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尻もちで異変…河合美智子さん語る「脳出血」の一部始終

 去年の8月13日、「脳出血」で救急搬送されました。でも、自分自身は「何で救急車呼ぶの?」と思っていたくらい普通だったんです……。

 その日は、夜にクルマで知り合いの監督が手がけていた自主映画の稽古場にお邪魔したんです。見学だけのつもりだったのに、その場で出演する話になって稽古に参加しました。稽古中、イスに腰掛けていた状態から、途中で床へ下りて横座りする姿勢になりました。すると、だんだん右脚が重いような固まっているような感覚になって……。でも、そのときは大して気に留めていませんでした。

 異変がはっきりしたのは、休憩になってイスに戻ろうとしたときです。立ち上がろうとして尻もちをついてしまったんです。周りの人たちが「足がしびれたんですか?」とイスに座らせてくれる中、「ごめんね、カッコ悪いね」と照れ笑いしながら、右脚に感覚がないことを自覚しました。それでも、病気だとは思いもしなかったので、ずっとしゃべって笑っていたんです。

 そのときプロデューサーが、いきなり「救急車を呼んで!」と大声で叫んだのです。右足首が普通じゃない曲がり方をしていたようでした。そのプロデューサーは身内に脳出血を患った方がいらしたそうで、迅速な判断をしてくださったのです。稽古場に着いてから1時間後ぐらいの出来事でした。

 救急車が到着するまでの間に右手が固まり始め、5分ほどで到着した救急隊員に自分の名前や状態を説明している間にろれつが回らなくなり、言葉が通じなくなっていきました。たとえるなら、ギリシャ神話の怪物メドゥーサと目が合って、足から徐々に石化していくような感じ(笑い)。

 救急車の中では「明日の仕事をキャンセルしなくちゃ」とか、「まだやることあるのに」「クルマ置いてきちゃった」なんていろんなことを考えて、大ごとだとはまったく思っていませんでした。

 集中治療室に運ばれると、血圧が200(mmHg)もあって、血圧を下げる薬を点滴されました。高血圧による脳出血でした。MRIやCT検査でわかったのは、「これ以上、出血量が増えれば頭蓋骨に穴を開ける手術をして血腫を取り除かなければならない」ということ。手術の同意書にもサインしていたのですが、ギリギリで出血が止まってくれたので、手術はせずに済みました。

 後から聞いた話によると、止めてあったクルマを取りにいってもらうと、何と鍵が開いていて、車内にお財布が無造作に置いてあったそうです。そんなことをした経験は過去にないので、今思えばそのときから影響が出ていたのかもしれません。

 発症当日はろれつが回らなくて「あ」と言いたくても「お」になってしまうような状態でしたが、幸いにも翌日には言いたいことが言えるようになり、ホッとしました。

 ICUにいた3日間は、どこも動かないし、羞恥心もなくなって、あおむけのままボーッと風に吹かれている感じ。まるで「枯れ葉の中の微生物」になった気分でした。

■ステージを歩くためにリハビリにも熱が入った

 その後、個室から一般病棟へ移り、さらにリハビリ専門病院に転院して約3カ月半を過ごし、今年の1月10日に退院しました。通算5カ月の入院生活は大変でしたけど、なかなか経験できないことができたという意味で、とても面白かったです。日頃知り合うことのない99歳のおばあさんのお話を聞いたり、自分の体を何とか動かそうといろんなところに意識を集中してみたり、退屈することがまったくありませんでした。特にリハビリ病院では、時間割通りの生活で結構忙しかったです。

 しかも、入院生活の中盤からは仕事もしていました。初めはNHKのラジオ出演。そして、病気を発症した例の自主映画の撮影もありました。さらに、12月にはNHKの生放送の歌番組「わが心の大阪メロディー」で、大阪まで行ったんです。ステージを歩くためにリハビリにも熱が入りました。

 ただ、一番大きなモチベーションになったのは、「大好きなレストランで食事をしたい」という気持ちでした。「のんとろっぽ」という世田谷のお店なんですが、2階にあるので「何としても、あの階段を上るんだ!」と頑張ったんです。実際、10月には外出許可をもらって食べにいきました。まあ、赤ワインを飲みにいったとも言えますが(笑い)。もちろん許可はいただいてますよ。「飲み過ぎない程度にリラックスしてきてくださいね」と。

 泣いていても笑っていても同じように時間が過ぎるのなら、笑っている方がいいと思うんです。リハビリも仕方なくやるんじゃなく、前向きにやった方が絶対に効果が出やすいはず。まだリハビリは必要ですが、この経験は絶対にお芝居に生かせると思っているので、これからが楽しみです。

▽かわい・みちこ 1968年、神奈川県生まれ。83年に映画「ションベン・ライダー」でデビュー。その後も数々の映画やドラマに出演した。96年、NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」で演じたオーロラ輝子の歌「夫婦みち」がヒットし、翌年の「NHK紅白歌合戦」にも出場。現在、出演映画「ママ、ごはんまだ?」が上映中。

“神の手”が解説 「脳動脈瘤」2大治療のメリットとデメリット

突然死を招く重大病として知られる「くも膜下出血」。その最大の原因は脳の動脈にできた脳動脈瘤の破裂だ。いったん破裂すると、社会復帰できるのは3分の1程度で、残りは死亡するか、社会復帰が不可能なほどの後遺症を残してしまう。この極めて恐ろしい「脳動脈瘤」の治療法には、2つの治療法がある。「開頭クリッピング術」と「脳血管内治療(コイル塞栓術)」だ。中心となる治療法はどちらなのか。

 日本で1970年代から行われている「開頭クリッピング術」は、伝統的な脳動脈瘤の手術法だ。全身麻酔をかけて頭部を切開し、動脈瘤の根元を洗濯ばさみの形をしたチタン製のクリップで挟み、血流を止めて破裂を防ぐ。

 一方、脳血管内治療である「コイル塞栓術」は1997年から始まり、まだ20年と歴史が浅い。脚の付け根(鼠径部)の動脈から1ミリ弱のカテーテルを挿入。プラチナ製コイルを脳動脈まで到達させて、脳動脈の内部をふさいでしまう。

 一時期、コイル塞栓術がクローズアップされたが、いまはどうか? 緊急を除いておよそ半年待ち。脳動脈瘤手術では、「神の手」の評価を持つ「昭和大学病院・脳神経外科」(東京・品川)の水谷徹主任教授が言う。

「『開頭クリッピング術』とコイルを利用した『脳血管内治療』の手術件数比率は、だいたい2対1です。ただ、クリッピング術は下降の傾向にあり、逆にコイル術が上昇の機運にあります。私の場合、どちらの手術を選択するかは、まず患者の『安全性』『確実性』を最優先にして判断しています」

 コイル塞栓術がクローズアップされたきっかけは、破裂脳動脈瘤に対して両者を前向きに比べたISAT試験。「どちらを選ぶか明確でない動脈瘤には、コイル塞栓術を選択すべき」と結論づけたからだ。

■両方の技術を持つ医師が理想

 しかし、その後ISAT試験にはいくつかの疑問が投げかけられた。たとえば「ISATに用いられた開頭クリッピング術の成績が日本のそれに比べて大きく劣っている」「発症から手術まで3日以上も経過していた」などだ。

 その後も、両者を比較した国内研究でコイル塞栓術の優位性が報告されてはいるが、急上昇しているわけではない。

「クリッピング術は再発が約1%と極めて少なく、多彩な形状でも手術が可能です。しかも、治療中に出血してもすぐに対応できます。開頭するため手術の痛みが伴い、手術者によって術後のけいれんや感染などを起こすリスクも高くなりますが、根治手術であることから、クリッピング術を選ぶ医療機関が多いのです」

 一方、コイル塞栓術は「頭部を切らないから痛くない。術後のけいれんが少なく、離床が早い」など多くのメリットがある。ただ、「再発率が約15%で、重度の腎機能障害疾患者や造影剤アレルギー患者にはふさわしくないこと」などのデメリットもあり、まれにコイル術中に脳動脈瘤が破裂し、すぐ開頭手術に切り替えるケースもあるという。

「その意味では脳動脈瘤の手術は、術者(執刀医師)が、開頭(クリッピング術)と血管内(コイル塞栓術)手術の両方ができる技量を持ち、患者さんによって使い分けできることが理想です。たとえば、クリッピング術に適応している患者さんはクリッピング術を施し、動脈瘤が脳の奥底にあったり、動脈瘤の入り口が狭く奥行きが大きかったり、お年寄りであった場合などはコイル塞栓術を使えばいいでしょう」

 この議論は10年以上続いているが、両者の短所・長所を綿密に検討して、症例ごとに最も適した治療法を選択するというのが結論のようだ。

常識覆す新リハビリ 失語症は「磁気」で言葉を取り戻せる

脳卒中の後遺症のひとつが、言葉が出てこなくなる、書く・読む・話す能力が著しく落ちる「失語症」だ。この失語症の新リハビリが注目されている。

 失語症を含む脳卒中の後遺症に対し、画期的なリハビリを行っているのは、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座の安保雅博教授だ。磁気刺激を利用したもので、世界的にも注目を集めている。2009年以降、脳卒中の後遺症に悩む3000人以上の患者に実施した。

■2週間で言葉がスムーズに出てくるように

 現在35歳のシステムエンジニアの男性は、32歳の時に脳梗塞を起こした。失語症の後遺症が見られ、SEの仕事から離れざるをえなくなった。リハビリを開始したが、うまくいかない。2年後、安保教授のリハビリを知り、転院。治療開始前、4コマ漫画を見て、その背景を説明するテストを受けた。

 たとえば「飛んでいた鳥が→小さな島を発見→降りようとしたらクジラの背中だった」といった簡単なものだ。ところが、失語症であるためにイメージをうまく頭に思い浮かべられず、言いたいことを言葉に表せない。

 安保教授のリハビリは2週間、入院して行われる。2週間後、同じ4コマ漫画のテストを受けると、治療前と一転し、オチのあるストーリーとして話せた。明らかに変わったのは、言葉がスムーズに出てくるようになったこと。磁気刺激と集中リハビリを12回(2週間×6回)受け、今では再就職して社会復帰を果たしている。

 安保教授のリハビリでは、磁気刺激を脳に与え、正常な働きを取り戻す手助けをする。

 磁気刺激を与える方法は、急性期と慢性期で変わる。脳卒中を起こしてしばらくの急性期では、「損傷した脳」に磁気刺激を与え、正常な働きを取り戻す手助けをする。ところが時間が経つと、脳は左右がバランスを保って機能しているので、右脳が損傷を受けた場合、左脳が右脳の働きを補うようになる。

「一般的には、健康な側の脳が損傷を受けた側の脳を『助ける』と考えられています。しかし私は、健康な側の脳の働きが強くなり、損傷を受けた側の脳を『抑制する』と脳機能画像の結果から考えたのです。そのため脳卒中から時間が経って後遺症が慢性化した場合は、『健康な側の脳』に刺激を与えて働きを弱め、損傷を受けた側の脳が正常な働きを取り戻せるようにします」

■磁気刺激で話せる能力を改善

 当初は上肢のマヒを持つ患者で実績を挙げた。上肢のマヒは下肢と違って回復が難しいとされ、「発症後6カ月以上は回復しない」といった“常識”もあるが、それらを覆した形だ。そして最近力を入れているのが、失語症への磁気刺激だ。

 ほとんどの失語症は「左脳の損傷」で起こる。だから普通に考えれば、健康な側の右脳に低頻度磁気刺激を与えることになるが、安保教授の研究では、失語症の改善においては、患者によって左右どちらが適しているか異なると判明した。

「MRIで左右どちらの脳のどの部分が、失語症の改善に有用な役割をしているかを見極め、その部分の働きがよくなるように脳へ磁気刺激を与えます。この点が上肢の場合と異なります」

 最初は損傷側の左脳に低頻度磁気刺激を与え、リハビリが進むにつれ、健康な側の右脳への低頻度磁気刺激が適切になるケースも多々見られた。

「少しでも改善される人は、約8割です。話せる能力が改善すれば、再就職できる可能性が高くなります」

コーヒー党と緑茶党 脳腫瘍のリスクが低いのは?

10万人以上の日本人を対象に、コーヒー、緑茶、それぞれの摂取量と脳腫瘍発症の関係を調べた研究で、1日3杯以上コーヒーを飲む習慣がある人は、週に4日以下しか飲まない人に比べて、脳腫瘍のリスクが半減していることが分かりました。

■40歳以上の日本人10万6000人を平均18年追跡

 コーヒーは、カフェインをはじめとするいろいろな成分を含んでおり、様々な病気を予防する効果があるといわれています。日本では、特に高齢者が、コーヒーより緑茶を好む傾向が強く、緑茶が健康に役立つという日本人研究者による報告も続いています。
 今回、国立がん研究センターの小川隆弘氏らは、日本全国の11の保健所管内(岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、

沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田)に住む人々を対象に、長期にわたって行われたJPHC Study(「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」)の一環として、コーヒーと緑茶の摂取量と、その後の脳腫瘍発症の関係を調べました。

 対象になったのは、JPHC Studyに参加した時点で、がんや循環器疾患ではなかった40~69歳の人々で、分析に必要なデータがそろっていた10万6324人です。1990年または1993年から2012年末まで追跡し、脳腫瘍発症の有無を確認しました。試験に参加した当初に、コーヒーと緑茶の摂取習慣について、質問票を用いて調べました。参加者には、週に1~2日、週に3~4日、1日に1~2杯、1日に3~4杯、1日に5杯以上の選択肢のなかから、いずれか該当するものを選ぶように依頼しました。

その結果に基づいて、週に4日以下のグループ、1日に1~2杯のグループ、1日に3杯以上のグループの3群に分けました。コーヒーの摂取量に基づいて、3群に割り振られた人の数は、週に4日以下が6万1371人(参加時点の年齢の平均は53.3歳、男性の割合は44.1%)、1日に1~2杯が2万8345人(50.1歳、40.0%)、1日に3杯以上は1万2230人(47.9歳、75.0%)でした。

■1日3杯以上コーヒーを飲む人は、脳腫瘍リスクが53%低かった

 平均18.1年の追跡期間中に、157人が脳腫瘍と新たに診断されていました。これらの脳腫瘍発症者のうち、コーヒー摂取量が週に4日以下だったのは102人、1日に1~2杯が45人、1日に3杯以上は8人でした。コーヒーを週に4日以下しか飲まないグループを参照群として比較すると、1日3杯以上のコーヒーを摂取しているグループは、脳腫瘍リスクが53%低いことが明らかになりました。ただし、コーヒーの摂取量が増えるほどリスクが下がる、といった傾向は見られなかったことから、摂取量が一定レベルを超えると、急に脳腫瘍抑制効果が現れる可能性が考えられました。

 同じ方法を用いて、緑茶の摂取量と脳腫瘍の関係も調べましたが、意味のある関係は見られませんでした。著者らは、今回対象とした集団においては、コーヒーを1日に3杯以上飲む人が比較的少なかったことから、より大規模な研究を行って、今回の結果を確認する必要があると述べています。論文はInternational Journal of Cancer誌2016年12月号[注1]に掲載されています。

[注1] Ogawa T, et al. Coffee and green tea consumption in relation to brain tumor risk in a Japanese population3. Int J Cancer. 2016;139(12):2714-2721.大西淳子(おおにし・じゅんこ) 医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

軽い痛みでも発症…くも膜下出血の“サイン”を見逃すな

後頭部をガーンとハンマーで殴られたような痛み――。くも膜下出血は激烈な痛みが特徴とされるが、実は、軽度な痛みで起こるケースもある。かえって見過ごされやすく、要注意だ。

 1年前の「あの日」を振り返るのは、会社員のAさん(58)だ。数日前から頭痛が続き、鎮痛剤を飲んでも治まらない。もともと頭痛持ちで、ある意味で頭痛に慣れてはいた。いつもなら、市販の鎮痛剤を飲めば痛みが徐々に消える。時に1錠では足らず、時間を空けて2錠飲むこともあったが、2日、3日と日をまたいで頭痛が続くのは初めてだった。

 妻からは「病院で薬をもらった方がいいんじゃない?」と言われていたが、仕事で厄介な案件を抱えている時期だったこともあり、病院に行く時間が惜しかった。そのうち良くなるだろうと楽観視して、仕事をこなしていた。

 激痛に襲われて倒れたのは、休日出勤中だった。幸いにも部下が職場にいたことで、速やかに救急搬送してもらえた。検査結果は「くも膜下出血」だった。さらにAさんの運が良かったのは、救急搬送先に脳神経外科の名医が当直でいたことで、すぐに緊急手術が行われた。Aさんは片足の軽いマヒは残ったものの、一命を取り留めた。後に主治医からは、「頭痛が治まらない時点で、病院に来ていれば……」と言われた。

■薬を飲んでも頭痛が1日以上続く

 脳神経外科医で、頭痛患者を多数診ている「くどうちあき脳神経外科クリニック」の工藤千秋院長は、Aさんの事例を「決して珍しいことではありません」と話す。

「くも膜下出血の典型的なものでは、動脈にできた瘤(動脈瘤)が爆発するように破れます。これによって、激烈な痛みが生じます。しかし、破ける前に、血液がジュワーッと血管の外に染み出ていく場合があります。すると痛みは、どちらかというと軽いようになるのです」

 頭全体が重苦しい。時に吐き気もある。Aさんに見られたように、鎮痛剤では痛みが治まらず、場合によっては数日間続く。

「これは、いわば大爆発となるくも膜下出血の前段階のような状態です。放置したからといって瘤は消えません。そして、何らかの拍子に瘤が本格的に破れてしまうのです」

 くも膜下出血は、発症すると50%が死に至るといわれている。治療によって、ほとんど後遺症なく社会復帰できるのは30%程度との指摘もある。もし、本格的に破れる前に発見できて治療を受けられたら、非常に幸運といえる。だからこそ、サインを見逃してはいけない。

 脳梗塞などの脳卒中では、体の片方のしびれ、マヒ、言葉が出ない、ふらつく、視野が狭まるといった症状もあるが、くも膜下出血に関しては、頭痛と吐き気が表れる。命拾いした患者の中には、「数日前から風邪だと思っていた」と話す人もいる。頭痛や吐き気からくる連想だろう。

「高血圧はくも膜下出血にも頭痛にも関係していて、『血圧の薬を飲んだら頭痛が治まった』というケースもあります。これならくも膜下出血を心配しなくてもいいでしょう。しかし、頭痛薬も含めて薬で症状が改善しなければ、すぐに外来を受診するか、救急車を呼ぶ。即行の対応が求められます」

 くも膜下出血は、働き盛りの世代に多い。それゆえに「様子を見よう」「この仕事が終わってまだ症状があったら病院へ行こう」などと考えがちだが、それが、命を縮める結果につながりかねないのだ。

突然の脳梗塞…迷わず救急車を呼ぶべき「5つの症状」

 年末年始の休暇に入り、病院も休みになる。しかし、5つの「ちょっとした異変」があれば、迷わず救急車を呼ぶべきだ。最悪の事態になりかねない。

「びびっと気づいて対応するか、『何かおかしいな』程度に考えて放置するかで、その後の運命は大きく変わります」

 こう言うのは、東京慈恵会医科大学神経内科の井口保之教授。脳梗塞治療のエキスパートだ。

 脳梗塞は突然起こる5つの症状が見極めの決め手になる。ところが、井口教授によれば、「見落とされることが非常に多い」という。ドーンとくる重い症状であれば慌てて救急車を呼ぶだろうが、軽い症状のケースが珍しくないからだ。しかも、一過性脳虚血発作といって、数分から1時間以内で症状が消えてしまうケースもあるから厄介だ。

 井口教授らの調査では、どんなに軽い症状であっても「びびっと気づいた」人は76%が2時間以内に来院。 一方、症状には気づいていても重大視しなかった人は半数以上がすぐに病院に来ていなかった。

 これがどういう結果を招くのか。

「早期に来院すれば、『血栓溶解療法』という内科的治療が可能になるのです」

 血栓溶解療法とは、「t-PA」(アルテプラーゼ)という血栓を溶かす薬剤を注射で投与する。脳梗塞は、脳へいく血管が血栓(血液の塊)で詰まって血流が滞り、その先の脳細胞が壊死する病気だ。当然のことながら、治療までの時間が長くなるほど壊死する脳細胞は増え、脳の損傷が拡大する。早い段階で血栓溶解療法を受けて血流が再開通すれば、“被害”は最小限に食い止められる。

「t-PAを受けた100人の調査では、39人が3カ月後に自立でき、プラセボ(t-PAを受けられなかった)群は26人しか自立できませんでした。100人単位で見ると小さな差と思うかもしれませんが、母体を大きくすると有意差がはっきりとわかります」

 脳梗塞は、約4割の患者は発症前と同程度まで回復し、一方で6割は後遺症が残ったり死亡したりするといわれている。さらに、後遺症・死亡例のうち、何らかの後遺症が残る人が20%、補助なしの社会生活が困難なほどの後遺症の人が23%、死亡者が17%。

 どれに属するか? に大きくかかわっているのが、軽い症状にも「びびっと気づき」「早期に来院」することなのだ。

■高齢者の場合「認知症と誤解」

 井口教授が注意を促す5つの症状は次の通り。

①片方の腕や脚にマヒ、しびれが起こる。マヒは「動かしたくても動かない」、しびれは「ジンジンしたしびれ」

②ろれつが回らない、言葉が出てこない、他人の言うことを理解できない

③片方の目が見えない、視野の半分が欠ける、ものが二重に見える

④立てない、歩けない、ふらふらする

⑤経験したことがない激しい頭痛

 ⑤は、くも膜下出血の症状で激烈なので、誰でも危険を感じるだろう。しかし、①~④も突然起こったら、たとえ軽くても迷わず救急車を呼ぶ。

 高齢者の場合、「認知症の表れ」と本人も家族も思いがち。たとえ認知症の症状だったとしても、それは検査を受けたからこそわかることであって、MRIなどのチェックは不可欠だ。「私の調査では、病院に入院した脳梗塞急性期の患者で血栓溶解療法を受けることができる割合は全体の5%程度。5つの症状にびびっと気づく人が増えれば、急性期治療を受けることができる患者の割合はもっと増えるでしょう」

 症状から脳梗塞を疑った時、救急車を呼ぶのに遠慮はいらない。

「時間が勝負」の脳梗塞治療 「t-PA」適用は1、2割

「脳梗塞のt-PA治療」を手掛ける岡山赤十字病院(岡山市北区青江)脳卒中科の岩永健部長を紹介する。t-PAをはじめとした治療方法や心掛けていることなどを聞いた。
 
 脳梗塞の治療は、時間との勝負だ。脳に酸素や栄養分を供給する動脈が血栓で詰まり、血流が止まる。時間がたつほど脳細胞の壊死が広がり、脳に重篤なダメージを及ぼす。血栓を溶かし、いち早く血流を再開させる治療として非常に有効なのがt―PA治療だ。

 およそ1時間かけて静脈から点滴する。個々の患者の状態によって効き方は異なるが、効果が高いケースでは、意識がなかったり、まひを起こした患者が、医師の目の前で劇的に回復する。脳梗塞後に後遺症なく社会復帰できる可能性も、他の治療に比べて高いという。岡山赤十字病院は2008年、脳梗塞を診る専門科として脳卒中科を開設し、これまで約200人にt―PA治療を適用している。

 ただ、t―PAは誰にでも使えるわけではない。脳梗塞の治療ガイドラインで、発症から4・5時間以内という条件が決められている。また時間内でも、脳梗塞の範囲が広がりすぎていたり、血栓予防の薬などの影響で脳内出血のリスクが大きい場合は使用できない。同病院でも、急性の脳梗塞患者のうち、t―PAを適用できるのは1、2割だ。

 救急車や地域の開業医から、脳梗塞が疑われる患者搬送の連絡がくると、岩永らは脳外科や検査部門などと連携し、t―PAを想定して準備を始める。頭部のMRIやエコー検査、採血など、治療方針を決めるための準備を行い、患者を待ち受ける。t―PA適用となれば、1分1秒も無駄にできないからだ。脳梗塞の症状と似た別の疾患ではないか、短時間かつ高い精度で診断を行う必要がある。

 さらに「検査を進めつつ、患者に関するありとあらゆる情報を全力でかき集める」と岩永は言う。手足や顔面のまひ、ろれつが回らないなどの典型的な症状が現れた時間や状況、持病や病歴、かかりつけ病院や服薬中の薬などを、家族やかかりつけ医らから聞き取る。脳梗塞の発症時間や抗血栓薬など併用注意薬の服用状況が不明の場合、t―PAを使えないため、情報が患者の治療方針を大きく左右する。

 「t―PAを使えるのは、実際のところごく一部。t―PAが使えなくても、それに劣らない質の高い医療を提供したい」。心臓にできた血栓が脳の血管に到達して起きる心原性脳塞栓症、脳の太い血管が動脈硬化を起こして発症するアテローム血栓性脳梗塞など、脳梗塞には複数の種類がある。発症部位や症状に応じて最適な治療薬を選択する必要があり、医師としての的確な判断が求められる。

 脳梗塞の場合、体の機能が衰えるのを防ぐため、リハビリは入院初日から行う。関節部分を動かすだけの人、立ち上がることができる人など、患者の状態によってリハビリの進め方はさまざまだ。また脳梗塞発症直後は、意識レベル低下による誤嚥(ごえん)性肺炎、中枢神経のストレスによる消化管出血などさまざまな合併症を起こしやすい時期でもある。医師と多職種の医療スタッフが毎朝情報を共有する時間を設け、連携しケアに取り組む。「特に最初の1週間は気を抜けない時期。患者の病状を安定させ、回復期の病院、社会復帰へとつなげていくのが、急性期を診る病院としての役目」と語る。

「患者さんの発語が徐々に増えてきましたね」「もう少し食事量を増やしてみましょうか」「退院後に薬を管理するご家族はいるかな」―。 院内で週1回開く脳梗塞患者のカンファレンスは、なごやかな雰囲気の中、医療スタッフが活発に意見を交換する。岩永を中心に、入院病棟の看護師、リハビリ担当の理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーらが、現在の病状やリハビリの進め方、退院後に必要なケアなどについて話し合う。

 「あえて冗談を言ったりして、誰でも気軽に発言しやすい雰囲気を心掛けている」と岩永。患者や家族の率直な気持ち、退院後にどのような生活を送りたいかなど、医療面を超えた情報が自然と共有されるという。また地域のかかりつけ医やケアマネジャーに参加してもらうこともあり、退院後の地域生活を支える立場の人との連携も深めている。

 近年、脳梗塞など重篤な疾患であっても長期入院するケースは少ない。急性期病院である同病院では、脳梗塞の平均入院日数は15日だ。そのため岩永は、地域の病院などと連携し、脳梗塞や脳出血など「脳卒中」に関する幅広い知識の普及にも力を入れている。

 病院主催の一般向け講演会をはじめ、岡山県南東部の医療機関による連携組織「もも脳ネット」でも講習を開催。救急車で運ばれてきた実際の脳卒中患者の治療の流れを撮影した動画などを使い、ただちに受診するべき脳卒中の症状や家族に把握しておいてほしい情報、脳卒中の危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙など)を、医療関係者や一般の人に伝えている。「知識の啓発が、万一の際に早い受診につながる。脳梗塞などで寝たきりになる人を、地域全体で減らしていきたい」

 (敬称略)

 岡山赤十字病院(岡山市北区青江2の1の1、086―222―8811)
 いわなが たけし 福岡・小倉高、宮崎医科大卒。九州大第二内科に入局後、済生会八幡病院、九州労災病院などを経て2005年より川崎医科大学へ。オーストラリア・メルボルン大などを経て11年より岡山赤十字病院勤務。脳卒中センター長、地域連携室副室長も務める。日本脳卒中学会専門医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本老年医学会老年病専門医、日本神経超音波学会脳神経超音波診断士・評議員、もも脳ネット理事。45歳。

危険因子の不整脈 治療必要な症例、代表は心房細動

 脳梗塞を引き起こす危険因子として、高血圧や糖尿病、高コレステロール、喫煙などがある。中でも、近年注目されているのが「不整脈」だ。脈のリズムが速くなったり、遅くなったり、乱れたりする症状で、健康な人でも起こることがあるが、一部には治療が必要なケースがある。代表的な症例が心房細動だ。心臓内に血栓が形成され、血栓が脳に運ばれると心原性脳塞栓症を引き起こす。このタイプは脳の広い範囲に脳梗塞を起こし、致死率も高い。

 治療が必要な不整脈であれば、心拍数のコントロールを行う。心房細動の場合、脈が頻回にとぶ、動悸(どうき)などの自覚症状が出ることがあり、血栓を防ぐ抗凝固薬の内服が重要となる。

脳卒中の後遺症「痙縮」へ働きかけるHANDS療法とは?

脳卒中の後遺症のひとつで、筋肉の緊張が高まり、手足がつっぱったり、曲がったりしてしまう痙縮(けいしゅく)。近年、重い痙縮にも効果的な治療法が登場している。

 脳梗塞や脳出血などを発症して、脳の血管が詰まったり細胞が壊死したりすると、後遺症が残ることがある。半身の手足の麻痺はその代表例だ。痙縮は、時間の経過とともに片麻痺と一緒に表れることが多い。

 脳卒中などで中枢神経が障害を受けると、筋肉が伸ばされたときに伸びすぎないようにする反射が強くなり、常に筋肉が緊張した状態を引き起こすことがある。筋肉の緊張が異常に上がると、自分の意思とは関係なく手足が勝手に動いてしまったり、筋肉がつっぱって手足が動かしにくくなったりする。これが痙縮だ。たいていは片麻痺と同じ側の手足に表れる。

 東海大学病院リハビリテーション科の藤原俊之医師はこう話す。

「患者は痙縮を起こした手足をだんだん動かさなくなります。すると手足を動かす筋肉の緊張が高まるため、さらに動かしにくくなってしまいます」

 強い反射を筋肉あるいは脊髄のどこかでコントロールすることができれば、重度な痙縮を和らげることができる。

 現在リハビリをはじめ、内服薬や筋肉へのボツリヌス注射など、さまざまな治療方法がある。

 神奈川県の田川和夫さん(仮名・42歳)は2011年に脳出血を発症し、右手足に麻痺が残った。福祉施設の調理師だった田川さんは、右手でものを握ったりつまんだりすることができなくなったため、左手だけでどうにか仕事を続けてきた。

 15年に藤原医師の診察を受けた際、右腕の筋肉がわずかに動くことがわかり、4週間、外来でHANDS療法を受けた。

 HANDS療法とは、「随意運動介助型電気刺激装置」と「手関節固定装具」の両方を1日8時間、3~4週間にわたって装着し、日常生活の中で手を動かす訓練を補助するものだ。

「随意運動介助型電気刺激装置」は、手を動かす筋肉がある皮膚の上に電極をつけ、患者が手を動かそうとしたときの筋肉の弱い活動を感知して、その活動に応じた電気刺激を与えて、筋肉の収縮を補助する。普通の電気刺激装置と違って、患者が麻痺した手を動かそうとしたときだけ電気刺激によって筋肉の収縮を補助するのが特徴だ。

 一方、「手関節固定装具」は、痙縮のある手を機能的によい位置に固定するもの。手の緊張を弱めて動かしやすくする。

「たとえ弱くても筋肉の動きがあることが筋電図で確認できれば、HANDS療法を受けられます。医師が状態を綿密に評価し、さらに患者から、仕事や日常生活の中でどのように手を動かしたいかを詳しく聞きます。これを反映して、個別の患者に合ったトレーニングプログラムを作成します」(藤原医師)

 個々のニーズに合わせたプログラムなので、患者はその装置をつけて自然に手を動かす機会が増える。トレーニングを重ねることで、運動機能は向上し、痙縮の程度は少しずつ軽くなる。3~4週間後には装置なしでも、ある程度は手指が動かせるようになる。多くの患者が治療終了後もその状態を保っている。

 田川さんはHANDS療法後、痙縮がある右手でほうきを使って掃除をしたり、タオルでからだを拭いたり、ドアを開けたりなどの日常の動作ができるようになった。さらに右手で食材を支えることが可能になった。

 藤原医師によると、HANDS療法では、脳卒中の障害が同程度の患者で、発症から半年後の人と3年以上経過した人の治療効果を比べたとき、手の機能の回復の程度はほぼ同じだった。つまり慢性期の患者にも機能回復の可能性があるのだ。

 ただし、この治療によって麻痺がなくなったり、手の動きが完全に元通りになったりするわけではない。また、この治療は足の麻痺には適応がない。

 HANDS療法を受けるにはいくつかの条件がある。脳卒中を発症して6カ月以上経過していること、手の筋肉がわずかでも動くこと、ひとりで歩行ができること(杖の使用は可)、腕が胸の高さくらいまで上げられること、患者が自主的に手を動かすこと、などだ。

 なお、体内に心臓ペースメーカーが入っている場合や、重い心疾患、肝・腎機能障害のある場合などは対象外となる。

熱中症だと思ったら、「夏の脳梗塞」だった その見分け方


くらくらして目まいが止まらない。手足が思うように動かない。その症状は突然、襲ってくるという。

 茨城県古河市の高校1年生、柳澤拓実君(16)は、ソフトテニス部に所属。高1だった昨年8月3日、グラウンドで練習をしていたところ、突然ふらふらし、ラケットとボールの距離感が合わなくなった。周りの部員も、空振りが続く様子を見て、異変に気付いた。彼の父親、直平さんが本人に代わって語る。

「部室で横になっていたそうですが、呂律も回らなくなった。夕方前、息子は顧問の先生に連れられ、病院に行きました。私も病院に駆けつけ、息子に問いかけましたが、“うん、うん”といった返事しかない。血液検査を行い、熱中症に特有の数値が示された。CTスキャンも撮ったのですが、その時は脳に異常は見つかりませんでした。そのため医師の診断はやはり熱中症となった。しばらく安静にし、日が落ちてから、息子を家に連れて帰りました」

 しかしその後、過酷な運命が拓実君を襲う。

「息子は家でも横になって寝ていました。夜の10時頃、“さすがに着替えくらいさせないと”と思い、服を脱がせようとした時に、右半身が動かなくなっていることに気が付いたのです。急いで同じ病院に行き、今度はMRIの検査を行った。それで初めて脳梗塞だということが分かったのです」
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■右の全身麻痺、緊急手術

 重い熱中症かと思われた拓実君は、命に関わる重篤な病を発症していたのだ。別の病院を経て、拓実君が筑波大学附属病院に搬送されたのは、4日未明のこと。直平さんは医師からこう告げられた。

「左の側頭葉の大部分が死にかけています。全失語、右の全身麻痺の状態です」

 父親が受けた衝撃の大きさは察するに余りある。

「“これから2週間が山です”と言われた。息子は集中治療室に移され、翌5日、脳梗塞の手術を受けました。その後、痙攣(けいれん)の症状も出た。先生から“危惧した通り、脳圧が上がりつつある”と指摘され、左側頭葉の頭蓋骨を外して脳圧を逃がす緊急手術が行われました」

 計3度の手術の結果、拓実君はからくも一命を取り留め、脳梗塞から生還した。

 もっとも重い後遺症は残った。車いす生活を余儀なくされ、失語症に陥ったのである。しかし懸命のリハビリを続け、発症から半年で車いすから歩行器に移行。今なお右足首が上がらず、膝から下は引きずるような形ではあるものの、彼は自力で歩けるまでになった。

「学校には戻れていませんが、言葉に関しても、3~4個の単語を繋ぎ合わせて、話ができるところまで回復しました。私が訴えたいのは、熱中症と間違える脳梗塞があるのを、皆さんに知識として持ってほしいということ。“若者・炎天下・スポーツ”という要素からすぐに熱中症と捉えられがちですが、息子のような若い人間にも脳梗塞は起こり得るのです」


■見分け方は

 炎天下で足元がふらふらし、意識がぼーっとする。熱中症と脳梗塞に共通する症状で、両者は区別がつきにくい。しかも、脳梗塞は冬場になるケースが多いとの先入観もある。

「しかし6~8月の夏場に脳梗塞を発症する確率も決して低くありません。冬は寒さから血管が収縮し、高血圧で発症しますが、夏は大量の発汗で脱水症状をきたし、血液の粘度が増す血液濃縮と低血圧が起こり、血管が詰まりやすくなる」

 と解説するのは、脳神経外科医の工藤千秋氏だ。

 実際、国立循環器病研究センターの調査によると、2008~13年の6年間の脳梗塞患者の件数は春(3~5月)961件、夏(6~8月)1004件、秋(9~11月)917件、冬(12~2月)966件だった。実は、脳卒中のうちでも脳梗塞に限っては、夏季に発症しやすいのである。

 ではどうすれば、熱中症と脳梗塞を見分けられるのか。日本脳卒中協会専務理事で、中山クリニック院長の中山博文氏はこう語る。

「熱中症と脳梗塞に共通する症状は、目まいと意識障害です。このうち目まいには、ふわふわとした布団の上を歩くような浮遊感があるものと、グルグルと頭や体が回ってしまう回転性のものがある。後者であれば、脳梗塞を疑い、すぐに医療機関にかかってください」

 総合内科専門医で、秋津医院院長の秋津壽男氏の指摘はこうだ。

「ポイントは、脳梗塞であれば、体の全体ではなく、左右のどちらかに悪い反応が出るということです。それを見分けるのにバレーサインというチェック法があります。まず目を瞑って、両腕を“前にならえ”の格好にします。この時、両腕の高さを同じにしようと思って上げてください。そして10秒ほど経ってから、目を開けます。この時、どちらか片方の腕が下がっていれば、麻痺状態を起こしているサインになります」
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■チェック法は「FAST」

 他にもポイントはいくつかある。工藤氏が補足する。

「私はまず第一に体温を挙げます。熱中症になった場合は、少なくとも体温が38度以上になり、体がものすごく熱くなる。一方、脳梗塞になっても、体温は特にあまり変化しません」

 さらにもう一つのポイントは、脳梗塞の“巣症状”があるか否かだという。

「夏場に増える脳梗塞は、脳の太い血管(動脈)が詰まるアテローム血栓性脳梗塞よりも、脳の細かい血管(毛細血管)が詰まるラクナ梗塞が多い。このラクナ梗塞では意識が遠のく前に、“右手だけ力が入らない”“話す時に言葉が出づらい”などの症状が先行することが多い。これを見分けるには“FAST”というチェック方法があります」(同)

 それは以下のようなものである。

F(face)顔の麻痺(歯を見せるように笑った時、片方が歪むと危険)

A(arm)腕の麻痺(手の平を上に向け、両腕を肩の位置まで水平に上げる。10秒ほど経ち、この時、片方が下がっていたら危険。できるなら目を閉じて行う)

S(speech)言葉の障害(呂律が回らなかったり、言葉が出ないようなら危険)

T(time)発症時期(上記3つのうち1つでも症状があれば、発症時刻を確認して、119番に電話する。発症から4時間半以内であれば、詰まった血栓を溶かす緊急治療が可能)

■“夏の脳梗塞“

 区別だけではなく、専門医は熱中症由来の脳梗塞にも気を付けるべきだと言う。

「熱中症の基本的な症状が脳梗塞の引き金になる」(医学博士で米山医院院長の米山公啓氏)

 脳神経外科医の眞田祥一氏はさらに踏み込んで言う。

「熱中症とは、脳の血流の循環障害であり、広義の脳梗塞なのです。普通は脳を巡る血液は一定量ですが、脱水症状になると、循環が悪くなり、“夏の脳梗塞”が起こる。つまり“夏の脳梗塞”は熱中症の延長線上にある症状と言える」

 この「夏の脳梗塞」でよく見られるのが「心原性脳梗塞」と呼ばれるものだという。秋津氏が解説する。

「大本は熱中症によって発症する不整脈が原因です。心臓は血液を送り出すことで、体の全身に酸素を供給している。脱水症状で血液量が減ると、心臓はもっとたくさん動いて何とかしようとする。その結果、脈が速くなって、不整脈を起こすわけです。これを放置しておくと心房細動という非常に危険な病気に進行してしまう可能性がある」

 心房が小刻みに震え、痙攣を起こしたような状態だ。

「この心房細動で血を押し出す力が激減する。心房に血液が滞って、より血栓ができやすくなります。これが脳に飛んで血管に詰まるのが“心原性脳梗塞”。あの長嶋茂雄さんが発症したものです。脱水症状にプラスして心房細動が起こると、脳梗塞のリスクは数倍高くなると言われています」(同)

「特集 敗血症も全身血栓もある『熱中症』から死に至る病」より

サインを見逃すな! 脳梗塞の“前触れ”は目に表れる

脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳細胞が壊死する病気だ。推定患者数は約92万人で、夏に発症することが多く、年間7万人が死亡する。命が助かったとしても深刻な後遺症を残す。突然発症するイメージがある病気だが、前触れがある場合も。何をキャッチすれば、命を永らえることができるのか?

 高血圧と糖尿病を患う加藤満さん(仮名=68歳)は昨年8月初旬、食事中に異変を感じた。右手の力が抜け、箸を落としてしまった。慌てて立ち上がろうとしたところ右足にも力が入らず、よろけた。熱中症を疑い、水を飲み、じっとしていたら症状が消えた。そのまま放っておいたが、3日後に救急車で運ばれた。脳梗塞だった。

「これは脳梗塞が起きる前に時々みられる『一過性脳虚血発作』(TIA)の典型です。ろれつが回らない、言葉が出ない、人の話し言葉が理解できない、片側が麻痺したり、しびれたりするなどの症状がこれにあたります。ところが、その多くは数分で症状がなくなってしまう。そのため、“疲れのせいだろう”と軽く考え、それを見逃してしまうのです」

 こう言うのは国家公務員共済組合連合会「立川病院」脳神経外科の福永篤志医長だ。

■シャッターが下りたように目の前が真っ暗になったら…

 問題は、この病気を放っておくと、3カ月以内に15~20%が脳梗塞を発症し、そのうち半数はTIAを起こしてから数日以内、特に48時間以内に脳梗塞になることだ。

 実はTIAを起こした後、早期に脳梗塞を起こすリスクを予測する方法がある。「ABCD2」スコアだ。これはTIAが起きた時点での「年齢」(60歳以上は1点)、「血圧」(140/90mmHg以上は1点)、「症状」(片側麻痺は2点、麻痺なしのろれつ障害は1点)、「症状持続時間」(60分以上2点、10~59分1点)、「糖尿病」(ありは1点)を計算するもの。

合計が3~4点以上になると、本格的な脳梗塞リスクが高いといわれている。この段階で飲み薬やカテーテルによる血管内治療、外科手術を行えば、本格的な脳梗塞を回避できる。

 とはいえ、冒頭のTIAの症状は、すでに脳の奥深くの血管が一時的に詰まっている危険な状態。いきなり本格的な脳梗塞が起こっても不思議ではない。それ以前に予兆をキャッチするにはどうしたらいいのか?

「目の異常に気をつけることです。TIAは大きく分けて2つの原因で起こります。動脈硬化と心臓の病気です。動脈硬化が原因で起きるTIAのうち、半数近くが頚動脈のプラークが脳の動脈に飛んで一時的な脳虚血を起こします。その多くが脳の中に入った直後にある目の動脈を塞ぎます。

ですから、突然シャッターが下りたように目の前が真っ暗になったり、視野が狭くなったり、物が二重に見えたりした場合は、TIAを疑い、ためらわず病院で診てもらう必要があります」(福永医長)

 中には、どこで診てもらえばいいか分からないという人もいるだろう。望ましいのは脳神経外科や神経内科、脳卒中科のある病院だ。

 TIAとは別の原因で起こる症状もあるが、脳梗塞に襲われた後で「あのとき、病院に行っておけばよかった」と後悔しても遅すぎる。疑問があれば恥ずかしがらず、病院で診てもらうべきだ。

脳動脈瘤破裂を防ぐ「多変量解析」で治療の選択が可能に

脳動脈瘤は、ごく小さいものまで含めると40歳以上の100人に2~3人は見つかるといわれている。脳動脈瘤は家族性のほか、高血圧や喫煙、性別が重なって発症する。致死率が高いくも膜下出血は、その原因の多くが脳動脈瘤の破裂である。

 近年CTやMRIの普及で、未破裂のまま発見される脳動脈瘤が増えている。未破裂脳動脈瘤の治療を開頭手術やカテーテルを用いた脳血管内手術など積極的治療を行なうか、経過をみる保存療法を実施するか、治療方法の選択に悩む人が多い。

 宇佐美脳神経外科(東京都大田区)の宇佐美信乃院長に話を聞いた。

「かつて破裂脳動脈瘤189例中で、術後に追跡調査のできた109例を分析した結果、3%以上の確率で別の部位に再度脳動脈瘤が発生、再破裂しました。未破裂脳動脈瘤を手術せず、血圧のコントロールや禁煙など保存的療法を選択した場合、脳動脈瘤の直径が5ミリ以下では破裂が1%未満となっています。しかし、15ミリを超えると約25%の確率で脳動脈瘤が破裂します」

 7ミリ以下の未破裂脳動脈瘤があった場合、積極的手術をすべきか、保存療法かの選択となる指標があると治療方針が決めやすい。そこで宇佐美院長は多変量解析(たいへんりょうかいせき)という手法を使い、未破裂脳動脈瘤の破裂やこぶが大きくなるリスクの指標を割り出した。使用したデータは、患者の症例以外に米国の論文データを使っている。

 それによると7ミリ以下の未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は(1)高血圧があるとリスクが4倍、(2)脳動脈瘤の場所(後頭蓋窩=こうとうがいか)ではリスクが6倍、(3)診察時の年齢が高いほどリスクが上がるという結果になった。

 また、脳動脈瘤が大きくなる確率は(1)女性の方が男性の2倍、(2)喫煙者は4倍、(3)年齢が高いほど大きくなりやすいという結果が出た。このようにリスクを点数化することで、どの治療を選択するかの目安になる。

 仮に破裂リスクが高い場合の治療としては開頭手術か、カテーテルによる脳血管内手術の選択がある。

心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中 10年以内の発症確率わかるサイト

年齢、性別のほか、健康診断の6項目の数値を入力するだけで、10年以内に心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中を発症する確率が算出できる──そんな画期的なシステムが開発された。

 国立がん研究センターと藤田保健衛生大学らの共同研究によるもので、ネットで藤田保健衛生大学のホームページ内のサイト(*注)にアクセスすれば、40~69歳の人なら誰でも簡単に自分の発症確率を知ることができる。開発に当たった藤田保健衛生大学の八谷寛・医学部公衆衛生学教授の話。

「健康診断では個々の検査項目ごとに、異常があるかないかを判断することが多い。そのことには合理性がありますが、生活習慣病と呼ばれている心臓や脳血管の病気の予防という観点からすると、“どれくらい異常なのか”はわかりにくい。各項目を組み合わせて、総合的に判断することが必要です」

 さまざまな項目を組み合わせて包括的にリスクを評価するのは世界的な潮流だという。

「心筋梗塞や脳梗塞は、高血圧、糖尿病、脂質異常、過度の飲酒、喫煙などが原因であることがわかっています。こうした危険因子を組み合わせることで病気が発症する確率を算出する研究は、世界で進んでいるのです」(八谷氏)

 研究グループは1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県で、心筋梗塞・脳梗塞を発症したことのない40~69歳の1万5672人の男女を対象に16年間にわたって追跡調査を行なった。すると、うち192人が心筋梗塞、552人が脳梗塞を発症していたという。

「そこで得られたデータをもとに、研究開始時の健診成績と生活習慣から、その後10年以内の心筋梗塞および脳梗塞の発症確率を予測するモデルを開発しました。そして岩手、秋田、長野、沖縄の4県で行なった別の調査で得られた1万1598人のデータで検証し、予測モデルの正確さを確かめました」(八谷氏)

ビールを大量に飲みそのまま寝入ると翌朝脳梗塞発症リスク大

脳梗塞の患者は120万人と推計され、年間約8人が死亡(厚生労働省調査)している。脳血管が詰まり血流が止まると、約4分でその場所の脳組織が壊死し、運動マヒや感覚マヒ、言語障害など様々の症状がおこり後遺症が残ることもある。

 脳梗塞は高齢者の病気と思われているが、30代、40代にもおこる。発症のピークは冬と夏だが、特に夏の起床時に多く発症する。聖マリアンナ医科大学東横病院脳卒中センターの植田敏浩センター長に聞いた。

「独身や単身赴任の男性によく見られるのが、ビールを大量に飲み、そのまま寝入ってしまい明け方に脳梗塞を発症するケースです。ビールは利尿作用があるため、寝ている間に脱水症状で血液がドロドロになり、さらに夜間は血圧が下がることで血管が詰まりやすくなります」

 成人男子では1日平均、尿・便で1.3リットル、呼吸や汗で1.2リットル、合計2.5リットルの水を消費するため、食事や飲料水で1日最低でも2.5リットル以上摂取する必要がある。

 汗を大量にかく夏場に水分摂取量が不足すると血漿浸透圧が上昇し、のどが渇き、尿が濃縮される。水分補給しないと、脱水によって血液が濃縮され循環不全をおこし、酸素や栄養素の運搬や体温調節ができなくなり、熱中症や脳梗塞がおこる。

 脳梗塞は突然おこるのが特徴で、マヒなどの症状が現われる。マヒを調べるポイントは顔と手と言葉の3つで、身体の片方だけに症状がでる。

「マヒの症状があったら、すぐに救急車を呼びます。脳梗塞の治療は時間との戦いです。3時間以内なら血栓を溶かすT-PA治療ができますし、8時間以内であれば大腿動脈からカテーテルを入れて、血栓を取り除く血栓回収治療も可能です。とにかく早く治療を始めることが肝心です」(植田センター長)

脳梗塞起こす「血栓」を溶かす特効薬は1回20万円

長年、日本人の死因の上位を占めてきた心筋梗塞と脳梗塞。厚労省人口動態調査(2014年)によれば、脳梗塞による死者は6万6000人、心筋梗塞は3万9000人。その国民病の「原因」を叩く方法に注目が集まっている。

 5月11日放送『ガッテン!』(NHK)では「血液のチカラ向上作戦! 脳梗塞・心筋梗塞で死なないために」と銘打って、その原因となる「血栓」をいかに溶かすかについて特集し、大きな反響を呼んだ。笛吹中央総合病院院長で日本血栓止血学会理事長の尾崎由基男氏が解説する。

「脳梗塞や心筋梗塞は、血栓症を原因とするものが9割を占めるといわれる。血栓は血液凝固に関わるフィブリノゲンとよばれるたんぱく質と血小板が中心となってできるもので、本来は傷口からの出血を防ぐ大事な役割を果たすもの。生体内では血流が保たれるよう、血栓を作る機構と血栓を溶かす機構がバランスをとっているが、加齢や動脈硬化によってこのバランスが崩れ、不必要な場所に血が固まり血流が遮断されるのが血栓症です。

 高脂血症、高血圧、糖尿病などで血栓症は起きやすくなる。もちろん喫煙や脱水も重大な危険因子。そのほか恐怖やストレスを感じると血栓が出来やすくなることがわかっています。例えばゴルフ中に心筋梗塞を発症するケースではグリーン上で起きることが多い。パッティングで緊張し、強いストレスを感じるからだと考えられる」

 この血栓が血中を流れ、脳や心臓の血管に詰まることで起こるのが脳梗塞や心筋梗塞である。ということは、原因となる血栓を溶かしてしまえばよい。

 すでに脳梗塞治療では特効薬が開発されており、後遺症がまったくない、あるいは日常生活に支障ないレベルまで回復する人たちが増えている。それをもたらしたのが血栓を溶解する特効薬「t-PA」である。

「体内には血栓を溶かす作用のあるプラスミンという酵素がある。プラスミンは前駆体のプラスミノゲンから作られ、t-PAはプラスミノゲンをプラスミンにすることにより血栓を強力に溶かす作用を示します。

 現在、脳梗塞治療に使われているt-PAはアルテプラーゼ製剤というタイプで、米国、欧州諸国など世界40か国以上で承認され、わが国でも2005年10月に厚労省の承認が下りています」(前出・尾崎氏)

根治率は約90% 40代にも広がる“不整脈”に最新治療

先日亡くなったタレント前田健さん(44)の持病であるなど、一部の40代にも広がる不整脈。心臓の拍動が乱れる病気だが、新しい治療法が登場している。

 不整脈とは、心臓が筋肉を収縮させるために発する電気信号が乱れ、脈の打ち方に異常が出ること。動悸や息切れなど自覚症状があることもあるが、多くの場合、健康診断などの心電図検査で発覚する。

 不整脈は、拍動が速くなる(頻脈)、遅くなる(徐脈)、不規則になる(期外収縮)などの症状があり、生命の危機に直結しない「心房細動」と、生命の危険がある「心室細動」に分けられる。

 心房細動は、頻脈の代表的な病気だ。患者数は高齢者を中心に増加し、約150万人といわれる。加齢のほか、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病も一因になる。

 心臓の上半分「心房」が、1分間350回以上の速さで小刻みに震えて、正常に収縮しなくなるために起こる。左心房にある四つの肺静脈の出口付近で、異常な電気信号が発生していることが多い。

 動悸や息切れ、息苦しさなどが出てQOL(生活の質)が落ちることもある。血栓が生じて脳に流れれば、脳梗塞を引き起こすこともあるため、この病気自体が生命の危機に直結しないとはいえ、治療することが望ましい。脳梗塞のリスクは、心房細動のない人の約5倍にものぼる。

 治療には、抗不整脈薬や抗凝固薬による薬物療法と、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)がある。

 カテーテルアブレーションとは、太もものつけ根から血管にカテーテルを挿入し、心房の患部まで到達させて、発作を起こす心筋を高周波で焼いて、異常な電気信号をブロックするというものだ。薬物療法で効果がない場合、日常に明らかに支障がある場合におこなわれる。このカテーテルアブレーションの新方式、高周波ホットバルーンカテーテルが注目を集めている。

 神奈川県在住の宮川隆一さん(仮名・65歳)も、ホットバルーンカテーテルを選択したひとりだ。

 宮川さんは、35歳のころから、夜勤明けなどに、心房細動の発作を繰り返していた。抗不整脈薬の服用を続けていたが、発作がなくなることはなかった。カテーテルアブレーションについては知ってはいたが、治療に踏み切れずにいた。

 そんな折、新聞記事でホットバルーンカテーテルが治験中であると知り、開発者である葉山ハートセンターの佐竹修太郎医師を訪ねた。2010年のことだ。

 ホットバルーンカテーテルは、06年に開発された。カテーテルアブレーション同様、太もものつけ根からカテーテルを挿入し、心房内の患部まで到達させる。ただし、電極をピンポイントにあてて少しずつ焼いていく従来の方式とは違い、焼灼にカテーテル先端につけたポリウレタン製のバルーンを使う。患部に到達すると、バルーンに生理的食塩水と造影剤を注入し、25~33ミリまで拡張させる。内部は高周波電流で約60度に熱し、撹拌して温度を均一に保つ。そのバルーンを患部に圧着し、面で焼いていく。

「カテーテルアブレーションに比べて簡単で、10倍の面積を約10分の1の回数で焼灼できます」(佐竹医師)

 安全性も高い。心筋に直接高周波電流が流れないため、食道にダメージを与えることもなく、治療中に血栓が発生して血管が詰まるなどの合併症が起こるリスクも抑えられる。

 佐竹医師による治療で、宮川さんは発作性の心房細動から解放された。その後、経過観察のため定期的に受診しているが、6年経った現在も心房細動の発作が再発することなく、日常生活を送っている。

「宮川さんのように、発作性の心房細動で、肺静脈の周囲を治療するだけで済むケースでは、当院の根治率は約90%です。ただし、持続性の心房細動が複数の部位にある場合や、右心房側に患部がある場合、一度の治療での根治率は80%ほどです」(同)

 ホットバルーンカテーテルは、17病院での治験の結果、安全性や有用性が認められ、16年4月に保険承認された。現在は葉山ハートセンターを含め、全国6病院での治療が可能で、年内には40病院で採用される予定だ。

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結婚しているかどうかで大違い 脳卒中リスク、5万人調査で分かった

配偶者との離婚や死別によって婚姻状況が変化した人は、脳卒中を発症するリスクが高い傾向にある――そんな調査結果が、国立がん研究センターによって発表された。

婚姻状況は健康に影響を与える重要な要因のひとつ。既婚者は非婚者(離別、死別を含む)と比較して、健康状態が良いことが複数の研究で報告されており、婚姻状況の変化は循環器疾患の発症リスクを上昇させることも報告されているが、脳卒中発症リスクとの関連は調査されていなかった。

同センターは、全国9か所に住んでいる40~69歳の男女5万人を、1990年から15年間追跡調査したデータを分析。研究開始5年前に配偶者と同居していたが、その後何らかの理由で同居してない人と、同居し続けている人の脳卒中発症のリスクを比較した。

その結果、男女ともに既婚から非婚になると、脳卒中発症リスクが1.26倍になっていた。脳卒中の種類別にみると、出血性脳卒中(脳出血)のリスクは男性が1.48倍、女性は1.35 倍に。脳梗塞リスクは男女ともに1.16倍だった。

さらに、同居家族の有無を確認したところ、婚姻状況が変化し、かつ自分の子どもと同居している男女の脳卒中発症リスクが高い傾向が見られた。同居する親の有無別にみると、男性にとっては配偶者を失うことによる脳卒中発症リスクへの影響が、親との同居で軽減されたが、女性はその影響が逆に加重される傾向が見られるという。

婚姻状況の変化が脳卒中リスクを上昇させた原因について、同センターは、これまでの先行研究の結果から、配偶者を失ったことによる飲酒量の増加や、野菜や果物の摂取が減るといった生活習慣の変化や、心理的ストレスレベルの上昇が、脳卒中発症リスクを上昇させているのではないかとコメントしている。

調査結果は、2016年3月1日、米心臓協会誌「Stroke」オンライン版に掲載された。

「朝は食欲が…」はNG! 朝食を食べないと脳出血のリスク36%増

朝はどんなに忙しくても、朝食をとらないと肥満や高血圧につながる恐れがあると言われている。
 
□朝食を食べないデメリット

 朝食抜きのデメリットはほかにもある。

 例えば、朝食をとらないと、午前中に体や脳を動かすためのエネルギーが足りなくなる。集中力を欠き、体温も上がらず、だるさや眠気が続くため、仕事も勉強もはかどらない。

 また、食べ物が胃腸を刺激しないため、便秘にもなりやすい。

 このように、朝食抜きが体にも社会的評価にも悪影響を与えることはよく知られているが、今までは命を落とすほどの影響があるとはされていなかった。
 
□朝食を食べないと脳出血リスクが上がる

 ところが、大阪大の磯博康教授と国立がん研究センターなどの研究チームによると、朝食抜きは脳出血のリスクも上げるという。朝食をとらないことと脳出血の関連性が確認されたのは、世界で初めてだそうだ。

 脳出血は命の危険がある重篤な症状で、命を落とさなかったとしても、脳機能に大きな影響を与える病気である。しかし、朝食を抜いただけで、なぜそんな危険な病気にかかるのだろうか。
 
□朝食を食べないだけで脳出血のリスクが36%も上がる

 磯教授らによると、朝食を食べないと朝の血圧が上がるため、朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血の危険性が36%高まるそうだ。

 研究チームは、全国8県の45~74歳の男女8万2772人を対象に、1995~2010年にかけて追跡調査を行った。この間、脳出血を発症したのは1051人。調査開始時に確認した朝食回数が週に0~2回だった人は、毎日食べる人に比べて、脳出血を発症する率が36%も高かった。また、朝食を抜く頻度が高いほど、リスクは高くなったという(※1)。
 
□高血圧は脳出血を招きやすい

 脳出血は脳内の血管が切れる病気だ。ちょうど水道のホースが切れるように、切れた部分の周辺に血液が流れ出す。切れた部分から先には血液が届かないため、脳細胞が栄養不足、酸素不足に陥って、細胞が死んでしまう。

 血管が切れる原因は、年齢や体調などによってもろくなった血管に加わる圧力だ。高い血圧の力に耐えられなくなると、血管壁が切れて出血する。
□心筋梗塞や脳梗塞のリスクは上がらない

 脳出血を含む脳の血管の病気を、まとめて「脳卒中」と呼ぶが、朝食抜きの人は、この脳卒中のリスクも18%高くなる。しかし、その中でも脳梗塞だけで比較すると差は見られなかった。磯教授は「脳梗塞は脳出血に比べ、高血圧の影響が小さいためではないか」と述べている(※1)。

 脳梗塞は、体内にできた血の塊である「血栓」が、血流に乗って脳内の血管まで送られ、血管をふさいでしまうことによって起きる。血栓が原因なので、脳出血に比べて血圧の影響を受けにくい。
 
□肥満だと朝食抜きで心筋梗塞リスクも高く

 ちなみに欧米の場合、朝食抜きの人は心筋梗塞のリスクが高くなる。心筋梗塞は、血栓が心臓の血管をふさぐことによって起きるが、原因は欧米人特有の肥満であり、血圧のせいではない(※1)。しかし、日本人でも、肥満体型の方は例に漏れない。十分な注意が必要だ。
 
□朝食を食べて高血圧リスクを下げよう

 冒頭で述べたように、朝食を抜くと肥満や高血圧にもつながる恐れがある。血圧が上がる原因の多くは、朝食抜きによる空腹がもたらすストレスなどで、なかでも、早朝の血圧上昇は脳出血に至るリスクを招きやすいという(※2)。

 朝食を食べるだけで脳出血リスクを下げられるのである。朝食で1日の始まりのエネルギーを補給すれば、日中の仕事や勉強に効率よく取り組める。そのうえ、重大な病気の危険も回避できるのだ。朝食を食べる習慣、明日からでも始めてみてはいかがだろう。

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社会的地位や仕事が見合わない? 高学歴の女性は脳卒中リスク高

 ストレスの高い職業に就いている人はそうでない人に比べ、脳卒中の発症リスクが高くなり、女性ではより顕著だということが、中国の南方医科大学による大規模調査で明らかになった。

 では、脳卒中の危険があるストレスの高い仕事とはどのようなものか? また、どうしたらストレスをためずに仕事ができるのだろうか?

□脳卒中リスク 働き盛りの若者にも

 脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりして脳に血液が運ばれずに、脳が酸欠状態となり、脳細胞がダメージを受ける状態である。脳の細胞はとても脆弱(ぜいじゃく)で、酸素がないとすぐに死んでしまう。

 近年、脳卒中による死亡率は減少傾向にあるが、入院原因としては未だ非常に多く、入院期間も長いうえに半身麻痺など重い後遺症が残る場合も多い(※1)。

 脳卒中は中高年以降でよくみられると考えられがちだが、実は働き盛りの30代、40代にも起こり得るのである(※2)。

□脳卒中になりやすい職業とは?

 2015年10月に、中国の南方医科大学による研究が米科学雑誌「Neurology」に掲載された。研究は14万人を対象に調査したもので、これによると、強いストレスを感じる仕事をしている人は、そうでない人と比べ、脳卒中のリスクが22%も高くなるという。

 さらに、女性に限るとリスクは33%も高くなるという驚きの事実が明らかとなった(※3)。

 ストレスを強く感じる仕事とは「責任が重く、裁量権をもたない仕事」である。責任は重くとも裁量権をもち、自由度が高い仕事は、比較的ストレスは低い。

 医師や教師などは、一見責任が重くストレスが高いようであるが、ある程度の裁量権が与えられているため、ストレスは低く推移しているようだ(※4)。

□仕事のストレスを減らす「裁量」と「やりがい」

 仕事上のストレスは喫煙、暴飲暴食、不規則な生活習慣など不健康な生活スタイルを招く。そして、そのことが体格指数(BMI)、血糖値、コレステロール値の上昇を引き起こし、脳卒中の要因となる。

 やりがいはどんな労働者にとっても重要であり、企業はこれについて工夫を凝らすべきであろう。

□高学歴の女性は特に脳卒中に注意! 

 脳卒中リスクが高いとされるなかでも、特に、高い学歴をもつにもかかわらず、それに見合った社会的地位に就いていない女性は、よりハイリスクだと言われている。

 日本における女性の高学歴化は急速に進んでいるが、必ずしも多くの女性が教育レベルに見合った社会的地位の仕事に就いているわけではない。これまでの教育投資が意味を成さない仕事への不満、出産や子育てなどにより存分に働けないこと、仕事が限られてしまうことなどが強いストレスとなり、脳卒中のリスクを高めていると考えられる(※5)。

 脳卒中のリスクは、責任が重く裁量度の低い職業でより高まることは分かったが、特定の職業に就いていると特に脳卒中になりやすいとは言えない。

 職場の人間関係や、環境によってもストレスを感じるだろうし、ストレスの許容範囲は人それぞれ違うからだ。仕事をする際には、自分のストレスを自覚することも大切である。

 また、企業側も労働者の生活習慣の改善指導や、精神的なサポート、仕事に自由度を与えるなどの対応が必要であろう。

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笑わない人、脳卒中の割合1.6倍…心臓病は1・2倍

日常生活でほとんど笑わない高齢者は、ほぼ毎日笑う高齢者に比べ、脳卒中の経験がある割合が1・6倍、心臓病の割合が1・2倍高いとの調査を東京大などの研究チームが発表した。特に笑わない高齢女性の危険が大きかった。

 研究チームは、65歳以上の男女に毎日の笑いの頻度、持病などを調査。回答のあった2万934人を対象に、笑いと脳卒中などの関係を分析した。

 その結果、高血圧などの影響を除いても、ほとんど笑わない女性は毎日笑う女性に比べ、過去に脳卒中になったり闘病中だったりする人の割合が1・95倍、心臓病になっている人が1・41倍高かった。男性では脳卒中が1・47倍、心臓病が1・11倍だった。

 調査にあたった東京大の近藤尚己准教授(保健社会行動学)は「笑いは動脈硬化やストレスを軽減するため、よく笑う人ほど脳卒中や心疾患になりにくい可能性がある。女性は普段からよく笑っている人が多く、笑わない人との差が出たのだろう」と話す。

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命の危険もある「美容室脳卒中症候群」とは? シャンプーの最中に頭痛や吐き気がしたら要注意

 美容室や理容室でのシャンプーは、実に気持がいい。うたた寝しそうになることもある。だが、気分が悪くなる人も少なくない。なぜだろう? 原因は、美容室では主流の「首を反らした状態で洗髪」することに関係があるらしい。

 東京医科大学の遠藤健司医師によれば、シャンプー台の上に首を乗せたまま後ろに反らす状態が長時間続くと、血管内に血栓ができやすくなり、脳卒中(脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞)を起こす恐れがあるという。

脳卒中を起こしやすい美容室脳卒中症候群とは?

 頸部の両脇には、小脳、脳幹、後頭葉などに血液を運ぶ椎骨(ついこつ)動脈がある。椎骨動脈は、椎骨と密接につながっているため、首を後ろに強く反らすと血管が圧迫されるので、血流が一時的に低減する。その結果、血小板の流れが滞るので、血栓ができる。再び首の位置を元に戻して血流が回復すると、せき止められていた血液が一気に流出するため、押し流された血栓は、脳内の枝分かれした毛細血管内に詰まり、脳卒中に繋がる。

 これが「美容室脳卒中症候群(Beauty Salon Stroke Syndrome)」と呼ばれる症状だ。

 美容室脳卒中症候群は、頭痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、冷や汗、首や後頭部の痛み、失神などの症状を示す。病院で診察を受ける人もいれば、体を休めるだけで回復する人もいる。

 美容室脳卒中症候群は、スタンダール症候群(The Stendhal Syndrome)ともいう。スタンダール症候群は、高い位置に飾られた彫像や壁画などの芸術作品を長時間にわたって見上げながら鑑賞している時に起きやすい。頸部の動脈が圧迫され、脳への血流が一時的に阻害されるので、動悸、目まい、失神、錯乱、幻覚などを伴う。

 1817年、フランスの作家スタンダールは、フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂を訪ねた。ジョットのフレスコ画を見上げた時に、至福感と激しい動悸に突然襲われた。その卒倒寸前になった恐怖を『イタリア紀行』に残している。

 1989年、イタリアの心理学者グラツィエラ・マゲリーニは、多くの外国人観光客が崇高な充実感とともに、強い動悸、目まい、圧迫感などの症状を現したことから、スタンダール症候群と命名した。

 先日の遠藤医師によれば、ほとんどの観光客は見上げたままの姿勢を続けているものの、症状が起きない人も多いという。血栓ができやすいのは、大量に汗をかいて血液中のミネラル成分の濃度が高まったり、5分以上も首を反らしたままでいるため、血流が急激に悪化する場合だ。

 つまり、水分不足や首への長時間の圧迫によって発生した血栓が脳卒中の元凶である。
首を圧迫しない、首に負担をかけない、水分補給や運動も大切

 美容室のシャンプーや美術館の鑑賞だけでなく、次のような状況でも起きやすいので、充分に注意が必要だ。

 たとえば、天井の電球の取り替え作業なら、ソケットまでギリギリ届く高さの足場ではなく、余裕を持って取り替えられるような足場を確保する。草むしりをする際は、1ヵ所に止まらずにこまめに移動し、手元の草だけを取る。劇場での映画鑑賞なら、ときどき首を元に戻して血流を改善したり、首に負担をかけないようにスクリーンから離れた席で観るなどだ。

 全日本美容業生活衛生同業組合連合会は、洗髪中は首の血管への圧迫を避ける、首を左右に揺らさない、洗髪後にチェアを起こす時は一声かけて首に急激な負担をかけないなど、全国の美容室に呼びかけている。また、首の負担軽減を考慮したシャンプー台を使用している美容室もあるので、気になれば美容室へ問い合わるのもいいだろう。

 また、シャンプー中に目まいや吐き気などを感じたら、すぐに美容師さんに伝え、休ませてもらえば、症状が回復する場合も多い。だが、手足がしびれる、手足が動かせない、ろれつがまわらない、激しい頭痛があるなどの症状があれば、神経内科や脳神経外科をすぐに受診してほしい。

 日々の注意としては、水分をしっかりと補給する、酒の飲み過ぎに注意する、ストレスを溜め込まない、ウォーキングや水泳などの適度の運動を続けるなどに留意し、コンディションを整えておきたい。

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左側だけ頭が痛い…これって脳梗塞の前兆?

脳梗塞は、特にミドルエイジ以降にとって身近な病気のひとつかもしれません。ご親族や知り合いの方が脳梗塞で亡くなられたり、あるいは重い後遺症が残った、というような話を聞くと、他人ごとではないな、と思えてきますよね。

一般的に関心の高い病気のため、テレビや雑誌などでも「こんな前兆があったら要注意!」「このような頭痛は危険」とセンセーショナルに取り上げられやすい病気のひとつです。

今回はこの脳梗塞の原因やそのサインについて、解説していきます。

左側だけ頭が痛い…これって脳梗塞?

結論からいうと「左側だけ頭が痛い…これって脳梗塞?」の答えはNOです。
特別に左側の頭痛が脳梗塞である危険性が高いか、というとそのようなことはありません。

「脳梗塞」は、脳の血管が様々な原因によって細くなってしまったり、あるいは血栓と呼ばれるかたまりが脳の血管に詰まってしまうことで起こる病気です。
血液は酸素や栄養を運んでいます。脳の血管が詰まり血の流れが止まってしまうと、そこから先の血管では必要な酸素や栄養が届けられず脳の組織は生きていくことができません。血液が送られない部分の脳細胞が死んでしまうことで、脳機能に大きなダメージを与えます。


もしも脳梗塞になって、治ったら…?

脳の各部分にはそれぞれ受け持っている役割があります。
脳内の血管が詰まった部分が支配している場所により、ダメージの種類も変わってきます。

・片側の手足が動きにくくなる
・言葉が出にくくなる
・脳梗塞が発症する前とは性格が変わってしまったようになる

など、脳梗塞の後遺症の種類や程度は本当にさまざまなものがあります。

もちろん、特に後遺症もなく回復する幸運なケースもあります。少しでも早く脳梗塞を発見して治療につなげることが、できるだけ後遺症を残さず回復するための重要なカギとなります。

脳梗塞のサインってどんなもの?

脳梗塞の兆候として、以下のような症状が現れます。
・片側の手足や、同じ側の顔のしびれや麻痺。
・食べ物が口からこぼれる。
・ろれつが回らなくなる。
・立つ、歩くことがうまくできずふらついてしまう。
・視野の半分がかけてしまう。
・片側の目が見えにくい。
・一つのものが二重に重なって見える(複視)。
など…。

特に高血圧のある方は脳梗塞リスクが高いので気を付けましょう。
頭痛について、脳梗塞発症時に特有のものはありません。今まで経験したことのないような激しい頭痛はくも膜下出血などのときに起こりやすいと考えられています。

【医師からのアドバイス】

脳梗塞が起こる前に、先にお伝えした初期症状(脳梗塞のサイン)が現れます。

≪脳梗塞の兆候を再度チェック!≫
・手足のしびれ
・力の入りにくい感じ
・ろれつの回らなさ
・複視

脳梗塞になる約25%の患者さんが、これらのように多彩な症状が起こること(一過性脳虚血発作と言います)を経験するともいわれています。おかしいな、と思ったらすぐに脳神経外科や神経内科を受診するようにしましょう。脳梗塞を防げるかもしれません。

朝食なしで脳出血は36%、脳卒中は18%発症リスクが増加 - 国立がん研発表

国立がん研究センターは2月4日、朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血リスクが4割近く高まるとした論文を、同日までに米医学誌に発表したことを明らかにした。

これまで、朝食の欠食は脳卒中・虚血性心疾患のリスク因子である肥満や高血圧、糖尿病などのリスク増加につながると報告されていた。だが、朝食の欠食が結果的に脳卒中および虚血性心疾患のリスクを上げるのかという点に関しては、ほとんど研究されていなかった。

特に脳卒中に関する研究は今までなかったという。そこで今回、朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係を検討することを目的とした研究を実施した。

研究チームは、沖縄県や茨城県などに居住していた45~74歳の男女(8万2,772人)を対象に、朝食に関するアンケートを実施。平均で約13年の追跡期間中、3,772人の脳卒中発症と870人の虚血性心疾患発症を確認したとのこと。脳卒中の内訳は脳出血が1,051人、くも膜下出血が417人、脳梗塞が2,286人だった。

さらに、発症者を1週間あたりの朝食摂取回数が「週に0~2回」「週に3~4回」「週に5~6回」「毎日」の4群に分けて疾病との関連を分析した。

その結果、週に0~2回摂取する群の発症リスクは、毎日摂取する群と比較して、脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患で14%、脳卒中全体で18%、脳出血で36%も高くなっていたという。一方で、くも膜下出血や脳梗塞、虚血性心疾患については、朝食の回数との関連が確認できなかった。

同センターは、「本研究は、世界で初めて朝食欠食により脳出血のリスクが上昇する可能性を示したコホート研究です。これまで朝食をとることの重要性がさまざまな報告で指摘されてきましたが、今回の結果はそれを支持するものとなります」と、研究の意義を説明。

そのうえで、これまでの報告も踏まえて「朝食を欠食することで朝の血圧が上昇し、毎日朝食を摂取する人に比べて脳出血のリスクが高くなっていた可能性が考えられます」としている。

脳血管に起こる「もやもや病」を知っていますか?

みなさんはもやもや病という病気を知っていますか?日本で発見され東アジアに患者が多く、歌手の徳永英明さんもこの病気を経験しました。脳出血や脳梗塞を起こす可能性が高い難病で、10才以下の子どもに発症する例も多いようです。

今回はこのもやもや病について、医師から聞いた話をお伝えします。

もやもや病とは
もやもや病とは、別名「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳血管障害のひとつです。この病気の人が脳の血管造影というレントゲンの検査を行うと、タバコの煙のようなもやもやした血管像が映ることが、この病名に由来しています。

なぜ脳の血管造影でこのような「もやもや」が見られるのかというと「ウィリス動脈輪」というリング状の動脈が塞がってしまい、そのために発達した異常血管網(細かい側副血行路)が造影されるのです。

ウィリス動脈輪の血流が悪くなることで脳に行く血流が低下しますが、 進行が緩やかなため血流不足を補う細かい側副血行路(もやもやして見える異常血管網)が発達します。

椎骨動脈・内頚動脈の合計4本の動脈は、 頭蓋内でウィリス動脈輪と呼ばれるリング状の動脈で交通しています(椎骨動脈や内頚動脈のいずれかが閉塞しても脳への血流を維持できるように、 このような形態になったと考えられています)。

もやもや病はなんらかの原因でこのウィリス動脈輪の閉塞がゆっくりと進行してゆく病気なのです。

もやもや病の発症データ
・人口10万人に対して3~6人
・男女比は1:1.8と女性の発症がやや多い
・好発年齢は10歳以下と40歳前後
・家族発症は全体の10~12%(遺伝的な関与の可能性も考えられている)
・1950年代に日本で発見された
・厚生労働省で難病指定している

最近では画像診断の性能の向上に伴い、無症候性の成人の発見例もあります。

もやもや病の症状
もやもや病には2つの発症パターンがあります。

[パターン1]
脳の血流が不足して起こる、脱力などの虚血症状
[パターン2]
負担がかかった側副血行路の血管が破れ、脳出血を起こす出血症状

【子どもの症状】
子どもは虚血症状を示す症例がほとんどです(側副血行路の発達が不十分であるため)。子どもがもやもや病にかかった場合、以下のような特徴的な病状があらわれます。

1. 食事で熱い物を息を吹きかけたり、リコーダーを吹くなど、短時間で深呼吸を繰り返したとき一過性の脱力発作が起きる
2. 突然起こる片側の麻痺。発作のたびに麻痺する側(左右)が変化する
3. 5歳以下の乳幼児は虚血時間が長くなり脳梗塞を発症することが多く、重症が多くなる

【成人の場合】
患者の2/3が、脳出血で発症します。出血を生じる場所によってその症状は異なります。

【医師のアドバイス】
脳出血や脳梗塞を発症した直後は内科的に治療されます。 状態が安定したら脳の血流不足を改善するための脳外科的な手術が必要になります。 手術には、直接血行再建術、間接血行再建術あります。

子どもが突然の脱力を繰り返す場合は、小児科や小児脳神経外科を受診して検査を受けましょう。 大人の場合は脳ドックで偶然発見される場合もあるので、利用するのも良いでしょう。

脳卒中伴う危険な「めまい」 見分ける4つのポイントとは?

めまいは、耳が原因の末梢性めまいと脳が原因の中枢性めまいに大別される。末梢性の代表的な疾患が「良性発作性頭位めまい症」、中枢性の代表的な疾患が「脳卒中」だ。

 耳が原因となる代表的な末梢性めまいに、メニエール病がある。数十分から数時間続く回転性のめまいや耳鳴り、難聴などの症状が、数日~数カ月の間隔で繰り返す。内耳の内リンパの腫れ(内リンパ水腫)によって起こるといわれ、ストレスとの関係も指摘されている。

「メニエール病の場合、来院した患者の話をしっかりと聞き、ストレスの軽減をアドバイスすることが有用なケースも多くあります」

 と聖マリアンナ医科大学病院耳鼻咽喉科診療部長、肥塚泉医師は言う。難治例に対しては、日本独自の新しい治療法の臨床がおこなわれており、近い将来これが導入される見通しだ。

 一方、めまい疾患の約2%と多くはないが、警戒すべき「怖い」めまいが、中枢性めまいと呼ばれる、脳卒中(脳梗塞や脳出血)に伴うめまいだ。

 横浜市在住の小林大介さん(仮名・61歳)は、もともと高血圧と脂質異常症があった。ある早朝、トイレに行こうとしたとき、めまいを感じ、歩けずに座り込んでしまった。左上半身に痺れがあり、ろれつがまわらないことにも気付いたため、救急要請して脳卒中・神経脊椎センターに搬送された。

 MRIで小林さんの脳に血栓による脳梗塞が確認できたために、そのまま緊急入院。城倉医師により、直ちに抗血栓治療が開始された。点滴治療とリハビリで症状は徐々に改善し、4日後には自分で歩けるようになった。左手の温度感覚の障害と右目の見えにくさは残ったが、3週間後に退院し、現在は自宅で生活している。

 中枢性めまいは、迅速な措置がカギになる。その見分け方を、横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副病院長で脳卒中・神経疾患センター長の城倉健医師は解説する。

「ほとんどの場合、中枢性めまいには随伴症状があります。[1]ものが二重に見える、[2]話してみてろれつがまわらない、[3]手足やからだに痺れや動かしづらさがある、[4]自分で立てない、の四つを確認してください。[4]は別として、[1]~[3]に当てはまらなければ、約9割の確率で、中枢性めまいではありません。逆に、[1]~[3]の症状がひとつでもあるなら、直ちに救急要請すべきです」

 突然のめまいに襲われたとき、耳鼻咽喉科や神経内科、めまい外来に行けばいいのか、直ちに救急車を呼ぶべきなのか、判断基準を覚えておくといいだろう。

 めまいの発症率は、加齢とともに増加する。高齢になるにつれ、大脳の平衡補正能力が低下するためだ。めまいの要因も複合的になっていく傾向にある。

「ひとつ原因を解決しただけでは、治癒にはつながらないこともあります。あきらめず、さらに他の原因の可能性を探っていくことが肝要です」(城倉医師)

「脳卒中」後遺症、手足のまひ…ボツリヌス毒素療法が浸透

脳出血など脳卒中の後遺症として多くを占める手足のまひ。その中で「痙縮(けいしゅく)」は、筋肉の緊張が緩まず、手足などが突っ張った状態になる症状だ。この痙縮に対し、食中毒の原因菌でもあるボツリヌス菌が作るタンパク質(ボツリヌス毒素)を薬として使う治療法が普及し始めている。

筋肉の緊張や痛みを和らげる作用があるため、治療後はリハビリに取り組みやすく、日常生活での不自由さの改善や家族の介護負担の軽減も期待できる。

 ◆感染の心配なし

 関西在住の50代のA子さんは3年前、脳出血を発症して入院し、治療を受けたが左半身にまひが残った。リハビリを続け、つえをついて歩けるようになった。しかし、左上肢の痙縮が強く、手指が固く握ったままの状態になってしまった。

 このため、1年3カ月前から3カ月に1回、大阪医科大付属病院リハビリテーション科(大阪府高槻市)の佐浦隆一教授を訪ね、ボツリヌス毒素療法を受けている。

 同療法は、ボツリヌス菌そのものを使うわけではないので感染の心配はない。この細菌が作り出し、筋弛緩(しかん)作用があるボツリヌス毒素を有効成分として含む薬液を筋肉内に注射することで、その筋肉につながる神経の働きが抑えられ、緊張が解かれる。

国内では平成22年、痙縮に対する治療法として公的な医療保険の適用が認められ、経済的な負担も軽減された。

 同治療は、痙縮の原因になっている筋肉に正確に薬液を注入するための知識と技術が必要になる。このため、針先からだけ電気が流れるように特殊コーティングした注射針と小型の筋電計・電気刺激装置を使用。

注射針で痙縮の原因の筋肉を探りながら、電気刺激によって筋肉の動きを確認し、薬液の注入に適切な場所を見つける。

 ◆組み合わせが重要

 この治療の効果で、A子さんの左手の指は右手で補助すれば開くようになった。A子さんは「治療の後、しばらくして手が開いて両手を組むことができるようになります。

3カ月ほどで元に戻ってしまいますが、それまでの間にまひした左上肢を伸ばしたり、動かしたりするリハビリを一生懸命がんばります」と意欲をみせる。

 佐浦教授は「手足のまひの中でも痙縮は緊張して力が抜けなくなり、動かせなくなった状態。ボツリヌス毒素療法はその状態を一時的に改善し、まひした部分を動かすときのバランスを取りやすくするものです」と説明する。

 リハビリは、まひのない側の手で助けながら、手を動かすなど簡単な動作を繰り返し、徐々に複雑なリハビリを行い、健常時に近い感覚をよみがえらせる。

「ボツリヌス毒素療法は、有効なリハビリや装具療法と組み合わせることが非常に重要。失われた機能を少しでも取り戻せるようにお手伝いしていきたい」と話している。

 ≪痙縮の治療≫

 痙縮には、手指を固く握ったままの状態のほか、肘や足先が曲がるなどの症状がある。長期間続くと筋肉が固まってしまい、関節の動きも制限される。治療には、ボツリヌス毒素療法のほか、内服薬、外科手術、神経ブロック療法などがあり、症状や重症度に応じて使い分ける。

ボツリヌス毒素療法の効果は注射後2、3日から表れ、1、2週間程度で安定し、約3カ月間持続する。まれに体がだるいなどの副作用が出ることもある。

アレルギー体質や慢性的な呼吸器の病気を持つ人、妊婦らには投与できないため、事前に医師に病気や投薬歴を伝え、相談することが必要だ。

脳血管に起こる「もやもや病」を知っていますか?

みなさんはもやもや病という病気を知っていますか?

日本で発見され東アジアに患者が多く、歌手の徳永英明さんもこの病気を経験しました。脳出血や脳梗塞を起こす可能性が高い難病で、10才以下の子どもに発症する例も多いようです。

今回はこのもやもや病について、医師から聞いた話をお伝えします。
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もやもや病とは

もやもや病とは、別名「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳血管障害のひとつです。この病気の人が脳の血管造影というレントゲンの検査を行うと、タバコの煙のようなもやもやした血管像が映ることが、この病名に由来しています。

なぜ脳の血管造影でこのような「もやもや」が見られるのかというと「ウィリス動脈輪」というリング状の動脈が塞がってしまい、そのために発達した異常血管網(細かい側副血行路)が造影されるのです。

ウィリス動脈輪の血流が悪くなることで脳に行く血流が低下しますが、 進行が緩やかなため血流不足を補う細かい側副血行路(もやもやして見える異常血管網)が発達します。

椎骨動脈・内頚動脈の合計4本の動脈は、 頭蓋内でウィリス動脈輪と呼ばれるリング状の動脈で交通しています(椎骨動脈や内頚動脈のいずれかが閉塞しても脳への血流を維持できるように、 このような形態になったと考えられています)。

もやもや病はなんらかの原因でこのウィリス動脈輪の閉塞がゆっくりと進行してゆく病気なのです。
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もやもや病の発症データ

・人口10万人に対して3~6人
・男女比は1:1.8と女性の発症がやや多い
・好発年齢は10歳以下と40歳前後
・家族発症は全体の10~12%(遺伝的な関与の可能性も考えられている)
・1950年代に日本で発見された ・厚生労働省で難病指定している

最近では画像診断の性能の向上に伴い、無症候性の成人の発見例もあります。
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もやもや病の症状

もやもや病には2つの発症パターンがあります。

[パターン1]
脳の血流が不足して起こる、脱力などの虚血症状

[パターン2] 負担がかかった側副血行路の血管が破れ、脳出血を起こす出血症状

【子どもの症状】
子どもは虚血症状を示す症例がほとんどです(側副血行路の発達が不十分であるため)。子どもがもやもや病にかかった場合、以下のような特徴的な病状があらわれます。

1. 食事で熱い物を息を吹きかけたり、リコーダーを吹くなど、短時間で深呼吸を繰り返したとき一過性の脱力発作が起きる
2. 突然起こる片側の麻痺。発作のたびに麻痺する側(左右)が変化する
3. 5歳以下の乳幼児は虚血時間が長くなり脳梗塞を発症することが多く、重症が多くなる

【成人の場合】
患者の2/3が、脳出血で発症します。出血を生じる場所によってその症状は異なります。
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医師のアドバイス
脳出血や脳梗塞を発症した直後は内科的に治療されます。 状態が安定したら脳の血流不足を改善するための脳外科的な手術が必要になります。 手術には、直接血行再建術、間接血行再建術あります。

子どもが突然の脱力を繰り返す場合は、小児科や小児脳神経外科を受診して検査を受けましょう。 大人の場合は脳ドックで偶然発見される場合もあるので、利用するのも良いでしょう。

「Doctors Me」寄稿 医師監修コラム

脳梗塞の最新治療 回復早まる「血栓回収療法」とは?

脳の血管が突然詰まる脳梗塞。血流が途絶えた領域の脳神経の機能が失われ、片まひや言語障害などが起こり、重症だと命にもかかわる。治療は、血管に詰まった血栓を薬剤で溶かすことが第一、さらに器具を使い血栓を回収する方法も選択肢が増えてきた。

 東京都中野区の鬼頭弘さん(仮名・51歳)は1年前、自宅のトイレで倒れ、家族の通報により、東京警察病院に救急搬送された。半身がまひし、言葉が話せない状態だった。

 同院脳卒中センター長の佐藤博明医師は、CT(コンピューター断層撮影)やMRIによる画像検査で超早期の脳梗塞を確認。管に詰まった血栓を溶かす薬「t‐PA」(組織プラスミノゲン・アクチベータ)の静脈注射を検討したが、持病による消化管出血などがあったため、ただちに血栓回収療法に切り替えた。

これは、太ももの付け根から血管内にカテーテルを挿入して脳血管まで到達させ、先端の装置によって、詰まっている血栓を回収する治療法である。回収装置の動きは、すべてX線画像で確認しながらおこなう。

 治療は、局所麻酔で実施することが多い。

「患者さんが動いてしまう問題はありますが、患者さんが話せるようになったり、腕を動かせるようになったりすることを確認しながらできるのが局所麻酔の大きなメリット。治療時間を短縮し、できるだけ早期に血栓を回収して血流を再開させることが重要です」(佐藤医師)

 回収機器にはいくつかの種類があるが、現在は、ステント(血管などを広げる医療機器の総称)タイプの「ソリティア」という機器を使うことが事実上の第一選択になっている。

これは、カテーテルを脳血管内の詰まっている部位まで到達させ、網の目・シート状のステントを広げ血栓に食い込ませた後、引き抜いて血栓を回収するものだ。

 鬼頭さんは、このソリティアを1回使っただけで、血栓を回収できた。血栓回収療法は発症から8時間以内に実施することになっているが、6時間以内だと血栓を回収できる確率が高い。

鬼頭さんの場合は、発症から再開通まで4時間だった。t‐PA静注同様、血栓回収療法でも、より早い治療がより治療効果を高めることは明らかである。

 鬼頭さんはリハビリをして、3週間後に退院するころには、健康な人とほとんど同じ生活ができるまでに改善していた。

 血栓回収機器で、最初に健康保険適用になったのは10年の「メルシーリトリーバー」だ。これは血管を傷つけやすい、などの課題を抱えていた。

 次いで11年に健康保険適用となった「ペナンブラ」は、詰まった部位へカテーテルを送り込み、ポンプで血栓を吸引するものだ。血管を傷つけることは少ないが、血栓が硬かったり、詰まった部位が長かったりすると、吸引は難しい。

 そして14年にソリティアが健康保険適用になった。「ソリティアでの再開通率は80%を超え、手術時間も短縮されました。そのため、患者さんの機能回復の面で、改善しやすくなりました」(同)

 ソリティアに使用されている金属はやわらかいため血管を傷つけにくく、血栓の回収効率も高い。しかも、カテーテルを引き抜く前の、ステントを血栓に食い込ませた時点ですでに再開通が始まる。そのため、血流遮断の時間をより短縮化して回復効果を高める可能性がある。

 ステント型にはこのほか、「トレボ」という機器があり、合計4種類の血栓回収機器が健康保険適用になっている。

 1回で血栓を回収しきれなかった場合でも、3回までは血栓回収療法を実施することができる。現在は、まずソリティアを使い、それでも主に細い血管にやわらかい血栓が残った場合には、ペナンブラを使用するパターンが多い。

 また、佐藤医師は、

「動脈硬化性の脳血管の閉塞の場合、血栓を回収しても血流が十分に再開しない場合もあります。ソリティアといえど、場合によってはそれだけでは治療として成り立ちません」

 と述べ、バルーン(風船)で脳血管を広げるなどの、ほかの治療法との組み合わせの必要性も強調。さらに、血栓回収療法をより多くの病院で受けられるように、病院間の連携が重要であることも指摘している。

「顔・腕・言葉」に要注意 脳梗塞の初期症状診断法

脳梗塞の最新治療法として、健康保険の適用も進んできた血栓回収療法。しかし、まだすべての患者が受けられるわけではない。より効果的な治療を受けるためのポイントは何か。聖マリアンナ医科大学内科学神経内科教授の長谷川泰弘医師に聞いた。

*  *  *

 管に詰まった血栓を溶かす薬「t‐PA」(組織プラスミノゲン・アクチベータ)の静脈注射による血栓溶解療法は、日本を含め、世界のガイドラインが推奨している、明確な有効性をもった治療法です。急性脳梗塞の患者さんには、適応があればまずt―PA静注をするべきです。

 血栓回収療法については、t‐PA静注だけに比べて、血栓回収療法との併用で有効性が高まる、という海外の複数の臨床研究の結果が今年2月に発表されたばかりです。

このためまだ日本のガイドラインには反映されていませんが、中大脳動脈などの太い血管の閉塞に対してステント型を使用し、6時間以内の再開通を目指すなどの条件で、世界のガイドラインが書き換えられつつあります。

 国内では、適応のある患者さんに、適切な医師が、適切な時間内に実施した場合に有効という段階です。

 どちらの治療法でもカギとなるのは、急性脳梗塞の患者さんを「いかに速く、治療可能な医療機関に搬送できるか」。発症してすぐに救急車を呼んでも、4時間30分以内にt―PA静注を受けられない地域が少なくないのが現状です。

こうした地域を「見える化」するのが第一歩です。

 海外では、距離的にどうしても4時間30分以内が困難な場合、双方向性の通信システムを使い、遠方の専門医が現地の医師に指示を出して実施するしくみが整備されつつあります。日本では、まだこれからです。

 現在、血栓回収療法を実施できる専門医は、全国に約950人しかいません。この専門医養成も課題です。

 そして何より、より多くの人が脳梗塞の初期症状を見逃さず、119番通報できるようにすることが重要です。私たちの調査では、一人暮らしの高齢者より、高齢夫婦のほうが、明らかに来院が遅れがちでした。

症状がありながら、「ちょっと様子をみよう」となってしまっているようです。

[1]「イーッ」と言ってもらったときに顔の片側がゆがむ、[2]手のひらを上にして前にならえをすると片腕が下がる、[3]ろれつが回らない。これら三つのうち一つでも当てはまったら、すぐに救急車を呼んでください。

脳卒中の後遺症による手足の突っ張りには“ボツリヌス療法”が有効■森脇美早

今日は痙縮(けいしゅく)の治療の1つのボツリヌス療法をご紹介します。

 脳卒中や脊髄損傷の後遺症の1つに痙縮という症状があります。痙縮とは筋肉が緊張しすぎて手足に力が勝手に入ってしまう症状です。手足に余分に力が入り、肘や手首や指や足が曲がったままになったり、つっぱったりして日常生活に支障をきたします。

 この治療法の1つとしてボツリヌス療法が有名で、希望される患者が増えています。ボツリヌス療法はとても有効な治療方法です。しかし、テレビなどの影響で「脳卒中の麻痺が治る。必ず動くようになる」と誤解されている方がいらっしゃるので、ここで解説しましょう。

 ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質を有効成分とするお薬を筋肉に注射する治療法です。病気で力が入りすぎている筋肉に1つ1つ丁寧に注射して筋肉の緊張を緩めます。力が入りすぎている筋肉が緩むので、ぎゅっと曲がった手首や肘、指、足首などがやわらかくなり楽になるのです。

 例えば指を動かすときには指を曲げる筋肉、伸ばす筋肉がそれぞれ伸びたり縮んだりタイミングよく働いて、自然な動きになります。それが、指を曲げる筋肉に力がずーっと入ったままになれば、伸ばす筋肉に力が入っても伸ばしにくくなります。

そんな時には指を曲げる筋肉をやわらげると指は伸ばしやすくなります。いままでびくとも動かなかった指が結果として動く可能性があるわけです。また、「動く」までいかなくても「緩む」だけでもとても楽になる場合もあります。

まひが治るというわけではないのですが、力が入りすぎているところがうまく緩み、結果として歩く、着替えする、手を洗うなど日常生活を送りやすくなるのです。

 私は、何年も前に発症された方でも、注射で良くなる方を何人も見ています。筋肉だけでなく関節自体のかたさが出てきている場合は少し難しいのですが、この症状に思い当たる方は一度ご検討されてはいかがでしょうか。

 どの科に相談に行けばいいかは、患者さんが具体的にどのような点にお困りかに耳を貸してくれ、場合によっては装具の変更や作製も含めてトータルに診てくれるところがいいでしょう。私個人的にはリハビリテーション科がおすすめです。他には神経内科や脳外科などでもやっています。

 グラクソスミスクライン社の脳卒中後遺症のホームページで病医院検索ができますので、近くの病院へお電話などで問い合わせましょう。ボツリヌス療法は注射でおしまいではなく、日々のリハビリテーションを組み合わせることがとても大事なので、そちらもぜひ、実践してくださいね。

 ■森脇美早(もりわき・みさ)社会医療法人祐生会 みどりヶ丘病院(大阪府高槻市)リハビリテーション科部長(医師)。日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医・指導責任者。(株)カロスエンターテイメント所属。

気付かぬうちに脳が侵される夏場に多い“隠れ脳梗塞”四つのチェック方法(2)

ところが近年、食生活の欧米化などに伴い、比較的若い40代にも、この病気が起こるようになった。

 「細い血管が詰まり、若い患者でも『ラクナ梗塞』と診断されますが、小さい粥腫(コレステロールを大量に含んだ脂質)が脳の細い血管から枝分かれするところに生じ、同じ部位に生じた血栓によって細い血管を根元から閉塞するタイプが多いようです。

高血圧や肥満、喫煙者などの条件が揃っている人は、40代から注意が必要です」(専門医)

 細い血管で起きた梗塞は1つだけなら大きな問題は起きないものの、脳全体の細い血管が軽い障害を受けている状態といえる。早期に生活習慣を改善しないと、他の脳血管も閉塞してしまう可能性が高い。

しかも症状が出ないまま脳のあちらこちらに「ラクナ梗塞」が起こり、少しずつ症状が進行し、多発性脳梗塞に陥れば、若いといえども認知症や歩行障害、言語障害を引き起こし、転倒して寝たきりになるリスクも高くなる。

そのため、前に挙げた喫煙などの習慣がある人は、一度脳ドックを受けてみるのが賢明なのだ。

 「脳ドックなどで『ラクナ梗塞』が見つかっても、生活習慣の改善に努めれば、その後の人生を健康に過ごせる可能性は高い。とにかく放置したままの状態を続けると、命にかかわる危険が待っていることを、肝に命じることです」(同)

 もちろん、「ラクナ梗塞」の一番の危険因子である高血圧の人は注意が必要だ。血圧の正常値は一般的に「最高120mmHg/最低80mmHg」とされるが、せめて「140mmHg/90mmHg」以下を保つように心掛けたい。

 「また日常生活では、交感神経の活性が高まる朝方や、熱い湯への入浴後には、血圧がさらに上昇し梗塞や出血を起こしやすくなるために注意が必要です。

さらに暑さが激しい日などは、脱水によって血液が濃縮状態になった場合も脳梗塞のリスクを伴うことを知っておく必要があります。すでに血液が濃縮気味なメタボの人が、サウナに入り、水分を補給せずに汗をかくことも危険です。

高齢者の場合は、寝汗による脱水が脳梗塞のリスクになるため、就寝前にしっかり水分補強をしましょう」(同)

 ある大学病院の研究グループが、30~80歳の男女(平均年齢57・5歳)を7年間追跡調査した結果、隠れ脳梗塞がある人は約10.5倍も脳卒中を引き起こす頻度が高くなっていたという。

 以下は、そのセルフチェック法だ。

◆両手を前に出し、手の平を上に向けて目を閉じ、その状態を30秒間維持できるか。

◆目をつぶり、その場で50回、腕をしっかりと振って足踏みをする。50回目で目を開き、始めた時の立ち位置からどれほど離れているかを確認する。最初の位置より向きが45度以上、距離が75センチ以上離れていた場合、小脳と頚髄に“隠れ脳梗塞”の疑いがある。

◆同じコッ
プ2つを用意し、一方に水をいっぱい入れ、一方を空にした状態で両手に持つ。水の移し替えを5~6回行い、たくさん水をこぼす場合は“隠れ脳梗塞”の可能性がある。

◆紙にペンで5ミリ間隔ほどの渦巻きを5周ぐらい書く。均一な渦巻きが描けない場合は“隠れ脳梗塞”が進んでいると疑うべき。

 最悪な事態を招かないためにも、症状が出る前から危険察知するように心掛けよう。

気付かぬうちに脳が侵される夏場に多い“隠れ脳梗塞”四つのチェック方法(1)

 脳梗塞は脳の血管が詰まって脳の組織が壊死し、重篤な障害をもたらす。原因別に分けると「心原性脳塞栓症」、「アテローム血栓性梗塞」、「ラクナ梗塞」の3種類がある。

 「心原性脳塞栓症」は、心臓の不整脈(心房細動)によってできた血栓が、脳の血管に飛来して栓塞するというもの。「アテローム血栓性梗塞」は、脳の太い血管が動脈硬化を起こし、血管が狭くなったり、閉塞して起こるタイプだ。

この2種類は広範囲の壊死を引き起こす可能性が高いため、呂律が回らない、手足が痺れて動かなくなるなどの明確な症状が表れることが多いとされる。

 しかし、三つ目の「ラクナ梗塞」の場合、脳の細い血管が動脈硬化によって閉塞し、同じように軽い言語障害や手足の痺れが出たりはするが、脳梗塞自体が小さいため、詰まった場所によってはハッキリした症状が表れない。

そのため、“隠れ脳梗塞”とも呼ばれ、たまたま受けた脳ドックやMRIで発見するケースが多いのだ。

 専門家によると、“隠れ脳梗塞”は、極めて微小な脳梗塞で、まったく症状が認められない「無症候性脳梗塞」から、一時的に目が霞んだり、持っていた箸を落とするなどの軽い症状が出る「一過性脳虚血発作」のことを指すという。

 しかし、このレベルの脳梗塞を患う人は意外に多く、ある調査では、MRI検査を受けた患者のうち40代では3人に1人、50代では2人に1人、60代では8割以上の人に発見されたという。

 「この段階では、症状が比較的軽いということもあり放置されることが多いのですが、生活習慣病の改善などで予防に努めなければ、5年以内におよそ3割の人が発作に襲われ、次のステージに進行しています」(専門家)

 脳梗塞は、ある日突然に意識を失い倒れることがある。しかし、予告なしに突然襲われると思われがちだが決してそうではない。
 高血圧や動脈硬化などの進行で、徐々に脳の血管が狭くなり、数ミリ程度の微小な“隠れ脳梗塞”がいくつか出現する。

その後、梗塞の数がさらにあちこちに増え、ついには本格的な脳梗塞へと進展してしまうのだ。
 
東邦大学病院医療センター大橋病院循環器科担当医が説明する。

 「“隠れ脳梗塞”は、いわば水田の水路に小石がたまり、草木が生えて水の流れが悪くなっているような状態です。もちろん水はわずかながら供給されているので、稲は弱々しく育ちます。

しかし、そのまま放置すれば水の流れは完全に遮断され、水田が干上がってしまい稲は枯れる。『ラクナ脳梗塞』は、高齢者に多く、高血圧が長く続くと血管の内壁が常に刺激を受けて傷つくため、強度を保とうと血管内壁が硬くなります。

こうして柔軟性を失うと血栓が形成されやすく、梗塞を起こしやすい状態になるのです」

握力低下で心筋梗塞や脳卒中の死亡率が増える!? 「5キロ低下で1.16倍」の報告も!!

運動をしない限り年を取るごとに筋力は落ちていくが、そんな筋力を簡単に測定できるのが握力だ。

カナダ・マックマスター大学健康科学部医学科のダリル・リョン准教授らは、世界17カ国14万人分のデータを解析した研究の結果、握力を測ることで死亡リスクを予測できると、5月13日発行の英医学誌「ランセット」(電子版)に報告した。

握力が5キロ下がるごとに、死亡リスクが1.16倍になったという。

◆心筋梗塞や脳卒中のリスクも予測
これまでの研究から、筋力の低下は早死にや病気・障害と関係することが指摘されている。そんな筋力を手早く簡単に測れるのが握力だ。握力と早死にや病気・障害との関連を調べた研究もあったが、所得が高い国での調査データしかなかったという。

そこでリョン准教授らは、カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦(以上、高所得国)、アルゼンチン、ブラジル、チリ、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、トルコ(以上、高位中所得国)、中国、コロンビア、イラン(以上、低位中所得国)、バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ(以上、低所得国)の17カ国で、35~70歳(計13万9,691人)を対象に約4年間追跡調査した。

分析の結果、握力が5キロ低下するごとに死亡リスクが1.16倍になることが分かった。死因別では、心筋梗塞や脳卒中など心血管病による死亡が1.17倍、それ以外の病気による死亡も1.17倍だった。

心筋梗塞になる危険性は1.07倍、脳卒中になる危険性は1.09倍と、死亡リスクよりも控えめだが握力との関連が認められた。これらの関連は、年齢や学歴、就業状態、運動量、喫煙、飲酒などの影響を取り除いても変わらなかった。

◆鍛えればリスク下がる?
握力の弱さと死亡リスクとの関連は、心血管病やがんにかかっている集団で強く、このことから、重病患者の死亡リスクを握力を測ることで予測できる可能性が示された。

リョン准教授らは「握力測定は、簡単で安価な死亡リスク、心血管病リスクの評価法となるかもしれない。一方、筋力を鍛えれば死亡や心血管病のリスクが下がるのかどうかについては、さらなる研究が必要だ」と述べている。

英サウサンプトン大学のアバン・アイヒー・セイヤー教授と英ニューカッスル大学のトーマス・カークウッド教授は、同号の付随論評(電子版)で「こうした発想は目新しいものではないが、過去の研究結果を裏付けるもの」とコメント。

加齢によって筋力が下がっていく過程を評価する方法はほかにもあるが、筋力を下げるような病気はまれなため、握力は特に有用かもしれないという。

【記事提供元】あなたの健康百科
http://kenko100.jp/

ハッキリした症状は表れず…“隠れ脳梗塞”招く「4つの悪習」

自民党の町村前衆院議長が脳梗塞で亡くなった。3年前に1度発症していて、今回は再発だった。もっともこの病気には、まったく症状が出ない「隠れ脳梗塞」もある。

気づかずに放っておくと、次々と小さな梗塞が発生し、認知症や歩行障害を引き起こす可能性もある。東京女子医科大学医学部神経内科学の北川一夫教授に詳しく聞いた。

 脳梗塞は脳の血管が詰まって脳組織が壊死し、重篤な障害をもたらす。原因別に分けると「心原性脳塞栓症」「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」の3種類がある。

心原性脳塞栓症は、心臓の不整脈(心房細動)によってできた血栓が脳の血管に飛来し、栓塞する。アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い血管が動脈硬化を起こし、血管が狭くなったり、閉塞したりして起こるタイプだ。

この2種類は広範囲の壊死を引き起こす可能性が高いため、ろれつが回らない、手足がしびれて動かなくなるなどの明確な症状が表れることが多い。

 一方、ラクナ梗塞は、脳の細い血管が動脈硬化によって閉塞する。同じように軽い言語障害、手足のしびれや麻痺などの症状が出ることもあるが、梗塞自体が小さいため、詰まった場所によってはハッキリした症状が表れない。

そのため、「隠れ脳梗塞」とも呼ばれている。たまたま受けた脳ドックやMRIによって見つかるケースが多いという。

「ラクナ梗塞は、高血圧を有する高齢者に多い病気とされています。高血圧が続くと、血管の内壁が常に刺激を受けて傷つくため、強度を保とうとして血管内膜が硬くなります。

柔軟性を失った血管は血栓が形成されやすく、梗塞を起こしやすい。ラクナ梗塞は高齢者にとって非常に身近な病気なのです」

 ところが近年、食生活の欧米化などに伴って、比較的若い40代にもラクナ梗塞が起こるようになってきたという。

「細い血管が詰まっているため『ラクナ梗塞』と診断されますが、原因としてはアテロームプラークの原理に近く、小さい粥腫が、脳の細い血管が太い血管から枝分かれするところに生じ、同部位に生じた血栓によって細い血管を根元から閉塞するタイプの梗塞が多いようです。

(1)高血圧(2)肥満(3)メタボリックシンドローム(4)喫煙者という条件が揃っている人は、40代から注意が必要です」

■いずれ重大病につながる危険も

 細い血管で起きた梗塞はひとつだけなら大きな問題はないが、脳全体の細い血管が軽度の障害を受けている証拠。生活習慣を改善しなければ、他の脳血管も閉塞してしまう可能性が高い。

症状が出ないまま脳のあちこちにラクナ梗塞が起こり、少しずつ症状が進行していく多発性脳梗塞になれば、認知症や歩行障害を引き起こし、転倒して寝たきりになるリスクも高くなる。

 前記の4つの悪習を持つ40代以上の人は、一度脳ドックを受けてみるのもいいだろう。もしラクナ梗塞が見つかっても、生活習慣の改善を行えばその後の人生を健康に過ごせる可能性が高い。

しかし、知らずに放置したままだと、いずれ複数の細い血管や太い脳血管が詰まって命に関わる危険がある。

 ラクナ梗塞の一番の危険因子である高血圧の人は、もちろん注意が必要だ。血圧の正常値は一般的に「最高120mmHg/最低80mmHg」とされているが、血圧が上がる高齢者の場合は、せめて「140/90」以下を保つように心がけたい。

 日常生活では、交感神経活性が高まる朝方や熱い湯への入浴に気を付けること。血圧がさらに上昇して、梗塞や出血を起こしやすくなる。

 また、脱水によって体内の水分が減少し、血液が濃縮状態になった場合も脳梗塞のリスクを伴うという。

「すでに血液が濃縮気味なメタボの人が、水分を補給せずに汗をかいて痩せようとサウナに入るのは、脱水を誘発する危険があります。高齢者は寝汗による脱水が脳梗塞のリスクになるので、就寝前にしっかり水分補給をしましょう」

 症状がないからといって安心するのは禁物だ。

月曜日は「脳梗塞」多し 医師が勧める日曜日の過ごし方

京都府医師会が先ごろ発表した脳梗塞の発症状況が注目されている。脳卒中の患者を調べた結果、脳梗塞を発症する確率は月曜日が一番高いことが分かったのだ。

 調査の対象となったのは1999~09年に同医師会に登録された脳卒中患者1万3788例。

日曜の脳卒中発症率を「1」として計算すると、月曜は1.157。月~土で一番数値が高く、血管が詰まって起きる脳梗塞の発症がとくに多かった。いうなれば「ブラックマンデー」だ。なぜこうなるのか。

「一週間の始まりのため、緊張するのが原因でしょう」と分析するのは医学博士の米山公啓氏だ。

「緊張感でストレスが強くなるため血液の粘性が高まり、血管の中で固まりやすくなって詰まるのだと考えられます。

月曜は心筋梗塞も増えるようですが、これも原因は同じ。日曜のリラックス状態から、急に忙しくなるからです」

 ブラックマンデーを予防するには、何をすればいいのか。

「大切なのは日曜と月曜の緊張感の差を少なくすること。日曜にゴロゴロしながらも“明日から仕事だ”と少しずつ緊張感を高める。散歩や軽い運動をして、体と気持ちを慣らすのも効果的です。

“明日はこの仕事を片付けよう”と気持ちをポジティブにできればさらに安全です。

高血圧や糖尿病、高脂血症などをしっかり治療し、禁煙するべきなのは言うまでもありません」(米山公啓氏)

 死にたくなければ、不断の努力が必要ということか。

小室哲哉さん「globe」の20周年記念ソング作曲!妻・KEIKOさんを襲った「クモ膜下出血」とはどんな病気?

音楽プロデューサーの小室哲哉さんが4月21日、自身の公式ツイッターで、2015年8月で結成20周年を迎えるユニット「globe」の20周年記念ソングを作成することを明かしました。

小室さんはツイッターの中で「(20周年記念ソングには)KEIKOにも無理せずトライしてもらいます」と「globe」のボーカルである活動休止中の妻・KEIKOさんが復帰する可能性についても触れました。

KEIKOさんは2011年10月に首の後部に激痛を訴え都内病院に緊急搬送。「クモ膜下出血」と診断されました。現在は、自宅療養と通院でリハビリをされています。

一般には40~50歳代に多く、女性の方がなりやすいといわれています。ここでは、KEIKOさんを襲った「クモ膜下出血」についてみてみましょう。

◆「くも膜下出血」とはどんな病気?
くも膜下出血とは、脳をとりかこんでいるくも膜と脳の間に出血が起こった状態です。ときに脳を破壊して脳内出血や脳室内出血をともなうことがあります。

頭部外傷によりくも膜下出血を生じることもありますが、非外傷性くも膜下出血の原因はほとんどの場合、脳の動脈の分岐部にできた動脈瘤というコブ(脳動脈瘤)が破裂することによって生じます。

脳動脈瘤の成因はさまざまあり、明らかにはなっていません。一般的には、動脈分岐部の壁に先天的に弱い部分があり、そこに加齢による動脈硬化や高血圧などが加わって動脈瘤が発生すると考えられています。

◆「くも膜下出血」にかかるとどうなるの?治療法は?
この病気は約30~50%の人が死亡するといわれ、一旦破裂をきたしてしまうとかなり重篤な状態となります。一度破裂した動脈瘤は再び出血し死に至るケースや、重い後遺症をもたらす可能性は高いと考えられています。

統計によれば、発症1日以内に再出血のピークがあり、約20%が2週間以内に再出血するといわれています。

また、くも膜下出血後には脳血管攣縮という問題や、脳血管攣縮の程度によって無症状から脳梗塞、非常に強い場合は脳死に至る可能性もあります。

病気や怪我によって脳に損傷を受けることで起こる高次脳機能障害の原因となる場合もあります。

治療法としては、開頭して破裂した脳動脈瘤の頚部に金属のクリップをかけ再破裂を予防するのがまず必要な処置となります。また、手術後に血管攣縮を防ぐための処置や薬剤の使用も行います。

◆KEIKOさんの今の状態は?
小室さんはKEIKOさんの近況をツイッターでたびたび報告しています。KEIKOさんは当初、手術後に高次脳機能障害の後遺症は残らないと報じられていました。

しかし、実際には退院から2年経過した頃にも、記憶障害が出ていたようです。その後は順調にリハビリを続け、今年の2月には、小学生向けの問題集を開くほど回復し、2人でカラオケに行く姿も公開されていました。

音楽プロデューサーという多忙なスケジュールの中、献身的に妻を支える小室さんの姿にツイッター上では感動の声が集まっています。globe結成20周年という節目の年に、KEIKOさんの歌声が再び聴けることを期待したいですね。

参考:
TetsuyaKomuro(@Tetsuya_Komuro)|Twitter
https://twitter.com/tetsuya_komuro

脳梗塞治療は年々進化も 「FAST」だけは忘れてはいけない

脳梗塞で死に至る人の多くは、発見・治療が遅れた人だ。いまや、早期に治療が開始されれば、脳梗塞は治る時代。脳梗塞治療の最前線をお伝えしよう。

 米国に遅れること9年、2005年に脳梗塞の画期的な治療「血栓溶解療法」が承認された。血栓を溶かす薬剤「tPA」を静脈注射して、脳の血管を再開通させる。患者への負担も少ないが、大きな課題があった。

「発症後4時間半以内に治療を開始しないと、効果がないのです。診断システムが整った脳卒中センターでも、診断には1時間かかります。

そのため、発症後3時間半以内に病院に搬送された患者さんしか血栓溶解療法が適応にならないのです」(兵庫医科大学脳神経外科・吉村紳一主任教授)

 しかも、重症例や主幹動脈の脳梗塞に対しては血栓溶解療法は効きにくい。そのため、tPAの恩恵を受けられるのは脳梗塞全体の5%未満だった。

 tPAの血栓溶解療法が適応できない、あるいは無効の患者に対しては、カテーテル(細い管)を血管に導入して血栓溶解剤を投与する治療法と、バルーン(風船)を閉塞した血管に置く治療法が行われる。

■網目状の筒で血栓をからめとる新機器も登場

 2010、11年には、これらよりも高い効果が期待される2つのタイプの機器が承認された。先端がらせん状の軟らかいワイヤで血栓をからめとって回収するタイプと、血栓を吸引して回収するタイプだ。

 さらに13、14年、より効果的な2つの機器が、相次いで承認された。どちらもステント(金属の網目状の筒)が血栓内で広がり、血栓をからめとる。そのステントを引き抜くことで血栓も引き抜かれ、血流が再開し、死や後遺症を免れる。

「脳梗塞の治療は、血栓で詰まった脳の血管を再開通させ、死亡率を減らし、自立した生活を取り戻せるかどうかで評価します。13、14年に承認された機器は、その前の機器と比較して優れていることが明らかになっています。

たとえば、90日後の日常生活自立度を比較すると、10年承認の『メルシー』は約21%ですが、14年承認の『トレボ』は40%と2倍高い。

脳梗塞発症後8時間以内まで可能です」(神戸市立医療センター中央市民病院脳卒中センター・坂井信幸センター長)

 つまり、脳梗塞治療の最前線は、「まず、可能ならtPAを静脈注射。無効か不可能なら、ステントで血栓をからめとり引き抜く治療」となる。

 脳梗塞の治療技術は、どんどん進歩している。しかし、脳梗塞の発症から元通りの生活を取り戻す可能性を少しでも高くするには、絶対に押さえておかなくてはならないポイントがある。

「おかしいと思ったら、一刻も早く専門病院へ行くことです。時間が経過すれば、それだけ治療の選択肢が減っていきます。『FAST』という言葉を常に念頭に置いてください」(前出の吉村主任教授)

「F」は「Face」、つまり顔に左右差はないか? 「A」は「Arm」、両腕を前に上げて維持可能か?

 「S」は「Speech」、明瞭に話せるか? 

そして「T」は「Time」。これらのうち、ひとつでも当てはまればすぐに救急車を呼ぶ。

「様子を見よう」という考えは捨てなければならない。

辛い二日酔いの朝に!お医者さんに聞いた、オススメの速攻回復法3つ

飲む機会が多くなる春の季節。ついつい飲み過ぎてしまい、辛い二日酔いになってしまうことも。そんな症状を回復させるためのケア方法を、東京メディカルクリニック平和台駅前院の院長、木島豪先生に伺ってきました!

二日酔いから素早く立ち直るには、「ポカリスエットを飲む」「カフェインを摂取する」「ビタミンB1を摂取する」の3つが有効だそうですよ。

■ポカリスエットを飲む

二日酔いは体の中が低血糖状態かつ、脱水症状の状態。そんな時こそ、糖質と水分補給が叶うポカリスエットを飲むのが正解です。

アルコールは利尿作用があるため、脱水状態に陥りやすい飲み物。「今日は飲むかも……」そんな時はあらかじめポカリスエットを買っておくと良いかもしれませんね!

■コーヒーでカフェイン摂取

二日酔い時に苦しい症状の一つが、血管が拡張して起こる頭痛。頭がガンガンして目が回る時は、ひたすら寝て待つのではなく、カフェインを摂取して頭痛を緩和させましょう!

カフェインは血管を収縮させる作用があるので、頭痛を軽減してくれるのです。二日酔いだと思った朝は、コーヒーもGOOD。

■ビタミンB1のサプリメント

アルコールを体内で代謝させる際に発生する毒、アセトアルデヒド。この有害物質が頭痛や吐き気、だるさなどの二日酔い症状の主な原因です。

そんな毒を分解して無毒化させる時、ビタミンB1が大量に消費されるため、体内におけるビタミンB1が不足しがちに……。欠乏症になってしまうと、アセトアルデヒドの分解も進まず、二日酔い症状が長引いてしまいます。

だからこそ、速やかにビタミンB1を摂取して、アセトアルデヒドの分解を助けてあげると、二日酔いからも早く回復できるのです!

「飲み過ぎないことが第一ですが、二日酔いになってしまった時は早く症状を和らげるために、この3つのポイントを取り入れることが大切」と、木島院長。二日酔いに悩んだ時は、ポカリスエット、コーヒー、サプリメントと覚えておきましょう!

寝すぎは本当に危険!8時間以上の睡眠で「脳卒中リスクは2倍」

「春眠暁を覚えず」の言葉通り、春はよく寝られ、寝過ごしてしまうこともありますよね。「もっともっと眠っていたい!」なんて思いませんか?

しかし、あまり寝すぎるのも危険なのです! イギリスのケンブリッジ大学が、8時間以上眠る人は脳卒中リスクが高まるという研究結果を発表しました!

寝不足が体に悪いことは既に知られていますが、寝過ぎも体に良くないことはあまり知られていないので、ちょっとビックリですよね。惰眠は相当、体に悪影響があったのです……。

それでは、本当に健康にいい睡眠時間は何時間なのでしょうか? 別の研究で、ベストな睡眠時間が報告されているので、一緒にご紹介したいと思います。

■8時間以上寝ると脳卒中になりやすい

ケンブリッジ大学の研究チームは、42~81歳のイギリス人1万人を対象に平均9.5年間行った調査で、8時間以上の睡眠が脳卒中のリスクを46%高めることを発見しました。

2回にわたる睡眠時間の調査で、どちらも8時間以上寝ていると答えた人の脳卒中リスクは、6~8時間と答えた人の2倍あったのです。

研究チームは「睡眠時間の長さと脳卒中リスクの関連は明らか。心臓・血管系の障害の結果として睡眠時間が長くなることもある」とコメント。

そもそも睡眠不足は代謝を阻害しストレスホルモンを高めるので、脳卒中になりやすいと言われています。今回の結果は、より長時間の睡眠も脳卒中リスクを高めてしまうことがわかったのです。

原因はまだ明らかではないのですが、心血管系疾患のリスク因子とは異なる何かが存在する可能性がある、とのこと。恐ろしいですよね。

■女性のベストな睡眠時間は7時間半!

長時間ダラダラ眠ってしまった時、起きたときに体がだるく、腰が痛くなりませんか? これ、寝過ぎによって健康を損ねてしまっているんですね。

睡眠時間と健康には何らかの関連があると言われているように、睡眠時間て人間の体にとって、とても重要。短くても、長すぎてもいけないということです。

それでは、いったい何時間の睡眠が体にいいのか? 実は、スウェーデンの研究チームが健康に最も良い睡眠時間を分単位まで発表しています。

男女各2,000人を対象に行った調査で、女性は7時間36分、男性は7時間48分、という事実が明らかに。つまり、女性のベストな睡眠時間は7時間半なのです!

この数字は、あくまでも基本。女性といっても、年齢や体調、仕事など人によってさまざまですから、当然ベストな睡眠時間も違います。

ちなみに、『マイナビウーマン』のアンケートによると、最も多い平均睡眠時間は「6時間以上7時間未満」。12時に寝て、朝6時から7時の間に起床というリズムでしょう。

2番目が「5時間以上6時間未満」と少し短め、3番目が「7時間以上8時間未満」となっています。働くアラサー女性は、比較的しっかりと睡眠時間を確保しているようです。

ただし睡眠時間5時間以下の寝不足と、8時間以上の寝過ぎには気を付けましょう。体に悪影響を及ぼします。睡眠時間を6時間半から7時間半までにするのが、最も体にいいので、ぜひ意識してみてください!


30~50代女性はキッチンドランカー予備軍かも?アルコール依存症の歴史と最新情報

アルコール依存性の歴史をざっと見渡すと、アルコール中毒という名が1852年に医学用語として定着しました。アメリカでは1900年代に禁酒法が制定されました。

しかし、法的規制には限界があり、だんだん医療的対処へ転換していきます。アルコール依存は長い間、「意志が弱い」など、その人に問題ありとされてきましたが、1952年に病気だと認知されました。

日本でのこうした動きは、欧米に比べると遅く、ごく最近まで酒類の消費量は増加するばかりでした。アルコールに関して寛容な文化なので、飲酒問題をとりあげる妨げになっていたとも言われます。

しかし、患者数は増加の一途を辿っています。とくに、女性、退職後の壮年期、若年層の増加が顕著です。家族への影響も深刻です。断酒会や自助グループの活動が盛んです。

◆伝説のリキュール「アブサン」
感性やインスピレーションを引き出す霊酒として、芸術家に愛飲されたアブサン。
「グリーンの詩神、聖女のため息、妖精のささやき」と呼ばれましたが、「禁断の酒、魔酒、飲むマリファナ」の別名もありました。

その理由は、アブサンに含まれるニガヨモギの主成分であるツヨンに、マリファナに似た幻覚などの向精神作用があったからです。中毒症状が問題となり一部の国で製造販売が中止されました。

アブサンに魅せられた人々はアブサニストと呼ばれ、画家ゴッホやロートレックが有名です。彼らは時に心身に異常を来たしました。1981年にツヨンの使用基準は見直され、アブサンは復活し、日本でも飲めるようになりました。

◆アルコール依存症を乗り越えたエリック・クラプトン
アルコール依存症に苦しんだ有名人は枚挙にいとまがないほどです。中でも、数少ない克服に至ったのは「ギターの神様」エリック・クラプトンです。70年代は薬物中毒、80年代はアルコール依存症と、試練の多い人生を送ります。

断酒を決意したクラプトンは、自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」に救いを求め、何度かの再飲酒を繰り返しながら、90年代になってようやく断酒を継続し、1998年、アルコール/薬物依存者治療更生施設「クロスロードセンター」を設立しました。

その後、施設維持のために自分のギターをオークションにかけたり、チャリティーコンサートをしています。

◆アルコール依存症専門外来
アルコール専門病院「国立久里浜療養所」はじめ、精神科、心療内科などに「アルコール依存症専門外来」を標榜している病院があります。禁煙外来のように「禁酒外来」とは呼びませんが、アルコール依存症の専門治療を行っています。

◆最終的には断酒?
アルコール依存症の治療上の合意は「節酒は不可能、断酒しか方法はない」というものだそうです。しかし、目的はそうであっても患者の要望を認めながら、節酒から治療を試みているセラピストもいます。
(参考:信田さよこ『依存症』文芸春秋新書)

◆キッチンドランカー問題
女性のアルコール依存症の増加に伴い、キッチンドランカーが増加しています。アメリカで使われ始めた言葉ですが、料理用の酒を飲んでいるうちに、ハマってしまい、止められなくなってしまう状態を指しています。

キッチンドランカーになる女性の多くは30~50代と言われます。子どもに手がかからなくなり、育児も一段落する年齢。でも、夫は仕事で多忙、核家族化が進み、独りの時間が増え、ストレスから飲酒に走る場合が典型です。

夫婦や家族の時間を大切にする、積極的に社会に出る、そして、体調の変化を見逃さないことも大切です。

●執筆者プロフィール:山本具代(やまもと・ともよ)
管理栄養士、サプリメントアドバイザー、食生活アドバイザー。株式会社とらうべにおいて、企業で働く人の食と健康指導、糖尿病などの疾病を持つ人の食生活指導にあたっている

アルコール中毒は精神疾患!気を付けたい「連続飲酒」

タレントの坂上忍さんの酔いどれぶりが話題になっています。「真っ昼間からハシゴ酒のススメ」という番組企画のロケで、立ち寄った店で次々と飲酒を重ね、自らのブログでも「最後の方は、記憶が途切れ途切れ」と書いています。

ネットでは、「坂上さんはアル中なのでは?」と心配する人も少なくないようです。そもそも「アル中」とは何でしょう?ここでは、アル中とはどの様な症状なのかを解説します。

◆アルコール依存症は精神疾患
「アル中」とは「慢性アルコール中毒」の略称で、現在は同じ状態を指して「アルコール依存症」と呼ぶのが一般的です。アルコール依存症は薬物依存症のひとつに数えられます。

慢性アルコール中毒というと単に「お酒を飲み過ぎる人」や「酒癖の悪い人」程度にとらえている人もいるようですが、その認識は間違いです。

アルコール依存症は精神疾患であり、一度発症してしまうと完治することはない、恐ろしい病気なのです。アルコール依存症患者の平均寿命は52歳とする説もあります。

◆アルコール依存症診断のガイドライン
疾病の国際的な判断基準である『ICD-10』のガイドラインでは、「過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1か月以上続いたか、または繰り返し出現した場合」はアルコール依存症であると診断されます。

 1.飲酒したいという強い欲望・強迫感
 2.飲酒の開始・終了・飲酒量をコントロールすることが困難
 3.禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
 4.耐性の証拠
 5.飲酒に代わる楽しみや興味よりも飲酒に費やす時間が長くなる
 6.明らかに有害な結果が出ていても飲酒を止められない

◆「離脱症状」と「耐性」
「離脱症状」とは俗に言う「禁断症状」のことです。アルコール依存症患者の場合、体内のアルコール濃度が下がることで、ふるえる、発汗、不眠、吐き気、嘔吐、血圧上昇、不整脈、イライラ感、集中力の低下、幻覚──といった離脱症状が現れます。

また、「耐性」というのは「より多くの量を飲酒しないと酔えなくなる」状態を指します。

離脱症状を抑えるために飲酒し、耐性がつくためにさらに多量の飲酒が必要になる、という悪循環が起こります。ここまでくると仕事や日常生活を送るのも困難になるため、医療機関での治療が必要になります。

◆遺伝的要因と環境要因がほぼ半々
世界保健機関(WHO)の2014年の発表によれば、全世界でアルコールの過剰摂取による死亡者は毎年330万人おり、これは全死亡の5.9%に当たるそうです。

また、厚生労働省の2013年の発表によると、国内のアルコール依存症患者数は推計で109万人います。

また、アルコール依存症の発症原因は50~60%が遺伝的要因で、残りが環境要因であるとされています。誰でも依存症になる可能性がありますが、親族に患者がいる場合は特に注意すべきでしょう。

◆アルコール依存症の形成プロセス
アルコール依存症は、次のようなプロセスで形成されます。もし、アルコール依存症である人が「連続飲酒」状態にある場合は、「精神依存」や「身体依存」が形成されている可能性があります。

連続飲酒とは、常に一定濃度のアルコールを体の中に維持しておくために、数時間おきに一定量のアルコールを飲み続ける状態です。連続飲酒は、アルコール依存症の重要な診断根拠となります。

 1.つき合いなどでたまに適正な量を飲む(機会的飲酒)
 2.毎日飲まないと物足りなくなる(習慣的飲酒)
 3.どんどん酒量が増える(耐性の増加)
 4.飲まないと精神的に不安定になる(精神依存)
 5.お酒の切れ際に離脱症状が出る(身体依存)

アルコール依存症にかかるとこの様に自分の意識では制御できない症状が現れてきます。「酒は飲んでも飲まれるな」という格言に倣うように飲みすぎには注意しましょう。

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