あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■糖尿病・高血圧・血糖値・痛風・低血圧
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血糖値下げるために有効な「“高速”無酸素運動」薬剤師が考案

「高血圧は危険と患者を脅かす医師は多いのに、なぜ“血糖値が高い”ことを危険視する医師は少ないのでしょうか。糖尿病の治療をせずに放置すれば、血管が傷つき、失明、腎不全、神経障害などの合併症のほか、脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともある。しかも、一度発症すれば、毎食後に注射を打たなければならない。大変ですよ!」

そう話すのは、近著に『食事をガマンしないで血糖値を下げる方法』(マガジンハウス)がある薬剤師の加藤雅俊氏。厚生労働省の’16年「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が疑われる成人が初めて1,000万人を超えた。

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量や働きの不足で、血中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気。「すぐにのどが渇き、水をたくさん飲んでしまう」「体が疲れやすく、常にだるさを感じる」などの、糖尿病予備軍の症状が出ていても、2人に1人は自分が糖尿病であることに気付いていないといわれる。もし悪化して足が壊死し切断しなければならなくなったら……。

そんな事態にならぬよう、加藤氏に「血糖値を下げる方法」を教えてもらった。

まず血糖値に関して“自分の数字”を覚えておくことが大切。空腹時血糖値が126以上だと糖尿病予備軍だ。薬局などの施設で検査できる。

「血圧も同じですが、薬はあくまで対症療法。薬に頼って自分で血糖値を下げる能力を失ってしまうのが、いちばんの問題です。そこで私が提唱しているのが毎日3分でできる『加藤式・降糖メソッド』。この瞬発力を利用した“高速”無酸素運動で、どんどん、糖が燃えやすい体になりますよ」(加藤氏・以下同)

血液中のブドウ糖を体内に取り込み、エネルギーに変えてくれる役割を持つのが「インスリン」。

「そして、筋肉細胞の中には糖を取り込むサポートを行う『インスリン受容体』があるんです。筋肉が衰えて筋肉量が減ると、このインスリン受容体も少なくなるため、糖はますます消費しにくくなっていきます。

これこそが高血糖の原因。そこで、このインスリン受容体に関係する筋肉を効率的に増やしていきます。筋肉にはアウターマッスルとインナーマッスルがありますが、インスリン受容体の観点では『速く動かすアウターマッスル』を鍛えるのが最適です」

アウターマッスルは、たとえば背中やお尻、腕や足といった大きな筋群。マラソン選手のような細い体ではなく、100mの短距離選手のようなマッチョな筋肉にあたる。“1日1万歩”を勧める医師もいるが時間がかかる……。

「この“高速”無酸素運動なら、より短時間でできて、効果抜群なんです」

加藤氏が考案した運動は、次の3種類の運動を上から順にそれぞれ20秒間続けて、1つの運動が終わるごとに10秒間のインターバルを置くというもの。これを3分間で2度繰り返す。

■エア縄跳び(20秒)

(1)縄跳びのロープを持っているイメージで立つ。両足は軽く開いて。

(2)手首を回しながら、弾みをつけて大きくジャンプ。トントンとリズムよくスピーディに20秒間続ける。

■ひざキック(20秒)

(1)両腕を軽く曲げ、両足を肩幅くらいに開いて立つ。

(2)右に向かって上半身を大きくひねる。同時に右足を太ももから大きく蹴り上げて、左ひじで右ひざに軽くタッチ。次に左に向かって上半身をひねり同様に太もも上げを。スピーディに交互20秒間繰り返す。

■エアバスケ(20秒)

(1)両足を肩幅くらいに開いて立つ。手にはバスケットボールを持っているイメージで。

(2)深く腰を落とす。ひざを90度以上曲げるのが目安。

(3)間髪を入れず、右側に向かって遠くにシュートするイメージで勢いをつけて上半身を伸ばす。軽くジャンプしてもOK。

(4)スピーディなテンポをキープしながら、なるべく深くひざを曲げるようにして腰を落とす。

(5)間髪を入れず、今度は左側に向かってシュート。テンポを落とさず、1~5を20秒間続ける。

さらに上級者向けに加藤氏がこうアドバイスする。

■エア縄跳び

「大腿四頭筋がメインです。高く跳び上がることが大事。速く、2重跳びのイメージで跳ね上がりましょう」

■ひざキック

「体幹をひねり、腰は大腰筋、大殿筋、大腿四頭筋、それら大きな筋肉を一気に動かすイメージです」

■エアバスケ

「足を使うけれど、体側も使う。広背筋、上腕三頭筋、一瞬で腕も足も使いたい。これがブドウ糖の爆発になりますから、そのイメージで」

最初は3種2セット「3分」で十分だが、慣れてくれば続けて「6分」を目指そう。多くの患者の血糖値を改善させた「加藤式・降糖メソッド」を、ぜひ試してみよう。

ランチは丼より定食を!専門家語る「血糖値を下げる生活習慣」

「高血圧は危険と患者を脅かす医師は多いのに、なぜ“血糖値が高い”ことを危険視する医師は少ないのでしょうか。糖尿病の治療をせずに放置すれば、血管が傷つき、失明、腎不全、神経障害などの合併症のほか、脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともある。しかも、一度発症すれば、毎食後に注射を打たなければならない。大変ですよ!」

こう語るのは、近著に『食事をガマンしないで血糖値を下げる方法』(マガジンハウス)がある薬剤師の加藤雅俊氏。厚生労働省の’16年「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が疑われる成人が初めて1,000万人を超えた。

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量や働きの不足で、血中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気。「すぐにのどが渇き、水をたくさん飲んでしまう」「体が疲れやすく、常にだるさを感じる」などの、糖尿病予備軍の症状が出ていても、2人に1人は自分が糖尿病であることに気付いていないといわれる。もし悪化して足が壊死し切断しなければならなくなったら……。

そんな事態にならぬよう、加藤氏が、これまでのカウンセリング経験から次の「血糖値を下げる4つの生活習慣」を勧めてくれた。

【1】ランチは丼より定食を

「メニューにカツ丼ととんカツ定食があったときは、できるだけ“定食”を選んでください。理由は早食い防止! 早食いが血糖値を上げます」(加藤氏・以下同)

日本人の摂取カロリーが、他国とくらべて高いとは思えないが、丼物や麺類など、早く食べられるメニューを好む傾向があるかもしれない

「ラーメンが太らせるのではなく、早く食べるから太るんです。かきこんで食べるのは糖尿のもと。時間をかけてゆっくりかんで食べましょう」

【2】たばこをやめてコーヒーを

「いまだに食後のたばこを習慣にしている人がいますが、吸い続けると糖尿病になるリスクが高まります。それよりも、コーヒーは血糖値を抑える成分がありますので、食後の飲み物はぜひコーヒーで」

【3】スイーツは間食で取る

血糖値は食後6時間ほどで下がってくるが……。

「日本人の昼食はだいたい時間が決まっていて、夕食までにかなり時間があります。ですから私は“チョコチョコ食べ”をお勧めしています」

1日4~6食くらい。ケーキやジュースなどかなり甘いものでも間食として食べれば、我慢しなくてよいという。

「“上がりすぎず下がりすぎず”という血糖値は、実はダイエットにもいいんですよ」

【4】昔の友達に会う機会を作る

「同窓会の直前になって慌ててダイエットする人も多いと思いますが、鏡に映した自分より、久しぶりに会った友人の目のほうがその“変化”に敏感なはず。その言葉の力を利用してください!」

旧友に「なんか前と感じが違う」と言われたら、セルフチェックのタイミングだ。

「定期的に血糖値を測り、体の“危険信号”を見逃さないようにしてください。薬は何かしら副作用があるもの。なるべく頼らず、あなたの体が本来持っている“治そう”という力を引き出してください」

糖尿病の薬に脳の若返り効果、世界が注目する「認知症治療」

認知症は、厚生労働省のデータによると、65〜69歳までの有病率は1.5%だが、5歳ごとに倍増。85歳の有病率は27%にものぼるといわれる。長寿化する日本においては、がんと並ぶ“国民病”ともいえるほど身近な病だ。しかしーー。

「がんの予防・検診・治療などは日進月歩ですが、認知症は進行を遅らせるという薬が4つあるものの、まだ効き目が弱く、画期的な治療薬も開発されていません」

認知症治療の現状を解説するのは、米国ハーバード大学元研究員で、老化や疫学の研究に従事したボストン在住の内科医・大西睦子さんだ.

年始には大手製薬メーカーであるファイザー社が認知症薬の開発から一時撤退することを表明するなど、認知症の研究において暗いニュースもあった。

しかし、最近、認知症治療が可能になるような、新しい研究が続々発表されている。

「3月に掲載されたイギリスの『テレグラフ』誌の記事によると、アルツハイマー病に関して50歳以上の者が接種できるワクチンが、10年以内に開発可能だと報じています。ワクチンはアルツハイマー病の約70%を予防することができると予想していますが、こうしたワクチン開発と同時進行で、世界中の研究者は日々、認知症と闘っています」

ほかにも今年に入ってから、認知症の治療を目指す夢の治療法の研究が進んでいる。その最前線を、大西さんが解説してくれた。まず、知っておきたい基礎知識が、認知症の原因だ。

「現在のところ、認知症の約7割を占めるアルツハイマー型の特徴は、アミロイドβによる老人斑とタウタンパク質による神経原線維の変化です。これらが徐々に蓄積して集合体になって、神経細胞を傷つけたり死滅させて起こるといわれています」

■糖尿病の薬に脳の若返り効果が!

英国ランカスター大学のクリスチャン・ホルシャー教授が、1月2日付の同学内ニュースに「アルツハイマー病などの慢性神経変性疾患の、新たな治療法に発展する」と発表した。それは、2型糖尿病治療のために開発された薬の利用だ。

「新薬を開発する発想ではなく、他の病気の治療薬が、アルツハイマー病にも効くのではないかと、アプローチした研究です」

薬を投与する実験の結果、マウスの脳は“若返り”に成功。

「マウスをプールに入れる水迷路試験では、学習と記憶力が大幅に改善されたと報告されています。さらに『神経細胞の機能を保護する脳成長因子のレベルが高まる一方で、アミロイドβ斑、慢性炎症や酸化ストレスが抑えられ、神経細胞の損失率は低くなった』とあります」

実験中のこの薬だが、人への安全性と有効性のデータ蓄積が期待されている。

■脳ペースメーカーで脳機能が回復

「米国有力紙『ニューヨーク・タイムズ』でも取り上げられたのは、米国ペンシルベニア大学で行われている“脳ペースメーカー”とも呼ばれる、新たな治療方法の提案です」

同様の研究は複数の施設で行われているが、大西さんが注目するのは1月30日、オハイオ州立大学医療センターの研究者が発表したレポートだ。

「基本的に心臓ペースメーカーと同じ構造です。異なるのは、電気を通す細いワイヤを心臓ではなく、アルツハイマー型認知症患者の前頭葉に埋め込むこと。

前頭葉は、問題を整理したり、計画を立てる役割を果たしていますが脳ペースメーカーによって深部脳刺激(DBS)を与えると、治療していないアルツハイマー病患者に比べて、認知機能と日常機能の低下を遅らせられたとのことです」

実際に3人の研究参加者全員の症状が、改善されているという。米国オハイオ州に住む85歳の女性は、’13年から試験に参加した。当初、食事の準備ができない状態だったが、脳ペースメーカーを埋め込んでから2年後には、簡単な献立を作り、食材を選び、さらに料理をするまでに回復したという。

「研究者たちは、手術をしなくてもいい、非外科的方法を探求したいと考えているそうです」

■臓器移植で使用される薬剤が認知症の進行を遅らせる

臓器移植手術後に使用される免疫抑制剤を、長期間投与している患者は、アルツハイマー型認知症の発症頻度が低いことに目をつけたのは、米国テキサス大学だ。

「日本の医療現場でも使用頻度が高いFK506という薬剤です。レシピエント(提供される人)がもらい受けた臓器を、体内で異物として排除しないために投与されます。免

疫力が下がるので感染症対策が重要ですが、認知症患者へは、そうしたリスクを回避できるほどの少量の投与で済むようです。しかも神経細胞を、アミロイドβから保護できる結果となったようです」

現段階ではマウスによる実験だが、既存薬ということもあり、安全性が担保されている。人への応用も可能なはずだ。

重度の認知症患者は24時間のケアが必要となり、家族には介護負担ばかりでなく、経済的負担も一気にのしかかる。そうした老後の不安を取り除くためにも、認知症医療の進展に期待したい。

性犯罪や反社会性パーソナリティ障害(サイコパス)に遺伝は関係する?

国際疫学学会誌で9日に、性犯罪には育った環境だけでなく遺伝的要因も関与しているとする論文が発表されました。1973~2009年にかけてスウェーデンで性犯罪による有罪判決を言い渡された男性21,566人について調査された結果です。

一方、パーソナリティ障害は、ある特定の文化で平均的な人の考え方、感じ方、行動の仕方から著しく偏っている人物像です。周囲との調和、適応性、内面的な安定性が壊れ、場合によってはトラブルメーカーとしてふるまいます。

現在、10のタイプが指摘されていますが、中でも「良心を持たない」サイコパスとして、「反社会性パーソナリティ障害」は遺伝的要因が強いとされています。*1)

◆性犯罪の遺伝性、遺伝率は40%?
上記の調査では、同じ環境で育った異父母の兄弟などを比較すると、血のつながった親(実親)に性犯罪歴がある子供の方が、性犯罪を行う確率が高いことが判明しました。

調査結果では平均の5倍とのこと。ちなみに血がつながっていない場合は、異父に犯罪歴があり子供も犯罪歴がある割合は2倍にとどまったとのことでした。

この調査結果は、同じ環境下で、血のつながった親と、そうでない親とを比べると、親に性犯罪歴がある場合、子どもが性犯罪を行う確率は、実親の場合5倍、異父の場合2倍と、実親の影響性が高かったということでした。

ここから、「(性犯罪には)環境が全てではなく、遺伝的な要因もあり、また、遺伝的要因を排除してはならない」という研究チームの結論が出てきています。

研究チームの見解は、性犯罪リスクに対して遺伝的要因が占める割合は40%ということですが、20~50%の間と考えた方がよいということです。

◆サイコパス(=反社会性パーソナリティ障害)の遺伝率は50%
アメリカ人の臨床心理学者マーサ・スタウトによると、思いやりや愛着をもたず、社会性を著しく欠いているサイコパス(精神病質)には、大脳皮質レベルで感情的情報を処理する能力にかなり逸脱が見られ、特徴の神経生物学的基礎の50%が、遺伝によるものと推測されているとのことです。*2)

◆「あれかこれか」なのか「あれもこれも」なのか?
反社会性パーソナリティ障害は、他のパーソナリティ障害と比べて治療効果の出ない障害と言われています。

遺伝性や脳の機能など「生物学的要因」と、育った環境や虐待の有無など「社会的要因」が複雑に絡んでいるとされています。遺伝か環境かではなく、両者がともに影響しているというのが現在の認識です。

そして、治療(後天的な改善)の難しさからも、遺伝性の解明が求められています。

性犯罪については、遺伝性の強調は、実の親に性犯罪歴があるから「おまえも性犯罪者だ」と決めつけることは厳に慎みながらも、やはり、育った環境や両親からの影響など「社会的要因」だけでなく、遺伝的要因からも理解を進めることが不可避ということで、ここでも、遺伝も環境も、が強調されているとみるべきでしょう。

ただ、どのように遺伝的要因が影響しているか、その実態の解明は今後に待たなくてはなりません。

<参考資料>
*1)『今日の精神疾患治療指針』より
*2)マーサ・スタウト著木村博江訳『良心をもたない人たち』草思社文庫,2012年

●山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

血糖値の傾向が大事 糖尿病悪化を防ぐために

 糖尿病の症状は、冬から春先にかけて悪化すると言われる。体の代謝機能が落ちることに加え、日常の活動量が減るため、余分なエネルギーを消費する機会も減る。専門医を交えた患者の座談会が開かれ、「血糖コントロール」の重要性が強調された。

 ◇上下の幅を少なくする
 糖尿病には1型と2型がある。1型は糖の代謝を調整し、血糖値を一定に保つインスリンを作ることができなくなる。生活習慣病といわれる2型は、インスリンの働きが低下する。怖いのは、網膜症や腎症、神経障害などの合併症だ。血糖値を測る重要な指標が「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」。赤血球内のたんぱく質の一種であるヘモグロビンにブドウ糖がまとわり付くと、糖化ヘモグロビンに変わる。血糖値が高いと、ヘモグロビンと結合するブドウ糖の量が多くなり、HbA1cは高くなる。

 岡山済生会総合病院内科・糖尿病センターの利根淳仁副センター長によると、HbA1cの正常値の上限は6・2%とされ、糖尿病であっても7・0%未満に下げれば合併症を発症しにくいとされている。利根副センター長は「血糖値の上がり、下がりの幅が小さい方が、体への負担が少ない。血糖値のトレンド(傾向)を知ることが大事だが、それにはHbA1cを見るだけでは駄目だ」と言う。

 ◇血糖値は変動する
 血糖値の傾向を把握することが、なぜ大切か。例えば、夜間に血糖値が下がり、その反動で朝、血糖値が上昇する患者もいれば、午前3時から4時ごろにかけて血糖値が上がる患者もいる。また、外食が多かったときにも上がりやすい。ラーメンやうどん、カレー、焼き肉など料理の種類、運動量によっても血糖値は変動する。平均値であるHbA1cが安定していても、食事の前後などに血糖値が乱高下すれば、血管を痛める恐れもある。

 利根副センター長は「大事なことは血糖値をある時点だけで判断するのではなくて、継続して把握することだ」とし、(1)今の状態を知る(2)ここ数時間の状態を知る(3)今後どうなるかを予測する―をポイントに挙げた。血糖値の上昇や低下といったトレンドを把握するためには、自身で測る「血糖自己測定(SMBG)」や「持続グルコースモニタリング(CGM)」が有効だ。利根副センター長は「HbA1c測定を補完するものと考えてほしい」と説明する。

◇食品成分表示を見る
 メッセージを寄せた料理研究家の相田幸二さんは1型糖尿病を発症して3年目になる。「料理を仕事とすることに悩んだ時期もあった」が、「慣れてしまえば、血糖コントロールに問題はない」と話す。現在、雑誌やラジオ番組などで料理のレシピを紹介する仕事に取り組んでいる。

 管理栄養士の国枝加誉さんは、17歳の時に2型糖尿病と診断され、28年目に。「普段は食事の前後にSMBCを行っている。体がヒンヤリと感じるという低血糖の自覚症状があったりすると、必ず測る」と言う。インスリン注射により、血糖が下がり過ぎることもある。患者にとって避けるべきは血糖値の急激な増減だ。炭水化物に含まれているブドウ糖や果糖などの単糖類は早く吸収・消化され、血糖値が急に上がりやすい。一方、食物繊維には血糖値の上昇を抑制する機能がある。国枝さんは「成分が表示されている食品は、糖類に注目してほしい」とアドバイスする。

◇おやつ・果物は大丈夫?
 おやつや果物は食べてよいのだろうか? 患者のこんな悩みをよく耳にする。國枝さんは「おやつは、相当カロリーが高いものもある。食間に食べると、せっかく下がってきた血糖値が再び上がってしまう」とし、食事の最後に少量食べることを勧める。「果物は季節感や素材を楽しむものだ。どれだけの量なら食べてよいか、主治医や管理栄養士に相談してほしい」。柿は単糖類のブドウ糖が多く含まれ、血糖値が上昇しやすい。一方、でんぷんが多いバナナは運動する前の良い補食になる。そうした知識も勉強したい。

◇家事でも運動量を稼ぐ
元エアロビック競技日本代表の大村詠一さんは、1型糖尿病との付き合いが28年と長い。「高血糖になると眠くなったりしてパフォーマンスが落ちる。ゆっくり食べると、上がり方が穏やかになることを現役の時に知っておきたかった」と振り返る。大村さんは、食前に必ず血糖値を測る。さらに、大事な仕事の前や車を運転する前にも測るという。講演をする際には、前と途中、後に測る。場合によっては、講演の最中でもインスリンを注射することがある。

 大村さんもコロナ禍で運動の機会が減った。そこで、日中を避けて夜の散歩で歩く距離を稼ぎ、血糖値が下がりやすくなった。「きょうはどこまで行って戻って来ようかなどと、目標を決めた方が継続できる」。洗濯物を干したり、掃除機をかけたりする家事も、大股で移動したり、体をひねったりすることで運動量を稼ぐことができる、と言う。

 ◇ストレスと付き合う
 小まめに血糖値を測らなければならないことに、ストレスを感じる患者もいるだろう。利根副センター長は「『見える化』がすべてよい、というわけではない。見え過ぎがストレスになることもあるだろう」と言う。最後に意見を求められた東京慈恵会医大糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明主任教授は「ストレスになるのであれば、血糖値を見ないときがあってもよい。ただ、完全に無視するのではなく、うまく付き合っていく方向に向けたい」と語った。

 「1日1回だけしか測らないこともあった。血糖値に振り回されない意識が大事かな、と思う」。國枝さんはこう率直な感想を述べ、大村さんは「自分の感覚で、予測してみる。実際の数値とのズレはどれくらいだろうか。『ゲーム感覚』でやってみたらどうか」と提案した。(了)

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知っていて損ナシ!痛風を発症したらまずやるべきこと

●痛風発作が起こったときの応急処置

痛風の発作は、夜中から明け方にかけての時間帯に、突然起こりやすいといわれています。最初の発作は、親指のつけ根の関節部分によく見られますが、かかとやくるぶし、足の甲、アキレス腱の周囲などに起こることもあり、ふつうは1ヶ所だけが痛みます。

すでに発作の経験があり、医師から「非ステロイド系消炎鎮痛剤」を処方されているなら、それを服用します。薬がない場合は、氷や冷却材で患部を冷やし、横になって、患部を心臓よりも高い位置に置くようにしましょう。

あまりの痛みに、患部をもみほぐしたり、さすったりしたくなるかもしれませんが、刺激を与えると、炎症を悪化させてしまいます。無闇に触ったり、動かしたりせず、安静にすることが大切です。

また、アスピリン系の鎮痛剤も、症状を悪化させるので、自己判断で痛み止めを飲むのも控えましょう。アルコールも、痛みをまぎらわせるどころか、症状を悪化させます。

●歩けるようになったら病院へ

痛みのピークは、しばらく続きますが、数日すれば、痛みが少しずつやわらいでいきます。歩けるようになったら、なるべく早く、病院で受診をしましょう。痛風の専門医がいる痛風外来か、整形外科や内分泌代謝科などに行くのが良いでしょう。

病院で痛風と診断されたら、まずは、「非ステロイド性抗炎症薬」や「ステロイド薬」を使って、発作の炎症や痛みをやわらげます。そして、痛みが完全に治まってから、尿酸値を下げるための治療を行っていきます。

中には、「発作の痛みがとれれば、もう治療の必要はない」と思う人もいるかもしれません。しかし、痛風の根本的な原因は、血液中に尿酸が増え過ぎて、結晶化してしまうことです。尿酸値を下げずにいると、いずれまた、痛風発作が再発するだけでなく、腎不全や尿路結石、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの合併症を発症しやすくなります。そんなことにならないように、きちんと治療を続けましょう。

痛風の治療の目標は、尿酸値を適正な範囲にまで下げ、それをずっと維持していくことなので、生涯にわたって続ける必要があります。

以前は「尿酸値が高いだけであれば、人体に特別悪いことはない」などと言われていましたが、高尿酸血症や痛風は、腎機能障害、尿路結石だけではなく、高血圧、心血管障害、メタボリックシンドロームとも関連が非常に深いことが近年で判明しています。

また、加齢に伴い、アンチエイジングをするなら痛風は大敵です。尿酸値の数値が高くならないように注意しましょう。

血圧は両腕で測る 左右差が5あるごとに死亡リスクが5%増

【医者も知らない医学の新常識】

 医学の検査も進歩はしていますが、血圧測定が健康のバロメーターであることは昔も今も変わりません。皆さんは血圧を自宅で測定していますか?

 最近では、血圧計は簡単に手に入るようになりました。使い方も簡単になりましたから高血圧と診断されている人ばかりでなく、健康な方も測定する習慣のある人が増えているようです。

 血圧は上腕(二の腕)か手首で測定しますが、右と左を比べると、その数値に違いがあることがあります。通常、上の血圧で5㎜Hg以内の違いは正常ですが、それを超える差は問題のある場合があります。

 特に左右の違いが10㎜Hgを超えるような場合には、体の血管のどこかに動脈硬化で狭くなっている場所が存在する可能性があるのです。

 左右差がある時には、血圧の管理は高い方で行う必要があるとされています。今年の高血圧の専門誌に、血圧の左右差についての論文が発表されました。これまでの24の研究に含まれる5万人以上の患者データを解析したところ、血圧の左右差が5㎜Hgあるごとに、死亡リスクが5%増加するという結果が得られました。心筋梗塞など動脈硬化が原因の病気も、血圧の左右差が大きいほど増えていました。血圧はその数値ばかりでなく、左右の違いにも注意する必要がありそうです。

(石原藤樹/「北品川藤クリニック」院長)

低血糖も要因!「イライラ」の病気

何かイヤなことがあったわけでもないのに、なんとなく機嫌が良くない日というのが、誰しもあるだろう。とりわけ上司の精神状態などは、職場の雰囲気にダイレクトに影響するだけに、日々、戦々恐々としている人も多いかもしれない。

「人は年をとると丸くなる」というけれど、年をとるごとに怒りっぽくなる人も多いように思えるのは気のせいか。実際、更年期障害などはよくイライラの一因に挙げられもするし、加齢はむしろ、人を怒りっぽくさせるのではないだろうか?

 新宿ライフクリニックの須田隆興先生に聞いてみた。

「個人差はありますが、どちらかというと人間は年齢を重ねるにつれて怒りっぽくなるものだと考えられます。というのも、イライラが症状のひとつに規定される疾患は、実は非常に多いんです。

甲状腺機能亢進症、PTSD、低血糖、不眠症など、これらはどちらかといえば若年層よりも中高年層の方が患いやすいものばかり。また、認知症の症状にもイライラは含まれています」

高齢の女性が更年期障害でイライラしやすくなるのはよく知られているが、男にとっても決して他人事ではないわけだ。

須田先生によれば、実は食物アレルギーや花粉症の症状にもイライラは含まれているという。イライラの原因は、僕らが思っている以上に多いのだ。

また、中高年のイライラは、必ずしも疾患ベースのものばかりではない。

「社会的な責任が増し、慢性的なストレスにさらされていることも大きな原因でしょう。仕事や家庭に関する悩み、老後への不安など、精神を圧迫されることで起こるイライラは決して少なくないはず」

一度イライラし始めると、ささいなことにもいちいち腹が立ってくるもの。イライラがイライラを呼び、それがいっそうストレスを増大させ、さらに深刻な疾患を招き入れることにだってなりかねない。

心身の健康とともに、ストレス発散の術をちゃんと用意しておくことが大切だ。

血圧、アレルギー、睡眠が変化 暖かい家は健康寿命延ばす

寒さは健康にとって大敵だ。気温が下がる冬は、高齢者を中心に死亡数が増える。死にたくなければ暖かい家に住んだ方がいい。厚労省の統計によると、心筋梗塞などの心臓病による死亡数は1月が最も多く、次いで2月、12月、3月と冬季に集中している。

 気温が下がって寒くなると、人は寒さが刺激となって血管が収縮し、血液量が減る。心臓はより大きな力で血液を送り出さなければならないため血圧が上がり、心臓の負担が増えるのだ。

 また、寒くなると代謝を活発にして体温を上げるため、アドレナリンが過剰に分泌される。これによって血液が固まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる。

 これは室外の気温だけでなく、住居内の温度でも同じ。慶応大理工学部の伊香賀俊治教授らの調査によると、「高断熱のモデル住宅」では、「断熱性能が低い住宅」よりも起床時の最高血圧が6㎜Hg低いという結果が出た。

 また、近畿大建築学部の岩前篤教授の調査では、「断熱性能が低い住宅」から「高断熱高気密住宅」への転居によって、気管支ぜんそく、のどの痛み、せき、アトピー性皮膚炎、手足の冷え、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎といった症状が改善した。

睡眠の質がアップするというデータもある。暖かい家に住めば、健康を守ることができるのだ。

■簡単なリフォームでも効果あり

 東京都健康長寿医療センター研究所の高橋龍太郎副所長は言う。「高齢になると、家の中で過ごす時間が長くなります。寒い時季に外出する際は、厚着をするなどそれなりに寒さ対策をして出かける人も多いのですが、家の中では薄着のまま過ごしているケースがほとんどです。

断熱レベルが低い家は外気温に合わせて室内の温度も下がりますから、温度変化によって血圧が急激に上下動するリスクがアップします。部屋全体が暖まっている適温での生活が、血圧を安定させることにつながります」

 さらに、高断熱の住宅は外気の影響が少なく、湿度をコントロールしてカビの発生を抑えることができる。

「カビはアレルギーを悪化させる大きな要因です。断熱レベルの高い住宅で、目、鼻、皮膚などのアレルギー疾患が改善されるのは、カビによる影響が少ないためだと考えられます。

ニュージーランドのオタゴ大が2年間にわたって古い家1400戸を対象に行った大規模調査では、断熱改修した住宅は湿度変化が少なく、断熱材入りの家の住人の方が、風邪や気管支疾患によって学校や会社を休むケースが少なかった。

カビの臭いが減り、通院や入院も減ったという結果が出ています」(高橋副所長)

 断熱レベルの低い家から高断熱高気密の住宅へ引っ越すのは簡単ではないが、リフォームするだけでも効果はある。

「断熱レベルが低い家では、いくら暖房を稼働させても効果が少なく、体感温度は上がらない。床と天井に断熱材を入れたり、内窓を設置するリフォームなら、それほど費用はかかりません。

それも難しい場合は、カーテンを厚手のものに交換したり、すき間テープなどで窓からのすき間風を防いだり、床に断熱シートを敷くだけでも効果があります」(高橋副所長)

 健康的に暮らしたいなら、寒さを我慢して生活するのはやめた方がいい。

糖尿病の改善に! 血糖値&HbA1c(※)を下げる“食前と食間の高カカオチョコ”|医師 監修

コツをつかめば血糖値は下げられる!

血糖値とHbA1c(※)を下げる「たった3つのルール」

控えなくてもよい食品

教えてくれたのは……

血糖値を下げたいなら食後に「かかと落とし」! 骨ホルモンがインスリン分泌を促進|糖尿病専門医 監修

両足のかかとを上げ、そのまま3秒間保つ

血糖値を下げるなら、食事終了後5分以内の運動を推奨

かかと落としのやり方

教えてくれたのは……

痛風もちは100万人以上…「激痛」と美食、どっちを選ぶ?

朝、経験したことのない激痛で目を覚ます。足指の付け根が大きく腫れている。知らぬ間に骨折したと思い、足の痛みに耐えながら、這うようにして整形外科に行く。すると医師にクールにこう告げられる。

「痛風ですね」

症状の差こそあれ、日本国内で100万人以上ともいわれる「痛風もち」の多くは、似たような経験があるはずだ。発症の原因は、血液中の尿酸値の上昇。尿酸値は「㎎/デシリットル」で表記されるが、これは血液1デシリットル(=100ミリリットル)当たり何ミリグラムの尿酸が存在するかを示したもの。成人男性で3・4~7・8(成人女性では2・4~5・6)が基準値といわれるが、厚労省が定める正常値の上限は7・0。この数値を超えると「高尿酸血症」と診断される。

症状が出るか出ないかは個人差があり、7・0以下でも痛みを訴える人もいる。高尿酸血症では、この痛風のほかに高血圧症、脂質異常症、高血糖症、尿路結石を招くことも多い。

よく知られたことだが、予防にはアルコール類の摂取量、プリン体が多く含まれた魚卵、肉、魚の摂取を控えること。さらに水分と野菜を多くとり、有酸素運動を行うこと。肉や魚に含まれるうま味成分であるイノシン酸はプリン体の一種。

味覚は人それぞれだが、おおむね「美味=プリン体」だから、尿酸値が高い人は美食に要注意だ。とくにプリン体含有量の多いのがちりめんじゃこ、アジ、サンマなど魚の干物。生に比べて、同じ重量でもプリン体の量は増す。煮干し、カツオ節なども同様だ。

痛風の別名は「ぜいたく病」。日本では高度経済成長期後に急激に患者が増加した。尿酸値の高い方は、年末年始は粗食を心がけてみてはいかが。風が吹いても足指の痛みはないはずだ。

糖尿病は冬に悪化、コロナ太りでリスクも拡大!専門医に聞く予防策

全国糖尿病週間。国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科学の坂本昌也教授は、「特に今年はコロナ太りで血糖、血圧、脂質、体重のどれもが悪化している人がいる。この冬には心筋梗塞・脳梗塞の発症に、例年以上の注意が必要」と警鐘を鳴らす。この冬、血糖値などのさらなる悪化を食い止める健康管理を、坂本医師に聞いた。(医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)

糖尿病は

60代の3人に1人の時代に

 実は日本人のカロリーと糖質の摂取量は減っている。にもかかわらず、糖尿病患者数は増えている。これはエネルギー摂取量に占める脂肪の割合が増えたことと関連が深い。面白いことに糖尿病患者数の上昇カーブは、米国ファーストフードチェーン店舗数や自家用車保有率の上昇カーブと相関する。繊維質摂取の減少を含めた食生活の欧米化、運動量の減少が影響していることを示唆している。

 このまま糖尿病患者数が上昇すると、いずれ60代の3人に1人は糖尿病になる(推定)。糖尿病になると、認知症リスクも高まる。70代の2人に1人は認知症の時代に突き進む。このシナリオは、コロナ長期化によるストレス太りで、さらに悪化する可能性がある。

 東京、山形で非常に多くの外来患者を診ている国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科学 坂本昌也教授は、「突然死でなくなる年間12万人のうち、最も多い致死性不整脈(心室細動・心停止)は糖尿病が関係する。コロナ太りで迎えるこの冬は例年以上の注意が必要」と語る。

世界初のエビデンス「糖尿病は冬に悪化」

規則正しい生活を心がける

 坂本医師は昨年2月、米国糖尿病学会誌で、生活習慣病が冬に悪化する詳細を明らかにした。血糖、血圧、脂質の季節変動は以前から指摘されていたが、数値変動を追った解析は世界初であった。坂本医師のチームは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)における登録病院38施設10万人強の患者データベースから血糖、血圧、脂質、体重の月別季節変動の詳細と、それに伴うガイドライン達成率を検証、それらに影響を及ぼす因子を同定した。すると、「血糖、血圧、脂質の値が同時に変動し、12月から2月に悪化している。冬の健康管理が大切」という結果が出た。日本は東西南北さまざまな気候が共存する。「どの国でも参考になる科学的根拠」と世界的評価の高い論文となった。

 近年は、採血するたびに血糖・血圧・脂質の数値がばらつくことも心血管病を増やすと報告されている。後述する食事・運動療法に気をつけ、睡眠不足やさまざまなストレスに対処し、出来るだけ規則正しい生活を送ることの重要性が高まる。

 坂本医師の近著『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)では、できるだけ長く人生を楽しむための有益な情報が63項目紹介されている。大きく分けて5つのカテゴリー、「食事」「運動」「睡眠」「生活習慣」「治療法」。その中から「食事」「運動」に絞り、坂本式実践メソッドを17項目抜粋、加筆する。

坂本式実践メソッド・食事編

バランスよい食事で血管ダメージを回避

◎1日3食、穀物や野菜を取り入れ、栄養バランスを良く

 血糖、血圧、脂質のトリプルリスクに気を配った食事、できれば、朝食は多め、夕食は少なめ。夕食は炭水化物や油分の多いものを控え、できるだけ早めの時間帯に。就寝前のドカ食いは絶対厳禁。

◎血管にダメージを与えない

 高血糖に加え、高血圧や脂質異常症が加わることで、血管を傷つけ、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすリスクが高まる。高血糖だけならそのリスクは「1」で済むが、高血圧や脂質異常症が重なると、「1+1」が10にも20にもなる。重い病気のほとんどは血管のトラブルが原因。この冬に備え一番大事なのは、血管にダメージを与えないことである。

◎「グルコーススパイク」に注意

 血糖値が一気に上下するグルコーススパイク(血糖値スパイク)の繰り返しが血管を傷つけ、心筋梗塞、脳梗塞の一因となる。グルコーススパイクは健康診断でも見逃されやすい。糖尿病の既往歴がない健康な人でも起こる。穀物や野菜が少なく、糖質、脂質に偏った食事を短時間で済ませてしまう人に、より起こりやすい。

◎減塩が難しい場合は、しっかり睡眠

 血圧はズバリ血管に影響を与える。塩分を控えることが一番だが、減塩効果は一食や二食などの短期間では得られない。無理なく続ける事が重要。コンビニ食や外食が多く、コントロールが難しい場合は、しっかり睡眠をとる。血圧の大敵である睡眠不足を解消すれば、おのずと血圧は下がる。

◎脂っこい食べ物も血管に影響あり

 高脂質、特にトランス脂肪酸・飽和脂肪酸が多く含まれた加工食品は血液がドロドロになり、血管に影響を与える。体重増による脂質値上昇をウォッチすべく体重測定を習慣化する。巣ごもりせずに時には日光を浴び、ビタミンD不足による脂質悪化対策を。

◎甘いものは食べてもよい

 適量の甘いものは、脳の疲労回復を促し、ストレスの軽減にもつながる。朝食時の果物や、3時のおやつも問題ない。坂本医師は、外来患者が適度なアルコールや炭酸飲料を飲むことを否定しない。ストレス無く食事療法に向き合って頂く為には無理は禁物だ。

◎ゼロカロリーに身を委ね、バランスを考えずに摂取するのは危険

 ゼロカロリーにこだわる人が太っている傾向がある。ゼロカロリーで安心して、逆に食事摂取量、体重が増えるためだ。ゼロカロリーに含まれる人工甘味料が、腸内細菌叢などに影響を与え、糖尿病の発症に影響することが動物実験レベルで明らかになっているので注意。完全にカロリーゼロではない食品、飲料にも注意。

◎一時的、短期的なファスティングはOK

 早めに夕食を済ませ朝まで何も食べないといった一時的なファスティングは、生活習慣病の発症を食い止める。負荷のかかった臓器を休ませ、機能を正常化する効果がある。単に体重を落とすダイエットのための長期的ファスティングは、一時的に臓器に良い影響を与える場合もあるが、骨や臓器に悪影響を及ぼす。

◎親が糖尿病の人は、なおさら食事に注意

 糖尿病は遺伝するケースが多い。同じ家族が同じモノを食べ、同じ病気にかかりやすくなる。食生活が糖尿病のリスクを高めていることを自覚し、若い段階からの食生活の改善が望ましい。

「坂本式実践メソッド・運動編」については、以下のようにポイントをまとめたので参考にしてほしい。

■坂本式実践メソッド・運動編

◎食事前の過度な運動は、糖が吸収されやすくなるので控える

◎夕食後には軽い健康体操やストレッチで血液中のブドウ糖を消費し、グルコーススパイクを避ける

◎1日10分でも、長期的に続ける適度な運動を

◎座っている時間を少しでも減らす

◎腹筋は加齢とともに衰えやすいので、お勧めの健康法

◎過去1カ月にかけた負荷よりも、やや多めの負荷にとどめる

◎疲労回復のため、週に1~2回は運動を控える

◎運動を続けるきっかけとなるコーチの存在も大きな味方

岐路に立つ糖尿病対策

「メタボ検診」には疑問も

 冒頭で述べた通り、11月9日から公益社団法人日本糖尿病協会が啓発する全国糖尿病週間が始まった。今回のテーマは「サルコペニア・フレイル(※)」。標語は「筋肉量 コツコツ積み上げ 健康長寿」である。超高齢社会を迎えた日本における課題の一つをテーマ、標語としている。

 一方、糖尿病発症予防の早期対策である「メタボ健診」は、ごく最近その効果に疑問が呈されている。より効果的な手段の検討が早急に必要でもあり、本邦の肥満対策も大きな岐路に立っている。医療従事者のみならず、行政も含めた社会全体での取り組みが必要となってきている。

 2020年、コロナ長期化と夏の爆暑は、生涯忘れ得ぬインパクトを私たちに与えた。このインパクトを機に、世界標準の糖尿病研究の旗手、坂本医師が提唱する食事と運動法を参考に、元気な生活、健康寿命の延伸を目指したい。

(※)サルコペニアは【加齢や疾患などにより筋肉量が減少し、筋力低下や身体機能の低下が起こること】。 フレイルは【加齢に伴い健常から要介護へ移行する中間の段階で適切な支援で健常に戻りうる状態】。

◎坂本昌也(さかもと・まさや)

国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科学教授。高糖質、高血圧、脂質異常症のトリプルリスク対策を軸とした総合診療能力に長けた、高い患者支持率を誇る内科医。昨年2月、米国糖尿病学会機関誌に、「糖尿病は冬に悪化する」という感覚的であった事実を、10万人強の患者データを基に世界で初めてエビデンスとして発表した。「高齢者は血管のダメージに注意」「若い人は食事の意識を高めよう」と外来診察や著書、メディアを通じて広く啓蒙している。

“コロナストレス”で懸念…高血糖を改善させる3分間早歩き

「新型コロナウイルスによる健康問題はいろいろ指摘されていますが、中高年以上の層で全体的に共通しているのは、ストレスによる血糖値の上昇傾向です」

こう話すのは工藤内科の副院長で、糖尿病内科医の工藤孝文先生。

「実際、私の患者さんで、コロナ禍でも運動量にも食事にも変化はなかったのに、血糖値が上がったという人が少なくありません。その原因は、連日のコロナウイルスについてのニュースなどによるストレスではないかと考えられます」(工藤先生・以下同)

通常、血糖値が上がる理由は、食事が関係している。血中のブドウ糖の量が多くなってくると、すい臓から分泌されるインスリンが糖を脂肪に変え、体は脂肪細胞をため込むようになる。

ところが、血中の糖が増えすぎると、インスリンの糖分解が追いつかなくなって糖尿病になる。さらに体脂肪が増え続けると、血糖が血管を傷つけて炎症を発生させたり、血管を詰まらせるようになるのだが、多くの場合はその前に、食事や運動、あるいは服薬で血糖をコントロールする。

しかし、ストレスはアドレナリンなど血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させるため、余計に注意が必要となるのだ。しかも、高血糖は糖尿病だけでなく、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを高めることもわかっている。「ですが早めに対策をとれば、改善が可能です。いまの生活習慣に少し足すだけでできることがあります」

それが次の「3分間早歩き」だ。基本の「3分間早歩き」で「メリハリ歩き」を行う。

■基本の3分間早歩き

【1】一歩踏み出す

やや大股で足を踏み出し、かかとから着地する。かかとに少し衝撃が加わる程度に。ひじは90度くらいに曲げ、手は軽く握る。

【2】後ろ足で蹴り出す

前足の足裏を全部地面につけ、体重を移動させながら後ろ足のつま先で蹴り出して前進する。※正しい姿勢で体重移動を意識して、前を向いて歩こう。

【3】逆の足を踏み出す

2で前足に完全に体重移動したら、逆の足を同様に踏み出して、かかとから着地する。

【4】リズミカルに繰り出す

同様に後ろの足で蹴り出す。体重を後ろから前に移動し、左右に揺れないようにすること。

■効果を上げるメリハリ歩き

【基本姿勢】まっすぐに立つ

頭のてっぺんから糸でつるされているように背筋を伸ばして立つのが基本。耳、肩、足の付け根、くるぶしが一直線になるように。

【普通歩き】軽いウオーキング(3分)

自然な歩幅で、自然な呼吸を保って歩く。姿勢、視線などはきちんと意識して。最初は普通に歩いてウオーミングアップ!3分ごとにスピードコントロール。

【早歩き】息が上がる早歩きを(3分)

歩幅を広げ、ひじを90度に構え、腕を大きく振って速度を上げて早歩きをする。すこし息が上がる程度に。※歩幅は身長×0.45〜0.5(160センチの人なら72〜80センチ)

「やや大股」で、「少しきつい」と感じる速さで3分間歩き、その後普通の速度に戻す。また3分したら早歩きし、3分後に普通の速度に戻す……。これを繰り返すだけだ。もし、3分がきつければ、1〜2分でもかまわない。

「『3分間早歩き』で、血糖値をコントロールできると、インスリンによるアミロイドβの分解が促進され、アルツハイマー型認知症の予防も期待できる。さらに、代謝バランスを整えてくれる幸せホルモン(セロトニン)はうつの予防、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌は睡眠促進など、健康面だけでなく美容面でも嬉しい効果が期待できます」

糖尿病専門医が伝授「高血糖に効果!筋力アップウォーキング」

「新型コロナウイルスによる健康問題はいろいろ指摘されていますが、中高年以上の層で全体的に共通しているのは、ストレスによる血糖値の上昇傾向です」こう話すのは工藤内科の副院長で、糖尿病内科医の工藤孝文先生。

「実際、私の患者さんで、コロナ禍でも運動量にも食事にも変化はなかったのに、血糖値が上がったという人が少なくありません。その原因は、連日のコロナウイルスについてのニュースなどによるストレスではないかと考えられます」(工藤先生・以下同)

通常、血糖値が上がる理由は、食事が関係している。血中のブドウ糖の量が多くなってくると、すい臓から分泌されるインスリンが糖を脂肪に変え、体は脂肪細胞をため込むようになる。

ところが、血中の糖が増えすぎると、インスリンの糖分解が追いつかなくなって糖尿病になる。さらに体脂肪が増え続けると、血糖が血管を傷つけて炎症を発生させたり、血管を詰まらせるようになるのだが、多くの場合はその前に、食事や運動、あるいは服薬で血糖をコントロールする。

しかし、ストレスはアドレナリンなど血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させるため、余計に注意が必要となるのだ。しかも、高血糖は糖尿病だけでなく、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを高めることもわかっている。「ですが早めに対策をとれば、改善が可能です。いまの生活習慣に少し足すだけでできることがあります」

それが次の「3分間早歩き」だ。基本の「3分間早歩き」で「メリハリ歩き」を行う。

■基本の3分間早歩き

【1】一歩踏み出す

やや大股で足を踏み出し、かかとから着地する。かかとに少し衝撃が加わる程度に。ひじは90度くらいに曲げ、手は軽く握る。

【2】後ろ足で蹴り出す

前足の足裏を全部地面につけ、体重を移動させながら後ろ足のつま先で蹴り出して前進する。※正しい姿勢で体重移動を意識して、前を向いて歩こう。

【3】逆の足を踏み出す

2で前足に完全に体重移動したら、逆の足を同様に踏み出して、かかとから着地する

【4】リズミカルに繰り出す

同様に後ろの足で蹴り出す。体重を後ろから前に移動し、左右に揺れないようにすること。

■効果を上げるメリハリ歩き

【基本姿勢】まっすぐに立つ

頭のてっぺんから糸でつるされているように背筋を伸ばして立つのが基本。耳、肩、足の付け根、くるぶしが一直線になるように。

【普通歩き】軽いウオーキング(3分)

自然な歩幅で、自然な呼吸を保って歩く。姿勢、視線などはきちんと意識して。最初は普通に歩いてウオーミングアップ!3分ごとにスピードコントロール。

【早歩き】息が上がる早歩きを(3分)

歩幅を広げ、ひじを90度に構え、腕を大きく振って速度を上げて早歩きをする。すこし息が上がる程度に。※歩幅は身長×0.45〜0.5(160センチの人なら72〜80センチ)

効果的な筋力アップには、次の「効果的な筋力アップウオーキング」のように、視線や姿勢に気をつけて、全身の筋肉を使うことがポイントだ。この歩き方を続けると、体が締まり、ダイエット効果も期待できる。

■効果的な筋力アップウオーキング

・視線は10〜20メートル先を見ると前かがみにならず、安全も確保。
・背筋を鍛えるために、背筋を伸ばし、猫背にならないように。
・ひじを90度に曲げて大きく振ることで、安定してスピードアップが可能に
・意識しておなかをへこませる。大きく息をすると、より腹筋が鍛えられる。
・最も大切なのは太ももの大きな筋肉に負荷をかけること。
・ふくらはぎの筋肉にも力がかかる歩幅でしっかり歩く。
・かかとから着地すると、足がしっかり伸び、衝撃は骨の強化にも。

「筋肉には、瞬発力に必要な速筋と持久力に必要な遅筋があります。歩くのに必要なのは遅筋ですが、『3分間早歩き』をすることで速筋も鍛えることができます。速筋と遅筋を交互に使うことで、代謝バランスのよい体ができるのです。私も『3分間早歩き』を実践して減量に成功し、姿勢がよくなったと言われます」

また、ウオーキングは有酸素運動だが、「3分間早歩き」の間は無酸素運動に近い。

「1日20分程度の有酸素運動が奨励されていますが、有酸素運動に無酸素運動を組み合わせると、20分以下でも十分に筋肉がつくられますし、糖や脂肪の代謝も促進されるようになるのです」

通勤時間や買い物へ行くときなど、普段の生活に「3分間早歩き」を加えるだけでいい。しかもこれなら食べる量を変えなくてもいいので、無理なく長く続けられる。早速実践して、生活の中にメリハリをつけよう!

減塩は血圧以外のリスク予防になる!?

減塩と言えば、「血圧が気になる人が気をつけるもの」というイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが、減塩は血圧を下げる以外にもさまざまリスク予防に効果が期待できることをご存じでしょうか?今回は、血圧が気になる方以外にはもちろん、「自分にはまだ関係ない!」と思っている方にこそ知ってほしい情報をあすけん栄養士が解説します。

・今すぐ読みたい→
上手に糖質制限を実践するには?ローカーボのススメ https://cocokara-next.com/food_and_diet/low-carbohydrate-diet/

食塩の摂り過ぎは●●のリスクにも影響

肥満のリスクが上昇
食塩摂取量が増えると肥満のリスクを上昇させるという研究報告(※1)があります。研究では、食塩摂取量が増加するにつれて、BMI(体格指数)があきらかに上昇することがわかりました。1日の食塩摂取量が1g増えると、肥満になるリスクが21%上昇したことも明らかになっています。味が濃い食事は食欲を増進させてしまう恐れがあるので、ダイエット中の方はうす味を心掛けると食欲をセーブしやすいでしょう。

糖尿病の発症リスクは約1.7倍
食塩は血糖値に直接影響はしませんが、食塩の摂りすぎが高血圧や肥満の原因となり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを弱めてしまうことで、2型糖尿病のリスクを上昇させると考えられています。食塩の摂取量が少ない人(1日5.8g未満)と比べて多い人(1日7.3g以上)では、2型糖尿病の発症リスクが約1.7倍上昇するという研究報告(※1)もあります。血糖値が気になる方で、濃い味付けが好きな方は要注意です。

脳卒中や心疾患のリスクが上昇
日本人の高血圧の方の特徴は「食塩摂取量が多いこと」とされており、高血圧により脳卒中や心疾患のリスクが高まることが知られています。食塩摂取量を減らしていくことが大切なのですが、英国の研究では、食塩を15%減らしたことで、脳卒中・心臓病による死亡が約40%減少したという報告(※2)もあります。

食塩に気を付けるとともに、健康診断などで定期的な血圧のチェックも大切です。

減塩に関するウソ・ホント!?
蒸し暑い日に汗をかいたら食事にもっと塩分が必要?
熱中症対策として、暑い時期に味の濃いものを意識して食べている、という方は注意が必要です。
汗をよくかく季節は、こまめな水分補給が必要ではありますが、もともと日本人は食塩摂取量が多いため、暑いからと言って食事から食塩をたくさん摂る必要性は低いと言えます。(※3)

ただし、大量に汗をかく状況では、体内の水分と食塩のバランスが崩れると、熱中症の一因になってしまうため、水分と一緒に食塩を補給することが大切です。(※4)その際は経口補水液や、塩タブレットなどを利用すると良いでしょう。

「天然塩」は普通の塩より大丈夫?
天然塩はカラダに良いイメージを持つ方もいるかと思いますが、「減塩が気になるので、天然塩を選んでいる」という方は注意が必要です。注意すべきは製造法ではなく、食塩の摂取量です。天然塩だからと言ってたくさん摂ると、やはり食塩の過剰摂取になってしまいます。ですが、まろやかな味わいなどの特徴を生かして、普段より食塩の量を減らすことができるのであれば、利用してみても良いでしょう。

食塩の摂りすぎになりやすい料理・食品

かまぼこやウインナーなどの加工食品
かまぼこ・ちくわ・カニカマなどの練り製品や、ウインナー・ハム・ベーコンなどの加工食品は、加工の際に食塩が添加されるため、他の食品に比べると食塩量が多くなっています。例えば、かまぼこ(1切20g)には0.51g、ウインナー (1本20g)には0.38gもの食塩が含まれます。また、これらを食べるときにしょうゆなどをつけて食べる方は、食塩のさらなる摂りすぎになってしまうため注意しましょう。

梅干しなどの漬物
漬物は長く保存するために食塩が多く使われており、少量でも食塩の摂りすぎにつながりやすい食べ物です。日本人が目標とする食塩の量は、男性7.5g未満・女性6.5g未満ですが(※5)、例えば梅干し1個(15g)には、3.31gもの食塩が含まれており、これだけで1日の目標量の半分も摂ってしまうこととなります。また、定食屋などでテーブルの上に漬物の容器が置いてあり、食べ放題になっているものがありますが、食べ過ぎてしまいやすいため気を付けましょう。

ラーメンやうどんなどの麺類
ラーメンやうどん、そばなどの汁のある麺類は、汁まで全部飲み干すと、1日分の食塩目標量をオーバーしてしまうメニューもあります。プラスしてチャーハンやぎょうざ、いなり寿司などを食べると、さらに食塩を摂ってしまうこととなります。麺の汁は1~2口楽しんで、あとは残すようにするだけで半分は食塩をカットすることができますよ。プラスのメニューも、ダイエットのためにも控えるほうが良さそうですね。

ちょっとした工夫でできる減塩方法3つ

1.食塩が多いものの回数を減らす
ハムやかまぼこ、漬物、ラーメンなどの麺類などをよく食べる方は、まずはその回数を減らしてみましょう。よく食べるものは、「○○は週1回まで」などのマイルールを決めても良いですよ。外食や弁当に漬物が入っていた場合、思い切って残すのもひとつの方法です。「薄味にする」よりはハードルが低いため、まずはこれから取り組むと良いでしょう。

2.しょうゆやソースはかけずにつける
しょうゆやソースを料理にかけて食べると、ついかけ過ぎてしまうことがありますよね。また、小袋に入ったしょうゆやソースを全部かけてしまう方もいるかと思います。直接かけるのではなく、小皿などに出してつけて食べるようにすると、かけ過ぎを防いだり、使う量を減らしたりすることができますよ。

3.物足りないときは一味唐辛子やこしょうをかけてみる
物足りないときにしょうゆやソースをプラスしてかけてしまう方は、一味唐辛子やこしょうに変えてみましょう。味にアクセントが出るため、薄味のものでもおいしく食べることができますよ。味を見る前にかけてしまう方は、まずはそのまま食べてみて、本当に必要かどうか考えてみるクセをつけましょう。

減塩はちょっとした積み重ねを続けて、少しずつ食塩摂取量を減らしていくことが大切です。うす味のものを食べ続けると、味覚も慣れていくと言われています。最近では、インスタントラーメンなどでも減塩タイプのものを見かける機会が増え、世間でも減塩に対する関心が高まってきています。この機会に減塩について考えてみませんか?

※このコラムでは、表記を「食塩」に統一しています。

嶋大輔が「血糖値の改善」で健康的に引き締まった肉体を披露

嶋大輔が、ライザップの「健康ダイエット」で血糖値の改善に成功。出演するCMが、9月18日から順次放映されている。

【写真を見る】健康的に引き締まった肉体を披露する嶋大輔

1982年に発売された代表曲「男の勲章」が大ヒットし、不良でツッパリという個性的キャラクターが話題を呼んで一躍人気者になった嶋。2018年には、ドラマ「今日から俺は!」(日本テレビ系)のオープニング曲に「男の勲章」が起用され、再ブームを引き起こしている。

ダイエットや美容に加え、健康・ヘルスケアなど、健康増進にもコミットするヘルスケア事業に積極的に取り組んでいる同社では、この取り組みの一つとして糖尿病と診断された嶋のダイエットをサポート。血糖値の数値改善に成功した。

新CMでは、診察室でぽっこりしたおなかの嶋が、医者に不摂生を怒られ、うなだれている姿から一変、「男の勲章」をBGMに、ぜい肉をスッキリ落とし、健康的に引き締まった肉体を披露している。

嶋は「子供に体形について指摘されたときにダイエットを意識したものの、なかなか一人では継続できず…。そんな時にライザップに出会い、改めてダイエット行うことを決意しました。ライザップでのトレーニングを始めてから外見はもちろん、内面にも効果が表れて、主治医が驚くほど糖尿病の数値が改善しました。下の子がまだ中学1年生なので、その子が成人して結婚するまでは元気で、いつまでも格好良い父親でいられるように健康第一で長生きしたいなと思います」と語っている。

■ 嶋大輔コメント

元々スポーツクラブに通っていたことがあるので、トレーニングには不安はありませんでした。

トレーニングは最初からきついのかなと思ったんですが、週2回~3回、50分ずつのトレーニングなことと、糖尿病で血圧も高かったので医師に相談しながら、徐々に負担をかけていきました。だから、毎日きついというのはなかったです。

一方で、カロリー制限などはやったことがなく、食事制限に対する不安はありました。イメージだと「食べられない」と思っていましたが、「本当に食べて良いの?」というぐらい、いろいろな食事を食べています。むしろ「食べてください」と言われてすごく気持ちが楽になりました。

定期的にかかりつけ医の健康診断へ行くんですが、運動しすぎで尿酸値が高めになったりすると「水分をしっかり摂って肉を控えましょう」と医師から指導を受けます。

トレーナーさんは、その指示に沿って食事・運動メニューを調整し、減量のペースが落ちないようにしながらも最大限に安全に配慮してアドバイスしてくれるんです。

もちろん、日々の体調についてコミュニケーションを欠かさず、僕ファーストで見ていただけるので、すごく心強いです。

■ 松尾トレーナーコメント

嶋さんは、左右の肩の痛み・腰痛・糖尿病・高血圧などがありました。そのため、運動のしずぎや追い込みすぎないことを意識したトレーニングを行いました。

食事も糖質・炭水化物の摂取量を減らしすぎないなど、内容を調整しながら、一般のお客さま以上に密に医師と連携して、トレーニング内容や食事内容を決めていくところがポイントです。

(ザテレビジョン)

高血圧予防には血管を丈夫にする「サ・カ・ナ・ス・キ・ヤ・ネ」が合言葉!

血液が流れるときに血管の壁に正常より強い圧力がかかり続ける状態を高血圧症といいます。この状態をそのまま放置しておくと血管が固く狭くなり、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる病気を引き起こす原因になります。高血圧を予防するには、毎日の食生活が重要です。「サ・カ・ナ・ス・キ・ヤ・ネ」と覚え、各食材を毎日食べるよう心がけましょう。

血管を丈夫にする!サ・カ・ナ・ス・キ・ヤ・ネ

「サ」:魚
 魚にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、動脈硬化や血栓を予防し、血中LDLコレステロールを減らす効果があります。
 《食材》サンマ・サバ・アジ・サケ・ブリ・イワシ・マグロなど

「カ」:海草
 海草のヌルヌルした成分は、ドロドロ血液の原因であるコレステロールや脂質の吸収を抑えます。
 《食材》昆布・わかめ・めかぶ・あおさのり・ひじきなど

「ナ」:納豆
 ナットウキナーゼという成分が、血管中にできた血のかたまりを溶かします。

「ス」:酢
 酢に含まれる酢酸には血圧を下げる働きがあるといわれています。少量の酢を毎日摂ることで効果が得られやすいようです。
 また、食塩のかわりに調味料として酢を使うことで味の物足りなさが解消され減塩にもつながります。(※)

」:きのこ
 きのこ類に含まれるβ-グルカンは血圧や血糖値のコントロールにも効果が期待されています。
 《食材》しいたけ・しめじ・まいたけ・えのき・エリンギなど

「ヤ」:野菜
 カリウムが多く、高血圧の要因となる塩分を排出してくれます。また豊富に含まれるビタミンAやCの抗酸化作用で、活性酸素による血管への攻撃を抑えます。
 《食材》ブロッコリー・ほうれん草・トマト・キャベツ・にんじんなど

「ネ」:ネギ
 ネギに含まれる辛味成分は、血液凝固を抑え、血液をサラサラにする働きがあります。
 《食材》長ねぎ・玉ねぎ・にんにくなど

 そのほかにも、減塩・禁煙・水分をたくさんとることが、高血圧を予防すると言われています。バランスのとれた食生活で、丈夫な血管を作りましょう。

【参考・参照】
(※)多山賢二 生活習慣病に及ぼす食酢の効果 日本醸造協会誌 Vol. 97 (2002) No. 10 P 693-699

血管力を高めると美肌になれるってホント?

「血管力」とは血液の流れ方を調節する力のこと。この機能が正常に働くと、栄養と酸素が肌全体にスムーズに運ばれて、老廃物が排泄される機能が整います。血管力が高いと、季節の変わり目に起こりやすい肌トラブルの緩和に効果があることが分かってきました。

血管力を高める方法3つをご紹介しますので、さっそく今日から実践し、美肌効果を感じてくださいね。

・今すぐ読みたい→
美肌は腸内環境から!食事で内側からキレイを作る方法 https://cocokara-next.com/food_and_diet/beautiful-skin-intestinal-environment/

血管力を高めて美肌に近づく3つの方法

1.美肌に効果的な栄養素をとり入れる
■オメガ3脂肪酸
 マグロ・カツオ・アジ・さば・さんまなどの青魚にはオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれています。DHAは赤血球や血管壁に柔軟性を与える働きや、血中の中性脂肪を減らす働きがあります。EPAは血管に沈着する血小板のかたまりを溶かし、血栓の形成を予防します。

植物性食品では大豆・くるみ・亜麻仁油・しそ油などにオメガ3脂肪酸が含まれています。これらの成分はDHAやEPAの前駆体となるα‐リノレン酸を含んでいます。 血液の流れが良くなると、カラダのすみずみに栄養と酸素がスムーズに運ばれ、老廃物は正常に排泄されるようになります。

■クロロゲン酸
 クロロゲン酸はコーヒー・なす・ごぼう・さつまいも・ジャガイモ・春菊・プルーンなどに含まれているポリフェノールの一種です。クロロゲン酸には悪玉コレステロールを抑制する効果があり、血管に沈着する余分な悪玉コレステロールを溶かして血液の流れを良くしてくれます。

 また、クロロゲン酸は抗酸化力が強く、活性酸素を抑制する作用があります。活性酸素が体内に過剰に発生すると、悪玉コレステロールを酸化させたり、動脈硬化を引き起こしたりして、血管を老化させる原因になる可能性があります。

■ラクトトリペプチド(LTP)
 ブルーチーズや乳酸菌飲料に含まれているラクトトリペプチド(LTP)は、乳酸菌が牛乳を発酵する過程で発見された成分です。乳タンパク質が分解されて、必須アミノ酸がつながった構造をとっています。血圧を下げる作用や血管機能を改善して、血管をしなやかに保つ働きがあります。

2.日常的に運動をする
 血管力をつけるおすすめの運動は、ウォーキング・ジョギング・エアロビクスなど、ふくらはぎをよく動かすエクササイズです。ふくらはぎの筋肉はカラダの中でも大きく、その筋肉を動かしてあげると、弛緩と収縮を繰り返して、末端の血液が心臓に戻されるポンプのような役割をします。

 血行がよくなると、血管内の血管内皮細胞からの一酸化窒素(NO)の分泌が増えます。この成分は、血管を柔軟にし、血管内にできるコブや炎症、血栓の形成を予防して、血流を改善する働きがあります。血液の流れがサラサラしていると、カラダのすみずみに栄養と酸素が行き渡り、肌の新陳代謝が正常におこなわれるようになります。

3.喫煙の害を知りましょう
 喫煙で体内に吸い込むニコチン・タール・一酸化炭素などの化学物質は血管内皮細胞を傷つけてしまいます。血管が弾力性や柔軟性を失うと、内壁にコブのようなかたまりができ始め、コブが大きくなると血液の流れが悪化し、血管が狭くなった箇所に血栓が詰まりやすくなります。喫煙することで酸素と栄養素をカラダ全体に運搬する機能が低下し、肌の再生能力が落ちるだけでなく、病気のリスクも上がります。血管力を上げるためには、禁煙を心掛けましょう。(※)

 血管の若さと肌の美しさは比例すると言われています。血管を美しく保つことは、美肌作りにとっても大切。今日からさっそく血管力をつける3つの方法を意識してみてくださいね。

【参考・参照】
(※)e-ヘルスネット 喫煙と循環器疾患

「あすけんダイエット - 栄養士が無料であなたのダイエットをサポート(www.asken.jp)」

[監修:あすけん 管理栄養士]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

糖尿病専門医が伝授「高血糖に効果!筋力アップウォーキング

「新型コロナウイルスによる健康問題はいろいろ指摘されていますが、中高年以上の層で全体的に共通しているのは、ストレスによる血糖値の上昇傾向です」う話すのは工藤内科の副院長で、糖尿病内科医の工藤孝文先生。実際、私の患者さんで、コロナ禍でも運動量にも食事にも変化はなかったのに、血糖値が上がったという人が少なくありません。その原因は、連日のコロナウイルスについてのニュースなどによるストレスではないかと考えられます」(工藤先生・以下同)

通常、血糖値が上がる理由は、食事が関係している。血中のブドウ糖の量が多くなってくると、すい臓から分泌されるインスリンが糖を脂肪に変え、体は脂肪細胞をため込むようになる。ところが、血中の糖が増えすぎると、インスリンの糖分解が追いつかなくなって糖尿病になる。さらに体脂肪が増え続けると、血糖が血管を傷つけて炎症を発生させたり、血管を詰まらせるようになるのだが、多くの場合はその前に、食事や運動、あるいは服薬で血糖をコントロールする。

しかし、ストレスはアドレナリンなど血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させるため、余計に注意が必要となるのだ。しかも、高血糖は糖尿病だけでなく、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを高めることもわかっている。「ですが早めに対策をとれば、改善が可能です。いまの生活習慣に少し足すだけでできることがあります」それが次の「3分間早歩き」だ。基本の「3分間早歩き」で「メリハリ歩き」を行う。

■基本の3分間早歩き

【1】一歩踏み出す

やや大股で足を踏み出し、かかとから着地する。かかとに少し衝撃が加わる程度に。ひじは90度くらいに曲げ、手は軽く握る。

【2】後ろ足で蹴り出す

前足の足裏を全部地面につけ、体重を移動させながら後ろ足のつま先で蹴り出して前進する。※正しい姿勢で体重移動を意識して、前を向いて歩こう。

【3】逆の足を踏み出す

2で前足に完全に体重移動したら、逆の足を同様に踏み出して、かかとから着地する

【4】リズミカルに繰り出す

同様に後ろの足で蹴り出す。体重を後ろから前に移動し、左右に揺れないようにすること。

■効果を上げるメリハリ歩き

【基本姿勢】まっすぐに立つ

頭のてっぺんから糸でつるされているように背筋を伸ばして立つのが基本。耳、肩、足の付け根、くるぶしが一直線になるように。

【普通歩き】軽いウオーキング(3分)

自然な歩幅で、自然な呼吸を保って歩く。姿勢、視線などはきちんと意識して。最初は普通に歩いてウオーミングアップ!3分ごとにスピードコントロール。

【早歩き】息が上がる早歩きを(3分)

歩幅を広げ、ひじを90度に構え、腕を大きく振って速度を上げて早歩きをする。すこし息が上がる程度に。※歩幅は身長×0.45〜0.5(160センチの人なら72〜80センチ)効果的な筋力アップには、次の「効果的な筋力アップウオーキング」のように、視線や姿勢に気をつけて、全身の筋肉を使うことがポイントだ。この歩き方を続けると、体が締まり、ダイエット効果も期待できる。

■効果的な筋力アップウオーキング

・視線は10〜20メートル先を見ると前かがみにならず、安全も確保。
・背筋を鍛えるために、背筋を伸ばし、猫背にならないように。
・ひじを90度に曲げて大きく振ることで、安定してスピードアップが可能に
・意識しておなかをへこませる。大きく息をすると、より腹筋が鍛えられる。
・最も大切なのは太ももの大きな筋肉に負荷をかけること。
・ふくらはぎの筋肉にも力がかかる歩幅でしっかり歩く。
・かかとから着地すると、足がしっかり伸び、衝撃は骨の強化にも。

「筋肉には、瞬発力に必要な速筋と持久力に必要な遅筋があります。歩くのに必要なのは遅筋ですが、『3分間早歩き』をすることで速筋も鍛えることができます。速筋と遅筋を交互に使うことで、代謝バランスのよい体ができるのです。私も『3分間早歩き』を実践して減量に成功し、姿勢がよくなったと言われます」

また、ウオーキングは有酸素運動だが、「3分間早歩き」の間は無酸素運動に近い。「1日20分程度の有酸素運動が奨励されていますが、有酸素運動に無酸素運動を組み合わせると、20分以下でも十分に筋肉がつくられますし、糖や脂肪の代謝も促進されるようになるのです」通勤時間や買い物へ行くときなど、普段の生活に「3分間早歩き」を加えるだけでいい。しかもこれなら食べる量を変えなくてもいいので、無理なく長く続けられる。早速実践して、生活の中にメリハリをつけよう!

新型コロナ 外出自粛で糖尿病悪化に注意 適切な受診と運動を

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響で、高齢者や基礎疾患がある人の健康状態が懸念されている。院内感染を恐れて病院を敬遠し、必要な受診を控える人が出ているためだ。特に症状が見えにくい糖尿病は気付かないうちに悪化しているケースがあるといい、済生会松山病院(愛媛県松山市山西町)の梅岡二美・内科部長は「新型コロナの重症化を防ぐためにも良好な血糖コントロールが重要」と適切な受診や運動を呼び掛けている。


 同病院では3月下旬ごろから外来患者が減り、通院の間隔を空ける人や、高齢者の代わりに施設関係者が薬を取りに来るケースなどが出てきた。感染縮小に伴い久しぶりに診察に訪れた人の中には、自己判断で薬を中断したり、家に閉じこもって運動不足になったりして血糖値が悪化している事例があったという。


 梅岡医師は「糖尿病だと新型コロナに感染しやすいと誤解している人が多い」と指摘し、中国や米国のデータでは感染者に占める糖尿病の患者数は国民全体での有病率と大差ないと説明。感染した場合に重症化する割合は高いが、血糖コントロールが良好な場合の死亡率は糖尿病でない人と同等との報告があり「まずはこれまで通りの治療をしっかり継続しておくことが大事」と強調する。


 糖尿病の治療は食事・運動療法が基本で、新型コロナの影響により通院のほかジム通いや散歩の機会が減った影響が大きいとみる。梅岡医師は「3密」を避けた場所での散歩を中心に、できる範囲で体を動かすよう提案。その際は小まめな水分補給も重要とする。「新型コロナ感染を恐れるあまり家に閉じこもったり、受診間隔を長くしたりして血糖値が悪化したら本末転倒。主治医と適切に相談してほしい」と訴える。


 急速に筋力が低下した高齢者や感染への不安からうつ病を発症する人、新型コロナの影響で解雇されてアルコール依存症を悪化させた人も見られるという。同病院の渡辺浩毅副院長は「行き過ぎた自粛や恐怖感による影響が出てきている」と警鐘を鳴らす。糖尿病が悪化すれば心疾患などの合併症も懸念されることから「救急医療の圧迫など、さまざまに影響する可能性もある。感染拡大の『第2波』に備えて健康を取り戻すためにも、受診の必要性を正しく理解してほしい」と話している。

1日4分で筋力アップ、注目の運動「HIIT」とは 血糖値の改善にも

健康診断のたびに指摘されながら、なかなか実行できないものの一つが運動だろう。そんな中、体を1日たった4~5分動かすことで、筋力アップや血糖値の改善などにつながるという運動「HIIT」(ヒット)が注目されている。 【画像】高強度インターバルトレーニング「HIIT」メニューの一例  福岡市博多区のみらいクリニック(今井一彰院長)トレーニングルーム。「あと10秒。頑張って足上げてー」。時計を手にしたインストラクターに励まされながら、60代の男性2人が、懸命に体を動かしていた。  運動の中身は、膝を曲げ、腰を落としては立ち上がる屈伸運動「スクワット」や、ジャンプして足を開閉しながら、手で弧を描く「ジャンピングジャック」など4種。一つずつ全力で20秒間やっては10秒休憩のセットを、2回繰り返す。


「もも上げダッシュ」では必死の形相

 1巡目こそ手足は動いていたが、2巡目はへとへと。最後のメニュー、その場で大きく足踏みする「もも上げダッシュ」では、必死の形相を浮かべる男性たちの足は床から5センチと上がらない。5分足らずだが、運動後の荒い息づかいは、しばらく収まらなかった。  休憩(10~30秒)をはさみながら強度の高い運動(20~60秒)をいくつか組み合わせて行う。これが高強度インターバルトレーニング「HIIT」(High-Intensity Interval Training)の基本形。クリニックでは要介護状態になるのを防ぐ「フレイル外来」の一環で取り入れ、効果を上げているという。


妻に「このままじゃ、車椅子生活になるよ」

 HIITを終えた男性(66)に話を聞いた。福岡市内で会社を経営しているというこの男性の場合、運動は月1回のゴルフくらい。日常的に体を動かすことはあまりなく、室内でつまずくことも多い。妻に「このままじゃ、車椅子生活になるよ」と諭され、昨年7月から週1回クリニックに通い、HIITなどで30分、汗を流すようになった。  それ以外は毎日の飲酒など、食生活も含めて以前通りだそうだが、多過ぎると動脈硬化などの危険因子になる総コレステロール値が324から263に低下。血液の状態が良くなった効果か歯周病が著しく改善し、かかりつけの歯科医師に不思議がられたという。  「きついけど時間はほんの少し。今は、これをやらないと1週間が終わらない感じ」。男性は軽い足取りでクリニックを後にした。


この程度の運動で、なぜ効果?

 この程度の運動で、なぜ効果が出るのか。今井院長の説明はこうだ。  運動には、酸素を取り込みながら行い脂肪の燃焼などつながる「有酸素運動」と、息を止めて行い筋力や瞬発力の向上につながる「無酸素運動」がある。  前者はジョギングやウオーキングなど、後者は筋肉トレーニングや短距離走などといった別メニューで行う。一方、HIITは短時間・高強度の運動で体を追い込み、心拍数を自分の限界(最大心拍数)に近いレベルまで上げられるので、二つの運動の目的を同時に達成できるのだという。


 興味深い効果の一つが、運動後のエネルギー消費(体脂肪燃焼)の持続だ。アフターバーンと呼ばれる。最近の研究で、ジョギングのような有酸素運動を20~30分やった場合のアフターバーン持続時間は約2時間だが、4分間のHIITでは最大48時間持続することが明らかになったという。  運動後も普段より酸素摂取量が増えるため、エネルギーの産生工場といわれる細胞内のミトコンドリアが増加して活性化すると考えられ、糖尿病や高血圧の改善なども期待されるというわけだ。今井院長は「わずか数週間で動きに切れが出て、体が楽になった、疲れにくくなったと実感される方も多い」と言う。


「ストイックに長時間運動する必要はない」

 階段の昇降のような息が軽く弾む、もしくはそれ以上の強度の身体活動(中高強度身体活動)は、継続時間が10分未満でも積み重ねられることで要介護化のリスクは下がる-。福岡県篠栗町は3月末、九州大、福岡工業大との共同研究成果として、こんな内容の発表をした。HIITの有効性を裏付ける結果と言える。  「ストイックに長時間運動する必要はない。新型コロナウイルスの感染防止のため在宅を強いられる中、室内で効果的に筋肉の量と質を高められるHIITは、高齢者のみならず、あらゆる年代にとってお勧めの健康法」(今井院長)  下半身の筋肉量は20代から少しずつ減っていく。記者(59)も今年1月、HIITを始めた。まだ4カ月だが、駅の階段を上るのが苦にならなくなっている。


 HIITのやり方はさまざまだが、みらいクリニック(福岡市)は、軽めのメニュー「自宅でできる! ゆるHIIT」の動画をホームページで公開している。  あまり運動をしたことのない初心者、病気で立つのが難しい人、少し慣れた人向けの3パターンで、20秒やって10秒休む4分間のメニューが計20用意されている。  今井一彰院長は「理想は週3回だが、週1回からでもOK。息が上がるので、やる時はマスクはせずに」と呼びかけている。 (佐藤弘)

【医師に聞く】糖尿病になると失明するってホント?

「糖尿病になると失明する」、と聞いたことはないだろうか。失明は合併症の一つだ。失明までには至らないだろうとたかをくくっていると、とんでもないことになる可能性がある。40歳代になると糖尿病の患者は一気に増えるが、最近は子どもや若い人の発症も増加しているという。ほとんどの糖尿病は体質のほかに、運動不足や高カロリーの食事、肥満などが原因となる。不規則な生活をしている人は要注意だ。日本糖尿病学会糖尿病専門医の根岸先生に、詳細を伺った。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]


【この記事の監修医師】 根岸雅嗣先生(根岸医院 院長) 帝京大学医学部卒業後、同附属溝口病院に勤務。衛生文化協会城西病院を経て、2016年より祖父の代から続く東京都杉並区天沼の根岸医院院長。地域のかかりつけ医として地域医療に尽力するとともに、糖尿病専門医として糖尿病患者に寄り添い、より高度な治療を提供している。日本糖尿病学会、日本内科学会、日本東洋医学会(漢方)所属。


全員が失明するわけではないけれど

編集部: 糖尿病になると失明するといいますが、本当ですか? 根岸先生: いえいえ、全員が失明するわけではありません。 知っておきたいのは、失明は糖尿病の合併症の一つである「糖尿病網膜症」が進行して起こるということです。 合併症には、細い血管の合併症と太い血管の合併症があり、網膜症は細い血管の合併症です。網膜には毛細血管が張り巡らされているのですが、高血糖によって毛細血管が詰まったりして徐々にそれらの血管に障害が出て、視界が狭くなったり視力が低下したりなどの症状が進行し、やがて失明してしまうのです。


編集部: 突然失明するのではなく、網膜症が進行することが原因なのですね。それを聞いて少し安心しましたが、失明する人は多いのですか? 根岸先生: 日本の糖尿病患者さんのうち網膜症にかかっている人の割合は、15%程度だといわれています。また、年間約3000人が糖尿病網膜症で失明しているというデータもあります。成人になってからの失明の原因の第2位が糖尿病なんですよ。けっして少ない人数ではありません。 だからこそ、糖尿病は早期に見つけ、きちんと医師のもとで治療していただきたいのです。そうすれば、合併症を起こさずに普通の生活を送ることもできます。


自覚症状がないから恐い

編集部: 網膜症は自分で気づくような症状はありますか? 根岸先生: 年齢に関係なく、網膜症の初期では自覚症状はありません。自分ではわからないんですよ。だから怖い。 編集部: 気づかないうちに進行するんですね。 根岸先生: そうです。糖尿病網膜症は初期の単純網膜症から、増殖前網膜症、増殖網膜症へと進んでいきます。増殖前網膜症まで進むと眼がかすむ、視力が低下するなどの症状が出ることがありますが、単純網膜症はもちろん、増殖前網膜症でも自覚症状がないケースがあります。 編集部: 自覚症状が出てくるのは増殖前網膜症または増殖網膜症まで進行した段階ということですね。どのような症状なのでしょうか? 根岸先生: 増殖前網膜症では、上記のとおりです。増殖網膜症では、たとえば飛蚊症といって、眼球の動きに合わせて黒いゴミのようなものが見えることがあります。


ほかに、視野が狭くなる、見ているものの一部が黒く見えるという症状が出ることもあります。網膜剥離を起こすこともありますね。皆さんが気にしている失明も、増殖網膜症の段階で起こります。 また、糖尿病黄斑浮腫というまったく別の病気があるのですが、これは3つの網膜症のどれにでも合併して起こります。この場合は、失明することは少ないのですが、視力が低下してしまいます。 ですから、糖尿病にかかったらまったく網膜症がない人でも、半年から1年に一度は眼科を受診するよう患者さんには指導しています。すでに網膜症のある人は、眼科医の指示どおりに受診してもらっています。 編集部: 眼科ではどのような治療をするのですか? 根岸先生: レーザーでもろくなった血管を焼く網膜光凝固術や、さらに進行した場合には目の中の出血を取り除く硝子体手術という高度な手術をすることもあります。眼科の領域については眼科医が治療しますが、一度視力が低下すると、手術をしてもなかなか視力は回復しないように思います。


多様な合併症。その怖さを知ることも予防のひとつ

編集部: ところで、糖尿病の細い血管の合併症には網膜症以外にどのようなものがあるでしょう? 根岸先生: まず、細い血管の合併症では糖尿病腎症がありますね。微量アルブミンと言う細かいたんぱくが、尿からどれだけ出ているかを観察して経過を見ていきます。食事療法や内服薬などで血糖や血圧を適正に保つと、微量アルブミンは減少します。 糖尿病腎症が進行するとたんぱく質や塩分、カリウムを制限をしなければいけなくなります。さらに病態が進むと透析も必要になるので、腎臓内科医と連携して治療することになります。透析とは、糖尿病の進行によって血液のろ過機能を失った慢性腎不全の状態において、人工的に血液中の余分な水分やミネラル、老廃物を浄化する治療法です。 なお糖尿病腎症で透析導入になった方は感染症や心不全になりやすいため、他の疾患で透析になった方より予後が悪く、5年後生きている確率(5年生存率)が47.9%という報告もあります。 編集部: 細い血管の合併症は他にもありますか? 根岸先生: あとは糖尿病神経障害ですね。末梢神経障害のほかに、自律神経に障害が出ることがあります。末梢神経障害というのは、足がしびれたような感じや痛みなどが出ます。自律神経障害だと、便秘しやすくなったり、立ちくらみがひどくなったりすることがあります。 なお明らかな自律神経障害を有する方は無痛性心筋梗塞や致死性不整脈が原因で3年後に生きている確率(3年生存率)は47%という報告もあります。 私は、足のしびれの治療には漢方薬を使うことが多く、処方した患者さんの4割くらいで効果が得られています。ある漢方の臨床研究では、7割近くの患者さんに有効であったという報告もあります。 編集部: 糖尿病の合併症はずいぶん多様なのですね。 根岸先生: そうなんです。


ほかにも、最初に説明したように太い血管の合併症もあります。動脈の壁の弾力性がなくなって、血管が詰まりやすくなる動脈硬化ですね。動脈硬化によって、命の危険もある心筋梗塞や狭心症、脳梗塞を引き起こすことがあります。 なお、網膜症や腎症を合併している人は、無症状でも一定の割合で心臓の血管が狭くなっている(無症候性心筋虚血)という報告もあるので、私は合併症の進んでいる患者さんには心血管の精査もするように心がけています。 編集部: これだけ医学が進歩しても糖尿病の合併症はなくならないんですね。


根岸先生: 確かにそうなんですが、失明するほど糖尿病が進行するというケースは、恐らく、昔よりはずいぶん減っていると思います。薬が格段に進歩しましたからね。 編集部: そんなに違いますか。


根岸先生: 私が医師になって2年目の2009年に、すい臓からのインスリンの分泌を調整して、すい臓を保護する働きもあるDPP-4阻害薬という薬が出たのですが、それが出る前の糖尿病医療と今の糖尿病医療は劇的に違います。 さらにインスリンの効きをよくするメトホルミン大量投与の解禁、体重減少作用が強いとされるSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の強力版であるGLP-1受容体作動薬(こちらは注射薬)の発売により、糖尿病治療は格段に進歩しました。 私が医師1年目の頃には、「絶対に入院しないと駄目だろう」という患者さんが数多くいましたが、今は糖尿病だけでの入院はかなり減っていると思います。とはいえ、油断してはいけません。糖尿病の治療は専門医に管理してもらいながら、あきらめずに、一生付き合っていく気持ちで続けることが大切です。


編集部まとめ

根岸先生のお話を伺い、糖尿病の合併症は糖尿病そのものより治療も大変で、命に関わることもあることがわかりました。 健診では大丈夫だったという人も、糖尿病なんて関係ないと思っている人も、肥満には十分気をつけたほうがいいようです。おなかに脂肪がたまる内臓脂肪型肥満の人は、腕やおしりなどに脂肪がつく皮下脂肪型肥満の人に比べると糖尿病を発症することが多いのだそうです。


糖尿病を悪化させる冬の「食べ方」

 糖尿病は悪化すると死に直結します。一般的に、冬の間に症状が悪化し、腎臓の機能が低下して、春になると人工透析に移行する患者さんが増えます。いったん人工透析を始めたら、もう止めることはできません。

 糖尿病が怖いのは、人工透析を招く腎臓機能の低下に加えて、合併症として目の病気である「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれなど末梢(まっしょう)神経が侵される「糖尿病性神経障害」を引き起こすことです。さらに、「心筋梗塞(こうそく)」「脳梗塞」の引き金にもなります。

私も糖尿病で薬を飲んでいる

 じつは私は、2005年から、血糖値を下げるために薬が必要になりました。最近は、血糖降下薬の「グリミクロン」を朝夕1錠、「エクア」を朝夕1錠、「メトグルコ」を毎食後3~6錠、飲み始めています。

 私が糖尿の気があるとされたのは 血糖値の検査で、HbA1c(過去1~2か月の血糖の平均値)が7.2と当時の基準値(6.2%未満が優、6.2~6.9%が良)を超えていたからです。薬を飲み始めて2、3か月で血糖値は下がりました。しかし、服用を止めると上がるので、以来、薬と血糖値の測定は欠かせなくなっています。

怖い低血糖

 ただ、糖尿病が本当に怖いのは、高血糖ではなく低血糖です。血糖値を下げ過ぎてもいけないのです。低血糖になると、冷や汗をかいたり、目がかすんだりして集中力がなくなり、最後には言葉が出にくくなったり、呂律(ろれつ)が回わらなくなったりします。意識を失い、倒れる場合もあります。すでに私は、こうした経験を3度しています。

 これは変だと思って、その時は即座にチョコレートなど甘い物を食べ、ことなきを得ています。もし、なにもしなかったら、そのまま意識を失ったかもしれません。糖尿病患者さんは、よく私と同じようなことを訴えます。ですから、常に甘い物を携行するようアドバイスしています。
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血糖や血圧をひたすら管理

 糖尿病は、一度発症したら治すことはできないため、それ以上悪化しないよう、血糖値、血圧値といった数値をひたすらコントロールすることが治療のポイントになります。血糖値を下げるためにクスリを服用しますが、大事なのは食事療法です。というのは、糖尿病の原因は、遺伝的な部分もありますが、主に食事だからです。

問題は不健全な食事

 2019年4月、アメリカの医学誌に、最新の研究報告が発表されました。ワシントン大学などによるこの研究は、約40か国の130人以上の研究者が参加して行われた大規模なもので、「不健全な食事」がいかに死に直結するかを明らかにしました。年齢や性別、地理的な影響、経済状態などにかかわらず、食事は主要な死の原因となっていました。

 2017年、世界で死亡した1090万人の主な死因は、第1位が心血管疾患、第2位ががんで、糖尿病はこれに続く第3位でした。そして、心血管疾患による949万7300人、がんによる91万3100人、糖尿病による33万8700人の死亡に、食事が関連していました。

炭水化物や塩分の摂り過ぎはダメ

 では、どんな食事が不健全かというと、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと、塩分の摂取量が多いことです。また、脂肪の多い肉類、糖質、トランス脂肪酸の摂(と)り過ぎも指摘されています。具体的に言うと、ご飯などの炭水化物、塩分を摂り過ぎるのはよくありません。私は、糖尿の気が出てから、食生活を変え、とくに炭水化物を摂り過ぎないようにするため、夕食にはご飯を控えています。野菜類も以前に比べ、多く摂るようにしています。

食習慣が変わる冬は要注意

 日本人にとって、冬は食事が普段と大きく変わる時期です。冬になると、温かい鍋物、汁物などを食べる機会が多くなります。ご飯はもとより、うどん、お餅など、炭水化物の摂取量も増えます。しかも、年末年始には、つい暴飲暴食しがちです。冬につきものの、鍋物、うどん、ラーメン、お餅、おせんべい、ミカンなどは、血糖値を上昇させるので要注意です。

 日本人は欧米人と比べると、肥満の人は多くありません。それなのに、糖尿病患者が多いのは、民族として遺伝的な要素を持ち合わせていると考えられ、最近は糖尿病を引き起こす遺伝子の解明も進んでいます。遺伝的に糖尿病になりやすいのに、さらに偏食を重ねたら、死期を早めるだけです。冬場は十分気をつけましょう。

富家 孝(ふけ・たかし)

 医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている

〈隠れ高血糖〉にご用心! 健康診断の数値が正常でも、油断は禁物です

だるい、疲れやすい、体重が増えてきた……。それらの不調は、高血糖が原因かもしれません。特に更年期以降は、糖質の摂りすぎに要注意。そのメカニズムと、血糖値を抑える食べ方をお伝えします(構成=天田泉 取材・文=鈴木裕子 イラスト=おおの麻里)

◆女性は年齢とともに血糖値が上がりやすくなる

40代半ばすぎから感じるようになった「何となく不調」。その原因の一つは、隠れ高血糖かもしれません。「健康診断で血糖値に異常なしという結果が出ても、実は高血糖の可能性がある」と話すのは、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生です。

「近年、こうした隠れ高血糖の女性が多くいることがわかってきました。私の実感では、40代半ばすぎの女性の2人に1人が、隠れ高血糖だと言っても過言ではありません」(山田先生。以下同)

一般的に健康診断で調べるのは、空腹時の血糖値。しかし「注目すべきは食後の血糖値です」と、山田先生は指摘します。

食後、血糖値が異常に高くなる状態を食後高血糖といい、さまざまな不調や疾患を引き起こす原因になるのだとか。

「食後に血糖値が急上昇し、その後また下がるという乱高下の状態が続くと動脈硬化が起こりやすく、血管が弱くなります。それによって、心筋梗塞脳梗塞のリスクが高まるのです。さらに、血糖値の乱高下は脳細胞を傷つけるという研究結果もあることから、認知症のリスクが上がると考えられています。また、食後高血糖は糖尿病の引き金にもなるのです」

いつまでも健康でいるためには、健康診断の結果に異常がなくても、高血糖の予防に努めましょう。

「特に更年期以降は、女性ホルモンの減少によって骨が弱くなりやすく、筋肉の萎縮も加わって、血糖値が上がりやすくなるので、さらに注意が必要です」

◆抑えるべきは、カロリーではなく糖質

高血糖の予防には、まず糖質を摂りすぎないことが肝心。これまでは摂取カロリーを抑えて体重をコントロールすることがよしとされてきましたが、「大切なのはカロリー制限ではない」と山田先生は話します。

「さまざまな研究の結果、中性脂肪が増える原因は糖質の摂りすぎであることが判明しています。また、カロリーを制限してタンパク質や脂質の摂取量を減らすより、両方をしっかり摂るほうが、エネルギー消費量を上げるのです」

血糖値を上昇させるのも中性脂肪を増やすのも糖質の摂取が鍵に。そこで、山田先生が提唱しているのが、ゆるやかな糖質制限「ロカボ」です。

「ポイントは、糖質の摂取をゼロにしないこと。糖質を極端に制限すると、ストレスですぐに挫折してしまいます。その点、ロカボは食べ方を工夫する必要があるものの、主食もスイーツも摂ってかまいません。おかずはおなかいっぱい、がルール。制限がゆるやかなので、続けやすいのです」

おいしく、楽しく、長く続けられるのが、ロカボの最大のメリット。

「糖質をセーブして血糖値をコントロールすると、細胞の糖化を防ぐことになり、不調の改善だけでなく、見た目の若さを維持することにもつながると期待されます」
健康を保ち、美容効果も望めるロカボ生活をはじめてみませんか。

◆高血糖チェックリスト

当てはまる項目にチェックを入れてみましょう。数が多いほど、高血糖のリスクが高くなります

 □ 最近、太ってきた
 □ ダイエットしたが、リバウンドしてしまった
 □ 階段を上がるのがつらくなってきた
 □ ぐっすり眠れない
 □ 40歳を超えている
 □ 運動不足だ
 □ 昼食後、眠気やだるさを感じる
 □ 日々、ストレスを感じている
 □ 甘いものに目がない
 □ 家族に糖尿病の人がいる 


◆「ロカボ生活」を続ける5つのポイント
「無理なく、おいしく、楽しく」が継続のカギ。食べ方や食材選びのポイントを紹介します

◆【1】3食+間食で1日70~130gを摂る
ロカボは、1食につき糖質を20~40g、そのほかにデザートなどの間食分が10gで、1日のトータルを70~130gにする、という食事です。「血糖値の乱高下は、糖質を少量ずつ分けて摂ることで防げます。1食分の目安としては、ごはんなら半膳、食パンなら6~8枚切りを1枚、麺類なら半玉程度です」(山田先生。以下同)

◆【2】意外と知らない「高糖質」と「低糖質」の食材
健康にいいといわれていても、実は糖質が多い食品があります。「ヘルシーなイメージのあるフルーツやスムージーなどには、糖質がたっぷり含まれています。根菜類や玄米、そばなどにも多い」逆に、高脂質で低糖質の食品も。「カロリーが高いフォアグラやステーキ、アボカド、ナッツ類は糖質が少なく、たっぷり食べても中性脂肪はたまりません」

【〇 高栄養価で低糖質の食材】
【× ヘルシーに見えて、高糖質の食材】


◆【3】調味料の〈隠れ糖質〉に注意!
砂糖はもちろん、みりん、めんつゆ、焼き肉のたれ、酒などの調味料には糖質が多く含まれているので要注意。「最近は、糖質を含まない甘味料や低糖質の調味料も増えています。それらを上手に使いましょう」なお、バターや油は気にせずに使ってOK。ただし、市販のドレッシングには糖質が含まれているものも少なくないので、注意が必要です。

◆【4】低糖質食品を賢く選んで、おいしさを味わおう
ごはんや麺類、カレー、スイーツなどにも低糖質のものが続々と登場。「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になることが、何より大事。食品を賢く選べば、満腹感と満足感が得られ、ストレスを感じることなくロカボ生活を続けることができます」

◆【5】タンパク質を意識的に摂る
「タンパク質は、筋肉のもとになる栄養素。筋肉を鍛えることで、インスリンの働きもよくなります。体力低下を防ぐためにも、肉や魚、卵やチーズ、大豆製品などでタンパク質を積極的に摂ってください」

◆【6】無理のない運動を食後に行うとより効果的
「筋トレと有酸素運動を組み合わせた運動の習慣があるだけで、血糖値は下がりやすくなります。食後に行うと、より効果的です」とはいえ、がんばりすぎると、続けるのがつらくなってしまいます。「私は患者さんに『運動は何をやっても、いつやってもいい。やればやるほど効果的』とお伝えしています。まずは『毎日プラス10 分歩く』からはじめましょう」


糖尿病は治らない…はかつての話 ポイントは早期治療にあり

 これまでこの連載では、どういう生活が糖尿病のリスクを高めるか、糖尿病が将来的にどれほど大きな問題になるかを紹介してきました。患者さんによく話していることも、同様の内容です。今回は、糖尿病における「希望」について取り上げたいと思います。

 糖尿病の基本概念として「治らない病気」というものがあります。たとえば日本人の死因第1位のがんは、早期発見であれば、完治も可能です。ところが糖尿病の場合、一度発症してしまうと、その後は厳格な食事制限が必要で、いったん投薬が始まれば一生飲み続けなければならないというのが“常識”でした。

 ところが近年、それを否定する研究結果が発表されているのです。つまり、糖尿病も「治る」可能性があるのです。2017年9月にポルトガル・リスボンで開催された欧州糖尿病学会では、「糖尿病患者が減量で適正体重に戻すことで、投薬なしで正常の血糖値を維持できる(寛解)可能性が高い」との発表がなされています。


また、英国のニューキャッスル大学とグラスゴー大学の研究グループによって行われている「DiRECT」(糖尿病を寛解するための臨床試験)には、2型糖尿病患者298人が参加しています。これらの患者は低カロリー食を実施し、ウオーキングなどの運動を毎日行うとともに、専門スタッフからストレス対処法や睡眠法についてのアドバイスを受けています。

 このうち、発症後6年以内の2型糖尿病患者64人を対象に、食事療法や運動療法を中心とし集中的に体重コントロールに取り組む群と、従来通りの治療を行う群に振り分け、12カ月後の結果を見ました。

 すると、集中的に体重コントロールに取り組んだ群は肝臓や膵臓にたまった脂肪も減少し、血中の中性脂肪が低下。それに伴い、血糖コントロールが改善し、血糖値が正常化。約半数にあたる29人が2型糖尿病から離脱できたのです。

ある患者は、体重の適正化によって、肝臓の脂肪蓄積は30・4%から1・3%に、膵臓の脂肪蓄積は8・9%から7・5%に減少し、インスリン産生にかかわるβ細胞が正常化して膵臓が再起動。必要な量のインスリンを分泌できるようになり、2型糖尿病が“治った”のです。

 なお、2型糖尿病から離脱できた群の糖尿病の罹患期間は平均2・7年、改善しなかった群では平均3・8年でした。

■体質が“リセット”できる

 この「DiRECT」は継続して行われており、2型糖尿病から離脱できなかった人の原因を遺伝子レベルで追究することを目指しているとのこと。

 いずれにしろ、この研究から推測できるのは、糖尿病を発症して早い段階で徹底した体重コントロールに努めれば、内臓脂肪が減少し、膵臓が再起動する。


結果、インスリンを適切に分泌できるようになり、糖尿病から脱却できる可能性がある、とのことです。全員がそうならなかったとはいえ、「糖尿病を一度発症すると、うまく付き合うことはできても、“完治”は不可能」と考えられてきたことを考えると、約半数近くが糖尿病から脱却できた意味は非常に大きいと思います。

 患者さんの中には、「糖尿病と言われた。お先真っ暗だ。もう食事を楽しめない」と悲観的になる人がいます。または、「血糖値が高い。再検査を」と健診で言われたけれど、「糖尿病と診断されるのが怖い」「糖尿病は治らない病気なのだから、早く診断されても意味がない」などの理由から、再検査を受けに行かない人もいます。進行しないと自覚症状が出てこない病気なので、「仕事が忙しいから」と再検査を後回しにしている人も少なくありません。


しかし、「糖尿病を早期発見し、早期治療をすれば、完治の可能性もある」と考えれば、行動も変わってくるのではないでしょうか? また、糖尿病を改善するために徹底した体重コントロールをすれば、DiRECTの研究結果でも示しているように、内臓脂肪も減少しますから、脂質異常症や高血圧も改善します。一石二鳥、いや三鳥かもしれません。そして、いわゆる“体質リセット”ができる。「人生100年時代」ですから、60歳を過ぎても生き生き元気に過ごせることは、非常に重要です。



名医・博士の健康術/ 血糖値が下がる簡単! 筋肉運動

 ジョギングや過酷な食事制限よりも効果大で続けやすい!週2日の“ずぼらスクワット”で糖尿病は改善する!!

 糖尿病の治療では、薬での治療と食事療法がクローズアップされることが多く、運動療法は見すごされがちだ。しかし、血糖降下剤を服用せず、また、過酷な食事制限をしなくても、運動療法で血糖値を安定させることができる。

 運動療法といえば、ウォーキングを中心とする有酸素運動(酸素を必要とする運動)をお勧めする内科医がほとんどだが、うさみ内科院長の宇佐見啓治先生は、「ウォーキングは糖尿病の運動療法には向いていない」と断言する。
「歩くだけでは糖の燃焼の効率が悪く、代謝(体内で行われる化学反応)もあまりアップしません。また、高齢者は足腰が衰えているので、歩行中に転倒する恐れもあります。こうした点から、私は『有酸素運動を行っても、糖尿病体質の改善にはつながりにくい』と考えています」(宇佐見先生)

 それでは、どのような運動がよいのか? 宇佐見先生は、「筋肉を積極的に動かすと血糖値が下がるので、筋トレなどの無酸素運動がお勧め」と説く。
「私は、糖尿病は筋肉の糖代謝が低下して起こる病気だと確信しています。糖質を摂ると、腸から吸収された糖はブドウ糖になり、腹部臓器や脂肪組織、筋肉、脳に取り込まれます。この中で、ブドウ糖の取り込みの大部分を占めるのは、エネルギーの消費量が多い筋肉です。しかし、筋肉でのブドウ糖の取り込み率(糖代謝)が低いと、十分に取り込まれないまま血液中にあふれてしまい、糖尿病を発症させてしまうのです」(宇佐見先生)

★大きな筋肉を徐々に動かす

 また、筋肉の衰えも糖尿病の発症につながる重大な要因の1つだ。それは、血糖の調整をする「インスリン」というホルモンとの関係からも、見て取ることができる。
「インスリンは、ブドウ糖を細胞内に取り込む時に必要なもので、今までは、『糖尿病はインスリンの効きが悪くなったり、分泌量が減るなどして血糖値が下がりにくくなった結果、起こるようになる』と考えられていました。ところが、筋トレを行った時のエネルギー消費を調べたところ、筋トレ後にインスリンを使わなくても、ブドウ糖を筋肉の細胞に取り込めることが分かりました。つまり、筋トレをやれば、糖の代謝がアップするだけでなく、インスリンを使わずに血糖値を下げ、糖尿病体質を一掃させることができるのです」(宇佐見先生)

 とはいえ、糖尿病の改善だけが目的なら、ストイックに筋肉量を増やす必要はない。筋肉に蓄えられているエネルギー源のグリコーゲンを使い切れば、筋肉にブドウ糖が取り込まれにくい状態(インスリン抵抗性)が改善し、血糖値も自ずと下がっていくので、大きな筋肉をゆっくりと動かして、効率よくグリコーゲンを消費するようにしよう。

 そして宇佐見先生は、糖尿病の改善にお勧めの筋トレとして、「ずぼらスクワット」を推奨している。
「基本的には、ゆっくりとしたペースで行うスクワット(ひざの屈伸運動)です。これに独自のアレンジを加えることで、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンを効率よく使うことができるようになっています」(宇佐見先生)

★ゆっくりと筋肉を伸ばす

 ずぼらスクワットが、糖尿病の改善によい理由は2つある。1つは「大きな筋肉を集中的に鍛えられること」、そしてもう1つは「筋肉を伸ばす運動に重点を置いていること」だ。

 私たちの筋肉の約7割は、太ももやお尻、ふくらはぎといった下半身にある。「ずぼらスクワット」なら、こうした下半身の大きな筋肉を集中的に動かせるので、筋肉に貯蔵されたグリコーゲンを効率よく消費できるのだ。

 また、筋トレの動きは筋肉を縮める「短縮性運動」と筋肉を伸ばす「伸張性運動」に大別されるが、グリコーゲンの消費を促させるのは「伸張性運動」である。

 大腿四頭筋をはじめとする下半身の筋肉をじっくりと伸ばす「ずぼらスクワット」は伸張性運動なので、続けることで自然と「グリコーゲンが消費されやすい体」になっていくのだ。
「ずぼらスクワットを続けると、下半身の筋肉を強化できます。特にお年寄りの方は運動不足や食事量の不足で痩せやすく、75歳以上になると大腿四頭筋の筋肉量は40代に比べて2~3割も減ってしまうので、筋肉痩せを防ぐためにも、ずぼらスクワットは有効です」(宇佐見先生)

 気になる「ずぼらスクワット」のやり方だが、まずは両腕をまっすぐ前に出し、両足を肩幅よりもやや広げて立つ(ガニ股でもOK)。その後、4秒ほどかけてゆっくり腰を下ろし、ももが床となるべく水平になったところで静止し、その姿勢を2秒間キープする。あとは反動をつけずに、速やかに立ち上がる。

 それぞれの動作をゆっくり行うのがポイントで、呼吸を止めていきむと血圧が急上昇したり、心拍数が速くなってしまうので、呼吸を止めないで行う。また、1回ごとに30秒ほどの休みを入れることで、筋肉にブドウ糖(血糖)を効率よく取り込めるようになる。

★週2回のペースでOK

「ずぼらスクワット」を行う回数は、10回を1セットとした3セットが目安となる。しっかりと時間をかけて、3セットを20分ぐらいで行おう。体力が衰えている人は、これより少ない回数から始めても大丈夫だ。

 また、筋トレをやると筋肉の組織に傷がつくので、「ずぼらスクワット」は毎日行う必要はない。1日やったら休みを1~2日入れて、週2回ぐらいのペースで行うのが理想的だ。休んでいる間にたんぱく質の再合成が起こり、筋肉の傷が癒えて、より強化される。ぜひ、今日から始めてみよう。

◉健康診断の結果を再確認!「糖尿病」の数値の目安
*チェックする項目 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
*数値 6.5以上 → 糖尿病 5.9以下 → 基準値 5.5以下 → 理想値

◉大きな筋肉を、ゆっくりじっくり動かそう
(1)両腕はまっすぐ前に出して、両足は肩幅よりもやや広げて立つ
ポイント:ガニ股になってもいいので両足の間隔は広くとる。両ひざは必ず、つま先と同じ方向に向けて曲げていく。
(2)4秒ほどかけて、ゆっくり腰を下ろしていく
ポイント:腰を下ろすときに、曲げたひざが足のつま先より前に出ないよう注意する。
(3)ももが床となるべく水平になったところで止めて、2秒間体勢をキープする
ポイント:キープしたあとは、反動をつけずに速やかに立ち上がる。(1)~(3)を計10回、ゆっくり繰り返して1セットが完了。

◉宇佐見先生の運動療法“ずぼらストレッチ”
やり方
*(1)~(3)を10回1セットとし、1日3セットが基本。
*1セット内、1回ごとに30秒ほど休みを入れて3セットを計20分ほどかけて行う。
*週2日ほど行えば十分。1日やったら、休みを1~2日入れるのが理想。

注意点
血圧の急上昇を防ぐため、呼吸を止めないよう意識することが大切。腰を下ろすときに「い~ち、に~、さ~ん、し~」、下ろした腰を静止するときに「い~ち、に~」と声を出してカウントすれば、自然と呼吸しながら行える。

***************************************
監修/宇佐見啓治先生
うさみ内科院長。福島県立医科大学卒業後、付属病院第二内科に入局。福島赤十字病院内科勤務を経て、現職。運動療法による糖尿病や肥満、高脂血症などの成人病の治療に力を入れ、その運動や効果が雑誌やテレビ等で反響を呼んでいる。

痛み悩みの相談室 痛風とは、どのような病気?

 肉や魚の内臓類やビールなどに特に多く含まれるプリン体は、人間の体内で尿酸に代謝されて尿と一緒に排泄されます。しかし、体内に尿酸が蓄積されると結晶が沈着し、関節の激しい痛みや腎機能障害などを引き起こします。これが「痛風」で、昔は男性に多い病気でしたが、最近は中年以降の女性にもみられます。痛みがあれば痛風で、痛みはないけれど血中の尿酸値が高い状態が高尿酸血症です。風に触れても痛いような激痛が多いのですが、マイルドな痛みの場合もあります。

 そもそも痛風は、明治時代以前の日本にはなかった病気ですが、食事の西洋化により飲酒や動物性たんぱく質の摂取が増加し、徐々に増えてきました。足の親指の付け根に激痛や発赤、腫脹が突如生じるのが特徴で、足の関節やアキレス腱や膝といった他の部位で発作が起こることもあります。あくまで暴飲暴食を控え、適度な運動と血中の尿酸値を高めないことが重要です。

 以前は肉食の制限が予防の基本でしたが、現在は肉からの直接の尿酸の生成は少ないことが分かっており、各品目をまんべんなく摂取することがよいとされています。高尿酸血症を長期間放置すると、腎臓に尿酸結晶が沈着して腎不全を起こしてしまいます。最近は副作用が少なくて、尿酸を低下させる薬剤も使えるようになっています。尿酸値を定期的に検査してもらい、しっかりとコントロールすることを心がけましょう。

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監修/井尻慎一郎先生
井尻整形外科院長。医学博士。著書・監修書に『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』(創元社)、『筋肉のからくり 動かし方を変えるだけでコリと激痛が消える!』(宝島社)などがあるほか、論文、講演、テレビ出演などで活躍中。井尻整形外科HPはhttps://ijiri.jp

血糖値が下がる簡単! 筋肉運動/名医・博士の健康術

ジョギングや過酷な食事制限よりも効果大で続けやすい!週2日の“ずぼらスクワット”で糖尿病は改善する!!

 糖尿病の治療では、薬での治療と食事療法がクローズアップされることが多く、運動療法は見すごされがちだ。しかし、血糖降下剤を服用せず、また、過酷な食事制限をしなくても、運動療法で血糖値を安定させることができる。 運動療法といえば、ウォーキングを中心とする有酸素運動(酸素を必要とする運動)をお勧めする内科医がほとんどだが、うさみ内科院長の宇佐見啓治先生は、「ウォーキングは糖尿病の運動療法には向いていない」と断言する。

「歩くだけでは糖の燃焼の効率が悪く、代謝(体内で行われる化学反応)もあまりアップしません。また、高齢者は足腰が衰えているので、歩行中に転倒する恐れもあります。こうした点から、私は『有酸素運動を行っても、糖尿病体質の改善にはつながりにくい』と考えています」(宇佐見先生)それでは、どのような運動がよいのか? 宇佐見先生は、「筋肉を積極的に動かすと血糖値が下がるので、筋トレなどの無酸素運動がお勧め」と説く。

「私は、糖尿病は筋肉の糖代謝が低下して起こる病気だと確信しています。糖質を摂ると、腸から吸収された糖はブドウ糖になり、腹部臓器や脂肪組織、筋肉、脳に取り込まれます。この中で、ブドウ糖の取り込みの大部分を占めるのは、エネルギーの消費量が多い筋肉です。しかし、筋肉でのブドウ糖の取り込み率(糖代謝)が低いと、十分に取り込まれないまま血液中にあふれてしまい、糖尿病を発症させてしまうのです」(宇佐見先生)

★大きな筋肉を徐々に動かす

 また、筋肉の衰えも糖尿病の発症につながる重大な要因の1つだ。それは、血糖の調整をする「インスリン」というホルモンとの関係からも、見て取ることができる。「インスリンは、ブドウ糖を細胞内に取り込む時に必要なもので、今までは、『糖尿病はインスリンの効きが悪くなったり、分泌量が減るなどして血糖値が下がりにくくなった結果、起こるようになる』と考えられていました。

ところが、筋トレを行った時のエネルギー消費を調べたところ、筋トレ後にインスリンを使わなくても、ブドウ糖を筋肉の細胞に取り込めることが分かりました。つまり、筋トレをやれば、糖の代謝がアップするだけでなく、インスリンを使わずに血糖値を下げ、糖尿病体質を一掃させることができるのです」(宇佐見先生)

 とはいえ、糖尿病の改善だけが目的なら、ストイックに筋肉量を増やす必要はない。筋肉に蓄えられているエネルギー源のグリコーゲンを使い切れば、筋肉にブドウ糖が取り込まれにくい状態(インスリン抵抗性)が改善し、血糖値も自ずと下がっていくので、大きな筋肉をゆっくりと動かして、効率よくグリコーゲンを消費するようにしよう。

 そして宇佐見先生は、糖尿病の改善にお勧めの筋トレとして、「ずぼらスクワット」を推奨している。「基本的には、ゆっくりとしたペースで行うスクワット(ひざの屈伸運動)です。これに独自のアレンジを加えることで、筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンを効率よく使うことができるようになっています」(宇佐見先生)

★ゆっくりと筋肉を伸ばす

 ずぼらスクワットが、糖尿病の改善によい理由は2つある。1つは「大きな筋肉を集中的に鍛えられること」、そしてもう1つは「筋肉を伸ばす運動に重点を置いていること」だ。 私たちの筋肉の約7割は、太ももやお尻、ふくらはぎといった下半身にある。「ずぼらスクワット」なら、こうした下半身の大きな筋肉を集中的に動かせるので、筋肉に貯蔵されたグリコーゲンを効率よく消費できるのだ。

 また、筋トレの動きは筋肉を縮める「短縮性運動」と筋肉を伸ばす「伸張性運動」に大別されるが、グリコーゲンの消費を促させるのは「伸張性運動」である。大腿四頭筋をはじめとする下半身の筋肉をじっくりと伸ばす「ずぼらスクワット」は伸張性運動なので、続けることで自然と「グリコーゲンが消費されやすい体」になっていくのだ。

「ずぼらスクワットを続けると、下半身の筋肉を強化できます。特にお年寄りの方は運動不足や食事量の不足で痩せやすく、75歳以上になると大腿四頭筋の筋肉量は40代に比べて2~3割も減ってしまうので、筋肉痩せを防ぐためにも、ずぼらスクワットは有効です」(宇佐見先生)気になる「ずぼらスクワット」のやり方だが、まずは両腕をまっすぐ前に出し、両足を肩幅よりもやや広げて立つ(ガニ股でもOK)。

その後、4秒ほどかけてゆっくり腰を下ろし、ももが床となるべく水平になったところで静止し、その姿勢を2秒間キープする。あとは反動をつけずに、速やかに立ち上がる。 それぞれの動作をゆっくり行うのがポイントで、呼吸を止めていきむと血圧が急上昇したり、心拍数が速くなってしまうので、呼吸を止めないで行う。また、1回ごとに30秒ほどの休みを入れることで、筋肉にブドウ糖(血糖)を効率よく取り込めるようになる。

★週2回のペースでOK

「ずぼらスクワット」を行う回数は、10回を1セットとした3セットが目安となる。しっかりと時間をかけて、3セットを20分ぐらいで行おう。体力が衰えている人は、これより少ない回数から始めても大丈夫だ。また、筋トレをやると筋肉の組織に傷がつくので、「ずぼらスクワット」は毎日行う必要はない。1日やったら休みを1~2日入れて、週2回ぐらいのペースで行うのが理想的だ。休んでいる間にたんぱく質の再合成が起こり、筋肉の傷が癒えて、より強化される。ぜひ、今日から始めてみよう。

◉健康診断の結果を再確認!「糖尿病」の数値の目安
*チェックする項目 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
*数値 6.5以上 → 糖尿病 5.9以下 → 基準値 5.5以下 → 理想値

◉大きな筋肉を、ゆっくりじっくり動かそう
(1)両腕はまっすぐ前に出して、両足は肩幅よりもやや広げて立つ
ポイント:ガニ股になってもいいので両足の間隔は広くとる。両ひざは必ず、つま先と同じ方向に向けて曲げていく。

(2)4秒ほどかけて、ゆっくり腰を下ろしていく
ポイント:腰を下ろすときに、曲げたひざが足のつま先より前に出ないよう注意する。

(3)ももが床となるべく水平になったところで止めて、2秒間体勢をキープする
ポイント:キープしたあとは、反動をつけずに速やかに立ち上がる。(1)~(3)を計10回、ゆっくり繰り返して1セットが完了。

◉宇佐見先生の運動療法“ずぼらストレッチ”
やり方
*(1)~(3)を10回1セットとし、1日3セットが基本。
*1セット内、1回ごとに30秒ほど休みを入れて3セットを計20分ほどかけて行う。
*週2日ほど行えば十分。1日やったら、休みを1~2日入れるのが理想。

注意点
血圧の急上昇を防ぐため、呼吸を止めないよう意識することが大切。腰を下ろすときに「い~ち、に~、さ~ん、し~」、下ろした腰を静止するときに「い~ち、に~」と声を出してカウントすれば、自然と呼吸しながら行える。

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監修/宇佐見啓治先生
うさみ内科院長。福島県立医科大学卒業後、付属病院第二内科に入局。福島赤十字病院内科勤務を経て、現職。運動療法による糖尿病や肥満、高脂血症などの成人病の治療に力を入れ、その運動や効果が雑誌やテレビ等で反響を呼んでいる。

最悪の場合、死に至る! 血管病リスクを高める悪の5大要素

「血管病」という言葉に聞き覚えがなくとも「心筋梗塞」や「脳卒中」はご存じでしょう。日本人の4人に1人の命を奪うのが、「血管病です。その「血管病」につながる、血管の老化を導く「悪の5大要素」をご紹介します。要素がひとつ加算されるごとに、血管病のリスクが3倍近く跳ね上がる、と思ってください。
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5つのリスクから遠ざかり、「健康な血管」を取り戻せ!

血管の老化につながるおもなリスク要因は5つあります。「喫煙」「高血圧」「肥満」「糖尿病・高血糖」「脂質代謝異常」。これらの要素がひとつ加わるごとに、心筋梗塞や脳卒中など「血管病」のリスクが約3倍になるといわれています。

もっともリスクが高いのは「喫煙」です。ニコチンやタールは、血管の老化を進めるだけでなく、発がんリスクも高めます。さらに、ニコチンは交感神経を刺激して心拍数を増加させると同時に、末梢血管を収縮させて血圧を上昇させます。狭心症や心筋梗塞のリスクは、喫煙者と非喫煙者では男性は2.9倍、女性は3.1倍もの差に。さらにヘビースモーカーは心筋梗塞による死亡率が1.7倍になるともいわれています。
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肥満は残りすべてのリスクにつながる「万病のもと」

そして「高血圧」は、健康な血管維持のために大切な血管内皮細胞(※)を傷つけてしまうリスクがあります。常に高い状態だけでなく、急激に上がり下がりすることも問題です。過度なストレスで血圧が急上昇し、心筋梗塞を発症する例も多数あります。

※ 3層構造になっている動脈の血管壁のうち、内膜の一部でもっとも内側に位置している細胞。血液と血管壁の仲介者として、血管を守り、強くするために働いています。

さらに「糖尿病・高血糖」もハイリスクです。血管壁の中にあるたんぱく質に血中の糖が結びついて糖化することで、動脈硬化が進行してしまいます。「脂質代謝異常」は、さらに厄介です。悪玉コレステロールが血管壁に入り込み、コブのようなプラーク(粥腫)をつくることで、動脈硬化を進行させます。 最後に「肥満」。これは、ここまでに述べた喫煙以外の3つのリスクの発症に直接的につながる「万病のもと」です。この5つのリスク要因から遠ざかることができるかは、あなたの意志次第です。この瞬間から「改善する」と、強く心に決めてください。

悪の5大要素

【1. 百害あって一利なし! 喫煙】

ニコチン、タールなどの有害物質は、血管を老化させるリスクに加えて発がんリスクも高めます。さらに、ニコチンは交感神経を刺激して心拍数を増加させると同時に、末梢血管を収縮させて、血圧を上昇させる作用があります。高血圧も血管力の天敵です。

【2. 急激な興奮に注意! 高血圧】

高血圧は血管の機能を低下させ、動脈硬化の進行を招くリスクがあります。さらに、恒常的な高血圧のみならず、血圧の急激な変化も血管に大きなダメージを与えるのです。過度なストレスで血圧が急上昇し、心筋梗塞を引き起こす例も多いので、注意が必要です。

【3. 万病のもと! おなかポッコリ、肥満】

肥満の中でも特に「内臓脂肪型肥満」が要注意。内臓脂肪の値が高いと、糖質や脂質などを体内で利用するための代謝機能に異常が生じ、高血糖や高血圧、脂質代謝異常につながってしまいます。肥満という状況は、血管力に対するすべてのリスクの根幹なのです。

【4. さまざまな合併症も怖い、糖尿病・高血糖】

高血糖状態になると、血管壁のたんぱく質に血液中のブドウ糖が結びついて糖化することで、血管の内皮細胞が阻害されてしまいます。それにより動脈硬化を進めてしまうのです。そのほか、糖尿病に起因するさまざまな合併症の恐ろしさはいうまでもありません。

【5. やっぱり気になるコレステロール。脂質代謝異常】

酸化しやすい、いわゆる悪玉コレステロール「LDLコレステロール」の値が高い状態のみならず、善玉コレステロール「HDLコレステロール」の値が低い状態、および「中性脂肪」の値が高い状態を「脂質代謝異常」と呼びます。脂質代謝異常は動脈硬化の直接的な原因となります。

教えてくれたのは……

新浪 博士(にいなみ・ひろし)先生

【profile】
1962年、神奈川県出身。1987年、群馬大学医学部卒業後、東京女子医科大学大学院修了。同年、東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所に入所。アメリカ・ウェイン州立大学、オーストラリア・アルフレッド病院、オーストラリア・ロイヤルノースショア病院への留学で心臓血管外科の研究と治療に従事する。帰国後、東京女子医科大学心研循環器外科医長、東京女子医科大学心臓血管外科助教授を歴任。2004年に順天堂大学 医学部心臓血管外科助教授に就任し、当時の天皇陛下(現在の上皇)の心臓手術を行った天野篤教授のパートナーとして活躍。埼玉医科大学 心臓血管外科教授を経て、2017年より東京女子医科大学 心臓血管外科の主任教授に就任。現在、年間300症例もの心臓血管外科手術を手がけている。

糖尿病を悪化させる冬の「食べ方」

リングドクター・富家孝の「死を想え」

 糖尿病は悪化すると死に直結します。一般的に、冬の間に症状が悪化し、腎臓の機能が低下して、春になると人工透析に移行する患者さんが増えます。いったん人工透析を始めたら、もう止めることはできません。

 糖尿病が怖いのは、人工透析を招く腎臓機能の低下に加えて、合併症として目の病気である「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれなど末梢(まっしょう)神経が侵される「糖尿病性神経障害」を引き起こすことです。さらに、「心筋梗塞(こうそく)」「脳梗塞」の引き金にもなります。

私も糖尿病で薬を飲んでいる

 じつは私は、2005年から、血糖値を下げるために薬が必要になりました。最近は、血糖降下薬の「グリミクロン」を朝夕1錠、「エクア」を朝夕1錠、「メトグルコ」を毎食後3~6錠、飲み始めています。

 私が糖尿の気があるとされたのは 血糖値の検査で、HbA1c(過去1~2か月の血糖の平均値)が7.2と当時の基準値(6.2%未満が優、6.2~6.9%が良)を超えていたからです。薬を飲み始めて2、3か月で血糖値は下がりました。しかし、服用を止めると上がるので、以来、薬と血糖値の測定は欠かせなくなっています。

怖い低血糖

 ただ、糖尿病が本当に怖いのは、高血糖ではなく低血糖です。血糖値を下げ過ぎてもいけないのです。低血糖になると、冷や汗をかいたり、目がかすんだりして集中力がなくなり、最後には言葉が出にくくなったり、呂律(ろれつ)が回わらなくなったりします。意識を失い、倒れる場合もあります。すでに私は、こうした経験を3度しています。

 これは変だと思って、その時は即座にチョコレートなど甘い物を食べ、ことなきを得ています。もし、なにもしなかったら、そのまま意識を失ったかもしれません。糖尿病患者さんは、よく私と同じようなことを訴えます。ですから、常に甘い物を携行するようアドバイスしています。
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血糖や血圧をひたすら管理

 糖尿病は、一度発症したら治すことはできないため、それ以上悪化しないよう、血糖値、血圧値といった数値をひたすらコントロールすることが治療のポイントになります。血糖値を下げるためにクスリを服用しますが、大事なのは食事療法です。というのは、糖尿病の原因は、遺伝的な部分もありますが、主に食事だからです。

問題は不健全な食事

 2019年4月、アメリカの医学誌に、最新の研究報告が発表されました。ワシントン大学などによるこの研究は、約40か国の130人以上の研究者が参加して行われた大規模なもので、「不健全な食事」がいかに死に直結するかを明らかにしました。年齢や性別、地理的な影響、経済状態などにかかわらず、食事は主要な死の原因となっていました。

 2017年、世界で死亡した1090万人の主な死因は、第1位が心血管疾患、第2位ががんで、糖尿病はこれに続く第3位でした。そして、心血管疾患による949万7300人、がんによる91万3100人、糖尿病による33万8700人の死亡に、食事が関連していました。

炭水化物や塩分の摂り過ぎはダメ

 では、どんな食事が不健全かというと、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと、塩分の摂取量が多いことです。また、脂肪の多い肉類、糖質、トランス脂肪酸の摂(と)り過ぎも指摘されています。具体的に言うと、ご飯などの炭水化物、塩分を摂り過ぎるのはよくありません。私は、糖尿の気が出てから、食生活を変え、とくに炭水化物を摂り過ぎないようにするため、夕食にはご飯を控えています。野菜類も以前に比べ、多く摂るようにしています。

食習慣が変わる冬は要注意

 日本人にとって、冬は食事が普段と大きく変わる時期です。冬になると、温かい鍋物、汁物などを食べる機会が多くなります。ご飯はもとより、うどん、お餅など、炭水化物の摂取量も増えます。しかも、年末年始には、つい暴飲暴食しがちです。冬につきものの、鍋物、うどん、ラーメン、お餅、おせんべい、ミカンなどは、血糖値を上昇させるので要注意です。

 日本人は欧米人と比べると、肥満の人は多くありません。それなのに、糖尿病患者が多いのは、民族として遺伝的な要素を持ち合わせていると考えられ、最近は糖尿病を引き起こす遺伝子の解明も進んでいます。遺伝的に糖尿病になりやすいのに、さらに偏食を重ねたら、死期を早めるだけです。冬場は十分気をつけましょう。

富家 孝(ふけ・たかし)

 医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

人は死亡する10数年前から「血圧が下がり続ける」との英調査

「人間は死亡する10数年前から血圧が下がり続ける」ことを示す大規模追跡調査が存在する。

 2017年に英エクセター大学の研究チームが報告した調査は、2010年1月~2014年11月の間に亡くなった約5万5000人の患者のうち、死亡前の20年間で6回以上血圧を測定した60歳以上の4万6634人のデータを抽出して、血圧の変化をたどった。

 その結果、「60歳以降に死亡した人々の血圧は死の14年以上前にピークを迎え、以降は10年以上にわたって直線的に低下」していたという。さらに死の2年前からは血圧が急激に低下していたことがわかった。

 例えば、60代の群の血圧は、死の14年前に平均146.3mmHgをピークにして、以降4年間横ばいした後、残りの10年間は右肩下がりだった。

 この結果について小林病院理事長の小林祥泰医師が指摘する。

「この研究結果を踏まえると、中年期に高血圧になり、降圧剤を飲んできた人は、70代を超えると加齢による血圧の低下も踏まえて、降圧剤を減らしていくことも考える必要性があるといえるでしょう。降圧剤の効果と、加齢による血圧低下が相まって“下げすぎ”による認知症などのリスクにつながっている可能性もある。

『次第に血圧が下がっていく』という現象は、加齢による体重減少の影響が大きいという可能性がある。論文でも『体重が20kg以上減少した人は、平均で24.87mmHg血圧が低下し、20kg未満だった人でも平均15.91mmHgの低下がみられた』と報告されている。他にも、認知症、心不全などとの関連も示されています」

数値改善でも油断禁物 夏の血圧低下でめまいや脳卒中に

 暑い季節は鬱陶しいが、悪いことばかりでもない。4000万人ともいわれる高血圧の人にとって、夏は血圧が下がりやすい時季だ。それで、油断していると、思いもよらぬ不調に襲われることがあるという。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器専門医)に聞いた。

 血圧は、ほかの血液検査の数値と同じように変動する。一日の中では、朝起きてから日中にかけて上昇し、夜間に向けて下がる。そんな血圧の変動が、一年を通してもあるという。

「梅雨から夏になると、気温がグンと上昇し、汗をかくようになります。そうすると、熱を放散するため、血管が拡張。汗とともに塩分も排出されるため、血圧が下がりやすいのです。それまで高めだった人が、収縮期血圧(上)が120(㎜Hg)くらいで安定するなら問題ありません。しかし、110から100を下回るようだと、血圧低下による不調が表れやすくなります。明らかに下がり過ぎです」

 若い人なら、自律神経の働きで血圧が調節されるだろうが、中高年だと、積み重なるストレスや加齢などの影響で調節力が衰え、血圧低下の症状が表れやすいという。

「軽いものなら、めまいや立ちくらみです。それで転倒して、骨折すると厄介だし、最悪の場合、脳の血管が詰まって脳梗塞で救急搬送されることもあります。夏の血圧低下は、決して油断できません」

 薬を飲んでも、期待するほど下がらなかった血圧が下がり、「よかった」と思うのは早計だ。そのまま仕事や外回りに出掛けて、汗をかくと、さらに血圧が下がって、よからぬことが起こり得るという。

「まず、十分な水分を取ること。汗をかいたときは適度な塩分を取るのも大切で、さらにこまめに血圧測定が無難です」

 要は、熱中症対策だ。それが、夏の血圧低下による不調を防ぐ。

 熱中症になると、急激に体内の水分量が減り、血圧が急降下。それが脳梗塞や心筋梗塞を招く。

■利尿剤の併用は要注意

 外回りで汗をかいて、公園の日陰のベンチで一休み。そんなときに急に立ち上がると、夏の血圧低下と起立性低血圧が重なって、ふらっとして転倒したりするそうだ。

「外回りから帰って社内で涼むと、体は気持ちいいでしょう。しかし、外との温度差が5度以上あると、今度は血圧が急上昇します。それはそれで脳卒中のリスクですから、温度差をなるべく小さくすることも大切です」

 生活上の注意点だけでなく、薬のチェックも重要だという。

「冬の薬と同じまま夏を迎えて血圧が下がり過ぎる人は、薬の見直しが重要です。複数の降圧剤を使っている人は容量を少なくする。特に、何かの薬と利尿剤を併用しているケースは、より血圧が下がりやすいので要注意。夏になって、血圧が春ごろの数値より下がってきたら、安心するのではなく、医師に相談して降圧剤の組み合わせを見直してもらうことが大切です。薬は一度決めたら、そのままではありませんから」

 油断禁物だ。

健康寿命のカギ“ABC”は冬に悪化 糖尿病患者の調査で初確認

 健康診断や人間ドックは、健康管理のためにぜひとも受けてほしいですが、「1年に1度」という性格上、どうしても限界があります。過去1~2カ月の血糖の平均値を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)、血圧、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の3つは、季節によって数値が変動するからです。

 私たちが糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)と共同で行った研究に「ABC Study JDDM49」があります。ABCの「A」はHbA1c、「B」はBlood pressure、つまり血圧、CはLDLコレステロールのことです。これらの数値が、一年の間でどう変動するかを調べたのです。

 この研究は、日本国内の診療所から登録された2型糖尿病患者10万4601人のデータから、「2013~14年の24カ月に12回以上通院」「この間にHbA1c、血圧、悪玉コレステロールを測定していた」に該当する4678人のデータを抽出しました。

 そして、4678人がどれくらいHbA1c7%未満、血圧130/80㎜Hg未満、LDLコレステロール100未満の目標を達成できているかを調べました。

 なお、それぞれの数値は、ガイドラインで定められている治療目標値です。

 その結果は、いずれの数値も春から夏に近づくにつれ目標値の達成率が上昇し、冬に近づくにつれ達成率が下がるというもの。2年間追った調査でしたが、各月で見ても、HbA1c、血圧、LDLコレステロールいずれも同じような動きをしていました。

 では、夏と冬では? 6~8月を「夏」、12~2月を「冬」とし、見比べると、その差は驚くものでした。A、B、Cのすべて、つまりHbA1c、血圧、LDLコレステロールのすべてが目標値を達成しているのは、「夏」は15.6%。そもそもこれも低いですが、さらに「冬」になると、わずか9.6%しかいません。

 血圧とLDLコレステロールはそのままで、HbA1cを8%未満に上げて条件を緩くしても、A、B、Cすべてが目標値を達成しているのは「夏」で23.7%、「冬」になるともっと低い15%です。

 それぞれひとつずつ見ると、これほどには差がないのです。HbA1cの達成率は夏53.1%、冬48.9%、収縮期血圧(上の血圧)の達成率は夏56.6%、冬40.9%、拡張期血圧(下の血圧)は夏73.4%、冬64.1%、LDLコレステロールは夏50.8%、冬47.2%です。

■3つすべての目標値を達成することが重要

 これらの結果をどう考えるか? それは、夏に測定した数値が「悪くない」「基準値以内だけどギリギリ」という状態であれば、冬には基準値を超えている可能性が十分にあるということです。現場でたくさんの患者さんの診察をし、「冬には数値が悪化する人が多い」という印象はありましたが、「夏より冬の方が悪い」とはっきり示したデータはありませんでした。しかし、この「ABCスタディー」で明らかになったのです。

「血圧は高いけど、HbA1cは目標値を達成しているから問題なし」では決してないのです。A、B、Cすべてが目標値を達成していることが非常に重要なのは、いずれかひとつが良くても、ほかの数値が悪ければ、動脈硬化の進行を食い止められないからです。

 糖尿病をきちんと治療せずにいると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの心血管障害、脳卒中などの脳血管障害のリスクが高くなります。そして、血圧、LDLコレステロールも同じ。治療をしないでいると、動脈硬化が進行するのです。脳血管障害は認知症にもつながりますから、A、B、Cのコントロールがきちんとできていないということは、認知症のリスクを上げることにもなります。

 健診や人間ドックの結果が手元にある人は、数値はいかがでしょうか? 春~夏にかけての季節に健診を受けている人で、数値がギリギリの人などは、食生活を見直していただいて、冬にもう一度検査することをお勧めします。1年後では遅い場合もありますよ。

坂本昌也:東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

高血糖の人に「サッと食べる」習慣を変えてほしい理由

 糖尿病をはじめ、生活習慣病対策は、規則正しい、バランスの取れた食生活と切っても切り離せません。いつ食べるか、献立のバランスをどうするか、カロリーをどれくらいにするか……。

 挙げだすとキリがありませんが、「いろいろ言われるとやる気をなくす」などと考える方には、まず基本の“き”として、「味わって食べる」ということを覚えてほしいと思います。

 時間がないから、ざるそばなどをサッと食べる。時々であれば仕方ありませんが、日常的には避けていただきたい行為。特に血糖値が高めと指摘されている人は注意してほしい。

 サッと急いで食べてしまうと、インスリンの分泌が遅れ、食後の血糖値が急激に上がります。すると今度は血糖値が急激に下がります。食後の血糖値の急上昇、急降下を「血糖値スパイク」と呼びます。血糖値の急上昇の時には強い眠気が生じ、急降下の時にはイライラ、集中力や判断力の低下などが起こります。

 さらに血糖値スパイクを何度も繰り返していると、血糖値スパイクが活性酸素を発生させて血管を傷つけやすくし、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった重大病のリスクも高まります。

■シンプルラーメンにはキャベツやキクラゲを

 近年は、血糖値の上昇・下降の幅を極力小さくすることは糖尿病対策の重要なポイントであると考えられています。

 食べ物を早く食べるから糖尿病になるわけではないものの、ひとたび糖尿病になってしまった人が「サッと食べる」習慣を変えられないでいると、血管へのダメージは大きくなります。空腹を満たすために食べるのではなく、味わって、できれば人とおしゃべりしながら、ゆっくりと食べた方が、血糖値スパイクが起こりにくくなります。

 メニューの選択で血糖値スパイクを起こしにくくもできます。サッと食べてしまうものの代表格といえば麺類ですよね。あまり噛まずに食べてしまえるのでインスリンの分泌が追いつかず、血糖値スパイクが起こりやすい。加えて、スープを飲んだりして塩分摂取量が多いのも問題です。

麺類よりも、品数が多く食べるのに時間がかかる定食を選ぶ。もし麺類を食べるなら、少しでも食べるスピードを遅らせられるものを選ぶ。麺とスープだけより、プラスアルファがあるものがいい。

 そばなら、ざるそばよりも、キュウリの千切りや卵焼きなど具材がのっているものを。

 サラリーマンのみなさんにはラーメンが好きな方が多いですね。ラーメンも、好きな人には「味わって食べている」ことになるのでしょうけど、やはりサッと食べてしまいがち。ラーメンを食べるなら、生キャベツやキクラゲ、または小松菜などの野菜がたっぷりのっているようなラーメンを選んでください。

 ファストフードも、栄養バランスの悪さや塩分量の多さなどが問題視されますが、サッと食べられてしまう点もよくないのです。ファストフード店で、一口ごとに味わって食べている人はあまり見かけません。「急いで食べる」「意識はスマホの画面に集中して味には無頓着で食べる」といった印象を受けます。

「野菜から食べるといい、いわゆるベジファースト」とよく言われます。食べる順番に気をつけることは糖尿病対策などに役立ちますが、実践できない状況もあるでしょう。バランスの取れた内容のものを味わって食べる習慣を身に付ける方が、もっと糖尿病対策に役立つと考えています。

 効率よく各種の栄養成分を摂取でき、「GI値が低い(=糖の吸収を抑えられる)」「カロリーが低い」などのうたい文句があるエナジーバーを愛用している人もいるかもしれません。

 これも、食事をきちんと取る時間がない時に活用するには便利でいいですが、食事の選択肢の一つに常に入っているというのは、私はお勧めできません。エナジーバーの食事をずっと続けるのは難しい。これで栄養成分を取れているからと、反動でジャンクなものを食べてしまうことになりかねない。

 食事は毎日、寿命が尽きるまで続くもの。バランスのいい食事を味わって食べる習慣を少しだけでも実践して下さい。これが、無理なく、ストレスなく、生活習慣病対策を続けられる方法だと考えています。

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授
専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

血圧、本当の危険値は? 上が160以上でもOKな年齢も

 高血圧を始め、様々な生活習慣病の治療が始まる端緒となるのが、日本人の多くが受診する健康診断の「基準値」である。「健康」か「病気」かを見極める境界線だ。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。

 長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『「血圧147」で薬は飲むな』著者の大櫛陽一氏が指摘する。

「米マサチューセッツ州フラミンガムの住民を追跡調査した研究では、5歳刻みで心筋梗塞など心疾患に対するリスクが異なることが明らかになりました。健診の基準は男女別、年齢別でなければ役に立たないのです。そもそも20歳の男性と、80歳の男性を同じ基準で判断できるわけがない」(以下、「」はすべて大櫛氏)

 大櫛氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表した。その数値が健診の基準値とはかけ離れていたため、各専門医学会からは猛反発が巻き起こった。

 しかし、大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。

 大櫛氏が調査したデータの中から、「血圧」について見てみよう。

 これまで高血圧の治療を受ける患者が目標とする血圧は、75歳未満なら140/90(最高血圧/最低血圧)mmHg未満とされていたが、4月に日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドラインの改訂を控え、130/80未満に変更される。

 しかし、「大櫛基準」では、血圧は65歳男性なら上が165、下が100までが基準範囲(正常値)で、130まで下げる必要はないことになる。なぜこれほど数値の開きがあるのか。

「そもそも高齢者は、ある程度血圧が高くなければいけないのです。年を重ねるにつれ、皮膚がかさかさになって硬くなるのと同様に、血管も硬くなっていきます」

 これは動脈硬化ではなく、糖化という細胞の老化によって起きる現象だという。

「硬いゴムホースで水を送り出すには水に勢いがないといけないように、硬い血管を通して血液を送り出すには、血の勢い(血圧)も強くなければいけない。血圧が年齢によってある程度高くなっていくのは『正常』と言えるのです。だからこそ血圧の健康基準範囲も、年齢ごとに見る必要がある」

 大櫛氏は年齢ごとの血圧の「大櫛基準」を下回ると起こるリスクについてこう話す。

「体内では脳が最も多く血液を必要としていますが、問題なのは脳が血液を送り出すポンプである心臓よりも上にあること。日中行動しているときなどは、重力の抵抗を受けているので、上向きに血液を送り出すには、高齢になるほど強い圧力が必要になる。圧力が弱まって脳に血が巡らないと、めまいや貧血、最悪の場合は脳梗塞の原因にもなる」

 大櫛氏が特に警鐘を鳴らすのは、今回のガイドラインの改訂で目標値(降圧目標)が変更されることで、降圧剤を処方される人が増えることだという。

「私の推計では、降圧剤の服用を勧められる治療対象者はこれまで約1660万人だったのが、約4000万人に増えます。複数の研究や調査により、降圧剤で20以上血圧を下げると脳梗塞の発症率や死亡率が高まることがわかっている。急激な血圧低下により血流が悪くなり、血栓で脳の血管が詰まってしまうのです。

 私が福島県郡山市の約4万人の男女(平均年齢約62歳)を平均6年間追跡調査したところ、血圧が180/110以上の人で降圧剤を使って血圧を最大20以上下げた人は、使わなかった人より、死亡率が5倍も高いという結果が出ました」

高血圧薬はアプローチ異なる5種 薬を替えて症状改善も

 医師から処方される薬は、病気を治す有力な手段であり、強い味方だ。2017年の厚生労働省の統計によれば、65才以上の3割が6種類以上の薬を処方されているという。しかし、中には薬が原因で新たな悩みを抱える人もいる。東京都に住む鎌田美沙さん(57才・仮名)が声を潜める。

「50代に入ってすぐに高血圧と診断されて薬をのんでいますが、大きな不調はないものの、手足がむくむし、めまいが起きたりするばかりで、血圧の数値もなかなか改善しません。

 しかも『薬の効き目を強める』という理由で、朝の日課だったグレープフルーツジュースを禁止されたのも地味にツラい。これが風邪や花粉症の市販薬だったら、別の薬を試してみようと思いますが、処方薬だと出されたものをのむよりほかにないですよね…」

 鎌田さんのような、持病の薬に対して不満を持つ人は少なくない。しかし、茅ケ崎メディカルクリニック院長の柘植俊直さんは「別の薬に替えることで症状が改善されることはよくある」と言う。

◆高血圧の薬は主に5種類

 血圧を下げる薬である降圧剤は、大まかに分けて5種類。冒頭の鎌田さんが処方されていたのは、「カルシウム拮抗薬」と呼ばれるタイプの薬だ。

「細胞にカルシウムが流れ込む際に血管が収縮し、血圧が上昇するのですが、カルシウム拮抗薬はそれを抑えて血管を拡張させます。

 昔から使用されているため、医師が『このくらい処方すれば、このくらい血圧が下がる』と把握しやすく、それゆえ処方しやすいため、最も一般的な薬です。副作用として、ほてりやむくみ、便秘などが現れることがありますが、いずれも自覚症状を伴うため、本人が気づき、危険な状態に至ることが少ないのが特徴です」

 高血圧薬にはこれ以外に、ARB、ACE阻害薬、利尿剤、β遮断薬と呼ばれるものなどがあり、それぞれ血圧を下げるという目的は同じだが、アプローチが異なる。

「血圧を下げる」という1つの目的に、これだけの種類の薬があるとなると、どのような基準で選んでいるのかという疑問がわく。

「どの薬も、それぞれ長所と短所がありますから、医師は患者さんの状態によって処方を決めます。たとえば夏には高齢者は脱水に陥りやすいので利尿剤の使用に注意する、喘息がある人にはβ遮断薬は出さない、などが挙げられます」(柘植さん)

また、高血圧の薬は患者ごとに効く、効かないの差が出ることがある。処方しても効果がみられなかったり、副作用がきつかったりする場合、アプローチの異なる別の薬に替えたり、処方されている薬を減らして食事や生活習慣の改善に力を入れることもあるという。

「私が診た中には、多数の薬をのみすぎたせいで副作用が強く出ている人もいました。80代の女性だったのですが、高血圧のためカルシウム拮抗薬を出され、副作用で手足にむくみが出てしまった。

 しかし、本人はそうと知らずに『むくみに悩んでいる』と告げたところ、“腎機能に問題がある”と診断されて利尿剤が追加で出されていた。私のところでカルシウム拮抗薬の量を減らす処方をしたところ、むくみは改善されました」(柘植さん)

 高血圧症の患者の中には、「副腎」という臓器から分泌されるホルモン「アルドステロン」の異常が原因である人が5~10%ほどいることが近年、わかってきた。そのタイプの患者は、手術で高血圧を治せるほか、“第6の選択肢”である「抗アルドステロン薬」の効果が高い。

 同じ病気でも、原因や体質は人それぞれ違う。薬も違って当然なのだ。

循環器と栄養の専門家が厳選 血管力を上げる食べ物ランキング

「人は血管とともに老いる」は、医学界では決まり文句になっているという。人体で最大の“臓器”ともいわれる血管は、あらゆる体の不調と密接なかかわりを持っている。そこで、循環器と栄養のプロに「本当に血管にいい食べ物」を教示してもらった。血管力を上げる食べ物をランキング形式で紹介する。

【以下、25人の「循環器と栄養の専門家」に「血管力を上げる食べ物」を挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計。6位までに入った食品を掲載した】

◆1位:いわし/42点

「いわしに含まれるEPAは中性脂肪を減らし、ドロドロになった血管を改善してくれる効果が。さらに、血中の赤血球の膜を柔らかくする効能もあり、血管の隅々まで酸素が行き渡るようになります」(中沢るみさん・管理栄養士)

「おすすめは、新鮮な状態で刺身にすること。調理する場合は栄養素が溶け込んだ汁も一緒に食べましょう」(磯村優貴恵さん・管理栄養士)

「EPAと並んで多く含有されるDHAには、認知症予防の効果も」(野田泰永さん・サクラクリニック院長)

「血管を柔らかく保ってくれる成分であるアルギニンも豊富に含まれています」(伊達友美さん・管理栄養士/ダイエットカウンセラー)

◆2位:納豆/29点

「納豆は、大豆イソフラボンとたんぱく質が豊富で、コレステロール値を下げる働きがあります」(望月理恵子さん・管理栄養士)

「ナットウキナーゼには血栓を溶かし血液をサラサラにする役割が。特に睡眠中は血液が凝固しやすくなるため、夜に食べることをおすすめします」(中沢るみさん・管理栄養士)

「納豆に含まれる食物繊維には、腸内環境を整え、余分な塩分や糖分の吸収を妨げる効果が。定期的に食べることで、血をきれいに保ってくれます」(磯村優貴恵さん・管理栄養士)

「たんぱく質や酵素、乳酸菌など血管を丈夫にする成分がバランスよく配合されています」(伊達友美さん・管理栄養士/ダイエットカウンセラー)

◆3位:さば/23点

「血管の持つ弾力性を高め、血栓を溶かす効果のあるEPAとDHAが多く含まれています」(家光素行さん・立命館大学教授)

「EPAを摂ると脂肪が燃焼しやすくなるため、メタボが気になる人も積極的に食べてほしい。ただ、油も多く含むので食べすぎには注意してください」(望月理恵子さん・管理栄養士)

「さばに多く含まれるEPAには脳梗塞を予防する効果も」(平井愛山さん・千葉県循環器病センター・内科・分泌代謝医師)

「いわしと同じく、さばにもDHAがふんだんに含まれており、認知症予防効果も期待できます」(野田泰永さん・サクラクリニック院長)

◆4位:シナモン/14点

「シナモンは漢方では桂皮と呼ばれ、毛細血管を構成している内皮細胞の結びつきを強化し、毛細血管を若々しく保つ効能が」(根来秀行さん・医師/ハーバード大学医学部客員教授)

「香辛料や漢方としても古くから使われてきた。毛細血管はもちろん、動脈や静脈の血流も改善してくれるといわれています」(橋本洋一郎さん・熊本市民病院 主席診療部長)

「デトックス効果があり、胃腸の機能も整えてくれます。腸内環境が悪化すれば、老廃物が血流にも流れ出し、血液の質も落ちる。便秘気味の人は積極的に摂って」(高倉伸幸さん・医師/大阪大学教授)

「一方、摂りすぎには注意が必要。クマリンという成分は大量に摂取すると肝障害が起きるリスクも。1日1g以下が目安です」(奥野祐次さん・医師/オクノクリニック院長)

◆4位:くるみ/14点

「くるみに含まれる植物油であるα-リノレン酸には動脈硬化を予防し、血管を若々しく保ってくれる効能が」(藤岡智子さん・栄養士/フードライター)

「くるみの油には、血管の弾力性を強化する働きもある。そのうえ、同じくくるみに含まれるビタミンEにはコレステロールが酸化して動脈硬化などの原因になるのを防ぐ働きも期待でき、いろいろな角度から、血管にいい食べ物といえるでしょう」(中沢るみさん・管理栄養士)

◆6位:トマト/13点

「赤い色素のリコピンには抗酸化作用があるため、血管の酸化を防いでくれます。食べ方は、同じく血管にいい作用をもたらすチーズと一緒に食べる、カプレーゼがおすすめです」(南和友さん・心臓外科医)

「トマトは赤ければ赤いほど、リコピンの含有量が多くなる。より真っ赤に熟したものを選びましょう」(磯村優貴恵さん・管理栄養士)

「リコピンは熱に強いので、さまざまな調理法を楽しめる。また、特に皮の部分に多く含まれているので皮ごと食べられるような方法で料理するのが望ましいでしょう」(奥野祐次さん・医師/オクノクリニック院長)

「定期的に食べることで動脈硬化の予防にも。積極的に食卓に取り入れることをおすすめします」(堀知佐子さん・管理栄養士)

症状はなかったのに…「突然」のウソ 原因は過去にある【進化する糖尿病治療法】

「突然、心筋梗塞を起こした」「突然、脳卒中を起こした」という話をよく聞きますよね。それまで症状がなかったのに……ということですが、本当は「突然」ということはないのです。

 Aさん(52歳)は、大学卒業後、大手メーカーに就職し、営業職に配属。仕事はものすごく忙しかったそうで、早朝から仕事に出て、たばこと缶コーヒーで空腹をまぎらわせながら、夜まで猛然と仕事をする毎日でした。

 仕事が終わるのは夜10時過ぎで、それから仕事仲間と一緒にその日初めての食事らしい食事。定食屋などは開いておらず、ラーメンでは物足りず、ファミレスでは味気ない。自然と、深夜まで営業している焼き肉屋に行くことが多かったと、Aさんは言います。ビールなどを深夜まで相当量飲み、「5人で15人前」なんていう食べ方も珍しくなかったとか……。

 みなさんも覚えはありませんか? 若い時にむちゃしたことを。若くて体力があるからこそ、仕事もプライベートも、睡眠時間を削って“頑張れる”のですよね。

 そんなAさんも30歳で結婚。子供もでき、“モーレツサラリーマン”であることは変わらないものの、さすがに「深夜に焼き肉」はなくなりました。

 1日1食の生活から一変、朝は奥さんが用意した朝食を取り、昼は仕事が忙しくて抜くことは時々あるものの、夜は取引先と会食の時以外は、夜遅くなっても、自宅で食べるようになりました。酒が好きで、会食時などには飲み過ぎることはありましたが、回数がそう多いわけではありませんでした。シメのラーメンも、年に1~2回ある程度だったとのことです。

 それでも、20代で一気に増えた体重はなかなか元に戻らず、健診では毎年、「やや肥満」と指摘されていたそうです。運動を、と思っても、Aさんにとってみれば「そんな時間はない」。移動はほぼ電車や車なので、1日の歩数も多いとはとても言えない状況。血糖値、血圧、コレステロール、中性脂肪、尿酸値は、基準値は超えていないものの、毎年測定のたびに数値が上がっていました。

 そんな30代を送っていたAさんが、突然、心筋梗塞を起こしたのは46歳の時です。会社での会議中でのことでした。周囲に人がたくさんいる時であったのが幸いでした。すぐに救急車が呼ばれ、病院に搬送。命を取り留めました。

 Aさんが言うには、「やや肥満ではあるけれど、健診の結果で異常な数値はひとつもなかった。健康だったのに、突然なぜ……?」。

■むちゃくちゃな生活を5年以上続けると危険

 心筋梗塞は心臓の血管が詰まる病気。不整脈でもない限り、ある日突然詰まることはないのです。必ず過去の経験が関係している。つまり、“負の遺産”です。

 エビデンスがあるわけではありませんが、私の経験からあえて数字を出すならば、むちゃくちゃな生活が1~2年くらいであればまだ大丈夫でしょう。しかし、5年ほどむちゃくちゃな生活をしていれば、それはかなりの確率で“負の遺産”として残ります。食生活だけではありません。ストレスが高い日々が続いていた、仕事が忙しく睡眠時間が少ない日々が続いていた、という場合も同じです。

 Aさんのケースでいえば、20代の生活による“負の遺産”が大きかったのでしょう。血管は、健康的な生活をしていても、年齢と共に硬くなります。負の遺産がある人は、早い段階で血管が硬くなっている可能性が高い。もともと血管が硬いところからスタートすれば、その後に規則正しい生活に変えたとしても、よほど気を付けていなければ、ほかの人より心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなってしまうのです。

 私がよく例えに出すのは、花粉症の例えじゃないですが、コップに入った水です。コップに水がなみなみと入っている人と、少ししか入っていない人がいる。前者は負の遺産を抱えている人で、後者はそうでない人です。水が少ししか入っていない人は、1滴の水が加わったところで大したことがありません。それこそ“たった1滴”で済む。一方、水がなみなみと入っている人は、1滴水が加わるだけで、水があふれ出してしまう。“たった1滴”ではないのです。

 過去にむちゃくちゃな生活をしていた人は、自分は水があふれ出しそうな状態だと自覚した方がいい。その上で一層気を引き締め、生活改善に臨むべきなのです。

(坂本昌也/東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授)

血糖値の罠 基準に従って薬で下げすぎると発作起こす可能性

 生活習慣病の治療が始まる端緒となる、健康診断。定められた「基準値」が、健康か病気かを見極める境界となる。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。

 長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『検査値と病気 間違いだらけの診断基準』著者の大櫛陽一氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表。大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。

 大櫛氏が調査したデータの中から、「血糖値」について見てみよう。「血圧」や「コレステロール」では学会の基準よりも「大櫛基準」が健康とされる範囲が広かったが、血糖値は違う。糖尿病の診断基準となる血糖値については、日本糖尿病学会の正常値(糖尿病の発症リスクが低い)が空腹時血糖で110mg/dl未満、HbA1c(ヘモグロビンA1c)で5.5%以下となっている。

 HbA1cは赤血球中のヘモグロビンとブドウ糖の結合比率のこと。食事の影響を受けずに検出できるため、検査項目として有用性が高い。「中高年に限って言えば、日本糖尿病学会の基準と私の調査した基準範囲や国際基準はほとんど変わりません。血糖値は高ければ高いほど、やはり糖尿病になるリスクは増加する」

 ただそこで気を付けなければいけないのは、高齢者が血糖値を下げすぎてしまうこと。「健診の基準は年齢別になっていないため、55歳以上の中高年には基準が厳しすぎる。健診の基準に従って薬物により血糖値を下げ過ぎると低血糖発作を引き起こし、死に至る可能性もあるので注意が必要です」

 また、「大櫛基準」の範囲を超えていた場合でも、「血糖値の下げ方」には留意すべき点があるという。「肉など高脂質食品を摂取し過ぎると血糖値が上がるというのは間違いです。2005年度国民栄養・健康調査報告によると、日本では加齢に伴い炭水化物摂取量が上がり、男女とも40代から増加傾向にあります。

 中年になり、脂っこい食事を避けて蕎麦や素麺などのさっぱりした食事を好み、ご飯やパンでエネルギーを摂ろうと考えがちだからです。 同調査報告で空腹時血糖値の高い人の比率を年代別に示したものを見ると、男女とも50代から跳ね上がっている。日本人の血糖値を上げているのは、脂質ではなく、炭水化物の過剰摂取が原因だとわかったのです」

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