l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■うつ病・認知症・アルツハイマー・男性更年期障害


認知症患者に期待高まる「複合型サービス」 要介護度が低くても利用化

認知症になったら、どんなふうに過ごし、どこで暮らせばいいのか。ちょっとした物忘れから、徘徊、そして寝たきりへと症状が進むなか、その時々に必要なケアを受けたい。自宅から通える施設の上手な利用法を考える。

 区内の自宅に住み、認知症で要介護1の鈴木サワさん(80)に「物盗られ妄想」や「徘徊」など中度の症状が現れるようになったのは2年半前。以後、夫の紀義さん(74)がつきっきりで支えるが、心身ともに疲労困憊が続く。

 以前、「週1回でも、どこかで預かってもらえないか」と悩み、意を決して居宅介護支援事業者と契約したことがある。

そこで、サワさんが週2回、近所のデイサービスに通う計画を立ててもらった。しかし、何日か通ったものの挫折し、途中で自宅に帰ってきてしまった。

 デイサービスでは高齢者20~30人がゲームなどのレクリエーションに興じるが、協調性を失うという認知症の特性で、場の雰囲気になじめなかったのだ。それからはデイサービスに行くのを嫌がった。

さらに「ケアマネジャーが作成したサービスを利用しなかった」として、居宅介護支援事業者との契約が解除されてしまった。

「時々、ものすごい剣幕で怒るときがある。手がつけられなくなるので、その場を離れ、怒りが収まるのを待つしかないんです」(紀義さん)

 サワさんは2年ほど前、一人で電車に乗り、千葉県船橋市の交番で保護された。転んで骨折していたが、船橋までどうやってたどり着いたのか、どこで転んだのか、一切覚えていなかった。

その後も外出しては転倒を繰り返した。始終、徘徊しては警察に保護され、時に激高する妻から紀義さんは目が離せなくなった。

次第に心がすり減り、そばにいられなくなった。なるべく顔を合わせないよう朝から近所の図書館などで時間をつぶし、昼と夕方だけ自宅に戻るようにして、同居生活に耐えた。

 このように老夫婦世帯でどちらか一方が認知症になると、介護サービスと切り離された途端、孤立しがちだ。だが、サワさんの場合は幸運だった。

 デイサービスを拒絶したなどの情報が、行政の出先機関である「地域包括支援センター」(墨田区は「なりひら高齢者支援総合センター」)の主任ケアマネジャーの志賀美穂子さんに伝わっていたのだ。頻繁に自宅を訪ね、二人の身を案じるようになった。

「紀義さんが相当疲れていたのでとても心配になりました。共倒れにならないためにもサワさんになんとか介護サービスを受けてもらいたかった」(志賀さん)

 志賀さんは8月上旬、夫妻と主治医、民生委員などを交えた「ケア会議」を招集し、サワさんに「複合型サービス」を提案した。認知症の人が地元に住み続けるための“切り札”と期待される、2012年に始まった介護保険のサービスだ。

サワさん夫妻が見学した施設「すこやかの家業平」で受けることができた。

 少し詳しく説明しよう。「複合型サービス」とは、「通い」を中心に、必要に応じて「泊まり」や「訪問介護」「訪問看護」を組み合わせて受けられるサービス。

06年の介護保険法改正により、その市区町村に住む人限定の「地域密着型サービス」の一つとして始まった「小規模多機能型居宅介護」に、医療がプラスされたものだ。

 サワさんのように認知症でも寝たきりでないと要介護度は低く判定され、使える介護サービスは限られる。

軽度ならデイサービスなどの「居宅サービス」を利用しつつ在宅生活も可能だが、「徘徊」「暴力」などの中度の症状が出てくると、家族は目が離せなくなり負担が増える。

そうした事態に対応する「地域密着型サービス」の中で、とりわけ「複合型サービス」に期待が高まっている。

 まず大きな利点は、要介護1以上から利用でき、医療のケアが受けられること。料金は定額制で、要介護1なら月額の自己負担が1万4千円ほど、要介護5でも3万5千円ほど。

 また、要介護1でも独居で認知症の場合は週5回までデイサービスに通える。定員25人以下、毎日デイサービスに受け入れる定員は15人以下と、少数で家庭的な雰囲気だ。

 ただし欠点もある。今年5月の時点で全国に131カ所しかない。まだ実施していない市区町村が多いのだ。

認知症告知に本人と家族の不安と恐怖…情報行き届かず、手薄な支援

医療技術の進歩で、認知症の早期診断が可能になっている。だが、告知を受けた本人や家族の不安への対応は貧しい。決定的な治療法はなく、進行する。理解力も判断力もある初期の不安と恐怖は並大抵でない。その負担を、どう軽減するかが問われている。

 夫の机の引き出しから出てきたのは、びっしりと文字の並んだ手帳だった。野菜の名前、果物の名前、身の回り品-。こぼれ落ちる記憶をつなぎ止めるかのように丁寧な文字が並んでいる。

2冊の手帳は、商社マンだった小林健太郎さん(70)=仮名=が若年性の前頭側頭型認知症と診断された後に書きつづった。

 ページをめくるにつれ、内容が必死になっていく。同僚の名前、自身の履歴、家族の名前。忘れまいとする気持ちとは裏腹に、文字は次第に怪しくなる。最後はカタカナで「スリッパ」「ムシメガネ」「ハミガキのコ」。後のページは真っ白だ。

 健太郎さんに兆候が出たのは50代の末。睡眠障害、怒り。妻の佐代子さん(65)=仮名=の浮気を疑い、暴言を吐く。佐代子さんは「仕事のストレスかと思いました。仕事一筋の人でしたから」。だが、新聞勧誘員を追い掛け、近所に怒鳴り込むなど行動はエスカレートした。

 鬱病と診断されたが、1年ほどで「言葉が出ない」と言い始めた。堪能だった英語が読めなくなり、秘書に指示する言葉が出ない。検査のため、都内の大学病院に入院。医師から「若年性の前頭側頭型認知症です。良くなることはありません」と告知された。

 佐代子さんは「これからどう生きていったらいいのか、病院は何も教えてくれなかった。薬をくれただけ」と言う。65歳前でも介護保険が使えること、障害者手帳を受け取れること、障害年金が受けられるかもしれないこと-。手探りで家族会を探し、自治体に電話して情報を得た。

 健太郎さんの不安は癒えなかった。受診のたびに「可能なら手術がしたい」「未承認薬の治験に参加したい」「何か薬を」「治療を」と訴えた。手帳はその頃のもの。佐代子さんは最近、見つけて涙した。「夫は分からなくなるまで苦しんでいました」

 職場には病名を言わず、2年を過ごした。最後は業務をこなせなかったから、同僚は分かっていたはずだ。だが、辞めろ、とは言われなかった。佐代子さんは涙をこぼす。「言わなければいけない、言わなければいけないと思っていました。でも、主人には仕事は人生そのものでした」

 退職後、2人は漢字ドリルを買い求めた。小学3年生用を始めたが、途中で書けなくなった。2年生用に替えたが、それもできなくなり、1年生用にした。最後のひらがなのドリルには一文字も書くことができなかった。

 あれから約10年。健太郎さんは話はできなくなったが、自宅で穏やかに暮らしている。デイサービスを「出勤」と思ってか、楽しみにする。1人分の菓子は佐代子さんに分け、童謡を口ずさめば涙をためる。「悲しさや苦しさ以上に感動がある」と佐代子さんは話している。

 ■情報伝え、励まし、寄り添い、支える

 認知症だと知らされたときの本人や家族への支援が不足していることは、家族の間では「常識」だという。

 「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は「初期は特に本人も混乱するし、家族もどうしていいか分からない。医療機関が手を放さず、寄り添わないといけないのに、『1年後にまた来てください。進行の度合いを見ます』では、告知は早期絶望にしかならない」と批判する。

 早期診断が可能になっている一方で、決定的な治療法がないことが問題を複雑にしている。

だが、病気が分かった時点でソーシャルワーカーにつなぎ、家族会や認知症カフェの存在が分かるだけでも家族には足掛かりになる。介護保険や障害者手帳、人によっては障害年金などの情報も必須だ。

 高見代表理事は「医療機関は告知と一緒に、どんな支援があり、どう生きていったらいいかを伝えないといけない。それができれば告知もそんなに怖くなくなる。だが、それにふさわしいサービスが整っていない。初期や若年性への対応を進めないといけない」と指摘する。

 医療機関にも支援のない告知への危機感がある。熊本大学大学院・生命科学研究部の池田学教授は「本人と家族がうちひしがれて帰るような告知は考え直さないといけない。病名だけを伝えるのは告知ではない。医療そのものへの信頼も失う」。

 「若年性の場合、自覚症状があって受診する。働いていることも多く、正確な病名まで告知せざるを得ないこともある。だが、アルツハイマーにも前頭側頭型にも根本的な治療法はなく、病気は進行する。本人は怖いだろう。告

知すると、まず、間違いなく鬱状態になる。医師が責任を持ってフォローできるか。ソーシャルワーカーや臨床心理士が落ち着くまで寄り添う態勢をつくれるか。早期診断が意味を持つ態勢をつくらないといけない」(池田教授)

 池田教授は家族の依頼で、本人の職場の総務担当と話をすることもある。信頼できれば、本人の可能な仕事を一緒に考える。経営状態が悪い会社、危険物を扱う職場、運転が必須の職場もあるから容易でない。だが、配置転換してでも働き続けられれば病状にも良い影響がある。

 こうしたサポートは医師の判断に任されており、制度の裏付けはない。池田教授は「支援に正解はなく、知識と経験を総動員する。だが、信頼ができ、寄り添っていければ、患者は恐怖を乗り越えられる。

認知症疾患センターに予算をつけ、若年性の人と家族のサポートから開始し、対象を少しずつ広げていくしかない。介護する家族が不安だと、患者も不安になる。本来、本人と家族をどう支えるかは精神科医療の本質だ」と話している。

怒鳴ったらダメ 認知症の親との距離感、つき合い方

親や配偶者が認知症を発症した時、困った行動の連続に、思わず怒鳴りつけてしまうことがある。どう対応すればいいのか? 「認知症と共に輝く日々をめざして」(飛鳥新社)を出版した順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の新井平伊教授は、次のポイントを挙げる。

■同じものばかり、 いくつも買ってくる

「食品なら冷蔵庫に入っているものを書き出しておく。財布に<〇〇は家にあります>などと書いたメモを入れておく。財布の中の金額を管理する。とにかく叱らない」

■気力がなく、テレビばかり見ている

「認知症では意欲、やる気が低下しますが、これが続くと正常な脳機能も衰えてしまう。家にいると、どうしてもテレビの前にいる時間が長くなるので、デイサービスやヘルパーを利用する。日中に散歩などで活動量を増やし、適度に体を疲れさせるといいでしょう」

■食事をしたのに、まだ食べていないと言い張る

「もうすぐ食べられるという安心感を与えることが一番。どうしても我慢ができない場合は、カロリーの低いおやつを少しずつ出したり、3回の食事を数回に分ける、寂しさや欲求不満を食べることで解消しようとしている場合もあるので、様子を見るのも大事です」

■夕方になると「家に帰る」と身支度を始める

「少し時間が経つと落ち着くことも多いので、お茶や夕食に誘うなどして、本人がここにいようと思えるように気を紛らわせてください」

■お金を盗まれたと、身近な人を疑う

「<私が盗むわけがない>と責めず、一緒に捜す。気持ちが落ち着き、興味がほかへ移りやすくなります。食事などを挟むと、お金のことを忘れてしまう場合もあります」

■入浴を嫌がる

「入浴は夜と時間を決めず、日中に誘う。同性の家族や孫となら入るという場合もありますし、風呂上がりのビールやジュースを楽しみにお風呂に入るようになった人も。無理強いはせず、入浴の気持ち良さを伝えてください」

■失禁してしまう

「規則正しい生活で排尿や排便のリズムを予測し、タイミングを見てトイレに誘うと、失敗が減ります。トイレの場所が分からないようなら、ドアを開けてトイレだと分かるようにする。着脱のしやすい下着にする」

■幸せな認知症介護

 新井平伊教授の外来には、認知症の患者さんの診察に臨床心理士も同席する。臨床心理士の戸田愛子氏に、認知症の患者さんと家族が上手に寄り添いながら生きている印象的なエピソードを聞いた――。

 認知症の中期の段階で、近所の植木を蹴飛ばしたり荒らしたりする患者さんがいらっしゃいました。
 当時子供たちは20歳前後。奥さんは反抗期だった子供たちに「お父さんは悪くない」と繰り返し諭し、仕事と介護と子育てで大変な苦労をされていたにもかかわらず、認知症の家族会で知り合ったご家族を自宅に招いて慰めるなどしていました。

 重度に進行してからは、暴れるなどの行為は治まりました。奥さんはショートステイやデイサービス、リハビリなどを活用しながら在宅介護を続け、一方で仕事を辞め、結婚前の趣味を生かした活動をされています。独立し結婚した子供たちは、孫を連れて頻繁に実家を訪れ、介護を手伝っています。

 認知症の患者さんの介護は、初期や中期など段階において問題が変わります。ひとりで抱え込まずに、社会や地域支援を活用することによって、ポジティブな連鎖が生まれると思っています。

怒鳴ったらダメ 認知症の親との距離感、つき合い方

親や配偶者が認知症を発症した時、困った行動の連続に、思わず怒鳴りつけてしまうことがある。どう対応すればいいのか? 「認知症と共に輝く日々をめざして」(飛鳥新社)を出版した順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の新井平伊教授は、次のポイントを挙げる。

■同じものばかり、 いくつも買ってくる

「食品なら冷蔵庫に入っているものを書き出しておく。財布に<〇〇は家にあります>などと書いたメモを入れておく。財布の中の金額を管理する。とにかく叱らない」

■気力がなく、テレビばかり見ている

「認知症では意欲、やる気が低下しますが、これが続くと正常な脳機能も衰えてしまう。家にいると、どうしてもテレビの前にいる時間が長くなるので、デイサービスやヘルパーを利用する。日中に散歩などで活動量を増やし、適度に体を疲れさせるといいでしょう」

■食事をしたのに、まだ食べていないと言い張る

「もうすぐ食べられるという安心感を与えることが一番。どうしても我慢ができない場合は、カロリーの低いおやつを少しずつ出したり、3回の食事を数回に分ける、寂しさや欲求不満を食べることで解消しようとしている場合もあるので、様子を見るのも大事です」

■夕方になると「家に帰る」と身支度を始める

「少し時間が経つと落ち着くことも多いので、お茶や夕食に誘うなどして、本人がここにいようと思えるように気を紛らわせてください」

■お金を盗まれたと、身近な人を疑う

「<私が盗むわけがない>と責めず、一緒に捜す。気持ちが落ち着き、興味がほかへ移りやすくなります。食事などを挟むと、お金のことを忘れてしまう場合もあります」

■入浴を嫌がる

「入浴は夜と時間を決めず、日中に誘う。同性の家族や孫となら入るという場合もありますし、風呂上がりのビールやジュースを楽しみにお風呂に入るようになった人も。無理強いはせず、入浴の気持ち良さを伝えてください」

■失禁してしまう

「規則正しい生活で排尿や排便のリズムを予測し、タイミングを見てトイレに誘うと、失敗が減ります。トイレの場所が分からないようなら、ドアを開けてトイレだと分かるようにする。着脱のしやすい下着にする」

■幸せな認知症介護

 新井平伊教授の外来には、認知症の患者さんの診察に臨床心理士も同席する。臨床心理士の戸田愛子氏に、認知症の患者さんと家族が上手に寄り添いながら生きている印象的なエピソードを聞いた――。

 認知症の中期の段階で、近所の植木を蹴飛ばしたり荒らしたりする患者さんがいらっしゃいました。
 当時子供たちは20歳前後。奥さんは反抗期だった子供たちに「お父さんは悪くない」と繰り返し諭し、仕事と介護と子育てで大変な苦労をされていたにもかかわらず、認知症の家族会で知り合ったご家族を自宅に招いて慰めるなどしていました。

 重度に進行してからは、暴れるなどの行為は治まりました。奥さんはショートステイやデイサービス、リハビリなどを活用しながら在宅介護を続け、一方で仕事を辞め、結婚前の趣味を生かした活動をされています。独立し結婚した子供たちは、孫を連れて頻繁に実家を訪れ、介護を手伝っています。

 認知症の患者さんの介護は、初期や中期など段階において問題が変わります。ひとりで抱え込まずに、社会や地域支援を活用することによって、ポジティブな連鎖が生まれると思っています。

間に合うかも! 禁煙で認知症リスクを減少できる?

 認知症予防の鍵を握るのは、食や運動だけではない。病気や生活習慣、嗜好品なども認知症の発症リスクを高める可能性があり、それらの改善が予防につながることがわかってきている。

 喫煙は血管を収縮させて血液の流れを悪くし、動脈硬化を促進させる。このため、心筋梗塞や脳梗塞といった病気の原因だけでなく、認知症のリスクにもなる。

 喫煙が認知症発症の危険因子であることは、今年6月に報告された福岡県久山町の住民を50年以上にわたって調査している「久山町研究」の結果からも示されている。

 この調査は、1988年に健康診断を受けた高齢者約700人を「喫煙」「過去に喫煙」「非喫煙」の三つに分けて15年間にわたって追跡した結果をまとめたものだ。

この間、約200人が認知症になったが、喫煙者は非喫煙者に比べて、認知症の発症リスクが2倍になっていた。過去に喫煙していた人と、非喫煙者では差が出なかった。久山町研究を主導する、九州大学大学院環境医学の清原裕教授はこう話す。

「この調査では、40代、50代の中年期以降も喫煙を続けている人はリスクが高くなっていました。一方で、老年期で禁煙した人ではリスクが減っていました。今すぐにたばこをやめればまだ間に合うかもしれない、ということです」

酒は少量ならむしろ認知症にプラス 気になるその適正量は?

愛飲家にとって、飲酒と認知症の関係は気になるところだ。杏林大学医学部(東京都三鷹市)高齢医学の松井敏史准教授に尋ねた。

「アルコール依存症患者や大量に飲酒する習慣がある人には、脳の萎縮や脳血管障害が高い割合で起こり、認知機能の低下がみられます。大量の飲酒は、認知症の発症リスクを高める可能性があるといえます」

 松井准教授によると、アルコールには脱水作用があり、これで血液中の水分が奪われると、血管が詰まり脳梗塞などを発症。血管性認知症の原因になるという。

 約1800人の高齢者を対象にしたアメリカの住民調査では、長期の飲酒で累積の量が増えるほど、脳が萎縮していることが判明した。アルコールを分解するときにビタミンB1が大量に消費され、脳の神経細胞が破壊されるなどして、萎縮が進むもので、アルコール関連認知症の原因となる。

 だが、悪影響を与えるだけではない。少量のアルコールは認知症のリスクを低減するという研究もあると、松井准教授は言う。

「1日あたりアルコール10グラム程度の飲酒は、認知症のリスクを低減させる効果があることが報告されています。ビールなら250ミリリットル、日本酒なら0.5合です」

 この研究はアメリカに住む約5900人の高齢者を対象に、平均6年間追跡したものだ。飲酒をしない人の認知症発症リスクを1としたとき、1日あたりアルコール10グラムの飲酒で認知症になるリスクは0.5程度。つまり、まったく飲まない人の半分程度にリスクが下がっていた。

 少量の飲酒はなぜいいのか。松井准教授は解説する。

「アルコールには、善玉コレステロールを増やしたり、血管を拡張したり、血液をサラサラにしたりする働きがあります。少量だとこれらが効果的に作用するのではないでしょうか」

 もちろん、お酒に弱い人が無理に飲む必要はない。また、アルコールが1日20グラムを超えると、リスクは急増していくこともわかった。

「1日に飲んでいいのはビール500ミリリットルまでです。それ以上だとリスクが急激に上がります。十分な栄養をとりつつ、楽しくお酒と付き合ってください」(松井准教授)

「味噌汁に牛乳」「緑茶ごはん」…認知症予防の意外なレシピ

認知症発症の予防が期待できる栄養素や予防食を日々、効果的にとるにはどうすればいいか。栄養学の専門家や管理栄養士にポイントやレシピなどを聞いた。

 DHA、EPA、ポリフェノール、葉酸といった栄養素を、日々の食事にどう取り入れたらいいか――。認知症予防の食生活指導に取り組む管理栄養士の可野倫子(かののりこ)さんに、おすすめのメニューを考案してもらった。また、それぞれの栄養素の上手なとり方のポイントも聞いた。

「まずDHAやEPAですが、これらは魚のなかでも、とくに青魚に多く含まれています。鮮度とともに減ってしまうので、なるべく新鮮なものを買い求め、買ったらすぐに調理するのがポイントです」(可野さん)

 それがむずかしい場合は、生の魚ではなく水煮の缶詰を利用するとよいそうだ。新鮮な魚を水煮にしているため、栄養成分はあまり変わらない状態で缶に詰まっている。

「水煮の缶詰に入っているアブラは、魚自身のアブラ、つまりDHA、EPAなのです」(同)

 今回紹介している料理は、アジやサバ、サンマ、ウナギを使ったもの。アジは比較的手ごろな値段で手に入り、半身(約100グラム)で約1グラムのDHAが含まれる。最新の厚労省の報告によると、n??3系多価不飽和脂肪酸の摂取量の目安は1日約2グラムなので、半分の量を一度にとることができる。

「ウナギは、DHAやEPAだけでなく、たんぱく質や抗酸化作用のあるビタミンEが豊富。代謝に欠かせないビタミンB1、B2も豊富なので夏バテ予防も期待でき、暑い時期におすすめです」(同)

 ポリフェノールは、果物や野菜に含まれるが、多くが水溶性で、加熱で失われやすい。可野さんは、「加熱したものを丸ごととるスープや味噌汁などの汁物、煮物がよい」と話す。

 夏野菜の代表格であるナス。効率よくポリフェノールをとるには、調理の際、長時間水にさらさないようにするのがポイント。

「ナスは煮浸しや味噌汁などでも活躍する野菜ですが、皮を素揚げにし、身はさいの目に切り、抗酸化作用のあるオリーブオイルと塩、こしょうで調味すれば、それだけで赤ワインに合う一品になります。もちろん、飲みすぎには注意してくださいね(笑)」(同)

 夏にぴったりな献立「トマトの冷麺」も教えてもらった。トマトにもポリフェノールが豊富に含まれる。ゆでて流水で洗ったきしめんに、ゆでた枝豆と、適当な大きさに切ったトマト(缶詰でも可)、ナス、タマネギをのせ、オリーブオイルで炒めたニンニクととうがらしをかけ、塩、こしょうとケチャップで味を調える。食欲がなくても、これならツルッと食べられそうだ。

 チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や牛乳は、料理しなくても食べたり飲んだりできるが、より積極的にとるためには、バタートーストをチーズトーストに、紅茶をミルクティーにするなどの応用も必要。

 牛乳ではこんなユニークな工夫もできる。味噌汁に入れるというのだ。意外な組み合わせだが、コクが出るので、そのぶん味噌を減らせる。減塩も期待できるので、一石二鳥だ。

 ポリフェノールと葉酸の両方を含む緑茶は、毎日欠かさず飲みたいが、ただ飲むだけではもったいない。料理に使えないだろうか。

「もちろん、使えますよ。緑茶を米と一緒に炊き、炊き上がったら茶葉をふりかけます。おいしい『緑茶ごはん』ができあがります。この方法だと、茶葉も食べるので、緑茶の栄養素がまるごととれます」(同)

「この食品がいいからと、同じものだけ食べるのではなく、偏らずいろいろな食材をとれば、栄養はしっかりとれます。これを機に、いろいろな料理にもチャレンジしてほしい。それが脳の活性化や認知症予防にもつながっていくでしょう」(同)

物忘れがヒドイ人必見!脳の老化を食い止めるには●●を7個食べて

「昨日の夕食何食べた?」「昨日会った方の名前は?」など、前の日に食べたものや行った場所を「何だったかな……」ということ、結構ありますよね。

もしかしたらそれは、脳の短期記憶の機能が、衰え始めている兆候かもしれません。

年齢を重ねても美しく知的でいたい女性にとっては、脳の若さも大切。そこで今回は、脳の活性化に役立つ“くるみ”の話をお届けします。

■脳は老化していくって本当?

脳は20歳代から衰え始め、認知力の低下に気づくのが40歳頃とされています。大人になると発達が止まり、少しずつ脳の神経細胞が死んでいくと、聞いたことがあるかもしれません。

しかし現在では、脳がネットワークとして機能していて、いくつになっても細胞が新生する点などから、加齢による自然な認知力の低下は、脳への刺激と食事によりカバーできるというように変わってきています。

■脳を老化させない食べ物って?

カリフォルニアくるみ協会によると、くるみの摂取によって、脳の力を高められる可能性があるとの研究が、米アンドリューズ大学の研究者らを筆頭に、さまざまな研究で明らかになっているとのこと。

食事にくるみを加えることで、心臓病や糖尿病などの身体の病気に加えて、脳の神経系統の衰えによる、疾病の始まりを遅らせることが可能であるとの内容が示唆されています。

医学ジャーナリストの山田雅之さんの話では、脳にとっては、良い脂肪酸を摂ることと、抗酸化物質で酸化を防ぐこと、血管の健康を保つことは、脳の老化を防ぐための3要素だといいます。

この3要素を満たすのが、くるみ。オメガ3脂肪酸が、ナッツ類で最も多く含まれています。オメガ3脂肪酸とは、細胞膜の構成要素の一つであり、身体の調整物質の一つ。

さらに抗酸化値が高く、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、葉酸、マグネシウム、銅、亜鉛などのビタミンやミネラルをはじめ、食物繊維、メラトニンなど人間の健康維持、増進に必要な成分が豊富に含まれます。

くるみは、バランス良く栄養素を補給するのに適した食材といえるのです。

■脳の質には脂肪酸が影響する

脳の60%は脂肪でできているので、脳内の脂肪酸の構成が、脳の質に大きな影響を与えます。その脂肪酸の構成は、食べ物によって決まり、脳に良い脂肪酸を摂っていれば、健康的な脳に変化させることが可能なのです。

脳に良い脂肪酸と悪い脂肪酸は、オメガ3>オメガ6>一価不飽和脂肪酸>不飽和脂肪酸>トランス脂肪酸の順となり、オメガ3は神経細胞間のコミュニケーションがスムーズに行える、健康的な脳を作ります。これらにはDHA、ALA、α‐リノレン酸があります。

その他くるみには、アルツハイマー病の主要な原因となるたんぱく質・アミロイドβの働きを阻害し、睡眠を調整するメラトニンを含むなど、多彩な働きで脳を活性化します。

バルセロナ病院のエミリオ・ロス博士らが行った、地中海料理に含まれる食材と認知機能の関連性の調査では、くるみにワーキングメモリを良くする働きがあることが分かっています。

他の研究でも批判的思考力、言語的な推理能力が、著しく向上することが実証されています。

いかがでしたか? 1日におよそ30gのくるみを摂ると、1日の推奨量を満たします。殻付きで7個、剥きくるみで14個ほど、毎日の生活に少しずつ取り入れてみませんか。

「味噌汁に牛乳」「緑茶ごはん」…認知症予防の意外なレシピ

認知症発症の予防が期待できる栄養素や予防食を日々、効果的にとるにはどうすればいいか。栄養学の専門家や管理栄養士にポイントやレシピなどを聞いた。

 DHA、EPA、ポリフェノール、葉酸といった栄養素を、日々の食事にどう取り入れたらいいか――。認知症予防の食生活指導に取り組む管理栄養士の可野倫子(かののりこ)さんに、おすすめのメニューを考案してもらった。また、それぞれの栄養素の上手なとり方のポイントも聞いた。

「まずDHAやEPAですが、これらは魚のなかでも、とくに青魚に多く含まれています。鮮度とともに減ってしまうので、なるべく新鮮なものを買い求め、買ったらすぐに調理するのがポイントです」(可野さん)

 それがむずかしい場合は、生の魚ではなく水煮の缶詰を利用するとよいそうだ。新鮮な魚を水煮にしているため、栄養成分はあまり変わらない状態で缶に詰まっている。

「水煮の缶詰に入っているアブラは、魚自身のアブラ、つまりDHA、EPAなのです」(同)

 今回紹介している料理は、アジやサバ、サンマ、ウナギを使ったもの。アジは比較的手ごろな値段で手に入り、半身(約100グラム)で約1グラムのDHAが含まれる。最新の厚労省の報告によると、n??3系多価不飽和脂肪酸の摂取量の目安は1日約2グラムなので、半分の量を一度にとることができる。

「ウナギは、DHAやEPAだけでなく、たんぱく質や抗酸化作用のあるビタミンEが豊富。代謝に欠かせないビタミンB1、B2も豊富なので夏バテ予防も期待でき、暑い時期におすすめです」(同)

 ポリフェノールは、果物や野菜に含まれるが、多くが水溶性で、加熱で失われやすい。可野さんは、「加熱したものを丸ごととるスープや味噌汁などの汁物、煮物がよい」と話す。

 夏野菜の代表格であるナス。効率よくポリフェノールをとるには、調理の際、長時間水にさらさないようにするのがポイント。

「ナスは煮浸しや味噌汁などでも活躍する野菜ですが、皮を素揚げにし、身はさいの目に切り、抗酸化作用のあるオリーブオイルと塩、こしょうで調味すれば、それだけで赤ワインに合う一品になります。もちろん、飲みすぎには注意してくださいね(笑)」(同)

 夏にぴったりな献立「トマトの冷麺」も教えてもらった。

トマトにもポリフェノールが豊富に含まれる。ゆでて流水で洗ったきしめんに、ゆでた枝豆と、適当な大きさに切ったトマト(缶詰でも可)、ナス、タマネギをのせ、オリーブオイルで炒めたニンニクととうがらしをかけ、塩、こしょうとケチャップで味を調える。食欲がなくても、これならツルッと食べられそうだ。

 チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や牛乳は、料理しなくても食べたり飲んだりできるが、より積極的にとるためには、バタートーストをチーズトーストに、紅茶をミルクティーにするなどの応用も必要。

 牛乳ではこんなユニークな工夫もできる。味噌汁に入れるというのだ。意外な組み合わせだが、コクが出るので、そのぶん味噌を減らせる。減塩も期待できるので、一石二鳥だ。

 ポリフェノールと葉酸の両方を含む緑茶は、毎日欠かさず飲みたいが、ただ飲むだけではもったいない。料理に使えないだろうか。

「もちろん、使えますよ。緑茶を米と一緒に炊き、炊き上がったら茶葉をふりかけます。おいしい『緑茶ごはん』ができあがります。この方法だと、茶葉も食べるので、緑茶の栄養素がまるごととれます」(同)

「この食品がいいからと、同じものだけ食べるのではなく、偏らずいろいろな食材をとれば、栄養はしっかりとれます。これを機に、いろいろな料理にもチャレンジしてほしい。それが脳の活性化や認知症予防にもつながっていくでしょう」(同)

40代でも認知症 直面する介護問題にまずは何をすればいい?

本人はもちろん、介護する家族にも負担のかかる認知症。まだまだ介護なんて関係ないといっても40~50歳代と比較的若い段階で発症する人もいる。では、ケアが必要になったらどうすればいいのか。認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子氏に聞いた。

Q1 「認知症かもしれない」と思ったらどう行動を起こしたらいいのでしょうか。

 まず、ふだん診てもらっている「かかりつけ医」に受診し、心配な点を具体的に相談しましょう。認知症の検査や診断、投薬などの治療をしてくれる「かかりつけ医」が増えています。

 より詳しい検査が必要な場合は、かかりつけ医が専門の医療機関を紹介する流れになっています。かかりつけ医がいない場合は、各市区町村に必ずある「地域包括支援センター」に電話をして、「物忘れ外来」など認知症に詳しい地域の医療機関を教えてもらいましょう。

各都道府県には、より専門的な診断や治療を行うための「認知症疾患医療センター」が設置されて、かかりつけ医や地域包括支援センターと連携を図っています。こうした医療機関をホームページに掲載している都道府県や市区町村もあります。

 地域包括支援センターにはケアマネジャー、保健師、社会福祉士などが常駐し、介護のよろず相談を受けています。悩みを抱え込まないで、これからの生活について最初の段階でよく話し合い、支えてくれる地域のサービスや支え手の情報を知っておくことが肝心です。

Q2 嫌がる本人をどうやって連れていったらいいのでしょうか。

 早めに受診させようと周りが急ぐと、本人の不安や不満を募らせ、ますます頑なになり、悪循環に陥りがちです。本人が病院に行ってみようという気になる誘い文句の工夫が必要です。

「お互い元気でいられるように一緒に健診にいこうよ」「これからもあの好きなこと続けられるといいね」など、前向きな声をかけましょう。

お孫さんや友達から誘ってもらう手もあります。地域包括支援センターの職員に家庭訪問を依頼して、在宅訪問の医師を紹介してもらい、家に診にきてもらう方法もあります。

Q3 普段の生活で困ったことがあったらどこに相談すればいいのでしょうか。

 まずは地域包括支援センターです。そこで、家族の集いや最近できている「物忘れカフェ」など、気軽に相談できる場や人を紹介してもらいましょう。地域の民生委員の中には、認知症の相談に乗ってくれる人も増えています。

面と向かっては話しづらいという場合、電話相談が便利です。認知症の専門ダイヤルを設置する自治体が増えたので、役所で聞いたり、市区町村の広報やホームページで確認をしましょう。

 介護体験のある人が親身に相談を受ける「認知症の人と家族の会」の電話相談もあります。地域には必ずいい相談相手がいます。一人で抱え込まないことが大事です。

Q4 使える介護サービスはどのようなものがありますか。

 認知症の人はいきなり何もかもできなくなるわけではなく、介護サービスが必要になるのは、長い経過の中盤以降です。最初のころは介護よりも、本人が閉じこもらずに安心して外に出かけられるような場所や支援者が必要です。

最近では各市区町村で支援者や場所づくりが進んできているので、地域包括支援センターに問い合わせ、地元情報を集めてみましょう。

 一方、家族が疲弊しないように、早めに介護保険サービスを申請し、お任せではなく本人・家族の生活や素朴な希望を伝えながら活用しましょう。




うつ病で休職中に「傷病手当金」を上手に受け取るためのちょっとしたコツ

もしうつ病等で休職中に、傷病手当金をもらえるケースが発生したら、なるべく早くもらえたほうがいいですよね?

さて、傷病手当金の申請にあたり、“医師の意見”と“会社の証明”が必要であると「うつ病で働けない…

そんなとき“傷病手当金”を受け取るためのポイント」でご紹介しましたが、今回は実際に医師や会社に記入や証明をお願いするにあたってのちょっとしたコツについてご紹介します。

前回に引き続き、中小企業診断士、社会保険労務士、職場メンタルヘルスコンサルタントの上江誠さんにお話をうかがってきました。

■1:医師の意見を書いてもらう際の費用は?

「医師に“診断書”を書いてもらうと自費になり、病院によって値段は違いますが、数千円程度、請求されることもあるかと思います」

「“傷病手当金支給申請書”に意見を書いてもらったら高いのでは……?と思う方もいらっしゃるようですが、診療報酬点数表で“傷病手当金意見書交付料”が定められています。それによると“100点=1,000円”と決められています」

傷病手当金意見書交付料は、診断書を書いてもらう際に請求される文書料金とは異なるものですので、まずそこをふまえておきましょう。

■2:“医師の意見”を書いてもらうのに健康保険は適用できる?

「医師の意見を書いてもらうにあたり、健康保険を適用できる場合とできない場合がありますね。

うつ病の治療を健康保険で受けていたら、3割負担の方はそれに応じて“300円”となりますし、もし自由診療で治療を受けていたら10割負担なので“1,000円”となります」

健康保険で治療を受けるか、自由診療で治療を受けるかによって違うとのことですね。

■3:医師の意見の記入をお願いする時には“コミュニケーション”を大切に!

『2012年医療文書作成業務・文書料金実態調査』によれば、“医療文書の作成業務は、医師のいやがる仕事の筆頭格で、負担感の大きいものとして知られています”と書かれています。

本来の仕事である診察や手術等の業務を行っている上で、さらに医療文書の作成を行うことになるわけですので、意見の記入をしてくれるのが当たり前と思わず、お願いする時には「お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします」といったようにお願いするのがベターな対応ではないでしょうか。

印象を良くしておくだけでも、主治医の先生も「なるべく早く書いてあげよう」と思ってくださるかもしれません。

また、精神科や心療内科は忙しいところが多いので、当日記入してもらえるとは限りません。その場合、次の診察の際に記入した書面をもらえるのか、いつごろかも含めて郵送などの対応を頂けるのか、事前に確認しておくといいでしょう。

■4:会社に証明をお願いする時にも、やはり“コミュニケーション”を大切に!

医師に記入をお願いするのと同じように、会社に証明をお願いする時にもやはりコミュニケーションが大切でしょう。

会社の担当者の方が申請手続きをしてくれるところがほとんどだと思いますが、書類の記入は大変ですし、添付書類の用意も必要で、意外と手間がかかるものです。

会社の担当者の方についても、普段の業務をしている上で申請書の記入を行うことになります。

「普段からコミュニケーションを良くしていたり、また、申請書を会社に送る時には、“お忙しい所、いつも素早い対応をして下さり、ありがとうございます”といったように書き添えるなどの心配りや気遣いがあったりすると、申請書を受け取った担当者の方の印象もちがいますよね」

以上、休職中に傷病手当金を上手に受け取るためのコツについてご紹介いたしましたが、いかがでしたか?

申請書の準備が遅れると、それに伴って傷病手当金の受給も遅くなってしまいます。ちょっとした心配りで、医師や会社の担当者が受ける印象もかわってくるものなので、記入などをお願いする時には“コミュニケーション”を大事にしましょうね。

当てはまったら気をつけて!「うつに陥りやすい性格」3つのパターンとは

眠れない、食欲がわかない、気分が落ち込む、何をしていても楽しくない……といったことを日々感じている人は、“うつ病”の可能性があるそうです。

病院でうつ病と診断されなくても、季節の変わり目、ホルモンバランスの変化など、ちょっとしたことで、うつ傾向になってしまうことを経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

とくに女性は、男性よりもうつ病になりやすいといわれていますが、うつ病になりやすい性格の傾向があるそうです。それを知っておけば、いざ大きなストレスがかかったときにどう対応するかを事前に心構えておくことができるかもしれません。

そこで今回は、中小企業診断士、社会保険労務士、職場メンタルヘルスコンサルタントの上江誠さんに、“うつ病になりやすい人の性格傾向3つ”をうかがってきました。

■1:まじめな性格

まじめで几帳面、気配りもできてルールや約束もキッチリ守るという、一見完璧にみえる性格の人はうつ病になりやすい性格の1つであると、上江さんは言います。

「このような性格の方は、人間関係や物事の秩序を重んじるので、これらのバランスが崩れたときに大きなストレスを受けてしまいます。つまり、融通が利かない、変化に弱いタイプとも言えるでしょう」

お客様対応の担当者、期限やお金の管理を担当している事務職の方などは、お客様からのクレームや自分で対応しきれない業務やトラブルが起こったときに、自分の許容量以上に抱え込んでしまう場合が少なくないので要注意とのことです。

■2:粘着気質の性格

「うつ病になりやすい性格の2つ目は、エネルギーにあふれ、集中力があり、正義感や責任感が強いという、いわゆる“優等生タイプ”の性格です。凝り性な一面もあります。

ただ、仕事では理屈や正論だけではうまくいかないこともありますよね。このような方は、強すぎる正義感や責任感が裏目となり、大きなストレスを抱えてしまうことがあります」と上江さん。

バリバリ仕事ができるタイプの方などが、昇格し管理職や職場のリーダーとなって仕事内容が変わったときに、チームの成果や部下・後輩の育成で悩み、抱え込んでしまう場合があるので気をつけた方がいいそうです。

■3:失敗の原因を他人に求める性格

「3つ目の性格としては、“新型うつ病”と言われる方にみられる性格で、“他責傾向”がありますね。つまり、”仕事でミスをしたのは、上司や先輩が適切な指導をしなかったせいだ”など失敗やミスをしても、自分の責任ではなく他人に責任を押しつけるという傾向がみられます」

「なお、医療の現場で明確に定義された言葉ではありませんが、“従来のうつ病”の方は、仕事も日常生活でも気力がわかないという症状に対し、“新型うつ病”の方は、仕事をするのは困難だけど、普段の生活では旅行や飲み会などは行くことはできるといった症状のようです」

“新型うつ病”は新入社員に多く、社会人になるまで、困難や挫折を経験したことがないため、そういったものに直面したときにうまく対応できないという、“社会的に未熟な面”を持っている方がなりやすいと言われているそうです。

以上、うつ病になりやすい人の性格傾向3つをご紹介しましたが、いかがでしたか?

実は、うつ病の原因ははっきり分かっておらず、性格だけではなく様々な原因があると考えられています。ただ、過度なストレスはうつ病につながりやすいと言われております。

大事なことは、自分の性格が今回紹介したものに当てはまるかどうかではなく、何かの出来事の際に、自分が大きなストレスを受けやすいかどうかを知っておくことでしょう。事前に知っていれば、より適切な対応も可能となるのではないでしょうか。

気軽に飲む風潮強い胃薬 アルツハイマーの一因となる説存在

体調が優れなければ、まずは薬を飲んで体を休めるのが鉄則──こんな当たり前の常識に一石を投じる説が登場した。

「薬で病気がつくられる」と主張するのは、『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂新書)の著者で、このたび『薬が病気をつくる』(あさ出版刊)を上梓した、薬剤師で栄養学博士の宇多川久美子氏だ。

「健康診断で基準値からはみ出すと、たとえ自覚症状がなくても『患者』と見なされ薬が処方されます。

コレステロール値が基準より高いがために、抑制薬を慢性的に飲み続けたことで筋力が低下し、四肢が麻痺してしまった人もいる。薬は、体にとって異物であり、体内で“毒”として作用することもあるのです」(宇多川氏、以下同)

 宇多川氏は胃薬とアルツハイマーの関係性を指摘する。体内に入ってきたものが最初に到達する器官である胃には、有害と見なしたものは胃酸で殺菌するという働きがある。

「胃酸を抑えるタイプの胃薬を服用することで胃酸不足による消化不良や、本来胃で殺せるはずの雑菌が生き延びて起こる感染症のリスクが発生します。

有害物質が殺菌されないまま胃を通過することで、肝臓や腎臓にまで大きな負担がかかる。消化機能が落ちて太りやすくなる恐れもあります」

 また、多くの胃薬に含まれるアルミニウムは、過剰摂取すると思わぬ弊害が起こる。

「問題となっているのは脳への影響です。アルミニウムを摂取しすぎることがアルツハイマー型認知症の一因になっているという説もあります。お酒を飲む前や暴飲暴食した翌日に気軽に胃薬を飲む風潮は、体に負担を強いるばかりです」

緑茶に「認知機能の改善」や「がんのリスク低減」の可能性があることが判明

昨年ユネスコの「無形文化遺産」に登録された“和食”。その和食とともに欠かせない飲み物として古くから日本人に愛されている“緑茶”が国内外で注目を集めているという。

緑茶は、人間の健康に役立つさまざまな機能性成分が含まれていることでも知られる。

その代表格とされるのが緑茶カテキン。お茶の渋みの主成分にあたるポリフェノールの一種で、抗酸化作用、抗菌作用、抗インフルエンザ作用などさまざまな健康効果が報告されている。

また、2013年に「第54回 日本神経学会学術大会」で発表が行われた、伊藤園中央研究所・静岡県立大学薬学部の山田浩教授と社会福祉法人白十字ホームの共同研究によると、緑茶抹の摂取による認知機能低下の改善がヒトを対象とした臨床試験においても確認されている。

臨床試験を行った山田浩教授は「短期間に緑茶を大量に飲んで一気に緑茶カテキンを摂るのではなく、毎日こまめに緑茶を飲んで、より効率よく緑茶カテキンを摂ることによって、認知機能の改善効果が得られる可能性があることが期待される」と研究結果についてコメント。

また伊藤園中央研究所長の提坂裕子氏は「緑茶カテキンには、紫外線や化学物質による遺伝子の変異を抑え、細胞の異常な増殖を抑制する作用があり、さまざまな研究において、発がんやがん細胞の増殖および転移を抑えることが報告されている」と緑茶による健康効果への期待の高さを語っている。

たんぱく質が不足するとうつ病になる? 効果的なたんぱく質の取り方

私たちは糖質、脂質、たんぱく質の3大栄養素から、生命維持に必要なエネルギー源を得ています。

糖質とたんぱく質は4kcal/g、脂質は9kcal/gのエネルギーを発生させます。

ところが、たんぱく質はエネルギーとなる前に、筋肉や骨、ホルモンや神経 伝達物質など、心身の構成成分として利用されるという特徴があります。

英語でたんぱく質のことをプロテインと言います。

この語源はギリシャ語で「第一」という意味の言葉から生まれたもの。

それほど、たんぱく質は生命維持になくてはならない第一の栄養素なのです。

私たちは新陳代謝を繰り返し、生命を維持し続けていきます。

この細胞を形づくり、活動させる命の担い手がたんぱく質です。

食物を食べる目的のひとつは、たんぱく質の摂取と言っても過言ではありません。

たんぱく質は私たちの身体を構成する成分のうち、水分に次いでもっとも多くを占めています。

筋肉、臓器、脳など身体をつくり、ホルモン、酵素、神経伝達物質などの材料となるなど、その役割は多岐にわたります。

たんぱく質をしっかり摂取することで、脳細胞の壊死(えし)を防ぎ、思考力を高め、神経の働きをよくして精神的な安定をもたらします。

また、免疫機能を高め、病気やけがに対する抵抗力や治癒力を高めます。

逆にたんぱく質が不足すると、脳の働きが鈍り、記憶力や思考力が減退、うつ病や神経症になりやすくなる他、体力やスタミナが不足します。

たんぱく質はストレスによって消費量が増す栄養素でもあります。

現代人は体力よりストレスの消耗の方が多くなりがちです。

にもかかわらず、朝は食パン、昼はチャーハン、おやつにチョコレート、夜はラーメンなど、安価で手軽に食べられる糖質たっぷりの食に陥りやすい食環境にいます。

意識して良質なたんぱく質の摂取を心がけていきたいものです。

では、具体的にどうやってたんぱく質を摂取すればいいのでしょうか? たんぱく質を多く含む食品には、肉、魚介類、大豆・大豆製品、卵などがあります。

これらから効果的に栄養を摂取する方法を教えます。

肉は赤身肉を焼く・ゆでるなどシンプルに調理しましょう。

ハム、ソーセージなど肉の加工品は食品添加物が使用されるものもあります。

たまに楽しむ程度か、添加物のないものを選びましょう。

魚介も、切り身や開きを焼くだけや刺し身がオススメです。

かつお節やじゃこなどの干物や水煮缶もいいでしょう。

いか、たこ、ホタテのボイルなど素材を生かしたシンプルな料理をチョイスしましょう。

大豆製品も、豆腐や納豆、無調整豆乳など、素材そのものを味わう料理を選びたいところ。

卵は手軽なたんぱく質系食品ですが、コレステロールを心配される方も少なくありません。

しかしコレステロールは、私たちの生命現象の根幹を成す細胞膜の原料として必須の栄養素です。

そのため、身体の中のコレステロールはその80%前後が主に体内(肝臓)で作られています。

つまり、卵を1日1~2個食べたり食べなかったりすることに関わらず、コレステロールは必要に応じて生産量を調整しているというわけです。

家族性高コレステロール血症の方以外、むやみに卵を制限する必要はありません。

たんぱく質の大きな特徴として、食べ貯めができないことがあります。

つまり、常に摂取し続けなればなりません。

とは言え、手軽さを重視し、市販の揚げ物や総菜など加工品に頼り過ぎるのも好ましくありません。

添加物や保存料など化学物質の取り過ぎにならないよう、注意が必要です。

知っている? 認知症と物忘れの違い

■「物忘れがあるから認知症」は誤り

 私の外来には1日60~70人、多いときで100人を超える患者さんがいらっしゃいます。最近は老若男女を問わず、物忘れが気になると訴える患者さんが多くなってきました。

 「テレビで昨日見た俳優さんの名前を思い出せない。物忘れが多く不安」「大事なものをどこにしまったか忘れてしまう。若年性の認知症ではないか」「漢字が書けないことが多い。自分はボケてしまったのでは……」などなど。

 ご安心ください。このような症状は全てよくある「物忘れ」であり、認知症とは全く別のものとして区別されます。

よくある物忘れは、年齢を重ねていくとどうしても出現してくるもの。現代は情報量が非常に多く、記憶機能を持った機械の多い便利な世の中なので、脳機能を使わなくなったことによる物忘れも増えているようです。

一昔前なら自分の家の電話番号は誰もが覚えていたと思いますが、最近は自分の携帯番号を覚えていない人が増えているのも、その一例です。

■認知症特有の主な症状とは?

 それでは、「認知症」と「物忘れ」の違いはどこにあるでしょうか? 認知症特有の症状を解説します。

□出来事の全部を忘れる

 朝食の内容だけでなく、朝食を食べたという事実自体を忘れる。ただの物忘れでは起こらない。

□記憶障害だけでなく、判断力が低下する

 ごく基本的な情報を忘れて、正しい判断ができなくなる。味付けを甘くしたいから塩を入れなければと判断し、大量の塩を入れるなど、基本的な調味料の役割が分からなくなるなど。料理の作り方の手順や詳細を忘れるだけなら、ただの物忘れ。

□物忘れをしてしまったという自覚がない

 大きな物忘れをしても、自分が物忘れをした、判断ができていないという自覚がない。

□物をなくしたときに、思わぬ発想をするようになる

 物をしまった場所を忘れたり、どこかに置き忘れるのは正常の範囲。認知症の場合は、物が見つからない時になくしたと考えたり探したりせず、誰かが家にやってきて盗んだと強く思い込むなど、被害妄想を始めとする思いもよらない発想をすることが増える。

□季節の感覚がなくなる

 日付や曜日を1~2日くらい間違うのは正常。認知症の場合、全く違う季節と間違えることがある。夏なのに、冬物を着ようとするなど。

□作り話をする

 現実的にはありえない言い訳をしてでも、自分の判断が正しいとその場を取り繕うとすることが増える。

□日常生活が一人でできなくなる

 少々忘れっぽいからといって、一人暮らしをしても何とかなると思える範囲の人の場合、認知症の疑いはまずない。どんな理由であれ、一人暮らしをさせることに周りが強い不安を感じる症状がある場合、認知症の可能性が高まる。

■家族の認知症を早期発見するために

 もし自分が認知症でないか気になって、Webを検索してこの情報にたどり着いたのなら、まずあなたに認知症の心配はないのでご安心ください。認知症になるとあらゆる自覚症状が乏しくなるため、Webを検索したり、その中から適切な情報を選択するという高度な行動をとることはできません。

 ご家族やご友人に気になる症状があり、上記の症状がその人に当てはまると思った場合は、その方を専門医に受診させてください。実際、外来診察でも、自分で「物忘れが気になる」という症状を訴える患者さんは大丈夫なケースがほとんど。

「人から物忘れをよく指摘される」という患者さんの方が、認知症と診断されることが圧倒的に多いのです。認知症の場合は、自分のことであっても他人からの指摘の方が参考になることがあります。家族や身近な人の認知症を早期発見するためにも、正しい知識を持っておきましょう。

あなたは大丈夫?アルツハイマーに影響する危険因子7個

現在世界に3,500万人以上も患者がいるアルツハイマー。

高齢化に伴い、この患者数は2050年までに3倍以上に増えると予想されています。

日本でも推定100万人の患者がいますが、物忘れなどの症状はアルツハイマーの初期と思われがちですが、すでに末期の症状といわれています。実は、その10年程前からアルツハイマーは身体を脅かしているのです。

■若い世代からのアルツハイマー

65才以上の10人に1人は発症すると言われるほど、高齢者に多い病気ですが、最近は18歳~64歳の若年のアルツハイマーが増えているのです。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究結果から、アルツハイマーに影響する危険因子ワースト7位が発表されています。

(1)低学歴

(2)喫煙

(3)運動不足

(4)うつ病

(5)中年期の高血圧

(6)中年期の肥満

(7)糖尿病

特に低教育水準の影響が最も大きく、リスクも倍になると分かっています。頭を使う、勉強するというのは脳に刺激にもなり、健康被害も少なくできるのですね。

■軽度認知症の50%は将来アルツハイマーのリスクが!

一般に65歳くらいを過ぎると物忘れは増えてきますが、加齢の場合はヒントを出せば思い出す事が多いのです。まだ若いという安心は危険です。

アルツハイマーは、アミロイドβたんぱくという異常物質が脳に10~30年かけてたまり神経細胞が死滅することで、物忘れや怒りっぽいという症状が表れます。

ただ、軽度認知症の段階で本格的な治療を開始すれば、本物のアルツハイマー病への移行を阻止したり、遅らせたりする事が出来るようになるので、早めの対処が重要です。

高カロリー食を摂取していると、質素な食事郡より2.3倍も発症しやすいとのコロンビアでの研究もあります。

生活習慣というのは、生活習慣病は勿論、その他の病気にかかるリスクを増やします。まだ若いから大丈夫ではなく、若いからこそ今のうちに改善するのが得策なのですね。

認知症への効果が注目される漢方薬「抑肝散」

認知症の中でも行動や心理に表れる症状を「周辺症状」と呼び、最近では「認知症に伴う行動異常・精神症状」を意味する「BPSD」という言葉が使われる。BPSDにはさまざまな症状がある。

どんな症状が出るかは、認知症のタイプや進行度、患者の置かれている環境、人間関係、介護のされ方などによっても大きく異なる。

 愛知県に住む石井八重子さん(仮名・78歳)は、中等度のアルツハイマー型認知症。

半年ほど前から夕方になるとそわそわし、家のなかを徘徊するようになった、同居する息子の妻・陽子さんが介護していたが、転倒しないよう八重子さんにつきっきりになるため、夕食の準備や家事ができない日が続いた。悩

んだ陽子さんは八重子さんを連れ、国立長寿医療研究センターを受診した。八重子さんを診察した、もの忘れセンター老年内科医長の三浦久幸医師は言う。

「夕方になると、不安になって徘徊したり、自宅にいるのに『家に帰る』と言って外に出ようとしたりすることがあります」

 この症状は「夕暮れ症候群」と呼ばれる。まわりが暗くなることで、自分の居場所や状況が理解できなくなる症状(見当識障害)が悪化することや、一日のうちの活動と休息の周期がわからなくなることなどが原因といわれる。

 三浦医師は、症状を早く和らげるため、八重子さんに漢方薬である「抑肝散(よくかんさん)」を処方した。

 抑肝散は、BPSDの治療薬として近年注目されている。子どもの夜泣きや疳(かん)の薬として古くから使われていたが、認知症患者のいらいらや不安感、興奮などに一定の効果があることがわかってきたからだ。

「抑肝散は体への負担が少ないため、近年広く使われるようになりました。今回は陽子さんの疲弊がひどく、すぐに症状を緩和させる必要があると考えて処方しました」(三浦医師)

覚えておきたい「認知症の法則」 医師が解説

親が認知症になった場合、どのように対応するのがいいのだろうか。思わぬ症状や行動に戸惑ったり、時には苛立つこともあるかもしれない。そんな時に知っておきたい「法則」を、専門家に話を聞いた。

 認知症治療に詳しい杉山孝博医師(川崎幸クリニック院長)は、こう断言する。

「症状の表れ方にはパターンがあることを理解すれば、優しく接することができ、家族の負担も大幅に軽減します」

 まず押さえておきたいのは、「症状の出現強度に関する法則」だ。症状は、身近な相手に強く出る傾向がある。例えば、暴力的な行動は、介護をしてくれる家族に向かうことが多い。

「家族としては、せっかくお世話をしているのになぜ?と思うでしょうが、一番、心を許している相手でもあるのです」

「自己有利の法則」は、自分が不利なことを認めたがらない傾向を指す。失禁をしても「自
分ではない」と否定することは珍しくない。

 少し想像しにくいのは、「感情残像の法則」。嫌な出来事があった時、何が起きたかは忘れるが、「嫌な気持ち」だけ残像のように残る。なぜか声を掛けても無口で機嫌が悪く、あとから「デイサービスでほかの利用者とけんかをしていた」などと分かることがある。

「こだわりの法則」は、入浴時に足ばかりを洗ったり、夜中に洗濯物をたたみ続けたりと、一つのことにこだわる。

 杉山さんによると、家族の気持ちは、「戸惑い・否定」「混乱・怒り」「割り切り・諦め」そして「受容」の4ステップをたどる。このステップを早く進めるには、適切な情報を得て介護保険サービスを上手に使うことだ。

「全国に支部がある『認知症の人と家族の会』では、定期的に家族の集いを開いています。ここで気持ちを共有したり、情報を得たりするといいでしょう。時にはショートステイ(短期の施設入所)を利用して、家族が息抜きをするのも必要です」

最近物忘れがひどい…。もしや若年性アルツハイマー?

忘れ物が増えたり、よく知っているはずの単語が出てこなかったり、同じことを何度も話したり聞いたり・・・

近ごろ、なんだかおかしい?と感じたとき、もしかして、若年性アルツハイマーでは?と不安に思う人が増えているようです。

「アルツハイマー病」とは、物忘れが増える・日付や自分のいる場所がわからなくなる・感情表現など精神活動が低下するといった症状が見られる病気のこと。

一般的には65歳以上の高齢者に発症するものですが、64歳以下の人に発症するアルツハイマー病を「若年性アルツハイマー病」と呼んでいます。

アルツハイマー病・若年性アルツハイマー病ともに、発病の原因についてはっきりとは解明されておらず、さまざまな要因の重なりや、脳の異常によるなどいくつかの説があります。

その中でも一番有力とされているのが、「βアミロイド蛋白」と言われる蛋白質が脳の神経細胞に蓄積し、神経細胞が破壊され脳が萎縮することにより脳機能が低下することで起こるという説です。

また、遺伝により発症するとも考えられており、アルツハイマー病を引き起こす原因となる遺伝子も多数発見されています。

このため、親族でアルツハイマー病の人がいる場合は注意が必要です。

また、若年性アルツハイマー病は通常のアルツハイマー病より発症率は低いのですが、発症してしまうと進行が早く、気がついたときには深刻な病状になってしまっている、という場合も。

ただし、若年性アルツハイマー病は早期発見・早期治療によって進行を抑制することができるので、初期症状を見逃さないようにすることが大切です。

代表的な初期症状を挙げるので、気になったらすぐに病院を受診しましょう。

1.仕事の能率と量が低下してくる
2.夜なかなか寝付けないなどの不眠の症状がある
3.だるさや疲れを感じやすくなった
4.常に不安感があり、うつ状態になった
5.頻繁に頭痛やめまいがする
6.以前よりも自己中心的になったり、頑固になるなど性格に変化が出た

若年性アルツハイマー病の予防には、規則正しい生活や栄養バランスのとれた食生活、適度な運動が有効とされているわ。また、興味、好奇心を持ってイキイキと毎日を送ることも脳を活性化させることにつながります。

秋川リサが語る認知症母の壮絶介護 エスカレートする行動に「殺意感じることもあった」

タレントでビーズ作家、秋川リサ(62)が、認知症となった実母(87)の介護生活をつづったエッセー「母の日記」(NOVA出版、1200円+税)を出版した。「娘なんて産まなきゃよかった…」。

そんな隠された母の思いを知りながら、それでも介護を続けた。親とは何か、子とは何か。壮絶な介護の現場だが、持ち前のさばけた性格で切り抜けた赤裸々な体験談が心に響いてくる。

 2度の離婚後、シングルマザーとして2児を育て上げ、「やっと自分の人生を楽しむ時期がきた」と考えた2010年1月、実母が認知症を発症した。厚生労働省による認定を受け、要介護1と判定。半年後には要介護3に進行していた。

 徘徊(はいかい)、無銭飲食、排泄(はいせつ)問題、秋川名義の預金通帳が残高ゼロに…エスカレートする認知症の母の行動。何をするのか分からない状態に「当初は戸惑い、殺意を感じることもあった」という。

 認定から1年後、偶然目にした実母の日記にがく然とした。

 「娘なんて産まなければよかった」

 「面倒みてるからって偉そうに」

 未婚だった母が30年にわたって、7冊の大学ノートに秋川への悪口を書き込んでいた。家計を支えるため、15歳でモデルになって働いてきたのに…。自分への思わぬ罵詈(ばり)雑言に喪失感にさいなまれた。

 「でも、今は読んでよかったと思っている。だって、不平不満を抱えて生きるほうがつらい。私はこういう生き方はしないと思えたから」

これが、本を書くきっかけにもなった。書くことで、「老後をどう生きていくか」「認知症になったら」「自分が死んだ後は」という心の整理もつき、子供たちにも伝えた。

 「親がまだ健在のうちに、家族で腹を割って今後のことを話し合っておいたほうがいいと思います」

 その後も、母の病状は進行し、ついにデイサービスの利用から介護施設への入居を決めた。

2年前、埼玉県の特別養護老人ホームにたどり着き、「やっと母の終の棲家が見つかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。「母は要介護4になり、私の顔も分からなくなりましたが、ニコニコしている顔を見るのは初めてかも」

 著書には、自身が体験を通じて得た介護への思いも詰め込んだ。「楽しく看取れればいいが、きれいごとでは済まない。介護はいつ終わるか分からないから、介護する側が疲弊して、つらい結末を迎えるケースもある。

私だって、長女が一緒に母の面倒をみてくれなければ危なかった。親の介護は子の務めといいますが、家族が共倒れするより、プロに任せたほうがいい」ときっぱり。

 壮絶な内容だが、読後感はどこかさわやかだ。「担当の編集者はもっとドロドロな心情を入れたかったようですが、どのように書いたところで、介護をしたことがない人には理解されない部分がある。だからこそ現実を淡々と書きました」

 凛として潔い。そんな秋川らしい生き方が貫かれている。 

 ■秋川リサ(あきかわ・りさ) 1952年5月12日、東京都生まれ。米国人の父と日本人の母を持つハーフ。お茶の水文化学院高等学校英語科卒。15歳でテイジン専属モデルとしてデビュー。16歳で雑誌「an・an」のレギュラーなどトップモデルとして活躍。その後、女優、司会業など活躍の場を広げる。01年、ビーズアート教室を開設しビーズ作家としても活躍中。

じゃんけんしながら声を出す…「シナプソロジー」が認知症に効果あり?

 仕事に煮詰まると散歩する。そうするとなぜか頭がスッキリして、いいアイデアが浮かぶ──。そんな経験をしたことはないだろうか。体を動かすと脳も動く。同じことが認知症予防にも言えるが、これを機に何か運動を始めたい。そう考える人におすすめしたいのが、「シナプソロジー」だ。

 シナプソロジーとは、頭と体を同時に使って、脳を適度に混乱させることで活性化をうながす運動プログラムだ。

スポーツクラブを運営するルネサンスの執行役員、望月美佐緒さんらが中心となり、昭和大学の藤本司・名誉教授(脳神経外科)からアドバイスを受けて開発。認知機能の維持・向上に効果があるとして、介護施設などでも導入され始めている。

「シナプソロジーでは、じゃんけんや足踏み、ボール回しといった軽い動きをしながら、声を出したり、計算したりします。二つ以上のことを一緒にやることによって、視覚や聴覚などの五感や、認知機能が刺激されるのです」(望月さん)

 たとえば、こんな具合だ。

 1から4までの数字に対し、1では両手を頭にのせ、2ではその手を胸の前で交差、3では両手を腰にあて、4では両ひざにのせる、というように、動作を組み合わせる。

 この後、別の人が「2、3、1……」と数字をアトランダムに言う。言われた側は、先ほどの数字に対応した動作を思い出し、そのとおりに体を動かす。このとき、言われた数字を声に出して言ってみることがとても重要だという。

「動作を思い出そうとすることで記憶の機能が、声に出すことで感覚器が刺激されます。その際、間違えたり、うまくできなかったりすることもあるでしょうが、それがいいんです。できないことに対応しようとすることで、脳がフル活動し、認知機能の向上が図られるのです」(同)

 したがって、シナプソロジーでは「学習効果」や「慣れ」は求めない。

そのため、同じプログラムを続けるのではなく、動作を変えたり、言葉を「1、2、3」から「あ、い、う」あるいは「A、B、C」などに置き換えたりして、常に脳が刺激されるように工夫する。「頭が混乱していることを、むしろ楽しんでください!」と望月さんは笑う。

 このシナプソロジーの効果を、筑波大学大学院人間総合科学研究科の田中喜代次教授が検証している。

 36~84歳の健康な17人に対して、週1回10分程度のシナプソロジーを約3カ月、計12回にわたって導入した。すると開始前と比べて、短期記憶や長期記憶、注意・実行機能(注意したり、料理などものごとを成し遂げたりするための機能)、言語流暢性(言葉を数多く、素早く処理する能力)がアップしていた。

「MCI(軽度認知障害)の患者さんに対する効果検証は、現在、進行中です。1~2年後をめどに結果を発表したいと思っています」(田中教授)

認知症「予防のカギは生活習慣の改善」橋本律夫国際医療福祉大教授に聞く 

物忘れなど認知機能が低下し、人格も変化するというアルツハイマー病の怖さはよく耳にする。日本で認知症の患者は300万人、65歳以上の5%、85歳以上では25%に症状が表れるといわれ、社会の高齢化とともに患者数も増えている。

 --認知症とはどんな病気ですか

 橋本律夫教授簡単に言えば、「知」が壊れる病気です。脳という臓器が生み出す働きの総称を「知」「認知」といいます。認知症は一つの症状名で、その原因疾患はいくつかあるのです。

 認知症は原因別に大きく3つに分かれます。1つは原因を除けば治るもの。慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などが原因となるものです。

2つ目は予防が大事なもので、脳血管障害性など生活習慣病のなれの果てともいえるもの。3つ目が一番やっかいで、神経変性疾患といい、代表的なのがアルツハイマー病です。神経細胞が減るのですが、原因が十分に解明されていません。

 --アルツハイマー病の原因は分からないのですか

 ある程度は分かっています。脳内にβアミロイドとタウタンパクがたまるのです。これらが蓄積すると、神経細胞を害し、神経細胞が減少します。

--そのタンパク質がたまるスピードは人により違うのですか

 遺伝的にたまりやすい人はいます。若年性アルツハイマー病で、40代からアルツハイマー病になる人は、βアミロイドというタンパクを産生している遺伝子の異常が見つかっています。

 また症状発現の閾値(いきち)が高い人と低い人がいます。機能的予備力のあるなし、つまりもともと知的能力が高く、いろいろ考え、情報アクセス対応力のある人は、認知症になりにくいともいえます。

 --認知症の診断は

 操作的に行い、有名なのは長谷川式認知スケールです。スクーリングテストで、30点満点で20点以下は認知症とされますが、それは一つの目安です。点数ではなく、認知症を疑うのは、今までできていたことができなくなるということですね。

 認知症の有無は、話を聞いたり、神経心理テストで判断しますが、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の画像を撮ったり、脳血流の写真を撮ったり、血液検査をしたりして確認して、原因疾患を調べます。脳血管障害とアルツハイマー病が合併していることもあります。

--治療法は

 最も患者の多いアルツハイマー病に効く薬は「アリセプト」1種類しかなかったのですが、平成23年、3種類が加わりました。脳内神経伝達物質のアセチルコリンを増やす「レミニール」という飲み薬と、「リバスタッチ」「エクセロンパッチ」の貼り薬です。もう一つはNMDA受容体拮抗(きっこう)剤の「メマリー」です。

 記憶障害などの中核症状は薬剤治療になりますが、認知症患者の反応による環境要因の強い周辺症状には、本人が精神的に安定する環境を周囲の人がつくってあげることが大切です。

 治療には他人の力が必要です。認知症の人は自分が病気とは思わず、薬を飲んだことも忘れます。1人では何ともできません。ほかの病気と大きく違うところです。

 --認知症が疑われたら

 早く専門外来を訪れてほしい。でも、本人は物忘れの自覚がなく、回りが気付いて連れてくることが多いのです。

 認知症では記憶障害に関する自己認識が薄れ、内省がなくなります。それで自分で病院を訪れることもない。身寄りのない人、老夫婦の場合、相当症状が進んでから、近所の人が気付くことも多いのです。

--予防法は

 アルツハイマー病の危険因子は生活習慣病とほぼ一致します。糖尿病、高血圧、運動しない人はアルツハイマーになりやすい。動脈硬化が進んで血流が不十分だと、神経細胞死が早まります。生活習慣病の予防は認知症の予防にも役立ちます。興味のある好きなことを何でもやってみることも、予防になります。(聞き手高橋健治)

 橋本律夫(はしもと・りつお)昭和32年8月、静岡県菊川市生まれ。57年、自治医大卒業。平成4年、自治医大神経内科助手、12年、同講師。13年、国際医療福祉大神経内科助教授、18年、同教授、神経難病部長。医学博士。神経内科学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医、日本神経学会代議員。

「自臭症」はうつになるシグナル!?

●口臭の気にし過ぎは危険?

強い口臭は、周りの人に不快感を与えるので、エチケットとして、ある程度の口臭ケアは必要です。でも、自分の口臭に神経質になり過ぎてしまうのも考えものです。

なぜなら、ストレスが強いと唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥して口臭が強くなるので、気にし過ぎてかえって臭いを強くするという悪循環を招くこともあるからです。

●心因性の口臭もある

口臭の中には、「自臭症」と呼ばれる心因性のものもあります。これは、実際には口臭がなくて、周りの人も口臭を感じていないのに、本人だけが「自分は口臭がする」と思い込んでしまうというものです。

自臭症の人の中には「他人に不快感を与えているのではないか」と考え込むあまり、うつ病や対人恐怖症になってしまう人もいます。

●気になるなら専門的なチェックを受けよう

口臭があるかどうかは、自分で判断するのが難しいものです。自分で測定できる口臭チェッカーも市販されていますが、口臭以外の匂いにも反応してしまうことがあるため、正確に測定できるわけではありません。

「きちんと口臭ケアをしているし、口臭につながる病気にかかっているわけでもないのに、どうしても口臭が気になる」という場合は、自己流で判断せず、口臭専門のクリニックを受診してみることをオススメします。

歯学部のある大学附属病院には、口臭専門のクリニックが大抵設置されています。

クリニックでは測定機器などを利用して口臭を測定し、口の中の検査をした上で、口臭の有無や原因について診断し、必要な治療を行ってくれます。

専門的な測定や検査を受けて口臭に問題がないことがわかっても、どうしても口臭があると感じる場合は、心療内科や心療歯科に相談してみると良いでしょう。

口臭専門のクリニックから、それらの医療機関を紹介してもらうことも可能なようです。

食事で治せる!? うつに効く食べ物とは

12歳以上の8人に1人がうつの可能性がある—-そんな調査結果もあるほどに、うつ病は身近な病気。

WHOは、2020年には日本がうつ病の疾病率で世界第2位になると予測しているほどで、社会問題といっても過言ではない状態だ。そんな誰にとっても無関係ではないうつ症状、じつは食べ物によっても対処できるという。

 『「うつ」が消える 食べ方&レシピ』(有田秀穂:監修、弥富秀江:その他/河出書房新社)は、食事を変えることでうつを解消しよう、というレシピ本。まず、この本ではセロトニンという脳内物質に注目。

「セロトニンが不足している人は、落ち込みやすいため、ストレスがかかるとその重圧に押しつぶされ」、うつの状態に陥りがちとのこと。逆にセロトニンがきちんと分泌されると「心が安定し、『うつ』の状態に陥ることを回避してくれる」というのだ。

 このセロトニンの原料は、トリプトファンという必須アミノ酸の一種。しかし、体内ではほとんど合成されないため、食べ物からとる必要がある。トリプトファンが多く含まれているのは、大豆製品や乳製品。大豆や枝豆はもちろん、豆腐や納豆、みそ、豆乳に、チーズや牛乳、ヨーグルトなどだ。

また、トリプトファンをセロトニンに変換するためには、ビタミンB6と炭水化物も必要。

ビタミンB6は、いわしやかつおなどの青魚、アボガド、しょうが、にんにくに多く含まれ、炭水化物はご飯やパン、めん類などのほか、じゃがいもやさつまいもといった、いも類にも含まれるもの。最近では炭水化物を抜くダイエットが流行っているが、うつっぽい人は要注意かもしれない。

 では、一体うつ症状にはどのような食事がいいのか。本書には、セロトニンの分泌を高める方法が書かれているのだが、たとえば「朝はシリアル」という人には、ナッツやドライフルーツ、キウイ、バナナといったトッピング例を紹介。

トースト派の人ならハムやチーズを、ご飯派なら卵や納豆、味噌汁といった定番の朝食で、トリプトファンやビタミンB6を摂取できるのだ。ちなみに、シリアルは玄米フレークやグラノーラがおすすめ。そばかうどんで悩んだときは、ビタミンB6や食物繊維が多く含まれるそばを選んだほうがいいようだ。

 また、味噌とにんにくが隠し味の「豆腐とくるみのディップトースト」や、大豆とさつまいもを加えたハンバーグなど、オリジナルレシピも豊富なので、うつっぽさを感じている人には実践しやすいはず。ただし、ただ食べるだけではダメ。

太陽の光を浴びることや、一定のリズムで身体を動かすリズム運動、おしゃべりや身体を触れあうコミュニケーションなども、セロトニンの分泌には大切。「身体を触れあうような恋人なんていない……」という人も、犬や猫をなでたり、マッサージやエステでもOKだそう。

 生活習慣を変え、食事にも気を配る。はっきり「うつ」とわからなくても、気分が沈みがちだったり、不眠に悩んでいる人は、こうした日々の小さなことからはじめてみてはどうだろう。

介護のため仕事やめた40代男性 祖母の葬式代を認知症の母が捨てて

高齢化が進む今、中高年に「介護」は身近で切実な問題になっている。ただし、その担い手が“孫”にまで広がっているとしたら、あなたはどう思うだろうか――。人生の節目で介護と向き合った男性の事例を通して、実態に迫る。

 40歳のある日、遠距離介護を始めたのは都内在住のシンジさん(仮名、41歳)だ。新幹線で片道2時間ほど離れた地方に暮らす認知症の祖母(当時89歳)が子宮頸がんの出血で倒れ、病院に運ばれた。

同時に、その祖母と同居していた母(当時68歳)の認知症が発覚したのだ。父親は20年以上前に家を出て別居、妹は子育て中。既婚だが子どもがいないシンジさんが「消去法で自分がやるしかない」と判断した。

 その年に転職し、企業の商品開発チームでリーダーを任されていたが、介護休業制度は入社1年以上経たないと使えないと知って断念。辞表を提出した。

「介護疲れで心も体もボロボロになり、仕事に影響が出るのが嫌でした。祖母が余命半年と宣告され、その間は介護に専念したいとも思いました」

 心配なのは“お金”だ。自分たちの生活は貯金や節約などで何とかなりそうだったが、入院中の祖母にかかる費用や新幹線代を含む交通費まで出すのは難しい。

 ふと祖母が「葬式代くらいは取ってある。何かあったらそこから使いなさい」と言っていたことを思い出した。ところが、その通帳を認知症の母が捨ててしまい、印鑑も見つからない。

途方に暮れるなか、判断能力が不十分な人の財産管理などを肩代わりする「成年後見制度」を知った。3カ月以上かけて成年後見人に選任され、2人を介護する費用を祖母の財産でまかなう道筋をつけた。

 祖母は倒れて1年後、90歳で逝った。シンジさんは会社員時代から続ける副業で収入を得ながら、一人で暮らす認知症の母のもとに月の半分は滞在し、その様子や認知症の情報などをブログにつづっている。

「同じ立場の人たちの役に立てれば。書くことが介護疲れのストレス解消にもなるし、自分を振り返る記録にもなっています」

カレー効果? 認知症のインド人は米国人の4分の1

歳を重ねるにつれ、不安が大きくなってくる認知症。「ラーメンからカレーに変えることでボケ予防につながる」と『100歳までボケない101の方法』の著者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二(しらさわ・たくじ)先生はボケない食事術について、こう言う。

*  *  *

 カレーの中の成分、ウコンに含まれるクルクミンの認知症予防効果はかなり高いと言われています。マウスでの研究結果だけでなく、インド人の認知症発症率がアメリカ人の4分の1というデータもあります。

ただ、残念ながらスーパーなどで売られているカレー粉やルーを調べると、インド料理屋のカレーよりはウコンの含有量が低いのです。そこで、市販のカレー粉やルーでカレーを作るときには、ウコンの黄色い粉を別に買って混ぜてほしいのです。

さらに、きな粉をそこに入れるとレシチンの効果で、クルクミンの吸収率が高まります。味もおいしくなるので、カレー+きな粉を試してみてください。

 昼には手軽にラーメンという人が多いと思いますが、これは炭水化物と塩のかたまりなので体に非常に悪い。特にラーメンライスは肥満にもなりやすく、ボケまっしぐらのメニューです。なるべくカレー党に移行してほしいですね。ただしカレーライスでも「ご飯どか食い」はNGです。

 辛いのが苦手で頻繁に食べられないのなら、スパイスとして、サラダにカレー粉を振りかけるだけでもいいですよ。

ボケ防止 1日3食で生野菜はジュースでもOK

認知症は、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型の三つに大別される。「軽度認知障害」(MCI)と認定されても、努力次第で後戻りできるという。どんな努力が必要かというと生活習慣の見直しだ。希望は、ある。たとえば、食事が偏りがちな人はどのように改善すればいいのだろうか。

「朝食」を抜く人はボケやすいとされる。近年「1日1食」で健康を維持しようというブームが起きたが、朝食を食べないとインスリン(膵臓から分泌されるホルモン)が出にくくなり、血糖値が上がり、肥満や糖尿病を招きやすい。

 順天堂大大学院・白澤卓二教授は、ボケを防ぐには3食きちんと食べることを推奨している。

「規則的に3食きちんと取れば、血糖値は安定します。寝ている間でも、基礎代謝によって体力は消耗するので、脳は毎朝、栄養不足になっています。朝食で栄養を補い、脳の萎縮を防ぐのです」

 もちろん野菜は欠かせない。生ジュースを週3回以上飲んでいる人は週1回も飲まない人に比べて、アルツハイマー病の発症率が76%も低いとのデータも発表されている。「野菜や果物に含まれるポリフェノールが、脳の萎縮につながる『βアミロイド』の働きを抑えると考えられています。葉や皮や茎を丸ごとミキサーに入れてしまえば、植物繊維もたっぷり摂れます」。

 植物繊維はおなかの調子を良くするだけでなく、高血圧を防いだりコレステロールの上昇を抑えたりもする。白澤教授がすすめる、野菜ジュースの素材の組み合わせは(1)ホウレン草+りんご+水(2)アボカド+しそ+オリゴ糖+水(3)青梗菜+プルーン+りんご+豆乳など。果物の薄皮はむかず、作り置きもしないことがポイントだ。

 EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの成分を含む青魚もいい。鮭は抗酸化作用が強い「アスタキサンチン」のほか、骨を丈夫にするビタミンDも豊富で、骨粗鬆症対策になる。ビタミンDはキノコ類にも多く含まれている。

 魚や野菜の調理の仕方は、和風ばかりでなく、消化吸収に良いビタミンが多いオリーブオイルを使うのも手だと助言する。

「オリーブオイルを多用する地中海料理は、認知症に効くとのデータが出ています。ご飯を主食にする人は、白米よりも玄米や雑穀米にして。米ぬかに含まれるフェルラ酸(ポリフェノールの一種)がボケや糖尿病を防ぐので、3回に1回はぜひ玄米食に!」

 骨を強くする上では、カルシウムや乳製品が欠かせない。ヨーグルトや牛乳などを定期的に摂っている人は、介護の対象になりにくい、と白澤教授は言う。

 肉を食べることがボケを防ぐというデータはないが、筋肉の維持には肉からもたんぱく質を摂るべきだろう。夕飯は日替わりで肉と魚を交互にするといい。

 カレーの成分ウコンに含まれる「クルクミン」も、認知症の予防効果が高い。ちなみにインド人の発症率は、米国人の4分の1だという。シーフードカレーなら魚とウコンで一石二鳥だ。白澤教授の裏技は、カレーにきな粉を入れること。レシチンの効果でクルクミンがよく吸収されるという。

「米とアルコールを減らす」と認知症リスクが大きく減る?

認知症治療にいまだ光が見えないなか、多くの専門家がいま「予防」に注目している。

 福岡県久山町の地域住人を観察した日本最大の疫学研究「久山町研究」でも、認知症の予防が期待できる食品について調べている。その結果が、今年4月の論文に掲載された。

この調査の特徴は、食品や栄養素ではなく、「食生活」を対象にしたところ。この研究に関わった九州大学大学院環境医学の清原裕教授は言う。

「大豆・大豆製品、野菜、海藻類を増やし、米とアルコールを減らす食生活が、認知症の発症リスクを大幅に下げることがわかりました。具体的にいうと、この『予防食』をとっている群は、とっていない群よりも3割以上も認知症の発症リスクが下がっていたのです」

 この調査は、認知症のない60歳以上の千人以上を15年間追跡したものだ。最初にこの人たちの食事内容を調べて、追跡期間中の認知症発症との関係を調べた。

「魚や果物と認知症の発症のリスクについては、強い関係はみられませんでしたが、たくさんとったほうがよい傾向がありました。一方、肉や麺類、塩分は関係がみられませんでした」(清原教授)

 ここで一つ注意したいのは、「米」の扱いだ。清原教授は続ける。

「これは、“米を食べるな”という意味ではありません。“同じカロリーのなかで、ご飯の量を減らし、大豆や大豆製品、野菜、海藻など予防効果のある食品を増やしたほうがいい”ということです。ご飯でおなかがいっぱいになってしまうと、ほかの食品がとれませんからね」

 さらに、この予防食に、もう一つ加えたほうがいい食品がある。牛乳・乳製品だ。これも久山町研究で、認知症予防が期待できる可能性が明らかになった。

 牛乳や乳製品については、海外の地中海食(果物、野菜、穀物、豆類をとり、油はオリーブオイルを使用。肉や卵は少量とるという地中海周辺地域の伝統食)の有用性を報告するいくつかの研究では「控えたほうがいい」とされている。ところが、今回はとったほうがいいという結果が出た。

 これについて清原教授は「日本人は欧米人に比べて、牛乳や乳製品の摂取量がもともと少ない。もう少しとってもいいのではないか」と分析する。

「少しのご飯にたくさんのおかず、それに牛乳という組み合わせは、現実的ではないでしょう。1食ですべての食品をとるのではなく、朝食はパンとサラダと卵料理に乳製品。昼や夜はご飯に納豆、野菜の煮物のような和食というように、工夫してください」(清原教授)

 ここまでは「とるとよい食」をみてきたが、逆に「食べると認知症になりやすいもの」はあるのだろうか。

 群馬大学大学院保健学研究科の山口晴保教授によると、牛肉や豚肉、そのアブラに含まれる「飽和脂肪酸」や「n-6系多価不飽和脂肪酸」、マーガリンやショートニングで使われる「トランス脂肪酸」などは、認知症のリスクを上げる可能性があるという。

「ただ、健康維持のためには、これらの脂質を一定量はとったほうがいいでしょう。肉はまったく食べない、という偏った食事をするのではなく、バランスのいい食生活を心掛けることが重要です」(山口教授)

うつ病で休職中に「傷病手当金」を上手に受け取るためのちょっとしたコツ

もしうつ病等で休職中に、傷病手当金をもらえるケースが発生したら、なるべく早くもらえたほうがいいですよね?

さて、傷病手当金の申請にあたり、“医師の意見”と“会社の証明”が必要であると「うつ病で働けない…そんなとき“傷病手当金”を受け取るためのポイント」でご紹介しましたが、今回は実際に医師や会社に記入や証明をお願いするにあたってのちょっとしたコツについてご紹介します。

前回に引き続き、中小企業診断士、社会保険労務士、職場メンタルヘルスコンサルタントの上江誠さんにお話をうかがってきました。

■1:医師の意見を書いてもらう際の費用は?

「医師に“診断書”を書いてもらうと自費になり、病院によって値段は違いますが、数千円程度、請求されることもあるかと思います」

「“傷病手当金支給申請書”に意見を書いてもらったら高いのでは……?と思う方もいらっしゃるようですが、診療報酬点数表で“傷病手当金意見書交付料”が定められています。それによると“100点=1,000円”と決められています」

傷病手当金意見書交付料は、診断書を書いてもらう際に請求される文書料金とは異なるものですので、まずそこをふまえておきましょう。

■2:“医師の意見”を書いてもらうのに健康保険は適用できる?

「医師の意見を書いてもらうにあたり、健康保険を適用できる場合とできない場合がありますね。うつ病の治療を健康保険で受けていたら、3割負担の方はそれに応じて“300円”となりますし、もし自由診療で治療を受けていたら10割負担なので“1,000円”となります」

健康保険で治療を受けるか、自由診療で治療を受けるかによって違うとのことですね。

■3:医師の意見の記入をお願いする時には“コミュニケーション”を大切に!

『2012年医療文書作成業務・文書料金実態調査』によれば、“医療文書の作成業務は、医師のいやがる仕事の筆頭格で、負担感の大きいものとして知られています”と書かれています。

本来の仕事である診察や手術等の業務を行っている上で、さらに医療文書の作成を行うことになるわけですので、意見の記入をしてくれるのが当たり前と思わず、お願いする時には「お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします」といったようにお願いするのがベターな対応ではないでしょうか。

印象を良くしておくだけでも、主治医の先生も「なるべく早く書いてあげよう」と思ってくださるかもしれません。

また、精神科や心療内科は忙しいところが多いので、当日記入してもらえるとは限りません。その場合、次の診察の際に記入した書面をもらえるのか、いつごろかも含めて郵送などの対応を頂けるのか、事前に確認しておくといいでしょう。

■4:会社に証明をお願いする時にも、やはり“コミュニケーション”を大切に!

医師に記入をお願いするのと同じように、会社に証明をお願いする時にもやはりコミュニケーションが大切でしょう。会社の担当者の方が申請手続きをしてくれるところがほとんどだと思いますが、書類の記入は大変ですし、添付書類の用意も必要で、意外と手間がかかるものです。

会社の担当者の方についても、普段の業務をしている上で申請書の記入を行うことになります。

「普段からコミュニケーションを良くしていたり、また、申請書を会社に送る時には、“お忙しい所、いつも素早い対応をして下さり、ありがとうございます”といったように書き添えるなどの心配りや気遣いがあったりすると、申請書を受け取った担当者の方の印象もちがいますよね」

以上、休職中に傷病手当金を上手に受け取るためのコツについてご紹介いたしましたが、いかがでしたか?

申請書の準備が遅れると、それに伴って傷病手当金の受給も遅くなってしまいます。ちょっとした心配りで、医師や会社の担当者が受ける印象もかわってくるものなので、記入などをお願いする時には“コミュニケーション”を大事にしましょうね。

うつを悪化させないために……抗うつ薬に抵抗がある場合は漢方薬の服用も有効

ストレス社会と言われる現代。職場でのプレッシャーや人間関係の悩みから心に問題を抱える人も少なくありません。体の不調に比べ、心の不調は「気のせいかも」「病院に行くほどではないし……」と思ってしまいがちですが放っておくと悪化してしまうことがあります。

軽度うつの対処法について、心療内科、内科として診療を行う「たまきクリニック」の玉木優子先生にお話を聞きました。

「職場やプライベートでの人間関係の悩み、親しい人を亡くした喪失体験など外的要因で軽度のうつになる人は少なくありません。昔に比べて他者の気持ちに敏感にならなければいけない機会も増え、ストレスを感じる人は増えていると思います」と玉木先生。

本人は自分の異変に自覚がなくても、職場で仕事の遅れやちょっとしたミス、遅刻などが増え、上司から受診を勧められて来院する人もいるのだそう。目安となるのは、食事・睡眠・便通。どれかに異常を感じたら、心の不調シグナルが出ている、という可能性があります。

うつ症状は、事前の予防策が大切でもあります。

「ストレスをため込まない自分なりの習慣や気分転換法をいくつか持っておけるといいですね。たとえば、軽い運動で巡りを良くするとか、日光浴するとか、ほかにもいろいろな趣味など。『一日主義』の習慣をつけるのもいいですね。その日の心の垢はその日に落として、翌日に嫌なことを持ち越さないというものです」(玉木先生)

また、軽度のうつに処方する漢方薬もあるそうです。

「西洋薬の抗うつ薬に抵抗がある方もいらっしゃるようですが、実は漢方薬という選択肢もあるんです。たとえば、軽度のうつ症状に関しては、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や六君子湯(りっくんしとう)などを処方することがあります」(玉木先生)

それぞれの特長は次の通り。

柴胡加竜骨牡蛎湯……不眠などの症状とともに、動悸や苛立ちを覚えるタイプの人に処方することが多い。抑うつ不安感に対する効果にすぐれ、高血圧や子どもの夜泣きに処方されることも。

六君子湯……胃腸が弱いタイプの人や、貧血、手足の冷えのある人に処方されることが多い。「胃の働きなどの低下のために気が停滞している」と判断されるときに用いられ、気の巡りを促す。

「ただし、漢方薬は症状だけでなく、その人の体質などさまざまな要素から総合的に判断して処方しますので、気になる方は一度受診してみてくださいね」(玉木先生)

西洋薬と比べたときのメリットは、「漢方薬は離脱症状がなく、依存度も低い」と玉木先生。心の不調に対して薬を用いることに抵抗感のある人でも、「漢方薬なら」と使用する人もいるそうです。

自分では気づきにくい心の不調ですが、悪化してしまうとそれだけ回復にも時間がかかります。誰でも起こる可能性のある心の病気。自分や家族のために、予防策や対処法を覚えておいてはいかがでしょうか。

かむ力がアップすると認知症が改善する?

いま歯科医療の現場で、歯の健康が全身の健康と関係していることが明らかになりつつある――。なかでも、かむ力の回復は食べることだけでなく、歯を通して脳に刺激が行き、記憶ややる気の回復にもつながるという。

 松野スミさん(仮名・93歳)は4年前の初診当時、認知症が進行し、ぼーっとしてただ座っているだけという状態だった。

他院で作った入れ歯が合わず、軟らかいものしか食べられなかったため、大分県佐伯市で開業する河原英雄歯科医師が新しい入れ歯を作り、かむトレーニングをした結果、何でも食べられるようになり、認知症も改善。9カ月後には、息子とともに地元のカラオケ大会に出場した。

 40年前にじん肺(粉塵やアスベストなどを吸い込むと起こる肺の病気)患者に認定された高橋忠さん(仮名・78歳)は、呼吸困難などが悪化し、07年には両肺が重症の気胸になった。

気胸は肺に穴が開いて空気が漏れてしまう状態で、半年間入院して治療を受けたものの、退院後は24時間酸素吸入が必要。さらに歯がボロボロでかめないため、体重は38キロまで落ちていた。

「主治医に『食べられないままだともっと痩せちゃうから、すぐに歯医者に行きなさい』と言われてね」

 と高橋さん。河原歯科医師の診察を受けにきたときは、歩くのもやっと。酸素吸入器を手放せないため、10カ月かけて慎重に治療した。

 歯の治療が終わり、かめるようになると、妻が栄養のあるものをたくさん食べさせたこともありメキメキと回復。1年6カ月後の定期検診では体重が11キロも増えた。栄養状態を示す総たんぱくやアルブミンの値も基準値に達したという。スタスタと歩いて私たちの前に現れた高橋さんは、

「今は肉がおいしくてね。酸素吸入器なしで階段も上れるし、自分で車を運転してカラオケに行けるようになりました」

 と笑顔で話してくれた。河原歯科医師が「今の元気な姿からはとても想像ができないでしょう」と、初診当時の記録映像を見せてくれたほどだ。高橋さんは誇らしげに歯を見せながらこう言った。

「ほら、きれいでしょ。昔は歯みがきもいい加減だったけど、今は時間をかけてするようになりました。大事な歯だからね」

 なぜ、かめるようになると、からだまで元気になるのだろうか。

「かんでのみ込む『咀嚼(そしゃく)』を含めた、『食べる』という一連の動作は、さまざまな器官を使う高度な作業です。近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきました」と、河原歯科医師は言う。

認知症予防に有効? 「強化食品」の魚肉ソーセージ

認知症予防に有効といわれている食べ物の代表格が魚だろう。「魚を定期的に食べている人は、認知症のリスクが下がる」という研究結果は、世界各国で報告されている。その理由として、魚に含まれる「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA(イコサペンタエン酸)」という栄養素が脳の認知機能に関わっていることが明らかになってきた。

 DHA、EPAはアブラの一種だ。これらは「n-3系多価不飽和脂肪酸」と呼ばれ、脳の神経細胞をつくる材料となり、脳の機能を保つ効果があるという。島根大学医学部の橋本道男准教授(環境生理学)は、こう解説する。

「水分を除いた脳の約60%が脂肪からできています。その脂肪のなかに含まれるのが、DHA、EPAといったn-3系脂肪酸です。なかでもDHAは、記憶や学習に関わる海馬と呼ばれる部分では、脂肪酸全体の30~40%を占めています。ラットの実験では、DHAに、アルツハイマー型認知症の原因といわれる、アミロイドβ(ベータ)の沈着を抑制する作用があることがわかっています」

 橋本准教授は、島根県に住む、認知症と診断されていない健常高齢者(平均年齢73歳)約100人に、DHA、EPAが含まれる食品を1年間、毎日食べてもらう研究を実施した。その結果、記憶力テストの数値は食べる前よりも改善し、一方で、食べていないグループでは数値が下がった。

「認知症の発症を遅らせるかどうかまではわかりませんが、広い意味で、DHAやEPAが認知機能の低下を抑制している可能性があります」(橋本准教授)

 DHAをもっとも多く含む食べ物は、マグロのトロだ。そのほか、サバ、アジ、サンマといった青魚にも多く含まれている。

「DHAを含むn-3系脂肪酸の摂取量は1日2グラムが目安とされていますが、とくにDHAを2グラムとることが重要。サバやアジなら半身(100グラム)で約1グラムのDHAが含まれます。最低でも1日に1グラム以上とったほうがいいでしょう」(同)

 一方、EPAを含むのも魚が中心だが、魚以外の食べ物から摂取する方法もある。白菜などの葉野菜やエゴマは、α(アルファ)リノレン酸という脂肪酸を含んでおり、これが体内でEPAに変換するため、代用になるという。

 DHAやEPAはいずれも使われない分は排出されてしまい、体内にためておくことができない。毎日、一定量を食べ続けなければ予防効果が持続せず、「やめたら認知機能が落ちてしまうことは証明されている」(同)という。

 だが、現代の食生活で、毎日魚を食べるのは簡単ではないだろう。

 そこで注目されるのが、「強化食品」と呼ばれるものだ。橋本准教授の研究で使われたのも、DHAとEPAを含む強化食品のひとつ「リサーラ」(マルハニチロ製)という魚肉ソーセージだ。先の研究では1日2本ずつ食べたといい、これでDHAを1.7グラム、EPAを0.4グラムとれる。

「今の高齢者世代にとって、魚肉ソーセージは子供のころに食べていたなじみのあるおやつなので、研究に協力してもらった方々にとっても受け入れやすかったようです。畑仕事の合間などでも簡単に食べられるのもメリットでした」(同)

 こうした成分はサプリメントとしても販売されている。だが、食べ物から摂取するのに比べると効果が劣るという研究があり、とり方にもコツがあるという。

「DHAやEPAはアブラなので、吸収されるときに肝臓でつくられる胆汁酸が必要です。胆汁酸は食べ物が胃や腸に入らないと分泌されないので、食べ物をとらずにサプリメントだけを飲むと、体内への吸収が悪くなると考えられます」(同)

 こうしたDHAやEPAの効果については、厚労省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の報告書では、「目標量を示すほど十分な証拠は今のところない」としている。報告をまとめた一人、名古屋大学大学院医学系研究科の葛谷(くずや)雅文教授はこう指摘する。

「魚の摂取量が多い人は認知症になりにくいという報告はあり、その説が否定されているわけではありません。ですが、発症予防につながるかを研究した有力な報告はありません。最低でも4、5年間での予防効果をみた長期的な研究を実施する必要があるでしょう」

65才以上の高齢者 4人に1人が認知症かその予備軍の「MCI」

以前とは、少しだけ何か違う──中高年になって感じるその違和感、もしかしたら認知症の一歩手前の、『MCI=軽度認知障害』なのかもしれない。MCIは、認知症とどう違うのか。鳥取大学医学部の浦上克哉さんが解説する。

「MCIとは、認知症の一歩手前の段階です。軽度の認知症と混同されがちですが、いわば“認知症までいってない状態”です」

 2013年に発表された厚生労働省の推計によると、65才以上の高齢者のうち、認知症は462万人、MCIは400万人。つまり、3079万人のうち、4人に1人が認知症またはその予備軍ということになる。

「MCIを放置しておくと、高い確率で認知症になります。でも、MCIの段階で予防対策を講じれば、認知症への移行を遅らせたり、正常に戻すことができるのです」(浦上さん)

 また、認知症の診療に詳しい、たかせクリニックの髙瀬義昌さんは、MCIの段階で発見する、もう一つのメリットを次のように説明する。

「慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、脳腫瘍などの病気の初期症状は、認知症と似ています。MCIの段階で気づけば、こうした病気を早期に発見し治療することもできるのです」

 では、どんな症状が出たら、MCIを疑えばいいのか。

「認知症のように日常生活や社会生活に支障が出るほどではないけれど、以前にくらべてもの忘れが増えていたら、MCIの可能性があります」(前出・浦上さん)

 ほかにもこんな兆候が。

「記憶やしゃべりはしっかりしているけれど、家の権利書を持ち歩くようになった、異常に細かいことにこだわるようになった、怒りっぽくなったときには、MCIや認知症を疑ったほうがいいでしょう」(前出・髙瀬さん)

 厄介なのは、日常生活に支障がないままゆっくりと進行するため、本人や家族が気づきづらいということだ。気づくころには、認知症が中度程度まで進んでいるケースもあるという。

「もっとカラオケを歌っておけばよかった…」認知力アップデイケアとは

認知症早期治療の実体験ルポを行っている、本誌の山本朋史記者(62)。筑波大学附属病院の認知力アップケア730病棟の学習内容について、リポートする。

*  *  *
 認知力アップケアでは教室で教えてもらったことを家庭で自習することを推奨する。スポーツでは定期的に「宿題」も出される。自宅で生活習慣に上手に取り入れることが大切という。

 730病棟のみんなが明るいことは、ぼく自身の印象でもある。不思議な効果だ。「音楽療法」も一度だけ受けた。おなかの底から声を出す訓練から始まった。参加者は回を追うごとに増えている。参加者は38人。

テレビの影響などもあったのだろう。730病棟いっぱいに椅子を円形に並べて、先生が口を大きく開けておなかから声を出すように指示するが、これが意外と難しい。

 ぼくは、自分では、口を大きく開けて大きな声を出しているつもりだが、先生は、

「もっと出るはず。はい、口を大きく開けて」

 と言い、口を縦に開けさせて「ツー」という音や、横に開かせて「エー」という音を出させる。30分も続けていると体中が熱くなってくる。

 次は歌だ。高齢者にはなじみの「チャンチキおけさ」や、3月末で終了した朝ドラ「ごちそうさん」の主題歌だった、ゆずの「雨のち晴レルヤ」など、新旧取り混ぜて全員で歌う。

 先生が小型電子オルガンで伴奏してくれるので、ぼくも、なんとかついていくことができた。昔はカラオケに行ったこともあるが、もう15年以上は遠のいている。調子外れで、何とも様にならない。もっと若い人たちに付き合ってカラオケをやればよかった。

3つあったら要注意 「認知症」初期段階危険度チェックリスト

 まずは、次の項目を見てほしい。

◆自分でできる「認知症初期段階の危険度チェック」

□このごろ、物忘れがひどいと思う
□頻繁に置き忘れや探し物をする
□何かしようと思っても、何をしようとしたかすぐ忘れてしまう
□億劫で、何事もやる気が起きない
□覚えていたはずの漢字が書けないことがよくある
□今日が何日だったか、よく忘れる
□家電製品やスイッチの操作にまごつくことが多い
□会話で、言葉がすらすら出てこない
□新聞を読むことが以前より少なくなった

 物忘れや、置き忘れなど認知症の初期の段階の症状を自分自身で確認するものだ。9つの項目があるが、いくつあてはまるものがあっただろうか。

 この「簡単チェックシート」を作った浴風会病院精神科の須貝佑一医師が言う。

「医薬品メーカーなどがよく使う、ボケの危険度セルフチェックです。一般的には、3つ程度の該当項目があれば要注意だといわれています」

 そもそも認知症の症状には、次のようなものがあるという。須貝医師はこれを「認知症であるための三つの条件」と呼んでいる。

(1)記憶障害(覚えられない、思い出せない)がある

(2)以下の項目が一つ以上あてはまる ・計算や書字など習い覚えた能力の低下 ・思考力や判断力の低下 ・言葉を忘れ、話がまとまらない(失語) ・慣れた動作、操作ができない(失行) ・物や人が識別できなくなる(失認)

(3)(1)、(2)で該当した項目のために以前と違って社会生活や日常生活に支障が起きている(ただし、精神疾患などでない) 「こうした3つの条件がそろってはじめて認知症だといえます。物忘れを自覚してセルフチェックの該当項目が多くなっても、必ずしも認知症とは限らないのです」(須貝医師)  

自転車、ウオーキング、有酸素運動がアルツハイマー病に効果あり

世界の認知症の患者数は今後、爆発的に増加し、2050年までに現在の約3倍に達する――。こんなセンセーショナルな内容が、認知症サミットに先駆け、国際アルツハイマー病協会から発表された。

アルツハイマー病の原因物質は「β(ベータ)アミロイド」というタンパクだが、発症を予防する決め手はあるのか。

 先制医療を成功させ、認知症を発症させなくするカギは、なんといっても治療薬の開発だ。現在使われているアルツハイマー病の薬は、いずれも進行を遅らせることが目的で、根本的に進行を食い止めることはできない。

これに対し、開発が進む新薬は、アルツハイマー病の“元を断つ”ものだ。具体的には、脳の神経細胞にβアミロイドが蓄積するのを防ぐ、「抗βアミロイドタンパク療法」の開発が盛んだ。βアミロイドが作られるのを防ぐ薬や、溜まるのを防ぐ薬、βアミロイド自体を除去する薬などがある。

 残念なことに、今のところいずれの臨床試験も成功にいたっていない。しかし、希望はある。

「新薬であるソラネズマブの試験は、認知症を発症した人の認知機能を改善するという目標を満たせませんでした。しかし、軽症のアルツハイマー病に限って改めて解析すると、わずかながらも認知機能低下のスピードを抑えていた可能性が浮上してきました。

そこで、βアミロイドの蓄積が確認された、軽度認知障害(MCI)や早期の患者をターゲットにした臨床試験で再度挑戦、勝負をかけるようです」(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・神経病理学分野教授の岩坪威医師)

 こうした先端研究が実を結び、予防や早期治療が実現するまでには、少し時間がかかるだろう。では、現時点でできる「予防」としては、なにが効果的なのだろうか。

 アルツハイマー病の予防に関する世界各国の大規模研究を分析した、筑波大学病院精神神経科教授の朝田隆医師によると、認知機能の低下に対し効果があると評価できるのは、「運動習慣」だけだという。朝田医師はこう語る。

「運動のなかでも、有酸素運動がとくに効果的です。サイクリング、やや速めに歩くウオーキング、なわとびなどを2週間に1回、30分以上することが目安になります。また、強制されてするのではなく、楽しんで行うレジャーアクティビティーがいいでしょう」

 運動習慣は、健康な人が加齢によって認知機能が落ちるのを防ぐだけでなく、すでにMCIを発症している人の認知機能低下を軽減させる効果もある。

MCIの高齢者170人を対象にしたオーストラリアの研究では、6カ月間運動した人は、しなかった人と比較して、3年後に認知機能の改善がみられたという。

授業に認知行動療法 ストレス対処の力育む

人間関係、勉強、部活で悩み…

親や友人との人間関係や勉強、部活の悩み――。そんな思春期のストレスに対処できる心を育てようと、医療現場で用いられている「認知行動療法」の考え方を取り入れた教育が、学校現場に広がりつつある。 

 5月、専修大付属高校(東京都杉並区)の教室。国語科教諭の平沢千秋さんは、友人関係でよくありそうな事例を黒板に示した。

 <出来事>春子は夏子と遊びたいと思って携帯に電話した。数回かけても出ない。返信もなかった。

 <考え>夏子に何か悪いことをしたかな。

 <気分>落ち込んだ。悲しかった。

 <行動>宿題が手につかなくなった。

 これは、認知行動療法の考え方を取り入れた「こころのスキルアップ教育」の一コマ。認知行動療法は、うつ病や不安障害などの治療に使われる心理療法で、カウンセリングなどを通じ、過剰なストレスを招く考え方や行動の癖を修正する。

 平沢さんは、3年生20人にこう切り出した。

 「春子さんは、ほかの考えはできなかったかな」

 五つの班に分かれた生徒たちはじっくり話し合った。「忙しい用事があったのかも」「携帯を忘れて出かけていたかもしれない」「寝ていたのかも」

 平沢さんは、そう考えられれば、気分はどうなるのか尋ねた。多くの生徒は「仕方がないと思える」「気持ちは落ち込まなくなる」と口にした。

 授業に参加した若佐南奈(なな)さん(18)は無料通話アプリ「LINE(ライン)」で友人にメッセージを送ったのに返事がないと「嫌われたのでは」と不安になることが多いという。若佐さんは「今後はいたずらにネガティブにならなくてすむかも」とうれしそうだった。

 平沢さんは「気持ちや行動は、その時に頭に浮かんだ考えに影響される。それを学べば、困難な場面に遭遇しても対処できる心のスキルが身に付く」と話す。

 この授業は、教師やカウンセラーなどでつくる「認知行動療法教育研究会」が2012年から普及に取り組んでいる。平沢さんもメンバーの一人だ。

 認知行動療法の第一人者で、国立精神・神経医療研究センターの大野裕さんの全面的な協力を得て指導案ができた。大野さんは「ストレスに強くなるだけでなく、他の人の気持ちを思いやる力もつく。子どもたちの心を育むことにつながる取り組み」と話す。

 神奈川県大和市立引地台(ひきじだい)中学校は今年度から、すべての生徒が道徳の時間に計10コマの授業を受ける。

 校長の篠原正敏さん(59)によると、核家族化や近所付き合いが減ったことなどで多様な考えに触れる機会が少ないことから、考え方の狭い子どもが増えているという。篠原さんは「人の心を読めず、LINEや携帯電話を巡るトラブルになることは少なくない。今の子どもたちには必要な教育ではないか」と話している。(加納昭彦)
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認知行動療法の考え方を取り入れた授業

対象は小学生から大学生。これまでに全国の十数校で行われた。同療法の理論や授業案などを紹介する勉強会は22日に福岡市、7月21日に名古屋市で行われる。いずれも午前10時~午後5時。教育関係者が対象で無料。問い合わせは認知行動療法教育研究会(apply@cbt‐education.org)。

かむ力がアップすると認知症が改善する?

いま歯科医療の現場で、歯の健康が全身の健康と関係していることが明らかになりつつある――。なかでも、かむ力の回復は食べることだけでなく、歯を通して脳に刺激が行き、記憶ややる気の回復にもつながるという。

 松野スミさん(仮名・93歳)は4年前の初診当時、認知症が進行し、ぼーっとしてただ座っているだけという状態だった。

他院で作った入れ歯が合わず、軟らかいものしか食べられなかったため、大分県佐伯市で開業する河原英雄歯科医師が新しい入れ歯を作り、かむトレーニングをした結果、何でも食べられるようになり、認知症も改善。9カ月後には、息子とともに地元のカラオケ大会に出場した。

 40年前にじん肺(粉塵やアスベストなどを吸い込むと起こる肺の病気)患者に認定された高橋忠さん(仮名・78歳)は、呼吸困難などが悪化し、07年には両肺が重症の気胸になった。

気胸は肺に穴が開いて空気が漏れてしまう状態で、半年間入院して治療を受けたものの、退院後は24時間酸素吸入が必要。さらに歯がボロボロでかめないため、体重は38キロまで落ちていた。

「主治医に『食べられないままだともっと痩せちゃうから、すぐに歯医者に行きなさい』と言われてね」

 と高橋さん。河原歯科医師の診察を受けにきたときは、歩くのもやっと。酸素吸入器を手放せないため、10カ月かけて慎重に治療した。

 歯の治療が終わり、かめるようになると、妻が栄養のあるものをたくさん食べさせたこともありメキメキと回復。1年6カ月後の定期検診では体重が11キロも増えた。栄養状態を示す総たんぱくやアルブミンの値も基準値に達したという。スタスタと歩いて私たちの前に現れた高橋さんは、

「今は肉がおいしくてね。酸素吸入器なしで階段も上れるし、自分で車を運転してカラオケに行けるようになりました」

 と笑顔で話してくれた。河原歯科医師が「今の元気な姿からはとても想像ができないでしょう」と、初診当時の記録映像を見せてくれたほどだ。高橋さんは誇らしげに歯を見せながらこう言った。

「ほら、きれいでしょ。昔は歯みがきもいい加減だったけど、今は時間をかけてするようになりました。大事な歯だからね」

 なぜ、かめるようになると、からだまで元気になるのだろうか。

「かんでのみ込む『咀嚼(そしゃく)』を含めた、『食べる』という一連の動作は、さまざまな器官を使う高度な作業です。近年、脳にたくさんの刺激を与えることが明らかになってきました」と、河原歯科医師は言う。

アルツハイマー型認知症、治療薬複数登場で使い分けも可能に

認知症の診断の中で最も比率の高いアルツハイマー型認知症患者に対する治療薬は現在、4種類あり、患者の体質や生活環境に合わせ、選択できる。香川大学医学部付属病院で認知症治療に取り組む中村祐・医学部教授に聞いた。(日野稚子)

 ◆生活機能改善

 「一般の方は認知症治療薬が、さほど効かないと考えているようだが、治療する立場から言えば、皆さんが思っている以上に効果がある」と中村教授は話す。

 アルツハイマー型認知症を対象とした治療薬で最も古いのは、国内で平成11年に発売されたアリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)。アルツハイマー病を発症すると、脳の神経伝達物質のアセチルコリンが減少する。

アリセプトは、アセチルコリン分解酵素(コリンエステラーゼ)を阻害し、アセチルコリンの減少を食い止めるメカニズム(作用機序)。「これによって、注意力低下や意欲が改善され、生活機能が上がる。そうすると、周囲とのコミュニケーションも改善され、副次的には患者が抱いていた不安も解消され、落ち着いてくる」(中村教授)

 それまではアリセプトだけで行われていた認知症治療だが、23年に次々と新薬が登場。レミニール(一般名・ガランタミン臭化水素酸塩)、イクセロンとリバスタッチ(ともに一般名・リバスチグミン)はアリセプトと同じ作用機序で、コリンエステラーゼ阻害薬だ。

 別の作用機序の薬も同年、登場した。アルツハイマー病が進行すると、脳の神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰となり、脳神経のNMDA受容体も過剰に活性化する。

記憶の定着を邪魔したり、脳神経そのものを傷付けたりしてしまうが、このNMDA受容体を阻害し、認知機能を改善するのがメマリー(一般名・メマンチン塩酸塩)。コリンエステラーゼ阻害薬と併用でき、焦燥感やイライラした状態、攻撃性も抑えられるという。

 ◆早期に対応

 治療薬が増えることで患者にどのような利点が生まれたのか-。

 「個々の患者の認知機能障害の程度や看護環境などを見ながら薬剤を選択できる。1つ目の薬が効かなかったり、副作用が出たりしたら別の薬に変えることができる。

認知障害の進行を緩やかにすることができる」と中村教授は指摘する。例えば、コリンエステラーゼ阻害薬でもレミニールは「ボーッとしている患者」に、残り2薬は「シュンとしている患者」に向くという。また、薬剤によっては食欲の減退や過食も改善する。

 中村教授が診療を行う香川大付属病院では、約300人のアルツハイマー型認知症患者に対し、コリンエステラーゼ阻害薬の3種類を使い分け、アリセプトを約5割の患者に、残る半数に2薬のいずれかを処方。メマリーも約100人が服用している。

 認知症は、リハビリや服薬で早期に認知機能の改善や低下阻止を始めることに意味がある。

日本神経学会は24年発行の『認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012』の中で、認知機能に対する薬物療法を推奨している。中村教授は「患者家族も認知症治療薬に選択肢があることを知ったうえで、診断を受けたら医師に相談してほしい」と呼び掛けている。

 ■薬の自己判断での中断は危険

 認知症治療薬を服用しても状態が変わらないと思って、看護する家族が服用をやめてしまうことが多い。しかし、中村教授は「薬を早期から服用する患者は、そうでない患者と比べ、認知機能低下が緩やか。このため、状態変化がないからと薬をやめたことによって急激に悪化し、再開を求められることも多い」と指摘。一旦、落ちた認知機能は服用を再開しても戻らないという。

 日本神経学会の治療ガイドラインも、治療効果が明らかでない場合も薬剤中止で認知機能が低下する症例があることを挙げ、「薬剤中止は慎重に検討すべきだ」とする。「効いていないかも」と考えても自己判断は危険だ。
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