初対面の人に会うとき、人前でプレゼンをするとき。緊張してガクガク、失敗…という経験はないだろうか。緊張すると全力を発揮できず、伝えたかったことを十分に伝えられないなど、後悔にさいなまれるもの。「実は、緊張に弱いタイプの脳があるのです」と公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんは言う。
緊張しやすい脳とは? 前回(「脳をダマして緊張を克服 不安を『外在化』する方法」)に引き続き、脳をだまして緊張を克服するテクニックを篠原さんに聞く。
■「わくわく」することでネガティブな不安を解消
――前回は「不安を書き出す」「キャラに乗せる」という2つの方法をご紹介いただきました。この他にも、なにか対処法はあるのでしょうか。
篠原さん 「不安を興奮として再評価すると、パフォーマンスが向上する」こともわかっています。前回、「プレゼン怖い」と不安にフォーカスしたのとはまったく反対のアプローチです。
対処法3 ドーパミン系を活性化させるセルフトーク「私は興奮している!」
不安な状態だと心臓がドキドキしますね。それを「私は興奮している…わくわくしている…」と言い直すんです。それだけでネガティブな不安がポジティブな興奮に置き換わり、実際にパフォーマンスが向上したという報告があります。あるいは、命令形にアレンジして「興奮しなさい、わくわくしなさい」という方法でも有効です。
――脳ってダマされやすい側面があるのですね。ドキドキする心拍を「うおー、興奮している」と受け止められれば、よっしゃ、と思えそうです。
篠原さん 外在化は効果的ですよ。前回説明した「キャラに乗せて不安を言葉にする」というのは、不安や緊張を自分の人格と一体化させてしまうとコントロールしにくくなるからです。キャラに乗せてみると、それを観察する目が生まれます。観察できれば、コントロールが可能になるのです。
対処法4 「緊張くん」を観察し、エサ探し&苦手探し
たとえば、こんな考え方はどうでしょう。プレゼンに失敗するのは自分の中に複数いるキャラの一つの「緊張くん」が邪魔するからだ。緊張くんはいつも元気なわけじゃない、エサになるのは「緊張」だ。緊張すると緊張くんはやたらと強くなる。ならば緊張くんが苦手なものもあるはず、と観察するのです。
とにかくよく眠っておくと、緊張くんは元気がなくなるかもしれません。身近な人に褒めてもらう、終わった夜にとっておきのウイスキーを飲む、などのご褒美があると緊張くんは弱くなり、反対に、元気に話せる「元気くん」が育つかもしれません。
実際に、引きこもりの人などのカウンセリングの場ではこういう宿題を出すのです。「これから2週間の間に、緊張くんのエサになるもの、苦手とするものを書き出しましょう。ただ書き出すだけでいいですよ」、というふうに。すると、自らの人格からは分離できるので、感情のコントロールがしやすくなるのです。不安を「キャラ化」して観察するだけで苦しい状況を乗り越えられることもあります。
■「緊張しやすい人でも本番に強い」人の秘密とは?
――今回教えていただいた「緊張対策」は、どれもすぐにでも始められそうです。
篠原さん 最後にお伝えしたいのは、「緊張しやすい人でも本番に強い人はいる」ということです。
その人たちは何をして「本番に強くなった」のか。自分は緊張しやすいことを知っていて、準備をするのです。
試験前に模擬試験は受けておこうよ、というのと同じ話です。緊張しやすい学生だって、模試を3~4回受ければ慣れてくるものです。慣れていない現場では緊張をするし、パフォーマンスも落ちるもの。それを計算に入れて練習しておけばいい。
そのためには、「ストレスがかかった状態でもパフォーマンスを上げられるような練習」をする必要があります。ピアノの発表会でうまく弾けなくなるのなら、極端な例かもしれませんが、演奏前に走って心拍数を高めた状態でピアノが弾けるか試してみるのだって有効です。
――緊張しているときと同じ身体状況を作るわけですね。
篠原さん ペーパーテストなら、時間を短くしたり、うるさい環境で受けたりするなど、負荷をかける。社長の前でのプレゼンなら、社長の嫌そうな表情の写真を手に入れてそれを横に置きながらプレゼンの練習をする。緊張しやすい「損害回避傾向」のある人たちはそういったトレーニングを行うことで克服しています。不安や緊張も当たり前ながら「慣れ」が生じてきますから、繰り返すうちに慣れて、乗り切れるようになりますよ。
◇ ◇ ◇
次回は、そりの合わない上司、気持ちがすれ違う親子関係など、ネガティブな人間関係の悪循環ループを断ち切る方法について聞く。
(ライター 柳本 操)
篠原菊紀さん:公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。
「頭の回転が速くなる」「誰でも脳の機能が向上しそう」「脳の老化防止に使える」「ゲーム感覚で小学生でも楽しめる」「たとえるなら、脳のストレッチ」「集中力や記憶力が伸びた」などの声が届いた、くり返し楽しんで使える『1分間瞬読ドリル』は、何歳からでも6つの力が飛躍的に伸びます。
間違ってもOK。1分間で与えられた課題を見ていくだけで、「記憶力」「思考力」「判断力」「読解力」「集中力」「発想力」が抜群にあがります。
子どもには、これから必要とされる「考える力」や勉強脳が磨かれ、覚えに不安があるシニアはボケ防止に使える、そして、大人は脳機能を高めていくことができるのです。10歳から100歳まで、誰でも簡単に続けられる『1分間瞬読ドリル』で、脳をよくしていきましょう!
答えがわかった状態で情景をイメージする
今回のドリルも並べ替えですが、今までと違うのは、クイズ形式になっているところです。
例題には、「山で高日本一番いは?」というバラバラの文字群がありますよね。これが問題文です。
この文章を並べ替えて、何を聞かれているかを把握します。正しく並べ替えると「日本で一番高い山は?」ですね。
そこから「富士山」という答えを導き出します。
並べ替えたうえに答えまで出すので、判断力に加え、思考力が身につきます。同時に複数のことを処理できるようにもなるので、勉強や仕事の面でも大いに役立ちます。
1回目は、問題文の並べ替えをしてみてください。例題は比較的やさしいので、並べ替えと同時にすぐに「富士山」という答えまで出せるのではないかと思います。
問題によっては答えがすぐに出てこないような問題や、調べないと答えがわからない問題もあるかもしれませんが、とりあえず並べ替えができれば大丈夫です。目安は1問1秒です。
2回目は、答えまで考えてみるようにしましょう。答えを知らなかったら、解答を見てかまいません。こちらも1問1秒です。
3回目は、答えがわかった状態で情景をイメージします。富士山なら、雪をかぶった様子や、車窓から見た姿など、自分が思いつくものをイメージしてみるのです。1回だけで終わらせずに、何回かやってみることをおすすめします。
そのたびに違うイメージが出せれば、右脳もしっかり働いている証拠です。
問題はいろいろなパターンを織り交ぜています。同じようなパターンが続くと脳はルーティンと認識して慣れてしまうので、あえて違うパターンを入れているのです。そこも脳を刺激するポイントになっています。それでは、次のページの問題を見てすぐに答えましょう!
いかがでしたか? 意表を突いたパターンの問題でしたか? 楽しんでやっていただけたのではないかと思います。
文章の並べ替えがきっちりできなかったかもしれません。それでも、なんとなく何を聞かれているかはわかったのではないでしょうか?
それがわかれば、正解したも同然です。正しい順番にすることよりも、パッと見て意味を把握すること。そちらのほうが大切です。
答えも、正解はありますが、その通りの答えを出さなくてもよいのです。答えもひとつとは限りません。
一番大切なのは、「なんだろう?」と考えること。考える習慣が思考力アップの後押しをするのです。
*本記事は、『1分間瞬読ドリル』から一部抜粋し、再編集したものです。
体をつくるのも動かすのも食事で摂る栄養。心にも大きな影響を与えるに違いない。心を丈夫にする食事法について考えてみよう。折れない心、落ち込みにくく逆境に強い力がレジリエンス。まずは、下のチェックリストを試していただきたい。精神的に疲れているかどうかの確認だ。思い当たることが多い人は、食事を見直してみるいい機会かもしれない。
【脳の疲労チェックリスト】
□ちょっとしたことが思い出せない
□よく眠れない
□憂鬱な気分になる
□体調に不安がある
□働く意欲が起きない
□ささいなことでイラつく
□まぶしくて目がくらむことがある
□ぼーっとすることがある
□集中力が低下している
□寝すぎてしまう
糖質制限という食事法は耳にしたことがあるだろう。多くはダイエットや糖尿病治療として紹介されることが多いが、この食事法、疲れを取り、集中力をアップするのにも効果があるという。新宿溝口クリニックの溝口徹医師にお話をうかがった。
「現代人は明らかに糖質を摂りすぎです。疲れが取れない、寝付きが悪くて起きられないといった症状は糖質過多の可能性が高い。でも、病気とまではいえないので、なかなか食事を改善しようとは思いつかないのです」
朝は駅の立ち食い蕎麦、昼はラーメン+半チャーハン、そして夜は同僚と飲んで食べたあとに〆のラーメンといった食生活は、栄養のバランスも悪ければ、カロリーも高い。しかし、最も注意すべきは炭水化物を中心とした糖質の量だと溝口先生は指摘する。
「糖質制限食は、二型糖尿病の治療として注目されました。カロリー制限をしても改善されない患者に、糖質制限の食事を指導したところ、明らかに効果が見られたのです。アメリカの糖尿病学会も食事指導の中に糖質制限を推奨するように変わってきています」
日本人といえば主食は米。近年は米の消費が減ったとはいえ、代わりに小麦からつくられたパンやパスタ、炭水化物が主食であることに変わりはない。
炭水化物は美味しい。しかも食べると幸福感も湧いてくる。しかし、それが体や心に不調をきたす原因だとは!?
■心に影響する血糖値のアップダウンのメカニズムを知る
私たちが生きていくために必要なエネルギーは、脂質、糖質、たんぱく質の3大栄養素からつくられる。
ざっくりと各栄養素の特徴をおさらいしておくと、通常時の活動の主なエネルギー源は脂質。小腸で吸収されたあと、肝臓を経由することなく全身の細胞に運ばれ、ダイレクトにエネルギー源となる。利用されなかったものは中性脂肪として脂肪細胞に貯蓄される。脂質は、糖質、たんぱく質の2倍以上、と効率のいいエネルギーでもある。
「摂りすぎは注意が必要ですが、脂肪=太る=悪といった単純な考えは間違いです。脂質には細胞膜をつくるという重要な役割もあります」
次に糖質は消化吸収されると、肝臓に運ばれ蓄えられるとともに、その多くは筋肉に貯蔵される。血糖値を調節しているのが肝臓。
血糖値が高くなると糖(グルコース)を肝臓に取り込んでグリコーゲンとして蓄積し、逆に血糖値が低くなるとグルコースを血液中に放出して、血糖値を安定させる。
筋肉に蓄えられたグリコーゲンは、血糖調節にはかかわらず、筋肉を働かせるエネルギーのみに使われる。
「糖質は脂質と較べると、同じ酸素を使ってエネルギーを生み出す場合、10%ほど多くのエネルギーが産生されます。つまり、非常時に瞬発力を出すためのエネルギーです」
3つ目のたんぱく質の本来の役割は骨や筋肉、皮膚や内臓など私たちの体を構成する材料の供給だ。ホルモンや神経伝達物質の重要な材料でもある。エネルギー源としてはやや特殊で、エネルギー需要に対して食事だけでは足りなくなったときに、体のたんぱく質を分解してエネルギーとなる。
「本来、人の体は3分の2を脂肪から、残りを糖質からのエネルギーに依存しているのですが、現代はご飯、パンをはじめ、糖質が主になっています」
食事をして血糖値が上がると膵臓からインスリンが出て細胞のなかに糖を取り込み、血糖値を下げるように働き、逆に低くなるとアドレナリンなどインスリン拮抗ホルモンが働き、血液中に糖が供給され血糖値が上がる。
通常、食事をすると血糖値は緩やかに上がり、その後緩やかに下がり、食後3~4時間後には、空腹時と同じ値になって安定する。
「ところが糖質過多の食事を続けていると、血糖値調整がうまくいかなくなり、少量の糖質を摂っただけでインスリンが大量分泌され、血糖値が低い状態が続くといったことになる。
すると脳へのブドウ糖の供給も不安定になり、自律神経が乱れます。その結果、疲労感、だるさ、朝起きるのがつらい、思考力や集中力の低下、強い眠気、イライラや不安感が増す、感情の起伏が激しくなるといった症状が表れます」
さて、あなたは下のリストのような自覚症状はないだろうか?
【食生活チェックリスト】
□ご飯、パンを大量に食べる
□スナック菓子、清涼飲料水をほぼ毎日摂る
□おやつを食べることが多い
□夜中に目覚めて、何かを食べることがある
□食事を抜くことがある
□食後1~2時間で空腹を感じる
□夕方に眠気を感じたり、集中力が落ちる
□イライラや不安感が、甘い物を食べてなくなったことがある
□頭痛、動悸が甘い物を摂ることでよくなったことがある
□血縁者に糖尿病の人がいる
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溝口徹
国立循環器病センターなどを経て、2003年日本初の栄養療法専門クリニックとなる新宿溝口クリニックを開設。栄養学的アプローチで、精神疾患のほか多くの疾患の治療にあたる。著書に『「疲れ」がとれないのは糖質が原因だった』ほか多数。
「人の目を見て話すのが苦手」という人がいる。それは引っ込み思案や人見知りなど、性格的な問題だと思っている人は多いだろう。しかし、その背景に、意外な原因として「大人の発達障害」が潜んでいることがある。現代人の2人に1人が抱えながら、ほとんどの人が気づかないという「大人の発達障害」。それを「脳の見る力」との関わりから解説し、改善方法を提案するのが『大人の発達障害 話し相手の目を3秒以上見つめられない人が読む本』(白秋社)だ。
著者の加藤俊徳氏は、加藤プラチナクリニック院長で昭和大学客員教授。累計150万部のベストセラーも持つ脳内科医。担当編集の間渕隆氏は語る。
「以前、加藤先生との打ち合わせ時に、『話をするときに、相手の目を見つめるのが苦手』という悩みをこぼしたことがあるんです。すると即座に、『それは大人の発達障害ですね。放っておくと、人生で大損をしますよ』と指摘。大人の発達障害を抱える人が示す6つの症状を挙げてくださったのです」
6つの症状とは-。
(1)人の顔を見ると何か怖いと感じる
(2)ずっと人の目を見ているのは苦痛だ
(3)相手と目を合わせようとすら思わない
(4)マスクをしていないと相手の顔が見られない
(5)相手の目を見ているつもりでも、「ちゃんと目を見て」といわれる
(6)相手と目を合わせると、なぜかすぐに目を逸そらしたくなる
かつては性格や育ち方のせいだと思われ、心の病ととらえられがちだった「発達障害」は、実際には脳の機能の偏りから起こる。著者は脳の同じ役割を担う細胞を約120に区分し、「脳番地」と名付け、機能別に次の8つに大別している。
〔1〕思考系脳番地…前頭葉にある
〔2〕運動系脳番地…頭のつむじ付近から左右の耳にかけてベルト状にある
〔3〕伝達系脳番地…コミュニケーションをつかさどる。前頭葉の思考系脳番地の隣に位置する
〔4〕感情系脳番地…前頭葉、頭頂葉、側頭葉などに位置する
〔5〕理解系脳番地…目や耳からの情報を理解。耳の後ろ側の頭頂葉に位置
〔6〕聴覚系脳番地…耳の近くの側頭葉に位置する
〔7〕視覚系脳番地…後頭葉と頭頂葉に位置する
〔8〕記憶系脳番地…側頭葉内側部の海馬が短期記憶を、主に側頭葉が長期記憶を担当する
以上8つの脳番地の中で、話し相手の目を3秒以上見つめられない症状は、〔4〕感情系の脳の弱さと〔7〕視覚系が原因と、著者は指摘する。
改善方法として勧めるのは、「脳の見る力」を鍛えること。本書では、正確な自己診断法を解説するほか、「大人の発達障害を克服して人生が好転した人たち」の実例も紹介。さらに、日常生活で実践できる31の「脳番地トレーニング」も具体的に解説している。
ビジネスや恋愛、人間関係など、つまずきがちだった諸問題が、「脳の見る力」を高めることによって好転するとしたら? 簡単なトレーニングから挑戦してみたい。 (田幸和歌子)
■スーパーは視覚系脳番地の養成所~視覚系脳番地トレーニングの一例
□スーパーでは食材をカゴに入れながら合計金額を暗算する。実際にレジで会計する際、自分の計算と合計金額に開きがないかを確認しよう
□税込み価格を税抜き価格に計算してみる
□今日1日いくら使ったかを計算する。家計簿に記入すれば、手を使い、運動系脳番地も使うことになり、節約にもつながり、一石数鳥
□会計時はお札で支払うだけでなく、小銭を交えて払うようにする
※詳細は本書を参照
イライラや憂鬱な気持ちが続く、気力がわかないといったメンタルの不調はいち早く解決したいそんなメンタルの不調に、漢方薬で改善を目指すという方法もあります。「西洋薬によくみられる眠気が少ない」「ナチュラルな効き目」「副作用のリスクが少ない」などの理由から、心療内科や精神科でも漢方薬が使われていることも多いです。
薬剤師の清水みゆきさんによると、体質や原因など、タイプに応じた漢方薬を用いることで、メンタルの不調の予防や緩和が期待できるそうです。
メンタルの不調が起こる原因を知り、自分の不調のタイプを確認して、自分に合った漢方薬を見つけましょう。
* * *
メンタルの不調の症状と原因
強いストレスや長く続くストレス、そして過労などが、自律神経の働きを乱して情緒を不安定にし、メンタル不調を引き起こします。
メンタルの不調を引き起こすストレスの原因としては、主に以下の3つがあげられます。
・人間関係などのさまざまな悩みによる精神的な要因
・病気やホルモンバランスの乱れなどの身体的な要因
・温度や騒音などの環境的な要因
メンタルの不調は、人によって感じ方がさまざまで、以下のような訴えがあります。
・イライラする
・不安感や焦りが強い
・気分が落ち込む
・意欲がない、やる気がでない
その他にも、メンタルの不調により、以下のような体の症状を引き起こすことがあります。
・食欲不振
・不眠
・頭痛
・肩こり
・吐き気
ものです。
漢方では、五臓の「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」が特にメンタルと関係しており、ストレスの影響を受けやすいと考えられています。
「肝」は自律神経系を調節する働きがあります。「心」は意識や思考に関わっています。「脾」は消化吸収を担い、「肝」や「心」にエネルギーの補給をしています。ストレスなどにより「肝」「心」「脾」の働きが悪くなると、その部位に呼応する不調を引き起こすと考えられているのです。漢方薬はこれらの働きを正常な状態に整えます。
また漢方薬はイライラや神経症、精神不安、不眠などの症状に対して、医薬品として効果と安全性が認められていますが、自然の生薬から作られているため、西洋薬よりも比較的、副作用が少ないといわれていることも特徴です。
メンタル不調のタイプをチェック
体質やタイプに合った漢方薬を用いることで、より効果があらわれやすくなります。タイプに応じた漢方薬を選ぶために、チェックリストでメンタル不調のタイプを確認してみましょう。
「肝」の異常タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、自律神経系を調節する「肝」の働きが低下した「肝の異常タイプ」の可能性があります。
・イライラする
・肩こりや頭痛がある
・目が充血しやすい
・足がつりやすい
「肝」の働きが低下すると「気(き)」の巡りが悪くなり、自律神経が乱れることから、イライラや怒りっぽいといったメンタルの不調が生じます。
「心」の異常タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、「血(けつ)」の循環や意識をコントロールする「心」の働きが低下した「心の異常タイプ」の可能性があります。
・不安感が強い
・寝付きが悪い
・夢をよくみる
・動悸や息切れがする
「心」が正常に働かないと心が不安定になり、不安感や不眠といったメンタルの不調が生じやすくなります。また、「心」の異常は血の循環の乱れにつながり、動悸や息切れを引き起こします。
「脾」の異常タイプ
以下のチェック項目に当てはまる人は、栄養を消化吸収して体に運ぶ「脾」(胃腸)の働きが低下した「脾の異常タイプ」の可能性があります。
・思い悩むことが多い
・食欲がない
・疲れやすい
・下痢をしやすい
「脾」の働きが低下すると、エネルギーが不足して元気がなくなります。そのため、気力が出ない、くよくよと思い悩むといったメンタルの不調が起きやすくなります。
タイプに合った漢方薬でメンタルの不調を改善
漢方の考えでは、病名にこだわらず、不調の原因がどこにあるのかに着目して漢方薬を選びます。下記の3つの漢方薬から、タイプに合ったものを選びましょう。
「肝」の異常タイプにおすすめの漢方薬「四逆散」
四逆散(しぎゃくさん)は、気の巡りを改善し、「肝」のはたらきをよくする漢方薬です。自律神経系のバランスを調節をするので、イライラや怒りっぽいといったメンタル不調の改善に役立ちます。
「心」の異常タイプにおすすめの漢方薬「酸棗仁湯」
酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、「心」の働きを補うことで精神を落ち着かせる漢方薬です。そのため、不安感や不眠などのメンタル不調の改善が期待できます。
「脾」の異常タイプにおすすめの漢方薬「加味帰脾湯」
加味帰脾湯(かみきひとう)は、「脾」の働きをよくして足りない「血」を増やし、「気」の巡りを整えることで精神を安定させる漢方薬です。エネルギーを補充するため、気力がない、くよくよと思い悩むようなメンタル不調の改善に役立ちます。
漢方薬で体と心の不調を改善
漢方薬は心と体のバランスを正常に整えてくれるため、心の不調、体の不調のどちらも解消できる可能性があります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こる場合もあります。服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・清水みゆきさん
「最近、もの忘れがひどくなった」「言葉がスッと出てこない」「集中力が続かない」……。中高年になるとこんなふうに感じる場面が多くなってくる。年を取れば脳のパフォーマンスが落ちてくるのは仕方ないと思うかもしれないが、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏は「それは大きな間違い」と指摘する。
「脳は何歳からでも成長できます」と言う瀧氏は、幼児から大人まで、実に16万人もの脳のMRI画像を読影・解析してきた脳医学者だ。認知症予防の研究にも力を入れているが、「老化現象だからと諦めるのではなく、楽しみながら脳の機能を維持することは可能」と主張する。
中高年ビジネスパーソンが脳のパフォーマンスをアップさせたり、認知症を予防したりする方法を解説した瀧氏の書籍『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』から、なぜ大人でも脳の機能を高められるのかについて、ライターの郷和貴氏を聞き手としてお届けする。
■脳の老化が始まってもパフォーマンスは上げられる?
郷和貴氏(以下、郷):前回、大人の脳のパフォーマンスをアップさせる方法があると聞いたのですが、ぜひ具体的に教えてください。というのも実は私、20代の頃にうつ病で仕事を1年間休んだことがあって、それ以来なんだか頭の回転が遅くなったような気がして心配なんです……。
瀧靖之氏(以下、瀧):確かに、うつ病になると、前頭葉や海馬が萎縮することがあります[注1]。それで脳のパフォーマンスが一時的に下がることはあるかもしれませんが、今はライターとして毎日バリバリと文章を書かれているわけですから、大丈夫ですよ。
郷:でも、原稿を書くスピードをもっと上げたいんです。どうしたら脳のパフォーマンスを上げられますか?
瀧:成長段階にある子供の脳とは違い、大人の脳はゆっくりと老化が始まっています。ですが、これまでにお話ししたように、コツコツと刺激を与え続ければ大人の脳だってパフォーマンスが上がりますし、老化をさらに遅くすることも可能です。
それでは、ここでちょっとクイズです。以下のMRI(磁気共鳴画像法)の画像は、それぞれ別の人の脳を輪切りにしたものです。上の人の脳に比べて、下の人の脳はスキマが大きく、萎縮していることが分かります。2人の年齢差はどれぐらいでしょう?
郷:全く分からないのですが……。上の詰まっているAさんが30代で、下のスカスカのBさんが70代、とか?
人間は24時間、絶えずなんらかの仕事をしていて、なにもしていないときでさえ「なにもしていない」という作業をしているもの。
だからこそ、脳と身体に備わっているスケジュールを知り、そこに自分のスケジュールを噛みあわせることが大切。そうすれば仕事でもプライベートでも、やりたいことにしっかりと力を注ぐことができるようになる。
そう主張するのは、『脳にいい24時間の使い方』(菅原洋平著、フォレスト出版)の著者です。
「作業療法士」と呼ばれるリハビリテーションの専門家として、脳と体の力を最大限に引き出し、ひとつひとつの作業を充実して行えるようにサポートしているのだそうです。
また、クリニックでの臨床や、全国規模の企業研修も行っているのだとか。
■人間が持つ「2つの基本的な原理」で治療
そんな著者は、患者さんの能力を引き出すために、人間が持つ「2つの基本的な原理」に従って治療をするのだといいます。
ひとつ目は、人間は同じ作業でも、より能力が発揮される時間帯に行ったほうが上達が早いということ。2つ目は、すべての作業を行う際に、脳と体にとって最適な時間帯があるということ。
なお、この科学的根拠をもとにして、ビジネスパーソンが生産性の高い仕事をするためにやることはいたってシンプル。
まず、脳には「この時間帯に、この仕事をすれば、質もスピードも上がる」という時間の使い方があるということを知ったうえで、仕事のスケジュールを組む。
そのために、脳と体が正常にリズムを刻むための「コンディションを整える習慣」を生活のなかに持つ。それが大切だというのです。
つまり本書では、“無理”“ムダ”“根性論”なしでこれらを実践できる方法を紹介しているのです。
■脳は「1日に2回」働かない時間帯がある
生体リズムには「睡眠—覚醒」リズムがあり、私たちの脳は1日に2回働かなくなる時間帯があるのだそうです。それは、起床から8時間後と22時間後。
最初の「起床8時間後」は、午後の時間帯にあたります。
昼食後は眠くなるものですが、生体リズムの研究では、たとえ昼食を摂っていなくても、あるいは少量の食事を2時間おきに摂り続けるという条件でも、起床8時間後には眠くなることが明らかになっているというのです。
そして2回目の眠気は、普段の起床時間の2時間前であり、多くの人にとって明け方にあたる時間。
どうしても眠れなくても、明け方にはウトウト眠っていたという体験をしたことがある人も多いはずですが、それはこういう理由があるからだというのです。
■「深部体温」もパフォーマンスに影響する
さらに、内臓の温度である「深部体温」の影響も。人間は深部体温が上がるほど元気にハイパフォーマンスになり、下がるほど眠くなるといいます。
なお深部体温が最高になるのは、起床から11時間前後。6時に起床していたら夕方の17時がいちばん体が元気に働く時間帯であり、この時間帯には眠気が起こらないということ。
これらの組み合わせにより、私たちは「午前」に冴えて「午後」に眠くなり、「夕方」に元気になって、「眠る前」に眠くなるというリズムになるわけです。
■「4・6・11の法則」で脳は鍛えられる
つまり人間の理想的なリズムは、午前に頭を使い、午後に短い睡眠をとり、夕方に体を使うと、夜には質の高い睡眠が取れるということ。
著者はこれを、起床から4時間以内に光を見て、6時間後に目を閉じ、11時間後に姿勢をよくする「4・6・11睡眠の法則」として、さまざまな現場での安全な業務と生産性の向上に活用しているのだそうです。
生体リズムには、ひとつのリズムが整うと、それが基準となって他のリズムが同調する仕組みがあるのだといいます。ですから、4・6・11の時間、すべてのことを実行する必要はないのだとか。
■もっともやりやすいことだけを実行すべし
そこで、どれかひとつ、もっともやりやすいことだけを実行してみることを著者は勧めています。
たとえば夕方に運動したり、帰りの電車で一駅前で降りて歩いたり、体温を上げることをすると、自然に朝、目覚めやすくなるというのです。
また、朝は目覚めたら窓から1メートル以内に入るようにすれば、昼間はいつも眠かったとしても、やがて理想的な就寝時間に眠くなるようになっていくそうです。
たったひとつのリズムが基準となって、他のリズムが同調していくということ。
なお、生体リズムを整えるときには、まず4日続けてみることが大切だと著者はいいます。
医療現場や企業研修で実証されたことだということもあり、強い説得力が本書にはあります。仕事のパフォーマンスを向上させたい人は、読んでみるといいかもしれません。
中年のテレビ視聴の時間と脳の病気の関連性が指摘されている。テレビの前で過ごす時間が中ぐらいからから長時間までの人々はそうでない人々に比べ、認識力テストの結果に低下が見られたという。
またテレビを頻繁に見る人は脳の灰白質が小さく、脳の働きが悪化していることを示す典型的な特徴だそうだ。
コロンビア大学のプリヤ・パルタ博士は認知症の多くの場合がライフスタイルを変えることで防げる可能性があるとし、こう語る。「今回の発見はテレビの視聴時間、座ったままの活動が、認知機能の低下や脳の健康に関係している可能性を示唆しています」
寝起きの倦怠感の原因は脳の疲労です
脳を疲れにくくする快眠ポイントとは?
朝起きたときに倦怠感がある人は、脳の疲労が取れていない証拠。 自律神経をつかさどる脳を休めないと、熟睡できずしっかりと脳疲労を取れません。脳疲労を取ることができる、快眠をもたらす睡眠のポイント10個を解説します。
普段感じている疲れの原因は、脳疲労
「疲れの正体は、脳にあります。具体的には、脳の視床下部や前帯状回にある自律神経の中枢の疲れであり、体が疲れているというのは錯覚であることが多いのです」と話すのは、疲労医学の第一人者で東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身(かじもとおさみ)さん。
梶本さんが実験で自転車を4時間こぎ続けた人の状態を調べたところ、筋肉や内臓は開始前と数値にほぼ変化はなかった一方、脳、特に自律神経の中枢は明らかな変化が見られました。
体温を上げ過ぎないように汗をかき、酸素を多く体に取り込むために心拍数を上げるといった生命活動機能をコントロールするのはすべて自律神経。運動を続けると自律神経に負荷がかかり、疲れてしまうのです。疲れた自律神経は「命を守らねば」と防衛本能を働かせます。すると、眉間付近にある眼窩前頭野(がんかぜんとうや)へ司令を送り、これ以上運動させないよう「体が疲れた」と勘違いをさせます。これが普段感じている疲れの実態です。
50代女性のパワー値は、野生動物なら倒れてしまうレベル
さらに、年齢ととともに自律神経自体のパワー値が減り、耐えうる負荷の大きさも小さくなっていきます(グラフ参照)。年齢を重ねるにつれて疲れやすくなる原因がこのパワー値の低下です。パワー値は、50代になると20代の頃の3分の1に。梶本さんによると「野生動物の世界では500を切ると生きていけない」のに、50代女性の平均は約500。野生動物なら倒れてしまう値にまで低下しているわけですから、毎日疲れるのは当然のことなのです。
「当然だから仕方ない」と何も対策を講じないで放置しておくと、疲れがたまってつらいだけではなく「脳の細胞が酸化してサビがたまり、脳の老化を招く可能性もあります」(梶本さん)。
脳の疲労回復のために「脳を休める睡眠術」が重要な理由
では、どんな対策ができるのでしょうか。
自律神経には緊張・興奮状態で働く交感神経と、リラックスしたときに働く副交感神経があります。自律神経の中枢は、交感神経が優位になったときにフル稼働し、疲労につながります。
「リラックスして副交感神経が優位になる時間を増やすことが、疲れ対策には効果的です」(梶本さん)。
「最近なんだか疲れやすい」という人は、実は脳が疲れているのかもしれません。疲れの原因は自律神経の中枢がある「脳」が鍵となります。体に指令を出し続ける脳は眠っているときにしか休むことができないので、まずは、深くぐっすり眠ることが重要です。
自分がいかに疲れているかは、朝目覚めたときの倦怠感が目安。倦怠感があるようなら、それは脳が疲れている証拠です。疲労回復のために最も重要なのが、睡眠。脳の疲れは寝ることでしか回復できません。しかし、「年を重ねるにつれ眠りが浅くなってきた」という人はどうしたらよいのでしょう?
「加齢の影響による睡眠の質の低下もありますが、よかれと思って続けてきた眠り方が実は逆効果だった、ということもあるかもしれません。これから伝える快眠習慣をぜひ実践してみてください。朝起きたときのスッキリ感が違うはずです」
疲労を軽くする方法は、日常生活の中にたくさんあります。大事なのは「合理的に手抜きをすること」と梶本さん。特にアラフィフ世代の女性には「何もしない時間をぜひ持ってほしい」と言います。「仕事・家事は際限がないため、ついずっと働き続けてしまう。ボーッとすることは『怠惰』ではなく、脳の老化予防のためにも必要です」
本記事では毎日の生活の中で今すぐ始められる、「脳を休める快適睡眠テクニック」をご紹介。生活に取り入れやすいものから、さっそく実践してみましょう。
就寝前にトライ!快眠をいざなう6つの習慣
■1 ベッドや布団は一人で眠れる環境にする
隣で寝ているパートナーの体温が移ったり、動きが伝わったり、いびきがうるさかったりすることがストレスとなり、睡眠の妨げに。疲れ対策のためには、ダブルベッドで一緒に寝るより、一人で寝られる環境を整えることをおすすめします。
■2 就寝前に白湯を1杯飲む
トイレに起きたくなくて寝る前の水分摂取を控えるのはNG。睡眠中、脱水状態を起こすと自律神経に負荷とストレスがかかり、眠りを浅くする要因に。白湯で胃腸を温めると副交感神経が優位になり、眠りにつきやすくなります。
■3 ベッドタイムに寝酒はしない
アルコールには覚醒作用があり、眠りにつけたとしても途中で目覚めやすいので、脳が休まるほど深くは眠れません。また、アルコールによって気道周辺の筋肉が弛緩するため、自律神経に負荷とストレスをかける大きないびきの原因になります。
■4 目覚ましは優しい音にセット
目覚まし時計やスマートフォンのアラーム機能の音は、鳥の声といった優しい音に設定を。大きな音でびっくりして起きると、睡眠中に活動レベルが下がっていた交感神経が優位になり、血圧も心拍も急上昇。自律神経に負荷がかかります。
■5 ベッドで携帯電話を操作しない
「布団に入ってからもスマートフォンやタブレットを何となく触ってしまう」という人も少なくないのでは? 液晶画面の強い光は交感神経を優位にするため、布団に入る30分前には「携帯電話断ち」する習慣をつけましょう。
■6 寒い季節の電気毛布は就寝直前に電源オフ
寒い季節に冷たい布団に入るのは自律神経に負荷がかかるため、就寝前に電気毛布などで布団の中を温めておくのは安眠のために有効。でも、一晩中電源を入れていると寝汗をかき、脱水症状を引き起こすことも。寝る前の電源オフをお忘れなく。
睡眠時間や寝姿勢は?睡眠中の快眠ポイント4つ
■7 睡眠時間は最低でも6時間は必要
睡眠中、浅い「レム睡眠」と深い「ノンレム睡眠」が90~120分単位で交互に繰り返されていて、脳の疲れを取るにはノンレム睡眠が3~4回必要。疲れを翌日に持ち越したくないなら、最低6時間は寝るよう心がけましょう。
■8 眠る時の姿勢はあおむけではなく横向きで
「あおむけ寝」は舌が下がって気道をふさいでいびきをかきやすく、眠りが浅くなりがちです。舌が気道をふさがない「横向き寝」がいびきには効果的。特に右側を下にして寝ると、消化吸収がスムーズになってより熟睡できます。
■9エアコンやタイマーを活用
極度な温度差は血圧を上げるなど、自律神経に負荷をかけるので、適宜エアコンを活用しましょう。冬場は、温かな布団から起きて冷えた部屋に出ると自律神経にダメージが。暖房のタイマーをセットし、起床時間の30分前から部屋を暖めておくのがベストです。
■10 手は布団の外へ出して寝る
手が温まると交感神経が優位になって寝つきが悪くなります。手は布団から少し出しておくくらいが、寝つくにはちょうどいいです。一方で、足を温めると副交感神経が優位になるため、足の冷えにはご注意を。
【監修】梶本修身(かじもと・おさみ)さん
東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。1962(昭和37)年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。主な著書に『すべての疲労は脳が原因Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(集英社新書)など。
取材・文=小林美香(編集部)
※この記事は、「ハルメク」2018年2月号を再編集しています。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。
普段「肩がこっているなぁ」と感じる方はたくさんいらっしゃると思います。実はコレ、ストレスや不規則な生活習慣、最近だとスマホの使いすぎなどで、頭も相当“こって”いることが判明いたしました。
「頭がこっているなぁ」と感じる方は少ないでしょうから、この事実は衝撃的ですよね。そこで、頭のコリが身体にどのような影響を及ぼすかについて、美容室『フォルトゥーナ』の美容師、岸田豪さんにお聞きしました。
■眼精疲労は肩ではなく頭のコリも原因に
「実は頭のコリは血行不良を招き、顔のたるみや眼精疲労の原因にもなってしまうのですよ」
顔のたるみが頭のコリで引き起こされることだけでも衝撃的ですが、眼精疲労は肩や首のコリからくるかと多くの方は感じていらっしゃるが故に、これは驚きの事実ですね。ではこの頭のコリ、どうやって解消すればよいのでしょうか?
■頭のコリを簡単にほぐす方法とは
「ご自分で頭のマッサージをするなら入浴後がベストなのですが、それが“面倒臭くて続けられなさそう”という方は、シャンプーしながらマッサージしてみてはいかがでしょうか。もともと“シャンプー”とは“頭部マッサージ”を意味する言葉なんですよ」
普段何気なく洗髪しているシャンプーの時間が、頭のコリをほぐす時間になると確かに手軽にできますよね。ならばシャンプーをするときに、短い時間で効果的に頭のコリを取る方法を教えて頂きましょう。
■たるみには“やさしく”“ゆっくり”が効く
「やさしく指の腹でシャンプーしながら、まずは耳周りをゆっくり揉みほぐし、それから地肌を頭頂部に引き上げましょう。この辺りがほぐれると血液やリンパの流れが良くなり、フェイスラインがシャープになります。
また前頭部から頭頂部、つまり髪の生え際から頭のてっぺんを、指で少し強めに押してマッサージしてあげると額のたるみに効果的です。もともと頭皮と顔の皮はつながっていますし、頭には内臓につながるツボもたくさんあります。
とにかく“やさしく引き上げる”ことと、“ゆっくりと押す”ことを心がけてマッサージしてあげれば、小顔効果も期待できます」
目立たないからと放っておくと、どんどん恐ろしいことになりかねない頭皮のたるみ。これを機会にシャンプーついでの頭皮マッサージを、毎日の習慣にしてみてはいかがでしょうか?
30代後半も過ぎると、人の脳の老化はどんどん進んでいきます。「最近、あまり頭をつかっていない」「楽なルーティーンワークに終始している」。そんな人は「脳の老化が進み、感覚や感性も衰えていくでしょう」と、脳内科医の加藤俊徳氏は警鐘を鳴らします。
では、どうすれば脳の老化を食い止めることができるのか。加藤氏は、意外な経験が老化を防ぐカギを握ると言います。それは一体……? 加藤氏の新刊『センスは脳で磨かれる』をもとに解説します。
仕事が早い! は実は危険
20代から30代になり、仕事の全貌をほぼつかんだ頃、仕事が楽に回せるようになったなと思う瞬間はきませんでしたか? 営業にしても企画にしても、事務処理にしても、若い頃あれだけつまずき、試行錯誤して時間がかかっていた仕事が、ウソのように簡単に処理できてしまう。半分の時間もかからずにこなせてしまう。脳が仕事の仕方を学習し回路ができ上がったことで、ムダな労力をかけずに処理することができるようになった証しです。
それ自体は、大変望ましいことです。ところが楽になったことにかまけて、自分の仕事をそれだけに限定し、9時~5時で要領よく仕事をこなすだけになってしまう人が結構いるのです。
「仕事が楽になった瞬間こそ危ない」と、私はよく話をしています。
脳は、放っておけばエネルギーを使わない楽なほうを選ぶものです。すると楽にこなせる状況に甘んじて、新しい挑戦をしようとせず、仕事をルーティーン化するようになります。守りに入った脳は、新たな分野に挑戦したり、未知の領域に足を踏み入れようとする冒険心を起こしません。
でき上がった脳の回路で処理できる仕事だけに限定し、楽に仕事を処理できるほうを選択します。すると脳はどんどん衰え、退化していきます。そうなると、ますます仕事に対する意欲や、積極性が失われていき、さらに脳の老化が進んでいくのです。
何か新しいことに直面すると、私たちの脳は各所が活性化し、連絡を取り合って対処するようにできています。しかしそのやり方を覚え、回路ができてしまうと、脳はできる限り“省エネ”を試みようとします。最初と同じように、脳をフル回転させるのではなく、前回使って有効だった脳だけを働かせ、最小限の労力で済ませようとするのです。
このこと自体は、脳の素晴らしい機能の一面であることは確かです。なぜなら目の前で起きるすべてのことを、つねに脳がフル回転で対応していたら、あっという間に脳がオーバーヒートしてしまうからです。そうならないために、脳はルーティーン的な行動を、脳の中のでき上がった回路を使って、なかば無意識に処理するようになっているのです。これがいわゆる「習慣化」とよばれるものの正体です。
朝起きて歯を磨き、顔を洗う。コーヒーを飲みながら新聞を読む。これらの行動は、いちいち頭の中で考えながら行うものではありませんね。体が自然と覚えていて、そのように考えなくても動いてしまう。脳は省エネのために習慣化を行うようにできているのです。
失敗すると脳はフル回転する
省エネという点では非常に合理的な脳の仕組みですが、じつはこれが諸刃の剣なのです。習慣化が進んでいきそれに頼ることは、楽になると同時にマンネリ化をもたらします。脳はほとんど働こうとせず、老化と退化が進んでしまうことになるのです。
ではどうすれば脳の老化を防げるのか。一番効果的な方法が〝失敗体験〟をすることです。失敗体験ほど、たくさんの情報を得られる体験はありません。それは強烈な刺激となり、脳のさまざまな部分を活性化させます。
人は失敗をすると、落ち込み、ショックを受けます。そのストレスはある程度のものであれば、脳に対する強烈な刺激になります。さらになぜ失敗したのか、その理由を考えます。脳をフル回転させ、失敗の原因を探り、次回どうしたらいいか、対応策や改善策を考えます。
ところが、大過なく事が運んだときは、これまでの経験から何も変える必要がないことが多く、ほとんど脳は働きません。成功したときの喜びのようなものは、ドーパミンなど脳内物質の分泌で感じるかもしれませんが、脳全体がフル回転するわけではありません。失敗したときにこそ、脳は成長するのです。
脳の成長のために大事なのは、失敗したときにしっかりと現実と向き合うことです。失敗したことを認め、なぜうまく行かなかったのかを冷静に考える。ここで、ごまかしたり逃げたりして脳が成長するためのターニングポイントをスルーすると、せっかくのチャンスを逃すことになります。
また、チャレンジする精神も大事になります。「チャレンジ」と「失敗」は表裏のものです。残念ながら若い人の傾向として、失敗を恐れるあまりチャレンジをしないということがあります。
未知の領域にチャレンジすることが、大いに脳を使うことにつながります。そして仮に失敗しても、それにしっかりと向き合うことで、さらに脳を使い成長させることができる。失敗を恐れ、チャレンジしない人はみすみすそのチャンスを逃しているのです。
初めての店に行ったほうがいい
失敗体験に加えて、「初めて」の体験も、脳への刺激となります。たとえば会社から帰宅する際、いつもと違う道を通ってみる。普段とは違う景色や人の流れがあるでしょう。新しいお店や気になる施設などを発見するかもしれません。
昼食は、ほぼ行く店が何軒か決まっていて、そのローテーションというビジネスパーソンも多いと思います。意識して、最低週に1回は、新しい店で昼食を食べるようにしてみる。なかにはハズレの店もあるかもしれませんが、隠れた名店、おいしいお店に出くわすかもしれません。
それを続けていくことで、自然とおいしい店と、そうでない店のそれぞれの特徴や共通点などが見えてきます。いい店と、そうでない店を見分けるセンスも自然と身につくでしょう。何より、新しい店に飛び込むことで脳がフル回転しますから、それだけで感覚が研ぎ澄まされていくのです。
最近、ビジネスにおいて重要と言われるセンスや感性も、日々意図的にブラッシュアップしていかないと鈍ってしまいます。こうした「初めて」や「失敗」の体験を通じて脳を刺激し、老化を防ぎ、感覚・感性を鋭く磨いていってほしいと思います。
「『記憶力は加齢とともに低下する』と思われていますが、大きな誤解です。脳を育てる要素はじつはふだんの生活のなかにたくさんあり、ほんのちょっと行動を変えるだけで、脳は活性化します」
そう語るのは、認知症予防が専門の医師で東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授。瀧教授は、認知症リスクを下げる「セルフトレーニング」を提唱している。
「認知症とは記憶力をつかさどる海馬の萎縮が始まり、脳全体に広がることで日常に支障をきたす状態を言いますが、近年の研究で大人になっても海馬で神経細胞が増えることがわかりました。さらに、神経細胞同士のつながりを強くすることで情報処理能力が高まるといわれています。これを“脳の可塑性”と呼び、最近注目されています」(瀧先生・以下同)
脳の健康を保つキーワードは大きく3つあるという。1つ目はいくつになっても「知的好奇心を持つ」こと。
「東北大学加齢医学研究所では、約400人の脳がどのように変化するのかを追跡調査しました。知的好奇心のレベルが高い人ほど、加齢によって進む脳の萎縮が少ないことがわかったのです。知的好奇心を刺激する簡単な方法は興味を持つこと。昔やってみたいと思っていたことやあこがれていたことに、時間ができた今だからこそチャレンジしてみましょう」
2つ目は「運動」。有酸素運動は神経細胞の栄養となるBDNF(脳由来神経栄養因子)が体内で生成されるのを促し、そのBDNFが海馬に送られると神経細胞が新しく作られるという。
「ハードな運動をする必要はありません。軽く息が上がる程度で十分です。30分ぐらいのウオーキングがベストですが、家の中にいてもできることはあります。主婦の方であれば床掃除や窓拭きといった『家事』も有酸素運動のうちに入ります」
そして3つ目は「人とコミュニケーションを交わす」こと。
今はコロナ禍で、人と会う機会が少なくなり、マスク越しで会話をするのも気がひけるという人も多いだろう。そんなときこそ、電話やメール、SNS、Zoomなどオンラインの通信手段を上手に使いこなして孤立を防ぐようにしよう。
「特に、ひとり暮らしでひきこもっていると、コミュニケーションを取る機会がほとんどなくなります。社会との関りを持ち、人と交流して、相手のことを思いやりながら考えて話をすることで、脳はたくさんの刺激を受けます。
最近は、離れて暮らす子どもや孫たちとZoomで話をする高齢者も増えています。『難しいことはできない』と決めつけないで、トライしてみること。それが脳に刺激を与えることになります」
人体で増殖するカビの存在として、皮膚など体の表面にとりつく水虫(白癬菌)がよく知られています。しかし驚いたことに、体の表面にとりつくだけにとどまらず、なんと体のなかに入り込んで悪さをするカビもいるようです。
「肺にカビが生える、という症例がけっこうあります。なかでも『アスペルギルス』という種類は、日本を含めて世界中で感染例が多いカビで、胞子が肺で成長・増殖すると発熱、せき、血痰などの症状が出ます。
また、吸い込むだけでなく、このカビの仲間が作りだす毒『アフラトキシン』を食品から摂取するのも非常に危険なんですよ。
毒性はフグ毒より強く、短期的には急性肝炎の原因に、長期的には肝臓ガンの原因になります。
インドでは一度に肝炎で100人以上の死者を出したこともありますね。輸入ナッツ類から検出されることが多いので、検疫では非常に厳しいチェックを受けているようです」
そう教えてくれたのは、千葉大学真菌医学研究センターの渡辺哲博士。しかし、恐ろしいカビもいるもんですね。
「ほかにも『カンジダ』などが臓器に感染することが知られています。ただ、これら体内に巣くうカビはガンの化学療法を受けている人や白血病の人、つまり免疫力が非常に低い状態の人にしか感染しないんですよ」
健康体でいるうちは内臓がカビにやられるなんてことはないんですね。
「ただし、例外もありますよ。日本で健康な人も感染しうる唯一のカビに『クリプトコッカス・ネオフォルマンス』というものがいます。
ハトの糞に存在することの多いカビで、まず胞子を吸い込んだ人の肺にとりつき肺炎を起こし、さらに3~5割の確率で脳に入り込み、マヒ、震え、痛みなど髄膜炎や脳炎の症状を起こす恐れもあります」
え、脳みそがカビに侵される…。カビもハトも怖すぎます!
「ただ、糞にこのカビの胞子が入っているのはわかっているものの、吸い込んだからといって、必ずしも感染、発症するわけではないんです。感染例もそれほど多いわけでもありませんし、ハトに接する機会が多いほど感染の危険が増すというデータもありません。
例えばレース用などハトを飼育している方は全国にたくさんいますが、その人たちの感染率が特に高いわけでもない。実はこの例に限らず、カビによる感染症に関してはまだまだわからないことだらけなんですよ」
専門家の先生にわからないことだらけ、なんて聞くとまた怖さも倍増ですが、研究は鋭意進められている模様。ハトを目の敵にするようなマネは性急なのでしょうけれど、注意するに越したことはないようです。
「体は意識して鍛えることができますが、頭の中はなかなか難しい。脳を鍛えるためには、多くの情報を『インプット』し、その情報を自分自身の知識として『アウトプット』することが重要になります。『瞬読』は、その最善のトレーニング方法。しかも、1日2〜3分、バラバラに並べられた文字を見るだけです!」
そう語るのは、一般社団法人「瞬読協会」代表理事の山中恵美子さん(48)。「SSゼミナール」「APマスターズ」など全国で30校以上の学習塾を経営する株式会社ワイイーエスの社長も務めている。山中さんが出版した『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術 瞬読』(SBクリエイティブ)は、10万部の大ヒットを記録している。では、この「瞬読」とは、いったいなんなのだろうか。
高い理解度を保ったまま、短時間で本を読めるようになるためのメソッドを瞬読と呼んでいます。マスターすれば、ほんとうに1冊を3分で読むことができるようになります。しかし、これは“速読”とは違うのです。瞬読をするメリットは、“右脳の潜在能力”を引き出すことができる点にあります。これによって『記憶力』や『問題処理能力』の向上をはじめ、『創造力』なども高められるのです」
空間把握や、芸術性、ひらめきをつかさどる右脳。アーティストなどは右脳を使うことに秀でているとされるが、ふつうの主婦にとっても右脳を鍛えることには大きな意味があるという。
「右脳を鍛えることで、暗記力や集中力が高まる。すると、“直感”が冴えてくるんです。私たち人間は一日中、判断や決断をして生きています。あれかこれどちらを食べるか、あの人とこの人どちらに話しかけようか……というふうに。そしてその判断の基準は、直感にもとづいていることがほとんどです。右脳がしっかり鍛えられていて直感が冴えている人は、決断を迫られたときに、正しい選択ができるようになる。つまり瞬読のトレーニングは、即時的な判断が求められる場面で大きな力を発揮するのです」
瞬読のメリットは、それだけではない。
「瞬読のミソは、『インプット』と『アウトプット』。人間の頭は、アウトプットしたことはなかなか忘れないようになっています。テレビをただ見る(インプット)より、その番組についての話を友達とする(アウトプット)ほうが、番組の内容もはっきりと覚えられますよね。これを繰り返すことで、認知機能の向上にも一役買うのです。人の名前が覚えづらくなったという人もいると思いますが、このトレーニングを積めばもの忘れなども改善するはずです」
この「瞬読」の原点は、山中さんがわが子のために考え出したものだという。「リーマンショックがあったとき、私は専業主婦だったんですね。主人の仕事がダメになって、文字どおりの一文なしになりました。子どもがそのとき小3と幼稚園で下の子の幼稚園の月謝2万5,000円もついに払えなくなった。どうやって生きていこうと……しかもそんなとき、長男が『塾に行きたい』って言いだしたんです」
’08年、山中さんは一念発起し、小さな部屋を借りて自ら学習塾を経営することを決意した。「自分の子どものための塾なので、よそのような合格率を重視するのではなく、“自分の考えや意見を伝えられる子”を育てられるような塾を作ろうと思いました」受け身でテレビやネットから流れてくるニュースを見ているだけでは、自分の言葉で何も語ることはできない。
「そんな子を育てるために、どんなことをしてあげたらいいか。それにはまず、本をたくさん読ませることによって、基礎学力や語彙力、知識を増やさないといけない。そして時間を無駄にしないためには、量だけでなく速く読ませることも重要だと思いました。そして編み出したのが瞬読でした」
瞬読によって、子どもたちの判断力や思考力が磨かれていくことを山中さんは発見。
「そして4年前、その力を磨くことに特化した教室を始めました。はじめ集まったのは興味を持った8人。その子たちに瞬読のトレーニングを1カ月間やってもらったところ、全員が8倍から10倍の量を読めるようになったんです」瞬発的な空間把握能力や判断力を磨きたいスポーツ選手、長ゼリフや小噺を覚える能力をつけたい俳優や落語家からも、瞬読は注目を集め始めているという。
「瞬読の根幹にある『インプットしたらアウトプットする』ことは、小学生から高齢者まで、すべての人に効果があります。病院の待合室で雑誌を手に取ったら、何でもいいから記事をひとつ覚えて帰ってみてください。芸能記事を覚えたならそれを友人や家族に話してみる。レシピを覚えたなら、家で料理してみる。それがアウトプットになり、認知機能を向上させるのです」
日常生活を送るなかで、インプットとアウトプットを実践する場はそこかしこにある。“瞬読トレ”で、認知症とはオサラバ!
「プロテイン=筋肉をつけるためのもの」。ほとんどの人はそんなイメージを持っているかと思います。でも、プロテインを摂るメリットはそれだけではありません。プロテインの原料であるタンパク質は、カラダのなかで多くの役割を担うものであり、筋トレでカッコいい見た目をつくるだけでなく、カラダの内側の調子を整えてくれる働きを持っているのです。
食生活の乱れや間違ったダイエットでタンパク質が不足すると、体力、美容、免疫力などさまざまな問題が起こる可能性があります。そこでぜひ、プロテインの効果をよく知り上手に活用してください。
■筋肉がつくだけでない。プロテイン摂取のメリット
ではさっそく、プロテインのメリットを紹介していきます。
●メリット1 痩せやすいカラダになる
筋肉が増えると基礎代謝が増えることは知っていると思います。基礎代謝とは、人が1日寝ているだけでも消費されるカロリーのこと。筋トレしてプロテインを飲むことで筋肉をつければ、1日の消費カロリーのベースがアップするので、痩せやすく、太りにくいカラダが手に入ります。「ひたすら食べない」「主食は食べない」といったような間違ったダイエットをするのではなく、筋肉をつければ代謝がよくなり、体質が変わることをしっかり理解しましょう。
●メリット2 美容にも役立つ
カラダのあらゆる組織はタンパク質からできています。もちろん、肌や爪、髪の毛といった組織もタンパク質からできているのです。そのことを前提に置くと、タンパク質不足は美容の面から見ても避けたいのはあきらか。「朝は忙しいから食べない」というような習慣がある場合、朝はプロテインだけでも摂取しましょう。1日に必要なたんぱく質を補うことで、美容においても効果を発揮します。
●メリット3 体力や免疫力低下を防げる
新型コロナウイルスの流行もあり、「免疫力」というキーワードが注目されている昨今ですが、カラダにウイルスが入ってきたときに働く免疫細胞もタンパク質からできています。また、タンパク質不足は体力や免疫力の低下につながるだけではなく、精神を健康に保つホルモンの分泌にもかかわっています。心身を健康に保つためにも、タンパク質不足にならないようにプロテインを活用してください。
■下腹部を引き締める「ニートゥチェスト」
今回の家トレは、下腹部を鍛えてポッコリと出たお腹を解消するニートゥチェストという種目です。いわゆるシックスパックと呼ばれる筋肉は、腹直筋というお腹の正面についた縦に長い筋肉を指します。バランスのいい腹筋をつくるなら、上部と下部に狙いを分けて鍛えると効果的。ニートゥチェストは腹直筋の下部に刺激が入り、引き締まったウエストをつくることができます。「食欲の秋」を迎え食べ過ぎてしまうことも増えてくる時期だからこそ、下腹部を意識的に鍛えましょう。
■美肌をつくる簡単ビタミンCレシピ
カラダのなかのタンパク質の1/3は、コラーゲンとして存在しています。そのコラーゲンは、ハリがあるきれいな肌のために欠かせない成分。コラーゲンの材料はタンパク質を分解してできるアミノ酸ですが、アミノ酸からのコラーゲンの合成に必要なのがビタミンCです。プロテインを使ってタンパク質を意識するなら、ビタミンCも積極的に摂りたい栄養素のひとつです。野菜のなかでもビタミンCが非常に多い、パプリカを使った簡単レシピです。
【パプリカとズッキーニのマリネ】
●エネルギー190kcal タンパク質2g
●使用する食材 パプリカ1個、ズッキーニ1/2本、オリーブオイル大さじ1、酢大さじ1、塩こしょう適量
1.パプリカ、ズッキーニを一口大に切り、オリーブオイルで軽く炒める。
2.1をボウルに移し、酢、塩こしょうを加えて味を整える。粗熱が取れたら冷蔵庫で1時間くらい冷やしてできあがり。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/櫻井健司
西巻草太
にしまきそうた 1988年、秋田県生まれ。管理栄養士、パーソナルトレーナー。中学校卒業後、二葉栄養専門学校に進学し調理師免許を取得。その後、高卒認定試験を経て東京聖栄大学管理栄養士学科に進学。管理栄養士国家試験に合格。卒業後は委託給食会社に勤務し、病院給食の調理業務を経て、2013年より城東社会保険病院(現JCHO東京城東病院)栄養科に勤務。2015年より、JCHO東京山手メディカルセンター栄養管理室に異動し、入院患者の栄養管理と外来栄養指導に従事する。主に生活習慣病の栄養指導を担当していくなかで、病気になる前の正しい食事習慣の構築、カラダづくりの必要性を痛感し、2018年よりパーソナルトレーナーとして活動。現在は、渋谷『Chicken Gym』に勤務している。主な取得資格は、管理栄養士、NSCA-CPT、静脈経腸(TNT-D)管理栄養士、調理師、食生活アドバイザーなど。
「体は意識して鍛えることができますが、頭の中はなかなか難しい。脳を鍛えるためには、多くの情報を『インプット』し、その情報を自分自身の知識として『アウトプット』することが重要になります。『瞬読』は、その最善のトレーニング方法。しかも、1日2〜3分、バラバラに並べられた文字を見るだけです!」
そう語るのは、一般社団法人「瞬読協会」代表理事の山中恵美子さん(48)。「SSゼミナール」「APマスターズ」など全国で30校以上の学習塾を経営する株式会社ワイイーエスの社長も務めている。山中さんが出版した『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術 瞬読』(SBクリエイティブ)は、10万部の大ヒットを記録している。では、この「瞬読」とは、いったいなんなのだろうか。
「高い理解度を保ったまま、短時間で本を読めるようになるためのメソッドを瞬読と呼んでいます。マスターすれば、ほんとうに1冊を3分で読むことができるようになります。しかし、これは“速読”とは違うのです。瞬読をするメリットは、“右脳の潜在能力”を引き出すことができる点にあります。これによって『記憶力』や『問題処理能力』の向上をはじめ、『創造力』なども高められる
空間把握や、芸術性、ひらめきをつかさどる右脳。アーティストなどは右脳を使うことに秀でているとされるが、ふつうの主婦にとっても右脳を鍛えることには大きな意味があるという。
「右脳を鍛えることで、暗記力や集中力が高まる。すると、“直感”が冴えてくるんです。私たち人間は一日中、判断や決断をして生きています。あれかこれどちらを食べるか、あの人とこの人どちらに話しかけようか……というふうに。そしてその判断の基準は、直感にもとづいていることがほとんどです。右脳がしっかり鍛えられていて直感が冴えている人は、決断を迫られたときに、正しい選択ができるようになる。つまり瞬読のトレーニングは、即時的な判断が求められる場面で大きな力を発揮するので
瞬読のメリットは、それだけではない。
「瞬読のミソは、『インプット』と『アウトプット』。人間の頭は、アウトプットしたことはなかなか忘れないようになっています。テレビをただ見る(インプット)より、その番組についての話を友達とする(アウトプット)ほうが、番組の内容もはっきりと覚えられますよね。これを繰り返すことで、認知機能の向上にも一役買うのです。人の名前が覚えづらくなったという人もいると思いますが、このトレーニングを積めばもの忘れなども改善するはずです」
この「瞬読」の原点は、山中さんがわが子のために考え出したものだという。
「リーマンショックがあったとき、私は専業主婦だったんですね。主人の仕事がダメになって、文字どおりの一文なしになりました。子どもがそのとき小3と幼稚園で下の子の幼稚園の月謝2万5,000円もついに払えなくなった。どうやって生きていこうと……しかもそんなとき、長男が『塾に行きたい』って言いだしたんです」
’08年、山中さんは一念発起し、小さな部屋を借りて自ら学習塾を経営することを決意した。「自分の子どものための塾なので、よそのような合格率を重視するのではなく、“自分の考えや意見を伝えられる子”を育てられるような塾を作ろうと思いました」受け身でテレビやネットから流れてくるニュースを見ているだけでは、自分の言葉で何も語ることはできない。
「そんな子を育てるために、どんなことをしてあげたらいいか。それにはまず、本をたくさん読ませることによって、基礎学力や語彙力、知識を増やさないといけない。そして時間を無駄にしないためには、量だけでなく速く読ませることも重要だと思いました。そして編み出したのが瞬読でした」
瞬読によって、子どもたちの判断力や思考力が磨かれていくことを山中さんは発見。
「そして4年前、その力を磨くことに特化した教室を始めました。はじめ集まったのは興味を持った8人。その子たちに瞬読のトレーニングを1カ月間やってもらったところ、全員が8倍から10倍の量を読めるようになったんです」瞬発的な空間把握能力や判断力を磨きたいスポーツ選手、長ゼリフや小噺を覚える能力をつけたい俳優や落語家からも、瞬読は注目を集め始めているという。
「瞬読の根幹にある『インプットしたらアウトプットする』ことは、小学生から高齢者まで、すべての人に効果があります。病院の待合室で雑誌を手に取ったら、何でもいいから記事をひとつ覚えて帰ってみてください。芸能記事を覚えたならそれを友人や家族に話してみる。レシピを覚えたなら、家で料理してみる。それがアウトプットになり、認知機能を向上させるのです」日常生活を送るなかで、インプットとアウトプットを実践する場はそこかしこにある。“瞬読トレ”で、認知症とはオサラバ!
齢による筋力の低下などにより足腰が衰え、自分で生活する機能が低下してしまうロコモティブシンドローム(運動器症候群)。近畿大学生物理工学部准教授の
谷本道哉(たにもと・みちや)さんは、「ロコモ」にならないために必要なのは「筋肉量を増やすこと」だと話します。
100歳まで生きるのが当たり前といわれる長寿時代、高齢になっても、自分の足でどこにでも出かけていきたいですよね。そのために重要なのは、「ロコモ」にならない意識を早いうちから持つことです。
筋トレを始めるのに、年齢は関係ありません。高齢になってからでも、筋肉量はある程度増やすことができます。とはいえ、筋力の衰えは50歳代以降、急速に進むので、今すぐ始めましょう。早ければ早いほど、筋力の低下を食い止めることができます。
※キッチンでは電子レンジの「チン」を待っている間に、掃除のときには掃除機を持ったりタオルを絞ったりしたときに! テキストでは生活の様々な場面で気軽に取り入れることができる“ ついで筋トレ”をたくさん紹介していています。今すぐ始めて筋肉量を増やしましょう。
■『NHKまる得マガジン 毎日テキパキ! お手軽“生活トレ”で快適ボディー』より
「疲労の原因は、現代社会においてずばり “脳”にある」。そう語るのは、LA在住の精神科医、久賀谷 亮(あきら)先生。先端脳科学を研究し、アメリカ神経精神医学会認定医である先生が、著書『ロスの精神科医が教える科学的に正しい疲労回復』をもとに、疲れにくくなる方法を伝授!
心に効く音楽をもっておく
ロンドンのクイーンメアリー大学のホール先生らによる2015年のメタ解析によると、手術前後の音楽が術後の痛みや不安、麻酔の量を減らすとともに、手術への満足度も高めたという結果が出ました。また、うつ病に長年、苦しめられていた人が、抜け出すために“マイ・ミュージック・リスト”を用意し、例えば悲しいときに聴く曲、イライラしたときに聴く曲など…を、そのときどきで聴くようにしていたところ、これが非常に効果があったといいます。音楽でよい気分がもたらされたら、それは脳の負荷を減らすはずです。
スマホのアプリの配列を毎日変える
いつも同じ向きの机で仕事をしていると、脳はその環境を覚えてしまい、いつしかその環境に合った動きをするようになります。すると生まれるアイデアがワンパターンになったり、脳のざわつきが生まれやすくなります。ルーティンの行動をとるとき、私たちの心はぼんやりしてしまい、ムダな思考が生まれてしまうのです。私のおすすめは、スマホのアプリの配列を変えること。そのほか、靴の中にコインを入れて1日過ごしたり、時計を右手につけてみるのも効果的でしょう。
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100%笑顔になれるネタをもっておく
楽しいと思う瞬間の笑顔やジェスチャーをすると、ネガティブな感情から解き放たれ、陽気な気分になれます。そうして、ネガティブな考えに支配されないよう、記憶や感情を操作することをおすすめします。心が落ち込んだときのために、くすりと笑えるようなネタをつくっておきましょう。
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試合に負けたスポーツ選手のインタビューを見る
1日5万個にも及ぶ考えの8割が、ネガティブだと言われています。カーネギーメロン大学のシーフ先生らは、HIVテストを受ける50人の被験者に、もし陽性だったらどれくらい辛いかを予想させる実験を行ったという。実際に陽性だった人については、結果から5週間後、辛さのレベルを予測値と比較しました。すると、私たちは実際の辛さよりも2~3割厳しく未来を予測していることがわかりました。この“不安”こそが、脳を疲弊させているのです。
普段から楽観性を高めるためには、スポーツ選手を参考にして。スポーツ選手が試合に負けた後の、楽観的で前向きなインタビューを見てください。見終わったら、悲観的に考えている自分の状況をその選手と照らし合わせ、状況を捉え直してみることをおすすめします。紙に書いて比較してもよいかもしれません。
マラソンをする
人から嫌われたり、拒絶されると心が痛みます。他人の拒絶に強くなる方法は、“慣れ”です。ハリウッドのエージェントの方は「プロモーションをしようにも、9割9分は断られる。でもいつかそれに慣れるんです。でないとやっていけない」と言っていました。人は拒絶による痛みを、脳の背側前帯状皮質で感じています。身体の痛みを感じるときに反応する場所でもあり、耐久性競技のアスリートは、この場所の働きが強いといわれています。
つまり、マラソンをしてこの部位を鍛えたら、人から拒絶されたときの辛さも乗り切れる可能性が上がります。
スマホやパソコンで日々酷使されている目。見えづらい、ぼやけるなどの症状があっても眼科では「異常なし」と診断されることも。もしかしたら、原因は眼球以外の場所にあるかもしれない。
「神経眼科」という言葉を目にしたことがあるだろうか。これは、視覚機能を眼球だけではなく脳の機能とともに考えるもので、一般眼科に比べると新しい領域といえる。眼科医の若倉雅登氏は、神経眼科を学ぶ中で、精神面も含めて眼科臨床を考えていくべきだと気付き、目の心身医学といえる「心療眼科」を提唱。神経眼科、心療眼科の第一人者として診察にあたっている。
その若倉氏が、現代人の目の不調を脳や神経、心の問題と絡めて解説するのが『心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因』(集英社)だ。
視野や色覚など、見え方を構成する要素は眼球だけで完結しているのではない。眼からの信号が脳に伝わり、視覚に関する大脳の機能が働いて初めて実現するのだ。しかし、一般の眼科では視力などの数値や眼球だけに注目し、数値や画像に示されない患者の感覚に寄り添ってこなかったと若倉氏は指摘する。
たとえば、見え方に不具合があっても眼球に異常がないなら、「神経眼科の立場から症状を見直すべきだ」と若倉氏は語る。
しかし、神経眼科的スタンスで患者を診ることができるのは眼科医全体のうちの1割にも満たないそうだ。不調の原因がわからず、眼科を転々とした末に、ワラにもすがる思いで若倉氏の神経・心療眼科外来に行きつく患者もいる。
これは、まばたきがうまくできないなどの運動障害、感覚過敏、不眠や抑うつといった精神症状の三要素が絡み合う神経疾患で、原因は大脳の神経回路の不調にある。眼科で検査しても眼球に異常は見られないため、「ドライアイ」などの誤診で片づけられる患者が少なくないという。
ドライアイや原因不明の眼精疲労、加齢性眼瞼下垂と診断されている人は、別項の7項目のうち一つでも当てはまれば、眼瞼けいれんである可能性が高いそうだ。
「『眼科で異常なしと言われていたけれど、本書を読んで、このような症状が自分だけではないことがわかった』といった反響がありました。眼球はあくまでも視界の入口であり、脳が重要な役割を果たしていることを知っていただきたいと願っています」(編集担当の集英社・東田健さん)
本書には「白内障手術をしたら見えなくなった」という例も。ある患者は、術後、視力は改善したものの視野の異常を訴えたという。これは、手術によって視覚の環境が一気に変化し、視覚情報の質が変わったために起こる。情報を受け取る側である脳も徐々に変化に対応するが、適応するのに時間がかかるケースもあるそうだ。
視覚の奥深さを教えてくれる一冊。索引つきで、気になる症状から調べられるのも便利だ。(井田峰穂)
■ドライアイにはない「眼瞼けいれん」の特徴
(1)目を細めてまぶしそうな表情をする
(2)薄目で下向きの姿勢がラクだと気付いている
(3)素早い連続的なまばたきができない
(4)薄暗いところでもまぶしさを自覚する
(5)両目を開けているより、片目をつぶるとラク
(6)ものや人にぶつかりやすい
(7)突然、金縛りになったように目が開かなくなる
病院の待合室や休憩所で、見知った顔と何度も挨拶をしたり、処方されて飲み続けている薬について語り合ったり、という経験をしたことはありませんか? また、そういった“常連さん”たちが談笑しているシーンを目にしたことはないでしょうか?
そんな現実は、彼らがその病院に通いながらも、病気が治っていないことを意味します。治れば病院に行かずに済み、常連と顔を合わせることがなくなるからです。
「1年経っても2年経っても、患者さんのメンバーが変わらない。これは、その病院の無能さを恥ずかしげもなく世間にアピールしているにほかなりません」
そう一刀両断するのは、8月に『西洋医学の限界 なぜ、あなたの病気は治らないのか』(アスコム)を上梓した、東大大学院医学部客員研究員を務める岡部哲郎医師。同書にて岡部医師は「対症療法の西洋医学には限界があり、治らない病気はたくさんあります。とくに薬を使った治療に関しては不得意分野です」と鋭く指摘しています。
岡部医師は東大病院の研究室で最先端の抗がん剤研究・開発に約20年間携わったあと、西洋医学に限界を感じ、中国伝統医学の台湾人名医に師事した異色の経歴の持ち主。西洋医学と中国伝統医学の修学・研究に専心し、両者の特徴や持ち味、長所・短所を熟知した岡部医師だからこそ、その言葉は説得力に満ちあふれています。
これ以外にも同書には興味深いトピックスがぎっしり。岡部医師自身の臨床経験や、学会で発表された海外の研究チームのデータなど、豊富なエビデンスをもとに「その理由」について丁寧かつわかりやすく解説してくれています。
また、「食品はすべて薬である」や「糖尿病にはスイカがいい」など、病院に行かずに自宅でもできる食事療法や、健康に対する心得・実践すべきことにも言及。思わず「え? 知らなかった!」と声がもれそうな驚きの事実が満載です。
この一冊が、みなさんが持っている医療に対する常識を変えるかもしれません。
◇
・80歳を過ぎると血圧を下げても死亡率は下がらない
・女性は「コレステロール値」が高いほど長生きする
・花粉症の薬には失明のリスクがある
・鬱病は「体の病気」ゆえに漢方ならば治すことができる
・精神安定剤は、いずれあなたを認知症にする
病院は愉快な気持ちで行くところではありませんが、とりわけ「行きたくないな~」と気が重いのは歯科医院。でも、その歯科医院において、逆にあなたのほうこそ「こんな患者さんには来てほしくないな~」と思われているとしたら……!?
歯科医院には日々いろんな患者さんが訪れますが、なかには病院側にとって“ちょっと困ってしまう”方もときどきいるようです。
そこで、ひろた歯科医院(福岡市早良区)の院長・廣田健先生に“歯医者に嫌われちゃう患者の特徴”について率直に語っていただきました。あなたは、以下の3つの特徴に当てはまっていませんか?
■1:体臭のきつい人
「とても足の臭い人がいるのです。たとえば、ブーツで来院されたキレイなお姉様の足が臭ったり、サラリーマンの足から酸っぱい臭いが漂ったり……。
それから、お風呂に入っていないような独特の体臭が、待合室から診察室まで臭ってきたというケースも。他の患者さんにも迷惑になるので、ちょっと気を遣ってほしいですね」
自分ではなかなか気づきにくい体臭ですが、汗をかきやすいこれからの季節には特に注意したいもの。また、体臭を香水でごまかそうとすると、かえって“スメハラ加害者”になりかねないので、香水の使用は避けましょう!
■2:他の歯科医院の悪口を大声で言う人
「受付カウンターで、今まで通院していた病院名を出して“●●歯科はヤブ”と大声で悪口をまくしたてた患者さんがいました。
当院でも納得しなかったら他所で言いふらすのだろう……と思うと診察するのが不安になってしまいます」
もちろん、歯科治療でセカンドオピニオンを求めるのはアリでしょう。しかし、これまでお世話になった医院の悪口を言うようでは、別の医院でも信頼関係を築きにくいかも……。
どういう症状でどういう治療を行ってきたのかを、なるべく主観をまじえずに説明するようにしましょう。
■3:歯科治療以外を指摘してくる人
「治療内容や処置内容では何も言われないのですが、“床の隅が汚れている”、“カウンターに物を陳列しすぎ”、“女性スタッフの化粧が濃い”など、重箱の隅をつつくようなご指摘をいただくことがあります。
小声で指摘してくださるならよいのですが、そういった方は大抵が“大声”。ご指摘いただくのはありがたいのですが、もう少し小声で言っていただけるほうが……」
受付カウンターや待合室で大声で話すのは、他の患者さんにも迷惑ですよね。しかも、内容がクレーマー的なものでは、余計に気分が悪いはず。
わざわざ揚げ足をとるような真似はやめましょう!
以上、“歯医者に嫌われちゃう患者の特徴”3つをお届けしましたがいかがでしたか? 治療は医師側と患者側の信頼関係があってこそ、スムーズに進むものといえるでしょう。
歯医者さんやスタッフの方から「モンスター患者キター!」なんて思われないように、くれぐれも最低限のマナーは守るようにしたいものですね。
世のお父さんと腰痛の関係は、女房以上に強い。もはや切っても切り離せない間柄だ。しかも、女房は女房で、ちゃんと腰痛と付き合っている。腰痛の攻撃に身もだえしたりしている。腰痛は悪いヤツだ。
そんな腰痛を、「水を飲むだけで撃退できる」と言い切る本が出た。
『1万人を診た治療師が教える 腰痛の9割は水で治る』(高橋洋平著、梅津拓史監修、かんき出版刊)という、じつにわかりやすいタイトル。著者は首都圏で複数の整骨院を経営する柔道整骨師。監修者は心臓血管カテーテルの症例が2000件を超える循環器科医である。
2人が、とにかく「腰痛を治したければ水を飲め!」と指南する。
成人の体の60%を占める水は全身を巡って栄養分を運び、老廃物を排泄している。水が不足すれば、体温調節や、体液の濃度調節などもダメージを受け、体のあちこちに問題が生じる。
腰痛もその一環として起きる症状。水分不足から来る筋肉のコリが、腰痛を引き起こす原因にもなると説いている。
本書によると、人は1日当たり大小便として約1・6リットルの水分を体外に出すほか、汗や呼気など「目に見えない排泄」を含めると、その量は約2・5リットルになるという。
一方、入る量はどうか。これがうまくできていて、飲み物や食事から摂取する水分量も平均して2・5リットル。つまり「差し引きゼロ」。
過不足ないなら安心だ-と考えるのは早計だ。金融庁の報告書が示した通り、年金だけでは「豊かな老後」は望めない。自分の努力で蓄えないと、体の水分だってあっという間に枯渇する。そうなれば骨にダメージがおよび、腰痛は悪化する。やっぱり「豊かな老後」は遠ざかっていくのだ。
「水は万能薬」と語る著者は、1日あたり「体重×30ミリリットル」の水を飲むことを推奨する。70キロなら2・1リットル、80キロのお父さんなら2・4リットルの水を意識的に飲むことが重要としている。そうすることで、体内の水分量が高まり、腰痛だけでなくさまざまな臓器の健康にも役立つという。
ただし、同じ飲むのでも「まとめ飲み」や「一気飲み」はNG。1回200~250ミリリットル程度の水を1日10回ほどに分けて飲む。ちなみに飲む水はミネラルウオーターでなくても構わない。最初は炭酸水から始めてもいいし、水道水だって構わない。水道水というと、塩素やらトリハロメタンといった穏やかならぬ物質をイメージする人もいるが、「人間が一生涯にわたって毎日2リットルの水道水を飲み続けたとしても、健康に影響を与えることはない」と著者らはいう。
骨の新陳代謝は他の臓器より遅い。胃腸は5日、心臓は20日、皮膚が28日、筋肉が60日なのに対して、骨は約90日もかかるという。積極的に水を飲み始めても効果が出るまでに数カ月の日数が必要だ。
ならば脱水症状になりやすい今がちょうど始めどき。半年後に腰痛の症状が軽減すれば快適な新年を迎えられるかもしれません。(竹中秀二)
■「腰痛リスク」チェックリスト
□朝起きて1杯目の飲み物はお茶
□水よりもコーヒーをよく飲む
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□コンビニ弁当をよく食べる
□オレンジジュースやサラダを欠かさない
□腰痛用のサプリを飲んでいる
□体が硬いのでストレッチをしている
□週に1回以上ジムで筋トレをしている
□姿勢に気を付けていつも胸を張っている
□お酒、たばこがやめられない
□サウナが大好き
□靴がすり減りやすい
□ノートパソコンやスマホを使う
□よく足がつる
□寝違えやすい
□リビングの角にテレビがある
※7つ以上該当=腰にとても悪い生活、4~6つ該当=腰痛予備軍、3つ以下=腰痛のリスクは低い
★ゲスト 貫井陽子・東京医科歯科大学准教授(感染制御部)(2)
先月22日、川崎市で今シーズン3度目のインフルエンザ流行が発表された。高齢者や免疫力が低下している人の場合、感染すると肺炎を伴うなど重症化することがある。食中毒も気になるこの季節、すべての感染症対策として、まず徹底すべき「手洗い」について知っておこう
朝田 感染症予防といえば「手洗い・マスク・うがい」ですね?
貫井 まず徹底していただきたいのは手洗いです。外出した後、お食事の前にしっかり手洗いをするのが感染予防ではいちばん大事です。手のひらについたウイルスや細菌は1時間くらい生きていますので、その手でドアノブやつり革などを触ると、次の人がどんどんもらってしまいます。
朝田 外出した手には常に何か付着していると思って間違いないですね。おすすめの洗い方は。
貫井 せっけんをつけて30秒、しっかり流水でもみ洗いをすれば手に付着した細菌数は100分の1に減ります。手洗い後は清潔なハンカチやペーパータオルでしっかり水気を拭き取りましょう。せっけんは普通のもので大丈夫です。手洗いが難しいときは携帯タイプの手指消毒薬も効果的です。手指消毒薬は30秒間しっかり使うと細菌数が1万分の1に減るといわれています。
朝田 マスクとうがいについてはどうですか?
貫井 ウイルスは小さいため、私たちが使っているような普通のマスクを通過してしまいます。マスクはくしゃみや咳(せき)でウイルスを拡散させないために、症状のある人が付けるのが本来の目的です。
朝田 「咳エチケット」が基本ですね。うがいはどうですか?
貫井 今のところ、うがいだけで感染症が防げたという十分なエビデンス(医学的根拠)はありません。
朝田 夏場の感染症対策で注意すべき点を教えてください。
貫井 ジメジメした時期には食中毒が多くなります。手洗いはもちろん、まな板や包丁など調理道具の消毒と乾燥をしっかりと。お料理の際には、火をきちんと通すことも大事です。(協力・東京医科歯科大学)
■朝田隆(あさだ たかし) 1982年、東京医科歯科大学卒業。メモリークリニックお茶の水理事長、東京医科歯科大学医学部特任教授、医学博士。数々の認知症実態調査に関わり、軽度認知障害(MCI)のうちに予防を始めることを強く推奨、デイケアプログラムの実施など第一線で活躍中。『効く!「脳トレ」ブック』(三笠書房)など編著書多数。
■貫井陽子(ぬくい ようこ) 東京医科歯科大学医学部附属病院感染制御部長。感染対策の教育、耐性菌防止対策、抗菌薬適正使用の推進、新興・再興感染症対策などを通じて安全で良質な医療を提供する環境を守る。研究領域は耐性菌の疫学、細菌学的解析など。
2万人もの患者と一緒に悩んだ医師だからこそわかる、意外な患者の心理も描かれている。
たとえば、がんと診断され、立ち直れないと悩んでいたある患者が「治るかもしれない」と思えたきっかけは、“些細なこと”だった。町内放送で流れてきた「熊が現れて畑を荒らしました。ご注意ください」というアナウンス。その日の日記に、こう書かれていたという。
「熊だってドングリが少ないと山から下りてくる。熊も生きたいんだろうなあ」
奈落の底を知った患者の数々の言葉や考えが登場する。それらはきっとがんと向き合い生きるためのヒントを与えてくれることだろう。(田幸和歌子)
■佐々木医師が勧める奈落の底から這い上がる法
(1)気持ちの整理…書いたものを誰かに見せる、シュレッダーにかけるなどは、自由。その時その時で書くことが、心を少し楽にしてくれる
(2)泣ける、話せる相手を見つける…泣ける相手、あるいは何でも話せる相手がいることは、心を外に出せて楽になれる方法の1つ
(3)死の問題は、頭で考えても決着がつかないから「体に聞く」…自分の人生を振り返るようにして、過ごした場所を順々に巡り、人生を再体験する。そうすることで死の恐怖が乗り越えられる
(4)奈落に日常を持ち込む…細々としたやらなければいけないことに囲まれた日常を維持することで、死という非日常を乗り越える、あるいはやり過ごす
人の脳は何かに対して、けなしている時はドーパミンという神経伝達物質が出なくなるので冷静な思考に戻れるのだ。こうした意識の持ち方をすることで浪費を防ぐ一方で、リッチ脳の神経回路にするには、「金額に敏感になること」が重要だと説く。
毎朝財布の中身を確認する、節約に成功したら大げさに喜ぶ、家計簿アプリで支出を見える化し、クレジットカードやネット銀行の有効活用などで、お金が貯まることの快楽を脳に体感させることで、リッチ脳を育てていくのだ。
「特にクレジットカードは重要です。国はキャッシュレス化を推し進めており、今後は「現金の見えない化」が進みます。クレジットカードは、金額に鈍感なビンボー脳の人だと使い過ぎて損をする。いまこそリッチ脳に切り替えておく絶好のチャンスなのです」
令和に変わるこのタイミングで、頭の中もガラッと変化させてみてはどうだろう。(竹中秀二)
■菅原式“リッチ脳”のつくり方(抜粋)
□欲しいものを手にしたら、いったんレジから遠ざかる
□レジに行く前に全く関係ないことを考えて、その商品から意識を遠ざけてみる
□周囲に流されずに、「自分は何が欲しいのか」を明確にする
□毎朝財布の中の金額を確認する
□節約に成功したらアクション付きで喜ぶ
□ひと月に使える金額を決める
□「固定費」を見直してみる
□クレジットカード払いにして「ポイント」を有効利用する
ふだん、自分の大便をじっくり観察し、状態を把握している人はどれだけいるだろうか。つい真剣に向き合うことを避けがちだが、たかがうんちと侮ってはいけない。今回は、大便について大まじめに考えた1冊を紹介する。
その本とは、『うんちはすごい』(イースト・プレス刊)。著者はNPO法人日本トイレ研究所の代表理事を務める加藤篤氏。災害時のトイレ調査や学校、街中のトイレ改善に取り組むトイレと排泄(はいせつ)のエキスパートだ。
「人生をトイレとうんちに捧げた著者による楽しくてためになる話が満載。きっとうんちのイメージが変わるはずです」
担当編集者の高部哲男さんがそう胸を張るだけあって、本書には便の形状の分類から、災害時のトイレの知識まで膨大な情報が詰まっている。
便の悩みとして代表的な便秘。女性に多いイメージがあるかもしれないが、男性にとっても身近な病気だ。とくに60歳を超えると男女差が縮まっていき、80歳以上では男性のほうが多いという。
便秘には国際的な基準(別項参照)があり、少なくとも週3回以上は便をしたほうがよいということになる。
大人の便秘対策法も紹介されている。それによれば、「排便姿勢は前かがみ35度」がベスト。ふだん、直腸は恥骨直腸筋という筋肉に引っぱられて「くの字」に曲がっている。排便時は、前傾姿勢をとることで直腸と肛門がまっすぐになって便を出しやすくなるという。前傾姿勢を取らず、直腸が「くの字」の状態のままではそもそも便を出しづらい。便が分割されて腸のほうに戻ってしまい、残便感につながる可能性もある。
肛門の開閉の仕組みもおもしろい。おならだと思ってこっそり肛門を緩めたら、便が出てきて大惨事に…という経験はないだろうか。
肛門は、内肛門括約筋と外肛門括約筋という2つの筋肉で囲まれており、前者は自分の意思で動かせないが、後者は自分の意思で収縮することができる。直腸に便やおならが移動してくると、まず内肛門括約筋が緩み、肛門近くまで移動させる。ここで、「形はあるか、液状か、おならなのか」を識別。もし、我慢しなければならない状況なら外肛門括約筋をがっちり閉じる。まれに肛門が判断ミスをすると“惨事”につながるわけだ。
また、病気などでこれらの筋肉が弱った場合にも便が漏れてしまう可能性があり、その治療法にも言及している。他にも、目からウロコの情報が満載。実は、トイレットペーパーには裏表があることをご存じだろうか。表と裏では肌触りが違う。ペーパーは、エンボス加工と呼ばれる細かいウエーブによって表面が凸凹になっており、肌触りがよい凹面がロールの外側に来るように巻いてあるのだという。つまり、外側が表となり、こちらで拭いたほうがお尻も快適ということだ。
トイレに行くのが楽しくなりそうな1冊。目をそらしてきた自分のうんちと向き合ってみては。(井田峰穂)
■「便秘症」の診断基準(次の6項目のうち2項目以上を満たした場合)
□排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある
□排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便
□排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる
□排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
□排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要
□自発的な排便回数が週3回未満
※『慢性便秘症診療ガイドライン』(編集:日本消化器病学会関連研究会、慢性便秘の診断・治療研究会)から
【医者も知らない医学の新常識】
だいぶ前に男脳と女脳のような本が、ベストセラーになったことがありました。男女の脳には違いがあり、それが性別による性格などの違いにつながっている、というような主張でした。確かに性差が脳の形や機能に影響を与えていることは事実ですが、研究結果はまちまちで確実といえるような知見がないのが現状です。これまでの研究は主に同じ年齢で男女の脳を比較したものでした。
それでは、脳の老化には男女の差があるのでしょうか? 女性は男性より長生きですから、脳寿命も長いということは想定されます。一方で認知症は女性に多いというような報告もあります。このことからは、脳の老化は女性の方が早い、というような想像も出来ます。
果たして実際はどうなのでしょうか? 今年の米国科学アカデミー紀要という科学の専門誌に、年齢と脳の男女差についての興味深い論文が掲載されています。ここでは、PET(ペット)という脳の代謝を測定出来る検査を活用して、脳年齢の男女差を比較検証しています。脳はブドウ糖を栄養として活動していますが、その取り込みの力は年齢とともに低下していきます。それを利用して脳年齢を計算しているのです。
その結果、脳年齢は平均で3.8歳男性より女性が若い、というデータが得られました。この差は20代で既に認められていて、脳の若さは思春期には既に決定されていたのです。脳の若さは女性に分があるようです。
(石原藤樹/「北品川藤クリニック」院長)
「泣いたら負け」「涙を流すのはみっともない」――。そう信じ、どんなにつらく苦しくても人前で表情を変えずにこの一年間耐え忍んできた人も多いのではないか。そんな人は年末休みの間に一度くらい声を上げ泣いてはどうか。涙はストレスを解消するだけでなく心と体を元気にしてくれる。
「笑いは健康に良いといわれていますが、泣くことはそれ以上の効果があるとの報告があります」
こう言うのはサラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長だ。
笑いの効果については大阪国際がんセンター(大阪・中央区)が吉本興業などの協力を得てがん患者を対象にした本格的な実証研究を行うなど、多くの研究が進んでいる。その「笑い」より「泣く」方が体に良い、とはどういうことか。
その根拠のひとつとされているのが東邦大学医学部の有田秀穂名誉教授の研究だ。
「日本薬理学雑誌」(2007年)に発表した論文によると、「泣くビデオ」「笑いのビデオ」などを各30分見せて、前頭前野の血流変動などを調べたところ、笑いは、泣きに比べて血流変動の程度が弱く短時間であった。その後の心理テストから「号泣」は脳全体をリセットし、スッキリさせる効果があったが、笑いは元気にはしてもそこまでの効果は得られなかった。
「つらい、悲しいなど感情が揺れると、その刺激が脳の中の目の奥にある視床下部に伝えられます。そこは自律神経の司令塔で、緊張や興奮を促す交感神経とリラックスや安心を促す副交感神経のバランスを取り内分泌機能も調整します。視床下部が刺激されると副交感神経が優位になり、その働きで涙腺が刺激され涙が出るのです。つまり、泣くという行為は交感神経が優位の緊張した状態から、副交感神経が優位のリラックスした状態に一気に変わったということなのです」(林院長)
これまでやったことがないことに挑戦すると脳の神経細胞の新しい回路ができ、脳の老化対策になることは、複数の研究で明らかになっている。そこで、日常的にできる方法として「脳活顔ヨガ」を取り入れてはどうか?顔ヨガ講師として注目を集める間々田佳子氏に話を聞いた。
顔ヨガとは、顔の筋肉を効率よく鍛えて若々しい表情へと導くものだ。
「日本人は一般的に顔の表情筋を20%ほどしか動かしていないといわれています。顔ヨガでは普段使っていない顔の筋肉を動かすのですが、顔ヨガが脳の活性化に役立つと聞き、最近は脳の老化対策としても勧めています」(間々田氏=以下同)
きっかけは、抗加齢・加齢制御医学の研究を続けてきた白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二医師との出会い。白澤医師によれば、脳の中で顔、手指をコントロールする領域は非常に広く、これらを日々活性化させることは非常に重要。そこで間々田氏は、顔の筋肉を動かす顔ヨガに手の動きも加えた「脳活顔ヨガ」を考案した。
「顔と手で異なる動きをするのは難しいのですが、それによって前頭葉、側頭葉、頭頂葉など認知症に関係の深い場所へ刺激を与えられます」
■光トポグラフィー検査でも実証
それを脳の状態を見る「光トポグラフィー」で脳の活性度を調べたのが、諏訪東京理科大教授の篠原菊紀医師。
顔ヨガをすると、脳の活動の上昇を示す赤色になり、脳活顔ヨガで赤い範囲が広がった。つまり、脳の活動範囲が広がった。特に、記憶や情報を一時保管して組み合わせて作業する前頭前野の活性度が上がった。
では、間々田氏イチ押しの3つの脳活顔ヨガを紹介しよう。
【ぐちゃぱーグーパー体操】
①顔のパーツをすべて中心に思いきり集める。同時に、手はグーにして握る(写真A)。
②手を開くのに合わせて、徐々に顔のパーツも開いていく。最終的には手はパーと全開に、顔は目も口も大きく開く。
③グーからパー、パーからグーと7回行う。
【ひ~は~のお祈り体操】
①首に縦筋が入るように口角を左右に引いて「ひぃー」と言う。両手はお祈りのポーズで組む(写真B)。
②口を大きく開いて「はぁー」と力を抜く。同時に両手はパーに開く。
③「ひぃー」「はぁー」の順番で①と②を繰り返すが、その都度、手を組んで上になった親指を1つ後ろへ送るように手を組み替えていく。1往復行う。
【おいしいウサギとカメ体操】
①黒目を右↓左に動かすのと合わせて、舌先を上げた状態で舌も右↓左と動かす。目線に合わせ、片方の親指ともう片方の小指を右↓左と交互に立てる(写真C)。3往復行う。
みなさん、休日はどのように過ごしていますか? 私は、勉強したり、“リア充”っぽいイベントに行ったりして、有意義に過ごしたいと思っているんですが、ついダラダラしてしまっています…。どうすればもっといい時間の使い方ができるのでしょうか。精神科医の樺沢紫苑先生に相談してきました。
ダラダラするのはいいことだった! アイデアを生むためには必要な時間
ライター・森:
先生、ついダラダラしてしまう習慣って、どうすれば直せますか。
樺沢先生:
みなさん疲れているから、しかたないことですね。
それに、ムダだと思ってるかもしれませんが、ダラダラする時間は大事なんですよ。
ライター・森:
え、そうなんですか?
樺沢先生:
まずひとつは、溜まった疲れをとるため。
さらには“何もしてない”ときにも脳は働いていて、役割があるから必要だといえます。
ライター・森:
なるほど。それって、どんなふうに働いているんですか?
樺沢先生:
端的にいうと、情報の整理をしています。
ダラダラしているときの脳内では、「デフォルト・モード・ネットワーク」が活発に働いて、いろんな処理をしているんです。
脳が消費するエネルギーの3分の2以上は、デフォルト・モード・ネットワークに使われていることが最近の研究でわかっています。
何もしていないようで、脳の中では重要な活動が行われている、ということです。
ライター・森:
その“情報を整理する”というのは、具体的にはどんなところに効いてくるんでしょう。
あんまり効果が感じられないと、やっぱりダラダラする時間はもったいないと思えてしまうんですが…
樺沢先生:
インキュベーションです。
ライター・森:
なんですか、それ?
樺沢先生:
インキュベーションは日本語で「孵化(ふか)」のこと。つまり卵からヒナがかえるように、アイデアが生まれることをいいます。
たとえば会社でブレストをしても、すぐにはいいアイデアは出てきませんよね。でも「出ないなー」と、お風呂に入って力を抜いているときなんかにパッと思いつく。
これはデフォルト・モード・ネットワークが、情報を整理してくれたおかげです。
ライター・森:
たしかに、お風呂で記事のネタを思いつくことあります!
樺沢先生:
そう、ダラダラしているときにいいアイデアは生まれるんです。逆にいうと、そういう余裕のない人にはいい発想はできませんね。
スマホを見ながらのダラダラは一番ダメ。寝る前はペットとたわむれよう
ライター・森:
でも、本当にダラダラするだけでいいんですか? なにかコツとか…
樺沢先生:
そもそもぼーっとする時間を意識的に確保できている人が少ないので、まずはそこからですね。ただし、気をつけるべきことがあります。
みなさん「ダラダラしよう」と思うとき、スマホを触ってません?
ライター・森:
そうですね。ついTwitterとか見ちゃいます。
樺沢先生:
それが一番ダメなダラけ方です。
脳は、キャパシティの90%を視覚情報の処理で使っているといいます。つまり、スマホ、パソコン、ゲーム、テレビなどの視覚情報を酷使する娯楽は、ものすごく脳に負担をかけるということです。
ちょっとした休憩時間にスマホを触ってしまうと、本人は休んでるつもりでも、脳にとっては全く休息にならない。むしろ、疲れがたまるので、マイナスと言えます。
ライター・森:
うわあ、そうだったんですか…
樺沢先生:
寝る前のスマホいじりはもっとダメ。
ただでさえ脳に負担がかかるのに加えて、ブルーライトによって睡眠の質が下がってしまいます。すると翌日も疲れが残るので、仕事の質が落ちてしまう。
ライター・森:
悪いことだらけだ…
樺沢先生:
なので、寝る前の1時間は、スマホやパソコンを触るのをやめましょう。
その代わり、視覚以外の五感への刺激が癒やしになります。たとえば音楽を聴くことや、お風呂にゆったりつかるのもいい。
あとは、ペットですね。
ライター・森:
え、ペット?
樺沢先生:
ペットと3分ふれあうだけで、「オキシトシン」という、リラックス効果のある脳内物質が出るんです。
するとストレスが発散して、免疫力も高まり、睡眠も深まります。
ライター・森:
なるほど! 今日から寝る前は、飼っている犬とたわむれることにします。
でも、欲をいうと寝る前の時間もなんとなくもったいなくて、何かのインプットに使いたいと思ってしまうんですが…
樺沢先生:
読書はリラックス効果もあるので、おすすめです。視覚を使いますが、スマホと違って強い光が出ていないので刺激は弱い。ただ、本の内容を耳で聴くオーディオブックだとよりいいですね。
二度寝はほぼ意味なし。休日は普段とは違うことをするのがおすすめ
ライター・森:
寝る前のダラダラについてはわかったんですが、休日はどうすればいいですか?
つい二度寝してしまいがちなんですが…
樺沢先生:
それはとてももったいない時間の使い方です。
実は、ちょっとした二度寝ってほとんど意味がないんですよ。
90分おきに深い眠りのサイクルがくるので、30分寝たとしても非常に中途半端。疲労回復効果は、睡眠の最初のほうでおこなわれますし。
ライター・森:
ただの時間のムダなんですね…
樺沢先生:
目が覚めるということは、睡眠が足りている可能性が高いんです。それなら、目が覚めたときに、スパッと起きてしまった方がいい。
同じ30分眠るなら、昼の仮眠をするべきでしょう。NASAの研究では、26分間の仮眠で、認知能力が34%、注意力が54%向上したというデータもあります。
ライター・森:
おお、昼寝なら効果があるんですね! じゃあ、おすすめの「休日の過ごし方」はありますか?
樺沢先生:
私がおすすめしているのは、「普段は使ってないところを使う」こと。
たとえばデスクワークをしている人は運動をしたり、数字ばかり眺めている人は美術館でアート鑑賞をしたり。
ライター・森:
結局は、そういうことをたくさん休日にしなきゃいけないんでしょうか。
樺沢先生:
いえ、楽しいことでもストレスは少しずつたまっていくので、のんびりする時間もあったほうがいいです。
「ダラダラすることが時間のムダ」という発想はダメ。クリエイティブな活動のため、積極的にダラダラしましょう!
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ぼーっと過ごした休み明けはいつも「もっと生産的な時間にできたはず…」と、後悔していましたが、まさかダラダラすることが重要だったとは!仕事も予定も詰め込まないと不安、というタイプの人も、積極的にだらける時間をつくりましょう! もっといいアイデアが生まれるかも。
毎日お仕事にプライベートにとがんばっていると、避けて通れないのが「ストレス」です。
「何度言っても伝わらない後輩にヤキモキ……」「仕事を押しつける上司にイライラ!」「なかなか思うようにいかない恋愛にモヤモヤ……」。時には「キーッ!」となることだってありますよね。
ストレスを溜めないように、みんなはどんな工夫をしているの? 働く女子に、ストレス解消法を教えてもらいました。
■食べて、飲んで、発散!
・「グレープフルーツなどの香りのいいものを食べています。気分が爽やかになります」(32歳/ソフトウェア/事務系専門職)
・「晩酌。ビールを注ぐ音と泡と金色を見ていると癒されるし、何よりうまい」(30歳/機械・精密機器/事務系専門職)
・「甘いものを食べる。甘いものを食べたら幸せな気分になるから」(26歳/アパレル・繊維/事務系専門職)
ストレスを感じたら、飲食で発散! こんな意見が目立ちました。アラサー女子に人気が高いのは「甘いもの」と「お酒」のようですね。ただし、体重増加にはご注意を。
■汗とともに流す!
・「ジョギング。朝起きて30分走っている。気持ちいいし程よく疲れるので、上司に怒られても適当に流せる」(27歳/電機/営業職)
・「お風呂に1時間以上かける。お風呂が好きなので疲れを洗い流す感じ。浴槽につかりながらキャンドルをたいたり好きなバスソルトを使ったり音楽を聞いたりしている」(33歳/医療・福祉/専門職)
ストレス発散のほか、ダイエットにもよさそうなのがこちらの方法です。飲食に頼りすぎて体型に出てしまうようなら、こちらの方法にシフトしてみては?
■まわりに聞いてもらう
・「夫や友だちや母親に愚痴を聞いてもらって、自分の中に溜め込まないこと」(30歳/金融・証券/秘書・アシスタント職)
・「友人とお酒を飲んで発散する。仕事のストレスは外部に漏らすのが一番」(27歳/建設・土木/事務系専門職)
モヤモヤは、溜め込んではダメ! とにかく人に聞いてもらう! という意見もありました。秘密が漏れないように、聞いてもらう相手は厳選してくださいね。
■とにかく寝る
・「目覚ましをかけずに寝ることが一番のストレス解消になる。寝ている分にはお金もかからないし、やけ食いするより圧倒的に健康的だから。ただし、滅多に叶わない」(32歳/医療・福祉/専門職)
ストレスは、脳が疲れているサイン! 強制的に休めることで、自然と機能回復できるようですね。睡眠の質も重要なので、環境にも気を配るのがオススメですよ。
■「自分」と向き合う
・「ひとりの時間を確保すること。ひとりでいるほうが落ち着くし、人間関係に疲れを感じないようにするためです」(23歳/医療・福祉/専門職)
・「自分を労わる時間、自分を褒める時間を作る。がんばっている自分を自分で褒めてあげるようにすると、ストレスが和らぐから」(28歳/機械・精密機器/技術職)
・「ぼーっとする時間をつくること。何もしないことも大事なので」(29歳/その他/その他)
忙しいと、つい忘れてしまうのがこんな時間。「○曜日の△時からは、ひとりの時間」と決めてしまうのもアリかも……!?
ストレスを感じずに生きていくことは不可能なので、ストレスと上手に付き合っていくことが重要です。自分なりの「ストレスを溜めない方法」を身につけたら、毎日がもっと楽に生きられそうですね。
「20年来の腰痛がキレイに消えた」。誰でもできる「ユルユル体操」とは? 日本人の8割が経験を持つという「腰痛」。常にその症状に苦しんでいる人は1000万人を優に超えると言われており、まさに「現代病」といえる。
そんな腰痛に20年来悩まされてきたある男が、カンタン体操で見事克服。その驚きのテクニックとは――。
「あきらめない腰痛」(太田出版)という本が出版された。著者はお笑いトリオ、ダチョウ倶楽部のリーダー、肥後克広だ。20代前半の若さで重度の腰痛持ちとなり、痛みに耐えながら体を張ったリアクション芸をこなしてきた。
しかし、今年で50歳。そろそろ腰の悩みに区切りをつけておかないと、明るい老後は望めない。
そこで訪ねたのが、東京・お茶の水にある「お茶の水整形外科リハビリテーションクリニック」。院長でこの本の監修も務めた銅冶(どうや)英雄医師は、かつて小紙木曜連載「ブラックジャックを探せ!」にも登場した有名整形外科医。日本における「マッケンジー法」という腰痛治療法の先駆者としても知られる人物だ。
マッケンジー法とは、ニュージーランド人の理学療法士が開発した治療法。薬や手術などではなく、日常に簡単なエクササイズを取り入れることで原因症状を修復し、痛みを取り去っていく。
そんな銅冶医師に助けを求めた肥後の、1年間にわたる治療の流れと症状改善の経過が克明に記されたのが本書だ。
といっても、難しいことをしたわけではない。基本は「腰を反らす」体操。床にうつぶせになった体勢から、両腕を突っ張って状態を反らせる。腰から下は床に着いたままなので、苦痛はまったく感じない。
この動きを10回で1セット。3時間おきに繰り返すのがベース。1畳ほどのスペースがあればできるこの体操は、背筋を鍛えるエクササイズではない。背骨に「反る刺激」を与えることで、椎間板のゆがみを治すことを目的としたもの。
肥後が「楽チンな腕立て伏せみたい」と表現した通り、「治療」という概念とは程遠い、実にユルユルな体操なのだ。
その他にも銅冶医師の指導の下、いくつかのユルユルエクササイズを実践していく肥後は、治療開始から1カ月後には腰痛はもちろん、姿勢の悪さから来る肩こりなどの症状も、かなり軽減していったという。
銅冶医師の勧める体操を継続し(途中ぎっくり腰のアクシデントで半月ほど離脱期間あり)、丸1年後に、無事治療を卒業することができた。つまり、20年以上にわたる腰痛から解放されたのだ。
治療が成功した今、一番うれしいことを肥後に聞くと、「背筋を伸ばして歩けることですよ。そんな普通のことがうれしいですね」。
以前はこりの痛みのため、猫背で歩くのが常だった肥後にとって、この「普通のこと」ができる喜びの大きさは計り知れないものだ。
そんな肥後から、腰痛に悩む小紙読者のお父さんたちにメッセージ。
「みなさんに合った治療は必ずあります。あきらめず、あせらず、ユルーく腰痛を克服しましょう」
薬も注射もコルセットもいらないなら、ちょっと試してみましょうか。 (竹中秀二)
■「こんな人にオススメ! ユルユル腰痛体操」
・過去にいろいろ試したが腰痛が治らない
・椎間板ヘルニアと診断されたことがある
・ぎっくり腰を繰り返す
・腰だけでなく、首や肩にも症状がある
・姿勢が悪いと指摘される
・足の裏にタコやイボができやすい
若い頃なら、ちょっと運動しただけで体重が落ちたのに、年とともに運動の成果が出なくなった…と嘆くお父さんは多い。それは「代謝」が下がっているからかもしれない。まずは食事を見直し、代謝を上げることから始めましょう。
外から取り入れた栄養を使って体の組成成分を古いものと置き換えたり、エネルギーを作り出して運動の原動力にしたりする体内反応を総称して「代謝」と呼ぶ。早い話が、人の体は、つねに代謝によって生まれ変わっているわけだ。
代謝の機能が高ければ生まれ変わるサイクルも早くなるので、肌や臓器も若さを保てる。逆に、年を重ねると代謝が悪くなり、結果として「大して食べていないのに太る」「運動しても体重が落ちない」など、世のお父さんたち共通の悩みにつながっていくのだ。
しかし、あきらめるのは早い。本書を読んで、食習慣の改善に取り組もう。著者は都内で加圧トレーニングスタジオを運営する人気ボディー・ワーカー。
代謝機能が加齢とともに落ちていくことに着目し、従来の低カロリーダイエットとは立ち位置を変え、「代謝を正常に戻すことで得られるダイエット法・健康法」を提唱している。そんな著者が「代謝とダイエット」のメカニズムを詳細に解説したのがこの1冊だ。
代謝を正常に戻す、つまり「代謝を上げる」ために、著者が最重要視するのが「食事」だ。別掲の「代謝を上げる10カ条」を実践することで代謝が上がれば、自然に体は「太りにくい体質」へと変化していくというのだから、試してみる価値はありそうだ。
ちなみに、第8条にある「マゴワヤサシイ」とは、古くから日本食を支えてきた食材の頭文字から取った造語。豆類、ゴマ、わかめ、野菜、魚、しいたけ、芋を指しており、これらの食材を柱にメニューを組み立てていけば、大外れする危険性は少ないということだ。
本書では、過去に流行したダイエット法の「誤り」にも言及している。たとえば、野菜から食べる「食べ順ダイエット」は、代謝のキモとなる肉や魚を十分に食べられなくなる危険性がある。
砂糖の代わりに人工甘味料を使う方法は、甘味への依存を根本的に解決するものではない-など。根本的な体質改善でなければいずれその取り組みは破綻し、リバウンドなどの結果が待っているというわけだ。
「同じ物を食べても、すぐ太る人と太らない人がいる。私は前者で、人生すごく損してるって思うんです。逆に考えれば代謝さえ上げてしまえば後者になれるのかなと」。そう語るのは編集を担当したワニブックスの吉本光里氏。
正しい食事で「太りにくい体」を手に入れよう、というのが本書のコンセプト。同じ食べるなら、代謝を味方にする食習慣を身に付けたいものだ。 (竹中秀二)
■森式・代謝を上げる10カ条
1 食事の50%をタンパク質主体の食品にする
2 食べ物は飲み込まずに噛み下す
3 卵は青天井でとってよし
4 加工食品の「似非(えせ)ヘルシー」にだまされない
5 油を制するものはダイエットを制する
6 米は1食80グラムまで
7 二大肥満食の「小麦」「砂糖」は排除
8 迷ったときは「マゴワヤサシイ」を食べろ
9 空腹は代謝アップスイッチをONにする
10 納豆、バター…発酵食品が体を変える
「6億3072万」という数字を見て、何を思い浮かべるだろう。実はこれ、人生八十年と考えたとき、人が一生で行う呼吸の回数。その大半を無意識に行っている呼吸を、少し意識するだけで健康になれたら…。今回はそんな1冊を紹介する。
帯津(おびつ)良一医師といえば、日本を代表するホリスティック医学の第一人者。「ホリスティック」とは、全体や全身という意味を持つ言葉だ。臓器別に専門性を極めていく西洋医学ではカバーできない領域を補う医療として注目されている。
このホリスティック医学に立脚したがん治療を30年にわたって続けてきた著者だが、それよりさらに長い「40年の付き合い」というのが「呼吸法だ。
ふだん無意識に繰り返している呼吸をちょっと意識的に行うことで、自律神経のバランス調整、自然治癒力や免疫力の向上、さらには精神の安定に寄与する働きを持つ脳内神経伝達物質「セロトニン」を増やすなどの効果があるという。ストレス社会に生きるサラリーマンにとって、聞き捨てならない情報だ。
そんな小紙読者に役立つ呼吸法を帯津氏が懇切丁寧に指南してくれるのが本著だ。
本によると、呼吸法の極意は「吐く」ことにあるという。そもそも呼吸は「吸う」と「吐く」の繰り返しで成立するものだが、「吸う」には緊張が、逆に「吐く」にはリラックスの作用があり、特にストレスを受けているときは、息を吐くことに意識を向けることで緊張感を和らげることがあるというのだ。
また、浅い呼吸や口呼吸は、免疫力を下げるのでNGだ。呼吸が浅いと肺に取り込む空気が少なくなり、体の隅々に送られる酸素も減ってエネルギー不足となる。
鼻には吸い込む空気中のほこりなどを除去する機能があるが、そこを通さず口で呼吸をしていると、汚染物質がそのまま喉や肺に送り込まれることになる。
1回や2回ならどうということはなくても、「6億3000万回」も繰り返していれば、影響が出ないほうがおかしいというもの。
本書で紹介されている呼吸法が効果を示す症状は別表の通り。世のお父さんの誰もがいくつかはまとめて持ち合わせている悩みばかりだが、これらがたった3分間の「意識して行う呼吸」で解消できるなら、試してみる価値はある。
「普段、自然に行っている呼吸の習慣を変えるだけのお手軽な健康法の効果は、今年傘寿(80歳)を迎えてもなお、毎日の晩酌を欠かさず、肉も食している帯津先生ご自身が証明しています」と語るのは、編集を担当した祥伝社の吉田浩行氏。
それぞれの呼吸法は、イラストでわかりやすく解説されていて、会社のデスクでも、あるいは空いている会議室などで簡単にできるものばかり。
覚えてしまえば、お金もかからず、どこででもできる究極の健康法。そう考えると、「無駄な呼吸」がもったいなく思えてきますよ。 (竹中秀二)
■帯津式・「3分間呼吸法」で解消できる症状
ストレス、緊張、プレッシャー、イライラ、集中力の低下、物忘れ、軽い鬱病、睡魔、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、目の疲れ、花粉症や鼻炎、ぜんそく、おならやげっぷ、耳鳴り、首や肩のこり、五十肩、便秘、メタボ腹、慢性的な疲労感、腰痛、足腰の衰え、かぜ、消化器症状、高血圧、不整脈、脳梗塞予防、精力減退やED、がん予防、動脈硬化予防など
長生きが当たり前の時代を迎えたいま、死ぬその日まで元気で過ごすために不可欠なことといえば、ボケないこと。認知症になりたい人などいないだろうが、ならないための取り組みをきちんと実践している人も、あまりいない。そろそろ本気で考えてみてはどうだろう。
質問/日記を付けるなら、次のどちらを選びますか?
A=「ノートに書く」
B=「ブログやSNSを利用する」
この質問のアタマに「ボケを予防するために」と付けたとき、あなたはどちらを選ぶだろう。ペンを持って一字一字をノートに書き込む作業は、何となく脳の活性化につながるような気がするので「A」を選ぶ人は少なくないような気がするが、答えは「B」。
ノートに書く日記は、基本的に「人に見せる」ことを想定していない。一方のブログやSNSは、誰かに読んでもらい、評価してもらうことを前提に書くもの。そこで「いいね」をもらう、あるいは好意的なコメントが書きこまれれば、うれしくないわけがない。
こうした「他者からの反応」が大きな刺激となって、ボケ防止に役立つのだ。
「ボケないのは、どっち?」(米山公啓著、泰文堂刊)は、誰もが日常の中で「何となく選んでいる選択肢」を列挙し、「ボケ予防に効果があるのはこっち!」と教えてくれる便利な1冊。
著者は作家としても活躍する神経内科医。医学的な根拠に基づくボケ予防に役立つ取り組みを、クイズ形式で解説してくれる。
たとえば、ニュースや新聞は「忙しくてもチェックする」と「時間があるときだけ」のどちらがボケ予防に役立つか-という質問。これは何となく前者のほうだろうという予想はつくが、中でも「新聞を読む」ことは脳の活性に大きな役割を果たしていると著者は言う。
「脳は、好きなものに対して強く反応します。新聞はパッと目にしただけで、興味の対象となるものが発見できるので、脳が活性化しやすいツールなんですね」(本書より)
ちなみに、読書に関しても、電子書籍より普通の本のほうが、手に取るだけでどれくらい読み進めてきたのか、あるいはあとどのくらい残っているのかが把握でき、この先の物語の展開を予測、想像することで脳の活性化が図られる-と著者は指摘する。
仕事帰りに夕刊フジを読み、その書評で興味を持った本を手にすることは、じつはボケ予防に一役買っていることになるのかも…。
「通勤電車ひと駅分の時間で2~3個のQ&Aが読めてしまう構成になっています。楽しみながらボケ対策の知識を得られる。
正しい知識があればボケなんて恐るるに足りない存在になります」と語るのは、本書を企画編集したリンダパブリッシャーズの峯岸桂子氏。
ちなみに、本書によれば、「きちょうめんな人」よりは「いい加減な性格」のほうがボケにくいとのこと。この本を読んで「こうしなければ」と思い込むのは逆効果だ。何事も気楽に取り組むのがよろしいようで…。 (竹中秀二)
■米山式・「ボケないための二者択一」(抜粋)
・出席するなら「同窓会」より「結婚式」
・趣味を持つなら「ゴルフ」より「釣り」
・納豆は「ひき割り」より「小粒」
・ギャンブルは「お金を賭けない麻雀」より「お金を賭ける競馬」
・忙しい時の休憩は「昼寝」より「散歩」
・運動するなら「朝」より「夜(夕方)」
・ボケない一生を送るなら「孤独な金持ち」より「にぎやかな貧乏」
肥満の原因というと、食べ過ぎや運動不足にばかり目が行きがちだが、40歳を過ぎると、これ以外の要素が加わってくる。代謝や自律神経の乱れだ。
そう考えると、今回、紹介する本の著者がいう「太ることは老化」の意味も理解できる。アンチエイジングの第一人者が提唱する、タイプ別ダイエットとは-。
「40歳からのタイプ別ダイエット診断」(竹書房新書)の著者・青木晃氏は、アンチエイジングとダイエットに関する医療指導の第一人者。最新刊は、小紙読者のために書かれたような内容だ。
40歳以上になると、年齢的な問題から自律神経の機能が低下してくるのに、従来のダイエット法はそこに目を向けていない。だから成功しない-と断じる著者が、代謝や自律神経の働きを十分、考慮し構築したダイエット法を披露している。
本書では、その人の肥満のタイプを4つに分類することから始める。
■食べ過ぎタイプ
▽毎日必ず間食をする▽朝食や昼食を抜きがち▽週5回以上の外食など
■運動不足タイプ
▽運動習慣がない▽1日の歩数が5000以下▽階段は昇らない▽近くでも車利用など
■基礎代謝が低いタイプ
▽疲労感が抜けにくい▽朝の目覚めが悪い▽20歳の頃より体重が10キロ以上増加▽人より寒がりなど
■自律神経不調タイプ
▽夜更かしで朝寝坊▽すぐにエアコンを使う▽食事の時間が不規則▽眠りが浅いなど
前の二群はダイエット本らしい内容と言えるが、あとの二群は少々、目新しい。どちらかといえば、生活習慣病対策のような項目が並んでいるが、肥満も老化と捉える著者には当然のことだ。
基礎代謝が低い人は、運動不足と同じように消費されるエネルギーが低い。自律神経が不調の人は、たとえ正しいダイエット法に取り組んだとしても、大きな効果が期待できないと著者は言う。
特に自律神経を正しく整えることは現代人にとって非常に重要な課題で、これなくして効果と安全性が確立されたダイエットは不可能なのだ。
「この本の最大の“売り”はココ。つまり、自分がなぜ太っているのか-その正しい原因を把握することができるという点です」と語るのは、編集を担当した竹書房の辻井清氏。中でも自律神経の乱れから来るタイプの肥満の人への注意を呼びかける。
「現代人は自律神経をやられやすい。なのに、それを知らずにカロリー制限などのダイエットを過剰にやってしまうと、逆に老化を進めることにもなりかねない。
自分の肥満の原因やタイプを知った上で、適正なダイエットに取り組むべきだということが理解できる内容になっています」
本書には効果的な取り組みや、「やってはいけないダイエット」なども紹介されているが、小紙読者にオススメなのが別表に掲げた「20(トゥエンティ)ダイエット」だ。
どうせいきなり思い切ったダイエットに取り組んだところで長続きしないし、意味がない。ならば「少しずつ」を「長く」続けるべきなのだ。
今日から早速試してみるべし。
■「青木式・20ダイエット」
(1)目標体重は20代前半の体重
(2)食事量は現状の20%減
(3)日常の活動量を20%アップ
(4)1日20分の有酸素運動
(5)食事は1口20回咀嚼(そしゃく)
(6)20分以上かけてゆっくり食べる
(7)風呂はぬるめのお湯に20分浸かる
(8)以上の取り組みを、まずは20日続ける
“冷え性”は女性の専売特許ではない。最近は冷え性に悩む男性が増えている。特に外気温が高まるこの時期、男性はクーラーの力に頼りがち。その弊害は、冷えを通じて全身各所に及んでいる。
今回はそんな冷えを解消する「蒸しショウガ」の実力を検証する。
そもそも男性は、冷え性に対する認識が低い。中には「寒がりの延長」程度に考える人もいる。まずはこの辺りの認識を改めることが重要だ。
暑い夏は人間の体温調節機能が低下する。そこにクーラーの強烈な冷気が当たり続けると、体温が下がって肩こり、頭痛、腰痛などの不快な症状を引き起こす原因になる。
それだけではない。長期的に続くと、免疫力が低下して、かぜなどの感染症にかかりやすくなる。つまり、冷えは万病の元なのだ。
そこで今回、紹介する1冊は「病気にならない蒸しショウガ健康法」(石原新菜著、アスコム)。
ショウガが体にいいことは、小紙読者のお父さんたちも、何となく知っていると思う。ショウガにはジンゲロールとショウガオールという冗談みたいな名前の薬効成分が入っている。
それぞれの効能を見ると、ジンゲロールには血行促進、殺菌、免疫力向上など。ショウガオールはダイエット、血液サラサラ、コレステロール減少、消化吸収促進、抗酸化、脂肪や糖質燃焼などがある。
しかし、生のショウガにジンゲロールは豊富に含まれるものの、ショウガオールの含有量はごくわずか。だがショウガを蒸すことで、ショウガオールの量を約10倍に増やすことができるという。
「そんな蒸しショウガの健康法を初めて紹介したのがこの本です」と力を込めるのはアスコム編集長の小林英史氏。
「著者の石原新菜さんは、ショウガをはじめとする漢方処方を中心とした治療を行っている医師。夏冷えで体が弱っている人や、夏バテ、熱中症の人が増えるこの時期に、自信を持ってオススメしたい健康法です」
ところで、蒸しショウガってどうやって作るんだろう。本書によると、非常に簡単だ。(1)ショウガの汚れを落とし、厚さ1ミリ程度にスライス(2)80度に設定したオーブンで1時間(3)細かく刻んで完成
これを飲み物でも食べ物でもなんでもいい、口に入れるものに振りかければ、蒸しショウガ健康法は成立する。小林氏によれば、蒸しショウガの粉末を焼酎に入れてもイケるとのこと。同じ飲むなら健康的に酔いたいものだ。
「ショウガは200種類以上ある漢方薬の7割に使われるほど、昔から知られた健康食。それでも、毎日食べようとすると何かと大変です。
その点、蒸しショウガは粉末にできるので、保存も持ち運びも簡単。外食の多いサラリーマンにも簡単にできる健康法です」(小林氏)
どの会社でもそうだが、女性社員の大半は、日々、オフィスで冷えと闘っている。
そんな時、冷えに理解を示し、その克服法である生ショウガ健康法の片鱗(へんりん)でも語って聞かせれば、「ちょっと、ワカッテルじゃない!」ということになって、OLたちの支持も取り付けられる…かもしれない。
モテるかどうかは別として、まずは今夏を元気に乗り越えるためにも、蒸しショウガについて勉強しておきましょう。
■長生きするための「蒸しショウガの七大健康効果」
(1)糖尿病改善
(2)高血圧改善
(4)うつ病予防
(5)血液サラサラ
(6)便秘解消
(7)花粉症予防
(8)ダイエット効果
株式会社KADOKAWA は、『シャンプーをやめると、髪が増える 抜け毛、薄毛、パサつきは“洗いすぎ”が原因だった!』(宇津木龍一(うつぎりゅういち)著の発売を開始した。
【女子の薄毛が急増!? 後悔しないための「ハゲ対策法」まとめ】
著者の宇津木龍一氏は、日本で最初のアンチエイジング専門施設・北里研究所病院美容医学センターを創設した、日本では数少ないアンチエイジング治療専門の美容形成外科医。
現在はクリニック宇津木流にて院長を務め、シミ・しわ・たるみなど老化の予防と治療に従事している。
著書『肌の悩みがすべて消えるたった1つの方法』(青春出版社)は肌のための革命的美容法を紹介。ファンの熱い声にこたえ、髪に関する待望の第2弾の新刊を執筆した。
この新刊では髪の悩みを解消する方法としてシャンプーをやめることを挙げている。「髪の悩みの原因は、加齢や遺伝だけのせいではなく、シャンプーにあった。
髪の悩みを解決するたった一つの方法、それはシャンプーをやめること。
シャンプーをやめると、毛が太くなる・毛が頭皮にしっかり根を張りはじめる・常在菌の力で頭皮環境が整う・髪の毛が増える・夕方のべたつき、ニオイがなくなるといった変化も期待できる。」といった内容を伝えている。
目は口ほどにものをいう-。情のこもった視線は、言葉で語りかけるのと同じくらいの訴求力があるというのだが、その「目」をアンチエイジングの柱に据えた健康本が話題だ。
その内容を知れば、目からウロコが落ちるかも…。
疲れやストレスの症状が出やすいところは人によって異なる。肩こり、腰痛、下痢や便秘などさまざまだが、ほとんどの人に共通してストレス症状が出やすいのが「目」。現代人の目は、ストレスフルな生活が最もダイレクトに影響し、またダメージを受けやすい器官なのだ。
そんな目の健康を考えることで、つらい症状から解放されるだけでなく、全身の健康を増進させ老いまでを予防しようと訴えるのが、『老ける老けないは目で決まる!』(服部匡志著、すばる舎)。
著者は月の半分はベトナムに飛び、医療設備の整わない奥地での医療活動にボランティアで参加している眼科医。
そんな著者が著したこの1冊。目の健康状態が落ち込む、つまり「目力」が落ちることで社会的な対人関係に微妙な影響がおよび、ひいては見た目の老化まで引き起こす危険性があると警鐘を鳴らしている。
編集を担当したすばる舎副編集長の菅沼真弘氏に話を聞いた。
「目の健康とアンチエイジングを結びつけた点が最大の特徴。目の健康状態が悪化することで相手にネガティブなイメージを持たせることにつながり、それが“老けた印象”となっていく。
目の健康維持からこの“老い”を防ぐことで、単に見た目の若々しさを取り戻すだけでなく、根本にある眼病や視力低下の予防にもつながり、結果、全身のアンチエイジングにもつながっていく。
中年以上にとっては、非常に興味深い内容であり、理にかなった健康法だと思います」
ちなみに本書では、目力が落ちてくると、仕事の能率が下がるだけでなく、恋愛面での不調も招きかねないと指摘する。目の状態を通して、内面の感情は相手に伝わるもの。そう考えると「目の不調くらい」とばかにしてもいられなくなるはずだ。
現代人がかかりやすい目の不調や症状について、原因や予防法を詳しく解説しているが、たとえばドライアイについては「現状では根本的な治療法はない」として、予防の重要性を訴えている。
もちろんパソコンやスマホなどの影響は小さくなく、これらを利用しながらも、上手に目に対するダメージを抑えていくことが、結果として目だけでなく全身のアンチエイジングにつながっていくという。
その具体的な対策の一部を別掲の5カ条にまとめた。これらはいずれも実践すると効果が実感できるところがうれしい。
「私自身、毎日パソコン仕事をしているので目が疲れやすく、そこから来る肩こりにも悩まされていましたが、著者のいう“PC用メガネ”を使うようにしたところ、いずれの症状も軽減しました」(前出・菅沼氏)。
オフィスワーカーの4人に3人がドライアイ発症の疑いを持ち、40歳を過ぎると男女の別なく加齢黄斑変性症、緑内障、白内障、視力の低下のリスクが高まってくる。
今、電車の中でこの記事を読んでいるあなた。「文字が読みづらい」と感じたら、それは老いの現象かもしれません。
駅で降りたら本屋さんに寄って、この本を探してみましょう。
■服部式「疲れ目・ドライアイ予防法」
(1)パソコンのディスプレーは必ず見下ろす
(2)自分用の加湿器で乾燥を防ぐ
(3)パソコン作業の場合、20分に一度は1分程度の休憩を
(4)職場用と普段用でメガネやコンタクトを使い分ける
(5)疲れ目には蒸しタオル、充血時には冷やしたタオルを5~10分あてる
世に氾濫する「健康情報」。どれが正しくて、何を信じていいのかが難しい。特に体のあちこちに「老い」を感じ始める40代以降にとって、その選択眼は重要となる。
この本を読んで、「正しい目」を養っておいたほうが良さそうだ。
それまで病気のことなど考えることもなく、忙しい日々を送ってきたサラリーマンが、何気ない不調や体の変化をふと自覚し、「老い」と結びつけて考えるようになるのが40代。
人生も半ばに差し掛かると、後半を無事に過ごすことへの不安が、加速度を付けて湧き上がってくる。
そんなお父さんに最適な本があった。その名も『40歳からはじめる健康学』(島崎弘幸著、平凡社新書)だ。「知っておきたい栄養の話」という副題からも分かる通り、栄養学の視点から、糖尿病やメタボリックシンドロームに代表されるさまざまな生活習慣病対策を、架空の物語で分かりやすく説いた1冊だ。
著者は、生化学を専門とし、特定保健用食品(トクホ)の黎明期から開発に携わる栄養学の第一人者。
「これまで数多くの学術論文を書いてきた著者ですが、一般向けの本は初めて。しかし、それを感じさせない平易な文章で、“健康”を理論から丁寧に解説しています。まさに健康本の“王道”的な内容です」
そう語るのは編集を担当した平凡社新書編集部の菅原悠氏。
大きく分けて、前半は生活習慣病の基礎知識、後半は著者の専門分野である栄養学の視点から見た健康長寿の秘訣(ひけつ)-という構成。
いずれも基本的なことではあるが、意外に知らないことが多い。40歳を過ぎて、いまさら、人に聞くのもためらわれるような“常識”が網羅されている。
初めは「健康常識のウソ・ホント」的な方向性で企画が進んでいたというだけあって、書かれている情報のひとつひとつに、読者を納得させる説得力がある。
「健康関連本の多くは『○○してはならない』とか『△△しなければならない』といった内容が主流ですが、本書はその基本となる知識を解説したもの」と菅原氏。
まさにこの本で健康管理に関するベーシックな知識を身に付けることで、どの健康法が正しく、どの健康常識が間違っているかを見抜く力を養うことができるのだ。
例えば、BMIという体格指数がある。体重と身長から算出するこの数値は、肥満、標準、痩せ過ぎの、いずれに入るかを判断する指標とされているが、これも正しい知識を持って見る必要があると著者はいう。
BMIは、体重÷(身長×身長)で算出される(体重はキロ、身長はメートル)。体重70キロ、身長170センチであれば、70÷(1・7×1・7)で弾き出された24・2がその人のBMIとなる。
一般的に日本人の理想とするBMIは22とされているが、今、これを読んで慌てて計算したお父さんのBMIが22を多少上回っていても、すぐに極端なダイエットをする必要はないというのが著者の考え。
というのも、22という数字は若い世代についていえること。人の体形は年齢によって少しずつ変化していくので、40代の人が20代と同じ数値を指標とするのはおかしいのだ。
このように「正しい目」で健康情報を見ていけば、無駄なく効率的な健康管理の姿が見えてくる。
40歳を過ぎると何かと物覚えも悪くなるので、折に触れて読み返すといいだろう。
■島崎式「健康常識のウソ・ホント」
(1)肥満は遺伝する?
(2)朝食抜きダイエットは効果がある?
(3)肉好きは痛風になりやすい?
(4)女性は食べなくても太る?
(5)「トクホ」は効く? (答えは下)
【答え】ウソ(2)(4) ホント(1)(3)、(5)は条件付きでホント