あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・くも膜下出血
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脳梗塞リスク大きい「隠れ心房細動」 スマートデバイスで見つけ出す

宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」

腕時計型のスマートデバイスでも

脳梗塞の最大のリスクファクター

感度95% 特異度98%

健康格差が広がる懸念も

ピーナツの摂取量が多いと脳梗塞の発症リスクが低下

国立がん研究センターなど「多目的コホート研究」グループ
 ピーナツの摂取量が多い人は少ない人に比べて、脳梗塞(こうそく)の発症リスクが低いとの研究結果を、国立がん研究センターなどでつくる「多目的コホート研究(JPHC研究)」の研究グループが発表した。

 ピーナツには、不飽和脂肪酸やミネラル、ビタミン、食物繊維などが多く含まれている。欧米の先行研究では、摂取が循環器疾患の予防に有効であるとされているが、アジアからの研究報告は初めてとしている。

 米医学誌「Stroke」(オンライン)に9月9日掲載された。

7万5000人を追跡調査
 1995年と98年に、岩手や秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に住む45~74歳の人で、食事アンケートに回答し、循環器疾患やがんになっていなかった約7万5000人を2012年まで追跡調査した。

 摂取量が少ない順に四つのグループに分け、最も少ないグループを基準として比較した。脳梗塞や脳出血などの脳卒中と、心臓の筋肉に栄養を運ぶ冠動脈が詰まることで起きる心筋梗塞などの虚血性心疾患の発症リスクを調べた。年齢、性別などによる影響を統計学的に調整した。

脳卒中全体で16%減、脳梗塞は20%減
 追跡期間中に3599人が脳卒中(うち脳梗塞2223人)を、849人が虚血性心疾患を発症した。その結果、ピーナツの摂取量が最も少ないグループ(1日当たりの摂取量の中央値0グラム)に比べて、最も多いグループ(同4・3グラム)は、脳卒中全体で16%、脳梗塞に限ると20%、発症のリスクが低かった。

 脳卒中のうちの脳出血と、心筋梗塞などの虚血性心疾患では、摂取量との関連はみられなかった。

 脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患全体では、脳卒中のリスク低下によって、13%リスクが低下した。

虚血性心疾患との関連はみられず
 今回の結果について、研究グループの池原賢代・大阪大学特任准教授(公衆衛生学)は、「ピーナツに多く含まれる不飽和脂肪酸にはLDLコレステロールを下げる作用があるほか、食物繊維には血液凝固因子や炎症反応の減少、血糖値の急な上昇の抑制、ビタミンEには抗酸化作用が報告されており、脳梗塞の発症リスク低下との関連がみられたと考えられる」と解説する。

 一方、欧米の先行研究では、虚血性心疾患の発症リスクの低下が報告されているが、今回の研究では関連がみられなかった。欧米と比べて、ピーナツの摂取量そのものが少ないことや、虚血性心疾患の発症が少ないことが理由ではないかとしている。

取り過ぎには注意を
 池原特任准教授は、「摂取量が最も多かったグループでも1日当たりでは4グラム程度と、欧米に比べればかなり少ないが、それでも脳卒中のリスク低下と関連がみられたことが注目される」と話す。

 そのうえで、「ピーナツは食後血糖値が上がりにくい食品である一方で、カロリーが高いために取り過ぎても良くない。それぞれの食生活の中で無理なく取り入れるのがよいのではないか」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

病気の早期発見・予防で節約!脳梗防げば生涯450万円の差に

病気になってもポックリとは逝けずに、お金を払って生きながらえる。それが、医療が発達した令和の現実。大病を防いで、健康でいるのがなによりの節約につながるのだーー。

「現状、大学病院などの大病院を初めて受診する際、紹介状がないと、診察料とは別に5,000円以上の負担があります。その負担が引き上げられる可能性があるのです」

こう話すのは、国の医療制度に詳しい社会保険労務士の石田周平さん。厚生労働省の諮問機関・社会保障審議会において、前述の費用を引き上げる方向で現在、議論がなされていると、11月19日付の読売新聞で報じられた。

「国は高齢者を中心に病院窓口での自己負担率を上げる傾向にあり、初診時の別負担増加もその流れ。紹介状を持って大病院を訪れるためには、『かかりつけ医』を持つことが重要です」(石田さん)

日本医師会によると、かかりつけ医とは《健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師》のこと。「医療情報ネット」などのウェブサイト上でも、探すことができる。

厚労省「上手な医療のかかり方」プロジェクトの担当者は、かかりつけ医を持つメリットを次のように説明してくれた。

「同じ先生に継続して診療を受けることで、体質や、生活習慣、なりやすい病気などを把握してもらうことができます。体調不良を気軽に相談できれば、大きな病気の早期発見や予防につながるはず。専門的な検査や治療が必要となった場合には、症状に適した専門医療機関を紹介。もちろん紹介状も書いてもらえます」

かかりつけ医を持たないいちばんのデメリットは、日ごろの健康管理がおろそかになり、病気やその予兆を発見するのが遅れてしまうことだ。そのせいで入院となれば、かなりの出費となる。

「かかりつけ医を持ち、病気を予防・早期発見することで、大病を防ぐことがいちばんの節約になるんです」(石田さん)

では、かかりつけ医がいることで病気を予防・早期発見できた場合と、そうでない場合で、どれくらい金額に差が出るのだろうか? 石田さんに「脳梗塞」「糖尿病」「乳がん」という3つの疾病に関して、かかりつけ医が「いる」「いない」のそれぞれで、50歳から90歳までの40年間にかかるお金をシミュレーションしてもらった。

【脳梗塞】

血圧が高い50代女性についてシミュレーション。まず、かかりつけ医がいて、高血圧を治療している場合、月1回診察を受け、薬代を含めて月額4,000円(自己負担3割分)がかかるとすると、40年間で192万円の出費に。

一方、かかりつけ医がおらず、高血圧を放置し60歳で脳梗塞となり倒れてしまった場合。容体により入院日数はさまざまだが、脳疾患患者の平均入院日数である78日間(厚生労働省「平成29年患者調査」より)入院したとする。

また、脳梗塞における一入院費用の平均値159万7,077円(公益社団法人全日本病院協会「医療費(’19年度)」より)に、高額療養費制度を適用したとすると、一入院あたりの費用は25万円弱。そこに、78日分の食事代を足すと35万円強が自己負担金額となる。

「そこで完治すればいいのですが、後遺症が残る場合も多いのが脳梗塞。《要介護1》となり、介護費用として毎月1万6,765円かかることになれば、30年間で約604万円の出費となります」(石田さん・以下同)

つまり、入院費と介護費用を足した639万円から、かかりつけ医がいる場合の費用192万円を引いた「447万円」が、「かかりつけ医がいれば減らせる出費」だとわかる。

【糖尿病】

かかりつけ医によって血液検査で血糖値の高い糖尿病予備群であることが発覚。毎月、食事・運動療法の指導を受けた場合、毎月の医療費が2,000円だとすると、40年間で96万円の出費に。

一方、かかりつけ医がおらず、高血糖を放置した場合。60歳になったある日、起き上がれないほどのだるさを感じ病院を受診し、そこで初めて糖尿病が発覚……。

「60歳で糖尿病が判明し、インスリン注射が必要になったとします。診療費・薬代の合計で毎月1万2,000円かかるとすると、30年間で432万円かかる計算です」

この432万円から、前述の96万円を引いた「336万円」が、「かかりつけ医がいれば減らせる出費」となる。

【乳がん】

風邪やちょっとした体調の変化で、かかりつけ医を受診。年に3回受診したとして、ふだんの通院費は40年間で12万円。そのなかで、自治体実施の乳がん検診を勧められ、55歳のときに乳がんを早期に発見できたとする。

がんの治療費などの情報を提供するサイト「がん治療費.com」の小郷浩之さんによると、早期乳がんで、乳房温存手術、再発予防抗がん剤、放射線治療、ホルモン療法などを行った場合、99万円が自己負担金額となる。

一方、かかりつけ医がおらず、検診を受けていなかったばかりに、60歳になって乳がんが進行した状態で発見された場合、治療にかかる自己負担金額は123万円に。術前に行う薬物療法や、術後の抗がん剤治療期間が長引くといった理由で、費用がかさんでしまうのだ。

さらに本誌の調べによると、切除した乳房を再建する手術を行う場合、高額療養費制度を利用しても、約10万円が自己負担となる。つまり、123万円+10万円=133万円が「かかりつけ医なし」の場合にかかる費用だ。その結果「かかりつけ医がいれば減らせる出費」は「22万円」。がんは進行すると、別の臓器に転移する可能性もあり、そうなると出費はさらに増えるだろう。

かかりつけ医は、自分の健康を守るばかりでなく、無駄な出費も防いでくれるのだ!

日頃から「血栓」をつくらないためにはどうすればいいのか

 新型コロナウイルスに感染した人は「血栓」を引き起こすという。怖いのは無症状や軽症であっても、感染していれば血栓ができる人もいることだ。ときにそれが原因で病状が急激に悪化して命が奪われることもある。

冬はただでさえ心筋梗塞や心不全などの心臓病や脳梗塞といった血管の病気が多く起こる。どうしたらいいのか? 東邦大学医学部名誉教授で循環器疾患が専門の東丸貴信医師に聞いた。

 厚生労働省の統計によると、心臓病による死亡数は1月が最も多く、次いで2月、12月、3月と冬季に集中、夏季のおよそ1・5倍に上る。寒さで自律神経が刺激され、朝の外出時には交感神経の活動が強まる。

すると体熱を外に放散しないように血管が収縮するとともに、血圧も上昇する。月曜日の午前中に脳梗塞や心筋梗塞が多いのは、日曜日の休養後の仕事始めによるストレスが原因だと考えられる。

 しかも、冬は交感神経の活性化だけでなく、食生活の乱れやアルコールの取り過ぎもあり、血管が収縮したり血栓ができやすくなる。さらに、寒冷期の血圧の上昇、特に暖かい室内から寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動であるヒートショックで心臓や血管の負担が増え、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなる。

 だからこそ、高血圧症などの生活習慣病や動脈硬化による心血管病を有する人は、血栓ができやすい新型コロナウイルス感染症にはとりわけ注意が必要だ。とはいえ、感染を完璧に防ぐのは難しい。普段から血栓ができにくい体にするにはどうすればいいのか?

「デスクワークの多い人は1時間に1度は立ち上がって数分でも歩き回るか、足のブラブラ運動をすることです。さらに2時間に1度は席を離れて軽く体を動かしましょう。全身の筋肉が動かないと血流が滞り、代謝も行われないために血栓ができやすいからです」

 心臓に血液を戻す静脈には、皮膚に近いところにある「表在静脈」と、深いところにある「深部静脈」がある。下肢の深部静脈で血液が固まり(凝固)血栓ができることを「深部静脈血栓症」(DVT)といい、その血栓が心臓に飛んでいって肺動脈に詰まる病気を「肺血栓塞栓症」(PE=エコノミークラス症候群)という。座り続ける人はDVTやPEが多く、新型コロナウイルス感染症でもPEになる人が少なくない。

 食事も大切だ。血栓リスクを抑える効果が期待できる食材もある。

「納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を溶かす作用があります。クエン酸には、血液中の血小板が過度に集まるのを抑制する働きがあります。レモンやグレープフルーツなどのかんきつ類や梅干しなどに多く含まれているので、意識して取るといいかもしれません。

ナッツ類やアボカド、カボチャなどに多く含まれるビタミンEは、ビタミンC同様で活性酸素の働きを抑える抗酸化作用があり、過酸化脂質の生成を抑えてくれます。活性酸素によって血管内の脂質が酸化されると、過酸化脂質が発生します。それが血管を硬くし、詰まらせる原因のひとつとなっています」

 ポリフェノールにも抗酸化作用があるといわれ、それを摂取できる食品はブルーベリー、大豆、ゴマ、ソバなど。緑茶やココアなどといった飲み物にも含まれているという。

脳卒中後のリハビリは自宅でやるべき?

脳卒中後に麻痺がみられる患者に遠隔医療を用いて、自宅でリハビリテーション(以下、リハビリ)を行ってもらったところ、理学療法士による対面でのリハビリを行った患者よりも回復が良好だったとするデータが報告された。復旦大学(中国)のChuancheng Ren氏らが実施した研究の結果であり、詳細は「Neurology」10月27日号に発表された。

 Ren氏らは、脳卒中患者を、自宅でライブ動画を介した指導を受けながらリハビリを行う群(テレリハビリ群)と、対面でのリハビリを行う群(従来型リハビリ群)にランダムに割付けて、回復の程度を比較した。その結果、12週間後の運動機能は、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の方が高かったという。Ren氏らは「自宅でも参加できるという利便性の高さが、テレリハビリ群でのプログラム順守率を押し上げたのかもしれない。それが、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の運動機能の改善幅が大きかった要因の一つである可能性がある」と考察している。

 一方、今回の報告を受けて、「遠隔医療を利用している患者に、対面診療を行っている患者と同等の治療効果が見られること自体は驚きでない。その考え方をリハビリにも当てはめるのは、理に適っている」と話すのは、米バージニア大学のAndrew Southerland氏だ。同氏は今回の研究には関与していないが、「医療機関に行くための移動、階段の昇り降りなどが負担になる人も多い中、遠隔医療は治療機会を広げる手段の一つとなり得る」と説明。また、「医療機関で行うよりも自宅の方が、リハビリという医療行為を受け入れやすくなるという面もあるのではないか」との見方を示している。

 この研究の対象者は、2017年7月~2019年1月に復旦大学付属第五人民医院で脳卒中治療を受け、片麻痺が残った52人。このうち半数は自宅で実施するテレリハビリのプログラムに参加し、残る半数は従来型の外来でのリハビリのプログラムに参加した。リハビリのセッションは、両群ともに作業療法と理学療法で構成され、1回当たり60分間かけて行われた。

 12週間のリハビリ終了時点で、上肢・下肢の運動機能の評価スコア(Fugl-meyer Assessment;FMA)は、テレリハビリ群の方が従来型リハビリ群よりも有意に高かった(P=0.011)。また脳内一次運動野の安静時機能結合(M1-M1 rsFC)は、テレリハビリ群で有意に強化されていた(P=0.031)。M1-M1 rsFCの変化はFMAの変化と有意な正相関が認められた(P=0.018)。

 ただしRen氏は、この研究の限界点として、リハビリを全く受けない対照群を設定しなかった点を挙げている。自然経過で麻痺が回復する可能性もあるため、介入を全く行わない対照群を設定していれば、実際の介入効果をより正確に評価できていたと考えられる。

 前出のSoutherland氏は、テレリハビリの実施に必要な条件として、患者が身体的にリハビリを行える状態であることが前提であり、かつ、「患者のサポートに当たれる介護者や家族の存在も、テレリハビリの成功に不可欠」としている。その上で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックをきっかけに、遠隔医療が浸透している現状を指摘。「遠隔医療の一層の普及には、保険償還システムなどの面での環境整備が重要であることを、政策立案者に認識してもらう必要がある」との見解を示している。

切れない、詰まらない「血管」を作る! 突然死リスクを下げる10のヒント

日本人の4人に1人が脳卒中や心筋梗塞など、血管の老化が原因で起こる「血管病」で亡くなる時代。医療関係者も今、「血管ケア」の重要性に注目しています。私たちが突然死から身を守るためにできることは──(構成=島田ゆかり イラスト=ラジカル鈴木)


〈血液老化度チェックテストはこちら〉

◆小さな兆候を見逃さないことが命を守る

心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞/脳出血)が怖いのは、普段から自覚のないまま進行する病気ゆえに、ある日突然、重篤な症状になるから。

血管が切れる(破裂する、解離する)のは、もとはゴムホースのようにしなやかだった血管が加齢や生活習慣により硬くなり、もろくなった結果です。よく耳にする「動脈硬化」は、この血管の老化現象のことを指します。また、血管の一部に血液がたまって「瘤」というこぶ状の膨らみ(プラーク)ができ、それが破裂するケースも。脳出血はこれが原因で起こります。

一方、血管が詰まるのは血管内のこぶが肥大化して血管が狭くなり、血液の通りが悪くなったところに血栓が詰まるから。それにより、その先にある細胞や臓器に血液が行かなくなって、細胞が壊死します。血栓とは、血管が傷ついたときそれを修復するために作られる血小板の塊。弱くなった血管は傷つきやすいため、血栓ができやすくなるのです。

どちらも自覚なく進行していきますが、小さな兆候はあります。「胸に違和感がある」「ときどき動悸がする」「手足がしびれる」などの症状は、血管が老化している、つまり動脈硬化が進みつつある前ぶれです。血管病における予兆は、すでに病気が進行している「初期症状」に該当しますので、気になる症状があれば、すぐに検査をし、血管ケアを始めることが必要です。

そして「ろれつが回らない」「まっすぐ歩けない」「顔の筋肉が左右対称に動かない」「胸をえぐられるような激痛がある」「口もとがだらりとして閉まらない」「理由もなく脚がむくむ」などのはっきりとした症状がある場合は、重度の危険サイン。命の危険が迫っている可能性があります。

●内皮細胞ケアで血管を強く保つ


◆血圧、血糖値、悪玉コレステロール値高めはリスク大

「今のところ、まったく気になる症状はありません」という方でも、血管病のリスクを抱えている場合があります。それは高血圧糖尿病、高コレステロールと診断された人。

血圧が高い状態は、血管壁が過剰に収縮し、血管に負担をかけ続けています。そのため、高血圧の人は血管が疲弊しやすく、老化が早いのです。また、血糖値とLDL(悪玉)コレステロール値が高い人は、血液中に過剰な糖やLDLコレステロールがあふれ、血液がドロドロの状態。血管に負担がかかるので、動脈硬化のスピードが加速します。健康診断などの血液検査で、この3つの項目は必ずチェックしましょう。

基準値を超えた人は赤信号ですし、正常範囲内でも基準値の上限に近い数値が出ている場合は黄色信号。血管ケアが必要です。また、血液検査の値が正常でも、肥満の人、喫煙習慣のある人は血管病のリスクを抱えています。40歳を過ぎたら自分の健康を過信せず、強い血管を作る生活習慣を意識したいものです。

◆強い血管は「内皮細胞」の状態で決まる

では、強い血管を作るためにできることは何でしょうか。そのカギは、「内皮細胞」にあります。血管は「外膜」「中膜」「内膜」の3層構造になっており、一番内側の内膜の中にあるのが「内皮細胞」です。

加齢や悪しき生活習慣により硬くなった血管は、元のやわらかくしなやかなゴムホースのような状態に戻すことはできません。できてしまったこぶも小さくなることはありません。しかし唯一、血管の内側にあるこの「内皮細胞」はケアによって、いい状態に生まれ変わらせることができ、こぶができても詰まりにくくすることができるのです。

内皮細胞は、皮膚のようにターンオーバー(生まれ変わり)します。皮膚は約28日周期で生まれ変わりますが、内皮細胞のターンオーバーは約1000日。長いと感じるかもしれませんが、疲れて傷ついた細胞組織が3年弱で生まれ変わり、血管の内側が強くなるならケアをしない手はありませんね。


◆内皮細胞をよみがえらせる3つの習慣

内皮細胞は、血管壁を守る「バリア機能」と、血管の拡張を促す「活性化機能」という2つの機能を備えています。これにより血液をよどみなく流し、血管壁を広げて血圧を下げ、血管の負担を減らすことができるのです。内皮細胞を元気に保つコツは、「内皮細胞の負担を減らし、良い刺激を与える」こと。そのためにできることは3つあります。

まず1つめは、内皮細胞を傷める要因を減らすこと。たとえば血液中のLDLコレステロールや血糖は、ストレスや生活習慣の悪さによって増える活性酸素の攻撃を受けやすく、これと結びつくことで悪玉物質へと変化するのです。

そしていずれも血管壁に侵入してこぶに入り込み、動脈硬化を促進させます。つまり、血糖値やコレステロール値を下げ、抗酸化力の高い食品を摂る、ストレスを減らすことなどで、内皮細胞を守ることができるのです。

次に、血圧を上げる要因を減らすこと。高血圧は血管病にとって最大の脅威です。なぜなら、動脈硬化の引き金になるばかりか、血管に血液を送り込むのに大きな力を必要とするので心臓に負担がかかるからです。血圧を高める主な原因は、肥満と塩分の摂り過ぎ。減塩の習慣と肥満の改善・予防により、いきいきとした内皮細胞に生まれ変わります。

なお、高血圧の判断基準は、医療機関や健康診断で測定する場合、上が140Hg以上、下が90Hg以上であれば高血圧となります。家庭で測定する場合は上が135Hg以上、下が85Hg以上となります。

3つめはサラサラ血液を心がけること。血管内を血液がスムーズに流れていると、内皮細胞に良い刺激が与えられ、血管を拡張して詰まりを防ぐことができます。ドロドロ血液の原因は、脂質と糖質の摂り過ぎ、食べ過ぎと栄養バランスの偏りです。バランスの良い食事は、内皮細胞を元気にすると覚えておきましょう。

次のページに「突然死リスクを下げる10のヒント」をご紹介しましたが、最も重要なのは食事です。とくに塩分の摂り過ぎが高血圧を招き、血管の老化を速めることになります。


突然死リスクを下げる10のヒント

強い血管はセルフケアで作れます。元気な内皮細胞を作り、血液がよどみなく流れる血管になる10のヒントをご紹介しましょう

《食事》

1 塩分を減らす

2 魚や大豆製品を食べる

3 野菜をたくさん食べる

《運動》

4 ウォーキングで血流良く

5 ストレッチで柔軟性を保つ

6 筋トレで筋肉をつける

《ストレス》

7 規則正しい生活

8 ぐっすり眠る

9 ぬるめのお風呂にゆっくりつかる

《生活習慣病》

10 「高血圧」「高血糖」「脂質異常症」の人は治療・ケアに取り組む

◆意識的な減塩は血管と健康を守る

厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取量の基準を2020年版より、高血圧および慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、1日の推奨摂取量は6g未満と設定されました。小さじ1杯が約5gですから、ほぼそれくらいが1日に摂取できる量の目安になります。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会のガイドラインでは、血管病を防ぐ理想的な食塩摂取量は1日3.8gまで、と定めています。

しかし、全身のミネラルバランスを保つために必要な塩分は、実は1日わずか1.5g。人間はそれだけの塩分で十分に生きていけるのです。ちなみに、日本人の食塩摂取量の平均は、1日約10g(日本高血圧学会、厚生労働省の基準等による)。普段の生活で、いかに過剰に摂取しているかがわかります。

ではどのように減塩をしたらよいのでしょうか。1つは意識的に塩分を減らすこと。もう1つは薄味に変えること。1日に1g減らすことができたら、1年で365gの減塩に成功します。たとえば、調味料を控える、漬物や佃煮、梅干しを食べ過ぎない、汁物や麺類を食べる回数を減らす、塩分が高い食品(干物、練り製品、ベーコンなど)を控える、などが効果的です。

薄味に慣れるには、減塩調味料を活用したり、だし、酸味、香りなどでおいしくする方法があります。もっと簡単なのは、腹八分目を心がけること、外食を控えめにすること。この2点は、糖尿病対策、高コレステロール対策、肥満対策にもなり、さらに効果的です。

塩分以外にも、魚や大豆製品の良質なたんぱく質を摂ること、野菜を毎日食べることが奨励されています。良質なたんぱく質は内皮細胞が丈夫に生まれ変わる材料になります。肉なら、脂肪が少ない赤身がよいでしょう。野菜は抗酸化力が高いので、血管を傷つける活性酸素の除去に役立ちます。また、塩分(=ナトリウム)を体外に排出する効果があるカリウムを豊富に含むものが多いので、減塩にもつながります。

さて、これまで血管の重要性、内皮細胞を生まれ変わらせる方法などをお伝えしてきましたが、突然死の「最後の引き金」になるものがあります。それはストレスです。不安やイライラ、ヒートショックなど、心や体にストレスがかかると、血管はギュッと収縮します。その結果、血管が破れたり、血栓が詰まったりする可能性があるのです。

日頃から楽しいことに目を向け、リラックスして過ごすことも、実はとても重要なリスクマネジメント。自然の中を散歩して深呼吸をしたり、ヨガをするのもいいでしょう。血管を強く保ち、にこにこ笑って過ごせたら突然死とは無縁になるはずです。

(構成=島田ゆかり)


ラーメン屋が多い地域では脳卒中による死亡率が高い

 日本を代表する料理といえば、「寿司」と並んで「ラーメン」を挙げることができます。自宅近くに評判の良いラーメン屋さんがあれば、ついつい足を運びたくなります。しかし、塩分が多いこと、カロリーが高いことなどから、健康にあまり良くないイメージを持たれる方も多いかもしれません。特に塩分の過剰摂取は脳卒中の危険因子であることが知られています。

 日本の各都道府県におけるラーメン店の数と脳卒中による死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、バイオメド・セントラルという医学誌出版社が発刊している栄養学専門誌に2019年9月4日付で掲載されました。

 この研究では、NTTのデータベースから各都道府県に存在する4種類のレストラン(ラーメン店、ファストフード店、フランス/イタリア料理店、うどん/そば店)の店舗数が調査されました。また厚生労働統計協会が発行している「国民衛生の動向」から、都道府県別の脳卒中による死亡率を集計し、レストラン店舗数との関連性が検討されています。

 その結果、ラーメン店の数が多い都道府県ほど、その地域の脳卒中による死亡率が男女ともに高いことが示されました。一方、ラーメン店以外のレストランでは店舗数と脳卒中による死亡率に、明確な関連性を認めませんでした。

 この研究では、ラーメンの直接的な摂取量が評価されているわけではありません。また、ラーメン店ではギョーザやチャーハンなどラーメン以外の料理も提供されうることも考慮すれば、ラーメン店の多い環境に住むことが脳卒中のリスクになりえるとは結論できないでしょう。とはいえ、将来的な健康リスクを考えれば、やはり大事なのはバランスの良い食習慣かもしれません。

青島周一 務薬剤師。「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰
2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

突然目に黒い幕が下りたら『脳梗塞』の前兆を疑え!

 一過性脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる病気。目の前にカーテ ンが下りるような視野障害が特徴で、突然幕が下りたように目が見えなくなる――。こんな症状が表れたら要注意。「一過性黒内障」の恐れがあるという。

「視力が回復しても、すぐに総合病院の神経内科や脳神経外科を受診すべきです」 こう警告するのは山梨大学名誉教授の田村康二氏だ。一過性黒内障は、頸動脈から枝分かれした眼動脈に血栓が詰まることで起こる。眼動脈は左右の目にあるが、両方が同時に詰まることは珍しく、多くの場合、片方の目にだけ症状が表れる。

「血管が詰まる原因は、長年の不摂生による高血圧、糖尿病、脂質異常症などによる頸動脈の動脈硬化が最も多い」(同)

 動脈硬化を起こしている血管の内側には、脂肪や血栓が溜まっている。その血栓の一部が剥がれ、脳に向かって流れて行く先の一つに眼動脈があるという。ただ、剥がれ落ちる血栓は非常に微細でもろいため、眼動脈をふさいでも、すぐに溶けて消失することが多い。そのため血流が阻害されるのも一時的で、目の症状も、すぐに解消することが多いというのだ。

「目が見えなくなるといった症状が出た場合、二つの可能性が考えられると思います。一つは網膜そのものの異変で、網膜剥離などが進んでいるケース。もう一つは脳梗塞の前兆です。一過性脳虚血発作を放置しておくと、15~20%の人が3カ月以内に脳梗塞を発症します」(同) 早い人は48時間から数日以内に脳梗塞を起こしてしまうとの報告もあるが、逆に言えば、この段階で総合病院に駆け込めば、脳梗塞の一歩手前で対処できる。

 家系的に脳梗塞が多いという人にも予防策はある。

「血栓ができやすい体質だとしても、食生活を工夫することで、血中のコレステロールや中性脂肪は抑えられます」(同)このように脳と目は密接に関わりあっている。もう一度言うが、一過性黒内障というのは、脳梗塞の前触れといわれている危険なサインなのだ。

発症から5年以内が危険 脳卒中後は自殺リスクが10倍に

秋が深まってきた。気温が下がり、一日の寒暖差が大きくなると、脳卒中(脳梗塞、脳出血)リスクが高まってくる。脳卒中は、日本人の死因の第3位を占め、患者数が約118万人(2014年の厚労省患者調査)に達する怖い病気だ。命が助かっても後遺症に悩む患者やその家族は多く、寝たきり老人の3割、要介護者の2割を脳卒中患者が占める。ところが、脳卒中には一般には知られていない後遺症がある。自殺や事故死だ。発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる率が高くなる。注意が必要だ。

 警察庁の自殺統計によると、2017年の日本の自殺者数は2万1321人。8年連続減少というが、まだまだ多い。

 自殺の背景にはうつ病などの精神疾患が存在することが知られているが、身体疾患も自殺リスクを高める。実際、脳卒中を発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる確率が高いという。国立がん研究センターが全国9保健所管内に住む40~69歳の11・7万人を追跡調査した研究がある。14年発表で脳卒中になっていない群に対する、脳卒中発症5年以内の群の自殺並びにその他の外因死のリスクは共に約10倍だった。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「研究では脳卒中後に自殺並びに事故で亡くなった人の数が数十人と少なく、そのうち発症5年以内で亡くなった人はさらに少なくなります。そのため10倍という数値は割り引いてみる必要があります。それでも、脳卒中を発症すると、うつ病リスクが高まることがわかっています。ご存じのようにうつ病は自殺の最大のリスク要因です。また、うつ病によってうつ状態になると、交通事故や転落などの不慮の事故に遭いやすくなることが知られています。認知機能が衰えるからでしょう。身体的、認知的な障害により、仕事や私生活で不自由な思いをすることでも自殺が増える可能性が高くなるのは間違いありません」

 脳卒中は、脳血管が障害されることによって起きる。後遺症は、それで脳が損傷を受けることが原因だ。脳へのダメージが自殺や交通事故などの外因死を招きやすいことはアメリカンフットボール選手を対象にした研究でもわかっている。脳振とうなど、脳への損傷を繰り返すことで慢性外傷性脳症(CTE)になる選手が多く、認知機能の低下から錯乱・抑うつ状態が続き、自殺することもあるという。

「米ボストン大学医学部の報告で、引退したアメフトの選手から死後提供された202人分の脳標本を調べたところ、177人(87%)がCTEだったことが明らかになっています。生前に認められた症状から軽症と重症とに分けたところ、軽症者の死因で最も多かったのは自殺(12人、27%)だったそうです。また、軽症者も重症者も生前、自殺行動が見られたことが報告されています」(林院長)

■自殺を図った人たちの特徴は?

 そのヒントになるのがスウェーデンでの研究だ。2001年から12年までに登録された同国の脳卒中患者のデータベースを使い、脳卒中発症後の自殺または自殺未遂の人数を調べた。約22万人の脳卒中患者のうち登録期間中に1217人が自殺を図り、うち260人が死亡した。スウェーデンの自殺率の2倍近くに相当した。

「この調査では、自殺を図った人の特徴を分析しています。①18歳から54歳までの比較的若い人は85歳以上の人に比べて5・89倍も高い②一人暮らしが多い③女性より男性が目立つ④脳卒中の症状が重い⑤脳卒中後にうつ病を発症⑥大学卒業者より初等・中等教育卒業者が多い⑦脳卒中を発症して2年後に集中している――などです。もちろん、これらの特徴はスウェーデンでのもので日本にそのままあてはまるわけではありません。しかし、ヒントにはなるはずです」(林院長)

 WHO(世界保健機関)によると、自殺が起こると、最低でも6人、職場や学校では数百人に深刻な影響を及ぼすという。集団の士気が下がるだけでなく、自殺が新たな自殺を呼ぶこともある。身近に脳卒中の人がいたら、日頃から注意を向けることだ。

緑茶カテキンが脳卒中や心筋梗塞を防ぐ…は間違いの可能性が

 これまで、「緑茶は心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを軽減させる」という研究結果がいくつも報告されている。しかし今回、国立がん研究センターなどが行った多目的コホート研究によると、緑茶カテキンの血中濃度は脳卒中や心筋梗塞といった虚血性心疾患の発症リスクと関連しない可能性が指摘されている。

 日本の9地域に在住していて、がんや循環器疾患の既往がない40~69歳の男女2万9876人を対象に追跡調査を実施。カテキンの血中濃度と脳卒中および心筋梗塞などの虚血性心疾患との関連を調べたところ、男女ともに緑茶カテキンの血中濃度は発症と有意に関連しないことが分かった。

 ただ、緑茶カテキンの一種であるEGCGの血中濃度については、喫煙をしていない男性の場合、血中濃度が最も低いグループに比べて最も高いグループでは脳卒中の発症リスクが47%低かったという。

 横浜創英短期大学名誉教授で管理栄養士の則岡孝子氏は言う。

「緑茶にはカテキンだけでなく、さまざまな成分が含まれています。リラックス効果があるテアニン、疲労感の解消や脂肪分解を助ける働きがあるカフェイン、ストレス軽減やコレステロールを抑えるGABA、カテキンと同じく抗酸化作用によって動脈硬化を予防するクロロフィルやベータカロテンなど、健康効果が指摘されている成分が豊富なのです。昔から緑茶は健康に良いと言われてきたのは、それらの成分の複合的な働きによるものだと考えられます。緑茶だけでなく、食品の摂取で得られる健康効果は、ある特定の成分だけによるものではないということです」

 それぞれの成分にさまざまな効果があるのはたしかだが、だからといって特定の成分をサプリメントでピンポイントに摂取すれば健康になれるという単純なものではないのだ。

発症から5年以内が危険 脳卒中後は自殺リスクが10倍に

 秋が深まってきた。気温が下がり、一日の寒暖差が大きくなると、脳卒中(脳梗塞、脳出血)リスクが高まってくる。脳卒中は、日本人の死因の第3位を占め、患者数が約118万人(2014年の厚労省患者調査)に達する怖い病気だ。命が助かっても後遺症に悩む患者やその家族は多く、寝たきり老人の3割、要介護者の2割を脳卒中患者が占める。ところが、脳卒中には一般には知られていない後遺症がある。自殺や事故死だ。発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる率が高くなる。注意が必要だ。

 警察庁の自殺統計によると、2017年の日本の自殺者数は2万1321人。8年連続減少というが、まだまだ多い。

 自殺の背景にはうつ病などの精神疾患が存在することが知られているが、身体疾患も自殺リスクを高める。実際、脳卒中を発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる確率が高いという。国立がん研究センターが全国9保健所管内に住む40~69歳の11・7万人を追跡調査した研究がある。14年発表で脳卒中になっていない群に対する、脳卒中発症5年以内の群の自殺並びにその他の外因死のリスクは共に約10倍だった。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「研究では脳卒中後に自殺並びに事故で亡くなった人の数が数十人と少なく、そのうち発症5年以内で亡くなった人はさらに少なくなります。そのため10倍という数値は割り引いてみる必要があります。それでも、脳卒中を発症すると、うつ病リスクが高まることがわかっています。ご存じのようにうつ病は自殺の最大のリスク要因です。また、うつ病によってうつ状態になると、交通事故や転落などの不慮の事故に遭いやすくなることが知られています。認知機能が衰えるからでしょう。身体的、認知的な障害により、仕事や私生活で不自由な思いをすることでも自殺が増える可能性が高くなるのは間違いありません」

 脳卒中は、脳血管が障害されることによって起きる。後遺症は、それで脳が損傷を受けることが原因だ。脳へのダメージが自殺や交通事故などの外因死を招きやすいことはアメリカンフットボール選手を対象にした研究でもわかっている。脳振とうなど、脳への損傷を繰り返すことで慢性外傷性脳症(CTE)になる選手が多く、認知機能の低下から錯乱・抑うつ状態が続き、自殺することもあるという。

「米ボストン大学医学部の報告で、引退したアメフトの選手から死後提供された202人分の脳標本を調べたところ、177人(87%)がCTEだったことが明らかになっています。生前に認められた症状から軽症と重症とに分けたところ、軽症者の死因で最も多かったのは自殺(12人、27%)だったそうです。また、軽症者も重症者も生前、自殺行動が見られたことが報告されています」(林院長)

■自殺を図った人たちの特徴は?

 そのヒントになるのがスウェーデンでの研究だ。2001年から12年までに登録された同国の脳卒中患者のデータベースを使い、脳卒中発症後の自殺または自殺未遂の人数を調べた。約22万人の脳卒中患者のうち登録期間中に1217人が自殺を図り、うち260人が死亡した。スウェーデンの自殺率の2倍近くに相当した。

「この調査では、自殺を図った人の特徴を分析しています。①18歳から54歳までの比較的若い人は85歳以上の人に比べて5・89倍も高い②一人暮らしが多い③女性より男性が目立つ④脳卒中の症状が重い⑤脳卒中後にうつ病を発症⑥大学卒業者より初等・中等教育卒業者が多い⑦脳卒中を発症して2年後に集中している――などです。もちろん、これらの特徴はスウェーデンでのもので日本にそのままあてはまるわけではありません。しかし、ヒントにはなるはずです」(林院長)

 WHO(世界保健機関)によると、自殺が起こると、最低でも6人、職場や学校では数百人に深刻な影響を及ぼすという。集団の士気が下がるだけでなく、自殺が新たな自殺を呼ぶこともある。身近に脳卒中の人がいたら、日頃から注意を向けることだ。

リスクを下げる働きも「お酒」と「脳卒中」の不思議な関係

物悲しい秋がやってきた。人恋しさから会社帰りには自然と赤提灯に足が向く。そんな中高年も多いはず。気温が下がっていくことが生命維持に不安を抱かせ、日照時間の短縮が脳内の神経伝達物質セロトニンを減らすことなどが原因だが、そんな季節だからこそ注意したいのがお酒と病気の関係だ。「お酒好きには尿酸値とγ―GTPの高さは勲章」などと強がってみてもやはり病気は怖い。とくに冬に向けて増えていく脳卒中は死因第4位の重大病だけに気になる。「赤坂パークビル脳神経外科」(東京・港区)の福永篤志医師に聞いた。

「お酒は脳卒中の原因といわれますが、近年の研究では適度なお酒は逆に一部の脳卒中リスクを下げることがわかっています」

 脳卒中には2種類ある。動脈が詰まって脳に十分な血液が供給されずに起こる虚血性脳卒中と、脳の血管が破れて出血する出血性脳卒中だ。「脳卒中データバンク2015」によると、日本では75.9%が虚血性脳卒中で、残り24.1%が出血性脳卒中(5.6%のくも膜下出血含む)だ。

「日本人の栄養状態が悪かった時代の脳卒中は出血性脳卒中が多かったのですが、現在は栄養状態が改善し、虚血性脳卒中が増えています。虚血性脳卒中には、動脈硬化で狭くなった脳の太い血管の中に血栓ができて血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い動脈が徐々に詰まるラクナ梗塞、心臓でできた血栓がはがれて飛んで脳の動脈を塞ぐ心原性脳梗塞の3種類があります。以前に比べ、ラクナ梗塞が減少して心原性脳梗塞が増えていますが、適度なお酒は脳梗塞のリスク、とくにラクナ梗塞リスクを減らすことが報告されています」

 日本でその報告をしているのが多目的コホート研究「JPHC Study」だ。長期にわたる観察型の疫学研究であるこの研究は、全国12地域、14万人強を対象にしたもので、「飲酒」「食事」「喫煙」「運動」などの生活習慣が病気や生活の質にどのように影響するかを調べている。それによると、出血性脳梗塞の発症率と飲酒量との関係は右肩上がりの直線的な正の相関関係にあるものの、虚血性脳卒中の発症率と飲酒量の関係はJカーブ現象が見られた。お酒を飲まない人に比べて適度にお酒を飲んでいる人は虚血性脳卒中の発症率は低く、お酒を大量に飲んでいる人はその発症率は高かった。

「時折お酒を飲む人に比べて、エタノール換算で週に450グラム以上のお酒を飲む人はすべての脳卒中の発症率が68%増加していることが報告されました。特にくも膜下出血の発症率が著しく増加したのです。その一方で、週に149グラム以下のお酒を楽しむ人は、ほぼお酒を飲まない人に比べて虚血性脳卒中の発症率が39%も低く、ラクナ梗塞でより顕著だったのです」

 その理由として適度な飲酒は、アルコールの作用で善玉コレステロールであるHDLコレステロールの血中濃度が上がること、血栓形成を促すタンパク質であるフィブリノゲンの値を低くして血液が固まりにくくなることなどが挙げられている。また、適度な飲酒は、血圧を一時的に下げる働きがある。

■休肝日を設けることは大切

 ただし、これらはあくまでもお酒と脳卒中だけの話。お酒はがんや心臓などの病気とも関係している。このため厚労省は「健康日本21」の中で「通常のアルコール代謝を有する日本人において、節度ある適度な飲酒とは、1日平均純アルコールで20グラム程度」としており、1日の適正アルコール量の目安として男性25グラム以下、女性20グラム以下と定めている。

 ちなみにアルコール20グラム程度とはビール・発泡酒の中ビン1本、酎ハイコップ1杯もしくは350ミリリットル缶半分、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯、グラスワイン1杯弱となる。

「“たったこれだけ?”と思う人もいるかもしれませんが、これは1日の量。週換算では約150グラムまで飲めるのですから、決して少ない量ではないはずです」

 また、週に1、2日はお酒を飲まない休肝日を設けることも大切だ。毎日お酒を飲み続ける人は休肝日のある人に比べて死亡リスクが1.8倍高いという研究もある。

「お酒は食欲を増進するのでおつまみの食べ過ぎにも気を使う必要があります。よくつまみに含まれる塩分が脳卒中の原因である高血圧を引き起こすといわれますが、お酒自体がその原因となる可能性があることも理解しておく必要があります。習慣飲酒が原因の高血圧は高血圧全体の35%ぐらいともいわれています。肥満に伴うものが15%程度といわれているので、いかに多いかがわかるはずです」

 楽しいお酒が悲劇にならないよう、まずは適量、休肝日に気をつけることだ。

言葉出ない、急に怒る…家族が脳障害 どうすれば?

しっかり話せない。約束を忘れてしまう。仕事を覚えられない。意欲が低下したり、怒りっぽくなったりする……。脳卒中などが原因で、記憶や思考、判断などを担う脳の機能に障害が出る「高次脳機能障害」が注目を集めている。患者はもちろん大変だが、症状が見た目にはわかりにくいせいもあって、家族の介護負担はより大きくなる傾向があるからだ。国は高次脳機能障害者と家族を支える体制づくりを進めており、東京都も今年2月、都内にある相談窓口や通所・入所施設など最新情報を盛り込んだパンフレットを発行した。かけがえのない肉親が脳障害を負った時、家族はどのような思いで支えればよいのだろうか。

■記憶障害や意欲低下の症状も

 「高次脳機能障害」の「高次脳機能」とは、手足を動かすなどの基本動作ではなく、記憶したり、物を考えたり、計画を実行したりといった、人間ならではの高度な脳機能を指す。この機能が、くも膜下出血や脳梗塞などの脳卒中、外傷性脳損傷などが原因で障害を受けることを、「高次脳機能障害」と呼ぶ。推計で、全国に約50万人の高次脳機能障害者がいるといわれる。

 具体的な症状としては、

(1)言いたい言葉が浮かんでこない、言われた言葉が理解できない、字を読めない、書けないなどの症状が表れる「失語症」

(2)発症前の記憶はあるのに、最近の体験やエピソードなどを中心に記憶できなくなる「記憶障害」

(3)物事に集中することが苦手になる「注意障害」

(4)物事を計画立てて実行できなくなる「遂行機能障害」

(5)何事にも意欲が低下する

(6)本人なりの理由はあるが、突然、興奮して怒り出すなど感情のコントロールができなくなる

(7)相手の感情などの読み取りが苦手となり、会話のキャッチボールができなくなる

(8)右脳の損傷を受けた場合、反対側である左側の空間が認識できなくなった行動を取る(左半側空間無視)

 などがある。症状は個人差が大きく、これらすべての症状が表れるわけではない。

 高次脳機能障害は、外見では分からないことが多い障害なので、「見えない障害」とも言われる。患者に対して、家族はどのように対応してよいのか分からず、戸惑い、疲れ切ってしまうことがある。

■動く右手だけでちらし寿司を作る

 東京都世田谷区の「つるや鮨」の3代目店主・磯貝政博さん(54)も、高次脳機能障害者の一人だ。つるや鮨は、プロ野球で活躍した「打撃の神様」の川上哲治さん、元首相の福田赳夫さんらに愛され、80年以上の歴史を誇る。

 磯貝さんは2006年2月10日、ランチの仕事を終えて、店の上の自宅で仮眠を取っていた時、異変に襲われた。目が覚めて起き上がろうとしたが、足に力が入らず、立ち上がれない。妻の香苗さん(48)に救急車を呼ぶように頼むと気を失ってしまった。

 救急車で近くの病院に運ばれたが、右側の脳に出血が見られた。幸い、命は助かったものの、左半身にまひが残った。3月下旬、車いすで都内のリハビリ病院に転院。厳しいリハビリの結果、杖(つえ)をついてゆっくり歩けるようになり、6月初め、自宅に帰ることができた。

 残念ながら、寿司(すし)を握っていた左手、左腕はほとんど動かなくなった。しかし、磯貝さんの苦難は、体が不自由になっただけではなかったのだ。

 忘れっぽくなった。寿司を握れなくなったので、電話番をしていると、相手の名前を覚えることができても、注文の内容を忘れてしまう。同時に複数のことができないのだ。

 視界に入っているはずなのだが、自分の左側にある物が認識できない症状(左半側空間無視)も表れた。高次脳機能障害に多い症状だ。

 できないことが多くなり、すべてにおいて自信を失った。イライラ感が募り、怒りっぽくなった。ささいなことで父親と口論となり、政博さんは店にあった包丁を持ってきて、部屋で大の字に寝そべり、「この包丁で殺してくれ」と大騒ぎしたことがあった。また、他人に会うのが嫌になり、引きこもりの日々を過ごした。

 「動く右手で何かできないかな」。訪問診療をしてもらっていた長谷川幹(みき)・三軒茶屋内科リハビリテーションクリニック院長(日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会理事長)から、そう提案された。妻の香苗さんに相談すると、「握り寿司は無理だけど、ちらし寿司なら作れるんじゃないの」と言われた。

 「よし、挑戦してみよう」。ネタは事前に父親にさばいてもらい、右手でご飯の上に乗せていく。自分の左側に置いたネタが認識できず、忘れてしまうことがあったので、体を左にひねって左側を必ず確認しながら作るように心がけた。何度も何度も挑戦して、作る時間を短くしていった。2008年春、初めてお客さんに食べてもらった。12年頃からは、右手だけで器用に包丁でネタを切って提供できるようになった。

 政博さんは現在、朝6時に築地に買い出しに行き、9時に帰宅。それから素材のトロやマグロなどを切って、開店に備える生活を送っている。「自分のできないことに目を向けるのではなく、できることを伸ばすようにすることが大切です」と話す。

 香苗さんは、「家族は、病気になる前の状態と比較するのはダメ。本人はもちろん家族も落ち込んでしまうから。本人が新たにやりたいと思えることを見つける手伝いをする、というような心づもりが重要だと思います」と言う。

■都が情報満載のパンフレットを作成

 国も高次脳機能障害者と家族を支える体制づくりを進めている。2006年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に基づき、高次脳機能障害者を継続的に支援するための「支援拠点機関」が各都道府県に設置された。患者や家族が安心して地域の中で暮らしていけるように、専門的な相談支援、関係機関との支援ネットワークの充実、普及・啓発事業、支援手法に関する研修などを実施することが役割だ。全国の支援拠点機関名は、国立障害者リハビリテーションセンターが運営する「高次脳機能障害情報・支援センター」のホームページで確認できる。

 東京都の支援拠点機関は「東京都心身障害者福祉センター」(東京都新宿区)で、法律施行当初から積極的に活動を行っている。都内にある相談窓口、通所・入所施設、就労支援機関、医療機関などについて最新情報を盛り込んだ2018年版パンフレット「高次脳機能障害の理解と支援の充実をめざして」を今年2月にまとめた。2年ぶりの情報更新による発行だ。

 元々は、都内の市区町村障害者担当者や医療機関、福祉関係者ら向けに作られたものだが、患者や家族が読んでも、役に立つ情報が満載だ。同センターのサイトにある「東京都心身障害者福祉センター発行各種パンフレット、リーフレット」という項目で読むことができる。

 パンフレットでは、高次脳機能障害者に対して、家族や周囲の人たちがどのように接したらよいのか、についての具体的な対応法も紹介されている。

(1)ゆっくり、分かりやすく、具体的に話す

(2)情報はメモに書いて渡し、絵や写真、図なども使って分かりやすく伝える

(3)何かを頼む時には一つずつ、具体的に示す

(4)疲労やいらいらする様子が見られたら、一休みして気分転換を促す

(5)手順を簡単にする、日課をシンプルにする、手がかりを増やすなど環境の調整をする

 と助言する。

■家族は時に介護を離れ、休息を

 一方、磯貝さんの主治医で、長年、高次脳機能障害者への訪問リハビリを続けている長谷川幹院長が、高次脳機能障害者を支える家族に心得てほしいと思っていることを、下の表にまとめた。

 家族はついつい、「昔はこんなことができたのに」「音楽が好きだったのに、最近は聴かなくなった」などと、病気の前後を比較してしまいがちだ。そのたびに家族が落胆していたら、本人は敏感に感じ取って自信を失っていくだろう。病気の前と比べるのではなく、本人が新しい楽しみ、趣味を見つけるように促すことが重要だ。

 その楽しみは必ずしも、病気になる前と同じとは限らない。写真撮影、旅行、キャンプ、料理作りなど、個人によって様々だ。それを見つけると、本人にやる気が出てきて、自宅に引きこもりがちだった状態から脱し、自然と外出したり、他人と交わったりできるようになることがある。

 家族は、本人ができることでも、靴下の脱ぎはき、食事の膳(ぜん)の上げ下げなど、何でもやってあげてしまい、結局、本人のためにならないことが少なくない。愛情を持ちながらも本人と適度な距離を保つことも、家族には必要だ。状態の改善が見られるまでには、年単位の長い時間がかかることも多いので、慌てず、あきらめずに見守ろう。

 患者への対応を一時忘れて、休息を取ることも大切だ。家族が疲れていては、患者に優しくなれない。前述の磯貝香苗さんも、夫がリハビリ病院に通院している間に、自分がマッサージを受けたり、銀座へウィンドーショッピングに行ったりして、気持ちのリフレッシュを図ったという。

 同じ環境に置かれた人たちに悩みを相談することは、適切な助言だけでなく、心の安らぎも得られる機会となる。全国に患者やその家族で作る団体があるので、積極的に参加してほしい。前出の高次脳機能障害情報・支援センターのホームページで確認できる全国の「支援拠点機関」に尋ねれば、患者団体の連絡先などを教えてくれる。だれもが病気に倒れ、だれもが家族を支える立場になりうる。この障害への理解を深めておくことが大切だ。

プロフィル

坂上 博(さかがみ・ひろし) 読売新聞調査研究本部主任研究員。医療部次長を経て現職。再生医療、難病、臓器移植、薬害、がんや生活習慣病など、医療全般について取材を続ける。「心と体に優しい医療」の実現をテーマに掲げた朝刊連載「医療ルネサンス」には、筆者、デスクとして約18年間、携わった。

喉が詰まるような違和感は「脳梗塞」の予兆かもしれない

 喉が詰まったような違和感を覚えた場合、脳梗塞の予兆の可能性がある。国立病院機構東京医療センター感覚器センター(耳鼻咽喉科学)角田晃一医師に聞いた。

 角田医師が市中病院に勤務していた時、内科から80代の患者が紹介されてきた。「扁桃炎ではないか」との見立てだったが、角田医師が口腔内を見ると、1カ所、咽頭後壁(口の突き当たり)がボコボコ腫れ、脈と同期して拍動していた。扁桃炎ではなく、口の中への頚動脈の変位走行異常(以下:走行異常)だった。

「その理由として考えたのは、高齢で前かがみの姿勢になると、胸、胸郭、頭のてっぺんの距離が近くなり、首が短くなる。静脈は縮むことができますが、動脈は加齢で硬くなっていて縮まず、抵抗のない口の中で不自然に曲がるしかなかった、ということです」

 すると、血液の流れに変化が起こる。血管が曲がっているため、あるところではせき止められ、あるところではドッと流れる。後者の時、その流れの勢いで血栓が一気に脳へ飛び、脳梗塞を起こす可能性がある。

「この患者には『脳梗塞を起こすリスクがあるからすぐに内科へ行きましょう』と紹介状を書きました。ところがその患者はすぐに行けなかった。すると6日後、脳梗塞を起こして病院へ救急搬送されました」

■高齢で身長が3センチ以上縮んだ人は危険

 角田医師は、脳梗塞と動脈の変化を調べるために、同センターと国立病院機構の計12施設の患者のデータを分析した。対象は65歳以上85歳未満で、脳梗塞患者72例と、めまいや難聴で受診したが脳梗塞は否定された患者163例。いずれも、「そもそも脳梗塞のリスクが高い人」である心房細動、不整脈、心臓弁膜症、糖尿病、その予防治療のアスピリンやワーファリンといった血液をサラサラにする薬を処方されている人を省いた。

 その結果、脳梗塞患者は87・5%に頚動脈の走行異常(曲がっている、蛇行しているなど)があったが、非脳梗塞患者は8・6%に過ぎなかった。

 さらに、身長3センチ以上減は脳梗塞患者で76・4%、非脳梗塞患者で19・6%。頚動脈の走行異常と身長3センチ以上減の両方がある人は、脳梗塞患者の87・5%、非脳梗塞患者の6・75%だった。

「つまり、脳梗塞と頚動脈走行異常、身長3センチ以上減は密接な関係にあるということ。身長が減少するのは、加齢で前かがみの姿勢になっているからです。自覚症状としては、最初の2カ月は座ったり立ったりした時に頚動脈が喉の突き当たりを移動するため、喉の違和感を覚える人が多い。頚動脈変位走行異常が何カ月も続くと、変位走行異常が固定してしまい、自覚しなくなる」

 ベテラン耳鼻咽喉科医が意識して脈を取りつつ口腔内の検査をすれば、走行異常した拍動する腫れは見つかる。前かがみの姿勢で身長が若い時と比べて3センチ以上縮んだ人なら、脳梗塞のリスクを疑って口の中を調べたほうがいい。

「頚動脈の走行異常が起こっていれば、アスピリンやワーファリンなどの服用をすることで、脳梗塞が予防できるかもしれません」

 冒頭の患者のような例があるので、姿勢が悪くなりのどの違和感がある人は、医師に行くのは、できる限り早めに。頚動脈走行異常を指摘されれば、何をおいてもすぐ病院で精査を。

明暗を分ける脳卒中後の生活~リハビリテーションの早期スタートが回復の早道!

 40年以上前の話ですが、1975年6月3日に佐藤栄作元総理が亡くなりました。 1964年から1972年まで日本の総理大臣を務め、1974年に非核三原則の制定などが評価されてノーベル平和賞を授賞した佐藤栄作元首相は、1975年5月19日、築地の料亭で政財界人らとの宴席の最中にトイレに行こうとして立ち上がったところで、崩れるように倒れ、いびきをかき始めたそうです。

 病名は当時、脳溢血と発表されていますが、嘔吐や頭痛を訴えなかったので、脳出血やくも膜下出血よりは、脳梗塞の可能性が高く、また意識障害で発症しているので、脳底動脈の閉塞等、脳幹部の梗塞が疑われます。脳梗塞であれ脳出血であれ、現在は救急車を呼び、救急病院へ搬送します。診察及び検査で、脳梗塞と診断され、禁忌事項が無く、発症4時間半以内であれば、tPAによる血栓溶解療法を実施することになります。

 しかし当時の日本では、脳溢血になったら動かしてはいけないと信じられていました。高名な大学病院から医師団が駆け付けましたが、誰も病院に運ぼうとしなかったそうです。倒れた料亭で4日間、布団に寝かせて動かさず、容態を診た後、大学病院に搬送されました。一度も覚醒することなく昏睡を続けた後、1975年6月3日に亡くなりました。今考えるとすごくおかしいことのように思えますが、当時としては常識の範囲だったのです。

脳卒中になったら早くリハビリテーションを開始することが回復の早道

 1975年9月にCTスキャン(当時は「EMIscanner」と言いました)が日本で初めて東京女子医大に導入されました。…それ以後、脳卒中の診断・治療は革新的な変化を遂げましたが、ちょうどその時代の直前のことでした。ちなみにCTスキャンを発明したハウスフィールドとコーマックには、1979年にノーベル医学生理学賞が贈られています。脳卒中に関しては、似たようなことが現代の日本でも一般的に行われています。それは「リハビリテーションの開始が遅れている」ことです。

 最近では、脳卒中の治療が一段落すると、受け持ちの先生から「そろそろ回復期リハビリテーション病院に移って、リハビリを集中的にやりましょう」という話があります。患者さんやその家族は「そう言われても、今いる病院は救急で助けてくれたし、規模も大きいし、医師や看護師もたくさんいるから、この病院で治療を続けたほうが良いはず。しかし、患者さんが次から次へと来るから、早く追い出したいんだな」と思う人が多いのではないでしょうか。それが間違っているのです。脳卒中になったら、可能な限り早くリハビリテーションを開始することが、回復の早道なのです(「脳卒中治療ガイドライン2015」pp277)。

回復期リハビリテーションとは?

 脳卒中になった患者さんは、救急病院や神経内科、脳神経外科のある病院で治療を受けます。引き続き手足の麻痺や、言葉の障害、呑み込みの障害などの脳障害に関して、リハビリテーションを受けます。しかし、冒頭でお話したように、日本では「脳卒中は動かしてはいけない」という常識があったので、体が固まって動けなくなった、寝たきりの患者さんが大勢発生しています。しかも、そのような患者さんは、家では世話ができないので、病院、特に昔でいう老人病院に大勢入院していた時期がありました。

 欧米では寝たきりの患者さんは少なく、その理由を探ると「リハビリテーションを早期から行っていること」が分かりました。そこで2000年に、回復期リハビリテーションという制度が新設されました。脳卒中発症から2カ月以内であれば、回復期リハビリテーション病院(同じ病院の中にあれば病棟)に移り、集中したリハビリテーションを受けることができます。 リハビリテーションは1単位20分として、回復期リハビリテーションでは最大9単位(3時間)、土日休みなく実施することが推奨されています。

 ただし、入院期間が最大6カ月と決まっており、さらに、70%以上(基準の高い病院)の患者さんが自宅等に退院することが義務付けられています。 自宅等に退院することを「在宅復帰」と言いますが、自宅、家族の家以外に、サービス付高齢者住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム等が自宅等に分類されます。一方、病院、老人保健施設(老健)など医者が在籍する施設は、自宅等とは言いません。

回復期リハビリテーション病棟はさらに増加する

 回復期リハビリテーション病棟は、2016年末で79000床登録されていますが(中医協-3 29.10.25 個別事項リハビリテーション)、これからの超高齢社会で、さらに脳卒中患者が増加すると推定されているので、さらに増加していくものと考えられています。 「脳卒中の発症から2カ月以内」という決まりがありますが、2カ月急性期の病院で待っていてはいけません。鶴巻温泉病院回復期リハビリ病棟を2017年に退院された脳梗塞の患者さん135人を発症から何日目に急性期病院から転院してきたかで分類してみました。

 「発症9日目まで」「10~29日」「30日以上」の3群に分けて、入院の時の歩行、食事、着替え、トイレ移動などの日常生活動作(ADL FIMで点数化)を退院時に入院時よりどのくらい良くなるかをFIMという点数で比較したものが、図1のグラフです。このグラフを見てお分かりのように、回復期リハビリテーションに早く転院して、早く集中的なリハビリテーションを実施したほうが確実によくなります。皆さんは今は考えられないかもしれませんが、発症9日以内に転院するのが一番良いことがわかります。しかし、発症9日以内に回復期リハ病院へ転院することは、今の日本でも一般的ではありません。

 急性期の先生が回復期へは2週間過ぎたころに申し込もうと思っていたり、患者・家族が転院を断ったり、受け入れる回復期リハ病院のほうが、病状が落ち着くまで受け入れの準備ができていないことも現状です。それ以外にも重症で意識障害が合ったり、合併症が治療できていなかったり、いろいろな理由で、こんなに早く転院することが難しい場合もあります。回復期リハビリテーション病棟協会の調査でも、14日以内に回復期リハ病院(病棟)へ入院したのは全体の24.7%しかありません(「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」平成30年2月 一般社団法人・回復期リハビリテーション病棟協会)。…

 でも、ともかく早く転院できるようにしてもらいましょう。急性期の治療が終わった頃に、皆さんから「早く回復期リハへ転院させてください」と申し出て進めてもらうのが、懸命だと思います。回復期リハビリテーション病院に早く移ったほうが良いという結果は、急性期の病院でも十分なリハビリテーションが実施できていない可能性があります。また栄養の問題もあるかもしれません。急性期では食事を食べないで、暫く点滴で管理することが多く、知らないうちに栄養不足になっていることも考えられます。

 発症9日目に転院した患者さんは急性期と合わせた入院期間が短くなります。1~2カ月早く自宅へ退院できます。早くリハビリを開始すれば早く変えれるということを是非覚えておいてください。この連載では脳卒中やその治療、リハビリテーションについて知っておいていただきたいことを、分かりやすく説明していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
(文=鈴木龍太:鶴巻温泉病院理事長)

鈴木龍太(すずき・りゅうた)医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。
「変化を進化に、進化を笑顔に」をモットーに日々の診療やリハビリテーションに注力し、高齢者医療や緩和ケアなど地域の幅広いニーズに応える病院経営に取り組む。1977年、東京医科歯科大学医学部卒。医学博士。米国NIH留学、昭和大学藤が丘病院脳神経外科准教授、安全管理室 室長を経て、2015年より現職。

脳梗塞秒読みの“不整脈”に注意! 100万人が患う心房細動の潜在脅威

 脳卒中には、脳出血やくも膜下出血といった血管が破れるものと、脳梗塞などの血管が詰まるものとの2種類がある。日本では、かつて脳出血が多かったが、主な原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態もよくなったことで、その割合が減った。しかし一方で増えたのが、脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞だ。現在では、脳卒中のうちの約60%が脳梗塞となっている。

 東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科医担当医はこう言う。
 「脳の血管が詰まって発症する脳梗塞の主な原因は、動脈硬化と、不整脈など心臓の異常によるものとの2つに分けられる。不整脈については、心臓の上部にある心房(左房にある肺静脈付近)が、痙攣したように激しく動く心房細動を起こし、それが一つの引き金となっていることが分かっています。無症状のため、本人が気付かないうちに病んでしまうことがほとんどで、近年では50歳以上の人に増えています」

 不整脈には、放置しても比較的安心なものと、命の危険があるものとの2つのタイプがあるという。 「心房細動の場合は突然死を招く恐れがあるため、後者に属します。現在は潜在的な患者を含めると、100万人以上が患っているとされ、2030年には300万人を超えるという予測まである。専門医や不整脈に関係する学会が警告を出すほどなのです」(健康ライター)

 こんな例がある。東京都中野区在住の男性(60)が、昨年10月、仕事を終えて会社を出た。しかし、間もなく足元がふらつき始め、思うように歩けなくなり、道端にしゃがみ込んでしまった。ふらつきは数分間で治まり、普通に歩けるようになって安心していると、今度は自宅に着いてから倒れたという。

 担当医が説明する。
 「その時点では、すでに呂律も回らず、右手、右足が動かない状態でした。家族につき添われて診察を受けに来たのですが、診断結果は脳梗塞で、ただちに治療を始めました。さらに検査の結果、この男性は心房細動を起こして血栓ができていたのです。あまり重症化しなかったのは、心臓に原因があることが判明し、早めに血液が固まることを防ぐ抗凝固薬を使うことができたからです」

 この男性の場合は発症後、早めの治療だったことに加え、幸いにして詰まった血管が細く悪影響があまり広がらなかった。そのため、すぐに軽い会話が可能になるまで回復し、治療経過も順調で12月上旬には退院できたという。男性は話し方に多少の後遺症を残しながらも「健康診断は受けていて健康には自信があった。自分が脳梗塞になるとは思わなかった」と語っている。

 脳梗塞を引き起こす原因にもなる心房細動では、心臓が規則正しく収縮できない状態を生み出し、それによって血液がよどみ、流れにムラができて固まりやすくなる状況に陥る。 「心房細動では、心臓を構成する上下の部屋のうち、上部屋の心房が、1分間に400~600回、さらには1000という速さで細かく震える(通常は60~100回程度)。これによりできた血栓が、心房の内壁から剥がれて血流に乗ってしまい、脳へと運ばれ血管が詰まる。この心房細動が原因で起こる脳梗塞、『心房性脳塞栓』では、比較的血栓が大きいため、突然死や重い麻痺などの後遺症が残りやすいのです」(前出・健康ライター)

 その血栓は、大きいと3センチにもなるというから驚きだ。
 「さらに心房細動は、決して特殊な不整脈ではなく、50代以上であれば無症状であっても、すでにかかっている可能性のある病。慢性になると気付かない場合が多く、健康診断の心電図で偶然、発見されこともあるほどです。特に糖尿病などの罹患者は心房細動を起こしやすいとされていますが、動悸や息切れがある人、胸がモヤモヤする人は早めに検査を受けるようにしましょう」(脳神経外科医師)

 また、結果として脳梗塞を発症した場合、7~8人に1人は死に至る。
 「つまりは、いかにして心房細動から脳梗塞を引き起こさないかが、対策となってくる」こう語るのは、東京都立多摩総合医療センター心臓血管外科の大塚俊哉医師だ。 「心房細動が見つかった人で、『高血圧』、『糖尿病』、『75歳以上』、『一過性脳虚血発作(TIA)の既往』のうち、2つ以上当てはまる場合は、積極的なチェックや予防をする必要があります。一般的な治療としては、抗不整脈と抗凝固薬による薬物治療がありますが、不十分な場合は、脚の付け根や首の太い血管からカテーテルを通し、不整脈の原因となっている信号伝達の異常な部分を焼灼する、カテーテルアブレーションを行います」(同)

 投薬としては、従来から広く使用されているのが、抗凝固薬のワーファリンだ。
 「しかし、服用している間は納豆や海藻類といったビタミンKを多く含むものは食べられません。このビタミンKは、出血した際に血液を固める作用を活性化させるからです。逆にワーファリンは血液を固まりにくくするため、出血をしやすくなる。そのため服用にあたっては、2カ月に一度程度の血液検査を受けて量を調整する必要があるなど、使いにくい面もあります」(専門医)

 しかし近年、ワーファリンの短所を解消した新薬も登場し、すでに心房細動に効果を発揮しているという。
 「高齢であることはもちろん、心房細動になりやすい人の特徴としては、糖尿病のほか、肥満や脂質異常症、高血圧、慢性腎臓病、さらに心臓の病では、心臓弁膜症、心筋症、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を起こしたことがある人などがあります。また、生活習慣においては飲酒、喫煙も関係があるとされています」(前出・健康ライター)

 加えて、睡眠不足も原因になりやすいという。
 「睡眠不足は自律神経の乱れ、つまり無意識に血管の働きを調整、支配する神経を狂わせるために、心房細動を起こしやすくなる。また、なかなか難しいとは思いますが、ストレスを溜めないことが理想的です」(前出・脳神経外科医師)安静にしても治らない胸の痛みや、食後の圧迫感も心房細動のシグナルとなる。異変を感じたら即、専門医に診てもらおう。

くも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤 高齢患者も治療すべきか

 病気になったら一刻も早く発症前の健康状態に戻したい──そう考えるのは“当然”であっても、“正解”とは限らない。治療を受けるか否かを判断する際に重要なファクターとなるのが「年齢」だ。

 脳の血管の一部が風船のように膨らむ脳動脈瘤は、破裂するとくも膜下出血を引き起こす深刻な病だ。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏がいう。

「症状の出ない未破裂の脳動脈瘤の有病率は5%ほど。脳ドックを受ければ20人に1人は見つかる」

 70代の患者が脳動脈瘤を治療するか否かのポイントは「破裂」と「手術」のリスク比較だ。

「脳動脈瘤が破裂する確率は、瘤の発生場所と大きさにもよりますが、1年間で1%未満です。一方で開頭して瘤の根元をクリップで止める『クリッピング手術』で合併症が生じる確率は1.9~12%とされます。合併症は認知機能の低下や動作に支障が出るなどで、最悪の場合は寝たきり状態になることもある。

 とくに70歳以上の高齢者は合併症の可能性が増すため、総合的なメリット・デメリットを考えると、手術の優位性が高いとは思いません」(同前)

脳梗塞治療は時間との競争 「お薬手帳」持参し早期受診を

「脳卒中」について、岡山中央病院(岡山市)の平野一宏脳神経外科科長が寄稿した。

 脳卒中は脳の血管が原因で起こる病気の総称で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血が含まれます。

 ●「急に手足が動かなくなった」=脳梗塞

 「急に手足に力が入らなくなった」という患者さんが受診したら、いつから、どの手足に症状が出たのか尋ねて、すぐに頭部CTかMRIの検査を行います。

 2005年からtPAという血栓を溶かす薬を急性期脳梗塞に使用できるようになりました。発症から4・5時間以内の患者さんに投与できます。診察で持病や内服薬を調べ、血液検査と画像診断を行い、血栓溶解剤を使用してはいけない状態がないかを確認してから、tPAを開始しなければなりません。時間との競争になります。

 残念なのは、「朝、手足が動きにくいのに気づいて昼まで様子をみていたけれど、よくならないので来ました」など、様子をみているうちに4・5時間を過ぎてしまった患者さんがかなりおられることです。4・5時間を過ぎるとtPAを投与できません。急にどちらかの手足が動かなくなったり、ろれつが回らなくなったり、ふらついて歩けなくなったら、お薬手帳を持って受診してください。お薬手帳は薬だけでなく、持病やかかりつけ医を知る手がかりになります。

 たとえば、不整脈の治療薬や抗凝固薬を飲んでいる方は、心臓の中にできた血の塊(血栓)が脳に行く動脈に詰まる病気(心原性脳塞栓症)の可能性を考えます。この病気は内頸(ないけい)動脈や中大脳動脈といった太い動脈に起こることが多く、tPA治療だけでなく、経皮的血管内血栓回収療法や、脳の腫れが強い場合は減圧開頭術などの手術が必要になる場合もあります。

●「急に動かなくなった手足がしばらくしたら動くようになった」=一過性脳虚血発作

 「食事中に右手が動かなくなり箸が落ちたが、10分すると動くようになった」という方が受診されると、一過性脳虚血発作と診断して、すぐ頭部CTやMRI検査などを行います。

 一過性脳虚血発作のうち約2割の方が3カ月以内に脳卒中を発症するというデータがあり、脳卒中予備軍と考えられるからです。手足の麻痺(まひ)のほかに、言葉が出ない・理解できない失語症(しつごしょう)、ろれつが回らない構音(こうおん)障害、片方の目が見えなくなる一過性黒内障(こくないしょう)などの症状があります。

 脳に血流を送る動脈に小さな血栓が詰まったり、血圧の低下のため脳に行く血流が少なくなることで症状が起こるため、頸部超音波検査、MRA、3D―CTA、脳血管撮影などによる脳血管の検査や、心電図、心臓超音波検査など心臓の検査を行います。治療は血圧管理や抗血小板薬の投与など脳血流を保つ治療を行います。写真のように動脈に細いところが見つかったり、不整脈や心臓の病気が原因だったりする場合は、その治療を行います。

●「再び脳卒中にならないためにはどうしたらいいですか?」=脳卒中慢性期

 この質問には、いつも「大切なのは血圧です」とお答えします。脳卒中で入院した患者さんやご家族から「高血圧といわれたが治療を受けていなかった」「血圧を下げる薬を飲んでも何も変わらないので、服用をやめていた」と聞くことがあるからです。

 脳卒中の大きな原因である動脈硬化を進めないため高血圧・糖尿病・高脂血症があれば、その治療を続けることが大切です。そのためには、気軽に相談できるかかりつけ医を持つことをお勧めします。脳卒中予防のための10カ条を表に示しました。

 脳卒中の慢性期には、麻痺した手足の筋肉が緊張する痙縮(けいしゅく)という状態になり、服の脱ぎ着や歩行が難しくなったり、痛みが出たりすることがあります。そのような患者さんには、ボツリヌス毒素の注射で筋肉を和らげ、生活しやすくする治療も行っています(イラスト参照)。

 岡山中央病院(086―252―3221)

 ひらの・かずひろ 川崎医科大学付属高校、川崎医科大学卒。川崎医科大学付属病院勤務を経て、2014年に岡山中央病院脳神経外科へ赴任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。

今日から実践したい”脳卒中発症率”を下げる術3

「高齢化に伴い、女性は脳卒中を発症しやすくなっています。今回の調査で、女性の大きな発症要素は、高血圧、肥満、喫煙の3つということも判明しました」と語るのは、公衆衛生学が専門の藤田保健衛生大学・八谷寛教授。19日、国立がん研究センターが発表した「脳卒中の発症確率計算法」の研究メンバーだ。

この調査は40~69歳の男女1万5千672人を平均14年間追跡、脳卒中を発症した790人の解析に基づいたもの。6項目の合計点数で、今後10年間の発症確率を、簡単に算出できるという。

「脳卒中の発症は、食生活の改善と禁煙によって、リスクを3割ほど、減らすことができます」(東京医科歯科大学・藤田紘一郎名誉教授)今回、藤田教授が、“女性の脳卒中の発症を下げる「3つの食卓ルール」を大公開!

1、緑茶・コーヒーで30%リスク減
 毎日、緑茶かコーヒーを飲む人は、いずれも全く飲まない方と比較して、最大3割のリスク軽減があるという別な調査結果もある。

「緑茶のカテキン、コーヒーのカフェイン、クロロゲン酸、アディポネクチンが、作用しているのでしょう。カテキンやカフェインには、脳卒中や心筋梗塞の引き金となる活性酸素の発生を抑える働きがあり、高血圧予防にもつながります」(藤田教授)最適な1日の量は、緑茶4杯、またはコーヒー2杯だという。

2、就寝前にはコップ1杯の水を!
「脳卒中の発症は、明け方が多いというデータもあります。体内の水分不足により、血液がドロドロになったことが原因なのです。その予防法で簡単なのは、寝る前にコップ1杯の水を飲むこと。私の研究結果でも、たったそれだけで、起床時の血液がサラサラになるという結果が出ました。年配の方は、就寝中、尿意で目が覚めることを嫌がるよりも、脳卒中のリスクを回避するべきです」(藤田教授)

3、食卓から醤油、ソースを無くして30%の減塩
 厚労省は、1日の食塩摂取量の目標を10グラム未満にしているが…「男女とも長寿日本一の長野県では味付けに工夫して塩分の摂取を減らしました。出汁を濃くとる、酢や香辛料で味付けをすることなどのひと工夫で塩分を減らせます」(藤田教授)

 食卓から醤油やソースをなくし、薄い味付けに慣れると、3割ほど、減塩できるという調査もあるという。適度な運動も大切。最初は緑茶やコーヒーからのトライが簡単かも♪

ビールをグビグビが命削る…夏こそ増える「脳卒中リスク」

ネットでは「思い出に残るゲーム」との呼び声が高い「がんばれゴエモン」シリーズ。そのコミカライズ版を執筆した漫画家・帯ひろ志さん(享年54)の命を奪ったのは、心臓や呼吸の動きをつかさどる脳幹からの出血だった。

脳出血は脳梗塞とクモ膜下出血とともに「脳卒中」に含められる。冬の病気のイメージがあるが、実は夏の方が発症者が多いという。

「夏は、発汗して脱水します。脳卒中を起こす人は、ベースに高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある。

概してお酒が好きで、夏になるとビールを飲みたがる。ビールのアルコールにも脱水作用があって、より脱水が進みます。脱水によって血液が濃縮され、血栓ができるため、脳梗塞を起こしやすくなるのです。

日本脳卒中協会が5月末の1週間を『脳卒中週間』として注意を呼び掛けているのは、脳梗塞を起こしやすい夏前に啓蒙するためです」(東京都健康長寿医療センター・桑島巌顧問=高血圧外来)

 実は、帯さんはまさに7年前の夏、8月31日に脳梗塞を起こしていた。その時に糖尿病も発覚した。一般に夏は発症リスクが下がる脳出血だが、夏に危ない脳梗塞をステップに発症することもある。

「脳幹の血管内で脳梗塞が再発した可能性はあるでしょう。糖尿病なら、なおさらです。

その直後になんらかのキッカケで、血栓が飛んで、血流が再開すると、血流が途絶えていた部分の血管が破れやすい。そんな2つのことが重なって、脳幹出血を起こしたのかもしれません」(桑島巌氏)

 夏も用心だ。

怖いのは熱中症だけじゃない“真夏の脳卒中”四つの危ない兆候(1)

脳卒中といえば、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の3大疾患を指すが、いずれも寒い時期に発症するイメージが強い。

しかし、厚生労働省研究班の調査によると、このうち、とくに脳梗塞については、気温の高くなる6~8月の暑い時期に発症するケースが多いことがわかった。その具体的な内訳は、脳梗塞が7割、脳出血2割、くも膜下出血が1割となっている。

 まず、脳卒中という深刻な病について説明しておこう。

 血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」、血管が詰まる「脳梗塞」の三つに分けられる脳卒中。

日本ではかつて脳出血が多かったが、大きな原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態も良くなり血管が破れにくくなったことから、発症率の割合が下がった。
 しかし、それに代わって脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞が増えているのが現状だ(現在は脳卒中の約60%)。

 脳梗塞はさらに、動脈硬化が原因で発症する「アテローム血栓性梗塞」、細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」のほか、心臓にできた血の塊(血栓)が血液の流れに乗って脳の血管を詰まらせることで起きる「心原性脳梗塞栓症」とに分けられる。
 東京多摩医療センターの脳神経内科の担当医はこう説明する。

 「小さな脳梗塞なら、一時的なマヒなど軽症で済む場合も多い。しかし、心臓でできた血栓は比較的大きいことから、これが脳の太い血管を詰まらせてしまう。

そのため心原性脳梗塞栓症はダメージが大きく、約2割が死亡したり、寝たきりや介助が必要になる人が約6割を占める実態があり、後遺症の問題も深刻になります」

 また、冒頭の調査が示すように真夏の脳梗塞が最も多い理由について、同研究班の関係者は、こう述べている。

 「脳梗塞の原因である血栓は、脱水状態になるとできやすい。夏の場合、発汗などによって水分が失われたままの状態で睡眠に入ることが増えるため、リスクが高まるのです。

寝汗をかくことで水分が減りやすくなり、血液の粘度が増して血塊(血栓)ができやすくなる。

すると、ラクナ梗塞、あるいは“アテローム梗塞”に陥りやすくなり、脳梗塞などを誘発するのです。汗をよくかいた暑い日には、夜寝る前にコップ1杯の水を飲むことが大切で、予防にも繋がります」

緑茶で脳卒中のリスクが低減!

緑茶やコーヒーをよく飲む人は、飲まない人に比べて脳卒中になるリスクが2割程度低かったとの研究結果を、国立がん研究センター(東京)と国立循環器病研究センター(大阪)のチームが15日、発表した。

 緑茶の血管保護効果やコーヒーの血糖値改善効果が影響している可能性があるという。

 チームは、1990年代後半に東北から沖縄の9保健所管内に住んでいた45~74歳の男女計約8万2000人を平均13年間追跡した。この間に3425人が脳出血、脳梗塞、くも膜下出血といった脳卒中を発症した。

 追跡開始時点で、緑茶を「全く飲まない」「週1~2回飲む」「週3~6回」「毎日1杯」「毎日2~3杯」「毎日4杯以上」のグループに分けて解析すると、飲まないグループに比べ、毎日1杯以上のグループは脳出血のリスクが22~35%低かった。脳卒中全体では毎日2~3杯以上で14~20%低かった。

 コーヒーについては、飲まないグループに比べ、週1~2回以上のグループは脳梗塞のリスクが13~22%低かった。脳卒中全体では週3~6回以上で11~20%低かった。

スマホ・パソコンの使いすぎに注意! 脳梗塞にも発展する“首への負担”

 昨今はよく電車内などで、首を曲げてスマホやパソコンを使っている人を見かけるが、あまりそうした体勢を取り続けていると、首を痛め“ストレートネック”と呼ばれる病などに陥りやすくなる。三井弘整形外科・リウマチクリニックの三井弘院長は、こう警鐘を鳴らす。

 「以前は整形外科にやってくる人といえば、腰や膝、関節などに痛みを抱える中高年者か、故障をしたスポーツ選手、あるいは交通事故などで骨を損傷した人がほとんどでした。それが今は、年齢層がぐっと若くなっているんです。頭痛や疲労がとれず、内科や心療内科に通院した人が症状が改善されないことで、最後にたどりついたのが整形外科という人が多い。そして診察すると、その9割は首に原因があることが分かってきたのです」

 なぜ、若い人に首の異常が増えたのか。その原因は、パソコンやスマホの使用過多によるストレートネックのような“パソコン病”なのだ。 パソコン病について、三井院長は著書『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)の中で、こう記している。
 「パソコンのディスプレイを長時間見続けることで首に負担がかかり、肩や背中のこり、頭痛、手の痺れ、脱力感といった症状などが表れる病気です。そもそも頭の重さは、成人で約5、6キロもある。ちなみに成人男子の脳の重さの平均は1350グラム。

それに頭蓋骨や血管などを合わせると、ボウリングの球の重さになるわけです。この重さに耐えながら、上下左右の回転などいつも支えている」また、米ニューヨークの脊髄外科医であるケネス・ハンスラージ氏による研究結果によれば、頭の傾きが15度の時は「12.2キロ」、30度の時は「18キロ」、60度では「27キロ」の重さが首にかかるという。

 女性では、昔から美人とされる条件は首が細くて長いことだった。一方、男性の場合は首が太くて短い猪首の人は仕事ができるとも言われてきたが、これはあくまで俗説。 「整形外科医からすると、首の故障が少ないのは、“背筋から首が伸びている人”だと言われます。猪首は、肩や胸の筋肉が盛り上がっているため頑丈そうには見えますが、必ずしも首の故障が少ないわけではない。要は、強い筋肉で首がいかに支えられているかどうかなんです」(専門医)

 人間の体で、どこよりも首が大事とされるのは、生きていく上でとても大切な器官が集まっている部位だからだ。 「首には、脳に血液を送る頸動脈、呼吸を保つ気管、食物を胃に送る食道、また様々なホルモンを分泌する甲状腺、加えて体を動かすための全神経が集結した脊髄などもある。体の中で、これだけ重要な器官が集まっているところは他にありません。そのため、首の具合が悪くなると、それぞれの器官の働きが悪くなり、あちこちで弊害が起こるのです」(同)パソコンなどの使いすぎから起きる首痛の症状は、単に“首が痛い”だけには留まらない。目が疲れる、体がだるい、腕が痺れるといった症状から、もっと重い変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、さらには、脳梗塞などの病気に進行することも考えられるという。ある専門家は、「首に不調が生じている場合、いくつかの症状が出る」として、見逃してはならない以下の4つの変調を挙げる。

 (1)スマホやパソコンを使うと、肩こりや首こり(背中痛)を感じる。
 (2)気付くとかなりの猫背になっている。
 (3)天井を見ようとすると首に痛みや違和感を覚える。
 (4)目が疲れやすく、ドライアイになりがち。
 これに、環境状況として「スマホやパソコンを1日5時間以上使っている」を加え、2つ以上当てはまる人は、パソコン病になっている可能性が高いという。

手足の痺れは危険信号

 以前、NHKの『ガッテン!』でも肩こりについて取り上げていたことがあるが、そこでは肩こりの原因を“筋膜のシワによるもの”としていた。この筋膜とは筋肉の束を包んでいる膜のことで、肩こりは、この筋膜が硬くなっていることが原因の一つとされる。
 「筋肉のこりは、すぐにほぐれますが、こりとほぐしを繰り返すうちに、筋肉の表面にある筋膜にシワができ、そのシワに引っ張られるように筋肉がこり固まってしまう。さらにスマホやパソコンを扱うときの前かがみの姿勢が、頑固なシワを作り出すのです。結果、首、肩に不調をきたすことにつながります」(専門医)

 特に女性は“ストレートネック”の人が多いと言われる。女性の首の筋力は弱く、また仕事中のデスクワークで負担をかけている首に対し、電車の行き帰りや休憩時間にスマホを見続けることなどで、首への負担は倍増。結果、首の自然なカーブが失われるストレートネックになる確率が高くなると考えられている。東京都立多摩総合医療センターの整形外科担当医も、こう説明する。

 「確かに、スマホやパソコンの普及もあって首の痛みを訴える人が増えてます。それも、40、50歳代あたりの人が非常に多い。そのほとんどは、背中を丸め、顔を少し前に突き出している時間が長いのが特徴です。この姿勢は、頚椎には不自然な状態で、特にアゴを突き出すと首が後ろに反り返り、頚椎や首の筋肉を緊張させてしまう。これを長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積して首を中心にこりや痛みを発症するのです。予防と改善への第一歩は、背筋を伸ばし、背中を椅子の背につけること。そして、あごを少し引く姿勢を意識することです」

 また、前述のように重い病に罹る人も増えており、「若年性脳梗塞」と診断される人も少なくない。「その多くは、脳の血管の一部が詰まることによって起きています。前兆については、首の痛みだけでは判断し難く、寝違いや筋肉疲労などと勘違いしやすい。手足に痺れ、震えなどが出たときは軽い脳梗塞を起こしている可能性があるため、診断を受けましょう」 このご時世、スマホやパソコンの使用を避けるといっても無理な話。そのため、少なくとも姿勢には注意し、途中に休憩を入れるなど、自分なりの心掛けが重要になってくる。

スマホ・パソコンの使いすぎに注意! 脳梗塞にも発展する“首への負担”

 昨今はよく電車内などで、首を曲げてスマホやパソコンを使っている人を見かけるが、あまりそうした体勢を取り続けていると、首を痛め“ストレートネック”と呼ばれる病などに陥りやすくなる。 三井弘整形外科・リウマチクリニックの三井弘院長は、こう警鐘を鳴らす。 「以前は整形外科にやってくる人といえば、腰や膝、関節などに痛みを抱える中高年者か、故障をしたスポーツ選手、あるいは交通事故などで骨を損傷した人がほとんどでした。

それが今は、年齢層がぐっと若くなっているんです。頭痛や疲労がとれず、内科や心療内科に通院した人が症状が改善されないことで、最後にたどりついたのが整形外科という人が多い。そして診察すると、その9割は首に原因があることが分かってきたのです」なぜ、若い人に首の異常が増えたのか。その原因は、パソコンやスマホの使用過多によるストレートネックのような“パソコン病”なのだ。 パソコン病について、三井院長は著書『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)の中で、こう記している。

 「パソコンのディスプレイを長時間見続けることで首に負担がかかり、肩や背中のこり、頭痛、手の痺れ、脱力感といった症状などが表れる病気です。そもそも頭の重さは、成人で約5、6キロもある。ちなみに成人男子の脳の重さの平均は1350グラム。それに頭蓋骨や血管などを合わせると、ボウリングの球の重さになるわけです。この重さに耐えながら、上下左右の回転などいつも支えている」 また、米ニューヨークの脊髄外科医であるケネス・ハンスラージ氏による研究結果によれば、頭の傾きが15度の時は「12.2キロ」、30度の時は「18キロ」、60度では「27キロ」の重さが首にかかるという。

 女性では、昔から美人とされる条件は首が細くて長いことだった。一方、男性の場合は首が太くて短い猪首の人は仕事ができるとも言われてきたが、これはあくまで俗説。 「整形外科医からすると、首の故障が少ないのは、“背筋から首が伸びている人”だと言われます。猪首は、肩や胸の筋肉が盛り上がっているため頑丈そうには見えますが、必ずしも首の故障が少ないわけではない。要は、強い筋肉で首がいかに支えられているかどうかなんです」(専門医)

 人間の体で、どこよりも首が大事とされるのは、生きていく上でとても大切な器官が集まっている部位だからだ。 「首には、脳に血液を送る頸動脈、呼吸を保つ気管、食物を胃に送る食道、また様々なホルモンを分泌する甲状腺、加えて体を動かすための全神経が集結した脊髄などもある。体の中で、これだけ重要な器官が集まっているところは他にありません。そのため、首の具合が悪くなると、それぞれの器官の働きが悪くなり、あちこちで弊害が起こるのです」(同)パソコンなどの使いすぎから起きる首痛の症状は、単に“首が痛い”だけには留まらない。

目が疲れる、体がだるい、腕が痺れるといった症状から、もっと重い変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、さらには、脳梗塞などの病気に進行することも考えられるという。ある専門家は、「首に不調が生じている場合、いくつかの症状が出る」として、見逃してはならない以下の4つの変調を挙げる。

 (1)スマホやパソコンを使うと、肩こりや首こり(背中痛)を感じる。
 (2)気付くとかなりの猫背になっている。
 (3)天井を見ようとすると首に痛みや違和感を覚える。
 (4)目が疲れやすく、ドライアイになりがち。
 これに、環境状況として「スマホやパソコンを1日5時間以上使っている」を加え、2つ以上当てはまる人は、パソコン病になっている可能性が高いという。手足の痺れは危険信号

 以前、NHKの『ガッテン!』でも肩こりについて取り上げていたことがあるが、そこでは肩こりの原因を“筋膜のシワによるもの”としていた。この筋膜とは筋肉の束を包んでいる膜のことで、肩こりは、この筋膜が硬くなっていることが原因の一つとされる。 「筋肉のこりは、すぐにほぐれますが、こりとほぐしを繰り返すうちに、筋肉の表面にある筋膜にシワができ、そのシワに引っ張られるように筋肉がこり固まってしまう。さらにスマホやパソコンを扱うときの前かがみの姿勢が、頑固なシワを作り出すのです。結果、首、肩に不調をきたすことにつながります」(専門医)

 特に女性は“ストレートネック”の人が多いと言われる。女性の首の筋力は弱く、また仕事中のデスクワークで負担をかけている首に対し、電車の行き帰りや休憩時間にスマホを見続けることなどで、首への負担は倍増。結果、首の自然なカーブが失われるストレートネックになる確率が高くなると考えられている。東京都立多摩総合医療センターの整形外科担当医も、こう説明する。「確かに、スマホやパソコンの普及もあって首の痛みを訴える人が増えてます。それも、40、50歳代あたりの人が非常に多い。そのほとんどは、背中を丸め、顔を少し前に突き出している時間が長いのが特徴です。

この姿勢は、頚椎には不自然な状態で、特にアゴを突き出すと首が後ろに反り返り、頚椎や首の筋肉を緊張させてしまう。これを長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積して首を中心にこりや痛みを発症するのです。予防と改善への第一歩は、背筋を伸ばし、背中を椅子の背につけること。そして、あごを少し引く姿勢を意識することです」

 また、前述のように重い病に罹る人も増えており、「若年性脳梗塞」と診断される人も少なくない。 「その多くは、脳の血管の一部が詰まることによって起きています。前兆については、首の痛みだけでは判断し難く、寝違いや筋肉疲労などと勘違いしやすい。手足に痺れ、震えなどが出たときは軽い脳梗塞を起こしている可能性があるため、診断を受けましょう」



 このご時世、スマホやパソコンの使用を避けるといっても無理な話。そのため、少なくとも姿勢には注意し、途中に休憩を入れるなど、自分なりの心掛けが重要になってくる。

肉の存在が“元気で長生き”のカギ 冬場の脳卒中、心筋梗塞の予防策

 厚生労働省の人口動態調査(2016年)では、死亡原因2位が心疾患、4位が脳血管疾患となっている。この2つは動脈硬化性疾患とも呼ばれ、月別推移でみてみると、11月以降、寒さが厳しくなるにつれ死亡者数が急激に増える傾向にあることが分かる。
 今回は、これらの病を回避すべく、特に食生活面から問題点を探ってみよう。

 一般的に、脳卒中(脳梗塞、脳内出血など)は、血液中にできた血栓が動脈に詰まり、酸欠のために脳組織が壊死、または、それに近い状態になり発症する病気と言われている 脳の場合、動脈が90%以上詰まると脳梗塞などを発症するが、自覚症状がなく非常に厄介だ。「発症した場所などによって意識がなくなったり、手足に麻痺や発作が起きます。たとえ一命を取り留めても、運動障害や言語障害などの後遺症が残ることが多く、後の生活面に大きな影響が出ます」(健康ライター)

 一方の心筋梗塞は、血管が70%以上詰まると発症する。こちらも寸前まで自覚症状はほとんどなく、「元気だった人が突然倒れた」と、突如の異変に周囲の人は慌てふためく。対応が遅れてしまうことも多く、最悪の場合は、“突然死”という事態に陥ることも少なくない。これは疾患の特徴ともいえる現象だが、心臓病は心筋梗塞以外にも、狭心症、不整脈、心筋疾患、心不全などで突然死するケースが8割近くもあるというから、油断できない。

 「こうした脳や心臓の疾患は、いずれも気温がぐんぐん下がり始める11月下旬あたりを境に増え始めます。寒さが直接の原因なのかどうかは多少、意見が分かれるところですが、多くの専門家は気温差を大きな要因として挙げているのです」(同)なぜ寒さが関係しているのか。具体的な一つの理由としては、寒冷の刺激によって皮膚血管が収縮して抵抗が増し、血圧が上昇するために心臓への負担が増すためだという。

 東京・三田の厚生中央病院総合内科担当医は、こう説明する。 「寒い季節になると、人の体は冷え、血管を詰まらせる血栓ができやすくなります。もともと血栓は体の防御反応と関係があり、血液中には止血のための血液を固まらせる血小板が含まれ、この血小板がストレスを活性化します。つまり寒さは、ストレスの要因の一つになるということ。最近の研究では、赤血球も寒さによるストレスで変形して大きくなり、血液が固まる原因になることも分かってきました。冬の寒さは血液の通り道である血管と血液を循環させる心臓、循環器に障害を引き起こす要因になり、心疾患から死に至るということです」

 では、しばらくは猛烈な寒さが続くこの時期、どのような点に気をつければいいのだろうか。管理栄養士で料理研究家の林康子氏は、日頃の食事面での注意をこう語る。「寒さによって体の冷えが続くと、免疫力がなくなり、ただでさえ病気になりやすくなります。とくに内臓の働きが悪くなることから、これを改善するために体内で熱を作らなければなりません。それには、食事や筋肉量が大きくものを言うため、バランスの取れた食事をしっかりと食べることです。まず、ご飯などの主食、メーンのおかずとなる主菜、小鉢など副菜2種類が揃う定食形式の食事を1日3食、しっかり摂ること。とにかく食事をすると体内に熱が生まれ、その熱量は、何を食べたかで異なってきます。中でもタンパク質は最も重要で、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などを取り入れた食事を心掛けてください」

 多くの人は、「健康な体は、野菜を中心にした食生活で、できるだけお肉を控えてカロリーを抑える」という、そんな粗食が健康長寿へと導くイメージを持っているかもしれない。さらに「菜食主義」という言葉まで流行ったこともあるが、近年は、そうした食生活では健康長寿とは程遠くなると説く研究者が増えている。林氏の言うように、タンパク源の一つである肉には、植物性タンパク質では補えない栄養素や生理活性物質が含まれている。「ある長寿社会の研究をしている専門家によれば“元気で長生き”のカギは、肉の存在があるからだと語っています。確かに、肉に含まれる鉄分は、体内で最も利用されやすいものです。また、最も多く含まれるセロトニンも脳内の神経伝達物質で、うつやボケの予防にもつながると言われるほどです」(同)

 加えて林氏は、今回取り上げる寒い季節の脳卒中、動脈硬化などの防止についても、こう語る。 「お肉を食べると、体に必要なアミノ酸が補われ、血管が丈夫になって脳卒中や心臓病、高血圧などのリスクが低下することが分かっています。アメリカの医療機関が行った大規模な臨床試験の結果などからも、『タンパク質が不足すると脳卒中のリスクが増える』ことが立証されている。米サイエンス誌にも掲載された、タンパク質の摂取量と脳卒中のリスクとの関連についての文献では、タンパク質は血管の材料で、不足すれば血管が損傷しやすくなり、脳卒中の要因になるとしています。これは、精度の高い疫学データ7種類をまとめて解析、検証したものです」

 専門家によると、現在、日本で推奨されているタンパク質の摂取量は、「男性で1日50グラム、女性で同40グラムを下回らない」ことが基準になっているという。もちろん、タンパク質の取りすぎも健康リスクを高めてしまうためNGだ。「また、肉そのものも、牛、豚、鶏など、偏りなく選びたいところです。もともと動物性タンパク質不足で短命だった日本人が、肉や魚、野菜、米を摂取するようになり、長寿になった背景を考えても、やはり肉は食べた方がいい。もちろん、野菜、魚、穀類などをバランスよく食べることが前提です」(同)

 食生活の見直しを含め“元気で長生き”のためには、自己管理に優るものはない。
 寒い時期は特に気をつけよう。

脳ドックで異常が見つかったらどうするべき?

脳の動脈にできたこぶ(瘤)が破れるとくも膜下出血を引き起こすため、見つかったら破裂させないことが重要だ。東京女子医科大学 教授の岡田芳和(おかだ・よしかず)さんは、こういった脳や脳の血管の異常を見つけるためにも、脳ドックを受けることを推奨する。

* * *

■脳ドックとは
脳ドックは、脳や脳の血管などの異常を調べる脳の健康診断です。主にMRA検査、MRI検査、超音波検査の3つの検査が行われます。

MRAは、磁気を使って脳の血管を見る検査で、未破裂脳動脈瘤(りゅう)を調べます。MRIは、脳の断面や立体的な画像を見る検査で、脳梗塞を調べます。また、首の超音波検査を行うことで、脳梗塞につながる頚(けい)動脈狭窄(きょうさく)症を調べることができます。

これらの検査でわかる異常は、無症候性といって自覚症状が現れません。脳ドックは、こうした自覚症状のない脳や脳の血管などの異常を発見して、脳の病気の予防につなげていこうというものです。

特に、両親や兄弟に脳卒中を起こした人がいる場合は、その対策に脳ドックは役立ちます。
会社や地域の健康診断で血圧や血糖、LDLコレステロールなどの値が高いと指摘された場合にも脳ドックをおすすめします。

現在、脳ドックを受けることのできる施設は、全国に600か所以上あり、脳神経外科や神経内科のある医療機関を中心に増加しています。費用は、検査項目や種類などによって異なりますが、4万~10万円程度で受けられます。

■未破裂脳動脈瘤とは
脳の動脈にできたこぶのような膨らみを、脳動脈瘤といいます。未破裂脳動脈瘤とは、まだ破裂していない脳動脈瘤を指します。

脳動脈瘤は、脳の大きな動脈が小さな動脈に枝分かれする部分にできやすいことがわかっています。この部分の動脈の壁に、血液の流れによって大きなストレスがかかることが、脳動脈瘤のできる一因とされています。

一度できた脳動脈瘤が自然に消えることはありません。時間とともに大きくなったり、形が変わるなどして破裂に至る危険があります。
脳動脈瘤ができる大きな動脈は、脳の表面を覆っているため、破裂すると脳を包んでいる「くも膜」の内側に出血します。これがくも膜下出血です。

くも膜下出血を起こすと、脳の血流が悪化したり、脳が激しくむくむなどして、命に関わる重篤な状態に陥ります。

■見つかっても心配し過ぎない
脳動脈瘤は、脳ドックを受けた人の5%程度に見つかります。検査機器が進歩し、2~3mmの小さな脳動脈瘤まで見つかるようになってきたためと考えられています。

しかし、脳動脈瘤があっても破裂してくも膜下出血を起こす確率は年1%ほどです。脳動脈瘤が見つかったからといって過剰に心配する必要はありません。

■脳動脈瘤が見つかったら
脳ドックで脳動脈瘤が見つかった場合は、専門医を受診して「3D-CT」などによる精密検査を受けます。

3D-CTは脳動脈瘤の位置や大きさ、形、数などがわかり、破裂しやすいかどうかが判定できます。大きさが5mm以上だったり、形がいびつな場合は破裂するリスクが高いのですが、2~3mmなら破裂のリスクは低いと考えられています。ただし、破裂するリスクが低い場合でも生活習慣の見直しは必要です。

また、脳動脈瘤の破裂には、家族歴といって、両親や兄弟にくも膜下出血を起こした人がいるかどうかが大きく関係します。高血圧や喫煙がある場合も、破裂しやすいことが知られています。

こうしたことも調べたうえで、経過観察をするか、それとも手術を受けるかが判断されます。

■『NHKきょうの健康』2014年7月号より

怒りすぎて脳卒中ってありえるの?

世の中には、怒りっぽい人というのがいる。些細なことでプリプリと怒りちらす人や、常に不機嫌そうな顔をしている人、皆さんの身近でも心当たりがあるのでは?

 とりわけカッと頭に血が上りやすいタイプは、ドラマやマンガでよく見かけるように、そのまま卒倒してしまうのではないかと心配になることも…。

でも、こうした感情の変化が、脳卒中を引き起こすようなことって、本当にあるのだろうか? 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみた。

「まず、脳卒中という言葉に少し誤解があると思うのですが、“卒中”とは突然現れる症状を意味する用語です。つまり“脳卒中”というのは、脳に突然現れる症状全般を指すもので、最近では臨床現場で使われることはあまりありません」

脳卒中とは病名にあらず。これは脳内出血や脳梗塞、くも膜下出血など、脳内の血管障害をともなう病名の総称なのだという。

「大きな情動興奮が血圧を上げるのは事実です。たとえばドラマなどで見られる、人が激しい怒りで卒倒してしまうようなシーンは、おそらく実際の脳出血のイメージに近いでしょう。

ただし、そうした情動だけが原因で脳出血を起こすことは、まずあり得ません。激しい怒りによってこうした症状を起こすことがあるとすれば、もともと病気の素因を持っていると考えるべき。

たとえば血管内にこぶがある脳動脈瘤、動脈と静脈がつながる部分に異常がある動静脈奇形、あるいは白血病のような血液疾患の類いなどですね」

こうした疾患は、基本的にはR25世代よりももっと上の世代が抱えるリスクと考えていいと須田先生は語る。

「先天的な異常が原因となる動静脈奇形のようなケースを除けば、健康的な20~30代がどれだけ怒ったところで、血管が破れてしまうようなことはまずないでしょう」

ともあれ、怒りは大きなストレスの元となるし、ストレスは万病の元となる。できるかぎり、怒らず笑顔で過ごすに越したことはないのだ。

新宿ライフクリニック
須田隆興先生が院長を務めるクリニック。ED治療など男性機能に関する悩みに対応!

脳卒中から5年内で死亡リスク10倍…国立がん研究センター

脳卒中の発症後5年以内に自殺や交通事故などで死亡するリスクは、発症していない人に比べ、10倍高いことが国立がん研究センターなどの調査で分かった。

 うつ状態になったり、体に障害が残ったりするのが原因と考えられる。海外の研究で、脳卒中の発症後1年以内はうつ病のリスクが高まることが知られているが、自殺、事故死に関する調査は初めて。

 研究グループは、岩手、長野、沖縄県など全国9か所に住む40~69歳の約9万3000人を平均17年にわたり追跡調査した。そのうち脳卒中を発症した約4800人を調べた。

その結果、発症後5年以内に17人が自殺し、34人が交通事故や転落などで死亡していた。脳卒中になっていない人に比べると、自殺、事故で死亡するリスクは10倍高かった。脳卒中発症の5年後以降では、自殺、事故死ともリスクは変わらなかった。

 データを分析した国立精神・神経医療研究センターの山内貴史研究員は「リハビリで障害を減らすとともに、患者の心のケアが大切だ」と話している。

大橋アナ、脳梗塞の原因は? 若くして発症する二つの理由

テレビ東京のアナウンサー、大橋未歩さん(34)が脳梗塞を発症したと明らかにして話題になった。脳梗塞を発症した大橋アナは、30代の若さだった。若年者に脳卒中が起こる危険はどれくらいあるのだろうか。

 作家で神経内科医の米山公啓氏は、「若年者の脳梗塞は、数としてはそれほど多いものではない」と前置きした上で、こう話す。

「あくまでも一般論ですが、若くして脳梗塞を発症する場合、次の二つの理由が考えられます。一つは、すでに高血圧や糖尿病、肥満などがある人で、これは動脈硬化による一般的な脳卒中と同じ理屈で発症します。

これとは別に、血管の病気や血液の病気、不整脈などがあると、脳梗塞を発症することがあります」。

 一方、脳出血は脳梗塞と比較して、若い世代や働き盛り世代にも起こる可能性があるという。とくに米山氏が重視するのは高血圧による「高血圧性脳出血」だ。「高血圧の原因はよくわかっておらず、体質的な要素もかかわっています。

確かに年齢が上がるほど血圧は高くなりますが、だからといって高齢者の病気と思っているとしたら、それは大きな誤りです」

 高血圧の診断基準は、上の血圧(収縮期血圧)が140以上、下の血圧(拡張期血圧)が90以上となっている。該当する場合は、まず生活習慣の改善や減塩、減量などで血圧を下げるように試み、それでも十分に降圧できない場合は、降圧薬での薬物療法が必要だ。

医師直伝 脳梗塞と肥満を防ぐ「すったまねぎ」の作り方

生涯元気な体をつくるには、生活習慣病を食の面で予防する事が大切。若さを維持するには何をどのくらい食べればいいのか、望ましい食事内容や食べ方のポイントを、南越谷健身会クリニック院長の周東寛(しゅうとう・ひろし)医師に聞いた。

*  *  *

「老化は足から」といわれますが、年をとるとフラついたり転びやすくなります。

筋力が低下するだけでなく、血流が悪くなるからです。膝上3センチから上は心臓ポンプによって血液が直接循環しますが、膝より下は循環が悪くなりがち。これを防ぐには、血流をよくする食べ物が必要です。

 周東先生がいう「寝たきりを防ぐ食事法」はこれだ。

(1)「すったまねぎ」(酢+スライスたまねぎ)で動脈硬化を防ごう(2)夜に納豆を食べて血栓を溶かせ(3)肥満と脳梗塞を招く「朝パン」を控えよう(4)週1のすき焼きより週2の「しゃぶしゃぶ」で脂抜きを(5)茶碗1杯分の温野菜(おひたしや煮物)で便秘を防ぐ(6)塩分の摂りすぎはキュウリやパセリ、香辛料で解消

「すったまねぎ」の作り方は、スライスしたたまねぎ1個をリンゴ酢や玄米酢(大さじ3)とハチミツ(大さじ5)に5日漬けるというもの。

周東先生は「たまねぎに含まれるイオウ化合物やグルタチオン酸が血管内皮細胞を浄化し、血流をよくして脳梗塞や肥満などを防ぎます。たまねぎはスライスしたあと水にさらさず少々置くのがコツ。

私は茹でキャベツとともに毎日、頂いています(冷蔵庫で2週間保存可能)」と話す。

脳腫瘍・くも膜下出血のサイン 知っておくべき「片頭痛」の危ない兆候(2)

さらに片岡氏は「片頭痛を“たかが頭痛ぐらい…”と甘くみないでほしい」と付け加える。

 「片頭痛は“脳の興奮”によって起こります。そのとき“頭痛ぐらいで休んでいられない”と鎮痛薬でごまかしたり、痛みを我慢してやり過ごしていると“脳の興奮”がどんどん蓄積され、ちょっとした刺激や些細な事でも頭の痛みを感じるようになり、深刻な状態を招きます。

とくに高齢者の場合は動脈硬化で血管が広がりづらくなり、痛み自体を感じなくなりますが、脳の興奮状態は鎮まらずに慢性化し『脳過敏症候群』に移行する。

こうなると脳の働きが混乱し、頭の中の雑音が鳴り響くような耳鳴りや、強烈なめまい、頭重、不眠といった深刻な症状が表れます」(同センター片岡医師)

 この他に、物忘れが激しくなってイライラから攻撃的になったり、奇行を繰り返す場合もある。認知症、うつ、パニック障害と思われていた人が、実は「脳過敏症候群」だったというケースもあるという。

 こうした深刻な事態を避けるためには、どのように対処したらいいだろうか。

 「片頭痛には特効薬であるトリプタン製剤が効果的です。他にセレトニン作動薬、エルゴタミン製剤(商品名カフェルゴット、クリミアンなど)があります。

いずれも脳の血管の拡張や三叉神経から放出される炎症物質を抑え込み、脳の興奮を鎮めます。頭痛が起こり始めたら、なるべく早く使用することが大切で、痛みをがまんしてはいけません。

既往症によっては薬を使えない人もいるので、医者の診察を受けてください。将来の脳過敏症候群の予防にもつながります」(前出・関東病院脳神経科担当医)

 慢性的な頭痛に悩まされている人は「こんなに辛い思いは、他人にはわかってもらえない」と、悲観的になりがちだ。しかし、北里大学・坂井文彦教授の全国調査(1997年)では、15歳以上の8.4%、約840万人が片頭痛に悩まされているといい、3割以上が何らかの慢性頭痛を抱えていると計算している。

 ある医療関係者によると片頭痛を起こしやすい人に共通する性格があるようだ。

 「頭が良くて仕事などの能力も高く、潔癖で完全主義者。また、几帳面で仕事も丁寧こなし、さらに勝気で野心が強く、プライドが高いタイプが多いとされています。一方で、頑固で融通が利かず、怒りっぽい性格が多いとされています」(前出・健康ライター)

 頭痛に悩んでいた有名人も、世の東西を問わず多い。音楽家のハイドン、チャイコフスキーやモーツァルトなどだ。

モーツァルトなどは、死亡時の激しい頭痛の記録から、死因は「慢性硬膜下血腫」という説もある。日本人では石川啄木や樋口一葉なども頭痛に悩まされ、しばし詩を詠むことができなかったそうだ。

 いずれにせよ、将来、深刻な症状に悩みたくない人は、片頭痛を放置しないこと。我慢は決して美徳ではない。

脳腫瘍・くも膜下出血のサイン 知っておくべき「片頭痛」の危ない兆候(1)

「片頭痛」は読んだ字のごとく、頭の片側がズキズキと痛む症状に襲われる。習慣的に悩まされる人も少なくないが、時に強い痛みが長時間続く場合もあり、吐き気や嘔吐、光や音への過敏性も伴う、厄介な症状に苦しめられる。

 関東中央病院脳神経外科担当医はこう説明する。

 「片頭痛を引き起こすメカニズムは、頭部の血管が拡張し炎症を起こして痛みが発生するものですが、その原因には幾つかの説があります。一つは“血管説”。頭部の血管が拡張することによって頭痛が発生すると考えられるものです。

もう一つは、脳神経の中で最も大きい三叉神経(顔面周辺の感覚をつかさどる)が関与している説。

何らかの要因によって三叉神経が刺激され、三叉神経の末端から血管を拡張させる作用を持っているさまざまな神経伝達物質が分泌されるのですが、それらの働きで拡張した血管や発生した炎症で神経が刺激され、激しい痛みが出るというものです。

また、脳内血管の収縮・拡張を助けるセロトニンも神経伝達物質の一種ですが、その働きが鈍ると片頭痛が起きてしまいます」

 いずれも頭の片側、または両側など、頭が脈打つようにズキンズキンと痛む。発症頻度は、人生で数回しかない人から、月に1~2度の人、週に1~2度の頻度で発作を起こす人などさまざま。

いったん痛み出すと寝込んでしまう、あるいは仕事が手につかないなど、日常生活にも大きな支障を来すことがある。

 また、頭痛は必ず何か他の症状を伴って表れるという。吐き気は約90%の人に現れ、嘔吐は約3分の1で起こる。また多くの患者は、光に過敏になったり、音声恐怖症、匂い恐怖症などの感覚の過剰興奮に伴い、全てを遮断して暗い静かな部屋に籠ろうとする。

 「頭痛の間の症状として、視界のボヤケや鼻詰まり、下痢、多尿症、発汗などが顕著になり、こめかみの血管の隆起、首のこりや圧痛といった症状も起きます。

日本人の約8%がこれらの症状に悩まされているというデータもあって、男性より女性に多く見られるのも特徴とされます。その数は男性の4倍も多く、理由として、多くの専門家は頭痛に女性ホルモンが影響しているとみています」(健康ライター)

 しかし、片頭痛は検査でわかる病気ではないため、症状をできるだけ正確に医師へと伝えることが重要になってくる。怖いのは脳腫瘍やくも膜下出血など、生命に関わる病気が原因となる頭痛もあることだ。

 「医師が片頭痛であるかどうかを診断する根拠にしているのは問診で、これを最大の情報源にしていますが、その中でハッキリしているのが頭痛の前兆を訴える人が20~30%もいることです。

よく知られている症状は、頭痛が起きる30分から数時間前に目の前にチカチカと輝く光が現れ、視野の中心から片隅にかけて部分的に見えにくくなる。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、片頭痛の特徴的な前兆です。

普通は60分以内に前兆現象は治まりますが、その後、1時間前後に、片頭痛の本番が始まる。ただしこれも不規則で、数時間後に遅れて発症したり、そのまま前兆だけで終わってしまうケースもあります」(東京社会医療研究センター・片岡恵一医師)

脳卒中は予防したいが…血管は本当に鍛えて強くできるのか

日本人の死因の上位を占める心筋梗塞や脳卒中など、血管のトラブルが引き起こす病気は命に関わるものが多い。

そのため、重大病を防ぐには血管を強くすればいいといった話題がクローズアップされ、〈血管を鍛えて強くすれば効果的だ〉なんてイメージを抱いている人がほとんどだろう。

 だが、そもそも血管を強くすることなんてできるのだろうか。ムック「100歳まで元気!強い血管をつくる塩分カットレシピ」を監修したばかりの東京医科大学八王子医療センターの高沢謙二病院長に聞いた。

■内皮細胞の状態が大切

「健康な血管を考えるうえで近年、注目されているのが内皮細胞です。血管内皮とも呼ばれるこの細胞は、血管の内側を細胞層として覆っているもので、血管の収縮や拡張を調節しています。内皮細胞が元気に収縮、拡張することで血管そのものが広がり、強くしなやかになるのです」

内皮細胞を健康な状態にすれば、血管は強くなる。そのために効果的だといわれているのが、抗酸化作用の高い食品を積極的に摂取することだ。

 緑黄色野菜のルテイン、トマトのリコペン、ショウガのジンゲロールやショウガオール、ミカンのβ-クリプトキサンチンなど、野菜や果物には抗酸化成分が豊富に含まれている。

赤ワインやオリーブオイルも抗酸化作用が高く、ソバに含まれるルチンなども効果があるとされている。野菜中心の食生活が、強い血管をつくるうえでは大切になる。

 だが、内皮細胞を健全にすれば万事解決というわけではない。

「血管を強くする目的は〈破れない、詰まらない〉ようにすることです。内皮細胞は血液が血管に凝固することも防ぐので、内皮細胞が健康な状態なら、血管は破れにくく詰まりにくくなります。

しかし、血液も含めた血管内の環境が悪ければ、血管は破れやすく詰まりやすくなる。これでは、強い血管とはいえません」

いくら血管を鍛えても、流れている血液がドロドロでは強い血管にはならないのだ。
「血管が強い状態というのは、言い換えれば高血圧、糖尿病、悪玉コレステロールによる高脂血症がない状態のことです。

そうしたリスクファクターがある人は、血管という器官だけを強くしようとしても意味がありません。〈攻撃は最大の防御〉といいますが、血管に関しては防御あるのみ。内皮細胞、血液を含めた血管内の環境を整え、血液を正しく循環させることが重要で、リスクファクターを減らすことが求められます」

 血管内の環境を整えるには、〈野菜中心の食生活〉に加え、〈睡眠を十分にとる〉〈クヨクヨ考えすぎない〉〈早起きを心がける〉〈喫煙を控える〉生活を心がける。

「適度な運動も効果がありますが、血管が弱っている状態で激しい運動をすると、逆効果になるケースもあります。週2回、20分ほど速足で歩く程度で十分です。

1日1分ほど、かかとを上げ下げして、ふくらはぎを動かすのも効果的です。ふくらはぎは、血液を足から心臓へ戻すポンプの役割があります。ふくらはぎの筋肉が柔らかくなれば、全身の血液循環がよくなります」

 強い血管を手に入れるには、健診などで自分のリスクファクターレベルを把握することも必要なのだ。

運動マヒの後遺症が改善 常識打破の脳卒中「新リハビリ法」

脳卒中で半身に運動マヒの後遺症が残るとリハビリが行われる。腕(上肢)は脚(下肢)より動きが困難で、回復が難しい。それもあり、「脚は何とか動くようになったけど、リハビリをしても腕は動かないまま」という人がほとんどだ。

 そもそも脳卒中による運動マヒは、発症後6カ月のリハビリで回復しなければ、それ以上はよくならないと考えられてきた。

軽いマヒならリミットはもっと短く、約1カ月だ。つまり、運動マヒの後遺症が残ったら、腕は動かないまま過ごさなければならない人が圧倒的多数ということだ。

その常識を打ち破るリハビリ法「NEURO」が登場し、注目を集めている。開発した東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座・安保雅博教授に話を聞いた。

 NEUROが画期的なのは、「発症後6カ月以上経った人でも回復可能」という点だ。

「専門医の間では、〈下肢が回復すればよし〉〈上肢は治らない〉といった考えが昔から変わっていません。それを何とかできないかと思ったのが開発のきっかけです」

試行錯誤の末、安保教授がたどり着いたのは、脳に刺激を加えて不自由な腕を動かそう、ということだった。

「脳は右と左がバランスを取りながら機能しています。たとえば脳卒中で右脳が損傷を受けると、左脳が右脳の働きを助けるというのが一般的な考えでした。

しかし私は、健康な左脳の働きが強くなり、損傷を受けた右脳の働きを抑えつけるので、運動障害が改善しない、と考えたのです」

■発症後半年以内がリミットだったが、28年目の人も改善

 では、健康な脳の働きを抑制し、損傷を受けた脳の働きを上げればどうなるか?

特殊な医療機器で脳に低頻度の磁気刺激を当てると機能が抑制し、高頻度の磁気刺激では機能が高まることは明らかになっていた。

安保教授は、健康な脳に1ヘルツ の低頻度刺激、または損傷を受けた脳に10ヘルツ の高頻度刺激を当てた。すると、磁気を当てる前より腕が動きやすくなった。目安は40分間。当てる場所、当てる時間などは患者によって変える。

「ただし、磁気刺激だけでは一時的な効果しか得られない。作業療法士とマンツーマンによる2時間の腕を動かすリハビリ(タオルで机を拭く、ペンで文字や絵をかくなど)と、日常生活で自分で行えるリハビリを共に行うことが重要です」

 磁気刺激+リハビリを行った1008人の患者を調べると、8割に腕の機能向上が見られた。

「お茶碗を持ってご飯を食べられる、編み物をできる、洋服を着替えられるなどです。対象患者は、脳卒中発症から1~28年。これまでの〈リハビリでよくなるのは発症後6カ月以内〉から大きく外れた方々です」

 ただし、これは万能のリハビリ法ではない。

「少なくとも2本の手指の曲げ伸ばしが可能な患者が対象です。〈今の動きを、より動くようにする〉というのがNEUROなので、全く動かない人には向いていません」

 脳卒中で運動マヒが残っている人は、マヒ側の筋肉がこわばり、内側に曲がった状態で極端に動きにくくなる痙縮(けいしゅく)も多い。そういう場合は、ボツリヌス毒素治療を行う。

「細菌が作り出す天然のタンパク質(ボツリヌストキシン)は、筋肉の緊張をやわらげる作用があります。運動マヒの改善は体の中心から進むので、上肢の場合は、肩、肘、手首の順。ボツリヌストキシンを肩回り中心に注射し、痙縮を落として、訓練をしやすくします」

 ボツリヌストキシンで筋肉の緊張がやわらいだ腕を動かすリハビリを、自宅で毎日1時間行う。全く腕が動かなかったのに、手が頭まで上がったり、肩から肘まで動かせるようになった例もある。

「最初はNEUROが不適応だったけど、ボツリヌス治療+リハビリで、NEUROが適応になった患者さんもいます」

 NEUROを行う医療機関は全国11カ所だ。

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脳卒中は予防したいが…血管は本当に鍛えて強くできるのか

日本人の死因の上位を占める心筋梗塞や脳卒中など、血管のトラブルが引き起こす病気は命に関わるものが多い。

そのため、重大病を防ぐには血管を強くすればいいといった話題がクローズアップされ、〈血管を鍛えて強くすれば効果的だ〉なんてイメージを抱いている人がほとんどだろう。

 だが、そもそも血管を強くすることなんてできるのだろうか。ムック「100歳まで元気!強い血管をつくる塩分カットレシピ」を監修したばかりの東京医科大学八王子医療センターの高沢謙二病院長に聞いた。

■内皮細胞の状態が大切

「健康な血管を考えるうえで近年、注目されているのが内皮細胞です。血管内皮とも呼ばれるこの細胞は、血管の内側を細胞層として覆っているもので、血管の収縮や拡張を調節しています。内皮細胞が元気に収縮、拡張することで血管そのものが広がり、強くしなやかになるのです」

 内皮細胞を健康な状態にすれば、血管は強くなる。そのために効果的だといわれているのが、抗酸化作用の高い食品を積極的に摂取することだ。

 緑黄色野菜のルテイン、トマトのリコペン、ショウガのジンゲロールやショウガオール、ミカンのβ-クリプトキサンチンなど、野菜や果物には抗酸化成分が豊富に含まれている。

赤ワインやオリーブオイルも抗酸化作用が高く、ソバに含まれるルチンなども効果があるとされている。野菜中心の食生活が、強い血管をつくるうえでは大切になる。

 だが、内皮細胞を健全にすれば万事解決というわけではない。

「血管を強くする目的は〈破れない、詰まらない〉ようにすることです。内皮細胞は血液が血管に凝固することも防ぐので、内皮細胞が健康な状態なら、血管は破れにくく詰まりにくくなります。

しかし、血液も含めた血管内の環境が悪ければ、血管は破れやすく詰まりやすくなる。これでは、強い血管とはいえません」

 いくら血管を鍛えても、流れている血液がドロドロでは強い血管にはならないのだ。

「血管が強い状態というのは、言い換えれば高血圧、糖尿病、悪玉コレステロールによる高脂血症がない状態のことです。そうしたリスクファクターがある人は、血管という器官だけを強くしようとしても意味がありません。

〈攻撃は最大の防御〉といいますが、血管に関しては防御あるのみ。内皮細胞、血液を含めた血管内の環境を整え、血液を正しく循環させることが重要で、リスクファクターを減らすことが求められます」

 血管内の環境を整えるには、〈野菜中心の食生活〉に加え、〈睡眠を十分にとる〉〈クヨクヨ考えすぎない〉〈早起きを心がける〉〈喫煙を控える〉生活を心がける。

「適度な運動も効果がありますが、血管が弱っている状態で激しい運動をすると、逆効果になるケースもあります。週2回、20分ほど速足で歩く程度で十分です。

1日1分ほど、かかとを上げ下げして、ふくらはぎを動かすのも効果的です。ふくらはぎは、血液を足から心臓へ戻すポンプの役割があります。ふくらはぎの筋肉が柔らかくなれば、全身の血液循環がよくなります」

 強い血管を手に入れるには、健診などで自分のリスクファクターレベルを把握することも必要なのだ。

あなたの肺は大丈夫?自分でできる話題の「肺クレンジング法」

皆さんは息苦しさを感じたことはありますか? もしかしたら、それは肺が悲鳴を上げている状態かもしれません。

「身体の中で一番大切なのは、心臓」という認識があるかもしれませんが、実は心臓と肺は密接な関係にあり、肺は生きるために必要な酸素を体内の細胞に送り出す、必要不可欠な臓器です。

実は、肺を洗浄しなければ、酸欠になったり、老廃物が体内に溜まりやすくなったりと身体に悪影響を及ぼします。特に、喘息や止まらない咳、痰がでやすい人は要注意です。その状態を放置すると、窒息死する可能性すらあります。

今、注目されている自分でできる肺のクレンジング方法を、英語圏の情報サイト『Live Love Fruit』をもとに紹介します。

■肺がダメージを受ける原因とは?

公害やタバコの煙、花粉等といった自分では気づかないダメージが、日々、肺に蓄積されていきます。しかし、肺はそもそも自己洗浄システムがあり、それらの老廃物を繊毛等を使って、体外に出すようにします。

しかし、あまりにも空気の悪い場所に長時間いたり、運動不足が続いたり、栄養状態の悪い食事をとったりしていると、自己洗浄ができなくなり、息切れや咳、痰などが溜まっていってしまいます。

■1:食生活の改善で肺をクレンジング

(1)クレソン、アプリコット、柑橘類、ブロッコリー、ベリー類が肺の洗浄に適しています。

(2)水を一日で、3~4L飲みましょう。体内を水で潤すことで、全身の細胞から化学物質を移動させてくれ、肺の中の汚れや老廃物を繊毛が排除してくれます。

(3)加工食品や動物性食品、白砂糖を避けましょう。

■2:動いて肺を鍛える

運動することで、自然と肺を鍛えることができます。肺を鍛えると、繊毛の力が強くなり、肺に汚れた粘液を押し出し、老廃物が蓄積されにくくなります。

運動すると、体中の細胞が酸素を使い、二酸化酸素を作ります。そのため、通常1分間に約15回の呼吸から、40~60回の呼吸を必然的にするようになります。運動と呼吸運動の相乗効果で、さらに肺を強くします。

エクササイズはジョギングや水泳やウォーキング、ヨガがおすすめです。

いかがでしたか? 息苦しさを感じる方は肺のクレンジングをぜひ行ってみてください。肺は鍛えれば鍛えるほど強くなるので、水泳、ジョギング、呼吸法等を実践しましょう。



リハビリはいま(1) 脳卒中後遺症にボツリヌス治療

筋肉に注射

 日本でボツリヌス注射は、1996年眼科領域の眼瞼(がんけん)けいれん、2000年に片側(へんそく)顔面けいれん、01年に痙性斜頸(けいせいしゃけい)、09年に脳性まひの尖足(せんそく)、そして10年に原因を問わない上肢・下肢の痙性まひに対して順次認可が開始となりました。残念ながら、脳卒中の痙性まひに対してボツリヌス注射が福音をもたらすことはまだ周知されていません。

 実際にはA型ボツリヌス毒素製剤(商品名ボトックス)という注射液を使うことが一般的です。製剤に毒素という名がついているため劇薬扱いされていますが、台所洗剤で簡単に失活(不活化)できます。

 当院では、10年8月より外来でボツリヌス注射を開始しました。注射は目的の筋肉に直接施注するのですが、慣れればさほど難しい手技ではありません。

 痙性による強い筋緊張をこの薬剤で低下させることで、これまで脳卒中後の筋痙縮に悩まされていた方に明らかな効果をもたらすことを確信してきました。

 当院では、リハビリのスタッフによる痙縮の評価と注射後の運動の指導を組み合わせて、ボツリヌスの筋注射の効果を十分に引き出せるようにチーム医療に積極的に取り組んでいます。

評価とトレーニング

 リハビリスタッフは、ボツリヌス注射前後の評価と、注射後すぐのトレーニングに関わっています。評価は、注射の直前直後と注射から2~4週間後に行っており、他動的な関節可動域や筋肉のこわばり(抵抗)具合を評価します。

 注射後のトレーニングは、注射液の効果をよくするために施注筋を動かすよう指導しています。本人あるいは家族には次回評価日まで、家庭で自主練習を継続していただくようお願いしています。

上肢への効果

 上肢のボツリヌス治療は、肩を中心とする痛みを軽減させ、上着の着脱や手指の衛生管理などの日常生活動作の改善と介助の軽減を目的としています。印象として一番の改善点は、肩の筋肉のこわばりが緩むことで関節が動きやすくなり、肩の痛みが軽減することです。患者さんに聞くと、注射後は更衣の介助がしてもらいやすくなり、手指の痙性が緩むことで入浴時に手指を洗いやすくなったと喜ばれています。

片まひ(右側)に特徴的な姿勢

下肢への効果

 片まひの下肢に対するボツリヌス治療は、「筋肉のこわばり=痙縮」が原因で起こる姿勢の問題や動く時の痛みの改善を目的に行われます=【図参照】。主な利点は、痙縮のため関節の可動域が狭まっているのを緩和し、抵抗なく動きやすくすることです。

 具体的な例を挙げましょう。股関節が開きにくくなった場合はおむつ交換に難渋しますが、ボツリヌス治療で股が開きやすくなり、本人も介護者もおむつ交換の労力が軽減します。歩ける人で足関節がこわばっている場合には、注射でこわばりを軽減することで歩きやすくなり、歩行姿勢も良くなります。

 下肢へのボツリヌス治療で注意しておきたいことは、筋肉が柔らかくなることで脱力感を生じ、荷重時に膝折れや足首のふらつきを起こして転倒する危険性が、注射直後ではなく2~3日たってから高まることです。そのため施注後に、状態の評価と同時に注意喚起をしています。

 リハビリに携わる者としては、下肢の大きな筋肉の拘縮が起こらないよう予防に力を入れますが、公的医療保険上、リハビリ日数には制限があり、いつまでも継続できません。硬くこわばってしまうとリハビリ治療が難しく限界を感じることも多い中、ボツリヌス治療のおかげで難しい痙縮の治療に可能性が広がったと感じます。

まとめ

 ボツリヌス注射が痙性を減弱させる効果を多くの医療者が実感すれば、近い将来、痙縮のポピュラーな治療法になると期待されます。問題はこの製剤が非常に高価であることで、公的援助制度が利用できる方にはそれを活用するよう勧めています。(岡山リハビリテーション病院 リハビリテーション科専門医 森田能子、作業療法士 乙倉智恵、理学療法士 浅野智也)

心筋梗塞予防にチョコが有効


厚生労働省の人口動態統計によると、2013年の日本人の死因は第1位が悪性新生物、第2位に心疾患、第3位は肺炎、そして僅差で脳血管疾患の順になっている。

そのなかで心疾患と脳血管疾患の死亡数は、12~2月の冬に増える傾向にある。寒い季節に増加する理由について、東京医科大学病院・循環器内科助教の椎名一紀氏は、こう解説する。

「冬は寒さのために血管が収縮し、健康な人でも血圧が高くなりがち。高血圧とは、血管の壁に圧力がかかりつづけている状態ですから、血管壁が傷つき、固くなったり脆くなったりします。

そこに、ヒートショックなどで血圧が大きく上下すると、心筋梗塞のような危険な病気を起こす可能性が高くなるのです」

 ヒートショックとは、冬場に入浴して温まってから寒い脱衣所へ行ったり、暖房の効いた室内から外に出たときなど、急激な気温の変化によって、血圧が上下するなど、体が受ける影響のことを言う。

2011年には約1万7000人がヒートショックによって入浴中に急死したと見られている(東京都健康長寿医療センター研究所の調査より)。

「冬は寒さのために血管が収縮するので、健康な人でも血圧が高くなりがち。血圧が高いと、血管の壁に圧力がかかって傷つきやすくなったり、固くなったりします。

そこにヒートショックなどのダメージが加わると、心筋梗塞や脳梗塞などが起こりやすくなるのです。

 ただし、血管については“若返りはありえる”という研究結果も出ています。治療が必要な状態にならないためにも、普段から血管をしなやかに保つ生活習慣を取り入れましょう。

食生活を見直すなら、摂取カロリーや塩分、コレステロール、魚卵などに含まれるプリン体を減らすこと。また、禁煙も効果的です」

 血圧降下作用がある食品として、椎名氏は、カカオポリフェノールを豊富に含むカカオ分70~90%の低糖のチョコレート、ダークチョコレートを挙げる。

「海外の研究では、チョコレートを食べると血圧が下がることを示す論文が150以上も発表されています。

 ドイツ・ケルン大学の実験では、少量のダークチョコレートを摂取することで、収縮期血圧が約3mmHg下がりました。これは、1日5g減塩したのと同じくらいの効果と考えられます。

また、カカオポリフェノールには、血管内皮を覆う細胞に働きかけ、血管をしなやかにする作用も認められます」

 チョコレートには、リラックス効果や集中力を高める効果もあるという。「仕事に疲れたらダークチョコ」を習慣にしてみては?

冬場に危険が高まる脳梗塞。自宅で出来る対処方法はあるのか?

先日、テレビ東京の大橋未歩アナウンサーが軽度の脳梗塞で自宅療養になったというニュースが話題を集めた。

田辺三菱製薬株式会社によるサイト「NO!梗塞.net」によれば、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)ができることで、脳に酸素や栄養が送られなくなり、細胞が壊死してしまう状態を「脳梗塞」と呼ぶという。

じつはこの脳梗塞、冬に発症しやすい病気のひとつであることをご存じだろうか。そこで今回は、脳梗塞を避けるために注意しておきたいことについて、All aboutで脳・神経に関するガイドを務める菅原道仁医師に話を伺った。

「まず、脳梗塞のリスクを高める原因として“脱水”と“温度差”があります。冬場はエアコン等で部屋が乾燥するので、知らないうちに脱水状態になっていることがあります。

血液中の水分が不足すると血液の粘度が上がり、血管が詰まりやすくなるんです。また、温度差が激しい場所を行き来すると血管が萎縮するため、血圧が急激に変化します。

すると体に負荷がかかり、脳梗塞のリスクが高まるんです。外出するときはもちろん、部屋から部屋へ移動する場合にも注意が必要ですね。特に風呂場は家のなかでも特に温度差が激しい場所なので気をつけてください」

なるほど。では、これら2つの原因を予防するためにはどうすれば良いのだろうか?

「脱水状態を避けるためには、こまめに水分を摂取することが大切です。1日1.5ℓを目安に飲むと良いでしょう。

また、急激な血圧変化を防ぐために、外出時は帽子やマフラー、手袋などできちんと防寒対策をすること。家にいるときにも部屋ごとの気温差をつくらないことが重要です」

この脳梗塞、若者でも発症する可能性があるという。「若いから大丈夫」という過信は捨て、きちんと対処することが大切だ。

ただの虫歯だと思っていたら……実は心筋梗塞の前兆だった

少し歯が痛いな、と思っていても歯医者に行くのがイヤで我慢していたりしませんか?

実は歯の痛み、ただの虫歯ではなく恐ろしい「心筋梗塞」の予兆だったりして・・・。

心筋梗塞というのは、血管に血栓という固まりができて、心臓に栄養と酸素を与えている「冠動脈」が詰まって心臓に血液が行かなくなった状態のことをいいます。

命にかかわる、非常に危険な病気。

主な前兆として、冷や汗や、呼吸困難、吐き気、そして胸を締め付けられるような痛みが30分以上続くことが多いです。

他にも、左側の歯やアゴ、左手の小指、左肩や背中などに痛みがおこる場合もあります。神経を通して脳に痛みを伝えるのだけど、脳が“別の場所の痛み”と間違った信号をだしてしまっている状態で、「関連痛」というもの。

関連痛は、心筋梗塞の初期段階の重要な合図です。

虫歯などの原因がないのに左側の歯が痛い時は、もしかしたら心筋梗塞の前兆かもしれません。

年齢や既往症の考慮はもちろん必要だけれど、圧迫感や不安感が強い時には、すぐ病院を受診しましょう。なるべく早く治療をすることで、生存率も高く、後遺症が残る可能性も少なくなります。

症状の前兆を見逃さないことが、心筋梗塞を重症化させない方法です。

心筋梗塞になりやすい要因は、タバコ、運動不足、肥満気味に加え、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病。
他にも、過労や睡眠不足、ストレスなどの体調や、極端に暑かったり寒かったりする気候でも心筋梗塞を起こしやすい環境になってしまいます。

心臓は1日に約10万回も拍動する働き者。だからこそ、日頃の変化を気にすることは必要です。

心筋梗塞は高齢者に多い病気だと思われがちだけれども、近年では20~30代でも患者が急増しています。

寒さは心筋梗塞の大きな要因の一つだから、冬に発作を起こす人が多いけれど、夏でも心筋梗塞で入院する患者数は冬の6~7割もいるんですよ。

気になる体調不良があれば、一度病院で検査を受けてみましょう。
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