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耳が遠くなると認知症になりやすい?

誰でも年を取れば体のさまざまな機能が衰えてくるものである。「最近、耳が遠くなって」という加齢性難聴(または老人性難聴ともいう)もそうした加齢による身体機能低下のひとつである。近年、この加齢性難聴と認知症の関係が注目されている。耳が遠くなると認知症になるのだろうか。そもそも加齢性難聴は治療で治すことはできるのか、予防はできないのか。気になる認知症と難聴の関係について、愛知医科大学耳鼻咽喉科特任准教授の内田育恵さんに話を聞いた。

■難聴があると加齢に伴う認知機能の低下が大きい

 超高齢社会を迎え、加齢性難聴の患者数も年々増加している。世界保健機関(WHO)では会話領域の平均聴力レベル[注1]が25dBHL(デシベル・エイチ・エル)を超えると難聴と定義しており、国立長寿医療研究センターの「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」という疫学調査[注2]によれば、聴力レベルが25dBHLを超える難聴の有病率は65歳以上から急激に増え始め、75~79歳では男性71.4%、女性67.3%、80歳以上になると男性84.3%、女性73.3%が難聴という結果だった(図1)。

[注1]聴力:聞こえの程度のこと。小さい音からだんだん大きくしていき、初めて聞こえた音の強さで測定。様々な音の高さ(周波数)で検査し、平均聴力レベルの値で示す。25dBHL以下は正常とされる。[注2]「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」が愛知県大府市にある同センターの近隣に住む40~79歳の約2000人を対象に1997年から2年ごとに行っている追跡調査。聴覚、視覚だけでなく、一般採血、頭部MRI検査などの医学検査のほか、生活調査、栄養、運動機能、心理検査などを行い、老化の過程を継時的に観察している。

 この疫学調査に総務省発表人口推計(2010年8月1日時点)を当てはめて推計した結果、65歳以上の難聴人口は約1500万人であることが分かっている。

 「聴力が低下すると、相手の声、話の内容が聞きとりにくくなり、話し相手が繰り返し話しかけたり、大きな声を出さなければいけなくなるなど、コミュニケーションの工夫や努力が必要となります。仮に高齢者1人に家族が2~3人いるとすれば、難聴がもたらす影響は、本人を含めて、国民の4500万~6000万人に及ぶ深刻な問題といえます」と内田さんは話す。

 問題は難聴だけではない。難聴があると認知機能の衰えが進むことも同疫学調査から分かってきているのだ。「認知機能は加齢に伴い誰でも低下していくものですが、難聴があるとその衰えは顕著になります」と内田さん。しかも、難聴によって衰える認知機能は、加齢に伴い成熟する知識や言語能力など、老化によって衰えないとされる領域にも及ぶのだという。

■なぜ難聴だと認知機能が低下するのか?

 「難聴があると、どうして認知機能も低下するのか、その理由はまだ明確には解明されていません。しかし、いくつかの仮説が考えられています」と内田さん。仮説のひとつが、「共通原因説」。「脳にはたくさんの神経細胞が集まっています。例えば動脈硬化や糖尿病などは神経を障害しますが、音を聞きとる感覚神経と、認知機能をつかさどる中枢神経に同時に影響が及ぶと、同時並行で聴力と認知力の機能低下が起こります」(内田さん)。つまり、難聴があるから認知症になるのではなく、難聴と認知症に共通の原因が作用するという考えが共通原因説である。

 もうひとつは、「Effortful Listening仮説」あるいは「認知負荷理論」というものだ。Effortful Listeningは直訳すると努力して聞くということ。私たちの脳には、パソコンでいうところのワーキングメモリー(情報を一時的に保ちながら操作するための領域)があり、例えば、「2階にメガネを忘れたから取ってこよう」という行為は、このワーキングメモリーに入れられて、一時記憶として保存される。しかし、2階に行ったときに、ちょうど雨が降ってきたからとあわてて洗濯物を取り込んだりしていると、「メガネを取ってこよう」という最初の記憶が「洗濯物を取り込む」という記憶に上書きされる形で消されてしまい、1階に戻ってから「肝心のメガネを忘れた!」となる。これはワーキングメモリーの容量が限られているために、あれもこれもと同時にやろうとする結果起こる物忘れである。

 「実は難聴のある人は、日常生活で、耳から入ってくる少ない情報から内容を理解するために、無意識のうちに人よりも多くのワーキングメモリーを消費してしまっていると考えられています」と内田さん。例えば、電車内の聞きとりやすいアナウンスならば小説を読みながらでも内容を理解できるが、音声の悪いアナウンスを聞きとる場合は、他の作業を止めて耳を澄まし集中しなければ聞きとれないという経験をしたことがあるだろう。難聴がある人は、日常的に、音声の聞きとりに多くのワーキングメモリー容量を使ってしまい、それが認知機能の低下に影響するという理論である。

 また、「誤解」説というものもある。これは難聴が原因で、認知機能のテストで実力よりも低く評価されてしまうというものである。一般的な認知症の検査であるミニメンタルステート検査(MMSE)や長谷川式の認知機能検査は、音声指示で行われるために、聴力が低下していると不利になり、質問をあいまいにしか聞きとれなかったり、聞きとるのに労力を使ってしまい記憶に定着しにくくなるなどして、実際の能力より検査結果が低く出る可能性があるというのだ。

 「実験的に聴力が正常な人に、聞きとりにくい音声加工で擬似難聴の条件を作り認知機能の検査をしたところ、重い難聴レベルの音声では約9割の人が認知症患者と同レベルの結果になってしまったという研究報告もあります」と内田さんは話す。通常、認知機能の検査をする場合は、検査の前に会話をして聴力がどの程度か確認し、必要に応じて質問を文字で見せるなどするが、中には聴力が衰えていることが見逃されることもあるという。

 最後の「誤解」説は別にして、難聴と認知症がお互いに関連していることは明らかだろう。厚生労働省が2015年に発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の中でも、認知症発症の危険因子として、加齢、遺伝性のもの、糖尿病、喫煙などとともに、難聴が掲げられているのだ。

■聴力機能は一度壊れたら元には戻らない

 そもそも、どうして難聴は起こるのだろうか。難聴になる人とならない人の差はあるのだろうか。

 「難聴を引き起こすすべてのメカニズムはまだ解明されていません。しかし、難聴の危険因子としては加齢のほかに遺伝的要因や糖尿病、喫煙など様々なリスクが考えられています。中でも難聴を起こす最も大きな原因と考えられているのが、騒音です」と内田さん。

 若い頃に大きな音を長期間にわたって聞いていると、年を取ってから難聴になるリスクは高くなるという。「10代や20代の頃に、大きな音量で音楽などを日常的に聞いていると、60歳を過ぎてから加齢性難聴になるリスクは非常に高くなります。また、大音量に長時間さらされると40歳くらいで難聴が起こることもあります。怖いのは、聴力機能は一度壊れたら元には戻らないということです」と内田さんは警鐘を鳴らす。

 大音量から耳を守るためには、できるだけ大音量に耳をさらさないことが大事だ。コンサートなども1時間に5分くらい休憩を入れるといいと内田さんは言う。「工事現場で仕事をしている人などで、その場から抜けられない場合は、耳栓をして耳を休めるようにしてもいいでしょう。またライブハウスなどではスピーカーの近く、音の反響がある壁の近くは避けることも重要です」と内田さんは話した。

 また、高齢者の場合、難聴かと思ったら、耳あかがたまっていたというケースもあるという。「通常、耳は自浄作用があるので、耳あかは外側へ押し出されるのですが、高齢になると自浄作用が低下して、耳の奥に耳あかがたまってしまうことがあります」と内田さん。健康診断では、聴力の検査はしても耳の中まで調べることはない。耳の聞こえが悪くなったなと思ったら、年だから仕方がないと思わずに、一度、耳鼻咽喉科でしっかり中まで調べてもらうことも大切だ。

■補聴器を使うことで認知症は改善されるか?

 難聴は治療をしても元の聴力に戻すことはできないが、補聴器を使うなどして聴力を補うことは可能である。では、補聴器で聴力が回復すれば、認知症も改善されるのだろうか?

 「補聴器を使って聴力を補えば認知機能が改善するのかという疑問には、まだ答えが出ていません。また、認知症の人は補聴器の管理や操作をするのが難しいため、使用自体が困難な場合もあります」と内田さん。ただし、家族のサポートで補聴器を使うことにより、コミュニケーションが取りやすくなり、認知症に伴う周辺症状が改善される場合もあるという。

 高齢者の難聴、そして難聴と認知症の関連はまだ分からないことも多いが、できるだけ若いうちから、騒音に耳をさらさないようにして、聴力の低下を予防することが大切といえそうだ。また、高齢者の難聴の中には、耳あかなど治療で治る場合もある。内田さんは「耳に違和感を覚えたら、一度は耳鼻咽喉科を受診してください」と話す。

内田育恵さん 愛知医科大学耳鼻咽喉科特任准教授。1990年大阪医科大学卒業。米国留学、名古屋大学医学部耳鼻咽喉科助手、非常勤講師等を経て、2010年国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科医長。2015年より現職。国立長寿医療研究センター客員研究員。2012年、「全国高齢難聴者数推計と10年後の年齢別難聴発症率―老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)より」にて日本老年医学会優秀論文賞受賞。

仕事も家族も同時に失った「若年性認知症」の恐怖 30代の発症例も多数

「あの人の名前、なんだっけ?」「昨日の晩ご飯、何を食べたっけ?」「実家の郵便番号っていくつだっけ?」……。30~40代にもなると急激に進む記憶力の低下。「あれ」「それ」といった指示語で会話する頻度が増えるたびに、「もしかしてボケが始まっているかも」と不安になる読者も多いことだろう。

 菅原脳神経外科クリニックの医師、菅原道仁氏は次のように説明する。

「64歳以下で発症する認知症を『若年性認知症』と呼びます。認知症というと高齢者のイメージがありますが、64歳以下でも認知症になるケースが意外と多くあり、近年、若年性痴呆症(若年性認知症)が増加傾向にあります。また、認知症と診断されるには5つの診断基準がありますが、早期に適切な治療を行えるよう、すべてを満たさなくても『軽度認知障害』、いわば“認知症予備軍”と診断するケースも増えています」

 39歳で兆候が表れ、42歳のとき、娘に「お父さん、ボケてるんじゃないの?」と言われたのをきっかけに病院へ行ったところ、アルツハイマー型若年性認知症と診断、その直後に妻に離婚されたという太田剛さん(仮名)。当時、太田さんは大手電機メーカーの研究職で多忙を極めていた。7~8時間の睡眠と、3食の食事は規則正しく取っていたが、睡眠と食事以外の時間はほぼすべて仕事に没頭していた。

「36歳で課長職に就いて部下が60人もでき、仕事の量はもちろん、プレッシャーも急に大きくなりました。それまで新開発で特許を取ったり、研究開発部門の最前線でやってきた自負もありました。しかし、研究がなかなかうまくいかないと、評価も気になるし、研究成果が出るまで残業もしました。平日は深夜帰りはザラで、土曜も出勤して仕事をしていました」

 太田さんは責任感の強い性格で、じっくり考えるタイプだという。食事中でも家族と過ごしているときでも、片時も仕事のことが頭から離れなかったという。

 そして40歳をすぎた頃から、会社ではミーティングの時間を忘れたり、プライベートでは家族と約束した待ち合わせ場所に行けなくなったり、それまでは絶対になかったミスが続くようになった。そこで病院で診てもらうと、アルツハイマー病による認知症との診断を受けたのだ。

「会社の上司に認知症のことを告げると、『もう休んでいいよ』と言われました。まるで『もう辞めていいよ』と言われているようで、すごくショックでしたね」

 企業は、認知症を理由にクビにはできないため、現在休職扱いになっている太田さん。さらに追い打ちをかけるように、妻は介護どころか離婚を切り出したという。

「元妻からは、『娘には一切連絡もせず、会わないでほしい』と言われました。妻子と住んでいた家は追い出され、生活保護をもらってアパートで一人暮らしです。今は本を読んだりネットを見たりして、のんびり過ごしています。つらかった会社員時代のことを思い出さずに過ごせればよく、将来は田舎の実家に帰る予定です」

 つらい過去の記憶は、忘れたくても忘れられないようだ。

 若い人だと自分が認知症だと疑いを持ちにくいため、若年性認知症は早期発見が難しいと言われている。また、認知症と診断されていなくても兆候が出ていると仕事に支障をきたすようになり、経済面で大きな問題が発生しがち。ほかにも、介護保険や障害年金などの公的なセーフティネットもあるが、決して完璧とは言えず、若年性ゆえの問題が山積している。

 6月13日発売の週刊SPA!では、「30代から始まる[若年性 痴呆症になる人]のヤバい兆候」という特集を掲載している。若年性認知症では、早期発見と周囲のサポートによって進行を遅らせることが何より大切だが、現代の“無縁社会化”はその希望すら打ち消しつつある。発症した人たちは、どんな兆候があり、現在どのような暮らしを送っているのか。また、予防法は? 物忘れが気になる人はぜひ参考にしてほしい。

梅雨の憂うつを解消!肌やココロに効くお天気別「傘」の選び方♪

おはようございます!キレイナビ代表・美容家の飯塚美香です。いよいよ梅雨の季節がやってきました。雨が降るとヘアスタイルが決まらなかったり、服や靴が濡れてしまったり、憂鬱な気持ちになってしまうこともありますよね。どんな天気でも気分を明るくするために!今回はお天気別「傘の選び方」をご紹介します。

【雨の日】「明るい色の傘」で気分を上げる!

雨の日にビニール傘や晴雨兼用の黒い傘をさしていませんか?雨を直接感じてしまうビニール傘や、黒い傘をさしていると、気分までどんよりしてしまいそう。

雨の日におすすめなのは、明るい色の傘です。ピンク、黄色、オレンジ色などパステル系の明るい色や、カラフルな花柄、ポップなチェック柄などの傘で気分を上げていきましょう。

たかが傘、と思うかもしれませんが、傘の色や柄は朝の気分に大きく左右します。憂鬱な気分を吹き飛ばすためにも、雨の日こそ素敵なお気に入りの傘で外出しましょう。

【曇りの日】「白い日傘」でハイライト効果♪

どんよりと暗い曇の日。曇りでも晴れの日の60%は紫外線が降り注いでいるので、日傘をさすのがおすすめです。

紫外線カット力が高いのは、薄い色よりも黒や紺などの濃い色になります。ただ、暗い色の傘は気分が上がらないばかりか、顔が暗くくすんで見えてしまいます。デートの時など顔色を明るく見せたい時は、白い傘でハイライト効果を狙いましょう。

縁取りにレースが施されている素敵な日傘を1本は持っておくと女子力が上がりそうですね。

【晴れの日】「UVカット力の高い日傘」でお肌を守る!

紫外線が強い日は、やはりUVカット力の高い日傘でお肌を守ることを第一優先に!UVカット率、遮光率のどちらも高い数値のものを選ぶことがおすすめです。

UVカット率は紫外線を防ぐ力のことで、遮光率は光そのものを防ぐ力のこと。遮光率が高い傘は、目に見える太陽の光も防いでくれますので、遮光率が低い傘と比べて涼しさを感じやすくなりますよ。

雨、曇り、晴れの日と、お天気別に傘の選び方をご紹介しました。今年の梅雨は、お気に入りの傘を見つけて、どんな天気でも明るい気分で外出しましょう☆

☆この連載は<毎週火曜日>に更新します。来週もどうぞお楽しみに…!

軽度認知障害簡易診断法「指で狐の形を作って真似てもらう」

寿命100歳時代を迎え、「ボケない」ことが最重要テーマとなる。シニア世代にとって、将来自分が認知症になるかどうかは最大の関心事だが、厚労省の調査によると、現在認知症の高齢者462万人に対し

、加齢による物忘れと認知症の間にあるグレーゾーンで、認知症予備軍ともいわれる軽度認知障害(MCI)は400万人と推計されている。

 臨床の現場では、簡単なことで認知症の初期症状を見極めるテストが取り入れられている。クリニック釈羅〈精神科)院長の中西昭憲院長が語る。

「10時10分を指す時計の絵を描かせると、アルツハイマー型認知症の初期の人は円がいびつな楕円形になったり、短針と長針が極端に違ったりして、意外とうまく描けない。ほかには、医師が指でつくる形と同じ形を真似してもらいます。

 まず人差し指と親指をくっつけて丸をつくり、次に中指と薬指と親指でキツネの形をつくって見せ、これを真似てもらう。アルツハイマー型認知症の初期の人は、丸からキツネに変えるときに丸のまま中指をつけることが多い。

頭頂葉の血流が悪くなり、空間認知機能が低下する場合が多いので、目で見たものの位置や形が認識できなくなることがある。

 またそれ以前の兆候として、物の名称が出てこなくて代名詞の『あれ、これ、それ』ばかりを使うようになる状態は危険です」

 ただし、そうしたテストでただちに認知症と判断されるわけではない。あくまでも「疑い」に過ぎず、正確な診断は問診やMRI検査などを経て下される。

認知症を過度に怖がる必要はないが、正しく怖がるために、自らの現状やリスクをしっかり把握し、予防に努めることがもっとも重要である。

薬が効かない7割の人に吉報! うつ病は「磁気刺激」で治す

うつ病が「きっちり治る」時代に、また一歩近づいた。薬が効かないうつ病を改善する「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」に注目が集まっているのだ。

 欧米では実用化されていて、日本でも先進医療、または医師主導治験による薬事承認のプロセスが検討されているところだ。rTMSの第一人者、杏林大学医学部付属病院精神神経科・鬼頭伸輔医師に話を聞いた。

 うつ病治療の第1ステップは、抗うつ薬を用いた薬物療法。SSRIやSNRIが主に使われる。

「これらを数種類服用して寛解(症状が消え、社会生活が送れる状態)に至る人は3割。7割はなかなかよくなりません」

 SSRI、SNRIで十分な効果が得られなければ、典型的な治療に反応性を示さない“難治性うつ病”と定義される。第2ステップとして、“マイルドな抗うつ薬”といわれるSSRIやSNRIに対し、“強力な抗うつ薬”である「三環系」と分類される抗うつ薬や、気分安定薬であるリチウムを用いた治療が行われる。

「現在、rTMSは、三環系やリチウムの前の段階で用いると有効ではないかと考えられています。治療の流れとしては、まずSSRIやSNRIを1種類6週間服用して駄目、次に2~3種類を4~6週間でも駄目という場合、rTMSを検討することになります」

 rTMSは、頭に特殊な刺激装置を置いて、頭蓋内に磁場を誘導させて神経を刺激するもの。

「うつ病は、感情をつかさどる脳の扁桃体や脳梁膝(のうりょうしつ)下部の働きが過剰になり、記憶や行動の切り替え、反応抑制など認知・実行機能をつかさどる前頭前野の働きが低下することで発症すると考えられています。

rTMSは前頭前野の神経を刺激し活性化させて、扁桃体や脳梁膝下部の働きを正常レベルに抑制しようというものです」

■安全性が高く、つらい副作用もない

アメリカの研究で、1~4種類のSSRI、SNRIが効かないうつ病患者300人を2群に分け、半数に本物のrTMS、半数に偽物のrTMSを行ったところ、本物の群の15~20%が改善。

次に、全員に本物のrTMSを行ったところ、30~35%が寛解に至った。「当院でも複数の抗うつ薬で改善しなかった130人にrTMSを実施すると、30%の人が寛解しました」

 rTMSのメリットは、安全性が高く、薬のように吐き気、眠気、性機能障害、急激にやめた場合のセロトニン離脱障害といった全身性の副作用が起こらないことだ。

もちろん、副作用がないわけではなく、頭痛や刺激を与える箇所の痛みを訴える人もいるが、耐えられないほどではない。けいれんの副作用も指摘されているものの、0.1%未満とわずか。

「SSRIやSNRIを3種類服用しても寛解に至らない場合、4剤目の薬を試した時の寛解率は約7%ですが、rTMSだと18%です。これもメリットだと思います」

一方、デメリットは患者の時間的負担が大きいこと。rTMSは1回約40分かかる。これを週5日、4~6週間続けなくてはならない。通院で受けるにしろ、入院で受けるにしろ、拘束時間が長い。

ちなみに、メリットの箇所で“痛みは耐えられないほどではない”と述べたが、これは、やり始めは痛いが、回数を重ねるうちに“痛みを感じなくなる”という意味も含まれている。

「従来のうつ病治療の第3ステップは脳に電気けいれんを与える電気けいれん療法です。しかし、rTMSが普及すれば、第1ステップと第2ステップの間にもうひとつ治療法が入ることになり、選択肢が増えます」

 実用化が待ち望まれる。

うつ病患者の6割に効果 最新「磁気刺激治療」体験レポート

人口の約3%、日本には300万~400万人の「うつ病」患者がいるとされる。優れた薬は開発されているものの、効果には個人差や相性があり、副作用に苦しむ人も多い。

そんな中、副作用がほとんどない画期的な治療法として注目を集めるのが、「TMS(磁気刺激治療)」だ。一体どんなモノなのか? 記者が体験した。

■根本的な治癒が期待できるうつ治療法

「TMSは、アメリカ発祥の最新うつ治療法です。活動が低下してうつ症状を引き起こしている脳の特定部分を磁気で刺激し、活性化するのが狙いです。

これまでアメリカで5年間に1万3000人が受け、そのうち6割近くに効果が認められました。日本でも臨床研究が進んでおり、副作用のほとんどない画期的なうつ病治療として注目を集めています」

 こう言うのは、「新宿メンタルクリニック アイランドタワー」の渡邊真也医師。同クリニックは、昨年6月からこのTMSを導入し、延べ600人以上を治療。1年間で86%の人の症状が軽くなり、61%の人からうつ症状が消えたという。

抗うつ薬を何年、何十年も飲み続けている人がいる実情を考えれば驚くべきスピードだ。

「実際、何年も薬物治療を続けても効果がなく、副作用に苦しんでいた人が、最後の望みで来院するケースが多いですね。良くなった方は“もっと早くこの治療法に出合いたかった”とおっしゃいます。

さらに、この治療法が素晴らしいのは、ダメージを受けた脳を元の状態に戻す効果があるということ。つまり、根本的な治癒が期待できる、唯一のうつ治療なのです」

 治療の流れはこうだ。

 まずは臨床心理士によるカウンセリング。その後、医師の問診を経て、TMS治療機が置いてある個室に入る(実際は問診の翌日から)。歯の治療に使うような電動リクライニング椅子に横たわり、頭を固定される。

 次に、治療部位である「背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)」の位置を特定。

背外側前頭前野は“大脳皮質の運動野の中でも親指をつかさどる部位”から5.5センチ前方に向かった所にあるので、まずは親指をつかさどる部位を探す(磁気が当たると親指がピクッと動く)。

 磁気を当てるたびに小指や薬指がピクッと動く。おしい! 親指はどこ? 意外とアナログなのが面白い。ただし、ミリ単位で器具を移動させながら探していくので、30分以上時間がかかった。この作業は最初だけだそうだが、動けないし不安だし、精神的にかなり疲れた。

■保険適用外で治療費は約180万円…

 場所が決まったらいよいよ治療開始。磁気を発するコイルが振動するために起こるダダダダ! という機関銃のような音と、キツツキに小突かれているような痛みが4秒間、側頭部を襲う。これが30秒に1回、40分間続く。

 爆音は耳栓をしているので平気だし、痛みはすぐに慣れて“イタ気持ちよく”なるが、40分間じ~っとしていなければならないのがとにかく苦痛。これを基本的に週3~5回、6~10週間かけ、計30回行う。

 保険が利かないため1回6万円、30回で180万円と、金銭的負担は大きい。臨床試験やモニターに参加することである程度安くなるそうだが、まだまだ限られた人のための治療法という印象だ。

 ただし、体験したその日は何となく頭がスッキリし、前向きな気分でいられたことは(思い込みかもしれないが)付け加えておく。

森永卓郎、森末慎二、小田嶋隆氏が認知症判別テストを受けた

寿命100歳時代を迎え、「ボケない」ことが最重要テーマとなる中、本誌前号で取り上げた「10分間で認知症予備軍かどうかがわかる判別テスト」は、大反響を呼んだ。

 このテストでは、電話口でオペレーターの質問に約10分間応答するだけで、軽度認知障害(MCI)であるかどうかを97%の精度で判断できる。

もとは米国メディカルケアコーポレーション社が開発し、現在、米国では主要民間保険会社52社のうち51社でこのテストが採用されている。この日本語版は、福岡大学の山田達夫教授らの検証によって原版と同様の精度が確認されている。

 やり方は簡単だ。ネット上でカードを購入し(1回3500円・税別)、電話でそのカード番号や名前、年齢などを伝えると、テストがスタート。まず電話口のオペレーターが関連性のない10個の単語を読み上げ、それを復唱して暗記する。

たとえば、寝室、産毛、メッセージという具合だ。復唱が終わると、それを思い出してオペレーターに伝える作業を、3回繰り返す。

 次に、オペレーターが動物の名前を3つ読み上げ、最も異なる(タイプが違う)と思われる動物を一つ選ぶよう指示される。何が正解というものではない。

 たとえば、猫、犬、牛から何となく猫を選ぶ、というようなものだ。この選択を2~3分繰り返す。

 最後に、もう一度最初の10の単語リストを思い出す。これで、テスト終了である。この間、わずか10分。結果は、その後郵送で送られる。なぜこんな簡単なテストで、MCIかどうかが判別できるのだろうか。

 テストでは10の単語が提示され、その並び順によって、どれほど記憶力に差が出るかが判別される。短い時間(数秒)内に物事を記憶し認知処理する能力を「作業記憶」、受け取った情報の記憶が短期間、保持される能力を「短期記憶」という。

 このテストでは、まず復唱して単語を記憶することで、作業記憶が問われる。その後、別の作業が挟まった後に、もう一度単語リストを思い出すことで、短期記憶が問われることになる。

短期記憶は、時間の経過や新たな情報のインプットとともに失われる。

 認知症の初期症状では、作業記憶や短期記憶に衰えが見られる。このテストは、そうした能力を総合的に評価するために構成されたものなのだ。

 今回本誌は、将来を心配する還暦間近の著名人3人に、実際にこのテストを受けてもらった。まずは経済評論家の森永卓郎氏(56)。意外にも、危機感が強かった。

「最近、とくに人の名前を思い出せない。しょっちゅう会っている人でも、会って名前が出てこない。

テレビやラジオに出ても、『あの……あれ……なんだっけ』という感じで言葉に詰まって、ボケてきたのかなと漠然と思っていました。この前は鳩山(由紀夫)首相と野田(佳彦)首相の間の首相の名前(菅直人氏のこと)が出てこなかった」

 結果は、認知機能指数78.54。50未満が「MCIの疑いあり」と判定されるため、「問題は見つかりません」という結果だった。

「全部覚えられなくて、『大丈夫なのか』とちょっと心配していました。普通なら3回聞けば覚えられるじゃないですか。いまでもどうしても一つ思い出せない。問題ないと聞いて、正直どうなのかと思っています」

 実はこのように、思い出せないと悔しがるうちは問題ない場合が多い。認知症は、「忘れたことを忘れてしまう」ものだからだ。

 次にロサンゼルス五輪金メダリストの森末慎二氏(58)。

「僕はモノを覚えるのが元々苦手で、電話番号などもメモしないとだめなほう。テストは緊張しました。10単語のうち、半分くらいしか覚えられなかったと思います」

 結果は、66.19。これも問題ない数値だった。

「認知症は自分が気づかないうちに進行するものだから、正直怖い。脳ドックも受けていて、脳の収縮もないと言われていましたが、やはり安心しました」

 最後に、コラムニストの小田嶋隆氏(57)。

「1+1を繰り返すようなものかと思ったら、予想よりも難しかった。2回目、3回目は全部覚えられましたが、最後もう一度やったときは一つ出てこなかった」

 そう言いながら、結果は78.56というハイスコア。しかし、本人の関心は別のところにあった。

「問題は『疑いあり』の場合、どうすればいいのかということです。早期発見したところで、個々人の意識に関わることだから、自覚的な予防が難しい。尊厳を傷つけるなど、むしろ悪影響が出ることも考えられる。

それを知ることが、果たしていいことなのか悪いことなのか、疑問です」

 小田嶋氏の指摘には一理ある。認知症は他の病気と違い、依然としてメカニズムがはっきりしておらず、発症した場合の効果的な治療法もない。

だから、これまでも将来認知症になるリスクに関しては、どれだけ知る必要があるのかについて議論が繰り返されてきた。

認知症になるかどうか 60歳までの生活習慣重要と専門家指摘

日本で認知症高齢者とその予備軍は合わせて862万人、高齢者の4人に1人は認知症になるという。

 では、効果的な認知症予防にはどのような方法があるのか。巷間、様々な食品や行動が「ボケ予防」に効く、と謳われてきた。だが、果たしてそれらは本当なのか。松川フレディ・湘南シルバーサポート湘南長寿園病院院長はこう指摘する。

「巷に流布するボケ予防のなかで、本当に科学的に効果があると立証されているものがどれなのかを見極める必要があります。

週に3日以上の適度な運動を行なっていれば、認知症の原因となる記憶を司る海馬の縮小を防止できるとメリーランド大学の研究チームが今年4月に発表するなど、軽い運動がボケ防止にいいというのは世界的な統計でも明らかになっている。

 かたや一時期流行した脳活性化トレーニングに関しては、オーストラリアでの研究で、脳活性化のための『認知活動』を5週間やっても、認知テストの点数は統計学的に意味のある改善にはつながらなかったなど、否定的な研究結果が相次いでいます」

 食べ物についても、科学的な効果が認められたものは限られる。最近では、緑茶が注目を集めた。

この5月、金沢大の山田正仁教授らの研究グループが、毎日緑茶を飲む習慣のある人は、認知症の発症率が全く飲まない人の3分の1にとどまるという研究結果を発表した。コーヒーや紅茶では効果はなく、緑茶にだけ認知症の予防効果がみられたという。

 医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の注目は、鮭と青魚だ。

「最近の研究では、今年の1月、ビタミンEがアルツハイマー病を遅らせるということをアメリカのミネソタ・ミネアポリスの研究グループが明らかにしました。1年でビタミンEを取っていた19%がアルツハイマーの進行が遅れたという。

 ビタミンEはオリーブオイルやアーモンド、ごま油のほか、鮭、青魚などに含まれています。

同様に、鮭や青魚にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれているが、そのオメガ3脂肪酸を血液中に倍以上持ったグループはそうでないグループより脳が0.7%大きかったという米サウスダコタ大学の研究結果がある。鮭や青魚はビタミンEも含まれているので相乗効果が期待できます」

 白澤卓二・順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授はココナッツオイルを推す。

「アルツハイマー病は『脳の糖尿病』といわれており、脳内でインスリンの効きが悪くなる。すると神経細胞でブドウ糖が使えなくなり、神経が変性を起こして記憶障害が悪化するというメカニズムが考えられる。神経細胞にはブドウ糖のほかにケトン体という脂肪酸がエネルギー源として活用できる。

 そのケトン体を血液中で上昇させるのが自然食のココナッツオイルなんです。ココナッツオイルを朝晩食べて、認知症の症状が改善された人は多いです。また、同様の理由で、糖尿病対策は認知症予防にもつながるため、糖質制限は効果的だと考えられる。

 できれば60歳になるまで、40~50代のうちから予防に努めておくことが、重要だと思います」

 認知症になるかどうかは、60歳までの生活習慣が重要だということだ。

【新型うつ】見落としやすい5つの兆候

◆典型的な鬱の症状に当てはまらずとも、注意が必要

 40男なら誰もが重大な病に罹る可能性がある。鬱の兆候というと「気持ちが沈み込み、やる気がなくなる」「食欲・性欲の減退」「寝付きが悪い」などが知られている。

が、医師であり、医療ジャーナリストでもある森田豊氏によると「イライラして八つ当たりする」「暴飲暴食・酒量が増える」なども危険な兆候だという。

「身なりに構わなくなったり、遅刻が増えるなど、ルーズになっていくケースもあります。典型例から外れた兆候は自分も周囲も見逃しやすいので注意が必要です」

 こうした兆候に気づくにはどうすればいいのだろうか。

「原則はセルフチェック。毎朝、鏡に向かい、昨日と変わっていないか、1週間前と変わっていないかを確認します。自分以外に配偶者、同僚など第三者にもチェックしてもらうと、さらに安心です」

 また、蓄積疲労や倦怠感にも気を配る必要があるという。

「40歳を過ぎると、若いときのように、1日寝ても完全に疲労回復できないのは普通なこと。でも、1週間かけてたまった疲れが、次の1週間のうちにリセットできない場合は、『危ない疲れ』です。放置すると、心身いずれかになんらかの異常が表れてきますよ」

【見落としやすい鬱の兆候】

▼早朝覚醒

▼暴飲暴食

▼イライラする・人に当たる

▼身だしなみに気を使わなくなる

▼遅刻が増えるなど、普段に比べてルーズになる

【森田 豊氏】

医療ジャーナリスト・医学博士。診療科を問わないさまざまな病気の概説や、医療にかかわる問題に取り組んでいる。『「病院に行くほどではない」と放っておくと、大変なことになる!』(扶桑社)など著書多数

認知症初期の診断 「10時10分」の時計を絵に描けぬこと多い

テレビを見ていて「あの女優の名前なんだっけ?」、夕飯の話をしていて「朝飯なに食べたっけ?」……最近、とみに激しくなる物忘れに、「もしかして認知症になってしまうのかも?」と不安になってしまう人は少なくないだろう。

「認知症の場合、単なる物忘れにとどまらず、日常生活に支障を来す。場所や道に迷う、財布や通帳などしまったものが見つからない、ものの名前がいえなくなり、会話も理解できなくなる。そのような兆候が少しでも見られたら医師に診てもらったほうが良いと思います」(認知症予防財団事務局)

 医師はどのように認知症を診断するのか。中西昭憲・クリニックの釈羅院長はこういう。

「私は診察のときに『10時10分』を示している時計を紙に絵として描いてもらいます。認知症の初期の人は意外とこれが描けない。頭の中でイメージはできているんだけれど、頭と手の連動がうまくいかないんです。

 このテストで側頭葉、前頭葉、頭頂葉の衰えが確認できます。側頭葉は言葉の理解や記憶、前頭葉は注意力や計画性、統括力、頭頂葉は空間認識を司る。

円がいびつな楕円形になってしまったり、短針と長針が極端に違ったり、数字の順番や場所が違ったりしてしまうのは、それらの衰えによるものです。これをやると、どうして描けないんだろうかと本人が非常に戸惑います。そうすれば認知の状態を伝えやすくなる」

 その後、問診による認知知能検査や、CT、MRIなどの精密検査を経て、認知症の診断をするという。

認知症 歩くスピードが遅い人、握力の弱い人のリスクが高い

 認知症高齢者とその予備軍は日本では合わせて862万人、高齢者の4人に1人は認知症になるという。認知症については、アメリカをはじめ先進国で共通の社会問題となっており、世界各国で研究が進められている。

そうしたなか、これまで未知の部分が多かった「認知症になりやすい人」の特徴が、科学的にわかってきた。

 たとえば2012年、米国ボストン・メディカルセンターの研究チームは、「歩くスピード」と「握力」で認知症になりやすいかどうかがわかると発表した。

「2400人を対象とした11年間に及ぶ追跡調査の結果、歩くスピードが遅かった人は、速かった人に比べ認知症の発症リスクが1.5倍も高かったという。同様に、握力の弱い人ほど、認知テストの点数が低かった。1

1年という長いスパンの調査研究だけに信頼性が高い。歩くスピードや握力が、大脳の総体積に比例するからです。

 ちなみに、これらは脳卒中のリスクとも相関関係があることから、脳の機能が低下し障害が出ているという点で、脳卒中と認知症はその発症リスクにおいて関連性があると考えられます」(医療ジャーナリストの田辺功氏)

 また、歯周病にかかっている人は認知症になりやすい、というデータもある。

 昨年6月、名古屋市立大大学院の道川誠教授の研究チームは、人工的にアルツハイマー型認知症に罹患させたマウスを用意して2グループに分け、1グループだけを歯周病菌に感染させた。

その結果、実験後にマウスの脳を調べると、歯周病になったマウスだけ認知症が悪化したという。

「歯周病菌が脳内で、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の増殖を促したということです。また、歯に関しては、残存歯が多いほど認知症になりづらいというデータもあります。

名古屋大の調査によると、70歳後半で健全な高齢者が9本に対し、アルツハイマー病の人の平均残存歯は3本、脳血管性の認知症の人でも6本しか残っていなかった。

歯を大切にする人は認知症になりにくいということです」(新谷悟・東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長)


うつになりやすい性格とは?

◆うつ病に典型的な3つの性格

ストレスの多い現代人に多い病気である「うつ病」。脳の働きが一時的に不安定になり、憂うつ感、意欲と活動の低下、体調不良などの症状がみられる病気です。うつ病は、さまざまな要因が絡み合って発症しますが、その要因のひとつに「性格」があります。特に、次の3つはうつ病になりやすい性格と言われます。

● メランコリー親和性性格

とても几帳面で、決まった秩序の中で過ごさないと安心できないタイプ。決まった形が乱されたり、臨機応変な対応を求められたりすると、気分が落ち着かなくなる。

● 執着性性格

真面目で、物事を徹底してやらなければ気が済まないタイプ。責任感が強く、手を抜いたり息を抜いたりせずに、猛烈に物事に取り組む。

● 循環性格

社交性に富み、ユーモアにあふれて明るく朗らかなタイプ。しかし、気分の浮き沈みが激しく、落ち込むときにはかなり深い憂うつを抱える。たとえば、仕事に熱心に取り組み、まじめで会社からも期待される人。人に気を遣い、責任感が強い人。このように、社会的には望ましい性格の人こそ、うつ病リスクが高いのです。これはまさに現代の悲劇です。

◆正反対の性格の人もうつになる

ところが、最近ではこの3つの性格に加え、社会的には歓迎されない性格の持ち主も、うつ病になるケースが増えています。「現代型うつ病」「ディスチミア親和型うつ病」など、新しいタイプのうつ病によく見られる性格です。このタイプには、次のような傾向がよく指摘されています。

・ 秩序を守るのが苦手
・ 気力がない
・ 自責的ではなく他罰的
・ 自己愛が強い

こうしたタイプは、豊かな環境で育ち、ストレスに揉まれてこなかった20~30代の若い世代に比較的よく見られます。社会に出て、急にイヤな仕事や人間関係など、複雑なストレスにさらされてしまうことが、これらのうつ病になる要因の一つと考えられています。

先にあげた性格の場合、薬をしっかり飲んで一定期間休養をし、ストレスをためやすい考え方を見直すことで、比較的早めに回復していきます。しかし、後者のタイプでは、服薬・休養だけでは十分な効果が表れず、生活指導や社会人教育を行うことが重要な要素になります。 自分にも似た傾向がある、と気づいた人は、早めに自分自身の考え方や生活習慣を改善して、本格的なうつ病にならないように予防することが大事です。

専門医に聞け! Q&A 感謝の言葉で認知症予防

 Q:妻に、「あなたは、ありがとうと言ったことがない。感謝する気持ちがないと早くボケるわよ」と言われました。妻は専業主婦です。妻が作ってくれるご飯は美味しいのですが、感謝の言葉を口にしたことはありません。早くからボケたくはないし、何かいい方法はありませんか。

(56歳・公益財団理事)

 A:感謝の気持ちを持たないことは、早く脳を老化させる原因となると考えられます。一方、感謝の気持ちを持って、「ありがとう」ということは脳の若返りに優れた効果があります。不思議に思うでしょうが、「ありがとう」と実際に言葉にして言うことで、感謝の気持ちが湧いてきます。「ありがたい」「嬉しい」などのプラスの感情が起こると、血流が促進します。このことも、脳の若さ維持、老化予防に役立ちます。

 また、そういった感情が湧くと、幸せホルモンと言われる「オキシトシン」の分泌が高まります。オキシトシンが増えると、自律神経が安定したり、ストレスが抑えられたりして、脳の老化やアルツハイマー病の予防に役立つと考えられます。

●感謝日記をつけよう
 ご質問の方は、妻に「ありがとう」というのが恥ずかしいのかもしれませんね。照れくさいでしょうが、思い切って言葉にして言ってみましょう。努めて言うようにすれば、次第に習慣となります。また、もう一つの方法として、私は「感謝日記」をつけるように勧めています。文字を書く行為は、前頭葉や記憶をつかさどる海馬などを含め、脳全体を刺激します。

 私が勧める感謝日記は、前日にあった感謝すべきことを3~5項目、ノートや手帳に簡潔に記すもの。記す内容は、人に対しての感謝だけでなく、物や動物に対して、行為に対しての感謝でもかまいません。
 
たとえば、次のようなことを記します。
・朝、すっきり気分よく起きられたことに感謝。
・食事、きちんと食事ができ、夜はお酒を飲めたことに感謝。
・お風呂にゆっくり入れたことに感謝。
 感謝日記は朝に記すとよいと勧めていますが、これは前日のことを思い出す想起力を著しくアップさせるからです。

首藤紳介氏(表参道首藤クリニック院長)
久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院、湯島清水坂クリニック等の勤務を経て、表参道首藤クリニック院長。自然療法や代替医療をはじめ、水素温熱免疫療法や臍帯血幹細胞療法、遺伝子治療などの高度先進医療を実践。

39歳でアルツハイマー 診断後も幸せで居続けられた理由

認知症になると何もできない、もう終わりだ――なんて思っていないだろうか。答えは否、だ。39歳のときにアルツハイマー型認知症と診断された仙台市の丹野智文(ともふみ)さん(43)は、今も仕事を続け、妻や子どもたちとともに幸せな日々を送っている。病気とつきあい、ともに歩みながら、診断後も幸せでい続けられる理由とは何なのだろうか。本人のメッセージをお届けする。

*  *  *
 私は39歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。営業の仕事をしていましたが、その5年ほど前から人より物覚えが悪いなと感じ、それまでは手帳に予定を記入していましたが、ノートに変更し、仕事の内容を書くようにしました。

 ある日、毎日顔を合わせているスタッフの名前も出てこなくなり、声をかけたくてもかけられなくなりました。おかしいと感じ、病院へ行きました。大学病院で詳しい検査をした結果、アルツハイマーだと診断を受けました。妻と一緒に医師の話を聞きましたが、その時には心配をかけたくないと思い、平然とした顔でいました。妻は泣いていました。

■「認知症=人生の終わり」だと思っていた

 自分一人になると目から涙がこぼれてきました。私の中で「アルツハイマー=終わり」だと思いました。病気の事で頭が一杯になり、不安で夜は眠れませんでした。病気のことをインターネットで調べると、悪い情報ばかりが目につきました。調べれば調べるほど絶望を感じていきました。

 ある日、「認知症の人と家族の会」というものがあるのを知り、集いに参加しました。私より前に不安を乗り越えた認知症当事者との出会いにより、10年たっても元気でいられることを知り、少しずつ不安が解消され、「認知症=終わり」ではないことに気付きました。私が選んだのは認知症になったことを悔やむのではなく、認知症と共に生きるという道です。

■勤務先の社長が言った言葉は「長く働ける環境をつくるから」

 アルツハイマーとわかった後、妻と二人で職場の社長と上司に診断内容を話しました。社長は「長く働ける環境を作ってあげるから」とおっしゃり、会社の理解のもと、今も事務の仕事を続けています。

 生活していて困った事は、認知症当事者だと誰も気がつかない事です。初期の認知症の人は、見た目には普通の人と何も変わりがないからです。普通に物事も頼まれますが、出来ないこともあり、そうするとすべてが嫌になってしまいます。

 そこで、私は病気を周りにオープンにしようと思いました。病気とわかってもらうことで、サポートをしてもらえ支えてくれる人がたくさんいる事を知ったからです。

 そう思うまでには葛藤がありました。まだまだ偏見を持っている人が多いからです。家族に迷惑がかかるのではないか、子供達がいじめられたりしないかなども考えました。ある日、両親に相談したら「何も悪いことをしているのではないのだから私達のことは気にしないで自分の思うようにオープンにしなさい」と言われました。子供達にも、もしかしたら友達に知られるかもしれないよと話をすると「パパは良いことをしているのだからいいんじゃない」と言ってくれました。

■人生は認知症になっても新しく作れる

 病気をオープンにすることでサポートや支援を受けられるようになります。私は認知症になっても周りの環境さえよければ笑顔で楽しく過ごせることを知りました。認知症と診断された後は、環境が一番大切だと感じています。

 できることを奪わないで下さい。時間はかかるかもしれませんが待ってあげて下さい。一回出来なくても次、出来るかもと信じてあげて下さい。そして出来た時には当事者は自信を持ちます。失敗しながらも自信をもって行動する、周りの人は失敗しても怒らない、行動を奪わない事が気持ちを安定させ進行を遅らせるのだと思います。失敗しても怒られない環境が認知症当事者には必要なのです。

 病気になった時、最初の一歩を踏み出すのは大変なことでしたが、踏み出すことにより人生が変わり、多くの認知症とかかわる人と知り合うことができました。私自身、これからの暮らしに対し安心することができ、進行も遅くなっていくような気がしています。

 認知症になったら、当事者や家族は、どうしても認知症になる前の姿を追い求めてしまい、出来なくなることを受け入れることができません。今までとは違う姿を見せたくないと思っている家族も多くいます。今までのようにはいかないと受け入れる勇気が必要だと私は感じています。出来なくなった事を受け入れ、よい意味であきらめる事で、できることを楽しんで生活するようになった全国にいる私の仲間たちは、とても輝いています。

 認知症と診断されることを恐れて病院へ行きたがらない人が多くいます。楽しい「人生の再構築」をする為にも早期診断、支援とのつながり、社会参加が必要で異変を感じたら早く、病院や相談窓口へ行ってほしいと思います。

 人生は認知症になっても新しく作ることが出来るのです。認知症は、けっしてはずかしい病気ではありません。誰でもなりえる、ただの病気です。これからますます増えてくる認知症、みなさんもいつなるかわかりません。ぜひ、みんなで支えあう社会を作りましょう。私も認知症ですが、同じ認知症の仲間を支えていきたいと思っています。

*4月に京都で行われた国際アルツハイマー病協会国際会議で丹野さんが発表されたものを、本人の許可を得て編集部で再構成しました

専門医に聞け! Q&A 感謝の言葉で認知症予防

Q:妻に、「あなたは、ありがとうと言ったことがない。感謝する気持ちがないと早くボケるわよ」と言われました。妻は専業主婦です。妻が作ってくれるご飯は美味しいのですが、感謝の言葉を口にしたことはありません。早くからボケたくはないし、何かいい方法はありませんか。(56歳・公益財団理事)

 A:感謝の気持ちを持たないことは、早く脳を老化させる原因となると考えられます。一方、感謝の気持ちを持って、「ありがとう」ということは脳の若返りに優れた効果があります。不思議に思うでしょうが、「ありがとう」と実際に言葉にして言うことで、感謝の気持ちが湧いてきます。「ありがたい」「嬉しい」などのプラスの感情が起こると、血流が促進します。このことも、脳の若さ維持、老化予防に役立ちます。

 また、そういった感情が湧くと、幸せホルモンと言われる「オキシトシン」の分泌が高まります。オキシトシンが増えると、自律神経が安定したり、ストレスが抑えられたりして、脳の老化やアルツハイマー病の予防に役立つと考えられます。

●感謝日記をつけよう
 ご質問の方は、妻に「ありがとう」というのが恥ずかしいのかもしれませんね。照れくさいでしょうが、思い切って言葉にして言ってみましょう。努めて言うようにすれば、次第に習慣となります。また、もう一つの方法として、私は「感謝日記」をつけるように勧めています。文字を書く行為は、前頭葉や記憶をつかさどる海馬などを含め、脳全体を刺激します。

 私が勧める感謝日記は、前日にあった感謝すべきことを3~5項目、ノートや手帳に簡潔に記すもの。記す内容は、人に対しての感謝だけでなく、物や動物に対して、行為に対しての感謝でもかまいません。たとえば、次のようなことを記します。朝、すっきり気分よく起きられたことに感謝。

・食事、きちんと食事ができ、夜はお酒を飲めたことに感謝。
・お風呂にゆっくり入れたことに感謝。
 感謝日記は朝に記すとよいと勧めていますが、これは前日のことを思い出す想起力を著しくアップさせるからです。

首藤紳介氏(表参道首藤クリニック院長)
久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院、湯島清水坂クリニック等の勤務を経て、表参道首藤クリニック院長。自然療法や代替医療をはじめ、水素温熱免疫療法や臍帯血幹細胞療法、遺伝子治療などの高度先進医療を実践。

「うつ病」と間違えやすい、べつの病気

うつ病の基本症状である「抑うつ症状」。

いわゆる気分が落ち込んでしまう状態が続くことですが、この抑うつ状態はうつ病だけでなく、ほかの病気の症状として現れることもあります。

ですから、専門医は診断を慎重に見極める必要があると考えています。

なぜならば治療法が違ってくるからです。

うつ病と間違えられやすいのは、どのような病気なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
うつ病と間違えやすい病気:不安障害
かつては神経症(ノイローゼ)と呼ばれていた不安障害は、考え方のクセや人間関係など心理・社会的なストレスが引き金になって発病するといわれます。

また、性格的に神経質でこだわりやすい真面目な人が、こうした疾患にかかりやすいとも言われてきました。

うつ病の病前性格も真面目で、執着的な人が多いと言われ、うつ病にもかかりやすいとされています。
うつ病と間違えやすい病気:心身症
心身症は、ストレスなど心理・社会的な原因によって身体的な症状や病変が起こっている病気です。

いわゆる気の病いが身体の不調に転じている疾患です。

ストレスやこれに伴って生じる抑うつ状態が、蕁麻疹、気管支喘息、偏頭痛、胃・十二指腸潰瘍など、身体の病気に現れていれば心身症となり、そうでなければうつ病の可能性が疑われます。
うつ病と間違えやすい病気:統合失調症
かつては精神分裂病といわれた「統合失調症」。

急性期には「妄想」「幻覚」などの陽性反応が起きることと、慢性期になると、「意欲の減退」「感情の平板化」など陰性症状をきたすことはよく知られるようになりました。

昨今、統合失調症の発病時期と慢性期に「抑うつ状態」になることが指摘されていて、とくに、初期段階でうつ病との鑑別は難しいという専門医の意見もあります。

昔は「精神分裂病」と「内因性うつ病」は精神疾患を二分する典型的な精神病でしたが、最近では、統合失調症に抑うつ状態が診られたり、うつ病に妄想がみられたりと、まるで症状も非定型化しているような印象を受けます。
うつ病と間違えやすい病気:認知症
高齢者のうつ病は認知症と区別がつきにくいことは、専門医からも指摘されているところで、「もの忘れがひどい」「ぼんやりして、質問しても答えが返ってこない(反応が鈍い)」など、うつ病の症状なのか、認知症の症状なのかを鑑別するのは難しいとのこと。

アルツハイマー型の認知症では、最初にもの忘れから始まって、次第に抑うつ状態になり、脳血管性認知症では、初期や経過中に抑うつ状態がみられるなど、認知症の種類によって抑うつ状態のでかたも違ってくるようです。

とくに、脳血管性認知症はうつ病との間違われやすいとされています。
うつ病と間違えやすい病気:慢性疲労症候群
原因不明の強い疲労感が長期間継続する「慢性疲労症候群」。

強い疲労感のほかに、身体的には、微熱、リンパ節のはれ、関節痛などが出ると同時に、精神面では、ものわすれや思考力の低下、睡眠障害などとともに、抑うつ状態などうつ病の症状があらわれます。
うつ病と間違えやすい病気:パーキンソン病
脳細胞に変性が起こり、動作が遅くなる、手足が震える、歩行が遅くなるなど症状が現れるパーキンソン病。

顔の表情が乏しくなったり、話し方が単調になってしまうなど、その症状がうつ病と間違われることがあるそうです。

うつ病と間違えやすい病気:そのほか

以上のほか、脳卒中などの脳血管障害、糖尿病、腎臓病、甲状腺の病気、パーソナリティ障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、アルコール依存症なども、うつ病と似た症状が起こることがあって、うつ病と間違われやすい病気とされています。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)
精神疾患の世界的基準となっている、アメリカ精神医学会発行の『DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き;最新版)』は、19年ぶりに2013年に改訂されました。

以前のDSM-Ⅳと比べると大きく変化したところがいくつかあります。

中でも、DSM-Ⅳまでは、同じ「気分障害」に分類されていたうつ病と躁うつ病が、「抑うつ障害群」と「双極性障害および関連障害群」という違ったカテゴリーに分類されています。

これもまた、双極性障害(躁うつ病)をうつ病とは違った病気として診断・治療していくという動向だと解されます。素人には間違われやすいかもしれません。

【参考】
・アステラス製薬株式会社『なるはど病気ガイド・うつ病と間違われやすい病気(https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/depression/preliminary02.html)

<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

【親の認知症】周囲にうまく伝えて、介護の輪を広げた実例

認知症の母の介護を、東京―岩手と遠距離で続け、その様子を介護ブログや書籍などで公開している工藤広伸さん。息子の視点で”気づいた””学んだ”数々の介護心得を紹介するシリーズ今回は、家族以外の周囲の人に、親の認知症をどのように伝え、結果どうなったか、体験をふまえてアドバイスしてもらった。「しれっと」をモットーとする工藤さんの介護サバイバル術、必見だ!

 * * * 

 自分の親が認知症になったとき、そのことをご近所や友人、親族に伝えますか?

 わたしは「伝える」という選択をしました。

 わたしの場合、認知症の母が1人暮らしであったことに加え、東京と盛岡の遠距離介護のため、誰かの協力がないと介護が成り立たないということもありました。中には、「誰にも伝えずに隠し通す」という選択をする方もいるかもしれません。
 
 今日は、親が認知症になったという事実を、周囲にどう伝えていったか、伝えた結果、どのようなことが起こったかについてお話します。

◆介護を始めてすぐは、とても小さな輪だった

 まずは、こちらをご覧ください。

 これは、わたしが介護を始めた2012年12月当時の、母の介護を支える人たちを構図にしたものです。認知症の母を中心に、わたし(家族)、ケアマネージャー、ヘルパー、たったこれだけです。

 この1年後、介護の輪はこのようになりました。

 認知症のお薬をセットしてくれる「訪問看護師」と「薬剤師」、地域住民の相談に乗ってくれる「民生委員」、手足の不自由な母のリハビリを担当する「作業療法士」、24時間体制で「在宅医療を行う病院」、「ご近所」など、介護の輪はこんなに大きくなりました。

 なぜたった1年で、ここまで介護の輪は大きくなったのでしょう?
 
◆介護の輪を大きくするために

 まず、母を病院へ連れて行き、認知症と診断されたことで、医療だけでなく、介護にも強いかかりつけ医から、たくさんのアドバイスがあったことが大きいです。訪問による服薬管理やリハビリを提案してくれたことで、関わる人数がグッと増えました。
 
 祖母の死も関係しています。祖母が亡くなった際、わたしは喪主を務めたのですが、葬儀で、めったに会わない親族が集合したので、この機会を逃すまいと、すべての親族に母が認知症であることを伝えたのです。また、葬儀で来客が増えて騒がしくなったご挨拶で、ご近所を回った際も、母が認知症であることを説明しました。
 
 1年で介護の輪が急拡大したのは、介護者であるわたしが積極的に認知症であることを伝えたからだと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

「チャンスが巡ってきたら、自然の流れで認知症であることを伝える」というスタンスだったのです。

◆認知症であることを伝えるメリット 

 母が認知症であることを伝えたお陰で、近くに住む親族や古くから知っているお隣さんが心配してくれて、家の様子を見に来てくれるようになりました。
 
 ただ定期的に家に来てくれるわけではなく、あくまで訪問する側が気になった時に来るので、介護の戦力として期待はできません。しかし、東京と岩手を往復する私にとっては、精神的な支えになっていることは間違いありません。
 
 認知症であることを伝えるのが、難しいケースもあります。例えば、母の住む実家には、町内会があります。地区の班長に伝えたいと思うのですが、班長は任期制で次々と変わるため、把握できず伝えられません。また、民生委員も任期があるため、同じようなことが起きます。
 
◆認知症であることを伝えるデメリット

 ご近所に、母親が認知症でわたしが遠距離介護をしている事実を伝えたら、「火の元は、どうしているの?」という質問を受けたことがあります。

 ご近所の方は、認知症の母が火元になって、自分の家に火が燃え移る心配をされて、そのように質問したのだと思います。自動消火装置の付いたガスレンジに変えたことを伝えると安心していましたが、認知症の人が近くに居ることで、自分の家に何か影響があるのではないか?と考える人もいるようです。
 
 亡くなった認知症の祖母が、近所の庭に入ってしまったことがあったのですが、前もって伝えておくと、何かあった時に介護する側も安心ですし、ご近所もその理由を理解してくれます。

 わたしは恵まれている方だと思いますが、中には認知症に対するネガティブなイメージから、事実を伝えたことで逆に介護がしづらくなるケースもあると思います。判断はそれぞれの家の事情によりますが、まずは地域の事情をよく知る民生委員などに相談してみるところから始めるといいと思います。

◆伝えることで、さらに大きくなる介護の輪

 わたしは、本やブログなどで母の認知症介護について書いています。すると、全国の医療・介護職の方々、同じ介護家族から、たくさんのアドバイスが寄せられるようになりました。

 他にも、認知症の講演会や介護仲間が集まるイベントに参加する機会が増えたことにより、介護仲間や医療・介護職のメンバーと知り合い、介護の輪はさらに大きくなりました。

 他人の目が気になって、認知症であることを伝えられないという人もいると思います。しかし、誰かに伝えないと、ひとりで介護を抱えるということになり、介護者自身が精神的にも肉体的にも追い詰められてしまいます。

 わたしが4年半もの間、遠距離介護を続けられているのは周りの支えがあるからです。認知症であることを伝え、介護の輪を大きくしておいて本当によかったと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

◆工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)

医者には書けない! 認知症介護を後悔しないための54の心得 (廣済堂健康人新書)
医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得 (廣済堂健康人新書)

「ボトックス」のうつ病治療効果は本物か メーカーが最終段階の臨床試験へ

米製薬大手アラガンは、主力製品のしわ取り剤「ボトックス」がうつ病の治療薬として効果があると見込んでいる。治療薬としての使用の安全性と有効性などを確認するための臨床試験の最終段階、第3相(フェーズ3)を実施する計画を明らかにした。

神経をまひさせることで作用するボトックスは既に、偏頭痛の治療薬としての利用も拡大している。うつ病については、治療に適用できる可能性を最初に指摘したのはアラガンではなく、ドイツとスイス、米メリーランド州にある2つのグループだ。それぞれに小規模な試験を実施したところ、いずれも有効性が高いと見られる結果が得られた。アラガンはこれらの結果を受け、自ら米国内の35か所でより大規模な試験を実施することを決めた。

分かれる見解

アラガンは4月5日、患者258人を対象としたフェーズ2の試験結果のデータを発表。これに基づき、新薬の開発を目指して次の段階に進む方針を決定したと説明した。だが、コロンビア大学精神医学部のジェフリー・リーバーマン教授は、「試験の実施方法について、結果が説得力あるものだと判断するのに十分な説明がなされてない。結果には説得力がない」との考えを示した。データは新薬開発を次の段階に進めるべきと考える根拠にはならないという。

アラガンの臨床試験では、ボトックスの投与量を異なる2単位(30単位と50単位)に設定。それぞれを、プラセボ(偽薬)を投与するグループと比較した。効果は患者の精神状態を詳しく把握するための「モントゴメリー・アスペルグうつ病評価尺度(MADRS)」によって測定した。

試験期間は6週間としたが、終了時点でいずれの投与量についても統計学的に顕著な効果は確認できなかった。だが、少ない単位の投与量のグループでは、わずかながらプラセボ投与グループの結果との間に違いが見られた。

投与量が多い方のグループにより大きな効果が見られなかったことが、リーバーマン教授が結果を信用できない大きな理由の一つだ。だが、アラガンのグローバル開発担当の上級副社長は、うつ病の治療薬として有効である可能性はあると語る。

うつ病の治療薬の臨床試験では、プラセボ投与のグループが予想以上に良好な結果を示す場合もあり、試験中の薬の効果を低く見せることがあるのだという。また、投与量が多い方のグループの結果の中にも、効果を示す兆候はあったという。

アラガンの別の幹部もまた、これまでに実施された全ての試験結果を合わせて考えれば、ボトックスは投与方法によってうつ病の治療効果があると見ることはできると主張。次の段階に進むことへの自信を見せている。

ただし、アラガンが実施した臨床試験については、疑問視すべき点が一つある。対象者を女性のみとしたことだ。同社は次回の試験では男性も含める計画だとしているが、リーバーマン教授は、より大規模でリスクも大きくなる最終段階の臨床試験に移行する前に、小規模な試験を再度実施すべきだと指摘している。

一部ではすでに利用

一方、米国内ではこれまでのボトックスの臨床試験の結果を受けて、既にうつ病の治療として処方する医師も出始めている。抗うつ薬は、利用する患者のおよそ半数にしか効果がない。新たな選択肢は切実に求められている。

どうして? 女性が「うつ」になりやすい理由

■女性の一生はストレスにさらされやすい

 男性より女性のほうが、うつになりやすいことをご存知ですか?

 その原因は、多々あります。たとえば、結婚、出産のように大きなライフステージの変化によって、生活が一変しやすいこと。また、社会的弱者である女性は、ジェンダー(社会的性差)によるストレスにされやすいこともそうです。

 多様な生き方・考え方が認められるようになってきたとはいえ、「女性(妻、母親)はこうあらねばならない」、「女性はこんなことをしてはいけない」というように、まだまだジェンダーによる不自由さを感じている人も多いのが実情です。

 また、女性のほうが男性より一人で何役もこなさなければならない場面が多いのも、うつの要因となります。特に仕事を持つ女性は、家事や育児、介護との両立で心身ともに疲れきってしまう人が少なくありません。

■「主婦症候群」をご存知ですか?

 出産によって仕事をやめ、育児や家事に専念する人もたくさんいますが、主婦はさまざまなストレスの影響を受けて、心のトラブルを抱えてしまうこともあります。こうしたトラブルは、「主婦症候群」などと呼ばれています。

 このトラブルが昂じると、キッチンに立つこともプレッシャーと感じてしまう「キッチン恐怖症」になったり、家族の不在中に飲酒で気分を紛らわす「キッチンドリンカー」になってしまう人もいます。

 主婦症候群は、夫婦のコミュニケーションの不和、縁戚関係のトラブル、家事・育児の負担など、さまざまなストレス要因が複雑に絡み合って起こります。また、日々の生活にやりがいを感じられず、生きる目標を見失ってしまうことも要因となります。

 また、他人と接触する機会の少ない主婦は孤独感に陥りやすく、心の悩みを深めてしまうことも見逃せない要因です。

 こうした社会的な要因だけでなく、ホルモンのバランスが精神に影響してうつになることもあります。

■ホルモンの乱れが関係する“女性特有”のうつとは?

 女性の身体はホルモンのバランスが乱れやすいのも、うつになりやすいことと関係しています。月経周期のほかに、妊娠・出産、更年期など女性の一生はホルモンの変化に大きな影響を受けます。これが、体調の乱れや精神状態の不安定さを引き起こすのです。

 特に、以下の3つはホルモンの乱れが関係する女性特有のうつ病としてあげられています。

□月経前症候群(PMS)

 月経の始まる10日ほど前から、心身が不安定になるトラブル。月経開始後2~3日で落ち着いてきます。このトラブルにより情緒不安定になる人は、全体の2~5割ほどといわれています。排卵・月経によりホルモンのバランスが変化することが要因となります。精神症状がひどくなると、「月経前不快気分障害」と診断されることもあります。

□産後うつ病

 産後2週間目くらいから1年くらいまでの女性が、かかりやすいうつ。産後のホルモンの乱れに加えて、出産と育児の疲れ、今後の育児への不安などが大きく影響します。

 ちなみに「マタニティブルー」とは、産後、3~10日くらいに産婦の半数くらいの人が経験するといわれる軽いうつのこと。これは、ほとんどの場合、1週間ほどで自然に治ります。

□更年期うつ病

 閉経をはさんだ前後5年くらいまでの期間を「更年期」といい、この期間に起こる心身のトラブルを「更年期障害」といいます。のぼせやめまい、多汗、食欲不振、肩こりなどの身体症状とともに、憂うつ感やイライラ、不安がつのることもあります。

 上のようなトラブルに心当たりのある人は、早めに婦人科を受診することをおすすめします。ホルモンバランスを整える薬や精神安定剤などを服用しながら治療していくのが一般的です。また、以下のポイントを参考にしながら、ストレスをためないようにゆとりをもって過ごすことも大切です。

■女性のうつ対策 まずはこの5ポイントを!

 では、女性がうつを避けるためには、日ごろからどんなことに注意したらよいでしょうか? ここでは、まずおさえたい5つのポイントをご紹介しましょう。

□1. 1日に30分でも自分の時間をもつ

 忙しい女性は、なかなかまとまって自分の時間をとれないものです。でも、細切れでもいいので、ちょっとでも時間ができたら、自分の好きなことに没頭しましょう。手がすいたときにすぐに取り掛かれるよう、リビングやキッチンなどに趣味のアイテムをおいておくとよいでしょう。

□2. 周囲の多様な意見に惑わされない

 育児や家事などについて、周りの人があれこれ意見をさしはさむため、どれを信じたらよいのかわからなくなることも多いでしょう。多すぎる情報にさらされているのも、心の負担を増やすもとです。自分がいいと思ったことを信じて、それ以外の「雑音」は聞き流すようにしましょう。

□3. 休めるときにはしっかり休む

 睡眠時間を削ってまで完璧にこなそうとしないこと。「疲れたな~」と思ったら、ゆっくり体を休ませましょう。また、日々の暮らしの中でも、疲れたらちょこっとお茶の時間をとるなど、根を詰めてがんばり過ぎないようにしましょう。

□4. 自分ひとりで抱え込まない

 “がんばり屋さん”ほど、人に頼るのが苦手なものです。なんでも自分ひとりでこなそうとせず、夫や家族、ご近所、友人に「ちょっと手伝って」と声をかけてみましょう。いろいろな人の手を借りることが、周囲とのコミュニケーションを円滑にすることにつながることもあります。

□5. 自分の中で優先事項をしっかりもつ

 「今週はこれとこれをやる」「ほかのことが中途半端になっても、これだけはしっかりやる」など、常に優先事項を決めて取り掛かることが大切です。どんな忙しい人でも、「1日は24時間しかない」ということをいつも心にとどめておきましょう。

認知症 初期症状に気づくための11の質問

認知症とは、病名ではなく、何らかの原因で脳が障害され、記憶力や判断力などの認知機能が低下して「一人暮らしが困難な程度にまで、日常生活に支障が出る状態」を指す。

「認知症の患者さんは、自分が病気だという自覚が少ないので、周りの人が早く気付くことが大切です」とアドバイスするのは群馬大学 教授の山口晴保(やまぐち・はるやす)さん。認知症を見極めるポイントを教えていただいた。

* * *

認知症は、早期に発見して、早期に治療を開始すれば、よい状態を維持することにつながります。また、家族や周囲の人が患者さんとの関わり方を身に付け、早期から対応することが大切です。

しかし、年をとるとともにもの忘れは増えてくるものですし、認知症はゆっくり進むので、それが年相応なのか認知症なのかを判断することは、簡単ではありません。

認知症では、まず生活管理能力が衰えてくるので、「同じことを何回も話したり、尋ねたりする」「計画を立てられなくなった」ことの有無など、生活の様子を11項目の質問にまとめました。

質問項目のうち、3項目以上に該当すれば、認知症が疑われます。実際に認知症と診断された患者さんの場合、6項目程度に該当しているケースが多く見られます。

■家族の理解が大切

これらの質問は、当てはまる数はもちろんですが、「誰が答えたか」が重要です。これらの質問は基本的に、生活の様子を客観的に評価できる家族に答えてもらうためにつくってあります。

本人が評価すると、家族が評価するよりも当てはまる項目が多くなることがあります。そのような人の中には、心配性だったり抑うつの傾向がある場合があります。

また、認知症の一歩手前の状態の人の場合もあります。認知症の手前では、自分の状態を自覚できるからです。

家族が評価した場合、病状が進行するにつれて、該当する項目の数が増えていきます。しかし、認知症では、病状が進行するほど、本人の自覚が薄れてしまう(病識が低い)という特徴があります。

そのため、本人が評価すると、発症までは家族の評価とあまり差はありませんが、軽度の認知症では家族よりも少なく答え、中等度になると、さらに少なくなり、家族の評価との差が広がります。

家族や周囲の人は、認知症の患者さんは、自分の病状について自覚が少ないことをよく理解して関わることが大切です。例えば、本人が「自分はできる」と思っていることを、家族が「できない」と指摘すると、患者さんは不満に思い、場合によっては暴言や暴力などに結び付くことがあります。

■『NHKきょうの健康』2014年5月号より

心の病 休職中の生活守る

うつ病などの精神疾患で働けず、長期間の休職を余儀なくされると、経済的な不安も増す。メンタルヘルスの不調にはどんな生活保障や支援制度があるだろうか。

出費は続く

 精神疾患で勤務先を休むことになっても、急に生活費を抑えることは難しい。また、生命保険や厚生年金の保険料、住民税などは給料が出なくても支払いが必要。ローンや子供の教育費を抱えていればさらに負担は大きい。

 かといって、無理に出社するのは禁物だ。社会保険労務士の池田直子さんは「出ては休むを繰り返すのは本人も勤務先にも良くない。しっかりと治してから復職するのが基本」と話す。

 会社員や公務員などの勤め人が、仕事を休んだ期間の保障として、池田さんは〈1〉会社独自のサポート〈2〉健康保険の傷病手当金〈3〉団体向け所得補償保険の活用〈4〉公的支援制度――を挙げる。順を追って確認しよう。

給料の3分の2出る

 会社を休み始めると、まず有給休暇を消化するのが一般的。日数は企業や勤続年数で異なるが、法律で、勤続半年以上で10日、6年半以上で20日などと最低限の日数は決まっている。有休を使い切っても、期限を過ぎた有休を積み立てて使える積立年休や、欠勤期間の賃金保障制度を設けている会社なら、所定の期間内は給料が出る。

 欠勤が続いて給料が出なくなった場合、健康保険から支給されるのが〈2〉の傷病手当金だ。病気やけがで働けない時の保障制度で、精神疾患も対象。おおむね給料の3分の2相当額が最長1年6か月間、非課税で受け取れる。

 症状が改善せず退職した場合でも、在職中に健康保険に1年以上加入していた人は、手当金の受給を継続できる。

 病気やけがの減収リスクに備える民間の所得補償保険はどうか。実は、個人向けの商品は精神疾患を対象外とするものがほとんど。

 ただ、企業単位で加入する「団体長期障害所得補償保険」(GLTD)は、精神疾患をカバーしているものが多い。日立キャピタル損害保険の商品は、特約で「健康な時の月収の60%」「月額20万円」など設定に応じた額を最長2年間受け取れる。

 同様の保険は大手損保も扱い、会社が窓口となり、従業員の任意加入としている場合もある。勤務先が加入しているか確認してみるといい。

公的支援も

 うつ病などで精神科医から所定の診断を受けた人は、通院医療費や薬代の自己負担が3割から1割に軽減される公的制度がある。また、精神障害の重さによっては、障害基礎年金や障害厚生年金が受け取れる場合もある。

 詳しい支援制度や申請窓口については、厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス総合サイト」や、NPO法人地域精神保健福祉機構が制作した小冊子「メンタルヘルス12の福祉サービス」(税込み124円)も参考になる。同機構の桶谷肇事務局長は「支援制度などに関する様々な情報を、患者や家族は知識として持ってもらいたい」としている。

患者95万人15年で2.2倍

 厚生労働省の2011年の患者調査によると、うつ病などの気分障害の患者数は約95万8000人と15年前の2・2倍に増加した。

 同省の別の調査では、11年11月から1年間でメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業、または退職した労働者がいる企業の割合は、規模1000人以上で92%、同500人以上で77%、同300人以上で65%となっている。

 日本生産性本部メンタル・ヘルス研究所のアンケート(12年)では、「心の病」が最も多い年齢層として40代(36%)、30代(35%)を挙げる上場企業が多く、働き盛りのメンタル疾患が社会問題化。政府は、企業が原則年1回、全従業員に対してストレスチェックを行うことを義務化する方針だ。

「歩幅」の狭い人は注意して! 認知症発症リスクとの関係

健康のために、誰もがお金をかけずに始められるウォーキング。特に「速歩」は驚くべき効果があることが、最近の研究からわかってきた。健康寿命を延ばす歩き方のポイントを紹介する。

 長野県松本市のアイさん(仮名・75歳)の日課は、夜の“速歩”。近所のウォーキングコースを30分間かけてスタスタと歩く。氷点下になる同市の真冬でも汗をかくほどの運動量だ。

 速歩を始めたのは今から13年ほど前で、市の健康診断で「問題アリ」と指摘されたことがきっかけだ。一念発起して速歩を始め、毎日の食事を記録するようになったら、体重は当時より8キロ落ち、健康診断の結果も「問題ナシ」となった。

「実は1月に雪道でスッテンって転倒しちゃってね(笑)。念のためにお医者さんに診てもらったけれど、大丈夫でした。ただ、後頭部にたんこぶができて、10日ほどはゆっくりしていましたけれど」

 アイさんはそう言って笑うが、高齢者にとって転倒は骨折や寝たきり、ひいては認知症などにつながる重大なアクシデントだ。それを軽く笑い飛ばすとは、スーパー高齢者でしかない。

 そんなアイさんを「目標の人」とし、速歩を始めて10年目になるのがケイコさん(仮名・69歳)だ。

「速歩って歩き始めはきつくて大変だけれど、途中からは慣れてきて、苦にならなくなる。歩き終わると、汗をかいて気分もサッパリです」(ケイコさん)

 世界的に見てトップレベルの長寿国である日本。だが、その一方で日常生活に制限のない期間を示す「健康寿命」をみると、男性が71.19歳、女性が74.21歳(2013年)で、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年もある。つまり、約10年もの間、何らかの介護支援が必要になるわけだ。

 ピンピンコロリで人生を終わらせるためには、できるだけこの差を縮めたいところだが──。

「健康寿命を延ばす方法が、近年の研究で次々と明らかになってきました」

 こう語るのは、東京都健康長寿医療センター研究所(板橋区)研究員の谷口優さんだ。気になるその方法とは、“歩行”。実際、歩行と健康寿命の関係を示した研究結果が国内外で報告され、エビデンス(科学的根拠)が蓄積されてきたという。その一つが、今年1月に海外の科学雑誌に掲載されたばかりの超最新研究で、「歩行の状態が将来の認知症の発症リスクと関連する」という報告。谷口さんらが行ったものだ。

 この研究は、群馬県内で毎年実施されている住民の特定健診の受診者が対象。02~14年に受診した高齢者のうち、認知症でない1686人(のべ6509人)について最大歩行速度などの変化と認知症の発症リスクとの関連を調べた。

 研究期間中に認知症を発症した人は、対象者の11.6%にあたる196人。これを、「歩く速度が速く保たれる群」「中程度の歩行の速さの群」「歩行速度がどんどん遅くなる群」に分類したところ、速く保たれる群を「1」とすると、中程度の速さの群では1.53倍、どんどん遅くなる群では2.05倍認知症の発症リスクが高くなっていた。

 また、歩行速度で重要なのは「歩調(歩くテンポ)」より「歩幅」だと判明。今回の研究でも「歩幅がどんどん狭くなる群」のほうが「歩幅が広いままで保たれる群」より認知症の発症リスクが2.8倍高くなる傾向にあった。

「どんな人でも、年齢を重ねると筋肉がやせてきて、歩く速度が遅くなったり、歩幅が狭くなったりします。本研究でわかったのは、通常の加齢変化に比べ明らかに早く歩行機能が衰える人がいて、この変化がみられた数年後に認知症を発症している人が多いということです」(谷口さん)

 参考までに、同研究で歩く速度が「どんどん遅くなる」と分類された群の歩行速度は、男性の70歳が1.76メートル/秒(単位は以下同)、80歳が1.55、90歳が1.34。女性ではそれぞれ1.44、1.18、0.92だった。一方、「歩幅がどんどん狭くなる」と分類された群は、男性の70歳が73.6センチ(単位は以下同)、80歳が62.2、90歳が50.9、女性ではそれぞれ63.8、53.4、43.0だった。

 こうした歩行速度や歩幅について、測定を受けたことのない人もいるだろう。歩幅については次のような方法で自己チェックができるので、やってみよう。

「横断歩道を渡るときに、白線を踏まずにまたぐことができていたら、合格点。横断歩道の白線は約45センチ幅でひかれています。足の大きさを考えると、つま先が白線上にあって、次の一歩のかかとが白線を越えていれば歩幅は約65~73センチになります」(同)

 ところで、なぜ脳からもっとも遠い位置にある足腰の機能が認知症と関連するのだろう。そんな疑問に対し、谷口さんはこう説明する。

「歩くという動作は単純そうですが、実は脳では複雑な処理が行われています。目や足から伝わる情報を脳は瞬時に処理し、次の一歩を踏み出すように筋肉に指令を出します。このとき、障害物や路面の状態、体のバランスに応じた適切な歩幅になるように計算しています。歩行動作は、複雑な脳の情報処理や神経伝達が必要とされる動作なんです」

 こうしたことから近年、認知症と歩行速度との関連が注目され、脳の画像検査や血流検査を用いた研究がさかんになった。そして、歩行動作に脳の多くの部分がかかわっていることがわかってきたという。

共働き家庭は要注意 老親の「孫離れうつ」をどう防ぐか

認知症と並んで高齢者に多い病気のひとつに「老年期うつ病」がある。その引き金には定年退職や失業、配偶者との死別などが挙げられるが、最近目立ってきているのが「孫離れうつ」だ。どんなうつ病なのか、専門医に聞いた。高齢になって発症するうつ病で多いのは「喪失体験」をきっかけとするもの。老年精神医学を専門とする北里大学北里研究所病院・精神科の高橋恵部長は「孫離れうつも、そのひとつのタイプ」と言う。

「両親が共働きする家庭が増えて、保育園の空きもなく、子供の世話を祖父母がしているケースが一定数います。そのような家庭で孫の面倒に生きがいを感じていた祖父母が、孫が成長して役割を失うと、その喪失感からうつ病を発症してしまうことがあるのです」 孫離れの喪失感は、保育園や幼稚園の送り迎えをしていて小学校に入学したことで感じるケース、思春期や反抗期を迎えて「ババア」「うざい」などの暴言を言われて感じるケース、孫が社会人になって家を出ることで感じるケースなど、人によってさまざまだという。

「逆に、うつ病だった高齢者が、孫が大学生になって同居するようになって症状が改善するケースもあります。とはいえ、その同居がストレスになる場合もあるので、人によってプラスにもマイナスにもなります。いずれにしても前の生活と今の生活の落差が激しいと、うつ病発症のきっかけになりやすい。新年度を迎える春は、その転機になるので注意が必要です」

 孫離れうつの予防は、とにかく孫の世話だけにのめり込まないこと。自分の趣味や他者との交流の時間を増やして、孫がいなくなっても孤独にならない生活スタイルを維持しておくことが大切になるという。 「80代くらいになると、だんだん体力的に遠出ができなくなって他人との交流が少なくなり、孤独になる人が多い。ですから隣近所など、60代くらいから自分の住んでいる地域での交流を少しずつつくって、大事にしてもらいたいと思います」

 老年期うつ病は、周囲から見ても認知症なのか、うつ病なのか分かりにくい。しかし、認知症では「抑うつ気分」はあまり強くなく、自分の能力低下をとりつくろう(認めない)傾向がある。記憶障害を強く自覚するようなら、うつ病の可能性が高いという。

 次の症状があるようなら受診した方がいい。

①何をやっても楽しくない
②食欲がなく、体重が減る
③眠れない(高齢者では朝早く起きてしまう睡眠障害が多い)

■認知症リスクが2倍に

 ただ、高齢者は精神科の受診に抵抗感があり、自ら受診しない人が多いのも問題だという。 「70代、80代の方は“気の病”は病気ではないと思っている人が多い。しかし、この世代に起こりやすい腰痛や膝痛などの持病の痛みはうつ病のリスクファクターになります。また、痛みを訴えて検査しても異常がなく、実は心の病が痛みの原因ということも少なくありません」

 孫離れうつでは軽症の場合が多いので、実際に受診しても薬は使わず、環境を整えるだけでよくなるケースもあるという。 たとえば、本人がやりがいを持って参加できる地域ボランティアなどの活動を探す。孫の代わりとなる“生きがい”を見つけるのだ。 「うつ病になった人は、2倍、認知症になりやすいといわれます。運動や他者との交流を積極的に行うことは認知症の予防にもなるのです」

【知れば怖くない認知症介護の実情】副作用出やすい薬漬け「多剤併用」対策 認知症を悪化させることも

 近年、医療分野では「ポリファーマシー対策」がキーワードになっている。ポリファーマシーとは、多量の薬剤が処方された「多剤併用」と呼ばれる状態のことだ。一般的には6種類以上の薬を飲んでいると副作用が出やすくなると言われている。

 さまざまな疾患を抱えて、複数の診療科を受診する高齢患者は少なくない。結果、処方される薬が積みあがる。持病の多い人の中には10~20種類もの薬を飲む人もいる。

 こうした“薬漬け”の状態が、認知症の症状を悪化させることがある。在宅医療で認知症治療に取り組む「たかせクリニック」(東京都大田区)理事長の高瀬義昌医師は、著書『認知症、その薬をやめなさい』(廣済堂出版)のなかで、高齢者は「薬の作用が強く出やすいので、薬の使用法には細心の注意が必要」と警鐘を鳴らす。

 本書では薬の副作用による症状が、薬を減らすことで劇的に改善した症例が多数紹介されている。「せん妄」で夜中に大声を出す87歳の男性。幻覚、抑うつの症状に悩む93歳の女性。それぞれが、不要と思われる薬を変えたり、減らしたりした結果、多剤併用による副作用が抑えられたという。

 ポリファーマシー対策として2015年、日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を作成。薬物による高齢者への有害事象を防ぐため、「特に慎重な投与を要する薬物」「開始を考慮するべき薬物」のリストを示した。

 国が定める調剤報酬では16年度から、多剤併用の患者の処方薬剤数を減らすと医療機関が増収するルールを導入している。

 医師や薬剤師の意識は確実に変容しつつあるが、患者側も薬と上手に付き合う工夫が必要だ。複数の診療科にかかる場合でも、処方薬を受け取る「かかりつけ薬局」を1カ所に決めておけば、薬剤の重複が避けられる。高齢者のみならず、現役世代にもお勧めの対策だ。

 前出の高瀬医師は、「認知症の治療は薬1・5割、ケア8・5割」と指摘する。認知症の人の心身の調子が良ければ、薬を減らせられる。そのためには、家族やケアに関わる人が認知症について理解を深めることが重要だという。要は薬とケアの適正化がポイントなのだ。

 薬を見直せば認知症の症状が穏やかになり、その結果、介護家族の負担も和らぐ-。そんな好循環をつくるためにも、過度な薬頼みの発想は捨てよう。 

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「睡眠不足だと認知症になりやすい」はウソ・ホント?

この記事では、今知っておきたい健康や医療のネタをQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。

【問題】睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与えることが知られていますが、近年、睡眠時間が短い人は、アルツハイマー病の発症率も高いことが分かってきました。これってホント? ウソ?
.
(1)ホント
(2)ウソ

 正解は、(1)ホント です。

徹夜明け、ボーッとしてうまく頭が回らない――。そんな経験はありませんか。睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与えます。 「睡眠不足の日が何日か続くと、明らかに記憶力や認知能力が衰えることが分かっています」と話すのは、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック(横浜市港北区)の白濱龍太郎院長です。

■しっかり眠っている人は記憶力が高く、成績も良い

 「記憶を司るのは脳の海馬という部分ですが、睡眠時間が少ない子供はこの海馬の体積が小さくなっています。成人を対象にした研究でも、しっかり睡眠時間を取っている人の方が記憶力が高いというデータが出ています」と白濱院長。例えば、米国で120人の高校生を対象に「睡眠時間と成績の関係」を調べた研究では、成績の良い生徒ほど睡眠時間が長く(7時間半程度)、就寝時刻が早い(22時半ごろ)という結果が得られました(図)。

 さらに、「慢性的な睡眠不足は将来の認知症にもつながる」と白濱院長は警告します。 認知症には「脳血管性認知症」や「レビー小体型認知症」などもありますが、圧倒的に多いのはアルツハイマー病。この病気は「β(ベータ)アミロイド」(アミロイドベータ)というたんぱく質が脳にたまって、脳の神経細胞を破壊することで起こります。

 「たまったβアミロイドは睡眠中に処理されます。年をとるとメラトニンというホルモンの分泌が減り、眠りが浅くなるため、βアミロイドがたまりやすくなる。日中に増えたβアミロイドを消すためには6時間半以上の睡眠が必要です」と白濱院長は話します。睡眠不足が続くと、脳内のβアミロイドを処理しきれず、返せない借金のように、どんどんβアミロイドが増えていき、アルツハイマー病を発症する危険性が高まるというわけです。

 「実際、睡眠時間が短い人はアルツハイマー病の発症率が高いことが分かっている」と白濱院長。2015年には、脳内にβアミロイドが増えると睡眠の質が悪くなり、さらにβアミロイドがたまりやすくなる悪循環を引き起こすことを示唆する研究結果も発表されています(Nat Neurosci. 2015 Jul;18(7):1051-7)。

1999年の画期的な抗鬱剤の日本上陸が鬱病大発生させた原因か

ほんの15年ほど前まで、うつ病は日本人にとってそれほど身近な病気ではなかった。1990年代後半まで、うつ病患者数は40万人前後で、ほとんど増減しなかった。フジ虎ノ門健康増進センター長で精神科医の斉尾武郎氏がいう。

「1990年代後半までは、精神科で治療の対象となる患者は、強い妄想を抱いたり、自殺の恐れがあったり、通常の生活を営むことができない重篤な症状を持つ人だけでした。

だから、研修医を受け入れるような大病院でもうつ病患者は数えるほどしか入院していなかった」

 しかし、2000年代に入ると患者数は右肩上がりで増え、1996年には40万人超だったものが2008年には100万人を突破。それに伴い、日本の抗うつ薬の市場規模も1996年の8倍と爆発的に伸びている。

 最近では、うつ病は深刻な社会問題にまでなっている。精神疾患を抱える人が学校に通えなかったり、会社を長期休養したりするケースが頻発しているからだ。

なぜ、1990年代までは病名さえ一般的でなかったうつ病の患者が、ここまで増えてしまったのか。

 一般的に、日本でうつ病が増えた原因は、「バブル崩壊後の日本経済の停滞」や「非正規労働者の増大」「グローバル競争の苛烈化」など、経済状況や労働環境の悪化の文脈で説明されてきた。

しかし、それだけでは2000年頃から爆発的に増加した理由にはならない。

 パナソニック健康保険組合メンタルヘルス科東京担当部長の冨高辰一郎氏の著書『なぜうつ病の人が増えたのか』(幻冬舎ルネッサンス新書)によると、イギリスやアメリカでは、日本より約10年先行してうつ病患者が増えている。

その増加曲線を経済の好不調に照らし合わせると、不況だからといってうつ病患者が増えるわけではなく、それらの因果関係は薄いという。

 それではなにが原因なのか──。実は1999年、日本に新しい“画期的”な抗うつ薬が上陸したのだが、それがうつ病を大発生させたと見られているのである。

「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」。1999年に初めて日本で認可されたこの薬は、セロトニンの血中濃度を高めることによって、うつ症状を軽減させようというものだ。

現在、フルボキサミン(商品名デプロメール、ルボックス)、パロキセチン(同パキシル)、セルトラリン(同ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(同レクサプロ)の4種がSSRI系の抗うつ薬として日本で認可されている。

「これらSSRIの登場によって、日本のうつ病を巡る環境は一変した」と、前出の斉尾氏が語る。

「私うつかも?」って時に絶対やっちゃいけないこと4つ

「もしかして私、うつなのかも?」と思った時に、どう対処するかでその後が変わってきます。

ここでは、セラピストの紀野真衣子さんに教えてもらった“メンタルの調子が優れない時に絶対してはいけないこと”を、4つお伝えします。

普段から以下の傾向がある方は気をつけてくださいね!

■1:自分を責める

「真面目で責任感の強い方がうつになりやすいと言われています。 これくらい出来なくてどうするの!?と自分を責めたり、頑張ればできるはず!と無理してやろうとしたりすると、状態は悪化してしまいます」

できなかったことではなく、これまで成し遂げてきたことを思い出すようにしましょう。

■2:楽しいと思うことを我慢する

「やらなきゃいけないことはできないのに、楽しいことはできる。そんな自分を責めて楽しいと思うことを我慢するのはよくありません。 万が一“何も楽しくない”という状況に陥ったときは、“楽しめることを探す”というステップから始めるのもいい方法です」

自分が好きだったものや、リラックスできる空間を見直してみましょう。

■3:嫌なことに目を背ける

「えっ、嫌なことから目を背けてはいけないの?」「無理したらうつは悪化するんじゃないの?」と思う人もいるかも知れませんが、そうではないと紀野さんはいいます。

「これは“仕事や人間関係から逃げるな、戦え”ということではありません。“嫌だと思うこと”をなかったことにしない、自分をごまかして平気なふりをしないという意味です。 自分が何を嫌だと思っているかを把握しましょう」

自分の気持ちをきちんと整理することが必要です。

■4:薬やアルコールに頼る

安易な解決策はよい結果をもたらさないものです。

「うつ気味になるとどうしても寝付きが悪くなります。 そんなとき、安易に睡眠薬やアルコールに頼ってしまうと薬物依存、アルコール依存などの新しい問題ができてしまいます。リラックス効果のあるCDやアロマなどで眠りにつくようにしましょう」

アロマには眠りを深くする効果があるものがあります。

「精神科にかかったうつ病の患者さんから、“話を聞いてほしいのに薬ばかり出された”という話をよく聞きます。軽度のうつでも、最初のケアを間違えば後々大変なことになってしまいます」と紀野さん。

さらに、「もしうつかも、と思ったら、無料電話相談にかけてみることをおすすめします(いのちの電話、地域の保健福祉センターなど)。“自分で自分を振り返ってみたい……”と思う方は、認知行動療法の本を買って自分でワークするのもよいでしょう」とアドバイスをくれました。

糖尿病になってしまったら……何とか予防したい合併症

糖尿病糖になると糖尿病そのものの症状だけでなく、病気の進行と共にいろいろな合併症が起こってきます。現在の糖尿病治療はとても進歩していますから、今では糖尿病患者の人生を左右するのは合併症の有無、そして、その程度であると言えます。

 人生を全うするには合併症を予防する、あるいは折り合いをつけなければなりません。

■糖尿病の合併症はどこまで予防できるか?

 合併症は予防できますし、初期の症状があっても進行を止めて元に戻すことも可能です。ポイント・オブ・ノーリターンと言って、たとえば飛行機が離陸の際にある速度に達すると、もう飛行中止が出来なくなるポイントがあるように、合併症予防にも超えてはならないポイントがあります。

ただ残念ながら、糖尿病合併症のポイント・オブ・ノーリターンはほとんどが自覚症状がない時点です。だからこそ定期的な検査を守ることが必要なのです。

■糖尿病と糖尿病合併症予防法……WHOによる3段階の予防

□1次予防

 生活習慣を改善して、遺伝的に糖尿病リスクが高い人の発症を阻止する活動です。平成20年度からの特定健診、特定保健指導、いわゆるメタボ検診がそうですが、肝心の糖尿病予防には日本独自のメタボ検診の腹囲やBMIの選定基準を入れてはなりません。

つまり、腹囲が男性<85cm、女性<90cm、BMI<25でも血糖検査をして糖尿病診断の基準に従うべきなのです。腹囲にこだわると、せっかくの早期発見の機会を失うことになります。標準体型でも糖尿病の人はいくらでもいるのですから。

□2次予防

 まだ糖尿病と診断されていない人を早期に発見して適切に治療することと定義されていますが、一般的には糖尿病が原因となって起こる合併症の発症予防を指します。

□3次予防

 合併症がすでに発症している糖尿病において、合併症がさらに進行して重篤な臓器障害を起こさないようにすることです。

■糖尿病の2次予防やケアはどこまで可能か?

 2013年12月にメルボルンで開かれた国際糖尿病連合(IDF)世界会議に合わせて、英国糖尿病協会(Diabetes UK)は糖尿病患者が安心できる生活を送るための15の基本的なチェックケアのリストを発表しました。

なお、英国では制度上は自由に医師を選ぶことが出来ず、診察も医療機関の都合でいつでも先延しされますから、内容によっては日本の現状とあわないことがありますが、その点は含んでお読みください。

1. 血糖測定を少なくとも年1回は受けよう。HbA1c測定はあなたの血糖コントロールを示し、医療チームの判断の元になる

2. 血圧を少なくとも年1回は測定記録して、あなた自身の目標を決めてもらう

3. 毎年、血液中の脂質(コレステロールのような)を測定し、実現可能な数値目標を立ててもらう

4. 糖尿病網膜症の検査を毎年受けること

5. 足の検査を毎年受けること

6. 腎機能の検査を毎年受けること

7. 体重測定をして、減量が必要かどうか、腹囲を計測してもらうこと

8. 喫煙者は禁煙のためのサポートを受けよう

9. 「自分だけの治療計画とアクションプラン」を糖尿病ケアチームと立てる

10. 糖尿病教室やイベントに参加すること

11. もし、あなたが子どもや若者なら、糖尿病専門医のケアを受けるように

12. もし、あなたがいかなる理由で入院するようなことになっても、糖尿病専門チームの配慮があるケアを受けられるように

13. 妊娠/出産を計画しているのなら、糖尿病者の妊娠/出産のスペシャリストのサポートを受けること

14. 糖尿病は全身の病気で生活習慣の改善も必要です。各分野のスペシャリストの協力を得よう

15. 感情や心の問題も、その分野のスペシャリストの支援を受けること。糖尿病と共にある長い年月はつらいことなのです

 糖尿病治療においては、すべての患者が適合すべき最低限の水準があると英国糖尿病協会の責任者が語っています。この15リストの検査項目は、それこそ最低限ですが、糖尿病治療を中断するとこれ以下になり、合併症の2次予防はできません。

また、糖尿病ビギナーは以上のチェックリストを担当医が配慮してくれると思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。糖尿病は患者自身が治療チームのリーダーにならないと、合併症予防はとてもできるものではないのです。

■糖尿病の3次予防はどこまで可能か?

 糖尿病があっても、長寿かつ健康な人生を送るための戦略は、なんと言っても合併症が始まる前にストップさせることです。だから、1次予防、2次予防が大きな結果につながるのですが、残念ながら合併症がある場合でも、あきらめてはいけません。

ベストを尽くして進行をストップさせましょう。また、医師や研究者たちも次のような新しい治療法や薬の開発に取り組んでいます。希望を持ちましょう。

■糖尿病合併症としての心血管病

 名前から心臓病と思いがちですが、心臓と脳の血管障害を指します。心臓発作や脳卒中を防ぐには、血圧・コレステロール・血糖を目標レンジに収めることと禁煙ですが、最近は早発性動脈硬化も発見できるようになりました。

米国では心臓発作を起こした人の約50%は冠動脈疾患の前兆がなかったのです。

血液中のマーカーであるC反応性タンパク、フィブリノーゲン、ホモシステイン、リポタンパク(a)などの検査や、電子ビームCT、頚動脈エコー等の進歩があります。

 心臓弁の交換も開胸せずに血管経由でできるようになりましたし、抗血小板剤のプラヴィックスも特定の遺伝子を持つ患者にはよく効くことを研究者は知っています。

■失明につながることも……目に起こる糖尿病合併症

 多くの研究が血糖と血圧のコントロールが糖尿病網膜症の予防になることを証明しています。失明につながる増殖網膜症や黄斑浮腫は自覚症状が出た時は手遅れなのです。

 レーザー光凝固は糖尿病者の目を救ってくれますが、そのタイミングがとても大切なので、くれぐれも治療中断をしないことです。

 網膜の毛細血管の亢進を防ぐため、抗がん剤のベバシズマブ(製剤名アバスチン)を眼球に注入する症例も報告されています。

がん細胞も血流が止まった網膜の細胞も、大量の血液を必要とするために、血管を伸ばすVEGF(血管内皮増殖因子)というタンパク質を分泌するので、それを阻害する薬が同じ作用を持つのです。

この薬は、時々とてもよく効くケースがあると報告されていますが、長期間は効果が続かないようです。同様な薬が開発中とのことです。

 すでに気づかぬ内に網膜症がある患者が、インスリンなどで急激な血糖コントロールをすると網膜症が悪化することがあります。そのメカニズムには諸説ありますが詳細は不明です。

 血糖是正は日本の熊本スタディで明らかにされたように、HbA1c値で1ヵ月あたり0.5~1%ポイント以内が望ましいとされています。網膜症の変化を見ながら徐々に行うのが原則です。

 誰でも知っているように合併症予防は血糖コントロールがなによりも大切です。どうしてもHbA1cが合併症予防の最低ラインの7%を切れないのなら医師を替えることも検討してください。自分の意志の弱さのせいにしてはいけません。

クレプトマニア、認知症…万引を繰り返す「病気」がある

万引犯のニュースを見て「なぜあの人が!」と思ったことはないだろうか? 社会的地位が高かったり、経済的に余裕があったり、万引と本人が結びつきにくい……。そんな場合は、ある病気が関係した万引かもしれない。

 話を聞いたのは、大田区にある大森榎本クリニックの斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)。「クレプトマニア」(窃盗症)への専門治療を行っている。

 クレプトマニアは依存症の一種。依存症ではアルコール依存症や薬物依存症などが知られるが、それらは物質に依存する「物質依存」で、クレプトマニアは行為に依存する「行為・プロセス依存」になる。

「自分の意志の力では窃盗行為をコントロールできない。衝動的に、繰り返し、貪欲にそして強迫的に盗んでしまう」

■「欲しいから」ではなく「窃盗のための窃盗」

「お金がないから」「どうしても欲しいから」盗むわけではない。クレプトマニアの人が求めるのは、人によって違うが、優越感や達成感で気分が変えられるなどなんらかの「メリット」だという。

 斉藤氏が担当したクレプトマニアのケースには、T字カミソリばかりを盗む人がいた。しかし、その人はヒゲを剃る時にT字カミソリをまったく使わない。化粧品やトイレの芳香剤の窃盗を繰り返す人もいたが、経済的にはとても裕福だった。

「社会的損失があっても、反復して盗む。盗むものは安価で、過去に実刑を受け『もう絶対にやらない』と言っていたはずなのに繰り返してしまう。もし家族がそうなら、クレプトマニアという病気が隠れているのではないかと疑ったほうがいいかもしれません」

 クレプトマニアと並んで、高齢期になって窃盗を繰り返すようになった場合、「前頭側頭型認知症」も疑われる。

 認知症だが「物忘れ」などの記憶障害はあまりなく、窃盗など「反社会的な行動」が目立つ場合が少なくない。本人は罪悪感がなく、なぜ盗んでしまったか理解していない。認知症の症状ゆえの窃盗だからだ。

 前頭側頭型認知症の人すべてが反社会的行動を取るわけではないが、世間に「認知症=反社会的行動」との認識が広まっていないので、「あんなことをしたのに、悪びれた様子が見られない」と批判され、実刑判決を受けることもある。

「前頭側頭型認知症であれば責任能力がないとみなされ、執行猶予判決になることもあります。当初はクレプトマニアだと思っていた人が、1審で争っているうち、話が噛み合わないことや感情のコントロールができなくなることが多々見られ、脳画像検査の結果、前頭側頭型認知症が判明したケースもあります」

 クレプトマニアにしても前頭側頭型認知症にしても、生活の中で注意深く接していないと分かりづらい。同居している家族ですら、気づきにくい。窃盗で繰り返し刑罰を受けている人の中には、クレプトマニアや前頭側頭型認知症がかなりの数、含まれているのではないかとの指摘もある。

「クレプトマニアの場合、環境が変わって病的な窃盗行動がいったん収まるかもしれません。しかしまた再発(リラプス)する可能性は高く、再び短いスパンで繰り返す。専門医療機関によるクレプトマニアの治療が不可欠です」

 前頭側頭型認知症は脳の変性が原因で、自然に治るものではない。やはり、生活支援を中心とした治療が必要だ。

 なお、未成年の頃から窃盗を繰り返す場合は、自閉症スペクトラム障害や摂食障害など別の原因も考えられる。

 万引は犯罪だ。病気だから許されるということではなく、病気が隠れているケースを見逃さず、その場合はきちんとした治療を受けることが大切なのだ。

食べる力引き出す口腔ケア 認知症患者、気持ちよさ体感大事

 認知症患者への口腔ケアのポイントについて、万成病院(岡山市)の藤原ゆみ歯科課長・歯科衛生士に寄稿してもらいました。

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 「○○さん。お口をきれいにしてもいいですか?」と認知症の患者さんに問いかけると、「歯みがきは嫌い!」と拒否されたり、厳しい表情をして口を固く閉じてしまわれることがあります。高齢者は口腔(こうくう)内が不衛生だと誤嚥(ごえん)性肺炎をはじめとした生命にも関わる感染症に罹患(りかん)する恐れがあるため、食後の口腔ケアはとても重要です。しかし、認知症の患者さんの多くは清潔に対する感覚が薄れており、セルフケア(患者さん自身で歯みがきをする)はもとよりケアの必要性を理解することも困難な状況にあります。

心が開けば口も開く 

 私たち歯科衛生士は「口のケアをしてもらったらすごく気持ちよかった」と患者さんに思っていただけるよう、心地よい口腔ケアの実践を心がけています。嫌がられる場合は無理強いせず、優しく声をかけながら1本の歯を丁寧に磨くことから始めます。最初は嫌がっていた患者さんも、痛みを感じないのがわかると閉じていた口が自然に開いてきます。強く拒絶される重度認知症の方も、時間は要しますが、「気持ちのよい口腔ケア」を体感するうちに必ず開くようになります。

習慣を呼び覚ます 

 セルフケアができそうな患者さんには、歯みがきの手順を思い出してもらうように働きかけます。歯みがきは細かい動作が多いため、何をどうしてよいかわからずオロオロと、とまどってしまうのです。歯ブラシ、歯磨き粉、コップを順番に渡し、声をかけながら動作を促すことで習慣になっていた身体記憶を呼び覚まします。また、歯みがきを行なう場所も大切で、ベッドの上ではスムーズにできなかった患者さんが洗面所へ移動すると記憶が蘇(よみがえ)り、セルフケアができるようになったケースもあります。麻痺(まひ)などの運動障害があれば動作はより困難になりますが、それでも周りの人たちのサポートによってかなり向上します。

嚥下障害への対策 

 当院には岡山大学病院スペシャルニーズ歯科センター(嚥下専門の診療科)の歯科医師が、月2回来院し、嚥下障害のある方の評価・ミールラウンド(食事観察)、必要に応じて嚥下の精密検査(嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査)を行っています。食事のペース、一口食べるときの量、口や舌の機能・動き、飲み込みの状態、姿勢、食事形態などから患者さん一人ひとりに対してどこに問題があるかが指摘されますので、歯科衛生士はそれに対するアプローチの仕方や訓練方法を学び実践しています。

食べる力を引き出す 

 「人生最期のときまで自分の口で食べたい」ということは誰もが望むことだと思います。栄養摂取の面だけではなく、「好きなものを、誰かと一緒に、楽しく食べる」ことは人としての尊厳、より良く生きることにつながります。認知症の方は本来の症状に加え多くの障壁が立ちはだかっていますが、私たちは口腔ケア・摂食嚥下リハビリテーションを主体とする「歯科衛生士の力」を発揮し、口腔衛生とともに患者さんの「食べる力」も引き出したいと考えています。

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 ふじわら・ゆみ 岡山県岡山歯科衛生専門学校卒。歯科医院勤務を経て1992年から万成病院で勤務。2005年から現職。元岡山県歯科衛生士会会長、元日本歯科衛生士会理事。岡山県歯科衛生士会監事。日本老年歯科医学会歯科衛生士関連委員会副委員長、日本歯科衛生士会認定歯科衛生士。

老後も安心! 認知症にならないための眠り方

◆高齢者の20人に1人が認知症による睡眠障害

歳をとるにつれて睡眠の質が悪くなり、不眠症になりやすくなります。不眠症状がある人は、すべての年齢で見ると5人に1人ですが、65歳以上の方では約半数が不眠症状を訴えています。さらに慢性的に不眠に悩む人は、全年齢では10人に1人なのに、65歳以上に限ると5人に1人と倍増します。

高齢者に多い睡眠障害は、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、周期性四肢運動障害ですが、うつ病や認知症による睡眠障害もよくみられます。認知症による睡眠障害は、65歳以上の高齢者の5%がかかっている、と報告されています。

アルツハイマー型認知症になると、初めのころは記憶を司る脳の部分が主に障害を起こします。認知症が進行すると、脳のほかの部分も異常をきたし、生体リズムの中枢である体内時計が壊れると、睡眠と覚醒のリズムがおかしくなり、睡眠リズム障害を起こします。

また、昼間は眠ってばかりいて夜に目覚めて騒ぎ出す、昼夜逆転の生活になる人がいます。睡眠と覚醒がバラバラに現れる「不規則型睡眠リズム障害」の形をとることもあります。このような認知症の方の睡眠障害は、介護する人の負担を増やし、さらには介護者の睡眠障害を引き起こすことが多く、介護の世界では大きな問題になっています。

まだ聞きなれないかもしれませんが、最近増えている認知症の1つに「レビー小体型認知症」があります。この病気は認知症状のほかに、身体が硬くなるパーキンソン病に似た症状や、実際にはないものが見える幻視があります。

睡眠に関する症状としては、「レム睡眠行動障害」が見られます。健常な人なら、夢の中でとった行動を実際にすることはありません。しかし、レム睡眠行動障害になると、たとえば喧嘩をする夢を見たときに、実際に腕や脚を振り回して隣で寝ている人に危害を加えてしまうことがあります。ごくまれですが、殺人事件に発展してしまうこともあります。
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◆認知症にならないための眠り方

高齢者が一般的な睡眠薬を使うと、翌日まで催眠作用が持ち越されるなど、副作用が起こりやすくなります。そのため、認知症による睡眠障害の治療では、睡眠薬の服用はなるべく控えて、睡眠環境を整えたり生活習慣を良くすることが大切です。

睡眠の状態が悪いと、認知症になりやすいこともわかってきました。習慣的に1時間以上の昼寝をしていた人は、そうでない人に比べて認知症になる確率が2倍になります。一方、毎日30分以内の昼寝をとっていると、認知症になる人を5分の1に減らすことができます。

認知症にならないため、高齢者に勧められている生活習慣や睡眠環境を以下にご紹介します。

□睡眠環境を整える

暗くて静かな部屋で眠りましょう。真っ暗が不安なら、豆電球のフットライトを点けておきます。眠りやすい寝室の温度は16~26℃、湿度は50~60%です。エアコンなどを上手に使って、温度と湿度を調整してください。

□十分に日の光に当たる

光は覚醒度を上げる大切な要因です。日中、明るいところで過ごすと、覚醒と睡眠のリズムにメリハリがついて、夜にはグッスリと眠れます。

□定時の就床と起床を心がける

特に、目覚める時刻を一定にすると、体内時計がきちんと働いてくれます。目覚めて明るい光を見た時刻から14~16時間たつと、睡眠ホルモン・メラトニンが分泌されて、自然に眠くなってきます。

□上手に昼寝する

午後3時までに30分以内の昼寝なら、認知症の予防にもなります。それ以降の長い時間の昼寝は、夜の睡眠の質を悪くするので止めておきましょう。また、ベッドや寝床は、睡眠のためだけに使いましょう。

□定時の食事や運動を心がける

睡眠の目的の1つが、心身の疲労回復です。活動量が少なければ、あまり眠らなくても良いというわけです。日中にしっかり身体と頭を使っておけば、夜には疲れて眠くなってきます。

□夕方以降に水分を摂り過ぎない

熱中症や脱水症の予防のため、必要な水分をとることはとても大切です。しかし、夜中に3回以上もトイレのために目覚めるときには、眠る前の水分量を見直してみてください。

□過眠や不眠の原因となる薬剤に注意

夕食後はカフェインやニコチンを摂らないようにしましょう。降圧薬や副腎皮質ステロイド、パーキンソン病治療薬、抗うつ薬などの中には睡眠障害を起こすものもあります。薬が原因と考えられる場合には、主治医と相談してみてください。

□ 痛みや痒みに十分対処する

ストレスよりも身体の症状のほうが、不眠の原因になりやすいことがわかっています。高齢者に多い関節や首・腰の痛み、身体の痒みは、シッカリ治療しておきましょう。

□アリセプトの午後以降の服薬を避ける

アルツハイマー型認知症を発症したら、治療薬である「アリセプト」はなるべく朝に服用しましょう。この薬は脳を活性化する作用があるので、午後以降に飲むと夜に眠れなくなることがあります。生活習慣や睡眠環境に少し気をつけるだけで、認知症になりにくくなります。また、認知症になっても、グッスリ眠ってスッキリ目覚められれば、穏やかな日々を過ごすことができます。ここにあげた項目のうち、1つでも良いですので、今日から実行してみてはいかがでしょうか。

認知症の原因に? 注意したい薬の重複と飲み合わせ

高齢者の薬の問題で家族がまず心配するのは薬の飲み忘れだが、問題は飲み忘れだけではない。高齢になると持病が増えて、薬が増えてくる。それに伴い、副作用や飲み合わせなど、気を付けなければいけない問題も増えてくる。持病で飲んでいる薬が認知症の原因になる可能性も!そんな高齢者の薬の問題について、前回「その薬の飲み忘れ 『認知症の始まりかも』を考えよう」に引き続き、東京大学大学院医学系研究科加齢医学(老年病学)教授の秋下雅弘さんに話を聞いた。

■薬が増えると認知症のリスクも増加!

 高齢者の場合、複数の病気で複数の病院に通院している人も多い。病気の数が増えればその分、飲んでいる薬の数も増えてくる。厚生労働省の「2015年社会医療診療行為別統計」によれば75歳以上の高齢者の約4人に1人が7種類以上の薬を使っているという。 「高齢者では、処方される薬が6種類以上になると、薬の副作用を起こす人が増えることが分かっています」と秋下さんは話す。

 薬の副作用が起こる最も大きな原因は薬の重複だ。複数の病気を抱えている人は、内科、整形外科、耳鼻科など複数の医療機関を受診している場合が多い。そうすると、それぞれの医療機関の医師から薬が処方される。しかし、医師は患者さんが他にどの病気でどの診療科に通っているのか、教えてもらわなければ分からない。当然、どういう薬を飲んでいるのかを知ることもできない。さらに薬をもらう薬局が、それぞれの医療機関の近くにある保険薬局で、お薬手帳もそれぞれの薬局で作ってもらったものを分けて使っているというような場合、薬剤師も患者さんの薬の全貌をチェックすることができない。

 このような状況では、どういうことが起こるのか。例えば、私たちは医師から「かかっている病気以外で他に何か困っていることはありませんか?」と聞かれれば、「最近、胃が痛くて」とか「よく眠れなくて」と話すだろう。そうすると医師は「では胃薬も出しておきましょう」とか「精神が安定する薬を出しましょう」ということになる。

 1つの病院内で複数の科が連携して、患者さんの薬を管理している場合はいいが、内科は市民病院、整形外科は町のクリニックというように、複数の医療機関を受診している場合、患者さんが何も言わなければ、医師は他の医療機関で処方されているとは知らずに、同じ薬を処方してしまう可能性があるのだ。  「重複して処方されやすい薬には、胃薬、便秘薬、鎮痛薬、睡眠薬などが挙げられます」と秋下さん。薬が重複していることに気付かずにすべての薬を飲むと、当然だが副作用は出やすくなる。

■薬の重複で起こりやすい副作用は?

 薬の重複で起こりやすい副作用にはふらつき、転倒、物忘れが多いと秋下さんは言う。他にもうつ、せん妄(興奮したり、ボーっとしたりする症状[注1])、食欲低下、便秘、排尿障害などが起こることもあるという。

[注1]脳の機能が乱れた状態のことで、話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる。

 こうした副作用は認知症の発症や進行の原因につながる。「例えば、高齢者では不眠症はポピュラーな病気で睡眠薬や抗不安薬が処方されることは珍しくないのですが、睡眠薬は脳の活動を抑えて眠りやすくする薬です。適正な量であれば問題はありませんが、薬が重複して過剰摂取すると記憶力が低下して、認知症の発症を後押ししてしまうことになってしまいます」と秋下さん。また、睡眠薬には筋力を低下させる作用もあるので、薬の重複による副作用で転倒して骨折し、それがきっかけで寝たきり生活が始まり、認知機能が著しく低下してしまう可能性もある。

 もう一つ問題になるのが、薬の飲み合わせだ。「他の診療科でどのような薬が出ているのかをそれぞれの科の医師が知らないと、作用がまったく逆の薬が投与されてしまう場合もあります」と秋下さん。

 例えば、アルツハイマー型認知症と診断された場合、認知症の進行を抑えるために、脳のアセチルコリン(神経伝達物質の一種)を増やす薬が使われることがある。一方、花粉症で使われる抗ヒスタミン薬、頻尿の原因となる過活動膀胱(ぼうこう)を抑える抗コリン薬、あるいは胃薬で使われる抗ヒスタミン作用を持つH2ブロッカーという薬、これらは全てアセチルコリンの働きをブロックする薬だ。アセチルコリンを増やす薬と抑える薬を両方同時に飲んでも意味がないことは言うまでもない。
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■「患者力」が多過ぎる薬の副作用を防ぐ!

 薬の重複や飲み合わせの問題は、その人がどういう薬を飲んでいるのか、トータルで医師や薬剤師が管理できれば、容易に解決できる。「そのためには、『患者力』を高めることが大切です」と秋下さん。私たちはまず、医師や薬剤師がなんでもお見通しの超能力者でないことを認識する必要がある。内科で高血圧の治療をしている人が、整形外科で腰痛の治療をしていても、教えてもらわなければ、それぞれの医師には分からないということである。

 つまり、複数の医療機関を受診している場合は、それぞれの医師にどこでどういう病気の治療を受けていて、どういう薬を飲んでいるのか、きちんと伝えることが重要なのである。また、お薬手帳は1冊にまとめること、薬はいろいろな薬局でもらうのではなく、かかりつけ薬局でもらうこと。できればかかりつけ薬剤師を作り、飲んでいるすべての薬を管理してもらうようにすることが大切だ。高齢者で認知機能が低下してきた場合でも、かかりつけ薬局が1つ、お薬手帳も1冊であれば、ご本人もご家族も管理しやすくなるし、薬の増え過ぎや薬の副作用をチェックしてもらいやすくなる。

 「もともと高齢になると、身体の代謝が落ちて薬の効き方が若い頃とは変わってきます。そうした変化を見逃さないようにするためにも、かかりつけ薬剤師がいると安心ですね」と秋下さん。薬とうまく付き合っていく「患者力」を高めることが、身体のためにはもちろん、認知症の発症や進行を予防するためにも大切だ。

秋下雅弘(あきした・まさひろ)さん 東京大学大学院医学系研究科加齢医学(老年病学)・教授。東京大学高齢社会総合研究機構・副機構長(兼任教授)、東京大学医学部附属病院副院長。1985年東京大学医学部卒業。2013年東京大学大学院医学系研究科教授に。日本老年医学会副理事長、日本老年薬学会代表理事。老年病の性差、高齢者の薬物療法などを主に研究する。主な著書に

【キレる老人と認知症】「運動+脳トレ」で機能の低下が抑制 ウオーキングしながら引き算、踏み台昇降でしりとり

 認知症予防には、認知症になる手前の「軽度認知障害(MCI=Mild Cognitive Impairment)」の段階で見つけ、適切な対処をすることが有効であることをご紹介してきた。電話で、MCIの検査が受けられるサービス「あたまの健康チェック」(ミレニア (電)03・5695・3028)なども有効だ。

 では、もしMCIの検査を受けた結果、「疑いアリ」と判定されたら、どうすれば良いのか。番町診療所表参道院長の山田正文医師は言う。

 「MCIは認知症ではありません。早期に気づけば、改善可能な、あるいは認知症への移行を遅らせたり、回避できたりする可能性もあります。認知症に移行するのを食い止めるためには、まず糖尿病や高血圧、高脂血症といった、認知症になりやすいリスクファクターの治療をすることが大切です」

 血管に変化が起きて血流が落ちると、脳の機能が落ち、認知症に移行してしまう可能性が高まる。

 メタボリックシンドロームや肥満、いわゆる生活習慣病を持つ人は特に、血管に負担がかかり、動脈硬化を引き起こしやすい。そのため、定期健康診断に加え、脳の機能の検査も早めに受けることが大切だという。

「また、生活習慣病の改善と同じく、普段の生活においては、バランスの良い健康的な食事や定期的な運動を心がけることが大切になります。それと同時に、『頭を使うこと』も大切です」

 こう話す山田医師が、頭を使う方法として、すすめるのが、「計算をすること」だ。

 国立長寿医療研究センターの研究によると、

 〔1〕ウオーキングしながら引き算をする

 〔2〕踏み台昇降運動をしながらしりとりをする

 -といった「運動+脳トレ」で、脳の委縮と認知機能の低下が抑制できたという報告もある。

 「高齢者向けのフィットネスクラブなどでは今、体を動かしながら頭を使うプログラムも増えているようです」

 また、認知機能の低下を防ぐためには、趣味を持つこと、友達と遊ぶことなども良いという。

 ちなみに、認知機能の低下につながる要因には、ストレスや不安、うつ病、アルコール、ビタミンB1、B2の欠乏、喫煙、社会的孤立など、実にさまざまなものがある。

 頭の健康を保つためにも、思い当たる要素がある人は、早めの改善を心がけたいものだ。 

抗うつ薬より向く人も うつ病は「漢方」で治すという選択肢

うつ病をはじめとする精神疾患で医療機関を受診する患者数は、がんや糖尿病をはるかに上回る。ストレスと関連する精神疾患の場合、漢方薬の効果が見られることが、研究でも明らかになってきた。

 過度なストレスでうつ状態になると、心だけでなく体にも不調が強く出てくることがある。

 しかし、病院を受診しても胃薬などの内科薬が処方され、効果が得られないままドクターショッピングを繰り返している人もいる。

「漢方薬は気分と体の両面に作用します。抗うつ薬や抗不安薬で改善されなかった体の症状が、漢方薬で良くなることがあります」

 こう話すのは、筑波大学大学院人間総合科学研究科で、ストレスマネジメント領域を担当する水上勝義教授(日本精神神経学会専門医)。

 病名に対して薬が処方される西洋薬に対し、漢方薬は症状で選ぶ。たとえば、うつ状態でも症状が変われば薬は替わる。さらに、症状への作用機序が西洋薬とは違う。

 不安や焦燥感に効果的な「柴胡加竜骨牡蛎湯」は、慢性的なストレスで副腎から過剰に分泌されるストレスホルモンを低下させ、受容体の働きを回復することで、心身のストレス反応を抑制する。

■抗うつ薬などで消えなかった身体症状がピタリ改善

 一方、抗うつ薬や抗不安薬は、ストレスで分泌が抑制された神経伝達物質のドーパミンやセロトニンに働きかけ、うつや不安などの症状が出ないようにする。

 人がストレスに適応するには、「視床下部―下垂体―副腎系」の働きが重要になるが、慢性ストレス下では、この働きが低下している。

 柴胡加竜骨牡蛎湯と抗うつ薬・抗不安薬の効果を比較した動物実験では、柴胡加竜骨牡蛎湯の投与でこの一連の働きが改善することが明らかになった。

「漢方薬は、ストレスで生じる脳と体両方の反応を改善するので、体の症状にも改善が得られやすいと考えられます」

 抗うつ薬の中には認知機能や運動機能に影響を与えるものもあるが、漢方薬にはそのような影響は見られず、むしろ認知機能に良い効果が報告されているものもある。

 さらに、免疫機能を活性化させたり、消化管の働きが向上して、栄養状態を改善させる作用が漢方薬にあり、これも身体的症状の改善に大いに役立つ。

 漢方薬は胃を保護する作用のものも多い。精神的な疾患には頭痛を伴う場合も珍しくないが、鎮痛薬(西洋薬)は胃を荒らすことがあり、胃弱の人は使いづらい。その点、慢性頭痛や片頭痛に使われる漢方薬、呉茱萸湯は、胃弱の人にも用いることができる。

 不眠においても、注目すべき効果が研究で明らかになっている。

「酸棗仁湯という漢方薬の研究では、服用前に必要だった睡眠薬が半分以下に減り、睡眠の質も大きく改善したということが報告されています」

 抑肝散という、イライラして眠れないときに用いられる漢方薬では、ストレスが強い時は効果を発揮するが、ストレスが弱い時は睡眠効果が弱いという、興味深い研究結果も出ている。

 ただし、いずれも適切に漢方薬が処方された場合の効果だということを忘れてはいけない。また、漢方薬も薬なので副作用が見られることもある。さらに、うつ病と診断される場合には漢方薬だけでは不十分だ。

 ストレスでさまざまな症状に苦しんでいるなら、早めに漢方を扱っている医師に一度相談してはどうか?

うつ病なのによく食べ、よく眠る。若い女性に急増の「非定型うつ」とは?

典型的なうつ病とは異なる「非定型うつ病」が、若い女性を中心に急増しています。

急増する「非定型うつ」は6~7割が女性患者

世界保健機関(WHO)が、世界のうつ病患者数が2015年に、全人口の約4%に当たる推計3億2200万人にのぼったと発表しました。日本では、うつ病の有病率6.5%、15人に1人が生涯に1度はうつ病にかかる可能性があるとされています。患者数は2008年に初めて100万人を突破し、なお増え続けています。

そして「典型的なうつ病とは異なる」という意味から「非定型うつ病」と呼ばれる病型が急増しており、すでに全うつ病の30~40%を占めているという報告があります。一般的にうつ病は女性に多いですが、「非定型うつ病」はさらに多く、女性が6~7割に上ります。中でも、20代から30代の若い女性に多く見られるうつ病です。

「甘え」「わがまま」と誤解受けやすい

「非定型うつ」の最大の特徴は、出来事に反応して気分が変わることです。定型うつ病は、“2週間以上、一日中続く抑うつ気分”という状態が診断条件の1つになります。どんなに楽しいことがあっても気分は晴れません。 一方「非定型うつ病」は気分の変動が激しく、良い出来事には一転して元気が出て、快活になります。しかし長続きはせず、また抑うつ状態に戻る。こうした気分の浮き沈みが繰り返されます。これを「気分反応性」と表現します。

気分反応性は「甘え」や「わがまま」等と、よく誤解される原因となります。しかしこれは「自分自身でも激しい気分の波を制御できない」という「非定型うつ病」の症状なのです。

他者の言葉を極端に悪く受け止める

他人からの侮辱・軽視・批判に対して極度に敏感になる「拒絶過敏性」も「非定型うつ」の症状の1つです。相手は全くそんなつもりはないのに「自分が批判された」「見下された」「軽蔑された」等と否定的に受け止めてしまう傾向が強いのです。 例えば、職場の上司にささいなことで注意されただけでも「自分の全能力を否定された」と過剰反応して、翌日から会社を休んでしまったりします。

出社しても上司の顔を見ただけで、抑うつ状態になります。「今日は頑張っているね」という良い意味での声かけに対しても「いつもは頑張っていないと思われているのか」ととらえてしまったりするのです。拒絶や批判を恐れるため、親密な対人関係を持てなくなったり、職場や学校を休みがちになったりと、社会生活に支障がでてきます。

「眠り過ぎ」に苦しむ

「非定型うつ病」の特徴に、過眠(10時間以上眠る日が週に3日以上)があります。とはいえ「よく眠れる」というよりも、「眠り過ぎ」障害に苦しめられます。 「非定型うつ病」の場合、他者から非難されたと思い込むと気分が落ち込み、併せて眠気が強まります。また「神経性疲労」で、体が鉛のように重く感じてしまうので、起きていられず寝るのです。

よく眠れば気分も落ち着くかというと、そうではありません。熟睡は出来ないので、昼間も眠くて仕方なく、目覚めてもやる気が起きません。そして昼間も寝てしまう傾向があります。睡眠のリズムが崩れ、学校や職場を休みがちになり、日常生活にも支障をきたします。
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甘いものを食べ過ぎて、体重が増加

「非定型うつ病」になると、ほとんどの人が甘いものへの欲求が強くなります。糖分には、抑うつ感を和らげる作用があるといわれており、甘いものを次から次へと食べます。しかし、甘いものの効果は一時的なもので、食べ過ぎによって体重の増加を招きます。女性患者が多いので、太ったことで自己嫌悪に陥り、気分がまた落ち込む悪循環に陥ることもあります。

優しい言葉で、やんわりと励ましを

「非定型うつ病」は抗うつ薬が効きにくいという特徴がありますので、治療では医師や臨床心理士によるカウンセリング等の精神療法をうまく組み合わせます。 定型うつ病では「頑張れ」等の励ましはタブーとされています。一方「非定型うつ病」の場合は、適度な負荷があった方が回復の一助となることが経験的に知られています。時には優しい言葉で、やんわりと励ましを。ただし、厳しい言葉は禁物。不安や焦燥感が強いときは、しっかり見守ることも大切です。

認知症は予備群も入れると1000万人時代に! 認知症の常識を変える「本人の力」とは?

認知症はつい10年前まで「痴呆」と呼ばれ、何もわからなくなる、なったら人生の終わりだ、徘徊で大変だ……といわれてきた。だが近年、本人が思いを語り始め、日本で初めて当事者団体ができ、安倍首相に政策を提言。23年前「痴呆病棟」で取材を始めた朝日新聞記者が、当事者の変化と最先端の「いま」を、『ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信』で伝えている。著者である生井久美子(いくいくみこ)さんにご寄稿いただいた。

 認知症は予備群(MCI)も入れると、2012年当時で860万人をこえ(厚生労働省研究班推計)、同研究班代表の朝田隆さん(現・筑波大学名誉教授)は、「2017年1月時点ですでに1000万人をこえた」と予想している。認知症になる人の割合(有病率)は、85~90歳では実に半数に迫る。夫婦とも平均寿命まで生きると、どちらかが認知症になる計算だ。

私たちは認知症に向かって生きているといってもいい。「認知症だけにはなりたくない」とおそれる人も多いが、「当事者発信」の取材を続けて、不安は薄れ、希望を感じるようになった。認知症になってからも、新しくよりよく生きることができる。それは夢物語ではない、と実感したからだ。

 認知症の「当事者発信」はどのように広がってきたのか。

 認知症になってからも発信できるのは、「特別な人」と思われがちだが、そうではない。
最初は「人生は終わった」と落ち込み、茫然自失。自殺を思った人もいる。そんな「早期診断→早期絶望」した人が、同じ経験をもちながら前向きに生きる人と出会い、心底話し合い、立ち直ってゆく。つながり、発信を始める。

「支援者」はいっしょに歩む「パートナー」へ。医師や行政まで変え、認知症の常識を変える「当事者の力」!

 39歳でアルツハイマーと診断された丹野智文さんは、「2年で寝たきり」の情報に落ち込んでいたとき、診断後5年たっても明るく元気な竹内裕(ゆたか)さん(恩人、タヌキのおっちゃん)に出会って、わくわくと生きる力を取り戻した。いま、仙台で認知症と診断された本人のための相談窓口「おれんじドア」を開くリーダーだ。

 IT時代、「記憶は残らないけれど、記録は残せる」と、パソコンやiPadを駆使して工夫を発信するのは佐藤雅彦さん。名前は忘れても「フェイスブック」は、顔がわかるから大丈夫。どんどんつながって、丹野さんのフォロワーは1000人を越えた。

 胸打たれたのは、本人が自分の中にある認知症への偏見に気づき、仲間と人間観を語り、「権利」「人権」に思い至る過程だ。そして、力をぬいて、もっと楽しく笑顔で生きよう! 自分たちの声で社会を変えよう! と意志をもち続けていることだ。「進化」し、「深化」する「希望の人びと」の人生の物語。そこにはどんな状況になっても、自分を投げださずに「いま」を生きる、いくつものヒントがあった。

 認知症の当事者発信を追い続けて気づかされたのは、能力主義からの解放の大切さだ。何かが「できる」からよいのではなく、そこに「いる」「存在する」意味と価値の重さである。いま、問われているのは社会の、私たちの人間観だと痛感する。

 本書は、04年、京都で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議に、海外の当事者たちが参加した前後から、10年後日本の当事者団体(JDWG)誕生の軌跡、最先端の「いま」を伝えるものだ。

 ありのままの「その人」と出会っていただけたら、「認知症の常識」はきっと変わる。読者の内面と響き合う「本人の言葉」が、この本の中にきっとあるに違いない、と信じている。

 春一番が吹いた2017年2月17日。東京・有楽町朝日ホールで、認知症本人の視点を重視した厚労省の研究事業(粟田主一代表)の報告会が開かれ、当事者団体の共同代表、藤田和子さん、佐藤さんも登壇。丹野さんたち仙台チームも発表した。そして、この日初めて勇気を出して舞台に立った人たちもいた。

 一方で、この瞬間、心ならずも精神科病院に入院している認知症の人が5万人以上いる。当事者発信の取り組みには地域差もある。だが、いま「希望の人びと」のネットワークは、確実に広がっている。

認知症は予備群も入れると1000万人時代に! 認知症の常識を変える「本人の力」とは?

認知症はつい10年前まで「痴呆」と呼ばれ、何もわからなくなる、なったら人生の終わりだ、徘徊で大変だ……といわれてきた。だが近年、本人が思いを語り始め、日本で初めて当事者団体ができ、安倍首相に政策を提言。23年前「痴呆病棟」で取材を始めた朝日新聞記者が、当事者の変化と最先端の「いま」を、『ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信』で伝えている。著者である生井久美子(いくいくみこ)さんにご寄稿いただいた。

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 認知症は予備群(MCI)も入れると、2012年当時で860万人をこえ(厚生労働省研究班推計)、同研究班代表の朝田隆さん(現・筑波大学名誉教授)は、「2017年1月時点ですでに1000万人をこえた」と予想している。認知症になる人の割合(有病率)は、85~90歳では実に半数に迫る。夫婦とも平均寿命まで生きると、どちらかが認知症になる計算だ。私たちは認知症に向かって生きているといってもいい。「認知症だけにはなりたくない」とおそれる人も多いが、「当事者発信」の取材を続けて、不安は薄れ、希望を感じるようになった。認知症になってからも、新しくよりよく生きることができる。それは夢物語ではない、と実感したからだ。

 認知症の「当事者発信」はどのように広がってきたのか。

 認知症になってからも発信できるのは、「特別な人」と思われがちだが、そうではない。
最初は「人生は終わった」と落ち込み、茫然自失。自殺を思った人もいる。そんな「早期診断→早期絶望」した人が、同じ経験をもちながら前向きに生きる人と出会い、心底話し合い、立ち直ってゆく。つながり、発信を始める。

「支援者」はいっしょに歩む「パートナー」へ。医師や行政まで変え、認知症の常識を変える「当事者の力」!

 39歳でアルツハイマーと診断された丹野智文さんは、「2年で寝たきり」の情報に落ち込んでいたとき、診断後5年たっても明るく元気な竹内裕(ゆたか)さん(恩人、タヌキのおっちゃん)に出会って、わくわくと生きる力を取り戻した。いま、仙台で認知症と診断された本人のための相談窓口「おれんじドア」を開くリーダーだ。

 IT時代、「記憶は残らないけれど、記録は残せる」と、パソコンやiPadを駆使して工夫を発信するのは佐藤雅彦さん。名前は忘れても「フェイスブック」は、顔がわかるから大丈夫。どんどんつながって、丹野さんのフォロワーは1000人を越えた。

 胸打たれたのは、本人が自分の中にある認知症への偏見に気づき、仲間と人間観を語り、「権利」「人権」に思い至る過程だ。そして、力をぬいて、もっと楽しく笑顔で生きよう! 自分たちの声で社会を変えよう! と意志をもち続けていることだ。「進化」し、「深化」する「希望の人びと」の人生の物語。そこにはどんな状況になっても、自分を投げださずに「いま」を生きる、いくつものヒントがあった。

 認知症の当事者発信を追い続けて気づかされたのは、能力主義からの解放の大切さだ。何かが「できる」からよいのではなく、そこに「いる」「存在する」意味と価値の重さである。いま、問われているのは社会の、私たちの人間観だと痛感する。

 本書は、04年、京都で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議に、海外の当事者たちが参加した前後から、10年後日本の当事者団体(JDWG)誕生の軌跡、最先端の「いま」を伝えるものだ。

 ありのままの「その人」と出会っていただけたら、「認知症の常識」はきっと変わる。読者の内面と響き合う「本人の言葉」が、この本の中にきっとあるに違いない、と信じている。

 春一番が吹いた2017年2月17日。東京・有楽町朝日ホールで、認知症本人の視点を重視した厚労省の研究事業(粟田主一代表)の報告会が開かれ、当事者団体の共同代表、藤田和子さん、佐藤さんも登壇。丹野さんたち仙台チームも発表した。そして、この日初めて勇気を出して舞台に立った人たちもいた。

 一方で、この瞬間、心ならずも精神科病院に入院している認知症の人が5万人以上いる。当事者発信の取り組みには地域差もある。だが、いま「希望の人びと」のネットワークは、確実に広がっている。

その薬の飲み忘れ 「認知症の始まりかも」を考えよう


高齢者で認知機能が低下してくると心配になるのが薬のこと。別々に暮らしている親は薬をちゃんと飲んでいるのだろうか。飲み忘れて病気が悪くなったりしていないだろうか。今回は認知機能が低下してきた高齢者の薬の飲み忘れとその対策について紹介する。

 高齢になると、複数の持病を持つ人が多くなる。そして病気の数だけ処方される薬の数も増えてくる。そこで問題になるのが薬の管理である。「最近、物忘れが増えてきたけど、お父さん、ちゃんとお薬飲んでいるかしら」と心配するのは別々に暮らしている子どもだけではない。

 長年一緒に暮らしていても、薬の管理は本人任せで、どのくらい薬を飲んでいるのか把握していない家族も少なくないだろう。年を取ったからといって急に、「お父さん、今日から私が薬を管理するね」などと言えば、「それくらい自分でできる。ばかにするな」と言われかねない。「物忘れは増えてきたけれど、まだ言動もしっかりしているし大丈夫だろう」と思っていたら、ある日、タンスの奥から飲んでいない薬が大量に見つかったなんてことも珍しい話ではない。

 「薬の飲み忘れに気付くのは、意外と家族ではなく、かかりつけ医院の看護師さんや、いつも行く薬局の薬剤師さんだったりします」と東京大学大学院医学系研究科加齢医学(老年病学)教授の秋下雅弘さんは話す。薬を出すときなどに、「この薬、前にもらった分がまだけっこうあるんだよね」と、ぽろっと漏らすことがあるからだ。看護師さんや薬剤師さんはそれを聞いて「あれ? もしかしたら薬が飲めていないのかな」と気付くのである。
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■「単なる飲み忘れ」と、「認知症が疑われる飲み忘れ」の違いは


 こうした薬の飲み忘れが、軽度認知障害や認知症の兆候であることも少なくないという。もちろん、薬を1回や2回飲み忘れても、それは単なる物忘れで心配はない。では、どういう飲み忘れが、認知症かもしれない飲み忘れだろうか。秋下さんによれば、「残っている薬がどのくらいあるのか把握していないような場合は、認知症が疑われます」とのこと。

 「飲み忘れて、まだ1週間分くらい薬が残っているんですよ」と医師に申告できるなら大丈夫。しかし、「ちゃんと飲んでいるつもりなんだけど、薬が減らない」とか「何日分か分からないけど、薬が残ってしまった」というように、薬を飲んだかどうか曖昧で、残っている薬の数も把握できていないという場合は要注意だ。

 薬の飲み忘れに早く気付くためには、1カ月に1回あるいは1~2週間に1回、誰かが残薬を確認することが大事だ。同居していても、そもそも親がどれだけ薬を飲んでいるのか把握できていない場合もある。そういう場合は、例えば病院に行く前日に「お父さん、明日は病院に行く日ですね。薬がまだ残っているか確認してみませんか。もし残っているならその分、次回の薬を減らしてもらえますから、薬代が安くなってお得ですよ」などと話すと、「それなら」と見せてもらいやすい。

 間違っても「ちゃんと薬飲んでる?」と相手を疑うような言い方をしてはならない。もし薬が大量に出てきても「こんなに飲み忘れて大変じゃない!」などと責めないことが大切だ。

 では、薬の飲み忘れが見つかったら、どう行動すればいいのだろうか。

■薬の飲み忘れが見つかったらまずは医師に相談

 薬の飲み忘れが見つかったら、まずは、かかりつけ医に相談することが大事だ。大量の薬が押し入れから出てきたりすると、家族は「こんなに薬を飲んでいなかったなんて」と慌てて、次の日からきちんと薬を飲ませようと管理するが、そうすると薬が効きすぎてしまうことがあるのだ。

 「医師は患者さんが薬をきちんと飲んでいることを前提に薬を出しています」と秋下さん。例えば、血圧の薬を出したのに血圧が下がらない場合、医師は薬の量を増やしたり、強い薬に変えたりする。それでも下がらなければ、さらに薬を増やすなど対応する。しかし、実際には薬を飲んでいないために血圧が下がらなかったので、急にすべての薬を飲んでしまうと、血圧が一気に下がってしまう危険性があるのだ。

 血圧が急激に下がると、ふらふらして転倒の恐れがある。また、血圧が低下することで脳の血流が悪くなり、その結果、認知機能が低下することもあるという。血圧だけではない。糖尿病の人が急に薬を大量に飲むと低血糖の危険性がある。低血糖は認知症の発症や進行の要因にもなる。

 だからといって自己判断で薬を飲んだりやめたりするのはもっと危険だ。「飲み忘れた薬が大量に見つかったら、慌てずに、できるだけ早くかかりつけの医師に相談してください。その際、残っている薬を確認して、どの薬をどのくらいの期間飲んでいなかったのか、分かる範囲でいいので医師に報告してください」と秋下さん。

 医師は患者さんの服薬状況を鑑みて、改めてその患者さんに適した薬を考えていくことになる。場合によっては、血圧や血糖値を安定させ、その後の治療方針を決めることを目的に入院したほうがいい場合もある。同時に、物忘れ外来などで認知機能が低下しないか調べていくことも必要となる。

■薬の飲み忘れを防ぐためにはどうすればいい?

 薬がきちんと飲めていないことが分かった場合、その後、どうやって薬の管理をしていったらよいのだろう。同居している場合は家族が薬の管理をすることもできるが、別々に暮らしている場合は、それも難しい。

 薬を飲み忘れないための工夫としては、薬局にお願いして、薬を一包化してもらう方法もある。また服薬カレンダーやお薬ケースを利用するのも一案だ(図1)。

 「病気によっては、週1回の服用でいい飲み薬や注射薬も最近は出ています。別々に暮らしていて薬の管理が難しければ、医師と相談して、そういった薬に替えてもらうこともできるでしょう。そうすれば、ご家族が週1回行って飲ませたり、あるいは訪問看護師さんに週1回来てもらうなどして飲ませることも可能です」

 また、薬の管理にはお薬手帳が便利だ。「病院、薬局に行く際には、お薬手帳を必ず持って行くようにしてください。複数の医療機関に通院している場合でも、薬を出してもらう薬局は1カ所のかかりつけ薬局に決めて、お薬手帳も1冊にまとめておくことで管理もしやすくなります」と秋下さん。かかりつけ薬局をつくることで、飲み忘れの薬の把握もしやすくなり、また薬の副作用や、複数の医療機関から出ている薬の飲み合わせなども、薬剤師に管理してもらえるようになる。認知機能に影響を与える薬の副作用や飲み合わせについては次回紹介する。

 慢性疾患などで飲んでいる薬は、年を取って認知機能が低下してきたからといって、飲むのをやめることは問題がある。安心して薬が飲めるように、早い段階から、薬の管理方法を見直してみてはいかがだろうか。

 次回、「認知症の原因に? 注意したい薬の飲み合わせ、薬の副作用」に続く。

■この人に聞きました秋下雅弘(あきした・まさひろ)さん 東京大学大学院医学系研究科加齢医学(老年病学)・教授。東京大学高齢社会総合研究機構・副機構長(兼任教授)、東京大学医学部附属病院副院長。1985年東京大学医学部卒業後、同老年病学教室助手、スタンフォード大学研究員、ハーバード大学ブリガム・アンド・ウイメンズ病院研究員、杏林大学医学部高齢医学助教授、東京大学大学院医学系研究科加齢医学助教授などを経て、2013年同教授に。日本老年医学会副理事長、日本老年薬学会代表理事。老年病の性差、高齢者の薬物療法などを主に研究する。主な著書に「薬は5種類まで」(PHP新書)。
(ライター 伊藤左知子)

今すぐ見直して!うつになりやすい「要注意な働き方」3つ

仕事もプライベートも、周囲の期待に応えようと頑張り過ぎていませんか? 頑張ることは大事ですが、何事も限度があります。

忙しくてどうしようもなく、いつも分刻みのスケジュールをこなしている人、要注意です。ひどいと“スーパーウーマン症候群”と呼ばれる心の問題につながり、うつ状態に陥ってしまいます!

そこで、医学博士で認知行動スペシャリストの松代信人先生に、うつになりやすい働き方をお聞きしました。こんな仕事の仕方をしていないか、振り返ってみましょう。

■うつになりやすいので要注意な働き方3つ

松代先生によると、以下のような働き方は避けた方がいいとのこと。

(1)傷つきやすいので、ついつい人を避けて話をしない

(2)納期がきついこともあるが、完全主義なのでついつい終電帰宅となってしまう

(3)周囲の期待が大きく、無理な依頼も引き受けてしまう

多くの人が当てはまってしまうと思いますが、こういった働き方にならないよう調整することも大事な仕事のひとつです。もともと仕事量が極端に多かったり、徹夜が何ヶ月も続いたりという状態は、メンタルには何よりも禁物!

■働き方よりも大きい原因はやっぱり人間関係

働き方以外に、見直した方がいいのはどんなところか? それは、やっぱり“人間関係”!

松代先生によると、うつの引き金を引くのは「“上司にひどいことを言われた”“同僚に無視された”などを始め、職場の対人関係のトラブルが大半」とのこと。

対人関係のトラブルでうつの引き金を引かないことがまず重要! 引き金を引かないためには、周囲の人からの発言の受け止め方を変えることが一番です。

■嫌なことを言われたら”評価しない”ようにする

例えば、あなたの会社にすごく嫌味を言う人がいたとします。

本当は完全に関係を絶ちたいが、仕事を進める上でそうもいかないという場合、松代先生が薦めるのは、”評価しない”という立ち位置。

この立ち位置は、”相手にしない”、”無視する”、”断絶する”、”耳を塞ぐ”、”気にしない”とも異なります。”気にしない”はこちらが受身となりますが、”評価しない”はこちらが主導権をとること。

評価に値しない言動なので”評価しない”なのです。”怒る”や”頭にきた”といった大きなストレスの原因になるような立ち位置でもありません。

この合理的な “評価しない”という思考法では、嫌いな人との間に壁をつくり完全にシャットアウトするのではなく、ガラスの向こうにレベルの低い言動を見ているといったイメージ。

「このような思考の変革の積み重ねが、うつの解消はもちろんのこと、キャリアアップにもつながる」と松代先生は言います。

見方を変えるとストレスがあっさり解決することも少なくありません。人間関係で人知れず悩むことが多い人は、受け止め方を変えてしっかり自己防衛していくことが大切ですね。

産後うつ、産後クライシス…産後のママを取り巻く状況って?

産後うつ、産後クライシスという言葉を聞いたことはありますか?産後うつは、出産後の女性の10~20%がかかるといわれています。また、産後にパートナーとの関係が悪化する現象を産後クライシスと言います。

ここでは、産後のママを取り巻く状況、産後うつ、産後クライシスについてみてみましょう。

◆産後うつとは?どれくらいの人がなるの?

「産後うつ」とはマタニティブルーともいい、ある統計では産後女性の10~20%がかかるといわれています。

原因ははっきりしていませんが、産後に急激に女性ホルモンのバランスが変わること、環境が劇的に変化することが大きく関係しているといわれています。

産まれてすぐの赤ちゃんは、まだ生活リズムが出来ていないため、昼夜、夜間、関係なく泣きます。ママはまともに睡眠時間を確保することができません。

また、自宅の近くで出産し、周りに赤ちゃんをみてくれる人がいない場合、外出することも出来ず、赤ちゃんのお世話におわれ、孤独を感じやすくなるのも事実です。

そんな中で赤ちゃんを見に来る人がいたり、家のこともやらないといけないし…これらの事情が重なり、産後うつを発症すると考えられています。

日本では産後1ヶ月は赤ちゃんを外に出さないのが一般的ですし、こういったことからも産後1ヶ月くらいが一番つらい時期であり、この間に発症することが多いようです。

産後うつは人によって症状は様々です。自分では気づきにくいものですが、気持ちの落ち込みがひどい、涙が止まらないなど、いつもと何か違うと感じたら、早めに医師や周りの人に相談するようにしましょう。

また、最近では出産後のママを支援する産後ケアの施設も増えてきています。 1人でため込まず、そのような施設やサービスをうまく活用しましょう。

◆産後クライシスとは?パートナーとの関係について

産後のママの愛情は、どうしても赤ちゃんに行きがちです。

ある統計では、出産前までは75%あった双方の相手への愛情が、子どもが産まれて2歳になる頃には、ママからパートナーへの愛情は30%近くまで下がるというデータもあります。これが「産後、急速にパートナーへとの仲が悪化する現象=産後クライシス」なのです。

産後クライシスの原因は諸説ありますが、子どもを出産した女性が、産後の旦那さんの育児への関わり方、家事の分担などに強い不満を持つことから起こると考えられています。

厚生労働省の統計から推測すると、産後に離婚する夫婦は年々増えており、特に子供が0~3歳の間に離婚してしまうケースが1/3を占めているそうです。産後の赤ちゃんのお世話は大変なのは事実です。

日本ではこれを母と子の問題として捉えてきましたが、これからは「家族として」の問題として捉える必要があり ますよね。

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