■食べてはいけないスーパー・駅ナカの「お寿司」(2/2)
低カロリー、低脂質の健康的なイメージのある寿司だが、スーパーや駅ナカのテイクアウト寿司には、添加物がてんこ盛り……。商品のラベルを丹念に見てみると、添加物ざんまいの実態が明らかになってくるのだ。(以下は「週刊新潮」6月13日号掲載時点の情報です)
掲載の表は、前回紹介した着色料を含め、添加物を多種類用いている商品を多い順にランキングにしたものだ。調査対象は、
▽小僧寿し、京樽、ちよだ鮨など、寿司の大手チェーン6店のテイクアウト商品
▽イオン、イトーヨーカドーなど大手スーパー5店が製造・販売している商品
合わせて計11店の商品である。
表では、食事における「超加工食品」、すなわち、菓子パンやカップ麺、チョコレートやキャンディー、ケーキなどのお菓子等に特徴的な添加物をピックアップ。「香料」や「化学調味料」「人工甘味料」などがそれに当たるが、テイクアウト寿司のラベルを見て、これらを使用している商品を集計、使用数が多い順に並べたものである。
その数が表の一番右にあるが、最高はライフの「五目ちらし寿司」で15もある。これはスナック菓子や菓子パンなどの最高レベルのものとほぼ同じ数だ。あの人工的な味のお菓子と寿司とが同じレベルとはそれ自体仰天である。7つ以上含まれる商品だけでも77個に上った。
なお、これらの添加物も、食品に香りや味を付けたり、色調を改善することが主な目的で、必要不可欠とは言えないものばかりである。
「添加物は、国が審査し、一定の基準を満たしたものが認可されています」
とは、『なにを食べたらいいの?』の著者で、「加工食品診断士協会」の安部司・代表理事。
「だから摂取しても問題ないというのが国の考え。しかし、複数の添加物をいっぺんに摂取した場合、どうなるのかという実験は十分になされていないのです」
■“味”の中毒
こうした考え方を補強するかのような論文が昨年発表された。
世界四大医学雑誌の一つに数えられる「BMJ」(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)。ここにフランスのパリ第13大学の研究者らが発表した論文だ。
かいつまんで言えば、彼らは、フランスの18歳以上の10万人超の食事を8年間に亘って集計。すると、先の「超加工食品」に分類される食品の摂取割合が10%増えた場合、がんのリスクが有意に12%上昇した――との結果が出たのだという。そして、その原因の「考察」の一つとして、〈(超加工食品に多く含まれる添加物などの)蓄積による影響や混合による影響の多くはわかっていない〉と、添加物による影響の可能性を示唆しているのだ。
これだけでも衝撃的だが、今年、同じ研究チームがやはり権威ある医学雑誌「JAMA Internal Medicine」に更なる論文を発表。それによれば、先の調査のうち、45歳以上の4万人超について、超加工食品の消費量が10%上がると、死亡率も14%上昇していた――という。
もちろん機械的に当てはめるワケではないが、今回の寿司においても、同じ添加物を対象に調べているだけに、健康への影響は気になるところなのである。
「店は商品を安く売ることだけを考え、粗悪な原材料を使う。それを誤魔化すためにさまざまな添加物を使っているのでしょう」
とは、元鈴鹿医療科学大学薬学部客員教授の中村幹雄氏。
「安い酢飯に甘味料、タレに調味料を使って複雑な味わいを出し、香料を使って風味を足す。黄身の色の薄いたまごに着色料を使って、鮮やかに見せる。ねぎとろに増粘多糖類を使って粘性を高め、“濃厚感”を出す。こうして安い寿司をそれらしい姿にしているのです」
また、都内で無添加の寿司店を営む「鮨大内」の大内久司氏も、
「大量流通しているお寿司は、米も酢も良質なものを使っていないため、味が“雑”になる。それを隠すために、調味料や甘味料を使っているのでしょう。が、このような味に慣れると中毒になってしまい、本当においしいものをそう思えなくなる。私の店に来るお客さんも、無添加のガリを食べて“おかしな味だ。古いんじゃないか”と言う。化学調味料を使っていないと味を感じないようになってしまっているんです」
表を見ると、上位にランクインしているのは、「太巻」や「ちらし寿司」が多い。これらは、具材が多いだけにそれを糊塗する添加物も多数使われているのだろう。「要注意」なメニューなのである。
■各店の見解は…
各々の店にこれらの危険性について尋ねてみると、
「法令の遵守はもとより、食材や調理につきましては十分な衛生管理、品質管理を行っております」(ちよだ鮨)
「回答は差し控えさせていただきます」(イオン)
「健康に配慮した食品を提供するために、食品添加物の使用につきましては、できる限り使用しないとの考えのもと商品開発に取り組んでおります。今後も不必要な添加物は極力低減・排除に向けて取り組んで参りたいと考えます」(イトーヨーカドー)
等々の回答だった。
静岡県立総合病院の島田俊夫・臨床研究部長は言う。
「食品添加物の長期的な影響や、生活習慣病などへの関与は未だよくわかっていないところも多い。正しい食事を心がけなければ、健康長寿を全うすることはますます難しくなります。それなのに今の日本人は外食産業の戦略に巻き込まれ、食の安全を疎かにしている。そのことを肝に銘じておくべきです」
また、AGE牧田クリニックの牧田善二院長も、
「このような添加物は、売る側の都合だけで、我々は欺かれているようなもの。消費者はよく食品表示を見て、無駄な添加物が入っていないかどうか、確認することが肝要です」
逆に言えば、自己防衛が可能。その上で各々がどのように選択するか、である。