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今からでもできる“体幹”鍛錬 ロコモ対策で目指せ健康長寿(2)

 こうしたロコモ防止の運動の裏には、健康長寿に対する認識を深める狙いもあるが、他の目的も。 「医療費や介護費用の伸びを抑えることです。高齢化社会の今、医療や介護に必要な国家予算も大きく膨れ上がっています。国民もそれ相応の負担増に悩まされている。そこで、骨折などをしないよう、介護不要の健康づくりの啓蒙活動が求められるようになってきたのです。中高年者は、そのような状況にならないためのロコモ対策を、早いうちから意識することが重要です」(整形外科医)

 そのめには、「七つのロコモチェック」と、「ロコモ度テスト」をしっかりとやっておく必要があるという。
 まず、「ロコモチェック」は次のようなものだ。

 (1)片足立ちで靴下が履けずにヨロケてしまう。
 (2)家の中でつまずいたり滑ったりする。
 (3)階段を上がるのに手擦りが必要。
 (4)家でのやや重い仕事が困難。
 (5)2キロ程度の買い物をして持ち帰るのが困難。
 (6)15分くらい続けて歩くことができない。
 (7)横断歩道を青信号で渡りきれない。早歩きが困難。
 「この七つ中で一つでも該当すれば、ロコモが心配されます」(同)

 次に「ロコモ度テスト」だが、こちらも以下の三つのテストの結果が、将来、ロコモとなる可能性を判定する材料となる。
 (1)片脚か両脚で決まった高さから立ち上がり、下肢の筋力を判定。
 (2)歩幅を測定することで下肢筋力、バランス能力、柔軟性など歩行能力を評価。
 (3)25項目の質問票で身体状態、生活状況をチェック。
 これらの詳細は、日本整形外科学会公認のホームページ『ロコモ チャレンジ』などに載っているので、挑戦しみてはどうだろうか。

 では、このテストで「将来、ロコモになる可能性が高い」となった場合はどうするのか。北里大学研究所病院理学療法士・新井雄司氏はこう説明する。「まず、スクワットを1日10~30回、片脚立ちを1日2~3セットを行うこと。また、両足で立った状態で、ゆっくりとかかとを上げて、ゆっくり下げる運動を1日20~40回(徐々に回数を増やす)を繰り返し、ふくらはぎを鍛える。

さらに腰に両手を押し当て、脚をゆっくり大きく前に踏み出し、太ももが水平になるくらいに腰を下げる。そして、体を上げて踏み出した足を元に戻す運動を、1日10~20回繰り返す。いずれも最初はきついものですが、体が柔らかく馴染んでくれば、そう難しい運動ではありません」

 さらに、新井氏はこう付け加える。
 「言い換えると、体の基礎部分の“体幹”と言われるところを鍛え、足腰の強化を図ることがロコモトレーニングでは重要になります。こうした鍛錬で、転んで骨折するような事故を防ぎ、交通事故などの重大障害を防ぐことにもつながるのです」現在、ロコモによって筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障をきたす要介護者やその予備軍は、4700万人いると言われる。今からでも遅くはない。健康長寿を目指し、対策に取り組もう。

今からでもできる“体幹”鍛錬 ロコモ対策で目指せ健康長寿(1)

 最近は、スポーツジムでも中高年者を多く見掛けるようになり、「ケガや病を持たない健やかな人生を送りたい」と願う人たちが多くなっているようだ。「“健康長寿”を長いスパンで捉え、将来的にも、入院・介護を受けずにいられる体づくりをしようと考え始めている人が多くなっているのではないでしょうか」こう語るのは、健康ライターの深見純一郎氏だ。

 厚労省が2013年に発表した日本人の健康寿命は、男性が71.19歳、女性は74.12歳。ここで言う健康寿命とは「介護の必要がなく健康的に生活できる期間」のことで、つまり、他人の助けを借りずに自立して生活できる年齢だ。同省では4年ごとにこうした調査を行っているが、'13年の4年前は男性が70.42歳、女性が73.62歳だったので、それぞれ0.77歳、0.5歳延びたことになる。おそらく、今年発表される健康寿命も延びていることだろう。

 しかし、健康に生活できる年齢が長くなることは喜ばしいことだが、前出の深見氏はこう指摘する。「'13年で言えば、日本人の平均寿命は、男性80.21歳で、女性は86.61歳。つまり、健康寿命との開きが男性は9歳、女性は約12歳もあるということ。この間、死ぬまでは健康とは言えず、寝たきりや介護を必要とし、1人では生きられない状態ということです。もちろん個人差はありますが、やはり健康寿命の平均をメドに、“生涯”、あるいは“死”というものをより身近に考える必要があるのではないでしょうか」

 現在、厚労省では、この健康寿命を少しでも延ばすことを目標に掲げ、'22年の平均寿命を男性81.15歳、女性が87.87歳と推計。健康寿命の延び幅が平均寿命の伸び幅を上回ることを目指している。

 そこで今、言われ始めているのが「メタボの次はロコモ」。メダボリック症候群は、肥満や高脂血症、糖尿病、高血圧などの二つ以上が同時に出る状態で、寿命にも関わるものとして指弾されてきた。しかし近年では、それよりもロコモティブ症候群(運動器症候群)のほうが問題視されているのだ。「“運動器”とは、骨や関節、筋肉などのことで、ロコモティブ症候群は、年齢を重ねるごとにこれらの機能が衰えてくるというもの。その結果、転倒して骨折するなどして、介護が必要になってしまう。そうしたことを防ぐ意味でも、日頃から体力をつけるトレーニングを積んでおけば、予防にもつながるのです」(医療関係者)

 東京都内には、ロコモの認知向上と運動機能改善を目指す『ロコモチャレンジ!推進協議会』がある。ここは整形外科専門医が参加し、サポート企業との連携で、ロコモの正しい知識と予防意識の啓発のための広報活動を推進している。また、埼玉県松山市で行われるウオーキングイベント『日本スリーデーマーチ』や、厚労省主催の『スマート・ライフ・プロジェクトフェア』などに同協議会も参加。“ロコモトレーニング”などの指導を行っている。

コタツで寝るとなぜ風邪をひく?

温かいコタツにすっぽりと身を収め、テレビでも観ながらまどろむのは、日本人ならではの真冬の悦楽。この冬休み、久しぶりの実家で思う存分“コタツでゴロゴロ”を満喫した人も多いのではないか。

ところで、昔よく母親から「コタツで寝ると風邪をひくわよ!」と怒られたものだが、これって何か根拠があったのだろうか? 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみた。

「一般的に風邪をひく原因には、単純に部屋が冷えているという環境的な要因のほか、脱水や疲労といった肉体的な要因が挙げられます。

コタツに長時間入っている状態では、局所的に加温され続けるため、知らず知らずのうちに体が疲労し、また、汗をかいて脱水症状を引き起こしやすくなります。そのまま眠ってしまったのであれば、何時間も水分補給が行えないわけですから、なおさらですよね」

体温よりも高く加温され続けることは、僕たちが自覚している以上に体に負荷を強いている。うっかりコタツで寝てしまった翌朝、全身に疲労や倦怠感を覚えるのはそのためだと須田先生は解説する。肉体疲労の結果免疫力が低下すれば、風邪を引きやすくなる可能性は大いにあるだろう。

「また、家族など複数でコタツに入っている状態というのは、人と人が非常に密着します。もしも、家族の誰かが風邪のウイルスを持っていたとしたなら、感染のリスクは高いといわざるを得ません」

そうでなくても、そもそもコタツを活用する時期というのは、一年のなかで最も風邪が猛威をふるうシーズンと一致している。風邪が感染性の病気である以上、これもまた軽視できない要因だろう。

コタツは冬の風物詩ともいうべき日本独特の文化だが、せっかくのオフをまるまる風邪でつぶしてしまうようなことがあってはもったいない。皆さん、どうか適切なコタツ・ライフを!

治療の難題をクリア 「進行パーキンソン病」新薬の実力

9月1日にパーキンソン病の新しいタイプの治療薬の発売が開始された。これにより、進行パーキンソン病患者の治療の選択肢が増えた。

 パーキンソン病は、多くは原因不明で、脳の黒質という部分の神経細胞が減少し、運動の仕組みを調節する働きを担う物質「ドーパミン」が減る疾患だ。

 主症状は「動きが緩慢になる・動けなくなる=無動」「手足が震える=振戦」「筋肉が硬くなる=固縮」「体のバランスが悪くなる=姿勢反射障害」の運動症状。加えて、非運動症状といわれる自律神経症状、睡眠障害、精神症状、認知機能障害、痛みなども見られる。これらの症状が出る前に、便秘、嗅覚障害といった前駆症状も分かっている。

 残念ながら完治する手段はなく、薬で症状を抑えるしかない。しかし、発症して間もない時期には薬はよく効くが、発症後、5~6年経過する頃には、効果にばらつきが出てくる。次第に効きづらくなり、さまざまな症状が表れる。

「ウエアリングオフ現象やジスキネジア現象が見られるようになり、より進行すると運動・非運動症状の増悪、認知症、転倒などが起こりやすくなります」(順天堂大学医学部神経学講座・服部信孝教授=以下同)

■症状に応じて投与量を微調整可能

 ウエアリングオフ現象は、スイッチをオン・オフするように、服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる(オフ状態)。ジスキネジア現象は、自分の意思とは関係なく、体の一部が自然に動く。

 今回の新薬は、既存の薬物治療では十分な効果を得られず、ウエアリングオフ現象などが起こるようになった患者を対象としたもの。

 経口投与だった既存薬と違い、今回登場した新治療薬は、専用のチューブを通して空腸(小腸の一部)へ直接薬を投与する。しかも、16時間持続して、だ。チューブは、腹部に開けた穴(胃ろう)から空腸へつなぐ。

 なぜ、パーキンソン病は進行すると薬物治療で症状をコントロールすることが困難になるのか? 服部教授は次の2点を挙げる。

 まず、「有効治療域の狭小化」だ。

「パーキンソン病が進行すると患者さんが動きやすいと感じる薬物の血中濃度の幅(有効治療域)が狭くなります。これに対して、断続的な経口薬では対処ができない」

 次に、「胃内容物排出遅延」がある。

「パーキンソン病では胃など消化管の働きが悪くなり、胃内容物の排出に遅れが生じます。すると、薬剤が小腸で吸収されるタイミングにばらつきが生じ、薬物血中濃度を安定して維持するのが難しくなるのです」

 空腸へ直接、16時間持続して投与する新治療薬なら、この2点の問題がクリアできる。

 臨床試験では、重度の運動症状が見られる進行期パーキンソン病患者が、新治療薬に切り替えた。すると、投与12週間後には、1日当たりの平均オフ時間(薬の効果が切れて動けなくなる時間)が、既存薬より大幅に減少した。その後、52週以降の評価でも、明らかな差ができた。

 これまでのパーキンソン病の薬は、数年すれば効きづらくなっていたが、今回の新治療薬は世界でも2年間のデータしかないので、その点は分からない。

「しかしこの薬の利点は、患者さんに応じて投与の量を調整できるところ。経口薬では、副作用を心配して十分量使用できない傾向があったが、それが、効き目を見ながら微調整できるのは大きいです」

 新治療薬で「希望が生まれた」と話す専門医もいるという。

運動不足は寝たきり予備軍? 元気な老後は”“ロコモ”が鍵

最近、目にすることが多くなった「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)」。運動不足…という人は、要注意です。

◆元気に年を重ねるために重要。「ロコモ」の予防を考えよう

要介護や寝たきりになる原因の多くを占めるのが、実は、腰痛や膝痛など関節の痛みや、転倒による骨折といった、骨・関節・筋肉等運動器の障害。そのため、運動器の障害を“予防”するために近年提唱され始めたのが「ロコモ」です。

「ロコモ」とは、骨・関節・筋肉などの運動器の機能が衰え、歩行や立ったり座ったりなどの日常生活に支障をきたし、寝たきりや要介護になるリスクが高まった状態のこと。直接命に関わるものではありませんが、自立して暮らすためには若いうちから意識しておくべき。

高齢者だけではなく、体力や筋力が衰え始める50代から注意が必要です。年齢にかかわらず左記の「ロコチェック」に該当するものがあれば、整形外科専門医に相談することをおすすめします。

【ロコチェック】
□片脚立ちで靴下がはけない
□家の中でつまずいたり滑ったりする
□階段を上るのに手すりが必要
□家のやや重い仕事が困難
□2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難
□15分くらい続けて歩けない
□横断歩道を青信号で渡りきれない
(ロコモ チャレンジ!推進協議会WEBサイトより)

現在は症状が無くても、定期的な運動は重要。「ロコモ」の予防、改善のために考案されたトレーニング「片脚立ち」で、無理なく日頃から骨と筋肉を鍛えましょう。

【片脚立ち】
背筋をまっすぐにして、床につかない程度に片脚をあげ1分間キープ。左右1日3セット行います。
※転ばないように、何かにすぐにつかまることができる状態で行う。支えが必要な人は、机やイスにつかまって行う

取材協力
福岡和白病院 関節症センター長
林 和生 先生

パーキンソン病、リハビリは「散歩」 岡山旭東病院の柏原神経内科部長に聞く

パーキンソン病をテーマにした市民健康講座が20日、岡山市北区駅元町の岡山コンベンションセンターで開かれる。患者は国内に約15万人と推計され、高齢化に伴い増加の一途をたどっている。講座を企画した岡山旭東病院(岡山市中区倉田)の柏原健一神経内科部長に、パーキンソン病の治療法や家庭で取り組めるリハビリ、市民健康講座の内容などを聞いた。

 ―パーキンソン病を発症する原因は。

 手の震えなどの運動障害は中枢神経に作用する神経伝達物質・ドーパミンの減少によることは分かっていますが、なぜ減るかという根本的な原因は分かっていません。また、全体の5~10%は遺伝性です。α―シヌクレインという物質が中枢神経系や末梢(まっしょう)の自律神経系に病的に蓄積され、神経細胞を障害して発症するのです。

 ―どういう症状が出ますか。

 手足が震えたり歩幅が小さくなったり、動作が緩慢になったりするのが最も知られた症状ですが、そこまで進行する以前に便秘や頻尿、寝言、うつといった症状が現れます。発症後20年ほどすると、約8割の人に認知症の症状が現れます。とはいえ、健康な人でも加齢とともに認知機能は衰えていきます。パーキンソン病だから認知症の症状が早く出たり、程度がひどくなるとは限らないので、悲観しないでください。

 ―治療方法を教えてください。

 脳内で不足するドーパミンを増やすレボドパと、ドーパミンの受容体を直接刺激するドーパミンアゴニストのいずれか、あるいは両方を処方するのが一般的です。レボドパは非常によく効く半面、長い年月にわたり飲み続けると、副作用として意思とは関係なく体が動く不随意運動が起きやすくなります。ドーパミンアゴニストはその副作用のリスクは小さいが、レボドパほどの薬効はありません。初期はどちらを使っても効果はあまり変わりませんが、少ない副作用で良い効果が得られるよう、年齢や症状を勘案して薬を選択します。

 ―日常生活で取り組めるリハビリは。

 日常生活の全てがリハビリといえます。まずは散歩をしてください。手を大きく振り、足をしっかり上げることが大事です。趣味のサークル活動やカラオケも良いです。大事なのは家族のサポート。家族はチーム医療の一員です。しっかり患者さんを支えてください。

 ―市民公開講座は年2回開き、今回で27回目を迎えます。長年続ける理由は。

 パーキンソン病は運動、精神、認知、自律神経などさまざまな問題症状が出て、しかもその症状は患者さんごとに異なります。治療も、薬、手術、リハビリなどがあります。そのため、治療の考え方が専門医によって若干異なることがあります。だからこそ、全国で活躍している専門医に協力を求め、それぞれの知見を分かりやすく話してもらっています。家族を含め、幅広く正しい知識を持ってもらうことが良き治療と豊かな生活につながります。前向きに病気と向き合ってください。

 ◇

 市民健康講座では、千葉大病院神経内科の平野成樹講師が「パーキンソン病との付き合い方」のテーマで講演。音楽療法士で倉敷北病院リハビリテーション科の松鹿滋子さんと、岡山旭東病院リハビリテーション課の藤田直也さんが「リズムに乗って歌ってみよう」と題し、音楽に合わせた体操を実演する。

「パーキンソン病」 上手に付き合うポイントと最新治療法

パーキンソン病は、脳の黒質でドーパミン神経細胞が減少する病気。これまでは「脳だけの病気」と考えられてきたが、近年、「全身の病気」だと分かってきた。

 症状は、手足の震え、筋肉のこわばり、全身の動作が遅くなる、倒れやすいといった「運動症状」。さらに、便秘、レム睡眠行動異常症、嗅覚低下、立ちくらみなどのさまざまな「非運動症状」が出る。

 東京慈恵会医大葛飾医療センター神経内科・鈴木正彦診療部長は、パーキンソン病と上手に付き合っていくための要点を次のように挙げる。

(1)治療は「症状に応じて」「きめ細やかに」

 パーキンソン病治療薬は、発症して間もない時期にはよく効くが、発症後5~6年経過するころには、効果にバラツキが生じてくる。

「服薬後、数時間で薬の効果が切れて動けなくなる『ウエアリングオフ』と、自分の意思とは無関係に体が自然に動く『ジスキネジア』を生じるようになり、どう対処するかが重要です」

 患者が最も困っている症状に対し、服薬量や服薬回数を適宜調整する。最近では貼り薬や自己注射薬なども登場しているので、生活環境を勘案しながら適正に使用する。

「薬の量が増えれば副作用も増します。いかに薬効は高く、副作用は少なくするか。専門医とのコミュニケーションが重要となりますので、普段、困ったことは受診時にすぐ伝えられるよう書き出しておくとよい」

 症状や進行度は十人十色。パーキンソン病は進行性の病気であるため、症状に応じて、細かく薬剤を調整していかなくてはならない。病気に精通した専門医と上手に付き合う姿勢も必要だ。

(2)便秘のコントロールとリハビリ

 今、治療のポイントになっているのが便秘のコントロールだ。便秘は高度になると薬の吸収率が下がり、症状の悪化につながることもある。

「薬の効果を十分発揮させるためにも、四肢・体幹のストレッチなど毎日の自己リハビリは欠かせません。積極的に、食事の前に1日3回はぜひ実践していただきたい」

 徹底して行えば、パーキンソン病の進行期、すなわち薬の効き目が悪くなる発症10年目以降も、健常者と同じまではいかないにしろ、杖なしでハイキングに行ったり、ゴルフを楽しんだりすることは十分可能だ。

「パーキンソン病薬は飛躍的に向上しています。それだけに、自己判断で服薬調整しないようにしましょう。かかりつけ医と専門医を上手に利用して、病気への良好な対応を継続することが非常に大切。パーキンソン病以外の病気を抱えている方も少なくなく、そういう意味でも、患者、かかりつけ医、専門医のトライアングルを意識すべき」

■「脳深部刺激療法」と「ビタミンD投与」に大きな可能性

 現在、パーキンソン病の最新治療で注目をされているものが2つある。

 ひとつは「脳深部刺激療法」。局所麻酔を用いた簡単な手術で脳の運動に関わる部分に電極を留置し、弱い電流で刺激を与える。これで薬の量を減らせる患者も多い。

 もうひとつは、ビタミンDの投与だ。

 パーキンソン病患者は健康な人に比べてビタミンDの血中濃度が著しく低く、その濃度が低いほど重症度が高いことが指摘されている。鈴木部長は同院の患者の協力を得て臨床研究を実施。二重盲検ランダム化比較試験の結果、1年後に症状の進行が抑制された患者の割合は、ビタミンD服用群で6割に達した。

 ただし、ビタミンDがパーキンソン病の進行を抑制できる可能性は示唆されたものの、「今後の国内外の研究結果が待たれる状況」と鈴木部長。安易に手を出していい治療では「まだ」ない。

30代から罹患も予防に光明! 研究進むパーキンソン病

団塊の世代が80歳以上となる2030年、パーキンソン病患者は28万人を超えるとみられている。患者の年齢も30代から80代と幅広いが、悲観するにはあたらない。薬物療法が大きく見直されるとともに、進行を抑える研究も進んでいる。

 パーキンソン病などの神経変性疾患を専門とする東海大学病院神経内科准教授の馬場康彦医師は、パーキンソン病の薬物療法を奏功させるためのポイントについて、次のように指摘する。

「患者さんにつけていただいた症状日誌に基づき、主治医が一日のうちでいつ、どのような症状が起こるかを把握したうえできめ細かく処方調整することが重要です。私たちは、たとえば効果の持続時間が短くなる『ウェアリング・オフ』が起きる直前に内服していた薬剤を増量する、自らの意思に関わりなく身体が動いてしまう『不随意運動(ジスキネジア)』が起きる直前に内服していた薬剤を減量する、補助薬を併用するなどの工夫をすることで、患者さんに支障なく日常生活を送っていただけるよう努めています」

 薬物療法の問題点は、進行とともに薬剤の種類や用量が増え、用法が煩雑になると、指示どおりに服薬する患者が少なくなることだ。主治医は患者が指示どおりに服薬していることを前提に処方調整をおこなっているため、自己流の誤った服薬は厳に慎みたい。

「薬物療法の効果が頭打ちとなっても、次の一手として手術療法の脳深部刺激療法の有用性が確立していますし、今夏には十二指腸に入れたチューブからジェル状のレボドパを小型ポンプで持続的に注入する治療が実用化する見込みです」(馬場医師)

 脳内でドパミンの効果を発揮させるため、ドパミンの前駆物質とドパミンの効果を保つ薬剤の合剤であるレボドパを投与する「レボドパファースト」の治療を開始して5年、神奈川県在住の主婦(54歳)は症状の進行とともにレボドパの用量・用法を見直し、補助薬を加えることで、病気を苦にすることなく充実した日々を送っている。

 日常生活の改善により、パーキンソン病の発症や進行を防ぐことはできないだろうか。

 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科診療部長・准教授の鈴木正彦医師はこう語る。

「当科を受診された患者さんにご協力いただいて臨床研究をおこなった結果、ビタミンDのサプリメントを摂取することによりパーキンソン病の進行を抑制できる可能性が示されました」

 ビタミンDは、魚介類、きのこ類などに多く含まれ、日光を浴びることにより体内でつくられる栄養素であり、ドパミン神経がドパミンを生合成する過程にも大きく関与する。

 パーキンソン病は非運動症状として便秘やうつ状態などをきたすことが多く、食事量が減ったり日中の外出を控えたりするとビタミンD不足に陥りやすい。

 これまで国内外の研究により、パーキンソン病患者は健常人に比べ血中のビタミンD濃度が著しく低く、またビタミンD濃度が低いほど重症度が高まることが明らかにされてきた。

 鈴木医師らは、パーキンソン病と診断され、書面で同意を得た患者を対象に、ビタミンDのサプリメントを1日1回12カ月間投与した群56例、同様にプラセボ(偽薬)を投与した群58例において二重盲検ランダム化比較試験をおこなった。

 その結果、ビタミンD群では症状が改善した患者の割合が6割に上り、プラセボ群に比べ有意に高かった。遺伝子検査では、ビタミンD受容体のタイプによって効果に差があることがわかり、ビタミンDの摂取が有効な患者を推定できる可能性も示された。

 一方、ビタミンDはとりすぎると高カルシウム血症をきたして腎不全や尿路結石などのリスクが高まるが、血中カルシウム濃度が異常値を示した例はなかった。この研究は13年に米国医学誌に発表され、これまで多くの文献に引用されている。

 鈴木医師は、「私たちの研究結果が実臨床で生かせるようになるには、多施設でより多くの患者さんを対象に追試が行われ、有効性、安全性が検討される必要があります」という。

 あわせて、パーキンソン病とビタミンDの関連が詳細に明らかになれば、予防にも有効な手段が見いだせるかもしれない。

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全国に4700万人いるロコモティブシンドロームの症状と対処

ロコモティブシンドローム、通称“ロコモ”をご存知だろうか? ポップなネーミングだが、実は足腰の衰えや障害によって要介護になる危険性が高い状態のこと。しかも、衰えは40代から始まっているので、その世代の人はすでに対策が必要だ。

「ロコモとは、筋肉や骨、関節という運動器に障害が生じたり運動機能が低下したりして、要介護や寝たきりになったり、その危険性が高まることをいいます」

 と解説するのは、東京ミッドタウンメディカルセンター平石貴久特別外来の平石貴久さん。

「糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症などが心筋梗塞を引き起こすメタボリックシンドロームは、多くの人に認知されていますが、ロコモもそれに並ぶ現代人の国民病。

東京大学の研究チームによると、ロコモ予備軍は全国に4700万人もおり、これは40才以上の男性の84%、女性の79%に当たります。

つまり、40代以上の10人のうち8人がロコモ予備軍ということになります」(平石さん・以下同)

 また恐ろしいことに、ロコモは運動器だけに支障が出るわけではない。

「ロコモになると体を動かせなくなりますし、予備軍の状態でも運動量はかなり減ります。すると基礎代謝が低下するので、メタボになる可能性も高まる。さらに、引きこもりがちになったり、慢性的な痛みが続くことで鬱になり、認知症を引き起こすこともあるんです」

 このように、ロコモはさまざまな病気を引き起こす原因にもなる。そして、ロコモは男性よりも女性のほうがなりやすいというから要注意。

「女性の場合、閉経後に女性ホルモンが減少するため、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が急速に進んで骨折しやすくなります。その結果、ロコモになりやすいんです」

 しかしこのロコモ、日ごろの心掛けで予防することができるという。

「90才を超えても元気な人は、しっかり筋肉がついているのが共通点。先日亡くなった森光子さんが80才を過ぎてもでんぐり返しができたのは、日々スクワットでトレーニングをしていたからです。

筋肉は使わないと衰えるので、長持ちさせるためには意識して動かすトレーニングが必要。また、骨もカルシウムやビタミンDなどの栄養を摂るだけでなく、運動で刺激を与えると骨量が増え、丈夫な骨が作られます」

 とはいえ、日常生活に必要な筋肉を鍛えるには、ハードなトレーニングは必要ない。ごく簡単なトレーニングを継続するだけでロコモは予防でき、なおかつ現在悩んでいる腰やひざの痛みも解消するという。

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【メタボより怖いロコモ】後期高齢者医療費30兆円に ロコモの2025年問題

今回も9月の日本整形外科学会記者説明会で取り上げられた「ロコモの2025年問題」について(「ロコモチャレンジ!推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演から)。

 私も団塊の世代だが、2025年には後期高齢者になる。今の後期高齢者医療制度では、自己負担は1割。所得によっては高額療養費の自己負担限度額があり、払った医療費からかなり戻ってくる。

 つまり、25年問題とは団塊の世代が後期高齢者になり社会保障費の高騰を招くと懸念されるものだ。医療費急増のグラフをみてほしい。25年には05年の約3倍、15年の約2倍の約30兆円に達する。

 問題はこの医療費を押し上げる要因としてロコモが挙げられることだ。「ロコモチャレンジ!推進協議会」の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」では、協議会が定める7つのロコチェックの1つでも当てはまればロコモの可能性があるが、調査では70代男性の6割、女性の7割が該当するという結果が出た。

 この世代は25年には後期高齢者になっている。05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年にはこの割合は一層高まるに違いない。さらに重要な指摘があった。

 「社会の利便性向上により運動機会が減少し、ロコモの危険性に拍車をかけている」というのである。例えば国内のエスカレーター保有台数は右肩上がりで伸びているのだが、1日当たりの歩数は逆に減る一方なのだ。

 それでも、まだ都市部の方が歩いている。県別に見ると、歩数のトップ3は兵庫県(男7964、女7063)、東京都、神奈川県。最下位は男が鳥取県、女が山梨県でトップより2000歩ほど少ない。地方は車社会なので運動機会がさらに減るのではないかとみられている。

 つまり、このままでは日本は確実に「ロコモ大国」となる。そこで、早期にロコモの危険性を知り、各自が対策に取り組むことが大事だとしている。まだ若いうちに自らのロコモ度を把握し、ロコトレ+ウオーキングでロコモ克服を目指そうと提唱している(ロコモ度テストやロコトレなど詳しくは「ロコモチャレンジ」で検索)。

 団塊の世代よ、歩け。

 次回は運動機能強化に効果があるアミノ酸の話。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】社会保障費の高騰に懸念… ロコモの2025年問題

日本整形外科学会の記者説明会では、「ロコモの2025年問題」が取り上げられた。「ロコモチャレンジ! 

推進協議会」副委員長で名戸ヶ谷病院院長の大江隆史氏の講演を要約して、「2025年問題」とは何かを記す。

 グラフのように、2025年には、1947-49年生まれのすべての団塊世代が、75歳以上の後期高齢者になる。それより前の20年には、75歳以上の後期高齢者が65-74歳の高齢者人口を追い抜いているが、その差がグンと広がっている。

当然ながら、医療費も増加し、25年には、28兆円と予想される。その10年前の約2倍である。つまり「2025年問題」とは、社会保障費の高騰が懸念されるわけだ。

 ところで、新聞などの表記でも、マチマチなのだが、いまだに日本は高齢化社会などと表記している場合があるが、間違いで07年から日本は超高齢社会に突入しているのだ。高齢化は先進国の中でも、群を抜いている。

 ここで、興味深いのが、協議会の行った「2013年度ロコモ生活者意識全国調査」だ。協議会では、「片脚立ちで靴下がはけない」など簡単な7つのロコチェックを設定している。

その1つでも当てはまればロコモの可能性がある。この調査では、70代では男性の6割、女性の7割がロコチェックに該当するという結果が出た。

 05年時点で、ロコモ予備軍は4700万人といわれ、総人口の3分の1を占めていた。25年に団塊の世代が後期高齢者になると、この割合は一層高まるに違いない。

 さらに興味深いのは、10年と25年での都道府県別高齢者増加数を見ると、トップ5は東京、神奈川、埼玉、大阪、千葉の順で、都市部の高齢化が指摘される。


同時に、住民の高齢化だけでなく、建物の高齢化も心配される。ベッドタウンによくある低層集団住宅では、階段しかない建物も多い。

 都市部の高齢化では、(1)マンションからの外出困難(2)近隣住民との関わり希薄(3)引きこもり(4)買い物難民などの結果、移動能力が低下し、1人で外出できない人が増え、孤立化していくと指摘されている。

 実は、私も団塊の世代だ。次回も本当に人ごとではない2025年問題について続ける。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】老親の痛みは骨折を疑おう ドミノ骨折を防ぐために…

80代の母がロコモの末に、自宅の畳の上で転倒し大腿(だいたい)骨頸部骨折で手術。1年以上たった今も入院中。なぜこうなったのか、医療セミナーなどを取材し、リポートしてきた。ここでまとめておきたい。

 4コママンガ(日本整形外科学会提供)は母のケースと同じ。ロコモ→骨折が、日本の高齢女性で増えている。2040-50年には、30万人に達すると予想される。先進国の多くは克服したのに、なぜ日本だけが?

 骨折の原因は骨粗鬆(こつそしょう)症だが、現在40歳以上の女性に健康増進法に基づき自治体が5歳ごとに実施している骨粗鬆検診の受診率が全国平均約5%と低すぎるのが1つ。

骨粗鬆症の推定患者数は1280万人だが、検診率が低すぎて治療対象に上がってこない。

骨粗鬆症と分かれば、骨密度を高め骨質を改善するのに有効な薬剤治療が受けられる。骨粗鬆症に気づき、深刻なドミノ骨折を起こす前に治療するのが大事。

 私の母の場合も大腿骨頸部骨折の半年前に、腰痛を訴え、整形外科で脊椎圧迫骨折と診断された。本人も周囲も骨折とは夢にも思っていなかった。痛みはあるが、動ける。だが、骨折は連鎖して起きる。

専門家の話では「脊椎圧迫骨折を起こした人が大腿骨骨折を起こすリスクは折らない人の3-5倍。1度骨折した人は無条件で治療対象にすべき」という。

皆さんの老親で、もし腰痛を訴える人がいたら、骨折かも? とうたがってほしい。それで、ドミノ骨折を防いでほしい。

 次回から9月に行われた日本整形外科学会主催の講演などをリポートする。テーマは「ロコモの2025年問題」。2025年問題とは、私ら団塊の世代が続々75歳の後期高齢者になることだ。今、老親介護をしている団塊の世代が介護される側に回る。どういう状況になるか、容易に想像できるだろう。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【検証55歳からの性 SEXパートナー学】女性の性欲は長~く続く 40代後半で思わぬ妊娠も

昨今、雑誌で盛んに取り上げられるシルバーエイジのセックスライフ。「男たるもの、いくつになっても」という勢いだが、パートナーである女性に拒否されては元も子もない。

「セックスより趣味」という妻もいるからなおさらだ。そもそも中高年女性の性欲はどうなっているのか。

 【60歳を過ぎても】

 今年1月に公表された「JEXセックスサーベイ2012」によれば、婚姻期間30年以上、平均年齢60歳前後のカップルでは、5組に4組はセックスレスだった。

しかし、5組に1組は月1回以上の性の営みを持っている。一般的に女性は50歳前後で閉経すると、女性ホルモンが急激に低下するのだが、5組に1組はそれを乗り越えていたことになる。実は女性の性欲は、年を重ねても旺盛なのだ。

 産婦人科医の日本家族計画協会クリニック・北村邦夫所長が解説する。

 「男女を問わず性欲と深い関係があるのは男性ホルモンです。男性は18-20歳にピークがあります。女性のピークは30代後半から40代。女性の場合は、女性ホルモンが低下すると、相対的に男性ホルモンが高まるのです。

だから男性よりもピークは遅い。閉経を過ぎても性欲は十分に保たれ、相当長い間、維持されることになります」

 つまり、女性は60歳を過ぎても性欲があってセックスも可能というわけだ。それを裏付けるもう1つの調査結果がある。

 【40歳以上で中絶増】

 厚労省の発表した「平成23年妊娠総数(出生数+中絶数)100」に対する「中絶の割合」では、45~49歳が58%にも上った。50歳以上でも33・9%。シルバーエイジのセックスライフで、思いがけずに「妊娠」することがあるのだ。

 「40歳以上の『産み終え世代』は、セックスにもゆとりがある、避妊のことも知らないわけではない。にも関わらず、妊娠して中絶を余儀なくされている。

ピルなどの女性主導の避妊法は確実に広がっているものの、コンドームと膣外射精の男性主導のセックスにより、このような状況が起こっていると考えられます」(北村所長)

 避妊方法については別の機会に譲るとして、40代後半以降の女性も、性欲があって妊娠することも可能。

つまり、「子供の母親」「オバサン」などと男性が思ってセックスレスを続けていると、女性は家の外に性欲のはけ口を求めることも考えられる。実際、「不倫をしている」といった女性の話は、そこかしこにある。

 ただし、それはごく一部に過ぎない。冒頭の調査結果では、セックスに積極的になれない理由として、60代の男女ともに『セックスより趣味など楽しいことがある』が目立っていた。

 「これではセックスの再開は難しいと言わざるを得ません」と北村所長は指摘する。 (医療ライター・夏山佳奈)

【メタボより怖いロコモ】母の介護、娘は「生活スタイルの変化が不安」★家族介護の実態(3)

今回も鳥取大学医学部・萩野浩教授の講演リポート。

「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(日本イーライリリー主催)という講演の中で、萩野教授は2012年6月に高齢の母親をもつ娘4700人(45-60代)を対象に行ったインターネット調査「母親の健康と介護に関する意識調査」を発表した。

介護の担い手は、この年代の女性が多いうえに、実は将来介護される側にもなりかねないので、どういう意識をもっているのか興味深い。

 「もし腰痛の原因に骨折の可能性があるとしたらどのような対策をとるか」という問いに、「医者に診てもらうことをすすめる」が7割だが、一方で「診てもらえる医療機関を調べる人」は3割未満で、30%は医療機関をどこで探していいのか分からないようだ=グラフ。

 「母親の介護が必要になった際、心配なことは何か」と聞かれて、「自分の生活スタイルを変えなければならないこと」がトップで約61%。「精神的な負担が生じる」58%。「経済的な負担が生じる」45%。「自分の自由な時間がなくなる」40%。「特に心配なことはない」はわずか約9%に過ぎなかった。

 だれしも、いずれ何らかの形で介護に関わる場合の不安が見て取れる。

 「母親の介護予防のためにどのような対応策を講じているか」については、「定期的に医者に診てもらうことをすすめる」がトップで44・5%。その一方で「何もしていない」が25・7%に上る。

 この調査で分かったことは、娘の約4割は母親が腰痛を抱えていることを認識している。だが、腰痛の原因に骨折があることを知らない娘は7割以上に上り、年齢が原因と思っている。

母親に腰の曲がりや身長の低下が認められても8割の娘は年齢が原因とし、骨折の危険が潜んでいることを9割は認識していない。

母親の介護をすることになった場合の気がかりは「自分の生活スタイルへの影響」などで、予防の対応策として約半数が「医者にかかること」をすすめているが、病院に付き添ったり、具体的な情報を提供する娘は少数派ということだ。

 「こういう調査は初めてですが、親の介護で大変な思いをするのは自分たちですし、やがては自分たちも介護される側に回るわけですから、骨折が大変なことだとぜひ気づいていただきたいと思います」と萩野教授は話していた。  

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】認識されない「骨折」の重要さ★家族介護の実態(2)

引き続き鳥取大学医学部の萩野浩教授の講演をリポートする。題目は「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(日本イーライリリー主催)。

 「骨粗鬆(こつそしょう)症は社会的に大事な問題とはいわれておりましたが、介護する立場に立っての取り上げ方は新しい取り組みだと思います。介護をする立場を見据えてこの問題を捉えることは、将来のこの問題の解決に道を開くことにもなろうかと思います」

 こう前置きして、萩野教授は、2012年6月に高齢の母親をもつ娘4700人(45-60代)を対象に行った、インターネット調査「母親の健康と介護に関する意識調査」を発表した。日本の介護の担い手は、この年代の女性が多いから興味深い。

 調査は介護を抱えている人の腰痛などへの理解度を把握したものだ。対象者の内訳は40代=36%、50代=53%、60代=10%という割合で、母親の年齢は70代が5割以上、80歳以上が4割以上となっている。半数以上が介護の可能性ありで、同居は2割未満だ。

 その調査結果によると、「母親が訴えている痛みの症状」では、手足の関節=38%、腰=33%、背中=9%。

 「母親の腰痛に対して何か行っていることはあるか」との問いには、行っている=44%、53%が何もしていない。

 「高齢者の腰痛の原因としてあなたが知っていることを選びなさい」との問いには、「年齢(高齢者だから)」が約7割で、「骨折」と答えた人は26・4%だった。つまり、68%の人がトシだから当たり前と片付けてしまい、意外に骨折の重要性が認識されていないことが明らかになった。

 「母親の姿勢の変化で気づいた点」を聞くと、身長が縮んできた=28%、身長が縮み背中・腰が曲がってきた=24%、背中・腰が曲がってきた=15%と約7割が姿勢の変化を認識している。

 すでに述べてきたように、身長の縮みや姿勢の変化は、骨粗鬆症や骨折の危険と密接な関わりがある。ところが、姿勢の変化の原因となると、「年齢(高齢者だから)」が77%で「骨折」と回答した人は4%に過ぎなかった。

 「骨折の3分の2は痛みがないので見過ごされやすいのですが、原因の1つとして考えていただきたいと思います」(萩野教授)

 私の母も大腿骨骨折の半年前に腰痛を訴え、整形外科を受診すると、腰椎の圧迫骨折と診断された。しかし、本人は骨折などとは夢にも思っていなかったのだ。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

全米で注目 ボクシングで「パーキンソン病」症状が軽減できた

パーキンソン病患者のための意外なセラピー「ボクシングセラピー」が全米ネットのテレビ番組で紹介され、大きな話題になっています。

 日本では難病指定されているパーキンソン病患者は、アメリカに100万人いて、毎年6万人が新たに診断を受けているといわれます。

 ボクシングの元ヘビー級チャンピオンのムハマド・アリ、俳優のマイケル・J・フォックスなどが患者として知られています。

 手足の震え、言語障害、曲げ伸ばしが硬くなり、バランスが悪くなるなどが特徴的な症状で、有効な治療法は見つかっていません。ところが、「ロックステディー・ボクシング」と名付けられたボクシングセラピーが、患者の症状を軽減すると注目されているのです。

 ロックステディー・ボクシングは2006年、インディアナポリス大学で考案され、今では全米50カ所、さらにイタリア、オーストラリア、カナダのジムでクラスが開催されています。

 通常のボクシングと違って激しく闘うことはしませんが、ストレッチで体が硬くなるのを緩和し、フットワークでバランスを養い、パンチは震えを、大声の叫びが言語障害を緩和する効果があることがわかっています。

 インディアナポリス大学で2年間行った調査によれば、ボクシングセラピーを受けた患者には、症状が進行しなかっただけでなく、軽減した人もいました。

「強度の高いエクササイズは脳のドーパミンを増やし、神経細胞を増加させるのではないか」と研究者らは推測。今後、病気の治癒にもつながる可能性もあるということで、まさに病気と闘うボクシングの効果に、熱い視線が注がれています。

▽シェリーめぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター。横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。

メタボより怖いロコモ】骨折の“前兆”腰痛に注意! 身長2センチ以上縮むと危険度高まる★家族介護の実態(1)

一昨年末に大腿(だいたい)骨骨折で手術し、現在も入院中の88歳の母のケースでも、実は前兆があった。骨折は連鎖して起こるから前兆に気づくかどうかは分かれ目となる。

そんな目を開いてくれたのが、昨年7月の鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授による「骨折と家族介護の実態(母の痛みは家族の痛み)」(主催・日本イーライリリー)という講演だった。

 萩野教授は骨粗鬆(こつそしょう)症は沈黙の疾患と呼ばれ痛みを伴わないために、どのように気づくかが大事だと強調した。

 「まず腰痛で気づくことが大事です。腰痛の原因となる疾患は背骨と内臓が考えられますが、動いたときに痛いのは背骨、寝ていても痛い場合は内臓と考えられます。

骨粗鬆症の推定患者数は1280万人といわれますが、沈黙の疾患といわれ、背骨の骨折でも痛みがあるのは3分の1で、残りは気づきません」

 痛み以外で家族に気をつけてほしいのは身長の変化だ。2センチ以上縮むと背骨骨折の危険度が高くなる。

 「1回背骨を骨折すると連鎖します。椎体骨折は4倍のリスク。75歳以上は大腿骨頸部骨折につながります。75歳から急に増え、生命にもかかわってきます。アメリカでは骨折を予防することで、死亡率が低下したことが証明されています」

 2010年の統計では、要介護者の10%が骨折が原因で、脳血管疾患21%、認知症15%となっている。

 女性で大腿骨骨折をするのは80歳代は100人に1人、80歳後半は50人に1人、それ以上は30人に1人といわれ、総計14万5000人に上る。

 「12年では19万人に達しているでしょう。いま50歳の女性の20人に1人が将来、大腿骨骨折を起こすとみられ、10-15%が寝たきりになります」

 こうした人たちの介護を担うのは同居家族であり、特に40代から60代の女性が約7割だ。時間的な負担では寝たきりになれば半数はほぼ終日介護に費やしている。介護者の悩みやストレスは計り知れない。

 この講演ではわが身に思い当たることばかりだった。少し数字は古いが、同世代の親を持つ人には参考になる話なので続けてリポートする。=次回に続く

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】日本整形外科学会記者説明会(下) 「骨粗鬆症マネージャー」制度で医師との橋渡し

日本整形外科学会記者説明会の続き。同学会理事長の丸毛啓史(まるも・けいし)東京慈恵会医科大学附属病院長は、国民の健康増進のために国が定めた基本方針「健康日本21」(第2次)に、運動器に関する具体的な目標として、ロコモの認知度を2012年の約17%から22年には80%に引き上げるなどを掲げた背景を説明。超高齢社会の日本で、健康寿命延伸と持続可能な社会保障制度のために、ロコモ対策が必要とした。

 丸毛理事長は、「ロコモは治療でき、予防できる」と強調した。その例として、骨粗鬆(こつそしょう)症を挙げた。放置すると、脊椎圧迫骨折から大腿(だいたい)骨近位部骨折を引き起こし、要介護、寝たきりとなる危険がある。

同学会が3000人に、65歳以上で骨折した家族の有無などを聞くと、骨折ありが292人に上り、うち62人が歩行不能になったという。

 また、最初の脊椎圧迫骨折を放置すると、4人に1人は1年以内に別の部位を骨折するドミノ倒し現象(骨折の連鎖)も指摘された。骨粗鬆症は適切な治療によって7割近くの骨折が防げるというが、骨粗鬆症の治療を受けているのは女性で5%、男性1%に過ぎないというデータもある。

骨粗鬆症検診の受診率は低く、1度骨折した後の治療率も20%未満で、2次骨折防止は不十分という実態がある。そこで昨年から、骨粗鬆症患者を見つけ、医師との橋渡しをする「骨粗鬆症マネージャー」の資格認定制度(日本骨粗鬆症学会)が始まった。

 変形性脊椎症などの慢性的な腰痛を放置しておくと、やはりロコモの危険性がある。だが、約6割の人が医療機関を受診しないというデータもある。この受診率を上げるのも課題だ。

 最近、話題になるサルコペニア(筋肉減少)についても、「筋肉の減少より筋力の減少のほうがもっと大きいことが分かってきた。それも適切なトレーニングと治療で増強は可能」とした。

 これらを受けて、日本整形外科学会のロコモ対策は、07年「ロコモ」提唱、10年ロコモチャレンジ!推進協議会設立、11年ロコモアドバイスドクター制度開始、12年健康日本21(第2次)目標項目に決定、13年ロコモ度テスト発表、14年ロコモメイト/ロコモコールプログラム開始、15年ロコモ度判定法公表-と進んできた。

 自分のロコモ度は片脚立ちなど簡単なロコモ度テストで知ることができる。そして、どこでもいつでもでき継続できるロコモーショントレーニング(ロコトレ)で改善できるので、同学会のホームページなどでやり方を確認してほしい。

また、特に中高年女性には、自治体が実施する骨粗鬆症検診を受けることをおすすめしたい。 (木村進) =おわり

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

4700万人が苦しんでいるという“ロコモ”を克服した85歳医師

ロコモティブシンドローム、通称“ロコモ”と呼ばれる言葉をご存じだろうか?

和名は運動器症候群。現在全国で4700万人の人が苦しんでいるという。中高年の人が加齢とともに、日常生活で大きな支障となっているのがこの足腰のトラブル。

実は日本でも骨、関節などの運動器の障害が年々深刻化しているのが実情。このロコモの3大要因として取り上げられているのが、関節症、骨粗しょう症、そして“脊柱管狭窄”である。

中高年の腰痛や足のしびれの多くはほとんどがこれなのだ。軽いうちは、さほど気にも留めず、見過ごしてしまうことも多いのだが、悪化すると歩けなくなったり、最悪の場合は寝たきり状態にもつながる厄介でつらい症状なのだ。

 脊椎管狭窄や腰椎のすべりの治療法は、手術で狭まった脊椎管を削って広げたり、腰椎のずれを元に戻す方法などがあるが、いずれもからだにかかる負担が大きいのが難点。

そこでこの度、にわかに注目を浴びたのがスイカの果汁に豊富に含まれている“シトルリン”という日本で発見された機能成分。

この成分はアミノ酸の一種で、軟骨によいとよく聞くグルコサミンやコンドロイチンなどの成分とは違い、血管を拡張して血液の流れをよくし、抗酸化作用によって免疫効果を高めるといわれる。医薬品の認可を受けたのち食品として認められた新成分だ。

シトルリンは、炎症ケア成分として話題の「非変性II型コラーゲン」や神経系のケアとして神経細胞を修復する働きをもつ「ビタミンB12」や骨量増加をサポートする「卵黄ペプチド」などと複合することによって、昨日パワーがアップし、ジンジンするしびれや痛みに大きな効果を発揮するということがわかった。

85歳になった現在も医師としてバリバリ活躍している桑原康隆先生は、2年前から脊椎管狭窄の症状に悩まされたひとりだが、こう語る。

「飲み始めて半年以上ですが、右足のしびれがあまり気にならなくなったことに驚きますね。

医療とサプリメントは違うものですが、上手に使えば非常によい働きをするということがわかりますね。毎日愛用しています。患者さんからも元気な先生、引退しないで頑張って、といわれています」

加藤茶もなった!パーキンソン症候群って一体何?

先日、加藤茶さんがパーキンソン症候群であったとカミングアウトされ、話題になりましたね。

パーキンソン病という名前はよく耳にするかと思いますが、実際どんな病気なのか、その原因や改善方法について医師に解説していただきました。

■ パーキンソン病ってどんな病気?
パーキンソン病は、脳が出す運動の指令が筋肉にうまく伝わらず、なめらかな動作ができなくなってしまう病気です。
これは、脳の黒質という部分の神経細胞が減ってしまうのが原因です。

この神経細胞は「ドパミン」という神経伝達物質を作り、「ドパミン」を使って体を動かす機能を調節する働きをしています。
黒質の神経細胞が減るとドパミンも減ってしまうために運動の情報が伝わらず、様々な症状が出てきます。

原因
薬剤性:飲んでいるお薬が原因です。
胃薬、降圧剤、抗不安薬などが原因薬剤になり、飲みはじめてから数ヵ月程度であらわれることが多いようです。薬剤性パーキンソン症候群は、原因薬剤を中止することで消失します。

脳血管障害性:動脈硬化により脳の基底核(運動を司る神経がたくさん集まっている場所)小さな血管が詰まることが原因です。その他:脳炎などの感染症の後遺症、ケガや中毒で起こります。

■ 手足の震えや動きの低下……気になる症状は?
震戦:手や足の震え
最初に気づくことが多い症状で、体の左右のどちらか片側でより強い症状があらわれます。
この震えは何もしていないときに目立ち、何かしようとすると止まるので、患者さんご自身はあまり不便を感じません。

筋個縮:筋肉がこわばる
患者さんの手首を持ってゆっくりと前後に動かすと、歯車のようなカクカクとした抵抗感があります。
患者さんご自身が日常生活で気づくことはほとんどありませんが、病気が進むと動作がぎこちなくなったり、歩くときに腕の振りが悪く足が引きずり気味になったりします。

無動:動きが遅くなったり、少なくなったりする
速く歩けない、寝返りが打てないなどの症状があります。
また、顔の動きが少なくなるために、表情が乏しくなります。

姿勢反射障害:バランスがとりづらくなる
バランスをとろうとして、膝をまげて、少し前かがみになった姿勢になります。
転びやすくなったり、歩いているうちに前のめりで小走りになってしまうこともあります。

【医師からのアドバイス】
薬剤性パーキンソン症候群は原因薬剤を中止することで改善します。また、脳血管障害性、感染症、ケガや中毒などが原因の場合はリハビリテーションが有用です。

加藤さんのように原因の薬剤をやめた途端、劇的に改善する可能性もありますので、当てはまる症状がおありの場合は神経内科医にご相談ください。

あなたも予備軍かも!? メタボより怖い「ロコモ度」診断テスト

みなさんは”ロコモティブシンドローム(ロコモ)”をご存じですか? 特にニュースなどでも頻繁に耳にするようになった言葉です。

過去記事で「運動不足によって起こる恐ろしい“機能障害の予防法”4つ」でもお伝えしたように、メタボの次に自己認識を持って欲しい、日常で起きる機能障害症状のことです。

ロコモの認知率向上を目標に含む厚生労働省”健康日本 21(第 2 次)”が本年 4 月よりスタートし、日本整形外科学会から「ロコモ度テスト」が発表されました。

今回は、すぐにできるロコモ度診断をご紹介します。高齢者だけの症状ではないと自覚して、ぜひトライしてみてください。

■ロコモ度テストとは

「ロコモ度テスト」は以下の 3 つのテストで成り立っています。

(1)下肢筋力判定方法:立ち上がりテスト

下肢筋力の強さを判定するため、片脚もしくは両脚で自分の体重を持ちあげることができるかをチェックします。

(2)歩幅判定方法:2 ステップテスト

歩幅と歩行速度に密接に関係しているので、歩幅の減少は歩行速度の低下を意味します。できるだけ大きく2歩進んだ歩幅を身長で割った値を算出し、この値が世代平均値より低下している場合は、年齢相応の歩行能力が保たれていない可能性が高いといえます。

(3)身体状態・生活状況判定方法

体の痛みや動かしにくさや、生活への積極性をチェックし、現在ロコモ予備軍であるかどうかを判定します。

■すぐにできる簡単な対策法

ロコモ予備軍にならないための簡単な対策法をお伝えします。膝を屈伸させる簡単なスクワットや、片脚立ちなど、わざわざ運動の時間をとらずにできるストレッチ的な要素を取り入れてみましょう。

机に向かって座り続けたら1時間に1分ほど休憩するというのは、これまで『美レンジャー』でもお伝えしてきたアンチエイジング方法のひとつです。休憩の際に少し大股で室内を歩いたり、大きく体を動かす癖をつけると、体の柔軟性を高め身体活動量の向上につながります。

寝たきりになってしまう心配の多い高齢者だけでなく、若いうちからロコモ予備軍にならないことを意識して、ますます健康美人になってくださいね。

【メタボより怖いロコモ】ひざ関節と筋肉に効く成分摂取で速く歩けた

速く歩くことが健康寿命の維持に密接な関係があるという京大大学院の森谷敏夫教授の講演に続き、サントリー健康科学研究所の神崎範之研究員の発表である。

 足の健康が気になる50-79歳の男女60人に「最近半年以内に感じた足の症状・状態」を聞いたところ、「実に6割近くが昔より歩くのが遅くなったと感じると答えました」。

「ひざ関節が痛い」約4割、「片足立ちで靴下がはけない」約2割など。「信号がチカチカしても急げなくなった」との声もあった。

 歩行速度の低下は、ひざ関節の痛みと筋肉の衰え、つまり足の老化が原因。対策としては、ひざ関節の軟骨と筋肉に役立つ栄養・成分の補給と筋力トレーニングが考えられる。ここでは、ひざ関節と筋肉の双方に役立つ成分を同時に摂取するという新発想を検証した。

 ひざ関節に有効なのは、おなじみのグルコサミン、コンドロイチン、II型コラーゲン。筋肉は、カツオ、マグロに含まれる筋肉材料のイミダゾールペプチド、抗酸化力の強いケルセチン、筋タンパク合成を促進するビタミンDだ。

 ひざ関節に痛みを感じ、歩行速度の低下が顕在化した40-74歳の男女100人を、軟骨・筋肉に役立つ成分の食品摂取群とそれらを含まない食品摂取群に分け、16週間、ひざ関節症状と歩行速度など運動機能を調べた。

その中で特にひざ関節の痛みが強い48人について解析した結果、ひざ関節についてははっきりと改善がみられた。

 運動機能については、いすに座ってひざを伸ばすときの力を測定すると、8週以降に筋力増強がみられた。体重60キロの場合、有効成分を摂取しない人より筋力が3・51キロ強くなった。

座った状態で2リットルのペットボトルを1・8本分押し上げる筋力がついたという。

 歩行速度も、10メートルを普段の速度で歩いてもらい真ん中の6メートルの速度を計測すると、8週以降で明らかにアップした。

有効成分を摂取しない人と比べ、100メートル当たり3・6秒早く、1分当たり3・9メートル多く歩けるようになった。東京・渋谷のスクランブル交差点の横断歩道(約140メートル)を5・1秒早く渡れるという。

 軟骨と筋肉の双方に有効な成分を摂取するという新発想は、劇的な効果をみせたのだ。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】衝撃のデータ 1日中座っている人は死亡リスク1・5倍

ただ歩けるだけでなく、速く歩けることが健康寿命と密接な関係があることを、アメリカの最新データで明らかにした。。

森谷敏夫京都大学大学院教授(人間・環境学研究科応用生理学研究室)。「ロコモの現状」という講演を続けてリポートする。

 「なぜ歩くスピードが生存率を決定するか分かりますか」と森谷教授。

 歩くためにはエネルギーが必要だ。下半身の筋肉に心臓から血液を送らなければならない。歩くための筋肉を「第2の心臓」と呼ぶのは、歩けばそれだけの血液を心臓に戻すから。従って速く歩く人ほど、心臓を使い鍛えていることになる。

 「歩行スピードが落ちると、心臓に戻る血液は少なくなるから、それだけ心臓も弱るわけです。そうした負のスパイラルに陥らないために、足を鍛えることが大事です」

 年齢とともに筋肉が衰えるのは、多くの人は「老化現象」という。

 「でも、半分くらいは『不活動性萎縮』といって、使わないから退化するんですよ。使い続ければ70-80歳になっても筋肉は維持できるんです」

 そこで森谷教授が指摘したのは、日本人のエネルギー摂取量の平均値が減り続けており、今は1846キロカロリーと、終戦直後より低いレベルまで下がっていること。

それなのに、日本人男性の肥満度をみると、BMI(体重キロ÷身長メートル×身長メートル)指数25以上の人の割合が40代、50代は約35%、30代、60代でも約30%が肥満レベルなのだ。

「飽食の時代なんてとんでもない。それなのになぜ、太っているのか。動かないからです。1日中座ってばかりいるから」

 ここで、森谷教授は再び衝撃のデータを明らかにした。カナダ人の18-90歳の約1万7000人の座っている時間と死亡率を平均12年間追跡調査したものだ。ほとんど1日中座っている人は、死亡リスクが1・54倍高いという結果が出た。

 「軽中度の運動をすすめるのは当たり前で、長時間座っていることのリスクに警鐘を鳴らすべきです」

 森谷教授は高血圧も糖尿病もほとんどすべての病気は運動しないことから起きるという。

 「糖尿病は筋肉の病気ですよ。筋肉で運動すると糖代謝できるのに、運動しないから代謝できなくて糖尿病になる。遺伝や糖質の取りすぎのせいじゃありません。

糖は脳の唯一のエネルギー源ですから糖質を制限して糖尿病を治すなんて本末転倒です。運動をすれば、血圧も正常化しますし、最新の脳研究の成果では、70歳でも運動すれば脳の海馬の容積が増えるというデータがあります。鬱病や認知症の予防にもつながりますよ」

 森谷教授は速く歩くことを維持することが、健康寿命を延ばす重要なロコモ対策になると結論づけた。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】歩く速度が落ちると死が近づく? 衝撃の研究データ

人間歩けなくなったらおしまい-とは、よくいわれる。だが、ただ歩けるだけではだめで、速く歩けなければいけない。

 6月に東京・丸の内で開かれた「第16回サントリー健康セミナー2013年」で、「ロコモの現状」と題して講演した森谷敏夫京都大学大学院教授(人間・環境学研究科応用生理学研究室)によると、歩行速度と健康寿命には密接な関係がある。

 森谷教授は、まずロコモの現状について説明した。2012年の要介護認定者数533万人(前年比105%)、要介護となる要因で、脳卒中(22%)認知症(15%)と並び骨折・転倒(10%)関節疾患(11%)を合わせた運動器障害=ロコモが、クローズアップされてきた。

 国も手をこまねいているわけではなく、現在17・3%しかないロコモ認知度を、近い将来に80%まで高めようとしている。そして、対策として「身体活動指針(アクティブガイド)」を発表して65歳以上を対象に毎日40分の身体活動を奨励している。

 果たして皆さんはそれだけ体を動かしているだろうか。「もし動かさないと、30歳から人間の筋肉は1年に1%ずつ落ちていく。そうして70歳になると40%の筋肉はなくなるということです」と、森谷教授は警告する。

 NASA(米航空宇宙局)の宇宙飛行士は無重力空間で生活すると、1日で1年分、2週間で15%の筋肉を失うという。

 「その上、男性も女性も骨粗鬆症になって帰ってきます。骨粗鬆症になりやすい閉経した女性の10-15年分のカルシウムが2週間で抜けてしまいます。無重力で筋肉に負担をかけない生活により、ロコモになってしまう」

 つまり、ロコモを防ぐためには、関節・筋肉・骨によい栄養を取ることだけではなく、筋肉を維持する運動をしっかり行うことが非常に大事だ。

 衝撃的だったのはここからだ。

 「最近、歩く速度が遅くなったと感じることはありませんか。アメリカの研究データでは、そう感じたら死期が迫ってきたという結果がはっきりと出ています」

 2011年に65歳以上の約3万4000人を6-21年間追跡した。その結果1万7000人以上が亡くなっているが、その歩行速度が記録されている。

そのデータによると、たとえば、75歳で速く歩けた人(1・6メートル/秒)の10年後の生存率は男性で87%、女性で91%、ゆっくりしか歩けなかった人(0・2メートル/秒)は10年後は男性で19%、女性で35%と、明らかな差が出たのである。速く歩けなければ死期は早いという結果だ。

 森谷教授は、自らの足の筋肉を見せながら「62歳の京大教授でも鍛えれば速く歩けますよ」と笑い、運動によって健康寿命を延ばす重要性を強調した。 =次回に続く (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】介護負担のカギを握る「服薬」 月1回の服用で骨折を予防

ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

 なぜ、先進国の中で日本だけ、高齢者の骨折が増え続けているのか。

88歳の母が骨折して以来、疑問に思っていたが、前2回でリポートした藤田保健衛生大学医学部の田中郁子講師の「骨粗鬆(こつそしょう)症治療の現状と対策」(主催・アステラス製薬)という講演で納得できた。

田中講師は名古屋膠原(こうげん)病リウマチ痛風クリニックで骨粗鬆症の治療に当たっている。

 明らかにされたのは、全国の自治体で行う骨粗鬆検診の受診率が、全国平均5%と低いこと。これでは1280万人いると推定されている骨粗鬆患者を治療の対象としてとらえにくい。

 ■月1回の服用で

 骨折が減った諸外国で顕著なのは、治療に効果的なビスフォスフォネート製剤の使用量の増加だ。

しかし、服用が継続されにくかった。ところが、月に1回の服用でいい薬剤が投入された。田中講師は、検診の受診を広め、薬剤を効果的に使う仕組みを整え、寝たきり大国を返上しようと訴えた。

 治療に効果的な薬剤があっても、服用が継続しないわけを、共同講演者の上原喜光・全国介護者支援協議会会長が、介護者の視点から話した。高齢者の介護にはさまざまな負担がのしかかるが、最大のものは服薬の問題だと指摘する。

 「服薬に1時間もかかります。高齢者は飲み込みができないので水で飲ませますが、3錠も服用すると、おなかがいっぱいになってもう飲まないとなり、少し頭の働く人だと飲んだふりして隠してしまう。ですから月1回の服用でいい薬は大変助かります」

 ■予防の心構えを

 骨折の中で寝たきりになるなど、最も影響の大きい大腿(だいたい)骨骨折についてもこう述べた。

 「大腿骨骨折では認知症の方が多いですね。動き回るからです。日本の住宅にも問題があります。私の母は畳のへりでつまずいて転び、寝たきりになり、亡くなりました。多くの人が骨折から1年以内でなくなります。これからは在宅で介護が前提ですが、まだまだ難しい問題があります」

 そしてこう訴えた。

 「これは大変な病気なのです。親の身体が小さくなったと感じたら、介護が始まると考えてください。その段階で検診を受け薬を飲み始めたら、骨折が予防でき、介護する人の人生もバラ色になるのではないでしょうか」

 わが身に振り返っていちいち納得の話だった。

【メタボより怖いロコモ】「骨粗鬆症」検診、低すぎる受診率 全国平均は約5%

田中郁子・藤田保健衛生大学講師(名古屋膠原病リウマチ痛風クリニック)の講演続報である。

 「わが国では寝たきりになる恐れのある大腿(だいたい)骨頸部骨折が増え続けています。骨折したら手術・入院費が140万-180万円かかり、介護費が年間242万円かかるという計算があります。

背骨の骨折ですと入院治療費は77万円。マスでとらえると、2012年は約19万人の患者で手術・入院費が3400億円ほど、介護費が4600億円ほどでしたが、2030年には約30万人で手術・入院費5400億円、介護費7200億円と想定されます。十分な対処をしなければ国の公的医療保険制度の破綻は目に見えています」

 問題は骨粗鬆(こつそしょう)症検診の受診率の低さだ。この検診は健康増進法にもとづき市町村が実施、40歳から5歳ごとに女性対象に行う。

 「受診率はすべての年齢にわたって5%を切っています。全国平均は約5%で東京は平均値。大分、山梨が14%でトップです。これでは予防にはつながりません」

 検診率の高い都道府県では要介護率が低くなる傾向がある。田中講師は骨粗鬆症の治療の現状にも触れた。

 「欧米では大腿骨近位部骨折の患者が減っています。それと比例しているのはビスフォスフォネート製剤の使用量の増加です。これがカギになっていると考えられます」

 カナダでは、一定の条件を満たした人にビスフォスフォネート製剤を無料提供。アメリカでは一定の条件の人に無料で検診を受診させるなど積極的だ。日本ではなぜ骨折が増え続けているのか。

 「2年間で59%改善されたという骨折を予防できる薬剤があるのに、継続されないのが問題です。ビスフォスフォネート製剤は早朝空腹時に180ミリリットルの水で服用するという少し飲みにくい薬剤でした。服用頻度を少なくするよう改善されたのが月1回の服用でいいビスフォスフォネート製剤です。これは、服用する本人にもいいし、介護者にもいい薬です。

服薬が面倒でやめてしまう人の7割が月1回製剤だったら飲んでみたいと言っています。これを活用することで、骨折予防に寄与できると思います」

 そのうえで、田中講師はこう締めくくった。

 「骨粗鬆症は老化の問題ではなく、治療すべき疾患だということを改めて認識していただきたい。医者だけでなくコメディカル(薬剤師や栄養士ら)が協力して骨粗鬆症に取り組み、骨粗鬆症検診を広め、月1回製剤による骨折予防を行い、日本の寝たきり大国化を防ぎたいですね」(木村進)

 【ビスフォスフォネート製剤】強い骨吸収抑制作用を有し骨量増加効果、骨折抑制効果があり、骨粗鬆症治療の中心的薬剤。服用しにくいという問題があっため、週1回→月1回服用製剤が開発された。

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

あなたのロコモ度は? 要介護の主原因、整形外科学会がテスト作成

■将来のリスク知り予防に生かそう

 寝たきりや要介護の主要な原因である「ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)」。日本整形外科学会は、将来ロコモになる可能性を判定する「ロコモ度テスト」を作った。若い世代にもロコモ予防の大切さを呼び掛けるのが狙いだ。あなたのロコモ度は?(平沢裕子)

 ◆健康寿命に影響

 ロコモは、骨や関節、筋肉などの機能が低下する「運動器の障害」によって歩行や日常生活に何らかの支障がある状態のこと。平成19年、同学会が提唱した概念。同学会は22年に予防・啓発のため、推進協議会を設立した。ロコモの認知向上は今年4月から開始した厚生労働省の「健康日本21(第2次)」の目標項目にも選ばれている。

 運動器の働きが大事なのは、運動器に支障があると健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)に大きく影響するためだ。日本人の平均寿命と健康寿命の差は男性が約9年、女性が約12年。晩年の約10年を自立できない状態で過ごしている人が多いのが現状だ。

 同学会はこれまで、「7つのロコチェック」によってロコモ予防を呼び掛けてきた。新たな「ロコモ度テスト」について、同学会理事長で九州大学大学院外科学講座の岩本幸英教授は「ロコチェックはロコモかどうか気づいてもらうためのテスト。既にロコモの人では予防が難しい。運動機能の低下は20~30代から始まっている。より早い段階で将来のロコモリスクが分かれば、生活習慣の見直しなどで効果的なロコモ予防ができる」と説明する。

 ◆年相応かチェック

 テストは、脚力や歩幅の測定と日常生活について25項目の質問に答える「ロコモ25」(https://locomo-joa.jp)でできる。

 脚力を測る「立ち上がりテスト」は、高さ10~40センチの台に座り、片脚や両脚で立ち上がれる台の高さを測る。低いほどよく、20代男性では20センチの台から立ち上がれるかが目安。

 歩幅を測る「2ステップテスト」は、2歩分の歩幅を身長で割った値を調べる。例えば、身長175センチの人で2歩幅が285センチの場合、2ステップ値は1・63。30代では標準、40代では標準以上だが、20代では標準以下となる。「歩行速度が遅くなると寝たきりのリスクが上がる。年齢相応の歩幅を維持しているかは大事なポイント」(伊奈病院整形外科・石橋英明部長)

 それぞれの結果を年齢層別の目安と比較し、一つでも達成していないと将来ロコモになる可能性が高いという。

 同学会は、ロコモ予防のために片脚立ち(左右1分間ずつ、1日3回)とスクワット(5~6回を1日3回)を推奨してきた。今回はこれに、カーフレイズ(両脚で立った状態でかかとを上げ下げする)とフロントランジ(両脚で立った状態から片脚を大きく前に踏み出し、太ももが水平になるくらいに腰を下げた後、踏み出した脚を元に戻す)の運動を追加。いずれも下半身に筋肉を付ける運動で、カーフレイズは10~20回、フロントランジは5~10回、ともに1日2~3回が目安だ。

 岩本教授は「ロコモにならないよう、暮らしの中で運動を習慣付けてほしい」と呼び掛けている。

 【7つのロコチェック】

 (1)家の中でつまずいたり滑ったりする

 (2)階段を上るのに手すりが必要

 (3)15分続けて歩けない

 (4)横断歩道を青信号で渡りきれない

 (5)片脚立ちで靴下がはけない

 (6)2キロ程度の買い物を持ち帰るのが困難

 (7)布団の上げ下ろしなどが困難

  ※一つでも当てはまるとロコモの可能性がある

メタボより怖いロコモ】ドミノ骨折の前兆はあった…でもホームへの入居は拒否

腰椎の圧迫骨折→大腿(だいたい)骨頸部骨折と骨折が連鎖して起きるのがドミノ骨折だ。

それも1年以内が34%という=グラフ。母の場合もそうだった。分かっていれば、備えることができたかもしれない。参考までに、どんな状況だったかを書かせてもらう。

 ドミノ骨折の引き金となる前兆が、4月の腰椎圧迫骨折から半年の10月に起きた。母から「顔の皮膚がただれて恥ずかしいのでデイサービスを休む」との電話があった。

 デイサービスでお世話になっている介護施設から少し前に介護を受ける人から皮膚の伝染病が出たと連絡があったので「それかな」と思い、近くの皮膚科医院に連れていった。医師は母を見るなり、「これは皮膚病ではない。打撲ですよ」と言った。

 確かによく見ると、顔のただれというのは、何かにぶつけてできた青あざである。そんなことも分からないのかという不審な目を向けられた。家庭内暴力か老人虐待を疑われたのかもしれない。ほうほうのていで私の家に母を連れ帰った。

「いったいどうしたの。どこかで転んだんじゃないの?」と聞くが、まったく覚えがないという。着ているものを脱がしてみると、青あざは腕にもついていた。

 今度は整形外科に行った。レントゲンを撮った結果、骨は折れていないという。痛み止めと湿布で治すとも。

 これを主治医の精神科医に話すと、「もう施設に入れたほうがいいかもしれない」とすすめられた。他人の目がないと危ないというのである。それにグループホームなどで生活をすると驚くほど認知症が改善されることもあるという。

 施設介護となると、特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームなどが候補。特養は料金は安いが入居希望者が列をなし、要介護2の母ではとても入れない。有料老人ホームは数百万円の一時金が必要なところが多いのでハードルが高い。渋る母をせきたてて近くのグループホームを見学に行った。

 施設を案内されて、最後に居住区画に入ると、入居者全員参加で食事を作っていた。参加せず、じっと座っているおじいさんもいた。母は他人ごとのように無関心な様子。

 料金は月額約20万円だった。かなり厳しいが、母の年金に私が足りない分を出せば何とかなりそうな金額である。

ところが、母は「あんなところに行かない。まだ1人でやっていけるから」と、かたくなであった。気ままな1人暮らしがいいという。説得しきれずにいるうちに、運命の12月を迎えた。自宅で転倒し、大腿骨を折ったのだ。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】ロコモが引き起す骨折、日本では増加の一途

4回にわたり日本整形外科学会主催の帝京大・松下隆教授の講演を詳報した。

日本が超高齢社会に突入し、高齢者が要介護になる最大の要因となったロコモにいかに対処するかが命題。特にロコモによって引き起こされる骨折が、西欧では減っているのに日本では増加の一途=グラフ。

 しかも、骨折はドミノ倒しのように連鎖して起きるから、骨折者を集中してケアすれば、介護に結びつく重大な骨折は防げるかもしれない。早急に医者だけでなく他職種の医療連携により、ドミノ骨折を防ぐ態勢づくりが急務ということだった。

 ここで本連載の冒頭で紹介した私の母のケースに立ち戻る。講演で分かったのだが、典型的なドミノ骨折だったからだ。

 2011年4月11日、1人暮らしをしている母から電話があった。腰が痛くて起き上がれないと言うのである。

 「医者に連れて行って」

 正直、「またか」という思いであった。ささいな身体の変調を訴える同様の電話がよくあったからだ。中でも頻繁だったのは、「ウオノメが痛くて歩けない」。

 だが、「医者の態度が気に入らない」と言っては治療に行かなくなった。医者の言うことが理解できずに逆ギレするパターンがほとんど。膝が痛いとかかった別の整形外科では、「変形性膝関節症」と診断されたが、やはりケンカして帰ってきた。

 さて、今度は腰痛である。これも私は最初「よくあることでトシだから仕方がない」と思った。しばらく市販の湿布を貼って様子を見るように言った。だが、数日たっても一向によくならない。念のため整形外科を受診することにした。

 レントゲンを見た医師が「腰椎の圧迫骨折ですね」と言うので、ビックリした。

確かに、だるま落としのように縦に連なっている腰椎の1つがつぶれてひしゃげているように見える。かろうじて歩くことはできるのだが、これもりっぱな骨折だという。骨を強くする薬を服用することと腰に負担のかかることは避けるように言われた。

 医師のすすめで自宅にベッドを入れることにした。ふとんの上げ下ろしが負担になるというのである。

母は要支援2で介護保険のお世話になっており、デイサービスにも通う。ケアマネジャーに相談すると介護保険を適用して介護器具をレンタルする業者からリースで借りられると言う。

 1週間後にベッドが部屋に入ったが、病院でも使う高級な介護用ベッドだった。費用は月1090円。3カ月ほどで腰の痛みもなくなり、母は普通の生活に戻った。

 だが、実は腰椎の圧迫骨折をやった人のかなりの割合で1年以内に別の骨折をするという。これがドミノ骨折だ。当時はまったくそんな知識はなかった。今思えば残念でならない。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】関節リウマチ治療の実態(5) 「日常生活に支障」日本は少なく

ロコモの原因疾患の1つである関節リウマチ(RA)についてのファイザー主催のセミナーで、世界8カ国の患者を対象にした治療実態調査を、松原メイフラワー病院(兵庫県加東市)の松原司院長が紹介した。

 米国、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、日本、ドイツ、トルコの約2700人を対象に昨年、治療に対する患者の理解などを調べたもの。日本人は354人で男性32%、女性68%。平均年齢は55・4歳。被雇用者は57%、専業主婦29%などとなっている。

RA診断時の平均年齢は45・1歳、発症からの平均年数は10・3年など。治療に使用している処方薬では、日本人は生物学的製剤が21%で、米国の23%に次いで高い数字だった(全体の平均は17%)。

 関節リウマチによって日常生活に支障があるか調べると、全体では約半数の人が何らかの支障があるとした。日本では支障があると答えた人が25%だったのは、世界平均から見て特出した数字。

 「非常にいい数字ですが、対象が若かったためかもしれないし、生物学的製剤によって状態のいい人が増えているのも事実でしょう」

 生活への影響として「特定の活動に参加しなくなった」は日本でも31%(全体は46%)あり、「仕事を変更した」は25%(同27%)、「仕事から引退」は10%(同14%)、「仕事を辞めた」は6%(同9%)となっている。これも、生物学的製剤が使われるようになったここ十数年でよくなっているという。

かつては、欧米でも関節リウマチにかかってから5年で30%、10年で50%という高い離職率だったという。

それでも、関節リウマチで心配していることを聞くと、QOL(生活の質)に対する悪影響(45%)、関節の損害の可能性(43%)、病気の悪化(37%)、自立した生活への影響(36%)、身体障害の可能性(30%)と、かなり不安を抱えながら暮らしている。

 松原院長は、日本全国の患者約9500人に調査した別のデータを紹介し、「知りたい情報としては、薬がどのような効果を持ち、副作用はないのかということが一般的。生物学的製剤は高価なものですから費用はどれくらいか、どれぐらいの期間使うのかも知りたい情報として大きくなっています。

意外だったのは、薬の効果が途中で効かなくなることを非常に心配していること。生物学的製剤を使っている人の方が失望率は高いことです」と話した。

 高価な治療なので、経済性にまつわる心配が強いことを考慮していきたいとした。次回に続く。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】関節リウマチ治療の実態(4) 新薬導入で寛解率上昇

ロコモの原因疾患の1つである関節リウマチ。世界8カ国の患者の治療実態調査を踏まえた、

ファイザー主催セミナーの詳報を続ける。松原メイフラワー病院(兵庫県加東市)の松原司院長は最近、関節リウマチの治療の目標として、「寛解」と「低疾患活動性」が浮上してきたという。

 つまり、治癒ではないが、炎症が止まり痛みがなくなり、関節破壊が日常的に起こらず、日常動作や身体機能が障害されない状態である寛解、低疾患活動性にむけて効果的な治療を行う。

そのためには1~3カ月ごとに定期的に疾患活動性を評価して、適正な治療が行われているかどうか見直すことにより、常に目標に向けた治療を行うことが大事だという。

 こうした治療は2003年くらいから治療に投入された生物学的製剤によって可能になった。

 「現在8剤あり、いずれも高価なものですが、効果もはっきりしており、治療に必要です。私の病院では治験も含めて500人近い患者が生物学的製剤を使っております。

その薬が導入されてからこの10年間で、明らかに寛解率は上がっており、手術件数が減っています。治療成績の向上により、手術に至らない症例が多くなったのです」

 ここで、松原院長は、「8カ国のRA(関節リウマチ)患者を対象とした調査」について触れた。

調査は米国、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、日本、ドイツ、トルコの約2700人を対象に昨年行ったオンライン調査で、治療に対する患者の理解などを調べた。

 日本人は354人で男性32%、女性68%。平均年齢は55・4歳。被雇用者は57%、専業主婦29%などとなっている。RA診断時の平均年齢は45・1歳、発症からの平均年数は10・3年など。

 治療に使用している処方薬では、日本人は生物学的製剤が21%で、米国の23%に次いで高い数字だ。全体の平均は17%くらい。前々回に紹介した患者会「日本リウマチ友の会」の会員では40%くらいになっているという。

日本では専門医を中心に積極的に使われていることがわかる。

 日常生活の動作でどの程度の実行能力があるのか問う調査では、介助なしに日常生活動作をすべて行うことができる=75%(世界平均53%)、介助なしに日常生活動作のほとんどを行えるが、掃除・買い物など負担のかかる動作に

ある程度の介助が必要=19%(同36%)、ほとんどの日常生活動作にある程度の介助が必要=5%(同9%)、日常生活動作のすべてに常時介助が必要=1%(同2%)だった。

 「すこし若い人が対象ということもあってか、このアンケートは非常にいいデータです。生物学的製剤によって治療の効果が上がっていることも事実でしょう」と松原院長は述べた。 =次回に続く (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】関節リウマチ治療の実態(3) 治癒から初期治療、寛解へ転換

ロコモの原因疾患の1つ、関節リウマチ。世界8カ国の患者の治療実態調査を踏まえた、ファイザー主催のセミナーがあり、松原メイフラワー病院(兵庫県加東市)の松原司院長が「治療の進歩と課題」という講演を行った。

 松原院長はリウマチの歴史から語り始めた。リウマチの語源はギリシャ語の「リウマ(流れ)」で、古代ギリシャでは「悪い液体」が流れて関節が痛むと考えられたという。

リウマチの病気としての歴史は古く、紀元前5世紀のヒポクラテスが、手指と足部に始まった関節炎が次第にひじ・ひざ、股関節に進展した35歳の男性について記述している。

 「それが痛風かリウマチかは分からないのですが、紀元前から朝のこわばりと変形をともなう関節炎について記載がありました」

 1800年代になって痛風と違う病気と認識され、1858年に「流れるような関節炎」ということで「Rheumatoid Arthritis=RA」と名づけられた。

 「それから1世紀半たって、治療はかなり進歩してきましたが、原因などはまだ分からない状態なのです」

 関節リウマチはどういう病態かというと、関節の内部の滑膜に炎症を起こし、軟骨が破壊され、関節に大きな変形を起こしていく。

かつては5~10年かけて関節破壊が進むと考えられたが、診断法が進歩するにつれて、発症2年以内の早期から関節破壊は起きていることが分かってきた。

「早期から的確に診断して的確に治療する必要があることが明らかになったのです」

 この早期の状態を「Window of Opportunity」(治療機会の窓)と呼び、この時期に関節リウマチを抑制すれば関節破壊の進行を少なくしたり止められると考えられるようになったという。

初期治療によって重度の身体機能低下、骨破壊、就労不能、生命予後の低下など、進行期や末期の患者をつくらないことに治療の方向性が変わった。

 そこで治療のゴールとしてクローズアップされてきたのが「寛解」である。寛解とは治癒ではないが、炎症が止まり痛みがなくなり、関節破壊が日常的に起こらず、日常動作や身体機能が障害されない状態をいう。

寛解という目標に向けて適正に治療することが重要だと、松原院長は強調する。

 その方針は、(1)患者とリウマチ医の合意に基づいた治療(2)治療ゴールは症状のコントロールなどで患者の長期的QOL(生活の質)を最大限まで改善(3)ゴール達成には炎症を取り除くことが最も重要(4)患者の状態を正確に評価し治療の適正化による治療が最も効果的-などとした。 =次回に続く (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

ロコモ予備軍の若者 「昔はただの運動音痴で済んでたが…」

日本整形外科学会が2007年に提唱した「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」。「ロコモ」の略称でも知られており、「運動器の障害」によって「要介護」となるリスクが高まることに同学会は警鐘を鳴らしている。

ロコモの原因として指摘されているのは、主に「運動器自体の疾患」と「加齢による運動器機能不全」の2つ。内臓脂肪症候群である「メタボリックシンドローム」とともに、健康寿命や介護予防を阻害する国民病として注目されている。

 運動器の障害というとどうしても高齢者のイメージが強まるが、最近では若い世代にもロコモ予備軍が増えているのだという。自身がロコモ予備軍ではないか、と不安を抱えている若い世代に話を聞いた。大学院生のAさん(女性・25歳)は、こう語る。

「以前、テレビでロコモの特集番組をやっていたのを見てから気になり始めました。

番組の中で『足の裏を全部床につけたまま完全にしゃがむことができるか』というテストがあって、それができていない子どもが登場していたのです。それを見て、『私も昔からできなかった』とびっくりしたんです。

 足の裏をつけると後ろにゴロンと転がってしまうので、しゃがむときはつま先だけ床につけて、かかとを上げて座っています。

まさかロコモ予備軍だったなんて……。通っているヨガの先生に、大腿四頭筋の衰えが将来の運動機能の低下に結びつくと言われているので、スクワットを始めようと思っています」(Aさん)

 またBさん(男性23歳・会社員)もロコモに不安を感じている一人だ。

「自分は小学5年の時に、体育で1000メートル走をしている最中に肉離れになったことがあります。

もともと子どものころから将棋やオセロ、カードゲームなど家の中でやる遊びが好きで外遊びや運動をほとんどしなかったんです。今も前屈ができないですし、足の裏をつけてしゃがむこともできません。

『ロコモ』という言葉を知るまでは、ただ体の固い運動音痴だと自覚していましたが、この言葉を知ってからは老後が不安になりました。僕が小学生の頃はこういう言葉はなかったので、今の子たちは問診してもらえるだけまだマシだし、対策も間に合うと思います」(Bさん)

 高齢者だけでなく子どもたちも生活習慣や運動習慣を見直し、自身の運動器に注意を払っていく必要がありそうだ。


新事実が続々判明 「パーキンソン病」は予防可能な時代に

パーキンソン病は、ふるえ、歩きづらさ、動きの悪さ、こわばりなどの運動症状を主とする難病だ。ここ数年、新たな事実が判明し、対策がガラリと変わるかもしれない。

 これまでパーキンソン病は、「脳だけの病気」ととらえられてきた。脳にある中脳の「黒質」でドーパミン神経細胞が減少し、神経伝達物質ドーパミンの分泌が減って運動症状のみ出てくるのが、パーキンソン病と考えられてきたためだ。

 脳の前頭葉の神経細胞が減少して発症するアルツハイマー病は、その神経細胞の減少によって前頭葉が萎縮する。

 一方、パーキンソン病は、ドーパミン神経細胞が減少しても、黒質のある中脳は萎縮しない。特異的にドーパミン神経細胞が減少するだけなので、黒質のある中脳の萎縮にまで至らないのだ。

 そのために「脳だけの病気」ととらえられてきたパーキンソン病だが、実は「全身性疾患」だということがわかってきた。大阪大学大学院神経内科学・望月秀樹教授が言う。

「運動症状の前にも、便秘、心臓の交感神経の異常(MIBG)、夜中に大声を出したり夢で見たことを実行に移すレム睡眠行動異常症、嗅覚低下、うつ状態などが、患者の多くに見られることがわかってきたのです」

■便秘や嗅覚低下なども症状も

 パーキンソン病の治療は、不足するドーパミンの補充や分泌促進のための薬の服用が行われる。しかし、運動症状以外の症状には効果が見られず、便秘などはかえって悪化した。

 つまり、「脳の黒質のドーパミンの分泌が減ることで、パーキンソン病のすべての症状が説明できる」という考えが当てはまらなくなってきたのだ。

「研究で、α―シヌクレインというタンパクとの関係が徐々に明らかになりました。ドーパミン神経細胞の減少は、α―シヌクレインの異常な蓄積が原因である可能性が考えられています。

さらに、腸管の神経に蓄積して便秘を、嗅覚の神経に蓄積して嗅覚低下を、それぞれ起こすのではないかと指摘されている。現在では、αーシヌクレインが体のいろいろな神経に蓄積されることが、パーキンソン病の原因の可能性が高いと考えられています」

 パーキンソン病は、がんの腫瘍マーカーのような発症のリスクを表す指標がなく、予防的治療は不可能だった。しかし、運動症状より前の症状の中で、特にレム睡眠行動異常症が見られる患者は、その後、パーキンソン病を起こす確率が高いこともわかってきた。

「この研究結果から、どういう人がそうなるのか、パーキンソン病にならないようにするにはどうすればいいのか、という研究が行われています。発症リスクがわかり、予防的治療が行われることも夢ではないでしょう」

 前出の「α―シヌクレインタンパクの蓄積でパーキンソン病の発症に至る」ということから、そのタンパクをノックダウンするための薬やワクチンの開発も行われている。

 パーキンソン病は、現在のところ根治療法がない。だからこそ、予防で発症を抑えられたら言うことはない。結果が出るのが待ち遠しい。

■治療法の進歩

 薬があまり効かない本態性振戦やパーキンソン病の手のふるえに対して、近々行われようとしているのが集束超音波療法。MRIを見ながら超音波を集め、脳治療を行う。

 また、進行期については、�齠PS細胞の治療が将来的な実現を目指して研究されている。

運動機能低下「ロコモティブシンドローム」…進行度合いの判定法

日本整形外科学会は、日常生活に必要な運動機能が低下する「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群、ロコモ)の進行度合い「ロコモ度」を測る判定法を公表した。どのようにして行うのだろうか。

 ロコモは、骨や関節、筋肉、神経といった運動器の機能が弱くなり、歩行能力が低下した状態を指す。進行すると、転倒や骨折をしやすくなり、介護が必要になる場合もある。国内では、予備軍も含めると4700万人がロコモの危険があると考えられている。

 ロコモ度の判定は、2種類の運動テストと、「ロコモ25」と名付けた質問票で行う。三つのテストの結果を踏まえて「ロコモ度1」「ロコモ度2」と2段階で判定される。前者は、運動機能の低下が「始まっている状態」、後者は「進行している状態」だ。

 運動テストには、「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」がある。

 立ち上がりテストは脚の筋力をチェックする。高さ40センチの台に両腕を組んで腰掛け、反動をつけずにどちらか片方の足で立ち上がり、3秒、姿勢を保つ。左右ともできれば問題なし。立てなければ「ロコモ度1」と判定される。

 片方の足で立てなければ、今度は両足で立ち上がれるかどうか確かめる。高さ20センチの台から立ち上がることができなければ「ロコモ度2」と判定される。

 「2ステップテスト」は、歩幅を測る。バランス能力や体の柔軟性も含めた歩行能力を調べるのが目的だ。まず、両足のつま先をそろえて立つ。次に腰を落とした姿勢で、バランスを崩さず、できる限り大股で2歩歩き、最後は両足をそろえて立つ。

 2歩分の歩幅(センチ)を測り、自分の身長(同)で割る。この値が1・3未満であれば「ロコモ度1」、1・1未満なら「ロコモ度2」と判定する。

 一方、質問票は、体の状態や生活の状況について尋ねる25の質問で構成される。それぞれ、0点から4点まで5段階で評価し、合計点数が7点以上だと「ロコモ度1」、16点以上だと「ロコモ度2」と判定する。

 三つのテストの結果、いずれか一つでも「ロコモ度1」「ロコモ度2」と判定されたら、進行度が高い方が判定となる。

 判定法の作成にかかわったNTT東日本関東病院(東京都品川区)整形外科主任医長の大江隆史さんは「『ロコモ度1』の場合は、階段を利用するなど、日常生活で足腰を使うことを意識する。

『ロコモ度2』なら、将来的に生活に支障が出てくる恐れもあり、整形外科医に相談してほしい」と説明する。相談できる整形外科医は、ロコモの予防啓発サイト(https://locomo-joa.jp)で検索できる。

 一方、ロコモは高齢者に限った問題ではない。骨や筋肉の量のピークは20~30歳代で、それ以降は衰え始める。

大江さんは「適度な運動で骨や筋肉に刺激を与えたり、適切な栄養を取ったりすることで強く丈夫に維持される。若い時からの心がけが大切だ」と話している。

親がパーキンソン病に!公的支援は受けられる?負担をひとりで抱え込まないために

俳優の高知東生さんは、妻で女優の高島礼子さんの父親の介護に専念するため、引退を決意しました。高島さんの父親は2004年にパーキンソン病のため寝たきりとなり、これまでも夫婦で協力して10年以上介護を続けてきました。

俳優を引退する高知さんは義父の介護と、女優として活躍する妻・高島さんのサポート役を買って出るかたちになります。高知さんと同様に、多くの人が仕事をとるか介護をとるかの選択を迫られています。

とりわけパーキンソン病は特殊な位置づけの病気です。どのような病気なのか、公的支援は受けられるか、などを確認しておきましょう。

◆パーキンソン病の主な症状
パーキンソン病の原因についてははっきり分かっていませんが、ドーパミンの減少が影響していると考えられています。代表的な症状には次のものがあります。

「ふるえ」…じっと座っていると、膝に置いた手がふるえます。手を膝から離して何かをしようとするとふるえは収まります。

「筋固縮」…筋肉がこわばり、手や足が固く縮んだように動きにくくなり、日常動作をスムースに行うことが困難になります。

「無動」…歩幅が小さくなり、歩き始めの1歩目を出しにくくなります。動作全般が小さくなり、字を書くと小さな字になります。

「姿勢障害」…バランスを崩すとスムースに姿勢を立て直すことができません。方向転換や寝返りも困難で、転倒しやすくなります。

治療は、ドーパミンを補充する抗パーキンソン病薬の内服治療が基本となります。

発症後10年程度は普通の生活が可能で、生命予後は良いとされています。体のコントロールがきかないことによる転倒や、食べ物を飲み込む能力が低下することで起きる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の予防が重要になります。

◆難病医療費助成制度
国は発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾患を「難病」に指定し、医療費の助成や研究の推進、医療保健施設の整備などの支援を行っています。

パーキンソン病は指定難病のひとつに含まれており、難病医療費助成制度が適用されます。

これにより、パーキンソン病治療でかかる医療費の自己負担分(一部または全額)が公費によって助成されます。同制度の申請にはホーン&ヤール重症度3度以上で、生活機能障害度2度以上であることが条件となります。

◆ホーン&ヤール重症度とは?
ホーン&ヤール重症度は次の5段階に分類されます。

 1度:症状は片方の手足のみ。
 2度:症状は両方の手足に。歩行障害はなし。
 3度:姿勢反射障害や歩行障害が加わる。
 4度:起立、歩行は可能だが、非常に不安定。介護が必要。
 5度:車いすか、ほとんど寝たきり。

◆生活機能障害度とは?
生活機能障害度は次の3段階に分類されます。

 1度:日常生活、通院にほとんど介助を要さない。
 2度:日常生活、通院に介助を要する。
 3度:日常生活に全面的な介助を要し、歩行・起立が不能。

難病医療費助成制度の対象はホーン&ヤール重症度3度以上で、生活機能障害度2度以上とされています。つまり、少なくとも姿勢反射障害や歩行障害があり、日常生活、通院に介助を必要とする人が対象ということになります。

この他、パーキンソン病に限ったことではありませんが、一般的な公的支援として医療保険制度、後期高齢者医療制度、介護保険制度、身体障害者福祉法、障害者総合支援法があるので、該当するかどうかを確認しておきましょう。

介護を始めるまでに準備段階がないと、公的支援について調べる間もなく、負担をひとりで抱え込んでしまいがちです。難病医療費助成制度、介護保険制度、自治体の支援にはどのようなものがあるのかを確認し、少しでも負担を軽くするようにしましょう。

公的支援を受けた場合でも、何かあったときに対応するために、仕事を辞めざるを得ない場合も少なくありません。

高知さんのケースでは、確かに引退という選択はファンにとって辛いものではありますが、家族でよく話し合い、それぞれの役割を明確にして出した答えという点で前向なものという印象を受けます。

状況によっては難しいかもしれませんが、考える余裕のあるうちに、介護をする人、受ける人が何を希望し、どのような選択肢があるのかを話し合うようにしたいものです。

監修:坂本 忍(医学博士)

【メタボより怖いロコモ】関節リウマチ治療の現状(4) 「寛解の先に」患者の負担軽減

ファイザー主催のセミナーで、東京女子医大附属膠原(こうげん)病リウマチ痛風センター・山中寿所長は、新しい薬剤のおかげで関節リウマチ患者の寛解率が50%を超える時代になったという。

寛解は治癒ではないが、関節破壊などの症状は抑えられている状態だ。山中所長は「寛解の先に何があるのか?」に話を進めた。

 「いままではひたすら寛解を目指してやってきました。しかし、これからは“寛解を目指せ”から“寛解の先に”目を向けることではないかと思っています。

いったん寛解に入ったら、薬はそのままでいいのかなど治療の最適化を考えなければなりません」

 治療の最適化とは、合併病態のマネジメント、薬剤を減らす=ステロイド剤、生物学的製剤(エンブレル)、

MTX(メトトレキサート)などからの離脱、どういう形で薬剤を使えばコストパフォーマンスがいいか経済学的検討、生命予後の改善や患者の意向をどこまで取り入れられるのか-など。

 「これまでの寛解を目指す治療は高度成長期のようなもので、これからは低成長期の治療が必要ではないでしょうか」

 山中所長は、このように前置きして、そうした場合に参考になりそうな治療データをいくつか紹介し「生物学的製剤を半分にしたり、外しても寛解を維持したというデータもありました」としたうえで、次のような日本と韓国での共同研究の成果にも触れた。

 中等度の関節リウマチ患者に早期に生物学的製剤とMTXを併用して治療すると、67・5%が臨床的寛解になった。

6カ月、12カ月臨床寛解を達成した症例を生物学的製剤継続群と中止群に分けて1年間観察すると、中止群の58・8%が1年間の中止を達成、その70%が寛解を持続した。

つまり、生物学的製剤とMTXを1年間投与し6カ月以上寛解を達成した症例に生物学的製剤を中止しても1年間寛解を維持しうることが分かった。

 これらのことから山中所長は「ヒット・アンド・ウェイ戦略」ということばを考え出したという。

 生物学的製剤の早期投与、早期に寛解に導入して関節破壊を避ける、6カ月以上寛解が維持できれば休薬を考慮、もし再燃したら同じ生物学的製剤を再投与する。

 「完全に薬をやめるのではなく、柔軟に構えることもできるのではないでしょうか。

リウマチ治療は厚い壁を少し抜けた状態で壁抜けまであと少しまできていると思います」と、パリのモンマルトルの丘の壁抜け男のモニュメントの写真を見せながら、山中所長は締めくくった。 =この項終わり (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

【メタボより怖いロコモ】関節リウマチ治療の現状(3) 「寛解維持へ」変わる治療方針

ロコモの原因疾患の1つ関節リウマチ治療についてのファイザー主催セミナーの続報。

東京女子医大附属膠原(こうげん)病リウマチ痛風センター・山中寿所長は、同センターの関節リウマチ患者では「寛解率が50%を超えた」と指摘。新しい薬剤のおかげだが、ガイドラインで治療方針が明確になったのも大きいと説明した。

 ガイドラインはかつては有識者の意見で作られたが、いまでは患者の意見も取り入れられるようになったという。日本リウマチ学会が編集した『関節リウマチ診療ガイドライン2014』で特に注目してほしいのが、以下の「治療目標」だという。

 〈臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す〉

 「リウマチの痛みを改善してほしいという患者さんが多いのですが、痛みを取るだけでは十分な治療とはいえません。進行を止めて生命予後の改善を目指すところまで目標とすると、少しハードルを上げたわけです」

 また、「治療方針」でも〈関節炎をできるだけ速やかに沈静化させて寛解に導入し、寛解を長期間維持する〉としている。山中所長は寛解の意義をこう強調する。

 「寛解は治癒ではありません。現時点ではリウマチの治癒は望めないと考えます。

薬剤は良くなったのですが、まだ病気を治すまでにはいたらず、病気の症状を抑え、進行を止めることができるだけです。従って、症状が完全に抑制され、進行が防止できている状態を寛解と呼び、当面の治療目標としました」

 果たして寛解になれば、病気は進行しないのか。山中所長のセンターで1307例の患者調査をしたところ、寛解に入った患者の病気の進行は止まることが分かったという。寛解を3年間維持し続けた人はほとんど進まないことも分かった。

 「寛解を長く維持しつづけることが大事だと分かってきました。リウマチは火事が燃え続けている状態なので、かけている水をとめると火が再び勢いを増す。だから常に抑え続けないといけないのです」

 現在、治療に使われる薬剤は、TNF阻害薬、抗IL-6受容体抗体、T細胞選択的共刺激調節薬などがある。

中でもTNF阻害薬のエンブレルがよく使われており、2005年の発売以来、ここ10年間の治療の進化を担ってきたという。そして、ガイドラインも整備されたのと相まって治療効果が上がってきた。

 それでは、寛解の先には何があるのか。山中所長の話はさらに続く。 (木村進)

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

ようやく“臨床判断値”できた「ロコモ」 潜在該当者には20代も

ロコモティブシンドローム、通称「ロコモ」は、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉といった運動器に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態をいう。
このロコモ度を判定する「臨床判断値」が発表された。自分ですぐにチェックできる。

「日本人の平均寿命は男性80歳、女性86歳。ところが実際に動ける健康寿命は男性70歳、女性は73歳と、10~13年短い。人生の最後の十数年は、家に閉じこもりか寝たきりという状態なのです」(九州大学整形外科・岩本幸英教授)

 国民生活基礎調査によれば、要支援、要介護の原因のトップは運動器障害。つまりロコモで、健康寿命を延ばすには、早い段階で自分がロコモかどうかを知り、対策を講じることが重要だということだ。

 ところがこれまで、「○○○ならロコモ」の「○○○」に当てはまる臨床判断値がなかった。「140/90㎜Hg以上は高血圧」というような具体的な数値があいまいだった。ロコモの認知度は決して高くない。

その上、臨床判断値もないので、対策に結びつきにくかった。そこで研究の結果、ようやく臨床判断値が“誕生”したのだ。

「ロコモを判断するには、(1)下肢筋力(2)歩幅(3)身体状態・生活状況の3つを見ます。

(1)~(3)のうち、ひとつでも引っかかれば、年齢、男女差、既往症と関係なくロコモと判断されます」(NTT東日本関東病院整形外科・大江隆史主任医長)

 (3)は「ロコモ25」という25項目の質問の答えで判断する。少々複雑なので、こちらは後回しにしてもいい。

「引っかかりやすく、すぐにチェックできる(1)と(2)から試したらいいでしょう。どちらかひとつなら(1)を」(大江医長)

 (1)は、「40センチの高さの椅子などから片脚で立てない」。右脚、左脚どちらもチャレンジして、一方でも立てなければ×だ。

 (2)は、できる限り大股で歩いた時の2歩幅(センチ)を身長(センチ)で割った「2ステップ値」が1.3未満だとロコモと判断される。

「パイプ椅子の高さはだいたい40センチ、地下鉄の椅子は37センチくらい。これらの椅子から何も持たずに片脚で立てなければロコモです」(大江医長)

■若い時に運動していても意味はない

 ロコモには、整形外科専門医がロコモと判断する「ロコモ度1」と、さらに進行した「ロコモ度2」がある。

「2」は、要介護が近いうちに必要になるかもしれない、より深刻な状態だ。先に挙げた数字はロコモ度1のもので、ロコモ度2は、(1)が「20センチの高さの椅子などから両脚で立てない」、(2)の2ステップ値が1.1未満になる。

「ロコモ=高齢者」と考えている人が多いだろうが、実は違う。

「20歳以降から徐々に運動器の機能が衰え、しのびよるようにロコモになります。20代、30代でも早いうちに対処した方がいい人もいます」(岩本教授)

 800人を対象にした調査では、(1)の「40センチの高さから片脚立ち」ができなかった「ロコモと判断される人」は、男女ともに20代からいた。40~49歳では、男性で約15%、女性では約30%が該当した。

「この調査は健康な人が対象だったので、結果は少ない方だと思います。

実際の該当者数はもっといるでしょう。デスクワーク中心で、運動をしていない人は、若くてもロコモである可能性がある。若い時に運動をしていても、今していなければ意味がありません」

 早速、(1)と(2)のチェックを! 「さらに(3)も」という人や、ロコモ予防のトレーニング「ロコトレ」を知りたい人は、「ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト」を参照すべし。

▼「ロコモ25」とは

「頚・肩・腕・手のどこかに痛み(しびれも含む)がありますか」「背中・腰・お尻のどこかに痛みがありますか?」「家の中を歩くのはどの程度困難ですか?」など、「からだの痛み」や「日常生活で困難な点」に関する質問が挙げられている。

回答の程度によって加点していき、7点以上ならロコモ度1、16点以上ならロコモ度2と判断される。

<運動器症候群>あなたの「ロコモ度」は?

◇判定基準 日本整形外科学会が初めて定める

 加齢などで立ったり歩いたりする機能が低下する「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)の判定基準を日本整形外科学会が初めて定め、15日公表した。

2種類の運動テストと質問票から「ロコモ度」を2段階で判定する。運動器の障害は要介護になる最大の要因とされ、学会は「生活習慣の見直しなど予防のきっかけにしてほしい」と呼び掛けている。

 ロコモは進行すると介護が必要になるリスクが高まる。学会は骨や筋肉、関節などの運動器の衰え始めを「ロコモ度1」、衰えが進んで自分で身の回りのことができない恐れが高い状態を「ロコモ度2」と定義。

台から片足や両足で立ち上がる脚力のテスト▽大股で歩いた時の歩幅▽困難な日常動作などを尋ねる25の質問(各項目0~4点で最高100点)--で、それぞれ判定基準を示した。

 ロコモ度1に該当する人は運動習慣や食生活の改善などの予防策を始める必要があり、ロコモ度2で足腰に痛みがある人には、専門医の受診を勧めるという。

 学会によると、国内にロコモ度1は約4700万人、2は約1400万人いると推計される。

基準作りに携わった大江隆史・NTT東日本関東病院整形外科主任医長は「現代社会は便利になり、移動機能の衰えに気付きにくい。若いうちから予防が必要だ」と話している。

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