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【最新「死に方」事典】連鎖する「死の10年問題」 FC2 Analyzer



FC2 Analyzer「死」について考えるとき、今後10年ごとにやって来る大問題を避けて通れない。「2015年問題」「2025年問題」「2035年問題」と、この問題は続く。

 まず、2015年問題は、団塊世代のほとんどが高齢者(65歳)となり、支給年金額が膨らむという問題だ。

すでに年金の受給バランスは崩れ、年金財政は大幅な赤字。税金から赤字を補填(ほてん)している状態だ。だから、消費税も増税され、その分社会保障費に回すとされた。

 しかし、消費税の増税程度では、この状態を解消できない。

今後もずっと年金を受け取る側の高齢者が増え、将来年金を支払う側になる子供が少子化でどんどん減っていくのだから、どうしようもない。いずれ、年金がもらえなくなることも覚悟して、私たちは「死期」をイメージしなければならない。

 問題はまだある。現在、年金は国民年金で月に約6万円、厚生年金で月に約24万円である。これで暮らしながら、年金受給世代は、高齢化した親の面倒を見続ける必要がある。

「老老介護」である。現在、介護政策は財政負担の大きい施設介護から在宅介護へと転換されつつあるので、これは相当な負担だ。

 次に、日本社会を揺るがす大問題「2025年問題」がやって来る。2025年を前後して親を看取った団塊世代は、今度は自分たちが死ぬ時期に入る。2025年、団塊世代の中核は75歳を超えた後期高齢者となり、男の平均寿命79歳から見て、次々に病院や介護施設に入る必要が出る。

 そこで、政府は今年度の診療報酬の改定(4月1日実施)と併せ、「入院を減らし在宅を重視する」方針を明確に打ち出した。簡単にいうと、「病院では看取れない。家族が自宅で看取れ」ということだ。

 こうなると当然だが、介護産業は、団塊世代がこの世から去った後の需要減も見越して、設備投資を減らすだろう。つまり、あなたが死期を迎えるころには、面倒を見てくれる病院も介護施設もないことになる。もちろん、富裕層はこの問題を乗り越えられる。年金で暮らす一般層は無理だ。

 つまり、団塊世代は病院からも介護施設からも見放され、頼れるのは家族だけというのが、2025年問題である。

 「死ぬときは自宅で」と願う団塊世代は多いが、実際は「自宅死」は金銭的にも家族にとっても最悪の選択だ。しかし、病床も介護施設も足りなければ他に選択がないわけだから、2025年を待たず自宅死は激増する。

 最後の「2035年問題」は、医療界では早くからささやかれていた問題だ。認知症患者がこの年に450万人に達するとみられているからだ。現在、全国の認知症患者は約230万人とされる。これが倍増するわけだ。

すると、先の老老介護から見て、もっとも困るのが、「親1人子1人」という世帯。こうした世帯は現在どんどん増えている。となると、親の認知症が進んだ場合、自宅介護となれば、子供の生活は成り立たなくなるだろう。

 このように見ると、私たちの老後は圧倒的に暗いのがわかる。もはや、リタイア後の悠々自適生活は一部の富裕層の話で、高齢庶民にとっての最大の社会貢献、家族貢献は、「早死」(平均寿命まで生きないこと)であると言うしかない。

 ■富家孝(ふけたかし) 医師・ジャーナリスト。1947年大阪生まれ1972年慈恵医大卒。著書「医者しか知らない危険な話」(文芸春秋)ほか60冊以上。

【最新「死に方」事典】「肺炎3位」のカラクリ FC2 Analyzer



FC2 Analyzer『65歳過ぎたら、肺炎予防。』という西田敏行さんのテレビCMが話題になった。ご本人も「最近、肺炎で亡くなっている友人、仲間が多い」と言い、自身も予防接種を受けたという。

 このCMを見て「なぜ、いま肺炎?」と思った方も多いと思うが、日本人の死因の第3位に肺炎が入ったためと聞いて、納得したのではないか。日本人の死因は、よく知られているように第1位ががんで、第2位が心疾患である。ところが、最近、肺炎が急上昇してきた。

 たとえば、有名人の訃報で、死因が「肺炎」と発表されることが多くなっている。俳優の二谷英明さん、女優の森光子さん、歌舞伎役者の市川團十郎さんが、いずれも死因が「肺炎」と発表された。

 しかし、医者から言わせてもらうと、CMでキャンペーンしている「肺炎」と、高齢者の死因となる「肺炎」は違うものだ。

 一般の人間が思っている「肺炎」という病気のイメージは、風邪をこじらせたもの、風邪の重いものということだろうが、死因となる肺炎はこれとは違うのである。

 一口に肺炎といっても種類がある。1つは、イメージどおりの肺炎で、これは若い人もかかる。じつは、肺炎と風邪は違い、たとえば風邪は炎症個所がのどや鼻などの上気道だが、肺炎は気管支より奥にある。そのため、せき、たん、発熱などの症状は風邪よりはるかに重い。場合によっては呼吸困難で死に至る。

その原因だが、風邪は主にウイルスだが、肺炎はウイルスの他に真菌という細菌に侵されるケースがある。ただし、肺炎を起こす菌は何種類も知られていて、原因となる菌によって効果があるクスリも違ってくる。

 肺炎は市中感染もあるが、病院や介護施設などで感染する例も多い。こういった場合、高齢の方がなりやすく、なると症状が重くなる。

 統計を見ると、肺炎による死亡者数のうち、約97%(約12万人)が65歳以上の高齢者によるものなのも、このためだ。

 ただし、高齢者の肺炎は、誤嚥(ごえん)による肺炎(誤嚥性肺炎)が圧倒的に多い。この誤嚥性肺炎というのは、本来、食道へ送られる食物や唾液中の細菌が誤って気管に入り、それが肺まで到達して起こる肺炎だ。この肺炎が重症だと、高齢者は死に至る。とくに、がんなどで末期治療を受けている患者は、この誤嚥性肺炎になるケースが多い。したがって、死因の第3位の肺炎というのは、このことを指すのである。

 高齢になるにしたがい、のどの食物を飲み込む機能が衰える。よく正月に、ご老人がのどにお餅を詰まらせて死ぬという事件があるが、大きく見ればこれと同じことだ。

 したがって、肺炎のテレビCMは、この事実を無視して、あえて「死因の第3位」を強調して、「予防接種」を勧めている。

 医療ビジネスは、じつに商魂たくましいと言わざるを得ない。

 ■富家孝(ふけたかし) 医師・ジャーナリスト。1947年大阪生まれ。1972年慈恵医大卒。著書「医者しか知らない危険な話」(文芸春秋)ほか60冊以上。

前立腺がんは凍らせて殺す 国内初治療を行った医師に聞く FC2 Analyzer


体への負担が少ない前立腺がんの治療法が注目を集めている。国内で初めて「前立腺がん凍結療法」を行った東京慈恵会医科大学付属病院泌尿器科診療副部長の三木健太医師に聞いた。

「前立腺がん凍結療法」は文字通り前立腺がんを凍結させ、がん細胞を死滅させる。

「1年半前から始め、これまでに凍結治療を受けた6人の患者さんは全員が経過良好です」

 前立腺がんは早期に発見されれば、非常に予後がいいがんだ。

 治療法は主に「全摘手術」「放射線療法」「ホルモン療法」。全摘手術と放射線療法の治療成績は同等で、それぞれメリットとデメリットがある。

 全摘手術は前立腺をすべて取るので、摘出後、がんの状態を詳細に調べられる。治療前の検査での想定より状態が悪い場合は、それに応じた今後の治療計画を立てられる点がメリットだ。デメリットとしては、率は低いが失禁や男性機能の低下が挙げられる。

 一方、放射線療法はPSAの低下で「治癒」は確認できるものの、前立腺はそのままなので、治療が不十分であれば残ったがんが再発する可能性がある。放射線が尿道や直腸など前立腺がん以外の場所に過度に照射されれば、切迫頻尿や下血が起こる。しかし、治療直後の男性機能の低下のリスクは低い。

「一般的に、前立腺肥大などによる排尿障害など前立腺があることで不具合を感じていれば全摘手術、そうでなければ放射線療法の選択肢があると説明しています」

■従来の治療法と違って副作用がほぼない

 今回の凍結療法は「全摘手術ではなく放射線療法を選択→放射線療法でいったんPSAは下がったが、その後、徐々に上昇→種々の検査で前立腺内がんの再発が確認」された患者が対象だ。PSAとは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクで、数値が高くなると前立腺がんが疑われる。

 こういった「放射線療法後の再発」の場合、従来はホルモン療法が行われてきた。しかし、ホルモンは全身に作用し、急な発汗、乳腺の痛み、体重増加、男性機能や性欲の低下、さらに糖尿病の悪化、心血管系の障害などの副作用がある。

「再発とはいえ、がんは前立腺内にとどまっているのだから、もっと低侵襲の治療法はないか。そこで始めたのが、凍結療法なのです」

 全身麻酔下で、冷やす針と温度計の機能を持つ針を前立腺がんに数本刺し、アルゴンガスを注入。細胞が死滅するマイナス20度になるまで、がんを凍らせていく。がんが氷で包まれていくイメージだ。

 直腸に入れたエコー(経直腸エコー)で、氷が的確な大きさになっているかなどを確認する。前立腺の近くの直腸と尿道が凍らないように、温度計の針で直腸の温度を確認し、尿道にカテーテルを通して温水を還流する。これらによる合併症は、これまで経験がないという。術後は、基本的にPSAで経過を見ていく。

 現段階では「放射線療法後の再発」の患者だけが対象だが、今後は変わるかもしれない。前立腺がんはごく早期の場合、特別な治療をせずにPSAで経過を観察する「監視療法」の選択肢もある。凍結療法は、監視療法の「次」の治療の一つとして期待されているのだ。

「フォーカルセラピー(部分治療)といい、すでに欧米では行われています。全摘手術や放射線に進む前に、それより低侵襲な治療法、つまり凍結療法などが検討される。日本でも今後注目されていくでしょう」

 なお、凍結療法は自費診療になり、150万円ほどかかる。凍結療法と並ぶ「放射線療法後の再発」に対する低侵襲の治療として、三木医師はヨウ素を前立腺内に挿入する「小線源療法」も行っている。小線源療法は放射線治療の一種だが、照射不十分の部位へ2度目の施術が可能。こちらは保険適用だ。

◆前立腺がんの凍結療法は、現在2泊3日の入院で行っている。「放射線療法後の再発」であっても、ホルモン療法をすでに開始している人は対象外。

【メタボより怖いロコモ】低すぎる骨粗鬆症の治療率 「骨で人生は変わる!」(4)



FC2 Analyzer医療セミナー「骨で人生は変わる! 忍び寄る“骨粗鬆(こつそしょう)症”の恐怖とその治療最前線」(主催・日本イーライリリー)のリポート4回目。浜松南病院整形外科・リハビリテーション科、梅原慶太副部長の講演だ。

 前回、欧米では減少している大腿(だいたい)骨近位部骨折が日本では増加の一途をたどっていることを、梅原氏は指摘した。そのわけとして、骨粗鬆症が治療の対象になっていない現実を挙げた。

日本の骨粗鬆症の推定患者数は1300万人だが、治療を受けているのは200万人。

しかも、65歳以上で大腿骨近位部骨折をした人の1年間の治療状況を調べた調査では、治療率が20%にも満たなかったという。

この人たちは骨折を治療するために、整形外科のお世話になっているはずなのに、骨折の原因である骨粗鬆症の治療は受けていないわけだ。

 「これが日本の医療の現実です」と、梅原氏はため息をついた。

 「脳梗塞や心筋梗塞の患者さんに医者は高血圧や高脂血症、糖尿病などその原因を治そうとするでしょう。ところが、整形外科分野では骨折の治療はしても、その原因である骨粗鬆症の治療まではしないという現実があります」

 「Stop at One!」を合い言葉に、骨折の連鎖を断つことが大事だと梅原氏は強調した。

 骨粗鬆症の診断基準は2012年に改定された。ただ歩いていて転んだだけで骨折することを「脆弱(ぜいじゃく)性骨折」というが、その中で椎体骨骨折か大腿骨近位部骨折なら即骨粗鬆症と診断される。

その他の脆弱性骨折は骨粗鬆症の判断基準である骨密度を示す数値YAMが80%未満で、骨折なしの人でもYAM70%以下で、骨粗鬆症と診断されるという。

それまでは手首やかかとで骨密度を測る簡便な方法もあったが、大腿骨近位部か椎体骨で測ると改められたという。

 厚生労働省がまとめた「介護が必要になった原因」(2010年)によると、1位は「脳血管障害(脳卒中)」21・5%、2位が「骨折・転倒・関節疾患」21・1%、3位「認知症」15・3%など。骨折は要介護になる原因の僅差で2位。

その原因が骨粗鬆症なのである。それだけ骨粗鬆症は重大な病気と認識しなければならない。梅原氏の話を聞き、患者と医療者の意識が変わらないと、私の母のような骨折→寝たきりは減らせないのではないかと思った。

 次回に続く。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

靴下が片足で履けない、椅子から立ち上がれない... 若い女性に急増中の「ロコモ」っていったい何?


みなさんは「ロコモ」という言葉をご存知ですか? あまり聞きなれない、という人も多いかと思いますが、実はこの「ロコモ」、普段から運動習慣のない若い女性の間で急増しているそう。

ロコモっていったい何?

「ロコモ」というのは「ロコモティブシンドローム」のこと。日本語では「運動器症候群」とも呼びます。このロコモは、2007年に日本整形外科学会によって提唱された新概念。骨や筋肉、関節や神経で構成される「運動器」に障害が起こり、移動機能が低下した状態のことを指す言葉です。

どうして最近になってこの新概念が提唱されたかというと、日本が高齢化社会に突入し、多くの人がこれまでよりも長い間「運動器」を使うようになったから。従来の運動器機能障害への対策では解決がつかなくなってきたため、この概念が生まれました。

「歩くとすぐに疲れる」「階段が上がりにくい」「つまづきやすい」「重いものを持つとすぐに疲れる」などが主なロコモの症状。進行すると、介護が必要になるリスクが高まってしまいます。

一見すると若い人には関係のなさそうなロコモですが、若いうちからの運動習慣がロコモ対策には重要。20~30代が骨や筋肉量のピークなので、この時期に適度な運動で刺激を与えておかないと60代以降で思うように動けなくなってしまう可能性が。

20代、30代でもロコモに要注意!

若いうちからの予防が大切なロコモですが、実はすでにロコモの症状が始まっている女性も少なくないんだとか。5月15日に放送されたAbemaTVの「原宿アベニュー」では、東京・丸の内で働く20代と30代の女性352人に調査を実施。なんと30%もの女性にロコモが“始まっている傾向”が見られ、4%の人はすでに“障害が進行中”という結果になりました。


街頭インタビューでは、多くの女性が片足立ちで靴下を履くことができず、「全然運動していない」と答える人もほとんど。
日常的に体を動かしていないと、ロコモに陥る大きな原因になってしまいます。

ロコモのチェック項目と対策は?

「どちらか一方の脚で40cmの高さから立ち上がれない」人はロコモが始まっている状態。
「両足で20cmの高さから立ち上がれない」人は既に移動機能の低下が進行している状態です。

他にも、大股で歩いた時の距離からロコモ度を出す方法など、日本整形外科学会の公式サイトには測定項目が提示されているのでぜひセルフチェックしてみてください。

ロコモを防ぐには、片足立ちやスクワットが効果的。つま先立ちをしてかかとを上げ下ろしする運動や柔軟体操もロコモの対策になります。「まだまだ先の話だから」と油断していると、いつの間にか思うように体が動かなくなるかもしれません。今のうちから運動習慣を身につけ、いつまでも元気に歩き回れる体をつくっていきましょう。

【メタボより怖いロコモ】“姿勢エイジング”を改善しよう サルコペニアの克服


 味の素主催の健康セミナー、国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄所長の「高齢期の筋肉減少症とロコモ予防」リポート最終回。

 前回報告したように、鈴木所長は運動とアミノ酸ロイシン摂取とを同時に行うことによって、サルコペニア(筋肉減少症)を克服する効果があることが、実際の試験によって明らかになったと述べた。

 つまり、(1)運動習慣の重要性(2)食・栄養ケアの重要性-を強調した。鈴木所長の話を引き継ぐ形で、(1)について整形外科医・医学博士でスポーツドクターの中村格子氏が「美姿勢のすすめ」、

(2)について管理栄養士でフードコーディネーターの柴田真希氏が「バランスのよい食事とロコモ予防」という講演をした。

 中村氏は、日本人の老いも若きもライフスタイルの変化により“姿勢エイジング”のリスクに見舞われていると指摘する。小学生の7割が悪い学習姿勢だし、スマホやPCなどIT機器の普及で若い人も姿勢が悪くなっている。

加齢により背中が曲がり前屈みになるのが、“姿勢エイジング”だが、それは姿勢を保つ姿勢筋(脊柱起立筋、腸腰筋、大腿四頭筋など)が衰えることで起きる。

 中村氏は日常の所作から姿勢筋を鍛える「美姿勢メソッド」を考案。味の素社員12人に2週間、簡単な運動と栄養を心がける実験を行った結果、8人の姿勢が改善された。

このメソッドは呼吸法に始まり、基礎編、上級編、さらにはいすから立ち上がったり、ビジネスバッグを持つなどの日常所作編まである。

このメソッドで外側から、アミノ酸摂取で内側からケアすることで、姿勢筋を保つことが大事。それも、できるだけ若いうちから始めるべきだという。

 次に登壇した柴田氏は栄養学の見地から、現代の日本人が抱えている問題点として、低栄養と過剰栄養の二重の負荷を同時に抱えていることを指摘した。

若い女性の過度のダイエットや高齢者のロコモにより食が細ることでの低栄養状態と、ファストフードなどの高カロリーでミネラル、ビタミン不足の食事によりメタボになる過剰栄養状態だ。

 望ましい「ロコモを予防する食事」は筋肉を丈夫にする栄養素タンパク質(アミノ酸)を含む肉・魚・タマゴ・大豆製品・牛乳・乳製品などをバランスよく食べ、タンパク質合成を促進し、骨を丈夫にする栄養素ビタミンD、B6、K、カルシウムなどを摂取する必要があるというものだ。具体的なレシピや調理法は、「からだごはんラボ」を検索してほしい。

 また、味の素では、生涯自立した生活を送りたいアクティブ・シニアのために、鈴木所長が実験結果を発表したロコモ予防に効果があるロイシン高配合必須アミノ酸混合物「Amino L40」配合サプリ「アミノエール」を新発売した。 =この項終わり 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

脳科学者に聞く、男性の脳が女性の外見「バスト、ヒップ」に反応する理由


男性が支持するグラビアアイドルは、女性ファンが多いアイドルと比べて巨乳な確率が高いですよね。でも、そもそもどうして男性は巨乳が好きなのでしょうか?

「男性が女性を見た目で選ぶのは、男性が、『見た目で人を好きになる生き物だから』です」

そう説明するのは、『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』(アスコム刊)の著者であり、医学博士、脳科学者としても活躍している中野信子先生。

■男性は、見た目で人を好きになる生き物
中野先生によると、男性の脳は、恋愛をするときには特に、視覚にかかわる「島皮質」が活性化するそうです。その理由はずばり、「健康で優秀な赤ちゃんを産める女性を見極めるため」。

というのも、バストやヒップが大きく、ウエストとの差が大きい女性から生まれた子どもと、そうでない女性の子どもを比較したところ、前者のほうがいい成績だという結果が出ているというのです。

「特に、お尻と太ももの脂肪は、脳の配線部分の原料となるEPAやDHAなどの脂肪酸を元に作られているので、お尻が大きいと、そうした栄養素を多量に持っているとみなされるのではないかと考えられているんです」(中野先生)

そうと知れば、すぐにでも「ボン・キュ・ボン」の理想的体型に近づくために、バストやヒップは維持しつつウエストを絞りたいものですが、冬の間に蓄えてしまった脂肪を落とすことはそうそう簡単ではありません。

■脳をだましてダイエット
しかし、「ダイエットこそ、脳の仕組みを知っておけばうまくいくものですよ」と中野先生。一体どういうことなのでしょう?

「その方法はとっても簡単。ずばり、脳をだませばいいんです。具体的には、食事している自分を想像するだけ。鮮明にイメージすることができれば、イメージしなかった場合と比べて、食べる量が20%ほど減ったという研究結果も出てるんですよ」(中野先生)

また、そのほかに「満腹中枢を刺激する物質を分泌させる」というのも有効な手段。

「恋愛などのドキドキによって分泌が高まる『ノルアドレナリン』は、満腹中枢を刺激してくれるんです。さらに、ノルアドレナリンは脂肪分解や脂肪燃焼を促進させる働きも有しているので、美を追求したい人にとってはうれしい存在ですよね。

ちなみに、ノルアドレナリンは、恋愛に限らずドキドキしたり闘争心を燃やしたりすることによって分泌されるものなので、夢中になれる趣味を見つけることもおすすめです」と中野先生。

とはいえ、趣味に夢中になりすぎて食事をおろそかにしてしまうことは禁物。脳の健康を維持するためにも、毎日の食事で十分な量の必須アミノ酸を摂取することは大切です。

「良質な必須アミノ酸は、赤身のお肉や大豆製品などのたんぱく質から取るようにしましょう。

たんぱく質が不足すると、攻撃的になったりイライラしたりとよくないことだらけ。もちろん、肌荒れの原因にもなるので、バランスのよい食事は心がけて、心身ともにヘルシーで魅力的な女性を目指してくださいね」

【メタボより怖いロコモ】骨粗鬆症潜在患者に治療啓発を 「骨で人生は変わる!」(3)


日本イーライリリーの医療セミナー「骨で人生は変わる! 忍び寄る“骨粗鬆(こつそしょう)症”の恐怖とその治療最前線」(東京)のリポート3回目。講演者は浜松南病院整形外科・リハビリテーション科の梅原慶太副部長だ。

 梅原医師は、転倒して手首を骨折する橈骨(とうこつ)骨折を「お知らせ骨折」と呼ぶ。治療が必要なほど骨粗鬆症が進んでいると知らせているからだ。

その知らせで現実に治療しているN子さん(71)のインタビュービデオが会場で流された。N子さんは手首の骨折の既往あり。その後、脊椎圧迫骨折もした。連鎖骨折だ。

 〈骨折したときは痛くて、何もできない。なんで私がと思いましたよ。仕事一筋でやってきて、唯一の楽しみのダンスも続けたいし、必ず治したいと思いました〉

 N子さんの話から、女性は何歳になっても若く美しくありたいと考えているのがよくわかる。

 「それだけ純粋に前向きに病気の治療と取り組まれる方が多い」と梅原医師。そして、日本人女性が骨粗鬆症である確率について、「50代は10人に1人、60代は3人に1人、70代は2人に1人」と明らかにした。

ほとんどの女性はいざ骨折して「なんで私が」と思うが、実は70代では2人に1人が骨折予備群の骨粗鬆症なのである。

 「他人ごとではありません」と梅原医師。

 また、欧米諸外国では大腿骨近位部骨折が減少しているのに、日本では増加の一途をたどっていることも指摘した。

 「氷山の一角です。日本の骨粗鬆症の推定患者数は1300万人といわれます。総人口の約1割、東京都の全員くらいが患者数だが、実際に治療を受けているのは約200万人。潜在する患者の多くが、治療を受けていないのが、骨折の増加につながっています」

 潜在患者が治療するよう啓発が大事だと強調した。しかし、女性特有の考え方が検査の邪魔をしているのかもしれない。

 「美しく若くありたい女性にとって、病院で骨密度の検査を受けることは老いを認めることになるということで、ついつい検診を受けるタイミングを失いがちです」

 ここで鳥取大学、萩野浩教授のデータを引用した。「大腿骨近位部骨折後1年間の骨粗鬆症治療状況(65歳以上2328人)」で「治療している」がわずか19%という。

 骨折の原因は骨粗鬆症で、ほとんどの人が手術を受け、整形外科医が関与しながら、この数字は何を意味しているのか。

 「お恥ずかしいけどこれが今の日本の医療の現実です」と梅原医師。

 次回に続く。 

【メタボより怖いロコモ】「骨で人生は変わる!」(2) 身長が縮んだら要注意!!


日本イーライリリー株式会社の医療セミナー「骨で人生は変わる! 忍び寄る“骨粗鬆(こつそしょう)症”の恐怖とその治療最前線」(2月、東京)のリポート2回目。講演者は浜松南病院整形外科・リハビリテーション科副部長の梅原慶太医師だ。

 骨粗鬆症は4大骨折を引き起こし、その人の人生を劇的に変えてしまう深刻な病気だ。

よくあるのは脊椎圧迫骨折だが、骨折した当人も気がつかない場合が多い。「3人に2人は自覚症状がない」とも。私の母もそうだった。ただの腰痛と思っていた。

 さらに恐ろしいのは、骨折は将棋倒しのように2度3度と連鎖して続けて起きる。私の母も最初の骨折から半年後、大腿骨頸部骨折で、寝たきりになってしまった。

早いうちに骨粗鬆症が明確な病気という意識を持って治療することが大事だと、梅原医師は強調する。

 「初期症状は、身長の低下です。でも、普通、身長はそんなに測ったりしませんよね。女性は体重計にはよく乗りますが、身長はあまり測らない(笑)」と梅原医師。

 骨粗鬆症患者に身長を聞いて、その後実際に測ると、平均して3-4センチの差があったという。実生活で「物干しざおが高くなった」などと感じたら、自分の身長が縮んだのではと疑ってみた方がいいかもしれない。

 骨粗鬆症で引き起こされる骨折の中で深刻なのが、大腿骨近位部骨折だ。私の母は室内で転んで、身動きできなくなり救急車で搬送された。

 「非常な痛みを伴いますので、みなさん救急車で運ばれ、80、90歳になってこんな痛いを思いをするとは思わなかったとおっしゃいます。人生最後の大けがといっていい。それが3分間に1人と増えているのです。

2-3日中に手術をしないと亡くなってしまう場合もあり、1年後に生きていられる確率は10-30%といわれております」

 よくある骨折の中で橈骨(とうこつ)遠位端骨折は、簡単にいえば転んで手をついたときに手首が折れる骨折で、比較的早い60代から起きる。梅原医師は「お知らせ骨折」と呼ぶ。

「転んだくらいで骨折するということは骨粗鬆症が進んでいるからです」

 残る1つは上腕骨近位部骨折。腕の付け根付近の骨折だ。

 「大事なことは転んだから折れたのではない。本来骨は非常に丈夫な組織です。それが転んだくらいで折れた原因には骨粗鬆症が隠れていることにぜひ気づいてほしい」

 骨折はまさに治療開始のお知らせなのだ。詳しくは次回に。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

メタボの次はロコモに注意【将来の要介護度チェック】


「ロコモティブシンドローム」、通称“ロコモ”という言葉をご存じだろうか。ロコモと言われると、なにかポップな言葉のイメージがあるかもしれないが、実は今年大注目の要注意健康キーワードなのである。

 今やすっかりお馴染みとなった健康用語に「メタボリックシンドローム」があるが、10年前はほとんど誰も知らなかったメタボの認知率がここまで上がったのは、厚生労働省が「健康日本21」という計画の中で、様々な広報活動を展開してきたからなのだ。

そしてこの3月から始まった健康日本21の第2次計画において、今度はロコモの認知率の向上が目標とされている。つまり、ロコモはメタボと同じくらい注意すべき言葉ということである。

 ではロコモとはいったい何か。卓球の福原愛選手のトレーナーとして有名な中野ジェームズ修一氏の著書『姿勢を変えてロコモ対策超入門』(扶桑社刊)によると、ロコモとは「運動器症候群」のことだそうだ。

筋肉、骨、関節などの体を動かすための器官=運動器の機能が低下することにより、将来、要介護になるリスクが高まってしまっている状態をロコモティブシンドロームと呼ぶのである。

「でも筋肉が衰えるなんて、ずっと先の話?」なんて侮ることなかれ。実は筋肉量は40代から目立って減少していき、特に交通網やエレベーター・エスカレーターなどが発達し、歩くことや階段を上ることが少なくなった現代人は、その衰えが著しいそうである。

 ある調査では、現在ロコモ及びロコモ予備軍と推測されるのは、全国で約4700万人。なんと40歳以上の5人に4人が将来、要介護になるリスクが高まっている状態なのだという。

 そこで、前出の中野氏の著書の中にある「中野式ロコモ危険度チェック」で、自分のロコモ度をチェックしてみよう。

【椅子の片脚立ち】

(1)高さ40cm程度の椅子に座って腕を胸の前で組み、片脚を伸ばして前傾姿勢をとる

(2)その状態で反動を使わず立ち上がり、そのまま3秒間キープ

この動作でぐらついてしまったり、上げた脚をついてしまった人は、筋力やバランス能力が低下しているロコモ予備軍!

※40cmという椅子の高さは40~50代の目安。20代は20cm、30代は30cmでチェック

 ただし、片脚立ちができなかったからと言って将来の要介護が確定したわけではないのでご安心を。

中野氏によると、40代であれば日常の生活活動強度を上げる、例えば階段を使ったり姿勢を整えるなどすれば、これ以上の筋肉の減少を抑えることができるそうだ。

逆に言えば、椅子の片脚立ちができたからといってエスカレーターばかりを使ってラクな生活をしていると、どんどん筋肉量が減少していき、いつロコモ予備軍になってもおかしくないということである。

このロコモ危険度チェックを機会に、自然と衰え行く自分の運動器と向き合ってみてはいかがだろうか。

【メタボより怖いロコモ】女性だけの健康体操教室会員60万人に 第1回ロコモサロン


ロコモ チャレンジ!推進協議会主催「第1回ロコモサロン」(東京、昨年11月)リポート。今回は、全国にフィットネスを展開するカーブスジャパンの「ロコモ啓発に関する取り組み」を、同社執行役員の齋藤光戦略企画部長が話した。

 同社では、「女性だけの30分健康体操教室」を全国で展開している。「筋力トレーニング+有酸素運動+ストレッチ」を組み合わせた30分ほどのプログラム。筋力トレーニングを30秒やり、有酸素運動を30秒というように交互に繰り返し、全身の筋肉を順次鍛えていく。

米国発祥で2005年にライセンス契約した同社が、翌年から全国展開。昨年10月には1365店舗、会員約60万人になったという。

 特徴は、(1)今まで運動とは無縁の40歳以上の女性が会員であること(40歳以上が90%で50~60代が中心)(2)始めやすい、続けやすい(女性だけ、短い30分プログラム、ターミナル駅でなくご近所に立地)(3)有効なプログラム(日米の専門機関でエビデンス)。

 医療費・介護費増の3大要因に次のようなアプローチをしているという。

 (1)メタボ対策(生活習慣病・血管疾患リスク低減)=国立健康・栄養研究所と共同研究
 (2)ロコモ対策(筋力・筋肉量・体力指標などの改善)=同
 (3)認知症対策(認知機能改善=東北大学加齢医学研究所と共同研究)。

 中でも、ロコモについては、トレーニングの結果、下肢筋肉が20%向上し、脚力と柔軟性の向上で転倒リスクが軽減するなどの介護予防効果が証明されたという。

 ロコモ対策はさらに、健康長寿医療センターや筑波大学久野研究室(システム脳科学)との研究を継続しているという。

 これらを踏まえた同社のロコモ啓発活動は、まずは会員向け。さらにその友人・地域社会、そして一般向けに行っている。

会員に対しては、部数60万~70万部の会員誌で専門医が「ロコモは体の動くうちから対策をしなければいけない」などとアドバイスしている。さらに、会員から友人にロコモ認知のための冊子を30万部配布した。

 この結果、会員へのロコモ認知度調査で、2010年8月の21%が13年5月には75%になった。

 また、同社は27都道府県150店舗で介護予防事業を展開しているが、そこでも啓発活動を行っている。そして最後に、「ロコモやメタボ、認知症への効果に関する確かなエビデンスをとり、皆様に広めていきたいと思います」と、齋藤氏は締めくくった。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】味の素はアミノ酸技術で貢献


昨年11月の「ロコモ チャレンジ! 推進協議会」主催「第1回ロコモサロン」リポート。経産省ヘルスケア産業課・鈴木隼人課長補佐の講演「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」に続き、ロコモ啓発に取り組む4社が紹介された。

まず、味の素・健康ケア事業本部長の鈴木信二執行役員が同社の「アクティブシニア・プロジェクト」について報告した。

 同社は食品事業100年、バイオ事業50年、医薬事業30年、その中から健康ケア事業が立ち上がり、10年ほどという。

 「初めは、五輪のアスリートも応援するスポーツサプリメントを手がけ、やがて中高年の健康基盤食品の通販へ。

そして、介護・医療食、さらには採血だけで8つのがんの可能性をスクリーニングする“アミノインデックス”を開発。これを使いメタボやロコモの将来リスクの判定につなげる研究を続けています」

 こう前置きして、鈴木氏は超高齢社会になった日本は、高齢者がいかにアクティブに生きていけるかを考えるトップランナーであるとし、同社が健康寿命延伸に貢献するためにアクティブシニアプロジェクトを発足させたと説明した。

 「最重要課題はロコモの克服ですが、当社は食を通じた栄養状態の改善によって取り組んでいこうと考えています。近年、老化のカギを握る栄養としてタンパク質(アミノ酸)が注目されていますので、当社のアミノ酸技術で貢献したい」

 高齢者は筋肉量が減少し、運動機能低下、つまりロコモになる可能性が高くなる。そこで、同社のロイシン40%配合必須アミノ酸組成物(AminoL40)が、筋肉合成に有効という研究データを示した。

75歳以上の筋肉量の低い高齢女性にAminoL40を3カ月摂取してもらい、同時に運動トレーニングを続けた結果、筋量、筋力は約5倍に増加したという。

 同社のアクティブシニアプロジェクトの基本構想は3つ。

 (1)測定で現状把握(姿勢・歩行診断、将来はアミノインデックスなどでロコモ・リスク診断)

 (2)食・栄養の改善(ロコモ予防メニューWEBサイト「からだごはんラボ」で食事作り支援、AminoL40などで栄養ケア支援など)

 (3)良い姿勢(運動)の実施(ロコモ予防体操、姿勢体操など)

 この構想のもと、メディアや栄養士、ユーザー対象にセミナーを開催。日本体力医学会、日本アミノ酸学会で研究発表するなど具体的な啓発活動事例も明らかにしたうえで、鈴木氏は「健康づくりを味の素グループ全力で応援して参ります」と締めくくった。

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

ロコモの陥らず元気に長生き80歳超でも現役の「健康長寿」を目指す心得(1)


新たな年を迎え、今年はケガや病なく健やかに過ごしたい--そう願う中高年者は多いだろう。そんな人たちは今、“健康長寿”を長いスパンで捉え、将来的にも入院介護を受けない体づくりをしようと考え始めているに違いない。

 厚生労働省は、昨年7月に「健康寿命」の新しいデータを発表した。それによると、男性は71.19歳、女性は74.21歳が健康寿命となっている。健康寿命とは「介護の必要がなく健康的に生活できる期間」のこと。

具体的には、他人の助けを借りずに自立して生活できることだ。その上限の平均が、先に挙げた寿命年数というわけだ。
 同省では4年ごとに、こうした調査を行っているが、今回は23万世帯余りを対象に行っている。4

年前は男性が70.42歳、女性が73.62歳だったので、それぞれ0.77、0.59歳延びたことになる。

 健康寿命がこのように延びたのは結構なことだが、問題もある。同時に発表された日本人の“平均寿命”は男性が80.21歳で女性は86.61歳。つまり、健康寿命は平均寿命よりも、男性は約9歳、女性は約12歳も短いことだ。

この間、死ぬまでの間は健康とはいえず、寝たきりや介護を必要とし、1人では生きられない期間があることを示している。

 もちろん個人差はあるが、ここをメドに「生涯」あるいは「死」というものをより身近に考える必要があるのかもしれない。

 現在、同省ではこの健康寿命を少しでも延ばすことを目標に掲げている。その目標は、2022年の平均寿命を男性が81.15歳で、女性が87.87歳と推計し、健康寿命の延び幅が平均寿命の延び幅を上回ることを目指しているのだ。

そこで今、盛んに「メタボの次はロコモ」と言われ始めた。

 メタボは不健康で寿命にも関わると指弾されてきたが、実は近年、メタボより怖い現象として、新たに問題視され始めたのが「ロコモ」だ。ロコモとは“ロコモティブシンドローム(運動器症候群)”の略で、軽視はできない。

 この運動器とは、骨や関節、筋肉などのことで、年齢を重ねるごとにその機能が衰える。

そして、転倒したり交通事故に遭い、ついに介護が必要になったような時を「ロコモ」と呼び、日頃から患わないように心掛けなければ、というものである。

 東京に「ロコモチャレンジ!推進協議会」という、地域に根差したロコモの認知向上と運動機能改善を目指す団体がある。同団体は日本整形外科専門医が参加し、サポート企業との連携でロコモの正しい知識と予防意識の啓発のための広報活動を推進している。

 また、日本で最大級のウオーキングイベント『日本スリーデーマーチ』('11年)や『スマートライフプロジェクトフェア』('12年・厚労省主催)に同協議会も参加し、“ロコモトレ”の実践や指導を行い、東日本大震災の被災地の仮設住宅などでも、お年寄りたちにロコモ体操などを指導しているのだ。

 こうしたロコモ防止のための運動の裏には、健康長寿の狙いもあるが、実はそれ以上の目的もある。医療費や介護費用の伸びを抑えることだ。

 「高齢者社会といわれ、医療費や介護に必要な国家予算も大きく膨れ上がっていますし、国民もそれ相応の負担増になっています。そ

こでロコモになってしまうのは困るので、骨折しない体や介護不要の健康づくりの啓発活動が求められ、全国の各地方自治体でも盛んに取り組まれるようになってきました」(整形外科学会の関係者)

40代でも要注意!あなたの【歩けなくなるかもしれない度】チェックリスト|美ST


何もないところでつまずく、下りの階段が怖い……日常生活でこんなことありませんか?


あなたは何番に心当たりがありますか?1~7番に当てはまる場合はロコモ。注意が必要です

40代でも油断できない「ロコモ」って知っていますか?

教えてくれたのは……医学博士・整形外科医師 岩瀬美保先生

パーキンソン病、早期治療で進行抑える…診断基準見直し


読売新聞社

発症前の兆候

2つ以上の症状で

死ぬまで自分の足で歩くために… 「ロコモ度」をチェック!


現在、要支援・要介護認定者は約621万人。ここ10年ほどで急増しており、その原因でもっとも多いのが、足腰の筋肉・骨・関節といった運動器の障害。つまり、立ったり座ったり、歩いて移動できなくなったりして自立生活ができず、何等かの支援や介護を必要とする人がもっとも多いということだ。高齢者問題として注目度の高い脳血管障害や認知症も上回る勢いで、要支援・要介護認定者の25%も占めている。
円グラフ

※出典:日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版より

 運動器の障害のために、立ったり歩いたりなどの機能が低下している状態を「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群 通称:ロコモ)と呼び、進行すると要介護リスクが高くなるとして、「メタボリックシンドローム」(代謝症候群 通称:メタボ)とともに国を挙げて対策が叫ばれている。

 とはいえ今、ごく普通に日常生活を送っている人が、“足腰の衰え”に気づくことは難しい。ましてや自分の足で歩いてトイレに行けなくなる状況など想像がつかないだろう。でも現実には、立ち座り、歩行などを担う足腰の筋肉や骨などの成長は20~30代がピークで、それ以降は加齢とともに衰える一方。歩くなどの生活活動をすることで機能を維持しているものの、活動量が減れば、その分どんどん低下する。

 たとえば地球に帰還した宇宙飛行士や骨折などで寝たきりだった人が一時的にも歩行困難になることからもわかるように、足腰の筋肉を一切、使わなければ筋力が落ち切り、立ち上がって歩くことさえままならなくなるのだ。

骨量チャート

※出典:国立長寿医療センター研究所 NILS-LSA活用研究室データより

 日常生活を振り返り、こんなことはないだろうか? まずは以下の7項目をチェックしてみよう。1つでも当てはまれば対策を考える必要がある。

□片足立ちの状態で靴下がはけない。

□家の中でつまづいたり、すべったりしやすい。

□階段を上がるのが億劫。手すりが必要。

□重い物の上げ下ろしなどの重い家事労働が困難。

□2kg(1リットルの牛乳2個くらい)の買い物を持ち帰るのが困難。

□15分くらい続けて歩くことができない。

□横断歩道を青信号の間に渡り切れない

※出典:ロコモチャレンジ!推進協議会『7つのロコチェック』より

「まず自分の運動器の状態を知り、今すぐに対策を始めることが大切。対策をすれば何歳からでも効果があります」と語るのは、医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長の石橋英明氏だ。

「運動器の衰えや疾患などによる機能低下はゆっくり進行するので、“年だから”と見過ごしているうちに歩けなくなるなどということは、大げさな話ではありません。まずはロコモ度テスト(※注)などで衰え具合を把握し、少しずつでも継続的な運動習慣をつけ、日常ではよく歩く、階段を使うなどの活動的な生活を心掛けましょう」(石橋氏)

 肥満や低栄養にならないよう、適切な食生活も大切。また中年以降は、運動器の機能に関わる骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症などが発症しやすくなるので、初期の腰痛、膝痛、だるさなどを放置しないよう、早目の整形外科医への受診をすすめている。

※注:ロコモ度テスト
 
日本整形外科学科が考案したロコモティブシンドローム判定に使われる簡易テスト。たとえば高さ40cmの台(イスなど)に軽く腰掛けた状態から、勢いをつけずに片脚で立ち上がることができるかなど。この40㎝からの片脚立ち上がりができないと、ロコモの始まりともいわれる。

やってみよう! ロコモ度テスト

死ぬまで自分の足で歩くために… 「ロコモ度」をチェック!

 

立ち上がりテスト片足イラスト

2ステップテストの方法イラスト

ロコモティブシンドロームの原因

●加齢(骨は女性で閉経前後から、男性で60才頃から急速に低下。筋肉は男女とも40代以降毎年0.5~1.0%ずつ低下する)
●遺伝(筋肉や骨、関節などが衰えやすい遺伝背景がある)
● 運動器の疾患(骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症など)
 +
●運動習慣の欠如
日常生活での活動量の低下
不適切な栄養摂取状態(肥満、痩せすぎ、低栄養など)

 緑文字の三つは、心掛け次第で向上できることです。

今すぐ始めたい“死ぬまで歩き続ける”ための体操

●ロコトレ

 ロコモティブシンドローム予防のための運動はこの2つ。簡単そうに見えるが、ふだん運動習慣のない人などには意外に大変。バランスを保とうとして動く筋肉、心地よい負荷感を感じる筋肉など、ふだん使われない筋肉を意識することができ、同時に足腰の衰えを自覚できる。毎日続けることが大切だ。

【片脚立ち】バランス力をつける

 姿勢をまっすぐにして立ち、片脚を軽く上げて1分間静止。転ばないように、すぐにつかまるものがある場所で行う。

ロコトレ片脚立ちイラスト

左右1分ずつ×3回/日

【スクワット】下肢の筋力をつける

1:肩幅より少し広めに足を広げ、つま先は外側に30度くらいずつ開いてまっすぐに立つ。
2:膝が足の人差し指の方向に向くように、またつま先より前に出ないようにして、お尻を後ろに引くように膝を曲げて体を沈め、元の姿勢に戻す。深呼吸をする速度で5~6回繰り返す。膝を傷めないよう90度以上は曲げないように注意。

ロコトレスクワットイラスト

5~6回×3回/日

イラスト/日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版より
取材・文/斉藤直子

みのもんたが語る「終活」 パーキンソン病との戦いとレギュラー番組


 タレント・みのもんた(76)が「週刊文春」の取材に応じ、パーキンソン病を患っていることや、番組終了、社長業の引退など、“終活”に向けて動いていることを明かした。

 全盛期には、レギュラー番組16本、推定年収6億円を誇ったみのだったが、今年3月末に12年半続いた「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ系)の司会を降板し、レギュラー番組は現在、関西ローカルの「朝からみのもんた」(読売テレビ系・日曜朝6時半~7時)のみ。「秘密のケンミンSHOW」降板の理由を、みのが明かす。

「実は僕は、糖尿病が持病なんですよ。ところがそこへもってきて去年の暮れ、パーキンソン病を発症してしまってね」

――それは公表されてない?

「誰も聞かないから。『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ系)でアップに映った時、目がうつろになっていた。それで調べたらパーキンソンとわかりました。それで僕、『ケンミンSHOW』をやめたんです。これは筋肉が硬くなっていく病気なんですよね。顔の筋肉にも影響出ますし。それから今、いい薬があるんですよ。その薬を朝・昼・晩飲んで、そういうことがあってね、そろそろ引退なんていうのはおこがましい話で、潮時っていう言葉を僕は使ってるんですけどね。文春さんにもね、この辺は書いてほしい。たくさんの芸能人の方たちいますよね。潮時っていうのを間違えないようにしてほしいです」

――その後、「朝からみのもんた」を始められたのは?

「これはね、僕は立ちの司会しかやったことないんですけど、椅子に座っていいっていうことと、関西ローカルの番組なんですけど、ウォーミングアップをするにはちょうどいい番組なんだよ。それを1年間ということです。まだ半年、来年の春まで続きますけど」

――1年というくくりなんですか。

「そうそう。やっぱりみっともないですからね。あんまり立ったり座ったりするのも不自由だなんていうのも良くないしね。いい薬があるから元気にはなると思いますけどね。今後に期待してますけど、でもあんまりしがみついてもね」

――来年の春に終わった後、別の番組をされる予定は?

「今のところ番組の予定はないですね。僕がやっぱりこう、元気にしゃべれればいいけれども、今はなんていうか薬を飲んでいる最中でしょ。パーキンソンがどんな病気かっていうのは調べてもらえればわかりますけれど、やっぱり結構、階段の上り下りとかね、もちろん走るなんていうのは厳禁だし。今はベッドから起きたり座ったりしゃがんだり、寝たり寝返りを打つのも不自由になってきてるんですよ。介護用のベッドの購入を考えていて、実際見に行ったり、カタログを見たりしているくらい。そんな毎日です」

 さらにみのは、自身が社長を務める水道メーター会社「ニッコク」の社長を引退することを明かした。

「12月26日がちょうど会社の80周年なんですよ。それを機に僕は社長を辞します」

――会長になるということですか?

「かっこよく言えば会長ですよね。その後は、今まで僕と一緒に努力してきた人間が社長になります。新しい血をどんどん入れないとね。子供三人が取締役にいますが、身内は株主だけでもいいですからね。もちろん僕みたいに実力があれば、自分で勝ち取ればいいだけの話ですから。企業っていうのは、存続する力がなければ全く意味ありませんからね」

 11月26日(木)発売の「週刊文春」では、みのが7年前に出会った40歳年下の”介護恋人”との“老いらくの恋”、彼女に贈与した1.5億円マンション、彼女との関係を語ったみのの50分インタビューなどを詳報する。

若いうちから対策を!ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)を防ぐには


ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)という言葉を知っていますか?将来寝たきりになってしまうきっかけとなるロコモは、高齢者だけの問題ではありません。日本整形外科学会が2014年に実施した調査では、30代女性でも約半数の人がロコモに対して不安を抱えているという結果も出ています。自分のカラダの状態をチェックし、今からできる対策を知っておきましょう。(※1)

ロコモとは?

 ロコモは、筋肉・骨・関節などの運動器に障害が起こり、立ったり歩いたりという機能が低下してしまう状態をいい、寝たきりや要介護の最大の原因となっています。日本人の平均寿命は、男性が79.55歳、女性が86.30歳と、世界的に見てもトップクラス。しかし、健康的に活動できる期間を考慮すると、寝たきりや介護が必要となる期間は男性で約9年、女性で約12年にもおよぶとされています。寝たきりになる期間を短くし、健康的に自立した生活を送るためには、早めのロコモ対策が必要です。(※2)

カラダの状態が分かる!7つのロコモチェック!

 自分はまだ大丈夫と思っていても、案外気付かないうちにロコモが始まっているかもしれません。その兆候は「日常生活の動作」から確認することができます。次の7つの項目に当てはまるものがないかチェックしてみてください。(※3)

1. 片足立ちで靴下がはけない
2. 家の中でつまずいたり、滑ったりする
3. 階段を上るのに手すりが必要
4. 家事のやや重い作業が困難(掃除機や布団の上げ下ろしなど)
5. 2kg程度(1リットルの牛乳パック2本程度)の買い物をして持ち帰るのが困難
6. 15分くらい続けて歩くことができない
7. 横断歩道を青信号で渡り切れない

 1つでも当てはまればロコモの可能性があります。当てはまるものがなくなるよう、簡単な筋トレやスクワットなどから、トレーニングを始めてみましょう。

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妊娠中に食べたい食材とつわりを軽減する工夫4つ https://cocokara-next.com/food_and_diet/food-you-want-to-eat-during-pregnancy/

ロコモ対策におすすめの食生活4つ

 肥満やメタボは足腰への負担を大きくし、痩せ過ぎは骨粗鬆症や筋力低下の原因となるので、適切な体重を維持することが大切です。特に、若い女性の極端なダイエットや高齢者の低栄養状態は痩せ過ぎを招くので注意が必要です。(※4)

1. 五大栄養素を意識する
カラダを動かすエネルギーとなる炭水化物や脂質、筋肉や血液の材料となるタンパク質、カラダのさまざまな機能を調整するビタミンやミネラルは五大栄養素といわれ、健康なカラダを作り運動器を正常に保つために欠かせません。

2. 主食・主菜・副菜を揃える
主食・主菜・副菜を揃えることを意識するだけで、自然と栄養バランスの良い食事に近づきます。主食(ご飯・パン・麺類など)からは炭水化物、主菜(肉・魚・大豆製品など)からはタンパク質、副菜(野菜・海藻類など)からはビタミン類やミネラル類を多く摂取でき、健康なカラダ作りに役立ちます。

3. 長いスパンで栄養バランスを整える
栄養バランスの整った食事を毎回食べるのが一番の理想とはいえ、きっちり続けていくのは難しいもの。1食で難しければ1日で、1日で難しければ1週間で、というように無理のない範囲で栄養バランスを整えていきましょう。例えば、朝食をとる習慣がない人は野菜ジュースを飲むようにしたり、パンだけの食事で済ませがちという人は牛乳や果物をプラスしたりとできることから対策をはじめるのもよい方法です。

4. サプリメントなどに頼りすぎない
サプリメントや青汁など、便利なものもありますが、噛むことは、満足感をもたらし、脳の活性化にもつながります。栄養補助食品に頼りすぎず、できるだけ食事から栄養をとり入れるようにしましょう。ロコモ対策はこれからの超高齢化社会において、とても重要です。若いうちからバランスの良い食生活と、運動習慣を身に付けておきましょう。

【参考・参照】
(※1)ロコモチャレンジ!推進協議会実施/2014年度ロコモティブシンドローム生活者意識全国調査
(※2)厚生労働省 平均寿命と健康寿命をみる
(※3)ロコモチャレンジ!ロコチェック
(※4)ロコモチャレンジ!食生活でロコモ対策

「あすけんダイエット - 栄養士が無料であなたのダイエットをサポート(www.asken.jp)」
[監修:あすけん 管理栄養士]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

「介護による家庭崩壊の危機は日本以外にない」と大前研一氏


高齢化が進む日本では、介護が今以上に深刻な問題となることは明白である。先進国に共通する介護問題だが、日本のように介護を理由に離職したり、家庭が崩壊する危機に直面させられる国はないと大前研一氏は言う。

 * * *

 親の介護のために仕事を辞めざるを得なくなる「介護離職」の増加が懸念されている。

 総務省の「就業構造基本調査」によると、2002年10月~2012年9月の10年間に前職を「介護・看護のため」に離職した人は105万4600人に達している。

また、厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%で、2012年時点で約462万人に上り、認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計されている。

 つまり、65歳以上(約3079万人)の4人に1人が認知症およびその“予備軍”となる計算なので、今後は介護離職を余儀なくされる人が急増するとみられているのだ。

 とくに共働き世帯の場合は、奥さんが義父母や自分の両親の介護や看護のために離職、もしくは正社員から契約社員やパートタイマーになって生活に窮したり、精神的・肉体的に疲弊したりして、家庭崩壊の危機に直面するケースも少なくない。だが、こんな国は世界で日本以外に見たことがない。

 たとえばアメリカでは、親が要介護状態になったら躊躇なく施設を利用するだろう。自宅で介護することはほとんどない。

自宅で介護するにしても離職はあり得ず、働き続けて給料の半分くらいでヒスパニック系の介護士などを雇う。デンマークやスウェーデンなど北欧諸国の場合は、寝たきり老人や認知症の老人をケアする公的な施設やサービスが充実している。

 中国のようにまだ大家族世帯が多い国では、家族の中の誰かが高齢者の面倒を見る。つまり、介護離職というのは、かなり日本独特の問題なのである。

【メタボより怖いロコモ】健康投資の重要性企業側に訴え 第1回ロコモサロン(3)


引き続き昨年11月の「ロコモ チャレンジ! 推進協議」会主催の「第1回ロコモサロン」のリポート。経済産業省ヘルスケア産業課の鈴木隼人課長補佐の「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」という講演の続き。

 前回までは、アベノミクスの日本再興戦略の最重要政策の1つとして、高齢者のロコモなどを克服し健康寿命を延ばすため、健康関連産業育成に取り組んでいるという話だった。

そのうえで経産省としては、法律など制度面での整備、サービスの品質の見える化、企業と健保組合など保険者に対して予防活動の投資対効果を明らかにして広めることなどを進めるとした。

 「健康に関する新規事業を起こす場合、個々の事業計画を経産省に申請していただけば、私どもで厚労省に問い合わせて何かリスクがあるのかないのか、あらかじめ法律の適用の有無などを明らかにします」

 また、予防活動の効果を広める取り組みについてもいくつかの実例を挙げた。例えば広島県呉市の健保組合が糖尿病患者に対して行った予防活動の効果について-。

 「糖尿病が進むと透析のリスクもあるわけですが、そうしたハイリスクの方に保健師が定期的に面談や電話などで指導し、数年間で透析に移行した方はゼロだったという実績を上げています」

 有名になったタニタのケースにも触れ、社員食堂の充実やさまざまな社員の健康作りに取り組んだ結果、1人当たりの医療費が9%削減された事例として紹介した。

海外でも、ハーバード大学の研究で、企業が従業員の予防活動に1ドル投資することで、平均して約3ドル分の医療費削減効果が得られたというデータも紹介した。

 そして、鈴木課長補佐は「ロコモでもこのような投資効果を上げたデータを出していただきたいと思います」と呼びかけた。そういうデータを持って、経済団体などへも健康投資の重要性を訴えていくというのだ。

 「ロコモ対策の重要性についてもPRのお手伝いをさせていただきたいと考えております」

 また、新たな健康関連サービスを始める事業者に、支援の予算措置も考えていることも明らかにした(講演した昨年11月時点で10億円規模)。

 「ヘルスケア産業課が窓口になりますので、そのような事業計画をお持ちの方はぜひご連絡ください」と、鈴木課長補佐は締めくくった。

 政府の新しい健康サービス創出へのなみなみならぬ姿勢を感じる話だった。この後、いくつかの企業が取り組むロコモ関連事業について報告があったので、次回からリポートする。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

脳深部刺激療法で症状改善 パーキンソン病の治療最前線


 「パーキンソン病の外科的治療」について、倉敷平成病院倉敷ニューロモデュレーションセンター(岡山県倉敷市)の上利崇センター長が寄稿した。

 機能的脳神経外科とは、脳や脊髄、末梢神経の機能が異常を来すことによって生じる症状に対し、外科的に治療を行う領域のことを言います。「機能的脳神経外科の治療最前線」の連載初回は、パーキンソン病に対する外科的治療をご紹介します。

 パーキンソン病は大脳の下にある中脳(ちゅうのう)の黒質(こくしつ)と呼ばれる場所で、ドパミンを産生する神経細胞が減少するために起こる病気です。ドパミンが減少すると、震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛(きんきょうごう))、動作が遅くなる(無動・寡動(かどう))―などの運動症状が生じます。

 現在、日本では千人に1人以上の方がパーキンソン病を患っており、今後、高齢化が進むとともに、さらに患者数が増えると見込まれます。治療の主体は薬物治療で、不足しているドパミンを補うために、L―ドパを中心とした薬剤による治療が行われます。

 パーキンソン病の初期には薬がよく効いて大変すごしやすいのですが、薬物治療を始めて4~5年経過し、長期になると、半数の方は薬の効いていない時間が出てきたり(ウエアリング・オフ現象)、薬が効きすぎて、自分の意思に反して手足や体が勝手に動き出す不随意運動(ジスキネジア)が現れたりします。

 これらの問題症状に対して、薬を工夫して内服してもうまくコントロールできない方、または消化器症状や精神症状などの副作用の出現によって十分な内服ができない方を対象に、外科的治療が検討されます。外科的治療には、脳深部刺激療法(DBS)、定位的脳手術(熱凝固、放射線、超音波)、移植再生療法(iPS細胞をもとにつくられた神経細胞の移植など)があります。

【メタボより怖いロコモ】「楽しく予防」健康関連、年間4兆円の新産業育成へ


引き続き「ロコモ チャレンジ!推進協議会」主催の「第1回ロコモサロン」のリポート。経済産業省ヘルスケア産業課の鈴木隼人課長補佐の「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」という講演の続きだ。

政府の健康産業育成の方向性がよく分かる。

 鈴木氏は、約38兆円の国民医療費の約半分が70歳以上の高齢者によって消費されている現状に触れ、ますます高齢化が進む中、医療費の支出を予防分野に振り向けることで総医療費を抑制し、各人のQOL(生活の質)も高めたいとした。その1例として糖尿病のケースを挙げてこう続けた。

 「重症化すると週3回の透析と年間500万円の医療費が必要になります。その対象者は約10万人。その前段階で通院している方も約200万人で1人当たり年間数十万円の医療費がかかります。

このようにロコモも含まれますが、経年で重くなっていく疾病に関して、早め早めにその進行を止める予防が必要です。ですが、自らに食事制限などを課すやり方ではドロップアウトする方も多い。

そこで、楽しみながら予防活動ができるサービスがたくさん出てくるといい。そうした形で健康関連の新たな産業が創出されると考えております」

 創出される市場規模は年間4兆円に上り、1兆円の医療費削減効果が見込まれ、ロコモ関連では、さらに介護費用の削減も見込めるという。

これは安倍晋三首相が進める第三の矢としての新たな成長戦略・日本再興戦略の「戦略市場創造プラン」の1つ「国民の『健康寿命』延伸」に該当する。

 具体的には〈効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し、老いることができる社会に向け、健康寿命伸長産業の育成〉と書かれている。

 「これは安倍内閣の重要政策ということです」と、鈴木氏は強調した。

 政府の戦略市場創造プランには、このほかすでに始まっている一般用医薬品のインターネット販売やロボット介護機器開発なども挙げられており、全体の市場規模では現在の16兆円が2020年で26兆円、2030年で37兆円。

雇用規模としては、現在73万人が2020年で160万人、2030年223万人という試算も明らかにされた。

 この後、鈴木氏は具体的にどのような取り組みをしているかについて話を進めた。それについては次回に報告する。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】医療費を抑制しQOLを上げるには 若いうちから健康に投資


いまやメタボに次いで“国民病”として認知されつつあるロコモ。その啓発に取り組む「ロコモ チャレンジ! 推進協議会」主催の「第1回ロコモサロン」が昨年11月に東京で開かれた。ロコモ関連の省庁や企業の動きをリポートする。

 同協議会は日本整形外科学会のもとに2010年に発足した。泉田良一委員長がまず登壇、宗教や歴史をひもときながらあいさつした。

 「宗教では、魂を重視し肉体を軽く見てきましたが、ルネサンス以来、肉体の復権が起こり、富国強兵時代にはドイツやスウェーデン、さらに日本でも体操などで国民の体を鍛え、兵隊さん、戦争の時代となりました」

 こう振り返った後、現代に話は移り、「人間が体を動かす動機は2つあります。

1つは遊び、1つは生活のためです。子供たちは自然の衝動でさまざまな遊びで体を動かしますが、最近では大人も東京マラソンなどのように体を動かす衝動に駆られています。

生活のための肉体労働は1960年代までは見られましたが、今は生活のため体を動かすことはなく飽食の時代になりました。そこでもう1つの体を動かす衝動が生まれました。それが健康を維持するための運動です」と続けた。

 「放っておけば太ってしまう体を運動で維持するというのは、西欧先進国の文化です。健康を維持するために運動することから、ロコモという考えも生まれました。メタボの次はロコモですので、しっかり情報を頭に入れてください」

 この後、経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課、鈴木隼人課長補佐が、「日本再興戦略を踏まえた健康サービス創出に向けて」と題した講演を行った。健康産業育成の政府の方向性と具体的な取り組みについて話したいという。

 「現在、国民医療費の総額は38兆円台ですが、2025年度には60兆円を超える勢いです。中身を細かく見ますと、70歳以上の高齢者の方が医療費の約半分を消費されている。

さらに高齢化が進むなか、このような構造自体を変えていかねばならないわけです。

それはロコモをはじめ生活習慣病などに由来する慢性期医療にかかる高額医療費を、若いうちから健康に投資することで健康な状態を長く維持し抑制する。

つまり健康寿命を平均寿命に近づける取り組みが必要と考えます。そのために医療外のサービスを活用できるようにすることで総医療費を抑制、一人一人のQOL(生活の質)も向上できると考えております」

 具体的な取り組みについては次回に続く。

■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

若い女性に「ロコモ症候群」が急増 2つのテストで「ロコモ度」診断


今、若い女性の体にある異変が起きている。「ロコモ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。  「ロコモ」とは、ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)の略で、関節や筋肉が弱くなり、「座る」「立つ」「歩く」などの日常的に必要な動作ができなくなってしまう状態だ。これが今、若い女性に急増している。

 その「ロコモ」の疑いがあるかどうか、実際に街の女性でチェックしてみると、驚きの結果が出た。ほとんどの女性が、片脚立ちで靴下を履くことができない。さらに「全く運動をしてない」という女性の声も寄せられた。

 ロコモの主な症状は、「歩くとすぐに疲れる」「階段が登りにくい」「つまずきやすい、転びやすい」「椅子から立ち上がりにくい」「重いものを持つとすぐに疲れる」といったものがある。この原因としては、「筋力の低下」「バランス能力の低下」「骨、関節、筋肉の病気」「使わないことによる身体機能の衰え」などが挙げられる。

ロコモアドバイスドクターで東京大学医学部付属病院整形外科・脊椎外科の山田恵子医師によると「もともとロコモというのが、日本語で運動器症候群といって、骨や関節、筋肉、神経などの体を動かす部分、こういったものの障害が原因で、立ったり座ったり、階段を上ったり、簡単な日常生活に必要な移動ができなくなる、もしくは低下している状態」だという。

 丸の内で働く20代・30代女性352人にテストを実施した結果、30%の女性に移動機能障害がすでに始まっている傾向が見られ、さらに4%に「障害が進行中」という調査結果が出た。 ロコモの大きな原因は、慢性的な運動不足と言われている。 現代社会では、車による「ドア to ドア」の移動が増えていたり、エレベーターやエスカレーターを使ったりなど、日常的に体を動かす機会が減ってきていることが理由の1つだ。

 また、社会人になると運動する機会は極端に減り、男性に比べて女性は筋肉量が少ないため、「ロコモティブ症候群」になりやすいという。さらに、偏った食生活で筋肉や骨、軟骨が適正に作られない、神経細胞の機能が落ちるといったことも大きな要因であると言われている。

 山田医師は「ロコモが目に見えるような形になるのが50代~60代以降になるが、当たり前だが、50代~60代になってから急激に運動機能が低下するわけではなく、個人差が大きくなるのが50代~60代以降ということ。それまでは少しずつ運動機能が低下していく。例えばバランス機能は30代ぐらいから明らかに低下していくので、少しずつでも体を動かす習慣をつけたほうがいい」と対処法を語った。

「ロコモ度」は2つのテストで簡単に分かる。  1つ目は「立ち上がりテスト」だ。これは、脚の筋力を測ってロコモ度をチェックする。 方法はまず、高さ40cmの台に両腕を組んで腰掛ける。そして、両脚は肩幅くらいに広げ、床に対して膝が70度になるようにし、片脚のみで反動をつけずに台から立ち上がって、そのまま3秒間キープする。

 成功した場合はロコモ度1をクリアとなるが、失敗した場合は、20cmの台から両脚で立ち上がるというロコモ度2のチェックへ進むことになる。2つ目は、「2ステップテスト」。このテストでは歩幅を測定するが、同時に足の筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に判定する。

 テスト方法はまず、スタートラインを決めて両足のつま先を合わせる。そこから、できる限り大股で2歩歩き、最後に両足を揃える。この2歩分の歩幅を測定するが、2回やって歩幅数が良かった記録を「2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値」という計算式で算出する。

 この2つのテスト結果で、ロコモ度が分かるという。

 「どちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれない」「2ステップ値が1.3未満」の、いずれか1つでもあてはまる場合は「ロコモ度1」。「両脚で20cmの高さから立ち上がれない」「2ステップ値が1.1未満」いずれかひとつでもあてはまる場合は「ロコモ度2」となる。

 この診断で引っかかった人は、どのような対策をすればいいのか。

 ロコモ度1は、移動機能の低下が始まっている状態で、筋力やバランス力が落ちてきているという。そのため、日常生活の中で運動する習慣をつけて、たんぱく質とカルシウムを十分に含んだバランスの良い食事を摂るよう気をつける必要がある。ロコモ度2は、移動機能の低下が進行している状態なので、自立した生活ができなくなるリスクが高まっているという。何らかの運動器疾患が発症している可能性もあり、整形外科専門医の受診をおすすめする。

【メタボより怖いロコモ】母のドミノ骨折その後(10) 身長が縮んだら注意信号


母のロコモによるドミノ骨折は、その後、本人のQOL(生活の質)を激変させた。そればかりでなく介護する立場になった私たちの生活も変わった。何より、前回述べた経済的負担が大きい。

 昨年、所得税の医療費控除のため、計算したところ、母が骨折の手術をした一昨年の医療費の総額は約180万円。昨年の分はまだ計算していないが、1年間療養型病院に入院していたので、その入院費の自己負担だけで、1カ月約12万円かかっている。

 若いときの骨折は、私も覚えがあるが、リハビリをすれば元に戻る。しかし、高齢者の骨折は、ある意味命取りになる。

そして、母が骨折してから、いくつかの医療セミナーを取材したところ、高齢者の骨折は欧米諸国では減っているのに、日本では増えているという。超高齢社会となったいま、早急に対処しなければならないと考え、連載を始めた。

 そこでどんな対策が考えられるか。一言でいえば、骨折させないことが大事だ。まず、高齢者の骨折には前兆があることを理解しよう。私の母の場合は、腰の痛みだった。病院に連れて行ったら、脊椎(腰椎)圧迫骨折といわれ、びっくりした。

 半年後、ドミノ骨折、つまり連鎖骨折で大腿(だいたい)骨骨折して大ごととなった。この痛みに気づくことが大切だ。痛みが治まって骨折に気づかないケースも多いからだ。

 次にドミノ骨折の原因である骨粗鬆(こつそしょう)症に気づくことも大切だ。

女性は閉経後ホルモンバランスが変わり、骨粗鬆症の危険が増える。だから、自治体が骨粗鬆症検診を行っているが、受診率は全国平均でわずか5%だという。これをもっと高めなければならない。母の場合、骨折して初めて骨粗鬆症検査を行った。

 さらに簡単な兆候は、姿勢と身長の変化である。よく、「年寄り臭い」といわれる背中を丸めて前屈みの姿勢は前兆の1つ。また、身長が縮んで「小さくなった」と感じたら、それも前兆の1つである。かげに骨粗鬆症やロコモが隠れているかもしれないからだ。

 それでももし、骨折してしまったら、1日も早いリハビリが大事だ。整形外科の専門医は救急で運ばれた病院から「杖をついて退院できるか」が、寝たきりにならない1つの目安と言った。また、転院するリハビリ施設を選ぶのも重要だ。私の母はいずれもうまくいかなかった。

 母のケースはこれでひとまず終わり、次回からはロコモ推進協議会の最近の動きや骨粗鬆症治療の最新事情などをリポートする。

■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

今からでもできる“体幹”鍛錬 ロコモ対策で目指せ健康長寿(2)


 こうしたロコモ防止の運動の裏には、健康長寿に対する認識を深める狙いもあるが、他の目的も。 「医療費や介護費用の伸びを抑えることです。高齢化社会の今、医療や介護に必要な国家予算も大きく膨れ上がっています。国民もそれ相応の負担増に悩まされている。そこで、骨折などをしないよう、介護不要の健康づくりの啓蒙活動が求められるようになってきたのです。中高年者は、そのような状況にならないためのロコモ対策を、早いうちから意識することが重要です」(整形外科医)

 そのめには、「七つのロコモチェック」と、「ロコモ度テスト」をしっかりとやっておく必要があるという。
 まず、「ロコモチェック」は次のようなものだ。

 (1)片足立ちで靴下が履けずにヨロケてしまう。
 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする。
 (3)階段を上がるのに手擦りが必要。
 (4)家でのやや重い仕事が困難。
 (5)2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難。
 (6)15分くらい続けて歩くことができない。
 (7)横断歩道を青信号で渡りきれない。早歩きが困難。
 「この七つ中で一つでも該当すれば、ロコモが心配されます」(同)

 次に「ロコモ度テスト」だが、こちらも以下の三つのテストの結果が、将来、ロコモとなる可能性を判定する材料となる。
 (1)片脚か両脚で決まった高さから立ち上がり、下肢の筋力を判定。
 (2)歩幅を測定することで下肢筋力、バランス能力、柔軟性など歩行能力を評価。
 (3)25項目の質問票で身体状態、生活状況をチェック。
 これらの詳細は、日本整形外科学会公認のホームページ『ロコモ チャレンジ』などに載っているので、挑戦しみてはどうだろうか。

 では、このテストで「将来、ロコモになる可能性が高い」となった場合はどうするのか。北里大学研究所病院理学療法士・新井雄司氏はこう説明する。「まず、スクワットを1日10~30回、片脚立ちを1日2~3セットを行うこと。また、両足で立った状態で、ゆっくりとかかとを上げて、ゆっくり下げる運動を1日20~40回(徐々に回数を増やす)を繰り返し、ふくらはぎを鍛える。

さらに腰に両手を押し当て、脚をゆっくり大きく前に踏み出し、太ももが水平になるくらいに腰を下げる。そして、体を上げて踏み出した足を元に戻す運動を、1日10~20回繰り返す。いずれも最初はきついものですが、体が柔らかく馴染んでくれば、そう難しい運動ではありません」

 さらに、新井氏はこう付け加える。
 「言い換えると、体の基礎部分の“体幹”と言われるところを鍛え、足腰の強化を図ることがロコモトレーニングでは重要になります。こうした鍛錬で、転んで骨折するような事故を防ぎ、交通事故などの重大障害を防ぐことにもつながるのです」現在、ロコモによって筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障をきたす要介護者やその予備軍は、4700万人いると言われる。今からでも遅くはない。健康長寿を目指し、対策に取り組もう。

【メタボより怖いロコモ】胃ろうで母の栄養状態改善、療養病棟へ


母が転院した療養型病院の担当医は、経鼻栄養を続けるという。栄養がとれないと背中が穴のようにえぐれている褥瘡(じょくそう=床ずれ)が治らない。母はたびたび鼻のチューブを抜いてしまうので、指が使えないようにミトンをはめられた。

 骨折で入院以来、半年ぶりに髪を切ると、すっかりやせた顔が現れ、祖母にそっくりだった。やがて、医者から胃ろうをすすめられた。さすがに抵抗感があり、知り合いの社会福祉士に相談すると、「簡単な手術だから心配ない。術後は元気になりますよ」といわれ、思い切った。

 胃ろう造設はPEGともいう。胃に入れた胃カメラの先の針を胃壁と腹部の外に突き刺し、出たところを切開して管を入れる口を作る。

そこにチューブを通して直接胃に栄養食を入れる仕組み。胃ろうについては最近安易に造設する傾向があるとして、延命治療との批判があるのは知っていた。だが、母の認知症を考えると、経鼻栄養より安定するかもしれない。

 胃ろうの造設手術は40分くらいで終わるので、付き添わなくても大丈夫ということだった。夕方仕事を終えて行ってみると、昼に手術は無事終わったという。ちょうど始まったロンドン五輪の開会式をテレビで見せる。

何をやっているのか分からないようだった。手術した院長から「順調ですよ。ストレスがないのか、胃はきれいでしたよ」ともいわれた。

 担当医は「胃ろうは作ったけど、できれば口から食べられるようにしたい」と言ってくれた。口から食べられると、生きる意欲がわくから、それで寝たきりから脱する場合もあるという。医者の言葉を信じたかった。

 胃ろうによる栄養摂取は徐々に母を元気にした。だが、母は口から食事をとれないことが自分では理解できないようで、いつも口をもぐもぐさせている。時々は、「今食べたばかり」などと言うから、口で食事をしているつもりになっているのかもしれない。

なんとか水だけでも飲ませたいが、口腔(こうくう)内は黴菌(ばいきん)だらけで、その水が誤飲して気管に入ると肺炎を併発するというから怖い。口から食事する場合、誤飲性肺炎は最も用心しなければならない。

 幸い、昨年1月から昼食の半分は口から食べられるようになった。「よかったね」と言うと「あまりおいしくないけどね」。やがて、3食口からとれるようになり栄養状態もよくなったので、褥瘡も完治。一般病棟から療養病棟に移ることができた。 (木村進)

■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

今からでもできる“体幹”鍛錬 ロコモ対策で目指せ健康長寿(1)


 最近は、スポーツジムでも中高年者を多く見掛けるようになり、「ケガや病を持たない健やかな人生を送りたい」と願う人たちが多くなっているようだ。「“健康長寿”を長いスパンで捉え、将来的にも、入院・介護を受けずにいられる体づくりをしようと考え始めている人が多くなっているのではないでしょうか」こう語るのは、健康ライターの深見純一郎氏だ。

 厚労省が2013年に発表した日本人の健康寿命は、男性が71.19歳、女性は74.12歳。ここで言う健康寿命とは「介護の必要がなく健康的に生活できる期間」のことで、つまり、他人の助けを借りずに自立して生活できる年齢だ。同省では4年ごとにこうした調査を行っているが、'13年の4年前は男性が70.42歳、女性が73.62歳だったので、それぞれ0.77歳、0.5歳延びたことになる。おそらく、今年発表される健康寿命も延びていることだろう。

 しかし、健康に生活できる年齢が長くなることは喜ばしいことだが、前出の深見氏はこう指摘する。「'13年で言えば、日本人の平均寿命は、男性80.21歳で、女性は86.61歳。つまり、健康寿命との開きが男性は9歳、女性は約12歳もあるということ。この間、死ぬまでは健康とは言えず、寝たきりや介護を必要とし、1人では生きられない状態ということです。もちろん個人差はありますが、やはり健康寿命の平均をメドに、“生涯”、あるいは“死”というものをより身近に考える必要があるのではないでしょうか」

 現在、厚労省では、この健康寿命を少しでも延ばすことを目標に掲げ、'22年の平均寿命を男性81.15歳、女性が87.87歳と推計。健康寿命の延び幅が平均寿命の伸び幅を上回ることを目指している。

 そこで今、言われ始めているのが「メタボの次はロコモ」。メダボリック症候群は、肥満や高脂血症、糖尿病、高血圧などの二つ以上が同時に出る状態で、寿命にも関わるものとして指弾されてきた。しかし近年では、それよりもロコモティブ症候群(運動器症候群)のほうが問題視されているのだ。「“運動器”とは、骨や関節、筋肉などのことで、ロコモティブ症候群は、年齢を重ねるごとにこれらの機能が衰えてくるというもの。その結果、転倒して骨折するなどして、介護が必要になってしまう。そうしたことを防ぐ意味でも、日頃から体力をつけるトレーニングを積んでおけば、予防にもつながるのです」(医療関係者)

 東京都内には、ロコモの認知向上と運動機能改善を目指す『ロコモチャレンジ!推進協議会』がある。ここは整形外科専門医が参加し、サポート企業との連携で、ロコモの正しい知識と予防意識の啓発のための広報活動を推進している。また、埼玉県松山市で行われるウオーキングイベント『日本スリーデーマーチ』や、厚労省主催の『スマート・ライフ・プロジェクトフェア』などに同協議会も参加。“ロコモトレーニング”などの指導を行っている。

コタツで寝るとなぜ風邪をひく?


温かいコタツにすっぽりと身を収め、テレビでも観ながらまどろむのは、日本人ならではの真冬の悦楽。この冬休み、久しぶりの実家で思う存分“コタツでゴロゴロ”を満喫した人も多いのではないか。

ところで、昔よく母親から「コタツで寝ると風邪をひくわよ!」と怒られたものだが、これって何か根拠があったのだろうか? 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみた。

「一般的に風邪をひく原因には、単純に部屋が冷えているという環境的な要因のほか、脱水や疲労といった肉体的な要因が挙げられます。

コタツに長時間入っている状態では、局所的に加温され続けるため、知らず知らずのうちに体が疲労し、また、汗をかいて脱水症状を引き起こしやすくなります。そのまま眠ってしまったのであれば、何時間も水分補給が行えないわけですから、なおさらですよね」

体温よりも高く加温され続けることは、僕たちが自覚している以上に体に負荷を強いている。うっかりコタツで寝てしまった翌朝、全身に疲労や倦怠感を覚えるのはそのためだと須田先生は解説する。肉体疲労の結果免疫力が低下すれば、風邪を引きやすくなる可能性は大いにあるだろう。

「また、家族など複数でコタツに入っている状態というのは、人と人が非常に密着します。もしも、家族の誰かが風邪のウイルスを持っていたとしたなら、感染のリスクは高いといわざるを得ません」

そうでなくても、そもそもコタツを活用する時期というのは、一年のなかで最も風邪が猛威をふるうシーズンと一致している。風邪が感染性の病気である以上、これもまた軽視できない要因だろう。

コタツは冬の風物詩ともいうべき日本独特の文化だが、せっかくのオフをまるまる風邪でつぶしてしまうようなことがあってはもったいない。皆さん、どうか適切なコタツ・ライフを!

治療の難題をクリア 「進行パーキンソン病」新薬の実力


9月1日にパーキンソン病の新しいタイプの治療薬の発売が開始された。これにより、進行パーキンソン病患者の治療の選択肢が増えた。

 パーキンソン病は、多くは原因不明で、脳の黒質という部分の神経細胞が減少し、運動の仕組みを調節する働きを担う物質「ドーパミン」が減る疾患だ。

 主症状は「動きが緩慢になる・動けなくなる=無動」「手足が震える=振戦」「筋肉が硬くなる=固縮」「体のバランスが悪くなる=姿勢反射障害」の運動症状。加えて、非運動症状といわれる自律神経症状、睡眠障害、精神症状、認知機能障害、痛みなども見られる。これらの症状が出る前に、便秘、嗅覚障害といった前駆症状も分かっている。

 残念ながら完治する手段はなく、薬で症状を抑えるしかない。しかし、発症して間もない時期には薬はよく効くが、発症後、5~6年経過する頃には、効果にばらつきが出てくる。次第に効きづらくなり、さまざまな症状が表れる。

「ウエアリングオフ現象やジスキネジア現象が見られるようになり、より進行すると運動・非運動症状の増悪、認知症、転倒などが起こりやすくなります」(順天堂大学医学部神経学講座・服部信孝教授=以下同)

■症状に応じて投与量を微調整可能

 ウエアリングオフ現象は、スイッチをオン・オフするように、服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる(オフ状態)。ジスキネジア現象は、自分の意思とは関係なく、体の一部が自然に動く。

 今回の新薬は、既存の薬物治療では十分な効果を得られず、ウエアリングオフ現象などが起こるようになった患者を対象としたもの。

 経口投与だった既存薬と違い、今回登場した新治療薬は、専用のチューブを通して空腸(小腸の一部)へ直接薬を投与する。しかも、16時間持続して、だ。チューブは、腹部に開けた穴(胃ろう)から空腸へつなぐ。

 なぜ、パーキンソン病は進行すると薬物治療で症状をコントロールすることが困難になるのか? 服部教授は次の2点を挙げる。

 まず、「有効治療域の狭小化」だ。

「パーキンソン病が進行すると患者さんが動きやすいと感じる薬物の血中濃度の幅(有効治療域)が狭くなります。これに対して、断続的な経口薬では対処ができない」

 次に、「胃内容物排出遅延」がある。

「パーキンソン病では胃など消化管の働きが悪くなり、胃内容物の排出に遅れが生じます。すると、薬剤が小腸で吸収されるタイミングにばらつきが生じ、薬物血中濃度を安定して維持するのが難しくなるのです」

 空腸へ直接、16時間持続して投与する新治療薬なら、この2点の問題がクリアできる。

 臨床試験では、重度の運動症状が見られる進行期パーキンソン病患者が、新治療薬に切り替えた。すると、投与12週間後には、1日当たりの平均オフ時間(薬の効果が切れて動けなくなる時間)が、既存薬より大幅に減少した。その後、52週以降の評価でも、明らかな差ができた。

 これまでのパーキンソン病の薬は、数年すれば効きづらくなっていたが、今回の新治療薬は世界でも2年間のデータしかないので、その点は分からない。

「しかしこの薬の利点は、患者さんに応じて投与の量を調整できるところ。経口薬では、副作用を心配して十分量使用できない傾向があったが、それが、効き目を見ながら微調整できるのは大きいです」

 新治療薬で「希望が生まれた」と話す専門医もいるという。

運動不足は寝たきり予備軍? 元気な老後は”“ロコモ”が鍵


最近、目にすることが多くなった「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)」。運動不足…という人は、要注意です。

◆元気に年を重ねるために重要。「ロコモ」の予防を考えよう

要介護や寝たきりになる原因の多くを占めるのが、実は、腰痛や膝痛など関節の痛みや、転倒による骨折といった、骨・関節・筋肉等運動器の障害。そのため、運動器の障害を“予防”するために近年提唱され始めたのが「ロコモ」です。

「ロコモ」とは、骨・関節・筋肉などの運動器の機能が衰え、歩行や立ったり座ったりなどの日常生活に支障をきたし、寝たきりや要介護になるリスクが高まった状態のこと。直接命に関わるものではありませんが、自立して暮らすためには若いうちから意識しておくべき。

高齢者だけではなく、体力や筋力が衰え始める50代から注意が必要です。年齢にかかわらず左記の「ロコチェック」に該当するものがあれば、整形外科専門医に相談することをおすすめします。

【ロコチェック】
□片脚立ちで靴下がはけない
□家の中でつまずいたり滑ったりする
□階段を上るのに手すりが必要
□家のやや重い仕事が困難
□2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難
□15分くらい続けて歩けない
□横断歩道を青信号で渡りきれない
(ロコモ チャレンジ!推進協議会WEBサイトより)

現在は症状が無くても、定期的な運動は重要。「ロコモ」の予防、改善のために考案されたトレーニング「片脚立ち」で、無理なく日頃から骨と筋肉を鍛えましょう。

【片脚立ち】
背筋をまっすぐにして、床につかない程度に片脚をあげ1分間キープ。左右1日3セット行います。
※転ばないように、何かにすぐにつかまることができる状態で行う。支えが必要な人は、机やイスにつかまって行う

取材協力
福岡和白病院 関節症センター長
林 和生 先生

パーキンソン病、リハビリは「散歩」 岡山旭東病院の柏原神経内科部長に聞く


パーキンソン病をテーマにした市民健康講座が20日、岡山市北区駅元町の岡山コンベンションセンターで開かれる。患者は国内に約15万人と推計され、高齢化に伴い増加の一途をたどっている。講座を企画した岡山旭東病院(岡山市中区倉田)の柏原健一神経内科部長に、パーキンソン病の治療法や家庭で取り組めるリハビリ、市民健康講座の内容などを聞いた。

 ―パーキンソン病を発症する原因は。

 手の震えなどの運動障害は中枢神経に作用する神経伝達物質・ドーパミンの減少によることは分かっていますが、なぜ減るかという根本的な原因は分かっていません。また、全体の5~10%は遺伝性です。α―シヌクレインという物質が中枢神経系や末梢(まっしょう)の自律神経系に病的に蓄積され、神経細胞を障害して発症するのです。

 ―どういう症状が出ますか。

 手足が震えたり歩幅が小さくなったり、動作が緩慢になったりするのが最も知られた症状ですが、そこまで進行する以前に便秘や頻尿、寝言、うつといった症状が現れます。発症後20年ほどすると、約8割の人に認知症の症状が現れます。とはいえ、健康な人でも加齢とともに認知機能は衰えていきます。パーキンソン病だから認知症の症状が早く出たり、程度がひどくなるとは限らないので、悲観しないでください。

 ―治療方法を教えてください。

 脳内で不足するドーパミンを増やすレボドパと、ドーパミンの受容体を直接刺激するドーパミンアゴニストのいずれか、あるいは両方を処方するのが一般的です。レボドパは非常によく効く半面、長い年月にわたり飲み続けると、副作用として意思とは関係なく体が動く不随意運動が起きやすくなります。ドーパミンアゴニストはその副作用のリスクは小さいが、レボドパほどの薬効はありません。初期はどちらを使っても効果はあまり変わりませんが、少ない副作用で良い効果が得られるよう、年齢や症状を勘案して薬を選択します。

 ―日常生活で取り組めるリハビリは。

 日常生活の全てがリハビリといえます。まずは散歩をしてください。手を大きく振り、足をしっかり上げることが大事です。趣味のサークル活動やカラオケも良いです。大事なのは家族のサポート。家族はチーム医療の一員です。しっかり患者さんを支えてください。

 ―市民公開講座は年2回開き、今回で27回目を迎えます。長年続ける理由は。

 パーキンソン病は運動、精神、認知、自律神経などさまざまな問題症状が出て、しかもその症状は患者さんごとに異なります。治療も、薬、手術、リハビリなどがあります。そのため、治療の考え方が専門医によって若干異なることがあります。だからこそ、全国で活躍している専門医に協力を求め、それぞれの知見を分かりやすく話してもらっています。家族を含め、幅広く正しい知識を持ってもらうことが良き治療と豊かな生活につながります。前向きに病気と向き合ってください。

 市民健康講座では、千葉大病院神経内科の平野成樹講師が「パーキンソン病との付き合い方」のテーマで講演。音楽療法士で倉敷北病院リハビリテーション科の松鹿滋子さんと、岡山旭東病院リハビリテーション課の藤田直也さんが「リズムに乗って歌ってみよう」と題し、音楽に合わせた体操を実演する。

「パーキンソン病」 上手に付き合うポイントと最新治療法


パーキンソン病は、脳の黒質でドーパミン神経細胞が減少する病気。これまでは「脳だけの病気」と考えられてきたが、近年、「全身の病気」だと分かってきた。

 症状は、手足の震え、筋肉のこわばり、全身の動作が遅くなる、倒れやすいといった「運動症状」。さらに、便秘、レム睡眠行動異常症、嗅覚低下、立ちくらみなどのさまざまな「非運動症状」が出る。

 東京慈恵会医大葛飾医療センター神経内科・鈴木正彦診療部長は、パーキンソン病と上手に付き合っていくための要点を次のように挙げる。

(1)治療は「症状に応じて」「きめ細やかに」

 パーキンソン病治療薬は、発症して間もない時期にはよく効くが、発症後5~6年経過するころには、効果にバラツキが生じてくる。

「服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる『ウエアリングオフ』と、自分の意思とは無関係に体が自然に動く『ジスキネジア』を生じるようになり、どう対処するかが重要です」

 患者が最も困っている症状に対し、服薬量や服薬回数を適宜調整する。最近では貼り薬や自己注射薬なども登場しているので、生活環境を勘案しながら適正に使用する。

「薬の量が増えれば副作用も増します。いかに薬効は高く、副作用は少なくするか。専門医とのコミュニケーションが重要となりますので、普段、困ったことは受診時にすぐ伝えられるよう書き出しておくとよい」

 症状や進行度は十人十色。パーキンソン病は進行性の病気であるため、症状に応じて、細かく薬剤を調整していかなくてはならない。病気に精通した専門医と上手に付き合う姿勢も必要だ。

(2)便秘のコントロールとリハビリ

 今、治療のポイントになっているのが便秘のコントロールだ。便秘は高度になると薬の吸収率が下がり、症状の悪化につながることもある。

「薬の効果を十分発揮させるためにも、四肢・体幹のストレッチなど毎日の自己リハビリは欠かせません。積極的に、食事の前に1日3回はぜひ実践していただきたい」

 徹底して行えば、パーキンソン病の進行期、すなわち薬の効き目が悪くなる発症10年目以降も、健常者と同じまではいかないにしろ、杖なしでハイキングに行ったり、ゴルフを楽しんだりすることは十分可能だ。

「パーキンソン病薬は飛躍的に向上しています。それだけに、自己判断で服薬調整しないようにしましょう。かかりつけ医と専門医を上手に利用して、病気への良好な対応を継続することが非常に大切。パーキンソン病以外の病気を抱えている方も少なくなく、そういう意味でも、患者、かかりつけ医、専門医のトライアングルを意識すべき」

■「脳深部刺激療法」と「ビタミンD投与」に大きな可能性

 現在、パーキンソン病の最新治療で注目をされているものが2つある。

 ひとつは「脳深部刺激療法」。局所麻酔を用いた簡単な手術で脳の運動に関わる部分に電極を留置し、弱い電流で刺激を与える。これで薬の量を減らせる患者も多い。

 もうひとつは、ビタミンDの投与だ。

 パーキンソン病患者は健康な人に比べてビタミンDの血中濃度が著しく低く、その濃度が低いほど重症度が高いことが指摘されている。鈴木部長は同院の患者の協力を得て臨床研究を実施。二重盲検ランダム化比較試験の結果、1年後に症状の進行が抑制された患者の割合は、ビタミンD服用群で6割に達した。

 ただし、ビタミンDがパーキンソン病の進行を抑制できる可能性は示唆されたものの、「今後の国内外の研究結果が待たれる状況」と鈴木部長。安易に手を出していい治療では「まだ」ない。

30代から罹患も予防に光明! 研究進むパーキンソン病


団塊の世代が80歳以上となる2030年、パーキンソン病患者は28万人を超えるとみられている。患者の年齢も30代から80代と幅広いが、悲観するにはあたらない。薬物療法が大きく見直されるとともに、進行を抑える研究も進んでいる。

 パーキンソン病などの神経変性疾患を専門とする東海大学病院神経内科准教授の馬場康彦医師は、パーキンソン病の薬物療法を奏功させるためのポイントについて、次のように指摘する。

「患者さんにつけていただいた症状日誌に基づき、主治医が一日のうちでいつ、どのような症状が起こるかを把握したうえできめ細かく処方調整することが重要です。私たちは、たとえば効果の持続時間が短くなる『ウェアリング・オフ』が起きる直前に内服していた薬剤を増量する、自らの意思に関わりなく身体が動いてしまう『不随意運動(ジスキネジア)』が起きる直前に内服していた薬剤を減量する、補助薬を併用するなどの工夫をすることで、患者さんに支障なく日常生活を送っていただけるよう努めています」

 薬物療法の問題点は、進行とともに薬剤の種類や用量が増え、用法が煩雑になると、指示どおりに服薬する患者が少なくなることだ。主治医は患者が指示どおりに服薬していることを前提に処方調整をおこなっているため、自己流の誤った服薬は厳に慎みたい。

「薬物療法の効果が頭打ちとなっても、次の一手として手術療法の脳深部刺激療法の有用性が確立していますし、今夏には十二指腸に入れたチューブからジェル状のレボドパを小型ポンプで持続的に注入する治療が実用化する見込みです」(馬場医師)

 脳内でドパミンの効果を発揮させるため、ドパミンの前駆物質とドパミンの効果を保つ薬剤の合剤であるレボドパを投与する「レボドパファースト」の治療を開始して5年、神奈川県在住の主婦(54歳)は症状の進行とともにレボドパの用量・用法を見直し、補助薬を加えることで、病気を苦にすることなく充実した日々を送っている。

 日常生活の改善により、パーキンソン病の発症や進行を防ぐことはできないだろうか。

 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科診療部長・准教授の鈴木正彦医師はこう語る。

「当科を受診された患者さんにご協力いただいて臨床研究をおこなった結果、ビタミンDのサプリメントを摂取することによりパーキンソン病の進行を抑制できる可能性が示されました」

 ビタミンDは、魚介類、きのこ類などに多く含まれ、日光を浴びることにより体内でつくられる栄養素であり、ドパミン神経がドパミンを生合成する過程にも大きく関与する。

 パーキンソン病は非運動症状として便秘やうつ状態などをきたすことが多く、食事量が減ったり日中の外出を控えたりするとビタミンD不足に陥りやすい。

 これまで国内外の研究により、パーキンソン病患者は健常人に比べ血中のビタミンD濃度が著しく低く、またビタミンD濃度が低いほど重症度が高まることが明らかにされてきた。

 鈴木医師らは、パーキンソン病と診断され、書面で同意を得た患者を対象に、ビタミンDのサプリメントを1日1回12カ月間投与した群56例、同様にプラセボ(偽薬)を投与した群58例において二重盲検ランダム化比較試験をおこなった。

 その結果、ビタミンD群では症状が改善した患者の割合が6割に上り、プラセボ群に比べ有意に高かった。遺伝子検査では、ビタミンD受容体のタイプによって効果に差があることがわかり、ビタミンDの摂取が有効な患者を推定できる可能性も示された。

 一方、ビタミンDはとりすぎると高カルシウム血症をきたして腎不全や尿路結石などのリスクが高まるが、血中カルシウム濃度が異常値を示した例はなかった。この研究は13年に米国医学誌に発表され、これまで多くの文献に引用されている。

 鈴木医師は、「私たちの研究結果が実臨床で生かせるようになるには、多施設でより多くの患者さんを対象に追試が行われ、有効性、安全性が検討される必要があります」という。

 あわせて、パーキンソン病とビタミンDの関連が詳細に明らかになれば、予防にも有効な手段が見いだせるかもしれない。

全国に4700万人いるロコモティブシンドロームの症状と対処


ロコモティブシンドローム、通称“ロコモ”をご存知だろうか? ポップなネーミングだが、実は足腰の衰えや障害によって要介護になる危険性が高い状態のこと。しかも、衰えは40代から始まっているので、その世代の人はすでに対策が必要だ。

「ロコモとは、筋肉や骨、関節という運動器に障害が生じたり運動機能が低下したりして、要介護や寝たきりになったり、その危険性が高まることをいいます」

 と解説するのは、東京ミッドタウンメディカルセンター平石貴久特別外来の平石貴久さん。

「糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症などが心筋梗塞を引き起こすメタボリックシンドロームは、多くの人に認知されていますが、ロコモもそれに並ぶ現代人の国民病。

東京大学の研究チームによると、ロコモ予備軍は全国に4700万人もおり、これは40才以上の男性の84%、女性の79%に当たります。

つまり、40代以上の10人のうち8人がロコモ予備軍ということになります」(平石さん・以下同)

 また恐ろしいことに、ロコモは運動器だけに支障が出るわけではない。

「ロコモになると体を動かせなくなりますし、予備軍の状態でも運動量はかなり減ります。すると基礎代謝が低下するので、メタボになる可能性も高まる。さらに、引きこもりがちになったり、慢性的な痛みが続くことで鬱になり、認知症を引き起こすこともあるんです」

 このように、ロコモはさまざまな病気を引き起こす原因にもなる。そして、ロコモは男性よりも女性のほうがなりやすいというから要注意。

「女性の場合、閉経後に女性ホルモンが減少するため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が急速に進んで骨折しやすくなります。その結果、ロコモになりやすいんです」

 しかしこのロコモ、日ごろの心掛けで予防することができるという。

「90才を超えても元気な人は、しっかり筋肉がついているのが共通点。先日亡くなった森光子さんが80才を過ぎてもでんぐり返しができたのは、日々スクワットでトレーニングをしていたからです。

筋肉は使わないと衰えるので、長持ちさせるためには意識して動かすトレーニングが必要。また、骨もカルシウムやビタミンDなどの栄養を摂るだけでなく、運動で刺激を与えると骨量が増え、丈夫な骨が作られます」

 とはいえ、日常生活に必要な筋肉を鍛えるには、ハードなトレーニングは必要ない。ごく簡単なトレーニングを継続するだけでロコモは予防でき、なおかつ現在悩んでいる腰やひざの痛みも解消するという。

【メタボより怖いロコモ】後期高齢者医療費30兆円に ロコモの2025年問題


今回も9月の日本整形外科学会記者説明会で取り上げられた「ロコモの2025年問題」について(「ロコモチャレンジ!推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演から)。

 私も団塊の世代だが、2025年には後期高齢者になる。今の後期高齢者医療制度では、自己負担は1割。所得によっては高額療養費の自己負担限度額があり、払った医療費からかなり戻ってくる。

 つまり、25年問題とは団塊の世代が後期高齢者になり社会保障費の高騰を招くと懸念されるものだ。医療費急増のグラフをみてほしい。25年には05年の約3倍、15年の約2倍の約30兆円に達する。

 問題はこの医療費を押し上げる要因としてロコモが挙げられることだ。「ロコモチャレンジ!推進協議会」の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」では、協議会が定める7つのロコチェックの1つでも当てはまればロコモの可能性があるが、調査では70代男性の6割、女性の7割が該当するという結果が出た。

 この世代は25年には後期高齢者になっている。05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年にはこの割合は一層高まるに違いない。さらに重要な指摘があった。

 「社会の利便性向上により運動機会が減少し、ロコモの危険性に拍車をかけている」というのである。例えば国内のエスカレーター保有台数は右肩上がりで伸びているのだが、1日当たりの歩数は逆に減る一方なのだ。

 それでも、まだ都市部の方が歩いている。県別に見ると、歩数のトップ3は兵庫県(男7964、女7063)、東京都、神奈川県。最下位は男が鳥取県、女が山梨県でトップより2000歩ほど少ない。地方は車社会なので運動機会がさらに減るのではないかとみられている。

 つまり、このままでは日本は確実に「ロコモ大国」となる。そこで、早期にロコモの危険性を知り、各自が対策に取り組むことが大事だとしている。まだ若いうちに自らのロコモ度を把握し、ロコトレ+ウオーキングでロコモ克服を目指そうと提唱している(ロコモ度テストやロコトレなど詳しくは「ロコモチャレンジ」で検索)。

 団塊の世代よ、歩け。

 次回は運動機能強化に効果があるアミノ酸の話。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。



【メタボより怖いロコモ】社会保障費の高騰に懸念… ロコモの2025年問題


日本整形外科学会の記者説明会では、「ロコモの2025年問題」が取り上げられた。「ロコモチャレンジ! 

推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演を要約して、「2025年問題」とは何かを記す。

 グラフのように、2025年には、1947-49年生まれのすべての団塊世代が、75歳以上の後期高齢者になる。それより前の20年には、75歳以上の後期高齢者が65-74歳の高齢者人口を追い抜いているが、その差がグンと広がっている。

当然ながら、医療費も増加し、25年には、28兆円と予想される。その10年前の約2倍である。つまり「2025年問題」とは、社会保障費の高騰が懸念されるわけだ。

 ところで、新聞などの表記でも、マチマチなのだが、いまだに日本は高齢化社会などと表記している場合があるが、間違いで07年から日本は超高齢社会に突入しているのだ。高齢化は先進国の中でも、群を抜いている。

 ここで、興味深いのが、協議会の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」だ。協議会では、「片脚立ちで靴下がはけない」など簡単な7つのロコチェックを設定している。

その1つでも当てはまればロコモの可能性がある。この調査では、70代では男性の6割、女性の7割がロコチェックに該当するという結果が出た。

 05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年に団塊の世代が後期高齢者になると、この割合は一層高まるに違いない。

 さらに興味深いのは、10年と25年での都道府県別高齢者増加数を見ると、トップ5は東京、神奈川、埼玉、大阪、千葉の順で、都市部の高齢化が指摘される。


同時に、住民の高齢化だけでなく、建物の高齢化も心配される。ベッドタウンによくある低層集団住宅では、階段しかない建物も多い。

 都市部の高齢化では、(1)マンションからの外出困難(2)近隣住民との関わり希薄(3)引きこもり(4)買い物難民などの結果、移動能力が低下し、1人で外出できない人が増え、孤立化していくと指摘されている。

 実は、私も団塊の世代だ。次回も本当に人ごとではない2025年問題について続ける。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

危険!健康な人でも突然死してしまうワケ



◆活動的な「健康人」が突然死してしまうリスク

国民的歌手とも言える西城秀樹氏が急性心不全のため逝去されました。2度の脳梗塞を経験されながらも超人的なリハビリ努力を続け、歌手としてのライフワークを全うされた人生には多くの人が感銘を受け、早すぎる死が悼まれています。同じ病の患者さんたちにも希望を与えた生き方だっただけに、脳梗塞を経験された同世代の患者さんたちの衝撃と悲しみはいっそう深いものでしょう。

西城氏は脳梗塞を起こす前から、水分制限をしながらのサウナなどの日常習慣があったそうで、これらが危険因子になったのではないかと振り返る声なども出てきているようです。

趣味のスポーツなどを活き活きと楽しみ、サウナでひと汗流した後にはぐいっとビールを流し込み、タバコも仲間たちと気にせずに吸う、いわゆる昔ながらの「体育会系」的なアクティブなタイプの方は、病気とは無縁に見えがちですが、見落としがちなリスクもあります。「健康人」の急逝は誰にとっても無関係のことではありません。今一度、健康管理のあり方、多くの人が陥りがちな盲点について、お話したく思います。

◆スポーツ中の水分制限は、脳梗塞・心筋梗塞の危険因子

以前はスポーツの最中に水を飲むのは悪いことのように言われていました。特に厳しい部活動などでは、水を飲むと根性が鈍る、胃がだぶついて調子を落とす、血液が胃に回って筋肉に行かなくなる、といったことから、水分制限すべきと教えられていたようです。

しかしスポーツの際に水分制限をするのは、急速な脱水を起こすために医学的には危険と考えます。特に夏場の脱水は危険です。脱水の怖いところは、ただ喉が渇くという不快感だけでなく、いわゆる「血液ドロドロ」と言われるような状態になることで、血管内の血液が詰まりやすくなってしまう点です。動脈硬化がありコレステロールや中性脂肪が高い方の場合、それがより起こりやすくなります。

血管が詰まればその詰まった部位に応じて、脳梗塞や心筋梗塞などになります。またそうでなくても血管に脂肪が溜まって細くなったり、腎臓を弱らせて機能低下を引き起こします。水分制限を頻繁にやっていると、その繰り返しで全身に徐々にダメージが蓄積していくのです。

昔、プロ野球の放送中に高名な解説者が、夏場のピッチャーは最初の3回ほどで汗をかき切り、以後はあまり汗が出なくなって調子が上がるといったことを話されていたのを思い出します。今なら4回以後は脱水状態に耐えて投球をしていたのだろうと考えられます。

試合の後にしっかり食べて水分を補給し、また対象が若く超健康なスポーツマンだったために運よく大きな問題にならずに済んだのだと思いますが、体に良いことではないと思います。

筋肉はスポーツによって鍛えることができますが、内臓、特に腎臓はなかなか鍛えられないものです。脱水で体内の水分が不足した時も、腎臓は律儀に尿を作り、体内の毒素を外へ出そうと頑張ります。そのため脱水状態が続くと腎臓は消耗し、次第に機能低下していきます。腎臓の機能は一旦低下すると戻りづらくなることも忘れてはいけません。

◆汗をかくこと、汗を流すことの効果・デメリット

ダイエットのためにたくさん汗をかくように頑張っているという人がいます。汗をかくのが適切な運動の結果で、徐々に体重を落としていくような場合はもちろんよいことですが、汗をかくだけで痩せることはありません。汗として出た水分量だけ一時的に体重は減りますが、汗をかくことと脂肪が減ることは別物だからです。汗をかいた後に一時的に体重が落ちても、必要な水分を飲めば当然、体重は元に戻ります。

以前、「痩せ薬」として販売されていた漢方の中に利尿剤が入っていて問題になったことがありました。その薬を飲むと多量の尿が出るため一時的に体重が減らせ、痩せたと錯覚させていたようです。しかし利尿作用が強いために脱水状態になると、前述のような問題が起こりやすくなり、体にはリスクがあるために問題になったのです。

体の脂肪分を減らしたいと思う場合は、運動や正しい食生活によるダイエットが必要です。汗をかいたり水分摂取量を減らしたりしても、健康的に痩せることはできませんし、健康効果も望めません。
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◆サウナの健康効果・効能と、注意すべき危険性・デメリット

では汗をかく方法の一つとして、サウナはどうでしょうか。サウナは正しく入れば健康によいことがいくつもあります。例えば、体内に「熱ショックたんぱく」や「一酸化窒素合成酵素」ができることで、血管の緊張がほぐれ、血行が良くなったり、体調を良くしてくれたりする効果があります。

ただ多量の汗をかくことから、前述のような脱水状態にならないよう注意が必要です。サウナに入る前に多量の汗を見越した十分な水やお茶、適宜スポーツドリンクなどを飲んでおくことが安全上すすめられます。つまりサウナは健康的にも利用できる反面、強い脱水を伴うことがあるため、リスクもあるという訳です。

またサウナの直後に冷水に浸かるのは急速に血圧を上げるため、心臓が悪い方には危険な場合があります。サウナは個々人の年齢や状態に応じて正しく使ってこそ、健康的な効果があるものだと考えましょう。

◆やはり無視できないタバコの健康リスク

今は社会的にも大きな禁煙の動きがありますが、それでも喫煙をやめられない方は少なくありません。タバコを吸うと眠気が取れたり、体がシャキッとしたり、気分が良くなったりすると感じるためのようです。これらの喫煙者からすると「タバコの効果」と感じるようなものは、タバコが交感神経を活性化するために起こるもので、言うまでもなく、健康的なメカニズムによって起こるものではありません。

タバコには、ニコチンやタールなどの有害物質が含まれており、これらが肺や胃腸へ入っていくと、そこで吸収されて血中に入り、心臓や血管まで到達します。すると血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。有害物質で血栓ができやすくなることも加わり、血管が詰まりやすくなります。つまりタバコははっきりと脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上げる危険因子なのです。

そもそも交感神経を活性化するということ自体、本来なら休みたいと思っている体を無理やり起こして元気を絞り出させているようなものです。一時的な感覚としては気分がよくなったとしても、いずれは何らかの破綻を体に来す……それがタバコの怖さなのです。

さらには発がん性のある有害物質のため、体のあちこちでがんが発生し易くなります。加えて習慣性・依存性があり、一度タバコが習慣化してしまうと、意志だけではなかなか止められなくなるのも怖さと言えるでしょう。この点では麻薬と同じです。

さらにタバコは肺の中の構造を徐々に壊し、肺気腫や慢性気管支炎などを起こします。いわゆる「タバコ肺」ですね。私はタバコ肺の末期の患者さんのお世話をしたことがありますが、残念ながら悲惨なものでした。いつも息苦しく、ただ呼吸をするだけで苦痛が伴い、朝も昼も夜も、逃げ場がないのです。そこへ最後には肺がん発生という追い討ちまでかかりました。

タバコはできれば禁煙、せめて減煙で、できるところから遠ざけていきたいものです。

世の中には痩せるためにタバコを吸う、逆にタバコを止めると太るからやめられない、とおっしゃる方も多数おられます。タバコは痩せる方向に効くのは事実ですが、それはタバコがそれほど有害であるという証左でもあります。どうしても痩せたいのであれば、やはりダイエットと運動です。

◆運動・サウナ・ビール・タバコを楽しむ方が注意すべきこと

昔からの楽しみ方、そして体育会的な方には豪快な健康法のように思われているパターンの一つに、スポーツを楽しみ、サウナに入った後にビールをぐいっと飲み干し、そしてタバコを一服……といったものがあります。充実した感じもあり、あぁ、至福のひと時……と感じる方もいるかもしれません。

これらは十分な水分補給のもとでタバコ抜きであれば、医学的にも推奨できますが、水分補給が十分でない場合は、スポーツによる脱水でのリスクもあり、サウナはそれをさらに悪化させます。ビールで一瞬水分が入っても、ビールの利尿効果で飲んだ量以上の尿が出て、ますます脱水になってしまいます。

結果として、血液はドロドロになり、腎臓も弱り切ったところへ、体にとっては猛毒でしかないようなタバコが加わることになるのです。血栓が一層できやすくなり、脳の血管の中でできれば脳梗塞に、心臓の血管の中でできれば心筋梗塞や心不全に至ります。いきなりそこまで行かない場合でも、こうした習慣が続けばいずれは体が壊れてしまいます。

こうした組み合わせが体に良いもの、健康的なものと信じてしまうと、自分に厳しくストイックで真面目な方ほど、体を徹底して傷めることにもなりかねません。やはり体を使う楽しみはそのやり方が大切なのです。

■西城氏が提唱された脳梗塞予防5カ条
実際、西城氏も後年、水分をしっかり摂ることの重要さを説いておられます。「医者の言うことは神の声として聞くべきであった」と後悔し、「脳梗塞予防5カ条」を記しておられます。

・こまめに水分補給
・冷房は弱めに
・肝に負担をかけない
・気を補う薬や食べ物を
・血液をサラサラにする

いずれも皆さんに実行していただければと思います。4の薬については、医師にご相談ください。医学的観点から少し追加しますと、激しいスポーツや夏のスポーツの時やサウナに入る前などの水分補給は、その状況にもよりますが、小さい紙コップでは何杯も飲んでも不足することが多々あります。

尿が少ない、あるいは濃くなる時は脱水、つまり飲水量を増やすべきと考えて良いでしょう。なお脳梗塞の本格予防には西城氏も言っておられたように、医師を活用し、その定期検診と指導を受けることが大切です。特に一回でも脳梗塞を患われた方はまた起こる可能性があるため本気で取り組まれることを勧めます。

定期検診にあたっては上述のことに加えて高血圧、糖尿病、コレステロール、尿酸、不整脈、心臓病、血管病その他様々な原因をまとめてチェックしてもらい、問題をできるだけ抑え込むと、脳梗塞はかなり起こりにくくなります。

医者にかかるというのは健康自慢の方々にとって、少々心苦しいところもあると思います。しかしある程度の年齢、具体的には40代以後になると、体力、気力、身体能力、運動神経などとは別の意味で体へのケアが必要になります。元プロ野球選手で皇太子殿下への野球解説も務められた解説者の佐々木信也さんの名言を記します。「昔の健康は財産にはなりません」。

稀代のエンターテイナー西城秀樹氏の訃報からお話を広げ、健康法やその注意点をお書きしました。西城氏のご冥福と、皆さんのご健勝を祈ります。

【メタボより怖いロコモ】老親の痛みは骨折を疑おう ドミノ骨折を防ぐために…


80代の母がロコモの末に、自宅の畳の上で転倒し大腿(だいたい)骨頸部骨折で手術。1年以上たった今も入院中。なぜこうなったのか、医療セミナーなどを取材し、リポートしてきた。ここでまとめておきたい。

 4コママンガ(日本整形外科学会提供)は母のケースと同じ。ロコモ→骨折が、日本の高齢女性で増えている。2040-50年には、30万人に達すると予想される。先進国の多くは克服したのに、なぜ日本だけが?

 骨折の原因は骨粗鬆(こつそしょう)症だが、現在40歳以上の女性に健康増進法に基づき自治体が5歳ごとに実施している骨粗鬆検診の受診率が全国平均約5%と低すぎるのが1つ。

骨粗鬆症の推定患者数は1280万人だが、検診率が低すぎて治療対象に上がってこない。

骨粗鬆症と分かれば、骨密度を高め骨質を改善するのに有効な薬剤治療が受けられる。骨粗鬆症に気づき、深刻なドミノ骨折を起こす前に治療するのが大事。

 私の母の場合も大腿骨頸部骨折の半年前に、腰痛を訴え、整形外科で脊椎圧迫骨折と診断された。本人も周囲も骨折とは夢にも思っていなかった。痛みはあるが、動ける。だが、骨折は連鎖して起きる。

専門家の話では「脊椎圧迫骨折を起こした人が大腿骨骨折を起こすリスクは折らない人の3-5倍。1度骨折した人は無条件で治療対象にすべき」という。

皆さんの老親で、もし腰痛を訴える人がいたら、骨折かも? とうたがってほしい。それで、ドミノ骨折を防いでほしい。

 次回から9月に行われた日本整形外科学会主催の講演などをリポートする。テーマは「ロコモの2025年問題」。2025年問題とは、私ら団塊の世代が続々75歳の後期高齢者になることだ。今、老親介護をしている団塊の世代が介護される側に回る。どういう状況になるか、容易に想像できるだろう。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

検証55歳からの性 SEXパートナー学】女性の性欲は長~く続く 40代後半で思わぬ妊娠も


昨今、雑誌で盛んに取り上げられるシルバーエイジのセックスライフ。「男たるもの、いくつになっても」という勢いだが、パートナーである女性に拒否されては元も子もない。

「セックスより趣味」という妻もいるからなおさらだ。そもそも中高年女性の性欲はどうなっているのか。

 【60歳を過ぎても】

 今年1月に公表された「JEXセックスサーベイ2012」によれば、婚姻期間30年以上、平均年齢60歳前後のカップルでは、5組に4組はセックスレスだった。

しかし、5組に1組は月1回以上の性の営みを持っている。一般的に女性は50歳前後で閉経すると、女性ホルモンが急激に低下するのだが、5組に1組はそれを乗り越えていたことになる。実は女性の性欲は、年を重ねても旺盛なのだ。

 産婦人科医の日本家族計画協会クリニック・北村邦夫所長が解説する。

 「男女を問わず性欲と深い関係があるのは男性ホルモンです。男性は18-20歳にピークがあります。女性のピークは30代後半から40代。女性の場合は、女性ホルモンが低下すると、相対的に男性ホルモンが高まるのです。

だから男性よりもピークは遅い。閉経を過ぎても性欲は十分に保たれ、相当長い間、維持されることになります」

 つまり、女性は60歳を過ぎても性欲があってセックスも可能というわけだ。それを裏付けるもう1つの調査結果がある。

 【40歳以上で中絶増】

 厚労省の発表した「平成23年妊娠総数(出生数+中絶数)100」に対する「中絶の割合」では、45~49歳が58%にも上った。50歳以上でも33・9%。シルバーエイジのセックスライフで、思いがけずに「妊娠」することがあるのだ。

 「40歳以上の『産み終え世代』は、セックスにもゆとりがある、避妊のことも知らないわけではない。にも関わらず、妊娠して中絶を余儀なくされている。

ピルなどの女性主導の避妊法は確実に広がっているものの、コンドームと膣外射精の男性主導のセックスにより、このような状況が起こっていると考えられます」(北村所長)

 避妊方法については別の機会に譲るとして、40代後半以降の女性も、性欲があって妊娠することも可能。

つまり、「子供の母親」「オバサン」などと男性が思ってセックスレスを続けていると、女性は家の外に性欲のはけ口を求めることも考えられる。実際、「不倫をしている」といった女性の話は、そこかしこにある。

 ただし、それはごく一部に過ぎない。冒頭の調査結果では、セックスに積極的になれない理由として、60代の男女ともに『セックスより趣味など楽しいことがある』が目立っていた。

 「これではセックスの再開は難しいと言わざるを得ません」と北村所長は指摘する。 (医療ライター・夏山佳奈)
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