まだまだ自分は関係ないから......と思っている人ほど確認してみてほしいチェックリストが「ロコモティブシンドローム (ロコモ)」チェック。もし既にロコモになっていてもこれ以上進行させないために、対策を始めましょう。今ならまだ間に合います。
何もないところでつまずく、下りの階段が怖い……日常生活でこんなことありませんか? ■片脚で立ったまま靴下が履けない
靴下を履くには、股関節や膝関節をしっかり曲げないとできません。ふらついてできないようならバランス能力の低下や、関節の痛みが原因ということも。
■牛乳パック2本でも持ち帰るのが大変
転びそうで不安になったり手や腕が痛むなど、重い荷物を持つには、首や腰、背骨など全身のバランスを取らなくてはいけないので、意外と負担がかかります。
■家の中でなぜかつまずいてしまう
持ち上げているつもりの脚がちゃんと上がっていないなど脚の力の低下、背骨の症状からしびれが生じて感覚が鈍くなってうまく脚を運べなくなっている可能性も。
■階段は上りより下りが怖いし、不安
膝関節が悪い方は、階段は上りより下りの方が不安を感じたり痛みが出やすいそう。背骨の神経の問題で足元が不安定になっているということも考えられます。
あなたは何番に心当たりがありますか?1~7番に当てはまる場合はロコモ。注意が必要です 1:片脚立ちで靴下が履けない
2:家の中でつまずいたりすべったりする
3:階段を上がるのに手すりが必要である
4:家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
5:2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度)
6:15分くらい続けて歩くことができない
7:横断歩道を青信号で渡りきれない
8:外を歩いているとき、必ず何度もつまずく
9:階段は上りより下りが怖い、不安
10:昔より歩くのが遅くなった
11:膝がミシミシいう、膝を曲げるとボキッと鳴る
12:偏平足である
13:外反母趾 が悩み
14:捻挫の癖がある
15:高いところに洗濯物を干したり、高いところに荷物を上げられない
16:昔激しいダイエットをしていた
上のチェックリストに不安を感じる方、特に1~7番に1つでも当てはまればロコモの心配があります。
立つ・歩くなどの身体能力が低下した状態がロコモなのです。重い物を持ち上げる作業は、肘や肩、首を使うので その機能の問題が生じることで困難を感じます。
15分くらい続けて歩くのが辛く、しばらく背中を丸めて休憩すると歩けるようになる場合、腰部脊柱管狭窄症 で背骨の中の神経が圧迫されている可能性が。
また痛みなどはなくても、歩き方がおかしかったり、歩行スピードが遅くなる場合は何らかの機能障害が考えられます。8番以降については膝がミシミシするのは、痛みがなければ問題ないでしょう。
炎症などで関節の中に水がたまることもあるので、気になる場合は専門医へ。外でつまずくのは首や腰、背骨の神経の問題かもしれません。大人になってからの偏平足は専門医に診てもらうこと。
捻挫を繰り返す場合も検査を。外反母趾は歩けなくなることには影響しません。激しいダイエットは骨粗しょう症の要因に。骨粗しょう症になると高いところに荷物を上げられないことが。
40代でも油断できない「ロコモ」って知っていますか? \あなたもチェック!/
まず床から40cmの椅子や台に両腕を組んで腰かけます。両脚は肩幅くらいに広げ、床に対してすねが約70度になるようにします。
反対の脚で反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間キープします。この片脚テストができないとロコモ度1。
ロコモとは「ロコモティブシンドローム 」の略称で、立ったり歩いたりするための身体能力が低下した状態のこと。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。高齢者の問題と思われがちですが、高血圧など生活習慣病のある人は比較的若い頃からロコモの原因となる病気にかかりやすいことがわかってきました。すでにロコモである場合も進行させないことが重要。簡単なテストで確認しましょう!
教えてくれたのは……医学博士・整形外科医師 岩瀬美保先生 HITO病院回復期リハビリテーション病棟医長でありロコモアドバイスドクター。最先端ロボットやICTを活用し、健康寿命の促進に取り組んでいる。
2021年『美ST』9月号掲載 撮影/平林直己 モデル/仁香 ヘア・メーク/伴 まどか スタイリスト/菊地ゆか 取材/菊池 真理子 編集/佐久間朋子
読売新聞社
パーキンソン病 は、脳の神経細胞に異常が生じ、歩行障害や便秘、睡眠障害 など様々な症状が出る難病です。薬物療法で進行を遅らせることができ、2018年に早期発見・治療がしやすい形に診断基準が見直されました。(佐々木栄 )
発症前の兆候 この病気は、50歳頃から増え始め、患者は16万人に上ります。高齢化に伴い、今後さらに増えることが予想されています。 脳の神経細胞に異常なたんぱく質「α(アルファ)シヌクレイン」が蓄積することが病気の原因と考えられています。症状が表れる10年以上前から兆候は出始めています。 まず、消化器や嗅覚に関わる神経などに蓄積し、便秘や嗅覚の低下、就寝中に手足の激しい動きや寝言が出る睡眠障害、うつなどが起こります。
中脳の「黒質」にたまると、神経細胞が壊され、運動を調節する神経伝達物質「ドーパミン 」が不足し、手足のふるえなどの運動症状が出ます。 大阪大教授(神経内科学)の望月秀樹さんは「運動症状が出る前の症状を知っておくことが早期発見・治療につながります」と説明します。
2つ以上の症状で 早期の患者を確実に診断することを重視し、日本神経学会は18年、診療ガイドラインを改定しました。〈1〉動作が鈍くなる〈2〉静止時に手足がふるえる〈3〉筋肉がこわばる――の三つの運動症状のうち、〈1〉と、〈2〉か〈3〉が当てはまることをパーキンソン病と定義しました。
〈1〉には、声が小さくなる、歩くのが遅くなる、足が出にくい「すくみ足」などがあります。
〈2〉は、じっとしている時に片側の手が1秒間に5回程度ふるえることなどが特徴的です。
〈3〉では、手足の動きがぎこちない、表情がない、肩や腰が痛むなどが挙げられます。 旧基準には、バランスを崩して転びやすくなる「姿勢保持障害」が含まれていましたが、進行してから表れるため除外されました。
根治は困難ですが、なるべく早くドーパミンを補う薬物療法を始めることで、症状を抑えられ、生活の質を改善できます。 運動症状への即効性が高いのは「レボドパ製剤」です。服薬が長期化すると体が勝手に動く運動合併症が出たり、効き目が切れて体が動かなくなる時間帯ができたりします。 神経伝達の活動を促す治療薬「ドーパミンアゴニスト」もあります。
レボドパ製剤と比べて効き目は緩やかですが、運動合併症は起こりにくく、ゆっくり溶ける飲み薬や効果が長続きする貼り薬も出ています。脳内のドーパミン分解を抑える「 MAO―Bマオビー 阻害薬」なども使われています。 薬で十分改善しなくなると、「脳深部刺激療法」を検討します。電極や刺激装置を脳などに植え込み、脳の特定の部位を電気で刺激します。
狙った脳の部分を超音波で加熱して焼く「集束超音波治療」を実施することもあります。髪をそり、位置を固定する器具を頭にピンでとめる処置が必要ですが、頭を切開せずにすみます。 望月さんは「パーキンソン病と診断されても病気とうまく付き合い、長生きできます。進行に伴い症状は変わるため、主治医と相談し、最適な治療法を選びましょう」と話しています。
現在、要支援・要介護認定者は約621万人。ここ10年ほどで急増しており、その原因でもっとも多いのが、足腰の筋肉・骨・関節といった運動器の障害。つまり、立ったり座ったり、歩いて移動できなくなったりして自立生活ができず、何等かの支援や介護を必要とする人がもっとも多いということだ。高齢者問題として注目度の高い脳血管障害や認知症も上回る勢いで、要支援・要介護認定者の25%も占めている。
<img loading="lazy" class="wp-image-2461" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/8e5ea37d4bcac0a0ed97d3e0690ef05f.jpg" alt="円グラフ" width="500" height="512" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/8e5ea37d4bcac0a0ed97d3e0690ef05f.jpg 800w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/8e5ea37d4bcac0a0ed97d3e0690ef05f-293x300.jpg 293w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/8e5ea37d4bcac0a0ed97d3e0690ef05f-527x540.jpg 527w" sizes="(max-width: 500px) 100vw, 500px" /> ※出典:日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版より
運動器の障害のために、立ったり歩いたりなどの機能が低下している状態を「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群 通称:ロコモ) と呼び、進行すると要介護リスクが高くなるとして、「メタボリックシンドローム」(代謝症候群 通称:メタボ) とともに国を挙げて対策が叫ばれている。
とはいえ今、ごく普通に日常生活を送っている人が、“足腰の衰え”に気づくことは難しい。ましてや自分の足で歩いてトイレに行けなくなる状況など想像がつかないだろう。でも現実には、立ち座り、歩行などを担う足腰の筋肉や骨などの成長は20~30代がピークで、それ以降は加齢とともに衰える一方。歩くなどの生活活動をすることで機能を維持しているものの、活動量が減れば、その分どんどん低下する。
たとえば地球に帰還した宇宙飛行士や骨折などで寝たきりだった人が一時的にも歩行困難になることからもわかるように、足腰の筋肉を一切、使わなければ筋力が落ち切り、立ち上がって歩くことさえままならなくなるのだ。
<img loading="lazy" class="wp-image-2454 size-full" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/chart_habit_01.jpg" alt="骨量チャート" width="700" height="426" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/chart_habit_01.jpg 700w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/chart_habit_01-300x183.jpg 300w" sizes="(max-width: 700px) 100vw, 700px" /> ※出典:国立長寿医療センター研究所 NILS-LSA活用研究室データより
日常生活を振り返り、こんなことはないだろうか? まずは以下の7項目をチェックしてみよう。1つでも当てはまれば対策を考える必要がある。
□片足立ちの状態で靴下がはけない。
□家の中でつまづいたり、すべったりしやすい。
□階段を上がるのが億劫。手すりが必要。
□重い物の上げ下ろしなどの重い家事労働が困難。
□2kg(1リットルの牛乳2個くらい)の買い物を持ち帰るのが困難。
□15分くらい続けて歩くことができない。
□横断歩道を青信号の間に渡り切れない
※出典:ロコモチャレンジ!推進協議会『7つのロコチェック』より
「まず自分の運動器の状態を知り、今すぐに対策を始めることが大切。対策をすれば何歳からでも効果があります」と語るのは、医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長の石橋英明氏だ。
「運動器の衰えや疾患などによる機能低下はゆっくり進行するので、“年だから”と見過ごしているうちに歩けなくなるなどということは、大げさな話ではありません。まずはロコモ度テスト(※注) などで衰え具合を把握し、少しずつでも継続的な運動習慣をつけ、日常ではよく歩く、階段を使うなどの活動的な生活を心掛けましょう」(石橋氏)
肥満や低栄養にならないよう、適切な食生活も大切。また中年以降は、運動器の機能に関わる骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症などが発症しやすくなるので、初期の腰痛、膝痛、だるさなどを放置しないよう、早目の整形外科医への受診をすすめている。
※注:ロコモ度テスト 日本整形外科学科が考案したロコモティブシンドローム判定に使われる簡易テスト。たとえば高さ40cmの台(イスなど)に軽く腰掛けた状態から、勢いをつけずに片脚で立ち上がることができるかなど。この40㎝からの片脚立ち上がりができないと、ロコモの始まりともいわれる。
死ぬまで自分の足で歩くために… 「ロコモ度」をチェック! <img loading="lazy" class="aligncenter wp-image-2455 size-full" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo03.jpg" alt="立ち上がりテスト片足イラスト" width="800" height="698" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo03.jpg 800w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo03-300x262.jpg 300w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo03-619x540.jpg 619w" sizes="(max-width: 800px) 100vw, 800px" />
<img loading="lazy" class="aligncenter wp-image-2456 size-full" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo04.jpg" alt="2ステップテストの方法イラスト" width="800" height="626" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo04.jpg 800w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo04-300x235.jpg 300w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo04-690x540.jpg 690w" sizes="(max-width: 800px) 100vw, 800px" />
ロコモティブシンドロームの原因 ●加齢(骨は女性で閉経前後から、男性で60才頃から急速に低下。筋肉は男女とも40代以降毎年0.5~1.0%ずつ低下する) ●遺伝(筋肉や骨、関節などが衰えやすい遺伝背景がある) ● 運動器の疾患(骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症など) +●運動習慣の欠如 ● 日常生活での活動量の低下 ● 不適切な栄養摂取状態(肥満、痩せすぎ、低栄養など) 緑文字の三つは、心掛け次第で向上できることです。
今すぐ始めたい“死ぬまで歩き続ける”ための体操 ●ロコトレ
ロコモティブシンドローム予防のための運動はこの2つ。簡単そうに見えるが、ふだん運動習慣のない人などには意外に大変。バランスを保とうとして動く筋肉、心地よい負荷感を感じる筋肉など、ふだん使われない筋肉を意識することができ、同時に足腰の衰えを自覚できる。毎日続けることが大切だ。
【片脚立ち】バランス力をつける
姿勢をまっすぐにして立ち、片脚を軽く上げて1分間静止。転ばないように、すぐにつかまるものがある場所で行う。
<img loading="lazy" class="aligncenter wp-image-2457 size-full" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo05.jpg" alt="ロコトレ片脚立ちイラスト" width="800" height="729" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo05.jpg 800w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo05-300x273.jpg 300w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo05-593x540.jpg 593w" sizes="(max-width: 800px) 100vw, 800px" />
左右1分ずつ×3回/日
【スクワット】下肢の筋力をつける
1:肩幅より少し広めに足を広げ、つま先は外側に30度くらいずつ開いてまっすぐに立つ。 2:膝が足の人差し指の方向に向くように、またつま先より前に出ないようにして、お尻を後ろに引くように膝を曲げて体を沈め、元の姿勢に戻す。深呼吸をする速度で5~6回繰り返す。膝を傷めないよう90度以上は曲げないように注意。
<img loading="lazy" class="aligncenter wp-image-2458 size-full" src="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo06.jpg" alt="ロコトレスクワットイラスト" width="800" height="423" srcset="https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo06.jpg 800w, https://www.news-postseven.com/kaigo/wp-content/uploads/2016/09/locomo06-300x159.jpg 300w" sizes="(max-width: 800px) 100vw, 800px" />
5~6回×3回/日
イラスト/日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版より 取材・文/斉藤直子
タレント・みのもんた(76)が「週刊文春」の取材に応じ、パーキンソン病を患っていることや、番組終了、社長業の引退など、“終活”に向けて動いていることを明かした。 全盛期には、レギュラー番組16本、推定年収6億円を誇ったみのだったが、今年3月末に12年半続いた「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ系)の司会を降板し、レギュラー番組は現在、関西ローカルの「朝からみのもんた」(読売テレビ系・日曜朝6時半~7時)のみ。「秘密のケンミンSHOW」降板の理由を、みのが明かす。 「実は僕は、糖尿病が持病なんですよ。ところがそこへもってきて去年の暮れ、パーキンソン病を発症してしまってね」 ――それは公表されてない? 「誰も聞かないから。『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ系)でアップに映った時、目がうつろになっていた。それで調べたらパーキンソンとわかりました。それで僕、『ケンミンSHOW』をやめたんです。これは筋肉が硬くなっていく病気なんですよね。顔の筋肉にも影響出ますし。それから今、いい薬があるんですよ。その薬を朝・昼・晩飲んで、そういうことがあってね、そろそろ引退なんていうのはおこがましい話で、潮時っていう言葉を僕は使ってるんですけどね。文春さんにもね、この辺は書いてほしい。たくさんの芸能人の方たちいますよね。潮時っていうのを間違えないようにしてほしいです」 ――その後、「朝からみのもんた」を始められたのは? 「これはね、僕は立ちの司会しかやったことないんですけど、椅子に座っていいっていうことと、関西ローカルの番組なんですけど、ウォーミングアップをするにはちょうどいい番組なんだよ。それを1年間ということです。まだ半年、来年の春まで続きますけど」 ――1年というくくりなんですか。 「そうそう。やっぱりみっともないですからね。あんまり立ったり座ったりするのも不自由だなんていうのも良くないしね。いい薬があるから元気にはなると思いますけどね。今後に期待してますけど、でもあんまりしがみついてもね」 ――来年の春に終わった後、別の番組をされる予定は? 「今のところ番組の予定はないですね。僕がやっぱりこう、元気にしゃべれればいいけれども、今はなんていうか薬を飲んでいる最中でしょ。パーキンソンがどんな病気かっていうのは調べてもらえればわかりますけれど、やっぱり結構、階段の上り下りとかね、もちろん走るなんていうのは厳禁だし。今はベッドから起きたり座ったりしゃがんだり、寝たり寝返りを打つのも不自由になってきてるんですよ。介護用のベッドの購入を考えていて、実際見に行ったり、カタログを見たりしているくらい。そんな毎日です」 さらにみのは、自身が社長を務める水道メーター会社「ニッコク」の社長を引退することを明かした。 「12月26日がちょうど会社の80周年なんですよ。それを機に僕は社長を辞します」 ――会長になるということですか? 「かっこよく言えば会長ですよね。その後は、今まで僕と一緒に努力してきた人間が社長になります。新しい血をどんどん入れないとね。子供三人が取締役にいますが、身内は株主だけでもいいですからね。もちろん僕みたいに実力があれば、自分で勝ち取ればいいだけの話ですから。企業っていうのは、存続する力がなければ全く意味ありませんからね」 11月26日(木)発売の「週刊文春」では、みのが7年前に出会った40歳年下の”介護恋人”との“老いらくの恋”、彼女に贈与した1.5億円マンション、彼女との関係を語ったみのの50分インタビューなどを詳報する。
ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)という言葉を知っていますか?将来寝たきりになってしまうきっかけとなるロコモは、高齢者だけの問題ではありません。日本整形外科学会が2014年に実施した調査では、30代女性でも約半数の人がロコモに対して不安を抱えているという結果も出ています。自分のカラダの状態をチェックし、今からできる対策を知っておきましょう。(※1) ロコモとは? ロコモは、筋肉・骨・関節などの運動器に障害が起こり、立ったり歩いたりという機能が低下してしまう状態をいい、寝たきりや要介護の最大の原因となっています。日本人の平均寿命は、男性が79.55歳、女性が86.30歳と、世界的に見てもトップクラス。しかし、健康的に活動できる期間を考慮すると、寝たきりや介護が必要となる期間は男性で約9年、女性で約12年にもおよぶとされています。寝たきりになる期間を短くし、健康的に自立した生活を送るためには、早めのロコモ対策が必要です。(※2) カラダの状態が分かる!7つのロコモチェック! 自分はまだ大丈夫と思っていても、案外気付かないうちにロコモが始まっているかもしれません。その兆候は「日常生活の動作」から確認することができます。次の7つの項目に当てはまるものがないかチェックしてみてください。(※3) 1. 片足立ちで靴下がはけない 2. 家の中でつまずいたり、滑ったりする 3. 階段を上るのに手すりが必要 4. 家事のやや重い作業が困難(掃除機や布団の上げ下ろしなど) 5. 2kg程度(1リットルの牛乳パック2本程度)の買い物をして持ち帰るのが困難 6. 15分くらい続けて歩くことができない 7. 横断歩道を青信号で渡り切れない 1つでも当てはまればロコモの可能性があります。当てはまるものがなくなるよう、簡単な筋トレやスクワットなどから、トレーニングを始めてみましょう。 ・今すぐ読みたい→ 妊娠中に食べたい食材とつわりを軽減する工夫4つ https://cocokara-next.com/food_and_diet/food-you-want-to-eat-during-pregnancy/ ロコモ対策におすすめの食生活4つ 肥満やメタボは足腰への負担を大きくし、痩せ過ぎは骨粗鬆症や筋力低下の原因となるので、適切な体重を維持することが大切です。特に、若い女性の極端なダイエットや高齢者の低栄養状態は痩せ過ぎを招くので注意が必要です。(※4) 1. 五大栄養素を意識する カラダを動かすエネルギーとなる炭水化物や脂質、筋肉や血液の材料となるタンパク質、カラダのさまざまな機能を調整するビタミンやミネラルは五大栄養素といわれ、健康なカラダを作り運動器を正常に保つために欠かせません。 2. 主食・主菜・副菜を揃える 主食・主菜・副菜を揃えることを意識するだけで、自然と栄養バランスの良い食事に近づきます。主食(ご飯・パン・麺類など)からは炭水化物、主菜(肉・魚・大豆製品など)からはタンパク質、副菜(野菜・海藻類など)からはビタミン類やミネラル類を多く摂取でき、健康なカラダ作りに役立ちます。 3. 長いスパンで栄養バランスを整える 栄養バランスの整った食事を毎回食べるのが一番の理想とはいえ、きっちり続けていくのは難しいもの。1食で難しければ1日で、1日で難しければ1週間で、というように無理のない範囲で栄養バランスを整えていきましょう。例えば、朝食をとる習慣がない人は野菜ジュースを飲むようにしたり、パンだけの食事で済ませがちという人は牛乳や果物をプラスしたりとできることから対策をはじめるのもよい方法です。 4. サプリメントなどに頼りすぎない サプリメントや青汁など、便利なものもありますが、噛むことは、満足感をもたらし、脳の活性化にもつながります。栄養補助食品に頼りすぎず、できるだけ食事から栄養をとり入れるようにしましょう。ロコモ対策はこれからの超高齢化社会において、とても重要です。若いうちからバランスの良い食生活と、運動習慣を身に付けておきましょう。 【参考・参照】 (※1)ロコモチャレンジ!推進協議会実施/2014年度ロコモティブシンドローム生活者意識全国調査 (※2)厚生労働省 平均寿命と健康寿命をみる (※3)ロコモチャレンジ!ロコチェック (※4)ロコモチャレンジ!食生活でロコモ対策 「あすけんダイエット - 栄養士が無料であなたのダイエットをサポート(www.asken.jp)」 [監修:あすけん 管理栄養士] ※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
高齢化が進む日本では、介護が今以上に深刻な問題となることは明白である。先進国に共通する介護問題だが、日本のように介護を理由に離職したり、家庭が崩壊する危機に直面させられる国はないと大前研一氏は言う。 * * * 親の介護のために仕事を辞めざるを得なくなる「介護離職」の増加が懸念されている。 総務省の「就業構造基本調査」によると、2002年10月~2012年9月の10年間に前職を「介護・看護のため」に離職した人は105万4600人に達している。 また、厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%で、2012年時点で約462万人に上り、認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計されている。 つまり、65歳以上(約3079万人)の4人に1人が認知症およびその“予備軍”となる計算なので、今後は介護離職を余儀なくされる人が急増するとみられているのだ。 とくに共働き世帯の場合は、奥さんが義父母や自分の両親の介護や看護のために離職、もしくは正社員から契約社員やパートタイマーになって生活に窮したり、精神的・肉体的に疲弊したりして、家庭崩壊の危機に直面するケースも少なくない。だが、こんな国は世界で日本以外に見たことがない。 たとえばアメリカでは、親が要介護状態になったら躊躇なく施設を利用するだろう。自宅で介護することはほとんどない。 自宅で介護するにしても離職はあり得ず、働き続けて給料の半分くらいでヒスパニック系の介護士などを雇う。デンマークやスウェーデンなど北欧諸国の場合は、寝たきり老人や認知症の老人をケアする公的な施設やサービスが充実している。 中国のようにまだ大家族世帯が多い国では、家族の中の誰かが高齢者の面倒を見る。つまり、介護離職というのは、かなり日本独特の問題なのである。
引き続き昨年11月の「ロコモ チャレンジ! 推進協議」会主催の「第1回ロコモサロン」のリポート。経済産業省ヘルスケア産業課の鈴木隼人課長補佐の「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」という講演の続き。 前回までは、アベノミクスの日本再興戦略の最重要政策の1つとして、高齢者のロコモなどを克服し健康寿命を延ばすため、健康関連産業育成に取り組んでいるという話だった。 そのうえで経産省としては、法律など制度面での整備、サービスの品質の見える化、企業と健保組合など保険者に対して予防活動の投資対効果を明らかにして広めることなどを進めるとした。 「健康に関する新規事業を起こす場合、個々の事業計画を経産省に申請していただけば、私どもで厚労省に問い合わせて何かリスクがあるのかないのか、あらかじめ法律の適用の有無などを明らかにします」 また、予防活動の効果を広める取り組みについてもいくつかの実例を挙げた。例えば広島県呉市の健保組合が糖尿病患者に対して行った予防活動の効果について-。 「糖尿病が進むと透析のリスクもあるわけですが、そうしたハイリスクの方に保健師が定期的に面談や電話などで指導し、数年間で透析に移行した方はゼロだったという実績を上げています」 有名になったタニタのケースにも触れ、社員食堂の充実やさまざまな社員の健康作りに取り組んだ結果、1人当たりの医療費が9%削減された事例として紹介した。 海外でも、ハーバード大学の研究で、企業が従業員の予防活動に1ドル投資することで、平均して約3ドル分の医療費削減効果が得られたというデータも紹介した。 そして、鈴木課長補佐は「ロコモでもこのような投資効果を上げたデータを出していただきたいと思います」と呼びかけた。そういうデータを持って、経済団体などへも健康投資の重要性を訴えていくというのだ。 「ロコモ対策の重要性についてもPRのお手伝いをさせていただきたいと考えております」 また、新たな健康関連サービスを始める事業者に、支援の予算措置も考えていることも明らかにした(講演した昨年11月時点で10億円規模)。 「ヘルスケア産業課が窓口になりますので、そのような事業計画をお持ちの方はぜひご連絡ください」と、鈴木課長補佐は締めくくった。 政府の新しい健康サービス創出へのなみなみならぬ姿勢を感じる話だった。この後、いくつかの企業が取り組むロコモ関連事業について報告があったので、次回からリポートする。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
「パーキンソン病の外科的治療」について、倉敷平成病院倉敷ニューロモデュレーションセンター(岡山県倉敷市)の上利崇センター長が寄稿した。 機能的脳神経外科とは、脳や脊髄、末梢神経の機能が異常を来すことによって生じる症状に対し、外科的に治療を行う領域のことを言います。「機能的脳神経外科の治療最前線」の連載初回は、パーキンソン病に対する外科的治療をご紹介します。 パーキンソン病は大脳の下にある中脳(ちゅうのう)の黒質(こくしつ)と呼ばれる場所で、ドパミンを産生する神経細胞が減少するために起こる病気です。ドパミンが減少すると、震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛(きんきょうごう))、動作が遅くなる(無動・寡動(かどう))―などの運動症状が生じます。 現在、日本では千人に1人以上の方がパーキンソン病を患っており、今後、高齢化が進むとともに、さらに患者数が増えると見込まれます。治療の主体は薬物治療で、不足しているドパミンを補うために、L―ドパを中心とした薬剤による治療が行われます。 パーキンソン病の初期には薬がよく効いて大変すごしやすいのですが、薬物治療を始めて4~5年経過し、長期になると、半数の方は薬の効いていない時間が出てきたり(ウエアリング・オフ現象)、薬が効きすぎて、自分の意思に反して手足や体が勝手に動き出す不随意運動(ジスキネジア)が現れたりします。 これらの問題症状に対して、薬を工夫して内服してもうまくコントロールできない方、または消化器症状や精神症状などの副作用の出現によって十分な内服ができない方を対象に、外科的治療が検討されます。外科的治療には、脳深部刺激療法(DBS)、定位的脳手術(熱凝固、放射線、超音波)、移植再生療法(iPS細胞をもとにつくられた神経細胞の移植など)があります。
引き続き「ロコモ チャレンジ!推進協議会」主催の「第1回ロコモサロン」のリポート。経済産業省ヘルスケア産業課の鈴木隼人課長補佐の「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」という講演の続きだ。 政府の健康産業育成の方向性がよく分かる。 鈴木氏は、約38兆円の国民医療費の約半分が70歳以上の高齢者によって消費されている現状に触れ、ますます高齢化が進む中、医療費の支出を予防分野に振り向けることで総医療費を抑制し、各人のQOL(生活の質)も高めたいとした。その1例として糖尿病のケースを挙げてこう続けた。 「重症化すると週3回の透析と年間500万円の医療費が必要になります。その対象者は約10万人。その前段階で通院している方も約200万人で1人当たり年間数十万円の医療費がかかります。 このようにロコモも含まれますが、経年で重くなっていく疾病に関して、早め早めにその進行を止める予防が必要です。ですが、自らに食事制限などを課すやり方ではドロップアウトする方も多い。 そこで、楽しみながら予防活動ができるサービスがたくさん出てくるといい。そうした形で健康関連の新たな産業が創出されると考えております」 創出される市場規模は年間4兆円に上り、1兆円の医療費削減効果が見込まれ、ロコモ関連では、さらに介護費用の削減も見込めるという。 これは安倍晋三首相が進める第三の矢としての新たな成長戦略・日本再興戦略の「戦略市場創造プラン」の1つ「国民の『健康寿命』延伸」に該当する。 具体的には〈効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し、老いることができる社会に向け、健康寿命伸長産業の育成〉と書かれている。 「これは安倍内閣の重要政策ということです」と、鈴木氏は強調した。 政府の戦略市場創造プランには、このほかすでに始まっている一般用医薬品のインターネット販売やロボット介護機器開発なども挙げられており、全体の市場規模では現在の16兆円が2020年で26兆円、2030年で37兆円。 雇用規模としては、現在73万人が2020年で160万人、2030年223万人という試算も明らかにされた。 この後、鈴木氏は具体的にどのような取り組みをしているかについて話を進めた。それについては次回に報告する。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
いまやメタボに次いで“国民病”として認知されつつあるロコモ。その啓発に取り組む「ロコモ チャレンジ! 推進協議会」主催の「第1回ロコモサロン」が昨年11月に東京で開かれた。ロコモ関連の省庁や企業の動きをリポートする。 同協議会は日本整形外科学会のもとに2010年に発足した。泉田良一委員長がまず登壇、宗教や歴史をひもときながらあいさつした。 「宗教では、魂を重視し肉体を軽く見てきましたが、ルネサンス以来、肉体の復権が起こり、富国強兵時代にはドイツやスウェーデン、さらに日本でも体操などで国民の体を鍛え、兵隊さん、戦争の時代となりました」 こう振り返った後、現代に話は移り、「人間が体を動かす動機は2つあります。 1つは遊び、1つは生活のためです。子供たちは自然の衝動でさまざまな遊びで体を動かしますが、最近では大人も東京マラソンなどのように体を動かす衝動に駆られています。 生活のための肉体労働は1960年代までは見られましたが、今は生活のため体を動かすことはなく飽食の時代になりました。そこでもう1つの体を動かす衝動が生まれました。それが健康を維持するための運動です」と続けた。 「放っておけば太ってしまう体を運動で維持するというのは、西欧先進国の文化です。健康を維持するために運動することから、ロコモという考えも生まれました。メタボの次はロコモですので、しっかり情報を頭に入れてください」 この後、経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課、鈴木隼人課長補佐が、「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」と題した講演を行った。健康産業育成の政府の方向性と具体的な取り組みについて話したいという。 「現在、国民医療費の総額は38兆円台ですが、2025年度には60兆円を超える勢いです。中身を細かく見ますと、70歳以上の高齢者の方が医療費の約半分を消費されている。 さらに高齢化が進むなか、このような構造自体を変えていかねばならないわけです。 それはロコモをはじめ生活習慣病などに由来する慢性期医療にかかる高額医療費を、若いうちから健康に投資することで健康な状態を長く維持し抑制する。 つまり健康寿命を平均寿命に近づける取り組みが必要と考えます。そのために医療外のサービスを活用できるようにすることで総医療費を抑制、一人一人のQOL(生活の質)も向上できると考えております」 具体的な取り組みについては次回に続く。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
今、若い女性の体にある異変が起きている。「ロコモ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。 「ロコモ」とは、ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)の略で、関節や筋肉が弱くなり、「座る」「立つ」「歩く」などの日常的に必要な動作ができなくなってしまう状態だ。これが今、若い女性に急増している。 その「ロコモ」の疑いがあるかどうか、実際に街の女性でチェックしてみると、驚きの結果が出た。ほとんどの女性が、片脚立ちで靴下を履くことができない。さらに「全く運動をしてない」という女性の声も寄せられた。 ロコモの主な症状は、「歩くとすぐに疲れる」「階段が登りにくい」「つまずきやすい、転びやすい」「椅子から立ち上がりにくい」「重いものを持つとすぐに疲れる」といったものがある。この原因としては、「筋力の低下」「バランス能力の低下」「骨、関節、筋肉の病気」「使わないことによる身体機能の衰え」などが挙げられる。 ロコモアドバイスドクターで東京大学医学部付属病院整形外科・脊椎外科の山田恵子医師によると「もともとロコモというのが、日本語で運動器症候群といって、骨や関節、筋肉、神経などの体を動かす部分、こういったものの障害が原因で、立ったり座ったり、階段を上ったり、簡単な日常生活に必要な移動ができなくなる、もしくは低下している状態」だという。 丸の内で働く20代・30代女性352人にテストを実施した結果、30%の女性に移動機能障害がすでに始まっている傾向が見られ、さらに4%に「障害が進行中」という調査結果が出た。 ロコモの大きな原因は、慢性的な運動不足と言われている。 現代社会では、車による「ドア to ドア」の移動が増えていたり、エレベーターやエスカレーターを使ったりなど、日常的に体を動かす機会が減ってきていることが理由の1つだ。 また、社会人になると運動する機会は極端に減り、男性に比べて女性は筋肉量が少ないため、「ロコモティブ症候群」になりやすいという。さらに、偏った食生活で筋肉や骨、軟骨が適正に作られない、神経細胞の機能が落ちるといったことも大きな要因であると言われている。 山田医師は「ロコモが目に見えるような形になるのが50代~60代以降になるが、当たり前だが、50代~60代になってから急激に運動機能が低下するわけではなく、個人差が大きくなるのが50代~60代以降ということ。それまでは少しずつ運動機能が低下していく。例えばバランス機能は30代ぐらいから明らかに低下していくので、少しずつでも体を動かす習慣をつけたほうがいい」と対処法を語った。 「ロコモ度」は2つのテストで簡単に分かる。 1つ目は「立ち上がりテスト」だ。これは、脚の筋力を測ってロコモ度をチェックする。 方法はまず、高さ40cmの台に両腕を組んで腰掛ける。そして、両脚は肩幅くらいに広げ、床に対して膝が70度になるようにし、片脚のみで反動をつけずに台から立ち上がって、そのまま3秒間キープする。 成功した場合はロコモ度1をクリアとなるが、失敗した場合は、20cmの台から両脚で立ち上がるというロコモ度2のチェックへ進むことになる。2つ目は、「2ステップテスト」。このテストでは歩幅を測定するが、同時に足の筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に判定する。 テスト方法はまず、スタートラインを決めて両足のつま先を合わせる。そこから、できる限り大股で2歩歩き、最後に両足を揃える。この2歩分の歩幅を測定するが、2回やって歩幅数が良かった記録を「2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値」という計算式で算出する。 この2つのテスト結果で、ロコモ度が分かるという。 「どちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれない」「2ステップ値が1.3未満」の、いずれか1つでもあてはまる場合は「ロコモ度1」。「両脚で20cmの高さから立ち上がれない」「2ステップ値が1.1未満」いずれかひとつでもあてはまる場合は「ロコモ度2」となる。 この診断で引っかかった人は、どのような対策をすればいいのか。 ロコモ度1は、移動機能の低下が始まっている状態で、筋力やバランス力が落ちてきているという。そのため、日常生活の中で運動する習慣をつけて、たんぱく質とカルシウムを十分に含んだバランスの良い食事を摂るよう気をつける必要がある。ロコモ度2は、移動機能の低下が進行している状態なので、自立した生活ができなくなるリスクが高まっているという。何らかの運動器疾患が発症している可能性もあり、整形外科専門医の受診をおすすめする。
母のロコモによるドミノ骨折は、その後、本人のQOL(生活の質)を激変させた。そればかりでなく介護する立場になった私たちの生活も変わった。何より、前回述べた経済的負担が大きい。 昨年、所得税の医療費控除のため、計算したところ、母が骨折の手術をした一昨年の医療費の総額は約180万円。昨年の分はまだ計算していないが、1年間療養型病院に入院していたので、その入院費の自己負担だけで、1カ月約12万円かかっている。 若いときの骨折は、私も覚えがあるが、リハビリをすれば元に戻る。しかし、高齢者の骨折は、ある意味命取りになる。 そして、母が骨折してから、いくつかの医療セミナーを取材したところ、高齢者の骨折は欧米諸国では減っているのに、日本では増えているという。超高齢社会となったいま、早急に対処しなければならないと考え、連載を始めた。 そこでどんな対策が考えられるか。一言でいえば、骨折させないことが大事だ。まず、高齢者の骨折には前兆があることを理解しよう。私の母の場合は、腰の痛みだった。病院に連れて行ったら、脊椎(腰椎)圧迫骨折といわれ、びっくりした。 半年後、ドミノ骨折、つまり連鎖骨折で大腿(だいたい)骨骨折して大ごととなった。この痛みに気づくことが大切だ。痛みが治まって骨折に気づかないケースも多いからだ。 次にドミノ骨折の原因である骨粗鬆(こつそしょう)症に気づくことも大切だ。 女性は閉経後ホルモンバランスが変わり、骨粗鬆症の危険が増える。だから、自治体が骨粗鬆症検診を行っているが、受診率は全国平均でわずか5%だという。これをもっと高めなければならない。母の場合、骨折して初めて骨粗鬆症検査を行った。 さらに簡単な兆候は、姿勢と身長の変化である。よく、「年寄り臭い」といわれる背中を丸めて前屈みの姿勢は前兆の1つ。また、身長が縮んで「小さくなった」と感じたら、それも前兆の1つである。かげに骨粗鬆症やロコモが隠れているかもしれないからだ。 それでももし、骨折してしまったら、1日も早いリハビリが大事だ。整形外科の専門医は救急で運ばれた病院から「杖をついて退院できるか」が、寝たきりにならない1つの目安と言った。また、転院するリハビリ施設を選ぶのも重要だ。私の母はいずれもうまくいかなかった。 母のケースはこれでひとまず終わり、次回からはロコモ推進協議会の最近の動きや骨粗鬆症治療の最新事情などをリポートする。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
こうしたロコモ防止の運動の裏には、健康長寿に対する認識を深める狙いもあるが、他の目的も。 「医療費や介護費用の伸びを抑えることです。高齢化社会の今、医療や介護に必要な国家予算も大きく膨れ上がっています。国民もそれ相応の負担増に悩まされている。そこで、骨折などをしないよう、介護不要の健康づくりの啓蒙活動が求められるようになってきたのです。中高年者は、そのような状況にならないためのロコモ対策を、早いうちから意識することが重要です」(整形外科医) そのめには、「七つのロコモチェック」と、「ロコモ度テスト」をしっかりとやっておく必要があるという。 まず、「ロコモチェック」は次のようなものだ。 (1)片足立ちで靴下が履けずにヨロケてしまう。 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする。 (3)階段を上がるのに手擦りが必要。 (4)家でのやや重い仕事が困難。 (5)2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難。 (6)15分くらい続けて歩くことができない。 (7)横断歩道を青信号で渡りきれない。早歩きが困難。 「この七つ中で一つでも該当すれば、ロコモが心配されます」(同) 次に「ロコモ度テスト」だが、こちらも以下の三つのテストの結果が、将来、ロコモとなる可能性を判定する材料となる。 (1)片脚か両脚で決まった高さから立ち上がり、下肢の筋力を判定。 (2)歩幅を測定することで下肢筋力、バランス能力、柔軟性など歩行能力を評価。 (3)25項目の質問票で身体状態、生活状況をチェック。 これらの詳細は、日本整形外科学会公認のホームページ『ロコモ チャレンジ』などに載っているので、挑戦しみてはどうだろうか。 では、このテストで「将来、ロコモになる可能性が高い」となった場合はどうするのか。北里大学研究所病院理学療法士・新井雄司氏はこう説明する。「まず、スクワットを1日10~30回、片脚立ちを1日2~3セットを行うこと。また、両足で立った状態で、ゆっくりとかかとを上げて、ゆっくり下げる運動を1日20~40回(徐々に回数を増やす)を繰り返し、ふくらはぎを鍛える。 さらに腰に両手を押し当て、脚をゆっくり大きく前に踏み出し、太ももが水平になるくらいに腰を下げる。そして、体を上げて踏み出した足を元に戻す運動を、1日10~20回繰り返す。いずれも最初はきついものですが、体が柔らかく馴染んでくれば、そう難しい運動ではありません」 さらに、新井氏はこう付け加える。 「言い換えると、体の基礎部分の“体幹”と言われるところを鍛え、足腰の強化を図ることがロコモトレーニングでは重要になります。こうした鍛錬で、転んで骨折するような事故を防ぎ、交通事故などの重大障害を防ぐことにもつながるのです」現在、ロコモによって筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障をきたす要介護者やその予備軍は、4700万人いると言われる。今からでも遅くはない。健康長寿を目指し、対策に取り組もう。
母が転院した療養型病院の担当医は、経鼻栄養を続けるという。栄養がとれないと背中が穴のようにえぐれている褥瘡(じょくそう=床ずれ)が治らない。母はたびたび鼻のチューブを抜いてしまうので、指が使えないようにミトンをはめられた。 骨折で入院以来、半年ぶりに髪を切ると、すっかりやせた顔が現れ、祖母にそっくりだった。やがて、医者から胃ろうをすすめられた。さすがに抵抗感があり、知り合いの社会福祉士に相談すると、「簡単な手術だから心配ない。術後は元気になりますよ」といわれ、思い切った。 胃ろう造設はPEGともいう。胃に入れた胃カメラの先の針を胃壁と腹部の外に突き刺し、出たところを切開して管を入れる口を作る。 そこにチューブを通して直接胃に栄養食を入れる仕組み。胃ろうについては最近安易に造設する傾向があるとして、延命治療との批判があるのは知っていた。だが、母の認知症を考えると、経鼻栄養より安定するかもしれない。 胃ろうの造設手術は40分くらいで終わるので、付き添わなくても大丈夫ということだった。夕方仕事を終えて行ってみると、昼に手術は無事終わったという。ちょうど始まったロンドン五輪の開会式をテレビで見せる。 何をやっているのか分からないようだった。手術した院長から「順調ですよ。ストレスがないのか、胃はきれいでしたよ」ともいわれた。 担当医は「胃ろうは作ったけど、できれば口から食べられるようにしたい」と言ってくれた。口から食べられると、生きる意欲がわくから、それで寝たきりから脱する場合もあるという。医者の言葉を信じたかった。 胃ろうによる栄養摂取は徐々に母を元気にした。だが、母は口から食事をとれないことが自分では理解できないようで、いつも口をもぐもぐさせている。時々は、「今食べたばかり」などと言うから、口で食事をしているつもりになっているのかもしれない。 なんとか水だけでも飲ませたいが、口腔(こうくう)内は黴菌(ばいきん)だらけで、その水が誤飲して気管に入ると肺炎を併発するというから怖い。口から食事する場合、誤飲性肺炎は最も用心しなければならない。 幸い、昨年1月から昼食の半分は口から食べられるようになった。「よかったね」と言うと「あまりおいしくないけどね」。やがて、3食口からとれるようになり栄養状態もよくなったので、褥瘡も完治。一般病棟から療養病棟に移ることができた。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
最近は、スポーツジムでも中高年者を多く見掛けるようになり、「ケガや病を持たない健やかな人生を送りたい」と願う人たちが多くなっているようだ。「“健康長寿”を長いスパンで捉え、将来的にも、入院・介護を受けずにいられる体づくりをしようと考え始めている人が多くなっているのではないでしょうか」こう語るのは、健康ライターの深見純一郎氏だ。 厚労省が2013年に発表した日本人の健康寿命は、男性が71.19歳、女性は74.12歳。ここで言う健康寿命とは「介護の必要がなく健康的に生活できる期間」のことで、つまり、他人の助けを借りずに自立して生活できる年齢だ。同省では4年ごとにこうした調査を行っているが、'13年の4年前は男性が70.42歳、女性が73.62歳だったので、それぞれ0.77歳、0.5歳延びたことになる。おそらく、今年発表される健康寿命も延びていることだろう。 しかし、健康に生活できる年齢が長くなることは喜ばしいことだが、前出の深見氏はこう指摘する。「'13年で言えば、日本人の平均寿命は、男性80.21歳で、女性は86.61歳。つまり、健康寿命との開きが男性は9歳、女性は約12歳もあるということ。この間、死ぬまでは健康とは言えず、寝たきりや介護を必要とし、1人では生きられない状態ということです。もちろん個人差はありますが、やはり健康寿命の平均をメドに、“生涯”、あるいは“死”というものをより身近に考える必要があるのではないでしょうか」 現在、厚労省では、この健康寿命を少しでも延ばすことを目標に掲げ、'22年の平均寿命を男性81.15歳、女性が87.87歳と推計。健康寿命の延び幅が平均寿命の伸び幅を上回ることを目指している。 そこで今、言われ始めているのが「メタボの次はロコモ」。メダボリック症候群は、肥満や高脂血症、糖尿病、高血圧などの二つ以上が同時に出る状態で、寿命にも関わるものとして指弾されてきた。しかし近年では、それよりもロコモティブ症候群(運動器症候群)のほうが問題視されているのだ。「“運動器”とは、骨や関節、筋肉などのことで、ロコモティブ症候群は、年齢を重ねるごとにこれらの機能が衰えてくるというもの。その結果、転倒して骨折するなどして、介護が必要になってしまう。そうしたことを防ぐ意味でも、日頃から体力をつけるトレーニングを積んでおけば、予防にもつながるのです」(医療関係者) 東京都内には、ロコモの認知向上と運動機能改善を目指す『ロコモチャレンジ!推進協議会』がある。ここは整形外科専門医が参加し、サポート企業との連携で、ロコモの正しい知識と予防意識の啓発のための広報活動を推進している。また、埼玉県松山市で行われるウオーキングイベント『日本スリーデーマーチ』や、厚労省主催の『スマート・ライフ・プロジェクトフェア』などに同協議会も参加。“ロコモトレーニング”などの指導を行っている。
温かいコタツにすっぽりと身を収め、テレビでも観ながらまどろむのは、日本人ならではの真冬の悦楽。この冬休み、久しぶりの実家で思う存分“コタツでゴロゴロ”を満喫した人も多いのではないか。 ところで、昔よく母親から「コタツで寝ると風邪をひくわよ!」と怒られたものだが、これって何か根拠があったのだろうか? 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみた。 「一般的に風邪をひく原因には、単純に部屋が冷えているという環境的な要因のほか、脱水や疲労といった肉体的な要因が挙げられます。 コタツに長時間入っている状態では、局所的に加温され続けるため、知らず知らずのうちに体が疲労し、また、汗をかいて脱水症状を引き起こしやすくなります。そのまま眠ってしまったのであれば、何時間も水分補給が行えないわけですから、なおさらですよね」 体温よりも高く加温され続けることは、僕たちが自覚している以上に体に負荷を強いている。うっかりコタツで寝てしまった翌朝、全身に疲労や倦怠感を覚えるのはそのためだと須田先生は解説する。肉体疲労の結果免疫力が低下すれば、風邪を引きやすくなる可能性は大いにあるだろう。 「また、家族など複数でコタツに入っている状態というのは、人と人が非常に密着します。もしも、家族の誰かが風邪のウイルスを持っていたとしたなら、感染のリスクは高いといわざるを得ません」 そうでなくても、そもそもコタツを活用する時期というのは、一年のなかで最も風邪が猛威をふるうシーズンと一致している。風邪が感染性の病気である以上、これもまた軽視できない要因だろう。 コタツは冬の風物詩ともいうべき日本独特の文化だが、せっかくのオフをまるまる風邪でつぶしてしまうようなことがあってはもったいない。皆さん、どうか適切なコタツ・ライフを!
9月1日にパーキンソン病の新しいタイプの治療薬の発売が開始された。これにより、進行パーキンソン病患者の治療の選択肢が増えた。 パーキンソン病は、多くは原因不明で、脳の黒質という部分の神経細胞が減少し、運動の仕組みを調節する働きを担う物質「ドーパミン」が減る疾患だ。 主症状は「動きが緩慢になる・動けなくなる=無動」「手足が震える=振戦」「筋肉が硬くなる=固縮」「体のバランスが悪くなる=姿勢反射障害」の運動症状。加えて、非運動症状といわれる自律神経症状、睡眠障害、精神症状、認知機能障害、痛みなども見られる。これらの症状が出る前に、便秘、嗅覚障害といった前駆症状も分かっている。 残念ながら完治する手段はなく、薬で症状を抑えるしかない。しかし、発症して間もない時期には薬はよく効くが、発症後、5~6年経過する頃には、効果にばらつきが出てくる。次第に効きづらくなり、さまざまな症状が表れる。 「ウエアリングオフ現象やジスキネジア現象が見られるようになり、より進行すると運動・非運動症状の増悪、認知症、転倒などが起こりやすくなります」(順天堂大学医学部神経学講座・服部信孝教授=以下同) ■症状に応じて投与量を微調整可能 ウエアリングオフ現象は、スイッチをオン・オフするように、服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる(オフ状態)。ジスキネジア現象は、自分の意思とは関係なく、体の一部が自然に動く。 今回の新薬は、既存の薬物治療では十分な効果を得られず、ウエアリングオフ現象などが起こるようになった患者を対象としたもの。 経口投与だった既存薬と違い、今回登場した新治療薬は、専用のチューブを通して空腸(小腸の一部)へ直接薬を投与する。しかも、16時間持続して、だ。チューブは、腹部に開けた穴(胃ろう)から空腸へつなぐ。 なぜ、パーキンソン病は進行すると薬物治療で症状をコントロールすることが困難になるのか? 服部教授は次の2点を挙げる。 まず、「有効治療域の狭小化」だ。 「パーキンソン病が進行すると患者さんが動きやすいと感じる薬物の血中濃度の幅(有効治療域)が狭くなります。これに対して、断続的な経口薬では対処ができない」 次に、「胃内容物排出遅延」がある。 「パーキンソン病では胃など消化管の働きが悪くなり、胃内容物の排出に遅れが生じます。すると、薬剤が小腸で吸収されるタイミングにばらつきが生じ、薬物血中濃度を安定して維持するのが難しくなるのです」 空腸へ直接、16時間持続して投与する新治療薬なら、この2点の問題がクリアできる。 臨床試験では、重度の運動症状が見られる進行期パーキンソン病患者が、新治療薬に切り替えた。すると、投与12週間後には、1日当たりの平均オフ時間(薬の効果が切れて動けなくなる時間)が、既存薬より大幅に減少した。その後、52週以降の評価でも、明らかな差ができた。 これまでのパーキンソン病の薬は、数年すれば効きづらくなっていたが、今回の新治療薬は世界でも2年間のデータしかないので、その点は分からない。 「しかしこの薬の利点は、患者さんに応じて投与の量を調整できるところ。経口薬では、副作用を心配して十分量使用できない傾向があったが、それが、効き目を見ながら微調整できるのは大きいです」 新治療薬で「希望が生まれた」と話す専門医もいるという。
最近、目にすることが多くなった「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)」。運動不足…という人は、要注意です。 ◆元気に年を重ねるために重要。「ロコモ」の予防を考えよう 要介護や寝たきりになる原因の多くを占めるのが、実は、腰痛や膝痛など関節の痛みや、転倒による骨折といった、骨・関節・筋肉等運動器の障害。そのため、運動器の障害を“予防”するために近年提唱され始めたのが「ロコモ」です。 「ロコモ」とは、骨・関節・筋肉などの運動器の機能が衰え、歩行や立ったり座ったりなどの日常生活に支障をきたし、寝たきりや要介護になるリスクが高まった状態のこと。直接命に関わるものではありませんが、自立して暮らすためには若いうちから意識しておくべき。 高齢者だけではなく、体力や筋力が衰え始める50代から注意が必要です。年齢にかかわらず左記の「ロコチェック」に該当するものがあれば、整形外科専門医に相談することをおすすめします。 【ロコチェック】 □片脚立ちで靴下がはけない □家の中でつまずいたり滑ったりする □階段を上るのに手すりが必要 □家のやや重い仕事が困難 □2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難 □15分くらい続けて歩けない □横断歩道を青信号で渡りきれない (ロコモ チャレンジ!推進協議会WEBサイトより) 現在は症状が無くても、定期的な運動は重要。「ロコモ」の予防、改善のために考案されたトレーニング「片脚立ち」で、無理なく日頃から骨と筋肉を鍛えましょう。 【片脚立ち】 背筋をまっすぐにして、床につかない程度に片脚をあげ1分間キープ。左右1日3セット行います。 ※転ばないように、何かにすぐにつかまることができる状態で行う。支えが必要な人は、机やイスにつかまって行う 取材協力 福岡和白病院 関節症センター長 林 和生 先生
パーキンソン病をテーマにした市民健康講座が20日、岡山市北区駅元町の岡山コンベンションセンターで開かれる。患者は国内に約15万人と推計され、高齢化に伴い増加の一途をたどっている。講座を企画した岡山旭東病院(岡山市中区倉田)の柏原健一神経内科部長に、パーキンソン病の治療法や家庭で取り組めるリハビリ、市民健康講座の内容などを聞いた。 ―パーキンソン病を発症する原因は。 手の震えなどの運動障害は中枢神経に作用する神経伝達物質・ドーパミンの減少によることは分かっていますが、なぜ減るかという根本的な原因は分かっていません。また、全体の5~10%は遺伝性です。α―シヌクレインという物質が中枢神経系や末梢(まっしょう)の自律神経系に病的に蓄積され、神経細胞を障害して発症するのです。 ―どういう症状が出ますか。 手足が震えたり歩幅が小さくなったり、動作が緩慢になったりするのが最も知られた症状ですが、そこまで進行する以前に便秘や頻尿、寝言、うつといった症状が現れます。発症後20年ほどすると、約8割の人に認知症の症状が現れます。とはいえ、健康な人でも加齢とともに認知機能は衰えていきます。パーキンソン病だから認知症の症状が早く出たり、程度がひどくなるとは限らないので、悲観しないでください。 ―治療方法を教えてください。 脳内で不足するドーパミンを増やすレボドパと、ドーパミンの受容体を直接刺激するドーパミンアゴニストのいずれか、あるいは両方を処方するのが一般的です。レボドパは非常によく効く半面、長い年月にわたり飲み続けると、副作用として意思とは関係なく体が動く不随意運動が起きやすくなります。ドーパミンアゴニストはその副作用のリスクは小さいが、レボドパほどの薬効はありません。初期はどちらを使っても効果はあまり変わりませんが、少ない副作用で良い効果が得られるよう、年齢や症状を勘案して薬を選択します。 ―日常生活で取り組めるリハビリは。 日常生活の全てがリハビリといえます。まずは散歩をしてください。手を大きく振り、足をしっかり上げることが大事です。趣味のサークル活動やカラオケも良いです。大事なのは家族のサポート。家族はチーム医療の一員です。しっかり患者さんを支えてください。 ―市民公開講座は年2回開き、今回で27回目を迎えます。長年続ける理由は。 パーキンソン病は運動、精神、認知、自律神経などさまざまな問題症状が出て、しかもその症状は患者さんごとに異なります。治療も、薬、手術、リハビリなどがあります。そのため、治療の考え方が専門医によって若干異なることがあります。だからこそ、全国で活躍している専門医に協力を求め、それぞれの知見を分かりやすく話してもらっています。家族を含め、幅広く正しい知識を持ってもらうことが良き治療と豊かな生活につながります。前向きに病気と向き合ってください。 市民健康講座では、千葉大病院神経内科の平野成樹講師が「パーキンソン病との付き合い方」のテーマで講演。音楽療法士で倉敷北病院リハビリテーション科の松鹿滋子さんと、岡山旭東病院リハビリテーション課の藤田直也さんが「リズムに乗って歌ってみよう」と題し、音楽に合わせた体操を実演する。
パーキンソン病は、脳の黒質でドーパミン神経細胞が減少する病気。これまでは「脳だけの病気」と考えられてきたが、近年、「全身の病気」だと分かってきた。 症状は、手足の震え、筋肉のこわばり、全身の動作が遅くなる、倒れやすいといった「運動症状」。さらに、便秘、レム睡眠行動異常症、嗅覚低下、立ちくらみなどのさまざまな「非運動症状」が出る。 東京慈恵会医大葛飾医療センター神経内科・鈴木正彦診療部長は、パーキンソン病と上手に付き合っていくための要点を次のように挙げる。 (1)治療は「症状に応じて」「きめ細やかに」 パーキンソン病治療薬は、発症して間もない時期にはよく効くが、発症後5~6年経過するころには、効果にバラツキが生じてくる。 「服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる『ウエアリングオフ』と、自分の意思とは無関係に体が自然に動く『ジスキネジア』を生じるようになり、どう対処するかが重要です」 患者が最も困っている症状に対し、服薬量や服薬回数を適宜調整する。最近では貼り薬や自己注射薬なども登場しているので、生活環境を勘案しながら適正に使用する。 「薬の量が増えれば副作用も増します。いかに薬効は高く、副作用は少なくするか。専門医とのコミュニケーションが重要となりますので、普段、困ったことは受診時にすぐ伝えられるよう書き出しておくとよい」 症状や進行度は十人十色。パーキンソン病は進行性の病気であるため、症状に応じて、細かく薬剤を調整していかなくてはならない。病気に精通した専門医と上手に付き合う姿勢も必要だ。 (2)便秘のコントロールとリハビリ 今、治療のポイントになっているのが便秘のコントロールだ。便秘は高度になると薬の吸収率が下がり、症状の悪化につながることもある。 「薬の効果を十分発揮させるためにも、四肢・体幹のストレッチなど毎日の自己リハビリは欠かせません。積極的に、食事の前に1日3回はぜひ実践していただきたい」 徹底して行えば、パーキンソン病の進行期、すなわち薬の効き目が悪くなる発症10年目以降も、健常者と同じまではいかないにしろ、杖なしでハイキングに行ったり、ゴルフを楽しんだりすることは十分可能だ。 「パーキンソン病薬は飛躍的に向上しています。それだけに、自己判断で服薬調整しないようにしましょう。かかりつけ医と専門医を上手に利用して、病気への良好な対応を継続することが非常に大切。パーキンソン病以外の病気を抱えている方も少なくなく、そういう意味でも、患者、かかりつけ医、専門医のトライアングルを意識すべき」 ■「脳深部刺激療法」と「ビタミンD投与」に大きな可能性 現在、パーキンソン病の最新治療で注目をされているものが2つある。 ひとつは「脳深部刺激療法」。局所麻酔を用いた簡単な手術で脳の運動に関わる部分に電極を留置し、弱い電流で刺激を与える。これで薬の量を減らせる患者も多い。 もうひとつは、ビタミンDの投与だ。 パーキンソン病患者は健康な人に比べてビタミンDの血中濃度が著しく低く、その濃度が低いほど重症度が高いことが指摘されている。鈴木部長は同院の患者の協力を得て臨床研究を実施。二重盲検ランダム化比較試験の結果、1年後に症状の進行が抑制された患者の割合は、ビタミンD服用群で6割に達した。 ただし、ビタミンDがパーキンソン病の進行を抑制できる可能性は示唆されたものの、「今後の国内外の研究結果が待たれる状況」と鈴木部長。安易に手を出していい治療では「まだ」ない。
団塊の世代が80歳以上となる2030年、パーキンソン病患者は28万人を超えるとみられている。患者の年齢も30代から80代と幅広いが、悲観するにはあたらない。薬物療法が大きく見直されるとともに、進行を抑える研究も進んでいる。 パーキンソン病などの神経変性疾患を専門とする東海大学病院神経内科准教授の馬場康彦医師は、パーキンソン病の薬物療法を奏功させるためのポイントについて、次のように指摘する。 「患者さんにつけていただいた症状日誌に基づき、主治医が一日のうちでいつ、どのような症状が起こるかを把握したうえできめ細かく処方調整することが重要です。私たちは、たとえば効果の持続時間が短くなる『ウェアリング・オフ』が起きる直前に内服していた薬剤を増量する、自らの意思に関わりなく身体が動いてしまう『不随意運動(ジスキネジア)』が起きる直前に内服していた薬剤を減量する、補助薬を併用するなどの工夫をすることで、患者さんに支障なく日常生活を送っていただけるよう努めています」 薬物療法の問題点は、進行とともに薬剤の種類や用量が増え、用法が煩雑になると、指示どおりに服薬する患者が少なくなることだ。主治医は患者が指示どおりに服薬していることを前提に処方調整をおこなっているため、自己流の誤った服薬は厳に慎みたい。 「薬物療法の効果が頭打ちとなっても、次の一手として手術療法の脳深部刺激療法の有用性が確立していますし、今夏には十二指腸に入れたチューブからジェル状のレボドパを小型ポンプで持続的に注入する治療が実用化する見込みです」(馬場医師) 脳内でドパミンの効果を発揮させるため、ドパミンの前駆物質とドパミンの効果を保つ薬剤の合剤であるレボドパを投与する「レボドパファースト」の治療を開始して5年、神奈川県在住の主婦(54歳)は症状の進行とともにレボドパの用量・用法を見直し、補助薬を加えることで、病気を苦にすることなく充実した日々を送っている。 日常生活の改善により、パーキンソン病の発症や進行を防ぐことはできないだろうか。 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科診療部長・准教授の鈴木正彦医師はこう語る。 「当科を受診された患者さんにご協力いただいて臨床研究をおこなった結果、ビタミンDのサプリメントを摂取することによりパーキンソン病の進行を抑制できる可能性が示されました」 ビタミンDは、魚介類、きのこ類などに多く含まれ、日光を浴びることにより体内でつくられる栄養素であり、ドパミン神経がドパミンを生合成する過程にも大きく関与する。 パーキンソン病は非運動症状として便秘やうつ状態などをきたすことが多く、食事量が減ったり日中の外出を控えたりするとビタミンD不足に陥りやすい。 これまで国内外の研究により、パーキンソン病患者は健常人に比べ血中のビタミンD濃度が著しく低く、またビタミンD濃度が低いほど重症度が高まることが明らかにされてきた。 鈴木医師らは、パーキンソン病と診断され、書面で同意を得た患者を対象に、ビタミンDのサプリメントを1日1回12カ月間投与した群56例、同様にプラセボ(偽薬)を投与した群58例において二重盲検ランダム化比較試験をおこなった。 その結果、ビタミンD群では症状が改善した患者の割合が6割に上り、プラセボ群に比べ有意に高かった。遺伝子検査では、ビタミンD受容体のタイプによって効果に差があることがわかり、ビタミンDの摂取が有効な患者を推定できる可能性も示された。 一方、ビタミンDはとりすぎると高カルシウム血症をきたして腎不全や尿路結石などのリスクが高まるが、血中カルシウム濃度が異常値を示した例はなかった。この研究は13年に米国医学誌に発表され、これまで多くの文献に引用されている。 鈴木医師は、「私たちの研究結果が実臨床で生かせるようになるには、多施設でより多くの患者さんを対象に追試が行われ、有効性、安全性が検討される必要があります」という。 あわせて、パーキンソン病とビタミンDの関連が詳細に明らかになれば、予防にも有効な手段が見いだせるかもしれない。
ロコモティブシンドローム、通称“ロコモ”をご存知だろうか? ポップなネーミングだが、実は足腰の衰えや障害によって要介護になる危険性が高い状態のこと。しかも、衰えは40代から始まっているので、その世代の人はすでに対策が必要だ。 「ロコモとは、筋肉や骨、関節という運動器に障害が生じたり運動機能が低下したりして、要介護や寝たきりになったり、その危険性が高まることをいいます」 と解説するのは、東京ミッドタウンメディカルセンター平石貴久特別外来の平石貴久さん。 「糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症などが心筋梗塞を引き起こすメタボリックシンドロームは、多くの人に認知されていますが、ロコモもそれに並ぶ現代人の国民病。 東京大学の研究チームによると、ロコモ予備軍は全国に4700万人もおり、これは40才以上の男性の84%、女性の79%に当たります。 つまり、40代以上の10人のうち8人がロコモ予備軍ということになります」(平石さん・以下同) また恐ろしいことに、ロコモは運動器だけに支障が出るわけではない。 「ロコモになると体を動かせなくなりますし、予備軍の状態でも運動量はかなり減ります。すると基礎代謝が低下するので、メタボになる可能性も高まる。さらに、引きこもりがちになったり、慢性的な痛みが続くことで鬱になり、認知症を引き起こすこともあるんです」 このように、ロコモはさまざまな病気を引き起こす原因にもなる。そして、ロコモは男性よりも女性のほうがなりやすいというから要注意。 「女性の場合、閉経後に女性ホルモンが減少するため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が急速に進んで骨折しやすくなります。その結果、ロコモになりやすいんです」 しかしこのロコモ、日ごろの心掛けで予防することができるという。 「90才を超えても元気な人は、しっかり筋肉がついているのが共通点。先日亡くなった森光子さんが80才を過ぎてもでんぐり返しができたのは、日々スクワットでトレーニングをしていたからです。 筋肉は使わないと衰えるので、長持ちさせるためには意識して動かすトレーニングが必要。また、骨もカルシウムやビタミンDなどの栄養を摂るだけでなく、運動で刺激を与えると骨量が増え、丈夫な骨が作られます」 とはいえ、日常生活に必要な筋肉を鍛えるには、ハードなトレーニングは必要ない。ごく簡単なトレーニングを継続するだけでロコモは予防でき、なおかつ現在悩んでいる腰やひざの痛みも解消するという。
今回も9月の日本整形外科学会記者説明会で取り上げられた「ロコモの2025年問題」について(「ロコモチャレンジ!推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演から)。 私も団塊の世代だが、2025年には後期高齢者になる。今の後期高齢者医療制度では、自己負担は1割。所得によっては高額療養費の自己負担限度額があり、払った医療費からかなり戻ってくる。 つまり、25年問題とは団塊の世代が後期高齢者になり社会保障費の高騰を招くと懸念されるものだ。医療費急増のグラフをみてほしい。25年には05年の約3倍、15年の約2倍の約30兆円に達する。 問題はこの医療費を押し上げる要因としてロコモが挙げられることだ。「ロコモチャレンジ!推進協議会」の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」では、協議会が定める7つのロコチェックの1つでも当てはまればロコモの可能性があるが、調査では70代男性の6割、女性の7割が該当するという結果が出た。 この世代は25年には後期高齢者になっている。05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年にはこの割合は一層高まるに違いない。さらに重要な指摘があった。 「社会の利便性向上により運動機会が減少し、ロコモの危険性に拍車をかけている」というのである。例えば国内のエスカレーター保有台数は右肩上がりで伸びているのだが、1日当たりの歩数は逆に減る一方なのだ。 それでも、まだ都市部の方が歩いている。県別に見ると、歩数のトップ3は兵庫県(男7964、女7063)、東京都、神奈川県。最下位は男が鳥取県、女が山梨県でトップより2000歩ほど少ない。地方は車社会なので運動機会がさらに減るのではないかとみられている。 つまり、このままでは日本は確実に「ロコモ大国」となる。そこで、早期にロコモの危険性を知り、各自が対策に取り組むことが大事だとしている。まだ若いうちに自らのロコモ度を把握し、ロコトレ+ウオーキングでロコモ克服を目指そうと提唱している(ロコモ度テストやロコトレなど詳しくは「ロコモチャレンジ」で検索)。 団塊の世代よ、歩け。 次回は運動機能強化に効果があるアミノ酸の話。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
日本整形外科学会の記者説明会では、「ロコモの2025年問題」が取り上げられた。「ロコモチャレンジ! 推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演を要約して、「2025年問題」とは何かを記す。 グラフのように、2025年には、1947-49年生まれのすべての団塊世代が、75歳以上の後期高齢者になる。それより前の20年には、75歳以上の後期高齢者が65-74歳の高齢者人口を追い抜いているが、その差がグンと広がっている。 当然ながら、医療費も増加し、25年には、28兆円と予想される。その10年前の約2倍である。つまり「2025年問題」とは、社会保障費の高騰が懸念されるわけだ。 ところで、新聞などの表記でも、マチマチなのだが、いまだに日本は高齢化社会などと表記している場合があるが、間違いで07年から日本は超高齢社会に突入しているのだ。高齢化は先進国の中でも、群を抜いている。 ここで、興味深いのが、協議会の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」だ。協議会では、「片脚立ちで靴下がはけない」など簡単な7つのロコチェックを設定している。 その1つでも当てはまればロコモの可能性がある。この調査では、70代では男性の6割、女性の7割がロコチェックに該当するという結果が出た。 05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年に団塊の世代が後期高齢者になると、この割合は一層高まるに違いない。 さらに興味深いのは、10年と25年での都道府県別高齢者増加数を見ると、トップ5は東京、神奈川、埼玉、大阪、千葉の順で、都市部の高齢化が指摘される。 同時に、住民の高齢化だけでなく、建物の高齢化も心配される。ベッドタウンによくある低層集団住宅では、階段しかない建物も多い。 都市部の高齢化では、(1)マンションからの外出困難(2)近隣住民との関わり希薄(3)引きこもり(4)買い物難民などの結果、移動能力が低下し、1人で外出できない人が増え、孤立化していくと指摘されている。 実は、私も団塊の世代だ。次回も本当に人ごとではない2025年問題について続ける。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
◆活動的な「健康人」が突然死してしまうリスク 国民的歌手とも言える西城秀樹氏が急性心不全のため逝去されました。2度の脳梗塞を経験されながらも超人的なリハビリ努力を続け、歌手としてのライフワークを全うされた人生には多くの人が感銘を受け、早すぎる死が悼まれています。同じ病の患者さんたちにも希望を与えた生き方だっただけに、脳梗塞を経験された同世代の患者さんたちの衝撃と悲しみはいっそう深いものでしょう。 西城氏は脳梗塞を起こす前から、水分制限をしながらのサウナなどの日常習慣があったそうで、これらが危険因子になったのではないかと振り返る声なども出てきているようです。 趣味のスポーツなどを活き活きと楽しみ、サウナでひと汗流した後にはぐいっとビールを流し込み、タバコも仲間たちと気にせずに吸う、いわゆる昔ながらの「体育会系」的なアクティブなタイプの方は、病気とは無縁に見えがちですが、見落としがちなリスクもあります。「健康人」の急逝は誰にとっても無関係のことではありません。今一度、健康管理のあり方、多くの人が陥りがちな盲点について、お話したく思います。 ◆スポーツ中の水分制限は、脳梗塞・心筋梗塞の危険因子 以前はスポーツの最中に水を飲むのは悪いことのように言われていました。特に厳しい部活動などでは、水を飲むと根性が鈍る、胃がだぶついて調子を落とす、血液が胃に回って筋肉に行かなくなる、といったことから、水分制限すべきと教えられていたようです。 しかしスポーツの際に水分制限をするのは、急速な脱水を起こすために医学的には危険と考えます。特に夏場の脱水は危険です。脱水の怖いところは、ただ喉が渇くという不快感だけでなく、いわゆる「血液ドロドロ」と言われるような状態になることで、血管内の血液が詰まりやすくなってしまう点です。動脈硬化がありコレステロールや中性脂肪が高い方の場合、それがより起こりやすくなります。 血管が詰まればその詰まった部位に応じて、脳梗塞や心筋梗塞などになります。またそうでなくても血管に脂肪が溜まって細くなったり、腎臓を弱らせて機能低下を引き起こします。水分制限を頻繁にやっていると、その繰り返しで全身に徐々にダメージが蓄積していくのです。 昔、プロ野球の放送中に高名な解説者が、夏場のピッチャーは最初の3回ほどで汗をかき切り、以後はあまり汗が出なくなって調子が上がるといったことを話されていたのを思い出します。今なら4回以後は脱水状態に耐えて投球をしていたのだろうと考えられます。 試合の後にしっかり食べて水分を補給し、また対象が若く超健康なスポーツマンだったために運よく大きな問題にならずに済んだのだと思いますが、体に良いことではないと思います。 筋肉はスポーツによって鍛えることができますが、内臓、特に腎臓はなかなか鍛えられないものです。脱水で体内の水分が不足した時も、腎臓は律儀に尿を作り、体内の毒素を外へ出そうと頑張ります。そのため脱水状態が続くと腎臓は消耗し、次第に機能低下していきます。腎臓の機能は一旦低下すると戻りづらくなることも忘れてはいけません。 ◆汗をかくこと、汗を流すことの効果・デメリット ダイエットのためにたくさん汗をかくように頑張っているという人がいます。汗をかくのが適切な運動の結果で、徐々に体重を落としていくような場合はもちろんよいことですが、汗をかくだけで痩せることはありません。汗として出た水分量だけ一時的に体重は減りますが、汗をかくことと脂肪が減ることは別物だからです。汗をかいた後に一時的に体重が落ちても、必要な水分を飲めば当然、体重は元に戻ります。 以前、「痩せ薬」として販売されていた漢方の中に利尿剤が入っていて問題になったことがありました。その薬を飲むと多量の尿が出るため一時的に体重が減らせ、痩せたと錯覚させていたようです。しかし利尿作用が強いために脱水状態になると、前述のような問題が起こりやすくなり、体にはリスクがあるために問題になったのです。 体の脂肪分を減らしたいと思う場合は、運動や正しい食生活によるダイエットが必要です。汗をかいたり水分摂取量を減らしたりしても、健康的に痩せることはできませんし、健康効果も望めません。 . ◆サウナの健康効果・効能と、注意すべき危険性・デメリット では汗をかく方法の一つとして、サウナはどうでしょうか。サウナは正しく入れば健康によいことがいくつもあります。例えば、体内に「熱ショックたんぱく」や「一酸化窒素合成酵素」ができることで、血管の緊張がほぐれ、血行が良くなったり、体調を良くしてくれたりする効果があります。 ただ多量の汗をかくことから、前述のような脱水状態にならないよう注意が必要です。サウナに入る前に多量の汗を見越した十分な水やお茶、適宜スポーツドリンクなどを飲んでおくことが安全上すすめられます。つまりサウナは健康的にも利用できる反面、強い脱水を伴うことがあるため、リスクもあるという訳です。 またサウナの直後に冷水に浸かるのは急速に血圧を上げるため、心臓が悪い方には危険な場合があります。サウナは個々人の年齢や状態に応じて正しく使ってこそ、健康的な効果があるものだと考えましょう。 ◆やはり無視できないタバコの健康リスク 今は社会的にも大きな禁煙の動きがありますが、それでも喫煙をやめられない方は少なくありません。タバコを吸うと眠気が取れたり、体がシャキッとしたり、気分が良くなったりすると感じるためのようです。これらの喫煙者からすると「タバコの効果」と感じるようなものは、タバコが交感神経を活性化するために起こるもので、言うまでもなく、健康的なメカニズムによって起こるものではありません。 タバコには、ニコチンやタールなどの有害物質が含まれており、これらが肺や胃腸へ入っていくと、そこで吸収されて血中に入り、心臓や血管まで到達します。すると血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。有害物質で血栓ができやすくなることも加わり、血管が詰まりやすくなります。つまりタバコははっきりと脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上げる危険因子なのです。 そもそも交感神経を活性化するということ自体、本来なら休みたいと思っている体を無理やり起こして元気を絞り出させているようなものです。一時的な感覚としては気分がよくなったとしても、いずれは何らかの破綻を体に来す……それがタバコの怖さなのです。 さらには発がん性のある有害物質のため、体のあちこちでがんが発生し易くなります。加えて習慣性・依存性があり、一度タバコが習慣化してしまうと、意志だけではなかなか止められなくなるのも怖さと言えるでしょう。この点では麻薬と同じです。 さらにタバコは肺の中の構造を徐々に壊し、肺気腫や慢性気管支炎などを起こします。いわゆる「タバコ肺」ですね。私はタバコ肺の末期の患者さんのお世話をしたことがありますが、残念ながら悲惨なものでした。いつも息苦しく、ただ呼吸をするだけで苦痛が伴い、朝も昼も夜も、逃げ場がないのです。そこへ最後には肺がん発生という追い討ちまでかかりました。 タバコはできれば禁煙、せめて減煙で、できるところから遠ざけていきたいものです。 世の中には痩せるためにタバコを吸う、逆にタバコを止めると太るからやめられない、とおっしゃる方も多数おられます。タバコは痩せる方向に効くのは事実ですが、それはタバコがそれほど有害であるという証左でもあります。どうしても痩せたいのであれば、やはりダイエットと運動です。 ◆運動・サウナ・ビール・タバコを楽しむ方が注意すべきこと 昔からの楽しみ方、そして体育会的な方には豪快な健康法のように思われているパターンの一つに、スポーツを楽しみ、サウナに入った後にビールをぐいっと飲み干し、そしてタバコを一服……といったものがあります。充実した感じもあり、あぁ、至福のひと時……と感じる方もいるかもしれません。 これらは十分な水分補給のもとでタバコ抜きであれば、医学的にも推奨できますが、水分補給が十分でない場合は、スポーツによる脱水でのリスクもあり、サウナはそれをさらに悪化させます。ビールで一瞬水分が入っても、ビールの利尿効果で飲んだ量以上の尿が出て、ますます脱水になってしまいます。 結果として、血液はドロドロになり、腎臓も弱り切ったところへ、体にとっては猛毒でしかないようなタバコが加わることになるのです。血栓が一層できやすくなり、脳の血管の中でできれば脳梗塞に、心臓の血管の中でできれば心筋梗塞や心不全に至ります。いきなりそこまで行かない場合でも、こうした習慣が続けばいずれは体が壊れてしまいます。 こうした組み合わせが体に良いもの、健康的なものと信じてしまうと、自分に厳しくストイックで真面目な方ほど、体を徹底して傷めることにもなりかねません。やはり体を使う楽しみはそのやり方が大切なのです。 ■西城氏が提唱された脳梗塞予防5カ条 実際、西城氏も後年、水分をしっかり摂ることの重要さを説いておられます。「医者の言うことは神の声として聞くべきであった」と後悔し、「脳梗塞予防5カ条」を記しておられます。 ・こまめに水分補給 ・冷房は弱めに ・肝に負担をかけない ・気を補う薬や食べ物を ・血液をサラサラにする いずれも皆さんに実行していただければと思います。4の薬については、医師にご相談ください。医学的観点から少し追加しますと、激しいスポーツや夏のスポーツの時やサウナに入る前などの水分補給は、その状況にもよりますが、小さい紙コップでは何杯も飲んでも不足することが多々あります。 尿が少ない、あるいは濃くなる時は脱水、つまり飲水量を増やすべきと考えて良いでしょう。なお脳梗塞の本格予防には西城氏も言っておられたように、医師を活用し、その定期検診と指導を受けることが大切です。特に一回でも脳梗塞を患われた方はまた起こる可能性があるため本気で取り組まれることを勧めます。 定期検診にあたっては上述のことに加えて高血圧、糖尿病、コレステロール、尿酸、不整脈、心臓病、血管病その他様々な原因をまとめてチェックしてもらい、問題をできるだけ抑え込むと、脳梗塞はかなり起こりにくくなります。 医者にかかるというのは健康自慢の方々にとって、少々心苦しいところもあると思います。しかしある程度の年齢、具体的には40代以後になると、体力、気力、身体能力、運動神経などとは別の意味で体へのケアが必要になります。元プロ野球選手で皇太子殿下への野球解説も務められた解説者の佐々木信也さんの名言を記します。「昔の健康は財産にはなりません」。 稀代のエンターテイナー西城秀樹氏の訃報からお話を広げ、健康法やその注意点をお書きしました。西城氏のご冥福と、皆さんのご健勝を祈ります。
80代の母がロコモの末に、自宅の畳の上で転倒し大腿(だいたい)骨頸部骨折で手術。1年以上たった今も入院中。なぜこうなったのか、医療セミナーなどを取材し、リポートしてきた。ここでまとめておきたい。 4コママンガ(日本整形外科学会提供)は母のケースと同じ。ロコモ→骨折が、日本の高齢女性で増えている。2040-50年には、30万人に達すると予想される。先進国の多くは克服したのに、なぜ日本だけが? 骨折の原因は骨粗鬆(こつそしょう)症だが、現在40歳以上の女性に健康増進法に基づき自治体が5歳ごとに実施している骨粗鬆検診の受診率が全国平均約5%と低すぎるのが1つ。 骨粗鬆症の推定患者数は1280万人だが、検診率が低すぎて治療対象に上がってこない。 骨粗鬆症と分かれば、骨密度を高め骨質を改善するのに有効な薬剤治療が受けられる。骨粗鬆症に気づき、深刻なドミノ骨折を起こす前に治療するのが大事。 私の母の場合も大腿骨頸部骨折の半年前に、腰痛を訴え、整形外科で脊椎圧迫骨折と診断された。本人も周囲も骨折とは夢にも思っていなかった。痛みはあるが、動ける。だが、骨折は連鎖して起きる。 専門家の話では「脊椎圧迫骨折を起こした人が大腿骨骨折を起こすリスクは折らない人の3-5倍。1度骨折した人は無条件で治療対象にすべき」という。 皆さんの老親で、もし腰痛を訴える人がいたら、骨折かも? とうたがってほしい。それで、ドミノ骨折を防いでほしい。 次回から9月に行われた日本整形外科学会主催の講演などをリポートする。テーマは「ロコモの2025年問題」。2025年問題とは、私ら団塊の世代が続々75歳の後期高齢者になることだ。今、老親介護をしている団塊の世代が介護される側に回る。どういう状況になるか、容易に想像できるだろう。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
昨今、雑誌で盛んに取り上げられるシルバーエイジのセックスライフ。「男たるもの、いくつになっても」という勢いだが、パートナーである女性に拒否されては元も子もない。 「セックスより趣味」という妻もいるからなおさらだ。そもそも中高年女性の性欲はどうなっているのか。 【60歳を過ぎても】 今年1月に公表された「JEXセックスサーベイ2012」によれば、婚姻期間30年以上、平均年齢60歳前後のカップルでは、5組に4組はセックスレスだった。 しかし、5組に1組は月1回以上の性の営みを持っている。一般的に女性は50歳前後で閉経すると、女性ホルモンが急激に低下するのだが、5組に1組はそれを乗り越えていたことになる。実は女性の性欲は、年を重ねても旺盛なのだ。 産婦人科医の日本家族計画協会クリニック・北村邦夫所長が解説する。 「男女を問わず性欲と深い関係があるのは男性ホルモンです。男性は18-20歳にピークがあります。女性のピークは30代後半から40代。女性の場合は、女性ホルモンが低下すると、相対的に男性ホルモンが高まるのです。 だから男性よりもピークは遅い。閉経を過ぎても性欲は十分に保たれ、相当長い間、維持されることになります」 つまり、女性は60歳を過ぎても性欲があってセックスも可能というわけだ。それを裏付けるもう1つの調査結果がある。 【40歳以上で中絶増】 厚労省の発表した「平成23年妊娠総数(出生数+中絶数)100」に対する「中絶の割合」では、45~49歳が58%にも上った。50歳以上でも33・9%。シルバーエイジのセックスライフで、思いがけずに「妊娠」することがあるのだ。 「40歳以上の『産み終え世代』は、セックスにもゆとりがある、避妊のことも知らないわけではない。にも関わらず、妊娠して中絶を余儀なくされている。 ピルなどの女性主導の避妊法は確実に広がっているものの、コンドームと膣外射精の男性主導のセックスにより、このような状況が起こっていると考えられます」(北村所長) 避妊方法については別の機会に譲るとして、40代後半以降の女性も、性欲があって妊娠することも可能。 つまり、「子供の母親」「オバサン」などと男性が思ってセックスレスを続けていると、女性は家の外に性欲のはけ口を求めることも考えられる。実際、「不倫をしている」といった女性の話は、そこかしこにある。 ただし、それはごく一部に過ぎない。冒頭の調査結果では、セックスに積極的になれない理由として、60代の男女ともに『セックスより趣味など楽しいことがある』が目立っていた。 「これではセックスの再開は難しいと言わざるを得ません」と北村所長は指摘する。 (医療ライター・夏山佳奈)
今回も鳥取大学医学部・萩野浩教授の講演リポート。 「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(日本イーライリリー主催)という講演の中で、萩野教授は2012年6月に高齢の母親をもつ娘4700人(45-60代)を対象に行ったインターネット調査「母親の健康と介護に関する意識調査」を発表した。 介護の担い手は、この年代の女性が多いうえに、実は将来介護される側にもなりかねないので、どういう意識をもっているのか興味深い。 「もし腰痛の原因に骨折の可能性があるとしたらどのような対策をとるか」という問いに、「医者に診てもらうことをすすめる」が7割だが、一方で「診てもらえる医療機関を調べる人」は3割未満で、30%は医療機関をどこで探していいのか分からないようだ=グラフ。 「母親の介護が必要になった際、心配なことは何か」と聞かれて、「自分の生活スタイルを変えなければならないこと」がトップで約61%。「精神的な負担が生じる」58%。「経済的な負担が生じる」45%。「自分の自由な時間がなくなる」40%。「特に心配なことはない」はわずか約9%に過ぎなかった。 だれしも、いずれ何らかの形で介護に関わる場合の不安が見て取れる。 「母親の介護予防のためにどのような対応策を講じているか」については、「定期的に医者に診てもらうことをすすめる」がトップで44・5%。その一方で「何もしていない」が25・7%に上る。 この調査で分かったことは、娘の約4割は母親が腰痛を抱えていることを認識している。だが、腰痛の原因に骨折があることを知らない娘は7割以上に上り、年齢が原因と思っている。 母親に腰の曲がりや身長の低下が認められても8割の娘は年齢が原因とし、骨折の危険が潜んでいることを9割は認識していない。 母親の介護をすることになった場合の気がかりは「自分の生活スタイルへの影響」などで、予防の対応策として約半数が「医者にかかること」をすすめているが、病院に付き添ったり、具体的な情報を提供する娘は少数派ということだ。 「こういう調査は初めてですが、親の介護で大変な思いをするのは自分たちですし、やがては自分たちも介護される側に回るわけですから、骨折が大変なことだとぜひ気づいていただきたいと思います」と萩野教授は話していた。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
引き続き鳥取大学医学部の萩野浩教授の講演をリポートする。題目は「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(日本イーライリリー主催)。 「骨粗鬆(こつそしょう)症は社会的に大事な問題とはいわれておりましたが、介護する立場に立っての取り上げ方は新しい取り組みだと思います。介護をする立場を見据えてこの問題を捉えることは、将来のこの問題の解決に道を開くことにもなろうかと思います」 こう前置きして、萩野教授は、2012年6月に高齢の母親をもつ娘4700人(45-60代)を対象に行った、インターネット調査「母親の健康と介護に関する意識調査」を発表した。日本の介護の担い手は、この年代の女性が多いから興味深い。 調査は介護を抱えている人の腰痛などへの理解度を把握したものだ。対象者の内訳は40代=36%、50代=53%、60代=10%という割合で、母親の年齢は70代が5割以上、80歳以上が4割以上となっている。半数以上が介護の可能性ありで、同居は2割未満だ。 その調査結果によると、「母親が訴えている痛みの症状」では、手足の関節=38%、腰=33%、背中=9%。 「母親の腰痛に対して何か行っていることはあるか」との問いには、行っている=44%、53%が何もしていない。 「高齢者の腰痛の原因としてあなたが知っていることを選びなさい」との問いには、「年齢(高齢者だから)」が約7割で、「骨折」と答えた人は26・4%だった。つまり、68%の人がトシだから当たり前と片付けてしまい、意外に骨折の重要性が認識されていないことが明らかになった。 「母親の姿勢の変化で気づいた点」を聞くと、身長が縮んできた=28%、身長が縮み背中・腰が曲がってきた=24%、背中・腰が曲がってきた=15%と約7割が姿勢の変化を認識している。 すでに述べてきたように、身長の縮みや姿勢の変化は、骨粗鬆症や骨折の危険と密接な関わりがある。ところが、姿勢の変化の原因となると、「年齢(高齢者だから)」が77%で「骨折」と回答した人は4%に過ぎなかった。 「骨折の3分の2は痛みがないので見過ごされやすいのですが、原因の1つとして考えていただきたいと思います」(萩野教授) 私の母も大腿骨骨折の半年前に腰痛を訴え、整形外科を受診すると、腰椎の圧迫骨折と診断された。しかし、本人は骨折などとは夢にも思っていなかったのだ。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
パーキンソン病患者のための意外なセラピー「ボクシングセラピー」が全米ネットのテレビ番組で紹介され、大きな話題になっています。 日本では難病指定されているパーキンソン病患者は、アメリカに100万人いて、毎年6万人が新たに診断を受けているといわれます。 ボクシングの元ヘビー級チャンピオンのムハマド・アリ、俳優のマイケル・J・フォックスなどが患者として知られています。 手足の震え、言語障害、曲げ伸ばしが硬くなり、バランスが悪くなるなどが特徴的な症状で、有効な治療法は見つかっていません。ところが、「ロックステディー・ボクシング」と名付けられたボクシングセラピーが、患者の症状を軽減すると注目されているのです。 ロックステディー・ボクシングは2006年、インディアナポリス大学で考案され、今では全米50カ所、さらにイタリア、オーストラリア、カナダのジムでクラスが開催されています。 通常のボクシングと違って激しく闘うことはしませんが、ストレッチで体が硬くなるのを緩和し、フットワークでバランスを養い、パンチは震えを、大声の叫びが言語障害を緩和する効果があることがわかっています。 インディアナポリス大学で2年間行った調査によれば、ボクシングセラピーを受けた患者には、症状が進行しなかっただけでなく、軽減した人もいました。 「強度の高いエクササイズは脳のドーパミンを増やし、神経細胞を増加させるのではないか」と研究者らは推測。今後、病気の治癒にもつながる可能性もあるということで、まさに病気と闘うボクシングの効果に、熱い視線が注がれています。 ▽シェリーめぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター。横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。
一昨年末に大腿(だいたい)骨骨折で手術し、現在も入院中の88歳の母のケースでも、実は前兆があった。骨折は連鎖して起こるから前兆に気づくかどうかは分かれ目となる。 そんな目を開いてくれたのが、昨年7月の鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授による「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(主催・日本イーライリリー)という講演だった。 萩野教授は骨粗鬆(こつそしょう)症は沈黙の疾患と呼ばれ痛みを伴わないために、どのように気づくかが大事だと強調した。 「まず腰痛で気づくことが大事です。腰痛の原因となる疾患は背骨と内臓が考えられますが、動いたときに痛いのは背骨、寝ていても痛い場合は内臓と考えられます。 骨粗鬆症の推定患者数は1280万人といわれますが、沈黙の疾患といわれ、背骨の骨折でも痛みがあるのは3分の1で、残りは気づきません」 痛み以外で家族に気をつけてほしいのは身長の変化だ。2センチ以上縮むと背骨骨折の危険度が高くなる。 「1回背骨を骨折すると連鎖します。椎体骨折は4倍のリスク。75歳以上は大腿骨頸部骨折につながります。75歳から急に増え、生命にもかかわってきます。アメリカでは骨折を予防することで、死亡率が低下したことが証明されています」 2010年の統計では、要介護者の10%が骨折が原因で、脳血管疾患21%、認知症15%となっている。 女性で大腿骨骨折をするのは80歳代は100人に1人、80歳後半は50人に1人、それ以上は30人に1人といわれ、総計14万5000人に上る。 「12年では19万人に達しているでしょう。いま50歳の女性の20人に1人が将来、大腿骨骨折を起こすとみられ、10-15%が寝たきりになります」 こうした人たちの介護を担うのは同居家族であり、特に40代から60代の女性が約7割だ。時間的な負担では寝たきりになれば半数はほぼ終日介護に費やしている。介護者の悩みやストレスは計り知れない。 この講演ではわが身に思い当たることばかりだった。少し数字は古いが、同世代の親を持つ人には参考になる話なので続けてリポートする。=次回に続く ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
日本整形外科学会記者説明会の続き。同学会理事長の丸毛啓史(まるも・けいし)東京慈恵会医科大学附属病院長は、国民の健康増進のために国が定めた基本方針「健康日本21」(第2次)に、運動器に関する具体的な目標として、ロコモの認知度を2012年の約17%から22年には80%に引き上げるなどを掲げた背景を説明。超高齢社会の日本で、健康寿命延伸と持続可能な社会保障制度のために、ロコモ対策が必要とした。 丸毛理事長は、「ロコモは治療でき、予防できる」と強調した。その例として、骨粗鬆(こつそしょう)症を挙げた。放置すると、脊椎圧迫骨折から大腿(だいたい)骨近位部骨折を引き起こし、要介護、寝たきりとなる危険がある。 同学会が3000人に、65歳以上で骨折した家族の有無などを聞くと、骨折ありが292人に上り、うち62人が歩行不能になったという。 また、最初の脊椎圧迫骨折を放置すると、4人に1人は1年以内に別の部位を骨折するドミノ倒し現象(骨折の連鎖)も指摘された。骨粗鬆症は適切な治療によって7割近くの骨折が防げるというが、骨粗鬆症の治療を受けているのは女性で5%、男性1%に過ぎないというデータもある。 骨粗鬆症検診の受診率は低く、1度骨折した後の治療率も20%未満で、2次骨折防止は不十分という実態がある。そこで昨年から、骨粗鬆症患者を見つけ、医師との橋渡しをする「骨粗鬆症マネージャー」の資格認定制度(日本骨粗鬆症学会)が始まった。 変形性脊椎症などの慢性的な腰痛を放置しておくと、やはりロコモの危険性がある。だが、約6割の人が医療機関を受診しないというデータもある。この受診率を上げるのも課題だ。 最近、話題になるサルコペニア(筋肉減少)についても、「筋肉の減少より筋力の減少のほうがもっと大きいことが分かってきた。それも適切なトレーニングと治療で増強は可能」とした。 これらを受けて、日本整形外科学会のロコモ対策は、07年「ロコモ」提唱、10年ロコモチャレンジ!推進協議会設立、11年ロコモアドバイスドクター制度開始、12年健康日本21(第2次)目標項目に決定、13年ロコモ度テスト発表、14年ロコモメイト/ロコモコールプログラム開始、15年ロコモ度判定法公表-と進んできた。 自分のロコモ度は片脚立ちなど簡単なロコモ度テストで知ることができる。そして、どこでもいつでもでき継続できるロコモーショントレーニング(ロコトレ)で改善できるので、同学会のホームページなどでやり方を確認してほしい。 また、特に中高年女性には、自治体が実施する骨粗鬆症検診を受けることをおすすめしたい。 (木村進) =おわり ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
ロコモティブシンドローム、通称“ロコモ”と呼ばれる言葉をご存じだろうか? 和名は運動器症候群。現在全国で4700万人の人が苦しんでいるという。中高年の人が加齢とともに、日常生活で大きな支障となっているのがこの足腰のトラブル。 実は日本でも骨、関節などの運動器の障害が年々深刻化しているのが実情。このロコモの3大要因として取り上げられているのが、関節症、骨粗しょう症、そして“脊柱管狭窄”である。 中高年の腰痛や足のしびれの多くはほとんどがこれなのだ。軽いうちは、さほど気にも留めず、見過ごしてしまうことも多いのだが、悪化すると歩けなくなったり、最悪の場合は寝たきり状態にもつながる厄介でつらい症状なのだ。 脊椎管狭窄や腰椎のすべりの治療法は、手術で狭まった脊椎管を削って広げたり、腰椎のずれを元に戻す方法などがあるが、いずれもからだにかかる負担が大きいのが難点。 そこでこの度、にわかに注目を浴びたのがスイカの果汁に豊富に含まれている“シトルリン”という日本で発見された機能成分。 この成分はアミノ酸の一種で、軟骨によいとよく聞くグルコサミンやコンドロイチンなどの成分とは違い、血管を拡張して血液の流れをよくし、抗酸化作用によって免疫効果を高めるといわれる。医薬品の認可を受けたのち食品として認められた新成分だ。 シトルリンは、炎症ケア成分として話題の「非変性II型コラーゲン」や神経系のケアとして神経細胞を修復する働きをもつ「ビタミンB12」や骨量増加をサポートする「卵黄ペプチド」などと複合することによって、昨日パワーがアップし、ジンジンするしびれや痛みに大きな効果を発揮するということがわかった。 85歳になった現在も医師としてバリバリ活躍している桑原康隆先生は、2年前から脊椎管狭窄の症状に悩まされたひとりだが、こう語る。 「飲み始めて半年以上ですが、右足のしびれがあまり気にならなくなったことに驚きますね。 医療とサプリメントは違うものですが、上手に使えば非常によい働きをするということがわかりますね。毎日愛用しています。患者さんからも元気な先生、引退しないで頑張って、といわれています」
先日、加藤茶さんがパーキンソン症候群であったとカミングアウトされ、話題になりましたね。 パーキンソン病という名前はよく耳にするかと思いますが、実際どんな病気なのか、その原因や改善方法について医師に解説していただきました。 ■ パーキンソン病ってどんな病気? パーキンソン病は、脳が出す運動の指令が筋肉にうまく伝わらず、なめらかな動作ができなくなってしまう病気です。 これは、脳の黒質という部分の神経細胞が減ってしまうのが原因です。 この神経細胞は「ドパミン」という神経伝達物質を作り、「ドパミン」を使って体を動かす機能を調節する働きをしています。 黒質の神経細胞が減るとドパミンも減ってしまうために運動の情報が伝わらず、様々な症状が出てきます。 原因 薬剤性:飲んでいるお薬が原因です。 胃薬、降圧剤、抗不安薬などが原因薬剤になり、飲みはじめてから数ヵ月程度であらわれることが多いようです。薬剤性パーキンソン症候群は、原因薬剤を中止することで消失します。 脳血管障害性:動脈硬化により脳の基底核(運動を司る神経がたくさん集まっている場所)小さな血管が詰まることが原因です。その他:脳炎などの感染症の後遺症、ケガや中毒で起こります。 ■ 手足の震えや動きの低下……気になる症状は? 震戦:手や足の震え 最初に気づくことが多い症状で、体の左右のどちらか片側でより強い症状があらわれます。 この震えは何もしていないときに目立ち、何かしようとすると止まるので、患者さんご自身はあまり不便を感じません。 筋個縮:筋肉がこわばる 患者さんの手首を持ってゆっくりと前後に動かすと、歯車のようなカクカクとした抵抗感があります。 患者さんご自身が日常生活で気づくことはほとんどありませんが、病気が進むと動作がぎこちなくなったり、歩くときに腕の振りが悪く足が引きずり気味になったりします。 無動:動きが遅くなったり、少なくなったりする 速く歩けない、寝返りが打てないなどの症状があります。 また、顔の動きが少なくなるために、表情が乏しくなります。 姿勢反射障害:バランスがとりづらくなる バランスをとろうとして、膝をまげて、少し前かがみになった姿勢になります。 転びやすくなったり、歩いているうちに前のめりで小走りになってしまうこともあります。 【医師からのアドバイス】 薬剤性パーキンソン症候群は原因薬剤を中止することで改善します。また、脳血管障害性、感染症、ケガや中毒などが原因の場合はリハビリテーションが有用です。 加藤さんのように原因の薬剤をやめた途端、劇的に改善する可能性もありますので、当てはまる症状がおありの場合は神経内科医にご相談ください。
速く歩くことが健康寿命の維持に密接な関係があるという京大大学院の森谷敏夫教授の講演に続き、サントリー健康科学研究所の神崎範之研究員の発表である。 足の健康が気になる50-79歳の男女60人に「最近半年以内に感じた足の症状・状態」を聞いたところ、「実に6割近くが昔より歩くのが遅くなったと感じると答えました」。 「ひざ関節が痛い」約4割、「片足立ちで靴下がはけない」約2割など。「信号がチカチカしても急げなくなった」との声もあった。 歩行速度の低下は、ひざ関節の痛みと筋肉の衰え、つまり足の老化が原因。対策としては、ひざ関節の軟骨と筋肉に役立つ栄養・成分の補給と筋力トレーニングが考えられる。ここでは、ひざ関節と筋肉の双方に役立つ成分を同時に摂取するという新発想を検証した。 ひざ関節に有効なのは、おなじみのグルコサミン、コンドロイチン、II型コラーゲン。筋肉は、カツオ、マグロに含まれる筋肉材料のイミダゾールペプチド、抗酸化力の強いケルセチン、筋タンパク合成を促進するビタミンDだ。 ひざ関節に痛みを感じ、歩行速度の低下が顕在化した40-74歳の男女100人を、軟骨・筋肉に役立つ成分の食品摂取群とそれらを含まない食品摂取群に分け、16週間、ひざ関節症状と歩行速度など運動機能を調べた。 その中で特にひざ関節の痛みが強い48人について解析した結果、ひざ関節についてははっきりと改善がみられた。 運動機能については、いすに座ってひざを伸ばすときの力を測定すると、8週以降に筋力増強がみられた。体重60キロの場合、有効成分を摂取しない人より筋力が3・51キロ強くなった。 座った状態で2リットルのペットボトルを1・8本分押し上げる筋力がついたという。 歩行速度も、10メートルを普段の速度で歩いてもらい真ん中の6メートルの速度を計測すると、8週以降で明らかにアップした。 有効成分を摂取しない人と比べ、100メートル当たり3・6秒早く、1分当たり3・9メートル多く歩けるようになった。東京・渋谷のスクランブル交差点の横断歩道(約140メートル)を5・1秒早く渡れるという。 軟骨と筋肉の双方に有効な成分を摂取するという新発想は、劇的な効果をみせたのだ。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
ただ歩けるだけでなく、速く歩けることが健康寿命と密接な関係があることを、アメリカの最新データで明らかにした。。 森谷敏夫京都大学大学院教授(人間・環境学研究科応用生理学研究室)。「ロコモの現状」という講演を続けてリポートする。 「なぜ歩くスピードが生存率を決定するか分かりますか」と森谷教授。 歩くためにはエネルギーが必要だ。下半身の筋肉に心臓から血液を送らなければならない。歩くための筋肉を「第2の心臓」と呼ぶのは、歩けばそれだけの血液を心臓に戻すから。従って速く歩く人ほど、心臓を使い鍛えていることになる。 「歩行スピードが落ちると、心臓に戻る血液は少なくなるから、それだけ心臓も弱るわけです。そうした負のスパイラルに陥らないために、足を鍛えることが大事です」 年齢とともに筋肉が衰えるのは、多くの人は「老化現象」という。 「でも、半分くらいは『不活動性萎縮』といって、使わないから退化するんですよ。使い続ければ70-80歳になっても筋肉は維持できるんです」 そこで森谷教授が指摘したのは、日本人のエネルギー摂取量の平均値が減り続けており、今は1846キロカロリーと、終戦直後より低いレベルまで下がっていること。 それなのに、日本人男性の肥満度をみると、BMI(体重キロ÷身長メートル×身長メートル)指数25以上の人の割合が40代、50代は約35%、30代、60代でも約30%が肥満レベルなのだ。 「飽食の時代なんてとんでもない。それなのになぜ、太っているのか。動かないからです。1日中座ってばかりいるから」 ここで、森谷教授は再び衝撃のデータを明らかにした。カナダ人の18-90歳の約1万7000人の座っている時間と死亡率を平均12年間追跡調査したものだ。ほとんど1日中座っている人は、死亡リスクが1・54倍高いという結果が出た。 「軽中度の運動をすすめるのは当たり前で、長時間座っていることのリスクに警鐘を鳴らすべきです」 森谷教授は高血圧も糖尿病もほとんどすべての病気は運動しないことから起きるという。 「糖尿病は筋肉の病気ですよ。筋肉で運動すると糖代謝できるのに、運動しないから代謝できなくて糖尿病になる。遺伝や糖質の取りすぎのせいじゃありません。 糖は脳の唯一のエネルギー源ですから糖質を制限して糖尿病を治すなんて本末転倒です。運動をすれば、血圧も正常化しますし、最新の脳研究の成果では、70歳でも運動すれば脳の海馬の容積が増えるというデータがあります。鬱病や認知症の予防にもつながりますよ」 森谷教授は速く歩くことを維持することが、健康寿命を延ばす重要なロコモ対策になると結論づけた。 (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
人間歩けなくなったらおしまい-とは、よくいわれる。だが、ただ歩けるだけではだめで、速く歩けなければいけない。 6月に東京・丸の内で開かれた「第16回サントリー健康セミナー2013年」で、「ロコモの現状」と題して講演した森谷敏夫京都大学大学院教授(人間・環境学研究科応用生理学研究室)によると、歩行速度と健康寿命には密接な関係がある。 森谷教授は、まずロコモの現状について説明した。2012年の要介護認定者数533万人(前年比105%)、要介護となる要因で、脳卒中(22%)認知症(15%)と並び骨折・転倒(10%)関節疾患(11%)を合わせた運動器障害=ロコモが、クローズアップされてきた。 国も手をこまねいているわけではなく、現在17・3%しかないロコモ認知度を、近い将来に80%まで高めようとしている。そして、対策として「身体活動指針(アクティブガイド)」を発表して65歳以上を対象に毎日40分の身体活動を奨励している。 果たして皆さんはそれだけ体を動かしているだろうか。「もし動かさないと、30歳から人間の筋肉は1年に1%ずつ落ちていく。そうして70歳になると40%の筋肉はなくなるということです」と、森谷教授は警告する。 NASA(米航空宇宙局)の宇宙飛行士は無重力空間で生活すると、1日で1年分、2週間で15%の筋肉を失うという。 「その上、男性も女性も骨粗鬆症になって帰ってきます。骨粗鬆症になりやすい閉経した女性の10-15年分のカルシウムが2週間で抜けてしまいます。無重力で筋肉に負担をかけない生活により、ロコモになってしまう」 つまり、ロコモを防ぐためには、関節・筋肉・骨によい栄養を取ることだけではなく、筋肉を維持する運動をしっかり行うことが非常に大事だ。 衝撃的だったのはここからだ。 「最近、歩く速度が遅くなったと感じることはありませんか。アメリカの研究データでは、そう感じたら死期が迫ってきたという結果がはっきりと出ています」 2011年に65歳以上の約3万4000人を6-21年間追跡した。その結果1万7000人以上が亡くなっているが、その歩行速度が記録されている。 そのデータによると、たとえば、75歳で速く歩けた人(1・6メートル/秒)の10年後の生存率は男性で87%、女性で91%、ゆっくりしか歩けなかった人(0・2メートル/秒)は10年後は男性で19%、女性で35%と、明らかな差が出たのである。速く歩けなければ死期は早いという結果だ。 森谷教授は、自らの足の筋肉を見せながら「62歳の京大教授でも鍛えれば速く歩けますよ」と笑い、運動によって健康寿命を延ばす重要性を強調した。 =次回に続く (木村進) ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
田中郁子・藤田保健衛生大学講師(名古屋膠原病リウマチ痛風クリニック)の講演続報である。 「わが国では寝たきりになる恐れのある大腿(だいたい)骨頸部骨折が増え続けています。骨折したら手術・入院費が140万-180万円かかり、介護費が年間242万円かかるという計算があります。 背骨の骨折ですと入院治療費は77万円。マスでとらえると、2012年は約19万人の患者で手術・入院費が3400億円ほど、介護費が4600億円ほどでしたが、2030年には約30万人で手術・入院費5400億円、介護費7200億円と想定されます。十分な対処をしなければ国の公的医療保険制度の破綻は目に見えています」 問題は骨粗鬆(こつそしょう)症検診の受診率の低さだ。この検診は健康増進法にもとづき市町村が実施、40歳から5歳ごとに女性対象に行う。 「受診率はすべての年齢にわたって5%を切っています。全国平均は約5%で東京は平均値。大分、山梨が14%でトップです。これでは予防にはつながりません」 検診率の高い都道府県では要介護率が低くなる傾向がある。田中講師は骨粗鬆症の治療の現状にも触れた。 「欧米では大腿骨近位部骨折の患者が減っています。それと比例しているのはビスフォスフォネート製剤の使用量の増加です。これがカギになっていると考えられます」 カナダでは、一定の条件を満たした人にビスフォスフォネート製剤を無料提供。アメリカでは一定の条件の人に無料で検診を受診させるなど積極的だ。日本ではなぜ骨折が増え続けているのか。 「2年間で59%改善されたという骨折を予防できる薬剤があるのに、継続されないのが問題です。ビスフォスフォネート製剤は早朝空腹時に180ミリリットルの水で服用するという少し飲みにくい薬剤でした。服用頻度を少なくするよう改善されたのが月1回の服用でいいビスフォスフォネート製剤です。これは、服用する本人にもいいし、介護者にもいい薬です。 服薬が面倒でやめてしまう人の7割が月1回製剤だったら飲んでみたいと言っています。これを活用することで、骨折予防に寄与できると思います」 そのうえで、田中講師はこう締めくくった。 「骨粗鬆症は老化の問題ではなく、治療すべき疾患だということを改めて認識していただきたい。医者だけでなくコメディカル(薬剤師や栄養士ら)が協力して骨粗鬆症に取り組み、骨粗鬆症検診を広め、月1回製剤による骨折予防を行い、日本の寝たきり大国化を防ぎたいですね」(木村進) 【ビスフォスフォネート製剤】強い骨吸収抑制作用を有し骨量増加効果、骨折抑制効果があり、骨粗鬆症治療の中心的薬剤。服用しにくいという問題があっため、週1回→月1回服用製剤が開発された。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。
■将来のリスク知り予防に生かそう 寝たきりや要介護の主要な原因である「ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)」。日本整形外科学会は、将来ロコモになる可能性を判定する「ロコモ度テスト」を作った。若い世代にもロコモ予防の大切さを呼び掛けるのが狙いだ。あなたのロコモ度は?(平沢裕子) ◆健康寿命に影響 ロコモは、骨や関節、筋肉などの機能が低下する「運動器の障害」によって歩行や日常生活に何らかの支障がある状態のこと。平成19年、同学会が提唱した概念。同学会は22年に予防・啓発のため、推進協議会を設立した。ロコモの認知向上は今年4月から開始した厚生労働省の「健康日本21(第2次)」の目標項目にも選ばれている。 運動器の働きが大事なのは、運動器に支障があると健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)に大きく影響するためだ。日本人の平均寿命と健康寿命の差は男性が約9年、女性が約12年。晩年の約10年を自立できない状態で過ごしている人が多いのが現状だ。 同学会はこれまで、「7つのロコチェック」によってロコモ予防を呼び掛けてきた。新たな「ロコモ度テスト」について、同学会理事長で九州大学大学院外科学講座の岩本幸英教授は「ロコチェックはロコモかどうか気づいてもらうためのテスト。既にロコモの人では予防が難しい。運動機能の低下は20~30代から始まっている。より早い段階で将来のロコモリスクが分かれば、生活習慣の見直しなどで効果的なロコモ予防ができる」と説明する。 ◆年相応かチェック テストは、脚力や歩幅の測定と日常生活について25項目の質問に答える「ロコモ25」(https://locomo-joa.jp)でできる。 脚力を測る「立ち上がりテスト」は、高さ10~40センチの台に座り、片脚や両脚で立ち上がれる台の高さを測る。低いほどよく、20代男性では20センチの台から立ち上がれるかが目安。 歩幅を測る「2ステップテスト」は、2歩分の歩幅を身長で割った値を調べる。例えば、身長175センチの人で2歩幅が285センチの場合、2ステップ値は1・63。30代では標準、40代では標準以上だが、20代では標準以下となる。「歩行速度が遅くなると寝たきりのリスクが上がる。年齢相応の歩幅を維持しているかは大事なポイント」(伊奈病院整形外科・石橋英明部長) それぞれの結果を年齢層別の目安と比較し、一つでも達成していないと将来ロコモになる可能性が高いという。 同学会は、ロコモ予防のために片脚立ち(左右1分間ずつ、1日3回)とスクワット(5~6回を1日3回)を推奨してきた。今回はこれに、カーフレイズ(両脚で立った状態でかかとを上げ下げする)とフロントランジ(両脚で立った状態から片脚を大きく前に踏み出し、太ももが水平になるくらいに腰を下げた後、踏み出した脚を元に戻す)の運動を追加。いずれも下半身に筋肉を付ける運動で、カーフレイズは10~20回、フロントランジは5~10回、ともに1日2~3回が目安だ。 岩本教授は「ロコモにならないよう、暮らしの中で運動を習慣付けてほしい」と呼び掛けている。 【7つのロコチェック】 (1)家の中でつまずいたり滑ったりする (2)階段を上るのに手すりが必要 (3)15分続けて歩けない (4)横断歩道を青信号で渡りきれない (5)片脚立ちで靴下がはけない (6)2キロ程度の買い物を持ち帰るのが困難 (7)布団の上げ下ろしなどが困難 ※一つでも当てはまるとロコモの可能性がある
腰椎の圧迫骨折→大腿(だいたい)骨頸部骨折と骨折が連鎖して起きるのがドミノ骨折だ。 それも1年以内が34%という=グラフ。母の場合もそうだった。分かっていれば、備えることができたかもしれない。参考までに、どんな状況だったかを書かせてもらう。 ドミノ骨折の引き金となる前兆が、4月の腰椎圧迫骨折から半年の10月に起きた。母から「顔の皮膚がただれて恥ずかしいのでデイサービスを休む」との電話があった。 デイサービスでお世話になっている介護施設から少し前に介護を受ける人から皮膚の伝染病が出たと連絡があったので「それかな」と思い、近くの皮膚科医院に連れていった。医師は母を見るなり、「これは皮膚病ではない。打撲ですよ」と言った。 確かによく見ると、顔のただれというのは、何かにぶつけてできた青あざである。そんなことも分からないのかという不審な目を向けられた。家庭内暴力か老人虐待を疑われたのかもしれない。ほうほうのていで私の家に母を連れ帰った。 「いったいどうしたの。どこかで転んだんじゃないの?」と聞くが、まったく覚えがないという。着ているものを脱がしてみると、青あざは腕にもついていた。 今度は整形外科に行った。レントゲンを撮った結果、骨は折れていないという。痛み止めと湿布で治すとも。 これを主治医の精神科医に話すと、「もう施設に入れたほうがいいかもしれない」とすすめられた。他人の目がないと危ないというのである。それにグループホームなどで生活をすると驚くほど認知症が改善されることもあるという。 施設介護となると、特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームなどが候補。特養は料金は安いが入居希望者が列をなし、要介護2の母ではとても入れない。有料老人ホームは数百万円の一時金が必要なところが多いのでハードルが高い。渋る母をせきたてて近くのグループホームを見学に行った。 施設を案内されて、最後に居住区画に入ると、入居者全員参加で食事を作っていた。参加せず、じっと座っているおじいさんもいた。母は他人ごとのように無関心な様子。 料金は月額約20万円だった。かなり厳しいが、母の年金に私が足りない分を出せば何とかなりそうな金額である。 ところが、母は「あんなところに行かない。まだ1人でやっていけるから」と、かたくなであった。気ままな1人暮らしがいいという。説得しきれずにいるうちに、運命の12月を迎えた。自宅で転倒し、大腿骨を折ったのだ。 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。