朝起きたときの血圧が140mmHg以上のこともあり、高血圧が気になる記者(60才)。通いで介護している母(89才)も高血圧で薬を服用している。高血圧が不安なシニア世代が、生活の中で気を付けるべきポイントとは? 注意すべき「早朝高血圧」や「仮面高血圧」など、気になる最新事情を専門医に教えてもらった。
朝の血圧が高い「早朝高血圧」

 昨年還暦を迎えた記者は、今冬、朝起きてすぐの状態で測ると、上が140mmHg以上、下が85mmHg前後と高めだが、日中は上が125mmHg前後、下が70mmHg前後に落ち着くことが多い。

 通いで在宅介護している母も血圧が高めで心配だ。そこで、生活で注意すべきポイントについて、日本高血圧協会理事であり、高血圧治療ガイドライン(2019)作成委員も務める社会医療法人製鉄記念八幡病院・理事長の土橋卓也さんに伺った。

 土橋さんによると、朝の血圧が上がるのは、『早朝高血圧』だという。

「早朝高血圧とは、早朝の血圧が急激に上がり、起床後1時間以内の測定値が上135㎜Hg、または下の血圧が85㎜Hg以上を基準として判断されます。

 高血圧のお薬を飲んでいる方では、薬を飲むことによって、また薬を飲んでいない方でも午後には正常値に戻ってしまうことがあるため、健診や病院受診時に見逃されることもあります」(土橋卓也さん、以下同)

 早朝高血圧の対処法は、土橋さんによると主に以下のようなものがあるという。

早朝高血圧の対処法3つ

・冬場は、部屋を暖かくしてから、起床すること。

・晩酌習慣がある人は、お酒の量を控えめにすること。

・薬を飲んでいる人は、服薬時間について主治医に相談すること。

医師の前では血圧が下がる「仮面高血圧」も

 また、最近注目されているのが、“仮面高血圧”だという。

「『仮面高血圧』は、病院で測ると血圧は良好でも、家庭や職場など病院外で測定すると血圧が高いというものです。仮面高血圧の方は、脳卒中などの発症リスクが高いことがわかっています。

 病院での血圧は良好だからといって放置しておくと、気づかないうちに高血圧に伴う血管病変(動脈硬化)や腎障害が進行する恐れがあります。

 予防や治療を医師任せにせず、家庭でも自分で血圧を測定して医師に報告し、二人三脚で管理することがポイントです」

血圧管理は早い段階から対策を

「中高年の高血圧は、脳卒中や心臓病などはもとより、認知症、とくに血管性認知症のリスク要因となることが明らかとなっています。多くの高血圧患者さんは無症状のため、受診が遅れがちで、治療に対しも消極的なんです」

 記者もいまのところとくに症状はないが、早速、生活の中で血圧対策をしていきたい。注意すべきポイントを土橋さんに教えてもらった。

高血圧予防のためのポイント3つ

1.毎日の食事で減塩を意識する

「食事では、減塩がもっとも重要です。高血圧の方は6g未満/日にしてください。和食は栄養バランスの取れた良い食事ですが、だしを利かせて塩、みそ、しょうゆなどの調味料を少なくしたり、減塩調味料を利用することがコツといえます。

 野菜や果物などカリウムを多く含む食品も血圧を下げる効果が期待できますので、積極的に摂りましょう」

 ちなみに、塩はひとつまみが約1g相当なので、1日6g未満を目指すとなると大変なようだが、調理の工夫次第とのこと。

 たとえば、カレー1皿あたりの塩分量は約2gだが、減塩タイプのルーなども登場しているので、25%カットのルーなら、1.5gに抑えられる。

 また、意外な食品の「隠れ塩分」にも注意してほしいと、土橋さんは語る。

「ハムやベーコンなどの加工食品は塩分が高いことはよく知られていますが、普段から食べるパンや牛乳にも塩分が含まれています」

 食品のパッケージの栄養成分表示にある、「食塩相当量」を確認することも予防への第一歩だという。

 実際、記者が今朝食べた食パンには、食塩相当量が0.7g、牛乳にはコップ1杯0.22gが含まれていた。
 なお、日本高血圧学会のHPでは、「減塩のコツ」や無塩だしの作り方などを紹介する「簡単健康料理」の動画や美味しい減塩食品リストも公開している。毎日の食事の参考にしてほしい。