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「俳優の名前が出てこない」は認知症の始まり?…脳の老化を知る10項目チェックと改善法

 よく知っている人の名前が出てこない、好きなドラマのタイトルを忘れてしまった……。きょうのテーマは「ちょい忘れ」。認知症の始まりかな、と不安に思っている方も多いと思います。2012年時点で認知症の発症者は465万人、そして予備軍が400万人といわれていますが、果たして、ちょい忘れは認知症の前兆なのでしょうか。(司会・右松健太キャスター)

朝田隆(あさだ・たかし) 東京医科歯科大学特任教授。認知症の実態調査・治療に30年以上携わる
工藤千秋(くどう・ちあき) くどうちあき脳神経外科クリニック院長。脳疾患・認知症など39万人以上を治療

朝田 記憶というのは、3段階に分かれると言われます。まず聞いたこと、読んだこと、それを覚える、インプットする。その上で必要なとき、例えば、この俳優は誰だっけということになったときに、それを記憶の中から引き出してくる、このような段階に分けられます。ちょい忘れというのは、覚えてはいるんだけれども、さあというときに引き出すことができない。それをよく、ちょい忘れと言っていると思います。

右松 どの部分が衰えているから、起きるんでしょうか。

朝田 さまざまな部分が関わるわけですが、ここに「側頭葉」というのがあり、その奥に「海馬」があります。この部分がインプットにも引き出しにおいても重要です。

久野静香アナウンサー 加齢によって衰えるものなんですか。

朝田 もちろん年齢も大きいですね。トレーニングも結構重要ですよ。

右松 工藤さん、このあたりどうでしょうか。

工藤 箱はいっぱいあるんだけど、どこの引き出しだったか忘れてしまうとか、そういうことがよく原因じゃないかと思いますね。どの引き出しだったか、ネーミングがされていたら覚えやすいじゃないですか。その引き出しに書かれているネーミングがぼやけてきてしまうということで、老化かなと思いますね。

右松 そうすると、このちょい忘れというのは、お年寄りのほうが増えてくるんですか。

人間の記憶は芋づる式 加齢とともに弱まる連想力

朝田 これは絶対にお年寄りのほうが増えます。よく例えられますけれども、人間の記憶はコンピューターの箱のように縦横があって、そこに何の記憶が入っているというものではないんです。よく芋づると言われますが、ひとつサツマイモをとったら、茎を引っ張っていくとゴロゴロ出てくるみたいに連想が働くわけです。その連想の働く力は、確かに弱まるなと思います。

館林牧子・読売新聞医療部長 人の顔は忘れないのに、どうして名前だけ忘れるのかなといつも不思議に思うのですが……。

朝田 顔については、顔細胞というものが人間にはあるぐらいなんですよ。人の顔を覚えることに特化した細胞があり、顔とか景色とか、そういうものを覚えるのは主として右側の脳。それに対して、人の名前とか文字とか言語を覚えるのは左なんです。アルツハイマーは割と左のほうがよりやられることが多い、というような左右差があるので、そうした現象もあるだろうなと思います。

単に注意力不足の場合も

久野 ちょい忘れみたいなものは、私は20代とか若いうちから経験があって、何か物を取りに行ったけれども何を取りに来たのか忘れてしまうとか、あるんですが、脳が老化してきているということですか。

朝田 いや、それは単純に注意の問題だと思います。

久野 そもそも、ちょい忘れと記憶力が悪いというのは別のものなんですか。

朝田 一般的に言う記憶力というのは、どれだけキープしているかですよね。覚えたつもりでもボロボロ抜け落ちていないか。要するにテストで100点をとるためには全部キープしていなくちゃいけないわけですよね。それを普通、記憶力が良いという。

右松 男女差はあるんですか。

女性に目立つ「ちょい忘れ」

工藤 そうですね。女性の方がやはりちょい忘れが多いと思います。統計学的なものはありませんが、そもそも認知症は女性の方が多いと言われています。ですので、我々のクリニックでも、ちょい忘れで「おかしいな」とお見えになる方は女性の方が多い印象はありますね。

右松 生活習慣も関係していますか。

工藤 そうですね。やはりバランスのよい食事や運動ができず、閉じこもってしまうような傾向の方は、ちょい忘れが多いんじゃないかなと思いますね。


脳の老化度を10項目でチェック

久野 今回は朝田さんに監修していただきました脳の老化度テストを受けてみましょう。テレビの前の皆さんもぜひチェックしてみてください。

久野 さあ、皆さん、一斉に出してみましょう。館林さんは四つですね。同じ商品を買ってしまうことってありますよね。

館林 冷蔵庫の中身が卵ばかりになったりします。

久野 右松さんは五つですか。気になるのが「水道水を出しっぱなしにする」。

右松 これは、歯を磨いているときに、気づいたら水がずっと出っぱなし、出しっぱなしになっていて、出ているなと思いながらも止めないままやり過ごすというのが結構あります。

久野 だらしないだけじゃないんですか。

右松 紙一重ですよね。確かに。

久野 これは一番要注意な人っていますか。朝田さん。

朝田 皆さん、要注意ですね。年齢の割には数もそうですし、やはり満遍なく散っていますでしょう。例えば、同じ話を繰り返すなんていうのは、別に認知症と関係なく、自分の気になっていることは何回でも聞くんです。聞いた答えを忘れちゃって、そうはいってもあれどうなったかなっていうことがありますね。それから会計時に小銭を使わなくなったというのは、本来は集中力とか瞬間の計算力のテストなんです。だけど、今キャッシュレスになってきている中で、そもそもそういう機会は減ってきますよね。

 それから、やはり気になるのは、認知症というのは記憶の病気だと言われるけれども、例えば、お化粧をしないとか外出しないとかというのは、まあいいか、面倒くさいみたいなことですよね。そういう意味で、ちょっと嫌だなとは思いました。

英語に比べて漢字は難しい 障害が出やすい可能性

右松 私は漢字が最近出てこなくて、漢字の漢という字も出てこないときがあります。スマートフォンとかパソコンの普及で、漢字を書くことが減ってきているなかで、読むことはできるんだけれども、ちょい忘れで、書こうと思うと書けない、こういうことはどう思われますか。

朝田 これはよく経験することです。私なんか若いころからよくやるんですけれども、漢字というのは1回迷い出すと、一生懸命書けば書くほど変な感じがします。でも、ある程度時間が来たら簡単に思えるんですね。逆に言うと、日本人とか中国人の頭頂葉の機能が発達しているとか、デッサン力がいいという専門医もいるんです。英語はABCDの繰り返しでしょう。それに対して漢字というのはデザインです。デッサンです。「薔薇(ばら)」なんて思い出してみてください。書けますか。

右松 書けないです。

朝田 あれを思い出し、かつバランスよく書くというのは相当、西洋人に比べてある種の脳を使っているということは言われます。だけど、それだけに、逆に難しいことをやっているから、衰えが出てくると最初に障害を受けるかもしれません。

右松 そういうものなんですね。

外に出て人と交流 最高の脳の使い方

久野 私が気になるのが、先ほどもお化粧の話がありましたけれども、ふだん全くお化粧をしなくて、もともと外出しないんですが、そういうのは危ないのでしょうか。

朝田 人間の脳には、記憶とか集中力とか方向感覚とかありますが、それは結局、人間というのは社会的な動物だから社会の中で生きていくためにあるんです。そのためのものが知能です。それだけに、むしろ外に出ていって人と交流する、おしゃべりする、これこそ最高の脳の使い方とも言われます。

右松 それに関連してですが、「趣味が楽しめなくなった」というのは、どう考えればいいんでしょうか。

工藤 これは一概に認知症の始まりとは言えませんが、朝田先生のご専門のように、精神科領域では、ご高齢になってきたときのうつのチェックなどに使われますよね。気持ちが落ち込んでくると脳の活動も落ちてきますから、そのまま、うつから認知症の方へつながっていってしまうということであって、認知症の入り口としての軽い気持ちの落ち込みはチェックすべきポイントだと思いますね。

館林 私は、若いときはなかったんですけれども、外出するときに、もう一回戻って、ガス栓閉めたかなとか、もう一回玄関に戻ったりすることが増えてきたんですけれども、これも危険な信号なんでしょうか。

朝田 いや、それはいいなと思います。なぜかというと、ジャーナリストの人に多いと思いますが、非常に几帳面(きちょうめん)で、自分が失敗をすると、またやらないかということを日々深く心に刻まれるんです。そういう意味で、いい習慣だと思います。

人の名前を覚えるには……連想法

右松 人の名前がなかなか思い出せなくなるという話でいうと、人の名前をすぐに思い出すコツとか秘訣(ひけつ)というのはありますか。

朝田 一般的には連想法があります。私なんかも日々当てはまるんですけれども、人の名前って思い出そうとしてもヒントがないんです。だから、例えば、あの人は何県の人だったとか、こんな商売をやっている人というのはすぐ思い出せますが、姓、名というのは全くヒントなく、何の脈絡もなく思い出さなくちゃいけない。そこが、ほかの様々なものの想起の仕方、思い出し方と違うと思います。

久野 例えば、どういうふうに名前を覚えればいいでしょうか。

朝田 例えば、あの人は石川県の人で「海野さん」だったよね。だから、日本海、きれいだねみたいな、そんなイメージです。

久野 つなげて覚えるということですね。

右松 工藤さん、朝田さんからの連想法というのがありましたけれども、ほかには?

工藤 僕も全く覚えられないです。だから、頂いた名刺に例えば顔写真が載っていると、非常にありがたいです。

夫がうつ病に――規則正しい食事、家事への参加を促そう

 うつ病を含む感情障害の患者は全国に約127.6万人いる(厚生労働省『患者調査』2017年より)。特に40~50代男性の発症が増えており、「夫がうつ病になり失業…」という事態は他人事ではない。もしそうなったらどうすべきか──専門家に聞いた。

◆3度の食事を規則正しく

 うつ病になる中年男性は、「周りが働いているのに自分だけ休んでいる」という罪悪感から、昼間は隠れるように寝て、夜、周りが寝静まってから起きてくる昼夜逆転生活になるケースが多い。これが病状を悪化させると、うつ病専門医の廣瀬クリニック院長・廣瀬久益(ひさよし)さんは言う(「」内、以下同)。

「うつ病の治療には、早寝早起きをして生活のリズムを整え、3食を規則正しく摂ることが何よりも大切。というのも、朝起きて日の光を浴びないと、うつ病改善に効果があるとされる脳内伝達物質セロトニンが発生しにくくなるからです。また、朝起きられないと、社会復帰するにも時間がかかってしまいます」

 この生活習慣を守ることがとても難しく、家族の協力が不可欠となる。

 また、食事では特に、たんぱく質と鉄分の多い食材がおすすめ。鉄欠乏症がうつ病の原因になっていることはすでに証明されているので、赤身肉などの食材を意識的に摂り、サプリメントで補おう。

 一方で、避けたいのは菓子パンやスナック菓子類。

「これらを食べると血糖値が急に上がるので、気分の浮き沈みが激しくなります」

◆家事をなるべくやらせる

「体を動かすことはうつ病の治療に有効です。しかも、人の役に立つという実感があると、働いていないことへの不安感を払拭できるので、本人が嫌いじゃない家事からお願いしてみてください」

 おすすめは、窓ふき。日の光を浴びながらやると、うつ病の改善に効果的な脳内伝達物質セロトニンの分泌が期待できるからだ。

「家事を一日のルーティンワークに組み込み、できたら一緒に喜んでください。それが自信につながります」

 ただし、料理は避けた方がよい人もいる。抗うつ剤を服用していると、味覚に変化を感じる人もいるからだ。

◆運動をさせる

 うつ病になる男性は、真面目な仕事人間が多い。休職していても会社のメールなどをチェックしてしまい、それがまたストレスになる。

「きちんと休ませることが大切なので、仕事から引き離しましょう」

 廣瀬さんの患者の妻の中には、夫からスマホとパソコンを取り上げた人もいたという。空いた時間は、自分と向き合う作業をすべき。体調や幸せを感じた出来事、自分はどういう人間なのかをメモする。これがうつ病を克服した後の人生設計図になる。

コーヒーの香りを感じにくくなったら認知症の予兆あり

 健康診断に嗅覚に該当する項目はないが、“鼻の衰え”は重大疾患のサインとなる。中でも注意すべきは、鼻そのものではなく脳の機能不全によって生じる「中枢性嗅覚障害」だ。川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が指摘する。

「脳の大脳辺縁系の機能不全によって生じる嗅覚障害です。脳腫瘍や脳梗塞などでも引き起こされますが、典型的なのは認知症。アルツハイマー型やレビー小体型では、最初に嗅覚障害で匂いがわからなくなり、その後に物忘れなどが生じると言われます」

 2015年に米国で発表された1430人を追跡した大規模研究では、嗅覚障害がある患者のアルツハイマー型認知症のリスクは3~5倍で、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)のリスクも2倍になった。

 嗅覚はとくに衰えを実感しづらい。そこで「匂い」そのものよりも、嗅覚とも密接に関係する「味」の感じ方の変化に着目するのがよいという。判断の基準となるのは「過去の自分」である。

「例えば、いつもと同じ分量で淹れたコーヒーが何となく薄くなったと感じたら、嗅覚障害を疑ってほしい」(同前)

 また「若いときと比べて最近は食べ物の感動がなくなった」として食べ残しが増えた人は、味覚に異常が起きている可能性もあるが、嗅覚障害で味が感じられなくなったとも疑われる。食材が腐っているのに気づかず食べてお腹を下したり、調理中になべの焦げ付きに気づかなかった場合も嗅覚の衰えが疑われる。

 周囲の指摘から気づけるケースもある。たとえば、久しぶりに自宅に立ち寄った子供に、冷蔵庫から傷んだ食材の悪臭が漂っているといった指摘を受けた場合、単なる“うっかり”として片づけないほうがいいかもしれない。

夫がうつになったら…「少し散歩でも行こうか?」はNG

うつ病は、本人はもちろん、周囲の家族にとっても大きな問題です。もし夫がうつ病になったとき、妻はどのようにふるまえばいいのでしょうか? 自身もうつで1年2か月休職した経験をもち、現在は「うつ専門メンタルコーチ」として活動する川本義巳さんに、方法を伺いました。
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ギリギリまで人に頼らなかったせいで、うつが悪化した過去

「家族がうつになったらどうすればいいですか?」仕事柄そういう質問を受けることがあります。とくに家族にとって経済的な柱である人がうつになると、事態は深刻になりがちです。

かくいう私自身も18年前うつ病にかかり、1年2か月休職をした経験があります。
今回はそのときの私に起こっていたこと、そして家族が思ったこと、行動したことをご紹介しながら、「夫がうつになったとき、どうすればよいか」についてお話したいと思います。

●大手企業への転職がきっかけでうつに

私がうつ病になったのは、転職がきっかけでした。憧れの大手IT企業に転職でき、収入もステータスも上がり、「今後の人生は安泰だ」そう思っていた矢先でした。

うつ病はある期間「調子が悪い」状態が続きます。そしてそれをガマンした結果、ある日動けなくなる。私を含めそういうパターンの人が多いように感じます。

私自身、体が動かなくなる4~5か月前から異変はありました。体調がすぐれない、よく眠れない、疲れが取れない…。でもそのときは転職してすぐだったので「慣れてないから」とか「がんばりがたりない」と思っていました。
徐々に状態は悪化し、人と話したくなくなったり、手足が震えたり、常に疑心暗鬼になったりしていき、最終的には動けなくなりました。

●男性はギリギリまで人に頼らない傾向が

男性は「ギリギリまで人に頼らない」という人が多く、症状がひどくなってからようやく精神科のクリニックにつながり、病気が判明するというケースが多数です。私自身も初期段階で誰かに相談していれば、「動けなくなる」ということは防げたかもしれませんし、もしかすると休職することも回避できたかもしれません。

コーチングをしていても女性は比較的、初期段階で相談に訪れますが、男性の場合は「すでに病院で診断名が降りている」状態で相談されることがほとんどです。しかも「奥さんに諭されて」という人も多いです。これだけうつ病が認知されてきていても、まだまだ「自分の努力がたりない」と思う男性が多いということだと思います。

●ムリして復職すると負のスパイラルに

では実際に闘病中の男性がなにを考えているか? ということなのですが、大抵の場合は「もうダメだ」と思っています。「会社には戻る場所がない」そういう人もいます。 「家族や会社に迷惑をかけている」という罪悪感にさいなまれる人もいます。しかしムリをして復職をしてしまうと、また再発ということを繰り返すことにも。

これは私見ですが、休職3か月以内で復職した人は再発するリスクが高く、1年ほど休む人は、状態が好転しやすいですね。なので私は「最低半年」というアドバイスをしています。確かに経済的な柱である夫が休職になると、家族の不安も大きくなりがちですが、ムリをさせてしまうとかえって長引くことになるので、まずはしっかり休ませるということを考える必要があります。

次は、支える側の家族はどうするのか? を説明します。

家族がうつになったらどうすればいい?「隣の部屋にいる感覚」が大事

●うつになると善意の声がけがつらいことも

私の場合、うちの奥さんの関わり方が本当によく、それで回復も早くなったと思っています。奥さんがいちばん気をつけたことはなにかというと、「適度な距離感を保つ」ということでした。 家族がうつになると、どうしても心配してしまうのでついつい「今日は気分どう?」とか、「●●つくったから食べる?」とか、「少し散歩でも行こうか?」などとやりがち。

しかし、うつ最中の人にとっては、非常に負担に感じます。なぜなら相手の言葉や誘いに今の自分が応えることができないため、なるべく関わりをもちたくないから。また単純にしゃべったり考えたりするエネルギーがない、というのもあります。なのであまり声をかけたり、なにかかをさせようとしないことがポイントになります。

同時に、相反する感覚なのですが「大切にしてほしい」という思いもあります。そのためあまりにも声をかえてもらえないと、それはそれで不安を増幅させてしまいます。うつは孤立する病気です。なので孤立はいちばん避けたい、でも近すぎるのもよくありません。

●うつから回復するには、安心安全な場所に身を置くこと

私は夫がうつ病になって休職されている女性には、「隣の部屋にいる感覚で」というお話をします。 「向こうから関わりをもちに来ないけど、ちゃんと近くにいてくれている」という感覚が安心安全な環境をつくり、うつ状態の改善につながります。 人によりうつになった原因や置かれている環境は違います。でも、うつから回復するには、充分な心と体の休息をとることと、安心安全な場所に身を置くことが必要です。

つかず離れずの関係をつくり、こちらから声をかけるときは「なにかすることある?」でいいのです。「ない」と言われたら「わかった。じゃあまた声をかけてね」でいいですし、「これをしてほしい」と言われたら、できる範囲内で「了解」でいいと思います。そして徐々に本人が前向きになってきたらそのことを喜び合い、また落ち込んだから「つかず離れず」「なにかできることある?」からやり直していく。

できればこうなる前に夫が専門家に相談できたり、自分でクリアーできるのがいちばんなので、普段から家族で話し合ったり、無理をしない取り組みをしたりすることをおすすめします。

●教えてくれた人
【川本義巳さん】
うつ専門メンタルコーチ。高校卒業後、SEとして20年以上メーカーに勤務。大手IT企業への転職を機にうつ病を発症、寝たきり状態になり、1年2か月の休職を余儀なくされる。職場復帰後も6年間うつ病に悩まされ、さまざまな方法を試すが失敗。2007年コーチングに出合い、うつ病を完全克服。その体験をきっかけにうつ専門のプロコーチになることを決意。最新刊は新刊『1日3分でうつをやめる。』(扶桑社刊)

脳機能低下、認知症、うつ病発症 カギは「難聴」

ヘッドホンを装着し、「ピー」「プー」などの音が聞こえたら手元のボタンを押す──健康診断でよくある聴力検査だ。

 自覚症状のない難聴を発見するのに適した検査だが、これだけでは完全でない。川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が指摘する。

「そもそも難聴にはいくつもの種類があります。大きく分けて、炎症や感染症、耳垢などによって聞こえにくくなる『伝音難聴』と、聴神経に障害が発生したことで言葉の聞き分けが難しくなる『感音難聴』があります。加齢による難聴も感音難聴の一種であり、高い音や子音が聞こえづらくなり、『佐藤』と『加藤』、『洗う』と『笑う』などを聞き間違えます」
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 厄介なことにいずれのタイプの難聴も、脳の機能を低下させる原因となる。
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耳が聞こえづらくなった場合、「痛みがなく、片耳が、徐々に」が重病のサインとなる。この3つが揃ったら、耳鼻科を受診したほうがよいということだ。早く気づけるほうが望ましいので、日常生活で注意を払うようにしたい。.難聴とうつ病、認知症の関係は国際的に認められており、2017年には国際アルツハイマー病会議が「難聴は認知症の最も大きな危険因子」と発表した。また米国成人1万8318人を調査した研究では中程度聴覚障害群のうつ病リスクが2.4倍に達した。
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 難聴は「耳の中」だけに原因があるのではない。中でも怖いのは「実はがんや脳腫瘍が原因だった」というケースだ。上咽頭がんにかかると、中耳に血管などから染み出た液体がたまる「滲出性中耳炎」を発症するケースがある。この中耳炎には自覚症状がなく、片耳の聴力が徐々に落ちていく。
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 聴力低下に気づいて滲出性中耳炎を治療しても、大本の原因である上咽頭がんを見逃しているとがんが着々と進行し、気づいた時は末期という怖れがある。秋津医院院長で内科医の秋津壽男医師が指摘する。

「脳腫瘍の一種である聴神経腫瘍も痛みなどの自覚症状はなく、片耳だけ急激に聞こえにくくなります。普段過ごしているリビングで特定の方向から家族の呼びかけが聞こえなくなったら要注意です」耳が聞こえづらくなった場合、「痛みがなく、片耳が、徐々に」が重病のサインとなる。この3つが揃ったら、耳鼻科を受診したほうがよいということだ。早く気づけるほうが望ましいので、日常生活で注意を払うようにしたい。
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「雑踏での人の会話が聞き取りにくくなったり、救急車のサイレンがどちらから聞こえるかわからなくなったら要注意です。『テレビやラジオの音が大きい』などと家族に注意された場合も気をつけてください」(坂田医師)「雑踏での人の会話が聞き取りにくくなったり、救急車のサイレンがどちらから聞こえるかわからなくなったら要注意です。『テレビやラジオの音が大きい』などと家族に注意された場合も気をつけてください」(坂田医師)

中高年の「初発鬱 (うつ)」は早期に症状緩和を 「人との会話」も重要 高橋英彦・東京医科歯科大学教授(精神行動医学)

なんとなく元気がない、ぼんやりしている…そんな様子が見られると、やはり最初に疑うのは高齢者の場合、認知症だろう。しかしそこに「鬱(うつ)」が潜んでいる可能性がある。高齢者で典型的な鬱病の症状を示す人は1/3~1/4ほどといわれ、見落とされてしまうことも。放置せず、早期発見、早期治療につとめたい。

 朝田 認知症の初期症状として鬱が見つかった場合、その後の治療はどんなものですか?

 高橋 中高年の初発鬱(はじめての発症)がアルツハイマーの初期症状だった場合、初期段階なら抗認知症薬がある場合が多いので、まず薬を使用しつつ生活上の注意点なども指導します。

 朝田 やはり早期発見、早期治療がポイントですね。

 高橋 家でゴロゴロ、鬱病みたいな単調な生活をしていると、刺激が減って脳の老化が早まります。そして結果的に認知症併発の下地を作ってしまいます。中高年の初発鬱の場合、できるだけ早く専門医の指導を受けて、鬱症状を緩和しておくことが大事です。

 朝田 これをやると鬱に効く、というものは何かありますか? 脳トレはどうですか?

 高橋 脳トレそのものより、何かを集団でやることがポイントです。できてうれしいとか、できなくて悔しいとか、何でもいいのですが、人との会話が認知症予防や生活の質をキープする効果があるとされています。女性は社交的なので比較的やりやすいのですが、男性はなかなか出てきてくれませんね。

朝田 男に「楽しさ」は通用しないことが多いですね。「そんなところへ行っていられるか、バカバカしい」と意地を張って家に引きこもってしまう。そうこうしている間に認知症が進行してしまうんですけどね。男性には権威と理屈で攻めていくのが有効だと感じています。「専門家の××さんがやって効果を上げたメソッドだ」とか。

 高橋 鬱がアルツハイマーの初期症状であろうとなかろうと、外出して人と話をする、いろいろな情報を目から耳から入れる、という生活にすることが大事です。

 朝田 鬱の人がアルツハイマーを発症するリスクは2倍とされています。中高年の初発鬱はできるだけ早い段階に診断、治療を受け、認知症の予防につなげてほしいですね。(協力・東京医科歯科大学)

 ■朝田隆(あさだ・たかし) 1982年東京医科歯科大学卒業。メモリークリニックお茶の水理事長、東京医科歯科大学医学部特任教授、医学博士。数々の認知症実態調査に関わり、軽度認知障害(MCI)のうちに予防を始めることを強く推奨、デイケアプログラムの実施など第一線で活躍中。『効く!「脳トレ」ブック』(三笠書房)など編著書多数。

 ■高橋英彦(たかはし・ひでひこ) 97年東京医科歯科大学医学部卒業。科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ研究員、京都大学大学院京都大学大学院准教授などを経て2019年2月より現職。研究分野は内科系臨床医学、精神神経科学。日本神経科学会奨励賞(2012年)ほか受賞多数。

認知症の親がいると巨額の賠償リスクと隣り合わせ どう備えるか?

 定年後の暮らしにはトラブルがたくさん潜んでいる。健康や家族関係、犯罪被害など数々のリスクが存在するなか、介護の分野においてもトラブルの芽は少なくない。そんな時、自分を守るための最大の武器になるのが“法律”だ。

 2007年12月、認知症の親が線路に侵入してはねられる事故が起きた。後に、鉄道会社が遺族に対して民法714条の〈責任無能力者の監督義務者等の責任〉を問い、720万円の損害賠償請求を起こしている。一審、二審では原告の請求が認められたが、最高裁で遺族の支払い義務を否定する逆転判決が出た。

 とはいえ、認知症の親がいる場合、家族は常に巨額の賠償リスクと隣り合わせだ。社会保険労務士の井戸美枝氏が説明する。

「水を出しっ放しにして下の階を水浸しにしたとか、介護施設で暴れて他の入居者に怪我をさせたというケースはよく耳にします。そうした事態に備えて、損保各社は個人賠償責任保険という商品を販売しています。補償上限は1事故に1億円から無制限と高いのに対して、火災保険や自動車保険の特約として付帯するため、掛け金は月額数千円とお手頃です」

◆入居していた老人ホームが倒産! 一時金は返ってくる?

 東京商工リサーチによると、昨年の老人福祉・介護事業者の倒産件数は106件。ここ3年間で毎年100件以上の倒産がある。 老人ホームの入居一時金は、「毎月の利用料の前払い」として償却期間があるが、償却途中で泣き寝入りするしかないのか。井戸氏が説明する。

「老人福祉法で、有料老人ホームに前払い金の保全義務が課されているため、最大で500万円まで戻ってきます。公益社団法人全国有料老人ホーム協会に申請することで一時金の返還が受けられます」

 ただし注意点がある。

「法の制定前の2006年3月31日以前に届け出された古い老人ホームには契約書に保全措置が明記されていない場合もある。事前によく確認する必要があります」(井戸氏)

後悔しない認知症/体験した「エピソード記憶」の喪失を食い止める方法はある

 たとえば、「ハワイに行ったのを覚えているよね」という子どもの問いかけに「忘れた」と無表情の親が答え、「はじめての海外旅行のことも覚えていないのか……」と子どもは落胆する。似たような経験を持つ子ども世代は多いはずだ。このように親子が共有していた鮮烈な記憶でさえ、認知症の親の脳からは消えてなくなってしまうことがある。認知症にかぎらず、高齢の親には多かれ少なかれ認められる症状なのだが、こうした親の記憶の消失は、子どもにとってつらい。

 前回、新しく体験したことを覚えられない「記銘力障害」について述べたが、このように古い記憶がなくなってしまうのが「想起障害」である。中高年以上になって、上書きされる情報が多くなり、過去に覚えたことを思い出しにくくなることは当たり前のことではあるが、加齢現象の場合、その主たる原因は脳の海馬の機能低下である。

 心理学では、人間の記憶を2つに分けている。ひとつが「エピソード記憶」で、もうひとつが「意味記憶」である。「エピソード記憶」とは簡単に言えば、自分が体験したことの記憶である。たとえば「北海道に行ったことがある」「○○君とは中学の同級生」といった努力を要さず自然に定着した記憶であり、「意味記憶」は文字通り、数学の公式とか歴史的事件の年号、あるいは外国語など学習によって定着させた記憶である。

■「なるほど」「それで?」と相づちを打つコミュニケーション

 一般的には「エピソード記憶」のほうが忘れにくいとされている。ハワイ旅行を例にとれば、通関のために暗記した英語などの「意味記憶」は意識的に復習しなければ短時間で消えてしまうが、ハワイに旅行したという「エピソード記憶」は努力せずに長期間保たれる。 同様に受験のためだけに記憶した知識も試験が終われば瞬く間に消えてしまうが、どこの学校を受験したかをすぐに忘れることはない。

 一般的に加齢とともに誰でも記憶は想起しにくくなるのだが、認知症になると、この「エピソード記憶」の想起力の低下が目立つようになる。こうした症状を改善させる可能性は低いものの、症状の進行を遅らせることはできる。

 コミュニケーションの量を増やし、子ども側から意識的に問いかけを行って、親の想起の機会を増やすことだ。同じ話をする親には根気強く耳を傾け、その話に関連したエピソードを聞き出すようにしてみる。「なるほど」「それで?」「初耳だな」などと相づちを打ちながら、これまで出力したことのなかった情報を引き出してあげてみるのである。「親の脳を悩ませる」ことが認知症の進行を抑えるのだ。

 昔話をしながら、あるいは古いアルバムを一緒に眺めながら、親子のコミュニケーションを深め、親の記憶の想起を促してみるのもいい。失われた記憶のすべてが蘇る可能性はないが、わずかであっても親が忘れていた記憶を想起できれば、親自身の機嫌もよくなるはずだ。

 フランスの文豪プルーストの小説「失われた時を求めて」は、紅茶に浸したマドレーヌの味が主人公の幼児期の記憶を劇的に蘇らせるというストーリーで有名だ。それほど劇的な展開は望めないにしても、コミュニケーションの中で何かがきっかけになれば、親にとっても子どもにとっても有意義な記憶の想起があるかもしれない。

和田秀樹:精神科医

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

いい状態と悪い状態を繰り返すレビー小体型認知症の接し方

 子どもにとって大切なことは、「親が本当に認知症なのか」「どんなタイプの認知症なのか」「正しい対応法は何なのか」をきちんと理解することだ。そのためには、何度も述べるが臨床経験豊富な専門医の診断を受けさせることだ。

 前回、認知症の中で比率が最も高いアルツハイマー型認知症について述べた。

 このアルツハイマー型認知症に次いで多いのが「レビー小体型認知症」だ。レビー小体とは脳の神経細胞にできるタンパク質なのだが、これが脳の大脳皮質や脳幹に蓄積、神経細胞を破壊し、神経伝達を阻害することによって認知症の症状が出る。これがレビー小体型認知症である。アルツハイマー型認知症と併発するケースもある。

 このレビー小体型認知症の場合、初期段階の特徴として挙げられるのは、うつ症状や幻視である。幻視の場合、例えば、「天井に虫が止まっている」「(死んだ)夫が笑いかけてきた」と、そこには存在しないものが見えてくる。それによって虫を殺そうとしたり、幻視で見えている亡夫に話しかけたりすることもある。

 幻聴を伴うこともある。また、誤認や妄想という症状が生じることもある。自分が実際とはかけ離れた年齢であると思い込んだり、同居している家族を他人だと言い張ったり、事実と異なる認識状態に陥る。

 さらに、手足の震え、筋肉のこわばり、体のバランス感覚の欠落などの症状が見られることもある。これはパーキンソン病の症状と似ているため、誤診を招きやすい。

 このレビー小体型認知症は、症状が徐々に進んでいくアルツハイマー型認知症とは違い、「いい状態のときと悪い状態のときを繰り返して進行する」という特徴がある。幻視、誤認、妄想の症状は常に生じるわけではなく、断続的に表れる。そのため、周りの家族はいい状態の親を基準に対応してしまいがちになる。その結果、「知らない人がいる」と訴えたり、動作が緩慢になったりする親に対して「誰もいないじゃないか」あるいは「グズグズしないで」などとひどく感情的に対応してしまったりする。これで、親の症状が改善することはない。

 こんなときは、まず親の訴えや主張を頭ごなしに否定するのではなく、まず話を聞いてあげることが大切だ。聞いてあげた上で「去年亡くなったね」などと諭すように伝えることだ。

 動作が緩慢であっても、せかすのではなく、親の動きに合わせてあげること。せかすことで転倒したり、ケガをすれば、さらに親の行動が制限され、結果として脳に悪影響を与えることになる。

 いずれにせよ、子どもはこのレビー小体型認知症の特性をきちんと理解して親と接することが大切だ。

 レビー小体型認知症に限らず、ほかの認知症を含めて老化現象が顕著になった親を持つ子どもの多くは「年だから」と諦めてしまいがちだ。だが、子どものそうしたスタンスは、認知症の症状をさらに進めてしまうことになりかねない。

 現代の医学では認知症の進行を完全に止めること、治すことはできない。だが、これまで述べてきたように、進行を遅らせることは可能だ。進行を抑える効果が認められている薬もある。

冒頭で述べたように高齢の親に的確な診断を受けさせた上で、認知症の親に正面から向き合いつつ、多少なりとも効果が認められている治療法を試みた上で、親がまだできることを維持することを心がけるべきだ。

 日常の積み重ねが生活の質を低下させないことにつながるのである。

和田秀樹:精神科医

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

「ウチはボケない家系だから大丈夫」に科学的根拠はない

 父親は90歳までボケずに死んだから大丈夫だ。母親は75歳でボケたから心配だ。そんなことを口にする人がいる。だが、極めてレアなケースを除いて、認知症発症が家族性によるものであるという医学的根拠はない。認知症には、大きく分けて「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の3タイプがある。その中で「アルツハイマー型」が約6割でもっとも多いのだが、このアルツハイマー型認知症の発症要因は、アミロイドβタンパクという物質が脳に蓄積され、脳の神経細胞の働きを阻害することによるものと考えられているが、これが家族性のものという根拠がないのだ。

 このアミロイドβタンパクはもともと脳内に存在する物質であり、それ自体が有害というわけではない。水溶性の物質で、通常、血液の中に溶け出す。ところが主に加齢で脳にたまりはじめ、塊のようになって蓄積されるようになる。それによって、神経細胞の正常な働きを阻害し、脳の萎縮を招くことになる。これがアルツハイマー型認知症発症のはじまりである。

 だからといって、このアミロイドβタンパクを体内から排除すればいいかといえば、ことはそう簡単ではない。排除する方法は見つかっていないし、排除することによる副作用の可能性も否定できない。残念なことに現段階では、この物質のメカニズムはいまのところ解明されておらず、正常な人体においては何らかの役割を担っているのではないかとも考えられている。だが、このアミロイドβタンパクが脳内に蓄積しはじめるとすぐに認知症を発症するかといえば、答えは「NO」である。蓄積から約20年程度を経過してから発症するとされている。現在40代、50代の世代ではすでにアミロイドβタンパクの脳内の蓄積がはじまっている可能性が高いともいえる。

 このようにアルツハイマー型認知症発症にアミロイドβタンパクが深く関わっていることは間違いのないことなのだが、いまのところ、これを脳内から取り除いたり、その生成を止めたりする治療薬の開発、あるいは治療法は確立されていない。認知症の治療薬としてはアリセプト、メマリーなどがあるが、これらはアミロイドβタンパクの蓄積を改善する薬ではなく、アルツハイマー病においてはアセチルコリンという神経伝達物質が減少するため、それを補うための薬なのである。

 脳におけるアミロイドβタンパクの蓄積の予防策も、私にはよくわからない。ただ、脳の環境が良い人のほうがなりにくいように思われる。たとえば、うつ病で治療を受けないと神経伝達物質の不足が長年続くせいか、年をとってから認知症になりやすいことが知られている。アルコールの大量摂取もそうだ。低血糖による脳のダメージも大きいようで、栄養状態が悪い人は認知症になりやすい。

 糖尿病が認知症のリスクファクターという説が強まっているが、私が浴風会病院にいる際に、解剖までして調べたデータでは、糖尿病のない人のほうが3倍くらい認知症になりやすかった。その頃は、血糖値が高いほうが脳にいいと考えられ、浴風会では糖尿病の治療をしなかった。今は糖尿病の治療をするので、認知症と糖尿病の関係については、治療による低血糖の影響の可能性を私は疑っている。経験的に言うと、私は高齢になってからの過度の節制によるストレスのほうが脳に悪いと信じている。

 いずれにせよ、「家系的に大丈夫」は論外で、脳にいい生活を心がけたいものである。

和田秀樹:精神科医

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

ボケ防止にはアウトプット! イグ・ノーベル賞ドクター新見正則さん「自分の考えを吐き出すんです」

 効き目が五分五分という薬は飲まない方がよい。肉親や自身の延命治療に迷ったら、「先生ならどうする?」と逆質問して最善策を教えてもらえと指南、大病もいつか寛解すると豪語する。

 「だって人間、いつかは死ぬ。死ねばどんな病気も治りますよ」

 万事がこんな調子。歯に衣着せぬ物言いで患者や家族に慕われている。

 「現代医学でもまだエビデンス(証拠・根拠)が定まったわけじゃない。例えば、血圧は低けりゃいいってものじゃないんです。上の値は心臓の収縮期の数値で、ウンチやセックスなど運動とともに上昇するのが自然。で、運動をやめたら下降するなら何の問題もありません。けれど下の値(拡張期)が高いのは問題。車なら止まっているのにエンジンの回転数が下がらない状態で、これは改善すべきです」

 健康志向、健康オタクに「あいまいな情報に踊らされるな」と活を入れ続けている。では究極の健康法はというと、「ボケないこと。レジリエンスの大事さを知ること」と断言する。 レジリエンス? もとは心理学用語。苦痛やストレスにうまく適応し、かつ耐えながら、精神力を回復させる能力のことだ。病気と折り合いをつけ付き合い、回復の機をうかがうのもその一つという。

 今でこそポンポンと小気味良い言葉が口をついて出るが、子供の頃は重度の吃音だった。それがあることをきっかけに解消されていく。 父は発明家で収入源の一つは浄化槽の特許料、小学生のころは貧乏のどん底を体験した。米屋などの借金取りをかわす役目を任され、「今、両親はいません」とうそを言う。給食費も払えなかったから「忘れました」と、これまたうそをつく。何度も繰り返すうち、うそをつくときは吃音が出ないことに気がついた。

 「暗記したものはすらすら言えるんだと分かりました。それに追いつめられると人間はうそでその場を逃れようとする、と。言葉には裏があると知りました」

この経験は“患者もうそをつく”という信念につながっていく。

 例えば、「最近体調が悪くて」と訴える患者の言葉をうのみにせず、「裏に夫婦関係のこじれがあるのでは」などと疑ってみる。「旦那のわら人形でも作って呪いをかければ」と冗談めかして誘導すると、「まぁ、そこまで恨んでませんしねぇ」との返事。こんな風に夫婦間、家庭内の問題が背景にあったりする。

 「環境は健康にとっても大事ですね。僕も母があんなに明るく寛容な人でなかったら、もっと吃音に苦しめられたでしょう。でも母はいつも穏やかに耳をそばだてて聞いてくれた」 中学時代、全国のユースホステルに泊まりながら日本一周、大学生のときは宿も決めない世界一周貧乏旅行。

 「母は『行っといで』と心配顔も見せずに見送ってくれました。僕は僕で、一人旅なんかを通して、吃音なら一人で遊べばいい、人前に無理に出なくてもいいんだと思い至った。そうしたら、全然言葉に詰まらなくなったんです。ありのままの僕を受け入れてくれた母のおかげですね」

 その母は2014年、95歳で亡くなった。

 「認知症を患ってね、切なかったな…。だから患者には声を大にして言うんですよ。ボケるなってね。方法? インプットよりアウトプットすること。本を読んだら誰かに感想を話す。井戸端会議大いに結構、自分の考えを吐き出すんです」

性格は「凝り性で新しもの好き」。

 その性格に後押しされ13年、専門の移植免疫学の分野をベースにした研究で、イグ・ノーベル賞(医学賞)を受賞。笑いと優れたサイエンスに授与される賞である。心臓移植をしたマウス群に延々とオペラ「椿姫」(ソプラノ=アンジェラ・ゲオルギュー、指揮=ショルティ)を聴かせたら、音楽なしのマウス群より約6倍、40日の生存期間を得たのだった。

 「今は、(仕事上)手術から解放された立場です。オーケストラならさしずめ僕は『バーン』と数回鳴らすシンバル奏者といったところかな。だけど給料はみんなと同じ。時間ができたので、不妊治療の研究とトライアスロンにトライしているところです」 興味があればやってみる。結果は常に未知数。そこから生まれるサムシング・ニューが面白い、と笑う。 (ペン・冨安京子 カメラ・酒巻俊介)

 ■新見正則(にいみ・まさのり) 1959年2月24日、京都府生まれ。60歳。85年、慶応大学医学部卒。93~98年、英オックスフォード大学医学部博士課程留学(移植免疫学で哲学博士号取得)などを経て現在、帝京大学医学部外科准教授。愛誠病院漢方外来統括医師。近著『健康マニア 何が楽しい』(集英社)など著書多数。

65才未満で発症する若年性認知症、高齢者の認知症との違いは?

 一般的に認知症は年齢を重ねるほどリスクが高くなり、高齢者の病気と思われがちだが、実は若い世代にもある。65才未満で発症するものは「若年性認知症」と呼ばれ、高齢者の認知症と病理や進行のプロセスは同じだが、取り巻く状況は大きく違う。

 老親の心配ではなく、たとえば自分が認知症になることを想像してみよう。恐れや不安はあるが、親の介護同様、知っておくことで避けられるリスク、準備しておけることもあるはずだ。

 厚生労働省の調査によると、若年性認知症の患者数は約4万人。認知症患者数全体に占める割合は1%以下で、やはり圧倒的に65才以上の発症が多いが、高齢者の認知症とはどんな違いがあるのだろうか。認知症専門医で湘南いなほクリニック院長の内門大丈さんが語る。

「認知症を起こす原因病は数十種類ともいわれますが、いちばん多いのはアルツハイマー病。老年性認知症でもアルツハイマー型が最多です。一方、若年性で多いのは血管性認知症。脳梗塞や脳出血などに続いて発症するので、発症のきっかけがわかりやすいということもできます。

 そして次に多いのは、やはりアルツハイマー病。老年性と同じく、もの忘れや見当識障害、判断力・思考力の低下などの初期症状から始まり、不安や焦燥、抑うつ、妄想などの精神症状も起こります」(内門さん・以下同)

 若年性のアルツハイマー型認知症は遺伝的な要因が強く、“進行が速い”ともいわれる。しかし必ずしもすべてではないと内門さんは言う。

「個人差がかなりあるのです。進行速度の要因はまだ解明されていませんが、診断から10年近く経過しても認知機能が維持されているケースもあります。治療を始めた時期や元来の性格、日常の活動、周囲のサポートなど、いろいろな要因が考えられます」

 そして若年性認知症は発症頻度が少ないこともあり、本人が気づかなかったり、受診しても見逃されたりして、治療が遅れることが少なくない。そんな状況から、若年性の場合は特に、かかりつけ医などを経由せず、専門医療機関の受診を勧めている。

「認知症は、最初に相談する医師がとても重要です。高齢者は、認知症以外にも複数の病気を併発していることも多いので、総合的に診てくれるかかりつけ医に相談するのがよいとされています。

 しかし、かかりつけ医が必ずしも認知症に精通しているとは限りません。若年性の場合はほかの病気を併発していないことが多いので、認知症が気になれば専門医を受診するのが近道。少しでも早い専門的治療で進行を抑制することも期待できます」

 認知症治療について豊富な知識と経験を持つ認知症専門医は、日本認知症学会のホームページから検索できる。

認知症と間違えやすい!?「正常圧水頭症(NPH)」とは【生涯現役脳をめざせ!】

★ゲスト 前原健寿・東京医科歯科大学教授(脳神経外科)(2)

 朝田 NPHも認知症と間違えられやすい病気ですね。私のクリニックにも「高齢の親がここ1年ほど様子がおかしい」ということで来院された方がNPHだった、ということがありました。簡単な見分け方を教えてください。

 前原 (1)物忘れ(2)歩行障害(3)尿失禁、これがNPHの3大兆候です。初期段階からこの3つがそろってみられるようならNPHを疑ったほうがいいでしょう。

 朝田 検査と治療はどのようなものですか。

 前原 CTやMRIによる画像診断で脳室が大きくなっているかどうかを調べ、NPHと診断された場合には脳室にたまった髄液を「シャント術」によって腹腔に流します。事前に少量の髄液を抜く検査(髄液タップテスト)をすると、よちよち歩きだった人がスタスタと歩けるようになったり、質問にちゃんと答えられるようになったりします。

 朝田 個人差はありますが症状が目に見えて改善するので「治る認知症」と言われています。体内に設置するシャントシステムの技術も日進月歩だそうですね。

 前原 手術入院は1週間から10日、その後は通院でフォローすることになります。「加圧変式バルブシャントシステム」は設置後も体の外から調整できます。マグネット式になっていて外来ですぐに終わります。もちろん痛みもありません。

 朝田 シャントを作って終わりというわけではないのですね。NPHは認知症患者の5~10%に潜在的に認められるといわれています。思い当たる方はぜひ脳神経外科・神経内科などの専門医に相談していただきたいと思います。(協力・東京医科歯科大学)

子供や孫との同居 「刺激が増えてボケ防止になる」は大きな誤解

「子供や孫と同居して暮らすほうが安心だし、孫と一緒にいられて楽しそう」(72歳男性)──こんなふうに70歳をすぎると“同居”を考え始める人は多いが、早まってはいけない。介護ジャーナリストの小山朝子氏はこう指摘する。

「子供世帯との同居は、ライフスタイルの違いもありかえってストレスになることがあります。三世代同居は理想的に見える半面、高齢者にとって孫の世話は体力的に大変な場合もあります」

 内閣府の幸福度調査でも、60~70代の男性は「孫の世話」より「趣味に熱中している時」や「友人との食事や雑談」に生きがいを見出す割合のほうが高い。また、同調査ではひとり暮らしの高齢男性の場合には孫がいない人のほうが幸福度が高いという結果も出ている。

 子供や孫が近くにいれば、刺激が増えてボケ予防にもなるだろう――というのも大きな誤解。同居している高齢者のほうが、実は認知症になりやすいという調査もある。

 面倒見のいい子供夫婦だと、親に「楽隠居」させてしまい、高齢者が自分で身の回りの世話をしなくなるからだ。

知っておきたい「認知症」の介護費用 負担が軽減する制度も紹介

ご家族の介護が必要になった場合に、一番心配なことは介護費用です。

介護離職という言葉も他人ごとではなくなるかもしれないという不安もあります。

いつ、親や配偶者の介護が必要となったり、認知症になったりするかは分からないです。

特に、認知症になった場合には、介護費用はさらに高くなるのでしょうか?

知っておきたい認知症の介護費用についてご紹介します。
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基本的な介護に必要な費用はいくらなの?

まず、介護に必要な費用はどの程度必要なのでしょうか。

在宅介護を受ける際にかかる費用は要介護度でも差がありますが、おおむね1か月の介護費用は約3~5万円だと言われています。

内訳すると、デイサービスやホームヘルパー等を利用する際に発生する

「介護サービス利用料」は平均で1.6万円
おむつ代や医療費等の「介護サービス利用料以外の支出」に関しては平均で3.4万円

かかるといわれています。

要介護度によって変動はあります。

比較的症状の軽い段階の要支援だとこれより安くなりますし、寝たきりで介護が必要になる要介護5になると同じサービスを利用しても介護サービス利用料は高額になります。

要介護度4や5になると介護サービス利用料のほかにもオムツ・医療費が必要になる場合が多いため、費用が高くなってしまいます。

そのため、介護用品については減額や還付制度を設けている地方自治体もありますので、詳しくは問い合わせてみましょう。

認知症になった場合にかかる費用は?

親や配偶者が認知症になったかもしれない、これからの介護費用はいったいいくら必要になるか心配だと思います。

■診察や検査費用
認知症の可能性がある場合、必要になるのが「検査」です。

お近くの病院の老人内科、精神科、神経科などを受診してみましょう。

最近では認知症専門の「物忘れ外来」をしている病院もあるので調べてみるといいでしょう。

「物忘れ外来」はご本人にとっては少し抵抗がある場合もあります。

その場合には、まずは主治医にご相談してみましょう。

問診や家族への質問の他に、簡単な認知テストを行います。

内容は、足し算や引き算、物の名前や野菜の名前など応えるものです。

これは初診が1割負担で280円、3割負担で850円となっています。

また、脳の検査であるMRIやCT検査、血液検査を行います。

その場合は1割負担が2~4000円、3割負担で7000~1万円です。

より詳しい検査をする場合はこれよりさらに加算されます。

■介護サービス費
介護サービス費については、要介護度によって違いがあります。

要介護度は市の調査で決定します。

認知症の進行の度合いによって、身体はしっかり動いても重度の判定となる可能性があります。

■薬代
アルツハイマー型認知症については薬物療法があります。

1日分のお薬代はおよそ300~500円と言われています。

1か月分で考えると、1割負担で約2000~4000円、3割負担で約7000~1.3万円ほどになります。

高額介護サービス費を利用する

認知症になった、ならないに関係なく、介護サービス利用料は要支援・要介護によって利用限度額が設けられています。

ただ、認知症になってしまうと病気の進行が早い場合には、比較的早く重介護になる可能性があります。

介護費用の事前の準備が必要になるでしょう。

しかし、介護費用の負担を軽減してくれる高額介護サービス費という制度があります。

在宅介護では月平均3~5万円かかると言われているため、一般的な所得の場合は、負担の上限を約4.4万円越えた場合、超えた分だけ払い戻される仕組みとなっています。

高額介護サービス費について気になることがあれば、お近くの地方自治体に相談してみましょう。
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さまざまな人とコミュニケーションをとることは大切です

認知症になった場合、他の要介護高齢者と違うところは、専門病院への受診や検査、専門の薬代がかかることです。

介護サービスである通所介護(デイサービス)にも認知症専用のデイサービスがあります。

一般のデイサービスに比べると1割負担の方で300円程度高くなります。

認知症の進行はその症状によって段階的に進行したり、緩やかに進行したりとさまざまですが、家族の精神的負担は大きくなるでしょう。

症状が進む過程では目が離せないといった時期もありますので、ご家族の介護軽減のために介護サービスを利用する必要も出てくるかと思います。

認知症専用のデイサービスでは進行を緩やかにする目的のレクリエーションやアプローチを行っています。

ご本人の状況を介護スタッフと共有することでご家族の心の負担が軽減されるでしょう。

ご本人にとっても、家から出てさまざまな人とコミュニケーションをとることは、現状を保つことにもつながります。

また、介護専門スタッフに相談するなどして、介護サービスを有意義に利用しましょう。(執筆者:佐々木 政子)

「私、病気なの!?」認知症の高齢者に薬をのませる難しさ

父が急死したことで認知症の母(83才)を支える立場となった女性セブンのN記者(54才)が、介護の日々を綴る。今回は「薬」に関するエピソードを明かす。 今、振り返れば、母は若い頃から薬の服用に抵抗感をもっていた。「薬は重病人のもの」と思い込んでいたのだ。それは高齢になっても変わらなかった。血圧などの薬が処方されると、「ちゃんとのんでます」と言いつつ──。

「血圧が下がらないな。薬、ちゃんとのんでますよね?」。2013年、母が認知症と診断されたばかりの頃、かかりつけ医が首を傾げた。私は「はい、たぶん…」と答えたが、当時の私には母の薬を気にする余裕はまったくなかった。父の急死のショックも手伝い、母には妄想、暴言、抑うつなどの症状が一気に噴出。まだ認知症の知識が浅かった私は、散らかった部屋や腐りものがいっぱいの冷蔵庫にも手をこまねいていた。

 そんな中で通院は唯一、癒しがあった。医師と話すと肩の力が抜けたし、調剤薬局では顔なじみの薬剤師さんがいつも明るく声をかけてくれた。母が処方されているのは血圧、骨粗しょう症、認知症の薬の3種類、1日3錠。今どきの高齢者としては少ない方らしい。それでも母は毎回、

「え~っ!? 私、病気なの? どこも具合悪くないのに」

 と、判で押したように騒ぐ。

「お薬をきちんとのんでいるから具合が悪くないのよ」と、薬剤師さんがなだめる脇で私は「ちゃんとのんでね」と、1か月分の薬の大袋を渡すだけ。ときどき電話で確認すると、「薬? のんだわよ!」と即答する。それでよしとしていた。 しかし、やっぱりのんでいなかった。母の独居が始まって半年以上過ぎた頃、意を決して冷蔵庫掃除に挑むと、庫内最上段に大量の薬袋を発見。

 のみ忘れの隠蔽か、断固のまない意思表示か。私は愕然として冷蔵庫を見つめた。

◆風邪にはうどんとみかんがいちばんいいよ

 思えば母は昔から、医者や薬に頼らない人だった。戦前に生まれ、体も丈夫だったせいか、薬は重い病人のものと思っているらしい。私が小学生の頃には、風邪程度で病院に連れて行かれることは、まずなかった。悪寒がして今夜あたり高熱が出そう…というときは、熱々のうどんとみかんと麦茶をたっぷり。熱めの風呂にサッと入り、首にタオルを巻いて寝かせられる。夜中に大量の汗をかき、翌朝はすっきり気分がよくなっていたものだ。

 大人になってからはこんなこともあった。私が出産を控えた正月の三が日に、夫がインフルエンザになったのだ。当時タミフルなどの治療薬はまだなく、休日診療をしてくれた医師が切々と諭した。「解熱剤で熱が下がっている間に卵かけご飯を食べ、体を清潔にしてひたすら眠ってください。薬でなく、自力で菌をやっつけるんですよ!」

 知っているようで“目から鱗”だった。母がやっていたのもこれだ。すぐに母に電話をすると「生卵は消化に悪いから、うどんに卵を入れて煮なさい」とさらに指示が来た。

 こんな母だから、言われるままに薬をのむことに抵抗があったのかもしれない。

 でも今は、3種類とも必要な薬だ。4年前、サ高住への転居を機に、介護保険で服薬援助を導入した。毎日ヘルパーさんが服薬を確認してくれる。すると認知症の症状が落ち着いて生活意欲が増し、血圧も安定。新居の環境のよさも大いに影響していると思うが、母の健康の一端を支える薬の力を改めて感じるのだ。

「新型うつ」は病的な「自分大好き」が原因だった!

根拠のない自信がありすぎる。相手の都合や気持ちは眼中にない。プライドが傷つきやすい。ホンネで話せる友だちがいない。イラッとするとツイッターでつぶやく……あなたのまわりにも、こんな人はいませんか? いま、自分のことしか考えられない「自分大好き人間」が急増しています。そんな彼らの心理メカニズムを徹底解明したのが、心理学者、榎本博明先生の『病的に自分が好きな人』。本書の一部をダイジェストでお送りします。

「うつ」には2つのタイプがある

うつになりやすい性格として、昔からよく知られているのが、執着気質だ。執着気質とは、何ごとも徹底的にやらないと気がすまない、凝り性、几帳面、責任感が強い、生真面目でいい加減なことができないといった性質をさす。 従来は、このような生真面目で責任感が強く、ものごとがうまく進まなかったり、問題が生じたりすると、何とかしなければと一生懸命に頑張り、それでもうまくいかないと自分を責めるといったタイプがうつになると考えられてきた。実際に、そのような傾向が顕著だった。

ところが最近では、責任感に欠け、思い通りにならないとすぐに投げ出し、人のせいにして攻撃する他罰的なタイプの人物が、落ち込んだとか傷ついたといって休みをとったり、うつの診断を求めたりするケースが増えてきたことが話題になり、新型うつとか現代型うつとかいわれている。

従来型が人のためにきちんと責任を果たさなければと思うあまり追い込まれていくのに対して、現代型は思い通りにならない自分をもてあまし、何とかしてくれと周囲に助けを求めるかのように落ち込みや傷つきを訴える。いわば自己中心的な感じのするうつだ。従来主流だったうつが、真面目で責任感の強いタイプのうつだとすれば、最近増えてきたうつは、依存的で甘えの強いタイプのうつということができる。

仕事や勉強がうまくいかないとき、自分が悪いと思い、自分が何とかしなければと思うよりも、だれかが何とかしてくれるべきだと思い、何とかしてくれない人が悪いと考える。職場で思うような評価が得られないと、もっと頑張らなくてはと思うよりも、評価する立場の上司に対して批判的になる。自分が落ち込んで、仕事に前向きになれなくなったのも、そんな上司の責任だといって攻撃する。自責型のうつではなく、他人を責めるタイプのうつといえる。

ちょっとしたことで傷つき、キレる

うつになりやすい人が自分大好き人間だというと、意外な感じがする人がいるかもしれない。だが、ものごとが思い通りにいかないときに、自分のやり方が悪い、自分は無能だ、自分の努力が足りないなどと自分を責める従来型のうつと違って、段取りをちゃんと整えてくれない周囲が悪い、自分を評価してくれない上司が悪いなどと他人のせいにするところに過剰な自己愛が読みとれる。

自分かわいさのあまり、何でも他人のせいにして自分の傷つきを防ごうとするのである。うつになるのも自分を守るひとつの戦略なのである。自分大好き人間のうつは、自責の気持ちによるものではなく、責任を転嫁し、同情を誘い、手心を加えてもらうためのもの、特別扱いをしてもらうためのものとみなすこともできる。

このタイプには、ちょっとした他人の言葉に過敏に反応し、傷つくという特徴もみられる。

情緒不安定で、感情的に動揺しやすいため、ミスを指摘し注意されたり、期待したような評価が得られないと、ひどく落ち込み、あたかも自分の全人格を否定されたかのように、怒りを爆発させたりする。ミスを注意した側からすると、逆ギレとしか言いようのない反応になる。だが、本人が傷ついたのは事実であり、落ち込んでいるのも事実なのである。つまり、周囲からすればあまりに調子のよいうつということになっても、本人が傷つき落ち込み苦しんでいるというのも事実であり、そこに対応の難しさがある。


■榎本博明
心理学博士。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、大阪大学大学院助教授などを歴任。現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演などを行う。 主な著書に、『病的に自分が好きな人』(幻冬舎新書)、『薄っぺらいのに自信満々な人』『「上から目線」の構造』(日経プレミアシリーズ)、『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)、『「過剰反応」社会の悪夢』(角川新書)、『モチベーションの新法則』(日経文庫)、『<自分らしさ>って何だろう?』(ちくまプリマー新書)などがある。

自殺、妄想…危険度高まる「高齢者のうつ」 認知症との違いは?

 社会の高齢化に伴って増加している高齢者のうつ病。年齢のせいだと見過ごされたり、認知症と間違われたりして受診につながりにくいことも。自殺によって死に至ることもある病だけに、適切な治療を受けることが大切だ。

 高齢者のうつ病は、高齢者人口の10~15%程度はいると考えられている身近な病気だ。老年期うつ病とも呼ばれ、ほかの年代のうつ病と区別されることがある。症状や治療法など基本的には共通しているが、高齢者特有の誘因や症状があり、それに伴って治療のアプローチが異なることもある。

 高齢者のうつ病は高齢になって初めて発症した場合と、過去にうつ病になり、高齢になって再発した場合とに分けられる。うつ病はストレスなどによって脳の働きに問題が起きて発症するとされる。代表的な症状は「抑うつ気分」で、明らかな誘因や理由がなくても気分が落ち込み、空虚感や絶望感などが現れて、それが長期間持続する。

 真面目で几帳面な性格の人ほどストレスをためやすく、うつになりやすいと言われている。しかし高齢になって初めて発症した場合、性格の影響は少ない。順天堂大学順天堂越谷病院メンタルクリニック教授の馬場元(はじめ)医師はこう話す。

「高齢者のうつに大きな影響を与えるのは、加齢による脳の変化です。動脈硬化などによって脳の血流が悪くなると血管障害を起こしやすくなり、それがうつの直接の原因になる可能性があります。実際に高齢で発症したうつ病の患者さんの脳を調べると、高い確率で隠れ脳梗塞が見つかるという報告もあります」

 脳の変化に加えて高齢者特有の心理・社会的要因もある。高齢になると、次々と「喪失体験」を経験しやすい。親やきょうだい、配偶者、同世代の友人との死別、定年退職や子どもの独立など役割の喪失、さらに身体機能の喪失もある。目が見えにくい、耳が聞こえにくい、以前のようにからだが動かないなど身体機能の低下を感じたり、病気にかかりやすくなったりもする。

「喪失体験は誰でも経験するものです。しかし加齢による脳の変化によって柔軟に対応しにくくなり、うつ病を発症しやすくなるのです」(馬場医師)

 喪失体験を経験しても、かつては大家族で暮らしていたり、近所づきあいがあったりして、周囲のサポートを得られやすかった。しかし近年は高齢者世帯の増加などによって、孤立しやすい。こうした社会環境も、一因といえる。

 服用している薬の副作用で、うつ状態になることもある。ステロイドやインターフェロン、抗がん剤、抗エストロゲン剤などの服用でうつ状態になることが知られているが、循環器系や消化器系など、より一般的に使用される薬でも、うつ状態が引き起こされることもある。高齢者は服用している薬が多くなりやすいため、「ある薬を飲み始めたらうつ症状が出た」という場合は注意が必要だ。

 また、中高年女性に多い甲状腺機能低下症は、疲れやすい、意欲・集中力・食欲の低下など、うつ病と似た症状が表れる。この場合は、甲状腺機能低下症の治療をすることで、うつ症状も改善するが、合併しているケースもある。

 高齢者のうつは、症状の特徴もある。慶応義塾大学病院精神・神経科学教室教授の三村將医師はこう話す。

「若い世代のうつ病は、軽症で適応障害に近い病態であることも多いですが、高齢者のうつ病は、症状が本格的な傾向があります。抑うつ気分が強く、自責感があり、自殺のリスクも高いのです」

 妄想傾向があるのも特徴だ。お金があるのにないと思い込む「貧困妄想」、悪いことがあると自分のせいだと思い込む「罪業妄想」、ささいな症状を重い病気だと思い込む「心気妄想」などがみられる。

「妄想性うつ病とも呼ばれ、最終的に『未来永劫この地獄にさいなまれるくらいなら生きていたくない、もう死ぬしかない』と思ってしまうのです」(三村医師)

 高齢者の場合、ほかの世代と比べて自殺が未遂に終わらず、実際に命を落とす割合が多いと言われている。

 高齢者のうつ病は認知症と間違われやすい。記憶力・判断力・理解力の低下など認知症のような症状があるうつ病、意欲や興味、関心の低下などうつ病のような症状がある認知症が存在するためだ。

 物忘れや活動性が落ちることにうつ病の人は過敏に反応するが、認知症の人はそのことを気にしていないといった違いがあり、診断の際に見極めるポイントとなる。しかし、合併しているケースやうつ病から認知症に移行するケースも少なくない。

「以前はどちらの病気かを見極めることが重視されていましたが、区別しにくい例もあり、どちらの可能性も考えて治療していくこともあります」(同)

 うつ病は治療によって改善することの多い病気だ。

「ほとんど毎日、一日中抑うつ気分が続く」「何事にも興味や喜びを感じない」「意欲や集中力がない」「食欲がない」「眠れない」などの症状があれば、近くの精神科や心療内科を受診して、治療を受けたい。治療がうまくいかない場合などは、高齢者の精神・神経の病気を専門的に診る医師がいる病院を受診するのも一つの方法だ。日本老年精神医学会のホームページで検索することができる。

 高齢者のうつは、受診率が低いと言われている。精神的な病気である自覚に乏しく、うつ病であることを否認する傾向があるためだ。精神科の受診に抵抗がある本人をどのように受診させればいいのか。前述の馬場医師はこう話す。

「『眠れていないのだから、それを治してもらおう』というように本人が自覚している『眠れない』『食欲がない』といった身体的な症状に焦点を当てて、受診を促すのがおすすめです」

 まずはかかりつけの病院で検査を受け、身体的な病気がないことを確認したうえで、精神科などを紹介してもらうと、抵抗がある人でも受診しやすい。(ライター・中寺暁子)

認知症の進行と関係 聴力と視力の衰えには積極的な対応を

和田秀樹【後悔しない認知症】

「コミュニケーションの機会を増やし、情報の入力と出力を途切れさせないこと」

 このコラムではたびたび述べてきているが、認知症の症状の進行を遅らせるためには、これを忘れてはならない。高齢者の場合、円滑なコミュニケーションを阻害する要因のひとつとして「耳が遠くなること」があげられる。この聴覚の不具合も認知症の発症、症状の進行と決して無縁ではない。

 子どもは「聞こえないから話してもムダ」、高齢の親は「余計な雑音が入らなくなってラク」などと軽く考えがちだが、これはいただけない。耳が遠くなれば、入力情報が少なくなり、脳を刺激する機会が減る。結果、「話す」「書く」といった出力の機会も減る。発語の回数や書く言葉を考える機会が減るわけだ。これも脳にとってはいいことではない。新しい情報を入力できなければ、当然のことながら「昔話」に終始することにもなる。いずれにせよ、「脳を悩ます機会」が減る。

これが脳の老化、認知症の進行を招くことになるわけだ。子どもは注意が必要だ。「玄関のチャイムに気づかない」「聞き返すことが多くなった」「テレビの音が大きくなった」「生返事ばかりしている」「首をかしげて話を聞く」「電話などで大きな声で話す」など、親にそんな変化が見られたらすぐに対応すべきだ。

 老化による聴力の衰えを改善することはむずかしいが、進行を遅らせることは可能だ。親に耳鼻科を受診させ、場合によっては補聴器の使用を考えたほうがいい。聴力の衰えはさまざまな問題を引き起こす。「正確なメッセージが伝わらない」「聞き間違いによるトラブルが生まれる」「本人も周囲も話す時の声が大きくなる」などだ。ほとんどの人間は声が大きくなると、本人の感情とは関係なく、声のトーンは怒りのニュアンスを帯びる。笑顔のまま大声で怒るパフォーマンスが可能な俳優の竹中直人さんとは違うのだ。耳の遠い親と声の大きな子どもの会話はしばしば親子ゲンカのようになってしまう。

となると、親子ともども会話がおっくうになり、次第にコミュニケーションの機会が減る。やがて「どうせ、わかってくれない」となり、親子関係に深い溝が生じてしまう。高齢者にとって補聴器は老いの象徴のように思えて、抵抗感が強いかもしれない。子どもは「もっと話がしたい」「わかり合いたい」という気持ちを伝えて優しく諭してみることだ。

 スムーズなコミュニケーションができないということは、人生をつまらなくしてしまう。ひと昔前と違い、補聴器の性能も飛躍的に向上しているし、装着しても目立たないものもある。高齢の親に機嫌よく生きてもらい、円滑な親子関係を紡ぐためにも補聴器の使用をポジティブに考えるべきだろう。

 また、聴力だけではなく、健康な視力もよき人生には欠かせない。視力が衰えれば、新聞や本を読むこともおっくうになる。前述したように、これも脳の老化を進行させることにつながりかねない。高齢の親が見づらそうにしていたら、白内障、緑内障の症状かもしれない。眼鏡に問題があるのかもしれない。速やかに眼科を受診させることだ。聴力にもいえることだが、視力の低下は外出時の事故などのリスクを高めることにもなる。だからといって外出を控えれば、脳の刺激の機会も減る。親の聴力、視力の低下に対して子どもが的確な対応をしなければいけない。

(和田秀樹・精神科医)

専門医に聞け! Q&A 中年期に飲まないのも認知症のリスク

Q:父が大酒飲みだった反動か、酒は飲みたくないし、酒飲みは嫌いです。最近、中年期にお酒を飲まないことも認知症のリスクになると聞きました。社会生活を送る上でも多少は飲んだほうがよいとも思いますが、主義を変えたほうがよいでしょうか。
(40歳・地方公務員)

A:そのデータは昨年、英国医師会雑誌に掲載されました。

 この研究は1980年代に35~55歳だったロンドンの公務員を対象として行ったものです。1985年から1993年にかけて飲酒量を調査し、その後、23年にわたって追跡調査しました。結果は、追跡期間中に認知症になった人が397人で、発症の平均年齢は76歳でした。

 そして、さまざまな因子を考慮して調整した結果、中年期に禁酒した人と週14単位以上飲酒した者は、週1~14単位で飲酒した者に比べ、認知症の発症リスクが有意に高かったというのです。

●認知症予防には運動を

 しかし、今回のこの研究は観察研究であるため、飲酒が認知症を減らす理由は導かれていません。また、中年期以前の飲酒も関係するかもしれませんが、その関係については明らかになっていません。

 ちなみに、ビール500ミリ㍑缶1本、日本酒1合(180ミリ㍑)、ウイスキーダブル1杯(60ミリ㍑)、焼酎0.6合(110ミリ㍑)が、それぞれ1単位に相当します。

 では、ご質問の方は今後、お酒を飲んだほうがよいのでしょうか。少量の飲酒は、体の健康に様々な効用があります。飲酒には酒飲みしか分からない楽しさがあります。しかし、飲みすぎが体に悪いことは分かりきっています。

 ご質問の方は、40歳まで酒を飲まないで生きてきたのですから、周囲の人も理解しているはず。今さら主義を変える必要もないでしょう。

 もし、主義を変えて飲むにしても、ウイスキーや泡盛、ウオッカなどの強い酒は、少量でも口腔がんや食道がんの危険があるので、水やお湯、ソーダなどで割って飲むのをお勧めします。

 なお、認知症予防には、ジョギングやウオーキングがよいでしょう。脳を鍛える一番の方法は運動です。

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牧 典彦氏(ほほえみクリニック院長)
自律神経免疫療法(刺絡)やオゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。ほほえみクリニック(大阪府枚方市)院長。牧老人保健施設(大阪市北区)顧問。いきいきクリニック(大阪市北区)でも診察。

「認知症の夫を私一人で介護…家族の会に入るべき?」58歳女性の相談に専門家が回答

Q. 認知症と診断された夫(60歳)を、私一人で介護しています。認知症の家族の会があると聞きました。入会した方がいいのでしょうか(58歳・女性)。

A. 認知症の方を介護しているご家族は孤独で、さまざまな悩みを抱えることが少なくありません。そのため家族同士が支え合い、交流を深めようと、全国各地で家族会が立ち上がっています。若年性認知症、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症など、病気別に特化した会もあります。

家族の会は、介護を担う家族の救いになることが少なくありません。その理由は、まず家族会を通して、認知症の方が利用できる制度や、医療、介護などの情報が得られること。そして同じ経験をした家族同士が気持ちを共有し、理解し合えること。

とくに若年性認知症は患者数が少ないですし、またレビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などは認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症とは症状も対応方法も異なるため、家族は戸惑ってしまうことが多々あります。そのような時に家族会でつらい気持ちを吐露したり、経験者から有益なアドバイスを受けることができれば、問題の解決につながります。

以前、若年性認知症と診断された夫を介護する女性が「夫がデイサービスに行ってくれない。あなたは認知症なんだからと言えばわかってくれるんでしょうか?」と相談に来たことがあります。夫に認知症だと自覚させてデイサービスに行かせるなんて、そもそも無理ですよね。しかし「それは意味がないですよ」という正論を伝えたところで、家族の救いにはなりません。相談に来られた方もそんな正論を求めていないんです。

でも「以前同じ思いをなさっていた方がいらっしゃいます。お話を聞いてみたいなら連絡を取ってみましょうか」とつなぐことはできます。家族の悩みにこたえられるのは家族だけという部分もあるんですね。

悩みにぶつかったときに利用して、「自分だけではない」と気が楽になることもありますし、社会保障に関しても家族会で情報を共有している場合が多く、どの病院がいいかとか親身になってくれる医師は誰とか、我々が持っていないような情報を持っていることも多いのです。

インターネットで探すとたくさん家族の会が出てきますが、トラブルを抱えているような会も含まれているので、地域包括支援センターや、若年性認知症であれば若年性認知症総合支援センターで情報収集をしてみましょう。地域の情報が得られるように地域密着型、病気別など、さまざまな視点で自分に合った会を探してみてください。

回答者プロフィール

来島みのりさん(東京都多摩若年性認知症総合支援センター管理者)
高齢者福祉総合施設マザアス日野副施設長。10年前に40代で若年期アルツハイマー病と診断された方と出会い、7年前に若年性認知症当事者と家族の会を立ち上げる。2016年11月より東京都多摩若年性認知症総合支援センター管理者。東京都小規模多機能型居宅介護協議会事務局長や、主任介護支援専門員の講師なども担っている。

俳優のブラッド・ピットも公表した「人の顔が覚えられない」それは病気かも

春。出会いのシーズンに「人の顔が覚えられない」と憂鬱になるあなたは、「相貌失認」という病気かも。俗に「失顔症」ともいわれるが、俳優のブラッド・ピットが2013年に告白したことで知られるようになった。「相貌失認」について、大阪市の「上本町わたなべクリニック」渡邊章範院長(総合診療医)に聞いた。

「一般の人は、目・鼻・口といった顔のパーツの位置関係を、瞬時に判別・分類し、記憶しています。一方、『相貌失認』の人はこのような機能が低下しているために、顔での人の識別ができません。そのため、髪形や顔の形、ほくろの位置、体形や性格、においやしぐさなどの情報を総合的に捉えて、『この人は誰か』と見分けているのです」(渡邊院長)

 事故やケガ、脳の病気で起こる「後天性相貌失認」の患者や、人の区別がつかないほどの重度の患者は、本人も周囲も気付きやすい。しかし胎児期の脳形成の過程などで、人の顔をすばやく認識する機能が低下する「先天性相貌失認」は生まれつきのため、本人が無自覚である場合が多い。さらに家族や親友、頻繁に会う人については認識できるという軽度の人も多く、「相貌失認」は100人に1人程度の割合でいると推定されている。「隠れ相貌失認」は意外と多いのだ。

「映画などで、登場人物の顔を一度で覚えられない人や、接客業に困難を感じる人は、相貌失認の可能性があります」(渡邊院長)

 相貌失認かもしれない、と心療内科を訪れた場合、どのような診察を受けるのだろうか。

「まずは、本当に相貌失認かどうかを調べます。1つ目は、そもそも顔を見ているのか。病気と関係なく、人の顔を見るのが苦手、人の顔に興味がない、という人は意外と多いからです。2つ目に、記憶力全般の能力検査。3つ目に、他の病気ではないのか。統合失調症などの心の病気かどうかを調べます」(渡邊院長)

 その上で、相貌失認であった場合は、トレーニングを行う。先天性の場合、完治は難しいが、改善は十分可能だという。顔以外の情報や、顔のパーツの特徴で識別するクセをやめ、「目・鼻・口の位置関係」で識別できるように鍛えるのだ。

「当院では、映画を使ったトレーニングを行っています。なるべく特徴の少ない顔の役者に注目し、その人の『目・鼻・口の位置関係』をひたすら追いながら、繰り返し観賞します。英単語を覚えるのと同じで、繰り返し『覚えよう』と努力することで、改善が期待できます」(渡邊院長)

 自分が相貌失認かも、と思い当たる人は、まずは心療内科に行ってみてはいかが。

チェスは認知症の発症率を7割下げる 脳が若返るゲームとは

 寿命をまっとうしてコロッと亡くなるのは、理想だろう。しかし、軽度認知障害(MCI)を含めると、認知症の人は6年後に1000万人を突破するという。高齢社会の今、認知症は決して他人事ではない問題だが、どうせなら認知症にならずに過ごしたい。神経内科が専門で、「米山医院」院長の米山公啓氏が言う。

「認知症のひとつ、アルツハイマー病は、アミロイドβが脳に蓄積するのが主な原因といわれています。しかし、アミロイドβが蓄積されていても、アルツハイマー病を発症しなかったという報告があるし、初期の認知症が回復したという症例もあります。そういう人たちは、発症した人と何が違うか。大きな視点で考えると、人生の役割や目的でしょうが、毎日の生活でいうと、手先を使うゲームが役立っている可能性が高い。そういうゲームを行うことで、脳の神経細胞が結びつき、アミロイドβで障害された部分を補完するネットワークができますから」

 先日、妻の樹木希林さんの後を追うように息を引き取ったミュージシャンの内田裕也さんは、妻の訃報に触れて「人を助け、人のために祈り、人に尽くしてきたので、天国に召されると思う」とコメントした。その内田について歌舞伎役者の中村獅童は「プロデュース力がすごい」と別れを惜しんだ。2人とも生前は人に尽くす生活だったことがうかがえる。それが人生の役割だろうが、ゲームはもっと簡単で効果的だという。ちなみに希林さんの趣味は和裁と車の運転だった。

 クロスワードパズルをすると、認知症の発症率が4割下がるとされる。チェスの認知症抑制効果はさらに上回り、74%だったという。

「相手の手を推理して、先を読むゲームです。脳の情報に検索をかけることで、特に前頭葉が鍛えられます。前頭葉は加齢によって機能が低下する。そうすると、怒りを抑える力が弱まって、感情が制御できなくなります。つまり、キレやすい。麻雀や将棋などのゲームによって、前頭葉の機能低下が抑えられると、気持ちが穏やかなまま生活できる利点もあるのです」

 なるほど、麻雀が強い人は、自分の手牌が悪くても、相手に振り込まないように打ち回しがうまい。そうやって自分に流れが来るのをじっと我慢し、「ここぞ」というときにリーチをかけて勝負に出る。将棋もそうだろう。形勢が悪いからといって、飛車や角でガンガン突っ込んでは、相手の思うツボだ。対戦型のゲームに卓越している人は前頭葉の働きが抜群で、感情の抑制が利く。

「人生の役割というと大げさでしょうが、麻雀で卓を囲むには、自分のほかに仲間を3人集めないといけません。そのためには、スケジュールを調整したり、周りの人の仕事や家庭の事情を思いやったりすることも大切。根底に仲間意識があるので疎外感とは無縁です。そんな人には、役割や目的のようなものがあるはずです」最近、キレやすくなったなぁ……。そう思ったり、周りに指摘されたりする人は、麻雀や将棋などで前頭葉を鍛え直した方がいい。

■オンライン麻雀で認知機能アップ

 麻雀や将棋などはスマホやパソコンなどでもできる。電車内で楽しんでいる人もいるだろう。では、リアルで対戦するのとネットで対戦するのとでは、認知機能には違いがあるのか。

 ゲームソフト会社「シグナルトーク」は、日常的にオンライン麻雀ゲームをやっている男女484人を対象に脳の認知機能との相関関係を調査。ゲームをやっている人は、一般の人に比べて、「視覚性注意力」「短期記憶」「エピソード記憶」が上回っていて、年齢が高くなるほどそれぞれの数値が良かったという。 視覚性注意力は、物事を処理するときに視覚情報をチェックする能力。短期記憶は、パッと見て20秒ほど保持される記憶。エピソード記憶は、宣言的記憶の一部でイベントの記憶を指す。

 ゲーム会社の調査だけに多少バイアスはあるだろうが、その結果は6年前の日本早期認知症学会で発表されている。ゲームでも、一定の効果はあるとみていいだろう。 認知機能については、ネット上で測定できる「脳測」を使用。35歳以上を5歳区切りで分析したという。

早めの補聴器が認知症予防につながる? 聞こえと脳の関係を専門医が解説

高齢化が進む中、難聴者の数は増加している。一方で「難聴は認知症のリスク要因」という報告が発表され、関心を集めている。聞こえと脳の関係を理解することが、認知症予防の最初の一歩になるかもしれない。

 2017年の国際アルツハイマー病会議で、ランセット国際委員会が認知症のリスクに関する発表をおこなった。その内容は、「認知症のうち約65%は個人の努力では予防できないが、約35%は予防・修正が可能な要因により起こる」というものだ。35%の予防できるリスク因子は、糖尿病、社会的孤立、運動不足、うつ、喫煙、肥満、高血圧、難聴、15歳以下の低教育、の九つで、そのうち難聴が最も多くの割合を占める。つまり、認知症の予防できるリスクのうち、最大のリスクが難聴であるということだ。

 ランセットの報告によれば、中年期以降の難聴は、認知症の原因の9%を占める。しかし、これは難聴を予防すれば認知症のリスクを9%減らせるということにもつながる。

 加齢とともに、からだのさまざまな働きが衰えていくのは自然なことだ。目の機能が衰えて老眼になるように、足の筋肉が衰えて動きにくくなるように、耳の機能も低下し、聞こえが悪くなる。それが「加齢性難聴」だ。起こる年齢や症状の程度には個人差があるが、年をとれば誰にでも起こることといえる。

■加齢で有毛細胞や聴神経細胞が減る

 耳の中の内耳には「蝸牛」という音を感じる器官があり、蝸牛の中には音を感じ取るセンサーの役割を果たす「有毛細胞」がある。加齢により、有毛細胞が減ったり、壊れたりすることで、音を感じ取る力が低下して聞こえが悪くなる。また、蝸牛から脳に音の信号を伝える聴神経の細胞数も加齢により減少し、働きも低下するため、音の情報が正確に伝わりにくくなる。さらに、脳の働きも衰えることで、届いた信号を音や言葉として理解する能力も低下する。このように、いくつもの機能の低下が重なり、難聴の症状が起こると考えられる。

 では、難聴と認知機能の低下にはどのような関係があるのか。その因果関係や詳しいメカニズムはまだ解明されていないが、いくつかの仮説が報告されている。

 一つ目は、難聴により音や言葉が聞こえにくくなることで聴覚を必要とする日常のさまざまな活動が減少し、認知機能の低下がもたらされるという考えだ。例えば、会話が成り立たないことなどによりコミュニケーションが減ったり、家に引きこもるなどして活動性が低下したりすることが認知機能を低下させる要因になるといわれている。

 二つ目は、難聴と認知機能の低下が、共通の原因で起こるという説だ。加齢性難聴は、聴神経細胞の減少や障害が原因となるが、認知機能の低下も同じように脳の神経細胞の減少や障害により起こる。難聴と認知症は同じメカニズムで起こる病態であり、難聴がある人ほど認知機能も低下しやすいと考えられる。

 三つ目は、難聴があると「聞き取る」ことが困難になり、脳の働きの多くが聞くことに費やされるために、ほかの認知的作業が減り、それが機能の低下につながるという考えだ。

 北里大学医療衛生学部教授の佐野肇医師はこう話す。

「一つ目の要因が最も大きいと考えられます。耳を通して脳に届けられる音や言葉の刺激、社会的活動やコミュニケーションによる脳への情報量や刺激はとても大きく、それが減ることが脳にとって最も良くない影響をおよぼすのでしょう」

■難聴はうつとの関係が深い

 また、防衛医科大学校病院耳鼻咽喉科の水足邦雄医師は、「難聴を放置することによるリスクは認知症以外にも考えられる」と指摘する。

「難聴はうつとの関係も深いとされています。私たちの研究でも、難聴があると将来的にうつ病を発症するリスクが高まるという報告が得られています。ほかにも、生活習慣病や運動機能への影響などの研究が進められています。それらはまだ明確なデータはありませんが、長期的には難聴は健康にさまざまな影響をおよぼす可能性が考えられます」

 現在のところ、加齢性難聴の治療法はない。しかし、補聴器を適切に装用することで聴力を補うことはできる。

「運動しないと筋肉がやせていくのと同じように、聞こえない状態が長く続けば、脳の『言葉を聞き分ける働き』が衰えていきます。機能が低下する前に補聴器で聞こえを補い、言葉が脳に届くようにすれば、聞き分ける能力は維持できますが、長く放置して働きが衰えてしまってから、それを取り戻すのは容易ではありません。難聴になったら、なるべく早く補聴器を装用することが望ましいでしょう」(水足医師)

 一方で、聞こえの悪さを感じて耳鼻咽喉科を受診しても、「医師に『補聴器はまだ早い』と言われてしまった」という声も聞かれる。それについて、佐野医師は「珍しいことではないかもしれない」という。

「補聴器相談医は増えつつありますが、全ての耳鼻咽喉科医が補聴器の専門知識を有するわけではないのが現状です。また、『いつから補聴器を使うべき』という厳密な基準はないため、補聴器の装用については医師によって考えが異なることもあるでしょう」

 もし、医師に「まだ早い」と言われても、生活の中で聞こえが悪いことを不便に感じるのであれば、もう一度別の補聴器相談医を受診するか、最初の耳鼻咽喉科で聴力検査をしたのであれば、その結果を持参して認定補聴器専門店に行くことをおすすめしたい。

「現段階では、まだ『早く補聴器をつければ認知症を予防できる』とまでは言えませんが、難聴が認知症のリスクであることは報告されていますし、できることがあるならしたほうがいいでしょう。聞こえは悪いよりも良いほうがコミュニケーションもスムーズになり、生活も豊かになるはずです。聞こえをよくすることには、健康に生活を楽しむための多くのメリットがあると考えます」(佐野医師)

◯北里大学医療衛生学部教授
佐野 肇医師

◯防衛医科大学校病院耳鼻咽喉科
水足邦雄医師

腸と脳は密接に関係 「腸内環境」改善が認知症予防につながる可能性

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のタイトルは「腸内環境を整える」。

【ポイント】
(1)認知症と腸内細菌の関連性が注目されている
(2)腸と脳は密接につながっている
(3)腸をもっといたわることが大事

 最近、認知症と腸内細菌の関連性について書かれた記事が複数の新聞に載りました。朝日新聞は2月8日付の朝刊で「認知症、腸内環境と関連?」という見出しで掲載しています。

 記事は国立長寿医療研究センターなどのチームが発表した研究結果を紹介したもので、論文が英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載されたそうです。

 研究チームは2016年3月から1年間、同センターのもの忘れセンターを受診した患者について、腸内細菌の構成割合や認知症の有無を調べました。

 有効なデータが得られた60~80代の128人分を解析したところ、認知症と腸内細菌の構成割合には強い関連があることがわかったというのです。

 腸に常在する「バクテロイデス」という菌が腸内細菌の3割以上を占めた人たちは、バクテロイデスが少なく、そのほかの菌の割合が多い人にくらべて、認知症の傾向が低く10分の1だというのです。

 腸内細菌の構成割合と認知症発症の因果関係はわからないものの、腸内細菌の作る物質が脳の炎症を引き起こす可能性が考えられるというわけです。研究にあたったもの忘れセンターの佐治直樹副センター長は、「食習慣との関連も解明して食事などを通じた(認知症の)予防法の開発にもつなげていきたい」と話しています。

 もとより腸と脳はホルモンや自律神経を通して密接につながっています。緊張するとお腹が痛くなったり、逆に便秘をするとイライラしたりします。脳の異常が腸に、腸の異常が脳に影響するという相互の関係があるのです。

腸内には数百から千種類以上の細菌が生息していて、その菌は三つに大別されます。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌。大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌。そして善玉菌でも悪玉菌でもないバクテロイデス属などの日和見菌です。

 善玉菌は消化吸収を助けて免疫力をアップさせるなど、健康維持にプラスに働きます。一方、悪玉菌は腸内の内容物を腐敗させます。こうした菌のバランスにより、腸内環境が形成されているのです。そのバランスは善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%というのが理想だと言われていますが、年齢や食事の内容で構成比が変化します。

 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は脳における神経伝達物質やその前駆体を産出すると見られています。認知症になった高齢者では善玉菌が激減し、悪玉菌が増加していることがわかってきました。これまで私は多少、腹具合が悪くても腸内環境に無頓着だったのですが、もっと気にした方がいいのかもしれません。

 善玉菌を減らさないためにはまずは食事の内容を吟味することですが、活性生菌製剤を飲むという方法もあります。ビオフェルミン、ラックビー、ビオスリーといった薬です。あるいはサプリメントに目を向けると、乳酸菌生産物質というものもあります。いずれにしろ、腸をもっといたわることが大事なようです。

親の認知症 “任意後見”等で子が財産整理を進めることも可能

 親の財産の整理手続きを難しくするのが、認知症だ。川崎相続遺言法律事務所の小林賢一弁護士がいう。

「携帯電話や購読している新聞は、親の契約を子供が勝手に解約することは法律的にはできません。手続きを代行する旨を記した本人の委任状が必要ですが、認知症を発症すると、有効な委任状を作成できない場合もある」

 こうした状況では親名義の銀行口座も事実上凍結される。最悪の事態に備えて積極的に活用したいのは、「任意(成年)後見」と「家族信託」という2つの制度だ。

 任意後見は、あらかじめ家族の1人を後見人に指名しておけば、認知症が進んだ段階で後見人が家庭裁判所に届け出て親の財産を管理できる制度だ。後見人になった子供は親の口座などから預金を引き出す権限を持つが、使途は裁判所が選任した後見監督人(弁護士など)のチェックを受ける。

「事前の公証役場への相談は子供だけでも可能で、必ずしも弁護士や司法書士といった専門家を介する必要はありません。相談の際に印鑑登録証明書と本籍記載の住民票を持参してください。公証役場での契約の段階では、親も行く必要があり、それぞれの実印を持っていきます」(弁護士の遠藤英嗣氏)

 後見開始の申し立ての際は医師の診断書を求められるため、子供が取得した上で、家裁で手続きする。子供が任意後見人となれば、委任状なしで公共料金、新聞等の解約ができるようになる。

 家族信託は、親が元気なうちから家族に資産の一部を信託し、運用・管理を委ねる制度だ。契約を通じて信託した財産は、受託者である家族に管理を委ねられるため、内容次第で家族は広い財産処分権を持つというメリットがある。

 弁護士など専門家への相談は子供だけでもできるが、契約書の作成は親子が立ち会うことになる。

「契約では信託の目的や財産を託される子の権限、財産から出た収益の帰属先などを定める必要があるため、弁護士や司法書士など専門家に依頼する必要があります。

 その後、公証役場で公正証書の作成に進む。不動産の名義変更と信託口口座の開設をしますが、これらは受託者である子供が進められます」(同前)

認知症の開始は「もの忘れ」だけではない、早期の受診を

 認知症は今や多くの人の関心事だが、一方で曖昧で偏ったイメージや漠然とした不安を抱く人も多い。一般的によく知られるアルツハイマー型認知症以外にも、レビー小体型、血管性、前頭側頭葉変性症ほか多くの種類があり、それぞれ特徴がある。きちんと知っておかないと受診のタイミングを見逃し、症状に翻弄されることにもなるのだ。

 認知症は早期診断、早期治療が大事と語るシニアメンタルクリニック日本橋人形町院長の井関栄三さんに聞いた。

 高齢者の認知症といえば、もの忘れがひどくなって同じ質問を繰り返し、何もできなくなる…というのが一般的なイメージかもしれない。しかし、必ずしもすべての認知症がもの忘れから始まるわけではない。

◆認知症にも種類がある。老化との違いにも注意を

「認知症は、さまざまな原因で脳の器質的障害が起こり、生活に支障を来した状態のこと。この“原因”となる病気によって症状や進行具合もかなり違うのですが、その種類も数多いのです。

 現在、日本でいちばん多く、よく知られているのが、記憶障害で始まるアルツハイマー型認知症。次いで多いのが幻視が特徴的なレビー小体型認知症、脳血管障害が原因の血管性認知症。この3つは三大認知症と呼ばれています。

 このほか脳の前頭葉、側頭葉が萎縮する前頭側頭葉変性症なども知られていますが、他にも多くの認知症があります。記憶障害はほとんどの認知症に共通しますが、アルツハイマー型のように初期にわかりやすく表れるケースだけでなく、レビー小体型や前頭側頭葉変性症のように初期にはあまり目立たない場合もあり、“もの忘れ”だけを認知症の指標にすると受診のタイミングを逃すことにもなります」

 また“老化”との違いもわかりにくく、家族が異変と気づけないこともある。

「認知症は少しでも早く治療を始めることが大切なのです。治療といっても投薬だけではなく、本人や家族が病気を理解し、生活上の注意や工夫を行っていくことが重要。医師とともに本人、家族がこれらに取り組むかどうかで、後の経過は大きく変わります」

 認知症の種類によって治療の方法は違う。きちんとした検査で認知症の種類を鑑別し、適切な治療を行うためにも、少しでも早く受診することが望ましいという。

「そのためにも身近な家族が早く“気づく”ことが重要。主な認知症のわかりやすい初期症状を挙げますが、3か月前と比べて、症状が顕著になってきているようなら受診をおすすめします」

前頭葉の老化による高齢者の頑迷さにどう立ち向かうか【後悔しない認知症】

「人のいうことを聞かなくなった」

 高齢の親を持つ子どもがよく口にする言葉だが、たしかに高齢者の特徴のひとつが「頑迷」である。「頭が固くなる」といってもいいだろう。

 これは認知症と診断された高齢者はもちろん、そうではない高齢者にも多かれ少なかれ見られる傾向といえる。医学的に考えれば、加齢とともに表れる脳の萎縮が招く症状である。頭が固くなってしまうと、何であれ、ものごとに対してこれまで自分が培ってきた世界観、価値観でしか判断を下せなくなってしまう。さらに自分が経験したことのない事象や新しいものに対して興味を抱いたり、学習したり、順応したりする能力も劣化する。

 困ったことに、頑迷さが増した高齢者は自分が理解できないことに対して、なかなか素直に「わからない」といえなくなる。だから、子どもはもちろん、まわりの人間に教えを請うたりしないし、自発的に調べて理解しようとすることもなくなる。その結果、新しい情報をインプットする機会がどんどん減っていってしまうのだ。

■想定外の体験で脳をほぐす

「年だからしかたがない」と子どもが放っておけば、高齢の親が認知症のようになったりする。すでに認知症と診断されている親の症状はさらに進むことになる。

 これは脳の前頭葉の変化と密接な関係がある。前頭葉は記憶や感情、意欲などをつかさどる部位なのだが、この前頭葉は40代、50代から少しずつ縮小しはじめると考えられている。つまり「脳の老化」として最初に表れるのが「前頭葉の老化」であり、これは「感情の老化」といってもいいのだ。残念なことに加齢による前頭葉の老化は脳科学的にも証明されていて、どんな人間も避けることはできない。

 だが、「諦めるしかないのか?」と問われれば答えはノーだ。前頭葉を使い続けることで機能の老化を防ぐことは可能なのである。

「どうすればいいか?」。答えは「ルーティン以外のことをやらせる」である。前頭葉は、意欲や感情のコントロールのほか、想定外のこと、新しいことへの対応をつかさどるのだが、「ルーティン以外」への対応で使われる部位でもある。だから、混乱をきたすレベルの重めの認知症でない場合、親が高齢であっても「初対面の人に会う」「行ったことのないエリアを旅する」「初めての飲食店に入る」「新しいファッションを試みる」「新しいジャンルの音楽を聴く」「読んだことのない著者の本を読む」など、その人にとって新鮮な体験を数多くさせることだ。それが親の前頭葉を使わせることになるのである。

 言葉を変えれば、これまでの自分の世界観、価値観に「一石を投じる体験」をさせるといってもいい。とくに同じ話、耳当たりのいい話しかしない人ではなく、考え方が違ったり、自分とはまったく異なる生き方をしてきた人と会話したり、読みなれていないジャンルの本、主義主張が正反対の人の本を読む機会を増やしてあげることも有効だ。

 そうしたチャレンジは「親の脳を悩ませる」ことだが、それが固くなった脳を「ほぐす」ことになり、結果として「脳の老化」を遅らせることにつながる。「人のいうことを聞く耳」も長く持つということだ。

(精神科医・和田秀樹)

忘れた記憶が「めまい薬」で回復する? 認知症治療に光明か

年齢を重ねるごとに誰もが低下していく、記憶力。最近、物忘れがひどくなったと心配になることはありませんか。

東京・巣鴨で取材をすると、60代の女性は「すごく忘れっぽいですよ。何かを取りに来ようと移動した途端、何を取りに来たか忘れちゃうことがあります」と話す。さらに、80代の夫婦に3日前の朝食は何だったかと聞くと、「3日前というと何日?朝ごはんは…」と記憶をたどる妻に対して夫は「おかゆ」と答えたが、「おかゆは昨日です」と指摘されてしまった。

そんな皆さんに朗報だ。
東京大学や北海道大学、京都大学などの研究チームが、世界で初めて「忘れた記憶を復活させる実験」に成功したというのだ。記憶力の回復に効果が認められたのは、ある意外な薬だった。それは、めまいの治療薬として使われている「メリスロン」。

このメリスロンについて、スエヤス調剤薬局 文京店の島田淳史管理薬剤師は、「メニエール病などのめまいなどで使われる薬。どこの薬局でも用意はあると思う」と話した。記憶力回復の効果を聞いたことがあるかと聞くと、「なかったです。驚きました」と語った。
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「忘れた記憶を元に戻せることが分かった」臨床応用を検討

実験は、20代を中心とした38人の参加者に128枚の写真を見せて、1週間後にどれだけ記憶できているかをテストする方法で実施。メリスロンを飲んだ場合と飲まなかった場合で、正解率を比較した。 薬を飲んだグループでは、脳内の情報伝達に関わるヒスタミン神経が活性化し、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率が上昇したという。

北海道大学大学院薬学研究院の野村洋講師は、「成績が悪いグループの成績が、おおよそ2倍の正解率になることが分かりました。忘れた記憶、忘れたようにみえた記憶であっても、実際には脳の中に痕跡、何らかのものが残っていて、(記憶を)元に戻せることが分かったこと。これが一番画期的でした」と話す。

記憶回復メカニズムの解明で、アルツハイマー病など認知症の治療薬の開発が期待される。 厚生労働省によると、認知症の高齢者数は年々増加していて、2025年には最大で730万人に達する見通しだ。京都大学の高橋英彦准教授によると、「様々な病気で記憶が思い出しにくい患者さんはおられますので、そういう方々に今後実際に臨床応用ができるのか検討している」ということだ。
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「処方目的」以外の服用はNG

倉田大誠キャスター:
効果が期待できるということで皆さんの関心も高いと思いますが、今回の実験はあくまでも医師管理のもと行っているということです。このメリスロンの使用上の注意を一部抜粋してご紹介します。 例えば、高齢者については生理機能が低下しているため量を減らすことなどが呼びかけられていますし、妊婦や小さいお子さんへの投与は、「安全性は確立していない」と記載されているんです。メリスロンは処方薬ですので、処方された目的以外では使用を避けるようにしてください。

認知症になると金融機関の口座も凍結、親の株を売却するには?

 親が亡くなったとき、銀行口座が凍結されることはよく知られているが、親が「認知症」になったときも、銀行預金から証券取引、年金が振り込まれる口座まで凍結され、介護にかかる費用や医療費、生活費さえ引き出せなくなることはほとんど知られていない。

 金融機関は個人財産の保護のため、口座の名義人が認知症と判断されると、家族が勝手に引き出せないようにするのだ。本人が窓口にきても断わられるケースもある。

 親には資産があるのに、子供は親の介護にその資産を使えず、生活苦に直面する──そんな本末転倒な悲劇を避けるために知っておきたいのが「成年後見」と「家族信託」という2つの制度だ。いずれも親の判断力がしっかりしているうちに、将来、認知症になったときの資産管理を信頼する家族などに委ねると決めておくことができる制度だが、一長一短がある。

 大まかにいえば、「成年後見」制度は裁判所から認められた後見人(家族など)が親の資産を管理する制度で、「財産の保全」を目的としているため、使途を厳しく管理され、制約が大きい。一方、「家族信託」は親が自分の財産の一部を家族に信託し、運用・管理してもらうもの。信託契約の内容次第で家族(受託者)は運用に広い裁量権を持つが、扱える資産に制限がある。

 親が上場株を持っていたとしよう。認知症が進んで証券口座が凍結され、その間に相場が暴落したら子供たちは相続財産を減らしてしまう。値下がりしても指をくわえて見ているしかないのか。なんとか売却できないだろうか。

 こういう場合、成年後見制度は向かない。家族が後見人に指名されていても、親の株を売るのは難しいからだ。まこと法律事務所の北村真一弁護士は次のように解説する。

「民法には、後見人は『財産の管理に関する事務』を行なうとしか書かれていませんが、成年後見制度は財産の保全を目的としており、任意後見人である家族が親の保有株を売買することを、後見監督人が認めないはずです。勝手にやってしまうと後見人の解任理由にもなりうる」

 後見制度では親の保有株は“塩漬け”になるのだ。

 一方、親が認知症になる前に「家族信託」を契約していれば、株の売買は不可能ではない。

「家族信託は信託法で、受託者(子供)が資産を『管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する』と定めている。子供が親から有価証券の信託を受け、株の売買ができる契約を交わしていれば、保有株の売却だけでなく、売ったお金で子供が新たに株を買って運用することもできます。リスクの低い運用であれば、損が出ても受託者の責任を問われることはないでしょう」(同前)

 とはいえ、株式相場が不安定な現在の状況下では、認知症になる前に、親に株取引を手じまいしてもらう方が家族は安心できるというものだろう。

親の認知症対策 「成年後見」と「家族信託」の使い分け方

 認知症700万人時代を迎え、「老親がボケるリスク」は、どの家族にもある。“その時”に親の資産が凍結されてしまうのを防ぐために「成年後見(任意後見)」「家族信託」という制度があるが、その普及は進んでいない。「どこに相談すればいいかわからない」「手続きが難しそう」──そんな不安をいち早く解消し、迫り来るリスクに備えなくてはならない。

 いまや65歳以上の15%、85歳を超えると5割以上が認知症になると推計されている。親が認知症になった時、家族には思いがけないリスクが降りかかる。

 認知症が進行して金融機関の窓口で「判断能力がない」と判定されると、口座を事実上凍結され、家族も、本人さえも引き出せなくなるケースがある。介護費用などに親の資産を使えなくなるのだ。

 本誌・週刊ポストでは、親の認知症への対策として、「成年後見(任意後見)」と「家族信託」の2つの制度があることを紹介してきた。「成年後見(任意後見)」は親の判断能力があるうちに家族の1人を後見人に指名(契約)しておき、認知症が進んだ段階で後見人が家庭裁判所に届け出て親の財産を管理する制度だ。

 後見人になれば親の口座などから預金を引き出す権限を持つが、その使途は裁判所が選任した後見監督人(司法書士や弁護士など)に厳しくチェックされる。

周囲の対応で変わる 都会と田舎で認知症の進行が違うワケ

【後悔しない認知症】

「田舎と比較すると都会の認知症患者は進行が速い」

 長年、多くの認知症の患者さんを診てきたが、そのことを実感した。都会、とりわけ「山の手」と呼ばれるエリアでは症状の進行が速いのだ。私はかつて同時期に東京の杉並区にある病院と茨城県鹿嶋市の病院で認知症の患者さんを診ていたことがある。そこでの経験がそれを実感させたのだ。原因はいくつかあるのだろうが、地域の認知症に対する意識の違い、子どもの対応の違いが深く関わっているのではないか。

 都会では親の認知症を隠したがって外出を控えさせる。田舎は自由に外出させる。誤解を恐れずに言えば、認知症の高齢者に対する考え方が偏狭か、寛容かの違いである。それは生活している地域の人間関係の濃密度が影響しているのではないか。都会では同じマンションの住人同士が顔を合わせても軽いあいさつをする程度。共用部分の郵便受けにも部屋番号だけしかなく、住人の名前も記されていない。個人情報の問題があるとはいえ、これでは人間関係が希薄になるのは当然だ。

■周囲の対応、理解によって大きく変わる

 一方、田舎はまったく違う。どこに住んでいるか、職業は何か、家族構成はどうかなど、まわりの人間は知っている。さらに都会とは違い住民構成における高齢者の比率が高い。だから、まわりは「ちょっとはボケているけど」と寛容な態度で接する。安心して外を歩かせることができるし、道に迷っても誰かが気づいて連れ戻してくれる。トラブルが生じれば助けてくれる。

 さらに認知症であっても多くの高齢者が長年培ったスキルを生かして農業、漁業の担い手として働いているし、商店を営んでいれば店番なども立派にこなす。労働力として機能しているのだ。

 つまり、田舎の高齢者は濃厚な近隣との人付き合い、周辺とのコミュニケーションによって、日々新たな情報や刺激を得ることができるわけだ。こうした暮らしが脳の萎縮を遅らせるのだろう。つまり残存能力を駆使してQOL(生活の質)を急激に下げずに暮らすことができるのだ。

 いまはデイサービスの普及によって、都会でもそれなりにコミュニケーションの機会は増えたが、認知症の高齢者の症状やQOLは、住んでいる地域の環境、住民の意識、子どもたちの対応によって大きく左右されることをよく認識してほしい。

 障がいがある三つ子の父親であり、自然栽培農業の普及活動を進める佐伯康人氏はその著書「あの青い空に向かって」のなかで述べている。

<「こういう子もいるんだ」ということを知ってもらいたい。現実を正しく見てもらうことで障がい者に対する理解者が増え、困っていれば手助けしてくれる人が増える>

 認知症の高齢者と障がい者を同列に論じることはできないが、子どもが世間体を気にするあまり認知症の親の行動をいたずらに制限してしまうことは避けるべきだ。もちろん、危険な徘徊をするようなケースはそのかぎりではないが……。

 超長寿社会に突入した日本では、これからも認知症高齢者の割合は増加する。だからこそ、子どもや周囲には正しい理解と対応が求められる。無理解な言動や視線を感じても、臆することなく「親は認知症ですが、それが何か?」というくらいのスタンスをとるべきなのである。

(精神科医・和田秀樹)

認知症700万人時代に…「家族教室」で備え

認知症介護、孤立しない…患者も自分も大切にする知恵

 2025年、全国で認知症を患う人の数が約700万人に増えると推計される。国が今年1月に発表した認知症の国家戦略では、「認知症の人や家族の視点」を重視し、当事者の立場に立った支援を柱の一つに掲げた。

病気の見通しを知り、患者の思いに気づき、そして自分自身を大切にする――。患者に寄り添う家族が自ら学ぶための「家族教室」プログラムを国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)もの忘れセンターが、今月から普及させる。

本人の思い

 認知症の妻(83)は、背骨の圧迫骨折で上半身にコルセットを巻く。介護の必要度は最も重い要介護5。

自分では歩けない。昨年から、夫(82)に抱えられて椅子にもたれると、「つぶれちゃう」「足を踏んじゃう」と新たな妄想を口にするようになった。夫は途方に暮れた。

 家族教室で、50年余りの結婚生活や、妻の性格、好きな事、嫌いな事、こだわりなどを細かく書き出す「ひもときシート」を使った。孫好きの妻は、乳児期の3人を順に娘から預かり、おんぶひもでおぶってあやしていた。

夫はハッとした。妻は、コルセットの締めつけ感をおんぶひもと混同し、孫をおんぶしたつもりでいたことに気づいた。

 成人になった孫たちの写真を食卓に飾り、名前と年齢を記して「みな大きくなったよ」と繰り返すと、妄想はやんだ。「一つ一つの行動の裏に意味がある。気がつけてよかった」と、夫は語る。

多様な仕掛け

 家族が抱える困難の多くは、認知症の基本的な知識の不足、病状がどう進むか分からない、先の見通しが立たないことなどによる。

 家族教室の「入門コース」(発症後3~5年が目安)では、認知症の進行に伴って起きる日常の問題や症状を説明。

薬の適切な使い方や、生活を支える制度やサービスの仕組みなどの知識を、医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーらから詳しく教わる。

 だが、介護環境や介護への意識、意欲、サポート力は家族ごとに大きく異なる。一律の知識や単純なノウハウだけでは対応しきれないことが多い。

 このため、「基礎コース」(同5~7年が目安)では、家族が実感を持って理解できるよう、「ひもときシート」などを使った体験型の講座を多く設けた。

 事例の検討も具体的だ。ある認知症の患者が部屋で排せつし、服で拭いた。患者の心理を学び、参加者の間で話しあううち、「本人はトイレの場所が分からない。迷惑をかけたくないから自分で拭いた」という可能性が分かってくる。

 自分のいら立ちが、「合わせ鏡」のように相手に伝わり、妄想や徘徊(はいかい)を起こす原因につながったケースを、自らの介護を見直すきっかけにした人もいる。

 介護相手の現状を箇条書きにして整理することも役立つ。

介護地図

 基礎コースの「私の介護地図」も好評だ。関係する人や施設を書き出し、線の種類や太さを利用して、介護を支援してくれる人たちとの関係や生活をしやすくするための要素などを書き込んでいく。

 認知症の父(70)を介護する主婦(43)は、作成した「地図」を、信頼するケアマネジャーに見せた。祖母の世話、2人の子育て、離れて暮らす妹との気持ちのすれ違い、口だけを出す叔母、態度がよそよそしくなった資産管理の相談相手ら複雑な人間関係の間で疲れ切っていた。

地図のおかげで、生活の全体状況を的確に理解してもらえた。夫も介護に協力的になった。

 基礎コースは年間計8回。毎回1時間半で、約20人が参加する。無料。2012年度に本格的に始まり、先月まで効果の検証と改良を繰り返して完成させた。

「二つのコースを続けて学ぶ家族が大半。家族は診療時に聞きにくいことを聞いたり、自分の位置を確かめたりする。病院側は、患者や家族の目線に立った診療が行える」と、もの忘れセンター長の櫻井孝さんは語る。

 参加者同士が互いの状況を共有し、意見交換も多いため、強い仲間意識も芽生える。

「自己嫌悪に陥っても、みんなのちょっとした言葉が、あったかい。無理強いしない、上滑りしない関係がある」「『そういうこと、ある、ある』と、泣いて、笑って、同情して、共感する。雑談の中に『答え』がある」

 開始時から教室に通い続ける80歳代の妻がしみじみと言った。「人は老い、人は病む。それでも人生は生きるに足るものだと、そう思えるようになりました」

「障害年金」「生活保護」という選択【実録・「うつ」と「アルコール依存」:その10】

お互いがそれぞれの疾患に影響する可能性が高いといわれている「うつ」と「アルコール依存」。

アルコールの摂取は「うつ」を悪化させることが指摘されていますが、アルコール依存症が原因で「うつ」を発症してしまうケースや、その逆に「うつ病」が原因でアルコールにのめりこんでしまうケースも多くみられるようです。

また、2013年に自殺をしたアメリカの人気俳優ロビン・ウィリアムズさんも、長年のあいだアルコール依存症と重度のうつ病に苦しんでいたことが知られています。

このシリーズでは、実話をもとに「うつ」と「アルコール依存」、そしてそれらが原因で家庭内に起こるケースも多いDVやモラハラ、共依存といった問題について掘り下げていきます。

(前回からの続き)
妻との別居をきっかけに断酒を決意し、約1年ぶりに就職活動をはじめたSさん(仮名・当時32歳)。しかし、Sさんは度重なる不安やパニックの発作のため、なかなか働きはじめることができませんでした。

そんなSさんに、心療内科の医師は「精神障害者保健福祉手帳(いわゆる「障がい者手帳」)」を取得することを勧めるのでした。

◆医師は協力してくれるというが…
心療内科の医師がいうには、Sさんの現在の状態は「抑うつ」をはじめとするさまざまな症状が重なったものであり、特定の精神疾患にはカテゴライズできないとのことでした。

しかし、医師は「障がい者手帳を取得するために」、便宜的に病名をつけることはできるといいます。

手帳を取得して「精神障がい者」と認定されれば、障害年金を受給できたり、税金が免除されたりという措置を受けられる可能性もあり、働けないことから経済的に困窮しつつあるSさんにとって、医師の提案は心を動かされるものでした。

医師は、Sさんのように精神疾患によって働けない人にとっては、「障害年金」をはじめとするこれらの制度がセーフティネットとして機能しているともいいました。

◆生活保護の受給を勧められる
しかし、Sさんは悩んだ末にこの提案を断りました。Sさんは、自分が「精神障がい者」とカテゴライズされることに、どうしても違和感があったのです。

次にSさんが知人から勧められたのは、生活保護の申請をすることでした。いまのSさんの状態であれば「生活保護を受給できる可能性は高い」と、その知人はいいました。

生活保護を勧められたときは、Sさんも「もう、それしかないかも」と思ったそうです。しかし、窓口で「もし、冷たくあしらわれたら…」「怒られるのではないか」という不安のため、どうしても福祉事務所に行くことができませんでした。

また、Sさんは心のどこかで「きっかけさえあれば、自分は働ける」とも考えていたのです。
(次回に続く)

※本文は実話をもとに脚色を交えて構成しています。実在の人物・団体とはいっさい関係がありません。

<執筆者プロフィール>井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。

ニオイが消えたら黄信号 認知症は嗅覚を鍛えて予防・改善

日本で認知症の6割を占めるアルツハイマー病を発見したドイツ人医師の誕生日にちなみ日本認知症予防学会が制定した。この病気が発見されて100年を超えるが、いまだにその原因も根本治療法も確立していない。わかっているのは、においが消えた数年後にアルツハイマー病を発症し、嗅覚を鍛えると症状が改善、または発症を防ぐ可能性があることだ。その研究の第一人者で日本認知症予防学会理事長でもある鳥取大学医学部の浦上克哉教授に話を聞いた。

「アルツハイマー病になるとにおいがわからなくなると気付いたのは、患者さんの冷蔵庫の中を見てから。腐った食材が異臭を放っているのに気付かない。そんな方が何人もいたのです。20年以上前のことです」

 その後の研究でこの病気は脳の「海馬」という記憶をつかさどる部位の神経細胞に、アミロイドβやリン酸化タウというタンパク質のかけらが蓄積されて神経原線維が変化し、神経細胞の連結部が消失することが判明。浦上教授らは、嗅神経により多くのタンパク質のかけらが集積していることに注目し、「アルツハイマー病は海馬より先に嗅皮質が障害を受け、神経原線維変化が神経細胞から神経細胞へと伝わり、海馬、新皮質へと拡散する」と考えて研究を進めている。

「嗅神経は鼻で吸い込んだにおいの粒子を電気信号に変えて脳に伝えます。そのため、外界から悪い刺激も多く受けます。一方、アミロイドβは神経細胞死をもたらす“悪の存在”なのでなく、炎症や毒物、栄養不足から神経細胞を守ることがわかってきました。つまり、普段ならアミロイドβはほどよく産生され、ほどよく溶解されることでその役割を果たしているのですが、そのバランスが崩れたときに嗅神経を含めた脳神経を障害する、と考えたのです」

 ならば、嗅神経を鍛えれば脳神経を維持できるのではないか。浦上教授らは実際にアルツハイマー病17人を含む28人の高齢者に、アロマセラピーの効果を検討したという。

 28日間、毎朝、ローズマリーカンファーとレモンの精油を、夜は真正ラベンダーとスイートオレンジの精油の芳香剤を各2時間嗅いでもらったところ、その期間中は抽象的思考力が改善され、実験後は徐々に元の状態に戻った。

 同様の研究を特別養護老人ホームに入居する高度アルツハイマー病患者65人を含む77人を対象に行ったところ、高度アルツハイマー病患者のタッチパネル式の認知症評価法の点数がアップした。

「この結果から、においの機能を鍛えるとアルツハイマー病の悪化を防ぐだけでなく認知機能を向上させる可能性があることがわかりました。しかも、高度アルツハイマー病患者さんの脳をCT撮影すると、脳が萎縮して多くの神経細部が死滅していることがわかります。それでも、認知機能が向上しているのはアロマセラピーが脳神経を再生する可能性があるということではないでしょうか」

■昼夜で香りを変える

 一般的に脳神経は成長してからはほとんど新生しないとされる。しかし、嗅神経は例外だ。

 マウスでの実験では海馬の一部と脳室下帯などで新生することがわかっている。側脳室で生まれた神経細胞は移動し、既存の神経回路に取り込まれる。つまり、アロマセラピーによる嗅神経への刺激は、脳神経の新生のキッカケになる可能性がある。

「昼夜でにおいの種類を変えたのは、朝は交感神経を刺激して体を活動的な状態にして記憶力を強化することが必要だと考えたからです。逆に夜は副交感神経を優位にし、不眠改善や不安軽減を期待しました。目的に合ったにおいを探すため、多数の文献から各6種類の候補を選び、それぞれ第1、2位をブレンドにしました。その方が効果を期待できるからです」

 認知症の患者は時間認知が衰える。結果、一日の生理リズムが崩れ、深夜の徘徊などが起こる。アロマセラピーはその改善も期待できるという。ちなみに現在のアルツハイマー病の研究の中心は「病気の原因は脳神経に蓄積するアミロイドβだから、その量を減らせばいい」とする「アミロイドβ仮説」だ。しかし、それを基にした創薬研究はことごとく失敗している。

「それは対象患者と投与のタイミングの間違いに過ぎず、仮説自体は正しいと考えています。より軽度の認知機能低下の状態(軽度認知障害=MCI)から早期にアミロイドβを除去すれば結果は違ったと思います」 ただ、アミロイドβが過剰産生や少量溶解に陥る原因にも目を向け、それを改善する生活習慣に変える必要がある。

「たとえば睡眠です。質の良い十分な睡眠はアミロイドβタンパクの分解を促進し神経細胞死を防ぎます。香りと睡眠の改善である程度予防や改善はできるのではないか、と期待しています」 根本治療法がないからと認知症をあきらめてはいけない。早期発見できれば打つ手はある。

認知症と診断されたら肝臓の検査を…肝性脳症の疑いあり

 認知症だと思っていたら、実は“治療可能”な肝臓病――。日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野の神田達郎准教授に話を聞いた。

 肝臓病は一般的に、ウイルス、アルコール、肥満、薬物などの原因によって、「肝炎→肝硬変→肝がん」と進んでいく。

「ところが、肝硬変や肝がんに至っても、自覚症状がゼロの人は多い。別の病気で検査をしたら、血液検査の数値が悪く、精密検査で肝がんが見つかった、というケースはよくあります」(神田准教授=以下同)

 なぜなら、肝臓は「沈黙の臓器」だからだ。自覚症状が出てくるのは、相当進行してから。健診で「肝機能の数値が悪い」と言われても、症状はないので、病院に行かない人が珍しくない。

「そもそも、健診の数値の設定は緩め。厳しく設定すると、かなりの人が引っかかるからです。再検査と言われたら、思っている以上に肝臓病が進んでいると思うべき」

 自覚するかは別にして、肝硬変に進んでから徐々に出てくる肝臓病の症状は主に、黄疸、腹水、上部消化管出血などの出血傾向、感染症、そして肝性脳症の5つがある。このうち肝性脳症は認知症と非常に似通った症状であり、認知症と誤診されるケースが少なくない。認知症のガイドラインにも「認知症との鑑別が必要な疾患」と記載されている。

「肥満の増加から、アルコールを摂取しなくても脂肪肝炎を起こすNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)が増えており、認知症と肝性脳症の鑑別は特に注目されています」

 肝性脳症は、肝硬変による肝機能低下で、アンモニアが解毒されずに血中濃度が増加。肝臓や、その周辺にできた側副血行路という新生血管を介してアンモニアが全身に回り、脳に達して脳神経細胞機能が障害される。

 さらに、血中アミノ酸のバランスが崩れて神経伝達を阻害し、脳に影響を及ぼす。これらによって、「時間・場所が分からなくなる」「物の取り違え」「お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなどの異常行動」「眠りに陥りがちで、うとうとしている」などの症状が表れる。

「肝性脳症は症状の程度によって1~5度に分類され、認知症と似た症状が出てくるのは2度以降です。1度は“潜在性肝性脳症”といわれ、鑑別診断が非常に困難。この潜在性肝性脳症の20%が半年以内に2度へ進むとされています」

■肝臓病なら医療費助成制度もある

 かつては、肝性脳症を含む肝硬変の症状が見られたら、「余命数カ月」といわれた。ところが、治療は進歩している。

 一昨年には、肝性脳症によく効く薬が認可され、打つ手が早ければ症状が消え、再発もしにくくなった。

 だからこそ、重要なのは「認知症と診断され、肝性脳症が見逃されている」ケースを回避することだ。認知症を疑う症状が見られた場合、もし、肝機能の検査を長い間していないようなら、血液検査などで確認すべき。

「肝硬変のほかの症状についても、治療可能になっているものは多い。黄疸にはまだ治療薬はないですが、それ以外の腹水、出血傾向、感染症には、よく効く治療薬がある。肝硬変そのものの治療もかなり進んでおり、10年単位で寿命が延びる人もいる。加えて、新薬が毎年のように登場しているので、決して諦めないで治療を受けてほしい」

 なお、肝臓病は病態によってさまざまな医療費助成制度がある。肝臓専門医がいる医療機関の専門窓口や、住んでいる自治体の障害福祉担当窓口に相談するといい。

薬でも改善しない…がんやうつでも認知症と似た症状が出る

【後悔しない認知症】第2回

「親がヘン」↓「ボケた」↓「認知症」↓「治らない」

 高齢の親の変化を目の当たりにすると、その子どもの多くはこう考えてしまいがちだ。だが、「親のヘン」に何の疑問も持たずに認知症と決めつけてしまってはいけない。最近、テレビなどで認知症が盛んに取り上げられ、私自身首をかしげたくなるようなことを話す医者がいることも影響しているのかもしれない。

「物忘れがひどくなった」「ものごとの理解力が衰えた」「言動が変わった」といった症状の原因のすべてが認知症によるものとはかぎらないと知っておくべきだ。

「医者に診てもらったのによくならない」

 親が認知症と診断され、投薬を受けたにもかかわらず改善の兆しがないことに落胆する子どもの話を聞く。たしかに認知症そのものは治らない病気だが、妄想や大声などの症状は改善することも多い。だが、ケースによっては誤診の可能性も否定できない。なぜなら「認知症らしく思えても原因は違う」ことも少なくないからだ。

 認知症の症状は老化に伴う脳の変性が主たる原因なのだが、よく似た症状がそれ以外の原因によって引き起こされる。

 まず挙げられるのは、がんをはじめとしたさまざまな内臓疾患。がんでも異常行動は起こることがあるし、さまざまな疾患による薬の服用が異常行動を招くこともある。たとえば糖尿病の薬で血糖値を下げるとボケの症状をきたしたり失禁したりすることがある。「眠れない」からと安定剤を服用すると、記憶障害が生じたり昼間でも夢と現実の区別がつかなくなったりすることも珍しくない。高齢者にかぎらず体に不調を抱えていれば、誰でも多かれ少なかれ言動や生活態度に変化が生じる。それまで楽しんでいた趣味に興味を示さなくなったり、コミュニケーションがうまくいかなくなったり、ものごとに対して消極的になったりするのは当然である。

 とくに高齢者の場合、がんをはじめとした内科的病変に対する自覚症状への感度が鈍くなっているからまわりに不調を訴えたり、受診したりといった行動ができない。「自分のヘン」に気づかないのである。

■薬で改善しなければ誤診の可能性

 また「老人性うつ」を認知症と誤診されてしまうこともある。老人性うつの症状は認知症のそれと非常によく似ている。私は現在まで30年近く老年精神医学に携わり数多くの高齢者を診てきたが、うつ病が原因で言動や生活スタイルに大きな「ヘン」が生じたケースも少なくない。

「別の病院で認知症と診断されて薬を飲んでいるが症状が進んでいる」と子どもに連れてこられた患者さんを実際に診察し検査をしてみると、認知症ではなくうつ病と判明したりする。そこで認知症ではなくうつ病の治療を施したところ、症状が飛躍的に改善したケースも多い。

 高齢な親をもつ子どもは、とにかく「親がヘン」↓「ボケた」↓「認知症」という考え方を一度は疑ってみることだ。ろくに患者の顔も見ずに、マニュアル通りの検査だけで「はい、認知症ですね」と診断し処方箋を出しておしまいという医者には要注意だ。「認知症らしく思えても原因は違う」ということを忘れてはならない。

(和田秀樹/精神科医)

認知症外来で行われているケアがスマホの無料アプリで体験可に

 認知症外来で実際に行われているケアがスマホのアプリで体験できる。高齢者にも使いやすく、どこでも気軽に歌えるのがポイントだ。

 国立病院機構京都医療センター脳神経内科の外来で、認知症ケアとして実施されている音楽療法に基づいたアプリ『認知症外来の音楽療法』が、2018年にスタートした。

 懐かしい曲を、画面を見ながら歌えるサービスで、高齢者が聴きなれた音色のメロディーや、音程・テンポを調節できる機能を搭載。手本の歌が流れるガイドボーカル機能、歌詞の先読み機能、連続再生機能など、高齢者が使いやすく工夫されている。

 監修した同センター脳神経内科医長の中村道三さんによると、「2009年から認知症患者に音楽療法を実施しており、BPSD(行動・心理症状)に効果があり、生活の質も向上することを報告してきました。認知症予防にも役立つ可能性も期待されています」

 童謡、唱歌、歌曲、歌謡曲、民謡、フォークソング、シャンソン、カントリーソング、宗教歌などのジャンルが用意されている。また曲の途中、短いサイクルで次の曲に切り替わり、次々にたくさんの曲が歌えるのが特徴だ。これはフラッシュソングセラピーといい、独自プログラムにより、その人の嗜好に合った曲リストが作成され、記憶の中の懐かしい楽曲をランダムに、カードをめくるように提供される。次の曲へのワクワク感や知っている曲が歌える喜びなどで、脳や体に刺激が得られるという。

 アプリのダウンロードは無料。有料会員になると医師のカルテ機能や収録されたすべての楽曲が楽しめる。iPhone、iPad(iOS10.0以降)の端末で利用できる。

65歳以上でもリスク低下 認知症は生活改善で予防できる/医者も知らない医学の新常識

 認知症を予防するにはどうすればいいのでしょうか?

 認知症にはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など、多くの種類があります。いずれの認知症も心血管疾患、つまり脳卒中や心筋梗塞など、動脈硬化に伴う病気と関連があり、そうした病気の危険性が高まることで、同時に認知症の危険も高まることが分かっています。最新の脳のMRI検査では、脳梗塞などになる前の、脳の血流の低下や血管の異常などの、ごくわずかな変化を検出することが可能です。

 そうしたMRIを使用した研究によると、中年の頃に不摂生な生活をしていることが、その後の認知症のリスクを増加させることが分かってきました。さらに今年のアメリカ医師会雑誌に発表された論文によると、40歳以下というもっと若い年齢における不摂生も、将来の認知症につながるような変化を既に起こしていることが、確認されているのです。

 それでは、生活改善は認知症の予防に有効なのでしょうか? 同じ医学誌に最近発表された別の論文によると、65歳以上の年齢であっても、禁煙する、適切にダイエットする、魚や果物、野菜をしっかり取る、血圧や血糖、コレステロールを正常に保つ、といった生活改善によって、その後の認知症のリスクが低下することが確認されています。年齢はどうあれ、思い立った時に生活習慣を改善することが、認知症の予防として最も大切であるようです。

認知症と診断されたら肝臓の検査を…肝性脳症の疑いあり

 認知症だと思っていたら、実は“治療可能”な肝臓病――。日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野の神田達郎准教授に話を聞いた。

 肝臓病は一般的に、ウイルス、アルコール、肥満、薬物などの原因によって、「肝炎→肝硬変→肝がん」と進んでいく。

「ところが、肝硬変や肝がんに至っても、自覚症状がゼロの人は多い。別の病気で検査をしたら、血液検査の数値が悪く、精密検査で肝がんが見つかった、というケースはよくあります」(神田准教授=以下同)

 なぜなら、肝臓は「沈黙の臓器」だからだ。自覚症状が出てくるのは、相当進行してから。健診で「肝機能の数値が悪い」と言われても、症状はないので、病院に行かない人が珍しくない。

「そもそも、健診の数値の設定は緩め。厳しく設定すると、かなりの人が引っかかるからです。再検査と言われたら、思っている以上に肝臓病が進んでいると思うべき」

 自覚するかは別にして、肝硬変に進んでから徐々に出てくる肝臓病の症状は主に、黄疸、腹水、上部消化管出血などの出血傾向、感染症、そして肝性脳症の5つがある。このうち肝性脳症は認知症と非常に似通った症状であり、認知症と誤診されるケースが少なくない。認知症のガイドラインにも「認知症との鑑別が必要な疾患」と記載されている。

「肥満の増加から、アルコールを摂取しなくても脂肪肝炎を起こすNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)が増えており、認知症と肝性脳症の鑑別は特に注目されています」

 肝性脳症は、肝硬変による肝機能低下で、アンモニアが解毒されずに血中濃度が増加。肝臓や、その周辺にできた側副血行路という新生血管を介してアンモニアが全身に回り、脳に達して脳神経細胞機能が障害される。

 さらに、血中アミノ酸のバランスが崩れて神経伝達を阻害し、脳に影響を及ぼす。これらによって、「時間・場所が分からなくなる」「物の取り違え」「お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなどの異常行動」「眠りに陥りがちで、うとうとしている」などの症状が表れる。

「肝性脳症は症状の程度によって1~5度に分類され、認知症と似た症状が出てくるのは2度以降です。1度は“潜在性肝性脳症”といわれ、鑑別診断が非常に困難。この潜在性肝性脳症の20%が半年以内に2度へ進むとされています」

■肝臓病なら医療費助成制度もある

 かつては、肝性脳症を含む肝硬変の症状が見られたら、「余命数カ月」といわれた。ところが、治療は進歩している。

 一昨年には、肝性脳症によく効く薬が認可され、打つ手が早ければ症状が消え、再発もしにくくなった。

 だからこそ、重要なのは「認知症と診断され、肝性脳症が見逃されている」ケースを回避することだ。認知症を疑う症状が見られた場合、もし、肝機能の検査を長い間していないようなら、血液検査などで確認すべき。

「肝硬変のほかの症状についても、治療可能になっているものは多い。黄疸にはまだ治療薬はないですが、それ以外の腹水、出血傾向、感染症には、よく効く治療薬がある。肝硬変そのものの治療もかなり進んでおり、10年単位で寿命が延びる人もいる。加えて、新薬が毎年のように登場しているので、決して諦めないで治療を受けてほしい」

 なお、肝臓病は病態によってさまざまな医療費助成制度がある。肝臓専門医がいる医療機関の専門窓口や、住んでいる自治体の障害福祉担当窓口に相談するといい。
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