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【健診数値の生かし方】血管が壊れる「LDL140超」 脂質異常症編


生活習慣病のひとつ脂質異常症は、コレステロール値と中性脂肪(トリグリセライド)で診断基準が確立されている。

しかし、中には「コレステロール値は高くて良い」などという医師もいて、私たちには理解しづらい。そこで、今回は悪玉と称されるLDLコレステロール値140(単位・mg/dl)以上について考えてみる。

 【死亡率の上昇】

 コレステロールと中性脂肪は、脂質の仲間。中性脂肪がエネルギー源になるのに対し、コレステロールは細胞膜やホルモンなどの材料となる。LDLはコレステロールを運び、HDLは余分なコレステロールを除去する働きがあって、どちらも必要不可欠。

だから、「コレステロール値は高くてもいい」といった話も横行している。では、LDL140以上は何を意味するのか。

 日本動脈硬化学会「脂質異常症治療ガイド2013年版」の作成委員長を務めた「寺本内科歯科クリニック」(東京都文京区)の寺本民生内科院長が説明する。

 「LDLが体内で増えすぎると、変性して血管壁を破壊します。それが、心筋梗塞や脳梗塞などの病気に結びつくのです。

1980年にスタートした疫学調査『NIPPON DATA80』などの長期的な研究で、LDL値が140以上で、高ければ高いほど、心筋梗塞などで亡くなるリスクは上がることが明らかにされています。高血圧や糖尿病など別のリスクを加味すれば、さらに死亡率は高くなるのです」

 身体に必要なLDLだが、多過ぎれば悪影響を及ぼす。その目安が「140」以上というわけだ。

 【1カ月の食事見直し】

 体内で増えすぎたLDLは、変性して酸化され、それが血管にダメージを与える。

 この酸化されたLDLが、動脈硬化と深く関係しているのだ。では、LDL140以上でどの程度増えるのか。

 「LDL140以上に加えて、中性脂肪が150以上の場合、小さい粒子のLDLが増えて、より酸化されやすくなります。これを超悪玉コレステロールといいます。つまり、LDLと中性脂肪が高いと、血管がダメージを受けて、動脈硬化を起こしやすいのです」(寺本院長)

 全身に広がる血管は、どこで動脈硬化による血栓や狭窄を起こすかわからない。ただし、2つの値が高いからといって、すぐに薬の治療が始まるわけではないそうだ。

 「LDLは、動物性脂肪を多く含む食事の影響を受けやすいのです。患者さんには、1カ月間だけ、(1)牛肉と豚肉を控える(2)卵の黄身を食べない(3)海藻類をたくさん食べる-といった3つのポイントを実行してもらっています。

1カ月ほど試してもらってLDL値が下がる人は少なくありません。食事が原因であれば、1カ月間の見直しが、運動も含めた食生活改善のきっかけにもなるのです」と寺本院長は話す。 (安達純子)

 ■脂質異常症の診断基準(単位mg/dl 空腹時採血)
 LDLコレステロール 140以上 高コレステロール血症
            120~139 境界域高コレステロール血症
 HDLコレステロール 40未満 低HDLコレステロール血症
 トリグリセライド   150以上 高トリグリセライド血症
 *日本動脈硬化学会「脂質異常症治療ガイド2013年版」より抜粋

イマドキの内視鏡検査は本当に痛くないのか?


イマドキの内視鏡検査は本当に痛くないのか? 不健康なスパの記者が体験

7月14日は“ないし”で「内視鏡の日」。そこで昼夜逆転、コンビニ飯が多くなりがちで、不健康な生活を送る記者も一念発起、内視鏡検診を受けてみることにした。

というのも、社会に出てから一度も健康診断を受けずにここまで来てしまったからだ。来年は30歳。髪の毛や体力の衰えも心配だが、それ以上に体内部の衰えが、急に不安になってきたのだ。

 内視鏡検査といえば、「痛い」、「おえっとなる」など怖い話を聞かされてきたが、一方で「最近は全然痛くない」、「入っているのかわからないレベル」という話も聞く。本当に痛くないなんてことがあるのか? 30歳になる前に内視鏡検査に挑戦してみた。

 今回、記者が上部消化管(食道・胃・十二指腸)の内視鏡検査を体験したのは、代々木にある田坂記念クリニック。

 検査の手順は、まず胃の中を見やすくするためのシロップを飲み、続いて、のどの麻酔や鎮痛剤の注射。その後、内視鏡で検査をするという流れだ。麻酔の効果には個人差があるというが、記者はまったく痛みを感じないレベルだった。

検査中の様子を同行したカメラマンに聞くと、たまに眉間にシワ寄せるときがあったものの、終始穏やかだったという。

 40代の内視鏡経験者の先輩からは「おまえ絶対に泣くぞ」と言われていたので、正直こわかったのだが、意外にもあっさり終わってしまった。なぜ? 田坂記念クリニックの院長・加藤雅士医師に話を聞いてみた。

「クリニックで利用している内視鏡は、オリンパスの最新システムです。昔の内視鏡検査では、嘔吐反射が強くて検査できない人もいたのですが、最近ではそういった人はほぼいません」

 そもそも内視鏡自体はどんな構造になっているのか?

「胃の中を見る内視鏡は約9mmの細く柔らかいスコープで、かつ柔らかくても操作性を損なわない構造も特徴です」

 だから痛くないのだ。さらにカメラ自体の性能の向上も、スムーズな検査に大きく貢献しているとか。

「画質の向上だけでなく、毛細血管など細部までハッキリと見える拡大機能も近年の大きな進歩です。細部まで検査できるようになったことで、組織採取が不要な場合も増え、当日の食事やアルコール制限などの負担が軽減されています」

 内視鏡検査の進化について話を聞いたあと、いよいよ記者の検査結果を聞くことに。結果は「健康です」とのこと。内視鏡によって撮影された健康的なピンクの自分の体内の画像を見ると、素人目でも不健康な点はない様子。

イマドキの内視鏡検査は痛くもなく、とても安心した。今後も人間ドックなどで不安なく検査を受けられそうだ。今回、検査を受けてみて本当によかった。 <取材・文/林健太>

“新基準値”で大混乱…人間ドック、健康診断の賢い使い方


日本人間ドック学会が4月に発表した「新基準値」をめぐって大混乱が続いている。いままで病気だと判定されていた人が実は健康だったとなれば、混乱するのも無理はない。

コロコロ変わる基準に翻弄されることなく、人間ドックや健康診断をどう活用すればいいのか。

「新しい基準範囲」は受診者約150万人から「健康な人」を1万人ほど選び、27項目の検査値を対象に、性別、年齢グループ別の基準範囲を算定。その結果、いくつかの検査項目で従来の基準よりも上限値が高くなった。

 中でも“患者”が多い血圧は、従来の「130未満/85未満」とされていた基準範囲が、「148未満/95未満」に緩和された。これまでは高血圧と診断されていたのに、「問題なし」とされる人が続出する事態になったのだ。

 しかし、新基準値のベースになっているのはあくまでも「健康な人の検査値」で、他の病気を患っている人や、高血糖や高コレステロールなど別のリスク因子を抱えている人は含まれていない。そもそも、新基準値の数値に信頼できる科学的根拠があるかどうかを疑問視する声もある。

 それなのに、単純に血圧の新基準値だけをみて、〈自分は問題ない〉と勘違いしている高血圧の患者が続出している。

 来院の際に新基準値が掲載された新聞や雑誌の切り抜きを持参して、〈もう薬は必要ない〉と降圧剤を飲むのをやめてしまったり、それっきり通院しなくなるケースが後を絶たないという。

 東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授はこう言う。
「それまで降圧剤を飲んで血圧コントロールをしていた患者さんが急に薬をやめてしまうと、リバウンドで血圧が一気に跳ね上がる危険があります。

また、血圧はちょっとしたことで変動するため、平均130台に抑えられていた人が薬をやめてしまった場合、瞬間的に180くらいまで上がる可能性もあります」

 新基準値をうのみにして、自分は健康だと勝手に判断するのは危ないのだ。

 世界的に血圧の基準値は「140/90」だという。この数値は数多くの研究や検証を重ねて算出されたもので、日本高血圧学会の基準も同じだ。これを超えると脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントのリスクが上がるため、血圧コントロールが必要になる。

■総合リスクに考慮するべし

「高齢者の場合、日本では75歳以上の後期高齢者が『150/90』に緩和され、欧州や米国では60歳前後で同じ基準値が該当します。ただ、欧州では血圧以外のリスク因子が詳細に評価されます。

悪玉のLDLコレステロール値や空腹時血糖値など、かつてのメタボ健診の厳しい基準を超えた項目がすべてリスク因子として換算され、高リスクの患者には早い段階で生活習慣改善による血圧、血糖、脂質のコントロールを促します。

日本の人間ドック学会が発表した新基準のようにすべての数値を緩めてしまうと、高リスク患者が見逃されてしまう危険があるのです」(東丸氏)

 ひとつの検査項目の数値だけでアウトだセーフだと判断するのではなく、総合リスクを考慮する必要があるのだ。

「その時の数値が基準範囲に収まっていたとしても、年々、数値が上限に向かって右肩上がりに推移していたら、食生活を改めたり、日常的に運動をしたり、生活習慣を改善すべきです。

人間ドックや健康診断で計測した数値は〈点〉ではなく〈線〉で判断するべきものなのです」(江田クリニック院長の江田証氏)

 せっかく検査を受けているのだから、有効活用したいものだ。

健康診断を受けない社員に罰金…これって違法じゃないの?


企業では社員の健康を守るため、1年に1度健康診断を受けるよう指導します。

これは労働安全衛生法66条の1に

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。という規定があるためで、経営者が労働者に健康診断を受けさせることは「義務」となっています。

しかし、受ける側としてはバリウムを飲むことや採血など苦痛なことも多く、敬遠したくなるもの。何年も受けていないという人も、いるかもしれません。そんな「健康診断を受けない社員」について、ある企業が「罰則規定」を設けたそうです。健康管理を促すためとされていますが、少々納得がいかないのも事実。このような健康診断の強制に違法性はないのでしょうか?

ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。
Q.健康診断を受けない社員に罰則……これは違法ではありませんか?

A.合法です

「労働安全衛生法66条5項には
*
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

と規定されており、労働者の義務と規定されています。判例でも、懲戒処分(減給等)が認められていますね。(名古屋高判平9.7.25等)」(森川弁護士)バリウムや胃カメラ、採血など嫌なことばかりの健康診断ですが、そこから重大な病気を早期に発見できることもあります。罰則規定を設けて受診を促すやり方については賛否両論ありますが、「受けることは社員の義務」であることは認識しておかねばなりませんね。

*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。

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企業では社員の健康を守るため、1年に1度健康診断を受けるよう指導します。

これは労働安全衛生法66条の1に

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。という規定があるためで、経営者が労働者に健康診断を受けさせることは「義務」となっています。

しかし、受ける側としてはバリウムを飲むことや採血など苦痛なことも多く、敬遠したくなるもの。何年も受けていないという人も、いるかもしれません。そんな「健康診断を受けない社員」について、ある企業が「罰則規定」を設けたそうです。

健康管理を促すためとされていますが、少々納得がいかないのも事実。このような健康診断の強制に違法性はないのでしょうか?

ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。
Q.健康診断を受けない社員に罰則……これは違法ではありませんか?

A.合法です

「労働安全衛生法66条5項には
*
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

と規定されており、労働者の義務と規定されています。判例でも、懲戒処分(減給等)が認められていますね。(名古屋高判平9.7.25等)」(森川弁護士)バリウムや胃カメラ、採血など嫌なことばかりの健康診断ですが、そこから重大な病気を早期に発見できることもあります。
罰則規定を設けて受診を促すやり方については賛否両論ありますが、「受けることは社員の義務」であることは認識しておかねばなりませんね。

*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。

専門医が指摘 悪玉コレステロールの本当に危険な基準値 FC2 Analyzer


「恐ろしさを理解していない人が多い」と専門医が指摘するのが、LDLコレステロール、別名、悪玉コレステロール(以下「LDL」)だ。昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学部門の平野勉教授に、絶対に押さえておきたいLDLのポイントを聞いた。

①肥満とコレステロールは関係ない

 中性脂肪とコレステロールはどちらも脂肪の一種。中性脂肪が高いと肥満につながる。一方、高コレステロールは、肥満につながらない。
「中性脂肪は栄養素ですが、コレステロールは細胞骨格をつくる物質で、太っている・痩せているとは関係ありません」

②高LDLが怖い

 LDLは冠動脈に蓄積されやすく、血管を硬くし動脈硬化を進行させる。その硬さは医療用ドリルで壊さなければならないほどで、その状態が続くと心筋梗塞のリスクが増す。心筋梗塞を予防したければ、高LDLを放置してはいけない。

③極めて危険なのは「LDL180以上」

 LDL140(㎎/dl)以上で高コレステロール血症と診断されるが、180以上ならすぐに病院へ行くべき。

「3カ月間食生活の改善をしてもらい、180を下回らなければ、薬物治療が検討されます」

④140以上180未満は、「プラスアルファ」で治療方針が決まる

 この場合「家族に心筋梗塞や狭心症、高コレステロール血症の人がいない」「糖尿病など生活習慣病が一つもない」「喫煙習慣や肥満がない」「中性脂肪が基準値以内」なら、食生活改善で基準値70~119を目指す。

⑤「LDL140以上プラス高中性脂肪」に注意

 中性脂肪が高いと、低い場合より、動脈硬化が進行しやすい。

「中性脂肪がLDLを小型化し、冠動脈の細胞壁に入り込みやすく、蓄積しやすくします」

 食生活改善で数値が下がらなければ、薬が必要と判断される。

⑥過去に心筋梗塞を起こしている人は別格

 ③~⑤は一度も心筋梗塞や狭心症を起こしたことがない人に当てはまる。心筋梗塞を起こしたことがある人は、再発予防のためにLDL70以下を目指さなくてはならない。薬はマストだ。

⑦「家族性高コレステロール血症」を見逃してはいけない

 これは、遺伝子異常で血液中のLDLが細胞内に取り込まれず、血液中にたまる病気だ。小児の頃からLDLが高めで、心筋梗塞のリスクが、“家族性”でない人と比較すると13倍も高い。

「薬物治療がすぐ必要。最近小児でも薬物治療が許可されました」

 小児の健康診断では一般的に、コレステロール値が項目に入っておらず、見逃されている人もいる。家系に心筋梗塞や狭心症の人がいるようなら、検査した方がいい。

⑧中性脂肪だけが高ければ、nonHDLコレステロールがカギに

 LDLは基準値内だが、中性脂肪だけが高い場合、総コレステロールからHDL(善玉)コレステロールを引いた「nonHDLコレステロール」をチェック。130以下なら、中性脂肪が多少高くても心筋梗塞の心配はない。それより高ければ、中性脂肪を下げるために食生活の改善を。

⑨薬はやめられない

 高LDLは、食事より体質が大きく関わっている。食生活の改善で数値が下がる人もいるが、そうでない人もいる。

「薬で数値は下がりますが、体質は変わりません。飲み始めたら、やめられません」

 昨今、コレステロールに限らず薬全体への賛否両論が渦巻くが、薬によって高LDLから心筋梗塞へ移行する人は減っていることは確か。どちらの道を選ぶかは自分次第かもしれない。

スボラな人でも中性脂肪とコレステロールは下げられる?


中年になると健康診断で、中性脂肪が多い、悪玉コレステロールの数値が高いと指摘され、「脂質異常症」と判定されることも珍しくない。思いがけず、こう判定されて驚いた人も数知れず。

 脂質異常症は放っておくと、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす。将来を考えれば、判定を機に生活習慣を改め、健康な体を取り戻すべきだろうが、長年にわたって継続してきた生活習慣は、そう簡単に改めることができない。食事制限や運動に取り組んでも、長続きせず挫折してしまった……なんて経験をした人も多いだろう。

『スボラでも中性脂肪とコレステロールがみるみる下がる47の方法』(アスコム刊)は、ズボラな人でもすぐに実践できる改善策をまとめた一冊。著者は生活習慣病の治療と予防にかかわる専門医。

これまでの経験から、生活習慣病の人はズボラな人が多いということから、すぐ実践でき、長続きする改善策を提示している。メソッドを手順通りに進める厳格なものではなく、緩い感じで取り組めるが、これは著者の狙いとしていたことで、まさにズボラな人を対象にしている。

■早食いをやめるだけで、簡単にダイエットできる

 では、まず第1章を見ていこう。ここでは、食生活や食習慣を改善する方法をレクチャーしているが、目的としていることはウエイトコントロールだ。脂質異常症をはじめとする生活習慣病で悩む人の多くは太り気味だが、ズボラな人に食事制限やハードなダイエットなど続くはずがない。しかし著者は、誰にでも簡単にでき継続できる方法を提唱する。それは、早食いをやめること。その理由を、このように明かす。

「ウエイトコントロールの方法はいろいろありますが、私がいちばんおすすめするのは、早食いをやめること。ただ、それだけです。(中略)早食いは大食いのもと。

早食いを直せば、おのずと大食いも改善されていくので、今の段階においてカロリーや栄養素などの知識もいらなければ、あえて食事の量を変える必要もありません」(同著・第1章17-18ページより)

 ただ、どれだけのスピードで食べれば早食いになるかわからないと、改めるにしても心もとない。その点、本書では目安も提示している。目安は20分。脳の満腹中枢が「満腹になった」という信号を送り出し始めるのは、食事を始めてから20分後だということに由来する。

 20分以上かけて食事をする方法として著者が推奨するのが、ひと口10回噛むこと。30回も噛む必要はない。まったくハードだと感じないはずである。また、第1章で印象に残ったのが食事日記。自分の食欲のスゴさを自覚するのに役立つという。

「本当は食べているのに、食べていたこと自体を忘れていたり、5個食べたのを『2個くらい』と記憶がすり替わっていたり。さまざまなパターンがありますが、『自分が忘れていただけで、どこかで何かを食べている』という事実は、みなさんに共通しています。現在の自分は、過去の自分が食べたもので作られているのですから、食事の内容に目を向けることは重要なのです」(同著・第1章33-34ページより)

 食事日記は、著者のクリニックで脂質異常症をはじめ、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の治療にあたる際、必ず書いてもらっているという。日記に書く内容は、〈時刻〉〈献立〉〈量の目安〉〈どこで何をしながら〉〈どんな気分で〉〈空腹感(あり+なし?)〉の6項目。

書く量が多い印象を受けるが、著者によれば、まずは平均的な過ごし方の平日と週末から3日間選び、書くことをすすめる。これなら、軽い気持ちで取り組め、ズボラな人も挫折することなくできるだろう。

■1日1回の体重測定は、これ以上増量しないためのストッパー

 中性脂肪とコレステロールに特化した第2章、第3章は読んで確認いただくとして、第4章以降で述べられている食や健康に関する新習慣について触れておきたい。まず印象に残ったのが、1日1回の体重測定を日課にすることだ。これを日課とするべき根拠は、次の通りである。

「肥満と生活習慣病は切っても切り離せない間柄。『健康で長生きがしたい』と思ったら、ウエイトコントロールは一生続く長期戦だと理解してください。前日に食べすぎた日も、便秘の日も、むくんでいる日も、毎日歯を磨くように体重を測ります。体重が増えていると予想される日は、体重計に乗る前に葛藤があるでしょうし

、イヤな気持ちにもなるでしょう。しかしその状況から逃げず、体重計の数字から目をそらさなかったことは、今日より先の未来に、自制心として必ずプラスに働きます。1日1回の体重想定は、これ以上増量しないためのストッパーです」(同著・第5章124ページより)

 一時期、話題となった、レコーディングダイエットよりも簡単。最初は昨日より体重を増やさないことを目標に実行し、徐々に体重が増えたり減ったりするときに見られる傾向がつかめたら、少しずつ減らすことを目標にしていけばいいという。体脂肪率については条件による変動が大きいので、1~2カ月程度に1回測ればいいとのこと。「安定しない数値に一喜一憂して振り回されていてはストレスがたまります。不要なストレスにはかかわらないのが賢明です」(同著・第5章127ページより)と言うほど、ウエイトコントロールでは体脂肪率は重視していない。余計な神経を使わなくてもいいかと思うと、ウエイトコントロールも少しは気が楽になる。

 また、メタボ検診の結果を過信しすぎるな、というのも心強い。医師がこんなことを言っていいのか? と気になるが、理由を聞いて納得する人も多いだろう。その理由は、次のようなものである。

「メタボ検診では、ウエストのサイズを重要視していますが、私はこの基準に問題アリ、と考えています。なぜなら、メタボでウエストの基準値とされている男性85センチ以上、女性90センチ以上という数字には、身長差が考慮されていないからです」(同著・第6章162ページより)

 個人的にも、身長を考慮しないでウエストだけで決めているメタボの基準に疑問を感じていたが、やはり問題があったか! と唸ってしまった。では、何を基準にして健康体かどうかを判断すればいいのだろうか? それはアディポネクチンと呼ばれる、健康を守ってくれるホルモンの量で、おおよその目安として活用したいのが、ウエストと身長の比率。男女とも、ウエストが身長の半分以上になると、アディポネクチンは平均以下に減少している。著者が提唱する、アディポネクチンの減る基準(同著・第6章161ページに記載)にも引っ掛かっていれば、生活習慣病のリスクが充分にあるという。

 本書で紹介されている方法は、我慢を強いるようなものはなく、継続して取り組みやすいものばかり。加えて、食習慣を変えるコツや、健康な体づくりのための考え方なども紹介されているので、脂質異常症や生活習慣病で悩んでいる人はもちろんのこと、現在は問題なくても将来に備えておきたいという健康意識の高い人も、一読してみるといいだろう。

健康診断「B判定」が一番危ない! ひそかに病気が進行? 血清脂質、血圧、血糖値がB判定でも心臓病の危険が31倍に!?


 読者は健康診断をきちんと受けているだろうか。『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(奥田昌子/青春出版社)によると、健康診断でB判定をもらった人こそ、普段の生活習慣を見直し、自身の健康と向き合ってほしいという。B判定は経過観察という意味だが、この経過観察は「現状維持で良い」という意味では全くない。

B判定には「隠れ糖尿病」「隠れ高血圧」などの予備群がまぎれこんでおり、数年後には、B判定のうち4人に1人が糖尿病に、2人に1人が治療を必要とする高血圧に移行しているのだ。

B判定とは、病気のベルトコンベアに乗った状態であり、そのまま「現状維持」してしまうと、どんどんベルトコンベアの奥深くへ進み、病気になってしまう。本書は、健診医として20年間で20万人以上診てきた京都大学医学博士の奥田昌子氏が、B判定の恐ろしさと健康になるための方法を紹介している1冊である。

 メタボリックシンドロームを知らない方は少ないだろう。病気の総合デパートになってしまう不健康な体のことだ。メタボの診断基準は「内臓脂肪の蓄積に加えて、高血糖、脂質異常症、高血圧のうち、2つ以上あてはまる状態」だそうだ。上記の3つは、ちょっとばかり基準値を超える程度なら、経過観察ということでB判定が出る。

つまり、血糖値と血圧がB判定であり、内臓脂肪が蓄積されていたら立派なメタボなのに、B判定という安心にも似た診断結果によって、メタボという事実が薄れてしまう。「内臓脂肪の蓄積なし&全てA判定の人」と「内臓脂肪の蓄積あり&3つ全てB判定」の人を比べると、心臓病の危険が31倍にふくれあがるという。B判定の恐ろしさが伝わっただろうか。

 心電図がB判定の人も注意した方がいい。まず、心肥大と高血圧の人だ。心肥大とは、心臓の壁が分厚く硬くなった状態を指す。確かに心肥大は高血圧が引き金となるが、血圧がB判定程度で心肥大になるのは考えにくいそうだ。

別の心臓病の可能性か、もしくは「仮面高血圧」かもしれないという。「仮面高血圧」とは、起床したときだけ異常に高血圧になったり、仕事やストレスを感じた瞬間だけ異常に高血圧になったり、健康診断だけでは測れない高血圧の症状のことだ。「仮面高血圧」なら心肥大になる可能性も十分考えられる。

このB判定を放っておくと、悲しい人生の結末を迎えることになる。また、頻脈と貧血の人も注意すべきだ。貧血をなめている人が多いが、心臓は酸素不足を補うために必死になって拍動を増やし、酸素を全身に送り届けようとしている。頻脈であり、貧血の状態を続けると、やがて不整脈や動悸が起こるようになり、心臓の機能が低下して、最悪の場合、死に至る。貧血は、ありふれていながら正しい知識が広まっていない病気である。

 本書では、まだまだ恐ろしいB判定の事例を述べているが、キリがないので、今回はここまでとさせていただく。健康診断でB判定をもらった方は、ぜひ本書を手にした方がいい。もっと言うなら、健康診断すら行けていない人は、今すぐ受けに行った方がいい。医学を持たない素人が考える健康とは、とてもあいまいなもので、失わないと気づけないからだそうだ。

コレステロールの真実 摂取目標量撤廃のワケ


秋に健康診断を行う企業は多い。結果が気になっている人も多いのでは? 健診のなかでも、コレステロール値は引っかかる人が多い項目だ。今回は、コレステロールについて解説しよう。

■コレステロールの目標量がなくなったワケ

 「食事摂取基準」をご存じだろうか。これは、日本人が健康を維持・増進するために摂取するべき各栄養素やエネルギーの基準量で、厚生労働省により5年ごとに発表される。2010年版では、コレステロールの目標量は、成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満だった。しかし、2015年版では、コレステロールの摂取基準(目標量)がなくなった。

 「コレステロールは体内で合成できる脂質で、食事で摂取するコレステロールの影響は少ないということが分かってきたのです。摂取目標量を決める科学的根拠が少ないため、最新版の食事摂取基準では、コレステロールの目標量がなくなりました」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)

 食事からの影響が少ないというのは、具体的にはどういうことなのだろうか。
 実は、私たちは肝臓で多くのコレステロールを合成している(体重50kgの人で1日当たり600~650mg、※1)。これは、意外に知られていない。
コレステロールは、細胞膜や胆汁酸、ホルモン、ビタミンDをつくる材料になる成分で、毎日新たに一定量必要になるため、食事だけに頼らなくていい仕組みになっているのだという。

 「食事でとったコレステロールのうち吸収されるのは、体内でつくられるコレステロールの3分の1~7分の1程度にすぎません。また、コレステロールは食事でとる量が少なければ体内で多く合成され、食事でとる量が多ければ、少なく合成されます。常に一定量が保たれるようになっているため、食事からの影響は少ないのです」(上西氏)

 つまり、「食事摂取基準」からコレステロールの摂取目標量がなくなったのは、健康な人においては、食事中のコレステロールの摂取量と血中コレステロール値の相関を示す、十分な科学的根拠がないことが分かったためだ。 ※1 Di Buono M, Jones PJ. Beaumier L, et al. Comparison of deuterium incorporation and mass isotopomer distribution analysis for measurement of human cholesterol biosynthesis. J Lipid Res 2000;41:1516-23.

■今、異常がなくてもとり過ぎに注意したい人も

 コレステロールを多く含む食品として、もっともよく知られているのは卵だ。鶏卵1個には210mgのコレステロールが含まれていて、確かに多い。かつて、卵は1日1個までと常識のようにいわれてきたため、それを守っている人も多いだろう。 「体内でコレステロールを合成する量や使われ方には個人差があり、遺伝も影響します。

つまり、コレステロールを食事でどれくらいとるべきかは、人によるということ。健康な人はむやみに制限する必要ありません。しかし、既に高コレステロール血症と診断されている人や、親が高コレステロール血症の人は、とり過ぎには注意したほうがいいでしょう」(上西氏) 日本人間ドック協会の調べによると、高コレステロールは、健診で引っかかる人が非常に多い項目だ。しかも、近年急増している。年代的には、40代、50代は要注意だ。

生活習慣病関連項目の異常頻度

 そもそも、コレステロールは体内で合成されるため、摂取不足で欠乏症が出ることはない。つまり、コレステロールは本来たくさんとらなくてもいい栄養素だといえる。制限がなくなったからといって、卵をやみくもに、例えば1日に3個も4個もというペースで毎日食べ続けていいかというと、そういうわけでもなさそうだ。

 「卵はコレステロールが多いため、コレステロールの摂取量を制限している人は、卵を食べなければ上限が守りやすくなります。もっとも、卵は血液中のコレステロール値に影響しないという報告もあります。



これは、卵黄に含まれるレシチンに、LDL(悪玉)コレステロールを減らして、HDL(善玉)コレステロールを増やす働きがあり、余分なコレステロールが血管に沈着するのを防ぐためと考えられています」(上西氏)卵はなにかとやり玉に上げられがちだが、コレステロールが多い食品はなにも卵だけではない。卵は安くて栄養価が高い食品であるという側面もあることは覚えておきたい。
.
●食事がコレステロール値に与える影響は少ない
●とはいえ、高コレステロール食品のとり過ぎには注意したほうがいい(特に、高コレステロール血症の人や親が高コレステロール血症の人)
●卵は適量摂取を心がける

 これらの点をふまえて、食生活を見直してみてはいかがだろうか。

上西一弘(うえにし かずひろ)さん女子栄養大学栄養生理学研究室教授徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。

専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを務める。

【ドクターQ&A】高コレステロール血症は数多くのNEATでエネルギー消費を


 【Q】健康診断で高コレステロール血症を毎年指摘されています。食事は自分なりに気を付けているつもりですが、運動は忙しいために全くしておりません。どうしたらよろしいでしょうか?(40代男性)

 【A】高コレステロール血症は基本的に症状がありませんが、高血圧や糖尿病と同様に将来の心臓病や脳卒中に至る危険性が高くなることから高値の場合には治療が必要となります。

 治療の3本柱は食事・運動・薬ですが、忙しい現代人において質問者の方のように運動する時間を作るのは非常に難しいことです。このため皆様にお勧めしているのが、日常生活にちょっとした工夫を取り入れることで、エネルギー消費を増やす方法です。

 具体的には通勤での階段の昇り降りや、電車内で立って移動すること、こまめな家事などを1日のうちに数多く行うことです。この運動以外での身体活動によるエネルギー消費をニート(※NEAT)と呼びます。仕事につかない若年層の呼び名であるニート(NEET)とは似て非なるものです。

 実際、過去の論文では痩せている方は太っている方よりも1日平均で約2・5時間多く立っていたとの報告があり、これをカロリーに換算すると約350キロカロリー、かけそば1杯分とほぼ同じエネルギー量になります。

 また、一般の方における1日の消費カロリーは運動よりもニートで消費するカロリー量の方が多く、多い人では1日最大約2000キロカロリー程度、余分に消費するとされています。リビングやお風呂、トイレなどの掃除、スーパーでの買い物、子供と公園で遊ぶことなどは、カロリーを消費するのみならず、家族にも感謝されることから一石二鳥です。

 このように一つずつの動作は軽くても、活動の頻度を増やすことで1日の消費エネルギーを増やすことができますので、ご自分のライフスタイルに合わせて少しずつでも実践して頂けたらと思います。

 (※)ニート 非運動性熱産生、Non Exercise Activity Thermogenesisを略してNEAT。特別な運動ではなく、日常生活に伴って消費するエネルギーのこと。

 ◆回答者プロフィール 荒木正(あらき・ただし)03年、東邦大学医学部卒。東邦大学医療センター大橋病院などに勤務後、16年に東京都江東区に亀戸内科クリニック開設。循環器・糖尿病内科医として地域に密着。総合内科専門医。循環器専門医。

コレステロールの「正常値」は決められない? 高い方が良いケースも


 血液検査でコレステロール値を指摘されたことがある人は多いだろう。だが、見解は医師によってさまざまだ。東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは「コレステロール値は下げなくていい」と語る。

「新型コロナに限らず、コレステロール値が低い人は感染症にかかりやすいのです。世界的な医学雑誌『ランセット』に掲載された新型コロナに関する報告では、小規模な調査ではありますが、新型コロナに感染した人の総コレステロール値は、そうでない人と比べて約50mg/dLも低いことが明かされている。“悪玉”と呼ばれるLDLコレステロールの値も、“善玉”であるHDLコレステロールの値も低かったのです」

 感染した場合、コレステロール値は予後にも影響するという。

「同誌の報告で、血液中の総コレステロール値は感染して症状が悪化するほど下がり、回復すると上昇することもわかりました。なぜなら、炎症で壊れた細胞を修復するためにコレステロールが使われるからです。つまり、もともと総コレステロール値が高い人の方が、感染した場合に回復するための体力を持っているといえます」(大櫛さん)

 コレステロールは脂質の1つであり、細胞膜やビタミンDのもとになる体に必須の栄養素だ。そのため、コレステロールが減少している状態は栄養不足を示しているとも受け取れる。

 コレステロール値は、高齢になるほど明らかに減少してしまう。

「高齢になると食べ物を消化吸収する体の機能が低下し、栄養状態が悪くなりやすいためです。栄養状態が悪ければ筋肉が衰えて体力もなくなっていくし、免疫力も低下して心筋梗塞のリスクも高まります。

 逆に、年を取っても動物性食品を食べている人は、コレステロール値も維持されて、栄養状態もいい。女性の方が男性よりも長生きなのは、コレステロール値が高いからだとも考えられます」(大櫛さん)

 高齢になればなるほど、コレステロール値は高くすることを目指した方がいいのかもしれない。

 一方で、コレステロール値が高いと健康問題を引き起こすという意見もある。日本動脈硬化学会は「低ければ低いほどいい」という見解を示しており、LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は高コレステロール血症と診断される。横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長で糖尿病専門医の市原由美江さんも、この方針に賛同する。

「女性の場合、50才前後になると女性ホルモンが減少し、コレステロール値が極端に高くなる人が大勢います。正常値は140mg/dLですが、ほかに疾患がある人は120mg/dL以下に抑えた方がいいこともある。たとえ健康な人でも、160mg/dLを超えたら動物性の脂質の摂取を控え、運動量を増やすなどの生活改善を行うべきです」(市原さん)

 場合によっては、薬で数値を下げる必要もある。しかし、血圧と同様に、薬でコレステロール値を下げるのは最終手段だと考えたい。大櫛さんが言う。

「日本でよく使われるタイプの薬『スタチン』は、糖尿病になるリスクを最大で3.1倍も高めます。がんや出血性の脳卒中などのリスク、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症率を10〜100倍上げるという報告もある。のんでも効かないだけの薬ならともかく、体の害になる可能性がある薬はなるべく避けた方がいい」

 自分はコレステロール値を上げるべきか、下げるべきか、気になる人は医師に相談してもいいだろう。

※女性セブン2022年1月6・13日号

コレステロール、γ-GTP…「健康基準値は気にする必要ない」説の真意


 健康診断の結果表を見ると、検査項目ごとに「基準値」が設定され、「正常」「要経過観察」「要精密検査」など判定が記されている。それを見ながら、「今回は良かった」「ああ、もうダメかも」と一喜一憂する。


 だが、基準値の意味を正しく知れば、判定に振り回されることはなくなる。東海大学医学部付属東京病院院長の西崎泰弘医師は、こう解説する。


「『検診』と『健診』の違いを理解していない人が多い。検診は病気の発見、健診はリスクの発見のためにするもの。健診の基準値は正規分布の上下2.5%の人を除外した数値で設定されるため、少々はずれたからといって、即病気になるわけではありません」


 血液検査で指摘されがちなのがコレステロールで、高いと脂質異常症を引き起こすとされる。現行の指標はLDL(悪玉)コレステロールが120mg/dl以上なら保健指導、140mg/dl以上なら受診勧奨となる。


 だが、長年、健康基準値を研究調査してきた東海大学名誉教授の大櫛陽一氏は、「あまり気にする必要はない数値」だという。


「コレステロールは細胞膜や神経細胞、ホルモン、骨を作るビタミンDなどの原料として身体に必須で、そのコレステロールを細胞に運ぶのがLDLコレステロールです。この値が減ると、これらの必須要素が身体に行き渡らなくなる。60代男性なら180までは問題ない」


 コレステロールとセットで、動脈硬化などの原因とされるのが中性脂肪だ。150mg/dl以上で保健指導値とされる。


「数値は、前日の食事内容を強く反映するので、1回の検査の数字で一喜一憂する必要はありません。厳密には10時間くらい空腹にしないといけないのですが、水やお茶以外の飲み物を直前に飲んだだけで基準値からはずれます」(西?医師)


 大櫛氏は、中性脂肪よりも別の指標に気をつけるべきだという。

「中性脂肪は一日のなかでも大きく変化します。毎年の検査で250を超えていても、肝機能検査のALT、ASTに異常がなければ、さほど心配する必要はありません」


 肝機能の検査についてはγ-GTPを気にしがちだが、重く捉える必要はないという。

「γ-GTPは飲酒量に比例する数値で、基準値の51を超えたならアルコールの摂取量を見直せばいい。肝臓は再生力の強い臓器なので早期の障害なら自ら治癒します。治療法のなかには肝臓の数値に影響を与えるものもあるので、心当たりのある人は医師に相談しましょう」(大櫛氏)


 肝臓や胆道に異常がないかを調べる総ビリルビンの数値も、多少の基準値超え程度ならあまり気にしない方がいいという。「総ビリルビンの基準値は厳しすぎて、日本人の1~2割は基準値から外れてしまう。指標として見直しが必要ではないか」(西崎医師)


 糖尿病の診断基準となる血糖値については、日本糖尿病学会が空腹時血糖値は110mg/dl未満、Hb(ヘモグロビン)A1cは5.5%以下を正常値とし、健診の基準値にもなっている。 HbA1cが基準値を超えていた場合、「軽く考えてはいけない」という。


「HbA1cだけが高い場合は食後高血糖になっていて、糖尿病の前段階が疑われます。この段階で糖質制限など食生活を見直せば改善を見込めます」(大櫛氏)

 

一方、空腹時血糖値については数値だけに囚われてはいけない。

「空腹時血糖値については、採血前の行動の影響を受け、6時間前から影響を受けると考えるといいでしょう。結果が悪くても数値だけで判断するのではなく、食事や運動量なども振り返って、数値を受け止めないといけません」(西崎医師)※週刊ポスト2022年1月1・7日号

高齢でもLDLコレステロールを下げると心血管病を防げる コロナ禍で改めて注目


長期にわたるコロナ禍で、生活習慣病の管理があらためて注目されている。高血圧、高血糖、高コレステロールといった生活習慣病を抱えていると重症化しやすくなるうえ、日頃の活動量が低下していることでそれらの管理がおろそかになり、心血管疾患の発症リスクの上昇が懸念されている。中でも、高齢者におけるLDL(悪玉)コレステロールに関する議論が活発だという。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

◇ ◇ ◇

コレステロールは全身の細胞膜、ホルモン、胆汁酸などの材料で、重要な役割を果たしている。肝臓でつくられたコレステロールは血液で全身に運ばれ、使われなかった分は再び血液によって肝臓に戻ってくる。このとき、余分なコレステロールが通り道である血管の内側にたまってしまう。

「善玉」といわれるHDLコレステロールは、血管の内側に沈着したコレステロールを取り除いて肝臓に戻る働きを担っているが、LDLは運ぶだけしかしない。そのため、血液中のLDLが増えて値が高くなると、使われないコレステロールが血管の内側に沈着し、動脈硬化を起こす原因になる。

動脈硬化が進むと、血管の弾力性が失われて硬くなり、血管の内側が狭くなって血液が流れにくくなる。すると、脳卒中、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、末梢動脈疾患といった心血管疾患を発症しやすくなってしまう。

「LDLは食生活の見直しや運動などで数値を改善することも可能ですが、難しい場合はスタチンなどのコレステロール降下薬による薬物治療が行われます。ただ、75歳以上の高齢者では有用性が低いとされ、米国心臓病学会と米国心臓協会のコレステロール管理ガイドラインでは高齢者のLDLコレステロール低下療法は推奨度が低く扱われていました。動脈硬化は数十年単位で進行するため、ある程度進んでしまった高齢者ではLDLを下げてもそれほど効果が見込めないと考えられていたのです。一方、欧州心臓病学会と欧州動脈硬化学会の脂質異常症ガイドラインは、高齢者の治療を支持しているなど、いまも議論が続いている状況です」

■画像診断検査を活用すべき

そんな中、最近になって「LDL低下療法は、75歳以上の高齢者でも75歳未満と同じように心血管イベントの抑制に効果的」とする研究が世界的な医学誌「ランセット」で報告された。米ハーバード大学医学大学院の研究チームが、24の試験を解析した「CTTC」と、5つの単独試験を合わせた6つの研究論文を対象にメタ解析を実施。その結果、高齢者における主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞などの急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術)のリスクは、LDL値が1mmol/L低下すると26%低かった。これは、75歳未満の場合(15%のリスク低下)と有意差がなく、高齢者でもLDLを下げるコレステロール低下療法は有益であることがわかった。

「この研究では、スタチン治療とスタチン以外のコレステロール低下療法についても解析していて、どちらも主要血管イベントを有意に抑制していました。論文の著者は、『高齢患者におけるスタチン以外の薬物療法を含むコレステロール低下療法の使用に関するガイドラインの推奨を強化するもの』としています」

日本でも、75歳以上の高齢者についてはLDLコレステロール低下療法などによる厳格な管理は強く推奨されてはいない。しかし、新たな海外の研究を参考にして、今後は高齢者のコレステロール管理についてきちんと確立すべきだという。

「日本では、LDLコレステロールの基準値は140(㎎/デシリットル)未満とされています。しかし、実際には160でも血管に問題はない人もいて、個人差があります。米国のガイドラインを見ると、LDLの値だけでなく血圧などのほかの因子によってリスクが変わってくるため、冠動脈CT検査で動脈の石灰化を確認して判断するよう勧めています。日本でも同様にLDLの値だけを見て判断するのではなく、冠動脈CTや頚動脈エコー検査などの画像診断を併用して動脈硬化の程度を確認したうえで、高齢でも薬物治療が必要なリスクの高い人を選別し、コレステロールの管理を実施するべきだと考えます」

高齢者の場合、コレステロール管理のための食事指導を行うと、逆に食事のバランスが崩れて栄養状態が悪化してしまう傾向があるという。そのため、高齢者には食事指導を行わずにスタチンを使ったほうが効果的なケースもある。

「ただ、スタチンには筋肉痛や関節痛、まれに筋萎縮や横紋筋融解症といった副作用を起こす可能性があるため、定期的な検査で効果と副作用の程度を確認したうえで、適切に使用する必要があります」

高齢でもLDLの値が心配な人は一度検査を受けてみてはどうか。

コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック


※写真はイメージです© AERA dot. 提供 ※写真はイメージです

「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。まずは、コレステロールや中性脂肪の値を知ることがセルフケアの第一歩。女性は年齢に応じた基準値があるのでチェックしてみましょう。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。今回は、前編・後編の前篇をお送りします。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載)

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動脈硬化は他人事じゃない

 女性ホルモンのエストロゲンには、血管が正常に機能するのを助ける働きと共に、LDLコレステロールを減らすなど、動脈硬化を抑制する作用があります。そのためエストロゲンが多く分泌されている20~30代までは、特別なケアをしなくても血管は比較的しなやか。これは30代から動脈硬化が見られる男性とは明らかな違いといえます。

 ところが女性も閉経を迎え、エストロゲンの分泌が止まると共に、血管の硬化が急速に進みます。血液中を流れる脂質にはコレステロールや中性脂肪がありますが、これまでエストロゲンによって抑えられていたそれらの数値も自然と高くなり、血液の流れを妨げることに。動脈硬化の進行に大きく影響してしまいます。

 さらにLDLコレステロールが血管の内壁にたまったものが、やがてドロドロの粥状のこぶのようになります。これがプラークです。プラークが破れると、そこに血栓ができて血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞の発症につながるのです。

「閉経前の女性が動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症する割合は低く、男性の約5分の1といわれています。ところが閉経後の55歳くらいから発症率はぐんとアップしてしまいます」と天野先生。女性は閉経後、意識的な血管ケアが必要不可欠となるわけです。

 閉経前にはエストロゲンによって動脈硬化から守られている女性たちでも、「その効果を帳消しにしてしまう危険因子がある」と天野先生。それが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が低下。血管は硬くなり、動脈硬化が進行します。喫煙をしている女性は吸っていない人より、急性心筋梗塞のリスクが8.2倍も高まることが分かっています。

コレステロールや中性脂肪の数値をチェック

 コレステロールや中性脂肪は増え過ぎると血液の流れを悪くし、血管にも悪影響となります。でも、これらの脂質は決して健康の敵ではありません。細胞膜やホルモンの原料となったり、体を動かすエネルギー源となったりする大事な要素なのです。

 女性の場合は、閉経後に急に脂質の数値が高くなった方もいるでしょう。でも、慌てないで。女性の体の変化に対応した基準範囲があるのです。

「そもそも女性と男性ではコレステロールや中性脂肪の検査値が違って当然。それなのに、これまでは男性も女性も同じ値で見ていました。また、女性はエストロゲンの分泌量が年齢で変わるため、年齢によっても基準範囲は変わります」と天野先生。女性が参考にしたいのは、下記の男女・年齢別に分けた基準範囲です。なお、総コレステロールとは、LDLコレステロールやHDLコレステロールなどを合計した血液中のコレステロールの総量です。下記の基準ではHDLコレステロールの基準範囲は示されていません。

更年期を迎えたら、全身をくまなく検査したい

 エストロゲンの分泌が減少すると循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整している自律神経も乱れやすくなり、体のあちこちにトラブルが起こるようになります。よくないのは、不調があっても、「更年期だから仕方ない」と放っておいてしまうこと。実は脳血管障害の症状だったケースもあるそうです。そこで先生は、「女性の体がダイナミックに変わる節目の50歳あるいは閉経を機に、頭から足の先まで自分の体の状態をきちんと検査することが大事」と提案します。

 栄養素や酸素を行き渡らせる血液の流れが滞ると、体のどこかに支障を来します。全身を検査することは、全身の血管に詰まりがないか、動脈硬化がないかの確認でもあるのです。健康診断だけでは十分とはいえないため、自費にはなりますが病院やクリニックで行っている個別検診で、詳細に調べることをおすすめします。

こんな検査を受けておこう

 健康診断や特定健診で行う身体測定(身長・体重・BMI・腹囲を測る)や血液検査、血圧測定(血圧脈波検査)に加えて、より精密な検査が行える個別検診。それによって、健康診断では見落とされた疾患や異常が見つかることも。女性特有の病気を網羅した検診メニューを用意しているクリニックもあります。

<脳検査>MRI(脳実質撮影)、MRA(脳血管撮影)などで脳血管疾患を調べる。

<循環器検査>心臓や血管の状態をチェック。動脈硬化や心血管疾患の有無を調べる。

頸動脈エコー検査

胸部エコー検査

胸部X 線検査

冠動脈CT 検査

心電図

<血液検査>女性に多い甲状腺機能障害や膠原病、関節リウマチの素因の有無を調べる。

甲状腺機能

抗核抗体

リウマチ因子

炎症反応

ホルモンチェック

腫瘍マーカー

<眼科検査>眼底検査で高血圧や動脈硬化の進行、糖尿病の発見、眼球の病気の有無をチェック。

<婦人科検査>子宮や卵巣のがん、乳がんなど、40代以降にリスクが高くなる病気を検査。

子宮頸がん検査

子宮体がん検査

経腟超音波検査

乳房視触診

マンモグラフィー

乳房超音波検査

<その他>

骨密度検査

PET-CT 検査

更年期の悩みはどこで相談できる?

 更年期に起こる心身の不調は、診療科を特定できないことが多いもの。そんな時は女性の全身症状をトータルで診察してくれる「女性外来」への受診をおすすめします。女性外来の先生は呼吸器、内分泌、循環器などと専門分野は違いますが、性差医療について勉強しているため、メンタル面も含めいろいろと相談にのってくれるはずです。女性外来の受診をきっかけに、かかりつけ医をもつとよいでしょう。

全身を検査する費用はどのくらい?

 健康診断や特定健診の費用は無料か、有料でも低額です。全身を診る個別検診の場合、基礎検査を中心とした日帰りの費用は平均3~8万円くらい、泊りがけでMRIやMRA、PET-CT(※)、エコー検査を行って、より詳しく検査する場合は10万円以上かかることも。個別検診は健康保険の適用外なので、費用は全額自己負担。ただし居住地の市町村や所属している健康保険協会、健康保険組合、あるいは契約している保険会社によっては、補助金や助成金、割引サービスが受けられる場合があるので、問い合わせてみましょう。

※PET(陽電子放出断層撮影)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を融合させた検査。がんの発見に役立つ。

<後編>「硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法」に続く

監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生

一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。

セルフドクターHP

悪玉コレステロールの値を下げたい… では、減らすといい食べ物は?


この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!

【問題】悪玉コレステロールと呼ばれる「LDLコレステロール」を下げるために、食べる量を減らすといいとされているのは次のうちのどの食品でしょう。当てはまるものをお選びください。

(1)動物性脂肪の多い食品

(2)糖質の多い食品

(3)コレステロールの多い食品

(4)プリン体の多い食品

■答えと解説

正解は、(1)動物性脂肪の多い食品と(3)コレステロールの多い食品 です。

「ご飯などの炭水化物を控えたら中性脂肪は下がったが、LDLコレステロールの値は下がらない。LDLコレステロール値は一体どうすれば下がるのか」。こういった疑問を抱いている人は少なくないようです。

千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授の横手幸太郎さんによると、肥満や、糖質、アルコールは中性脂肪に直接影響を与えます。ですから、ご飯の食べ過ぎなどで太ると中性脂肪値は上がるし、お酒を飲むと上がる、また、糖尿病があると上がります。しかし、LDLコレステロールには遺伝的な要因が関係しており、同じように生活していても、数値が高い人とそうでない人がいます。肥満とも関連するものの、やせていてもLDLコレステロールが高い人はいます。そのため、コレステロールは生活習慣の改善だけでは下がりにくいという特徴があります。

とはいえ、生活習慣の改善が、全く効果がないわけではありません。「生活習慣でコレステロールを下げようと思ったら、まず卵などコレステロールの多い食品を控えること。また、肉類や乳製品といった動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸もLDLコレステロールを増やす作用があります」と横手さん。つまり、動物性脂肪(飽和脂肪酸)とコレステロールの多い食品を減らすのがLDLコレステロール対策として有効ということです。

© NIKKEI STYLE

■「コレステロールの摂取量を減らすことに意味はない」は誤解

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、2015年版でコレステロールの上限値がなくなったため(※2020年版では「脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい」と記述された)、コレステロールの摂取量を減らすことに意味はないと思っている人もいるようですが、それは誤解です。

「食事摂取基準から上限が一時期なくなったことで誤解している方が多いのですが、上限にあまり神経質にならなくていいのはあくまで動脈硬化の心配がない人、コレステロール値が高くない人だけです。LDLコレステロールが高い人がたくさんコレステロールをとれば、さらに数値が上がる可能性があります。そのため、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017 年版』(日本動脈硬化学会)では、高LDLコレステロール血症の人はコレステロールの摂取量を1日200mg未満にすることで、LDLコレステロールの低下効果が期待できるとしています」(横手さん)

ただし、食事に含まれるコレステロールを減らすのは想像以上に「がんばる」必要があるようです。 「『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』によるとコレステロールは鶏卵1個(ゆで、60g)に228mgも入っていますから、毎日卵を食べていたら、それだけで超えてしまいます。本当にコレステロールを減らそうと思ったら、卵は週に1~2個に抑えなければいけません。それでも必ず効果があるとは言えないのがもどかしいところです。繰り返しになりますが、体重を減らす、糖質を減らすと中性脂肪は下がりますが、コレステロールは個人差が大きいのです」(横手さん)

コレステロールは7~8割が体内で作られますが、それも食事だけではなかなか下がらない理由の一つと考えられます。しかし、「それでも食事制限をすれば、残りの2~3割分の効果はあります」と横手さん。コレステロールが高い人は、まず生活習慣を改善してみて、効果が不十分なら薬も併用することが大切です。

■コレステロール摂取量は「かなり」減らさないと効果が出にくい

もう一つ、コレステロールを制限してもLDLコレステロールが下がらないのは、「制限の程度」が足りないケースも多いと考えられる、と横手さんは指摘します。

「食事からとる1日のコレステロール量が0~100mgだと、LDLコレステロール値にはほとんど影響がありません。200~400mgになるとLDLコレステロールが上がってきます。ところが400mg以上になると、500mgとっても、600mgとっても、LDLコレステロールはほぼ横ばいになってそこからは上がらなくなります。つまり、今まで800mgとっていた人が500mgや600mgにしてもあまりLDLコレステロールの数値は変わらないけれど、600mgとっていた人が200mgにすると減ってくる可能性があるのです。これは1980年代の時点で分かっています」(横手さん)

2019年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人(成人)の1日のコレステロール摂取量は平均335mgです。コレステロール低減効果が期待される200mg以内にするには、「少し減らす」だけでは足りず、「かなり減らさないといけない」ということです。まずは主菜や間食でコレステロールを多く含む食品を避けるなどの工夫をしましょう。

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(図版制作 増田真一)

この記事は、「『LDLコレステロールを下げるには?』『糖質と油、どっちを控える?』名医が回答」https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/18/020200005/061400110/(伊藤和弘=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2021年10月25日付記事を再構成]

意外と知られていない「コレステロール値を下げる食品」5つ


健康をめぐる最新のエビデンスや、様々な情報が各国で報じられています。この記事では、M3 USAが運営する米国医師向け情報サイトMD Linxから、米国医師から特に反響の大きかった健康トピックスを翻訳してご紹介します。

※この記事は、M3 USAが運営する米国医師向け情報サイトMDLinxに2021年1月11日に掲載された記事「5 foods you didn’t know can help cut cholesterol」を自動翻訳ツールDeepLで翻訳した記事となります。内容の解釈は原文を優先ください。

CDCによると、米国の死因の第1位は依然として心臓病です。COVID-19の順位は上昇しており、CDCの暫定データによると、2020年には31万6,000人から43万2,000人のアメリカ人が死亡するとされていますが、米国では毎年65万人以上の人々が心臓病で命を落としています。

コレステロール値を健康に保ちたいなら、ベーコンや卵の食べ過ぎに注意することはよく知られていますが、では、コレステロール値を正常に保つのに役立つ食品はどうでしょうか?

コレステロール値が高いと心血管疾患の危険因子になることはわかっています。また、コレステロール値を下げるために制限すべき食品として、ベーコンなどの脂肪分の多い肉類、卵、フルファットの乳製品などを知っている人は多いでしょう。しかし、逆に、コレステロールを下げるのに役立つ食品はあるのでしょうか?

コレステロールには、低比重リポ蛋白質コレステロール(LDL)と高比重リポ蛋白質コレステロール(HDL)の2種類があることを覚えておいてください。LDLは、動脈壁に蓄積して心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性があるため、しばしば「悪玉」コレステロールと呼ばれています。

一方、HDLは「善玉」コレステロールと呼ばれています。HDLはLDLを血液中から取り除き、肝臓に移送して分解する働きがあるからです。したがって、LDLコレステロールの増加を招く食品を制限し、HDLコレステロールを多く含む食品を食事に取り入れることが健康への近道です。

もちろん、当たり前のことですが。野菜、葉物野菜、果物、ベリー類を多く含む食事がコレステロール値の低下に役立つことは、研究結果を見るまでもなくご存知でしょう。しかし、意外と知られていない5つの食品が、コレステロール値を下げ、心血管疾患から体を守ってくれることをご紹介します。

チョコレート
朗報です。夕食後にこっそり食べているチョコレートは、実は心臓の健康に役立つかもしれません。British Journal of Nutrition誌に掲載された研究によると、チョコレートには心血管の健康に役立つ成分が数多く含まれており、特にフラバノールがその一端を担っているとのことです。

「カカオフラバノールが心血管の健康に重要な貢献をしていることを示す科学的データは、急速に増え続けている」と著者は書いています。「今回の研究結果は、チョコレート摂取と心血管代謝因子との良好な関連性を拡張し、毎日のチョコレート摂取とインスリン感受性との逆相関の証拠を追加するものである」。

ココア製品にはフラボノイドが豊富に含まれています。フラボノイドはポリフェノールと呼ばれる化合物のグループに属し、血圧や心血管疾患のリスクを軽減する働きがあります。Free Radical Biology and Medicine(FRBM)誌に掲載された研究では、ココアに含まれるポリフェノールが「善玉」コレステロールのレベルを高める可能性が示されています。

しかし、もしあなたがチョコレート好きなら、どんな種類のチョコレートを食べているのか注意する必要があるでしょう。FRBMの研究では、ホワイトチョコレートとダークチョコレートの摂取効果を比較し、ホワイトチョコレートではHDLコレステロールがわずかに減少し、ダークチョコレートではHDLコレステロールが増加することがわかりました。

これは他の多くの研究でも支持されており、糖分が少なくカカオ含有量の多いダークチョコレートを適度に摂取することで、心血管疾患のリスクを下げることができると結論づけられています。

にんにく
ニンニクを食事に取り入れる理由はたくさんあります。風味の良さだけでなく、様々な研究により、ニンニクの摂取が心血管疾患の予防に役立つことが示されています。

研究者たちは、ニンニクがLDLコレステロールの低下、血圧低下による高血圧対策、血小板凝集の抑制など、心血管疾患のリスクを低減させることを発見しました。ある研究レビューでは、ニンニクのサプリメントは、高血圧やわずかに上昇したコレステロールの補完的な治療法として、また免疫力を刺激するものとして考えられると結論づけています。

一番の利点は?にんにくの摂取量をそれほど増やさなくても、効果が得られるかもしれません。ある研究では、1日にニンニク1片の半分から1片を食べると、コレステロール値が約10%低下すると報告されています。

豆類
コレステロール値を下げるためには、豆類が一番の味方です。ひよこ豆、レンズ豆、乾燥豆などの豆類は、高タンパクなだけでなく、血液の健康増進にも役立つことが、Canadian Medical Association Journalに掲載された研究で明らかになりました。

26件の食事研究のレビューでは、豆類の摂取が心血管アウトカムに影響を与えるかどうかを見極めるために、豆類の摂取が脂質レベルに及ぼす影響を分析しました。その結果、1日平均約130gの豆類を摂取する食生活では、LDLコレステロール値が有意に低下することがわかりました。この論文の著者は、豆類を食生活に取り入れることで、コレステロール値を下げることができると結論づけています。

また、American Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された21件の試験のレビューでは、食事に豆類を多く取り入れることによる減量効果が分析されています。研究者たちは、1日1食分の豆類を摂取すると、6週間の間に参加者の体重が大幅に減少することを発見しました。また、いくつかの試験結果から、パルス類の摂取は体脂肪の減少にも関係することが示唆されました。肥満は心臓病を含むいくつかの病気の危険因子であることを考えると、豆類が予防につながる可能性があることを示しています。

お茶
お茶のさまざまな健康効果はよく話題になりますが、お茶を飲むことでコレステロール値を下げることができるという研究結果があることをご存知ですか?

ここで重要なのは、お茶に含まれるフラボノイドや抗酸化物質の一種である「カテキン」です。Europe PMCに掲載された、ラットを使った研究によると、お茶のカテキンは血中コレステロール値を下げ、肝臓や心臓などの場所にコレステロールが蓄積されるのを減少させる効果があることがわかっています。研究者たちは、カテキンが脂質の乳化、加水分解、ミセル化を妨害する可能性があることを発見しました。

欧州PMC誌の記事によると、ヒトを対象とした研究で、緑茶の摂取がLDLコレステロールの低下と関連しているのは、このためと考えられます。このように、研究者たちは、緑茶が心血管疾患のリスクを低減するのに役立つのではないかと仮説を立てている。

ナスとオクラ
ナスとオクラは、低カロリーの水溶性食物繊維を含んでおり、コレステロール値を下げる効果が期待できます。いくつかの研究によると、これらの粘性食物繊維は、総コレステロール値を3~7%低下させる効果があるそうです。

さらに、オクラの種と皮の両方がコレステロールの抑制に役立つという研究結果もあります。ある研究では、オクラの種のサプリメントを加えると、ラットのLDLコレステロールが大幅に減少することがわかりました。また、別の研究では、オクラの皮の抽出物は、体内での吸収を遅らせる働きにより、コレステロール低下作用を示すと結論づけています。

動物を使った研究では、ナスにはコレステロール値を調整する効果もあるとされています。

健康診断で「コレステロールや中性脂肪が高い」結果…健康への影響や対策は?


健康診断で「脂質」に異常があったら?© オトナンサー 提供 健康診断で「脂質」に異常があったら?

 健康診断の脂質検査で「コレステロールや中性脂肪の数値が高い」と指摘され、気になった人もいると思います。コレステロールや中性脂肪の数値が高いと、健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、脂質検査でC判定(要経過観察)やCより悪かった場合、どのような対策が求められるのでしょうか。脂質検査の基準などについて、内科医の市原由美江さんに聞きました。

【表】あなたは大丈夫? コレステロールや中性脂肪の診断基準

動物性脂肪や卵の摂取控えめに

Q.そもそも、コレステロール値や中性脂肪値が高いと、どのような病気を引き起こす可能性があるのでしょうか。

市原さん「コレステロール値が高いと動脈硬化が進みやすいので、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など、血管が細くなることで引き起こされる病気のリスクが上がります。また、中性脂肪値が高いと内臓脂肪が蓄積され、肥満の原因になるほか、脂肪肝へ進展する恐れがあります。これらは糖尿病のリスクになりますし、脂肪肝は肝臓がんのリスクにもなります。

一方で、低ければいいというものでもなく、中性脂肪は体内のエネルギー源になるので、数値が低過ぎる場合、倦怠(けんたい)感などの症状が出る人もいます。コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸の原料であり、体に必須の成分です」

Q.脂質検査の項目にある「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「総コレステロール(TC)」「non(ノン)-HDLコレステロール」のそれぞれの違いについて、教えてください。

市原さん「LDLコレステロールは『悪玉コレステロール』と呼ばれ、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがありますが、過剰になると動脈硬化を引き起こします。HDLコレステロールは『善玉コレステロール』と呼ばれ、余剰なコレステロールを回収する働きがあるので、数値が低いと問題があります。

総コレステロールはLDLコレステロールとHDLコレステロールを合わせたもので、以前は主にこの数値で病気のリスクを判断していました。しかし、体によい働きをするHDLコレステロールが高いことで総コレステロールも高くなることがあるなど、総コレステロールでは病気のリスクを正確に判断できないため、最近では、LDLコレステロール、HDLコレステロールを見て判断しています。

non-HDLコレステロールとは、総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いたものです。悪玉と呼ばれるコレステロールはLDLコレステロール以外にもあり、それらを表したものです」

Q.健康診断の脂質検査でC判定(要経過観察)やCより悪かった場合、日々の生活でどのようなことに取り組むべきでしょうか。

市原さん「結果が『経過観察』であれば、急いで受診する必要はありませんが、基準値を超えているので生活の改善は必要です。LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールが高いのであれば、動物性脂肪を含む食品や卵の摂取を控えめにしましょう。例えば、動物性脂肪を含む食品には、肉の脂身や加工肉(ウインナーやベーコンなど)のほか、牛乳やヨーグルト、チーズといった乳製品が該当します。また、卵も1日2個以上食べているのであれば、1日1個までにとどめておきましょう。

なお、D判定(要医療)やDよりも悪かった場合は、すぐに内科を受診しましょう」

Q.中性脂肪値は下がっても、コレステロール値がなかなか下がらない人もいるようですが、なぜなのでしょうか。体質的な問題なのでしょうか。

市原さん「中性脂肪は炭水化物の過剰摂取や飲酒、脂肪の摂取によって高くなります。一方、コレステロールは動物性脂肪や卵、乳製品などの過剰摂取によって高くなるので、両者の数値が上がる原因はそれぞれ異なります。コレステロール値が下がらないのは体質的な問題もありますが、やはり、日々の食事の内容に原因があると思います。

ただし、女性ホルモンや甲状腺ホルモンが減ると、コレステロール値は高くなります。食事の内容を改善しても数値が改善しない場合、特に甲状腺ホルモンの検査をするのが望ましいです」

Q.LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールの数値が高いと病気のリスクが高まるということですが、近年、「コレステロールの基準値がおかしい」といった指摘が出ているほか、「コレステロール値に一喜一憂する必要はない」という学説も登場しているようです。コレステロール値は本当に気にしなくてもよいのでしょうか。

市原さん「確かに最近、このような指摘も散見されますが、日本動脈硬化学会の指針に沿って医療を行っているわれわれにとっては信じがたい状況です。同学会の基準は、図の通りです。厚生労働省が5年おきに公表する『日本人の食事摂取基準』では、2015年からコレステロール摂取の上限値がなくなりました。

なぜなら、食事から摂取するコレステロールが血液中の悪玉コレステロールにどの程度影響を与えるかについては、個人差が大きいからです。しかし、上限値がなくなったことは『コレステロールをどれだけ摂取しても大丈夫』を意味しているわけではありません。また、この基準値は病気のない健康な人の基準値であって、糖尿病や慢性腎臓病、心筋梗塞の既往の有無などによって基準値は異なります」

オトナンサー編集部

胃カメラで辛い・嫌なことランキング、3位「苦しい」、2位「嘔吐恐怖・吐き気」、気になる1位は?


正モバイルは2021年6月27日~7月11日、10~60代の男女302名(女性200人/男性102人)を対象に胃カメラの何が嫌かについて、インターネットでアンケートを実施しました。アンケートは、胃カメラで辛い・嫌なこととされる代表的な10項目を用意し、当てはまるものすべてを選択してもらう形で行いました。今回は「胃カメラで辛い・嫌なこと」ランキングを発表します。

◆胃カメラで辛い・嫌なこと1位は「嘔吐反射」
胃カメラで辛い・嫌なこと1位は「嘔吐反射」でした。「意識が少しはっきりしていない状態で検査されるが、嘔吐反射はどうしてもなる。何回やっても慣れない」「喉に物が入りこむことが条件反射で嘔吐しそうになるから。とても不快な気持ちの良くない検査の1つ」「すぐにえづいてしまうので検査時間中ずっと喉の奥に触れられるのは耐えがたく、一度えづき出すと止まらなくなってしまう」など、具体的な不快感を訴える回答が多くありました。

◆2位は「嘔吐恐怖・吐き気」。チューブの太さにビックリ……との声が多数
「吐き気を抑えるのがほぼ困難で、時間が長くかかった。またチューブの太さにビックリし、やる前の恐怖感も感じた。もう少し細ければ苦しさも減るのかな」「カメラを初めて見た時、こんな太い物を入れるんだ!と恐怖を覚えた。吐き気が凄くて、でも吐けない。もう二度としたくない」「想像するだけで辛く、とても苦手意識を感じる」との声が挙がりました。

◆3位は「苦しい」。バリウムやカメラを飲み込むことに抵抗感を感じるとの声も
「3回経験しましたが、苦しいの一言に限ります。気道が半分くらい胃カメラでふさがれ呼吸がうまく出来なくなるからです。検査の間ずっと鼻からの吸ってはいてに集中して、ゆーっくりと呼吸を繰り返します」「バリウム飲むことと、カメラを飲み込む際とても苦しい」と、読むだけで苦しくなるような意見が集まりました。

コレステロールを下げる食べ物 ベスト7


高コレステロール値で悩んでいる人は世界中にたくさんいる。「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)」によると、高コレステロールはおよそ9,300万人のアメリカ人が抱えている問題で、心臓病や糖尿病など、深刻な健康状態を引き起こしているという。

コレステロールは細胞内に存在するワックス状の脂肪物質で、肝臓で自然に作られるほか、肉や乳製品などの動物性食品にも含まれている。体が機能するためには適度なコレステロールが必要だけど、コレステロールが豊富な食品を必要以上に摂取すると、動脈にプラークが形成され、血管が詰まってしまう恐れもあるため、とても危険だそう。

高コレステロールの原因とは?
「高コレステロールは、心臓発作、脳卒中、血行不良の最大のリスク要因です」と語るのは、ミシガン州にある「ARK・メディカル・センター」の公認心臓専門医であるオマー・アリ博士(医学博士、米国心臓病学会フェロー)。日々の生活で、LDL(悪玉)コレステロールを減らし、HDL(善玉)コレステロールを増やすように心掛けたいところ。
 
「アメリカ国立衛生研究所(NIH)」によると、動脈内に蓄積して、詰まりの原因となるのはおもにLDLコレステロールで、HDLコレステロールはLDLコレステロールを抑制する働きがある。コレステロールは、血液1DL(デシリットル)あたりのミリグラム量で測定され、「mg/dL」と表記される。「NIH」による理想的なコレステロール値は以下の通り。
 
20歳以上の女性の場合:
・総コレステロール:125~200mg/dL
・LDLコレステロール:100mg/dL未満
・HDLコレステロール:50mg/dL以上
 
20歳以上の男性の場合:
・総コレステロール:125~200mg/dL
・LDLコレステロール:100mg/dL未満
・HDLコレステロール:40mg/dL以上

薬を使わずコレステロール値を下げるには?
スタチン系の薬は、コレステロール値を健康的なレベルに低下させるのに役立つけれど、専門家の多くは、まずは生活スタイルを健康的なものに変えることをすすめている。「私はいつも、食事と運動でコレステロールを下げるようアドバイスしています」と、ニューヨーク長老派教会病院の女性専門心臓血管健康センターで共同ディレクターを務めるジェニファー・ヘイス博士は語る。
 
薬を使わずにコレステロールを下げることは可能だけど、簡単にできるわけではない。もっとも効果的な変化は、シンプルに体を動かすこと。
「コレステロールを減らすには、心臓血管にいい適度なトレーニングを週4回行うようにしましょう」と語るヘイス医師。まずはウォーキングのような軽めの運動を、1日15~20分程度から始めてみて。また喫煙習慣のある人は、できるだけ早く禁煙するのがよさそう。
 
さらに、栄養価の高い食事をとることも重要だ。揚げ物、甘いデザート、脂肪の多い肉など、コレステロールの多い食品を減らすことは第一歩だけど、それと同時にコレステロール値を下げるのに役立つ食品もたくさん食べるべき。
 
また地中海式ダイエットをしている人に朗報!  地中海式ダイエットの主要食品は、もともとLDLコレステロールが少ないので、自然と摂取量を減らすことができる。それではさっそく、コレステロールを下げるために食べたいフードをご紹介。

コレステロールの低下に効果的なフード(1) 全粒穀物
「全米脂質協会」によると、水溶性食物繊維(オーツ麦や玄米などの全粒穀物に含まれている)を毎日5~10g摂取すると、LDLコレステロール値を下げる効果があるそう。
 
「ゆっくり消化される食物繊維は、血液中のコレステロールと結合して体外に排出してくれます」と、ヘイス博士は説明する。調理したオーツ麦は食物繊維の優れた供給源で、1サービング(2分の1カップ)あたり2gの水溶性食物繊維を含んでいる。
 
おすすめの食べ方:マフィンなどのベイクものに、小麦粉の一部をオーツ麦に差し替えてみて。

コレステロールの低下に効果的なフード(2) 脂肪分の多い魚
「アメリカ心臓協会」は、サーモン、サバ、マグロ、マス、ニシンなど、脂肪分の多い魚を、毎週100g以上食べることを目標にするよう呼びかけている。
 
魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸は中性脂肪の改善に役立つそうで、血液中に含まれるコレステロールに似た脂肪の一種である中性脂肪は、動脈硬化の原因となるという。

おすすめの食べ方:サーモン、アーティチョーク、赤玉ねぎを同じ天板で一緒に30分ローストしてみよう。

コレステロールの低下に効果的なフード(3) ナッツ
くるみやアーモンドなどの木の実を定期的に摂取すると、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の数値が低下することが研究で判明している。
 
「これらは、ナッツに不飽和脂肪酸、オメガ3脂肪酸、食物繊維、ビタミンE、植物ステロールが含まれているためです」と話すヘイス博士。ただし、ナッツ類はカロリーが高いので、1回に摂取する量に注意して。
 
おすすめの食べ方:くるみ、アーモンド、ピーカンナッツ、さらに食物繊維が豊富なオーツ麦が含まれたブルーベリーパフェにトライしてみて。

コレステロールの低下に効果的なフード(4) 緑茶
40,000人以上の成人日本人を対象にした調査で、毎日緑茶を5杯以上飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ、心臓発作や脳卒中による死亡率が26%少ないことが判明した。
 
専門家によると、これは緑茶がカテキンを豊富に含むためだそうで、フラボノイドの仲間であるカテキンは、コレステロールの生成と吸収を妨げる効果をもつ。
 
おすすめの食べ方:そのまま飲んでもいいし、スムージーに入れたり、抹茶ホイップにしても◎。

コレステロールの低下に効果的なフード(5) 豆類
26件の研究を参照した2014年のメタ分析で、毎日2分の1カップの豆類 (ピーナッツ、レンズ豆、エンドウ豆を含む))を食べると、わずか6週間でLDLコレステロールが平均5%低下することが分かった。
 
オーツ麦同様、豆には水溶性食物繊維が豊富に含まれていて、血流からコレステロールを排除してくれると、アリ博士は説明する。
 
おすすめの食べ方:豆類は基本的にどんな料理にも合う(スイーツにも!)ので、メキシコ風の黒豆スープや、ルッコラ&ひよこ豆のサラダからお試しあれ。

コレステロールの低下に効果的なフード(6) シード類
全粒穀物と同様、シードも悪玉コレステロールと結合して体外に排出してくれる食物繊維が豊富。
 
何にでも簡単に振りかけられるチアシードとフラックスシード(亜麻仁)は、とくに食事に取り入れるのに適しているうえ、最近の研究では、LDLコレステロール値を下げ、脂肪を体外に排出する効果が報告されている。

さらにこれらのシードには、植物由来の希少な栄養源であるオメガ3脂肪酸も豊富に含まれている。
 
おすすめの食べ方:甘くて腹持ちの良いココナッツ・チアプディングは、朝食にぴったり。

コレステロールの低下に効果的なフード(7) ダークチョコレート
おやつが体に良くないなんて、誰が言ったの? イギリスで行われた研究では、ココア飲料を毎日2回、1ヶ月間飲んだ被験者グループは、LDLコレステロール値が下がり、HDLコレステロール値がアップしたそう。
 
これはおそらく、ココア飲料に(抗酸化作用のある化合物の一つである)フラボノイドが豊富に含まれているため。抗酸化物質がより多く、砂糖やミルク成分が少ない、カカオ70%以上のダークチョコレートを使用するようにして。
 
おすすめの食べ方:ダークチョコレートバーを購入するか、果物とナッツをミックスして自家製チョコレートを作ってみよう。

translation : Mutsumi Matsunobu

※この記事は、海外のサイト『Prevention』で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

今年の健康診断の結果で注意したほうがいい数値や項目は? 産業医が解説


この1年余り、新型コロナウイルスの流行により、リモートワークも含め生活サイクル、環境が変わった方も多いのではないでしょうか。健康診断は、身体の様子を定期的にチェックする良い機会です。せっかく受けたのであれば、結果を有効活用していきたいですね。本記事では、健康診断の有効活用のポイントや、特に注意したい項目/数値について、産業医かつ臨床医である筆者が解説していきます。


健康診断の活用 4つのポイント

労働と健康は密接に関連しています。労働により健康が損なわれないよう、また健康状態に応じて働けるよう、健康診断結果をうまく利用したいものです。有効活用のポイントは4つあります。


1 二次検査を勧められたらちゃんと行く

健康診断は、あくまで「スクリーニング」であり、病気がある可能性を探るものです。まずは広く探って、さらに詳しい診察や検査をすることで、確定診断に至り、その病気がどのくらい危険な状態なのか、治療は必要なのか、どんな治療がよいのかなど、調べていくわけです。だから受けっぱなしでは意味がありません。異常があれば、二次検査に行ったり運動や食生活を改善するなど、何かしら行動に移す。これが一番の活用方法になります。


2 動脈硬化リスク5項目はまとめて考える

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、の5項目は、該当項目が多ければ多いほど動脈硬化のリスクが高くなります。さらに、年齢が上がれば加齢による動脈硬化も加わりますし、ここに職場での「過重労働」が加わると、脳・心血管疾患の危険性はさらに高まります。5項目のうち1つでも当てはまる場合は、他のリスクはないかをチェック、他にリスクがあれば一緒に改善を目指すことがお勧めです。過重労働については、会社の産業医や労務と相談することをお勧めします。


3 数値は時系列でみる

健康診断は、毎年1回(場合により2回)の受診が義務付けられています。基準範囲からの逸脱が少しであったとしても、もし一年ごとに徐々に悪化している、急に悪化の幅が大きくなったなどがあれば、注意が必要です。職場や受診先が変わっても比較できるよう、健康診断結果は毎年保存しておくと安心です。


4 数値が良くなった原因、悪くなった原因を考える

結果とその原因を考えることの重要性は、健康診断だけではなく、日常生活や仕事も同じですよね。原因がわかれば、今後にも役立ちます。ただし、良くなっている場合はまだしも、悪くなっている場合は、自己判断で結論づけないことが大事です。受診が必要な場合は受診し、原因がわかったらそれに対応する方針をとりましょう。


特に注意したい項目/数値は?

次に、一般的な健康診断の項目について、特に注意すべき結果や数値を解説していきます。中でも生活習慣病に関する項目は、コロナ禍の生活スタイルの変化で影響を受けていることが予想されます。これまで異常を指摘されたことがない方でも、体重が増えたと感じている方、コレステロールの数値が徐々に上がっている方は特に注意して確認いただきたいと思います。


<胸部レントゲン検査(胸部X線検査)>

胸部レントゲン検査は、肺癌、肺結核、肺炎、肺気腫、縦隔腫瘍、心肥大、胸部大動脈瘤(りゅう)など、さまざまな病気を見つけるきっかけとなります。この検査では肺や心臓、太い血管など重要臓器が多く写りますが、あくまで病気の特徴を見つけるにとどまります。二次検査を勧められたときは、改めて病院で必要な診察や検査を受け、治療方針を検討することが大切です。


<血圧>

高血圧は数値が高いだけでは症状が出ないため、放置されてしまうことも少なくありません。しかし、動脈硬化がじわじわ進んでいくと、症状が出たときには脳卒中や心筋梗塞など重い病気として発症することがあるため、日頃の管理がとても重要です。日本における男女計7万人ほどの研究で、年齢によらず血圧は脳心血管病死亡と関連があること、さらに、若い年齢層でその関連がより強まることが指摘されています(文献1)。

画像制作:Yahoo! JAPAN
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その指摘を表したのが上の図です。どの世代も血圧と脳心血管死亡のリスクに関連がありますが、特に働く世代の「中壮年者」は高齢者と比べ、血圧が高くなるほど死亡リスクも高まる傾向が強いことがうかがえます。さらに、血圧は将来の認知症や日常生活のしにくさ(ADL低下)と関連していることがわかっています。下の図は、血圧が高くなるほど、そうしたリスクも高まる傾向を示しています。将来元気な状態で長生きしたい場合は、血圧は最も気をつけたい体の指標のひとつといえます。

画像制作:Yahoo! JAPAN
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<血糖>

糖尿病は、血糖値や、過去1〜2カ月前の血糖値を反映しているHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という項目でチェックします。健康診断の項目において、血糖値(空腹時血糖が126 mg/dL以上、随時血糖が200 mg/dL以上)とHbA1c(6.5%以上)の両方があてはまる場合、またはどちらか一方だけの場合でも糖尿病の典型的な症状や糖尿病網膜症があれば、糖尿病の診断となります。


糖尿病は神経、目(ときに失明)、腎臓、壊疽(えそ=足の感染と腐敗など)、心血管疾患、などさまざまな影響を及ぼす全身に関係する病気です。少なくとも上記の数値のどれかにひっかかるようであれば、通院を開始することをお勧めします。血糖値が非常に高い(300 mg/dl以上など)か非常に低い状態は、昏睡(こんすい)状態、果ては命に影響を及ぼすこともあり、職場で業務調整が検討されることもあります。


<脂質>

脂質は、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド、TG)でみます。LDLコレステロールやTGが高ければ高いほど、HDLコレステロールが低ければ低いほど、動脈硬化が進みやすくなります。まず、極端に数値が高い状態(LDL-C 200mg/dL以上など)が続く場合は、やはり動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞など)のリスクが懸念されるため、過重労働をさけるよう業務制限が検討されることもあります。また、中性脂肪(TG)が非常に高い(500mg/dl以上)と膵炎(すいえん)のリスクが高まるので注意が必要であり、これも受診を強くお勧めします。


上記の数値より低くても治療は必要ですし、その他の危険因子(高血圧、喫煙、糖尿病、心筋梗塞などの家族歴の有無など)によってどれくらいの数値を目指すべきかが異なってくるため、数値に何かしらの異常があれば受診を検討してください。ちなみに、日本動脈硬化学会から一般向けに「冠動脈疾患発症予測ツール これりすくん(https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool/)」のアプリやウェブ版が出ており、参考になります。

日本動脈硬化学会「冠動脈疾患発症予測ツール」データ入力後の結果画面の一例
日本動脈硬化学会「冠動脈疾患発症予測ツール」データ入力後の結果画面の一例

なお、コレステロール値は生活習慣の影響を受けますが、遺伝的な要因による「家族性高コレステロール血症」というものがあり、この場合はリスクがとても高く、男性では20代から、女性では30代から心筋梗塞の発症が起こりえます。若いのにLDLコレステロールが180 mg/dl以上の方はこちらが考慮されます。


<肝機能>

肝機能は主に、GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP、ALPの結果からみます。脂肪肝、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変、総胆管結石、胆管炎、薬剤などでこれらの数値に影響が出ます。肝細胞癌の約70%がウイルス性肝炎(B型あるいはC型)の既往歴があり、また、脂肪肝、アルコール性肝障害も肝細胞癌の要因と考えられています。健康診断をきっかけにこれらの病気が見つかればその段階で、癌になる前に治療を始めることができます。肝細胞癌も、ある程度は予防が可能なのです。


<体重>

体重が年々増えて基準範囲を超える場合は、生活習慣の是正が必要であり、保健指導が検討されます。コロナ禍の運動不足や食習慣の変化により、今年は体重が大幅に増加してしまった、という方も少なくないのではないでしょうか。肥満と死亡についてはよく研究されており、BMI (体格指数=体重kg÷身長m)22.5〜25の「標準体重」の死亡リスクがもっとも低く、BMIが上がると死亡リスクも上昇したという報告もあります(文献4)。BMIには筋肉量や脂肪量の割合などは加味されていませんし、解釈に注意が必要ですが、傾向をつかむのには参考になる結果です。


肥満を改善することで、血圧を下げたりHbA1cを適正にしたり、コレステロール値が改善したり、良いことがたくさんありますので、健康診断をきっかけに減量を試みるのも良いかもしれません。一方、意図的な体重コントロール(ダイエット。食生活の改善や運動など)をしていないのに体重が減っている場合(目安として6~12カ月間に5%以上。体重60kg±1〜2kgの方が、57 kg±1〜2kgになるなど)は、癌や糖尿病、甲状腺機能亢進症、うつ病などの可能性が考えられるため、健康状態の確認が勧められます。


<貧血>

貧血は主に、Hb(ヘモグロビン)の値をみます。貧血は、出血、栄養欠乏、血液の病気、慢性の病気、女性では婦人科の病気などが原因となって起こります。異常がある場合は、内科と婦人科の受診を検討しましょう。動悸、息切れ、易疲労感など自覚症状がある場合には要受診ですし、数値がかなり低い場合(8mg/dL以下など)ではめまいが出現することもあり、転倒による二次被害(頭を打つなど)の可能性があるため早めの対応が必要です。


<心電図>

心電図では、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、不整脈などがわかります。ただし、心電図検査は検査しているその時だけの心臓の状態を表しており、異常を100%キャッチできるわけではありません。動悸や胸痛の症状がある場合は、心電図で異常がなくても受診しましょう。心電図の結果で二次検査を勧められた場合は、内科(特に循環器内科)の受診がお勧めです。


精査の結果、失神や心臓突然死のリスクがある場合は、運転事故や転落事故につながる可能性のある業務は危険なため、業務調整が行われる可能性があります。また、心臓病の種類によっては、長時間労働や深夜業務が病気に悪影響である場合があるため、これも業務調整の対象となる可能性があります。

以上、一般的な健康診断の各項目のまとめになります。


二次検査で命拾いしたケースも

繰り返しになりますが、基本的には健康診断の結果で二次検査を促されたら、医療機関を受診しましょう。筆者は最近、健康診断がきっかけで大動脈瘤が見つかったという働き盛りの方を診療しました。大動脈瘤はひとたび破裂すると体の中で大出血となり、突然死するリスクのある病気ですが、破裂や解離(血管が裂けること)に至るまで無症状で経過し気づかれないことも多く、健診で見つかることは珍しくありません。健診から二次検査を受けたことで、大げさではなく命拾いしたケースといえます。

健康診断を受けて何もしないのはもったいないです。健康は大事な資産ですから、健康診断をぜひ活用し、ご自愛いただければ幸いです。

都道府県「人間ドック費用」ランキング…1位と47位の差は8倍


日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点を当てるのは「健康診断」「人間ドック」。あなたは今年、健康診断を受けましたか?

企業は従業員に「健康診断」を受けさせないといけない

様々な影響を与えている新型コロナウイルスですが、そのひとつが「検診」ではないでしょうか。ひっ迫する医療機関が検診に人手をさけなかったり、感染リスクを恐れて医療機関に足が遠のき、本来受けなければならない定期検診を拒むケースが増えたりなどして、検診率は30%程度落ちている、という報道もありました。そもそも健康診断は労働安全衛生法第44条に実施義務が制定され、違反した場合、50万円以下の罰金刑があります。また従業員は、企業が行う健康診断を受けなければなりません。もし健康診断を拒否した場合、就業規則にその旨が記載されているのであれば、健康診断拒否を理由に懲戒処分を行うこともできます。

企業が受けさせるべき主な健康診断は3つです。ひとつが「定期健康診断」。一般的な健康診断で、常時雇用者に対して、1年以内に1回の健康診断を実施する義務があります。検査項目は以下の通り。

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査及び喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査
7 GOT、GPT、γ-GTP検査(肝機能検査)
8 LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライドの量の検査(血中脂質検査)
9 血糖検査
10 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査(尿検査)
11 心電図検査

出所:労働安全衛生規則第44条

さらに新規で常時雇用者を迎える時には、「雇用時の健康診断」が義務付けられています。3ヵ月以内に医師による健康診断を受けている場合、診断結果を書面で証明することで、雇用時の健康診断を省略できます。検査項目は以下の通りです。

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査

出所:労働安全衛生規則第44条

最後が「特定業務従事者の健康診断」。深夜に働く人や危険な業務に携わる「特定業務従事者」が対象の健康診断です。対象者は以下のような業務につく人たちです。

1 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
5 異常気圧下における業務
6 さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7 重量物の取扱い等重激な業務
8 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9 坑内における業務
10 深夜業を含む業務
11 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
12 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
13 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14 その他厚生労働大臣が定める業務

出所:労働安全衛生規則第13条第1項第3号

健康診断を受けられるのは、前述のとおり、常時雇用されている人。また正規雇用者の労働時間の3/4以上勤務している場合は、パートやアルバイトでも健康診断の実施対象者になります。また労働者性のある役員は実施対象ですが、代表取締役社長など事業主には実施義務はありません。

都道府県別…人間ドックに一番お金をかけているのは?

会社勤めであれば、多くが1年に1回は健康診断を受けているでしょうが、実際、私たちは健康についてどのように考えているのでしょう。厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2019)によると、「健康と思っている」(「よい」「まあよい」「ふつう」の合計)は86.1%と高い値を示し、男性87.2%、女性85.1%と、若干、男性のほうが健康状態が良いと思っている割合が高くなっています。また有訴者(病気やけが等で自覚症状のある人)は、人口1,000人当たり302.5。男性が270.8、女性が332.1と、女性のほうが高くなっています。

症状別にみていくと、男性では「腰痛」が最も高く、「肩こり」「鼻がつまっている・鼻汁が出る」と続きます。一方で女性では「肩こり」が最も高く、「腰痛」「手足の関節が痛む」となっています。病気の中には、健康診断では見つけることができず、自覚症状なく進行していくものもあります。たとえば、日本人の死因第1位の悪性新生物(関連記事: 『都道府県「三大疾病」ランキング…がん1位は北海道、47位は?』 )。そのような病気の早期発見に効果的なのが人間ドックです。健康診断の検査項目は10~15項目ほどですが、人間ドックは検査項目が50~100項目と圧倒的に多く、自身が気になる箇所をより細かく診ることができます。また医師との面談が用意されているケースが多いのも特徴です。

人間ドックは任意検査で、保険適用外。費用は数万~10万円程度ですが、高級人間ドックになると、数十万円というのも珍しくありません。そんな人間ドックですが、そこにどれくらいお金をかけるかは、地域性があるようです。総務省「家計調査」(2019)によると、47都道府県で最も人間ドッグなどの受診料に費用をかけているのが「福井県」。平均9,741円となっています。続くのが「栃木県」で9,039円。「三重県」「埼玉県」「沖縄県」と続きます(図表1)。

一方、人間ドックにお金をかけないのが「群馬県」で1,225円。1位と47位で8倍近い価格差があります。続くのが「高知県」で1,741円。「長崎県」「青森県」「滋賀県」と続きます。プラスαでお金を払うかどうかには、地域差があります。しかし日本人の平均寿命は世界トップクラス。充実した検診制度は、その下支えになっているようです。

人間ドックを安く受ける裏技 ふるさと納税活用で実質自己負担2000円も


 保険適用外の人間ドックは全額自費になるが、様々な制度を利用して安く受ける裏技がある。『週刊ポストGOLD 得する医療費』より、ファイナンシャルプランナーの小谷晴美氏が解説する。小谷氏はまず、「ふるさと納税」を知っておくべき選択肢の一つに挙げる。

「近隣でふるさと納税の返礼品として人間ドックを用意している自治体がないか、チェックしてみましょう。その自治体のクリニックで受けなければいけませんが、節税にもなり一石二鳥です」間ドックをふるさと納税の返礼品にしている自治体は時期により異なるが、和歌山、愛知、静岡、福岡、千葉、埼玉などにある。

 寄附金額は3万~30万円など。1日1名限定の「プレミアム人間ドック」といった、全身を詳しく調べるコースもある。人間ドックは通常10万円ほどの費用がかかり、保険が適用されないので全額自費だ。それが、ふるさと納税なら住民税の控除との差し引きで“実質自己負担2000円”で受けられる。ただし、住民税の控除は、年収により上限額が決まるので注意したい。

 他にも安く人間ドックを受ける方法がある。前出・小谷氏が解説する。「健保組合や自治体によって人間ドックの助成をしている場合があります。“差額人間ドック”と呼ばれ、市や区などからクーポンをもらえるケースがあるので、申し込む前に調べてみてください」加入する健康保険によっては、“1回につき2万円まで”といった上限付きで補助金が支給される場合もある(東京都千代田区で国保加入の場合)。

 また、協会けんぽでは35~74歳の加入者が年に1度受けられる「一般健診」がある。これに「腹部超音波検査」や「肺機能検査」などの「付加健診」をオプションで付けることで、人間ドック同等の健診項目にすることも可能だ。その場合、約1万2000円で済む。加入している生命保険にも、人間ドックの優遇制度が付帯されている場合がある。提携している病院を紹介・予約まで代行してくれ、2割程度割安で受けられる。お得な制度を使わない手はない。※週刊ポスト2020年10月1日号増刊『週刊ポストGOLD 得する医療費』より

高血圧、糖尿病、脳梗塞…痛風だけじゃない尿酸値のこわい話


「痛風の気があるから、医者からビールを控えるように言われてさ……」

 飲酒の機会が増える年末年始、居酒屋のテーブルでよく交わされるこの会話。ここで話題に上っているのは、健康診断や人間ドックで判定される「尿酸値」のことだ。基準値は3.6〜7.0mg/dL。基準値内でも、6.0を超えると医師から指導を受けるケースが多い。

 痛風発症を左右する尿酸代謝の研究を専門に行い、特に生活習慣病との合併に詳しい痛風治療の第一人者である鳥取大学大学院教授の久留一郎医師が解説する。

「血清尿酸値が基準値(7.0mg/dL)を超えると、高尿酸血症と診断します。これは、激しい痛みを伴うことでよく知られる『痛風関節炎』のリスクが高いということです」

尿酸値は健康リスクマーカー

 しかし実は、尿酸値が高いことの健康リスクは、痛風だけではないという。近年は、自治体が行う健診でも尿酸値を健康リスクマーカーとして検査項目に取り入れる場合が増えている。

「近年の研究により、高尿酸血症は痛風を引き起こすだけでなく、尿酸が全身の臓器の細胞内に取り込まれることで様々な臓器障害を引き起こす“全身病”であることがわかってきました。

 私の研究チームが“合併症のない高尿酸血症”の患者約6000人を5年間追跡調査した結果、尿酸値が高い人ほど、高血圧や脂質異常症、慢性腎炎、糖尿病、肥満などの発症率が高いことが判明しています。

 他の疫学調査でも、尿酸値が高い人はそうでない人に比べ1.48倍高血圧になりやすいことがわかっている。兵庫医科大学の研究では、糖尿病の発症リスクは1.56倍と出ています」(久留医師)

 さらに、高尿酸血症は脳梗塞を引き起こす不整脈「心房細動」のリスクを高めることも2012年の研究で判明しているという。特に高血圧と合併すれば、尿酸値が基準値内でも安全とは言えないそうだ。

尿酸値を下げる食事とは

 どうすれば、高尿酸血症を予防できるのか。高尿酸血症・痛風を含む内分泌代謝疾患の専門医、大阪市立大学大学院講師の藏城雅文医師が解説する。

「そもそも尿酸は体内での合成と食事からの摂取で毎日約700mg産生され、産生された尿酸と同じ量の700mgが尿や便から排泄されることで、血清尿酸値は一定に保たれています。

 この産生と排泄のバランスが崩れて尿酸値が高くなるのが高尿酸血症ですが、その約60%は『排泄低下型』と言い、腎臓からの尿酸排泄量が低下する病態です。そこで問題となるのが『肥満』。1997年の研究により、内臓脂肪の面積が大きいほど血清尿酸値が高く、腎臓からの尿酸排泄量が低いことがわかっています。その後の研究で、肥満は腎臓から尿酸の『再吸収』を促進させることで、尿酸排泄量を低下させることもわかっています。つまり、高尿酸血症の予防や治療には、肥満の解消が重要なのです」

 では、尿酸値を下げるにはどんな食生活が求められるのか。一般に、成分として「プリン体」を含む食品の摂取が尿酸値を高め、痛風発症のリスクになることはよく知られている。藏城医師が続ける。

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(クリニカルクエスチョン7)において、食事指導の有効性と尿酸値・痛風に関する文献を網羅的に調べたところ、いくつか食事についてのエビデンスが確かめられました。

 まず、尿酸値を高める食品としてはアルコールや糖質があります。その結果としての痛風発症を増加させる食品は、アルコール、肉類、魚介類、糖質です。一方、痛風を抑制する効果があると言えるのは乳製品でした」

 海外での研究結果によると、肉類・魚介類の摂取が多いと痛風発症の相対危険度は1.5倍、アルコールの中でもビールは同1.5倍に上ると指摘されている。

「アルコールを代謝するときにATPというエネルギー供給源を用いるのですが、ATPが分解されると、最終的に尿酸となります。尿酸はそれ以上、体内で分解されないため、アルコールの摂取量が多いほど尿酸値を上昇させることになり痛風発症リスクが高まるのです」(藏城医師)

 中でもビールは、ワインやウイスキー類に比べプリン体を多く含むため、影響が大きいという。尿酸値が高めの人にビールを控えるよう医師が指導するのはそのためだ。

「アルコール同様、砂糖入りソフトドリンクも尿酸値を上昇させます。フルクトース(果糖)が体内で代謝される際にも、ATPが用いられるので、尿酸が産生されることになります。食品の他には、激しい運動が尿酸値を上昇させることもわかっています」(藏城医師)

 反対に、高尿酸血症・痛風のリスクを下げるのが牛乳やヨーグルトなどの乳製品だ。

「牛乳が尿酸値を低下させるのは、プリン体を含んでいないことに加え、牛乳に含まれるタンパク質が作用して尿酸の排出を促進させる(尿酸排泄率を高める)からだと想定できます。

 一方、ヨーグルトについては株式会社明治との共同研究で興味深い結果が出ました。20歳以上の男性14名を2グループに分け、『Lactobacillus gasseri PA-3(以下、乳酸菌PA-3株)』を含むヨーグルトと含まないヨーグルトをそれぞれ食べてもらい、両者に尿酸の元になるプリン体を経口摂取してもらう負荷試験(プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験)を行い尿酸値を測定した結果、血清尿酸値の変化量(上昇量)で比べると、乳酸菌PA-3株を含むヨーグルトを摂取したグループのほうが、乳酸菌PA-3株を含まないヨーグルトを摂取したグループに比べて食後の尿酸値の上昇が抑制されていたのです。乳酸菌PA-3株が尿酸値の上昇を有意に抑えることが確かめられました。

 併せて尿中の尿酸排泄量を見たところ、両者に差は認められませんでした。尿からの尿酸排出量が変わらないということは、乳酸菌PA-3株がヒトの腸内でプリン体を取り込み、ヒトが吸収するのを抑制しているのではないかと想定されます」(同前)

 試験の結果、乳酸菌PA-3株は1日1回程度、食事前に摂取することで効果が見込めそうだと藏城医師はいう。

医師200人が選ぶ「受けたい検診・検査」の1位は


《乳腺の超音波検査により胸に腫瘍が見つかって、精密検査が行われた結果、乳がんが発見された》

 宮内庁が上皇后美智子さまの「定期検診」の結果を発表したのは、8月9日のこと。ステージこそ発表されていないものの、比較的早期であったため転移の可能性は低いとみられ、9月以降に入院・手術が予定されている。美智子さまは10年以上にわたって乳腺検査の定期検診を受けてこられたというが、前回の検査では、がんらしきものは見つかっていない。つまり今回、早期発見できたのは定期的に検診が行われていたことの賜物だったともいえるだろう。

 しかし検診さえ受けていれば絶対に安心であるとは言いきれない。実際、東京・杉並区の肺がん検診を受けていた40代女性のがんが2014年、2015年と複数年にわたって見逃され、2018年6月に死亡するという痛ましい事件も起きている。

 受けなければ病気は見つからないが、受けても見落とされたり、そもそも意味のない検診だったりすることもあるうえ、多くの種類の検診を受ければそれだけお金もかかる。私たちはどう取捨選択すべきなのか。

 もちろんかかりつけ医など信頼できる医師がいれば尋ねるのも手だが、常に本音が聞けるとは限らない。都内のあるクリニックに勤務する医師が声を潜めて言う。

「医療といえども利益追求型ビジネスの1つであり、採算が取れなければ成り立たない。検診や検査は、ある意味で病気にかかっていない人を医療機関に足を向けさせることにつながる、いわばお客さんを獲得するための場。

 口の悪い関係者は新たな患者を釣り上げることから検診を“釣り堀”と呼ぶ人もいます。『念のために』という言葉とともに、本来ならば必要ない検診・検査を受けさせられるパターンも多いのが現状です」

 私たちの不安につけ込む悪質な医療関係者もいるということだ。ならば、医療の専門家である医師たち自身は、どう選んでいるのか。

 女性セブンは、医師200人を対象に、医師自身が「受けたい」「受けたくない」検診・検査は何なのかを徹底取材した。幅広い診療科の医師が匿名を条件に答えたアンケートを読み解くと、検診・検査における私たちがとるべき“最適解”が見えてくる──。

【調査方法】
〇医師200人が明かす『受けたい検診・検査ランキング』
 医師200人が「医師として自分が受けたい、もしくは受ける必要があると考える検診・検査」の項目を推奨度順に3つ回答。推奨度が高い順番に3点、2点、1点とポイントをつけて計上した。なお、肩書の「その他」は所属する科がなかったり、現在研究機関に勤務していたりするなどの医師。

〇医師200人が明かす『受けたくない 受ける必要がない検診・検査ランキング』
 医師200人が「医師として自分が受けたくない、もしくは受ける必要がないと考える検診・検査」の項目を推奨度順に3つ回答。受けたくない順に3点、2点、1点とポイントをつけて計上した。なお、肩書の「その他」は所属する科がなかったり、現在研究機関に勤務していたりするなどの医師。

◆血液検査は体調管理の指標

 医師たち自身が「受けたい」検査のトップに躍り出たのは、「血液検査」。なんと第2位にダブルスコアをつけての断トツぶりだ。その理由も「血液が健康状態をいちばん表している」など単純明快。採血だけで済む、苦痛や痛みが少ない検査でありながら健康状態に関する多くの情報が得られることがその理由のようだ。

 新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが解説する。

「欧米では検診や検査を受けすぎると、本来は治療不要なわずかな異変を見つけてしまい、その結果『過剰医療』につながるという考えが一般化しています。ゆえに検診項目はシンプルになりつつありますが、それでも血液検査は有用だとされている。

 たとえば血糖値やコレステロール値が高ければ、将来なりやすい病気も想定できる。油ものを控えようとか、運動をしよう、といった生活習慣上でどんな努力をしたらいいのか明確になります」

 たしかに検診の結果票を見て、ダイエットを決意した経験を持つ人も多いはず。体調管理のモチベーションアップの面でも評価できるようだ。

MRI、頭部CT、心エコー検査で見つかる病気は?


中高生のスポーツ女子が健康を守るための基礎知識2

「食べて太るのが怖い」「体重のことが気になって仕方がない」

 スポーツをがんばりたいと考え、体重や体形を気にするあまり、そんな心理状態になって、おそるおそる食べたり、食事を抜いたりしている中高生のスポーツ女子はいませんか。

 そんな状態がエスカレートして、必要な食事量を食べられず、極端にやせてしまう人がいます。逆に、食べなかった反動から、「むちゃ食い」してしまう人もいます。

 こうして、食行動の乱れから心と体の健康が損なわれてしまう病気を「摂食障害」といいます。精神科医で日本摂食障害協会理事の西園マーハ文・明治学院大教授は「早く病気を見つけて、早めに治すことがとても大切」と話します。
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食事制限が引き金、完璧主義も影響

 一生の間に、摂食障害やその疑いのある症状にかかる割合は、男性が大体100人に1人なのに対し、女性は10人に1人。中でもスポーツをやっている女性は、一般の人に比べて、リスクが2~3倍高いといわれています。

 スポーツ女子の場合、「速く走るために体を軽くしたい」「演技の印象をよくするために体形を細く見せたい」などと考え、食事を制限することが、摂食障害を発症しやすくするといわれています。

 ただ、西園マーハ先生は「決してスポーツだけが発症の引き金になっているわけではない」とも言います。「受験勉強や楽器の練習などに完全を求める中で発症したり、家族関係が引き金となって発症したりすることもあります」と説明します。
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怖い拒食症、やせ始めは達成感

 食事をあまり取らずに極端にやせてしまう「神経性やせ症」は、一般には「拒食症」と呼ばれています。小学生のうちから見られ、中高生に多い病気です。成長期なのに低体重が続き、身長も伸びなくなってしまいます。

 やせ始めのとき、以前と比べ、「長い距離を速く走れる」とか「演技で体がよく動く」と感じた経験を持つ人は、皆さんの中にもいるかもしれません。その一時的な達成感が、「もっとやせよう」いった心理状態になる拒食症の「落とし穴」になることがあります。

実は多い過食症、見た目では気づきにくい

 拒食症にかかり、あまり食べないまま低栄養状態が続くと、低体温や低血圧になり、心拍数が低下します。次第に筋力が低下して、体が疲れやすくなります。便秘がひどくなったり、髪の毛が抜けたり、肌がかさかさになったりすることもあります。

 それなのに、本人がなかなか「病気だ」と考えず、治療を受け入れない場合があるのが、摂食障害の怖いところです。西園先生は「拒食症だと分かり、『運動を休みましょう』と本人に勧めても、『休むのは嫌」と言って聞かないことが多い。そのまま運動をストップできないと、重症化し、命に関わることもあります」と注意をうながします。

 こうした拒食症よりも患者が数倍多いとみられているのが「過食症」です。正式には「神経性過食症」と言います。

 発症年齢のピークは大学生くらいの年齢で、中高生のスポーツ女子ももちろん注意が必要です。西園マーハ先生は「見た目の体形があまり変わらない人がほとんどで、周囲の人にも気づかれにくい病気」と説明します。

 たまにおやつのお菓子を大食いしたり、「やけ食い」したりするのはよくあることですが、過食症と診断された人は、「むちゃ食い」をコントロールできなくなる「過食」を頻繁に繰り返しています。「食べた物をわざと吐いてはまた食べる」「下剤を乱用する」といった行動をやめられなくなってしまうことも多く、胃酸で歯の表面が溶けたり、体の中のカリウムが失われて心臓に不整脈が出る人までいます。

 拒食と過食を繰り返す人もいます。「拒食症が治る過程で、過食気味になり、『体重が増えてしまった』とあせって、また拒食状態になると、摂食障害が長引きます」(西園マーハ先生)。思春期にかかった摂食障害が長引き、大人になっても治らず、長い間、苦しんでいる人も中にはいます。

長引かせないため、受診をためらわないで

 しかし、摂食障害は精神科医や心療内科医といった専門家の診察と適切な治療を受ければ、十分治る病気です。スポーツ女子の場合、練習を制限したり、食事を増やしたりして、心と体の健康を取り戻していきます。

 早い回復のためには、早めの治療がやはり、何より大切です。西園マーハ先生は「スポーツ女子には、スポーツのトレーニングだけでなく、健康管理にも興味を持ってほしい。摂食障害かもしれないと思ったら、勇気を出して、まず家族や部活の指導者、学校の養護教諭の先生といった周りの人に相談してください」と勧めています。(水口郁雄)

◇西園マーハ文先生

 にしぞのまーは・あや 九州大学医学部卒。英国への留学経験もある精神科医で、東京都精神医学総合研究所勤務、白梅学園大教授などを経て、2019年4月から明治学院大教授。摂食障害の専門家で、一般社団法人日本摂食障害協会理事。

健康診断で基準値を超えずにギリギリセーフが長年続くと危険なワケ


 健康診断や人間ドックは一般的に、春から初夏にかけて行われることが多いです。1年に1回の「頑張り時」を終えて、ホッとしている人もいることでしょう。しかし、せっかく健診を受けたのですから、ぜひ、その結果をいい方向に活用していただきたいと思います。

 血糖値の判定を行う代表的な検査は、空腹時血糖値、75グラム経口ブドウ糖負荷試験、ヘモグロビンA1c(HbA1c)です。このうち健診や人間ドックで受けるのは、空腹時血糖値とHbA1cですね。

 これらの検査の結果から「糖尿病型」となるのは、空腹時血糖が126㎎/デシリットル以上、あるいはHbA1c6.5%以上。HbA1c6.5%未満で110~125㎎/デシリットル以上は糖尿病の疑いが否定できない「境界型」です。

 境界型の方は、健診の担当医から「再検査として、75グラム経口ブドウ糖負荷試験を受けるように」といったことが言われているはずです。

 そして空腹時血糖値109㎎/デシリットル以下は「正常型」の域に入りますが、100~109㎎/デシリットル、あるいはHbA1c5.6~5.9%は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高いグループになります。

 高血圧、脂質異常症、肥満などがある人は特にリスクが高く、75グラム経口ブドウ糖負荷試験を受けることが望ましいと考えられています。

 では、ここでみなさんに質問です。糖尿病型ではないけれど、境界型や将来的に糖尿病を発症するリスクが高いグループに何年もいるのと、同じくまだ糖尿病型には達していないものの、これまで100㎎/デシリットルを切っていたのに、この1~2年で血糖値が上昇してきたのとでは、どちらがより問題でしょうか?

■1~2年で急激に上昇した場合は打つ手あり

 病気の中には、「これまで何ともなかったのに、急に症状が出てきたら要注意」というものも少なくありません。だから、血糖値の場合も後者(この1~2年で上昇)の方が問題だろうと考える人がいるかもしれません。しかし、実は、「糖尿病でない」状態にギリギリとどまっている期間が長い人ほど、全身の血管に与えるダメージが大きいのです。

 崖っぷちでギリギリ踏ん張っている人は、落ちてしまうと戻ってこられない。ゴムをずっと引っ張っていると、手を離してもダランと伸び切った状態のままになりますが、そのイメージです。

 実際、血糖値が境界型の人は、正常型の2.2倍心臓や血管の病気になりやすいといわれているのです。何度かこの欄で「負の遺産」についてお話ししました。血管などに負担をかけている年数が長くなると、それこそ苦労して規則正しい生活に切り替えても、負の遺産が少ない人よりも、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなるのです。 一方、ゴムをグンと思いっ切り引っ張って手を離すと、ゴムはすぐに元に戻ります。1~2年で上がった血糖値は、このゴムと同じ。

 ご飯や肉類などの前に野菜を食べる「ベジファースト」を習慣化したり、運動までいかなくても少し歩くなど体を動かすことを心掛けたり、睡眠を十分に取ったり、飲酒量を見直すだけで、血糖値は元に戻る可能性が高いのです。

 では、先に挙げた「糖尿病でない」状態にギリギリとどまっている期間が長い人は、何をしたらいいのか?

 血糖値を下げる薬を飲む? いえ、糖尿病とまだ診断されていない以上、薬物治療の対象にはなりません。糖尿病でない、でも「糖尿病でないから安心」とは決して言えないこの段階でできることは、生活習慣改善しかありません。

「1~2年で血糖値が上がった人と対策は同じじゃないか」と思う人もいるかもしれません。確かに対策は同じですが、より熱心に生活習慣改善を行わないと、良い結果は得られないでしょう。また、「ギリギリ状態を長年」の人は、血圧やコレステロールなどほかの数値についても高めであるケースが珍しくない。ほかの数値の改善のためにも、熱心な生活習慣改善が必要とされます。

 具体的な目標として、「食事は腹八分目」「野菜を取る」「日常的な運動」「体重5~10%減」「禁煙」「ストレス対策」「定期的な健診」を。どれでもできるもの、続けられやすいものから実践しましょう。

坂本昌也:東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

「家族性高コレステロール血症」ってどんな病気!?


●多過ぎる脂質の種類による分類

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)などの脂質が、多くなり過ぎる病気のことです。血液中に多くなる脂質の種類によって、3つのタイプに分けることができます。

高LDLコレステロール血症悪玉(LDL)コレステロールが多過ぎる状態で、脂質異常症ではこのタイプがもっとも多くみられます。増え過ぎた悪玉(LDL)コレステロールは、動脈の壁に蓄積してしまうので、動脈硬化を招きます。

低HDLコレステロール血症善玉(HDL)コレステロールが少な過ぎる状態です。善玉(HDL)コレステロールには、血管や組織に余っているコレステロールを回収して、肝臓に戻す働きがあります。このため、HDLコレステロール値が低いと、血管に余分なコレステロールがたまり、動脈硬化のリスクが高まります。

高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)中性脂肪が多過ぎる状態のことです。中性脂肪が多いと、善玉(HDL)コレステロールが減って、悪玉(LDL)コレステロールが多くなるので、間接的に動脈硬化の原因になります。また、急性すい炎を招くこともあります。

●原因による分類

脂質異常症は、病気を起こす原因によっても3つのタイプに分けることができます。

【原発性高脂血症】
遺伝的な要因によって起こるもののことです。日本人に起こる原発性高脂血症の代表的なものには、「家族性高コレステロール血症」があります。これは、遺伝的にLDLを処理する機能に異常があり、悪玉(LDL)コレステロールが高くなってしまう脂質異常症です。

【二次性(続発性)高脂血症】
ほかの病気や薬の副作用などによって、二次的に起こるもののことです。

別の病気「甲状腺機能低下症」「ネフローゼ症候群」「慢性腎不全」「閉塞性黄疸」「糖尿病」など。

薬「降圧剤(利尿薬・遮断薬)」「ホルモン薬(ステロイド薬・経口避妊薬・エストロゲン製剤)」「免疫抑制薬」など。

【その他の脂質異常症】
食べ過ぎや運動不足、それによる肥満、脂質のとり過ぎ、お酒の飲み過ぎなど、食生活や生活習慣の乱れによって起こるもののことです。脂質異常症の約80%はこのケースだといわれています。

保険証を無くした! どうすればいい!?


病院に行く場合はもちろん、身分証としても利用する機会のある保険証。

非常に大事なものなので、常にお財布などに入れ携帯している方も多いはず。

しかし、いざ使おうと思ったときに、財布に入っているはずの保険証が無くなっていたら…。

今回は、緊急対処法をはじめとした、保険証紛失時にすべきことをまとめました。

保険証が見当たらない場合などは、ぜひ参考にしてください。

■今すぐ保険証が必要なのに手元にない!病院で保険証を紛失したことに気がついたら、この場合はまず全額を実費で払い、再交付手続きが済んでから差額払い戻しの申請を行います。

保険証は診察前に提示することがほとんどなので、その時点で保険証が無く、全額負担できるお金を持っていなければ、診察ができないこともありますのでご注意を。

■すぐに見つかれば、病院で払い戻しが可能な場合も「家に戻って探したら見つかった」というような場合には、病院にその旨を伝え、持参することで差額の払い戻しに応じてくれます。

領収書なども忘れずに持参しましょう。

払い戻し手続きを行っていない医療機関や、診察してからしばらくたっているような場合は、再交付手続きと同じ要領で払い戻し申請書類を提出します。

診療明細書と領収書が必要になりますから無くさないようにしましょう。

注意したいのは、一時的にでも全額負担となった場合は自由診療となり、必ずしも10割負担とは限らず、医療機関によってはそれ以上の金額を支払う場合もあります。

この場合は自己負担額が大きくなる可能性もありますので、診察前に必ず窓口で確認するようにしましょう。

■まずは警察に。

同時に再発行の手続きを紛失や盗難の可能性があれば、保険証が悪用される可能性もあります。

そのためまずは警察署で被害届/遺失届を出しましょう。

タイミングがよければすぐに見つかることもあります。

保険証の再交付手続き先は、保険証発行元になります。

国民健康保険(国保)の場合は最寄りの市役所や区役所、健保や組合の場合は職場、もしくは管轄内にある支部などに書類を提出しましょう。

尿検査で分かること


尿の検査で何がわかるのでしょうか?(2型糖尿病、54歳、女性)

【回答】 尿はただの排せつ物の一つではなく、さまざまな体内の環境を教えてくれる手紙のような役割を持っています。古い医学書には、患者さんの尿を飲むという診察法も書かれていたほど、尿は重要なサンプルです。また、侵襲(体に傷をつけること)なく採取できる点も簡便でよいのではないでしょうか。尿検査の意義を理解し、有効に活用しましょう。
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■ 血糖コントロールに関して(尿糖)

 一般的に、健康な人では尿糖は陰性になります。尿を生成している(作っている)腎臓の、尿細管という部分にあるSGLT1、 SGLT2によって、原尿(最初にろ過された尿のもと)中のブドウ糖が100%再吸収されるからです。しかし、腎性糖尿のようなSGLT2に遺伝子変異がある特殊な病態や、血糖値が高すぎて再吸収が十分追いつかなくなっている場合は、尿糖が陽性になります。

その閾値(いきち)は、おおよそ血糖値が160~180mg/dLとされています。ですから、尿糖が陽性であったら、血糖値が180mg/dL以上の時間帯が近い過去にあったと思ってください。

 現在のように簡易血糖測定が頻繁にできなかったときは、入院患者さんに1日蓄尿していただき、尿糖が出なくなるのを目標に血糖コントロールをしていました。最近では、血糖変動や食後高血糖の指標として尿糖を活用しています。

 図に示したように、血糖値は一日中変動しています。Aの波を形成する人とBの波を形成する人がいた場合、血糖値の平均は同じなのでヘモグロビンA1cは同じ値を示します。

 しかし、実は血糖値の最高値が高く、大きく波打つAの人の方が、血管合併症が進みやすいことが分かってきました。もしもAとBの人がいつも早朝空腹時に来院して検査をしていたら、まるでAの人の方が血糖コントロール良好であると誤解されてしまいます。ですから、受診の際には普段通りの朝食や服薬、インスリン注射を行って、食後の尿糖や血糖値を包み隠さず見せてください。

 もし、食後の血糖値が低値でも尿糖が陽性であれば、数時間以内に血糖値が180mg/ dL以上になっていた足跡ありと考えられます。しかし、多くの患者さんは受診日の朝食は緊張して控えめになってしまうのではないでしょうか(笑)。

それでは、日常の食後高血糖を十分にチェックできません。わたしは自宅で食後の尿糖をチェックすることをお勧めしています。ウリエース(テルモ)のような尿糖試験紙は薬局でも購入することができます。週に2~3回、1日で一番多くご飯を食べた後の尿糖をチェックしてみることで、血糖自己測定をしていない患者さんでも食後高血糖をチェックできます。

 SGLT2阻害薬を服用中の患者さんは、尿糖は常に陽性になりますので、残念ながらこの方法は使えません。

■ 危険なケトン体

 病院やクリニックで行う尿検査の項目にはケトン体が含まれます。インスリンが不足すると、脂肪組織から出された遊離脂肪酸をもとに肝臓でケトン体が生成されます。糖尿病患者さんではインスリンが不足するとケトン体が過剰に産生され、糖尿病ケトアシドーシスという恐ろしい急性合併症を引き起こすことがありますので、あまりお目にかかりたくない物質です。

 インスリンが不足しているので、通常は高血糖も同時に認められますが、SGLT2阻害薬を服用している患者さんや、長い間食事がとれずインスリンも打っていないような患者さんでは、血糖値がさほど上昇していなくてもケトン体を認めることがありますので、血糖値が低いからケトン体もなく安心というわけではありません。

また、3‐ヒドロキシ酪酸というケトン体は、尿ケトン体ではチェックできませんので、尿ケトン体が陰性だからといって、ケトン体が体内で増えていないとも言い切れません。ケトン体が上昇している危険性があるときには、尿検査だけではなく確認のための血液検査を必ずしてください。

■腎症の有用なマーカー(尿たんぱく)

 尿たんぱくは、糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病腎症の重要なマーカーです。初期の腎症は微量アルブミン尿という特殊な検査で診断されますが、腎症が進むにつれて、尿たんぱく定性も陽性になっていきます。また、糖尿病があって尿たんぱくが陽性であるからといって、全てが糖尿病腎症によるものとは限りません。他の腎臓の病気が隠れている可能性もあるので、詳しい検査を受けてください。

■ おわりに

 尿の検査はそれ以外にも膀胱(ぼうこう)炎をはじめとした尿路感染症や潜血の有無など多くのことを教えてくれます。また、尿中Cペプチドの測定によって、インスリンの自己分泌能を測定することも可能です。血液検査に勝るとも劣らぬ尿検査を、ぜひ糖尿病療養にお役立てください。

 また、高齢者で尿が出ないという方がよくおられます。しっかりと尿検査をするためにも、脱水予防のためにも水分補給を心掛けましょう。

福岡大学医学部
内分泌・糖尿病内科
野見山 崇(のみやま・たかし)

※『月刊糖尿病ライフさかえ 2016年6月号』より

健康診断のウソ・ホント 職場検診で大病も見つかる?


会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのはありがたいが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、いまひとつ釈然としない人も多いだろう。誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。まずは「職場健診で大きな病気は発見できるのかどうか」について。

Q 職場健診を受けてさえいれば、大きな病気はまず発見してもらえる?A いいえ。生活習慣病の多くは見つかるが、例えばがんなどは見つかりにくい。企業が実施する定期健康診断(職場健診)の目的は、職場における労働者の安全と健康を守ること。職場健診を受けることで、自分の健康状態を知り、生活習慣病の予防や隠れた病気の早期発見に役立てられる。ただし、職場健診を受けていれば、病気が100%見つけられるわけではないので、油断は禁物だ。
.
■発見されやすいのは生活習慣病や肝臓・腎臓疾患

 東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授の奈良信雄氏によると、職場健診で発見しやすい病気は、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの生活習慣病のほか、肝臓疾患や腎臓疾患など。これらは職場健診の基本的な血液検査や尿検査などでスクリーニング(ふるい分け)できるので、かなりの確率で発見できる。生活習慣病は自覚症状が少なく、放置すれば心疾患や脳疾患など命にかかわる病気につながるリスクが高まる。早期発見のために、職場健診の機会を生かさない手はない。

■発見が期待できない代表は「がん」

 一方、通常の職場健診で発見が期待できないものもある。その代表が、がんだ。職場健診でも、造影剤のバリウムを使った胃のエックス線検査や、便の潜血反応による大腸の検査、胸部エックス線による肺の検査などを行うこともある。だが、がんが見つかるケースはそれほど多くない。

「そもそも職場健診を受ける人にがんが少ないこともあるが、ごく初期の段階であるためにがんを発見できなかったケースや、がんのタイプに検査方法がマッチしていなかったケースがある」(奈良氏)それでも、判定に異常所見があった場合は、がんの疑いも考えられるので、「要受診」「要精密検査」などの指示には必ず従おう。奈良教授によれば「便の潜血反応検査で陽性の結果が出て、大腸の内視鏡検査を受けたところ、大腸がんが発見されたという例もあった」という。

■がんが気になる人はがん検診を

 がんが気になる人は、職場健診とは別に、がん検診を受けた方がいい。がん検診は、健康増進法に基づく健康推進事業として、それぞれの市区町村が実施している。前述の胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん検診は40歳以上を対象に、年に1回(乳がん検診は2年に1回)受けられる。大腸がん検診では40歳から5年ごとに60歳までの計5回、乳がん検診では40歳時に無料クーポン券が配布されている。職場健診のオプションとしてがん検診がある場合は、受けておくといいだろう。
 
ちなみに、人間ドックは職場健診などより検査項目が多く、オプションとしてがんの検査を加えることもできる。だが、これも全身の病気がすべて分かるというものではない。また、人間ドックには健康保険が適用されず、費用は全額自己負担となる。検査内容や費用は施設によって異なるので、受診を検討する場合は、事前にしっかり確認しよう。.

■この人に聞きました

奈良信雄(なら のぶお)さん 東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター長。1950年、高松市生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。同大学第一内科、放射線医学総合研究所、カナダのトロント大学オンタリオ癌研究所、東京医科歯科大学医学部教授を経て、1999年より同大学大学院教授。専門は内科学、血液病学、臨床検査医学。一般向けの健康に関する啓蒙活動に積極的で、『病院の検査が分かる本』(講談社)、『ホームドクターを探せ』(宝島社新書)など多数の著書がある。

140でも要注意 悪玉コレステロールの数値リスクと治療法


LDL(悪玉)コレステロールが180mg/dl以上なら、すぐに病院へ行かなくてはならない――。こう言うのは昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学部門の平野勉教授だ。

 LDLコレステロールは「140以上」が高コレステロール血症で、健診などで判明すると再検査を言い渡される。

 しかし極端な話、①心筋梗塞や狭心症を一度も起こしたことがない②糖尿病をはじめ生活習慣病がひとつもない③喫煙習慣や肥満がない④中性脂肪が基準値以内──のすべてに該当するなら、140を超えたくらいでは、さほど深刻な状況ではない。

「食生活の改善などで、数値は基準値内に下がるかもしれません」

 しかし「爆弾を抱えているような危機的状況」なのが、LDLコレステロール180以上。心筋梗塞、狭心症の冠動脈(心臓の動脈)疾患の発症リスクが極めて高い。冒頭の①~④や年齢にもよるが、食事や運動で数値は下がりづらく、それらによる改善を待っている段階でもない。

「180以上の中には遺伝子の異常による家族性高コレステロール血症も含まれていて、この場合、心筋梗塞の確率が13倍に跳ね上がります」

 コレステロールは、その恐ろしさが正しく認識されていない。コレステロールが高いと血液がドロドロになり、動脈硬化につながるとの“常識”が浸透しているが、大間違いだ。

 コレステロールは無色透明で、血液中を流れている時はまったくの無害。ドロドロともサラサラとも関係しない。

 細胞膜の構成に必要なコレステロールを細胞に運ぶ役割を担っているのがLDLだ。ところが遺伝や体質などでLDLの血液中の量が過剰になると、血管壁に入り込み蓄積される。

「特に冠動脈にLDLが蓄積されやすく、蓄積されると医療用ドリルで壊さなければならないほどカチカチの塊になります。それを粥状動脈硬化症といい、心筋梗塞、狭心症につながる。LDLの害はこれに尽きます」

 LDLコレステロールが180以上の場合、心筋梗塞、狭心症から逃れるには高コレステロール血症薬「スタチン」の投薬治療しかない。スタチンには「レギュラー」「ストロング」の2種類の強さがあり、ストロングが必要な患者もいる。

■LDLの小型化で粥状動脈硬化のリスク増

 LDLコレステロールが「140以上180未満」なら、中性脂肪との関係に注目。

「LDLは球形で、直径が大きいものと小さいものとに分けられます。直径が小さいLDLは『スモールデンスLDL』と呼ばれ、直径が大きいものに比べ血管壁に入り込みやすい」

 つまり、粥状動脈硬化症のリスクが高くなる。では、小型化に何が関係しているかといえば、中性脂肪なのだ。

「中性脂肪が血液中に多いと、LDLを小型化するのです。LDLコレステロールが180までいかない、例えば140~150でも中性脂肪が高ければ、薬物治療が必要と判断されることがあります」

 整理すると、①LDLが血管壁に入り込み蓄積されると心筋梗塞、狭心症のリスクを上げる。②LDLコレステロールが180以上であれば薬物治療が必要。③LDLコレステロールが140をやや超えている程度でも、中性脂肪が高ければスモールデンスLDLで心筋梗塞、狭心症

のリスクが高く薬物治療が必要な場合もある――。

 心筋梗塞、脳卒中など冠動脈疾患の専門医たちは「高コレステロール血症は、薬の副作用にとらわれず治療すべき」と言う人が多い。それほど深刻なのだ。

▽LDLとは
 脂質とタンパク質が結合したものが「リン脂質」。比重の違いからいくつかの種類に分けられ、「LDL(低比重リボタンパク)」はそのひとつ。血液中のコレステロールの3分の2以上がLDLに含まれていて、LDLコレステロールと呼ばれる。

【レポート】健康診断の結果、約3人に1人が再検査を経


●再検査の受診経験、3割を超える
新年度が始まり、健康診断の案内を受け取った方も多いのではないだろうか。血糖値や血圧、尿酸値等、診断結果の数値に一喜一憂するこの時期。マイナビニュースでは、読者会員に対して、健康診断に関する調査を実施した。今回の調査は、2016年4月13日から4月18日の6日間、全国の男女600名を対象に行った。

○再検査の実施項目、1位は尿関連

健康診断での再検査受診項目について聞いたところ、67.2%が「特にない」と答えた。一方、残りの32.8%は、何かしらの項目で再検査を経験している。本設問において、「特にない」の回答を除いた結果を見てみると、最も多かったのは、「尿関連項目(尿酸・尿糖等」(6.8%)であった(図1)。次いで、「心電図」(5.7%)、「血圧」(5.5%)、「コレステロール値」(5.0%)、「肝機能」(4.8%)が上位の項目となっている。

このデータを男女別の上位5項目に絞って見ると、男性は「肝機能」(7.3%)、女性は「尿関連項目(尿酸・尿糖等)」(7.7%)が1位となっており、男女で異なる傾向が見られた(表1)。特に、肝機能については男女間の差が最も顕著であり、男性の数値(7.3%)が、女性(2.3%)の3倍以上になっている。日常生活におけるアルコール摂取量の差が影響しているのではないだろうか。また、「白血球・赤血球数」については、女性の数値(4.0%)が男性(2.3%)の約2倍となっており、これは、女性により多く貧血の症状が見られることと関連性があるように思われる。

本設問への回答を年代別に見ると、多くの項目において、50代の数値が相対的に高くなっていることに気づく(図2)。50代に比べて、その他の年代の数値が目立つほど高くないことから、50歳を超えると、健康リスクが急激に高まることが伺える。特に、「血糖値」に関しては、数値の差が最も顕著であり、30代・40代(2.5%)と比較して、50代(8.6%)は約3.5倍の値となっている。

このデータを年代別の上位5項目に絞って見ると、20代では「尿関連項目(尿酸・尿糖等)」・「心電図」・「血圧」(6.3%)が同率で1位となっており、30代では「尿関連項目(尿酸・尿糖等)」(11.8%)、40代では「血圧」(8.1%)、50代では「コレステロール値」(12.3%)が1位となっている(表2)。30代に多い「尿関連項目(尿酸・尿糖等)」や、50代に偏っている「コレステロール値」に比べて、「心電図」については、年代ごとのばらつきが比較的少なく、どの年代においても一定の再検査受診率を保っていることが読み取れる。心電図の異常は、主に不整脈等によって起こることが多いので、年代に関わらず気をつける必要がありそうだ。

●健康診断にまつわるエピソード
○健康診断の活用方法と課題

今回の調査において、健康診断に関するエピソードを尋ねたところ、以下のような意見が見られた。(自由回答一部抜粋)

病気の早期発見に

・普段、自覚症状はないが健康診断ではじめて心臓に不正脈があることがわかった(59歳/男性/輸送機器/技能工・運輸・設備関連)
・肝機能で引っ掛かって精密検査を受けた所、腎臓に異常を発見。さらに検査を受けたところ、腎臓がひとつ機能しておらず、萎縮していた。さらに前立腺肥大まで見つかり、がん検査まで行う羽目に。結果的に、生まれつき腎臓が機能しておらず、それで前立腺肥大も問題ないことが判明したが、ちょっとしたことから、いろいろな事が判って、ショックでもあり、医学って凄いなと思ったり……(41歳/男性/精密機器/技能工・運輸・設備関連)
・母の疾患が見つかりました。放置すれば失明などにつながった病気だったので、ひと目見ただけで母の病を見抜いてくれたその先生には本当に感謝しています(34歳/女性/ソフトウェア/専門サービス関連)
・低血糖過ぎて糖尿病が発覚。やせ形なので周囲はびっくり(37歳/女性/建築・土木関連技術職)
・今まで受けていなかったが、受けたら、糖尿病だとわかった(59歳/女性/専業主婦)

数値で気づく体調の変化

・血糖値が上がっていて驚いた(35歳/男性/食品/事務・企画・経営関連)
・中性脂肪が前年の4倍になってびっくりした(34歳/女性/ソフトウェア/事務・企画・経営関連)
・肝機能の数値が悪くなっていたことに気づくことができた(27歳/女性/その他)

健康管理を見直すきっかけに

・健康診断の結果は過去3年間の結果が見られるので、3年間での体重の変化が一目でわかり「やばい」と思ったことがあり、ダイエットを開始するきっかけになりました(31歳/女性/ソフトウェア/営業関連)
・昔、健康診断前になると必死でダイエットを毎年していた記憶がある(32歳/女性/不動産/専門職関連)
・普段は体重計を避けて生活していたが、健康診断で過去最高の体重を目の当たりにしてショックでダイエットを緩く誓った結果、一年後に体重計に乗った時8キロ痩せていた。それからさらにダイエットにはまり、今はトータルで12キロ痩せた。(51歳/女性/専業主婦)
・健康診断前になると、周りではお酒を控える人がいる(39歳/女性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・健康診断に合わせて短期ダイエットを毎年していますが、年々体重調整が難しくなっているような気がします(32歳/女性/流通・チェーンストア/事務・企画・経営関連)
・血糖値を指摘されたことがあり食事改善した(40歳/女性/その他)

アドバイスをもらう場として

・毎日の食生活について、担当の先生とディスカッションした(40歳/男性/インターネット関連/クリエイティブ関連)
・痩せ型で関係ないと思っていたコレステロール値に突然引っ掛かり、食事指導を受けるほど警告された(50歳/女性/フリーター)

不満の声も

・会社の定期健診なので、契約機関の問診は流れ作業みたいな感じだった(46歳/女性/流通・チェーンストア/事務・企画・経営関連)
・職場でやる検診は簡易なものなので、どうせやるなら人間ドックのような身体の内側までわかるような検診にしてほしい(43歳/男性/農業協同組合/公共サービス関連)
・内科が問診を担当するため、内科以外のことを相談しても、全く納得のいく回答がもらえない(52歳/男性/電気・ガス・エネルギー/技能工・運輸・設備関連)
・健康診断前の絶食にはいつも苦労する。お腹が空いて眠れなくて、いつもフラフラになりながら病院へ行く(32歳/男性/教育/専門職関連)
・待ち時間が多くて疲れる(32歳/男性/ガラス・化学・石油/事務・企画・経営関連)

健康診断を通して、病気の早期発見や、それまで無自覚だった体の変化に気づくことができたという回答が多数見られた。また、健康診断の時期にダイエットを始めるというコメントもあり、その多くが女性の意見であった。さらに、普段の健康管理について直接指導を受ける場として機能していることも伺えた。一方、診察機関や検査方法、検査の質等に対する不満の声が複数見られ、課題となる側面も指摘された。

なお、本調査における、その他の結果データは以下のとおりである。

最近コレステロールの値が上がってきています。お薬を勧められていますが…。 (2型糖尿病、61歳、女性)


健康診断の基準値の中で、最も「信頼性に欠ける」と昨今批判を浴びているのがコレステロール値である。なかでも“悪玉”と呼ばれ、動脈硬化や生活習慣病の犯人とされているLDLコレステロール(以下、LDL)の基準値に対しては、疑問の声が多い。

 現在、健診で採用されているLDLの一般的な基準値は60~119mg/dlだが、欧米の基準と比べて低すぎると指摘するのは、東海大学名誉教授の大櫛陽一氏だ。

「私が神奈川県伊勢原市の40歳以上の住民約2万6000人を8年間追跡調査したところ、LDLが低い人ほど死亡率が高いという結果が出ました。男性ではLDLが100mg/dl未満になると死亡率が急上昇します。逆に最も死亡率が低かったのは140~159mg/dlのグループでした」

 大櫛氏らは、2004年、全国の健診実施機関から集めた約70万人の結果を解析し、健康な人のLDLの基準値を男女別・年齢別に日本総合健診医学会で発表した。

 それによると、50代後半のLDLの正常範囲の上限(mg/dl)は男性186、女性192となり、欧米の189とほぼ一致した。

「60兆個ある人間の細胞はコレステロールが豊富な細胞膜によって守られています。LDLが少な過ぎると細胞膜が 弱になり、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなって免疫力が低下し、疾病リスクが高まるのです。

 実際、伊勢原市の調査ではLDLが低い人ほど肺炎やがんの死亡率が高いという結果も得られています。また、2015年にはコレステロールの摂取制限は日米ともに廃止されました」(前出・大櫛氏)

 健診の基準を守るほど、病気になるという笑えないジョークが罷り通っているというから恐ろしい。盲信は禁物である。

コレステロール値が上がってきたら、薬が必要?


最近コレステロールの値が上がってきています。お薬を勧められていますが…。 (2型糖尿病、61歳、女性)

【回答】お悩みのようですね。それでは今回はコレステロールについて、治療が必要である理由と目標値、性別・年齢との関係、そして治療法などについてお示ししましょう。
………………………………………………………

■ コレステロールとは
 体を作っている細胞の膜の成分であり、また生きるためになくてはならないステロイドホルモンのもとでもあります。コレステロールは、食べ物から吸収されるものもありますが、多くは体の中で作られています。コレステロールの一部はリポたんぱくというかたちで血液中を流れています。

■ 治療が必要な理由と治療目標値
 動脈硬化症を予防するコレステロールを善玉コレステロール、進行させてしまうものを悪玉コレステロールというのを聞いたことがあると思います。リポたんぱくには、いくつかの種類があり、そのうち高比重リポたんぱく(HDL)、および低比重リポたんぱく(LDL)に含まれるコレステロールが、それぞれ善玉コレステロール・悪玉コレステロールの代表的なものです。

 日本人においてもLDLコレステロール(LDL-C)の値を低下させることにより、冠動脈疾患や非心原性脳梗塞を予防できることが、多くの研究で分かっています。

 また動脈硬化性疾患の起こりやすさは、コレステロール以外の多くの危険因子(性別・年齢・喫煙・脂質異常症・耐糖能異常)の数や程度によっても変わってきますので、LDL-Cの治療目標値(管理目標値ともいいます)も変わってきます。

糖尿病患者さんの目標値を表に示します。non HDL-Cとは総コレステロールからHDL-Cを引いた値のことで、中性脂肪値が400mg/dL以上のときや食後に採血したときなどに使用します。LDL-C以外の動脈硬化を引き起こすリポたんぱくのコレステロールも含まれるため、治療の指標として用いられることもあります。

■ 性別・年齢との関係
 男性では20歳以後、年齢とともにLDL-Cは上昇してきます。これは運動量の減少や食べすぎ・飲みすぎなどの生活習慣の悪化と関係していると考えられています。

女性では、エストロゲンがLDL-Cの値に大きく関係します。エストロゲンは女性ホルモンの一つですが、肝臓へのLDL-Cの取り込みを増加させて、LDL-Cの値を下げるはたらきがあります。更年期の頃からエストロゲンの値が低下していきますので、逆にLDL-Cは徐々に上がってくることになります。

■ 治療法は食事・運動療法そして薬物療法
 高コレステロール血症の治療は糖尿病の治療と同じで、まずは食事・運動療法を行います。食物繊維の積極的な摂取やトランス脂肪酸摂取を控えることは、LDL-Cを低下させるのに効果があります。コレステロール摂取量については、多くてもLDL-Cが上がる方と上がらない方がおられるなど個人差が大きいので主治医の先生とご相談ください。

 また、肥満の改善や運動は中性脂肪値も高い方では特に有効です。運動療法については中等度強度の有酸素運動を毎日30分以上続けることが勧められていますが、始める前にかかりつけの先生に心臓や肺の状態チェックをしてもらうことを忘れないでください。

 食事・運動療法で目標値に達しない場合には薬物療法をすることを考えます。糖尿病など動脈硬化性疾患を起こしやすい方は、より早くから薬物療法を考慮するよう勧められています。

 高コレステロール血症に対する薬としてはスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が最も効果が高く、また動脈硬化性疾患予防効果も示されているので、多くの場合最初に使用されます。効果が十分ではない場合はスタチンの量を増やしたり、陰イオン交換樹脂(レジン)や小腸コレステロールトランスポーター阻害薬を併用したりすることがあります。

 また、糖尿病など高リスクの高LDL-C血症の方では、スタチンとイコサペント酸エチルとを併用することで冠動脈疾患・非心原性脳梗塞が予防できることも明らかになっています。

■ 動脈硬化症予防のためにコレステロール(脂質)の治療も必要
 動脈硬化症の予防のためには血糖コントロールだけでは十分とはいえません。血圧・体重管理に加えてコレステロール(脂質)についてもかかりつけの先生と相談して、しっかりと治療をしていきましょう。

福岡大学筑紫病院内分泌・糖尿病内科 教授
小林邦久(こばやし・くにひさ)

悪玉が正常値でも要注意 コレステロールはLH比で評価する


 コレステロールと耳にすると、メタボや動脈硬化の元凶のように感じるかもしれませんが、メリットもあります。コレステロールがあるから、胆汁、ビタミンD、副腎皮質ホルモン、性ホルモンなどが作れるのです。でも、やっぱり、コレステロールがする悪さには困ります。

 健康診断の血液検査では、脂質に関するものとして、HDL(善玉)コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪、総コレステロールの値が出てきます。

 伊東優さん(44=仮名)の健康診断結果は次の通りでした。善玉コレステロール43㎎/デシリットル(正常値40以上)、悪玉コレステロール117㎎/デシリットル(60~119)、中性脂肪116㎎/デシリットル(30~149)、総コレステロール183㎎/デシリットル(140~199)。すべて正常値の範囲で、検査結果の評価も「A評価:正常」。よかったですね。本人もほっと一息。

 しかし、もう半歩踏み込んでチェックする必要があります。悪玉コレステロールは、血液に乗って全身を駆け巡って血管の壁という壁に脂肪をまき散らしていきます。そのまま放っておいては、動脈硬化に。それでは困るので、善玉コレステロールがその後を追いかけて、壁にくっついた脂肪をはがして回収。善玉のおかげで動脈硬化が予防できるのです。

 さて、伊東さんは、善玉コレステロールも、悪玉コレステロールも正常値なので、安心かというと、実はそうではありません。

 というのは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールは、その比率が大切なのです。それが、LH比と呼ばれるもの。悪玉コレステロール値を善玉コレステロール値で割った数値が2・5以上だと、動脈硬化や血栓のリスクが俄然高くなります。伊東さんのLH比は2・7と危険な水準。健康診断の結果のA評価をうのみにしてはいけない理由がそこにあるのです。本当の評価は「C:要経過観察」が妥当でしょう。

※正常値は、日本人間ドック学会の数値に準拠

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

悪玉が正常値でも要注意 コレステロールはLH比で評価する


【検査数値 裏読みナナメ読み】

 コレステロールと耳にすると、メタボや動脈硬化の元凶のように感じるかもしれませんが、メリットもあります。コレステロールがあるから、胆汁、ビタミンD、副腎皮質ホルモン、性ホルモンなどが作れるのです。でも、やっぱり、コレステロールがする悪さには困ります。

 健康診断の血液検査では、脂質に関するものとして、HDL(善玉)コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪、総コレステロールの値が出てきます。

 伊東優さん(44=仮名)の健康診断結果は次の通りでした。善玉コレステロール43㎎/デシリットル(正常値40以上)、悪玉コレステロール117㎎/デシリットル(60~119)、中性脂肪116㎎/デシリットル(30~149)、総コレステロール183㎎/デシリットル(140~199)。すべて正常値の範囲で、検査結果の評価も「A評価:正常」。よかったですね。本人もほっと一息。

 しかし、もう半歩踏み込んでチェックする必要があります。悪玉コレステロールは、血液に乗って全身を駆け巡って血管の壁という壁に脂肪をまき散らしていきます。そのまま放っておいては、動脈硬化に。それでは困るので、善玉コレステロールがその後を追いかけて、壁にくっついた脂肪をはがして回収。善玉のおかげで動脈硬化が予防できるのです。

 さて、伊東さんは、善玉コレステロールも、悪玉コレステロールも正常値なので、安心かというと、実はそうではありません。

 というのは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールは、その比率が大切なのです。それが、LH比と呼ばれるもの。悪玉コレステロール値を善玉コレステロール値で割った数値が2・5以上だと、動脈硬化や血栓のリスクが俄然高くなります。伊東さんのLH比は2・7と危険な水準。健康診断の結果のA評価をうのみにしてはいけない理由がそこにあるのです。本当の評価は「C:要経過観察」が妥当でしょう。

※正常値は、日本人間ドック学会の数値に準拠

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

健康診断結果を“読み取る”ためのポイント 意味と数値を解説


健康診断の結果をじっくり眺めたことはありますか? 見慣れないワードや単位が並び、何を指しているのか分からないことも。そこで、分かりにくい検査項目の読み取り方をご紹介します。

●健診結果の検査項目の読み取り方

 検査項目の意味と読み取り方を知って、毎日の健康習慣に生かしてみましょう。特に分かりにくい項目を解説します。

1:HDLコレステロール/LDLコレステロール

 どちらも血液中の脂質で、いわゆる善玉・悪玉コレステロールのことです。HDLコレステロールは、善玉コレステロールのことで、体内の余分なコレステロールを肝臓に運びます。もし値が40mg/dl未満だと「低HDLコレステロール血症」が疑われ、血管にコレステロールがたまって動脈硬化になりやすくなるといわれています。

 LDLコレステロールは、悪玉コレステロールのことで、多すぎれば血管壁にたまり、動脈硬化につながるといわれています。120mg/dl未満が基準値で、140mg/dlを超えると「高LDLコレステロール血症」が疑われます。

 いずれも脂っこい料理や肉・卵、牛乳・乳製品などの食べすぎや、魚、大豆、野菜などが不足していることで異常が出るといわれています。

2:AST(GOT)とALT(GPT)

 いずれも肝臓病の疑いを調べるものです。血液の中に、破壊された肝細胞がどれくらいあるのかを調べ、基準値を超えると肝臓病の可能性があります。一般的に、お酒を飲みすぎるとAST(GOT)とALT(GPT)が基準値を超えるといわれています。

3:空腹時血糖

 空腹時血糖とは、血液中にある「糖の量」を示しています。糖尿病の有無が分かり、食べすぎやお酒、油、主食のごはんやパン、めん類などの摂りすぎで異常が出ます。また、間食や寝る直前の食事なども異常数値になる原因の1つです。110mg/dl以上で、メタボリック症候群と判定され、126mg/dl以上で糖尿病と判定されます。

4:HbA1c(グリコヘモグロビン)

 HbA1cとは、血管の中にあるブドウ糖が、ヘモグロビンと結合した状態の値です。HbA1cも糖尿病の判定に活用されており、5.6%以上になると保険指導を受ける必要があります。5.9%以上でメタボリック症候群、6.5%以上で糖尿病と判定されます。

●生活習慣病を予防するために

 検査項目の数字を見るだけでは、どのように毎日の生活へ生かしたらいいか分かりづらいですよね。悪い結果が出ても、食事や運動を上手く取り入れて、毎日の生活習慣を少しずつ変えていきましょう

知っているようで知らない“健康診断”の正しい受け


春先は健康診断の季節。でも、「何を検査すべきかわからない」「数値の見方がわからない」という、健康診断の“そもそも”が理解できていない人が意外と多い。そこで今回、健康診断や人間ドックに詳しい東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター所長の和田高士先生の監修のもと、健康診断の基礎知識について整理してみた。
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1. 「健診」と「検診」の違いは?

健康診断とひと口で言っても、健康診断、特定健康診査、乳がん検診といろいろある。このとき疑問に思うのが、「健診」と「検診」の違いだ。一文字だけの違いだが、「健診」は健康かどうかを確認し、健康上の問題がなく、社会生活が正常に行えるかどうかを判断。学校健診や就職時の健診がこれにあたる。

一方「検診」は、特定の病気を発見し、早期に治療を行うことを目的とする。具体的には、がん検診や糖尿病検診等がある。健康診断とひとくくりにされがちだが、目的は異なるため、両者を受けることが大事だ。
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2. 自分が受けられる検査は?

そもそも健康診断は、会社員と非会社員(フリーランスや主婦)とでは違いがある。会社勤めをしている人は、「定期健康診断」が毎年行われているはず。これは毎年行われることが義務とされていて、アルバイトやパートでも所定の勤務時間を超えていれば受けることができるようになっている場合が多い。 
 
検査内容は、問診+身体測定(身長・体重・腹囲など)+視力・聴力・血圧検査+胸部X線+血液検査+尿検査が基本項目(貧血・肝機能・血中脂質・血糖値・心電図検査は、35歳未満および36歳以上40歳未満は省略する場合もあるので、基本項目ではない)。これにオプションなどを追加することは可能だ。

非会社員の場合は、「特定健康診査」を各自治体の案内で受けることができる。通称“メタボ健診”とも呼ばれ、対象は40歳以上75歳未満の全国民なので、会社員も受けることは可能だ。 
 
特定健康診査では、喫煙や飲酒の有無などの質問票+身体測定(身長・体重・腹囲・BMI)+理学的検査(身体診察)+血圧測定+検尿(尿糖・尿蛋白)+血液検査(血中脂質検査+血糖検査+肝機能検査)などを行う。 
 
会社勤めの人たちの「定期健康診断」に含まれる心電図検査、貧血検査は、医師が必要と認めた場合に実施されるという仕組みだ。会社員の場合は、定期健康診断と特定健康診査の内容が重複するところも多いので、定期健康診断だけで問題はない。

このほかに、年齢に応じて各市町村などで「がん検診」を受けることができる。行政が行っているがん検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、乳がん検診が中心。これらは行政が行っている検査だが、これ以外に「人間ドック」という選択もある。

3. 健診でくまなく検査できる?

前述のとおり、企業が行う「定期健康診断」と自治体が行う「特定健康診査」の項目には違いがあることがわかる。さらに、血液検査項目などを詳しくチェックしてみると、全身くまなく検査しているわけではない。ある程度リスクが高い項目をチョイスした、規定の検査項目になっているというのが実態だ。

いちばんわかりやすい例でいえば、人間ドックには必ずある、腎機能血液検査項目が「定期健康診断」にも「特定健康診査」にも含まれていない。また、がん検診も各自治体が行っているものは、罹患率が高い5大がんの胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんのみの検査なので、その他のがんは検査していない。 
 
定期健康診断も特定健康診査も受けることはとても大事だが、受けて問題がなければ100%大丈夫というわけではない、ということも理解しておくべきだ。

4. やはり人間ドックが万全?

不足項目を補う意味では、「人間ドック」という選択もある。オプションでさまざまな検査をつけることもできて、自分が気になる部分をきちんと検査することができる。が、こちらは健康保険適用外の検査になるので、当然料金は高くなる。満足度は高くなるので、勧めたいところだが、こればかりは自己選択。

サイクルとしては、100÷年齢が理想とされている。40歳であれば、100÷40歳なので2年をサイクルに人間ドックのプランを考えてみるのもいいだろう。毎年、自治体の特定健康診査やがん検診を受け、2~3年に1度は人間ドックを、という形で受けるのが40代ではオススメかも。
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5. 検査前の禁酒はNG?

健康診断でいい結果を出そうと、検査前に禁酒やダイエットをする人がいるが、これはその場しのぎの一夜漬けのテスト勉強と同じこと。普段の状態を知るうえでは、検査前に急いでダイエットするよりも普段の問題点を見つけてもらうことが大事。

健康診断では分からず 日常動作が失神招く「危険な病気」


健康診断では分からず 日常動作が失神招く「危険な病気」

急に気分が悪くなって、意識を失い倒れてしまう。その2次被害で「外傷性くも膜下出血」と「両側前頭葉脳挫傷」を発症した、いっこく堂の話を持ち出すまでもなく、失神は思いもよらぬ事態をもたらす。

日本では推定年間79万人が失神していてその背後には病気が隠れているが、ちょっとした日常動作が失神を招く病気もある。注意したい。

 畔柳美千代さん(53歳=仮名)は昨年10月ごろから後頭部に痛みが襲った。手の先がしびれるような感覚があり、気が遠くなるような感覚があった。「脳梗塞」を疑い、近くのクリニックで相談したが「異常なし」。

 ほどなくして、お風呂場で髪を洗っている最中に気を失い、救急車で運ばれた。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授が言う。

「畔柳さんの病気は鎖骨下動脈盗血症候群でした。腕に向かう鎖骨下動脈の付け根が狭くなり、反対側からつながっている脳へ行くべき血流の一部が腕に流れてしまうことで脳が血液不足になってしまう病気です。脳に行くべき血液が腕に盗まれるため、盗血という言葉が病名に付けられています」

 鎖骨下動脈には右と左があるが、大動脈に連なる左鎖骨下動脈の方が詰まりやすい。左腕を胸より高いところに上げたときに症状が出ることが多いので、洗濯物を干していたとか髪を洗っていた、あるいは高い所にあるものを取っていたときなどに発症しがちだ。

「患者さんが自覚できるハッキリした前兆はありませんが、喫煙や肥満など動脈硬化リスクが高い人がかかりやすい。血圧の左右差があり、鎖骨下動脈に雑音がする特徴があります」(東丸教授)

■失神の原因は3種類

 そもそも失神とは、血圧の異常低下などにより、脳全体の血流が減ることで引き起こされる一時的な意識障害のこと。多くは危険性の低い失神だが、なかには命に関わるヤバい病気が潜んでいることもある。

 サラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「失神は脳への血流が6~8秒途絶えたり、収縮期血圧が60㎜Hgに低下したり、脳への酸素供給量が20%低下するだけで起こります。その原因は①起立性低血圧による失神②心血管性失神③反射性失神に大別できます。

①はパーキンソン病や糖尿病や脊椎損傷、尿毒症に伴うもの、抗うつ剤、血管拡張剤などの薬によるもの、がんなど消化管からの出血や下痢・嘔吐に伴うものが含まれます」

 ②は激しい運動中に起こる「大動脈弁狭窄症」のほか、「肺塞栓症」「くも膜下出血」などで発症する。むろん、失神の背景にあるこうした病気はヤバいが、厄介なのは日常動作で起きる失神だ。

「例えば③の反射性失神です。この失神はさらに3つに分かれ、恐怖や痛みなどの感情ストレスや長期の起立が引き金になる『血管迷走神経性失神』、くしゃみなどで起きる『状況失神』、それに『頚動脈洞過敏症』に分かれます。

大量飲酒後に起きる『排尿失神』、高齢女性の切迫した排便や腹痛を伴う排便で起きる『排便失神』は『状況失神』に含まれます」(林院長)頚動脈洞は首の付け根にある血圧と脈泊数をコントロールするセンサー。圧迫すれば脈が遅くなる。

「ただし、過敏症の人はひげをそるのに首を曲げたり、伸ばしたり、マッサージを受けたり、ネクタイを強く締めただけでも失神することがあります」(林院長)

 失神を防ぐことは簡単ではない。意識が遠くなりかけたら、しゃがみ込んで2次被害を軽くすることだ。

自宅でのDIY健康診断が命を救う? 口臭・視力・認知症・心疾患


心臓病から認知症まで、自宅で簡単にできる病気の自己診断テスト(DIY健康診断)をご紹介する。家にあるもので行え、特別な装置も必要なければ、費用も時間もかからない。日常の健康管理の一環として、ぜひとも試していただきたい。

■あなたの口臭大丈夫? スプーン1つで口臭チェック

 スプーンで舌の上をできるだけ奥のほうまでこする。そのあと、ラップなどでスプーンにフタをして、明るいライトの下で1分間待ち、においを嗅ぐ。

 そのスプーンの上には、舌の上にある「舌苔(ぜったい)」というものが載っている。舌苔とは、舌の表面にある突起の隙間に付着した食べカスや、口内の粘膜細胞などに細菌が繁殖して白っぽくなったものだ。

 健康的な舌苔(ぜったい)は透明だが、臭いにおいや濁りがあったら注意信号だ。

 誰かと会話をするとき、知らず知らずのうちに、口臭で不快な気持ちを与えてしまっているかもしれない。舌苔は口臭の原因となるが、特に舌の裏は微生物が繁殖しやすいため、口臭の強さの指標になる。

■口臭でわかる病気いろいろ

 口臭は、人に不快な思いをさせる心配だけが問題なのではない。口臭の原因の約9割は歯周病、扁桃炎、歯の詰め物が取れた場合や虫歯など、口腔内のトラブルだ。

 さらに、もし変わったにおいがするならば、危険な兆候かもしれない。フルーティーなにおいは「ケトアシドーシス」という重篤な糖尿病のサインで、アンモニア臭は腎臓病のサイン、その他の異臭は胃や肺の病気のサインとなることもある。

■時計を描くだけで分かる認知症

 紙を1枚用意し、紙の大きさに合うように丸時計を描いてみよう。数字も全て記入し、時計の針は3時40分に合わせよう。たったこれだけで、認知症の診断にとても有効だ。

 実際にこの検査は病院でも行われており、時計描画試験と呼ばれる。丸がうまく描けない、数字の順番や配置が間違っている、1~12までの数字全てが書かれていない、時刻の針が間違っているなど、時計がうまく描けない場合は、認知症やその前段階である「軽度認識障害(MIC)」の可能性がある。

 このテストでは、数字の順番や空間的な配置などの認知機能を使う必要があり、脳の前頭葉という部位が深く関与している。

■お腹の調子が悪い、胸焼け…その原因はゲップで分かる?

 ティースプーン1杯の重炭酸ソーダ(重曹)を小さめのコップ1杯の水に溶かして、空腹のときに一気に飲む。5分以内に大きな生きのいいゲップが出れば、健康的な胃酸レベルの証拠だ。重炭酸ソーダと胃酸が反応することで二酸化炭素が発生して、ゲップが起きるのだ。

 一方で、生きのいいゲップが出なければ胃酸が減少している可能性がある。胃酸の減少は40代以降で見られることが多く、食べ物の消化や吸収を悪くしたり、お腹の調子が悪くなったりする。

 また、胃酸が少ないと、逆にそれを補おうとする反応で、特に胃の上部で部分的に胃酸の分泌が多くなる。すると、その一部が食道に流れ込み、胸焼けを起こすのだ。お腹の調子が悪いとか、胸焼けするからといって、胃酸の分泌を抑制するタイプの胃薬(制酸剤)を服用すると、状態がもっと悪くなるので注意が必要だ。

■自分では気付きにくい黄斑変性症。交通事故の原因にも

 左右の目で片方ずつ約30秒、ドアや窓のフレームを眺めてみよう。上下左右のフレームのフチは平行だが、これが曲がって見えたりねじれて見えたり、一部が欠落して見えたりする場合は、「黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)」の可能性がある。

 黄斑変性症はものを見るときに最も重要なフィルムの役割をしている網膜の中心部(黄斑)に障害が起こり、視力が低下する病気だ。目の中に蓄積した老廃物などが原因で、加齢とともに増えるという(※1)。この症状により、交通事故の原因にもなりうるため、早めに気付くことが大切だ。

■ベッドで試せる心疾患チェック

 ベッドやソファーに横になり、両足を45度持ち上げて、1分間その姿勢を保持する。次にベッドやソファーのフチに両足をかけ、直角にだらっと垂らす。

 持ち上げている足が青白くなり、足をベッドのフチに垂らしたときに真っ赤になるようだと、動脈閉塞(へいそく)症 の可能性があり、心疾患になるリスクも高い。手足の末端に十分血液が送られていない証だ。

 高齢になると、手足などの末梢(まっしょう)血管に血液を送っている動脈が狭くなる「末梢動脈疾患」になりやすくなる。動脈硬化によって血管の内側が狭くなると、血液の流れが悪くなる。しびれや痛みが起こり、悪化すると潰瘍ができたり、壊死(えし)したりすることもある。

 高血圧、高コレステロール、糖尿病などがリスクファクターである。このような自分で行える簡単なテストのメリットは、病気の早期発見につながるという面もあるが、自分自身の健康状態に興味を持つことができるという点が最も重要なことであろう。
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