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果物はお菓子よりも悪い!?肝臓がんの原因となる「脂肪肝」の仕組みと予防法について専門医が解説

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シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

【画像】肝臓がんの原因と割合はこちら

今回は肝臓病学が専門の広島大学大学院教授・茶山一彰先生が、「脂肪肝」やそれによって引き起こされる「脂肪性肝炎」「肝硬変」「肝臓がん」について詳しく説明する。

肝臓がんの原因と割合

昔は、肝臓がんになる人の9割以上は、原因がウイルス性でした。

C型肝炎がすごく多くて、C型肝炎が7割以上、B型肝炎が2割ぐらい、そうではないアルコールを原因とする人はすごく少なかったんです。

C型肝炎はどんどん治るようになってきて減ってきました。

B型肝炎はまだ高齢の人はウイルスが陽性な人が多いのでそこまで劇的には減っていませんが、今はB型が1~2割、C型が3割、残りの約半分は「脂肪肝」や「アルコール」が原因です。

こうしたウイルスのいないがんがどんどん増えてきて、今は半分ぐらいを占めています。

「脂肪肝」は、肝臓の細胞に脂肪が溜まってしまった状態で、要は食べ過ぎや運動不足で余ったエネルギーが脂肪になって蓄えられる状態です。

不思議なことに、肝臓にやたらとつきやすい人と皮下脂肪になりやすい人、あるいは内臓脂肪になりやすい人と人によってそれぞれです。

そんなに太っていなくても脂肪肝の人はいるし、結構太っていても脂肪肝は大したことない人もいます。

脂肪肝のもう一つの原因は、アルコールです。

お酒飲んで太っている人は結構脂肪肝の人が多いです。

脂質異常、あるいは高血圧、糖尿病を合併している人はその傾向が多いです。

脂肪肝が進行するとどうなる?

ウイルス性肝炎と同じで、脂肪が原因で肝臓の細胞が壊れます。

そうすると肝臓の中に傷痕ができて肝硬変に向かって進行していきます。

昔はあまり気付かれていなくて、お酒を飲まないんだけどお酒と同じような肝臓の繊維化が起きて肝硬変があります。

全然お酒を飲まないのにそういうことになっている人もいますよ、ということが今ははっきりしてきました。

これは、Non-alcoholic Steatohepatitis (NASH) 「非アルコール性脂肪性肝炎」という病気なんです。

お酒を飲んで太っている人は両方あるということですから、両方のリスクを併せ持っているということなので肝硬変になりやすいということになります。

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)になりやすい人は、「遺伝子多型」という遺伝子のちょっとした違いによって、例えばお酒が飲める、飲めないとかが決まってきますが、「PNPLA3」という遺伝子のちょっとした違いがNASHになりやすい、なりにくい、あるいは、肝臓に傷痕ができやすい、できにくいという違いに関係があるということが分かっています。

それは血液検査をすれば分かることですが、それよりもやはりどれだけ太るか、どれだけ飲むかといったことを気を付けなくてはいけません。

遺伝子多型が安全の方だからと言って飲んでも食べても大丈夫といったことにはなりません。

肝硬変・肝臓がんの予防法

「食べ過ぎない」「飲み過ぎない」「適度な運動をする」につきます。

ただ、口で言うのは簡単ですが、みなさんなかなかできません。

だから毎日体重を測って、何歩歩いたかを記入するといった地道な努力が大切です。

肝臓は体の中の工場みたいなもので、体の中で必要なタンパク質などを作っています。

それが肝臓が悪いために減ってしまうと、仕方ないから筋肉を分解して使うようになります。

エネルギーが足りないと筋肉から補うことが起こるので、肝臓が悪くなると筋肉・筋力は落ちやすくなります。

あまりハーハーいうような激しい運動ではなくて、じっくり歩くとか、ある程度重たいものをぐっと持って筋肉を鍛えるのがいいでしょう。

ただ、あまり末期になってから無理に運動するとかえって状態が悪くなったりしますから、ひどく悪くならないうちにきちんと運動して、悪くならないようにすることが大事です。

果物はお菓子よりも悪い!

食べ物だったら昔はシジミやウコンが良いとか言っていましたが、これをひたすら食べれば肝臓が良くなるということはありませんから、全体のバランスが良い食事が大事です。

カロリーを過剰に摂ればそれが何からでも変わりありませんが、甘い物は太るのでその辺は気を付けた方がいいです。

過剰に摂取したブドウ糖は、グリコーゲンや脂肪酸になって蓄えられるので、食べるなら食後すぐに少しデザートとして食べるのがいいです。

間食として食べると吸収も良いし、身につきやすいので、食後に意識して「よし!きょうはお菓子食べてやる。だからご飯はこれだけ減らそう」という風にできると一番いいですね。

気を付けないといけないのは、「果糖」が結構悪いんです。

代謝のされ方で果糖が良くないので、果物は肝臓にとってはお菓子よりもむしろ悪いんです。

リスクを高めるタバコ

タバコを吸うと全てのがんが増えます。

肝臓がんも同じです。

吸わない人と吸う人を比べると、吸う人の方ががんになりやすい。

これはC型肝炎が治った人をフォローアップして調査しても、やはり発がん率はタバコを吸う人の方が高いです。

自分の肝臓の細胞が壊れているかどうか、壊れているなら何が原因なのか、あるいは壊れていなくてもウイルスがいないかなど、血液検査でチェックすることが大事です。

異常値が出ていればすぐにわかりますが、B型、C型のウイルスがいても正常値の人もいます。

ウイルス検査は1回やっておけば、皮膚を突き破ったり、粘膜からウイルスが入ってくることがなければ感染することはないので、1回調べておくことが大事です。

肝臓の細胞が壊れたりするような、例えば脂肪が溜まって壊れている、アルコールで壊れていることがないかをチェックすることが大事です。

糖尿病で腎臓にダメージ…透析に 怖い合併症どう防ぐ?

11月14日の「世界糖尿病デー」を前にした2021年11月11日、バイエル薬品はオンラインセミナー「糖尿病から腎臓を守るためにできること~早期診断と、糖尿病に関連する合併症への理解~」を開催した。最初に国際医療福祉大学教授の小田原雅人さんが糖尿病と腎臓の関係や予防の重要性について解説。その後、糖尿病から透析治療を受けることになったタレントのグレート義太夫さん、管理栄養士の沼津りえさんが参加し、3人によるトークセッションが行われた。当日の内容をお届けする。

■糖尿病になると心筋梗塞、脳卒中も起こしやすく

ご存じの通り、糖尿病とは血液中に含まれるブドウ糖、すなわち血糖値が高くなる代表的な生活習慣病だ。2016年の「国民健康・栄養調査」によると患者数は約1000万人。その手前の予備群も同じくらいいて、合わせると実に2000万人に達する。

血糖値が高くなっても自覚症状は何も感じられないが、高血糖の状態が長年続くと深刻な合併症が起こるようになる。網膜症、腎症、神経障害が3大合併症として知られるが、さらに心筋梗塞、脳卒中、足の動脈硬化(末梢動脈疾患)も起こしやすくなる。

糖尿病は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことも分かっている。「糖尿病になると免疫力が落ちて感染症のリスクが高くなりますが、新型コロナウイルスに感染した場合、健康だった人に比べて死亡率が約3倍に上がります」と国際医療福祉大学教授の小田原雅人さんは指摘する。

感染症だけではない。糖尿病になると日本人の死因トップ10に入る病気の多くを発症しやすくなる。がんは1.2倍、心疾患や脳卒中は2~4倍、さらに認知症も約2倍リスクが高くなるという。

「心筋梗塞など冠動脈疾患を起こす人の57%は糖尿病で、糖代謝異常のない人はわずか14%しかいなかったという報告もあります。福岡県久山町で行われた大規模な疫学研究から、糖尿病患者はもちろん、予備群のレベルでも心筋梗塞や脳卒中のリスクが明らかに上がることが分かりました」(小田原さん)

■腎臓を守るには血糖値と血圧のコントロールが重要

3大合併症の1つである「糖尿病性腎症」も怖い。

進行すると腎不全になり、定期的に透析治療を受けなければ生きられなくなってしまう。週に何回も医療機関に通い、1回ごとに数時間ずつ奪われる。当然、できる仕事は限られてくるし、長期の海外旅行になど行けない。QOL(生活の質)は大きく下がることだろう。

昭和の時代、透析治療に至る病気はほとんど慢性糸球体腎炎[注1]だった。ところが年々減っていく慢性糸球体腎炎に対し、糖尿病性腎症は右肩上がりで増え続け、約10年前に逆転。2019年末の調査では、約4割を占めるまでになっている(下グラフ)。

透析患者の4割は糖尿病が原因

データ:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2019年12月31日現在)」より原疾患割合の推移© NIKKEI STYLE データ:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2019年12月31日現在)」より原疾患割合の推移

[注1]血液中の老廃物などをろ過する働きを持つ腎臓内の糸球体。慢性糸球体腎炎は、この糸球体の慢性的な炎症によりタンパク尿や血尿が出る疾患の総称。

腎症を発症すると、心筋梗塞や脳卒中も起こしやすくなってしまう。透析を受ければ働けなくなった腎臓の機能はカバーできるが、それでも心筋梗塞や脳卒中のリスクは下がらないという。「心臓と腎臓は密接にリンクしている。腎臓を守ることが心臓を守ることにつながるのです」と小田原さんは話す。

網膜症や腎症など恐ろしい糖尿病の合併症を防ぐには、とにかく血糖値を下げることだ。血糖値の指標の1つであるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)[注2]は、6.5%以上になると糖尿病の可能性が強く疑われる状態とされる。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」によると、血糖値の正常化を目指す観点から6.0%未満が目標とされている。

[注2]赤血球のヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合したものの割合。検査日の数値だけを見る空腹時血糖値と異なり、最近1~3カ月の長期的な血糖値が反映される。特定健診の基準値は5.5%以下。ちなみに、合併症予防のための目標値は7.0%未満だ。

血糖値に加え、血圧を正常に保つことも必要になる。血圧が高いほど腎機能が低下していくことが分かっているからだ。小田原さんによると「腎臓は心臓以上に血圧の影響を受けやすい臓器。腎臓のためには血圧は低ければ低いほどいい」という。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」によると、正常血圧は上(収縮期血圧)が120mmHg未満で下(拡張期血圧)が80mmHg未満。上が140mmHg以上か下が90mmHg以上になると「高血圧」と診断される。上が130~139mmHg、下が80~89mmHgのグレーゾーンは、高血圧ではないが正常でもない「高値血圧」と呼ばれる[注3]。

[注3]高値血圧と正常血圧の間に位置する収縮期血圧120~129mmHgは「正常高値血圧」と呼ばれる。

腎機能が悪い人や糖尿病の人はこの高値血圧よりも低い血圧を維持しなければならない。つまり、上が130mmHg未満、下が80mmHg未満だ。なお、これは医療機関で測る場合であり、リラックスできる自宅で測る場合はそれぞれ5mmHgずつ低くなる。

脳卒中や心筋梗塞は発症してから後悔しても遅いし、腎機能は脂肪肝などと違っていったん悪化すると元に戻らないという。生活の改善だけで血圧が下がらないようなら、嫌がらずに薬を飲んだほうがいいだろう。

「腎臓を守り、心筋梗塞や脳卒中を防ぐには血糖値と血圧の両方をしっかりコントロールしなければいけません。食生活に気を配る、禁煙、お酒を飲みすぎない、適度な運動習慣など、健康的な生活習慣を持つことが重要です」と小田原さんはアドバイスする。

■糖尿病性腎症から、50歳を前に透析治療をスタート

小田原さんの講演に続き、タレントのグレート義太夫さんと管理栄養士の沼津りえさんが登場し、3人のトークセッションが始まった。

グレート義太夫さんはまだ30代だった1995年に糖尿病と診断された。やがて糖尿病性腎症を発症し、50歳を前にした2007年から透析治療を始めたという。芸能界ならではの不規則な生活に加え、父も糖尿病だったというから遺伝もあったのかもしれない。

もっとも「糖尿病は遺伝的要因もありますが、生活習慣でかなり予防できます。実際、終戦直後の日本には少なかったでしょう」と小田原さん。糖尿病の急増は、食生活の変化と運動不足による肥満の増加が最大の要因だと指摘した。

「肥満は腎臓にもダメージを与え、BMI[注4]の増加で腎機能が低下することが分かっています。大切なのはカロリー制限と運動で体重を減らすこと。体重が5%減るだけで劇的に代謝が改善しますから、まずは5kgやせることを目指して長期にわたってがんばることが大切です」(小田原さん)

[注4]体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、太っているほど大きくなる。日本肥満学会では22を「標準体重」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上を「肥満」としている。

糖尿病の予防、悪化を防ぐため、食生活でのポイントを沼津さんが語った。

「大切なのはちょっと意識すること。暴飲暴食をやめる、食べる順番を意識する、味の濃いものをやめる、ゆっくり食べる。これらのことを意識するだけでも、毎日の食事を楽しみながら長く続けられると思います。血圧のためには減塩も重要です。最近はおいしい減塩食品も出ていますし、いろいろな味のタレを用意して家族みんなで“味変”(味の変化)を楽しむのもいいでしょう」(沼津さん)

■生活習慣の改善とともに必要な薬はきちんと飲む

義太夫さんも糖尿病と診断されて以来、食事にはそれなりに気を使い、週に1回ウオーキングもするようにしていた。しかし「糖尿病の怖さは痛い、つらい、がないことなんですよ」と振り返る。症状がないのであまり真剣に取り組めず、処方された薬もきちんと飲まないことが増えていく。そして2007年、仕事中に突然倒れ、病院にかつぎ込まれた。「このままでは命にかかわる」と言われ、透析治療を開始したという。現在は週3回、5時間ずつ透析を受けている。

「糖尿病と診断されてからも、もっと生活習慣に注意していれば、透析を始める時期をずっと後ろに持っていけたんじゃないかと後悔しています……。でも透析をしていても、それ以外は普通に暮らせますよ。病院で週15時間受ける透析の間は静かにものを考える時間と決めて、ネガティブにならないようにしています」(義太夫さん)

透析治療を始めたからといって自暴自棄になってはいけない。小田原さんは「治療開始はどの段階でも遅すぎることはない」と強調した。

「透析治療はハンディキャップにはなりますが、それでも普通の生活を送ることは可能です。脳卒中を起こして寝たきりになるとさらにQOLが下がりますから、ほかの合併症を発症しないようにすることが大切。繰り返しますが、腎臓を守るには血糖値と血圧のコントロールが非常に有効です。食生活や生活習慣の改善とともに、必要な薬はきちんと飲んでいただくのがいいと思います」(小田原さん)

腎機能はいったん下がると戻らない。大切な腎臓を守り、末永く人生を楽しむため、血糖値と血圧をしっかりコントロールしていこう。

(文 伊藤和弘、グラフ制作 増田真一)

小田原雅人さん

国際医療福祉大学教授。1980年、東京大学医学部卒業。英オックスフォード大学医学部講師、虎の門病院内分泌代謝科部長、東京医科大学主任教授などを経て現職。東京医科大学特任教授、山王病院内科部長、日本成人病(生活習慣病)学会理事長。専門は糖尿病内分泌代謝。グレート義太夫さん

タレント。1958年、東京都生まれ。たけし軍団の一員として活躍する一方で、ミュージシャンや舞台俳優としても活動する。2007年から糖尿病性腎症による末期腎不全のため透析治療を開始。著書『糖尿だよ、おっ母さん!』(幻冬舎)で透析に至った経緯をつづっている。沼津りえさん

管理栄養士。大手食品メーカーで管理栄養士として勤務後、製菓・製パン専門学校に入学。同時に渋谷の洋食レストランで料理の基礎を学ぶ。料理教室COOK会主宰。企業向けのレシピ開発なども行い、メディアでも精力的に活動している。

腎不全の人は注意!「腎性貧血」とは

腎不全の人に起こりやすい腎性貧血の原因や治療方法などを解説します。

腎性貧血が起きるメカニズムとは

血液中のヘモグロビンが減少し、体に酸素が行き渡らなくなる状態を一般的な貧血といいますが、腎性貧血とは腎臓に起因する貧血をいいます。

腎性貧血は腎臓から分泌されるホルモンのうち、赤血球の生成を促進するエリスロポエチンというホルモンが、腎臓の機能の低下によって分泌が減ることで起こります。エリスロポエチンが減少すると、骨髄への赤血球の生成を促す刺激が弱まり、赤血球の産生能力が低下するのです。

腎不全の人に起こりやすい

エリスロポエチンは、腎臓でつくられ体内に分泌されていますが、腎不全が進行すると、エリスロポエチンの分泌量が減少していくため、赤血球が不足して腎性貧血が起こりやすいのです。腎不全によって血液透析を受けている場合には、透析不足によって尿毒素の除去が不十分で赤血球の寿命が短くなることによっても起こる場合もあり、透析回路に残った血液を十分に返血できないことも貧血の原因となります。

腎性貧血で起きる症状とは

腎性貧血では、動悸(どうき)や息切れ、めまいや立ちくらみ、全身の倦怠感、皮膚や唇の蒼白といった一般的な貧血の症状が現れます。しかし、貧血は徐々に進行するため、症状に気がつかないこともあります。腎性貧血は心臓への負担となり、貧血によって末期心不全に進行することもありますので、腎不全にかかっている人は注意が必要です。

腎性貧血の治療方法

腎性貧血の治療は、エリスロポエチンの分泌不足を補い、赤血球の生成を促すために、赤血球造血刺激因子製剤を月に1〜2回ほど、皮下注射によって投与します。鉄剤だけを補給しても改善はしませんが、鉄分が不足すると薬剤の効き目が低下するため、鉄剤は補助的に使われています。血圧の上昇や頭痛といった副作用が現れた場合には、医師に相談しましょう。

血液の生成が行われやすいようにするためには、タンパク質や鉄分、ビタミンの摂取が欠かせず、栄養バランスのとれた食事を摂取することも大切です。しかし、腎不全の人は腎臓にも負担をかけない食事とする必要があるため、薬剤による治療とともに、医師による食事指導も行われます。

なぜ運動は腎機能を改善するのか? 4つの腎臓体操を医師が推奨

慢性腎臓病と診断されると、かつては「安静第一」と言われて運動制限が常識だった。しかし、その常識も近年、百八十度転換してきている。「運動療法」が推奨され、その重要性がクローズアップされているのだ。

東北大学病院が開発し、世界各国で導入が進む「腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)」がある。運動・食事・薬物療法から、水分管理、教育や精神的サポートまで含む包括的プログラムで、その中心となるのは運動療法だ。

実際、きちんと実行することで腎機能の指標「GFR値」が改善する症例が多数報告されている。

では、なぜ運動をすると腎機能にいいのか。東北大学大学院医学系研究科・内部障害学分野の上月正博教授が言う。

「腎臓のろ過機能を担う糸球体という毛細血管の塊には『タコ足細胞』という細胞が張り付くように存在しています。この細胞は足を伸ばしたタコに似た形をしていて、それらの足が互いに絡み合ってフィルターとして働き、通常は分子の大きなタンパク質を通しません。ところが、タンパク質の取り過ぎや高血圧、高血糖などが続くと、糸球体の入り口の血管に過剰な圧がかかってタコ足細胞にも負担がかかり、糸球体から剥がれてしまうのです。するとフィルターの目が粗くなり、タンパク質などが尿中に流れ出て『タンパク尿』を引き起こすのです」

それが運動することでどう変わるのか。

「適度な運動をすると、糸球体の出口の血管が広がることが分かっています。出口が広がれば圧も下がるので、糸球体にかかる負担が減り、タコ足細胞がしっかりと足を絡ませ合ってフィルターの役割を果たすことができます。糸球体出口の血管を広げる作用は、ACE阻害薬などの降圧剤にもあります。適度な運動は、まさに薬と同じような働きをするのです」

さらに運動をすると筋肉や心臓で血流が増え、その刺激によって血管の内皮細胞からNO(一酸化窒素)が放出される。NOには血管を広げて血圧を下げる働きがあるので、より効果的に糸球体にかかる圧を下げ、腎臓を守ることができる。もうひとつ、適度な運動を習慣にすると、活性酸素を無害化する酵素(SOD)の働きがよくなる。活性酸素は免疫力の強化や感染の防止などに重要な役割を果たすが、増えすぎると糸球体の毛細血管を傷つけたり、腎臓の血流を妨げたりして腎臓に悪影響を与えるのだ。

「腎臓リハビリの運動療法で最も重要で推奨されるのは1日トータル20~60分のウオーキングを週3~5回行うことです。その運動の腎臓活性効果を高めるのに『腎臓体操』という簡単な室内軽運動もあります。併せて習慣にするといいでしょう」

4種類ある腎臓体操のやり方はこうだ。

■かかとの上げ下ろし

①両手を腰に当て、両足を肩幅に開いて立つ。

②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてかかとをゆっくり上げる。

③かかとを上げたところで息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてかかとを下げる。

これを5~10回繰り返して1セット。

■足上げ

①シッカリした椅子の背や手すりなどを体の右横に置き、右手でつかまって立つ。

②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて左足を前にゆっくりと振り上げる。

③息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけてゆっくりと膝を曲げ、太ももを持ち上げる。

④息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、曲げた足を5秒かけてゆっくり下ろし、後ろに振り上げる。

⑤最初の①の姿勢に戻る。

⑥右足も同様に行う。

①~⑤を3回ずつ繰り返して1セット。

■中腰までスクワット

①両手を腰に当てて両足を肩幅に開き、浅い中腰の姿勢で立つ。つま先は少し外側に向ける。

②呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて中腰まで腰を落とす。

③鼻から息を吸いながら、5秒かけて膝を伸ばし、①の姿勢に戻る。

①~③を3回繰り返して1セット。

■ばんざい

①両足を肩幅に開いて立ち、両手は太もものわきに添える。

②鼻からゆっくりと息を吸う。

③呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて両腕を「ばんざい」するように上げる。

④息を吸い、呼吸を止めないよう「ツー」と言いながら、5秒かけて両腕を元の位置に戻す。

②~④を3回繰り返して1セット。

どの体操も1セット、1分で終わる。朝・昼・晩、1日3セットが目標だが、できなければ1日1セットでもOKだ。

肝臓がん再発防止でエビデンスがある唯一の生薬「フアイア」とは

肝臓がんに対して高いレベルのエビデンス(科学的根拠)があるとして、2018年以降、中国や米国で注目を集めているのが「Huaier(フアイア)」という生薬だ。

これを用いた治療を行う新見正則医院(東京・千代田区)院長の新見正則医師に話を聞いた。

フアイアは、キノコの菌糸体から抽出された成分が原料の生薬だ。中国では1992年から抗がん新薬として使用されてきたが、注目を集めるようになったのは18年。肝臓がん手術後の患者1000例超を96週間(24カ月)観察したフアイアに関するランダム化比較試験が、消化器学の権威ある国際的医学誌「Gut」に掲載されたのだ。

それによると、フアイア投与群686例と対照群316例を比較したところ、フアイア群は無再発生存期間の平均値は7週間長く、無再発率は13%以上高かった。無再発生存期間とは、再発も転移もない期間のこと。副作用については、軽い下痢しかなかった。

「この研究の特に着目すべき点は、大規模研究であること、エビデンスレベルが高いランダム化比較試験であること、あらかじめ米国の研究機関に申請された研究で影響力の高い国際的ジャーナルに掲載されたこと、副作用が軽い下痢だけだったことなどです」

漢方薬は積み重ねられた経験で生薬を組み合わせて用いるため、ほとんどにエビデンスがない。効能効果が複数あり、エビデンスを出しにくいという面もある。

「ところがフアイアは1000例規模の大規模研究で結果を出している。日本で保険適用の漢方薬でも、これほどのエビデンスのあるものはありません」

■米国、中国では薬として承認

肝臓がんの画期的な薬としては、手術が困難な肝細胞がんに対する分子標的薬ソラフェニブがある。これは大規模臨床試験で肝臓がんの全生存期間を延ばすことが分かっているが、手術後の肝臓がんの再発抑制に関しては「十分な効果がない」との結果が出ている。つまりフアイアは、現時点では肝臓がん再発防止でエビデンスがある唯一の手段なのだ。なぜフアイアは、肝臓がんの再発を抑制できるのか?

「フアイアの免疫低下に作用する論文が発表されており、加えてフアイアは免疫亢進にも作用することが研究で明らかになっています」

がんは、免疫低下で発症する。新型コロナをはじめとする感染症も免疫低下が関係している。一方、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患、リウマチや乾癬といった自己免疫疾患は免疫の亢進で起こる。

そしてもうひとつ、免疫システムの異常には、免疫の混沌がある。たとえば、がんを発症しつつ、花粉症の症状が出ることがあるが、これはひとりの人間の体で免疫低下と免疫亢進が同時に起こっていることになる。

「免疫低下には免疫チェックポイント阻害剤が登場し、免疫亢進の代表的な薬にはステロイド薬があります。これらは免疫低下、免疫亢進どちらかにしか作用しませんが、フアイアは、免疫低下、免疫亢進の両方にエビデンスがあり、免疫を中庸にする。これが、ほかの薬にはないフアイアの特徴なのです」

実際、フアイアは肝臓がんに限らず、乳がん、胃がん、大腸がん、肺がんなどのさまざまながん(免疫低下)への有効性を示す研究結果が発表されており、また腎臓病であるIgA腎症、喘息、乾癬といった免疫亢進による病気への研究結果も発表されている。

フアイアは、中国、米国ではがんの治療薬として承認されているが、日本では健康食品の扱いだ。しかし、これまでの「健康食品=エビデンスがない」とは違い、フアイアだけは「医薬品レベルのエビデンスのある健康食品」となる。

金額はそれなりにするものの、副作用も非常に軽いことを考えると、従来薬では良くならない病気への打つ手として、もしもの時のために、頭に入れておきたい。

なお、新見医師は新型コロナ感染対策としてフアイアを毎日3グラム服用しているという。

最も体の負担が少なく簡単な「腎臓活性ストレッチ法」を東北大学教授が教える

腎臓は血液をろ過して不要になった老廃物をこし取り、尿として体外に排出している。また、体液の量やミネラルバランスを整え、体内環境を一定に保つのも腎臓の重要な働きだ。

この腎機能が低下する「慢性腎臓病(CKD)」の患者が、高齢化や生活様式の変化、糖尿病や高血圧の増加を背景に急増している。

ひとたびCKDと診断されると、医師から「安静第一」を強いられて近い将来に末期腎不全となり、やがて人工透析や腎移植が必要になるというのが一般的なイメージだろう。

しかし、その腎臓病の常識も百八十度転換してきている。

東北大学大学院医学系研究科・内部障害学分野の上月正博教授が言う。

「CKDは、早期に発見して適切な治療やケアを行うことで、進行を防止したり改善できる病気になりました。その大きなカギを握るのが、かつて禁忌とされてきた『運動』です。軽い運動を習慣化して行うと、クレアチニン値が低下する、尿タンパクが減少・消失する、腎機能(GFR)が向上する、人工透析を回避・先延ばしできる、など数々の顕著な効果が得られることが分かってきました。CKDに安静は禁物なのです」

東北大学病院で開発された「腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)」は包括プログラムで、世界各国で導入が進んでいる。そのプログラムの中心になるのが「運動療法」。心不全の患者でもできることを前提に厳選された運動なので、誰でも簡単にできる。腎臓病でない人でも生活習慣に取り入れれば、腎臓のケアになるわけだ。

ここでは中でも最も体の負担が少なく、簡単な「腎臓活性ストレッチ」の一部を紹介する。

■寝たまま肩ストレッチ

①あおむけに寝て、手足は自然に伸ばす②鼻からゆっくりと息を吸う③呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、5秒かけて両腕を「バンザイ」するように上げる④静かに呼吸しながら、バンザイの姿勢を10秒間キープ⑤鼻からゆっくりと息を吸いながら、5秒かけて両腕を元の位置に戻す。

③~⑤を3回繰り返して1セット。

■寝たままもも裏ストレッチ

①あおむけに寝て、手足は自然に伸ばす②左足の膝を直角に立てる。右足を上げたときにグラつかないよう、足の裏を床にしっかり着ける③膝を軽く曲げながら右足を上げ、両手で太ももをつかむ。呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、5秒かけて右膝を胸の方へ引き寄せる④静かに呼吸をして、もも裏が伸びる感覚を味わいながら、そのまま10秒キープ⑤鼻から息を吸いながら、ゆっくりと②の姿勢に戻る⑥同様に②~⑤を左足でも行う。

②~⑤を左右2回ずつ繰り返して1セット。

■寝たままお尻ストレッチ

①両足をそろえてあおむけに寝る②両足の膝を直角に立てる③呼吸を止めないように「ツー」といいながら、5秒かけて右膝をゆっくりと外側へ倒す。静かに呼吸しながら、そのまま10秒キープ④鼻から息を吸いながら、ゆっくりと②の姿勢に戻る⑤同様に②~④を左足でも行う。

②~④を2回繰り返して1セット。

■寝たまま前ももストレッチ

①うつぶせになり、両手両足を伸ばす②右膝を曲げ、右手で足先をつかんで、かかとをお尻に近づけるように引っ張る③静かに呼吸しながら、太ももの前面が伸びているのを感じる。そのまま20~30秒間キープ④ゆっくりと①の姿勢に戻る。②~③を左足でも同様に行う。

②~④を左右の足で行って1セット。

■座ったまま胸ストレッチ

①椅子に腰かける。背もたれがある椅子の場合は背もたれから背中を離し、背すじを伸ばす②両手を肩の高さまで上げ、手のひらを前に向ける③呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、ゆっくりと5秒かけて両腕を後ろへ引く。胸が広がっているのを感じながら、静かに呼吸しつつ、そのまま20~30秒間キープ④鼻から息を吸いながら、①の姿勢に戻る。

①~④を2回繰り返して1セット。

「腎臓活性ストレッチは、どれも1セットを約1分で行うことができます。一度にすべて行う必要はなく、好きなものから週3~5回の頻度で行うといいでしょう。さらに腎臓リハビリでは、1日トータル20~60分のウオーキングを週に3~5回行うことを推奨しています。腎機能の維持や改善には、これが最も重要です。ウオーキング前には、筋肉のウオーミングアップとして必ずストレッチを行ってください」

8人に1人が罹患する腎臓病「座りすぎ」が発症リスクを高める可能性も

 新型コロナウイルス感染リスクを避けるため、家で椅子に座ってテレワーク。しっかりたんぱく質を摂って、頭痛や生理痛には薬を一錠──。こんな「普通の生活」が腎臓に負担をかけているかもしれない。“沈黙の臓器”腎臓の声を聞く方法を徹底取材。

 8人に1人……これは日本における「慢性腎臓病」の罹患者数だ。この数は生活習慣病の代表格であり、「国民病」といわれて久しい糖尿病よりも多い。筑波大学腎臓内科学教授の山縣邦弘さんが言う。

「2005年には1330万人だった国内の罹患者は、2015年に私たちが調査したところ、1480万人に増加していました。その数はいまも右肩上がりであることが予想されます」

 実際、医学雑誌『ランセット』の2020年の報告によれば現在の患者数は2100万人だともいわれている。山縣さんはその最大の原因は高齢化にあるという。

「腎臓は血液を濾過して老廃物を体外に排出する働きをする、生命の維持に欠かせない臓器です。しかしその働きは加齢とともに徐々に衰えていきます。慢性腎臓病は機能が正常の6割以下に低下している、またはたんぱく尿が出るなどの腎障害が3か月以上持続した状態をいいます。

 罹患率は50代から増え始め、60代では15%、70代では30%、80代に至ると約半数が当てはまります。つまり、年を重ねることそのものが発症リスクを上げるのです」(山縣さん)

 この傾向に拍車をかけるのが、コロナ禍における巣ごもり生活だ。

 大阪大学の研究グループが2006年から12年にわたって行った追跡調査によれば、デスクワークが多い業務体系の人はそうでない人よりも腎臓病の症状の1つである「たんぱく尿」が出るリスクが1.35倍高かった。

「実際、筑波大学に通院する慢性腎臓病患者の1日の活動量を調査したところ、座っている時間が37%で最も多く、次いでベッドなどで眠っている時間を指す臥床時間が34%。1日の最も長い時間を座って過ごしていました。有酸素運動のような、体に負荷がかかる動きに至っては4%で、1日1時間にも満たなかった。

 もちろん体調が悪いゆえに座っている時間が長い人もいましたが、“座りすぎ”が発症リスクを上げることは間違いありません」(山縣さん)

 大手健康機器メーカー・オムロン ヘルスケアが行った調査によれば、コロナ禍で座っている時間が増えたと実感する人は多く、今後、罹患者数はさらに増えることが予想される。

高血圧の日本人女性は特に注意

 座りすぎ生活と並んで腎臓病のリスクを上げるのは、高血圧や糖尿病、肥満などの疾患だ。

「腎臓は細かい血管が塊になって成り立っている臓器で、糖尿病や高血圧などの疾患によって細い血管の硬化が進み、機能も落ちてしまう。

 このため、慢性腎臓病の患者が心筋梗塞や脳卒中を併発して、そのまま亡くなるケースも非常に多いのです」(山縣さん)

 思わず、巣ごもり生活でテレビの前に寝そべる夫のお腹まわりを確認してしまう人も多いだろう。しかし、まず気をつけるべきはあなた自身かもしれない。

 生活習慣病の専門クリニック・AGE牧田クリニックの院長で『医者が教える最強の解毒術』の著書がある牧田善二さんは「特に高血圧の日本人女性は気をつけるべき」と警鐘を鳴らす。

「2016年に中国の北京大学が過去に世界中で行われた血圧に関する7つの研究を分析し、発表した論文によれば、収縮期の血圧が120〜139mmHg、拡張期の血圧が80〜89mmHgの高値血圧レベルの人の慢性腎臓病の発症リスクは、正常値の人に比べて1.28倍高くなることがわかりました。

 しかもこの傾向は、東アジア人女性に特に強くみられた。つまり日本人女性は、軽度であっても高血圧の人の腎臓病リスクが上がると考えられます」(牧田さん)

 また、生理痛や慢性頭痛の際に服用する鎮痛剤も腎機能の低下を招く要因になる。

 2012年に厚労省が発表した『厚生労働科学研究』によると、「薬剤性腎障害」の原因となる割合は、鎮痛剤が最も高く、強力な薬であるはずの抗がん剤や抗菌剤をしのぐ数値だった。

 毎日を快適に過ごすための痛み止めをのんでコロナ対策の巣ごもり生活をする──そんな「普通の日常」が腎機能低下のリスクをはらんでいるのだとしたら、これほど恐ろしいことはない。

コロナ重症化リスクは6倍に

「このたび、思いもよらぬ腎臓機能障害の発見により、急遽入院せざるをえない状況となり、プロの俳優として恥ずかしい限りです」

 俳優の佐野史郎(66才)が連続ドラマの降板を発表したのは今年の5月。佐野に腎機能低下の自覚症状はまったくなく、発見に至ったきっかけは発熱により新型コロナウイルスの罹患を疑い、健診を受けたことだった。PCR検査は陰性だったものの腎臓機能障害があると判明したのだ。

「腎臓病が厄介なのは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことです。それゆえ腎臓は、肝臓と同様に“沈黙の臓器”と呼ばれます。

 病状が進行し、腎臓の機能が正常な状態の3分の1以上低下した『腎不全』になると、食欲不振や吐き気、手足や顔のむくみ、血圧の上昇、夜間の排尿の回数の増加といった症状が表れることがあります。

 さらに進行すると貧血や疲労感、息切れなども起こる。しかしこの段階で気がついても、すでに透析治療が必要な状態になっていることも少なくありません」(山縣さん)

 腎不全の状態になれば根治は難しい。さらに進行して腎機能が通常の10%未満まで落ちた状態の「末期腎不全」になると、自身の力で体内の毒素を充分に排泄できなくなり、透析療法や腎臓移植が必要になる。


透析治療には、人工の膜で作られた人工腎臓に血液を通して再び体内に戻す「血液透析」と、自分のお腹の中に管を通して透析液を入れ、腹膜を介して老廃物を透析液に移動させる「腹膜透析」がある。

 前者の場合、1回約4時間の治療を週に3回通院して受けることが必要だ。後者なら通院は月1~2回ですむものの、透析液の交換を1日に4回行わなければならない。いずれも、生活に大きな支障をきたすことになる。

 透析の医療費は年間500万円程度かかり、大半は公費で賄われるが、個人での負担も大きく、自己負担額の平均は、月1万〜2万円にものぼる。

 生活への制限に加え、恐ろしいのは腎機能の低下がほかの病気も引き起こす可能性があること。特に懸念されるのは激しい関節の痛みを伴う「痛風」だ。痛風・リウマチを専門とし、透析治療を行う両国東口クリニック理事長の大山博司さんが解説する。

「痛風の原因となる尿酸の7割は腎臓から排出されます。つまり、腎臓の働きが悪く排泄機能が低下すれば、尿酸が体内に停滞するようになり、尿酸値が上がる。その結果、痛風になるリスクが上昇するのです」

 尿酸は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギーであるプリン体が分解されてできる物質で、血液中の濃度が上昇すると、関節にたまって結晶化する。それを白血球が処理する際に炎症を起こし、痛みが生じる。

「痛風患者は年々増加していて、2019年には男女合わせて125万人。男性が圧倒的に多いものの、女性も安心はできません。もともと女性は尿酸値が男性より低いため痛風は起こりにくいのですが、尿酸値が上昇した場合のリスクは男性より高いとされています。

 加えて、ダイエットやむくみの解消を目的として利尿剤をのんでいる人がいるのも気がかりです。利尿剤の多用で尿酸値が上がることもあるため、心臓や血圧の病気でない限り、利尿剤をのみ続けるのは危険です」(大山さん)

 牧田さんが懸念するのは新型コロナの重症化リスクだ。

「日本腎臓学会の発表によれば、慢性腎臓病で透析を行う人の新型コロナウイルス感染による死亡率は一般の人より6倍も高いと報告されています。これは腎機能の低下に伴い、免疫力も落ちていることなどが理由に挙げられます」

 山縣さんも声を揃える。

「コロナは気管支や肺だけでなく、腎臓にも影響を及ぼすことが知られています。肺炎が起こると血液中の酸素濃度が下がるだけでなく、血圧が低下して腎臓への血流が減り、腎機能が急速に低下する『急性腎障害』が起こりやすい。

 コロナは血管の内皮細胞に炎症を起こすため、血管が多く集まっている腎臓がダメージを受けやすいことや、腎臓内部の尿をつくる『尿細管』に感染することもわかってきました」

塩分とタンパク質に注意

 知らないうちに忍び寄る腎臓病。その魔の手を振り払うためにはどうすべきなのか。山縣さんはとにかく健診を受けることを強く提案する。

「職場や各自治体が住民に対し行っている一般的な健康診断でも、腎機能をチェックすることができます。注目するのは、血液検査による『血清クレアチニン値』と尿検査による『尿たんぱく』です」(山縣さん)

 クレアチニンは筋肉を動かしてエネルギーを使ったときに発生するもので、血液中のクレアチニンは腎臓で濾過され、尿として排泄される。血液中のクレアチニン値が高いということは、それだけ腎臓の働きが悪くなっていることを示している。

「健診ではクレアチニン値をもとに、腎臓機能を表す値である『推算糸球体濾過量(eGFR)』が算出されます。健康な腎臓は1分間に90mL以上の血液を濾過しているので、eGFRが90以上なら正常。60を割ったら危険信号です。

 尿たんぱく検査は、尿の中に基準値以上のたんぱくが含まれているか否かを判断する検査です。1度の検査では正しい判定が出ないこともあるため、異常があれば、3か月後に再検査することを推奨します」(山縣さん)

 大山さんは尿酸値の重要性を指摘する。

「尿酸値は7.0mg/dLまでは基準値内とされますが、女性は6を超えたあたりから腎臓病のリスクが高くなる。見落とさずにしっかりとチェックしてほしい」

 定期的な健診とともに取り組みたいのは、生活習慣の改善だ。管理栄養士の望月理恵子さんは、食生活での注意点をこう話す。

「気をつけるべきは塩分です。塩分を多く摂ると、血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分が増え、血圧が高くなって腎臓に負担がかかります。

 特に朝は塩分排泄能力が低い状態なので、朝食は減塩を意識すること。しょうゆやソースなどの調味料は、食材の上からかけて使うのではなく、小皿に入れて口に当たる部分だけにちょっとつけるなどするといい。

 酢、レモン、ゆずなどの酸味や、わさび、マスタード、唐辛子などの香辛料、しそやみょうがなどの香味野菜を利用して塩分のある調味料を減らすのもいいでしょう」

 牧田さんが懸念するのはたんぱく質の過剰摂取だ。

「たんぱく質から生成されるアミノ酸は、排出時に腎臓の強い働きを必要とします。多く取り入れすぎると腎臓を疲弊させる原因になる。特に人工的なたんぱく質であるプロテインは推奨できない。実際、私のクリニックでも急に腎臓病に関する数値が上がってしまった患者に話を聞いたら、スポーツクラブですすめられたプロテインをのみ始めたというケースが複数ありました」(牧田さん)

 食事に気をつけつつ、運動も欠かさず取り組みたい。

「運動時間の目安は、1週間あたり2時間30分以上。ウオーキングなら、30分を週5回行えばいい。階段の上り下りなど、日常生活の中で取り入れる形でも構いません」(山縣さん)

 人生100年時代、健康長寿の源は腎臓にあり。

【肝臓】は美を司る栄養のキーマン 専門家に基本から教わってきました

こんにちは、新人美容研究家のにらさわあきこです。美容関係者によると、今年の美容キーワードは「代謝」とか。代謝といえば、実は肝臓が担っているって、ご存じでしたか? 

 私は良く知らなかったのですが、肝臓は代謝と解毒を司る臓器。しっかり働いてもらってこそ、全身に栄養が行き渡り、瑞々しい肌や筋肉をキープできるというのです。

 そこで、肝臓がきちんと働いているかどうかをチェックする方法や肝臓をいたわる暮らし方について、専門家の先生方にとことん教わってきました。今回から4回にわたり、ご紹介していきます。

●肝臓は美と健康の守り人
まずお邪魔したのは、東海大学医学部付属東京病院健診センター。全国に先駆けて2006年に抗加齢ドックを始めるなど予防医学や健康管理に力を入れているところです。

【取材協力先】
東海大学医学部付属東京病院健診センター
http://tokai-anti-aging.com/

「肝臓はすべての臓器の下支えをしている臓器です。ですから、肝臓を健康に保つことが全身の健康や美容キープに繋がるのは間違いありません」とは、東海大学医学部付属東京病院の院長で、健診センターのセンター長でもあり、肝臓を専門とする西崎泰弘(にしざき やすひろ)先生。

 肝臓の働きについては、最近の研究で今まで以上にいろいろなことがわかってきているそうですが、個人的には「お酒を飲む人が気にするところ」というイメージで、なにをしているところかすらも、今ひとつわかっていませんでした。

「肝臓の働きは、主に4つです。『解毒』、『エネルギーの生成(代謝)』と『貯蔵』、そして脂肪を吸収するのに欠かせない『胆汁の生成』です」(西崎先生、以下・同)

 私たちの口から入った栄養は、胃や腸で消化・吸収された後、すべていったん肝臓に集められ、アミノ酸・アルブミンというたんぱく質になって血液を通して全身に運ばれます。すぐに必要でない分は、肝臓で貯蔵されます。

 一方、全身から集められてきた毒素の無毒化、つまりデトックスもやはり肝臓が行います。ですから、肝臓が機能しないと、毒素が体内をめぐったり、体内に停滞したままになり、様々なトラブルを引き起こします」

 つまり、全身の栄養を司るのが肝臓なら、毒素が回らないようにするのもやはり肝臓なのですね。

「ちなみに肝臓が除去する毒素で最も重要なのは活性酸素です」と先生。

 なんと、活性酸素ですか。活性酸素といえば、様々な害をもたらすことで知られていますよね。病気の原因になったり、美容面でもシミ、しわ、たるみなど様々なトラブルの原因になるとはよく聞きます。

 ということは、肝臓にしっかり働いてもらってこそ、美容もキープできるということでしょう。

 とはいえ、肝臓は生命維持を左右するほどの大事な臓器。ゆえにとても頑丈にできていて、一般的な健康診断で見る数値では、よほどのレベルにならない限り、注意には至らないと聞いたことがあるような。

「そうです。肝臓は、臓器の中で最も大きく、4分の1が働いていれば、十分に仕事ができます。ただし、健診でわからなくても、注意したほうがいい状態があります」

 それが、脂肪肝。

 最近、アルコール以外の原因で脂肪肝になる人が増えてきているというのです。

 私も思い当たることがあるので、脂肪肝については、実は密かに気にしておりました。

●脂肪肝と脂肪沈着
では、脂肪肝とはどのような状態を言うのでしょうか。

「脂肪肝とは、肝臓の中の脂肪の割合が30%以上を占める状態です。肝臓は、肝細胞という細胞で主に構成されているのですが、脂肪肝では、肝細胞に脂肪が沈着しています」

 つまり、もともと肝臓としての仕事をする「肝細胞」という職人集団で組織された肝臓に(注・イメージで言ってます)、脂肪が入り込んだ状態が脂肪肝。沈着のイメージは、ロース肉のように周囲にたまる感じではなくて、そこかしこにぽつぽつと入り込んでいる感じらしいです(図参照)。

「脂肪肝を放置していると、肝炎や肝硬変に進行することがありますが、そこまでの状態にならなくても、肝臓の働きが阻害されて、トラブルを引き起こす可能性があります」

 肝臓の働きが阻害されると言うことは、パフォーマンスが下がると言うこと。つまり、代謝やデトックスが十分に行われなくなる可能性があると言うことではないですか! 困ります! 

 ちなみに、なぜ30%が脂肪肝の目安になっているかというと、西崎先生によれば、

「脂肪肝の診断は肝生検という組織検査で行うのですが、肝生検は危険を伴うので、超音波(エコー)で見て判断できるのが30%だからというのが大きいです」とのことでした。

 というのも、脂肪肝の診察は、一般には血液検査を経てエコーで確認するのが主流。なので、エコーで判断できる30%の割合が脂肪肝の目安だそう。

 が、「脂肪が沈着し始めた時点で、肝臓のパフォーマンスは下がり始めるので、代謝が下がり、除去しきれなかった活性酸素が肌にトラブルを引き起こす可能性はあります」というから、注意です。

 なお、最新の機械では脂肪沈着を数値で可視化できるものができていて、30%以下の脂肪沈着でも見ることができるそう。その機械とは、フィブロスキャン。

 元は、肝臓の硬さを測るためにフランスで開発されたものに、2013年に肝臓の脂肪の割合を数値化する機能が付加され、医療現場でも利用されるようになったそうです。

●痩せていても脂肪肝に注意!
とはいえ、一般人の我らには、可視化のチャンスがそうはないのも事実。

 脂肪肝や脂肪沈着は、どう推し測ればいいのでしょうか。

「太っている人や内臓脂肪が多い人は、脂肪肝の可能性があります。また、ある程度は血液検査でチェックできるので、後程見方をご説明しましょう。

 ただし、それでもわかりにくいのが痩せている人の脂肪肝です。私がこれまでに見てきた中でも、スリムで健康的に見える女性が脂肪肝または脂肪沈着の状態だったことがあります」

 たとえば身長153センチ、43キロ、やせ型の20代女性が、脂肪の割合10%台の脂肪沈着状態だったことがあったそう。

「彼女の場合、食事のほとんどがファーストフードのハンバーガーやフライドポテトでした。実は、脂肪肝になる人には共通項がありまして、肝臓を作るタンパク質の摂取が足りていない場合が多いんです。また、もう一つ大事なのが運動です。痩せているのに脂肪肝になっていたケースは、運動をしないで、食事制限でダイエットした人に多く見られました」

 ……かなり思い当たります。

 ダイエットなどで食事制限をする場合、カロリーを抑えることに意識を向けるあまり、タンパク質が不足することは十分にあり得ます。

 なお、私自身は我慢が嫌いなので、ダイエットはしないのですが、肉や魚よりもお菓子や果物が好きなので、小腹が空いたときはそれらで済ませることがよくあります。しかも、このところの自粛生活で外出がままならず(個人的にはアレルギーのせいもあるのですが)、まるで動いておりません。体感的に脂肪沈着している気がかなりするのですが、いったいどうすればいいのでしょうか? 

「不摂生を続けていると、脂肪沈着は、ほんの1、2週間ですぐに始まります。が、一方で、改善もしやすいんです。生活を改善すれば、1、2週間で脂肪沈着は改善されていきますよ」

 先の脂肪肝だった女性も、西崎先生の指導により、生活改善を行ったところ、脂肪肝から脱せられたとか。

 生活改善の内容が気になります! 

 そこで、次回は肝臓の状態をチェックする血液検査の見方や、肝臓によい食事やサプリなどをご指導していただきます。こうご期待! 

●資料提供

東海大学附属東京病院健診センター

西崎泰弘(にしざき やすひろ)先生

東海大学医学部付属病院健診センター長、東海大学医学部基盤診療学系健康管理学 領域主任教授、東海大学健康推進センター伊勢原健康推進室長、東海大学医学研究科バイオ研究医療センターライフケアセンター・センター長、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会専門委員(新開発食品評価調査会)、日本肝臓学会専門医、指導医。著書に『イラスト図解 検査のしくみ・検査値の読み方』(日本実業出版社)など。

にらさわあきこ
文筆家、美容研究家。NHKディレクターを経て、文筆業に。恋愛や結婚、美容について取材・執筆を続ける中、2019年から美容活動を強化。簡単&ラクに綺麗になるための情報をブログやインスタ、雑誌ウェブなどで発信中。著書に『未婚当然時代』(ポプラ新書)。『婚活難民』(光文社)『必ず結婚できる45のルール』(マガジンハウス)など。
インスタ:@akiko_nirasawa_beauty、ブログ:『美活☆365日 簡単&ラク~に綺麗になろう! 』

“眉間のシワ”は肝臓に危険信号?顔でわかる病気のサイン

「自覚症状が出ていなくても、病気のサインは顔に表れています」

こう話すのは『顔を見れば隠れた病気がわかる』(マキノ出版)の著者、「みうらクリニック」の三浦直樹医師だ。

「眉間と目は肝臓、目の下は腎臓、鼻は心臓、頬は肺、唇は胃と腸といった具合に、顔のパーツと内臓には相関関係があります」(三浦先生・以下同)

これらの位置に血色、膨らみ、へこみ、シワ、シミ、吹き出物といった急な変化が見られたら、その関係する内臓に不調が出るという。

自分でチェックできる「顔でわかる病気のサイン」、なかでも重篤な症状につながるものを三浦先生に聞いた。女性はお化粧や外出前などに、鏡を見る習慣があるので、こうした変化に気をつけてみよう。

■肝硬変や肝臓がんなど肝臓の疾患

年齢とともに眉間のシワが気になるが、眉間のシワは「年のせい」だけではなく、肝臓の機能と関係しているという。

現代人には、働きすぎ、ストレス、目の酷使、飲酒、食品添加物の摂取など、肝臓に負担のかかることが多い。しかし、肝臓は“沈黙の臓器”といわれるだけあって、自覚症状が出にくい。ところが、眉間にはしっかりとサインが出ているというのだ。

「肝臓が弱いと眉間の左側に縦ジワが現れます。『眉間のシワが増えた』『溝が急に深くなった』『シワの入っている部分の肌の色が変わってきた』などの変化が表れると、肝機能の著しい低下が考えられます」

また、眉間が赤くなっていると肝炎のサイン。眉間の中央が膨れていたら、肝臓肥大あるいは脂肪肝のサインだ。これらの状態が悪化すると、肝硬変や肝臓がんに進行することがあるというから要注意。

「肝臓の症状が悪化してくると、白目の部分が黄色くなってきます。また右の眼球の斜め上を押して痛みがある場合も、何らかの深刻な状態になっている可能性がります」

次のエクササイズを行ったり、シジミや、梅干しなど酸味のある食品を取ろう。

【エクササイズ】
(1)右の太ももの内側、膝と鼠径部の中心部分を指でほぐす。
(2)右のふくらはぎの内側と足首の中間部分を指でほぐす。

■心筋梗塞などの心臓疾患

心臓にストレスがかかると鼻にサインが表れる。

「もともと鼻が赤い人は、心臓に負担がかかっていたり、高血圧の傾向があります。特に注意してほしいのが、鼻先に毛細血管が浮き出て、赤い筋ができている場合と、鼻が不自然に腫れている場合です。

通常の血管が詰まって通りが悪いため、鼻の表面に新しくバイパスを作った毛細血管が浮き出て見えたり、うっ血した血液がたまって鼻が腫れているのです。心筋梗塞や狭心症といった心不全のリスクが非常に高いので、早急に医療機関で診てもらってください」

次のエクササイズをしたり、食事に気をつけるなど、生活習慣を変えていけば、症状は改善されるという。

【エクササイズ】
胸の左上部にある第2、第3、第4肋骨の間を指でほぐして、心臓周辺の血液やリンパ液の滞りを流すようにする。

■白内障・緑内障

鼻と上唇の間の部分が膨らんでいる場合、白内障や緑内障の可能性がある。

「白内障や緑内障は加齢によるものだと思われていますが、実はどちらも原因は目の中の体液の循環の滞りです」

ストレスや自律神経の乱れなどが理由で、鼻から目頭へ通る血液やリンパ液の流れが滞っていることが、膨らみを引き起こしているそうだ。

ぜひ次のエクササイズを試してほしい(ただし、網膜剥離を起こしている人や出血のある人はNG)。

【エクササイズ】
鼻の下あたりを指で押さえ、硬くなっている部分をもみほぐす。左目が悪いと左側、右目が悪いと右側に痛みを感じる。直接、指を歯肉と唇の間に入れてもいい。

血液やリンパ液が流れ始めると、症状の改善が期待できるという。

下戸なのに肝臓がん…脂っこい物が好きな人は超音波検査を【進化する糖尿病治療法】

【進化する糖尿病治療法】

肝臓に脂肪が多くたまった状態を脂肪肝といいます。「肝臓病=お酒を飲む人の病気」という印象が強いのか、「お酒を飲まなくても脂肪肝になることがあります。治療せずに放置すると、肝硬変や肝臓がんになるリスクがありますよ」と言うと、驚く患者さんが少なからずいます。

脂肪肝には、アルコールを過剰に摂取する人がなるアルコール性脂肪肝と、アルコールを一切飲まない、またはアルコールを摂取するけれど肝臓に障害を及ぼすほどではないのに発症する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」があります。「NAFLD」は「ナッフルド」と読みます。

アルコール性の場合、男性なら、ビール大瓶1本強、日本酒1合半、ワインならグラス2杯半以上飲む人が高リスクとなりますので、NAFLDは、それよりもアルコール摂取量が少ない人(女性は、男性の3分の2の量より少ない人)となります。

NAFLDの原因の多くは「アルコール以外」。具体的には肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧など。2型糖尿病患者は肥満、脂質異常症、高血圧を併発している人が圧倒的に多いですから、NAFLDのリスクが高い。一方で、脂肪肝が糖尿病を発症させているという見方もできます。肝臓に脂肪が沈着するとインスリン抵抗性になり、糖尿病を引き起こすからです。

昨年1月に「Diabetes Care」オンライン版に掲載された内容によると、米国ではNAFLDを併発した2型糖尿病患者の増加に伴い、今後20年間で推計6兆円の医療コスト負担が発生し、肝移植の手術件数や心血管死の増加などが予想されるとのこと。日本でも糖尿病患者は増えていますから、今後NAFLD併発患者が増加していくことは容易に考えられます。

■症状が出てからでは手遅れ

NAFLDは、80~90%が脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。しかし10~20%の人は少しずつ悪化し、肝硬変に移行。さらには肝臓がんを発症する人もいます。

この徐々に進行し、肝硬変、肝臓がんへと移行する可能性のある脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH=ナッシュ)」といいます。前述の米国の発表では、NAFLD併発2型糖尿病患者は推計1820万人、すでにNASHに進行している患者は推計640万人。臨床の現場では6万5000件の肝移植が必要になり、137万件の心血管死、81万2000件の肝臓病関連死が発生するだろうと指摘されています。

NAFLDを早期発見し、NASHにならないようにするにはどうすればいいか? 肝臓は沈黙の臓器とよくいわれる通り、自覚症状はほとんどありません。NAFLDはもちろん、NASHであっても、かなり進行しない限り、目立った症状はないのです。

黄疸、足のむくみ、腹水などによるお腹が張った感じなどが出てくるのはNASHを発症し、肝硬変まで進行してから。肝臓病はある段階を過ぎると治療で健康な状態に戻すことは難しくなりますから、これらの症状が出る前にNAFLD、NASHを発見し、治療を開始しなくてはなりません。

そのためには、超音波検査やCT検査などの画像検査が必要。これで脂肪肝の所見があり、ほかの肝臓の病気がなければNAFLDの診断になります。NASHの場合は肝臓の一部を針で採取して顕微鏡で観察する肝生検が確実な診断法になります。

2型糖尿病の人は、NAFLD、NASHのリスクが高いため、定期的に超音波検査を。採血で肝臓の数値であるGOT(AST)、GPT(ALT)もチェックします。これらが高くなると、NASHが疑われます。NAFLD、NASH治療は、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧治療と、食事療法や運動療法改善の2本柱になります。

(坂本昌也/国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長)

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腎臓病のサイン「たんぱく尿」 朝食抜き、遅い夕食は避ける

「朝食を抜く」あるいは「遅い時間に夕食をとる」という食習慣が、たんぱく尿の出現リスクを高める可能性があることが、日本人を対象とした研究で明らかになりました。

■不健康な食習慣も腎臓の病気の原因になり得る?

職場や自治体が実施する健康診断では、ほぼ必ず尿検査が行われます。結果の中にある尿たんぱくが陽性(たんぱく尿)だと、腎臓の病気が疑われます。腎臓病は無症状である場合が多いため、たんぱく尿は腎臓の病気を見つけ出すための重要なサインになります。たんぱく尿が続けば、慢性腎臓病と診断される可能性が高まります。

慢性腎臓病は、進行して末期腎不全になると透析治療や腎移植が必要になるほか、総死亡(あらゆる原因による死亡)や心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡のリスク上昇にも関係することが分かっています。慢性腎臓病の主な原因は、糖尿病、高血圧、肥満ですが、それらの発生には不健康な食習慣が関係すると考えられます。例えば、日常的な朝食抜きや遅い夕食は、肥満リスクを高めることが示唆されています。

これまでに行われた、食事と慢性腎臓病の関係を評価した研究の多くは、特定の栄養素(塩分など)の摂取を控える、栄養素の摂取バランスを変更する、といった介入が、慢性腎臓病の進行に及ぼす影響に注目していました。しかし近年、食事をとる時間や食べ方も慢性腎臓病の発症に影響するのではないかと考えられるようになりました。

食習慣は本人の努力次第で変えられることから、不健康な食習慣がどのような病気を引き起こすのかを明らかにすることは重要です。そこで金沢大学などの研究者たちは、慢性腎臓病の発症の手前で出現するたんぱく尿と不健康な食習慣の関係を調べることにしました。

■腎機能に問題のない約2万7000人を3年超追跡

対象となったのは、石川県金沢市で、1998~2014年に年1回の健康診断を受けていた40歳以上の一般人です。

年1回の健康診断の際に、質問票を用いて、不健康な食習慣、飲酒習慣、喫煙習慣、降圧薬の使用、血糖降下薬の使用に関する情報を収集し、BMI[注1]とウエスト/ヒップ比[注2]を測定しました。不健康な食習慣に関する調査では、遅い夕食(週に3回以上、夕食が就寝前2時間以内になる)、夕食後の間食(週に3回以上)、朝食抜き(週に3回以上)について、「はい」「いいえ」から回答を選択し、早食いについては、同年代の人と比較して「早い」「同じ」「遅い」から選択するよう依頼しました。

健診の時点で腎機能が低下していた人や、尿たんぱくが1+(30mg/dLに相当)以上だった人、食習慣などの分析に必要な情報がそろっていなかった人などは除外し、健康診断後1年を超えて追跡できた2万6764人(平均年齢68歳、44%が男性、平均BMIは22.8、平均追跡期間3.4年)を分析対象にしました。

不健康な食習慣の中で最も多かったのは早食い(29%)で、続いて、遅い夕食(19%)、夕食後の間食(16%)、朝食抜き(9%)となりました。

[注1]BMI:体格指数=体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕 日本肥満学会の分類では25以上が肥満。

[注2]ウエスト/ヒップ比=ウエスト周囲径(cm)÷ヒップ周囲径(cm) 数値が大きいと生活習慣病のリスクの高い腹部肥満(内臓脂肪型肥満)と判断される。

まず、健康診断時のBMIおよびウエスト/ヒップ比と不健康な食習慣の関係を調べたところ、不健康な食習慣を実践していた人の方が、そうでない人に比べ、BMIもウエスト/ヒップ比も統計学的に有意に大きいことが明らかになりました。唯一の例外は、朝食を抜く習慣とBMIの関係で、朝食をしばしば抜く人としっかり食べる人のBMIには有意な差は見られませんでした。

また、追跡期間中のBMIの変化とウエスト/ヒップ比の変化には、不健康な食習慣の有無はほぼ影響していませんでした。

追跡期間中に、2844人(10.6%)にたんぱく尿が出現しました。発生率は1000人-年あたり32.7でした。4つの不健康な食習慣のうち、たんぱく尿出現リスクの上昇と関係していたのは、「遅い夕食」と「朝食抜き」でした。出現リスクはそれぞれ12%、15%上昇していました(表1)。「朝食抜き」と「遅い夕食」がある人のたんぱく尿出現リスクの上昇は、年齢、性別、BMIにかかわらず、広く認められました。

表1 不健康な食習慣とたんぱく尿出現リスクの関係

(Nutrients. 2020;12(9):2511. Published online 19 August 2020.)© NIKKEI STYLE (Nutrients. 2020;12(9):2511. Published online 19 August 2020.)

この研究は、不健康な食習慣とたんぱく尿出現の因果関係を示したわけではありませんが、不健康な食習慣を改善すれば、腎臓をいたわることができる可能性を示すものといえます。

論文は、2020年8月19日付のNutrients誌電子版に掲載されています[注3]。

[注3]Tokumaru T, et al. Nutrients. 2020;12(9):2511. Published online 19 August 2020.

[日経Gooday2021年1月6日付記事を再構成]

大西淳子 医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

名医・博士の健康術 ★今週のテーマ「脂肪肝を改善する飲み方・食べ方」

 ハイボール×から揚げは最高の組み合わせだった!脂肪肝は、酒と肉・魚・卵で予防・改善できる! 現在、日本人の4人に1人が抱えているといわれる「脂肪肝」。肝臓に脂肪が付き、働きが低下する病気だ。肝臓は、約2000種以上の酵素を分泌し、「栄養の代謝」や「毒素の解毒」、「胆汁(消化液)の生成」といった重要な役割を担う人体最大の臓器で、働きが低下した場合の影響は大きい。

 健康な肝臓の脂肪は3%ほどだが、30%を超えると、「脂肪肝」と診断される。しかし、脂肪肝には痛みなどの自覚症状はない。さらに、肝臓=酒の飲みすぎというイメージから、「酒をやめるのは無理だ」と思い込むなど、脂肪肝を放置する人は驚くほど多い。

 そんな現状に警報を鳴らすのが、肝臓専門医で栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅先生だ。

「脂肪肝を侮るのは本当に危険です。脂肪肝は生活習慣病の入口となり、糖尿病や高血圧、脂質異常症、果ては、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。さらに放置すると、肝臓の細胞が炎症を起こし、「細胞の壊死」や「線維化(細胞が硬くなる)」が生じます。この頃になって、ようやく自覚症状が出てくるのですが、一度硬くなった肝臓を元通りに回復させるのは極めて困難です。症状が軽い脂肪肝のうちに対策をとらないと、「肝硬変」や「肝がん」へと進展してしまいます」

★適量なら酒は悪ではない

 長らく、「脂肪肝」といえば「酒の飲みすぎ」が原因と考えられてきた。しかし、その常識はもう古い。

「脂肪肝に対して、アルコールは一律に有害とはいえません。むしろ、適量のアルコールは脂肪肝の予防・治療に有効ということが分かっています。1日の適量とは、純アルコール量40グラムまで(次ページの右上図参照)。この量の飲酒は脂肪肝のリスクにならず、むしろ脂肪肝を招く確率が低下します。さらに、糖尿病を予防するという効果も報告されています」(栗原先生)

 適量のアルコールが、なぜ脂肪肝の予防や治療に有効なのだろうか。

「肝臓がアルコールを分解する時に、脂肪の元となる糖を消費するからです。アルコールを飲んだ結果、脂肪が減っているという、酒好きにとっては都合のよすぎる人体の仕組みですね。ただし、アルコールには脂肪の合成を促進する作用もあるため、飲みすぎは逆効果です」(栗原先生)

★禁酒ではなく糖質を減らす

 酒の飲みすぎよりもある意味危険なのは、つまみだ。

「脂肪肝の大きな原因となるのは、糖質の摂りすぎです。脂肪というと油の摂りすぎと思いがちですが、脂肪の元となるのは糖質です。アルコール性脂肪肝と診断された人でも、実際は、酒を飲みながら食べた食事で脂肪肝を進行させていることが多いのです。肝臓の負担を減らすためには飲酒時につまみは必要です。糖質が少ないものを食べるようにしましょう」(栗原先生)

 控えるべき対象の「糖質を含む食品」の代表は、ごはんやパン、麺類。次に、でんぷんを多く含むイモ類、吸収が早い果糖を含む果物。また、当然ながら甘い菓子、米や小麦が原料のしょっぱい菓子も控えるべき対象だ。その代わりに積極的に摂りたいのが、肉や魚、卵、豆類などのたんぱく質。筋肉の材料となり、脂肪を燃やしやすくするからだ。つまり、ハンバーグやステーキ、トロの刺身やマヨネーズも我慢する必要はない。

 ちなみに、おすすめの酒は、酎ハイやハイボールである。焼酎やウイスキーなどの「蒸留酒」は糖質ゼロだからだ。これからは、脂肪肝撃退のために“ハイボール&から揚げ”の黄金コンビを胸を張って楽しもう。

 脂肪肝を改善するためには、適量の酒と糖質を控えたつまみが有効だ。さらに、食べる順番にも注意すれば、より高い効果が期待できるという。

「糖質を最初に食べると血糖値が上がり、体内で脂肪を合成・蓄積しやすくなってしまいます。ですから、最初は肉や卵、魚などのたんぱく質、その合間に野菜やきのこなどの食物繊維を食べるようにしましょう。糖質を多く含むメニューは、最後に食べるようにします。そしてもう1つ、よく嚙んでゆっくり食べるようにしてください。早食いもまた、脂肪蓄積につながる悪習慣です」(栗原先生)

 居酒屋で気をつけたいのは、「とりあえずのポテサラ」だ。「すぐに出てくるから」「じゃがいもは野菜だから大丈夫」と頼む人も多いのではないだろうか。しかし、いも類に含まれているでんぷんは「糖質」である。空腹時にいきなり食べると血糖値が急上昇し、脂肪がたまりやすくなってしまうので注意しよう。

★最悪なのはシメのラーメン

 酔って気分がよくなると、もう1軒と、はしご酒をしてしまいがち。適量を超えたアルコールは、脂肪の合成を促す他、脂肪肝のためによいことはないという。

「2次会、3次会と飲み続けると、お腹が空くことも問題です。お酒を飲みながら食事を摂ると、糖質の吸収がよくなるうえ、アルコールで上昇した血糖値が急激に落ちるため、すぐにお腹が空いてシメのラーメンなどを食べたくなってしまうのです。これが肥満を増進させる最悪のシナリオです。特に、シメのラーメンだけは即中止してください。糖質の急激な摂取、血糖値の急上昇…といいことなど1つもありません。脂肪肝の予防・改善のためには、飲み会は1次会で切り上げましょう」(栗原先生)

◎酒別の適量(純アルコール40gの目安)
ビール 中びん2本(中ジョッキ2杯)
焼酎 チューハイ(7%)350ml缶2本
日本酒 2合
ワイン グラス3杯(約360ml)
ウイスキー ダブル2杯

◎酒別の糖質量
蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)0(ゼロ)
ビール(淡色・350缶1本)10.85g
日本酒(1合)8.8g
ワイン(グラス1杯・約120)赤1.8g 白2.4g
※「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」をもとに炭水化物の総量から食物繊維を引いて糖質量を算出。

◎おすすめの酒とつまみ
脂肪肝を改善するには、毎日2杯のハイボール(または酎ハイ)と、肉・卵のつまみがよい。

◎肝臓についた脂肪を減らす“食べる順番”
1たんぱく質(肉・卵・魚・大豆製品など)
 ▼
2食物繊維(野菜・きのこなど)
 ▼
3糖質(ごはん、焼きそば、お好み焼きなど)
ただし、はしご酒のあとのシメのラーメンだけは即刻中止を!
これをやめるだけで脂肪肝の改善はもちろん、ポッコリお腹もへこむ。

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監修/栗原 毅先生
栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。前慶應義塾大学特任教授、前東京女子医科大学教授。主な著書に『誰でもスグできる! 脂肪肝をぐんぐん解消する! 200%の基本ワザ』(日東書院本社)など多数。

“腸年齢”が若いと素顔がきれい! “腸”を大事にしたい5つの理由

近年、大きな注目を集めている“腸活”。腸をいい状態に整えれば、美容や健康だけでなくメンタルまで上向きに! カラダのすべてに関わる腸のひみつに、今あらためて迫ります。

理化学研究所で長年腸内細菌について研究している辨野義己先生によると、腸はカラダの中でも最も重要な臓器だそう。

「腸は、動物が進化する過程で最初にできた臓器。脳と連携してカラダの状態を左右し、免疫力にも大きく関わっています。大腸にすむたくさんの腸内細菌は、カラダに様々な影響を及ぼしています」(辨野先生)

科学ジャーナリストの小澤祥司さんは、こう語る。

「最近では、腸内細菌が肥満や老化、はたまた気分や食欲まで左右すると示唆する研究結果も出ています。腸内細菌をうまくコントロールして腸を元気にすれば、美容や健康はもちろん、心の健康まで叶う可能性があるんです」

それでは、腸の“底力”をひとつずつご覧あれ!

“腸年齢”が若ければ、素顔もきれいに!

“腸年齢”とは、辨野先生が提唱する、腸のコンディションの目安。食事や生活環境によって左右される。

「腸内細菌の中には悪玉菌と呼ばれるものがいて、人間にとって有害な物質を作り出しています。この有害物質が腸から吸収されることで、吹き出物ができるなど肌にも影響を与えかねません。そして肉ばかりの食生活や運動不足により腸年齢が高くなると、悪玉菌が大増殖。見た目年齢まで高くなる可能性があります」

すっぴん美人を目指すなら、まずは腸活に励んで腸年齢を下げるべし。

腸の“免疫細胞”が、カラダを守る!

病原菌から身を守る臓器として、腸は免疫力にも大きく関わっている。

「腸には、免疫システムの約60%が集まっています。小腸にはたくさんの免疫細胞がいてカラダをバイ菌から守っています。腸を健康にすると、風邪をひきにくくなったり、アレルギーが改善されたりなどのいい影響が。カラダ全体の免疫力アップにつながります」(辨野先生)

「最新の研究では、免疫細胞の司令塔である“T細胞”の成長に、腸内細菌が関わっているかもしれない、という報告も」(小澤さん)

“溜めない腸”が、ボディラインを美しくする!

「ダイエットのリバウンドや空腹感に、腸内細菌が関わっていることも指摘されています。太りやすさについても、腸の状態が鍵を握っていると言えるのでは」(小澤さん)

便秘による下腹ぽっこりも、腸が不健康になっている証拠。

「よいお通じのためには、3つの力が必要。食物繊維を摂って便を作る力、腸内細菌が食べカスを分解して便を育てる力、腸まわりの筋肉が便を出す力です。これを整えれば溜めないカラダになり、スッキリしたウエストラインに」(辨野先生)

アンチエイジングの新たな鍵は、腸内の“短鎖脂肪酸”。

短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が作る酸の一種。それ自体が腸の粘膜を整えるうえに、嬉しい効果があるそう。

「最近では、短鎖脂肪酸が、カラダの中で大変よい働きをすることがわかってきました。例えば短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、筋繊維の代謝を活性化させたり、マウスの実験では筋力低下を防ぐことも報告されています。また、短鎖脂肪酸には体内の炎症を防ぐ効果が見られるものが多く、老化を妨げる可能性も。今後、アンチエイジングが期待される分野です」(小澤さん)

“腸内細菌”の働きで、メンタルも整う!?

脳内では神経伝達物質が行き交い、喜びや怒りなどの感情を操っている。

「その神経伝達物質も、実は腸内細菌と関係があるんです。例えば、“意欲”に関わるドーパミンの材料を作る腸内細菌が発見されています。脳によい微生物を腸内で探す“サイコバイオティクス”という研究もトレンド。またストレスに関係する腸内細菌が存在し、このバランスが崩れるとさらなるストレスを呼ぶと指摘する研究も」(辨野先生)

腸内細菌でメンタルケアできる時代が、近い将来やってくるかも。

辨野義己先生 理化学研究所特別招聘研究員。45年にわたって腸内細菌を研究し続ける“うんち博士”。腸や腸内細菌に関する著書を多数執筆する。

小澤祥司さん 科学ジャーナリスト。近著に『メタボも老化も腸内細菌に訊け!』(岩波書店)、『日本一要求の多い消費者たち』(ダイヤモンド社)。

未来の腸活 便の細菌のDNAを調べて腸内細菌叢をつくり直す

腸内細菌をまとめて「腸内フローラ」と呼びます。腸内フローラを整える「腸活」は、いまではすっかり市民権を得ています。

 まだ、「乳酸菌や発酵食品などを積極的に食べましょう」といったレベルではありますが……。

 それにいまの腸活は、主に便秘・軟便対策を目指しています。なかには花粉症対策などもありますが、まだ「平均」の世界にとどまっていますから、万人に効果があるわけではありません。

「個別化栄養」を実現するためには、自分の腸内フローラの特徴を知る必要があります。「メタゲノム解析」と呼ばれる新しい検査がそれを可能にしました。便に含まれる細菌のDNAすべてをまとめて調べる方法です。

 その結果をコンピューターで処理すると、菌の種類までは分かりませんが、腸内フローラ全体として、たとえば太りやすいとか、がんにかかりやすいといった特徴が見えてくるのです。

我々の大学では、学生実験で、琵琶湖の水を採ってきて、メタゲノム解析をやらせています。学生でもできるくらい簡単に、しかも安価に、琵琶湖にすむ細菌やプランクトン全体の特徴を測ることができるのです。

 腸内フローラだって同じことですから、全然難しいことではありません。

 しかしそこからが難問です。腸内フローラは睡眠不足や精神的ストレスで簡単にバランスが崩れてしまいます。ところが細菌の入れ替えはかなり難しく、ちょっとサプリメントを飲んだくらいではほとんど変わりません。

 しかし大腸内視鏡検査の前後で、お腹の調子が変わったという人が時々います。検査の際には、強力な下剤入りの水を2リットルも飲んで、腸をきれいに洗うのですが、それによって古い腸内フローラが洗い流されて、新しい腸内フローラが形成されるらしいのです。

だから腸内フローラを意識した個別化栄養を実現するとすれば、同様に過去の腸内フローラを捨て去り、健康な腸内フローラをつくり直すといった治療が行われるはずです。そしてもちろん、各人のゲノム情報も考慮して、栄養学的にもっともバランスの取れた細菌を組み合わせたカプセルが処方されるでしょう。それが今のところ考えられる、近未来の腸活の姿です。

永田宏:長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

腎臓病、リウマチ、潰瘍性大腸炎…鼻うがいで病気は治る

鼻の穴の奥を水で洗い流す「鼻うがい」で、さまざまな病気が治りやすくなるという。腎臓内科専門の「堀田修クリニック」堀田修院長に聞いた。

 人間の喉は「上咽頭」「中咽頭」「下咽頭」の3つに分けられる。一般的に行われている「うがい」は口の奥の中咽頭を洗うもので、あまり効果がないという。

「外から侵入したウイルスや細菌といった害となる異物をキャッチするのは、ツルッとした扁平上皮の中咽頭ではなく、ボコボコした繊毛上皮の上咽頭です。そこに付着した異物を洗い流すには『鼻うがい』が有効なのです」

 上咽頭の表面にはたくさんのリンパ球が待機していて、異物をキャッチするとすぐに攻撃を始める。すると炎症が起きて口の奥の喉に痛みを感じるが、実際に炎症を起こしているのは鼻の奥の上咽頭だ。

上咽頭は非常に敏感で、細菌やウイルスだけでなく、花粉やほこり、喫煙の刺激などでも炎症を引き起こす。

 この炎症は、風邪の他にもさまざまな病気の原因になるから注意が必要。炎症が長引き、慢性上咽頭炎になると、最悪の場合、腎症、リウマチ、潰瘍性大腸炎といった病気を誘発する。

 細菌などに感染した病巣が体の離れた部分に病気を引き起こす「病巣感染」という現象が起こり、長引く炎症が自己免疫システムの誤作動を招く。細菌などを攻撃していた病巣の好中球やマクロファージと呼ばれる白血球が、病巣が発する間違った指令によって血液に乗って全身に移動し、今度は自分の体の臓器などを傷つけてしまうのだ。

■歯と扁桃が危険スポット

 中でも、病巣になりやすい場所として知られるのが歯と扁桃だ。歯周性病巣は心疾患、扁桃の炎症は腎臓の血管が破れるIgA腎症の原因といわれている。

「IgA腎症の場合、まずは病巣になっている扁桃を摘出します。これで間違った指令のもとを断てますが、白血球の“自爆攻撃”はその後も続く。それを抑えるため、ステロイドホルモンの投与を併用した『扁摘パルス』を行いますが、血管破壊が収まらず血尿が続くケースが2割ほどあるのです。

そこで、上咽頭が新たな病巣になっている可能性を考え、塩化亜鉛を上咽頭に塗布する治療を実施したのです。実際、血尿が続いていた2割の患者さんも完治しました」

 塩化亜鉛の塗布治療に効果があったということは、上咽頭もIgA腎症の病巣となっていることを証明している。

「他にも、リウマチ、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、花粉症など、一部の自己免疫疾患も上咽頭が病巣になっているケースが多くあります」

 さまざまな病気の原因となる上咽頭の炎症を防ぐために効果的なのが「鼻うがい」だ。病状が進行している場合は塩化亜鉛処置が必要だが、初期段階なら鼻うがいが寛解の大きな手助けになるという。

 堀田院長が推奨する鼻うがいの方法は、水に食塩を少量混ぜて鼻から吸い込み、そのまま飲み込むだけ。食塩水なら吸い込んだ時の痛みがなく、誰にでも実践できる。ただし、鼻うがいの直後に鼻をかむと中耳炎になる可能性があるので注意が必要だ。

 鼻うがいだけでなく、外気の刺激が上咽頭を直撃する口呼吸や、喫煙などの悪習を改善することも心がけたい。

肝臓の別名は“沈黙の臓器”…男性の5人に2人が機能異常です

 人間にとって代謝と解毒を担う大事な臓器の一つである肝臓が、“沈黙の臓器”と呼ばれることは知っているだろうか。長年の酒の飲み過ぎや不摂生が原因で深くダメージを受けていても、自覚症状がなかなか出ないことを意味する。

 肝臓の機能が低下すると実に厄介だ。糖や脂肪の代謝がスムーズに行えなくなって高血糖や脂質異常を招き、脂肪肝を引き起こし、さらなる肝機能低下を招く……という“負のスパイラル”に陥ってしまうからだ。

 健康診断や人間ドックで、肝機能マーカーのγ(ガンマ)-GTPに51以上、ALTに31以上など“要注意”の数値が出たにもかかわらず、放っておいたがために気づいたら手遅れ……というケースも少なくない。何だかダルいし食欲もイマイチ、風邪のような自覚症状が出た時には急性肝炎……ということもあるのだ。

 日本人間ドック協会がまとめた「2015年全国集計結果」によると、316万人いる人間ドック受診者のうち、肝機能異常を指摘されたのは33.2%の約105万人。受診者の約3人に1人で、2年連続で100万人を超えた。男性に至っては40.2%、つまり5人に2人が肝機能異常ということ。しかも肝機能異常を抱える人は年々増加、その割合は30年前に比べて約3倍というデータもある。

 ただでさえ、働き盛りのビジネスマンは会食が多く、普段から肝臓を酷使しがち。過度のアルコール摂取の他にも、仕事のストレスや睡眠不足、油っこいものや甘いもの、お肉の食べすぎなど悪い生活習慣も、肝臓にはボディーブローのようにジワリジワリとダメージになる。

 人間ドックでアドバイスされる週1日の休肝日や、ドラッグストアやコンビニに並ぶ“二日酔い回復ドリンク”で肝臓を労わったとしても、それだけでは肝機能改善対策は十分とはいえない。やはり大事なのは、生活習慣の改善による日々のケアなのだ。

■日々の肝臓ケアは簡単に習慣化できる

 毎日の肝臓のケアついては、これまでもさまざまな方法がクローズアップされてきたが、実はいま注目を集めているのが、スルフォラファンという成分だ。健康に敏感な芸能人やアスリートが摂り始めて話題を呼んだ、ブロッコリーの新芽ブロッコリースプラウトに多く含まれている。

 スルフォラファンには、体内の解毒酵素を活性化し、肝臓の解毒力を助ける働きなどがあることがわかっている。カゴメの研究で、肝機能異常の男性52人を、スルフォラファンを毎日摂る人と摂らない人のグループに分け、2カ月後に検査したところ、摂取したグループではγ(ガンマ)-GTPやALTの平均値が改善したという結果も確認された。

 そんなスルフォラファンの1日の摂取目安量は30mg(※)。継続摂取がオススメだが、実はブロッコリースプラウトに換算すると約1.5パック分。最近はスーパーでも手に入りやすいとはいえ、毎日の食生活で摂り続けるのはハードルが高い。サラダやおひたし、サプリメントなどを普段の生活の中にうまく取り入れて、スルフォラファンを摂ることがポイントだ。今や肝臓ケアは、自宅でもオフィスでも外出先でも手軽にできる時代なのだ。(※)スルフォラファングルコシノレートとして

 ビジネスマンにお酒の付き合いはつきもの。バリバリ働いて美味しい酒を楽しむためにも、肝臓ケアは日々の習慣にしてしまいたい。

毎日5杯のコーヒーで肝臓がんの発生率は4分の1に低下する

【Dr.中川のみんなで越えるがんの壁】

 忘年会シーズンに、気になる訃報がありました。コラムニストなどでおなじみの勝谷誠彦さんの命を奪ったのは、肝不全だそうです。57歳の若さでした。

 8月に重症アルコール性肝炎で入院され、その後の治療で回復されたこともあったようですが、先月の再入院後に容体が急変。28日に息を引き取ったといいます。

 肝不全の具体的な病態は肝硬変で、肝臓がんになる手前の状態。肝臓がんではありませんが、肝臓がんとの結びつきが強いので、お話ししましょう。

 慢性的に肝臓に炎症が生じた慢性肝炎が悪化すると、肝硬変に進展。それがさらに悪化すると、肝臓がんになります。これまで肝炎を起こすのはC型肝炎ウイルスが80%で、B型肝炎ウイルスが10%と、圧倒的大多数が肝炎ウイルスでした。

 そのウイルスの感染経路として大きいのは、輸血でしたが、血液製剤をめぐる事故が相次いだことで、血液製剤の製造が厳格に見直され、ウイルスが混入することはありません。新規感染者はほとんどいないため、肝炎ウイルス由来の肝臓がんは減少に転じています。今後はさらに減るでしょう。

 これまでの肝臓がんは感染症の要素が大きかったのです。しかし、ウイルスの感染ルートがほぼなくなると、事情は変わります。そうではない肝臓がんが増えるとみられているのです。

 そのひとつが、アルコール性肝炎。およそ18万人を対象にした国立がん研究センターの大規模調査によると、男性は多量飲酒で肝臓がんのリスクが上昇します。多量飲酒とは、正味のアルコール量で1日69グラム以上。日本酒換算で3合以上です。これを避けることが肝臓がんを食い止める第一歩になります。

 肝臓がんとの関係で、もうひとつ見逃せないのがNASHです。飲酒をよくする人がなる脂肪肝と区別して、非アルコール性脂肪肝炎といいます。アルコールを飲まない人の中にも、アルコール性肝炎と同じような重症化のシナリオをたどるケースがあるのです。肥満の人に多いことから、肥満予防も大切でしょう。

 アルコールにせよ、脂肪肝にせよ、肝臓への持続的な慢性炎症がよくないということ。では、どうすればいいのかと思われるでしょうから、予防法もお伝えします。それがコーヒーです。

 国立がん研究センター多目的コホート研究で、コーヒーを毎日5杯以上飲む人はほとんど飲まない人に比べて、肝臓がんの発生率が約4分の1に低下していました。コーヒーの肝臓がん予防効果はハッキリしませんが、コーヒーが持つ抗炎症作用が肝炎の進行を防いでいるのかもしれません。

(中川恵一/東大医学部附属病院放射線科准教授)

健康長寿は毎日の観察から 腎臓を守る“尿チェック”

 腎臓病の罹患者は今や1600万人とされ、高血圧、糖尿病の人の5人に2人は患っていると言われる。そもそも腎臓病は、病気になっても自覚症状がないため、つい油断しがちだ。「腎臓は“無言の臓器”と呼ばれ、腎臓病を未然に防ぐには本人の努力が必要。特に尿のチェックは重要で、具体的には泡立ちの度合いを見ることです」(専門医) 朝起きてトイレで用を足すと、いつもと違う色をしていたり、泡立ちの量の違いに気付くことがある。「ひょっとして悪い病気なのかも…」と、不安に駆られた経験を持つ中高年者も多いだろう。

 腰の背中側に2つある腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物を取り除き、余分な水分とともに体外に排出する“尿製造機”のイメージが強い。しかし最近では、多くの臓器と情報を交わし、臓器を制御することで生命維持に貢献していることも分かっている。
 「心臓が送り出す血液の4分の1が集中する腎臓は、血液管理の司令塔でもあるのです。24時間働き続け、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、水分やミネラルの量調整をし、きれいな血液を全身に供給するほか、エリスロポエチン(EPO)やレニンと呼ばれるメッセージ物質を放つことで“酸素の運び屋”である赤血球の量や血圧も調節します。さらに骨づくりに必要なビタミンDを活性化させ、ホルモンを産出する役割もある、非常に重要な臓器といえます」(健康ライター)

 都内で総合医療クリニックを営む医学博士・遠藤茂樹院長は、さらにこう説明する。
 「腎臓は寿命や老化にも大きく関係します。血液中のリンの濃度が少ない動物ほど寿命が長いことが、最近の調査で分かってきました。主成分がリン酸カルシウムである骨は、腎臓と絶えず会話を交わし、血液中のリン濃度が高くなると“リンが十分に足りている”というメッセージを出します。腎臓にはその受容体があり、この情報を受けて血液中のリン濃度を調整しているのです。腎臓の機能が失われると、血液中のリンの濃度が過剰になり、血管内皮にリン酸カルシウムが沈着して血管が石灰化する。血管が狭窄したり、血栓ができたりして、脳梗塞や心筋梗塞を起こすのです」

 ちなみに、腎機能が低下してリンが体内から排泄できない場合は骨がもろくなり、簡単に骨折してしまうなどの症状が出る。
 また、逆に言えば、腎臓は心臓、肝臓、肺、脳、腸、骨などあらゆる臓器と深く関わっているため、どこかが悪ければ腎臓に悪影響が出る。 例えば、心臓のポンプ機能が衰えれば血流が減り、常に大量の血液が必要とする腎臓はダメージを受けてしまう。また、何かしらの薬を飲んでいる場合、それを代謝する腎臓は大きな負担がかかり、それが他の臓器に影響を与える可能性もある。つまり腎臓を守るには、不必要な薬やサプリメントは飲まない、医師が処方した薬は用法・用量を守る、汗をかく夏場は医師との相談のもとで高血圧の薬を減らすなど、薬との付き合い方を変える必要もあるということだ。

 ところが、前述のように“沈黙の臓器”と呼ばれる腎臓は、その機能が破綻する寸前まで自覚症状が表れにくい。
 「腎臓の機能を調べる血中クレアチニン値は、男性が0.65~1.09mg/dl、女性は0.46~0.82mg/dlが基準です。そこから外れた数値だと、疲れ、だるさ、むくみなど腎臓特有の複数の症状があり、尿にも変化が表れれば、腎臓の機能低下を疑うべきでしょう。例えば、尿量が減るか、出なくなった場合。尿を作る腎臓の能力が極端に低下しており、急性腎臓障害を起こしている可能性があるため、すぐに病院に行くべきです」(同)

 また逆に、尿量が多い時は、単なる水分の摂りすぎや糖尿病以外に、慢性腎不全の初期症状の疑いがある。
 体内の保水機能が低下して多尿になる“尿崩症”の中には、尿濃縮を指示するホルモンが出ていても、その作用部位である尿細管に異常が起きている腎性尿崩症の場合もあるのだ。

 加えて、尿の“泡立ち”にも注意が必要だ。
 泌尿器専門医はこう言う。 「尿が泡立ってなかなか消えないと訴えて検査に来られる方がいます。大半は落下によってできる細かい泡がドーム状になった状態を気にされていて、この泡の場合は心配いりません。しかし、蜂の巣のように大きめで洗剤のシャボン球のようにふんわりした感じの泡である場合は、蛋白が混ざっているため医師の診断が必要となります」

 最近の尿検査で重視されているのは、腎臓の働きの指標となるクレアチニン値とeGFR(推定系球体ろ過量)なのだが、専門医はこう続ける。 「eGFRもいいのですが、もっと尿蛋白を重視すべきとの見方もある。尿に蛋白が漏れ始めているということは、腎臓に何らかの異変が起きている可能性がある証拠だからです。健康診断などで、蛋白が出ていると言われても、そのまま放置する人が多い。痛くもかゆくもないし、見た目も大きな異変がないため、この程度なら平気だろうと甘く考えてしまいがちです。そのままにしておくと、腎臓機能がどんどん悪化する可能性があるので、注意すべきです。泡のチェックは、その意味でも重要なのです」

 さらに注意が必要なのは、尿の色だという。真っ赤な尿はもちろん、コーラのような褐色の尿が出る場合も、専門医の診察が必要になる。「尿は体液を調整する役割もあるため、水分が足りていなければ濃い色になりますし、十分に満たされていれば透明に近い色になります。また、激しい運動をした後などに血中から筋肉の成分が混ざり込み、こちらも濃い尿が出るケースもある。などなど、体内の状況が敏感に表れるため、普段から尿の色をチェックして、安静にしている状態でいつもとは違う赤色や褐色の尿が出たら注意すること。腎臓に炎症があるケースだけでなく、膀胱がん、膀胱炎、尿路結石といった尿の経路に問題があることも多いのです」(内科医)

 各臓器を支える要となっている腎臓をいたわるためにも、サインとなる尿の状態を観察する癖をつけよう。

心臓・腎臓・肝臓の病のシグナル 侮れない足の“むくみ”の脅威

 朝、会社に履いてきた靴が、夕方帰る時は靴ベラが必要なくらいきつい。また腕時計も日によってきつい時がある…。これらの現象を一般的に“むくみ”と呼ぶが、なぜ起きるのか。それを探っていくと、危ない病気、高血圧性の腎機能低下や心臓病、肝臓病などが原因となっていることがある。

 まず、この“むくみ”は、いかにして起きるのか。
 人の体は、ご存知のように大部分が水分(体液)でできている。つまり、体を形成している細胞や血管の中など、組織の中の隙間に体液があり、普段は一定のバランスが保たれている。ところが、それが何らかの原因で崩れ、体液が余分に溜まった状態になることがあり、それは手や足だけでなく、顔や内臓などあらゆる部分に出る可能性がある。

 東京労災病院外来担当の内藤隆彦医師は“むくみ”のメカニズムをこう語る。
 「そうした現状を、総じて“むくみ”と言いますが、特に重力の影響で、足首やスネといった体の下の部分に出やすい。それも、筋肉が比較的少ないところです。体の中では、常に毛細血管の中から外へ体液が漏れ出ていて、この体液によって細胞や組織に栄養分が運ばれている。しかし、何らかの病気で漏れ出る体液が多くなりすぎて、リンパ管や再吸収しようとする毛細血管の働きが悪くなると、今度は細胞や組織の間に体液が溢れてしまう。こうして、目で見ても、触っても分かるくらいの“むくみ”が出るのです」

 我々の体には、血液を循環させるための血管(動脈と静脈)が網の目のように走り、また体液の“下水道”とも言えるリンパ管も、同じように張り巡らされている。「血液は、これらの管を通って体の隅々まで循環し、栄養が送られています。血液の役割は、そうした酸素を送ったり二酸化炭素を回収して栄養分を運ぶ一方で、不要物を回収、免疫を担当する白血球を運搬し細菌やウイルスを攻撃します。また、そうした役目をする血液を心臓に戻す働きをするのが静脈とリンパ管。このどちらかの働きが衰えると、“むくみ”が発症するようになるのです」(同)

 こんな症例をご紹介しよう。電化製品を取り扱う会社の部長を務める清水敬一郎さん(55=仮名)は、基本的には終日、社内で仕事をしている。朝9時に出勤するとサンダルに履き替え、夕方の退社時に靴を履く。ところが最近、帰る時に靴ベラがなくても履けた靴が、わざわざ靴紐を緩めなければ履けない日が増えた。また、手で触ると、靴下のゴムが当たる部分から足首、甲にかけて、腫れ上がったような“むくみ”がある。 「不安になった清水さんは、会社近くの病院に行き、診察を受けました。すると担当医から、腎不全の疑いを指摘されたのです。つまり、たかが“むくみ”と思っていたら、思いのほか重大な病が隠れている場合があるということです」(健康ライター)

 清水さんはすぐに血液検査から心電図、レントゲン検査、尿検査などを行い、心臓・腎臓・肝臓などの働きまで徹底的に診断を受けたという。その結果、やはり腎臓の働きが悪いために“むくみ”が生じていたことが分かり、治療が必要と判断された。腎不全は、体の中の余分な体液を尿として体外に出す腎臓の働きが悪くなった状態を指す。
 
健康ライター・泉准也氏はこう説明する。
 「清水さんの場合は、体の中に余分な体液が増え、血管の外にも多く溜まるようになってしまったため、“むくみ”が発症したのです。担当医の話によれば、あのまま放置すれば、“むくみ”どころか、高血圧の他、腎・肝機能障害や心臓病などの原因になるところだったそうです。根本的な原因としては、ストレスも無視できません」

 血圧が高い状態が続くと腎臓が悪くなり、排出できる塩分量が減り、体の中に塩分が溜まる。これが足のむくみを引き起こすと言われ、さらにストレスが加われば血圧も上がる。「酒を飲む人だと、どうしても辛いものを多く食べたり、塩分を摂りすぎるため、高血圧だけではなく動脈硬化を進行させてしまう。さらに肥満が重なれば、脳梗塞や心筋梗塞といった、命に関わる重大病につながりリスクは一層高まるため、心当たりのある人は、注意が必要です」(同)

 “むくみ”が症状として出た場合、心臓や腎臓、肝臓など、重要な臓器の病が絡んでいる場合は、当然、そちらを優先的に治療する必要がある。一方、内臓器官にこれといった障害がない場合でも“むくみ”は起こる。それをどんな方法で防ぎ、対処していけばいいのか。 「何はともあれ血行をよくすることが重要です。一般論になりますが、運動不足の人は足の筋肉も弱くなっていることが多い。その場合、足の筋肉のポンプ効果が十分得られず血行が悪くなります。

例えば、調理師や販売員など、立ちっぱなしの仕事をする方が足の“むくみ”に襲われることが多いですね。自宅に帰ったら、血行をよくするための青竹踏みをするのもいいでしょうし、足湯に浸かるのも効果的だと思います。また、軽いストレッチをしたり、マッサージをして、むくんだ部分の筋肉をほぐしてあげること。日頃から散歩をしたり、なるべくこまめに体を動かすように心掛けることも大切です」(医療関係者)

 “筋肉ポンプ”という言葉が出てきたが、これは静脈とリンパ管の働きを助けるものだ。
 「例えば、足の皮下組織に体液が溜まっている場合、患部を表面から弾力性のある包帯や靴下、下着などで圧迫する。そのように皮膚を固定した状態で運動すると、筋肉と一緒に包帯や靴下で挟まれた皮下組織を押し上げるため、リンパ管に“筋肉ポンプ”のような効果が出るようになるのです」(同)

 専門医によっては、薬剤治療より、バンテージを使った筋肉運動を勧める場合もある。
 「ただし、いずれにしても(1)足だけではなく全身にむくみが出た場合、(2)“むくみ”と同時に、動悸、息切れを感じた、(3)“むくみ”と同時にお腹に水が溜まる感覚がする、こうした時は、まず医療機関で受診することをお勧めします」(同)たかが“むくみ”と思うなかれ。

これって胃からのSOS?胃潰瘍の自覚症状ってどんなもの?

なんだか最近、胃が重たい、胃がもたれたりむかつく感じがする…と悩んでいる人はいませんか? もしかするとそれは「胃潰瘍(いかいよう)」かもしれません。

今回は多くの人がかかる病気のひとつ「胃潰瘍」の初期症状や予防法について、医師に聞いてみました。
胃潰瘍ってどんな病気?
胃には、強い酸性の胃酸があります。
普通の細胞であれば溶けてしまいますが、胃の壁には胃が傷つかないように防御する機能が働いています。この防御機能によって、胃は胃酸から守られています。

胃潰瘍はその防御する機能がうまくいかず粘膜が傷ついてしまい、胃の壁がえぐられたような状態になってしまうことです。
こんな初期症状に要注意!
胃潰瘍になったとき、はじめは気付かないこともあります。

以下のような初期症状が出た場合は、注意が必要です。
・胃がもたれる
・食欲がなくなる
・胃がさしこむように痛い、おなかが張ったように痛い
・吐き気がする、嘔吐する
・胸やけがする、すっぱい液体がこみ上げてくる
・背中が痛い

これらの症状が続く場合は内科や消化器内科を受診するようにしましょう。

病状がひどくなると吐血や、胃で出血する影響で便が黒っぽくなる、貧血になる、体重が減るなどの症状がでることもあります。
胃潰瘍になりやすいのはどんな人?
胃潰瘍は、以下のような人がなりやすいといわれています。

・慢性的にストレスがある人
・ピロリ菌に感染している人
・痛み止めなど、長期に薬を服用している人
・アルコールをよく飲む人
・喫煙者
・辛いものなど、刺激物をよくとる人
胃潰瘍って予防できる…?
胃潰瘍は、胃酸が多く出すぎるために胃の粘膜が傷ついて起こることがあります。
これを予防するためにも、以下を意識するとよいでしょう。

・牛乳やスキムミルク、ヨーグルトなどの乳製品、豆腐などをとる(胃酸を中和されます)
・胃に負担のかかる脂っこい食べ物や強いアルコール、コーヒーなどをとりすぎない
・禁煙する
・辛いものなど刺激物には気をつける
・暴飲暴食を避ける
・ストレスをためない
・家族にピロリ菌感染者がいないかを確認。

ご家族にピロリ菌感染者がいる場合は検査をして保菌していた場合は除菌を行うといいです。
どんな治療がおこなわれるの?
胃が出血が続いている場合には、まず出血している場所に止血剤を使ったり、クリップやレーザーで血を止める治療が行われます。

止血後、または出血がない場合には、薬による治療を行うこともあります。
胃酸の分泌を抑制する制酸剤や酸中和薬、粘膜抵抗強化薬、粘液産生分泌促進薬、胃粘膜微小循環改善薬などの内服にて治療が行われます。

また、胃潰瘍の原因となるピロリ菌が見つかれば除菌療法を行います。

医師からのアドバイス
胃潰瘍は、以前は治りにくい病気といわれていました。現在はかなり治療成績のよい病気です。それでも治療をしっかりと行わないと難治性潰瘍というやっかいな状態となることがあります。上記の初期症状に思い当たる節があれば、早めに病院を受診するようにしましょう。

肝臓にブラック勤務を強いていませんか?あなたの「肝臓のお疲れ度」をチェック

アルコールが体内に入ってくると、肝臓の中で分解作業を行いますが、毎日毎日お酒を飲んでいると当然肝臓に負担がかかります。長期間肝臓に負担をかけて肝臓の機能低下が進行すると、肝臓が「疲れて」しまい、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの深刻な病気に発展することも…。

ブラック企業、ブラックバイトという言葉があるこのご時世、あなた自身が自分の肝臓をブラックな環境に置いているかも…!
あなたの肝臓が今どのくらい「お疲れ」なのか、チェックしてみましょう!
チェックスタート!
□ 週3日以上、お酒を飲む
□ 1日あたりビール大瓶1本以上飲む
□ 1日あたり日本酒3合以上飲む
□ お酒を飲むペースが速い
□ 普段から身体がだるい
□ 足がむくみやすい
□ 風邪をひきやすい
□ お酒を飲んだ翌日は必ず二日酔いをする
□ 目や皮膚が黄色い
□ 手のひらが赤い
□ 肌が荒れやすい
□ 食欲がない
□ おなかが張っている
□ 吐き気を感じる
□ 身体がかゆい
□ 急にお酒に弱くなった

いくつ当てはまったでしょうか?
結果は…
当てはまった数が「0~3個」の人

【特に問題なし】今の生活習慣を維持してくださいね!

あなたの肝臓の「お疲れ」度はそこまで高くないといえるでしょう。

お酒が好きな場合でも、1日あたりビールなら2杯程度、日本酒なら2合程度の適量を守っていただき、また最低週2日は休肝日を設けることが大切です。肝臓を守ることで、今後も長くお酒と付き合っていけると思います。

お酒をあまり飲まないけれども慢性的に疲労がたまっているなど体調不良がある場合には、肝臓以外に問題がないか、内科的な検査を受けるようにしましょう。
当てはまった数が「4~7個」の人

【注意】あなたの肝臓は「ややお疲れ」のようです。

あなたの肝臓は、やや「お疲れ」になっている可能性が高いです。

毎日お酒を飲んでいる人は、この習慣を何年間も続けていると、肝臓への負担が大きくなってしまいます。最低週2日は休肝日を設けるようにしましょう。

お酒をあまり飲まないけれども慢性的に疲労がたまっているなど体調不良がある場合には、肝臓以外に問題がないか、内科的な検査を受けるようにしましょう。
当てはまった数が「8個以上」の人

【要注意】いますぐ生活を見直して!

あなたの肝臓は、とても「お疲れ」になっている可能性が高いです。

肝臓はアルコールを分解するのにエネルギーを必要としており、一気にたくさん飲むと肝臓への負担が大きくなってしまいます。

毎日お酒を飲んでいる人は、最低週2日は休肝日を設けるようにしましょう。また定期的に健康診断を受けて、肝臓の病気がないかをチェックしましょう。
一言アドバイス
いかがでしたか?

飲酒は、肝臓にとても負担のかかる行為です。適度な飲酒は豊かな人生につながりますが、過剰な量の飲酒を毎日続けていると肝臓のダメージが蓄積して取り返しのつかない状態になっているなんてことも…。私たちが適度な飲酒でリフレッシュしているように、肝臓にも休肝日を設けてリフレッシュさせてあげる機会が必要ですね。

「沈黙の臓器」肝臓の異常は寝汗で分かる? 毎日よく寝て病気予防

揚げ物や焼肉を、おなかいっぱい食べる。デザートは別腹だからと言って、食後に甘いケーキやアイスも食べる。お酒を飲んで夜更かしをする。歓送迎会の季節などに続けてしまいがちなこんな生活は、肝臓にとても負担をかけている。

 肝臓には、主に3つの働きがある。食べ物を体内で使える形に変えて蓄える「代謝」、アルコールや老廃物など体に有害なものを無毒化する「解毒」、脂肪の消化吸収を助ける胆汁の「生成、分泌」だ(※1)。

 暴飲暴食をして睡眠不足の生活を続けると、肝臓は働きづめで休む暇もない。肝臓は、現代人が知らないうちに酷使しがちな臓器なのだ。

□肝臓と睡眠との密接なつながり

 肝臓の働きと睡眠とは連動しているといえるほど、密接につながっている。規則正しい生活で自律神経のバランスが取れていれば、肝臓の働きも良くなる。しかし、夜更かしで睡眠不足になり、食べすぎ飲みすぎが続いたり、ストレスの多い生活をしていると、肝臓が代謝や解毒などを処理しきれなくなって音を上げる。

 肝臓の機能が低下すると、自律神経が乱れて体調が悪くなる。自律神経の乱れは眠りにも悪影響を与えて不眠症を招き、不眠症がまたストレスになる…こんな負のスパイラルに陥りやすくなる。

□寝汗は肝臓不良のサイン?

 季節を問わず、寝汗をかくときは病気が隠れていることがある。

原因はいくつか考えられるが、その一つが肝機能の低下だ。肝機能が低下すると、自律神経機能も低下する。そうなると寝ている間の体温調整がうまくできなくなり、寝汗をかきやすくなる。毒素もたまりやすくなり、汗がアンモニア臭くなる。

 寝汗が増えて、汗がアンモニア臭いのは、肝機能低下のサインである可能性があるのだ。

□肝臓からのSOSを見逃さないで

 肝臓は、「沈黙の臓器」とも呼ばれる。機能が低下しても、痛みが出ないからだ。肝臓が悪くなっても自覚することは難しい。そのため知らないうちに、肝臓がんにまで進行してしまっていることもあるのだ(※2)。

 その沈黙の臓器も、静かにSOSを出している。寝汗をかいたり、汗がアンモニア臭くなったら、肝臓が悲鳴を上げている可能性がある。そのSOSを見逃さず、病院で肝機能のチェックをしてもらうことが早期発見、早期治癒に結びつく。

□肝機能の低下、睡眠不足、負のスパイラル防止に生活を見直そう

 肝機能の低下と睡眠不足という負のスパイラルにはまってしまったら、どうすればよいのか。ポイントは、食生活と睡眠の改善だ。

 食生活では肉や揚げ物(高タンパク・高脂肪の食べ物)やパンなどを食べ過ぎないことと、アルコールを飲みすぎないことが大切だ。野菜や果物、大豆や未精製の穀物を中心に摂取しよう。特に大豆には肝機能の働きをサポートするサポニンが含まれている。

□肝臓の負担減のために規則正しい睡眠を意識しよう

 肝臓の負担を減らすためにも、睡眠の改善は大切だ。夜型の生活習慣を見直し、適度な運動をして、ストレスが少なく快適に眠れるための生活習慣を心掛けよう。

 質のよい睡眠に変えて、睡眠時間をきちんと確保すれば、肝臓は負担が減って回復していく。不眠のストレスもなくなり、自律神経もバランスが取れてくる。良いサイクルへと導いていくことができるだろう。

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「恐ろしい」といわれる慢性腎臓病…どんなリスクがあるの?

慢性腎臓病が重要視されるようになってきました。腎不全を予防する重要性はもちろん、慢性腎臓病だと心臓や血管系の病気(心筋梗塞、心不全、脳梗塞など)のリスクが高くなることがわかってきたからと考えられます。今回は慢性腎臓病について、医師に詳しい話を聞きました。

慢性腎臓病の検査と診断

慢性腎臓病は以下の値によって診断されます。
・血液検査のクレアチニン値
・尿検査の尿蛋白

ほかにも腎臓がどれだけ機能を果たしているかの指標に「eGFR」というものがあります。
このeGFRの値により5段階にステージ分類されてそれぞれの対応を行います。
※eGFRは以下の情報から算出されます。
・年齢
・性別
・血清クレアチニン値

【慢性腎臓病の診断】
以下の項目により、慢性腎臓病と診断されます。
・明らかな尿異常
・画像検査や血液検査や病理検査で腎障害の存在が明らかである
・GFR(糸球体濾過量)が一定量、3か月以上持続する
『3か月以上持続する』と期間を設けている理由は、急性腎不全のように一時的に腎機能が低下する場合があるためです。

【糖尿病による診断の切り分け】
日本では慢性腎臓病の患者を、さらに糖尿病の有無で分けています。糖尿病による腎障害は、初期に尿中に微量のアルブミンというタンパクの一種が漏れ出ます。これを見つけることで、より早い段階から腎不全に至らないための取り組みを始められるからです。

日本人に多い慢性腎臓病

慢性腎臓病は日本の成人の8人に1人が該当するというとても多い疾患です。

慢性腎臓病の原因としてリスクの高いものは以下のことが挙げられます。
・高血圧
・脂質異常症
・糖尿病
・喫煙
・肥満
・過量飲酒

メタボリックシンドロームと重なる部分も多いです。

慢性腎臓病の症状・予防法

【症状】
初期には自覚症状がほとんどありません。気づかない間に進行してしまうことが多いですが、このときに病気を見つけることができるかが重要になってきます。病気が進行すると、夜間多尿、体のむくみ、腎性(腎気低下が原因による)貧血、だるさ、息切れなどの症状があらわれてきます。この段階ではもはや初期とは言えない進行状況です。

【予防法】
自覚症状がないときから病気は進んでいきますの。機会があるならば積極的に健康診断を受けましょう。少なくとも1年に1回は診断を受ける機会を作りましょう。採血検査と尿検査で手がかりをつかむことができます。

慢性腎臓病の治療法

一度悪化した腎機能を戻すことは困難です。それ以上の悪化を防ぐことが治療のメインになります。

1.血圧のコントロール
上が140未満、下が90未満になるように減塩生活や肥満の改善、必要であれば降圧薬を用います。ステージによって降圧薬の種類の使い分けが少し異なってきます。
2.血糖値のコントロール
糖尿病があれば食事・運動療法の他、腎機能に合わせた薬で血糖値をコントロールします。
3.生活の改善
脂質異常があれば同じく食事・運動療法とともに腎機能に合わせた薬での治療となります。たばこは厳禁です。

【医師からのアドバイス】

脳卒中や心筋梗塞が見つかった時に、初めて腎機能が悪いことを指摘される場合も多いです。
慢性腎臓病は早期発見することで死亡や透析に至るリスクを減らすことができます。積極的に検診を受けて早期発見に努めるなど、日々の生活を見直すきっかけをもちましょう。

腸の冷えは万病の元? 腸内環境を整えるには

今、注目を集めている臓器といえば「腸」です。“第二の脳”といわれ、神経伝達物質であるセロトニンの大半は腸の中にいる腸内細菌が作っていることが分かってきたほか、腸内環境の良し悪しは美容や健康にも大きな影響を及ぼします。

 「長寿の人はみんな腸が元気。逆に腸に不調をきたす人は長生きできません」というのは、医学博士の松生恒夫さん。松生さんによれば、人間の免疫システムの約60%は腸に集まっていて、腸が健康でないと、病気になりやすくなったり、老化が進みやすくなったりするといいます。

 では、どうすれば腸を健康に保つことができるのでしょうか。松生さんの新刊『長生きしたけりゃ、腸は冷やすな』(主婦の友社/刊)から、腸内環境を整えるのに効果的な食事や生活習慣についてご紹介します。

■“腸の冷え”にはカレーが有効
 猛暑の屋外から冷房のきいた涼しい室内に入り、「お腹が冷えた」と感じたことがある人は多いはずです。この“冷え”というのは東洋医学で使われる概念で、西洋医学では「循環不良」「代謝の低下で起こる血行不良」になります。便秘や下痢などの身体の不調を招くだけでなく、腸の免疫力を弱らせるなど、まさに万病の元ともいえるものです。

 この“冷え”は食事によって体を温めるという方法で対策が可能です。そして、腸を温めて働きを活性化させる代表メニューが「カレー」なのです。

 特に松生さんが勧めるのが、30種類以上のスパイスから作る、いわば本格派のカレー。例えば、スパイスの一つであるターメリックは、日本では「ウコン」として親しまれており、生活習慣病の改善に効果があるといいます。他にもシナモンやジンジャー、クミンなど、様々なスパイスが豊富に使われているカレーは、体の保温力に優れているのです。

 ただ、市販のカレールーはスパイスの量が少なく、調味によってカレーの味に仕上げられているので、健康を考える場合はスパイスから手作りしたほうが間違いありません。

■健康効果に優れた油、エキストラ・バージン・オリーブオイル
 日本は世界に誇る長寿国ですが、同じように長寿が多いのが、サンマリノや地中海沿岸の国々です。この地域は、がんによる死亡者が少ないことで知られています。

 その長寿の秘密は、オレイン酸の宝庫であるエキストラ・バージン・オリーブオイルにあると松生さんは言います。オリーブオイルには、高脂血症の改善やアンチエイジングに欠かせない抗酸化成分が4つ(ポリフェノール、ビタミンE,葉緑素、オレイン酸)が含まれているほか、カルシウムの吸収を助けたり、ピロリ菌を抑制するなど、その働きは枚挙にいとまがないほどです。

 さらに、オリーブオイルを一時的に多量摂取した場合、短時間では小腸で吸収されにくいという検証結果があり、この「吸収されにくさ」が腸内のすべりをよくし、便秘解消に良い効果を与えるのです。オリーブオイルを食卓の中で少し取り入れるといいかもしれませんよ。

■寝る直前の食事は厳禁
 夜遅くまで働いていると、どうしても夕食の時間も遅くなり、食べてすぐに寝るという生活習慣が染みついてしまいがち。しかし、その生活習慣は、十二指腸からモチリンというホルモンを十分に分泌させなくなり、冷えや肥満、腹部膨張感や便秘の元になります。

 このモチリンというホルモンは、いわば深夜の腸内のお掃除屋さん。寝ている間に消化管の内部をきれいに掃除し、朝の食事や排便に備えてくれるのですが、空腹の状態でなければ十分に分泌されないという特性を持っています。

 そして、掃除が不十分だと、腸内の便や老廃物が完全に排泄されず残ってしまい、老廃物が腸内で腐敗。腸の環境は悪化してしまうという悪循環に陥ります。そうなることを防ぐためにも、就寝1~2時間前にはリラックスし、深く睡眠できる環境を整えましょう。

 本書を読んでいくと、いかに私たちの生活の中に腸内環境を悪化させるものが蔓延っているかが分かるはずです。

 そうしたものを全て排除することは難しいですが、腸に良いことを一つずつ実践することなら可能なはず。毎日を元気に過ごすためにも、腸内環境に気を使ってみてはいかがでしょうか。

気付けば末期状態…症状ゼロの腎臓病で知っておくべきこと

 国内の慢性透析患者数はこの40年で18倍に増加。その理由のひとつに、慢性腎臓病(CKD)に関する認識の低さがある。埼玉医大総合診療内科・中元秀友教授に、知っておくべきことを聞いた。

■CKDとは

 腎臓の主な働きは、①尿を作り老廃物や塩分を体外に排出②血圧調整や、体液量やイオンバランスの調節を行い身体の恒常性を維持③ホルモンの産生や活性化。これらの機能が低下した状態がCKDだ。腎機能の軽度低下を含めると、全国民の6~25人に1人が該当する。

■自覚症状

「“CKDの疑いがあります”と言うと患者さんはびっくりするのですが、それくらいCKDの初期ではほとんど症状がありません。健康診断でタンパク尿、クレアチニンの上昇があっても、自覚症状はないのです」

 クレアチニンとは、筋肉で生成され、腎臓から尿中に排泄される代謝産物のこと。腎臓の力を示す指標「GFR(糸球体濾過量)」で見ると、60%を切った段階からCKDと診断される。30%を下回ると腎不全、10%を下回ると尿毒症だ。GFRの低下と反比例してクレアチニン、尿素窒素が上昇し、尿毒素が蓄積される。

 健康診断ではクレアチニンで表示されるが、目安として、クレアチニン1㎎/デシリットル以上がCKD、6㎎/デシリットル以上で透析を検討する。腎機能低下による症状が出てくるのは、クレアチニン6㎎/デシリットル以上。

「症状が出た時は命に関わる末期状態。透析直前でも本人はピンピンしていて、むくみが少し出る程度です。それほど腎臓は予備能力が高い。しかしステージが進むにつれて悪化速度が増し、ある時急激に悪くなるところがCKDの怖さです」

 CKDの進行は透析を招くだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率を高める。

■治療

 生活改善や薬物療法を経て、透析治療あるいは腎臓移植になるが、“いきなり透析”のCKD患者も珍しくない。

 透析は血液透析と腹膜透析がある。機械を使って血液を濾過する血液透析に対し、腹膜透析は透析液を出し入れするカテーテルを腹部に埋め込み、腹膜の機能を利用して血液を濾過する。

「腹膜透析の方が残った腎機能を維持するのに良好で、QOL(生活の質)、患者満足度も良い。しかし、普及率が低い。透析治療を受けているのに、腹膜透析の存在を知らない患者さんもいます。透析患者の4割が腹膜透析を知らない、というデータもあります」

 その理由として、十分な情報提供が患者さんに行われていないこと、さらに腹膜透析に熟練した医師や看護師が少ないことが挙げられる。

「さらに、診療報酬との関係などから、患者に腹膜透析の提案をしていない医師が多いことも挙げられます。ある調査では十分な情報提供が行われないために、患者は腹膜透析と双方のメリットを比較しないまま血液透析を受けていると報告されています」

 今回の診療報酬改定で療法選択に関する加算が充実した。医療者側も腹膜透析に関する情報提供を積極的に行うことが予想されている。

「アメリカでは十分情報提供を行うことで、50~80%の患者さんが血液透析ではなく腹膜透析を選ぶという調査結果も出ています。週数回、3~5時間かけて医療機関で受けなければならない血液透析よりも、24時間連続的に自宅でも外出先でも受けられる腹膜透析の方が自由度は高い。今後は病院側も積極的に情報提供を行うべきと考えます」

肝臓が一生で処理できるアルコール量 男性500kg女性250kg   

50才を超えても30代に見える大人気ドクターの南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は、アルコールとの上手なつきあい方について。

【質問】

 お風呂上がりのビールがおいしくて、毎日飲んでしまいます。週に一度は“休肝日”を作るといいと聞きますが、実際のところどうなんですか?(ホップルン・45才・主婦)

【南雲先生の回答】

“毎日お酒を飲んでいたから肝臓を悪くした”なんて話もよく聞くけれど、じゃあ、アルコールを一切摂らない“休肝日”を設ければ、それで肝臓の機能は元に戻るかというと、そういうことではないんだな。

 実は肝臓がアルコールを処理できる容量というのは決まっていて、一生の間にどれだけアルコールを飲めるかというと、男性なら500kg、女性なら250kgといわれているんだよ。だから、1日抜いたからといって、翌日いっぱい飲んだら、まったく意味がない。

 ちなみに、アルコールの量0.1kgというと、ワインなら1本、日本酒なら4合びん1本、ビールなら中びん4本に相当する。これを毎日飲むとすると、男性なら14年、女性なら7年で“極量”がきてしまう計算になるんだ。

 だから、“休肝日”を設けるというのは、その極量に到達する日を少しでも遅らせようということになるわけだね。

 怖いのは、この極量を超えると高い確率で肝硬変になり、それでもまだ飲み続けると、肝臓がんになる人が多いということ。“すぎた酒は命を削るカンナ”というのがよくわかるでしょう?

これで安眠!寝床でできるストレス解消術

■呼吸に集中して、雑念には「お札」を貼る

 呼吸と筋肉の緊張度の間には深い関係があります。強いストレスにさらされていて心身の緊張が強い人は、呼吸が浅く早くなります。

逆に十分リラックスしている人は、ゆっくり深く呼吸しています。リラックスするためには、今よりも少しゆっくりと大きな呼吸をする必要があるのです。

 腹式呼吸と胸式呼吸のどちらでもかまいません。ゆっくり息を吸ってちょっと息を止め、次にゆっくり息を吐いてまたちょっと止めます。息を吸うときには、胸あるいはお腹の筋肉が緊張することを意識します。

また、息を吐くときに胸あるいはお腹の力を抜くと、筋肉の緊張がどのくらいなくなるかも観察してください。

 ストレスにさらされている人は、呼吸に集中しようとしてもいろいろなことを考えてしまいがちです。そんなときに「考えてはいけない」と思うと、なおさらその考えにとらわれてしまいます。

考えや悩みごとが浮かんできたら、イメージの中で「雑念」や「後で」と書いたお札を貼りましょう。だんだん気にならなくなってきます。

■ストレスによる体と心のコリをほぐす

 呼吸だけではなかなかリラックスできないなら、積極的に筋肉を緩めましょう。不眠に対するリラクゼーション法で、最も多く用いられている技法が「漸進的筋弛緩法」です。

 この方法では、体の各部位の筋肉に力を入れることで意識的に筋の緊張を高めておき、そのあと一気に筋肉の力を抜きます。すると、単に筋肉を緩めたときよりも強いリラックス効果を得ることができるのです。

 布団に寝ころんだまま、手足は伸ばして手を体の近くに置きます。ゆっくり呼吸をしながら目を閉じて、70%くらいの力で両手を握りしめます。

5秒ほど握ったら一気に力を抜きましょう。そのあと30秒ほど、筋肉が緩んでいる状態をぼんやり実感します。

両手が終わったら、肩や脚、顔でも緊張と弛緩の練習をします。体のすべての部分をやる必要はないので、自分のやりたいところだけを行ってください。

 体の緊張がほぐれてきたら、上で説明した呼吸法をもう一度やってみましょう。息を吐くときに全身の力を抜くようにすると、さらに効果的です。

膵臓に水がたまり袋状になる膵のう胞 悪性化の可能性もある  

膵臓は胃の後ろあたりにある十二指腸に接続する細長い臓器で、消化酵素が含まれる膵液とインスリンなどのホルモンを分泌している。

 膵のう胞は膵臓の内部や周囲に液体が溜まり袋状になったもので、大きく腫瘍性と非腫瘍性に分けられる。

膵のう胞の約30%は非腫瘍性の仮性のう胞だ。腫瘍性には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や粘液性のう胞腫瘍(MCN)、漿液性のう胞腫瘍(SCN)などがある。

 この4種類で約80%を占める。腫瘍性の一部は悪性化する可能性もあり、的確な診断が欠かせない。

 東京医科大学病院消化器内科の糸井隆夫准教授に話を聞いた。

「診断は超音波内視鏡やCT、MRIなど画像検査で行ないます。仮性のう胞は風船のような丸い形をしています。IPMNはブドウの房状、MCNも丸形ですが中は複数の小さな部屋に分かれています。

 SCNは、固まり状やブドウの房状など様々の形があります。見た目が似ていて判断しにくい症例もあるので、専門病院の診断で治療方針を決める必要があります」

 仮性のう胞は、急性膵炎や慢性膵炎の炎症に伴い、膵臓の一部に膵液が溜まり膨れたもので、小さいものは無症状で、時間が経過すると自然と消えるものが多い。しかし大きくなると、上腹部や背中に息苦しさや痛みを感じることもある。

 腫瘍性のIPMNは、膵臓で作られた膵液を十二指腸に流す膵管の粘膜に粘液を作る細胞ができ、この粘液が膵内に溜まりブドウの房状の袋ができる。

MCNは膵尾部に粘液を作る細胞ができて、のう胞となるものだが、発症頻度はIPMNの方が高い。SCNは粘液性に比べて悪性化しにくいといわれている。

課題は“誤診”と医師選び 「慢性胃炎治療」の意外な落とし穴

日本人の6割に胃炎があるといわれている。慢性的な胃炎を引き起こすヘリコバクター・ピロリ菌が、胃がんなどの原因になっていることは知られているが、それを放置している人がまだまだ多いということ。医師にも問題があるという。

 慢性胃炎にかかっている人は、ほぼ100%がヘリコバクター・ピロリ菌に感染している。感染があると、ピロリ菌を退治しようとして大量の白血球が胃の粘膜に集まり、サイトカインという物質が放出される。

しかし、ピロリ菌は胃の粘膜ではなく胃粘液の中を泳いでいるため、サイトカインが届かない。そのため“誤爆”で自分自身の粘膜を傷つけることになり、炎症を引き起こす。

 日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。

「アルコールやストレスなどが原因になる急性胃炎なら、放置しておいてもそのうち改善します。胃の粘膜は再生力が強いので、一時的な炎症があっても元に戻るのです。しかし、ピロリ菌によって起こる慢性胃炎は、除菌しない限り続きます。

粘膜はジワジワと破壊され続け、そのうち粘膜がペラペラになってしまう萎縮性胃炎が進みます。これが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になるのです」

 胃とは関係ない病気も引き起こす。慢性胃炎があると、サイトカインも放出され続ける。サイトカインは全身の血管を巡って免疫の働きを狂わせ、慢性じんましん、慢性頭痛、悪性リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病といった病気の原因になる。

 血管も傷つけられるため動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中のリスクもアップ。また、脳神経系にも大きな影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2倍になるという報告もある。

 まさに“万病のもと”といえる慢性胃炎をしっかり治すには、ピロリ菌を除菌するしかない。

「ピロリ菌を除菌すると、半年ほどで慢性胃炎はなくなります。すでに萎縮性胃炎になっている人も、10年弱で胃の粘膜が再生して萎縮が改善します」(江田氏)

■万全を期すなら他の検査法も

 ただ、慢性胃炎の治療には落とし穴がある。これといった自覚症状が出ないため、気づかずに放置している人が多いこともそうだが、“誤診”も少なくないという。

 現在、全国の都道府県で「ABC検診」と呼ばれる胃がんリスク検診が行われている。「ピロリ菌感染の有無」と「ペプシノーゲン検査」(胃粘膜から分泌されるペプシノーゲンの血中濃度を測定し、萎縮の進行度を診る)により、胃がんにかかりやすい人をスクリーニングする有益な検診といえるが、これだけでは感染を見落とすケースがあるという。

「ABC検診では、ピロリ菌がいない人をA群、ピロリ菌に感染していて胃の萎縮が軽い人をB群、萎縮がひどい人をC群に分けます。さらに、過去にピロリ菌に感染していたものの、胃が荒れすぎたためピロリ菌が自然消滅した人はD群に分類しています。

D群の人は〈もうピロリ菌を除菌する必要がない〉と判断されるのですが、D群の人を尿素呼気試験で調査した研究によると、実際には50%の人にピロリ菌が存在し、除菌が必要だったのです」(江田氏)

 加齢が進むと血液中のピロリ菌の抗体の値が自然に下がってきて、消えてしまう人がいるのが見落としの原因だという。検診で「ピロリ菌陰性」と診断されても、万全を期すには他の検査法でも調べたほうがいい。

「診てもらう医師にも気をつけてください。ひと昔前の医師は、慢性胃炎を〈年をとれば誰にでも起こるもので、放っておいても問題ない〉と誤って解釈していました。こうした古い考えにとらわれている医師も、残念ながら少なくないのです」(江田氏)

 慢性胃炎を治すなら、新しい知識を持った「日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染症認定医」に診てもらうべし。

20人に1人が危険性あり!「アルコール依存症」かもしれない飲酒量の基準

「毎晩晩酌している」「月に2回程度」「仕事の付き合いで飲むくらいかな」「週末にちょっとやるのが楽しい」

お酒との付き合い方というのは、人それぞれ違いがあるものです。

適度な飲酒はむしろ体にいいと言われており、リラックス効果ももたらします。しかし、「毎日飲んでいる」という人は要注意。あなたは、アルコール依存症の一歩手前かもしれません。

今回は、アルコール依存症の実態を、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス アルコール依存症」から見ていきましょう。

■20人に1人がアルコール依存症の危険性あり

「アルコール依存症なんか自分には関係ない」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、厚生労働省が出している実態調査では、「アルコール依存症の可能性がある人およびアルコール依存症(要治療)の人の人数は、合わせて520万人」とあります。日本の成人人口と比較すると、約5%という数字になります。

つまり、20人に1人がアルコール依存症の危険性があるかもしれないのです。

■アルコール依存症の症状とは

アルコール依存症の定義とは、

・自分自身で飲酒欲求をコントロールできない。また、飲み始めたらやめられない

・禁酒したときに離脱症状が起こる

・本来は優先すべき事柄(人間関係や仕事、趣味など)よりも、飲酒を選んでしまう

などのような症状が起きることを指します。

ちなみに、“離脱症状”とは、お酒から離れたときに起こる症状を指し、手の震えや不眠、幻聴、下痢などが起きることを指します。このようなつらさから逃れるためにまたアルコールを飲み、どんどん依存度が高まるという危険性もあります。

■どこからがアルコール依存症?

お酒の強さには個人差がありますが、基本的には、“大量のアルコール摂取”が原因となっています。

1日に純アルコール量として60グラム以上摂取している人は「飲みすぎ」とされるので、飲酒量という点ではこの量がアルコール依存症のおそれがあるかどうかの基準となりそうです。

ちなみにこの量は、日本酒3合程度、中瓶のビール3本程度。「お酒を飲むときはそのぐらい飲んでいる」という人は注意が必要ですね。ちなみに、「適度な飲酒」は、この3分の1の量です。

アルコール依存症の人は、明らかに過ぎた飲酒量であっても、「自分よりもっと飲んでいる人も大丈夫だったから」と、自分がアルコール依存症であることを認めようとしません。

しかし、アルコール依存症の原因の50~60%は遺伝要因だと推定されており、発症には個人差があることは知っておく必要があります。

アルコール依存症は、非常に怖い病気です。自分自身の社会性だけでなく、周囲の家族をも巻き込んでしまいます。アルコール依存症になってしまった大黒柱が仕事を失い、一家が離散した、というケースも珍しくありません。

アルコールは、楽しく、適量を楽しむ。このように心がけて飲んでいきたいものですね。

お腹が張るアナタは胃が原因!パンパンお腹とはサヨウナラ「逆流性食道炎の薬飲む」「コーヒー、酒飲まない」

便秘でもないのにおなかがやたらと張るアナタ。この3つを守ることで、ツライ張りとも縁が切れるはず。

1.「逆流性食道炎」の薬を飲む

おなかがやたらと張ってしまう人の多くが、実は「逆流性食道炎」なのだとか。この「逆流性食道炎」は最近よく耳にするほど、とても多くの人が知らないうちにかかっている病気。

おなかの胃酸が人より多く作られ、その胃酸が食道に向けて上ってくるという厄介な症状を持つこの病気は、アナタのおなかがパンパンに張ってしまう大きな原因となっています。市販で売られている「逆流性食道炎」の薬を飲む事で緩和されるそうなので、うまく利用すると良いかも。

2.「コーヒー」と「お酒」を飲まない

ガスが腸内で作られないように食事には気をつけているのに、なぜかおなかが張る!それもそのはず、おなかが張る原因は「ガス」だけではないのです。

実は、消化器に「ある刺激」を与えてしまうことでおなかが張ってしまうそう。それが「コーヒー」と「アルコール」だそうで、長年おなかの張りに悩んでいた人たちがこの2つを止めたことで張りが一気に引いたというケースが多く存在しているみたい。ガス防止だけではダメなのです!

3.食べる時間が大切。

「体内に入れる物」ばかりに気を取られ、肝心な「タイミング」を忘れてはいませんか?身体にとても良い食べ物だって、タイミングを誤ると翌日大変なことになるそうですよ。

食事の時間は決まった時間にすると身体の消化機能がアップするそうだから、生活リズムならぬ「食事リズム」を作ると良いのかも。そして、就寝2時間前には絶対食事をしないこと。

そうしてしまうことで消化しきれなかった食べ物と消化液が寝ている間に逆流してしまい、おなかの張りの大きな原因である「逆流性食道炎」を引き起こすことになってしまうそう。

食べ物に気をつけるだけではパンパンおなかはどうにもならないのです。最近とても多いと言われるこの「逆流性食道炎」にアナタも気をつけて!

ウイルス性腸炎にかかりやすい人の特徴とは??

ウイルス性腸炎とは、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状を引き起こします。代表的なウイルスには、秋から冬にかけて感染の多いノロウイルスと、冬から春にかけて多いロタウイルスがあります。

ウイルス性腸炎と一言でいっても、罹るウイルスの種類によって、感染時期や症状は異なります。また、ウイルス性腸炎に罹ってしまうと、効果的な抗ウイルス薬がないため、治療は対処療法のみになります。そのため、予防がとても大切となってきます。

ところで、毎年のようにウイルス腸炎に罹る人と、ほとんど罹らない人がいますが、実は毎年罹ってしまう人には、ある共通した特徴があるのです。

■ 1. うがい、手洗いをほとんどしない

感染予防の大原則といえば、うがい・手洗いですよね。
帰宅時や食事前・トイレへ行った後にきちんと手洗いやうがいをしている人は、手に付着したウイルスを洗い流すことが出来ます。

逆に、きちんと手洗いをしないまま生活をしている人は、腸炎の原因となるウイルスが手に付着したままになり、食事の時などに経口感染しやすくなります。

■ 2. 生ものが大好き

しっかり加熱調理されていない食品は、それだけで腸炎のリスクが高まります。特に冬場にオイスターバーなどで生牡蠣を食べるのが大好きな人は、ノロウイルスに感染するリスクが高くなるでしょう。また、小さいお子さんをお持ちの方は、お子さんに生牡蠣は与えないようにしましょう。

■ 3. 小さい子供を持っている、または保育園や幼稚園に勤務している。

子供はロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス性腸炎に罹りやすい環境にいます。
また、感染後に嘔吐や下痢をして、その処理をする時に、大人が二次的に感染してしまうケースが多いのです。

吐物や糞便にもウイルスは存在するため、処理する際は手袋とマスクを着用して、飛沫・経口感染をしないように予防することが大切です。また、処理した後は、その場所を消毒して、ウイルスを拡散させないようきちんと対策をとることも大切です。

胃もたれにやさしい飲み物ってありますか?

夏場はお盆などの帰省や夏休みの旅行などで、食べないようでいて実は食べてしまうことが多い時期ですよね。

アイスクリームなども口当たりがよく、ついつい口にしてしまいがちですが、脂肪分も多く、量を食べてしまうと胃もたれを起こしてしまうことがあります。

またビアガーデンで気分よく何杯もビールを飲んで、から揚げやフライドポテトといった油っこいおつまみをたくさん食べた時など、翌日どうも胃の具合が……といったことも経験のある方が多いのではないでしょうか。

そんな胃もたれでお困りの方に、おすすめの飲み物について医師に教えていただきました。

胃もたれに優しい飲み物・3種
1:安心して飲めるのは水
水道水でもいいですし、ミネラルウォーターを飲む習慣のある方は、できるだけ硬度の低い軟水を選ぶようにするとよいでしょう。

<ポイントは温度>
可能であれば、冷たく冷やしたものではなく室温か、少し温めて飲んだ方がより胃には優しいと思います。

2:ホットミルク
胃に優しい飲み物の代表格。牛乳に含まれるたんぱく質が胃の粘膜を優しく保護してくれます。暴飲暴食で弱った胃にはぴったりといえそうですね。

3:リンゴジュース
ちょっと意外かもしれませんが、リンゴジュースもおすすめです。じつは、消化を促してくれる効果があるのです。ただ市販のジュースよりも、可能な限り手作りのリンゴジュースのほうが◎。安全面はもちろん、酵素などの効果の点でも最高といえるでしょう。

キャベツもおすすめ!

ジュースにするのは難しいですが、キャベツに含まれる栄養も胃にはとてもよいことが知られているので、キャベツを軟らかく煮たスープなども胃もたれには効果的といえそうです。

胃もたれのときにNGなのは……
反対にカフェインを含む飲み物や極端に冷たいもの、熱すぎるものは刺激が強いので避けましょう。スパイスの強いカレーなども控えたほうがいいですね。

医師からのアドバイス
いかがでしたか?身近な飲み物や食べ物にも、胃の調子を整えてくれるものが多くあります。こういったものを活用しながら上手にご自身の胃と付き合っていけたらいいですね。

回数が減ったのに「ゴルフ焼け?」と聞かれたら肝臓癌かも!?

<病気の予兆を見逃すな/医学ジャーナリスト・市川純子>

 その不調は病気のサインかも!? 私たちを襲う危険な病気とその予兆を、ケーススタディで紹介します。

◆脂肪肝と肝機能障害を放置していたら肝臓癌に!

 Gさんは商社マン。働きざかりの40代前半から50代は、アジアの都市を2年おきに転々としていた。その際もGさんは、空気や食事、子どもの教育と学校、妻の親の看病のことを考えて単身赴任を選択。

そのため、新しい土地に赴任するたびにしばらくは自炊をするが、慣れてくると地元の人が行く屋台でつまみを頼みながらビールを飲むという夕飯になってしまうのは、仕方がなかった。

なかでも一番長く駐在したのは台北だ。繁華街の夜市は、たくさんの屋台が道路いっぱいに出て毎晩地元の人で賑わっていた。いつも行く屋台のスタッフや常連は、カタコトの日本語で声をかけてくれた。

屋台料理で一番好きだったのは、クレープのような丸く焼いた卵焼きで、野菜炒めを巻いて食べる。お気に入りの屋台で、それをつまみに夕方から地元のビールを飲んでいると、ここが異国であることを忘れるほどだった。

テレビの日本語放送は一局だけ。自宅に帰っても、とりたててやることもないので、いつもこの屋台で過ごしていた。居心地がよくて、ついついお酒が進んでしまっていたわけだ。

たまに帰国して受ける年に一度の会社の健康診断では、脂肪肝と肝機能障害を長年指摘され続けていたものの、20代の頃のように酒が飲めなくなってきたのは、単なる歳のせいだと思い込んでいた。

 そんなGさんが、本社勤務を命じられたのは数年前のこと。商社マンは、時差のある海外とのやり取りが多いビジネスなので、帰国後、仕事やメールは朝早くから夜中まで続いた。

そのため、飲みに行く日も休日のゴルフも海外時代より激減。海外赴任時代のほうが気楽で時間もあった。しかし、同僚からは「ゴルフに行って日焼けした?」と聞かれることが多い。なぜか首の横の赤い痣も消えない。しかも右肩にはいつも痛みがある。

気になって健康診断を受診した際に、医師からこう告げられた。

「Gさんすぐに肝臓の精密検査をしましょう」と。検査の結果、大きめの肝細胞癌と告げられた。手術をすすめられたが、その後、インターネットで切らない治療法があると知って、すぐに連絡したGさんだった。

◆5cm以上の癌も陽子線なら治療効果が期待できる

 Gさんの症状について、南東北陽子線治療センター(http://www.southerntohoku-proton.com/)副センター長の中村達也医師は、再発率の高い肝細胞がんにおいて、陽子線治療のメリットを語っています。

「下の写真は2年前に当センターに来られた60歳代男性です。右側腹部痛で近医受診。肝腫瘍が見つかり手術を推奨されたが陽子線を知り受診されました。

腫瘍が10cm以上あり腫瘍破裂の危険があったため、まずは血管内治療を先行した後、陽子線治療を7週間の通院で治療されました。2年たった今も腫瘍の再発はなく元気に過ごしておられます」(中村医師)。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=871436

 中村医師は、「肝臓癌に対する放射線治療は5cm以下に対しては定位照射などで対応可能であるが、それ以上の場合はX線治療では難しくなります。

しかし陽子線であれば5cm以上の肝臓癌に対しても治療効果が期待できるため、治療法の選択枝として挙げられます。

ただし現在は先進医療のため健康保険外の治療となり南東北がん陽子線治療センターでは288万3000円の自己負担が必要となります。入院治療の場合はこれに入院費が加わります」と語っています。

【市川純子】

1961年栃木県生まれ。私鉄系広告代理店、PR 会社を経て、2004年ヘルスケア、スキンケア、栄養および食に特化したPR 会社「株式会社ジェイアンドティプランニング」を設立。20年以上ヘルスケアのビジネスをサポートすると同時に、数多くの疾病啓発や生活提案に取り組んできた。

医療全般、スキンケア、栄養療法などが得意分野。製薬会社、医療機関、化粧品会社、食品会社などのクライアントを数多く受け持つ。著書に『危険な病気の意外な予兆69』(宝島社)

王貞治の次女・王理恵さん 両親が胃がんになり胃腸を休める大事さ身に沁みる

美容や健康管理に重きを置く有名人やスポーツ選手など、スペシャリストたちが多く取り入れ、注目を集めるようになったファスティング(断食)。5年前から実践しているというスポーツキャスターでジュニアベジタブル&フルーツマイスターの王理恵さん(44才)にファスティングのコツを聞いた。

 * * *

 5年前、体調が優れず、疲れやすくて眠れない日が続いたため、デトックス目的でファスティングに挑戦しました。最初は3日間の予定だったんですが、いったん始めたら、“あと1日やったら、もっと効果があるかも”と欲が出て(笑い)、酵素ドリンクを摂りながら、結局5日間の断食を行いました。

 1~2日目はデトックスによる頭痛もあってつらかったのですが、徐々にその症状も消えていきました。驚いたのは4日目の朝。フッと体が軽くなり、頭がやけに冴えている。五感が研ぎ澄まされた感覚がありましたね。

5日目を終えて体重は4kg減。でも、いちばん印象的だったのは味覚の変化。舌が敏感になり、塩分を強く感じるように。以来、外食では特にセーブしていませんが、家で食べる時はなるべく薄味を心がけるようになりました。

 現在は半年ごと、年に2回のペースで実践しています。最初は“また3日間、予定を入れられない”という面倒な気持ちもありましたが、今は“またスッキリできるぞ”と、むしろ楽しみに。

 ファスティングはまず1回やってほしいですね。最初はつらいけど、体の変化に衝撃を受け、“こんなに清々しいんだ”という気持ちになり、2回目からはかなりハードルが下がりますから。

 うちは両親が胃がんになり、母は57才で亡くなって、父も8年前に大手術を経験。胃腸を酷使することの怖さは痛感しています。胃腸や内臓を休めることがいかに大事か、身に染みているんです。

 友人とおいしいものを食べたり、いい時間を過ごすためにも、体のリセットは必須だと感じています。

肝臓病 未然に防ぐことが重要 那須赤十字病院・佐藤隆医師に聞く

--肝臓はどんな働きをしますか

 佐藤隆医師アンモニアやアルコールなど体に有害な物質を分解解毒し、タンパク質をアミノ酸から合成し、脂肪の消化・吸収を助ける胆汁を作ります。グリコーゲンやビタミンなどを蓄え、必要に応じて血液中に放出するなど多くの重要な働きをしています。

 --肝臓病はどのような病態ですか

 急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどがあります。急性肝炎はウイルスやアルコールなどが原因で起こる一過性の肝障害です。中には高度の肝機能異常や肝性昏睡(こんすい)などをきたし、死に至る劇症肝炎に進む場合もあるため注意を要します。

 慢性肝炎は6カ月以上の肝機能異常とウイルス感染が続く状態をいいますが、急性肝炎に比べると症状は軽い。

 肝臓は非常に丈夫な臓器で、古くなった細胞は新しい細胞に迅速に換わり、活動を維持します。しかし、炎症が持続すると、それがスムーズに行われず硬い線維組織が残り、肝機能が低下します。この状態が肝硬変です。一度肝硬変になると、肝臓は元の状態に戻れず、やがて肝がんが発生することがあります。肝硬変になる前に医師の診断を受け、未然に防ぐことが重要です。

 --肝臓病の症状は

 肝臓の細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊れる病態を肝炎といいます。肝臓病の初期は症状が出にくく、「最近疲れる」など日常感じる軽いものが多いため、本人も気付かないうちに進行する可能性があります。慢性肝炎を治療せずに放っておくと、いずれ肝硬変や肝細胞がん(=肝がん)などに進行する病気なのです。

 --肝臓病の原因は

 ウイルス、アルコール、脂肪肝、薬剤、自己免疫(自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変)などがありますが、日本では、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの感染による肝炎が多くを占めています。最近は脂肪肝に伴う肝炎やそこから進行した肝硬変、肝がんが増えつつあります。

 --肝炎患者数は

 日本のウイルス性肝炎の持続感染者はB型が110万~140万人、C型が190万~230万人と推定され、人口比にすると、本県ではB型肝炎が1万7千~2万2千人、C型肝炎が3万~3万6千人いることになります。感染者の9割以上が40歳以上ですが、最近は成人のB型肝炎初感染からの慢性化が問題になっています。

 --C型肝炎治療について

 C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変の治療の目標は将来の非代償性肝硬変への進行あるいは肝がんの発生予防にあります。原因のC型肝炎ウイルスの排除を目的としたインターフェロン療法や進展予防のための肝庇護(ひご)薬があります。

 --具体的な療法は

 インターフェロン療法の効果は、主にウイルス量と遺伝子型によって変わります。現在、ウイルスのタイプによってはかなり治るようになりましたが、治療効果は百パーセントではありません。現在行われているインターフェロン、リバビリンやテラプレビルによる併用療法や、近々治療承認が期待されるプロテアーゼ阻害薬・ポリメラーゼ阻害薬など、治療法はさらに進むと思います。

 --最近増えている脂肪肝とは

 アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に分けられます。アルコールや脂肪などの摂取で肝臓に脂肪がたまり、過剰蓄積された状態を脂肪肝といいます。

 アルコール性脂肪肝は禁酒すれば元の状態に戻りますが、脂肪肝状態が長年続くと、肝臓内に線維が増え、肝硬変に至ります。

 非アルコール性脂肪肝は生活習慣病の一つです。最近日本人の肥満が増加しており、健康診断などで脂肪肝を指摘される人が増えています。

 飲酒歴がないにもかかわらず、肝組織がアルコール性肝障害に似た所見を有する疾患を非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といいます。脂肪肝の約1割にNASHが発症します。

 BMI(体格指数)が25以上の肥満でAST、ALTの上昇がみられた場合、NASHが強く疑われます。最終的には肝生検をして確定診断をつけます。

 --NASHの治療は

 NASHに対する特効薬は今のところありません。肥満や糖尿病を合併することが多いので、食事療法、運動療法が中心になります。(1)肥満でアルコール摂取量が1日20グラム(瓶ビール1本相当)以下(2)ALTがASTより高く半年以上異常が持続(3)ウイルスなど他の肝障害の原因なし-という人は病院を受診してください。(聞き手 高橋健治)

 ■佐藤隆(さとう・たかし) 昭和34年9月、栃木県大田原市生まれ。61年、東邦大医学部卒。東邦大佐倉病院などに勤務し平成15年、県厚生連塩谷総合病院消化器内科部長。20年、大田原赤十字病院消化器内科部長。24年、那須赤十字病院消化器内科部長。日本肝臓学会指導医。日本消化器病学会指導医。

=おわり(連載は栃木県医師会の協力を得ました)

疲れが取れないのは肝臓のせいかも!これから時期必見の「肝ケア」方

あなたの肝臓は元気ですか? お酒を飲まないから平気なはず……と考えている人が一番危険かもしれません!

食べ過ぎやストレス、運動不足などが原因で肝臓数値に問題のある人が、人間ドック受診者の3割にものぼっています。その割合は今や高血圧、肥満を抜いて第1位に。

30年前と比べるとなんと3倍以上にまで増加し、今やお酒を飲まない人にも密接に関わった“国民病”とまで呼ばれています。

■沈黙の臓器「肝臓」

肝臓は「代謝」「エネルギーの貯蔵」「解毒」「胆汁の生成」というような、実に500以上の仕事をこなすスーパー臓器です。

そして、“沈黙の臓器”の異名をもちます。たとえ異常があっても、痛さなどの自覚症状が表れず、問題が見つかった時にはすでに病気が進行している……ということがあります。

そんな自己主張の少ない肝臓からの数少ないSOS信号が疲労感。「眠っても疲れが取れない」「一日中体がだるい」などは肝臓からのサインかもしれません。

■4人に1人が肝臓に何らかの問題

現代では、4人中1人が肝臓に何らかの問題があるといわれています。

肝臓を弱める原因はお酒の飲みすぎばかりではありません。睡眠不足や夜更かし、食べ過ぎやストレスなど、誰しも身に覚えのある日常生活の中にあります。

睡眠不足や食べ過ぎ飲み過ぎによって肝臓が酷使されると、代謝や解毒が十分に行われなくなります。それにより脂肪が溜まったり、毒素が蓄積され、疲労につながってしまうのです。

■肝臓は自己修復機能を持っている

「肝臓にはオルニチンが良い」と聞いたことがありませんか?

オルニチンには、ストレス時に多く発生するアンモニアを無害な尿素に変換する作用があります。肝臓は自己修復機能をもった珍しい臓器で、たとえ肝臓が弱っても、オルニチンを外から補ってあげることで機能回復が期待できます。

実験でも、肝機能検査の数値が高い人にオルニチンを摂取させたところ、8週間で機能に回復の兆しが見られたという結果が出ています。

■オルニチンを多く含む「滋養強壮」食品

オルニチンを多く含む食品でおすすめなのが、シジミです。古くから滋養強壮に役立つ健康食品としても親しまれ、「シジミは2日酔いにいい」といわれる所以でもあります。

他にもキハダマグロやチーズ、ヒラメ、エノキタケなどに豊富に含まれています。普段の食事で補うのが難しいという方は、サプリメントも市販されているので上手く組み合わせるといいでしょう。

いかがでしたでしょうか。食欲の秋、イベントの多い冬と、暴飲暴食しやすい季節が続くからこそ、肝臓を上手くケアしてあげたいですよね。

また、普段から肝臓に負担をかける生活習慣に心当たりのある方は、ぜひオルニチンの力を借りてみてください。

あなたの胃は大丈夫?忘年会シーズン編(2) 毎日の鍋料理でやせる!

秋冬は、身体を保温しようとして脂肪を蓄えやすい季節です。本来燃焼されるべきカロリーも、暖房の効いた屋内で過ごすことが多いと消費の機会を失いがちです。

そんなときに、クリスマスや忘年会、正月などのイベント事も多くなるため、体重が増えてしまうのです。

そこで考えたいのが、普段の食事です。なかでも鍋物は、カロリー制限をしつつも身体を温めてくれるので、冬場にぴったり。毎日飽きずに作れる簡単鍋レシピをご紹介しましょう。

◆大根おろしたっぷりのヘルシー鍋

大根おろしを使った「みぞれ鍋」をご存知でしょうか? 通常は鍋のタレに加える薬味程度にしか大根おろしを使わないかもしれませんが、これは鍋の真ん中にど~んと投入する鍋です。火が通るとみぞれ雪のように見えることからその名が付きました。消化酵素が含まれる大根は、ダイエットにもうれしい素材です。

(作り方)
鮭や牡蠣、魚介が苦手なら鶏肉などの、メイン具材をひとつ用意します。ほかには白菜や水菜、ねぎ、人参などの野菜と豆腐を、すべて食べやすい大きさにカットしておきます。

鍋に水とだし昆布を入れて火にかけます。沸騰したら昆布を取り出し、酒を加えて野菜と鮭(牡蠣や鶏肉など)を投入。グラグラっと煮立ったら、中央に大根おろしを入れます。豆腐は大根おろしを入れた後に入れると、すが立ちにくくプルンとした触感が楽しめます。

つけダレは、ゆずとしょうゆなど、さっぱりしたものがよく合います。大根おろしに含まれる酵素は熱に弱いので、いつまでも火にかけないのがポイント。一度に入れずに食べる間際に適量を投入するようにしましょう。
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◆千切り野菜でボリューム満点!

毎日のお鍋では、そうそう豪華な具はそろえられませんよね。そこで、ストック野菜と豚肉を使った、その名も「何でも千切り鍋」はいかがでしょうか。肉はしゃぶしゃぶ用スライスなら、バラでも肩ロースでも、お好みで用意してください。

(作り方)
人参や玉ねぎ、キャベツや大根、白菜にレタスなど、冷蔵庫にある使いかけの野菜を千切りにします。水菜や豆苗、もやし、えのきなど、千切りの手間を省ける野菜があれば便利ですね。種類を多くすれば野菜のうまみが凝縮しますし、彩りも豊かで食欲が増します。

次に土鍋に湯を沸かし、酒、塩、和風の顆粒だしを加えたら、野菜を適量入れてさっと煮立たせます。そして豚肉を投入。しゃぶしゃぶっとして肉に火が通ったら、必ずたっぷりと野菜を巻いていただきます。

タレは、酢としょうゆ、ゆずとしょうゆなどのさっぱり系と、市販のごまだれなどを用意すると、飽きずに食べられますよ。
野菜のうまみが染み出したスープは、醤油や味噌などを足して食後にどうぞ。少量のご飯でおじやにすれば、さらに満腹感が得られるでしょう。

◆味付け缶詰を使った簡単鍋

新鮮な魚介を使った寄せ鍋は、忙しい平日にはなかなか作れないものです。そこで、日ごろストックしている魚の缶詰を活用した鍋をご紹介します。水煮や味噌煮など、骨まで軟らかくなっているので、食べやすいのも魅力です。

(作り方)
用意するのは、さばの味噌煮の缶詰、小松菜や春菊、ほうれん草などの葉物野菜、しめじやしいたけなどのきのこ、豆腐、豆乳です。

まず、鍋に和風だしと豆乳を1:1の分量で用意します。そこへさばの味噌煮缶の煮汁を投入し、煮立ったところで、さばの身と野菜、きのこ、豆腐を加えて弱火で煮ます。野菜がしんなりしたら完成です。

さばの味噌煮缶ではなく、水煮缶の場合は、鍋の汁にお好みで味噌や砂糖を加えて作ってみてください。缶詰に使われている魚は、脂が乗った良質なものが多いので、濃厚な味わいが楽しめますよ。
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◆トマトで作る洋風鍋

和風味に飽きたら、ちょっと目先を変えて、洋風鍋はいかがでしょうか。トマトのうまみが染み出したトロっとしたスープは、フランスパンや白ワインにもよく合います。

(作り方)
用意するのは、トマト、玉ねぎ、いんげん、鶏もも肉、オリーブオイル、塩コショウだけです。まず、トマトと玉ねぎは1cm厚さの輪切りにします。いんげんは筋を取り、4cmほどの長さにポキポキと折ります。鶏肉は一口大の大きさにブツ切りにして、塩コショウを強めにししておきます。

なべ底にオリーブオイルを薄くひき、玉ねぎの輪切りを鍋底に敷き詰めます。その上にいんげん、トマト、鶏肉の順で重ね、鍋の高さに合わせてこれを繰り返します。そして水は一切いれずにふたをし、火にかけます。

30分ほどしてトマトのいい香りがしてきたら弱めの中火でさらに20分ほど待ちます。トマトが崩れてトロッとしてきたら完成です。パセリを散らしたり、粉チーズをかけたりするとまた美味です。

1日3食はNG? 胃の調子がどんどん良くなる3つの方法「普段からガムを噛む」

食生活の乱れや疲労、ストレス等々、現代は何かと胃に厳しいことばかり。とくにこの時期、五月病はクリアできたものの、「どうも最近胃の調子がすぐれない・・・」という人も少なくないのでは?じつは、日ごろ何気なく行なっている食生活の中には、知らずのうちに胃に負担をかけてしまっていることもあるのです。

たとえば、「1日3食しっかり食べましょう!」という健康の常識は、胃の弱い人にとっては非常識ともいえる行為だったのです!そこで今回は、胃痛や胃もたれなど、いまいちパッとしない胃の調子を改善するための3つの食生活習慣をご紹介します。

●1日頻回ちょっとずつ食べよう

ちなみに、かつての日本では1日2食が一般的だったようです。しかし、「武士社会の必要から発生した実質1日3度の食事は、室町時代に始まり、江戸時代に一般化した」とも言われています(『日本の食文化―その伝承と食の教育』より)。たしかに今の世も、企業戦士はじめ武士さながらに戦っている人はたくさんいます。しかし、胃弱な人の場合、1日3食しっかり食べていては、かえって本領を発揮できないことにもなりかねません。

胃の弱い人、あるいは、胃の消化力が弱っているようなときは、通常1回分の食事を2~3回に分割し、2~3時間おきに食べましょう。一気に食べると胃は消化活動に追われ疲弊してしまいますが、少量をちょこちょこ食べる分にはさほど負担がかかりません。また、この食べ方だと血糖値の急激な上昇もセーブすることができるので、ダイエットにもグッドなのです!

●普段からガムを噛もう

胃酸の出過ぎは胃痛の原因になります。また、消化不良は胃もたれを引き起こします。このふたつを予防するには、よく噛んで食べることが基本になります。食べ物を消化するには酵素のチカラが欠かせません。酵素にはたくさんの種類がありますが、最初に活躍するのがアミラーゼで、これは唾液に多く含まれています。そして、唾液をたくさん分泌する方法がよく噛むことなのです。

大量のアミラーゼにより最初の段階で食べ物が十分に分解されていれば、胃への負担は軽くて済みます。胃酸の分泌も抑えられるので、多少胃の働きが弱まっていても消化活動はラクになるわけです。最低でもひとくちにつき30回は噛むようにしましょう。普段からガムを噛むのもおすすめです。噛むことで唾液が分泌されるため、とくに食前に噛むことで胃への負担が軽減されます。同じ理由で、梅干しやレモンを食前に口にするというのもよいでしょう。

●肉類・乳製品は控えめに

脈略と米食文化を受け継いできた日本人。それゆえ、脂質や動物性タンパクを分解する酵素を分泌するのは不得意だったりします。もちろん、「ばんばんお肉を食べてもまったく問題なし!」という人もいるわけですが、胃の弱い人や胃の消化力が弱っているときはほどほどを心がけましょう。欧米の食文化が入ってきてまだ100年程。うまく適応できないのも当然なのです。

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