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最期を迎える人に「私」を取り戻してもらう方法

日本は今、人を看取る(みとる)ことが日常的な「多死社会」時代を迎えつつある。若い世代であっても、この社会の一員として、「看取り」を見つめ直すべきときに来ている。そこで、2800人以上の看取りを経験してきた医師・小沢竹俊さんに、最期を見据えた人とともに穏やかに生きていくためのヒントを聞いた。今回のテーマは、人生の最終段階を迎え、できないことが増えていく人にとっての自己肯定感の培い方。何もできない自分でも「これでよい」と思えたとき、人は自分を受け入れられるという。

■「何もできなくても自分は大切な存在だ」という自己肯定感の培い方

 人生の最終段階を迎え、できないことが増えていくのは苦しいものだろう。自分らしさを見失い、自身を大切に思えなくなったり、その存在価値を疑ったりすることもあるかもしれない。そんな苦しみの中にいるとき、どうすれば日々を穏やかに過ごせるのだろうか。ここではまず、自分の大切さを実感できる状況について考えてみよう。例えば、100点満点を取れたり人の役に立てたりしたとき。それから、「たいへんよくできました」と高評価をもらえたとき。自分で自分を認め、好きになれるのではないだろうか。

 しかし、外出できなくなったりトイレに行けなくなったりとできないことが増え、自分らしさが失われていく中で、100点満点をつけるのは難しいことだろう。周りの人と比較して自分の価値をはかり、高得点をつけられないこともあるはずだ。しかし果たして何点取れたなら、自分を好きになれるのだろう。どんな状況にあっても「たいへんよくできました」と自分を認め、大切にして生きていく方法はないのだろうか。

 「点数では価値を測れないそんなとき、自分を認めて穏やかに生きていくうえで、大切なキーワードがあります」と小沢さん。それは「これでよい(Good enough)」だ。「『これでよい』と思えるとき、自分の弱さや無力さも含めて認めることができます。これは、ありのままの自分を受け入れながらも前に進むために必要な気持ちであり、開き直りや責任放棄とは異なるものです」人は、誰かの役に立てるときには自己肯定感を持つことができる。「役に立つ、だから自分は大切な存在だ」というわけだ。しかし、「役に立てない、それでも自分は大切な存在だ」と思うには、どうすればいいのだろうか。

 自分だけではなく誰かが、点数にかかわらず「これでよい」と許してくれるなら……。ナンバーワンになれなくとも、オンリーワンとして認めてくれる人がいるのなら……。それは、苦しみの中にいる人にとって、きっと心強い支えとなるだろう。

■大切な支えの存在に気づく「ディグニティセラピー」

 そしてもう一つ、自分らしさが失われていく人生の最終段階において、有効なことがある。それは、尊厳を取り戻す「ディグニティセラピー」だ。「尊厳療法ともいわれるこの手法では、その人がこれまで大切にしてきたものを振り返りながら、周囲の人たちに伝えておきたいことを形にしていきます。具体的には、構造化されたいくつかの質問を中心にインタビューを行い、その内容を大切な人に宛てた手紙にします」と小沢さん。

 ディグニティセラピーでは、例えば、「あなたが人生で一番生き生きとしていたのは、いつですか?」というように尋ねる。自分自身の人生を写したアルバムを眺めていると仮定して、これまでの人生の中で、最も輝いていた時期について語ってもらうのだ。さらに、アルバムの中のその写真では、誰と何をしているのか。どのような表情をしているのか。どんな役割があって、どんなことを達成したのか。また、どんなことを誇りに感じているのか……を聞いていく。

 こうして記憶を引き出すうち、「自分にはもう何もない」と望みを失っていた人も、自分が持ち合わせている大切なものに気づき始める。過去を丁寧に振り返ることで、自分らしさを取り戻し、生きる意志が高まることも多い。 「ディグニティセラピーで行っているのは、“私”を取り戻し、後世に“私”を伝えるための準備。過去の振り返りを通して、大切な人に知っておいてほしいこと、覚えておいてほしいことなどを確認し、手紙という形で伝える。こうして“私”が生きた証しを世代を超えて伝えることは、尊厳を取り戻し、今後の人生を穏やかに過ごすうえで大きな支えとなり得るのです」(小沢さん).

■介護する側にも支えは必要

 そして最後に、介護を担う家族をはじめ、支える立場にある人こそが、支えを必要としているということも忘れてはならない。人生の最終段階は、美しく幸せなものとは限らない。本人のみならず周囲の人々も巻き込んで苦しみを味わうことも、無力感にさいなまれることもあるだろう。小沢さんは、このように話す。 「一生懸命に対応しても、うまくいかないこともある。そんなときに私たちにできるのは、誠実に関わり続けること。そのためにも、自分自身への支えも必要なのだと思います」

「今日が人生最後の日だと思って生きなさい」の著者に聞く第1回 看取りのプロが教える 人生の最期が近い人との対話術第2回 苦しむ人との接し方 相手が望む話の聞き方とは?

■この人に聞きました小沢竹俊(おざわ・たけとし)さん ホスピス医。めぐみ在宅クリニック院長。救命救急センター、農村医療に従事した後、横浜甦生病院内科・ホスピス勤務、ホスピス病棟長を経て、06年にめぐみ在宅クリニックを開院。「ホスピスで学んだことを伝えたい」と、学校を中心に「いのちの授業」を展開。多死時代に向けた人材育成に取り組み、15年にエンドオブライフ・ケア協会を設立。著書「今日が人生最後の日だと思って生きなさい」(アスコム)は、25万部を突破するベストセラーに。新著は「2800人を看取った医師が教える人生の意味が見つかるノート」(アスコム)。

【冬の突然死から身を守れ】ストレスの血管死を未然に防ぐ「レインボーダイエット

働き盛りの人に多い「突然死」は、血管の詰まりから起きる“血管死”だ。過度なストレスなどによって、血管が突然けいれんを起こし、強く収縮して詰まることが原因の多くを占める。どうすれば、未然に防ぐことができるのか。今回はその防止策を紹介する。

 すぎおかクリニック(千葉県船橋市)院長で循環器内科医の杉岡充爾医師は語る。「突然死が一番多いのは朝。睡眠時などストレスのかからない時間帯のリラックス度をいかに上げ、ストレスに負けない強い血管を作る健康習慣を取り入れるか、が肝です」

 今すぐできることのひとつに、「レインボーダイエット」という食事法がある。 トマトを食べたら、次の日はニンジン、その翌日はブロッコリー-という具合に、毎日違う色の野菜を順に食べるのだ。「若くても動脈硬化が起きるのは、身体が酸化するものを食べ続けているから。カラフルな野菜には“ファイトケミカル”といって、血管が酸化して錆びるのを防ぐ強い抗酸化作用があります」

 抗ストレスホルモンを作り、血管を強くするコラーゲンの材料にもなるビタミンCも、積極的に摂りたい栄養素のひとつ。 「レモン2分の1個分の果汁をコップ1杯分の水かお湯に入れて飲むだけでも、腸管のクレンジングができる」忘年会・新年会など、飲む機会が増える季節ならではの注意点もある。

 「大前提として、飲み過ぎは禁物。糖質の多いビールなどの醸造酒は1杯だけで切り上げ、焼酎やウイスキーの水割りかお湯割にシフトするといい。焼酎なら梅干しを入れると、これに含まれる有機酸が肝臓の解毒力を高めてくれます」あわせて試したいのが「ドローイング」という健康法。お腹をグーッと凹ませて30秒間キープして力を抜くだけの簡単な腹筋トレーニングだ。

 「内臓脂肪を減らす効果があり、それによって脂肪細胞の中から、血管にこびりついたプラークを直接掃除してくれる“アディポネクチン”という善玉ホルモンが放出されます」通勤中や横になってテレビを見ている時でも、手軽に取り入れられる習慣だ。次回も引き続き、突然死の防止策について紹介する。 

冬場に浴室で襲う突然死 「ヒートショック」を回避する心得(2)

 寒いからと急いで湯船に飛び込めば、今度は脈拍が高くなる。ましてや、湯の温度が42~43℃と熱い場合、心臓にかなりの負担がかかり、ますます事故を起こしやすくなるのだ。健常者でもそうなのだから、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧や糖尿病、脂質異常などで動脈硬化が進んでいる人は、特に危険だ。

 「確かに、家の中に10℃以上の温度差のある部屋があると、心臓疾患や脳神経疾患を起こしやすい。人間の身体は急激に寒いところに行くと、針で肌を刺されたような感覚となり危険を知らせますが、ヒートショック対策といっても、家の中をすべて暖かくできる環境の人は限られている。

高齢者はまず、温度差が事故につながるということを認識して、トイレに行く際はダウンなどを1枚羽織るようにし、急に身体を冷やさないように心掛けることです」(医療ジャーナリスト)

 また、一番風呂や深夜に1人での入浴は避けた方がいい。風呂が一番目より二番目に入った方がいいのは、当然ながら浴室が温まっているからだ。また、かけ湯、半身浴をうまく掛け合わせて、少しずつ身体を温めていくこと。参考までに言えば、高い位置からのシャワーは15分間で浴室全体の温度を10℃上げることができる。

 「シャワーは、立って浴びるより座って浴びる方が、血圧の変動やめまいなどで倒れた時のリスクも減る。さらに入浴前、室温も大事ですが、コップ1杯の水を飲むことをお勧めします。湯船に浸かっているだけで血液は濃くなり、ドロドロ状になることもある。前もっての水分補給は、未然に脳疾患などの防止にもつながります」(同)

 さらに健康ライターは、ヒートショックの対策として“乾布摩擦”を推薦する。 「朝、全身を寒気にさらし、皮膚を擦ることで刺激を与えると、血行がよくなり自律神経の働きも活発になります。ドイツでは朝、窓を開けて身体に寒気を当てる習慣があり、身体を擦りあげる健康法が一般的だそうです」

 乾布摩擦の注意点は、天然素材(木綿)のタオルを使用すること。そして手足、胸、お腹、背中と、抹消神経から中枢神経を刺激しながら順番に10分くらい擦り上げる。ただし、アトピーの人は皮膚を傷つける恐れがあるので、やめた方がよい。また、体調の悪い場合も悪化させることがあるので控えよう。

 これらを踏まえ、毎日、乾布摩擦をしている人は、風邪を引きにくくなったというデータもある。 「日本では、山梨県内に上半身裸で子供を預かっている幼稚園もある。子供のうちからそうして鍛えておけば、自然に免疫力を高めることができる。結果、風邪を引く子はほとんどいないそうです」(同)

 ともあれ、すでに高齢者や高血圧、糖尿病などの病気を持っている人については、冬の入浴などが常に危険と隣り合わせであることを忘れてはならない。 「今は浴室の装置に“呼び出しボタン”がついている場合もありますが、本人が倒れた場合はどうにもならない。ご家族で、こうした人が同居している場合は、入浴中に『湯加減はどう?』といった定期的な“声掛け”をぜひ行ってください」(医療関係者)

 寒さはこれからが本番。ヒートショックには、くれぐれもご用心!

冬場に浴室で襲う突然死 「ヒートショック」を回避する心得(1)

 これからの季節、浴室やトイレなど、暖かい部屋から冷たい部屋に移動した際に、心臓突然死、脳神経疾患などを発生する人が急増する。いわゆる“ヒートショック”と呼ばれるものだ。 10月22日、俳優の平幹二朗さんが東京都内の自宅の浴槽で倒れているのを発見、死亡が確認された(享年82歳)。この死因も、ヒートショックによるものと見られている。

 冬になると、暖房が効いた居間と、脱衣所や浴室などの温度差が10℃以上になることはよくある。そんな中、鳥肌を立てながら浴槽へ急ぎ、さらに熱い湯船へと一気に浸かることもあるだろう。 

しかし、このごく短い移動、小さな動きで、急激な温度変化が身体を襲い、それが血圧の上昇や下降を引き起こす。それが“ヒートショック”だ。この症状は、人体に非常に大きな負担をかける。特に入浴中に起こる突然死の大きな要因だ。

 日本大学医学部附属板橋病院・脳神経科担当医は、こう注意を喚起する。 「熱い湯船に急に入ると、血圧が上昇した場合は脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などで死亡する恐れがあります。

逆に、急激に血圧が低下した際は脳貧血を起こして浴槽でめまいを生じ、湯船で溺れる危険性もある。12月過ぎから1月は、1年のうちで入浴中の突然死が最も増えるので、特に注意が必要です」

 ヒートショックで亡くなる人は年間約1万人で、何と交通事故死の2倍にも上る。そのうち浴槽内での溺死者の8割は、65歳以上の高齢者。今年の冬はとりわけ厳しい寒さになるとされ、事故が増えそうな気配だ。 「ヒートショックという言葉は、医学事典を探しても載っていない用語。医療よりむしろ、建設業界で使われてきた言葉で、最近になって医療現場で使われるようになったのです。

ひと昔前の家の場合、暖かいのはコタツの中ぐらいで、部屋は均一に寒かった。つまり、温度差がないことからヒートショックなどというものは起きなかったのですが、やがて暖房器具の発達から、事故が話題になり始めたのです」

 冬場の一般的な住宅内の室温は13~18℃。しかし、ファンヒーターが入っている室内は23℃程度まで上昇する。そんな室内でくつろいでいた高齢者が、入浴やトイレに立って行くと、温度差に身体がついていけず“事故”を起こす。

 「最近の高気密の住宅はともかく、1980年以前に建てられた断熱性能の弱い木造家屋ほど、室温差が発生しやすいとされる。暖かい部屋では血圧、脈拍が安定していても、寒い浴室脱衣所で服を脱ぐと、急激に血管が収縮し、血圧が上昇する。さらに浴室も最初は温度が低いので、血圧は一層上がってしまう。加齢とともに血管がもろくなってくると尚更のことです」(医療ライター)

孤独死を起こしやすい“孤独死予備軍”の特徴

今、40代以降の孤独死が社会問題になっている。遺品整理をなりわいとする「あんしんネット」は数々の孤独死の現場を見てきたことから、孤独死の問題を深く受け止め、なんとかしようと啓蒙活動を続けている。

 東京都監察医務院によると、2015年に東京23区内で誰にも看取られずに自宅で死亡した一人暮らしの65歳以上の人は、前年よりも約230人多い3,116人となった。3,000人を超えたのは初めてで、統計を取り始めた2003年の2.1倍の人数に。男性は1,973人、女性は1,143人となり、孤独死する高齢者は女性よりも男性が多いこともわかる。

 では、孤独死を起こしやすい人の特徴はどういったものだろうか?

「もっとも多いのが糖尿病を代表とする成人病疾患を患っている人です。そこからの合併症で亡くなっている方が目立ちます。なぜならインスリン注射の残骸が残っているからです。このパターンが一番多いですね」(あんしんネットの従業員) 我々が老人になる時代は、もっと成人病疾患を患う人数は増えている可能性が高い。そのとき、何か対策を国はやっているのだろうか。

「今、なんとかするのが精一杯で、私たち民間にどうしたらいいかを聞いてくるくらいだから、十分に対策をしているとは言い難いと思います」

 そして、孤独死第二予備軍と言われる層がいる。

「次に多いのが独居で認知症を発症した高齢者。これはもう、自分で認識していないので、特徴的なのですが、ゴミ出ししなくなります。だから、ゴミ屋敷になってしまうことが多いんです。でもこれはコミュニティや親族がいれば解決できる問題です」 これは現代に特徴的なものだ。地域のコミュニティがなくなってしまった都会では、死んでも誰も気づかないということが実際によくある。

「もうひとつが生活保護自給者。200万人以上いますから、バカにできない数字です。年間8,000人孤独死していると言われていますが、男性が5,000人、女性が3,000人と推測されています。これはコミュニケーションが女性のほうがうまいからだと言われています」

 このまま放置すると、年金の不安や、独身の増加もあいまって、これから20代、30代が40代を迎え、老人になるころには、本格的な社会問題になっているだろう。

【上手な死に方を考える】どこで最期を迎えるか 緩和ケア病棟の現実

がんが進行、もしくは転移し、終末期を迎えた時、人生の最期をどこで迎えるか-という選択を迫られる。住み慣れた自宅か、設備の整った病院か。その判断には家庭の事情だけでなく、患者自身の死生観も大きく関係してくる。今回は「病院」を選んだ場合について考える。

 人生終焉の場を病院に求めた時に、受け皿となる「緩和ケア病棟」。ここには「がんを治すための治療」は存在しない。残された時間を苦痛なく、有意義に過ごすことに特化したケアが行われる。

 東京都品川区にある東芝病院緩和ケア部長の茅根義和医師が解説する。

 「自宅ではなく病院を選ぶ理由としては、家族に迷惑をかけたくないという“気遣い”と、何かあった時にすぐに医療スタッフが駆けつけられるという“安心感”が挙げられます。ただ、近年は在宅医療の技術が進化したことと、緩和ケア病棟もなるべく自宅に近い療養環境を整える努力していることもあり、その差は小さくなっています」

 一方、医療者の判断で入院を勧めることもある。その基準は次の3つだ。

 (1)足腰が弱り、歩いたり動いたりする体力がなくなったとき

 (2)嚥下(えんげ=飲み下す)機能が落ちて、食事や薬が飲み込めなくなったとき

 (3)痛みや呼吸苦、吐き気、意識障害などが強く出たとき

 このうち、(3)以外は十分な介護力があれば在宅療養も可能だが、患者だけでなく、家族の負担や不安を考慮して、入院を選ぶケースも少なくない。

 特に認知症患者などの場合、痛みや苦痛を正確に伝えることが難しいこともあり、そうした対応にも熟知したスタッフのそろう緩和ケア病棟なら安心感も大きい。

 「治療を目的とした病院を退院し、緩和ケアの外来に通院するようになってから亡くなるまでの期間は、平均すると半年ほど。もちろん個人差があるので、数年にわたって通院している方もいます。ただ、最後の入院では残された期間は1カ月ほど。苦痛のコントロール以外の医療行為は最小限にとどめ、看護と精神的ケアに力を入れます」(茅根医師)

 家族への支援も重要だ。

 「患者さんが亡くなっていく過程の情報をあらかじめきちんと伝え、気持ちの上で準備ができていれば、最後に『ありがとう』とあいさつができる。ただ、無理をして理性的に見送る必要もない。人生の最後に“パターン”はありませんから」

 終末期医療は死をもって終了する。しかし、死がゴールなのではない。「生ききること」がゴールなのだ。

 次回は「在宅での看取り」について考える。 

怖い細動、突然死… 不整脈ってどんな病気?

 運動もしていないのに脈が急に速くなったり、遅くなったり、一瞬飛んだようになったり――。こんな症状があれば「不整脈」かもしれない。多くは命に関わるものではないが、重症化すれば突然死や脳梗塞のリスクを高めるものもある。異常は感じていなくても、年に一度は心電図検査を受けて早期発見を心掛けたい。

 正常な心臓は安静時に1分間に60~100回拍動している。規則正しい拍動を生み出しているのは、心臓の上部にある「洞房結節」という部分から出る電気刺激だ。この刺激で心房や心室などの心臓の各部位がタイミングよく収縮し、全身に血液を送り出している。

 ところが「この回路に不具合が起きると不整脈が出る」と小田原循環器病院(神奈川県小田原市)の杉薫病院長。1分間に60~100回より速い場合を「頻脈性不整脈」、逆に拍動のリズムがゆっくりになったり、間隔が空いたりして、1分間に50回未満になるのが「徐脈性不整脈」だ。また、脈が飛んだように感じる「期外収縮」もある。

■大半は治療不要

 杉病院長は「検査で不整脈が見つかっても、ほとんどは特に治療しなくてもよい」と話す。例えば症状を訴える人が一番多い期外収縮。拍動が本来のタイミングより早く起こり、心室に十分な血液がたまる前に心臓が収縮してしまう。「脈が飛んだように感じて心臓が止まるのでは」と不安を覚えて受診する人も多い。実は健康な人でも、1日に年齢の数ぐらい起きているのだという。

 では、気をつけたい不整脈とはどのようなものか。特に注意したいのが脈が速くなる頻脈性不整脈が重症化した「心室細動」。心臓が細かく震えるようにけいれんし、突然死を起こすリスクのある不整脈だ。心臓のポンプ機能が働かず、全身に血液を送り出せなくなる状態が長く続けば命にかかわる。

 心室細動が起こりやすいのは、心筋梗塞や心筋症など、もともと心臓の病気がある人のことが多い。しかし、なかには心臓病がなくても突然起こることがある。これを特発性心室細動といい、30~40代の突然死の原因の一つだ。これまでの研究で、特発性心室細動を起こしやすい人では、ブルガダ症候群と呼ばれる特有の心電図を示す病気があることが分かってきた。心電図検査で心室細動のリスクが高まっていないか見極めるとともに、睡眠不足や過労、ストレスなどを避ける。心室細動のリスクが高いと判断された場合、自動的に電気ショックで細動を止める植え込み型除細動器を使って治療することもある。

■60歳以上に多く

 同じく脈が速くなる不整脈の一つに「心房細動」がある。加齢に伴い増える危険な不整脈の代表で60歳以上に多い。東邦大学医療センター大森病院(東京・大田)の循環器センター、池田隆徳教授は「心房内のあちこちで電気的興奮が発生し、心房が細かく震えるように動く状態」と話す。胸がモヤモヤするように感じることがあるという。

 心室細動のように心停止を起こすわけではないが、心臓に大きな負担がかかって疲弊し、心臓の機能が低下すれば心不全につながることもある。心房内の血液がよどめば血栓ができやすくなる。血栓が脳の血管に詰まり、脳梗塞(心原性脳塞栓症)の原因ともなる。心房細動の治療は、血栓ができにくくする抗凝固薬や抗不整脈薬を用いた薬物療法が中心。完全に治すには、カテーテルという細い管を血管から入れて、異常な電気的興奮の発生源を焼き切るという治療法もある。

 脈が遅くなる徐脈性不整脈で気をつけたいのが、拍動のリズムが遅くなったり、一時的に止まったりしたときに起こる失神だ。杉病院長は「3、4秒拍動が止まるとめまいを感じ、9秒以上では失神する」と話す。「後ろに引きずり込まれるように意識が遠くなる感じ」だという。

 不整脈そのもので突然死することはまれだが、失神が起こると転倒によるけがや事故の原因となる。車などの運転中の場合には、命にかかわる重大な事故を引き起こす危険もある。リスクの高い人では、体にペースメーカーを埋め込んで治療する。不整脈は、危険なものもあるが、適切な処置をすれば、命にかかわる事態を最小限に食い止めることができる。池田教授は「定期的に心電図検査を受けることが大事」と話す。脈に異常を感じたときのほか、症状はなくても、年に一度は検査を受けたい。

■心電図、24時間連続や数週間記録も

 心電図検査には、目的に応じていくつかのタイプがある。病院の外来で行うのは、横になって心電図を記録する安静時心電図検査だ。健康診断などでも広く使われている。検査時間は短くてすむが、検査中に不整脈の発作が出ないと記録できないという難点がある。
 
そんな場合に使われるのがホルター心電図。携帯型の心電計を装着、24時間連続して取る。医師はデータをコンピューターで解析し、不整脈が起こっている場所をチェックする。このほか運動時の心電図を調べる運動負荷心電図や、数日~数週間にわたって心電図を取るイベント心電計などもあり、症状に応じて使いわけられている。

「孤独死は独居老人より独身40代のほうが多い」特殊清掃人が断言

2035年には50歳男性の3人に1人が未婚者になると言われる「生涯未婚」時代。10/25発売の週刊SPA!に掲載されている特集『[40歳独身]の危機』でのアンケートでも独身男性の実に50.4%の人が「生涯独身」を受け入れている。しかし、自由気ままな生活は突如思わぬ弊害を発生させるのも事実。ここでは、40代独身者の最期の瞬間について取り上げたい。

◆人知れずに死んでいく……。独居老人よりも多い中年孤独死

 真夏のある日、東京都大田区にあるマンションの一室のドアを開けると、視界を完全に塞ぐほどの黒い虫の大群が襲いかかってきた。よく見ると、コバエだ。そして、部屋の奥から漂う強烈な死臭が防臭マスク越しの鼻をつんざく。

 部屋で亡くなっていたのは、某上場企業の中間管理職だった42歳の独身男性(写真参照)。すでに死後1か月が経過し、腐乱した遺体から流れ出た体液は、畳裏の板張りにまで達していた。死因は糖尿病による合併症。糖尿病や精神疾患を患った男性は、長期療養のため会社を休んでいた。そのため、死後1か月が経っても、誰にも発見されることはなかったという。

 孤独死の現場は凄惨だ。特殊清掃人として長年、孤独死現場を見てきた石見良教氏は、散乱するゴミの中から糖尿病の患者に配布されるマニュアルを拾い上げ「またか」と思ったという。

「孤独死=独居老人のイメージは、間違い。実は40~50代の独身中年にこそ多い。

糖尿病など病気による離職や休職、リストラをきっかけに、唯一の社会との接点だった会社での人間関係が断たれ、孤独死へと向かうのです」(石見氏)

 部屋の中は足の踏み場もないほど荒れ果て、おそらく亡くなっていたであろう黒ずんだシミの場所だけがぽっかり空いている。遺品整理の立ち会い人は、亡くなった男性の会社の同僚だ。高齢の両親は地方に住んでおり、付き合いのある親族や友人もいなかった。

 特殊清掃人として孤独死の最前線に立つ石見氏によれば、中年の孤独死には共通する特徴があるという。50代の独身男性が都内自宅で孤独死していたケースでは、遺体発見時には死後3か月が経過。メーカー系プログラマーとして活躍していたが、糖尿病で療養中だった。この男性の部屋も例に漏れず大量のゴミが床を埋め尽くしていたが、整理収納に関する書籍が複数発見されたという。自身の生活に危機意識を持ちながらも抜け出せなかったようだ。

「ほかにも『健康は精神の安定から』などといった自戒メモが大量に残されていることも、中壮年男性の孤独死現場にはよくあります。また、アニメのDVDやフィギュア、ワインなどの収集品が大量に残されていることが多いのも特徴。アウトドアな人よりは、インドアな人が孤独死に陥りやすい」

 厚生労働省が発表した平成27年版「厚生労働白書」によると、日本人男性の生涯未婚率(50歳までに一度も結婚したことがない人の割合)は22.8%。

さらに、’35年には約3人に1人の29%に上ると推計され、現役世代の孤独死予備軍は今後も増加の一途を辿る。淑徳大学教授で孤独死に詳しい結城康博氏もこう指摘する。

「ここ数年は現役世代の孤独死が増加傾向にあり、20~25%を40代、50代が占めています。そんななか、女性よりも社交性に乏しい男性は、さらに孤独死の可能性が高い。例えばマンションの廊下などで隣人と会っても挨拶もしないような独身男性は、立派な孤独死予備軍と言っていい。地方出身で周りに親族もいなければなおさら。また、独身男性は食生活が乱れやすく、脳梗塞などで突然死するリスクも高いでしょうね」

 同特集では、孤独死だけでなく、健康不安や地方左遷など「生涯未婚予備軍」を取り巻くヤバすぎる日常に密着。「仕事面」「健康面」「恋愛面」において、どんな危機的状況が彼らを待ち構えているのか徹底取材している。彼らのクライシスな日々を目撃し、独身者なら今後の人生を考え直すきっかけになるかもしれず、また既婚者ならば「結婚してるだけマシだった」と溜飲を下げられるかも!? <取材・文/週刊SPA!編集部 写真提供/あんしんネット>

【特殊清掃人・石見良教氏】

アールキューブあんしんネット事業部長。孤立死問題や高齢者のゴミ問題など講演も各地で実施 http://www.r-anshin.net

【社会福祉学者・結城康博氏】

地域包括支援センターでの社会福祉士勤務を経て、現在は淑徳大学教授。著書に『孤独死のリアル』(講談社現代新書)など

朝の突然死リスクを抑える! 日内変動の整え方

■突然死に至ることも……朝に発症しやすい病気とは
朝に発症しやすい病気として、心筋梗塞、脳卒中、不整脈などが挙げられます。これらはいずれも突然死につながることもある怖い病気です。これらの病気が朝に起きやすいのは、朝、自律神経が大きく変動することで、血管の状態が変化するためと考えられています。

朝になると一般的に血圧は上昇します。心臓への栄養血管である冠動脈の内腔は狭くなり、様々なホルモンが産生されます。血液凝固に関わる因子も変動し、血の塊である血栓も作られやすくなります。結果として、朝は高血圧による脳出血やくも膜下出血、血栓による心筋梗塞や脳梗塞、ホルモン異常による不整脈が起こりやすい時間帯になってしまうのです。

例として、2001年に阪神地区における急性心筋梗塞の患者の研究からされた報告によると、心筋梗塞の発症時間帯は、朝と夜の2つの時間帯にピークがみられました。朝の発症者には女性および65歳以上の高齢者が多く、夜の発症者には男性および65歳未満の人、飲酒者、喫煙者および就業者が多い傾向がみられました。夜に死亡リスクが上がる原因は、血圧等の変化だけでなく、アルコール、タバコ、労働などの影響があるのではないかと考えられています(Kinjo K 他 Jpn Circ J. 2001; 65: 617-620.)。

また、気温の変動や自律神経の変動は呼吸にも影響します。そのため気管支喘息がある場合は、明け方に喘息発作が起こりやすくなる傾向があります。

■自律神経はなぜ朝変動するのか
自律神経には、起きているときに活動する交感神経、リラックスしているときに活動する副交感神経の2種類があります。1日を通じて、朝、昼、夕、夜と一方が優位になっては、時間ととともに他方が優位になるリズムがあります。大雑把にみると、起きているときは交感神経優位、寝ているときは副交感神経優位です。早朝の起床時はちょうど、副交感神経優位から交感神経優位に変わる時間になることがイメージできると思います。

2つの自律神経の変動は「日内変動」といわれ、1日の活動に必要なタンパク質やホルモンなどが作られることにも関わります。作られたタンパク質やホルモンは体内で細胞と細胞、臓器と臓器の連絡に関与し、自律神経にも作用します。無意識のうちに起こっている「日内変動」ですが、これをコントロールしているのが「体内時計」です。

■体内時計の乱れを整えることが健康につながる?
一般的にも馴染みのある「体内時計」は、実は遺伝子によって制御されています。遺伝子によって作られるタンパク質が細胞同士の連絡に使われ、「日内変動」を起こしているのです。そのため、遺伝子の異常がある場合、体内時計が正しく働かなくなってしまうこともあります。

一方、私たちがある程度コントロールできる「環境」も、体内時計に影響を与えます。「規則正しい生活が大切」とよく言われますが、最も関係があるものが睡眠です。体内時計は、光の影響を受け、2500ルクス以上の光によってヒトの体内時計はリセットされます。脳にあり眠気を起こすメラトニンというホルモンは、網膜に強い光を浴びることで産生が抑えられ、メラトニンが低下すると眠気が取れます。そして、光を浴びてから14~16時間後に再びメラトニンが増えることで眠気が生じるわけです。毎日なるべくリズムを崩さずに睡眠をとり、朝目覚めて光を浴びるようにすることで、体内時計が整い、結果的に日内変動も正常に整えることができるのです。

■自律神経のバランスが悪いと体内変動も乱れる
自律神経の副交感神経から交感神経へのスムーズな橋渡しができないと、血圧が上昇したり、血栓が作られるようになり、心筋梗塞になるリスクが上がります。特に、休日のリラックスした状態から緊張感をもって仕事が始まる月曜日には、橋渡しが悪くなるためか、週全体で見ても心筋梗塞が起こりやすい傾向があると報告されています。これに冬や春の寒さや、気圧の変動、風の強い不安定な天気などが加わった場合、さらにリスクがあがるようです。

■命に関わる突然死リスクを抑えるために
「魔の月曜日」を含めて朝に起きやすい心筋梗塞などを防ぐためには、自律神経のバランスを整える生活が大切です。

朝の自律神経の変調をできるだけ小さくする理想的な方法は、自然光による起床で、ゆっくりと起きることで血圧の急な上昇が防ぐことが有効です。余裕をもって起きて、しっかりと朝食をとりましょう。心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などを防ぐために、普段から高血圧や動脈を硬化を防ぎ、食事は、塩分を1日6g未満にして、酸化された脂質を減らしておきたいものです。

そしてできれば午後にかけて運動をして、心機能を高めておく習慣が作れるとベストです。散歩などの運動は筋力維持と骨を丈夫にする効果があり、転倒しにくくなり、骨折予防にもなります。

厚生労働省の健康日本21では、1日当たり1500歩(歩行距離にして1km、消費カロリーは100kcal)増加していき、1週間で3000~3500kcalを消費する運動が望ましいとされています。できれば、継続的な運動が大切になります。

帰宅時には、エレベーターやエスカレーターを使用せず、電車なら出口に遠い車両に乗ることで歩く距離が長くなります。

タバコは心血管系の病気及び呼吸器系の病気の危険因子ですから、もともと喫煙しないか、喫煙していたら、禁煙が望ましいです。アルコールは、高血圧、脂質異常、脳出血、乳がんに関しては消費量とともにリスクが上昇します。肝硬変はある程度の量が増えるとリスクが増えますので、適度な量、または飲みすぎない方がよさそうです。

自律神経などの日内変動や体内時計は、自分の意志でコントロールできるものではありませんが、その特性と変動の特徴を知ったうえで、上手につきあっていける身体づくりをしていきましょう。

あなたの“理想の死に方”は? 現役医師と考える終末期医療のあり方

「元気で長生きして、死ぬ時はコロッと逝きたい」「たくさんの孫に囲まれて、眠るように最期を迎えたい」――。そんな“理想の死に方”を考えたことはないだろうか。とはいえ、そう思い通りにならないのが現実。病気や老化により体の自由が利かなくなれば、入退院を繰り返すことになるだろう。認知症になれば、大切な人のことさえわからなくなってしまうかもしれない。誰にでも訪れる終末期をどう過ごすか、若い人にとっても文字通り他人事ではない問題だ。

 そんな終末期医療にフォーカスしたのが、連作長編『サイレント・ブレス』(南杏子/幻冬舎)だ。著者の南さんは現役の医師。多くの患者に向き合い、その生死を見つめてきたからこそ、デビュー作にして心を深く揺さぶる作品が書けたのだろう。

 主人公の水戸倫子は、大学病院から訪問診療クリニックへの“左遷”を命じられた37歳の医師。在宅で最期を迎える患者が穏やかな日々を送れるよう、彼らの家を訪ねて診察するのが彼女の仕事だ。命を助けるために医師になったにもかかわらず、死を待つだけの患者と向き合うことに最初は無力感を覚えた倫子。しかし、さまざまな患者に対峙するうち、終末期医療の意義、その大切さに気づいてゆく。

 倫子が向き合うのは、6人の患者たち。抗がん剤治療をあえて行わない45歳の知守綾子、「無理に生かされたくない」と胃瘻(腹部にチューブを入れて直接栄養を流し込む処置)を拒む84歳の古賀芙美江、時には言葉を話さない身元不明の少女を診ることもある。誰もが小さな謎を秘めており、彼らの診察を続けるうちに真実が紐解かれていく。終末期医療を描きつつも、ミステリー仕立てになっているのが面白い。

 こうした患者に触れるうち、倫子の心にも徐々に変化が生じていく。中でも、第5章「ロングターム・サバイバー」は、倫子の転機となるエピソードだ。この章の患者は、消化器がんの権威である権藤名誉教授。現役時代は「治る可能性があれば徹底的に治す」というポリシーで、治療に取り組んできた名医だ。しかし終末期を迎えた時、彼が選んだのは自然死。かたくなに治療を拒む姿は、自身がかつて行ってきた医療行為を否定してい

るようにも見える。確かに医師の役割は、患者を治療することだ。しかしその思いが昂じて、死を“負け”と捉える医師も少なくない。権藤も倫子も長らくこうした哲学で治療を行ってきたが、それは正しかったのか。信念を揺さぶられた倫子に対し、彼女の恩師・大河内教授は言う。「死ぬ患者も、愛してあげてよ」と。

 現代の医療をもってしても、治せない病気は存在する。老化による衰弱は、防ぐことはできない。だからこそ、治らないとわかってからの終末期医療にも、もっと目を向けるべきではないだろうか。残された人生をどう過ごすか、自分はどのような終末期を望むのか、家族とも話し合う必要があるだろう。

最終章を迎えた時、倫子は施設で寝たきり生活を送る父を看取るため、ある決断を下す。それは、読者によって賛否の分かれる決断かもしれない。しかし、「こういう終末期もあるのか」と目を開かせてくれる選択でもある。

 誰のもとにも死は等しく訪れる。この本をきっかけに、“理想の死”について今一度考えてみてはいかがだろうか。

「痛い死に方」と「穏やかな死に方」分ける要因は何か

最も痛くない、苦しまない死に方として、医療関係者がこぞって挙げたのが老衰死だ。老衰死とは、直接の死因となる病気を持たず、老いによる体の機能低下で死を迎える死を指す。4年前に95歳で母親を看取った前屋庄吉氏(70・仮名)の述懐だ。

「母は生前、大病を患ったことがありませんでした。亡くなる約1か月前から食事量が徐々に減っていき、日にお粥を1~2杯食べる程度。老衰死に至るまでの最後の数日は水を少し飲むくらいでした。最期は自宅の布団の上で微笑みを浮かべたまま眠るように亡くなりました。老衰死とはこんなに安らかに死ねるのかと家族全員、驚いたものです」

 老衰死はなぜ安らかに逝けるのか。その理由を江別すずらん病院認知症疾患医療センター長の宮本礼子氏が解説する。

「老衰になり死が近づくと、私たちは食欲がなくなり、飲み込む力も衰えます。体が栄養を必要としていないのです。飢えているわけではありません。その時、点滴や経管栄養を行なわず、食べられるだけ飲めるだけの自然な経過に任せることで老衰死を迎えられる。

 最近の研究では、動物を脱水や飢餓状態にすると脳内麻薬の一種である『β-エンドルフィン』や、肝臓で生成され脳の栄養源となる『ケトン体』という脂肪酸の代謝産物が増えることがわかっています。これらには鎮痛・鎮静作用があります。そのため、眠るように死に至ると考えられています」

 つまり痛みがないどころか、この脳内麻薬によって快楽さえ感じながら、絶命すると考えられているのだ。

 では、「痛い死に方」と、「穏やかな死に方」を分ける要因は何なのか。医学博士の中原英臣氏は、生活習慣や食生活を挙げる。

「くも膜下出血や心筋梗塞、大動脈解離は、高血圧や肥満などによって、血管に過度の負担が掛かることで発症します。高カロリーな食事を摂り続ける人は、生活習慣病になりやすく特に注意が必要です。

 痛い死に方をしたくなければ、日常生活にウォーキングなど15~30分程度の有酸素運動を取り入れ、塩分や脂っこいものは控える食生活に改めることが肝要です。未病を心掛ければ、必然的に安らかな死を迎えることができるでしょう」

 逆説的に言えば、苦しまないで死ぬためには、健康に生き続けなければならないということだ。

 実は近年、この老衰死で逝く人が増えているという。老衰死による死者数は、1938年の9万8450人をピークに減り続けていた。しかし、2000年に2万1213人で底を打ち、その後、大幅に増加している。2014年には7万5000人を超え、戦後最高を記録した(厚労省・人口動態調査より)。前出の中原氏はこう分析する。

「高齢者の絶対数が増え、老衰による死亡者数を押し上げたと言えます。さらに昨今は、延命治療を断わり、自然な形での死を求める人も、少しずつですが増えてきています。日本人の死に方に対する考えの変化が、老衰死の増加に表われているのかもしれません」

死後に財産を寄付、「遺贈」希望増加

公益団体などが窓口設置

 自分の死後、財産を公益団体などに寄付したいと考える人が増えている。少子高齢化や終活への関心の高まりを背景に、今後も増加が見込まれる。団体側も専門の相談窓口を設けるなど受け入れ態勢の整備に動き出した。

 神奈川県に住む元教師の男性(68)は、死んだ後に残る預金などの財産を、貧しくて大学に行けない子どもたちの学資にしてもらおうと決めている。

 しかし、きょうだいや子どもはおらず妻も亡くなっている。死後に寄付の手続きを託せる人がいない。日本財団の「遺贈寄付サポートセンター」に相談し、6月下旬、寄付の意思を盛り込んだ遺言書を作成した。

 遺言書により、財産を特定の人や団体に譲ることを遺贈という。

 男性は奨学金を得て大学に進学した経験から「大学で学べたことが私の人生を変えた。たいした金額は残せないかもしれないが、少しでも多くの子どもを進学させてあげたい」と話す。

 同センターでは遺言書作成のアドバイスや寄付先の紹介をしている。寄付先が日本財団の場合は、手続きをする「遺言執行者」も引き受ける。

 今年4月の開設から3か月余りで300件以上の相談が寄せられ、現在も約10人と遺贈に向けた具体的な話し合いを進めている。

 日本財団によると、ある女性からの遺贈約1億5000万円を元に昨年秋、ミャンマーに障害者のためのトレーニングセンターが完成した事例もある。

 相談者は、配偶者や子どもがいないケースが大半だ。相続人が全くいない場合、遺言書がなければ遺産は国庫に入る。同センターの長谷川隆治さんは「遺産の行き先を自分で決めたいと考える人が増えているようだ」と話す。日本ユニセフ協会や国境なき医師団日本などにも、遺贈に関する相談が増えているという。

 民法では、配偶者や子らに相続を受ける最低限の権利「遺留分」を認めている。遺言書に公益団体に寄付すると書き残しても、子や配偶者がそれを知らなかったり、納得していなかったりする場合があり、後になって、遺族から遺留分の返金を求められたケースがあるという。

 また、借金の担保になっている不動産や売れる見込みのない山林などを寄付すれば、その処理を巡って面倒を掛けることになる。ある団体の担当者は「遺贈を受け入れるのは、現金化したものに限定している」と話す。

 寄付文化の普及を目指す「日本ファンドレイジング協会」代表理事の鵜尾雅隆さんは「トラブルになるのを恐れ、遺贈そのものを受け付けていない団体もある」と明かす。遺贈を決断する際には、自分の財産状況がどうなっているのか、しっかりと把握しておく必要がありそうだ。

 団体側も、希望者に適切なアドバイスができる態勢を整えているケースはまだ一部で、弁護士や税理士でも遺贈による寄付の実務を扱った経験がある人は少ない。このため、同協会は3月に団体向けの「遺贈寄付ハンドブック」を作成。法務、税務の担当者らを対象にした研修を開き始めた。

 鵜尾さんは「約50兆円ともいわれる年間相続額のごく一部でも寄付に回れば、様々な社会問題の解決につながる。遺贈が人生の集大成となる新たな寄付文化として根付いてほしい」と話している。

公正証書遺言の作成を

■遺贈に詳しい弁護士の鈴木大輔さんの話

 遺言書を自筆作成する場合は日付、署名、印鑑が必要というように形式が決まっている。遺贈によって団体に寄付をする際も同様だ。間違えると遺言書として認められず、善意の寄付をしたくても無駄になってしまう。

 形式が整っていても、内容の意味するところが不明確なケースも見受けられる。親族らとのトラブルを避けるためにも、専門家に意見を求めながら作成した方がいい。

 時間とともに気持ちが変わることもあるので、内容は定期的に見直すようにしたい。最終的には、公正証書遺言を作ることをお薦めする。第三者の立ち会いのもと公証人が作成し、公証役場が原本を保管する。間違えたり紛失したりする心配がない。

 日本財団が今年3月、40歳以上の男女約2500人に行った調査によると「遺贈による寄付をしたい」が5%、「関心がある」と答えた人が26%いた。一方、親が財産を団体に寄付すると希望したら賛成できるか尋ねたところ、「賛成」が47%、「反対」が53%とほぼ半々に割れた。

■生きている間は無理でも

 ◎取材を終えて 被災地の窮状や貧困問題などに触れる度、寄付をしようと思いつつ、行動に移せないことも多かった。ついつい、日々の生活に必要なものや、子どもの教育費、将来の老後資金のことなどが頭をよぎってしまうのだ。先行き不透明な時代、生きている間にそう簡単に多額の寄付はできない。遺贈のことを知り、せめて自分の死後、まとまった額が寄付できるくらいのものが残せればいいなと思った。

突然死の6割超「心臓病」の予兆が表れる意外な部位

 著名人の死などをきっかけにこの数ヵ月「突然死」への注目度が高まった。その死因とされた「虚血性心疾患」といういささか聞き慣れない症状も関心を集めているようだ。

 突然死とは「予期していない突然の病死」のことで、医学的定義は「発症から24時間以内に死亡に至る」ものである。病院に運ばれ翌日に亡くなるといったケースも突然死ということになる。その原因は、急性心筋梗塞、狭心症、心不全など心臓病によるものが6割以上とされ、他の原因も脳血管障害、消化器疾患などというから、突然死のほとんどは循環器系のトラブルによるものと考えてよさそうだ。

 虚血性心疾患とは心臓に血液が供給されないことによって起こる疾患のこと。狭義では狭心症や心筋梗塞など、心臓の冠状動脈の硬化性変化による狭窄や閉塞で起こるものを指し、広義では致死性の不整脈や心肥大などを含む心筋に虚血を起こす疾患の総称だという。心臓病のほとんどが虚血性心疾患を引き起こすといっても過言ではない。

 症状は心臓の動きが悪くなると、それを防ぐために交感神経が作動して闘争的な生理状態となることから引き起こされる。具体的には胸痛や胸部の苦しさ、肩から上腕にかけての痛み、嘔吐、下顎痛、歯痛、腹痛や腹部不快感などがある。

 これらの症状は程度の差こそあれ心理的ストレスへの反応にも似ているし、ここ数日まさに「肩から上腕にかけてが痛む」うえに「気分もよくない」人はビジネスパーソンには珍しくないだろう。

おそらく単なる四十肩、五十肩や心身の疲労によるものだろが、心疾患の症状は「胸」にだけ表れるわけではないことは気に留めておいたほうがよいだろう。

 なお虚血性心疾患から突然死に至る場合は、仕事中、歩行中、乗車中、テレビを観ているときなどの平常時や、用便中あるいはその直後、就眠中に突然倒れて意識を失い、反応が無い状態となるという。まさに突然意識を失うわけだ。救急搬送が必要だが、短時間で心肺停止に陥った場合には蘇生は困難という。

5つの実例からみる納得の遺言書 思いが実現する遺言書とは?

 遺言書には遺言者の思いが込められています。週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』(朝日新聞出版)に掲載された5つ実例から、自分の思いを確実に実現するために、遺言書にどんな配慮がなされているかを見ていきましょう。監修は行政書士の竹内豊さんです。

【CASE1】独身の二女が老後に困らないよう、財産を残したい

 82歳のAさんにとって最大の気がかりは、40代半ばを過ぎても独身でいる二女のことでした。二女は転職を繰り返していたため、定年まで勤め上げても退職金は期待できそうにありません。そこでAさんは、二女の老後資金の足しにしてほしいと、自分の財産をすべて二女に相続させる内容の遺言書を作成しました。

 この内容では、長女が自分の相続分がないことに不満を抱く可能性があります。そこでAさんは、長女には結婚の支度金など生前に贈与をしたことを説明し、遺留分の請求をしないよう付言事項でメッセージを加えました。

【CASE2】前婚でもうけた子と再婚相手に財産を円満に相続させたい

 元会社員のBさん(75歳・無職)は、前妻と死別後に再婚した。前妻との間に娘が1人いるが、後妻との間に子どもはいない。自分が死んだ後も妻と娘が円満に暮らしてほしいと願い、遺言書を作成。妻には老後資金として現金を多く残し、娘には妻が亡くなった際の二次相続の負担を軽くするため、妻と同居している自宅を相続させることにしました。ただし、娘には妻が亡くなるまで自宅を処分しないよう、付言事項に書き加えました。現預金は妻6割、娘4割の割合で相続させ、娘が先に死亡した場合は、孫に相続させるようにしました。

【CASE3】先に子どもが亡くなり(逆縁)、孫の中に音信不通者がいる

 Dさん(92歳・無職)は、夫に先立たれ、二世帯住宅(長男と共有)で長男夫婦と同居中です。長女は娘2人を残して亡くなりました。そのため、Dさんが死亡した場合は長男と孫2人(亡き長女の子)が相続人となりますが、孫の1人とは連絡が取れません。相続人全員で話し合う遺産分割協議が難航すると見て、Dさんは遺言を残しました。遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても遺産分けができます。

【CASE4】自分の世話をしてくれた子にすべての財産を残したい

「家族の中でも特定の人に多く財産を残したい」、あるいは「この人にだけは財産を残したくない」と考えている人は少なくありません。元教員のEさん(72歳・無職)には妻と娘3人がいます。妻とは、妻の不貞が原因で別居中。二女夫婦と同居しています。「妻に財産を残したくない」「自分の身の回りの世話をしてくれている二女にすべての財産を残したい」と考え、遺言書を作成しました。

 付言事項に妻との関係、娘たちにかけた教育費の格差について記載しました。Eにさんは遺言作成の4ヶ月後に死亡。妻と長女から二女に対して遺留分減殺請求がなされましたが、Eさんの死亡から7カ月後に合意して解決しました。

【CASE5】夫の相続で仲違いした長男に財産を残したくない

 Fさん(67歳・無職)は夫に先立たれ、一人暮らし。子が2人(長男、長女)いますが、長男とは結婚を機に関係が悪化。夫が亡くなったとき、自分の遺産の取り分を強硬に主張する長男のせいで遺産分けの話し合いがつかず、苦労しました。以来、長男との関係が悪化し、絶縁状態になっています。自分の死後は長女にすべての財産を残したいが、子どもたちの間で相続争いが起こることが予想されるので、Fさんは「争続」防止のため遺言を残しました。遺言書には、遺留分減殺請求の対策も記載しました。

※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より

竹内行政書士事務所代表
行政書士・竹内豊
たけうち・ゆたか/中央大学法学部卒業後、百貨店勤務を経て2001年から現職。遺言・相続を専門として活動する。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)、『親が亡くなったあとで困る相続・遺言50』(共著、総合法令出版)など多数

※『はじめての遺言・葬式・お墓』発売記念無料講演会、5/14(土)開催!
http://publications.asahi.com/news/602.shtml

遺言は書かせておくべき!? 親が存命中に子がすべきこと

意外と知らない通夜やお葬式でのマナー、業界の裏事情を綴った今、注目のサイト「考える葬儀屋さんのブログ」。「ライブドアブログOF THE YEAR 2015」にも選ばれた同サイトの管理人・考える葬儀屋さんに聞いた、恥をかかない今のうちに知っておきたいお葬式の常識とは――。

 葬儀屋さんブロガーの「考える葬儀屋さん」と申します。

「子供に迷惑をかけたくない」。最近、ご自身の葬儀の相談にいらっしゃる方が言うキーワードです。

 「迷惑」と言っては語弊がありますが、確かに親が亡くなったことで大変な思いをするお子さんは多いです。みなさんも「もし親が死んだら、自分はどうすればいい?」ということを一度は考えた経験があるのではないでしょうか。

◆親の葬儀で迷惑をかけられない方法

 子供が被る迷惑の度合いで、親が自分自身のお葬式に対して取るべき態度を評価するとこんな感じになります。

○:良く調べて自分のお葬式のやり方を決めておく
△:子供に全て任せてしまう
×:出来もしないお葬式のリクエストを言い残す

 子供にとって一番ありがたいのは親自身がお葬式の内容を「ちゃんと」決めているケースです。こういう親は自分自身のお葬式の内容をエンディングノートに書き記しており、依頼すると決めている葬儀屋さんの連絡先やお葬式の見積もりなどを残しています。

 そして、ここまでお葬式の事を決めている人は遺言書を作成して相続で子供たちが揉めないようにしている場合が多いです。いわゆる「終活」をちゃんとやっているわけですね。こういう親を持つと子供には迷惑がかかりません。

◆あの名優も「終活」!? 残された迷惑な遺言

 “△”の「子供に全て任せる」と聞いて、いやいやそれは困るよ、と思われる方も多いと思います。しかし“×”の「出来もしないお葬式のリクエストを言い残す」よりはずっとマシなのです。だいたいの“×”の人は、無頓着なのか縁起が悪いと思っているのか、お葬式の知識が絶対的に不足しており、よく調べずにイメージだけでお葬式を語りがちです。

 その結果、交友関係が広いにもかかわらず、「誰にも知らせるな」と言い残す、遺族の同意が取れていないのに「遺骨をまけ」と言い残すなど、残された遺族を困らせてしまうケースが多いのです。

 ちなみに上記の事例は俳優の故・三國連太郎さんが実際にやってしまったことです。

 できもしないことを言い残されると、遺族はお葬式の時に苦労するだけでなく、ずっと望みをかなえてあげられなかったという罪悪感を引きずることになります。

 では、”×”から”○”になってもらうにはどうすればいいでしょうか。

 親が亡くなったとき、迷惑をかけられないため、子供がまずできること。それは、親御さんに、葬儀屋さんの主催するお葬式のセミナーに参加してもらうことです。葬儀のリアルで、正しい知識を知ってもらいましょう。事実、最近は葬儀セミナーブームでほとんどの葬儀屋さんがお葬式のセミナーを行っています。

◆空前の葬儀セミナーブーム。親の上手な誘い出し方は?

 セミナーには健康不安を持つようになると行きづらくなるので、元気なうちに早めに参加してもらうべきです。そうは言ってもお葬式のセミナーを勧めるってハードル高いなぁと、感じた方も多いでしょう。

 確かに、ズバリお葬式というセミナーもありますが、最近は「相続」や「エンディングノート」をテーマにしてハードルを下げて参加しやすいように工夫しているセミナーも多いのです。ここでお葬式の知識を得てもらいましょう。それから、終活に対して男性は腰が重く、女性は積極的です。まず母親をそそのかして、父親を口説かせると成功率が高まります。

 さて、お葬式のセミナーに参加するもう一つのメリットは、セミナーを主催している葬儀屋さんの良し悪しを見分けることができるということです。なぜなら、消費者はお葬式の経験も知識もない方がほとんどです。

◆セミナーで見分ける良い葬儀屋、悪い葬儀屋

 そのため、「分かりやすく説明する能力」は葬儀屋さんにとって必須です。つまり、葬儀屋さんの良し悪しはセミナーのプレゼンテーション能力で判断できます。セミナーにはプレゼンテーション能力においてその葬儀屋さんのエース級のスタッフが投入されます。

 そこで、そのセミナーの内容がいまひとつわかりづらいと感じたらその葬儀屋さんを選んではいけません。お葬式のことを全く知らない人が聞いてもよくわかるセミナーなら、その葬儀屋さんは良い葬儀屋さんです。

 ちなみに葬儀屋さんのサイトに掲載されているセミナー風景写真だけで葬儀屋さんの良し悪しが分かる場合がありますので、最後に記しておきます。

・聴衆に年配者が多いのにもかかわらずスライドの文字が小さい
・マイクを使っていない(声が聴き取りづらい)
・セミナー講師の格好がラフ

 こういうところは避けましょう。

 考える葬儀屋さんでした。

【考える葬儀屋さん】
 葬儀社に15年以上勤務し、業界内部を知り尽くしたその道のプロ。業務内容はお葬式の担当と葬儀・葬儀業界の分析。Twitterアカウントは@kangaerusougiya。「ライブドアブログOF THE YEAR 2015」にも選ばれ、月間45万PVを突破した「考える葬儀屋さんのブログ」も日々更新中。

死亡年齢の平均ではない? 平均寿命のウソ・ホント

日本の平均寿命は高いと言われています。平均寿命とは、厚生労働省から発表され、報道などでもよく耳にする統計値ですが、一方でその意味についてはあまり知られておらず、微妙に間違った捉え方をしている人が多いようです。平均寿命についてのよくある疑問や間違いについて解説しましょう。

■「平均寿命-自分の年齢」で大まかな余命がわかる→ウソ
これはとても多い誤り。よく聞くのが、「女性の平均寿命が約85歳で、いま、私40歳だから、平均寿命まであと45年生きられるわ」といった表現です。

平均寿命は、あくまでも「発表されたその年に誕生した人」の平均余命のこと。そもそも計算すること自体が間違いなので、この考え方は正しくありません。ただし、現在アラフォーの女性の平均余命が45歳より長いのは確かです。

■平均寿命を毎年報道するのは意味がない→ホント
こちらは正論。平均寿命は、「生命表」という統計の指標のひとつ。国勢調査に基づくものを「完全生命表」と呼んでいますが、国勢調査は5年ごとに実施しています。平均寿命だけ取り上げて毎年大きく報道されるのはやや不自然な感じがします。

前回の国勢調査は平成22年の第21回国勢調査。国勢調査の間の生命表は、「簡易生命表」と呼んでいます。

■平均寿命まで生きるのは50%?→ウソ
誤り。生きるという表現に関係したのは平均余命ではなくて生命表の中で生存数という別の指標です。上の言い方に直接関係した指標があります。ただし、日本では平均寿命まで生きる確率は50%より大きくなっています。

■平均寿命は女性が長い→ホント
こちらは正解。日本を含めて、世界的に見ても女性の方が寿命が長い傾向になるのは事実です。遺伝因子と環境因子の両方が関係していると考えられます。しかし大事なのは平均寿命ではありません。平均寿命から介護が必要となる期間を差し引いた、自立した生活ができる期間である「健康寿命」が大切です。健康寿命は個人の生活習慣しだいで伸ばすことが可能です。

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突然死リスク高い運動は「ゴルフ」か「登山」か?

内科医で『突然死しないのはどっち?』(すばる舎刊)の著書がある池谷医院院長・池谷敏郎氏は、「突然死するかどうかは、日々の何気ない行動のほんの些細な差で決まる」と話す。「突然死」とは、直接の死因となる症状が現われてから24時間以内に死亡すること。突然死のリスクを避ける生活習慣を池谷氏に聞いた。

●通勤電車では足を「横に開いて立つ」か「縦に開いて立つ」か

「人間は1日のうちで座っている時間が長ければ長いほど、肥満や糖尿病になりやすく、脳や心臓の血管系の病気やがんの発症リスクまで高くなることが分かっています」(池谷氏)

 突然死のリスクを回避するためにも、電車通勤の際には座らずに立っているほうがいいそうだ。問題は、どうやって立つか。

「足は肩幅程度に開いた位置から、さらに前後に開いて立つといい。電車が揺れた時にふくらはぎの筋肉が収縮して血行が促進されます。足を動かすのと同じ効果が得られ、有酸素運動の働きをするのです。

ところが横に開いて立つと、揺れた時に体の側面に負荷がかかり、筋肉をあまり動かせません。踏ん張っても無酸素運動と同じ動作になる。これは血圧を上げることにつながってしまう」(池谷氏)

 足を縦に開き、できれば爪先で立つとより効果的だ。

●運動するなら「ゴルフ」か「登山」か

 この正解は、年代によって異なる。スポーツ中の突然死の相対危険率を示す統計によれば、40~59歳では登山、60歳以上ではゴルフのほうがより危険という結果が出ている。

「登山がかなり危険な運動であることには変わりありませんが、60歳以上でゴルフがより危険なのは、自律神経が不安定な早朝からコースに出ることや、気温が変化する中を長時間歩くことで血圧が上がりやすくなることなどが考えられます。夏場には脱水症状を起こす危険もある」(池谷氏)

 さらに「勝ち負け」にこだわったり、打つ時に精神的なプレッシャーがかかることの影響もありそうだ。

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突然死防ぐペットは「犬」か「猫」のどっちか?

 自分が死ぬなんてまだまだ先のことだと思っていたら、ある日突然あの世行き──死への準備ができないままに人生を断たれる「突然死」は、自分自身にとっても、残された家族にとっても悲惨な死に方だ。突然死のリスクを避ける生活習慣を専門医に聞いた。

●ランニングするなら「早朝」か「夕方」か

 健康のためにランニングを、と思っている人は、時間帯に気をつけたい。「朝起きてすぐに走る」か「仕事終わりの夕方に走る」かでは、突然死リスクに大きな差がある。小田原循環器病院院長の杉薫氏が解説する。

「心臓が原因の突然死の90%以上は不整脈を伴いますが、朝方は不整脈が起こりやすい。起床後1時間くらい置いてから体をほぐす程度の体操をするのはいいですが、すぐに走ることは狭心症や心筋梗塞、脳出血などを起こす危険があります。ランニングするなら夕方のほうがいい」

 ただし、ハードワークで疲れているような時は、夕方でも走るのは控えるべし。

●ペットを飼うなら「犬」か「猫」か

 ペットを飼うことは癒しにつながり、血圧の安定に役立つ可能性がある。ただし、「犬を散歩させているから健康にいい」と考えるのは早計だ。『脳卒中、心筋梗塞、突然死を防ぐ101のワザ』の共著者で東京都健康長寿医療センター副院長の原田和昌氏が語る。

「犬の散歩中に心筋梗塞を起こす人は多く、とくに朝の時間帯に多発しています。大きな犬の場合、散歩の際に引っ張られて走るはめになり、許容範囲を超えた運動になる恐れがあるからです」

 飼うなら小さめの犬か、猫にしたほうが無難だ。

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男性の用足し 突然死避けるには立ってするか座ってするか

直接の死因となる症状が現われてから24時間以内に死亡する「突然死」は、自分自身にとっても、残された家族にとっても悲惨な死に方だ。内科医で『突然死しないのはどっち?』(すばる舎刊)の著書がある池谷医院院長・池谷敏郎氏に、突然死のリスクを避ける生活習慣を聞いた。

●おしっこは「立って」するか「座って」するか

 近頃は座っておしっこをする男性が増えているが、その理由は「トイレを汚すな」という家族のプレッシャーによるところが大きい。だが、立ってするか座ってするかは、突然死にも大きく影響するという。

「排尿の時は血圧が下がるため、体調などによっては意識を失ってしまう場合もある。これを『排尿失神』と呼んでいます」(池谷氏) 排尿失神は立ってしていても座ってしていても起こるが、立った状態で失神するほうが、危険度が高いことはいうまでもない。

「立った姿勢から失神すると、頭部に100キロ以上の衝撃がかかることも十分にありえます。下手をすると脳内に出血が起こる危険性もある」(池谷氏)「俺は男らしく立ってする」なんていっている場合ではなさそうだ。

●毎日、「同じ時間に眠る」か「同じ時間に起きる」か

 平日の睡眠不足を週末に「寝だめ」して補う人は少なくないが、これは間違い。

「私たちの体内時計は、朝起きて朝日を浴びることでリセットされ、その約15時間後に眠気がくると決まっています。休日だからと朝起きる時間を遅くすると、体内時計のリズムが一定せず、よい睡眠がとれません。

ストレスの増加や高血圧、高血糖、免疫力の低下などを招き、長期的には突然死の危険性が上がります」(池谷氏)

 就寝時間や睡眠時間の長短にはあまり神経質にならず、毎朝一定の時間に起きればよい、と気楽に考えるのが大事なようだ。

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突然死防止 トンカツソースは「つける」?「かける」?

「突然死」とは、直接の死因となる症状が現われてから24時間以内に死亡することをいい、心筋梗塞や脳卒中などで突然死する人は年間10万人にも及ぶ。

「突然死するかどうかは、日々の何気ない行動のほんの些細な差で決まる」と内科医で『突然死しないのはどっち?』(すばる舎刊)の著書がある池谷医院院長・池谷敏郎氏は話す。運命を分ける二者択一。あなたはどっちの行動を取っている?

●ヨーグルトやフルーツを食べるのは食事の「最初」か「最後」か

 ヨーグルトやフルーツに含まれる糖分は、ご飯やパンから摂取する糖分と体内で基本的に同じ働きをする。

「お腹がいっぱいでも比較的食べられてしまうこれらを食事の最後にデザートとして食べると、主食で十分糖質を摂取した後に、追加で糖質を摂ってしまうことになる。逆に最初に食べておけば、主食を全部食べ終わる前に満腹感を得られる。ヨーグルトやフルーツを食べた分、ご飯を減らすことを意識してください」(池谷氏)

 過度な糖質制限は体によくないが、炭水化物などの糖質を抑えることは突然死の予防につながるのである。

●トンカツを食べる時、ソースは「つける」か「かける」か

 高血圧は動脈硬化を進める要因で、心筋梗塞や脳卒中などによる突然死につながりやすい。高血圧と密接な関係にあるのが塩分の摂取量だ。

「ソースやしょうゆなどの調味料は塩分が多く、かけて食べると摂取量が増えやすい。塩分過多による高血圧を防ぐためにも、ソースは小皿に出して、チョンチョンとつけて食べるほうがいい」(池谷氏)

 ただし、ソースに浸すようにして食べるのでは意味がないのでご注意を。

●「大勢とおしゃべりしながら食事」か「1人でテレビを見ながら食事」か

「ひとりで食べるのを『孤食』といいますが、孤食の人はどうしても早食いの傾向が強い。急いで食べると血糖値が速く上昇し、動脈硬化が進みやすい」

 そう話すのは久留米大学医学部教授・山岸昌一氏。早食いでは満腹感が得られる前に食べすぎてしまうため、糖質や脂肪の過剰摂取にもつながりやすい。肥満になれば心臓への負担が重くなり、当然、突然死のリスクが高まる。

 その点、大勢でおしゃべりしながら食事をすると「ゆっくり食べる」ことにつながる。結果、食べる量を減らし、血糖値の上昇も緩やかに抑えられるのだ。

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突然死予防 起き方にも秘密が

目覚ましが鳴ったら「すぐに起きる」か「ダラダラ起きる」か

 自分が死ぬなんてまだまだ先のことだと思っていたら、ある日突然あの世行き──死への準備ができないままに人生を断たれる「突然死」は、自分自身にとっても、残された家族にとっても悲惨な死に方だ。突然死のリスクを避ける生活習慣を専門医に聞いた。

●朝、目覚ましが鳴ったら「すぐに起きる」か「ダラダラ起きる」か

『脳卒中、心筋梗塞、突然死を防ぐ101のワザ』(主婦の友インフォス情報社刊)の共著者で東京都健康長寿医療センター副院長の原田和昌氏によれば、「ダラダラ起きる」のが正解だとか。

「朝は寝ている間に体内の水分が失われているので、血液がドロドロになりがち。さらにストレスホルモンのひとつであるコルチゾールの血中量が多くなっているため、血圧が上昇しやすくなっています。この状態で急に起き上がることは心臓への負担が大きい。寝そべった状態で手や足先などを動かし、ウォーミングアップしてから起き上がるほうがいいでしょう。ダラダラしているように見えるくらいがちょうどいい」(原田氏)

●朝の歯磨きは「起きてすぐ」か「朝食後」か

 起きてすぐに口の中をスッキリさせたい人は多いだろう。だが、原田氏は、起きてすぐの歯磨きには注意が必要だという。

「口に物を入れる時には副交感神経(体の疲れを回復させ、心をリラックスさせる自律神経)が優位になる。交感神経(緊張時やストレスを感じたときに心身を活発にする自律神経)が目覚めつつある朝に、いきなり歯ブラシを口に入れると自律神経がびっくりしてしまいます。自律神経の乱れは心臓への負担につながるのです」

 歯磨きするなら、朝食をとった後のほうが得策だ。

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突然死しないおにぎりの食べ方は温める?そのまま?

「突然死」とは、直接の死因となる症状が現われてから24時間以内に死亡することをいい、心筋梗塞や脳卒中などで突然死する人は年間10万人にも及ぶ。

内科医で『突然死しないのはどっち?』(すばる舎刊)の著書がある池谷医院院長・池谷敏郎氏は、「突然死するかどうかは、日々の何気ない行動のほんの些細な差で決まる」と話す。運命を分ける二者択一。あなたはどっちの行動を取っている?

●コンビニおにぎりは「温める」か「そのまま」か

 温めたほうが美味しいという人もいるだろうが、突然死したくなければ冷たくても「そのまま」食べるほうがいい。

「食後の血糖値の急激な上昇は、動脈硬化の進行を早め、脳卒中や心筋梗塞の原因になります。お米などに含まれるデンプンには消化されやすいものと消化されにくいものの2種類があり、消化されやすいほうのデンプンはすぐに吸収されて血糖値を急激に上げてしまう。

 一方、消化されにくいデンプンは『レジスタントスターチ』と呼ばれ、急激な血糖値の上昇を抑えるとともに、食物繊維と同じような働きをして腸内環境を整えます。このレジスタントスターチは、デンプンを加熱した後に冷やすと割合が増え、冷めていたものを温めると割合が減ってしまうのです」(池谷氏)

 おにぎりを温めることは、わざわざ健康に有益なレジスタントスターチを減らし、突然死リスクを高めることにつながるのだ。

●「三角食べ」か「ばっかり食べ」か

 昔は給食の時間にご飯と汁物とおかずを順繰りに食べる「三角食べ」を奨励され、親にも「食べたいおかずだけ先に食べるな」と注意されたもの。だが、これは大きな間違いだった。

「血糖値の急激な上昇を防ぐには、まず野菜やおかずを先に食べ、ご飯やパンなどの主食は最後にするほうがいい」(池谷氏)

 三角食べは結果的に炭水化物を摂り過ぎることにもつながり、血糖値を上げるほかメタボの原因にも。もちろん、ばっかり食べでも「ご飯を先に」はもってのほかだ。

●ご飯を盛るのは「茶碗」か「お皿」か

 ご飯茶碗があると、ひと口おかずを食べたら、次はご飯を口にしたくなる。自ずと「三角食べ」になり、ついついご飯を食べすぎてしまうことに。

「この習慣を変えるには、ご飯茶碗を手元から引き離す必要があります。洋食スタイルでご飯をお皿に盛って他のおかずと同列にし、手元から離して並べることをおすすめします」(池谷氏)

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続く疲労も前兆現象の1つ “突然死”の前触れと回避策(1)

 突然死と言えば、去る2月25日、大阪・梅田の繁華街で乗用車が暴走し11人が死傷した事故が思い出される。この暴走した男性運転手(51)の死因が、大動脈解離による心タンポナーデだったという。

 事故を目撃した50代女性は「(男性は)ハンドルを握っている感じではなく、気を失っていると思った」と証言している。つまり、運転中に突然心臓の大動脈が裂けて死亡した可能性が高いと見られているのだ。

 しかし、男性の家族は「持病はなかった」と語っており、近隣住民も「ウォーキングをするなど身体は鍛えている様子だった。健康には気を使っていたのでは」と証言している。そのような状態でも、突発性の病気が死を招き、大事故につながってしまった。

 突如激痛を感じ、そのまま帰らぬ人となる突然死。医学的には、「事故や自殺などの外因性の原因がなく、それまで全く病気がないか、あっても安定した状態で、すぐに悪化する気配がなかった。なのに、突然病気が発症、24時間以内に死んでしまう場合」を言う。
 「特に、発病から1時間以内に亡くなってしまったケースについては、『瞬間死』と呼ぶこともあります。今回の事故で運転していた男性が亡くなったのも、それに当たる可能性は高い」(医療関係者)

 突然死を起こす直接の原因の約半数は心臓にある。残りは、脳(くも膜下、脳梗塞など脳卒中)や呼吸器系だ。しかし、実際に突然死した人の実態を把握することは非常に難しいという。

 「ただし、この突然死を迎える人は意外に多く、亡くなる人の5人に1人が病気を発症して24時間以内に死んでしまうというデータもある。しかも年齢は40~50代が多く見られ、女性より男性の方が約2倍近く多い。

中高年の方なら、大動脈瘤や大動脈解離といった病名を一度は聞いたことがあるでしょう。家族や知人に、大動脈が破裂して緊急手術を受けた方もいるかもしれません。

決して珍しい病気ではないのですが、では『大動脈ってどこにあるの?』とか、『原因は?』と聞かれ、正確に答えられる人は少ないでしょう。それだけ大動脈の部位は知られていない箇所にあるわけですが、決して油断できない病気なのです」

 こう語るのは、日本大学医学部附属板橋病院の外科担当医。
 「大動脈は、心臓から出て胸部、腹部に至る、身体の中心を走る最も太い血管を指します。太さは胸部で直径約3センチ、腹部でも約2センチもある。その太い血管で動脈硬化が進むと、血管内壁の弾力性が低下し、様々な異常が起こりやすくなるのです。

もろくなった血管内壁に高血圧などの要因が加わり、血管がコブのように膨らんだ状態になるのが大動脈瘤。そして血管内壁の一部に亀裂が入り、剥離を起こした状態が大動脈剥離。どちらも放置すると、あるとき血管が破裂して大出血を起こし、命にかかわる重大な病気に発展します。

しかし、それほど危険な病気なのに、大事に至るまで自覚症状がなく、なかなか気づかない。そこに落とし穴があるのです。早期発見のためにも知識を得て、予防を心掛けましょう」(同)

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「恐怖の突然死」中高年が覚えておくべき“兆候と対策”

 車の運転中に突如発生した体調の急変で命を落とさないため、他人に迷惑をかけないため、コレは知っておきたい!

 先月25日、大阪・梅田の交差点で、会社経営者の男性(51)の乗用車が突然暴走し、11人の死傷者を出す大惨事が起きた。その後の調べで、暴走したのは男性の心臓発作が原因で、乗用車がビルの花壇にぶつかって停車したときには、男性が心肺停止の状態だったことが判明した。「実は、私も大学に行くとき、あの交差点はよく通っているんですよ。運転していた男性は、車が暴走したときはすでに意識がなく、体が突っ張った状態でアクセルを踏んでしまったのでしょうね」

 こう話すのは、内科・循環器科が専門の石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授。ちなみに、事故を起こした男性は、家を出るときも普段と変わらず元気で、文字通り突然死だったという。司法解剖の結果、判明した死因は≪大動脈解離による心タンポナーデ≫。石蔵教授が、まず大動脈解離を解説する。「血管は内側から内膜、中膜、外膜の三層構造になっています。内膜と中膜の間にはコレステロールや脂肪などが溜まり、プラーク(脂肪の塊)ができます。内膜は玉ねぎの皮のように薄いため、プラークが溜まりすぎるとピーッと裂けてしまいます。これが大動脈解離です」

 同疾患が発生すれば、胸や背中に激痛が走る。有名人では落語家でタレントの笑福亭笑瓶さん(59)も、昨年暮れ、この大動脈解離で危うく一命を落とすところだった。「ものまねタレントの神奈月さんたちと千葉県のゴルフ場に行ってプレーしているとき、笑瓶さんが急に“背中が痛い!”と苦しみだしたそうです。ドクターヘリで病院に搬送されて、どうにか事なきを得たのですが、もう少し搬送が遅れていたら、命の危険もあったそうです」(芸能記者)

 今回の事故を起こした会社経営者は、大動脈解離が心臓に近い場所で起こった可能性が高いという。「心臓に近いところで解離が起こると、心臓にまで亀裂が入ってしまうことがあります。すると、心臓の内膜と中膜の間に血液や体液が入り込み、ポンプ機能が大幅にダウンしてしまうのです。これが心タンポナーデです」(前出の石蔵教授)

 事故を起こした男性は交差点手前で一度停車して、その後、急発進している。まず大動脈解離が起こり、胸の痛みで車を停めた直後に亀裂が心臓まで達し、失神して体が硬直。そのまま足がアクセルを踏んだため、今回の大惨事になったと、石蔵教授は推測している。「車の運転中に胸や背中に急な激痛を感じたら、まずギアをニュートラルにする。または、路肩に車を寄せてサイドブレーキを引く。これが後続車に追突されたり、巻き添え事故を防ぐために大切です」(前同)

 レスリングの吉田沙保里さんの父親・栄勝さん(当時61歳)は2年前に高速道路を運転している際に、くも膜下出血を発症し、急死しているが、「きっと激痛の中、車を路肩に停めたんでしょう。おかげで、他の車を巻き添えにすることがありませんでした」(同)

 交通事故総合分析センター、日本自動車工業会の統計によると、2007年から12年までの5年間では、心臓による事故は1年間で20件前後、脳卒中などの脳が原因の事故が50件前後も発生している。特に、脳卒中による事故は中高年に多いという。もはや他人事とは言えないのだ。では、脳の場合はどんな前兆があるのか。

 脳のトラブルに詳しい秋葉原駅クリニックの大和田潔院長(東京医科歯科大学臨床教授)は、こう話す。「ただの頭痛だと思っていたら、脳卒中の前兆だったというケースが少なくありません。つい最近も、首が痛いと来院された患者さんをMRIで調べたところ、椎骨動脈解離を起こしてました」

 椎骨動脈は首の根元にある動脈で、解離した部位を下手にマッサージしたりすると、プラークが脳血管に流れ、くも膜下出血などを引き起こす恐れがある。そのまま、いつもの“首の痛み”と放っておけば大変なことになっていたという。大和田院長によると、突然死を引き起こす脳血管障害には、痛みや通常と異なる感覚になるといった特徴があるという。

「一つは、急に激しい頭痛があり、これがずっと続くケースです。こんなときは一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります」 また、「運転中に対向車が二重に見える」「ハンドルを持つ手が急に力が入らなくなる」「車を降りたとき、足下がおぼつかなくなったり、めまいがする」などと、いつもと感覚が違う「神経脱症状」を感じるときも、脳に重大な異常が出ている前兆の可能性が高いという。

 なるべく早く、専門病院でMRI検査などを受けたほうがいい。突然死の2大死因は心臓と脳だが、突き詰めると、最大の原因は動脈硬化により血管が詰まったり、破れてしまうことだ。「高コレステロール、高血圧、喫煙者は特に注意が必要です」(石蔵教授)

 また、「肥満気味の人や睡眠時無呼吸症候群の人、血糖値が高い糖尿病患者も心臓や脳の血管事故を引き起こしやすい」(前出の大和田院長)という。動脈硬化が進む中高年は誰もが突然死の可能性がある――。こう考えて、節酒禁煙、脂っこい食事を控えるなどの節制を心がけよう。

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人はどんな時に「遺書」を書く?60代男性から不思議な回答も

万引きを疑われた広島県の中学生が、それを苦に自殺してしまったというニュースが話題になっている。

彼は至って真面目な少年だったが、学校側の手違いで「彼は万引きで捕まったことがある」と見なされ、志望高校への推薦入学を取り消された。このような耳を疑うべき不祥事が、我が国で実際に起こっているのだ。

また、亡くなった少年は、遺書を残していたという。
■遺書を書いたことがある人の割合は...
「遺書を書く」ということは、自分の死後を少なからず心配しているということだ。

その動機は自殺以外にも、いつか訪れる自然死や「もしかしたら死ぬかもしれない環境」に移る場合など多岐に渡る。だが共通しているのは、そこに何かしらの覚悟や決心があるから遺書を書く、という点。

そこでしらべぇ編集部では、「遺書を書いたことがあるか?」という調査を実施した。


全国1348人の調査結果によると、「遺書を書いたことがある」と答えた人は全体の6.7%。調査した年代が20代~60代であることを考慮しても、やはりこうした経験をしている人はごく少数である。
■遺書を書く理由は?
では、遺書を書いた動機について質問してみよう。まず目立つ回答は、「自殺を考えた時」や「辛くなった時」など、自死を窺わせる内容のものだ。中にはなぜ自殺を考えたのかという理由を答えた読者もいた。

あえてすべては書かないが、親からの虐待や学校でのいじめなどがその理由として複数あった。

だが一方で、50代から上の世代の人々は「残務整理」や「夫の公正証書遺言の作成」といった遺産相続に絡む回答が多かった。ある60代男性は、

「口座、パスワード、保険等の個人情報を遺書に記載した」

と、回答。こうしたことは、これから若い世代の間でも広がるのではないか。
■60代男性の書く遺書
中にはこんな声も。

「冬山登山時に遺書を書いた」

そう答えたのは、60代男性だ。考えてみれば、我が国日本は山岳国。3000メートル級の山々があり、しかも明確な四季がある。冬山登山を趣味にしている人は多い。

さらに、こんな回答もある。

「毎年正月に遺書を書く」

これも60代男性の答え。今回の自由回答調査では、どういうわけかこの世代の男性から興味深い回答が多い。遺書を書く理由もさまざまだということを、この調査で改めて見えてくる。

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一人身の場合、老後の孤独死を避ける方法は?

一人身の場合、老後の孤独死を避ける方法は?

孤独死の明確な定義付けはされていませんが、基本的には社会的に孤立し、充分なケアを受けられない状態の中での死を迎えた方に対し、語られています。ですので、実質的には高齢者だけの問題ではなく、障害を持つ方や小さな子どもなど、すべての人に関わってくる問題なのです。

今回は近年話題となっている高齢者の孤独死について、その予防策を医師に解説していただきました。

孤独死は未婚だけの問題ではない!

孤独死を迎える原因となるものが、未婚、家族との不仲、知り合いがいない、などが上げられます。しかし、未婚の場合は確かに孤独死を迎える原因となりやすい、ともいえるのですが、既婚であっても、配偶者に先立たれれ、さらに子どもとも不仲となると、未婚の方と大差のない状況になってしまうわけです。

不仲でなくとも、遠方にしかいない、連絡もあまりとらない、などといった場合には気づくのが遅れてしまう、そんな方も中にはおられるかもしれません。

孤独死を防ぐための取り組みとは?

まずは自分でできる対策として、近所に頼れる知り合いを持つことも有効ですが、社交的な性格ではないといった方もいるため、1人暮らしの高齢者に対する見守りサービスが全国各地で展開されるようになっています。

兵庫県のある団地では、水道メーターを定期的に点検するようにし、メーターが動かなかった場合などにはご家族と連絡をとり、様子を見に来てもらう、という取り組みを自治体でやっているとテレビで紹介されていました。

ほかにも、2014年度の夏から大阪府の寝屋川市社会福祉協議会がスタートした「緊急時安否確認事業」では、一人暮らしの65歳以上の希望者から合鍵を預かり、緊急時に安否を確認するというサービスです。合鍵を用いた立ち入りの目安は「新聞や郵便物がポストに溜まっている」「洗濯物が何日も放置されている」といった状況ができていることだそうです。

新聞配達員や宅配ドライバーによる安否確認のような定期巡回も様々なところで展開されています。

ひとり暮らしが不安な人向け! 軽費老人ホームがある!

独居ではなく、施設に入ってしまう、ということも一つの手ではあります。老人ホームと聞くと、どうしても費用が高い、介護が必要になってからでなければ入ることができない、などと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

あまり話題にならないので知られていないようなのですが、独居となり、1人では不安なので、といった方が入居できる軽費老人ホームといったところもあります。福祉法人や地方自治体の運営している福祉施設ですので、費用の面では安く済みますが、福祉施設ですので入居基準があり、介護が必要になった場合などには対応していません。資産や収入が低いほど入居には有利になる、などといった面もあります。

介護士からのアドバイス

誰もがいつかは迎える老後。そうなった時に焦らないように、今から自分がどうしたいのかおぼろげでもヴィジョンを持っておきたいものですね。

亡くなる前の「お迎え現象」 本当にある? 故人と会い恐怖和らぐ

家族や知り合いが亡くなる前、誰もいないのに誰かと会話をしている様子を見せたり、「故人が会いに来た」と語ったりする場面に遭遇した経験はないだろうか。これは「お迎え現象」と呼ばれ、送られる人にも送る人にも意義のあることだという。

 神奈川県藤沢市のA子さん(65)は2014年6月、96歳の母親を看取(みと)った。歌が大好きでよく歌っていたが、少しずつ体力が落ち、あまりしゃべらなくなった。ところが、亡くなる3週間ほど前から、部屋に誰もいなくなると、手ぶりを交えて言葉にならない声を発するようになった。

 A子さんらが部屋に入ると、動きはぱたりと止まる。「誰とお話ししていたの」と尋ねても答えてはくれなかった。ただ、A子さんは「時折、父の遺影を見て会話をしているようでした。父がお迎えに来ていたのかもしれません」と振り返る。

 A子さんは10年、その父親を亡くした際もお迎え現象を経験した。亡くなる3週間ほど前、父親は、1歳で亡くなった長男が自宅に来ているとはっきりした口調でつぶやいた。

 その時は「亡くなった人が来るわけないじゃない」と信じなかった。だが、没後、知り合いの住職から「お迎えが来ていたんだね」と教わった。A子さんは「父も母も家族とともにあの世に逝ったと考えると気持ちが楽になります」と話す。

 お迎え現象はどのくらいの人に起きているのだろうか。島根大教育学部准教授(宗教社会学)の諸岡了介さんらが07年、自宅で家族を看取った経験がある遺族を対象に実施した「お迎え」体験に関する調査では、回答した約4割の人が「あった」と答えた。

 A子さんの母親を診ていた同市の湘南中央病院在宅診療部長の奥野滋子さんは「入院中の患者さんにもお迎え現象は起きていると思います。『話すと変だと思われる』という意識が働くのか、入院患者さんからそういう話を聞くことは、あまりありません」と話す。

 末期がんや認知症などを患って全身状態が悪くなると、しばしば「せん妄」と呼ばれる意識障害を引き起こす。お迎え現象は、せん妄とは違うのだろうか。

 奥野さんは「はっきりした違いはわかりませんが、せん妄の場合は、恐怖におびえて苦痛を伴い、話す内容も混乱しています。一方、お迎えの場合は、患者さんの意識ははっきりしていてストーリーもきちんとしています」と説明する。

 奥野さんは昨年9月、父親を亡くした。その際、父親にお迎えが来たという。旧制高校のサッカー部の仲間4人が来たようだった。そこで、父親に真っ赤なユニホームを着せて送り出したという。

 静岡大農学部教授(死生学)の竹之内裕文さんは、お迎え現象が果たす役割について、こう考えている。

 「多くの人は死に対して不安を持っているが、自分の大切な人やペットなどがお迎えに来ることで恐怖心が和らぐのではないか。送る人にとっても、一人で旅立たせたのではないと考えることができ、気持ちが救われる部分があるのではないだろうか」

 ◇「お迎え」体験に関する調査=宮城県の診療所の協力で、2003~07年に家族を自宅で看取った682人を対象に実施。回答した366人のうち42.3%が、「故人が生前、お迎え体験をしたようだ」と答えた。来たのは、「亡くなった家族や知り合い」とする回答が多かった。

69歳の僧侶・内科医が余命3か月のいま、考えていること語る

田中雅博氏(69歳)は、奈良時代に建立された栃木県益子町の西明寺に生まれた。

前住職の父親の勧めで東京慈恵医大に進学し、1974年に国立がんセンターに入職。前住職が亡くなった後、入学した大正大学では博士課程まで進んで7年間、仏教を学んだ。その間1983年に寺を継いだ。1990年に境内に緩和ケアも行なう普門院診療所を建設し、医師として、僧侶として患者に向き合ってきた。
 
 ところが、昨年10月にステージ4b(最も進んだステージ)のすい臓がんが発見され、手術をしたが、今度は肝臓への転移がみつかった。現在は抗がん剤治療を続けているが、効果は芳しくなく、余命わずかであることを自覚している。数多くの末期がん患者と向き合ってきて、自身の死も静かに見つめる彼が、いま、考えていることを語った。

 * * *

 40年ほど前、国立がんセンターに内科医として勤めていた頃は、担当した患者さんのほぼ全員が、治らない進行がんでした。

外科医だと、手術して治る患者さんも診るのですが、内科医の私が担当した患者さんは、ほぼ全員が進行がん。当時はいまよりも治療法が限られていて、どうすることもできない、延命も難しい場合もあるという状況でしたが、いまでもがんの大部分は進行してしまうと治すのが難しくなります。

 そんな患者さんから「私は治りますか?」と質問されたらどう答えますか?

「残念ながら治すことはできません」と答えるしかない。がん性疼痛(がんに伴う痛み)を薬で抑えるなど、身体苦の緩和ケアで痛みを抑えることはできますが、痛みがなくなると最後に出てくるのが「死にたくない」「死ぬのが怖い」という苦しみです。

「私は死ぬのですか?」と多くの患者さんから聞かれました。しかし、医学ではどうにもならないことがある。「いのちの苦」の緩和ケアから人を救うことは、医者にはできない、科学にはできないのです。

 一般にがんが肝臓に転移した場合、黄疸が出ると余命約1か月です。私の場合、まだ黄疸は出ていませんが、検査結果を見て、各種統計と照らし合わせると、生きられるのはあと何か月かといったところでしょう。来年3月の誕生日を迎えられる確率は非常に小さい。

 先日、孫が生まれたんですよ。この子の成長をいつまで見られるのかと、つい考えてしまいます。生きていられるのなら、生きていたいと思いますし、命がなくなることに苦しみは感じます。しかし、人の死は思い通りにはなりません。

 たくさんの患者さんが亡くなっていくのを見ながら、「そのうち自分の番が来るだろう」と思っていました。だから、驚きもしないし、悲観もしない。「自分の番が来たか」と。むしろ「自分の番が来たらこうしよう」と考えてきたことがあるので、それを一つ一つ実行しているような感じです。

【死ぬときに後悔しない方法】(下)勘三郎さんは「かっこいい最期」

「後悔のない人生」の背景には、その人の生きざまや、反対に「死にざま」というものも関係すると思います。今回は私の敬愛する先輩のエピソードから、「かっこいい最期」についてお話ししましょう。

 その先輩とは、昨年末に亡くなった歌舞伎役者の十八代目中村勘三郎さんです。勘三郎さんと私は、中学・高校時代の先輩後輩の間柄でした。

卒業後、長いブランクはありましたが、勘三郎さんが病気になって、今度は患者と医師としての交流が復活していました。

 勘三郎さんの逝去は新聞の号外が出るほどの衝撃的なニュースでしたから、報道をご覧になった方も多いと思います。勘三郎さんは食道がんを患い、術後に肺炎を発症。

その後「ARDS(急性呼吸逼迫症候群)」という、身体に酸素を送れない重篤な状態になり、さらに肺線維症にまで悪化。食道がんの手術から半年経たないうちに不帰の人となりました。

 肺線維症になったときは、ふたりのお子さんからの肺移植が検討され始めていました。ふたりのお子さんとは、同じく歌舞伎役者の中村勘九郎さん、七之助さん兄弟のことです。

 将来を期待される、若きふたりからの肺移植。勘九郎さん、七之助さんの手術にも当然リスクがともない、また肺活量も低下します。

でもふたりは、「父親が生きているだけでいいから、あげる」と、名乗りを上げました。その時、勘三郎さんはすでに人工呼吸器につながれていて、声を発することができませんでした。

 そして移植準備が着々と進むなか、勘三郎さんは脳出血を起こし急逝。その知らせを聞いた私は、呆然とするのと同時に、ふと不思議な思いも抱いたのです。

 「のりさん(勘三郎さんの本名)は自分から逝ってしまった」と。子どもたちを傷つけるくらいなら、ふたりの役者生命を短くするくらいなら、「もういいよ」--。

勘三郎さんはそう思って、自ら潔く旅立ったのではないでしょうか。そんなことが人間に可能なのか、医者である私にもわかりません。

でも、誤解を恐れずにあえて言うとしたら、「かっこいい」。そう思わせる見事な最期だったと思います。あれだけ復帰に執念を燃やしていた人が、家族が肺移植という一か八かの延命治療に進もうとしたら「そんなことはしないでくれ」と潔く大見得を切って逝ってしまったのですから。

 偉大な先輩の死を通じて私が確信したのは、かっこいい生き方をした人は、死に方もかっこいいということです。私は改めて、自分だったらどういう死を迎えたいのかを真剣に考え、希望や意志を家族に伝えておくことの大切さを感じています。

■川嶋朗(かわしま・あきら) 1957年東京都生まれ。
東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、准教授、医学博士。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院などを経て2004年から現職。漢方をはじめとするさまざまな代替、伝統医療を取り入れ、西洋近代医学と統合した医療を担う。

「よりよく生きる」「悔いのない、満足のいく人生を送る」ための心得として、「自分の理想的な死とは何か」を考え、QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)を充実させることを提案している。西洋医学での専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。日本統合医療学会理事、日本抗加齢医学会評議員。最新刊「医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト」(アスコム刊)が好評発売中。

人が死ぬときに後悔する34のリスト

・病気にのまれてしまった

患者の心の持ち方次第では、生存率に大きな差があります。病気にのみ込まれて絶望してしまう患者はたくさんいますが、生存率が高いのは、病気と積極的に闘いながらも、それを無視できる人なのです。

●がんになってからの生存率が高い人

 たくさんのがん患者を診てきて思うことは、患者の心の持ち方で生存率に大きな差があるということです。

 がんになってからの生存率が高いのは、がんと積極的に闘う人。次は、がんであることを無視できる人。3番めは、医師の指示に従う人。もっとも悪いのは、絶望してしまう人です。

 がんにのみ込まれてダメになってしまう患者はたくさんいます。女優の宮崎ますみさんは、がんと積極的に聞う人でした。宮崎さんに乳がんが見つかったのは、主演映画『奇妙なサーカス』の撮影を終えて、念のための細胞診をしたときでした。

 「最悪の場合、乳房の全摘出になる可能性もある」と医師から言われていましたが、その後の検査によって部分切除で十分対応できることが分かり、宮崎さんは手術を受けることになりました。

 手術で腫瘍を摘出したあと、再発防止のため、乳房内に残っているかもしれない微小ながん細胞を破壊する放射線照射と、がん細胞を増殖させる女性ホルモンを抑えるホルモン療法をはじめました。

●死を意識したことで解き放たれた

 主治医からは、放射線照射は疲れや肌のかさつき、焼け焦げのような痕が残ること、またホルモン療法は更年期障害と、それぞれ副作用が出ると聞かされていました。この副作用が思いのほかひどく、とくにホルモン剤を飲むと疲労感、倦怠感がどんどん増していき、子どもたちに微笑むこともしんどくなったそうです。

 そのとき宮崎さんは主治医と話し合い、やめた場合の再発の可能性を数字で示してもらい、最終的に自分でホルモシ療法をやめる決断をしたのです。

 「再発しない人は、たくさんいる。ならば再発しないという希望を持って生きていこう」

 そう思ったら、心も体も軽やかになったそうです。宮崎さんは、当時の心境をあっけらかんと、こう表現してくれました。

 「簡単なことですよ。死を受け入れたんです」

●再発の不安が心身のバランスを蝕む

 がんは最初にできた原発巣と、原発巣から転移した転移巣に分けられます。手術で原発のがんが完全に摘出されれば転移は起こりません。もし術後に再発が起これば、それはすでに手術の前に、画像診断や腫瘍マーカーなどでも分からないほどの微小な取りきれない病巣があったと考えられます。

 よく「5年生存率」という言葉を聞きますが、微小転移のほとんどが、この間に分かるまでに増大すると考えられているからです。再発がんは早く発見しても治療は大変むずかしく、現在の医療(標準治療)では完治させることは困難です。

 外科手術で病巣だけを切り取っても、進行して広がったようなものはお手上げなのです。それだけに、その間に受ける患者の精神的ストレスは大きく、再発するのではないかとの不安から心身のバランスを崩してしまい、治療に影響が出てしまうことがあります。再発という不安にのまれてしまうのです。

●生活習慣病は、体のなかで本人がつくってしまう病気

 多くの病気は、心の影響を少なからず受けています。がんの発症の原因についても、食生活や喫煙などの影響がよく言われますが、そこに大きく影響を及ぼしているのは心のストレスです。

 宮崎さんに「病気になった原因ってなんだったと思いますか」と聞くと、「だから離婚したの」とおっしゃいました。自分が抱えた矛盾やエゴ、執着。そうしたさまざまな葛藤から乳がんになった。がんは自分自身がつくってしまったんだと受け入れたら、恐れがなくなったのだそうです。

 原因が分かったのだから、病気をつくってしまうようなストレスを遠ざけるようにしたのです。死を意識したことで、それまで自分自身がつくっていたさまざまなストレスから解き放たれる感覚があったそうです。

 宮崎さんは、病気の原因だったストレスフルな生活を改めることで気持ちが楽になり、がんを克服したのです。

●潜在意識のなかに隠れている病気の原因

 彼女はがんを克服した体験から、病にも目的があり、人の心の奥底には自らを健全な状態へと戻していく、大いなる治癒力が備わっていることを知ったと言います。

 2年に及ぶ壮絶な乳がん治療の間に、心と体と魂のバランスの重要性を身をもって経験した宮崎さんは、すっかり回復して催眠療法(ヒプノセラピー)を本格的に学び、今はヒプノセラピスト(催眠療法士)として活躍しています。私も催眠療法士の認定を持っていますから、催眠療法士仲間ということになります。

 催眠療法の世界では、病気の原因が分からない場合に潜在意識に戻ってもらう退行催眠療法という治療方法があります。患者の過去の記憶に戻ってもらい、心理的に傷ついていることはないかなど、カウンセリングしながら聞き出すのです。

 人間の心のなかで顕在化している意識は氷山の一角で、普段意識していない潜在意識のなかに、病気の原因が隠れていることもあると、私は考えています。(次回は「人を恨み続けてしまった」について)

【死ぬときに後悔しない方法】(上)人生後悔しないと言い切れますか?

こんにちは。東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックの川嶋朗です。今回から3回、このコーナーで連載します。

 私はこのクリニックで日本の大学病院としては唯一「統合医療」を実践しています。「統合医療」というのは、西洋医学、伝統医療(漢方薬、鍼灸、気功、ヨガなど)、

代替医療(サプリメント、アロマテラピー、ホメオパシーなど)などの区別なく、患者さんそれぞれに最も適した方法を優先的に考えて治療していく医療のことです。

患者さんを前にしてじっくりと話をうかがい、病気になった原因を一緒に探っていくので、診療時間は軽く1時間を超えることもあるんですよ。

 そんな患者さんに寄り添う診療を長く続けるなかで、医者である私も、じつにさまざまなことを学んでいます。なかでも、末期がんなどの患者さんの話からは、人は死を意識すると、

「後悔」することがたくさんあることを知り、改めて、生きるとは何かを考えさせられることが少なくありません。

 突然ですが、みなさんは「自分がなぜ生きていたいのか=死にたくないのか」について考えたことはありますか? 私は、本当の人生の充実って、じつはこれをじっくりと考えてこそ、初めて得られるんじゃないかと思うんです。

 私が患者さんから聞く「後悔」は、たとえば「やりたいことができなかった」「ストレスの多い人生を送ってしまった」「自分だけは大病しないと思い込んでいた」「夜型の生活を続けてしまった」

「人に言えない悩みを引きずってしまった」などなどありますが、これを読んでドキッとした方もいるでしょう。

乱れた生活習慣、ストレスは万病の元、なんて聞いたことはあっても、目先の忙しさを優先して「自分だけは大丈夫」と思っていませんか。

 でも結局、その結果病気になって後悔するのならば、日頃から「自分はなぜ生きたいのか」について考えていたほうが、人生も、究極のところでは死でさえも、自分が納得し、満足できるものになるんじゃないかと思います。

 私の著書「医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト」では、患者さんが死を意識したときに吐露したさまざまな「後悔」のエピソードと、いまを生きている人が悔いなく生きるためのヒントをご紹介しています。

 あなたは、突然「明日死ぬかもしれません」と言われても、ひとつの後悔もなく人生をまっとうしたと、いま、言いきれますか?

 次回は、後悔なく生きるためのヒントについてお話ししたいと思います。

■川嶋朗(かわしま・あきら) 1957年東京都生まれ。
東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、准教授、医学博士。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院などを経て2004年から現職。漢方をはじめとするさまざまな代替、伝統医療を取り入れ、西洋近代医学と統合した医療を担う。

「よりよく生きる」「悔いのない、満足のいく人生を送る」ための心得として、「自分の理想的な死とは何か」を考え、QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)を充実させることを提案している。西洋医学での専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。日本統合医療学会理事、日本抗加齢医学会評議員。最新刊「医者が教える 人が死ぬときに後悔する34のリスト」(アスコム刊)が好評発売中。

ショック!生き返った人の39%が「死後も意識はあった」と証言

知りたくても知ることのできない「死後の世界」。しかしサウサンプトン大学の研究者によって、ひとつの新たな事実が判明しました。「死」と判定されてから、少なくとも数分の間は意識が存在しているということが証明されたのです。

今回は、「死後の世界」に関する最新の研究についてまとめました。

■心停止患者への調査で死後も意識があると判明!

最新の研究にとって、脳が完全に死んでしまって傍目からは意識がないような状態に見えても、死後少しの間は意識があることがわかりました。サウサンプトン大学の科学者たちは、イギリス、アメリカ、オーストリアなどの15の病院で心停止した患者2,000人以上を4年かけて調査してきました。

心停止したあとに生き返った人の約40%が、心停止の状態になんらかの意識状態があったことを証言したのです。

■心停止後に意識が回復した男性患者の衝撃の証言

ある1人の男性も、「心停止中に自分の体を部屋の隅から見ていたようだった」と証言しました。3分間意識不明で「死」のような状態であったにもかかわらず、ソーシャルワーカーはそのような証言を引き出したのです。

研究を主導した、サウサンプトン大学の元研究員(現:ニューヨーク州立大学所属)サム博士は、彼の証言を支持します。通常は心停止後、脳は通常20~30秒以内にシャットダウンするといわれています。ただ、たとえばこの男性の場合では、意識のレベルでは心停止中の3分間も、なお潜在意識があったのではないかといえそうです。

男性は、部屋で起きていたすべての事象を説明したそうです。なかでも研究者が重視したのは、機械から出る2回の信号音についても証言したこと。結果、総合的に見て、証言の信頼性が高いと判断されたというわけです。

■心停止中の記憶があった人は調査対象の39%も!

研究対象となった2,060人の心停止患者のうち、330人が生存。調査対象140人の、39%が心停止中に意識レベルでさまざまなことを感じていたことがわかりました。多くの患者は具体的な詳細までは思い出せなかったとはいうものの、いくつかのテーマが浮上しました。

5人に1人が、時間の感覚が異なり、「遅くなった」「3分の1くらい高速化した」などと証言したのです。その間は、異常なほど平和な時間が流れていたそうです。また一部の患者は、フラッシュや太陽光のようにとても明るい光をおぼえていると証言しました

他にも、恐怖や溺れているかのような境地にいたことを思い出した人もいます。13%の人は、彼らが自分の体から分離していたように感じていたそうです。

■脳のダメージで心停止中の記憶は曖昧になりがち

心停止中は死に限りなく近い状況ですが、蘇生するために使用される薬や鎮静剤によって少なからず引き戻される可能性はありそうです。そして、心停止に陥った多くの人も同様の経験をしていると考えられます。

もっと鮮明にさまざまなことを記憶していてもよいはずですが、蘇生のための鎮静薬やそもそも心停止の原因となった脳のダメージによって、心停止中の記憶は曖昧なものとなっています。そのため、科学的に証明することが難しいのです。ただ、調査対象を増やしていけば、ある程度科学的に断言、証明することは可能だといえそうです。

ノッティンガム・トレント大学の研究心理学者、デビッド・ワイルド博士は、調査対象患者それぞれのエピソードをパターン化しようと試みています。それによって、「死後の世界」で本当は存在している意識について証明をしようとしているのです。

医学が進歩するにつれて、調査対象となる患者の数、種類も膨大に増えていっているのが現状です。この研究がもっとメジャーになって進んでいけば、「死後の世界」についてわかる日が訪れるかもしれません。

飯島愛や山城新伍、森茉莉、大原麗子などの孤独死は本当に寂しい死に方なのか?

後期高齢化社会と呼ばれる現在、大きな関心事となっているのが「孤独死」の問題だ。とくに最近は単身者が増加していることから、高齢者に限らず、多くの人にとって他人事ではない状況。

若い世代でも「ひとりでは死にたくない」といまから恐れている人も多いという。

 しかし、高齢者や社会保障を受けられない社会的弱者が“孤立”し、結果として死に至ってしまうというケースは無論別として、人がひとりで死ぬというのは、思い悩むほどに寂しいものなのだろうか。

芸能人や作家などの“先に逝った人々”から死についてを見つめた『みんなの死にかた』(青木由美子/河出書房新社)から、ひとりで死を迎えた人々のケースを紹介しよう。

 まだ記憶に新しい、女優・大原麗子の死は衝撃も大きかった。自宅で亡くなっているのを発見されたのは、死から3日後。死因は「不整脈による脳内出血」だった。

NHKの大河ドラマ『春日局』やサントリーのウイスキーのCMなど、美しさのなかに愛らしさも感じさせた全盛期のチャーミングな大原のイメージが強いせいか、晩年“近所でも注目の人”“深夜にも構わず電話をかけていた”とワイドショーや週刊誌で報じられたときには世間は驚き、まさしく“たったひとりの寂しい最期”と受け取った人も多かっただろう。

 だが、弔辞では浅丘ルリ子が「(周囲の人々の)好意を一切受け付けず、拒否し続けるあなたの気持ちが私にはわかりませんでした」と述べたように、彼女には「受け止める人を求めていなかった」節もあるという。

たとえば、大原の衣装部屋に貼られていたのは、<孤独な島は仲間を求めない。同類さえ求めない>というカルロス・カスタネダの詩だった。彼女は躁と鬱を繰り返していたといわれるが、著者は“誰にも受け止められない強い思いを持っていたから、自分一人で抱えようとした。

だけれど溢れ出して、自分という「いれもの」が壊れてしまった”のではないかと綴っている。たしかに孤独な死ではあるが、そこには彼女の信念も隠されていたのではだろうか。

 一方、39歳という若さで亡くなった伝説のコラムニスト・ナンシー関の場合は、友人たちとの会食後、帰路のタクシー内で意識を失って、その後、虚血性心不全で病院にて亡くなった。

ひとりで死を迎えただけではなく、何の死の準備も叶わなかったわけだが、「無防備な自己陶酔」を恥ずかしいと考えていたナンシーのこと、「仮に彼女が長生きをしたとしても、自分の死にかたや葬儀、墓を詳細に指示することは、気恥ずかしかったのではないか」と著者はいう。

何より「ひとり=さびしい」という社会が信じる図式は、彼女にはあまりに似合わないし、陳腐にも思えてくる。

 このほかにも本書では、飯島愛や山城新伍、森茉莉、永井荷風などの「孤独死」のケースをはじめ、松田優作や逸見政孝などの闘病の果てに亡くなった人々、大滝秀治や新藤兼人などの大往生を遂げた人々など、さまざまな“死”が取り上げられている。

ただ闇雲に孤独死を恐れるのではなく、自分は何をいちばんに恐れているのか──そのことについて考える時間は、きっと無駄にはならないはずだ。

ペットオーナーなら知っておくべき「ペットフード安全法」の真実・前編

現在、日本で流通するペットフードは、ペットフード安全法によって定められた下記の成分規格や製造方法に沿って販売されていることをご存知だろうか?

愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)

【成分規格】

※汚染物質:環境中に存する物質であって、意図せず愛玩動物用飼料中に含まれるものをいう。
※規定する成分の販売用ペットフードにおける含有量を算出するにあたっては、そのペットフードの水分含有量を10%に設定する。
※(注)は平成27年2月20日から適用

【製造の方法の基準】
1.有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いがある原材料を用いてはならない。
2.販売用ペットフードを加熱し、又は乾燥するにあっては、微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行うこと。
3.プロピレングリコールは、猫用の販売用ペットフードには用いてはならない。

【表示の基準】
販売用ペットフードには、次に掲げる事項を表示しなければならない。
1.販売用ペットフードの名称(犬用又は猫用)
2.原材料名(原則的に添加物を含む全ての原材料を表示)
3.賞味期限
4.事業者の氏名又は名称及び住所
5.原産国名(最終加工工程を完了した国)

このペットフード安全法は2009年に施行されたのだが、そのきっかけとなったのが、2007年にアメリカで発生したペットフードの大規模なリコール事件だ。この事件は、ペットフードを摂取した犬と猫が大量死したという事件で、原材料に使われた小麦グルテンに含まれるメラミンやシアヌル酸が原因となり、腎障害などを引き起こしたと言われている。

しかも、このペットフードは、日本国内でも輸入販売されていたことが判明。販売業者の自主回収により被害はなかったものの、これを機に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」、いわゆるペットフード安全法が制定された。

こうした国の取り組みにより安全が確保されたと思われるペットフード。しかし、一方で国が定めた成分規格などに疑問視する声もあがっている。中でも鳥取大学では、予てよりペットフードの安全に関する研究やセミナーなどを行なっており、つい先日も「ペットフードを考える- 微量元素の視点から-」というセミナーを開催し、新たな研究結果を発表した。

鳥取大学
地域学部 地域環境学科
准教授 寶來佐和子(ほうらい・さわこ)氏

セミナーに登壇したのは、鳥取大学の准教授である寶來佐和子先生。寶來先生は、環境内を分析、解析して汚染実態などを評価する環境化学の専門家である。

寶來先生の今回の研究の目的は、主にイヌ・ネコの微量元素レベルと蓄積特性の解明、リスク評価、暴露源の探索。これらの研究は現在も進行しており、今回のセミナーでは、中間報告という形で下記の4項目を発表した。

・ペットフードの安全性評価と健康影響評価
・イヌ・ネコのフード中微量元素濃度比較
・ハウスダストとフード中微量元素の特徴解析
・イヌ・ネコの体内濃度比較と暴露との関係解析

研究に使われた試料は、安楽死処分や交通事故死したイヌ、ネコの肝臓、腎臓、脳。さらに国内で流通するドライタイプとウェットタイプのドッグフード計20商品、キャットフード計19商品を分析した。

ペットフード安全法で定められている成分規格では、サンプル中の含水率が10%と設定されている。今回、分析するにあたりキャットフード、ドッグフードともにドライ、ウェットそれぞれの平均含水率を算出。この数値を含水率10%の設定に計算し直して、上限値を割り出した。

ペットフードの安全性評価と健康影響評価

ペットフードの安全性評価では、最初にキャットフードに含まれる成分の分析結果を発表。分析された成分は、ペットフード安全法で上限値が設けられている強毒性元素のAs(ヒ素)、Cd(カドミウム)、Pb(鉛)の3つと、同じく強毒性元素であるHg(水銀)。それぞれの毒性は、As(ヒ素)は和歌山毒物混入カレー事件、Cd(カドミウム)はイタイイタイ病、Pb(鉛)は鉛中毒、Hg(水銀)は水俣病などとして、国際的にも有名である。

分析した結果、国内で市販されているドライタイプ、ウェットタイプのキャットフード計19商品では、上限値を超えるものはなかった。つまり法律上は安全ということ結果になった。

そこで次に、ネコの健康影響評価を発表。世界保健機構(WHO)と米国環境保護庁(USFPA)が制定する「毎日一生涯摂取し続けても健康影響がないとされる量」(※ただし、この数値はペット対象が存在せず、あくまで人間を対象とした数値を参考にしている)に、先ほどの数値を照らし合わせてみることに。

すると、ドライタイプ全10商品の中では、As(ヒ素)は1商品以外全て基準値を超えており、Cd(カドミウム)は2商品が、Pb(鉛)は4商品が超えていた。また、強毒性元素のひとつであるHg(水銀)に関しては、全ての商品が基準値を大幅に超える結果が出た。

一方、ウェットタイプ全9商品では、Pb(鉛)は超えているものはなかったものの、As(ヒ素)とHg(水銀)は全ての商品が基準値を大幅に超えており、Cd(カドミウム)は5商品が超えていた。

この結果を見て、寶來先生は「これはあくまで人を対象にした数値なので今後ペットに合わせた評価法を確立することが必要になりますが、毎日一生涯食べ続けても本当に安全と言えるのかな?と思います」とコメントした。

続いてドッグフードの安全性評価が発表された。こちらも同じように上限値を超えるものはなく、国が定めた数値では法律上安全といえる。しかし、寶來先生は「こちらもキャットフード同様に毎日一生涯食べ続けても本当に安全と言えるのか?を考えていく必要がある」と述べた。

イヌ・ネコのフード中微量元素濃度比較

次にイヌとネコのフード中微量元素濃度比較を発表。この分析結果では、As(ヒ素)とHg(水銀)の濃度がドッグフードよりもキャットフードの方が高いことがわかった。キャットフードとドッグフードのわかりやすい違いといえば、キャットフードは原材料に魚介類のエキスを使用している点が挙げられる。

今度は実際に体内に残っている濃度を分析するため、ネコの肝臓に含まれるAs(ヒ素)レベルを野生動物と比較した。こうしてみると、ネコの肝臓に含まれるAs(ヒ素)レベルは総体的に高いといえる。

これが一般的な数値なのかどうかについて、「はっきりいって一般的とは言えません。As(ヒ素)の濃度を陸生哺乳類と海生哺乳類で比べた時、基本的に海生哺乳類のほうが高くなります。

それはなぜかというと、As(ヒ素)は魚に多く含まれており、それを海生哺乳類が食べるからです。陸生哺乳類であるネコがここまで高いことには、正直、私も驚きました。私はペットフードからの暴露が原因なのではないかと考えております」と寶來先生はいう。

咳が止まらない…ハリセンボン箕輪、モデルのJOYも患った結核は「昔の病気」じゃなかった

■昔の病気ではない「結核」

 「結核」と言うと「昔の病気」のように感じられるかもしれませんが、いまでも身近な病気です。ハリセンボンの箕輪はるかさんや男性モデルのJOYさんが結核で入院したというニュースを記憶している方も多いでしょう。

 「昔の病気」と考えられているがゆえに診断が遅れてしまうということが増えています。抗生物質で治療可能ですが、発見が遅れると命にかかわることもあるので注意が必要です。

 若くして「結核」で命を落とした偉人たちから、結核を考えていきましょう。

■「子規」の名は結核を患ったため……正岡子規

 結核を患ったために正岡「升(のぼる)」から「子規」と号したとされています。「子規」とは「ホトトギス」のこと。この鳥は「のどから血が出るまで鳴き続ける」といわれることから、「血を吐きながら歌を詠み続ける」自分自身をなぞらえたようです。

 俳句・短歌・新体詩・小説・評論・随筆など多方面に亘り創作活動を行い、日本の近代文学に多大な影響を及ぼしました。俳諧の新たな史的考察によって俳句革新を志し、次いで「歌よみに与ふる書」を発表、短歌革新にのり出し、高浜虚子らの「ホトトギス」刊行を支援しています。

 晩年は結核が脊椎骨に感染し脊椎カリエスを発症、化膿して骨組織が壊れてしまっていたため歩行困難となりました。およそ7年間の闘病生活の末、34歳で死去。

■栄養失調が結核を進行させた?……樋口一葉

 中島歌子に歌、古典を学び、半井桃水に小説を学びました。父親の事業の失敗により十七歳で家庭を支えなければならなくなり、小説を書いて糊口をしのぐ生活でした。貧乏に苦しみながら、「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」といった秀作を発表し、文壇から絶賛。わずか1年半でこれらの作品を世に送り出しました。

 「赤貧洗うがごとし」であったにもかかわらず気位が高く、困った人には姉御肌であったとされています。そのため、借金生活を余儀なくさせられていたようです。生活苦による栄養失調が結核を進行させたと考えられています。24歳で死去。

■キツツキのように痩せていた!? ……石川啄木

 若くして「明星」に詩を発表し、与謝野鉄幹に師事。口語体3行書きの形式で生活を短歌に詠んでいます。「かなしみ」を歌わせると天才的で、多くの若者の心をとらえました。代表作に、評論「時代閉塞の現状」、歌集「一握の砂」「悲しき玩具」、小説「雲は天才である」などがあります。

 「啄木」とは「キツツキ」のこと。上京後、栄養失調となり帰省。療養中にキツツキが樹を叩く音を聞いて勇気づけられ、キツツキを意味する「啄木」と雅号。キツツキのように痩せていたことに対する自虐の命名ともいわれています。

 啄木はあまりに自分勝手で破天荒な生活を送っており、借金を踏み倒す名人でもあったという一面もあったようです。啄木だけでなく、周囲の母や妻も結核で亡くなっています。26歳で死去。

■早すぎた天才作曲家の死……滝廉太郎

 日本の音楽家、作曲家。明治の西洋音楽黎明期における代表的な音楽家の一人。今の東京芸術大学音楽部で、極めて優秀な成績を修めたため、卒業と同時に母校に教員に採用され、ドイツへの留学を命ぜられました。

 しかし、半年もしない間に結核を発病したため帰国。23歳という若さでそのまま帰らぬ人となりました。代表作に「荒城の月」「箱根八里」「お正月」「雪やこんこん」「鳩ぽっぽ」、ほかに歌曲「四季」などがあります。

■反動での粗食が病状を悪化……宮沢賢治

 詩人・童話作家。花巻で農業指導者として活躍のかたわら創作。自然と農民生活で育まれた独特の宇宙的感覚や宗教的心情にみちた詩と童話を残しました。代表作に、童話「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「注文の多い料理店」、詩集「春と修羅」があります。

 賢治の生家は裕福な質屋であり、「周囲の貧しい人たちから絞りとった利益によって恵まれた生活をしてきたのではないか」という思いに苦しめられていたようです。反動での質素な生活や過労がもとで結核が進行。37歳で死去。

■結核の悪化でやむなく戦線を離脱……高杉晋作

 江戸時代後期の長州藩の志士。幕末期に尊攘・倒幕運動の中心人物として活躍しました。奇兵隊を組織したことで知られています。

 長州征伐に来た幕府の軍隊を負かした後、藩の海軍総督に就任するも、激職のオーバーワークにより持病の結核が悪化。喀血がしばしばおこり、体調不良でやむなく戦線を離脱せざるをえなくなりました。療養生活に入るものの病状は改善せず、27歳で死去。

 その他の結核を患っていた偉人としては、沖田総司や竹久夢二、堀辰雄、新美南吉などがいます。

■「2週間以上続く咳」には検査・診察を

 結核は、医療が発達し生活水準も高い先進国では患者数の少ない病気です。日本は、韓国や中国などのアジア諸国に比べると低いものの、アメリカやドイツなどの先進国と比較すると、結核にかかる人の比率(罹患率)は4倍ちかくもあります。

 日本は人口10万人当たりの患者数が16.1人(平成25年)と高く、いまだに「中蔓延国」に分類されています。他の先進国のように、人口10万人当たりの患者数が10人以下の「低蔓延国」になるには10年以上かかるとされています。

 「まさか結核とは……」、多くの患者さんが口にする言葉です。現在でも結核にかかる患者さんは決して少なくはありません。「2週間以上長引く咳や痰」「長引く微熱」「長引く倦怠感」のような症状が続いた場合は、近くの医療機関に相談してみるといいでしょう。

近年増加傾向?あの芸能人も選んだ、最期の時を自宅で過ごす「在宅死」

先日亡くなられた愛川欽也さん、最期は病院ではなく自宅で迎えられたことも話題になりましたね。

「在宅死」や延命治療を拒否する「平穏死」は2005年から増加傾向にあるようですが、この増加の背景にはなにがあるのか、医師に解説していただきました。

■ 自宅 or 病院、あなたはどちらを選ぶ?
厚生労働省によれば、1976年に病院での死亡者の割合が48.3%となり、自宅での死亡者の割合(46.3%)を逆転してから、「在宅死」は減少の一途をたどってきました。

しかし、2005年に12.2%まで下がってからは徐々に上昇し、13年には12.9%にまで増加しました。週刊誌で特集を組まれるなど、世間的に関心が高まったのも背景にあるとみられています。

病院で死ぬというと、体に管を入れられて(スパゲティー症候群)管理され、あんな死に方は絶対したくない、またさせたくない、そんなイメージで受けとめられがちです。そうでなくても、病院や医師の管理下にあって患者本人や家族には自由やプライバシーはほとんどありません。

しかし、そんな病院不信がありながらも、病院にいけば安心するという病院信仰もまた根強く、病院死が全体の80%というのが現状です。

ですが、最期は自宅で迎えたいという「在宅死」や延命治療は拒否する「平穏死」など、自分の最期を選び取ろうとする人が増えているも事実です。

■ 在宅死のメリットは最後まで自分らしく過ごせること
在宅死を望む方とそのご家族には以下のメリットがあります。

1. 本人が主人公で、自由とプライバシーを持って生を全うできる
2. 看取った家族に心残りがない
3. 社会的な経済効率が良くなる(福祉の仕事の増加が雇用を推進する)
4. 介護や死を通して、ふれあう人達が成長する

ですが周囲の協力なくしては困難でもあり、近隣の方や在宅ホスピスなどのチームの支えが必要で、以下のような課題もクリアしなければいけません。

1. 自分の意志を明確にして、周囲に知らせる必要がある
2. 家族や地域の人たちが本人の意思を理解し尊重しようとする
3. ホームヘルパーと看護婦と医師との連携が必要である。

■ 医師からのアドバイス
今回の愛川欽也さんのケースは、愛川さんは肺がんと診断を受けた後、たっての希望で在宅治療を選んだとされています。

自宅に介護用ベッドなどを運び込み、妻のうつみ宮土理(71)さんが息を引き取るまで看病したということですので、「在宅死」のモデルケースといえるでしょう。

これから近い未来には「在宅一人死」なんてケースも出てくるかもしれません。「孤独死」とは違い、周りの方たちがサポートに入った状態での在宅死です。多種多様化していく最期の時。あなたならどのような最期を選びますか?

突然の余命宣告・・・限られた時間でするべき3つのこと

医師から突然の余命宣告を受けた時、あなたなら限られた時間で何をしますか?

大切な人たちと過ごす、大好物なものを出来るだけ食べる、思い出の場所を訪れる……。人それぞれ、思い思いの過ごし方があると思います。

それらと並行して、遺される方のために、何をすべきか考えてみましょう。

●何よりも遺言書を作ること

まず、もしあなたに多少なりとも財産がある場合、死後の相続に備えて遺言書を作成しておいてはいかがでしょうか。

「いやいや、自分には大した価値のある財産なんて無いし、息子や娘たちも仲がいいからそんなことで揉める心配は無いよ。」と思われる方もいらっしゃることでしょう。

でも、現実は意外とそうでもないかもしれません。僕も仕事柄、遺産の揉め事に関与することが有りますが、多くの方が「遺産のことでこんなに揉めるとは思わなかった。」という感想を漏らされます。1年以上、揉め事が終わらないケースも有り得ます。

遺言書さえ作成しておけば、お子さん方にそういった手間をかけることはおよそ無くなります。特に、作成に際し、弁護士等の専門家に関与させれば、ケースに応じて遺言者のニーズにこたえてくれることと思います。是非ご検討ください。

近年、『エンディングノート』という死後のことに備えてご自身の希望などを書き残しておくためのノートも販売されています。

そこに書き込んだことが法的拘束力を有するものではありませんが、こういったものを活用することで、ご遺族らの負担を解消する方法もあります。

●借金がある場合は相続破棄を

借金などの債務が多い方については、ご遺族(相続人)に自分の死後に相続放棄の手続きを取るようにお伝えしておくことも大事なことでしょう。

配偶者など、あなたの債務状況等に詳しい方がいればそこまで心配はいらないかもしれませんが、肉親とはいえ、借金など自分の債務に関することはなかなか話しづらい部分もあると思います。

もし、これを放っておくと、相続人が知らぬ間に相続を承認してしまい、あなたの債務を負ってしまう危険性があります。また、第一順位の相続人(通常はあなたからみてお子様)が相続放棄をした場合、次順位の相続人にお鉢が回ってくることになります。

相続放棄をしたことは公開されませんので、仮にお子さんが相続放棄をした場合には、次に相続人となる方、さらにその先の方についても注意喚起をしておいてあげるのが親切だと思います。

●生命保険の受取人を知っていますか?

最後に、少し目先を変えたお話をします。生命保険に加入されている方も大勢いらっしゃると思います。あなたの生命保険について、死後に保険金の受取人となっている方を把握されていますか?

ご自身で手続された方なら当然分かっているとは思いますが、お父さん方の中には奥さんに任せっきりでよく分かっていない方も、もしかしたらおられるのではないでしょうか。

家庭内にトラブルなどが無ければ特に大きな問題にはならないとは思いますが、生命保険金は得てして大きな金額になりがちです。きちんと確認しておいて、適切な方に受け取らせるように確認しておいた方が良いと思います。

この記事を書いてみて、僕自身、余命宣告を受けたらどうするだろうなと考えてみました。そんな日が来ないに越したことはないのですが、遺される人のためを思って行動するということって、とても大きな愛だなあと思いました。

*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

余命3日ってどういう状態? そもそも余命ってどうやって決まるの?

5月28日に俳優・今井雅之さんが大腸がんで亡くなりました。今井さんががんと診断されたとき、「余命3日」という宣告を受けたと言われています。「余命○か月」という言葉はよく耳にしますが、どのような基準で判断されるのでしょうか?

◆余命宣告は正確ではない?

余命宣告は、病気の治癒のための治療を行うことが難しくなった時になされます。文字通り、「その人があとどれくらい生きることができるのか」を意味しますが、基本的に、宣告通りに亡くなることはあまりありません。

今井雅之さんも、余命3日と言われたのは昨年の11月の時点ですから、実際には宣告を受けてから約半年間は存命だったことになります。
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◆余命はどのようにして決まるのか

余命は「生存期間」の中央値を取っています。生存期間とは、その病気集団において、50%の患者が亡くなるまでの期間のことです。つまり、同じ病気の100人の患者がいた場合は、50人目が亡くなった時点がその病気の生存期間中央値(=患者の余命)となるのです。

半分の患者が亡くなるまでの期間であり、全患者の平均値ではありません。

当然ながら、その病気の生存期間中央値(余命)が1年だとしても、3年、5年と生きる人が一定数いるのです。末期のがんの患者でも、すべてが5年以内に亡くなるわけではありません。
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◆余命3日とはどういう状態か

では、今井さんが宣告された「余命3日」とはどういう状態なのでしょうか? もはや食べ物を受け付けないとか、呼吸困難になっている、血液データから内臓の機能が極端に低下している、

意識がもうろうとしている──などの末期的な状態に陥れば、余命が数日であることは、医師の経験から予想できます。今井さんの場合も、そうした危機的な徴候が見られたのだと考えられます。
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◆余命を宣告する意義

しかし、余命はあくまでもデータや経験に基づく予測値であって、実際にその人がいつ亡くなるのかは医師でもわかりません。生存率は、がんの進行具合によってかなりバラツキがあります。

選択される治療法や病気の進行具合、個人差によって、その患者の実際の余命は大きく違ってくるのです。

ならば、なぜそんなあやふやな情報をわざわざ宣告するのかと言えば、あとどれくらい生きられるかのおおよその目安を、本人や周囲の人に知ってもらうという意味合いが大きいと考えられます。

これから何十年も生きるのではなく、数か月後には亡くなってしまう可能性が高いことを意識して過ごすことは、残された時間をより有意義に使うという意味で必要なことだと言えるでしょう。

◆本人への余命宣告

1990年頃までは、がんは本人には告知しないことが多かったのですが、最近は本人に告げるのが一般化しつつあります。本人が受け入れられないような場合は、家族の意向で本人には隠しておくこともありますが、本人にはっきりと病名と余命を告げるケースが増えています。

現場では、実際の予測よりも余命を短めに宣告する医師が多いようです。これは、宣告された期間よりも長生きすると本人や周囲が前向きになれるからです。
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◆宣告の問題点

余命を告げることには問題点もあります。治癒するつもりで頑張っていた人が、余命を宣告されて生きる気力を失ってしまう可能性もあるからです。余命宣告したことで、それがどの程度影響するのかがわからないことも多いのです。

一方で、余命を宣告されずに病気と闘い続けて、次第に闘うことが難しくなり、死を悟った時にはもう動くこともできず、思い残したことがたくさんある、というケースも考えられます。

残された時間を使って、ギリギリまで病気と闘うか、それとも人生の「まとめ」に入るかは人それぞれですが、それを考えるうえでは、余命宣告は重要だと言えるでしょう。

執筆:南部洋子(看護師)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)

シニアになっても、寿命を5年延ばせる方法ってある?

先ごろ、オスロ大学がノルウェーのシニア男性5,700人以上を対象に行った調査の報告が、「イギリス・スポーツ医学」誌に発表されました。

その結果、ある習慣を持っている人は、それをしない人より5年長生きするそうです。これは、喫煙者と非喫煙者の差に匹敵します。

その習慣とは、週に3時間運動すること。
「運動が体にいいのは当たり前」と思われるかもしれませんが、この調査は11年間続けられ、運動の時間や頻度も細かく研究しているところが興味深いのです。

◆軽い運動でも、何歳から始めても効果あり
一番重要なのは、高齢者でも週3時間の運動を継続することです。
68~77歳で、週に1時間以下の軽い運動を行っている人では、特に変化は見られませんでした。

一方、週に6日、30分の運動を行う人は、運動しない人に比べて、調査期間中に亡くなることが4割少なかったそうです。これまで運動していなかった人が始める場合、心強いポイントもふたつあります。

継続して行えば、運動の激しさは関係ないということ。さらに何歳で始めてもいいということです。レポートによれば、平均73歳で始めた人たちにも効果があったそうです。

研究の著者たちは、この結果を踏まえ、高齢者に運動を勧めるキャンペーンを行うべきだと結論しています。

◆日本のシニアの運動習慣は
イギリス政府では公式に、65歳以上の人に週150分の運動を勧めています。

ところが英国心臓財団の調査では、適度な運動を行っていない成人は、ドイツでは26%なのに対し、イギリスでは44%だそうです。

日本の国民栄養調査では、「1回30分以上、週に2回以上、1年以上」運動を継続している人を「運動習慣あり」としています。 平成20年の調査では、運動習慣のある人は60代で男女共約4割、70代では男性の4割、女性の3割。

時間に余裕ができることもあって50代以下に比べて増えていますが、寿命を延ばせるほど運動している人はそのうちどのくらいでしょうか。

◆政策はあれど、アピール不足
厚生労働省が進めている「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」では、高齢者に対しても軽い物なら毎日、下肢や体幹部の筋力トレーニングなら1週間に2回程度といった継続的な運動の目標を定めています。

今回の調査結果と比べるとまだ時間も足りませんが、残念なのは、子供や成人向けにもそれぞれ定められている目標が、あまり広く知られていないのではないかということです。

高齢化が進む日本では、シニアが健康になれば医療費や介護費用の負担も減ります。

健やかな高齢化社会に向けて、特に高齢者にとっての運動の大切さを広め、また老いも若きも日常的に運動ができる社会基盤が広く整備されてほしいものです。

参考:
『BBC』
http://www.bbc.com/news/health-32735723

『健康長寿ネット』
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000400/hpg000000311.htm

『厚生労働省』
http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/b2.html

<監修>
樋口二三男(医学博士)整形外科、産業医

19歳で余命半年宣告の女性 「記憶を上書き」で前向きに

仕事で、恋愛で、人間関係で。人生、落ち込むことは多い。問題はそこからどう立ち直り、やる気を出すかということだ。若くしてがんにおかされた山下弘子さん(22)の場合は、こういう方法で前向きになる。

 2012年、大学1年の秋。胸の痛みに襲われて病院を受診すると、山下さんの肝臓に巨大ながんが見つかった。

わずか19歳で「余命半年」という宣告。手術で重さ2キロもの腫瘍を摘出した後も、転移や再発、手術を繰り返しながら治療を続けている。それでも、自称「楽観的でポジティブ」な山下さんは明るくてよく笑い、“死の影”は見えない。

落ち込むことはないのだろうか。

「本気で死を感じて絶望したことは、この2年半で4、5回しかありません。最近だと半年前。検査の結果があまり良くなくて、友人との旅行中に大泣きしました。こんなに幸せな時間を二度と体験できなくなるのは嫌だと思ったんです。

 落ち込んでいる時は、周りの言葉は耳に入ってこない。なぜなら、自分で落ち込むことを選んでいるからです。でも、ふと立ち止まる瞬間がある。私の場合は、3時間ぐらい泣き続けた後、やっと冷静になれます。

そのときに母が作ってくれる朝食だったり、友人からのメールだったり、周りにある幸せを感じられるようになるんです」

 薬の副作用で急激に髪の毛が抜けたときには、悩んでいても仕方ないと、ウィッグを楽しむ方向に転換。そしてナタリー・ポートマンやエマ・ワトソンなど海外有名セレブのかっこいいベリーショートやスキンヘッドの画像を見て、テンションを上げた。

「でも鏡を見るとやっぱり見慣れた自分の顔。100%は立ち直れなかった。

その時に、高校時代の先生が、自身が丸刈りにした写真をフェイスブックでシェアしてくれたんです。写真がすごくいい笑顔で、堂々としていればいいんだと思えるようになりました」

 立ち直るきっかけはいつも違う。それでも、自分なりのタイミングがわかれば積極的に幸せなポイントを探すことができる。そのコツに気づいたのは、何度も取材で聞かれて振り返ってみたからでもある。

いまでは、落ち込んだときも頭の片隅で「あ、落ち込んでいるな」と思えて、冷静になった時には全力で幸せを探す。自分の気持ちの変化を少し引いたところから意識してみると、コントロールする糸口が見つかるのだという。

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