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倒れても立ち上がる木村和司さん。急増する脳梗塞克服のポイントは「サインを見逃すな!」



FC2 Analyzerサッカー元日本代表の木村和司さんが脳梗塞で入院していたことがわかりました。幸い、比較的状況は軽く、本人はまだ現場復帰する強い意志を持ってリハビリに励んでいます。

かつて代表監督をつとめたオシムさんも脳梗塞で倒れるなど、脳梗塞は高齢者の病気、というイメージがありますが、実は若年での発症患者数が今、ますます増えてきている危険な病気なのです。

◆脳梗塞ってどんな病気?
脳梗塞は脳の血管がつまって起きる病気。高齢者に多い病気と思われがちですが、現代では若くして発症するケースが増えてきています。

記憶に新しいところでは、2002年にミスター・チルドレンのボーカル桜井和寿さんが32歳で、昨年にはアナウンサーの大橋未渉さんが34歳という若さで発症しています。

その原因はさまざまですが、脂質異常症や糖尿病など、生活習慣病が原因になることが少なくありません。

また、それらが原因で発症する一般的な脳梗塞とは別に、50歳以下で、首や脳に強い衝撃を受けたり、血管や血液に先天的な疾患があったりすることで起こる「若年性脳梗塞」というものもあります。

◆発症のサイン(前兆)とは?
一般的な脳梗塞では、多くの場合において発症の前兆が見られます。もちろん個人差はありますが、脳梗塞と診断されたあとで「そういえばあのとき、なにかおかしいと思った」ということがよく聞かれます。

たとえば、歌手の西城秀樹さんは、48歳で最初に発症したとき、「鏡に映った自分の顔が歪んでみえた」、前述の桜井さんの場合は、「携帯電話の操作がしづらくなった」といいます。

また、大橋アナウンサーは、夜、顔を洗っているときに左手が動かなくなり、その場に倒れこんだそうです。

代表的な症状として挙げられるのは、目がかすむ、ものが二重に見える、顔や手足の片側がしびれる、足がふらつく、転びやすくなる、ろれつが回らない、一時的に言葉が出なくなる、相手の言うことが理解できない、といった症状。

若年性脳梗塞では、これらの一般的な脳梗塞の前兆に加え、頭や首に痛みを感じることが多いといわれています。

◆発作が一時的でも病院へ!
発作によっては少し時間が経てば症状がおさまることがあるため、おかしいなと思っても病院へ行かないという人がみられます。しかし、こういった一過性の発作を放置しておくと、本格的な発症につながる確率が高まります。

脳梗塞は発見が遅れると、重い後遺症が残ったり、最悪のケースでは死にいたったりすることもある病気ですが、前兆に気づいた段階で対処すれば、大事にいたらないようにすることが可能。大橋アナウンサーのように、

倒れてもすぐさま病院へ搬送されたことで後遺症が残らなかったケースも多々あります。

自身だけでなく、一緒にいる家族や友人が、いつもと何か違う、おかしいなと思ったら、すぐに病院に行くことを心がけてください。

脳卒中が原因で発症する「高次脳機能障害」 その症状とは?回復するの? FC2 Analyzer



FC2 Analyzer病気や怪我によって脳に損傷を受けることで起こる高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)。

記憶障害や注意障害をともなうことも多いため認知症と混同されがちですが、一般的に徐々に症状が進行していく認知症に対して、高次脳機能障害の場合は障害が出てからもリハビリなどで回復する余地のあるところが最大の違いといわれています。

また、症状が軽度の場合でも、認知症と同様に物忘れや感情の起伏が激しくなる一面もあることから、周囲の理解がより必要とされる障害といえるでしょう。

◆高次脳機能障害の主な原因と症状
高次脳機能障害の原因でもっとも多いのは、一般的に脳卒中といわれる脳の病気(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)です。また、交通事故・転倒などによる怪我で脳に傷を受けた場合にも起こることがあります。

特徴としては、手や足など見える部分に障害がなくても、「いままでできていたことが、スムーズにできなくなる」という点があります。

たとえば、日づけや場所がわからなくなったり、物忘れが激しくなったりする「記憶障害」、集中力の低下をともなう「注意障害」、計画的に行動することが難しくなる「遂行機能障害」、行動や感情のコントロールができなくなる「社会的行動障害」などといった症状です。

またそのほかに、失語症や、人の顔が判別できなくなる失認症、身体的な障害をともなう場合もあります。

◆リハビリなどで回復の可能性も
冒頭にも記したように、高次脳機能障害はリハビリなどによって回復する可能性のある障害です。ただし、認知症と同様に、本人に自覚がないことが多いため、受診やリハビリには家族や周囲の協力が不可欠となります。

医師の診断を受けて症状の原因が判明することにより、ケアをする家族や周囲の人々にとっても、心理的な負担が軽減されることもあるようです。

また、高次脳機能障害は行政上は精神疾患に区分されているため、症状によっては「精神障害者福祉手帳」の交付や、さまざまな「障害福祉サービス」の対象となる場合もあります。

◆身近な人が異変に気付くことも
脳の病気や怪我の経験のある家族や知人に、「ちょっとしたことでキレやすくなった」「すぐにイライラする」「物忘れが激しい」「新しいことが覚えられない」といったような病気・事故前との「人格の変化」が見られた場合は、医師の診断をあおぐ必要があるかもしれません。

ただし、高次脳機能障害に関しては、診察する医師が、神経内科・脳外科・精神科・リハビリテーション科など多岐にわたるため、事前に医療機関に相談してから受診するとよいでしょう。

また、全国各地に高次脳機能障害に関する相談窓口も設けられているようです。

高次脳機能障害 相談窓口一覧
http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/soudan/

血管詰まる脳梗塞、新たな器具で再開通率向上 注目される「ソリティアFR」


血栓により脳内の血管が詰まる脳梗塞。血流が途絶え、脳が徐々に壊死(えし)する病気で生命に関わる。発症後、早期の治療が必要で、一命を取り留めても、寝たきりになるなど重い後遺症に苦しむ人は多い。

そうした中、血栓を除去する医療器具を使った新たな治療法が注目されている。

◆死亡率は1割に

 脳梗塞を含む脳卒中は、「3大疾病」と言われ、長く日本人の死因としてがん、心疾患に次ぐ3位の座を占めていた。近年は肺炎に次ぐ4位。高齢化が進む中、患者は増えているが、「死亡者数は減っている」と、総合東京病院の渡辺貞義院長は指摘する。

 渡辺院長によると、脳の血管が詰まったり、破裂したりする脳卒中のうち、血管が詰まる脳梗塞は6~7割を占める。「かつては3分の1が死亡し、3分の1が寝たきりになり、社会復帰できるのは3分の1」と言われていた。

現在は「治療技術の進歩もあり、5割が社会復帰し、何らかの後遺症が出るのが4割、死亡するのは1割になった」という。

 脳梗塞で死亡する人が減っている背景には新たな薬剤や医療器具の導入など治療技術の進歩がある。

 平成17年に血管内で詰まった血栓を溶かし、血管を再開通させる薬剤として「t-PA」が承認された。当初は発症から3時間以内の使用が条件だったため、受けられるのが発症者全体の5%程度にとどまっていた。

しかし、その後の研究で発症から4時間半たっても治療効果が得られるとされ、24年に適用が発症から4時間半まで延長された。

 ◆血栓をキャッチ

 その間、血栓を除去して血管を再開通させる医療器具も次々と開発されてきた。

 22年にカテーテルの先端のコイル状部分で血栓を絡め取る「メルシーリトリーバー」、23年に血栓を吸引して回収する「ペナンブラ」、そして25年には網目状の筒で血栓をかき出す「ソリティアFR」が国内で承認された。

 中でもソリティアFRは有望な治療法の一つとして注目されており、渡辺院長は「血栓をよくキャッチしてくれるので、再開通率が全体の9割前後まで高まった」と指摘。発症から8時間以内の治療が可能という。ソリティアFRは全国約250の病院で導入されている。

 治療技術の進歩で、死亡者が減っているとはいえ、脳梗塞を発症する人は増えているのが実情だ。「治療で大事なのは詰まった血管をいかに早く再開通させるか」と渡辺院長。家族などが倒れて脳梗塞の症状が表れたら、すぐに救急搬送してもらうことが重要だ。

 ■救急隊は簡易テストで脳卒中かどうかを判断

 救急隊が患者が脳梗塞を含む脳卒中かどうかを見分ける際に用いるのが「FAST」と呼ばれるチェック法だ。

 顔(Face)が左右非対称な動きをしている▽腕(Arm)の一方が上がらない、または上げたまま保持できない▽言葉(Speech)の発語が不明瞭、単語を間違える、うまく話すことができない▽発症時刻(Time)-の4つの言葉の頭文字を取ったものだ。

 顔、腕、言葉のうち、一つでも当てはまるものがあれば、脳卒中の可能性は72%とされる。

「口から食べる」を支援する 脳梗塞や脳出血の治療後に FC2 Analyzer


脳梗塞や脳出血などの治療後、集中的なリハビリを行うのが「回復期リハビリテーション病棟」。

まひの残る体で、歩く、食べる、排泄(はいせつ)などの自立に取り組む。後遺症が重いと、口から食べることが困難になるが、口腔(こうくう)ケアに取り組み、「口から食べる」を支援する病院も増えている。

 鳥取県米子市にある「錦海(きんかい)リハビリテーション病院」。食堂からは、ラムサール条約に指定された「中海(なかうみ)」が見渡せる。地元で「錦海」とも称される中海には淡水魚と海水魚が生息し、ガンやカモが飛来する。

 同院は、集中的なリハビリで自宅復帰を促す「回復期リハビリテーション病院(病棟)」で、在宅復帰率は80%を超える。言語聴覚士(ST)でもある竹内茂伸副院長は「うちは『口から食べる』を支援する病院。

口から食べられると、家族の介護負担が減り、家に帰りやすい。患者本人にとっても食べることは大きな楽しみです」と言う。

 米子市に住む小林千代さん(64)=仮名=の夫(70)は、くも膜下出血の治療後に転院した。当初は寝たきりで、排泄はおむつ。言葉も発せず、栄養摂取は胃に直接、管で栄養分を入れる「胃ろう」だった。

しかし、ある日、スタッフがアイスクリームを夫の口に入れると、夫はゆっくりと口を動かした。小林さんは「すごくうれしかった。胃ろうになったら元に戻らないと思っていたけれど、希望を持った」。

 ただ、再び話したり、食べたりするまでの過程は容易でなかった。日に3時間のリハビリが連日、マンツーマンで行われた。立つ、歩くなどの運動機能や、手指のリハビリだけではない。

このうち1時間はSTによる発語や嚥下(えんげ)のトレーニング。歯科医との連携で、抜けたままになっていた部分に義歯も入った。

 厚生労働省の施設基準では、STは質の高い回復期リハビリ病棟で「1人以上」の規定があるが、同院は48床に16人を配置。11人が入院病棟を担当し、患者の口腔ケアも担う。

通常の発語や発声の訓練のほか、口腔ケアは日に最低3回。食前も含めて6回という人もおり、顔と口の中のマッサージ、舌のストレッチなども行う。

 小林さんの夫は半年後には話したり、軟らかい食事を食べたりできるようになり、胃ろうを抜いて退院した。小林さんは「そこらじゅうに管が付いていた夫の状態を知る人は、信じられないと思う」と話す。

退院後も骨折や誤嚥(ごえん)性肺炎で入退院を繰り返したが、その都度、同院を経て自宅復帰した。

 もちろん、全ての患者が口から食べられるようになるわけではない。同院の実績では、小林さんの夫のように入院時に重度の摂食・嚥下障害のあった人で、管を抜いて出られた人は27%。

入院時に何らかの経口摂取はできたが、経管による代替栄養が必要だった中等度の人で、退院時に管を取れた人は8割だった。

 小林さんは「主人は認知症もあり、会話の内容ははっきりしないが、食べ物を見ると、うれしそうにする。満足していると思います」と話している。

 ■「その後」のため良質のリハビリ病院を

 「完全に回復していないのに転院を求められた」「病院から退院を勧められてショックだった」

 病院から出るように勧められるのは不安なものだ。しかし、今は、例えば、脳卒中で運び込まれる病院と、その後にリハビリを受ける病院は異なるのが一般的だ。

発症して最初にかかる病院は「急性期病院」と呼ばれ、命を助けるのが目的。元の生活に戻るための医療機関は「回復期リハビリ病棟(病院)」と呼ばれ、リハビリ専門の病院や病棟が担う。

 ただ、誰でも入れるわけではない。対象は、脳梗塞や脳出血、大腿骨頚部(だいたいけいぶ)骨折、廃用症候群などで身体機能が低下した人で、発症から1~2カ月以内に入院するなどの条件がある。早期の方が改善効果も高いためだ。

 同じ回復期リハビリ病棟でも、スタッフ数やリハビリ内容に差があるため、質の高い医療機関を選ぶことが「その後」につながる。厚生労働省は今年度の診療報酬改定で施設基準を引き上げ、スタッフの充実した医療機関に「回復期リハビリテーション病棟入院料1」として高い診療報酬を付けた。病院に掲示されているので参考になる。

 回復期リハビリテーション病棟協会(東京都渋谷区)は良い病院を選ぶポイントとして、(1)リハビリテーション専門医がいる(2)看護・介護のスタッフ数が多い(3)療法士によるリハビリ時間が長い-などを挙げる。

(3)は最低でも1日2時間以上、できれば3時間の実施が理想だ。また、土日祝日も平日と同様のリハビリを提供するかどうかも目安になる。

 同協会のHP(http://www.rehabili.jp/)で全国の会員病棟一覧が見られる。

怖い、冬の寒さが引き上げる「脳梗塞リスク」 死や重い後遺症…検査で予防



FC2 Analyzer冬の寒さにより血圧が上昇、血管が収縮することでリスクが高まるのが脳梗塞だ。脳梗塞を含む脳卒中は日本人の死因第4位で、命を取り留めてもまひや言語障害など重い後遺症に苦しむ人も多い。

その主な要因はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)だ。専門家は生活習慣への注意と簡便な検査を利用しての脳梗塞予防を呼びかけている。(山本雅人)

 ◆長い治療期間

 「生命の危機を脱しリハビリまでこぎ着けても完全に治る人は少なく、不自由な生活をその後何十年も続けている人をたくさん見てきた」。

血管内治療の権威で東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸(とまる)貴信教授は、脳梗塞での救急搬送の実情をこう語る。

 脳卒中には、脳の血管が破れ出血する脳出血と、血管が詰まる脳梗塞がある。脳出血が減少する一方、動脈硬化を主原因とした脳梗塞は激増している。「脳卒中データバンク2009」などによると、脳卒中のうち75%が脳梗塞となっている。

 脳梗塞の恐怖は、3時間以内に治療に着手しないと死亡や後遺症のリスクが高まることだ。地方など医療環境が整っていないところでは、時間内に治療に至らないこともあるのが実態だ。

入院日数は平均93日と長いうえ、退院後も長期のリハビリが続く。また、高額な医療費が家族にとっても大きな負担になっている。

 ◆頸動脈エコー推奨

 メタボで内臓脂肪が蓄積すると、脳梗塞につながる頸(けい)動脈の硬化が進行しやすくなるとの報告がある。東丸教授は予防として「油脂分の多い揚げ物を食べる回数を減らし、エスカレーターやエレベーターを使わない生活を心がけてほしい」と話す。

 こうした予防に取り組むほか、自分の血管の状態を知ることも大切だ。頸動脈の血管壁の厚さや詰まり具合は、頸動脈エコー検査で調べることができる。

 頸動脈エコーは原則、通常の健康診断には含まれていない。このため、東丸教授は人間ドックなどの受診でこの検査を上乗せすることを勧める。頸動脈の分岐部の動脈硬化は脳梗塞の原因となる。

また、最近の研究で、頸動脈の状態が頭蓋内部の血管の状態も反映していることが分かってきた。簡便な頸動脈エコーで脳梗塞の前兆をかなりの程度推測することができるという。

 東丸教授が循環器専門外来を担当する汐留シティセンターセントラルクリニック(東京都港区)では、標準的な人間ドックより低額で、脳梗塞と心筋梗塞のチェックに特化した「循環器ドック」を実施している。

頸動脈エコーも含まれており、企業単位で受けるところも増えつつあるという。

 東丸教授は「人間ドックなどの場合、頸動脈エコーは6千円前後で追加できる。1回飲みに行くお金を節約し、それを命を守るために使うという意識を持ってほしい」と語る。高

血圧や肥満など脳梗塞リスクのある人は30代なら5年に1度、リスクのない人でも50代になったら2、3年に1度受けることをアドバイスしている。

 ■起床後1時間も要注意

 東丸教授によると、ここ数年、欧州では冬の気温低下により脳梗塞や心筋梗塞の発症が増加するとのデータが相次いで発表されており「冬にレストランで食事後、屋外に出た直後に脳梗塞や心筋梗塞を起こす人が多いことから、大きな温度差は血管を直撃するとの共通認識がある」と話す。

 また、一日の中では、血圧や脈拍が不安定になる朝に発症するリスクが高まるといい、「起床からの1時間は特に注意してほしい」。目を覚ました後、布団の中で手足を5分くらい動かすだけでもリスク軽減になるという。

こんな症状があったら、即病院へ。見逃してはいけない脳卒中のサイン「ろれつが回らない」



FC2 Analyzer食生活の変化などが原因で、脳卒中の若年化が進んでいると言われています。

痛みを伴う心臓発作と違い、脳卒中の初期症状は痛みがありません。アメリカの医師であり、脳卒中の専門家ヘイディー・モワド氏によれば、脳卒中の30%が、初期の3週間では診断未確定のままになりえるという研究結果もあるそうです。

そのため、重症になる前に適切な処置を受けるためには、脳卒中の症状を知っておくことが大切です。

モワド氏は、About.comで、次のような症状が出たら脳卒中を疑い、すぐに病院へ行くべきだとアドバイスをしています。

■顔の片側、片腕、片手、または片方の脚が動かしずらい。

■まぶたが垂れる、ろれつが回らない。

■視覚の変化:ぼんやりと見える、物が二重に見える、目が見えない、部分的に見えない。

■バランス感覚がおかしくなる:歩いたり、手を使うことが出来ない。

■感覚の異常:麻痺、チクチクしたり、焼けるようにビリビリする感覚が、体の片側だけに起こることが多い。

■激しい頭痛、めまい-脳卒中の他、別の神経系の病気の可能性も。

■話せない-言葉が出てこない、人の言葉が理解できない

脳卒中には、脳梗塞や、脳出血など様々なタイプがあります。ダメージを受けている脳の部分によって、出る症状が違うことにも要注意です。

初期の症状では、緊急性が感じられず、見過ごしてしまうことが多いようです。少しでも異変を感じたら医師の診断を受けましょう。

また、症状が出ている時には、言葉で助けを求められなくなったり、本人の判断力も奪われてしまうことがあります。

周りの人が脳卒中のサインに気づき、救急車を呼ぶなど、素早い対応をすることが求められます。

“元気で長生き”は食生活改善から 肉・魚の摂取で防ぐ冬場の脳卒中と心筋梗塞(1)


厚生労働省「平成25年人口動態調査」によると、昨年1年間で脳梗塞と急性心筋梗塞で亡くなった人は全国で10万9923人、1日当たり300人以上になる計算だ。それを月別推移で見ると、11月以降、寒さが厳しくなると死亡者が急激に増える傾向にある。

 一般的に脳卒中は、血液中にできた血栓(血の塊)が動脈に詰まり、酸欠のために脳組織が壊死、またはそれに近い状態になって発症する病気だ。脳の場合、動脈が90%以上詰まると脳梗塞などを発症するが、自覚症状がないため厄介な病とされる。

 「障害が起きた場所によって意識が無くなったり手足が麻痺する発作が起きます。たとえ命が助かっても、運動障害や言語障害などの後遺症が出る場合があります」(医療ライター)

 一方の心臓病は、血管が70%以上詰まると発症するが、こちらも寸前まで自覚症状がほとんどないため、「健康な人が突然倒れた」と、急な異変に関係者は慌てふためく。最悪の場合、予期しない“突然死”に至るケースが少なくないのだ。

 これは疾患の特徴ともいえる現象だが、心筋梗塞以外でも狭心症、不整脈、心筋疾患、心不全など、突然死は心臓病によるものが8割近くに達しているというから油断できない。

 「こうした脳疾患の病気や心臓病は、いずれも気温差が大きくなる11月を境に増えます。専門家の間では寒さが直接の原因かどうか意見が分かれますが、大きな要因として挙げられるのは確かです」(同)東京都立多摩総合医療センター・循環器科担当医もこんな指摘をする。

 「やはり“寒さ”と“早朝”は、狭心症などの心臓に悪い。これは寒冷の刺激によって皮膚血管が収縮して抵抗が増し、血圧が上昇するため、心臓に負担が増すことが一つの原因。

また、体が冷えると血管を詰まらせる血栓ができやすくなります。もともと血栓は体の防御反応と関係があり、血液中には止血のための血液を固まらせる血小板が含まれていて、この血小板がストレスを活性化させる。

つまり、寒さはストレスの要因の一つになるということです。最近の研究では、赤血球も寒さによるストレスで変形して大きくなり、血液が固まる原因になることもわかってきました」

 では、寒さに負けず病気を防ぐには、どんな点に心掛ければいいのか。女子栄養大短期大学部の松田早苗准教授は、こう語る。「体の冷えが続くと免疫力がなくなり病気になりやすく、内臓の働きも悪くなります。

これを改善するには、体内で熱を作らなければなりません。それには、食事や筋肉量が大きくものをいうため、バランスの取れた食事をしっかりと食べなければいけません。

 これからは体を温める食品が出回る季節ですが、それだけに頼るのはNG。ま

ず、ご飯などの主食、メーンのおかずとなる主菜、小鉢など副菜2種類が揃う定食形式の食事を一日3食、しっかりと摂ることが大事です。副菜の一つは、具だくさんの汁ものでもいい。多品目を摂るように心掛けたいですね」

 また、他の管理栄養士によると、食事をすると体内に熱が生まれ、その熱量は何を食べたかで異なるという。中でも体温を保つための熱を多く生み出す「タンパク質」は最も重要。つまり、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などを積極的に摂ることが大事というわけだ。

脳梗塞に注意!普段から気を付けること


「脳梗塞」というと「お年寄りの病気ですね」なんて思っていませんか。そんなことはありません。最近では「若年性脳梗塞」についても知られるようになってきました。また、日本人の死因として上から数えた方が早い、誰もが発症の可能性のある病気です。「脳梗塞」にご用心!です。

■脳梗塞は日本人の死因のワースト3

2012年10月までの、最新の厚生労働省による「国民の疾病による死亡原因統計」(死因簡単分類)では、脳梗塞は、肺炎、肺ガンに次いで死因の第3位となっています。

肺炎:100,880人
肺ガン:59,223人
脳梗塞:59,066人

(平成24年度1月-10月 累計実数)

脳梗塞の場合は分かりやすい初期症状がありません。普段の生活で少しずつ発症のリスクが高まっていく厄介な疾病なのです。

■脳梗塞を起こす血栓のメカニズム

脳梗塞は、脳の血流が悪くなり、脳細胞が壊死したりする病気です。その多くは動脈硬化の進行によって血管が細くなり、そこに血栓(けっせん)と呼ばれる血の塊が詰まる、またはよその場所から血栓が運ばれてきて脳で詰まって起こります。

しかし、血栓は実は悪いことばかりをしているのではありません。血栓は損傷してしまった血管を修復する働きをするのです。また、使わなくなった血栓は、血流を滞らせる恐れがあるため、普通は血液に溶かしてしまいます。

この血栓を溶かす働きをするのが「プラスミン」という酵素です。プラスミンは「タンパク質分解酵素」と呼ばれるもので、普段は「プラスミノーゲン」という形で血漿(けっしょう)に含まれています。

そして、いざプラスミンが必要となると、働くようにできています。なので、血栓で血流が止まるようなことには普通ならないのです。人間の体はよくできていますね。

ところが、年をとってくる、またストレスがひどくなってくると、プラスミンの働きが衰えることがあります。また、血液がドロドロ状態である(血液の粘性が高い)と、血栓が血液に溶けにくくなってしまうのです。

■自覚症状は見当たらない!?

発症までほとんど自覚症状がないのが脳梗塞の特徴ともいえます。またMRIなどで小さな梗塞が見つかっても、すぐに深刻な事態になるとは限りません。しかし、それを放置すると脳梗塞を引き起こすリスクが高まるといわれています。

ですから、もし健康診断で数ミリの梗塞が見つかったら専門医に相談しなければなりません。また、発症まで自覚症状がほぼない脳梗塞ですが、以下のようなことがあるなら、(たとえ脳梗塞ではないにしろ)すぐにお医者さんに行くのが良いでしょう。

●足がもつれることがある
●片目が見えなくなることがある
●体の半身がしびれたように感じる
●ろれつが回らないことがある

■「若年性脳梗塞」の報告も上がっている

脳梗塞は、血管硬化の進んだ年配の人ばかりが発症するのではありません。現在では「若年性脳梗塞」が知られています。「若年性脳梗塞」は、40歳以下、極端な場合では20歳代でも発症することがあります。

この場合には脳梗塞の原因は「脳動脈解離」「もやもや病」「抗リン脂質抗体症候群」など、体質的に血管が詰まりやすいことによって起こると考えられています。

■脳梗塞の予防とは!?

「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「肥満」「運動不足」「ストレス」「喫煙」「加齢」が脳梗塞を引き起こす要素として指摘されています。心当たりがある人は十分に注意が必要です。

脳梗塞は血管の硬化、血管が弱くなること、血栓が溶けにくくなることが原因ですから、それを防ぐようにすることが予防になります。

●魚を食べることを心がけましょう
魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。EPAには動脈硬化を予防する作用があることが知られています。またDHA(ドコサヘキサエン酸)にはコレステロール、中性脂肪を下げ、こちらも動脈硬化を予防する力があります。DHAはサバ、サンマ、イワシなどの青魚に多く含まれています。

●運動をしましょう!
肥満、高血圧、脂質異常症などは密接に結びついています。ですから肥満を解消することは重要です。運動不足はエネルギーの代謝を悪くします。毎日適度な運動をすることは脳梗塞の予防にもなります。

●水分を取ることを心がける
脱水症状は血液の粘性を高めます。ですから、脱水症状にならないように水分を多く取るよう心がけましょう。特に二日酔いのときなどはアルコールの利尿作用などもあって、体が水分不足になっています。また夏の起床時などが脳梗塞を引き起こしやすい時期です。起床時にコップ一杯の水、などを習慣にすると良いといわれます。

脳梗塞は、たとえ命を取り留めたとしても体に障害が残ったりなど、大変に難しい病気です。普段から脳梗塞を予防するような生活をしたいものです。*……死因のワーストデータは、「症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの」「傷病及び死亡の外因」を除いています。

10代でも起こりうる脳梗塞 スノボや鉛筆も原因に?


まだ40歳だから関係ないと思うことなかれ。ストレス社会が、脳梗塞の発症リスクを高めていることを知るべきだ

 タレントの磯野貴理子さん(50)が脳梗塞で入院した。所属事務所によると、10月23日に自宅で体調不良を訴え、救急車で病院に運ばれた。

 脳梗塞は脳の血管が狭くなったり、血のかたまり(血栓)が詰まったりして、脳細胞が壊死する病気だ。

かつては高齢者に多いとされてきた病だが、テレビ東京のアナウンサー、大橋未歩さん(36)やミスター・チルドレンのボーカル、桜井和寿さん(44)は、いずれも30代前半で発症している。

「脳梗塞は10代からでも起こり得る病気です」

 そう話すのは、立川病院(東京都立川市)顧問で、神経内科医の篠原幸人医師だ。若年性脳梗塞は、脳に異常な血管が発達する病気や、血液が固まりやすい病気など、特殊な背景があるケースが多い。

頭や首のけがで脳梗塞になることもある。スノーボードで転倒して首を強くひねったり、子どもが鉛筆をくわえたまま転んで口の奥を突いてしまう場合などだ。

 脳梗塞は働き盛りの30~50代でも無縁ではいられない病気なのだ。篠原医師は言う。

「高齢者と同じような動脈硬化による脳梗塞患者が、40代後半でも増える傾向にあります。ストレスも血圧を上げる要因です。昔に比べたら生活自体がストレスフル。現代社会は動脈硬化の促進因子が増えています」

クモ膜下出血 買い物や就寝中などいつでも発症の可能性あり


片頭痛は何度も同じ痛みを繰り返すが、意識の障害はなく命にかかわるものではない。しかし同じ頭痛でも、今まで経験したことがない痛みに突然襲われ意識障害やマヒ、言葉がしゃべれないなどの症状を伴う怖い頭痛は放置してはいけない。

 怖い頭痛の筆頭はクモ膜下出血だ。年間、日本人の5000人に1人がクモ膜下出血になり、そのうち40%が3日以内に死亡している。脳は頭蓋骨の中で、硬膜とクモ膜、軟膜に守られている。

クモ膜から吊り橋のような線維が出て脳の表面を覆う軟膜との間にクモ膜下腔を形成し、その中を脳脊髄液と太い動脈が通っている。その血管が破裂したり、血液が沁み出すのがクモ膜下出血だ。

 東京女子医科大学脳神経外科学の岡田芳和主任教授に話を聞いた。

「脳の表面の太い血管にある動脈瘤が破裂するのがクモ膜下出血で、この時、血管と硬膜に激しい痛みを感じます。血液は脳脊髄液と混じり、脳の表面が血だらけになります。

 その後、頭蓋内圧が急激に高くなり、呼吸や循環など生命維持に不可欠な機能が失われます。クモ膜下出血は買い物途中や就寝中など、いつでも発症する可能性があります」

若くても起こる脳梗塞!その体調異変、本当に大丈夫?


磯野貴理子さんが脳梗塞により緊急入院したというニュースが話題になっています。いつも明るく元気なイメージがあったため、驚かれた人も多いでしょう。脳梗塞は高齢者の病気というのは今は昔、実際は若年での発症患者数が増えてきているのはご存じですか?

◆脳梗塞ってどんな病気?

脳梗塞は脳の血管がつまって起きる病気。高齢者に多い病気と思われがちですが、現代では若くして発症するケースが増えてきています。記憶に新しいところでは、2002年にミスターチルドレンのボーカル桜井和寿さんが32歳で、昨年にはアナウンサーの大橋未渉さんが34歳という若さで発症しています。

その原因はさまざまですが、脂質異常症や糖尿病など、生活習慣病が原因になることが少なくありません。

また、それらが原因で発症する一般的な脳梗塞とは別に、50歳以下で、首や脳に強い衝撃を受けたり、血管や血液に先天的な疾患があったりすることで起こる「若年性脳梗塞」というものもあります。
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◆発症のサイン(前兆)とは?

一般的な脳梗塞では、多くの場合において発症の前兆が見られます。もちろん個人差はありますが、脳梗塞と診断されたあとで「そういえばあのとき、なにかおかしいと思った」ということがよく聞かれます。

たとえば、歌手の西城秀樹さんは、48歳で最初に発症したとき、「鏡に映った自分の顔が歪んでみえた」、前述の桜井さんの場合は、「携帯電話の操作がしづらくなった」といいます。また、大橋アナウンサーは、夜、顔を洗っているときに左手が動かなくなり、その場に倒れこんだそうです。

代表的な症状として挙げられるのは、目がかすむ、ものが二重に見える、顔や手足の片側がしびれる、足がふらつく、転びやすくなる、ろれつが回らない、一時的に言葉が出なくなる、相手の言うことが理解できない、といった症状。若年性脳梗塞では、これらの一般的な脳梗塞の前兆に加え、頭や首に痛みを感じることが多いといわれています。
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◆発作が一時的でも病院へ!

発作によっては少し時間が経てば症状がおさまることがあるため、おかしいなと思っても病院へ行かないという人がみられます。しかし、こういった一過性の発作を放置しておくと、本格的な発症につながる確率が高まります。

脳梗塞は発見が遅れると、重い後遺症が残ったり、最悪のケースでは死にいたったりすることもある病気ですが、前兆に気づいた段階で対処すれば、大事にいたらないようにすることが可能。大橋アナウンサーのように、倒れてもすぐさま病院へ搬送されたことで後遺症が残らなかったケースも多々あります。

自身だけでなく、一緒にいる家族や友人が、いつもと何か違う、おかしいなと思ったら、すぐに病院に行くことを心がけてください。

手足のまひ回復に成果 注目されるリハビリ法「機能的電気刺激」


現在わが国の脳卒中患者は約137万人(平成17年厚生労働省調べ)。その多くが手足のまひなどに悩んでいる。そうした中、機能的電気刺激(FES)という新しい治療法が登場し成果を上げている。

最先端ロボットリハビリ外来を持つ「光仁会第一病院」(東京・金町)は、昨年FESを導入。担当医師の二宮淳一氏にその有用性を聞いた。

 FESは、脳卒中や脊髄損傷などでまひした手足の筋肉を、コンピューター制御の電気刺激で動かしリハビリ効果を高めるもの。

手足の表面から電極を使って刺激を与えるが、それを患者が自分で容易にできるようにしたのが、フランスベッドのハンドリハビリシステム「H200」とフットドロップシステム「L300」だ。これにより、治療やリハビリの幅が飛躍的に広がった。

 「ハンディータイプなので、在宅で使用できるのが大きい」と二宮医師はこのシステムを高く評価する。

「当院は、数年間リハビリを続けても効果の出ない、いわば“慢性期”の患者が多いのですが、FESはそんな人たちにも顕著に成果が表れ始めています」という。それがインターネットや口コミで広がり、最近は全国から患者が訪れる。

 「1年間で約30人の患者にFESを使いましたが、何の変化も表れない人はいません。

ただ、脳神経の再生スピードは月1ミリに満たないほど遅いので、たとえすぐに成果が出なくても、諦めず気長に取り組むことが大事です」と二宮医師。「うまくいくかいかないかではなく、やるかやらないか」をモットーに患者と接し、アドバイスする。

 FESは医師の目の届かないところで使用するケースがあるだけに高い安全性も求められるが、これについては、「認知症の人など誤使用の可能性がある場合は、ご家族への指導を徹底し、細かい確認を行いながら続けています」という。

そうしたリスクを軽減し、遠方の患者をフォローするために、同院ではこの春から、インターネットを使った遠隔相談も始める予定だ。

美容院のシャンプーでめまいや吐き気? 「美容院脳卒中症候群」


■なぜか美容院のシャンプーで体調を崩してしまう

 美容院のシャンプーは気持ちよくてリラックスでき、うたた寝してしまいそうになることもよくありますね。しかし、なぜかこれがきっかけで具合が悪くなってしまい、途中でシャンプーを中断する必要が出てしまう人がいます。

 このようなケースは意外と多く、「美容院脳卒中症候群」と呼ばれることがあります。「脳卒中」という言葉が含まれると恐ろしくなってしまいますが、症状の程度には個人差があり、病院で診察を受けるべき人もいれば、体を休めるだけで回復する人もいます。

■「美容院脳卒中症候群」の症状とは

 主な症状は、以下のようなものです。

・吐き気がする
・ふらふら、ふわふわとめまいがする
・手足がしびれる
・冷や汗がでる
・首や後頭部に痛みを感じる
・ひどいケースでは、嘔吐や強い頭痛

 原因としては、シャンプーの際に首を後ろへ反らせる姿勢をとることがきっかけになっていると考えられます。無理な姿勢によって、頸椎を通り脳へ繋がる動脈が圧迫を受けることにより血流が低下し、上記のような症状が表れます。

 また、それに伴い小さな血栓ができることもあります。その上で姿勢を元に戻した場合、血液が勢いよく流れることになるため、血栓が血管内に押し流されてしまいます。それが詰まってしまうと脳卒中になる可能性があるのです。

■気持ちが悪くなってしまったらどうする?

 シャンプー中にめまいや吐き気を感じた場合、我慢をせずにすぐに美容師さんへ伝え、休ませてもらいましょう。休むことで症状が回復するケースも多いですが、症状が変わらない場合や悪化するようなときは、神経内科や脳神経外科を受診しましょう。

 手足のしびれや手足が動かせない、ろれつがまわらなくなる、激しい頭痛などがある場合は、迅速な受診が必要です。また、美容院から帰宅した後に発症することもありますので、体調の変化には注意をしておきましょう。

■快適に美容院でシャンプーをしてもらうには?

 美容院のシャンプーで気持ち悪くなってしまったという人でも、以前はシャンプーをしても全く問題がなかったといった場合が多いです。生活習慣やストレスなどの影響で、美容院脳卒中症候群の症状を生じやすい状態になってしまったと考えられます。

 予防の基本は、「血流の滞らないような生活を送る」ということです。注意点は多岐に渡るため、すべてを気を付けるというのは難しいですが、できることから心がけてみましょう。

1. 水分をしっかりと摂りましょう

 汗をかいていないように感じたり、喉の渇きも特に無いと思っていても、意外と汗はかいているものです。脱水の状態に近づくと、血液の流れが悪くなる可能性を高めます。喉が渇いていなくても、水分をしっかり摂りましょう。

2. お酒の飲み過ぎに注意しましょう

 「お酒はいくらでも飲めるから、水分は足りているはず」と安心していませんか? 実は利尿作用のあるアルコール。お酒をたくさん飲んでも、水分が外に出てしまうのです。お酒だけでお腹をいっぱいにせずに、スポーツドリンクなど、アルコール以外の水分も摂りましょう。

3. リラックスをする時間を設けましょう

 ストレスの多い生活を送っていると、いつのまにか首や背中の筋肉が緊張して、頸椎を始め背骨の柔軟性が低下します。その状態で、シャンプー台に仰向けになると、ネッククッションの当たりが強く感じて、首に痛みを生じることがあります。

4. 運動不足はなるべく解消しましょう

 美容院へ行く前に両肩を上下に動かしたり、肩甲骨を動かしたりと軽く筋肉を緩めておきましょう。日ごろから、ウォーキングや水泳などの運動を続けることができると理想的です。

■お客様の体調を配慮したサービスをする美容院も!

 美容院によっても、シャンプー台の種類はさまざまなようです。首の負担軽減を考慮したものを使用している美容院もあるようですので、心配な場合は直接美容院へ問い合わせてみるのも良いかと思います。

また、頭を揺らすような洗髪の方法で発症することも多いため、揺らさないようにシャンプーをしてくれる美容院も多いようです。もしシャンプー中に気になることがあれば、積極的に美容師さんに伝えるようにしましょう。

脳卒中マヒの新リハビリ「ニューロフィードバック」で劇的改善


脳卒中によるマヒの新たなリハビリとして注目を集めているのが「ニューロフィードバック」だ。開発者の大阪大学神経内科学・三原雅史特任助教が昨年、国際的な医学雑誌「Stroke」に発表した。どういうものなのか?

 脳卒中で脳細胞がダメージを受けてマヒが残ると、指や手、足が思うように動かせなくなる。これに対してリハビリが行われるが、一般的な方法は、マヒした指、手、足を、できる限り動かし、ダメージを受けた脳細胞の周辺を刺激して、活性化させるというものだ。

「ところが重症のマヒでは、手や足を動かしたくても動かせない。作業療法士の助けを借りても、なかなかうまくいかない。

脳細胞は使わなければ、どんどん機能が衰えていきます。『マヒで動かない→脳細胞の機能が衰える→より動かない』といった負のスパイラルが生まれるのです。これを断ち切るのが、ニューロフィードバックです」

 スポーツ選手はイメージトレーニングとして、理想的なフォームを頭の中で繰り返し描く。ニューロフィードバックもそれと似ている。

「マヒした指、手、足を動かすことを繰り返しイメージしてもらいます。それによって、手足の動きと連動している脳の運動野の脳細胞が活性化されるのです」

■脳の動きを“見える化”

 ただ、「イメージ」なので、脳の必要な部分が本当に活性化されているかがはた目には分からない。さらに、実際はできないことをイメージすることは、それ自体が難しいという。

「指を動かしている“映像”を思い浮かべるのは比較的容易にできますが、それは指を動かすことをイメージするのとは違います。活性化させたい部分の脳を使えているか、きちんとイメージできているかを客観的にチェックするために、近赤外分光法(NIRS)を用いました」

 患者は近赤外分光という光線を発するヘルメットのようなものをかぶり、モニターの前に座る。近赤外分光は皮膚や頭蓋骨などを透過し、ヘモグロビンなどの生体内色素に吸収される性質がある。脳は活性化すると、その部分の血液量が増える。適切に脳が活性化されていると、モニター上で棒グラフが伸びる。

「運動に関連する部分がうまく使えていないと、棒グラフは伸びません。つまり、活性化させたいと思っている脳の部分を使えているかどうかが、棒グラフの伸びで明らかに分かるのです」

 三原医師は、マヒがある脳卒中後3カ月の患者20人を対象に実験を行った。10人ずつ2グループに分け、一方は脳の働きに応じて棒グラフが表示される方法(脳の働きを客観的にチェックできる方法=A)、

もう一方は脳の働きとは関係なく棒グラフが表示される方法(脳の働きを客観的にチェックできない方法=B)で、週3回2週間、マヒ部分を動かすイメージを持ってもらった。すると、A群の方が、B群より指と手の動きの機能改善が上だった。

「14点満点中、Bは平均1~2点でしたが、Aは3~4点でした」

 マヒした指などをうまくイメージできるようになるまで時間がかかる人もいるが、逆上がりと同様にコツをつかめば後は簡単だ。

「現在は、脳卒中のリハビリで入院中の患者さんにご希望で行っていますが、ゆくゆくは外来でも行う予定です」

 近赤外分光を発する機械が必要なので、まだ広く普及しているわけではないが、それも遠い先のことではないだろう。

脳梗塞リスク大きい「隠れ心房細動」 スマートデバイスで見つけ出す


宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」

腕時計型のスマートデバイスでも

脳梗塞の最大のリスクファクター

感度95% 特異度98%

健康格差が広がる懸念も

ピーナツの摂取量が多いと脳梗塞の発症リスクが低下


国立がん研究センターなど「多目的コホート研究」グループ
 ピーナツの摂取量が多い人は少ない人に比べて、脳梗塞(こうそく)の発症リスクが低いとの研究結果を、国立がん研究センターなどでつくる「多目的コホート研究(JPHC研究)」の研究グループが発表した。

 ピーナツには、不飽和脂肪酸やミネラル、ビタミン、食物繊維などが多く含まれている。欧米の先行研究では、摂取が循環器疾患の予防に有効であるとされているが、アジアからの研究報告は初めてとしている。

 米医学誌「Stroke」(オンライン)に9月9日掲載された。

7万5000人を追跡調査
 1995年と98年に、岩手や秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に住む45~74歳の人で、食事アンケートに回答し、循環器疾患やがんになっていなかった約7万5000人を2012年まで追跡調査した。

 摂取量が少ない順に四つのグループに分け、最も少ないグループを基準として比較した。脳梗塞や脳出血などの脳卒中と、心臓の筋肉に栄養を運ぶ冠動脈が詰まることで起きる心筋梗塞などの虚血性心疾患の発症リスクを調べた。年齢、性別などによる影響を統計学的に調整した。

脳卒中全体で16%減、脳梗塞は20%減
 追跡期間中に3599人が脳卒中(うち脳梗塞2223人)を、849人が虚血性心疾患を発症した。その結果、ピーナツの摂取量が最も少ないグループ(1日当たりの摂取量の中央値0グラム)に比べて、最も多いグループ(同4・3グラム)は、脳卒中全体で16%、脳梗塞に限ると20%、発症のリスクが低かった。

 脳卒中のうちの脳出血と、心筋梗塞などの虚血性心疾患では、摂取量との関連はみられなかった。

 脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患全体では、脳卒中のリスク低下によって、13%リスクが低下した。

虚血性心疾患との関連はみられず
 今回の結果について、研究グループの池原賢代・大阪大学特任准教授(公衆衛生学)は、「ピーナツに多く含まれる不飽和脂肪酸にはLDLコレステロールを下げる作用があるほか、食物繊維には血液凝固因子や炎症反応の減少、血糖値の急な上昇の抑制、ビタミンEには抗酸化作用が報告されており、脳梗塞の発症リスク低下との関連がみられたと考えられる」と解説する。

 一方、欧米の先行研究では、虚血性心疾患の発症リスクの低下が報告されているが、今回の研究では関連がみられなかった。欧米と比べて、ピーナツの摂取量そのものが少ないことや、虚血性心疾患の発症が少ないことが理由ではないかとしている。

取り過ぎには注意を
 池原特任准教授は、「摂取量が最も多かったグループでも1日当たりでは4グラム程度と、欧米に比べればかなり少ないが、それでも脳卒中のリスク低下と関連がみられたことが注目される」と話す。

 そのうえで、「ピーナツは食後血糖値が上がりにくい食品である一方で、カロリーが高いために取り過ぎても良くない。それぞれの食生活の中で無理なく取り入れるのがよいのではないか」としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

病気の早期発見・予防で節約!脳梗防げば生涯450万円の差に


病気になってもポックリとは逝けずに、お金を払って生きながらえる。それが、医療が発達した令和の現実。大病を防いで、健康でいるのがなによりの節約につながるのだーー。

「現状、大学病院などの大病院を初めて受診する際、紹介状がないと、診察料とは別に5,000円以上の負担があります。その負担が引き上げられる可能性があるのです」

こう話すのは、国の医療制度に詳しい社会保険労務士の石田周平さん。厚生労働省の諮問機関・社会保障審議会において、前述の費用を引き上げる方向で現在、議論がなされていると、11月19日付の読売新聞で報じられた。

「国は高齢者を中心に病院窓口での自己負担率を上げる傾向にあり、初診時の別負担増加もその流れ。紹介状を持って大病院を訪れるためには、『かかりつけ医』を持つことが重要です」(石田さん)

日本医師会によると、かかりつけ医とは《健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師》のこと。「医療情報ネット」などのウェブサイト上でも、探すことができる。

厚労省「上手な医療のかかり方」プロジェクトの担当者は、かかりつけ医を持つメリットを次のように説明してくれた。

「同じ先生に継続して診療を受けることで、体質や、生活習慣、なりやすい病気などを把握してもらうことができます。体調不良を気軽に相談できれば、大きな病気の早期発見や予防につながるはず。専門的な検査や治療が必要となった場合には、症状に適した専門医療機関を紹介。もちろん紹介状も書いてもらえます」

かかりつけ医を持たないいちばんのデメリットは、日ごろの健康管理がおろそかになり、病気やその予兆を発見するのが遅れてしまうことだ。そのせいで入院となれば、かなりの出費となる。

「かかりつけ医を持ち、病気を予防・早期発見することで、大病を防ぐことがいちばんの節約になるんです」(石田さん)

では、かかりつけ医がいることで病気を予防・早期発見できた場合と、そうでない場合で、どれくらい金額に差が出るのだろうか? 石田さんに「脳梗塞」「糖尿病」「乳がん」という3つの疾病に関して、かかりつけ医が「いる」「いない」のそれぞれで、50歳から90歳までの40年間にかかるお金をシミュレーションしてもらった。

【脳梗塞】

血圧が高い50代女性についてシミュレーション。まず、かかりつけ医がいて、高血圧を治療している場合、月1回診察を受け、薬代を含めて月額4,000円(自己負担3割分)がかかるとすると、40年間で192万円の出費に。

一方、かかりつけ医がおらず、高血圧を放置し60歳で脳梗塞となり倒れてしまった場合。容体により入院日数はさまざまだが、脳疾患患者の平均入院日数である78日間(厚生労働省「平成29年患者調査」より)入院したとする。

また、脳梗塞における一入院費用の平均値159万7,077円(公益社団法人全日本病院協会「医療費(’19年度)」より)に、高額療養費制度を適用したとすると、一入院あたりの費用は25万円弱。そこに、78日分の食事代を足すと35万円強が自己負担金額となる。

「そこで完治すればいいのですが、後遺症が残る場合も多いのが脳梗塞。《要介護1》となり、介護費用として毎月1万6,765円かかることになれば、30年間で約604万円の出費となります」(石田さん・以下同)

つまり、入院費と介護費用を足した639万円から、かかりつけ医がいる場合の費用192万円を引いた「447万円」が、「かかりつけ医がいれば減らせる出費」だとわかる。

【糖尿病】

かかりつけ医によって血液検査で血糖値の高い糖尿病予備群であることが発覚。毎月、食事・運動療法の指導を受けた場合、毎月の医療費が2,000円だとすると、40年間で96万円の出費に。

一方、かかりつけ医がおらず、高血糖を放置した場合。60歳になったある日、起き上がれないほどのだるさを感じ病院を受診し、そこで初めて糖尿病が発覚……。

「60歳で糖尿病が判明し、インスリン注射が必要になったとします。診療費・薬代の合計で毎月1万2,000円かかるとすると、30年間で432万円かかる計算です」

この432万円から、前述の96万円を引いた「336万円」が、「かかりつけ医がいれば減らせる出費」となる。

【乳がん】

風邪やちょっとした体調の変化で、かかりつけ医を受診。年に3回受診したとして、ふだんの通院費は40年間で12万円。そのなかで、自治体実施の乳がん検診を勧められ、55歳のときに乳がんを早期に発見できたとする。

がんの治療費などの情報を提供するサイト「がん治療費.com」の小郷浩之さんによると、早期乳がんで、乳房温存手術、再発予防抗がん剤、放射線治療、ホルモン療法などを行った場合、99万円が自己負担金額となる。

一方、かかりつけ医がおらず、検診を受けていなかったばかりに、60歳になって乳がんが進行した状態で発見された場合、治療にかかる自己負担金額は123万円に。術前に行う薬物療法や、術後の抗がん剤治療期間が長引くといった理由で、費用がかさんでしまうのだ。

さらに本誌の調べによると、切除した乳房を再建する手術を行う場合、高額療養費制度を利用しても、約10万円が自己負担となる。つまり、123万円+10万円=133万円が「かかりつけ医なし」の場合にかかる費用だ。その結果「かかりつけ医がいれば減らせる出費」は「22万円」。がんは進行すると、別の臓器に転移する可能性もあり、そうなると出費はさらに増えるだろう。

かかりつけ医は、自分の健康を守るばかりでなく、無駄な出費も防いでくれるのだ!

日頃から「血栓」をつくらないためにはどうすればいいのか


 新型コロナウイルスに感染した人は「血栓」を引き起こすという。怖いのは無症状や軽症であっても、感染していれば血栓ができる人もいることだ。ときにそれが原因で病状が急激に悪化して命が奪われることもある。

冬はただでさえ心筋梗塞や心不全などの心臓病や脳梗塞といった血管の病気が多く起こる。どうしたらいいのか? 東邦大学医学部名誉教授で循環器疾患が専門の東丸貴信医師に聞いた。

 厚生労働省の統計によると、心臓病による死亡数は1月が最も多く、次いで2月、12月、3月と冬季に集中、夏季のおよそ1・5倍に上る。寒さで自律神経が刺激され、朝の外出時には交感神経の活動が強まる。

すると体熱を外に放散しないように血管が収縮するとともに、血圧も上昇する。月曜日の午前中に脳梗塞や心筋梗塞が多いのは、日曜日の休養後の仕事始めによるストレスが原因だと考えられる。

 しかも、冬は交感神経の活性化だけでなく、食生活の乱れやアルコールの取り過ぎもあり、血管が収縮したり血栓ができやすくなる。さらに、寒冷期の血圧の上昇、特に暖かい室内から寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動であるヒートショックで心臓や血管の負担が増え、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなる。

 だからこそ、高血圧症などの生活習慣病や動脈硬化による心血管病を有する人は、血栓ができやすい新型コロナウイルス感染症にはとりわけ注意が必要だ。とはいえ、感染を完璧に防ぐのは難しい。普段から血栓ができにくい体にするにはどうすればいいのか?

「デスクワークの多い人は1時間に1度は立ち上がって数分でも歩き回るか、足のブラブラ運動をすることです。さらに2時間に1度は席を離れて軽く体を動かしましょう。全身の筋肉が動かないと血流が滞り、代謝も行われないために血栓ができやすいからです」

 心臓に血液を戻す静脈には、皮膚に近いところにある「表在静脈」と、深いところにある「深部静脈」がある。下肢の深部静脈で血液が固まり(凝固)血栓ができることを「深部静脈血栓症」(DVT)といい、その血栓が心臓に飛んでいって肺動脈に詰まる病気を「肺血栓塞栓症」(PE=エコノミークラス症候群)という。座り続ける人はDVTやPEが多く、新型コロナウイルス感染症でもPEになる人が少なくない。

 食事も大切だ。血栓リスクを抑える効果が期待できる食材もある。

「納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を溶かす作用があります。クエン酸には、血液中の血小板が過度に集まるのを抑制する働きがあります。レモンやグレープフルーツなどのかんきつ類や梅干しなどに多く含まれているので、意識して取るといいかもしれません。

ナッツ類やアボカド、カボチャなどに多く含まれるビタミンEは、ビタミンC同様で活性酸素の働きを抑える抗酸化作用があり、過酸化脂質の生成を抑えてくれます。活性酸素によって血管内の脂質が酸化されると、過酸化脂質が発生します。それが血管を硬くし、詰まらせる原因のひとつとなっています」

 ポリフェノールにも抗酸化作用があるといわれ、それを摂取できる食品はブルーベリー、大豆、ゴマ、ソバなど。緑茶やココアなどといった飲み物にも含まれているという。

脳卒中後のリハビリは自宅でやるべき?


脳卒中後に麻痺がみられる患者に遠隔医療を用いて、自宅でリハビリテーション(以下、リハビリ)を行ってもらったところ、理学療法士による対面でのリハビリを行った患者よりも回復が良好だったとするデータが報告された。復旦大学(中国)のChuancheng Ren氏らが実施した研究の結果であり、詳細は「Neurology」10月27日号に発表された。

 Ren氏らは、脳卒中患者を、自宅でライブ動画を介した指導を受けながらリハビリを行う群(テレリハビリ群)と、対面でのリハビリを行う群(従来型リハビリ群)にランダムに割付けて、回復の程度を比較した。その結果、12週間後の運動機能は、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の方が高かったという。Ren氏らは「自宅でも参加できるという利便性の高さが、テレリハビリ群でのプログラム順守率を押し上げたのかもしれない。それが、従来型リハビリ群よりもテレリハビリ群の運動機能の改善幅が大きかった要因の一つである可能性がある」と考察している。

 一方、今回の報告を受けて、「遠隔医療を利用している患者に、対面診療を行っている患者と同等の治療効果が見られること自体は驚きでない。その考え方をリハビリにも当てはめるのは、理に適っている」と話すのは、米バージニア大学のAndrew Southerland氏だ。同氏は今回の研究には関与していないが、「医療機関に行くための移動、階段の昇り降りなどが負担になる人も多い中、遠隔医療は治療機会を広げる手段の一つとなり得る」と説明。また、「医療機関で行うよりも自宅の方が、リハビリという医療行為を受け入れやすくなるという面もあるのではないか」との見方を示している。

 この研究の対象者は、2017年7月~2019年1月に復旦大学付属第五人民医院で脳卒中治療を受け、片麻痺が残った52人。このうち半数は自宅で実施するテレリハビリのプログラムに参加し、残る半数は従来型の外来でのリハビリのプログラムに参加した。リハビリのセッションは、両群ともに作業療法と理学療法で構成され、1回当たり60分間かけて行われた。

 12週間のリハビリ終了時点で、上肢・下肢の運動機能の評価スコア(Fugl-meyer Assessment;FMA)は、テレリハビリ群の方が従来型リハビリ群よりも有意に高かった(P=0.011)。また脳内一次運動野の安静時機能結合(M1-M1 rsFC)は、テレリハビリ群で有意に強化されていた(P=0.031)。M1-M1 rsFCの変化はFMAの変化と有意な正相関が認められた(P=0.018)。

 ただしRen氏は、この研究の限界点として、リハビリを全く受けない対照群を設定しなかった点を挙げている。自然経過で麻痺が回復する可能性もあるため、介入を全く行わない対照群を設定していれば、実際の介入効果をより正確に評価できていたと考えられる。

 前出のSoutherland氏は、テレリハビリの実施に必要な条件として、患者が身体的にリハビリを行える状態であることが前提であり、かつ、「患者のサポートに当たれる介護者や家族の存在も、テレリハビリの成功に不可欠」としている。その上で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックをきっかけに、遠隔医療が浸透している現状を指摘。「遠隔医療の一層の普及には、保険償還システムなどの面での環境整備が重要であることを、政策立案者に認識してもらう必要がある」との見解を示している。

切れない、詰まらない「血管」を作る! 突然死リスクを下げる10のヒント


日本人の4人に1人が脳卒中や心筋梗塞など、血管の老化が原因で起こる「血管病」で亡くなる時代。医療関係者も今、「血管ケア」の重要性に注目しています。私たちが突然死から身を守るためにできることは──(構成=島田ゆかり イラスト=ラジカル鈴木)


〈血液老化度チェックテストはこちら〉

◆小さな兆候を見逃さないことが命を守る

心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞/脳出血)が怖いのは、普段から自覚のないまま進行する病気ゆえに、ある日突然、重篤な症状になるから。

血管が切れる(破裂する、解離する)のは、もとはゴムホースのようにしなやかだった血管が加齢や生活習慣により硬くなり、もろくなった結果です。よく耳にする「動脈硬化」は、この血管の老化現象のことを指します。また、血管の一部に血液がたまって「瘤」というこぶ状の膨らみ(プラーク)ができ、それが破裂するケースも。脳出血はこれが原因で起こります。

一方、血管が詰まるのは血管内のこぶが肥大化して血管が狭くなり、血液の通りが悪くなったところに血栓が詰まるから。それにより、その先にある細胞や臓器に血液が行かなくなって、細胞が壊死します。血栓とは、血管が傷ついたときそれを修復するために作られる血小板の塊。弱くなった血管は傷つきやすいため、血栓ができやすくなるのです。

どちらも自覚なく進行していきますが、小さな兆候はあります。「胸に違和感がある」「ときどき動悸がする」「手足がしびれる」などの症状は、血管が老化している、つまり動脈硬化が進みつつある前ぶれです。血管病における予兆は、すでに病気が進行している「初期症状」に該当しますので、気になる症状があれば、すぐに検査をし、血管ケアを始めることが必要です。

そして「ろれつが回らない」「まっすぐ歩けない」「顔の筋肉が左右対称に動かない」「胸をえぐられるような激痛がある」「口もとがだらりとして閉まらない」「理由もなく脚がむくむ」などのはっきりとした症状がある場合は、重度の危険サイン。命の危険が迫っている可能性があります。

●内皮細胞ケアで血管を強く保つ


◆血圧、血糖値、悪玉コレステロール値高めはリスク大

「今のところ、まったく気になる症状はありません」という方でも、血管病のリスクを抱えている場合があります。それは高血圧糖尿病、高コレステロールと診断された人。

血圧が高い状態は、血管壁が過剰に収縮し、血管に負担をかけ続けています。そのため、高血圧の人は血管が疲弊しやすく、老化が早いのです。また、血糖値とLDL(悪玉)コレステロール値が高い人は、血液中に過剰な糖やLDLコレステロールがあふれ、血液がドロドロの状態。血管に負担がかかるので、動脈硬化のスピードが加速します。健康診断などの血液検査で、この3つの項目は必ずチェックしましょう。

基準値を超えた人は赤信号ですし、正常範囲内でも基準値の上限に近い数値が出ている場合は黄色信号。血管ケアが必要です。また、血液検査の値が正常でも、肥満の人、喫煙習慣のある人は血管病のリスクを抱えています。40歳を過ぎたら自分の健康を過信せず、強い血管を作る生活習慣を意識したいものです。

◆強い血管は「内皮細胞」の状態で決まる

では、強い血管を作るためにできることは何でしょうか。そのカギは、「内皮細胞」にあります。血管は「外膜」「中膜」「内膜」の3層構造になっており、一番内側の内膜の中にあるのが「内皮細胞」です。

加齢や悪しき生活習慣により硬くなった血管は、元のやわらかくしなやかなゴムホースのような状態に戻すことはできません。できてしまったこぶも小さくなることはありません。しかし唯一、血管の内側にあるこの「内皮細胞」はケアによって、いい状態に生まれ変わらせることができ、こぶができても詰まりにくくすることができるのです。

内皮細胞は、皮膚のようにターンオーバー(生まれ変わり)します。皮膚は約28日周期で生まれ変わりますが、内皮細胞のターンオーバーは約1000日。長いと感じるかもしれませんが、疲れて傷ついた細胞組織が3年弱で生まれ変わり、血管の内側が強くなるならケアをしない手はありませんね。


◆内皮細胞をよみがえらせる3つの習慣

内皮細胞は、血管壁を守る「バリア機能」と、血管の拡張を促す「活性化機能」という2つの機能を備えています。これにより血液をよどみなく流し、血管壁を広げて血圧を下げ、血管の負担を減らすことができるのです。内皮細胞を元気に保つコツは、「内皮細胞の負担を減らし、良い刺激を与える」こと。そのためにできることは3つあります。

まず1つめは、内皮細胞を傷める要因を減らすこと。たとえば血液中のLDLコレステロールや血糖は、ストレスや生活習慣の悪さによって増える活性酸素の攻撃を受けやすく、これと結びつくことで悪玉物質へと変化するのです。

そしていずれも血管壁に侵入してこぶに入り込み、動脈硬化を促進させます。つまり、血糖値やコレステロール値を下げ、抗酸化力の高い食品を摂る、ストレスを減らすことなどで、内皮細胞を守ることができるのです。

次に、血圧を上げる要因を減らすこと。高血圧は血管病にとって最大の脅威です。なぜなら、動脈硬化の引き金になるばかりか、血管に血液を送り込むのに大きな力を必要とするので心臓に負担がかかるからです。血圧を高める主な原因は、肥満と塩分の摂り過ぎ。減塩の習慣と肥満の改善・予防により、いきいきとした内皮細胞に生まれ変わります。

なお、高血圧の判断基準は、医療機関や健康診断で測定する場合、上が140Hg以上、下が90Hg以上であれば高血圧となります。家庭で測定する場合は上が135Hg以上、下が85Hg以上となります。

3つめはサラサラ血液を心がけること。血管内を血液がスムーズに流れていると、内皮細胞に良い刺激が与えられ、血管を拡張して詰まりを防ぐことができます。ドロドロ血液の原因は、脂質と糖質の摂り過ぎ、食べ過ぎと栄養バランスの偏りです。バランスの良い食事は、内皮細胞を元気にすると覚えておきましょう。

次のページに「突然死リスクを下げる10のヒント」をご紹介しましたが、最も重要なのは食事です。とくに塩分の摂り過ぎが高血圧を招き、血管の老化を速めることになります。


突然死リスクを下げる10のヒント

強い血管はセルフケアで作れます。元気な内皮細胞を作り、血液がよどみなく流れる血管になる10のヒントをご紹介しましょう

《食事》

1 塩分を減らす

2 魚や大豆製品を食べる

3 野菜をたくさん食べる

《運動》

4 ウォーキングで血流良く

5 ストレッチで柔軟性を保つ

6 筋トレで筋肉をつける

《ストレス》

7 規則正しい生活

8 ぐっすり眠る

9 ぬるめのお風呂にゆっくりつかる

《生活習慣病》

10 「高血圧」「高血糖」「脂質異常症」の人は治療・ケアに取り組む

◆意識的な減塩は血管と健康を守る

厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取量の基準を2020年版より、高血圧および慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、1日の推奨摂取量は6g未満と設定されました。小さじ1杯が約5gですから、ほぼそれくらいが1日に摂取できる量の目安になります。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会のガイドラインでは、血管病を防ぐ理想的な食塩摂取量は1日3.8gまで、と定めています。

しかし、全身のミネラルバランスを保つために必要な塩分は、実は1日わずか1.5g。人間はそれだけの塩分で十分に生きていけるのです。ちなみに、日本人の食塩摂取量の平均は、1日約10g(日本高血圧学会、厚生労働省の基準等による)。普段の生活で、いかに過剰に摂取しているかがわかります。

ではどのように減塩をしたらよいのでしょうか。1つは意識的に塩分を減らすこと。もう1つは薄味に変えること。1日に1g減らすことができたら、1年で365gの減塩に成功します。たとえば、調味料を控える、漬物や佃煮、梅干しを食べ過ぎない、汁物や麺類を食べる回数を減らす、塩分が高い食品(干物、練り製品、ベーコンなど)を控える、などが効果的です。

薄味に慣れるには、減塩調味料を活用したり、だし、酸味、香りなどでおいしくする方法があります。もっと簡単なのは、腹八分目を心がけること、外食を控えめにすること。この2点は、糖尿病対策、高コレステロール対策、肥満対策にもなり、さらに効果的です。

塩分以外にも、魚や大豆製品の良質なたんぱく質を摂ること、野菜を毎日食べることが奨励されています。良質なたんぱく質は内皮細胞が丈夫に生まれ変わる材料になります。肉なら、脂肪が少ない赤身がよいでしょう。野菜は抗酸化力が高いので、血管を傷つける活性酸素の除去に役立ちます。また、塩分(=ナトリウム)を体外に排出する効果があるカリウムを豊富に含むものが多いので、減塩にもつながります。

さて、これまで血管の重要性、内皮細胞を生まれ変わらせる方法などをお伝えしてきましたが、突然死の「最後の引き金」になるものがあります。それはストレスです。不安やイライラ、ヒートショックなど、心や体にストレスがかかると、血管はギュッと収縮します。その結果、血管が破れたり、血栓が詰まったりする可能性があるのです。

日頃から楽しいことに目を向け、リラックスして過ごすことも、実はとても重要なリスクマネジメント。自然の中を散歩して深呼吸をしたり、ヨガをするのもいいでしょう。血管を強く保ち、にこにこ笑って過ごせたら突然死とは無縁になるはずです。

(構成=島田ゆかり)


ラーメン屋が多い地域では脳卒中による死亡率が高い


 日本を代表する料理といえば、「寿司」と並んで「ラーメン」を挙げることができます。自宅近くに評判の良いラーメン屋さんがあれば、ついつい足を運びたくなります。しかし、塩分が多いこと、カロリーが高いことなどから、健康にあまり良くないイメージを持たれる方も多いかもしれません。特に塩分の過剰摂取は脳卒中の危険因子であることが知られています。

 日本の各都道府県におけるラーメン店の数と脳卒中による死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、バイオメド・セントラルという医学誌出版社が発刊している栄養学専門誌に2019年9月4日付で掲載されました。

 この研究では、NTTのデータベースから各都道府県に存在する4種類のレストラン(ラーメン店、ファストフード店、フランス/イタリア料理店、うどん/そば店)の店舗数が調査されました。また厚生労働統計協会が発行している「国民衛生の動向」から、都道府県別の脳卒中による死亡率を集計し、レストラン店舗数との関連性が検討されています。

 その結果、ラーメン店の数が多い都道府県ほど、その地域の脳卒中による死亡率が男女ともに高いことが示されました。一方、ラーメン店以外のレストランでは店舗数と脳卒中による死亡率に、明確な関連性を認めませんでした。

 この研究では、ラーメンの直接的な摂取量が評価されているわけではありません。また、ラーメン店ではギョーザやチャーハンなどラーメン以外の料理も提供されうることも考慮すれば、ラーメン店の多い環境に住むことが脳卒中のリスクになりえるとは結論できないでしょう。とはいえ、将来的な健康リスクを考えれば、やはり大事なのはバランスの良い食習慣かもしれません。

青島周一 務薬剤師。「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰
2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

突然目に黒い幕が下りたら『脳梗塞』の前兆を疑え!


 一過性脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる病気。目の前にカーテ ンが下りるような視野障害が特徴で、突然幕が下りたように目が見えなくなる――。こんな症状が表れたら要注意。「一過性黒内障」の恐れがあるという。

「視力が回復しても、すぐに総合病院の神経内科や脳神経外科を受診すべきです」 こう警告するのは山梨大学名誉教授の田村康二氏だ。一過性黒内障は、頸動脈から枝分かれした眼動脈に血栓が詰まることで起こる。眼動脈は左右の目にあるが、両方が同時に詰まることは珍しく、多くの場合、片方の目にだけ症状が表れる。

「血管が詰まる原因は、長年の不摂生による高血圧、糖尿病、脂質異常症などによる頸動脈の動脈硬化が最も多い」(同)

 動脈硬化を起こしている血管の内側には、脂肪や血栓が溜まっている。その血栓の一部が剥がれ、脳に向かって流れて行く先の一つに眼動脈があるという。ただ、剥がれ落ちる血栓は非常に微細でもろいため、眼動脈をふさいでも、すぐに溶けて消失することが多い。そのため血流が阻害されるのも一時的で、目の症状も、すぐに解消することが多いというのだ。

「目が見えなくなるといった症状が出た場合、二つの可能性が考えられると思います。一つは網膜そのものの異変で、網膜剥離などが進んでいるケース。もう一つは脳梗塞の前兆です。一過性脳虚血発作を放置しておくと、15~20%の人が3カ月以内に脳梗塞を発症します」(同) 早い人は48時間から数日以内に脳梗塞を起こしてしまうとの報告もあるが、逆に言えば、この段階で総合病院に駆け込めば、脳梗塞の一歩手前で対処できる。

 家系的に脳梗塞が多いという人にも予防策はある。

「血栓ができやすい体質だとしても、食生活を工夫することで、血中のコレステロールや中性脂肪は抑えられます」(同)このように脳と目は密接に関わりあっている。もう一度言うが、一過性黒内障というのは、脳梗塞の前触れといわれている危険なサインなのだ。

発症から5年以内が危険 脳卒中後は自殺リスクが10倍に


秋が深まってきた。気温が下がり、一日の寒暖差が大きくなると、脳卒中(脳梗塞、脳出血)リスクが高まってくる。脳卒中は、日本人の死因の第3位を占め、患者数が約118万人(2014年の厚労省患者調査)に達する怖い病気だ。命が助かっても後遺症に悩む患者やその家族は多く、寝たきり老人の3割、要介護者の2割を脳卒中患者が占める。ところが、脳卒中には一般には知られていない後遺症がある。自殺や事故死だ。発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる率が高くなる。注意が必要だ。

 警察庁の自殺統計によると、2017年の日本の自殺者数は2万1321人。8年連続減少というが、まだまだ多い。

 自殺の背景にはうつ病などの精神疾患が存在することが知られているが、身体疾患も自殺リスクを高める。実際、脳卒中を発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる確率が高いという。国立がん研究センターが全国9保健所管内に住む40~69歳の11・7万人を追跡調査した研究がある。14年発表で脳卒中になっていない群に対する、脳卒中発症5年以内の群の自殺並びにその他の外因死のリスクは共に約10倍だった。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「研究では脳卒中後に自殺並びに事故で亡くなった人の数が数十人と少なく、そのうち発症5年以内で亡くなった人はさらに少なくなります。そのため10倍という数値は割り引いてみる必要があります。それでも、脳卒中を発症すると、うつ病リスクが高まることがわかっています。ご存じのようにうつ病は自殺の最大のリスク要因です。また、うつ病によってうつ状態になると、交通事故や転落などの不慮の事故に遭いやすくなることが知られています。認知機能が衰えるからでしょう。身体的、認知的な障害により、仕事や私生活で不自由な思いをすることでも自殺が増える可能性が高くなるのは間違いありません」

 脳卒中は、脳血管が障害されることによって起きる。後遺症は、それで脳が損傷を受けることが原因だ。脳へのダメージが自殺や交通事故などの外因死を招きやすいことはアメリカンフットボール選手を対象にした研究でもわかっている。脳振とうなど、脳への損傷を繰り返すことで慢性外傷性脳症(CTE)になる選手が多く、認知機能の低下から錯乱・抑うつ状態が続き、自殺することもあるという。

「米ボストン大学医学部の報告で、引退したアメフトの選手から死後提供された202人分の脳標本を調べたところ、177人(87%)がCTEだったことが明らかになっています。生前に認められた症状から軽症と重症とに分けたところ、軽症者の死因で最も多かったのは自殺(12人、27%)だったそうです。また、軽症者も重症者も生前、自殺行動が見られたことが報告されています」(林院長)

■自殺を図った人たちの特徴は?

 そのヒントになるのがスウェーデンでの研究だ。2001年から12年までに登録された同国の脳卒中患者のデータベースを使い、脳卒中発症後の自殺または自殺未遂の人数を調べた。約22万人の脳卒中患者のうち登録期間中に1217人が自殺を図り、うち260人が死亡した。スウェーデンの自殺率の2倍近くに相当した。

「この調査では、自殺を図った人の特徴を分析しています。①18歳から54歳までの比較的若い人は85歳以上の人に比べて5・89倍も高い②一人暮らしが多い③女性より男性が目立つ④脳卒中の症状が重い⑤脳卒中後にうつ病を発症⑥大学卒業者より初等・中等教育卒業者が多い⑦脳卒中を発症して2年後に集中している――などです。もちろん、これらの特徴はスウェーデンでのもので日本にそのままあてはまるわけではありません。しかし、ヒントにはなるはずです」(林院長)

 WHO(世界保健機関)によると、自殺が起こると、最低でも6人、職場や学校では数百人に深刻な影響を及ぼすという。集団の士気が下がるだけでなく、自殺が新たな自殺を呼ぶこともある。身近に脳卒中の人がいたら、日頃から注意を向けることだ。

緑茶カテキンが脳卒中や心筋梗塞を防ぐ…は間違いの可能性が


 これまで、「緑茶は心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを軽減させる」という研究結果がいくつも報告されている。しかし今回、国立がん研究センターなどが行った多目的コホート研究によると、緑茶カテキンの血中濃度は脳卒中や心筋梗塞といった虚血性心疾患の発症リスクと関連しない可能性が指摘されている。

 日本の9地域に在住していて、がんや循環器疾患の既往がない40~69歳の男女2万9876人を対象に追跡調査を実施。カテキンの血中濃度と脳卒中および心筋梗塞などの虚血性心疾患との関連を調べたところ、男女ともに緑茶カテキンの血中濃度は発症と有意に関連しないことが分かった。

 ただ、緑茶カテキンの一種であるEGCGの血中濃度については、喫煙をしていない男性の場合、血中濃度が最も低いグループに比べて最も高いグループでは脳卒中の発症リスクが47%低かったという。

 横浜創英短期大学名誉教授で管理栄養士の則岡孝子氏は言う。

「緑茶にはカテキンだけでなく、さまざまな成分が含まれています。リラックス効果があるテアニン、疲労感の解消や脂肪分解を助ける働きがあるカフェイン、ストレス軽減やコレステロールを抑えるGABA、カテキンと同じく抗酸化作用によって動脈硬化を予防するクロロフィルやベータカロテンなど、健康効果が指摘されている成分が豊富なのです。昔から緑茶は健康に良いと言われてきたのは、それらの成分の複合的な働きによるものだと考えられます。緑茶だけでなく、食品の摂取で得られる健康効果は、ある特定の成分だけによるものではないということです」

 それぞれの成分にさまざまな効果があるのはたしかだが、だからといって特定の成分をサプリメントでピンポイントに摂取すれば健康になれるという単純なものではないのだ。

発症から5年以内が危険 脳卒中後は自殺リスクが10倍に


 秋が深まってきた。気温が下がり、一日の寒暖差が大きくなると、脳卒中(脳梗塞、脳出血)リスクが高まってくる。脳卒中は、日本人の死因の第3位を占め、患者数が約118万人(2014年の厚労省患者調査)に達する怖い病気だ。命が助かっても後遺症に悩む患者やその家族は多く、寝たきり老人の3割、要介護者の2割を脳卒中患者が占める。ところが、脳卒中には一般には知られていない後遺症がある。自殺や事故死だ。発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる率が高くなる。注意が必要だ。

 警察庁の自殺統計によると、2017年の日本の自殺者数は2万1321人。8年連続減少というが、まだまだ多い。

 自殺の背景にはうつ病などの精神疾患が存在することが知られているが、身体疾患も自殺リスクを高める。実際、脳卒中を発症した人は5年以内に自殺や交通事故などで亡くなる確率が高いという。国立がん研究センターが全国9保健所管内に住む40~69歳の11・7万人を追跡調査した研究がある。14年発表で脳卒中になっていない群に対する、脳卒中発症5年以内の群の自殺並びにその他の外因死のリスクは共に約10倍だった。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「研究では脳卒中後に自殺並びに事故で亡くなった人の数が数十人と少なく、そのうち発症5年以内で亡くなった人はさらに少なくなります。そのため10倍という数値は割り引いてみる必要があります。それでも、脳卒中を発症すると、うつ病リスクが高まることがわかっています。ご存じのようにうつ病は自殺の最大のリスク要因です。また、うつ病によってうつ状態になると、交通事故や転落などの不慮の事故に遭いやすくなることが知られています。認知機能が衰えるからでしょう。身体的、認知的な障害により、仕事や私生活で不自由な思いをすることでも自殺が増える可能性が高くなるのは間違いありません」

 脳卒中は、脳血管が障害されることによって起きる。後遺症は、それで脳が損傷を受けることが原因だ。脳へのダメージが自殺や交通事故などの外因死を招きやすいことはアメリカンフットボール選手を対象にした研究でもわかっている。脳振とうなど、脳への損傷を繰り返すことで慢性外傷性脳症(CTE)になる選手が多く、認知機能の低下から錯乱・抑うつ状態が続き、自殺することもあるという。

「米ボストン大学医学部の報告で、引退したアメフトの選手から死後提供された202人分の脳標本を調べたところ、177人(87%)がCTEだったことが明らかになっています。生前に認められた症状から軽症と重症とに分けたところ、軽症者の死因で最も多かったのは自殺(12人、27%)だったそうです。また、軽症者も重症者も生前、自殺行動が見られたことが報告されています」(林院長)

■自殺を図った人たちの特徴は?

 そのヒントになるのがスウェーデンでの研究だ。2001年から12年までに登録された同国の脳卒中患者のデータベースを使い、脳卒中発症後の自殺または自殺未遂の人数を調べた。約22万人の脳卒中患者のうち登録期間中に1217人が自殺を図り、うち260人が死亡した。スウェーデンの自殺率の2倍近くに相当した。

「この調査では、自殺を図った人の特徴を分析しています。①18歳から54歳までの比較的若い人は85歳以上の人に比べて5・89倍も高い②一人暮らしが多い③女性より男性が目立つ④脳卒中の症状が重い⑤脳卒中後にうつ病を発症⑥大学卒業者より初等・中等教育卒業者が多い⑦脳卒中を発症して2年後に集中している――などです。もちろん、これらの特徴はスウェーデンでのもので日本にそのままあてはまるわけではありません。しかし、ヒントにはなるはずです」(林院長)

 WHO(世界保健機関)によると、自殺が起こると、最低でも6人、職場や学校では数百人に深刻な影響を及ぼすという。集団の士気が下がるだけでなく、自殺が新たな自殺を呼ぶこともある。身近に脳卒中の人がいたら、日頃から注意を向けることだ。

リスクを下げる働きも「お酒」と「脳卒中」の不思議な関係


物悲しい秋がやってきた。人恋しさから会社帰りには自然と赤提灯に足が向く。そんな中高年も多いはず。気温が下がっていくことが生命維持に不安を抱かせ、日照時間の短縮が脳内の神経伝達物質セロトニンを減らすことなどが原因だが、そんな季節だからこそ注意したいのがお酒と病気の関係だ。「お酒好きには尿酸値とγ―GTPの高さは勲章」などと強がってみてもやはり病気は怖い。とくに冬に向けて増えていく脳卒中は死因第4位の重大病だけに気になる。「赤坂パークビル脳神経外科」(東京・港区)の福永篤志医師に聞いた。

「お酒は脳卒中の原因といわれますが、近年の研究では適度なお酒は逆に一部の脳卒中リスクを下げることがわかっています」

 脳卒中には2種類ある。動脈が詰まって脳に十分な血液が供給されずに起こる虚血性脳卒中と、脳の血管が破れて出血する出血性脳卒中だ。「脳卒中データバンク2015」によると、日本では75.9%が虚血性脳卒中で、残り24.1%が出血性脳卒中(5.6%のくも膜下出血含む)だ。

「日本人の栄養状態が悪かった時代の脳卒中は出血性脳卒中が多かったのですが、現在は栄養状態が改善し、虚血性脳卒中が増えています。虚血性脳卒中には、動脈硬化で狭くなった脳の太い血管の中に血栓ができて血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い動脈が徐々に詰まるラクナ梗塞、心臓でできた血栓がはがれて飛んで脳の動脈を塞ぐ心原性脳梗塞の3種類があります。以前に比べ、ラクナ梗塞が減少して心原性脳梗塞が増えていますが、適度なお酒は脳梗塞のリスク、とくにラクナ梗塞リスクを減らすことが報告されています」

 日本でその報告をしているのが多目的コホート研究「JPHC Study」だ。長期にわたる観察型の疫学研究であるこの研究は、全国12地域、14万人強を対象にしたもので、「飲酒」「食事」「喫煙」「運動」などの生活習慣が病気や生活の質にどのように影響するかを調べている。それによると、出血性脳梗塞の発症率と飲酒量との関係は右肩上がりの直線的な正の相関関係にあるものの、虚血性脳卒中の発症率と飲酒量の関係はJカーブ現象が見られた。お酒を飲まない人に比べて適度にお酒を飲んでいる人は虚血性脳卒中の発症率は低く、お酒を大量に飲んでいる人はその発症率は高かった。

「時折お酒を飲む人に比べて、エタノール換算で週に450グラム以上のお酒を飲む人はすべての脳卒中の発症率が68%増加していることが報告されました。特にくも膜下出血の発症率が著しく増加したのです。その一方で、週に149グラム以下のお酒を楽しむ人は、ほぼお酒を飲まない人に比べて虚血性脳卒中の発症率が39%も低く、ラクナ梗塞でより顕著だったのです」

 その理由として適度な飲酒は、アルコールの作用で善玉コレステロールであるHDLコレステロールの血中濃度が上がること、血栓形成を促すタンパク質であるフィブリノゲンの値を低くして血液が固まりにくくなることなどが挙げられている。また、適度な飲酒は、血圧を一時的に下げる働きがある。

■休肝日を設けることは大切

 ただし、これらはあくまでもお酒と脳卒中だけの話。お酒はがんや心臓などの病気とも関係している。このため厚労省は「健康日本21」の中で「通常のアルコール代謝を有する日本人において、節度ある適度な飲酒とは、1日平均純アルコールで20グラム程度」としており、1日の適正アルコール量の目安として男性25グラム以下、女性20グラム以下と定めている。

 ちなみにアルコール20グラム程度とはビール・発泡酒の中ビン1本、酎ハイコップ1杯もしくは350ミリリットル缶半分、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯、グラスワイン1杯弱となる。

「“たったこれだけ?”と思う人もいるかもしれませんが、これは1日の量。週換算では約150グラムまで飲めるのですから、決して少ない量ではないはずです」

 また、週に1、2日はお酒を飲まない休肝日を設けることも大切だ。毎日お酒を飲み続ける人は休肝日のある人に比べて死亡リスクが1.8倍高いという研究もある。

「お酒は食欲を増進するのでおつまみの食べ過ぎにも気を使う必要があります。よくつまみに含まれる塩分が脳卒中の原因である高血圧を引き起こすといわれますが、お酒自体がその原因となる可能性があることも理解しておく必要があります。習慣飲酒が原因の高血圧は高血圧全体の35%ぐらいともいわれています。肥満に伴うものが15%程度といわれているので、いかに多いかがわかるはずです」

 楽しいお酒が悲劇にならないよう、まずは適量、休肝日に気をつけることだ。

言葉出ない、急に怒る…家族が脳障害 どうすれば?


しっかり話せない。約束を忘れてしまう。仕事を覚えられない。意欲が低下したり、怒りっぽくなったりする……。脳卒中などが原因で、記憶や思考、判断などを担う脳の機能に障害が出る「高次脳機能障害」が注目を集めている。患者はもちろん大変だが、症状が見た目にはわかりにくいせいもあって、家族の介護負担はより大きくなる傾向があるからだ。国は高次脳機能障害者と家族を支える体制づくりを進めており、東京都も今年2月、都内にある相談窓口や通所・入所施設など最新情報を盛り込んだパンフレットを発行した。かけがえのない肉親が脳障害を負った時、家族はどのような思いで支えればよいのだろうか。

■記憶障害や意欲低下の症状も

 「高次脳機能障害」の「高次脳機能」とは、手足を動かすなどの基本動作ではなく、記憶したり、物を考えたり、計画を実行したりといった、人間ならではの高度な脳機能を指す。この機能が、くも膜下出血や脳梗塞などの脳卒中、外傷性脳損傷などが原因で障害を受けることを、「高次脳機能障害」と呼ぶ。推計で、全国に約50万人の高次脳機能障害者がいるといわれる。

 具体的な症状としては、

(1)言いたい言葉が浮かんでこない、言われた言葉が理解できない、字を読めない、書けないなどの症状が表れる「失語症」

(2)発症前の記憶はあるのに、最近の体験やエピソードなどを中心に記憶できなくなる「記憶障害」

(3)物事に集中することが苦手になる「注意障害」

(4)物事を計画立てて実行できなくなる「遂行機能障害」

(5)何事にも意欲が低下する

(6)本人なりの理由はあるが、突然、興奮して怒り出すなど感情のコントロールができなくなる

(7)相手の感情などの読み取りが苦手となり、会話のキャッチボールができなくなる

(8)右脳の損傷を受けた場合、反対側である左側の空間が認識できなくなった行動を取る(左半側空間無視)

 などがある。症状は個人差が大きく、これらすべての症状が表れるわけではない。

 高次脳機能障害は、外見では分からないことが多い障害なので、「見えない障害」とも言われる。患者に対して、家族はどのように対応してよいのか分からず、戸惑い、疲れ切ってしまうことがある。

■動く右手だけでちらし寿司を作る

 東京都世田谷区の「つるや鮨」の3代目店主・磯貝政博さん(54)も、高次脳機能障害者の一人だ。つるや鮨は、プロ野球で活躍した「打撃の神様」の川上哲治さん、元首相の福田赳夫さんらに愛され、80年以上の歴史を誇る。

 磯貝さんは2006年2月10日、ランチの仕事を終えて、店の上の自宅で仮眠を取っていた時、異変に襲われた。目が覚めて起き上がろうとしたが、足に力が入らず、立ち上がれない。妻の香苗さん(48)に救急車を呼ぶように頼むと気を失ってしまった。

 救急車で近くの病院に運ばれたが、右側の脳に出血が見られた。幸い、命は助かったものの、左半身にまひが残った。3月下旬、車いすで都内のリハビリ病院に転院。厳しいリハビリの結果、杖(つえ)をついてゆっくり歩けるようになり、6月初め、自宅に帰ることができた。

 残念ながら、寿司(すし)を握っていた左手、左腕はほとんど動かなくなった。しかし、磯貝さんの苦難は、体が不自由になっただけではなかったのだ。

 忘れっぽくなった。寿司を握れなくなったので、電話番をしていると、相手の名前を覚えることができても、注文の内容を忘れてしまう。同時に複数のことができないのだ。

 視界に入っているはずなのだが、自分の左側にある物が認識できない症状(左半側空間無視)も表れた。高次脳機能障害に多い症状だ。

 できないことが多くなり、すべてにおいて自信を失った。イライラ感が募り、怒りっぽくなった。ささいなことで父親と口論となり、政博さんは店にあった包丁を持ってきて、部屋で大の字に寝そべり、「この包丁で殺してくれ」と大騒ぎしたことがあった。また、他人に会うのが嫌になり、引きこもりの日々を過ごした。

 「動く右手で何かできないかな」。訪問診療をしてもらっていた長谷川幹(みき)・三軒茶屋内科リハビリテーションクリニック院長(日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会理事長)から、そう提案された。妻の香苗さんに相談すると、「握り寿司は無理だけど、ちらし寿司なら作れるんじゃないの」と言われた。

 「よし、挑戦してみよう」。ネタは事前に父親にさばいてもらい、右手でご飯の上に乗せていく。自分の左側に置いたネタが認識できず、忘れてしまうことがあったので、体を左にひねって左側を必ず確認しながら作るように心がけた。何度も何度も挑戦して、作る時間を短くしていった。2008年春、初めてお客さんに食べてもらった。12年頃からは、右手だけで器用に包丁でネタを切って提供できるようになった。

 政博さんは現在、朝6時に築地に買い出しに行き、9時に帰宅。それから素材のトロやマグロなどを切って、開店に備える生活を送っている。「自分のできないことに目を向けるのではなく、できることを伸ばすようにすることが大切です」と話す。

 香苗さんは、「家族は、病気になる前の状態と比較するのはダメ。本人はもちろん家族も落ち込んでしまうから。本人が新たにやりたいと思えることを見つける手伝いをする、というような心づもりが重要だと思います」と言う。

■都が情報満載のパンフレットを作成

 国も高次脳機能障害者と家族を支える体制づくりを進めている。2006年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に基づき、高次脳機能障害者を継続的に支援するための「支援拠点機関」が各都道府県に設置された。患者や家族が安心して地域の中で暮らしていけるように、専門的な相談支援、関係機関との支援ネットワークの充実、普及・啓発事業、支援手法に関する研修などを実施することが役割だ。全国の支援拠点機関名は、国立障害者リハビリテーションセンターが運営する「高次脳機能障害情報・支援センター」のホームページで確認できる。

 東京都の支援拠点機関は「東京都心身障害者福祉センター」(東京都新宿区)で、法律施行当初から積極的に活動を行っている。都内にある相談窓口、通所・入所施設、就労支援機関、医療機関などについて最新情報を盛り込んだ2018年版パンフレット「高次脳機能障害の理解と支援の充実をめざして」を今年2月にまとめた。2年ぶりの情報更新による発行だ。

 元々は、都内の市区町村障害者担当者や医療機関、福祉関係者ら向けに作られたものだが、患者や家族が読んでも、役に立つ情報が満載だ。同センターのサイトにある「東京都心身障害者福祉センター発行各種パンフレット、リーフレット」という項目で読むことができる。

 パンフレットでは、高次脳機能障害者に対して、家族や周囲の人たちがどのように接したらよいのか、についての具体的な対応法も紹介されている。

(1)ゆっくり、分かりやすく、具体的に話す

(2)情報はメモに書いて渡し、絵や写真、図なども使って分かりやすく伝える

(3)何かを頼む時には一つずつ、具体的に示す

(4)疲労やいらいらする様子が見られたら、一休みして気分転換を促す

(5)手順を簡単にする、日課をシンプルにする、手がかりを増やすなど環境の調整をする

 と助言する。

■家族は時に介護を離れ、休息を

 一方、磯貝さんの主治医で、長年、高次脳機能障害者への訪問リハビリを続けている長谷川幹院長が、高次脳機能障害者を支える家族に心得てほしいと思っていることを、下の表にまとめた。

 家族はついつい、「昔はこんなことができたのに」「音楽が好きだったのに、最近は聴かなくなった」などと、病気の前後を比較してしまいがちだ。そのたびに家族が落胆していたら、本人は敏感に感じ取って自信を失っていくだろう。病気の前と比べるのではなく、本人が新しい楽しみ、趣味を見つけるように促すことが重要だ。

 その楽しみは必ずしも、病気になる前と同じとは限らない。写真撮影、旅行、キャンプ、料理作りなど、個人によって様々だ。それを見つけると、本人にやる気が出てきて、自宅に引きこもりがちだった状態から脱し、自然と外出したり、他人と交わったりできるようになることがある。

 家族は、本人ができることでも、靴下の脱ぎはき、食事の膳(ぜん)の上げ下げなど、何でもやってあげてしまい、結局、本人のためにならないことが少なくない。愛情を持ちながらも本人と適度な距離を保つことも、家族には必要だ。状態の改善が見られるまでには、年単位の長い時間がかかることも多いので、慌てず、あきらめずに見守ろう。

 患者への対応を一時忘れて、休息を取ることも大切だ。家族が疲れていては、患者に優しくなれない。前述の磯貝香苗さんも、夫がリハビリ病院に通院している間に、自分がマッサージを受けたり、銀座へウィンドーショッピングに行ったりして、気持ちのリフレッシュを図ったという。

 同じ環境に置かれた人たちに悩みを相談することは、適切な助言だけでなく、心の安らぎも得られる機会となる。全国に患者やその家族で作る団体があるので、積極的に参加してほしい。前出の高次脳機能障害情報・支援センターのホームページで確認できる全国の「支援拠点機関」に尋ねれば、患者団体の連絡先などを教えてくれる。だれもが病気に倒れ、だれもが家族を支える立場になりうる。この障害への理解を深めておくことが大切だ。

プロフィル

坂上 博(さかがみ・ひろし) 読売新聞調査研究本部主任研究員。医療部次長を経て現職。再生医療、難病、臓器移植、薬害、がんや生活習慣病など、医療全般について取材を続ける。「心と体に優しい医療」の実現をテーマに掲げた朝刊連載「医療ルネサンス」には、筆者、デスクとして約18年間、携わった。

喉が詰まるような違和感は「脳梗塞」の予兆かもしれない


 喉が詰まったような違和感を覚えた場合、脳梗塞の予兆の可能性がある。国立病院機構東京医療センター感覚器センター(耳鼻咽喉科学)角田晃一医師に聞いた。

 角田医師が市中病院に勤務していた時、内科から80代の患者が紹介されてきた。「扁桃炎ではないか」との見立てだったが、角田医師が口腔内を見ると、1カ所、咽頭後壁(口の突き当たり)がボコボコ腫れ、脈と同期して拍動していた。扁桃炎ではなく、口の中への頚動脈の変位走行異常(以下:走行異常)だった。

「その理由として考えたのは、高齢で前かがみの姿勢になると、胸、胸郭、頭のてっぺんの距離が近くなり、首が短くなる。静脈は縮むことができますが、動脈は加齢で硬くなっていて縮まず、抵抗のない口の中で不自然に曲がるしかなかった、ということです」

 すると、血液の流れに変化が起こる。血管が曲がっているため、あるところではせき止められ、あるところではドッと流れる。後者の時、その流れの勢いで血栓が一気に脳へ飛び、脳梗塞を起こす可能性がある。

「この患者には『脳梗塞を起こすリスクがあるからすぐに内科へ行きましょう』と紹介状を書きました。ところがその患者はすぐに行けなかった。すると6日後、脳梗塞を起こして病院へ救急搬送されました」

■高齢で身長が3センチ以上縮んだ人は危険

 角田医師は、脳梗塞と動脈の変化を調べるために、同センターと国立病院機構の計12施設の患者のデータを分析した。対象は65歳以上85歳未満で、脳梗塞患者72例と、めまいや難聴で受診したが脳梗塞は否定された患者163例。いずれも、「そもそも脳梗塞のリスクが高い人」である心房細動、不整脈、心臓弁膜症、糖尿病、その予防治療のアスピリンやワーファリンといった血液をサラサラにする薬を処方されている人を省いた。

 その結果、脳梗塞患者は87・5%に頚動脈の走行異常(曲がっている、蛇行しているなど)があったが、非脳梗塞患者は8・6%に過ぎなかった。

 さらに、身長3センチ以上減は脳梗塞患者で76・4%、非脳梗塞患者で19・6%。頚動脈の走行異常と身長3センチ以上減の両方がある人は、脳梗塞患者の87・5%、非脳梗塞患者の6・75%だった。

「つまり、脳梗塞と頚動脈走行異常、身長3センチ以上減は密接な関係にあるということ。身長が減少するのは、加齢で前かがみの姿勢になっているからです。自覚症状としては、最初の2カ月は座ったり立ったりした時に頚動脈が喉の突き当たりを移動するため、喉の違和感を覚える人が多い。頚動脈変位走行異常が何カ月も続くと、変位走行異常が固定してしまい、自覚しなくなる」

 ベテラン耳鼻咽喉科医が意識して脈を取りつつ口腔内の検査をすれば、走行異常した拍動する腫れは見つかる。前かがみの姿勢で身長が若い時と比べて3センチ以上縮んだ人なら、脳梗塞のリスクを疑って口の中を調べたほうがいい。

「頚動脈の走行異常が起こっていれば、アスピリンやワーファリンなどの服用をすることで、脳梗塞が予防できるかもしれません」

 冒頭の患者のような例があるので、姿勢が悪くなりのどの違和感がある人は、医師に行くのは、できる限り早めに。頚動脈走行異常を指摘されれば、何をおいてもすぐ病院で精査を。

明暗を分ける脳卒中後の生活~リハビリテーションの早期スタートが回復の早道!


 40年以上前の話ですが、1975年6月3日に佐藤栄作元総理が亡くなりました。 1964年から1972年まで日本の総理大臣を務め、1974年に非核三原則の制定などが評価されてノーベル平和賞を授賞した佐藤栄作元首相は、1975年5月19日、築地の料亭で政財界人らとの宴席の最中にトイレに行こうとして立ち上がったところで、崩れるように倒れ、いびきをかき始めたそうです。

 病名は当時、脳溢血と発表されていますが、嘔吐や頭痛を訴えなかったので、脳出血やくも膜下出血よりは、脳梗塞の可能性が高く、また意識障害で発症しているので、脳底動脈の閉塞等、脳幹部の梗塞が疑われます。脳梗塞であれ脳出血であれ、現在は救急車を呼び、救急病院へ搬送します。診察及び検査で、脳梗塞と診断され、禁忌事項が無く、発症4時間半以内であれば、tPAによる血栓溶解療法を実施することになります。

 しかし当時の日本では、脳溢血になったら動かしてはいけないと信じられていました。高名な大学病院から医師団が駆け付けましたが、誰も病院に運ぼうとしなかったそうです。倒れた料亭で4日間、布団に寝かせて動かさず、容態を診た後、大学病院に搬送されました。一度も覚醒することなく昏睡を続けた後、1975年6月3日に亡くなりました。今考えるとすごくおかしいことのように思えますが、当時としては常識の範囲だったのです。

脳卒中になったら早くリハビリテーションを開始することが回復の早道

 1975年9月にCTスキャン(当時は「EMIscanner」と言いました)が日本で初めて東京女子医大に導入されました。…それ以後、脳卒中の診断・治療は革新的な変化を遂げましたが、ちょうどその時代の直前のことでした。ちなみにCTスキャンを発明したハウスフィールドとコーマックには、1979年にノーベル医学生理学賞が贈られています。脳卒中に関しては、似たようなことが現代の日本でも一般的に行われています。それは「リハビリテーションの開始が遅れている」ことです。

 最近では、脳卒中の治療が一段落すると、受け持ちの先生から「そろそろ回復期リハビリテーション病院に移って、リハビリを集中的にやりましょう」という話があります。患者さんやその家族は「そう言われても、今いる病院は救急で助けてくれたし、規模も大きいし、医師や看護師もたくさんいるから、この病院で治療を続けたほうが良いはず。しかし、患者さんが次から次へと来るから、早く追い出したいんだな」と思う人が多いのではないでしょうか。それが間違っているのです。脳卒中になったら、可能な限り早くリハビリテーションを開始することが、回復の早道なのです(「脳卒中治療ガイドライン2015」pp277)。

回復期リハビリテーションとは?

 脳卒中になった患者さんは、救急病院や神経内科、脳神経外科のある病院で治療を受けます。引き続き手足の麻痺や、言葉の障害、呑み込みの障害などの脳障害に関して、リハビリテーションを受けます。しかし、冒頭でお話したように、日本では「脳卒中は動かしてはいけない」という常識があったので、体が固まって動けなくなった、寝たきりの患者さんが大勢発生しています。しかも、そのような患者さんは、家では世話ができないので、病院、特に昔でいう老人病院に大勢入院していた時期がありました。

 欧米では寝たきりの患者さんは少なく、その理由を探ると「リハビリテーションを早期から行っていること」が分かりました。そこで2000年に、回復期リハビリテーションという制度が新設されました。脳卒中発症から2カ月以内であれば、回復期リハビリテーション病院(同じ病院の中にあれば病棟)に移り、集中したリハビリテーションを受けることができます。 リハビリテーションは1単位20分として、回復期リハビリテーションでは最大9単位(3時間)、土日休みなく実施することが推奨されています。

 ただし、入院期間が最大6カ月と決まっており、さらに、70%以上(基準の高い病院)の患者さんが自宅等に退院することが義務付けられています。 自宅等に退院することを「在宅復帰」と言いますが、自宅、家族の家以外に、サービス付高齢者住宅(サ高住)、特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム等が自宅等に分類されます。一方、病院、老人保健施設(老健)など医者が在籍する施設は、自宅等とは言いません。

回復期リハビリテーション病棟はさらに増加する

 回復期リハビリテーション病棟は、2016年末で79000床登録されていますが(中医協-3 29.10.25 個別事項リハビリテーション)、これからの超高齢社会で、さらに脳卒中患者が増加すると推定されているので、さらに増加していくものと考えられています。 「脳卒中の発症から2カ月以内」という決まりがありますが、2カ月急性期の病院で待っていてはいけません。鶴巻温泉病院回復期リハビリ病棟を2017年に退院された脳梗塞の患者さん135人を発症から何日目に急性期病院から転院してきたかで分類してみました。

 「発症9日目まで」「10~29日」「30日以上」の3群に分けて、入院の時の歩行、食事、着替え、トイレ移動などの日常生活動作(ADL FIMで点数化)を退院時に入院時よりどのくらい良くなるかをFIMという点数で比較したものが、図1のグラフです。このグラフを見てお分かりのように、回復期リハビリテーションに早く転院して、早く集中的なリハビリテーションを実施したほうが確実によくなります。皆さんは今は考えられないかもしれませんが、発症9日以内に転院するのが一番良いことがわかります。しかし、発症9日以内に回復期リハ病院へ転院することは、今の日本でも一般的ではありません。

 急性期の先生が回復期へは2週間過ぎたころに申し込もうと思っていたり、患者・家族が転院を断ったり、受け入れる回復期リハ病院のほうが、病状が落ち着くまで受け入れの準備ができていないことも現状です。それ以外にも重症で意識障害が合ったり、合併症が治療できていなかったり、いろいろな理由で、こんなに早く転院することが難しい場合もあります。回復期リハビリテーション病棟協会の調査でも、14日以内に回復期リハ病院(病棟)へ入院したのは全体の24.7%しかありません(「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」平成30年2月 一般社団法人・回復期リハビリテーション病棟協会)。…

 でも、ともかく早く転院できるようにしてもらいましょう。急性期の治療が終わった頃に、皆さんから「早く回復期リハへ転院させてください」と申し出て進めてもらうのが、懸命だと思います。回復期リハビリテーション病院に早く移ったほうが良いという結果は、急性期の病院でも十分なリハビリテーションが実施できていない可能性があります。また栄養の問題もあるかもしれません。急性期では食事を食べないで、暫く点滴で管理することが多く、知らないうちに栄養不足になっていることも考えられます。

 発症9日目に転院した患者さんは急性期と合わせた入院期間が短くなります。1~2カ月早く自宅へ退院できます。早くリハビリを開始すれば早く変えれるということを是非覚えておいてください。この連載では脳卒中やその治療、リハビリテーションについて知っておいていただきたいことを、分かりやすく説明していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
(文=鈴木龍太:鶴巻温泉病院理事長)

鈴木龍太(すずき・りゅうた)医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院院長。
「変化を進化に、進化を笑顔に」をモットーに日々の診療やリハビリテーションに注力し、高齢者医療や緩和ケアなど地域の幅広いニーズに応える病院経営に取り組む。1977年、東京医科歯科大学医学部卒。医学博士。米国NIH留学、昭和大学藤が丘病院脳神経外科准教授、安全管理室 室長を経て、2015年より現職。

脳梗塞秒読みの“不整脈”に注意! 100万人が患う心房細動の潜在脅威


 脳卒中には、脳出血やくも膜下出血といった血管が破れるものと、脳梗塞などの血管が詰まるものとの2種類がある。日本では、かつて脳出血が多かったが、主な原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態もよくなったことで、その割合が減った。しかし一方で増えたのが、脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞だ。現在では、脳卒中のうちの約60%が脳梗塞となっている。

 東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科医担当医はこう言う。
 「脳の血管が詰まって発症する脳梗塞の主な原因は、動脈硬化と、不整脈など心臓の異常によるものとの2つに分けられる。不整脈については、心臓の上部にある心房(左房にある肺静脈付近)が、痙攣したように激しく動く心房細動を起こし、それが一つの引き金となっていることが分かっています。無症状のため、本人が気付かないうちに病んでしまうことがほとんどで、近年では50歳以上の人に増えています」

 不整脈には、放置しても比較的安心なものと、命の危険があるものとの2つのタイプがあるという。 「心房細動の場合は突然死を招く恐れがあるため、後者に属します。現在は潜在的な患者を含めると、100万人以上が患っているとされ、2030年には300万人を超えるという予測まである。専門医や不整脈に関係する学会が警告を出すほどなのです」(健康ライター)

 こんな例がある。東京都中野区在住の男性(60)が、昨年10月、仕事を終えて会社を出た。しかし、間もなく足元がふらつき始め、思うように歩けなくなり、道端にしゃがみ込んでしまった。ふらつきは数分間で治まり、普通に歩けるようになって安心していると、今度は自宅に着いてから倒れたという。

 担当医が説明する。
 「その時点では、すでに呂律も回らず、右手、右足が動かない状態でした。家族につき添われて診察を受けに来たのですが、診断結果は脳梗塞で、ただちに治療を始めました。さらに検査の結果、この男性は心房細動を起こして血栓ができていたのです。あまり重症化しなかったのは、心臓に原因があることが判明し、早めに血液が固まることを防ぐ抗凝固薬を使うことができたからです」

 この男性の場合は発症後、早めの治療だったことに加え、幸いにして詰まった血管が細く悪影響があまり広がらなかった。そのため、すぐに軽い会話が可能になるまで回復し、治療経過も順調で12月上旬には退院できたという。男性は話し方に多少の後遺症を残しながらも「健康診断は受けていて健康には自信があった。自分が脳梗塞になるとは思わなかった」と語っている。

 脳梗塞を引き起こす原因にもなる心房細動では、心臓が規則正しく収縮できない状態を生み出し、それによって血液がよどみ、流れにムラができて固まりやすくなる状況に陥る。 「心房細動では、心臓を構成する上下の部屋のうち、上部屋の心房が、1分間に400~600回、さらには1000という速さで細かく震える(通常は60~100回程度)。これによりできた血栓が、心房の内壁から剥がれて血流に乗ってしまい、脳へと運ばれ血管が詰まる。この心房細動が原因で起こる脳梗塞、『心房性脳塞栓』では、比較的血栓が大きいため、突然死や重い麻痺などの後遺症が残りやすいのです」(前出・健康ライター)

 その血栓は、大きいと3センチにもなるというから驚きだ。
 「さらに心房細動は、決して特殊な不整脈ではなく、50代以上であれば無症状であっても、すでにかかっている可能性のある病。慢性になると気付かない場合が多く、健康診断の心電図で偶然、発見されこともあるほどです。特に糖尿病などの罹患者は心房細動を起こしやすいとされていますが、動悸や息切れがある人、胸がモヤモヤする人は早めに検査を受けるようにしましょう」(脳神経外科医師)

 また、結果として脳梗塞を発症した場合、7~8人に1人は死に至る。
 「つまりは、いかにして心房細動から脳梗塞を引き起こさないかが、対策となってくる」こう語るのは、東京都立多摩総合医療センター心臓血管外科の大塚俊哉医師だ。 「心房細動が見つかった人で、『高血圧』、『糖尿病』、『75歳以上』、『一過性脳虚血発作(TIA)の既往』のうち、2つ以上当てはまる場合は、積極的なチェックや予防をする必要があります。一般的な治療としては、抗不整脈と抗凝固薬による薬物治療がありますが、不十分な場合は、脚の付け根や首の太い血管からカテーテルを通し、不整脈の原因となっている信号伝達の異常な部分を焼灼する、カテーテルアブレーションを行います」(同)

 投薬としては、従来から広く使用されているのが、抗凝固薬のワーファリンだ。
 「しかし、服用している間は納豆や海藻類といったビタミンKを多く含むものは食べられません。このビタミンKは、出血した際に血液を固める作用を活性化させるからです。逆にワーファリンは血液を固まりにくくするため、出血をしやすくなる。そのため服用にあたっては、2カ月に一度程度の血液検査を受けて量を調整する必要があるなど、使いにくい面もあります」(専門医)

 しかし近年、ワーファリンの短所を解消した新薬も登場し、すでに心房細動に効果を発揮しているという。
 「高齢であることはもちろん、心房細動になりやすい人の特徴としては、糖尿病のほか、肥満や脂質異常症、高血圧、慢性腎臓病、さらに心臓の病では、心臓弁膜症、心筋症、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を起こしたことがある人などがあります。また、生活習慣においては飲酒、喫煙も関係があるとされています」(前出・健康ライター)

 加えて、睡眠不足も原因になりやすいという。
 「睡眠不足は自律神経の乱れ、つまり無意識に血管の働きを調整、支配する神経を狂わせるために、心房細動を起こしやすくなる。また、なかなか難しいとは思いますが、ストレスを溜めないことが理想的です」(前出・脳神経外科医師)安静にしても治らない胸の痛みや、食後の圧迫感も心房細動のシグナルとなる。異変を感じたら即、専門医に診てもらおう。

くも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤 高齢患者も治療すべきか


 病気になったら一刻も早く発症前の健康状態に戻したい──そう考えるのは“当然”であっても、“正解”とは限らない。治療を受けるか否かを判断する際に重要なファクターとなるのが「年齢」だ。

 脳の血管の一部が風船のように膨らむ脳動脈瘤は、破裂するとくも膜下出血を引き起こす深刻な病だ。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏がいう。

「症状の出ない未破裂の脳動脈瘤の有病率は5%ほど。脳ドックを受ければ20人に1人は見つかる」

 70代の患者が脳動脈瘤を治療するか否かのポイントは「破裂」と「手術」のリスク比較だ。

「脳動脈瘤が破裂する確率は、瘤の発生場所と大きさにもよりますが、1年間で1%未満です。一方で開頭して瘤の根元をクリップで止める『クリッピング手術』で合併症が生じる確率は1.9~12%とされます。合併症は認知機能の低下や動作に支障が出るなどで、最悪の場合は寝たきり状態になることもある。

 とくに70歳以上の高齢者は合併症の可能性が増すため、総合的なメリット・デメリットを考えると、手術の優位性が高いとは思いません」(同前)

脳梗塞治療は時間との競争 「お薬手帳」持参し早期受診を


「脳卒中」について、岡山中央病院(岡山市)の平野一宏脳神経外科科長が寄稿した。

 脳卒中は脳の血管が原因で起こる病気の総称で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血が含まれます。

 ●「急に手足が動かなくなった」=脳梗塞

 「急に手足に力が入らなくなった」という患者さんが受診したら、いつから、どの手足に症状が出たのか尋ねて、すぐに頭部CTかMRIの検査を行います。

 2005年からtPAという血栓を溶かす薬を急性期脳梗塞に使用できるようになりました。発症から4・5時間以内の患者さんに投与できます。診察で持病や内服薬を調べ、血液検査と画像診断を行い、血栓溶解剤を使用してはいけない状態がないかを確認してから、tPAを開始しなければなりません。時間との競争になります。

 残念なのは、「朝、手足が動きにくいのに気づいて昼まで様子をみていたけれど、よくならないので来ました」など、様子をみているうちに4・5時間を過ぎてしまった患者さんがかなりおられることです。4・5時間を過ぎるとtPAを投与できません。急にどちらかの手足が動かなくなったり、ろれつが回らなくなったり、ふらついて歩けなくなったら、お薬手帳を持って受診してください。お薬手帳は薬だけでなく、持病やかかりつけ医を知る手がかりになります。

 たとえば、不整脈の治療薬や抗凝固薬を飲んでいる方は、心臓の中にできた血の塊(血栓)が脳に行く動脈に詰まる病気(心原性脳塞栓症)の可能性を考えます。この病気は内頸(ないけい)動脈や中大脳動脈といった太い動脈に起こることが多く、tPA治療だけでなく、経皮的血管内血栓回収療法や、脳の腫れが強い場合は減圧開頭術などの手術が必要になる場合もあります。

●「急に動かなくなった手足がしばらくしたら動くようになった」=一過性脳虚血発作

 「食事中に右手が動かなくなり箸が落ちたが、10分すると動くようになった」という方が受診されると、一過性脳虚血発作と診断して、すぐ頭部CTやMRI検査などを行います。

 一過性脳虚血発作のうち約2割の方が3カ月以内に脳卒中を発症するというデータがあり、脳卒中予備軍と考えられるからです。手足の麻痺(まひ)のほかに、言葉が出ない・理解できない失語症(しつごしょう)、ろれつが回らない構音(こうおん)障害、片方の目が見えなくなる一過性黒内障(こくないしょう)などの症状があります。

 脳に血流を送る動脈に小さな血栓が詰まったり、血圧の低下のため脳に行く血流が少なくなることで症状が起こるため、頸部超音波検査、MRA、3D―CTA、脳血管撮影などによる脳血管の検査や、心電図、心臓超音波検査など心臓の検査を行います。治療は血圧管理や抗血小板薬の投与など脳血流を保つ治療を行います。写真のように動脈に細いところが見つかったり、不整脈や心臓の病気が原因だったりする場合は、その治療を行います。

●「再び脳卒中にならないためにはどうしたらいいですか?」=脳卒中慢性期

 この質問には、いつも「大切なのは血圧です」とお答えします。脳卒中で入院した患者さんやご家族から「高血圧といわれたが治療を受けていなかった」「血圧を下げる薬を飲んでも何も変わらないので、服用をやめていた」と聞くことがあるからです。

 脳卒中の大きな原因である動脈硬化を進めないため高血圧・糖尿病・高脂血症があれば、その治療を続けることが大切です。そのためには、気軽に相談できるかかりつけ医を持つことをお勧めします。脳卒中予防のための10カ条を表に示しました。

 脳卒中の慢性期には、麻痺した手足の筋肉が緊張する痙縮(けいしゅく)という状態になり、服の脱ぎ着や歩行が難しくなったり、痛みが出たりすることがあります。そのような患者さんには、ボツリヌス毒素の注射で筋肉を和らげ、生活しやすくする治療も行っています(イラスト参照)。

 岡山中央病院(086―252―3221)

 ひらの・かずひろ 川崎医科大学付属高校、川崎医科大学卒。川崎医科大学付属病院勤務を経て、2014年に岡山中央病院脳神経外科へ赴任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。

今日から実践したい”脳卒中発症率”を下げる術3


「高齢化に伴い、女性は脳卒中を発症しやすくなっています。今回の調査で、女性の大きな発症要素は、高血圧、肥満、喫煙の3つということも判明しました」と語るのは、公衆衛生学が専門の藤田保健衛生大学・八谷寛教授。19日、国立がん研究センターが発表した「脳卒中の発症確率計算法」の研究メンバーだ。

この調査は40~69歳の男女1万5千672人を平均14年間追跡、脳卒中を発症した790人の解析に基づいたもの。6項目の合計点数で、今後10年間の発症確率を、簡単に算出できるという。

「脳卒中の発症は、食生活の改善と禁煙によって、リスクを3割ほど、減らすことができます」(東京医科歯科大学・藤田紘一郎名誉教授)今回、藤田教授が、“女性の脳卒中の発症を下げる「3つの食卓ルール」を大公開!

1、緑茶・コーヒーで30%リスク減
 毎日、緑茶かコーヒーを飲む人は、いずれも全く飲まない方と比較して、最大3割のリスク軽減があるという別な調査結果もある。

「緑茶のカテキン、コーヒーのカフェイン、クロロゲン酸、アディポネクチンが、作用しているのでしょう。カテキンやカフェインには、脳卒中や心筋梗塞の引き金となる活性酸素の発生を抑える働きがあり、高血圧予防にもつながります」(藤田教授)最適な1日の量は、緑茶4杯、またはコーヒー2杯だという。

2、就寝前にはコップ1杯の水を!
「脳卒中の発症は、明け方が多いというデータもあります。体内の水分不足により、血液がドロドロになったことが原因なのです。その予防法で簡単なのは、寝る前にコップ1杯の水を飲むこと。私の研究結果でも、たったそれだけで、起床時の血液がサラサラになるという結果が出ました。年配の方は、就寝中、尿意で目が覚めることを嫌がるよりも、脳卒中のリスクを回避するべきです」(藤田教授)

3、食卓から醤油、ソースを無くして30%の減塩
 厚労省は、1日の食塩摂取量の目標を10グラム未満にしているが…「男女とも長寿日本一の長野県では味付けに工夫して塩分の摂取を減らしました。出汁を濃くとる、酢や香辛料で味付けをすることなどのひと工夫で塩分を減らせます」(藤田教授)

 食卓から醤油やソースをなくし、薄い味付けに慣れると、3割ほど、減塩できるという調査もあるという。適度な運動も大切。最初は緑茶やコーヒーからのトライが簡単かも♪

ビールをグビグビが命削る…夏こそ増える「脳卒中リスク」


ネットでは「思い出に残るゲーム」との呼び声が高い「がんばれゴエモン」シリーズ。そのコミカライズ版を執筆した漫画家・帯ひろ志さん(享年54)の命を奪ったのは、心臓や呼吸の動きをつかさどる脳幹からの出血だった。

脳出血は脳梗塞とクモ膜下出血とともに「脳卒中」に含められる。冬の病気のイメージがあるが、実は夏の方が発症者が多いという。

「夏は、発汗して脱水します。脳卒中を起こす人は、ベースに高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある。

概してお酒が好きで、夏になるとビールを飲みたがる。ビールのアルコールにも脱水作用があって、より脱水が進みます。脱水によって血液が濃縮され、血栓ができるため、脳梗塞を起こしやすくなるのです。

日本脳卒中協会が5月末の1週間を『脳卒中週間』として注意を呼び掛けているのは、脳梗塞を起こしやすい夏前に啓蒙するためです」(東京都健康長寿医療センター・桑島巌顧問=高血圧外来)

 実は、帯さんはまさに7年前の夏、8月31日に脳梗塞を起こしていた。その時に糖尿病も発覚した。一般に夏は発症リスクが下がる脳出血だが、夏に危ない脳梗塞をステップに発症することもある。

「脳幹の血管内で脳梗塞が再発した可能性はあるでしょう。糖尿病なら、なおさらです。

その直後になんらかのキッカケで、血栓が飛んで、血流が再開すると、血流が途絶えていた部分の血管が破れやすい。そんな2つのことが重なって、脳幹出血を起こしたのかもしれません」(桑島巌氏)

 夏も用心だ。

怖いのは熱中症だけじゃない“真夏の脳卒中”四つの危ない兆候(1)


脳卒中といえば、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の3大疾患を指すが、いずれも寒い時期に発症するイメージが強い。

しかし、厚生労働省研究班の調査によると、このうち、とくに脳梗塞については、気温の高くなる6~8月の暑い時期に発症するケースが多いことがわかった。その具体的な内訳は、脳梗塞が7割、脳出血2割、くも膜下出血が1割となっている。

 まず、脳卒中という深刻な病について説明しておこう。

 血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」、血管が詰まる「脳梗塞」の三つに分けられる脳卒中。

日本ではかつて脳出血が多かったが、大きな原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態も良くなり血管が破れにくくなったことから、発症率の割合が下がった。
 しかし、それに代わって脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞が増えているのが現状だ(現在は脳卒中の約60%)。

 脳梗塞はさらに、動脈硬化が原因で発症する「アテローム血栓性梗塞」、細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」のほか、心臓にできた血の塊(血栓)が血液の流れに乗って脳の血管を詰まらせることで起きる「心原性脳梗塞栓症」とに分けられる。
 東京多摩医療センターの脳神経内科の担当医はこう説明する。

 「小さな脳梗塞なら、一時的なマヒなど軽症で済む場合も多い。しかし、心臓でできた血栓は比較的大きいことから、これが脳の太い血管を詰まらせてしまう。

そのため心原性脳梗塞栓症はダメージが大きく、約2割が死亡したり、寝たきりや介助が必要になる人が約6割を占める実態があり、後遺症の問題も深刻になります」

 また、冒頭の調査が示すように真夏の脳梗塞が最も多い理由について、同研究班の関係者は、こう述べている。

 「脳梗塞の原因である血栓は、脱水状態になるとできやすい。夏の場合、発汗などによって水分が失われたままの状態で睡眠に入ることが増えるため、リスクが高まるのです。

寝汗をかくことで水分が減りやすくなり、血液の粘度が増して血塊(血栓)ができやすくなる。

すると、ラクナ梗塞、あるいは“アテローム梗塞”に陥りやすくなり、脳梗塞などを誘発するのです。汗をよくかいた暑い日には、夜寝る前にコップ1杯の水を飲むことが大切で、予防にも繋がります」

緑茶で脳卒中のリスクが低減!


緑茶やコーヒーをよく飲む人は、飲まない人に比べて脳卒中になるリスクが2割程度低かったとの研究結果を、国立がん研究センター(東京)と国立循環器病研究センター(大阪)のチームが15日、発表した。

 緑茶の血管保護効果やコーヒーの血糖値改善効果が影響している可能性があるという。

 チームは、1990年代後半に東北から沖縄の9保健所管内に住んでいた45~74歳の男女計約8万2000人を平均13年間追跡した。この間に3425人が脳出血、脳梗塞、くも膜下出血といった脳卒中を発症した。

 追跡開始時点で、緑茶を「全く飲まない」「週1~2回飲む」「週3~6回」「毎日1杯」「毎日2~3杯」「毎日4杯以上」のグループに分けて解析すると、飲まないグループに比べ、毎日1杯以上のグループは脳出血のリスクが22~35%低かった。脳卒中全体では毎日2~3杯以上で14~20%低かった。

 コーヒーについては、飲まないグループに比べ、週1~2回以上のグループは脳梗塞のリスクが13~22%低かった。脳卒中全体では週3~6回以上で11~20%低かった。

スマホ・パソコンの使いすぎに注意! 脳梗塞にも発展する“首への負担”


 昨今はよく電車内などで、首を曲げてスマホやパソコンを使っている人を見かけるが、あまりそうした体勢を取り続けていると、首を痛め“ストレートネック”と呼ばれる病などに陥りやすくなる。三井弘整形外科・リウマチクリニックの三井弘院長は、こう警鐘を鳴らす。

 「以前は整形外科にやってくる人といえば、腰や膝、関節などに痛みを抱える中高年者か、故障をしたスポーツ選手、あるいは交通事故などで骨を損傷した人がほとんどでした。それが今は、年齢層がぐっと若くなっているんです。頭痛や疲労がとれず、内科や心療内科に通院した人が症状が改善されないことで、最後にたどりついたのが整形外科という人が多い。そして診察すると、その9割は首に原因があることが分かってきたのです」

 なぜ、若い人に首の異常が増えたのか。その原因は、パソコンやスマホの使用過多によるストレートネックのような“パソコン病”なのだ。 パソコン病について、三井院長は著書『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)の中で、こう記している。
 「パソコンのディスプレイを長時間見続けることで首に負担がかかり、肩や背中のこり、頭痛、手の痺れ、脱力感といった症状などが表れる病気です。そもそも頭の重さは、成人で約5、6キロもある。ちなみに成人男子の脳の重さの平均は1350グラム。

それに頭蓋骨や血管などを合わせると、ボウリングの球の重さになるわけです。この重さに耐えながら、上下左右の回転などいつも支えている」また、米ニューヨークの脊髄外科医であるケネス・ハンスラージ氏による研究結果によれば、頭の傾きが15度の時は「12.2キロ」、30度の時は「18キロ」、60度では「27キロ」の重さが首にかかるという。

 女性では、昔から美人とされる条件は首が細くて長いことだった。一方、男性の場合は首が太くて短い猪首の人は仕事ができるとも言われてきたが、これはあくまで俗説。 「整形外科医からすると、首の故障が少ないのは、“背筋から首が伸びている人”だと言われます。猪首は、肩や胸の筋肉が盛り上がっているため頑丈そうには見えますが、必ずしも首の故障が少ないわけではない。要は、強い筋肉で首がいかに支えられているかどうかなんです」(専門医)

 人間の体で、どこよりも首が大事とされるのは、生きていく上でとても大切な器官が集まっている部位だからだ。 「首には、脳に血液を送る頸動脈、呼吸を保つ気管、食物を胃に送る食道、また様々なホルモンを分泌する甲状腺、加えて体を動かすための全神経が集結した脊髄などもある。体の中で、これだけ重要な器官が集まっているところは他にありません。そのため、首の具合が悪くなると、それぞれの器官の働きが悪くなり、あちこちで弊害が起こるのです」(同)パソコンなどの使いすぎから起きる首痛の症状は、単に“首が痛い”だけには留まらない。目が疲れる、体がだるい、腕が痺れるといった症状から、もっと重い変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、さらには、脳梗塞などの病気に進行することも考えられるという。ある専門家は、「首に不調が生じている場合、いくつかの症状が出る」として、見逃してはならない以下の4つの変調を挙げる。

 (1)スマホやパソコンを使うと、肩こりや首こり(背中痛)を感じる。
 (2)気付くとかなりの猫背になっている。
 (3)天井を見ようとすると首に痛みや違和感を覚える。
 (4)目が疲れやすく、ドライアイになりがち。
 これに、環境状況として「スマホやパソコンを1日5時間以上使っている」を加え、2つ以上当てはまる人は、パソコン病になっている可能性が高いという。

手足の痺れは危険信号

 以前、NHKの『ガッテン!』でも肩こりについて取り上げていたことがあるが、そこでは肩こりの原因を“筋膜のシワによるもの”としていた。この筋膜とは筋肉の束を包んでいる膜のことで、肩こりは、この筋膜が硬くなっていることが原因の一つとされる。
 「筋肉のこりは、すぐにほぐれますが、こりとほぐしを繰り返すうちに、筋肉の表面にある筋膜にシワができ、そのシワに引っ張られるように筋肉がこり固まってしまう。さらにスマホやパソコンを扱うときの前かがみの姿勢が、頑固なシワを作り出すのです。結果、首、肩に不調をきたすことにつながります」(専門医)

 特に女性は“ストレートネック”の人が多いと言われる。女性の首の筋力は弱く、また仕事中のデスクワークで負担をかけている首に対し、電車の行き帰りや休憩時間にスマホを見続けることなどで、首への負担は倍増。結果、首の自然なカーブが失われるストレートネックになる確率が高くなると考えられている。東京都立多摩総合医療センターの整形外科担当医も、こう説明する。

 「確かに、スマホやパソコンの普及もあって首の痛みを訴える人が増えてます。それも、40、50歳代あたりの人が非常に多い。そのほとんどは、背中を丸め、顔を少し前に突き出している時間が長いのが特徴です。この姿勢は、頚椎には不自然な状態で、特にアゴを突き出すと首が後ろに反り返り、頚椎や首の筋肉を緊張させてしまう。これを長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積して首を中心にこりや痛みを発症するのです。予防と改善への第一歩は、背筋を伸ばし、背中を椅子の背につけること。そして、あごを少し引く姿勢を意識することです」

 また、前述のように重い病に罹る人も増えており、「若年性脳梗塞」と診断される人も少なくない。「その多くは、脳の血管の一部が詰まることによって起きています。前兆については、首の痛みだけでは判断し難く、寝違いや筋肉疲労などと勘違いしやすい。手足に痺れ、震えなどが出たときは軽い脳梗塞を起こしている可能性があるため、診断を受けましょう」 このご時世、スマホやパソコンの使用を避けるといっても無理な話。そのため、少なくとも姿勢には注意し、途中に休憩を入れるなど、自分なりの心掛けが重要になってくる。

スマホ・パソコンの使いすぎに注意! 脳梗塞にも発展する“首への負担”


 昨今はよく電車内などで、首を曲げてスマホやパソコンを使っている人を見かけるが、あまりそうした体勢を取り続けていると、首を痛め“ストレートネック”と呼ばれる病などに陥りやすくなる。 三井弘整形外科・リウマチクリニックの三井弘院長は、こう警鐘を鳴らす。 「以前は整形外科にやってくる人といえば、腰や膝、関節などに痛みを抱える中高年者か、故障をしたスポーツ選手、あるいは交通事故などで骨を損傷した人がほとんどでした。

それが今は、年齢層がぐっと若くなっているんです。頭痛や疲労がとれず、内科や心療内科に通院した人が症状が改善されないことで、最後にたどりついたのが整形外科という人が多い。そして診察すると、その9割は首に原因があることが分かってきたのです」なぜ、若い人に首の異常が増えたのか。その原因は、パソコンやスマホの使用過多によるストレートネックのような“パソコン病”なのだ。 パソコン病について、三井院長は著書『体の痛みの9割は首で治せる!』(角川SSC新書)の中で、こう記している。

 「パソコンのディスプレイを長時間見続けることで首に負担がかかり、肩や背中のこり、頭痛、手の痺れ、脱力感といった症状などが表れる病気です。そもそも頭の重さは、成人で約5、6キロもある。ちなみに成人男子の脳の重さの平均は1350グラム。それに頭蓋骨や血管などを合わせると、ボウリングの球の重さになるわけです。この重さに耐えながら、上下左右の回転などいつも支えている」 また、米ニューヨークの脊髄外科医であるケネス・ハンスラージ氏による研究結果によれば、頭の傾きが15度の時は「12.2キロ」、30度の時は「18キロ」、60度では「27キロ」の重さが首にかかるという。

 女性では、昔から美人とされる条件は首が細くて長いことだった。一方、男性の場合は首が太くて短い猪首の人は仕事ができるとも言われてきたが、これはあくまで俗説。 「整形外科医からすると、首の故障が少ないのは、“背筋から首が伸びている人”だと言われます。猪首は、肩や胸の筋肉が盛り上がっているため頑丈そうには見えますが、必ずしも首の故障が少ないわけではない。要は、強い筋肉で首がいかに支えられているかどうかなんです」(専門医)

 人間の体で、どこよりも首が大事とされるのは、生きていく上でとても大切な器官が集まっている部位だからだ。 「首には、脳に血液を送る頸動脈、呼吸を保つ気管、食物を胃に送る食道、また様々なホルモンを分泌する甲状腺、加えて体を動かすための全神経が集結した脊髄などもある。体の中で、これだけ重要な器官が集まっているところは他にありません。そのため、首の具合が悪くなると、それぞれの器官の働きが悪くなり、あちこちで弊害が起こるのです」(同)パソコンなどの使いすぎから起きる首痛の症状は、単に“首が痛い”だけには留まらない。

目が疲れる、体がだるい、腕が痺れるといった症状から、もっと重い変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア、さらには、脳梗塞などの病気に進行することも考えられるという。ある専門家は、「首に不調が生じている場合、いくつかの症状が出る」として、見逃してはならない以下の4つの変調を挙げる。

 (1)スマホやパソコンを使うと、肩こりや首こり(背中痛)を感じる。
 (2)気付くとかなりの猫背になっている。
 (3)天井を見ようとすると首に痛みや違和感を覚える。
 (4)目が疲れやすく、ドライアイになりがち。
 これに、環境状況として「スマホやパソコンを1日5時間以上使っている」を加え、2つ以上当てはまる人は、パソコン病になっている可能性が高いという。手足の痺れは危険信号

 以前、NHKの『ガッテン!』でも肩こりについて取り上げていたことがあるが、そこでは肩こりの原因を“筋膜のシワによるもの”としていた。この筋膜とは筋肉の束を包んでいる膜のことで、肩こりは、この筋膜が硬くなっていることが原因の一つとされる。 「筋肉のこりは、すぐにほぐれますが、こりとほぐしを繰り返すうちに、筋肉の表面にある筋膜にシワができ、そのシワに引っ張られるように筋肉がこり固まってしまう。さらにスマホやパソコンを扱うときの前かがみの姿勢が、頑固なシワを作り出すのです。結果、首、肩に不調をきたすことにつながります」(専門医)

 特に女性は“ストレートネック”の人が多いと言われる。女性の首の筋力は弱く、また仕事中のデスクワークで負担をかけている首に対し、電車の行き帰りや休憩時間にスマホを見続けることなどで、首への負担は倍増。結果、首の自然なカーブが失われるストレートネックになる確率が高くなると考えられている。東京都立多摩総合医療センターの整形外科担当医も、こう説明する。「確かに、スマホやパソコンの普及もあって首の痛みを訴える人が増えてます。それも、40、50歳代あたりの人が非常に多い。そのほとんどは、背中を丸め、顔を少し前に突き出している時間が長いのが特徴です。

この姿勢は、頚椎には不自然な状態で、特にアゴを突き出すと首が後ろに反り返り、頚椎や首の筋肉を緊張させてしまう。これを長時間続けていると、首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積して首を中心にこりや痛みを発症するのです。予防と改善への第一歩は、背筋を伸ばし、背中を椅子の背につけること。そして、あごを少し引く姿勢を意識することです」

 また、前述のように重い病に罹る人も増えており、「若年性脳梗塞」と診断される人も少なくない。 「その多くは、脳の血管の一部が詰まることによって起きています。前兆については、首の痛みだけでは判断し難く、寝違いや筋肉疲労などと勘違いしやすい。手足に痺れ、震えなどが出たときは軽い脳梗塞を起こしている可能性があるため、診断を受けましょう」



 このご時世、スマホやパソコンの使用を避けるといっても無理な話。そのため、少なくとも姿勢には注意し、途中に休憩を入れるなど、自分なりの心掛けが重要になってくる。

肉の存在が“元気で長生き”のカギ 冬場の脳卒中、心筋梗塞の予防策


 厚生労働省の人口動態調査(2016年)では、死亡原因2位が心疾患、4位が脳血管疾患となっている。この2つは動脈硬化性疾患とも呼ばれ、月別推移でみてみると、11月以降、寒さが厳しくなるにつれ死亡者数が急激に増える傾向にあることが分かる。
 今回は、これらの病を回避すべく、特に食生活面から問題点を探ってみよう。

 一般的に、脳卒中(脳梗塞、脳内出血など)は、血液中にできた血栓が動脈に詰まり、酸欠のために脳組織が壊死、または、それに近い状態になり発症する病気と言われている 脳の場合、動脈が90%以上詰まると脳梗塞などを発症するが、自覚症状がなく非常に厄介だ。「発症した場所などによって意識がなくなったり、手足に麻痺や発作が起きます。たとえ一命を取り留めても、運動障害や言語障害などの後遺症が残ることが多く、後の生活面に大きな影響が出ます」(健康ライター)

 一方の心筋梗塞は、血管が70%以上詰まると発症する。こちらも寸前まで自覚症状はほとんどなく、「元気だった人が突然倒れた」と、突如の異変に周囲の人は慌てふためく。対応が遅れてしまうことも多く、最悪の場合は、“突然死”という事態に陥ることも少なくない。これは疾患の特徴ともいえる現象だが、心臓病は心筋梗塞以外にも、狭心症、不整脈、心筋疾患、心不全などで突然死するケースが8割近くもあるというから、油断できない。

 「こうした脳や心臓の疾患は、いずれも気温がぐんぐん下がり始める11月下旬あたりを境に増え始めます。寒さが直接の原因なのかどうかは多少、意見が分かれるところですが、多くの専門家は気温差を大きな要因として挙げているのです」(同)なぜ寒さが関係しているのか。具体的な一つの理由としては、寒冷の刺激によって皮膚血管が収縮して抵抗が増し、血圧が上昇するために心臓への負担が増すためだという。

 東京・三田の厚生中央病院総合内科担当医は、こう説明する。 「寒い季節になると、人の体は冷え、血管を詰まらせる血栓ができやすくなります。もともと血栓は体の防御反応と関係があり、血液中には止血のための血液を固まらせる血小板が含まれ、この血小板がストレスを活性化します。つまり寒さは、ストレスの要因の一つになるということ。最近の研究では、赤血球も寒さによるストレスで変形して大きくなり、血液が固まる原因になることも分かってきました。冬の寒さは血液の通り道である血管と血液を循環させる心臓、循環器に障害を引き起こす要因になり、心疾患から死に至るということです」

 では、しばらくは猛烈な寒さが続くこの時期、どのような点に気をつければいいのだろうか。管理栄養士で料理研究家の林康子氏は、日頃の食事面での注意をこう語る。「寒さによって体の冷えが続くと、免疫力がなくなり、ただでさえ病気になりやすくなります。とくに内臓の働きが悪くなることから、これを改善するために体内で熱を作らなければなりません。それには、食事や筋肉量が大きくものを言うため、バランスの取れた食事をしっかりと食べることです。まず、ご飯などの主食、メーンのおかずとなる主菜、小鉢など副菜2種類が揃う定食形式の食事を1日3食、しっかり摂ること。とにかく食事をすると体内に熱が生まれ、その熱量は、何を食べたかで異なってきます。中でもタンパク質は最も重要で、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などを取り入れた食事を心掛けてください」

 多くの人は、「健康な体は、野菜を中心にした食生活で、できるだけお肉を控えてカロリーを抑える」という、そんな粗食が健康長寿へと導くイメージを持っているかもしれない。さらに「菜食主義」という言葉まで流行ったこともあるが、近年は、そうした食生活では健康長寿とは程遠くなると説く研究者が増えている。林氏の言うように、タンパク源の一つである肉には、植物性タンパク質では補えない栄養素や生理活性物質が含まれている。「ある長寿社会の研究をしている専門家によれば“元気で長生き”のカギは、肉の存在があるからだと語っています。確かに、肉に含まれる鉄分は、体内で最も利用されやすいものです。また、最も多く含まれるセロトニンも脳内の神経伝達物質で、うつやボケの予防にもつながると言われるほどです」(同)

 加えて林氏は、今回取り上げる寒い季節の脳卒中、動脈硬化などの防止についても、こう語る。 「お肉を食べると、体に必要なアミノ酸が補われ、血管が丈夫になって脳卒中や心臓病、高血圧などのリスクが低下することが分かっています。アメリカの医療機関が行った大規模な臨床試験の結果などからも、『タンパク質が不足すると脳卒中のリスクが増える』ことが立証されている。米サイエンス誌にも掲載された、タンパク質の摂取量と脳卒中のリスクとの関連についての文献では、タンパク質は血管の材料で、不足すれば血管が損傷しやすくなり、脳卒中の要因になるとしています。これは、精度の高い疫学データ7種類をまとめて解析、検証したものです」

 専門家によると、現在、日本で推奨されているタンパク質の摂取量は、「男性で1日50グラム、女性で同40グラムを下回らない」ことが基準になっているという。もちろん、タンパク質の取りすぎも健康リスクを高めてしまうためNGだ。「また、肉そのものも、牛、豚、鶏など、偏りなく選びたいところです。もともと動物性タンパク質不足で短命だった日本人が、肉や魚、野菜、米を摂取するようになり、長寿になった背景を考えても、やはり肉は食べた方がいい。もちろん、野菜、魚、穀類などをバランスよく食べることが前提です」(同)

 食生活の見直しを含め“元気で長生き”のためには、自己管理に優るものはない。
 寒い時期は特に気をつけよう。

脳ドックで異常が見つかったらどうするべき?


脳の動脈にできたこぶ(瘤)が破れるとくも膜下出血を引き起こすため、見つかったら破裂させないことが重要だ。東京女子医科大学 教授の岡田芳和(おかだ・よしかず)さんは、こういった脳や脳の血管の異常を見つけるためにも、脳ドックを受けることを推奨する。

* * *

■脳ドックとは
脳ドックは、脳や脳の血管などの異常を調べる脳の健康診断です。主にMRA検査、MRI検査、超音波検査の3つの検査が行われます。

MRAは、磁気を使って脳の血管を見る検査で、未破裂脳動脈瘤(りゅう)を調べます。MRIは、脳の断面や立体的な画像を見る検査で、脳梗塞を調べます。また、首の超音波検査を行うことで、脳梗塞につながる頚(けい)動脈狭窄(きょうさく)症を調べることができます。

これらの検査でわかる異常は、無症候性といって自覚症状が現れません。脳ドックは、こうした自覚症状のない脳や脳の血管などの異常を発見して、脳の病気の予防につなげていこうというものです。

特に、両親や兄弟に脳卒中を起こした人がいる場合は、その対策に脳ドックは役立ちます。
会社や地域の健康診断で血圧や血糖、LDLコレステロールなどの値が高いと指摘された場合にも脳ドックをおすすめします。

現在、脳ドックを受けることのできる施設は、全国に600か所以上あり、脳神経外科や神経内科のある医療機関を中心に増加しています。費用は、検査項目や種類などによって異なりますが、4万~10万円程度で受けられます。

■未破裂脳動脈瘤とは
脳の動脈にできたこぶのような膨らみを、脳動脈瘤といいます。未破裂脳動脈瘤とは、まだ破裂していない脳動脈瘤を指します。

脳動脈瘤は、脳の大きな動脈が小さな動脈に枝分かれする部分にできやすいことがわかっています。この部分の動脈の壁に、血液の流れによって大きなストレスがかかることが、脳動脈瘤のできる一因とされています。

一度できた脳動脈瘤が自然に消えることはありません。時間とともに大きくなったり、形が変わるなどして破裂に至る危険があります。
脳動脈瘤ができる大きな動脈は、脳の表面を覆っているため、破裂すると脳を包んでいる「くも膜」の内側に出血します。これがくも膜下出血です。

くも膜下出血を起こすと、脳の血流が悪化したり、脳が激しくむくむなどして、命に関わる重篤な状態に陥ります。

■見つかっても心配し過ぎない
脳動脈瘤は、脳ドックを受けた人の5%程度に見つかります。検査機器が進歩し、2~3mmの小さな脳動脈瘤まで見つかるようになってきたためと考えられています。

しかし、脳動脈瘤があっても破裂してくも膜下出血を起こす確率は年1%ほどです。脳動脈瘤が見つかったからといって過剰に心配する必要はありません。

■脳動脈瘤が見つかったら
脳ドックで脳動脈瘤が見つかった場合は、専門医を受診して「3D-CT」などによる精密検査を受けます。

3D-CTは脳動脈瘤の位置や大きさ、形、数などがわかり、破裂しやすいかどうかが判定できます。大きさが5mm以上だったり、形がいびつな場合は破裂するリスクが高いのですが、2~3mmなら破裂のリスクは低いと考えられています。ただし、破裂するリスクが低い場合でも生活習慣の見直しは必要です。

また、脳動脈瘤の破裂には、家族歴といって、両親や兄弟にくも膜下出血を起こした人がいるかどうかが大きく関係します。高血圧や喫煙がある場合も、破裂しやすいことが知られています。

こうしたことも調べたうえで、経過観察をするか、それとも手術を受けるかが判断されます。

■『NHKきょうの健康』2014年7月号より
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