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驚異の弱火調理法でつくる「残暑疲れ」を吹き飛ばす激ウマレシピ FC2 Analyzer


夏バテ、残暑疲れで体調を崩していませんか? そんなときには、栄養たっぷりの食事で体を労わることも大事ですよね。

食べ続けるほど健康になるとされる、料理研究家の山本千代子さん考案の”弱火調理法”。野菜の持つ旨味や滋味(じみ)が生きたとびきり美味しい料理が、誰でも簡単にできると評判です。

そこで今回は、山本千代子さん監修の『ラクなのに美味しい 驚異の弱火調理法』から、山本式調理法による、夏野菜レシピを2つ紹介しようと思います。

■1:ラタトゥイユ

葉野菜が少ない夏に心強い味方のピーマンは、ベータカロチン含有量がトマト以上、ビタミンCはレモン以上と、女子力アップに必須の栄養もたっぷり。リコピン豊富なトマトと調理すれば鬼に金棒です。

【材料(2人分)】

・玉ねぎ・・・1/2個

・パプリカ・・・1/2個

・ピーマン・・・1個

・茄子・・・2本

・オリーブ油(下処理用)・・・大2

・オリーブ油・・・大2

・塩・・・小1/4

・ベーコン(1cm角切り)・・・80g

・にんにく(スライス)・・・1かけ

・オリーブ油・・・大1

・ホールトマト・・・1/2カップ

・トマト・・・1/2個

・ローリエ・・・2~3枚

・塩&胡椒

【作り方】

(1)にんにく以外の野菜は、2~3cm角に切る。茄子は水にさらさず、すぐにオリーブ油(下処理用)をかけておく。

(2)予熱していない鍋にオリーブ油をひき、塩を振り、玉ねぎ、茄子、パプリカの順に重ねて10分、ピーマンをのせてさらに1分、加熱する。

(3)2を加熱している間に、別鍋ににんにく、オリーブ油、ベーコンを入れ、ゆっくり弱火で焼く。

(4)3の鍋からベーコンを取り出し、ホールトマト、生のトマトを入れて軽く火を通し、ローリエを加えて7分ほど弱火で煮る。

(5)2と4、取り出したベーコンを一緒にして塩、胡椒で味を調える。

野菜とは別鍋で、トマトを弱火で煮込むのがポイント。これでトマトの酸味が消え、山本式で加熱した野菜の甘みがより生かされます。

■2:ゴーヤチャンプル

ビタミンCをトマトの5倍も含むゴーヤ。ゴーヤの苦みを旨味にかえる山本式カッティング&加熱方法で、自分史上最高のゴーヤチャンプルにチャレンジしてみましょう。

【材料(4人分)】

・ゴーヤ・・・1本

・玉ねぎ(せん切り)・・・1/2個

・オリーブ油・・・大2~3

・塩・・・ひとつまみ

・豚薄切り肉(2cm幅切り)・・・100g

・木綿豆腐(一口大)・・・1/2丁

・卵・・・2個

・みりん・・・小1/2

・醤油(お好みで)

【作り方】

(1)ゴーヤはわたは残し、種だけを竹串などで取り除きます。通常の切り方のように輪切りにすると、苦み成分が出やすいので、ゴーヤに対して斜め45度の角度でスライスしましょう。

(2)予熱していない鍋にオリーブ油をひき、塩を振り、玉ねぎ、ゴーヤの順に入れて蓋をし、弱火で7~10分程度加熱。

(3)鍋にスペースを空けて豚薄切り肉を入れ、軽く炒める。みりん、好みで醤油を。

(4)木綿豆腐を加え、卵を溶き入れて火を通す。

豚肉は一気に入れず少量ずつ炒めると、臭みが出ず柔らかく仕上がりますよ。

一般的な料理法に比べて、調味料の量が少ないのに美味しく仕上がるのが山本式です。血圧やコレステロールが気になる方にも作ってあげてくださいね。

冷たい血液を全身へ…熱中症予防に「手のひら・足の裏を冷やす」


6月27日、関東甲信などで、例年よりも早く梅雨が明けたとたん、関東の内陸部は40度超えの“殺人的な熱波”に見舞われた。

 

「今年の暑さは例年とは異なります。熱中症にならないためにも、ふだんから対策を講じることがとても大事です」

 

そうアドバイスするのは帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長の三宅康史先生だ。

 

体内の水分が不足すると、血液がドロドロになり、熱を体内から運び出す血液自体を十分に冷やすことができなくなってしまう。そこから脳や臓器の温度が上がり続けることになり、機能が低下し、さまざまな症状が出る。血液の温度を下げ、内臓を冷やすためには、首や脇の下など“太い静脈”が走る部分を氷のうなどで冷やすのが効果的だという。

 

「洗面器の冷水に手を1分つける、両手で保冷剤を握るなどするのもいいでしょう。手のひら、足の裏には毛細血管の10倍の太さのAVAという血管があります。この血管を冷やすと、冷たい血液が全身をめぐり、効率よく内臓の温度を下げることができるのです」(三宅先生)

 

両手に握るのは冷たいペットボトルでもいいそうだ。

 

室内にいても熱中症になってしまうことはある。エアコンは必ず使うこと、と三宅先生は忠告する。 「冷たい風が苦手だという人は、扇風機やサーキュレーターをエアコンと併用しましょう。冷気が直接肌に当たるのを防ぎ、空気が攪拌されて、部屋全体を冷やすことができます」(三宅先生)

 

また、マスク生活も熱中症のリスクを高める要因のひとつともいわれている。

 

「がんばって呼吸をしようとするのは、運動をするのと同様に体内に熱を作ります。その熱は、本来顔の毛細血管が広がることで放熱されるところを、マスクをしていると熱がこもりやすくなってしまいます。外に出たら、状況に応じてマスクを外して深呼吸をしましょう」(三宅先生)

 

ふだんから熱中症を防ぐためには、外出時も「首を冷やすのが重要」と語るのは、天気痛ドクターで、愛知医科大学客員教授・中部大学教授の佐藤純先生。佐藤先生は、外に出るときは常にハンディーファン(小型扇風機)とタオル、水、塩アメを携帯するという。

 

「タオルを水で濡らして首に巻き、ハンディーファンで首を冷やすと、冷感が得られ、体温の上昇を抑えることができます。首を通る頸動脈の上を濡れタオルで覆うと効果的です。私が使用しているハンディーファンは、両手が使える首にかけるタイプ。本体に体温を下げる金属板がついていて、ひんやりと気持ちがいいのでおすすめです」(佐藤先生)

 

外にいるのが長時間におよぶときは、インナー類の着替えもタオルとともに携帯しよう。

 

「濡れたものを体にまとっていると、皮膚表面の湿度はほぼ100%。サウナに入っているのと同じ状態になります。汗をかいたらきちんと拭き、濡れたインナーは替えたほうがいいでしょう」(佐藤先生)

 

もちろん水分補給も欠かさずに。喉が渇く前に飲むのが基本だ。1時間おきにコップ半分(100 mmリットル)や、2〜3口飲む、とルール化しておくのもよいだろう。外出時には水を飲む頻度を上げるようにしたい。塩分濃度0.1〜0.2%のスポーツドリンクや経口補水液が熱中症予防には最適だという。ミネラルウオーターや麦茶であれば、塩アメ、塩こんぶなどで塩分も併せて取るようにしよう。

 

「ただし、心臓に疾患のある人は、水分と塩分を摂取しすぎると心不全のリスクが高まってしまいます。持病がある人はかかりつけ医と相談しながら目安を決めるようにしてください」(三宅先生)

 

まだ7月に入ったばかり。酷暑は続くが、体を冷やすワザを活用しつつ、三度の食事と規則正しい生活を維持して、体調管理に努めていこう。

熱中症予防の最新理論! 首筋やワキより即効で体を冷やせる“意外な部位”とは?


手のひらで冷却された血液が素早く体を巡る

 ゴルフのラウンド中、熱中症予防のために首筋や脇の下を冷やすと有効であることが知られています。しかし、もっと簡単に冷やすことができて、頸動脈と同等か、それ以上に深部体温を下げられる部位があることをご存じでしょうか。

 その部位とは「手のひら」です。

 実は今、スポーツ医学の知識を有する指導者は、手のひらを冷却することによって上昇した体内深部温を下げ、より良いパフォーマンスをするための暑熱対策をさまざまな競技のアスリートにアドバイスしています。

【画像】世界陸上のメダルにも貢献した「リカバリーパーム」

 7月25日に閉幕した世界陸上。20キロ競歩で日本の山西利和選手、池田向希選手がワンツーフィニッシュを果たしたのは記憶に新しいことと思います。

 両選手はレース中ずっと深部体温を冷却するジェル状のツールを握り、手のひらを冷やしていたのです。タレントの“みちょぱ”こと池田美優さんの“はとこ”だという池田選手がレース直後にテレビ局のインタビューを受けたとき、イヤホンを耳に当てる右手には白いサポーター状のものが装着されていました。

 手のひらは、心臓や脳にそれほど近くはなく、どちらかといえば体の末端のひとつです。どういうメカニズムで深部体温が冷えるのでしょうか。医学博士の末武信宏氏(愛知県名古屋市・さかえクリニック院長)に教えていただきました。

 末武先生は、五輪選手をはじめとするさまざまな競技選手への治療および指導に定評があり、先端医科学ウエルネスアカデミー副代表理事もつとめる、トレーニング・コンディショニングの第一人者として知られています。

「手のひらには動脈と静脈がつながっている特殊な血管(動静脈咬合血管)があります。そのため手のひらで冷やされた血液は、静脈を通って即座に心臓へ戻り、さらに体中を巡って深部体温を素早く冷却するのです。車にたとえるとラジエーターの役目ですね。暑いときは拡張して血流を増やすことで体の熱を外に放出する。寒いときは収縮して血流量を絞ることで体幹の熱が外に逃げるのを防ぐ。真冬の寒いとき無意識に手のひらをストーブや暖炉の熱源に向けることで深部体温を高めようとするのはそのためです。反対に猛暑のラウンドで深部体温が上昇した場合は、手のひらを冷却することで冷やされた血液が素早く体を巡り、深部体温を急速に元の体温に戻します」

 末武先生によると、動静脈咬合血管はおもに手のひらや足裏、足の指、首などにあり、いずれも熱交換の役割を果たしています。

首筋も冷却効果は高いが筋肉も冷えてスイングに悪影響

 ラウンド中シューズを脱いで足の裏や足の指を冷やすのは現実的ではありませんが、首にも熱交換のための特殊な血管があるなら、今まで通り首筋を冷やすのでいいのでは?

「もちろん頸動脈を冷やすことも熱中症予防には有効です。ただ、注意していただきたいのは、首の前側や大腿部の動脈は深いところにあり、冷却するのに時間がかかることです。また、冷えすぎると交感神経が優位になり、筋肉が拘縮してしまいます。熱中症を防ぐことはできても、スイングが乱れてパフォーマンスが低下してしまうのです」

「一方、手のひらの動静脈咬合血管は動脈に比べれば圧倒的に細いため、冷えすぎにくい。それでも毛細血管の約10倍の太さと1万倍の血流量を持っているし、浅いところを通っているため皮膚からダイレクトに冷やせます。そのため冷やされた血液が即座に体を巡り、早く冷却できるのです。しかも手のひらは、体のどこよりも簡単に冷やせるので、こまめに継続しやすいでしょう」

 手指を少しでも切ると出血します。それだけ浅いところに無数の血管が張り巡らされているから、手のひらを冷やすと深部体温を下げる効果が高いのですね。

インターバルでは必ず手のひらを冷やすことを習慣に

 では、どのように冷やせば熱中症に対してより有効になるのでしょうか。

「濡れタオルに氷を挟んだのをジップロックのようなファスナー付き袋に入れて、保冷バッグで持ち歩くのがオススメです。カートに乗っているときやちょっとした待ち時間にタオルを握って手のひらを冷やしてください。グローブをしていないほうの手だけ冷やしても十分効果が得られますよ。世界陸上の競歩でメダルを取った選手が装着していたツールも一般販売されています」

 このツールは「リカバリーパーム」といい、もともとオリンピックの陸上日本代表選手の暑さ対策として、6年間の開発期間を経て製品化されました。暑熱や運動で上昇した体内深部や筋肉の熱を下げることによって筋力の低下や疲労感が取り除かれ、集中力やパフォーマンスが向上するというデータがあるそうです。

 伸縮性のあるメッシュカバーの中にジェルが入っていて、サポーターのような見た目です。冷凍庫に平置きして2時間以上ジェルを冷やし、手のひらに着けて使います。

 ジェルは保冷剤のようにも見えますが、一般家庭の冷凍庫でよく保存されている保冷剤で代用はできないのでしょうか。

「このジェルはただの保冷剤ではなく、特殊技術によって7度になるよう設定されています。先程もお話ししましたが、一般的な保冷剤や氷では冷えすぎて血管が収縮するので、血流量が減ってしまいます。それだとかえって冷却効率が悪く、スポーツパフォーマンスにとっても逆効果になりかねません。保冷剤を使用する際は、直接使わずガーゼに巻いて調整するなど冷たくなりすぎないように注意しましょう。また一般的な保冷剤はすぐ溶けて温まってしまいますが、このジェルは冷たさが約3倍長持ちします」

 冷たければ冷たいほどいいわけではなく、ほどよい冷却を長く持続させられるのが理想のようです。では、ラウンド中はどのように活用すればいいのか、ゴルファーのコンディショニングを指導する柴田晃伺トレーナーに聞いてみました。

「ゴルフは激しいスポーツではないため、疲労していても自覚がなく、気づかないうちに熱中症になってしまう人が多いのです。そうなる前から手のひらを冷やし、予防を習慣づけることが重要です。ドリンクと一緒にグリーン脇に置いておき、ホールアウトしたら手に巻いたり握ったりして次のホールのティーイングエリアへ移動する。これを毎ホールのルーティーンにするといいでしょう」

 末武先生は「深部体温が下がると、オーバーワーク気味で働き続けていた自律神経が安定します。それによって集中力が高まる、発汗が抑えられる、疲労が軽減する。これらの効果はしっかり証明されています」と付け加えました。

 手のひらを冷やす熱中症予防によってプレーのパフォーマンスも上がれば、ゴルファーにとっては一石二鳥といえるでしょう。

【解説】末武信宏

医学博士。さかえクリニック院長、先端医科学ウエルネスアカデミー副代表理事、順天堂大学医学部非常勤講師、トップアスリート株式会社代表取締役、日本美容外科学会認定専門医。アンチエイジング診療を行なうかたわら順天堂大学医学部でスポーツ医学の研究に従事。陸上の五輪選手をはじめ、ゴルフ、サッカー、野球、キックボクシングなど、さまざまな競技のトップアスリートへの治療およびトレーニング、コンディショニング指導で日本有数の実績と定評をもつ。テレビや雑誌、講演会でも活躍中。監修をつとめる『スポーツのパフォーマンスを最強にする超肺活』(カンゼン)など著書多数。

野上雅子

熱中症予防に! 暑い夏を乗り越えるための子ども向け暑さ対策グッズを紹介


TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)、7月21日(木)の放送では、熱中症予防のための暑さ対策グッズを紹介しました。







◆子どもも必須、熱中症を防ぐ暑さ対策グッズ

TOKYO MXでは7月31日まで「子ども未来応援ウィーク」を実施中。「堀潤モーニングFLAG」では、子どもにもニュースをわかりやすく伝える「子どもニュース」をお届け。この日は、記録的な暑さとなっているこの夏を涼しく過ごすための最新グッズを紹介しました。

今年も暑い日が続くなか、7月20日から暑さを吹き飛ばすグッズを集めたイベント「猛暑対策展」が開催されました。

そこで展示されていたのは、冷蔵庫に入れなくても水につけたり、涼しい部屋に置いておくだけで冷たくなり、装着することで首元を冷やしてくれる「アイスネッククーラー」。

また、ランドセルに取り付けて背中に涼しい風を送る小型の扇風機「ランドセル用クールパッド」も。

さらには、赤ちゃんやママを涼しくしてくれる「扇風機つき 抱っこひもカバー」など、さまざまなグッズが展示されていました。

◆最新の暑さ対策グッズの数々に、Z世代の反応も上々

タレントで起業家の加藤ジーナさんは、登下校中にアイスネッククーラーをしている子どもを度々見かけ、自分も購入しようと思ったものの品切れだったそう。

また、シッターのような形で小学生の子どもと日々触れ合っているという慶應ビジネススクール2年(MBA)の池田颯さんは、「子どもは学校で『熱中症に気をつけなさい』と言われながら、コロナの感染症対策として『マスクをしなさい』とも言われる。体調管理がとても難しいので、こうしたグッズはすごくいいと思う」と高評価。

◆熱中症による搬送者数は昨年の2.5倍!

なお、熱中症で病院に運ばれた人の数は、今年、5月1日~7月17日までの期間で3万3,767人と昨年の同時期に比べすでに約2.5倍。この数字に、キャスターの堀潤は「ちょっと多いよね」と感想を口にします。

環境活動に尽力しているFridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、「これは今年だけでなく、今後も暑い日は続くと思う」と示唆。その上で「気候変動のことも対策しないといけないが、今起こっている現象に対応していかないと私たちの命も危ないので、こうしたグッズが普及していけば」とグッズの活用を促します。

総じて堀は「子どもたちが欲しいものを大人が一緒になって開発するところに、いろいろな広がりが見られそう」と期待を寄せる一方で、加藤さんは「グッズがなくても家でできることはたくさんあり、例えばペットボトルに水を入れて凍らせ、夜寝るときに置いておけば寝やすくなったり、今はネットで調べればいろいろな対策が出てくるので、いろいろ工夫したい」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>

番組名:堀潤モーニングFLAG

放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信

キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)

番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/

番組Twitter:@morning_flag

「氷」は逆効果?「手のひら冷却法」が熱中症対策に効果的なワケ【アスレティックトレーナーが解説】


熱中症対策で冷やすと効果的な部位はどこ? 首、脇の下、股の付け根など

私たちの体には、外気温に左右されない体温調節システムが備わっています。体温が高くなりやすい屋外活動や運動時には、体温を下げようと汗をかきます。水分やミネラル分が汗で失われてしまうので、脱水を防ぐために、適切に水分・ミネラル分を補給することが大切です。

外の気温に対して体温調節がうまくできなくなると、めまいや筋けいれん、頭痛、倦怠感などの熱中症のような症状が現れます。このときにまず行わなくてはならないのは、体の深部体温を下げることです。

深部体温とは皮膚表面ではなく、体の核心部の体温のこと。私たちは普段、脇の下で体温を測定することが多いと思いますが、深部体温はより体の深部に位置し、実際には直腸温などを参考にします。

深部体温を下げる一般的な方法としては、大きな血管が通っている部位を冷やす方法が知られています。例えば首や脇の下、股の付け根、膝裏などの、大動脈の通り道になっている部分です。これらの部位を中心に氷や氷水を用いて冷やすことで、急激な体温上昇を抑えることができます。

手のひらや顔を冷やすと体が冷える? AVAという血管のメカニズム

上記でご紹介した大動脈の通り道の部分はとても効果的な部位なので、実際に熱中症になってしまったときの対処法として覚えておくとよいでしょう。あわせて、より手軽で日常的にできる熱中症対策法として最近注目されているのが「手のひら冷却法」です。専門的な言葉では「手掌冷却法(しゅしょうれいきゃくほう)」と言います。

手のひらや顔には冷やしやすい大きな血管はなさそうですが、なぜこれらの部位を冷やすと効果的なのでしょうか? そのメカニズムのカギは、体の末端部分にある、動脈と静脈をバイパスのように結ぶ「AVA」という血管が握っています。

AVAは「動静脈吻合」(どうじょうみゃくふんごう)ともいい、体毛のない手のひらや足裏、頬などに多く分布しています。AVAは普段は閉じられていますが、体温が上昇するとともに開通し、熱を放出して体温を下げようと働くことが知られています。

手のひら冷却法は、このAVAを効果的に冷やすことによって血液の温度を下げ、その血液が全身を循環することによって深部体温を下げようとするものです。

手のひら冷却法の方法・やり方・逆効果になる注意点

具体的なやり方をご紹介しましょう。

▼手のひら冷却法のやり方

1. 「やや冷たい」と感じる10~15℃程度に冷やされたペットボトルを準備する

2. ペットボトルを手に持り、5~10分程度手のひらを冷やす

これだけです。ペットボトルはどこでも購入できて手軽ですが、もちろんペットボトルにこだわる必要はありません。手のひらが冷やせればよいので、例えば洗面器に10~15℃程度の冷たい水を張り、5~10分間両手をつけるといった方法でも、効率よく体温を下げることができます。

注意点としては保冷剤などの凍ったものや氷のうなど、冷たすぎるものを使わないこと。肌への負担に気をつけて使ったとしても、冷却刺激が強すぎることで、体温上昇によって開かれたAVAが閉じてしまい、逆効果になってしまうことが懸念されます。10~15℃程度のほどよい冷たさを守って行うようにしましょう。

例えば屋外活動やスポーツを行う前に、手や足を水に浸したり、ペットボトルを使って手のひらや頬などを冷やすようにすると、活動時の急激な体温上昇が抑えられ、熱中症予防にもつながります。また寝る前に実践すると、寝苦しい夜をより快適に過ごせることが期待できます。

手軽に取り入れることのできる「手のひら冷却法」をぜひ実践してみてください。

※参考書籍:スポーツ現場における暑さ対策 長谷川博・中村大輔/編著 ナップ

▼西村 典子プロフィール

20年以上に渡り、スポーツ現場でのトレーナー活動に従事する日本体育協会公認アスレティックトレーナー。NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト。選手へのトレーナー活動だけでなく、幅広い年齢層を対象としたストレッチ講習会やトレーニング指導経験も豊富。スポーツ傷害予防や応急処置などの教育啓蒙活動も行い、毎日の健康づくりに役立つ運動に関する情報発信を精力的に行っている。

命の危険も? 熱中症対策の「携帯扇風機」が逆効果になりかねないワケを医師に聞く


 手軽に涼を得られるグッズとして重宝する「携帯扇風機」(ハンディーファン)。屋外で使っている人もよく見かけますが、気温や使い方によっては、脱水状態を招き、熱中症につながる恐れがあるとの情報もあります。事実でしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

【危険!】携帯扇風機、屋外で脱水症状にならないように使うコツ

単独使用で脱水状態の恐れ

Q.まず、体温調節のために汗がどういう役割を果たすか教えてください。

市原さん「汗が皮膚の表面から蒸発するときに熱を奪うことにより、体温を下げる役割があります。汗による熱の放散は、熱中症を防ぐために大切なことの一つです」

Q.屋外で携帯扇風機だけを使っていると、脱水症状を引き起こす恐れもあるというのは事実でしょうか。

市原さん「事実です。実際には暑い環境にいるにもかかわらず、携帯扇風機による風で涼しさを感じて油断してしまい、水分摂取を怠ると、脱水症状となり、熱中症になる危険性があります。また、携帯扇風機によって汗を急速に乾かしてしまうことで、本来の汗の役割である、気化熱によって体温を下げるという役割が十分に果たせない可能性があります」

Q.特に猛暑の中で使った場合の危険性を教えてください。

市原さん「猛暑の中での携帯扇風機は、熱風を体に送ることになるので、余計に暑さを感じる可能性もあり、危険です。首には太い血管があり、熱中症予防のためには首を冷やすことが大切ですが、逆に首元へ熱風を当てる行為は、熱中症を起こしやすくしてしまうので、注意が必要です」

Q.屋外、しかも猛暑の中で、携帯扇風機を使って、熱中症対策をする適切な方法を教えてください。

市原さん「猛暑の時の屋外では、基本的に携帯扇風機の効果は『ほぼない』と考えてください。なるべく暑さを回避し、水分摂取を小まめにすることが基本です。やむを得ず屋外で過ごすときに携帯扇風機を使用するのであれば、風を当てる体の部位に水分をスプレーしたり、速乾性に優れる生地をぬらしたものを首に巻いた状態で風を当てたりして、工夫してください」

オトナンサー編集部

「朝食を抜くと、熱中症リスクがあがる」説は本当? 管理栄養士が超わかりやすく教えてくれた


「朝食抜きで熱中症になりやすくなる」? その原因と理由

「朝食を抜くと、熱中症リスクがあがる」という話が話題になっているようです。

熱中症対策としては、水分と塩分が重要ということは、すでに多くの方が知っていると思います。「こまめな水分補給」「適度な塩分補給」は日々耳にされていると思いますが、ここに「朝食」という言葉が出てきて、不思議に感じている方もいるかもしれません。

実は、朝食抜きは知らず知らずのうちに「水分を控えている」状態に近くなってしまうのです。栄養学的な視点から、詳しく解説しましょう。

1日2.5Lが入れ替わる体内の水分! 摂取量の内訳は?

成人男性を例にすると、体成分の60%は水分です。このうち、1日で2.5Lが入れ替わっていると言われています。

まずは、1日に体に入ってくる水について見てみましょう。大まかに、

・食品から摂る水……1000mL

・飲料水から摂る水……1200mL

・代謝水から摂る水……300mL

と考えられています。代謝水とは、摂取した食べ物が体内で分解されるときに発生する水のことです。

一方で、1日に体から出ていく水を見てみましょう。

・尿として出ていく水……1500mL

・便中に含まれて出ていく水……100mL

・呼気に含まれて出ていく水……300mL

・主に汗として皮膚から出ていく水……600mL

と言われています。

ごはん・パン・肉・魚……意外な食品からも摂れる水分

ここで確認したいのは、実は「食品から1000mL」の水分が摂取されているという事実です。飲料水は別になっていますので、この食品に含まれるものは、いわゆる「食事」、米やパン、肉、魚、野菜など、料理に含まれる食材です。

普段、見慣れた食材や料理にこんなに水分が含まれているとはにわかには信じがたいと思いますが、実はけっこうな水分が含まれています。

例えば、ごはん(米飯)は100gあたり水分は60g。実に60%が水分です。カリカリに感じられるフランスパンでも100gあたり30gが水分です。みずみずしいフルーツ・例えばスイカは100gあたり89.6gまでもが水分です。このように意識していないにもかかわらず、食事を食べることで水分をしっかり摂ることができるのです。

成人男性の場合、1日1000mLの水分が食品から摂取されています。1日3食で割れば、1食350mL弱になります。朝食を抜くと、それだけで350mLの水分を飲まなかったことと同じ状態になってしまいます。寝起きから最初の食事が抜きでは、厳しい暑さで脱水になるのも無理もありません。

熱中症対策に身につけたい朝食習慣……猛暑を健康的に乗り切るために

熱中症対策には「水分と塩分」と言われるように、塩分も大切です。

食品から1000mLの水分を摂取する際、味付けに使用する調味料には食塩も多く含まれています。食事を食べることで調味料として含まれる塩分も無理なく摂取することができるため、水分と塩分補給を同時に行うことができます。

このように、食事は水分・塩分を摂取するのに大事な役割を果たしています。暑い季節は起き抜けに食事をする気になれない、という人もいるかもしれませんが、まずはバナナ1本からでもOKです。夏こそ朝食習慣を身につけて、健康的に暑さを乗り切ってください!

※参考:「健康のため水を飲もう」推進運動(厚生労働省)

▼平井 千里プロフィール

メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

猛暑で「熱中症保険」に入る人が急増中!入ったほうがいい?


熱中症で救急搬送された人は、6月末のわずか1週間で4,551人もいるなど2022年は例年より暑さが厳しくなりそうです。熱中症対策には、水分補給が最も重要ですが、それだけでなく保険で備えおくという方法もあり、いま加入者が増えています。

■申し込みが17倍に増加!熱中症保険は1日100円から入れる

契約者が増えている熱中症保険を発売したのは住友生命保険。傘下のアイアル少額短期保険が開発したもので、ほうどうによると、6月下旬まで1日最大400件程度だった申し込みが、6月29日は約6900件に上ったといいます。

この熱中症保険で保険金がおりるのは、病院で点滴治療(治療保険金)を受けた場合や、2日以上入院した場合の費用(入院保険金)です。

契約は1日~7日(期間選択型)または1ヵ月(月額型)かを選べます。保険料は期間選択型が100円から170円、月額型が200円からです。

受け取れる保険金は、期間選択型は治療保険金が1万円、入院保険金が3万円。月額型は、保険料によって表の通り3つのプランから選べます。支払回数は、異なる障害に対して、2回が限度(期間選択型は1回が限度)です。

保障内容お手軽プラン基本プラン安心プラン
治療保険金5,000円7,000円1万円
入院保険金1万円3万円2万円
保険料200円220円240円
(出典:アイアル少額短期保険「ミニ医療保険」=熱中症保障条項=重要事項説明書)

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■熱中症保険は告知なしで入れるが……

熱中症保険に入る際には、健康状態の告知が必要なく、PayPayのアプリから入れますが、「安いから」「簡単だから」と保険に入るのではなく、必要かどうかしっかり考えるべきでしょう。

最近はニーズの多様化に合わせて、熱中症保険だけでなく様々な「ミニ保険」が発売されており、その都度保険に入っていては、総額の保険料負担が大きくなるからです。

■熱中症保険は傷害保険の特約にもある

熱中症保険に入らなくても、保険で熱中症の補償を得られます。「傷害保険の特約」です。傷害保険は基本1年契約で期間を夏のみに限定できないので、割高な感じはしますが、1年間メンテナンス不要なので、都度加入する手間を省ける点がメリットでしょう。

マイナンバーカードを保険証代わりにすると損?知っておきたい3つの注意点

熱中症はめまいやけいれんなどを引き起こし、命に関わることもある病気です。炎天下に外出した時だけでなく、自宅で倒れる人も少なくありません。保険で備えたとしても、熱中症で倒れないのが一番です。日頃から水分補給や温度管理をして、熱中症にかからないようにしましょう。

文・小宮崇之(保険代理店経営のファイナンシャル・プランナー)

編集・dメニューマネー編集部

【わかるまで解説】熱中症を防げ…朝食にはごはんがおすすめ?メカニズムと対策 注意点まで


© FNNプライムオンライン

これからの夏本番に向け、いっそう懸念される熱中症。

果たして、皆さんの常識は、どこまで正しいのか?知っていそうで知らない、そのメカニズムと効果的な対策について解説します。

【画像】医師が勧める熱中症予防の朝ごはん 人は水分の5割を食事からとっている

猛暑日続く東京 熱中症による搬送者急増…正しい知識で予防を!

観測史上最も早い梅雨明けとなった東京都では、連日の猛暑日により、早くも熱中症患者が急増しています。

東京都の熱中症とみられる搬送者の推移を見ていくと、6月30日は226人。グラフを見ると、25日から搬送者が急増していることがわかります。25日は、観測史上最も早く35度を超えた猛暑日となった日です。この日以降、6日連続の猛暑日で、搬送者も連日100人を超えている状況です。

帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長の三宅康史さんも、「我々のところは重症の患者をみるのですが、今の時期から1日何人も搬送されてくるというのはこれまでなかったことです」と、早い時期に患者が増えていると話します。

命の危険もある熱中症。正しい知識を身に着けることが、その最大の予防法と言えます。まずは、熱中症のメカニズムを見ていきます。

そもそも「熱中症って?」知っているようで知らないメカニズム

そもそも熱中症とは、高温多湿な環境の中で、多量の汗をかくことにより脱水状態になったことを指します。その影響で、体温の調節に不具合が起き、平熱を超える温度にまで上昇、体に様々な異変が起こり始めます。

脱水状態になると、体温の調節に不具合が起きるメカニズムは、こうです。通常血管は、体温が上昇すると、血管が拡張し、体内の熱を放出しやすくなります。しかし、脱水症状になってしまうと、血液内の水分が減って“ドロドロ状態”に。血管を拡張してもスムーズに血液が流れず、体温をうまく調節することができなくなってしまいます。

つまり、熱中症の症状というのは、脱水症状による体の機能不全のことなのです。

“脱水症状による体の機能不全”とは、例えば、脳がダメージを受けると、めまい・立ちくらみ。胃腸がダメージを受けると、食欲低下・吐き気。筋肉がダメージを受けると、足のつり・痛みなどの症状を引き起こします。このように、血管は体を巡っているため、熱中症の症状は多岐にわたるのです。

さらに気をつけたい点が、時間差で症状が出る場合もあるということです。炎天下での活動(発汗)から、自宅など涼しい場所へ移動すると、体温は下がります。しかし、そこで十分な水分を補給しないと、血流は不完全なまま。無自覚のままで体へのダメージが蓄積し、時間差で熱中症の症状が現れることもあるといいます。

このように、脱水症状の怖いところは、症状が出るまで、ほとんど自覚症状がないという点です。予防をするためには、数少ない「サイン」を見逃さないことが重要です。

熱中症を防げ…数少ない脱水症状のサインは?こまめな水分補給を

数少ない危険サインの1つは、「のどの渇き」の有無。実は、のどが渇いたと感じた時点で、すでに初期の脱水状態になっています。つまり、のどが渇く前の水分補給がベストです。

2つ目のサインは、尿”の変化です。体の水分が減少すると、尿の回数が減ったり、尿の色が濃くなったりするといいます。

帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長・三宅康史さん:

我々は持続的に水分を体から失っているので、本来であれば、点滴のように持続的に入れた方がいいです。ですが、それは難しいので、少なくとも30分に1回ぐらい水分補給し、足りなくなったらすぐ補う。そうやって、翌日に熱中症の症状を残さない、すぐに手を打つ、ということが、重症化させない、あるいは、後から後遺症を残さないために大切なことです。

また、持病のある方、心臓病や高血圧、腎臓病などがある方は、日頃、塩分を取らないで、水分を取らないで、と言われていますので、夏は非常に難しいです。水分を取り過ぎると血圧が上がる、持病が悪化するということが起こりえます。なので、バランスがとても大切です

熱中症の原因となる脱水症状ですが、特に注意が必要な人もいるといいます。

「高齢者」「運動不足」は熱中症になりやすい?

まず、注意が必要なのが高齢者です。感覚機能が衰えることで“のどの渇き”に鈍感になるので、熱中症のリスクが増加します。

さらに、運動不足の人もリスクが高いといいます。実は、体内の水分の4割は筋肉などの細胞に貯められています。つまり、運動不足により筋肉量が減ってしまうと、体内の水分をためる場所も減ってしまい、熱中症のリスクを高めることになるのです。

ダイエットも熱中症リスク増…1日に必要な水分の半分は食事から

さらに、夏のダイエットにも注意が必要です。

1日に必要な水分の約5割を、人は食事から取っています。従って、3食しっかり食べることが、熱中症の予防にも繋がっているのです。特に重要なのは朝食。人が寝ている際にかく汗の量は、最大でコップ一杯分にもなっているといい、実は毎朝、軽度の脱水状態になっているのです。ダイエットなどで、朝食を減らしたり抜いたりすると、水分や塩分が補給できず、少し活動しただけでも熱中症のリスクを上げてしまいます。

そんな中、どのような朝食がこの時期に適しているのでしょうか。

熱中症予防に最適なのは「米飯」 ポイントは水分量

100gあたりに含まれる水分は、ごはんで約60g、トースト(焼いた食パン)で34g。ご飯の水分量は、トーストの約2倍という結果に。

また、朝食は和食がおすすめだといい、みそ汁・煮物類(野菜)など、水分の多いおかずと組み合わせることで、十分な水分補給が可能になります。

飲み物ではなく、食事から1日の約半分もの水分補給をしているということに、気づいていない人も意外と多いのかもしれません。

帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長・三宅康史さん:

食事をきちんと食べるということは、栄養だけではなく、塩分、水分もとれるということです。特に、朝食を抜くというのは非常にリスクが高いです。夜中なにも食べないで、朝食も食べないというのは、とても長い時間水分を補給していないことになります。

また、パンが悪いという訳ではなく、パンを食べるならサラダやスープを添えるなど、工夫することで、和食でなくても、リカバーすることができます

ほかにも重要な、三宅先生おすすめの熱中症への備えは、“暑さに耐えうる体”になることです。

専門家直伝!「汗をかける体になること」

“暑さに慣れる”とはつまり、「汗をかける体になること」、これが大事です。汗をうまくかけないと、体温調節も困難になり、1時間の外出でも熱中症になりやすいといいます。

そこで、自宅で簡単にできる対策として、ぬるめ(38度~39度)のお湯に、10分~15分入浴します。この際、入浴の前後に水分補給も忘れずに行ってください。

正しい知識で有効な対策をとって、熱中症を予防していきましょう。

(めざまし8「わかるまで解説」7月1日放送)

牛乳が“熱中症予防”で効果…適度な運動と合わせることでリスク減 専門家「積極的な攻めの予防」


 今年初めて熱中症警戒アラートが発令された石川県内。牛乳を飲むことで熱中症の予防につながることをご存じでしょうか。

 石川県内灘町のホリ牧場。牛たちも木陰で暑さをしのいでいました。その牛たちが出してくれる牛乳、実は熱中症の予防に効果があるのです。

信州大学 能勢博特任教授:
「アルブミンというタンパク質の材料が牛乳から提供されて血液量が増える。(アルブミンは)血管外から血管の内側に向かって水を引き込む」

 スポーツ医科学が専門の能勢博特任教授です。能勢特任教授によると、血管中の血液量や体内の水分量を調整するアルブミンという成分は、牛乳に含まれるタンパク質をもとに作られます。

 そのアルブミンが増えることで血液中の水分を増加させ血流が良くなるそうです。血液の循環がよくなると身体が気温の変化に対応できるようになることから、熱中症の予防につながるというのです。

「スポーツドリンクは(体内の水分量を)維持する。汗をかいたらそれを補うのがスポーツドリンク。牛乳っていうのはそれ(体内の水分量を)増やすんです」

 先ほどのホリ牧場は…。

ホリ牧場 堀達夫牧場長:
「自分で自由に日陰入ったり、牛も暑さに強いやつもいれば弱いやつもいるんで」

 今年は物価高で牛の餌も暴騰し、例年以上に厳しい夏となりました。それでも炎天下での作業は続きます。

「(私は)夏も仕事しないといけないので、熱中症になるわけにはいかないので。必ず朝晩絞ってて飲む機会があるので、ここまで大きくなったのも牛乳のおかげだと思ってます」

 熱中症予防に効果がある牛乳。しかし、ただ牛乳を飲めばいいわけではないそうです…。

能勢特任教授:
「たんぱく質食べててもダメ。運動してたんぱく合成をあげておく」

 暑さに強い身体を作るには運動+牛乳。能勢特任教授は週に3日ほど早歩きとゆっくり歩き、これを交互に3分ずつ繰り返す「インターバル速歩」をすすめています。

 20~30代なら早くて1週間、40代以上なら2~3週間で効果が現れるといいます。

能勢特任教授:
「ややキツい運動をした直後、30分以内に牛乳とかヨーグルトを摂取してください。体温調節機能が上がって熱中症リスクを下げることができます。これは積極的な攻めの熱中症予防。急に梅雨明けが起こって問題になってますけど今からでも遅くはないです」

【解説】“睡眠中の熱中症”要注意! 睡眠環境プランナーによる「夜のエアコン活用法」とは?


29日の東京は5日連続の猛暑日、28日も熱帯夜となりました。「寝苦しい」と感じる人も多いのではないでしょうか。“睡眠中の熱中症”には要注意です。

「寝ている間が危険」、「エアコン活用法」、「“睡眠の質”アップ」、以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■猛暑で搬送相次ぐ…エアコン未使用で死亡も

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東京消防庁管内で28日、今年最多となる8歳から100歳の男女224人が熱中症とみられる症状で病院へ搬送されました。

さらに、28日、70代の男性2人が熱中症で死亡しました。2人とも、部屋の中でエアコン未使用だったということです。

猛暑日だけではなく、熱帯夜も続く中、東京・銀座で街の人に聞きました。

――暑さで夜は寝られない?

80代

「やっぱり、目が覚めますね。夜ね」

「そうね、途中で目が覚める」

「もう、だるいという感じ」

20代

「起きちゃいます。ちょっと寝苦しくて、起きちゃいます」

70代

「私は、すぐ寝られます」

60代

「僕は、4時ごろ起きますよ。起きてから、寝苦しさを感じるかな」

■「熱中症の4割は夜間・睡眠中」専門家が警鐘も

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実は、熱中症は夜間、それも睡眠中に発生する人が多いということです。

東京消防庁管内では、28日午後9時から29日9時までの12時間だけで、熱中症とみられる症状による47人の搬送が報告されました。ただ、夜間の発症かは確認されていません。

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熱中症に詳しい兵庫医科大学・服部益治特別招聘教授も、実際のケースでは「熱中症の4割は、夜間・睡眠中に発生する」と警鐘を鳴らしています。

夜は昼ほど暑くないため、「大丈夫」と油断しがちですが、そういうことではありません。夜に熱中症になりやすい背景として、水分補給ができないということが挙げられます。

人は寝ている間にも、呼吸や汗で400~500ccの水分を一晩で失っているということです。夜中にトイレに起きるのが嫌だからと、水分を取らないお年寄りも多いです。寝る前と起床後に、少なくともコップ1杯の水を取り、失われた水分を補う必要があります。

そして、2年連続のコロナ禍で運動していない人も多いため、筋肉量が大幅に減っています。水分は筋肉の細胞の中にたまります。筋肉量が減少すると、体内の水分の貯蔵庫が小さくなっているということです。そこに異常な暑さも加わり、まさに“ダブルパンチ”に見舞われています。

元々、筋肉量が少ない高齢者・子ども・女性だけでなく、今年は健康な男性でも熱中症になる危険性が高まっているということで、注意してください。

■屋内での熱中症による死亡者「大半がエアコン未使用」

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また、熱中症による死亡について怖いデータもあります。

東京都監察医務院によると、東京都内で2020年、屋内で熱中症のため死亡した187人のうち約90%がエアコンを未使用、または設置していませんでした。やはり、大半の人がエアコンを使用していなかったということです。

今年は節電も気にしなくてはいけませんが、やはり命には代えられません。街の人は、寝る時にエアコンをどうしているのでしょうか。東京・銀座で聞きました。

40代

「かけっぱなしで、寝てます」

20代

「一応、タイマーにしてはいるんですけど、やっぱり暑くて起きちゃうので、また、ちょっとつけたりという感じです」

70代

「消す! 寒くなっちゃうから、嫌だよね。やっぱりね」

■「夜のエアコン活用法」睡眠環境プランナーがアドバイス

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夜中のエアコン使用について、睡眠環境プランナー・三橋美穂さんに聞きました。三橋さんは「エアコンは朝までつけておくのがいい」とアドバイスしています。

室温が28℃を超えると、「睡眠中熱中症」のリスクが高まるということです。設定温度は26℃から28℃がおすすめですが、「エアコンの設定温度=室温」ではないことに注意が必要です。枕元に温度計を置くなどして、それぞれの適温を見つけてほしいということです。

■避けたい寝冷え「長袖・長ズボンのパジャマ」で対策を

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エアコンをつけっぱなしにする場合、寝冷えを避けるために長袖・長ズボンのパジャマがおすすめということです。この服装で、ちょうど良い温度にエアコンを設定すると、快眠につながるということです。

さらに寝つきをよくするために、三橋氏は「設定温度を2段階にする」とアドバイスしています。まず、就寝1時間前、低めの温度でしっかり部屋を冷やし、就寝時は高めの温度に設定します。すると、室温がゆっくりと上昇していくため、寝入ったころには体が冷えすぎず、熟睡しやすい環境になります。

エアコンの設定温度は、人によって暑がり・寒がりの好みがあるため、家族と一緒の部屋の場合は困ります。暑がりの人には冷たい枕・冷たい布団などの「冷感寝具」、寒がりの人にはパジャマ・布団の厚みで調整することがおすすめです。

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     ◇

昭和の日本は、今ほど暑くなく、薄着や扇風機で乗り切ることができました。一方、令和では上手にエアコンを使うことが快眠のコツです。熱中症は知識と対策で防ぐことができますので、エアコンも活用して睡眠中の熱中症を避けてください。

(2022年6月29日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

命に関わる「屋内での熱中症」 扇風機だけに頼るのはかえって危険


梅雨も明けていない中、ぐんぐん気温が上昇している。6月24日は横浜で30.6℃と、今年初の真夏日を記録。新潟県では37℃の地点も観測されるなど、さながら夏本番のようだ。熱中症といえば“屋外の炎天下”というイメージがあるが、実は熱中症の死亡者のうち56.5%が「家庭」で発症している(厚労省人口動態統計、2018年)。

【グラフ】大半はエアコンを使用していない… 屋内での熱中症死者のエアコン設置率

安全であるべき自宅での悲惨な事故を防ぐためにはどうすべきか。

まずは熱中症について正しく理解する必要がある。医師の上昌広氏(医療ガバナンス研究所理事長)が解説する。

「熱中症は体温の上昇により作られた体内の熱がうまく放出できなくなっている状態。高温多湿の環境下にいたり、激しい運動をすることで引き起こされます。大量の発汗やめまい、筋肉痛など軽度の症状に始まり、吐き気や頭痛、倦怠感などが起きる。重症化すると高体温や痙攣、意識障害も起こすので、特に高齢者の場合は少しでも違和感があれば医療機関を受診していただきたい」

熱中症に関し特に注意すべきなのが、「脱水」だ。

「人間は汗をかくことで体温を調整しますが、脱水を起こすと熱を逃す働きが弱くなり、体温が下げられずにさまざまな機能障害や循環器不全につながります。高血圧、糖尿病の人は脱水になると血管中の水分が減り、血がドロドロになって血管が詰まりやすくなるので脳梗塞のリスクも上がる。脱水を避けるためのこまめな水分補給は、熱中症対策としても、夏場の脳梗塞・脳卒中予防としても有効です」(同前)

そもそも、高齢になると体温の調整機能や感覚機能が鈍り、暑さや喉の渇きに気がつかないことが多い、と上医師は言う。

「高齢者がエアコンの風を嫌う傾向があるのは、身体が冷え切って初めて“寒い”と気づくから。それを理解して、自分の肌感覚で温度調節をしないこと。室内の温度計を見ながら、常に室温を26~28度に保つことが重要です」

エアコンに頼らず、扇風機を使う人もいるが、使い方には注意が必要だ。

「エアコンと併用して室内の空気を循環させるのはいいが、扇風機だけに頼るのはかえって危険。温風を浴び続けることになり、熱中症になりかねません」(同前)

気象予報士・森朗氏もこう指摘する。

「アスファルトやコンクリートに覆われた都市部では、夜でも日中の熱が冷めにくい。熱帯夜に窓を開けると、夜中でも暑い空気が入ってくる可能性があります」

熱中症の予防ポイントとして、上医師、森氏ともに口を揃えるのが「湿度管理の重要性」だ。

人間の体には、汗が蒸発する際の気化熱で体温を下げる働きがある。湿度が高い環境では汗をかいても蒸発せず、体の中に熱がこもりやすくなって熱中症を発症しやすい。

熱中症危険度は、室温28度の場合、湿度70%で「警戒レベル」、71%以上では「厳重警戒レベル」となるが、湿度50~60%なら危険度は下がる。

「食事の煮炊きでも部屋の湿度は上がります。外が暑いと、窓を開けても温度や湿度は下がりません。そんな時は上手にエアコンを利用してほしいですね」(森氏)

近年は、部屋の温度を下げ過ぎずに除湿ができる「再熱除湿」機能付きエアコンも増えてきた。今年の夏は節電要請などでエアコンを使うことが憚られる状況になると考えられるが、酷暑の室内における熱中症予防には、エアコンと折り合いをつけて付き合うことが欠かせない。

※週刊ポスト2022年7月8・15日号

モデル女性「熱中症にならないよう気をつける」…日傘や扇子・ドライミストで涼む人も


照りつける日差しの中、日傘を差して歩く人たち(28日午前9時10分、東京都新宿区で)=飯島啓太撮影© 読売新聞 照りつける日差しの中、日傘を差して歩く人たち(28日午前9時10分、東京都新宿区で)=飯島啓太撮影

 前日に観測史上最も早く梅雨明けした関東地方は28日も朝から気温が上昇し、午前中から東京都心など各地で30度を超えた。国は熱中症に注意を呼びかけている。

 気象庁によると、午前9時現在の各地の気温は、東京都八王子市や埼玉県越谷市で31・8度、茨城県鉾田市や神奈川県海老名市で31・5度を観測。東京都心も31・2度で、すでに最高気温30度以上の真夏日となっている。

 東京・銀座では買い物客らが日傘を差したり、扇子であおいだりと暑さをしのぎながら歩いていた。歩道に設置された霧状の水を噴射する「ドライミスト」で涼む人の姿も。日傘を差していた杉並区のモデル女性(28)は「6月とは思えない暑さ。周囲に人がいないときはマスクを外して、熱中症にならないように気をつける」と話した。旅行で東京に来たという仙台市青葉区の無職男性(73)は「仙台と違ってじめじめして暑い。ずっとミストを浴びていたい」と汗をぬぐった。

 環境省は熱中症予防策として、1時間にコップ1杯の水分補給やエアコンの終日使用を勧め、屋外では日陰に入ることが有効としている。新型コロナウイルス対策のマスクは、屋外では原則外すよう呼びかけている。めまいや頭痛、大量の発汗など熱中症が疑われる症状がある時は、すぐに涼しい場所に移動して体を冷やし、水分や塩分を補給することが大切だ。

“かくれ脱水”に要注意…史上初6月に40℃超「普通この時期はない」熱中症とみられる救急搬送相次ぐ


史上初都心で6月に2日連続猛暑日”危険な暑さ”

リポート:「現在、有楽町駅前に来ています。午後2時を回ったところなのですが、手元の気温計を見てみますと、36.1℃と表示されています」

6月26日、東京都心では、6月として最も暑い36.2℃を観測しました。

有楽町駅前にあるミストの周辺をサーモカメラで見てみると、ミスト周辺は青くなっているものの、真下にいる人たちは、赤いまま。

25日も35.4℃を観測した東京都心。6月に2日連続で猛暑日となるのは、観測史上初めてのこととなりました。さらに、群馬・伊勢崎市では25日、今年全国で初めて40℃超えとなる、最高気温40.2℃を観測。6月に40℃を超えるのも、観測史上初めてのこと。週末、列島各地で真夏のような“危険な暑さ”となりました。

「きょうが何月か分からない…」熱中症で救急搬送相次ぐ

埼玉県熊谷市にある埼玉慈恵病院で撮影された映像。熱中症とみられる患者が、相次いで搬送されています。6月25日、埼玉県川越市では、94歳の男性が熱中症の疑いで死亡。ベッドの上でぐったりしている姿を家族が発見し、119番通報。男性は搬送先の病院で死亡が確認されました。この日、埼玉県内で熱中症の疑いで救急搬送されたのは、135人に上りました。運び込まれたのは、70代の男性。

医師:「今ここがどこだか分かります?分からない?

埼玉慈恵病院です。救急車で来られましたよ。きょうは何年何月ですか?何日ですか?何月何日か分かる?」

患者:「分からない」

医師:「分からないか、何月くらい?春夏秋冬、分からない?エアコン壊れちゃったの?」

患者:「うん」

自宅のエアコンが壊れたという男性。脱水症状で意識がもうろうとしています。

この日、病院のある埼玉・熊谷市は、午前中から気温は30℃を超え、最高気温は体温を上回る38.4℃を観測。熱中症の症状を訴える患者が次々と搬送される事態になったのです。

運び込まれた80代の男性は…

看護師:「寒い?暑い?」

患者:「ちょうどいいです」

看護師:「ちょうどいい」

医師:「意識変化はありましたか?」

患者:「自分じゃ」

医師:「分からなかった」

畑仕事をしていた最中、突然倒れたといいます。患者を診た、藤永副院長は、この時期としては異例の事態だと話します。

埼玉慈恵病院 藤永剛 副院長:

「6月はやっぱりスポーツ、あとは仕事で肉体労働頑張っちゃうとか、そういう方が熱中症で運ばれるイメージが強くて、今みたいに、ご高齢の方が、自宅で倒れちゃうとか。エアコンつけなかったから具合悪くなって一晩で重症になっちゃってるとか。そういう熱中症は、6月は珍しいです。普通はこの時期、ないんですよ」

東京消防庁によると、26日、東京都内では8歳から97歳の男女93人が熱中症とみられる症状で病院に搬送されました。このうち、80代の男性が重体で60代から80代の男女4人が重症だということです。

熱中症とみられる救急搬送が各地で相次いだ週末。そこで、暑さが続く中、再確認しておきたいのが熱中症対策です。

熱中症になる前のサイン「かくれ脱水」
済生会横浜市東部病院の谷口医師によると、熱中症の前に出るあるサインがあるといいます。それが「かくれ脱水」です。気づかないうちに脱水症状になりかけてしまっている状態のことです。「疲れやすい」「眠い」「喉が渇きやすい」などが出てくると脱水の一歩手前だといいます。そうなるとすぐ熱中症になってしまうということで、対策が必要になります。

熱中症対策 水分補給4つのポイント
その中で、大切なのが水分補給。水分補給のポイントが4つあります。

まず1つ目は、「就寝前・起床後にコップ1杯の水を飲む」こと。水分は寝ている間に発散してしまうということで、これが大切になります。

2つ目は「1.5~2リットルの水を6~8回くらいに分けて飲む」こと。汗をかく場合はもう少し必要かもしれません。

3つ目は「お酒を飲むとき、水分の多い食べ物を一緒に食べる」こと。

4つ目は「暑さや疲れを感じるときは、塩分を含んだスポーツドリンクなど冷たい飲み物を飲む」こと。これが身体の中の水分と同じものになるので、飲み過ぎはよくありませんが、水とスポーツドリンク一緒に飲むと良さそうです。

(めざまし8 6月27日放送)

マスク生活で増える「脱水症」は、脳梗塞を引き起こす! デスクワーク中も30分に1回は水分を


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高齢者は常に脱水症の危険に晒されていることをご存じですか。最悪の場合は命を落とすことも――。屋外・室内にかかわらず、渇きを感じていなくても、マメな水分補給を心がける必要があります(構成=中山あゆみ イラスト=花くまゆうさく)

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【イラスト】体調にあった飲料の選び方は?

渇きを感じにくくなっていることに注意!

血液やリンパ液、汗、涙、唾液、尿……。私たちの体は、体液が体重の約6割を占めています。体液には体温をコントロールする役割のほか、栄養素や酸素を運び込んだり、老廃物を排出したりする働きがあり、体を正常に維持してくれる体液が失われることを「脱水症」と言います。

体液は常に入れ替わりながら、一定の量を保っています。1日に必要とされる水分量(mL)は、体重に40をかけた数字。体重が50kgの人なら約2000mLの水分が必要になり、だいたい飲料水から1000mL、食事から1000mL摂取し、同量の水分が体から出ていっていると考えればよいでしょう。

しかし加齢とともに、人は食事量が少なくなりがち。これは、知らず知らずのうちに水分摂取が減ってしまうことを意味しています。さらに、のどの渇きを感じる口渇中枢という脳内のセンサーも鈍るので、渇きを感じにくくなっていることにも注意が必要です。

【チェックリスト】

それ、脱水症のサインかも!?

□ 手足が冷たい

□ 集中力が続かない

□ 二日酔いのように、吐き気があったり食欲がなかったりする

□ 手に力が入らない

□ 37度くらいの微熱がある

□ 舌が乾いている

□ 寝ているときに足がつる

□ 日中、6時間以上

□ トイレに行かない

□ 体中が痛くなる

□ 経口補水液を飲んで「甘い」「おいしい」と感じる

頑なに冷房を拒否する高齢者の危険性

そもそも高齢者が脱水症になりやすい要因のひとつに、「暑さを感じにくい」ことが挙げられます。私たちの皮膚にある、「暑さ」と「寒さ」を感じるセンサー。冷感センサーのほうは皮膚の表面近くに多数ありますが、温感センサーはもともと数がそう多くありません。

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年齢とともにどちらのセンサーも減っていき、最後は冷感センサーだけが残るため、暑さに対する感覚が鈍ってしまうのです。頑なに冷房を拒否する高齢者がいますが、実際の室温や外気温を感じ取れていない場合もあるので、非常に危険と言えるでしょう。

加えて、コロナ禍は脱水傾向に拍車をかけています。ひとつは、外出先でマスクを外せないため、水分補給を怠りがちになること。2つ目は、マスクをしているとのどが渇いた感覚を持ちづらい、ということ。マスクの中はスチームサウナで息をしているような状態。実際は渇いているのに、自分の呼気を吸って潤っていると錯覚を起こしやすいのです。3つ目は、長く続く自粛生活で、体内で最も水分をためておける筋肉量が減っていること。以上の理由から、コロナ下での生活では多くの人が脱水症に陥りやすいと言えるのです。

特に命にかかわるのは、脳梗塞や心筋梗塞

脱水症の症状は、脳、胃腸、筋肉に表れます。この3つは特に水分を必要としている臓器で、不足すると体は正常に機能しなくなります。たとえば夏バテで消化機能が低下すると、頭痛や倦怠感、食欲低下などを起こしがちですが、これも脱水症が原因のことが多い。熱中症の初期症状のひとつも脱水症です。脱水によって汗がかけなくなり、体に熱がこもって熱中症を引き起こします。

脱水状態になると脳の血流が不足し、めまいや立ちくらみ、ふらつきなどの症状が表れますので、転倒して骨折し、寝たきりになるケースも。特に命にかかわるのは、脳梗塞や心筋梗塞です。

体液が減り、血液がドロドロの状態になると、血管を詰まらせる血栓ができやすくなります。脳梗塞や心筋梗塞は、急激な温度差で血管が収縮する冬場に起こりやすいと思われがちですが、脱水が引き金となる夏にも多いことは、実はあまり知られていません。

ひとたび脳梗塞を起こすと、最悪の場合は命を落としますし、脳に血液がいかない時間が長ければ麻痺が残ったり目が見えなくなったり、後遺症がこわい病気です。

たかが脱水、と思われるかもしれませんが、このように多くの危険と隣り合わせ。水分補給を怠っただけでその後の人生が大きく変わる可能性があることを、まずは理解していただければと思います。

わきの下とおでこが乾いていたら要注意

では脱水症に気づくにはどうすればよいか。先ほどご説明した諸症状のほか、ぼーっとして集中力がない、食欲の低下、手に力が入らず、いつも使っているコップが持てない、37度くらいの微熱がある……なども脱水症のサインです。

体重の減少も、脱水に気づく重要なポイント。1週間以内に4%以上の体重減少が認められたら、医師は脱水症を疑います。体重が50kgの人なら、よほど過激なダイエットでもしない限り、週に2kgも減ることはありません。サウナで汗をかくと一時的に体重は減りますが、せいぜい1~2%程度。それも、水分補給をすればすぐに戻ります。いつも通りの生活で4%も減ったら、異常の証です。

汗をかいているかどうかもチェックしてみましょう。汗をかく機能は加齢とともに低下。人は最終的に、わきの下とおでこしか汗をかかなくなります。暑い夏にわきの下とおでこが乾いていたら、それだけで脱水を疑ったほうがいいでしょう。

また、朝起きて持病の腰痛やひざ痛が悪化していたら、これも脱水が影響している可能性があります。脱水状態になると全身の血流が減りますが、人間の体は、痛みを感じる脳の中枢の血流だけは最後まで残るようにできています。そのため、痛みの感覚が過敏になるのです。

グルコサミンを飲むより1杯の水を飲むほうが、痛みに対して効果的なことも(笑)。ちょっと触れただけで痛がったら、脱水症を疑ってみてもいいかもしれません。

脱水状態がひどい場合、まずは経口補水液を飲むのが理想的です。経口補水液には塩などの電解質が特定の配合で含まれており、点滴と同じ速度で体に入っていきます。身近になければ、水やスポーツドリンクでもいいでしょう。

自力で水が飲めない状態なら、医療機関で点滴をする必要があります。意識がはっきりしない、うわごとを言いだした、というときはすぐに救急車を呼びましょう。

一度に摂取する水分量は、コップ1杯でOK

脱水症の予防策は、筋肉量を維持するために体を動かし、筋肉のもとになるタンパク質を多く含んだ食事を3食しっかり食べ、こまめに水分補給する、これだけです。「筋肉量を増やす」というと、筋トレをしたほうがいいのか、と思われるかもしれませんが、その必要はありません。ただ家の中を歩くだけで筋肉量は維持できます。自粛生活であっても、座っている時間を極力減らせばいいのです。

加齢で筋肉量が減るのは、単純に歩く量が減り、体で最も筋肉量が多い下半身が衰えてくるから。仕事でもスポーツや趣味でも、用事をつくって歩きましょう。毎日、スーパーに買い物に行くだけでも、十分な運動になります。

水分補給の際、一度に摂取する水分量は、コップ1杯程度でOK。一度にたくさんの水を飲むより、回数を多くするほうが、水分が体に残ります。デスクワークをしている方なら30分に1回、外出中や運動しているときは10分に1回くらいのつもりで。頻繁に摂れるなら、一度の量はお猪口1杯分でも十分。ペットボトルを持ち歩き、少しずつ飲むのが理想的でしょう。よくカフェインが入っているものは避けたほうがよいか聞かれますが、アルコール以外の水分であれば、お茶でもコーヒーでも、飲みやすい温度の飲料を摂取していただいてけっこうです。

【体調にあった飲料の選び方】

飲んでも飲まなくてもトイレには起きる

トイレが近くなるからと、夜間の水分を控える方がいらっしゃいますが、高齢者の場合、これは非常に危険です。ペットボトルを枕元に置き、寝る前とトイレに起きたときには水分を摂る習慣をつけるようにしてください。

水分補給せずに、就寝中に汗をかいて6~7時間も水分が失われ続ければ、脱水状態になることも。実際、脳梗塞や心筋梗塞を起こした人が救急車で運ばれる時間帯は、朝4時から10時に集中しています。夜間の脱水がいかに危険か、わかっていただけるでしょう。

夜間に尿意で起きてしまうのは、水分を摂りすぎるせいではありません。加齢で膀胱が硬く、広がりにくくなっているため、少ししか尿がたまっていないのに尿意を感じてしまうからです。寝る前に水分を摂っても摂らなくても、トイレには行きますから、試しに「飲んでも変わらない」ことを実感してみるといいでしょう。

脱水を放置すれば命にかかわる一方、ただ水を飲むだけで脱水は防ぐことが可能。「水は魔法の薬」と思って、積極的に摂取する習慣をつけてほしいと願っています。

脳の熱中症に注意!暑さ、ストレス、考えごと…働き過ぎると脳は熱くなる【医師解説】


 ワクチンの接種はもう始まっているというのに、ほとんどの人が今夏もマスクの下を汗だくにして過ごさなければならない。熱中症も危険だが、実はもっとおそろしいのは、脳が熱中症になることだと、専門医は警鐘を鳴らす。

 熱中症の疑いがあるときは、わきの下や首など、太い血管のある場所を冷やすといいといわれるが、それだけでは安心できない。実は、最もおそろしいのは、脳が熱中症になることなのだ。


 東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんは、脳の温度が上がることは、体の熱中症以上に命にかかわると話す。


「体中のすべての器官は、使えば使うほど血流が上がって熱を持ちます。その中でも、脳は最も血流が激しく、最も発熱しやすい器官です。パソコンやスマホを長時間使っていると熱くなるように、頭を使いすぎると、頭の中、すなわち脳が熱くなるのです」


 TH東洋総合治療センター代表の外山仁さんは、今年の夏はさらにこの「頭部内熱(脳の熱)」で不調を抱える人が増えるのではないかと話す。


「脳の熱は、夏の暑さはもちろん、ストレスによっても上がります。緊急事態宣言が発出され、人々は真夏の暑さの中、これまで以上のストレスを抱えて過ごすことになる。さまざまな悩みに頭を使いすぎて、脳が“オーバーヒート”を起こしやすくなるでしょう」


まるでブラック企業! あなたの脳も働きすぎ

 そもそも、脳が熱を持つとはどういうことか。

「頭にくる」「頭に血がのぼる」といった言葉のあやではない。実際に、脳は常に熱をつくり続けており、その熱をうまく冷ませなくなることこそが問題なのだ。


 脳は、全身の器官が安定して機能するよう、休みなく指令を出し続けている。脳の細胞が活動するのに不可欠なエネルギーは、主に酸素とブドウ糖からつくられる。


「脳は、常に大量の酸素を燃焼して細胞のエネルギーをつくっています。脳がエネルギーをつくるとき、副産物として『熱』と『活性酸素』が生まれる。これが、脳が熱くなる原因です。


鼻や口から吸い込んだ酸素のうち、1~2%が活性酸素になる。活性酸素は体内に侵入したウイルスを分解するなど、よい働きもしますが、それと同時に、ウイルスだけでなく、自分の体の中の正常な細胞まで、見境なく攻撃するのです」(梶本さん・以下同)


 活性酸素は、細胞を酸化させて、炎症を起こす。老化を早める物質としても知られ、ストレスや紫外線、喫煙などによっても発生する。


脳が過活動になり、過剰な活性酸素によって細胞に炎症が起きると、傷ついた細胞の働きが悪くなるため、全身のパフォーマンスが低下する。さらに、自律神経の乱れも招くという。


「自律神経の中枢である『視床下部』は、鼻の奥、鼻腔の上にあります。脳から体の各器官への指令は、視床下部から末梢に向かう交感神経および副交感神経(いずれも自律神経)によって届けられる。


 自律神経は、心拍、血圧、呼吸、血液循環、消化吸収、発汗、睡眠と覚醒など、生きるために不可欠なすべての活動を24時間365日、休まず管理しています。


ただでさえ働きづめなのに、全身の機能が低下していると、脳は生命維持のために“もっと全身の細胞や臓器を働かせろ”と、自律神経に指令を出します。


 そうして自律神経の中枢が疲弊すると、さらに熱と活性酸素が生まれ、どんどん脳に熱がたまっていくのです」

脳が働きすぎることで熱くなる仕組み図解
暑さやストレス、考えごと、スマホやパソコンなど脳にはたくさんの負荷がかかっている

 脳は文字通り、酸素を燃料にして、休まず働き続けているのだ。

「日本人は、『思考起因の頭部内熱』を抱える人が多い。つまり、あれこれ考えすぎて、脳に熱がたまるのです。


スマホやパソコンを使っているときは、たとえゲームやSNSで遊んでいるつもりでも、脳は画面からの刺激を受けながら、膨大な量の情報を処理するという“仕事”をこなしている。


また、長時間画面にくぎづけになっていると、無意識に呼吸が浅くなっていることが多い。これでは脳の燃料である酸素が不足し、脳が充分に働かなくなります」(外山さん・以下同)


 外山さんによれば、頭部内熱には、感情に起因するものもある。

「緊張状態になると呼吸がうまくできなくなるのと同じように、人間関係や仕事、家庭のストレスが続くと、充分な呼吸ができず、酸素不足に陥る。ストレスは自律神経の乱れも招くので、脳にとっては2倍のダメージです」


 例年通りの猛暑にコロナ禍のストレスが加わり、天候不順に東京五輪強行…今年の夏は、脳にとっては過去最悪の環境になるかもしれない。


教えてくれた人

梶本修身(おさみ)さん/東京疲労・睡眠クリニック院長
外山(とやま)仁さん/TH東洋総合治療センター代表

※女性セブン2021年7月29・8月5日
https://josei7.com/

家でも熱中症の危険性あり。かかってしまったときの真っ先の対処法


気温が高い夏に気をつけたいのが熱中症。最近では炎天下だけでなく、家の中にいても熱中症にかかり重症化するケースも増えています。いざというとき慌てないための対処法を、医師の十河(そごう)剛先生に教えてもらいました。クイズ形式でご紹介します。

正しい熱中症対策って?(※写真はイメージです)

<熱中症対処法クイズ>こんなとき、どうしたらいいの?
熱中症ってどんな症状が出るの? どう対処したらいいの? いざというときのためにも、きちんと覚えておきましょう!

Q1:熱中症にかかったとき、どこを冷やすといい?
A 額 B 首や脇の下 C 手足

答え:B 首や脇の下
首や脇の下、さらに足のつけ根など、太い動脈が流れる場所を保冷剤などで冷やすのが効果的です。冷たいものがなければ、自動販売機で冷えたペットボトルや缶を購入し、タオルで包んで当てましょう。

Q2:熱中症で倒れた人が、自力で水を飲めない場合は?
A 無理やりでも口に入れて飲ませる B 救急車を呼ぶ

答え:B 救急車を呼ぶ
自力で水を飲むことができない、また意識がない熱中症は重症で、救急搬送が必要です。救急車を待っている間に意識が回復して、自力で水分を飲めるようになったら、経口補水液を少しずつ飲ませてください。

Q3:熱中症になると現れる症状は?
A めまい B 筋肉痛・筋肉の硬直 C 頭痛や吐き気

答え:A、B、C めまい、筋肉痛・筋肉の硬直、頭痛や吐き気
引っかけ問題ですみませんが、答えはすべてです。さらに、顔がほてったり、体がぐったりして力が入らない、体温が高くて皮膚を触ると異常に熱いなど、いくつものサインがあるので、きちんと覚えておきましょう。

Q4:熱中症で倒れた人の対処法は?
A うつぶせに寝かせる B 足を高くして寝かせる C 頭を高くして寝かせる

答え:B 足を高くして寝かせる
まず意識を確認し、意識がはっきりしているようなら涼しい場所に移動させ、足を数十cm程度高くして寝かせます。心臓への血流がよくなり、脳の血流を改善する効果が期待できます。意識がない場合は救急搬送を!

●カラダを暑さに慣らすことが重要!夏はしっかり汗をかこう
熱中症に関するクイズ、いかがでしたか? 正しい知識をもつことが、いちばんの対策法だと、十河先生は力説します。その理由は、昨今は、だれもが熱中症にかかるリスクが高まっているからだそう。

「暑さで体温が上昇すると汗が出ます。その汗が蒸発することで熱を外へと逃がし、人間は体温を調節しているのです。ところが、カラダが暑さに慣れていないと、体温調節がうまくいかず、体内に熱がたまり、熱中症を引き起こしやすくなります。どこにいても冷房が完備されている現代は、子どもから大人まで暑さに慣れていない人が多くなっているのです」

カラダを暑さに慣らすためには、日頃から運動を心がけ、夏でも湯船につかるなど、無理のない範囲で汗をかくことが効果的。 「とくに気温が低くても湿度が高かったり、雨のあとの急な晴れ間で暑くなったりすると、熱中症による救急搬送者が急増します。暑さにカラダを慣らしておくことはもちろん、こまめに水分と塩分を補給する習慣をつけて家族の健康を守りましょう」

夏を乗りきるおすすめの服装&グッズ
熱中症対策に必要なのは、カラダの中に熱をためない工夫。日々、気温と湿度をこまめにチェックしながら、服装や持ち物にも気を配りましょう。

●熱中症を防ぐための服選びのポイントをチェック!
<屋外>
外出するときは、体内に熱がこもらない、ゆったりと通気性がいい服がベスト。

・直射日光を遮り、頭部の温度上昇を防ぐ帽子は通気性のいいものに ・インナーは吸汗性や速乾性を重視した素材をチョイス ・スポーツ飲料や冷却グッズ、塩タブレットを忘れずに ・風が入りやすいゆったりしたデザインで熱を逃がして ・ウエストのきつい締めつけはNG。ふんわりしたものに

<屋内>
リラクシングウエアを基本に、エアコンを使用しているときは、逆に冷えすぎにも気をつけて!

・衿や袖口がゆったりしたもので、サラッとした素材を ・ウエストは伸縮性があり、ゆるりと着られるものを

残暑でも油断大敵 突然死も招く“ステルス熱中症”にご用心


「今年の夏は急激に暑くなったうえに、コロナ禍で迎えた2度目の夏。これまで以上に熱中症になるリスクが高まっています」

そう語るのは、熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院・患者支援センター長の谷口英喜先生。

消防庁の発表によると、今年6月1日から8月8日までに熱中症で救急搬送された人は3万4,768人にのぼる。これは昨年同時期間の2万1,995人からじつに1.6倍にも増加している。なぜ今年は熱中症リスクが上がっているのだろうか? 谷口先生が解説する。

「今年は梅雨入りが早く、汗をかいて体内の熱を発散する機会が少ないまま真夏を迎えました。暑さに体が慣れる『暑熱順化』ができず、急激な気温の上昇に体がついていけない人が多くいます。そして1年以上にわたる外出自粛から運動不足になり、筋肉が衰えている人が少なくありません。体の水分の4割を蓄える筋肉の量が減ると、それだけ熱中症のリスクも高まってしまうのです」

熱中症といえば、屋外の蒸し暑い環境で発生する印象が強いが、もっとも多いのは住居で起こるもので、4割以上を占める。

「室内で2時間座っているだけでコップ1杯分の水分が失われています。特に女性は男性よりも筋肉量が少ないため、熱中症のリスクが高い。家にいるから大丈夫と思っていたら、熱中症になって倒れてしまう女性も意外と多いのです」(谷口先生・以下同)

今年は“家の中”で“気づかないうち”に熱中症になっていて不調を抱える人が増えているという。

「頭痛や胃のもたれがあっても、不調を夏バテのせいだと思い、季節が変われば改善するだろうと軽く考えている人がいます。しかし調べてみると、その原因が軽度の熱中症というケースがあるのです」

密かに私たちの体に忍び寄る、いわば“ステルス熱中症”が、この夏は増えているという。夏の疲れと見分けるサインはあるのだろうか?

「症状は脳、消化器、筋肉の3つの臓器に現れます。これらの臓器は水分が多く、熱中症になりかけるといち早くSOSを発します。頭がボーっとする、頭痛がする、眠くなるなど脳の症状、下痢や便秘など消化器の症状、そして痛みやしびれなど筋肉の症状。これらが重なっている場合は、熱中症の初期段階だと考えていいでしょう」

■ステレス熱中症の主な症状とは

次の項目はステルス熱中症によって脳、消化器、筋肉に現れる主な症状だ。当てはまる項目がA、B、Cの分類にまたがる場合は、あなたにもステルス熱中症が忍び寄っている可能性が高い。

【A】脳の症状

□ めまい、立ちくらみがする
□ 集中力の低下を感じる
□ 頭がボーっとしたり、頭痛がある
□ 日中に強い眠気を覚える
□ 寝つきが悪い、夜中に起きてしまう

【B】消化器の症状

□ 食欲がない
□ 胃がもたれる
□ 腹部の不快感がある
□ 便秘や下痢を繰り返す
□ 腹痛や嘔吐することがある

【C】筋肉の症状

□ 体がだるい
□ 足の筋肉が頻繁につる
□ おなかの筋肉がけいれんする
□ 筋肉痛やしびれがある

軽い初期症状と侮ってはいけない。放置していると、命に関わることもあるのだという。

「気づかないうちに体が常に脱水症状になっているため、いずれ重い熱中症を発症する可能性が高くなります。重度の熱中症は生命に関わることも。適切な処置をすることで命を落とすことは防げても、後遺症が残ってしまうことが少なくありません。特に脳へのダメージが大きいと、記憶障害や判断力が鈍ったり意欲が低下したりする高次脳機能障害や、歩行障害などの重い後遺症が懸念されます」

これから先も、平年よりも高い気温が続き、残暑も厳しくなる予報も出ている。ステルス熱中症から自分の体を守るため、くれぐれも油断は禁物だ。

家でも熱中症の危険性あり。かかってしまったときの真っ先の対処法


気温が高い夏に気をつけたいのが熱中症。最近では炎天下だけでなく、家の中にいても熱中症にかかり重症化するケースも増えています。いざというとき慌てないための対処法を、医師の十河(そごう)剛先生に教えてもらいました。クイズ形式でご紹介します。

正しい熱中症対策って?(※写真はイメージです)

<熱中症対処法クイズ>こんなとき、どうしたらいいの?
熱中症ってどんな症状が出るの? どう対処したらいいの? いざというときのためにも、きちんと覚えておきましょう!

Q1:熱中症にかかったとき、どこを冷やすといい?
A 額 B 首や脇の下 C 手足

答え:B 首や脇の下
首や脇の下、さらに足のつけ根など、太い動脈が流れる場所を保冷剤などで冷やすのが効果的です。冷たいものがなければ、自動販売機で冷えたペットボトルや缶を購入し、タオルで包んで当てましょう。

Q2:熱中症で倒れた人が、自力で水を飲めない場合は?
A 無理やりでも口に入れて飲ませる B 救急車を呼ぶ

答え:B 救急車を呼ぶ
自力で水を飲むことができない、また意識がない熱中症は重症で、救急搬送が必要です。救急車を待っている間に意識が回復して、自力で水分を飲めるようになったら、経口補水液を少しずつ飲ませてください。

Q3:熱中症になると現れる症状は?
A めまい B 筋肉痛・筋肉の硬直 C 頭痛や吐き気

答え:A、B、C めまい、筋肉痛・筋肉の硬直、頭痛や吐き気
引っかけ問題ですみませんが、答えはすべてです。さらに、顔がほてったり、体がぐったりして力が入らない、体温が高くて皮膚を触ると異常に熱いなど、いくつものサインがあるので、きちんと覚えておきましょう。

Q4:熱中症で倒れた人の対処法は?
A うつぶせに寝かせる B 足を高くして寝かせる C 頭を高くして寝かせる

答え:B 足を高くして寝かせる
まず意識を確認し、意識がはっきりしているようなら涼しい場所に移動させ、足を数十cm程度高くして寝かせます。心臓への血流がよくなり、脳の血流を改善する効果が期待できます。意識がない場合は救急搬送を!

●カラダを暑さに慣らすことが重要!夏はしっかり汗をかこう
熱中症に関するクイズ、いかがでしたか? 正しい知識をもつことが、いちばんの対策法だと、十河先生は力説します。その理由は、昨今は、だれもが熱中症にかかるリスクが高まっているからだそう。

「暑さで体温が上昇すると汗が出ます。その汗が蒸発することで熱を外へと逃がし、人間は体温を調節しているのです。ところが、カラダが暑さに慣れていないと、体温調節がうまくいかず、体内に熱がたまり、熱中症を引き起こしやすくなります。どこにいても冷房が完備されている現代は、子どもから大人まで暑さに慣れていない人が多くなっているのです」

カラダを暑さに慣らすためには、日頃から運動を心がけ、夏でも湯船につかるなど、無理のない範囲で汗をかくことが効果的。 「とくに気温が低くても湿度が高かったり、雨のあとの急な晴れ間で暑くなったりすると、熱中症による救急搬送者が急増します。暑さにカラダを慣らしておくことはもちろん、こまめに水分と塩分を補給する習慣をつけて家族の健康を守りましょう」

夏を乗りきるおすすめの服装&グッズ
熱中症対策に必要なのは、カラダの中に熱をためない工夫。日々、気温と湿度をこまめにチェックしながら、服装や持ち物にも気を配りましょう。

●熱中症を防ぐための服選びのポイントをチェック!
<屋外>
外出するときは、体内に熱がこもらない、ゆったりと通気性がいい服がベスト。

・直射日光を遮り、頭部の温度上昇を防ぐ帽子は通気性のいいものに ・インナーは吸汗性や速乾性を重視した素材をチョイス ・スポーツ飲料や冷却グッズ、塩タブレットを忘れずに ・風が入りやすいゆったりしたデザインで熱を逃がして ・ウエストのきつい締めつけはNG。ふんわりしたものに

<屋内>
リラクシングウエアを基本に、エアコンを使用しているときは、逆に冷えすぎにも気をつけて!

・衿や袖口がゆったりしたもので、サラッとした素材を ・ウエストは伸縮性があり、ゆるりと着られるものを

夏は"太陽が力を奪う季節"|夏バテしないためにできる5つのこと【アーユルヴェーダに学ぶ】


  • アーユルヴェーダの古典書で“太陽が力を奪う季節”と表現される季節、それが夏です。太陽はあらゆる生命にとって不可欠なものであり、人間にとっても心身への様々な働きをサポートしてくれていますが、夏の太陽はとても強く、付き合い方が肝心です。

    太陽に奪われてしまう“力”を考えてみると、体力、消化力、抵抗力という3つの力が挙げられます。そして、この3つの力は、いつもセットでアップダウンすると考えられています。

    引き続き、主な夏の不調も上げてみましょう。食欲不振、やる気が出ない、睡眠不足といったところでしょうか。食事が美味しく食べられないことによって、やる気が出てこないのかもしれませんし、睡眠不足だからこそやる気が出なかったり、食事も美味しく食べられなかったりするのかもしれません。どうやらこれらの不調は相互関係があり、負の連鎖になっているようにも思えます。

    ここで、消化力が低下することによって現れる代表的な不調を見てみましょう。食欲不振、排泄困難、頭痛、肌荒れ、倦怠感、やる気がでない、無関心、寝つきが悪い、眠りが浅い、悪い夢を見るなどです。ズバリ!バテは、消化力が低下することによって現れるのです。

    今年こそ夏バテしないよう、早速始められる消化力ケアについて、5つのポイントを紹介します。

    1.空腹感を思い出しましょう

    空腹感は最高の調味料です。前の食事の消化が終わっていないうちに、次の食事を始めないように。間食を控えましょう。

    2.腹八分目を心がけましょう

    食べ過ぎは消化機能に負担を与え、その後の活動にも悪影響が出る可能性もあります。食事を始める前に、どのくらい食べられそうか、この食事を食べた後にはどんな感覚になりそうなのかを想像してみるのもおすすめです。

    3.食べる環境を整えましょう

    食事を取るのにふさわしい環境を整えます。早すぎず、遅すぎず、ながら食べではなく、五感を楽しませながら、季節の食材を美味しくいただきましょう。食べる環境が良いと、腹八分目もわかりやすくなります。

    4.食後の過ごし方を見直しましょう

    一食が消化されるには3時間程度かかり、食後の運動、入浴、睡眠は消化の妨げになります。特に夕食後、消化されないうちに寝ると消化不良の不快感が元で、悪い夢を見たり、途中で起きてしまったりと、睡眠不足になりかねません。

    5.日常的に運動をしましょう

    体力の半分程度の運動(発汗、適度に心拍数が上がる、運動後には喉が渇くことを目安に)を日頃から続けていると、体力、消化力、抵抗力の3つの力をUPすることができます。やり過ぎや嫌々やっては疲労になってしまうので、充足感や達成感を味わえるように、その日の体調にふさわしい程度を調節しましょう。

    HIKARU

    アンダーザライト ヨガスクール リードトレーナー、全米ヨガアライアンスE-RYT500、YACEP認定講師、シヴァナンダヨガ正式指導者。アーユルヴェーダ・ヒーリングコンサルタント(日本アーユルヴェーダスクール認定)、Ayurvedic Medicine Practitioner(米国補完医療大学発行)など各資格を取得。AyuSya(アーユシュヤ)にて、ヨガとアーユルヴェーダの叡智を統合させたセルフケアの方法を提供する。著書に「やさしいヨガ」「HIKARUの楽しいヨガ」「はじめての楽しいヨガ」「はじめてのアーユルヴェーダ」(主婦の友社) www.ayusya.jp

筋肉量が減ると「熱中症」リスクが高まる、本当? コロナ禍での対策は?


 東京都に4度目の緊急事態宣言が出ることが決まりましたが、コロナ禍で2度目の夏を迎えることになり、猛暑の中のマスク生活で「熱中症」も心配になります。ただ、コロナ禍ならではの熱中症の危険要素はマスクだけではないようです。

外出自粛や在宅勤務による運動不足などで、筋肉量が減ることも、熱中症の危険性を高めるとの情報があります。なぜ、筋肉と熱中症が関係するのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

筋肉中の水分量は多い
Q.まず、熱中症の原因と主な症状について、改めて教えてください。

市原さん「熱中症は暑い環境下にいることで熱が体の中にこもり、さらに脱水によって、汗による熱の放散が十分できないために起こります。熱中症の症状は軽いものから重度のものまでさまざまです。

軽症であれば、目まいや立ちくらみ、大量の発汗、こむら返り、筋肉痛などが起きます。中等症の場合は頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感などの症状もみられ、重症になると、意識障害やけいれん、40度以上の発熱などの症状があります」

Q.「筋肉量が減っていると熱中症の危険性が高まる」といわれます。筋肉と熱中症の関係を教えてください。

市原さん「脱水状態になると、まず、血管内の血液量が減少し、それを補うために細胞から水分が血管内に移動します。成人では水分が体重の約60%を占めていますが、筋肉の中の水分量は75%と特に高いのです。従って、筋肉量が少ないと水分の貯蓄が少なくなり、脱水が進行しやすくなるといえます。

自粛生活や在宅勤務の影響で運動量が減ってしまっている人は、筋肉の量が減っている可能性があります。そうすると、体内の水分の貯蓄も減っていて、熱中症のリスクが上昇していることが考えられるでしょう」

Q.筋肉量の減少による熱中症リスクを低くするためには、どうすればよいでしょうか。

市原さん「自粛生活などの影響で運動量が減っている人が多いと思います。自宅でもできる運動もあります。有酸素運動や筋肉トレーニングを定期的にして、筋肉量を維持しましょう。既に筋肉量が減少している人は本格的な夏に向けて、無理のない範囲で筋肉量を増やすことを意識しましょう。筋肉量の回復や維持によって、体内の水分量も保たれ、熱中症のリスクを低くすることができます」

Q.マスクによる熱中症のリスク上昇についても、理由を教えてください。

市原さん「マスクを着けていると口内の湿度が保たれるため、喉の渇きに気付きにくくなります。また、水分摂取の際にマスクを外す必要があるため、水分摂取のタイミングが減ることもあります。それらの理由から、脱水状態に陥りやすくなるので注意が必要です。また、マスクによって体感温度が上がり、体への負担が増えることも熱中症の一因となります」

Q.マスク生活による熱中症を避けるために気を付けるべき点は。

市原さん「マスクをしていると喉の渇きに気付きにくかったり、水分摂取が面倒になったりすることがありますが、意識して、小まめな水分摂取を心掛けましょう。暑い環境下に長時間いることは避け、少しでも体の異変を感じたら、早めに涼しい場所に移動し、水分を摂取して休みましょう」

Q.筋肉量、マスクのほかに、コロナ禍での熱中症について注意すべきことを教えてください。

市原さん「新型コロナウイルスの感染防止のためには換気が大切ですが、暑い日に換気をしていると、エアコンの効果が弱まってしまうことも考えられます。換気をしつつ、室内の温度は一定に保てるよう、エアコンの設定や空気の流れなどを工夫することが大切です。

また、屋内で過ごす時間が長く、暑さに体が慣れていない人も多いと思います。例年、梅雨明けに熱中症が急増するのは体がまだ、夏の暑さに慣れていないためです。今年は特に懸念されます。

『暑熱順化』といって、暑さにさらされると皮膚の血管が広がりやすくなり、効率よく汗をかけるようになるので、今年は例年以上に、適度な運動や入浴で汗をかく習慣をつけましょう。体温を適切に調整できるようになり、熱中症の予防につながります」

冬瓜は9割が水分で熱中症予防に最適 抗酸化作用もあり【時間栄養学と旬の食材】


【時間栄養学と旬の食材】冬瓜

冬瓜(とうがん)は漢字からは想像しづらいですが、夏野菜です。保存能力がとても高い野菜で、冬まで長持ちして食べられることからその名が付いたといわれています。丸のまま温度13~15度、湿度70~75%くらいに保てる冷暗所であれば6カ月以上、冷蔵庫の場合はキッチンペーパーとラップで包んで野菜室で約1~3カ月保存することができます。

スーパーなどでカットして販売される冬瓜や、余った冬瓜を保存する際は、空気に触れると腐敗しやすいワタを取って冷蔵庫で保存すれば5日程度持ちます。クセもなく、どんな料理にも合わせやすい食材です。

そんな冬瓜に含まれる成分の9割は水分です。暑い時季に体を冷やす効果もあるので、熱中症予防や暑い夏を乗り切るために積極的に取り入れたい野菜のひとつです。

また、残りの1割にも大切な栄養素が含まれています。まず、塩分を体外に排出してくれる働きがあるカリウム。冬瓜は100グラム中に200ミリグラムのカリウムが含まれており、成人女性の1日に必要なカリウムの目安量(2000ミリグラム)の約1割となります。

夜は塩分を排泄(はいせつ)するホルモンの働きが高まることも分かっていますので、日頃から高血圧などの理由で薄味でガマンされている方も夕食で減塩を少し緩めることができます。その際、一緒にカリウムを取ることでダブルの高血圧対策ができそうです。

次に、強い抗酸化作用を持ち、活性酸素から体を守ってくれるビタミンCです。冬瓜100グラムには1日に推奨されるビタミンC量(100ミリグラム)の約4割(39ミリグラム)が含まれています。ビタミンC欠乏症で知られる壊血病は、コラーゲンがつくれないために細胞の間の結合が緩むことで起こります。

つまり、ビタミンCが不足してしまうと健康な細胞をつくりづらくなってしまうのです。私たちの体はすべて細胞でできていますので、体全体をつくり上げるためにも、ビタミンCはぜひ取っていただきたい栄養素のひとつといえます。

カリウムやビタミンCは水に溶けやすい栄養素。より効果的に摂取するのであれば長時間の煮込みよりも、サッと火が通る程度にするのがおすすめです。

(古谷彰子/愛国学園短期大学非常勤講師)

約7割の子どもが「隠れ熱中症」を経験 症状を感じた場所は?


 日本コカ・コーラが子どもを持つ親と高齢者を対象に、「水分補給や熱中症対策に関するお悩み実態調査」を発表した。調査によると、高齢者の76.0%、子どもの65.7%が、熱中症の自覚はないが、吐き気やめまい、ふらつきなどを感じる「隠れ熱中症」を経験していることが分かった。

 隠れ熱中症経験者に、症状を感じた場所を聞いたところ、子どもは「運動場や校庭」(36.0%)が1位、2位は「自宅」(26.8%)、3位は「校舎内」(18.3%)だった。高齢者は1位が「自宅」(48.7%)、2位が「道端」(13.9%)、3位は「スポーツジム」(4.4%)という結果となった。熱中症は日中の屋外というイメージが強いが、室内での発症が多いことが分かる。

 熱中症対策のトップ3は共通して「定期的な水分摂取」「夏は冷房をつける」「帽子をかぶる」だった。水分不足に陥りやすい「起床時」と「睡眠時」の水分補給については、起きてすぐに水分補給する子どもが20.7%、高齢者は44.2%だった。就寝時に枕元に飲料を置く割合は、子どもが12.8%、高齢者が19.2%と約1割が置くと回答した。

 厚生労働省は、1日2.5リットルの水分摂取が好ましいと発表している。1日の水分摂取量を尋ねたところ、子どもは平均1.4リットル、高齢者は1.8リットル。目標の水分量には達していないことが分かる。

 慢性的な水分不足が、日中の熱中症や隠れ熱中症を引き起こしていると考えられる。

 健康機器の製造販売を行うタニタは6月に東京都豊島区と共同で、熱中症予防対策を推進していくと発表した。また、健康商品の開発、販売するHEATVANCEが、熱中症リスクを検知するウェアラブルデバイス「カナリア」を発売した。3カ月使い切りになっており、期間中は充電も通信も不要だという。

 調査は4月27~28日にインターネットで実施。小学生・中学生・高校生の子どもを持つ30~40代の保護者516人と、65~75歳の高齢者208人を対象とした。

約7割の子どもが「隠れ熱中症」を経験 症状を感じた場所は?


 日本コカ・コーラが子どもを持つ親と高齢者を対象に、「水分補給や熱中症対策に関するお悩み実態調査」を発表した。調査によると、高齢者の76.0%、子どもの65.7%が、熱中症の自覚はないが、吐き気やめまい、ふらつきなどを感じる「隠れ熱中症」を経験していることが分かった。

 隠れ熱中症経験者に、症状を感じた場所を聞いたところ、子どもは「運動場や校庭」(36.0%)が1位、2位は「自宅」(26.8%)、3位は「校舎内」(18.3%)だった。高齢者は1位が「自宅」(48.7%)、2位が「道端」(13.9%)、3位は「スポーツジム」(4.4%)という結果となった。熱中症は日中の屋外というイメージが強いが、室内での発症が多いことが分かる。

 熱中症対策のトップ3は共通して「定期的な水分摂取」「夏は冷房をつける」「帽子をかぶる」だった。水分不足に陥りやすい「起床時」と「睡眠時」の水分補給については、起きてすぐに水分補給する子どもが20.7%、高齢者は44.2%だった。就寝時に枕元に飲料を置く割合は、子どもが12.8%、高齢者が19.2%と約1割が置くと回答した。

 厚生労働省は、1日2.5リットルの水分摂取が好ましいと発表している。1日の水分摂取量を尋ねたところ、子どもは平均1.4リットル、高齢者は1.8リットル。目標の水分量には達していないことが分かる。

 慢性的な水分不足が、日中の熱中症や隠れ熱中症を引き起こしていると考えられる。

 健康機器の製造販売を行うタニタは6月に東京都豊島区と共同で、熱中症予防対策を推進していくと発表した。また、健康商品の開発、販売するHEATVANCEが、熱中症リスクを検知するウェアラブルデバイス「カナリア」を発売した。3カ月使い切りになっており、期間中は充電も通信も不要だという。

 調査は4月27~28日にインターネットで実施。小学生・中学生・高校生の子どもを持つ30~40代の保護者516人と、65~75歳の高齢者208人を対象とした。

例年以上に熱中症に弱い夏 ~コロナに症状類似、医療現場に混乱~


熱中症 は、古くは江戸時代 からあったことが記録として残っています。近年、地球の温暖化と日本社会の高齢化に伴い、熱中症の患者数は増加しています。熱中症は、脱水症と異常高体温の二つにより起こります。

 ◇重い熱中症はコロナ症状に類似

 熱中症を知るには、まずは脱水症を知ることです。脱水症は、微熱、喉の渇きや倦怠(けんたい)感に加え、主に脳神経の異常(集中力低下、眠気、頭痛など)、消化器の異常(食欲不振、気持ち悪さ、下痢や便秘など)、筋肉・関節の異常(筋肉・関節痛、筋力低下、こむら返りなど)として現れます。

身近な脱水症の症状としては、皆さんなら朝の寝起きや二日酔いなどを想像すると分かりやすいでしょう。  熱中症では、このような脱水症が暑さによって起こります。重篤な熱中症では、脱水症の症状に異常高体温の症状である40度近い発熱、けいれん、意識障害などが加わります。

これらの症状は、実は新型コロナウイルス感染症の症状に非常に類似しています。毎日のように報道されている通り、今、医療現場は新型コロナウイルス感染対策に追われています。  

そんな状況で、新たに熱中症による病院への搬送者および受診者が増加したらどうなるでしょうか。当然、患者数の増加によって現場の医療従事者の負担は増加します。

さらには、熱中症と新型コロナウイルス感染症の症状が類似していることから、現場に混乱が生じます。 実際に、当院でも昨年の熱中症シーズン中では、救急車の搬送がスムーズに進まなかった事例もありました。

このようなことが起こらないように、市民の皆さんには、しっかりと熱中症を予防して、医療現場の負担を少しでも減らしていただきたいと考えます。熱中症は予防効果が大きな病気です。正しい予防策を講じて、市民の手で熱中症を予防していきましょう。

 ◇昨夏は減少

 暑熱順化とは、簡単に表現しますと「暑さに身体が慣れること」です。私たちの身体は、日本の四季に対応してさまざまな順化を繰り返しています。寒い時期には寒冷順化をしています。さて、身体が暑熱順化できていると、暑い環境に置かれたときに次のような反応を起こして体温の上昇を防いでくれます。

汗をかくこと(発汗)により気化熱(打ち水効果)を利用して体温を下げます(図2)。また、皮膚血管を拡張させて(皮膚が赤く火照る現象によって)身体の表面から空気中に熱を逃がす熱放散により体温を下げます(図3)。この反応が鈍ると、つまり暑熱順化が遅れると、身体に熱がこもり、熱中症にかかりやすくなるのです。

 2020年の夏(昨夏)は、新型コロナウイルス感染拡大の中で迎える初めての夏でした。  全国の傾向が消防庁の統計から明らかにされています。2020年6~9月に熱中症で救急搬送された人数は、全国で6万4,869人と19年の同期より2,000人少ない結果になりました。  

また、高齢者の割合が増加した一方、少年(7~18歳未満)の割合は、19年の約3分の2に低下していました。重症度では軽症がやや減り、中等症がやや増加していました。  

これらの結果から、外出自粛により屋外(外出中)で起きる熱中症者数が減ったこと、軽症者は病院受診による感染機会を回避したために受診しなかった可能性があること、などが推察できます。しかし、今夏はどうでしょうか。もちろん暑く長い夏であれば熱中症者数は増えるでしょう。

そして、外出自粛への慣れの影響で、昨年のように自粛が厳格に守られなくなると、屋外での熱中症者数が増えることも危惧されます。

 ◇外出自粛や在宅勤務で筋肉減

 この夏、私たちが例年よりも熱中症 になりやすい環境に置かれていることに注意が必要です。その理由は、外出自粛による筋肉量の減少と暑熱順化(しょねつじゅんか)の遅れです。  私たちの身体にある水分の40%は筋肉に蓄えられています。筋肉量は20歳代をピークに加齢と共に減少してきます。

筋肉量の減少スピードは、女性では1年で0.9%減、男性では1年で0.6%減とされています。筋肉は、身体を動かさないことにより、下半身から減少していきます。

病院に入院している患者さんで調査した結果からは、1日ベッド上で安静にしていると、筋肉量の減少スピードは高齢者では1日に0.5%減、若者でも0.4%減とされています。

男性の加齢による筋肉量の減少量と同等の減少が、1日安静にしていただけで起きてしまうのです。  つまり、外出自粛や在宅でのテレワークにより外出や通勤を控えることで、私たちの筋肉量が減少してしまっていることが予想されます。

筋肉量が減少することで、体内の水分量も減少し、その結果として脱水症、熱中症にかかりやすくなるのです。特に、加齢によって体液量は減少していますので、高齢な方ほど脱水症になりやすいので注意が必要です(図1)。  そして、外出自粛により私たちの身体は暑熱順化ができていない状況にあります。

 ◇早い梅雨入りもリスク

 暑熱順化とは、簡単に表現しますと「暑さに身体が慣れること」です。私たちの身体は、日本の四季に対応してさまざまな順化を繰り返しています。寒い時期には寒冷順化をしています。

さて、身体が暑熱順化できていると、暑い環境に置かれたときに次のような反応を起こして体温の上昇を防いでくれます。汗をかくこと(発汗)により気化熱(打ち水効果)を利用して体温を下げます。

また、皮膚血管を拡張させて(皮膚が赤く火照る現象によって)身体の表面から空気中に熱を逃がす熱放散により体温を下げます。この反応が鈍ると、つまり暑熱順化が遅れると、身体に熱がこもり、熱中症にかかりやすくなるのです。

 例年ですと、私たちは大型連休が明けてから梅雨に入るころまでの暑さの変化に伴い、暑熱順化していきます。しかし、今年のように梅雨の到来が早い場合には、暑熱順化の期間が例年よりも短くなります。今年は、外出自粛と早い梅雨の到来によって、梅雨明けからの暑さに備えた十分な暑熱順化ができていない可能性があります。  

以上のように、今夏は外出自粛に加え、早い梅雨の時期の到来が加わり、私たちの身体は例年以上に熱中症 に弱い状態で夏を迎えることになりそうです。そして、昨夏も言われていましたマスクを常時着用することによる熱中症発症リスクも加わります。熱中症に対する正しい知識を持って、予防と対策に努めていきましょう。(了)

 谷口英喜(たにぐち・ひでき)

麻酔科医師 医学博士  済生会横浜市東部病院 患者支援センター長兼栄養部部長。1991年、福島県立医科大学医学部を卒業。専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。麻酔科認定指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、東京医療保健大学大学院客員教授、「かくれ脱水」委員会副委員長を併任。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ、ラジオに多数出演。年に1冊のペースで、水電解質、経口補療法に関する著書を出版。2021年は6月に「はじめてとりくむ水電解質管理 上下2巻」を発売予定。

風呂場の急死の原因は「冬の熱中症」だった! 年間2万人死亡、最適な入浴時間と温度は?


日本は海外に比べ入浴中の事故死が非常に多い。これまでその原因は「ヒートショック」、つまり急激な温度変化が血圧の乱高下を招き、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすのだと考えられていた。だが、最新の調査から衝撃の事実が判明。思わぬ死因が浮かび上ってきたのだ。

 ***

 寒さが厳しくなると、熱い湯船にゆっくりつかりたくなる。世界を見渡しても、国内のほとんどの家に浴槽が設置され、毎日のように湯をためて入浴する習慣をもつ民族は珍しい。豊富な水資源と温泉が身近にあったことで、日本人は風呂好きになったといわれている。

 しかし、日本は海外と比べて、入浴中に死亡するケースが非常に多い。2018年に自宅で不慮の事故のために死亡した約1万5千件のうち、4割近い5374人が「浴槽における溺死」とされている。

 厚生労働省は2012年、入浴関連の事故について大規模な調査を行い、その結果が昨年、日本内科学会英文誌などに発表された。

 調査は2012年10月から13年3月の間に東京都、山形県、佐賀県で、脱衣所や浴槽、洗い場など入浴に関係した場所から119番を要請した4593件を対象に行われた。そのうち死者は1528人。男女ともに年齢が上がるほど死亡率が高かった。

 この調査対象区域の人口あたりの入浴関連の死亡率から、全国の年間推定死亡者数を計算すると、その数なんと約1万9千人にのぼる。さらにそれを高齢者数が増加している2020年現在の人口にあてはめると、入浴中の急死は2万人を超えていると推計された。

「現場感覚としても、それくらいの数だと思います」

 と語るのは、実際に調査を実施した東京歯科大学市川総合病院教授で、救急科部長の鈴木昌(まさる)医師である。

「入浴できるのは、寝たきりでない自立した状態の方です。高齢者とはいえ比較的健康な人が毎年2万人死亡するのは、1年間に数千人死亡する交通事故よりも、社会的には大きな問題といえます」

 さらに鈴木医師はこうも指摘する。

「海外で溺死というと子供が溺れるケースが多い。しかし日本の場合は圧倒的に高齢者が浴槽の中で死亡しています。30年以上前から問題視されてきたものの、特別な対策はとられてきませんでした。これは入浴中の死亡事故の死亡診断に明確な規定がなく、地域によっては心不全、溺死、異常死などといった状態で統計がとられ、正確な死者数が把握できなかったことや、解剖しても死因がはっきりわからなかったためです」

 これまで死因は、いわゆる「ヒートショック」と考えられ、注意が促されてきた。ヒートショックとは“急激な温度変化に伴う体調不良”を指す造語で、正式な医学用語ではない。暖かい居室から廊下、浴室と室温が下がっていく環境で服を脱ぐと、血管が収縮して血圧が上がる。直後に風呂につかって体が温まると、今度は血管が拡張して血圧が低下する。

 そのような“血圧の乱高下”によって心筋梗塞や脳卒中などが引き起こされるといわれてきた。今でも循環器を専門とする医師を中心に、このような指摘をする専門家が大勢を占める。

 しかしながら、鈴木医師らの大規模調査はそれを覆す結果となったのだ。

■意識障害と脱力感

「私たち救急医療の現場では、入浴中の急死者に遭遇することはあるものの、入浴中の心筋梗塞や脳卒中で運ばれてくる患者さんに出会うことは稀です」(鈴木医師)

 では、その原因は何なのか。

 入浴事故4593件のうち死亡した1528人は、119番コール、すなわち救急車の要請があった時点で心停止であった。発見された場所について、「(脱衣所などの)浴室外」「浴室内」で分けると、1461人が浴室内。それも浴槽の中での死亡が1274人とほとんどを占めた。

 死亡はしなかったが、一人で風呂から出られず救助が必要だった人は935人で、こちらもそのうち854人が浴槽内の事故である。

 鈴木医師らを中心とした調査チームは、入浴事故の「生存者の体にどのようなことが起きていたのか」を調べれば、死因が推測できると考えた。もし心筋梗塞や脳卒中が原因で死亡する人が多いなら、生存者にはその数以上に、そのような病気が起きているはずである。ところが、

「心電図の異常、心筋梗塞の兆候は、1%未満だったのです。頭部のCT検査を行っても、脳出血などの脳卒中は10%未満。ということは、心臓や脳血管の病気によって入浴中にこれだけの死者が発生した可能性は非常に少ない。それでは何が起こったのかというと、助けだされた人の半数以上に“意識障害や脱力感”がみられたのです」(鈴木医師)

 入浴中に救急搬送されてきた患者は、「体温が高い人ほど意識の状態が悪い」こともわかった。そして体温が平熱に下がるに伴って、意識障害が回復していったという。

「そうであれば、入浴という高温の中に身を置くことで体温が上昇し、熱射病、熱失神、あるいは熱疲労などが進行した、すなわち浴槽内で“熱中症”を発症したと考えられるのではないでしょうか。意識障害や脱力感が起こると、浴槽から外に出られなくなってしまいます。そうするとさらに体温が上がる。そのまま誰も助けてくれなかったら、最後には湯の中に沈んで、死に至ってしまうと推察されます。実際に多くの人が顔を湯につけて死亡しているのです」(鈴木医師)

 入浴時間と湯温によって、どの程度体温が上昇するかをシミュレーションした研究がある。長年、住宅と健康について調査研究を続けてきた慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授らが中心となって行ったもので、それによると42度のお湯に10分つかれば、36度だった体温が38度近くまで上がるという。

「42度のお湯に10分つかっていると、汗がだらだら流れますね。汗が流れるというのは、体温が上がっているということ。それも運動によってではなく、周りから温められたために汗が出るのです。私たちは常に熱を産生し、放熱しながら生きています。放熱しすぎれば体温が下がって生命の危機となりますが、放熱ができない状態でも熱中症になって危なくなってしまうのです」(鈴木医師)

 たとえると、高温全身浴は“ゆでたまご”を作る時のように、お湯の中で人の体がゆでられている状態という。お湯の中に入ると、体は放熱できず熱を吸収するのみで、急速に体温は上昇する。そして最終的には湯温よりも体温が高くなるという。

 いわれてみれば夏場は熱中症を避けるため、高温環境にいないように私たちは気をつけている。そして夏は38度程度の高温でない湯につかり、短時間で済ませる人が多いだろう。しかし冬の寒い日は42度~44度に至る高温湯で長風呂をする人も少なくないのではないか。実際に入浴事故は、最低気温の低下とともに増加することもわかっている。

 特に「寒い家に住む人」は“熱い湯に長くつかる”傾向があるのだとか。

「冬に居間14度、脱衣所10度程度の家に住んでいた人が、家の断熱改修工事を行い、それぞれ3度程度室温が上昇(居間17・4度、脱衣所13・6度)すると、熱め・長めの危険入浴をする頻度が明らかに減少することがわかっています」(伊香賀教授)

 WHOは2年前に「冬の室内温度は18度以上にすること」を強く勧告している。全世界の中でも高所得国は、一般市民が一日のうち約7割を自宅などの屋内で過ごすとされ、重度の熱中症や低体温症の多くは自宅で発生している。熱い湯が恋しくならないようにするためには、室内を暖かく保つ工夫が必要なのだ。

■湯温41度で10分以内

 そして何より安全な入浴法を理解しておく必要がある。前出の体温上昇のシミュレーションの研究で、体温を37・5度以下に抑えるための入浴法は「湯温41度以下で10分以内」であることがわかった。これを根拠に、消費者庁も「入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41度以下、湯につかる時間は10分まで」と呼びかけている。

 鈴木医師は「カラスの行水がいい」と話す。

「救急の現場で入浴中に動けなくなったという人は体温38度くらいで運ばれてきて、しばらく経過観察をしていると、体調が良くなって帰宅していきます。でももう少し入浴時間が長いと、おそらく死亡した状態で搬送されてくることになったでしょう。特に高齢者は暑さ・寒さに対する適応力が落ちていますし、入浴中にのぼせた時に浴槽から這い出していく運動機能も落ちていますから、注意が必要です」

 こうしたリスクを知って、入浴回数を減らそうと考える人もいるかもしれない。しかし入浴そのものは健康寿命を伸ばすのにつながる。

 日本温泉気候物理医学会が65歳以上の高齢者約600人を対象に5年間の追跡調査を行ったものを紹介しよう。高齢者を入浴の頻度別にグループ分けして要介護認定者数を調べると、「週7回以上」入浴する群は、「週1~3・5回」や「週4~6回」入浴する群に比べて自立度が1・85倍も高かった。温泉療法専門医で東京都市大学の早坂信哉教授らを中心とした研究でも、1万4千人弱の高齢者を対象に調査したところ、毎日入浴する人はそうでない人より「3年後に要介護になるリスクは29%低かった」という。つまり毎日の入浴習慣があるほうが要介護になりにくいということである。

「いくつかの理由が考えられますが、入浴による“温熱効果”が一番大きいと思います。温かいお湯につかることで血管の拡張が起こり、血液の流れが良くなります。睡眠の質を高めたり、免疫力の向上が期待できるでしょう。また、体が温まることで神経の過敏を抑えることがわかっていて、腰や膝などの痛みが緩和されるという効果もあります。慢性的に体が痛いと動くのが億劫になりますから、痛みがとれることによって動き続けられ、結果的に要介護の予防になると考えられます」(早坂教授)

 また早坂教授が行った別の研究では、「入浴習慣と幸福度」について調べたものがある。静岡県在住で20歳以上の男女3千人へのアンケート結果をもとにデータを解析すると、毎日入浴する習慣のあるグループは、そうでないグループと比べて主観的幸福度の高い人が10%も多かった。

「“毎日入浴”は心身ともに良い影響を与える」

 と、早坂教授は繰り返す。

「海外の習慣であるシャワー浴でなく、湯船につかる浴槽浴であって初めて健康効果が望めます。一度入浴すれば、8時間程度、高めの血圧を下げる作用があるという研究結果もあります」

 早坂教授が推奨する入浴時間も10分。しかもこれは延べ時間で、最初に5分入って途中であがって体を洗い、再度5分入って出るという“分割浴”でもいいそうだ。また基本は肩までつかる「全身浴」がお勧めだが、心臓や肺に疾患がある人や高齢者は体への負荷が減る「半身浴」という手もある。

「時間がない時は足湯でもいいでしょう。体温が0・2~0・3度程度上昇するという研究報告があり、シャワー浴よりは効果が望めます」(早坂教授)

■食事直後は避けて

 また入浴時の熱中症予防には、入浴前後にコップ1杯程度の水分補給をしておくことも欠かせない。

 大塚製薬の研究データでは、41度の風呂に15分間入浴すると、約800ミリリットルの水分が失われると報告されている。体が脱水状態になると熱中症が重症化しやすく、また風呂あがりであっても血液の粘度が高まって血栓ができやすくなる。

 管理栄養士の望月理恵子氏は「白湯か温かい麦茶」を提案する。

「冷たい飲みものですと温まった体の芯が冷えてしまいますので、風呂あがりには常温が適しているでしょう。麦茶は大麦を煎った時に生まれる香り成分のアルキルピラジンに血液の流動性を高める働きがあり、血栓ができるのを防ぐ効果が期待できます」

 牛乳も、脱水を回復させる効果が高いという報告があるため風呂あがりに適している。

 一方で、緑茶などに含まれるカフェインは利尿作用があり、脱水を進めてしまう。また風呂あがりのアルコールはおいしいが、カフェインより強力な利尿作用がある上、血管内の脱水を進めてしまうため、これも避けたほうがいいだろう。そしてやってしまいがちなのが食事直後の入浴。

「特に飲酒後の入浴は血行が良くなりすぎて脈拍数があがり、心臓に負担がかかってしまいます。飲酒をしなくても、食事直後は消化のために血液が消化器系に集まっています。それが入浴で体が温まると全身に血液が拡散してしまい、消化吸収の妨げになってしまいます。入浴による水圧で消化器系を圧迫し、消化不良を起こしたり、吐き気を催す可能性があることからもお勧めできません。食事後1時間ほどしてからか、食事前の入浴がいいと思います」(望月氏)

 言うまでもなくコロナ禍での入浴習慣は清潔を保つ上でも重要で、またいくつかの研究では温かいお湯に一定時間つかることで体内の免疫細胞が増加することがわかっている。

 しかし今回新たに判明したのは、冬場の入浴時の死亡事故の大半が、これまで常識とされていたヒートショックではなく冬の熱中症だったという目からウロコの事実である。入浴は、湯温が高く、また時間が長くなるほど、体に悪影響を与える。

 過ぎたるは、なお及ばざるが如し。健康効果を求めつつ、入浴時の急死リスクを下げるため、「41度以下10分以内」の入浴を習慣にしたい。

笹井恵里子(ささいえりこ)
1978年生まれ。ジャーナリスト。「サンデー毎日」の記者を経て、フリーに。医療や衣食住の生活分野を中心に執筆活動を続ける。著書に『救急車が来なくなる日』『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』など。

マスク生活で“冬の熱中症”増加の危険、救命救急医語る


「今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オフィス内や家の中でも常時マスクをつけている人がたくさんいます。ただでさえ水分補給の回数が減るこれからの時季に、暖房の効いた乾燥した室内で長時間マスクをしていると、“冬の熱中症”ともいわれる『かくれ脱水』になる危険性があるのです」

こう警鐘を鳴らすのは、堺市立総合医療センター救命救急科の医師で、熱中症予防啓発ネットワーク代表の犬飼公一さん。記録的な猛暑となった今夏、マスク着用による熱中症の危険性がたびたび指摘された。いまだに続く“マスク生活”だが、今年の冬は「かくれ脱水」に注意しなければならないという。

「マスクをすると口の中の湿度は保たれるため、口やのどの渇きを感じにくい。そのため、水分補給をする回数が減りやすい傾向にあるのです。しかし、たとえばオフィスなど空気が乾燥している環境にいると、『不感蒸泄』(口や皮膚からの、目に見えない水分の蒸発)が盛んになります。蒸発する水分量は通常で、1キログラムあたり約1日15ミリリットル。体重60キログラムの人の場合、約900ミリリットルの水分が、知らず知らずのうちに失われているのです」

夏であれば、汗で水分が失われたぶん、水分補給をしようという意識が生まれる。しかし、冬場は暖房が効いていても汗をかかない場合が多いので、水分補給の意識づけがないことも脱水が起こる要因だと犬飼さんは続ける。「冬場に『かくれ脱水』で病院に搬送される人は非常に多いです。『かくれ脱水』になると、血液の巡りが悪くなり、脳梗塞、心筋梗塞が起きやすくなるといわれています」

“突然死”にもつながりかねない「冬の熱中症」。とくに、“熱中症弱者”といわれている高齢者たちは気をつけるべきだと、犬飼さんは強く主張する。「高齢者の方々は口の渇きを感じる体内のセンサーが衰えているだけでなく、周囲の温度を感じるセンサーも弱っている。暖房のよく効いた部屋でも、体感として暑さに気づきにくいのです。とくに全身の中でも足は熱に対して鈍感。ずっとこたつに入っていても、あまり熱く感じない。こたつの熱の蓄積と脱水の進行によって、容易に熱中症を発症してしまう恐れがあります」

今年はマスクをつけた状態で、一日中エアコンやストーブがついた部屋で過ごしていることがぐっと増えるため、危険性がさらに高いというーー。

冬に多い“かくれ脱水”を防ぐためには「室内厚着はNG」


寒い時季は、水分補給を忘れがち。でも、そんな冬こそこまめに水分補給する習慣をつけないと「脳梗塞」や「心筋梗塞」など、命に関わる疾病を引き起こす危険もーー!「今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オフィス内や家の中でも常時マスクをつけている人がたくさんいます。ただでさえ水分補給の回数が減るこれからの時季に、暖房の効いた乾燥した室内で長時間マスクをしていると、“冬の熱中症”ともいわれる『かくれ脱水』になる危険性があるのです」

こう警鐘を鳴らすのは、堺市立総合医療センター救命救急科の医師で、熱中症予防啓発ネットワーク代表の犬飼公一さん。記録的な猛暑となった今夏、マスク着用による熱中症の危険性がたびたび指摘された。いまだに続く“マスク生活”だが、今年の冬は「かくれ脱水」に注意しなければならないという。

「マスクをすると口の中の湿度は保たれるため、口やのどの渇きを感じにくい。そのため、水分補給をする回数が減りやすい傾向にあるのです。しかし、たとえばオフィスなど空気が乾燥している環境にいると、『不感蒸泄』(口や皮膚からの、目に見えない水分の蒸発)が盛んになります。蒸発する水分量は通常で、1キログラムあたり約1日15ミリリットル。体重60キログラムの人の場合、約900ミリリットルの水分が、知らず知らずのうちに失われているのです」

夏であれば、汗で水分が失われたぶん、水分補給をしようという意識が生まれる。しかし、冬場は暖房が効いていても汗をかかない場合が多いので、水分補給の意識づけがないことも脱水が起こる要因だと犬飼さんは続ける。「冬場に『かくれ脱水』で病院に搬送される人は非常に多いです。『かくれ脱水』になると、血液の巡りが悪くなり、脳梗塞、心筋梗塞が起きやすくなるといわれています。では、冬のマスク生活で、「かくれ脱水」にならないためにはどうすべきか。犬飼さんにアドバイスしてもらった。

■水分補給はいつもより多く

「理想の水分摂取量は、常温のミネラルウオーター1日1リットルです。春や秋の気候のよいとき、平常時にふだん飲んでいる量に追加して飲んでいただくのがいいと思います。いちばんいいのは白湯ですが、お茶でもいいです。ただし、お茶は利尿作用が働くので、飲みすぎには注意してください。ふだんオフィスで、500ミリリットルのペットボトルを1本飲む人なら、冬場は追加でもう1本飲む感覚で」

■室内温度は24~26度に

「明確なエビデンスはないものの、当ネットワークは、冬場の室温設定について24~26度程度が理想と考えております。その理由は、体表の温度が32度を超えてくると不感蒸泄が増えてくるのですが、上記の温度であれば、手足の温度などは32度を超えることが少ないと推測されるためです。室内が乾燥しないように、加湿器をじょうずに使うことも心がけてください」

■できるだけ厚着をしない

「体温が上がると不感蒸泄の量が増えます。室内では軽めの服装で過ごすようにしましょう」

■筋肉量を落とさない

「今年は外出自粛の生活が長く続いたことから、筋肉量が落ちている人も多いと思われます。筋肉には多くの水分が保持されているので、今年は例年よりも体の水分量が減っていると考えたほうがいいでしょう。つまり、そのぶん『かくれ脱水』になりやすいのです。筋肉量を落とさないためには、ストレッチやウオーキングなど、無理のない範囲での運動を習慣的に行うことが重要です」

また、寒い脱衣所で着替えた後、温かい湯船につかったりするなど、気温の急激な変化によって起こる「ヒートショック」も、熱中症の病態の一部だそう。「冬場でいちばん危険なのが、お風呂やサウナに入るとき。42度のお湯に全身がつかると、10分間で1度体温が上昇するといわれています。仮に30分つかると、体温は40度に達し、熱中症の危険ラインを越えます」 80~90度のサウナの場合、20分で体温が40度を超えるそうだ。

「日中、暖房が効いている室内で、水分を補給せずにマスクをしていると、脱水は進行します。その状態のままで長く風呂に入ると、脱水が急激に進行するため、熱中症になりやすい。湯船で体を温めたい冬だからこそ、くれぐれも水分補給は怠らないようにしてください」冬でも熱中症になるーー。その事実と対策を常に頭に入れて、コロナ禍の冬を過ごそう。

マスク生活で“冬の熱中症”増加の危険、救命救急医語る


「今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オフィス内や家の中でも常時マスクをつけている人がたくさんいます。ただでさえ水分補給の回数が減るこれからの時季に、暖房の効いた乾燥した室内で長時間マスクをしていると、“冬の熱中症”ともいわれる『かくれ脱水』になる危険性があるのです」

こう警鐘を鳴らすのは、堺市立総合医療センター救命救急科の医師で、熱中症予防啓発ネットワーク代表の犬飼公一さん。記録的な猛暑となった今夏、マスク着用による熱中症の危険性がたびたび指摘された。いまだに続く“マスク生活”だが、今年の冬は「かくれ脱水」に注意しなければならないという。

「マスクをすると口の中の湿度は保たれるため、口やのどの渇きを感じにくい。そのため、水分補給をする回数が減りやすい傾向にあるのです。しかし、たとえばオフィスなど空気が乾燥している環境にいると、『不感蒸泄』(口や皮膚からの、目に見えない水分の蒸発)が盛んになります。蒸発する水分量は通常で、1キログラムあたり約1日15ミリリットル。体重60キログラムの人の場合、約900ミリリットルの水分が、知らず知らずのうちに失われているのです」

夏であれば、汗で水分が失われたぶん、水分補給をしようという意識が生まれる。しかし、冬場は暖房が効いていても汗をかかない場合が多いので、水分補給の意識づけがないことも脱水が起こる要因だと犬飼さんは続ける。「冬場に『かくれ脱水』で病院に搬送される人は非常に多いです。『かくれ脱水』になると、血液の巡りが悪くなり、脳梗塞、心筋梗塞が起きやすくなるといわれています」

“突然死”にもつながりかねない「冬の熱中症」。とくに、“熱中症弱者”といわれている高齢者たちは気をつけるべきだと、犬飼さんは強く主張する。「高齢者の方々は口の渇きを感じる体内のセンサーが衰えているだけでなく、周囲の温度を感じるセンサーも弱っている。暖房のよく効いた部屋でも、体感として暑さに気づきにくいのです。とくに全身の中でも足は熱に対して鈍感。ずっとこたつに入っていても、あまり熱く感じない。こたつの熱の蓄積と脱水の進行によって、容易に熱中症を発症してしまう恐れがあります」

今年はマスクをつけた状態で、一日中エアコンやストーブがついた部屋で過ごしていることがぐっと増えるため、危険性がさらに高いというーー。

冬に多い“かくれ脱水”を防ぐためには「室内厚着はNG」


寒い時季は、水分補給を忘れがち。でも、そんな冬こそこまめに水分補給する習慣をつけないと「脳梗塞」や「心筋梗塞」など、命に関わる疾病を引き起こす危険もーー!「今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オフィス内や家の中でも常時マスクをつけている人がたくさんいます。ただでさえ水分補給の回数が減るこれからの時季に、暖房の効いた乾燥した室内で長時間マスクをしていると、“冬の熱中症”ともいわれる『かくれ脱水』になる危険性があるのです」

こう警鐘を鳴らすのは、堺市立総合医療センター救命救急科の医師で、熱中症予防啓発ネットワーク代表の犬飼公一さん。記録的な猛暑となった今夏、マスク着用による熱中症の危険性がたびたび指摘された。いまだに続く“マスク生活”だが、今年の冬は「かくれ脱水」に注意しなければならないという。

「マスクをすると口の中の湿度は保たれるため、口やのどの渇きを感じにくい。そのため、水分補給をする回数が減りやすい傾向にあるのです。しかし、たとえばオフィスなど空気が乾燥している環境にいると、『不感蒸泄』(口や皮膚からの、目に見えない水分の蒸発)が盛んになります。蒸発する水分量は通常で、1キログラムあたり約1日15ミリリットル。体重60キログラムの人の場合、約900ミリリットルの水分が、知らず知らずのうちに失われているのです」

夏であれば、汗で水分が失われたぶん、水分補給をしようという意識が生まれる。しかし、冬場は暖房が効いていても汗をかかない場合が多いので、水分補給の意識づけがないことも脱水が起こる要因だと犬飼さんは続ける。「冬場に『かくれ脱水』で病院に搬送される人は非常に多いです。『かくれ脱水』になると、血液の巡りが悪くなり、脳梗塞、心筋梗塞が起きやすくなるといわれています。では、冬のマスク生活で、「かくれ脱水」にならないためにはどうすべきか。犬飼さんにアドバイスしてもらった。

■水分補給はいつもより多く

「理想の水分摂取量は、常温のミネラルウオーター1日1リットルです。春や秋の気候のよいとき、平常時にふだん飲んでいる量に追加して飲んでいただくのがいいと思います。いちばんいいのは白湯ですが、お茶でもいいです。ただし、お茶は利尿作用が働くので、飲みすぎには注意してください。ふだんオフィスで、500ミリリットルのペットボトルを1本飲む人なら、冬場は追加でもう1本飲む感覚で」

■室内温度は24~26度に

「明確なエビデンスはないものの、当ネットワークは、冬場の室温設定について24~26度程度が理想と考えております。その理由は、体表の温度が32度を超えてくると不感蒸泄が増えてくるのですが、上記の温度であれば、手足の温度などは32度を超えることが少ないと推測されるためです。室内が乾燥しないように、加湿器をじょうずに使うことも心がけてください」

■できるだけ厚着をしない

「体温が上がると不感蒸泄の量が増えます。室内では軽めの服装で過ごすようにしましょう」

■筋肉量を落とさない

「今年は外出自粛の生活が長く続いたことから、筋肉量が落ちている人も多いと思われます。筋肉には多くの水分が保持されているので、今年は例年よりも体の水分量が減っていると考えたほうがいいでしょう。つまり、そのぶん『かくれ脱水』になりやすいのです。筋肉量を落とさないためには、ストレッチやウオーキングなど、無理のない範囲での運動を習慣的に行うことが重要です」

また、寒い脱衣所で着替えた後、温かい湯船につかったりするなど、気温の急激な変化によって起こる「ヒートショック」も、熱中症の病態の一部だそう。「冬場でいちばん危険なのが、お風呂やサウナに入るとき。42度のお湯に全身がつかると、10分間で1度体温が上昇するといわれています。仮に30分つかると、体温は40度に達し、熱中症の危険ラインを越えます」 80~90度のサウナの場合、20分で体温が40度を超えるそうだ。

「日中、暖房が効いている室内で、水分を補給せずにマスクをしていると、脱水は進行します。その状態のままで長く風呂に入ると、脱水が急激に進行するため、熱中症になりやすい。湯船で体を温めたい冬だからこそ、くれぐれも水分補給は怠らないようにしてください」冬でも熱中症になるーー。その事実と対策を常に頭に入れて、コロナ禍の冬を過ごそう。

熱中症や夏バテ対策はもちろん“コロナ疲れ”の予防にも 今年の夏は“鉄分摂取”がカギ


暑さが厳しくなるこの季節に、コロナ禍でマスクを着けていなければいけない今年は、例年以上に熱中症や夏バテへとつながりかねない。 また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、慣れない環境下での仕事から、集中力が続かない、疲れを感じるという人も多く不安や心配にとらわれ「コロナ疲れ」に陥っている人も少なくないはず。  そんな中、最新の調査では「少量の鉄分継続摂取」(1日3.6mgの鉄分を1か月摂取し調査を実施)による疲労回復や心理的ストレス軽減の可能性が明らかにされた。を中心に鉄分の摂取量が不足している。


貧血には鉄分摂取が効果的であるとされる一方、今回の調査結果から少量でも継続的に鉄分を摂取することで疲労回復やストレス低減に効果があることが分かった。  コロナ禍において多くの人が働き方の変化を体験している中、継続的な鉄分摂取により心身の疲労が低減され、仕事のパフォーマンスにも良い効果を得られるかもしれない。


手軽に鉄分を摂取する3つの方法


 熱中症や夏バテの予防対策としては、水分と塩分摂取が知られているが、最新の研究結果では、夏場を想定した疲労には少量でも鉄分の継続摂取に改善効果があることが、スポーツの国際競技力向上に関する支援活動に携わる日本体育大学体育学部の杉田正明教授の研究により明らかになった。さらに、鉄分の継続摂取によって快適な目覚めが得られることが分かった。  


また、鉄分摂取が運動による疲労の改善とともに、日常的な心理的ストレスを軽減することも大妻女子大家政学部の川口美喜子教授による研究で明らかとなった。少量の“鉄分”を1か月継続して摂取することで疲れを改善し、さらに不安や無気力といったネガティブな気分や感情を改善することが明らかになった。  日本は貧血大国といわれており、貧血率は、他国の約45倍ともいわれている。日本人は特に女性

鉄分は体内で吸収されにくい成分であるため、食物で摂る場合には必要量の約10倍の量を摂る必要がある。普段の生活で効率よく鉄分を摂取するには一般的に以下の3つの方法があるとされている。


【鉄分入り飲料】  今年は鉄分入り飲料が続々と登場。熱中症対策には塩分と鉄分が含まれた飲料がぴったり。


【鉄分入り軽食】  毎日飲めるお味噌汁にも、鉄分入りのものが登場。塩分と鉄分が含まれているので、一石二鳥。


【鉄でできた調理器具】  鉄鍋や鉄のフライパンなど鉄でできた調理器具を使うと、調理をしている間に、調理器具から鉄が溶け出すため、鉄の摂取量を増やすことができる。

平熱」なのに「発熱」しかも何度も… いまいち知られていない非接触型体温計の使い方


新型コロナウイルス禍の今、外出先で検温を求められる機会が増えている。商業施設やレジャー施設のスクリーニングで用いられているのが、非接触型体温計やサーモグラフィーだ。先日、記者が医療機関を定期受診した際も非接触型体温計で検温されたが、風邪症状がないのに結果は「37・6度」。何度計り直しても表示される体温は下がらず、ペンシル型体温計で脇の下を計ってようやく「平熱」と判断された。この時に限ったことではなく、同じ体験を何度もしている。なぜ「平熱」なのに「発熱」と計測されてしまうのだろう。医療機器メーカー「オムロンヘルスケア」(京都府向日市)に、非接触型体温計の仕組みと留意点を聞いた。

 非接触型体温計は「皮膚赤外線体温計」といい、皮膚が放出した赤外線を測定して体温に変換する。オムロンヘルスケアが製造する非接触型体温計の場合、額の赤外線を舌下の体温に換算している。赤外線から表面温度を計る非接触型温度計は工業用品の製造現場などで利用されているが、この非接触型温度計を人に使用する場合は皮膚の表面温度しか計測できない。インターネット通販サイトでは、非接触型体温計か非接触型温度計か判別が難しい商品が多数販売されており、オムロンヘルスケアの広報担当者は「非接触型体温計は医療機器ですので、購入する場合はパッケージなどに医療機器認証番号が表記されているか、確認してください」と注意喚起する。

 記者の場合、医療機関のスクリーニングだったため、非接触型温度計が誤って用いられたとは考えにくい。では「発熱」と判断されてしまったのはなぜなのだろうか。

 オムロンヘルスケアの広報担当者によると、額などにかざすだけで検温できる非接触型体温計は大人数を短時間で調べられる一方、使用環境によって計測結果が左右される場合がある。例えば、直射日光を浴びている時は体温が高く測定されやすい。また、汗をかいたり、化粧や日焼け止めを施したりしている時は体温が低く表示されることも。広報担当者は「値はあくまで体温の目安。必要があれば改めて脇の下で計るのが正しい使い方です」と説明する。

 非接触型体温計を全国知事会や内閣府に寄贈したオムロンヘルスケアだが、これまで国内向けにはほとんど販売しておらず、主な販売先はアジア地域や欧米だったという。日本はペンシル型体温計が主流で、需要も小さかったからだ。オムロンヘルスケアの広報担当者は「テレビなどでスクリーニングの様子を見ていて正しい検温がおこなわれていないのではと思うケースもあり、形骸化してしまうのではないかと心配しています。『使用上の注意』を読んで正しく有用に使ってほしいです」と呼び掛けている。

(まいどなニュース/京都新聞・天草 愛理)

熱中症対策にも「手洗い」が有効 コロナの夏はプラス2分のすすぎの勧め


 例年であれば、梅雨明けごろから増え始める「熱中症」。暑さが招く体の不調は今年、少し様子が違う。新型コロナウイルスの影響で外出を控えた“巣ごもり”によって、重症化のリスクも心配されている。気温の上昇だけでなく、湿度の高さにも注意が必要だ。




熱中症は、暑さでめまいや筋肉痛、頭痛、けいれんなどの症状が出る病態をいう。体内の水分や塩分が奪われてしまうことで、脳内にある体温の調整システムに障害が起きるのが原因とされている。

「当院では現在、熱中症で40~90代の5人が入院していて、これは昨年より多い。今年は急にバタンと倒れて搬送されるケースが目立ちます」

 東京曳舟病院(東京都墨田区)で救急医療を専門とする三浦邦久副院長は、状況をこう説明する。巣ごもり熱中症の原因として考えられるのは「体が暑さに慣れていないこと」だという。

「いつもなら、徐々に気温が上がる4~6月に外へ出ることで体が少しずつ暑さに慣れていきます。このことを専門的には“暑熱順化”といいますが、具体的には皮膚の血流が増えて、汗をかきやすい体ができあがるのです」

 汗は、体温を調整する大事な機能の一つで、皮膚から蒸発する際に体にこもった熱も奪い去り、体温を下げてくれる。

 日本生気象学会によると、暑熱順化のためには、夏本番を控えた5~6月の暑い日に、ややキツいと感じる運動を1日30分間、1~4週間ぐらいするとよいという。三浦副院長も「日ごろからウォーキングなどをして、汗をかく習慣が身についていれば、多少の暑さには備えられる」。

 だが今年は事情が違う。新型コロナで外出を控えて暑熱順化ができなかった人が多いとみられる。このため、夏の暑さが身に直接こたえ、熱中症を発症するおそれがある。ずっと家にこもっていた人が外出した際、熱中症が急に重症化するケースが危惧されるという。

 もう一つ、巣ごもり熱中症の原因として「運動不足」を挙げるのが、在宅医療の専門医、たかせクリニック(東京都大田区)の高瀬義昌理事長だ。熱中症につながる“かくれ脱水”の名付け親でもある。

「運動不足と熱中症は一見、関係なさそうに見えますが、実は深いつながりがあります。体内でおおかたの水分とミネラルを貯蔵している場所は、筋肉です。とくに大事なのは、太ももにある大腿四頭筋。ここが運動不足で痩せ細ってしまうと、水分やミネラルをためておけなくなるので、脱水しやすいのです」

 運動の機会が減り、筋肉が落ちていたとしたら、これもまた熱中症の要因になるというのだ。

 巣ごもりとは直接は関係がないものの、マスク着用にも注意が必要だと、三浦副院長は強調する。

「水分を取るためには、いちいちマスクを外さなければならないうえ、マスクで呼吸がこもるので、のどや口があまり乾かない。こうした理由で、水分摂取のタイミングが遅れてしまうことが考えられます」

 厚生労働省も「屋外で人と十分な距離(少なくとも2メートル以上)が確保できる場合には、マスクを外すように」と呼びかけている。

 では、巣ごもり熱中症を防ぐにはどうするか。

 熱中症対策に詳しい中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授は「コロナ禍においても、例年どおりの予防策をしっかりと」と話す。松本教授らがまとめた冊子「日常生活における熱中症予防」(日本生気象学会)などを参考にしたい。同学会のホームページ(※1)からダウンロードできる。

 そのうえで、本誌が紹介したい対策は次の五つだ。

(1)プラス2分手洗い

 感染対策として有効だとされる手洗いの際に、すすぎを「2分」多めに(手首までしっかりと)する。実はこれ、感染症と熱中症の“W対策”にもなると、三浦副院長は勧めている。

「手のひらはラジエーター(熱を放熱する装置)のような機能があるため、体にこもった熱を冷ますには、手のひらを冷やすのが最適。暑い日は1時間に1回程度、このような手洗いをするといいと思います」

(2)ペットボトル予防法

 外出時に冷えたペットボトルを手で持って歩くというもので、(1)のラジエーター機能を利用した対策だ。持ち歩いたペットボトルの水は、のどが渇いたときに飲む。冷却と脱水予防の一石二鳥となる対策だ。

(3)こまめなスクワット

 水分やミネラルを貯蔵しておく、太ももの筋肉を鍛える。気づいたときに10回ずつスクワットを。

(4)具だくさんみそ汁

 体調を整えておくことは、まさに熱中症予防となる。そのためにもしっかりと朝食をとろう。暑くなると、どうしても火を使った料理を避けたくなるが、具だくさんのみそ汁なら、冷蔵庫にある余りものの野菜を切って入れるだけなのでカンタン。しかも、体に必要な塩分や糖分、ビタミン、ミネラルを豊富にとりやすい。

 ちなみに、熱中症予防のための水分摂取について、前出の高瀬理事長はこうアドバイスする。

「食事がしっかりとれていれば、水や麦茶で十分。水分がとれていないときのコーヒーや緑茶は、カフェインが入っていて利尿作用があるのでお勧めできません。夏バテなども加わって食欲がなく、食が細いときは経口補水液を。成分が体に吸収しやすいバランスで含まれているので、飲む際は氷や水で薄めないで」

(5)部屋の温度は28度

 松本教授は、部屋の温度設定の誤解をただす。

「エアコンの設定温度を28度にしても、人がいるところではそれより高くなります。ですので、部屋に温度計を置いて、室温が28度になるようにエアコンを調整してください。とくに高齢者のためには、数字がわかるよう、大きめの温度計にするといいと思います」

 窓からの直射日光を避けるため、遮光カーテンなどを使うことも大切だ。

 コロナ禍で気になるのが換気だが、「一人暮らし、あるいは夫婦2人暮らしで、コロナを外からもらってくるリスクが低ければ、必要ありません」(松本教授)。

 むしろ気にしたいのは湿度で、50~60%に調整を。エアコンの除湿機能が苦手な人には、凍らせたペットボトル2本を扇風機の前に置くという方法(上の写真)がある。ペットボトルの表面に部屋の水分が付着して水滴になることで、除湿効果が期待できる。

 日本気象協会は、今年の夏は厳しい暑さの日が多いと予想する。松本教授は改めて言う。

「環境省の熱中症予防情報サイト(※2)には、熱中症予防の目安になる暑さ指数(WBGT)が載っています。この数値や天気予報をこまめにチェックして、暑い日は外出を控え、庭の草取りや洗車などは延期しましょう」

(本誌・山内リカ)

(※1)http://seikishou.jp/content/files/message/heatstroke.pdf

(※2)https://www.wbgt.env.go.jp/

専門医に聞け! Q&A 猛暑日の熱こもり対策


:屋外での仕事のため、真夏日は全身がだるくなることがあります。また、夜も体がほてって冷めず、寝苦しいことも。とはいっても、寝るときにクーラーを効かせすぎるのも体によくないと思い、ためらわれます。熱中症対策も含めて教えてください。
(38歳・電気工事会社勤務)

A:全身がだるくなるのは、熱中症の初期段階でしょう。夜も体がほてっているのは、体内に熱がこもり、出ていかないからです。かといって、就寝時にクーラーを効かせすぎると、おっしゃる通り、それはそれで体によくありません。

 熱中症の予防には漢方薬を利用するとよいでしょう。いろいろとよいものがあります。

●全身倦怠感に「清暑益気湯」

 代表的なものに「清暑益気湯」があります。暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠感、夏やせに適しています。特に、熱中症になりかけて、全身がだるいときに用いるのがオススメです。

 また、体がなんとなくだるいなどの熱中症の前段階のような状態のときに用いるとよい漢方薬に「麦門冬湯」があります。肺をうるおし、配合されている「人参」が元気をつけてくれます。

 初期からさらに本格的な段階に進んだ場合に適している漢方薬に「白虎加人参湯」があります。

 また、夏の果物のスイカは熱中症予防に役立ちます。体をうるおし、熱を冷まし、熱を尿から出します。スイカは水分も電解質も豊富ですので、熱中症予防にピッタリの食品なのです。

 スイカには「シトルリン」というアミノ酸の一種が含まれています。シトルリンは血流を改善します。この成分は赤い果肉よりも白い部分に多く含まれているので、白い部分も食べたほうがよいのです。ちなみに漢方では皮を煎じて食べます。

 ご質問の方は、熱中症対策食品として、できるだけスイカを食べるようにするとよいでしょう。

 なお、熱中症予防に水ばかり飲むと、電解質のバランスが崩れます。麦門冬湯をミネラルウオーターのペットボトルに入れ、熱中症予防ドリンクとして飲むとよいでしょう。

***************************************
岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師)
東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病等に成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。

栄養とりながら熱中症を防ごう! 誰でも簡単に作れる「自家製スポーツドリンク」


 ちょっと動いただけなのに、滝のように流れ出る汗…。そんな時、スポーツドリンクで水分補給をしている方も多いのではないでしょうか。しかし、市販のスポーツドリンクは添加物や人工甘味料が大量に使われており、生活習慣病のリスクを高めてしまう恐れがあります。

 そこで今回は、家庭で簡単にできる自家製スポーツドリンクをご紹介。実は、水、砂糖、塩さえあれば、誰でも簡単に作れてしまうんですよ。レモンのクエン酸効果をプラスすれば、夏バテ対策もバッチリです!

 ポイントはハチミツを使うこと。体内に素早く吸収&エネルギーに変換されるブドウ糖や果糖が含まれていますので、一般的な砂糖よりも低カロリーです。

 さらに、ミネラルやビタミンも豊富なので、栄養を摂取しながら効率的な水分補給がかなえられるんですよ。

 令和最初の夏。脱水症や熱中症で倒れないために、自家製スポーツドリンクを持ち歩いてみませんか? 「喉が渇く前に少しずつ飲む」のがおすすめですよ。

 【材料】
 水 1リットル
 はちみつ 大さじ4
 塩 小さじ3/4
 レモン汁 大さじ3

 【作り方】
 1 レモンを半分に切り、半分は搾ってレモン汁、半分は輪切りする。
 2 容器にはちみつ、塩、レモン汁を入れ、水を少しずつ入れながら混ぜて溶かし、輪切りレモンを添える。

 ■今坂佳美(いまさか・よしみ) 1975年生まれ、静岡県浜松市在住。料理研究家で珠算指導者。二男一女の母で、ボートレーサー故ガッツ今坂の妻。

多量の水分摂取が起こす危険


脱水症状を防いだり体の乾燥を防ぐなど、水分補給は毎日の生活に必要不可欠。

でも、水を一杯飲むべきだという説を多々聞いてきたものの、実は多過ぎる摂取もまた問題となるのだそう。

ロンドンのホワイトリー・クリニックの創設者で外科医のマーク・ホワイトリー氏らが、多量の水分摂取が起こす危険を説明しています。

<過度の発汗>
多汗症の専門家でもあるホワイトリー氏は、水分の過剰摂取が多汗症につながっているケースが多いと指摘。

同氏の患者の中には、汗の量があまりに酷いため、汗腺手術を考えている人も居るのだとか。

でも、「患者にどの位水分を摂っているかと尋ねると、汗を多くかくので水分補給のためにいっぱい水を飲むと話す。

体内に余分な水がある時は、汗は排出するための手段の一つとなる。

そうした患者に水の大量摂取をやめさせると、発汗量が少なくなることが多い」と説明しています。

<不眠症>
夜遅くに大量の水分を摂ると、睡眠の障害になることも。ホワイトリー氏は、「我々が眠りに落ちる時、脳から抗利尿ホルモン(ADH)が出て腎臓の働きを抑えるため、寝ている間に排尿欲求が出ないようになる。

しかし、ADHの働きを上回る量の水を飲めば当然短時間で起きるような結果となり、その後眠りに落ちるのが難しくなることもある」と話しています。

<死に至るケース>
2008年には、ジャクリン・ヘンソンさんという40歳女性が水分の過剰摂取で死亡するというケースが。ダイエット目的で、数時間のうちに4リットルという大量の水を飲んだことで、「水中毒」という症状になったそう。

英医師フランキー・フィリップス氏は、短時間で多くの水を飲むことで「体内の塩分濃度が低下したことが原因だ。

腎臓が、余剰な水分を排出するのに追いつかず、血液が必要以上に薄まり塩分不足となる」となり、時に命に関わる低ナトリウム血症になるとしています。

では、多すぎても少なすぎてもダメならば、摂取の適量とは?多くの栄養の専門家やトレイナーなどは、1日2リットルの摂取を推奨。

一方、英国営医療事業のNHS(国民保健サービス)は、女性に対して1日当たり1.6リットル、男性には2リットルの摂取を薦めています。

これらの水分は水のみでなく、お茶やコーヒー、ジュースや牛乳、果物から摂るものも含まれます。

ただ、こうした摂取量ももちろん体の大きさや、運動量によって若干変動するもの。

自分の体に十分な水分を維持するためには、まずはのどが渇いた時にはきちんと水分補給をすること。

そして、通常は薄めの麦わら色の尿の色が、濃すぎたら水分不足、逆に色があまり無いほど薄ければ水分の過剰摂取気味だと考えましょう。

命を守る熱中症対策、冷たい水かけるのは窒息の危険あり


 総務省の調べによると、昨年5~9月に熱中症で救急搬送された9万5137人のうち、死亡者数は160人だった。命さえ奪いかねない熱中症に自分や周りの人がかかってしまった時、慌てずに対処できるよう、正しい応急処置と防止策を知っておこう。

「熱中症は重症化すると、脳などに後遺症が残り、死に至ることもある危険な病気です。しかし、正しい対策と応急処置を知っていれば重症化は防げます」

 こう語るのは、熱中症と脱水症対策に詳しい医師の谷口英喜さんだ。そもそも熱中症は、体温が上がることと、体の水分が失われることが原因となって起こる。高温多湿な環境下で体の水分が不足すると、体内にこもった熱を放出できなくなる。すると、体温が上がり、体調に異変が生じるのだ。

 気温だけでなく、湿度が高いことも問題で、そんな中で激しい運動をすると、体温がさらに上がりやすくなり、熱中症になってしまう。湿度が高く、急に気温が上がる梅雨の晴れ間や梅雨明けは、一年の中でも熱中症が多発する時期なので、特に注意が必要だ。「熱中症といっても頭痛・倦怠感・吐き気など、症状は多様。これらはまだ軽症ですが、放っておけば、脳へのダメージによって起こる意識障害やけいれんなどを引き起こします」(谷口さん・以下同)

 熱中症予防にはまず、症状にどんなものがあるのかを知っておくことが大切。そして、自分や周りの人に該当する症状が出たら、呼びかけるかどうかを確認し、返答がなければすぐに救急車を呼ぶ必要がある。

 救急車が来るまでの間に涼しい場所へ移動させ、服をゆるめ、氷のうなどで首・わきの下・太ももの付け根を集中的に冷やす。呼びかけに反応がない場合、無理に水を飲ませないこと。返答がある場合には、涼しい場所で水分を自分で補給できるか確認を。症状が改善したら、安静にして十分な休息をとる。

自分で補給できない場合には、医療機関へ連れていき、付添人が状況を説明するのだ。どちらにしても、症状が出ていて呼びかけに応じられなかったら緊急性が高いと覚えておこう。

 熱中症そのものを防ぐには、屋内だろうと蒸し暑い場所での作業は控えるのがベスト。外出しないといけない場合は、麻や綿など汗の吸水・通気性のよい服を選び、日差しを遮る効果のある長袖を羽織る、帽子をかぶるなどで対策を。そして、日傘や扇子、飲料を持ち歩こう。

「塩分と糖分をバランスよく含んだ経口補水液やスポーツドリンクは、体に素早く水分を吸収させるのに効果的なので、水やお茶ではなく、なるべくこういった飲料を持ち歩きましょう」 なお、頭から水をかけると窒息などの恐れがあるので厳禁。また、介助して水分を摂らせる時は誤嚥に気をつけること。水分はのどが渇く前に、少量ずつこまめに摂るのがおすすめだ。

熱中症対策には日傘が有効、最新機能と選ぶポイントを紹介


今年も暑い夏が到来する。その前に知っておきたいのが、熱中症対策だ。日々の対策には気軽に持ち運べる日傘が有効。日本洋傘振興協議会事務局長の田中正浩さんに、最新機能と選ぶポイントを聞いた。

 ここ10年くらいの間に急速に機能性が進歩したという日傘。遮光やUVカットなどを表示する商品も多くなった。

「昔は光を跳ね返す白や淡色、熱を吸収する黒や濃色など、色の性質による遮光・遮熱でしたが、現在は生地の加工技術が進んで色に関係なく[遮光][遮熱][UVカット]の機能をより高めたものが出てきています。機能性×ファッション性で、選択の幅が広がっています。 また、片手で持ったままワンタッチで開け閉じができる[自動開閉式]、小型で[超軽量]の日傘などは、高齢のかたにおすすめです」

 前出の協議会では傘の機能や品質に基準を設け、会員企業の遮光率99%以上の生地使用の傘に「遮光」マークを添付。99.99%以上を「一級遮光」としている。会員以外のメーカーも独自基準で遮光率を表示している。

「ただし、日傘が遮るのは上からの直射日光のみ。実際の使用場面では路面などからの照り返しもあり、遮光率が高くても熱中症や紫外線を完全に防げるわけではありません。それでも炎天下、日傘で熱や紫外線を除ける効果は絶大。木陰のようなホッとする空気感、日を遮りながら風が抜けるさわやかさは、帽子とはまた違った風情があります」

 この日傘のよさを、ぜひ高齢男性にもすすめたいという。

「今の高齢男性には、世代的にも日傘はハードルが高いようです。でも最近の日傘男子ブームで一度使った人は、皆、その快適さに驚かれます。男性向けや家族で兼用できるデザインも増えていますから、ぜひ使ってみてください」

救急車を呼ぶほどの重症熱中症 病院が行う4つの全身冷却法


 地球温暖化で夏場の「真夏日」(最高気温が30度以上)、「猛暑日」(同35度以上)、「熱帯夜」(最低気温が25度以上の夜)が増えている。熱中症による死亡者数が目立ったのは、2010年の約1700人、13年と15年の約1000人、昨年の約1500人。

 毎年、熱中症の怖さが叫ばれ、対策もとられているが被害者が減らない。なぜか。帝京大学医学部付属病院・高度救命救急センターの三宅康史センター長が言う。

「高齢化でがん患者が増えているのと同じで、熱中症による死亡者の8割以上は65歳以上の高齢者です。温暖化による気象の変化に加えて、社会的背景としても『高齢化』『孤独化』『貧困化』などのリスクファクターが増えているのです」

 東京都監察医務院の15年の集計でも、熱中症死亡のほとんどが屋内で起こっている非労作性熱中症。その65.6%が独居で、90.3%はクーラーを使用していなかったことが報告されている。

 高齢者の非労作性熱中症の場合、暑い日に急激に熱中症を起こすのではなく、連続する猛暑や熱帯夜によって徐々に脱水が進行、体力と食欲を失い、持病の悪化や感染症の併発も相まって発症するのが典型例だ。

 救急車を呼ぶケースは、基本的には意識障害やショック状態を起こした最も重いⅢ度の熱中症のとき。運ばれる医療機関には1次救急、2次救急、救命救急センターなどの3次救急とあるが、患者の状態によって救急隊員が判断する。では、重症熱中症の患者を対象とする3次救急では、どのような治療が行われるのか。

■患者を体ごと冷水に浸すことも

「重症熱中症では、迅速な冷却、確実な体温管理と臓器障害の治療予防を中心とした集中治療が必須となります。冷却法は一般的には『冷水浸漬』や『蒸散法』が行われていますが、近年では新しい冷却デバイスが開発され、保険適用にもなっています。当院では『ジェルパッド循環冷却法』や『血管内冷却法(サーモガード)』なども併用しています」

 冷水浸漬とは、水槽のような専用設備で患者を体ごと冷水に浸す方法。蒸散法は、霧吹きを用いたり、体に濡れたガーゼなどを覆ったりした上で、扇風機などで送風して冷却する。

 ただ、冷水浸漬は高齢者には負担が大きく、若年に比べて死亡率が高いと報告されている。また、輸液の点滴をしながら体を冷やすのだが、冷やしすぎてもいけないので、直腸温、膀胱温、食道温などで深部体温をモニタリングしながら行う。どちらも人手がかかる冷却法だ。

 一方、ジェルパッド循環冷却法は、体幹部と両大腿部に冷水が循環するジェルパッドを貼り付けるだけなので、患者の負担が少なく、安全性が高い。

「サーモガードは、2個のバルーンの付いたカテーテル(細い管)を鎖骨下や内頚、大腿などの太い静脈に挿入します。バルーン内に冷却した生理食塩水を循環させることで、血液自体を冷却する方法です。カテーテルから輸液の注入を同時に行うこともできます」

 どちらのデバイスも40度前後に上がった深部体温を5~6時間で37度に下げる。37度に近づくと冷やしすぎを防止するために、逆に温めて自動的に深部体温を一定に保つという。

 ただし、重症熱中症は死と隣り合わせの状態。心臓が熱にやられていると初日に亡くなることが多い。どれくらい長い時間、高体温が続いていたかで後遺症の程度が異なり、助かってもほとんどの患者に高次脳機能障害や小脳障害などが残るという。

 熱中症は防げる病気。予防が最も重要であることを肝に銘じておこう。
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