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日本人のがん1位「大腸がん」を予防する4つの生活習慣【2020年BEST5】

2020年(1~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。健康部門の第5位は——。(初公開日:2020年2月10日)暴飲暴食で腸に負担がかかり、炎症を起こすことを「腸のむくみ」という。医師の大久保政雄氏は、「腸のむくみは大腸がんのリスクになるが、痛みを感じにくく、ひどくなるまでなかなか気づかない」という——。


※本稿は、大久保政雄『大腸がんで死にたくなければ腸のむくみをとりなさい!』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

大腸がんは増え続けている

現在、日本人が最も多くかかっているがんをご存知でしょうか? 答えは、「大腸がん」です。がん検診が推奨され、前がん段階での早期発見が可能になっているにもかかわらず、日本人の「大腸がん」の罹患率は、下のグラフのように右肩上がりで増え続けています。

※編集部註:本文に合わせ、図表1を追加しました。(2月13日12時46分追記)

大腸がんは、生活習慣と深くかかわっている病気です。腸は私たちが食べたり飲んだりした物すべての残渣(ざんさ)(残りカス)が便になる過程で、最後に必ず通過していく通り道ですから、食生活の影響を特に受けやすい臓器なのです。暴飲暴食を続けていると、大腸も悲鳴を上げますが、腸の最も内側の粘膜には神経がないため、炎症が起きていても痛みを感じにくく、ひどくなるまではなかなか気づきません。

これこそが、「腸がむくんでいる」状態なのです。

炎症初期は「お腹に違和感がある」程度の症状

大腸がむくんでしまうことは、消化器の診療を専門にしている医師であれば誰でも知っていることですが、一般の人たちにはほとんど知られていないようです。筆者も、お腹の不調を訴える患者さんの腸の内部を大腸内視鏡(肛門から挿入してカメラで内部を調べる医療機器)で観察して、「腸の中が大分むくんでいますね。お酒を飲み過ぎたり、脂っこいものを食べたりしていませんか」と問いかけると、患者さんはびっくりするらしく、「腸もむくむことがあるんですか!?」と聞き返されます。

内視鏡で見た健康な大腸の粘膜は、腸管のヒダがしっかり立ち上がり、毛細血管もはっきり見えます。対して、むくんでいる大腸の粘膜は、慢性的な炎症によって、細胞に水分が誘導されて腫れぼったくなり、表面のヒダや血流がはっきり見えません。

炎症が内側の粘膜層に留まっている段階なら、強い痛みはなく、「お腹に違和感がある」「押すと痛いところがある」「酒を飲むと下痢が続く」などの症状が見られる程度です。しかし、炎症が粘膜より外側の層や、腸のすぐ外にある腹膜など神経のある組織にまで及べば、強い痛みを感じるようになります。

腸がむくむメカニズムをさらにわかりやすくするため、イラスト化してみました。

日頃から食事に気をつけていると、上の図のように、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスが良好に保たれて、粘膜の表面もきれいです。血液中の免疫細胞は、何ごとも起こらないときも見張ってくれています。

大腸がんの重大なリスク

ところが、毎日お酒を飲み、油物を好んで食べるような不摂生を続けていると、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増えてしまいます。そして、腸の粘膜に炎症が起きると、免疫細胞は戦闘態勢になって炎症細胞の数が増え、粘膜の細胞に水分が誘導されて、右図のように膨らんで見えます。これが「腸のむくみ」の正体です。

さらに、腸がむくんだ状態が続くと、大腸の壁に「憩室(けいしつ)」という凹みができてそこから出血したり、エノキのような「大腸ポリープ」ができたりすることもあります。大腸がんは、この大腸ポリープの一部が悪性化したものです。「腸のむくみ」は大腸がんの重大なリスクとなるのです。

腸のむくみの原因は、不摂生な生活──具体的には、①大量飲酒②牛・豚肉やバター、ラード、乳脂肪を含む牛乳や乳製品などの動物性脂肪(オメガ6系脂肪酸)の多い食事③水分不足による慢性便秘など腸内環境の悪化④運動不足などです。

①と②は、大腸がんの発症リスク要因とも共通しています。疫学的な調査研究からも、「1日に30グラムを超える動物性脂肪を摂っていると、腸の炎症を引き起こしやすい」ことや「ハム、ソーセージなど加工肉を食べることは大腸がんの発症につながる」ことなどが報告されています。つまり、「腸のむくみ」を予防する生活習慣は、そのまま大腸がんを予防することにつながるのです。

むくみを予防する4つの習慣

では、どうすれば「腸のむくみ」を予防できるのか?

ここでは、その対策として、4つの習慣を挙げたいと思います。

まず大量のアルコールによる腸のダメージを最小限に抑えるために、患者さんには週2日以上の「完全休腸日」を提案しています。一般的に、お酒好きの人がアルコールを抜く日を設けるときに「今日は休肝日だ」といいますが、そもそも、節酒したアルコールを吸収、分解、解毒するために働いているのは肝臓だけではないのです。

「食べものは胃腸、お酒は肝臓」と、消化の役割分担があるように誤解されていますが、消化器官はすべてつながっており、常に関わりあって働いているので、肝臓の負担になるものは他の消化器官にも負担をかけています。たとえば、膵臓もアルコール摂取の影響を強く受ける臓器であり、「急性膵炎」の約半数、「慢性膵炎」では約8割は、お酒の飲み過ぎによるものです。

少なくとも週に2日は、完全にお酒を抜いて、休肝日ならぬ「休腸日」を作ってあげてください。長く働いてもらうためには、内臓にも働き方改革が必要なのです。

水溶性の食物繊維や水分摂取も大切

次に、腸内環境を整えるための食事です。大腸がんは、食生活の欧米化に伴って増えてきた病気です。「腸のむくみ」の原因になりやすい動物性脂肪を控えるとともに、発酵食品と食物繊維を意識して摂るようにしましょう。納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品には、腸内の腐敗物質の生成を抑える乳酸菌がたくさん含まれています。そして、食物繊維は、腸内の善玉菌のエサになるだけでなく、消化されないまま大腸まで届いて便のカサを増すという効果もあります。

特に、便通を整えるためには、昆布やワカメなどの海藻類や大豆、大麦、イモ類、キノコ類などに多く含まれる「水溶性食物繊維」を積極的に摂るようにしましょう。

さらに、便秘を予防して腸に負担をかけないためには、十分な水分を摂取することが重要です。小腸で栄養分が吸収されたあとの食べものの残渣は、大腸のトンネルの中を運ばれる過程で水分が少しずつ吸収され、便の形になっていきます。水分の摂取量が不足していると、便の塊が硬くなって排便しにくくなるだけでなく、大腸の内壁を傷つけて炎症を引き起こします。

ふつうの体格の成人であれば、「1日2リットルの水を飲む」ことを目安にしてください。水は、喉が渇いていなくてもしっかり飲むものだと考えましょう。

運動不足も腸の健康に影響する

最後に運動です。スマホなどの普及と交通機関の発達、エレベーターやエスカレーターの普及などに伴って、私たち現代人は日常の活動量が激減しています。それに伴って、姿勢が崩れ、大腸などの内臓を支える骨盤底筋群をはじめとする下半身の筋肉が衰えて、内臓を本来の正しい位置にキープすることが難しくなっています。

健康状態に問題のない人であれば、まず1日30分程度のウォーキングを日課にすることから始めてみてください。背筋を伸ばして、大股で腕を大きく振って歩きましょう。腕を振ることによって、お腹の上下運動にひねり運動が加わり、腸の動きがよくなります。膝や腰が痛い人は、プールの中で行う「水中ウォーキング」も効果的でしょう。

日本人の二人に一人が、がんにかかる時代になりました。そのトップである「大腸がん」の重大リスクには、大腸の粘膜に軽い炎症が続くことによって起きる「腸のむくみ」があるのです。不摂生を避けて腸内環境を整えることができれば、むくみは必ず治まります。そして、便通の異常やおなかの違和感、軽い痛みなどを感じたら、軽視せずに消化器内科専門医を受診することをお奨めします。

---------- 大久保 政雄(おおくぼ・まさお) 山王病院 内科副部長 1974年、京都府生まれ。日本大学医学部卒。東京逓信病院消化器内科医長を経て、2018年より山王病院(東京都港区)内科副部長。専門は消化器疾患全般、特に内視鏡での診断と治療に尽力し、“正確で安全かつ苦痛のない内視鏡診断”を実践する。地域医療に尽くした内科医の父の志に倣い、「研究より臨床」をモットーに日々、患者と向き合う。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本肝臓学会専門医。

がん電話相談 大腸がんⅡ期「ハイリスク」なのに化学療法なし?

© 産経新聞

Q 48歳女性です。今年7月、検診でS状結腸がんと診断され、翌月、腹腔鏡下大腸切除術を受けました。切除した部位の病理検査によると、病期はステージⅡa(がんが大腸壁の固有筋層より深く入り込んでいる状態)で、再発危険因子を持つ「ハイリスク」と診断されました。医師からは「腫瘍マーカーは高くないので抗がん剤による治療はしなくてもよい」と言われました。抗がん剤はできれば使いたくないのですが、使わないと再発のリスクが高まるのではないかと不安が募り、食べ物ものどを通りません。

A 一般的にステージⅡでは、術後の補助化学療法(手術で残った可能性のある微小ながんによる再発を防ぐ抗がん剤治療)は必要ないといわれています。大腸がん治療のガイドラインで術後に抗がん剤治療が推奨されているのはステージⅢです。

Q ステージⅡ以下なら抗がん剤による治療は必要ないのですか。

A ステージⅡだから抗がん剤治療をやらなくてよいと言われたとしても、がんが将来再発しないというわけではありません。これは再発をめぐる確率の問題なのです。例えば大腸がんステージⅡの患者のうち手術だけで治る人がどれくらいいるかご存じですか。

Q 約85%と聞きました。

A その通りです。ステージⅡの患者100人のグループのうち85人は治って再発せず、残りの15人は再発するということになります。一方、ステージⅡの患者100人の別のグループがあり、このグループにだけ補助化学療法を行った場合はどうでしょうか。実は再発率はあまり変わらず、補助化学療法の効果で再発しないのはせいぜい1~2人という程度です。これくらい効果が小さいとなると、あえて副作用もある抗がん剤治療を行う必要はないという判断になるわけです。

Q ステージⅡでも、私のようなハイリスクの場合はどうなるのでしょう。

A ステージⅡのうち、がんが大腸壁を破って外まで浸潤している場合やがんの分化度が低い(悪性度が高い)場合などは補助化学療法を考慮するとされています。リンパ管などにわずかにがんが入り込んでいるとの所見があったそうですが、このリスク因子だけなら一般的なステージⅡのグループに入るといってもいいでしょう。

仮にハイリスクであっても、ステージⅡであれば抗がん剤治療が強く推奨されているわけではありません。1~2%という一般的なステージⅡ患者に対する効果が少し大きくなる程度で、顕著な効果が期待できるとはいえないからです。

一方、ステージⅢでは手術後何もせずに再発しない人の割合が例えば約75%だとすれば、補助化学療法を行った場合は80%以上となり、恩恵を受ける人の割合が大きいため、補助化学療法の意義があるということになるのです。

Q ご説明はよく分かりましたが、まだ不安でいっぱいです。

A がんになれば、だれでもそうなりますが、再発の可能性が極めて高いというわけではありません。万一、再発した場合に積極的に治療を受けることにして、今は手術を受けたことでがんは治ったんだと割り切り、心配しすぎず過ごすのがよいでしょう。

回答は、がん研有明病院消化器センター長・大腸外科部長の福長洋介医師が担当しました。

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日は除く)午前11時~午後3時に受け付けます。電話は03・5531・0110、無料。相談は在宅勤務でカウンセラーが受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

ステージIVのママも生前、警鐘 「女性の大腸がん」を避けるためにできること

「早期発見のために動くことが大事」。そう生前に発信していたのが、21才で大腸がんステージIVを宣告された遠藤和(のどか)さん(享年24)だ。彼女が娘のために遺した日記をまとめた書籍『ママがもうこの世界にいなくても』が12月1日に上梓された。

 和さんは18才頃から、たびたび激しい腹痛に襲われていた。

《いつも、みぞおちの左側のところ。前ぶれなく、いきなりガツンと強い痛み。時間が経つと、徐々に治まっていく。》(同書からの引用)

 しかし、病院での診断結果は、はっきりしたものではなく、和さんがステージIVの大腸がんだと診断されたのは、21才のときだった。最初に違和感を覚えたときから3年が経っていた。

 最新の国立がん研究センターのデータによると、女性の大腸がんの年間罹患数は、乳がんに続く第2位で、6万5840人。死亡数では1位で、2万4004人だった。また、同センターの最新予測によれば、2021年に大腸がんで命を落とす人は2.5万人を超えるとされ、第2位の肺がんとは3000人以上も差がある。

 そんな大腸がんをを少しでも遠ざけるためにできることはあるのだろうか。聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座教授の砂川優さんはこう話す。

「便潜血検査やCTでは、確定的な診断ができないことが多い。少しでも疑わしいと思ったら、必ず内視鏡検査を受けてください。大腸がんは、内視鏡検査で採取した組織を生体検査に回して診断を確定するので、やるしかない。

 大量の下剤をのむ必要があり、肛門からカメラを入れるので忌避する女性もたしかに多いですが、最近は検査機械のスコープも改良が進み、麻酔で寝ている間に行えるようになったので、苦痛に耐えながらやる検査ではなくなりました」

 福岡大学医学部消化器外科教授の長谷川傑さんも続ける。

「アメリカでは検診として大腸内視鏡検査が推奨されています。その結果、近年は大腸がんの発見率が高まり、死亡率も下がりました。しかし、日本ではまだ死亡率が高止まりしたままです」

 内視鏡で発見したがんが初期であれば、その場で切除することも可能だ。

「初期の自覚症状としてわかりやすいのは、前はそうでもなかったのに便秘や下痢をするようになるなどの排便習慣の変化です。残便感や、便が出きらないなどもあります。さらに、明らかに便が出にくくなる、腹痛を伴うなどの症状が出てくると、がんは進行しているケースが多い。その前に検査で見つけることが重要です」(砂川さん)

 生前の和さんも、インスタグラムでこう発信していた。

「ちょっとでもおかしいと思ったらすぐ病院に行くとか、健康診断、人間ドックは定期的に受けるとか、早期発見のために動くことが大事だなあと……。みなさんもちゃんと病院に行ってください。他人事じゃないので! 若いからとかがん家系じゃないからとか油断したらダメですよ! 自分の体を守れるのは自分しかいないので!」

 ほかには、食生活に注意するという手もある。

「赤肉(牛肉や豚肉)やハム、ソーセージなど、加工肉に代表される高たんぱく食は摂取しすぎない方がいいでしょう。切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリーなどの食物繊維は積極的に摂取する量を増やすといい」(砂川さん)

 初期であれば9割以上が克服できるとされる大腸がん。体にまつわる不安は1つでも多く解消しておきたい。

※女性セブン2022年1月1日号

大腸がん、唾液検査で早期発見に期待…口の中の細菌が関わる可能性

 鹿児島大医歯学総合研究科の研究チームは21日、口の中の特定の細菌が大腸がんの発生に関わっている可能性があることを発見したと発表した。将来的には唾液検査で大腸がんの早期発見が期待されるという。

 研究は同大と同大病院、大阪大の共同研究で、7月に国際学術誌に掲載された。大腸がん患者と健康な人計約100人から唾液と便のサンプルを採取した結果、大腸がん患者の唾液と便からは共通して4種類の細菌が検出されたことが判明。一方で、健康な人のサンプルからはこの細菌がそろって見つかることはなかった。

 発表では、今回の研究により、この細菌が大腸がんの発生に関与している可能性があることが分かり、「今後、唾液の検査による大腸がんの発見やリスクを検知することができるようになるかもしれない」とする。同科の杉浦剛教授は「口の中の細菌を管理することによる大腸がん予防についても研究を進めたい」と話した。

男女共々知らなきゃダメ!大腸がんの兆候、見逃さないで

2017年のがん罹患(りかん)数予測でトップの大腸がん。初期は自覚症状が乏しく見逃しやすい。聖マリアンナ医科大学(川崎市)臨床腫瘍学の砂川優准教授は「大腸がんを早期発見するには、便通の変化などの初期症状に気付くことと、検査を受けることが大切です」と強調する。

 ▽腰痛の原因にも

 日本に大腸がんが多いのは、食生活の欧米化に加え、高齢化も影響していると考えられている。砂川准教授は「大腸がんは早い段階で治療をすれば、90%以上の確率で治ります」と早期発見の重要性を訴える。

 大腸がんの典型的な症状は血便だ。痔(じ)による出血は真っ赤な血が混じる場合が多いが、大腸がんでは黒っぽく見える。便が細切れになる、便の表面にゼリー状の粘液が付く、便秘と下痢を繰り返す、残便感、下血といった症状が見られることもある。便が大腸を通る際、がんそのものや狭くなった腸管が圧迫され、腰からお尻にかけて痛みが出る場合もある。

 砂川准教授は「血便を痔と勘違いして受診が遅れるケースがあります。いつもと違う便の状態が続いたら、早めに医療機関を受診してください」と促す。

 ▽症状が出づらい右側

 大腸がんには、腹部の左側に位置する直腸やS状結腸、下行結腸にできるがんと、右側に位置する横行結腸や上行結腸、盲腸にできるがんがあるが、右側のがんは症状が出にくい。砂川准教授は「便が盲腸や上行結腸を通過する時点ではまだ軟らかく、狭まった腸管を通過できてしまうため腹痛が起きにくいのです。また、肛門まで距離があり、途中でかき混ぜられ血液も判別しにくくなります」と話す。

 早期発見には便潜血検査が不可欠。便中のわずかな血液も検出できる。40歳以上になったら特に症状がなくても、年1回は検査を受けることが推奨されている。

 砂川准教授は大腸がんの予防法について「運動がリスクを減らすことは実証されています。肥満は大腸がんの要因の一つで、体重コントロールも重要です。加工肉や赤身肉の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎに注意し、喫煙も控えてください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

「ピロリ菌」検査で陰性… 胃がん検診は受けなくてOK?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!

【問題】胃がんの原因として知られるヘリコバクター・ピロリ菌。この菌と胃がんの関係について、正しい説明は次のうちどれでしょう?
(1)ピロリ菌が陰性なら胃がん検診は受けなくてもいい

(2)除菌をすると胃がんリスクはほぼゼロになる

(3)生まれたときから一度もピロリ菌に感染したことがない人の胃がんリスクはかなり低い

■答えと解説

正解は、(3)生まれたときから一度もピロリ菌に感染したことがない人の胃がんリスクはかなり低い です。

知っておきたい健康や医療の知識Q&A、ほかにも…
○血圧高めの人要注意 予兆なく発症「急性大動脈解離」

○内臓脂肪に要注意 体重が少なくても危険な太り方とは

○睡眠中の「いびき」「無呼吸」 どうすれば改善する?

○命に関わる脳卒中の予兆 どんな「しびれ」が要注意?

○虫歯や歯周病の原因「プラーク」 落とすポイントは?

○「足の血栓」死に至ることも 飛行機搭乗より多いのは

多くの胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染が原因で起こることが、今や医学の世界では常識となっています。胃に棲みついたピロリ菌が胃粘膜に炎症を起こし、発がんしやすい状態(萎縮性胃炎)に変化させてしまうのです。そこで、ピロリ菌の存在を調べて、陽性の場合は複数の抗菌薬を使って除菌すると、炎症の進行が止まって胃がんにかかるリスクが下がることが分かっています。

ただし、ピロリ菌の除菌でどの程度まで胃がんのリスクを下げられるかは、実はまだはっきり分かっていません。除菌した時点の萎縮性胃炎の進行度によって、その後の胃がんリスクが変わってくるため、正確な調査をするのが難しいのです。

「除菌による胃がんリスクの低下は、だいたい30%から40%くらいだろうと言われています。リスクは下がるが、ゼロにはならないのです。この点を誤解している人が、医師の中にもかなりいるようです。『ピロリ菌を除菌したら胃がんのリスクはゼロになると言われました』という患者さんがとても多く、そのつど誤解を解くのが大変です」。がん検診に詳しい、近藤しんたろうクリニック院長の近藤慎太郎さんはそう話します。

■最初から陰性でも胃粘膜の状態は確認したほうがいい

一方、ピロリ菌検査の結果が最初から陰性の場合も、生まれてからずっと感染していないのか、ある時点までは感染していて途中で自然除菌されたのかは分かりません(注:自然除菌とは、風邪で抗菌薬を飲んだときなどに、意図せずに除菌されてしまうことをいいます)。「陰性だからといって胃がんにかからないわけではないので、胃がん検診で胃内視鏡検査を定期的に受けて、胃の粘膜の状態を確認したほうがいいでしょう」と近藤さんは勧めます。

もっとも、生まれたときから一度もピロリ菌に感染したことがないことがはっきりしている場合は、胃がんになるリスクはかなり低いとされています。ピロリ菌の感染ルートは水と考えられており、上下水道が完備していなかった時代に生まれた人、つまり年齢が高い世代ほどピロリ菌の感染が多いことが分かっています。「衛生状態が良くなったこともあり、若者のピロリ菌感染率は減っています。今の10代の感染率は10%程度と言われているので、この世代が中高年になったときには胃がんは激減するでしょう」(近藤さん)

現在、ピロリ菌の検査と除菌は、保険適用になっていますが、保険診療で検査を受けるには、先に胃内視鏡検査で胃の炎症(胃炎)があることが確認されていなければなりません。保険外でもかまわなければ人間ドックなどのオプションメニューでピロリ菌の検査を受けることもできますが、その際、「ピロリ菌検査を単独で受けることはお勧めしません」と近藤さんは話します。

「ピロリ菌が陽性でも、内視鏡で胃炎などの異常所見が確認されていなければ、保険で除菌治療が受けられません。一方、ピロリ菌が陰性と分かっても、その人が生まれてから一度も感染していないのか、それとも実は感染後に自然除菌されたのかは分かりません。現在ピロリ菌がいなくても、もし以前感染していたら、胃の炎症が進んでいる可能性もあります。その場合、胃がんのリスクは高くなります。胃内視鏡検査を受けなければ、胃の炎症の有無を確認できないので、胃がんのリスクも推測できないのです」(近藤さん)

ピロリ菌が最初から陰性でも、除菌によって陰性になった場合も、胃の状態は定期的にチェックしていくことが、胃がんの早期発見のためには大切だと言えるでしょう。

この記事は、「胃がん検診、『バリウムより内視鏡』の最大の理由とは」https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/21/012200002/012900003/(梅方久仁子=ライター)を基に作成しました。
[日経Gooday2021年7月26日付記事を再構成]

みぞおちの不快感や痛み…それって「胃がん」かも? 見過ごしてはいけない初期症状【医師が解説】

胃がんの初期症状で多いみぞおちの不快感や痛み
以前は、日本人のがん死因第一位を占めていた胃がん。がん検診や胃カメラによる検査の普及により、早期発見できれば十分完治が目指せるがんになってきました。
胃がんの初期症状として気をつけていただきたいことは、以下の2つです。

▼1. みぞおちの不快感や痛み胃もたれ、むかつき、膨満感といったみぞおちの不快感、そして、しくしく、きりきり、ずーんといった痛みが長引く場合には、要注意です。

もちろん、これらの症状は、胃酸過多による胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍でも見られる症状で、市販の胃薬で改善するケースも少なくありません。しかし、薬を飲まないと必ず痛む、食欲不振が長く続く、症状が以前より悪化している、といった時には、是非、内科の先生にご相談ください。

▼2. 真っ黒なタール便が出るトイレでタールのような真っ黒な便が出た時には、自覚症状が全くない時でも、必ず、内科の先生に速やかにご相談ください。もちろん、イカスミなどの食物や鉄剤などの薬の影響で黒い便が出ることはありますが、黒い便が続くような時には、放置は禁物です。

この黒い色のもとは、血液のヘモグロビン中に含まれる鉄分が酸化したものです。主には、胃や十二指腸といった上部消化管の出血によって見られる症状です。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの可能性もありますが、胃がんも念頭に置かなくてはなりません。

進行胃がんで起こる症状
胃がんの進行に伴って見られる症状には、局所の進展によるものと、他の臓器への転移によるものに分けることができます。
▼1. 胃がんの局所の進展による症状胃がんができる部位によっても異なりますが、噴門部や幽門部といった胃の入り口や出口付近にできた胃がんは、進行によって狭窄・閉塞症状を来します。つまり、召し上がった食べ物が通過できずに、嘔吐してしまいます。この嘔吐は、二日酔いや乗り物酔いの時とは異なり、吐き気は特段ないのに、ある時、急にどっと嘔吐してしまうということが特徴です。

また、胃がんの進行によって、出血量が増加することで、貧血が急速に進行したり、場合によっては血圧の低下などを招いたりすることもあります。

さらに、胃がんが胃の壁を食い破ってしまった場合、膵臓や胆嚢など周辺の臓器に浸潤したり、腹膜全体に広がってしまう(播種)こともあります。腹膜播種の場合には、痛みとともに便秘や下痢などの便通異常も出てきます。

▼2. 胃から他臓器への転移による症状胃がんも、他のがん同様、血流の多い肝臓、肺、脳、骨への転移が見られますが、胃からの血液の流れを考えると肝臓への転移が多いです。肝臓への転移が大きくなったり、その場所が肝臓からの消化液である胆汁の流れを滞留させるような部位であれば、胆汁が血液内に逆流し黄疸(皮膚や白目の部分が黄色くなる)が見られるようになります。

また、がんに共通のことですが、特に要因なく体重が減少したり、帯状疱疹(ヘルペス)を発症する場合には、何らかの悪性疾患の存在も疑われます。万一、このような兆候が出た場合には医療機関を受診するようにしてください。

治癒率をあげるためには、早期発見・早期治療が大切です。早期発見のためには、初期症状に注意するとともに、やはり、年に1回の定期的な健康診断を受けられることをおすすめします。

▼狭間 研至プロフィール大阪大学医学部卒。日本外科学会 認定登録医。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院などで外科・呼吸器外科診療に従事した後、現在は地域医療の現場で医師として診療を行う。ファルメディコ株式会社 代表取締役社長。医療法人嘉健会思温病院理事長。外科医、地域医療、薬局運営の豊富な経験から、医療と患者さんの橋渡しとなる分かりやすい医学情報発信を行っている。

大腸がんを予防! 秋の旬食材“サンマ”の驚くべき健康効果

こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。

昔から旬の食材はおいしいだけでなく、その季節の人間の体調に合った栄養素がたくさん含まれていて、とても体に良いと言われています。ママが買い物に行ったときに、旬の果物は比較的手に取りやすいもの。しかし、魚はどうでしょう?

残念なことに、“魚食クライシス ”という言葉があるほど、日本人の魚離れは進んでいます。「調理が面倒」「ニオイが嫌」「骨があるから食べにくい」その理由はさまざまですが、もし魚を食べる習慣が大腸がんの予防に繋がるとしたらどうでしょう?

今回はイギリスの医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』の消化器病学専門誌『Gut』に発表された研究報告をもとに、魚を食べるメリットをご紹介したいと思います。

●日本人女性の死亡原因トップは大腸がん

報道では女性タレントや有名人の乳がんのニュースが多いため、つい乳がんばかりに意識が向きがちですが、実は女性の死亡原因のトップは大腸がん 。患者数こそ1位の乳がん(73,997人)に次いで2位(57,210人)となっていますが、それだけ死亡率が高いとも言えます。

●大腸がんの死亡リスクが41%も低い!

アメリカ人17万人以上のデータをもとに、大腸がんの発症について研究したところ、鮭やまぐろなどの魚に含まれるオメガ3脂肪酸を1日0.3g以上摂ると、1日の摂取量が0.1g未満の人と比べて死亡リスクが41%も低くなる ことが分かったと言うのです。この研究はアメリカで行われたため、さんまについては明記がありませんでした。

調べてみると、大腸がんの発症を抑えると言われるオメガ3脂肪酸の含有量は、鮭では100gあたり0.92g、まぐろ赤身で0.17g、まぐろ脂身で5.81g、さんまで3.78g。さんまはまぐろの脂身に次いで非常に多い含有量を誇っています。まぐろの大トロはお財布にちょっと厳しいかもしれませんが、旬のさんまはお財布にも優しい上に、栄養価も高いため積極的に摂って欲しいと思います。

もし、小骨が気になるなら圧力鍋で煮魚にすれば骨ごと食べられるので、カルシウムまでしっかり摂ることができます。値段が高いと言っても、1匹200円ほど。コンビニスイーツのことを思えばそんなに高くはないのではないでしょうか。オメガ3脂肪酸には大腸がんの予防だけでなく、女性に嬉しい脂肪燃焼促進効果 もあると言われているので、ぜひ積極的に食べてくださいね。

病気のサイン 「原因不明の肌荒れ」は大腸がんの可能性も

全身に現れる「体調不良のサイン」

全身に現れる「体調不良のサイン」


 ただでさえ億劫な通院、院内感染への不安もあってためらう人が多いという。だが、『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)の著者で循環器内科の名医・秋津壽男氏は、「些細な体調不良が、死に至る病のサインであることは少なくない」と話す。


「異変に気づくには、普段から『自分の正常』がどういう状態かを知っておく必要があります。日ごろから体温や体重、血圧などを測定して、便や尿の状態も確認しておく。そうすれば異変に素早く気づくことができます」(秋津医師)


 コロナ禍で、院内感染を怖れて通院を避ける高齢者が多いという。厚生労働省が発表した「全国の医療機関の患者数の変化」(8月19日)によると、5月の外来患者は前年同月比で2割減少した。


だが、秋津医師はこう警鐘を鳴らす。

「日本人の新型コロナ感染者の死亡率は1%未満ですが、体のサインで見つかる病気には20~30%の確率で死に至る大病もあり、コロナよりはるかに怖い。最初は総合的に診てくれる町のクリニックを受診すれば、専門の病院を紹介してもらえるので、コロナを過剰に怖れるのではなく、体のSOSにきちんと耳を傾けて、早めに受診してほしい」

首から上の「体調不良サイン」

首から上の「体調不良サイン」

上半身に出る体調不良のサイン

上半身に出る体調不良のサイン

下半身に出る体調不良のサイン

下半身に出る体調不良のサイン

大腸がんを確実に予防する 科学的に証明された2つのポイント

日本で大腸がんは増えており、臓器別の患者数では男性で3番目に、女性では2番目に多い(2017年)。死亡数では男性3位、女性では1位(19年)だ。「18年の死亡数予測は男女ともに米国を抜いています。日本人の大腸がん死亡率は世界トップレベルであり、その対策は十分ではありません」――こう指摘する京都府立医科大学生体免疫栄養学講座教授の内藤裕二医師に大腸がん予防と早期発見のために知っておくべきことを聞いた。

大腸がん予防のポイントは2つだ。

「日本人を対象とした8研究に基づいて『大腸がんのリスクを下げることが、ほぼ確実』と評価されているのが運動です」

運動で骨格筋から分泌される生理活性物質マイオカインは、脳神経系や代謝系などにさまざまな影響を及ぼす。

マイオカインのひとつで、運動によって分泌量が増え、加齢や不活動で量が低下するものに「SPARC」と呼ばれるものがある。SPARCは「ACF(Aberrant crypt foci)」(異常陰窩巣)のアポトーシス(細胞の自殺)を誘導し、大腸がんの発現を抑制することが分かっている。ACFとは、肉眼的には正常に見える大腸粘膜だが、大腸がんの前がん病変と考えられているものだ。

13年に内藤医師らによって発表された研究内容では、発がん物質を与えたマウスに、高強度・短時間・間欠的運動を実施したところ、大腸がんの前病変ACFの数が、運動をしていない群の半分以下になった。健康な若年男性を対象とした研究でも、高強度・短時間・間欠的運動を実施したところ、SPARCが増加した。

「これ以外にも、運動習慣が大腸がんに与える影響について研究した論文は複数あります。どのような運動をすべきかは、その人のそれまでの運動経験によって異なるので1種類には決められません。自分の体力に合った継続できる運動を選ぶようにしてください」

もう1つのポイントが食事だ。

国立がん研究センターなどの研究グループによる「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、大腸がんに関して、飲酒が「確実に」、肥満が「ほぼ確実に」、リスクを上昇させるとなっている。赤肉(牛、豚、羊)はリスクを上昇させる可能性ありだ。

一方、食物繊維、カルシウム、魚由来の不飽和脂肪酸はリスクを下げる可能性がある。

「肉の中でも、加工肉は腸の中の硫黄代謝細菌に関係し、硫化水素を増加させ、炎症や遺伝毒性を引き起こして大腸がんのリスクを上げます。最近、注目を集めているのがブロッコリーやキャベツ、カラシナなどアブラナ科の野菜に含まれる成分グルコシノレートで、生物活性を持つイソチオシアネートといった化合物を形成し、その抗炎症作用で大腸がんを抑制します」

ブロッコリーやキャベツは比較的リーズナブルで、一年を通して手軽に手に入る。大腸がん予防に大いに役立てたい。

■早期発見のためには検査が不可欠

大腸がんは、予後が良いがんだ。早期発見、早期治療で95%以上が「完治」する。

「大腸がんは進行するまで自覚症状がないので、早期発見のためには大腸がん検診の受診が不可欠です。便潜血反応では早期がんは発見率が落ちるので、大腸内視鏡検査を強くお勧めします。40歳以上で、異常がこれまで見つかったことがない人であれば、5年に1度が理想的です」

現在は検査技術が向上し、「大腸内視鏡=痛い」ではなくなってきている。

「人工知能(AI)で内視鏡の画像を解析し、検査中にリアルタイムでがんを高精度に判別するソフトも登場。がんの認識率は格段に上がっています」

女性では、大腸がんはがん死亡率1位だが、大腸内視鏡検査を受ける人が増えれば、この数字は簡単に塗り替えられるだろう。早期発見・早期治療の術があるのだから、その恩恵が受けられる機会を逃すのは損だ。

顔面神経麻痺、大腸がん、胃がん、目の異常…不調の要因は夫へのストレス

時間に追われる毎日を送っていたあの頃。無理することが当たり前という生活に、気がつけば体が悲鳴を上げて──(「読者体験手記」より)

◆あてがない以上、自分で稼がなくては

ああ、よく働いた。時々思い出しては自分をほめたり後悔したり。70歳になり、来し方を振り返ると、いつも誰かのために働いてばかりだった。それが知らず知らずストレスと病のもとをためていたのかもしれない。

25歳で結婚し、子どもを3人産み家事育児に専念した20代。夫は薄給の上、夫の親はすでに亡く、私の親も事情があり一切頼ることはできなかった。末っ子の次女が幼稚園に入るのを機に内職を始めた。少しでもスキマ時間を利用してお金を稼ぎたかったのだ。1万円足らずのために納期に間に合わせようと徹夜もした。

その後、子どもの成長に合わせ、配達などの仕事も始めダブルワークに。子らは3人とも別々のスポーツに夢中になり、なにかと物入りで、週末は試合の世話に駆け回る。睡眠時間も短く、いつもコマネズミのように動いていたと思う。

5人きょうだいで唯一の男である夫は、田舎の冠婚葬祭の費用を一手に担っている。嫁の私は顔も知らない親戚の台所の手伝いに駆り出された。体力も気も使い、帰宅しても疲れ果てて寝つけず、睡眠導入剤を飲んだことも。

やり切れぬ思いをぶつける場もなくストレスは蓄積される。だが、無理をすることに体も少しずつ慣れていったのだろう。

◆極度のストレスから顔面神経麻痺に

口下手な夫は、不満があると突然、家具に当たり散らした。原因がわからず家族はおびえ、私は40歳を過ぎた頃、極度のストレスによる自律神経の乱れから顔面神経麻痺になった。

顔半分の麻痺は表情を奪い、日常の家事はできたが食事はこぼし、歯磨きも会話も不自由で情けなかった。仕事も断念するしかなかったが、しかしこんな形で神様が休みをくれたと開き直るのも、我ながら早かった。

一度、子どもの進学で費用がかさむことを夫に相談したら、私の親に借りればと一言。期待はしていなかったが愕然とし、この時、心の中で夫を見限った。もう、自分が何とかするしかない。

顔面神経麻痺は1年かけて快復、その後私は、働き方改革を実行することに。ダブルワークをやめ、それまでの収入より少しでもプラスになる営業職へと転職した。

新しい営業の仕事はやりがいがあり、時間もある程度は融通がきく。自宅に立ち寄り夕食を作れた日は、残業もできた。自分のペースでこなし、何より結果を出せば収入に跳ね返ってくる達成感があった。

やがて子どもたちも進学し、気持ちに余裕ができた。恋の予感にドキドキしたのもこの頃である。しかし悲しいかな、稼がねばの思いは脳に強くインプットされていて、仕事優先の日々は変えられない。貧乏性になっていたのだ。

◆「病気知らずの元気な母さん」のはずが

60代半ばのことだった。健康診断で初期の大腸がんが見つかる。青天の霹靂だった。さいわい内視鏡手術で入院もしないで済み、転移もなかったので家族には告げなかった。

そして2年後、健康診断を担当したかかりつけ医からすぐ来るようにとの連絡が入る。胃の内視鏡の結果が悪かったにちがいない。案の定、ポリープを調べたらがん細胞が見つかり、ただちに大学病院へ行くようにとのことだった。

1ヵ月後に入院・手術となった。内視鏡で大丈夫といわれたが、術後の検査でリンパへの転移が懸念され、退院2週間後に再入院し、開腹手術を受けた。この2度の入院手術は心身へのダメージが強く、手術後も痛みや不具合があり、管につながれたベッドの上で落ち込んだ。

胃の術後ゆえ食事制限もあり、痩せ気味の私の体重はさらに激減し、あっという間に体力はなくなった。酒も飲まず偏食もせず、運動もして健康的な生活をしていたつもりの自分が、ステージIIの胃がんとは。いつ日常を取り戻せるのか、不安で不眠に悩まされた。

成長し、家を出た子どもたちが遠方から駆けつけ、付き添ってくれたのは心強かった。これまで病気知らずの「元気な母さん」だったので、子どもたちもショックを受けたようだ。

発熱や痛みでしばらく体調が悪く、体にメスを入れるしんどさは、これほどつらいものかと思った。克服したというにはほど遠く、定期的に検査を受け、結果を聞きに行くたびにドキドキである。少しの体の不調にも再発の2文字が浮かんでしまう。

◆またもや試練が訪れる

やっと日常を取り戻した1年後、またもや試練が訪れた。今度は眼科。定期検診で眼球の異常を告げられたのである。硝子体(しょうしたい)に穴が開き手術が必要とのこと。コロナでピリピリしている猛暑のなかでの入院だった。

部分麻酔での手術は怖く、術後は10日間の安静。痛みこそないが、うつぶせ寝の闇の中で過ごすのは不安だった。さらに視力が完全に回復するまでひと月近くかかったのである。

大腸がんから5年経過して安心したのもつかの間、2度の胃がん手術、そして1年後の目の手術と、病気のオンパレードのこの数年。病は音もたてず静かに忍び寄ってくることを実感した。

人生100年とは言うが、70歳まで生きて、この先は誰かの世話になる日もくるのだろうか。人に迷惑をかけずにこの世を去りたいが、寿命ばかりは決められない。何かと生きにくいこの頃だが、命あることに感謝して、ただ日常を生きていくしかないのである。

※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

AI活用し大腸がんの見逃しを防止 診断システムが医療機器承認、がんセンターとNECが開発

診断システム「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」の概略図(国立がん研究センター提供)

病気のサイン 「原因不明の肌荒れ」は大腸がんの可能性も

全身に現れる「体調不良のサイン」

全身に現れる「体調不良のサイン」

写真4枚

 ただでさえ億劫な通院、院内感染への不安もあってためらう人が多いという。だが、『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)の著者で循環器内科の名医・秋津壽男氏は、「些細な体調不良が、死に至る病のサインであることは少なくない」と話す。


「異変に気づくには、普段から『自分の正常』がどういう状態かを知っておく必要があります。日ごろから体温や体重、血圧などを測定して、便や尿の状態も確認しておく。そうすれば異変に素早く気づくことができます」(秋津医師)


 コロナ禍で、院内感染を怖れて通院を避ける高齢者が多いという。厚生労働省が発表した「全国の医療機関の患者数の変化」(8月19日)によると、5月の外来患者は前年同月比で2割減少した。

 だが、秋津医師はこう警鐘を鳴らす。


「日本人の新型コロナ感染者の死亡率は1%未満ですが、体のサインで見つかる病気には20~30%の確率で死に至る大病もあり、コロナよりはるかに怖い。


 最初は総合的に診てくれる町のクリニックを受診すれば、専門の病院を紹介してもらえるので、コロナを過剰に怖れるのではなく、体のSOSにきちんと耳を傾けて、早めに受診してほしい」

病気のサイン 「原因不明の肌荒れ」は大腸がんの可能性も

全身に現れる「体調不良のサイン」

全身に現れる「体調不良のサイン」

写真4枚

 ただでさえ億劫な通院、院内感染への不安もあってためらう人が多いという。だが、『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)の著者で循環器内科の名医・秋津壽男氏は、「些細な体調不良が、死に至る病のサインであることは少なくない」と話す。


「異変に気づくには、普段から『自分の正常』がどういう状態かを知っておく必要があります。日ごろから体温や体重、血圧などを測定して、便や尿の状態も確認しておく。そうすれば異変に素早く気づくことができます」(秋津医師)


 コロナ禍で、院内感染を怖れて通院を避ける高齢者が多いという。厚生労働省が発表した「全国の医療機関の患者数の変化」(8月19日)によると、5月の外来患者は前年同月比で2割減少した。

 だが、秋津医師はこう警鐘を鳴らす。


「日本人の新型コロナ感染者の死亡率は1%未満ですが、体のサインで見つかる病気には20~30%の確率で死に至る大病もあり、コロナよりはるかに怖い。


 最初は総合的に診てくれる町のクリニックを受診すれば、専門の病院を紹介してもらえるので、コロナを過剰に怖れるのではなく、体のSOSにきちんと耳を傾けて、早めに受診してほしい」

「塩辛い食べ物」が大好きな人は胃がんになりやすい

塩辛い食べ物が好きな人は注意が必要                                                 

 塩辛い食べ物、つまり塩分が多く含まれている食品の摂取が多いほど「胃がんになりやすい」という研究はこれまでに複数報告されています。ただ、実際の塩分摂取量ではなく、塩辛い食べ物に対する「好みの強さ」と胃がん発症リスクの関連についてはあまり検討されていませんでした。日本疫学会誌2016年2月号に、「塩辛い食べ物に対する好みが胃がん発症と関連するのか」を検討した前向き観察研究が掲載されています。

 この研究では、がんや心臓病のない40~79歳の日本人4万729人を対象に、アンケート調査を行っています。塩辛い食べ物の好みに関して「全く好まない」「どちらかといえば好まない」「どちらとも言えない」「どちらかといえば好む」「強く好む」の5つのグループに分け、14・3年間(中央値)追跡調査しています。

「アルコールの摂取」「喫煙状況」「胃がんの家族歴」「野菜や果物の摂取頻度」「塩分の摂取量」など結果に影響を与えうる因子で調整し、胃がんの発症リスクを検討しました。

 その結果、胃がんの発症は「どちらとも言えない」と答えた人たちに比べて、「強く好む」と答えた人たちで31%、統計的にも有意に増加しました。しかし、「どちらかといえば好む」「どちらかといえば好まない」「全く好まない」と答えた人たちでは、「どちらとも言えない」と答えた人たちとほぼ同等で、統計的に有意な差もありませんでした。

 この研究から「塩辛い食べ物への好みが胃がんのリスクと関連する」とまでは言い切れない部分もありますが、「塩辛い食べ物が大好物である」というのは、胃がんの危険因子のひとつと考えてもいいかもしれません。



ピロリ菌除菌の5年後に「胃がんで死亡」の患者に学ぶこと

胃がんに対しては予防・早期発見・再発防止の三段構えで対策する必要があります。今回は、胃がん対策として有効な「ピロリ菌の除菌」と「定期的な内視鏡検査」について紹介します。本記事では、藤田胃腸科病院理事長・院長の本郷仁志氏が、胃腸の健康に関する正しい知識や、氏が普段の診療の中でアドバイスしている健康維持の秘訣等を紹介します。
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ピロリ菌感染者が全て胃がんになるわけではないが…

【心得その1】

ピロリ菌感染、恐れるに足らず

いざ検査をしてピロリ菌に感染していることが分かってもショックを受ける必要はありません。ピロリ菌感染者が全て胃がんになるわけではないことはすでにお話したとおり。胃に症状がある方は、除菌することで症状が改善することもありますし、若い人ほど、除菌することで将来胃がんになる危険性を減らすことができます。しかし、将来がんができる可能性があるといっても今日、明日という話ではありません。その際に除菌するかどうかは、医師にアドバイスを求めるといいでしょう。

除菌療法では、胃酸の分泌を抑える薬を1種類、抗菌薬を2種類、合計3つの薬を1日2回、7日間にわたって服用します。要は薬を毎日飲むだけ。とても簡単な治療です。手術を受ける必要がなければ、通院の必要もありませんから、負担はとても少ないといえます。ただし、注意点はいくつかあります。まず、服用はよほどのことがない限り中止しないこと。自分の判断で服用をやめてしまうと、ピロリ菌が耐性を持つ(薬に対して抵抗力を付ける)ことがあります。これでは元も子もありません。

自分の判断で服用を中止するケースとしては、副作用に驚くことが多いようです。便が軟らかくなったり、下痢気味になったり、味覚異常になったり。こうした症状にビックリするわけです。また、服用をやめないまでも薬の量や飲む回数を減らす人もいます。しかし、ここは初志貫徹でお願いしたいところです。当院では、現在までに1万人以上の方に除菌治療を行っていますが、後遺症を残すような副作用が出た人は一人もいません。

ただ、症状がひどくなったときは医師に相談してください。発熱・腹痛を伴う下痢になったとき、下痢に血液が混じっているとき、そして発疹があったときなどは、薬を中止することがあります。

「本当にピロリ菌が除菌できたのか」を確認する

【心得その2】

ピロリ菌除菌と検査で胃がんを99%防ぐ

ピロリ菌除菌と検査で胃がんを99%防ぐ

ピロリ菌の除菌療法を全て終えたからといって安心はできません。今度は「本当にピロリ菌が除菌できたのか」をしっかり確認してもらう必要があります。ここは何度でも強調しておきたいポイントです。なぜこの部分を強調するのかといえば「薬を全部飲んだからもう大丈夫」と早飲み込みする患者さんが多いからです。「除菌=安心」と思いたい気持ちは分かりますが、最後の詰めを甘くすれば、それでつらい目に遭うのは本人(とそのご家族)です。

除菌療法をしてもピロリ菌を全滅できないことに驚くかもしれませんが、何事も100%は難しいものです。一次除菌療法の成功率は75~90%。かなり高い成功率ですが、それでも除菌しきれないケースがあることは知っておくべきでしょう。 実際に、ピロリ菌の除菌療法を受けたにもかかわらず、最終的な検査をしなかったがために、5年後に胃がんで亡くなった患者さんもいます。もし最終的な検査を受けていたら、ピロリ菌が完全に除菌できていなかったことが分かり、次の手を打てたはずです。

除菌が残念ながら失敗に終わったときには、二次除菌療法が用意されています。一次除菌療法と同様の薬を飲むだけですが、2種類使っていた抗菌薬のうち一つを別のものに変更します。毎日3つの薬(胃酸の分泌を抑える薬1種類・抗菌薬2種類)を2回、7日間にわたって飲み続け、その後4週間以上経ってから再び検査を行います。

二次除菌療法を行えば、一次と併せ99%の人が除菌に成功するといわれていますから、ここまでくれば、第一段階終了。先ほどの「がんの発生そのものを防ぐこと」の一部はクリアできるわけです。しかし、残念ながら、除菌に成功した方にもがんができる可能性は十分残されています。この時期のがん細胞は顕微鏡でしか見えず、胃カメラで見ても分かりません。除菌により慢性胃炎の活動性を抑えることはできたとしても、細胞レベルで発生しているがんを殺すことはできないのです。

そこで「胃がんは早く見つければ助かる病気」と私が強調していたことを思い出してください。胃がんは早期のうちに適切な処置を行えば、5年生存率は94.9%でした。となれば、早期のうちに見つければいいだけのこと。すなわち「検診」(定期検査)です。当病院で発見された胃がん患者を対象としたデータがあります。発見時からさかのぼって、いつ内視鏡検査を受けたかを調べたものです。それによると、胃がん発見の1年および2年以内に胃カメラ検査を受けた記録のある方では100%近く「早期がん」の状態で見つかっています。3~4年で85%が「早期がん」でした。

ところが、これが5年以上検査をしていなかった場合となると、半数近くの方が「進行がん」の状態で見つかっています。つまり、1年または2年ごとに内視鏡検査を受けておけば早期の段階でがんを発見できるということです。参考までに最近5年間の当院の数字を挙げると、内視鏡検査から1年以内に胃がんが見つかった30例のうち外科手術に至ったケースはわずか2例。内視鏡切除率は約97%となっています。

また、内視鏡検査から2年以内に見つかった87例に関しては外科手術に至ったケースが22例。内視鏡切除率は約75%です。早期がんが見つかったとき、体への負担が少ない内視鏡で切除したいのであれば「1年に1回の胃カメラ」がベストということです。早期胃がんは恐れるような存在ではありませんので、適切な処置をすれば、命を落とす可能性はほぼゼロといえます。ピロリ菌の除菌と定期的な内視鏡検査。このコンビネーションはまさに「鬼に金棒」なのです。

ですから、特にピロリ菌感染の疑いのある中高年の方には、早急に検査を受けていただきたいのですが、一方で私が推奨するピロリ菌検査の「適齢期」は20歳まで。全体に徹底しやすいのは中学生のころです。免疫力も大人と同じくらい発達していますし、検査や治療も正しく行える年齢です。10代のピロリ菌保持者は5%(以下)程度ですから、このタイミングで除菌できれば、この世代の胃がん検診は必要でなくなり、胃がんを撲滅できる日も遠くはないと考えています。

「胃がん対策先進都市」として行政ぐるみで取り組む

<高槻市は「胃がん対策先進都市」>

当院のある大阪府高槻市では市民に提供する胃がん対策として、中学2年生を対象としたピロリ菌検査と成人を対象としたピロリ菌検査、さらに内視鏡検診の3つを用意しています。これは全国の自治体でも高槻市だけで、胃がん対策では先進的な取り組みを行っていると言えます。しかし、実はそれも最近のこと。かつての高槻市は「後進国」だったのです。2005年の数字ですが、胃がん検診の受診率は全国平均で12.4%。大阪府全体では6.8%でした。高槻市単体で見ると、わずか3.4%。大阪府の43市町村のうちで39位という状況でした。

この状況を何とかしようと市内の医療関係者が連携を取り、2007年から個別検診の導入やがん検診精度管理委員会の発足および行政への働きかけ等をスタート。これには濱田市長をはじめ行政の協力が必要でしたが、私もその働きかけに中心的に関わりました。その後、行政や大阪医科大学の理解・協力のもと、今の充実した胃がん対策の確立に至りました。私自身もそのメンバーの一人として微力を尽くしたつもりです。

胃がんによる死亡者数は2010年以降、全国的に減ってはいるものの、40代以下の若年層に限っては横ばい状態が続いています。若年層に対しては早い時期のピロリ除菌が効果的ですが、2018年時点では、中高生を対象としたピロリ除菌を実施している市町村は35にしか過ぎません。この数をさらに増やしていくことが重要です。 高槻市の取り組みが着実な実績を積み上げることで、同じような取り組みが全国に広がっていくと確信しています。

胃がんになりやすい食事 イクラや漬け物が指摘される調査

「がん予防」を謳った食材や料理の話は、テレビや雑誌で目にしない日がないほど。しかしその一方で、あまり語られることはないが「がんになりやすい食事」も存在するという。実は今、がん発症と食事の関係について研究が進んでいる。

◆イクラと胃がん

 国立がん研究センターは2004年、岩手、秋田、長野、沖縄の各地域に住む約4万人の男女を10年にわたって追跡調査し、塩分濃度が高い食品の摂取頻度と胃がん発生率の関係を発表した。

 その結果、どの食品でも摂取頻度が高くなるほど胃がんリスクが増した。特に顕著だったのが「イクラ」で、「ほとんど食べない」人と比べて「ほぼ毎日食べる人」の胃がん発症リスクは男性で2.44倍、女性で3.50倍だった。

「高濃度の塩分は胃粘膜を保護する粘液を破壊し、胃酸による胃粘膜の炎症や、胃がんの原因となるヘリコバクターピロリ菌の感染を引き起こすためと考えられます。食品によって差が出た理由は明らかになっていません」(医師で医療ジャーナリストの富家孝氏)

◆漬け物と胃がん

 日本の伝統食である漬け物も、胃がんリスクが指摘される。漬け物の塩分濃度は一般的にイクラより低いが、国際がん研究機関の調査では、日本、中国、韓国の漬け物からニトロソアミンという物質が検出された。

 元ハーバード大学研究員で、ボストン在住の内科医・大西睦子氏が解説する。

「製造上使用されることがある『亜硝酸ナトリウム』が、漬けられる過程で『ニトロソアミン』に変化することで発がん性を生じると考えられています。

 ただし、野菜や酵母、調味料の種類によって発がん物質が生じる量は変化します。塩漬けは微生物の繁殖を抑えて保存性を高める一方、塩分過多のリスクもあります」

大腸はベーコン3枚で2割増 がんリスクは生活習慣で上がる

あの笑顔に勇気づけられる方もいるでしょう。タレントの堀ちえみさん(52)のことです。

 今年2月に舌がんで手術を受けたのに続き、先月には食道がんが判明。取り除いた細胞を病理検査したところ、GW中の2日には「結果はステージ0。追加の治療も外科手術も必要ない」とブログにつづっています。

 その後は、親子丼を作って家族で食べたり、リハビリを受けてから風呂釜の掃除をしたり。病気にめげることなく、前向きに生活されている様子が見て取れます。その調子でぜひがんを克服してほしい。心底、そう思います。

 さて、今回はがんと生活習慣の関係について。食道がんは、飲酒と喫煙に加えて、熱い飲食物がよくありません。イランで5万人を追跡したところ、1日に60度以上の「とても熱い茶」を飲む人は、「冷たい・ぬるい茶」を飲む人に比べて食道がんを発症するリスクが2・4倍高いことが明らかに。

 国立がん研究センターの調査でも、熱い飲食物が食道がんリスクを上げることは「ほぼ確実」。国際がん研究機関は3年前、熱い飲食物を発がん物質に分類しています。大腸がんについては、加工肉です。

 英オックスフォード大などのグループが英国人50万人を6年ほど追跡。毎日ベーコンを3切れ食べる人は、1切れの人より大腸がんリスクが20%増加すると報告。国際的に加工肉が大腸がんリスクになることは注目されていますが、日本はそれほどでもないでしょう。

 英国の保健制度によると、ベーコン1枚は加工肉23グラム相当。76グラムの加工肉は赤身のステーキ230グラムに相当するといいます。果たして、日本にステーキを上回るほどの量のベーコンを毎日食べる人がいるでしょうか。

 それより注目は、肥満と運動不足。これが大腸がんのリスクを上げることが分かっています。大腸がんはメタボの延長線上にあり、減量と運動がリスクを下げます。

 その点でいうと、糖質や甘いものを好んで糖尿病になると、膵臓がんと肝臓がんのリスクが、糖尿病でない人に比べて2倍に。糖尿病の人は、全体のがんを2割増やします。ですから、糖質制限は、がん予防にも重要です。

 先ほど熱いものがよくないといいましたが、コーヒーはほぼ確実に肝臓がんを防ぎ、緑茶は胃がん予防になる可能性があります。イランの研究では、6分待ってから飲むと、リスク低下になりますから、冷まして飲むといいでしょう。

 最後はセックスです。セックスでHPVというウイルスが女性の膣に感染すると子宮頚がんに、咽頭に感染すると咽頭がんになります。特に、咽頭の中央部の中咽頭がんは、半分がHPVが原因とされますから、男性も要注意です。

中川恵一:東大医学部附属病院放射線科准教授
1960年生まれ。東大医学部医学科卒業。同院緩和ケア診療部長を兼務。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

大腸切除でお腹を壊しやすくなり体重も増えやすくなった【「がん家系」に生まれて】朝香さん(モデル・美肌温泉家)

リンチ症候群は、比較的若い年代で大腸がんが発症することが多く、それ以外のがんのリスクも高くなることが報告されています。子宮内膜がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がんなどですが、日本人の研究が進んでいないので、基本的には欧米人の調査結果です。

 母は子宮体がんを最初に発症し、大腸がん、胃がん、膵臓がんも見つかった。私は、リスクが高いとされるがんについては、半年に1回、検査を受けています。毎年1月は“検査祭り”なので、結構忙しいですね。また、今後の研究のために、治験への細胞提供をしています。

 大腸がんの手術による影響はいくつかあります。まず、切除した部分が長かったせいか、お腹を壊しやすくなりました。「よく噛みましょう」と言われますが、私の場合、本当によく噛まないとお腹を壊してしまいます。美肌温泉家の取材で各地の温泉に出向いている私には、これが結構厄介なんです。特にプレスツアーなどの場合は、時間がありませんから、早く食事をしなくてはならない。よく噛むことがなかなか難しくなるんです。

 早くに大腸がんが見つかっていたら、そもそも大腸を切らなくてもよかったわけで、そうすると、お腹を壊しやすくならなかったのになと、時々思います。

 次に、体調を崩しやすくなりました。これは、手術の影響かどうかは正確には分からないんですが、時に起き上がれなくなることも。生理前後は特に頻度が高い。ただ、仕事は休めませんから、体調を崩しても死ぬ思いで頑張っています。なお、食事制限は今は別にありません。

 さらに、太りやすくなりました。手術の前から「大腸を切ると太りやすくなりますよ」とは言われていたんです。私、それまでいくら食べても太らない体質だったんですが、主治医に言われた通りになりましたね。同じ食生活、同じ運動量のままだと太るとのことでしたが、今以上運動する時間を増やすのは難しい。体調や年齢の問題から、ランウエーショーに出るモデルは難しいかなとも感じていたので、体をがっつり使うモデルではなく、企業広告のモデルに仕事をシフトしていこうとしていました。

 太ったといっても、3キロ程度。ファッション系は無理かもしれないけど、企業広告やCMならまだまだいける、という見通しがあったんです。実際その通りだったのですが、がんの手術後に交通事故に遭ってしまうのです。それが影響して運動をできなくなり、ヒールも履けなくなり、体重が15キロ増えてしまった。さすがにこれでは企業広告のモデルもできないとなり、以前から書いていた温泉コラムの仕事により力を入れるようになったのです。

▽1974年8月生まれ。44歳。北海道出身。モデルとしてCMなどに多数出演。現在は温泉観光実践士協会理事、温泉ソムリエアンバサダーも務める。

胃酸を抑えるPPIで胃がんリスクが増してしまう落とし穴

 どんな薬にも、必ず効能などの「メリット」と、副作用などの「デメリット」がある。その両方を天秤に掛け、患者にとってメリットのほうが大きいと判断されたときに薬が処方される。だが、その判断が必ず信頼できるとは限らない。

 そこで、病気の専門家である医師に「もし患者になったら、どの薬を飲まないか」とぶつけた──。マールクリニック横須賀院長の水野靖大医師(消化器内科)がいう。

「もし私が胃痛で医療機関を受診したとしたら、いきなりプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されても飲みたくないですね」

 処方薬であるPPIは、胃酸を抑える効能がある。胃酸が逆流することで食道に炎症を引き起こす「逆流性食道炎」に処方されるケースが多い。逆流性食道炎は、炎症による胃の痛みや胸やけだけでなく、喉の痛みや長引く咳を引き起こすこともある。

 胃酸を抑えることはその治療につながるはずだが、水野医師はなぜ“いきなり処方されても飲みたくない”というのか。

「もし胃の中にピロリ菌が存在した場合、胃酸が減少した環境下では菌が活動しやすくなり、増殖を促してしまう。すると、萎縮性胃炎が進行し、胃がんのリスクが増えてしまうのです」

専門医であれば処方前にピロリ菌検査をする。だが、専門外の医師の場合はそれを省くことがあるという。

「市販薬にPPIは存在しないので、知らずにドラッグストアで買ってしまう心配はありません。医師から長期処方を受ける場合には、ピロリ菌検査を求めるか、H2ブロッカーなど別の薬にできないか相談してみるのがよいでしょう」(水野医師)

■ 大腸がん 「切る」以外の選択肢

大腸がん治療 ひと昔前は「腹を切る」選択しかなかったが…

 日本人の死因第1位であるがん。これまで長く、「見つけたら切る」が治療の常識だった。外科手術でがんをすべて切除すれば再発の可能性が減るという前提に立ち、「早期発見、早期切除」が大目標とされてきた。

 だが近年、その常識が変わってきている。歳を重ねるほどに「手術を受けない」という選択も有力になってくるのだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。

「加齢とともに、手術自体に体が耐えられないリスク、さらには手術の合併症で後遺症が残ったり命にかかわるリスクは高くなります。がんを治すための『切る』という行為が、かえって余命を縮めることもあるのです」(室井氏)

 例えば、男女合わせた新規患者数が最も多く、男性の罹患者数では2番目となる大腸がん。ひと昔前は“腹を切る”という選択しかなかったが、より患者の負担が少ない治療が一般的になってきた。

 東京都立駒込病院大腸外科部長の高橋慶一医師(56)はこう話す。

「現在、大腸がんの患者が『開腹手術』をするのは、腫瘍が10cmを超えるなどごく一部のケースに限られます。昨年の当病院は9割が『腹腔鏡手術』と、専用のカメラとロボットアームを使う『ロボット支援手術』でした。ステージ0の超早期の患者は、お尻から入れた内視鏡で除去することもあります」

歳を重ねていれば、治療を取りやめるという判断も有力になってくる。

 2017年に国立がん研究センターが全国のがん拠点病院の症例を集計したデータでは、大腸がんのステージIVで「治療なし」の割合は65~74歳では6.7%だが、75歳以上では14.7%と倍増し、85歳以上では36.1%と3人に1人に達する。

「肛門に近い部分の大腸がんを切除すると排尿障害や性機能障害などの後遺症や、人工肛門になるケースがあります。

 ロボット支援手術や腹腔鏡手術だと神経や肛門を温存しやすく、これらのリスクを減らすことができる。その場合でも、抗がん剤治療や放射線治療は可能です」(高橋医師)

大腸がんの兆候 便の異変と「便秘と下痢の繰り返し」

 3464万円。これは東京都杉並区が「がん検診精度管理強化費」として計上した来年度予算だ。それもそのはず、杉並区のがん検診は“ザル”だった。肺がん検診で「見落とし」ミスが相次ぎ、昨年、40代女性が亡くなった。

 同様の見落としは全国で起きている。2017年11月には兵庫県の県立柏原病院においてわきの下にできたがん腫瘍が、2016年3月には福岡県の北九州市立医療センターにおいて肺がんがそれぞれ見落とされていたことが明らかになった。きちんと検診を受けて「異常なし」のお墨付きをもらっても、「絶対に大丈夫」とは言い切れない。

 がん患者の数は増加傾向にあり、年間37万人が命を落とす。だからこそ、漫然と検診を受けるだけでなく、できるだけ自分で不調に気がつき、早期に見つける必要がある。医療ジャーナリストの村上和巳さんが言う。

「そのためには、体が発する“小さなサイン”を敏感に感じ取り、自分自身で防衛しなければなりません。些細な症状や異変が、がんの兆候であるケースは、決して珍しくありません」

 たしかにがんは恐いが、一朝一夕で大きくなることはなく、すぐに死に至るわけではない。時間をかけて進行するからこそ、いかに初期に気がつき、“芽”を摘むかが重要なのだ。専門家の知識と経験をもとに、「がんのはじまり」を見つけにいこう。

◆【大腸がん】繰り返される便秘と下痢

 大腸がんは、がんにおける女性の死因第1位。だが、決して治りにくい病気ではない。東京ミッドタウンクリニックの森山紀之医師が説明する。

「基本的に大腸がんの進行は遅く、ある程度大きくなってから見つかったとしても、治る可能性が高い。同じステージで3cmのがんだったとして、すい臓がんなら予後が難しいけれど、大腸がんは充分治療できます。死亡率が高いのは、検診を受けないばかりか、異変があっても気がつかず放置してしまい、進行した状態で見つかる人が多いからです。

 気がつかない、いちばんの理由は痛みがないこと。大腸の粘膜は痛みを感じる神経がないため、初期の段階ではがんによる腹痛を感じることがないのです」

 そんな大腸がんでわかりやすい兆候は、「便秘と下痢の繰り返し」。森山さんが続ける。

「大腸にがんができると、腫瘍が盛り上がって硬くなり、腸自体が細くなります。すると細くなった腸の上に便がたまり、通過しづらくなるため、便秘になる。

 その状態がある程度続くと、今度はたまった便を排出するために腸が水分を取り込んで便を溶かし、下痢になる。

 便秘と下痢のサイクルは3日に1回、1週間に1回など個人差があるが、繰り返されるようならば、大腸がんを疑った方がいいでしょう」

 もっと早期の段階では、腹痛を覚えることもあるという。

ピロリ菌を除去しても胃がんに絶対ならないとは限らない

毎年多くの人が、癌(がん)で亡くなられ、闘病をされています。成人の約3分の1が癌になるのですから、結構な確率です。ここ最近増えているのが肺癌です。喫煙が重要因子ではありますが、それ以外にも大気汚染など様々な外的因子が関係しているようです。その中で、以前は胃癌大国であった日本で、胃癌の死亡率が減少しています。以前にも紹介した胃カメラ(上部消化管内視鏡)による健診が増えたのが理由の一つです。もう一つの大きな要因は、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)の除去が広く行われるようになったからです。

 かつてピロリ菌の除菌は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のある人にしか保険適応とされていませんでしたが、現在は慢性胃炎などの人にも保険治療が適応されます。様々なデータがありますが、除菌前と除菌後では、胃癌になる確率が3分の1程度まで下がるといわれています。ですから、ピロリ菌に感染している人は、必ず除菌をしてほしいのです。現在は、生涯で2回のみ保険適応となっています。

 気をつけてほしいのは、胃癌になる可能性が“3分の1”になっただけで、除菌=可能性ゼロになるわけではないということ。ここを勘違いしている人がたくさんいます。例えば、幼少期に感染したピロリ菌は、数十年かけて胃粘膜を委縮させ、さらには前癌状態とも言われている腸上皮化生という状態にまで正常胃粘膜を悪化させている可能性が高いのです。除菌しても、それまでに悪化した状態が劇的に改善するわけではないので、癌になる因子は残っているということです。また、ピロリ菌に再感染してしまうケースもあります。

 ピロリ菌に感染している人は、胃カメラを受ける年齢が遅ければ遅いほど、既に悪くなっているリスクは高まります。ですから、若い人ほど胃カメラを受け、感染を認めれば、直ちに除菌をしてほしいのです。それにより、胃癌発症のリスクはかなり軽減します。もちろん、その場合でも胃癌になるリスクが“3分の1”以下になっただけという認識は持つべきです。除菌後でも年に一度は胃カメラを受けて、癌の早期発見を心がけてほしいです。早期胃癌であれば、かなりの確率で内視鏡治療を施すことで完全に治癒することが可能です。今は癌と言っても死刑宣告ではないのですから。

 また、胃癌の中にも、上記とは違った形で出現する怖い癌があります。ピロリ菌の感染などと関係なく、出現してくる癌です。このタイプの癌も早期に見つけることは難しいのですが、胃カメラを受けて早期発見できれば、治癒する確率は高まります。胃癌になる因子としてピロリ菌の感染以外に、塩分の過剰摂取、喫煙なども挙げられています。遺伝的な要因はないとされていますが、親族内で胃癌が多発しているケースも時々みます。これはピロリ菌の感染であったり、生活習慣が引き起こしたのかもしれません。

 癌の予防は難しいのですが、防ぎようがないと諦めるのではなく、積極的な治療でリスクの軽減を図れるということを知っていただきたいのです。多くの患者さんが癌と戦いながら、日常生活を送っています。回復に向かうことを心から祈っております。健診は意味がない、癌と戦うなという医師もいますが、私の経験から納得できる一般的な意見を述べさせてもらいました。

 ◆筆者プロフィール

 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。1969年、大阪府生まれ。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

胃がんになりやすい食事 イクラや漬け物が指摘される調査

「がん予防」を謳った食材や料理の話は、テレビや雑誌で目にしない日がないほど。しかしその一方で、あまり語られることはないが「がんになりやすい食事」も存在するという。実は今、がん発症と食事の関係について研究が進んでいる。

◆イクラと胃がん

 国立がん研究センターは2004年、岩手、秋田、長野、沖縄の各地域に住む約4万人の男女を10年にわたって追跡調査し、塩分濃度が高い食品の摂取頻度と胃がん発生率の関係を発表した。

 その結果、どの食品でも摂取頻度が高くなるほど胃がんリスクが増した。特に顕著だったのが「イクラ」で、「ほとんど食べない」人と比べて「ほぼ毎日食べる人」の胃がん発症リスクは男性で2.44倍、女性で3.50倍だった。

「高濃度の塩分は胃粘膜を保護する粘液を破壊し、胃酸による胃粘膜の炎症や、胃がんの原因となるヘリコバクターピロリ菌の感染を引き起こすためと考えられます。食品によって差が出た理由は明らかになっていません」(医師で医療ジャーナリストの富家孝氏)

◆漬け物と胃がん

 日本の伝統食である漬け物も、胃がんリスクが指摘される。漬け物の塩分濃度は一般的にイクラより低いが、国際がん研究機関の調査では、日本、中国、韓国の漬け物からニトロソアミンという物質が検出された。

 元ハーバード大学研究員で、ボストン在住の内科医・大西睦子氏が解説する。

「製造上使用されることがある『亜硝酸ナトリウム』が、漬けられる過程で『ニトロソアミン』に変化することで発がん性を生じると考えられています。

 ただし、野菜や酵母、調味料の種類によって発がん物質が生じる量は変化します。塩漬けは微生物の繁殖を抑えて保存性を高める一方、塩分過多のリスクもあります」

週7日なら要介護リスクが3割減 認知症を防ぐ入浴法とは

「毎日入浴すれば介護を受けず健康に暮らせる」――。こんな調査結果が高齢者を安心させている。

 千葉大学などの研究チームが2010年8月から12年1月まで65歳以上の男女計約1万4000人を追跡調査。夏に週7回以上入浴していた人は週に0~2回の人より要介護認定のリスクが約28%減り、冬の入浴では約29%減という結果が出た。研究の中心メンバーを務めた千葉大学医学部付属病院の八木明男医師に聞いた。

「なぜこうした結果が出たのかはこれから研究します。毎日の入浴で介護のリスクが約3割減るというのは大きな数字。入浴が認知症予防につながる可能性もありそうです」

 ある研究メンバーは、長時間労働が多く喫煙率の高い日本人が長寿なのは国際的な謎とされているが、入浴がひとつの要素なのではないかと指摘している。

 医学博士の米山公啓氏は「原因として考えられるのはリラクセーション効果」と言う。

「その昔、ベトナム帰還兵の中には戦場で極度の恐怖を感じたため記憶の中枢である脳の海馬が壊れ、記憶を失う人がいました。ストレスで副腎皮質ホルモンが出過ぎて脳の細胞が壊されるからです。要するにストレスは認知症発症の危険要因のひとつということ。毎日風呂に入り、副交感神経を活発化してリラックスすれば記憶力を維持でき、認知症を防げるわけです」

 毎日入浴する人はきちょうめんな性格で、健康管理に余念がない。そのことも要介護者の割合を押し下げているという。

 では65歳以上の人はどのような入浴をすればいいのか。

「お湯につかるのは副交感神経が活発化しやすい夜の時間帯で、就寝まで1時間は空けたほうがいい。41度のお湯に10分ほど入ってください。ポイントは心配事みたいな余計なことは考えず、ボーッと過ごすこと。一種の瞑想状態を目指すのです。好きな音楽を聴いたり、アロマの香りをかぐとさらにリラックス効果が出ます。シャワーだと、ずっと立った状態なのでリラックスできません」(米山公啓氏)

 ボケ防止のために、秋の夜長を“入浴メディテーション”で過ごしますか。

大腸がんのゴッドハンド医師 「早期発見なら100%治せる」

《病気は罹ってから治す》──これまでの医療は、患者に明らかな症状が現われるまでは「経過観察」し、体に不調が現われてから治療を行なうことが多かった。医師も患者も「薬を飲んだり手術を受けたりすれば、病気が治る」と考えていたからだ。

 だが、症状を薬で抑えようとすれば、進行しているほど服用する量は増え、手術による体の負担も増えてしまう──これが世界的に問題視されている。新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師がこう話す。

「米国の研究では、『薬の副作用』で毎年10万6000人が命を落としていると推計されています。また、『本当はやらなくてもよかった手術』のせいで年1万2000人が亡くなるとの報告もある。病気を治すための手術や薬が、患者の命を脅かす“リスク”になってしまっているのです」

 そこで始まったのが、「超・早期発見主義」への一大転換だ。病気は罹ってからの時間が長いほど“治療のリスク”が増す。ならば、超早期に発見して可能な限り治療開始を早めることで、リスクを減らそうという考え方である。

 それを支えるのが最新の検査法と、病気を「見つける名医」の“神業”だ。詳細は後述するが、「大腸がん」は「ステージI(大腸の組織にがんが到達している状態)」よりもさらに早期であり従来の検査では捉えることが難しかった「ステージ0(がんが表面の粘膜にとどまっており、組織まで到達していない状態)」で発見できるようになったことで、ほぼ100%治るようになった。

 がんに限った話ではない。最新検査によって、通常の検査よりも数か月から数年早く発見できたり、発見精度がこれまでより飛躍的に向上している。患者は、手術を受けたり薬を飲み続けたりすることによる肉体的・精神的な負担や、高額な医療費への不安から解放される。

「ピロリ菌」除去が最良法 胃がんで死なないために

 現在、日本においてがんで死亡する人は年間約37万人で、男性の4人に1人、女性は6人に1人ががんで死亡します(2017年)。臓器別では男女合計で肺、大腸、胃の順に死亡数が多く、また新たにがんと診断された罹患(りかん)数(2014年)では、大腸、胃、肺の順になっています。胃がんで死亡する方は次第に減っていますが、かかる人は2番目に多いという状況です。

 胃は食道と小腸の間に位置する袋状の臓器です。主な役割は食物を一時的に貯蔵し、その食物を消化することです。胃の粘膜から出る胃液と混ぜて粥(かゆ)状にして、吸収を行う小腸に押し出していく働きをします。

 胃がんはその粘膜の細胞ががん細胞になって、増殖することで起こります。がんの原因については、いくつかのリスク要因が指摘されています。中でも、喫煙や食生活などの生活習慣、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染などが疑われています。ヘリコバクターピロリ菌に感染した人のすべてが胃がんになるわけではありませんが、現在、除菌治療を受ければ胃がんにかかるリスクが低下するという研究結果が集積されつつあります。

胃がんの症状は、早い段階ではほとんどありません。がんが進行するにつれて、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などが出てきますが、これらは胃炎や胃潰瘍の場合でも起こります。

 胃がんの検査については、基本的に胃エックス線検査(バリウム検査)、内視鏡検査などで発見し、最終的には胃カメラでの生検(組織を採取する検査)で確定診断となります(「胃がん診断の流れ」参照)。進行程度などを調べるためにCT検査、PET検査などが行われます。これらにより病期(ステージ)分類が分かり、治療法が決まります(「ステージ別治療法」参照)。

 非常に早期の粘膜内にとどまるがんであれば内視鏡治療(EMR・ESD)、それを超えていても早期がんの範囲であれば多くは腹腔鏡(ふくくうきょう)による胃切除(「胃がんに対する腹腔鏡手術」参照)が行われ、進行がんであれば開腹による胃切除手術が行われることが多いです。しかし、病変の場所や広がりなどにより、胃の切除方法(全摘か一部切除かなど)は異なることがあります。

 また、がんが胃もしくはその周囲のリンパ節にとどまらず、他の臓器や腹膜などに転移しているときは、手術を行わず、化学療法などの治療が行われます。化学療法は、以前は胃がんにあまり効果がないといわれていましたが、近年は効果が期待できる治療薬が次々に開発されています。

胃がんにならないため、自分でできる最も良い方法は、もしピロリ菌が陽性であれば、薬を内服することによりピロリ菌を除去する除菌治療を受けることです。除菌が必要かどうかは、胃内視鏡で感染の可能性を調べ、ピロリ菌の有無を検査して判定します。特に50歳以上で今まで胃内視鏡検査を受診したことのない方などは、ぜひ検査を受けてみてください。

 胃がんになったとしても命を落とさないようにするには、早期発見が一番重要です。早期がんの状態で見つかれば多くの方は治ります。何か消化器に症状が出ている方などは、一度内視鏡検査を受けることをお勧めします。

 現在働き盛りの方々が胃がんに関して気をつけていただきたいと思うことを述べました。何か気になることがあれば、いつでも私たちにご相談ください。

  岡山ろうさい病院(086―262―0131)

 いしざき・まさひろ 徳島大学医学部医学科卒。国立病院四国がんセンター、愛媛県立病院を経て2010年より岡山ろうさい病院に勤務。日本消化器外科学会専門医・指導医、日本外科学会専門医・指導医、日本ヘルニア学会評議員。

食物を溶かす臓器「胃」 なぜ胃壁まで溶けることがないのか

人体には多数の内臓があるが、具体的にどんな形状でどんな機能を果たすのか。ここでは「胃」について紹介しよう。胃は食べたもの、飲んだものが最初に集まるところ。

平均的な長さは20cmで、容量は約1リットル。食物が通過するのに2時間ほどかかるが、液体なら10分ほどでOKだ。

 胃は袋の形をしていて、右から左へとカーブし、左側に大きく膨らんでいるのが特徴。他の臓器と違い、人によって形が異なる。

「牛角胃」は牛の角のようにすらりとした形で、食べ物がスムーズに流れて胃もたれが少ない、欧米人や肥満の人に多い。

「鉤状胃」は鉤のように曲がった胃で、中央部分が出口より低い位置になるので、食べ物がたまりやすく、「下垂胃」ともいわれ、日本人や痩せ型の人に多い。

「瀑状胃」は胃の入口が出口より下にある複雑な形で、食物が流れにくくて数か所に溜まりやすい。日本人の2~3割がこの胃といわれている。

 胃の働きは、何といっても食べ物など胃に入ったものを、胃酸を使って溶かすこと。

口腔内で唾液とともに胃に運ばれた食べ物は、胃のぜん動によって上から下(噴門から幽門)へと送られ、その間に胃酸と混ぜ合わさることで消化を促す。ただし、溶かすだけで、栄養の吸収はほとんど行われない。

 胃酸はpH2という強酸性。他の臓器を溶かしてしまうほど強力だが、胃の粘液と粘膜が胃液をしっかりガードするため、食物は溶かしても胃壁まで溶けることはない。

 胃潰瘍や胃がんの原因となるピロリ菌は、アルカリ性の尿素を出して胃酸を中和することで、胃の中でも生存が可能。食べすぎやストレスで胃の中のバランスが崩れると、ピロリ菌が暴れだし、胃炎や胃潰瘍などを発生してしまう。

 胃酸の勢いが強すぎて、胃で消化される途中の食物が食道に逆流すると、逆流性食道炎。もともと日本人には少なかったが、食生活の変化により、増加傾向にある。

みぞおちの不快感や痛み…それって胃がんかも?

◆胃がんの初期症状で多いみぞおちの不快感や痛み

以前は、日本人のがん死因第一位を占めていた胃がん。がん検診や胃カメラによる検査の普及により、早期発見できれば十分完治を目指せるがんになってきました。

胃がんの初期症状として気をつけて頂きたいことは、以下の2つです。

1. みぞおちの不快感や痛み
胃もたれ、むかつき、膨満感といったみぞおちの不快感、そして、しくしく、きりきり、ずーんといった痛みが長引く場合には、要注意です。

もちろん、これらの症状は、胃酸過多による胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍でも見られる症状で、市販の胃薬で改善するケースも少なくありません。

しかし、薬を飲まないと必ず痛む、食欲不振が長く続く、症状が以前より悪化している、といった時には、是非、内科の先生にご相談下さい。

2. 真っ黒なタール便が出る
トイレでタールのような真っ黒な便が出たときには、自覚症状が全くない時でも、必ず、内科の先生に速やかにご相談下さい。もちろん、イカスミなどの食物や鉄剤などの薬の影響で黒い便が出ることはありますが、黒い便が続くような時には、放置は禁物です。

この黒い色のもとは、血液のヘモグロビン中に含まれる鉄分が酸化したものです。主には、胃や十二指腸といった上部消化管の出血によって見られる症状です。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの可能性もありますが、胃がんも念頭に置かなくてはなりません。
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◆進行胃がんで起こる症状

胃がんの進行に伴って見られる症状には、局所の進展によるものと、他の臓器への転移によるものに分けることができます。

1. 胃がんの局所の進展による症状
胃がんができる部位によっても異なりますが、噴門部や幽門部といった胃の入り口や出口付近にできた胃がんは、進行によって狭窄・閉塞症状を来します。つまり、召し上がった食べ物が通過できずに、嘔吐してしまいます。

この嘔吐は、二日酔いや乗り物酔いの時とは異なり、吐き気は特段ないのに、ある時、急にどっと嘔吐してしまうということが特徴です。

また、胃がんの進行によって、出血量が増加することで、貧血が急速に進行したり、場合によっては血圧の低下などを招いたりすることもあります。

さらに、胃がんが胃の壁を食い破ってしまった場合、膵臓や胆嚢などの周辺の臓器に浸潤したり、腹膜全体に広がってしまう(播種)こともあります。腹膜播種の場合には、痛みとともに便秘や下痢などの便通異常も出てきます。

2. 胃から他臓器への転移による症状
胃がんも、他のがん同様、血流の多い肝臓、肺、脳、骨への転移が見られますが、胃からの血液の流れを考えると肝臓への転移が多いです。

肝臓への転移が大きくなったり、その場所が肝臓からの消化液である胆汁の流れを滞留させるような部位であれば、胆汁が血液内に逆流し黄疸(皮膚や白目の部分が黄色くなる)が見られるようになります。

また、がんに共通のことですが、特に要因なく体重が減少したり、帯状疱疹(ヘルペス)を発症する場合には、何らかの悪性疾患の存在も疑われます。 万一、このような兆候が出た場合には医療機関を受診するようにしてください。 治癒率をあげるためには、早期発見・早期治療が大切です。早期発見のためには、初期症状に注意すると共に、やはり、年に1回の定期的な健康診断を受けられることをおすすめします。

下血、貧血…「直腸がん」の初期症状・進行症状

◆直腸がんの初期症状「下血」……痔と自己判断して見過ごしも

直腸がんの代表的な初期症状は下血、つまり肛門からの出血です。がんの表面は血管が豊富で組織ももろいため、便が通過する際のちょっとした刺激がきっかけで出血します。

逆に考えると初期症状がわかりやすい疾患といえるのですが、便のことは恥ずかしさもあり相談しづらいことに加え、肛門からの出血は痔でも見られる症状のため「きっと痔からの出血だろう」と軽く考えて見過ごされることも少なくありません。

便に血が混じったり、肛門から出血するということは、通常の状態ではないので、下血の症状がみられた時には必ず医師の診察を受けることが大切です。
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◆直腸がんの初期症状「貧血」……めまい・ふらつき・倦怠感

一方「便の様子なんてじっくり見ない」という方もいらっしゃると思います。直腸に限らず消化管のがんからの出血は少しずつ出るため、出血に伴う激烈な症状は出ません。しかし、じわじわとした出血がある程度の期間続くと、貧血の出現や進行となって現れてきます。

貧血の症状はめまいやふらつき、全身倦怠感のほか、下まぶたの裏(眼瞼結膜)の色や顔色が白っぽくなるということも見られます。健康診断を毎年受けているならば、ここ数年の赤血球数とヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)の数値の推移を見てみてください。これらが急速に下がっている場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。

なお、医療機関ではいきなり大腸カメラや注腸造影検査などの大がかりな検査をすることはありません。基本的には、まず検便で便潜血の有無を検査。便を一部採取して血が混じっていないかをチェックするだけの体に負担のない検査なので、安心して病院に行ってください。
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◆直腸がんが進行した場合の症状……下痢・便秘・細い便

直腸がんが進行すると、便の通過障害に伴う症状が出てきます。直腸という管の中に新しく「できもの」ができるため、便の通過が悪くなるのです。

便の通過障害に伴う症状はさまざまですが、代表的なものは、繰り返す下痢と便秘、そして「便柱狭小」といわれる便が細くなる症状です。

快便の例として「バナナ状」という表現がしばしば使われますが、ある程度の太さと固さを保った便が定期的に出ることは、腸の健康を示す大切な指標。便の形だけでも、異常がないか注意して観察するようにしましょう。

◆便の異常など違和感は早めの相談が何よりも大切

便のことや下のことは相談しづらいと感じる方が多いようですが、私たち医師は仕事として日常的に患者さんに接しています。何か異常を感じた場合は恥ずかしがらずに早めに受診することをおすすめします。

女性の場合は、最近では女医さんや女性スタッフのみの女性向け外来やクリニック、検診日の設定も増えています。そういった情報を入手するのにインターネットは非常に有力な武器になります。

あなた自身の健康はあなた自身が守るという気持ちで、体調の不調を放置せず、医師への早めの相談を心がけてください。

便でわかる!日本人に多い「S状結腸がん」の症状

◆大腸がんの初期症状でもある便通異常

毎日のお通じは快調ですか? 個人差はありますが、通常の食生活を送っていれば、1~2日に1回、黄褐色でバナナ状の便が排泄され、排泄後はすっきりするのが健康的な体の仕組みです。

その一方、便通異常も多くの方が経験しているでしょう。一番多いのが便秘。次にストレス性や食あたりでの下痢。それから痔のため便に少し血液が付いてしまうという人もいます。

近年増えつつある大腸がんも、便通異常は特徴的な症状の一つ。特に便通異常が症状として出やすいのが「S状結腸がん(S字結腸がん)」です。S状結腸というのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、大腸の中では直腸と並んでがんができやすい部位なのです。S状結腸がんについて解説しましょう。

◆S状結腸がんとは

S状結腸は、上行・横行・下行結腸に続く部位で、その名の通りアルファベットのS字のように屈曲・蛇行している臓器。私たちが食べたものは、胃・十二指腸・空腸・回腸を通って、どろどろの状態(便汁(べんじゅう)とも呼ばれます)で上行結腸に流れ込みます。この後、水分が腸管で吸収されて少しずつ固形化していきます。下行結腸に入ると便としての形ができはじめ、S状結腸ではかなり便らしくなり、その後ろの直腸に溜まってくると便意を催すようになります。

大腸にがんができると腸管の内腔が狭くなりますが、上行結腸や横行結腸などでは便汁の状態のため、なかなか症状が出づらいことが多いです。一方、S状結腸の位置までくると便はかなり固形化しているため症状が出やすくなります。この部分にできるのがS状結腸がん。

他の大腸がんと同様、やや男性に多く、50~70歳代に多く見られます。早期発見・早期治療で治癒率が格段にアップするのも特徴。その反面、直腸とともに肛門に近い部位であり、出血の症状が痔に類似しているため「痔の出血だろう」という自己判断で見過ごされやすいことが多いのが特徴です。
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◆S状結腸がんの代表的な症状・初期症状

S状結腸がんの注意すべき症状は以下の通り。

■繰り返す「下痢」と「便秘」
もともと便秘気味という場合は別として、下痢と便秘を繰り返すようなケース。

■「血便」
便の表面に血液が付着していたり、便の中に血の塊が混じっていたりするようなケース

■細い便しか出なくなる「便柱狭小」
細い便しか出ていないようなケース。がんによる腸の内腔の狭小化に伴って見られる。

もちろん、これらの症状が出たからといって心配しすぎることはありません。下痢や便秘のほとんどは心配ないものですし、血便は痔や憩室炎といった良性疾患の可能性もあります。便柱狭小も毎回見られるのでなければ食事や体調の影響によるケースがほとんどです。ただ、少しでも気になったときには、まず、お近くの医療機関を受診し、便の潜血反応のチェックを受けることをお勧めします。いわゆる検便検査で便を取るだけの簡単な検査なので、あまり怖がらずに、まずは医師にご相談ください。

外科医も“恐怖”だった食道がん 今は内視鏡だけの治療で完遂も

食道癌(がん)…。私のように20年以上前に外科医だった医師が聞くと、ゾッとする言葉の一つでした。今もそうですが、私が医師になった頃は、食道癌がんは命がけの手術の一つでした。

 患者さんの主治医になると1カ月は病院から出られなくなることは珍しくなく、手術日には、泊まり込みに備えて新しいパンツを30枚以上用意して臨みました。

 60代以上の男性に多く、喫煙、飲酒、熱い食事や繰り返す逆流性食道炎が危険因子とされていて、コップ1杯程度のビールで顔が赤くなるフラッシャーと呼ばれる人たちも危険とされています。食道には胃や大腸と違い漿膜(しょうまく)という膜がないため、進行すると簡単に周囲の重要な臓器である気管、肺、大動脈、肺静脈、肺動脈、椎体などに浸潤してしまうのです。

 また、癌は食道の内側から発生し、表層近くに血管やリンパ管が発達しているので比較的早期に肺、肝臓などに転移しやすい。愛煙家、愛飲家はぜひ気を付けて、1年に一回は内視鏡検査を欠かさないで頂きたい。

 怖い話をつづってきましたが、最近は医療機器の発達により特殊な光線を食道にあてることで、早期食道癌の発見が容易となってきました。早期なら内視鏡だけの治療で完遂することがあり、食道癌といえども恐くはなくなってきました。

 内視鏡手術も進歩しており、以前なら不可能だった広範囲に及ぶ早期食道癌でも内視鏡的切除が可能な“達人”も増えています。以前はお腹、胸、首の3箇所を開けて施行する大手術でしたが、最近は小さな穴からカメラを入れ最小限の侵襲で終了させることができる施設も増えています。

 抗がん剤、放射線治療の手法も大幅に改善されているので、予後の改善にも期待を寄せたい疾患の一つです。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

早く気づいて!胃がんの初期症状


◆食欲不振・体重減少・みぞおちの痛み

私たち医師が、診察室で患者さんと話をしていて、「おや?」と気になるのは、食欲不振・体重減少・みぞおちの痛みの3つの症状です。

食欲不振とは、まさに、食欲がない状態のこと。定期的におなかがすいて、ご飯を食べて「おいしい!」と思うサイクルが淡々と回っていることを、普段私たちは気にしませんが、非常に重要なことです。

また、食欲不振が続くと、体重も当然減ってきます。「寝食を忘れる」という表現もあるように、食欲や食べると言うことについては、主観的な部分もあるので、食欲の減退があまり気にならない方もいらっしゃいます。

しかし、体重は、客観的な数字となって現れます。特にダイエットをしたり運動をしたりしたわけでもないのに、半年で10~15%の体重減少があるようならば、要注意です。

暑い時期には、誰しも食欲が落ち、体重も減少しやすくなりますが、それ以外の可能性があるということも、頭の片隅に置いておいてください。

そして、みぞおちの痛みや胃のもたれといった症状も、非常に一般的に見られるものですが、長期にわたって続く、市販の胃薬が効かないということも、要注意信号だと思います。
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◆貧血と黒色便

胃がんでは、うじうじと出血が続くことがあります。そんな時には、貧血が出てくることがあります。貧血の症状は、もちろん、ふらつく、立ち上がったときなどに目の前がさーっと白くなるといったこともありますが、意外に多いのが、全身倦怠感と動悸・息切れです。

貧血は採血検査で簡単に調べることができますので、気になった時には医師の診察を受けるようにしてください。

また、胃から出血していると、十二指腸、小腸、大腸と通って出てくる間に血中のヘモグロビンに含まれる鉄分が酸化されるため、大便が真っ黒になって出てきます。

もちろん、食事の内容によっても便の色調は変化しますが、タールのような真っ黒の便に気がついたときには、医師の診察をお受けになることをおすすめします。
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◆特に胃がんに気をつけるべき方

胃がんは罹患率の高い疾患ですが、やはり、なりやすい方もいらっしゃいます。

食生活の面では、刺激物や濃い味付けのもの、塩辛いものが好きな場合は注意が必要。がんは遺伝病ではありませんが、同じ味付けや生活習慣、食習慣を引き継ぐため、身内に胃がんの既往がある方がいる場合にも注意が必要です。

また、タバコや過度の飲酒は胃がんのリスクもあげますので、喫煙者や大酒家の方は、特に注意してください。

気になる症状や思い当たる節がある方は、是非、お近くの医師の診察を受けてくださいね。もちろん、年に1回のがん検診もお忘れなく。

何色の便が出たら、「胃がん」を疑うべき?

◆便は健康のバロメーター

便通と体調がある程度リンクすることは、私達は経験的に知っています。便は健康のバロメーターとも言われます。快食・快便という言葉もあるように、すっきり便通がついた日は気持ちがよいもの。その一方で下痢や便秘の日は、なんとなく気分も晴れません。

便と健康という観点から言えば、胃潰瘍や大腸がんなど、消化管出血を来す疾患では、便の色は大きく変化します。

ここでは、便の色から見た消化管出血の部位の推定についてお話します。
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◆血液の色と鉄分

血液中には、ヘモグロビン(血色素)と呼ばれる物質があります。

これは、ポルフィリン骨格という構造の中に、鉄分を含んだもので、血液が体の隅々まで効率よく酸素を運搬し、受け渡しをするために欠かせないものです。

通常、血管内には、空気はありません。鉄は、空気に触れると酸化、すなわち錆びていきます。鉄が錆びると、時間が経つにつれて黒く変化していきます。

ちょうど、膝小僧をすりむいたときに、最初に出てくる血がかさぶたになりますが、最初は、赤かった血液が、少しずつ暗い赤色に変化して、最後は、黒いかさぶたになっていきます。このことを思い出しながら考えると、便の色と消化管出血の部位との関連性を考えることができます。
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◆便の色が黒いほど、口に近い部位からの出血

便の色が黒いということは、出血してからの時間が長いことを示しています。逆に肛門に近いほど、便の色は赤くなります。 たとえば、黒い便は、どう考えるとよいでしょうか。血が黒くなっているということは、それだけ、出血してからの時間が長いということになります。

食道がんや胃がん、胃潰瘍や十二指腸潰瘍など、いわゆる上部消化管と呼ばれる領域から出血した場合には、便の色はタール便とも呼ばれる真っ黒な色になります。

その一方で、結腸がんや直腸がんなど肛門に近い部位から出血している時には、それほど時間を経ずに排出されるので、赤黒い血便になります。ちなみに、肛門周囲から出血する痔の場合には、出血してすぐなので鮮血と呼ばれる鼻血のように真っ赤な色がつきます。
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◆便の色が気になったら……

便の色で推測はできますが、自己判断は禁物。必ず、医師の診察をお受け下さい。このように、便の色と出血の部位とは、比較的簡単な知識で推測することが可能です。

食事の時にしみる感じや、胃もたれ、むかつきなら、上部消化管の症状、腹痛や下痢気味、極端な便秘気味などなら下部消化管の症状であることが多いので、これらと便の色とを勘案しながら、私達医師も体の中で何が起こっているのかを考えていきます。

とはいえ、推測しただけでは全く何も治療にはなりません。便の色が気になったら、是非、お早めにお近くの内科を受診されることを、強くおすすめします。

衣笠祥雄さんは71歳で…大腸がんになりやすい人と予防法

「鉄人」の異名を持つ衣笠祥雄さんが上行結腸がんで亡くなった。71歳という年齢は「人生100年時代」にあって“早過ぎる死”といえる。

 衣笠さんは数年前から闘病していたという。最後に野球解説で出演したのは今月19日放送の「DeNA―巨人戦」(BS―TBS)で、ときに振り絞るような、ときにかすれるような声で苦しそうにしゃべっていた。最近はさらに頭髪が薄くなり、激やせしたため、ネットで「重病ではないか」と話題になっていた。

 上行結腸がんは大腸がんの一種。人が食べたものは胃から盲腸を経て上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸へと移動していく。

 上行結腸は食べて間もない段階なので便が液状、しかも排便まで時間がかかるため出血しても発見されにくい。怖い病気なのだ。ちなみに大腸がんは日本人(男女総計)のがんの死因としては肺がんに次いで2位になっている。

「症状は下痢や便秘。血便が出たり、便が細くなったら、がんがかなり進んでいる証拠です」と言うのは医学博士の米山公啓氏。

「ほかに腹痛やお腹の張り、貧血、急激な体重減少などの症状があります。ただし、大腸がんは早期に発見しないと手遅れになるので、これらの症状が出る前に見つけなければなりません。血液検査よりも検便で便潜血を調べるほうが確実。一度でも陽性が出たら、大腸内視鏡の検査を受けてください。放っておくと、肝臓や肺に転移してしまいます」

 大腸がんにかかる割合は40代から増加し、50代でリスクが高まる。がん全般については高身長の人やたばこを吸う人に患者が多いそうだ。

■定期的に検便を

 衣笠さんは肉料理と酒が好きなことで知られていたが、これも因果関係がある。

「大腸がんの患者は牛肉などの赤肉やハムみたいな加工品が好きな人に多いのです。お酒は1日に1~2合飲むとがんのリスクが2、3倍にはね上がるというデータもあるので注意が必要。肥満の人も大腸がんになりやすいから、適度な運動で予防することが大切です。このほかコーヒーを飲んだり、野菜をよく食べる人が大腸がんになりにくいことが分かっています」(米山公啓氏)

 40歳を過ぎたら、定期的に検便を受けたほうがいい。

胃がん治療に新たな選択肢 注目「CLEAN NET」とは何だ?

胃がん治療の新たな選択肢として、内視鏡と腹腔鏡を組み合わせた治療法が注目を集めている。昭和大学江東豊洲病院消化器センター長の井上晴洋医師に聞いた。

 胃は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層で成り立っている。胃がんの7割は、粘膜か粘膜下層内にがんがとどまった早期がんだ。早期胃がんの場合、従来の治療法はまず、「腹腔鏡による胃の3分の2切除あるいは胃全摘」。腹腔鏡は、腹部に5カ所程度の小さな穴を開け、そこから腹腔鏡と手術器具を入れ、胃の外側からがんを切除する。

 開腹手術に比べ患者の負担は少ないとはいえ、胃が3分の2あるいはすべてなくなれば、術後は生活の質(QOL)が下がる。そこで、胃のごく一部にできたがんに対し、より負担が少ない治療法として登場したのが「内視鏡治療」だ。口から内視鏡を入れ、がんが発生している胃の粘膜を電気メスで剥離する。現在行われているのは「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」という方法だ。

「ところが、胃の粘膜に潰瘍瘢痕(潰瘍の治った痕)があるとESDができないことがあります。この場合は、腹腔鏡で胃の外側から胃壁の筋肉ごと胃がんを切除する方法が取られてきました。これを胃部分切除術といいます」

 この方法だと胃がんは切除できるが、治療後、空腹時や満腹時などに胃がムカついて不快感を覚えるようになる。伸縮性が悪い筋肉ごと切除したため、胃が変形してしまうからだ。

■変形もほとんど起こらない

 そこで行われ始めたのが内視鏡と腹腔鏡を組み合わせた治療で、全身麻酔で行う。

「内視鏡で胃がんとその周辺の切除部分に印をつけます。腹腔鏡で胃の外側からがんに接した部分の筋肉だけ切除。がんごと胃壁の外に持ち上げ、自動縫合器をかけて、持ち上げた部分を切除します」

 これが可能なのは、伸縮性の悪い筋肉と違い、粘膜は伸縮性に富んでいるからだ。“がんごと胃壁の外に持ち上げて切除”は、焼いてプクーッと膨れ上がった餅をイメージすると分かりやすいかもしれない。餅の外側部分が胃壁の筋肉。膨れ上がっている時の伸びている軟らかいところが胃の粘膜。餅の外側部分(筋肉)は一部切るだけにして、伸縮性に富む粘膜は餅を伸ばすように持ち上げて切除するのだ。

「内視鏡と腹腔鏡の組み合わせで、筋肉は最小限に、粘膜のがんは最大限に切除できます。これによって、胃の変形もほとんど起こりません」

 さらにメリットは、腹腔鏡で筋肉は切っているものの、粘膜はそのままなので、胃の内容物が外にこぼれるリスクがゼロであることだ。腹腔鏡で胃の外側から切れ目を入れ、がんを切除する場合、その切れ目から胃の内容物がこぼれるリスクがある。そこにはがんが含まれているので、最悪の場合、がんが腹部にまき散らかされることになるのだ。これが完全に回避されるのは大きい。

 内視鏡と腹腔鏡を組み合わせたこの治療法を、井上医師は「CLEAN―NET」と名付けた。「露出しない方法を使った腫瘍に対する内視鏡と腹腔鏡を組み合わせた治療アプローチ」という意味と、“胃の内容物が外にこぼれない”ことから「清潔な網」の意味をかけている。健康保険適用だ。

「『CLEAN―NET』を無理に推し進めていけばいい、とはまったく考えていません。広範囲の胃切除術がベストの患者にこの治療を行えば、がんの取り残しにつながる。患者さんの状態に応じて最も適した、かつ過不足のない治療を行うべき。そういった意味で、腹腔鏡による手術と、内視鏡による胃がん剥離の間に新たな治療法ができたことは、選択肢の幅が広がり、患者さんにとってメリットがあります」

ピロリ菌の原因・症状、胃がんとの関係を医師が解説

◆ピロリ菌とは? ピロリ菌の原因・感染経路

ピロリ菌の正式名称は、「ヘリコバクター・ピロリ菌」。食べ物や飲み水から感染する経口感染がほとんどで、多くが幼少時に感染すると考えられています。日本の場合は衛生環境が十分整っていなかった時代に生まれた方の感染率が高く、50歳以上の約80%の人はピロリ菌を保菌していると言われています。

現在は生活環境が改善され、生活習慣も衛生的に変化してきたため、ピロリ菌保菌者は減少傾向。現在は国民の約半数程度の感染に減少しているとされています。現在の家庭内では、ゴキブリがピロリ菌を運んでいる可能性が指摘されているので、ピロリ菌予防のためにも駆除するようにしましょう。

また内視鏡を介した医原性感染が問題視された時期がありましたが、消毒方法の改良で現在ではほとんど心配がなくなりました。性的接触では感染しないと考えられていますが、ペットからの感染についてはまだはっきりとわかっていません。
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◆ピロリ菌保菌でも無症状?

ピロリ菌がいるだけなら、症状が出ることはありません。症状が出るのはピロリ菌が原因で何らかの病気が発症したときのみで、これは保菌者の約3割程度。残りの7割の人はピロリ菌に感染した状態でも何の症状も現れず、「健康保菌者」「無症候キャリア」と呼ばれます。

ピロリ菌に関連した症状は、

・胃潰瘍になれば、胃がしくしく痛む

・胃炎が起これば、胃がもたれる感じがする

など、それぞれの病気によってさまざま。

実際に病院に来られるのは、ピロリ菌に関連する症状が出ている人だけでなく、以下のような事情で来院する人が多いように思います。

・健診のバリウム検査で胃炎が見つかり、ピロリ菌等の検査を勧められた

・胃カメラによる検査で、ピロリ菌がいそうだと指摘された

・何となく胃腸が弱い自覚があり、ピロリ菌のせいではないかと心配になった

・無症状だが健診で胃潰瘍とピロリ菌が発見された

・親が胃がんなので、自分もピロリ菌を保菌していないか検査してほしい

など。

最近は具体的な症状があるというより、「ピロリ菌」が知られたことで自分にもピロリ菌がいるのではないかと検査を希望して来られる方が多いです。

◆ピロリ菌が引き起こす病気一覧

それ自体では自覚症状のないピロリ菌も、さまざまな病気の発生や進行に関係しています。ピロリ菌が引き起こす主な病気は以下の通りです。

●胃潰瘍、十二指腸潰瘍
潰瘍患者のピロリ菌感染率は90%以上。ピロリ菌除菌が推奨され、唯一保険適用になっている病気です。昔も今も潰瘍は一度よくなっても半数以上が再発し、薬をなかなかやめることができない病気。ピロリ菌が発見されるまでは私たち医師も潰瘍は再発するのが当たり前と考えてきましたが、ピロリ菌除菌に成功すると胃潰瘍、十二指腸潰瘍ともに再発率が明らかに減少しました。

ピロリ菌がどのように潰瘍を起こすかはまだ完全に解明されていませんが、ピロリ菌がいなくなることで潰瘍の傷がしっかり治るようになることが1つの要因と思われます。怪我をしたときを考えてみても、菌がついて膿んだ汚い傷ときれいな傷では治りが違います。ピロリ菌に感染していると炎症が起きやすく、潰瘍は膿んだ状態になりますが、ピロリ菌がいなくなると潰瘍は膿のないきれいな状態になり、きれいに治ることが多いです。潰瘍がきれいに治ることで、再発率が減少していると考えられます。

●胃がん
ピロリ菌感染者の多い日本では、世界的に見ても胃がん患者が多いようです。早期胃がんでピロリ菌が見つかった場合は、内視鏡的治療後に除菌治療が推奨されます。1994年、世界保健機構(WHO)は疫学的調査から、ピロリ菌を確実な発がん物質と認定しました。除菌により胃がんの発生率が1/3に抑制され、ピロリ菌除菌が胃がん予防効果があると証明されています。

●萎縮性胃炎
粘膜層が非常に薄くなり胃炎と同様の症状を起こす萎縮性胃炎の大部分も、ピロリ菌感染が原因。萎縮性胃炎になった場合、その後の胃がん予防のためにピロリ菌除菌治療が薦められます。ピロリ菌に感染するとまず急性胃炎が起き、長い年月をかけて萎縮性胃炎になり、胃がんになる危険性が4~10倍に増加すると考えられています。これまで萎縮性胃炎は加齢現象と言われてきましたが、ピロリ菌感染者のみが萎縮性胃炎になることと、除菌でそのリスクが改善することがわかっています。ただし萎縮性胃炎以外のいわゆる慢性胃炎と呼ばれるものの原因には、ピロリ菌感染以外に加齢、塩分の過剰摂取、アルコール、タバコ、野菜の摂取不足など多くのものがあるので、ピロリ菌除菌をしたからと言って油断してはいけません。

◆ピロリ菌が胃酸の中でも生きられる理由

胃の中は胃酸が作られているため、非常に強い酸性で生物が生きていける環境ではありません。普通の細菌はこの胃酸で死んでしまうため、ほんの20年前ほど前までは「胃に細菌は住めない」という考えが常識でした。ところがピロリ菌は強い胃酸の中で生きることができるのです。

ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を多量に持っていて、この酵素で胃内の尿素をアンモニアに変化させます。このアンモニアが胃酸を中和し菌の周囲のpHを変化させて、生存できる環境を作り上げているのです。ピロリ菌は自分の周りだけにいわゆるバリアを張れる細菌だと考えてください。ピロリ菌は、このように非常に進化した細菌で、この働きが結果として胃に悪い影響を与え、思わぬ病気を引き起こすのです。

下戸の人は胃がんになりやすい!?「L-システイン」が胃がんを予防するってホント?

お酒に弱い人、いわゆる下戸とよばれる人たちですが、なんとお酒に強い人よりも、胃がんになりやすいって知っていましたか?

先日、東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の飯島克則講師らが行った実験によると、お酒に弱い人ほど、アルコールを飲酒したときに生じるアセトアルデヒドが高濃度のまま長時間、胃液の中にとどまるということが明らかになりました。胃液中のアセトアルデヒドは胃がんのリスク因子だと言われています。

また、同実験では非必須アミノ酸である「L-システイン」の投与が、胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑えられることも明らかになりました。

ここでは、日本人にも多いと言われる胃がんとリスクを減らすといわれる「L-システイン」についてみてみましょう。

◆胃がんはどんな病気?
胃がんは全世界で男女ともに癌死亡のうち3番目に多い原因であり、東アジアにおいては最も高い死亡率を占めます。

胃がんの原因の多くは、ピロリ菌への感染や喫煙や食生活など生活習慣などで起こりますが、飲酒、特にお酒に弱い人は胃がんのリスクが高まると言われています。

胃がんは自覚症状がでにくいがんの1つです。がんが胃の入り口付近に発生した場合や、がんと一緒に胃潰瘍などがある場合は、消化不良、胃の痛み・もたれ、胸やけ、げっぷ、吐き気・おう吐、嚥下困難(飲み込みにくくなる)などが現れます。

しかしこれらは胃炎や胃潰瘍とも良く似ているため、見過ごされてしまうこともあります。

◆お酒に強い人、弱い人の違いは何?
アセトアルデヒドは、発がん物質とされ、食道がん、胃がんをはじめとするアルコール摂取と関連するがんの重要な発がん因子と考えられています。

先日、岡山大学の発表でも、「舌表面の汚れの付着面積が大きい人は、アセトアルデヒドの濃度が高く、口の中のアセトアルデヒドは、口や喉のがんの原因になる」という発表がありました。

アセトアルデヒドは「ALDH2」という酵素によって酢酸へと代謝されますが、「ALDH2」の2つタイプ(活性型・不活性型)によって代謝速度に個人差があるといわれています。

代謝が遅いALDH2不活性型の人は、少量の飲酒でもアセトアルデヒドが体内に蓄積し、顔が赤くなったり動悸などを引きおこすといわれ、いわゆる「下戸」と呼ばれる人たちのことです。

この研究では、アルコール投与後に胃液中のアセトアルデヒド濃度が、お酒に弱い人(ALDH2不活性型)ではお酒に強い人(活性型)に比べて5.6倍も増加していることが明らかになりました。

ALDH2不活性型は、アジア人に多く、日本国内では30~40%がALDH2不活性型だといわれています。

◆胃がんのリスクを減らす「L-システイン」とは?
また、非必須アミノ酸である「L-システイン」の投与が、胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑えられることも明らかになりました。

ALDH2活性型では67%、ALDH2不活性型では60%のアセトアルデヒドの低下が観察され、その効果は2時間持続しました。これは「L-システイン」が、胃がんのリスクを減らす可能性があることを示しています。

「L-システイン」はヨーロッパの多くの国で使用されている健康食品であり、日本でも「L-システイン」が成分に入っている市販薬が「二日酔いを改善する」と話題になっていました。

二日酔い予防のため、飲酒前にサプリメントを服用している人は多いと言いますが、将来的には、二日酔いの改善だけではなく、胃がんを予防するために「L-システイン」を服用する人がでてくるかもしれませね。

参考:
東北大学プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20150330_02web.pdf

専門医に聞け! Q&A 胃酸過多以外の消化不良対策

 Q:慢性的に疲れており、便秘気味ですし、時々胃から酸っぱいものや苦いものが上がってくる感じがすることがあります。精神的にも冴えません。この状態から抜け出したいのですが、どうすればよいか、アドバイスをお願いします。(38歳・NPO理事)

 A:胃から酸っぱいものが上がってくるというと、一般的には胃酸過多により胃酸が逆流する逆流性食道炎という見方がなされます。
 
しかし、ご質問の方の場合、便秘気味で慢性的に疲れており、精神的にも冴えないとのこと。それらの訴えを総合的に判断すると、胃酸過多以外の状態も考えられます。

 一つは胃と腸の動き(ぜん動)が低下し、内容物が停滞しやすい状態が考えられます。また、小腸で消化酵素がうまく働いていない可能性もあります。

 消化不良によってガスが発生し、横隔膜を押し上げ、それにより胃の内容物が上がってくると考えられます。胃腸のぜん動運動の低下や消化酵素不足が、胃から酸っぱいものが上がってくる原因かもしれません。

●食前に酢水を飲むとよい
 実は、酸っぱいものや苦いものを食べると、消化器官が反応して消化酵素の分泌が促進され、消化管の運動も促進されます。これを俗に「イヤなもの反射」と呼びます。「イヤなものは早く体外に排泄したい」という反応です。

 ですから、消化酵素の分泌を促すために、ゴーヤ、ピーマン、ニガウリなど苦いもの、梅干しや食酢など酸っぱいものなどを適度に摂取すると良いでしょう。また、砂糖も胃酸の分泌を低下させ、消化管の働きを悪くしますので、甘いものの摂取は少なくしてください。

 以上が対策の基本です。

 食事はよく噛んで食べ、食前に酢水などを飲むと良いでしょう。酢水は、小さじ2杯の黒酢や果物酢を150mlの水で割って作ります。酢水は濃すぎると良くないので、濃くし過ぎないように注意しましょう。

 また、ストレスは交感神経を緊張させるため胃腸の働きは低下します。リラックスをすることで、副交感神経優位になり消化機能を高めます。

 なお、逆流性食道炎の治療には胃酸分泌を抑制する薬がよく処方されます。消化不良にこの薬を服用すると、消化不良はますます悪くなる恐れがあるので、注意してください。

首藤紳介氏(表参道首藤クリニック院長)
久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院、湯島清水坂クリニック等の勤務を経て、表参道首藤クリニック院長。自然療法や代替医療をはじめ、水素温熱免疫療法や再生医療(臍帯血幹細胞治療)などの高度先進医療を実践。

全摘から最小限切除へ 患者数第1位の胃がんに最新手術

日本人がかかるがんの第1位を占める「胃がん」。診断・治療技術の進歩で、半数以上が早期に見つかり完治が望めるようになったが、胃を切除すれば合併症や後遺症に苦しむこともある。

新たな手術法で、手術後の生活の質の向上を目指せるようになった。

 東京都に住む会社員、佐藤真理子さん(仮名・52歳)は、14年7月、胃のむかつきを感じて職場近くの病院で検査を受けたところ、胃の入り口(噴門)付近に早期胃がんが見つかった。

担当医からは、胃の全摘を勧められたが、佐藤さんは胃をすべて取ることに大きな抵抗があった。胃がん手術を受けた知人から、手術後に食事が少ししか食べられなくなって苦労した話を聞いたからだ。

 佐藤さんは、胃全摘をせずにすむ方法はないかと思い、インターネットや本を調べたところ、全摘せずに手術できる「センチネルリンパ節生検」というものを知り、慶応義塾大学病院一般・消化器外科教授の北川雄光医師のもとを訪れた。

 センチネルリンパ節とは、がんがリンパ管に入ったときに最初に流れ着くリンパ節で、転移が最初に起こると考えられている。

センチネルリンパ節生検は、手術の前にトレーサーといわれる色素やラジオアイソトープ(放射性同位体)を内視鏡で胃がん周囲の胃壁に注入。

そのトレーサーが入り込んだ胃周囲のリンパ節をセンチネルリンパ節として判断し、すぐに病理検査して(生検)、がんがないと確認できたらリンパ節は取らず、がんの病巣だけ取るという方法だ。

 そもそも、胃がんの標準治療として早期でも胃を全摘したり大きく取ったりする手術をするのは、一部の人にリンパ節転移が起こっている可能性があるためだ。

これまでの画像診断だけでは転移が判定できなかったため、転移している場合に備えて大きく切除していた。

「センチネルリンパ節を正確に見つけ出して、がんの転移がないことを確認できれば、縮小手術が可能になります」(北川医師)

 乳がんや悪性黒色腫(メラノーマ)ですでに保険適用となっていたが、北川医師はこの手法を胃がんに応用できないか、1999年から検討を続けてきた。

内視鏡治療では切除できない深さで大きさが4センチ以内の早期胃がんのうち、画像診断でリンパ節転移がないとされた433例を対象に検証したところ、約97%でセンチネルリンパ節を見つけることができ、転移の有無は99%で正確に判定できた。14年1月から胃がんのセンチネルリンパ節生検は先進医療として認められた。

 佐藤さんは、手術前にセンチネルリンパ節生検でリンパ節転移なしと判定された。そのため、胃全摘はせず、腹腔鏡下手術と内視鏡治療を組み合わせて、胃の切除範囲を最小限とする手術を受けることができた。

手術後の経過は順調で5日で退院することができ、手術から約2週間で通常の勤務が可能となった。胃のほとんどが残せたため、食事は手術前と同じようにとれて、体重減少もない。

「がんをしっかり治して、手術前とまったく変わらない生活ができていることが本当にうれしい」

 と佐藤さんは喜んだ。

 ただ、センチネルリンパ節生検は、どんな人でも受けられるわけではない。北川医師はこう話す。

「現状、4センチ以上の大きすぎるがんや、一度内視鏡治療でがんを取った人は受けることができません。

また、トレーサーを打ち込む場所を間違うと正確な診断ができないため技術が必要で、放射性物質を扱ったりするので特定の施設でのみ受けることが可能です」

 現在、縮小手術をした後の再発の有無を検証する臨床研究が進行中だ。

「この結果が出るまで5年以上かかると思いますが、患者さんごとに適応を慎重に判断して実施することで、根治させ、かつその後の生活の質も維持することができる画期的な治療戦略となるでしょう」(北川医師)
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