったような感じがしている □ 集中できないことが多い □ 元気を出すのに、甘いもの、カフェイン、タバコが必要 □ 疲れを感じることが多い □ 砂糖がたっぷり入った食品や、カフェイン、タバコで頭痛が治まる □ スリルでドラマティックな展開を期待している 以上に当てはまるものが多いほど、あなたの脳は疲労しています。 ◆耐性や依存性の問題 タバコやコーヒーのとりすぎで問題視されるのは、ドーパミンの過剰分泌による「依存性」です。 タバコもコーヒーも、一時的な疲労回復や元気・気分の向上には役立ちますが、常習化したり、過剰摂取が続くと、ドーパミンを枯渇させ、以前より大量に摂取しないと効果が出なくなり(耐性)、ついには、それなしにはいられない「依存症」に発展するリスクがあります。 また、タバコには肺がんや心臓病などの健康リスクと精神的依存、コーヒーの飲みすぎ(1日5杯以上は過剰という見解もあります)は、頭痛・不整脈・イライラなどの離脱症状(禁断症状)や、記憶力の低下などが指摘されています。 タバコがカフェインの効きを悪くするという知見もあります。 ◆「たしなむ」に留まる タバコもコーヒーも、適度・適量を「楽しむ」という、嗜好品本来の「たしなみ」に徹していればよいのですが、ハマってしまうと、以上にあげた健康リスクを抱えることになってしまいます。 飲まずにはいられない状態から、生活習慣を改善して、適度に飲むことをエンジョイしたいですね。 ●井上 愛子(いのうえ あいこ) 保健師・助産師・看護師・保育士 株式会社とらうべ社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
●適度な運動 脂質異常症を改善するには、食生活を見直すことが基本となりますが、ほかにも生活習慣で心がけたいことをご紹介していきます。 ひとつは適度な運動です。運動をすると、体内で脂肪の流れが良くなるように調整する「リポたんぱくリパーゼ」という酵素が活性化されるので、中性脂肪が減って、善玉(HDL)コレステロールが増えます。 また、体脂肪がエネルギーとして消費されるので、肥満の改善にもつながります。そして、血流も良くなるので、血管が拡張して血圧が下がり、動脈硬化の予防にも役立つのです。 脂肪をエネルギーとして消費して、脂質の代謝をうながすには、有酸素運動が効果的です。とくにウォーキングなら、誰でも手軽に始められるでしょう。 ガイドラインでは、できれば毎日、1日30~60分間、あるいは1週間で合計180分以上の運動が勧められていますが、まずは週に3日程度からでもかまいません。その場合は、3日以上運動しない日が続かないようにしましょう。 ●禁煙する タバコを吸うと、悪玉(LDL)コレステロールと中性脂肪が増加し、善玉(HDL)コレステロールは減ってしまいます。 また、血液を固まりやすくする作用があるホルモンの分泌が促されるので、血管内で血栓ができやすくなり、動脈硬化になるリスクも高まります。1日も早く、禁煙したほうが良いでしょう。 ●お酒はほどほどに 適度なお酒は、善玉(HDL)コレステロールを増やす作用がありますが、飲み過ぎると、中性脂肪を増加させたり、肥満の原因にもなったりします。 1日に飲む量は、日本酒になら1合、ビルなら中びん1本、ウイスキはダブルで1杯、赤ワインはグラス2杯くらいに留めましょう。 また、毎日お酒を飲むと、肝臓に負担をかけてしまうので、1週間のうちに連続して2日間、お酒を飲まない「休肝日」をもうけるようにしましょう。 ●ストレスと上手につき合う ストレスを感じると、交感神経が刺激され、血管を収縮させ、血圧が上がります。また、体内でさまざまなホルモンが物質たくさん作られ、コレステロール濃度や血糖値が高まります。 さらに、ストレスがたまると、やけ食いやけ酒などに走りやすく、こうした意味でも、中性脂肪やコレステロールを増やしやすいのです。 まったくストレスを感じずに生活していくのは無理ですが、軽く受け流したり、上手に発散したりするなど、ストレスとうまくつき合っていけるようにしましょう。 (この記事の監修: マオクリニック 院長 / 岡田昌子 先生)
日本人の半数にあたるとされる「お酒が飲めない体質」の人が持つ遺伝子タイプは、難病「再生不良性貧血」の原因のひとつとなっているケースがあることを、京都大などのチームが突き止めた。血液をうまく作れず貧血を起こしたり、出血が止まりにくくなったりする病気で、これまで原因が見逃されてきた可能性がある。 再生不良性貧血の多くは、免疫細胞が血液をつくる細胞を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患とみられ、後天的に発症する。一方、生まれながらに発症するケースもあり、原因となる遺伝子が分からない患者もいた。 研究チームは、原因不明とされてきた患者の全ての遺伝子を解析した。すると複数の患者で、人体に有害なホルムアルデヒドという物質を分解する酵素「ADH5」をつくる遺伝子と「ALDH2」という遺伝子が変異しているケースがあることがわかった。 ALDH2は飲酒後、体内でアルコールからできるアセトアルデヒドという物質を分解する酵素をつくる遺伝子で、日本人を含む東アジア人の半数に変異があるとされる。この変異があると酒が飲めなかったり、飲酒時に顔が赤くなったりすることが知られ、体質を調べる遺伝子検査も普及している。【ポッドキャスト】禁酒、コロナに効果あり? 南アフリカで驚きのデータ
皆さん、薬の飲み忘れ、飲み間違いはありませんか? 気を付けているつもりでも、薬を飲まれている方なら一度は経験があるのではないでしょうか。今回は飲み忘れ、飲み間違いを防ぐ工夫や、対処法をタイプ別にご紹介します。 ■飲んだかどうか分からなくなる、うっかり忘れてしまう人 1週間分や1日分の薬がセットできるお薬カレンダーやピルケース、小袋を使用し、薬をあらかじめセットしておく方法がお勧めです。薬の数が少ない方は、薬のシートにペンで日付を書いておくのも簡単でいいですね。薬を飲んだかどうかが一目で分かるようになります。そしてセットした薬を食卓やリビングなど目に付く所に置いておくことで飲み忘れの防止にもなります。この方法は毎回、薬を用意するのが面倒な方にもお勧めです。外出先や職場へ持っていくのを忘れてしまうという方は、いつも持ち歩くかばんや職場にも予備の薬を置いておくとよいでしょう。 ■決まった時間の薬を忘れてしまう人 「朝の薬は忘れないが、夜の薬はつい忘れて眠ってしまう」というように、決まった時間の薬を忘れてしまう方は、用法の変更を医師に相談してみるのも一つの方法です。例えば、長時間作用型のスルホニル尿素(SU)薬(グリメピリドなど)は、通常1日1回の薬ですが、1日2回で処方されている場合もあります。1回に変更できないか相談してみましょう。食前と食後両方に薬を飲む指示がある方では、食後の薬も食前へまとめることが可能な場合もあります。 また、飲み忘れた場合でも、気が付いたときに遅れて飲んでも問題のない薬もあるため、その回の服用を飛ばさなくて済む場合があります。薬ごとに飲み忘れ時の対応を確認してみましょう。 ■ 薬の種類が多く、飲み間違えてしまう人 このような方は、薬の一包化を試してみましょう。一包化とは、服用時間が同じ薬を薬局などで1回分ずつ1袋にまとめてもらう方法です。 その他にも、最近では配合剤と呼ばれる複数の薬効成分を一つの薬の中に配合した薬や、1回服用すると効果が1週間持続するタイプの週1回製剤も多く発売されています。これらを上手に活用して、1回の服用量や回数、手間を整理することで飲み間違いを少なくすることが期待できます。 医師や薬剤師に飲み忘れ、飲み間違いを伝えることをためらってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ相談してください。正しく服用できる方法を一緒に見つけていきましょう。 大阪大学医学部附属病院 薬剤部 病棟薬剤室 嶺尾 里奈(みねお・りな) ※『月刊糖尿病ライフさかえ 2019年10月号』「お薬との上手な付き合い方」より
コロナ禍による外出自粛でオンライン飲み会が増えるなど、最近は
お酒 を飲むスタイルに変化が見られる。その結果、お酒を飲む量が変わった人も多いのではないだろうか。そこで、アルコール依存症治療の第一人者であり、日本初のアルコール専門治療病棟を立ち上げた国立病院機構久里浜医療センター院長 樋口進先生に、アルコール依存症について話を聞いた。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/ViewApart) ■ここ数年、日本人の飲酒量が増えている? WHO(世界保健機関)のレポートによると、世界では成人(15歳以上)の23億人がアルコールを摂取しており、これは15歳以上の世界人口の約43%に当たる(※1)。
※1 WHO. 2018 Global Status Report on Alcohol and Health.
また、15歳以上の年間平均飲酒量は2000年以降、ヨーロッパでは少しずつ減少し、アメリカでは横ばいであるのに対し、日本を含む西太平洋地域では増加していることがわかっている(図表1)。
出典:WHO. 2018 Global Status Report on Alcohol and Health. P45 Fig3.5 さらに、日本を含む西太平洋地域の年間平均飲酒量の推移(2000年→2016年)を見てみると、オーストラリアやニュージーランドは減少しているが、日本は増えていることが判明した(図表2)。
出典:WHO資料 2019 加えて、最近はコロナ禍の影響により、アルコールとの付き合い方が変化したといわれている。日本アルコール関連問題学会は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ネットを介した新しい飲み会のスタイルが普及したほか、不況による経済不安や、ステイホームによる孤独感を紛らわせるための手段として飲酒量が増え、その結果、飲酒問題が生じることを懸念している。
■多量飲酒は、心身のほか家庭や仕事にも影響する では、飲酒量が増えると、どのような問題が起こるのだろうか。
WHOによると、アルコール消費による死亡者数は300万人で、結核やHIV/AIDS、糖尿病の死亡者数を上回っている(※2)。
※2 WHO. 2018 Global Status Report on Alcohol and Health.
さらに、過度な飲酒は「出生前・乳幼児期」「少年期・青年期」「成年期以降」のすべての年代において、さまざまな心身の障害の原因となるだけでなく、暴力や飲酒運転といった社会的問題のほか、夫婦の不和や児童虐待などの結婚・家庭問題、そして失職や事故などの職業上の問題など、さまざまな問題を引き起こすことがわかっている(図表3)。
出典:厚生労働省サイト「成人の飲酒実態と関連問題の予防について」 なかでも、「アルコール依存症」は多量の飲酒を続けることで脳に障害が起き、自分の意思で飲酒の量や時間、状況をコントロールできなくなる病気で、習慣的に飲酒をする人なら誰でもなりうるもの。さらに、自分では気づかないうちに進行するのが特徴だという。
日常的に飲酒を続けていると、少しずつ飲酒量が増え、しばしば多量飲酒による記憶障害が生じるようになる。さらに症状が進むと、飲みたい気持ちが抑えられなくなり、飲酒量が増えて心身に悪影響を及ぼし、仕事や家庭にまで支障をきたす。加えて、アルコール依存症は本人が病気と認めたがらないケースが多く、治療や相談につながりにくいという問題もある。
■女性は男性より、アルコールの影響を受けやすい アルコール依存症のリスクは、男性よりも女性のほうが高いといわれている。そもそもアルコールは、体内に入ると水に溶けて薄められるが、脂肪には溶けにくいもの。女性は男性に比べて体が小さく脂肪が多いため、男性より体内のアルコール濃度が高くなりやすい。また、アルコールは肝臓と筋肉で分解されるが、女性は男性より肝臓が小さく、筋肉量も少ないため、アルコールが長時間、体内に残りやすい。こうした理由から、女性は男性よりもアルコールの影響を受けやすく、依存症になるまでの時間も短い。そのため世界の多くの国では、女性は男性より飲酒量を少なくすべきだといわれている。
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」によると、節度ある適切な飲酒量は、一日あたりの純アルコール摂取量が20g程度。お酒に換算すると以下が目安となるが、女性はさらに少ない量にとどめたほうがいいといわれているから、お酒好きの女性は注意が必要だ(図表4)。
出典:大塚製薬「減酒.jp」 ■あなたのお酒の飲み方をチェックしてみよう! 「外出自粛などの影響で、最近お酒を飲む量が増えた」「なかなか休肝日をつくれない」という人は、減酒.jpの「お酒の飲み方チェック」で、アルコール依存の度合いをチェックしてみよう。アルコール依存の疑いが高い場合には、アルコール依存症の治療ができる医療機関やクリニックで診察を受けることが勧められるが、保健所などに相談することもできる(全国の相談窓口・医療機関を探す)。
アルコール依存症の治療法は、これまでの「断酒」に加え、飲酒量を減らす「減酒」を選ぶことも可能だ。減酒はヨーロッパではかなり前から行っている治療であり、軽症の人なら減酒を達成でき、継続することで安定した状態を保つことができる。一方、重症の場合、本人が「依存症ではない」と否認するケースが多いが、「減酒」という選択肢を提示することで治療の間口が広がり、早期の回復につながることもあるそう。
また、断酒も減酒も心理社会的治療が中心となるが、薬を使用して治療をサポートできるという。いずれにしても、適切な治療が必要となるので、まずは医師に相談することが重要だ。適度な飲酒は楽しみを増やすものだが、付き合い方によっては、さまざまな弊害をもたらすことに。一度、飲酒習慣を見直し、自分なりの最適なアルコールとの付き合い方を見つけてみてはいかがだろうか。
(籔 智子 写真=iStock.com)
彼氏の健康や二人の将来を考えれば、一日でも早く禁煙を始めてほしいもの。とはいえ「タバコをやめて」とお願いしたところで、すぐに実行してもらえないケースが大半なのではないでしょうか。そこで今回は、10代から20代の独身女性500名に聞いたアンケートを参考に「『もう禁煙するしかないな…』と彼氏の逃げ道をふさぐ一言」をご紹介します。 【1】「じゃあ、週末から禁煙始めようよ」と期日を決める 「『いつから?』と日にちを尋ねて、強引に禁煙を始めさせる!」(20代女性)というように、「やめるやめる」と調子のいいことばかり言う彼氏には、さっさと禁煙開始日を設定してあげるのが効きそうです。「よし、私も協力するね!」と盛り上がって、後戻りしづらい雰囲気を作ってしまいましょう。 【2】「タバコをやめるまでキスはお預け」と我慢を強いる 「臭いがイヤで接触禁止を言い渡したら、急にやる気を出し始めた(笑)」(20代女性)というように、彼女ならではの罰を設けるのもよさそうです。一定期間禁煙できたらご褒美を与えるなど、アメとムチを上手に使い分けてサポートしてあげましょう。 【3】「あなたに長生きしてほしいの」としおらしく頼む 「タバコのせいでもし病気になったら悲しい…と涙ぐんでみた!」(10代女性)というように、本気で健康を案じてみせて、男心を揺さぶる人もいます。ここぞとばかりに女優になって、目を潤ませて迫れば、彼氏も受け止めざるを得ないでしょう。 【4】「友達の彼氏は一発で禁煙成功だって!すごーい」と競争心をあおる 「禁煙した男友達を褒めちぎって、彼氏の闘争心に火をつける作戦!」(20代女性)というように、負けず嫌いの男性の場合、仮想敵を作ってあげるのが効果的かもしれません。「本当にやめられるかなー?」などと疑いの目を向けると、負けん気を刺激できそうです。 【5】「こんな肺になってもいいの?」と真っ黒な肺の画像を見せる 「体に悪いといくら言っても無駄なら、ショッキングな写真でビビらせる」(10代女性)というように、タバコの健康被害をわからせるために、視覚に訴える方法です。一本吸おうとするたびに「やめないとやばいよ…」と脅しをかければ、そのうちタバコに手を伸ばしづらくなるでしょう。 【6】「煙を吸わされてる私がどうなってもいいんだ…」と悲しんでみせる 「『私にも悪影響があるのにやめないのは、愛がないから?』と面倒くさい女を演じてみる」(20代女性)というように、愛情を盾に禁煙を促すのも手です。「禁煙は私のためでもあるの」などと相手が反論しづらそうなことを言って、観念させてしまいましょう。 【7】「私との将来を真剣に考えてないんでしょ!」と怒りを爆発させる 「『結婚するならタバコをやめてね』って言ってあるのに一向に禁煙しないので、思いきりキレてやった!」(20代女性)というように、気持ちをストレートにぶつけるのもいいでしょう。先々のことを考えての「激怒」だと伝えれば、真剣に聞き入れてもらえそうです。 【8】「吸い続けるなら、私とは別れて」と二者択一を迫る 「『禁煙する気がないならもう会わない』と宣言して、踏ん切りをつけさせた」(20代女性)というように、タバコか自分かを選ばせる方法です。彼氏も禁煙の必要性を感じているようなら、タバコを選ぶ可能性は低いので、自動的に禁煙を決意させる結果となるでしょう。 【9】「もういい。勝手にすれば?」と愛想を尽かす 「『明日からがんばるから!』と言われても無反応を貫くようにしたら、ある日『今日で禁煙一ヶ月』と報告が!」(20代女性)というように、手を尽くしても無駄だったなら、突き放すのもよさそうです。容認したと誤解されないよう、喫煙への冷たい視線は保っていましょう。 どの方法が効果的かは、相手の性格に左右されそうです。見極めが難しければ、優しく促したり厳しく迫ったり、いろいろと試してみるといいでしょう。
お酒を飲む機会が増えますよね。しかし酒ジャーナリストの葉石かおりさんによると、老化の一因とされる「糖化 」と「飲酒」には深い関係があるのだといいます。そこで葉石さんの著書『酒好き医師が教える もっと!最高の飲み方 』(日経BP社)より、今回特別にその一部を抜粋し、老いとお酒の関係性についてお届けします。
糖化=身体のコゲ 電車の窓に映った自分の老け顔にハッとする。 残念なことに、五十路を過ぎ、こんなことがやたら増えてきました。中でも特に気になるのはお肌のハリやシミ、シワ。四十路までは何とか重力に耐えていたのに、五十路になるとこうも違うのかと、鏡を見る度、両手で頬を引き上げながら、深いため息をついてしまいます。 「アラフィフなんだから仕方ない」で済ませればいいのかもしれませんが、あきらめきれないのが女性というもの。美容皮膚科でレーザーをあてたり、アメリカの皮膚科医が作ったという化粧品を試してみるものの、「焼け石に水」といったふう。 最後は、誰もが加齢には勝てないのかもしれません。とはいえ、同じアラフィフでも、人によって見た目にずいぶん違いが出てくるように思います。例えば石田ゆり子 さんや永作博美 さんをはじめ、驚くほど若く見える方もいます。
ではどうしてここまで差が出るのでしょうか? こんなとき、私がいつも気になるのが「飲酒との関係」です。最近でこそ休肝日を週2~3回も設けて、節酒に努めるようにしているものの、若い頃の酒量はそれはもう半端ではありませんでした。そのツケが今になってきているのでは…、と心配でなりません。 そういえば、このところ、テレビの健康番組などで「糖化」という言葉をよく耳にするようになりました。何でも、糖化は老化要因の一つで、肌のハリやシワなどにも密接に関係しているのだそう。 そこで、「糖化ストレス研究センター」という糖化専門の研究機関を有する同志社大学 を訪れ、同大学生命医科学部糖化ストレス研究センターチェア・プロフェッサー教授の八木雅之さんに話をうかがいました。
余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質が変化 「糖化 を一言で言えば『体のコゲ』。身近な例を挙げると、パンケーキなどを焼くと表面がこんがりしたきつね色になりますよね。これはパンケーキなどに含まれる糖と、卵や牛乳、そして小麦に含まれるたんぱく質が結びついて起こった現象です。これがまさに『糖化』なのです」 この話だけだと何やら「おいしそう」と思ってしまいますが、八木さんによると、この糖化が体の中で起こると大変なことになるというのです。 「体の中で起こる糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていくことです。たんぱく質は、臓器、皮膚、筋肉、血管などをはじめとする体を構成する重要な成分です。
つまり、糖化により体を構成するさまざまな要素が劣化していくわけです」 八木さんによると、牛の皮や骨などをブドウ糖溶液につけておくと、それだけで徐々に組織が糖化して、数日で茶褐色に変色し、弾力を失っていくという(写真上)。 「糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成されます。AGEsはさまざまな経路を経て作られ、一口にAGEsと言っても、論文に報告されているだけでも数十種類あり、実際のところ100種類以上あるとも言われています。このAGEsこそ、老化を促進させてしまう厄介な物質なのです」 老化を促進させるなんて、何とも恐ろしい物質! では具体的に、糖化が進み、AGEsが多く生成されるとどんな悪影響が出てくるのでしょう。 「見た目に密接に関わる肌への影響としては、まず肌の弾力が失われます。さらにシワ、くすみ、血色不良など、女性にとってはありがたくない作用が肌表面に現れます。肌の弾力が低下する原因はさまざまありますが、糖化の影響が大きいと言われています。私たちの研究でも、糖化ストレスにさらされている糖尿病患者は皮膚の弾力が失われやすいことが確認されています(下図)」
2型糖尿病患者と健常者の皮膚弾力性が加齢に伴って変化する度合いを比較した同志社大学の研究。神奈川県相模原市の北里大学病院の外来患者を対象に測定したデータ。2型糖尿病患者では、健常者に比べて弾力性が下がっている。(データ:JClin Biochem Nutr.2008;43(Suppl1):66-69.)
外からせっせとレーザー治療をしたり、高価な美容液を塗っても、いっこうにたるみが改善しなかったのはこういうことだったんですね(涙)。
お酒と糖化は関係あるの? では、実際のところアルコールと糖化 は関係しているのでしょうか? 「実は、アルコールと糖化は密接な関係にあります。先ほど、糖とたんぱく質が結合してAGEsを生成すると説明しましたが、実は、その生成過程の中間生成物として『アルデヒド』が生成されているのです。つまり、糖化のプロセスでは、糖からアルデヒドが生成され、それがたんぱく質と結びつくことで、AGEsの生成が進むのです(注)」
アルデヒド…、何やら聞き覚えがある言葉と思ったら、お酒の分解過程でできるアセトアルデヒドのこと。お酒の中に含まれるアルコール(エタノール)は、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに変換されます。もしやこのアセトアルデヒドがたんぱく質とくっついて悪さをするのでしょうか? 「その通りです。アルコールが体内で分解されて生じたアセトアルデヒドも、同様にたんぱく質と結合し、アセトアルデヒド由来のAGEsができます。つまり、アルコールには、AGEsの生成を促進してしまうという作用があるのです」
飲酒機会が多いほど体内にAGEsが蓄積される ということは、当然、お酒をたくさん飲んで体内にアセトアルデヒドができる人ほど、糖化が進み、AGEsが生成されるということ。老化肌に悩むお酒好きとしては、これは目を背けられない事実です。 八木さんは、同志社大学 の糖化ストレス研究センターの研究から、「実際に飲む頻度が高い人ほどAGEsが体内に多く蓄積していることが確認された」と話します。
「私たちは、皮膚のAGEsの蓄積と生活習慣の関係を確認するため、日本人244人の生活調査とAGEsの測定を行い、結果を解析しました。生活習慣の中で相関関係が認められたのが、喫煙経験、飲酒習慣、睡眠時間です。飲酒習慣については、グラフのように、飲酒頻度が週4日以上のグループは、週3日以下のグループに比べてAGEsの蓄積量が高くなりました(下図)。ただ、現時点では飲酒量との関係は明確になっていません」 中でも最も注意しなくてはならないのが「酒を飲んで顔が赤くなる人」、つまりアセトアルデヒドを分解する(アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性が低い人だと八木さん。 「お酒を飲んで顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドの分解能力が低いため、体内においてアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなります。そのため赤くならない人に比べ、AGEsの生成が促進されやすくなります。これにより体内のたんぱく質の変性が進み、老化やさまざまな疾患のリスクが高まってしまうのです」 お酒を飲んで顔が赤くなる人(フラッシャー)は、やはり飲酒による悪影響を受けやすい。こう聞くと、顔が赤くならない人は、「大丈夫」と思うかもしれませんが、そう都合よくはいきません。
結局、飲んで顔が赤くならない人であっても、飲む量が多くなるとアセトアルデヒドの影響は避けて通れないのです。 「よく二日酔いになっている人、日常的に多量飲酒をする人もまた、アセトアルデヒド由来のAGEsの生成が促進されます。ALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素の一種)の活性が強い人はアセトアルデヒドの分解が早いとはいえ、量を飲めばアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなるのでリスクは高まります。顔が赤くならないから安心ということではありません」 悲しいかな、やはりお酒の飲み過ぎは糖化リスクを高めてしまうのです。八木さんは分かりやすい言葉でこうまとめてくれました。 「多かれ少なかれ、加齢とともにAGEsの蓄積は増えていきます。これは生きていく限り仕方のないことと言えます。そこに『飲酒』という負荷をかけることで、その蓄積の速度が早まるわけです」 飲み過ぎに一利なし、ということですね。 注:AGEsの生成経路は複雑・多経路で、実際には糖だけでなく脂質からもAGEsが生成される経路がある。
mi-mollet(ミモレ)
『酒好き医師が教える もっと! 最高の飲み方』著者:葉石かおり 監修:浅部伸一 1400円(税別) シリーズ13万部を突破の第二弾! 「酒好き」必携の、健康的においしく飲むための一冊。気になる「血糖値」「中性脂肪」、老化の主犯「糖化 」と飲酒の関係性や、「がん」リスク、酒乱になりやすい人の傾向など、酒飲みならば知っておきたい健康情報が満載です。
禁煙治療のためのスマートフォン用アプリを医療機器として製造販売することを厚生労働省の部会が19日、了承した。近く承認される。アプリの医療機器承認は国内初になるという。 健康に関するアプリは多いが、医療機器として承認されると治療効果をうたうことができる。今後、保険適用されれば公的医療保険が使えるようになる。 アプリはベンチャー企業キュア・アップと慶応大医学部が開発した。禁煙外来で医師の診察を受けて患者に処方される。紙巻きたばこを吸っている人が対象で、禁煙治療薬と併用する。対象患者数は最大で約7万人という。 同社によると、ダウンロード後、医師が発行した「処方コード」を患者が入力してログインする。専用機器で呼気に含まれる一酸化炭素の濃度を測定すると結果が自動で記録される。喫煙したい衝動に駆られた際、例えば「たばこを吸いたい」などと入力すると学会の指針などに基づき、「ガムをかみましょう」と助言が表示される。 約570人を対象とした臨床試験(治験)では、禁煙治療にアプリを使ったグループは、使わなかったグループより半年後に禁煙を継続できた割合が、13ポイント以上高かった。 部会終了後に記者会見した、医師でもある同社の佐竹晃太社長は「ソフトウェアという目に見えないものが治療することを国が認めたことが大きい」と話した。(姫野直行) ■「アプリのおかげで禁煙成功」 禁煙治療のためのスマートフォンアプリの製造販売が19日に厚生労働省の部会で了承され、近く承認されることになった。アプリの臨床試験(治験)に参加した男性は「アプリのおかげで禁煙に成功した」と話す。
ボストンのブリガム・アンド・ウイメンズ病院の研究者たちが、医学雑誌『ランセット』にパスタ好きにはありがたい研究結果を発表してくれました。 「パスタはストレスの軽減と睡眠の質向上に寄与し、なおかつ夕食に食べても太らない」といういいことずくめの研究結果です。 パスタの本場イタリアにおける調査によれば、イタリア人の大半は昼食にパスタを食べ、夕食に食べる人は全体の35%にとどまっています。日本でも、ランチでパスタを食べる方が多いのではないでしょうか。 しかしこの結果が本当であれば、パスタは夜食べる必要があります。 ホルモンとパスタの関係 あらゆる疾病の要因のひとつとなっているストレスは、コルチゾールなどのホルモンの分泌を刺激します。これによって、インスリンの作用が抑えられてしまうことになるのです。 いっぽう、パスタを食べる、つまり炭水化物を摂取するとインスリンの分泌が促されます。 インスリンがより産生されると、アミノ酸のトリプトファンが体内で吸収されやすくなります。トリプトファンは、ストレスを軽減し快眠を誘発するホルモン「セロトニン」や「メラトニン」の前駆体です。 こうして、精神が安定し質の良い睡眠を獲得できれば、空腹の要因となるホルモンの分泌が低下するために、夕食にパスタを食べても体重増加にはつながらないという図式になるのだそうです。 睡眠と食欲の関係 2018年末、ドイツのケルン大学が睡眠不足と肥満の関連性を医学誌に発表しました。 それは、睡眠と覚醒をつかさどるホルモンと満腹感や空腹に関連するホルモンのバランスが崩れると、睡眠不足と猛烈な食欲が誘発されるというもの。 濃厚な味付けを避けたパスタは、夕食時に摂取するとカロリーの観点からみて理想的な食材なのだそうです。 炭水化物の摂取によりメラトニンの分泌が刺激され、ビタミンB1の存在が中枢神経に働くセロトニンの産生につながるためです。 スポーツを愛する人もPMSに苦しむ女性も 研究ではさらに、スポーツ愛好家も夕食にパスタを摂取することが望ましいとしています。 というのも、スポーツを始めて最初の30分で体内に蓄えられていたグルコースが消費され、体力が著しく低下するためだそうです。炭水化物は、グリコーゲンのレベルをあげて体をリラックスさせる作用があるのです。 また、体のだるさ、気分の不安定、意味のない空腹感などのPMSに苦しむ女性にも、パスタの夕食は最適なのだとか。これらの症状は、ドーパミン、セロトニン、ビタミンB6の欠乏が引き起こすことが多いのですが、炭水化物を摂取することで症状が軽減する可能性があるためです。 こうした理由から、気分が落ち込んでいるときにもパスタは有効なのだそうです。 今回の結果はパスタですが、他の炭水化物でも研究されたら同じような結果になるのでしょうか。ただ、食べては良いとは言っても、食べすぎには注意したいですね。
病院で治療を受ける時、どうせなら「医者に好かれる患者」でいたい。どういう患者が医者に好かれるのか? 『知ってはいけない医者の正体』の著書があり、のべ10万人以上の患者と接してきた「二本松眼科」(東京・平井)の平松類医師によると、大きく分けて2つのタイプがあるという。 「ひとつは、『治療などは、お医者さんにお任せします』と言って、本当に“お任せ”の患者さん。治療についていろいろ言われるのを面倒がる医者は多いので、こういった患者さんは歓迎されます。逆に、『お任せします』と口では言っているのに、実際はそうではない患者さんは嫌がられる傾向があります。そしてもうひとつの“好かれる患者さん”のタイプは、医者と同じ土俵で話せる患者さんです」(平松医師=以下同) 「同じ土俵」というのは、医者と同じ医学用語を介して話ができる患者、という意味ではない。医者の言う意味を正しく理解した上で、治療について希望を述べる、ということだ。たとえば乳がんで手術となった場合、医者は乳房の全摘手術を勧めている。しかし患者は乳房温存を希望している。 「がんの位置から、乳房温存では再発のリスクがあるとします。その説明を医者から聞き、患者さんが『再発リスクが高くてもいいから乳房を残したい』と言うなら、医者は患者さんの人生観を尊重し、それに沿った治療プランを立てるでしょう。これが私が言う“同じ土俵で話せる”です」 しかし患者の中には、乳房温存のデメリットを医者が説明してもそれを聞こうとせず、「乳房を残したい。でも、再発リスクも低い方がいい」と言う人も少なくない。すると医者は「再発リスクが低いなら乳房全摘」と返すしかならず、堂々巡りだ。 「最初から感情的過ぎる患者さんは嫌がられる傾向があります。重大病を告げられてつらい気持ちも分かりますが、最初から『つらいんです』などと感情をぶつけられると、『状況判断に不要なデータばかりを出す患者』『オーバーに表現する患者』と認識されかねない。まずは冷静にご自身の症状を伝えるようにした方がいいでしょう」 なにより、自分のために。
Q:営業という仕事柄、接待などでお酒を飲む機会が頻繁にあります。時々二日酔いになり、翌朝、顔が見事にむくんでいることもあります。これまで二日酔い防止によいというサプリも試しましたが、合うものが見つかっていません。漢方薬でよいものがあったら教えてください。 (36歳・建設会社勤務) A:二日酔いに効く漢方薬としてよく用いられるものに、「黄連解毒湯」や「五苓散」があります。 黄連解毒湯は、黄連、黄芩、黄柏、山梔子を配合しています。酒毒を尿から出し、熱を取ります。胃の不快感や頭痛などの緩和にも役立ちます。 五苓散もまた、飲酒でこもった熱や酒毒を尿で出し、むくみも取ります。お酒を飲んでいるときトイレに行く回数が少ない人、翌朝におなかが下る人にも適しています。 ●茵蔯五苓散がオススメ この2つの漢方薬もよいですが、よりよいものに「茵蔯五苓散」があります。これは、五苓散に茵蔯蒿を加えたものです。二日酔いのむかつき・むくみに適用します。 茵蔯蒿もまた、尿から毒(こもった熱)を出す作用がすぐれています。五苓散の作用をもっと高めた漢方薬ともいえ、実際、二日酔い防止の漢方薬として患者さんに人気ナンバー1です。 以上の3つの漢方薬はどれも、健康保険適用のエキス剤があります。お酒を飲む前に服用するとよいのですが、飲んだ後に服用しても二日酔い軽減の効果があります。中国漢方には薬酒がたくさんあります。紹興酒は赤い色をしていますが、あの色は生薬の山梔子(クチナシの果実)の色です。たくあんなどの着色料にも使われます。山梔子には酒毒を消し、熱を取る作用があります。つまり、紹興酒ははじめから、酒毒や熱を消す解毒薬を入れています。 山梔子を配合している漢方薬に、「梔子柏皮湯」があります。日本酒にこの漢方薬を入れると、紹興酒の日本酒バージョンに仕立てられます。二日酔い防止のお酒ともいえますが、飲みすぎては意味がありません。なお、山梔子は黄連解毒湯にも配合されていますが、梔子柏皮湯のほうが効果的です。 *************************************** 岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師) 東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病等に成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。
「適度な飲酒は健康に良い」などと言われることもありますが、近年報告されている研究では、少量の飲酒でも健康に悪影響を及ぼす可能性が示されています。 そんな中、飲酒によるがんの発症リスクを、生涯リスク(人の一生を通じて健康障害が発生しうる潜在的可能性)という視点で検討した研究論文が、生物医学分野の大手出版社バイオメド・セントラルが発行する公衆衛生の専門誌に2019年3月28日付で掲載されました。 この研究では英国における一般的な集団の発がんに関する生涯リスクを解析したうえで、飲酒によって発生しうるがんの生涯リスクを、喫煙によって発症しうるがんの生涯リスクに換算した場合、どの程度に相当するのかについて検討しています。 解析の結果、非喫煙者において1週間にワイン1本飲む人は、男性で1.0%、女性で1.4%、がんの生涯リスクが増加しました。つまり非喫煙男性1000人、同女性1000人が、1週間にワイン1本を飲んでいると、男性で10人、女性で14人が一生のうちのどこかでがんを発症することになります。このリスクを喫煙によるがんの発症リスクに換算すると、男性で1週間にたばこを5本、女性で同10本という結果でした。 煙による発がんリスクは広く知られている事実ではありますが、アルコールやその代謝物であるアセトアルデヒドにも発がんリスクがあります。飲酒に関連するがんでは、やはり口腔、咽頭、食道、大腸がんが多いようですが、女性では乳がんリスクが増加したとする報告もあります。 喫煙と比べれば飲酒とがんの関連はあまり注目を集めないようにも思いますが、生涯リスクという視点や喫煙本数で換算してみると、軽視できないリスクの大きさが見えてくることでしょう。 青島周一]勤務薬剤師。「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。
世の中には、日々の節約が一瞬でパァになってしまうようなアクシデントがあり、場合によっては、家族や友達、上司や同僚などにも損失を与えかねない、深刻なケースもあります。そこで今回は、実際に急性アルコール中毒になった当人の処置費用やベッド代金と、付き添った筆者の損失をリアルにお金に換算し、計算してみました。 処置に必要な費用は? 急性アルコール中毒の症状にもよりますが、病院に運ばれてから2~3時間程度で目が覚めるような軽度な場合で、3000円程度ですが、重症の場合は4万円を超えることもあります。 軽度の場合で、処置室などで処置してくれれば料金も安いですが、入院となると費用はグンと跳ね上がります。 また、急性アルコール中毒の場合、意識がなくなったり、顔面蒼白になったりと急激に症状が悪化するため、救急車を呼ぶ人が多いようです。 そのため、処置が終わるまでの間に時間単位でアップした駐車場代や病院からの帰りのタクシー代など、自分の分と救急車に乗ってくれた人の費用とが必要です。 かかってくる費用は、これだけではありません。 . 付添人の被害 強制力はないものの、病院にもよっては付き添った人は急性アルコール中毒になった人が目覚めるまで病院から帰ることができないという災難に見舞われることがあります。 急性アルコール中毒になった人は目覚めるとき、急に暴れ出したりベッドから落ちたりすることがあるようで、大きな病院でも1名は付き添うように言われるためです。 正直、ビジネス関係や友達でも、なかなか1人置いては帰りづらいですし、家族や親しい友人ならなおさらです。 救急車の中では、救急隊が患者の様子を見ながら症状のレベル付けをしてくれますし、病院へ着くと医師が診断をおこなって危険レベルを判断してくれます。 けれど病院に運ばれてからどのくらいで目が覚めるかは、看護師さんいわく、「どれぐらいお酒に強いか」、「どれぐらいアルコールが分解されるのが早いか」なのだそうです。 付き添いの具体的な被害額 急性アルコール中毒になった時間が明け方などの場合、付き添いの人は会社に出勤できない状態になったり、予定していた約束をキャンセルしたりと被害を被ることになります。 また、納品日のあるフリーランスなどは、納品日を過ぎてしまい、クライアントに損失を与える可能性もあります。 こういった被害を弁償するとなれば、1日の日当分や損害額の実費を支払うことになり、少なくとも5000円以上の出費になるでしょう。 . 保険証や所持金がない場合 急性アルコール中毒になった当事者が保険証を持っていない場合、一時的に治療費などを全額請求されます。 また、所持金がない場合、付き添いの人に費用の立て替えを打診されるケースが多いようです。 . 実録! 軽度の急性アルコール中毒にかかった費用 実は先月、身近な人が、周囲が止めるのも聞かずに急ピッチでお酒を飲み、軽度の急性アルコール中毒になりました。 ケガやトラブルなどもなく元気になったのでいまは笑い話となっていますが、顔面蒼白になり、呼びかけても意識がなくなっていくのを見ていた1人として、本当に焦りました… そのときにかかった費用を算出してみましたので、ぜひ参考にして、お酒を飲むときには気を引き締めてください。 ・ 処置費用:3290円(入院なし・処置室での処置のみ) ・ タクシー代:1000円近く(病院からホテルまでが近かったため) ・ 仕事に関する損害:2万5000円(コンサル系の業務で入ってくるはずだった収入) 合計額は、2万9290円の大損害となりました。※タクシー代は1000円で計算しています。 急性アルコール中毒は、気を引き締めて自分で飲むペースを調整することで防ぐことが可能です。 周囲の人も無理に飲酒をあおるようなことはせず、お酒を楽しむよう心がけてください。 お酒は飲んでも飲まれるな 今回紹介したように「急性アルコール中毒」は、自分自身が気をつけていれば防ぐことができる症状です。 「お酒は飲んでも飲まれるな」の格言をかみしめつつ、送別会や歓迎会などお酒を飲む機会の増えるこれからの季節、気を引き締めてムダな出費を回避しましょう。(執筆者:山内 良子/エコ・クッキングナビゲーター、豆腐マイスター、CS接客改善指導業務も約10年の実績あり)
アルコール依存症の治療は、酒を全く飲まない「断酒」が基本だが、途中で断念してしまう人が少なくない。最近、まずは飲酒量を減らし、心身の回復を目指す「減酒」が注目されている。 最終的には「断酒」へ 昨年8月、東京都八王子市の駒木野病院を男性(52)が受診した。焼酎1升(1.8リットル)を3日で空けるほど酒量が増え、妻子にからむなど家族関係もぎくしゃくした。「酒をやめる自信はないが、このままではよくない」。担当医の田(でん)亮介さんに相談すると、減酒を勧められた。 最初に取り組んだのは飲酒習慣の見直し。飲酒の頻度や量などを書き出し、飲まない日を設けるなどの目標を立てた。酒を飲むと気分が悪くなる薬も処方してもらい、少しずつ飲まない日を増やしていった。 半年後、二日酔いのない爽快さを感じるようになった。肝機能の数値も改善した。減酒のメリットを体験しながら、「最終的に患者の意志で断酒につなげていきたい」と田さんは話す。 アルコール依存症は、酒を一日中飲み続けるなど、飲酒を自分でコントロールできない状態を言う。仕事中も我慢できずに酒に手が伸びる。酔いがさめるといらいらしたり、手が震えたりといった離脱症状が出て、また飲んでしまう。 心身の状態も悪化し、うつ病などに苦しむ人も少なくない。家族や職場の同僚に迷惑をかけるなど、社会生活の継続を難しくしてしまうこともある。 治療の基本は、飲酒を断ち、同時に離脱症状を抑えることだ。医師によるカウンセリングを中心とした心理療法、酒を飲みたくなくなる薬を使った薬物療法も併用する。 アルコール依存症は「否認の病」とも言われ、本人が病気だという自覚を持ちにくい。治療の必要性を理解できても、なかなか一歩を踏み出せない。厚生労働省によると、推定58万人の患者のうち、専門的な治療を受けているのは1割弱に過ぎない。 学会指針でも「選択肢」に アルコール依存症関連の学会などは昨年、治療指針を改訂し、軽症患者には減酒を治療目標とすることも認めた。断酒に応じない重症患者の場合も、減酒が選択肢になるとした。減酒で症状が改善したとする海外の研究成果を踏まえた。減酒を補助する新しい処方薬も近く使えるようになる。 2017年4月に減酒専門の外来を始めた国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)。昨年末までに160人が訪れた。来院の理由は「酔いつぶれて記憶をなくす」「健康が心配」が多く、アルコール依存症の一歩手前か軽症の人が大半だった。 医師の湯本洋介さんは「重症化する前に支援できるのは重要だ」と話す。患者と話し合い、飲酒量を減らす計画を立てる。「一口飲んだらコップをテーブルに置く」「酒の買い置きはしない」など、飲み過ぎないための指導も行う。 厚労省が示す「節度ある適度な飲酒」は、アルコール摂取量で1日平均20グラムまで。ビールならジョッキ1杯程度だ。女性や高齢者はさらに減らすことが推奨されている。湯本さんは「依存症でなくても、1日平均で男性40グラム、女性20グラムを超えていれば、減酒を検討してほしい」と話している。
【お酒と健康 8つの疑問】 【Q】父親がお酒大好きで、酔っぱらって暴れる姿を見て育ちました。自分もお酒を飲むとああなるのか、と思うと心配です。アルコール依存症に関係する遺伝子はあるのですか? 【A】アルコール依存症とは飲酒が習慣となり、やめると禁断症状が起き、精神的にも肉体的にもお酒の依存が見られる状態をいいます。アルコール依存症の診断基準にはWHO(世界保健機関)が作成した「ICD―10」(国際疾病分類第10版)によるアルコール依存症診断ガイドラインがあります。その中には「明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒をする」「禁酒、減酒の際に離脱症状がある」「飲酒したいという強い欲望・強迫感がある」などの6項目が書かれていて、そのうち3項目以上が過去1年間に1カ月以上続いたか、繰り返した場合などにアルコール依存症と診断されます。 よく、アルコール依存症は「お酒をやめる意志が弱い人」「だらしない人」が発症するなどと言う人がいますが、そうではありません。あくまでも病気であり、お酒が切れると離脱症状が出るため、それがつらくて飲んでしまうのです。 実はアルコール依存症は関連する遺伝子が次々と見つかっています。 例えば、「オピオイド受容体遺伝子」です。 オピオイドは麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などを指す言葉ですが、麻薬=オピオイドではありません。中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体への結合によりモルヒネに似た働きをする物質を言います。 こうしたオピオイド物質は、植物由来のものもあれば化学的に合成されるものもあります。また、エンドルフィンのように生体に危機が迫った時に体内で作られる内因性のオピオイドもあります。 オピオイド物質は鎮痛効果を持つと同時にその報酬・依存作用により、依存症の原因になり得るといわれています。 実際、オピオイド受容体が変異すると、アルコールによる快楽が続くなどして、アルコール依存症を発症しやすくなることがわかっています。 また、最新の医療では、精神の安定や睡眠などに関連する神経伝達物質のセロトニンに関連するある受容体がアルコール依存症に関係していると注目されています。この受容体が壊れると、アルコールと水の区別ができなくなり、アルコール依存症の症状が出る、ともいわれています。 いずれも、その理論を応用してアルコール依存症の薬が作られ、一定の効果を上げているようです。 (国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)
【医者も知らない医学の新常識】 たばこを吸うことが健康に大きな害があるのは、多くの研究により確認されている事実です。たばこの害は喫煙者だけのものと思われがちですが、一緒に暮らしている家族にも影響を与えることがありますし、お母さんが妊娠中にたばこを吸っていると、それが胎児に影響を与えることも分かっています。妊娠中の喫煙の影響により、お子さんの肺の機能が低下し、喘息などの病気が増えるのです。その仕組みは遺伝子のメチル化という異常が、たばこによって起こるためと考えられています。お子さんの肺の病気を予防するためには、お母さんはもとより、家族が禁煙することがとても大切なのです。 しかし、実際には妊娠が分かってから禁煙することは、非常に難しい場合もあります。そんな時に、たばこの害を予防する方法はないのでしょうか? 今年の呼吸器疾患の専門誌に、それについての興味深い研究が発表されています。妊娠中の喫煙女性が1日500ミリグラムのビタミンCを取ったところ、胎児の肺機能の低下が予防されたのです。 たばこを吸うと血液中のビタミンCが低下し、ビタミンCは遺伝子の異常を修復するような働きがあるので、こうした結果につながったようです。 もちろん禁煙は健康のためには必要不可欠ですが、その害の一部は、ビタミンCで予防出来ることも知っておいた方がよさそうです。 (石原藤樹/北品川藤クリニック院長)
体に良いもの、悪いものは突然変わる。お酒もしかりだ。長いこと「百薬の長」といわれていたのに、近頃では風向きが変わりつつある。混乱している人もいるだろう。飲む機会が増える今だからこそ、お酒にまつわる健康情報を整理したい。 【Q】お酒が大好きな40歳です。先日、酔っぱらって帰ったら、妻から「飲み過ぎるとがんになるよ」と言われました。本当ですか? 【A】確かにWHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)は、「お酒により、世界中で300万人を超える人が亡くなっている」と発表しています。アルコールが原因で発症する病気は約60。口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、結腸、直腸と、女性の乳房にできるがんがアルコールにより発症しやすいと言います。 お酒の発がんリスクはその量に加え、喫煙量に関係します。 例えば食道と頭頚部(口腔・咽頭・喉頭)の発がんリスクは1日1.5合(270ミリリットル)以上の飲酒で8倍です。30pack―years(1日のたばこの箱数×年数ではじき出したたばこ量。この場合、1日1箱なら30年、2箱なら15年の量)以上の喫煙では4倍です。両方ともあれば30倍の食道がん、下咽頭がんのリスクがあるとされています。また、男性の大腸がんの4分の1は1日1合以上の飲酒によってもたらされるといわれています。 では、なぜお酒を飲むと発がんリスクが上がるのでしょう? WHOは飲酒の発がん物質は、アルコールが分解されたときにできるアセトアルデヒドと結論付けています。 アルコールは、主に胃や小腸の上部で吸収され、肝臓でアセトアルデヒドに代謝されます。 このアセトアルデヒドがくせもので、せっかくアルコールが楽しい気分にしてくれたのに、嫌な気持ちにさせます。心拍数を上げ、血管を拡張させて顔を赤らめさせて頭痛を発生させ、吐き気、発汗、二日酔いなどの災いをもたらすのです。時間が経てばアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のおかげで無害な酢酸へと分解されます。しかし、それまでの間アセトアルデヒドが体中の細胞のDNAを傷つけ、がんリスクが上がるというわけです。 (国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)
【Q】お酒が苦手です。営業部の先輩は「営業にお酒は不可欠。下戸でも鍛えればお酒は強くなる。とにかく飲め」と言います。本当でしょうか?【A】半分、本当です。下戸とは、飲むとすぐ顔が赤くなったり、気持ちが悪くなったりして、お酒を受け付けない人のことを言います。 こういう人がお酒を受け付けない理由は、アルコールを無害化する能力が乏しいからです。アルコールから分解されてできたアセトアルデヒドは毒性があり、その血管拡張作用により、顔が赤くなったり、血管が膨張することで、それを取り巻く神経を圧迫したりして頭痛を引き起こしたりします。 しかし、しばらくすると2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)により酢酸に分解され、無害な酢酸になります。このALDH2の能力は遺伝子により生まれつき決まっています。人の努力で何とかなるものではありません。 しかし、アルコールを肝臓でアセトアルデヒドという物質に分解させる仕組みは、1つだけではありません。3つの代謝経路が関わっています。一つはアルコール脱水素酵素、もう一つはカタラーゼ系、最後にミクロソームエタノール酸化系(MEOS)です。この中で、アルコールの代謝能力が最も高いのがアルコール脱水素酵素です。しかし、この酵素はいくらアルコールを飲んでも鍛えることはできません。 一方、カタラーゼ系やMEOSは、一生懸命お酒を飲み続けると活性が高まるといわれています。これが「お酒は鍛えれば強くなれる」という話の根拠になっているのだと思います。ただ、いくら活性が高まったとしても、アルコールの分解能力の向上はたかが知れています。25%程度という話もあります。 ですから、下戸の人が飲めるようになったとしても、お酒が強い白人や黒人並みの大酒飲みになることはなさそうです。 下戸の人は無理に飲んで、カタラーゼ系やMEOSの活性化によるアルコール分解能力のアップに期待するよりも、お酒の席ではなるべくお酒を飲まないですむように、話術を磨き、芸のひとつも身に付けておく方がいいかもしれません。 (国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)
◆体型や健康が気になる30代が飲み会で後悔しないコツは? 少し前の調査ではありますが2016年2月に行われた(株)酒文化研究所の「ビールのおつまみランキング」によると、好まれるおつまみの条件には「腹がふくれない」「塩分と脂分が適度にある」という2つが挙げられていました。 1つ目の「腹がふくれない」に関しては、確かに飲み会は食事会ではないので、おなかがいっぱいになる必要はないのかもしれません。しかし、一般的に飲み会が行われる夜7~10時くらいの時間帯は、何もない通常の日であれば「夕食」を食べている時間です。 そのため、「飲み会は飲み会、食事は食事」と分けて考えようとすると、飲み会の後に食事としてラーメンを……という流れが出来上がってしまいます。遅い時間になってしまう二次会や帰宅後に食べなくても気持ちよく眠りにつける程度に、一次会と呼ばれる飲み会の時点でお腹を満たしておくことが大切です。 2つ目の「塩分と脂分が適度にある」については、ご推察の通り太る原因になりますので避けたいところです。ただし、居酒屋さんはお客様が「塩辛く脂分の多い料理」を求めて来店していることを知っているので、他の店舗よりも塩分や脂分の多い料理や味付けにしてあることが多いように思います。この点は少しだけ意識して、自分で注意することが大切です。 . ◆飲み会の食事も「いつもの食事」に準ずることが基本 それでは一次会と呼ばれる飲み会で、健康的に適度にお腹を満たすためには、どのようなものを注文すればよいのでしょうか? まずは、そもそも夕食にあたる時間帯なので、後は帰宅して寝るだけだと考えましょう。活動のためのエネルギーはさほど必要ありません。いわゆる高カロリーになりやすいフライドポテトやから揚げなどの油料理はできるだけ控えること。 これらのメニューは上記の「塩辛くて脂分の多い」という条件を見事にクリアしています。そのため、自分が注文しなくても、おそらく誰かが注文してしまうでしょう。付き合いのために1~2個つまむことはアリだと思いますが、目の前に来たからと言って「ラッキー!」などと思ってしっかり一人前を食べてしまうことのないよう注意してください。 それでは、どのようなメニューを選べばよいのでしょうか? 飲み会と言っても「夕食代わり」にするのですから、青写真として目指すのは「いつもの夕食」です。「いつもの夕食」とは、「主食:主菜:副菜=3:1:2」の割合になるような食事です。割合はさておき、まずは主食、主菜、副菜が揃うように、酔って暴食してしまう前に整えておきましょう。 飲み会の席では「主菜」にあたる肉料理、魚料理のメニューがたくさんありますので、抜けることは考えにくいです。そのため最初の注文で「副菜」として「サラダ」などの野菜系の料理を意識して頼むことと、シメに「焼きおにぎり」1個程度の主食を頼むことを意識すれば、必要な栄養素はほぼ摂ることができます。さすがに割合まで調節することは難しいことも多いですが、1カ月に1~2回であれば摂取量の割合が崩れても問題ありません。 ◆飲み会のときくらい、忘れてもいいじゃないか!? もう一つ、正直に言ってしまうと、飲み会の頻度が1カ月に1~2回程度の人なら、飲み会の際に、そこまで身体のことを心配する必要はありません。その他のタイミングでの食事で栄養がしっかり摂れていれば、飲み会の1回分くらいはどうにでもカバーできます。飲み会の頻度が少ない人は「身体のために……」とあれこれ考えるよりも、料理も含めて飲み会らしさを楽しむほうが精神的によいかもしれません。 . ◆飲み会前後のリカバリーのポイント そして、飲み会で気をつけなければならないことがもう一つあります。飲み会ではどんなに気をつけておつまみを選んだとしても、お酒が入ると食べた量がよくわからなくなってしまうことがよくあります。そして、ほとんどの場合で、食べ過ぎている傾向があります。のため飲み会の予定が事前に分かっている場合は、その前日からご飯を1口分程度減らすようにします。飲み会の翌日も同じように、いつもよりご飯を1口分くらい減らしましょう。 仮に、急に誘われて行った飲み会でも、翌日の食事量を調節すればさほど体重に影響することはありません。このように、飲み会の前後でバランスをとることも可能です。気乗りしない誘いに対しては「今日はちょっと……」とお断りするのも手ですが、楽しい仲間との飲み会まで、身体のためにと我慢しなくても大丈夫です(さすがに毎日は考え物ですよ! )。 少し注意すれば、飲み会も健康的な食事に変えることができます。飲み会の最中に気をつけるもよし、飲み会の前後で気をつけるもよし、TPOにあわせて飲み会を楽しみながら健康な体を維持して下さい。 . 平井 千里(管理栄養士)
◆健診結果は「問題なし」。でも結果に現れないリスクは多いのです 多くの人が毎年定期的に受けている健康診断や人間ドッグ。「タバコは健康に悪い」ということはよく理解している喫煙者の方の中には、健診結果を見るのが毎年怖いという話もよく聞きます。 しかし、おそるおそる結果を見ると、今年もどの検査項目も異常なし! 血圧、糖尿、コレステロールも問題なく、がんに関係があると言われている腫瘍マーカーとやらも正常値。おまけにレントゲンや心電図もすべて正常! よしよし。同僚の「メタボで引っかかっちゃったよ……」といった声を聞きながら、自分は健康体だと喜ぶ方も少なくないと思います。 タバコ、タバコってみんなうるさいけど、健康診断は毎年完璧。やっぱり、この一服は止められないね……。 ここでは、喫煙していても健康には少し自信がある方にこそお伝えしたい、健康診断結果には現れない、タバコのリスクについてお話しします。 . ◆別名「タバコ病」とも言われる肺気腫は タバコが、肺がんや心筋梗塞、脳梗塞の原因にもなりうるということは、現代では広く知られています。しかし肺気腫がどんな病気なのかは、あまりご存知ない方がまだ多いようです。最近ではタバコのパッケージの注意書きにも記載してある病名ですが、英語では、別名タバコ病(Tobacco disease)とも言われるほどに、タバコとの明らかな因果関係がある疾患です。 肺気腫とは、一言で言うと、タバコの影響で肺の組織がボロボロに壊れてしまう病気です。肺は、空気中の酸素と、血液中の二酸化炭素を交換するための大切な臓器ですが、喫煙により肺の正常な機能が壊れてしまうことで、酸素が体内に取り込めなくなると同時に、体内の二酸化炭素を排出できなくなります。そのため少し動いただけで息切れがするようになり、在宅での酸素療法なども必要になります。 さらに、症状が進むと呼吸困難のために坐位でなければ眠れなくなるなど、生活の質を非常に落としてしまう怖い病気です。壊れた肺を治す薬はありませんので、最終的には肺移植も検討しなければならない状態になります。もちろん、肺移植の手術は簡単に進められるものではありません。 しかし、この肺気腫予備軍であっても、健康診断の結果は問題がないことが多いのです。初期症状は軽い息切れがある程度で、レントゲン検査でもほとんど異常が見つかることがありません。 健診結果は優良だったけれど、最近なぜか息切れするようになった……。そんな場合には、一度内科や呼吸器科、禁煙外来などを受診して禁煙相談をされるとともに、呼吸機能検査を受けてみることをおすすめします。 ◆タバコとEDの関係 そして、肺気腫のように命には関わらなくても、タバコが関与する怖い病気はまだまだあります。例えば、性機能。ED治療薬は模造品が出回ったり、1錠数千円で取引されたりといったニュースや事件もあり、性機能の問題を抱えている方の多さや、改善したいというニーズの大きさが分かります。 EDなどの性機能障害になってしまった場合、しかるべき医療機関で診察を受けた上で、適切な薬物治療を受けることは大切なことですが、そもそもなぜEDになったのかという原因や、タバコがEDと関係があることは、実はあまり知られていません。 EDの仕組みは、簡単に言うとペニスの海綿体を充血させるための血流が不足することです。タバコは全身の血管をキュッと収縮させる性質があります。ED治療薬の多くは、血管を拡張させ海綿体を充血させやすくするものです。いわば、ED治療薬とタバコは正反対の作用を持つわけですが、このような性機能に関する影響も健康診断の結果には現れてきません。 もしかしてEDかも……という自覚症状が出始めた方は、治療薬をネットで探そうとしたりするのではなく、まずは禁煙を決断するのがよいでしょう。 . ◆親は健康でも子の健康を損なうパターンも……喘息・副鼻腔炎・中耳炎など 「自分はタバコを吸っているけど、自分の身体なんだから勝手だろう」という方でも、ご家族や子供の健康に影響があると知れば、喫煙し続けたいという気持ちが変わるかもしれません。 家族の喫煙と子供の喘息や副鼻腔炎、中耳炎などには強い関係があることも報告されています。自分の何気ない一服が、子供たちの体に健康被害を及ぼしてしまうリスクは看過できないことではないでしょうか。 また、喫煙者のパートナーは、非喫煙者のパートナーよりも肺がんになりやすいという日本の研究データも報告されています。これらの家族の健康状態やリスクについては、もちろん、喫煙者自身の健診結果では全く見えない大きなリスクです。 「うちの子供は中耳炎になりやすい体質なのかなぁ……」という方がいましたら、是非、この機会に禁煙をご決断下さい。 これらの他にも、脳血管障害や虚血性心疾患、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、そして、女性の方であれば、不妊や低出生体重児など、がん以外にも実に多くの病気をタバコは引き起こすことが知られています。いずれも健康診断の結果だけで事前にリスクが察知できるものばかりではありません。 「健康診断で異常なし」というのは嬉しいものだと思いますが、あなたの健康に関する事柄が、すべてがうまくいっているということを保証しているものではありません。 健康診断の結果を過信せず、そして、タバコが持つ様々な影響について十分に理解を深めて、少しでも早く禁煙を決断されることを、医師として強くおすすめします。 . 狭間 研至(医師)
酒は「百薬の長」と呼ばれるが、その付き合い方を間違えると、ときに「百害あって一利なし」になってしまう。 特に、何かと酒量が増える年末年始。呑兵衛には心弾む季節だが、気になるのは体への影響だ。“飲み方”を間違うと、二日酔いや高血圧、さらにはもっと深刻な病のきっかけになってしまうこともある。 ◆晩酌より「昼飲み」 例えば、陽の高いうちから飲むのはどこか後ろめたいものだが、体への影響はどうなのか。岡村クリニック院長の岡村長門医師は、「カロリーや体への負担を考えれば、お酒は昼間に飲む方がいい」という。 「アルコールを分解・消化するのは主に肝臓です。夜にお酒を飲むと、肝臓は就寝中に働くことになってしまう。寝ていても、内臓は休むことができません」 その点、昼に飲むお酒は、起きている間に分解されるため、就寝中の内臓への負担は軽減される。晩酌は止められないにしても、就寝直前のアルコール摂取は控えたほうがよさそうだ。 ◆「ダラダラ飲み」のススメ 「スポーツ中継を見ながらチビチビと」──休日に長い時間をかけてゆったり飲む酒はたまらないが、妻にはいい顔をされないもの。しかし、秋津医院院長の秋津壽男医師によれば、これも悪い飲み方ではないという。 「体の負担を減らし、心地良くほろ酔い状態になるためには、ゆっくりダラダラが最適です。いわゆる悪酔いや二日酔いは、体内で処理する速度を上回る速さでアルコールを摂取してしまうことが原因。短時間で飲み干してしまうより、“ながら飲み”のほうがいい」
「酒は百薬の長」ということわざもあるように、「適量の酒は健康に良い」と長らく信じられてきた。しかし昨今、「飲酒は健康にとってデメリットである」との報告が世界の研究機関から相次いで出されている。WHO(世界保健機関)も今年9月、アルコールが原因で死亡する人が毎年世界で300万人を超えるという統計を発表し、各国に対応を促した。 とはいえ、お酒好きの人がいきなり「断酒」するのは難しい。年末年始という一年で最も飲む機会が多くなる時期に備え、久里浜医療センターで「アルコール依存症外来」と「減酒外来」を担当する精神保健指定医の湯本洋介医師から上手に酒量を減らしていくコツを聞いた。 ■認知機能が下がる可能性も WHOは、アルコールに起因する病気が約60個あると指摘している。その代表が脂肪肝や肝硬変だ。体内に入ったアルコールの大部分は肝臓で解毒される。習慣的な飲酒があると肝臓に負担がかかり、こうした肝臓の疾患になりやすい。 またアルコールが粘膜を傷つけるため、食道炎や胃炎を起こすほか、胃や腸、口腔、咽頭、食道などのがんリスクを助長する。飲酒によって血圧が上がりやすいとのデータもあり、高血圧になれば脳卒中、心臓病のリスクも高まる。 飲酒と認知症の関係も注目されている。日常的に40グラム以上のアルコールを摂取している人は、そうでない人と比べて認知機能が下がる可能性を指摘されている。 40グラムのアルコールとは、アルコール度数が5度のビールの場合、500ミリリットルの中瓶2本分に相当する。毎日、晩酌でこれくらいの量を飲んでいるという人も少なくないだろう。 「アルコールが健康にもたらすメリットはなく、病気のリスクは飲めば飲むほど高くなります。飲まないに越したことはありません」 ただし完全な断酒ではなく、現在の酒量を減らすだけでも体やメンタルの健康度はアップする。男性の場合、1日の平均アルコール摂取量を40グラム以下、女性の場合は20グラム以下にすれば、生活習慣病のリスクを下げることができる。 「1日の平均アルコール摂取量が60グラム以上の人、γ―GTPの数値が高かった人は、まずは減酒に取り組んでください」 ■断酒が無理ならまずは「減酒」 では、具体的にはどのようにして酒量を減らしていけばいいのか。湯本医師がすすめるのはレコーディングだ。 「自分がお酒を何本飲んでいるか、できれば何グラムなのかを飲むたびに記録すると、心理的なブレーキになり量を減らしていけます。なぜ飲むことになったのかも書いておけばたくさん飲んでしまう状況を把握でき、次から回避できるようになります」 ほかにもお酒を薄いものに替える、週に1日でも休肝日をつくる、2次会に行かない、一口飲んだらコップをテーブルに置く、ノンアルコールの物に替えてみるなどの方法もよい。また飲む前に食べたり、飲みながら食べたりすると、アルコールが胃腸から吸収されるのを遅らせることができ飲む量自体が減る、悪酔いしにくくなるといわれている。 「適量を飲めた時、そのことをメールや電話で家族や友達に伝え、『よくやったね!』と励ましてもらうのも効果的な方法。褒められると『これからも続けていこう』とモチベーションが高まります」 本格的に減酒に取り組みたいなら、「減酒外来」を利用するのも手だ。久里浜医療センターでは昨年4月に減酒外来を開設したところ、すでに受診者は100人を超えた。年齢層は30~50代、圧倒的に男性が多い。飲酒した後の記憶がなくなって何をしたのか覚えていない、どうやって帰宅したのかわからない、身に着けていたものをなくしてしまったなどの「ブラックアウト」の症状や、悪酔いして暴言を吐いてしまったなどのトラブルを気にしてやってくる人が目立つという。通院の目安は半年で、治療には公的医療保険が適用され、レコーディングをしたり、酒量を減らす工夫を話し合ったりする。 「この時点ではまだアルコール依存症ではありません。依存症の定義は飲み始めるとやめられない連続飲酒や、お酒をやめると手が震える、寝汗をかくなどの離脱症状があるかどうか。早めに減酒に取り組み、飲酒習慣をコントロールできるようにしてほしい」 さて、宴席では無理にお酒をつがれることもある。その場合は、どうやって切り抜けたらよいのか。近い間柄なら「今、健康に気を使っていてお酒を減らしている」と正直に伝えてはどうか。もう少し気を使う関係なら「ドクターストップがかかっているから飲めない」と言えば、大抵の場合それ以上すすめてくることはないだろう。お酒はコミュニケーションツールのひとつだが、自分の健康は自分で守るという意識を持ち、適度な距離感を保つことが大切だ。
つい先頃、「黄金の左」と呼ばれて人気の元横綱・輪島大士さんが、咽頭がんと肺がんの影響で命を奪われた。死因はがんによる衰弱だった。70歳。 日大からプロ入り。学生出身で初の横綱に昇進し、得意の左下手投げで歴代7位の14度の優勝。年寄名跡を借金の担保にして廃業後は、全日本プロレスでも活躍した。土俵の内外で自由奔放な個性的な横綱だった。 現役時代の朋友・北の湖さんとのエピソードについてこんな事が書かれている。 「ちょっとくらい土俵外で盛り上げたら面白いと喋ったら、大変なことになった。でも、それが大相撲人気につながった」 サービス精神旺盛な性格がうかがえる。そんな輪島さんは、近所の住民によると以前は1人でよく散歩し、顔を合わすと喋る代わりに肩や手を叩いて、気さくに挨拶されたそうだ。 '13年に咽頭がんの手術を受けた後は声が出ないことがあり、筆談を余儀されたそうで、本人にとってはショックだったに違いない。日本癌研究センターによると、'18年の咽頭がんの死亡数予測は、口腔がんと合わせて約8000人。7万人超の肺がんや5万人を超える大腸がんなどと比べると少ない数字だが、病状によっては生活の質が大きく損なわれるため、予防が大切なのだ。 東京医療センター放射線科の馳澤康孝医師は、こう語る。 「この咽頭がんは、咽頭にできるがんをいいますが、組織的には扁平上成がんが多く、粘膜表面に発生するがんです。咽頭は鼻の奥から食道の入り口までで、上から順に『上』『中』『下』に分かれます。どの位置にがんが出来るかによって、原因や症状、治療が異なります」 さらに「この部分は、たばこやお酒の影響を受けやすいところで、リスクも増えます」と言い、次のように指摘する。 「たとえば、たばこを吸う男性は、吸わない人に比べると咽頭がんの罹患リスクは2.4倍。1日の喫煙箱数と年数をかけて算出する累積喫煙指数が60以上だと4.3倍です。たばこには70種類の発がん物質が含まれ、喫煙することで煙が肺に達し、血液によって全身に運ばれる。咽頭は、たばこの煙が直接当たるため、さらに発がんリスクは高まります。 部位別だと、下咽頭への影響が強く、喫煙グループで13倍、累積喫煙指数60以上で21倍と報告されています。飲酒については、週1回以上飲む人は、飲まない人に比べて咽頭がんの罹患リスクが1.8倍。アルコール換算で週に300㌘、1日平均で日本酒4合以上だと、3.2倍です。適量飲酒のリスクはそれほどでなくても、常用すればリスクは高くなるのです。飲酒も下咽頭への影響が強く、週1回の飲酒で3.3倍。週300㌘以上のアルコール摂取で10倍超にアップします」 ただ、咽頭がんになると25~30%の確率で食道がんも発生すると言われる。これは転移ではなく、別のがんだ。 どちらも飲酒と喫煙の影響を受けやすいがんであることがその要因と考えられると専門家は言う。また日本では、咽頭がんにかかる人は圧倒的に男性が多く、年齢は50~80代の人が多い。 特に危ないのが、もともとお酒が弱ったのに、飲むにつれて飲めるようになった人、赤ら顔になりやすいタイプに重複しやすいことが分かってきた。「上」「中」「下」の三層に別れる咽頭がんは、症状がそれぞれ違う。 ★“胃カメラ”で早期発見! 都内で総合医療クリニックを営む久富茂樹院長は、こう説明する。 「上咽頭にがんが出来ると、鼻から空気が通りにくくなり、鼻づまりや鼻血を出します。耳との圧を調整している耳管開口部までがんが広がると耳がつったような感じになり、聞こえが悪くなります。さらに脳神経を圧迫したり、神経そのものががんに侵されてしまった場合は、脳神経に症状が表れます。神経の場所により異なりますが、視覚をつかさどる視神経に影響した際には、視力障害が起こります」 また、上咽頭がんは転移しやすいことでも有名だ。肺や骨、肝臓が代表的な転移部位となる。これに対して中咽頭は比較的早い段階から、頸のリンパ節に転移しやすいのが特徴とされる。一方の下咽頭がんは進行しないと現れない事が多く、受診した時はがんが進行していることも少なくないと言われる。さらに、下咽頭とは異なる位置に食道がんや胃がんなど、全く別ながんが見つかることがあるという。 咽頭がんの特徴として、早くから声がれがあるが、声がかれるのは進行時で、他に嚥下時の異物感や耳の痛みも表れる。その痛みは、中耳炎にでもなったような強さだから、まず見逃す事はないだろうといわれる。これらの検査方法は、がんの早期発見のカギともいえる内視鏡や消化管内視鏡検査である。いわゆる“胃カメラ”で、早期発見には欠かせない重要な医療器具だ。 ノドから先端に超小型のカメラのついた管を入れ、食道や胃の粘膜の状態を観察する。CT、MRIでがんの疑いがある場合やがんの転移の有無を調べる。「使用するのは専用のプローブを当てるだけですので、痛みはほとんどありません。本来、胃カメラといえば、胃を検査するものでしたが、近年、カメラの進化とともにノドの異変も見つけられるようになりました。驚くほどの進歩です。また、通常、がんはリンパに乗って転移しないように頸のリンパ節を切除するのが一般的です」(久富院長) もう1つ見逃せないのが、セックスの影響だ。頻繁にオラールセックスを行うと、HPVというウイルスが咽頭に感染し、がん化する恐れがあるという。 特に、中咽頭がんのうちの半分はHPV感染が原因とみられているので、注意が必要だ。 いずれにしても咽頭がんの早期発見には胃カメラの検査が重要である。適量飲酒や禁煙に努めるのはもちろんだが、健診などで定期的に受けることも大切。そして、検査の前に「咽頭も調べてください」と伝えること。以上のことが肝心だという事を、ぜひ覚えておくべきだ。
教えて!ヨミドック たばこの煙が嫌いなインコさん。今後、いろいろな場所で禁煙化が進むと聞きました。「私はうれしいけれど、どうしてなの?」……ヨミドックにたずねました。 Q 法律で公共の場所は禁煙になるそうね。 ヨミドック 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、健康増進法が改正され、病院や学校などは屋内完全禁煙となります。ただし、既存の小規模飲食店では、喫煙が認められるなどの例外もあり、世界的な規制の水準に照らすと不十分です。 Q どうして分煙ではだめなの? ヨ 分煙では、たばこの煙が漏れるのを完全には防げないからです。喫煙室の周囲がたばこ臭いと感じるのは、外にたばこの煙が漏れている証拠です。喫煙室を掃除する人が、受動喫煙の害を被る問題もあります。 乳幼児突然死症候群の危険性も Q 喫煙者本人が直接吸う煙と、受動喫煙の煙の成分は違うの? ヨ 受動喫煙で吸う主な煙は副流煙と呼ばれます。本人がフィルターを通じて吸う主流煙と比べ、ニコチンだけではなく、約70種類の発がん性物質、有毒ガスの一酸化炭素などを高濃度に含みます。 Q でも、有害物質は空気中で拡散して薄まるし、たいした健康被害はないのでは? ヨ とんでもありません。国内では、受動喫煙の影響で亡くなる人は、肺がん、心臓病、脳卒中だけで年間約1万5000人と推計されます。乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険性も高まります。直接喫煙による死亡者は約12万~13万人とされますが、受動喫煙の被害も深刻です。 亡くなる人は女性に多い Q 受動喫煙で亡くなる人は、女性の方が多いのはなぜ? ヨ 喫煙者は男性の方が圧倒的に多く、その分、たばこを吸わない女性が、被害を受けてきたことを示しています。 Q 最近は煙の出ない加熱式たばこを吸う人も増えているようだけど。 ヨ 加熱式たばこは、たばこの葉を燃やさないので副流煙は出ませんが、喫煙者が肺の途中まで吸い込んだ有害物質は、次の呼気で吐き出されます。周囲への影響はまだよく分かっていませんが、禁煙の場所で吸うのはやめてほしいですね。 (田村良彦/取材協力=片野田耕太・国立がん研究センターがん対策情報センター部長、大和浩・産業医科大学産業生態科学研究所教授)
慢性腎臓病とは「腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下」「タンパク尿などの尿異常など」の両方、あるいはどちらかが3カ月以上続く状態をいう。進行すれば慢性腎不全になって人工透析が必要になったり、心筋梗塞、脳卒中といった命にも関わる重大病にしばしば陥る病気だが、自覚していない人が多いのが問題だ。 ■「無症状」でも安心できない むくみや疲労感が症状として挙げられる慢性腎臓病だが、「無症状だから問題なし」と考えるのは間違いだ。筑波大学付属病院腎泌尿器内科・山縣邦弘診療グループ長が言う。 「慢性腎臓病にはさまざまな原因があり、たとえばネフローゼ症候群などの疾患がある場合は、進行しなくてもむくみなどの症状が出ることがあります。しかし、いま増えているタイプの慢性腎臓病は、症状がまったくないケースがほとんどです」 それは、生活習慣が関係したものだ。高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風・高尿酸血症といった血管にダメージを与える生活習慣病を放置すると、動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなる。腎臓にはトータル200万個といわれる「糸球体」(毛細血管でできた微細な球状の組織)があるが、動脈硬化の進行によってこれが壊れていく。 糸球体は「血液から老廃物を濾過して尿を作る」腎臓の働きに欠かせない組織だ。糸球体の破壊によって、尿中にタンパクが漏れるようになったり、腎機能が落ちていったりし、慢性腎臓病と呼ばれる状態に至る。そうなると自分の腎臓だけでは老廃物の濾過ができなくなり、その働きを代替する人工透析が必要になってしまうのだ。 ■人工透析へ一直線のデッドライン 「人工透析が必要な直前まで自覚症状がまったくない人もいます。むくみ、息切れなどの症状が出てきた時は腎機能が相当落ちていると考えた方がいい場合もあります」 壊れた糸球体は元に戻らないので、慢性腎臓病を完治させる方法はない。人工透析になると、週3回通院して行う血液透析や、在宅で行う腹膜透析を一生続けるか、健康な腎臓を移植する腎移植しかない。「人工透析で腎臓が健康になって元通りの生活に」とはならないのだ。 「慢性腎臓病で最も重要なのは、早い段階で腎機能低下に気づき、生活習慣を変えるとともに、薬物治療などでこれ以上、機能が落ちないようにすることなのです」 まずは健診や人間ドックなどでタンパク尿と血清クレアチニン値を調べる。血清クレアチニン値は、腎機能の程度を見る「推算糸球体濾過量(eGFR)」のもとになる数値だ。 ただ、健診では血清クレアチニン値のチェックが義務ではないので、行われていないところも。血液検査でわかるので、少なくとも40歳以降は年1回、調べておくべきだ。 特に高血圧、糖尿病、脂質異常症、痛風のいずれかがある人は、知らないうちに腎機能が低下している可能性がある。半年に1回は血清クレアチニン値やタンパク尿を調べた方がいい。さらに糖尿病の人は、尿中アルブミン検査など、早期発見をもっと可能にする検査も受けるべきである。 日本慢性腎臓病対策協議会のサイトには、年齢、性別、血清クレアチニン値を入力すれば、eGFRがすぐにはじき出されるページ(http://j-ckdi.jp/ckd/check.Html)がある。eGFRの区分が「G3a」(尿異常があれば「G2」)以降だと慢性腎臓病の可能性がある。少なくとも、ここまでに食い止めることが重要だ。また、タンパク尿の程度とeGFRは、脳卒中・心筋梗塞のリスクを測る指標にもなるから要注意。 「動脈硬化が進行して腎機能が低下し、eGFRの数値の悪さとして表れる。eGFRが低下していれば、動脈硬化は全身に起こるものですから、腎臓だけでなく心臓や脳に行く血管も動脈硬化が進んでいると考えられます」つまり、脳卒中、心筋梗塞になりやすい。残念ながら、専門医以外では、腎機能を示す数値を重視していない医師もいる。自分で知って、自分で身を守るのだ。
急性アルコール中毒で病院に運ばれる人は非常に多く、東京都内だけでも年間1万1千人以上の人が救急車で運ばれています。 そして、その約半数が20代の若者と未成年者で占められています。 この数字を見ると、若者が無理なお酒の飲み方をしていることがお分かりいただけるでしょう。 お酒を激しく飲んでも酔っ払うだけで、まさか自分は死なないだろう、と思っている人もいるかもしれませんが、急性アルコール中毒を甘く見てはいけません。 今回は医師に急性アルコール中毒について詳しく解説してもらいました! ■ 急性アルコール中毒が起こる仕組みは? アルコールは、飲んでから血中のアルコール濃度が最高度に達するまでには、ふつう飲酒してからおよそ30分から1時間かかるといわれているため、アルコールを大量に飲んでいても、どれだけ多くの量を飲んだのか、本人も周りの人たちも気づかない場合があります。 急性アルコール中毒が起こる仕組みは以下のとおりです。 短時間でアルコールを大量に摂取すると、肝臓でのアルコールの代謝が追いつかなくなり、血液中のアルコールの濃度がどんどん増えていきます。 アルコールは、あまり知られていませんが、鎮静効果があり、イライラや興奮といった神経系の過活動を抑制してくれます。 しかし過剰に摂りすぎると、鎮静効果が強く出すぎて昏睡状態になります。 意識の混濁、昏睡、血圧の低下、呼吸の抑制、失禁、といった症状が見られたり、吐いたものが喉につまることで死にいたるケースもあるため、急性アルコール中毒とは、非常に危険な状態なのです。 ■ こんな飲み方は危険!やってはいけない4つの飲み方 1. イッキ飲み かつて大学生の新入生歓迎会や会社の飲み会などでは「イッキ、イッキ」とはやし立てられて、イッキ飲みをする場面が多くありましたが、これは大変に危険です。 2. 空腹で飲酒 空腹でアルコールを飲むことがあると思いますが、空腹の状態で飲酒すると、胃や小腸からアルコールがいきなり吸収されてしまいます。そうすると、血中アルコール濃度が急上昇し、これも危険です。 3. お酒に弱い人へアルコールを強要 日本人の40%がお酒に弱く、4%が全くお酒を飲めません!お酒に弱い人は、少量でも、アルコール中毒になりやすいの注意が必要です。他人へのアルコールの強要は絶対にやめてください。 4. 未成年者の飲酒 未成年者は肝臓の中にアルコールの分解酵素が十分になくアルコールを大人と同じペースで分解できません。そのため、少量の飲酒でも血中アルコール濃度が急激に上昇し、急性アルコール中毒になってしまいます! ■ 医師からのアドバイス 以下の点に気をつけて、お酒は適度にたしなむようにしましょう。 1. 短時間のうちに多量の飲酒をしないようにする 2. 自分の適量を知り、その日の体調にも注意する 3. 空腹のときは、飲酒しないようにする 4. イッキ飲みを迫られても、断る勇気をもつ もし、急性アルコール中毒の症状と思われる人を見かけたら、迷わず、すぐに救急車を呼びましょう。 救急車を待っている間、吐いたものが逆流してノドに詰まり、窒息してしまうわないように、顔を横向けにして寝かせましょう。
いよいよビアガーデンが本格オープンする季節。お酒を飲む機会も増えそうですが、「次の日も仕事......」という日は、できれば悪酔いしたくないもの。そこで今回は、「悪酔いしない方法」など、お酒に関するお役立ち情報についてリサーチしました。 【お酒の適正量を知ろう!】 まず、「お酒の適正量」について、その道のエキスパートに質問! 先日開催された、味の素によるセミナー「飲酒時の悪酔いや二日酔いの回避に役立つアミノ酸素材(『アラニン・グルタミン混合物』)」に出席した、 国立病院機構・久里浜医療センター・真栄里仁医師(アルコールに関連する社会問題などが専門)は、「医学的に言うと、お酒の適正量は、ビールだと中ビン1本に相当する500ml程度だと言われています」とアドバイス。 ただし、女性や顔が赤くなりやすい人、すなわち生まれつきお酒に弱い人はこれより少ない量が良いそうで、「諸外国のガイドラインなどを見ますと、だいたい女性のアルコールの適正量というのは、男性の半分から2/3になっています。 女性ホルモンが関係しているのでは、とも言われていますが、少なくとも女性の体はアルコールに弱いということが言えますね。妊娠中には絶対飲まないでください」と注意点を挙げました。 【アルコール分解に役立つ食品って?】 お酒を飲むと、アルコール分解に役立つ体内のアミノ酸「アラニン」「グルタミン」が激減します。なので、それらを多く含む食品を、飲酒前・飲酒時に食べることを指南。「しじみなどの貝類、チーズ、ナッツ類などの食品がオススメです」とのこと。 【水分は多めに摂取!】 また、飲酒に関する実態調査などを実施する高橋酒造は、「飲酒時に大量の水を飲むことがポイントになります」とコメント。 アルコールは肝臓で分解されますが、その過程で大量の水が必要になるそうで、「飲んだアルコール量と同じか、それ以上の水分を摂るようにしましょう」と教えてくれました。 ちなみに、焼酎やウイスキーは水で割って飲むことができるのでオススメなのだそう。また、水で割らない日本酒やワインを飲む際も、チェイサーを同時に頼むようにして、飲み過ぎたと思ったら寝る前にも水を大量に摂ることが効果的だとアドバイスしてくれました。 酔い過ぎて、翌日の仕事を休んだり遅刻したり......なんてことにならないように、今後は適正量を考えながら、おつまみや水分摂取などに気を配ってみてはいかがでしょうか?
二日酔いで体調を崩すなんてイヤですよね。こんなとき、漢方なら何を飲むと良いのでしょうか。実は、身近な夏の食材で二日酔い対策ができるんですよ! ■スイカは天然の漢方薬 スイカは昔から暑さしのぎの身近な食材とされ、利尿作用があって、むくみを取るのに良いとされています。これはカリウムや特殊アミノ酸であるシトルリンが、尿と一緒に余分な塩分を体外へ排出する作用があるためです。 市販品では「西瓜糖」というスイカの汁をべっ甲色になるまで煮詰めたのシロップがあったり、中国では西瓜の種を炒って塩で味付けしたものを道端で食べているのをよく見かけますが、西瓜糖に含まれるリコピンや、種に含まれるたんぱく質や脂質、ミネラルやビタミンの存在も忘れてはいけません。そう、スイカはほとんどが水分で……とはいうものの、実はとっても優秀な夏の果物なのです。 ここで、漢方的なスイカの働きをご紹介しましょう。 □西瓜(すいか) ・甘味で、寒性 ・心・胃・肺・腎に深く関連がある カラダを涼やかにする作用があり、余分な熱を取ったり、ノドの渇きをいやし、のぼせやほてりに良いとされています。失った体液を補ってくれる働きもあるので、熱中症や暑気あたりに良いこともうなずけますね。 これらの作用からスイカは「天然の白虎湯(びゃっことう)」と呼ばれ、熱、汗、のどの渇き、脈の激しさの4つの大きな症状を改善してくれるといわれています。 利尿作用があり、水分代謝をよくしてくれる働きや、暑さでカラダや頭が煩わしくなっているような症状を緩和してくれるので、夏場の二日酔いにも適しているんですね。 ■二日酔い対策!スイカを使った簡単レシピ 薬効も果肉や果汁にありますし、スイカは生のまま食べるのが一番おいしいと私も思います。でも捨ててはもったいない部分、つまり白い皮の部分を有効利用した、簡単でおいしい箸やすめをここでご紹介しましょう。 まずスイカを普通に頂きます。そして硬い外皮の部分を包丁でむき、白い部分を7センチ幅くらいの薄さに切ります。これをボールに入れて塩を軽く振り、クコの実をいれてざっくり混ぜてしんなりしたら食べごろです。 とても簡単でスピーディーな一品ですが、実は大きなポイントが2つあります。赤い果肉の部分があるとよりおいしいということと、もうひとつは薄さです。いろいろ試したのですが、薄すぎても厚すぎてもダメで、7センチ幅くらいが一番味のなじみや食感が良いという結果になりました。 ■薬膳レシピの補足 スイカの皮は西瓜翠衣(せいかすいい)という生薬で、利尿作用は果肉よりも優れています。ほかには黄疸のむくみや口内炎にも用いられます。 一緒に和えたクコの実は、スイカの味わいを邪魔することがない上に彩りのアクセントにもよく、滋養強壮や目の疲れや充血、慢性肝炎などにも良い果実です。根は地骨皮といい、こちらものぼせやほてりを鎮めるのに良い生薬です。 なお、スイカはカラダを冷やす作用があるので、冷え性のひとは食べる量に気をつけてください。冷蔵庫で冷やさずに食べたりするなどの工夫をしましょう。 ちなみに、このレシピは中国の先生に教えていただいたものを少しアレンジしたものですが、一般的にもよく食べられるものだとお聞きしたので、掲載しました。
気心知れた仲間との飲み会や、上司と同席の接待……。楽しいお酒や気を使う場では、ついついお酒を飲みすぎてしまうこともあるかもしれません。働く女子に、二日酔いを乗り切る対処法を聞きました。 ■食事でスッキリ! ・「朝食にしじみのみそ汁を飲みます。『しじみは胃や肝臓に効果がある』とおばあちゃんに教えてもらって以来、習慣に。胃が気持ち悪いときは生姜を入れています」(26歳/食品) ・「柿に含まれるタンニンが二日酔いの原因のアセトアルデヒドを体の外に出す作用があるらしいんです。それを聞いてから、二日酔いのときは柿を食べるようにしています。スーパーなどでも手に入る干し柿を常備しておくと、日持ちもするので便利です」(29歳/小売) ・「おろし納豆を食べます。実家に住んでいたころ、朝起きて二日酔いがひどいと母が作ってくれていました。食べるとスッキリしたので、ひとり暮らしをはじめてからもコレで二日酔いを乗り切っています」(33歳/不動産) 食事で二日酔いを乗り切っている女子が多いようです。しっかり起きて、胃や肝臓などにいい食事をとるのは、健康のためにもいいですね。 ■気分転換でスッキリ! ・「私の場合、朝風呂が二日酔い対策に効きます。38度くらいのぬるめのお湯にゆっくりと浸かって体を温めてから、冷たい水で顔を洗います。気分も体もスッキリして気持ちいいですよ」(28歳/IT) ・「二日酔いのときはとくに目のまわりが腫れてボテッとしてしまうので、冷蔵庫で冷やした化粧水をコットンにたっぷり含ませてアイパック。私はコレで二日酔いの頭痛までふきとびますよ!」(27歳/アパレル) 二日酔いは体調がすぐれないだけではなく、体もだるくなってむくむことも。ボディケアをすることも大事ですよね。 なかには、「飲み会の予定が入っている翌日は二日酔いになるかもしれないので、あらかじめ午後出社の届けを出しておく」(30歳/旅行)なんてツワモノも。フレックス制など、出勤時間が決まっていない会社であれば先に手を打つのもアリかもしれません。二日酔いの対処も大切ですが、まずは飲みすぎないように気をつけることもお忘れなく。
企業トップの喫煙に禁煙の部下は困惑 健康経営の講演会で、ある企業の総務担当者から「うちの社長はヘビースモーカー。喫煙には甘い環境です。たばこを吸わない従業員は、喫煙者が仕事中にたばこタイムから帰ってきた時の臭いで不快な思いをしても、我慢をしている状況で、困っています」という意見が出ました。こうしたケースは非常に多く見られますし、受動喫煙に「ノー」というのは心理面からとても難しいものです。喫煙する上司に「ノー」と言える部下はまずいないでしょう。 さて、喫煙者にどんなに穏やかに、冷静にエビデンス(証拠)を基に、たばこのリスクを伝えても、反発を受けることがしばしばです。それまでの態度が急変し、中には地雷並みの反応だな、と思わせる人さえいます。 . 喫煙者に2タイプ 喫煙のリスクを喫煙者に話すと、大きく二つのタイプの反応があります。 一応は話を聞いてくれて、「悪いのは分かっているんですけどね。やめようと思うけど、なかなかやめられなくて」と苦笑いするような方。こうした方はお手伝いして後押しサポートをすると、家族のためや会社の健康経営のためというモチベーションの下に、禁煙の方向に行動修正する可能性を秘めています。 一方で、完全拒否型の方がいて、こういう方は全く話を聞こうとしない点が特徴です。 「個人の自由」「喫煙者に対する差別」「個人の嗜好の自由を制限する規制」「喫煙が悪いという事実はでっち上げ」こうした発言は多くの場合、声を荒らげて感情的です。喫煙に対して何かを話すと、攻撃されたという気分に陥り、瞬間的に反応してしまう状態です。ストレスが多く、気分が落ち着かず、たばこに依存している人の場合、そのたばこの問題点を指摘されると、責められているような気分になり、攻撃的な発言になりやすいと思われます。 . なぜ依存しやすいのか? たばこがやめられないのは、ニコチンが持つ薬理作用によるものです。ニコチンは、脳内のニコチン性アセチルコリン受容体に働きかけ、脳の側座核、前頭葉皮質、中脳皮質辺縁系という、報酬や喜び、感情を処理する上で大事な働きをする領域の活性を高めるといわれています。すなわち、気分を高めたいときには高め、気分を落ち着かせたいときには落ち着かせてくれる作用があるのです。 依存症の研究で知られる米国人のE.J.カンツィアン博士によれば、たばこは、さまざまな感情状態の苦痛を緩和する作用を持ちます。このため、気分がうつ状態になる人にとって依存しやすい物質となり、気分を落ち着かせるためにどうしてもたばこに依存するということになります。 「たばこにいい作用」喫煙者の思い込みが問題 「たばこを吸うとリラックスできて緊張がほぐれるんです。こんないいものはないですよ」と語る喫煙者の男性がいました。それは、先に述べたニコチンの持つ薬理作用のためです。気分が不安定な人ほど、たばこに依存しやすく、やめられないという研究報告もあります。 米国医師会発行の「Journal of the American Medical Association 」誌に発表された大規模な疫学調査では、(1)抑うつ症状が高まるにつれ、禁煙率が低下する(2)9年間の追跡調査で抑うつ症状がない喫煙者の禁煙率は抑うつ症状のある喫煙者の2倍である―ことが報告されています。こうしたことから、喫煙者は抑うつ状態を緩和するためにニコチンを用いている可能性があると論文は考察しています。 また1200人を対象にした21年間に及ぶ追跡調査で、思春期に気分がうつ状態である場合、後にニコチン依存になるリスクが高いことも報告されています。うつ気分の人ほど、たばこをやめられない。ストレスによる精神的苦痛を和らげるため、たばこを用いて、その薬理作用に依存している可能性が示されています。 禁煙や受動喫煙の話に過敏に反応する人たちには、それなりに理由があります。そして、それぞれの事情に配慮しながら、禁煙できるようなサポートが必要だと思います。 海原 純子(うみはら・じゅんこ) 東京慈恵会医科大学卒業。医学博士、心療内科医、産業医。日本医科大学・特任教授。ハーバード大学・客員研究員(2008~10年)。近著に「男はなぜこんなに苦しいのか」(朝日新書)、「今日一日がちいさな一生」(あさ出版)、「こんなふうに生きればいいにゃん」(海竜社)。20年間休止していた歌手活動を1999年より再開。
その1 二日酔いのメカニズムとは 体内に入ったアルコールは、肝臓に運ばれて分解されます。 一般的に体重が60キロの人の場合、瓶ビール1本のアルコールを分解するのに3時間程度かかるといわれています。単純計算でビール3本を深夜0時まで飲んでいれば、翌朝9時まで体内にアルコールが残っていることになります。そのため、分解しきれないアルコールが身体に残った状態でおこる症状を、二日酔いといいます。 また、肝臓には、食べ物から吸収された糖をエネルギーに変換する働きがあるため、お酒の飲みすぎで、肝臓が疲れていると、身体にエネルギーを送り出すことが遅くなり、ダルさとなってあらわれるとも言われています。 その2 「ウコン」を飲むと二日酔いにならないってホント? ウコンについてですが、ウコンに含まれる「クルクミン」という物質が ・肝臓保護作用 ・抗炎症作用 ・抗がん作用 などを持つのではないかといわれています。 ウコンを摂取すると、血液中のアルコール濃度、アセトアルデヒド濃度が下がったという調査結果はあるようですが、小規模の試験の報告だと思われるので、残念ながら医学的根拠というほど確実なものではないかと思います。 その3 二日酔いの予防と対策 適量を超えてアルコールを摂取しないことが二日酔いを防ぐ一番の方法です。しかし、適量は人によって異なります。人種あるいは個人の遺伝的体質によりその代謝能力に差があります。東洋系の民族のほぼ半数はアセトアルデヒドの働きが弱いか、 全く働かないタイプです。酒に弱く二日酔いになりやすい方が多いですね。 欧州民族は酒に強く二日酔いにもなりにくい体質の方が多いと言われています。 量も大切ですが、飲む時間帯も重要です。瓶ビール1本を分解するのに3時間程度かかるわけですから、仮に朝7時に起きる人であれば、瓶ビール3本の分解に約9時間必要です。深夜まで飲むと、目覚めたときにもアルコールが身体に残っている、という可能性は高くなります。ついつい遅くまで・・・とならないよう気をつけましょう。
50才を超えても30代に見える医師として大人気の南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は、アルコールとの上手なつきあい方について。 【質問】 お風呂上がりのビールがおいしくて、毎日飲んでしまいます。週に一度は“休肝日”を作るといいと聞きますが、実際のところどうなんですか?(ホップルン・45才・主婦) 【南雲先生の回答】 確かに、お風呂上がりの冷たいビールは本当においしいよね。昼間、喉がカラカラになるほど一生懸命働いて、仕事が終わった後に飲むビールも最高! お酒は、少量であれば血液循環をよくしてくれるから、健康増進作用がある。祝い事の席などでは感情を解放できたり、コミュニケーションをスムーズにしたりと、人づきあいの上でも利点が多いものだから、“百薬の長”といわれることも納得だよね。 でもね、いいことばかりじゃない。主婦など、日中家にいる人は特に注意が必要! なぜって、昼間からひとりで飲むことができるから。“いつでも飲めちゃう”状況って、キッチンドランカーになりやすくて、とっても危険なことなんだよ。 外で働く人でも、仕事中は飲まない、体の調子が悪いときは飲まない、ときちんとコントロールできないなら、飲むのはやめたほうがいいね。アルコールって人間を崩壊させる一種の麻薬のようなもの。ぼくは“麻薬系”の飲み物と言っているよ。 血液の中にはさまざまな有害物質が流れているんだけど、それが脳に流れ込まないように、血管と脳の間には“血液脳関門”というものがある。そこを通過できるのは、糖分などのごく限られた栄養素だけなんだけど、アルコールやシンナー、ニコチンやカフェインなどは、その関門を簡単に越えて脳に到達するんだ。 これらはひとたび脳に到達すると、欲求が満たされたときに活性化して快感を覚える、脳の“報酬系”部分に作用して、すごく幸せな感覚を生じさせるんだよ。 この多幸感のせいで、またその幸せを感じたいと思って、やがて習慣性や依存性が表れる。そしてどんどん量が増えていって、やめると幻聴・幻覚といった禁断症状を起こすようになるんだ。 主婦であれば、日中ひとりでいるときに飲んじゃうとか、外で仕事をしている人が仕事の途中にも飲むなんてことがあれば、それはアルコール依存症の可能性があるね。それと、“飲まない日が一日もない”というのも、実は潜在的なアルコール依存症といえるんだ。本物の依存症に進行しないよう、生活習慣に気をつけてほしいな。 朝飲んでしまって仕事を休んだり、酔って正体をなくしたり、暴力を振るったりモノを壊したり…、なんていう行動が出てきたら、それはもう立派なアルコール依存症という病気だね。 その場合は、ヘタに家族内でかばったり尻ぬぐいをしたりしちゃダメ。身内がかばってくれることが、依存症にはいちばんよくないことなんだ。アルコールをやめる自立支援の組織や病院に委ねて、きちんと治療をする必要があるんだよ。
頭痛や吐き気に、起き上がれないほどのだるさ。飲みすぎた翌日の二日酔は、つらいですよね。そして、そのつらさを学んでも、やっぱり適量が大切と悟っても...人間ですもの、時々は羽目を外してしまうものです。どうにかならないものでしょうか? 古今東西を問わず、人類を悩ませ続けてきた二日酔い。米国の酒飲みたちももちろん、その悩みとは無縁ではありません。かの国では、「二日酔いには脂ぎったハンバーガーを食べろ」なんて対処法も語られていますが、本当に効くのでしょうか。きっと効かないでしょうね。日本の「迎え酒」のように、苦し紛れの荒治療にすがるのもまた、古今東西変わらないようです。 しかしついに、迷走する米国の酒飲みたちを救う食べ物が発見されたのです!その救世主の名は Yak-a-mein(ヤカメン)。米国メディア CBS News が伝えています。 ヤカメンとは、米国南部のニューオーリンズで有名な麺料理。「牛肉麺」という中国語名を持つように、ルーツはアジアにあり、「19世紀の中国系移民が広めた」、「朝鮮戦争の帰還兵が味を持ちかえった」など、諸説あるようです。いずれにしてもこの麺料理は、ニューオーリンズの人々から長く愛されてきたのでした。 いわば郷土料理の1つであるヤカメン。それが驚くことに、4月に開かれた米国化学学会にて、二日酔いに効く食べ物として発表されたのですから、さあ大変。目ざとく見つけた米国中の酒飲みたちが狂気し、ネット上で「レシピはどこだ?」と大盛り上がりになっているのです。ノミュニケーション文化をもつ日本人としても、見逃せないですね。ヤカメンとは、どんな食べ物なのでしょうか?体内のアルコールを一気に抜いてしまうような、何かすごい食材を使っているのでしょうか? ヤカメンの基本的な材料は「スープ(しょうゆ、牛肉ベース)」「肉類」「麺」「ネギ」「ゆで卵」。材料と写真を見ると、美味しそうとはいえ、日本の肉うどんみたいで、「すごそう!」という印象は受けません。しかし、学会で発表をしたカリフォルニア大学デービス校のミッチェル教授によれば、これらの素材が理想的な組合せなのだとか。肉のタンパク質やスープの塩分などが、脱水症状の緩和や、体内の毒性物質の発生の抑制などの役目を果たし、アルコールと闘う身体の代謝を総合的に整えてくれるようです。 なるほど。身近な食材ほど、私たちを二日酔から救ってくれるみたいですね。 実はニューオーリンズでは既に、二日酔いに効く食べ物として重宝されていたヤカメン。今回晴れて、科学的根拠を得たわけですが、人々は実際に、効果を感じて いるのでしょうか?ニューオーリンズ出身のシェフである Woodrow Conerly 氏は CBS NEWS の取材に対し、次のように答えています。 「私は科学者ではありません。しかし確かに、ヤカメンは二日酔いに効くのです」 日本では、飲んだ後のしめや、胃が弱った翌日の食事として、人気の高いうどんやそば。実は案外、理にかなっていたのかもしれませんね!?
50才を超えても30代に見える大人気ドクターの南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は、アルコールとの上手なつきあい方について。 【質問】 お風呂上がりのビールがおいしくて、毎日飲んでしまいます。週に一度は“休肝日”を作るといいと聞きますが、実際のところどうなんですか?(ホップルン・45才・主婦) 【南雲先生の回答】 “毎日お酒を飲んでいたから肝臓を悪くした”なんて話もよく聞くけれど、じゃあ、アルコールを一切摂らない“休肝日”を設ければ、それで肝臓の機能は元に戻るかというと、そういうことではないんだな。 実は肝臓がアルコールを処理できる容量というのは決まっていて、一生の間にどれだけアルコールを飲めるかというと、男性なら500kg、女性なら250kgといわれているんだよ。だから、1日抜いたからといって、翌日いっぱい飲んだら、まったく意味がない。 ちなみに、アルコールの量0.1kgというと、ワインなら1本、日本酒なら4合びん1本、ビールなら中びん4本に相当する。これを毎日飲むとすると、男性なら14年、女性なら7年で“極量”がきてしまう計算になるんだ。 だから、“休肝日”を設けるというのは、その極量に到達する日を少しでも遅らせようということになるわけだね。 怖いのは、この極量を超えると高い確率で肝硬変になり、それでもまだ飲み続けると、肝臓がんになる人が多いということ。“すぎた酒は命を削るカンナ”というのがよくわかるでしょう?