あなたの健康はお金で買えますか・・・? ■終活Q&A・葬儀・墓・相続・遺言
fc2ブログ

新盆(初盆)にかかる費用の相場は? 香典やお布施はいくらぐらい?

お布施の金額は3~5万円が相場

新盆は親戚なども招いて行うものであり、特別なものでもあるので、僧侶に渡すお布施は、通常のお盆より相場は高めとなっています。通常のお盆でのお布施は5000~2万円ですが、新盆のお布施は3~5万円ほどです。

お布施以外の費用がかかるケースもある

新盆の場合は会食を行うことも多く、僧侶が参加するケースも少なくありません。しかし、お盆の時期でスケジュールが立て込んでいる場合などは、会食への参加を辞退されることもあります。

そういった場合は「御膳料」も必要になり、相場は5000~1万円程度です。また、自宅などで法要を行うときは、「お車代」として5000~1万円程度を別途わたします。

つまり、自宅などに僧侶を呼んで新盆を行う場合は、7万円前後かかるケースもあると考えておきましょう。会食については予約も必要になるため、早めに僧侶に参加できるかどうかの確認をしておくことが大切です。

合同法要の場合は自宅などで行うよりも費用の節約が可能

檀家が菩提寺で新盆の法要を行うことは合同法要と呼ばれていますが、こちらの場合のお布施は5000~3万円ほどが相場になります。宗教によって異なるので、法要前にあらかじめ確認をしておくのが無難です。

香典の金額は年齢と故人との関係によって異なる

新盆の香典の相場は、本人の年齢や故人との関係によって異なります。

例えば、20~30代が親の新盆で香典を用意する場合は1~5万円、40代以上が用意する場合は1~10万円ほど。故人が祖父母の場合は20代で3000~1万円、30~40代で3000~3万円、50代で5000~3万円が目安になっています。

地域や親族間で金額が大体決められているケースもあるので、臨機応変に包むことが大切です。

・友人や知人の場合は2000~1万円が相場

故人の友人や知人という立場の場合の香典は、2000~1万円ほどが相場です。故人との関係が深かったり、会食の参加をしたりするのであれば、香典の金額を多めにするのもよいでしょう。

新盆の香典は、旧札(すでに使用されているお札)でも新札でも、どちらでも構いませんが、旧来の風習やしきたりが重んじられているような場合は、旧札を使うのが無難でしょう。

香典の相場は2000~1万円ですが、香典に使用するお札のルールとして、4と9の数字は縁起が悪いとして避ける必要があります。そのため、2000円以外であれば、3000円、5000円というように4、9の数字がつかない金額にしましょう。

もしも新盆に行けない場合は、後日手渡しするか、香典袋にお金を入れて現金書留で送るようにします。その際、新盆に行けないおわびと理由を書いた手紙も同封すると丁寧です。

お布施や香典は相場に合わせて臨機応変に

お布施や香典は、地域や宗教によって異なるケースも多いため、相場を参考にしながら包むことが大切です。僧侶へのお布施は自宅などで行うのであればお車代がかかり、会食を辞退されたときには御膳料が必要になります。

特に会食については、あらかじめ僧侶に参加の可否を確認しておけば、料理が無駄になりませんし、御膳料の用意ができます。新盆の法要に参加できない場合の香典は後日渡すか、現金書留で送りましょう。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

蓋が閉まらない棺、人件費の追加請求…“格安葬儀”の落とし穴

© 女性自身

「みなさんのなかには、『葬儀社には、ぼったくられる』とか『お葬式は最低でも数百万円かかる』と思っている方も多いかもしれません。90年代のバブル期は特に、一般的なお葬式の費用が数百万円で、見積もりもアバウトということもありました。そんな業界の悪いイメージが消えないのでしょう」

こう話すのは、『日本一笑顔になれるお葬式 ~大切な人が亡くなる前に知っておきたい葬儀の本当のハナシ~』(扶桑社)の著者で、葬儀社「小金井祭典」社長の是枝嗣人さん。

特に意識して事前に準備をしている人を除けば、身内を見送るお葬式を出すことは「突然手配しなければならないこと」という印象を持つ人がほとんどではないだろうか。

「葬儀社に言われたとおり、あるいは、ご遺族の方もよくわからないまま『ご近所の〇〇さんのときと同じくらいのお葬式にしてください』というと、葬儀社によっては金額がどんどん加算されてしまうことでしょう」(是枝さん・以下同)

だが、バブル崩壊やリーマンショックなどで長引く不況により、親の供養に多額の費用をかけた団塊世代が、自分たちが見送られるときは「子どもたちに迷惑かけたくない」と、身内だけの「家族葬」や通夜を省いた「一日葬」を希望するようになってきたという。

「さらには、ネット葬儀社が格安葬儀を売りにしたり、全国一律のパック料金で、スマホで見積もりができるなど、昨今は手軽なプランが増えていることは間違いありません」

そんななか「ひとつ間違えば、一度しかない故人とのお別れが、とても残念な結果になるケースもある」と是枝さんは指摘する。

「まず、お葬式にどの程度のお金をかけるかというのは、葬儀社のスタッフ数=人件費や、棺などの材質や造りなどの品質の関係で大きく変わることを覚えておいてください」

たとえば、スマホでお葬式の価格を調べると、大型スーパーなどが参入してきていることもあり、「全国均一価格」という表示がみられるようになってきている。

「ネットで『9万円』(火葬式のみ)と書いてあるのと、最寄りの葬儀社さんで『30万円』と言われるのとでは、どちらを選ぶでしょうか。しかし9万円のほうでは、まず『人件費』と『品質』が省略されていると考えていいでしょう」

実際、どんなケースでその“省略”が起き、どんな不便が発生してしまうのだろうか?

「たとえば、当社では火葬式の基本プランで『18万円』というものがございますが、この場合は、棺は8万円程度のものを入れさせていただきます。

しかし、ネットで『9~10万円』と書かれている場合は、棺にはおそらく2~3万円くらいしかかけていないと思われます」

是枝さんの小金井祭典での棺代「8万円」に対して、ネットは格安で「2~3万円」。棺はご遺体とともに「どうせ火葬してしまうんだから……」という考えもなくはないが、「棺の品質には、大きな差が出てくるものです」と是枝さんが言う。

「国内メーカーと外国メーカーで、まず違いが出ます。国内メーカーであればどこで製造されたかたどることができますが、外国メーカーだと追跡できない場合が出てくる。棺の建て付けが悪かったり、蓋がピッタリ閉まらない、目が痛くなる接着剤が使われている、などという場合もある。挙句には、森林破壊につながる伐採をされた木材のこともあるというんです」

製造者を追跡できない=それだけ責任の所在がハッキリしない商品となる。建て付けが悪いなどの棺に当たってしまった場合、故人が“安眠”できるものなのだろうか……。

お葬式を執り行おうとする遺族は、どうしても判断力が鈍りがち。送った後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないような選択を、いまのうちに考えておくことも大切かもしれない。

60代からの「終活」、まず何から始めればいい?

終活はいつから始めたらいいの?

みなさんは「終活は早いうちから始めましょう」という話は聞きませんか? よく分からないし、そのうちにと思っていると思います。終活は早すぎることはありません、思い立ったその日から始めることをおすすめします。いつかは始めたい、では、いつまでも終活を始めることはできません。

終活を始めるときは、身構えない

「終活」と聞くと、遺言書を書かなければならないのか、それとも相続の準備?とハードルが高いと感じるかもしれませんが、そんなに身構えることはありません。

例えば、子どもが帰省するタイミングで今後のことを話題にするだけでもいいのです。かしこまって家族会議をする必要はありません。大事なことは、文章にして書面で残すことです。

「書面=遺言書」とは限らず他にもあります。

遺言書は法的な効力があり、自分で書く「自筆証書遺言」(書き方は一定の決まりがあります)、公証人に依頼する「公正証書遺言」があります。遺言書が有効となるには一定の条件があり、自筆証書遺言は書き方を誤ってしまうと無効になります。遺言書ではなく、気軽に書き込めるので、おすすめしたいのがエンディングノートなのです。

エンディングノートの活用方法とは

終活の第一歩として、自分のことを、身近な人・大切な人に伝えるために作っておきたいエンディングノート。書店に行くと、いろいろなエンディングノートを目にすることと思います。目移りしてしまいますが、自分が使いやすいもので構いません。購入しなくても手持ちのノートでもいいのです。

現在は、NPO法人や葬儀会社で終活無料セミナーも開催されており、参加するとエンディングノートがもらえることも。エンディングノートは、記入方法や記入例、記入項目が記載されているため書きやすいかもしれませんね。

エンディングノートが用意できたら実際に書いてみましょう。大切なことは、読みやすく正確に書くことです。書く順番はありません。書きやすいことから書き始めましょう。例えば、自分の身近なことから記入してみるといいでしょう。

まずは自分のことを書いておこう

エンディングノートでまず書いておきたいのは、自分のことです。

【1】自分が生まれたところ(本籍)

【2】危篤になった場合や亡くなった時に連絡してほしい親友や友達・仲間の名前、連絡先

【3】自分が患っている病気や、通院している(通院していた)病院やなじみのお医者さん

【4】介護が必要になった時のこと(自宅にいたい、介護施設に入居したい)

ここまで書いていくと、エンディングノートを作成することの必要性を実感してくることと思います。過去に旅行した時のお気に入りの写真を貼り付けてみるのもいいと思います。懐かしい思いを抱きながら作成することができることでしょう。

資産について書き残すこと

自分の持っているお金についても記入しておくことが大事です。

【5】取引している金融機関(インターネットの取引も)

60代くらいの人は、複数の銀行や証券会社と取引している場合も多く、現在は使用していない休眠口座がでてくるかもしれません。書き出していくと意外なところに預金があったということがあるかもしれません。

気づいていなかった自分の保有資産を把握することになります。使わない口座は解約して、必要な口座だけ残すようにシンプルにしておくといいでしょう。自分にとっても家族にとっても手続きが分かりやすくなることと思います。

【6】加入している保険

多くの人はなんらかの保険に加入しています。生命保険・医療保険・火災保険・自動車保険等。

証券番号や契約内容を記入するのは面倒かもしれませんが、保険会社から送られてくる契約概要を一緒にしておくと分かりやすいと思います。そういった書類がないのであれば、最低でも保険会社・保険種類を記入しておきましょう。

【7】自宅や不動産のこと

持ち家がある人は、自宅について家族と話し合いをすることが大切です。親は子どもの好きなようにしてほしいと思い、子どもは親の大切な自宅(不動産)を親の想いを大切にしなければとさまざまな迷いが生じ、結果空き家となることが多いのです。家族と話し合うことが難しいのであれば、自分が自宅について考えていることを記しておくことが大切です。

法的な効力はありませんが、残された家族の負担を少なくすることができることと思います。家族が知らない自宅以外の不動産がある場合は、土地か建物か、所在地、所有名義も記入しておきましょう。

【8】葬儀やお墓のこと

残された家族は故人を安らかに見送りたいと思うものの、病院での手続き、葬儀会社・葬儀プランを決めるなど、慌ただしいことになります。葬儀会社や費用について記載しておくと家族が落ち着いて手続きを進められます。

エンディングノートを書く時の注意点とポイント

個人情報を詳細に書き過ぎないことも重要です。特に銀行口座等を書く際に注意が必要です。暗証番号やパスワード等、すぐにでも他人が引き出しできるようなことは書いてはいけません。万が一紛失した場合、知らないところで大切なお金を引き出されてしまう恐れがあります。印鑑の保管場所は、信頼できる人にだけそっとお伝えしておくのもいいかもしれません。

最後のポイントは、エンディングノートを伝えたい人が見つけることができるところに保管しておくことです。寝室やタンスの中とかもいいかもしれません。あとは、万が一のことがあったら、ここを探してねとお話ししておくのもいいかもしれません。

エンディングノートを書くと人生を振り返ることができます。今までの生活に感謝の想いを感じることにもなるでしょう。これからの過ごし方、考え方の道しるべとなり、心豊かにセカンドステージを過ごすことができることと思います。

監修・文:深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)

相続ルールが2022年にも変更見通し 「駆け込み贈与」なら契約書の準備を

 12月に発表される来年度の税制改正大綱では、相続税と贈与税の在り方の抜本的な見直しがあるとみられている。注目すべきは、これまで相続税対策の“王道”として活用されてきた「年間110万円の贈与税非課税枠」が撤廃される可能性があることだ。

『トラブルの芽を摘む相続対策』の著書がある吉澤諭氏(吉澤相続事務所代表)はこう言う。

「どのような制度変更になるかは複数のパターンが考えられます。贈与者が亡くなった後に生前贈与した財産も相続財産として一緒に課税する『相続時精算課税制度』に一本化するという方法や、2001年の租税特別措置法で非課税枠が110万円に拡大される以前の60万円に戻す方法、現行では被相続人が亡くなる前の3年以内の贈与が相続税の課税対象となる制度を10年以内に拡大する方法などが考えられます。

 いずれの場合も現行の贈与税の非課税枠110万円を使って将来の相続財産を圧縮する相続税対策は難しくなり、負担は大きくなります」

 だからこそ、生前贈与で相続財産を圧縮しようと考える人たちの間で“駆け込み贈与”が注目を集めているのだ。早ければ来年3月の税制改正により、翌2023年から新制度がスタートする可能性がある。「納税者が不利になる制度変更では周知期間が設けられる」(吉澤氏)とみられているものの、今年の110万円の非課税枠を使うには年内に贈与を行なう必要があるのはたしかだ。

 では、どのように行なえばいいのか。

「110万円以下の贈与の場合、払う税金がないため税務署への申告は必要ありません。ただし、贈与する人と受け取る人の間で『贈与契約書』を交わしておくのが望ましいでしょう。法的に書面の作成義務はなく、税務調査の際に親が“贈与した”、子が“贈与してもらった”と言えばいいのですが、書面があれば贈与者が亡くなった後の調査でも生前贈与の証明がしやすくなります」(同前)

 贈与契約書には決まった書式はないが、「『いつ』『誰が』『誰に』『何を』贈与したかをもれなく記載し、作成した日付を書き、贈与者と受贈者が署名捺印する」(吉澤氏)というかたちになる。それを2部作ってお互いに手元に残しておくのだ。未成年者の場合は、親権者が署名捺印する。

「また、『お金の移動履歴』が書面で残っていることも大切です。そのためには、贈与するのが現金であれば、贈与者が振り込んだ記録が残る銀行振り込みにしておくべきです。ただし、受贈者がお金を受け取ったと知らない、振り込まれた口座の通帳や印鑑を管理していないなどのケースでは、贈与と認められないリスクがあります」(同前)

 親が子供名義の口座を開設して振り込んでも、子供が成人なのに親が口座を管理している場合などは、贈与と認められない可能性があるのだ。

 正しい知識を持って、非課税枠を活用していかなくてはならない。

※週刊ポスト2021年12月3日号

準備不足が「争族」の火種に…老親の終活で絶対にしてはいけないこと

多くの老親世代(70~80代)が「PPK(ピンピンコロリ)」を望みますが、現実には誰かの介助を受けながら最期に至るケースがほとんどです。現役世代は、老親の死後に「争族」が起きないよう、「まさか」の事態に備えなくてはいけません。どう備えれば良いのか、考えてみましょう。(百寿グループ代表、社会福祉士 山崎 宏)

親の「まさか」は子の「まさか」

 老親問題は誰の身にも100%起こりますが、きちんと対策を講じておく人はあまりいません。仕事では当然のようにリスクヘッジをする人でも、老親のことは見てみぬフリをして先送りしてしまうようなこともあります。そして、ある日突然、事は起きるのです。

 でも、当事者たる親側はまだいいのです。多くの場合、本人はもうわからないからです。困るのは後のことをしなければならない子どもの側です。親が備えぬままに「まさか」が起こったとしたら、不便や不利益を被るのは子どものほうです。たとえ絶縁状態にあったとしても、親子の縁は死んでも切れません。仕事や家庭のことでてんてこ舞いしているさなかに親の不幸があれば、厄介なことになりかねません。

終活適齢期は50代から

 人間50歳ともなれば、明日の朝、今日と同じように元気に目覚める保証はありません。十の位を四捨五入して100歳になるみなさんは、老い先のことで子どもたちに負担をかけたくないのであれば、即刻備えるべきです。遅くとも、後期高齢者(75歳)になるまでには段取りを終えておくことをお勧めします。これは親世代最後の大仕事です。

 残念ながら親が備えていなそうであれば、老親問題で大変な目に遭わなくて済むように、早い段階から親を備えさせるように誘っていく必要があります。「エンディング」までに想定される諸課題ごとに、親子で具体的な段取りについて共有しておかねばなりません。その際に、現役世代のみなさんも、一緒に備えるようにしてください。

 終活を通じて親子での会話や共有する時間が増えたとすれば、これはとても価値のあることです。兄弟姉妹がいる場合には、他の誰よりも早く、親に声かけすることをお勧めします。そうすることが、近い将来にあなたをハッピーにしてくれます。

たった10の質問に答えるだけ!老親リスク診断

 問題意識を高めるために、以下の質問のうち何個「YES」と回答できるか考えてみてください。老親リスクのスコア化だけでなく、老親の何を知っておくべきなのか、親に何を準備してもらえばいいのかがおわかりいただけると思います。実際には全20問で構成されています。老親リスク診断の完全版&診断ガイドも必要という場合には、筆者プロフィールに記載のURLまでご一報ください。

【診断項目】

□兄弟姉妹がいない(一人っ子である)

□最低、月に一度は親と会話している(電話、メール、LINEでも可)

□親がエンディングノートあるいは遺言を書いているかどうか知っている

□認知症対策として任意後見を検討しているかどうか知っている

□介護施設に入る場合の予算と、譲れない条件を知っている

□看取りと葬儀についての要望を知っている

□親のキャッシュカードの暗証番号を知っている

□実家の土地および家屋の固定資産税評価額を知っている

□生命保険の契約内容を把握している

□非嫡出子や特別な異性の存在の有無を把握している

【診断結果】

・9つ以上・・・老親リスクは低いです。兄弟姉妹がいる場合、先駆けて老後支援を申し出ましょう!

・7~8つ・・・折り合いの悪い兄弟姉妹がいなければ大丈夫そう。親との接触頻度を高めましょう。

・5~6つ・・・標準的なリスクです。兄弟姉妹がいる場合は要注意!まずは親と向き合いましょう。

・3~4つ・・・老親リスク大です。親との心理的距離を縮めつつ、早急に手を打つ必要があります。              

・0~2つ・・・超危険!争族等で不利益を被る可能性大です。即、対策を講じてください!   

よくある終活の履き違え

 老親世代が陥りやすい終活の落とし穴について、特に重要なものに触れておきます。

・エンディングノートをしたためたものの、その内容を子どもと共有することなく、保管したまま逝ってしまう。

・親が葬儀の生前予約をしていた事実を知らず、遺族が別途葬儀を手配してしまう。

・預金の全貌はおろか、キャッシュカードの暗証番号さえも秘密裏にしたまま、親が認知症になってしまう。

 こんな失敗も多々見受けますが、笑い話では済まないのが、遺言と任意後見人に関することです。いずれも、銀行や法律事務所が販売しているサービスです。わが子に相談することもなく契約してしまう人たちが一定数いるのです。これはとても残念なことです。

遺言がきっかけで「争族」が起きることも

 遺言をしたためた場合、子どもが複数いれば、争族とまではいかないまでも、兄弟姉妹関係が悪化することは少なくありません。それを望まないのであれば、遺言相続という財産承継法はお勧めしません。

 というのも、親が亡くなった後で遺言が出てくると、相続者たちの心に火種が起きるからです。仮に均等分けと記載されていれば、親のことをいちばんサポートしたという自負のある子どもは面白くありません。特定の子どもの分け前を多くしたとすれば、金額の少なかった側は「なぜだ」と疑問を覚えます。

 自分が死ぬまで財産の分け方を伏せておいたり、誰がいくら受け取るのかを相続人全員に開陳したりすることなく、子どもたちそれぞれと個別に対話して、特に多く引き継がせたい子どもには、贈与税に配慮しながら、早いうちからこまめに先渡しすると良いでしょう。

 そうすることで、いざというときに見かけ上は均等分けになるよう、前倒しでアクションを取ることができます。それによって、多く受け取る子どもには、感謝はもちろん、親の老後を支えようという覚悟が定まると思います。

後見制度の落とし穴

 任意後見については、「娘や息子を指定しておけば認知症になっても安心」とは限りません。判断能力が損なわれたときに、家庭裁判所から選任された監督人に娘や息子が管理されることになってしまうかもしれないからです。加えて、ひとたび後見制度を利用してしまったら、いくら異議を唱えようがクーリングオフできません。これが後見制度の厄介なところです。

 ちまたの終活セミナーでは、主催者がこうした任意後見制度のデメリットに言及していないことも少なくありません。制度をきちんと理解し、わが子に相談した上で後見制度の利用を検討するようにしましょう。

終活を通じて親子の絆を再構築しよう

 現役世代のみなさんは、老親問題で不利益を被らぬようリスクヘッジしておかねばなりません。老親にはエンディングまでの想定課題ごとに、ビジョン、子どもへの依頼事項、そしてそのための財源も明らかにしてもらったうえで、可能な限り先に渡しておいてもらう必要があります。

 方法はいくらでもあります。わが子や孫の生活資金・教育資金には、贈与税は一切かかりません。結婚資金や住宅資金も実質的に非課税です。お金に余裕があれば、政治家や芸能人が活用している使用貸借(わが子のために親名義でマイホームを購入し、そのまま子ども世帯に住まわせる究極の財産承継術)も賢い選択です。

 終活のパートナーは、銀行や法律家ではありません。相続者間に紛争性があるなどのイレギュラー・ケースを除いては、これはという子どもを選んだ上で親子間で完結すべきです。どうしても遺言や任意後見に執着があるのなら、コンタクトすべきは公証役場です。そうすれば、無駄な報酬は一切取られなくて済みます。

「まさか」は必ずやってくる

 老親問題というリスクは必ずやってきますので、しっかり備えることをお勧めします。

 まずは、親子で向き合うことです。親世代最後の大仕事です。子どもの側からは切り出しづらいという声もよく耳にします。親子間の心の距離の縮め方については、またの機会に書いてみようと思います。

お布施は相続税で控除できるのか 領収書がないときの対処法も知りたい

お布施は葬式費用の一つとして相続財産の額から差し引けます。ただし、領収書の有無について気になる人も多いはず。お布施の領収書をもらえなかったら、相続税から控除できないのでしょうか。賢い対処法を税理士が解説します。

お布施は相続財産から控除できる
お布施とは、お寺の僧侶に対し、読経や戒名の謝礼として渡す金品のことをいいます。本来は「仏を供養する」という意味があります。あくまで気持ちから支払うものであり、対価ではありません。

お布施は相続税の計算上、「葬式費用」にあたります。そのため、お布施を支払った人が承継した相続財産の額から差し引けるものです。お布施以外にも、僧侶へのお車代(交通費)やお膳料(会食に参加しないときに包むお金代)、お土産代も控除の対象となります。

具体的な計算は次のようになります。

この後、少し複雑なプロセスを経て相続税額を計算します。葬式費用を負担していると、その分納税額が下がるのです。

葬式費用になるものの範囲
相続税法では、相続人や包括受遺者が支払った葬式費用を、相続税の計算の基準となる相続財産の額から差し引けます。お布施も葬式費用の一つですが、払ったお布施のすべてを控除できるとは限りません。

税法上の葬式費用になるのは、故人の死亡に伴い必要となる葬儀費用と遺体処置費用です。具体的には、次のように分かれています。

葬式費用になるもの
葬式費用に含まれるのは、次のような費用です。

1.葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
2.遺体や遺骨の回送にかかった費用
3.お通夜など、葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用
4.葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
5.死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用

葬式のときに包んだお布施やお車代、お膳料は、5の「葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用」に該当します。そのため、葬式費用に含まれることになります。

葬式費用にならないもの
一方、次のような費用は、葬式費用になりません。

1.香典返しのためにかかった費用
2.墓石や墓地の買い入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
3.初七日や法事などのためにかかった費用

葬式以外でも、初七日や四十九日、一周忌などといった法事でもお布施やお車代、お膳料を支払うことがあります。残念ながら、法事で支払った分は葬式費用に含まれません。法事はあくまで亡くなった人の供養に過ぎず、葬る儀式ではないからです。

お布施は領収書がもらえるのか
葬式費用として控除するには、領収書など内容や金額を証明できる書類が必要となります。交通費やお膳料は領収書がもらえますが、お布施の領収書を出してくれるお寺はあまり目にしません。

なぜでしょうか。それは、お布施はあくまでも喪主の自発的な「気持ち」という位置づけあり、読経や戒名の対価ではないからです。また、仮に対価性があると言っても、お寺には領収書を発行する義務がありません。民法第486条は領収書の発行について次のように定めています。

「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」

つまり、喪主はお寺に「領収書を出してください」と言えるだけに過ぎません。言われたお寺が領収書を発行しなかったら、それっきりなのです。

お布施の領収書がもらえなかったときの対処法
では、領収書がなかったら、お布施は相続財産から控除できないのでしょうか。実は、そうではありません。領収書がなくても、記録を残せば差し引けます。

記録に残すべき項目は次の五つです。

・お寺の名称
・所在地・連絡先
・支払日付
・支払の目的
・支払額

これらをメモとして記録し、申告書と一緒に提出すれば、お布施も葬式費用として控除できます。

お布施に関する注意点
お布施に関しては、次の点に注意しましょう。

差し引ける金額は「常識的な範囲」
お布施は相続財産から差し引けますが、いくらでも控除できるわけではありません。「常識的に見て『これくらいが妥当』と言える金額」が限度です。亡くなった人の置かれた立場や相続人の状況などを踏まえて判断します。

記録は正確に残そう
日付やお寺の名前も正確に書きましょう。葬儀のその場で思い立って手帳にペンで書くのは難しいかもしれません。あらかじめ、スマートフォンのスケジュールアプリなどで葬儀の時間や場所、お寺の名前や包む予定の金額を記録しておくと安心です。

相続放棄をした人が負担したお布施は控除できる
葬式費用を相続財産から差し引けるのは「実際に支払った人」です。なかには相続を放棄した人がお布施を負担する家もあるでしょう。「相続放棄をしていると、相続財産から引けないのでは?」と思われがちですが、実際には放棄していてもお布施の支払額を葬式費用として控除できます。

ちなみに、相続放棄をしても死亡保険金や死亡退職金は受け取れます。かつ、これらは相続税の課税対象です。つまり、相続放棄後に死亡保険金や死亡退職金を受け取っても、葬式費用を負担すれば、納税額を抑えられます。

悩んだら税理士に相談を
お布施以外にも葬式費用となるものはいろいろありますが、正確に判断するのは難しいものです。迷ったら、税理士に相談するとよいでしょう。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)

税理士 鈴木まゆ子プロフィール
2000年中央大学法学部法律学科卒業。(株)ドン.キホーテ、会計事務所勤務を経て、2009年税理士試験官報合格、2012年税理士登録。

今すぐできる終活講座 それでも片付けたいなら、休眠口座やSNSの整理をしよう 断捨離不要、片付けない終活(後編)

残された家族のための片付けとは

財産に関する片付け

財産以外に関する片付け

片付けた財産を世の中に役立てるという選択肢

今すぐできる終活講座 残される人のため? その片付けは無理にしなくて大丈夫です(前編)

興味のある終活項目は「片付け」

  終活に対する意識について興味深いデータがあります。「NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ」が2021年8月に実施した「遺贈寄付に関する実態調査」(50代〜70代の男女)のアンケート項目に「あなたは終活においてどのような準備に興味がありますか」という質問があり、いくつかの回答のうち「片付け・断捨離」がダントツでした。特に女性の76%が興味を持っており、「終活=片付け」のイメージが強いようです。でも、終活にあたって本当に「片付け」は必要なのでしょうか? 

興味のある終活項目は「片付け」
「NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ」の調査結果を参考に作成(齋藤弘道さん提供)

 この連載で前にもお伝えしましたが、「片付け」や「断捨離」は「残された家族のため」というよりも「自分のため」の側面が強いように思います。同じ終活でも、「死後」よりも「生前」に重点があると感じられるのです。この感覚を確かめるために、家の近所にある比較的大きな本屋に行ってみました。


「片付け」の本が63冊!

 デパートの一角にある本屋に行くと、すぐに「くらし」というジャンルの本棚が見つかりました。その棚はさらに「貯金・節約」「家事」「収納」「片付け」という名前の付いた仕切り板で区切られています。「片付け」に分類された本は、なんと63冊もありました。「片付け」大人気ですね。


  その中身をナナメ読みしてみると、ライフスタイルや心理的な視点で書かれているものが多いことに気付きます。やはり、今の暮らしや自分の気持ちに焦点が当たっているようです。終活の観点で書かれているものも4冊くらいありましたが、それも「老後の生活」がメーンテーマです。残された家族のための「片付け」が書かれた本は見当たりませんでした。


片付けはだれのため?

 「今後の生活をスッキリと送りたい」「大切なモノだけに囲まれて暮らしたい」という理由で「片付け」に取り組むことは素晴らしいと思います。しかし、「残された家族のため」という理由の「片付け」はおすすめしません。「片付け」には気力も体力も必要です。身体を壊してしまっては本末転倒です。


  相続手続きの仕事をしていると、時々ゴミ屋敷と思える状態の家に出会うことがあります。大量のモノの中から、相続手続きに必要な情報を探し出すのは本当に大変です。それでも、専門の業者に依頼すれば、料金はかかりますが迅速丁寧にモノを分別しながら不用品を処分してもらえます。残された家族がモノの処分で困ることはほとんどないのです。


 常にモノが整理され、必要なモノの所在が把握できている暮らしは、確かに精神衛生上も好ましいと思います。でも、どうしても「捨てられない」「整理できない」性格の人もいますよね。他人から見れば理解不能でも、本人にとっては残しておきたい理由があるのでしょう。


別に片付いていなくても、本人が構わないのであれば、それで良いではありませんか。実家の片付け問題や、夫婦間の片付け問題もよく聞きますが、たとえ親子や夫婦でも、人それぞれ価値観が違うのですから、とやかく言わない方が円満な人間関係のためだと思います。


片付けは自分が共感できる方法で

 では、高齢者が「自分のため」に片付けようと考えた場合に、ちょっと困ったことがあります。さきほどの本屋でナナメ読みして気付きました。本によって、言っていることがバラバラなのです。たとえば、こんなに違います。


・頑張り過ぎないことが大事 ←→ モノを全部出して整理する

・気楽に取り組みましょう ←→ 強い信念でやり切る

・捨てる順番を決める ←→ 残すモノを決める

・賞状や趣味のモノとは決別 ←→ 思い出の品は最後

・捨てない片付け ←→ 「捨てる」を終わらせる

・書斎は片付けない ←→ 書類は全部捨てる

・あきらめること ←→ 「好き」を捨てられない


 もう、一体どうすれば良いの? という感じです。意外にも高齢者向けに書かれた本でも、強い調子で生前整理をすすめていたりします。高齢者がこのような勢いで片付けして大丈夫かと、少し心配してしまいます。結局は、自分に合った方法、心から共感できる方法で取り組んでみるしかないようです。自分がスッキリすれば良いのですから、特に正解はないのだと思います。


 作家の宇野千代さんは「人生は死ぬまで現役である、老後の存在する隙はない」という言葉を残されたそうです。心の赴くまま自由に生きることは簡単ではありませんが、自分の望む人生に少しでも近づけるようになりたいものです。


 次回後編では、どうしても「片付ける終活」をしたい方へ、「自分のため」だけでない片付けの方法をご紹介します。


齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)

遺贈寄附推進機構 代表取締役、全国レガシーギフト協会 理事

信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の「全国レガシーギフト協会」)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

「妹が心配」と放棄求める親、全財産を要求する義姉 家族の本性があらわになる相続問題

 主に両親や祖父母など、亡くなった人が残した財産を引き継ぐ「遺産相続」。預貯金、株券、小切手、現金などの他、家や土地、宝石、ゴルフの会員権、著作権、電話加入権といったさまざまなものが相続できる財産に含まれます。

もちろん、プラスのものだけならいいのですが、住宅ローンなどの借金や未払いの税金など、負の遺産も少なくありません。

そのためか相続は古くからさまざまな問題を引き起こし、家族間に亀裂を生んでしまうことも多々あるようです。こうした亀裂を避けるためには、早いうち(被相続人が生きているうち)から家族間で話し合いをしておくことが大切ですが、その話し合い自体が亀裂を生んでしまうことも……。

喘息持ちの妹に全財産を譲ると言い出した両親
 関東地方在住の美空さん(仮名・44歳)はこの夏、大きな虚無感に襲われる出来事を体験しました。事の発端となったのは今から3年前、70歳になる父親が交通事故に遭い、介護が必要になったこと。美空さんの家から車で15分ほどの距離に住んでいる父親は寝たきり状態になり、母親から助けを求められ、仕事が終わったあとと週末を使って実家に通うようになりました。

「夫に相談した結果『できることはできるうちにやるべきだよ』と言ってもらい、夫がある程度家事を担当してくれることになりました。でも、土日は泊まりがけで実家に帰るため、家族の時間をほとんど持つことができなくなってしまったんです。それでも子どもたちは寂しいとも言わず『ママ、おじいちゃんのために頑張って! でも、疲れたら休んでいいんだよ!』と優しい言葉をかけてくれました」

 仕事が終わるとその足で実家に向かい、父親の体をホットタオルで拭き、ドライシャンプーで頭を洗い、汚れた洗濯物を洗って干す。それが終わると翌日分の食事を作り、冷蔵庫へ。母親がやってくれれば……と思う美空さんですが、実家には体の弱い妹がおり、母親はそちらにかかりっきり。結局、美空さんが動くしかなかったのだとか。

「妹はひどい喘息持ち。とはいえ医師からは普通に生活する分には問題ないと言われているんです。でも、病気を盾に何もやろうとしません。母も妹のことを口実にして、父親の世話を拒否している状態です。以前からそういう家族だったので仕方ないと割り切って面倒を見にいっているんですが……。実は先日、こんなことを両親から言われてしまって……」

 ある夜、美空さんが実家であれこれと家事をしていると、両親に「話がある」と呼ばれました。「ようやく介護施設に入居できるようになったのかな?」と美空さんは思いましたが、ご両親からの言葉は意外すぎるものでした。

「妹は体が弱くて将来が心配なので、家や財産はすべて妹に相続させると伝えられました。相続放棄に関する書類にサインするよう求められましたが、介護はこれまで通り私がやるよう言われたんですよ。『本気か!?』って、思わずツッコミを入れたくなりました」

 美空さんはとりあえず返事は保留にして帰宅し、夫に相談することに。すると、夫は美空さん以上に怒ってくれました。

「お金の問題じゃないけれど、夫から見ても妹を甘やかしすぎているから、『もう二度と行かなくていいと思う』と言ってくれました」

 夫の言葉で憑き物が落ちたように、両親への愛情や責任感が消えてしまったという美空さん。それからは実家に顔を出す頻度を抑え、週に1度程度にしたそう。すると、父親からは「金を渡さないと知った途端にその態度か!」と怒鳴られるのだとか。

「『あらそう。お父さんもそんな娘に介護なんてされたくないでしょ? 私も、ここに来ないで済んだ方が楽なんだけど?』って答えています。子どもの頃から妹ばかりがかわいがられていることは理解していましたが、まさかここまでとは。血のつながった相手でも、他人なんだなぁって思いました」

 母の負担が心配で完全には絶縁できずにいる美空さんですが、今後のことを考えると憂鬱な気持ちになるそうです。

長男がすべてを相続? 意味不明な理論を振りかざす義姉にうんざり
 東北地方在住の英恵さん(仮名・50歳)は、仲が良かったはずの家族と絶縁の危機を迎えています。

 昨年、とても元気に一人暮らしをしていた母親が急逝し、英恵さんと兄の2人が遺産を相続することになりました。その際、しゃしゃり出てきたのが兄の妻である義姉だったそうです。

 義姉の言い分は「長男が財産を相続するべき!」というもの。何かと押しが強い義姉が兄を説得したことで、母親が暮らしていた家や土地、1000万円ほどの貯金のすべてを放棄するよう、兄自身も言い出すようになってしまいました。

「田舎だし古い家なので、すべてを合わせても3000万円くらいだと思うんですが……。義姉の言いなりになって相続放棄をするのは悔しい気がして。弁護士を立てて反論するか、兄などいなかったものとして放棄しこれを限りに絶縁するか、悩んでいる最中です」

 夫から相続放棄の条件として、金輪際関わりを一切持たないことを約束させるべきだと言われたそうですが、英恵さんにとって兄は、唯一残された親族。そう簡単に割り切れるものではなく、悶々とした思いを抱えているといいます。

 金銭が絡むとその人が隠してきた本性があらわになるため、遺産関係はとかく問題が起こりやすくなります。法務省の司法統計年報のデータによると、こうした遺産分割のトラブル件数は増加傾向にあるとのこと。今後、こうした問題に直面する可能性を考えて、親を交えて話し合いを重ねておくようにするといいでしょう。

「どうして、死んじゃった人の顔に白い布をかけるの?」 疑問への回答

なぜ、遺体の顔に白い布?© オトナンサー 提供 なぜ、遺体の顔に白い布?

 筆者は葬祭業に携わりながら、6年ほど前から、「葬儀葬式ch」というYouTubeチャンネルを運営している現役のYouTuberでもあります。そんな活動をしていると、視聴者さんから質問を頂くことがあります。あるとき、お母さんが子どもの素朴な疑問を代筆し、このような質問として送ってきてくれたことがありました。

【動画】なぜ白い布をかけるのか?

「どうして、死んじゃった人の顔に白い布をかけるの?」

 これに対する当時の筆者の回答は「死者の顔が腐敗して変色し、見た目が怖いものになっていくから、その顔を隠すため」と「死亡確認が曖昧だった頃、顔に薄い布をかけておけば、万が一、息をしていたときに布が動いて分かるから」というものでした。

 数年前にした回答ですが、さすがに毎日のように動画で質問に答えていると、答える側も少しずつ、新しい見解が進んできます。そこで今回は、現状での「なぜ、遺体の顔に白い布をかけるのか」という考察を話してみたいと思います。

遺体の持つ根源的な怖さ「腐敗」

 まず一つは、先述した以前の回答と同様に「ドライアイスがなく、十分に冷却できなかった時代、遺体の顔色は見る見る変わっていくから」というものです。白装束というのは宗教的な心理面だけで語られることが多いですが、実は物理的な変色による「遺体の怖さ」を隠すものとして存在している側面があるのです。

「天冠(てんかん)」と呼ばれる、頭に着けるひも付きの三角の布があります。幽霊のコントでよく使われているのを見ますが、もともとはもっと大型で深く、おでこ全体を隠すように使われていました。顔の全てを隠すわけではないですが、髪の毛の生え際など大きく露出している部分を隠すには非常に有効で、腐敗の様子を隠し、故人の尊厳を守るために着けられました。

 他に手甲(てっこう。てこう、とも)、足袋、脚半(きゃはん)などもありますが、変色は人間の体の末端部分から起こることが多く、変色が大きくみられる場所を隠すためにあるのでしょう。そう理解すると、白装束は合理的に「死の恐怖」「腐敗による変色の恐怖」に対応した、生きている人が死者を送るための合理的な装具だということが分かります。よって、遺体に白布をかけるのは、腐敗して変色していく様を直接見せないためという意味合いがあるのは間違いない事実でしょう。

 現代ではドライアイスの流通状況がよくなり、また、エンバーミング(遺体の消毒や保存処理をすること)などの遺体保全技術が利用しやすい状況によって、遺体の腐敗による変化を実感しにくくなったので、白布をかける行為を疑問に思うこともありますが、昔の、遺体の腐敗が当たり前だった時代には、白装束も遺体の顔にかける布も当然の処置であり、必要なものだったのでしょう。

「納棺した後は白布をかけない」ワケ

 白い布に対する考察の重要なポイントとして、「布団に安置しているときは白い布をかけて、顔を隠し、ひつぎに納めた後は布を取って、顔が見える状況にする」という使い分けがあります。

 医療が行き渡らず、医師による死亡診断が不十分だった頃には、顔に薄布を当てて、呼吸しているかどうかを見定めたというのは一見、合理的な説に思えていました。しかし、医師の診断が安定して行われるようになった昭和の時代も、白い布を顔にかける風習は存続し続けました。その答えの材料は同じく、昭和の頃に行われた「遺体の耳や鼻に綿球を詰める」行為にヒントがあるのではないかと筆者は推測します。

 体液の流出を抑えるためには、浅い所に詰める綿球はあまり意味を成しません。遺体処置のやり方が科学的に理解されていなかった頃には、遺体から、体液や血液があふれることがよくありました。そういうことに対する風習的な言葉も残されており、「仏さまが喜んでいると、血が出ることもあるんだよ」と教えてもらったこともあります。しかし、「昔の人が意味のないことを伝統として続けるだろうか」という疑問が浮かびました。

 その際、過去の自宅安置の風景を思い出したときに、答えとして有力なのは「虫」の存在です。現代の、温度管理の行き届いた気密性の高い自宅空間での安置ではなく、そこそこに隙間があり、空調がなく、部屋の温度管理が難しい時代においては、遺体の口が開いていて、大小のハエが遺体にたかっている光景は、1976(昭和51)年生まれの筆者より上の世代では記憶にあることでしょう。

 鼻や耳に浅く詰められた綿球は虫の侵入を防ぎ、卵を生み付けられるのを防ぐ物でしたし、白布もそうした虫の侵入を防ぐバリアーとして有効に働くといえます。顔にかける白布は現実的な効果として、「腐敗による変色の怖さを遠ざけ、物理的にハエなどの虫の侵入を防ぐものとして機能していた」というのが筆者の現在の見解です。そして、納棺後は虫の侵入の恐れがないため、納棺時には白布を取り去っているというのが理論的な推測になります。

顔に白布をかけたがらない人も

 部屋の気密性が上がり、虫の侵入も容易に防げて、ドライアイスなどの冷却措置で顔色もあまり変化しなくなった現代では、「(故人の)お顔を見ていたいので、白い布をかけなくてもいいですか」と、死者をまだ生きているかのように扱う遺族も現れるようになりました。

 先述した通り、死者の怖さとは根源的にその腐敗していく様子にあるもので、腐敗がある程度は抑えられる現代においては、白布の必要性が感じられなくなってきているのかもしれません。筆者としては「寝顔をずっと見られると恥ずかしいかもしれませんし、まぶしいと、よく眠れないかもしれませんから、ほどほどでご家族の気が済むようにしてくださいね」とアドバイスすることにしています。

 理解できない風習を「迷信」と片付けてしまうのは簡単なことですが、風習には極めて合理的な側面や敬意が存在しており、人の営みと文化の豊かさを表すものです。昔通りのことをできるだけ残すのは、やはり、連綿と続いてきた死者への敬意を失わないこと、そして、時代背景に思いをはせ、風習の意味をもう一度知ることにつながるのではないでしょうか。

佐藤葬祭社長 佐藤信顕

相続税がらみで突然、税務調査官がやってきた!?どう対応するのが正解なのか

相続税の節税対策をきちんと行うことは重要だ。しかし、それだけでは不十分である。相続税を申告した後にやってくる「税務調査」の怖さを、多くの人は知らない。「税務調査は大金持ちや、脱税をしている人だけが気を付ければいい」という考えでは、突然の税務調査に慌ててしまい、結果として余計に税金を払わされる可能性も出てくる。年間1000件の相続税申告・相談に携わる筆者が、あまり知られていない税務調査の実態を明かす。(税理士・OAG税理士法人資産トータルサービス部部長 奥田周年)

相続税で「マルサ」はやってこない

税務調査で気を付けておくべきポイントは?

 そもそも「税務調査」とは、納税者から提出された申告内容が正しいかどうかを税務署がチェックし、不明点や誤っている点などについて確認や是正を求めることを指す。

 相続税の税務調査の場合は、被相続人(=亡くなった人)の自宅を税務調査官が訪問し、相続人(遺族)への質問を通じて申告内容が適正だったかを確認することになる。

 税務調査というと、多くの人がイメージするのは、「マルサ」と呼ばれる国税局査察部による強制調査ではないだろうか。令状を手にした国税調査官が、早朝5時に突然、自宅にやってきて家の中のあちこちを捜索される……。映画やドラマでこんなシーンを目にしたことがある人もいるだろう。

 だが安心してほしい。相続税の税務調査でこのような強制調査になる可能性はほぼない。

 税務調査には大きく分けて強制調査と任意調査の2種類がある。強制捜査は、国税犯則取締法に基づき、裁判所の令状交付を受けて国税局査察部が実施するものであり、悪質な脱税などが疑われる場合に行われる。一方、任意調査は国税通則法に基づいて税務調査官が実施するものであり、対象となる納税者の同意を得た上で行われる。

 相続税で税務調査が発生しても、基本的には任意調査となる。相続税とは被相続人の財産にかかる税であるため、当事者である被相続人が亡くなっている状態での調査はあくまでも推測の域を出ず、性質的に強制調査はそぐわないからだ。

 ただし任意調査といっても、相続人には調査の受忍義務があると法律で定められているため、調査自体を拒否することはできない。

税務調査官が来ても

玄関のドアを開けてはいけない

 任意調査は、(1)税務署から申告を担当した税理士事務所へ連絡が入る→(2)相続人と日程の調整→(3)税務調査の立ち合いという流れで行われることになる。

 しかしごくまれに、税理士事務所への連絡をすっ飛ばして、相続人のところへ税務調査官が直接訪問してしまうケースがある。

「ピンポン」とチャイムが鳴ったと思ったら「税務署です。税務調査に来ました」と告げられる。すると、多くの人は焦って玄関のドアを開けてしまうのだ。ドアを開けたら最後、調査官はあなたの自宅に入ってきて、一応了解は取るものの調査を始めてしまう。

 だが、ここで覚えておいてほしいのは、「突然、税務調査官が訪ねてきても、玄関のドアを開けてはいけない」ということだ。

 任意調査である以上、玄関のドアを開けずに、一呼吸おいてこう伝えればよい。

「うちは税理士さんにお願いしていますので、税理士に連絡をしてください」

 すると税務調査官といえども強制調査ではないので帰るしかないのだ。国税庁のホームページでも、税務調査の事前通知に関して「調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備などをできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています」と記載されている。

 だが、相続財産に現金が多い場合に、現金を移動されるのを嫌って突然訪問してくる調査官がまれにいるのだ。しかし、そうした行為には応じなくてよい。

「しつこい税務調査」に根負けして

修正申告に応じる人も

 相続税の申告は、被相続人の死亡によって相続開始となってから10カ月後までに行わなければならないと定められている。そして、相続税の税務調査は申告後1~2年のうちに税務署から連絡が来るパターンが多い。

 税務調査などによってすでに申告した納税額に誤りが判明した場合、申告の誤りを税務当局が正して変更する「更正」か、あるいは申告の誤りを納税者が自主的に訂正する「修正申告」の2通りの対応がある。

 更正は税務署の判断による処分なので、課税する根拠が明らかでなければならない。ただ相続税の場合は被相続人が亡くなっているため、現金の行き先が不明なケースなども多くある。本来なら、その現金がどこかに存在するか、あるいは相続人に流れていることが証明できなければ、税務署として更正の処分はできない。

 すると税務署はどういう手段に出るか。

 相続人などへのヒアリングが何度も行われ、調査が長期戦となるのだ。

 相続人は当初、現金の行方に心当たりがないと言っていても、税務調査があまりにも長引いてくると「このくらいの金額で済むのだったら修正申告して終わらせよう」という心境になってしまう。本来、行き先が分からないお金には課税できないのが筋だが、しつこい税務調査に相続人が根負けして、修正申告に応じてしまうことも多い。

 こうした「修正申告の慫慂(しょうよう:そうするように誘って勧めること、現在では勧奨という)」と呼ばれる手段を税務署が取ってくるようになったのだ。

 税務調査官もその道のプロなので、素人の相続人では対応が難しい。税務調査には税理士を同席させるのがベターだといえるだろう。

 余談だが、税務署には管轄エリアがあるため何度も同じ調査官の税務調査を受けることもある。時には、調査官の性格や特徴を踏まえて相手の考え方を先読みした対応も必要だ。

加算税という重いペナルティー

税務調査にどう備えるか

 国税庁が発表している相続税の税務調査の統計によると、1件当たりの否認額(申告漏れ財産)の平均は約3000万円になるという。申告漏れの相続財産があると判断された場合には、相続税の追加納付が必要となる。また本来の申告期限から遅れて払うので、その分の延滞税もかかってしまう。

 だがそれだけではない。税務調査で指摘された申告漏れ財産については、ペナルティーとして加算税が課せられてしまうのだ。加算税は大きく以下の2種類に分けられる。

(1)過少申告加算税……故意ではないが申告が漏れていた場合。追加納付税額×10%

(2)重加算税……故意に税額を少なく申告した場合。追加納付税額×35%

 4000万円の申告漏れがあった場合を例に取ってみよう。

 相続税率は条件によって異なるが仮に30%とすると、4000 万円×30%=1200万円で、この1200万円が追加納付税額となる。さらにここに加算税がかかる。

 過少申告加算税の場合は1200万円×10%=120万円、重加算税の場合だと1200万円×35%=420万円もかかってしまう(実際には延滞税も加わるが、延滞日数によって税率が異なるため省略)。

 こうして見ると、誰しもが税務調査で追徴課税を受ける事態は避けたいと思うのではないだろうか。

 近年、相続税への課税の網は強化される傾向にある。従来なら「うっかり漏れていたようなので過少申告加算税ですね」と言われていたケースでも、税務調査官が最初から「重加算税です」と言ってくることが時折見受けられるようになった。

 重加算税を課すには、相続人による「財産から除外しました」という一文が根拠として必要だった。だが、そんな一文は誰もが書きたくはない。そのため最近は、税務調査の際に調査官が作成する質疑応答記録書の中に、根拠となるような相続人の発言を記録することで重加算税を課そうとするやり方が増えている。

 相続税への課税が強化される中で、税務調査も一段と厳しくなっている。申告の段階から、相続税に精通した税理士と事実を共有して調査に臨むことが、防衛策として今後さらに重要になってくるだろう。

人生終盤は銀行口座の集約を 普通預金・定期預金の解約手続き方法を解説

 銀行口座を複数持てば、給与の振り込み、定期的な支払い、貯蓄など目的ごとに分けられるメリットがある。しかし、人生の終盤に差し掛かるとそれがデメリットに変わってしまいかねない。都内在住の60代男性は「煩わしくなった」と語る。

「現役時代よりお金の出入りが減ったのに、複数の銀行口座に分けていると面倒なだけ。給料振り込み用、住宅ローンの引き落とし用、定期口座などに年金用の口座が加わり、管理しきれません。子供からは『万が一の時に大変だから、元気なうちに口座をまとめて』と言われていますが……」

 ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏は「60代以上で多数の口座を持つ人は多く、そのまま放っておくと家族に迷惑がかかる」と指摘する。

「昔は今よりも口座開設が容易だったので、様々な用途ごとに銀行口座を分ける人が多かった。また、1000万円以上の預金が保護されないペイオフを怖れて、預金を分散させるケースも多くみられます。さらに、平成以降の銀行の合併や統廃合後も新しい通帳を作ったりせず、口座をそのままにしている人もいます。

 管理が大変ですし、使っていない口座の存在は忘れてしまいがち。

 最も困るのは名義人の死後です。口座が見つからずに相続できるはずの財産が消失したり、遺産分割を済ませたのちに別の口座が見つかり、相続手続きをやり直さなければならないケースもあります」(丸山氏、以下同)

 こうしたリスクを避けるために不要な口座は解約して、多くても2~3行に集約しておきたい。

「解約に必要なのは通帳、キャッシュカード、銀行届出印、本人確認書類の4点です。本人がこれらを銀行窓口に持参して解約用の書類に記入して手続きします。体調不良などで本人が手続きできない場合は、金融機関によって委任状があれば代理人でも受け付けるところや、事前の代理人申請が必要なところがあるので、事前に確認しておきましょう」

 解約の手続きは、口座を開設した店舗とは別の店舗でも行なえる。

 解約時に多額の残高がある場合は注意したい。

「銀行の窓口で解約するとその場で残高を受け取れます。ただし、残高が高額の場合は持ち歩くのが危険なので、受取先の銀行口座を指定してそこに送金してもらうといいでしょう」

 普通預金とは別に、定期預金も見直したい。子供が独立するなどしてお金を長期にわたって積み立てる理由がなくなるなら、解約を視野に入れたい。

「定期預金は引き出しにくく、いざという時に必要なお金を下ろせないことも。解約して普通預金にまとめておくのも一案です」

 定期預金の解約は、満期なら通帳と銀行届出印を、中途解約の場合はさらに免許証などの本人確認書類を持参して店舗で手続きを行なうなどする。

※週刊ポスト2021年9月17・24日号

みのもんた76才の極端な生前整理 妻や家族の写真を全て焼却

「歩くのも話すのもだいぶゆっくりになり、往年の雰囲気ではありません。けれど本人はいたって元気。これからが人生の第二ラウンドだ、なんて言っているくらいですよ」(みのの知人)

 みのもんた(76才)が8月22日に喜寿を迎える。

「1週間で最も長時間テレビの生番組に出演する司会者」として’08年をピークにエンタメ界を盛り上げたみのだが、今年3月に『朝からみのもんた』(読売テレビ)が終了、レギュラー番組はゼロになった。

「みのさんはタレント業のほか、家業の水道メーター会社の社長も務めていましたが、それも昨年末、退任しています」(前出・みのの知人)

 そんなみのが、今年6月に刊行した書籍『終活なんか、するもんか』(朝日出版社)に気になる記述がある。2012年に亡くなった妻の靖子さん(享年66)は、何を誰に残すか全てを明記し、「生前整理」をしっかり終えて旅立っていた。それを真似て、みのも思い出の品を整理し始めたというのだ。

「残された家族に迷惑をかけないようにするためという目的のようでした。出演した番組の録画や新聞、週刊誌の記事、手紙などから処分し始め、最後には奥さんや両親など、家族の写真をデータ化など一切することなく、全て焼却炉で燃やしてしまったそうです」(テレビ局関係者)

 これには周囲が驚いた。

「みのさんは周囲に相談することなく、思い出の品を一切合切燃やしてしまったのですから。いくら生前整理とはいえ、自分の生きてきた痕跡を全て消し去るような行為にあ然としました」(別のみのの知人)

 思えば、みのの生前整理は、いつも極端だった。彼には、靖子さんが亡くなった後に身の回りの世話をしてくれる女性Aさんという存在ができた。前出の書籍にもこう記している。

《大変僕によくしてくれる素敵な女性とときどき食事デートを楽しんでいます。自宅で妻の面影と語り合う時間も、外で彼女と語り合う時間もどちらも今の僕にとっては必要なんです》

 Aさんは銀座の高級クラブの元ホステス。みのとはクラブで出会い、手作りのお弁当を差し入れるなどして距離を縮め、パーキンソン病を発症した彼の近くで生活を支えてきた。

「Aさんは結婚したがっていましたが、みのさんはそれだけはできないと固辞。それでお詫びのしるしとして、彼女にマンションをプレゼントしたんです。みのさんの会社が持っていた都内の一等地に建つマンションを贈与したと聞いています。これもみのさんにとっては一種の生前整理のつもりだったのでしょうが……」(前出・テレビ局関係者)

 みのには3人の子供、そして孫も8人いる。

「このときも家族に何の相談もなく会社の財産であるマンションを渡してしまったようで、周囲はかなり驚いたようでした」(前出・知人)

 相続・終活コンサルタントで行政書士の明石久美さんは「男性の方が極端になる傾向がある」と話す。

「周りに迷惑をかけたくないという思いが強いあまりに、極端な生前整理にハマりがちな男性は多いんです。生前整理と言うと、身の回りのものを全て処分するという考え方の人がいますが、それは間違いです。例えば、写真などの思い出の品が不要になるかは人それぞれ。残された人が判断するものなので、勝手に捨てるとトラブルになりやすいんです」

 みのは喜寿を機に新しい生活を始めるようだ。

「古希のパーティーこそ盛大に行いましたが、喜寿は派手な集まりはしない予定みたいです。コロナが落ち着いたら、終の棲家として別荘がある軽井沢への移住も考えているそうですよ」(前出・みのの知人)

 みのさん、その終活、ファイナルアンサー?

トラブル回避のために 生前にやっておきたい4つの相続手続き

トラブル回避のための相続手続きスケジュール表

写真1枚

 相続は「時間との勝負」になる。「生前」も「死後」も、期限内に所定の手続きや準備を進めていかないと、親族間の争い事に発展するリスクなどがある。別掲の「手続きスケジュール表」を参照しながら、手順を確認していきたい。


【図解】兄弟姉妹、父・母、子に遺産は原則どう分配される? 相続の優先順位や法定相続分


「生前」の段階ではまず、(1)相続人の確認をしておく。誰が相続に関わるのかが分からなければ、対策の立てようもないからだ。


 その際には、民法で定められた「法定相続人」が基本となる。法定相続人には優先順位があり、それぞれに遺産の取り分の目安となる「法定相続分」が定められている。


 最も優先的に相続の権利が認められるのが「配偶者」となる。夢相続代表で相続実務士の曽根惠子氏の解説。


「配偶者は誰よりも優先的に法定相続人となり、遺産の2分の1が法定相続分となります(子がいる場合)。ただし、内縁関係や離婚して婚姻関係を解消した元妻や元夫は除外されます」


 配偶者以外で第1順位となるのが「子供や孫」といった直系卑属だ。子供がいない場合、第2順位は「故人の父母や祖父母」にあたる直系尊属。直系尊属がすでに亡くなっていれば、第3順位が「故人の兄弟姉妹」の傍系の血族となる。


各順位で該当する相続人がいないと順番に権利が移っていくルールだ。法定相続分も相続人の組み合わせによって異なる【別掲図(1)参照】。


「第1順位には養子や認知している子供、元夫や元妻との間に生まれて戸籍に記載されている子供も含まれます。配偶者がいる場合は遺産の2分の1が配偶者、残りの2分の1が子供たちの法定相続分となります。


すでに子供が亡くなっている場合は孫が代わりに相続人となり、それを『代襲相続』と言います」(曽根氏)法定相続分はあくまで目安であり、相続人全員の協議などで、分配の割合を変えることは可能だ。


財産目録と遺言書を作る

 必ずしも法定相続分の通りに分けなくてもいいからこそ、家族間での“争続”が起きる。トラブルを回避するには、「どのような財産があるのか」を確認して、「それをどう分けるのか」を決めておきたい。そこで、(2)財産目録を作る。


 財産目録には「預貯金・現金」だけでなく、「不動産」「有価証券」「自動車」「生命保険」などの項目を分けて、それぞれについてできる限り詳細に記入していく。預金口座なら口座番号や残高、有価証券なら銘柄ごとに株数や証券会社の口座を書き入れる。「住宅ローン」などの「負の財産」も忘れずに記入したい。


 財産の内容を整理していくことで、(3)名義変更・生前贈与をする必要があるかが見えてくる。所有する不動産の登記簿を確認していくと、すでに亡くなった先代の名義のままになっているケースが少なからず存在する。トラブルに発展しないように、きちんと「名義変更」をしておく。


 また、相続人の人数と財産の総額が分かれば、亡くなった時に相続税がかかりそうか確認できる。

 財産の総額が、相続税の基礎控除額である「3000万円+600万円×法定相続人の数」より多ければ、相続税が発生する(ただし、配偶者が相続する場合は相続財産の半分または1億6000万円まで非課税)。


 相続税を減らすために、「生前贈与」という選択肢もあるが、近い将来に制度が大きく変更されるといわれている。そのうえで、財産をどう分配するかを決めて、(4)遺言書の作成を進める。遺言書は、本人自筆の「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作る「公正証書遺言」などがある。


 司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏が指摘する。

「遺言書は元気なうちに本人の意思で自分の遺産の行方を決められるほぼ唯一の方法です。自筆は日付や押印などの形式に気をつけないと法的に無効になることもあるので、不安な人は公正証書にしておくと安心でしょう」

亡くなった家族が保有していた株や不動産を見つけ出す方法

 家族が持っている金融資産をすべて把握している人はどれくらいいるだろうか──。家族が急に亡くなって、その“財産”がどこにどれだけあるかわからず、頭を悩ませる人も多いだろう。


【図解】生保は42社に「一括照会」が可能! 2021年7月1日からスタートした「生命保険契約照会制度」


 そんな“財産”のなかでも少しやっかいなのが、株や投資信託に投資していた場合だ。送付されてくる取引残高報告書や配当金の通知などがあれば把握できるが、郵便物での通知がなく、インターネット上で確認しなければならない場合、その存在自体がわからなかったり、残高が把握できないこともある。


 上場企業の株や投資信託は「証券保管振替機構(通称:ほふり)」に問い合わせれば、照会することが可能だが、すべての株や投資信託に対応しているわけではない。相続・終活コンサルタントで行政書士の明石久美さん)はこう話す。


「『端株』(100株単位で取引されている株なら、その100株に満たない単元未満株)は、送られてくる配当金の計算書を手掛かりに調べるか、信託銀行(三菱UFJ、みずほ、三井住友)や東京証券代行、日本証券代行といった株式名簿管理人に問い合わせる必要があります。


たんす株(電子化の際に証券会社に預け入れなかった株券)は、株券を発行している会社から株式名簿人を調べ、そこに問い合わせます」


 ただ、あくまで端数なので、労力に見合うお金があるかどうかは運次第。最後の手掛かりはやはり郵便物だ。クオーレ代表の竹本泰志さんが説明する。


「家に残っている郵便物の中に配当通知があれば、それを頼りにどこに問い合わせればいいかわかります。ただし、住所氏名に変更があった場合、株主名簿上での変更手続きができていないと、開示に応じてもらえないことがあるので、やはり事前の手続きが重要です」


土地、家、アパートは年に1回“手掛かり”が届く

 最も大きな“財産”は、やはり不動産。亡くなった親などが、自宅以外のアパートや山などを所有しているケースもある。「不動産はほとんどが固定資産税がかかるので、毎年4~6月に届く、固定資産税の納税通知書が手掛かり。


しかし、私道、公衆用道路、課税されない不動産は記載されません。その場合、市区町村役場で『名寄帳』を取得すれば大丈夫。ただし、名寄張は市区町村単位で発行されるため、“そもそもどこに不動産があるかもわからない”といった場合は、調べるのは困難です。権利書や契約書などがあれば、そこから確認できることもあります」(明石さん)


 ほかにも、百貨店の「友の会」の積み立てや純金積み立てなどは通帳に記帳されているはずなので、細かいところまで見落とさないようにしたい。

【通夜・葬儀・告別式】仕事関係の参列や服装、挨拶のマナーをプロが解説

「通夜や葬儀、告別式など、悲しみの場で、知らないうちに非常識なふるまいをしてしまわないよう、最低限の知識を持っておくとよいでしょう」

訃報を受け取ったらすべきこと、迷いがちなことをコミュニケーション・マナー講師の松原奈緒美さんに伺いました。

通夜・葬儀・告別式。仕事関係はどちらに参列すべき?
元来、通夜は身近な方々が参列し、一般の方の参列は葬儀・告別式とされてきました。また通夜に参列する場合は、葬儀・告別式にも参列することが主流でしたが、時代とともに変化しています。

コミュニティやビジネススタイルが変わった今、仕事関係の参列は「通夜のみ」が主流の地域もあります。

これは、通夜は夜に、葬儀・告別式は昼間に執り行われることが多く、通夜の方が仕事の調整がつけやすいという理由から。時代とともに、変化しつつあるからです。

とはいえ、葬儀・告別式に出たからといって「いけない」わけではありません。もともとは、葬儀・告別式に参列するのが正式ですので、予定がたつ範囲で参列し、仕事関係の参列の場合には、会社や上司の指示を仰ぐとよいでしょう。

参列時に注意したい服装と小物のマナー
通夜や葬儀・告別式の参列がある際、知らぬ間にマナー違反になりがちなのが、服装や小物などの装いです。

「黒であればいい」と思っていらっしゃる方が意外と多いですが、それは間違い。素材やデザインにもふさわしい装いがあります。また、見落としがちな袱紗や数珠についてもみていきましょう。

参列に備えて、ブラックフォーマル一式を揃えておく
もともとは、通夜は喪服ではなく暗い色の平服を着用するとも言われてきましたが、最近は通夜もブラックフォーマルで参列する方が増えています。

これは通夜が亡くなったその日ではなく、別の日程で行われることが多くなったためです。通夜もブラックフォーマルで差し支えありません。

仕事関係での参列も同様で、靴やバッグ、アクセサリーなどの小物も含めて一式を揃えておきましょう。

服装や小物で気をつけたいこと

カジュアルテイストはNG
 丈の短いスカート、派手なデザインなど、黒のタイツなど

殺生をイメージさせるもの、光沢のあるもの
 毛皮のコートや革製のバッグ、エナメルの靴など

アクセサリーはパール。ネックレスの「二連」はNG
 身につけていいのは、パールの一連のネックレスとひと粒のイヤリングのみ。二連のネックレスは、「不幸が重なる」ことを連想させるため避ける。

袱紗(ふくさ)も忘れずに
香典袋をそのままバッグに入れて受付で出すのはマナー違反。必ず袱紗に包んで持参します。

袱紗は慶弔の両方で使い、慶事では明るい色、弔事では寒色系と、ふさわしい色は異なります。ただ、紫は高貴な色とされ、慶弔問わず使えるので、ひとつ用意をしておきましょう。

数珠(じゅず)は大切に扱う
参列する葬儀が仏式の際は、「数珠(じゅず)」を持参します。

数珠は「念珠」とも呼び、文字通り「念じる珠」。厄除けやお守りの意味もある仏具です。

貸し借りをしたり、葬儀場でテーブルや椅子、畳に置いたりしてはいけません。左手で数珠の房を下にして持ち、大切に扱いましょう。

日本において最も参列する機会が多いのは仏式なので、事前に用意をしておくと安心です。なお、キリスト教、神式の葬儀に参列する際には、持参する必要はありません。キリスト教式や神式の場合には、持参していても、出さないようにします。

知っておきたい「お悔やみの言葉」と「忌み言葉」
通夜や葬儀・告別式の場では、言葉がけや使う言葉に配慮が必要です。

言葉がけは宗派によって異なる
式場の受付では、係の人にお悔やみの言葉を述べてから香典を差し出します。

「ご愁傷様です」とよく使われますが、これは仏式の言葉。宗教ごとにお悔やみの言葉は異なるので、葬儀がどの宗派で行われるかを事前確認しておけるといいですね。

仏式 …「このたびはご愁傷様でございます」など

神式 …「心よりお悔やみ申し上げます」(※仏式でも使えます)など

キリスト教式 …「安らかな眠りをお祈り申し上げます」など

元気よくハキハキ伝えるのではなく、語尾にいくにつれて声を抑え気味にすると、偲ぶ気持ちが伝わります。

喪主家への言葉がけには一層の配慮を
喪主家(ご遺族)の方にお声がけをするタイミングもあるかもしれません。

喪主家の方はつらく悲しみのなかにあり、傷つきやすいときです。詮索したり長々と話をしたりするのは控えましょう。

ただ、故人とどのような間柄であったかは気になります。お悔やみの言葉を伝えるとともに、仕事でお世話になっていたことなど、手短に自己紹介を行います。

挨拶、弔電やお悔やみのお手紙での「忌み言葉」に注意
深くお悔やみを伝えたい、という気持ちが先走り、「重ね重ねお悔やみ申し上げます」と仰る方がいますが、これはNG。

「重ね重ね」と言葉を重ねるのは、不幸が重なることを嫌がる弔事にはふさわしくない「忌み言葉」です。

忌み言葉とは

言葉を重ねること。不幸が重なることを連想させる言葉
 「重なる」「重ね重ね」「くれぐれも」「返す返すも」「しばしば」「まだまだ」「いよいよ」「皆々様」ほか

不幸が再び訪れることを連想させる言葉
 「また」「再び」「戻る」「再々」「次々と」「続いて」「追って」

苦しみ、死を連想させる「四」「九」の文字
遺族に声をかけるとき、弔電やお悔やみの手紙を送るときは特に気をつけましょう。

失礼のないよう最低限の準備を
弔事は突然起こりますが、お世話になった方の通夜や葬儀、告別式で失礼があってはいけません。

そのため、​​事前に基本的なマナーをおさらいしておくと、冷静に対応できると思います。

社会人として、ブラックフォーマルや、袱紗、数珠、アクセサリーなど身につけるもの一式は、常に備えておくとよいですね。

PROFILE 松原奈緒美(まつばらなおみ)
コミュニケーション・マナー講師 EXSIA代表。マナーやコミュニケーションの専門家として、企業研修・講演を行っている。年間150回登壇し、3万人以上を指導。テレビ出演などのメディアでも活躍。NPO法人日本サービスマナー協会ゼネラルマネージャー講師としてプロ講師養成も手掛ける。

取材・構成/鈴木有子

夫婦間での相続準備のポイント 「2人で資産を使い切る」選択肢も

 かつては、子供世代が老後の親世代の面倒をみるということも当たり前だったが、昨今では必ずしもそうではない。子供に迷惑をかけたくないという親世代もいれば、経済的な事情で親のサポートが難しいという子供世代もいるだろう。

また、親世代も子供たちに財産を残すのではなく、あくまでも「ふたりで」あるいは「ひとりで」最期を迎えたいという人も多い。そういう意味では、夫婦のどちらかが亡くなった時に、残された「ひとり」にきちんと財産が渡るようにしておくことも重要だ。

「基本的には、『遺言書』を作ってカバーしていきます」と話すのは、夢相続代表取締役で相続実務士の曽根惠子氏だ。

「早いうちから遺言書に『配偶者に全財産を』とお互いに書き合う夫婦は少なくありません。子供がいる場合、遺留分を請求される可能性はありますが、『これまでたくさんのお金をかけて育ててきたのだから、頼りにしないでほしい』と伝えておけば、理解してくれることが多い」

 そのうえで、夫婦間で相続する財産に漏れが生じないように備える。曽根氏は「まずは財産情報を共有することが大切です」と強調する。

 年金や預金口座、保有する有価証券や保険などの情報を洗い出し、リスト化するのが望ましいという。

「現役時代は夫婦それぞれがどれほどの資産を持っているか、意外と共有できていません。まずはお互いの財産情報をまとめて、エンディングノートなどで一覧表に書き出していきます」

 次の段階として曽根氏は「資産を整理していくのが大事」だとする。

「まず預金口座の数を絞ります。年金用と光熱費などの引き落とし用の2つくらいで十分。定期預金は認知症になると本人が解約することが難しくなるので、先に解約しておきましょう。株や投信、保険などの金融商品も見直しの対象です。有価証券は保有したままだと何にも使えないので、できれば解約して現金にして活用していきたい」

 近年利用者が増加しているネット銀行や仮想通貨などのデジタル遺産にも注意が必要だ。

「デジタル遺産の管理や解約に必須のIDやパスワードは、必ずエンディングノートなどに記録しておく。それを怠ると、亡くなった後に見つけられず、そのままとなり妻のものにならないリスクがあります」(曽根氏)

 このように夫婦間での相続をスムーズにする備えだけでも、それなりに手間はかかる。ここに「子供にどれだけ残すか」「長男と次男への分配はどうすれば公平になるか」といった要素が加われば、どんどん煩雑になっていく。曽根氏が言う。

「最近は親と同居する子供世帯も減り、“子供に残さないといけない”という考えも薄れてきました。それならいっそのこと夫婦で築いた財産をふたりのために使おうと考えて、趣味に使う、日々の生活にかける、高齢者施設の費用にするなど快適な人生のための消費としてもいいはずです」

 健康寿命が延び、人生の最終盤を自己実現の期間にする考えもある。

「散骨」って実はこんなに大変なんです トラブルも多発中

自分の死後、「残された家族に負担をかけたくない」といった理由で人気なのが「散骨」だ。しかし、いざ実行すると、さまざまなトラブルが待っていることもある。

「海釣りが好きだった主人は『いつも眺めていた相模湾に骨を撒いてほしい』と言い残して亡くなりました。『田舎への墓参りも面倒だろう』と、私たち家族にも気を遣ってくれたのです」(72歳の夫を亡くした68歳女性)

 最近、こうした“散骨希望者”が増えている。都内の葬儀業者は、「全国に散骨業者は約80社あり、年間の散骨件数は1万件ともいわれている」とする。

 定額葬儀サービスで知られる「小さなお葬式」では、2013年から海洋散骨の代行を行なっているが、「サービス開始当初と比べて依頼件数は倍増した」(広報部)と活況を強調した。

 散骨を希望する理由は、「自然に還れる」「入る墓を決める時の親戚とのやり取りが面倒くさい」「お墓を継ぐ人がいない」「そもそもお墓を作るお金がない」というものが多いという。

 だが、安易に散骨を選択すると、思いがけないトラブルと遭遇することになる。冒頭の女性はこう語る。

「主人の遺骨を希望通りに海洋散骨したところ、親戚から『墓を建てるカネが惜しいのか』と総スカンに遭い、冠婚葬祭にも呼ばれなくなってしまいました」

 散骨は、こうした親戚間でのトラブル原因になりがちだ。NPO法人・葬儀費用研究会の冨永達也・事務長はこういう。

「散骨した親族が、親戚から『お参りができないじゃないか』『成仏させてあげられない』と責め立てられてしまうケースもある」

 予想もしなかった反発を受けた例もある。

「散骨したといったら、菩提寺の住職の態度が急変。『魂のない仏壇にお参りするつもりはない』と、月命日にお経をあげてもらえなくなった」(78歳の妻を亡くした80歳男性)

 また、家族が業者を通さずに個人で散骨すると、「国立公園になっている山中に勝手に撒いてしまい、バレて問題になることもある」(関西の葬儀社関係者)という。

 家族が後々トラブルに巻き込まれないようにするためには、次のような注意点が必要だと葬儀コンサルタントの市川愛氏は話す。

「散骨を希望する方が、家族、親戚としっかり話し合って自分の意志を伝え、根回ししておくこと。遺骨の一部だけを散骨してもらうように頼むことも一つの手です。遺骨が全く手元に残らないと、後で『拠り所がない』と後悔するご遺族が少なくないのです」

 トラブルの“置き土産”を残すことなく、スッキリと旅立ちたいものだ。

森永卓郎さんが経験した相続手続き地獄 父の生前に財産把握できなかった後悔

 近年、終活を行う人が増加している。本来は、よりよき人生の終焉を迎えるためのものだが、その終活が原因となり、人間関係に亀裂が入ったり、残された子供たちが困難を抱えたりする事例も増えているという。

 経済アナリストの森永卓郎さん(63才)は、脳出血で倒れた父親に最期まで寄り添った。最初は在宅で介護をしていたが、がんが見つかってから容体が悪化したため、介護付き老人ホームに移った。

 要介護4で寝たきりの状態だったが意思疎通はできたため、森永さんは万が一に備えて口座の数やどこに通帳があるかを父親に尋ねていた。しかし、何度聞いても父親の返事は「わかんねぇな」の一点張りだった。

「認知症のせいではなく、家のことは先に亡くなった母が全部管理していたため、本当にわからなかったのだと思います。私も、『通帳なんてどうせ貸金庫に入っているだろう』と軽く考えていました。しかし、父の死後にその考えがいかに浅はかだったかを思い知りました」(森永さん・以下同)

 父親は2011年3月に他界。その後、森永さんは数年にわたって相続の手続きで「地獄」を見る。

「父の銀行口座や生命保険の情報がまったくなく、実家に来ていた郵便物を一つひとつチェックしました。銀行から『口座確認には、預金者の生前のすべての戸籍謄本と相続人全員の合意書が必要です』と言われたものの、父は新聞記者をしていて、九州や神戸など全国あちこちに異動していたので、戸籍謄本をすべて取得するのは気が遠くなる作業でした。しかも、苦労して開示した口座の残高がわずか700円だったこともあり、頭にきて相続を放棄しました(苦笑)」

数千万円の介護費用を負担したが…
 森永さん夫妻が父親の介護を行った期間は11年にも及ぶ。しかし、遺産分配の際、父の介護に使った実費が顧みられなかったことにも不満が残った。

「私と妻が父の面倒をみて、生活費や施設の入居代などで数千万円を負担しました。遺産分割の協議の際、それについても話はしたのですが、弟は法律通りの折半を主張しました。『さすがにそれはひどいよ』と文句を言ったら、『兄貴はいっぱい稼いでいるからいいじゃん』と言われました。兄弟で争うのは嫌だったし、父にかかった費用の領収書などを保管しておらず、証拠は何も残っていませんから折半を受け入れましたが、内心、複雑な思いは残りました」

 さらに、父親の生前にすべての財産を把握できなかったことで、森永さんが最も不安だったと語るのが「借金」だ。

 遺産は預貯金や不動産などの「正の遺産」だけでなく、借入金や連帯保証などの「負の遺産」があり、負の遺産を相続したら、もちろん遺族が返済しなくてはならない。

「父の場合は、ふたを開けてみるまで借金があるかどうかわかりませんでした。仮に、相続放棄できない状況になってから、悪徳業者が『実はお父さんにお金を貸していました。返してください』と言ってきたら、借金を全部かぶるしかありません。借金の催促はどこからもありませんでしたが、父の死後しばらくは戦々恐々としていました」

 この苦労から、森永さんは終活の重要性を思い知った。そして、その経験を生かし、自身の終活に反映させている。

「特に財産管理の件は、母が生きているうちに家族で話をしておくべきだったと感じています。私はその失敗を繰り返さないよう、子供のために口座リストを作成しました」

※女性セブン2021年7月15日号

池波志乃が夫婦で取り組む終活 アトリエ、別荘を手放し遺言書も準備

人生の最後を締めくくり、次の世代にスムーズにバトンを渡すための終活。その際に大切なのは、住まいも含めた不要なモノの整理だ。それは著名人であっても同様だ。池波志乃(66才)、中尾彬(78才)夫妻は、結婚3年目に建てた千葉・木更津にあるアトリエを5年前に手放したという。

「処分する際、アパート経営をすすめてくる業者もいましたが、中尾がきっぱりとお断りしました。終活なのに面倒が増えるのは嫌だからって」(池波・以下同)

 夫妻は15年ほど前に続けて大病を患い、「いろいろと持ちすぎた生活を整理しよう」と終活を意識するようになった。そこで、最初に手をつけたのが木更津のアトリエだった。

「イタリア産の素材を使い、こだわって建てたアトリエでした。しかし、東京で仕事もあり、中尾も大きなキャンバスで絵を描くことがなくなったため最近は訪れることもなく、荷物置き場のようになっていました。

 老朽化も目立ち、最初は修理して維持しようと思ったのですが、私たち夫婦もどちらかが体が動かなくなったり、認知症になるかもしれません。この先はどんどん衰えていくことを認めたうえで、老後を快適に過ごすための新しい出発をしたい。そう中尾と話し合った末に、アトリエを手放すことにしたのです。それが私たちの終活の始まりでした」

 思い出のアトリエは、解体して更地にして売却。さらに、別荘として16年間利用していた沖縄のマンションも手放した。自宅の食器や洋服、中尾のトレードマークである“ねじねじ”ストールなども次々と手放し、東京・谷中に墓を建て、ふたりで遺言書を書いた。

 コロナ禍も相まって、必要な道具まで「うっかり捨てすぎた」と笑う池波だが、後悔はひとつもないという。

 前向きな終活で失敗しないコツは「よこしまな気持ちを持たないこと」と語る。

「たとえば木更津のアトリエは、更地にするための費用と、土地の売却代がほとんど同じでした。そこでよこしまな気持ちを出して、『もう少し高く売れるはずだ』と売り惜しみをすると、せっかく抱いた『整理しよう』という気持ちがざわつきます。

 大切なのは、売ることや得することに執着せず、楽しい思い出に感謝する気持ちで終活を進めること。終活は“死に支度”ではなく、自分たちが衰えたとき煩わしいことに振り回されず、よりよい生活を送るための作業です。なかには悪徳な業者もいますから、欲を張るほどトラブルに巻き込まれ、すっきりした老後を送れなくなります」

 終活は、手つかずはもちろん、やりすぎてもいけない。残される人たち、自分たちの老後にとって「優しい終活」を実践するには、ほどほどのさじ加減が重要だ。

※女性セブン2021年7月15日号

お香典の金額に服装は?知らないと赤っ恥「葬儀参列のNGマナー」

突然の訃報から葬儀・告別式の参列……あまりに急な知らせで、葬儀に参列する服装や挨拶の仕方、肝心なマナーすら分からないと不安になる人も多いはず。

「お香典はいくら包むべき?」や「お焼香ってどうやるんだっけ?」という、人には聞きづらい内容は事前に備え、もしもの時に困らないようにしたいですよね。

そこで今回は、『メモリアルアートの大野屋』がまとめた、葬儀に参列する際の立ち振る舞いや準備物などのマナーから、覚えておきたいものをご紹介します。

■知らないとやりがち!葬儀・告別式でのNGマナー5つ

まずは、実際にやってしまっている人も多い葬儀・告別式でNGマナー例を紹介します。

(1)お香典として“新札”を使うことは、事前に準備していたように思われてしまうのでNG。新札の場合は必ず一度折り目をつけて包みます。

(2)告別式でのアクセサリーは結婚指輪やパールのシンプルなものなら問題ありませんが、2連以上のタイプは「不幸が重なる」ことを連想させるので避けましょう。また赤色の数珠は慶事で使われることが多いので、葬儀では控えた方が無難。

(3)女性で多い派手な“ネイル”は、できればオフしていくのが礼儀。同じように華やかな巻き髪スタイルや、バッチリ決まったメイクなどもTPOを考えてシンプルに。

(4)お悔やみの言葉で不幸がまた続くイメージを与える「重ね重ね」「返す返す」「再び」などのニュアンスは厳禁です。

(5)通夜で、焼香が終わり次第すぐに帰るのは実はNG。読経や焼香後のタイミングで、 遺族が別室にて食事やお酒をふるまう“通夜ぶるまい”で故人を偲ぶのがマナー。ただし、知人とペチャクチャ盛り上がるのは場違いなので注意を。

まだまだある、知っておきたい基本マナーをご紹介しましょう。

■香典の金額

香典は亡くなった方にお香を備える習慣に由来しており、現金を包んで渡します。金額の相場は、故人との間柄や年齢によって変動します。

親戚であれば1万円〜3万円、職場関係者やその家族なら5千円~1万円、そして友人または友人の家族の場合は5千円〜が基準のようです。

■弔問側の正しい服装

一般的に“通夜”において服装の細かな決まりはありませんが、オシャレをする場ではないので華美な服装は避け、地味な色や形のスーツが無難でしょう。

“告別式”では喪服を着用します。スカートが基本ですが、昨今はパンツスタイルでの参加も増えているようです。

四季を問わず会場内や式の間はコートを脱いで過ごすのがルール。会場に到着したらすぐ脱ぐとしても、毛皮などのアウターは相応しくありません。

■数珠の使い方

利き腕に関わらず、歩く時や焼香中は“房”が下に来るように“左手”で持ちます。合掌では“房”が真下に来るよう両手の親指と人差し指の間に数珠をかけ、親指は軽く添えます。

このように数珠は仏様を拝む時に使う法具であり、色や材質はなるべくシックなデザインからお好みのものを選ぶと良いでしょう。

■焼香の仕方

死者を弔うために抹香や線香をたくことを“焼香”と呼びます。焼香の仕方や回数は宗旨ごとに違い、自身の宗旨の作法で構いません。

ここでは一般的な焼香の流れを説明しましょう。

(1)祭壇の手前まで進み、遺族に一礼

(2)祭壇に向かい、遺影と位牌を仰いで一礼

(3)抹香を右手の親指と人さし指と中指の3本でつまみ、目の高さまで押しいただき、抹香を静かに香炉へ入れる

(4)合掌する

(5)数歩下がり遺族に一礼して退く

■お悔やみの言葉

悲報を受け、葬儀に参列すると迷うのが“お悔やみの言葉”でしょう。良かれと思い口にした言葉が「非常識」だと白い目で見られる可能性も……。

最も差し支えないのが「お悔やみ申し上げます」や「寂しくなりますね」などの言葉がけ。他にも「突然のことで何と申し上げたらいいか」や「大変でしたね」などのように、故人への哀悼の意そのままの気持ちをお伝えするのも問題ないです。

今更聞けない葬儀・告別式のマナーは今の内に確認しておくだけで、焦らずに対応できます。いざという時、故人を穏やかに見送れるよう基本的なマナーはおさえておきたいですね。

【老後資金に大きく影響】遺産相続が資金作りのマイナスになる「2つのケース」と「回避策」

50代も後半になると、数年後には定年退職、さらにその先には年金生活が控えています。

豊かな老後の為には十分な資金が必要ですが、皆さんはどのように準備をしていますか。

老後資金作りと言えば、一般的に貯蓄や退職金を株、投資信託、債券などの金融商品で運用することになりますが、忘れてはならないのが相続です。

相続は資金作りの手法ではありませんが、老後資金には大きく影響するイベントです。

そこで今回は、相続における注意事項をいくつか紹介したいと思います。

相続が資金作りにマイナスとなるケース
そもそも相続は老後資金作りにどのような影響があるのでしょうか。

自分が50代になるということは、親世代は80前後でしょう。

厚生労働省が発表した最新の平均寿命によると、男性は81.41歳、女性は87.45歳ですので、50代にもなれば必ず相続はやってきます。

早い方は既に相続を経験しているかもしれません。

「相続は遺産を受け取るのだから老後資金を大きく増やすことができる」というイメージがあるので、筆者も含めて大半の方は安心しきっています。

しかし、場合によっては大損するということをご存じでしょうか。

次に挙げているのは、遺産相続でいずれも大損するケースです。

■1. 被相続人に負債が予想されるケース
被相続人に負債が予想される場合には要注意です。

負債の総額が預金や不動産などの財産評価額を超える場合、普通に相続(単純承認)をすると、相続人全員が負債を背負うことになってしまいます。

これではせっかく作った老後資金を相続で減らすことになってしまいます。このような場合には、「限定承認」または「相続放棄」が有効です。

■□「限定承認」□□
「限定承認」は、相続財産から負の財産を清算して、余った財産を引き継ぐという方法です。

限定承認手続き終了後に多額の負債がみつかった場合でも、相続した遺産以上の額を払う必要はありません。

「限定承認」は相続人全員が共同で、3か月以内に申述をすることが必要です。

万が一相続人の1人が反対した場合や、そもそも相続人が1人でも行方不明の場合には「限定承認」は成立しません。

■□「相続放棄」□□
「相続放棄」とは、その名の通り、相続する権利を放棄することです。

明らかに負債が多いと分かっている場合には「相続放棄」が有効ですが、財産は一切相続できないので注意が必要です。

「相続放棄」は各相続人が単独で行うことができますが、「限定承認」と同様に3か月以内に申述をすることが必要です。

■2. 相続財産が不動産のみのケース
たとえば、自分は母親と同居しており、同居はしていない弟が1人居るようなケースを考えてみましょう。

母親が亡くなった場合の相続財産が、母親と同居していた家屋のみだった場合には非常に厄介なことになります。

兄弟で遺産を半々に分割しようにも現在住んでいる家屋は分割できません。

従って、一般的にこのような場合には、

自分が家屋を相続し、代償分割として相当額を弟に現金で支払う
ことになります。

なお、家屋を兄弟の共有名義にする方法や家屋を売却して分け合う(換価分割)という方法もあるのですが、デメリットが多い方法なので、今回は割愛します。

家屋の評価額が3000万円だった場合に、遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらないのであれば、通常は弟に1500万円を支払うことになります。

たとえ遺言書に「自分が全てを相続する」という記載があったとしても、弟は遺留分750万円を請求する権利を有しています。

従って、自分の老後資金から弟に750万円を支払う必要があるのです。

上記の2つのケースは、遺産相続によって資産が減ってしまうような事例でした。

このような事態を避けるには、

・ 遺産の内訳を事前に詳しく把握しておく
・ 遺言書の準備

・ 日頃から万が一の場合に備えて相続人の間で話し合いをしておく

・ 生前贈与や現金化

など、必要な対策をとっておくことが重要です。


早めの暦年課税(贈与税)で相続税をゼロにできる
相続税とは、被相続人の財産を相続で受け継いだ場合に、その遺産総額となる金額が大きい場合にかかる税金です。

遺産が以下の金額(基礎控除額)を超える場合に金額に応じた相続税率が適用されます。

基礎控除額 = 3000万円 + 法定相続人の数 × 600万円
たとえば、法定相続人が子供3人の場合には、3000万円 + 3人 × 600万円 = 4800万円です。

もし、上記計算式の金額を超えないようであれば、相続税の申告自体が必要なく、納税も必要ありません。

相続税の計算は非常に面倒なので今回は触れませんが、相続税を支払うことになる場合にはかなりの額になることが予想されますが、事前に対策をしておくだけで相続税を払わなくても済むことあります。

たとえば、遺産総額が5400万円、相続人が子供3人の場合で考えてみましょう。

基礎控除は4800万円(3000万円 + 3人 × 600万円)なので、差し引き600万円オーバーした分に相続税がかかります(ちなみにこの場合の相続税の総額は60万円です)。

しかし、事前に対策をしておけば相続税をゼロにできるのです。

事前に

子供3人に110万円以下の金額で贈与をしておけば良い
のです。

暦年課税(贈与)と言って、年間110万円以下の額であれば贈与税はかからない制度です。

これを2年間利用すると計660万円を非課税で渡せる計算です。

遺産総額は4740万円となり、基礎控除額4800万円以下になるので、相続税がかからないことになります。

ただし、相続開始前の3年以内になされた贈与は相続財産にカウントされてしまうので、暦年課税はなるべく早めに、計画的に済ませておきましょう。



必ずしも法定相続分で分割しなくてもよい
さて、実際に相続が発生した場合を考えてみましょう。

通常、遺言書があれば、遺言書の記載通りに分割されるため、大きな問題にはなりません。

遺言書がなかった場合には、相続が発生すると、遺産はいったんは相続人全員の共有財産となり、ここから被相続人の遺産の分配について相続人同士で協議を行い(遺産分割協議)、相続人全員の同意で遺産の分割内容を決めてゆきます。

相続人には、民法で定められている法定相続分がありますが、相続人全員の合意があれば、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はなく、自由に分割することが可能です。

■分割の考え方
そこで考えたいのが、相続人同士でどのように分割するのかです。

通常の家庭では、法定相続分の通りに相続することは適当ではないと筆者は考えています。

被相続人への貢献度が高かった場合、たとえば長年に亘って被相続人の世話や介護を行ってきた場合などには、社会通念上及び民法904条の寄与分に従って他の相続人よりも多くの財産の相続が認められて当然だと考えるからです。

反対に、被相続人への依存度が高かった場合、たとえば被相続人から長年に亘って多くの資金援助を受けていた場合などは、相続財産は少なくても当然だと考えます。

遺産分割協議では相続人全員の同意が必要になるため、実際に相続が発生した場合に備えて、

・ 被相続人の意見
・ 被相続人への貢献度

・ 被相続人への依存度

も含めて日頃からお互いに話し合いで納得しておくことが何よりも重要です。

ちなみに、遺言書があった場合であっても、相続人同士で遺産分割協議が成立すれば、遺言書通りに分割をしなくてもよいとされています(ただし、遺言者が遺産分割を認めない場合は例外、遺言執行者がいる場合はその同意が必要です)。

遺産分割協議においても損をしてしまわないように注意が必要です。

暦年課税はいずれ廃止か厳格化される可能性
今回は、相続も老後資金に大きく影響することを説明させていただきました。

ここまで一生懸命作ってきた老後資金ですから、つまらないことで減らしたくはないものです。そして、できれば相続では可能な限り多くを相続したいところです。

ちなみに、令和3年税制改正大綱で暦年課税が話題になっていましたので、いずれ廃止される、または強化される(厳しくなる)と考えられます。

暦年課税は可能な限り早めに実施しておくのがよいと思われます。(執筆者:村上 裕昭)

納骨堂、散骨、永代供養…増える〈供養〉の選択肢。初期費用の目安は〈お墓の基礎知識〉

日本には墓を引き継ぐという慣習があります。しかし、時代とともに家族のかたちや価値観が多様化し、「供養」の選択肢も増えてきました。葬儀・お墓・終活コンサルタントの吉川美津子さんの解説で昨今のお墓事情を学びながら、先々のことを考えるヒントにしてみましょう(構成=村瀬素子 イラスト=コーチはじめ)

◆どこまで知ってる?基礎知識をおさらい

お墓は、法律で許可された「墓地」にのみ建てることができます。墓地は、運営主体別に3つ。寺院が運営し、境内や隣接する場所にある「寺院境内墓地」、都道府県や市区町村などの自治体が管理する「公営墓地」、宗教法人や公益法人が事業主となり、石材店や開発業者なども販売に携わる「民間墓地・霊園」です。

墓地にお墓を建てるには、土地を使用する権利(墓地使用権)を得る費用(墓地使用料)と年間管理費を運営主体に支払うほか、石の墓であれば墓石代がかかります。寺院境内墓地は原則として檀家になることが義務づけられていますが、ほかの2つは宗旨宗派を問わないところが多数。ただ、境内や既存墓地の一画に開発された民間墓地の場合は、少なくともそこの宗旨宗派への理解はしておきたいものです。

お墓というと、墓石に家名を刻んだ「一般墓」を思い浮かべる方が多いでしょう。でも今は、お墓の形態もさまざま。都市部に増えているのが、お墓のマンションとも言える「納骨堂」です。遺骨を安置する屋内施設で、骨壺を扉付きロッカーに納めるタイプ、コンピュータ制御で遺骨が運ばれてくる自動搬送タイプなどがあり、参拝スペースも併設されています。

近年注目を集めている「樹木葬」は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として、その周辺に納骨するスタイル。「環境にやさしく、自然に還る」というイメージが人気の一因のようです。ただし、法律上墓地として許可を受けた場所に限定されるので注意しましょう。

「死んだ後も私を苦しめる父にはらわたが煮えくり返ります」空き家を相続放棄したのに多額の負担という現実

祖父母や親が残した建物が、だれも住まずに「空き家」状態になっているケースは少なくありません。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、肉親の空き家問題に頭を痛める女性からの投稿がありました。

空き家を放置していると、近隣の迷惑になることもあります。どうしたら解決できるのでしょうか。専門家に聞いてみました。「相続放棄したら終わり、ではなかった」というタイトルで投稿したのは、トピ主の「その」さん。

中学生のころに両親が離婚し、以来、30年も会うことのなかった父親が4年前に亡くなりました。父親が住んでいた家が借地に建っていることは知っており、父の残した借金の取り立てから逃れるために、親族と相談のうえ、全員で相続放棄をしたそうです。

ところが、昨冬、空き家にしていた亡父の家について、市役所から「屋根の雪下ろしがされないので、隣家の窓ガラスが割れてしまった」という内容の手紙が来ました。問い合わせたところ、相続放棄をしても、相続財産管理人が決まるまでは、子供であるトピ主さんが空き家を管理する義務があるという説明だったそう。

これ以上、近所に迷惑はかけたくない
仕方なく、トピ主さんが隣家に窓ガラスの修理代を払い、相続財産管理人を決める方法などを市役所に教えてもらうことになりました。

これ以上、近隣に迷惑をかけないためには、家を取り壊すしかないと考えたトピ主さん。調べてみたところ、すでに相続放棄をした後だったので、弁護士や司法書士などに相続財産管理人になってもらうよう依頼をする必要があり、その場合には、報酬100万円のほか、戸籍の収集代行手数料や家の解体費用などに200万円余りがかかることがわかってきました。

「死んだ後も私を苦しめる父には、はらわたが煮えくり返ります」「払えない額ではありません。夫は理解してくれていますが、勤続30年、コツコツためたお金をこんな形で使わなければならないことは、悔しくてたまりません」とトピ主さんはつづっています。

地代も安いのに300万円も費用がかかる
この投稿には、土地の所有者の立場からのレスもありました。土地を貸した「たこ」さんは、トピ主さんのケースとは反対に、相続放棄された居住者名義の建物を取り壊すために、弁護士費用や解体費用など300万円を準備中。

「トピ主さんの気持ちはわかりますが、相続放棄は家族内の問題。『相続放棄したからって、地主が支払うってどーなの? あんまりじゃない!』って気持ちです。地代なんて固定資産税にちょっとプラスしたくらい。弁護士さんに『地主なんて、もうからない商売だねー』って言われました」と書き込みました。

ある日突然、巻き込まれてしまう恐れがある空き家問題。どのように考えて対処すればいいのでしょうか。東京都の「空き家利活用等普及啓発・相談事業」を手掛ける「ネクスト・アイズ」の社長で、不動産コンサルタントの小野信一さんに話を聞きました。

トピ主さんのケースについて、小野さんは「建物の解体費用だけでも、木造なら3.3平方メートルあたり5万円以上はかかるといわれていますので、多額の負担は仕方ないでしょうね。

一般的に、借地権を滅却する場合、借地人の家族だけで費用を負担するのではなく、借地権の価値算定を行い、地主(底地権者)への買い取り請求などの交渉を行うことはできますが、この方のように、相続を放棄した後だと、そうした交渉も難しく、余計に大変だった可能性はあります」と指摘します。

空き家問題は相続から数年後に深刻化するケースも多く、正解がなかなか出せないともいいます。自治体と共同で行っている空き家問題のセミナーで、小野さんは「まずは所有する空き家や、将来空き家となる可能性がある不動産の現状を正しく確認すること」を呼び掛けています。

建物の状態や残置物、接道(土地が接している道路)の幅、建ぺい率、容積率などを把握しておくことを勧めています。

トピ主さんの亡父の家では、屋根に積もった雪が落下して、隣家の窓ガラスが割れるという事故が発生しました。「人の住んでいない空き家には、リスクがいっぱいあります。

老朽化して窓ガラスやブロック塀が倒れ、他人がけがをすることがあれば、空き家の所有者の責任として損害賠償を問われることになりかねません。治安上の不安、住環境の劣化などで地域問題へ発展する恐れもあります。なるべく空き家にしない対策が求められています」と小野さんは話します。

維持管理か利活用か売却か
セミナーで配布している「空き家解決マニュアル」では、大きな方向性として、

<1>空き家のまま維持管理する

<2>親類に住んでもらったり貸家として活用したりする

<3>売却する

――のいずれかを選択することを勧めています。自分で家を維持管理できない場合は、警備保障会社の定額サービスを利用することなども可能です。

「高齢者の間で、子や孫たちに迷惑をかけないで生前整理する終活がブームになっていますが、空き家にすることで、どれだけの費用負担がかかっていくのか、家族が冷静に話し合っておく必要もあります。

決定権は、不動産の権利者である被相続人(亡くなった人)のほうにあるので、いろいろなケースを見ながら、現状のまま売却するか、それとも建物を解体して更地にして売却するかなども、専門家を交えながら話し合うといいと思います」と小野さんは強調します。

どんな選択をするにしろ、財産の引き継ぎ方について、家族内で話し合いだけはしっかりしておくのがよさそうです。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

介護を担った相続人の「寄与分」実際にはほとんど認められない現実

「先に亡くなった父から『お前が家を守り、お母さんの面倒を最後まで見てくれ』と頼まれていました。その言葉通りにしただけなのに……」

 そう語るのは、昨年母を亡くした都内在住の65歳女性。遠方に嫁いだ2人の妹がいるが、長女で独身の彼女は亡父の遺言に従って実家に住み続け、母が認知症を患ってからも在宅での介護を一手に引き受けてきた。

「母に介護が必要になった時、妹たちは施設に入所させるよう提案してきました。でも私は住み慣れた自宅で最後まで過ごしてほしかった。そのために自分の時間も体力も犠牲にしてきましたが、悔いはありません。それなのに母の死後、遺産のことで妹たちと争う羽目になったんです」(同前)

 女性は母の介護に苦労した分、何もしなかった妹たちより多く遺産をもらうのが当然と考えていた。母の遺産は老朽化した実家を除くと預貯金100万円足らず。ところが2人の妹は、「実家暮らしで家賃もなく、生活費も出してもらっていたのだから」と、法定相続分である3分の1を渡すよう要求してきたという。

 さらに、「こちらが言う通り施設に入れていれば、すんなり法律通りに分けられた」と妹たちから恨み言まで言われ、女性は家庭裁判所での調停を決意。ところが調停の結果、「介護の実態を証明することができない」と、母のわずかな遺産を姉妹で3等分することになった。

「母の介護を一人で頑張った事実まで裁判所に否定されたようで、本当に悲しい」と女性は嘆く。

◆かなり低く見積もられてしまう

 税理士の山本宏氏はこう指摘する。

「介護を担った相続人の“寄与分”は遺産分割協議で金額を決めるのが原則ですが、どれだけ面倒を見たかの証明が難しく、相続人同士でトラブルの火種になりやすい。実際には寄与分が認められないことがほとんどです」

 そうしたトラブルを避けるには、生前の遺言書作成が必要となる。

「遺言書には、『介護をした××には遺産の6割を、2人の妹にはそれぞれ2割ずつを相続させる』というように具体的に記しておく。これには妹たちも従わざるを得ません。付言事項として、『介護の大変さに報いるため長女の相続財産を多くすることを理解してください』と記せばなおよいでしょう」(同前)

 遺言書がない場合は、介護日誌や金銭出納帳を作り、費やした時間や労力、出費などを細かく記録しておかなくてはならない。山本氏が続ける。

「裁判所で“寄与分”が認められたケースでは、〈介護職員を雇った費用×介護を行なった日数×裁判所が判断する割合(裁量割合)〉という計算式で寄与分の金額が算出されます。細かく記録しておけば、その分だけ多くお金に換算できますが、かなり低く見積もられてしまうのが現実です」

 民法改正で2019年7月以降は法定相続人以外にも「特別の寄与」が認められるようになり、義父母の介護をした〝長男の嫁〟などが財産分与を請求できるようになったが、認められるためのハードルはやはり高い。この場合も、遺産を渡すには「介護をした長男の嫁に〇〇円を与える」などと遺言書に明記するのが最善策だという。

 そうした手を打たないと、自分のことをいちばん支えてくれた家族が泣くことになる。

60代からの「終活」、まず何から始めればいい?

終活はいつから始めたらいいの?
みなさんは「終活は早いうちから始めましょう」という話は聞きませんか? よく分からないし、そのうちにと思っていると思います。終活は早すぎることはありません、思い立ったその日から始めることをおすすめします。いつかは始めたい、では、いつまでも終活を始めることはできません。
終活を始めるときは、身構えない
「終活」と聞くと、遺言書を書かなければならないのか、それとも相続の準備?とハードルが高いと感じるかもしれませんが、そんなに身構えることはありません。
例えば、子どもが帰省するタイミングで今後のことを話題にするだけでもいいのです。かしこまって家族会議をする必要はありません。大事なことは、文章にして書面で残すことです。

「書面=遺言書」とは限らず他にもあります。

遺言書は法的な効力があり、自分で書く「自筆証書遺言」(書き方は一定の決まりがあります)、公証人に依頼する「公正証書遺言」があります。遺言書が有効となるには一定の条件があり、自筆証書遺言は書き方を誤ってしまうと無効になります。遺言書ではなく、気軽に書き込めるので、おすすめしたいのがエンディングノートなのです。

エンディングノートの活用方法とは
終活の第一歩として、自分のことを、身近な人・大切な人に伝えるために作っておきたいエンディングノート。書店に行くと、いろいろなエンディングノートを目にすることと思います。目移りしてしまいますが、自分が使いやすいもので構いません。購入しなくても手持ちのノートでもいいのです。
現在は、NPO法人や葬儀会社で終活無料セミナーも開催されており、参加するとエンディングノートがもらえることも。エンディングノートは、記入方法や記入例、記入項目が記載されているため書きやすいかもしれませんね。

エンディングノートが用意できたら実際に書いてみましょう。大切なことは、読みやすく正確に書くことです。書く順番はありません。書きやすいことから書き始めましょう。例えば、自分の身近なことから記入してみるといいでしょう。

まずは自分のことを書いておこう
エンディングノートでまず書いておきたいのは、自分のことです。
【1】自分が生まれたところ(本籍)

【2】危篤になった場合や亡くなった時に連絡してほしい親友や友達・仲間の名前、連絡先

【3】自分が患っている病気や、通院している(通院していた)病院やなじみのお医者さん

【4】介護が必要になった時のこと(自宅にいたい、介護施設に入居したい)

ここまで書いていくと、エンディングノートを作成することの必要性を実感してくることと思います。過去に旅行した時のお気に入りの写真を貼り付けてみるのもいいと思います。懐かしい思いを抱きながら作成することができることでしょう。

資産について書き残すこと
自分の持っているお金についても記入しておくことが大事です。
【5】取引している金融機関(インターネットの取引も)

60代くらいの人は、複数の銀行や証券会社と取引している場合も多く、現在は使用していない休眠口座がでてくるかもしれません。書き出していくと意外なところに預金があったということがあるかもしれません。

気づいていなかった自分の保有資産を把握することになります。使わない口座は解約して、必要な口座だけ残すようにシンプルにしておくといいでしょう。自分にとっても家族にとっても手続きが分かりやすくなることと思います。

【6】加入している保険

多くの人はなんらかの保険に加入しています。生命保険・医療保険・火災保険・自動車保険等。

証券番号や契約内容を記入するのは面倒かもしれませんが、保険会社から送られてくる契約概要を一緒にしておくと分かりやすいと思います。そういった書類がないのであれば、最低でも保険会社・保険種類を記入しておきましょう。

【7】自宅や不動産のこと

持ち家がある人は、自宅について家族と話し合いをすることが大切です。親は子どもの好きなようにしてほしいと思い、子どもは親の大切な自宅(不動産)を親の想いを大切にしなければとさまざまな迷いが生じ、結果空き家となることが多いのです。家族と話し合うことが難しいのであれば、自分が自宅について考えていることを記しておくことが大切です。

法的な効力はありませんが、残された家族の負担を少なくすることができることと思います。家族が知らない自宅以外の不動産がある場合は、土地か建物か、所在地、所有名義も記入しておきましょう。

【8】葬儀やお墓のこと

残された家族は故人を安らかに見送りたいと思うものの、病院での手続き、葬儀会社・葬儀プランを決めるなど、慌ただしいことになります。葬儀会社や費用について記載しておくと家族が落ち着いて手続きを進められます。

エンディングノートを書く時の注意点とポイント
個人情報を詳細に書き過ぎないことも重要です。特に銀行口座等を書く際に注意が必要です。暗証番号やパスワード等、すぐにでも他人が引き出しできるようなことは書いてはいけません。万が一紛失した場合、知らないところで大切なお金を引き出されてしまう恐れがあります。印鑑の保管場所は、信頼できる人にだけそっとお伝えしておくのもいいかもしれません。
最後のポイントは、エンディングノートを伝えたい人が見つけることができるところに保管しておくことです。寝室やタンスの中とかもいいかもしれません。あとは、万が一のことがあったら、ここを探してねとお話ししておくのもいいかもしれません。

エンディングノートを書くと人生を振り返ることができます。今までの生活に感謝の想いを感じることにもなるでしょう。これからの過ごし方、考え方の道しるべとなり、心豊かにセカンドステージを過ごすことができることと思います。

監修・文:深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)

相続税「プロの税理士に任せれば安心」の落とし穴 大損するケースも

 相続税対策は富裕層だけの話と思われていたが、課税強化によって対象が広がり、“専門家”による相続対策セミナーなども活況を呈している。ただ、「ややこしい相続税の申告は、お金を払ってプロの税理士に任せれば安心だ」と考えているとしたら、ちょっと待ってほしい。

 お金を払ったうえに、「相続税で大損」するリスクがあるのだ。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏によると「実は相続税法に詳しい税理士は少なく、そうした税理士に任せっぱなしにして割高な相続税を払っているケースはとても多い」という。

 橘氏が真っ先に指摘するのは、「小規模宅地等の特例」の適用ミスだ。同制度は、被相続人(故人)が自宅として使っていた土地(100坪まで)を配偶者か同居親族(子供など)が相続する場合、土地の評価額を80%減額できるというもの。この特例の適用を受ける際に、多くの税理士が間違えるという。

「配偶者はもともと、軽減措置により相続財産1億6000万円までは無税になります。小規模宅地等の特例を適用するのであれば、自宅の土地は配偶者ではなく、あえて同居の子供らに相続させたほうが税を圧縮できる場合もあります。不慣れな税理士はそこを間違えやすい」(同前)

 自宅の土地を配偶者が相続するか、子供が相続して特例適用するかで、納税額に数百万円の差が出ることもあるという。

 それだけではない。

「相続の対象となる土地は、形が悪い不整形地や墓地などの隣接地、上空を高圧電線が通っている土地などの場合、最大50%近く評価額を下げられることがあります。本来、不動産鑑定士などの専門家に依頼すべきところ、それをしないで割高な申告をしてしまう税理士がいるのです」(同前)

 相続税の申告には様々な特例などがある。税理士もいちいち依頼主に説明しないことが多い。

「父が亡くなった時に頼んだ税理士は、“どんな書類が必要か”といったことは教えてくれたが、“(相続財産から差し引ける)故人の借金はこう探すといい”といったアドバイスは全くなかった。結果、後になってカードローンの残債が発覚するなどして大変な手間でした」(60代男性)

 相続税の“納め過ぎ”が判明した場合、申告期限から5年以内なら還付請求が可能だが、それを過ぎれば取り戻せない。

急増する「仏壇じまい」相談 僧侶による「魂抜き」費用は2万~3万円


 ここ数年どんどん規模が縮小しているのが「葬儀」のかたちだ。新型コロナウイルスの影響もあり、家族葬や通夜を省いた一日葬、さらには通夜を省略し一度もお経をあげない「直葬」も増えている。

 葬儀同様にあり方が変わったのが「墓」だ。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏がいう。

「墓は先祖代々受け継ぐものとされていますが、最近は家督という考え方が薄れ、少子高齢化もあり墓を継げる人が減っています。そのために様々な問題が生じています」

 一般財団法人日本消費者協会が2017年に行った「葬儀についてのアンケート調査」への回答では、〈代々の墓は東京だがその墓に入る予定の者が誰も東京にいない〉〈墓の移転に直面している〉といった悩みの声が多かった。

「『親が亡くなり、今あるお墓をどうすればいいか分からない』という相談を多く受けます。その場合、遠方の実家のほうに墓があるなら、その近くに住む親戚に引き継いでもらう、子世代の住むエリアの墓地に改葬するなどの選択肢があります」(吉川氏)

 こうした「墓じまい」が話題になる一方、大阪市にある柳谷観音大阪別院・泰聖寺の純空壮宏住職は、「最近はそれ以上に『仏壇じまい』の相談が多い」と語る。

「田舎の両親が他界したり、介護施設に入るなどして実家を処分する時、多くの人が仏壇の処理に困っています。仏壇はそのままの状態では廃品業者も回収してくれなくて、僧侶が『魂抜き(閉眼供養)』をする必要がある。魂を抜いた仏壇は家具と同じ扱いになり、業者も回収に応じてくれます」

 純空住職が魂抜きをする際は、依頼者の家で供養をした後、同行させた回収業者が仏壇を引き取っていくのだという。

「場所にもよりますが、費用は魂抜きが2万~3万円、回収費用が2万~4万円。魂抜きをした後に粗大ゴミとして出せば2000~3000円で処分できますが、近所の人の目もあるのでなかなかやりづらいでしょう」(純空住職)

 仏壇同様、位牌の処分を希望するケースも増えてきた。

「位牌を処分する際は、『没年月日と戒名だけは記録しておいてほしい』と伝えています。

 すべてを廃棄したら、ご先祖様のことが何も分からなくなってしまいます。これからは仏壇も位牌も処分が進んで、手を合わせるところがない家ばかりになっていくでしょう」(純空住職)

 葬儀は簡素になり、墓も仏壇も変わっていく。常識の激変をどう捉えるべきだろうか。

「故人に対して尊崇の念を持つことの大切さは変わりません。コロナを機に、“大切な人とどうお別れするか”について深く考えてみるとよいでしょう」(前出・吉川氏)

“見送り方”が変わっても、変わらないものもあるはずだ。

人気の都市部の納骨堂 追加メンテ費用、管理会社変更のリスクも

 遺された家族にとって、葬儀やお墓は労力も費用も大きな負担となる。だからこそ生きているうちに準備を進めておきたいと考える親は多いが、それが裏目に出ることがある。

都内の60代元会社員の男性は、先祖代々の墓地には骨壺を納めるスペースが足りないため、定年を機に近郊で墓探しを始めた。その結果、23区内より手頃な郊外の霊園の墓地に決め、永代使用料を支払った。

 しかし、男性が子供たちに墓地購入を告げると、戻ってきたのは、予想外の反応だった。

「『そんな辺鄙な場所、お参りできない』と皆から責められました。結局、子供らに押し切られるかたちで、墓石代にするはずの100万円を払って、アクセスのよい都内の納骨堂を契約し直しました。郊外に買った墓地は売買ができないそうなので、現在も保有したままです」(60代元会社員)

 葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏が指摘する。

「霊園の区画使用権は原則として他の人に売ったり販売会社に買い戻してもらうことはできません。また、最近は都市部の自動搬送式の納骨堂の人気が高まっていますが、こちらは管理費が年間1万~2万円ほど必要になることが多く、固定型の納骨堂に比べて少々高めです。大規模なメンテナンス時に追加費用がかかるリスクもあります」

 早くに墓を準備したのに、「業者の倒産」という想定外の事態に見舞われることもある。

 2010年には福井県あわら市の寺院が経営破綻した。その際、墓地や納骨堂の所有権が民間管理業者に移行するとともに、墓の移転や骨壺の返還を申し出る人が現われた。

「永代供養墓や納骨堂の場合、寺から開発や販売を委任された会社が倒産した後に業務が別会社に移行して、管理費用などの方針が変わるケースがあります。その場合、原則として墓地の購入費用や永代供養料は戻ってきません」(吉川氏)

 早めの準備が、裏目に出ることは多いのだ。

「葬儀費用を値切るのはタブー」は過去の話 130万が35万になった人も

 しめやかに家族や友人に送られる──人生最後のセレモニー「葬式」だが、新型コロナウイルスの影響もあり、ここ数年どんどん規模が縮小している。家族葬や通夜を省いた一日葬など、お金をかけない葬式がテレビCMを賑わし、「葬儀の常識」も大きく変わっているのだ。

 だが、その一方で新常識に伴う注意したい「落とし穴」もある。長崎県に住む父親の葬儀を行なった60代男性が語る。

「父親の実家のあたりでは地域の関係で、決まった葬儀社しか使えませんでした。参列者もほとんどいなかったのに、費用は言い値で200万円以上。自分の時にはもっと簡素なものでいい」

 こうした後悔をしないためには、事前の準備が重要になる。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏は「葬儀の費用を値切るのがタブーとされた時代は、すでに過去の話です」と言う。

一方、葬儀や告別式の「斎場・式場利用料」は、施設の設備による違いのほか、会場の大きさ次第で変わるので注意が必要だ。前出の吉川氏が指摘する。

「まず声をかける人数を葬儀社に伝えて、それに見合った広さと規模で見積もりを取ることが重要です。そうすることで無駄を省けます」

 参列者が減れば斎場の規模が小さくでき、食事の準備も少なくて済む。ただし、注意したいのは「葬儀後の香典」だ。

「訃報を後になって知った知人から香典や花などが送られてくることがあります。そうすると、香典返しの準備等で思わぬ手間がかかることも。そうならないように、事前に親子間などで声をかける人のリストを共有しておきたい」(吉川氏)

“なぜ知らせてくれなかったのか”と知人から後で言われることも多いという。

「訃報を伝えたうえで、『このご時世ですから、葬儀は家族だけで行ないます』と添えれば、無理に参列しようとする人は少なくなります。ただし、家族以上に故人を慕う人もいると思うので『最後のお別れをしたい』という声は大切にしてほしい」(吉川氏)

「今は消費者のほうが賢く、葬儀社の不要なオプションをはっきりと断わることが少なくない。そのため、葬儀社もどんぶり勘定ではなく、内容や費用をわかりやすく提示しています」

 費用の内訳についても知っておきたい。吉川氏が続ける。

「大きくは『葬儀施行費用』『斎場・式場利用料』『火葬料』『僧侶へのお布施』『飲食接待費用』に分類できます。とくに葬儀施行費用については、葬儀社によって大きく変わってきます」

 これは棺や祭壇、霊柩車、骨壺といった通夜や告別式でかかる費用の総称だ。祭壇や供花を豪華にするオプションなどで追加料金が発生する場合もある。

 大阪で葬儀コーディネーターとして活動する男性が語る。

「祭壇などの高価なオプションを提示して、『故人が望まれていたはずです』『最後の親孝行ですよ』などの殺し文句で押し切るケースがあります。業者の言いなりにならず、交渉を重ねましょう。見積もりでは130万円だったが、粘り強く交渉した結果、35万円まで値段が下がった例もあります」

 家族葬の場合、「遺影は不要」という遺族もいる。

「家族だけならわざわざ参列者に遺影を見せる必要がなく、故人のアルバムを並べて済ませるケースも増えています」(同前)

葬儀の生前積立で大失敗 「追加費用」や「積み立てしすぎ」の落とし穴

 葬儀は遺された家族にとって、労力も費用も大きな負担となる。だからこそ生きているうちに準備を進めておきたいと考える親は多いが、それが裏目に出ることがある。

 目立つのが、生前に積立金を払うと会員価格で葬儀ができる「互助会」にまつわる失敗だ。都内在住の50代男性が語る。

「『俺の葬儀で子供を煩わせたくない』が口癖だった父は、互助会に加入して75歳で30万円を完納しました。担当者からは、70万円の祭壇が30万円を積み立てるだけで使用できると聞いていた。

 これで不安はないと思っていたのですが、それから5年後に父が亡くなって互助会の担当者と葬儀の打ち合わせをしたら、湯灌や引出物の費用が追加でかかると言われたんです。結局さらに90万円ほどの追加費用を払うことになった。死んだ親父には悪いが、これなら老後のなけなしの年金の中からわざわざ積み立てる必要はなかったのに、と思います」

 予想外の費用を請求されるケースだけでなく、「多額の積み立て」で損をする場合もある。

 群馬県の50代男性は、大手葬儀社の互助会に長年加入していた父親を昨年に亡くした。

「父は、80万円クラスの葬儀を開くために、月額5000円を8年間、積み立てていました。ところがコロナの最中に亡くなったので、そこまで大規模な葬儀は必要ありません。我々遺族は通夜・告別式をせず、火葬のみの小規模な葬儀を希望しましたが、互助会員の割引を加味しても近所の葬儀社の見積もりのほうが安かった。

 そこで解約を申し出ましたが、掛け金の20%ほどの解約手数料がかかるという。結局、“父の遺志だから”と互助会の葬儀社で80万円クラスの葬儀をすることに決めたが、こんな時期なので弔問客も少なく、これでは父も浮かばれないと思いました」

 葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏が指摘する。

「近年、特にコロナ禍では通夜・告別式を省略する『直葬』や家族と親戚、ごく一部の知人だけを呼ぶ『家族葬』が増えています。たとえ本人が盛大な葬儀をしてほしいと前もって互助会に加入していても、条件などについてご家族や葬儀社ときちんと共有しておかないと、希望通りの葬式の実現が難しい場合があります」

※週刊ポスト2021年6月4日号

終活で自宅不動産を考える 選択肢と特長、リスクを解説

相続の際、亡くなった人(被相続人)が保有していたすべての財産を相続人が引き継ぐことになります。個人の財産では、自宅の土地建物が占める割合が大きいことが多いですが、不動産は分けるのが難しく、遺産分割でトラブルの原因となるケースが珍しくありません。

そのため、終活の一環として自宅不動産をどうするかを考えておくことが大切です。今回は終活で不動産を考える時の選択肢と、それぞれのメリットやリスクについて解説します。

自宅不動産がトラブルの原因になる
相続の際、自宅不動産についてどんなトラブルが起こりうるのか、よくある3つのケースを見てみましょう。

ケース1:子が相続して住む
親が亡くなったとき、同居していた子がその自宅を相続する、あるいは別居していた子が相続してその自宅に住む、というケースです。自宅を相続した子Aのほかに、相続しなかった子Bがいた場合、遺産を均等に分割するとしたら、子Bには自宅不動産の評価額と同程度の金融資産を相続させなければなりません。

遺産の中にそれだけの金融資産があればよいのですが、金融資産が自宅不動産の評価額より少ないと均等な遺産分割ができません。Bがどうしても均等な分割を望むなら自宅不動産を売却して現金化しAとBで分けることが考えられますが、そうするとAは住まいを失ってしまいます。

ケース2:誰も住まない
子はすでにマイホームを取得していて、遺産として残った家に住む人がおらず空き家になってしまうケースは多く、社会問題となっています。空き家でも土地・建物の固定資産税を負担しなければならず、建物の維持にもお金がかかります。ゴミの不法投棄など空き家が防犯・防災面でのトラブルにつながることもあり、空き家のまま放置しておくのは望ましくありません。

ケース3:共有名義にする
遺産となった自宅に子が住む場合も住まない場合も、均等に遺産分割するために自宅不動産の所有権を共有することはできますが、共有すると共有者の一人が単独でその不動産を貸したり売ったりできにくくなります。

また、共有者が亡くなったときその相続人が所有権を相続すると共有者が次第に増え、利用・処分がますますしづらくなります。実際に、共有者が多すぎて処分できなくなっている不動産は数多くあります。

自宅不動産に関する選択肢
こうしたトラブルを避けるためには、事前に自宅不動産をどうするかを考えておくことが大切です。選択肢としては次のようなものがあります。

・住み続ける
相続人が住むのであれば空き家になる心配はありませんが、リフォームや二世帯住宅への建て替えが必要になるかもしれません。また、自宅不動産を相続しない相続人がいる場合は、金融資産や生命保険などを利用した遺産分割対策も考えなければなりません。

・活用する
立地条件がよければ、賃貸住宅などに建て替えておくことが考えられます。それによって賃貸料が入ってくれば老後の生活費として使うこともできます。ただし、建て替えの費用をどう手当てするかが課題になります。相続人が複数いる場合は、その賃貸住宅を含めた遺産分割対策も必要です。

・売却する
誰も住まないことがわかっているなら、生前に売却して利便性の高いマンション、高齢者向けの住宅、有料老人ホームなどに住み替えることが考えられます。亡くなったあとに売却して、売却代金を相続人で分割する方法もありますが、将来の不動産市況によっては売却価格が想定より低くなったり、買い手がいなくて売るに売れない状況になってしまったりする可能性があります。

・老後資金に充てる
自宅不動産を相続させない、または相続させる必要がないのであれば、リバースモーゲージを利用して、自宅に住み続けながら老後資金を確保するために活用するのも選択肢となります(参考記事:「老後資金の選択肢リバースモーゲージ 生活や相続に活用する具体例や注意点を解説」)。高齢者向け住宅などへの転居までのつなぎとして、リースバックを利用することも考えられます。(参考記事:「リースバックの活用法 マイホームの売却資金を得た後も住み続けられる」)

不動産の終活に必要な手続き
自宅不動産をどうするのかを考えるとき、あるいは実際に相続・売却するにあたってしておくべき実務的な手続きもあります。

・不動産の評価額を調べる
相続税がかかるかどうかを確認したり、遺産をどのように分けるかを考えたりするには、自宅不動産の評価額を知る必要があります。土地の相続税評価額は、路線価に敷地面積を掛けたもの(それに加算・補正がある場合がある)で、路線価は国税庁のサイトで調べられます。正確な相続税評価額を知りたい場合は、相続に詳しい税理士に依頼しましょう。

売却する場合にいくらくらいで売れるかは、国土交通省のサイトなどで近隣の土地の取引価格を調べられます。個別の物件価格は不動産会社に査定してもらいます。

・名義の変更
親から相続した土地の場合、土地の名義が亡くなった親などのままになっているケースがあるので確認しておくことが大切です。もし名義変更がされていなかったら、所有権移転登記をして現在の所有者の名義にしておきます。

・境界の特定・測量
代々相続してきた土地や古い住宅地にある土地などは、隣地との境界があいまいだったり、不動産の面積が登記簿の記載と違っていたりすることがあるので、土地家屋調査士に依頼して測量してもらい、境界や面積を確定しておきます。

不動産の終活でしておくべきこと
・自分の希望をはっきりさせる
まず、自分自身が自宅不動産をどうしたいのかを考えましょう。例えば、自分が亡くなったあとも配偶者が住み続け配偶者亡きあとは子が相続して住んでほしい、あるいは一定の年齢になったら売却して有料老人ホームへ転居したいなど、具体的なプランを考えます。

・相続人の意思を確認する
子と同居していない場合は、子が自宅不動産を相続したいかどうかをきいておきましょう。相続するかしないかによって、相続税対策や遺産分割対策が違ってきます。配偶者や子がいない場合は、相続人となる兄弟姉妹や甥・姪などの意思を確認する必要があります。

・活用や売却を考える
自宅不動産を誰も相続しない、あるいは誰にも相続させないのであれば、売却や活用の仕方を考えます。そのタイミングについても検討しましょう。

・税理士に相談する
自宅不動産の相続にあたって相続税がかかりそうであれば、相続に詳しい税理士に相談して相続税対策を考えておきます。

・遺言書を書く
自分亡きあとに自宅不動産をどうするのかを決めたら、その内容を記した遺言書を作成します。

まとめ
愛着のある自宅も、何もしないまま相続を迎えると子どもどうしの争いにつながったり、放置されて荒れてしまったりします。そうならないためには早めの準備が大切です。自分や配偶者の希望、子の意思などをしっかり確認して、ベストな選択をしたいものです。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

ファイナンシャル・プランナー 馬養雅子プロフィール
ファイナンシャル・プランナー(CFP (R) )。「だれでもカンタンにできる資産運用のはじめ方」(ナツメ社)をはじめ投資信託や介護などに関する著書多数。

遺骨をダイヤモンドに… 故人をそばに置いておく「手元供養」のニーズ高まる

 いま、お墓のかたちが多様化している。通常のお墓に比べて費用の負担も少ない樹木葬や納骨堂も人気となっている。もっとも樹木葬や納骨堂などは、従来のお墓とは形が違えど、「手を合わせる場所を作る」という共通項がある。一方で、そもそも遺骨をどこかに埋葬したり納めたりせずに手元に置いておく「手元供養」を選ぶ人もいる。


【グラフ】コロナの影響で約8割が葬儀を簡素化。あらゆる項目で葬儀を簡素化・省略の傾向に


 近年注目を浴びているのが、遺骨をダイヤモンドに加工する方法だ。女優の冨士眞奈美(83才)もテレビ番組で自身の終活に触れ、伊豆にお墓があるものの娘から「お墓参りは遠いから遺骨はダイヤモンドにしてあげる」と言われたことを明かしている。そうした遺骨からダイヤモンドを作製するサービスを提供する企業の1つ「LONITE」の坂巻友一さんが言う。


「ご遺骨をダイヤモンドにして残すのは、ヨーロッパでは古くから伝わる供養の方式で、遺骨や遺灰に含まれる炭素の量を分析して、不純物を取り除いて結晶化させるのです。遺骨や遺灰を特殊な溶液や装置を用いて精製すると、炭素の純度が99.99%になります。その精製された炭素とダイヤモンドの種を天然ダイヤモンドの生成環境を再現する容器に入れて、極端な熱と圧力を加えることで、遺骨がダイヤモンドに生まれ変わるのです」


 同社ホームページによれば約30万円から作製が可能。依頼者の9割は女性で、ペンダントなどいつも身に着けられる形を選ぶ人が多い。


「墓じまいに際して、先祖代々の遺骨をすべて出して混ぜ、ダイヤモンドを作った例もありました。きょうだいで分骨した際に、“私はダイヤモンドを作る”といってオーダーされたケースもありました」(坂巻さん)


 親を亡くした独身女性が、「お墓をどうしよう」と悩んで骨壺を自宅に置いたまま1年がたち、ようやく遺骨ダイヤモンドによる手元供養にたどり着いたケースもあるそうだ。『0葬──あっさり死ぬ』(集英社)の著者で宗教学者の島田裕巳さんは、こうした方法は今後さらに増えると予測する。


「納骨堂も面倒だと考え、火葬場で遺骨を引き取らずに手放す“0葬”という方法をとる人も増えています。地域によっては引き取ってもらえないケースもありますが、関西では実施しているところが多い。何も残らないのはさびしいと、お墓を購入する代わりに少量の遺骨を持ち帰り、散骨したり手元に残したりする方法が選択肢の1つとして、スタンダードになるでしょう」

自然と共存して眠る「樹木葬」が人気 お墓の暗いイメージも払拭

購入したお墓の種類は、樹木葬が一般墓を逆転している(2021年「お墓の消費者全国実態調査」より)© マネーポストWEB 提供 購入したお墓の種類は、樹木葬が一般墓を逆転している(2021年「お墓の消費者全国実態調査」より)

 少子高齢化で、お墓の手入れをする人や引き継ぐ人が減ったことで、伝統的な石のお墓にこだわらず、散骨などを選ぶ人が近年増えている。だが、そうした“最期に眠る場所”の簡略化が進んでも、故人を思う気持ちは変わらない。最近では、従来のお墓に代わるさまざまな供養の形が生まれてきている。

「こもれびの 夫のとなりに 眠ろうか」

 チッチとサリーでおなじみの半世紀以上続いたベストセラー漫画『小さな恋のものがたり』を生み出した漫画家のみつはしちかこさん(80才)は、新緑がまぶしい雑木林のベンチに腰掛け、一句詠んだ。咽頭がんを患い、10年前に先立った最愛の夫は、この雑木林のクヌギの木の下に眠る。

「クヌギの木が大好きだった夫は、生前から“樹木葬がいい”と話していました。日当たりのよい山の斜面にあって、家からも近いし、ここなら夫が満足しそうだと思って即決しました。きっと天国で喜んでくれていると思います」(みつはしさん)

 樹木葬とは、許可を得た区画に遺骨を埋葬し、墓石などを設けずに花や木を墓碑として自然と共存する方法だ。みつはしさんは夫の隣に自分用の区画を購入しており、最期はそこで眠る予定だという。

 このように家族同士で隣り合って入るケースのほか、ペットと一緒に入れるタイプ、桜をシンボルツリーにしてその周辺に遺骨を埋める「桜葬」など、樹木葬にはさまざまな種類がある。費用も一般的な墓石の半額程度ですむケースが多い。みつはしさんは、「ここに来るたび、なんだかほっとする」と言う。

「お墓にはなんとなく暗くて怖いイメージが伴いますが、ここは真逆。近くのベンチでくつろいだり、丘の上から見える景色を楽しんだり、俳句をひねったり。行けば面白かった夫のいいところばかり思い出して、『ごめんね』と言おうと思って来たのに、なんだかそこらへんの木の下であの人がマスクもせずに大好きなビールを飲んでいるような気がしてきて、『また来るね』と言って帰ります」(みつはしさん)

 実際に樹木葬を選ぶ人は増えており、前出の「お墓の消費者全国実態調査」においてその割合は最も多い。同調査によれば次いで多いのが一般墓。追随するのは、遺骨を土に還さずに骨壺のまま収蔵する「納骨堂」だ。ロッカータイプが一般的だが、仏壇タイプやカードをかざすと遺骨が運ばれてくる、立体駐車場のようなシステムを導入しているところもある。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが語る。

「土地の狭い都市部でも、納骨堂はつくりやすく多く収蔵できることから、急増しています。一定期間供養してくれる『永代供養』の墓のため、管理の必要もなく、家族に迷惑をかけずにすむと考えて選ぶ人も多い」

 永代供養の期限は三十三回忌までとされているケースが多い。納骨堂購入に伴う平均予算は約90万円。都市部の比較的交通の便のよい場所にあり、個別にお墓を建てるよりもかなり安価なことも大きなメリットとなっているようだ。

※女性セブン2021年5月20・27日号

老親が元気なうちに確認しておくべき事柄「保険の有無」「延命の意志」等

 父や母が高齢になると、病気、介護、そして葬儀など、さまざまなトラブルが生じる。だが、事前に親子で情報を共有し、書類や資料を用意しておくことで、問題を回避することができるだろう。

 たとえば、医療や介護についての備え。親が急に倒れた時のために、健康保険証・介護保険証の保管場所は知っておきたい。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏が解説する。

「加えて、親が民間の医療保険、生命保険に入っているかを確認しましょう。せっかく保険料を払ってきたのに、いざという時に子が保険の存在自体を知らないと無駄になってしまいます。

 また、親に延命治療の意思表示カードを記入してもらっておくことも重要です。多くの人が、“その時が近づいてから確認すればいい”と後回しにしがちですが、親が弱ってからだと延命治療の希望なんて、なかなか聞けません。どこまで手を尽くすか、子供同士で意見が違ってトラブルになるケースも多いので、事前に親の意思を共有しておくのが望ましい。

 公正証書をつくって意思を明示する方法もありますが、自治体や病院が用意する意思表示のフォーマットを使ってもいいでしょう」

 親の認知症が進行した場合などは、家族だけで介護を担おうとすると、家族関係が崩壊しかねない。介護保険サービスを利用するために介護保険認定申請書を作成し、手続きする。夢相続代表で相続実務士の曽根恵子氏はこういう。

「親の判断能力が低下していれば自分で手続きができないため、子が申請することになります。地域包括支援センターや自治体の介護保険窓口に行って相談しましょう」

 親が弱る前に済ませておきたいのは、葬儀関連の備えだ。

「遺影や葬儀に呼ぶ人のリストなどを用意し、希望の葬儀社などを親が決めておくと、子にとっては非常にスムーズです。親から“どういうお葬式をやりたいか”の希望を聞いておくとよいでしょう。元気な時だから聞けるのです。事前に複数の葬儀社の見積もりを取ってもいい。また、葬儀費用を積み立てている口座や互助会があるのなら、その情報についても、忘れずに親子で共有しておきましょう」(太田氏)

苦労の末に義母を見送った50代男性 葬儀で親戚から責められ我慢の限界

父が亡くなった後、母が亡くなった後には、「おひとり」になった親に関する様々な問題が生じてくる。特に難しいのは介護の問題だが、それは「実の親」との間だけではない。むしろ、「義父母」のほうが、一筋縄ではいかないこともある。もし、妻の親が「おひとり」になったら、夫はどのように関わればいいのか。その距離感を見誤れば、たちまち悲劇が訪れる──。


【表】代理人カード、家族信託契約書…他、親子で「その時」のために準備しておく重要書類20


「妻の親の面倒を見ている夫は増えています。一人っ子だったり、きょうだいが少ない人が増え、長男・長女同士の結婚が増えたことが背景にあります」――シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏はそう言う。


「おひとり」になった実父・実母との関わりの難しさはここまで見た通りだが、相手が「義父母」でひとり身となると、さらに複雑な問題が生じることがある。今年1月、82歳の義母を見送った神奈川県在住の男性(55)が、自身の身に降りかかったトラブルを打ち明ける。


「5年前に妻の父が亡くなり、ひとり残された義母の面倒を同じ県内に住む私たち夫婦が見ていました。義母は持ち家の戸建てを処分して有料老人ホームへの入居を希望。そこで義父の車や自宅の売却手続き、ホーム探しをする妻を私がフォローしたのです」


 しかし、それが間違いのもとだったのかもしれない。

「疎遠だった義母の兄弟から『財産を乗っ取ろうとしている』と陰口を叩かれるようになったんです。親切のつもりで手伝ったのに、なんでそんなことを言われなくてはいけないのか。


 しかも、ホームへの入居が決まった後、義母が飼っていた中型犬を我が家で引き取ったのですが、大学生のひとり娘は動物が苦手で、猛反発を食らってしまい……」


 その後、義母は末期がんの診断を受け入院。今年の1月に息を引き取った。

「葬儀では義母の兄弟から『私たちの了承を得ないで何もかも勝手に売られた。環境が変わらなければ静かな余生を送れたはずだ』と責められました。顔と名前が一致しないような親戚ですが、この5年のさまざまな我慢が頭をよぎり、怒りを抑えるのに必死でした」(同前)


 ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏はこう指摘する。

「財産の管理や処分に娘婿が関与すると、思わぬトラブルに繋がります。娘である妻は夫に頼りがちですが、婿は周りの親族から『娘婿が入れ知恵した』などと悪者にされるケースが少なくない。


 また、施設に入居する際に義親の『身元引受人』になると、支払いが滞った場合は責任を負わされる上、施設に居られなくなる状況になれば義親を引き取らなくてはならないことも。義理の親の問題に口出し・手出しをする際は慎重な判断が必要です」

“おひとりさま”の終活を考える 老後リスクと死後の手続き

おひとりさまの老後リスクとは

終活を始めたらやるべき7つのこと

死後の手続きを他人に頼む場合には

ファイナンシャル・プランナー 山田静江プロフィール

吉田拓郎が明かす夫婦の終活 妻・森下愛子は「1年前に引退」

「これからの老老人生、ふたりで協力して、できれば明るく、できれば平穏に、できればより長く、助け合って生きていこうと思っています」──4月9日、吉田拓郎(75才)は自身のラジオ番組で、1986年に再々婚した妻・森下愛子(63才)との“老後“を口にした。

 吉田は長きにわたり病と闘い続けてきた。2003年に肺がんが見つかり、肺の3分の1を切除。2007年にはブログで《更年期障害、ストレス、うつ病の入り口》と告白し、さらに2014年には、のどにがんが見つかった。そのたびに森下は、女優業をセーブするなどして吉田をサポートしてきた。結婚35年を迎えたおしどり夫婦は、最近よくこんな話をしているという。

「どちらかが寝たきりになったらどうするか、という話をしているんです。いざというときのために、いまから何をすべきか話し合っているようです」(吉田の知人)

 実際、ふたりはすでに“終活”を始めていた。

「森下さんのテレビ出演は、2017年のドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)が最後。そんななか久しぶりに彼女の出演が噂されたのが、先日放送されたドラマ『俺の家の話』(TBS系)です。脚本家の宮藤官九郎さん(50才)と主演の長瀬智也(42才)さんとは、何度も共演した仲。長瀬さんがジャニーズを退所する前の最後の作品なので、森下さんの出演も期待されていた。ですが、それはかなわなかった」(芸能関係者)

 その理由は冒頭のラジオで判明した。吉田が「森下愛子さんもね、1年前からすべてのドラマの撮影の世界からのリタイアを決断しておりまして」と、森下の“引退“とも取れる発言をしたのである。

「拓郎さんの闘病生活を支えるなか、新型コロナという社会の変化もあって決断したようです。森下さんだけじゃありません。近く、夫婦揃ってリタイアする意向のようです」(前出・吉田の知人)

 昨年7月、吉田は今夏のツアーをもってライブ活動に終止符を打つと発表した。しかし、新型コロナの感染が拡大する状況を鑑みて、開催の中止を決定。代わりに吉田が“人生の集大成“と位置づけているのが、ラストアルバムだ。

「このアルバムは、親交のあるKinKi Kidsの2人も、何らかの形で参加する予定になっています。リリース時期は未定ですが、拓郎さんは『解放されたい』とよく言っているので、そう遠くないタイミングで出すと思いますよ。すでにアルバム発売後は“完全なるリタイア“を宣言されています」(音楽関係者)

 夫婦は終活だけでなく、死後の話までしているという。

「ちょっと気が早い話ですが、拓郎さんは自分が死んだ後に、『追悼番組』が放送されることが嫌なんです。拓郎さんクラスになれば、各局が追悼番組を組むのは当然。その番組に友人や知人が出て、いろんな思い出話をされるのが嫌だそうで……(笑い)。

 拓郎さんは森下さんに『追悼番組の打診が来たら、絶対に断って!』とお願いしたそうです。すると森下さんが、『ベラベラしゃべりそうな人よりも、あなたが長生きすればいいじゃない』と返したとか」(前出・吉田の知人)

 吉田はこのエピソードをラジオ番組で披露し、「よ~し、長生きしなきゃな!」と、声を弾ませた。死後のことまで楽しく話せる吉田夫婦。この夫婦が芸能界の一線からリタイアするのは残念だが、晩年はふたりの時間を楽しんでほしい。

※女性セブン2021年4月29日号

老親の再婚で多発する「財産・介護・墓」トラブル防止法

もしも親が「再婚したい」と言いだしたら……。子どもとして複雑な気持ちに加え、老親の再婚には財産や介護などさまざまな問題が。トラブルを防ぐ方法を聞いたーー。

高齢者の再婚が増えている。国立社会保障・人口問題研究所によると、70歳以上の再婚数は’00年の1,718件から、’18年には3,955件と倍以上に急増中だ。

「60代から70代になると、外出が減り、一気に人と会う機会が少なくなります。そんな日々を過ごす70代の方が“あと10年、20年は生きられる”と思うと、一緒に食事をしたり、旅行したりと、人生を豊かに過ごせるパートナーを求める気持ちが生まれるんですね」

こう語るのは、中高年からシニアの婚活支援、結婚相談を行う「茜会」の後藤礼美さんだ。

「本当に元気なご高齢者は多く、茜会に登録されている最高齢の女性は82歳で、男性は86歳です。恋愛することは生きる活力と心の安らぎを与えるので、みなさん、とっても若々しくなります」

ただし、高齢の親の恋愛を素直に喜べない子どもも多いというのは、夫婦問題コンサルタントでファイナンシャルプランナーの寺門美和子さんだ。

「40代、50代の方からの、親の恋愛・再婚に関する相談は年々増加傾向にありますが『いい年して、はずかしい』『いきなりあらわれた再婚相手に、財産の半分も持っていかれるのは嫌だ』と、拒否反応を示す方が多いです。しかし、私たちも若いころ親から反対されて経験したように、恋愛は反対されればされるほど燃え上がるもの。思わぬトラブルに発展することもあります」

東京都在住の堀内美恵さん(56・仮名)も、その一人だ。

「11年前に母を亡くし、その1年後に父がまさかの再婚宣言。父とは母が亡くなってからずっと不仲だったので“もう他人だし、関係ない”と、音信不通状態でした」

ところが昨年、父が遺言も残さず、脳梗塞で急逝。ほとんど会話もしたことのない後妻と、相続の話を進めることになった。

「最初は大人同士だしなんとかなるだろうと思っていたのですが、いざ話し合いとなると、後妻は『金融資産はほとんどない』と言い張り、開示を拒否。私たち家族の思い出がつまった実家も、あっさり売却すると言いだし、大もめに。裁判をしようにも、裁判費用のほうが高くつくし、10年近く、父に寄り添ってくれたのは事実。結局、家の評価額2,000万円に対して、半分の1,000万円を現金で後妻に支払い、実家の権利を手にしました」

父親との音信不通状態を放置したために起きてしまったこのケース。生前、財産分与に関して話したり、遺言を書いてもらえていれば、このような事態は防げたはず。

こうした事例は、誰もが直面する可能性があるからこそ、寺門さんのアドバイスに耳を傾けたい。

「大前提は、ふだんからコミュニケーションをしっかりとること。親は自分の恋愛を積極的に話しません。『1人で寂しくない?』『いい人、いるの?』と聞いて、話しやすい雰囲気を作りましょう。急に身なりがきれいになるなど、変化を見抜くことも重要。交際相手がいることがわかっても、冷静に対応し、信頼してもらうことです」

話ができる状況なら、財産問題にステップアップできる。

「財産トラブルを防ぐためには、事実婚を選択してもらうのがシンプル。でも、好きな相手にはお金を残し、責任を果たしたいという思いがある可能性も。その先にあるのは入籍です」

たった1人でも婚姻関係があれば、配偶者は財産の半分を取得する権利を得る。当人だけの問題ではなくなるので、入籍前に、家族全員で話し合い、納得する答えを見つけなくてはならない。

「不動産や預貯金などの情報を共有して、誰が管理し、親の死後、どうやって分けるのか、道筋を決め、遺言を残してもらうことです。問題は財産だけではありません。介護は誰がして、高齢者施設に入る場合の資金や葬式代は誰が払うのか、親や配偶者の墓をどこにするのか、なども含めて話し合ってください。当然、交際相手の家族と話すことも必要。相続診断士などを交えて、話し合いを行うことがおすすめです」

老親の再婚前に確認しておきたいことを、次のチェックリストにまとめたので参考にしてほしい。

【老親の再婚で多発するトラブルを未然に防ぐチェックリスト】

□ 再婚相手に子どもはいるか、いる場合連絡はとれるか
□ 再婚相手が借金、酒やギャンブル問題などのトラブルを抱えていないか
□ 親、再婚相手ともに兄弟姉妹との関係性はどのような状態か
□ 再婚相手の介護は誰が行うのか、親が先立った場合はどうするのか
□ 再婚相手の介護費用は誰が負担するのか
□ 親、再婚相手はそれぞれどこの墓に入るのか
□ 再婚相手の葬式、墓の費用は誰が負担するのか
□ 今後墓を誰が管理するのか
□ それぞれの資産(負の遺産も)は何がどれくらいあるのか
□ 遺産分割はどのような分配にするのか(遺言書の作成まで行う)

親の思いに耳を傾け、財産・介護・墓・葬式などトラブルを未然に防ごう。

  カフェ、ネイルサロン、ヨガ・整体マッサージ、レストランビジネス など様々な業種の方がプロ並みのHPがたった5分で作成出来ます!プロに依頼する必要はありません

夫が「全財産を妻に」と遺言 それでも義母と義姉に相続させる必要はあるか

 遺産相続のトラブルを回避するために「遺言」は重要な存在だ。しかし、条件によっては、遺言に従うだけでは、不十分なケースもあるという。たとえば夫が「全財産を妻に」と遺言を残していた場合でも、夫の母が“遺留分”を請求できるというのだ。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 夫が病気で亡くなりましたが、遺産相続のことでもめそうです。義父はすでに他界していますが、義母と義姉がいます。私と夫の間に子供はなく、義母と義姉とは同居していません。夫の遺言書では、「私に全財産を相続させる」となっていますが、法律的には義母と義姉にも相続させないといけないのでしょうか。教えてください。(大阪府・55才・会社員)

【回答】
 ご主人の相続人は、子供がいないので、配偶者であるあなたとお義母さんです。お義姉さんは相続人ではありません。

 相続人が複数だと、本来は遺産分割協議が必要です。分け方の基準としては、配偶者と親が相続人の場合、法定相続分で、配偶者が3分の2、親が3分の1の割合となります。

 しかし、ご主人は遺産全部をあなたに相続させる遺言を残しているので、遺産分割協議は不要で全部を取得できます。

 不動産があれば所有名義をあなたに変更できますし、預貯金の引き出しもできます。

 しかし、お義母さんには遺留分があります。遺留分とは、被相続人の配偶者・直系卑属・直系尊属(*)が持っている相続に関する固有の権利で、被相続人が遺言や生前贈与によっても奪えない遺産の範囲です。

【*直系卑属=子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族のこと。直系尊属=父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のこと】

 遺留分の権利は、直系尊属だけが相続人の場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合には2分の1です。今回の場合、直系尊属であるお義母さんの法定相続分が3分の1で、配偶者とともに相続人ですから、遺留分は、その2分の1、すなわち全体の6分の1です。

 遺留分の具体的な金額は、まず実際の遺産の額に、死亡の10年前以後に相続人が生計の資本として贈与された財産(特別受益)の金額を加算します。ご主人が、お義母さんのために住まいを買ってあげたり、大規模の修繕費用を負担するなどしていれば特別受益ですから加算されます。

 また、あなたがご主人から賃貸不動産などを購入してもらっていれば同様です。

 お義母さんの遺留分の額は、遺産に特別受益を加算した額から相続債務の額を控除した残額に、遺留分の割合6分の1をかけた金額です。この額からお義母さんの特別受益の額を差し引いた残額がプラスであれば、それが遺留分侵害額です。

 お義母さんはご主人の遺言を知ったときから1年以内であれば、あなたに侵害額の支払請求ができます。

 相続人ではないお義姉さんと話し合う必要はありませんが、お義母さんから遺留分の申し出があれば協議する必要があります。特別受益の有無を含めて相続財産の範囲を確認しあうことからスタートして、遺留分の額を確定し、支払い方法を相談することになります。

 遺留分の計算は素人には簡単ではありません。遺留分の請求があれば弁護士に相談してください。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2021年3月18日号

  カフェ、ネイルサロン、ヨガ・整体マッサージ、レストランビジネス など様々な業種の方がプロ並みのHPがたった5分で作成出来ます!プロに依頼する必要はありません
おススメサイト!
最新記事
★★互助会推薦★★
QRコード
QR
admax
="">
カテゴリ
ランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ