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痛みが出始めたらすぐに服用ーーメーカーに聞いた「鎮痛剤」の正しい飲み方

© 女性自身

頭痛や生理痛に苦しむ女性の味方となる鎮痛剤。だが、使い方を誤ると、十分な効果が得られない場合も。ワクチンの副反応対策で身近になった薬の正しい使い方を知ろうーー。

コロナ禍による精神的ストレスや、テレビ・スマホによる肩こりや首こり、マスク習慣などが要因となり頭痛に苦しむ人が増えているという。さらにワクチンの副反応への対応で、ふだん使っていなくても鎮痛剤を使ったという人も多いだろう。

「ワクチンによる副反応が出た場合に、手軽に購入できる鎮痛剤で頭痛や発熱などの症状をやわらげることは問題ありません。しかし、副反応が出る前から予防的に鎮痛剤を飲むのは避けるべきです。『薬物乱用頭痛(正式名称・薬剤の使用過多による頭痛)』の第一歩になりかねません」

そう語るのは、慶應義塾大学医学部の元教授で、湘南慶育病院の鈴木則宏院長だ。頭痛研究の第一人者である鈴木先生が薬物乱用頭痛について解説する。

「市販されている鎮痛剤は大きくわけて、エヌセイズ(NSAIDs)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬と、アセトアミノフェンの2種類ありますが、薬物乱用頭痛はこれら鎮痛剤を常用して起こる慢性頭痛です。鎮痛剤は頭痛以外にも腰痛や歯痛などさまざまな痛みに対して常用されますが、薬物乱用頭痛は片頭痛や緊張型頭痛を抑えようと鎮痛剤をひんぱんに服用している人に生じます。薬物乱用頭痛のメカニズムはよくわかっていませんが、頭痛を抑えようと薬を飲んでいるのに、その薬によって頭痛が慢性化。さらに薬に頼ってしまうという悪循環を招いてしまうのです」

一般的にアセトアミノフェンの鎮痛剤よりも、即効性と効き目が高いといわれるエヌセイズの鎮痛剤。ワクチンの副反応への対応で使われることが多いのも、このタイプの鎮痛剤だ。

エヌセイズの鎮痛剤「ロキソニンS」を販売している第一三共ヘルスケア・マーケティング部のブランドマネージャー土合桃子さんは仕組みを次のように語る。

「エヌセイズは、痛みの原因物質である『プロスタグランジン』の産生を抑制する働きがあります。『即効性がある』『頭痛・発熱に効く』という特徴がある一方、胃酸から胃を守る粘液分泌なども抑制するため、腹痛や胃部不快感などの副作用が出ることもあります。ロキソニンSは胃への負担が少ない特徴も持ち合わせていますが、もし症状が出たら注意が必要です」

鎮痛剤の購入者の8割以上が女性で、購入目的の72%が頭痛への対応だという。薬物乱用頭痛については、どのような警鐘を鳴らしているのだろうか?

「市販の鎮痛剤は、定められた用法・用量を守って使用することを前提でつくられています。まず、それを守っていただくこと。そして、正しく服用しているのに痛みが治まらなかったり、1カ月の服用日数が10日以上になったりする場合は、病院を受診していただくように発信しています。また予防的に服用はしないことも呼びかけています」

どう使うと、効果的なのか。

「鎮痛剤は痛みそのものをなくすのではなく、あくまでも痛みの原因物質がそれ以上産生されないようにするもの。原因物質が体の中で増え過ぎると、鎮痛剤を服用しても効果が実感しにくくなることもあるので、痛みを感じたらすぐに使用するようにしてください」

正しく使えば、苦しい痛みを軽減してくれる鎮痛剤。次のポイント5を守って、症状が出たら迷わず使おう。

■鎮痛剤を使うときの5つのポイント

【1】予防的に鎮痛剤を服用しない

痛みが出てから服用する。痛みは我慢せずに、すぐに服用する。

【2】定められた用法・用量を守る

服用する錠数、次に服用するまで空ける時間を守る。

【3】月に10日以上鎮痛剤は飲まない

頭痛が月10日以上ある場合は、医師の診察を受けよう。

【4】頭痛日記(服用薬・痛みの症状)をつける

痛みの出るタイミングや原因がわかる可能性がある。

【5】痛みが治まらなければ、頭痛専門医を受診する

重病の場合もあるので要注意。

これが鎮痛剤との上手な付き合い方だ。

市販薬でも流通する「解熱鎮痛薬」の副作用 胃潰瘍や腸閉塞に注意

歳を重ねるごとに重くのしかかってくる“多剤併用”の問題。厚生労働省によると、75歳以上の4割以上が「5種類以上」の薬を飲んでおり(2020年)、加齢により薬の代謝などの機能が衰え、体内に留まりやすくなる高齢者ほど多くの薬を飲んでいる現実がある。

 多剤併用は身体への負担が大きいため、薬を減らしたい人は多いだろう。だが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。そこで普段、患者に薬を処方する立場にある医師に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。

 腰や膝、筋肉などに痛みがある時や、発熱時に服用する機会が多い解熱鎮痛薬。市販薬としても流通するロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナクナトリウムなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、その効果の高さから処方を求める患者が多い。

 しかし、国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師は、消化器内科の立場から副作用の問題を指摘する。

「昔から非ステロイド性抗炎症薬は副作用のNSAIDs潰瘍(胃潰瘍)を起こすことで知られています。

 薬の作用で炎症が少なくなる反面、胃の粘膜が傷付きやすくなる。腰痛などで処方されたロキソプロフェンを飲み続けた高齢の患者さんが、腹痛を訴えて来院したこともある」

 また、厚労省は2016年、同薬の添付文書の「重大な副作用」に〈小腸・大腸の狭窄・閉塞〉を追加するよう指示を出している。

「厚労省によると、3年間で5人に副作用と見られる腸閉塞などの症状が出たそうです。死亡例はないものの、因果関係が否定できないとされる。

 今後、もし必要なら、私は同じ解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン製剤を服用するつもりです」

※週刊ポスト2021年12月17日号

日本製ジェネリック薬の「降圧剤」を飲まなくなった医師の見解

日本製ジェネリックを飲まなくなった理由は?(永井敦医師)© NEWSポストセブン 提供 日本製ジェネリックを飲まなくなった理由は?(永井敦医師)

「とりあえず薬を出しましょう」。不調を感じて病院を受診した際に、多くの人がそう言われた経験を持つのではないか。このような“とりあえず”の処方には注意が必要だ。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師が言う。

「薬には、現在の症状を改善し緩和する効能などのメリットと、新たな症状が生じる副作用のデメリットが必ず存在します。その両方を天秤にかけ、患者にとってのベネフィット(利益)が副作用のリスクに勝る時だけ、薬は飲まれるべきで、服用を始める際には慎重な検討が必要です」

 厚労省によると、75歳以上の4割以上が「5種類以上」の薬を飲んでおり(2020年)、加齢により薬の代謝などの機能が衰え、体内に留まりやすくなる高齢者ほど多くの薬を飲んでいる現実がある。

 こうした「多剤併用」は身体への負担が大きいため、「薬を減らしたい」という人は多いだろう。だが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。

 そこで普段、患者に薬を処方する立場にある名医に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。

薬を替えて気づいた降圧剤の「苦味」

 川崎医科大学附属病院病院長の永井敦医師は持病に高血圧があり、降圧剤のカルシウム拮抗薬(アムロジピンOD)を飲んでいる。

「もともとは日本製ジェネリック薬を飲んでいましたが、2020年に相次いで発覚したジェネリック製造会社の不正問題を受けて、海外製の(先発薬と原薬や添加物、製造方法などが同じ)オーソライズドジェネリック薬に切り替えました。

 するとまったく苦味を感じず、飲みやすかった。唾液で溶かすOD錠は苦味があるとものすごくつらい。服用後に食事をしてもまだ苦味が残っていた日本製ジェネリックはもう飲みたくないですね。苦味を感じなくなるだけで薬への抵抗感が消え、QOLが改善します」

 永井医師には、ほかにも飲みたくない薬がある。

「ロキソプロフェンナトリウム水和物(非ステロイド性抗炎症薬)は解熱鎮痛薬として一時的に飲むのは問題ないですが、腎機能障害や腎不全の副作用があることから、長期で漫然と飲みたくありません。

 また、総合かぜ薬の非ピリン系感冒剤はかなり眠気が来るので、服用後は運転などができないうえ、男性の場合、前立腺肥大症があると排尿障害が出たりするので飲みません」

※週刊ポスト2021年12月17日号

薬と健康食品・サプリの併用リスク ウコンやセサミンにも注意が必要

 身体の不調を治すために飲んでいるはずの「薬」が、「一緒に口にするもの」によっては “毒”にもなる。複数の医療機関や薬局にかかることで、薬の組み合わせ次第では効き過ぎてしまったり、思わぬ副作用が出たりするケースがある。健康の維持・増進目的で摂取するサプリや健康食品にも、薬の作用を強めたり、反対に弱めてしまうものがある。


「サプリは薬ではないから大丈夫だろう」と自己判断し、患者から医師に報告しないことが多い。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師は、こんな体験をしたという。


「60代男性患者に胃カメラで生検中、出血がダラダラと止まらなくなりました。男性は抗血小板薬のアスピリンを服用中でしたが、生検程度で血が止まらなくなることはありません。よく聞くと、イワシのサプリ(EPA)を一緒に飲んでいるとわかった。EPAと抗血小板薬を併用すると、血をサラサラにする作用が増強され出血のリスクが高まります。男性は、『サプリは申告する必要はないと思った』そうです」


 日本健康食品・サプリメント情報センターの宇野文博理事は「サプリは食品だから関係ないという誤解がいちばん怖い」と語る。「サプリや健康食品が身体に効く=作用しているのであれば、医薬品との相互作用を考えなければなりません。しかし、日本では医薬品とサプリの相互作用について細かいチェックができていないのが現状です」

セサミンでふらつく

 同センターは約1200種類のサプリや健康食品について、成分の有効性や安全性、医薬品との相互作用などの科学的根拠について研究論文をもとに統計的な評価をし、サプリと薬の「危ない飲み合わせ」をまとめている。


 危険度が低いものから「併用禁忌」のものまで様々だが、コンビニやドラッグストア、通販などでお馴染みのサプリも多い。


「肝臓に良い」と言われ、成分入りのドリンク剤などが広く利用されているウコンは、抗凝固薬・抗血小板薬との併用で出血のリスクが、糖尿病治療薬との併用で低血糖のリスクがある。


 疲労回復や老化防止など、さまざまな健康効果を期待して摂取されるコエンザイムQ10は、降圧剤との併用で血圧が過度に低下する恐れがある。ゴマに多く含まれる酵素で人気サプリのひとつであるセサミン。老化予防のために飲んでいる人が多いが、こちらも同様に降圧剤との飲み合わせには注意が必要だ。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏が語る。


「セサミンには血圧を下げる効果が期待されますが、降圧剤と併用すると過度に血圧が下がりすぎてしまいめまいやふらつきなどの原因になる可能性があります」関節痛などに悩む人が症状緩和を期待して摂取するグルコサミンには、抗凝固薬(ワルファリン)との併用で出血のリスクがある。


「グルコサミンはワルファリン製剤との併用で薬の作用が強まり出血のリスクが高まると報告されています。また、EPAやイチョウを含むサプリと抜凝固薬を併用すると胃潰瘍や脳出血による小さな出血でも血が止まらなくなるリスクが高まります。


特に手術時にサプリの摂取状況について医師らに伝えないと、血が止まりにくくなり命に関わることがあります」(医薬情報研究所エス・アイ・シー取締役で薬剤師の堀美智子氏)誰もが手軽に購入できるサプリだけに、医師への相談はこまめにしたい。

意外と危ない「薬と食事」の組み合わせ グレープフルーツ、リンゴに注意

「薬と薬」、あるいは「薬と健康食品・サプリ」の飲み合わせ次第では、思わぬ副作用が出ることもある。一方で、「薬と日常の食事」にも、注意すべき組み合わせが存在する。

 

アルコール類は薬の服用中は摂取しないよう指導されることが多い。例えばビールは、解熱鎮痛剤の非ステロイド性抗炎症薬との飲み合わせで潰瘍や出血のリスクが高まる恐れがある。同じくワインは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬との飲み合わせで過度の眠気が引き起こされるリスクが高い。


 また一般的に健康なイメージのある食品にも、薬との併用でリスクが指摘されるものがある。特に危険なのがグレープフルーツだ。降圧剤(カルシウム拮抗薬)、脂質異常症治療薬(スタチン系)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬など多くの薬との相性が悪く、いずれも薬の作用を過度に増強する恐れがある。医薬情報研究所エス・アイ・シー取締役で薬剤師の堀美智子氏が語る。


「グレープフルーツには薬物代謝酵素(CYP3A4)の働きを阻害する成分が含まれています。これを食べると薬の代謝分解が抑制され、結果、何倍もの薬を飲んだのと同じ状態になり、薬の作用・副作用が強まります。特にカルシウム拮抗薬や一部のスタチン系薬、一部のベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方時には『食べないように』とされています」


 見落とされがちな点として堀氏は、「和製グレープフルーツとも呼ばれるぶんたん(ザボン)のほか、スウィーティ、ジャクソンフルーツにも同様のリスクがあるので注意が必要」という。

リンゴで血糖値に異変

「健康に良い」食品にも注意が必要だ。ミネラル豊富なコンブ、健康ジュースとして飲まれるノニは、それぞれ降圧剤のACE阻害薬、ARB薬との併用で高カリウム血症のリスクがある。


 納豆などの原料で植物性タンパク質が豊富な大豆は、糖尿病治療薬と合わさると薬の作用が増強して血糖値が過度に低下する恐れがあるため、「一緒に摂取する際は慎重に様子を見てほしい」(銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏)という。


 長澤氏が「厄介だ」と指摘するのがリンゴだ。糖尿病治療薬チアゾリジン薬の服用中は血糖値を上昇させる恐れがある。


「糖尿病治療薬の服用時は、糖の吸収を抑える働きをする食品との併用で血糖値を下げてしまう低血糖のリスクに注意が必要ですが、反対に、リンゴのように血糖値を上昇させて薬の作用を妨げるものもあります。薬を飲んでも血糖コントロールが上手くいかない方は、食べ物の影響を受けている可能性があるので、積極的に医師や薬剤師に質問すべきでしょう」(長澤氏)


コーヒーと一緒に飲むと危険な薬 体への影響も解説

健康をめぐる最新のエビデンスや、様々な情報が各国で報じられています。この記事では、M3 USAが運営する米国医師向け情報サイトMD Linxから、米国医師から特に反響の大きかった健康トピックスを翻訳してご紹介します。

※この記事は、M3 USAが運営する米国医師向け情報サイトMDLinxに2021年1月23日に掲載された記事「Danger:Don’t mix these meds with coffee」を自動翻訳ツールDeepLで翻訳した記事となります。内容の解釈は原文を優先ください。

最近では、コーヒーが健康に良いことを示す証拠が数多く発見されています。しかし、この人気のある飲み物をすべての人が安全に飲めるわけではありません。特定の薬を服用している人は要注意です。コーヒーやその他のカフェインと一緒に飲むと、悲惨な副作用が出るものもあります。

私たちの多くは朝の一杯を楽しんでいますが、研究によると、コーヒーはさまざまな薬に悪影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、コーヒーと相互作用する8つの薬と、両方を摂取した場合の影響を紹介します。

エフェドリン
エフェドリンは、神経系の働きを活発にする刺激物です。充血除去剤や気管支拡張剤として、呼吸困難の治療に使用されます。また、低血圧、過眠症、月経異常などの治療にも使われます。

コーヒーに含まれるカフェインも興奮剤であるため、エフェドリンとコーヒーを組み合わせることは非常に危険です。メイヨー・クリニックの健康専門家は、両方の消費が高血圧、心臓発作、脳卒中、または発作につながる可能性があるため、2つの混合に対して助言しています。

抗糖尿病薬
RXList.comの記事によると、コーヒーと相互作用する抗糖尿病薬には、グリメピリド(Amarylとして販売)、グリブリド(DiaBeta、Glynase PresTab、Micronase)、インスリン、ピオグリタゾン(Actos)、ロシグリタゾン(Avandia)、その他多くの薬があります。

コーヒーは、個人によっては血糖値を上昇させ、抗糖尿病薬の効果を打ち消してしまう可能性があります。コーヒーを好んで飲む糖尿病患者は、血糖値を注意深くモニターする必要があり、これらの影響を考慮して薬の投与量を変更する必要があるかもしれません。

テオフィリン
テオフィリン(テオ24、テオクロン、ユニフィルなどの名称で販売されている)は、息切れや喘ぎを症状とする喘息、気管支炎、肺気腫などの治療に用いられます。本剤はキサンチン系薬剤であり、筋肉を弛緩させ、気道を広げ、刺激物に対する肺の反応を改善する作用がある。

メイヨー・クリニックによると、コーヒーに含まれるカフェインはテオフィリンと同様の影響を体に与えるため、この2つを組み合わせることで薬の効果が高まり、吐き気や動悸などの副作用も出やすくなるといいます。また、コーヒーはテオフィリンを体外に排出する速度を低下させるため、投与量の変更が必要になることもあります。

フェノチアジン系薬剤
フェノチアジン系薬剤は、統合失調症などの精神疾患の治療に用いられる薬剤群です。フルフェナジン(パーミチル、プロリキシン)、クロルプロマジン(ソラジン)、ハロペリドール(ハルドール)、プロクロルペラジン(コンパジン)などがある。フェノチアジン系薬剤は、重度の吐き気や中等度から重度の痛みを伴う患者さんなど、一部の患者さんの焦燥感を和らげるために使用されることもあります。

コーヒーに含まれるタンニンは、これらの薬と結合し、体内での吸収を妨ぎます。この相互作用は、薬を服用してから1~2時間以内にコーヒーを飲んだ場合にのみ発生しますが、これらの患者には慎重なモニタリングが必要です。

抗凝固剤
アスピリン、クロピドグレル(プラビックス)、イブプロフェン(アドビル、モトリンなど)、ナプロキセン(アナプロックス、ナプロシンなど)、エノキサパリン(ロベノックス)など、血液の凝固を遅らせるために使用される薬です。

健康専門家は、血液凝固を遅らせる可能性のあるコーヒーとの併用に注意を促しています。これらの薬とカフェインを混ぜると、過度の出血やあざができる可能性が高くなるとRXList.comは指摘しています。

三環系抗うつ剤
これらのうつ病治療薬には、アミトリプチリン(エラビル)とイミプラミン(トフラニール、ジャニミン)が含まれます。これらの薬は、神経伝達物質であるノルエピネフリンとセロトニンの濃度を高め、神経伝達物質であるアセチルコリンを抑制することで、脳内の化学物質のバランスをリセットし、うつ病の症状を和らげることができると考えられています。

しかし、コーヒーに含まれるタンニンが薬と結合し、体内への吸収量を制限することで、このプロセスを阻害する可能性があります。専門家は、三環系抗うつ薬の効果を確実にするために、服用後1~2時間以内はコーヒーを控えるようにアドバイスしています。

喘息治療薬
アルブテロール(プロベンティル、ベントリン、ボルマックス)、メタプロテレノール(アルペント)、イソプロテレノール(イスプレル)など、βアドレナリン作動薬は、喘息の治療に用いられます。これらの薬剤は、気道周辺の筋肉を弛緩させることで作用しますが、不安、震え、動悸、心拍数の増加などの副作用を引き起こす可能性があります。

コーヒーとβアドレナリン作動薬を同時に摂取すると、前述のような副作用を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。

避妊用医薬品
避妊薬の例としては、エチニルエストラジオールとレボノルゲストレル、ノルエチンドロンなどがあります。避妊薬は、体がカフェインを通常のように素早く分解するのを妨ぎます。その結果、コーヒーと一緒に避妊薬を服用すると、神経過敏、頭痛、速い心拍などの副作用が生じる可能性があります。

上記に加えて、コーヒーはビタミン剤との相互作用もあります。これらの相互作用については、MDLinxで詳しく説明しています。

他の薬との相互作用や健康上の問題がない限り、適量のコーヒーには利点もあります。いくつかの研究では、認知能力の向上、脂肪燃焼効果、運動後の回復、さらにはパーキンソン病やアルツハイマー病のリスク低下に関連しています。最近の研究では、コーヒーが慢性肝疾患のリスクを低減する可能性も示唆されています。

医師が「私はのまない」と宣言する要注意な市販薬

医師がのまない市販薬一覧

「毒にも薬にもなる」という言葉がある。病気やつらい症状を治してくれる「薬」でも、効き目が強いがゆえに、服用の量や仕方を間違えたり、個人の体質と合わなかったりすることで、逆に体調を悪化させる「毒」にもなる。薬に精通する医師たちは、どんな薬に注意しているのだろうか。


◆ロキソニンをのんで「黒い便」が出たら要注意

 頭痛や生理痛などの時につい頼りたくなるのが、痛み止め。代表的な薬である「ロキソニン」には否定的な声が複数あがった。新潟大学名誉教授の岡田正彦医師はこう話す。


「主成分の『ロキソプロフェン』は鎮痛効果がある半面、胃が荒れやすいので、病院では胃薬を一緒に処方します。市販品は胃を荒らさない工夫がされているというが心配は残る。自分ではのみません」(岡田さん)


 健康増進クリニック院長の水上治さんも胃粘膜のダメージを心配する。

「『ロキソニン』をのんで黒い便が出たら、胃から出血している疑いが。すぐに医師に相談してほしい」


◆H2ブロッカー胃腸薬で食中毒になるリスクも

 胃を守り、消化を助けてくれる胃薬も、ものによってはかえって胃を弱めてしまう。水上さんは「H2ブロッカー胃腸薬」をあげる。


「ちょっとした胃痛や消化不良の時、胃酸を抑える『H2 ブロッカー』を配合した胃薬をのむのは、避けた方がいい。胃酸が減ることによって消化力が落ちるうえ、殺菌力も弱まる。


その結果、食中毒を起こすリスクさえある。胃潰瘍になってしまったならともかく、少し胃が悪くなったからといってのむ薬ではありません」


 女性の強い味方であるはずの便秘薬も、選び方次第ではかえって悪化の原因になる。東邦大学医療センター大橋病院・婦人科の高橋怜奈医師はこう話す。


「私は『刺激性の便秘薬』は第一選択としては服用しません。大腸を刺激し、腸のぜん動運動を促すため即効性はありますが、その一方で依存しやすくなってしまう。


慢性的に服用すると腸の自然な動きがなくなってしまい、最終的には、薬なしでは便はおろかガスも出なくなる。この状態になってしまうと治療はかなり難しいでしょう」


 下痢止めも「基本的にはのまない」と回答する医師がいた。渋谷セントラルクリニック院長の河村優子さんが言う。


「ノロウイルスやO-157だった場合、薬で下痢を止めると、ウイルスがいつまで経っても体外に出ていかない。これらの病気が原因ではなかったとしても、極力、食事内容を見直したり、漢方薬を使ったりして治療します」

医師がのまない処方薬一覧

薬の「多剤処方」 医師から“漫然処方”されてないかを知るチェックリスト

「医師から漫然処方されていないか?」危険度チェックリスト

「医師から漫然処方されていないか?」危険度チェックリスト


 日本病院薬剤師会が公開した『多剤投薬の患者に対する病院薬剤師の対応事例集』(2018年2月)には、「医師の漫然投与」による多剤処方への対応事例が紹介されている。


 同事例集は、全国48の病院から多剤投薬への対応事例を収集し、33の事例を精査・分類したもの。主に入院により集中的に取り組まれた減薬の成功事例を知ることができる。


 70代の男性(別表症例)は誤嚥性肺炎で入院した際に4種類の糖尿病治療薬など計15種類の薬を日常的に服用していた。さらに脂質異常症治療薬と抗凝固薬を飲み合わせるなど、危険な飲み合わせが複数確認されたことで「断薬」に取り組んだ。


『知ってはいけない薬のカラクリ』の著者、谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)が言う。


「服用していた4種類の糖尿病薬はそれぞれ他の糖尿病薬と組み合わせることで低血糖リスクが高まります。脂質異常症薬のスタチン系薬とワルファリンは併用すると抗凝血作用が増強され出血が起きやすくなる場合もある。実際、服用中にワルファリンが効きすぎて消化管出血や脳出血などで救急搬送される方がいます」


 その他、「併用注意」とされている抗不安薬と抗精神病薬も処方されるなど危険な飲み合わせが複数あった。減薬の結果、薬は入院時の15種類から9種類になったという。前出・谷本医師が言う。


「病気に合わせて薬が決まる現代医学では、複数の病気に単純に処方していくと、どうしても薬の種類が増えてしまいます。臓器別、専門別に細分化されすぎている現在の診療体系の問題もある。本来は、一人の患者さんの“全体”を診て最適な処方を決めるのが理想です」


 医療の構造的問題とも言えるが、そうした危ない処方に患者はどう対策できるのか。その一助とするべく、銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏監修のもと、「漫然処方チェックリスト」を掲載した。長澤氏が解説する。


「10項目のうち、3つ以上当てはまる人は要注意、5つ以上当てはまる人は減薬を検討する必要があるでしょう。


【1】の『常時、6種類以上の薬を飲んでいる』は一時的にではなく『常時』であることがポイントです。


【5】の『医師の問診時間が極端に短い』の目安は、診療時間が2~3分と非常に短い場合。患者さんの状況に合わせて正しく処方できているとは思えません。


【10】の『セカンドオピニオンを相談したら嫌な顔をされた』場合は減薬に取り組む際に、薬の見直しの足枷になる可能性があるので注意が必要です」相手(医師や漫然処方)を知り、己を知ることから、健康を蝕む「多剤処方」との戦いが始まる。


日本病院薬剤師会が「医師の漫然処方」と判断した70代女性患者の事例

ジェネリック薬「どれも一緒」と考える人の大誤解 患者が積極的にメーカーを指定する時代が来る

 先日、診察室で患者さんから次のような質問を受けました。

 「先生、この前薬局に行ったら、薬剤師さんから「ジェネリック薬でいいですか?」って聞かれたけれど、ジェネリックって本当に大丈夫なんでしょうか」

 高橋英樹さんや黒柳徹子さんなどがテレビのCMでジェネリック医薬品を奨めているのを視聴して、ジェネリックという言葉に聞き覚えのある方は多いかもしれません。が、その意味はよく知らないという人もいるでしょう。

 さらに、最近ジェネリック医薬品メーカーの不祥事が相次いでいるため、安全性に不安を持つ人もいるでしょう。今回は、「ジェネリック医薬品とのつきあい方」についてお話しします。

そもそもジェネリック医薬品とは
 ジェネリック医薬品とは、後発医薬品のことをさします。新薬(先発医薬品)として開発された薬が特許出願日から20年という特許期間が過ぎると、審査を受けた上で他の医薬品メーカーから同じ有効成分の薬の発売が可能となるのです。

それらが後発医薬品とかジェネリック医薬品と呼ばれます。また、ジェネリック医薬品の中でも新薬のメーカーから承諾をうけた上で他のメーカーがつくっているオーソライズド・ジェネリックというものもあります。

 ジェネリック医薬品は、2005年に数量ベースで32.5%というマイナーな存在でしたが、2020年9月時点で78.3%まで成長(厚生労働省『令和2年薬価調査結果』)。すでにメジャーな存在ということができます。また、ジェネリック医薬品への転換がより進んでいる米国では90%を超えているのです。

 わが国で、なぜジェネリック医薬品がこんな短期間に増えたのでしょうか。それは、厚労省が医療費の抑制のために、その普及を強力にすすめてきたからです。新薬から価格の安いジェネリック医薬品に置き換え、医療費を抑えようとしてきたのです。

 そもそも新薬の開発には数百億円から数千億円という莫大な資金が必要となるため、その開発費が上乗せされて価格が設定されています。新薬メーカーは特許で守られた20年間はその薬を独占的に販売でき、開発費を回収することができます。そして、特許が切れるとジェネリック医薬品が登場するのです。

 ジェネリック医薬品の価格は、販売当初は原則として先発医薬品の約半分に設定され、その後も市場価格の調査から薬価を改定され続けます。そのため、先発医薬品の価格の2割程度になる製品もあります。

 ジェネリック医薬品が市場で増えることになれば先発医薬品の価格も低下し、結果として薬価全体が下げられます。また、ジェネリック医薬品への置き換えが進まない薬品では、一定の率で先発薬品の価格が下げられることになっているのです。

ジェネリック医薬品の品質は?
 ジェネリック医薬品が承認される前には、① 規格試験(原薬・製剤の品質確保)、② 安定性試験(加速・長期保存)、③ 生物学的同等性試験(溶出試験、ヒトBE試験)などが実施された上で厚生労働省が審査します。

さらに、国際的に医薬品の品質の保持のためにGMP(Good Manufacturing Practice;医薬品の製造管理及び品質管理の基準)が整備され、厳しい基準が設けられているのです。

 このような厳しい審査があることや、最近は新薬のメーカーがジェネリック医薬品をつくったり、ジェネリック医薬品のメーカーに東証一部上場企業も増えたことから、私自身、患者さんに「ジェネリックでも大丈夫」とお話ししてきました。

 ところが、自信を持ってそのように回答できなくなるような事件が2020年12月から2件立て続けに起きてしまったのです。

 一つは、ジェネリック医薬品メーカーの小林化工が製造販売した薬で、真菌症(水虫やいんきんたむし、カンジダなど)に対する感染症治療薬「イトラコナゾール錠50mg」に、睡眠薬であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入した事件です。

 結果として、二人の高齢の方が亡くなられ、車の運転中に事故をおこした人が38人もいて、他にも健康被害の報告例も多数あったのです。

 もう一件は、ジェネリック医薬品メーカーの日医工が10年以上も前から国が承認していない工程で医薬品を製造していたことが富山県の抜き打ち検査で判明し、2021年3月に業務停止命令が出され、全社の製品の販売が24日間停止となる事件です。

 幸い、この事件では健康被害は報告されていないのですが、わが国の三大ジェネリック医薬品メーカーであり、東証一部の会社で起きた不祥事であり、わが国のジェネリック医薬品に対する信頼を大きく損なわせることになりました。今回の事件で、製造工程でも、出荷前の品質チェックの面でも、長年にわたって省令が遵守されていなかったことが明らかになったのです。長期間にわたり、監督機関も十分にチェックできていなかったのです。

 ジェネリック医薬品メーカーは数多くありますが、名前がよく知られた信頼性が高いと考えられていた二社でこのような事件がおきたことは、わたしにとっても衝撃的なことでした。

ジェネリック医薬品と新薬では効果に差があるのか
 ジェネリック医薬品の普及は、欧米が先行してきました。そのため、欧米ではジェネリック医薬品の安全性や信頼性に関する論文も多く発表されています。

 例えば、循環器で使用する多くの薬やてんかんの薬ではジェネリック医薬品と先発医薬品とでは同等の効果と安全性があり、両者に差がないと結論する論文があります(注1,2)。

 しかし、抗がん剤の使用においては、結論が異なります。インドでつくられたジェネリック薬品は開発途上国で問題がおきているが、欧米諸国や日本など監視の厳しい国では大きな問題は起きていないと報告されています(注3)。このことは、監視の厳しい国でなければ、ジェネリック医薬品の安全性は低いことを意味します。そして、この論文では、日本は監視の厳しい国とされていますが、今回の二つの事件により、実はそうではないことが判明してしまったのです。

 また、治療指数が小さい安全性の低い薬ではジェネリック医薬品に安全上の問題が起きていることが報告されています。(注4)

*治療指数:薬を投与した動物の半数が死亡する「半数致死量」を、投与した動物の半数に最小限の効果があらわれる「半数効果用量」で割った数値。治療指数が大きいほど、致死量に達するまでに多くの用量を必要とするため、安全性が高いとされる

 さらに、腎移植後に使われる免疫抑制剤では、すべてのジェネリック医薬品が、先発品と同等の相対的生物学的同等性を有するわけでなく、有効性と安全性に関するエビデンスは決定的でないと報告されています。そして、治療指数が小さい薬品においては、ジェネリック医薬品の承認に、より厳しい規制要件が必要と結論とされています(注5)。

 抗生物質でも治療指数が小さいものでは、生物学的同等性に問題があると報告されています。有効性の評価で、抗生物質によって結果に大きなばらつきがあり、同じ成分の抗生物質であっても、すべてのジェネリック医薬品が同等ではないのです。薬剤成分、不純物のレベルなど、あらゆるレベルで違いがあることが報告されています(注6)。

 このように、今回の二つの事件のような、単に製造工程の間違いや管理の不良から起きる問題だけではなく、治療指数の小さい薬品でのジェネリック医薬品の使用には根本的に慎重さが求められているのです。

ジェネリック医薬品との付き合い方
 ジェネリック医薬品は、慢性病の時代、高齢化社会での医療費の抑制のために必要不可欠なものであるとわたしは考えています。そのために、ジェネリック医薬品の有効性と安全性に対する不安を払拭させていかなければなりません。

 一番大切なことは、製薬メーカーが体制を整えることにより市場に出ているジェネリック医薬品が全て安全・安心なものすることです。しかし、そうなっていない現実があるから、その対処を考えておかなければいけません。

 そこで、大切になるのが、監督官庁の厳しい査察です。これがなければ、ジェネリック医薬品の安全性は確保できないのです。

 次に、医師が薬剤を処方するときに注意が必要となります。処方箋上で単にジェネリック医薬品でもよしとしてしまえば、ジェネリック医薬品の中で、どのメーカーの製品が患者の手に渡るのかが解りません。患者さんが訪れた院外薬局にたまたま備えられているメーカーの製品が出される可能性が高いのです。同じ院外薬局で会っても、今月と先月では違うメーカーの製品になっているかもしれないのです。

 その対処としては、ジェネリック医薬品の中で、「品質が信頼できるメーカー」、「患者が今まで継続して使用している製品」をと指定することができます。今後は、そのような自衛策を考えなければいけないのかも知れません。

 「○○メーカーのジェネリック医薬品の信頼性が高い」といった情報を患者さんに届けることも必要かも知れませんが、そんな情報を実は誰ももっていないのです。今回のような事件が起きてしまうと、大きい会社や歴史のある会社が安全とは言い切れず、どのジェネリック医薬品メーカーが信頼できるのかは誰も確かなことは言えなくなってしまいます。

 結局のところ、患者さんにはジェネリック医薬品の選択にももっと積極的に参加してもらうことが必要になります。今まで製薬メーカーの選択は、医師または薬局の薬剤師に任されてきました。そして、ジェネリック医薬品の販売が伸びたのも、薬局や医療機関に対してジェネリック医薬品を出すことにインセンティブを与えてきたためでもあります。

 今後は、院外薬局でたまたま在庫のあるジェネリック医薬品をもらうのではなく、患者さんに製薬メーカーの選択に積極的に参加してもらう時代が来ると思います。患者さんは、どのジェネリック薬品のメーカーのものにして欲しいとか、今までと同じメーカーのものにして欲しいなど、ジェネリック医薬品のメーカーを指定する権利を行使することになるでしょう。

 先発薬からジェネリック医薬品にスイッチしたときには、その効果や安全性について、医師だけでなく患者さんも意識的になるべきだと思います。つまり、自覚症状のあるものでは、その変化により患者さんは効果を判定できます。血圧の薬であれば、家庭での血圧測定によりその効果をモニターできます。患者さん自身ではその効果をモニターできないものであれば、診療所での検査でその効果を確かめることが必要となります。

 薬によっては、その血中濃度を測定したり、その効果の指標を測定したりすることもあるのです。スイッチ後の再診までの期間は短くした方がよいでしょう。そして、効果だけでなく安全性についても、医師も患者も切り替え当初には特に慎重になるべきなのです。

 ジェネリック医薬品を使うことが普通の時代となったからこそ、その使用について、医療者も患者も、より慎重にならなくてはならないのです。

降圧剤の多剤併用リスク 高カリウム血症を引き起こすと最悪心停止も

 服用している薬が多すぎると、「組み合わせ」によって“飲めば飲むほど不健康になるリスク”が増していく。実際に処方された患者の事例から、医師・薬剤師が一緒に飲んだら危ない「あの薬」と「この薬」の組み合わせを解説する。


 日本病院薬剤師会は2018年2月に『多剤投薬の患者に対する病院薬剤師の対応事例集』を公開。同会は多剤投薬の実態調査の一環として、全国48の病院から対応事例を集積し、内容を精査・厳選したうえで33の事例を詳細に紹介している。


 そのなかから「降圧剤」に関するケースを見ていく。『事例集』の〈漫然投与に対する対応〉という分類のなかに、過去に急性汎自律神経失調症や総胆管結石などを患って複数の医療機関を受診していた80代男性(別表の症例)の例が紹介されている。免疫治療のために病院を訪れた際に多剤処方の実態が判明した。

漫然投与されていた80代男性患者の事例

降圧剤を4種類服用することになっていた80代男性患者の事例

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 医師から漫然と処方されていると思われる薬が多く見られ、降圧剤だけでARB、ACE阻害薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬の4種類が処方されていた。さらに抗てんかん薬や胃腸薬、便秘薬などのほか、ビタミン剤や漢方薬など実に計30種類もの薬を服用していたという。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎医師が指摘する。


「降圧剤はそれぞれ、別のタイプと一緒に飲むことで効果が増強されます。それが奏功することもありますが、80代で4種類もの降圧剤を併用すると効きすぎるリスクが高い。血圧低下により胃粘膜への血流が減って吐き気や腹痛、食欲不振などの症状が出るほか、心臓が多くの血液を送り出そうと強く働いて動悸や息切れが起こることがあります。


特に高齢者は脳への血流が減少してめまいや立ちくらみを起こし、転倒事故のリスクが高まります。転倒による骨折から寝たきりになる恐れもあるので、さらに注意が必要です」

 

この症例にはさらに“危ない組み合わせ”が潜んでいた。

『知ってはいけない薬のカラクリ』(小学館新書)の著者で内科医の谷本哲也氏(ナビタスクリニック川崎)が問題点を指摘する。「類似の作用を持つ降圧剤のACE阻害薬とARBの併用は、腎機能障害や高カリウム血症を引き起こす恐れがあり、高血圧学会のガイドラインでも推奨されていません。


腎機能が低下すると血中カリウムが体外に十分排出されず、高カリウム血症に陥るリスクがあるのです。不整脈の原因となる高カリウム血症は、最悪の場合は心停止してしまう病なので、特に腎機能が低下しやすい高齢の方は十分な注意が必要です」降圧剤との併用で注意すべき組み合わせは、上記の症例以外にもある。

降圧剤の「危ない組み合わせ」一覧

降圧剤の「危ない組み合わせ」一覧

写真3枚

 例えば、サイアザイド系利尿薬と、皮膚炎や肝機能を改善させる薬であるグリチルリチン製剤(漢方薬の甘草にも主成分が含まれる)を組み合わせると「低カリウム血症」が出やすくなる。


「併用すると血清カリウム値が低くなりすぎることがあります。わずかに低下しただけなら無症状ですが、重症化すると手足の脱力や痙攣、筋肉の麻痺を起こし、高カリウム血症同様、不整脈を起こすこともあります。血液中のカリウム値は、高すぎても低すぎても体に害があるので要注意です」(谷本医師)


 同様に、β遮断薬と血糖値を下げるための糖尿病治療薬(インスリンなど)の組み合わせでは、こんな危険があるという。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘氏が語る。「放置すれば死に至る『低血糖』症状の発見を遅らせる恐れがあります。


糖尿病の患者さんは、薬で血糖値が下がりすぎ、低血糖の初期症状である眠気や動悸、頻脈が生じた場合はすぐにブドウ糖を飲むように医師から指示されています。しかし、頻脈を抑える効果があるβ遮断薬は、低血糖の初期症状を隠してしまうことがある。発見が遅れる可能性があるため注意が必要です」

8割以上がニセモノ!? 危ないサプリをどうやって見分ける?

健康を維持するために必要な栄養素を効率よく摂取できるサプリは、いまや我々が生活していくなかで欠かせない存在になっている。しかし、市販されているサプリ151品目のうち、129品目がニセモノだと知ったらどうだろう?

8月24日に発売された『そのサプリ、危険です! 本物サプリの正しい選び方』(柴田 丞/経済界)によると、サプリの中には恐ろしいものや危険なものもたくさんあるというのだ。

一体、どんな危ないサプリがあり、どうすれば見分けられるのだろうか。同書から紹介しよう。

 サプリを買うときに、まず参考にしてしまうのが宣伝文句。だが、それが落とし穴らしい。そもそも、サプリは医薬品とは違うので「○○に効く!」とか「○○○がすぐに治る!」「これを飲めば血液がサラサラに!」といったように、効能や効果をダイレクトに謳うことができない。

しかし、平成23年5月に東京都福祉保健局が発表した情報によると、「販売店で購入した製品では、88品目中75品目」「インターネット通信販売で購入した製品では、63品目中54品目」に不適正な表示・広告が見られたというのだ。

世間に出回っているサプリのなんと8割以上で、不当な表示や広告といった虚偽記載が行われていたということになる。

 また、サプリには多くの添加物も使われている。たとえば、形を作るための「賦形剤」や、錠剤を固めるノリのような役割を果たす「結合剤」、錠剤を体内で崩壊させ成分を吸収しやすくするための「崩壊剤」、製造過程において錠剤が機械にへばりついたりしないようにするための「滑沢剤」などがそれだ。

しかも、市販のサプリの場合、この添加物が50%から多いものになると90%を占めるなんて情報も。そうとは知らない人々が、体にいいと思ってサプリを摂取すればするほど、同時に添加物も取り込むことになっていたのだ。

 実は、そんな添加物の量を見分ける方法もある。パッケージに書かれた「1錠あたりの質量」をチェックして「栄養成分の含量」を引けばいいのだ。

しかし、多くのメーカーがこのような計算をされることを嫌がるので1錠の質量を記載していないそう。これでは、危険なサプリを避けるのも一苦労だ。

 さらに、サプリには合成と天然のものがあるのだが、特に合成ビタミンには注意が必要だ。これは用量や用法を守って服用しなければならない。ビタミンを補うためにと用量や用法を守らずに大量に摂取してしまいがちだが、天然か合成かの違いだけで体に与える影響は大きく変わってくる。

そして、もちろん天然の方が望ましいのだが、天然ならなんでもいいわけでもない。2008年にはサプリの原料に使われた「マカ」が放射線照射されていたとして、商品を回収する騒ぎが起きた。

日本ではビール会社や化粧品メーカーのように、原料を仕入れてサプリを作っているところが多いので、原料に関しては把握できていないこともある。

 こんなにたくさんの危険なサプリが出回っている現状だが、それでも食事だけで補えないものや体内で作れないものを摂取するためにはサプリに頼るしかないという面もある。

だからこそ、こういったチェックポイントを押さえながら151品目の中にある本物の22品目を見抜く力を身につける必要がありそうだ。

降圧剤 医師が教える健康のための「減薬」や「断薬」の注意点

 多くの日本人が、「生活習慣病」の治療薬と長い付き合いをしている。厄介なのは、複数の基礎疾患を抱えた人の「多剤併用」だ。内科医の谷本哲也医師(ときわ会常磐病院)が解説する。

「何種類もの薬を同時に飲む多剤併用の問題は、その組み合わせによって薬の効果が強まったり、反対に弱まったりする場合があることです。一般的には、6種以上の薬の服用で副作用リスクが高まると言われます」

 近年は多くの専門家が多剤併用リスクに警鐘を鳴らしている。2015年、日本老年医学会は「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」を作成。同リストをもとにした医師向けの「適正処方の手引き」(日本医師会)では、薬の主成分を指す「一般名」に加え「商品名」が追記されている。今回はそのリストを掲載した。各分野の断薬の名医の解説とともに参照してもらいたい。谷本医師は言う。

「高齢になると肝臓や腎臓の機能が低下し、代謝や排泄の能力が下がります。それに伴って副作用が生じるケースが増加する。どんな薬にも言えることですが、年齢を重ねた人ほど医師との適切なコミュニケーションを取り、体調を確認したうえで、減薬や断薬を考えたほうがいい」

 健康のための「減薬」や「断薬」とはどういうものか。臨床現場で実践する断薬の名医たちの知見を参考に考えていく。

 いまや国民病とも言われる「高血圧」の治療薬である降圧剤は「一度飲んだらやめられない薬」のイメージが強い。しかし、坂東ハートクリニック院長の坂東正章医師は「医師の指導のもとで正しいプロセスを踏めばやめることは可能だ」と語る。その第一歩として坂東医師が掲げるのは「正確な数値の把握」だ。

「高血圧患者の多くが正しく血圧を測れていません。朝なら朝食前、夜なら就寝前の排尿後に、自宅で計測する家庭血圧が実態に近い数字。計測は椅子に座って腕帯を心臓の高さにし、無理のない姿勢で行ないます」

 同クリニックでは血圧の測り方を指導後、降圧の目標値を決めて治療を進めている。

「たとえば降圧目標が家庭血圧で135/85mmHgの患者さんなら、130未満が3日間続いた時点で薬を減らす。その後、家庭血圧が120台で安定すれば通院の必要はありません。同時に、患者自身が血圧上昇の原因を見極め、食事などの生活習慣改善を進めることで、 “薬に頼らない状態”を目指します」(坂東医師)

「飲み忘れ」で薬が増える
 銀座泰江内科クリニック院長の泰江慎太郎医師は、こんな高血圧患者を断薬に導いた。

「血圧が180/100mmHgと非常に高く、別のクリニックで降圧剤を4種類処方されていた50代前半の男性です。

 まずカルシウム(Ca)拮抗薬2種とアンジオテンシンII阻害薬(ARB)1種を配合剤1種に変えました。他に比べて効果が低いと判断した利尿薬は中止し、その代わりナトリウムの排泄に役立つカリウムを多く含む野菜や果物の摂取を指導しました」

 睡眠指導もあわせて行なった結果、男性の血圧は4か月後に130/80で安定。さらに薬を配合剤からARBに変えると、4か月後には上が120まで下がり安定した。

「ここでARBの処方も中止して、最終的には薬をゼロにすることができました」(泰江医師)

 降圧剤では「似た薬効を持つ薬が何種類も処方されることがある」と指摘するのは秋津壽男医師(秋津医院院長)だ。

「ある80代の男性は、降圧剤や血栓予防薬など1日10種16錠が処方されていた。似た降圧剤を3種も服用していたので2つに絞り、同様に薬効が近い血栓予防薬2種を新薬1種に見直すなどして5種5錠まで減らしたが、数値は悪化しなかった」

 獨協医科大学病院腎臓・高血圧内科の石光俊彦医師は、「飲み忘れ」による服用の乱れが症状悪化を起こすと指摘する。

「降圧剤は服薬率(患者が指示された薬のうち実際に服用した割合)の低下により脳卒中などの発症リスクが高まります。多剤処方の患者さんは薬を正しく飲めないせいで症状が安定せず、逆に薬が増えていく場合が多い」

 そうした患者には減塩や減量など生活習慣改善をまず指導したうえで、血圧の記録を課すという。「血圧を記録することで薬の飲み忘れを防ぐことができ、それで数値が改善すれば、薬を減らすことができます」(石光医師)

 年齢によって「“卒業”を考えてもいい」という医師もいる。新潟大学名誉教授の岡田正彦医師だ。

「高齢者施設では多い人になると20種以上の薬を飲んでいる人もいる。何十年も漫然と飲み続ける人もいますが、風呂上がりや排便後に血圧が急激に下がって転倒事故を起こす事例がとても多い。年齢を重ねて血圧が高くなるのは自然な現象で、薬で無理矢理下げるのはかえって有害と考えます」

※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号

医薬品や医薬部外品などたくさん分かれる薬の種類、ちゃんと定義は知っていますか?

季節の変わり目で風邪をひくなど体調を崩されている方も多いのではないでしょうか。薬局に薬を買いに行くと、同じ用途のものでも数が多過ぎてどれを買えば良いのか分からない……なんてことはありませんか?

数の多さに加えて、「医薬品」から「医薬部外品」「一般用医薬品第1類」などの種類に分かれており、更に何を買えば良いのか分からなくなるかもしれません。もちろん分けられているのには意味があり、薬事法という法律でしっかり定められています。

では、どのような基準でこれらの区別がされているのでしょうか。よく見かけるのに、実はあまり知られていない薬の種類分けについて解説して行きます。

■「医薬品」の定義

簡単にいうと、配合されている有効成分の効果が認められており、病気の治療や予防に使われる薬のことです。医薬品の正確な定義は、薬事法で以下のように決められています。

1.日本薬局方に収められているもの。

2.人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているものであつて、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」)でないもの(医薬部外品を除く)。

3.人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであつて、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く)。

医師が処方する薬だけでなく、薬局で買える風邪薬、胃腸薬、目薬、滋養強壮剤などの市販薬も医薬品に含まれます。医薬品は、さらに副作用リスクに応じ、要指導医薬品、一般用医薬品第1類~第3類に分類されています。

■「要指導医薬品」の定義

副作用リスクが特に高く薬剤師の対面による情報提供や指導が必要な要指導医薬品は、薬剤師による対面販売が必要で、インターネットや電話、カタログ等による販売(特定販売)ができません。

販売側から購入者へカウンター越しに医薬品を手渡す陳列方法によることが必要です。

■「一般用医薬品第1類」の定義

薬剤師による対面販売の他、インターネットや電話、カタログ等による販売も可能です。

要指導医薬品と同じく、販売者から購入者へカウンター越しに医薬品を手渡す陳列方法が必要です。

■「一般用医薬品第2類、第3類」の定義

薬剤師以外に、登録販売者による対面販売も可能です。登録販売者とは、薬の販売に関する資質確認のための都道府県の試験に合格し、登録を受けた者をいいます。

インターネットや電話、カタログ等による販売も可能です。

■「医薬部外品」の定義

医薬部外品とは、医薬品に準じるもので、効果・効能が認められた成分は配合されているが、予防に重点を置かれたものが対象です。

薬用歯磨き剤、制汗スプレー、薬用クリーム、ベビーパウダー、育毛剤、染毛剤、入浴剤、薬用化粧品、薬用石けん等が含まれます。

■医薬品に関する広告規制について

医薬品には、様々な広告規制が課せられており、承認を要する効果効能の表示や、誤解や誇張した効果効能の表示、効果を保証するような表現等が規制されています。

市販の風邪薬などを見ると、どれも断定的広告を記載していないのは、消費者の誤解と濫用等のリスクを回避しようとする薬事法の規制によるものです。

もし薬局に行く時は、以上の事を念頭に入れて行くと選びやすくなるでしょう。もちろん、お店にいる薬剤師に聞くのが安心ですね。

病院での医薬品とは違うの…?「PMS」に効く市販薬について

薬局などで買えるPMS(月経前症候群)治療薬は、病院で処方されている薬とはどこが違うのでしょうか。

PMSのための治療薬は最近まで市販されていなかった

はっきりPMS治療薬と表示されていて、かつ消費者が直接買うことができる薬は、最近まではありませんでした。そのため、PMSの症状が軽度であれば、薬店などで購入できる漢方薬やサプリで症状を抑えていたという人も多いでしょう。

しかし、症状がひどくなると、そのようなセルフケアだけでは対処できず、病院を受診することになります。大半の婦人科医はPMSと診断すると、低用量ピルなどを処方しますが、低用量ピルは病院でしか処方できず、PMSの治療薬を入手するには病院に行かなくてはいけませんでした。

医療用医薬品ではなく、市販薬として日本初登場

日本で販売されるようになったPMSの市販薬の主成分は、西洋ハーブのチェストベリーです。チェストベリーはヨーロッパの薬局方という公定書にはすでに収録されており、PMSに有効性があるとされています。

日本では医師はまだチェストベリーを使用していないのですが、安全性の高さなどから、薬局などで販売するPMSの市販薬の成分としては使用を許可されました。

健康食品と医薬品の違い

チェストベリーは、すでに健康食品として店頭やインターネットなどでも販売されています。そのため、チェストベリーという名前を以前から耳にしていた人もいるのではないでしょうか。

医薬品としてのチェストベリーは、臨床実験などの厳しい検査を通過してきたものであり、その品質、有効性、安全性などが厚生労働省に確認されています。それに対し、一般的な健康食品(特定保健用食品や機能性表示食品を除く)は、国の確認や許可なく市場に出すことができます。

そのため、健康食品の品質は、メーカーによってバラつきが発生している可能性があります。また、健康食品は、パッケージの効能効果などの表示方法に、多くの制限が設けられています。

要指導医薬品

チェストベリーを主成分としたPMSの市販薬は「要指導医薬品」とされています。これは普通の医薬品と何が違うのでしょうか。

要指導医薬品は、使用に十分な注意を要し、薬剤師の説明、情報提供を必要とする薬として、他の医薬品と区別された薬です。医薬品の中でも、第2類医薬品と第3類医薬品は、薬剤師がいなくても販売登録者がいれば販売できます。一方、要指導医薬品や第1類医薬品に分類された薬は、薬剤師のいない店頭に置くことはできません。

また、その店に薬剤師が勤務していても、薬剤師が不在で説明や情報提供が受けられない場合は、要指導医薬品に該当する薬の購入はできません。

チェストベリーはホルモンに影響を与えるため、妊娠中の安全性は確立されていません。また、併用を避けるべき薬剤などもありますので、薬剤師に現在の状況を説明してから購入するようにしましょう。

気軽に買える「睡眠改善薬」について、専門医が「できれば使わないで」と顔をしかめる理由

睡眠改善薬は服用した翌日の昼になっても眠気が残る
4月から新年度がスタートし、特に環境が変わった人はこの1カ月、睡眠に悩んでいないだろうか。日々、強い緊張にさらされ、熟睡感が得られないことがしばしばあるかもしれない。

たとえば翌日に大事な仕事を控えている、でもどうしても眠れないとき、安易に市販の睡眠薬(睡眠改善薬)を服用するのはどうだろうか。

「それは“失敗のもと”ですね」

と、秋田大学大学院医学研究科の三島和夫教授が指摘する。

「市販の睡眠改善薬は、服用した翌日の昼になっても眠気が残り、パフォーマンスが低下しやすいのです」

まず知っておきたいのが市販の睡眠改善薬と、医療機関で処方される睡眠薬は全くの別モノであること。睡眠改善薬として代表的な「ドリエル」には抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン塩酸塩)が含まれており、もともとはアレルギーを抑える薬効成分が眠気を引き起こす“副作用”を利用している。

「抗ヒスタミン剤というのは、脳の中で最も強い覚醒物質であるヒスタミンをブロックして眠気をもたらします。たとえ血液中の濃度が低くなっても、脳への作用が残ってしまうので、長時間眠気やパフォーマンスの低下が起きるのです」(三島教授)

自分の「最適な睡眠時間」を知るにはどうすればいいか
大阪回生病院睡眠医療センター部長の谷口充孝医師も、「市販の睡眠改善薬というのは、それほど“いい薬”ではない」と話す。

「医師であれば抗ヒスタミン剤をかゆみが強いときには使いますが、睡眠薬としては処方しないものです。一般的には安全性が高いから市販薬となるわけですが、睡眠薬の場合はそうでもありません。しかも市販の睡眠改善薬に含まれる抗ヒスタミン薬には、抗コリン作用もあります。これは、記憶に関連するアセチルコリンの働きを抑える作用で、そういった作用を含む薬剤を服用すると、認知症のリスクが上昇するというデータもあるのです」

一時期の不眠であれば、「仕方ない」とわりきることも必要だ。「睡眠負債」という言葉がブームになり、“寝不足は悪いもの”という意識が広まった。だが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の櫻井武教授によると「睡眠不足が多少続いても、その後に十分な睡眠をとればリセットできる」という。

「睡眠負債の定義に関して、みなさんが理解されているような、通常の睡眠が足りない、(睡眠時間の)“負債”という考えもあります。一方で、“睡眠圧”という意味もあるのです。長い時間活動するほど睡眠圧が強くなって、その“圧”によって眠れる。睡眠圧という意味なら、睡眠負債があるからこそ眠れるという側面もある」

「睡眠の質を高めること」を目標にするのではなく、「日中の覚醒」に目を向けることが大切、と櫻井教授は言う。

「睡眠の目的は睡眠自体ではなく、目が覚めた後の覚醒のクオリティを高めること。たしかに睡眠は大切ですが、その内容や時間を意識しすぎると、こだわりが生まれ、脳が覚醒して『眠れない』ことにつながります」

電車などの居眠りでは「夜の睡眠」の不足は補えない
巷の情報に振り回されず、自分の最適な睡眠時間を知っておこう。

昼間、眠気に襲われず本来の作業がしっかり行えれば、あなたの睡眠時間は足りている。逆に日中に眠くて仕方がない、または休日にいつもの起床時間より30分以上遅く起きてしまうのであれば、睡眠時間が不足している。

寝不足であれば「昼寝」で補いたいが、20分以内に起きること。「睡眠慣性」といって、深い睡眠に入って脳の機能を落とすと、覚醒に時間がかかり、昼寝後の目覚め感がかえって悪くなる。

「夜間の睡眠にも支障が出ます」と、櫻井教授。

「睡眠は、浅いステージから深いステージへと移行します。最も浅いステージはほんの数分で終わり、次のステージも10分程度。寝つくのに5分かかるとして、ここまでで合計20分程度。そのあとは深いノンレム睡眠になります。昼寝でそこまで入ってしまうと、脳は本来の7時間かけて行う睡眠のモードになってしまうのです」

電車などの居眠りであっても、長時間眠らないように気をつけたい。

「眠れない」と悩む人が普段から心がけたい3ポイント
さて、短期間の不眠であれば気にしなくていいが、週半分以上の不眠があり、それが3カ月以上続く場合は「不眠症」に陥っている可能性がある。かかりつけ医に相談しよう。

医療機関で処方される睡眠薬は4つ――「ベンゾジアゼピン系」「非ベンゾジアゼピン系」「メラトニン受容体作動薬」「オレキシン受容体拮抗薬」――があるが、そのうちベンゾジア系・非ベンゾジア系は依存性があり、長期間服用するのは望ましくないことを知っておきたい。よく眠れるのが“いい薬”ではないのだ。

「メラトニン受容体作動薬」「オレキシン受容体拮抗薬」などの依存性が少ない、新しいタイプの薬を使ったり、薬の減量・卒業を視野に入れて治療を勧めてくれるのが心ある医師だ。あなた自身も将来的に睡眠薬を飲まずに眠れることを目標にしよう。

眠れないと悩むなら、普段の生活習慣で心がけたい点が3つある。

1つめは、「寝る場所」の認識だ。櫻井教授は15分眠れなかったら居間に戻る(布団から離れる)ことを勧める。

「苦労なく眠れる人は気にする必要はありません。でも眠れなくて悩んでいるなら、寝室で“寝れない体験”を繰り返さないこと。眠くてしょうがなくなるまで寝室にはいかない。寝つけないなら一旦寝室を離れて、居間で好きなことをし、また眠くなったら寝室に戻る。それを繰り返せば眠気がたまり、必ず眠れます。“寝室で眠れた”という成功体験を積むことが大切です」

「寝酒」はNGだが、「軽い晩酌」ならOK
2つめは、「朝起きる時間」を決め、毎日それを守ること。

「たとえ寝つきが悪い日があっても、多少寝不足でも、同じ時間に朝の光を浴び、食事を取ることで体内時計のリズムが正確に刻め、夜に眠くなります」(谷口医師)

3つめは、「寝酒」を避ける。

「アルコールを飲むと寝つきはよくなりますが、睡眠薬代わりに飲んでいると依存性が高くなって、飲む量が増えます。寝酒でなく晩酌ならOK。できれば夕食とともに20時ごろまでにお酒を終え、4時間くらい空けてから眠るといいですね」(三島教授)

最後に、年とともに人は多くの睡眠時間を必要としなくなるが、現役世代で急に不眠症状が出てきた場合、背景に「うつ」が隠れていることもある。また日中にしっかり起きていられないようなときは、過眠症や睡眠時無呼吸症候群などの疾患の可能性、そのほか、高血圧や心疾患、逆流性食道炎、糖尿病などの生活習慣病も不眠に影響することを知っておきたい。

※プレジデント誌はエスエス製薬に「ドリエル」の認知症リスクについて電話で問い合わせたが、「回答までに時間を要するため、今回の質問については回答を控えさせていただきます」と答えるだけだった。

---------- 笹井 恵里子(ささい・えりこ) ジャーナリスト 1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。新著に、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)がある。 ------

有名薬の発売後の副作用情報が一般患者に届きにくい理由

 知ってそうで知らない薬の副作用リスクがある。一般に医療用医薬品の副作用は「医薬品添付文書」でチェックできる。問題は、薬の発売後に新たに発覚して「追加」として記載される副作用が多いことだ。

「発売後に高齢者や合併症のある患者などが幅広く服用することで、初めて副作用が出現するケースが多くあります」(医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏)

 発売後に薬を処方した患者に副作用が出たら、その薬を製造した製薬会社や医師などが厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に報告する。ここが医薬品と副作用の因果関係などを精査し、製薬会社への照会などを経て、厚労省が「医薬品添付文書の改訂」を製薬会社に指示する。

 問題はこの情報がなかなか患者に届かないことだ。

「追加された副作用の情報はPMDAのホームページで順次公開されますが、多忙な医師はそのすべてを把握しているわけではありません。一般患者にもほとんど周知されていません」(上氏)

 医薬品はリスクを上回る利益がある場合に使用されるため、発売後に新たな副作用が出た薬を服用しても、必ずしも患者の健康を害するわけではない。だが、中には重篤な副作用もあり、体力が低下する高齢者ほど副作用が生じるリスクが高まる。特に服用する機会の多い薬はあらかじめ副作用を把握しておきたい。

本誌・週刊ポストは、国内の売上高上位100薬品(2016年度決算・日刊薬業調べ)と、高齢者の使用頻度が高い薬のうち、この4年間で副作用が「追加」された薬54種類をリストアップした(関連記事〈副作用が新たに見つかった有名薬、54種類全実名リスト〉参照)。「有名薬」の新たな副作用を紹介する。

◆心筋梗塞に意識障害

 処方薬の場合、薬局で渡される薬の説明書に、すべての副作用の説明は記載されていない。追加された副作用を確認するには、PMDAのホームページで最新の医薬品添付文書の改訂情報を閲覧する必要がある。

 高血圧の治療薬(降圧剤)である「アイミクス」(2016年度の医薬品国内売上高で88位)は、添付文書の「重大な副作用」の欄に、「無顆粒球症」が追加された。医薬情報研究所の取締役で薬剤師の堀美智子氏が解説する。

「白血球の働きが弱まり、感染症にかかりやすくなる。発熱や食欲不振などかぜのような症状が特徴です」

 高血圧と並ぶ生活習慣病の代表、糖尿病の治療薬・SGLT2阻害剤でトップシェア(2017年12月時点)の「スーグラ」は、重大な副作用として「脱水」が追加された。

「この薬には血液中の糖を尿中に排出するため尿量が多くなり、脱水症状になりやすい。脱水すると血液が粘着性を帯び、心筋梗塞やせん妄など意識障害が出ることがあります」(堀氏)

スーグラには、「ケトアシドーシス」という耳慣れない副作用も追加された。

「血液中の糖が利用できなくなり、体内の脂肪がエネルギーに利用されて、めまいや倦怠感などが生じます。重度の場合は意識障害や昏睡を引き起こすこともあります」(堀氏)

 脱水、ケトアシドーシスとも危険な副作用である。

 脳卒中・心筋梗塞の治療薬では「イグザレルト」に「血小板減少」が加わった。

「血小板減少が生じると血液が固まりにくく、血が止まらなくなる。鼻血が出たり、皮膚に内出血ができることもあります」(堀氏)

 血が止まりにくくなる薬だけに、他の薬との飲み合わせにも気をつけたい。

「痛み止め薬を服用すると、腎機能が低下する。薬の成分が腎臓から適切に排出されず、脳内出血などのリスクが高まる」(堀氏)

 胃潰瘍薬の「プロマック」には、「銅欠乏症」が追加された。

「プロマックが含有する亜鉛によって、同じ吸収過程を持つ銅の吸収が阻害される怖れがあります。銅が欠乏すると貧血を起こすことがあります」(堀氏)

 過度に怖れる必要はないが、服薬にはこうした「意外な副作用」を伴うことを自覚しよう。

ロキソニンSやオロナインH軟膏らに新たに加わった副作用

 知っているようで知らない薬の副作用リスクがある。一般に医療用医薬品の副作用は「医薬品添付文書」でチェックできる。問題は、薬の発売後に新たに発覚して「追加」として記載される副作用が多いことだ。

 発売後に薬を処方した患者に副作用が出たら、その薬を製造した製薬会社や医師などが厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に報告する。ここが医薬品と副作用の因果関係などを精査し、製薬会社への照会などを経て、厚労省が「医薬品添付文書の改訂」を製薬会社に指示する。だが問題はこの情報がなかなか患者に届かないことだ。

 そこで本誌・週刊ポストは、国内の売上高上位100薬品(2016年度決算・日刊薬業調べ)と、高齢者の使用頻度が高い薬のうち、この4年間で副作用が「追加」された薬54種類をリストアップした(関連記事〈副作用が新たに見つかった有名薬、54種類全実名リスト〉参照)。

 リストアップされたものは医師の出す処方薬(医療用医薬品)である。しかし、処方薬で副作用の改訂指示があった場合、同成分の市販薬(一般用医薬品)も改訂するよう指示される。

 多くの人が服用している市販薬にもこの4年で新たな副作用が追加された。注意したいのは、市販薬は購入時に同封されている「使用上の注意」の中の「相談すること」という項目に新たな症状が追加されることだ。これが“副作用”を意味する。

「文書の形式が違うため『相談すること』という項目に症状が記載されますが、ここに追加された症状は医療用医薬品と同じく、薬の副作用という意味です」(PMDA企画調整部広報課)

 2016年3月に「使用上の注意」を改訂したのは解熱鎮痛剤の「ロキソニン」だ。同じ成分である市販薬の「ロキソニンS」も同様に指摘を受けた。医薬情報研究所の取締役で薬剤師の堀美智子氏が解説する。

「『相談すること』の欄に『小腸・大腸の狭窄・閉塞』が追加されました。いわゆる腸閉塞のことで、最初は下痢が生じ、その後に激しい腹痛や吐き気が起きます。ガスや便が出なくなったら危険信号です」

 腸閉塞は放置した場合、死に至ることもある。

 風邪の諸症状に効く薬として知られる「ベンザブロックLプラス」の場合、同成分の処方薬に副作用が追加されたわけではなく、この薬単独で「急性汎発性発疹性膿疱症」が追加された。

「高熱とともに全身が赤くなったり、赤い斑点や白っぽい膿みのようなぶつぶつが出現します」(堀氏)

切り傷ややけど、しもやけや水虫などに効く「オロナインH軟膏」は、同成分の処方薬「ヒビテン・グルコネート」、「デスパコーワ」などに2017年10月、「ショック(アナフィラキシー)」が追加されたのを受け、同じ副作用の明記を指示された。急激に生じるアレルギー反応で、口や手足の痺れから始まって次第に脈が弱くなり、血圧が急低下し、放置すると意識を失う怖れがある。

 しかし、本誌が6月20日に薬局で購入したオロナインH軟膏の添付文書に「ショック(アナフィラキシー)」の文言はなかった。これについて製造販売元の大塚製薬工場は、「既に改訂後の添付文書を封入した製品を製造、出荷していますが、店頭の製品がすべて添付文書改訂後のものに置き換わるには時間を要することになります」(総務課広報担当)と説明する。

 販売されている薬には、新たに追加された副作用が記載されていないものも存在しているということだ。

 処方薬の場合でも、本誌記者が6月21日に薬局で受け取った鎮痛剤であるボルタレンの説明文書には、この4年間で追加された〈消化管の狭窄・閉塞〉に関する記載がなかった。処方薬に関する副作用の記載は各薬局に任されており、すべての副作用が明記されることはほとんどない。

 ロキソニンSは第1類医薬品、オロナインH軟膏とベンザブロックLプラスは第2類医薬品に分類される。

 同じ市販薬でも第1類医薬品は薬剤師が居なければ購入できず、第2類医薬品は薬剤師または登録販売者がいれば購入できることになっている。つまり、第2類医薬品は薬剤師経由で副作用を知ることなく使用する可能性が高い。

◆薬剤師を活用

 このように副作用の最大の問題は、一般患者への周知が遅れていることだ。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏が解説する。

「すべての副作用を説明したら患者が不安になって薬の服用を拒否するかもしれず、それを避けるために医師が事細かな副作用の説明を行なわない傾向もあります」

 活用したいのは薬剤師だ。

「ほとんどの薬局はPMDAに登録していて、製薬会社からも随時情報が来るため、説明文書には書いてなくても薬剤師はアップデートされる副作用情報を把握しています。有害事象よりも圧倒的に効果が高いのが薬です。副作用を怖がりすぎるのではなく、副作用の情報には注意し、服用後に副作用が疑われる症状が出たり、少しでも不安に感じることなどがあれば、迷わず薬剤師に相談してほしい」(前出・堀氏)

 過度ではなく“適度”に怖れるためにも、新たな副作用の情報を知っておきたい。

たった1錠が体調を大きく左右することも「薬の選択」の重要性

 どんなマスクをつけて、どこまで消毒するか。巣ごもり生活やリモートワークはどのレベルまで実施するか。新型コロナウイルスは常に私たちに「選択」を迫ってくる。

しかし「自分の体を守るため、自分で考え行動する」ことはコロナに関係なく、重要だ。特にどんな薬をのむかはあなたの体調を左右する大切な選択。「替える」勇気を持つことが、命を守る第一歩になる──。

 現在、年を重ねるほど薬を服用する割合は増え、65才以上の3割が「6種類以上の薬」を処方されているというデータもある。しかし、都内在住の主婦・上原裕子さん(61才・仮名)はその効能に違和感を覚えている。

「血圧の薬をのんでいますが、なかなか数値が安定しません。そのうえ、最近ふらふらするようにもなったし、体調がよくなる気配もない。このままのみつづけていいものなのか、だけど勝手にやめることもできないし、悩みはつきません」

 こうした状況に警鐘を鳴らすのは、銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんだ。

「高血圧や糖尿病など生活習慣病の薬は特に全身に作用するため、体調に大きく影響します。薬の効き方には個人差があり、副作用も出る。長年続く不調の原因が、実はのんでいる薬にあったということは少なくありません」

 長澤さんによれば処方薬の種類を替えただけで、悩まされてきた不調があっという間に消えたケースも珍しくないという。

「そのうえ製薬の世界は日々、飛躍的な進化を遂げています。同じ症状を抑える薬でも、より高い効果が得られるものや、服用回数が少なくてすむものが新たに出ている場合も多いのです」(長澤さん)

 あなたがいまのんでいる薬はもう“替え時”かもしれない。

降圧剤の副作用で歯茎に影響

 罹患者数は4000万人。70代以上の女性の過半数がのんでいるといわれる降圧剤。その種類はさまざまで、大きく分けると「ARB」「ACE阻害薬」「カルシウム拮抗薬」「利尿薬」「β遮断薬」の5つに分類される。ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也さんはこう解説する。

「なかでも一般的なのは血管細胞にカルシウムが流入するのを防ぐことで血管の収縮を抑制する『カルシウム拮抗剤』です。昔から定評があり安価で取り入れやすい一方、頭痛や動悸、便秘などの副作用があり、まれに歯茎が腫れることもある」(谷本さん)

 心当たりがあるならば、ほかの種類に替えるのも手だろう。

「加えて降圧剤全般に言えるのは服用後、一時的に血圧が下がりすぎて、ふらつきが起こる場合があること。特に高齢の場合は同じ薬をのんでいても、代謝が弱ったり体力が落ちたり、暑い日に脱水症になったりすることで、ある日突然ふらつきが起こることも。それにより、転倒して頭を打ったり骨折したりすると、そのまま寝たきりになってしまう可能性もあるため、充分に注意してほしい」(谷本さん)

 また、降圧剤は、必ずしも5種類のうち1種類のみが処方されるわけではないことも知っておきたい。

「複数の薬を併用したり、1つに混ぜた『配合剤』が処方されることも多い。配合剤は1錠のむだけで高い効果が得られるのがメリットですが、副作用が出たときに、どの成分が原因か特定が難しく、問題が起きたとき調整がしづらい。そのため最初から配合剤を使わず、単剤を使って様子を見ながら調整するのが一般的。本当に配合剤を使うべきかどうかの見極めは、しっかりするべきです」(谷本さん)

糖尿病には画期的な新薬が

 高血圧と並んで多くの罹患者がおり、その数は2030年には世界で5億人を突破するといわれる糖尿病も、薬で症状が左右される病気の1つだ。

「糖尿病治療で最も一般的な『SU薬』はインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる薬ですが、その作用の強さゆえに食欲がなく食事量が減ってしまったときなどに低血糖を起こしたり、体調が悪くなることが少なくありませんでした。しかし、ここ数年で糖尿病のメカニズムの研究は大きく進み、新しい薬も増えているのです」(長澤さん)

 糖尿病の専門医・有楽橋クリニック院長の林俊行さんは2021年から服用が開始された新薬に注目している。

「これまで注射剤しかなかった『GLP-1受容体作動薬』の内服薬が登場しました。この薬は血糖値を下げるだけでなく、体重の減少や脂肪肝の改善も期待できるため、目に見える効果が大きく、患者の治療へのモチベーションも上がります。注射に抵抗があった人や、自分で注射を打つのが困難だった人も使用できるようになり、選択の幅が広がりました」

 この新薬も含めて、現在、糖尿病の主な内服薬は8種類。糖尿病の原因はインスリンを分泌する力が弱い、インスリンの働きが悪い、あるいはその両方など人によってさまざまなので、症状に合った薬を選ぶことが大切になる。

 また、高齢者の場合は、認知症リスクや薬ののみ忘れにも警戒が必要だという。

「薬の副作用で低血糖を繰り返すことで、認知症の発症を誘発する可能性があります。高齢者や腎臓機能が低下している人の場合、低血糖を起こしやすいSU薬をなるべく減らす、ほかの薬剤に変更するなどの選択肢も視野に入れた方がいい。

 また、糖尿病患者は血圧やコレステロールの薬も服用している割合が高く、内服薬が増えてしまいがち。種類が多くなるほどのみ忘れのリスクが高まりますが、なかには薬をのみ忘れて数値が悪化したことでさらに内服薬が増えてしまう悪循環に陥る人もいます。服用する薬を減らす、のむタイミングを揃えるなどの工夫も大切です」(林さん)

もの忘れ外来に気をつけろ

 薬ののみ忘れは糖尿病に限らない。日本調剤の調査によれば1か月以上同じ薬を処方された人のうち半数は、のみ忘れの経験があるという。

「のみ忘れを防止し、患者の負担を減らすため服用回数を減らすことができる薬も登場しています。たとえば骨粗しょう症の薬は毎日服用するタイプのもののほか、月1度で済む薬もあります」(長澤さん)

 こうした「もの忘れ」が頻繁に起きる認知症も、適切な薬を選び、体に合った使い方をすれば、その症状を最小限に留めることができる。 

 処方される薬は認知症の種類によって異なり、認知症全体の6割を占める「アルツハイマー型認知症」に使用されているのが、抗認知症薬と呼ばれる「コリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体拮抗薬」だ。

 前者は記憶力や学習能力に関係する神経伝達物質・アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑制することで、アセチルコリンを増やす。

 多くの認知症患者を診察してきたシニアメンタルクリニック日本橋人形町院長の井関栄三さんは、認知機能障害の程度に加えて、患者の性格によっても薬を使い分けることが重要だと語る。

「コリンエステラーゼ阻害薬には、『ドネペジル』と『ガランタミン』、貼り薬の『リバスチグミン』の3種類があります。最もよく使われるのがドネペジルで、記憶障害の進行を抑えるほか、注意力が高まる、意欲が出るといった効果も期待できる。ただし、もともと短気な性格の人が服用すると、その傾向に拍車をかけて怒りっぽくなったりすることがあり、一人ひとりの性格や傾向をみながら処方することが必要です」(井関さん)

 これらは認知症の初期にのむ薬で、進行すると「NMDA受容体拮抗薬」が追加されるか、単独で使用されることが多い。

「認知症は脳全体にかかわる病気であり、さまざまな要素が関連している。薬だけで目に見えて症状が改善するわけではありませんが、薬によって家族を困らせるような行動・心理症状を改善できることもある。私は抗認知症薬に加えて、抗不安薬や抗うつ薬、抗精神病薬など、複数の薬を少量ずつ合わせるなど、患者の年齢や症状によって使い分けています」(井関さん)

 つまり薬の特性をよく知り、かつ患者の状態をしっかり把握してくれる医師のもとで服用しなければ、症状は改善しづらいということ。

「近年は専門医でない医師が『もの忘れ外来』を標榜している場合も増えており、患者に合わない薬を間違って処方しているケースも見受けられます。もし症状が改善しないのであれば、病院のホームページなどで医師の経歴や所属している学会をチェックしてみてください」(井関さん)

 専門性が高い病気の薬でなくとも、使い分けによって差が付くケースもある。

「頭痛や腰痛、生理痛などに処方される鎮痛剤も、医師がきちんと使い分けてくれるかは重要です。

 たとえば痛みが軽度のときは副作用が少ないアスピリンを使い、局所にはっきりとした強い痛みがあるときはロキソプロフェン、それでも抑えられないときやひどい歯痛はジクロフェナクナトリウムといった形で使い分けます。ただ、ジクロフェナクナトリウムは副作用が強く、普段遣いにはしない方がいい」(長澤さん)

薬を替えたいときはストレートに

 1錠の薬を替えるだけで、これほど症状に変化があるならば、替えない手はないだろう。しかし、自由に購入できる市販薬とは違い、処方薬は医師の判断で提供されるもの。専門家の知識と経験をもとに処方された薬を「替えてほしい」と切り出すのには勇気がいるかもしれない。しかし谷本さんは「ストレートに伝えるべき」とアドバイスする。

「のんでも体調が改善しなかったり副作用に悩まされたりしている場合は理由とともにはっきり伝えてほしい。特に体の状態は患者本人にしかわかりません。

 たとえばふらつきは外からではわかりづらいので、自覚症状を詳しく医師に説明すること。ただし『この薬はダメだ』という全面的に否定するような言い方ではなく、『副作用が気になる』とか『ほかの薬を試したい』といった伝え方をするといい。

 担当医に聞いてもらえないようなら、別の医師にセカンドオピニオンをもらってもいいでしょう」(谷本さん)

 自分の体を守れるのは自分だけだということを、あらためて思い出してほしい。

※女性セブン2021年6月10日号

プロテインの摂り過ぎで体のニオイがきつくなるのはなぜ? 専門家が解説

体臭発生のメカニズム プロテイン摂取による体臭の問題
アスリートをはじめ、スポーツをする人にとって欠かせないのがプロテイン。手軽に摂取できるため、飲んでいる人も多いのではないでしょうか。ただ、プロテインを過剰摂取すると体臭がキツくなってしまう可能性があるそうです。その原因は何なのでしょうか。神戸大学医学部客員教授の寺尾啓二先生に詳しい話をうかがいました。

<プロテインの摂取で体臭がキツくなる?>

プロテインは筋肉を増強してスポーツパフォーマンスを向上させるためには欠かせません。しかし、プロテインを摂り続けていることで、体臭がキツくなったと自分でも感じている人が多くいます。その原因はタンパク質の過剰摂取による腸内環境の悪化です。

<タンパク質の過剰摂取>

プロテインやコラーゲンなどのタンパク質を過剰摂取すると、タンパク分解酵素によってアミノ酸やペプチドに分解されなかったタンパク質は体内には吸収されず、小腸から大腸に移行されます。この未吸収のタンパク質、ペプチド、アミノ酸は、大腸で悪玉菌のエサになって腐敗産物のアンモニアに変換され、大量に吸収されます。

この腸内環境悪化によるアンモニアの大量生産が体臭の原因なのです。通常は、アンモニアは肝臓において尿素回路によって尿素に無毒化され、尿として排出されます。しかしながら、肝機能に異常がある場合や大量のアンモニアを処理しなければならない場合には、アンモニアは尿素変換されきれず、汗の中に混じって体臭となってしまうのです。

●腸内で発生したアンモニアが体臭となるメカニズム

《アンモニア→尿素回路(オルニチン回路)→尿素→尿から排出》

アンモニアは腸管から吸収されて体内に入ると、肝臓において尿素回路によって再び尿素に変換されて無害化し、尿と一緒に排出されるために、本来なら気になるほどのニオイにはなりません。

《アンモニア→尿素回路(オルニチン回路)→血管→汗に混ざり体臭となる》

大量のプロテインを摂取していると、腸内で発生するアンモニア量が増え、体内に大量に吸収され、肝臓では完全に処理しきれなくなります。さらに肝臓の機能が低下すると、尿素回路が働かず、アンモニアは肝臓から血液中に移行して体内をめぐり、その結果、汗のニオイ成分となります。

<体臭を感じたら肝機能不全や肝性脳症の危険も>

このように過剰なプロテイン摂取や肉の食べすぎは腸内環境を悪化させ、体内にアンモニアが増えることで体臭を感じるようになります。体臭が気になるだけならいいのですが、肝臓への負担が増しているので肝機能不全や、アンモニアが血液を通して脳に達することで生じる肝性脳症の危険があります。肝性脳症を発症すると意識障害、異常行動、羽ばたき振戦などの神経症状が現れ、最悪の場合は死に至ります。

<腸内環境の悪化はおならのニオイでわかる>

このようにタンパク質を摂りすぎると大腸では悪玉菌が増殖し、腐敗産物が増加するという腸内環境の悪化を招くのですが、その腸内環境の悪化を知るための簡単な方法があります。自分のおならのニオイを嗅ぐことです。もしおならが臭いなら、腸内環境はよくありません。タンパク質から変換された腐敗産物の中に含まれる硫化水素やメチルメルカプタンといった揮発性硫黄化合物が、そのニオイの原因です。

タンパク質の摂取は筋肉をつくるうえで欠かせないのですが、タンパク質を摂取する際は腸内環境の改善を考えて、必ず、α-オリゴ糖などのプレバイオティクスを一緒に摂るようにしましょう。α-オリゴ糖でしっかりと腸内環境が整うと、おならが臭くなくなるはずです。

教えてくれたのは……寺尾啓二 (てらお・けいじ)さん
【PROFILE】
1957年、岡山県生まれ。86年、京都大学大学院工学研究科博士課程修了。ドイツのワッカーケミー社勤務を経て、2002年に株式会社シクロケムを設立。環状オリゴ糖に関する数々の研究成果は、グループの販売会社である株式会社コサナのヒット商品にも活かされており、11年からは株式会社コサナの代表取締役社長も兼任。06年、東京農工大学客員教授。12年4月から神戸大学医学部客員教授、神戸女子大学健康福祉学部客員教授。19年10月からモンゴル国立大学応用科学工学部客員教授。

(抜粋)
書籍『最新科学で証明された 超効率的に筋肉をつける最高の食事術』
著者/寺尾 啓二

サプリと市販薬の組合わせNG例、ウコン・DHA・プロポリス他

健康のためにサプリメントを日常的にのんでいるという人も多いだろう。そして、同時に頭痛や肩こりといった日常的に起こる症状を和らげるために、市販薬をのんでいる人も多いはず。しかし、何の気なしに市販薬とサプリメントを同時に服用することで、まさかの副作用を起こすこともあるのだ。

 そこで、市販薬とサプリメント・健康食品の代表的な「危険な組み合わせ」を紹介する。

※監修/生田哲さん(薬学博士、米カリフォルニア大学など海外の研究機関で生命科学の研究にあたる)

◆『解熱鎮痛剤』と組み合わせると危険なサプリメント・健康食品

【EPA】
アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった、血液をサラサラにする成分を含んだ解熱剤は、血液を固まりにくくする作用のあるEPAとのみ合わせると、効果が強まって、内出血などを起こしやすくなる。

【DHA】
 EPA同様、DHAには血液を固まりにくくする作用が。アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった、血液をサラサラにする成分を含んだ解熱剤と併用すると、効果が強まり、内出血などを起こしやすくなる。

【マグネシウム】
 血液をサラサラにする効果がある成分含有の解熱鎮痛剤と、血流を促進させるマグネシウムを併用すると、出血しやすくなる。軽い打撲でもひどい青あざができることがある。

【イチョウ葉エキス】
 イチョウ葉エキスにはフラボノイドなどが含まれ、血を固まりにくくする。アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった成分を含む解熱鎮痛剤にも同様の作用があり、血流がよくなりすぎてしまい、止血しづらくなる。

【ノコギリヤシ】
 ノコギリヤシは、血流を改善して前立腺肥大にも効果があると謳われている。血液を固まりにくくする作用のあるアスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンと一緒にのむと、効果が増強して出血リスクを高めてしまう。

【プロポリス】
 抗酸化作用や糖尿病予防などによいとされるプロポリスは、肝臓で薬が代謝されるのを阻害する可能性が。また、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの副作用である胃腸障害、発疹などを増強する恐れもある。

【グルコサミン】
 軟骨のすり減りを抑えて関節の動きを滑らかにし、関節痛を改善する効果が期待されるグルコサミンだが、アセトアミノフェン配合の解熱鎮痛剤と一緒に摂取すると、効果が弱まることがある。

◆『肩こり改善の市販薬』と組み合わせると危険なサプリメント・健康食品

『ウコン』
 筋肉の緊張を緩める作用のあるクロルゾキサゾンは、ウコンと併用すると、吐き気や体温低下などの副作用が起こる可能性がある。

日本は世界有数の“薬服用大国”、薬剤師が警告する「飲み続けると危ない薬」

 日本は世界有数の薬服用大国だ。OECDの調査によると、1人当たりの薬剤費支出総額はアメリカに次ぐ2位(2018年度)。特に高齢者の多剤服用が目立つ。

厚生労働省の調査では、75歳以上の40・3%が5種類以上の薬を処方されており、7種類以上の処方があった人も23・9%いた(令和元年度社会医療診療別統計 院外処方より)。

薬の種類が増えていく理由
「飲む必要のない薬を飲み、逆に体調不良に陥っている高齢者が多すぎます」

 と、薬剤師の宇多川久美子さんは警鐘を鳴らす。高血圧症だった60代男性は、禁煙や食事の改善により、長年飲み続けていた降圧薬をやめることができた。

「いつも午前中はだるかったのに、薬をやめてからは朝すっきり起きられるようになりました」と笑顔で話す。

 また、糖尿病でインスリン注射が欠かせなかった80代女性は、「もう一度、友達と気兼ねなく旅行をしたい」という思いをきっかけに、生活習慣や食生活を徹底的に見直した。今では見事に脱インスリンを果たし、糖尿病の症状も出ていない。

「保険制度のもとでは、薬を処方することで医師も薬剤師も利益を得ます。本当に必要な薬であれば問題ありませんが、“僕はこの薬は飲まないけど、患者には出すよ”という医師がいるのも現実なのです」(宇多川さん、以下同)

 例えば、高血圧症など生活習慣病の薬は、症状を抑えるにすぎない。完治することはないので、ずっと飲み続けるしかない。血圧を下げる薬に、コレステロール値を下げる薬、最近では睡眠薬なども高齢者に処方され、薬の種類はどんどん増えていく。

 また、日本では1つの症状について複数の薬を飲むことも当たり前になっている。
例えば、眠れずに悩む高齢者に、寝つきのよくなる睡眠薬が処方されるとする。

「薬のおかげで寝つきはよくなったんですけど、今度は朝早く目が覚めてしまって……」と患者が訴えると、これまでの睡眠薬に加え、また新たな睡眠薬がプラスされる。結局、睡眠薬だけで2種類を飲むことになる。

「このような処方が日常的に行われていますが、アメリカでは、1つの症状につき1つの薬が基本です」

 薬はたった1つでも副作用がある。数が増えるほどに、薬の組み合わせによる相互作用で、重篤な副作用が起こる危険性は増す。だがそのリスクはあまり知られていない。

受診控えで死者数が減少する事例も
「副作用の症状は頭痛や倦怠感など、さまざま。最悪の場合、死に至ることもあります。トロント大学の研究報告によると、アメリカでは、処方薬の副作用で年間約10万6000人が死亡しています。ちなみに、アメリカでは処方薬は1人4剤までというルールです。それでも、これだけの死亡数が報告されているのです」

 日本では、処方薬の副作用による死者数の統計はない。その一方で、気になるデータがある。厚生労働省の人口動態統計によると、新型コロナウイルスが猛威をふるう中、2020年度の国内の死者数が11年ぶりに前年を下回ったというのだ。

「約15年前、財政破綻した夕張市でも似たような現象が起きました。夕張の市立病院がなくなり、高齢者を中心とした患者たちは病院を利用するとなると市外へ行くしかありませんでした。通院の機会が減るなか、不思議なことに夕張市民の死亡者数は減少したのです。コロナ禍の“受診控え”が目立つ今と、似た状況だと感じます。過度な医療や過剰な服薬は、必ずしも高齢者の健康にとってプラスとはいえないのです」

 そもそも、なぜ高齢者の多剤服用は危険なのか。

「薬を飲むと、その成分は肝臓で分解・解毒され、排出されます。しかし高齢者は加齢により肝機能や腎機能が低下しているため、若者に比べて薬の成分が体内に長時間とどまりやすくなっています。ただでさえ薬の影響を受けやすいのに、それが多剤になれば、副作用のリスクが大きくなるのは当然です」

 加齢によって見られる、記憶障害やふらつきなどの症状も、実は薬の副作用で起きている場合があるという。

「これを『薬剤起因性老年症候群』といいます。便秘や食欲低下などの比較的軽いものから、せん妄、抑うつ、排尿障害まで、さまざまな症状が見られます」

 この問題に対し、厚生労働省は2019年に『高齢者の医薬品適正使用の指針』を発表した。多剤服用の中でも特に害のあるものを「ポリファーマシー」と呼び、高血圧治療薬や糖尿病治療薬、認知症治療薬などジャンル別に、具体的な薬剤名を挙げて注意を促している。

「血圧を下げる降圧薬は、10年、20年と飲み続けている人も珍しくありません。しかし、厚労省の指針では、記憶障害やせん妄など脳への影響が指摘されています。降圧薬は血液循環の圧力を弱める作用があるため、脳へ届ける血液量が減って酸欠状態となり、このような副作用が起こりやすくなるのです。因果関係はまだ不明ですが、長期の服用が認知症を引き起こすという研究もあります」

 日本では、約4000万人が高血圧とされ、降圧薬の市場規模だけでも1兆円に上るといわれている。

「診断や処方せんの基準となる血圧値の分類は、日本高血圧学会が示す『高血圧治療ガイドライン』で定められています。ただし、男女の別や身長、体重などの個体差は考慮されていないのです」

 基準値から少しでもはずれたらすぐに薬を飲む“悪習”は、高血圧症に限らない。

「コレステロールや中性脂肪の値が高いと、心疾患のリスクが高まるといわれています。ですが、これらの値を下げる脂質異常症治療薬についても、厚労省が注意喚起しています。特に75歳以上の後期高齢者においては、筋肉痛や消化器症状、糖尿病の副作用が指摘されています。なかには、筋力が低下し、四肢がまひする深刻な副作用が生じたケースもあったんです」

手軽に入手できる処方せんに問題が
 総合病院の薬剤師として勤務経験のある宇多川さんは、世界に誇る日本の皆保険制度も、皮肉なことに多剤服用を生み出す一因だと話す。保険適用では一般的な処方薬の個人負担額が数百円程度と安く、患者の懐が痛まないからだ。

「高いものじゃないし、とりあえずもらっておけば安心」という考えが患者の意識にあり、薬に対する抵抗感が低い。最近では「こんな症状があったらお医者さんへ相談!」などのCMも頻繁に見受けられ、ますます処方薬がお手軽な印象になっている。

「一時期、過活動膀胱や逆流性食道炎などの薬がCMに登場しました。これらは抗コリン系薬と呼ばれ、アセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑える作用があります。実は厚労省が注意喚起している薬のひとつなのです」

 パーキンソン病治療薬や抗うつ薬の一部にも抗コリン系薬がある。また、市販の風邪薬や抗うつ薬、花粉の時期には欠かせない抗ヒスタミン剤にもアセチルコリンを抑える、抗コリン作用のある薬がある。なぜ危険なのか。

「日本では、2025年には3人に1人が罹患するといわれている認知症。初期の段階では、脳内のアセチルコリンが減少することがわかっています。そのため、いま広く使われている認知症改善薬では、脳内のアセチルコリンを増やす作用があるのです」

 この認知症治療薬を服用している人が、抗コリン作用のある風邪薬や、抗うつ薬を飲むとどうなるのか。

「かたやアセチルコリンを増やす作用、かたや減らす作用と、身体の中はもはやパニックです」

 ここに飲み合わせの怖さがある。患者が飲んでいる薬を医師がすべて把握し、患者側もお薬手帳で処方薬をきちんと管理していれば避けられる事態かもしれない。かといって、飲み合わせだけ気をつければいいわけではない。冒頭で触れたように、薬は単独でも必ず副作用があるからだ。

「比較的新しい薬を長期にわたって服用した場合、将来どんな副作用が生じるかはわかりません。認知症の一因が脳内のアセチルコリンの減少にあるのなら、抗コリン系薬を長期間飲み続けることが、なんの影響もないと言い切れるでしょうか。1週間だけ飲んだ風邪薬が、将来の認知症につながるとは思いません。

 ただ、過活動膀胱やうつ病など、簡単にやめられない治療薬を何年も続けた先の影響を想像してみることは大切です。先進国において、なぜ日本で認知症患者の割合が高いのかも考える必要があるでしょう」

薬との付き合い方でいちばん大切なこと
「すべての薬が悪いわけではなく、本当に必要な薬は上手に活用すべきです」と宇多川さんは強調する。

「生活習慣病に限っては、薬は必要ありません。まずは生活を見直し、自分で治す心構えを持ちましょう。ただし、すでに服用している薬を勝手にやめることは危険。必ず主治医に相談してください」

 できるだけ薬に頼らない生活を送るには、遠慮がちでNOと言えない“日本人的”な考え方を改めることも大切だ。

「医師にわずらわしく思われたくないという気持ちを捨て、うるさい患者になるべきです。気兼ねせずに、薬を飲む理由を聞き、やめたり減らしたりしたければその意思を伝えてください。コロナ禍では、自分の身体は自分で守るということがこれまでにも増して重要だと感じています」

 新型コロナウイルスのワクチンをめぐる騒動についても、同じことがいえそうだ。

「遺伝子組み換えで作られたmRNAワクチンを、人類は初めて接種します。安全性については医師や専門家でも意見が分かれますが、未知のものなので誰にも結論は出せません。だからこそ、自分で考えて決めることが大切なのです」

 最近では接種の遅ればかりがクローズアップされ、安全性など本当に重要な議論が尽くされていない印象だ。

「私は60代ですが、現時点でワクチン接種の意思はありません。今後、子どもをつくる可能性のある若い世代は、より注意が必要とも考えています。ただし、基礎疾患がある方はコロナで重篤化する可能性がありますので、打つメリットのほうが大きいケースもあります。薬もワクチンも、年齢や既往歴を鑑みて、リスクとメリットを比較する点は同じです。そのうえで、最終的な結論は自分で出しましょう」

 コロナ禍の今こそ、薬との付き合い方を真剣に考えるときだ。

うだがわ・くみこ
薬剤師。医者や薬への依存から脱却し、病気にならない、病気を治す啓蒙活動を行っている。新著に『薬剤師が教える 子どもから大人まで「飲み続けると危険な薬」』(PHP研究所刊)(取材・文/植木淳子)

60才過ぎたら”やめるべき”5つの医療習慣|薬、サプリ、病院のはしご…【医師監修】

「60才を過ぎると薬やサプリを習慣としてたくさんのんでいる人が目立つ」と、専門医が指摘する。60代の患者に多い薬やサプリののみすぎによる弊害とは? やめたたほうがいい習慣とは?医療にまつわる「やめるべき」ものを5つのチェックリストで確認しておこう。

60才を過ぎると増えがちな薬やサプリ

 平均寿命はますます長くなり、老後を元気で暮らすには、若いときの習慣や新たな挑戦を断ち切る潔さが必要な時代となった。あれもこれもとがんばるのは、年寄りの冷や水。60才以降の人生は、ぬるま湯につかったつもりで心地よく生きたいものだ。


 若いときとの大きな違いとして、まず目につくのが「薬」だ。60才になると、日常的に服用する量が増えやすい。血圧やコレステロール値、血糖値の薬など、のみすぎを指摘する声は少なくない。特に、血圧や血糖値は過剰に薬で下げすぎると、めまいなどを起こし、転倒を招く恐れがある。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長の下方浩史さんは「花粉症など、アレルギー薬には要注意」と話す。


「アレルギーを抑える抗ヒスタミン薬には、眠くなる成分が入っているものもある。それらのタイプは脳の働きを抑えるため認知症の原因になるといわれ、常用することはおすすめできません。いまは眠くならないタイプの花粉症薬も市販されているので薬剤師に相談するといいでしょう」(下方さん)薬ののみすぎを防ぐためには、不要に医師にかかることを避けたい。海外と比べ医療費の自己負担が少ない日本では、自分に合う医師を探してはしごする「ドクターショッピング」をいとわない人もいるが、下方さんは否定的だ。

病院を渡り歩くと薬が増える?

「病院をあちこち渡り歩くことは、薬が増えるきっかけになります。医師を変えたことで違う種類の血糖値の薬をもらい、両方のんでいるという人もいますが、明らかにのみすぎです。血糖値の下げすぎは命にかかわることさえあります」


サプリを摂りすぎると…

 多剤併用のリスクは薬に限らない。サプリメントののみすぎは逆効果となり得る。ちくさ病院の内科医、近藤千種さんが指摘する。「60代の患者さんは、習慣的にサプリメントをいくつものんでいる人が目立ちます。正直なところ、サプリメントは成分の含有量がしっかり書かれていないものもあって、必ずしも安全とはいえません。なかには、サプリメントの乱用によって、代謝を担う肝臓の機能を悪くする人もいます」


 下方さんも「サプリの摂りすぎはよくない」と同意する。

「貧血気味だからといって鉄のサプリを買ってのむ人がいますが、鉄の欠乏による貧血を高齢者が起こすことは少なく、ビタミンやたんぱく質不足で貧血になることがほとんどです。鉄は摂りすぎると老化のもととなる活性酸素をつくり出し、肝臓にも悪い。あくまでも、栄養は食事で摂ることが基本です」(下方さん)

60才過ぎたら「やめるべき」医療の習慣5選

【1】高血圧の薬

 血圧は年齢とともに上がるのが自然なこと。服薬基準を下回るのに、習慣だからと薬で無理に下げていると脳や心臓に血液が充分に行き渡らなくなり、認知症や心筋梗塞を引き起こす恐れもある。

【2】血糖値を下げる薬

 加齢とともに血糖値はその調整能力が衰えるため、上下の振れ幅が大きくなる。少し血糖値が高いからと過剰に薬をのんでいると、低血糖を起こして失神するリスクが。

【3】花粉症、風邪薬、睡眠薬などの常用

 眠くなる成分の入っている薬は脳の活動を抑制する働きがあるため、服用を続けていると認知症になる恐れがある。

【4】サプリメント

 サプリメントは原材料それぞれの含有量が不明の場合が多く、効果や副作用のリスクの影響が把握できない。肝臓にも負担がかかる。

【5】ドクターショッピング

 “病院のはしご”は、薬をもらいすぎる原因となり、多剤併用の危険が高くなる。

※女性セブン2021年4月8日号
https://josei7.com/

教えてくれた人

名古屋学芸大学健康 栄養研究所所長・下方浩史さん、ちくさ病院 内科医・近藤千種さん

乳製品の「乳化剤」、摂りすぎるとカルシウムを欠乏させる

脂質、炭水化物に続く三大栄養素の1つ「たんぱく質」は、乳製品に豊富に含まれている。腸内環境を整える健康食の代表である「ヨーグルト」を毎日食べている人も多いのではないだろうか。しかし、ヨーグルトも選び方によっては危険が潜んでいるのだ。日本臨床栄養協会理事で名古屋経済大学准教授でもある早川麻理子さんが指摘する。


「飲むタイプのヨーグルトは、水分の含有率が多いものの、たんぱく質や乳脂肪などの栄養成分は固形のものとほぼ変わりません。しかし、“飲みやすさ”をかなえるために、砂糖や果糖ブドウ糖液糖などが添加されているものが多い。血糖値や中性脂肪の上昇につながります」


 だが、固形のヨーグルトにも落とし穴がある。

「果肉入りヨーグルトに入っているのは、シロップ煮の果物がほとんど。糖分が多い上、生の果物に含まれる酵素や栄養素は期待できません。果物を入れるなら、プレーンヨーグルトに生の果物を切って入れるようにして」(早川さん)


 カルシウムが豊富に含まれるチーズも、選び方を間違えると、せっかくの栄養が台無しになる恐れがある。「プロセスチーズに使われている『乳化剤』とは、『リン酸塩』のことです。過剰摂取すると、カルシウムの吸収を妨げます」(早川さん)


 カルシウムが不足すると骨粗しょう症になるリスクが高まる。プロセスチーズよりも、添加物の入っていないナチュラルチーズを選ぼう。ただし、調理法に気をつけたい。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが語る。


「発酵食品であるチーズは、たんぱく質もカルシウムも脂質も、そのままの形で吸収しやすい食材です。逆に、ナチュラルチーズを加熱してしまうと、乳酸菌や酵素の活性が失われる恐れがあります」

 さらにナチュラルチーズでも、スイーツによく使われるものは、太りやすいことを覚えておこう。

飲むヨーグルトよりも固形ヨーグルト

飲むヨーグルトよりも固形ヨーグルト

「ティラミスやチーズケーキなどに使われている『クリームチーズ』『マスカルポーネ』は、脂質も糖質も高い。ダイエットには不向きです」(望月さん)


 お菓子作りで、生クリームとホイップクリームのどちらを買うか迷った経験はないだろうか。原材料を見てみると、生クリームは「動物性脂肪」、ホイップクリームは「植物性脂肪」と書いてある。「植物性」の方が体によさそうな印象を受けるが、そうではない。


「生クリームは牛乳を分離させた後の『乳脂肪』を原料にしたものですが、ホイップクリームは乳脂肪に植物油脂や乳化剤、安定剤などの添加物を加えて、生クリームに似せて作ったものです。心疾患のリスクを高めるトランス脂肪酸が生クリームより約10倍も多く含まれます」(望月さん)


 価格はホイップクリームの方が大幅に安いが、決して飛びつかず、生クリームを選びたい。

薬と食品の危険な飲み合わせ 正確な知識持ちリスク回避を

 薬は食前・食間・食後のタイミングに服用するものがほとんどだ。薬と食事は切っても切れない関係だが、一緒に食べる食品によっては薬効が弱まるばかりか、逆に「毒」に成り変わるリスクもある。

 栄養価の高い食品としてスポーツ選手のエネルギー補給にも用いられるバナナだが、潰瘍性大腸炎など免疫疾患の治療薬を服用している人が食べすぎるとリスクにつながる。

 薬の働きで腎機能が低下しやすくなっているため、バナナに豊富に含まれるカリウムの排泄が進みにくくなるからだ。薬剤師の堀美智子氏によると「場合によって不整脈などの原因になる」という。

 高血圧治療薬、いわゆる降圧剤を服用している人が気をつけなければならないのも、カリウムを多く含む食品だ。

「高血圧治療薬の中でも、カリウム保持性利尿薬と呼ばれるタイプは、血圧を下げる働きを持つカリウムを体内に保持する機能があります。カリウムが豊富に含まれる赤ワインを好んで飲む人は要注意です。高カリウム状態になって倒れ、救急車で運ばれた事例もあります。

 一方、ACE阻害薬やARBといったタイプの高血圧治療薬を服用する人も同様に、カリウムが多く含まれている食品に注意してほしい。また、高血圧治療をしている人は、漢方薬や甘味料に使われる甘草の過剰摂取にも注意が必要です。摂取しすぎてしまうと血圧を上げてしまいます」(同前)

高血圧患者に限らず、酒と薬の組み合わせは基本的に避けるべきだ。アルコールが胃粘膜を傷つけ、飲みすぎれば中枢神経の働きが抑制され記憶障害が起きる可能性もある。

「睡眠薬や催眠鎮静成分を含む風邪薬を飲むとその作用が強くなるので、薬を飲む日は飲酒を避けるべきです」(同前)

 脂質異常症治療薬(プロブコール)の添付文書には「高脂肪食」と一緒に摂取することに注意すべきとある。この薬を投与しているアカゲザルに高脂質・高コレステロール食を摂らせたところ、死亡する実験結果が出たという。薬の効果を過信して食生活管理を疎かにすべきではないということが示唆されている。

 日常飲む薬も危険なものに変えてしまう「飲み合わせ」。その情報をよく知ることが、リスクを遠ざける何よりの近道になる。

つらすぎる頭痛! 肩こりもひどい! 漢方薬で一気に治せる?

会社を休むほどではないけれど、頭痛がしばらく続いている。放っておいて治るかなと思っていたけれどなかなか治らない。そんな頭痛に悩まされたことはありませんか。頭痛の原因はさまざまですが、中には漢方薬で対処することができる場合も。

「おかしいな」と思ったら早めに受診しましょう。慢性的な頭痛持ちのリサと、頭痛の頻度にムラがあるカヨコのケースから、頭痛に処方される漢方薬を紹介します。

リサ「おはよう、カヨコ」
カヨコ「おは……、リサ、首の角度がおかしくない?」

リサ「今朝ちょっと寝違えちゃってね……。イタタタタ」
カヨコ「あらら、かわいそうに……」

リサ「首も痛いし、寝違えたせいなのか今日は特に頭痛もひどくって」
カヨコ「私も今日は頭痛が痛い。疲れが溜まっているのかなあー」

リサ「カヨコ、日本語が変だよ! でも頭痛が痛いって言いたくなる気持ちもわかる。頭の中を『痛』という漢字が巡り巡っているような感じだよ。何とかならないかなぁ」

カヨコ「そうだよねえ。リサ、いつも頭痛で悩んでいるし、一度病院へ行ってみたらどう? 私もせっかくだから付き合うよ。カン子先輩が漢方薬は副作用がないから軽い症状でも飲みやすいって言っていたし……」

リサ「病院ねー。面倒くさいなあ。頭痛ぐらいで来るなって言われそう」
カヨコ「そんなことないって。何か原因があるはずだから行ってみようよ」

というわけで病院へ向かった2人。診察していただくのは、「霞が関ビル診療所」の丸山綾先生です。リサの様子から見てみましょう。

リサ「こんにちは。よろしくお願いします」
丸山先生「こんにちは。あらら、首を寝違えたのかな?」

リサ「そうなんです。朝からずっと痛くて。もともと頭痛持ちなんですが、今日は特にひどいんです。鎮痛剤も全然効きません」
丸山先生「慢性的な頭痛ですね。肩こりもありますか?」

医師が「私は飲まない」と宣言する要注意な市販薬

医師がのまない市販薬一覧

「毒にも薬にもなる」という言葉がある。病気やつらい症状を治してくれる「薬」でも、効き目が強いがゆえに、服用の量や仕方を間違えたり、個人の体質と合わなかったりすることで、逆に体調を悪化させる「毒」にもなる。薬に精通する医師たちは、どんな薬に注意しているのだろうか。


◆ロキソニンをのんで「黒い便」が出たら要注意

 頭痛や生理痛などの時につい頼りたくなるのが、痛み止め。代表的な薬である「ロキソニン」には否定的な声が複数あがった。新潟大学名誉教授の岡田正彦医師はこう話す。「主成分の『ロキソプロフェン』は鎮痛効果がある半面、胃が荒れやすいので、病院では胃薬を一緒に処方します。


市販品は胃を荒らさない工夫がされているというが心配は残る。自分ではのみません」(岡田さん)健康増進クリニック院長の水上治さんも胃粘膜のダメージを心配する。「『ロキソニン』をのんで黒い便が出たら、胃から出血している疑いが。すぐに医師に相談してほしい」


◆H2ブロッカー胃腸薬で食中毒になるリスクも

 胃を守り、消化を助けてくれる胃薬も、ものによってはかえって胃を弱めてしまう。水上さんは「H2ブロッカー胃腸薬」をあげる。「ちょっとした胃痛や消化不良の時、胃酸を抑える『H2 ブロッカー』を配合した胃薬をのむのは、避けた方がいい。胃酸が減ることによって消化力が落ちるうえ、殺菌力も弱まる。その結果、食中毒を起こすリスクさえある。胃潰瘍になってしまったならともかく、少し胃が悪くなったからといってのむ薬ではありません」


 女性の強い味方であるはずの便秘薬も、選び方次第ではかえって悪化の原因になる。東邦大学医療センター大橋病院・婦人科の高橋怜奈医師はこう話す。「私は『刺激性の便秘薬』は第一選択としては服用しません。大腸を刺激し、腸のぜん動運動を促すため即効性はありますが、その一方で依存しやすくなってしまう。


慢性的に服用すると腸の自然な動きがなくなってしまい、最終的には、薬なしでは便はおろかガスも出なくなる。この状態になってしまうと治療はかなり難しいでしょう」下痢止めも「基本的にはのまない」と回答する医師がいた。渋谷セントラルクリニック院長の河村優子さんが言う。


「ノロウイルスやO-157だった場合、薬で下痢を止めると、ウイルスがいつまで経っても体外に出ていかない。これらの病気が原因ではなかったとしても、極力、食事内容を見直したり、漢方薬を使ったりして治療します」


医師がのまない処方薬一覧


政府が使用促進を強めるジェネリック薬 トラブル続出の負の側面も

 寒さと新型コロナウイルスが猛威を振るう2020年12月、70代と80代の男女が相次いで亡くなった。死の背景にあったのは病院から処方された「薬」。ジェネリック医薬品製造メーカーの「小林化工」が製剤した爪水虫の治療薬に、睡眠導入剤の成分が混入していたという前代未聞の事件だった。

 3か月後、今度はジェネリック医薬品国内大手の1つ「日医工」に業務停止命令が下った。理由は、10年にわたって国から承認されていない手順で、不正に薬剤を製造してきたというもの。都内在住の会社員・田村和子さん(52才、仮名)がため息をつく。

「テレビでもジェネリック医薬品のCMをよく見かけるし、薬局では『値段は安いけれど成分は先発医薬品と同じ』と説明を受けていたから、言われたとおりにジェネリック薬にしていました。ですがこうした事件が立て続けに起こると不安になります。このままのみ続けていいものか……」

 医療費削減の観点から、これまでジェネリック薬の使用は国をあげて推進されてきた。しかし厚生労働省が掲げてきた使用割合を8割とする目標もほぼ達成したいま、信頼が揺らぎ始めている──。

 後発薬とも呼ばれるジェネリック薬はその名のとおり、新薬の有効成分についての「物質特許」期間の満了後に発売される低価格の医薬品だ。先発薬と同じ有効成分を持ち、そのため効能や効果も原則として同一とされており、各種医薬品メーカーが厚生労働省の認可を得て製造販売を行っている。

 しかし問題となったジェネリック薬は、どちらも国の承認を得ていない工程で薬が製造されていた。相次ぐ不祥事の理由はどこにあるのか。医療問題に詳しいジャーナリストの鳥集徹さんが指摘する。

「背景にあるのは、先発薬と比較してジェネリック薬の売り上げが小さいという問題です。一般的に薬の開発には巨額の投資が必要で、1つの薬を世に送り出すのに数百億円以上をかけることも珍しくありません。

 そのコストを回収し、さらに利益をあげるために、10年程度の独占販売が許され、薬価も高くつけられています。一方で特許が切れた後に販売されるジェネリック薬は開発に先発薬ほどお金をかける必要がないので、薬価が安く設定されます。そのため先発薬ほどの利益は出ず、試験や品質管理に充分な予算や人員をかけようという意欲が起こりにくい。それが不正を招いた要因の1つにあると思います」

 日医工は、出荷時の試験で「不適合」となった、破棄すべき錠剤を砕いて再び加工し直したりすることで、適合品として出荷していた。

「小林化工の製造工程においても、原料の計量など本来は2人1組で指さし確認をしながら実施すべき際に担当者1人で作業するなど、不適切な管理体制が明らかになった。

 こうした不祥事は社内で隠蔽されれば外部にはわからない。日医工の問題は2020年2月に本社のある富山県の担当者が抜き打ちで立ち入り調査を行い問題が発覚したが、見落とされてしまえば人体に悪影響をおよぼす薬が出回ってしまうことになります」(都内調剤薬局の薬剤師)

 つまり、医薬品メーカーの信頼度や安全性に加え、国や自治体のチェック機能も問われている。しかしそれも万全とはいえない現実がある。

「2016年以降、医薬品メーカーには定期的に抜き打ちでの調査を行っているが、このような問題が起きた以上、不充分だったと言わざるを得ない。抜き打ちでの査察以外にどうしたら不正防止になるのかを現在検討している最中です」(厚生労働省担当者)

成分が同じでも効きが違う

 ジェネリック薬の持つ不安要素は、今回の不祥事で明らかになった製造・管理体制のずさんさだけではない。関町内科クリニック院長で循環器専門医の申偉秀さんは、そもそもジェネリックと先発品が同一であるというとらえ方は危険だと警鐘を鳴らす。

「先発薬が出る前には有効性や安全性を確認するために、厳しい臨床試験と承認審査が行われます。しかしジェネリックは、先発薬で一度審査を通っているという前提のもとで製造されるため、検査項目が少なく、先発品ほど厳しい検査は行われません」

 そのため、品質的に劣る可能性があるというのだ。

「薬局では何種類も薬を服用する場合、のみ忘れを防ぐため1回分を1袋にまとめる『薬の一包化』を実施するケースがある。このとき薬を一度包装シートから出しますが、ジェネリック薬は保管時に変質しないか不安が残ります。というのも、先発品は温度や湿度を変えて成分に変化が起きないか厳しい検査をしていますが、ジェネリック薬ではそこまでの確認は実施されていないのです」(申さん)

 加えて、成分が同一であっても、添加物の内容や製造工程などが異なれば効き方にも影響が出てくる。

「薬剤の混ぜ方や、塗り薬ならば肌につけたときにどのくらい伸びるかなどは各メーカー独自の技術があるため、簡単には真似できません。例えば季節性のアレルギー薬の有効成分である『フェキソフェナジン』や痛み止めの『ロキソプロフェン』などは、患者さんから先発薬とジェネリック薬で効き方が違うという声があがることが多い。

 私も花粉症がひどいときは同じフェキソフェナジンを主成分とする薬でも、先発薬の『アレグラ』をのみ、そこまでひどくないときは価格が安いジェネリック薬を使用するなど使い分けることを意識しています」(申さん)

 元近畿大学薬学部教授の松山賢治さんも声をそろえる。

「代表的なのは、胃薬の『ランソプラゾール』。逆流性食道炎や胃潰瘍の治療でよく用いられますが、成分が非常に分解されやすい性質を持っています。そのためランソプラゾール配合の先発品『タケプロン』を開発した武田薬品は、分解を防ぐ技術を独自に開発している。つまり、たとえ成分が同じでも、独自の安定化剤の違いによって効き方にも違いが出ることがありうるのです」

薬剤師の深井良祐さんは「医師によっては『この薬は絶対にジェネリックに変えてはいけない』と指定する場合すら存在する」と指摘する。

「例えば、気管支ぜんそくの患者さんに使われる貼り薬はゆっくり溶けて薬効成分が体に入り、長時間血中濃度を保つことが重要であるため、先発薬の『ホクナリンテープ』を指定するケースが多い。有効成分は同じでも、ジェネリックの薬は一気に溶けてしまい、危険であると指摘する医師が多いのです」(深井さん)

 申さんも、かつて医療現場において先発薬をジェネリック薬に切り替えた患者が、命にかかわるような事例を経験した。

「心臓に酸素や栄養を供給する冠動脈が発作を起こして縮む『冠攣縮性狭心症』を患っていた60代女性のケースでした。血管を拡張させる作用を持つ『カルシウム拮抗薬徐放剤』で発作を抑えていたのですが、先発薬をジェネリックに変えた直後、急に胸の痛みを訴えて救急病院に搬送されたのです。幸いにも回復しましたし、先発薬に戻してすぐに容体は安定しましたが、一時は危険な状態でした」

 その後、申さんが受け取った救急病院の報告書には、「処方をジェネリック薬に変更して発症したと思われるので、もとの処方に変えてほしい」と書かれていた。

「『カルシウム拮抗薬徐放剤』は少しずつ有効成分が溶け出して作用するため、先発薬を使っていたときは冠動脈が縮まないようにギリギリの状態で広げていたのが、ジェネリック薬に変えた途端に戻ってしまい、わずかな効き方の違いで発作を抑えられなかったと考えられます。循環器の病気では、数値に表れない部分でそうした危険があります」

 命を救ってくれるはずの薬が、自分の首を絞めているとしたら、これほど恐ろしいことはない。

 気をつけるべき点はほかにもある。日本ジェネリック製薬協会の発表によれば、現状コスト削減のために約6割の原料を海外に頼っている。先発薬も同様に約半数が海外頼みではあるものの、ジェネリック薬が作られる海外の工場は劣悪な環境のケースもある。

 実際、アメリカでは中国で製造したジェネリック薬の降圧剤から発がん性物質が検出されたり、インド製の高脂血症治療用のジェネリック薬にガラス片が混入する事故が報告されたりとトラブルは後を絶たない。

「日本のジェネリック薬も原料の4割は中国とインドに頼っています。たとえ薬の安全性の国際基準であるGMP(適正製造規範)を守っていたとしても、実際に工場を視察してみたらハエがたかっていたという報道もありました。ジェネリック薬製造メーカーの中には規模が小さく人手が少ない会社もあるため、国内外すべての工場に監査の人員が派遣できているかは疑問が残ります」(鳥集さん)
 松山さんも、原薬(薬の有効成分となるもの)の製造を国外に委託することの危険性を指摘する。

「外国で主薬原料を作り日本に安価で輸入したものを製品化する場合、主薬の品質保証がなされていないことがあります。2013年には韓国の原薬メーカーである『SSファーマ』がGMP(薬の安全性の国際基準)を満たしていないとして、製造を委託していた国内ジェネリック薬メーカー11社が製造中止に追い込まれた事例もあります」(松山さん)

薬も資本主義で動いている

 原材料から管理体制まで、矛盾や問題をはらみながらも推進され続けるジェネリック薬品。真実を知った後、私たちはどう向き合うべきなのか。松山さんは、薬局で薬をもらう前、診察の段階で医師に質問することを推奨する。

「医師の診察を受ける段階で、ジェネリック薬をのんでも大丈夫なのかを確認し、心配なものは先発薬にしてほしい旨を医師に処方箋に書いてもらうといい。また薬局では受付で『ジェネリック薬を希望するか』を聞かれることもありますが、薬剤師からジェネリック薬の説明を聞いて決めるようにしてください」

 薬剤師からジェネリック薬をすすめられても選択肢は患者にあることを忘れてはいけない。

「かかりつけの薬局をつくることも安全の担保になります。先発薬と違い、ジェネリック薬は1つの薬を複数のメーカーが作っているため何種類もあり、それぞれ少しずつ効き目が異なります。

 ジェネリック薬品がすべて悪いわけではなく、なかには先発薬を上回る効果や工夫がみられるものもある。自分に合った薬を取り扱う薬局を選ぶのもひとつの手です。また、先発品メーカーが作るジェネリック薬である『AG(オーソライズド・ジェネリック)』は先発品と同等のものが多いと考えられています。服用する薬にAGがあるかどうかを調べて医療機関や薬局で希望することも推奨できます」(申さん)

 一般にはあまり知られていないことだが、調剤薬局がジェネリック薬製造メーカーの関連会社にあたるケースがあることも知っておきたい。ある患者(48才)が言う。

「調剤薬局で、あまりに熱心にジェネリック薬に変えるようすすめるので、かえって不安になり、先発薬にしてほしいとお願いしたのですが、わざわざ医師に連絡され、『先生はジェネリック薬に変えていいとおっしゃってます』と言う。それでも先発薬をお願いしたら、『実は、うちにはこの先発薬は置いてない』と言われてしまった。後でこの薬局が某ジェネリック薬の製薬会社のグループ企業だと知り、あ然としました」

 実際、日本ジェネリック株式会社の関連会社である日本調剤は、ジェネリック医薬品の使用率が同社平均88.8%とほぼ9割にもなり、国内の平均を大きく上回っている。こうした事実も頭に入れて薬を選んでほしい。また、松山さんは「薬を容易に変えてはいけない」と指摘する。

「ジェネリック薬でも先発品でも、最初にのみ始めた薬は医師がその人に合った投与量を決めていきます。ですからのみ続けて、効果を観察することが大切です。いちばん悪いのは、医師に相談せずにジェネリック薬からほかのジェネリック薬や先発品に勝手に変えること。体内への薬の成分の溶け出し方や吸収率が変わるので、気軽に変えると、思わぬ副作用が出ることもあるのです」(松山さん)

 一連の事件がもたらしたのは「医療機関で提供される治療や薬は無条件に信頼できる」という、私たちの思考停止に対する警告だ。「製薬会社も利益を出すための“資本主義の理論で動いている”ことを覚えていてほしい。食品の添加物や原産地をチェックするような気持ちで、どの薬をなんのためにのむのか、そして本当に必要なのかを考えることが、自分の身を守り健康を保ついちばんの方法です」(鳥集さん)

 良薬にするかリスクにするかは、選び方次第だ。

エナジードリンクは子供が飲んでも大丈夫?「海外基準でも、子供が1日1本は過剰気味」

「気持ちよい爽快感」「ゾクゾク感」など、不思議なキャッチコピーが多いエナジードリンク。薬ではなく食品なので「疲れた時に」など効果を表示できないからだ。

薬じゃないなら子供が飲んでも大丈夫なのか? 答えはNoで、大量のカフェインが含まれている製品が多い。不眠やめまいの原因となり、海外では量を制限している国もあるぐらいだから子供も大人も飲み過ぎには注意だ。

■エナジーの正体はカフェイン?

滋養強壮系のドリンク剤は薬として作られているため、基本は薬局で販売すべきものだが、効果もリスクもマイルドな製品は指定医薬部外品とされ、スーパーやコンビニでも購入できる。対してエナジードリンクは食品で、清涼飲料水に区分される。

清涼飲料水の定義は、

・乳酸菌飲料、乳および乳製品を除く

・アルコール1%未満

で、菌や金属などの有害な成分が含まれていなければ、医薬品のような厳しい制約はない。炭酸が含まれていると炭酸飲料、果実が入っているものは果実飲料と表示されるが、これらはすべて清涼飲料水=食品のグループなのだ。

味や香りづけはもちろんのこと、ビタミンやアミノ酸など、いわゆる栄養成分も添加できるので、ドリンク剤との違いが分かりにくい。そこで3種類のエナジードリンクを購入し、原材料名や栄養成分表示を確認したところ、すべての製品にビタミンとカフェインが、一部の製品にはアルギニンやロイシンのようなアミノ酸も含まれ、もはや薬品顔負けだ。

共通して含まれるカフェインには心拍数が上がる、解熱鎮痛などの効果があり、医薬品としても使われている。社団法人全日本コーヒー協会の資料から、身近な飲み物100ml(ミリ・リットル)に、およそ何mg(ミリ・グラム)のカフェインが含まれているかをあげると、

・コーラ飲料 … 10~13mg

・煎茶/ウーロン茶 … 20mg

・紅茶 … 30mg

・コーヒー … 60mg

・玉露 … 160mg

で、標準的なカップ1杯・180mlのコーヒーには108mgのカフェインが含まれる計算となる。

■劇薬だけど食品にはOK?

エナジードリンクにはどれくらいのカフェインが含まれているのか? 同様に100ml中のカフェインmg、1本飲んだ際のカフェイン量をあげると、

・製品A … 43.2mg / 79.92mg

・製品B … 40mg / 142mg

・製品C … 32mg / 80mg

で、平均するとコーヒー1杯程度といえる。製品Bがズバ抜けて多いのは、355mlと量が多いからだ。

カフェインは健康に悪いのか? 答えは「日本では不明」としか表現できない。薬品としては劇薬扱いなのに、食品には規制がないからだ。

眠け覚ましに飲まれるのは、興奮や心拍数の増加が起きるためで、過剰摂取すると不安や不眠につながる。また、肝機能が低下しているひとは、高血圧や骨粗しょう症のリスクが高まる例もあるので、少なくともヘルシーとは言い難い。

食品に含まれるカフェインの基準/規制をおこなっている国もあるが、日本には存在しない。海外の例をあげると、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関では、子供は一日95mg、成人は210mgを超えると不安作用が現れると記されている。

また、カナダ保険省やオーストリア保険・食品安全局は10~12歳の子供は最大85mgまでと定めている。85~95のあいだを取って90mgが子供の許容範囲とすると、製品Bは明らかに過剰摂取だ。製品A/CでもギリギリOKな状態だから、毎日飲むのは避けるべきだ。

厳密には、飲むひとの体重によって量が違い、重いひとほど許容量は増える。体格の小さい日本人になら、海外基準の7~8割ぐらいと考えるのが妥当だろう。

■まとめ

・エナジードリンクはジュースと同じ清涼飲料水

・コーヒー並にカフェインが多い

・薬のカフェインは劇薬扱いだが、日本では食品への規制がない

・海外基準でも、子供が1日1本は過剰気味

平均してコーヒー並なら、エナジードリンクが危険とは言い難い。だが毎日ガブガブ飲んでいると、子供はもちろん大人でさえカフェインの摂り過ぎにつながるので注意しよう。

機長を殺害したハイジャック犯にみる薬の副作用と刑事責任能力

万能薬の「ハッピードラッグ」その思わぬ副作用とあの刺殺事件 から続く

  1999年7月、日本を震撼させた全日空機ハイジャック機長刺殺事件が起きた。犯人の精神鑑定を行うにつれて、ある薬の存在が浮かび上がってきた。

 裁判を傍聴したジャーナリスト・青沼陽一郎氏の著書『 私が見た21の死刑判決 』(文春新書)から一部を抜粋して紹介する。(全2回中の2回目。 前編 を読む)

◆◆◆

 そうかと思うと、念願だった航空機の操縦には、機長のアドバイスが必要だと二人きりになったはずなのに、何の前触れもなくその相手に斬り付けている。ハイジャック犯が、ひとりで操縦桿を握って517名を乗せたジャンボ機が墜落の危機に直面したとき、乗り合わせていた別の機長操縦士と追い出されていた副操縦士が操縦室に押し込み、犯人を取り押さえて航空機を奪還。羽田に引き返すことができたのだった。

「用意周到な犯行計画」と「あまりに短絡的な犯行態様」
 このあたりの複雑な事件経過やその後の裁判の詳細については、拙著『裁判員Xの悲劇 最後に裁かれるのは誰か』に収録してあるので、詳しく知りたければ、是非そちらをお読みいただきたいが、ここでどうしても合理的に説明ができなかったのが、被告人の中に同居する用意周到な計画的犯行の一面と、あまりに短絡的な犯行態様の相反する部分だった。

 このハイジャック犯を犯行直前まで診療していた専門科医は、当時の彼の病状を極度のうつと診断していた。ところが、犯行後に証人として呼び出された法廷の場では、統合失調症であると証言。むしろ、こんな犯行を犯したことで、その病状が証明できたとまで言ってのけたのだ。

 かつては「精神分裂病」と称された統合失調症による心神喪失もしくは心神耗弱ともなれば、刑事責任能力が問えなくなり、無罪もしくは減刑の対象となる。

 では、そんな状態の人間が、たったひとりでジャンボ機を一機まんまと奪ってしまうことができるだろうか。それも、空港警備の盲点を突いた上での犯行である。

 このハイジャック犯については逮捕後、鑑定留置の措置がとられ、簡易鑑定が実施されている。その結果、「人格異常」は認められるものの、「精神疾患」とまでは言えず、刑事責任能力は問える、と判断された。それを受けて起訴され、裁判となった次第だ。

浮かび上がった副作用の存在
 だから、この時点でもう診断結果が、真っ二つに分かれていたのだ。

 法廷でも、緊張のあまりか、ぎこちない態度と溜息混じりの証言をして見せる被告人。

 裁判所では、審理を中断して、精神鑑定を実施した。

 ところが、ここでの鑑定においては、また別の診断結果がでたのだ。

 アスペルガー症候群──。簡単に言ってしまえば、自閉症と同様の発達障害の一種と診断したのだ。しかも、鑑定主文の被告人の刑事責任能力の有無については、白紙で提出。

「犯罪者のしかるべき精神治療施設の整わない現制度下において、刑事責任能力については言及したくない」

 と持論を展開して、ますます法廷を混乱させるばかりだった。

 それにしても、自閉症の人間が堂々とハイジャックまで引き起こすものだろうか?

 そこで納得のいかない裁判所は、再度、審理を中断させて、鑑定を実施する。

 その結果、浮かび上がってきたのが、抗うつ剤SSRIの副作用だった。

 犯行直前までハイジャック犯を診療していた医師というのが、実は、複数の自著を持つほどの日本におけるSSRIの信奉者だったのだ。だから、重度のうつ状態と診断していた同医師は、国内未承認だったSSRIを医師の責任における処方によって、このハイジャック犯に服用させていたのである。

 この薬を服用していたことによって、「躁とうつの混ざった混合状態」が生じ、「犯行時の精神状態は、事物の理非善悪を弁識する能力が著しく減退していた」と判断されたのだ。

 こうした状態によって、いわば副作用的に攻撃性が増したり、自殺念慮が高まるとする報告は、すでにこの時点でアメリカでは相次いでいた。そのことは、既にハイジャック犯の弁護人によって主張され、証拠もいくつか提示されていた。

死刑とクスリ
 たとえば、米国同時多発テロを題材にした『華氏911』で世界的に有名となった映画監督マイケル・ムーアが、その前作『ボウリング・フォー・コロンバイン』で取り上げた、コロラド州リトルトンで発生した高校銃乱射事件(99年)の首謀者がやはりSSRIを服用していたことが、ワシントン・ポストによって報じられている。

 それ以前には、94年にはニューヨークで爆弾を仕掛けて48人に重軽傷を負わせた男性もやはり同剤を服用していたことが報告されている。

 89年には、SSRIを服用中の47歳の男性が職場で銃を乱射し、8人を殺害した上に自殺した事件が発生していた。

 この日本版が、すなわち全日空機ハイジャック機長刺殺事件ということになる。

 判決でも、この鑑定結果が採用されて、減刑の対象となった。すなわち、本来ならば死刑であるべきはずのところを、SSRIによって刑事責任能力に欠ける状態にあったとして、無期懲役の判決が言い渡されたのである。

 もっとも、検察側も躁鬱の入り交じった状態であったことを認めて、最初から死刑の求刑を避けていた。

 従って、死刑相当事犯であることを認めながらも、薬の副作用を認めて減刑対象とした判決は、弁護側、検察側の双方がまるくおさまる結果となった。

 法廷でも、大袈裟な芝居をしているようにしか見えない緊張状態にあった──もっと端的にいえば、普通の人の言動からはかけ離れたところのあった被告人にとっても、治療に専念できる機会を与えられたことになる。

 この判決が、SSRIと犯罪の因果関係を認めた最初であり、死刑の回避の理由となっている。

 その当時、ぼくは週刊誌上でこの判決が下った意味の大きさについて触れていた。クスリのいわば副作用で、人を傷つける大事件を起こす事例を司法が判断しているのだ。その服用者の数からして、隣を歩いていた人間が、いつなんどき、通行中の人間を襲うような通り魔に変質することだって、考えられる事態だったのだ。

 それが、今ごろになってお役所が騒ぎだすところが、不思議でならない。

 死刑が回避されるほどの重大事件を、個人の刑事責任が問えなくなるほどの事例を、みすみす見逃してきている。

 それだけ司法の死刑判断と、国民の健康維持や生活安全とは、別世界のことだったのだ。

どの鑑定を採用するのか
 このハイジャック犯の死刑回避判決の要となったように、いくとおりもの鑑定結果がでてきて、どれを判決に採用するのか、しないのか、の判断もすべて一般素人の裁判員に任せられることになる。

 裁判員の対象事件となる刑事被告人の多くがSSRIの服用歴があったところで、これを裁く裁判員にだって同剤の服用者がいることもあり得る。そんな裁判員が、自分の常用薬の副作用を理由に死刑回避を認められるものだろうか。

 まして、大阪池田小学校児童殺傷事件の宅間守死刑囚にも服用が認められたところで、彼には既に死刑が執行されている。

 死刑と鑑定、それに精神衛生と無差別殺人の話がでてきたところで、ぼくの見たもうひとりの死刑判決者について触れておきたい。

(青沼 陽一郎/文春新書)

清涼飲料水の過剰摂取は危険? 突然発症する「ペットボトル症候群」とは

サニーヘルスはこのほど、ダイエット情報発信サイト「microdiet.net」にて、調査レポート「夏の水分補給に要注意! 突然発症するペットボトル症候群」を公開した。

「ペットボトル症候群」は、ジュースや甘い炭酸飲料、スポーツドリンク、缶コーヒーなど、糖分の入った清涼飲料水を多く摂取することで発症する病気のこと。正しくは「ソフトドリンク(清涼飲料水)ケトーシス」と呼ばれている。糖分の摂(と)り過ぎにより体が糖を正常に代謝できなくなる「糖尿病性ケトアシドーシス」という急性代謝失調で、突然発症するという。

のどが渇いた際に水やお茶ではなくソフトドリンクを飲むと、飲料中の糖質によって血糖値が上がる。ジュースや炭酸飲料には多量の糖分が含まれており、コーラなら500mlのペットボトル1本で角砂糖約15個分、スポーツドリンクも、角砂糖9個分程度の糖分が含まれている。

血糖値が上がるとのどが渇くため、さらにソフトドリンクを飲んでしまい、高血糖を引き起こすという悪循環になる。そして、血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンが不足しその働きが低下。糖の代謝がうまくいかず余計に血糖値が上がってしまうという。

糖質の代謝が滞ると体はエネルギー源を他に求めるようになり、体内のタンパク質や体脂肪を燃やし始める。この時に大量に産生される「ケトン体」という物質が増えると血液が酸性に傾き、ペットボトル症候群の諸症状が現れる。

症状としては、倦怠(けんたい)感、イライラ、のどの渇き、多尿、吐き気など。重篤な場合は命に関わることもあるという。若年の2型糖尿病の人が発症しやすく、10~30代の男性が圧倒的に多いとのこと。

糖尿病と診断されていない人でも、日常的に清涼飲料水をよく飲む人、水分補給時に水代わりにジュースやコーラを大量に飲むような人は発症しやすいという。糖尿病をはじめとする生活習慣病の傾向がある人に発症することが多いが、小さい子供でも発症する場合があるとのこと。

厚生労働省が発表している生活指針によると、1日の砂糖摂取量は40~50g。しかし、多くのソフトドリンクは、500mlのペットボトル1本でこの量に届きそうなほど糖分が含まれている。同サイトでは、ペットボトル症候群を防ぐためには、日常的な飲み物は水やお茶にし、糖分を含む飲料を飲むのであれば時々にすることをすすめている。

また、糖分を過剰摂取することで発症するため、飲み物だけにとどまらず、アイスクリームや果物の缶詰など、糖質の高い食品の摂取にも気を付けたほうがよいとのこと。

「コーヒーは健康・美容・長寿にいい万能薬」と近藤誠医師

多くの人が良いと思って実践している、あんな健康法やこんな健康法。しかしそれは、体に良いどころか、むしろ逆効果になってるかもしれない。 『先生、医者代減らすと寿命が延びるって本当ですか?』を上梓した近藤誠医師に、健康法の知識を教えてもらった。

かつてコーヒーは、「がんになる」「シミを増やす」などといわれていたが、現在は、それらの説が次々と覆されている。

「国立がん研究センターを中心とする研究班は、40~69才の男女9万人を10年間追跡調査して、『1日に5杯以上コーヒーを飲む人の肝臓がんの発症率は、飲まない人の4分の1』と発表しました。 

がんで日本女性の死亡率がもっとも高いのは、大腸がんです。岐阜大学グループによると、コーヒーを飲まない人と1日1杯以上飲む人を比較したところ、後者の女性の大腸がん発症率が半分以下に抑えられているとわかりました」(近藤医師)

 コーヒーとシミの関係を調査したのは、お茶の水女子大学。「30~60代の女性のシミを、お肌の奥に潜んでいる予備軍まで測定し、コーヒーを飲む量や日頃の生活習慣で比較。するとなんと、『コーヒーをたくさん飲む人ほど、シミの量が少ない』と、判明したのです。

 スウェーデンとフィンランドの合同チームの20年以上にわたる調査では、中高年でコーヒーを1日3〜5杯飲んでいたグループだけが、高齢になった時にアルツハイマー病や認知症を発症するリスクが65%も低かったと報告されています。紅茶では、その差がみられませんでした。これらのデータから、『コーヒーは健康・美容・長寿にいい万能薬』といえるでしょう」(近藤医師)

コーヒー or ジュース?「朝一番」に飲むべきドリンクとは

あなたは朝起きて一番に、何を飲みますか?眠気覚ましにコーヒーでしょうか?それとも健康的にトマトジュース?ダイエットを意識して白湯?ドリンクには、それぞれ1日のうちで飲むべきタイミングがあります。朝に飲むべきドリンク、そして朝に飲まないほうがいいドリンクをご紹介します。

コーヒーのカフェインは朝一番には危険!
コーヒーを始め、紅茶や緑茶などカフェインを多く含む飲み物を朝一番に飲む方は多いかと思います。カフェインは確かに眠気覚ましに効果を発揮しますので、朝一番に飲むべきだというイメージがたりすよね。しかし、これは間違い!朝目覚めた時はコルチゾールという脳を覚醒させるホルモンが一番分泌されています。

すでに覚醒されている体にさらにカフェインを摂取すると、カフェインへの耐性が高くなりカフェインが効きにくい体になってしまいます。そして、余計にカフェインを欲してしまうことにも。コーヒーやカフェインを含むお茶は朝一番には飲まず、起床後1時間以上経ってからがよいでしょう。

晴れた朝のオレンジジュースはNG!
目覚めたての乾いた喉に、酸味のあるオレンジジュースやグレープフルーツジュースは美味しいですよね。体がシャキッと目覚めるドリンクです。しかし、柑橘類の果物にはソラレンという物質が含まれています。ソラレンを摂ると体は紫外線を吸収しやすくなり、日焼けやシミの原因となる可能性があります。晴れていて紫外線が強い日に外出する場合は、朝一番で柑橘系果物のドリンクを飲むのは避けたいですね。

朝一番の白湯で代謝アップ!
朝一番にぜひ飲んで頂きたいのは、白湯です。朝目覚めた時は1日のうちで最も体温が低くなっています。目覚めてすぐに冷たいドリンクを飲むと、内蔵が冷えてしまい冷え性や代謝低下の原因になります。温かい白湯を少しずつ体に入れてあげることで、内蔵を温めて活性化し代謝がアップ。便秘解消や美肌作りにも効果が期待できます。

朝一番のトマトジュースで紫外線対策
ソラレンを含む柑橘類果物のジュースは朝一番に飲むのはNGですが、トマトジュースならソラレンが含まれていないのでOKです。トマトには強い抗酸化作用で紫外線ダメージから肌を守るリコピンという成分が含まれています。朝一番にジュースが飲みたい場合はトマトジュースがおすすめです。ただし、冷蔵庫から取り出したての冷えたものではなく、常温のものを飲むようにしましょう。

いかがでしょうか?朝一番に飲むべきドリンクは他にも腸を活性化する牛乳、代謝アップや女性ホルモンに似た働きをする豆乳などがあります。ご自身の体調に合わせて、最適な「朝いちドリンク」を選んでみてくださいね♪

サプリメントは本当に効果がある?目的別・サプリの選び方を医学博士が教える

 不足しがちな栄養を補うために摂取するサプリメント。最近では男性でも、美容やダイエットのために購入する人も少なくありません。しかし、その一方で、ネットで若返りや美容をうたった商品のなかには、効果に乏しく、不当に高額なものを売りつけられることもあるようです。

 厚生労働省が2020年7月17日に公表した「2019年 国民生活基礎調査」の結果概況では、保健機能食品、特定保健用食品などを含む「サプリメントのような健康食品」を、2~3割が利用していることが明らかになった。その割合は、男性が21.7%、女性28.3%(入院治療を受けている人を除く。以下の項目はすべて同様)。年齢階級別では、男性は60~69歳が28.1%で最多、女性は50~59歳が37.6%で最多だった。

 若いビジネスマンにはまだ他人事かもしれないが、将来的に知っておいて損はない「サプリメントの選び方」。そもそも本当に効果があるのか?といった素朴な疑問について、健康や肥満に詳しい、一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会理事長の永田孝行氏(医学博士)に聞いた。

サプリメントは本当に効果がある?
 まず、気になるのは「サプリメントは、本当に効果があるのか?」ということだ。この疑問に対して、永田氏は「日常的な体調によって効果の実感度合いは異なる」と語る。

「日々の食事で栄養素不足の予防のために摂っている場合には効果の実感はありませんが、食欲不振や偏食が長引いた時の身体の不調(だるさ・体力低下・胃腸不良など)がある場合は効果が実感できます。

 つまり、毎日の食事が充実していれば一般的な生活(スポーツ栄養は別)ではサプリメントは必要ありませんが、1日単位の栄養が満たされるように食事を摂り続けることは難しいので、普段から予防策を兼ねてのサプリメント摂取をおすすめします」

 サプリメントにも一定の効果があることがわかった。しかし、ドラッグストアやコンビニには膨大な種類のサプリメントが売られている。どんなものを選んだらいいのか?

「不足している栄養素や目的に応じた栄養素を適確に摂りたいところですが、一般的にはなかなか選別できないので、おおむねの目処として、ダイエットにはビタミンB群。そして美容にはビタミンC、ビタミンP。健康にはビタミンE、DHA・EPA、クエン酸がよいでしょう。また、デスクワークが多いならビタミンD、精神不安定には鉄・亜鉛、その他を中心に選んでください」

サプリメントで補えると便利な栄養素

つまり目的によって必要なサプリメントは異なるようだ。一方で、栄養素のなかには普段の食生活では摂取しづらいものも存在する。サプリメントで補ったほうがいい栄養素として、永田氏は「日常の食生活で不足しがちなもの」と語る。

「食生活で不足しがちな栄養素としては、ビタミンB群、ビタミンC、オメガ3系脂肪酸(DHA、EPAなど)を中心に摂取してください。ネットで調べるとあれもこれもと摂取量が増えてしまうので、1日で摂る種類は3種程度に抑えます。いずれにしても摂り過ぎは吸収率も低下しやすく、かえって逆効果になることもあるので注意が必要です」

 また、野菜が苦手で、代りにサプリメントを飲んでいる人もいる。代替品としてサプリメントを飲むのも有効な気がするが、永田氏はピシャリとこう否定的に述べる。

「イメージとしては簡単で便利に思いますが、ビタミン類はあくまでも“栄養補助食品”なので食品の代わりにはなりません。野菜には繊維質や酵素も含まれるのである程度は野菜を摂ってから少し栄養を補給する目的としてサプリメントを補うなら有効です」

最低6か月続けられる価格帯のサプリを
 では、医師の目から見て、おすすめ・非おすすめのサプリメントの企業はどこなのだろうか?

「基本的には毎日続けられる価格帯で選ぶことをおすすめします、非おすすめなサプリメントは高額サプリです。サプリの知識がある人で含有量などを納得できる人なら高額でも選べますが、サプリは薬品ではないので即効性はなく、長期間続けることで効果が現れますので、最低6か月以上は継続するために信頼できる会社を選びます。

 サプリメントの原料は大量仕入れほど単価が安価になるので、製造量が多い大手企業のものを選ぶことで比較的安価で購入できます。ただ、大手でも1粒(1包)あたりの有効含有量が少ないものもあるので必ず成分値を確認してください」

 一方で、サプリメントを固めるために化学物質等(自然ではないもの)を入れている企業もあるが、毎日飲んでいて体に害はないか?

「サプリメントの製造段階では必ず賦形剤と呼ばれる、固めたり、流動性を良くしたりする成分が含まれます。しかし、これは食品添加物で安全性が認められたものなのでそれほど気にする必要はありません。例えば『自然/ナチュラルサプリ』の表示があっても、赤い色素に使われる原料は『ラックカイガラムシ』という昆虫の分泌物だったりします。もちろん安全な成分ですが、イメージの問題で嫌う人もいます。

 このように詳しく調べると、単独では摂りたくない成分もありますが、サプリメントに含有することで腐敗を防いだり、艶を良くしたり、湿気を防いだり、味や色を良くしたりと添加物にはさまざまなメリットもあります」

使い分けて摂取したい「マルチビタミン」

 最後に、「マルチビタミン」というサプリメントがあるが、曖昧な表現でどう扱っていいのかわからない――。ビタミンC、ビタミンBなど個別のサプリメントを飲むのと、マルチビタミンをどう使い分けたらいいか?を聞いた。

「ビタミンの有効性には配分が重要で単独で複数のビタミンを選ぶと摂取バランスが悪くなることもあります、そのために3種以上のビタミンを組み合わすならマルチビタミンのほうが安心です。ただし、マルチビタミンは含有する種類が多いので、たとえば5種類を均等にすると仮定しても、各20%で、5種で100%となります。ですので、1種類ずつの含有量は少なくなるので、特にビタミンCが必要なら、マルチビタミン+ビタミンCを別途1錠といった摂り方をすすめます。また、特に摂りたい成分があれば、対象サプリ+マルチビタミンもおすすめします」

 あくまで普段の食生活が大事とのことだが、サプリメントにはさまざまなメリットがあることもわかった。選び方や、摂取のポイントを理解したうえで、サプリメントを日常生活にプラスしてみてはどうだろうか。

<取材・文/シルバー井荻>【永田 孝行】
医学博士・健康科学博士。1958年名古屋市生まれ。ACSM(アメリカスポーツ医学会)公認EP-C。健康保険組合や企業を通して社員の健康・保健指導や生活習慣病予防と改善対策における食品の研究開発などを行う。著書に『低インシュリンダイエット』(新星出版社・宝島社など)、『Diet Basic Book』(評言社)など多数

実は漢方薬と同じぐらい大事。漢方医が教える「養生」とは何か

二月に入って寒さが一段と増してきましたね。インフルエンザも流行中とのことで、特に防寒具の装備やうがい等の予防が肝心になります。皆様いかがお過ごしでしょうか?

今回も、日々の生活習慣の見直しだけではなく、実際になにかの症状でお困りの場合に漢方クリニックで治療してもらうにはどうすればよいのか、どのような治療をしてもらえるのか、といったよくある疑問について、実際に漢方クリニックに行くことをイメージしながらお答えしていきたいと思います。

前回は処方してもらった漢方薬を飲んでみるまでの流れをみてきましたが、今回は第5回目で、漢方薬だけではなくて漢方医から教えてもらった生活指導の実践の段階です。

漢方クリニックでは、お薬の処方だけではなく、生活習慣の指導もしてもらえるのでしょうか? 慶應義塾大学教授の渡辺賢治先生にお聞きしました。

「漢方医学では病気になる前に、病気にならないような生活を送ること、そして毎日をイキイキと過ごすことが大事とされています。この考え方を『養生(ようじょう)』といいます。漢方というと『漢方薬の服用』が治療法だと思いますよね?

 でも実は漢方の世界では、漢方薬を飲んでもらうのと同時に養生(生活習慣の改善)がとても重要だと考えられています。ですので、漢方クリニックでは漢方薬の処方だけにとどまらず、生活習慣の改善などの養生指導をしてくれることが多いです」

養生指導ではどのようなことを言われるのでしょうか?

「それは患者さんの状態に合わせて指導するので一概にこれというものはありませんが、大きく食事、運動、睡眠について言及されることがあると思います」

食事というと薬膳料理のことを指すのでしょうか?

「もちろん薬膳の考え方がベースとなりますが、食べたものが私たちの体を作るので、食事に気をつけることは養生の基本です。1日の食事の回数や食事の時間が不規則であるか、バランスの良い食事を取っているか、よく噛んで食事をしているか、など普段の食生活を見つめ直し、心と体に良い食事をするようにしましょう。

また、体の状態にあわせて、体を温める食べ物を食べる、体を冷やす食べ物を食べる、血を補う食べ物を食べる、という風に薬膳の考え方を食事に取り入れるとなおよいですね」

なるほど。運動や睡眠についても指導してもらえるなんて驚きです。

「そうですね、それは通常の西洋医学のクリニックに比べて漢方クリニックの大きな特徴の一つと言えるでしょう。運動は健康に良いと昔からよく言われていますが、実際、運動をすると、筋肉が動いて姿勢がよくなる、熱が体から生まれやすくなる、生活習慣病を予防してくれる、心がスッキリする、疲れにくくなる、などの効果が得られるとされています。

運動といっても激しい運動やジム通いをする必要はなく、階段を上る、ストレッチをする、ウォーキングをするなど、普段の生活の延長線上で十分に効果を得ることができちゃいますので、自分のできることから少しずつ増やすようにしましょう。

また、十分な睡眠をとることは養生の1つとされており、十分な睡眠をとることで1日の疲れを取るだけでなく、明日への活力を得ることが期待できます。

睡眠の質に悪影響を与える要因を取り除き、睡眠環境を整え、質の高い睡眠を得られるようにすると良いです」

そうなんですね。言われてみるとたしかに納得の部分が多いですが、どうしても漢方クリニックに行くとなると漢方薬での治療を期待してしまいます。

「はい、その気持ちはごもっともなのですが、漢方医学では漢方薬は崩れた身体のバランスを一時的に戻すためのものと考えます。

もし病の根本原因である生活習慣の改善をしないと、しばらくして漢方薬の服用をやめれば元の状態に戻ってしまいます。それゆえ、漢方薬を飲んでもらうのと同時に養生(生活習慣の改善)がとても重要だと考えられています」

漢方薬ではなく生活習慣の改善も実践することで体全体を見直し、治療につなげる。これが漢方医学の真骨頂ということですね。

次回は初診後しばらく処方してもらった漢方薬を飲み、生活習慣の改善にも取り組んだ後、二回目のクリニックへ行くタイミングについて取り上げたいと思います。

炭酸水は身体に良い?悪い? 健康への影響とメリット&デメリット

炭酸水は食欲増進を招き、体重の増加を引き起こす

「炭酸水を飲むと太る」は本当? 専門家に聞いてみた

水は一日1.5~2リットル飲むべし

炭酸水は骨にいい?

炭酸水は便秘や消化不良の解消にも効果的

炭酸水の飲みすぎには注意

炭酸水のデメリットとは?

猛暑に急増するペットボトル症候群 清涼飲料水のとり過ぎによる急性糖尿病に要注意

暑い夏は「ペットボトル症候群」に要注意。飲むなら、水やお茶がおすすめ!

 例年とは違い、マスク着用がエチケットとなった今年の夏。マスクをしていると、のどの渇きが分かりにくいため、水分補給が遅れるといわれています。ですから熱中症対策のためには、こまめに水分を取ることが重要です。しかし、気をつけたいのは水分の取り方。一つ間違えると「ペットボトル症候群」を引き起こすことがあります。正式名は「ソフトドリンク(清涼飲料水)ケトーシス」といいます。


■暑い日は要注意?  「暑い日は汗も出やすく、のども乾いて、自動販売機を見つけては冷たい飲み物をつい買ってしまう」という声が少なくありません。その時、どんな飲み物を買うかが問題です。スポーツドリンクやジュース、炭酸飲料などの清涼飲料水をよく飲むという人は「ペットボトル症候群」に注意してください。  というのも、スポーツドリンクや清涼飲料水には通常100mlあたり5g~10g前後の糖分が含まれているものが多いといわれています。


角砂糖は1個約4g。もし、1リットル飲めば、角砂糖を10数個から25個を食べているようなものです。軽い気持ちで飲んでいるうちに、予想以上に糖分を取ってしまう危険性があるのです。  そこで、スポーツドリンクや清涼飲料水を飲む時は成分表もチェックしてください。カロリーオーバーにならないように、甘味料を使ったゼロカロリーやカロリーオフのものを選ぶのも一つの選択肢かもしれません。


■発症すれば、どうなるの?  暑いからといって1日に数リットル近い清涼飲料水を飲めば、たくさんの糖が一気に体に入り、一時的にインスリン不足に陥り、血糖値が急上昇します。血糖値が上がるとノドが異常に乾き、さらにガブ飲みしたりすれば、さらに血糖値が上がり、悪循環に陥ります。トイレの回数が増え、急性糖尿病の症状が現れることがあります。ひどい場合は意識がもうろうとし、激痩せすることもあります。  このようなペットボトル症候群は20代、30代に多く、近年は40代以上の中高年にも増えています。


■予防するには?  予防法は、糖分の多い清涼飲料水のガブ飲みは避けることです。しかし、水分補給は重要なので、水やお茶など糖分のないものを積極的に飲むように心掛けたいですね。暑い夏場は口当たりのいい冷たくて美味しいジュースやアイスクリームなどを食べたくなる気持ちはわかります。しかし、健康のことを考えて、ほどほどにしましょう。


◆尾原 徹司 東京医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センターを経て、神戸鐘紡病院消化器科に赴任。昭和57(1982)年に独立し、医療法人社団つかさ会「尾原病院」(神戸市須磨区妙法寺荒打/神戸市営地下鉄西神山手線妙法寺駅徒歩3分)院長に。

1日にレモン50個分?「ビタミンC」の適切な量と撮り方を栄養学のプロに聞いてみた

◆ビタミンCの効果とは……不足すると壊血病の原因にも

栄養学の教科書的には「皮膚や細胞のコラーゲンを合成するのに必要」という言い方になりますが、ビタミンCが不足するとコラーゲンが合成できなくなるため、血管がもろくなり、出血しやすくなります。これが続くと、壊血病になり疲労倦怠、いらいら、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などの症状が出ます。

また、ビタミンCは強い抗酸化作用を持っているので、ビタミンEと協力して活性酸素を消去し、細胞を保護する役割もあります。

◆1日にレモン50個も必要!? ビタミンCの適切な摂取量
日本人の1日に必要なエネルギーや栄養素量を示した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、ビタミンCの必要量(推奨量)は一般成人で1日100mgです。喫煙者(受動喫煙者も含む)の場合は、非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高く、推奨される量よりも多めに摂ることが望ましいとされています。

1日100mgとありますが、6~12mg摂取していれば壊血病は発症しないとされています。また、ビタミンCは水溶性ビタミンなので過剰摂取(1日100mg以上)した分は尿中に排泄されます。体内のビタミンCは飽和状態にしておくほうがよいという意見もありますが、それでも1日100mgを摂れば飽和状態を維持できるといわれています。

一方で、レモン50個分のビタミンCはどれくらいかというと、約1000mg。食品メーカーでは各社の規格を統一するために、「レモン果実1個当たりのビタミンC量として20mg」を基準として計算をしています。レモン50個分のビタミンCは、1日に必要なビタミンCの10倍だということが分かります。

少し話しは逸れますが、マルチビタミン剤を飲んだ後、トイレへ行くと尿が普段よりも黄色っぽいと感じたことはないでしょうか。これはビタミンB2は蛍光カラーを持っているため、吸収しきれなかったビタミンB2が体内を通過して尿中に排泄されている色なのです。

ビタミンCは水に溶けると無色透明なため、ビタミンCが含まれていることで尿の色が変わることはありませんが、過剰に摂取すれば同様のことは起こっています。せっかく飲んでも尿中に出てしまうのではあまり意味がないですよね。

◆ビタミンCの過剰摂取リスク・注意すべきポイント
ビタミンCは水溶性のビタミンなので、基本的には体内に蓄積させることはできません。余剰分は尿中に排泄されるといわれています。そのため、今のところ過剰に摂取しても健康障害が起こったという報告はありません。

ただし、腎機能障害のある人が数千mg単位のビタミンCを摂取した場合、腎シュウ酸結石のリスクが高まることが知られています。また、過剰摂取の影響として、吐き気、下痢、腹痛といった胃腸症状が出ることがあるとされています。1日3000~4000mgを摂取し続けると下痢になるという報告もあります。

ですが、基本的に1日400mgを摂取すれば体内のビタミンCは飽和状態になるといわれていますし、1日100mgを摂れば飽和状態が維持できるといわれています。過剰分が尿中に排泄されてしまうということは、体内をすり抜けて捨ててしまっているのと同じような状態です。

そのため、ビタミンCたっぷりの飲料1本を飲んで、10日分のビタミンCを摂ったと思いたいところでしょうが、その後で食生活をおろそかにすると数日後にはビタミンCは枯渇してしまいます。そう考えると、飲料1本で1000mg。そんなにたくさん摂る必要はないように思います。

先にご紹介した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、「通常の食品以外の食品から1g/日以上のビタミンCを摂取することは推奨できない(p.274)」とされています。もちろん、食品は薬と違い、誤って1g(1000mg)以上のビタミンCを摂取してしまったからといって、いきなり健康を害することはありません。

しかし、私たち人間が昔から継続的に摂っていたのは「天然の食品」だけです。これらから摂れない量のビタミンCが身体に与える影響は未知数です。

◆サプリメントに頼らずビタミンCを食べ物で100mg摂る方法

柑橘系の果物は1回分に食べられる量で100mgを摂ることができます。しかし、ビタミンCは体内に蓄積しておくことができないので、1度に100mgを摂っても尿中に流れていってしまいます。そのため、ビタミンCだけを考えて無理につめこむのではなく、野菜類などを上手に取り入れて、3食の総合計で100mgになるほうが効果的です。

例えば、小松菜であれば1回の小鉢に1/2袋くらいが入るため20mgくらい。白菜は鍋などに入れれば2枚くらいは食べられるため、加熱による損失を加味して10~20mgくらい。ほうれん草なら小鉢1杯で1/2束(50~70g)くらいのため、10~15mgくらいを摂取することができます。

こう考えると、野菜の小鉢を1日5~6品摂ればビタミンCは充足できる計算です。このくらいであれば、さほど目くじらを立てずとも、食べられる量ではないでしょうか。いきなりサプリメントに頼るのではなく、本当に天然の食品で必要な量が確保できないかを考えてみるとよいと思います。

▼平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

果物の果糖で脂肪肝に!? 食べていいフルーツは?

奇跡の55歳!オーガスト・ハーゲスハイマー(栄養科学博士)のアンチエイジングのための食事の科学 

果物はヘルシーというイメージがありますよね。でも果物には果糖という種類の糖がたくさん含まれています。この果糖が実はクセモノなんです。 果糖はブドウ糖と違ってほぼ肝臓で代謝されるため、血糖値を上げないのでヘルシーだ、と言われていたこともありました。 しかし、果糖は摂りすぎると中性脂肪を増やし、肝臓にダメージを与えることがわかってきたのです! 肝臓に直行して代謝される、というのは実はアルコールに近い代謝システムなので、脂肪肝の原因ともなります。体にダメージを与えないためには、一度に摂る果糖の量は15g以下にすべきというのが、いま欧米の研究者が提唱する一般的な基準値です。 果物を食べたいのなら、その基準をもとに果糖の少ないものをなるべく選びましょう。果糖の量とGL値をもとに、オーガスト流の“おすすめフルーツ、OKフルーツ、NGフルーツ”の表を作りましたので参考にしてみてください。

果糖がアメリカ人をデブにした犯人!?

そして、果糖は体脂肪になるだけでなく、体の中をぐるぐる回って、タンパク質である組織をAGEs(終末糖化産物・体内老化に関与する物質)化する原因になることが知られています。その作用がブドウ糖より7倍も強いのです。 7倍ですよ。7倍! 体にはほとんど使われないのに、体脂肪になったり、悪玉物質AGEsをたくさんつくったり、肝臓病を引き起こしたり……ブドウ糖の7倍もダメージを与えるのですから、私に言わせれば、果糖は食べてはいけない栄養素にほかなりません。 ところが、果糖はブドウ糖よりはるかに甘みが強いので、たくさんの食品の甘味料、とくに清涼飲料水の甘味料として使われてしまっているのが現状です。


たとえば、アメリカで肥満が増えた原因のひとつは1970年代に登場した、清涼飲料水に使われる高果糖コーンシロップだと言われています。  コーンシロップはとうもろこしから作った果糖の液体です。砂糖より安価なため、あっという間に普及しました。果糖は前述したように、最強の“デブのもと”です。さらに恐ろしいことに液体になった糖類は固形のものよりはるかに吸収率が高いのです。 液体になった“デブのもと”、もとい果糖が清涼飲料水の甘みに使われた結果、アメリカであんなにも肥満が増えてしまった、というわけです。


あなたも清涼飲料水を選ぶときは、成分表をよく見てください。「高果糖コーンシロップ(異性化糖)」あるいは「果糖」と書いてあったら、注意したほうがいいでしょう。 成分表は含まれる含有量が多い順に表記してありますから、果糖類が先のほうにあったら、それだけ危険な果糖シロップの含有量が多いと判断できます。

スティーブ・ジョブズはフルータリアンだった

ついでにふれておくと、糖分がガンのエサになることも忘れてはなりません。ガン細胞はほかの細胞が糖を摂る前に、自分が糖を横取りしてしまいます。そのために、特殊な血管をつくって、自分のところに糖分を回し、それをエサにしてどんどん増えていきます。 とくに、果糖は膵臓ガンが大好きなエサだといわれています。研究でわかっているのは、膵臓ガンのガン細胞に果糖を与えると、非常に速く増えることです。 膵臓ガンで亡くなったアップルの創始者スティーブ・ジョブズが一時期、熱心なフルータリアン(果物しか食べない人)だったことは、偶然ではないでしょう。 甘いものや果物を食べたり、清涼飲料水を飲む前に、「これはガンにエサをやっているのではないか」と考えれば、少しは甘いものを控える気になるのではないでしょうか。


オーガスト・ハーゲスハイマー 栄養科学博士。1962年福島県猪苗代生まれ。 サンディエゴ州立大学で医学を学ぶ。長年の研究から「人間の身体は自然の力で回復できる」という結論に達し、株式会社アビオスを設立。環境と健康を念頭に、無添加、無農薬にこだわる美容健康補助食品事業を行い、ココナッツオイルなどのスーパーフードを自社製品ブランドとして開発。 また、オーガニックエステティックサロンのスキンケアラインのプロデュース、レストランのアンチエイジングメニューの監修を手がけ、テレビ、雑誌、セミナーなどでも活躍。著書『老けない人はやめている』『オーガスト流 30日で体が10歳若返る食事』(ともに講談社)他著書多数。

サプリと市販薬の組合わせNG例、ウコン・DHA・プロポリス他

健康のためにサプリメントを日常的にのんでいるという人も多いだろう。そして、同時に頭痛や肩こりといった日常的に起こる症状を和らげるために、市販薬をのんでいる人も多いはず。しかし、何の気なしに市販薬とサプリメントを同時に服用することで、まさかの副作用を起こすこともあるのだ。

 そこで、市販薬とサプリメント・健康食品の代表的な「危険な組み合わせ」を紹介する。

※監修/生田哲さん(薬学博士、米カリフォルニア大学など海外の研究機関で生命科学の研究にあたる)

◆『解熱鎮痛剤』と組み合わせると危険なサプリメント・健康食品

【EPA】
アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった、血液をサラサラにする成分を含んだ解熱剤は、血液を固まりにくくする作用のあるEPAとのみ合わせると、効果が強まって、内出血などを起こしやすくなる。

【DHA】
 EPA同様、DHAには血液を固まりにくくする作用が。アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった、血液をサラサラにする成分を含んだ解熱剤と併用すると、効果が強まり、内出血などを起こしやすくなる。

【マグネシウム】
 血液をサラサラにする効果がある成分含有の解熱鎮痛剤と、血流を促進させるマグネシウムを併用すると、出血しやすくなる。軽い打撲でもひどい青あざができることがある。

【イチョウ葉エキス】
 イチョウ葉エキスにはフラボノイドなどが含まれ、血を固まりにくくする。アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった成分を含む解熱鎮痛剤にも同様の作用があり、血流がよくなりすぎてしまい、止血しづらくなる。

【ノコギリヤシ】
 ノコギリヤシは、血流を改善して前立腺肥大にも効果があると謳われている。血液を固まりにくくする作用のあるアスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンと一緒にのむと、効果が増強して出血リスクを高めてしまう。

【プロポリス】
 抗酸化作用や糖尿病予防などによいとされるプロポリスは、肝臓で薬が代謝されるのを阻害する可能性が。また、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの副作用である胃腸障害、発疹などを増強する恐れもある。

【グルコサミン】
 軟骨のすり減りを抑えて関節の動きを滑らかにし、関節痛を改善する効果が期待されるグルコサミンだが、アセトアミノフェン配合の解熱鎮痛剤と一緒に摂取すると、効果が弱まることがある。

◆『肩こり改善の市販薬』と組み合わせると危険なサプリメント・健康食品

『ウコン』
 筋肉の緊張を緩める作用のあるクロルゾキサゾンは、ウコンと併用すると、吐き気や体温低下などの副作用が起こる可能性がある。

皮膚科専門医が使う市販のオススメ薬、その具体名

ドラッグストアで売られているたくさんの市販薬。どれをのめばいいのか、わからないという人も多いのではないだろうか。そこで、病のことならその専門家に聞けばいい──ということで、乾燥が激しいこの季節に知りたい、専門医が実際に使っている薬を聞いてみた。

 市販の口唇ヘルペス治療薬『アラセナS』を患者にすすめていると話すのは、皮膚科医の土屋佳奈さんだ。

「クリニックでは、保険の関係で口唇ヘルペスの内服薬と外用薬を同時に処方することができません。ですので、内服薬を処方した時は、外用薬として市販薬の『アラセナS』をすすめています。

 クリニックで処方するアラセナ軟膏と成分が一緒で、よく効くんです。あまり症状が悪くなっていない、かつ病院をすぐに受診できない時には、ドラッグストアでこれを購入して塗るといい」

 冬はとりわけ肌の乾燥が気になる季節だ。はじめはただの乾燥であっても、悪化すれば炎症やひび割れにもつながる。同じく皮膚科医の宇井千穂さんは、乾燥対策に『プロペト』と呼ばれる白色ワセリンを使用しているという。

「原料の軟膏は、美容液やクリームよりも保湿力が高いので、乾燥肌の人におすすめしています。ですが、万人に効果があるわけではありません。アトピーなど敏感肌の場合、かぶれるかたもいるので、注意が必要です。これはどの医薬品や化粧品にもいえることですが、新しいものを試す時は少量ずつ使って様子を見てほしい」

 ぜひ専門家のアドバイスをもとに市販薬を選んでほしい。前出・皮膚科医の土屋さんはこう付け加える。

「市販薬にはさまざまな成分が混合されていることも少なくなく、その分、かぶれの症状が出やすくなります。また、パッケージに“無添加”“オーガニック”“体に優しい”などと書いてあっても、必ずしも肌や体にいいわけではありません。

 どんな成分がどのくらい入っているかをしっかり見ることが大切。普段処方されている薬の成分と同じだったら買う、というルールを作るのもいいでしょう」

 専門医の言葉を参考に、正しく選び、正しく服用すれば、いざという時の強い味方になってくれそうだ。

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