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足がクサイ!ブーツのニオイを抑える方法

ファッションが楽しい季節になりました。寒い日の定番アイテムとして人気が高いブーツは、これからの時期は特に出番が多くなるのではないでしょうか。しかし、問題になるのがニオイ。ブーツは蒸れやすくて、ブーツも足もクサくなりがち。ママ友宅やお座敷で食事のときは脱ぎづらいのがホンネ…。ブーツのニオイを抑えるためにはどんな方法があるのでしょうか?

●清潔な足で蒸れづらい工夫をする
そもそもブーツのニオイは、足の汗や古い角質などによって発生する雑菌が原因といわれています。雑菌を少しでも軽減するためには、足を清潔に保つことが大切です。

指の間もしっかりと洗って、ソルトスクラブなどで古い角質を除去するといいでしょう。また、忘れがちなのが爪。長すぎる爪は不衛生になりやすいので短くしたほうが◎。

実際にブーツを履く際は、汗を吸収しやすい素材や抗菌・消臭効果のあるストッキングや靴下を履くようにしましょう。ナイロン製のストッキングやタイツは、汗を吸収しづらく蒸れやすい素材なので注意が必要です。

汗対策としては、中敷を入れて定期的に交換するのも効果的。汗を吸収しやすい素材でいらなくなった服をブーツサイズにカットすれば、お財布にもやさしいのでいいかもしれません。

ちなみに、同じブーツを連続で履き続けるのもNG。1回履いたブーツは、なかに新聞紙などを入れて2日程度は陰干ししたほうがいいでしょう。

●ブーツについたニオイは重曹や10円玉で消臭できる
さて、いくらニオイを軽減させてもブーツ自体にニオイがついてしまっては意味がない。ブーツのニオイが気になった場合は、重曹で消臭できるそう。不要になったストッキングやタイツのなかに重曹を入れて、ブーツに入れておくだけで消臭効果が期待できます。

他には、10円玉をブーツに入れると、ニオイの原因となる雑菌を分解して消臭できるのだとか。また、チューブタイプのワサビを使う方法も。ワサビには消臭効果があるといわれており、車屋が車内の消臭として使用することもあるので、効きめは抜群かもしれません。

素敵なブーツを履いてもニオイがあっては魅力が半減…。これからの時期、忘年会などでお座敷にあがることも増えると思うので、いまのうちから十分にケアをしてニオイのないブーツライフを楽しみましょう!

大人になって「アレルギー発症」する人の傾向5つ 成人食物アレルギーで多い原因は「果物・野菜」

成人の10人に1人に症状があり、近年、患者数が急増している成人食物アレルギー。花粉症の人や幼少期にアレルギーがあった人、食生活や就労環境に偏りのある人……誰もが発症リスクを抱え、重症化すると命を脅かすにもかかわらず、その実情はあまり知られていません。本稿は、そのメカニズムから治療・対処法にいたるまで、成人食物アレルギー研究・治療の第一人者である福冨友馬氏が解説した最新著書『大人の食物アレルギー』より一部抜粋・再構成してお届けします。

なぜ成人になって突然発症するのか

 子どもの時には起こらなかった食物アレルギーが、なぜ成人になってから発症するのでしょうか。それには、発症のメカニズムが関係しています。

 そのメカニズムの1つとして、ある食物を毎日のように食べていると、次第にその食物に対するアレルギーになることがあります。今まで問題なく食べられていたものでも、食べ続けているうちにアレルギーを発症することがあるのです。

 もしかすると、食べているものに新しくアレルギーになりやすくなる原因が生じたり、体質が変化したりといったことがあるのかもしれませんが、それが何であるか、現在の医学では十分にわかっていません。

 もう1つのメカニズムは、鼻や目、気管支の粘膜、皮膚などのアレルギーとの関係です。成人になってからでも、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルギーの関係した皮膚炎などを発症する例は多数あります。

 仕事などで特定の食物を頻繁に扱っていると、鼻・目・気管支・皮膚などを介して、その食物に対してアレルギーになることがあり、それがさらに悪化していくと、その食物を口にすることによって食物アレルギーを起こすケースもあります。

 食物ではなくても、花粉やダニのような環境中に普通に存在するアレルゲンが食物アレルギーに関与することがあります。花粉やダニなどの環境アレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、環境アレルゲンに対してアレルギーがある人が食物アレルゲンに対してもアレルギー反応を起こしてしまうわけです。

 これを「交差反応」といいます。交差反応とは、免疫細胞が、構造が似ているアレルゲンを間違って異物とみなして過剰な免疫反応を起こすことをいいます。

 もちろん個人差はありますが、食物アレルギーになりやすい人に共通する傾向がいくつかあることがわかってきています。

  ①アレルギー反応を起こしやすい体質である

 食物アレルギーに限らず、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息など、すべてのアレルギー疾患の人に共通して見られるのは、アレルギー反応を起こしやすい体質(アレルギー体質、アトピー体質)である点です。

 体質とは、文字どおり体の性質、生まれ持っての遺伝的素因と、生まれ育った環境的要因との相互作用によって形成される、人それぞれの総合的な性質という意味です。

 親、兄弟、姉妹など肉親にアレルギー疾患を持つ人がいると、新たに生まれてくる子どももアレルギー疾患を発症しやすい傾向があります。こうしたアレルギー疾患の家族歴は、子どものアレルギー疾患発症のリスク因子であることが、多くの研究結果からわかっています。

 しかし、アレルギー疾患は遺伝的な素因だけで発症するわけではなく、環境的要因を含めてさまざまな要因が関与しています。アレルギー体質であっても発症しない人もいますし、子どもの頃に発症したアレルギー疾患は、成長するに伴って、自然にあるいは治療によって症状が軽快することが多いのです。

 一方、成人になって新たに発症した食物アレルギーは、長期的には軽快する場合もありますが、軽快しにくいものもあります。

成人の食物アレルギーで圧倒的に多い原因

 ②花粉アレルギー(花粉症)がある

 0〜3歳の乳幼児の食物アレルギーでは、鶏卵、牛乳、小麦が三大原因食物といわれていますが、成人食物アレルギーの場合、圧倒的に多い原因食物は、果物・野菜です。

 その理由として、成人に花粉アレルギー(花粉症)が多いことが考えられますが、花粉と果物・野菜とがなぜ結びつくのか、不思議だと思いませんか。

 原因は、そこで起こっている交差反応にあります。

 花粉アレルゲンにより花粉アレルギーを発症した成人は、構造がよく似ている果物・野菜に存在するアレルゲンに対する交差反応によっても、花粉-食物アレルギー症候群を発症してしまうというわけです。

 ③生活習慣が乱れている

 働き盛りといわれる20代後半〜50代は特に、過労、慢性的なストレス、睡眠不足や運動不足、偏った食事といった生活習慣の乱れなどが原因で病気にかかりやすくなり、明らかに成人食物アレルギーが出やすくなります。

 中でも気をつけなければいけないのは、偏った食事です。特に、砂糖の取りすぎが、アレルギーの発症・増悪(病状がさらに悪化すること)に関係していることは、私の長年の診療経験からして紛れもない事実です。実際に、甘い菓子を食べる習慣をやめたところ、長年悩まされていた鼻炎や咳などのアレルギー症状がほぼ完治した患者さんをたくさん診てきました。

 ではなぜ、砂糖を取りすぎるとアレルギー症状が悪化しやすいのか。そのメカニズムについてはあまりよくわかっていない面もありますが、その1つとして、ブドウ糖を代謝する時に、ビタミンやミネラルを消費してしまうことが考えられます。つまり、砂糖の摂取によって大切なビタミンやミネラルが奪われて欠乏を招き、健康な体を維持するのに栄養の面で圧倒的に不利になってしまうのです。

 また、砂糖を取りすぎると、それを好む微生物(カンジダ菌など)が腸内で増えすぎて細菌バランスが崩れ、アレルギー反応を引き起こす可能性が考えられるだけでなく、全身のさまざまな疾患の炎症反応を悪化させてしまうこともわかっています。

 砂糖が多く使われる菓子などを間食としてたくさん食べてしまうと、それだけでおなかがいっぱいになります。その結果、本来体にとって必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルといった栄養素を摂取する食事がおろそかになり、日々のバランスのとれた栄養摂取という点からも大きな問題です。

 最近では、ブドウ糖よりも果糖のほうが体にとって害になっているのではないかという報告も増えています。果糖が体の中で代謝され、アレルギーの炎症を悪化させる物質ができることを多くの論文が挙げていますが、これらの関係を直接的に示したものはまだありません。

フルーツジュースをたくさん飲む人に…

 トウモロコシのでんぷんを加水分解して得られたブドウ糖液を、さらに甘い果糖液に変化(異性化)させた「異性化液糖(別名高フルクトース・コーンシロップ)」という液体甘味料があります。果糖の含有率が50%以上90%未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、50%未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」と呼びます。

 甘味がさわやかで砂糖よりも口の中に残りにくく、低温でも甘味度が増し、低コストでつくれるため、ソフトドリンクや冷菓のほか、パン、調味料、缶詰などにも広く使われています。パッケージにも、原材料名として表示されています。欧米でも、異性化液糖を含んだフルーツジュースなどをたくさん飲む人にアレルギー疾患が多いという報告がいくつか見受けられます。

 世界保健機関(WHO)は、2015年に「成人及び児童の糖類摂取量」を発表しました。このガイドラインでは、成人および児童の1日あたりの遊離糖類摂取量を、エネルギー総摂取量の10%未満(1日50g未満)に減らすようにすすめています。さらに5%まで減らして1日25g(ティースプーン6杯分)程度に抑えれば、健康効果はより増大するとしています。遊離糖類(free sugars)とは、単糖類(ブドウ糖・果糖等)および二糖類(砂糖、ショ糖)のことです。

 また、遊離糖類の摂取量をエネルギー総摂取量の10%未満に抑えれば、肥満や過体重、虫歯のリスクを減らせる明確な証拠があるとされています(食品安全委員会ウェブサイト、『Guideline : Sugars intake for adults and children』World Health Organization 2015)。

 アレルギーの発症・増悪予防という点から、砂糖をどの程度厳密に避けるべきなのか、その具体的な数字はまだ明らかになっていません。砂糖は、さまざまな加工品に使われていて、摂取を完全にゼロにするのはむずかしいかもしれませんが、なるべく控えたほうがいいことは間違いないでしょう。

 ④過度のきれい好きである

 世の中がきれいになりすぎたために食物や花粉などのアレルギーが増えたという声がよく聞かれますが、はたしてどうなのでしょう。

 私たちの体に異物が侵入した時、白血球が連携して防御してくれるシステムには、細菌やウイルスなど万人にとって有害な異物に対して作用する「免疫反応」と、食物の成分など無害であるはずの異物(アレルゲン)に対して作用する「アレルギー(反応)」があります。

 異物侵入を察知した抗原提示細胞は、白血球の1つであるT細胞にそれを知らせます。すると、T細胞のうち、細菌やウイルスが侵入した時はTh1細胞(1型ヘルパーT細胞)が、アレルゲンが侵入した時はTh2細胞(2型ヘルパーT細胞)が、リンパ球の一種であるB細胞に対して武器(抗体)をつくるように指令を出し、それが異物にくっついて撃退します。

 アレルギーを発症しやすいかどうかは、このTh1細胞とTh2細胞のバランスが関係しているといわれています。

 最近は衛生環境が整い、世の中が清潔になりすぎて感染症が激減したことなどからTh1細胞の出番が減り、代わってTh2細胞の働きが優位になり、本来攻撃する必要のない食物の成分や花粉にまで過剰に作用するようになったという考え方があります。

 このようなメカニズムが、アレルギーの患者さん一人ひとりのメカニズムとしてどの程度重要かは十分明らかになっていません。しかし、世の中全体としてアレルギーの人が増えてきているのは、このようなメカニズムがあるからではないかと考えられています。

乳幼児の食物アレルギーは秋冬生まれが多い理由

 ⑤ビタミンDが不足している

 生活習慣とも関係していますが、乳幼児の場合、食物アレルギーを発症する数は、季節によって異なることが報告されています。

 2歳以下を対象に行った疫学調査(あいち小児保健医療総合センターアレルギー科)で、食物アレルギーと診断された乳幼児は秋冬(10〜12月)生まれが多く、春夏(3〜5月)生まれが少ないという報告があり、日本以外の国からも同様の結果が聞かれます。

 ここで考えられるのが、日照時間とビタミンDとの関係です。ビタミンDはカルシウムやリンといったミネラルの吸収を増やして骨を強くしたり、血液中のカルシウム濃度を調節したり、過剰な免疫反応を抑制するなどの働きがあります。

 食物では、サケ、カツオ、しらす干し、イワシの丸干し、あん肝などほとんどの魚介類、キクラゲや干しシイタケなどのキノコ類、豚や鶏のレバー、鶏やうずらの卵の黄身に多く含まれています。

 また、こうした食物からだけでなく、日光を浴びることでも体内につくられます。皮膚の近くにあるプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)が紫外線に当たることでビタミンD3が合成されます。

 近年、ビタミンD欠乏症と喘息などのアレルギー疾患の発症との関係について研究が盛んに進められています。ビタミンD欠乏状態が食物アレルギー症状を増悪させることが、松井照明氏(あいち小児保健医療総合センターアレルギー科医長)によるマウスを使った研究で直接的に証明されています(Matsui et al. Allergology International 2018 vol.67. (2) p289-291)。

 1日に必要なビタミンDの目安量は、成人で8.5㎍(マイクログラム)とされています。しかし、ビタミンDの推奨摂取量に関しては議論も多いようです。

 秋冬生まれの乳幼児に食物アレルギーが多いのは、春夏に比べて日照時間が短く、日光を浴びる時間が少ないことによるビタミンDの生成不足も要因の1つと考えられます。

アレルギーになる原因は「皮膚」にある?最新研究が明かす真実

食物アレルギーに悩まされている人は多い。

しかしなぜ人はアレルギーになってしまうのか疑問に思ったことはないだろうか。

ちまたにはアレルギーの原因に関する様々な俗説があるが、科学的根拠の全くないものもたくさんある。アレルギーに関しては間違った情報により、間違った治療法を選択し、苦しんでいる患者さんも多い。

近年、アレルギーの研究が進み、徐々に発症の仕組みが分かってきた。

『HEALTH RULES(ヘルス・ルールズ) 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』を上梓した、医師でUCLA准教授の津川友介氏が、最新の研究をもとに解説する。

免疫が間違ってしまう

 新型コロナウイルスの影響もあり、「免疫」という言葉をよく聞くようになった。

 免疫とは、人間の身体を異物から守るための機能のことである。免疫は、細菌やウイルスに対して感染を予防したり、感染してしまったときに体内からこれらを排除するという有益な役割を持っている。

 しかし、残念なことに免疫は万能ではなく、必ずしも有害な異物にのみ反応するわけではない。私たちの身体にとって無害であるはずの食物や花粉などの異物が体内に侵入したときに、免疫機能が過剰に反応してしまい、その結果として、様々な症状を発症してしまうことがある。この現象を「アレルギー」と呼ぶ。

 それでは、なぜ人はアレルギーを発症してしまうのだろうか。

乳幼児期にピーナッツを

食べるとアレルギーになる?

 食物アレルギーは乳幼児に多いことから、これまでは消化機能が未熟なうちに食べることでアレルギーになってしまうと考えられていた。

 このような考えから、母乳や胎盤を介したアレルゲンへの曝露を防ぐ目的で、米国小児科学会は2000年に「妊娠・授乳期の母親は食物アレルギーの原因となりやすい卵やピーナッツなどの食物の摂取を制限し、乳幼児に対しては乳製品、卵、ナッツ類、魚の摂取開始時期をできるだけ遅らせるべきである」という声明を出した。

 これを受けて、日本でも予防的にこれらの食物の摂取開始を遅らせる指導が普及した。

 しかし、このような指導にもかかわらず、ピーナッツアレルギーを持つ子どもの数は減らなかった。それどころか、その後も年々増え続けたのである。

アレルギーを引き起こす真の原因

 2003年、世界的に権威のある医学雑誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に驚くべき研究結果[*3]が報告された。1万3971人のイギリス在住の就学前の子どものデータを解析した結果、ピーナッツオイルを含む保湿剤を肌に塗布していた乳幼児のピーナッツアレルギーになる確率が、そうでない乳幼児より高かったのである。

 一方で、妊娠・授乳期の母親の食事内容は、子どものピーナッツアレルギーのリスクと関係がなかった。食べ物ではなく、皮膚への曝露が食物アレルギーの原因になる可能性を示唆しているということで、驚きをもって受け入れられた。

 ピーナッツアレルギーのある子どもの91%がピーナッツオイルを含む保湿剤を使用していたのに対して、ピーナッツアレルギーのない子どもの中でそのような保湿剤を使用していたのは53~59%にとどまった。

 一方で、ピーナッツオイルを含まない保湿剤の使用率に関しては、ピーナッツアレルギーのある子どもとない子どもで差はなかった。

 保湿剤は、乳児湿疹などで赤ちゃんの肌が荒れているときに、それを改善させる目的で使われていた。そこから、肌荒れなどでダメージがある皮膚から異物が侵入することで、食物アレルギーが引き起こされるのではないかという考え方が生まれたのだ。

気をつけるべき「経皮感作」とは?

 皮膚が正常な場合には、肌に異物が触れてもバリアがきちんと機能しているので問題ない。

 一方で、皮膚がダメージを受け、バリアが破れた状態で異物にさらされると、その異物が肌から体内に侵入してしまう[*4]。その異物にランゲルハンス細胞などの免疫担当細胞が反応し、アレルギーを起こす状態になる(これを感作と呼ぶ)。その結果、その異物に対する食物アレルギーを発症すると現在では考えられている。このように皮膚から異物が侵入することでアレルギーになってしまうことを特に「経皮感作」と呼ぶ。

アトピーになる原因

 また、経皮感作することで引き起こされるのは、食物アレルギーだけではない。アトピー性皮膚炎も、経皮感作が発症に関わっていると考えられるようになっている。皮膚を健康に保ち、バリア機能を維持することで、アトピー性皮膚炎の発症を抑えることができるというエビデンスが出てきているのである。

 例えば、堀向健太氏らが行った研究[*5]では、アトピー性皮膚炎の発症リスクが高い新生児118人を、1日1回全身に保湿剤(商品名2e[ドゥーエ])を塗布するグループと、乾燥した部分のみにワセリンを塗るグループに無作為に割り付けた実験を実施した。その結果、保湿剤の全身塗布によってアトピー性皮膚炎の発症率が低下することが示された(図4)。

 この研究の追試ともいえる研究[*6]が、2020年に発表されたBEEP(Barrier Enhancement for Eczema Prevention)研究と呼ばれるものである。英国で行われたハイリスクな新生児1394人を対象としたこの研究の結果、新生児期に保湿剤を積極的に利用したグループと、標準的なスキンケアをしたグループで、2歳時点でのアトピー性皮膚炎の発症率に統計的に有意な差を認めなかった。

 しかしこの研究ではいくつかの限界点も指摘されている[*7]。前述の日本の研究では保湿成分が含まれる保湿剤が使われたのに対して、BEEP研究ではエモリエントと呼ばれる保湿成分の含まれない保湿剤が使われたという違いがあった。

 その他にも、標準的なスキンケアをしたグループもそれなりにきちんと保湿していたことで、差が見られなくなったなどの可能性も考えられている。保湿がアトピー性皮膚炎の予防に本当に有効かに関しては今後の研究が待たれるところであるが、子どもの皮膚をしっかり保湿することに対するデメリットはないので、ぜひしっかり保湿してあげてほしいと筆者は考えている。

 また、このような経皮感作は子どもだけでなく、大人でも起こる可能性がある。

 日本では、化粧品会社「悠香」(福岡県)が製造販売する「茶のしずく石鹸」を使用していた人が、小麦に対する食物アレルギーを発症した事件が有名である。合計2111人が食物アレルギーを発症し、25%がアナフィラキシーショック、43%が呼吸困難を経験するなど重篤例も多く含まれていた。[*8]

 この石鹸には、加水分解された小麦のたんぱく質である「加水分解コムギ」(グルパール19S)が含まれており、繰り返し石鹸を使うことで経皮感作を引き起こし、結果として小麦に対する食物アレルギーになってしまったと考えられている。

 アレルギー予防の観点からみると、皮膚に湿疹や傷があるなどバリア機能が失われている状態で異物に触れることは、極力避けたほうが良いと言える。

 またバリア機能を保つためにも、日ごろから保湿などのケアはしっかりしてほしい。また皮膚に異常が場合はインターネットや本で自分で調べるのではなく、ぜひ皮膚科の先生に相談してほしい。

参考文献

*1 Motosue MS et al. National trends in emergency department visits and hospitalizations for food-induced anaphylaxis in US children. Pediatr Allergy Immunol. 2018;29(5):538-544.

*2 Lieberman J et al. Increased incidence and prevalence of peanut allergy in children and adolescents in the United States. Annals of Allergy, Asthma & Immunology. 2018;121(5):S13.

*3 Lack G et al. Factors associated with the development of peanut allergy in childhood. N Engl J Med. 2003;348(11):977-985.

*4 Yoshida K et al. Distinct behavior of human Langerhans cells and inflammatory dendritic epidermal cells at tight junctions in patients with atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):856-864.

*5 Horimukai K et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 2014;134(4):824-830. e6.

*6 Chalmers JR et al. Daily emollient during infancy for prevention of eczema: the BEEP randomised controlled trial. Lancet. 2020; 395(10228):962-972.

*7 小児アレルギー科医の備忘録[https://pediatric-allergy.com/2020/03/09/beep/]を参照。(2020年7月20日アクセス)

*8 Yagami A et al. Outbreak of immediate-type hydrolyzed wheat protein allergy due to a facial soap in Japan. J Allergy Clin Immunol. 2017;140(3):879-881. e7.著者略歴

津川友介(つがわ・ゆうすけ)

医師・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授。

東北大学医学部を卒業後、ハーバード大学で修士号、博士号を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。

2016年に発表した女性医師の治療成績に関する論文が2017年「世界で影響を与えた科学論文」の3位に選ばれる。

著書に10万部超のベストセラー『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』、『世界一わかりやすい 「医療政策」の教科書』、共著に「週刊ダイヤモンド」の「経済学者・経営学者・エコノミスト111人が選んだ2017年 ベスト経済書」で第1位を受賞した『「原因と結果」の経済学』、『最高のがん治療』などがある。

魚を食べて「症状」が出たら要注意! アレルギーの原因になりやすい身近な魚は?【専門医が解説】

魚アレルギーとは
魚は健康やアレルギーに良い不飽和脂肪酸と、骨に大切なビタミンDを多く含んでいます。しかし、中には魚で起きるアレルギーもあるので注意が必要です。詳しくご説明しましょう。
魚アレルギーの症状……じんましん・咳・アナフィラキシーなど
魚を食べて、下記のような症状が出たことがあれば、「魚アレルギー」の可能性があります。
・じんましん

・顔が赤くなる

・目が赤くなる

・まぶたが腫れる

・咳・喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)

・アナフィラキシー

・アトピーの湿疹がひどくなる

魚アレルギーの原因となる魚……サケ・アジ・タイなど
原因となる魚は多い順に「サケ・マグロ・イワシ・カレイ・アジ・タイ・タラ・ブリ・サバ」があり、日常的に食べる魚ばかりです。
魚アレルギーはどれくらいあるのでしょうか? 日本では、食物アレルギーの5%ほどしかありませんが、スウェーデンでは子供の食物アレルギーの39%を占めていますので、国によって様々です。

魚アレルギー体質の場合、1種類の魚だけに限定されず、いくつかの魚でアレルギーを起こします。

魚アレルギーの原因は、魚の筋肉に含まれる「パルブアルブミン」というタンパク質なのですが、この「パルブアルブミン」は、ほとんどの種類に含まれています。さらに、魚のコラーゲンもアレルギーの原因になります。

このように魚に共通する成分が原因になるために、多くの種類の魚でアレルギー症状を起こすことになります。

魚アレルギーの検査法・診断法
一番大切なのは、問診といって、どんな魚を食べた時にどんな症状がでるかどうかを詳しく記録しておくことです。魚を食べると、いつもじんましんや咳などの症状が出るかどうかです。
アレルギーの検査については、血液検査を行い、魚に対するIgEを測定します。現在、検査できる魚は「アジ・イワシ・カレイ・サケ・サバ・タラ・マグロ」の7種類です。

皮膚検査は、症状に応じて行います。血液検査の必要がない場合に行うこともあれば、血液検査が陰性でも症状が出ている場合に行うこともあります。

皮膚検査では、新鮮な魚または加熱した魚を針で刺し、その針で皮膚を刺す「プリック試験」や、魚の成分を皮膚内に注射する方法で行います。

その際に皮膚が赤くなったり、盛り上がったりした場合、陽性と判断しますが、皮膚試験そのもので全身のアレルギー症状であるアナフィラキシーを起こすことがありますので、十分な注意が必要な検査法です。また、魚には寄生虫が存在することもありますので、あわせて注意しながら行います。

経口負荷試験を行うこともありますが、アナフィラキシーが出てしまうと大変ですので、医療機関の監視のもとで行うのが望ましいです。

このような問診と検査で診断するのですが、なかには魚アレルギーと思っていたら違うことがあります。魚アレルギーに似ているのに違う2つのケースについて解説します。

魚アレルギーに似た症状を起こす「アレルギー様反応(仮性アレルギー)」とは
名前の通り、アレルギーではありません。鮮度の落ちた(古い)魚を食べると、食べた直後から3時間後に、じんましん、顔の腫れ、発汗、頭痛、吐き気などの症状が起こってきます。アレルギーに似ていますね。
しかし、これは体がアレルギー反応を起こしたわけではありません。魚に含まれるヒスチジンというアミノ酸が、魚についた微生物でヒスタミンに変わるためです。ヒスタミンは、アレルギーの症状を起こす物質です。

つまり、体がヒスタミンを作ってアレルギーを起こすのではなく、外からヒスタミンが入ってアレルギーに似た症状を起こすので、アレルギー様反応(仮性アレルギー)と呼んで区別します。

ヒスチジンを多く含む魚は、サバ、サンマ、カツオ、イワシ、カジキ、マグロなどの赤身の魚です。ヒスタミンは加熱しても安定ですので、調理品でも危険です。古い魚を食べると、魚に対してアレルギーがない人にも起こりうるのです。

魚アレルギーに似た症状を起こす「アニサキスアレルギー」とは
「アニサキス」(※)は魚の寄生虫です。寄生した魚を食べると、胃で暴れ、腹痛の原因になります。これをアニサキス症といって、実際にアニサキスを内視鏡で取らないといけないので、大変です。
この寄生虫アニサキスに対してアレルギー反応が起こり、じんましんなどの症状が出ることがあります。アニサキスが寄生していない魚なら、アレルギー症状が出ないので、魚アレルギーとは区別します。

アニサキス自体は冷凍や加熱に弱いのですが、アレルギーを起こす力は加熱しても残りますので、加熱した魚でも起こります。

血液検査で、アニサキスに対するIgEを測定します。陽性ならアニサキスアレルギーの可能性が高いです。寄生虫なので皮膚試験は推奨されません。

このように、アレルギー様反応やアニサキスアレルギーではなくて、魚アレルギーと診断された場合の治療法について次に解説します。

魚アレルギーの治療法・対処法
何よりの予防は、原因となる魚を食べないことが一番です。
そのためには、自分が食べられる魚と食べられない魚とを把握して区別する必要があるのですが、複数の魚でアレルギーを起こすことがあるので、なかなか分けることは困難です。また、魚アレルギーは治りにくいといわれています。

その中で、安全に食べられる可能性があるのが、出汁と水煮タイプの「マグロの缶詰」です。これは、缶詰にするために、マグロを加圧加熱殺菌する過程で、マグロのアレルギーを起こす力が弱くなるためだといわれています。

しかし、中には「マグロの缶詰」でアナフィラキシーを起こした例もあるので、注意は必要です。

魚を食べられないと不足しがちな不飽和脂肪酸はシソの実油やえごま油で、ビタミンDはしいたけなどで補給するのも1つの方法です。

▼※アニサキス:線形動物門 双線綱 桿線虫亜綱 回虫目アニサキス科 アニサキス属。成虫はクジラやイルカなど哺乳類の胃に寄生し、幼虫はサバやイカなどの魚に寄生。人の中では幼虫のままで、体長は20~35mm、体幅は0.4~0.6mm。人の胃や腸壁を穿孔することで、激しい腹痛を起こす。

▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

「蚊アレルギー」強い皮膚症状の原因はEBウイルスにあり

【あなたを狙う「有毒」動物】#5

蚊に刺されると、痕が赤く腫れて痒くなります(蚊刺症:ぶんししょう)。これは蚊の唾液に対するアレルギー反応で、即時型と遅発型の2種類に分かれています。

即時型は刺された直後から起こる痒みと腫れで、ほとんどすべての人に生じます。しかし症状は軽く、早い人で15分程度、長い人でも数時間で治まります。一方、遅発型は刺されてから数時間ないし半日後から生じる痒みや腫れです。大半は遅発型反応がまったく起こらないか、あったとしてもごく軽症で済みますが、中には1週間以上も断続的にぶり返す人もいます。しかしそれがもっと長引くことは滅多にありません。

遅発型反応が強い人は、自分は「蚊アレルギー」だと思っています。しかし、医学的に言う蚊アレルギーはもっと強い症状がしつこく続きます。これには、局所症状と全身症状があります。局所症状は、刺し痕に直径数センチ、時にはニワトリのタマゴ大の水疱性の紅斑ができ、中心が潰瘍化して壊死し、かさぶたとなって痕に窪みができてしまうという、かなり痛々しいものです。しかも、かさぶたが取れるまで1カ月ほどを要します。

■高熱、リンパ節の腫れ、肝機能障害が出るケースも

全身症状としては、刺されて数時間ないし1日後に高熱を発し、リンパ節が腫れたり肝機能障害が出たりすることもあります。通常のアレルギー反応とは異なっているため、正式には「蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)」と呼ばれています。 蚊刺過敏症の引き金はたしかに蚊なのですが、その正体はまったく違っています。あるウイルスが背後に潜んでいるのです。「エプシュタイン・バールウイルス(EBウイルス)」といって、伝染性単核球症や悪性リンパ腫など面倒な病気を引き起こすことがあるウイルスです。

EBウイルスは日本人の大半が持っていて、子供のうちに親から感染します。高熱が出たり喉が腫れたりと、普通の風邪と同じような症状が出る(伝染性単核球症)ことがありますが、ほとんど無症状の子供もいます。 思春期以降に初感染する人もいて、別名「キス病」とも呼ばれています。キスの相手の唾液から感染するからです。子供のものより重症化すると言われており、長い人では1カ月近く具合の悪い状態が続きます。しかしいずれにしても一過性の病気で、二度と罹ることはありません。

■EBウイルスが慢性化すると免疫が壊される

ただし、EBウイルスは体内から駆逐されたわけではありません。B細胞と呼ばれる免疫細胞の一種に感染したまま、ほとんどの場合、宿主である人間が死ぬまでずっとおとなしくしています。その意味で平和主義なウイルスと言えます。

しかし稀に慢性化する場合があり、恐ろしい側面を見せつけます。「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」と呼ばれる病気を引き起こすのです。国内では毎年数十人が新規に発病していて、EBウイルスがB細胞以外の免疫細胞に感染して引き起こされることが分かっています。ただ、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。

患者の大半は子供ですが、きわめて稀に大人が罹ることもあります。発熱、倦怠感、リンパ節が腫れる、肝臓や脾臓が腫れるなどの症状が出て、それが数年にわたって強弱を繰り返しながら続くのです。

ただし幼児のうちは、まだCAEBVの症状がほとんど出ていません。ですから、親もまさか自分の子供がそんな病気に罹っているとは思いもよりません。しかしある日、蚊に刺されたことをきっかけに、上述したような激しいアレルギー反応が起こるのです。最初のうちは比較的軽く、年齢を重ねるごとに重くなっていきます。

■かつては予後不良だった蚊アレルギー

1980年代までは原因が分からないまま、皮膚科的な対症療法が行われていました。皮膚症状は抗炎症剤などを投与すると一時的によくなるのですが、また蚊に刺されると同じ症状の繰り返しになります。進行すると、38度を超える高熱が出ることも少なくありません。そうこうしているうちに、患者の大半が悪性リンパ腫や白血病に罹って、亡くなってしまうのです。そのため、「蚊アレルギーは予後不良(助からない)」と言われていたほどです。

実はEBウイルスは、アフリカ人に多い「バーキットリンパ腫」というがんから発見されたもので、人のがんを引き起こすウイルスの第1号として知られています。CAEBVも、悪性リンパ腫や血液がんなどを引き起こす点では共通しています。

そのため治療も血液がんに準じていて、主に抗がん剤治療と骨髄移植の2つからなります。まずステロイドなどで全身の炎症を抑えた後、複数の抗がん剤を使って悪性細胞の数を減らしていきます。次に抗がん剤を大量投与して体内に残っている造血細胞を全滅させた後に骨髄移植を行うのです。現在は治療法がかなり洗練されてきたため、7~8割の患者が長期生存できるようになっているようです。

蚊アレルギーはCAEBVのサインです。子供が蚊に刺されて皮膚炎が長引くようなら、一度、皮膚科や血液内科で診てもらうのがおすすめです。一方、大人のCAEBVは数えるほどしかいませんから、蚊に刺されて他人より少し痒かったり腫れたりしても、あまり心配する必要はなさそうです。

(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)

卵アレルギー、腸内細菌の乱れが原因?子ども調べて判明

卵アレルギーが、腸内細菌の群れ「腸内フローラ」の乱れに関係していることを、関西医科大学の研究チームが突き止めた。腸内環境を改善することで、食物アレルギーの予防や治療につながる可能性がある。

 アレルギーは、本来なら拒絶しなくてもいい無害な物に対して、体が反応してしまい、めまいや発疹などの症状を引き起こす現象だ。過剰な免疫が引き金となるため、研究チームは、体の免疫細胞の7割が集まる腸に注目。免疫細胞と作用し合う腸内細菌を調べた。

 腸内細菌は様々な種があり、腸の粘膜に隙間なくびっしりと張り付いている。顕微鏡で見ると、まるで並んで咲いた花のようであることから、花畑(フローラ)にちなんで腸内フローラと呼ばれる。食生活なども影響するが、およそ3歳までにはその人の腸内フローラの基礎が決まるとされる。

 チームは、1~8歳の子どもを対象に、卵アレルギーのある子と、アレルギーのない子(健常児)の便を遺伝子解析し、腸内フローラの状態を比べた。その結果、卵アレルギーがある子どもは、腸内に存在する細菌の分布が健常児とは違っていた。さらに、腸内で「酪酸」という物質を作り出す「酪酸産生菌」の割合が健常児の3分の1ほどだったことがわかった。

米国では18%が罹患!チョコでも発症、金属アレルギーに注意

乳幼児期に起こるイメージが強いアレルギーだが、大人になってから発症するケースも多く、患者数は年々増加。今や2人に1人はなんらかのアレルギーを持っているとも。食物によるアレルギーに関しては、最近増加の傾向にあるという。

日常に潜むリスクは、食物に限ったことではない。大人になってから発症するアレルギーには、日用品の使用によって起こるものも。

「多様な素材で作られた製品が増え、アレルギーの原因となる物質が皮膚から入り込むことでアレルギーを発症する方は増えています」

そう話すのは、東京医科歯科大学教授の横関博雄先生。横関先生によれば、次のような日用品によるトラブルの事例が増えているそう。

「『接触性皮膚炎』は、アレルギーの一種です。症例が多いのは、化粧品、ニッケルなどの金属によるアレルギー。いずれも一度発症してしまうと、基本的には二度と使うことができません」(横関先生・以下同)

横関先生によれば、原因を知って予防することで、発症を防ぐこともできるという。原因について、注意点を聞いた。

「ニッケル、コバルト、クロムなど、メッキで使う金属で発症する例が多いですね。汗で金属が溶けて、イオン化して皮膚に入り込むことが原因です。この症例が急増しているアメリカでは、国民の18%が罹患しているというデータもあります。

予防は金属になるべく直接触れないようにすること。ピアスなど身につけるものは、できれば金やプラチナなど、触っても溶けにくい金属を選ぶようにしたいですね」

成人してから発症する「金属」が原因の皮膚アレルギーの特徴(横関博雄先生の監修による)は次のとおり。

【原因】

ニッケル、コバルト、クロムなどの金属

【主な症状】

皮膚のただれ

【アレルギーの特徴】

何度も触ることで体内に蓄積されて発症。ピアスなどは汗がついた皮膚に触れても溶けにくい金やプラチナなどの金属がベター。じかに触らない工夫を

一度発症すると、貝やチョコ、コーヒーなど、ニッケル等の金属を含む食べものを口にするだけでもアレルギーが起こるので、食べものにも気をつけたい。

湿布や毛染めでもなる後天性アレルギーを知っておこう

乳幼児期に起こるイメージが強いアレルギーだが、大人になってから発症するケースも多く、患者数は年々増加。今や2人に1人はなんらかのアレルギーを持っているとも。食物によるアレルギーに関しては、最近増加の傾向にあるという。

日常に潜むリスクは、食物に限ったことではない。大人になってから発症するアレルギーには、日用品の使用によって起こるものも。「多様な素材で作られた製品が増え、アレルギーの原因となる物質が皮膚から入り込むことでアレルギーを発症する方は増えています」

そう話すのは、東京医科歯科大学教授の横関博雄先生。横関先生によれば、次のような日用品によるトラブルの事例が増えているそう。

「『接触性皮膚炎』は、アレルギーの一種です。症例が多いのは、湿布や塗り薬などの薬、毛染めによるアレルギー。いずれも一度発症してしまうと、基本的には二度と使うことができません」(横関先生・以下同)

成人してから発症する「湿布・塗り薬などの市販薬」「毛染め」が原因の皮膚アレルギーの特徴(横関博雄先生の監修による)は次のとおり。

■湿布、塗り薬などの市販薬が原因の皮膚アレルギー

【主な症状】

皮膚のかぶれ

【アレルギーの特徴】

テープを貼って光を浴びると起こる。重症化すると貼っていない部位にまで広がる可能性が。水虫薬は配合成分が徐々に浸透して発症する

■毛染めが原因の皮膚アレルギー

【主な症状】

皮膚のかぶれ、びらん、顔が腫れる

【アレルギーの特徴】

毛染めに含まれる成分が徐々に浸透することで発症。頭皮がかぶれたり、ただれたりするが、まず、顔が腫れることが多い。かゆみを伴う

横関先生によれば、原因を知って予防することで、発症を防ぐこともできるという。

「腰などの痛み止めテープに含まれているケトプロフェンは、貼った部位に日光が当たると、光アレルギーを起こすことがあります。予防のためには必ず使用方法を守り、使用時は光を当てないようにしましょう。貼った部位に水疱ができたり、かゆみを感じたらすぐ使用を中止してください」

水虫薬などによく配合されているルリコナゾールという成分も使用時に遅延型のアレルギーを起こすことがあり、発症すると、似た構造を持つラノコラゾールという成分も使用できなくなるという。

これらの成分が含まれる市販薬には、〈使用時に日光に当てない〉といった注意書きがされている。きちんと確認して使用したい。

お世話になっている人も多い、白髪染めにも注意が必要だ。

「パラフェニレンジアミンという成分が肌に入り込むことで起きます。顔が腫れるなどの症状が出ますが、重症の場合は、アナフィラキシーを起こすことも」

荒れた皮膚から物質が入り込むので、肌を健やかに保つことが予防につながるという。

治らないケースが多い後天性アレルギー。だからこそきちんとした知識をもち、身近に潜むリスクに備えよう!

アレルギーの原因にも…すぐに変えたい“勘違い”な健康習慣

毎朝、コップ一杯の水を飲むといい――。常識だと思っていた健康習慣が体の不調の原因だったということがある。

べ3000人の体質改善に携わった「クリアバランス」代表で「健康な人はコレを選んでいる」(ワニブックス刊)の長尾羊生乎氏は、西洋医学、東洋医学の両面からアレルギー・過敏症などの解消法を研究してきた。“勘違い”健康習慣が、アレルギーを悪化させたり、発症の原因になると警告する。

■人間に必要な菌も殺す除菌スプレー

「ソファや衣服の布用除菌スプレーは重宝しますよね。ウイルスやばい菌から身を守ってくれますが、殺菌作用のある成分は化学物質が原料であることが多いです。

一方、本来、人の皮膚にいる菌は感染から身を守り、潤いを閉じ込めてくれるわけです。使い過ぎはお勧めできません。消毒液も同じ。化学物質で手を洗っているようなもので、肌荒れや目が痛くなる人は少なくありません」

 健常者も、頭には入れておくべきだ。

■朝の「コップ一杯の水」はよくない

「人は寝ている間に汗をかくため、起きがけの水分補給は大事です。問題はその温度で、内臓の温度より低い、冷えた水はもちろん、水道の常温水もお勧めできません。体温は平均36.5度前後です。

常温水は20度程度。スポーツの後ならまだしも、起床直後の温かい体に体温より低い温度の水を入れると一時的に臓器の温度が下がる。毎日繰り返すと低体温になります。体温が1度下がると、免疫力は30%低下します。

免疫力が低ければ、臓器の働きが鈍り、35度台ががん細胞が一番増殖する体温といわれています。低体温の人はがんになりやすいのです。できれば、60度、70度のお湯を飲みたいですね」

 健康のためには熱いくらいの温度の方がいいのだ。

■冷たいお茶の健康効果は疑問

 猛暑の季節、誰もが冷えた水やお茶が手離せない。しかし――。

「緑茶に含まれるカフェインは胃を荒らし、体を冷やします。冷たいお茶は内臓機能を低下させます。特に胃腸が弱い人は控えましょう。カフェインの入っていない麦茶などを温めて飲むのがいいでしょう」。体を冷やさないのが大事だ。

■焼き肉とビールの組み合わせは相性が悪い

「霜降りやカルビなど脂肪分が多いお肉を食べると胃腸に脂の膜ができます。そこに冷えたビールを飲んだらどうなるか。脂肪分が体の中で固まります。

すると、老廃物を排泄するための繊毛運動ができず、胃腸の動きを妨げてしまう可能性が。実は、ビールに体を冷やす夏野菜の枝豆や冷ややっこも相性がよくありません。もちろん、体が温まっていれば固まりにくくなりますから、ビールを飲む前に温スープを飲むことをおすすめします」

 ユッケ、野菜サラダ、刺し身など“生モノ”は体を冷やす。同様に注意したい。

■発熱・保温下着は自律神経を乱す

「人には体温調節機能が備わっています。暑いときは体内の熱を外に放ち、寒い冬は体を震えさせることで体を温めます。発熱・保温下着を日常で使うことで、体機能の反応が鈍くなります。

冷え性や自律神経が乱れることも。この手の下着は機能性を優先するため化学繊維を原料に作られていることが多い。かぶれの原因にもなります」

 アレルギーや過敏症の子供がいる家庭は覚えておこう。

「配給食べられない」命に直結する食物アレルギー 対応遅れる避難所

 地震や豪雨など大規模災害が多発する中、被災したアレルギー患者をどう支えるかが課題となっている。中でも子どもに多い食物アレルギーは命に直結するが、混乱する被災地では対応を後回しにされがちだ。2016年の熊本地震で支援に奔走した関係者の話から必要な支援と備えについて考える。

 熊本医療センター(熊本市)小児科のアレルギー専門医、緒方美佳さんは16年4月16日未明の熊本地震の本震発生後、直ちに日本小児アレルギー学会の仲間と連携し、被災地の患者支援に動いた。学会が中心となってアレルギー対応食を募る一方、アレルギー医療の拠点である福岡病院(福岡市)に物資をいったん集積し、選別した上で同センターに届ける仕組みを大急ぎで整えた。16日夕には第1便がセンターに到着した。

 ところが被災地は大混乱のさなか。どんな症状の患者がどこにいるのか分からない。現地で対応する専門医は緒方さんだけで人手も足りない。複数の自治体に避難所でアレルギー食を配布したいと協力を求めたが「アレルギーの対応まではできない」「アレルギーの人はいない」と断られた。

 やむなくセンターの総合受付の前にアレルギー食を並べ、必要な人に持ち帰ってもらう形を取った。一方で大勢の患者が一斉に集まればセンターの救急医療業務に支障が出かねない。積極的な情報の周知はためらわれ、学会を通じた間接的な発信や関係者の口コミに頼った。

 それでもセンターには1日10人ほどが受け取りにきた。卵とクルミのアレルギーを抱え10日以上車中泊を続けていた市内の男児(6)は避難所の食事をほとんど口にできなかったという。「どんな食材が入っているか分からない」「症状が出ても診察が受けられないかもしれない」。不安に不安が重なっていた。

      ■

 同時期、他の団体も支援に乗り出していた。

 日本栄養士会(東京)の災害対策チーム「JDA-DAT」は本震翌日の17日に現地入り。栄養士が避難所を巡回して食物アレルギーや離乳食、飲み込みが困難な高齢者など食にまつわるさまざまな悩みを聞き取り、必要な食品を届けた。6月末までに延べ約千人が活動したという。現地で指揮した国立健康・栄養研究所(東京)の笠岡宜代さんは「避難所の声には対応できた。ただ、車中避難者には十分に手が届かず、課題が残った」と言う。

 NPO法人「アトピッ子地球の子ネットワーク」(東京)はボランティアのドライバー1人が活動。会員制交流サイト(SNS)などを通じて被災した患者から直接連絡を受け、個別に食品を届けた。多くは車中避難者。電信柱の番号などを目印に居場所を探し、物資を届けたという。

      ■

 緒方さんは当初「JDA-DATが現地で活動していることすら知らなかった」。両者が連携したのは本震から10日後の4月下旬だった。その経験を生かし、今年7月の熊本豪雨では現地入りしたJDA-DATが避難所の情報を緒方さんに伝えるなどした。

 緒方さんによると、熊本地震では親戚宅などアレルギー食を自炊できる場所に身を寄せて乗り切った患者も多かった。とはいえ被災直後は必要な食材や自炊できる環境を自力で確保するのは困難だ。緒方さんは「最低3日分の食料を常備してほしい」と呼び掛ける。

 一方で避難所生活を続けた患者の中には食材を過剰に避けて、何も食べられなくなる人もいたという。非常時、やみくもに食事を制限すれば栄養状態に影響する。緒方さんは「日頃から専門医の診察をきちんと受けて、どの食材を避け、どの食材はどのぐらい食べられるのか、正確に把握することが重要だ」と話した。 (本田彩子)

窓口を一本化へ アレルギー学会など15団体

 大規模災害時にアレルギーを抱える被災者を適切に支援するため、日本アレルギー学会を中心とする災害時合同対策委員会が今月、発足した。東日本大震災や熊本地震などの教訓を生かし、関連団体が連携して対応窓口を一本化するなど新たな支援体制を築く。

 アレルギー疾患は食物やぜんそく、皮膚炎、鼻炎など症状はさまざまで、年齢も乳児から高齢者まで幅広い。委員会ではアレルギーのほか呼吸器や耳鼻科、小児科などの学会をはじめ、栄養士会や関連のNPO法人など計15の団体が窓口を一本化し、被災患者の声を迅速に把握して自治体と連携し、支援活動を円滑に展開することを目指す。

 委員会のメンバーで福岡病院の西間三馨名誉院長は「これまでは各団体が個別に活動し、さまざまな混乱もあった。常設の窓口を設けてより充実した支援につなげたい」と話した。

命に関わることもあるアレルギー サーファーは納豆に注意

人が1人がアレルギーを持っている言われる現代日本。命に関わるケースも珍しくない。ある女性は、「友達との温泉旅行で、夕食にかにやえびを食べたあと、2時間ほど休憩してから温泉に入ったら、急に呼吸困難になってしまって…」と明かす。

 これは「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」といわれる症状の一例だ。

 アレルゲンとなる食べ物を食べたあと、2~3時間以内に運動をするとアレルギーを引き起こす。国立病院機構相模原病院副臨床研究センター長でアレルギー性疾患研究部長の海老澤元宏さんはこう話す。

「普通の食物アレルギーと違うのは、ただ食べただけでは起こらないということ。検査をしても原因となる物質の特定が難しいことも特徴です。アレルギー反応が出るかどうかは、その日の体調によるところがあり、体調がすぐれない時の方が出やすいという傾向もあります」

 甲殻類や小麦が原因になることが多く、食後の激しい運動、散歩や入浴でも起こることがある。アレルゲンの疑いのあるものを食べた場合は、4時間は運動を避けた方がいい。

 怖いのは、「アナフィラキシーショック」につながるリスクがあることだ。
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「『アナフィラキシー』は、皮膚、粘膜、呼吸器、消化器など体の2か所以上の器官で症状が出ている状態を指します。『ショック』は急激な血圧の低下による症状を意味しており、脳に充分な血液が供給できなくなって、運動能力や判断力の低下、意識消失といった危険な状態に陥ります。皮膚症状に加えて呼吸器系に症状が出た場合は、アナフィラキシーと判断し、治療が必要です」(海老澤さん)

◆サーファーは納豆に注意
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 アレルギーは原因となる物質(アレルゲン)が体内に侵入したことを「IgE抗体」が感知することで症状が出る。異なる物質であっても、たんぱく質構造が似ていればIgE抗体はアレルゲンとして判別し、その結果アレルギー反応が起きてしまうこともある。このように、異なる物質で反応が出てしまうことを「交差反応」と呼んでいる。
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 予想外の交差反応から生じたアレルギーが話題になったこともある。

 横浜市立大学附属病院の研究によると、納豆アレルギーを引き起こす「PGA」という物質はクラゲにも共通するため、クラゲに頻繁に刺されているサーファーは、納豆アレルギーを発症しやすくなるという。なかには、朝食で食べた納豆でアナフィラキシーショックを起こし、意識を失ったサーファーもいる。
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 マリンスポーツが好きな人はクラゲの時期に注意し、なるべく肌の露出が少ない格好で刺されないようにしたい。

トマトでアレルギー症状が出ることも 気をつけるべき人は?

健康情報番組で紹介された食品が、翌日にスーパーから消えることは珍しくない。健康意識の高まりで、“体にいい”とされる食べ物の情報が巷に溢れている。

 だが、そうした食材について逆に「私は食べません」という医師が存在する。当然ながら、その理由は単なる好き嫌いではない。医学的な根拠に基づいて、自らの口に何を入れるかを判断しているのだ。

 例えば、トマトには抗酸化作用のあるリコピンに加え、ビタミンA・C・Eなど多くの栄養素が含まれる。熱に強く油との相性もよいため、様々な料理に重宝される。

 だがスクエアクリニック副院長の本間龍介医師は、いかなる調理法のトマトも口にしない。

「栄養豊富なトマトには、アレルギー症状の原因物質となるヒスタミンが含まれています。私はトマトアレルギーではありませんが、遺伝的にヒスタミンを分解する酵素が働きにくいので、トマトを口にすると皮膚に痒みが出たり赤くなったりします。

 同様に、腸壁にある粘膜が傷んでいる人は、ヒスタミンを分解する酵素がつくられにくく、痒みなどが生じるケースがある。ヒスタミンは脳にダイレクトに刺激を与える物質なので、子供の場合は落ち着きがなくなったり、大人は集中力が続かないという状態になることもあり得ます。

 また、何らかのアレルギーを持つ人は、ヒスタミンを多く含む食材が体に合わない傾向があります。アトピーなどのアレルギーを持つ人はより一層気をつけてほしい」(本間医師)

 近年、花粉症の人が果物や野菜を摂ると、アレルギー症状が出ることが報告されている。患者の多いスギ花粉症の人は、トマトでアレルギー症状が出るとされる。決して“万人に対して万能”の健康食ではないのだ。

専門医に聞け! Q&A アレルギー性鼻炎の漢方薬

Q: アレルギー性鼻炎があるため、スギ花粉が飛散する時期は鼻水が止まらなくなります。透明の水っぽい鼻水です。以前、漢方薬の小青竜湯を服用したことがありましたが、あまり効果はありませんでした。私は冷え性で風邪も引きやすく、鼻炎の鼻水も寒い日にはひどくなります。私に合った漢方薬はないでしょうか。
(42歳・郵便局勤務)

A: 漢方では、体質や症状に応じて処方(漢方薬)を使い分けます。アレルギー性鼻炎や花粉症にもいろいろな漢方薬があります。ご質問の方は、水っぽい鼻水が出て、寒い日ほど症状がひどく、冷え性で風邪も引きやすいとのこと。このことから、寒証と考えられます。春先のこの時期は三寒四温と言うように、寒い日があります。その時が、風寒の鼻炎です。

 漢方では、病気を引き起こす原因を「邪」と言います。邪にもいろいろありますが、寒証には風邪(ふうじゃ)と寒邪(かんじゃ)が関係しています。ですから、治療はこの風寒を取る事を目的とします。言い換えると、体を温める漢方薬を処方します。

 ご質問の方は、小青竜湯を服用したが、あまり効果がなかったとのこと。小青竜湯は、アレルギー性鼻炎や花粉症に用いる基本的な漢方薬です。しかし、ご質問の方のような風寒のタイプには、それだけでは足りません。体を温める処方を加えるとよいのです。その作用がある生薬に附子があります。

●体を温める作用の漢方薬を
 つまり、小青竜湯に附子を加えます。附子は、体を温め、冷えを解消する働きがあります。さらには、麻黄附子細辛湯があります。 この漢方薬は麻黄と附子、細辛の3つの生薬を配合しています。細辛にも体を温める作用があります。また、麻黄には、風寒を散らす働きがあります。体が温まると、鼻の周囲の循環がよくなり、鼻水が出なくなります。

 ちなみに、麻黄は小青竜湯にも配合されています。小青竜湯も麻黄附子細辛湯も、健康保険適用のエキス剤があります。ご質問の方は、以上の知識を持った上で漢方専門医の診察を受けるとよいでしょう。

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岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師)
東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病等に成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。

ダウンJKや羽毛布団で乾いた咳なら…アレルギー性肺炎を疑うべき

 全国各地で初雪が観測され、いよいよ本格的な冬がやってきた。先週末、押し入れやタンスにしまい込んでいた羽毛布団やダウンジャケットを慌てて引っ張り出した人も多いのではないか。中には空調や加湿器を使い始めた人もいるだろう。そこで気をつけたいのが、アレルギー性の肺炎だ。この時期、注意したいのは「鳥関連過敏性肺炎」や「空調症」「加湿器肺」など。発熱、乾いた咳や息切れといった風邪の症状が長く続き、肺の中に肉芽腫ができる場合も。放っておくと肺組織が壊れて命を失うこともある。「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に聞いた。

 通常、肺炎というと細菌やウイルスなどが肺の奥にある肺胞などに感染して起きる。ところがカビや細菌の一種、ホコリや塗料、動物の体毛やキノコの胞子などを繰り返し吸い込むことでアレルギー反応が起き、肺炎になる場合がある。それが過敏性肺炎だ。発症の引き金となる抗原は100以上あり、鳥関連過敏性肺炎は布団やダウンジャケットに使われている鳥の羽毛やフンに含まれるタンパク質が抗原となる。空調症や加湿器肺は増殖した細菌や真菌が原因だ。日本ではトリコスポロンと呼ばれる真菌による夏型過敏性肺炎が最も多く、それに次ぐのが鳥関連過敏性肺炎や加湿器肺などといわれる。

「そもそも過敏性肺炎は間質性肺炎のひとつであり、発症すると空気の取り入れと放出を担う気管支や、血液中に酸素を送り込み二酸化炭素を排出する肺胞などが広域に、しかも同時に炎症を起こします。肺の間質とは肺胞隔壁や血管やリンパ管などのことで、そこが炎症で腫れたりむくんだりすると、肺の収縮力や酸素吸収力が弱くなります。その結果、酸欠状態になりやすく、階段を上ったり、運動したりすると息切れするようになるのです。放っておくと肺胞が徐々に線維化して機能を失い、血液での酸素と二酸化炭素の交換ができなくなる。命を失うことさえあります」

 基本的に過敏性肺炎は増悪と寛解を繰り返しながら病状がゆっくり進む。ところが、その途中にインフルエンザなどのウイルス感染や細菌感染を起こすと急激に病状が悪化し、重篤な状態に陥ることがある。それだけに、一刻でも早く診断・治療することが大切だ。

「ところが過敏性肺炎は風邪と症状が似ているため、最初から疑ってかからないと分かりづらいといわれています。症状は風邪と同じで、くしゃみや咳、発熱です。風邪などの感染症の咳と違って痰が絡まない、乾いた咳が出ることだとされています。また、過敏性肺炎を胸部エックス線や胸部CT画像で見ると、感染症の肺炎と違って、すりガラス様陰影と呼ばれる特徴のある画像が見られます」

 最近では「原因不明の肺炎症状」の場合、病気の原因となる物質を探し出すため、アレルギー抗原を見つける血液検査をする医療機関もあるが、多くはない。

■症状によってステロイド剤も

 感染症による肺炎の場合、治療には抗生物質や抗ウイルス薬といった薬剤が使われる。

 一方、過敏性肺炎の治療は、まず抗原を見つけて、その抗原を避ける抗原回避が行われる。さらに環境に原因がある場合は環境改善を行い、それらとともに薬剤治療が施される。

「羽毛が原因の場合は、羽毛布団や羽毛が使われているダウンジャケットの使用や、鳥の飼育を中止します。空調や加湿器が原因の場合は運転を中止して清掃します。それだけで症状が改善する人もいますが、症状がひどい場合は、アレルギー反応を抑制するためにステロイド剤を使うことになります」

 冬に風邪をひくのは当たり前。ちょっとした熱や咳くらいでは病院に行かない人も多い。また、病院に行っても医師が鳥や真菌などのアレルギーによる過敏性肺炎だと気づかないケースもある。

 乾いた咳が長く続いて治りが悪い場合は過敏性肺炎を疑い、医療機関にかかった際は「鳥を飼っている」「羽毛のダウンジャケットや布団を使っている」「加湿器を出した」などということも話してみることだ。

食あたりで発熱したら…これは危険な状態? どうすればいいの?

食あたりすると下痢や腹痛が起きますが、状態がひどくなると熱が出ることがあります!…熱が出ると、より心配になりますね。食あたりで発熱するのは、なぜでしょうか?病院に行かなくてはいけないのでしょうか?

今回は、食あたりのときの発熱について、医師に詳しい話を聞いてきました。
食あたりで発熱するのはなぜ?
食あたりのときの発熱は、主に2つの原因、いずれかである可能性が考えられます。

1. 細菌が原因の場合
腸から身体の中に有害な細菌が入りますが、細菌から熱を出す物質が出ることによって熱が出ることがあります。たとえ細菌が身体の中に入らなくても、腸の中で細菌から出た熱を出す物質が直接に働いて熱が出ることがあります。

また、身体に入った細菌自体には、熱を出す物質がなくても、細菌は身体にとっては異物ですので、身体の中では細菌を排除する免疫の働きが起こります。この働きのために熱が出ることがあります。

2. 食物アレルギーの場合
細菌が原因でない食あたりで熱が出るのは、食べ物自体に対するアレルギーの反応の場合があります。
食あたりで発熱した場合の治療方法
【細菌が原因の場合】
1. 水分補給をする
細菌からの熱を出す物質が原因の場合と、細菌を排除する免疫の働きが原因の場合は、症状を緩和するために整腸剤の内服と、下痢による脱水やナトリウムやカリウムなどの電解質バランスの乱れを改善するためにスポーツドリンクで水分を補給する必要があります。

2. 有効な抗生物質が必要
細菌が原因での食あたりによる発熱は、細菌を身体の中から除き去らないと良くなりません。症状が軽い場合は市販の整腸剤で良くなる場合がありますが、熱が出るような食あたりの場合は整腸剤では良くならないことが多いです。このためにはどんな細菌が原因かを調べて、その細菌に対応する抗生剤を服用する必要があります。

3. 必ず病院を受診すること
下痢止めなどで下痢を無理やり止めると、腹痛や発熱が悪化することがあります。発熱を伴う場合は、必ず病院を受診するようにして下さい。またこのような細菌の中には、抗生剤によって排除しないと、身体の中に居ついてしまうものがあります。本人には症状は起こりませんが、他の人にうつす感染源となることがありますので、便検査で確実に細菌がいなくなったという確証が必要です。特に食品を扱う仕事、幼児や高齢者を介護する仕事についている場合は注意が必要です。

4. 経過の観察も必要
細菌が原因の食あたりでは腎不全などの2次的な合併症が起こることがあり、症状が良くなるまでは注意深い観察が必要になります。特に幼児や高齢者、持病のある人は合併症が起こり易いので注意する必要があります。

【食物アレルギーの場合】
食べ物自体に対するアレルギーが原因の場合は、整腸剤等で症状が治まるのを待って下さい。アレルギー反応は1度目よりも2度目の方がひどくなるので、同じものを再度食べないように注意する必要があります。原因となる食べ物を調べるには、病院を受診して血液検査を受ければはっきりします。
医師からのアドバイス
食あたりでも熱が出ないもの、便に血が混じらないもの、腹痛がさほど強くないものは市販の整腸剤で様子を見ることが可能ではあります。

しかし、幼児や高齢者、持病がある場合は無理をして病院を受診しないで市販薬だけで様子を見ると思わぬ合併症が起こることがありますので、2~3日以上様子を見ても症状が改善しない時は病院を受診した方が良いでしょう。

食べ過ぎは危険? この時期に注意したい「銀杏アレルギー」とは

秋も終わりに近づき、そろそろ冬がやってきますね。この季節、ちょうど食べごろのものといえば「銀杏」です。モチモチとした食感と、独特の苦みをもった銀杏は、茶碗蒸しに使われたりおつまみとして好まれたりと、何かと活躍しますよね。もしかしたら、みなさんのなかにも銀杏拾いをして家で食べようと考えている人もいるでしょう。

実は銀杏に含まれている成分によって、アレルギーによるショック症状を引き起こしてしまう危険性があります。
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■「銀杏アレルギー」とは?

銀杏アレルギーとは、銀杏の実や葉に接触することによって起こるアレルギー症状のことを言います。銀杏にはギンゴール酸やビロボールというアレルギー性の物質が含まれているため、かぶれを起こす場合があります。敏感な人であれば、イチョウの木の葉でもかぶれをおこすことがあるため、「銀杏かぶれ」や「銀杏皮膚炎」などと呼ばれています。

銀杏アレルギーにかかると、手足や顔などが赤く腫れ、激しいかゆみに襲われます。ひどい場合は水疱ができ、腫れによって目が開かなくなってしまうことがあるのです。

とはいえ、銀杏アレルギーの症状が現れるのは銀杏に触れてから2~3日ほどかかるため、原因を特定するのが遅くなってしまうことがあります。また、症状が治まるまでには20日間もかかると言われています。銀杏かぶれを起こした場合は、きちんと石鹸を使って洗い流してから、皮膚科を受診しましょう。

●銀杏の食べ過ぎによって中毒を引き起こすことも…
また、銀杏にはMPNという中毒物質が含まれているため、接触するだけでなく食べ過ぎることによっても中毒症状を引き起こす可能性があります。発症は人によって異なり、1~12時間とも数時間~数日間とも言われています。

大量に食べることで神経が興奮し、呼吸困難や手足の麻痺、不整脈、嘔吐などの症状を引き起こす危険性があるのです。日本中毒情報センターによると、子どもでは1度に7個以上、成人では1度に20~40個以上の摂取は危険です。
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■銀杏アレルギーを予防するために気を付けることとは
一度銀杏アレルギーにかかると、次にかかるときは症状が重くなると言われています。銀杏に似ている物質の含まれているウルシ科の植物やマンゴーは避けたほうが無難です。ま

た、銀杏を拾ったり、銀杏をむいたりするときは必ずビニール手袋やゴム手袋を着用しましょう。イチョウの木の近くを通るときは、なるべく肌を露出しないよう長袖を着るといいでしょう。心配な人は、銀杏を食べるのを控えるといいですね。

監修:坂本忍(医師)

アレルギーは食べ物で悪化する「アルコール」「スパイス」

食べ物によってアレルギー症状が悪くなっている気がする?実は、たくさんの人が経験しています。アレルギーには免疫システムが関わっていて、体の敏感度を高める食べ物というものがあります。

結果、症状悪化、紅潮、じんましんなどを引き起こします。ここではアレルギー症状を悪化させる食べ物と対処法をジェームスクック大学分子免疫学部の主任兼、准教授であるロパタ氏が説明します。

●アルコール
ワインは高ヒスタミンで異物への反応として免疫システムを作動させます。特に花粉症持ちの人はヒスタミンによってアレルギー症状が悪化します、とロパタ准教授。

●交差反応
様々な食べ物に対してアレルギー反応が出るかもしれませんが、原因はただ一種類の花粉なのです。一つの植物から他の植物に他花受粉されたせいでしょう。例えば草に対するアレルギーがある人が、りんごなどの意外な食べ物に交差反応するのです。

●スパイス
辛いカレーを食べたあと、すごく具合が悪くなりますか?唐辛子によく含まれるカプサイシンという要素が涙目、鼻水などを引き起こします。しかしこれはまだまだ軽い炎症のうち。これがワインと一緒に消化されると何日間にも渡る地獄のアレルギーを引き起こしえるのです。

アレルギーに効果があるものとしては、オメガ3の多い魚、ビタミンC、暖かい飲み物などがあります。

もし特定の食べ物を食べたあとにアレルギー症状が見られる場合、食事日記をつけるのがおすすめです。何時に何を食べた後になったかを記録しておくとその後のアレルギーテストをするのにも使えます。

検査をしても異常がみられない場合も!? アレルギー検査ってどんなことをするの?

花粉症などアレルギーがあるのはつらいもの。でも原因がわかっていれば対策をとることができます!

今回はアレルギーの検査の種類や、検査によってどんなことがわかるのかなどについて、医師から話を聞いてきました。
アレルギー検査の種類

現在行われているアレルギー検査には

・血液検査
・皮膚のテスト

があります。

昔はアレルギーが疑われる物質を食べてもらって実際にアレルギー反応が起きるかどうかを見ていました。陽性の場合はひどいアレルギー反応が起こり、危険な場合もあります。このために現在は行われていません。

1. 血液検査
血液検査ではアレルギーの原因となる物質の検索と今後アレルギーになりやすいかどうかがわかります。

2. 皮膚のテスト
皮膚のテストは濃度を薄くした対象の物質を皮膚につけて、赤くなるかどうかによってアレルギーがあるかどうかを見る検査です。この検査はアレルギーの可能性がある物質を直接に皮膚につけるので、たとえ濃度が薄くても、強いアレルギー反応が起きることがあります。

アレルギー検査でどこまでわかるの?
保険では全ての物質に対するアレルギーの可能性を一度に調べることはできません。ある程度可能性のあるものに対して検査を行います。例えばアレルギーが春に多いとか秋に多いとか傾向がわかれば、季節によって花粉などの種類が異なるので、検査をする対象を数種類選ぶことができます。

検査の結果が陽性であれば、対象の物質に対するアレルギーを持っていることになりますので、注意しやすくなります。ただし検査の結果が陰性でも対象に対するアレルギーがないと完全には言い切れませんので、その点は留意しておきましょう。

また、アレルギーの血液検査はいつでもできますが、生後1歳未満で検査の結果が陽性でも、今後ずっとその物質に対するアレルギーもち続けるという訳ではありません。陽性の場合は、免疫機能がある程度発達した2~3歳以降に再度検査を受けた方がいいでしょう。

気づきにくいアレルギーもある!
通常のアレルギーは、皮膚に湿疹が出たり、アレルギー性鼻炎のように鼻水、鼻詰まり、あるいは目が痒いなどの症状が出るため、わかりやすいものです。この場合は病院を受診してアレルギーの検査を受ければ、何に対するアレルギーがあるかはっきりします。

しかしアレルギーの中にはこれらのようなはっきりとした症状を起こさず、だるい、気分が悪い、微熱が続く、疲れやすい等のはっきりしない症状の原因がアレルギーであることがあります。

しかもアレルギーの原因となる物質が日常的に接しているものであると季節性もなく、気づきにくいです。このような場合は病院を受診して一般的な血液検査をしても異常は認められず、気分的な問題、あるいは精神的な病気として安定剤等を処方されてしまうことがあります。

アレルギーの血液検査は簡単にできる検査ですので、はっきりしない症状がある場合、一度は受けた方がいいでしょう。

医師からのアドバイス
アレルギーの強さによって命に関わる場合もあるので、自分の体質については知っておく必要があるでしょう。気になる症状がある場合は、ぜひ検査を受けてみてください。

気づかないうちに触れている? 家庭にある意外なアレルギー源とは?

先日、猫に対するアレルギー反応がどのようにして誘発されるのかを解明したという論文が、米専門誌『ジャーナル・オブ・イミュノロジー』で発表された。

発表によると、猫のタンパク質がバクテリアの一種と接触し、それにより人間にアレルギー反応を起こす可能性があるという。

猫アレルギーだけでなく、世の中にはさまざまなアレルギー物質が潜んでいる。今回はその中でも家に潜む意外なアレルギー物質についてご紹介したい。お話を伺ったのは、アレルギー疾患・呼吸器疾患に力を入れている『あざみ野 おさかべクリニック』の刑部院長。

そもそも、アレルギーとはどのようにして起こるのでしょうか?

「人間の体は、鼻、目、皮膚、気管支などから、体に入ってくる異物(抗原)に対して、抗体をつくって中和するという機能があります。

アレルギー体質の人は、この機能に異常をきたし、過剰に反応しているのです」
では、次に家庭のアレルギー源には、どのようなものがあるのでしょうか。

「一般家庭では、ダニやハウスダストがよく知られていますが、ほかにもさまざまなものがあります。

例えば、変わったところでは“蛾”もアレルギーの原因になります。穀物や菓子など、乾燥した食品に発生する5mmくらいの大きさのもので“メイガ”と呼ばれています。

夜行性のため、昼間は見ても気づきません。他にも、衣服につく“イガ”という蛾もいます。食品は気密性を高めて密封したり、衣類には虫除けを入れることで、防ぐことができます」

なるほど、蛾がアレルギーの原因になるとは驚きだ。そのほかにもこんなものも…。
「ゴキブリなどのフンや死骸、通ったあとの粉などもアレルギーを起こすことがあります。布団や毛布はこまめに干し、じゅうたんはやめてフローリングにするのも有効です。

また、観葉植物にはホコリやダニがつきますから、葉をこまめに拭くのがよいでしょう」
やはり部屋を清潔にすることがまずは重要なようだ。

刑部院長によると、良かれと思って利用しているアロマディフューザーや線香の煙が、気管支ぜんそくを悪化させるケースもあるので、息苦しさを感じたら使用をやめたほうが良さそうだ。

ほかにも「うさぎやフェレットなどを家の中で飼う人は、寝室に入れないようにしたほうがいい」とのコメントもいただいた。

アレルギー反応は場合によっては重篤な症状に陥ることもある。家の中でアレルギー反応を感じたら、専門の医師の診断を受けて適切な治療をするとともに、アレルギー検査で原因の特定をしてみると良いだろう。

「かゆみ」「かぶれ」は放置しない~原因は身近に潜んでいる!

アレルギー接触皮膚炎とは、いわゆる皮膚の「かぶれ」。身近な生活用品や食品には、アレルギーを起こす原因となる物質が、たくさん潜んでいる。もし、なかなか治らないかぶれに悩んでいたら、それは原因を取り除けていないせいかもしれない。

かぶれの原因と対策について、藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座教授・松永佳世子さんに聞いた。

●ある物質に触れることで起こる、皮膚の「かぶれ」

 「接触皮膚炎」とは、いわゆる「かぶれ」の症状を起こす皮膚の病気。体の外から特定の物質が触れ、皮膚から吸収されることで、そこに炎症が起こるものだ。

 接触皮膚炎は、触れた物質の毒性により皮膚が直接破壊されてしまう「刺激性接触皮膚炎」と、原因物質に触れてから免疫反応が起こり、2~3日経ってから症状が現れる「アレルギー性接触皮膚炎」に分けられる。どちらも、中には紫外線が当たることによって反応して皮膚炎が起こる「光接触皮膚炎」もある。

 刺激性接触皮膚炎は、酸やアルカリ、洗浄剤の原液、ガソリンなどの刺激性の強い物質が原因で、皮膚が赤くなったり腫れたりする。化学熱傷のようにひどくただれることもある。弱い刺激でもくり返し触れることで炎症症状が起こる。

 アレルギー性接触皮膚炎は、植物や化粧品、アクセサリーなどに含まれる物質がアレルギー反応を起こす。かゆみが強く、皮膚の赤み、腫れのほか、水ぶくれになることもある。原因物質への接触がくり返されると、症状が悪化して慢性の湿疹になる。

●まずは炎症を抑え、原因物質を特定する

 かぶれで皮膚科を受診すると、湿疹が体の一部分に限定されているのか、全身にあるのか、光が当たる部分なのか、など症状と病歴を聞いたうえで、まずはステロイドや抗ヒスタミン薬などで炎症を抑える。

 それでも2週間以上くり返すなど、ひどいかぶれが治まらない場合は、原因物質(アレルゲン)を特定し、取り除くことが必要だ。アレルギー性接触皮膚炎は原因物質を避ければ改善するのだが、日常に溢れる多種多様な物質の中から原因を特定するのは、難しいこともある。

診断に役立つ新しいバッチテスト剤が登場

 原因物質の特定に役立つのが「パッチテスト」という検査だ。背中などにさまざまなアレルゲンを少量貼りつけて人工的にアレルギー反応をつくり、皮膚炎と関係していないかどうかを調べる。パッチテストを行えば、思いがけないアレルゲンへの反応がわかることもあり、確実に原因を特定し、接触を避けることで皮膚炎の根治につながる。

 しかし、パッチテストを行うには手間と時間がかかるうえ、保険点数も低く設定されており、一連の診療技術を行う医師に一定の知識と修練が必要とされる。こうしたことから、パッチテストを定期的に行うという皮膚科医は大学病院でも約半数、開業医では2割弱にとどまっていた(日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会が2011年に行ったアンケート調査)。

 そんな中、今年5月に、新しい「パッチテストパネル(s)」と呼ばれる検査薬が発売された(佐藤製薬)。従来のように手間のかかる準備が必要なく、剥がして貼るだけで簡便に行えること、「ジャパニーズスタンダードアレルゲン」と呼ばれる、

日本人がかぶれやすい原因物質のうち21種類を含む、計22種類が一定の面積に均一に配置されていることが特徴だ。

 「準備不要でパッチテストが簡便にできるようになったことは画期的なこと。貼った人の手技による差が出にくく、接触皮膚炎の検査にはとても有用です」(松永さん)

●かぶれを起こしやすい物質とは?

 では、どんなものがかぶれを起こしやすいのだろうか。

 2012年の統計(下図) によると、かぶれを起こした製品のうち68%を化粧品が占めていた。その他に、医薬品、ゴム製品、金属などにかぶれる人が見られた。

 また、日本人において陽性率が高いとされる「ジャパニーズスタンダードアレルゲン」については、2013年の統計では下記の通りだった。

かぶれやすい物質(ジャパニーズスタンダードアレルゲン)2013年 1位 ニッケル 2位 うるし 3位 コバルト 4位 フラジオマイシン硫酸塩

 ニッケルはあらゆる合金製品や、硬貨(50円、100円、500円硬貨)、ステンレス製品などに含まれ、ベルトのバックルやネックレスなどが皮膚に触れることでかぶれを起こすケースがよく見られる。チョコレートやナッツ類などの食品にもニッケルが含まれている。

 コバルトも、ニッケルメッキ製品の多くに含まれ、歯科金属や染毛剤、絵の具、クレヨンなどにも使われている。フラジオマイシン硫酸塩は、外用薬として多く使用される抗生剤の成分だ。薬にかぶれてしまうことも少なくない。

 「缶コーヒーの缶にクロムが含まれているのを知らずに、毎日4本の缶コーヒーを飲み続けて唇がかぶれてしまった人や、かぶれていながらも染毛剤をくり返し使い続けて入院した人もいます」(松永さん)

 また、メチルイソチアゾリノンという化粧品に使われる防腐剤が、アレルギーを引き起こす確率が高いのではないかと、注目されているという。日本では洗い流すタイプの化粧品にのみ使用が許可されているが、外国製化粧品などでかぶれることもある。

●「おかしいな」と思ったら、使い続けない

 こうして見てみると、私たちが日常で触れる日用品、化粧品、薬、食べ物などあらゆるものにかぶれの原因となる物質は含まれている。

 「製品を作る企業側には、かぶれやすい物質だとわかった時点で、濃度を下げる、あるいは除去するといった努力は必要ですが、かぶれを全く起こさないということは不可能です。“いかに重症化を最小限にするか”という視点が大切だと思います」(松永さん)

 体がアレルギー反応を起こす体質になり、炎症症状として表面化するまでには、“くり返し”原因物質が皮膚から吸収される機会があるという。私たちができる対策としては、ひどいかぶれになる前に、「おかしいなと思った時点で使用をやめる」ことが大切だ。

汗をかいてただれやすい状態のところに無理やりネックレスやピアスをしない、少しチクチクすると思ったら使わないなど、自分の体質や状態を見極めて、合わない物質を避ける意識を持とう。

 また、いつまでも皮膚の赤みが続いたり、茶色く変色したり、なかなか治らないかぶれがあるときは、身近に原因が潜んでいるかもしれないと考えて原因物質を探してみることも大切だ。この人に聞きました藤田保健衛生大学 副学長 医学部皮膚科学講座教授 松永 佳世子さん 1976 年名古屋大学医学部医学科卒業

。同大学医学部皮膚科、藤田保健衛生大学医学部皮膚科講師等を経て、2000年より現職。2014年4月より藤田保健衛生大学副学長。専門分野は接触皮膚炎、じんましん、ラテックスアレルギー、アトピー性皮膚炎、スキンケア、美容皮膚科、再生医療。

要注意!子どもの食物アレルギーを引き起こす食べ物「グルテン含む穀物」「イカ、タコ」「ピーナツ」

食物アレルギーを持つ子どもが増えている、と言われますが、アレルギー源となる食べ物は、日常に溢れています。

そこで、フランスの妊婦や小さな子どもを持つ家族向けのWebサイト『Famili.fr』から、子どもの食物アレルギー源になる食べ物を紹介します。

「アレルギーの子どもにうっかり挙げたお菓子がアレルギー源だった」なんてことがないよう、親だけではなく、周囲の大人も知識を身につけ、注意をするのが大切です!

●グルテンを含む穀物類

小麦、オート麦、大麦など多くの穀物類がグルテンを含み、さらにそれらを使った小麦粉、パン、クッキー、麺類、さらにはピザ、ハンバーガーにもグルテンが含まれます。

多くの加工食品に含まれているので、原材料の表示をよく見て、グルテンを含んでいないか、必ずチェックしましょう。

●甲殻類、軟体類、貝類

エビやカニなどの甲殻類は、アレルギー源として知られていますが、他にも、イカ、タコなどの軟体動物、ホタテ、カキ、アサリなどの貝類でもアレルギーが起こることがあります。

●タマゴ

タマゴはアレルギーの主な原因の1つ。6歳頃でアレルギーが消えることが多いですが、6歳以降も続く場合があるので、注意が必要。他にも、サケ、マグロ、タラといった身近な魚もアレルギーの原因に。さらに、ピーナツは重症なアレルギー反応を引き起こすので、くれぐれも注意が必要です。

人は清潔感が9割?クサそうだからやめてほしい3つのこと

1年でもっとも汗をかくシーズンといえば、夏。みなさんのなかにも夏を目前としてニオイに気を付けている人もいるのではないでしょうか?

株式会社マンダムが25~54歳の働く男女183名を対象に行った調査では、女性がもっとも嫌うニオイは「汗臭」という結果も出ています。

いったいどんなシーンで「ニオイそう…」と思われるのでしょうか?また、周囲にしてほしいと考えるニオイケアにはどのようなものがあるのでしょうか?

◆最悪な第一印象は「フケ」と「ニオイ」
株式会社マンダムが2014年5月、25~49歳の働く男女1117名を対象に行った「身だしなみに関する調査」によると、男性への第一印象でマイナスに影響するものトップ3は次の結果になりました。

 「フケ」(91.2%)
 「口臭」(89.8%)
 「体臭」(88.1%)

また、女性への第一印象でマイナスに影響するものトップ3は次の結果になります。
 「口臭」(91.0%)
 「フケ」(90.9%)
 「体臭」(89.6%)

男女共に「ニオイ」と「フケ」がトップにあがり、不衛生な人に対して好ましく思わないことがわかりました。

一方で、「センスのわるい服装」(14.6%)や「肌あれやにきび跡」(7.35%)にいたってはマイナスイメージを持つことが少なく、男女ともに大きく印象を変えることはありません。

◆約4割が望んでいる「クサそうだからやめてほしいこと」
 1位:汗染みができている(44.0%)
 2位:汗がぽたぽた滴っている(39.2%)
 3位:シャツが汗で透けている(37.5%)

実際に臭ってはいないものの、クサそうだからやめてほしいことにトップ3は以下の通りです。
 「汗染みができている」(44.0%)
 「汗がぽたぽた滴っている」(39.2%)
 「シャツが汗で透けている」(37.5%)

臭いがしなくても、夏場の「汗」をクサそうだと感じる人が多いようです。汗で衣類がぬれ、ぽたぽたと垂れている状態は、周りに不快な印象を与えかねません。ほかにもクサそうだからやめてほしいこととして、次の内容があがっています。

 「靴を脱ぐ」(32.1%)
 「頭を掻く」(20.5%)
 「半そでシャツからワキ毛が見える」(20.1%)

◆最低限してほしいニオイケアって?
それでは、周りからみて不快なニオイを打ち消すために、最低限してほしいケアにはどのようなものがあるのでしょうか?
同調査によると、トップ3は次の通りです。

 「毎日お風呂に入る」(76.5%)
 「デオドランド剤で汗や臭いを抑える」(60.5%)
 「汗をかいたら汗ふきシートで拭く」(42.3%)

毎日お風呂に入る、周りに臭わないよう制汗剤やデオドランド剤を使う、汗をかいたらこまめに拭くといった基本的なケアを望む声が多いことがわかりました。

汗をかく季節だからこそ、ニオイケアを念入りにして爽やかに夏を乗り切りましょう!

参考:株式会社マンダム「身だしなみに関する調査」
 (http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000006496.html)

「乳アレルギー」の誤解…離乳食で牛乳デビューが望ましい

■重要な食材、少しずつ飲ませて

 「牛乳デビュー」はできるだけ遅い方が、子供が乳(にゅう)アレルギーになりにくい-。離乳期の子供を持つ保護者の中に、こう思っている人は少なくない。かつて主流だったこの考えに科学的根拠はない。

牛乳を与え始めるタイミングを遅らせたからといって、アレルギーの発症予防になるという効果は認められていない。離乳期は子供が味覚を覚える大事な時期。カルシウムやビタミンB群などが豊富な牛乳・乳製品を上手に活用しよう。(平沢裕子)

                   ◇

 ◆科学的根拠なし

 世界的に子供の間で増加しているとされる食物アレルギー。アナフィラキシーといわれる重篤な症状を起こす食物には、卵、乳製品、小麦、ソバ、落花生などがある。神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)のアレルギー科、高増哲也医長は「子供の食物アレルギーは5~10%といわれる。

中でも乳製品によるアレルギーは、昨年末に学校給食で誤ってチーズ入りチヂミを食べた女児が亡くなったこともあり、非常に神経質になっている保護者が多い」と話す。

 離乳食は生後5、6カ月で始めるのが普通だが、保護者に誤解が多いのが「離乳食で特定の食物を除去すると食物アレルギーになりにくい」という考え。これをうのみにして、離乳食を始めたばかりの乳児に牛乳・乳製品を与えないようにしている保護者もいる。

育児雑誌でも「牛乳・乳製品は7、8カ月になってから加熱したものをあげましょう」などと、牛乳・乳製品は遅めに与えるよう勧める表記も見受けられる。

 しかし、この考えには科学的根拠がない。日本の離乳ガイドや小児アレルギー学会では「離乳食で特定の食物を除去しても子供が食物アレルギーになりにくいとはいえない」とする見解を出している。

米国やヨーロッパの小児科学会も同様で、アレルギーを発症していないのに予防的見地から除去食をすることを否定するのは世界的な動向でもある。

◆ゆっくりと

 栄養学的にみれば、牛乳はカルシウムやビタミンB群など他の食品では取りにくい栄養素が含まれているという特徴がある。学校給食で牛乳・乳製品が利用されるのはこのためだ。

 もちろん、牛乳・乳製品のアレルギーを既に発症している場合は摂取できない。

 しかし、牛乳・乳製品(育児用ミルクを含む)を取っても症状が出ない場合、離乳食での牛乳デビューは他の食材と同じように与えるのが望ましい。

ただ、離乳食前の時期に母乳や育児用ミルクの代わりとして牛乳を与えるのはタンパク質の過剰や鉄欠乏性貧血に陥る危険があり、すすめられない。

 離乳食を与えるときに気をつけたいのは「少しずつゆっくり」を心掛けることだ。おかゆ1さじから始め、消化管で処理できているか便で確認しながら量を増やしていく。

牛乳やヨーグルトなどの乳製品もいきなり、たくさん与えるのは禁物で、スプーン1さじから始める。

 高増医長は「子供は1歳になる頃には大人に近い物が食べられるようになる。それまでの離乳食は、まんべんなくいろいろな食材を取ることが望ましい。

牛乳・乳製品も食材の一つとして、離乳食が始まったら少しずつ安全な条件を確かめながら与えるようにしてほしい」と話している。
                   
 ■牛乳使った「乳和食」がおすすめ

 料理研究家・管理栄養士、小山浩子さんは「乳和食」を勧めている。牛乳を使った和食のことで、減塩効果もあり、離乳食に使うのもおすすめだ。 利用法としては、だしにする(だし汁を牛乳にかえる)▽割る・のばす(塩分や味の濃い調味料を牛乳で薄める=減塩)▽ゆでる・ゆで戻す(牛乳で野菜をゆでたり乾物をゆで戻したりする=コクと甘味がプラス)▽溶く(小麦粉などの粉を牛乳で溶いて利用)-など。

アレルギーが出やすい「ヘアカラー」はどのタイプ?

白髪を染めたり、髪の明るさを変えたりと、手軽に使えて便利なヘアカラーですが、皮膚トラブルの原因になることが指摘されています。消費者安全調査委員会はこの問題に関して23日に発表を行っています。

2010年度からの5年間で寄せられた被害相談は1,000件を超え、1か月以上続く重症も170件含まれていました。

毛染め剤によるアレルギー症状は、重篤な場合には顔が腫れ上がったり、全身に広がったりします。「危険なもの」という認識がないことの多い毛染め剤ですが、使用の際は十分に注意する必要があります。

◆ヘアカラーリング剤は大きく2つに分類される

髪を染めるための製品には、医薬部外品に分類される「染毛剤」と、化粧品に分類される「染毛料」に分けられます。染毛剤は一般にヘアカラー、ヘアダイ、白髪染め、おしゃれ染などと呼ばれています。染毛料は一般にヘアマニキュア、酸性カラー、カラーリンス、カラートリートメントと呼ばれています。

色の変化がどれくらい持続するかという「色持ち」については、染毛剤の方が長持ちします。しかし、染毛剤は、次にふれるアレルギー性接触皮膚炎を起こしやすく、中でも酸化染毛剤というタイプにその傾向が強いことが分かっています。

酸化染毛剤は毛髪に含まれるメラニン色素を分解(脱色)しながら染めるタイプで、明るい色にも暗い色にも染められるため最も広く使用されています。主成分となる酸化染料には、アレルギーの原因になりやすいアレルゲンとしてのパラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、トルエン-2、5-ジアミン等が含まれています。

◆毛染めによって引き起こされる症状は?

毛染めによる皮膚トラブルで多いのが、かゆみ、痛み、水泡、かぶれ、腫れなどを伴う「接触皮膚炎」です。接触皮膚炎には非アレルギー性と、アレルギー性の2つのタイプがあります。

非アレルギー性接触皮膚炎では、毛染め剤に含まれる成分が「刺激物質」となり、刺激の度を超した強さが症状を引き起こします(一次刺激性接触皮膚炎)。これに対してアレルギー性接触皮膚炎では、毛染め剤に含まれる成分が「アレルゲン」となり、アレルギー反応を引き起こします。

いずれの場合でも、原因物質(刺激物質またはアレルゲン)との接触を絶つこと、保湿すること、物理的な刺激を加えないことが大切です。

◆パッチテストを実施しよう

ヘアカラーリング剤を使用する際は、事前にパッチテストによってアレルギー反応が出ないかどうかを確かめることが大切です。パッチテストは、使用予定薬剤をしみ込ませたもの(布や紙)を腕の内側の軟らかいところに貼り付け、異常が出ないか確認するものです。

アレルギー性接触皮膚炎は翌日以降に反応が現れることもあります。そのため、薬剤を塗ってから30分後に加え、48時間後にも観察する必要があります。また、薬剤を塗ったところを絆創膏等で覆ってはいけません。過度のアレルギー反応を引き起こす危険性があるからです。

便利なヘアカラーですが、自分の体質に合っていないものを使用すると、つらい症状を引き起こす危険があります。ヘアカラーに危険が伴うことを知り、パッチテストによって異常が生じないかどうかを確認してから使用することが大切です。

<参考>
毛染めによる皮膚障害(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/csic/action/index5.html

毛染めで皮膚トラブル相次ぐ 定期的なパッチテストが必要
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151023-00000478-fnn-soci

監修:坂本 忍(医学博士)

食物アレルギー対策 「周囲の大人が気を配って」

卵や小麦、乳製品といった特定の食品を食べることで発作が起き、命を落とすこともある食物アレルギー。昨年末、東京で小学5年女児が給食後に意識障害を伴うアナフィラキシーショックで死亡した事故を受け、岡山県内の学校でも献立や成分表を綿密に確認するなど対応が進む。アレルギーに詳しい岡山医療センター(岡山市北区田益)小児科の金谷誠久医師(57)に対策のポイントを聞いた。

 ―食物アレルギーとは。

 そばやピーナツなど特定の食材を口にすると、急激な血圧低下に加え、皮膚のかゆみをもたらす物質「ヒスタミン」が体内で増加。じんましんや吐き気、息苦しさなどの症状が出る。最悪の場合、肺や肝臓など複数の臓器が機能不全に陥るショック状態となり、死亡することもある。

 ―アレルギー体質を知る方法や治療法は。

 医療機関で血液を調べれば分かるが、母親の免疫に守られている生後6カ月までは正確なデータが得られず、注意が必要だ。これといった治療法がなく完治は難しいが、医師の指導に基づき、薬の服用と合わせて少量の原因食材を数年間食べ続ければ、耐性を高められる。

 ―発作時はどのように対処すべきか。

 「エピペン」というアドレナリンの自己注射薬の投与が有効だ。心臓からの血液量を増やして血管を収縮させることで、急激な血圧の低下が防げる。使用は早ければ早いほど効果が高いが、発症後30分以内に投与しなければならない。ただ、保険適用でも1本約1万円と高額な上、使用期限は約1カ月と短い。経済的な負担の軽減に向け、行政は補助を検討すべきだ。

 ―東京での事故は、女児にアレルギーのある乳製品入り食材を担任が誤って渡したことが原因とされる。同種事故を防ぐ対策は。調理された食べ物に原因食材が含まれているかどうか、子どもには判別できない。周囲の大人が気を配る必要がある。原因食材を取り除く対策はもちろんだが、おかわりなどの際も注意を怠ってはならない。

女児はエピペンを持っていたが、使用が遅れ、命を落としてしまった。患者と長い時間接する人たちに、緊急時の処置法を周知しておくことも重要だ。

 【アナフィラキシー】 じんましんや嘔吐(おうと)、
息苦しさ、めまいなど短時間で激しい症状が現れるアレルギー反応。血圧低下、意識障害など重篤な全身症状を呈する場合はアナフィラキシーショックと呼ばれ、命に危険が及ぶとされる。食物のほかハチの毒などで発症することもある。岡山県教委の調査によると、県内の公立小中高校で発症の恐れのある児童生徒は3月時点で119人に上った。

全身発熱にじんましんも……蚊アレルギーとは?

蚊に刺されただけなのに、重い症状を引き起こすことがあるのを知っていますか? ここでは「蚊アレルギー」について説明したいと思います。

■実は知らない蚊のあれこれ

 まずは普通あまり知られていない蚊の生態について、軽く解説しましょう。蚊は、昆虫でハエ目カ科に属します。オス・メスともに長い口吻を持ち、上唇で食物を吸収し、下面に唾液を送り込む管を持っています。蚊の主食は花のミツや草の汁などで、動物の血ではありません。

血を吸うのはメスだけで、産卵期に吸血します。卵を発達させるために必要なタンパク質を得るために、動物の血液が必要なのです。体温や二酸化炭素などで動物を探し、血を吸うために寄ってきます。

 蚊が血を吸う時に、こちらに送り込んでくる唾液は、刺した時に痛みを感じさせない麻酔作用や、血が空気にふれて固まるのを防ぐ作用などを持ついろいろな成分が含まれています。この唾液腺物質が、刺された後の腫れや痒みの原因です。

■蚊アレルギーとは?

 蚊に刺された場所では、注入された唾液腺物質に対するアレルギー反応がおこります。反応の強さによって症状が異なり、個人差が大きいのが特徴です。

 このアレルギー反応には2種類あります。

即時型反応:刺された直後からかゆみ、腫れ、発赤が出現
遅延型反応:刺された翌日以降に発赤、腫れ、発疹、水疱などが出現

 特に乳幼児は体温が高いので、蚊に狙われやすく、強い遅延型反応を起こすことが多いと言われています。時に重症化する蚊アレルギーがあり、蚊に刺された部分の発赤や腫れだけでなく、全身に発熱、蕁麻疹などの全身症状が出てきます。

■重症化する原因の1つ「EBウイルス」

 EBウイルスとは、水疱瘡などのウイルスや、ヘルペスウイルスの仲間です。発見者の名前にちなんで、この名前がつけられています。EBウイルスは、1歳で12.5%、2歳で60%、20歳までに90%以上が感染すると言われています。唾液を介して人にうつります。

 蚊刺過敏症とは、蚊に刺された後の部分の症状が強く、水泡(みずぶくれ)、血泡(ちまめのようなもの)から壊死・潰瘍(皮膚がただれ、じくじくし、へこむ)まで起こり、発熱などの症状を伴うこともあります。

原因としては蚊の唾液腺に対する免疫とEBウイルスに対する免疫反応が関与しています。発熱だけでなく、リンパ節が腫れたり、下痢などがみられることもあります。

 蚊刺過敏症の場合、EBウイルスが持続的に感染していること(慢性活動性EBウイルス感染症)があるので、様々な合併症を起こします。

悪性リンパ腫や血球貪食症候群(白血球、赤血球、血小板をマクロファージなどの白血球が食べてしまう病気)などを起こすと大変です。蚊アレルギーがひどい場合は、EBウイルスの検査をしておいた方がいいかもしれません。

■油断大敵! 蚊が関与する病気

 蚊は、多くの病原体を運びます。日本脳炎、野口先生が亡くなられた黄熱病、デング熱、マラリア、フィラリア、西ナイルウィルス熱症などたくさんあります。参考までに、以下でご紹介しましょう。

□マラリア

 ハマダラカが媒介する伝染病です。マラリアは原虫で、感染すると肝臓で増え、赤血球に侵入します。2週間程度の潜伏期間で、3日ごとや4日ごとに高熱を繰り返します。抗原虫薬で使用しますが、最近は薬に効きにくいマラリアもあり、予防が大切です。

□日本脳炎

 コガタアカイエカが媒介する伝染病です。ブタやサギなどの野鳥でウイルスが増えます。蚊に刺されてから6~16日潜伏期間を経て、約300人に1人が脳炎になってしまうと、発熱や頭痛、吐き気、嘔吐が起こり、けいれんや意識障害を起こし、後遺症を残したり、死に至る病気です。予防接種が有効です。

□西ナイル熱

 アメリカで大問題になっています。蚊に刺されてから3~15日の潜伏期間を経て、3~6日間程度の発熱、頭痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振などの症状が見られ、たいていは1週間程度で回復します。高齢者や体力の無い人では、高熱や、麻痺、昏睡などの髄膜炎、脳炎を起こし、死に至ることもあります。

■アレルギーや様々な病気を起こす蚊の対策

□蚊アレルギーの治療

 まずは、刺された部分に抗ヒスタミン薬の外用薬を使用します。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服を行うことがあります。蚊に刺された部分は、「じんましん」を起こしていますので、「じんましん」の治療に似ています。ただ、遅延型免疫反応が強い場合はステロイドを使用します。

□日常生活での注意点

・できるだけかきむしらないよう、爪を伸ばさない
・刺された部分を冷やす

□何よりも予防が重要!

・蚊取り線香や防虫剤を適切に利用する
・外出時は虫よけスプレーを使用し、蚊に刺されないようにする
・蚊の発生を防ぐために、水溜りなどを減らす
・屋内への、蚊の侵入を防ぐ。窓を開けない、網戸にする、網戸に虫よけスプレーをしておくなど

 夏のこの時期は、蚊には特に注意が必要です。蚊アレルギーがひどい時には医療機関に相談した方がいいでしょう。

果物アレルギー増加中? 花粉症の方は気をつけて

秋はフルーツもおいしい季節。ビタミン補給のために食べる人も多いでしょう。その一方、果物でアレルギーになる人が最近増えています。

国立病院機構・相模原病院が行った09~11年の調査で、成人の食物アレルギー原因は、リンゴなどの果物・野菜が48.4%で最多に。

また、2011年に
行われた厚生労働省研究班による食物アレルギーの全国調査では、全アレルギー患者の中で、果物アレルギーを新たに発症した患者は4~6歳で16.5%と、第1位です。7~19歳では甲殻類についで2番目に多いことがわかりました。

花粉症との深い関係も指摘されており、中にはアナフィラキシー・ショックを引き起こし、深刻な事態を引き起こす場合もあります。
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◆連鎖的に起こる果物アレルギー

ある日、普通にリンゴを食べていたら、口の中や喉の奥がかゆくなった。あまり気にしないでいたら、桃やさくらんぼでも同じような症状が……。

今、このように果物で「連鎖的に」アレルギーが発症するケースが増えているのです。実は、果物や野菜には、花粉と似た構造のアレルゲンを持つものが少なくないのです。

例えば、シラカバやハンノキの花粉にアレルギー反応を持つ人は、似たアレルゲンを持つリンゴや桃、さくらんぼ、キウイフルーツ、マンゴーなどにアレルギー反応を起こす可能性があります。

同じように、ブタクサの花粉症の人はメロンやスイカ、バナナなどに、イネの花粉症の人は、オレンジやトマトなどに反応することが考えられます。果物だけでなく、セロリやパセリなど一部の野菜でも同様のアレルギーになる場合があります。
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◆命に関わるリスクも

一般に果物アレルギーは「口腔(こうくう)アレルギー症候群」と呼ばれています。口の中だけで反応が起き、果物を食べると唇・舌・口の中が腫れたり、かゆくなったりする症状です。症状は軽い場合が多いですが、中には全身に反応が出て、ぜんそくの発作や重篤なアナフィラキシー・ショックになるケースもあります。

アナフィラキシー・ショックは命にも関わりますので、果物を食べて口の中などに違和感を感じる人は、病院で血液検査や皮膚のアレルギー反応テストを受けるようにしましょう。

口腔アレルギー症候群はここ20年ほどで増えた比較的最近の病気のため、未解明のことも多く、効果的な予防法や治療法は確立していません。対策としては、原因となる果物などの摂取をできる限り避けること、また違和感を感じたときはすぐに吐き出してうがいをするようにしましょう。

ただ果物のアレルゲンは熱に弱いため、多くの場合は加熱処理することで食べられるようになります。ジャムやパイにしたり、ジュースは一度加熱するなどの対策が効果的です。

<監修>
坂本 忍(医学博士 公認スポーツドクター(日本オリンピック委員会強化スタッフ))

幼少時のピーナツ摂取で、アレルギー発症率の8割低減につながる可能性

米国小児科学会(AAP)の公式査読ジャーナルである「PEDIATRICS」のオンライン版にこのほど、「早期のピーナツ摂取は、ピーナツアレルギーリスクから子どもを守る」という合意声明が掲載された。

複数の専門家によるこの声明は、今年の「New England Journal of Medicine」に掲載された、イギリスの King's College Londonの小児アレルギー部門に属するGideon Lack氏が小児とピーナツアレルギーについてまとめた論文に関するもの。

ピーナツアレルギーを含むアレルギーは世界中で増え続けており、Lack氏は「ピーナツアレルギーの発症リスクが高い子どもに早期のうちにピーナツ(製品)を食べさせることは、ピーナツアレルギー保護の観点からよい」としている。

同氏は、ピーナツアレルギーの発症リスクが高い生後4~11カ月の乳児640人で研究を実施。640人の乳児を、ピーナツを6g以上含む食品を週3回以上摂取する群(摂取群)と5歳までピーナツ製品を摂取しない群(非摂取群)に分けた。ピーナツ含有製品には、ピーナツバターやピーナツスープなどを使用した。

研究の結果、5歳時点における摂取群のピーナツアレルギーの有病率は約3%だったが、非摂取群では17%を上回っていた。摂取群の有病率が非摂取群の約6分の1だったことを受け、同氏は「これはピーナツアレルギーのリスクを80%以上も低減させている」と話している。

また、ピーナツアレルギーのリスクがある小児には生後4カ月時に皮膚テストを行い、問題がないようならば、5歳になるまでにピーナツ製品を定期的に与えるべきと推奨している。

ただ、論文の共著者であるRebecca Gruchalla氏は、「ピーナツリスクが高い乳児にピーナツ製品を与えるのは、小児科医とアレルギーの専門家との相談が必要だ」と注意している。

喘息外来患者は2倍に!? 秋はアレルギーの時期だった

その症状、風邪と侮るなかれ。もしかしたら秋のアレルギーかも?

秋のはじまりに微熱や鼻水、くしゃみが出たりすると冷えてきて風邪をひいたかなと考えますが、2週間以上症状が続いたらアレルギーの可能性が!風邪なら、1週間程度でよくなるので長引く症状には要注意。じつは、秋もアレルギー症状がでやすい季節なのです。

秋に多い、3大アレルギー

1:秋の花粉
春のスギによる花粉症は有名ですが、秋にもブタクサやヨモギ、イネ科の雑草などの花粉が増加し、それにアレルギー反応を示す人もいます。また春よりも量は、はるかに少ないのですが、スギ花粉が飛散することがあります。

ただ春とはことなり目のかゆみは、ほぼ出ません。

対策は花粉のある場所に近づかないことです。あるいはマスクや眼鏡で防御しましょう。ちなみに、ブタクサやヨモギは、土手、河川敷、野山などの場所に、イネ科の雑草はゴルフ場や公園などに自生しています。

2:ハウスダスト
夏場に繁殖したダニ、ゴキブリ、蛾、ユスリカなどの死骸の他、乾燥のために発生するペットのフケや抜け毛がホコリとなって空気中に舞ったものを吸い込むと、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の原因になることがあります。

予防のためにはこまめな掃除が不可欠。1畳当たり30秒以上の掃除機がけを週に2回以上は行いましょう。フローリングの場合は拭き掃除が効果的です。また、ダニの温床となりやすい布団にもしっかり掃除機をかけてください。

最近では性能のいい空気清浄機が販売されていますので、こういったものを利用するのもよいでしょう。

3:気候
秋は寒暖の差が大きく、晴れたり雨が降ったりと天気も変わりやすくなり、空気が乾燥し始めます。こういった秋特有の天候も喘息を悪化させる原因です。また,台風などの低気圧や冷たい空気も刺激になります。

10月には喘息の外来患者が通常の約2倍に増えるともいわれるほどです。

食中毒の正しい対処法。もしも食中毒になったら…

年間を通して、感染の危険がある食中毒。暑い季節はもっとも注意が必要です。そして、もし感染をしてしまったら、適切な対処をすることが重症化を防ぐポイントになります。そこで今回は、食中毒になってしまったときの正し対処法について医師に教えていただきました。

病院の受診目安は……

食中毒になったとしても、1日数回以内の泥から水のような下痢(便の色は赤や黒色ではない)で、腹痛も軽度であれば、水分補給と市販の整腸薬でようすを見ても問題ない場合もあります。いっぽう、次の症状は早めに病院にかかるようにしましょう。

<危険な症状>
・便の回数が1日10回以上
・便の色が赤や黒色
・熱がある、
・腹痛がひどい

重度の食中毒の治療法

上記のケースでは、便の細菌培養検査と抗生剤による治療が必要になります。水分補給をする場合は下痢のために血液中のカリウムが失われますので、スポーツ飲料が良いですが、手元にない時には水分とバナナなどの果物でカリウムを補給するだけでも効果を感じられるでしょう。食事は症状が落ち着くまではお粥などの消化が良いものがおすすめです。

食中毒の対処法

食中毒の原因は、細菌やウイルスへの感染がほとんどで、それぞれの対処法は次の通り。

<細菌>
軽症であれば、市販の整腸薬でようすを見ることもできますが、便の細菌培養検査を受けて、原因菌が何かがわかった方が適切な抗生剤による治療で速やかによくなります。

<ウイルス>
特別な治療はなく、3~4日間は脱水予防のために水分補給をして、市販の整腸薬で様子を見ることもできます。しかし症状だけからは原因が細菌かウイルスかは判別することができないので、安全のためには病院に行った方が良いでしょう。

細菌、ウイルスの潜伏期間は?

食中毒は生ものなどの疑わしき食べ物を食べてから数時間で症状が起きますが、細菌の種類によっては症状が起きるまでに4~5日程度かかることがあります。特に細菌によって起こる食中毒の中には適切な治療を早めに開始しないと重症化して入院しなければならないことがありますので、心当たりがある時には早めに病院にかかった方が良いでしょう。特に幼児や高齢者に関連する仕事や食品関係の仕事に従事している場合は必ず病院に行って細菌培養検査が必要です。

医師からのアドバイス
細菌によって起こる食中毒は抗生剤を飲めば治りますが、細菌の種類によっては治った後で合併症を起こすものや慢性化するものがありますので、自己判断で通院を中止せずに、便の細菌培養検査で原因菌が消えたことを証明する必要があります。

じんましん、湿疹…「大人のアレルギー」に勝つ秘策は

「全身にじんましんと湿疹ができて、つらいです。子どものころはなんともなかったのに……」(30半ばの女性)。聞けば、周りのアラフォー女性の間でも似たような症状が頻発。これは珍しいことではなく、最近は、大人になってからアレルギーを発症する女性が増えています。

「原因として、もっとも考えられるのはストレス。ただでさえ、女性は40歳を境に自律神経の働きが乱れ、血流が悪化します。

それに合わせて腸内環境も衰えますが、腸内環境が悪いと、アレルギーのもとになる『IgE抗体』が血液中に増える傾向があるのです。そこに、さらにストレスが加わることで、発症の引き金となるのです」

そう話すのは、「診察5年待ち」といわれる順天堂大学教授・小林弘幸先生。ストレスは副交感神経の働きを衰えさせ、血液の質を悪くし、免疫力そのものを下げてしまう。

子どものころにアトピー体質だったわけでもないのに、疲れたときにじんましんや湿疹が出るのはその代表例。こうした発疹は、「昨日は脚、今日は腕」と、血流が滞っている部位に起きやすいという。

「アレルギー体質は遺伝も関係していますので、簡単に克服できるものではありません。

しかし、ハウスダストやダニなど、アレルギーの原因になりうるものは遠ざけ、部屋は清潔に保ちましょう。また、ストレスから上手に逃げることも自己防衛のひとつ。規則正しい生活も、免疫力を高めるポイントです」(小林先生・以下同)

さらに体質の改善をはかるなら、腸内環境の改善を。腸に刺激を与えることで、アレルギーのもとになるIgE抗体の生産を抑え、血流もよくしていこう。

「腸の環境をよくするには『ひねり』が大切なので、最近はやりのフラダンスやヨガなどを習うのもいいですね。

ストレス解消にもなって一石二鳥です。両足を開いて立ち、腰に両手を当て、腰を左右にひねる、腰を左右に振る――これだけでも効果的なので、習い事に行く余裕がない方も、気分転換にお試しください」


意外な盲点! 帰省先で悩まされる「アレルギー」は“客用○○”のせいだった

■帰省先での体調不良……なぜ?

 お盆や年末年始の帰省先で、体調を崩す。子どもにしても親にしてもあまり「そうなりたくない」シチュエーションですよね。でも、「帰省するたびに子どもの具合が悪くなる」ということが繰り返されると、帰省先にも迷惑をかけることですし、いろいろ理由を考えてしまいます。

 長い帰省の行程で疲れてしまったから? 自宅と違う地方の気候で、風邪を引いた? マンションと戸建ての違い? うちの子の身体が弱過ぎるせい?

 でも、一年以上元気に過ごして来たのに、帰省先で突然喘息の発作が起こってしまったり、花粉の季節でもないのに親の方までいきなり一晩中クシャミ、鼻水、鼻づまりに見舞われたりすることがあって、やっと「ハッ」と気づくわけです。

 ……これ、アレルギー反応なんじゃない? とすると、あやしいのは、もしかすると、この……お布団?

■「客用○○」の盲点

 多くの帰省先(実家)では、子や孫を指折り数えて待っていてくれています。何を食べさせよう、どこに連れて行こう。もちろん、泊める部屋の掃除や、布団干しなどの準備も当然のことでしょう。

 そうした、心づくしの「片付いていて綺麗な部屋、お客さんしか使っていない新しめの布団、洗濯済みのシーツ」などで出迎えてくれるわけですが、実はお客さん用だからこそ、そこにダニがたくさん(というのは、天文学的数ということです)潜んでいたり、あるいはかつて潜んでいたその死骸がたくさん残っていたり、その死骸がばらばらになったホコリが付着していたりする……でも、それが分からないのです。

 「ダニ(カビ)のいる部屋」というのは、必ずしも見た目「汚い部屋」ではありません。「ダニのいる布団」というのも、必ずしも見た目「不潔な布団」では、ありません。

 ダニという虫は、基本的にどんな家にもいます。0.5ミリに満たず、乳白色でホコリとも見分けにくいので、私たちにはなかなか認識しづらいのですが、どんなところにもいます。

 どこかしら潜入できる場所(布団や畳、絨毯のほかカーテン、エアコンフィルター、普通の衣類タンスなども)があり、夏場の気候くらいの程よい気温と湿度があり、エサ(カビやホコリ、食べ物カスなど)があるといった条件が整いさえすれば、爆発的に繁殖もします。

 ですから、「普段は人のいない客間」「押入の中の客用布団」などは、まさに絶好の繁殖場所と言えます。つまり、「客用○○」を揃えた心づくしの準備が、裏目に出てしまいやすいということなのです。

 「帰省」は実際のところ、行く方も迎える方も大変で、それにこれ以上の対応を求めたり、自分でも策を講じるというのはなかなか難儀なことだと思います。

でも、年に数回しか会えない機会を大事にしたいと思われるならば、ここはお互いのため、ざっくばらんに事情を説明し、理解し受け入れたうえで、できる限りの対策を講じ、安心して過ごせる「帰省」環境を整えたいところです。

■帰省する側にできること

・自家用車での帰省ならば、「子ども用布団」だけでも持参する(比較的かさばらない。子どもの環境優先)

・肌に直接触れるシーツ、上掛けだけでも持参する(触れたり吸い込んだりするリスクを減らす)

・ダニ用掃除機を持参する(帰省したらすぐ、布団を念入りに掃除しておく)

・レンタル布団を手配して、そこで寝る(帰省先の親に、布団干しを頼めない場合)

・帰省先でも率先して掃除機がけなど行う(帰省先の掃除機が古過ぎる機種の場合、却ってダニを撒いてしまうこともあるので注意)

・マスクをして寝る(アレルゲンの吸入を避けるため)

■帰省を受け入れる側にできること

・帰省1カ月ほど前のうちに、帰省中寝泊まりさせる部屋にダニ駆除燻煙剤をかけ、よく換気しておく(子どもが化学物質に過敏な場合は逆効果になることもあるので、確認して)

・帰省中寝泊まりさせる部屋のエアコンのフィルター清掃をし、空運転して内部のカビやホコリもなるべく飛ばしておく

・帰省中寝泊まりさせる部屋の換気乾燥、掃除機がけを数日前から念入りに行っておく(カビ胞子の浮遊や、ハウスダスト数を可能な限り減らしておく)

・客用布団は帰省の一週間程度前から、天日干し(布団乾燥機がけ)と掃除機がけを複数回行っておく(ダニは死んでいてもアレルゲンとして強力なので、掃除機で吸っておかないと干すだけでは対応不十分)

・客用布団は、布団クリーニングに出しておく(ダニごと洗浄乾燥できるので、これが一番安心。コストはかかる)

・枕なども天日干し乾燥、シーツ等は帰省直前に洗濯乾燥しておく(一年前に洗濯したようなシーツにはダニが付いていることもあるので、直前に洗っておいた方が安心)

 また、万が一アレルギー症状が出てしまったときのために、アレルギー用の薬を持参したり、最寄りの医療機関を調べておくと安心です。

アレルギーの原因にも…すぐに変えたい“勘違い”な健康習慣

毎朝、コップ一杯の水を飲むといい――。常識だと思っていた健康習慣が体の不調の原因だったということがある。

べ3000人の体質改善に携わった「クリアバランス」代表で「健康な人はコレを選んでいる」(ワニブックス刊)の長尾羊生乎氏は、西洋医学、東洋医学の両面からアレルギー・過敏症などの解消法を研究してきた。“勘違い”健康習慣が、アレルギーを悪化させたり、発症の原因になると警告する。

■人間に必要な菌も殺す除菌スプレー

「ソファや衣服の布用除菌スプレーは重宝しますよね。ウイルスやばい菌から身を守ってくれますが、殺菌作用のある成分は化学物質が原料であることが多いです。

一方、本来、人の皮膚にいる菌は感染から身を守り、潤いを閉じ込めてくれるわけです。使い過ぎはお勧めできません。消毒液も同じ。化学物質で手を洗っているようなもので、肌荒れや目が痛くなる人は少なくありません」

 健常者も、頭には入れておくべきだ。

■朝の「コップ一杯の水」はよくない

「人は寝ている間に汗をかくため、起きがけの水分補給は大事です。問題はその温度で、内臓の温度より低い、冷えた水はもちろん、水道の常温水もお勧めできません。体温は平均36.5度前後です。

常温水は20度程度。スポーツの後ならまだしも、起床直後の温かい体に体温より低い温度の水を入れると一時的に臓器の温度が下がる。毎日繰り返すと低体温になります。体温が1度下がると、免疫力は30%低下します。

免疫力が低ければ、臓器の働きが鈍り、35度台ががん細胞が一番増殖する体温といわれています。低体温の人はがんになりやすいのです。できれば、60度、70度のお湯を飲みたいですね」

 健康のためには熱いくらいの温度の方がいいのだ。

■冷たいお茶の健康効果は疑問

 猛暑の季節、誰もが冷えた水やお茶が手離せない。しかし――。

「緑茶に含まれるカフェインは胃を荒らし、体を冷やします。冷たいお茶は内臓機能を低下させます。特に胃腸が弱い人は控えましょう。カフェインの入っていない麦茶などを温めて飲むのがいいでしょう」。体を冷やさないのが大事だ。

■焼き肉とビールの組み合わせは相性が悪い

「霜降りやカルビなど脂肪分が多いお肉を食べると胃腸に脂の膜ができます。そこに冷えたビールを飲んだらどうなるか。脂肪分が体の中で固まります。

すると、老廃物を排泄するための繊毛運動ができず、胃腸の動きを妨げてしまう可能性が。実は、ビールに体を冷やす夏野菜の枝豆や冷ややっこも相性がよくありません。もちろん、体が温まっていれば固まりにくくなりますから、ビールを飲む前に温スープを飲むことをおすすめします」

 ユッケ、野菜サラダ、刺し身など“生モノ”は体を冷やす。同様に注意したい。

■発熱・保温下着は自律神経を乱す

「人には体温調節機能が備わっています。暑いときは体内の熱を外に放ち、寒い冬は体を震えさせることで体を温めます。発熱・保温下着を日常で使うことで、体機能の反応が鈍くなります。

冷え性や自律神経が乱れることも。この手の下着は機能性を優先するため化学繊維を原料に作られていることが多い。かぶれの原因にもなります」

 アレルギーや過敏症の子供がいる家庭は覚えておこう。

何故起こる?見た目以上に痒くてツラいヒフのアレルギー

ヒフのアレルギーは、大きく分けて2種類

ヒフのアレルギーは、見た目以上に痒くて辛いもの。そんなヒフのアレルギーは、大きく分けて2種類あります。それが、「接触性皮膚炎」と「蕁麻疹」。これらの特徴を、見ていきましょう。

いわゆる“かぶれ”と言われる「接触性皮膚炎」

[原因]
アレルギーの原因となる「アレルゲン」に直接触れることで引き起こされ、症状は原因物質(アレルゲン)に触れた部分にだけ局所的にあらわれるのが特徴です。

[対処法]
原因となるアレルゲンとの接触を避ければ、簡単に予防でき、かつ多くの場合症状も次第によくなってきます。

原因不明の場合も多い「蕁麻疹」

原因]
寒冷刺激や直射日光、薬、食物アレルギー、免疫機能不全などによって起こることもありますが、半数近くは「特発性」といって原因不明といわれています。

[対処法]
蕁麻疹が発生した、数時間前~数分前に遡って、いつもと違うものを食べたり、何か刺激を受けることはなかったか、あるいは何か特別なことをしていなかったかを思い出して下さい。

そして、もし何か思い当たる節があれば、今後はそれらを避けるようにしましょう。
どちらのアレルギーにしても、症状がなかなか軽快しない時はすぐにヒフ科へ行き、必要な検査や薬をもらうようにしましょう。

ピーナツアレルギー防ぐなら「生後4カ月から食べるべき」

子供のピーナツアレルギーはやっかいな問題だが、今年2月に発表された研究結果は、ピーナツをいち早く食べ始めるとピーナツアレルギーになる危険性が下がるという、専門家にとっても「驚き事実」だった。

これを受けて、日本アレルギー学会を含む世界のアレルギー関連学会はピーナツアレルギーに関する共同声明を発表した。

生後4~11カ月という早い時期にピーナツを食べ始めることを推奨するなど、ピーナツアレルギーの予防に関する手引きが紹介されている。

◆早く食べ始めた子供でリスク8割減
日本アレルギー学会などによると、ピーナツアレルギーは先進国の子供の1~3%で見られるほか、米国ではこの10~15年で3倍に増えている。また、欧米に比べて少なかったアジアやアフリカでも目立つようになってきたという。

そんな中で発表された米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」(2015;372:803-813)掲載の研究結果は、専門家にとっても衝撃的な内容だったとされている。

この研究は、ピーナツアレルギーになる危険性が高いながら、まだ発症していない生後4~11カ月の乳児640人を、ピーナツを早い時期に食べ始めるグループと遅い時期に食べ始めるグループに分け、発症リスクを比べたもの。結果は、早い時期に食べ始めたグループで、5歳の時点でピーナツアレルギーになる危険度が80%も低かった。

今回の共同声明では、この研究結果や従来の治療ガイドライン(指針)を基に、以下のような暫定的な手引きを示している。

・ピーナツアレルギーが多い国では、乳児期の早期(4~11カ月)にピーナツを含む食品の摂取を開始することを推奨すべき
・乳児期の早期に別のアレルギーを発症している場合、ピーナツの早期摂取を始めるには、アレルギー検査など専門医らの診断が役立つかもしれない。家族と医師が検討することも適切だろう

◆「日本でも積極的に行うかどうかは今後の研究課題」
日本アレルギー学会は、NEJM誌に掲載された研究結果について「驚きの事実」と紹介。今回の共同声明の背景として、この発見に基づき、医療関係者のピーナツ早期導入の利益について理解を深めてほしいと説明した。

なお、同学会は注釈として「わが国において離乳早期にピーナツを積極的に摂取すべきかどうかは、これからの研究課題」「早期摂取で予防効果が得られたのは、ピーナツアレルギーを発症していない乳児に限られることに留意すべき。

すでにピーナツアレルギーを発症している子供のピーナツ摂取は極めて危険な行為であることは言うまでもない」との見解を示している。

通年性のアレルギー性鼻炎…ダニエキス錠剤 根治期待


飲み薬が保険適用に

 くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が表れるアレルギー性鼻炎。スギ花粉の飛散時期に急増する花粉症もその一つだが、季節を問わずに発症する「通年性アレルギー性鼻炎」に悩まされる人も少なくない。

今年、根治が期待できる飲み薬が保険適用され、治療の選択肢の広がりに期待が寄せられている。
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原因物質は花粉やハウスダストなど

 アレルギー性鼻炎は、異物から人体を守る免疫が過剰に反応し、鼻などに炎症が起きる病気だ。引き金となる原因物質はアレルゲンと呼ばれ、花粉やハウスダストなどがある。

 アレルゲンを吸い込むと、血液中の免疫細胞が、アレルゲンを排除するためのたんぱく質「抗体」を作る。抗体が、鼻などの粘膜上にある「肥満細胞」に付着。

アレルゲンとの接触を繰り返すうちに、抗体が付着した肥満細胞が増え、炎症などを引き起こす物質を放出。また、アレルゲンのさらなる侵入を防ごうと、くしゃみや鼻水などを発症する。

 一方、花粉などの飛散時期に関わらないアレルゲンで起こるものは、通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれる。全国調査では、通年性アレルギー性鼻炎を患う人の割合は、1998年の18・7%から2008年には23・4%へと増えた。年代別では、10歳代以上の各年代でいずれも増加した。
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対処法…小まめに部屋を掃除、ペットを寝室に入れないなど

 通年性アレルギー性鼻炎のアレルゲンは、ほこりやダニ、ペットの毛などがある。対処法としては、鼻に入るアレルゲン量を減らすため、小まめに部屋を掃除し、ペットを寝室に入れないことなどが大切だ。

 治療は、鼻の細胞の炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の点鼻薬、アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬などが中心だ。強い鼻づまりには、鼻の穴の粘膜表面をレーザーで焼く手術もある。

ただし、いずれも、症状を抑えるだけの対症療法だ。

 ハウスダストのエキスを少しずつ注射して体を慣れさせ、アレルギー反応を抑える治療もあるが、少なくとも2年以上通院する必要がある。

 これに対して、飲み薬である「アシテアダニ舌下錠」が今年5月、保険適用された。日本医大(東京)耳鼻咽喉科教授の大久保公裕さんによると、この薬は、通年性アレルギー性鼻炎の原因の9割を占めるとされるダニに着目して開発された。

ダニから抽出したエキスを成分とし、この薬を服用して体に慣れさせ、改善効果を狙う。12歳以上が対象で、舌の下に錠剤を含み、溶かしてのみ込む。注射薬に比べ、自宅での治療が可能で患者の負担は軽い。

 効果を確かめる臨床試験では、アシテアダニ錠と偽薬をそれぞれ約300人に44~52週投与した結果、アシテアダニ錠を投与した人たちの方が症状が改善した。

 ただし、症状の改善や根治につなげるには2年以上かかると考えられる。また、薬による激しいアレルギー反応で呼吸困難などのショック症状が起きる恐れがあり、厚生労働省は、事前に講習を受けて十分な知識や経験を持つ医師が適切に使用するよう求めている。

 大久保さんは「この薬は根本治療につながる可能性があり、特に若年の患者に薦めたい」と話している。

子供の食物アレルギー 6歳からの「食物経口免疫療法」で治す

子供の食物アレルギーの治療で注目されているのが「食物経口免疫療法」だ。うまくいけば、食物アレルギーと手を切れるかもしれない。しかし、間違った考え、やり方も横行している。昭和大学医学部小児科学講座・今井孝成講師に聞いた。

 食物経口免疫療法について「食物アレルギーは、食べて治す」などと表現される場合がしばしばある。

師の口から発せられる言葉に、親たちは信じて飛びつく。しかし、食物経口免疫療法は安易にやってはいけない。重篤なアレルギー症状が誘発されるかもしれないのだ。

 まずは、食物アレルギーの診断方法から説明しよう。食物アレルギーは、原因となる疑いのある食物を少量ずつ食べ、アレルギー反応が出るかどうかを見る「食物経口負荷試験」で確認する。

「血液検査や皮膚検査で食物アレルギーを診断できる」と思っている人が、医師も含めて少なからずいるが、これらの検査は診断の可能性を探るだけで、最終的な診断には結びつかない。

「血液検査などで陽性と出ても、食物経口負荷試験で陰性(食物アレルギーではない)と出ることは珍しくありません」

 子供の食物アレルギーの4分の3は、鶏卵、牛乳、小麦が原因食物で、これらは3歳までに5割、6歳までに9割が治療なしで治る。問題は、6歳までに治らなかった1割だ。

その後の選択肢は2通り。原因食物を一生完全に食べないか(完全除去)、「食物経口免疫療法」を受けるかだ。

 食物経口免疫療法は、(1)食物経口負荷試験で食物アレルギーと診断された原因食物を、(2)ごく少量から食べ始め、量を段階的に増減させ、目標量を食べられるようにする治療法だ。

 (1)で、原因食物をどれくらい食べると食物アレルギーが出るかがわかる。同じ牛乳アレルギーでも、100㏄までOKの子供もいれば、1㏄でNGの子供もいる。(1)と(2)が両方必要であることを、しっかり把握したい。

■間違った方法も横行

 決められた期間、決められた量を、決められた食べ方で毎日摂取し、アレルギー症状が起こらなければ量を増やす。

最終目標は、昭和大学では牛乳なら200㏄。それを3カ月間続け、無症状なら、今度は14日間完全除去に戻し、15日目に病院で200㏄摂取。アレルギー症状が起こらなければ、治療終了だ。

「3カ月間無症状が続いても、14日間抜けば、15日目に取った時、5割はアレルギー症状を起こします」

 すると“200㏄(牛乳の場合)を3カ月間”からやり直す。多くても4~5回繰り返せば、最終目標量を取れるようになるという。

「ただし、経口免疫療法は現在研究的な取り組みなので、各施設でやり方は違います」

 方法はさまざまでも、きちんと経口免疫療法を行っている医療機関は、その危険性を重々承知している。

 決して安易に行える治療法でないことを子供と親に伝え、アレルギー症状を起こした時の細かい対応をはじめ、細部に至るまで目の届いた指示を与える。

 一方で、冒頭で述べたように

、「食べて治す」という大まかな情報だけを伝え、“お任せ”にする医師がいるのも事実。(1)を飛ばして(2)から始めるという、専門医から見ると「本当は食物アレルギーではない子供に、経口免疫療法をしている」医師もいるという。

 非常に期待できる治療法だが、慎重さが必要なのは言うまでもない。

学校給食で死亡事故も…「食物アレルギー」事故の防止策4つ



食物アレルギーのある子どもが、学校の給食でアレルギーを起こす食べ物を食べてしまう事故が続発しています。

食物アレルギーは肌がかゆくなるという軽いものだけでなく、呼吸困難を引き起こし、最悪の場合死亡してしまうケースもあるのです。

現に、調布の小学校で粉チーズ入りのチヂミを食べてしまった生徒が死亡しています。

家庭ではアレルギーを起こす食品を出さないようにしていても、学校の給食だとそうはいかないので心配ですよね。

食物アレルギーを持った子どもが誤ってアレルギー食物を食べないよう、親はどう注意すればいいのでしょうか? 

養護教諭という立場から多くの子どもと、その親御さんに接している中里幸子さんに教えてもらいました。

■アレルギー食物を食べさせないための注意

アレルギー食物を食べさせないようにするには、子ども本人に食物アレルギーがあることを、普段から自覚させなければいけません。以下のことを普段から習慣づけましょう。

(1)必ず連絡帳で先生に知らせる

基本ですが、アレルギーのある製品が給食に出る際はそのことを連絡帳に記入しましょう。

しかし、その日に担任の先生が休むこともありますので、養護教諭を始め、他の先生にもアレルギーのある製品を知ってもらい、連携をとることも大事です。

(2)子どもに自覚させる

普段から子どもに「あなたはこの食べ物は食べちゃダメだからね、命に関わるからね」と言い聞かせ、自覚させましょう。

(3)親子で一緒に献立表をチェック

献立表にはどんな食材が入っているかが表記されています。献立表は必ず子どもと一緒にチェックしましょう。そうすることで、子どもがアレルギー食物について、より自覚するようになります。

(4)自分の給食は他の人と違うということを伝える

学校によって、食物アレルギーを持つ子どもにのみ、アレルギー食物を抜いた特別なものが配布される場合もあれば、家庭で別のおかずを用意して持参させる場合もあります。

アレルギー食物を抜いた特別なものを用意される場合は、子どもに“今日の給食はあなたにだけ特別なものが来るから、自分のしか食べちゃダメだよ”ときちんと伝えましょう。

調布の小学校での粉チーズ入りチヂミの事故では、食物アレルギーをもつ生徒にのみ粉チーズ抜きのものが配られていましたが、おかわりで食べたチヂミは他の生徒が食べているものと同じ、粉チーズ入りのものでした。

このような事故を防ぐため、自分に用意されたものだけしか食べてはいけないことを言い聞かせましょう。

食物アレルギーの恐ろしさを子どもに自覚させ、事故を防げるよう親子で気を付けてくださいね。

お好み焼きの粉でアレルギー!? 室内ダニが怖い 10週で300倍に

気温と湿度が上がってダニが繁殖しやすい季節。屋外には、国内で13人が発症した「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)のウイルスを保有するマダニがいる。だが、外出しなければOKとはいえない。

思わぬところに潜む室内のダニで、アレルギーによるショック症状を起こすことがあるからだ。専門医に話を聞いた。

 【開封後の粉に繁殖】

 一般的に、ぜんそくや鼻炎などアレルギーの原因(アレルゲン)として、ハウスダストはよく知られている。ハウスダストは、室内のカビやダニなどだが、目に見えないそれらはどこに潜むかわからない。

近年、開封後のお好み焼きの粉やたこ焼きの粉にダニが繁殖し、知らずに食べた人が、ダニによるアレルギー症状を引き起こしているという。

 千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原(こうげん)病内科の中島裕史教授が説明する。

 「うま味成分の入った小麦粉は、開封後に条件が整うとダニが繁殖しやすい。米国では、パンケーキの粉にダニが繁殖し、アレルギー症状を引き起こす『パンケーキ症候群』が、1993年に初めて報告されました。

国内でも現在までに36例の報告があり、多くは、お好み焼きの粉やたこ焼きの粉に繁殖したダニによるアレルギー症状です」

 【熱しても効果なし】

 室内のダニが好むのは高温多湿の環境。気温20度~30度、湿度60-80%程度で、カビやホコリ、食品、人間のフケやアカなど、ダニのエサがあると一気に増殖する。

 「条件が整えば、10週間で300倍に増えるといわれています。小麦粉やパン粉、砂糖、乾麺、みそ、チーズ、かつお節など、さまざまな食品で繁殖するダニがいるのです。

繁殖したダニを含む食材は熱処理しても、アレルゲンを完全に除去することはできません。ダニを増やさないことが大切です」(中島教授)

 開封後の食品は、密封して冷蔵庫に入れるなど、ちょっとした工夫でダニ予防が可能。むやみに怖がる必要はないが、これからの季節は食中毒も起こりやすいだけに、食品管理の徹底が必要。

 【書籍や段ボールにも】

 野山にいるマダニは、肉眼で確認できても、室内のダニは、よほど繁殖しない限り小さくて見えない。ダニのエサ・カビそのものもアレルギーの原因になる。さらに別の生き物の存在も…。

 「国立相模原病院の研究では、書籍や段ボール箱などに発生するチャタテムシでも、ぜんそくなどのアレルギー症状を引き起こすと報告されています。気づかないところにアレルゲンは潜むので注意してください」(中島教授)

 すでにアレルギー疾患を持つ人は、発症リスクが高い。そうでない人も、見えないアレルゲンを体内に入れ続けることで、アレルギー症状を引き起こしやすくなるそうだ。

呼吸困難やおう吐、下痢、低血圧などを伴うアナフィラキシーという重度なアレルギー症状を引き起こすこともある。ショック状態になると命に関わるため油断禁物。

 「食品管理だけでなく、室内のこまめな掃除や換気などを心掛けていただきたい。もちろん、身体に不調を感じたら、医療機関を早めに受診することも大切です」と中島教授はアドバイスする。

春の味覚にご用心!タケノコがアレルギーに似た症状を引き起こす

春から初夏にかけて旬を迎えるタケノコ。独特の風味とシャキシャキした歯触りを愛好しているという人も多いでしょう。しかし、実はタケノコを食べるとアレルギー症状を起こすことがあるのです。

タケノコをはじめ、「仮性アレルゲン」と呼ばれる物質を含む食品がいくつかあります。アレルギー体質の人は要注意です。

◆そもそも食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、摂取した食物に対して身体の免疫反応が誤作動し、不快な症状を起こす疾患です。原因となる食品(食物アレルゲン)を食べると、皮膚や粘膜にかゆみやじんましん、

呼吸困難や喘息、腹痛や嘔吐、下痢などの症状を起こすほか、重篤な場合はアナフィラキシーショックという命にかかわる全身症状を引き起こす場合があります。

食物アレルゲンとしては、鶏卵や小麦粉、甲殻類、そば、ピーナッツ、牛乳などがよく知られているほか、肉や魚、野菜、果物までさまざまな食品がアレルギーを引き起こします。

◆仮性アレルゲンとは何か
タケノコには、食物アレルゲンとなる物質は含まれていません。

しかし、人がアレルギーを起こした際に体内で産生されるアセチルコリンといった物質(仮性アレルゲン)を含んでいるため、これらの物質が直接アレルギーに似た症状を引き起こすのです。

仮性アレルゲンにはアセチルコリン以外にもたくさんの種類があります。以下に、主な仮性アレルゲンと、それが含まれる食品を示します。

●アセチルコリン
タケノコ、里芋、山芋、トマト、ナスなど

●セロトニン
トマト、アボカド、バナナ、キウイ、パイナップル、クルミなど

●ヒスタミン
ほうれん草、トマト、トウモロコシ、エノキ茸、牛肉、鶏肉、鮮度の落ちた青魚など

●チラミン
チーズ、ワイン、チョコレート、プラム、アボカド、バナナ、ナス、トマト、鶏レバーなど

●サリチル酸化合物
トマト、キュウリ、イチゴ、メロン、ブドウ、柑橘類など

◆症状は重篤でないことが多い
上記のものを食べると口の中にかゆみを感じたりお腹を壊したりする場合は、アレルギー症状を起こしている可能性があります。特定の食品を食べると毎回同じ症状が出るという場合は、その可能性は極めて高いと言えます。

仮性アレルゲンが起こす症状はそれほど激しいものではないと言われていますが、体調や摂取量などによっては症状が強く出る場合もあるので、なるべく避けたほうがいいでしょう。

◆本人が経験から学ぶしかない
食物アレルギーや仮性アレルギーの厄介なところは、同じものを食べても症状が出る人と出ない人がいることです。また、以前は問題なく食べられていたのに、ある時期から特定の食品に対してアレルギー症状を起こすこともあります。

このため、本人が経験しないことにはアレルギーかどうかがわからないのです。

アレルゲンが何かを病院で調べることはできますが、実際には何らかの症状が起きてから病院へ行くというパターンが多いでしょう。根本的な治療方法が早期に発見されることを期待したいですね。
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