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早期発見は3人に1人 斉藤仁氏の命奪った胆管がんの怖さ


突然の病状悪化に、金メダリストも力尽きた。84年ロス五輪から男子95キロ超級を2連覇した斉藤仁氏(享年54)の命を奪ったのは、肝内胆管がんだった。懸命な治療も実らず、20日午前2時56分息を引き取った。

 昨年11月の講道館杯全日本体重別選手権では、「やることが山積みだから、やせちゃったよ」と笑っていただけに、突然の訃報に耳を疑ったファンは少なくないだろう。

しかし、このがんは、手術できるかどうかが大きな分かれ目。手術できないと、厳しい運命をたどることになる。

杏雲堂病院消肝内科科長・小尾俊太郎氏が言う。
「胆管は、肝臓から膵臓を経由して十二指腸をつなぐ管で、消化液や消化酵素を運んでいます。斉藤さんのケースでは、肝臓の内部にある胆管にがんができたので、『肝内胆管がん』。

管は直径6~8ミリですが、がんが小さいうちは消化液などの流れが阻害されず、自覚症状がほとんどありません。

その場所は肝臓や十二指腸などの陰になり、エコー検査で捉えにくいため、手術できる早期のうちに見つかる人は全体の2~3割。手術できない進行がんだと、余命は半年から1年です」

■20代で亡くなるケースも

 昨年1月、女優・川島なお美(54)が同じがんで手術を受けていた。人間ドックのエコー検査で見つかったようだが、上述した理由で、「エコー検査は万全ではない。肥満で脂肪が厚いと、超音波の透過性が悪くなり、エコー検査の精度が落ちる」(西崎クリニック・西崎統氏)という。

 発症は60代が多いが、小尾氏の知人の医師は20代で発症し亡くなった。2人が発症した50代は決してまれではない。厄介ながんが発症して、「助かる3割」に入る手立てはないか。

「患者さんの中には、<ダイエットをしていないのに、体重が落ちた><正常だった肝機能の数値が突然上昇した>と受診されることがあります。

体重減は『3カ月で5キロ減』と急激で、肝機能の項目は『GOT』『GPT』『γ―GTP』など。これらの異常があって、(1)黄疸の症状が全身に回っておらず(2)リンパ節転移がなければ、手術できる可能性が高い」(前出の小尾氏)

 西崎氏の患者は、突然の嘔吐と上腹部の不快感で受診したが、エコー検査では異常なし。それでも不快感が続き、3カ月後のMRI検査でがんが見つかり、手術できたケースもあった。

2人の運命の違いを知ると、粘り強く検査を受けるのも大切かもしれない。

前立腺がんは凍らせて殺す 国内初治療を行った医師に聞く


体への負担が少ない前立腺がんの治療法が注目を集めている。国内で初めて「前立腺がん凍結療法」を行った東京慈恵会医科大学付属病院泌尿器科診療副部長の三木健太医師に聞いた。

「前立腺がん凍結療法」は文字通り前立腺がんを凍結させ、がん細胞を死滅させる。

「1年半前から始め、これまでに凍結治療を受けた6人の患者さんは全員が経過良好です」

 前立腺がんは早期に発見されれば、非常に予後がいいがんだ。

 治療法は主に「全摘手術」「放射線療法」「ホルモン療法」。全摘手術と放射線療法の治療成績は同等で、それぞれメリットとデメリットがある。

 全摘手術は前立腺をすべて取るので、摘出後、がんの状態を詳細に調べられる。治療前の検査での想定より状態が悪い場合は、それに応じた今後の治療計画を立てられる点がメリットだ。デメリットとしては、率は低いが失禁や男性機能の低下が挙げられる。

 一方、放射線療法はPSAの低下で「治癒」は確認できるものの、前立腺はそのままなので、治療が不十分であれば残ったがんが再発する可能性がある。放射線が尿道や直腸など前立腺がん以外の場所に過度に照射されれば、切迫頻尿や下血が起こる。しかし、治療直後の男性機能の低下のリスクは低い。

「一般的に、前立腺肥大などによる排尿障害など前立腺があることで不具合を感じていれば全摘手術、そうでなければ放射線療法の選択肢があると説明しています」

■従来の治療法と違って副作用がほぼない

 今回の凍結療法は「全摘手術ではなく放射線療法を選択→放射線療法でいったんPSAは下がったが、その後、徐々に上昇→種々の検査で前立腺内がんの再発が確認」された患者が対象だ。PSAとは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクで、数値が高くなると前立腺がんが疑われる。

 こういった「放射線療法後の再発」の場合、従来はホルモン療法が行われてきた。しかし、ホルモンは全身に作用し、急な発汗、乳腺の痛み、体重増加、男性機能や性欲の低下、さらに糖尿病の悪化、心血管系の障害などの副作用がある。

「再発とはいえ、がんは前立腺内にとどまっているのだから、もっと低侵襲の治療法はないか。そこで始めたのが、凍結療法なのです」

 全身麻酔下で、冷やす針と温度計の機能を持つ針を前立腺がんに数本刺し、アルゴンガスを注入。細胞が死滅するマイナス20度になるまで、がんを凍らせていく。がんが氷で包まれていくイメージだ。

 直腸に入れたエコー(経直腸エコー)で、氷が的確な大きさになっているかなどを確認する。前立腺の近くの直腸と尿道が凍らないように、温度計の針で直腸の温度を確認し、尿道にカテーテルを通して温水を還流する。これらによる合併症は、これまで経験がないという。術後は、基本的にPSAで経過を見ていく。

 現段階では「放射線療法後の再発」の患者だけが対象だが、今後は変わるかもしれない。前立腺がんはごく早期の場合、特別な治療をせずにPSAで経過を観察する「監視療法」の選択肢もある。凍結療法は、監視療法の「次」の治療の一つとして期待されているのだ。

「フォーカルセラピー(部分治療)といい、すでに欧米では行われています。全摘手術や放射線に進む前に、それより低侵襲な治療法、つまり凍結療法などが検討される。日本でも今後注目されていくでしょう」

 なお、凍結療法は自費診療になり、150万円ほどかかる。凍結療法と並ぶ「放射線療法後の再発」に対する低侵襲の治療として、三木医師はヨウ素を前立腺内に挿入する「小線源療法」も行っている。小線源療法は放射線治療の一種だが、照射不十分の部位へ2度目の施術が可能。こちらは保険適用だ。

◆前立腺がんの凍結療法は、現在2泊3日の入院で行っている。「放射線療法後の再発」であっても、ホルモン療法をすでに開始している人は対象外。

大腸、小腸に原因不明の炎症「IBD」 正しい理解と早期治療を


原因不明の腹痛や下痢、下血が続いたらIBD(炎症性腸疾患)を疑って病院に行ってほしい-。そう呼びかけ、アッヴィ合同会社とIBD患者団体などは疾患の認知を促進する「IBDを理解する日」を5月19日に制定し同日、啓発イベントを都内で開いた。

 IBDとは、大腸や小腸などに原因不明の炎症をおこす難治性疾患。「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」からなり、ともに10~20代前半に発症するケースが多く、症状が良いとき(寛解期)と悪いとき(活動期)を慢性的に繰り返す。

根治療法はなく、ときに手術が必要になるという。

 要因は食の欧米化や衛生的すぎる環境などに求める仮説があるなか、ここ数年で患者数は総計17万人以上と増加。一方で、疾患への認知度が低いため、症状に悩んだり、周囲から理解されず仕事や学業に支障をきたすこともあるという。

 17歳でクローン病を発症し、これまで4回手術した福祉施設勤務でNPO法人IBDネットワークの中山泰男副理事長(49)は、こう話す。

「IBDは、いつトイレに駆け込まないといけないかという不安をいつも抱えている。私の場合、正社員とアルバイトを繰り返したが、トイレが近いことや通院のことを理解してもらえれば社会で活躍できる。定期的な通院で学業や職業を続ける患者も増えている」

 大切なのは早期診断と治療で寛解を維持すること。大船中央病院の上野文昭特別顧問は、「IBDは研究が進み、従来の治療はステロイドや手術などだけだったが、最近では生物学的製剤や経腸栄養剤など選択肢が増えているため、早めに医師に相談してほしい」と説明する。

 IBDネットワークの萩原英司理事長(53)は、「今後は国の制度として、IBD患者が理解され働ける仕組みができることを願う」とし、偏見の是正を訴えた。

前立腺がん 2025年には日本人男性のがん罹患者数1位に?


手術、放射線治療と並ぶがんの3大療法の一つである、抗がん剤治療。患者数の多い前立腺がんの最新治療薬について、がん研有明病院血液腫瘍科部長畠清彦医師に解説してもらった。12月8日発売の週刊朝日ムック「新『名医』の最新治療2015」から紹介する。

*  *  *

前立腺がんは日本人の男性がんの罹患者数で4位ですが、2025年に年間10万人を超え、1位になると予想されています。男性ホルモンであるアンドロゲンにより発症、増殖するがんで、進行がんではアンドロゲンの分泌や働きを抑えるホルモン剤が薬物治療の第一選択薬となります。

ただ、数年で効かなくなり、この状態を「去勢抵抗性前立腺がん」といいます。唯一の治療法として従来型の抗がん剤タキソテールが08年に導入され、2年くらい延命できるようになりましたが、副作用が多く、治療できるのは3割程度の患者さんでした。

 そんな中、14年に登場した3種類の新薬が、治療選択肢のなかった人の福音になるといわれています。このうち二つはザイティガとイクスタンジという飲み薬です。

抗アンドロゲン剤という種類のホルモン剤ですが、作用するしくみが異なります。アンドロゲンの95%は精巣で作られ、5%は副腎や前立腺腫瘍組織内で作られますが、ザイティガは精巣、副腎、腫瘍組織に作用し、アンドロゲンの合成を阻害します。

イクスタンジは、男性ホルモンが、前立腺にあるアンドロゲン受容体に結合するのをブロックします。両剤ともタキソテールの治療前か治療後に用いますが、従来の薬に比べ、アンドロゲンの低下作用やブロック作用がより強力です。

 治療する際に重要なのは、持病や合併症です。ザイティガは肝機能障害や心疾患、イクスタンジは稀ですが痙攣麻痺の報告があり、脳梗塞の既往歴のある人などは注意が必要です。

また、一方の薬で効かなくなった後に、もう一方の薬で治療しても効果は低いと言われています。

 タキソテールが効かなくなった人への治療薬として、抗がん剤ジェブタナも発売されました。ザイティガやイクスタンジが効かなくなった人にも30.0%の割合で効果がありますが、白血球(好中球)などの数が減る骨髄抑制が高頻度で起こるため早めの対処が必要です。

一方で、末梢神経障害など生活の質を低下させる副作用が少なく、タキソテールの治療期間(現在は10回以上)を短くして、ジェブタナに替えるという治療法が増えると思われます。

去勢抵抗性前立腺がんに2種の経口新薬が保険承認で効果期待


日本人男性の前立腺がん患者数は、胃がん、肺がん、大腸がんに次いで4位だ。発症のリスクファクターは加齢、食事、遺伝、ホルモンで、高齢化と脂肪の多い食生活によって、患者数は急増している。

血清PSA検査の導入で、早期発見が可能になっているものの、現在約30%が進行がんで発見され、そのうち約15%で転移が起こっている。

 治療は手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤)で、がんの進行や症状、転移の有無などで治療法を決定する。

早期がんは、手術や放射線療法で完治を目指す。進行がんは、放射線とホルモン療法の併用、あるいはホルモン療法のみで治療を行なう。横浜市立大学附属病院泌尿器科の上村博司准教授の話。

「前立腺がんは、アンドロゲン(男性ホルモン)によって増殖します。アンドロゲンの数値を下げることで、がんの進行を抑えるのがホルモン療法です。複数のホルモン療法がありますが、おおむね3年以内に効果が減弱します。

ホルモン療法抵抗性の患者や、手術で精巣摘出後にホルモン療法で再発した患者を合わせて、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)と称されます」

 CRPCの治療は、抗がん剤ドセタキセルしかなかったが、年齢や合併症などで治療ができないこともある。そこで今年、抗がん剤移行前に使う薬として、アビラテロンとエンザルタミドの2種が保険承認された。

 どちらの薬も1日1回4錠(カプセル)を内服する。一方が効かなくなった後に、もう片方の薬を使っても交叉耐性が起こるため、効果が期待できない。

またこの秋、新しい抗がん剤カバジタキセルも保険承認された。CRPC治療の選択肢が広がると期待されている。

前立腺がん…進行・再発に対応新薬登場


男性ホルモン生成を抑制/がん細胞増殖防ぐ

 前立腺は、男性だけにある臓器で、膀胱(ぼうこう)の下にある。栗の実のような形をしており、精液の一部を作っている。この臓器に発症するのが前立腺がんだ。高齢になると発症率は高くなり、国内では、平均寿命が延びたことで患者は増加傾向にある。

 治療は、がんが前立腺にとどまるなど治りやすい場合は、前立腺や隣の精のうを摘出する手術を行ったり、放射線治療を行ったりする。特別な治療はせずに、様子を見ることもある。

 一方、がんが周辺に広がったり別の臓器に転移したりしている場合は、薬で男性ホルモンの分泌や働きを抑える「ホルモン療法」を行う。男性ホルモンの「アンドロゲン」が前立腺がんの増殖に関わり、病気を進行させるためだ。

 アンドロゲンには、精巣から分泌される「テストステロン」や、副腎で作られる「副腎性アンドロゲン」がある。これらを抑えるため、「LH―RHアゴニスト」や「抗アンドロゲン薬」などの薬を使う。

広がる治療の選択肢

 だが、慈恵医大泌尿器科教授の頴川(えがわ)晋さんは「前立腺がんは、治療を行っても一部が性質を変化させて生き延びるやっかいながん」と説明する。このため、ホルモン療法を長く続けると治療効果が落ちてしまう。この場合、抗がん剤治療などを行うが、効果はあまり期待できない。

 今月発売された「アビラテロン酢酸エステル」(商品名・ザイティガ錠)は、こうした前立腺がんに対する新薬だ。精巣と副腎、さらに前立腺がんの計3か所で、男性ホルモンの生成に関わる酵素「CYP17」の働きを抑える。ホルモン療法が効かなくなった場合に、次の一手として使うことができる。

 従来、抗がん剤治療を行っても十分な治療効果が得られなくなると、それ以上は有効な治療法はなかったが、抗がん剤治療後でも効果が期待される新薬も登場した。

 今年5月に発売された「エンザルタミド」(商品名・イクスタンジカプセル)は、前立腺がんの細胞にある受容体と男性ホルモンがくっつかないようにする。男性ホルモンが、がん細胞の内部に届かなくなり、がんの増殖を抑える。

 一方、今月発売された「カバジタキセル」(商品名・ジェブタナ)は、新しい抗がん剤だ。がんの細胞分裂に関わるたんぱくにくっつき、その働きを抑えてがんの増殖を防ぐ。

 抗がん剤治療では通常、「ドセタキセル」という薬が使われているが、効果が得られなくなると、有効な抗がん剤はほかになかった。エンザルタミドもカバジタキセルも、臨床試験でドセタキセルによる治療を受けた患者に投与したところ、生存期間が延びるなどの成果が出た。

 頴川さんは「これまで手立てがなくなっていた患者さんに対する治療の選択肢が広がった。ただ、肝障害などの副作用が生じることがあり、体の状態をみながら薬の使用を検討していくことが大切だ」と話している。

「前立腺がん」増加…新薬相次ぎホルモン療法の可能性広がる


男性特有のがん、前立腺がんの新薬が相次いで登場している。前立腺がん患者数は、食の欧米化や社会の高齢化により今後も増加し続けるとみられる。

最新の治療法について、近畿大医学部の植村天受(ひろつぐ)教授(泌尿器科)に聞いた。(村島有紀)

 前立腺は男性だけが持つ臓器でぼうこうの真下にあり、栗の実のような形状をしている。排尿をスムーズにしたり、精液の流れを調節したりするのが役割で、精液の一部である前立腺液を作る。

 ◆6年後には1位

 がん対策情報センターによると、人口10万人当たりの前立腺がんによる死亡率は、昭和63年には20人だったが平成24年には40人を超えた。「がん・統計白書」によると6年後の患者数は約10万人で、男性がんの患者数第1位になると予想されている。

 「前立腺がんは50歳以降に急増し、病理解剖のデータからすると高齢男性の60%以上に潜在的ながんがあると推察されている。進行の速さは、悪性度や年齢によって異なり、何十年も進行しない人もいれば、1年程度で急激に悪くなる人もいる」(植村教授)

 治療法としては手術、放射線療法のほか、男性ホルモンを遮断する薬物療法(ホルモン療法)も広く行われている。

根治はされないが、前立腺がんは精巣から分泌される男性ホルモンにより進行することから、薬物による去勢状態を作り出すことで進行を抑えられるからだ。

 ◆薬剤に抵抗性

 しかし、長年ホルモン療法を続けていると、やがて大部分の患者は、精巣から男性ホルモンを作り出さないにもかかわらず、がんが進行する状態「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」に移行するとされる。

 例えば、65歳でホルモン療法を始め、3~5年進行を抑えた後、CRPCになったとする。すると、自覚症状がなく転移がない場合でも平均余命は約2年、症状がなく転移がある場合は1年~1年半、痛みなどの症状がある場合は約1年しかないという。

 近年の研究で、副腎と前立腺がんそのものが男性ホルモンを生成し、腫瘍を大きくすることが分かり、より完全に男性ホルモンの生成を抑える新薬の開発が進展。

日本では今年5月にアステラス製薬(東京都中央区)が、「イクスタンジカプセル」(一般名・エンザルタミド)を発売。アストラゼネカ(大阪市北区)とヤンセンファーマ(東京都千代田区)も「ザイティガ」(同・アビラテロン)を今月2日、発売した。

 ◆治療に選択肢

 植村教授は「これまでホルモン療法が効かなくなった患者に対しては、たった1種の抗がん剤(ドセタキセル)を使うしかない状況が長年続いていた。今回発売された新しいホルモン剤2種が、CRPCの第一選択肢になる」と話す。

 そのほか、サノフィ(新宿区)も、新たな抗がん剤「ジェブタナ」(同・カバジタキセル)の販売を開始。植村教授は「従来の抗がん剤よりも、末梢(まっしょう)神経への影響が少ない。

たとえ70歳以上でCRPCになっても、新薬を適切に使うことで、平均寿命までより良い生活を目指す治療の選択肢が増えた」と話している。

 ■前立腺がんへの新薬

 「エンザルタミド」 男性ホルモン受容体阻害薬。1日1回160ミリグラムを経口投与する。主な副作用は疲労、背部痛、便秘、関節痛。一部にけいれん発作も。

 「アビラテロン」 男性ホルモン生成酵素阻害薬。1日1回空腹時に1000ミリグラムを、ステロイド剤(プレドニゾロン)と併用して、経口投与する。主な副作用は疲労、背部痛、関節痛など。

 「カバジタキセル」 抗がん剤。ステロイド剤(同)と併用し、1日1回1時間かけて3週間おきに点滴静注する。重い副作用として白血球減少がある。

前立腺ガン予防の秘訣は“週5回の射精


4月30日に前立腺ガンで亡くなった作家の渡辺淳一氏。享年80歳。渡辺氏は最後までダンディで華があった。

そして「かっこ良さに男の美学を感じていた」(女優・黒木瞳)と生涯モテモテ。長年の健康と若さの秘密は”日々是好色”だったともいわれる──。

 前立腺肥大や前立腺ガンは男の、しかもシニアの病気だ。厚労省の調べによれば人口10万人あたりの罹患者は104.2人(うち死亡者18.2人)。

 しかも高齢化に伴って急増。男性ガンの中で増加率トップ。2020年には1995年の約6倍にものぼると見られているのだ。

 前立腺の病への対策には諸説があるが、川崎医科大学泌尿器科学教室の永井敦教授は、講演・著書でこう指摘している。

「前立腺は空になった精嚢内を、再度精液で満タンにするために働く。射精回数が多いほど、前立腺は働き続け、前立腺の病気を予防できる」

 渡辺氏は生前、こうも語っていた。

「異性への興味を持ち続ける人こそが生命力のある証。異性に興味を失ってしまったら、人はすぐに“枯れた人”になってしまう」

 枯れた男性の、前立腺の病へのリスクは高そうだ。

 実際、「ビクトリア州がん協会」(メルボルン)のグラハム・ジレス博士のグループは、前立腺ガン患者に対し、性生活に関するアンケートを実施した結果、より射精する人ほど前立腺ガンになりにくいと分析している。

そしてジレス博士によると、週に5回以上射精していた男性は、前立腺ガンを発症する確率が3分の1にまで減少するという。研究結果を見る限り、「日々是好色」主義は、健康を維持する方法の一つだったことになる。

前立腺がん 病院の選び方は“治療バランスのよさ”


前立腺がんの治療は選択肢が多く、どの治療法を選ぶのがいいか迷う患者も多いだろう。

東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター泌尿器科主任教授の田邉一成医師に、今後期待できる前立腺がんの治療法と治療を受けるための心得を聞いた。

 前立腺がんは患者数が急増してきましたが、治療の選択肢は多く、前立腺の中におさまっているがんの場合は根治できます。

治療を受けるにあたっては、手術の多さだけではなく、他の治療もまんべんなく実施している、バランスのとれた病院で診療を受けるべきです。

根治を考えると、やはり手術なのですが、前立腺の周りにある神経の温存や、転移している可能性があるリンパ節をきちんと取り切れているかどうかが重要になります。

 また、現在、手術については、ロボット手術を実施しているかどうかも一つのポイントとなります。

手術のアプローチは、従来の開腹、5センチ以下の傷から手術器具を入れて行うミニマム創(小切開)、さらに傷が小さい腹腔鏡下とさまざまありますが、腹腔鏡下手術を手術用ロボットで支援するロボット手術は、安全にがんを根治できる上に、術後のQOLも高い手術法だと思います。

 日本では薬事承認されていないのですが、最新型のロボットも開発されており、今後新しいロボットを採用できれば、将来的にはさらに正確な手技の手術が可能になるはずです。

 放射線治療も内照射である小線源療法と、外照射のIMRTが、確実性の高い治療法として確立されています。今後は、抗がん作用の強い重粒子線を集中してがんに照射できる重粒子線治療も期待できると思います。

ただし現時点では、全国で4施設しか実施しておらず費用も高額なこと、IMRTと比べるといびつな形の腫瘍に対してうまく照射できないことなどの欠点があります。しかし、機器はこれから発展していくでしょうから、将来的には可能性の高い治療でしょう。

 前立腺がん治療のいい病院を選ぶ基準は、日本泌尿器科学会の専門医教育施設の基幹教育施設のリストを参考にするといいでしょう。

また、泌尿器科はさまざまな病気を治療していますので、前立腺がん治療を専門にしている医師が複数人いるところがいいと思います。

近くて長いオシッコ~前立腺肥大を疑え


■年齢とともに前立腺は肥大する

 トイレで排尿していると後から若者が入ってきて、さっさと用を足して先に出ていってしまい、自分はまだタラタラ、ポタポタと出きっていないといった経験はありませんか。

 排尿に時間がかかる、切れが悪い、トイレに行って1時間も経つとまた行きたくなり外出先ではトイレ探しに苦労するが実際にはさほど溜まってはいなかった、

残尿感がある、夜間に3回以上トイレに起きる――、早い人は50歳代からこんな症状が気になる場合があります。いずれも前立腺肥大の症状です。

 前立腺は男性の膀胱の直下にあるクルミ大の重さ15から20グラムほどの器官で、精子に栄養を与えるなどの働きをしていますが、生殖年齢を過ぎた人にはあまり役に立ってはいないものです。

 しかし、加齢と共に少しずつ肥大して直上にある膀胱を圧迫し、膀胱の容量を少なくしてしましいますので、溜めておける尿量が減り、種々の症状がでてくることになります。70歳以上の70%位の人は明らかな症状はなくても肥大が存在します。

 昔は日常生活に不自由を感じるようになって泌尿器科を受診すると、肛門から指を入れて前立腺を触診するだけで経験豊かな泌尿器科医なら肥大症かがんかは区別ができました。がんの大きさが5ミリ以下でも分かる名人がたくさんいたのです。

 手術で取り出した前立腺がんがあまりに小さかったので、手術標本をみた病理学の専門医に、泌尿器科の人は指先に眼がついているのかとまで言われたものです。

■前立腺がんのマーカーであるPSA

 でも最近は名人芸ではなくても客観的な方法があります。採血、採尿などの一般的な検査のほか腎盂・尿管・膀胱造影、超音波、尿流曲線、腫瘍マーカー、CT、MRIなどを駆使して前立腺の状態を細かく把握できます。

最終的には前立腺に針を刺して前立腺の組織の一部を採って顕微鏡でがん細胞がないかを調べる方法がとられます。肥大症かと思っていたらがんだったというのが一番困りますので、診断は確実にする必要があります。

 以下は前立腺がんのマーカーであるPSA(prostate specific antigen)について解説します。

PSAは前立腺がんから特徴的に出ているものではなく、正常の前立腺の組織からもでているものなのですが、前立腺がんがあると量が増えるのでマーカーとして利用できます。

 基準値は4.0ng/ml(血液1ミリリットルの中に存在するPSAが4.0ナノグラム)以下です。

前立腺がんのマーカーとしてみるときの根拠は、PSAが4.0ng/ml以下の人の中にがんの人は0.2%以下ですが、4.1~10.0では20%、10.1以上では40%の人にがんが存在することが分かっています。これが根拠になるわけです。

■繰り返し測定による時系列データで判断する

 逆にいえば10.1以上でも60%の人には前立腺がんは確認できないということです。さらに基準値は40歳代2.0、50歳代3.0、60歳代4.0、70歳代5.0、80歳代6.0とする考え方がありますので、年齢による変化を加味して判定する必要があります。

従って1回の測定では確実性に問題がありますので、繰り返し測定による時系列データで判断するべきでしょう。

 前立腺がんは普通はどんどん進行するタイプではありませんので、時系列データがそろうのを待っても手遅れになる可能性は低いと思われます。

時系列データをとっていて数値が2倍になる期間が短く、どんどん右肩上がりに上昇する場合は要注意です。腫瘍マーカーといってもがんである確率はこの程度のものなのです。

近くて長いオシッコ~前立腺肥大を疑え


■年齢とともに前立腺は肥大する

 トイレで排尿していると後から若者が入ってきて、さっさと用を足して先に出ていってしまい、自分はまだタラタラ、ポタポタと出きっていないといった経験はありませんか。

 排尿に時間がかかる、切れが悪い、トイレに行って1時間も経つとまた行きたくなり外出先ではトイレ探しに苦労するが実際にはさほど溜まってはいなかった、

残尿感がある、夜間に3回以上トイレに起きる――、早い人は50歳代からこんな症状が気になる場合があります。いずれも前立腺肥大の症状です。

 前立腺は男性の膀胱の直下にあるクルミ大の重さ15から20グラムほどの器官で、精子に栄養を与えるなどの働きをしていますが、生殖年齢を過ぎた人にはあまり役に立ってはいないものです。

 しかし、加齢と共に少しずつ肥大して直上にある膀胱を圧迫し、膀胱の容量を少なくしてしましいますので、溜めておける尿量が減り、種々の症状がでてくることになります。70歳以上の70%位の人は明らかな症状はなくても肥大が存在します。

 昔は日常生活に不自由を感じるようになって泌尿器科を受診すると、肛門から指を入れて前立腺を触診するだけで経験豊かな泌尿器科医なら肥大症かがんかは区別ができました。がんの大きさが5ミリ以下でも分かる名人がたくさんいたのです。

 手術で取り出した前立腺がんがあまりに小さかったので、手術標本をみた病理学の専門医に、泌尿器科の人は指先に眼がついているのかとまで言われたものです。

■前立腺がんのマーカーであるPSA

 でも最近は名人芸ではなくても客観的な方法があります。採血、採尿などの一般的な検査のほか腎盂・尿管・膀胱造影、超音波、尿流曲線、腫瘍マーカー、CT、MRIなどを駆使して前立腺の状態を細かく把握できます。

最終的には前立腺に針を刺して前立腺の組織の一部を採って顕微鏡でがん細胞がないかを調べる方法がとられます。肥大症かと思っていたらがんだったというのが一番困りますので、診断は確実にする必要があります。

 以下は前立腺がんのマーカーであるPSA(prostate specific antigen)について解説します。

PSAは前立腺がんから特徴的に出ているものではなく、正常の前立腺の組織からもでているものなのですが、前立腺がんがあると量が増えるのでマーカーとして利用できます。

 基準値は4.0ng/ml(血液1ミリリットルの中に存在するPSAが4.0ナノグラム)以下です。

前立腺がんのマーカーとしてみるときの根拠は、PSAが4.0ng/ml以下の人の中にがんの人は0.2%以下ですが、4.1~10.0では20%、10.1以上では40%の人にがんが存在することが分かっています。これが根拠になるわけです。

■繰り返し測定による時系列データで判断する

 逆にいえば10.1以上でも60%の人には前立腺がんは確認できないということです。さらに基準値は40歳代2.0、50歳代3.0、60歳代4.0、70歳代5.0、80歳代6.0とする考え方がありますので、年齢による変化を加味して判定する必要があります。

従って1回の測定では確実性に問題がありますので、繰り返し測定による時系列データで判断するべきでしょう。

 前立腺がんは普通はどんどん進行するタイプではありませんので、時系列データがそろうのを待っても手遅れになる可能性は低いと思われます。

時系列データをとっていて数値が2倍になる期間が短く、どんどん右肩上がりに上昇する場合は要注意です。腫瘍マーカーといってもがんである確率はこの程度のものなのです。

前立腺がんの生存期間を延長! 骨転移治療薬「ラジウム223」の力


どのがんでも起こり得る骨への転移。特に前立腺がんは骨に転移しやすく、進行すると痛みや骨折などを起こし生活の質が著しく損なわれる。近年は骨の健康への対策が進み、画期的な新薬も登場している。

 前立腺がんの国内の推定患者数は約9万2千人で、2015年の予測では男性のがんでトップになった。

 前立腺がんと診断された人のうち、転移も見つかる人は約1割いる。そのうちの大半が、背骨や肋骨、骨盤といった骨に転移している。

 骨は通常、古い細胞の破壊と再生(代謝)を繰り返しながら元気な骨を保っている。代謝のバランスは「RANKL(ランクル)」という物質などが維持しているが、骨転移などがあると均衡が取れなくなってしまう。

 前立腺がんが進行している場合、がん細胞を増殖させる男性ホルモンの働きを抑える「ホルモン療法」がおこなわれる。

「男性ホルモンには骨を強化する役割があります。それを抑制するホルモン療法を1~2年以上おこなうと、骨密度が低下して骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になりやすくなります」

 こう話すのは、東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科教授の鈴木啓悦医師だ。骨粗鬆症になると、背骨の圧迫骨折や股関節の骨折が起こりやすくなる。これらが原因で車椅子の生活や寝たきりになれば、今度は肺炎にかかりやすくなり、命を落とすこともある。

「薬の進化により、前立腺がんで骨転移のある患者さんの生存期間は以前の約3年から約4年に延びています。しかし、骨折して歩けなくなってしまっては生活の質を保てません。骨転移と骨粗鬆症の両面から『Bone Health(骨の健康)』対策をすることが重要になります」(鈴木医師)

 千葉県在住の石井健三さん(仮名・67歳)は、13年の春ごろから軽い腰痛に悩まされるようになったが、放置していた。

 同年秋に市町村が実施する健康診断を受診。前立腺がんになっているかどうかを調べるPSA検査を受けると、正常値が0~4ng/mlのところ340ng/mlと異常に高い値が出た。石井さんはすぐに東邦大学医療センター佐倉病院の泌尿器科を受診した。

 担当した鈴木医師は次のように話す。

「前立腺を詳しく検査したところ、がんが見つかりました。そしてCT(コンピューター断層撮影)検査と骨シンチグラフィで、骨に転移していることもわかりました」

 骨シンチグラフィとは、がんが骨に転移しているかどうかを確認できる検査だ。石井さんは背骨と骨盤に合わせて10カ所ほどの転移があった。

 がんの増殖を抑えるため、すぐにホルモン療法を開始。次いで、骨転移や骨粗鬆症の治療に使われるデノスマブの治療を始めた。

 デノスマブは12年、製品名「ランマーク」で骨転移の治療薬に、13年には「プラリア」という製品名で骨粗鬆症薬として使えるようになった。いずれも皮下に注射する。“ヒト型抗RANKL抗体”というジャンルの薬で、ランクルにピンポイントで結合して作用を止める。そのため骨の破壊を抑え、痛みや骨折といった症状を軽くする効果がある。鈴木医師はこう話す。

「石井さんは治療開始から約3年が経過し、一時はPSA値が0.2ng/mlまで下がりました。最近は1.1ng/mlまで上昇しているため経過観察中ですが、前立腺がんは小康状態を保っています。骨転移も悪化することなくコントロールできています」

 そしてこう付け加えた。

「前立腺がんは内臓への転移が少ないがんです。ただし、薬が効かなくなると骨に転移し、その後、内臓に転移します。とにかく骨転移を抑えることが第一です。骨転移を制御できれば、のちの体調を改善することにもつながります。痛みが出る前から治療することが大切です」

 骨転移への対策には、デノスマブのほかにゾレドロン酸や、放射性医薬品のストロンチウム89という薬があった。しかし、痛みの軽減や骨折などの発症を抑制・遅延させる効果しかなかった。

 そうしたなか、今年6月に前立腺がんに対する骨転移治療薬として、初めて生存期間を延ばす薬が登場した。放射性医薬品の「ラジウム223」だ。ホルモン療法が効かなくなった前立腺がん(CRPC)患者の9割に最終的には骨転移がみられ、同剤はこうした患者が適応になる。

「前立腺がんの骨転移の治療は、従来は痛みなどの緩和が目的でした。ラジウム223は骨のがん細胞そのものにダメージを与えるため、生存期間の延長が望めます」

 そう話すのは北里大学医学部泌尿器科教室の佐藤威文医師だ。

 同剤は放射線のなかでもα線を放出する国内初の薬だ。静脈から体内に入ると、骨代謝が活発ながん細胞部分に取り込まれる。β線を照射するストロンチウム89に似ているが、α線はβ線より強力な高エネルギーを照射し、がん細胞のDNAの二重らせん構造を切断する。DNAが複製できないようにして、がん細胞も作らせないようにする仕組みだ。

 これまでの放射性医薬品では生存期間が延びることはなかったが、臨床試験では平均で3.6カ月延長すると示されている。

罹患数予測トップ 前立腺がんは切らずに放射線治療で治す


気温の低下とともにトイレが近くなる中高年も多いだろう。医師に相談した際、見つかることがあるのが、日本人男性の間で急増する前立腺がんだ。尿道を包む前立腺ががん化する病気で、2004年までは3万人程度だった年間罹患数が、2016年に発表した国立がん研究センターの予測では9万人超となった。

 前立腺がんの罹患数予測は男性のがんのトップだが、なぜ急増しているのか?JCHO東京新宿メディカルセンター放射線治療科の黒崎弘正部長が言う。

「食生活の欧米化などといわれますが、単純に日本人の寿命が延びたからです。前立腺がんの8割は65歳以上の高齢者。がんは細胞分裂の際の転化ミスが原因といわれ、高齢化が進むほど患者数は増えます。検査精度が上がったことも大きい。採血だけで済み、検査精度の高いPSA検査が、ほとんどの人間ドックで行われ、早期発見が可能になっています」

 PSAとは前立腺の上皮細胞と尿道の周囲の腺から特異的につくられて分泌される糖タンパクの一種。前立腺にがんができると、この分泌量が正常の2倍以上に増えるといわれている。

「PSA検査をきっかけに体の細胞を採取して顕微鏡で調べる精密検査を受け、がんと確定する人が増えているのです」(都内の泌尿器科医)

 最近では高精度のMRIと超音波検査立体生検を組み合わせた「フュージョン生検」と呼ばれる新たな画像診断検査法も開発されており、1センチ以下の小さながんでも発見できるようになっている。

「かつては、前立腺の治療は前立腺の周りを含めごっそり取る“全部切除”が常識とされ、開腹手術が選択されてきました。しかし、前立腺がんは進行が遅く、5年生存率は80%以上。治療しない方が健康に暮らせるケースもあるので、待機療法を選択する人もいます。また、排尿や勃起に関わる神経を残すなど患者さんの負担を軽くするため、腹腔鏡手術やロボット手術なども増えています」(黒崎部長)

■手術と治療成績は同じ

 そんななか、改めて注目されているのが“切らずに治せる”放射線治療だ。すでに複数の臨床試験を併せて分析した結果、限局性前立腺がんの生存率は手術と同等とわかっている。

 前立腺がんの放射線治療というと、マスコミは電子よりも重い「重粒子」や「陽子」をがんにぶつけて破壊する「粒子線治療」をもてはやしてきた。しかし、治療費が高いうえ、設備が大掛かりで受け入れる患者数に限りがある。

 一方、従来の放射線治療機(ライナック)では正常な細胞に影響を与える可能性がある。直腸のガスや膀胱の貯尿量などで前立腺は日々、位置が変わるからだ。患者の皮膚にマーキングして、そこに向けて照射するライナックでは、微妙なずれが発生する恐れがある。

「そこで、より高い治療効果が得られる放射線治療としてトモセラピーへの関心が集まっているのです。トモセラピーはIMRTにCTを組み合わせたような放射線治療機です。治療のたびにCT画像で患部を正確に知ることができるうえ、360度あらゆる方向からピンポイントで細い放射線を当てます。結果、周辺の正常組織を損なうことなく、患部に強い照射ができるのです。都内では当院を含め、4施設しか設置されていませんが、費用も粒子線に比べればかなり安い」(黒崎部長)

 前立腺がんの治療はほかに、前立腺がんのエサになる男性ホルモンを抑えるホルモン療法や抗がん剤治療、塩化ラジウムによるアルファ線治療などがある。選択肢が複数あるうえ、他のがんに比べて何が自分にベストかを考える時間的余裕があるケースも多い。前立腺がんが見つかったら、慌てずじっくり考えて選ぶことだ。

死亡リスク3割減 急造「前立腺がん」の新たな治療法とは


 前立腺がんが猛烈な勢いで増えている。国立がん研究センターの予想によると、今年中に前立腺がんを新たに患うと予想されている人は9万人余り。ここ10年で2倍以上の増加だ。

 この病気は尿道を包む前立腺が、がん化する。進行すると、骨に転移することが多い。こうなると治療法は限られるが、今年3月に生存期間の延長が期待できる新たな放射線療法が認められた。どんな治療法なのか?

「世界で初めて、α線と呼ばれる放射線を用いて、骨に転移したがん細胞に対して治療効果が認められた治療法です。静脈注射で『ゾーフィゴ』と呼ばれる放射性医薬品を体内に投与。体の内側から放射線を出して治療します」

 こう言うのはJCHO東京新宿メディカルセンター放射線治療科(東京・新宿)の黒崎弘正部長だ。

 ゾーフィゴにはα線を出す「ラジウム-223」と呼ばれる放射性物質が含まれている。この物質には、骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすい性質がある。注射で体内に運ばれると、代謝が活発となり、がんの骨転移巣に多く運ばれる。そこからα線が放出され、骨に転移したがん細胞の増殖を抑えるという。

「骨転移した前立腺がんの治療に使われる放射性医薬品は、他に『メタストロン』があります。静脈注射で投与して、体の内側から放射線を出すのはゾーフィゴと同じですが、あくまでもこれは痛みを緩和する治療法です。比較的弱い放射線であるβ線で痛みの原因となるがん細胞を殺す。そのことで、鎮痛効果をあげてきたのです」(黒崎部長)

 しかし、ゾーフィゴは破壊力がまったく違う。α線はβ線の7000倍の重量があり、突き抜ける力は紙1枚程度と弱いものの、目的物に衝突したときの放射線量は強烈だ。

「複数の国々で共同実施された臨床試験では、ゾーフィゴを使用した患者さんは、そうでない患者さんに比べて生存期間が4カ月延び、30%の死亡リスクの低下が認められています。これまでは、痛みを取るだけだった患者さんに生存期間延長の希望が出たことは朗報です」(黒崎部長)

 JCHO東京新宿メディカルセンターは、メタストロン治療で都内1位の実績を誇ってきたが、今後は新しい治療法に変わるだろうという。

 中には、“新たな治療法といっても、たったの4カ月しか長生きできないのか”と思う人もいるかもしれない。しかし、これはあくまでも平均的な数字。より長生きする人もいるということだ。

■骨に転移しても諦めない

 治療は簡単だ。4週間ごとに1回の間隔で静脈注射を行うだけ。最大でも6回で済む。気になる副作用は貧血や下痢や嘔吐、食欲減退、骨痛、疲労など軽度なことが多い。

 問題は家族への影響だ。体内から放射線を発するだけに、患者の身近にいる家族に被害はないのだろうか?

「ゾーフィゴ静脈注射から発せられるα線は、患者さんの体内では0.1ミリ未満の範囲にしか影響を及ぼしません。ほとんど影響なしと言っていいでしょう。ただし、ゾーフィゴの静脈注射後1週間程度は、α線を出す放射性物質のラジウム-223が血液や便などに微量に残る可能性があります。

そのため、患者さんの便や尿などに触れる可能性がある場合や、これらで汚れた衣類などを触る場合はゴム製の使い捨て手袋を使う必要があります。子供や妊婦さんの接触も最小限にする必要があります」(首都圏の放射線治療医)

 現在、都内でこの治療法を実施しているのはJCHO東京新宿メディカルセンターを含めて4施設のみ。“骨にまで転移したらがんの治療はおしまい”などとあきらめずに、新しい治療法を試してみてはどうだろう。

前立腺がん検診、受けるべき?<上>平均寿命の延長に寄与せず


先日シンガポールでアジアの泌尿器科医が集まる大きな学会がありました。やはり大きな話題は、アジアのどの国でも増えている前立腺がん死亡の対策です。前立腺がんについて、今回から3回に分けてご説明いたします。

 筆者はアジアの食生活が大きく変わり、脂肪の多い食事が増えてきたこと、そして大豆にがんの予防効果があることを報告して多くの国々の医師から声をかけられました。

 例えば牛乳摂取量は前立腺がん・乳がんの発生と密接な関係がありますが、日本では戦後、牛乳を飲む人が年々ウナギ登りに増えています。この傾向はほかのアジアの国でも見られています。

 欧米では男性がんのトップであることもあり、病期に応じたさまざまな治療法が開発されてきました。ロボット手術ダヴィンチや、転移がんに対する新しい薬剤が開発されています。

 特に転移がんに対する新しい薬剤の登場により、治癒はしないものの生存時間が大幅に伸びましたが、一方で薬剤が高額なため、保険財政に影響を与えつつあります。

◆もっとも費用対効果が高い予防と早期診断治療

 日本は幸い、どの薬剤も制限なく処方が可能ですが、ヨーロッパでは処方できる薬剤が制限されたり、アメリカでは治療回数が制限されています。また、アジアの国の多くは国民皆保険制度ではないので、高額な薬剤は富裕層しか享受できません。日本でも薬剤の費用がはたして「割に合う」ものなのか、薬剤の費用対効果が政府で検討されています。

 実際、日本ではロボット手術による前立腺がんの手術は年間1万2000件ありますが、この手術にかかる費用の総額よりも、これらの薬剤にかかる費用のほうが数倍高いのが現実です。しかし財政上もっとも費用対効果が高いのは前立腺がんの予防、そして早期診断・治療による治癒と言えます。

 PSA(前立腺特異抗原)という血液項目があります。PSAが高値になると前立腺がんがある可能性が高く、また治療によりPSAは下がります。現在70%を超える市町村はこのPSAを用いた前立腺がん検診を行っていますが、残念ながら受診率は10%程度です。アメリカでは70%を超える男性が1回はPSAを測定していると言われており、実際アメリカでは前立腺がんの死亡者は既に減少してきています。

◆国民の平均寿命の延長に寄与しない検診

 ところでこのPSAを用いた前立腺がんの検診を、税金を用いて一律に行うことは、日本でもアメリカでも勧められていません。この理由は、前立腺がんを早期に発見して治療しても、結局ほかの病気で死亡することが多いため、国民の平均寿命の延長に寄与しないこと、また早期の前立腺がんの治療は個人の余命に影響しないばかりか、治療の副作用が生活の質を落とすからというものです。

 また、PSAは必ずしも治療を必要とするがんを発見することに役立つわけではありません。しかし、国民全体といった大きな集団の健康を研究する疫学の見地からは正しくても、個人のレベルから見ると、検診を受けないで、転移があり治癒しない状況でがんが見つかると「早く検診を受けていれば」というジレンマに陥ってしまいます。

 過剰診断、過剰治療は避けつつ、前立腺がんで亡くならないためにはどうするか、これが世界の泌尿器科医の関心事です。

20人以上の女性とセックスした男性は前立腺がんリスクが低くなる!?



 前立腺がんは男性特有のがんで、その罹患者数は増加傾向にあるといわれる。そんな中、ちょっと目を引く研究結果が報告された。

 生涯のうち20人以上の女性とセックスすれば、前立腺がんリスクが低下するという。これは、相手が女性の場合であって、男性と関係を持つと、反対にそのリスクは増えるのだそうだ。

 男性はニンマリ、女性からしてみれば、「冗談じゃない」とお叱りを受けそうな結果ではある。

□セックスと前立腺がんリスクとの関連は未解明領域も多いが…

 性生活と前立腺がんリスクとの関連は、依然として論争の的だという。激しい性生活は疾患リスクを高めると指摘する研究もあれば、それに真っ向から反対する研究もある。

 「Cancer Epidemiology」誌で発表されたカナダのモントリオール大学による研究では、生涯を通しての性的パートナーの数が前立腺がんリスクに影響するかどうかを調べた。研究チームは、「前立腺がんおよび環境研究(PROtEus)」に参加した男性3,208人のデータを分析した。2005~2009年に前立腺がんの診断を受けたのは1,590人だった。残り1,618人には、その徴候が認められていない。

□生涯で20人以上の女性とセックスするとリスクは28%低下

 被験者全員には、性交渉に関する質問や、社会人口統計学、環境、ライフスタイルの要因に関する質問に答えてもらった。

 このデータを分析したところ、20人以上の女性と夜を共にした男性は、性交渉を持つ相手の数がそれより少ない男性に比べ、前立腺がんリスクが28%低かったそうだ。また、浸潤性の強いタイプがんのリスクも19%低いという。

 さらにデータによると、性的パートナーがいたことがないと回答した男性は、いると回答した男性に比べ、疾患リスクが2倍になるという。

 これまでの研究では、親族に前立腺がん患者のいる男性が前立腺がんに罹るリスクが2倍高くなり、家族の病歴が大きなリスク因子になることが指摘されている。しかし、生涯における性的パートナーの数が影響することに、研究者は関心の目を向ける。

□前立腺がん罹患リスクには射精の頻度も影響?

 こうした結果の決定的な理由は分かっていないが、「多くの性的パートナーを持つと、射精の頻度が高くなる。それは以前の研究から、前立腺がんを防ぐ要因となることが分かっている」と、研究者は説明した。

 男性は射精するほど、前立腺液に含まれる発がん物質の濃度が薄くなると報告する研究や、射精の頻度が高くなると、前立腺がんに関連する管腔内クリスタロイドの生成が減ると指摘する研究もある。

□性感染症や初体験の年齢との関連は認められず

 性感染症(STI)との関連も調べたが、生涯で被験者が性感染症に罹った数は、前立腺がんリスクに影響しなかったという。

 がん発症は、生涯で最低1度は罹ったと報告した男性の12%にとどまっている。また、男性の初体験年齢と前立腺がんリスクとの間に関連性は認められなかった。

□20人以上の男性と関係を持つ男性のリスクは2倍高くなる

 しかし、相手が男性となると、結果がまるで変わってくる。男性が20人以上の男性と関係を持つと、全く関係しない男性と比べ、あらゆるタイプの前立腺がんリスクは2倍になる。浸潤性が少ないタイプのがんの場合は500%も高くなるそうだ。

 こうなる理由ははっきりしていないが、このグループは、性感染症に罹る割合が高いからではないかと、研究者は推測している。また、アナルセックスにより前立腺が外傷を受け、それががんリスクを高めているとも考えている。

 多くの男性は、科学を味方につけたような気になるのかもしれないが、「浮気」の言い訳に使われるとしたら…。浮気がバレた際に「前立腺がんリスク軽減」で切り抜けるのは無理がある、と思うのは筆者だけではないだろう。

前立腺がん 赤身肉をフライパンで焼き食べ危険率上昇と判明


白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、前立腺がんと、肉の調理法の関係性を解説する。

 * * *

 がんは、日本人の直接の死亡原因の第1位として今も患者が増えているが、すべてのがんが増加しているわけではない。胃がんや肝臓がんによる死亡率は下がっているのだが、それを上回って、その他のがんの死亡率が上昇しているのだ。

 その中でも増加率が最も顕著なのが、男性の前立腺がんと女性の乳がんだ。これらのがんの発症はホルモンに関係しているといわれているが、最近の食事の欧米化が増加傾向に大きく影響しているとも言われている。

 南カリフォルニア大学公衆衛生学教室のアミット・ジョシー博士らの研究チームは、早期前立腺がん患者717人、進行性前立腺がん患者1140人、対照群1096人の計2953人の食事内容を調査し、前立腺がんの発症との関連性を調査した。

 ジョシー博士らは、食事に関して特に肉の摂取頻度やその調理法に注目した。

その結果、豚肉や牛肉など赤身肉を週に1.5回以上、フライパンで焼いて食べている人は進行性前立腺がんの危険率が30%も上昇していることを確認した。また、直火焼きなどで高温調理した赤身肉を週に2.5回以上食べると危険率はさらに40%まで上昇。

 興味深いことに、ステーキよりも中までよく火が通りやすいハンバーグの方が危険率は高かったという。

高温調理ではタンパク質から発生する「HCas」と呼ばれる物質や、脂質の焦げ部分に含まれる「PAHs」と呼ばれる物質などが前立腺細胞の代謝により発ガン物質に変化するため、発ガン性が上昇する可能性をジョシー博士は指摘する。

 一方、鶏肉の危険率を調べると、フライパン調理では赤身肉と同じく危険率が上昇したが、直火焼きでは逆に危険率が低下したという。

 これらのデータからすれば、焼き肉の焼き過ぎ、食べ過ぎは控えた方が良さそうだが、鶏肉を食べる時にはフライパンではなく焼き鳥のような直火料理を選択した方が良さそうだ。

実際、日本食は欧米の肉料理に比べて、フライパンによるグリルより煮物や蒸し物が多い。日本人の前立腺がん罹患率が米国より少ないのは人種の差よりも食文化の調理の差にあるのかもしれない。

ウコンに前立腺がん予防効果 注目の成分「クルクミン」



この時期に起こりがちなカラダの不調、特に肝機能の改善に有効な栄養素が今、注目されつつあります。今回はその『クルクミン』という成分についてお話しします。

 クルクミンとは、ウコンに含まれるポリフェノールの一種。ウコンといえば、二日酔いに効くことで知られていますが、それはクルクミンの持つ胆汁分泌促進作用が肝機能を高めてくれるからなのです。

 ウコンはカレーに多く含まれる成分。お酒好きな方の中には、もしかしたら飲み過ぎた翌日、カレーが食べたくなるという方もいるかもしれませんね。

 クルクミンは他にも、がんや動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、アルツハイマーなど、加齢に伴う疾患も予防する働きがあります。

 がんの中でも近年急増しているのが、前立腺がんです。2020年には、患者数は肺がんに次いで第2位になる予想。頻尿や尿道切迫などを引き起こし、排尿すら困難になることも。また、転移しやすいという問題を抱えることにもなります。

 しかしここにきて、前立腺がんに対して、クルクミンに予防効果があることが研究結果として発表されました。

帝京大学医学部秘尿器科学准教授の井出久満先生の報告によれば、前立腺がんにクルクミンを投与したところ、『PSA(前立腺特異抗原)』が減少し、発症を抑制する働きを示したのです。

別の研究では、クルクミンが転移をストップさせるという結果も出ています。

 でもこのクルクミンは、摂取しても非常に体内に吸収されにくい成分。せっかくの効果を存分に発揮できないという欠点がありましたが、現在では細かい粒子に加工することで、吸収率を27倍にも上昇させる開発がなされています。

 前立腺がんは、性生活にも関わってくる重大な病気。パートナーとの良好な関係を末永く保つためにも、お酒の飲み過ぎに関わらず、クルクミン入りのウコンのドリンクやサプリメントを常飲してみてもいいかもしれません。

 ■山下真理子 医師。京都府立医大卒。美容やアンチエイジングに関する講演を数多く行う。著書に「女医から学ぶ あなたの魅力が10倍増すセックス」(ぶんか社)。

45歳が髪老化の分かれ目です!【白髪、パサつき、薄毛、ペタンコ、うねりを解消】


OVER45歳の方々がみな口を揃えて言うのが「45歳からガクッと来るよ」ということ。それを聞くたびにガクッとって一体何がどうなるの? と戦々恐々。そこで実際その“ガクッと”を経験した先輩美容賢者に実体験とその乗り越え方を聞いてきました。先輩方の愛のあるメッセージが刺さります。

★<髪のガクっと>白髪、パサつき、薄毛、ペタンコ、うねりなど髪悩みがオンパレード
複合的に現れるので頭皮ケアやサプリ、美容家電、サロンなど全方位から肌以上にケアをスタートする人が多数。

◯ 顔まわりの悩み筆頭である 「たるみ」のケアにも直結するのでかなり重要視
白髪も確実に進行したのでヘマチン入りや3STEPで美容院に行った後の髪質になれるシャンプーなど複数を常備。お風呂で使えるスカルプケア用EMSで髪の土台=頭皮ケアを徹底。(偏愛系フードライター 小石原はるかさん 49歳)

髪が生まれる環境、今生えている髪の両方をダブルケア。3ステップで、シャンプー、トリートメントした後、最後にコテをあてるとさらっさらに。パーフェクト3 ¥15,400(ミネコラ)

頭皮だけでなく顔にも使える低周波EMS。ブラシタイプで楽チン。ミーゼ スカルプリフト ¥33,000(ヤーマン)

◯ 潤いが減り パサパサ、モサモサ
元々のクセがより強く。45歳からはボリュームが大事。トップや根元は触らず、表面は強め、中は軽くのストレートパーマで、さじ加減を大事に。毎朝必ずコテでトップを立ち上げます。(mix&mingle代表 松井美緒さん 47歳)

左から:根元にスプレーしてボリュームUP。
セラムウォーター フレックスボリューム ¥3,300(uka Tokyo head office)

ドライヤーの熱や紫外線から守りカラーの持ちもキープ。顔にも使える。
ピュアオイル ¥3,300(ZACC)

ふりかけて根元を立ち上げるスタイリングパウダー。
オージス ダストイット ¥1,650(シュワルツコフ プロフェッショナル)

◯ 頭皮の健やかさを保つと自律神経も整う
ヘアサロン・SINCERELYで定期的にヘッドスパを受けています。頭皮が柔らかいと血流がよくなり、リラックスでき自律神経が整います。頭皮をほぐすと目の疲れがスッキリ。(シンシア・ガーデン代表 杉谷惠美さん 46歳)

◯ ありとあらゆる毛にハリとツヤがなくなった
髪には睡眠、疲れも大きく関わるので疲れたら昼寝の時間を作ったり、徹夜は絶対しない。6歳の息子と21時に一緒に寝て、3時に起きるを心がけます。頭皮の美容液を投入し、できることをコツコツと。(ビューティライター AYANAさん 45歳)

シャンプー前の頭皮用オイル。
ビロードオイル アーバン アーユルヴェーダ ¥5,280(AMATA)

宮本亞門がいま明かす「前立腺がんとの闘いのすべて」


2019年2月、テレビ番組の企画で『人間ドック』を受けた。 宮本亞門(63)も所属事務所のスタッフも「仕事で健康チェックができるなら一石二鳥」というくらいの、軽い気持ちでオファーを受けたという。

近年、急増している男性のがん「前立腺がん」で死なない方法とは!?


 そもそも、男性特有の前立腺がどんな機能を持つ臓器か詳しく知らない人も少なくないのではないだろうか。前立腺がんの治療を専門にする東京慈恵会医科大学泌尿器科の頴川晋教授はこう話す。

 「前立腺は尿がたまる膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように位置する臓器です。40歳以上の8割はこの臓器が大きくなる前立腺肥大症に罹ると考えられているため、年齢によって大きさや重さは異なりますが、20歳くらいの若い成人男性の場合だと大きさは栗の実ほど、重さは15グラムほどです。精液を構成する成分の3分の1を作っていることが大きな特徴で、射精された精子が女性の膣の中に留まりやすいよう、つまり、妊娠しやすいよう粘り気のある半固形の状態を保たせているのも、前立腺から分泌される成分なのです」

 栗の実ほどの小さな臓器が、実は人間の命をつくるために大切な役割を果たしているわけだが、この前立腺に起こるがんが増えているというのだ。

 国立がん研究センターによると、2000年に約2万人だった患者数は、2005年には倍増して4万人を超え、2014年には約7万4000人に到達、男性のがんの罹患数で4位に浮上した。

 その後も増え続けており、2016年に施行された「がん登録推進法」に基づき厚生労働省が行った調査によれば、同年における患者数は約9万人で、男性のがんの多さでは2位。2020年以降には胃がんを抜き、男性が罹るがんのトップになると予想されている。

★有効な検査方法普及で患者増加

 それでは、なぜ急増しているのか?

 頴川教授は、(1)高齢化、(2)食事の欧米化、(3)効果的な検査方法の普及―の3点を理由に挙げる。
「他のがんと同じように、前立腺がんも加齢によって発症リスクが上がります。特に50歳以降に罹りやすくなると考えられており、現在、患者の罹患平均年齢は72歳です。長生きする人が増えることで、患者が増えているのは間違いないでしょう。一方、食事の欧米化の影響は厳密には分かっていませんが、動物性タンパク質の摂り方が変わったこと、つまり、魚を食べる量が減り、赤身の肉を食べる量が増えたことが影響している可能性があると考えられています。そして重要なのは、効果的な検査方法が普及して、見つかりやすくなったことです」

 頴川教授の言うその方法とは、「PSA検査」と呼ばれるもの。PSAとは、前立腺から分泌されるタンパク質の一種であり、採血によってこの成分がどれくらい血液中に含まれているかを調べるのがPSA検査だ。

 がんなどによって前立腺に異常が起こると、PSAが血液中に放出されて濃度が上がるため、前立腺がんの疑いがあるかどうかを調べるのに有効だという。

 PSA検査は、元は法医学の見地からレイプ事件の検査などに行われていたが、’86年に海外で臨床に応用され、後に日本にも導入された。

 頴川教授は、1992年に日本で初めて人間ドックのオプションにPSA検査を組み込んだ、検査普及の一端を担った医師でもある。現在は健康診断や人間ドックのオプションとして、2000円ほど追加料金を払えば受けられる。

 診断するためには、MRIや前立腺の組織を調べる生検を行う必要があるが、前段階のスクリーニング方法が普及したことで、発見率が上がったというわけだ。

★早期発見により完治の可能性大

 見つけやすくなったというが、前立腺がんを予防する方法はないのだろうか。胃がんについては、発症の主因となるピロリ菌への感染の有無を調べ、感染していれば除菌することで「ほぼ防げる」と、消化器内科医は口をそろえるが、前立腺はどうなのだろう。

 「今までに予防医学を目的に様々な大規模研究が行われてきましたが、有効な方法は見つかっていません。そもそも、胃がんを除く多くのがんと同じように原因が解明されていないので、防ぐ方法も分からないのです。多くの病気と同じように、前立腺がんも早期発見が最も重要です」(前出・頴川教授)

 頴川教授によれば、前立腺がんは進行すると骨に転移しやすく、骨への転移後は激烈な痛みが出やすい怖い病気だが、転移する前に見つかれば、完治する可能性は非常に高いという。

 「私が若手の医師だった30年ほど前は、入院患者さんのおよそ4割に転移が見られましたが、検査方法の普及などによって、現在、東京慈恵会医科大学附属病院でいえばその割合は5、6%にまで減りました。前立腺がんは胃がんや大腸がんと同じように早期発見が行いやすく、また、早く見つかれば治せる可能性の非常に高いがんなのです」(同)

 治療方法は、手術や放射線療法、男性ホルモンの分泌を減らしてがん細胞の増殖を防ぐことを目指すホルモン療法が挙げられる。これらの治療を行うことで、尿漏れや勃起不全(ED)、血尿、直腸障害などの副作用が起こる可能性はあるが、少なくとも早期発見・早期治療で死の危険性は減らせるわけだ。

 また、前立腺がんは10年以上かけてゆっくりと進行していく特徴があるため、仮に見つかったとしてもがんの状態や症状の有無、患者の年齢や本人の希望によって、治療を行わず様子を見るケースもあるという。

 PSA検査によって、病気の疑いがあるかどうかを調べられるというが、検査を受けたほうがいい目安となる症状はあるのだろうか。

 結論から言えば、他のがんと同じように初期には症状が出ないことが多いため、無症状の段階から検査を受けたほうがいいそうだ。

 病気が進行してがんが大きくなると、前立腺の中を通っている尿道が圧迫されるため、尿が出づらくなったり、残尿が増えることで頻尿になったりすることがある。がんが膀胱に侵食すると血尿を引き起こすこともある。

 尿道に近い場所にがんができれば、初期であってもこれらの症状が起こることはあるが、前立腺がんの7割は尿道から離れた場所に起こると考えられているため、多くの場合、進行しないと症状は起きないという。

 「前立腺がんは50歳頃から罹りやすくなりますが、55歳以上でも治療によって完治する可能性が高いため、55歳を超えたら必ずPSA検査を受けるようにしましょう。それ以降も年に1度のペースで検査を受けることをお勧めします」(同)

 「男性がこれから最も罹るがん」とだけ聞けば怖い印象を抱きやすいが、「55歳を超えたらPSA検査」を胸に留めておけば、あまり死の危険を心配する必要はないのかもしれない。

〈目からウロコの健康術〉 『放置しても安全』は全くの誤解!? 早期発見で「前立腺がん」を完治!


 「前立腺がんは安全なので、放置していても大丈夫」という話を聞いたことはないだろうか。この話を曲解してしまうと、取り返しのつかない事態を招きかねない。

 前立腺がんは、肺がんや大腸がんと同じように、命を奪う恐ろしい病気。まず、その認識を持つことが大事だと専門家は言う。
「いまだに前立腺がんは安全だと思い込んでいる人が多いことに、私たちは驚いています。早期のがんが前立腺内に溜まっている状態を『早期』と言いますが、これにはいくつかのタイプがあります。

早期の前立腺がんのうち、50~55%は前立腺のほぼ全域にがんが分布しているもの、35%は限局しているもののある程度のボリュームがあるもの、そして15%はサイズが小さくて悪性度も低く、放置しても悪さをする危険性の低いものなど、この3タイプです。このうち、最後に挙げたタイプについては、特に治療はせず、経過観察だけを行う“監視療法”が取られることになります」

 こう説明するのは、昭和大学横浜北部病院秘尿器科松原克己医師だ。

 さらに、同医師は続けて
「最後に挙げたタイプ、『小さくて悪性度も低いがんの“監視療法”』が、メディアでたびたび取り上げられる中で、『前立腺がんは放置しても安全』という誤解が広まったのでしょう。その経過観察となるのは、早期前立腺がんの15%にすぎず、残る85%は何らかの治療をする重い病気なわけです。きちっと治療を受ければ分かることですが、曲解してはいけません」と警鐘を鳴らす。

 がんが前立腺の中だけにとどまり、他の臓器への転移がなければ、手術や放射線治療などの適切な治療を行うことで完治も期待できる。しかし、前立腺から離れた場所に転移している場合、5年生存率が45%になると言われるので、いかに早い時期に発見し、治療するかが大きなカギとなる。

 遠隔転移している場合は、がんの進行を抑える治療となるため、完治を目指すことが難しくなる。
「したがって、前立腺がん治療において最も重要なことは、存在するがん細胞をいかに『切除』、または『消失』させ、それ以後の『再発』や『転移』を未然に防ぐ事ができ、さらに、その病気を克服できるかが課題です」(同)本来、患者側が考える前立腺がん治療の目的は、決して「5年生存率の向上」などではなく、「克服」「完治」することにある。

 専門家は次のように説明する。
「しかし、そうは言っても標準治療単独での、前立腺がんの克服は、まだまだ満足のいくレベルではなく、今以上に治療効果を上げ、『がん細胞を消失させること』と『転移や再発を防ぐこと』で本来の目的である前立腺がんの“克服”に向けて繋げていくことだと思っています」ところで、前立腺がんの原因の1つに、男性ホルモンや食生活、遺伝子などが密接に関与していることをご存知だろうか。前立腺がんの発生や増殖に男性ホルモンが深く関与していることは分かっているが、どのようにがんができるのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていない。

 ただ、前立腺には前立腺液を作る働きがあり、前立腺内には前立腺液を作るための管状腺がある。この管状腺の細胞は、日々新しい細胞が入れ替わっており、その過程で細胞が突然変異してがん化し、増殖したのが前立腺がんと言われる。危険因子として加齢や食生活、遺伝が関係することも分かっている。

★食の欧米化により患者数が増加
「こんなデータがあります。前立腺がんは欧米で患者数が非常に多いのに対し、以前は日本ではほとんど発生しませんでした。しかし、日本の食生活が和食から洋食に変化していくにつれ、前立腺がん患者数も増加するようになりました。和食は魚や野菜が中心であり、生活習慣病の改善も期待できる健康食ですが、洋食は肉やチーズ、バター、牛乳など動物性脂肪が非常に豊富であり、高脂肪食品を摂りすぎると前立腺がんのリスクが高くなります」

 こう語るのは、管理栄養士で料理研究家・林康子氏である。そして、さらにこう続ける。
「日本で前立腺がんが増えているのは、食の欧米化にあります。まだこの増加傾向は衰えていません。そのため、近い将来、日本人男性の罹患者数で、前立腺がんが1位になると予想されています。自分の食生活を振り返り、動物性脂肪を摂りすぎないように食生活を見直してみる必要があります」

 とはいえ、前立腺の正常な細胞ががん化した場合、そのがん細胞が健康上の問題となるまで大きくなるには、どれくらいの期間を要するのか。実際、「20~30年」かかるとされる。その一方で、若い人に発症することはほとんどないそうで、60歳以上になると患者数が極端に増えるのだ。

 人口10万人当たりの年代別・前立腺がんの患者数を見ると、60歳では100人程度だが、70歳代になると300人、80歳代では600人を超えるようになる。「発症が高齢者に多いため、がんの進行が他のがんに比べると遅いのも特徴の1つです。しかも、がんの状況によっては無理に『治療』しない場合もあります。このあたりの事で『前立腺がんはほっといても大丈夫』と誤解されてしまうのでしょう」(前出・専門医)

 近年は、1本の注射器から取る血液検査で大半の病状が判別できる時代。とはいえ、前立腺の細胞がんを見つけるには、前立腺の生検が必要になる。肛門と陰嚢の中間、もしくは肛門から器具を挿入して直腸越しに針を刺し、前立腺の組織を採取する方法だ。「通常は6~12本の針を打ち、1本でもがん細胞が見つかればがんと診断されるが、外れればがんは見すごされてしまう。この検査の精度がその後の治療の成果を大きく左右するのです。ただ、肛門から器具を入れる方法は、痛みと出血、または感染症のリスクを伴います。MRI検査でも、安全性を考慮して経皮的針生検を行っています」(同)

 ’20年には男性のがんの中で「肺がん」の次に多いがんになると予測されている「前立腺がん」。特に50歳以上の男性は、喫煙や多量飲酒、食事などの生活習慣を改善することが、予防につながるのだ。

専門医に聞け! Q&A ★PSA(前立腺がんのPSA検査)が少し高い場合


Q:先生が以前に検診でPSAを測るのはデメリットが多く、米国では行われていないと書かれていました。実はその少し前に測定し、5.1でした。PSAは年齢とともに上がると聞いています。前立腺がんが気になりますが、毎月測定し、数値に一喜一憂するのは嫌です。どうすればよいでしょうか。_(62歳・警備員)

A:PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーですが、前立腺炎や前立腺肥大症などの良性疾患でも上昇します。正常値は4ナノグラム/ミリリットル以下です。

 PSAは加齢とともに高くなります。ご質問の方が心配されるのも無理はないでしょう。10ナノグラム/ミリリットル以上のように高い場合は、がんの確率が高まります。4~10ナノグラム/ミリリットルの間は悪性と良性のグレーゾーンですが、がんの疑いも否定はできません。

 PSAは前立腺がんの早期発見に役立ちます。しかし、早期発見は過剰な治療にもつながります。東邦大学医療センター大森病院泌尿器科の中島耕一教授は、
「早期がんの発見は一方で過剰診療の懸念をはらんでいる点も無視できない。PSA検診および生検、前立腺がん治療における利益・不利益を明確にし、患者への情報提供を間断なく続ける努力と、不必要な生検・過剰な治療を回避するシステム構築が泌尿器科医には課せられている」
 と述べています。

●性機能に影響しない薬
 ご質問の方の場合、正常値をわずかに超えています。私はこのような患者さんに対しては、「クロルマジノン」という薬を処方しています。

 この薬は1錠25ミリグラムで、前立腺肥大には1日2錠、前立腺がんには1日4錠を服用することになっています。抗アンドロゲン剤、つまり男性ホルモンを抑える薬なので、インポテンツや性欲低下の副作用があります。

 これを、まず1日に25ミリグラム1錠から処方します。すると、PSAの数値は低下しますが、ほとんどの人には性機能に影響は見られません。

 ご質問の方も、この薬を服用されるとよいのではないでしょうか。
 まずは泌尿器科の医師に相談してみてください。

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牧 典彦氏(ほほえみクリニック院長)
自律神経免疫療法(刺絡)やオゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。ほほえみクリニック(大阪府枚方市)院長。牧老人保健施設(大阪市北区)顧問。いきいきクリニック(大阪市北区)でも診察。

1日1本のソフトドリンクで前立腺がんのリスク増


通常サイズのソフトドリンクを1日1本飲む男性は、治療を必要とする前立腺がんの発症リスクが高くなるとするスウェーデンの調査結果が、26日発表された。

 ルンド大学(Lund University)の博士課程で学ぶイサベル・ドラケ(Isabel Drake)さんらの研究チームは、45~73歳の男性8000人以上を対象に、平均15年間にわたり定期健康診断の受診と食習慣の記録を依頼した。

 その結果、330ミリリットルのソフトドリンクを1日当たり1本飲む男性は、治療が必要とされる比較的重い前立腺がんの発症率が40%高いことが分かった。

これらのがんは、前立腺特異抗原(PSA)検査で発見されたのでははなく、表立った症状が出て見つかったものだった。

 またドラケさんによれば、治療を必要としないことが多い比較的軽度の前立腺がんを発症する割合は、米やパスタに偏った食事をとる男性で31%、砂糖を多く含む朝食用シリアルを頻繁に食べる男性では38%高かった。

なお、中国と日本から米国に移住した人は、自国にとどまった人よりも前立腺がんの発症率が高いことが先行研究で示されている。

 ドラケさんは、食生活の指針を改定するにはさらなる調査が必要だとしつつも、ソフトドリンクの量を控えるべき理由は十分にあると話すとともに、食生活の変化に遺伝子がいかに反応するかをさらに研究することで、特定の高リスク集団にあわせた食習慣ガイドラインの作成が可能になるのではないかと語った。

メタボより怖いロコモ】“骨粗鬆症”は老化ではなく治療すべき疾患


母が大腿(だいたい)骨頸部骨折をして以来、骨折関係の医療セミナーをいくつか取材した。なぜ、こんなことになったのか知りたかったからだ。

 昨年10月、東京・大手町で藤田保健衛生大学医学部の田中郁子講師が「骨粗鬆(こつそしょう)症治療の現状と対策」(主催・アステラス製薬)という講演を行った。田中講師は名古屋膠原(こうげん)病リウマチ痛風クリニックで骨粗鬆症患者の診療にあたっている。

 折しも「10月10日」は転倒の日。高齢者は転倒すると骨折しやすい。最初の骨折を起こすと骨折の連鎖といって次々に骨折していく。田中講師は「だから最初の骨折を起こさないことが大事です」と強調する。

 「骨折をするとまず整形外科にかかって手術で直しますが、あくまで骨折してからのことで、骨折の予防という意味では遅きに失したといえます」

 また、日本の人口ピラミッドについても触れ、富士山型からつりがね型を経てつぼ型になり、若い人が少なく、高齢者が多い頭でっかちの型になったと指摘。総人口に占める65歳以上の人口の割合が7%を超えると高齢化社会、14%超は高齢社会、21%超は超高齢社会だが、1995年には15%超で高齢社会、2007年には21%を超え超高齢社会に突入したと指摘する。

 「今後は高齢者に起こりやすい疾患を考えなければいけません。それが骨粗鬆症です。骨粗鬆症は老化の問題ではなく治療すべき疾患であることを捉えていただきたい。

わが国の年間発生者数は1280万人。それも閉経後の女性に多い。女性の50代で10人に1人、60代で3人に1人、70代で2人に1人と考えられます」

 女性はだんだん身長が低くなり、椎体骨骨折の結果、姿勢の異常がみられるようになる。転倒したり尻餅をついてグシャとつぶれたような椎体骨折の場合は整形外科にかかるが、じわじわとつぶれる場合は痛みも感じないので、医者にかからないケースもあるという。

 「骨は骨代謝を行うことで新陳代謝をしています。骨代謝にはエストロゲンが重要な役割を担っています。閉経によってエストロゲンの分泌が減り、骨代謝バランスがくずれてしまう。高齢社会になればなるほど女性の骨粗鬆症のリスクが増えるのです。

もう1つ大事なことは、成長期の子どもたちにはちゃんと栄養を取らせ、十分な運動をさせ、骨形成が十分行われるようにしなくてはいけません。これは将来わが国の骨粗鬆症を増やさない上では重要な課題です。

同様に妊娠出産期の若い女性に多い無理なダイエットも考えものです。そして子供の骨を形成するという意味で妊娠中の栄養も大事です」田中講師はダイエットや子どもたちの偏食にも警鐘を鳴らす。 

 ■ロコモ ロコモティブシンドローム=運動器症候群の略。筋肉や骨などの衰えで歩行などに支障を生じ要介護リスクが高まる。予備軍含め4700万人が危機にある。

前立腺がん手術後 尿のじゃじゃ漏れを防ぐ唯一の治療法とは


前立腺がんの手術で命は助かった。でも、尿漏れが止まらない……。前立腺全摘後の重篤な尿漏れの治療が、人工括約筋埋め込み手術だ。国立がん研究センター東病院泌尿器・後腹膜腫瘍科の増田均科長に聞いた。

 前立腺がんでがんが前立腺内にとどまっている場合などは、前立腺全摘手術が行われる。前立腺がんは、排尿に関係する尿道括約筋と近い場所にできることが多く、大抵の患者に術後、尿漏れが起こる。

「一般的に、6カ月くらいで急激に尿漏れが改善し、1年も経てばなくなります。それまではパッドで対応します」

 ところが、まれに“じゃじゃ漏れ”が6カ月を超えても続き、パッドでは到底間に合わず、おむつを手放せなくなる人がいる。

 患者の肥満度、骨盤の形、尿道括約筋の個人差などさまざまな要因が関係しており、「米国でトップクラスの腕の医師が手術をした場合でも2・3%の比率で起こる」という報告もある。

■人工括約筋埋め込み術で劇的に改善

「尿漏れの治療には、骨盤底筋体操、膀胱訓練、抗コリン薬などの薬物療法がありますが、前立腺がんによる重度の尿漏れには効きません。唯一の治療法が人工括約筋埋め込み手術になります」

 人工括約筋埋め込み手術は、前立腺がん術後、1年ほど経過した辺りから検討される。手術は全身または腰椎麻酔下で、会陰部と下腹部を5センチほど切開し、人工括約筋を埋め込む。

 手術時間は、増田科長のようなベテラン医師で60~80分。入院期間は約1週間だ。

 人工括約筋は、「尿道を圧迫する液体が入ったカフ」「陰嚢内に留置するコントロールポンプ」「圧力調整をするバルーン」の3つのパーツで構成され、これらはチューブでつながっている(図参照)。

 埋め込み後6~8週間経ってから使用可能だ。カフは尿道の周りに巻き付いて、拡張期血圧(下の血圧)よりやや低めの70㎜Hg程度の圧力で、尿道を圧迫し、尿が漏れないようにする。排尿時には、ポンプを陰嚢の外から押す。するとカフのチューブの液体がチューブを介してバルーンへ移動し、尿道にかかる圧が弱まり、排尿できる。

 排尿後は1~2分で液体がバルーンからカフへ戻り、尿道に圧をかけ、尿が漏れないようになる。

「医療機関によって差はありますが、平均して3~5年で25%が人工括約筋が使えなくなります。このうち10%が故障で、取り換えればいいので継続使用ができます。5%が感染で、いったん人工括約筋を取り出し数カ月後に施術を行う。残り10%が尿道の萎縮などで、これも人工括約筋の設置場所を変えることで対処できます」

 人工括約筋埋め込み手術をしても、スポーツや大きなくしゃみなどで軽度の尿漏れが起こり、日常生活でパッド1枚程度が必要な場合もある。

「しかし、重症の尿失禁だった人には、おむつを使わなくて済むようになっただけで、生活の質が著しく上がります。人間の1日の排泄量1500㏄のほとんどが漏れてしまう人もいますから……」

 人工括約筋埋め込み手術は、保険適用。問題は、まだまだ認知度が低いことだ。

 前立腺がん手術後6カ月を過ぎても“じゃじゃ漏れ”であれば、今後よくなる期待はほぼ持てない。しかし、「体操や薬で良くなるかも」という間違った情報しか得られず、人工括約筋埋め込み手術の存在すら知らない人が多い。

 さらに今後の課題は、体操や薬などでは良くならない男性の軽症、中等症の尿漏れ。

 重症例には人工括約筋埋め込み手術があるが、軽症、中等症には適さない。画期的な治療法は国内で登場していないのが実情だ。

【知っ得News】前立腺がん手術後の重い尿漏れ 医療器具埋め込み暮らし改善


男性特有の前立腺がんの手術後に重い尿失禁で苦しむ患者に対し、専用器具を患部に埋め込むことで改善する治療法が効果を上げている。不自由な生活を強いられている患者にとって、明るい光となりそうだ。

 この治療法は、人工尿道括約筋と呼ばれるシリコーン製の医療器具を手術で陰のうと下腹部に埋め込む。陰のうをつまむように内部のコントロールポンプを3回程度押すと、尿道に巻き付くように配置されたカフが適度に締まったり緩んだりして、手動で排尿を調節できる仕組み。チューブで結ばれた器具の中は生理食塩水で満たされ、その水圧で作動する。カフが締まった状態で、ぼうこうに尿がたまってくると通常の尿意として感じられるため、トイレに行くタイミングも分かる。

 ぼうこうの出口にある前立腺はその中を尿道が通っており、前立腺がんの手術で全摘出した場合、尿道を締めて尿が漏れないようにする筋肉(尿道括約筋)まで傷が付き、重い尿失禁を起こすことがある。国立がん研究センター東病院泌尿器・後腹膜腫瘍科科長の増田均医師によると、この全摘術は毎年2万人程度が受け、直後には尿失禁もみられるが、大半は半年以内で回復する。しかし、約1000人には中~重度の尿漏れ(1日200ミリリットル以上)が続き、今回の治療法が有力な選択肢になる。

 埋め込み手術は全身麻酔で約2時間と比較的短時間で済み、安全性も高いという。尿失禁が100%止まるわけではないが、術後の感染症などに注意しながら埋め込んで十数年間継続して使える人もいる。平成24年からは健康保険が適用され、年齢や収入にもよるが、自己負担は10万円前後。とはいえ、患者数が少ないことなどから普及せず、実施例は年百数十件にとどまるとされる。

 同器具を扱うメーカー「ボストン・サイエンティフィック ジャパン」(東京都中野区)がこのほど都内で開いたメディア向けセミナーでは、今回の治療法を受けた患者が登場し「趣味のウオーキングや水泳、旅行も再開でき、思う存分体を動かせる」と喜びを語る場面もあった。 同社は今回のような重い尿漏れに悩む患者に向けて、専門医の紹介といった情報も満載した啓発サイト「尿漏れ.com」を7月中に開設する予定だ。アドレスはhttps://www.aus-info.com/

前立腺がん早期治療 トモセラピーのメリットとデメリット


全てのがんの中で特に増加率が高いのが前立腺がんだ。早期であればさまざまな治療法がある。そのひとつ「トモセラピー」による治療について都立駒込病院放射線診療科治療部・唐澤克之部長に聞いた。

 トモセラピーは米国で開発されたCT搭載の強度変調放射線治療機器。がんの形に合わせて線量強度を変えて照射する方法で、正常組織へのダメージを最小限にできる。

 日本では2008年に前立腺がんなど3疾患が、10年に限局した固形がんの全てが保険適用になった。最も多く使われているのは前立腺がんだ。

 駒込病院では12年から導入。前立腺がんは生検組織のがんの悪性度やがんのステージによって低・中・高リスクの3段階に分けられるが、「低リスクでは治癒率はほぼ100%。中リスクでも前立腺がんの再発による死亡例はなく、高リスクでも5年で90%以上の治癒率」だという。ただし、実施年数はまだ6年ほど。世界的に見ても、登場したのが02年なので、20年足らずだ。

「長期成績が出ていないのでトモセラピーによる治療が本当にいいかどうかは明言できません。少なくとも10年間の経過観察は必要。しかし経験から、非常に優れた治療法だと考えています」

 なぜなら副作用が少ないからだ。全身転移のない前立腺がんの治療は「全摘手術」「放射線治療」「ホルモン療法」「経過観察」などがあるが、手術では尿失禁、勃起不全という副作用がある。手術支援ロボット、ダビンチの登場で率は減っているもののゼロではない。

■尿失禁もほとんど起こらない

「放射線治療のひとつであるトモセラピーはホルモン療法と併用して行いますが、低リスクの前立腺がんでは手術と治療成績が同等。中・高リスクでも同等の成績が期待できます。一方、トモセラピーでは尿失禁、勃起不全が起こりにくい」

 勃起機能を術前と同様に保てる点に着目してトモセラピーを選ぶ患者も少なくない。ただし、前立腺の中を尿道が通っているため、頻尿になるリスクがある。

「1日の排尿回数が平均10~十数回に増えます。治療を終えれば、徐々に元通りになっていきます」

 もうひとつデメリットとして挙げるなら、「手術であれば、再発時に放射線治療という選択肢がある。放射線治療の場合、再発時に手術は困難。一般的にホルモン療法を行うことになる」という点。これに関し、唐澤部長は「再発させないようにトモセラピーを行う、と述べるしかない。実際、再発例は現段階でほとんどありません」。

 トモセラピーはCT画像撮影によって前立腺と、近くの直腸、膀胱の位置を確認しながら、前立腺がんにだけ大量に放射線を当てられる。これまでの放射線治療になかった「360度らせん状照射」が可能で、線量の集中性が際立っている。

「前立腺は排尿、排便、おなら、わずかな体位の変化などで位置がズレます。ミリ単位のズレでも治療成績は落ち、周囲の重要臓器へダメージを与える。トモセラピーは一体化されたCTで位置を調整しながら照射できるため、より高い精度が保証され、それによって良好な治療成績、安全性を保てるのです」

 一般的に、治療は外来で2グレイ(放射線量)×週5日、合計38回、総線量76グレイを行う。仕事と両立できる。

「米国では86グレイなど高い放射線量で行うところもありますが、治療後5年以降、尿道障害が多発するとの報告があります。日本では75~80グレイで治療を行うようになっています」

 放射線治療としては、陽子線や重粒子線といった粒子線療法も4月から保険適用になる。新たな選択肢が加わる。

食生活改善で前立腺がんのリスク低下 取るべき食物は何だ


 前立腺がんは、全てのがんの中で最も増加率が高い。この前立腺がんのリスクを高めるのが肥満だ。

 独協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授の井手久満医師によれば、肥満度を示すBMIが高いほど前立腺がんの発症リスクが高く、前立腺がんの悪性度が高いため予後が悪い。

 特に要注意は、肥満の人にありがちな高コレステロールだ。

「コレステロール値が高い人は、前立腺がんが発見された時点で転移がたくさん見られます」

 コレステロールは前立腺の細胞組織に多く蓄積されており、男性ホルモンであるテストステロンの“原材料”だ。つまりコレステロールが多い人ほど、テストステロンが多い。

 前立腺がん細胞はテストステロンの量に依存して増殖するが、かつてはテストステロンは精巣と副腎で合成されてから前立腺に運ばれ、それによって前立腺がんの発症リスクを高めると考えられていた。

「ところが近年、前立腺がんの細胞自身が前立腺内でテストステロンを作り出し、それを自ら消費して増殖していくことが分かってきました。いわば“地産地消”です」

「前立腺のコレステロールが多い→テストステロンが増える→前立腺がん細胞増殖→テストステロンが増え、がん細胞もより増える」という流れだ。

 なお、前立腺がんは血中のテストステロンが「少ない」ほど悪性のがんの発症リスクが高まる。矛盾を感じるが、井手医師によれば血中と前立腺組織のテストステロン産生は反比例の関係にある。

■食生活改善と運動だけで進行を抑制

 いずれにしろ、コレステロールが低い生活(血中のテストステロン値が高く、前立腺細胞内のテストステロン値が低い生活)が、前立腺がん対策になるのは間違いない。

「前立腺がん患者が生活習慣を変えるとどうなるか調べた研究があります。おとなしい前立腺がんの患者93人を対象に、一方の群は徹底した食生活改善と運動を取り入れ、もう一方の群はそれまで通りの生活を2年間続けました」

 結果、「食生活改善+運動」群は5%の人しか新たな治療が必要にならなかった。ところが「それまで通りの生活」群は、27%の人が新たな治療が必要になった。ここから分かるのは「食生活改善+運動で前立腺がんの進行を抑えられた」ということだ。

 何をどう食べ、どういった運動をどれくらい行えばいいかは、まだ分かっていない。

「ただ、トマト、ブロッコリー、大豆、ウコン、コーヒーにそれぞれ含まれる抗酸化成分は前立腺がん対策に役立つというエビデンスがあります」

 このひとつ、ウコンの抗酸化成分クルクミンについて井手医師は研究中だが、クルクミンの吸収率を高めたサプリメント(市販品)を前立腺がんの患者に投与したところ、前立腺がん細胞のアポトーシス(自殺的に脱落死する現象)が多かった。特殊な酵素を通してクルクミンが前立腺がんの細胞に到達し、そのような効果をもたらしているのだとみている。

 また、クルクミンのサプリを服用した人はホルモン療法を経て手術を受けた後のPSA上昇が有意に抑えられた。これらの結果は解析を加え研究論文として発表予定だ。

 ウコンはカレーに含まれる成分。今日からカレー、トマト&ブロッコリーサラダ、豆腐や豆乳、コーヒーを積極的に取るか。

変わる前立腺の治療 川崎医科大学泌尿器科の永井敦教授に聞く


 伝統が息づく研究室で、先端治療に挑む臨床の最前線で、スタッフを束ねて指揮する新進の医学教授に決意を伺う。6回目は川崎医科大学泌尿器科の永井敦教授に聞く。―近年前立腺がんが急増し、男性の部位別がん罹患(りかん)数ではトップになったとみられています。安全、確実な治療法の確立が課題ですが、川崎医科大学付属病院では、待望のダヴィンチを使ったロボット支援手術が始まりましたね。

 昨年11月21日に1例目を行い、2月中旬までに13例になりました。これまで全くトラブルはありません。

 執刀医が患者さんから離れた位置でコンソールをのぞき込むと、患部が3次元の立体映像で、まるで顕微鏡で拡大したみたいに明瞭に見えます。ロボットの“手”は震えることがありませんし、人間と違って動きに制限がないので、病変の剥離や縫合などの操作もより安全にできます。

 カメラは自由に患部に近づけることができます。患者さんのそばには助手がつきますが、椅子に座っていればいい。立ちっぱなしだった従来の手術と比べて、はるかに楽になりました。慣れてくれば手術時間ももっと短くなるでしょう。

 ―患者にとってもメリットがあるのでしょうか。

 体に与える負担の少ない低侵襲の手術ができるので、術後に起きる尿失禁などの合併症が少なくなります。電気メスを使うと、どうしても勃起神経がやられやすいのですが、ダヴィンチは出血も少ないので電気メスを使う頻度が減ります。勃起神経の細かいところまで丁寧に温存できますから、QOL(生活の質)もよくなるでしょう。メリットは大きいと思います。

 ―教授は低侵襲手術の先駆者で、前立腺がんに腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を導入したのも、岡山では最初でした。

 腹腔鏡は男性不妊症の手術から始まりました。岡山大学泌尿器科に入局して師事した大森弘之教授は「これからは内視鏡の時代になる」とおっしゃって、不妊症を手がけていた私が腹腔鏡チームを立ち上げることになりました。フランスまで行って手術を見学し、すごいと目を見張りました。

 国鉄職員だった父は指先が器用で、工作が得意でした。私も工作好きで、コンピューターを扱う電子工学を志したこともあります。岡山大学泌尿器科時代は、夜遅くまで自分でシミュレーターを操作して腹腔鏡手術を訓練し、学生たちに教えていました。努力だけでなくセンスも求められるので、手先の器用さを生かせたかもしれません。

 ―川崎医大に赴任されてからは、放射線治療のHDR(高線量率組織内照射法)の症例も積み重ねられました。

 腹腔鏡手術では、少ないながら尿失禁のリスクが避けられませんが、HDRは体に傷をつけないので安心感があります。麻酔をして前立腺に針を刺し、2回放射線を照射して半日で終わります。効果を高めるため、体外から放射線を照射する外照射も行いますが、これは通院でできます。

 いかに効率よく針を刺すかが私たちの役割です。放射線の照射は放射線科医と技師が担当し、刺した針の数や位置によってコンピューターで最適な放射線源の動作を計算します。1997年以来約1200例を治療しており、全国トップの実績です。

 ―HDRの適応や治療効果は腹腔鏡手術と同じなのでしょうか。

 治療効果や再発率はほぼ同等です。術後の合併症を考慮して治療法を選ぶことになります。がんが前立腺の外に少しはみ出しているような場合、手術だと取り残しの可能性が出てくる。HDRで放射線をその部分にも当てれば、がんを死滅させることができます。

 ただし、このような局所浸潤がんであっても、ダヴィンチを使えば、リンパ節や隣接する臓器のぎりぎりまで取る拡大手術ができます。修練を積んで挑戦していきたいと思っています。放射線でも合併症の少ない照射法などを考えているので、患者さんはどちらを選んでも低侵襲の治療を受けられると思います。

 ―教室として今後、どのような研究に取り組もうと考えておられますか。

 柱の一つはアンチエイジングです。泌尿器科分野は全身の疾患とつながっています。糖尿病による血管障害で、ED(勃起不全)や蓄尿・排尿障害、神経因性膀胱(ぼうこう)などが起きます。大学院生たちは、泌尿器科で投与する薬によって、同時に血管年齢が若返ってくるといったデータを集めています。基礎研究として、ラットを使った実験もやっています。

 EDは全身疾患の前触れであり、侮ってはいけません。陰茎には非常に細い動脈が流れていて、ここに障害が出てくれば、いずれ心筋梗塞や脳卒中を起こすことになります。通常の薬が効かないEDの方を対象に、特殊な薬を自己注射する治療の臨床研究も行っています。

 ―後進の若き泌尿器科医には何を求めますか。

 入局した人には「どんなことにも必ず『イエス』と言いなさい」と指導しています。「ノー」と言った瞬間に自分の可能性が閉ざされるからです。決して後ろ向きになるな―ということです。最初は無駄だと思っても、コツコツやっていくうちに必ず自分のものになり、将来役立つはずです。

 ながい・あつし 愛光高校(松山市)、岡山大学医学部卒。同大学病院泌尿器科講師などを経て、2006年1月から川崎医科大学泌尿器科教授。同学長補佐。日本泌尿器科学会の代議員で専門医・指導医、日本泌尿器科学会西日本支部理事、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本性機能学会副理事長・性機能専門医、日本泌尿器科学会・日本内視鏡外科学会の泌尿器腹腔鏡技術認定医など。61歳。

6割以上が症状改善。ビタミンDは前立腺がんに効く


ビタミンDのサプリメントを服用すると、初期の前立腺がんの進行が遅くなるか、または軽くなる可能性があるという調査結果が出ました。

研究を主宰したサウスカロライナ医科大学の小児科、生化学と分子生物学のブルース・ホーリス教授によると、ビタミンDには細胞の炎症を減らす効果があり、がんも細胞の炎症の一種だからだということです。

◆6割以上が症状が改善された
実験では、無作為に選んだ37人の患者に60日間毎日、100μgのビタミンDか、または偽薬を飲んでもらいました。

手術で摘出したがんを実験開始前のデータと比べたところ、偽薬を飲んだグループは、同じか悪化していました。ビタミンDを飲んだグループは6割以上でがんが改善され、残りの人たちも進行が止まったのです。

ただし、BrighamandWomen’sHospitalの放射線腫瘍学のアンソニー・ダミーコ博士は、実験の規模が小さいため、決定的な結論とはいえないと指摘しています。

◆罹患数に比べ、死亡数は少ない
早期の前立腺がんには自覚症状はありません。併発することの多い前立腺肥大症による尿が出にくい、排尿後、すっきりしないといった症状が出ることがあります。

前立腺がんが転移する場合はリンパ腺や骨が多く、血尿や腰痛といった症状から検査すると、発見される場合もあります。

最前立腺特異抗原(PSA)という腫瘍マーカーを血液検査で調べることができるので、早期発見が可能になりました。

国立がんセンターの2014年の予測によると、罹患数(新たに発病した数)は7万5400で、男性のがんでは第3位。死亡数は1万1800で6位となっています。

罹患数が年々増加しているのは、PSA検査が普及したことも一因と見られています。

「PSA値が高い=前立腺がん」ではありません。前立腺肥大症や前立腺炎でもこの数値が高まるので、前立腺生検を受けましょう。

◆手術が必要か見極める
初期の前立腺がんは、手術や放射能治療で治すことができます。比較的進行が遅いので、すぐに摘出手術をせず、経過を見るように勧める医師もいます。

生前、検査などで前立腺がんが見つからなかったのに、他の原因で亡くなった後に調べるとがんが発見されることがあります。このようながんをラテントがんと呼びます。

前立腺がんは年齢と共に罹患率が高くなり、特に60歳以上で急増します。でも適切な処置を行えば、長く通常の生活を続けることができるのです。

ビタミンDの効果がより明確になれば、患者や家族も、もう少し気持ちにゆとりをもって経過を見守ることができるようになるかもしれません。

参考:
http://www.cbsnews.com/news/vitamin-d-supplements-may-slow-prostate-cancer/
http://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/

見逃しは減り排尿障害も回避 前立腺がん最新検査と治療法


 前立腺がんに対し、東海大学医学部付属八王子病院が新たな試みをしている。泌尿器科准教授の小路直医師に話を聞いた。

 前立腺がんの早期発見のために行われているのがPSA検査だ。4(ng/ミリリットル)以上で前立腺がんの疑いありとなり、前立腺生検が実施される。

 前立腺生検は肛門または会陰部から前立腺へ6~20本ほどの針を刺し、超音波検査でがんの有無を調べる検査だが、いくつかの問題点がある。

「痛く、出血や感染症のリスクがあり、がんを見逃す可能性がある」

 そこで小路医師らが行っているのは、超音波にMRIを組み合わせた検査だ。超音波はがんの輪郭や大きさを大まかに把握できるが、内部構造までは分かりにくい。そこで特殊な機器で、内部構造が分かるMRIの画像と融合。がんがあれば3次元の画像として映し出され、生検に移る。

「PSA4以上→MRIと超音波で評価↓必要に応じて生検」という新たな流れによって、不要な生検と前立腺がんの見逃しが減少。近年、前立腺がんは体積0.5㏄以上の大きいがんであれば生命予後に影響し、小さいがんは予後に影響しにくいと分かってきたが、予後に影響するがんの見逃しも減った。

「450症例の患者さんに新しい生検と従来の生検を同時に施行した結果、従来の生検のがんの検出率35%に対し、新しい生検は検出率54%。予後が悪いがんの検出率は、従来の生検では20%、新生検では47%。明らかに有意差がありました」

 さらに前立腺を切除後、標本を用いてがんの場所、見逃しの有無について調べると、従来の生検のみでは予後に影響するがんの検出率は42%だったが、新たな生検では90%だった。

■術後24時間で退院可能

 この新しい生検は先進治療Aとして昨年承認され、11万300円で実施。全国7カ所の病院で行われている。従来の生検では過剰診断・過剰治療につながる可能性があり、今回の新しい技術はそれを避けることにつながると期待されている。

 小路医師らはこの生検を利用して新たな治療にも取り組んでいる。性機能や排尿に影響する部分を可能な限り温存する「前立腺部分治療」だ。

 前立腺がんは、たとえ患者への体の負担が少ないロボット治療(腹部に数カ所穴を開けて内視鏡とロボットアームを挿入してがんを切除)でも、術後合併症として勃起障害、排尿障害が出てくることがある。 

 しかし、小路医師らが始めたMRIと超音波の検査をすれば、前立腺がんの大きさや場所が分かる。勃起神経や尿道を回避して前立腺がんだけを部分的に治療できれば、勃起障害、排尿障害を起こすリスクは減る。

「そこで行っているのが、高密度焦点式超音波療法(HIFU)による前立腺部分治療です」

 HIFUは肛門から超音波を入れて、高エネルギーの超音波を「前立腺全体」に当てる治療法。しかし、小さな領域を狙い撃ちして治療できる特徴も持っている。小路医師はこの原理を利用し、「前立腺の中のがんとその周囲のみ」に超音波を当てた。体にメスを入れない上に、がんを狙い撃ちにするため、失われる機能が少ない。

「比較的長期間にフォローしている20症例のうち、勃起機能も術前の状態を保ち、排尿機能は術後3カ月目で手術前とほぼ変わりなしです」

 治療後は24時間以内に退院可能。こちらはまだ臨床試験中のため、行っているのは東海大医学部付属八王子病院のみだ。インターネットで「HIFU実施」の医療機関が多数出てくるが、それらは「前立腺部分治療」と異なる。適応基準も今後決まっていく予定。

 □ □ □

 米国の調査で「PSA検診は前立腺がんの早期発見につながらない」との指摘が数年前にあったが、複数の研究から現在は否定されている。たとえばスウェーデンで2万人を対象に14年間フォローした大規模試験では、PSA検診群は非検診群より死亡率が44%低く、世界5大医学雑誌「Lancet Oncology」に掲載。こうした事実を踏まえ、日本泌尿器科学会はPSA検診を推奨している。

【男の排尿・前立腺 悩み解決!】最新レーザー手術で「肥大症」改善 中高年の尿トラブル一因、放っておくと尿閉や腎後性腎不全に


55歳以上の5人に1人が発症し、推定患者数が400万人にも上る「前立腺肥大症」。中高年の尿トラブルの一因であるこの疾患を改善するにはどうすればいいのか。

 「年だから仕方がない-で済ますのではなく、症状が出た時こそ、きちんと対処するべきです。放っておくと、膀胱内に尿が溜まっているのに排尿できない『尿閉』や、尿の通り道が閉塞し、腎臓の動きが悪くなる『腎後性腎不全』などが起こることもあります」と話すのは、かとう腎・泌尿器科クリニック(神奈川県平塚市)理事長の加藤忍医師。

 尿が出なくなり、腹部がパンパンに張った状態で、救急車で運ばれてくる患者もいるという。こうした状況を回避する策はあるのだろうか。

 「前立腺の中の狭くなった通り道を広げる、前立腺の体積を小さくする、あるいは血流を改善するなど、患者さんそれぞれの状態に合わせた薬を使うことで、尿の通りが良くなるなど、排尿障害に十分な効果が出るケースは多々あります」

 ただ、肥大の程度や症状によっては、手術もひとつの選択肢になる。

 というと、内視鏡を尿道から入れて、電気メスで切除するという従来の方法を想起する人がいるかもしれない。

 この場合、10日ほど入院する必要があり、仕事にも大きな支障をきたすことになるが、ここで紹介するのは、「HoLEP」と「CVP」と呼ばれるレーザーを使用した最新術式の日帰り手術だ。

 HoLEPは、内視鏡を尿道から通し、その先端からホルミニウムレーザーというレーザーを照射して肥大組織を核出、縮小する手術。

 ホルミニウムレーザーは、レーザー照射によって、組織の蒸散、切開、止血が同時にできるのが特徴で、組織への吸収深度も0・4ミリ以下と浅く、安全に使用できるレーザーだ。

 「HoLEPは、大きな前立腺でもスムーズに手術できて、長期成績が良いことがメリットです」

 一方、CVPは、半導体を利用して発生させるダイオードレーザーで組織を蒸散させる手法。

 「ホルミウムレーザーよりさらに低侵襲で、出血がほとんどなく、より安全です。体に優しい方法なので、高齢者の方にも、体に負担を掛けずに行えます」

 HoLEPを東京で初めて行い、CVPを日本に導入した加藤医師はこう話す。

 「前立腺肥大症の手術は、排尿障害が改善するだけでなく、生活の質を大きく変えます」

 次回も引き続き、前立腺肥大症の手術について検証する。 (岸由利子)

前立腺がんを克服した稲川淳二も受けた“ロボット手術”とは?国内40台の先端医療


前立腺がんを克服したタレントの稲川淳二(64)が、今年2月に先進医療のロボット手術を受けていたことが先週分かった。

術後すぐに歩くこともでき、一般的に前立腺がん手術の合併症としてありがちな勃起障害が起こりにくいのが特徴。このロボット手術、今年4月から保険適用となり、身近な存在になりそうだ。

 ロボット手術は、米社のマシン「ダビンチ サージカル システム」を駆使して腹腔鏡下手術と同じような数カ所の孔に、医療機器を装備したロボットアームを入れ、医師が3次元画像を見ながら遠隔操作する。

同手術を実施する金沢大学附属病院泌尿器科の並木幹夫教授が説明する。

 「エキスパートの医師が行う腹腔鏡下手術とロボット手術では、術後の経過などはほとんど変わりはありません。ただ、腹腔鏡下手術は、小さな孔から入れた器具を動かすことが一定の範囲に限られるため、熟練した技術を要します。

一方、ロボット手術は、アームの先端が360度回せるため、細かい縫合などが比較的楽に行える。医師の上達スピードも速い。それが大きく違います」

 ロボット手術では傷口が小さく、術後すぐに歩き回ることが可能だ。医師が細かい作業を行いやすいため、「勃起神経の温存」も従来手術よりも成績が良いと言われる。

 「保険適用になった日本でも、治療の広がりは考えられますが、医療費財源の問題もありますし、今のところ(普及は)なんとも言えません」と並木教授。

 「ダビンチ サージカル システム」の日本代理店となっている株式会社アダチ(大阪市)によれば、国内の導入は現在40台。「欧米では既存の施設が複数台導入するほど注目されています。今後の応用が期待されています」(同社)

 ただし、前立腺がんの全ての人が適用になるわけではない。稲川の場合は「1ミリ程度」の小さい前立腺がんだった。早期であることが条件だ。

 「手術の適用は、大きさだけでなく、血液検査の腫瘍マーカーPSA検査数値や悪性度などにより、総合的に判断されます。小さくても悪性度が低ければ、経過観察もある。

また、放射線療法、小線源療法、ホルモン療法など、前立腺がんに対してはさまざまな治療法があります。ロボット手術は、その選択肢のひとつ」(並木教授)

 稲川は、身体の異変を感じて受診し、昨年12月に血液検査でがん告知を受けた。

 「特にリスクの高まる50代の方は、PSA検査を受けていただきたい」と並木教授はアドバイスする。

トイレが近くなったら…前立腺肥大症の恐れも  


「最近、トイレが近くなったなぁ…」と思い当たる読者世代は多いのでは? 男性は加齢と共に前立腺肥大症になりやすく、その症状のひとつに頻尿がある。単なる寒さでトイレに行きたくなるのか、それとも病気が潜んでいるのか。その見極めについて専門医に話を聞いた。

 ■頻尿原因はさまざま

 前立腺は膀胱(ぼうこう)の下にあるため、前立腺肥大症になると尿道をふさぎ、膀胱に残尿がたまりやすくなって頻尿になりやすい。一方、冷たい空気に触れたときには、腎臓が寒冷刺激を受けて尿量が増えやすいという。

 東京厚生年金病院泌尿器科部長の赤倉功一郎医師=写真=が説明する。

 「夜間頻尿の原因はいろいろあります。まず、尿は夜間に濃縮されて、本来は昼間よりも尿量が少なくなるのですが、加齢とともに夜間に出る抗利尿ホルモンの分泌が不十分になると、濃縮できずに多尿になる。また、加齢により膀胱のしなやかさも失われ、尿を貯める力が衰える。

さらに、眠りが浅いとちょっとした尿意でも、目覚めてトイレに行きたくなります。いちがいに前立腺肥大症だけが原因とはいえません」

 赤倉医師が挙げた「前立腺肥大症チェック」(別項)で、8点以上の人は前立腺肥大症の可能性が高い。ただし、今の時期は先の理由に寒冷刺激が加わって夜間頻尿が起こりやすいという。

 ■夜間の尿量を計る

 トイレが近くなったからといって、それがイコール前立腺肥大症とは限らない。

 夜中に布団から出て、寒い廊下を裸足で歩いてトイレへ行くと、腎臓は寒冷刺激を受けて利尿作用が働いてしまう。布団に戻っても、たくさんの尿が作られ、またトイレに行きたくなって目覚めやすくなるそうだ。単なる寒さか、それとも前立腺肥大症か。その見極めが自分でも可能だ。

 「夜間頻尿の人は、紙コップでご自身の夜間の尿量を計ってみてください。1回の尿量がコップの3分の1程度と少ないときには、前立腺肥大症が疑われます。

逆に、コップ1杯の色の薄い尿が出たときには、寝る前に水分の摂り過ぎや、夜間の寒冷刺激、あるいは、腎機能の低下が考えられます」(赤倉医師)

 冬場の心筋梗塞や脳梗塞を防ごうと、血液をサラサラにするために、寝る前に1リットルほどの多量の水分を摂取する人がいる。夜間に尿は濃縮されずに薄い色の状態のまま、多量の尿となって出ることがあるそうだ。

 「寝る前の水分補給は、コップ1杯の白湯にしましょう。お茶には利尿作用があり、冷たい飲み物では腎臓に寒冷刺激を与えてしまいます。飲み過ぎないように注意してください」と赤倉医師はアドバイスする。

 ■早期がんは無症状

 頻尿で1回の尿量が少なく、常に残尿感が伴う場合は、前立腺肥大症が疑われる。逆に、水分をたくさん飲んでもいないのに、尿量が多くて色が薄いと、腎機能の低下の恐れもある。自己診断は禁物だ。

 「頻尿が気になるときには、泌尿器科の専門医に診てもらいましょう。ただし、前立腺がんは早期の段階では無症状です。自覚症状はないので、50歳以上の方は、血液の腫瘍マーカー(PSA)検査を受けるようにしてください」(赤倉医師)

 頻尿以外に血尿や痛みなどが生じたときも、早めに医療機関へ受診を。

■前立腺肥大症状チェックリスト
□尿をした後にまだ尿が残っている感じがある
□尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがあった
□尿をしている間に、尿が何度も途切れることがあった
□尿を我慢することが難しいことがあった
□尿の勢いが弱いことがあった
□尿をし始めるためにお腹に力を入れることがあった
□夜寝てから朝起きるまでに、何回も尿をするために起きた
※各項目でこの1カ月の状態を振り返り、「全くない」0点、「5回に1回の割合より少ない」1点、「2回に1回の割合より少ない」2点、「2回に1回の割合くらい」3点、「2回に1回の割合よりも多い」4点、「ほとんどいつも」5点とし、合計点が8点以上の人は前立腺肥大症の可能性が高い。

大人の男の人生は「前立腺」に左右されると石原壮一郎氏解説


中年男性なら前立腺からも大人力を学べる!? 大人力コラムニストの石原壮一郎氏が前立腺の予防について熱く語る。

 * * *

 「前立腺」と聞くと反射的に「前立腺マッサージ」という言葉を思い浮かべてしまう、健全な中年男性のみなさん、オシッコや勃起の調子はいかがですか。いきなりで恐縮ですが、中年以降の大人の男の人生がどう転ぶかは、前立腺に左右されると言っても過言ではありません。

いつもはニュースからさまざまな大人力を学んでいますが、今回は趣向を変えて、男性の股間の奥に鎮座している前立腺に着目してみましょう。

 前立腺は、排尿や勃起を陰で支えている存在。これからもまだまだ死ぬほどセックスしたり死ぬまでセックスしたりするためには、前立腺に頑張ってもらう必要があります。

しかし、50歳以上の男性の2割は前立腺肥大症になり、前立腺がんも男性のがんの中で10年後には1位になるという予測も。

たとえ病気にならなかったとしても、前立腺が年齢とともに老いていって、尿のキレが悪くなったり勃起力が弱まったりするのは男の宿命です。

 自分の前立腺としっかり対峙するのは、自分の会社や仕事としっかり対峙することと似ています。生きていく上で大切なことを支えてくれているけど、日頃はありがたさを忘れがち。

今後、下降線をたどっていく覚悟もしておかなければなりません。たとえ会社自体は上り調子でも、中年の自分が活躍できる場は確実に減っていきます。

 それがわかっていて、せめてできることは何か。大きなトラブルの兆候を早めに察知して対策を講じたり、変化を受け入れて自分をそれに合わせたりするのが、大人としての真摯で前向きな生き方に他なりません。

ただ単に困った事態を恐れていてもストレスが貯まるだけだし、衰えを嘆いているばかりでは、ますますしょぼくれていく一方です。

 大人の男の意地と気概で、自分の仕事にも前立腺にもしっかり対峙しましょう。会社や仕事においては自分なりの役割が必ずあるはずだし、前立腺においては、たとえば血液を採取するだけの「PSA(腫瘍マーカー)検査」を受ければ、前立腺がんのリスクを早い段階から察知できます。

お尻にお医者さんが指を突っ込む直腸診を経験したことがある方も多いでしょうが、じつはあれでは前立腺がんはほとんど発見できません。

 なぜ、私がいきなり前立腺のことを語り出して、しかもそこそこ詳しそうな気配を漂わせているのか。じつは今年に入ってから何度か、前立腺治療の世界的権威である東京慈恵会医科大学泌尿器科の穎川晋先生に、前立腺についての疑問をどんどんぶつける機会がありました。

朝立ちや前立腺マッサージの謎についても率直に伺いましたが、穎川先生はどんなマヌケな質問にも嫌な顔ひとつせず、わかりやすく丁寧に答えてくださいました。

 そして、ふとパソコンの横を見ると、おっと一冊の本が! タイトルは『ああ、愛しの前立腺~「男の不安」から最先端がん治療まで~』(穎川晋、石原壮一郎共著)。版元は、おや、このサイトを運営している小学館ではありませんか。なんて奇遇なんでしょう。

 いろんな状況を勘案しつつ、大人として許されるスレスレのラインを狙ってみました。それもこれも、多くの方に前立腺に関心を持っていただくためということで、ニヤリと笑って大らかにお許しいただけたら幸いです。

そんなふうに、大人の寛大さを発揮する気持ちよさも味わわせてくれるなんて、やっぱり前立腺は偉大ですね。

臓器が腐る!?胆石は胆のうの中が“腐敗”している証!? 


コレステロール値が高い人は要注意

胆石とひと口に言っても、病気が発生する場所は3カ所もあり、その位置によって症状に違いが生じ、胆石がみつかっても何も症状のない方もいるほどです。また、胆石の種類も大きくわけて3種類。その中でも、日本人に多いのは「コレステロール結石」といわれています。

<胆石のできる場所>
・肝臓の中
・肝臓と胆嚢をつなぐ胆管
・胆のう
<胆石の種類>
・コレステロール結石(最多)
・ビリルビンカルシウム結石
・黒色石

“ダムのような役割”をもつ「胆のう」に、結石ができる仕組みとは
肝臓で作られた胆汁という液体は「胆管」という川を通って「胆のう」というダムに貯まります。そして、食事の刺激などで胆のうがギュッと縮んで胆汁を放出します。

ところが、胆汁の成分に異常があったり、胆のうが充分に収縮せず胆汁が滞ってしまうと石ができやすくなるのです。それは、まるでダムに汚い水が貯まり、しかも何日も解放しなかったせいで腐ってしまったというようなイメージですね。

いっぽう、ダム(胆嚢)の中から石がコロッと落ちるとダムの下流にある「総胆管」という場所に石が落ちて引っかかることや、初めから総胆管の中に石ができる場合もあります(総胆管結石)。

うまく胆のうが機能しない原因
胆のうを収縮させるのは、食事の脂肪分なので、脂肪があまりに少ない食事をしていると胆のうの働きが鈍くなり、「ビリルビン結石」の原因になります。また腸で生産される消化に関連するホルモンの働きも胆のうの働きと関連しています。

つまり、ストレスなどで腸の働きが悪くなっても、結果的に胆嚢の働きが悪くなり、胆石を作るもとになってしまうということです。

日本人の70%はコレステロール結石
今日本人に増えているのはコレステロール結石です。胆汁は大部分が水分で、そこに胆汁酸やビリルビン、コレステロールなどが含まれているのですが、そのうちのコレステロールが胆汁中に多くなってコレステロール結石ができてしまいます。

濃い食塩水を放っておいたら結晶化した、というのと同じような仕組みです。では、なぜ胆汁のコレステロールが増えてしまうのでしょうか? それは、血液中に余分なコレステロールがあることに起因します。胆汁を含め、体液の原料は血液なのです。

胆石を防ぐ生活とは
胆石は適切な食生活と心のあり方で、予防できます。まずは、なんといっても規則正しい時間に食事をして、適度な脂肪(特に魚の脂がよい)を摂取して胆嚢を縮ませることが重要ですね。その際の注意点が以下になります。

・ジャンク・フードを食べない
・太らない
・中性脂肪を下げる
・体を動かす
・精神的なストレスはきちんと管理する

日々の、至極当たり前の生活が胆石を防ぐのに役立ちます。まずは、生活から見直して胆のうに負担をかけないようにしましょう。

[3]世界三大激痛って知ってる? ~尿路結石編~


あまりの痛みに失神する患者も?!尿路結石症とは?
症状としては、背中やわきばらなどに、激痛が走ります。痛みは夜間や早朝に起こりやすく、約3時間から4時間程度続きます。

排尿時には痛みや違和感があったり、無自覚で排石されることもあります。  また、肉眼や顕微鏡で血尿が見受けられ、無症候性血尿という自覚症状のない血尿は膀胱がんの予兆である可能性が高く、早めの受診を心がけましょう。  

原因として何が考えられますか?
下記などが考えられます。

・尿路の通過障害
・尿路感染症
・代謝異常
・副甲状腺ホルモン異常

尿路に通過障害あるいは変形がみられると、尿流の停滞を招き、結石が成長しやすくなります。また、水腎症では骨の吸収が原因で、結石の成長を手助けすることがわかっています。代謝異常はもっとも危険な因子で、高カルシウム尿症などは重要な異常所見で、結石と深いかかわりをもっています。

治療法
尿路結石症は治療後、水分を1日2リットル程度、じゅうぶんに摂取し、尿量を増やして、結石が排出しやすいような環境作りをします。

また、再発や予防のために、下記の食材のような、シュウ酸を多く含むものはなるべく避けて、食べ過ぎないように注意しましょう。

・ホウレン草
・タケノコ
・大根

普段の食生活でも、動物性脂肪の摂取をなるべく控えるようにし、バランスのよい食事を心がけましょう。果物や野菜に多く含まれるクエン酸や、結石形成を予防する、マグネシウムや食物繊維を含んだ穀物などを多く摂取しましょう。

夏場は注意が必要な尿管結石 自然排斥促す「排斥薬物治療」


尿管結石は、メタボリックシンドロームと強い相関関係があるため、患者は中高年が多かった。しかし近年、運動不足で肉食中心の偏った食生活をしている若い世代にも尿管結石の患者が増えている。

 結石の原因は、運動不足や尿路閉塞による尿流停滞、発汗や水分の摂取量が少ないことによる尿の濃縮、食生活の偏りによる尿の酸性化、尿路細菌感染など様々な要因がある。

盛夏は汗で水分が減少して尿が濃くなるだけでなく、ビールなどプリン体を含む食品の多量摂取で尿酸値が上がり、シュウ酸カルシウムが増え結石にがることがある。

 結石は腎臓の中で発生するが、何らかの加減で移動して細い尿管に入り、閉塞すると血尿と激痛で救急搬送されるケースが多い。東京警察病院泌尿器科の松島常部長に話を聞いた。

「石の長径が5ミリ未満で、20センチ以上もある尿管の下部近くまで下りているような場合は、運動と1日3リットルの水分補給で排石を促します。

その際、前立腺肥大症で使われるα1ブロッカー内服による薬物治療(Medical Expulsive Therapy=MET)を行ないます。この薬剤は、尿管平滑筋(へいかつきん)を弛緩させる作用があり、結石の排石を助け、疼痛軽減効果もあります」

 結石が5ミリ程度と比較的小さい場合でも、結石により尿管の上部が閉塞され、尿が腎臓に貯留し、圧力が高まる水腎症を起こしていたら、積極的に石を砕く治療を実施する。

結石の破砕は、数年前までは体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が行なわれていたが、現在はレーザー内視鏡手術が第一選択となっている。

 体外衝撃波結石破砕術は、1回で結石が砕けなかったり、尿管にはまり込んだ石(嵌頓〈かんとん〉結石)を取り出せないことがあるだけでなく、衝撃波による腎臓や腸からの出血の可能性がある。

さらに砕けた結石が四方八方に飛び散り、それが核となって結石になる多発性の再発の確率が高いこともあり、適応となる患者数は減少傾向にある。

「レーザー内視鏡は、年々進歩しています。軟性ファイバースコープが登場し、改良・普及が進んでおり、例えば手術中に対象とする結石が腎臓内へ移動してしまっても、腎盂(じんう)・腎杯(じんぱい)までファイバースコープを進め、結石を破砕できるようになっています。

こうしたレーザー内視鏡手術後にも、結石の破砕片の自然排石を助ける目的で、METを併用することがあります」(松島部長)

 タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルなど代表的α1ブロッカーは、前立腺肥大症治療薬として保険承認されている。

現在、尿管結石の排石促進としての適応はないが、結石治療のガイドラインには、10ミリ以下の結石に対しては使用が推奨されており、排石治療の選択肢の一つとして効果が期待されている。

“隠れ前立腺肥大”はこうしてチェック! 残尿感、夜間の頻尿


気温が上昇し、帰宅後のビールなどがおいしい季節。1杯飲んで気持ちよく布団の中へ入ったものの、夜中に尿意で目が覚める。ビールの飲み過ぎで尿量が増えただけでなく、前立腺肥大症でも夜間頻尿は起こりやすい。そんな隠れ前立腺肥大症のチェック方法を専門医に聞いた。

 【メタボに関係なし】

 米国の調査報告では、40代の約20%、50代では約40%、60代の約70%に前立腺肥大症が見られたという。加齢とともに増加する病気だが、40代でもまだ若いと安心はできない。

 日本泌尿器科学会認定専門医・認定指導医のやじま泌尿器科クリニック(神奈川県相模原市)の矢島通孝院長が警鐘を鳴らす。

 「一般的に、頻尿などの排尿障害があると『年のせい』と考えられがちですが、それらの症状を伴う前立腺肥大症は、病気のひとつです。40代でも発症します。遺伝的な要因やメタボ体形に関係なく、やせた人でも前立腺肥大症になるのです。

また、同時に別の病気として前立腺がんが潜んでいることもあるため、注意が必要です」

 症状については、まず別項の世界保健機関の「国際前立腺症状スコア」を基に作成した表でチェックを。

 【勢いがなくなる】

 前立腺はぼうこうの下に、尿道を取り囲むようにあるため、前立腺肥大症になると、尿が尿道へスムーズに流れにくくなり、残尿量が増えてしまう。

加えて、ぼうこうも肥大した前立腺に刺激されるため、「さっきトイレに行ったばかりなのにまた行きたい」といった頻尿も起こりやすい。残尿感や頻尿は、前立腺肥大症の特徴ともいうべき症状だが、前立腺が肥大し始めた初期段階では、別の症状も見られるという。

 「比較的若い患者さんで訴えることの多い症状は、『排尿後尿滴下(てきか)』といって、尿の切れが悪く、トイレの後に、尿道に残っていた尿が水滴のように下着をぬらす症状です。

また、尿の勢いが落ちたと感じる方も多い。『何か以前とは違う』と感じたら、1度は専門医を受診してください」(同)

 前立腺肥大症は、徐々に前立腺が肥大するため、症状も少しずつ強くなるそうだ。20年前と比べて「尿の勢いがなくなった」と感じることも、受診のひとつの目安。

 【薬で症状改善】

 前立腺肥大症には、さまざまな治療法がある。最近では、前立腺を刺激する交感神経の働きを抑える作用の「α受容体遮断薬」が、治療のファーストチョイスになっているという。この薬の種類もいろいろあり、症状に合わせて使い分けをすることで、QOL(生活の質)を改善している人が増えている。

 「早期の段階で適切な治療をする人が増えているため、近年、前立腺肥大症の手術数は減る傾向にあります。最近、米国では、新たにED(勃起不全)治療薬が前立腺肥大症の薬として承認されました。日本でも、近い将来、新たな薬が承認されることで、治療薬のレパートリーが増えるでしょう」と矢島院長は言う。

■前立腺肥大症チェック! 

  最近1カ月間を振りかえり、次の(1)~(6)の項目で、「まったくなし0点」「5回に1回の割合未満1点」「2回に1回の割合未満2点」「2回に1回の割合3点」「2回に1回の割合以上4点」「ほとんど常に5点」で算出。(7)の項目は、トイレで夜間に起きた回数を点数にする。ただし、5回以上は5点とする。

 (1) 排尿後に尿がまだ残っている感じがあった

 (2) 排尿後2時間以内にもう1度行かねばならないことがあった

 (3) 排尿中に尿が途切れることがあった

 (4) 排尿を我慢するのがつらいことがあった

 (5) 尿の勢いが弱いことがあった

 (6) 排尿開始時にいきむ必要があった

 (7) 床に就いてから朝起きるまでに平均して排尿に何回起きたか

  以上の点数を足した合計が、0-7点は「軽症」、8-19点は「中等症」、20-35点は「重症」と判定される。

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