動脈硬化を手軽に検診 今、注目のABI検査とは?
先ごろ歌手の安西マリアさんが亡くなった。死因は急性心筋梗塞。心筋梗塞や脳梗塞は自覚症状がなく、ある日突然発症するケースが多いため、検診での早期発見が肝心。
しかしMRIやCT、人間ドックなどは高額な上に時間がかかる。そこで今、注目されているのがABI検査だ。
糖尿病の家系であるのに加え、ヘビースモーカーの鈴木正さん(50)=仮名。わが身に不安を持っていたが、仕事に追われ検診に行く時間がないと嘆いていた。
しかし、50歳を迎えついに重い腰を上げて検診に行き、医師に糖尿の気と喫煙者であることを告げると、動脈硬化を見つけるABI検査なるものを勧められた。
さぞかし時間を要するのではと憂鬱になったが、所要時間はわずか5分との説明を受けた。それくらいなら出勤前に済ませられる。鈴木さんにとっては医師の紹介であれば保険も効くというのも好都合だった。
「ABI検査は、上腕と足の血圧比を出すことで末梢(まっしょう)動脈疾患を見つけるものです。服を着たままで受けられますし、痛みもありません。
特に50~69歳の喫煙者や糖尿病患者、あるいは70歳以上の方は、1度は検査を受けた方がよいと学会で推奨されています」(岩手医科大学、森野禎浩教授)
末梢動脈疾患とは、手や足の動脈硬化。50歳から69歳で喫煙者、あるいは糖尿病を患っている男性に多く、ひどいと壊死(えし)することもあるという。
この検診は末梢動脈疾患の可能性を探るだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞の気があるか否かの判断にも役立つという。
「手や足の血管に詰まりがあるということは、心臓や脳の血管にも同様の症状が現れている可能性があります。
事実、末梢動脈疾患患者の43・8%が冠動脈疾患か脳血管疾患のどちらか、あるいは両方を合併しているという研究データがあります」(森野教授)
この検査で末梢動脈疾患とわかれば脳梗塞や心筋梗塞を疑っての精密な検査を受けるなどの対策が打てるわけだ。しかし医師の間でも末梢動脈疾患の理解は進んでいないと森野教授は続ける。
「糖尿病患者を対象にABI検査を行ったところ、7・6%の方に末梢動脈疾患が見つかり、その75%以上がそれまで末梢動脈疾患という診断をされていませんでした。潜在患者は300万人以上いるといわれています。
現状では医療現場の認識も薄いですから、一人一人が検査の重要性を理解することが大切でしょう」
検査装置自体は病院と名のつく大抵の施設の循環器内科や内科に導入されているという。
「最近では個人クリニックでもABI検査装置を導入しているところがありますので、まずはかかりつけ医に聞いてみるのがいいでしょう」(末梢動脈疾患の治療薬を扱うサノフィ株式会社、染田育久シニアプロダクトマネージャー)
動脈硬化はサイレントキラーと呼ばれ、知らず知らずのうちに病状が進行する。それに待ったをかけられるABI検査、ぜひとも受診したい。