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週明け&寝起きは要注意…放駒前理事長を襲った心筋梗塞

八百長問題を追及した放駒・日本相撲協会前理事長(元大関・魁傑=西森輝門さん、享年66)の命を奪ったのは心筋梗塞だった。

西森さんは18日、息子と孫の3人で、ゴルフ練習場に行ったところ、突然、「気分が悪い」と救急搬送された。病院に着いたときには息を引き取っていたため、遺体は田無署へ。検視の結果、19日、死因は虚血性心疾患と発表された。

虚血性心疾患は心筋梗塞と狭心症を合わせた病名。心筋梗塞による死亡者は年間約19万人。およそ2人に1人は発症から数時間で亡くなるといわれるから、西森さんのケースは決して他人事ではない。どんなときに発症しやすいのか。

「心筋梗塞は、血圧が急上昇するときに発症しやすい。1週間のサイクルだと月曜日、1日の流れでみると起床後1~2時間が要注意です。休んでいた状態から体を動かす状態に変わると、だれでも血圧が上がる。

持病として高血圧がある方は、なおさらです。加えて、朝のトイレでいきんだり、遅刻を挽回しようと小走りになったりすると、さらに血圧が上がる。

それに通勤ラッシュや社内トラブルなどのストレスが重なると…。朝は、血圧上昇の要素がたくさんあり、月曜日の午前中は特に危ない。通勤中や出社直後に発症することが多いのです」(東京都健康長寿医療センター・桑島巌顧問=高血圧外来)

■糖尿病の影響も

 西森さんが発症したのは日曜だったが、ゴルフはスイングの瞬間に力むため、血圧が上がりやすい。約30年前から患っていた糖尿病の影響もあったようだ。検視結果も、その点を指摘している。

 糖尿病専門医で、加藤内科クリニック院長の加藤光敏氏が言う。

「糖尿病は、ほかの病気以上に動脈硬化が重くなりやすい。そういう方が運動などで脱水すると、重症の心筋梗塞を起こしやすいのです。東京は5月でも夏日が続いていますから、ゴルフによる脱水の影響があったのかもしれません。

脱水というと、運動ばかり注意しますが、温泉も危ない。運動や入浴の前は水分補給が大切です」

 出社もレジャーも命懸けだ。

朝丘雪路が老人性うつ病で休養に 夫・津川雅彦とは別居中

今からちょうど1か月前のこと。東京芸術劇場で4月9日から13日まで行われた舞台『花や…蝶や…』は久しぶりの家族共演だった。

別居中の夫・津川雅彦(74才)がナレーションを務め、娘・真由子(40才)とともに舞台に上がる朝丘雪路(78才)。しかし、舞台裏の彼女にいつもの笑顔はなかった。

「いつになく元気がなくて、階段の上り下りもスタッフの手を借りるほどでした。でも、それだけじゃなくて、台本を覚えるのにもだいぶ苦労なさったみたいで、“これが最後の舞台ね”と打ち合わせの段階でこぼしていたそうです」(芸能関係者)

 そして舞台を終えると、彼女はひっそりと休養に入った。今年で79才。周囲のほとんどが、高齢が理由と考えていたが、実際はより深刻な状態だという。

「実は朝丘さんは老人性うつ病なんです。昨年の秋頃からその症状は出ていて、よくなったり、悪くなったりという状態だったのですが、ここ最近はぼーっとうつむくことが多くなってしまったそうで…」(朝丘の知人)

 彼女のそばにいるのは、娘の真由子ただひとり。夫・津川の姿はない──。

「津川さんのおもちゃ屋さんが大変だったので、みんなで協力しただけです」

 2008年末、それまで一家で暮らしていた東京・世田谷の一戸建てを朝丘は売り払う。理由は津川が経営していた会社が抱えていた6億円もの借金返済だった。だが、以来夫婦は一度も同じ家に暮らすことはなかった。

「ふたりは円満を強調していましたが、夫婦の溝は修復できないほどに深まっていたんです。当時の津川さんは映画監督業に力を入れていたのですが、これに朝丘さんは大反対していました。

映画製作となるとまた莫大なお金がかかりますからね。しかも津川さんはモテますから、長年一緒に暮らしてある程度は理解しているとはいえ、思うところがあったんでしょう」(テレビ局関係者)

 朝丘、津川、そして真由子はそれぞれ新しい生活をスタート。朝丘はここ数年、バラエティー番組にも出演、“天然な素顔”がお茶の間にうけていた。が、異変は突然訪れた。始まりは、昨年秋頃だった。前出の朝丘の知人が言う。

「真由子さんから足元がおぼつかなくなったと聞いていたんですが、実際会うと、しっかりとまっすぐ歩いていたんです。ただ、歩く様子が少し変で、足元だけをじっと見つめて一心に歩いていて、周囲には目もくれないという感じでした。

セリフに関しても、覚えられないというよりも、なんだか覚えるのが億劫な感じで。どこか気力がないように見えたんです。でも、そうかと思うと、元気にひとりで買い物に出かけていたこともあって…」

 当初は認知症かと思われていた朝丘だったが、検査の結果下されたのは前述の通り、“老人性うつ病”という診断だった。『文京根津クリニック』の任博(にん・ひろし)院長は言う。

「子供や働きざかりの大人と同じように高齢者もうつ病にかかります。老人性うつ病と認知症は物忘れが激しくなったり、落ち着きがなくなったり、ぼんやりしていたりと共通する症状があるので非常に見分けるのが難しい。

しかし、治療法は違います。老齢期のうつ病は自殺にも注意が必要で、家族は認知症だと思い込まずに医師による診断を受けることが大切です。症状が好転しない時にはセカンドオピニオンを求めることも必要です」

【デキる人の健康学】認知機能低下は40代で始まっている

認知症の中でも物忘れを主要症状とするアルツハイマー病は70歳前後で物忘れの症状で発症する。 しかし脳の病変は臨床症状が出現する20年も前から脳の中で進行していることが分かっていた。

 また、認知機能の低下が本当は何歳から始まるかに関してはよく知られていなかった。

 フランス国立衛生医学研究所の疫学・公衆衛生研究センターのアルシャナ・シンマヌー博士らは「認知機能の低下が始まる時期を特定することは、医療介入をどの年齢で開始するかを決定する上で極めて重要」と考え、

45歳~70歳の公務員で85年にホワイトホールIIコホート試験(1985年より英国人公務員を対象に実施された臨床研究)に登録した男性5198例と女性2192例を1997年から10年間観察する研究をロンドン大学との共同研究で実施した。

■認知機能の低下が男女ともに45~49歳で始まる

 観察期間中に認知機能を3回測定して認知機能の低下を評価した。認知機能は(1)推論能力、(2)記憶力、(3)音声の流暢性(Sから始まる単語を可能な限り書き出す能力)、(4)語義の流暢性(動物の名前を可能な限り多く書き出す能力)、(5)ボキャブラリーの5項目につきそれぞれ評価した。

 その結果、5歳刻みの各年齢層(45~49歳、50~54歳、55~59歳、60~64歳、65~69歳)でボキャブラリーを除いた全ての認知機能スコアが観察期間の10年間に有意に低下していることを明らかとした。 特に女性の推論能力の低下は45~49歳と50~54歳の年齢層でより顕著になり、男性では60~64歳と65~69歳でより顕著に低下した。

 女性の推論能力の低下が顕著だった時期は更年期と一致することから女性ホルモンの分泌低下が認知機能に影響を与えたと考えられる。今回の研究で認知機能の低下が男女ともに45~49歳で始まることが初めて明らかにされた。

シンマヌー博士は、「心血管系に良い生活習慣を目指すことは認知機能維持にも重要」と心疾患の危険因子である肥満、高血圧、高コレステロール血症などの危険因子を中年期から少しでも減らすことが後年の認知症予防にもつながると予防効果の連続性を強調する。

■「歩く速度」と握力で認知症の発症リスクを知ることが可能

 認知機能検査ばかりでなく、「歩く速度」や「握力」といった誰でも簡単に測定できる検査で認知症の発症リスクを知ることが可能なことが最近明らかとなった。

 ボストン医療センターのエリカ・カマルゴ博士らの研究チームはフラミンガム・ハート・スタディ(FHS)に参加した平均年齢62歳の2400名の男女に対して「歩く速度」、「握力」、「認知機能」を測定し、その後11年間認知症の発症に関して追跡調査を行った。

 結果は2012年4月にニューオリンズで開催された第64回米国神経学会の年次総会で発表された。調査期間中に34名が認知症を発症し70名が脳卒中を発症した。

解析の結果、「歩く速度」が同年代の男女より1.5倍遅い人は認知症を発症しやすく、握力がより高い人は42%も脳卒中や一過性の脳虚血発作を発症するリスクが低いことが明らかとなった。

 予防は中年期から開始することが重要で、「ゆっくり」歩くより「速歩」で歩く方が心臓病や将来の認知症の予防には有効なようだ。70歳以降になって物忘れで症状が始まる認知症は既に40歳半ばから脳に初期変化が起きていることがシンマヌー博士らの研究で明らかになった。

 神経細胞は可塑性という柔軟性をもっているので、40歳代に認知症の初期病変が脳で進行しても物忘れなどの症状がマスクされてしまい、認知機能の低下は自覚しにくい状態にある。

しかし歩く速度や握力など脳の機能と一見無関係に見える機能が認知症などの脳の初期病変を評価するのに有用なので、中年期から速く歩くように心がけてメタボを予防できれば、認知症も同時に予防できると期待できそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】最新ダイエット方法…筋肉量の低下も防ぐ

ダイエットに関しては巷にさまざまなダイエット法が氾濫していて、どのダイエット法が自分に適しているのか迷ってしまうほど沢山の「ダイエット本」を本屋さんの店頭で見かける。

 そんな中で「糖質オフダイエット」は最近のトレンドである。

 アトキンス博士により推奨され米国で流行したこのダイエット法は、炭水化物を減らせば良いだけの単純な方法で誰でも簡単に導入できる点が利点である。

しかし、一方で炭水化物を制限することは炭水化物好きにとっては、「食欲との厳しい闘い」でもあり長続きしない場合が多い。

一時的に減量できても最終的にリバウンドしてしまえば、糖尿病や肥満などの生活習慣病の改善や様々な予防医学的な効果は結果的には帳消しになってしまう。

 以前にも本コラムで解説したが、糖質オフダイエットは別名「ケトン体ダイエット」とも呼ばれ、糖質の変わりに「ケトン体」をエネルギー源に使っている。

 脂肪細胞に蓄えられている中性脂肪が分解されて肝臓でケトン体が合成されるのでダイエット期間中は確実に脂肪が燃焼して体重が減少していく。

 しかし、ケトン体は内科の教科書に「糖尿病が悪化したときに産生され、糖尿病性ケトアシドーシスをもたらす」と記載されているため、これまでは「悪者」のレッテルが貼られていた。

 しかし、そんなケトン体が実は酸化ストレスを減弱させるアンチエイジング効果がある「善玉物質」であると報告され話題を呼んでいる。

 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリック・ヴァーディン教授はケトン体の中でも血中で最も大量に産生されるβヒドロキシ酪酸に注目した。

βヒドロキシ酪酸はカロリー制限や飢餓状態で健康な人の血中にも検出できるが、その役割はブドウ糖にかわるエネルギー源と単純に考えられていた。

 一方で、動物にカロリー制限すると酸化ストレスから身を守る酵素の遺伝子発現が増強することによりアンチエイジング効果がもたらされることが知られていたが、ヴァーディン教授がβヒドロキシ酪酸をゆっくり放出するポンプをネズミの皮下に植え込んだところ、ネズミは抗酸化酵素の遺伝子発現が増強して酸化ストレスに対して強くなっていた。

 実際、ネズミにパラコートという酸化剤を投与して細胞の老化を促進させたところ、驚くべきことにポンプが埋め込まれたネズミは体が酸化せずに若々しく保つことができたのだ。

 これまでカロリー制限やプチ断食でのアンチエイジング効果が知られていたが、ケトン体にその効果があることがわかった。糖質オフダイエットは減量のみでなくアンチエイジング効果も期待できそうだ。

 さらに最近、ダイエット時に避けられないと考えられていた筋肉量の低下を防ぐ有効な方法も発表された。

米国陸軍省環境医学研究所のスティーブン・パシアコス博士らの研究グループは39人のボランティアを3群に分け、カロリー制限と運動による21日間のダイエットを指導した。

第1群には推奨量のタンパク質量(0.8g/Kg)、第2群には推奨量の2倍量、第3群には3倍量のタンパク質を摂取するように栄養指導をした。

その結果、第1群は最も減量効果が大きかったが減量分の58パーセントは筋肉の減量だったのに対し、第2群は減量効果は若干少なかったが筋肉減少は30パーセントにとどまり70パーセントは脂肪分の減少だった。

一方、第3群はタンパク質摂取にも関わらず減量分の36%は筋肉減少だった。パシアコス博士はダイエット中の筋肉減少を抑えるためには推奨量の2倍量のタンパク質を摂取することが必要と結論した。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】テレビゲームでボケ予防

75歳以上の高齢者が運転免許を更新するときには、講習予備検査という認知機能のテストを受けなければならない。このテストは時間の見当識、手がかり再生、時計描画という3つの検査項目から構成されるが、記憶力や判断力を評価する簡易検査である。

 認知機能が低下すると、交差点での事故が増えることが知られているが、交差点で右折するときには直進する車を待つか右折するかの判断が要求される。

この時には対向車線を直進してくる車のスピードから交差点に到達する時間を予測するという高次脳機能が要求される。実際、交差点で事故を起こした人の脳を調べると、高頻度にアルツハイマー病の脳病変をみとめたという報国もあり、高齢期の認知機能の低下が交差点の事故につながる可能性が指摘されている。

このような交差点での判断能力の低下を予防することは出来ないのだろうか?

 米国カリフォルニア大学生理学講座のアングエラ博士らの研究チームは3Dのテレビゲームを使ったトレーニングにより高齢期の認知機能の低下を防げる可能性を報告し話題を呼んでいる。

 アングエラ博士らが用いたテレビゲームはニューロレーサーという3Dシミュレーションで曲がりくねった道路を車で走っているときに現れるさまざまな道路標識の中から特定の標識の時にボタンを押すというゲームで、複数の作業を同時に遂行するマルチタスク処理能力を評価できる。

 研究チームがニューロレーサーを使って若者と高齢者のマルチタスク処理能力を調べると、複数の作業を同時に遂行するマルチタスク処理能力は加齢とともに除々に低下することが分かった。

 しかし、60~85歳の被験者がニューロレーサーの訓練モードで1ヶ月間トレーニングするとマルチタスク処理能力を若者のレベルに回復させることが出来ることが分かった。

 また、訓練終了後6ヶ月後にマルチタスクの処理能力を再評価すると、その作用記憶や注意力の維持などの能力は6ヶ月後も持続されていることが分かった。

研究チームがさらに脳波計を使って脳への影響を調べたところ、ニューロレーサーの訓練により認知機能に関与する神経回路の脳波パターンが若者で観察される脳波パターンに類似していることが判明した。博士は高齢期の認知機能の低下が最新の3Dテレビゲーム訓練を導入することにより予防可能であると考察している。

テレビゲームは認知機能低下の予防だけでなく、ダイエットの手助けにもなるかも知れない。

 ジョージワシントン大学公衆衛生学のナポリターノ準教授は過体重の女性を対象に、アバターが登場する仮想現実ゲームを使ってダイエットプログラムを開発した。

 参加者は週に一度クリニックで健康的な減量行動を実践するアバターが登場する15分のDVDを見るように指示された。DVDには沢山盛られた食事ではなく、ちょうど良い量の食事を選択するアバターや適度な強度でウオーキングマシーンを操作するアバターを見ることにより、適切なカロリーや運動量が勉強できるようなレッスンが含まれていた。

 プログラムに参加した女性は4週後には平均で約1.6Kgの減量に成功した。DVDで参加者の外観に合わせた肌の色や体型のアバターを登場させることにより仮想現実をカスタマイズできたことが成功の理由とナポリターノ準教授は考察する。ITの進化とともに医療の分野でも様々なツールがこれからも開発されるだろう。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】野菜ジュースでアルツハイマー病を予防する

「100歳までボケない」ための講演会でアルツハイマー病予防のためには、野菜・果物ジュースを週に3回以上摂取するように中高年の聴衆にむけ力説している。

1990年代にシアトル在住の日系米国人1836人の食生活を10年間追跡調査した結果、野菜・果物ジュースを週に3回以上摂取している人は、週に1回未満の人に比べアルツハイマー病の発症リスクが76パーセントも低いことが判明した。

一方、野菜・果物ジュースを週に1~2回摂取している人のアルツハイマー病の発症リスクは16パーセントしか減少していなかった。つまり野菜・果物ジュースの摂取は週に2回では不十分であることが調査で明らかとなった。

■50歳から野菜ジュースを始めるとよい

 一般的にアルツハイマー病は70~75歳くらいで物忘れで発症するタイプの認知症であるが、脳の中で神経細胞が変性していく病理所見は50~55歳で確認されると報告されている。つまり、物忘れの症状が顕著になる70歳の頃には脳の病変はかなり進行した状態になっているのだ。

しかし、今のところ物忘れの症状が出る前にアルツハイマー病を早期診断する手段は確立されてないので、講演会では50歳になったら全員に毎日野菜・果物ジュースを飲むように奨めているのである。

なぜ、発症危険度が高い人だけでなく全員に野菜・果物ジュースを奨めているかというと、私が以前に勤めていた東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)の神経病理部門の調査によると、80~85歳で解剖された高齢者の脳では3人に1人の割合でアルツハイマー病の病理所見が観察されるからである。

つまり、日本人は何も予防しなければ3人に1人がアルツハイマー病を発症する危険因子を内在していると考えられる。最近、糖尿病や肥満、高血圧、運動不足、喫煙、うつ病、低教育水準などの要因がアルツハイマー病の発症リスクとなることが報告されているが、仮にこれらの危険因子を全く保有していなくともアルツハイマー病の発症予防を確約できる人はいないのが現状である。

■野菜ジュースは自宅でミキサーで作ること

 私の「100歳までボケない」講演会では、特に野菜・果物ジュースは市販のジュースではなく、自宅でミキサーを使って生の野菜と果物でジュースを作ることを奨めている。特にリンゴやブドウ、レモンなどはなるべく皮付きで使うこと、ジューサーではなくミキサーを使うことを奨めている。

果物の皮には病気を予防するフィトケミカル成分が豊富に含まれること、野菜に含まれる食物繊維がアルツハイマー病や糖尿病、ガンの予防に効果があり、ジューサーを使うと食物繊維が取り除かれてしまうためである。

■果物は生で食べると糖尿病を予防できる

 果物そのものを食べると2型の糖尿病の発症を予防するが、市販の果物ジュースは逆に糖尿病の発症リスクを上げることが、最近の米国ハーバード大学栄養学教室の調査で明らかとなった。

研究を統括したキ・サン博士によると果物、特にブルーベリー、ブドウ、リンゴを週に2皿(約400グラム)以上食べていた人は月に1皿(約200グラム)未満の人に比べ糖尿病の発症リスクが23パーセント減少していた。

一方、果物ジュースを毎日1本(約240ml)以上飲む人は糖尿病を発症するリスクが21%も増加していた。また、1週間に飲む果物ジュースのうちの3本分(約720ml)を果物そのものに変えることで、糖尿病のリスクが7%減少することも明らかとなった。

一般に糖尿病の発症予防効果の高かった果物はブルーベリーやブドウ、プルーン、リンゴなどフィトケミカルや食物繊維が豊富な果物で、市販のジュースではこれらの栄養成分が十分に確保されていないとサン博士は指摘している。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】ナッツは免疫力を高め、減量効果もある

米国でベストセラーになったジョエル・ファーマン医師の著書『スーパー免疫力』の中でファーマン博士は免疫力を高めるために、ナッツを1日に28グラム食べるように推奨している。

ファーマン医師はナッツは体によい脂肪酸が含まれているだけでなく、栄養素が豊富で高脂肪の割に太りにくい食材と推奨の理由を強調している。

これまで複数の疫学研究からナッツを食べる人ほど痩せている傾向が報告されているが、生ナッツには食欲を抑える効果があり糖尿病の改善や減量に役に立っているためと主張する。

食事療法中の人がナッツを少量食べると満足感が得られ、おかげでくじけないで続けられるため体重を維持できるという研究結果も複数報告されている。

ただし、焦げ目がつくまで炒ったナッツは発がん性のアクリルアミドが発生し、タンパク質が減少、カルシウム、鉄、セレンなどのミネラル成分が減少し、灰分の増加が起きるので、ナッツは生で食べるか、ほんの軽く炒って野菜料理と一緒に食べるのがベストと健康的な摂取法を推奨している。

一方、テレビの前に座ってレジャー目的でナッツをビールのおつまみに何袋も食べることはカロリーや塩分の過剰摂取になるので控えるべきと警鐘をならす。

■ナッツに健康長寿効果あり

 そんな中、ピーナッツ、アーモンド、クルミなどのナッツ類を沢山摂取する人はがんや心臓病などを含めた総死亡率が低いという結果がニューイングランド医学誌に報告され話題を呼んでいる。

ハーバード大学医学部のイン・バオ博士らは米国看護師健康調査に参加した健康女性76,464人、米国医療従事者追跡調査に参加した健康男性4万2498人に関してナッツ類の摂取量と様々な病気による死亡率の関連性を調査した。

その結果、ナッツ類を食べない人に比べ、ナッツ類を食べる人の総死亡率は週に1回未満の人は7パーセント、週に1回の人が11パーセント、週に2~4回の人が13バーセント、週に5~6回の人が15パーセント、週に7回以上の人が20パーセントも低いことが分かった。

死因別に死亡率を検討すると、心臓病、がん、呼吸器疾患、感染症、腎臓病、糖尿病での死亡率に有意の低下が認められた。バオ博士はナッツに含まれる不飽和脂肪酸、良質のタンパク質、食物繊維、葉酸やビタミンEなどのビタミン類、カリウムやカルシウムなどのミネラル分、カロテン類やフラボノイドなどのフィトケミカルが死亡率の低下に寄与したと考察する。

■アーモンドはダイエット時のスナックとして有効

 一方、ナッツの中でもアーモンドにスナックとして摂取すると食欲を抑制して食後の血糖の上昇を抑える働きがあることが分かり話題を呼んでいる。

南オーストラリア大学医学部のスゼ・イェン・タン博士らの研究チームは肥満気味で糖尿病のリスクの高い成人男女137名を、アーモンドを摂取しなかった群、朝食に摂取した群、午前中にスナックとして摂取した群、昼食に摂取した群、午後にスナックとして摂取した群の5群に分け、1日43グラムのアーモンドを4週間摂取させ、その前後で食欲抑制効果、食後高血糖や体重に及ぼす影響を調べた。

アーモンドはいずれの群でも食欲を抑え食後血糖を下げる効果が認められたが、その効果はスナックとして摂取した時が最も顕著に認められた。

いずれのアーモンド摂取群でも体重の増加が認められなかったことから、血糖を下げ、糖尿病の発症を抑えるためにもアーモンドはスナック摂取時の健康的なオプションになるとタン博士は考察する。

間食にはケーキや煎餅などのスナック菓子ではなく、アーモンドなどナッツ類がお勧めだが、食塩無添加で素焼きか生のナッツ類を選択したい。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】サイクリングEDが増えている!?

1997年に米国雑誌サイクリングマガジンが「自転車に乗ることでED(勃起障害)を発症する危険性」を最初にスクープした。翌1998年、米国ABCニュースがこの問題を特報番組20/20で報道したことをきっかけに「サイクリングED」問題が大きくメディアで注目されるようになった。

もともとサイクリングはアウトドアスポーツのなかでも健康的なスポーツの定番で、警察官などは仕事として移動手段に自転車を使っている。米国だけでも5457万人のサイクリング愛好家がいるとされ、競技としてサイクリングに参加している5万6千人の愛好家の中、68パーセントの愛好家が年間200日以上も自転車に乗っているとされる。

近年、ツール・ド・フランスなどの人気サイクリングイベントで認知度が上がるにつれ愛好家が増えて、米国のサイクリング愛好家による自転車関連消費の経済効果は年間1億ドル以上とされいる。しかし、せっかく健康を増進するために始めたサイクリングでEDを発症したら話にならない。

■サドルによる血行障害が引き金になっている

 米国コネティカット保健センターのジョン・テイラー博士は18~77歳のサイクリング愛好家男性688名にインターネットを用いてEDに関する聞き取り調査を行った。

その結果115名、17パーセントのサイクリング愛好家にEDがあることが判明した。しかし、このED頻度は1994年度に報告されたマサチューセッツ州男性加齢調査研究の中で明らかにされた米国のED有病率とほぼ同じ頻度。

テイラー博士は「サイクリング愛好家に特にEDが多い訳ではない」と、サイクリング愛好家の不安を払拭する。それでも一部の研究者は自転車の走行距離、走行時間、サドルの位置が「サイクリングED」の危険因子であることを強調、サドルの首を下げサイクリング中は瀕回に腰を浮かせて会陰部の血流を改善させることを推奨している。

またサイクリングによる障害は男性だけと思われがちだが、女性サイクリング愛好家も安心してはいられない。長時間自転車に乗る女性には会陰部の圧迫から「不感症になりやすい」「尿路感染などの症状が出現しやすい」傾向が認められる。サドルが会陰部を圧迫すると会陰動脈が圧迫され陰部の酸素濃度が低下する事が知られている。

ドイツケルン大学医学部泌尿器科のナヤル博士らの研究結果によると、腰を浮かせている時の会陰部の酸素濃度が61.4mmHgであるのに対し、サドルに座るとたったの3分で会陰部の酸素濃度は19.4mmHgに低下、再び腰を浮かせると酸素濃度は速やかに元にもどった。腰を浮かすことの有効性が性器の酸素濃度のモニターで示された。

■三日月型の「首なしサドル」が予防に有効

 このような研究成果をもとに会陰部があたるサドルの首の部分がカットされた三日月型の「首なしサドル」も開発されている。

米国オハイオ州の米国労働衛生研究所のスティーブン・シュレーダー博士は「首なしのサドル」の効果を90名の警察官を対象に日常業務で「首なしのサドル」を6ヶ月間使用してもらい「勃起に与える影響」や「性器の敏感性」などの効果を判定した。

その結果、会陰部にかかる圧力は「首なしサドル」では「通常サドル」でかかる圧力より66%も減弱し、6ヶ月後の調査では「性器がより敏感になり」、「より勃起しやすくなる」ことが分かった。

「首なしのサドル」に変えることにより、自転車勤務で会陰部や性器のしびれや痛みを訴える警察官の数は73パーセントから18パーセントに減少した。興

味深いことに半年の研究期間が終了した後、通常のサドルにもどった警察官はたったの3名に過ぎず、大半の警察官はその後も「首なしサドル」を使用し続けた。ランニングはやり過ぎると膝を痛めるが、サイクリングはやり過ぎると性器を痛める可能性がありそうだ。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【デキる人の健康学】日本に600万人…LOH症候群とは

某商事会社に務める45歳のAさん、最近元気がなく、仕事にも趣味にも打ち込めない。

今まで元気に仕事を続けてこられたのに、特にこの数ヶ月、眠れない、肩がこる、頭痛がするなどの症状がひどくなり病院へ行って検査を受けたが原因不明だった。処方された睡眠薬や抗うつ剤を服用しても一向に改善しなかった。

実は、Aさんは「LOH(加齢男性性腺機能低下)症候群」だったのだ。帝京大学医学部泌尿器科 堀江重郎主任教授によると、日本の40歳以上の男性に、600万人もの「LOH症候群」が存在する可能性があるという。

■LOH症候群はテストステロンの減少で発症する

 男性ホルモン(テストステロン)は、男らしさをもたらすホルモン。このホルモンが減少すると男らしさを失うだけでなくメタボリック症候群やうつ病などの原因にもなる。テストステロンが加齢によって徐々に減少していくことで起きる症状を総じて「LOH(加齢男性性腺機能低下)症候群」と呼んでいる。

 女性には「更年期」というものがあるが、この「更年」には変化するという意味が含まれている。つまり女性の更年期は、女性ホルモンから男性ホルモンに移行するトンネルのようなものなので、一時的な変化に過ぎない。

しかし男性のLOH症候群は男性ホルモンが下がり続け、しかも女性更年期の様な出口がないので放置すると悪化する一方である。LOH症候群が近年、特に注目されているのは、テストステロンが減少することで、「生きがい」が消失し、仕事に集中できない、あるいは社会に適応できないなど、社会心理的な側面をもつ点である。

一旦、LOH症候群を発症すると、人生にハリがなくなる上に様々な病気を併発するので、中高年男性にとって大きな落とし穴となっている。

 しかし、LOH症候群を自ら疑い病院の外来を受診する中高年男性は極めて少ない。この点が訴えの多い女性更年期との大きな違いである。実際には「頑固になった」、「趣味にうちこめない」、「外出がおっくうになった」などの症状を家族から心配されて病院を受診することが多い。

病院を受診すると、血液中の遊離テストステロンを測定することにより診断される。遊離テストステロンは加齢と共に減少することが知られている男性ホルモンでて、本邦では8.5 pg/ml未満でLOH症候群と診断される。

■「朝立ち」の消失がLOH症候群の重要な警告

 しかし、男性が自分自身でLOH症候群かどうかを見分けられる重要なサインがある。起床時の勃起、つまり「朝立ち」の回数が減少したら要注意。この1カ月間、「朝立ち」がないという場合はLOH症候群の可能性が高い。

逆に「朝立ち」に問題ないときは、LOH症候群でない可能性が高い。「朝立ち」にテストステロンが重要であることが知られているが、ペニスの血管が動脈硬化を起こしても「朝立ち」がなくなると報告されている。つまり、「朝立ち」は、LOH症候群だけでなく生活習慣病の警告でもあるのだ。

■生活習慣の工夫でLOH症候群を克服する

 堀江教授によると生活習慣のちょっとした工夫でも血中の遊離テストステロン値を上げあることが出来る。心の底から「笑う」と副交感神経が活発になり遊離テストステロン値は上昇すると報告されている。

硫黄の温泉に入ることでも副交感神経が活発になり遊離テストステロン値は上昇する。さらにマウス実験では、炒めたタマネギを摂取すると遊離テストステロン値は倍になることが分かった。生活習慣の改善でもテストステロン値が改善しない場合にはテストステロンの注射が有効だ。

しかし、注射は数週しか効力が続かないので、安定に血中濃度を上げたい場合にはテストステロンのゲル製剤も最近では使われるようになった。劇的にホルモン値が上がるわけではないが安定した血中濃度を保つことが可能だ。

白澤卓二

しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

松方弘樹、10万人に1人の病気で「ほとんど言葉も出ない…」

新年仕事始めの風物詩・マグロの初競りが1月5日、築地市場で行われた。今年はすしざんまいの木村清社長が212kgの青森県大間産クロマグロを、7420万円で競り落とした。

 マグロといえば、なんといっても松方弘樹(74才)だ。真っ白なクルーザーでマグロ相手に竿を振るうドキュメンタリーは、正月番組の定番だった。

 2015年5月には、石垣島沖で361kgもの超巨大マグロを釣り上げ、世間は仰天。このマグロは、すしざんまいが約185万円で落札。松方が釣ったマグロの握り約1万2000貫を求めて、都内各店には大行列ができたほどだ。

 その松方は今、釣り船ではなく、病床で闘っている。著書『松方弘樹の世界を釣った日々』(2016年3月、宝島社)の出版を目前にした昨年2月、頭痛や体のしびれなどを訴えて医師の診断を受けた松方は、そのまま大学病院への入院を余儀なくされた。

「入院時には右手右足に軽いしびれがありました。開頭して生体検査を行った結果、脳リンパ腫であることが判明したんです」(病院関係者)

「脳リンパ腫」とは脳の深部にできる悪性のリンパ腫で、発症率は10万人に1人という非常に稀な病気だ。腫瘍の場所によって体の麻痺や失語症、視力・視野の障害や認知能力の低下といったさまざまな症状を引き起こす。また、腫瘍によって脳が圧迫され、激しい頭痛や嘔吐に襲われることもあるという。松方の知人が言う。

「腫瘍が脳内にあるため手術で病巣を取り除くことは難しいらしく、松方さんは放射線治療と抗がん剤治療を中心に取り組んでいます。ところが昨年秋頃、ちょうど抗がん剤を投与しているときに脳梗塞を起こしてしまったそうです」

 脳リンパ腫によって脳にストレスがかかったり、抗がん剤を使う“副作用”で脳梗塞を併発する例は少なくないとされる。松方の場合はそれが抗がん剤をまさに投与中だったので、一時的に脳リンパ腫の治療を中止せざるをえなくなったという。

「しばらくして再開しましたが、その後もさらに小さな脳梗塞を2度起こしてしまったようで、腫瘍の治療が思うように進んでいないようです」(前出・知人)

【デキる人の健康学】「男らしさ」を高く保つ生活術

年を重ねるごとに失われていく「男らしさ」で悩んでいる中高年男性も多いだろう。残念なことに「男らしさ」を造っているホルモン、テストステロンの血中濃度は加齢とともに減少する運命にある。

 しかし、同じ年でも「男らしさ」を保てる人、「男らしさ」のみならず下半身の力まで失ってしまった人から「やる気」を失いほとんど「うつ状態」に陥ってしまった人まで、「男らしさ」の減退には個人差が大きい。

 実際、血中のテストステロンの濃度を測定すると個人差が大きいことが判明、テストステロンの濃度が高く保たれている人は「男らしさ」と保ち「やる気」があるのに対して、テストステロンの血中濃度が低い人は、「意欲」「気力」「男らしさ」「精力」を失っていることが分かった。

特に中年期を過ぎるとこの個人差は顕著になるが、このテストステロンの減退には生活習慣も大きく関っていると順天堂大学泌尿器科の堀江重郎教授は指摘する。

「たとえば熱心なプロ野球ファンの場合、応援しているチームが勝つとテストステロン値が上がり、負けると下がる」と言われるほど生活習慣やストレスに敏感なのが血中のテストステロンの値だ。

テストステロンは精巣で分泌されるが、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(LH)と、視床下部から分泌される黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)とのバランスで成り立っている。

 つまり、テストステロンの血中濃度低下には中枢性の性腺機能低下症と末梢でテストステロンの分泌が傷害される、あるいはテストステロンの分解が促進される末梢性の性腺機能低下症がある。

実際に睡眠、運動や食事などの生活習慣は中枢性にも末梢性にもテストステロンの分泌不全をもたらし「男らしさ」を消失させる可能性が指摘されている。

 ドイツのリューベック大学内科学のセバスチャン・シュミット博士らは、健常人男性15名を対象に7時間睡眠を取ったときの早朝のテストステロンと2.5時間早く起床した時の早朝テストステロンの値を比較検討した。その結果、2.5時間早く起床することで早朝テストステロンの血中濃度が低下することを明らかとした。

 しかし、興味深いことに夜更かしをして夜遅く床について睡眠時間を4時間に制限した時には血中テストステロンの濃度は低下しなかった。シュミット博士は睡眠時間よりも睡眠の質やタイミングが血中テストステロン値に影響を及ぼしていると考察する。

 一方、米国ピッツバーグ大学内分泌循環器科のジョゼフ・ツムダ医師らは健常人男性7名を対象に自転車エルゴメーターによる60分の運動負荷が血中のテストステロンに与える影響を検討した。

その結果、60分の運動負荷により血中テストステロンの濃度は39%も上昇し、運動負荷後には速やかに基礎値に戻ることを明らかとした。ツムダ医師は性腺刺激ホルモンの変動が観察されなかったことより、テストステロンの血中濃度上昇は中枢性ではなく末梢性であると考察する。

 食事では良質のタンパク質を摂取することが重要。精巣は活性酸素による酸化に弱いので、タマネギやニンニクなど抗酸化作用の強い野菜も積極的に摂りたい。

 タマネギの皮やリンゴに含まれるケルセチンはテストステロンの排泄を抑制して血中濃度を上げると報告されている。更に、スイカや冬瓜などウリ科の野菜に含まれるシトルリンは一酸化窒素を作って血管を拡張させテストステロン値を高めてくれることが知られている。牡蠣など亜鉛が豊富な食材もテストステロン値を上げるのに有効だ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。グロービア(http://www.glovia.net/)でも連載中。

【デキる人の健康学】野菜ジュースでアルツハイマー病を予防する

「100歳までボケない」ための講演会でアルツハイマー病予防のためには、野菜・果物ジュースを週に3回以上摂取するように中高年の聴衆にむけ力説している。

1990年代にシアトル在住の日系米国人1836人の食生活を10年間追跡調査した結果、野菜・果物ジュースを週に3回以上摂取している人は、週に1回未満の人に比べアルツハイマー病の発症リスクが76パーセントも低いことが判明した。

一方、野菜・果物ジュースを週に1~2回摂取している人のアルツハイマー病の発症リスクは16パーセントしか減少していなかった。つまり野菜・果物ジュースの摂取は週に2回では不十分であることが調査で明らかとなった。

■50歳から野菜ジュースを始めるとよい

 一般的にアルツハイマー病は70~75歳くらいで物忘れで発症するタイプの認知症であるが、脳の中で神経細胞が変性していく病理所見は50~55歳で確認されると報告されている。

つまり、物忘れの症状が顕著になる70歳の頃には脳の病変はかなり進行した状態になっているのだ。

しかし、今のところ物忘れの症状が出る前にアルツハイマー病を早期診断する手段は確立されてないので、講演会では50歳になったら全員に毎日野菜・果物ジュースを飲むように奨めているのである。

なぜ、発症危険度が高い人だけでなく全員に野菜・果物ジュースを奨めているかというと、私が以前に勤めていた東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)の神経病理部門の調査によると、80~85歳で解剖された高齢者の脳では3人に1人の割合でアルツハイマー病の病理所見が観察されるからである。

つまり、日本人は何も予防しなければ3人に1人がアルツハイマー病を発症する危険因子を内在していると考えられる。

最近、糖尿病や肥満、高血圧、運動不足、喫煙、うつ病、低教育水準などの要因がアルツハイマー病の発症リスクとなることが報告されているが、仮にこれらの危険因子を全く保有していなくともアルツハイマー病の発症予防を確約できる人はいないのが現状である。

■野菜ジュースは自宅でミキサーで作ること

 私の「100歳までボケない」講演会では、特に野菜・果物ジュースは市販のジュースではなく、自宅でミキサーを使って生の野菜と果物でジュースを作ることを奨めている。

特にリンゴやブドウ、レモンなどはなるべく皮付きで使うこと、ジューサーではなくミキサーを使うことを奨めている。

果物の皮には病気を予防するフィトケミカル成分が豊富に含まれること、野菜に含まれる食物繊維がアルツハイマー病や糖尿病、ガンの予防に効果があり、ジューサーを使うと食物繊維が取り除かれてしまうためである。

■果物は生で食べると糖尿病を予防できる

 果物そのものを食べると2型の糖尿病の発症を予防するが、市販の果物ジュースは逆に糖尿病の発症リスクを上げることが、最近の米国ハーバード大学栄養学教室の調査で明らかとなった。

研究を統括したキ・サン博士によると果物、特にブルーベリー、ブドウ、リンゴを週に2皿(約400グラム)以上食べていた人は月に1皿(約200グラム)未満の人に比べ糖尿病の発症リスクが23パーセント減少していた。

一方、果物ジュースを毎日1本(約240ml)以上飲む人は糖尿病を発症するリスクが21%も増加していた。

また、1週間に飲む果物ジュースのうちの3本分(約720ml)を果物そのものに変えることで、糖尿病のリスクが7%減少することも明らかとなった。

一般に糖尿病の発症予防効果の高かった果物はブルーベリーやブドウ、プルーン、リンゴなどフィトケミカルや食物繊維が豊富な果物で、市販のジュースではこれらの栄養成分が十分に確保されていないとサン博士は指摘している。

白澤卓二
しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て2007年より順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など100冊を超える。

【今からトレーニング】ウオーキング(7)寝たきりにならないための10分 64歳以下は1159歩、65歳以上は1372歩多く歩く

誰でもできるスポーツとして、ウオーキングについて紹介している。すでに、週末や平日の朝晩、通勤時などを利用してウオーキングに取り組んでいる人もいるだろう。ウオーキングには、歩く行為そのものを楽しむということのほかに、ウオーキングイベントに参加したり、ハイキングを兼ねて歩くなど、いろいろな楽しみ方がある。だが、その根底で共通するのは、いずれも「健康増進」という目的だ。

 死ぬ直前まで健康体でいたい、というのは万人の願いだが、あいにく現実はそうなっていない。いわゆる「健康寿命」とは「日常生活に制限のない期間」で、自由に元気で暮らせる期間のことだが、この健康寿命と平均寿命の差、つまり人が不自由な生活を強いられる期間は現在、男性が9年、女性は12年もある。

 この差をどう縮めていくか。現在、「要支援」や「要介護」と認定されている人たちの3割以上は、脳卒中など生活習慣病が原因だという。生活習慣病の中には、食生活や運動などの生活習慣を改善することで避けられる疾病も多い。では、どのように生活習慣を変えればいいのか。

 そのための参考となるのが、厚生労働省の「健康日本21」の中にある「日常生活における歩数の増加」だ。

具体的な数字としては、64歳以下の成人男性で現在より1日1159歩、65歳以上の男性で同じく1372歩多く歩くことを目標にしている。この歩数はどのくらいで達成できるのだろうか。

 1159歩は普通に歩くと10分程度。消費カロリーは、体重が70キログラムの人ならば約37キロカロリーだ。ご飯1膳が235キロカロリー、生ビール中ジョッキが200キロカロリーなので、37キロカロリー分を歩いても大したことないと思ってしまう。

 だが、毎日37キロカロリーを消費すると、1カ月で脂肪0・16キログラム、1年では1・9キログラムにもなる。つまり、毎年2キロくらいずつ太っている人は、毎日10分間多く歩くだけで肥満を食い止められるというわけだ。

 寝たきりを防止するには足りないかもしれない。だが、たかが10分、されど10分。塵も積もれば山となる、なのだ。 

【デキる人の健康学】寝たきりにならないための生活習慣 中高齢期の食習慣と運動が重要

百歳を超えて元気な高齢者の研究を百寿研究と呼んでいる。厚生労働省の発表によると、2015年の日本の百寿者は6万人を超え、世界的にも日本はトップランクの長寿国である。しかし、日本の百寿研究の第一人者である慶応大学医学部の広瀬信義博士によると、元気に暮らしている百寿者は2割未満に過ぎず、残りの8割の百寿者は寝たきり状態だったり介護が必要な状況に置かれている。

 広瀬博士の研究によると、元気な百寿者はまさしくエリート的存在、生活が自立しポジティブ思考を持ちあわせ、幸せ感が高いという特徴がある。もちろん、百歳を超えて元気な人には遺伝的背景もあるだろうが、中高齢期の生活習慣も大きく高齢期の生活の質や要介護状態に影響を及ぼしている。

 米国ハーバード大学の公衆衛生学教室のアン・ニューマン博士らの研究チームは、米国で『心血管健康研究』に登録した65歳以上の男女5888人を対象に25年間に渡り追跡調査を行い、中高齢期の生活習慣と終末期の要介護状態の関連性を検討した。その結果、喫煙、飲酒、肥満度、健康的な食事、運動、社交性などの生活習慣の中で、終末期の障害期間に最も悪影響を及ぼしたのは肥満度で、BMIが30を超えると標準体重の人に比べて健康寿命(寿命から終末期の障害期間を差し引いた期間)が7.3%も短縮していることが分かった。

 また、不健康な食習慣を持つ人は健康的な食習慣の人に比べて健康寿命が3.7%短縮、運動に関しては1週間に25ブロック歩くごとに健康寿命が0.5%延伸するメリットがあることが分かった。喫煙は健康寿命を短縮する傾向を認めたが、飲酒や社交的習慣は健康寿命や終末期の障害に影響を及ぼしていなかった。終末期に障害なくピンピンコロリの人生を目指すには中高齢期の体重管理、食習慣と運動が重要だ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】古代小麦で作られたパンは健康的 コレステロール値や血糖値が気になる人にオススメ

 米国で130万部のベストセラーになった『小麦は食べるな!』の著者、ウイリアム・デイビス博士によると米国産の現代小麦は繰り返し行われた品種改良の結果、グルテンの含有量が高くなり、パンがふんわり膨らむようになった一方で、血糖が上昇しやすく、たとえ全粒粉の小麦粉を使っても肥満、2型糖尿病、心臓病や認知症の発症リスクを上げているとその著書の中で警鐘を鳴らしている。

 それでは、品種改良する前の古代小麦のパンに戻れば心臓病のリスクを軽減することができるのだろうか。イタリアのフローレンス大学のアリス・セレニ博士らの研究チームは現代小麦で作ったパンを古代小麦で作ったパンに置き換えることによりコレステロール値や血糖値を下げ、心臓発作や脳卒中のリスクを下げられる可能性を示唆し話題を呼んでいる。

 研究チームは平均年齢50歳の健康成人45名を対象に現代小麦で作られたパンをベルナという古代小麦で作られたパンに8週間置き換えた前後で血糖、コレステロール、LDLコレステロール値を検討した。その次の8週間は再度、現代小麦で作ったパンに置き換え、最後の8週間はジャンティロッソ、あるいはアウトノミアBという他の古代小麦から作ったパンに置き換えた。

 その結果、古代小麦ベルナのパンを8週間摂取すると、総コレステロールは前値に比べて3.1%、LDLコレステロール値は3.9%、血糖値は5.6%も低下していることが分かった。

 他の古代小麦から作ったパンの摂取でも同様の傾向が観察された。しかし、小麦を有機農法で栽培したか、あるいは農薬や化学肥料を用いた慣行農法で栽培したかは、コレステロール値や血糖値に影響を与えなかった。コレステロール値や血糖値が気になる人は現代小麦から古代小麦に置き換えた方がより健康的になるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】カルシウムサプリメントに認知症リスク 食品から摂取を

1日に必要なカルシウムの摂取量は650mgと言われているが、実際には男性で平均520mg、女性で489mgしか摂取できていないので、1日約130-160mgのカルシウムが不足している。

 カルシウムは牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、そしてめざし、イワシなどの小魚、豆類や青梗菜や小松菜などの緑黄色野菜、ワカメや寒天などの海藻類に含まれている。

 しかし、高齢期には食が細くなったり、消化管からの吸収が悪くなったりするので、サプリメントでカルシウムを摂取している高齢者も多い。しかし、サプリメントでカルシウムを摂取すると血中のカルシウム濃度が一時的に上昇するため認知症のリスクを高めていることが分かった。

 スウェーデンのヨーテボリ大学精神神経疫学部門のユルゲン・カーン博士らの研究グループは、認知症のない70歳?92歳のスウェーデン人女性700人を対象に5年間追跡調査を行い、カルシウムサプリメントの摂取と認知症の発症リスクとの関連性を検討した。

 観察期間中に新たに59名が認知症を発症した。認知症の発症はカルシウムサプリメント非摂取群では602人中45人(7.5%)だったのに対し、摂取群では98人中14人(14.3%)と約2倍の認知症のリスクがあることが分かった。さらに解析を脳卒中の既往のある女性108人に限ると、認知症の発症リスクがなんと6.77倍に上昇していることが分かった。

 一方で脳卒中の既往がない女性はサプリメントを摂取しても認知症の発症リスクは上昇しなかった。カーン博士は血中カルシウム濃度が上昇することにより、脳の虚血性病変で神経細胞に細胞死が誘導されたり凝固能が亢進するなどの変化が起きているのではないかと考察する。高齢期にはカルシウムはサプリメントではなく食品から摂取した方が良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】脳での炎症を抑えるナッツ類 不飽和脂肪酸が豊富

認知症の最大の原因疾患であるアルツハイマー病は認知機能の低下に伴い脳で炎症性変化が起きていることが報告されている。一方で、脳血管性認知症は脳の動脈硬化病変により認知機能が徐々に低下する病気だが、動脈硬化病変では炎症性変化が病変を増悪させている。

 それでは食事で脳の炎症や動脈硬化病変の炎症を抑えることが可能なのだろうか。米国ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のイン・バオ博士らの研究チームはナッツ類に身体の炎症を抑える効果があることを報告し話題を呼んでいる。

 博士らの研究チームはこれまでの研究でピーナッツやアーモンド、クルミなどのナッツ類をたくさん摂取する人はがんや心臓病などを含めた総死亡率が低いことを報告してきたが、今回の研究でナッツ類の抗炎症作用が重要であることを示唆した。

 研究チームは12万人以上の女性看護師を対象とした看護師健康調査と5万人以上の男性医療専門家を対象とした男性医療従事者疫学調査を用いて食事質問票からのナッツ類の摂取量と血液サンプル中の炎症のバイオマーカーの関連性を調べた。

 その結果、週に5サービング(5カップ)以上のナッツ類を摂取する人は、ナッツ類をほとんど食べない人に比べて、CRPやIL-6と呼ばれる炎症性バイオマーカーの値が有意に低い事を見出した。

 また、赤身肉、加工肉、卵、精製穀物を週に3サービング分だけナッツ類に置き換えても炎症性バイオマーカーが有意に低くなることが判明した。

 ナッツ類にはマグネシウム、食物繊維、L-アルギニン、抗酸化物質、αリノレン酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られているが、これらの健康に良い成分が身体の炎症を抑えたのではないかとバオ博士は考察する。認知機能を保つために脳の炎症を抑えたければナッツ類を選択するのが良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。


【デキる人の健康学】脳での炎症を抑えるナッツ類 不飽和脂肪酸が豊富

認知症の最大の原因疾患であるアルツハイマー病は認知機能の低下に伴い脳で炎症性変化が起きていることが報告されている。一方で、脳血管性認知症は脳の動脈硬化病変により認知機能が徐々に低下する病気だが、動脈硬化病変では炎症性変化が病変を増悪させている。

 それでは食事で脳の炎症や動脈硬化病変の炎症を抑えることが可能なのだろうか。米国ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のイン・バオ博士らの研究チームはナッツ類に身体の炎症を抑える効果があることを報告し話題を呼んでいる。

 博士らの研究チームはこれまでの研究でピーナッツやアーモンド、クルミなどのナッツ類をたくさん摂取する人はがんや心臓病などを含めた総死亡率が低いことを報告してきたが、今回の研究でナッツ類の抗炎症作用が重要であることを示唆した。

 研究チームは12万人以上の女性看護師を対象とした看護師健康調査と5万人以上の男性医療専門家を対象とした男性医療従事者疫学調査を用いて食事質問票からのナッツ類の摂取量と血液サンプル中の炎症のバイオマーカーの関連性を調べた。

 その結果、週に5サービング(5カップ)以上のナッツ類を摂取する人は、ナッツ類をほとんど食べない人に比べて、CRPやIL-6と呼ばれる炎症性バイオマーカーの値が有意に低い事を見出した。

 また、赤身肉、加工肉、卵、精製穀物を週に3サービング分だけナッツ類に置き換えても炎症性バイオマーカーが有意に低くなることが判明した。

 ナッツ類にはマグネシウム、食物繊維、L-アルギニン、抗酸化物質、αリノレン酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られているが、これらの健康に良い成分が身体の炎症を抑えたのではないかとバオ博士は考察する。認知機能を保つために脳の炎症を抑えたければナッツ類を選択するのが良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】唐辛子と生姜の食べ合わせでがん予防

唐辛子は中南米を原産とするナス科の果実で香辛料として世界中で使われている。料理に使われるだけでなく、健胃薬、凍瘡・凍傷の治療、育毛など薬として使われてきた歴史がある。

 唐辛子の辛味成分カプサイシンは感覚神経のカプサイシン受容体に結合すると痛み刺激や辛味刺激を起こすことが知られている。日本でも「激辛ブーム」以来、唐辛子の消費量が増えたが、唐辛子を多く摂る国では胃癌や食道癌の発癌率が高いと報告され、唐辛子の過剰摂取と発癌の関連性が指摘されている。

 一方で生姜はショウガ科の多年草で根茎が食材や生薬として使われている。生姜特有の辛味ギンゲロールは血流を促進して冷えを改善する効果や免疫力を向上させる効能が報告されている。

 唐辛子と生姜はともにアジア料理に幅広く使われているが、一緒に使うと唐辛子による発癌性が相殺されるだけでなく、より健康な食べ合わせになっていることが報告され話題を呼んでいる。

 中国の河南大学薬学部のシェンナン・ゲン博士らの研究チームは肺癌を発症しやすいマウスを用いてカプサイシンとギンゲロールが肺癌発症率に与える影響を検討した。その結果、カプサイシン投与群のマウスは全て肺癌を発症したのに対し、ギンゲロール投与群の肺癌発症率はカプサイシン群の50%に、カプサイシンとギンゲロールの両方を投与した群ではカプサイシン群の25%に肺癌の発症率が減少していた。

 研究チームが肺癌の病理組織を解析すると、カプサイシン群ではがん細胞に炎症を伴っていたが、ギンゲロールを併用した群ではがん細胞の炎症が抑えられていることが分かった。激辛好みの人は生姜をうまく組み合わせることでがんを予防する効果が期待できそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】食物繊維の摂取量と健康長寿の関連性

最近のハーバード大の研究で、ギリシャなど地中海沿岸地域に暮らす人々は長寿のバイオマーカーである白血球のテロメアが長いことが報告されているが、テロメアが長い人はアルツハイマー病や骨粗しょう症などの加齢性疾患を発症しづらいことが報告されている。

 一方で、高齢期に身体障害、抑うつ状態、認知障害、がんや冠状動脈疾患、脳卒中などの病気がない高齢者は生活が自立していることが多く、最後まで介護を必要としないことが多い。

 このような高齢者のグループはサクセスフルエイジング群と定義されている。豪州ウエストミード医学研究所のバミニ・ゴピナス博士らの研究チームは砂糖や炭酸飲料、食物繊維を含む炭水化物の摂取量とサクセスフルエイジングの関連性に注目した。

 豪州に在住の49歳以上の成人1609人をを対象に10年間の追跡調査を行い、炭水化物の質および摂取量とサクセスフルエイジングに影響を与える高血圧、認知症、うつ病、身体的障害の発症の関連性を検討した。

 その結果、炭水化物の中で最もサクセスフルエイジングに影響を与えたのは食物繊維の摂取量だった。食物繊維の摂取量が最も多い群の成人は、摂取量の少ない群の成人に比べて、長く健康的な生活を送れる確率が80%も高いことを明らかとした。

 研究チームは砂糖の摂取量に関しても同様の解析を行った。興味深いことに、砂糖の摂取量は死亡率を上昇させることに関係していたが、サクセスフルエイジングへの関連性は予想外に低かったとゴピナス博士はコメントしている。砂糖や炭酸飲料の摂取を控えることに加え、食物繊維をしっかり摂取することがサクセスフルエイジングの鍵になりそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】血圧変動が認知症リスク 血圧下げるより安定させることが重要

日本高血圧学会では収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上に保たれた状態を高血圧と定義している。中年期から高齢期の高血圧は虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症原因となるので、中年期からの血圧管理は高齢期の生活の質を保つためにも重要である。

 最近の研究では中年期の高血圧が認知症リスクの1つになっていると報告されている。昔は高血圧による脳出血が多かったが、食生活の変化により脳梗塞や動脈硬化による脳血管性認知症の割合が増えているのが現状で、血圧管理の考え方も変えていく必要がある。

 そんな中、高齢者では血圧の値よりも血圧の変動の方が認知機能の低下に影響を与えているという発表が話題を呼んでいる。

米国のノースカロライナ大学栄養学のミッシェル・メンデ博士らの研究グループは1991年から2004年の間に中国で実施された健康・栄養調査に参加した55歳以上の中国人成人976人(そのうち約半数が女性)を対象に、医療機関で測定された3-4回の血圧の受診毎変動とその後の認知機能の低下との関連性を検討した。

 その結果、収縮期血圧の受診毎変動が大きい高齢者ほど、認知機能および言語記憶の低下が顕著に認められた。一方、拡張期血圧の受診毎変動が大きかった55-64歳の高齢者は認知機能の低下が顕著に認められたが、65歳以上では受診毎変動は認知機能の低下には関連していなかった。

 興味深いことに、平均収縮期血圧または拡張期血圧の値はいずれも脳機能の変化とは関連していないことが分かった。血圧の変動は脳の血流の変化や血管の損傷につながる可能性があり、そのような微小血管病変がさらに脳血流の変化や脳機能の低下をもららす可能性をメンデ博士は指摘する。認知機能を保つためには血圧を下げることより安定させることの方がより重要かも知れない。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】ケトン体で持久力向上 アスリートの間でも人気

ココナッツオイルがアルツハイマー病の認知機能を改善させることが報告されてから日本でもココナッツオイルの人気が高まっている。

 ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は小腸で吸収された後、肝臓に運ばれケトン体に代謝されるが、このケトン体が認知機能を改善させていることが最近の研究で分かった。

 厳しい糖質制限食でも肝臓でケトン体が産生されるので、別名ケトジェニックダイエットと呼ばれている。ケトン体は筋肉の代謝を促進させることから、ケトジェニックダイエットはアスリートの間でも人気がでている。

 実際、グランドスラムを達成したセルビア人テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手は食事をグルテンフリーの糖質制限食に変えてから快進撃が始まったと著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』の中で告白している。

 しかし、認知機能や身体機能を保つように血中ケトン体の濃度を維持するには厳しい糖質制限を続ける必要があり、多くの人が続けられずにリバウンドしてしまう。

 英国ケンブリッジ大学生理学のアンドリュー・マレイ博士とニコラス・ナイト博士らの研究チームはケトン体そのものを食事で摂取することにより認知機能と持久力を向上させられる可能性をラットの実験で証明し話題を呼んでいる。

 研究チームはケトン体をケトンエステルという形でラットに投与した。ケトンエステルは速やかに消化管から吸収されケトン体に変換され、5日間の摂取でラットのトレッドミルでの運動能力が32%向上、八の字迷路での認知機能が38%向上、心臓の代謝とパフォーマンスがケトンエステル投与群で有意に向上した。一方で血中のコレステロール、中性脂肪、血糖は有意に低下していることが分かった。ケトンエステルはサプリメントに応用可能なので、これまで厳しい糖質制限を続けられなかった人に朗報になるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】両親が長寿は有利 喫煙、認知機能と長寿の間に因果関係

この世の中で最も長生きしたフランス人女性、ジャンヌ・カルマンさんは122歳まで生きた。1995年に生まれ故郷の南仏のアルルの街で120歳の誕生日を元気な姿でお祝いした映像が残っている。

 最後までユーモアの精神を忘れなかったカルマンさんは、「長生きの秘訣は何ですか?」とのメディアからの質問に対し、「私は、生涯一度も病気をしなかったのよ!」と明快に答えて有名になった。

 120歳まで認知機能を保っていたカルマンさんのご両親も長寿だったと記録されている。カルマンさんはまさに長寿家系の出身だったと言える。

 双生児の研究から寿命を決める要因の25%が遺伝要因であることが知られているが、どのような遺伝子が長寿をもたらしているのだろうか。

 英国エクセター大学医学部疫学部門のデービット・メルツアー博士らの研究チームは英国バイオバンクに登録された7万5千人のデータを対象に親の寿命と疾患リスク遺伝子との関連性を検討した。

 その結果、長生きの両親を持つ人は冠状動脈疾患、収縮期高血圧、BMI(肥満度)、コレステロール、中性脂肪、1型糖尿病、炎症性腸疾患やアルツハイマー病などに保護的に働く遺伝子多型の保険者が多いことが分かった。

 また、母親が98歳以上、父親が95歳以上の1339超長寿家系に対象を絞り込むと、さらにHDLコレステロール遺伝子の関連性が明らかとなった。

 興味深いことに、これまで喫煙と肺癌の関連性が報告されていたニコチン受容体遺伝子が父親の長寿に関連していることが新たに分かった。カルマンさんは120歳までタバコを吸い続けたが肺癌にはならなかった。

 肺癌を発症しない喫煙者に長寿傾向が認められるのかさらなる解析が必要だが、ニコチン受容体がアルツハイマー病の治療薬のターゲットであることを考えると、喫煙、認知機能と長寿の間に何らかの因果関係が見出されるかも知れない。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】肥満と脳白質容積との関連性 高齢期の認知症の発症リスクも

 脳の白質は脳の各領域を接続する組織で領域間の情報伝達を可能にしている。一つの神経細胞は大脳皮質内に局在する多数の神経細胞と神経回路を形成することにより複雑な認知機能を維持していることが知られている。

 神経細胞間のコミュニケーションは軸索と呼ばれる神経線維を介して行われるが、白質ではその軸索が束になって存在している。50歳を過ぎてMRI(磁気共鳴画像)を撮影すると、白質に病変が観察されることがある。

 この白質病変は脳内の血管の動脈硬化に伴う虚血性病変と考えられているが、白質病変の数が加齢とともに増加すると脳血管性認知症が発症するとされる。

 これまでの疫学研究で30歳代で肥満と診断された人は肥満でない人に比べ認知症の発症リスクが3.5倍になることが報告されていたが、英国ケンブリッジ大学医学部精神科のリサ・ロナン博士らの研究チームは中年以降の肥満者の白質の容積が非肥満者の白質容積より著しく小さいことを見出した。

 研究チームは20-87歳の英国人成人527人を対象に肥満とMRI画像から計算された白質容積との関連性を検討した。ロナン博士らが対象群を過体重群とスリム群に分けると、両群の白質容積に著しい差異が検出された。

 さらに、白質容積を年齢別に算出すると50代の過体重群の白質容積は60代のスリム群の白質容積にほぼ等しいことが分かった。

 同時に測定した大脳皮質の厚みや表面積には両群間で差異を検出できなかったことから、肥満は神経細胞そのものではなく血管病変を介して認知機能に影響を与えているとロナン博士は考察する。

 これまで中年期の肥満は糖尿病や心筋梗塞、がんなどの生活習慣病との関連性が重要視されてきたが、高齢期の認知症の発症リスクや認知機能も考慮して管理する必要があるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】“不健康食品”が世界規模で増えている

 日本や欧米諸国などの先進諸国では、野菜や果物などの健康的食品の流通も増えたが、一方でファストフードや加工食品などの不健康食品も急速に広まっている。

 1990年以降の世界的レベルでの食文化の変化は予測できないほど速く、多くの国が伝統的な食文化を失いつつある。しかし、この食文化の変化の方向性が果たして健康的な方向に進化しているのか、あるいは不健康な方向に進化しているのかに関しては良く理解されていなかった。

 英国ケンブリッジ大学の代謝科学研究所の疫学部門の今村博士らの研究グループは世界187カ国450万人の食事調査から、健康的な食品と不健康的な食品の消費動向から各国の食事の健康度をスコア化し国別に採点した。

 健康的な食品として全粒粉、野菜、果物、魚類、ナッツ類、豆類、ミルクなどの健康食品の消費量、一方、不健康的な食品として砂糖・人工甘味料入り飲料、赤肉、加工肉などの不健康食品の消費量をスコアを用いて187カ国別に採点した。

 健康的な食品のスコアが最も高かったのはギリシャ、トルコなどの地中海沿岸諸国で健康的とされる地中海食を反映したと考えられた。逆にスコアが低かったのはハンガリーなどの中欧諸国やウズベキスタンなどの旧ソビエト諸国で、日本は187カ国中上から90番目のスコアを示した。

 一方、不健康的な食品でスコアが最も高かった(不健康食品の消費量が低かった)のは食品の流通が未だ発展途上であるエチオピアやバングラディッシュなどのアジア・アフリカ諸国、逆に最もスコアが低かったのはファストフードなどの食品流通が既に普及した米国や欧州の先進諸国だった。

 日本のスコアは187カ国中上から118番目だった。「2020年には肥満などの非伝染性疾患による死亡率が75%以上になるという予想があるが、この数字を下げる鍵は食事の改善にある」と今村教授。不健康食品の国際的流通が健康食品の普及効果を相殺している現状に警鐘を鳴らしている。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】高齢期の低血圧と降圧剤の関係 血圧を自己制御することも重要

日本高血圧病学会の分類によれば、収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上で高血圧と診断される。

 高血圧には原因が不明の本態性高血圧症や腎臓病や内分泌疾患に合併する二次性高血圧症、病院に来ると緊張して血圧が上がってしまう白衣高血圧症など様々な病態があるが、いずれの病態であっても慢性的に高血圧状態が持続すると脳卒中や心筋梗塞の危険度が増すので、減塩による食事指導と同時に降圧剤が処方される。

 高齢期には動脈硬化により血管抵抗が増し交感神経が優位になるので血圧は上昇傾向を示す。一方で血圧を調節する機能は低下するので、降圧剤を処方されると却って血圧が下がりすぎて低血圧になり脳や腎臓の血流が低下して認知機能低下や腎機能低下をもたらすこともある。

 英国のケント大学の東ケント病院のファーマー教授らの研究チームは70歳以上の高齢者では低血圧にも関わらず降圧剤を処方されている高齢者が多いことに注目した。研究チームが70歳以上の11,167人の患者データを分析した結果、収縮期血圧が100mmHg未満の低血圧の高齢者128人のうち89人(約70%)もの高齢者が降圧剤の投与を受けていることが明らかとなった。

 降圧剤には副作用もあるが血圧を下げることのメリットと薬の副作用を両天秤にかけて降圧剤の治療が開始される。しかし、加齢や他の薬に関連した生理学的変化に合わせて降圧剤の減量や見直しを定期的に行うことが重要とファーマー教授は警鐘を鳴らす。降圧剤を処方されている低血圧の高齢者は薬の副作用のみならず、低血圧によるデメリットをも考慮する必要があることを研究チームは指摘する。

 降圧剤はあくまでも対症療法なので、まずは薬に頼らず塩分の多い食生活を見直し、十分な睡眠を確保し、生活上のストレスを極力減らすことにより血圧を自己制御することも重要だ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】運動すると認知機能が向上する理由 脳に達したケトン体の作用

先週のコラムで学習後4時間で運動すると記憶がより効率的に固定化するという話題を紹介した。身体活動量の高い高齢者の認知機能が保たれていることから運動と認知機能の関連性は古くから知られている。「最強の脳トレはウオーキング」と主張する研究者もいるほどだ。

 しかし、定期的な運動によって認知機能が保たれるメカニズムに関しては必ずしも詳細には理解されていなかった。ニューヨーク大学ランゴーニ医療センターのサマ・スレイマン博士らの研究グループは運動によって脳の中で脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれるタンパク質の産生が増えることに着目した。

 脳由来神経栄養因子は1980年代に発見され、その後の研究により記憶力を高めたり神経細胞を成長させる役割から、認知機能の維持や学習・記憶などのプロセスに重要な物質と考えられている。

 さらに、この物質はアルツハイマー病などの認知症を発症すると脳での産生が減少すると報告されている。研究チームはマウスを回し車で30日間運動させると体脂肪が燃焼して血液中のケトン体が増えることに注目した。

 ケトン体はグルコースと同様に脳のエネルギー源になることが知られていたが、定期的な運動を続けるとケトン体が脳の細胞に直接働きかけ、脳由来神経栄養因子の遺伝子発現を誘導することを研究チームは今回の実験で新たに見出したのだ。

 最近、ココナッツオイルにアルツハイマー病の認知機能の改善効果があることが話題になっているが、ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体に変換されることが知られている。

 アルツハイマー病では、脳に達したケトン体の作用で脳由来神経栄養因子の産生が増え認知機能が改善しているのではないかとスレイマン博士は考察する。高齢期に認知機能を保つためには食事のみならず定期的な運動が重要であることが再確認されたようだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】記憶力の維持に運動が必要 歩行距離や日常活動量の低下が悪影響

高齢期になって外出の頻度が減ると、記憶や学習などの認知機能が低下することが知られている。外界から脳への刺激が減ることも大きな要因の1つだが、歩行距離や日常活動量の低下が認知機能低下に悪影響を与えていると考えられる。

 学習や記憶では脳の海馬と言う部位が重要な役割を果たすことが知られているが、海馬では高齢期になっても神経幹細胞が再生し続けていることが最近の研究で明らかとなっている。

 興味深いことにマウスの実験では、豊かな刺激の多い飼育環境が海馬の神経幹細胞を分裂・増殖させるが、分裂した幹細胞が安定した神経回路を作るためには運動が必要であることが分かっている。

 オランダ、ラドバウト大学のイエルコ・ヴァン・ドンゲン博士らの研究チームはヒトでも学習活動をした後に運動を行うことで記憶力を改善させることができることを見出した。

 研究チームは72人の被験者を対象に90種類の絵と場所の関連性を40分間学習したのちに、被験者を(i)学習直後に固定バイクで運動した群、(ii)学習4時間後に運動した群、(iii)全く運動しなかった群の3群に分け、48時間後に記憶力と脳MRI(磁気共鳴画像)で脳の活性化部位を検討した。その結果、4時間後に運動した群では脳の海馬で神経細胞の活性が高まり記憶力が増強していることが分かった。

 しかし、学習直後に運動した群は全く運動しなかった群とほぼ同じレベルで記憶力の改善傾向を認めなかった。ドンゲン博士は運動により分泌が促進されるドパミンやノルアドレナリンなどの化学物質が記憶の定着にプラスに作用している可能性を指摘する。

 現在でも記憶のメカニズムは必ずしも詳細には理解されていないが、認知症を予防するためにも学習と運動の組み合わせは重要と考えられる。今回の研究では運動のタイミングの重要性が確認された。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】“思秋期”を賢く生きるために 認知機能を維持を

子どもから大人への移行期が「思春期」なら、大人(成人)から老人(高齢者)への移行期は「思秋期」と呼びたい。つい最近、出版された『思秋期』(ブックマン社)の著者で国際福祉大学大学院の和田秀樹教授はこの思秋期という移行期をどのように過ごすかが、高齢期の人生の質や充実度に大きな違いをもたらすと力説する。

 思春期にたくさん分泌した性ホルモンが大人への成長を促したように、45歳を過ぎて経験する性ホルモンの分泌低下が高齢期の身体と心への移行期の入り口になる。

 思秋期に起きる性ホルモンの減少が人間の感情を制御している前頭葉の機能に影響を与えることに和田教授は注目した。前頭葉が萎縮した高齢者は若い頃の感情を維持できなく、男性や女性特有の感情表現を失って中性化してしまう。一方で前頭葉が萎縮しない高齢者はいつまでも自分が男性であることや女性であることを意識するので、何歳になっても人生に張りと艶があることが精神科医として5千枚以上の脳のCT画像やMRI画像を見て分かったという。

 先月末に新宿駅南口にオープンした新宿白澤記念クリニックは認知症予防法を専門とするクリニックで前頭葉への磁気刺激治療が受けられる。繰り返し前頭葉を磁気刺激することにより、うつ病が改善したりストレスのために落ち込んでいる気持ちが前向きになったりする。

 さらに磁気刺激治療により神経幹細胞の再生が促されることにより認知症の予防が期待されている。高齢期になってもヒトの大脳皮質には神経幹細胞があり、脳への様々な刺激により神経幹細胞は分裂して再生することが知られている。

 思秋期や高齢期では様々な刺激を脳に入れることにより神経幹細胞を刺激して前頭葉の萎縮を防ぎ認知機能を維持することが認知症の予防につながるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】音楽で脳を刺激して認知所予防 芸術作品に囲まれた環境で治療

 新しくオープンした新宿白澤記念クリニックでは、前頭葉への磁気刺激治療で神経幹細胞を再生させ認知症を予防する磁気刺激療法を行っている。磁気刺激により分裂した神経幹細胞が神経細胞に分化し神経回路を形成するためには更なる脳への刺激が必要である。

 昔から左脳は論理脳、右脳は芸術脳と言われているが、実際、言語を発する時の中枢(運動性言語中枢)は左前頭葉にあり、音楽を奏でる時の中枢(運動性音楽中枢)は右前頭葉にあることが分かっている。

 従って、左右の前頭葉の萎縮を予防するためには、脳トレのような論理回路の刺激のみならず、カラオケや芸術鑑賞による刺激も必要になるだろう。

 そこでクリニックでは磁気刺激治療後にオルゴール療法を併設したリラクセーション室を設計した。オルゴールは3.75ヘルツから20万ヘルツの可聴領域を超える幅広い音の響きが脳を刺激するといわれているが、静かに目を閉じて、白鳥の湖(チャイコフスキー)、愛の夢(リスト)、カノン(パッヘルベル)、アヴェマリア(バッハ)などのクラシック音楽を聴くと脳の深い部分が刺激されるためか演奏が終わった時に涙ぐむ人が多い。

 最近のドイツのルール大学の研究でもモーツアルトやシュトラウスなどのクラシック音楽鑑賞に血中脂質濃度と心拍数を下げる効果を認めるが、ポップバンドABBAの音楽を聴いてもその様な健康効果が認められないことが、参加者120人を対象にした実証試験で明らかとなった。

 クリニックには私の父で医師でもあった白澤實画伯の絵画が多数展示されていて、芸術作品に囲まれた環境で磁気刺激治療を受けることができる。

 デジタル化された現代社会の中でバランス良く脳の認知機能を維持していくために芸術作品に触れ合うなどのアナログ刺激が今後重要になるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】果糖は脳に炎症を惹起し記憶力低下もたらす

果糖(フルクトース)は蜂蜜や果実、メロンやある種の根菜に含まれている単糖である。グルコースに比べて血糖を上げる作用が弱いために健康的な糖質との評価もあったが、一方で中性脂肪の値を上昇させる効果があり心臓病の発症要因になるとの警鐘も鳴らされていた。

 現代人の摂取する果糖の供給源の多くはコーンスターチから生成される安価な甘味料である果糖ブドウ糖液糖(別名、異性化糖)で、コンビニやスーパーに置いてあるスポーツドリンク、ゼリー、アイスクリーム、シリアル、ノンアルコールビールなどの商品に幅広く使われている。

 最近では、心臓病だけでなく、アルツハイマー病や注意欠陥多動性障害などの神経・精神疾患との関連性が示唆されている。

米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のフェルナンド・ゴメツピニラ博士らの研究チームはラットを使った実験で、果糖が直接的に脳の神経細胞に作用し遺伝子発現を変容させている可能性を検討した。

 研究チームはアルツハイマー病や注意欠陥多動性障害などの脳疾患で発症に重要な役割を果たしている海馬と視床下部に注目した。人に換算すると1日1リットルの炭酸飲料に相当する量の果糖溶液をラットに6週間摂取させた後に迷路試験を行った。

 その結果、果糖を摂取した群のラットは記憶力が低下し、迷路を解くのに通常の2倍の時間を必要とした。遺伝子を調べると、視床下部で700以上、海馬で200以上の遺伝子が異常な発現パターンを示していた。これらの遺伝子には代謝や細胞間のコミュニケーション、炎症の調整に関わる遺伝子が多数存在した。

 興味深いことに、果糖とオメガ3脂肪酸であるDHAの両方を摂取した群では、記憶力の低下や遺伝子発現異常は観察されなかった。DHAが果糖による脳障害の特効薬になる可能性があるとゴメツピニラ博士は示唆する。脳のためには果糖を減らして青魚の摂取を増やすのが良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】地中海食の効能は短鎖脂肪酸か 伝統的な日本食も

これまでの栄養学研究で地中海式ダイエットは生活習慣を予防する健康的な食事法と報告されている。また、最新の研究でも認知症予防効果があることを本コラムでも紹介した。しかし、どの食材にその健康効果があるのかに関してはオリーブ油であるとする説、地中海地方で取れる野菜や果物であるとする説、あるいは新鮮な魚介類にあるとする説など諸説あり未だにはっきりしていない。そんな中、地中海食に豊富にふくまれている食物繊維が腸内細菌により発酵されて生成される短鎖脂肪酸にその健康効果があるとの報告が話題を呼んでいる。

 イタリアのナポリ大学微生物学科のダニロ・エルコリ二教授らの研究チームは腸内フローラが生成する短鎖脂肪酸に注目した。酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸は食事中の不溶性食物繊維が腸内細菌により発酵される過程で生成される代謝産物であるが、最新の研究ではその抗酸化作用や抗老化効果が注目され、炎症性疾患や糖尿病、心血管疾患を予防する効果があることが分かった。

 研究チームはイタリアの離れた4つの町の成人153名の1週間の日常の食事内容と腸内細菌、および便中の短鎖脂肪酸の濃度の関連性を検討した。

 その結果、果物、野菜や豆類など植物性食品の摂取量が多い人の腸内にはプレボテーラとラクノスピラという細菌が検出されたが、これらの菌が腸内で食物繊維を分解し短鎖脂肪酸を生成し健康効果に繋がっていると考えられた。

 一方で動物性タンパク質の摂取が多い人では、ルミノコッカスという細菌が検出された。ルミノコッカスは動物性蛋白質由来のカルニチンやコリンを分解するが、その代謝産物は心疾患の要因になると報告されている。伝統的な日本食も野菜や豆類が豊富なので、同様の腸内フローラと短鎖脂肪酸の生成が期待されるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える

千代の富士は61歳で…「すい臓がん」リスクをどう抑える

早すぎる死にビックリした人も多いだろう。

 元千代の富士の九重親方が亡くなった。まだ61歳の命を奪ったのは、すい臓がんだった。

 九重親方は昨年、すい臓がんの手術を受け、「早期発見でよかった」と喜んでいたが、その後、胃や肺への転移が見つかったという。すい臓がんは男女ともに「治りにくいがん」のトップにランクされる厄介な病気だ。「すい臓は『沈黙の臓器』と言われるほど、がんの自覚症状が乏しい器官。そのため早期発見が難しいのです」とは医学博士の米山公啓氏だ。

「太い血管やリンパ、神経などと密接しているため、血液の流れなどで遠隔転移しやすいのです。そのため早期に発見したとしても、すでに別の部位に転移していることがある。すい臓がんの90%が進行性がんと言われるのはそのためです。しかも初期ではこれといった痛みがありません。背中や腰、胃腸が痛みだしたときは、かなり進んでいると考えていい。背中が痛むのはがんによって膵管が圧迫されるからです」

 黄疸のほか、目と皮膚が黄色くなったり、尿がチョコレート色になるのも症状の一種。糖尿病のようにやたら喉が渇き、一度のオシッコの量が増えるのも兆候だ。因果関係は不明だが、統計的に肥満の人がかかりやすいことも分かっている。

「体格を表す指数のBMI値が30以上の場合、男性は、すい臓がんの発症が1.4倍になることが分かっています。だから力士のような肉付きのいい人が罹患してしまうのです。予防法はカロリーの低い食事と運動で肥満を防止すること。糖尿病のリスクを抑え、たばこを控えてください。超音波検査やMRIでは発見できないので、特殊な検査薬でがんに目印をつけるPET検査をお勧めします」(米山公啓氏)

 人間ドックや通常の検診では、早期発見は不可能という。すい臓は小さな器官だが、大きな危険を秘めているのだ。

大橋巨泉氏のモルヒネ投与医師はニキビ治療専門家だった

7月12日に亡くなった大橋巨泉さん(享年82)の死後、妻・寿々子さんが発表したコメントが物議を醸している。

〈先生(看取った医師)からは「死因は“呼吸不全”ですが、(中略)最後に受けたモルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与による影響も大きい」と伺いました。もし、一つ愚痴をお許しいただければ、最後の在宅介護の痛み止めの誤投与が無ければと許せない気持ちです〉

 過去、胃がんを始め3度にわたるがん手術を乗り越えてきた巨泉さんは、国立がん研究センターで放射線治療などを受けた後、今年4月に退院し、千葉県内の自宅で在宅医療を受けていた。

 それを担ったのが、近所の在宅診療所の院長であるA医師だった。A氏は、巨泉さんが「背中が痛い」というと、モルヒネ系の鎮痛剤を処方したという。巨泉さんはその後、一人で歩けなくなるほど体力が低下し、再びがんセンターに入院。それから約3か月後にこの世を去った。寿々子さんは今も鎮痛剤の服用を後悔しているという。巨泉さんの親族が語る。

「親族はみな後悔の気持ちでいっぱいです。あとで調べたら、A氏は皮膚科や美容形成外科の分野で有名な医師だったと知り、驚きました」

 A氏はもともと防衛医科大学校病院の形成外科医として勤務後、都内に美容皮膚科クリニックを開業。重症のニキビに対する光線力学療法で話題を呼び、ニキビ治療に関する著書も出版するなど、業界内では有名な存在だった。

 だが、その得意分野においてもこんな過去があった。防衛医大病院の形成外科医時代の1998年に、あざの治療をめぐって医療事故訴訟を起こされていたのである。原告であるフリーライターの井上静氏によれば、裁判では「十分な説明がなされないまま手術をした診療契約上の債務不履行にあたる」として、勤務する防衛医大=国に、500万円の賠償命令が下された。井上氏はこういう。

「私は背中の手術だったため、命に影響はなかったが、巨泉さんは違う。形成外科医ががん患者の在宅医療に携わっているとは思いもよりませんでした」

【デキる人の健康学】日光浴で寿命延伸 習慣的でメリットとデメリット

 紫外線は皮膚がんのリスクを増やし、皮膚の光老化を促進するのでシミやシワなどの皮膚の老化症状を加速するとされ、多くの日本人が紫外線を回避している。

 しかし、紫外線を浴びることにより皮膚の細胞でビタミンDの前駆体が合成されることから、紫外線を回避することはビタミンD欠乏症の原因になるとの警鐘が鳴らされている。

 高齢期にビタミンDが欠乏すると骨粗鬆症、認知症や癌のリスクを増やすことから、高齢期の生活の質を低下させ寿命を短縮している可能性が指摘されている。習慣的に日光浴することが寿命に及ぼす影響に関してはメリットとデメリットがあり、どちらを優先したら良いのかに関して議論も多い。

 そんな中、スウェーデンのカロリンスカ大学のリンドクビスト博士らの研究グループは29,518人のスウェーデン人女性を20年間に渡り追跡調査し、日光浴の習慣と皮膚がんの発症率や寿命との関連性を検討した。

 研究グループは日光浴の習慣に関して、夏や冬にどのくらいの頻度で日光浴をするか、休暇中に海水浴などの日光浴を計画するか、習慣的に日光浴ベッドを使用しているかなどの質問から対象者を3群に分けて比較分析した。その結果、最も日光に当たる習慣のある群の人たちは他の群に比べて有意に寿命が長いことがわかった。

 死亡率を詳細に検討すると日光浴群では心臓病による死亡率が顕著に低下していることが分かった。しかし、日光浴群では寿命か長寿化したために死亡率における癌の相対的寄与率が増える結果となった。

 興味深いことに日光浴をしない非喫煙群の死亡率と日光浴の習慣のある喫煙群の死亡率がほぼ同じレベルであったことから、リンドクビスト博士は日光浴を避けることは喫煙リスクと同等で0.6-2.1年の寿命を短縮するデメリットがあると警鐘を鳴らす。今回の研究は北欧の調査ではあるが、紫外線を回避する傾向が一般化した日本でも同様の調査が必要だろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。
1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える

「クレジットカード」で、絶対やってはいけないこと “知っておきたいトラブルの種”

 肥満症の人は睡眠時無呼吸症候群を高率に合併するために、良い睡眠の質が保てないことが知られている。肥満症は2型糖尿病や癌の発症リスクも上昇させ中年期以降の生活の質を著しく損ねるので減量が必須である。しかし、減量のためのダイエット食で十分にタンパク質を摂取しないと、良い睡眠の質が保てないことが報告され話題を呼んでいる。

 米国パデュー大学栄養科学のウェイン・キャンベル教授らの研究グループは過体重か肥満の被験者44人を2群に分け、対照群には通常のタンパク質量(0.8g/体重)のダイエット食、高タンパク質摂取群には通常の約2倍のタンパク質量(1.5g/体重)のダイエット食を16週に渡って摂取してもらい、毎月、睡眠の質をピッツバーグ睡眠問診表(PSQI)で評価した。

 この問診表は睡眠時間、睡眠の連続性、睡眠潜時、日中の眠気の有無、睡眠効率、主観的評価や睡眠薬の使用の有無をスコア化したもので睡眠の質を数値化して評価できる。

 解析の結果、高タンパク質群の被験者は3ヶ月目と4ヶ月目に睡眠の質が向上していることが明らかとなった。被験者は主に牛肉、豚肉、大豆、豆類、乳蛋白からタンパク質を摂取したが、これらのタンパク質は睡眠の質を左右するセロトニン、メラトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の原料になるトリプトファンやチロシンなどのアミノ酸の供給源になるとキャンベル教授は考察する。

 しかし、高タンパク質ダイエット食ではタンパク質が増えた分の炭水化物の摂取量を抑えているので、低糖質が睡眠の質を良くした可能性も否定できない。以前のコラムでも夕食と睡眠の関係を紹介したが、質の良い睡眠のためには高タンパク質で低糖質の夕食が良さそうだ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】食事で白内障の進行を抑制 ビタミンCは食事での摂取が大事

 白内障は目の水晶体を構成する蛋白質クリスタリンが変性することにより、本来透明な水晶体が白色に濁ることにより発症する。

 通常、45歳以上の中年で発症し年齢を重ねるにつれて物がかすんだりぼやけて見えるなどの症状が進行、80歳以上の高齢者ではほとんどが何らかの形で白内障の症状を引き起こしていると言われている。しかし病気の進行速度には個人差があり、水晶体の白濁そのものは皮膚のシミや皺などと同じく老化の一環と位置づけられている。

 英国キングスカレッジロンドン眼科学のクリストファー・ハモンド博士らの研究チームは、遺伝よりも食事や生活習慣の方が白内障の発症や重症度に関連性が高いことを明らかにして話題をよんでいる。

 研究チームは英国在住の女性の双子2054人の食事のアンケートから栄養素の摂取量を推定し、更に60歳の時点での目のデジタル画像から白内障の進行度を定量化しそれらの関連性を検討した。

 その結果、白内障の発症は遺伝的要因が35%で残りの65%は食事などの環境要因であることが分かった。また、食事に含まれる栄養素を解析した結果、ビタミンCが豊富な食事を摂取している女性の白内障のリスクは通常よりも19%低いことが明らかとなった。

 さらに研究チームが324組の双子を10年間追跡調査し70歳の時点での白内障の進行度を再評価した結果、ビタミンCが豊富な食事を摂取すると報告した女性は白内障の進行のリスクが33%も低いことが分かった。

 ビタミンCは酸化を防ぐ作用があるが、目の内部のビタミンCの濃度が高いと水晶体が酸化して濁るのを防ぐ作用があるとハモンド博士は考察する。興味深いことにサプリでビタミンCを摂取していた女性は白内障の進行を抑制できなかったことから研究チームはビタミンCは食事による摂取が大事であることを強調している。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】糖質オフは超加工食品を減らして

農産物、畜産物、水産物を原料として種々の処理加工、調理により製造された食品を総称して加工食品と呼んでいる。これまでの古典的な加工食品は塩、砂糖、油脂などの添加が主であったが、最近の加工食品は調理には使われない香料や乳化剤、人工甘味料をたくさん使用してるため「超加工食品(ウルトラ加工食品)」と呼ばれる。

 シリアル、袋詰めされたパンや焼き菓子、袋入りのスナック類、種々の菓子類、デザート類、チキンナゲットなどの再構成肉、即席めん類、即席スープなどが超加工食品に含まれるので、コンビニに置かれている食品の多くは超加工食品と考えられる。

 ブラジルのサンパウロ大学栄養学科のカルロス・アウグスト・モンテイロ博士らの研究チームは超加工食品の普及と添加糖の摂取量の増加に関連性を見出した。研究チームは米国人の国民健康栄養調査の2009年から2010年の9000人以上の食事データを用いて詳細な解析を行った。

 その結果、超加工品の摂取カロリーは総カロリーの約58%を占め、添加糖の約90%は超加工食品から摂取していることが明らかとなった。また、超加工食品に含まれる添加糖の含有量は平均21.1%で通常の加工食品(2.4%)の8倍以上、非加工食品(平均3.7%)の5倍以上だった。超加工食品の摂取量と添加糖の摂取量の間には直接的な相関性が見出された。

 研究チームによれば、超加工食品のうち米国人で摂取量が最も多かったのが、清涼飲料水(総カロリーに占める割合が平均17.1%)、フルーツジュース(平均13.9%)、ケーキ・クッキー・パイなど(平均11.2%)、パン(平均7.6%)、デザート類(平均7.3%)、スナック菓子(平均7.1%)、シリアル(平均6.4%)、アイスクリーム類(平均5.9%)、乳飲料(平均4.6%)と続いた。

 日本でも認知機能向上やメタボ予防のために糖質オフダイエットが注目されているが、超加工食品の摂取を減らすことが有効だろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】血中ビタミンD濃度と発がんリスクの関係

以前の本コラムで日光浴に寿命延伸効果があることや心臓病の死亡率を下げる効果があることを紹介した。皮膚が紫外線を浴びることによりビタミンDが合成されるので、日光浴を習慣にしている人や高緯度地方に住む人、あるいは冬期には血中ビタミンD(25(OH)D)の濃度が低く、逆に日光浴を習慣にしている人や低緯度地方に住む人、あるいは夏期には血中ビタミンD濃度は高いことが知られている。

 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校公衆衛生学のセドリック・ガーランド教授らの研究チームはこれまでに、高緯度地方に住む血中ビタミンD濃度が低い人の調査から血中ビタミンD濃度が低いと結腸がんのみならず、乳がん、肺がん、膀胱がんの発がんリスクが高くなることを報告してきた。

 今回、研究チームは血中濃度が高い集団にまで調査対象を広げた結果、血中濃度は高ければ高いほど発がんリスクは更に下がることを見出した。合計2304人を対象にした複数の研究でビタミンDの血中濃度と発がんの関連性を検討すると、血中濃度が20ng/ml未満の人の発がんリスクに対して、血中濃度が20~39ng/mlの人の発がんリスクは39%、血中濃度が40ng/ml以上の人の発がんリスクは67%も低くなっていることが分かった。

 興味深いことに、最新の研究でこれまでには報告されていなかったビタミンDの代謝産物の存在が明らかにされ、活性型ビタミンDよりも強力なガン細胞の増殖抑制効果と細胞を分化誘導する作用がある点をガーランド教授は指摘する。

 日本人は紫外線を回避する傾向が強く、多くの人が血中濃度20ng/ml未満を示している。そのような人は、発がんのリスクを下げるためには食事や日光浴により血中ビタミンDを上昇させる必要がある。サプリメントが有効との報告もあるが、がんを予防するためにどの程度の摂取量が必要なのか更なる研究が必要だろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

【デキる人の健康学】健康的なスナック食品 野菜や果物の搾りかすを膨らし粉代わりに

先日のコラムで、砂糖や食品添加物である乳化剤や人工甘味料などを沢山使用している超加工食品の摂取が現代人の過剰な糖質摂取につながっているという話題を提供した。

 焼き菓子などの超加工食品をふっくらと仕上げるのに使われているベーキングパウダーは膨張剤の一種で「膨らし粉」とも呼ばれている。炭酸ガスを発生する重曹が基材となり、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、酒石酸、焼きミョウバン、フマル酸、リン酸ナトリウムなどの酸性剤が重曹の分解を助ける助剤となっている。

 ところが最近、野菜や果物の搾りかすを膨らし粉の代わりに膨張剤として使うことにより健康的な焼き菓子を作る方法が開発され話題を呼んでいる。米国ワシントン大学食品科学のギリッシュ・ガニヤル博士らの研究チームはコーンスターチにニンジンの搾りかすを混ぜることでスナック食品を膨張させる効果があることを見出した。

 研究チームがコーンスターチ100gに対して、ニンジンの搾りかすをそれぞれ、5g、10g、15g加えたのち、出来上がったスナック食品の膨張率、密度、溶解度、水の吸収率、微細構造やβカロテン含有率を検討した。

 その結果、搾りかすを5g(5%)加えた実験群が膨張率が最大で、スナック食品の外観も優れていた。搾りかすはスナック食品の味や食感に影響を与えなかったばかりでなく、食品に食物繊維や野菜の栄養素などが追加されるのでより健康的なスナック食品になっている点をガニヤル博士は強調する。

 最近、ジューサーが流行しているが、多くの人が野菜や果物の搾りかすを再利用できずに捨てているのが現状だ。この方法なら、健康的な焼き菓子が楽しめるだけでなく、ジューサーの搾りかすを再利用できるというメリットもあるので試してみたい。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。
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