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夏の血圧低下、高血圧の人もご用心 水分補給忘れずに

血圧は季節によって変動する。気温が上がるこれからの時期は、血圧が低下しやすい。高血圧の人でも、下がり過ぎで不調に陥る場合も。夏ならではの血圧対策をおさえておこう。血圧はストレスや睡眠不足、塩分の取り過ぎ、飲酒のほか、気温の変化など様々な要因で上下する。一般的に血圧は寒い冬に上がり、暑い夏には下がる。

 東京逓信病院(東京・千代田)の平田恭信院長によると、夏に血圧が下がる要因は2つある。「気温が上がり、体内の熱を放散するために血管が拡張する」。さらに「汗を多量にかくと、血管内の水分と塩分を失う」。血圧が低めの人や高齢者はこの時期、血圧が下がり過ぎてだるさや立ちくらみ、ふらつきなどの症状が出ることがある。茅ヶ崎メディカルクリニック(神奈川県茅ケ崎市)の柘植俊直院長は「高齢者は血圧を調節する力が低下しているので、若い人なら問題にならない程度の血圧の低下でも症状が出やすい。転倒の原因にもなる」と注意を促す。

 日ごろ血圧が高い人も、夏は普段より低めの血圧値が出ることがある。だからといって安心してはいけない。降圧剤を服用している人は、冬場と同じ薬を夏に飲むと、血圧が下がり過ぎることがある。 「ふらつきや立ちくらみが起きる、収縮期の血圧(上の血圧)が100ミリを下回るというのは、明らかに下がり過ぎ」と平田院長。柘植院長も「複数の降圧剤を使っている人、利尿剤を飲んでいる人と高齢者は特に下がりやすいので要注意」と指摘する。

 この時期は血圧を日常的に測定して、数値の変化に敏感になろう。気温が上がり始める5月から6月にかけて、血圧が普段よりも下がる傾向があれば、医師に相談を。「薬の量を減らしたり、別の種類に替えたりして調整する。薬も“衣替え”が必要」(柘植院長)と語る医師もいる。日常生活の注意点は何か。普段の血圧の高低にかかわらず、この時期は熱中症対策が必須だ。「熱中症になると、血圧が高めの人でも急激に血圧が低下するので、非常に危ない。熱中症の予防がそのまま血圧変動対策につながる」と平田院長は指摘する。

 そのためには、こまめに水分を補給する。夏は体内の水分が減って血圧が下がったり、血液がドロドロになったりして、心筋梗塞や脳梗塞も起きやすい季節だ。脱水状態にならないように注意したい。多量の汗をかいたときは、塩分を含むスポーツドリンクなどを飲むとよい。日ごろから血圧が低く、夏のだるさがつらい人は「この時期、食塩を普段より多めに取るのも手だ」(平田院長)。ただし血圧の高い人は、夏でも減塩の食事を心がけよう。

 血圧の低下による立ちくらみやふらつきは、失神や転倒につながる場合も。起床時や椅子から立つ時、急に立ち上がらないようにする。血圧の下がり過ぎを防ぐのは重要だが、これだけでは不十分だ。実は夏には、血圧が上昇しやすい要因がある。例えば暑い屋外と、冷房が効いた室内との温度差。「一般に温度差が5度を超えると、血圧が上がるといわれる」と平田院長。冷房の効きすぎで急に体が冷えると、血管が収縮し、血圧が上昇しやすい。高血圧の人は要注意だ。
 
暑いとビールを飲む機会も増える。アルコールを取ると血管が拡張し、一時的に血圧が下がるが「アルコールが体内から抜けた翌朝、リバウンドで血圧がぐっと上昇する」(平田院長)。血圧が下がりやすい夏だが、高血圧の人も油断せず、血圧の急激な変動に気を付けて乗り切ろう。

正しい性交渉は高血圧を抑える?

心臓病や脳卒中の原因となるため、健康の大敵とされているのが高血圧です。
 
この高血圧、対処法や予防として減塩や運動などが提唱されていますが、その中には効果がないばかりか、かえって血圧をあげてしまうような間違ったものも含まれているのをご存じでしょうか。

 『高血圧ならソバより牛丼』(桑島巌/著、アスコム/刊)は、これまでの高血圧克服の常識の間違いを指摘し、正しい方法を教えてくれる一冊。その中から、高血圧対策で知っておきたいことをいくつかご紹介します。

■意外に多いソバの塩分
 血圧を下げるためには、減塩が効果的です。これは間違っていないのですが、その際に何を食べるかという、メニューの選択には多くの誤解が付きまといます。

 その最たるものが「ソバ」。
 「ソバ」と「牛丼」、どちらが塩分が多いかと聞かれたら、多くの人が「牛丼」と答えるのではないでしょうか。
 しかし、1食あたりの塩分を比較すると、牛丼が2.4gなのに対し、月見そばは6.0g。

 実は牛丼の方が塩分は少ないのです。同様にハンバーガー(1.4g)、ピザ(1.2g)など、“ジャンクフード”は塩分という観点では意外に優秀だといえます。

■アルコールが血圧を下げることも
 塩分と並んで高血圧の原因に挙げられるのが「アルコール」。しかし、ただ飲酒を控えればいいというものではないようです。

 お酒と高血圧の関係は「Jカーブ」といわれ、飲み過ぎてもまったく飲まなくても血圧は上がります。そして、ほどほどの量を正しい飲み方で飲むことで、血圧を下げる効果があるのです。

 ほどほどの量とは、ビールならロング缶1本(500ml)、日本酒なら1合(180ml)、焼酎なら水割り2杯(110ml)ほど。これくらいの量をちびちび飲んでいるうちに少しずつ酔いが回ってくる、というのが正しい飲み方のコツです。もちろんつまみは塩分の少ないものを選びましょう。

■正しいセックスは血圧を下げる
 高血圧だからセックスはいけないと思っている人がいますが、決してそんなことはありません。確かにセックスは血圧を上げる行為ですが、あくまでも一時的なもの。逆に、行為の後は心地よい睡眠を誘うホルモンが分泌され、夜間の血圧を下げる効果も生みます。

 ただし、あまりにも刺激の強いセックスはやはり考えものです。不倫や若い相手とのセックスは、心筋梗塞や脳卒中など思わぬ事故につながる恐れがあるので注意が必要です。血圧は自分の努力次第で下げられるものです。健康で長生きするためには高血圧への対策は不可欠。今のうちから正しい知識と正しい対策を身につけましょう。

糖尿病の初期治療 間食をやめたら完全に直った症例もある

白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として新刊『ボケない道』(小学館101新書)を上梓し、テレビ出演も多い白澤氏が、糖尿病と間食の関係についての新しい知見を紹介する。

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 平成19年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる890万人と糖尿病の可能性を否定できない1320万人を合わせて糖尿病の可能性のある人は、全国で実に2210万人以上と推定されている。

 糖尿病は食べ過ぎや運動不足などの生活習慣を基盤に発症することが知られているが、悪い生活習慣はなかなか改善できないのか、日本での患者数は増加の一途をたどっている。

糖尿病の引き金は、欧米型の食事によるカロリーや糖質の摂り過ぎが発症要因と指摘されている。しかし、食事のみならず、間食が糖尿病の発症に重要な引き金になることはあまり知られていない。

 米国ソーク生物学研究所のイグオ・ワン博士は、糖尿病を発症する時には肝臓で「イノシトール3リン酸」受容体という細胞内のカルシウムの濃度を調節している分子が重要な役割を果たすことをネズミの実験で明らかにした。

通常、摂取された栄養は、腸管で吸収された後、門脈という血管を通って肝臓に運ばれる。

 一方、膵臓で分泌されたインスリンは、門脈を通って一緒に肝臓に運ばれることになる。肝臓に到達したインスリンは受容体に作用し、細胞内カルシウム濃度を上昇させ、肝臓で糖を作る回路を抑制すると同時に肝臓に糖を取り込む回路を活性化させている。

 しかし、糖尿病を発症したネズミを調べると、門脈に高濃度のインスリンがあるにもかかわらず、肝臓の細胞ではイノシトール3リン酸受容体が機能せず、さらに糖を作り続けて高血糖になっていた。

 糖尿病の発症初期で血糖が上昇するのは、吸収した血糖を下げられないのではなく、肝細胞がインスリンのシグナルを誤認知して血糖を新たに合成してしまい、高血糖を維持している病態が明らかとなった。

 広島市で内科を開業する唐川卓治医師は、間食が糖尿病発症に重要な役割を果たしていると警鐘を鳴らす一人だ。唐川医師は、「間食により波状的に門脈内に分泌されるインスリンが、肝臓のインスリン感受性を狂わせて誤作動させているのではないか」と分析。

糖尿病の初期治療で、間食をやめることを患者への食事指導の大きな柱にしたところ、多くの患者で薬を使わずに糖尿病が改善、完全に治ってしまった症例も経験したという。 

これまではあまり注目されてこなかった間食の問題だが、糖尿病の初期治療では重要な治療指針になりそうだ。

血圧「新基準」で医療現場の混乱続く 患者から「薬やめたい」戸惑いの声

血圧をめぐる「新基準」で医療現場が混乱している。日本人間ドック学会がまとめた高血圧に関する数値の新基準が、従来の目安より大幅に緩かったことが発端だ。高血圧は脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を誘発するリスクが高い生活習慣病のため、日々数値をチェックする中高年は多い。

それだけに悩む患者からは「降圧剤を飲む必要はあるのか」「そもそも高血圧ではないのでは」との戸惑いの声は広がる。新基準の登場で降圧剤はやめられるのか。

 906万7000人(厚生労働省調べ、以下同)。日本の人口で約13人に1人が悩む高血圧。放っておくと脳卒中や心筋梗塞、腎障害など生死に関わる合併症を引き起こし、同じ生活習慣病の糖尿病(270万人)、高脂血症(188万6000人)の患者数と比べてみても断トツに多い国民病だ。

 自覚症状がほとんどないことから別名「サイレントキラー」と呼ばれ、原因は塩分の取り過ぎや運動不足、遺伝などさまざま。治療は降圧剤を飲み続ける対症療法が取られ、特効薬のようなものはない。

 降圧剤も薬である以上、副作用があり、費用もかさむため、誰もが食事療法や運動で改善しようと試みるものの、なかなか正常範囲に戻らないことから、マス媒体でも永遠のテーマのように取り上げられている。

 「そんなところに数値の目安が緩和された新基準が出たものだから、注目を集めるのも当然だった」というのは医療関係者の1人。

 日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)が発表した血圧などの新基準は、悩む患者たちにとって確かに衝撃的な内容だった。

 特に血圧は、これまで採用されてきた日本高血圧学会の正常範囲、上(収縮期)が139、下(拡張期)は89までが、新基準では上が147、下は94にまで広がった=表。

 大幅に緩くなったことで話題が集まり、数値が独り歩きし、医療現場では、患者から「薬を止めたい」「自分は新基準では健康体だから薬をやめて構わないか」との疑問の声が上がるほか、「薬を独自に判断して勝手にやめてしまう人がいる」(先の医療関係者)など混乱が続いている。

 結論から先に言うと、新基準の数値を基に降圧剤の服用を止めたり、高血圧ではないと判断したりするのはやめた方がいい。

 都内の開業医は「新基準は、合併症のリスクとの関係が全く評価されていない。現時点では従来の基準や他の学会のエビデンスに基づいたガイドラインに沿って治療するのが最善だ」と断言。

 別の都内の開業医は「新基準は、高血圧学会等が行った10年ほど経過を見て、10年後の治療成績から至適血圧(理想的な血圧値)を判断したものではない。現在、見かけで正常値(=新基準)であっても、10年後に大丈夫かという判断の材料にはならない」と力説する。

 大阪市内の基幹病院の内科医も「いままで通り降圧剤を飲むべきだ。新基準は、超健康人のデータで予防医学的な考えが入っていない」。3者とも合併症のリスクを考慮していない点を危ぶむ。

 そもそも人間ドック学会は、どのような調査でこの数値を導き出したのか。

 同学会の『新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー』によると、約150万人の人間ドック受診者から健康人を定義づけて約34万人を抽出し、最終的に選んだ「超健康人」約1万~1万5000人の検査値から基準範囲を求めたという。

 超健康人の現時点の数値を分析したもので、健康ではない層は除かれている。しかも、その超健康人を将来にわたって調査したものではないため、長期間追跡して結果を反映した従来の学会の数値と、同じ土俵で比べることはできない。

 キッコーマン総合病院(千葉)の院長代理で内科医の三上繁氏は、「人間ドックの新基準は、これまで医療機関ごとに基準範囲が異なっていたことから、統一するための第一歩として調査、発表したものだ。

すべての検査に異常がなく、飲酒は少量、喫煙もしない厳選された健常者の検査値を基に算出されている。マスコミもそのへんの実態をよく把握して報道すればよかったが、数字だけが独り歩きして混乱を招く結果になった」と解説。

 「人間ドック学会も、『今回の値で基準値範囲になったからといって治療を受けなくてよい、薬を中止してもよいということではありません。自己判断せず主治医と相談してください』とのコメントを出している。患者は将来のリスクを見据えた対応が必要」と従来通りの治療を勧める。

 高血圧は、治療が長期に及ぶため、治療そのものが日常生活の一部に溶け込んで認識が薄くなりがちでもある。

 医療ジャーナリストの長田昭二氏は「臨床現場に混乱が生じたが、あえて好意的にとらえれば、漫然と治療を受けてきた医療消費者が『自分の受けている治療は何の意味があるのか』という意識を向けるきっかけにはなった」と語る。

 これを契機に正しい知識を再確認してみてはどうだろうか。

甘酸っぱい口臭は糖尿病の予感⁈

●糖尿病ってどんな病気?

「糖尿病」とは、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなる病気のこと。私たちは体を動かすエネルギー源として、炭水化物を消化してブドウ糖に変え、血液に取り込んで体中の細胞に届けています。

しかし糖尿病になると、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなり、血液の中に溢れてしまいます。このため筋肉や内臓にエネルギーが届かず、全身がエネルギー不足になってしまうのです。これはインスリンというというホルモンが不足したり、うまく細胞に作用しなくなったりすることで起こります。

●糖尿病と口臭

糖尿病が口臭に結びつくのは、歯周病にかかりやすくなるからです。糖尿病になると唾液の分泌が低下し、口の中が乾くようになります。唾液には、口の中を殺菌する自浄作用があるので、唾液が不足すると口の中に歯周病菌などの細菌が増え、口臭が強くなってしまうのです。

また「ケトン体」というニオイ物質の発生も口臭の原因になります。糖尿病になると、ブドウ糖が利用できずにエネルギーが不足するので、体は体脂肪を燃焼して代わりのエネルギーを得ようとします。

このときに発生するのがケトン体です。ケトン体が血液に取り込まれて肺に到達すると、甘酸っぱいような独特の口臭がするようになります。

●糖尿病を予防するには?

糖尿病の予防には肥満を防ぐことが大切です。野菜を中心とした栄養バランスの良い食生活を心がけ、食べ過ぎないように気をつけましょう。

また、エスカレーターの代わりに階段を利用したり、こまめに歩くようにしたりするなど、日頃から体を動かす習慣を身につけて、基礎代謝を上げておくことも大切です。

糖尿病になってしまうと、完治することはありません。また進行すると、腎臓障害や網膜症、神経障害などの合併症を引き起こす怖い病気でもあります。

でも「糖尿病予備軍」と呼ばれるうちに発見し、生活習慣や食生活を改善すればまだ間に合います。健康診断にも糖尿病の検査は含まれていますから、毎年必ず健康診断を受けるようにしましょう。

高血圧が気になる人に

健康診断の結果が届いた後は相談に来る人が増えて、企業内医務室は結構忙しい日々が続きました。

 今年48歳になったB氏は数年前から血圧が高めで、担当保健師から薬をのんだほうがいいと勧められていましたが、一生薬をのみ続けることに抵抗感があり、逃げ回っていました。しかし、今年は例年より更に高めになり、産業医に相談する気になったようです。

 健診データをグラフ化して見ると確かに血圧は右肩上がりで、おまけに体重も就職時より15kgも増加、残業も多く、書類やパソコンの持ち出しは禁止されているため休日出勤もしています。

まず常時高血圧なのかを確認するため、量販店で血圧計を買って自宅で朝夕測定してもらうことにしました。

■検診会場では正確に血圧が測れないことも

 健診会場の雰囲気に押されて健診時だけ高い人もいれば、昼間は多少高いだけなのに、朝だけびっくりする程の高値の人もいて、なかなか昼間医務室での測定値だけでは治療開始の決断や、使用薬剤の選択に迷うことも少なくないからです。

即日薬を処方されると思っていたB氏にとってはやや肩すかし気味の結論になりましたが、一応納得して自己測定を始めることになりました。

 最近メタボリックシンドロームという言葉をよく耳にすると思います。2005年9月28日と2006年6月14日の本シリーズでも解説しました。

日本人の死因につながる病気のうち動脈硬化に由来するものは圧倒的に多く、医療費や介護費の抑制のためにも、動脈硬化の防止はきわめて大切な要件になり、肥満、高脂血、糖代謝異常などにひとつずつ対応するのではなく、総合的な判断での対応が大切――ということで、メタボリックシンドロームという考えかたがクローズアップされてきているわけです。

■降圧剤は多種多様

 さてB氏、1カ月後に血圧自己測定結果を記入した集計表を見るとやはり朝も寝る前も150を超えていて、休日の昼間も同じ程度。肥満のほか中性脂肪が200近く、心電図の軽い異常、父系に心筋梗塞で亡くなった方がいるなど、動脈硬化に進む要因をいくつかあるということも分かり、本人納得の上、降圧剤の服用に踏み切ることにしました。

 日本で入手できる降圧剤は多種あり、担当医の判断で選択するわけですが、どれでも思いついたものを選べばいいというものではありません。昔は降圧利尿剤といって尿をたくさん出して血液量を減らして血圧を下げようとする薬が主流でした。

 しかし最近は、血管に作用して血管を拡張させ、血管抵抗を減らして降圧させるカルシウム拮抗薬、体内に存在して血圧を維持するレニン-アンジオテンシン系に作用してアンジオテンシンIIの作用を阻止するARB、アンジオテンシンIIの生成を阻止するACE阻害剤、交感神経のβ‐受容体を遮断して心臓拍出量を減らすことで降圧させるβ‐遮断薬、交感神経のα受容体を遮断して血管を拡張させることで降圧させるα‐遮断薬などがあり、専門医はその人の様々な背景を考慮して薬剤を選択します。はじめは常用量の半量から開始し、効き具合をみながら適量にもっていきます。

 結局B氏にはカルシウム拮抗薬が選択され1カ月後には収縮期血圧は15mmHg、拡張期血圧は10mmHg位下がりました。そして起床時になんとなく感じていた後頭部の頭痛がなくなり、肩凝りも気にならなくなったということでした。

 高血圧の治療開始に関する最近の見解は、動脈硬化が進んでどうにもならなくなってから始めるのではなく、ちょっとその兆候が出始めたら、血圧値はさほどではなくても、治療に踏み切ったほうが、最終的に動脈硬化をとことんまで進めることにならず、最良の方法であるとの考えが主流になってきました。

(カラダに嬉しい豆知識「Dr.鷲崎の健康エビデンス」)

糖尿病 なりやすい人のタイプと予防のための「3つの実践」

「糖尿病」は、一度発症すると一生つきあっていく病気である。「糖尿病予防 3つの実践」を 京都医療センター 予防医学研究室長の坂根直樹(さかね・なおき)さんにご紹介いただいた。

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糖尿病のリスク

■糖尿病を起こしやすい人

次のような人は、糖尿病を起こしやすいと考えられています。

◎家でゴロゴロすることが多い——横になってテレビを見続けたり、座っていることが多い人は、活動的な人に比べて、糖尿病のリスクが約2倍に上がるといわれています(※1)。

◎朝は食べず、夜は“ドカ食い”——夜遅くにたくさん食べると、朝食が食べられなくなるだけでなく、内臓脂肪が付きやすくなり、肥満を招きます。

◎若いときのズボンがきつくなった——それほど太っていなくても、若いころのズボンがきつくなった人は、腹部に内臓脂肪が付いているおそれがあります。現在の体重が、20歳のときから5㎏以上増えていると、糖尿病のリスクが高くなるといわれています(※2)。

これらは、言い換えれば、「運動不足」「よくない食事習慣」「肥満」が、糖尿病のリスクであることを示しています。

このほか、次のような人も注意が必要です。

◎家族に糖尿病のある人がいる——インスリンの分泌が遅れたり、量が不十分だったりする体質(インスリン分泌不全)が遺伝する場合があります。

◎妊娠糖尿病だった——妊娠中につくられるホルモンにインスリンを抑える働きがあるため、妊娠をきっかけに血糖が異常に上昇します。出産後は、多くの場合、血糖値が正常に戻りますが、将来、加齢に伴い、糖尿病を発症する危険性が高いと考えられています。

◎糖尿病予備群——糖尿病は、血糖値を基に診断されます。空腹時の血糖値で見ると、126mg/dL以上の場合には糖尿病が疑われ、100mg/dL未満の場合なら正常です。

100〜125mg/dLの場合は、将来、糖尿病になるリスクが高く、糖尿病予備群と呼ばれています。予備群は、正常な場合に比べると、約6倍も糖尿病を起こしやすいといわれています(※3)。

■合併症

糖尿病は、高血糖により血管が傷害されるため、「血管の病気」ともいわれます。そのため、病気が進行すると、血管が張り巡らされている、体内のさまざまな部位に合併症が起こるおそれがあります。なかでも、細い血管が多い神経、目、腎臓が障害されやすく、3大合併症といわれています。

◎神経——手足のしびれやこむら返りなどが起こります。

◎目——眼底出血が起こり、失明することがあります。

◎腎臓——腎不全などが起こる場合があります。

また、血糖値が高いと、太い血管に動脈硬化を起こしやすいことも知られています。動脈硬化は予備群のころから進行し、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクが高まるとされています

糖尿病予防 3つの実践

今回は、「糖尿病予防 3つの実践」を紹介します。

1 週に150分運動

2 腹八分目

3 3か月で3㎏減

糖尿病予備群でも、これらを目標に実践すると糖尿病になるリスクがほぼ半減することが、最近わかってきました(※4)。

■1週間に150分間運動を行う

運動は、1週間単位で目標を立てて行うとよいでしょう。例えば、ウオーキングなどを1回30分間、1週間に5回、あるいは1回50分間、1週間に3回行えば、合計で150分間になります。

運動の種類には、軽く汗をかく程度のウオーキングのほか、「好きなスポーツをする」「ジムで筋力トレーニングをする」「家でスクワット、腹筋運動、腕立て伏せなどをする」などがあります。

■食べ過ぎの人は、腹八分目にする

過体重(※5)や肥満のある人は、摂取エネルギーを平均して1日当たり約200kcal減らすことが、糖尿病予防につながることがわかっています(※6)。例えば、「ご飯を2口」「小さな菓子パンを1個」「せんべいを1枚」の3つを合計すると約200kcalになります。つまり、余分なものを食べないよう心がけることが大切です。

■肥満のある人は、3か月で3㎏減量

肥満のある人は、3か月をめどに3㎏の減量を目指しましょう。これは60㎏の体重の人なら5%に当たります。それを達成したら維持することが大切です。3か月と期間を区切ることで、減量の成功率が高まります。標準体重(※7)や20歳ごろの体重を目標にする必要はありません。

■『NHKきょうの健康』2014年4月号より

糖尿病の合併症はなぜ起こる?

糖尿病で特に怖いのが合併症だ。糖尿病を放置していると、全身の血管が障害されてさまざまな合併症が現れる。旭川医科大学 教授の羽田勝計(はねだ・まさかず)さんが、糖尿病の三大合併症とそれらが起こる仕組みを解説する。

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■糖尿病の合併症
日本の糖尿病の患者数は約950万人で、予備群を含めると2000万人を超すと見られています。特に地方では、車を使うことが増えて以前ほど歩かなくなったため、糖尿病を起こす人が都市部以上に増えているといわれています。これは、日本だけに限らず世界的な傾向です。

最近は、糖尿病の治療に前向きに取り組む人も増えていますが、今なお糖尿病のある人の約3割が、十分な治療を受けていないのが現状です。人数にすると、300万人以上になります。

糖尿病は、長い間自覚症状がほとんどありません。そのため、放置してしまう人が多いのです。しかし、糖尿病はその間も徐々に進行していき、合併症の症状が現れてくるころには相当に悪化しています。

■合併症が起こる仕組み
糖尿病は、慢性的に血糖値が高い状態が続く病気です。血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖は全身に運ばれてエネルギーになりますが、細胞に十分取り込まれず血液中に異常に増えた状態が糖尿病です。

血液中にブドウ糖が異常に増えた状態が続くと、全身の血管壁が傷つけられます。

その結果、さまざまな合併症が起こってきます。主な合併症には、細い血管が障害されて起こる糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があります。太い血管も障害されて動脈硬化が進むため、脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症なども起こりやすくなります。

■細い血管に起こる合併症
糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

■糖尿病網膜症
眼球の奥にある網膜の細い血管が、障害されてもろくなる病気です。進行すると、視力が低下して失明に至る場合があります。

■糖尿病腎症
腎臓の働きが徐々に低下していく病気です。腎臓は細い血管がたくさん集まった臓器で、その血管が少しずつ障害されていきます。ひどく悪化した場合、透析治療が必要になります。

■糖尿病神経障害
末梢(まっしょう)神経が障害される病気で、足のしびれや痛み、感覚麻痺(まひ)などが起こります。原因は、神経に酸素や栄養を送っている末梢血管の血流低下や、末梢神経そのものの障害です。非常に悪化すると、脚を切断するなどの事態に陥ることもあります。

※それぞれの合併症についての詳しい説明や治療法は、『NHK きょうの健康 2014年7月号』に掲載しています。

■『NHKきょうの健康』2014年7月号より

【健診数値の生かし方】まず自己計測と食生活改善 高血圧編

血圧が「140/90」(単位mmHg、日本高血圧学会基準)以上は、高血圧とされている。生活習慣病ならば、食生活の見直しが不可欠だが、診療所へ行って「薬を出しましょう」といわれることは珍しくない。薬はイヤだと思う人もいるだろう。

一方、現在すでに服用中で、血圧コントロールがうまくいっていない人もいるのでは。そこで、今回は数値と薬の服用について考えてみる。

 【薬を飲む前に見直し】

 50代のある男性は、体調が悪くてクリニックを受診し、「高血圧」と診断された。血圧値は「171/98」。薬の服用を勧められたが、男性は不審に思い、専門医のいる総合病院を受診。すると、「高血圧ではない」といわれた。このように医療機関によって診断が異なると、一般のわれわれは戸惑いがち。

 東京都健康長寿医療センター顧問を兼務するNPO法人臨床研究適正評価教育機構の桑島巌理事長が警鐘を鳴らす。

 「診察室で緊張して血圧が高くなる人は、意外と多い。血圧170の人も、世間話をした後に再測定したら130まで下がるのは、よくあることなのです。1回だけの血圧測定で『お薬出しましょう』という医師は、疑った方がいい。

血圧が高くても、頭痛などの症状がなければ、まずは家庭で数日、自己測定してもらい、食生活を見直してもらうのが基本です」

 朝晩2回ずつ自分で血圧測定し、減塩やカロリー制限、運動などの食生活の改善が、高血圧改善の第一歩となる。

 【少量安価の薬でOK】

 食生活の改善が身体に及ぼす効果は、人にもよるが一朝一夕とはいかない。3カ月間がんばっても、家庭血圧が高い状態が続くと、薬の服用が勧められるという。

しかし、高血圧の薬に関しては、今年1月に刑事告発されたノバルティスファーマ社の「バルサルタン(成分名)」問題で、一般の人々にも不信感が広がった。

バルサルタンはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)という血管を拡張して血圧を下げる薬。他に利尿効果で血圧を下げる薬や、血管拡張と利尿作用を併せ持つカルシウム(Ca)拮抗薬などがある。

 「高齢者では、利尿作用のある薬の方がARBよりも血圧を下げる効果が強いのですが、臨床研究でバルサルタンの成績があまりにも良すぎたために、『不自然』であるとして不正が発見されたのです」

 桑島理事長はノバ社の問題が明らかになる前から、論文への疑惑を公言していた。

 では、薬を服用するときに、われわれはどう考えればよいのか。

 「ごく少量で値段が安い薬でも、効果は十分に得られます。食生活を見直し、薬を服用して3カ月経っても高血圧が改善しないときには、専門医ならば他の薬に切り替えます。

また、薬の服用と同時に行う食生活の見直しが順調に進み、高血圧の改善が明らかになれば、薬の服用を止めることも可能です。単に医師任せにするのではなく、ご自身でも、健康管理の意識を高めていただきたいと思います」と桑島理事長は話す。 

■治療で第一選択薬とされる薬
・Ca拮抗薬…血管に直接作用して血管を広げるほかに利尿作用でも血圧を下げる。
・ARB…血管を縮めるアンジオテンシンという物質の働きを阻害することで血圧を下げる。
・ACE阻害薬…アンジオテンシンの分泌を抑制することで血管を拡張させ血圧を下げる。
・利尿薬…体内への水と塩分の再吸収を抑制。穏やかな作用のサイアザイド系が代表。
*上記は、桑島巌著「高血圧、効く薬効かない薬」(朝日新聞出版)より抜粋

副作用が相次ぐ糖尿病新薬「SGLT2阻害薬」とは?

発売前から懸念

 糖尿病の新薬「SGLT2阻害薬」に重篤な副作用が相次いでいるとして、専門家で作る委員会が6月16日、適正使用を求める文書(Recommendation)を出しました。

 SGLT2阻害薬は、糖の再吸収を防いで尿中に排出させることで血糖値を下げるという新しい機序の薬で、4月にまず1社から発売されたのを手始めに6社から発売が予定されています。

低血糖を起こしにくく、体重の増加を招かないなどの利点があるとする一方、特に高齢者などで脱水の危険性などが指摘されていました。

 適正使用を求める文書は、「発売開始から1か月の副作用報告を受け、因果関係など情報に不十分な点はあるものの、重篤な副作用の懸念のうち、残念ながらいくつかが現実化した」「予想された副作用である尿路・性器感染症に加え、

重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹(ひしん)などの重篤な副作用が発症している」として、使用にあたっては慎重な注意を呼びかけています。

 新薬には常に、未知の副作用のおそれがあります。SGLT2阻害薬は特に、発売前から懸念が示されていました。今回の文書は公的な強制力のあるものではありませんが、専門家によって素早い対応がとられたことは評価できます。

 糖尿病は2009年末からインクレンチン関連薬(GLP1受容体作動薬、DPP4阻害薬)が7製品発売され、新薬ラッシュが起きています。なかでも飲み薬のDPP4阻害薬は、この2、3年の間に急速に普及し、最もよく使われる薬のひとつになっています。

 取材した糖尿病の専門医は「専門医はまず従来薬を選択し、DPP4阻害薬をすぐに使うことはしない」と話します。新薬の急速な拡大の背景には、非専門医による使用があるとみられます。

 そこへもってきての、“さらなる新薬”SGLT2阻害薬の登場です。何百万人もの患者がいる糖尿病では、すべてを専門医がみるわけにはいきません。適正使用の呼びかけがいち早く伝わることを願います。

尿の色で病気が分かる 「無色透明」なら糖尿病の疑い

尿の色の変化は、病気のサインになる。とりわけ「無色透明」のオシッコには糖尿病の危険があるという。日本大学医学部泌尿器科学系の高橋悟主任教授に詳しく聞いた。

 健康な尿は通常「麦わら色」をしている。だが、アルコールを飲んだ翌朝や、利尿作用のあるカフェイン飲料を摂取した後は、かなり色が薄い尿が多量に出る。アルコールと一緒に摂取した余分な水分が排出されているからで、一過性のものだから心配ない。

 しかし、無色透明な尿が1日に何度も、何日も続くようなら、糖尿病の可能性を疑ったほうがいいという。

「腎臓は、体内の水分量の調整や、血液中にある老廃物の濾過(ろか)などの役割を果たしています。糖尿病患者の場合、血液中の血糖値が高いので、濃度が低いほうから高いほうへ移行する浸透圧の働きによって、血管中にたくさんの水分が引っ張られます。

その血液が腎臓に達すると、フィルターの役割をしている腎杯(じんぱい)・腎盂(じんう)が余分な糖を排出しようとして、血液中に吸収された大量の水分も一緒に尿として出してしまうのです」

 尿中の水分が多いため無色透明な希釈尿となり、体内の水分も不足して喉が渇く。そのためにまた大量の水分を飲んで頻尿になる悪循環が起こり、多い場合は1日15回以上、合計で3000~3500?の尿を排出する場合もあるという。
 健康な人は1日7回、1500~2000?といわれているから倍以上だ。

 この「無色多尿」の症状は糖尿病の早期から見られるので、気付いたらすぐ病院へ行ったほうがいい。放置すると、糖を好む細菌が尿や膀胱(ぼうこう)で大量に増殖して尿路感染や尿路結石などを合併し、濁った尿や血尿、発熱などを引き起こす。こうなると重症だ。

「すでに糖尿病で食事療法や内服治療を行い、血糖値が150~200?/dl程度に保たれていれば問題ありませんが、再び血糖値が上がると、再び『無色多尿』の症状が出ます」

 その場合はすぐに再検査が必要。尿の色は病状も教えてくれるのだ。

■「赤」「白」にも注意

 他にも、病気のサインとなる尿の色がいくつかある。
「まずは赤い色をした血尿です。痛みもかゆみもない無症候性血尿の場合、膀胱がんか尿路上皮がん(尿管や腎杯・腎盂など尿の通り道にできるがん)の可能性が高いでしょう。

特に中年男性の喫煙者は注意してください。一刻も早く診断を受けるべきです」

 一度きりの血尿なら大丈夫だろうと甘くみて放置していると、半年後には手遅れに…なんてことにもなりかねない。

 白く濁った尿は、尿路結石や尿路感染症の可能性が高い。膀胱炎などで細菌が繁殖して体内で炎症が起き、膿(うみ)などによって尿が白く濁る。

若いうちは痛みを伴うが、加齢や糖尿病で末梢(まっしょう)神経が麻痺(まひ)して感覚神経が鈍っていると、痛みも感じなくなる。尿の色が重要なサインになるのだ。

「尿路感染症だけでは命の危険はありませんが、長引けば膀胱がんのリスクが高くなります。軽くみてはいけません」

 濃い茶色の尿は「ビリルビン尿」といわれ、肝硬変やC型肝炎によるものが多い。糖尿病で尿路感染症を併発している場合は、尿の泡立ちも起こる。オシッコの色や状態に変化があった場合は、たとえ1回だけでも体が異変を訴えている証拠。早めにしっかり検査を受けたい。

今すぐオトンやオカンにも教えてあげて~! 高血圧を防ぐ9つのコツ

「高血圧なんてまだまだ関係ないわ」とお思いのアナタ。実は日本人の3人に1人はこの病気とされていて、いわば国民病といえるんです。「そういえば、母が(または父が)高血圧の薬を飲んでたっけ…」と思い当たる人も少なくないはず。

でも、お薬は血圧をコントロールするためのものに過ぎず、根本の治療にはなりません。

そこで今回は、健康指南サイト「My Healthy Tips」から将来の自分のため、そして家族のためにきっと役にたつ、高血圧を改善するための9つのコツを教えちゃいます。かしこい女子は、自分の健康は自分で守るのよっ!!

1 フルーツと野菜をたっぷり採る

健康的な食生活を語る時によくいわれることではあるけれど、特に高血圧を防ぐには、ブロッコリーなど緑の濃い野菜や、キャベツといった葉物を食べることが効果的なんだとか。カリウムを多く含むメロンやバナナ、オレンジなどのフルーツも、血圧を安定させる助けとなるようです。

2 脂肪は少なめに!

すでに高血圧である方は、食生活から高脂肪の食品や乳製品を減らした方が賢明。牛乳やチーズ、ヨーグルトは低脂肪のものを選びましょう。

3 プロテインを含む食品をしっかり食べる

高血圧には、“プロテインが豊富で、脂肪が少ない食事”が理想。赤身のお肉よりも、鶏肉や魚、卵でプロテインを積極的に採り入れた方がベターです。

4 全粒パンなど精白していない食品を意識して

まず、加工食品は避けましょう。その上で、パンやシリアル、パスタは全粒粉で作ったものを食べるなど、なるべく未精白の食品を選ぶように意識して。

5 豆やナッツを味方にする

カリウムを多く含む、インゲン豆やエンドウ豆、きな粉を食事や間食で採りましょう。血圧を下げる作用があるそうです。

6 ヘルシーなオイルを選ぶ

高血圧を和らげるために、オリーブオイルなどより体に良い油にチェンジ。動脈硬化を防ぎ、コレストロール値を下げる効果のあるといわれるオメガ3脂肪酸を豊富に含む、アマニ油やエゴマ油もおススメです。意外にもオメガ3脂肪酸の含有量が多いクルミをサラダ等に使うのも良い方法。

7 砂糖やアルコール類は極力控えて

砂糖やトランス脂肪酸多く含んだケーキやドーナツを食べることは、なるべく控えましょう。砂糖やアルコールを過剰に摂取すると、動脈硬化が進行しやすくなるという事実も!

8 血圧を定期的に計る

血圧計を購入して、定期的に血圧をチェックするのも重要なポイント。上記の改善策を参考にして食生活を見直すと、2~3週間で効果が現れるかもしれません。

9 ナトリウムの多い食品は避ける

高血圧の原因としてよくいわれるのが、塩分のとりすぎ。塩分の強い食品を避けるのは必須ですが、食品のパッケージ等には塩分ではなく、ナトリウムとして記載されていることに注意が必要です。ポテトチップス、ケチャップ、マスタード、漬物などは少なめに。

以上、9つのコツでした! 高血圧は自覚症状のないうちにどんどん人の健康をむしばむことから「サイレント・キラー」と呼ばれる病気。まずは食生活から見直してみましょ!

【健診数値の生かし方】腎機能を測る血清Cr値「1.1」★高血圧編

長らく高血圧状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中、慢性腎臓病などの将来的なリスクが高まるといわれる。中でも腎機能の低下は、全く自覚症状がないまま進行し、腎不全がかなり進んだときに初めて気づくことが多いそうだ。

 指標となるのは、検診でも実施されている「血清クレアチニン(Cr)」値。年齢別の推計値があり、50代男性で「Cr1 1mg/dl」以上の値は、腎機能が低下している可能性があるという。

 【腎硬化症を誘発】

 慢性腎臓病には、糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎など、さまざまな原因がある。高血圧と深く関わっているのは「腎硬化症」。

腎臓には細い動脈がたくさんあり、加齢とともに動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなるため、腎機能は低下していく。この動脈硬化を後押しする要因のひとつに、高血圧があるそうだ。

 聖マリアンナ医科大学病院腎臓・高血圧内科部長の木村健二郎教授が説明する。

 「腎臓の障害を知るには、一般的な検診では、尿蛋白(たんぱく)の有無が目安になります。ところが、腎硬化症では、尿蛋白は出ないことが多いのです。

その場合、腎臓の障害を知るには血清Crを測定する必要があります。血清Crの値と年齢および性別から、腎臓の働きを推測することができます。これを推算糸球体濾過(ろか)量(eGER)といいます」

 eGFRは「60」以上が正常。たとえば、50代男性で「Cr1・1」では、eGFRは「57」となり、腎臓の働きが落ちている恐れがある。

 「高血圧であるなら、腎硬化症の可能性もあります。放置すると腎臓の働きがさらに落ちてしまう危険もあるのです」(木村教授)

 【気づかない腎機能を知る】

 55歳でCrが「1・20」の場合、eGFRは「50・3」となり、腎機能は明らかに低下している。ただし、末期腎不全で人工透析が必要となるのは、eGFR「7~8」以下になってから。

 CrやeGFRの値が多少異常でも、すぐに重篤というわけではない。しかし油断は禁物だ。

 「腎不全になると、腎臓の老廃物を排泄(はいせつ)する能力は落ちます。しかし、腎臓の働きがかなり低下して透析が必要になっても、尿量が減ることはありません。

自覚症状のないことも多いので、ご本人は気づかないのです。だからこそ、高血圧が続いている人は、CrやeGFRのチェックも重要なのです」(木村教授)

 50代男性ではCr1・1以上、60代男性ではCr1・0以上になると黄色信号。高血圧を放置すると、腎機能低下を加速させる危険があるそうだ。もちろん、高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症、さらには、肥満も腎臓の障害を後押しする。

 「自覚症状がないから良いのではなく、50代でも、60代でも、気づいたときに食生活を改善し適切な治療を受けることで、高齢になったときのリスクを回避することが可能です。遅すぎることはありません」と、木村教授は話す。 

 ■血清Cr値からみた腎機能正常の目安(男性用)
 30~40歳 1.10mg/dl以下
 45~55歳 1.00mg/dl以下
 60歳以上 0.90mg/dl以下
 *血清Cr値がこれらの数値を超えていたら腎機能低下の可能性あり。
 (木村健二郎教授提供)

境界型糖尿病の安上がり治療法

ドックや健康診断で糖尿病の疑いがあると糖負荷試験という検査をすすめられます。その結果、「正常ではありませんが、糖尿病でもありません。境界型です」と言われた人はたくさんいると思います。

正常ではないのだとひどく心配になる人もいれば、糖尿病ではないのだからとすっかり安心してしまう人もいて、同じ結果の解釈でも人によって様々です。

 安心すべきなのか重大にとらえるべきなのか迷うところですが、どちらかといえば「無視はできない」と理解した方が無難です。

境界型と診断された人が、2年後に再度糖負荷試験を受けたところ、境界型から糖尿病型になっていた人が25%もいたという研究があります。肥満度、遺伝因子など種々の条件で左右されるとは考えられますが、少ない数字ではないと理解すべきでしょう。

■1日平均38分の有酸素運動が有効

 境界型といわれたらどう対処すべきかを考えてみましょう。

 一言でいえば今より絶対に太らないことです。

 糖代謝を悪化させる要素のひとつに肥満があげられます。しかし、食事制限を主体にするのはよくありません。むしろ運動を第一選択にするべきです。

 糖尿病専門雑誌にイタリアのペルージア大学から発表された論文をみると、体重減少があまり認められなくても、1日平均38分の有酸素運動が有効なことが明らかになっています。

すなわち、1日平均4.8kmの歩行をするとHbA1cが0.4%、中性脂肪が48mg/dl、血圧が6mmHg下がったと記載されています。これを1日83分、8.5kmの歩行に増加するとさらに改善し、HbA1cは1.1%、中性脂肪が57mg/dl、血圧が5mmHgそれぞれ低下したとのことです。

■歩行時間、距離は徐々に増やしていく

 ただ、1日ほとんど座りがちの生活をしているサラリーマンに、急に40分、5kmの歩行を強要しても、誰も実行してくれないことは明白です。

しかも糖尿病のような慢性の病気は一生ものですから、短期間頑張ればすっかり治るといった急性疾患とは異なり、運動でも食事でもすべて長続きすることがポイントになります。従って歩行を勧めるとしても、はじめは短時間、短距離から開始してもらいます。

 コロラド大学保健科学センターでは、その人が今までの日常生活中の運動量にプラスして、1日2kmまたは30分あるいは2400歩の歩行を追加することを推奨することにしていて、これなら多くの人が達成可能であるとしています。

 ほとんどの人は日頃から運動不足ですから、少しでも運動するようになると、気分がよくなりもう少し増やしてみようかという気持ちになりますので、そうなったら理想値の平均、1日5.1km、77分、6400歩へと目標を高めていくよう支援します。

 その際、医師よりも、糖尿病をよく勉強した保健師やカウンセラーの助言が効果的のようです。このように無理せずに少しずつ増やす方法で実行すると2年間経過したあとでも69%が歩行を継続していたということです。

■1日1万歩も開始当初は2000歩から

 日本では語呂の良さもあってか1日1万歩を推奨していますが、やはり開始当初は2000歩でもいいからとか、駅を降りたら10分でいいから遠回りして帰りなさいとかいろいろ実行可能な方法を本人に選択してもらっています。

 歩行による運動療法は糖尿病に限った話ではなく、高脂血症、骨粗しょう症、高血圧症の治療にも有用です。歩行なら、ジムやプールの月会費も入会金も要りません。靴屋さんを多少喜ばせるだけでしょう。

 ウオーキングシューズを選ぶ際に迷う場合はシュー・フィッターの居る靴屋さんがおすすめです。

また服装は軽く動きやすいものを選ぶことは当然ですが、できれば両手は何も持たず、最小限の荷物は肩から斜めにかける軽い鞄だけにしてください。そして気分も大切です。自分はいま身体のためにわざわざ30分を割いているんだという気分です。

「もっとカラオケを歌っておけばよかった…」認知力アップデイケアとは

認知症早期治療の実体験ルポを行っている、週刊朝日の山本朋史記者(62)。筑波大学附属病院の認知力アップケア730病棟の学習内容について、リポートする。

*  *  *

 認知力アップケアでは教室で教えてもらったことを家庭で自習することを推奨する。スポーツでは定期的に「宿題」も出される。自宅で生活習慣に上手に取り入れることが大切という。

 730病棟のみんなが明るいことは、ぼく自身の印象でもある。不思議な効果だ。「音楽療法」も一度だけ受けた。おなかの底から声を出す訓練から始まった。参加者は回を追うごとに増えている。参加者は38人。

テレビの影響などもあったのだろう。730病棟いっぱいに椅子を円形に並べて、先生が口を大きく開けておなかから声を出すように指示するが、これが意外と難しい。

 ぼくは、自分では、口を大きく開けて大きな声を出しているつもりだが、先生は、

「もっと出るはず。はい、口を大きく開けて」

 と言い、口を縦に開けさせて「ツー」という音や、横に開かせて「エー」という音を出させる。30分も続けていると体中が熱くなってくる。

 次は歌だ。高齢者にはなじみの「チャンチキおけさ」や、3月末で終了した朝ドラ「ごちそうさん」の主題歌だった、ゆずの「雨のち晴レルヤ」など、新旧取り混ぜて全員で歌う。

 先生が小型電子オルガンで伴奏してくれるので、ぼくも、なんとかついていくことができた。昔はカラオケに行ったこともあるが、もう15年以上は遠のいている。調子外れで、何とも様にならない。もっと若い人たちに付き合ってカラオケをやればよかった。

※週刊朝日  2014年6月6日号より抜粋

高齢者の15%かかる認知症 疑いのサインは性格変わったなど

2014年時点で65才以上の認知症患者は約462万人で、これは高齢者の15%にあたる。

また、4年以内に半数が認知症を発症するといわれる軽度認知障害(MCI)の数は約400万人と推計され(ともに厚生労働省研究班)、認知症予備軍の増加も見逃せない。

「認知症には、何度も同じことを言う、買い物で同じものを買う、慣れている道なのに迷う、などの症状があります。しかし、周りが疑って簡単な質問の答えを聞き出そうとしても、“さっきまで覚えていた”とごまかすことも多く、電話だけで気づくのは難しいかもしれません。

少しでも心配な点があれば、物忘れ外来などを上手に受診して」(福祉介護ジャーナリスト・代居(よすえ)真知子さん)

 また、老人性のうつ病は性格が変わる、ぼんやりするなど、認知症と似た症状も。配偶者との死別がきっかけになることもあるので、片親を亡くした際は特に注意を。

<認知症を疑うサイン>

【性格が変わった】
 医師より子供のほうが気づきやすいポイント。怒りっぽくなった、疑り深くなったなど、昔の性格と変わったら注意。

【物忘れしているのに「私は大丈夫」と言う】
 認知症は自覚がないことが多い。何度も同じことを言っているにもかかわらず「私は大丈夫」と言い張る傾向が。

【前にあった出来事を忘れる】
「昨日食べたものを思い出せない」は老化だが、食べたことそのものを忘れていたら、進行している可能性が高い。

がん・糖尿病の原因にもなる 食事中の水分摂取がもたらす危険(2)

 さらに、医療現場に詳しい健康ジャーナリストは、こんな話をする。「食事を摂るときの水を飲む行為は、実は見事なまでに太る原因となります。水にはカロリーはないのですが、大量に摂る人と、ほとんど摂らない人では、同じ物を同じだけ食べても、水をたくさん飲む人の方が体重が増えやすい。また、唾液そのものについては、年齢に伴い唾液腺が成熟していき、咀嚼などの刺激がなくても自然に流れ出る安静時唾液の量は増加する。それは30歳頃最大に達し、年を取るにつれて減少していきます。

やがて唾液腺に委縮、脂肪化が起こり、機能が衰え、主として漿液性唾液というものが減少し始める。そうなると、口腔内の雑菌が水分などで押し流される形で、小腸や大腸に達し、体内の細菌のバランスを崩し、健康を害する可能性が高くなるのです」人間の腸内には、数百種類の細菌が生息している。その数は約100兆個、重さにして1~1.5キロと言われる。歯科クリニックの院長はこう話す。

 「最近の歯科医師会の研究でも明らかになったことですが、腸内の細菌は人間が生きていく上で必要な乳酸や酢酸などを産出し腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑え、病原菌の感染や発がん物質の産出を抑える働きがあることが分かっているのです。具体的には、がんや糖尿病、アレルギー、神経疾患、肥満などと関連し、脳への影響からうつ病との関係も指摘されています。こうした点から見ても、小腸や大腸の雑菌の増殖を抑えるために、唾液がいかに大切であるかを認識する必要があるのです」

 人は、食べ物を口の中に入れ、噛むことで唾液が多く出て、口腔内の食べカスを洗い流す。また、食べたり話したりするときに、舌や頬の筋肉が動くことでも、食物のカスを取り除きもする。これらは必要不可欠な生理的なことで、自浄作用となる。「よく噛むことにより、唾液の量は増える。噛めば噛むほど、自浄作用は高まるのです。そのため、食べ物を水で流し込むことは、その自然の流れに逆らうことになるのです」(専門医)

 こんな話がある。横浜市に住む自営業の久保直哉さん(仮名・67)の例だ。 「私は、50代で歯の大半を虫歯でなくしてしまいました。一時は入れ歯を作りましたが、だんだん合わなくなり、最後は使うのをやめてしまいましてね。だから当然、硬い食べ物はダメ。よく噛んで食べろと言われてもできない。だから、食事はお茶漬けが多い。パンも食べますが、喉につっかえそうで、水やコーラなんかで流し込んでいたんです。すると60歳になって、耳の下あたりが痛くなって医者に診てもらったら、菌が入って炎症を起こす唾液腺腫脹と診断された。おまけに健康診断では糖尿病と指摘されてしまったんです」

 原因をたどれば、噛む行為が少なくなったことで唾液が減り、食べ物を水で流し込む行為で雑菌が繁殖したことが問題。いかに唾液が重要か、が分かる。 「食事中に水分を摂ることを習慣にしている人が、いきなり飲まないようにするのは難しい。ならば、徐々に水分の量を減らし、できれば食事の後に飲むようにすることです」(専門医) 習慣づいてしまっているその行為が、体の状態を危うくする可能性があることを知ろう。

がん・糖尿病の原因にもなる 食事中の水分摂取がもたらす危険(1)

 食事中に水やスープで食べ物を流し込む――意外にもこの行為が、体調を崩す原因となるかもしれない。虫歯や歯周病につながるだけでなく、大腸や小腸の細菌のバランスを崩し、思わぬ病を引き起こしかねないという。「ご飯を食べながら、水をガブガブ飲み、さらにスープがないと食事が進まないといった人は、少なからずいます。

噛まずに食べ物を胃に流し込むスタイルですが、それは単に、胃や腸の負担を増やすだけではありません。結果的に、口の中を保護する唾液の量が減ることにつながり、体に様々な支障を与えることになるのです」
 こう語るのは、昭和大学歯科病院総合歯科診療科の担当医だ。

 中でも、最も重要とされる“唾液”について、さらに詳しく聞いてみると、主に七つの働きがあるという。
 ●熱い物、冷たい物など、刺激物を食べた際に傷つきやすい口腔内の粘膜を保護する。
 ●話をしたり、飲み込んだりする時の舌の動きをよくする。
 ●虫歯菌に溶かされた歯を再石灰化して、元に戻す働き。
 ●虫歯菌が出す酸を中和する。
 ●風邪や食中毒の原因となる細菌が体内に入らないようにする。
 ●味覚を感じさせる。
 ●体の水分が減った場合、唾液量が減ることで口や喉が乾いて補給を促す役目を果たす。

 唾液は健康な人で1日500~600ミリリットル程度が分泌されるという。重要なのは、その多く(約300ミリリットル)が、食事中に食べ物を咀嚼する刺激によって分泌されることだ。食べ物を水などで流し込むという行為は、食事中だけでなく、1日の唾液量を減らすことにもつながる。結果的に口腔内に雑菌が繁殖し、虫歯や歯周病が増え、カンジタ菌を増やし、同時にカビも繁殖させてしまう。

 さらにもう一つ問題なのは、食事中に水分を摂るということは、胃液を薄めることにもなる。そのため、こうした口腔内の雑菌が死ぬこともなく、そのまま小腸や大腸に送り届けられることになるのだ。「食べ物に付着した菌は、胃の中では生きていられません。しかし、食事中に水を飲むと胃酸が薄まり、菌が胃の中でも生きのびてしまうのです。実際、薬が一切なかった旧日本軍の部隊内でコレラの保菌者が出て、部隊全滅の危機に陥った際、『食事中に水を飲むな』という軍医の指示を守り、全員が無事だったという例があります。

必要以上の水分が加わらなければ、それだけ本来の胃酸は強力ということ。本来は薄めてはいけないのです」(同)そもそも、食材の衛生において基準が非常に厳しい日本において、コレラが起きる余地はまずない。しかし、食事中に水分を流し込むことで雑菌を体内に侵入させ、知らず知らずのうちに体を壊しているかもしれないのだ。

糖尿病の薬(1) 「ビグアナイド薬」

 第1回 ビグアナイド薬―メトホルミンの物語―

【どうやって誕生したの?】
 糖尿病薬が発見されるまでには、研究に長い年月がかかります。発売後も使用調査から使用上の注意が見直され、患者さんに大切に育てられて、新しい使い方が生まれていくのです。

 この新シリーズでは、各種糖尿病薬の発見の歴史をたどり、その意味を深く知ることで、新しい薬の正しい使い方を身に付けてもらいたいと願っています。

 第1回目は、メトグルコ錠(ジェネリック名は、メトホルミン塩酸塩錠など)の名前で知られるビグアナイド薬(BG薬)を紹介します。

 その発見の歴史は古く、中世の欧州で多年草のマメ科の植物ガレガソウ(別名:フレンチライラック)に、多尿や口渇などの糖尿病の症状を緩和する作用があると知られていました。後に、その抽出物の「グアニジン」に血糖降下作用があることが発見されましたが、そのままでは毒性が強いため、1950年代からその誘導体が開発され、フェンホルミンやメトホルミンが薬として誕生したのです。

【新しく見直された効果は?】
 フェンホルミンでは乳酸アシドーシスという重篤な副作用が続き、BG薬の使用全般が制限された時期もありました。80年代後半になるとBG薬の肝臓でブドウ糖の産生を抑えるメカニズムが解明されるようになりました。98年には英国のUKPDS(※)という大規模臨床試験で、メトホルミンは肥満の糖尿病の人に、スルホニル尿素薬(SU薬)と同じくらい有効性がありながら、体重の増加や低血糖の発症が少なく、心筋梗塞など糖尿病に関連した死亡を大きく減少させることが報告され、欧米で糖尿病に対する第一選択薬に位置付けられました。

 近年、日本でも1日2250mgまでの最大用量が認められ、他には抗がん効果も研究中で、いまなお新しい治療効果が期待されています。

【より安全に効果的に使うポイントは?】
 メトホルミンは、高用量で使っても安全で効果が高い薬であることが分かっています。乳酸アシドーシスという副作用はめったに起こりませんが、腎機能がかなり低下したときや、高齢者(特に75歳以上)、脱水、シックデイ時、利尿薬やSGLT2阻害薬という種類の糖尿病薬を併用時、ヨード造影剤を使用する際には注意が必要です。

 体調が変化したときや併用薬があるときは、お薬手帳を持参し、主治医やかかりつけ薬剤師に相談しましょう。

(※)The United Kingdom Prospective Diabetes Study

フローラ薬局 河和田店薬局長 篠原 久仁子(しのはら・くにこ)
監修/新潟薬科大学 薬学部教授 朝倉 俊成(あさくら・としなり)

『月刊糖尿病ライフさかえ 2017年1月号』より

高血圧の食事療法は減塩食とDASH食で

【Q】健康診断で血圧が高いと指摘されました。食事と運動に気を付けるように言われましたが、食事はどのようなことに気をつければ、よいのでしょうか?(40代男性)

【A】高血圧は日本で最も多い生活習慣病で、患者数は4300万人に達するともいわれています。多くの場合で無症状ですが、進行すると脳卒中、心臓病、腎臓病などを招く恐れがあり、予防ならびに治療が重要です。治療は食事療法、運動療法、薬物療法に大別されますが、とりわけ食事療法では減塩食とDASH食(※)をうまく組み合わせることが効果的と思われます。

 日本人の食塩摂取量は年々低下傾向にあるものの、1日平均10・4グラムと、諸外国と比べても多いとされています。厚生労働省や日本高血圧学会では、健康な方の一日の食塩摂取量について男性8グラム未満、女性7グラム未満、高血圧の方で6グラム未満を推奨しています。

減塩の方法としては食事量全体を減らして塩分を減らす方法と、塩や醤油などの調味料の使用を控える方法の2つに大別されます。調味料を料理に直接かけるのではなく、お皿に取ってつけることや、ラーメン・そば・味噌汁の汁を飲まないことなどの工夫が有効です。

 続いてDASH食ですが、これはアメリカで提唱された高血圧患者に対する食事方法です。野菜、果物、低脂肪の乳製品、魚、大豆製品、海藻を増やし、肉や脂肪を減らすことが勧められています。また、食事の量を減らすことよりも食事の中身を野菜や果物、豆類に変えることで血圧の上昇を抑えることに重きを置いております。

 これら、減塩食とDASH食を組み合わせることが高血圧の食事療法として有効ですので、ご自分の食習慣に合わせて工夫してみてください。

 (※)DASH食 Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語で、体内から塩分の排泄を促す食材を摂取することで、高血圧を防ごうとする食事方法

 ◆回答者プロフィール 荒木 正(あらき・ただし)03年、東邦大学医学部卒。東邦大学医療センター大橋病院などに勤務後、16年に東京都江東区に亀戸内科クリニック開設。循環器・糖尿病内科医として地域に密着。総合内科専門医。循環器専門医。

糖尿病の下肢切断を回避 注目の「PRP療法」を詳しく知る

血糖コントロールが悪い糖尿病は、足の皮膚の潰瘍を再発しやすく、7~20%が下肢切断になる。これを避ける治療として注目を集めているのが、PRP(多血小板血漿)療法だ。

 下肢切断は生命予後が悪い。術後の死亡率は、1年で約30%、3年で50%、5年で70%といわれている。

「いかに切断を回避するかが重要。PRP療法がとても良い治療成績を出しています」と言うのは、聖マリアンナ医科大学病院形成外科学の相原正記病院教授らだ。

 皮膚潰瘍の治療は通常、「軟膏→皮膚潰瘍の治療薬トラフェルミン(商品名フィブラストスプレー)あるいは陰圧閉鎖療法→皮膚の移植」と進む。軟膏は軽症の皮膚潰瘍に対する治療で、糖尿病による皮膚潰瘍ではトラフェルミンや陰圧閉鎖療法を試みる。

 トラフェルミンは、細胞増殖因子(bFGF)が細胞に作用して、肉芽形成、血管新生、上皮化を促進する。陰圧閉鎖療法は、潰瘍部分を専用素材で覆って陰圧に保ち、治癒を促す治療法だ。

 皮膚の移植は患者の全身状態の悪さから行えないことも多く、トラフェルミンや陰圧閉鎖療法でうまくいかない場合、多くは下肢切断しか手がなかった。

■痛みやつらさがない治療

 PRP療法は、下肢切断の前、つまりトラフェルミン・陰圧閉鎖療法を行っても効果が見られない患者が対象。PRPとは患者の血液を遠心分離して得られた血漿で、その中に含まれる細胞増殖因子の働きを利用して潰瘍の治癒率を上げる。

 前述の通り、トラフェルミンも細胞増殖因子の働きを利用している。しかし、含まれているのは1種類だけ。一方、PRPには複数の細胞増殖因子が含まれている。

 PRPを作る井上肇幹細胞再生医学講座特任教授は言う。

「人によって細胞増殖因子の含有率、含有量は違います。PRPは患者自身の血液をもとにしており、その人に合った構成の細胞増殖因子が含まれているのです」

 40~60ミリリットルの血液(献血の7~10分の1程度)を採取し、遠心分離機でPRPを作成。4回に分け、1週間に1度の外来で潰瘍部分に塗布する。1クール(週1×4回)で痛みが消えたり、皮膚の形成が見えてくるなど効果が表れれば、2クール目に進む。

 下肢切断しかない、いわば万策尽きた患者が対象だが、PRP療法を実施した22症例のうち、16症例が治癒。これはかなりの好成績だという。潰瘍の範囲が広ければ、健康な皮膚を小さく切り、潰瘍部分に適度に置く「ピンチグラフト」という治療と組み合わせる。

「ただし、PRPを塗れば治る魔法の治療と考えるのは間違い」と、治療を担当する菅谷文人主任医長は指摘する。

「皮膚潰瘍は糖尿病だけではなく、静脈うっ帯や膠原病などさまざまな原因が重なって起こる。これらの原因改善を併せて行わなければ不十分です」

「たばこをやめたくないが、切断は嫌」とPRP療法を求めるのは本末転倒。さらに「150平方センチ以上の広範囲の症例」など、いくつかの項目に該当する場合はPRP療法でも治癒が難しいと研究でわかっているため、治療を希望する前にチェックが必要だ。

「PRP療法の希望者には、皮膚潰瘍の治療がそもそも正しく行われていないケースも少なくありません。まず傷の専門家である形成外科を受診し、現在の治療が適切かを確認することを勧めます」(菅谷主任医長)

 PRP療法は先進医療の承認を受けており、同大での治療費は約10万円(2クール)かかる。

■注意するべきことは

 美容目的を筆頭にPRP療法を行うクリニックもあるが、PRP作成や使用の間違いなどによるトラブルの報告もある。難治性の皮膚潰瘍においては先進医療の承認を受けている医療機関で受診すべき。今後、全国数カ所の大学病院などで実施予定だ。

★高血圧編/家庭での「135」毎朝続けば注意

健康管理の目安とすべき数字がいくつもあると、どれを目標とすべきか戸惑いやすい。高血圧の基準もそのひとつ。

 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、診察室で測定した場合は「140/90(単位・mmHg)」以上が高血圧だが、家庭で測定する家庭血圧では「135/85」以上としている。なぜ数値に違いが出るのだろう。

 【将来リスク2・5倍】

 血圧はちょっとしたことでも変動する。正常値血圧の40代後半記者が、ひいきのスポーツチームが負けて激高したときに、血圧を測ってみると「167」。深呼吸を3回した後に再測定すると「126」まで下がっていた。

このように乱高下するために、「厳格化しなくてもよい」との見方もあるが、日本高血圧学会では、診察室の基準よりも家庭血圧を厳しくしている。

 「ズボラでも血圧がみるみる下がる49の方法」(アスコム)の著者、東京女子医科大学東医療センター内科の渡辺尚彦准教授は、「変動があるからこそ家庭血圧が大切」と明言する。

 「診察室で緊張して血圧が上がる人もいます。これを“白衣高血圧”と呼びますが、家庭では正常値。家庭ではリラックスして測定できるので、血圧は下がりやすいのです。ところが、診察室では正常値なのに、家庭血圧は高い人がいる。

こちらは“仮面高血圧”と呼ばれます。正常値や白衣高血圧の人と比べて、仮面高血圧は、心・脳血管疾患の将来的なリスクが2・5~3倍。その指標となるのが、『135/85』以上なのです」

 【夏場も血圧上昇】

 渡辺准教授は、1987年から毎日24時間測定器をつけて、日々の血圧変動を研究している。一般的に、日中の血圧は上昇傾向で、夜寝ているときには10~20程度下降し、朝起きて出勤する頃には血圧は再び上昇するのがパターン。

 ところが、仮面高血圧では、夜間から早朝に血圧が上昇しやすい。

 「前の晩に塩分の多い食事や飲酒をした場合などにも、朝の血圧は上ります。朝晩2回ずつ血圧を測り、それぞれの平均値を見てください。朝は起きてトイレに行った後に測定し、毎朝、『135/85』以上が続くようならば、高血圧の可能性があります」

 一過性の血圧上昇ならば、翌日には下がっているはず。下がらないのには、何かわけがある。それを知る一助となるのが、家庭での毎日の血圧測定。自ら定期的に測ることで、季節によって血圧が上昇することもわかるそうだ。

 一般的には、冬場は血管が収縮して高血圧になりやすいが、夏場に上昇傾向の人もいるという。

 「温度差は身体に大きな悪影響を及ぼします。真夏に外出先から、急にエアコンで冷やされた電車や室内の中に入ると、一気に血圧は上昇し、血管にダメージを与える恐れがある。風呂上がりの扇風機も、しかりです。

ご自身の日々の血圧変動のパターンを知り、食生活を見直して、身体を冷やしすぎないなどひと工夫するだけでも、血圧を正常に導くことは可能です」と渡辺准教授は話す。 

危ないのは高血糖ばかりではない 震え、動悸、目まい・発狂を引き起こす「低血糖」回避術(1)

糖尿病患者は、予備軍を含めると2200万人に達するという。その影響かどうか、自らの血糖の数値に関心が高まりつつある。しかし、専門家によると数値の高さ(高血糖)に関心が集まり、低い数値(低血糖)への理解度がおろそかになりがちだという。

 低血糖を軽く見てはいけない。血糖値が70mg/dlになると、異常な空腹感や動悸・震え。50mg/dlだと中枢神経の働きが低下。さらに30mg/dl以下は意識レベルが低下し、こん睡状態から死に至ることもある。

速やかに対処しないと、重大な事故に繋がるのだ。

 東京都長寿健康医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科の担当医は言う。 「低血糖を起こす疾患・原因には、さまざまなものがあります。

最も多いのが糖尿病の罹患者が薬を飲み過ぎたり、インスリンを多く打ち過ぎた時。あるいは、食事を抜いたり激しい運動をすると、薬が効き過ぎて血糖値が下がり過ぎてしまう。

50mgを下回ると、大脳のエネルギー代謝が維持できなくなり、精神症状を起こし始めてしまい、さらに意識消失を引き起こすと重篤な場合は死に至ることがあります。

しかし、人体には低血糖に対し数値を上げるホルモンの放出やコルチゾールの分泌が亢進するなど、数段階の回避システムがあります。

ただし、その代わりにアドレナリンが大量放出されるため、交感神経刺激症による震えや、大量の冷や汗のほか、夜中に突然、大きな声で叫ぶといった異常な行動など、さまざまな症状が表れます」

 低血糖で苦しんだ体験を持つ自営業Kさん(53)は、そんな一人だ。

 Kさんが自分が1型糖尿病と知ったのは36歳のときだった。1型の場合、膵臓がほとんどインスリンを分泌できないので、常時、自分でインスリンの注射を打つことが必要となる。

ところが、時にそれが効き過ぎてしまい、低血糖状態に陥ることがあった。すると、震えや動悸、めまい、視界不良などが主な症状として表れた。

 そんな時は速やかに血糖値を上げる必要があるため、Kさんは病院で処方された固形のブドウ糖を常備していた。

しかし、この低血糖というのは侮れないクセ者。気づかないうちに起きていることがあるし、処置が遅いと最悪の場合は死に至ることもある。Kさんも何度も苦しい体験をしている。

一つは、注射を打った後、予定していた時間に何らかの事情で食事を始められなかった場合。もうひとつは、想定していなかったタイミングで血糖値が下がり過ぎていた場合だ。

 ある日、Kさんは仕事の打ち合わせが終わり、空腹感があったので帰途、行きつけのレストランで食事を摂ろうとした。まず手洗い所でインスリン注射を打つ。効いてくるまで約30分。顔見知りの店長に事情を話し、注文を遅らせながら世間話に興じた。

 ところが、調理するコックさんが気を利かせて注文の品をさらに遅らせたため、注射から45分も経っていた。まずいな、と思った時には意識が朦朧(もうろう)とし、水を口に含み注文を催促したが、すでに視野は暗く狭くなっていた。

持参のブドウ糖をバリバリかじり、ようやく出てきたハンバーガーステーキをむしゃぶりつき何とか落ち着く。まさに九死に一生を得たとKさんは苦笑いする。

ブラジルの原住民ヤノマモ族を手本に? 減塩で血圧は確実に下がる

高血圧によりすでに薬を飲んでいる人でも、生活習慣を変えれば薬がやめられる可能性があるという。では、具体的にどうすればよいか。血圧コントロールと切っても切れないのが、塩分。専門家に対処法を聞いた。

 塩分の過剰摂取と血圧の関係については、いくつかのしくみが明らかになっている。例えば、塩分を摂取すると循環血液量の増加によって血圧が上がる、腎臓が余分な塩分を排出しようとして血圧が上がる、といったものだ。

 逆にいえば、塩分を減らせばそれだけ血圧は下がるということだ。実際、1日の塩分の摂取量が1グラム前後(日本人の平均摂取量は10~12グラム、目標は6グラム未満)というブラジルの原住民ヤノマモ族は、年をとっても血圧が上がらないことが知られている。

 横浜市立大学病院腎臓・高血圧内科教授の梅村敏医師は最近公表されたイギリスの事例を紹介する。

「イギリスは約10年間にわたる減量プログラムにより、国民の1日の塩分摂取量を1.4グラム減らすことに成功しました。

その結果、上の血圧の平均が3mmHg下がり、脳卒中や心筋梗塞などによる死亡率も42%減りました。まさに塩分摂取量の減少が重大な役割を果たしたと考えていいでしょう」

 海外の話ばかりではない。福岡県久山町でも、1960年代から70年代にかけて脳卒中の発生率は半減した。その背景にあるのが、保健師による減塩と服薬指導だったという。

 しかし、実際に試みたことのある人ならおわかりだろうが、減塩は口で言うほど簡単なことではない。料理が物足りなく、おいしく感じないため、ついしょうゆや塩をかけてしまうという人も多いだろう。

「減塩に成功しないのは、それなりに理由がある」と、梅村医師は説明する。

「実は、塩分をおいしいと感じる脳の部位の遺伝子群は、麻薬中毒に関わる遺伝子群と類似しているという報告があるのです。多くの生物にとって、塩分に含まれるナトリウムは生命の維持に欠かせません。

昔の人間は塩分摂取が容易ではなかったため、塩分を欲する遺伝子を持つ必要があった。皮肉なことに、それが塩分をいくらでもとれる現代人の高血圧の原因の一つと考えられます」

 自力で減塩を試みるのがたいへんであれば、専門家の助言に頼るしかない。

 例えば、坂東ハートクリニックは、管理栄養士が患者の背景などに合わせた減塩法をアドバイスし、効果を上げている。坂東正章医師は言う。

「管理栄養士は、患者さんの話を聞いただけで、一日にだいたいどのくらいの塩分をとっているかを推定し、どこに塩分摂取の問題が隠れているかを見つけ、助言することができます。それを繰り返すと、患者さんの塩分摂取量が減っていくのです」

 坂東医師によると、管理栄養士が個別に患者を指導できるような医療機関は、とくにクリニックでは多くないというが、薬に頼らない治療を目指すなら、そういう医療機関にかかりたい。

狭心症や心筋梗塞を誘発 血圧を下げすぎると命が危ない

年を取ると、血圧を気にする人が多い。血圧が高すぎると血管が破れ、脳内出血やくも膜下出血などの原因になるから、注意するのは大切だ。しかし、下げることばかりに必死になっていると逆に危ない。

 これまで、日本では高血圧の基準値が厳しかった。しかも、「最高180mmHg/最低100mmHg」(87年)→「140/90」(00年)→「130/85(健診レベル)」(04年)と、どんどん引き下げられ、高血圧と診断される人が増加。70歳以上の52.5%が血圧を下げるクスリを飲んでいるという調査もある(厚労省調べ)。

 今年、発表された「高血圧治療ガイドライン2014」では、病院で「140/90」、家庭なら「135/85」で、高齢者は「150/90まで考慮可能」という数値に緩められたが、それでも、〈血圧はとにかく下げた方がいい〉というイメージを抱いている人が多いに違いない。

■さまざまな要因で変動する

 しかし、血圧を下げすぎると、深刻な事態を引き起こしかねない。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授はこう言う。

「血圧はさまざまな要因で変動しやすいものです。朝は上がって、夜は下がりますし、暑いと下がり、寒いと上がります。深呼吸した程度でも変わるほどで、自分の正確な血圧を把握できている人は少ない。

一般的に、病院で計測した血圧より、家庭血圧の方が低めですが、クスリの量は診察時の血圧によって決められることが多い。

血圧が高いからと降圧剤を服用していたら、下がりすぎてしまい、命に関わる病気や事故を引き起こすケースもあります。とりわけ、血圧が不安定な高齢者は注意が必要です」

 高齢になると加齢による動脈硬化が進んで、血管が硬い状態になっている。心臓が血液を送り出す時にはそれだけ力が必要になるため、収縮期血圧=最高血圧は上がる。

逆に心臓に血液を戻す時は、膨らんだ動脈が元に戻ろうとする力が弱いため、拡張期血圧=最低血圧は下がる。さらに、血管内に血液をためておく容量も減っているので血圧を維持できない。

 高齢者の血圧は上が高くても下は低いから、下手に降圧剤を飲むと下がりすぎてしまうのだ。

■大ケガするリスクが30~40%増

「血圧を下げすぎると、冠動脈血流が低下して、狭心症や心筋梗塞を誘発するリスクがあります。腎臓の血流低下によって腎機能が悪化したり、長期的には、かえって心臓血管病のリスクが増加するという報告もあります」(都内の循環器専門医)

 起立性低血圧によるめまいや立ちくらみ、ふらつきによる転倒も、高齢者には危険だ。

 米国の研究では、降圧薬を服用している高齢者は、服用しない高齢者に比べ、転倒後に股関節や頭部を骨折するなど、大きなケガをする可能性が30~40%高いという。

高血圧で病気になるリスクより、血圧を下げたことによって起こる病気や事故のリスクの方が高くなってしまったら、本末転倒だ。

 血圧を下げすぎないようにするには、定期的に家庭血圧を測って、変動しやすい自分の血圧を把握することが基本になる。朝と夜、1日2回計測するのが理想的だ。

「計測した最高血圧が常時120以下の場合、どこかで一時的に100以下まで下がっている可能性があります。クスリを減らしたり、飲まない方がいいでしょう。クスリを飲んで、めまい、立ちくらみ、動悸(どうき)、胸痛がある場合も、血圧を下げすぎているサインだと考えてください」(東丸教授)

 血圧はただ下げればいいというものではないのだ。

心当たりのある人は注意…だから、あなたの血圧は下がらない

薬をきちんと飲み、減塩にも気をつけている。なのに、血圧が140/90mmHg以下に下がらない。

「もし3種類以上の薬を飲んでいるのに効果が見られないなら、3つの理由に当てはまらないかをチェックしてもらった方がいい」と言うのは、東京都健康長寿医療センター・桑島巌顧問(高血圧外来)だ。高血圧の状態が続くと、心筋梗塞、脳卒中、心臓肥大など取り返しのつかない事態を招く。

【手術で治る高血圧】

 高血圧には「手術で治る高血圧」がある。原発性アルドステロン症だ。左右の腎臓の上には、帽子のように乗っかっている副腎という3センチほどの臓器があり、体の水分や血圧を調整するアルドステロンというホルモンを分泌している。

「その副腎におできのような良性の腫瘍ができるために、アルドステロンが過剰に出すぎて血管の中のナトリウムが増え、血圧が上昇するのが原発性アルドステロンという病気です。高血圧が治りにくいほか、血液中のカリウムが低くなるのが特徴です」

原発性アルドステロンは、降圧剤では血圧は下がらない。
「手術で腫瘍を切除すると、頑固な高血圧が治ります」

【適切な薬ではない】

 桑島医師によれば、高血圧には「パンパン型」と「ギュウギュウ型」がある。
「血中の塩分(ナトリウム)が増えると、それを薄めようとして水分が血管に入り込む。すると心臓は、その過剰な水分を腎臓から尿として押し出そうとして、血管がパンパンに腫れることで血圧が上がります。これが、パンパン型です」

 一方、ギュウギュウ型は、血管を締め付ける物質が増えたために、血液が勢いよく血管の中を流れて血圧が上がる。

「いずれも高血圧を招くのですが、適する薬が違います。パンパン型は利尿薬やCa拮抗薬で、血中の水分量を減らす。ギュウギュウ型は締め付けた血管を広げる血管拡張薬が適しています」

 パンパン型は60代以降に、ギュウギュウ型は40~50代に比較的多く見られる。最初はギュウギュウ型でも、加齢とともにパンパン型に変わることもある。薬が効きづらくなってきたら、自分の「型」と薬の相性を調べるべきだ。

【ストレスが強い】

「白衣高血圧」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。
「白衣の医師の前になると、緊張で血圧が高くなる。ほかに緊張で血圧が上がるものに、職場高血圧というのもあります。診察室や職場で緊張して、本来の血圧より数値が高くなります」

 緊張、すなわちストレスは血圧に大きな影響を与える。
「つまり、薬を飲んでいてもストレスが強い状態が続けば、血圧は下がりにくい」

 職場(家庭)を替えるのは、今の時代、非現実的だ。
「まずは職場や家庭での血圧がどうなっているかを知ること。普段の血圧と比べて差がどれほどあるかを調べてください。それを高血圧の担当医に伝え、薬で調整します」

“自衛”としては、かっかと頭にくるようなことがあれば、少し深呼吸をしてみる。思い切って、職場の外に出て気分転換するなどもいい。

美肌効果や血糖値を下げる効果まで⁉︎ 本格焼酎・泡盛の魅力が凄い

焼酎の3つのタイプと、本格焼酎・泡盛の楽しみ方

焼酎には3つのタイプがある事をご存知でしたか?

【本格焼酎・泡盛】
麹を使い、麦、米、芋などの原料を発酵させて造った単式蒸留酒(1回だけ蒸留)。原料の風味が生かされている。「本格」や「泡盛」と表記できるのはこの種類だけなんです。

【焼酎甲類】
サトウキビやトウモロコシやなどの搾りかすを再利用した、連続式蒸留酒(何度も蒸留する)。ほぼ純粋のアルコールで、無味無臭なので何かで割ったり、梅に漬けたりします。

【混和焼酎】
「本格焼酎」と「焼酎甲類」を混ぜ合わせたもの。麦や芋などの表記がありますが、本格表記がないのでラベルで要確認を。

欧米における蒸留酒(ブランデー、ウイスキー等)は料理と味わう習慣がなく単独で飲まれることが多いですが、本格焼酎と泡盛は単独でも料理と合わせても楽しめるお酒と言えます。甘さがなくスッキリとしているので、料理のジャンル(和食・洋食・中華)を問わず合い、特に、辛い・酸っぱい・脂っこいといった濃厚な料理との相性が抜群です。

美容や健康に嬉しい効果が沢山!本格焼酎・泡盛の魅力

【低カロリー・糖分ゼロ】
ビールやワインなどの醸造酒と違い、原料を発酵させた後に蒸留して造るため。

【血栓予防効果】
本格焼酎と泡盛には血栓溶解酵素と言われる「ウロキナーゼ」が多く含まれているため、血栓を溶かしたり、出来にくくする効果が高いことが確認されているそうです。その効果はなんと、赤ワインのポリフェノールの血液サラサラ効果に比べ1.5倍と言われています。

【血行促進】
冷え性や、肩こり、美肌に効果が期待できます。

【酔いざめがさわやかで翌日に残らない】
全員に当てはまるわけではありませんが、翌日に残りにくいと感じる人が多いようです。

【血糖値を下げる】
まだ医学的に解明されていないそうですが、芋焼酎が、水を飲んだ時よりも血糖値が下がったという結果が実験で明らかになったそうです。これは今後期待が高まりそうですね!

【テラピー効果】
原料の風味が生かされているため、ほんのりとした香りによってストレスが緩和される効果が期待できます。

【色々な飲み方ができる】
ロックや水割り、お湯割り、お燗など、好みや季節によって様々な飲み方で楽しめます。

【濃度が選べる】
ロックにしたり、割ったり、アルコール濃度を調節できるので、お酒に強い人はもちろん、弱い人でも楽しめます。

【どんな料理にも合う】
和食はもちろん、麻婆豆腐やピザなど、ジャンルを問わず合わせられます。

【世界貿易機構(WTO)による地理的表示認定】
・長崎県は「壱岐焼酎」
・熊本県は「球磨焼酎」
・鹿児島県は「薩摩焼酎」
・沖縄県は「琉球焼酎」

いかがでしたか?日本酒と並び、日本の伝統的なお酒ですが、知らなかった魅力が沢山ありますね!ダイエット中でも安心して飲める本格焼酎・泡盛。割り物も工夫して、お気に入りの飲み方を見つけてみてはいかがでしょうか?

両親が高血圧だと、子どもが高血圧になる確率は?

 この記事では、今知っておきたい健康や医療のネタをQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。

【問題】高血圧の発症には、遺伝と生活習慣の両方が関与しています。両親が高血圧の場合、子どもが成人後に高血圧を発症する確率はどれくらいだと考えられているでしょうか。(1)20%(2)50%(3)80%

 正解は、(2)50% です。

 高血圧は、特定の原因に絞り込めない「1次性高血圧(本態性高血圧)」と、臓器の病気などの明らかな原因が分かっている「2次性高血圧」とに大きく分類されます。1次性高血圧は原因の特定はできませんが、遺伝的なものと生活環境的なものが要因となっています。

 1次性高血圧の発症には、遺伝に加え生活環境も関与しているため、親が高血圧だからといって子どもが確実に高血圧になるわけではありません。「両親ともに高血圧の場合は50%、どちらか一方の場合だと30%ぐらいの確率で、その子どもも高血圧になる傾向にあります」と、東京都健康長寿医療センター(東京都)顧問で高血圧のエキスパートである桑島巌医師は話します。

■遺伝の場合も、対策の基本は「生活習慣の改善」

 遺伝と生活環境のどちらが原因であっても、対策の基本は生活習慣の改善。親が高血圧の場合は特に、若い頃から薄味の習慣に慣れて、肥満を防ぐなど将来的に血圧を上げないような生活を心がけておくことを桑島医師は勧めています。

 なお、臓器の病気といった明らかな原因がある「2次性高血圧」には、腎臓の上にある小さな臓器に腫瘍ができて、アルドステロンという血圧を上げるホルモンが過剰に分泌される「原発性アルドステロン症」や、副腎などの腫瘍からアドレナリンが過剰に分泌される「褐色細胞腫」、腎臓の動脈が動脈硬化のため狭くなり、レニンという物質が過剰に分泌される「腎血管性高血圧」などがあります。

 重症の高血圧や薬ではうまくコントロールできない高血圧、若い人が急に高血圧になった場合などは、2次性高血圧の確率が高いといわれています。原因となる病気を治療すれば血圧も下がる可能性があるので、気になる場合は専門外来で相談してみてはいかがでしょうか。

高血圧の薬は一生飲み続けなくていいって本当?

日本人間ドック学会などが発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」。血圧については、基準範囲の上の値が147mmHgとされた。

「高血圧治療ガイドライン2014」では、140 mmHg以上が高血圧の診断基準なのだが、今回の発表で7mmHg高くても問題ないと勘違いした患者が治療をやめるという事態になった。

この騒動でわかったのは、治療中の患者を含め、われわれの多くが高血圧を理解していない、ということ。専門家に高血圧の「常識」について聞いてみた。

 一般的に、降圧薬というと「飲み始めたら、一生飲み続けなければならない薬」という印象がある。

 ところが、今回取材した医師のほとんどが、「薬は飲み続けなくてもいい」と答え、また、実際に「薬をやめられた患者もいる」と話した。いずれも、減塩や減量、運動など生活習慣の改善で降圧がうまくいったケースだという。

 いったいどれくらいの患者がやめられるのか。この問いかけに自治医科大学病院循環器内科主任教授の苅尾七臣(かずおみ)医師は、「これまでの経験からすると、患者さんの20人に1人ぐらい」と答える。

「決して多いわけではありませんが、きちんと取り組むと薬がいらなくなるケースがあることは事実です」

 ささえるクリニック岩見沢(北海道)院長の村上智彦医師は、減量の重要性を指摘する。

「肥満に伴って高血圧になった場合は、“体重を3キロ減らすと上の血圧は8mmHg下がる”と言われています。適正体重に戻すのが理想ですが、そこまで至らなくても減量は大事なのです。

私が診ている患者さんのなかにも、減量で血圧が下がり、薬をやめた方がいます」

 東京都健康長寿医療センター顧問で臨床研究適正評価教育機構理事長の桑島巌医師は、「血圧の薬をやめられた患者さん? たくさんいるよ」ときっぱり。

「薬は一生飲まなければならないというのは、誤った考え方。例えば、夏と冬だと平均の血圧が10mmHgぐらい違う。暖かい時期に減塩したり、減量したりすれば、血圧はどんどん下がる。

それで試しに薬をやめてみると、その後も上がらないことが少なくないのです」(桑島医師)

認知症になるかどうか 60歳までの生活習慣重要と専門家指摘

日本で認知症高齢者とその予備軍は合わせて862万人、高齢者の4人に1人は認知症になるという。

 では、効果的な認知症予防にはどのような方法があるのか。巷間、様々な食品や行動が「ボケ予防」に効く、と謳われてきた。だが、果たしてそれらは本当なのか。松川フレディ・湘南シルバーサポート湘南長寿園病院院長はこう指摘する。

「巷に流布するボケ予防のなかで、本当に科学的に効果があると立証されているものがどれなのかを見極める必要があります。

週に3日以上の適度な運動を行なっていれば、認知症の原因となる記憶を司る海馬の縮小を防止できるとメリーランド大学の研究チームが今年4月に発表するなど、軽い運動がボケ防止にいいというのは世界的な統計でも明らかになっている。

 かたや一時期流行した脳活性化トレーニングに関しては、オーストラリアでの研究で、脳活性化のための『認知活動』を5週間やっても、認知テストの点数は統計学的に意味のある改善にはつながらなかったなど、否定的な研究結果が相次いでいます」

 食べ物についても、科学的な効果が認められたものは限られる。最近では、緑茶が注目を集めた。

この5月、金沢大の山田正仁教授らの研究グループが、毎日緑茶を飲む習慣のある人は、認知症の発症率が全く飲まない人の3分の1にとどまるという研究結果を発表した。

コーヒーや紅茶では効果はなく、緑茶にだけ認知症の予防効果がみられたという。

 医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の注目は、鮭と青魚だ。

「最近の研究では、今年の1月、ビタミンEがアルツハイマー病を遅らせるということをアメリカのミネソタ・ミネアポリスの研究グループが明らかにしました。1年でビタミンEを取っていた19%がアルツハイマーの進行が遅れたという。

 ビタミンEはオリーブオイルやアーモンド、ごま油のほか、鮭、青魚などに含まれています。

同様に、鮭や青魚にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれているが、そのオメガ3脂肪酸を血液中に倍以上持ったグループはそうでないグループより脳が0.7%大きかったという米サウスダコタ大学の研究結果がある。

鮭や青魚はビタミンEも含まれているので相乗効果が期待できます」

糖尿病の血糖値を下げる!? 最新の研究でさらなるショウガの驚くべきパワーが明らかに!

ショウガが風邪や冷えに効くことはよく言われますが、イランのShahid Sadoughi医科大学の研究によると、2型糖尿病患者の血糖値を下げる効果があることが明らかになった。

海外サイト「Prevention」によると、リサーチチームは10年以上2型糖尿病を患っている88人を対象に、普段服用している治療薬と共に1日3回ショウガパウダーの入ったカプセルと入っていないカプセルを飲むグループに分けたところ、8週間後にショウガカプセルを飲んだグループに劇的な変化が起きたそう。

研究の対象になった患者は中年でやや太り気味だったものの、病的な肥満ではなかった。

「調査の前、ショウガを服用するグループの空腹時血糖値の平均は171mg/dl、ショウガを服用しないグループの平均は136 mg/dlだったが、8週間後には両グループ共に150mg/dlになった。

これは非常に興味深い研究だ」とWellness Associates of Chicago(シカゴ健康協会) のマーサ・ハワード博士は話している。アメリカ糖尿病学会によると、糖尿病患者の空腹時血糖値の平均は70~130 mg/dl。

研究者らは具体的にどうショウガが血糖値を下げたか明確に突き止められなかったが、「肝臓のホスホリラーゼ(グリコーゲンを糖リン酸塩へ加水分解する際の触媒作用をする酵素の一群)のはたらきを抑制するのに効果がある。

グリコーゲンが分解されるときに血糖値が上がるので、この酵素の抑制は理論的に2型糖尿病患者の血糖値を下げる」と説明している。

ハワード博士によると、2型糖尿病を患っていて、医師の指示に従っているが血糖値が正常ではない場合、血糖値を安定させるためにショウガを試してみる価値はあるそう。

「ショウガは血液を固まらせない効果もあるので、すでにそのような抗凝血薬を服用している場合はショウガを摂ってはいけない」とのこと。投薬にショウガを足す場合は必ず担当の医師に相談し、定期的に血糖値を測ることが重要だそう。

治療も薬もやめたい…「血圧147正常」で混乱する医療現場

日本人間ドック学会などが発表した「血圧147」が波紋を呼んでいる。この騒動の内容から疑問の解決まで、現役の高血圧治療医らへ取材した。

*  *  *

「『自分は上が147以下だから治療をやめたい』と言う高血圧の患者さんが今日も診察に来ました。高血圧に伴う脳梗塞もある方です。あなたは治療しないと危ないと言ってどうにか納得してもらいましたが、数値が独り歩きしていて、非常に危ない状況です」

 高血圧治療を専門にするある医師はこう嘆く。いま、医療現場では高血圧の数値をめぐって大きな混乱が起きている。

 きっかけは、4月4日に日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」だ。

過去に人間ドックを受診した約150万人のなかから、肥満や持病がなく、たばこを吸わないなどの条件を満たした「スーパーノーマル(超健康)」な人、約1万~1万5千人を抽出。血圧、血糖値、コレステロール値など計27項目を調べたものだ。

 その結果、血圧については、基準範囲の上限が、147/94(初めの数値が上の血圧、次の数値が下の血圧、単位はmmHg、以下同)。「高血圧治療ガイドライン2014」では、140/90以上が高血圧の診断基準なので、上の血圧はそれより7mmHg高いことになる。

さらに血圧以外の項目でも、これまで「治療の必要がある」とされてきた診断基準の数値と比べ、総じて“ゆるい”数値が示されたのだ。

 人間ドック学会の数値が報道されると、「正常の範囲が広がった」と受け止められた。「自分は高血圧ではない」と考え治療をやめたいと言いだす患者や、薬を勝手にやめてしまう患者も出てきた。

 人間ドック学会には医師からの問い合わせが殺到した。その後、「今すぐ学会判定基準を変更するものではない」「『健康』とされる範囲を緩和した新基準を発表したかのような一部報道は事実誤認」とホームページで表明するなど、騒動の火消しに追われた。

 診療側の学会も相次いで声明を出した。日本高血圧学会は、「人間ドック学会の『正常』の一部には、『要再検査、要治療』が含まれていると理解するのが正解」と指摘。

同学会学術委員長で大阪大学大学院老年・腎臓内科学教授の楽木宏実医師は、「血圧を下げるべき人への生活習慣修正の指導もされなくなってしまい、血圧のさらなる上昇と将来の心血管病発症の危険が増加する可能性がある」と心配する。

 ついに5月21日には、日本医師会が「多くの国民に誤解を与え、医療現場の混乱を招いている実態に鑑みても、『拙速』と言わざるを得ない」と、人間ドック学会の対応を厳しく批判する事態にまで発展した。

「147」という数値をどう理解したらいいのか。臨床研究適正評価教育機構の理事長で、東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師は、「正常範囲が広がったと理解するのは正解ではない」と指摘し、人間ドック学会、高血圧学会の数値の違いをこう解説する。

「人間ドック学会の数値は、現時点で健康と考えられている人の血圧の分布範囲。つまり将来、脳卒中や心筋梗塞を発症する可能性には言及していません。

一方、高血圧学会の基準値は、脳卒中や心筋梗塞を予防するうえで、どのレベル以上だと危険かということを示した数値なのです」

 高血圧の恐ろしさは、放置すると動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる病気を引き起こすことにある。高血圧学会の数値は、将来これらの病気が起こる危険性を考慮している、というわけだ。 

認知症初期の診断 「10時10分」の時計を絵に描けぬこと多い

テレビを見ていて「あの女優の名前なんだっけ?」、夕飯の話をしていて「朝飯なに食べたっけ?」……最近、とみに激しくなる物忘れに、「もしかして認知症になってしまうのかも?」と不安になってしまう人は少なくないだろう。

「認知症の場合、単なる物忘れにとどまらず、日常生活に支障を来す。場所や道に迷う、財布や通帳などしまったものが見つからない、ものの名前がいえなくなり、会話も理解できなくなる。

そのような兆候が少しでも見られたら医師に診てもらったほうが良いと思います」(認知症予防財団事務局)

 医師はどのように認知症を診断するのか。中西昭憲・クリニックの釈羅院長はこういう。

「私は診察のときに『10時10分』を示している時計を紙に絵として描いてもらいます。認知症の初期の人は意外とこれが描けない。頭の中でイメージはできているんだけれど、頭と手の連動がうまくいかないんです。

 このテストで側頭葉、前頭葉、頭頂葉の衰えが確認できます。側頭葉は言葉の理解や記憶、前頭葉は注意力や計画性、統括力、頭頂葉は空間認識を司る。

円がいびつな楕円形になってしまったり、短針と長針が極端に違ったり、数字の順番や場所が違ったりしてしまうのは、それらの衰えによるものです。

これをやると、どうして描けないんだろうかと本人が非常に戸惑います。そうすれば認知の状態を伝えやすくなる」

 その後、問診による認知知能検査や、CT、MRIなどの精密検査を経て、認知症の診断をするという。

予備軍含め2200万人 放置が命取りになる「糖尿病」の怖さを徹底解明(1)

 糖尿病の人は、予備軍を含めると2200万人といわれている。中には「俺は大丈夫」と根拠なき自信を抱いている人も多いが、治療を放棄しているうちに、少しずつ体がむしばまれていくだけに、油断は大敵。

 糖尿病は、最短3年で神経障害、腎症、網膜症などの合併症を引き起こす。さらに、5~10年放っておけば、インスリンを作る膵臓(すいぞう)のβ細胞が破壊され、失明や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症で命の危機にさらされ、壊疽による足の切断もある。

 また、一度破壊されたβ細胞は元に戻らないため、怖さは計り知れない。検査数値が基準値のオーバーを指摘され、イエローカードが出されたら、すぐに適切な治療を受け、運動や生活改善などの努力が必要となる怖い病気だ。

 川崎市のサラリーマン・小林芳光さん(=仮名・49)は、10年ほど前から空腹時の血糖値が110mg/dl前後をウロウロ。ここ3年は、120近くに上昇していた。空腹時の血糖値は110未満が正常とされているため、数値が悪いといってもそれほど気にすることもなかった。

 小林さんは、設計事務所に勤め、納期前は徹夜仕事が続く。毎年受けていた春の健康診断シーズンは、なぜか納期と重なることが多く、健康診断はもとより、わざわざ精密検査を受ける余裕もなかった。

体格は174センチ、68キロと細身。「お腹が出ているわけじゃないし、メタボではないから大丈夫」という安心感も、精密検査をサボる理由になっていた。

 「仕事が追い込み時になると、食べずに仕事を続けている。だが、だんだん齢を取ってくるとそうはいかず、最低でも2食は摂るようにしました。食べるのはコンビニ弁当かカップラーメンでしたね」(小林さん)

 おまけに体を動かすことといえば、通勤で家から駅(15分)、最寄駅から会社までの10分程度の歩行のみ--。そんな小林さんに突如、異変が現れた。

 寝る前になると脚が痺れるようになり、正座の後のピリピリ感のようなものに襲われる。
 「無数の虫が脚をはっているようで、何とも言いようがない嫌な感じがしたんです」

 と小林さん。それでも最初のうちは我慢して寝ていたが、だんだん眠れなくなり、睡眠外来を受診したところ、その痺れの原因は糖尿病の合併症、「神経障害」と診断された。

 外食に頼り切って運動をほとんどしないサラリーマンにとっては他人事と片付けられない話だが、楽天家の小林さんも内科で精密検査を受け、病気の深刻さに初めて気付かされた。

 小林さんを診察した総合医療クリニックの院長がこう警告する。

 「小林さんの血糖値は、一目瞭然で糖尿病と診断できるくらいに上昇。腎臓の検査数値も悪いし、合併症の腎症も発症していました。診察がもっと遅れれば、さらにひどい病態に至ったでしょうね。他の腰痛や骨折などの手術にも影響が出るほどで、決して甘く考えないでほしい」

 糖尿病を放置したり、治療をしても不十分だったりすると、手足の神経や自律神経などがやられる神経障害、腎機能が低下する腎症や視力低下を余儀なくされる網膜症の順で合併症を引き起こすとされる。

 最初に発症する神経障害の発症までのタイムリミットは、最短で3年といわれ、無治療が長ければ長いほど合併症が進行するわけだ。

血圧新基準「147」は大ウソか? 専門家からは医療費削減策との指摘も…

健康診断で、健康かどうかの目安にされている高血圧や中性脂肪。日本人間ドック学会が発表したその「新基準」が大きな波紋を広げている。基準値が大幅に緩和され、専門学会が猛反発するなど大論争になっているのだ。

基準値が緩和されると“病気予備軍”は減ることになり、高血圧などと診断された側にとっては朗報といえそうだが、専門家は「数値だけを頼りにしていると危ない」と警告する。どういうことなのか。

 今までの基準は一体、何だったのか-。

 健康診断の結果が出るたびに一喜一憂していた人は、いまこんな心境かもしれない。日本人間ドック学会が先月4日に公表した「新基準値」のことだ。

 「学会が人間ドック検診受診者約150万人から超健康人約1万~1万5000人を対象に調査し、導き出した新たな健康基準で、研究対象は尿酸値など27項目。なかでも『生活習慣病』の主要因といわれる血圧、LDLコレステロール、中性脂肪の基準が緩くなったことが注目を集めている」(都内の医療関係者)

 高血圧症は致死率の高い脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの重大疾病を招く危険性が高い。そのため、自分の血圧に注意をはらっている人は多いが、公表された新基準は従来の認識を覆すものだった。

 「これまでは上(収縮期血圧)が140以上、下(拡張期血圧)が90以上で高血圧とされてきた。ところが、新基準では上は147まで、下は94まで正常値とされた。医師に『病気予備軍』と診断されてきた人の多くが対象から外れることになる」(同)

脂質異常症から動脈硬化を引き起こす危険因子、中性脂肪の値もグンと緩和された。男女とも150以上が“危険域”だったが、新基準では男性が「39~198」で、女性は「32~134」。男性は従来の上限値を大きく上回った。

 別名「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールも同様だ。一律140以上で脂質異常症と診断されてきたが、新基準は男女別に分かれ、男性は「72~178」、女性は30歳から80歳まで3段階に細分され、例えば45~64歳は「73~183」の範囲が正常値とされた。

 ただ、この新基準を歓迎しない人たちもいる。

 高血圧には「日本高血圧学会」、中性脂肪とLDLコレステロールには「日本動脈硬化学会」の専門学会があり、従来の基準値はそれぞれの学会が決めてきた。今回の調査はその“常識”を突き崩すものだったため、反対の声は少なくない。

 医療現場も賛否で割れている。

 首都圏の大規模病院心臓血管外科医は「時間の経過とともに基準も見直すべきだ。時代に即した新基準を打ち出すことは必要」とし、関西の大規模病院消化器外科医は「従来の基準が厳しすぎた」。「軽度の高血圧や脂質代謝異常の人の薬への依存が緩和されることはいいこと」(首都圏の民間病院消化器外科医)との声もある。

 だが、関東の大学病院循環器内科医は「今回の基準は“断面調査”であり、調査対象となった人たちが20年後にどうなっているかをみた“前向き調査”ではない」と話し、首都圏の大学病院脳神経外科医は「厳しい基準で取り組んできたからこそ、日本人の脳出血患者は激減できた」と断言する。

「従来の基準は確かに厳しかったが、今回の新基準は、国民のためというよりは『医療費削減』を狙う思惑が強く感じられる」(関西の開業医)という意見もある。

 2000年度に30・1兆円だった医療費は、11年度には38・5兆円にまで増大した。5年連続で過去最高を更新するなど国の財政を逼迫(ひっぱく)させているため、行政側の思惑を指摘する関係者は確かにいる。

 近畿大学講師で医師の榎木英介氏も「基準緩和で患者が減ると、当然医療費も減る。それに対して、医師と製薬業界は患者がいないと商売にならない。患者を減らしたい行政と権益を死守したい医療業界とのせめぎ合いになっている側面がある」と解説する。

 厚生労働省によると、高血圧症の患者数は11年に906万7000人に達し、高脂血症も188万6000人を記録した。製薬会社にとっては、高血圧症に処方される降圧剤や高脂血症薬はドル箱。業界が、利益を失う可能性のある新基準を脅威に感じても不思議ではない。

 物議を醸す新基準。ただ、われわれサラリーマンにとって最も気になるのは、諸業界の事情ではなく、この新基準を受けて、高血圧や中性脂肪などを抑制する薬を止めたり、摂生していた生活習慣を元に戻したりしてもいいのかという点だ。

 医療ジャーナリストの長田昭二氏は「今回の新基準は、あくまで健康な人を対象にした調査であって、すでに血管や脂質代謝に異常を持つ患者は対象外。それを認識せず、いま基礎疾患を持っている人が『血圧147未満だから健康なんだ』と勘違いする事態は避けなければいけない。

降圧剤を処方されている人が自分の判断で突然やめたりするのは危ない。健康への意識を高く持って、常日頃から摂生に努める姿勢を怠らないことが大事だ」と話す。

 安易に朗報と判断してはいけないようだ。

いまや認知症は特別な病ではない 予防できる? その治療法は? 最新の研究と知見を紹介!



いまや65歳以上の10人に1人が認知症になると言われ、〈認知症800万人時代〉というフレーズが新聞・週刊誌の誌面に躍っている。

認知症は治るのか、アルツハイマー病の原因は、遺伝子治療の研究は進んでいるのか、早期発見・治療は可能か。治療薬・ワクチンは効くのか、また予防のための食事療法・サプリメントは有効なのか――。

情報洪水のなかで、いたずらに怯えたり、間違った情報を鵜呑みせず、正しい知識をもって適切に対処することが必要だろう。

『これだけは知っておきたい 認知症Q&A55』(小社刊)の著者で、アルツハイマー病研究の第一線にある丸山敬氏に、昨今の研究動向、認知症を取り巻く現状について伺った。

――厚生労働省研究班の推計によれば、「認知症」の患者数は2012年時点で、予備軍とされる「軽度認知(機能)障害」(MCI)まで含めると、800万人を超えるとも言われています。

認知症に関する情報も氾濫していますが、その適正な知識となると、意外に知られていないように思えます。

丸山敬氏(以下、丸山氏):実は「認知症とは何か」を定義するとなると、非常に難しいのです。例えば、ある専門書では「脳器質性疾患によって慢性的に生じた認知機能障害状態の総称」という、わかったような、わからないような定義になっています。

 では、ここでいう「認知機能障害」とは何か。おおざっぱに言えば「何となく知的能力が衰えた状態、記憶が衰えた状態で、本人がそれを自覚していない状態」といったところでしょうか。

さらに、その知的能力の低下はなぜ起こるかとなると、詳細は不明というのが現状です。認知症は脳の機能不全なのですが、人間の脳の機能はいまだ全くと言っていいほど解明されていません。したがって定義が難しいのは当然なのです。

 認知症の代表格であるアルツハイマー病に関しては、「脳の中に老人斑とタングル(神経原線維変化)という構造が異常に増加した認知症」という厳密な定義があります。ただし、知的能力の低下を引き起こしている原因については、やはり曖昧としているのが実情です。

――アルツハイマー病のほかにも、認知症にはいろいろな種類があるそうですね?

丸山氏:かつては、認知症と言えば脳血管障害によるものとされていました。ところが20年ほど前から、分子生物学の進歩でアルツハイマー病の研究が進むと、突然アルツハイマー病の頻度が上昇しました。

 実際にアルツハイマー病が増えた面もあるかもしれませんが、それ以前は、ほとんどは脳血管障害、あるいは単なる高齢化として済まされてきたものが、アルツハイマー病と診断されるようになったという側面もあると思います。

 近年は「レビー小体型認知症」に注目が集まっています。報告されはじめた当初は、極めて稀な疾患例とされていましたが、その本体がわかって来たとたんにアルツハイマー病と同様に頻度が急上昇し、今やアルツハイマー病に次ぐ存在となっています。

 このほかにもいくつか別種の認知症がありますし、今後もっとさまざまな認知症の原因疾患が明らかになって、その頻度も変化してくるでしょう。

――アルツハイマー病の世界的な研究はどこまで進んでいるのでしょうか。

丸山氏:若い正常な人には前述の老人斑、もしくはタングルがほとんどみられないため、たぶんそれが原因ではないか。なかでも、老人斑の主成分であるアミロイド(Aβ=βアミロイド蛋白質)が一番の原因ではないかという説が現在の主流になってきています。

 アミロイドをつくる蛋白質の遺伝子に異常があると、まちがいなくアルツハイマー病になるという家系がわずかですが存在する。それが、このアミロイド説の最大の根拠となっているのです。また、このアミロイドをつくる酵素もすべてわかっているので、その阻害薬(Aβをつくりにくくする薬物)も、すでに開発されています。

 ところが、その薬物は10年ほど前から実際に人に投与されているものの、今のところすべて無効という結果に終わっています。その原因として最も有力視されているのは、すでに認知症になった人に投与しているので、それでは手遅れで効果が得られないのではないかということです。 

 そうしたなかで、今年から、アルツハイマー病を発症する前の健康な人に投与するという研究が、アメリカで始まる予定です。3~5年後にその結果が出れば、本当にアミロイドがアルツハイマー病の原因であるかどうか、はっきりと決着がつくというような状況です。

――丸山先生ご自身は、どのような研究を進めておられるのでしょうか?

丸山氏:私はちょうどそのアミロイド蛋白質の見つかった頃に研究を開始しました。まずは培養細胞のモデル系をつくろうということで、培養細胞にアミロイドの遺伝子を入れてアミロイドをつくり、アミロイド生成を阻害する薬物をスクリーニングするという研究をずっとやってきています。 

 ちなみに、5年ほど前に、すでに臨床使用されているものですが、副作用があまりなく、アミロイドを大量に減らすことができる薬物を見つけました。ただ、それを学会で発表をして、特許が取れなかった。これは残念でした(笑)。

 このほか、私を含むグループ研究としては、いわゆるiPS細胞での研究もしており、昨年患者様から提供された細胞から作成されたiPS細胞を作成し、神経に分化させるとアミロイドが増えているといった研究発表もしています。

――認知症はいずれすぐに治せるというような報道も見られますが、なかなかそう簡単にはいかないのが現実なのですね。

丸山氏:最近は、メリハリの利いた配分とか成果主義という一見合理的な基準のもとで、特定の分野に多額の研究費が費やされます。本来、そのようなある種偏った配分をするためには、どの研究が将来有望であるかという評価が的確にできなければいけない。しかし、将来どうなるかは誰もわからないわけですね。

 にもかかわらず評価をするということになると、何となく流行っているところに潤沢な研究費が提供されることになります。すると研究者は、すぐ新聞に載るようなわかりやすい研究成果を求めることになる。

 だからこそ、ねつ造(あるいは試験データの不適切流用)も起こるわけです。研究に悪い意味での圧力がかかって、そのために明日にも病気が治るというような発表を誘発すると言えます。

 したがってアルツハイマー病に関しても、様々な報告が出ていて、その通りなら今ごろは完全にアルツハイマー病は制圧されているはずなのですけれども、現実はそうではない。

 実際には認知症の治療はまだまだ難しいし、明日にでも病気が治りそうだというような新聞報道が出たとしても、ことはそれほど単純ではないのです。こうした実情も、一般の読者の方にぜひ知っておいていただきたい。それが、この本を執筆した理由の一つです。

――脳トレゲームなども盛んに喧伝されていますが、認知症の予防に関しても、これが効果的と断言できるものはない、ということなのでしょうか?

丸山氏:残念ながらその通りです。例えば脳トレゲームに関しては、どちらかと言えば否定的で無効という報告もあります。基本的に体全体に健康的なことをやっていれば悪くはないだろうとは言えますけれども、それ以上は言いようがないですね。

 今後、認知症の解明についての研究がさらに進んで行くでしょう。その一方で、これからは、単に長寿であればいいというのではなく、いかに自らの死を成し遂げるかを真剣に考えることも大切ではないでしょうか。

 今から20年くらい前までは、とにかく患者さんを生かし続ける、ということが医学の大命題でした。それが次第に、いわゆるQuality of Life、つまり生活の質を重視するという考え方になってきました。個人的には、そろそろQuality of Dying and Death、すなわち、いかに豊かな死を迎えるかについても議論すべきだろうと考えています。

――どうもありがとうございました。

<著者プロフィール>
丸山 敬(まるやま・けい)  
埼玉医科大学医学部薬理学教室教授。1957年生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、東大医学系大学院で研究を開始。医学博士。カナダ・トロント大学医学部へ留学後、臨床研修を開始する。その後、東京都精神医学総合研究所、国立生理学研究所などを経て現職。

研究テーマはアルツハイマー病・アミロイドタンパク質の代謝、神経特異的遺伝子など。著書に『最新カラー図解 はじめての薬理学』(ナツメ社、 2013年)、『休み時間の薬理学』(講談社、2008年)、訳書に『イラストレイテッド薬理学』(監修・翻訳、丸善出版、2012年)、『アメリカ版大学生物学の教科書』全3巻(監修・翻訳、講談社ブルーバックス、2010年)など多数。

薬局でカンタン糖尿病検査 指先チクッ、6分で結果

東京都足立区と徳島県内の薬局20店で、糖尿病の簡易検査を無料で受けられるのを知っていますか――。指先から血をごく微量採り、短時間で済む。2050万人と言われる糖尿病患者とその予備群。病気に気づかない人が多いなか、早期発見・治療につなげようという取り組みだ。

■自分で針刺し採血

 今月、足立区のJR綾瀬駅前の「あやせ薬局本店」。社会人2年目の医療機器メーカー社員福本貴大さん(23)は飛び込みで営業に訪れた。薬剤師の長井彰子さんに糖尿病の簡易検査を受けるよう勧められ、「実家を離れてから暴飲暴食気味なんです」。

 福本さんは長井さんの説明に従って、自分で左手の中指の先に小さな針を刺した。記者も試したが、チクッとする程度だ。

 必要な血液はわずか千分の1ミリリットル。血を細い管で吸い取り、検査装置(幅23センチ、奥行き・高さ27センチ)に入れる。待つこと6分。血液中の「ヘモグロビン(Hb)A1c(エーワンシー)」の値が出る。

 HbA1cは赤血球のたんぱくであるヘモグロビンとブドウ糖が結合したもの。食事などの影響を受けないため、直近1~2カ月間の平均的な血糖値を推定できる。

血糖値をあげず脂肪を吸収しない食べ方 「糖質4割」が理想

ダイエット経験について調査をしたところ、回答者全体の85%以上が「ダイエットしたことがある」と答え、女性に限ってみるとおよそ90%もの人が「あり」となった。

今までに試したことがあるダイエットをみると、最も多い回答は「食事制限」(リンゴのみ、炭水化物抜きなど)、続いて「ウォーキングやランニング」「サプリメントの摂取」となっており、日常生活の延長でやせたい願望がみえる(ブランディア総研調べ)。

 多くの人が経験しているダイエットだが、失敗やリバウンドを繰り返し、今度こそは正しいダイエットをしたいと知識を求めてさまようケースが多い。

 それでは、正しいダイエットとはどのようなものなのか。日本抗加齢学会専門医の森田祐二さんに聞いた。

「皆さんよく勘違いされていますが、ダイエットとは“体重を落とす”ことではなく、“体脂肪を落とす”こと。そもそも肥満は、糖質(炭水化物など)と脂質の摂取量が、消費量を上回ることなどによります。

 糖質や脂質は余ると中性脂肪という体脂肪になって蓄積されるので、体脂肪を落とすには、単純に糖質と脂質の摂取量を抑えればいいということになります。特に糖質制限は、糖尿病治療にも効果的であると、医学的にも認められています」

 とはいえ、極端な制限には注意点も。

「脂質は、エネルギー源であるほか、細胞膜や脳組織などを作る役目もあります。とくに体内では作れない必須脂肪酸は、食事から摂るしかありません。ですから、極端な制限は体調不良の原因に。

 また、糖質制限を5年以上続けると死亡率が高まるという研究結果もあります。とくに更年期以降の女性は、代謝や筋肉量が低下し、女性ホルモンの減少とともに、脳の衰えや、骨粗鬆症などさまざまな不調が出てくるようになります。

こういった時に、食べるべきものを食べ、体力をつけていないと、大病を患う恐れもあります」(森田さん)

 では、糖質と脂質は、どう摂るのが理想的なのか。ここでは、血糖値をあげない&脂肪を吸収しない3つの食べ方を紹介しよう。

【1】野菜・海藻類→たんぱく質・脂質→炭水化物の順で食べる

【2】脂や油を減らしすぎない。質を選んできちんと摂ること

【3】血糖値上昇や脂肪吸収を抑えるトクホ食品などを活用

「ダイエットのためには、糖質は、総摂取カロリーの4割が理想です。1日2000キロカロリー摂るとすれば、糖質は800キロカロリー程度。

また、食事の際、食物繊維の多い野菜などを先に食べると、糖の吸収が抑えられることもわかっています。ですから、食事の順序を意識するだけでも、ダイエットにつながります。

最近では、食事の前に摂ることで、脂肪や糖の吸収を穏やかにするトクホの食品なども出ているので、そういったものを活用するのもいいでしょう」(森田さん)

 今春には『からだすこやか茶W』(日本コカ・コーラ)など、1本で脂肪と糖の両方に作用するものも登場。ダイエットの強い味方になりそうだ。

「脂質ですが、肉抜きはNG! 肉や乳製品はたんぱく質が豊富なので、ほどほどに食べることも大切。また、料理に使う油をオリーブオイルやえごま油、キャノーラ油など、体によく、必須脂肪酸が豊富なものに変えるだけでも、ダイエット効果は期待できます。

 肥満は、糖質・脂質の過剰摂取のほか、運動不足、睡眠不足、ストレスも原因に。食事はもちろん、運動やメンタルのケアもダイエット成功には欠かせない要素です」(森田さん)

 薄着になる夏は、一年で最も体形が気になる季節。真夏に備えて効率的にやせよう。

糖尿病壊疽の足切断を回避 「メカノセラピー」って何だ?

宇宙飛行士の若田光一さんが188日ぶりに地球に帰還。無重力の世界で過ごしていたため、骨密度や筋力は20歳も年を取った状態だという。

「体には重力や気圧などさまざまな物理的刺激がかかっています。それがあるから、細胞は正常な機能を維持できるのです」

 こう話すのは、日本医科大学付属病院形成外科・美容外科の小川令准教授だ。この「細胞は物理的刺激の影響を受けて機能を維持している」という考え方がメカノバイオロジーで、「メカノセラピー」として医療に応用され、注目を集めている。小川准教授に聞いた。

 メカノセラピーの応用は多岐にわたっている。そのひとつが、糖尿病の足の壊疽(えそ)に対する治療だ。

「傷ができると、細胞は自然の物理的刺激に反応して皮膚を再生していきます。ところが糖尿病では、皮膚の細胞が物理的刺激に鈍感になることが分かってきました。

皮膚が再生されずに足が壊疽し、進行を抑えるために切断するのが従来の治療。そこで自然の物理的刺激以上の刺激を与え、鈍感な皮膚の細胞が正常に働くように促すのです」

 具体的には、壊疽した傷口にスポンジを詰め込んでフィルムで密閉し、専用器具で吸引する。

「人工的な物理的刺激を細胞が感じて増殖し、血管が新生され、皮膚の線維ができる。切断しかなかった患者さんの傷が、数週間できれいにふさがる場合があります。陰圧閉鎖療法と呼んでいます」

■ケガの傷跡も残らない

 一方、細胞が物理的刺激に対して敏感になり過ぎている場合もある。肥厚性瘢痕(はんこん)やケロイドだ。

「外傷や手術でできた傷痕の再生がちょうどよいところで終わらず、線維が過剰に産生され、皮膚が赤く盛り上がり、みみず腫れのようになります。

特にケロイドは肥厚性瘢痕とはっきり区別することは困難ですが、傷を越えて正常範囲まで病変が広がり、痛みやかゆみを伴う。理由が分からず、治療効果もこれまで期待できませんでした」

 この肥厚性瘢痕やケロイドにもメカノセラピーが応用されている。

「強い物理的刺激を与える糖尿病の陰圧閉鎖療法と異なり、傷にかかる物理的刺激を分散し、過剰にかかる力を逃がします」

 外傷や手術の傷は、皮膚の下層の真皮を縫う。しかし、これでは縫い口で真皮が上下左右に引っ張られ、真皮からできる肥厚性瘢痕やケロイドを引き起こす原因となる。

「そこで真皮よりもっと下層の皮下組織や筋膜を縫う。すると自然に皮膚が盛り上がって、傷口がぴったり合い、肥厚性瘢痕やケロイドができるリスクが減る。傷口が上下左右に引っ張られる力を分断したり弱めたりするために、切開の方法や向きも体の場所によって変えます」

 事故で鼻の下に大ケガを負った女性は、「結婚式を迎える10カ月後までに傷口が残らないように治して欲しい」と小川准教授の外来を受診。鼻の下は唇などの動きで物理的刺激がかかりやすく、どうしても肥厚性瘢痕ができやすい。

「彼女も、外傷の治療後3カ月後に肥厚性瘢痕ができた。しかし、レーザー治療も併用しましたが、メカノセラピーで傷口への細胞の力を逃がすようにすることで、結婚式の1カ月前には傷痕は目立たなくなりました」

 メカノセラピーの基本は、(1)物理的刺激に鈍感になった細胞に、強い刺激を与える(2)物理的刺激に敏感になった細胞に、力の分散を図る。陰圧閉鎖療法や肥厚性瘢痕・ケロイドの治療以外に、巻き爪や、短い骨を伸ばす骨延長術に利用されたり、変形性膝関節症、薄毛、美容などの研究が行われている。

糖尿病の食事療法は「地中海型食生活」が理想的

糖尿病と診断されて最初に学ぶのは、たくさん食べると血糖値が高くなるということです。何を食べても血糖が高くなるので途方に暮れた人もいるでしょう。

しかし、食後高血糖の直接の原因は、ほとんどが糖質(消化吸収できる炭水化物)によるものです。そのため、食事の糖質をグラム単位でカウントして、糖質をあらかじめ決めた量に守る「カーブカウンティング(糖質管理食)」の手法が用いられています。

 では、どの糖質食品でも同じように食べた量に比例して血糖が上がるのでしょうか? 実はそうではありませんでした。これを科学的に調べようとして発見されたのが、「グリセミック指数(GI)」なのです。

■GIの低い食品はすべて高食物繊維?

 以前から、食物繊維の効果とGIを混同している医療従事者がかなりいたので気になりました。この2つの効果は厳密には区別できませんが、同じではありません。

 食事の糖質の量と、体が分泌できるインスリン、あるいは注射するインスリンのバランスが、食後血糖値に最も影響を与えるのは明らかなのですが、糖質食品の種類や加工度、調理法、食べ方も食後血糖値に関係します。この糖質食品の「質」を科学するGIとは何なのか、そしてその賛否両論を紹介しましょう。

■GIの発見

 米国でも1980年までは、糖尿病患者の炭水化物食品の摂取管理は食品交換表を使っていました。つまり、「量」の管理です。トロント大学の科学者、David Jenkinsは、さまざまな炭水化物食品を食べた後の体の血糖値変化に興味を持ち、1981年、ごくありふれた食品62品の血糖反応を「Glycemic Index(グリセミック指数)」として、米国の臨床栄養学の専門誌AJCNに発表しました。栄養学者も医師も患者も、初めて耳にする言葉でした。

 糖質、つまり消化吸収できる炭水化物を50g含む食品を健常者に食べてもらって、2時間の血糖値の変化を折れ線グラフにして、同量のブドウ糖を摂取したときのグラフと照らし合わせました。

各食品の折れ線グラフの面積を、吸収が最も速い、つまり血糖ピークが最も高くなるブドウ糖の面積と比較したのです。こうするとブドウ糖を100とする、各食品の血糖上昇の割合、つまりGIが0~100で表わせます。

 50gのブドウ糖を100とすると、平均的な健常者の場合、精製小麦粉で作った白いバゲット(フランスパン)のGIは95、リンゴは39でした。日常生活で米飯とリンゴの糖質を同じ20gにそろえても、食後の血糖上昇の曲線は異なるのです。

 低GIの食品が食後2時間の血糖値上昇を抑えるのなら、必要とするインスリンも比例して減るので、インスリン不足の2型糖尿病患者には願ってもない話です。当初は大いに期待されました。

しかし、GI発見から30年以上たった今日でも、低GI食はそれほど熱心には糖尿病患者に勧められていないのです。なぜでしょうか?

■グリセミックロード(血糖負荷)の考え方

 多くのGI研究者はGIの利用だけでは、それほど糖尿病のコントロールに役に立たないことを知っています。低GI食品でも食べ過ぎれば高血糖になります。やはり糖質の総量規制が必要なのです。

 そこで料理に使用する各食品の糖質量にGIを掛け算した数値を、「グリセミックロード(血糖負荷)」とする方法が考えられました。グリセミックロードは、食事の糖質の質と量を加味した、負荷を表わす数値です。

これはハーバード大学公衆衛生大学院などで応用され、精白穀物の白いパンなどを好んで食べることが血糖負荷を高めて、肥満や2型糖尿病のリスクを高くすることが証明されました。

 GIの高いマッシュポテトとメロンを1カップずつ食べると、当然ながらマッシュポテトの方が血糖値が高くなります。

マッシュポテトにはより多くの糖質(グラム単位)が含まれているからです。ただし、このグリセミックロードを実際に糖尿病食事療法に導入できるかどうかは不明です。疫学としては有用でも、糖尿病患者の日常のコントロール目標には役に立ちません。

■GI擁護派の主張

 低GI食品を選んでその糖質をカウントすることで、血糖上昇を抑えられるとGI信奉者は力説します。25gの糖質を含むベークドポテトとスパゲッティでは、食後血糖に与える影響は3倍も違う! とシドニー大学のJennie Brand-Miller教授は主張します。このGI論者のカリスマ教授は彼女自身の体でこれを実験したそうです。

 もうひとつのメリットは、おおむね低GI食品がヘルシーだという主張です。低GI食品はフルーツや野菜、全粒穀物、パスタ、乳製品などですから、一見説得力がありますが、加工食品で低GIをうたうチョコレートやスナックはとてもヘルシーとはいえません。GIが低いのは高脂肪だからです。

■GI懐疑派の主張

 GIの懐疑派は根本的に欠陥があると考えています。食事はいろいろな材料でできていますから、例えば私達は単品のニンジンだけを食べることは、まずありません。また、GIは個人差が大きいのです。

健常者は、激しい運動で肝臓のグリコーゲンが消費されていれば、何を食べてもその補充に回りますから、血糖値は上がりません。そもそも健常者の場合、高GI食でもほんの少し血糖値が上がるだけです。また、百人百様の糖尿病患者の血糖反応からGIを計測するのは不可能です。

 どうもGIはあいまいさが残るので、サイエンスとは言い切れない部分があります。そう言えば、確かに食品成分表を使った糖質制限食だって実際の糖質量ではありませんから、正確なサイエンスではありませんね。

■GIも使い方次第では……

 食品別のGIリストは数え切れないほどありますが、各国各様の、もともと品質も季節も味も違う同じ名前の食材で、体格も料理の好みも異なる人達がざまざまな条件で測ったものなので、とても紹介できるものではありません。

ですからGIの細かい数値は無視して、高・中・低ぐらいの判断でいいと思います。日本では白米ご飯の血糖上昇を100として、83以上を高GI、65~82を中GI、64以下を低GIとしています。

 ひとつの考え方ですが、食事に低GI食品を少なくとも一品加える努力をするといいでしょう。代表的なのは野菜です。茹でたてのポテトのGIは75ですが、冷めると55に下がります。

ポテトサラダは冷めたいポテトと酢、オイル、他の野菜を加えて作りますから、ポテトが好きな人にはおすすめです。酢やオイルを加えると腸の動きが抑えられて、さらにGIが低くなるのです。

 たっぷりの野菜(デンプン食品は除いて)とフルーツ、全粒穀物、低脂肪乳製品、豆類、魚、脂肪の少ない肉を計画的に摂る「地中海型食生活」を実践すれば、ヘルシーですし、とりもなおさず低GI食なのでおすすめです。

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