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アルツハイマー病やうつ病にも効果的?1日25gチョコを食べ続けた研究結果が発表される


大好きなチョコレートを食べて健康になれたら...。そんな夢のような結果が、愛知学院大学や愛知県蒲郡市、明治の産学官共同研究によって示された。

カカオポリフェノールが多く含まれているチョコレートを1日25グラム、4週間食べ続けた結果、血圧や善玉コレステロール値(HDLコレステロール)が改善したほか、炎症や酸化ストレスを示す値も下がったという。

◆アルツハイマー病やうつ病に関わるBDNFも改善

チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは活性酸素を抑える働きがあり、これまでに生活習慣病に有効との研究結果が多数報告されている。ただし、日本人を対象にした大規模な調査は今回が初めてという。

今回は、蒲郡市在住を中心とした45~69歳の男女347人(男性123人、女性224人)に、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを1日25グラム、4週間にわたって食べさせ、体重やBMI(肥満指数)、血圧などを測定し、血液検査やアンケートも実施した。

 その結果、4週間後には血圧や善玉コレステロール、炎症・酸化ストレスの指標が改善。アンケートで精神的にも肉体的にも活動的になったと答える人が多かったほか、「BDNF(脳由来神経栄養因子)」が上昇していた。

脳には140億個の神経細胞があるが、この脳の活動を支える重要な物質がBDNF。脳の記憶に関わる海馬という部分に多くある。BDNFが増えると、記憶や学習などの認知機能が向上するといわれている。

また、うつ病やアルツハイマー病との関連性があることも報告されており、65歳以上では年齢とともに減っていくことも知られている。

BDNFは適度な運動によって増加させることができるというが、愛知学院大学心身科学部(愛知県日進市)の大澤俊彦教授は「今回の大規模調査では、チョコレートの摂取によって、BDNFが増加することが確認されました。

このような身近な食べものでBDNFが上昇することが分かったのは、高ストレス社会あるいは超高齢社会にあって非常に画期的なこと」と述べている。

【記事提供元】
あなたの健康百科
http://kenko100.jp/

「うつ」「不安」心のトラブルは食事で改善? FC2 Analyzer


栄養療法という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 ダイエット関連の言葉ではない。これは、身体(脳)の栄養状態を調べ、不足している栄養素を見つけ出し、それを補うことでうつ病をはじめとする精神疾患を改善していこうとする治療方法のことだ。

 うつと食事。意外な組み合わせだと思う人は多いだろう。だが、『「うつ」は食べ物が原因だった!』(青春出版社/刊)の著者、溝口徹氏によれば、「うつに悩む人の95%は食事になんらかの問題がある」という。

 ところで、なぜ栄養療法がうつ症状に効くのか。ひと言でいえば、心と脳が強く結びついているからだ。たとえば、「やる気」は脳が分泌するセロトニンという神経伝達物質の量によって左右される。

「何を食べるか」は脳の働きを変えるうえで重要になってくるのだ。

 ここでは一例として、本書の第4章「心のトラブルを引き起こす5つの栄養欠損」のなかから、ビタミンB群欠乏がどのような症状を引きおこすのかを紹介しよう。

■睡眠や集中力に問題あり…と思ったら、ビタミンB不足を疑うべし!?
 まずは以下のチェックリストを見てほしい。あなたはいくつ当てはまるだろうか? 

・アルコールをよく飲む
・音に敏感だ
・イライラしやすい
・集中力が続かない
・記憶力が衰えている
・よく悪夢を見る
・テレビがわずらわしい
・本を読んでも頭に入らない。興味がなくなった
・寝ても疲れがとれない。とにかく疲れる
・口内炎がよくできる

 いかがだったろうか。3つ以上当てはまるようなら、ビタミンB群の欠乏を疑ったほうがいい。ビタミンB群はすべての神経伝達物質の生合成にかかわっているという意味で重要な栄養素なのだ。

 本書ではより具体的な例として、長年ひきこもりの状態が続いていた20歳女性のケースが取り上げられている。

彼女は、感情のコントロールがきかず、イライラや不安、恐怖などに襲われることが度々あり、自傷行為にもおよんでいた。栄養療法をはじめる前は、13種類もの薬を飲んでいたという。

 検査の結果、ビタミンB6のひどい欠乏状態にあること、さらには亜鉛、たんぱく質、鉄なども不足していることがわかり、食事療法を行った結果、3か月後にはいずれの値も改善した。抑うつレベルを見るSDSテストの数値が65から30にまで下がったという(この値が53以上になると、うつ症状と判定される)。

 本書では他にも、低血糖症、鉄欠乏、亜鉛欠乏、たんぱく質欠乏についても、各栄養素とうつとの関係性という観点で解説されている。また本書では、そもそもの話として、「脳にいい」食事の摂り方についても言及されている点が興味深い。

 溝口氏によれば、脳にいい食事とは、血糖値がゆっくりと上がり、ゆっくりと下がっていくよう配慮できていること。

そのような食事を実現するための指標として、GI(グリセミック・インデックス)値というものも紹介されている。おもな食品のGI値についての一覧表も掲載されているのでチェックしてみてはいかがだろうか。

「うつ病」を克服した経営者が語る復活までの2年半の軌跡:その4  「抗うつ剤」を飲むべきか、飲まざるべきか……



FC2 Analyzer現在、経営者として活躍中の村井氏は、3年前に突然うつ病になり、様々な苦しみを経験しながらも、克服しました。村井氏は、うつ病に苦しむ人々の為に改善のきっかけになればと考え、自らの体験を執筆しようと決意しました。

今回は、抗うつ状態が深刻化した状況について語って頂きます。(なお、本記事内で説明されている症状、治療内容はあくまで村井氏個人の体験したものです。)

◆憂鬱な正月休み
年が明けて実家に帰りました。故郷で何もかも忘れてのんびりすれば、また良くなるのではないかとの淡い期待を抱いての帰郷でした。しかし、気持ちは全く安らぎません。

それどころか、外に出るのも億劫で、欠かしたことのない先祖の 墓参りにも行かずに、終日、洋間のソファーの上でゴロゴロです。本当に何もやる気がしないのです。

お酒も口にする気がおきません。豪華なお節を見ても、食欲すら湧きません。まだ、都内にひとりでいた方が落ち着く気がしたので、1日早く帰京しました。

◆診断の結果は?
その年の初出社を控えた正月休みの最終日、いよいよ出社が嫌になって来ました。当然、その日は眠れずに朝を迎えました。会社としての初詣が終わったその足で、掛かりつけ医のところに行きました。

自分自身は、“うつ”とは思いたくないので、前年の末、ある人から、「男の更年期障害じゃないか?」、「自分自身も丁度、55歳の頃にそうだった。」と言われ、色々とネットで調べていたので、 先生に血液検査を申し出ました。

「そうじゃないと思うよ。村井さんはこれまでの肉体的・精神的な疲れが一挙に出た軽い“うつ”じゃないかな。とりあえず、血液検査はしておくけど。」と言うことでその日は、更年期障害であることに大きな期待を持って帰りました。

結果が出ましたとの連絡を受けて急ぎ先生を訪ねると、「ホルモンバランスの異常はなかったよ。更年期じゃないね。」「やっぱり“うつ”じゃないかな?今は良い抗うつ剤がある。

これを飲むと気分が上向くので、少し出しておくから飲んでみて。」と言われ、ホッとしたのを覚えています。

くわえて、「この抗うつ剤は、日々の緊張が取れないことで脳が睡眠中も休めずにセロトニンの分泌が不足している時に、これを増やす効果がある。ある程度飲んで溜まらないと効果は出てこないが、2週間もすれば気分が上向くから。」との説明を受けました。

診断直後、秘書的な役割をしてくれていた女性に、「よかったよ。これで治るから。」と電話で伝えたくらい、この抗うつ剤でもうすぐ直ると思いました。しかし、伝えた女性は、極めて抗うつ剤に詳しく、薬の名前を私から聞いた途端、電話口の声が変わりました。

「飲んじゃだめです。どうしても、飲まなくちゃいけないのですか?」「帰ってネットで調べてください。多くの場合、依存症になり抜け出せなくなります。」愕然としました。

その後、一緒に事業を始めたもう一人の経営者とその女性は、私からの委任状を持って掛かりつけの先生を訪ねてくれ、 本当の小生の病状と、「抗うつ剤」での治療が本当に大丈夫なのか?を質問して来てくれました。

最後は、先生からの、「量も少ないし、今は依存症も少なくなっている。一方、飲まずにこのまま放っておいたら、村井さんは自殺する可能性だってありますよ。責任は取れるのですか?」と言うことで押し切られ、“うつ”を早期に治すために「抗うつ剤」を飲むことを許してくれました。

◆ついに抗うつ剤の服用を開始…
しかし、ネットで調べれば調べるほど、いいことが書かれていません。「断抗うつ剤時の自殺率が高い。」とか、「友達が抗うつ剤を減らす段階で自殺した。」とかが、それはたくさん書かれていました。飲もうと思っては、辞める日が続きました。

そしてある決断をしました。

1週間、全く仕事か ら離れて海外のリゾートでのんびりしてみよう。それでも気分が上向かなかったら、「抗うつ剤」のお世話になろうと言うことで、2月にグアムに行きました。もちろん、抗うつ剤を飲んでしまえば、抗うつ剤の効果か休暇の効果かわからなくなるので旅行が終わるまでは飲みませんでした。

ところが、グアムでいくらのんびりしても、一向に気分は上向きません。コバルトブルーの海を見ても感動のかけらも湧いてこないのです。社会人1年目に初めての海外旅行で来た時と違って。さらには異変です。

高層階のホテルの部屋のベランダの先から海を臨んでも、少しも怖くないのです。強度の高所恐怖症であったにも関わらず。それくらい、なんか自律神経が麻痺に近いくらい鈍感になっていて、身も心もスドーンと重い感覚が全身を覆っていました。

帰国後、「抗うつ剤」を飲み始めることとしました。そしてそれが、うつ症状を更に悪化させていくことになるとは知らずに…

<執筆>
村井哲之
広島大学 政治経済学部 経済学科卒
法政大学環境マネジメント研究科修士課程中退
事業構想大学院大学 研究員
環境プランナー
リクルート、第二電電(現KDDI)等を経て、
現在、日本初の廃棄のコンシェルジェ
総合商社 (株)イブロン代表取締役

認知症の親への接し方は?介護のプロはどうする? 叱るのはNG。いやな感情だけが残り問題行動に


 認知症を発症した親に、どのように接すればいいか悩む家族も多いようです。「認知症の介護は身内には無理。でもその場その場で対応のしかたがある」と介護アドバイザーの髙口光子さんは言います。その時々でどうすればよいか、介護のプロの技術を聞いてみました。

*  *  *

■親の困った行動には、常識的に対応する

 認知症を発症して、簡単なことが徐々にできなくなっていく親を見ているのは、本当につらく、せつないことです。

「なんとか認知症を予防したい、それでも認知症になったら、治したい、できることなら進行を遅らせたい」と多くの家族が思っています。弱っていく親に「しっかりしてほしい」という感情をコントロールできないあなたは、たとえば、母親が何十年と繰り返してきたみそ汁がつくれなくなって、自分でも戸惑っている状況を前にして、「何やってんの!」と叱りつけてしまいます。「まずい。いつもの味じゃない」「台所をちらかして汚い」など、言葉が止まらなくなってしまいます。

親が入居した老人ホームの対応がひどい! 退去を考えてもいい4つのこととは? プロが指摘© AERA dot. 提供

 そして、自分の強い態度や言葉に後悔を繰り返し、ますますつらくなります。そんなとき、「普通の接し方をする」ことを心がけてみてください。

 目の前でまごまごして困っている人が他人だったら、あなたはどうするでしょうか。そんな言葉は投げつけられないはずです。認知症だから特別な接し方をするというのではなく、普通の、常識的なかかわり方をすればいいのです。さりげなく手伝って、一緒にみそ汁をつくり、一緒に食べ、あとで本人に気づかれないようにさりげなく片づけてあげる、それでいいのです。

■認知症の親ができないことを非難するのは「いじめ」

 認知症では知的な機能が障害され、記憶、見当識(いまが何月何日で何時か、いまいる場所はどこかなど)、思考、判断などがこれまでと同じようにはできなくなっていきます。

 そういう人に向かって、「つくり方、忘れたの?」「きれいに片づけられないの?」などと言うのは、たとえば(引き合いに出して申し訳ないのですが)、視力が低下した人に「赤信号でしょ、何回言ったらわかるの?」と言うようなものです。

 できないことを指摘して非難する、それは「いじめ」です。

 もちろん、あなたにいじめている意識はないでしょう。これまでどおりのおとうさん・おかあさんでいてほしい、こんな情けない姿は受け入れられない、家族こそがあきらめないで認知症を克服するんだ、その思いで、ついつらく当たってしまう、そして繰り返す親子げんかと後悔。その気持ちはわかります。

■叱られた、いやな感情だけが残ってしまう

 認知症がない親ならば、親子げんかですから、謝れば関係は元に戻ります。しかし認知症の親は、何について叱られているのかがわからず、叱られたときのイヤな気分、悲しい気持ちだけがいつまでも心に残ります。

 この、敗北感、屈辱感、嫌悪感などの精神活動は、知的活動の裏付け(なぜ叱られたかの理解)がないために、不安感がより募ってしまいます。その強くなった不安から、歩き回りや大声、暴力、失禁などの周辺症状(問題行動)につながるケースも少なくありません。

 そして夜中の大声や失禁などについて、あなたがまた叱ったりすると、周辺症状がますます悪化する……あなたがせっかくここまで介護しているのに、悪循環に陥ってしまうのです。

 現在の認知症ケアは、認知症をだれにでも起こる普通のこととして受け入れ、認知症の人と共に前向きに生きるための生活の仕方を工夫する、認知症の人ではなく介護する側が変わっていく、という考え方です。ここが認知症の高齢者の介護が、家族に難しい理由です。

 親子という深い人間関係があるあなたは、いつまでも、いままでどおりの、しっかりした親子関係を守りたいので、認知症の親に優しくできなくて当たり前です。そのことを大前提としてスタートしてください。イライラするなど、自分たちの生活が脅かされてきたら、介護保険サービスを上手に利用して、介護のプロに協力を求めてください。

■「関心をそらせる」のも効果的な接し方

 それでも日常のなかで、認知症の親とのやり取りに困ることもあるでしょう。

 家族が最も悲しく感じる認知症のお年寄りの行動の一つに、「お金がなくなる」「物を盗まれる」という認知症による被害妄想があります。自分の親に泥棒呼ばわりされて、やりきれない思いを抱く人はとても多いです。

 こんなとき、「関心をそらせる」接し方をしてみてください。おとうさん・おかあさん本人の関心をそらせると同時に、あなた自身の関心もそらせます。「泥棒」という強い言葉に親も子どももとらわれると、怒りや悲しみのあまり、相手を攻撃するような言動を双方がしてしまいます。そうなると事態はさらに悪くなります。

たとえば、次のように「そらして」みてはいかがでしょうか。

「おとうさんはやっぱりお金のことはきちんとしている。一代で財産を築いたんだもんね。商売のこと、もう少し教えてください」。この場合、おとうさんを「財産を築いた立派な人」として尊敬する態度で接します。

 あるいは、「お金がなくなったなんて許せないね。おかあさんは間違ったことが大きらいだものね。その正義感、どうやったら持ち続けられる?」。相手の「正しい姿勢」をほめて、教えを請う接し方にします。

 こんなふうに会話することで、盗まれたという被害妄想が、おとうさん・おかあさんの生きてきた道、人生訓のようなものに入れ替わってくれるかもしれません。

■介護職の力を借りて、認知症の親を受け入れる

 私たち介護職は、危険を伴わないかぎり、認知症のさまざまな行為、問題行動を止めることはしません。行動を否定したり、直そうとしたりもしません。そのままを受け入れ、そして行動の裏に隠れている「理由」を探り出し、それをできる限り解決して、改善に導きます。なぜそれができるかというと、過去から積み上げた人間関係がないので、いまの目の前のそのままのお年寄りを受け入れられるからです。これは身内にはまずできないことです。

 しかし一つひとつの場面での、よりよい接し方・対応のしかたは一緒に考えることができます。

 多くの認知症の親をもつ家族と接してきて、わかったことがあります。それは、一人で抱え込まず、さまざまな人との出会いをもって認知症ケアを続けてくると、ある程度の時間が過ぎたら、認知症の親を受け入れるようになる家族が多いことです。自分たちだけでがんばるのではなく、介護のプロの手を借りて、認知症であろうがなかろうが、「これが私のおかあさん、これが私のおとうさん」と気負うことなく言える日を目指してほしいと思います。

(構成/別所 文)

髙口光子(たかぐちみつこ)元気がでる介護研究所代表

【プロフィル】

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

【ストレスと認知症】ストレスで脳が萎縮?ストレスから脳を守るためにできること|医師が解説


ストレスは、脳細胞の老化を早める!

ストレスが加わると、コルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌され、交感神経の働きが強まります。

交感神経の働きが強まると、血圧が上昇、血管も収縮し、脳への血流が低下します。

脳への血流が低下すると、脳の神経細胞同士の繋がりを促進する神経栄養因子や神経成長因子、さらには、細胞から細胞へ情報を伝達する神経伝達物質(セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなど)の分泌が悪くなります。

また、脳が必要とする酸素も栄養源も十分には届かなくなります。

結果、脳は、働こうと思っても十分に働くことができず、集中力や注意力、記憶力の低下などが起こってきます。

また、長期的にストレスにさらされることで、脳の司令塔と呼ばれる前頭葉や記憶の中枢と呼ばれる海馬において、脳神経細胞の樹状突起の退縮が若い年代から始まり、脳の萎縮や老化が年齢不相応に起こると言われています。

ストレスは、認知症を発症するリスクをあげる!

脳のゴミ、いわゆる、アミロイドβ(アルツハイマー認知症の原因物質の1つ)は、ミクログリア(脳における免疫細胞)によって貪食され、寝ている間に脳血流によって排泄されます。

この脳のゴミを除去してくれるミクログリアですが、ストレスが加わると、異常活性します。

ゴミを除去してくれるミクログリアが活性化するなら、良いのでは?と思うかも知れませんが、異常活性したミクログリアは、本来除去してはいけない脳細胞同士の繋がりであるシナプスまで除去してしまったり、正常な神経細胞を攻撃して傷つけてしまったりします。

また、ストレスにより、「夜なかなか寝付けない」「途中で何度も目が覚める」など、夜ぐっすり眠れない日が続くと、ミクログリアが貪食したアミロイドβが排泄できず、脳内にたまりやすくなります。

たまったアミロイドβは、老人班と呼ばれる塊を作り、脳細胞同士の情報をやり取りを邪魔し、情報がうまく受け渡しできないために、脳の働きが悪くなります。

つまり、ストレスは、脳における神経細胞の働きを低下させるとともに、将来的な認知症の発症リスクをあげると言われています。

ストレスから脳を守るためにできること

ストレスを全く感じることなく生きていく事は不可能です。

ですが、ストレスを溜め込む事は、心や体ばかりではなく、脳にも悪影響を与えます。

そこで、なるべくストレスを溜めないように日頃からストレスの発散、ストレスの緩和を図ることが大切です。

スポーツやアウトドア、お友達と会話するなど自分なりのストレス解消法を持っている方は、定期的に自分なりのストレス解消法でストレス解消を図りましょう。

もし「自分なりのストレス解消法なんてない!特に趣味もないし、ストレスを解消する方法が分からない!」という方は、波の音を聴いてみてください。

波の音は、1/fゆらぎ音で、副交感神経の働きを活発にしてくれます。

副交感神経の働きが活発になると、収縮していた筋肉がほぐれ、血管も拡張し、全身の血流が良くなります。

脳へも沢山の酸素や栄養源が運ばれ、神経細胞同士の繋がりを促進する神経栄養因子や成長因子、神経伝達物質の分泌も増えて、脳がしっかり働くことができるようになります。

ストレスにより脳に溜まりすぎたゴミ(アミロイドβ)も排泄することができるようになり、ストレスによる脳の老化を防ぐことができます。

自分なりのストレス解消法を持っていない方は、YouTubeなどで波の音を検索して聞いてみましょう!

心が落ち着くとともに、頭がスッキリし、回転が良くなりますよ。

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。

ストレス社会でうつ病にどう向き合うか…「7つのストップ」と「3つのT」



FC2 Analyzerストレス社会でうつ病にどう向き合っていけばいいのか。うつ病にならないための「7つのストップ」と、うつ病になった時の「3つのT」など、精神科医で横浜相原病院院長の吉田勝明さんが、BS日テレ「深層NEWS」で分かりやすく解説した。

◆まじめな人が陥りやすい

 日本では2つの「スタートの時期」があります。まず、お正月。「おめでとう」とスタートを切って、少し落ち着いた頃に、卒業、入学、入社式がある4月になります。そこでまた、新たな人間関係、新たな仕事、勉強等々と、新しいストレスが加わってきます。

何とかうまく乗り切ろうとするけれど、うまくいかず、5月になっていっぱいいっぱいになってくる。こういう時期を、「スプリング・フィーバー」、つまり、5月の風邪とか、5月の発熱と呼んでいます。

何とか成績や仕事で追いつかなければと思わず、「まあまあ、これぐらいでいいや」「7、8割でも合格だ」という思いでいられると、うつ病の予防にもなります。

 最近の「悩み・相談」の傾向は図1の通りです。一生懸命追いつかなければと思う人は、基本的には生真面目な人が多い。周りは「十分だよ」と思っても、「いや、まだまだ自分の努力が足りない」と受け止め、どれだけ疲れているのか分からず、オーバーワークになってしまう。

 世代的には30代、40代、場合によっては50代、働き盛りの人にもかなり増えています。責任感が出てきて、上司、部下との関係に悩むことが多いと思います。

 周りからみると、仕事ができる、何でもこなしているという方が、部下を育てなければいけない、同僚との人間関係を構築しなければいけないという新たな悩みが加わった結果、このようになっている事例が多くなっているようにも思います。
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◆インターネットでコミュニケーション不和

 インターネットの発達も、原因の一つかもしれません。電子メールで全てこなしてしまい、席が隣同士で話をしながら「お疲れさん」などと雑談するコミュニケーションが不足しています。隣席の同僚にメールで用件を送り、メールで返事する。目と目を合わせたコミュニケーションの機会が減ってくると、結果的にストレスになるのです。

 雑談は、相手に自分の「弱み」を見せられる場でもあります。鎧(よろい)を着て難しく固まっているのではなくて、ちょっとした弱みを見せ、相手も弱みを見せれば、いろいろなストレスの発散をするのに大事な時間になります。

 うつ病の兆候としては、睡眠障害が必ず起きます。「7時間寝ているから大丈夫」というのではダメで、朝、起きた時に、熟眠感があったかどうかを聞いてください。食欲不振は、体重まで減れば皆が気付きますが、最初のサインとしては味覚異常があります。

元気がない仲間がいたら、「あそこの店のラーメン、好きでしたね」と連れて行く。そのとき、その仲間が「ちょっと最近、味付けが変わっていませんか」と言うようなら、要注意です。食欲不振の一歩手前の状態だからです。

 うつ病の最大の症状として、快楽、喜びの消失があります。おいしいものを食べるのは喜びです。その部分に影響が来ているのが、味覚障害だといえます。ただ、その変化は、互いによく知っていなければ気付きません。

だから、コミュニケーションが非常に大事なのです。出社時間が変わったとか、おしゃれだった人が気を使わなくなっているとか、仕事のミスが増えているとか、そうした点に気をつけてあげるといいでしょう。

 夜に考えることも、必ずしもいいとは思いません。まず、自分の仕事をオフの時間まで持ち込むことがよくありませんし、夜中の決断は、必ずネガティブ側に振れます。昼間考えているとポジティブな形に行きます。

人生における重大な決断、例えば、離婚や会社をやめるといったことは、絶対に夜に決めてはいけません。ですから、僕はよく、夜9時以降は考えちゃいけないと助言します。

◆7つのストップと「不良長寿」

 うつ病にならないために止めた方がいいことを「7つのストップ」として示しましょう。

(1) 完璧主義
(2) 自分に厳しい
(3) すべてをコントロール
(4) 体力や能力を過信
(5) 見栄(みえ)を張る
(6) 努力・根性・責任・義務
(7) いつやるの? 今でしょう!

 「いつやるの? 今でしょう!」を止めろというのは、責任感から「今日中に終わらせなければいけない」と、ついついオーバーワークになるからです。明日でもいいのに、家に持ち帰り、自宅でまでやるのはよくない。完璧主義も止めた方がいい。

数学なら1+1は2ですが、我々が生きている世界では1+1は「おおむね2」でいいのです。自動車の運転でも、ハンドルに全く遊びがないと怖くて運転できません。多少の遊びがあるからうまくいくという感覚が大事です。

努力・根性・責任・義務も、加減というものがあると考えることが大事です。

 一生懸命がんばっていれば、少しずつ出世して、会社の部長ぐらいにはなるかもしれません。でも、要領がよくなくて、そこから先にはなれない。その状態で、自らに厳しく立ち止まってしまうと、長生きできません。

「少しぐらい、さぼっちゃえ」という感覚で、ある程度、自由にやっていると、案外、出世することもあります。同窓会に行くと、学級委員もやっていたまじめな人が、老け込んでいて、不良っぽかった人が若々しくて格好いいなんて経験をしたことはないでしょうか。

遊びがあって、クッションを持っていた方が、ストレスをためず、結果的に素晴らしい人生を歩めるのではないかという意味で、「不老長寿」ならぬ「不良長寿」という表現ができると思います。

症状が深刻になって一番困るのは、自責の念です。周りから「休んでいいよ、ゆっくりしていいよ」と言われても、そう言われること自体が申し訳ないと思ってしまう。ですから、精神科医として、薬を使ったり、いろいろな治療をしたりする前に、自責の念を取り除いてあげることが大事な要素なのです。

 うつ病の人にどう接したらいいか、一言で教えてくださいと言われると、「愛ある無関心」と答えています。

無関心がネグレクト(無視)ではいけませんが、かといって過干渉でも困ります。絶対に見捨てず、愛情をもった形で「好きにやっていていいよ」「心配してないよ」「自由にどうぞ」というのが、非常に良い距離感だと思います。

 うつ病と診断された場合、軽度であっても、隠すことで無理が生じますので、やはり、会社や学校に話すべきでしょう。また、会社の雰囲気として、それを受け入れることが必要です。

患者さん本人は言いにくいところがあるでしょうから、産業医などが関与し、時間外勤務を制限するとか、ノルマを取り除くなどの対応をして、それ以上病気が進行せず、会社を休まなくても済むような仕組みがいいと思います。

 かつては、福利厚生面で保養所を持っているとか、各種施設の割引が充実しているとか、そんなことが会社のステータスのように思われていましたが、今はメンタルヘルスにきちんと対応できているかどうか、うつ病のような人たちを見守る雰囲気があるかどうかが、会社のステータスの判断基準だと思います。

 うつ病で会社を休職した場合、復職に向けて大切なことは、本人、家族、そして会社の「トライアングル」です。

本人の病気が良くなることはもちろんですが、自宅できちんと休める時間を提供する。家で「そんなことでローンをどうするの」「子どもの教育どうするの」などと枕元で言われていては困りますし、会社で「半年休んだのだから、倍働いて返してもらうぞ」というようなことではいけません。

トライアングルがうまくいってこそ、初めてきちんとした復職ができます。

 カウンセリングにあたっては、悩み、苦しみを解決する三つの「T」が大事だと考えています。Tear(涙)、Talk(話す)、Time(時間)。感情を素直に表していい、何でも話してください。そして、時間をかけること。時間が解決するのではなくて、時間をかけて解決するということです。

 医者を選ぶ際に考えてもらいたいことは、名医にかかる必要はなくて、良医であればいいということです。名医は何十年勉強しても、なれるか、なれないか分かりませんが、良医は、一生懸命患者さんのことを考え、自分の手に負えなければ、他の医者に紹介できる人です。

医者を選ぶのは患者さんの権利ですが、薬を飲んで1週間で「効かない」と言って医者を変えるのはよくありません。うつ病の薬は即効性がなく、少なくとも2週間、場合によっては4週間かけて、初めて効果が出るものが多い。

もちろん、人間の関係ですから、「薬以外に治療法は分からない」などと言い、患者さんが何か聞くと面倒くさそうな表情をするような医者にはかからないといった基準ならば、いいと思います。薬だけでなく、気持ちの持ちよう、考え方、そして家族、同僚、皆で協力してやっていくのが、今の時代だと思います。

             ◆

 <2015年4月28日放送の「深層NEWS」をもとに再構成しました。「深層プラスfor yomiDr」は、深層NEWS(月曜日から金曜日の午後10~11時放送)の医療関係の放送から、反響の大きかったものについて随時、とりあげます>

チョコレート食べると認知症防げる?・・・脳の栄養分増やす働き


チョコレートに認知症予防の効果が期待できる――。

 そんな研究成果を、大手菓子メーカー「明治」(東京)や愛知県蒲郡市などがまとめ、17日、名古屋市内で発表した。

 発表によると、実証実験の結果、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールに、脳の重要な栄養分となるたんぱく質の一種「脳由来神経栄養因子(BDNF)」を増やす働きがあることが分かったという。BDNFは記憶や学習などの認知機能にかかわる栄養分で、65歳以上では年々減るとされる。

 昨年6月中旬から4週間かけて行われた実証実験には、蒲郡市民ら347人が参加。カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを毎日25グラム食べ、摂取前と摂取後の血中のBDNF濃度などを調べた。

 共同研究者の大沢俊彦・愛知学院大心身科学部教授(食品機能学)によると、実験の結果、摂取前には1ミリ・リットルあたり6.07ナノ・グラム(ナノは10億分の1)だったBDNF濃度の平均値が、4週間後には7.39ナノ・グラムに上昇したという。

今回は摂取時の条件を指定せず、性別や年齢別の分析も行っていないが、大沢教授は「一緒に摂取するものとの組み合わせなどで結果が変わる可能性もある。ほかの病気の予防も含め、次のステップでの調査を検討したい」と話している。

 今回の研究について、桜美林大加齢・発達研究所長の鈴木隆雄教授(老年学)は「認知症予防には、適度な運動に加え、認知症になりにくい食べ物をとることが重要。チョコレートがその可能性を秘めていることを示唆する大きな一歩だ」と評価している。

若者のうつ病治療に効果、コンピューターゲーム「SPARX」


長きにわたり、若者たちを孤立させる要因であるとみなされてきたコンピューターゲーム――しかし現在、ニュージーランドのプロジェクトチームが若年性うつ病の治療に効果的なコンピューターゲーム「SPARX」を開発中だ。

 ファンタジーロールプレイングゲームのSPARXは、認知行動療法(CBT)と呼ばれる心理学的アプローチで、若者たちにうつ病への取り組み方法を伝えるゲームだ。プレーヤーは戦士となり、火の玉でネガティブな考えを吹き飛ばして悲観と絶望の沼から世界を救いだすことが目的だ。

■深刻になりすぎずに自分のペースで

 オークランド大(Auckland University)の児童青年精神科医でプロジェクトリーダーのサリー・メリー(Sally Merry)氏は、この型破りのアプローチは若者たちに支持されたと語る。

 この治療方法なら、プライバシーを守りながら、自分のペースでうつ病に取り組むことが可能で、「精神衛生上の問題に対して、深刻になりすぎずに取り組むことができる」とメリー氏は語る。

「治療行為自体が憂うつなものである必要はまったくない。私たちは治療を楽しくすることを目指している」

 メリー氏によると、うつ病に苦しむ若者の75~80%が、なんの助力も得られないでいるとし、その結果、学校の成績が下がったり、人間関係の中で孤立したり、将来を悲観するようになるという。「気分が落ち込んでいても、それが何なのかわかっていないことが多い」とメリー氏は説明した。

「『けだるさ』を自分で感じていることに気づきながらも、それに耐えなきゃいけないと思いこんでしまう。SPARXと認知行動療法を用いることで、『それに耐える必要はない』と伝えることができる」

■「エンターテインメントとして楽しめるように」

 ゲームは7つのステージに分かれており、各ステージは35~40分でクリアすることができる。これはちょうど1回のカウンセリングと同程度の時間。対象年齢は13~17歳で、ちょうど若年性うつが始まる時期だ。

 プレーヤーはガイド役のキャラクターに導かれながらステージを進み、それぞれのステージには、「怒りの管理」「衝突の解決」「リラックス呼吸法」など、それぞれの学習目標がある。

 ステージをクリアするにつれ、ゲーム中の世界は徐々に不気味さを和らげ、明るい世界になって行く。

 メティア・インタラクティブ(Metia Interactive)のマル・ニホニホ(Maru Nihoniho)氏は、若者たちが学習行為だと思わずに楽しめるような魅力あるゲームにすることが難しかったと語る。

「学習目標を達成しつつゲームとしてデザインする必要があった。つまり、一般ゲームにあるようなインタラクティブな3D環境やパズル要素、クエストなどのエンターテインメントとしての価値を維持しなければならなかった」

 その目標を達成するため、開発チームは14か月の開発期間中、若者たちのテストグループから得られるゲームへの反応を重視した。なかには銃撃戦や流血のリクエストもあった。

「ゲームの性質上、銃撃戦は入れることができない。だから機関銃や爆弾の代わりにキャラクターに杖を持たせ、ネガティブな考えをポジティブなものに変える光の玉を撃てるようにした。どこで妥協が成り立つかという問題だった」とニホニホ氏は語った。

■臨床で効果、賞を獲得、近日リリースへ

 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)に今年発表された臨床結果によると、このゲームは、軽度から中程度のうつ病に対して、1対1の対人カウンセリングと同程度の治療効果があった。

 同ゲームは国連(UN)のワールドサミットアワード(World Summit Awards)でイノベーション賞を獲得。メリー氏によると米国や英国、カナダ、オーストリアからゲームに対する注目が集まっており、また非英語圏でも翻訳版のプロジェクトが持ち上がっている。

 ゲームが一般向けに発表される期日はまだ決まっていないが、メリー氏は、学校や医師、若者向けの施設などを通じてゲームを配付したい考えを語った。

 またプロジェクトチームは、インターネット上で提供し、iPadやアンドロイド(Android)端末などで遊べるようにすることや、同性愛者の若者向けに「レインボーSPARX(Rainbow SPARX)」を制作するなどといった特別バージョンの開発も検討中だという。

「脂質異常症」放置するとどうなる? 認知症の発症にも関与【第一人者が教える 認知症のすべて】


【第一人者が教える 認知症のすべて】

「血糖値や血圧が高いと『治療が必要なのかな』と思うんですが、コレステロールが高いっていうのは、いまいちピンとこないんです」

こんなふうに言うのは、55歳のYさん。

コレステロールが高い場合に診断されるのが、脂質異常症。かつては高脂血症と呼ばれていた病気です。

コレステロールには、LDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるもの。HDLは善玉コレステロールと呼ばれています。どちらも血中に含まれる脂質(血中脂質)です。

血中脂質には、中性脂肪もあります。コレステロールと中性脂肪はどちらも脂質ですが、働きが異なります。コレステロールは、細胞膜を構成する成分で、ホルモンや胆汁酸の材料にもなります。一方、中性脂肪は活動するためのエネルギー源となります。

コレステロールも中性脂肪も生きていく上で必要ですが、量のバランスが崩れると害になる。LDLコレステロールは増えすぎると血管壁にたまり、血管の機能を低下させます。HDLコレステロールは減りすぎると余分なコレステロールを十分に回収できません。そして中性脂肪は過剰になると体脂肪として蓄積されてしまいます。

血液中でコレステロールや中性脂肪の量のバランスが崩れた状態が脂質異常症です。

脂質異常症は、血管が硬くなる動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを上げます。糖尿病や高血圧と同様に、しっかりと対策を講じなくてはならない。

また、脂質異常症がある人は、糖尿病や高血圧も抱えていることが少なくありません。

しっかり運動しているのに、悪玉コレステロールが高い理由

Yさんが健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われるようになったのは、40代前半とのこと。釈然としなかったそうで、その理由は「こんなに運動をしているのに、コレステロールが高いなんて!」という気持ちがあったから。

実際Yさんの運動量は相当なもので、週3回はスポーツジムに通い、汗を流している。それでも、健康診断では毎年「LDLコレステロールが高い」。

実はLDLコレステロールは、運動だけではなかなか下げることができないのです。コレステロールは生きていく上で必要な成分で、体内に再生産する仕組みが備わっています。エネルギー源である中性脂肪は運動すれば減りますが、コレステロールはエネルギーにならないので、運動しても減りません。

コレステロールは、運動よりも食事の見直しが重要。悪玉コレステロールが高いのは、脂質異常症の発症や進行に大いに関係しますので、健康診断などで指摘されているようなら、まずは生活習慣改善、それでダメなら薬物治療の検討が必要です。

さて、認知症の連載で、なぜここまで脂質異常症の話をするのか。それは、脂質異常症が認知症の発症に関与するとみられているからです。

そもそも脂質異常症は前述の通り脳卒中の危険因子で、血管性認知症のリスクを高めます。さらにはアルツハイマー型認知症の関連も報告されています。脂質異常症の中でも、高LDLコレステロールと低HDLコレステロールがアルツハイマー病の発症リスクに影響を与えるとされています。

ただ、脂質異常症がアルツハイマーの発症を抑制するとの報告もあるんですね。「脂質異常症=アルツハイマーの危険因子」とする一定の見解はまだ得られていない状況ですが、血管性認知症との関係は明らかなわけですから、「認知症の発症前に対策を講じよう」と常から言っている私としては、コレステロールが高ければ、速やかに生活の改善、必要に応じての薬の治療を開始してほしい。

その後のYさんですが、最近、LDLコレステロールを下げる薬を飲み始めたそうです。

Yさんと同様「コレステロールが高い」と言われていたテニス仲間が脳梗塞を起こしたことがきっかけ。幸いにも命に別条はなく、後遺症もなかったそうですが、その仲間の話を聞いて「コレステロールが高いのは、まずいんだな」と考えるようになったとのことでした。

(新井平伊/順天堂大学医学部名誉教授)

数時間の記憶がまったくない! 中高年に起こりがちな「一過性全健忘」


記憶喪失なんて、ドラマの中だけのことと思っていませんか? 実は、数時間~1日程度の記憶を失うことは、想像しているよりもよくあることなのです。

具体的には、人口10万人に対して年間5人ほどが、「一過性全健忘」と呼ばれる一時的な記憶喪失を起こしています。ここでは、この一過性全健忘について解説します。
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◆ある時間内の記憶がすっぽり抜け落ちる

「一過性全健忘」(Transient Global Amnesia=TGA)とは、何の前兆もなく、数時間~24時間程度の間の記憶がなくなってしまう記憶喪失です。

脳の記憶をつかさどる部位の海馬に血流障害が起こるなど、何らかの原因で一時的に機能不全を起こす症状です。これにより、文字どおり一過性の健忘(物忘れ)をきたす疾患で、詳しい原因はわかっていません。

一過性全健忘の発作を起こすと、その間の記憶が形成されません。この発作は数時間で回復しますが、発作中の短期記憶および近時記憶(数分間~数十日間保持される記憶のこと)を失った状態になります。

発作中でも意識は明確にあり、日常の動作にも変わった点は見られませんが、発作中に起こったことの記憶がまったくなく、周囲の人と話が合わないため、本人は不安に陥ります。
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◆発作中の記憶は戻らない

一過性全健忘は40~80歳で発症することが多いと言われています。発作が起きている間は自分が何をしているのかが記憶に残らないため、周囲の人にしつこく同じような質問を繰り返すことがあります。このため、家族や身近な人が異常に気がつくことが多いのです。

また、発作が治まった直後に、数時間前からの記憶を失っていることに気づくことがあります。例えば、自動車を運転している時、どこへ行くために運転しているのかわからなくなるといったケースです。

発作は1~24時間ほど続きますが、たいていは1回きりです。何度も起こることはめったになく、再発率は10%程度と言われています。ただし、発作が治まって正常に戻っても、発作中の出来事はまったく覚えていません。

◆一過性全健忘の診断と治療

通常、発作後すぐの脳波やMRI検査では異常が見られません。最近になって、一過性全健忘の発作から1~3日後に脳のMRIをとると、海馬に異常な影が見つかることがわかってきました。

その他の診断基準としては、発作中の当人を目撃した周囲の人の話をもとに診断をすることもあります。てんかんのような症状や、最近頭部外傷などを負った人は、一過性全健忘とは別の記憶障害だと考えられます。

発作の数日~数週間前から、精神的または身体的に疲労した状態にある人が、外部から何らかの刺激を受け、その直後に生じることが多いと言われています。

具体的には、ランニング、体操などの身体的な活動のほか、性交、重要な会議、突然の配偶者の死、水泳など冷水との接触、急性の疼痛などの感覚刺激が、発作を誘発すると考えられています。
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◆特別な治療は不要

一過性全健忘は、特別な治療を施さなくても自然に治るため、特に治療は必要ありません。予後も良好です。とはいえ、突然の記憶喪失に戸惑い、強い不安感を抱く患者が多いのも事実です。

患者には、脳に何か重大な病気があるわけではなく、記憶以外の脳機能にはまったく異常がなかいことなどを、十分に説明し、理解してもらう必要があるでしょう。不安感が強ければ、抗不安薬が処方されることもあります。

執筆:南部 洋子(看護師)
監修:岡本 良平(東京医科歯科大学名誉教授)

「うつ」にならない食生活とは? 大切なのは一汁三菜と「○食」からの脱却


食事は私たちの元気の源。昔から「腹が減っては戦はできぬ」と言いますが、実際にお腹が空いていると、元気も無くなりがちです。一方、仲間同士で食卓を囲み、おいしい食事を楽しみながら会話が弾めば、少し疲れているときでも元気が出て来るもの。

 忙しさに追われやすい現代社会において、人によっては食を軽視してしまいがちですが、食生活は心の健康維持の大切な柱でもあるのです。食事と心の健康の関係について解説します。

■毎日の食べ物が、あなたそのものになっていきます

 私たちは生物である以上、体が必要とする物質を食べ物から体に摂り入れる必要があります。私たちが食べたものが、私たち自身になっていくと言えるでしょう。

 健康を維持していく上で食生活が重要であることは、皆さんもよくご存知の通り。たとえば、忙しくて食事がいい加減になると、風邪を引きやすくなったりしませんか? 食生活の内容と体の調子は連動するのです。

 メンタル面も同様です。「やる気が出ない」「集中力が続かない」といった精神的な不調も、いわゆるココロの問題ではなく、「脳」の活動状態が反映されたもの。脳が良好に機能するため必要な物質もまた、私たちは食べ物から摂取しています。

たとえば、脳内神経伝達物質は神経細胞間の情報伝達を行ないます。そ

の働きに不調が生じると、精神症状が現れやすくなります。たとえば、セロトニンは、うつ病に関連深い脳内神経伝達物質。セロトニンの原料は必須アミノ酸の一種、トリプトファンです。私たちが食べるタンパク質に含まれています。
 
 基本的に「一汁三菜」のしっかりした食生活を守っていれば、通常は何らかの深刻かつ不可逆的な症状が現われるような事は起こりません。しかし、たとえば慢性アルコール依存症では、食生活の中心がアルコールになってしまい、ビタミンB1欠乏症が生じる可能性があります。

ビタミンB1は脳が良好に機能するために重要な栄養素。ビタミンB1が長期間欠乏すると、脳内の一部の神経細胞に変性が起こり、記憶障害などが出現するコルサコフ症候群になる可能性などもあります。

■心を健康にしてくれる、誰かと共にする食事時間

 食事には体が必要とする栄養を摂取する役割の他、食事を通じて誰かと時間を共にするという面もあります。もっとも、食事を一人で済まさなければならない場合もあるとは思いますが、誰かしら人と一緒に食卓を囲むことは大切です。

 家庭での一家だんらんの食事に限らず、たとえば、職場の食堂で他の同僚と一緒に昼食のテーブルを囲んだり、ときには仲間同士の食事会に出かけたりするのも良いものです。皆と一緒においしい食事をする時間は、心も満たしてくれます。

会話がはずみ、普段、口にしないような愚痴をこぼしてしまうこともあるかもしれませんが、心の内を言葉にして、口から出す事はストレス対策の基本でもあります。

たとえばママ友同士のランチ会では、時に夫の愚痴をこぼし合うこともあるかもしれませんが、それも必ずしも悪いことではなく、家庭円満のために日ごろのストレスを上手に解消していると見る事もできるのです。

■心にも体にも欠かせない! 医食同源としての食

 心身の調子が悪いとき、普段と違うものを食べて元気をつける事はよくあると思います。こういうときにはこれを食べる、これを飲むといった決まりがあるご家庭もあるでしょう。

たとえば、子どものころは風邪で寝込むと母親が温かいレモネードを出してくれた、といった事は、大人になってからも覚えているもの。実際、レモネードの元となるレモンには免疫を強化する働きがあるビタミンCが豊富で、体内で白血球が風邪のウイルスと闘いやすくなるという効果もあります。

 また、疲れて集中力が落ちてしまったとき、チョコレートを一口、口にしたら頭がすっきり! また頑張る気が出てきた、といったことはありませんか? チョコレートのカロリーは脳のエネルギー源。

また、チョコレートには脳内でエンドルフィンと呼ばれる、気分が良くなる物質を分泌させる働きもあります。ただ、言わずもがなとは思いますが、食べ過ぎには注意が必要です。

 そして、食事の栄養素自体が心の病気の予防にもつながることがあります。たとえば、冬季うつ病は冬季の日照時間の短さが原因と考えられています。

実際、冬季に日照時間が極端に短い、フィンランド、スウェーデンなど北欧諸国では冬季うつ病の発症率は高率。しかし、例外的にアイスランドでは冬季うつ病の発症率は低率です。その原因は、アイスランドの食生活にあると考えられています。

アイスランドの食生活は魚が中心。魚の油脂、特に、アジやサバといった、いわゆる青魚にはDHA、EPAなど、抗うつ効果があるとされる物質が豊富。青魚はアレルギーがあるのでダメといった理由がなければ、食事のラインアップに入れてみるのはいかがでしょう?

 食生活は、ただ空腹を満たすため、体の機能維持のために何かを口に入れればよい、というものではありません。心の健康のためにも、食生活が大切であることを、ぜひ知っておいて下さい。

ぼくもそうだったけど、マスコミは認知症の理解が浅い


認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」の筆者で、認知症早期治療を始めて1年半になる山本朋史記者。マスコミの取材を受けて、こんなことに気づいたという。

*  *  *

 これまで、認知症が引き起こす徘徊などという現実がマスコミで大きく取り上げられてきた。主に認知症の人たちを支えて苦闘する家族や介護者の立場からのアプローチが多かったように思う。

 65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症になる可能性が高いと言われてから、最近は認知症予防に報道の重点は移ってきたようにも思う。早期発見、早期治療の前提は偏見をなくすことだ。その流れをつくろうとするときに、ぼくは格好の狂言回しだったのだろう。

 しかし、NHKの専門記者などこの問題と長く取り組んできたスタッフは別として、認知症や軽度認知障害(MCI)に対するメディアの理解はまだ浅いとつくづく思う。

ある民放テレビのディレクターは何回もMCIと精密検査のMRIという言葉を間違えたし、別の記者は、ぼくがコンビニおにぎりのセロハンをはがして食べるのを見ながら、

「上手にはがせるんですね。認知症の方はうまくいかないと言いますよね」

 と言われた。驚いた。MCIと認知症が一緒のものだと思っていたようだ。ぼくも自分がMCIと診断されるまでは、軽度認知障害というのは「軽度認知症」と思っていたのだから、他人のことは言えないが……。

 ぼくは取材であれ講演の依頼であれ、こんな自分の経験が役に立つのであれば協力したいと思っている。

話をすることで自分の頭も整理されるような気がするからだ。すでに、来年9月に熊本市で開かれる日本早期認知症学会での当事者としてのスピーチまで、講演の依頼が何件か来ている。

 マスコミの取材を受けたおかげで新しい発見もあった。ぼくを診てくれた東京医科歯科大学特任教授の朝田隆医師がどうしてMCIと判断したか。それまで、

「MRIの画像では脳の海馬の部分の萎縮は年齢相応のものですが、敏捷性に少し問題があるのと認知機能検査でのケアレスミスが多い」

 という理由でMCIと診断したと説明されて了解していたのだが、テレビ朝日・スーパーJチャンネルのディレクターの粘っこい追及で、朝田医師はぼくの脳血流スペクトの画像を示して、こう言った。

「山本さんの脳のこの部分の血流が一般の人に比べると悪い。これです。この部分。これも判断材料の一つになりました」

 同席していたぼくは、ここで初めて深く腑に落ちたのだ。確かに画像を見る限り、血流が流れていると赤い画像になるのに、流れが悪くなっているやや青い画像の部分が何カ所か見られた。ぼくは本当のことを知るのが怖かったのかもしれない。

朝田医師を問い詰めるということをしていなかった。改めて説明を請うと、

「テレビの人には画像で説明したほうが納得してくれるので脳の血流スペクトの話をしました。もちろん、山本さんの脳の血流が後頭葉で悪いのは事実です。ただ、検査した日にちによっても違うでしょうし、個体差もある。それほど大きな問題点ではありません」

 朝田医師は丁寧に解説してくれた。本当に? ぼくは疑心暗鬼に陥っている。心配だ。だけど、右往左往しながらも、早期治療を続けるしかない。

うつ患った精神科医「病気直しより生き方直しを」


自らもうつ病を患った経験のある、精神科医の宮島賢也さん。激務の中、診断され病名が付いたことでホッとしたという。治療には、生活習慣を整え、考え方を変えることが大事だと訴える。

 僕は1999年、母校の防衛医科大学校で研修医をスタートしましたが、一番つらかったのは、循環器内科の研修医だった時です。医師免許を取得して1年、臨床研修も1年程度の経験しかないのに、看護師に指示を出さねばならず、不安で仕方ありませんでした。

 病棟業務は早朝から始まり、夜は膨大な量のデータ整理、カルテ書きが待っています。研修医が提出しなければならない回診のレポートは、同期が要領よくやっているのに、僕は「完璧に仕上げないといけない」と思い込み、大事なデータと大事でないデータの区別もよく分からず、徹夜になることも度々。

重篤な患者さんが多い循環器内科は24時間いつ呼び出されるか分かりません。体も心も休まる時がなく、1、2カ月たつとしんどくなってきましたが、ラグビー部根性で病棟には出ていました。が、僕の様子がおかしいことに周りが気づき、結局、医局長から1カ月休むように言われました。

 休み中も「僕は医者としてやっていけるだろうか」と不安は大きくなる一方でした。復帰前、循環器内科は無理だと考え、総合臨床部へ異動。こちらは、夜はほとんど呼び出されず、以前より体は楽になりました。

ところが、やる気は戻りません。集中力に欠け、「早朝に目が覚める」「食欲がない」という状況は変わりませんでした。

 勤務先の精神科を受診すると、診断は「うつ病」。実は、診断されてホッとしたんです。僕が仕事ができないのは病気だからだと納得できた。「病名」が必要だったんですね。

しかし、処方された抗うつ薬などを飲み続けましたが、症状は重くなったり、軽くなったりの繰り返しでした。

 再度、研修先を精神科に変えたのは、自分のうつを治したかったことと、うつ病にははっきりとした「診断基準」があるため、これなら自分の診断にも不安を抱かないだろうと思ったからです。

ところが、間違った診断をすれば、その患者は一生、誤った薬を飲み続けるかもしれないと思い始めたら、常に誤診におびえるようになりました。

 自分自身のうつも患者も治せないまま7年。医者を辞めたくても、今後のお金の心配から辞められません。そこで『金持ち父さん貧乏父さん』を始め、何冊もお金の本を読み、医者を辞めても稼ぐ方法を模索しました。

そんな僕にとって大きな転機となったのが、『成功の9ステップ』という成功哲学本との出合いです。医者は病気の専門家であって健康のことを知らない、という指摘に衝撃を受けました。僕自身、病気の治療については学んでいても、健康には疎かったからです。

 うつを治すには生活習慣を改善し、考え方、生き方を変えることがポイントです。今では、病気治しより生き方直しを提案しています。僕自身、「自分を楽にする考え方」を探り、言葉や人間関係を変えました。

同時に、食生活も果物や野菜、玄米を食べるように。職場に玄米ご飯を持参し、キュウリ、ピーマン、キャベツ、にんじんなどを生のままかじることもありました。

 医師としても、「患者さんは病気で自らの生き方を変えるチャンスをもらった。患者さんが主役で僕はサポーターなんだ」と気づくと、気持ちが楽になりました。うつは「それを続けると苦しいよ」という体からの愛のメッセージだと感じています。

「定年後うつ」の予防に良い!? ルー大柴さんも実践する「●●」とは?


タレントのルー大柴さん(61歳)には意外な一面がありました。それは、掃除です。60歳を過ぎて社会貢献について考えるようになったルーさんは、富士の樹海の掃除や公衆トイレ掃除を定期的に行っているといいます。

トイレ掃除は、朝の日課である太極拳の仲間の影響ではじめ、月1回ペース。富士の樹海については年に2、3回掃除をしに行っているそうです。

古くから掃除は心の健康と結び付けて考えられてきました。富士の樹海や公衆トイレの掃除といった社会貢献は、ルーさん自身の心にも良い影響を与えているはず。私たちの心の健康を考える上で大いに参考になります。

とりわけ、帰属してきた組織から離れたことがきっかけで発症する「定年後うつ」の予防に良いと考えられます。ここでは、掃除の効用について見ておきましょう。

◆日本独自の行動療法「森田療法」

うつ病治療に用いられる森田療法は「寝ること、掃除すること」を重視する、日本独自の行動療法です。日本においては、言葉による論理的な解釈をベースにした夢分析や深層心理の分析は普及しませんでした。

西洋文化と異なり、日本には懺悔(さんげ)によって内面を誰かに語るという習慣がなかったことが関係していると考えられます。

医学者・森田正馬(もりた まさたけ)は、「あるがままでよい、あるがままよりほかに仕方がない、あるがままでなければならない」との思想を持ち、絶対臥褥(ぜったいがじょく)に始まる治療法、「森田療法」を作りました。

絶対臥褥とは、食事と排泄以外の一切の行動を行わずに過ごすこと。こうして英気を養った後、掃除を中心とする軽作業に進みます。森田療法は現在も行われており、東洋的な行動療法として注目されています。

◆掃除の五徳とは?

医療法人和楽会・貝谷久宣理事長の「掃除の五徳」を読むと、掃除が心にどのような影響を与えてくれるのかがよく分かります。以下はその要約です。

第1の徳:掃除には「汚れを祓う(はらう)」という意味があり、清らかな心でいられます。

第2の徳:実際に部屋がきれいになるので、清々しい気持ちになります。

第3の徳:掃除はよい運動になり、抗ストレスホルモンや神経細胞を活発にします。

第4の徳:掃除をするとは働くことです。家族の見る目も変わってきます。

第5の徳:掃除に熱中すれば過去を後悔したりせず、「今に生きる」ことができます。

◆仕事一筋は「定年後うつ」になりやすい

ルー大柴さんは、在職中に会社のトイレ掃除をし、仕事をリタイアした後も公園の掃除をしているという仲間の話に共感したといいます。実は、定年後に継続できる活動を在職中から始めることには、老後の生活を充実させる上で非常に大きな意味があります。

自分を仕事一筋の人間と自覚している人は、定年後に取り組める活動を見つけておくことが賢明です。人は、会社組織、家族、趣味の仲間など、複数のコミュニティーから評価され、自己肯定感を持つことで心の安定をはかることができます。

しかし、会社組織からの評価だけを重視していると、それを失ったときの反動も大きくなります。定年で職場との関係がなくなった途端に気持ちの張りを失って、「定年後うつ」になってしまう人が少なくありません。

定年を迎え、無気力な状態になってしまってから、新たな楽しみを見つけるのはなかなか難しいでしょう。

定年前から何か活動を始めておきたいものです。掃除はその有力な候補になります。仲間といっしょに行えれば理想的です。近所の人からの「ありがとう」は、想像している以上に心の栄養になることでしょう。

<参考>
ルー大柴 月1で公衆トイレ清掃「クリーンな気持ちになる」
http://www.news-postseven.com/archives/20150711_334829.html

掃除の五徳(医療法人和楽会)
http://www.fuanclinic.com/sonota/vol_52a.htm

監修:坂本 忍(医学博士)

「うつ病」を克服した経営者が語る復活までの2年半の軌跡:その3  「うつ」の地獄への入り口は……


現在、経営者として活躍中の村井氏は、3年前に突然うつ病になり、様々な苦しみを経験しながらも、克服しました。

村井氏は、うつ病に苦しむ人々の為に改善のきっかけになればと考え、自らの体験を執筆しようと決意しました。今回は、村井氏が、うつ的症状に至った経緯について、ご紹介します。

◆業績の不振が人生を狂わせた
3年前の夏を過ぎた頃から業績の不振が資金繰りの悪化に直結し始めました。そうなってくると1件1件の営業中の商談の早期クロージングが日々重みを増してきます。

全国から入ってくる失注の報告が事業の維持・継続に堪(こたえ)ます。堅いと思っていた大型商談 の確定が1ヶ月先延ばしとの報告を受けて、福岡空港国内入口の1Fロビーで周囲を憚(はばか)ることなく、座り込んだのを今でも覚えています。

この商談は大丈夫かと考え過ぎ、営業マンの活動に不安と不満を覚え、こちらの想定通りに決まらなかった場合に備えて、自らが陣頭に立ち営業に専念しよう…と決意しました。

私にも、営業最前線のメンバーにも、常にプレッシャーのかかる日々が長く続きました。

◆失われる快眠 崩れる生活パターン
こんな状況で一日を終え、帰宅しても、商談の進捗が気になり、深夜近くまでメンバーにメールで指示を出すようになりました。

ベッドに入るのが25:00~26:00、以前だったら身も心も疲れ切って、1分もかからず に睡眠に入っていたのが、だんだんと寝付きも悪くなり、1時間以上寝付けない日も出てきました。

それでいて、途中で何度も目が覚めます。二度寝、三度寝としているうちに、季節も冬に向かっていたせいもあり、朝ベッドから出るのが本当に億劫(おっくう)になっていました。

続けてきた“朝1番出社”からは真逆のギリギリ出社となり、体調不良と言うことで、定時出社が出来ない日が週に1回は出てくるようになりました。

◆そして…沈んでいく気持ち
これまでの生活パターンが崩れていく事実が、さらに気持ちを沈ませていきました。社員の誰よりも働いているから、社員がついてきてくれているのだという自信が崩壊し始めたのです。

そうやって、自信喪失の負のスパイラルに完全に嵌(はま)って行ったのでした。

それまでは、フルに活動をした一日を終えると、体は鉛のように疲れますが、マッサージに行くと直ぐに蘇(よみがえ)って、それなりに気持ちが良くなっていたのですが、その頃になるとマッサージに行って90分間しっかりと体をほぐして貰っても、全然気持ち良くなりません。体全体の疲れを感じる感覚が鈍っている感じで、心はいつもワサワサしていました。

◆次々と襲う「異変」

第一の異変
その当時、日中は高い緊張を強いられる経済産業省の委員会への参考人出席などの仕事も入っていました。ある日、私の発表の順番が回ってくる直前になると 激しい動悸が始まり、足の震えが止まらないという事がありました。

動画放送の収録中ですが、席を外そう、外そうと心が大きく動くのです。突然襲った衝動を我慢しながら、TVにもよくコメンテーターとして出演されている有名な大学教授の発言に対し「こんなこと価値があるのか」「早くやめろ!」と言いたくて仕方がないという新たな衝動が生じます。

何かとんでもないことが自分の心の中で起こっていることに対する不安はMAXに達しました。

流石に心配になり、かかり付けの、内科の先生のところに行きました。診断は、「極度に疲れが溜まって来ているので、まずは睡眠をしっかりと取ってください。」と言うことで、少量の安定剤(デパス)を寝る前に飲むようにと処方されました。

しかし、眠れない日、眠った感覚がない日は減りませんでした。

そして第二の異変
そんな健康状態の中、数社のお客様と一緒に台湾に太陽光 発電所やパネル製造工場の視察に行きました。その時は、引率者としての緊張感もあったので、お客様がナイトツアーに行っている間に、自身はマッサージ師を呼んで、90分間の施術をしてもらいました。そこで、また異変が起こったのです。

30分を過ぎた頃からうつぶせ状態になっていること自体が物凄い苦痛に感じられて来ました。何か、心がイラつくのです。体勢を入れ替えてもその感覚は続き、マッサージが終わっても、体が軽くなったと言う感覚は全くありませんでした。

第三の異変…そして地獄の入口に
帰国した自宅の風呂場で次の異変がありました。旅行中も胸や脇の当たりが“痒い”と言う感覚がありましたが、暑さのせいだと思っていました。 しかし、風呂場の鏡を見て驚きました。

真っ赤な発疹(蕁麻疹・じんましん)が体中に拡がり、体全体が腫れているのです。正直、蕁麻疹など出たことがなかったので、大変驚きました。

もちろん翌日、朝一番で病院に行って、抗生物質を貰い、それは2日で治まりましたが、先生に今でも眠れないことを伝えると、「じゃ、軽い睡眠薬を出しましょう。」「企業幹部やエグゼクティティブの多くは普通に安定剤を飲んでいます。

睡眠薬も結構飲んでいますよ。まずは、睡眠を取ることです。私も飲んでいますし、睡眠薬も軽いものですから…。」と言うことで、睡眠薬(マイスリー)を処方されました。

後年、これが立派な「抗うつ剤」のひとつであることを知りまし た。当時は自分が「うつ」だなんて微塵にも思っていませんでしたが、今考えるとこれがうつ病の地獄の入口をノックした瞬間だったのです。

次回からは、実際に私が体験したうつ病治療の真実についてお話します。なお本文に記載されている医療情報については、精神医療学会の権威である、川村総合診療院(臨床分子精神医学研究所併設)院長の川村則之先生にご監修を頂いております。

<執筆>村井哲之
広島大学 政治経済学部 経済学科卒
法政大学環境マネジメント研究科修士課程中退
事業構想大学院大学 研究員
環境プランナー

「見える化」でうつ診断 強力な武器が保険適用に


診断が難しいこともあるうつ病。その判断にあたって大きな武器となる検査が、保険適用になった。

 うつ病は患者自身の訴えを主な材料にして診断されている。躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(躁うつ病)、統合失調症、認知症など、似たようなうつ症状を示す病気がいくつもあり、精神科医でも診断を間違えることがある。

 こうした類似の精神疾患を鑑別する方法として注目されているのが、近赤外光を用いて脳血流量の変化を測定する「光トポグラフィー検査」だ。

 近赤外光を照射するヘッドギア(写真)をかぶり、目の前のモニターから出される簡単な課題に答えていく。

 脳が活動を始めると、思考などを司る前頭葉の神経細胞が活発に働き、大量の酸素が必要になるため、脳の血流量が増加する。精神疾患ではそれぞれの病気ごとに血流量の変化に特有のパターンがあり、そのパターンから「健常」

「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」「その他」を判別できるのだ。検査は15分ほどで終了し、痛みや副作用もない。

 判別しづらい検査結果が出ることもあり、これだけで診断を確定するわけではないが、正しい診断にたどり着くための強力な武器になる。検査結果が画像で「見える化」されるので、患者が診断に納得しやすいという利点もある。
 
 09年から厚生労働省の先進医療の一つとして実施されてきたが、昨年4月からは基準を満たす医療機関なら保険が適用されるようになっている。

太っている人、痩せている人、認知症のリスクが高いのはどっち?


英ロンドン衛生熱帯医学大学院のナワブ・クズルバシュ氏らは、40歳以上の約200万人分のデータを分析したところ、中高年のときに痩せていた人(BMI=肥満指数20未満)は、将来的に認知症になる危険性が3割以上高まることが分かったと、4月10日発行の英医学誌「ランセット」の姉妹誌(電子版)に発表した。
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◆肥満度の影響は15年後も変わらず

クズルバシュ氏らは、500万人分以上が登録されている英国の診療データベースから、40歳以上の195万8,191人(年齢55歳、BMI 26.4=いずれも中央値=)を9年間ほど追跡調査し、肥満度と認知症の関係を分析した。

その結果、中高年のときに痩せていた人(BMI 20未満)は、健康的な体重の人と比べて将来に認知症と診断される危険性が34%高かった。こうしたリスクの上昇は、BMIの測定から15年以上たっても維持されたという。

BMIは体重(キロ)÷身長(メートル)の2乗で計算される肥満指数で、日本肥満学会の基準では18.5未満が「低体重」とされており、今回の基準値である20未満は一部が「普通体重」に分類される。「肥満」は25以上。

BMI 20は身長170センチならば体重57キロ程度、160センチならば51キロ程度となる。
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◆肥満の人ではリスク低下

一方、中高年のときのBMIが高まるにつれて認知症リスクは下がっていき、BMI 40を超える極度な肥満の人でも、健康的な体重の人と比べて認知症になる危険性が29%低かった。

これまでの研究では、中年のときに肥満だと将来的の認知症リスクを高めると報告されていたが、今回の結果は真逆のものとなった。

なお、米疾病対策センター(CDC)が世界の研究結果を評価したところ、BMI 25~30の小太り(日本肥満学会の基準では「肥満1度」)で最も死亡リスクが低かったとしている(関連記事:300万人が証明! 小太りは長生き―米当局の評価)。

共同研究者である同大学院のスチュアート・ポーコック教授は「専門家らに、認知症リスクの高い集団について再考を迫るもの」と指摘。「BMIが高いの人で認知症リスクが低い原因を見つけられれば、認知症の新しい治療法を開発できるかもしれない」と付け加えてた。

一方で、米ニューヨーク州立大学ダウンステート医療センターのデボラ・グスタフソン教授は、同誌の付随論評で「BMIと認知症に関してこれまでに発表された研究結果は一貫しておらず、中年のときにBMIが高いと認知症リスクも高まるとしたものもある。

こうした研究では、影響を与えるさまざまなを要素を考慮する必要があり、要素を特定することは複雑で難しい」と述べ、さらなる研究の必要性を訴えた。

抗うつ薬「8割の患者に無意味」? それでも処方される理由


アベノミクスで株価は上がっても、仕事のストレスが原因でメンタルクリニックを訪れる人は減らない。昔に比べ受診しやすくなり、服薬への抵抗感も薄れたが、向精神薬の副作用や依存症のリスクを、患者はどこまで知っているのだろうか。

 埼玉県の獨協医科大学越谷病院こころの診療科では“薬に頼らない治療”をコンセプトに掲げている。『うつの8割に薬は無意味』(朝日新書)を著した同科教授の井原裕医師は、こう説く。

「NNTといって、薬の効能を示す指標があります。09年に発表された論文によると、うつ病にSSRI(抗うつ薬は、化学構造の違いから「三環系」「四環系」「SSRI」「SNRI」などに分類される)を処方した場合のNNTは7~8。

つまり、抗うつ薬で治るのは7~8人のうち1人です。2012年に発表された論文ではNNT3~8でした。間をとって仮にNNT5とすれば、抗うつ薬が効くのは20%。8割の患者に無意味なのです」

 08年以降、SSRIとプラセボ(偽薬)の効果を比較した結果、軽症から中等症までで大差なく、重症例に限って有効とする論文も複数発表された。日本うつ病学会は12年のガイドライン作成以降、軽度うつ病に対する積極的な抗うつ薬投与を推奨していない。

 だが、井原医師は「抗うつ薬の投与は減っていない」と言う。なぜ、8割の患者に効かない薬が当たり前のように処方されるのか? その背景には、製薬会社の販売戦略が隠れている。

「うつは心の風邪」というキャッチコピーを覚えている人も多いだろう。SSRIが認可された1999年ごろ、製薬会社によるうつ病啓発キャンペーンに使われた。井原医師は、偏見を持たれていた精神科のハードルが下がったのはいいが、行きすぎたと指摘する。

「薬の販売促進を目的に、病気の怖さを大げさに宣伝する『疾患喧伝』という手法があります。2週間以上、憂うつな気分が続くなら早く医師に相談しろ、早期治療が必要だと騒ぎ立てた結果、多くの『悩める健康人』までうつ病に仕立て上げられた」

 厚生労働省の患者調査によると、99年に約44万人だった「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」の総患者数は02年に約71万人。11年には約96万人まで増加した。

比例するように抗うつ薬の市場規模も拡大。05年は790億円だった売り上げが、13年に1176億円。22年には1500億円を超える見通しだ(富士経済調べ)。

父に殴られ「キーボー」負傷! 認知症にともなう暴力に直面したら?


7月2日、歌手の山田喜代子さんが父親に清掃用の水切りワイパーで殴られ、負傷しました。

山田さんは「ヒロシ&キーボー」のキーボー。「ヒロシ&キーボー」は80年代の大ヒット曲「3年目の浮気」で有名です。山田さんは、半身麻痺の母親と認知症の父親の介護をしていました。ここでは、認知症と暴力行為との関連についてみておきましょう。

◆脳機能の低下で感情の抑制が困難になる
認知症は脳機能が低下する病気です。うつ病などの心の病気と異なるのは、画像検査によって脳の委縮が確認できる点です。脳機能の低下は感情の抑制を困難にします。

一方で、認知症の患者さんは自尊心を持っており、軽視されたり、不当に扱われたりすることに敏感で、怒りを感じやすくなります。介護者に対して、「体に触れた」などをきっかけに暴力をふるってしまうことがあります。

◆レビー小体型認知症にみられる妄想
誤りであることを指摘しても訂正することができない間違った考えを「妄想」といいます。認知症の患者さんは、「ものを盗まれた」「のけものにされた」「浮気された」といった妄想を抱くことがあります。

認知症にはさまざまなタイプがありますが、中でもレビー小体型認知症では妄想が主症状となっており、約8割の患者さんに認められるといいます。

妄想に由来する怒りが暴力行為に発展しそうなときは、部屋を移動するなど、一時的に距離をとって落ち着くのを待ちます。しかし、脳の神経細胞の変性に由来する妄想は、対応の仕方で改善に導くことは困難です。

医療現場では副作用に留意しつつ、抗パーキンソン剤や抗精神病薬が用いられます。

◆対抗せずに離れるのが基本
認知症にともなう暴力行為は、本人が真実と思い込んでいる妄想を原因としていることが少なくありません。

しかし、「貴方は勘違いしている」「嘘をついているのは貴方の方だ」というように対抗しても、本人の自尊心を傷つけ、かえって怒りを助長してしまいます。

興奮状態のときは説得するよりも距離をとることが基本とされています。ヘルパーさんなど、一時的に家族以外の人が介護することで興奮が収まることもあります。

怒りやすい、暴言・暴力をふるう、といった問題が老化に由来するものなのか、病気に由来するものなのかの区別は容易ではありません。レビー小体型認知症の例もあるように、介護者の対応で改善するのかしないのかの判断も困難です。

「物忘れ外来」や「認知症外来」というかたちで、認知症に関する検査、治療を行っている医療機関もあります。そこでは対応の仕方についてアドバイスをもらったり、必要な場合に薬の処方を受けることができます。

介護中の暴力に悩んでいる方は、専門家のいる医療機関の受診を検討しておきましょう。一方で、介護をする側の心構えとして、幼児言葉を使う、下にみるような態度をとる、といった介護を受ける人の自尊心を傷つける行動を慎むことが大切です。

監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)

認知症予備軍、血液で判定…精度8割、費用数万円


 アルツハイマー病の予備軍とされる軽度認知障害の発症を血液成分から判定できる検査法を開発したと、筑波大などの研究チームが発表した。約80%の精度があるという。

 アルツハイマー病は、原因たんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」が脳内にたまり、神経細胞を傷つけて起こるとされており、認知症の7割を占める。

内田和彦同大准教授や朝田隆東京医科歯科大特任教授らは2001~12年、茨城県利根町の住民約900人を対象に発症と、血液成分の関係を調べた。

 その結果、軽度認知障害、アルツハイマー病と進むほど、アミロイドβの脳外への排除などに関わるたんぱく質3種類が減ることが判明した。

 さらに、この3種類のたんぱく質を測ることで、軽度認知障害を高精度に判別できる検査法を開発。

7cc程度の血液を採って調べる。全国約400か所の医療機関で検査を受けられるようにした。保険はきかず、検査費は数万円。

 研究チームは「60歳以上で、症状がない人や、物忘れなどの異変に家族が気づいた人に適している。運動や頭の体操など発症予防のプログラムにつなげることにも使える」としている。

 ◆軽度認知障害=記憶力や判断力などの認知機能は低下しているが、日常生活に支障をきたす「認知症」と診断されるほどではない状態。その後、認知症に進行する人がいる一方、正常な認知機能に回復する人もいる。

意外?うつ病患者に多い肥満 その食生活の特徴


決して他人事ではない病、うつ病。最近では薬での治療以外にも、食生活からアプローチする方法があるという。

 食欲がなくてげっそり…。うつ病の患者といえば、そんなイメージがあるかもしれないが、意外なことに肥満が多い。

「食事を準備する気力がなく、朝食を抜いてしまう。

昼や夜は外食や買ってきたものが中心で、肉類や炭水化物をとりすぎる傾向があります。夜中、眠れずにスナック菓子などを食べてしまい、肥満になるのです」と、国立精神・神経医療研究センターの今泉博文氏は話す。

 うつ病患者は、まじめで自分に厳しい性格の人が多いとされる。それがあだとなり、極端な食事をしている例も多いそうだ。

「『一日1食がいい』と書かれた本を読めばその通りにし、牛乳が体にいいと聞けば6リットルも飲んでしまう。健康のためにと、通常の食事のほかにプロテインの栄養補助食品を大量にとり、タンパク質過多で太ってしまう人もいました」

 うつ病と食事の関係は、近年、研究が進んできた。食生活が乱れ、必要な栄養が不足することで症状が悪化すると考えられている。また、人によっては抗うつ薬の副作用で食欲が増すこともある。

誰かと一緒に食べていれば、食事の偏りに気づきやすいが、うつ病の患者は「孤食」が多い。今泉氏は、食事や栄養の指導を通して、通常の薬物療法を補完している。

「ビタミン・ミネラルでは、ビタミンB群、葉酸、鉄、亜鉛。脂肪酸ではDHA、EPA。アミノ酸ではトリプトファン、チロシン…。うつ病と関係が深いと報告されている栄養素はいくつもあります。野菜や果物、魚などに豊富で、うつ病の患者は不足しがちです」

 ただ、栄養素の改善は生活リズムと食生活が整ってからの課題。それよりも、過不足なく3食食べるための指導が先だ。

「手間のかかるカロリー計算はせず、『お菓子は半分』『牛乳は朝コップ1杯』など、ハードルの低い指導から始めます。

自炊が難しい患者も多いので、缶詰や加工食品に野菜を追加して食べる方法などを教えています。休職して食費を切り詰めている人もいますから、安上がりに済ませられることも重要です」

梅雨はうつになりやすい? 雨と心の関係


梅雨の季節はなんだかうっとうしくって、気分が晴れない! という方が非常に多いのではないでしょうか。中には、この気候が災いしてうつ状態に陥ってしまうというケースもあるようです。今回は、そんな梅雨とうつの関係性について解説いただきました。

■ 季節性うつ病に要注意!
「季節性うつ病」は、特に冬季に起こりやすいことで知られていますが、じつは日照時間と関係があることがわかってきました。

私たち人間は太陽の光を浴びる時間が少なくなると、メラトニンやセロトニンというホルモンが減少。これにより気分が沈みやすくなったり、やる気が低下する抑鬱気分の他、睡眠や覚醒リズムが崩れたりするのです。

■ 日照時間+湿度=梅雨のうつ
つまり、雨の続く梅雨の時期も、冬同様に太陽を浴びる時間が短くなることで憂鬱な気持ちになりやすいわけです。

加えて、雨のために湿度が上がり、体感する不快指数もグッと高くなるので体調のバランスも崩れやすくなり、うつ状態が続きやすいと考えられます。

■ 梅雨のうつは、こんな症状が……
梅雨の時期に起こるうつでは一般的な鬱同様、次の症状が現れやすくなります。
・気分が落ち込む
・元気ややる気がでない
・物事を楽しいと感じられない
・イライラが続く
・人と会ったり外出が億劫になる
・性欲が減退する
・午前中の方が症状が強

■ 梅雨のうつを吹き飛ばす3つの改善策
1. 晴れた日は屋外へ!
季節性のウツは、日照時間が短いことが関与しているので、雨が降っていない時はできるだけ屋外に出て日光に当たるようにしましょう。たとえ、曇りでも散歩などをするだけで気分が改善されるはずです。

2. 軽い運動
軽い運動を習慣付けましょう。適度な運動はホルモンバランスを整える上で有効です。

3. ひとりで抱え込まない
ツラいと感じるときは、家族や仲間に相談を。ひとりで抱え込まず、誰かに理解と協力を得るようにすると改善が見込めます。

■ 医師からのアドバイス
どんなに改善策をとろうとも、症状がツラいときはあります。

そんなときには、内服治療や、光を照射する治療などが効果的ですので、心療内科や精神科を受診するのもおすすめです。これから始まる本格的な梅雨シーズン。抑鬱気分をうまく対処して、すっきり過ごしたいですね。

「まさか、経営者の私が、“うつ”になるなんて!」~「うつ病」の地獄から復活した2年半の軌跡~その2 何故私は“うつ”という暗闇に迷い込んだのか?



一般的に経営者は心が強いと思われていますし周りに弱みは見せないように努力しがちです。

周りの力を借りて、考え抜くことで、経営上の難局を打開できていたとしても、どう考えても進むべき方向性すら見つけられずに堂々巡りを繰り返してしまうこともあります。結果として、考えることに疲れ、ついには、体まで動かなくなってしまう……というケースもあるのです。

最終的には、肉体的にも精神的にも限界に達し、自分が生きるために、現状から逃避するしかないと思い定めてしまうのです。こうやって、心が強いはずの経営者でも「うつ」になってしまうのです。

私は、自らがもがき苦しみ、そして回復できた過程を赤裸々にすることで、私と同じように精神的に苦しんでいる経営者やビジネスパーソンの方々を、「うつ病」の苦しみから救うきっかけを作りたいと思っています。
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◆経営者としての高いプライドが、「うつ病」の原因?

遡ること3年前の秋、その新規性、新たな価値の創造を評価され数々の賞に浴してきたビジネスモデルが、東日本大震災を契機に機能しなくなりました。当然、業績は急降下です。起死回生の一打を打つには、大きな資本を必要としました。

しかし、業績の急降下を見た金融機関はお金を出してはくれません。このジレンマの中、優秀なメンバーは一人、また、一人と会社を去っていきます。会社に元気がなくなり、負のスパイラルは際限なく続くように思えました。

会社のすぐそばの自宅に帰っても、答えが出ずに、早い時間にベッドに横たわり、考え続ける日々が3ヶ月続きました。ある経営者からは、現場で素振りを繰り返していれば、必ず答えは見えてくると言われました。

頭では理解できるものの、それすらする気力も体力も徐々に失せて行きました。そして、昼間、お客様を訪ねた帰りに、駅のホームに立っているときに、線路に飛び込みたいと考える程思い詰めるようになっていったのです。

「これで楽になる!」と言うものすごい衝動が襲ってくるのです。その衝動を、歯を喰いしばって押さえている自分がいつもいました。

自分には、経営者として、事業を立ちあげたものとしての高いプライドがありました。今考えると、このプライドこそが、自らを正真正銘の「うつ病」へと突き進ませた要因のように思えます。

プライドと「うつ病」の関係について、もう少し説明します。 このところ増加傾向にある、いわゆる、「新型うつ病」では、自らの心の病の原因を周囲に求めると聞いています。

しかし経営者や企業において重要な職責にあるものにとっては、負のスパイラルに巻き込まれ、どうしようもなくなると、選択肢が2つしか見えなくなるように思います(少なくとも私の場合はそうでした)。2つの選択肢とは、死ぬか、現状を放り出し、とりあえず現状から逃げるかです。

死ぬのは怖いです。しかし、逃げ出すと「経営者失格」の烙印を押される事になります。それは、これまで偉そうに夢を語り、指導し、指示を出してきた経営者としてのプライドが許さないのです。

そうなると、これ以上頑張れないことを証明する、正式な病名のある病になることでのみプライドが維持されるのです。「病気なら仕方がない。」と周囲にも、自分にも納得させる事が出来るように思えるのです。

全従業員を前に、「自律神経失調症」で働く限界にきたと伝え、その日から、ゴールの見えない逃避的な入院生活に入りました。

しかし、振り返ると、これこそが真の苦しみの始まりでした。治療を受ける中で、逆に「うつ病」は悪化していったのです。
次回からは、そのあたりの状況を詳しくお話していきたいと思っています。

<執筆>村井哲之
広島大学 政治経済学部 経済学科卒
法政大学環境マネジメント研究科修士課程中退
環境プランナー リクルート、第二電電(現KDDI)等を経て、
現在、日本初の廃棄のコンシェルジェ
称号商社(株)イブロン代表取締役

米国神経学会がアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブのレビュー結果を発表


アルツハイマー病患者へのアデュカヌマブ使用に関するエビデンスが米国神経学会(AAN)ガイドライン小委員会により報告され、「Neurology」4月12日号に掲載された。

米メイヨークリニックのGregory S. Day氏らは、早期症候性アルツハイマー病患者へのアデュカヌマブ使用について検討された臨床試験データのシステマティックレビューを実施。クラスIと評価された臨床試験1件、クラスIIと評価された臨床試験3件のデータを用いた。

その結果、クラスI研究では、1回用量が30mg/kgまでのアデュカヌマブは安全で、忍容性が高いことが示された。また、クラスII研究の3試験全てにおいて、プラセボ群に比較してアデュカヌマブ群で1年後、脳のPET画像でアミロイド蓄積が減少するというエビデンスが示された。

クラスII研究での有効性データは用量と評価項目によってばらつきが見られたが、アデュカヌマブはClinical Dementia Rating Sum of Boxesスコアの平均変化量で効果なし、またはプラセボ群に比較して悪化が少ない(臨床的重要性は不確か)という結果となった。アミロイド関連画像異常が見られたのは、プラセボ群の10%に対し、アデュカヌマブ群では約40%だった。

Day氏は、「新たな研究データが利用可能になるまでは、現在のデータを集中的に理解することが、医師、患者とその家族がアデュカヌマブによる治療を行うかどうかを議論し決定する上で重要である」と述べている。

なお、数名の著者は、製薬業界および医療業界との利益相反(COI)を開示している。(HealthDay News 2022年3月3日)

https://consumer.healthday.com/report-presents-evidence-for-aducanumab-use-in-early-alzheimer-s-2656751965.html

Abstract/Full Text (subscription or payment may be required)

蛭子能収さんが語った〝つらくない認知症〟 ギャンブルやめて見つけたもの「知らない人と話すのが…好き」



「つらく見せなければいけないかなって思うくらい……それはだめか」。認知症について前向きに語る蛭子能収さん© withnews 提供 「つらく見せなければいけないかなって思うくらい……それはだめか」。認知症について前向きに語る蛭子能収さん

「つらく見せなければいけないかなって思うくらい……それはだめか」。認知症であることを公表している、漫画家・蛭子能収さんから返ってきたのは意外な言葉でした。

2014年に軽度認知障害と診断を受け、2020年7月に放送された健康情報番組の中で、レビー小体型認知症の可能性が高いと診断された蛭子さん。認知症になってからの日々の過ごし方や、介護の様子について、17年間連れ添うマネジャーの森永真志さんに同席してもらい、YouTube「たかまつななチャンネル」で聞きました。

デパートに電車? 幻視や頻尿も自覚なし

――本日は蛭子さんの認知症について、お伺いしたいと思っています。初めて認知症と診断されたときは、どんな気持ちでしたか?

蛭子さん)

認知症って、そんなに大した病気ではないと思っていたんです。1週間もすれば治るんじゃないかな、と。実際は長引く病気だということを、のちに知りました。それから専門の病院に行ったような気がするけど……(マネージャーの森永さんに)行ったかな?

マネージャー)

はい。今も通院していますよ。

――病院にいつ行ったか、なども忘れてしまうことがあるんですね。

マネージャー)

でも、もともと人の名前が覚えられないなど、忘れっぽいところがあります。

蛭子さん)

そう。昔から、人の名前が全然覚えられない。

――認知症としてはどんな症状がありますか。たとえばレビー小体型認知症の場合、実際には見えないものが見える「幻視」の症状が現れることもあると伺ったのですが。

蛭子さん)

俺も見たことがあるんですけど、何を見たのか忘れてしまった。デパートで何かが見えたんですよね。そんな大したものじゃないのかもしれないけど。

マネージャー)「デパートの売り場で、電車が走っているのが見えた」と話していましたよ。

蛭子さん)

電車が見えるって言ったっけ? 本当かな。要するに、ずっとボーッとしているような状態なんですよ。何かが目の前を通ったような気がするんだけど、何が通ったのかがわからない。頭の中に、情報が入ってこないような感覚なんですよね。

マネージャー)他にも、洗濯カゴを奥さんに見間違えたと言っていました。奥さんが倒れているように見えたと。

蛭子さん)

それはあったね。女房が倒れたように見えたんですけど、全然倒れていないんですよ。一緒にいたマネージャーが「違う違う」と教えてくれました。

――幻覚が見えるというのは怖いですね。

蛭子さん)

怖くはないです。幻覚を見ている、と自分で思っていないので。

――過去のインタビュー記事をいくつか読ませてもらったのですが、「レム睡眠行動障害」によって睡眠時に暴れたり、夜間頻尿があったりしたと書いていました。

蛭子さん)

自分ではそういうことがあったとは思わないんです。夜にお手洗いに行ったとかも、全然覚えていないんですけど…。

マネージャー)

一晩で5・6回は行っていましたよ。

蛭子さん)

一晩で? 自分ではわからないんですよね。

パチンコ、麻雀、競艇、全部やめた

――認知症になってから仕事や生活は変わりましたか?

蛭子さん)

仕事…変わったかね?

マネージャー)

変わりました。認知症に関する取材が多くなりましたね。

――奥様との関係性は変わりましたか?

蛭子さん)

どうだっけね。

マネージャー)

すごく変わりましたね。蛭子さんが奥さんのことを「好き好き」という感じで、ずっと奥さんのそばにいます。

蛭子さん)

離れていると、寂しいと思うようになったんですよ。すぐに家に帰りたくなっちゃう。「帰りたい、女房に会いたい」という気持ちがどんどん大きくなっている。だから、常に女房のことを考えています。

――以前は違ったのですか?

蛭子さん)

昔は怒られてばかりでした。俺がギャンブルばかりしていたので。それは間違っていたなと思いますし、今では謝りたい気持ちでいっぱいです。

最近は女房に「ありがとう」と言う回数も増えました。とにかく「ありがとう」とばかり言っています。女房が一番好きですし、本当はいつも一緒に行動したいくらいです。

マネージャー)

昔は照れて「ありがとう」も言えなかったんですよ。

蛭子さん)

言えないとまずいなと思って。

――最近はギャンブルもあまり行かれなくなったのですか。

蛭子さん)

まったく行っていないです。パチンコ、麻雀、競艇、全部やめました。

――それで今、奥様と一緒にいる時間が楽しい、ということなんですね。

蛭子さん)

そうですね。前から楽しかったんだけど、今は特に。これまでと変わらず、ごはんをちゃんと作ってくれますし、おいしいです。ただ、迷惑はすごくかけていますね。

――奥様が介護されているそうですが、自宅での介護は大変ですよね。最近、蛭子さんはショートステイ(短期入所生活介護)にも行ってらっしゃると伺いました。

蛭子さん)

最初からその施設に入っていたんだっけ?

マネージャー)

いや、介護する奥さんの体力を回復するために、行き始めたんですよ。

蛭子さん)

本当はショートステイも乗り気ではなかったんだけど、女房と話して「ちゃんと入らないとだめだ」と言われてね。俺はショートステイが何なのか、そもそも知らなかったんですけど、入ってみたら、いいものなのかなって。

マネージャー)

イラストを描くなど、いろいろなことをやっているみたいです。結構楽しくやっていると、僕は聞いています。

蛭子さん)

俺が家に帰ると、女房がまず「私の名前は分かっている?」と聞くんですよ。忘れちゃうことも昔はあったんですけど、今はなるべく女房の名前を覚えて帰らなきゃ、って思っています。

介護をしている人へ「ありがとう」を言いたい

――自分が認知症だと考えると、つらくなることはありますか?

蛭子さん)

そんなにつらくはないんですよ。もっとつらく見せなければいけないかなって思うくらい……それはだめか。認知症になろうが仕方がない、生きていくことはできる。そんなふうに考えているから、さほどショックを受けてはいないんですよね。

――今日お話を伺っていても、明るく、悲観されていないように見えます。認知症であることも、前向きに受け入れられたのでしょうか。

蛭子さん)

俺、人が思うのとは違うことを言いたくなるんですよ。

――天邪鬼なところがある?

蛭子さん)

よく言われました、天邪鬼って。多分そういう性格だから、深刻になりすぎると笑っちゃうんですよね。

――認知症で苦しんでいる方や、受け入れたくないという方へ、何かメッセージはありますか。「出来事やものを忘れていくのがつらい」と思う方もいらっしゃると思うのですが。

蛭子さん)

俺もそれは思いますけど……何だろうな。これ難しいな。俺は、知らない人を見たり、話を聞いたりすることが好きなんですよ。「この人、おもしろいことをやっているなあ」と人の動きを見るとか。だからそういうのを……あれ、わからなくなってきたな。

マネージャー)

何か楽しみを見つけられるといいですよね。蛭子さんは、公園に散歩しに行くのが好きじゃないですか。子どもたちが遊んでいるのを見るのが好き。

蛭子さん)

そうそう。あとは、若い人の中に、俺みたいなのが好きな人もいるんですよ。若い……人気者で……。

マネージャー)

有吉さん?

蛭子さん)

有吉さんだ。有吉さんとかが気にかけてくれるのは、嬉しいですね。活躍している人たちに俺はついていって、これからも生きていきたいなと思います。

――今、介護をしている人に対して、何かメッセージはありますか。

蛭子さん)

介護をしている人たちには、本当に「ありがとうございます」と思っています。会うたびに「ありがとう」という一言は言いたいです。俺も、女房のことを忘れないようにして、家に帰らなきゃいけませんね。

――蛭子さんのお話を聞くことで、少し病気のことを前向きに捉えられた方もいるんじゃないかと思います。ありがとうございました。

(取材:たかまつなな、監修:精神科医・森隆徳、編集協力:塚田智恵美)

     ◇

〈たかまつなな〉笑下村塾代表取締役。1993年神奈川県横浜市生まれ。時事YouTuberとして、政治や教育現場を中心に取材し、若者に社会問題を分かりやすく伝える。18歳選挙権をきっかけに、株式会社笑下村塾を設立し、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶ SDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


75歳以上では飲酒が認知機能低下を防ぐ?――SONIC研究データの横断解析


75歳以上の日本人高齢者を対象とする研究から、適度な頻度でアルコールを摂取している人の方が、認知機能が高いことを示すデータが報告された。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学講座の赤木優也氏、樺山舞氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に2月28日掲載された。アルコールの種類別ではワインを飲んでいること、飲酒状況では機会飲酒(宴会等)があることが認知機能の高さと関連しているという。

認知機能低下のリスク因子の一つとして、過度のアルコール摂取が挙げられる。ただし、そのエビデンスは主として壮年~中年期の成人を対象とした研究から得られたものであり、75歳以上の後期高齢者ではどうなのか、よく分かっていない。また、ワインの認知機能保護効果がよく知られているが、その効果を示した研究は地中海諸国で行われたものが多く、食事スタイルの影響を否定できない。加えて、人種的にアルコール耐性が低い日本人での効果は不明であり、さらに日本酒や焼酎の認知機能に対する影響はほとんど知られていない。

そこで赤木氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究「SONIC研究」の参加登録時データを用いて、飲酒頻度、飲酒量、アルコールの種類、機会飲酒の有無と認知機能との関係を横断的に解析した。なお、SONIC研究の参加者の年齢は、75~77歳または85~87歳のいずれかであり、本研究の解析対象(飲酒習慣に関するデータのない人を除外した1,226人)のうち60.6%が75~77歳だった。また、48.5%が男性だった。

飲酒の頻度は、毎日が25.7%、週に1~6日が13.5%、週1日未満が5.4%で、55.5%は飲酒の習慣がなかった。飲酒量は、中程度(純アルコール40g/日未満)が34.8%、中程度を超えて多量未満(同40~60g未満/日)が5.8%で、多量飲酒(60g/日以上)が3.6%だった。アルコールの種類は、ビールが24.3%、焼酎13.1%、日本酒10.8%、ワイン4.4%、ウイスキー2.6%で、一部の人は複数の種類のアルコールを習慣的に摂取していた。

認知機能は、日本語版モントリオール認知評価(MoCA-J)という指標で把握した。MoCA-Jは0~30の範囲でスコア化され、スコアが低いほど認知機能が低いことを表す。本研究の解析対象者は、平均22.7だった。

認知機能(MoCA-Jスコア)に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中の既往、メンタルヘルス状態(WHO-5日本語版で評価)、教育歴、居住形態(同居/独居)、外出頻度、経済状況など〕を調整後、飲酒頻度が週に1~6日の人は、飲酒習慣のない人、および、毎日飲酒する人に比較して、MoCA-Jスコアが有意に高いという結果が得られた。一方、前記の因子で調整後に飲酒量で比較した場合、MoCA-Jスコアとの有意な関係は認められなかった。

重回帰分析の結果、ワインの摂取と機会飲酒があることがMoCA-Jスコアの高さに、それぞれ独立して関連することが明らかになった(いずれもβ=0.09、p<0.01)。一方、ビール、焼酎、日本酒、ウイスキーを飲む習慣は、MoCA-Jスコアとの間に有意な関係がなかった。

適度な飲酒習慣が高齢者の認知機能に対し保護的に働く可能性が示されたことの背景について著者らは、「飲酒関連の行動の一部には社会参加が含まれるため、社会活動による認知機能の保護効果が影響を及ぼしている可能性がある。ただし本研究では、外出頻度や居住形態の影響を調整後にも有意な関連が示された。よって、飲酒に関連する行動パターンそのものが、認知機能に対して保護的に働くのではないか」との考察を加えている。

一方、研究の限界点として、解析対象が後期高齢者のみであるため、元来健康でヘルスリテラシーが高い集団である可能性があることや、生存バイアスの存在が否定できないことなどを挙げている。

以上より著者らは結論を、「毎日ではない中程度の頻度での飲酒とワインの摂取、機会飲酒は、75歳以上の高齢日本人の認知機能の高さと関連していた。この因果関係を明らかにするための縦断研究が望まれる」と総括している。(HealthDay News 2022年3月28日)

補聴器は自分のライフスタイルやどの場面で使うかを考えて選ぶ【認知症を予防する補聴器のすべて】


【認知症を予防する補聴器のすべて】

みなさんは補聴器を購入するとき何を基準に選びますか? デザインや形でしょうか? それとも価格ですか?

補聴器は10万~50万円台と価格幅がとても大きい製品ですが、基本的にデザインや形による価格差はありません。実は価格に一番影響するのはその性能です。性能が優れている補聴器ほど、価格が高くなります。

一方で、性能が優れているからといって、つけて即100%聞こえるようになるものでもありません。何度もこのコラムでお伝えしているように、リハビリのようにある程度の期間をかけて慣れる必要があります。

ではどういった基準で補聴器を選べばいいのでしょうか。それは自分のライフスタイルや、どの場面でどういう使い方をするかを考えて選ぶということが大切です。

仕事をバリバリやっていて会議も多い、いろんな方向から話しかけられることが多い方は、雑音を抑制する機能が強く、さまざまなシーンで聞き取りやすくする機能を備えた高機能の、ある程度高価格帯の機種が向いているでしょう。あまり外に出かけないし、家族としか話さないという方は低価格のものでも、十分にその機能を発揮することもあるでしょう。

また、今まで家に閉じこもりっきりだった人がシンプルな機能の補聴器を購入し、それでも思った以上に聞こえるようになり、散歩に出かけたり、お稽古事を始めてみるなど活動的になったので、その機種では物足りなくなり、もう少し上のランクに買い直したといった実際のケースもあります。補聴器をつけてからのご自分の生活の変化を想像しながら、よく検討して購入することは必要なことかもしれません。

いずれにしても補聴器は毎日、それも一日中つけるもの。我慢して使うのはもったいないお話です。補聴器選びはご自身の生活スタイルに合わせて選びましょう。多くの販売店ではレンタル期間があり、日常生活の中で補聴器を実際に試してから購入することができますよ。

(田中智子/「うぐいすヘルスケア株式会社」代表取締役)

どこからが「うつ病」や「潔癖症」なの? 心の病気と正常の境界線が気になる【医師が解説】


心の病気はセルフチェック可能? うつ病の境界線はどこか

手の洗い過ぎ、ちょっとしたことを気にし過ぎ、戸締りを確認し過ぎ……。日常生活を送る中で、自分や他人の癖やこだわりや傾向に、何かしら違和感を覚えることがあるかもしれません。

その際、どこまでが精神科的な治療などが不要なレベルで、どこからが心の病気の可能性などを考えて受診を検討すべきレベルか、その狭間はなかなか微妙なものです。

ここでは冒頭に挙げたようないくつかの具体的な状況を例に、どのような状況になっていると心の病気の可能性を考慮すべきかを解説します。

手洗いに5分以上かけるのは「強迫神経症」「潔癖症」か

手洗いをしっかりすることは基本的には良い習慣と言えるでしょう。風邪やインフルエンザなどの感染症予防の観点でも大切です。しかし、このように良い習慣であっても、行き過ぎると問題になる場合があります。

例えば、自分も他人も納得できるような理由がなく30分以上も念入りに手洗いを続けないと気が済まないような場合、行き過ぎなのは明らかと判断できるでしょう。精神医学的にも「強迫神経症」などの病気の可能性を疑うケースです。

では、その境界線はどこでしょうか? 具体的には、1回の手洗いに何分かけていれば、こうした心の問題を考えるべきでしょうか。状況が個々人で違うこともあるため、「何分」と時間だけで定義するのは難しいものです。重視すべきポイントは、その手洗い行動によって、日常にどの程度問題が現われているかという点です。

たとえば手洗いに1回5分以上かける場合でも、それが外出先からの帰宅時のみで1日1~2回程度ならば、日常生活にそれほど大きな問題は出ないと思います。平均よりもかなりきれい好きな性格と捉えられるかもしれませんが、困っていなければ、直ちに治療が必要なものとは考えなくてよいでしょう。

反対に1回1分程度の手洗いという場合でも、もし1時間に2~3回以上手洗いをしないと気が済まなくなっているような場合、本来であれば必要のない手洗いのために、日常ですべきことがこなせなくなっている可能性があります。

心の病気の可能性や精神科受診を考えるべき一つの判断の目安は、このように「日常生活にはっきり問題が現われ始めているか」という点です。具体的には手洗いに限らず、自分も他人も納得できないようなことに毎日時間を費してしまう場合、日常生活にも弊害が現われやすくなります。

もしそうした状況にある場合は、精神科や神経科の受診をぜひ考慮してみてください。

先週聞いた悪口で頭がいっぱいなのは「うつ病」か

他人の何気ない一言が心にこたえることや、ふと聞いてしまった悪口がいつまでも頭に残ってしまうことは、誰にでもあることです。こうしたことを気に病むかどうかもまた、かなり個人差があります。その直後はひどくうろたえてもすぐに気を取り直せる人もいるでしょうし、いつまでもひきずって暗い気持ちが続いてしまう人もいるでしょう。

個々人の個性と見なせる面もありますが、手洗い同様、もし行き過ぎている場合は、精神医学的に注意すべき問題が関わっている可能性も考えなくてはなりません。たとえば「うつ病」の場合、自分に自信を持ちにくくなり、他人の評価、特に他人の自分に対するネガティブな評価に対して、必要以上に敏感になることがあるからです。

しかしこのような単一の事柄だけでうつ病と決め付けてはいけません。

例えばこのような問題は、ストレス状況に直面した際の、心理的対処の問題と見ることもできます。心理学用語で「心の防衛機制」と呼ぶものです。

いつまでも悪口が頭に残って気持ちが立て直せない場合、ストレス状況から自分の心を守るメカニズムとしての心の防衛機制がうまく機能しなかったと見ることもできます。心の病気ではなく、成人していても心の防衛機制が充分に成熟したレベルになっていない可能性もある、ということです。

たとえば思春期の若者は、大人よりも、友人からの悪口に深く傷つきやすいものです。成人してからも、思春期同様、必要以上に深く傷ついてしまう可能性はあります。

このような場合、心の防衛機制を成熟させていくことが一つの達成すべき目標とも考えられます。具体的にはユーモアに転化したり、何かに昇華したり、上手に気分転換を図ったり……とそれぞれに合った方法で心の防衛機制を効かせ、悪口のダメージを上手くかわしていきたいところです。

また、もし悪口が自分にも非があったと感じるものであれば、それがよい機会になって自分の悪い点が改まった、と考えることも、心を軽くするのに有効なことがあります。

うつ病の可能性を考えたい状況は、気持ちの落ち込みやイライラ感の原因が単に悪口を言われただけでなく、それがきっかけになって脳内の機能が、治療が必要なほど病的になってしまった状態です。その目安としては症状の深刻さとそれがどのくらい持続しているのかの2点が重要です。

具体的にはもし1週間以上、普段の自分通りに振舞えないようなレベルで問題が持続しているようならば、精神科受診も考慮してみてください。

戸締りを何度も確認してしまうのは「不安症」か

大事なことをしっかり確認することは、慎重で良いことと考えられがちですが、これも程度の問題です。外出時にドアの施錠を10回以上確認してもなお心配で確認を繰り返してしまう……というような行き過ぎた確認行為は、強迫神経症で現われやすい問題の一つです。

このような確認行為が精神医学的に注意すべきレベルと考えるポイントは、先述した手洗いの場合と同様、日常生活に明らかな悪影響が現われているかどうかです。具体的には戸締りチェックが原因で、毎日のように職場に遅刻してしまうといったケースです。

そしてこうした状況になっている場合、自分でコントロール可能かという点も、はっきりさせるべきポイントです。もし、つい何度も確認してしまう癖があるけれども、しっかり考えて納得できれば1回確認しただけでも大丈夫というような場合、精神疾患に関わるレベルとは見なし難いです。

しかし、もし頭でどう考えても不安感が消せず、不合理とわかっていても行動が止められないような場合はやはり注意が必要です。そのような場合は、精神科を受診して相談してみることが最善の解決策になり得ることを、ぜひ頭に置いておいてください。

吐く寸前まで食べてしまうのは「過食症」か

嘔吐したことはないけれど、吐く寸前まで過食してしまう……。もしこれが一回きりのことでなく、毎回続いているような場合は精神医学的に注意したい状況です。過食症は、簡単に表現すれば、食べると言う行為にストップをかけられなくなってしまう状態です。

過食症では食べた後の嘔吐が現れやすい問題ですが、嘔吐を伴わないケースもあります。そのため、吐き癖がついたから過食症、吐いたりはしないから過食症ではない、と嘔吐の有無だけで診断することはできません。

一般に過食症のレベルになると、食べることや食に関する観念がいわば生活の中心になってしまいます。そして摂食障害の大きな問題点の一つとして、当人はその問題をまわりに隠す傾向が強いです。まわりのサポートが得にくく、事態がさらに深刻化していく要因にもなります。

さらにもし過食症のレベルになっていれば、気持ちが落ち込みやすい、飲酒量が増えるといったその他の問題も抱えやすくなります。こうした状況を改善していくためにも、精神科的な対処は一番役立ちます。

嘔吐の有無など一つの問題行動だけで捉えず、総合的な判断、実際にどれくらい日常生活や健康に問題が生じ始めているかを見ることが大切です。

もしご紹介したような内容で、日常生活に支障が出るような行動が自分ではコントロールできなくなっているような場合、精神科受診もぜひ考慮してみてください。

▼中嶋 泰憲プロフィール千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。

耳鼻科で耳垢を取ってもらった途端に耳の聞こえが良くなった【認知症を予防する補聴器のすべて】


【認知症を予防する補聴器のすべて】

みなさんは「耳垢(じこう)栓塞」という言葉をご存じでしょうか? 読んで字のごとく、耳垢が過剰にたまって耳の穴を塞いだ状態のことをいいます。耳垢栓塞があると、その状態によっては数デシベル~最大約40デシベルの難聴が生じるともいわれています。

ある報告によると高齢者の1割は耳垢によって聴力が低下している場合があるとのことです。また耳垢は認知機能とも関係があるとされています。難聴によってコミュニケーション能力が低下し、認知機能を悪くする可能性があるからです。

アメリカの高齢者向け施設での調査では、耳垢を取ることで聴力とともに認知機能が改善された人もいたそうです。

以前、耳が聞こえにくいと相談に来られたお客さまがおられ、耳の中を観察したところ、鼓膜が確認できないほどの耳垢! 近くの耳鼻咽喉科を紹介し、受診。耳垢をごっそり取ってもらうと、その途端に聞こえが良くなり、結局、補聴器をつけなくてもよかったなんてこともありました。

このように耳垢がたまり過ぎると難聴の原因になることもありますが、とはいえ、適度な量の耳垢は、細菌に対する防御機能や皮膚表面を保護する作用もあります。それにもともと外耳道には、耳垢を外へ押し出す自浄作用があり、本来なら耳掃除はしなくてもいいともいわれています。ただ、高齢になると、新陳代謝が鈍くなったり、自浄作用が弱まったりし、前述のお客さまのようになるわけなのです。それならやっぱり耳掃除が必要なのでは、と思う方もいるかもしれませんが、必要以上に耳の中をかいてしまって皮膚を傷つけたり、思わぬ出血をしたりして、危険なこともあります。高齢者では、血液がサラサラになる薬を飲んでいる方も多いでしょう。もし血が止まらなくなると怖いですよね。

耳垢がたまりやすかったり、奥にたまった耳垢が気になる場合は、耳鼻咽喉科に相談しましょう。耳垢が詰まっていれば、点耳薬といって、耳垢を軟らかくする薬を処方してもらってから耳垢を取り除くことになるので、痛くはないですよ。1年に1度は耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

(田中智子/「うぐいすヘルスケア株式会社」代表取締役)

「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと



老年医学の専門家である和田秀樹氏は「40歳こそ老化の始まり。この年代から“足りないものを足す健康法”へのシフトが重要だ」と説く。このたび上梓したセブン‐イレブン限定書籍『40歳から一気に老化する人、しない人』より、その一部を特別公開する──。(第3回/全4回)

※本稿は、和田秀樹『40歳から一気に老化する人、しない人』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

70代こそ肉を食べよう

20代、30代の人がスキーで転倒して足を骨折し、病院のベッドで1カ月寝たきりの生活をしたとしても、退院すればまもなく普通に歩くことができるようになります。

しかし70代ではそうはいきません。寝たきりの生活が続くと筋力が低下し、骨折が治ったあとも、「立つ」「歩く」といった日常生活に必要な動作に支障をきたすようになり、介護が必要になるリスクが高くなってしまいます。

こうした「ロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)」が目立ってくるのも、70代からの特徴です。

70代こそ意識して体を動かす必要があるのですが、前頭葉が萎縮(いしゅく)し、動脈硬化もかなり進行していますから、なかなか動こうとしない人が増えてきます。これは男性に顕著な傾向です。男性ホルモンが減り、行動意欲が失われているからです。

したがって、歳をとればとるほど、毎日の食事を通じて男性ホルモンの材料になる肉やコレステロールを摂取する必要があります。コレステロールは主要な男性ホルモンである「テストステロン」の材料であり、コレステロールが気になるからとこれを減らすのは、ホルモン医学の立場で言えば、まったくの逆効果でしかありません。

女性ホルモン補充で骨粗鬆症予防を

女性の場合、男性ホルモンが増加するので、むしろ元気になる人が多いのですが、その一方で女性ホルモンが減るため、それにともなう問題がないわけではありません。女性ホルモンが減ることの弊害としては、肌つやが悪くなることのほか、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の原因にもなることがわかっています。

骨粗鬆症を防ぐには適度な運動をし、戸外を散歩するなどして日光によく当たること、あるいはビタミンDが多く含まれている食品をとるなど、ごく常識的なことをする心がけが必要です。

日に当たらない生活があまり長く続くとうつになりやすいのは、広く知られているとおりです。日光浴は、うつ病や不眠症を予防し、骨粗鬆症の予防にもなる70代女性にとっての格好の健康法なのです。

また性ホルモンは性別を問わず、ホルモン補充療法で補うことが可能です。

副作用のリスクを心配する方も少なくないでしょうが、更年期に特有の不定愁訴に対しては、苦痛を手っ取り早く取り除き、副作用も比較的少ない療法です。QOL(生活の質)を重視するのであれば、ホルモン補充は効果的な療法だと私は思います。

認知症リスクが大きくなってくる70代

70代になると、いよいよ認知症が他人事ではなくなってきます。

認知症の有病率は、70代前半までは世代人口の5%。70代後半に入ると8~10%弱の人が認知症になります。

日本では認知症患者の6割以上がアルツハイマー病を原因疾患とする「アルツハイマー型認知症」だとされています。アルツハイマー病は、神経細胞の中にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積されることによって引き起こされると考えられています。

脳にアミロイドβがたまりやすいかどうかは、遺伝的要因に左右される面がかなり大きく、親がアルツハイマー型認知症の有病者であった場合は、子どももなりやすいといわれています。

「頭」を使って認知症リスクを低減する

実は、2021年に、ついにこのアミロイドβを脳内から除去する作用のある薬がアメリカで認可されました。たしかに朗報ですが、年間650万円もかかることもあり、日本で認可されるのか、あるいはどういう患者さんに保険が利くようになるのかはまだ不透明です。将来には期待できますが、いますぐとはいかないのが実情です。

それでも、昔からいわれる「頭を使っている人はボケにくい」というのは一面の真理です。

脳の萎縮が同じくらい進んでいる2人の認知症患者を比較すると、何もしていない片方の人はかなりボケてしまっているのに、日頃から頭を使う環境にいたもう片方の人はそうでもなく、知能テストをするも明らかに後者のほうが点数が高かった、というケースがままあります。

頭をしっかり使って、認知症のリスクを低減させていきましょう。

「脳トレ」より「人との会話」

近年、「脳トレ(脳力トレーニング)」と呼ばれるトレーニングメソッドが、脳に刺激を与え、ボケ防止に役立つということでブームになっています。

ただ「脳トレ」は残念ながら、認知症予防という観点からはほとんど無意味だということが、最近行われた海外の研究で明らかになっています。

『ネイチャー』や『JAMA』(アメリカの医学会雑誌)のような超一流の医学誌に、この効果にまつわる大規模調査の結果が発表されています。

そのうちの1つ、アラバマ大学のカーリーン・ボール氏による2832人の高齢者に対する研究では、たとえば言語を記憶する、問題解決能力を上げる、問題処理の能力を上げるというようなトレーニングをさせた場合、練習した課題のテストの点だけは上がるのですが、ほかの認知機能がさっぱり上がらないことがわかっています。

つまり、与えられた課題のトレーニングにはなっても、脳全体のトレーニングにはまったくなっていないことが確認されたというのです。

では、いったいどうやって「頭を使う」といいのか。私の経験上、もっとも効果が高いと感じられるのは、人との会話です。

他人とのおしゃべりでは、自分の話したいことに対して相手から反応が返ってきますし、強制的に頭を働かせなくてはいけない局面が増えます。もちろん、仕事や家事も複数の知的作業をともなうので、「頭を使う」ことにつながります。「生涯現役」というスタンスも、有力な脳のトレーニング法といえるでしょう。

認知症の進行は生活環境で大きく変わる

介護保険がまだ導入されておらず、今日の主要な抗認知症薬であるアリセプトも未認可だった1990年代に、私は勤務先である浴風会病院とは別に、茨城県鹿嶋市の病院で月2回、認知症の診察を担当していたことがあります。

鹿嶋市に足を運ぶようになってしばらくして気づいたのが、浴風会病院にやってくる東京都杉並区の認知症患者たちに比べて鹿嶋市の認知症患者の進行がかなり遅く、症状が目立たない、ということでした。

それがなぜなのか、最初はとても不思議でした。しかし、杉並区と鹿嶋市の高齢者が置かれている生活環境を見比べているうちに、おおよその見当がついてきました。

当時はまだ介護保険が始まる前でしたから、杉並区の高齢者たちは、認知症になるとその多くが家に閉じ込められたのに対し、鹿嶋市では、比較的気ままに近所を歩き回らせていることが多かったのです。

それでも、出歩いた認知症高齢者が家に帰れなくなっていると、すぐに近所の誰かが見つけて連れて帰ってくれるので、あまり困った事態になることはありません。

オール・オア・ナッシングで考えない

農業や漁業の従事者に関していえば、認知症が発症しても、それまでと変わりなく仕事を続けている人も少なくありませんでした。

認知症が発見されると、一般的には周囲が先回りして外出や仕事などいろいろなことをやめさせてしまうことが多いのですが、“オール・オア・ナッシング”で考える必要はありません。

「この仕事、この家事は、もうできなくなったからやめる」

「この家事は、できるからしばらくは続けよう」

そういう判断があっていいはずなのです。

70代からは「比べない」

70代ともなると、世代全体の10%が認知症になります。残りの9割は依然として頭がはっきりしており、健康な人とそうでない人の差が、それまでになくはっきりと分かれてきます。

外見の面でも、同級会などで集まれば、みな同い年のはずなのに一見して「え?」と驚くくらいの個人差が容姿の老け具合に出てきます。社会的にも、現役バリバリで社長を務めている人がいるかと思えば、定年退職した人の多くは「無職」という肩書をつけられてしまう現実があります。

だからこそ、なにかと「あいつに比べて自分は……」という引け目を感じやすくなり、人によってはそれが重荷になってくることもあります。

老いを受け入れるとは個人差を受け入れること

同世代の人よりもちょっとだけ早く老いを受け入れざるをえなくなった70代の人にとっては、「老いを受け入れる」ことは「個人差を受け入れる」とほぼイコールの行為でもあります。

この世に同じ人は一人も存在せず、誰もがみんなとちょっとずつ変わっているのですから、自分を他人と比べているかぎりは苦しさから抜け出せません。他人にはできて、自分にはできないことについて思いを巡らせて悶々(もんもん)とするよりは、「いまの自分に何ができるのか」ということを前向きに考えたほうが、ずっと健康的に生きられます。

人と比較するより、自分の生き方を模索するほうが賢明だと、私としては信じています。

---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 国際医療福祉大学大学院教授 アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。

中高年のための認知症講座 認知症の非薬物療法は、昔の思い出を語り合う「回想法」が有効 認知症でない人は予防のために、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取


認知症の治療法には、薬物療法と非薬物療法がある。とくに非薬物療法は非常に大切で、家族や介護者が困ることの多い、怒りっぽくなったり徘徊(はいかい)したりするといった「行動心理症状」(BPSD)を緩和することが可能だ。

非薬物療法でおもに実施されるのが、心理社会的アプローチだ。「認知刺激療法」「回想法」「音楽療法」「運動療法」などさまざまあり、医療機関やデイサービス等の高齢者施設で行われる。

この中で、昔の写真や音楽など、その人にとって懐かしいものを見たり触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う「回想法」は、良き聞き手が高齢者の過去の語りを傾聴する方法だ。上智大学総合人間科学部心理学科の松田修教授は、タブレットやスマホなど、ICTを活用することもおすすめだという。

実家にある写真アルバムを親と一緒に見て、昔話に話を弾ませるのは基本だ。その上で、松田教授も使っているのが、ネットで無料閲覧できる、NHKの『回想法ライブラリー』や、明治安田生命グループ「MI介護の広場」の『昭和回想メモリーズ(懐かしの動画)』だ。

これらの動画を一緒に見たり、タブレットなどが使える場合はブックマークなどをして、一人でも見られるようにするといいだろう。「ご実家を見たい、という方には、グーグルマップを使うこともおすすめです。絵(写真)は言葉より具体的です」

遠方に住んでいてなかなか親に会えない場合でも、ICTを使ったサービスを使う手もある。どういう写真、あるいはどういう音楽だとその人が笑顔になるかをAIが記録し、その人用の回想法アルバムを作る『Aikomiケア』などもおすすめだ。こうしたサービスは今後増えるだろう。

気をつけたいこともある。「親御さんと〝答え合わせ〟をしないでください。その方のリアリティーを尊重することが大事で、つじつまが合わなくてもご本人の中で合っていればいいのです。自伝的記憶は書き換えられるもので、ご自分にとってその意味は随時変わります。それを尊重しながら聞いてあげてください」

最後に、食事と認知症の関係も大切なので説明したい。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)、もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らは、日本食の食事パターンと腸内細菌・認知症との関連を発見したことを以前お伝えした。その研究成果は、世界的な科学雑誌『Nutrition』に、2021年10月29日にオンライン版で公開された。

簡単に説明すると、認知症でない人は認知症の人より日本食スコア(日本食らしい食事内容)が高く、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取していた。また、これらの食品摂取が多いと、腸内細菌の代謝産物濃度が低い傾向にあるという。

腸内細菌が代謝により産生する物質は、よいものもあれば悪いものもある。今回の研究では、これらの食品摂取が多いと、アンモニアなどの腐敗産物が低い傾向にあったということだ。

また、「地中海食、DASH食(高血圧予防食)、それらを組み合わせたMIND食(アルツハイマー病予防食)という健康に良い食事を取っている方は、血液脳関門(血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組み)も保たれます」(佐治副センター長)など、有益な研究データはどんどん集積してきている。

このように認知症の予防、進行抑制は、どの段階でもできることがある。自分や親のために今できることを知り、お互いのために実行してほしい。

=おわり

中高年のための認知症講座 行動心理症状のメカニズムを知れば怖くない 「間違っている患者の言動を正さない」



認知症の原因疾患は、認知症患者の7割を占めるアルツハイマー病をはじめ、血管性認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)、レビー小体型認知症などがある。原因疾患によって中核症状(記憶、理解などの認知機能が失われること)が違うように、行動心理症状(BPSD)も変わる。


中核症状によって状況に適応できなくなるために起こる行動や心理症状がBPSDだからだ。そのため「認知症を十把(じっぱ)ひとからげに考えてはいけません。アルツハイマー病にはアルツハイマー病の、血管性、レビー小体型、前頭側頭葉型にはそれぞれのBPSDがあります」と話すのは、認知症治療の第一人者でアルツクリニック東京(千代田区)の新井平伊院長。

新井院長は、BPSDについて知っておきたいポイントを3つ挙げる。

①脳の障害を受けた部位によって症状は違う。原因疾患によって症状が違うのはこのためだ。

②正常な心理状態が関係している。認知症になっても、感情、喜怒哀楽の感覚は正常なので、環境や対人関係で生じた心理状態によってBPSDが悪化することも軽減することもある。

③患者の反社会的に見えたりする行動は、BPSDではなく多くは中核症状である。

昨今、社会問題化している、車のアクセルとブレーキを踏み間違え、高速道路の逆走による事故は、「リモコンをうまく使えないのと同じで、中核症状である実行機能障害(目的遂行のために計画を立てて順番に行うことができなくなること)」が多いという。

これらの3点を理解すると、どうしてそのようなBPSDの症状が現れるのか、また推奨される態度やケア方法の意味がわかるようになる。

「BPSDの治療法には、非薬物療法と薬物療法があります。非薬物療法は、ケアの仕方を工夫することと、その患者さんの健康なところを維持するための、脳機能と身体のリハビリが大切です。中でもケアの仕方は一番大事です」

よく推奨される方法に、「間違っている患者の言動を正さない」がある。たとえば自宅にいるのに「家に帰りたい」と訴える患者がいる。この場合、帰りたい自宅は子供の頃に住んでいた家であることが多く、「ここが家ですよ」「もうあの家はないよ」と言って〝現実の社会〟に戻そうとすると、逆に混乱してしまうそうだ。

「患者さんを現実の世界に戻さなければいけないときは、たとえば腐ったものを食べようとしているときなど、患者さんが危険にさらされる場合です。その場合でも、できるだけ笑顔で優しく話すことが大切。

それ以外では、現実の世界に戻すことは意味がなく、さらにそのときにイライラして怒りながら注意したりすると、その感情が患者さんに影響して、鏡のようにイラ立った反応が返ってきてしまいます」

BPSDの行動には、患者なりの理由がある。患者を観察して、なぜそうしているのかを理解し、夕方など決まった時間に行動が現れることなどがわかれば、家族や介護者に余裕ができる。余裕ができれば、患者の行動をある程度受け入れ、現実の社会に戻そうとせず、患者の思っていることに沿って対応することが患者にとっても介護者にとってもよいことなのだと理解できる。

「家族はとくに感情が入ってしまいますから大変ですが、言ったら逆効果だということを、常々頭に入れておくことが大事です」

あすはBPSDの薬物療法について。


みのもんた語る パーキンソン病との闘い「5分かかってたのが10分、20分」「一番いいのは歩くこと」


 タレントのみのもんた(77)が23日放送のテレビ朝日「徹子の部屋」(月~金曜後1・00)にゲスト出演。自身が患っているパーキンソン病について語った。

 パーキンソン病は、50代以上の中高年に多く見られ、手足のこわばりや震え、徐々に体を動かすことが難しくなってくる脳神経系の病気。司会の黒柳徹子から、「みのさんは数年前からパーキンソン病に」と振られると、みのは「はい。3年前からパーキンソン病と言われました」と語った。

 黒柳に「どうですか。パーキンソン病というものは。朝起きるときに大変なんですって」と問われると、「パーキンソンっていうのは筋肉がなくなるもんですからね。寝返りをうったり、上半身を起こしたり、ベッドから降りる作業が、5分かかってたのが10分、10分が20分みたいになりますね」と明かした。

 「これはパーキンソンで悩んでる方は共通の悩みだと思いますけれども、いかに筋肉を落とさないようにするかって言うのが。それが一番いいのはやっぱ歩くことだそうで」とみの。黒柳は「でもこうやって拝見していると、全然どっか悪いようには見えないわね」と話した。

「パーキンソン病」と闘う当事者たちが発症前の自分に伝えたいこと


「パーキンソン病」とは

「周りからのサポートは受け入れて」

「少しの異変も無視しないで」

「ストレス管理を怠らないで」

「うつ病と併発する可能性もあるから…」

認知症の本人から見た世界とは?お風呂に入りたくない、トイレが間に合わない


認知症の人から見えている世界とは?認知症の「本人」の視点から、その気持ちや困りごとがまとめられた筧裕介さんの『認知症世界の歩き方』(ライツ社)は、認知症の人が経験する出来事を旅形式でまとめています。今回は家族や介護者の多くが戸惑う、「お風呂に入りたがらない問題」や「トイレを思いがけず失敗してしまう問題」を中心に抜粋してお届けします。

「認知症」とは、なにか?
認知症とは、

「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」のこと。

そして認知機能とは、

「ある対象を目・耳・鼻・舌・肌などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化したり、記憶に留めたりする働き」のことです。

 例として、「わたしたちが外出先でトイレに入るまで」の過程を見てみましょう。

 ある行動に至るまでに、わたしたちはこうしたステップを一瞬で行っています。しかし、認知機能が働きにくくなると、この一連の過程がうまくいかなくなるのです。

たとえば、「お風呂を嫌がる」のはどうしてなのか?
「本人が、お風呂に入るのを嫌がって……」。介護をされる方から、よくお聞きする話です。見方によっては「介護への抵抗」と感じられる、その人の「お風呂に入りたくない理由」は1つではなく、実はその背景には、さまざまな認知機能のトラブルがあると考えられます。

お風呂は、あらゆる感覚のダイバーシティ

 熱い、冷たい、しっとり、ピリリ……。七変化温泉の泉質は、本当に訪れるたびに変化しているのでしょうか?答えは「NO」です。

 変化しているのは、実は、お風呂に入る人間の「身体の感覚」の方なのです。

 季節や朝晩などの時間帯、そして気分や体調によって、自分の周囲を取り巻く環境に対する感じ方、見え方が変わるのは、だれにとってもよくあることです。

 気が乗らない日の朝は、視界がよどんで見えます。親しい人との楽しい食事はなんでも美味しく感じられます。この部屋臭いなあと一度思ったら、ささいな匂いも気になり、どんどん臭く感じてしまいます。

 そしてたいていの場合、こうした感覚は自分だけにしかわからず、周りに伝えるのはすごく難しいことです。

【「認知症世界」の旅人の声】

 わたしが感じている感覚を周りの人には理解してもらえない、と悩んでいることがあります。それはお風呂です。

 あるとき、自宅で入浴中に不思議な体験をしました。いつも通り39度にセットして、お風呂に湯をはったのですが、入ってみると、なんだかいつもと違う触感なのです。

 お湯がどうもヌルヌルします。入浴剤は入れていません。それなのに、何かが身体にまとわりつくようで、とっても気持ちが悪いのです。仕方がないので早めにお風呂から出て、シャワーで身体を流すことにしました。

「お風呂掃除のときの洗剤でも残っていたのかしら?」と思い、直前に入った娘に聞いても、「そんな感じしなかったけど?」と不思議そうに言います。

 翌日のお風呂は、わたしもそんな感じはなかったのですが、また違う日に同じようなヌルヌルを感じたり、またある日は熱すぎたり、逆に冷たいと感じることもあって、「なんか変だなあ」と思っています。お風呂は大好きだったのですが、こんなことが続いてからは、入ることが少し億劫に感じています。

 近頃では、なんとか以前のようにお風呂を楽しめないかと、自分の体調に合わせてお風呂に入るタイミングや方法を変えることにしました。長年、夜にお風呂に入るのが習慣でしたが、「なにも気持ち悪い思いや熱さを我慢してまで、入る必要はないじゃないか」と。

 夜、お風呂に入ったときに気持ちいいと感じなければ、すぐに出て、次の日の朝にお風呂に入ったり、シャワーだけで済ませたりするように切り替えました。

「お風呂に入りたくない」と嫌がる理由
 認知症のある方がお風呂に入るのを嫌がるというのは、介護をしている方からよく聞く話です。

「介護への抵抗」と、ときに感じられるかもしれないその方の「お風呂に入りたくない」の背景には、実にいろいろな理由があるのです。

 身体感覚のトラブルで極度に熱く感じる、浴槽に入るとぬるっとした不快な感覚があるという方もいます。空間認識や身体機能などのトラブルで服の着脱が困難、その介助を受けたくないという思いを持っているのかもしれません。「自分の中ではお風呂に入ったばかりだ」という時間感覚のズレや記憶の取り違えの場合もあります。

 このように、お風呂という1つのシーンをとっても、1人ひとり異なる心身機能の障害、その組み合わせによって困りごとが生じているため、周囲から理解されづらいことも暮らしにくさにつながっています。

【「認知症世界」の旅人の声】

 ある夏の日に、友人とカフェで食事をしていたときのことです。

 お店に入った途端、ものすごく室内が寒く感じて、急いでかばんの中のカーディガンを羽織りました。友人に「なんか、このお店冷房が効きすぎているね」と言うと、友人は「そう? わたしには暑いくらいだけど」と、額の汗をぬぐっています。

 こんなふうに、みんなが「暑い」と言っているときに自分だけ寒さに震えていたり、反対に周りの人が「寒い」と言っているのに、わたしだけ暑く感じて汗をかいていることがたびたびあります。

 ですから今は、暑くても寒くても、すぐに脱ぎ着ができる服を着たり、かばんの中に上着やストールを持ち歩くようにしました。

 そうそう、友人たちとテニスをしていたときなんて、ちょっと熱中症気味になってしまいました。

 ちゃんと水筒は持っていたのですが、「水を飲みたい」とか「喉が渇いた」という感覚がなくていつの間にか水分補給をしないまま、炎天下で運動し続けてしまったのです。目の前がくらくらして、初めて脱水状態になっていることに気づきました。

 友人たちがすごく心配していたので、「最近、喉が渇いたって感じないんだよね」と言ったところ、その次からは、「そろそろ休憩して水分をとろう」と積極的に声をかけてくれるようになりました。

 自分の感じ方が変化するということを自分で理解してからは、そのつど柔軟に対応できるようになりましたし、周囲の人にも伝えておくと、さりげなく配慮してもらえるのでさらに楽になり、困りごとはずいぶん減りました。

 でも、出かけようと家を出て車に乗った途端、急にトイレに行きたくなってしまったときは、少し困ってしまいました。

 ほんの数分前に家を出たばかりだったので、家族には「なんでさっきトイレに行っておかなかったの!」と言われてしまったのですが、数分前まではまったく尿意を感じていなかったのです。

トイレを思いがけず失敗してしまう理由
 トイレに間に合わないのも、身体の中の感覚が鈍感になっていることから起こることがあるようです。

 普段は意識しませんが、人は空腹感や喉の渇き、尿意などを感じる「内臓感覚」を持っています。この感覚がうまく働かないことによって、「そろそろトイレに行きたいかもしれない」という微妙な変化が感じとれず、急に尿意がやってきてしまうのです。水分補給を忘れて熱中症になってしまうのも同じ理由です。

 また、トイレを失敗する原因と考えられるものは、ほかにもたくさんあって、そのどれが当てはまるのかは、人によって異なります。いつトイレに行ったのかを忘れてしまう、早めにトイレに行くことが難しい、扉の向こうがイメージできず場所がわからずに間に合わない、家やショッピングモールなどの空間の中でトイレの場所がわからない、サインが見つけられない、便器と床が白くて便器の場所がわからない。

 原因によって、とることのできる対策も変わってきます。

 この他、本著では「アクセルとブレーキを踏み間違える」「何度も同じ話をする」「お金を盗まれたと思い込む」などのよく聞く話から、「ICカードのチャージ方法や切符の購入方法がわからない」「降車駅や目的地を忘れる・間違える」など、「本人の視点」から認知症を学び、生活の困りごとの背景にある理由を知ることができます。

体育会系の人ほどうつに陥りやすい?環境に潜む大きなリスク


冬はメンタルを崩しやすい季節と言われていますが、うつのリスクは意外なところにもあると言います。 うつメンタルコーチで、公認心理師の川本義巳さんによると、「メンタルが強いイメージがある体育会系の人ほど要注意」と言います。その理由を教えてもらいました。

スポーツをやっている人はうつとは無縁?意外な事実

今年はスポーツ当たり年でしたね。まずなんといっても東京オリンピック・パラリンピックが無事開催されたこと。一時はどうなるか? とさえ言われていましたが、たくさんの感動をいただけたので「やっぱりやってよかったなあ」と今は素直にそう思います。

そしてメジャーリーグでも大谷選手が大活躍しました。私たちが子どものころは「日本人はメジャーでは通用しない」というのが定説でしたが、なんと二刀流での大活躍でした。これもまた夢と希望を多くの人に与えてくれました。最近では日本のプロ野球も日本シリーズで盛り上がりましたね。セパ共に昨年最下位からの躍進は「がんばれば道は開かれる」そう思わせてくれました。

●多くの人が思い込んでしまう「アスリートは強いメンタルの持ち主」

スポーツといえば、一般的に「トップアスリートたちは皆、厳しい練習に耐えてきている」そんなイメージがありますよね。それゆえに「苦境にも強く何より自分を律することができる」といった印象もがあります。それゆえ「スポーツ選手はメンタルが強い」と言われることもあります。じつは数年前に、サポートしていた抑うつの男性からこんなことを言われたことを思い出しました。

「体育会系の人はメンタルが強いからうつにならないのですよね?」

「自分は体育会系ではないからメンタルが弱いと思っています」

それを聞いて私は笑いながらこう言いました。

「そんなことないですよ。現に僕はめっちゃ体育会だったけど、うつになりましたよ」

彼はちょっとびっくりしていましたが、私が元体育会系でうつ病になったのは事実だし、それ以外にも「じつは体育会系だった」というクライアントさんは何人もいらっしゃいました。

一般的に考えられているイメージとは違うわけですね。

実際に現場でクライアントさんと向き合っていると、こういうことがわかりました。

・うつになるのに体育会系か文系かは関係がない。

・メンタルが強い、弱いもあまり関係ない。

・むしろ体育会系の人の方が、リスクが高いかもしれない。

うつは本当に「え? この人が?」と思うような人もなったりします。

それこそすごく元気でアクティブで、なんでも乗り越えられそうな人もなるときはなります。逆に「この人大丈夫かなあ」と思うくらい繊細であったり、ネガティブな人でもならない人はたくさんいます。

うちの母親も結構ネガティブですが、これまでうつっぽくなったことがありません。うつはその人の性格や経験からそうなってしまうと思われがちですが、それよりも自分がうまく対応できない人間関係や環境に出会ったときにそうなる傾向が強いです。いわゆる適応障害のような状態から始まり、その対応できない環境を継続させた結果、うつ状態に変化していったというケースが多いです。そのため、どんな人であれ、対応できない環境に出会ってしまうと、そのリスクは高くなるわけです。

●体育会系ほどうつのリスクが高い理由

では、先ほどのべた「体育会系のリスク」というのはどういうことでしょうか?

これは一言でいうと「逃げるという選択肢が優先されない」ところにあります。体育会系の人は「自分の努力が結果につながる」という経験をたくさんしてきています。それゆえ、自分に起こっている問題は自分の努力で解決しようと試みます。もちろん、自己解決できる課題であれば、それを乗り越えることで自己成長につながりますからむしろ大歓迎なのですが、うつに関してはかなり勝手が違います。

まずスポーツのように明確な採点基準やルールなどがありません。言ってしまえば無限大にいろいろな事象が起こる可能性もあるわけです。そのため、努力しても必ず報われるということはありません。もちろん「逃げる」という選択も有効なのですが、体育会系の人はときに「逃げずに努力する」というモードに入りがちなので、逃げることができる人よりも数段うつになるリスクは高くなります。

これはアスリートだけでなく、「がんばらなければならない」という信念を持つ人はすべて当てはまります。私がサポートした例でいうと、看護師さんや学校の先生などがそうでした。

「自分ががんばらないと迷惑をかけてしまう」そう思い込んでしまっていて、それが原因で追い込んでいるようなところがありました。

こういったパターンの人をサポートするときに、私は「がんばらなかったらどうなるか?」ということを想像してもらうようにします。そしてその結果に対して「それは自分の健康よりも大切なことですか?」という質問をします。

私は世の中には自分の命や健康を犠牲にしてまでがんばらなければならないことは存在しないと思っています。何よりも優先されるのは、その人の命であり健康です。

うつの問題は心を鍛えれば大丈夫というものではありません。ときには逃げることが最も効果的な場合もあります。「逃げる」という言葉に抵抗があるのなら「道順を変える」と考えてもらってもいいと思います。強いメンタルよりも、臨機応変なメンタルがじつは最強だったりします。


ソーシャルメディアユーザーはうつ病を発症しやすい? 米国医師会誌に論文


 ソーシャルメディアの利用が抑うつ症状をもたらす可能性について、これまでに複数の研究データが報告されています。

しかし、ソーシャルメディアを積極的に利用している人では、そもそも抑うつ症状を有している可能性が高いという指摘もあり、両者が因果関係にあるのかよく分かっていません。また、報告されている研究の多くは、若年層を対象とした調査でした。

 そんな中、米国医師会のオープンアクセス誌に、ソーシャルメディアと抑うつの関連を検討した最新の研究論文が、2021年11月1日付で掲載されました。

 この研究は、2020年5月から2021年5月において、米国で毎月実施されたインターネット調査の結果を解析したものです。

初回の調査で抑うつ症状を認めず2回目の調査で抑うつ症状の度合いについて回答を得られた5395人(平均55.8歳)が対象となり、フェイスブック、インスタグラム、リンクトイン、ピンタレスト、ティックトック、ツイッター、スナップチャット、ユーチューブの利用状況と抑うつ症状を有する人の変化が比較されました。  

その結果、スナップチャット、フェイスブック、ティックトックの利用者は、そうでない人に比べて抑うつ症状を有する人がそれぞれ1.53倍、1.42倍、1.39倍、統計的にも有意に増加していました。年齢別に解析したところ、スナップチャットとティックトックの利用は35歳以上で抑うつ症状の増加に関連していましたが、35歳未満では関連性を認めませんでした。

対照的にフェイスブックでは35歳未満で抑うつ症状の増加に関連していましたが、35歳以上では関連性を認めませんでした。

 論文著者らは「ソーシャルメディアの影響を理解するためには、さらなる研究が必要」と結論しています。

青島周一 勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰
2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

誰もがボケない時代がくる? “認知症”治療の最前線「発症する年齢をズラせる」


「人生100年時代」が叫ばれるようになったのも束の間、研究者の間では、「人間が120歳まで生きる」というのはわりと現実的だと考えられているという。世界中で活発化する「老化研究」の最前線とは??。

 加齢に伴う疾患としてまず浮かぶのが認知症だ。’25年には65歳以上の認知症患者が700万人を超えるという予測もある。これほど多くの人が悩む病気なのに、有効な薬が生まれてこなかった。

「大きな原因は、アルツハイマー病は研究者の予想以上に長い時間をかけて進行していく病気だったことです。患者さんの多くは70代以上ですが、実際には10~20年前からアルツハイマー病はゆっくりと進行している。症状が目に見えてわかる段階まで進行してから気づくのでは遅かったのです」

 そう話すのは、東京大学教授の富田泰輔氏だ。

◆実は40代から始まる!? 原因解明で治療法も進化中

 富田氏は40代の若さで教授になるなど、今、認知症研究者のなかでも注目される人物である。

「また、同じ認知症でも『レビー小体型』や『血管型』『前頭側頭型』などがあり、それぞれ原因が違います。そういった個別の違いも原因特定を困難にしていました。しかし、近年は技術革新が進み、ようやく原因に合わせた正しい治療ができるようになってきたのです」

◆認知症治療は新しい局面へ

 そして今年、認知症治療は新しい局面を迎えている。 アメリカにてエーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ(商品名:アデュヘルム)」が販売されたのだ。

「認知症のなかで患者数が一番多いアルツハイマー病の発症原因は、『アミロイドβ』と『タウ』というタンパク物質が、脳内に埃のようにたまることです。それによって認知機能に異常をきたします。『アデュヘルム』はアミロイドβに対する抗体医薬で、投与すると認知機能の低下を緩やかにする効果が見られました。

アメリカでは今後、8年ほどかけて薬効を確かめる必要がありますが、これまで有効薬がなかったなかで画期的な存在になり得ると期待しています」

 さらに違う治療法の研究も日本で進められ、今年4月には富田氏が所属する東大の研究チームが「光認知症療法」を発表した。

「これは脳内に蓄積したアミロイドβに対して、光触媒を使って除去する方法です。今は動物実験の段階ですが、数年以内の治験開始を目標にしています。ほかにも京都大学では認知症の超音波療法を研究したり、東北大学では認知症予防ワクチンの研究が進んでいます。

薬やワクチンなどいろいろなアプローチがありますが、共通しているのはアミロイドβとタウという脳内にたまるタンパク物質をターゲットにしていることです」

◆アルツハイマー病のリスクが高い遺伝子

 また、近年では遺伝子検査などで発症リスクを事前に知り、生活習慣を改善することもできる。


「遺伝子研究では、特異な『アポイー遺伝子』を持っている人の場合、アルツハイマー病のリスクが3~10倍も高い体質だとわかってきました。さらに中年期肥満や糖尿病などの環境要因も大きく関連します。積極的に有酸素運動をしたり、サプリメントを摂取するなど、生活改善がリスク軽減に繋がることも判明しています」

 アルツハイマー病の原因のアミロイドβは加齢とともに代謝が下がり、60代以降からは徐々に脳内に溜まり始めるそうだ。そこで、将来的には健康診断の結果を認知症の予防に繋げられるような研究も進んでいるという。

「体は健康でも脳にアミロイドβがたまっている人は意外に多い。だから血液や尿の検査で脳内にアミロイドβやタウがどれぐらいたまり始めているか数値化できれば、10~20年後の脳の状態を予測して40~50代から予防を始められます。正直、認知症の研究は糖尿病やがんに比べて10~20年は遅れていて、当面は撲滅することは難しい。

ですが、早く対処することで発症する年齢を後ろにズラすことは可能です。もし発症を5年遅らせられれば、多くの人が認知症にならずに老後を過ごせる社会になっても不思議ではないのです」

 研究者の尽力によって、誰もがボケない時代が来るかもしれない。

【東京大学薬学部教授 富田泰輔氏】
東京大学薬学部卒業。40代と若手ながら、アルツハイマー病基礎研究の第一人者として知られる。東大の研究チームで「光認知症療法」の論文を発表した神経科学誌『Brain』が話題に

<取材・文/週刊SPA!編集部>

コロナ禍で注目の「非定型うつ病」、専門医が教える正しい対処法とは


コロナ禍でうつ病になる人が増加しているが、なかでも目立つのが「非定型うつ病」だという。気分が激しく変化しやすい非定型うつ病患者は、周囲からは「わがままな人」と思われてしまうことも多い。なぜ今、非定型うつ病が注目されているのか。パークサイド日比谷クリニック院長で精神科医の立川秀樹氏に聞いた。(清談社 田中 慧)

コロナ禍で注目される

非定型うつ病の特徴

 2020年にOECD(経済協力開発機構)が行った、メンタルヘルス(心の健康)に関する国際調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態にある人の割合は17.3%で、前年に比べて2.2倍に増えたという。

 一口にうつ病といってもその種類は多様だ。特に最近注目されているのが非定型うつ病の増加だ。

「一般に知られる定型うつ病は、全てのことにやる気が起こらず悲観的になります。一方、非定型うつ病の場合、趣味などの自分の好きなことに対しては気分が上がり、行動的になれますが、好ましくない状況ではひどく落ち込むと同時に、うまく立ち回れない自分への自己嫌悪に苦しみます。このように、日常の出来事で気分が激しく浮き沈みする『気分反応性』が最大の特徴といえます」(立川氏、以下同)

 特に、非定型うつ病の場合、実際の状況よりも過度に悪い想像をしてしまう傾向もあるという。

「たとえば、起きたときに少しダルさを感じると『自分は重い病気かもしれない』と思い込んで、学校や仕事を休んでしまったり、相手から自分と異なる意見を言われると『自分は拒絶されている』とふさぎ込んでしまったり。ささいなことに過剰に反応して気持ちが低下した結果、職場や知人関係がうまく回らなくなり、最終的に引きこもりになるケースもあります」

 立川氏は、こうした非定型うつ病の症状は、「うつ病というよりも、むしろ双極性障害に近いのではないか」と、持論を展開する。

「非定型うつ病の患者は、ハイテンションのときと気分が落ちているときの、感情の波の幅が非常に大きく、これは双極性障害に近いものです。ただ、非定型うつ病と双極性障害は、気分の波が上下する“きっかけ”に違いがあります。双極性障害の場合、周りの状況に関係なく、定期的な間隔で、なぜかハイになる期間とローになる期間が生まれます。一方、非定型うつ病では、気分の上下の波が一定ではなく、誰かに褒められたり、怒られたりといった対人関係の変化が大きなきっかけとなって、気分が激しく変動します」

 感情の起伏が激しく、その波の変化に対人関係の良し悪しがかなり関与するのが、非定型うつ病の特徴なのだ。

「そのほか、私が臨床の現場で診てきたなかでは、過眠傾向の非定型うつ病患者が特に多かったです。いくら寝ても体が鉛のように重く感じられ、夕方になってやっと起きても、一日を無駄にしてしまった自分を責め、過食や自傷行為、アルコールや他人への依存に発展する事例もあります。また、非定型うつ病は20~30代の女性に多い傾向がありますが、これはPMS(月経前症候群)により、ひと月のなかで気分の波が起きることも影響していると考えます」

リモートワークが

非定型うつ病を重症化

 そもそも非定型うつ病という名称がつけられたのは1959年のことで、最近出てきた病気ではない、と立川氏。

「当時、うつ病傾向のある患者に対する治療法のなかで、効果が高かったのはECT(電気けいれん療法)と三環系抗うつ薬(イミプラミン)でした。しかし、なぜかそれよりもMAO阻害剤という薬によく反応する患者が一定数おり、定形うつには当てはまらないという意味で非定型うつ病と呼ばれるようになりました」

 また、「コロナ禍で非定型うつ病が増えている」という報道もあるが、それは事実とは異なると立川氏は指摘する。

「もともと非定型うつ病の人が一定数いたなか、コロナ禍のストレスにより、生活に支障をきたすほど症状が悪化し、医療機関を受診する患者が増えたという表現が正しいです。したがって、患者数が増えたのではなく、顕在化する患者が増えたといえます。また、精神医学界でも非定型うつ病の認知度が上がり、正しく診断できる医師が増えたことも患者数増加の背景にあります」

 特に、コロナ禍でテレワークが主体になったことが、非定型うつ病の症状を悪化させる原因になっているという。

「コロナ禍で当院を受診した非定型うつ患者のなかで、対面であれば、うまく周囲とコミュニケーションをとって仕事をこなせていた人もいます。たとえば、上司から『もう少し考えてから質問しなさい』と注意を促されたとき、対面であれば上司の表情や声のトーンから、『上司は4割くらい怒っている』と想像がしやすいはずです。しかし、メールやオンラインでの情報だけだと、表情や声のトーンなど、相手の感情やニュアンスを想像するための材料が少ない。そのため、相手の状況を適切にイメージすることが苦手な非定型うつ病の人は、『上司は自分のことを拒絶している』と、極端にマイナスな考えに陥り、落ち込んでしまいます。つまり、相手の感情を適切に見積もることが下手なのです」

非定型うつ病の症状を

緩和する思考法

 周囲とのコミュニケーションを苦手と感じる非定型うつ病の人が症状を改善するためには、状況や相手の感情を正しく把握するための材料となる経験を積み重ねていくことが重要だという。

「こう言われたらこういう言葉で返したらいい」という経験を頭のなかでファイリングし、現状や相手の感情を正しく想像する力をトレーニングすると、症状の改善につながっていく。

「相手の感情は、自分が想像して見積もっているよりも、2割5分引いて考える癖をつけるのも有効です。上司が50%怒っているように感じても、実際は25%くらいしか怒っていないかもしれない。どんなに自分が鋭くても、他人の考えや感情を完璧に察することができるとは思わないほうがいいでしょう。その際、カウンセリングや認知行動療法の本などを活用するのも手段の一つです」

 また、コーヒーによる過度なカフェインの摂取や夜ふかしを控えて不摂生を改善するのも、症状の緩和に効果的だという。「マイナスな側面ではなく、今できていることに目を向け、自分自身を認めてあげましょう」と立川氏はアドバイスする。

 そして、非定型うつ病の周囲の人たちも、気遣うべきポイントがある。

「『このくらい言わなくてもわかるよね』と、不十分な情報しか与えないのはNG行為です。

 経験が豊富な人なら、少ない指示でも過去の経験を材料として、状況を正しく把握し対応できます。しかし、若く経験が浅い人には、イマジネーションを構築するための豊富な経験が足りません。相手が十分に考えるための要素を漏れなく、わかりやすく伝えてあげてください」

 非定型うつ病は、周囲との関わり方が症状の程度を左右する。身近にいる人は、非定型うつ病患者が十分に想像できるように配慮することも重要なのだ。

(監修/心療内科・精神科 パークサイド日比谷クリニック院長 立川秀樹)

【監修】立川秀樹氏 心療内科・精神科 パークサイド日比谷クリニック院長

筑波大学医学部卒業、同大学院博士課程修了。産業医を経て2007年より現職。著書に『「こころの病気」から自分を守る処方せん:こころの健康を取り戻すために』など。

家族が認知症になった場合に備える財産管理 「成年後見制度」か「家族信託」か


「成年後見制度」と「家族信託」の違い© マネーポストWEB 提供 「成年後見制度」と「家族信託」の違い

 準備をせずに迎えると、後々になって様々な問題に直面することもある「相続」。特に、不幸にも親や配偶者が認知症などで判断能力を失った場合、自宅の売却や口座の管理など、財産に関する一切の手続きができなくなるほか、資産が凍結されるおそれもある。

 すると、本人に代わって家族や第三者が財産管理を行う「成年後見制度」を利用する必要がある。すでに認知症などになっている場合は、家庭裁判所の判断で弁護士や司法書士などが「成年後見人」に定められることが多い(法定後見人)。プロに任せられるならと、安心はできない。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。

「後見人には、不動産の管理や処分、介護施設などの入所契約、ATMでの預貯金の管理や生活費の管理など、財産に関するすべての法律行為の代理権が与えられます。ただし、選任された成年後見人が家族ではなく第三者だった場合、赤の他人に毎月報酬を支払わなければなりません」

 財産の総額によって異なるが、例えば資産が1000万円なら、選任までの一時金に10万~20万円、選任された後見人への報酬が月々2万円ほどかかり、これは本人が亡くなるまで続く。

「なかには、不動産を売って財産の総額を増やし、付加報酬を取るように仕向ける、悪質な後見人もいます。基本報酬が月々2万円なら、プラス1万円まで加算されることになります」(三原さん・以下同)

 後見人は本人の意思で選ぶことはできないため、気をつけようがない。一方、本人が元気なうちに、あらかじめ家族などを「任意後見人」に指名しておく方法がある。

「実際にはまず『財産管理等委任契約』を結んで、その後、任意後見契約にする『移行型任意後見』を契約するパターンが多い。弁護士などの専門家に依頼しない限りは、費用は公証役場での契約にかかる2万円程度で済みます。任意後見監督人へ月々1万~2万円支払う必要がありますが、任意後見人自体は無報酬です」

家族信託は遺言書より強い

 もっと自由度の高い財産管理をしたい場合は、「家族信託」がおすすめだ。本人が元気なうちから、家族など信頼できる人に財産の管理を任せることができる。

「任意後見との違いは、株式の売買や資産の組み換え、不動産の活用など、財産を積極的に増やすことも可能です。また、“金融資産は妻に、不動産は長男に”など、資産を特定して誰に管理を任せるかも指定できます」

 さらに「自分が亡くなった後は長男から妻に分配し、妻が亡くなったら長女に相続させる」など、先々の相続や贈与に対しても細かく決めておくことができる。相続実務士で夢相続代表の曽根恵子さんが話す。

「遺産の使い道は遺言書の付言事項に書くこともできますが、家族信託と違って、意思表示にはなっても法的効力はありません。また、遺言書は何度でも書き換えられますが、家族信託は一度契約すれば変更はできません」

 家族信託を契約したうえで遺言書も残せば、確実に自分の意思のとおりに資産を分配・管理してもらえるだろう。ただし、自由度が高い分、契約にかかる費用はやや割高。財産の総額によって異なり、家一軒で数十万円、財産が多ければ数百万円になる。契約後はお金はかからないが、合計で成年後見人の5~10倍の費用がかかるイメージだ。

運用資産がなければ「移行型任意後見」を

 前述のように、法定後見人の選任を待つと、赤の他人にお金を払って財産を牛耳られてしまう。一方、任意後見人を選ぶと、財産管理の自由度が下がり、家族信託をすればお金がかかる。どうやって選べばいいのか。三原さんは、財産の総額と種類を目安にすることをすすめる。

「不動産を複数保有していたり、会社の経営をしていたりと、資産を積極的に運用する必要があるなら、元気なうちに家族信託を検討した方がいい。一方、財産が少ない場合は、かかる費用が少ない移行型任意後見契約が安心です。入退院の手続きといった身上監護も任せることができます」(三原さん)

 どちらを選ぶにせよ、契約は認知症などを発症する前でなければできない。選択肢を失う前に判断しておこう。

※女性セブン2021年12月9日号

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