2

1分で「がん細胞」を破壊し、副作用もない「光免疫療法」。注目の世界的研究者に単独取材!

オバマ前大統領が、2012年の一般教書演説で世界に誇った革新的ながん治療法「光免疫療法」。その世界的研究者に現地ワシントンで単独取材しました!

がん治療を根底から変革!主導する日本人研究者にすべてを聞く!

ホウドウキョクの水曜夜の人気コーナー【ニュースなヤマイ】で昨年、がんの革新的治療法「光免疫療法」を渡邊千春ドクターが解説したところ、なんと、その研究を主導するアメリカ国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆先生が、ワシントンで【ニュースなヤマイ】を観ていました!直接お礼のエアメールが届き、さらにNIHへの招待を。渡邊ドクターが早速現地へ赴き、単独取材に成功しました!
.
がん細胞だけを極めて『選択的』に破壊

従来のがん治療法である「外科手術」は身体への負担が大きく、「放射線療法」「化学療法」には副作用があります。それらの治療は、がん細胞だけでなく、正常細胞や周囲の臓器も傷つけるからです。一方、「光免疫療法」は、がん細胞だけを極めて『選択的』に攻撃し、破壊します。この治療は、「近赤外線」という光を使ってがんを破壊するものです。「近赤外線」とは、TVのリモコンや赤外線通信などに用いられている無害な光線。さらに、がん細胞だけに特異的に結合する抗体というたんぱく質と、その抗体と対になっているIR700という色素がポイントとなります。

IR700は近赤外線を照射すると、そのエネルギーを吸収し、化学反応する性質を持っています。

小林先生
近赤外線に反応して化学反応を起こすIR700を、がん細胞のところまで抗体に運んでもらうのです。IR700と一体となった抗体を、静脈注射で体内に入れます。すると抗体はがん細胞と結合します。結合した抗体に近赤外線の光を照射すると、IR700が化学反応を起こします。 化学反応で変化したIR700は、がん細胞の膜にあるたんぱく質を変性させ、細胞膜の機能を失わせます。すると1~2分という極めて短時間で、がん細胞は膨張~破壊されるのです。

小林先生
IR700の化学反応で、がん細胞の細胞膜が壊れて膨らんでくる。膨らみ過ぎると破れて、がん細胞が破壊されます。

8~9割のがんに有効!

小林先生
体の奥の方にがんがある場合も、細い光ファイバーを患部に挿し込めば、近赤外線を照射出来ます」「光ファイバーを使うことで、皮膚がんのような身体の表面に近いものだけでなく、食道がん、肺がん、子宮がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がんなど、がんの8~9割はこの治療法でカバー出来ると考えています。
.
副作用はなく、入院も不要!

小林先生
この治療のための入院は必要ないですね。初日に抗体を注射する、そして翌日に光をあてる、それだけが全てです。動物実験上、臨床治験上では特に副作用というのは見られていません。正常細胞は傷つけないで、がん細胞だけを破壊するからでしょう。
.
転移がん・再発がんにも有効!

本来、免疫細胞が機能していれば、がん細胞は免疫細胞が攻撃することで排除されます。しかし、実際にはがん細胞はどんどん増殖していきます。 実は、がん細胞は、免疫細胞の働きを阻害する「制御性T細胞」という細胞を周囲に集めて、免疫細胞を眠らせるのです。免疫細胞からの攻撃がなくなるので、がん細胞は増殖します。

小林先生
がんが出来た局所の免疫を上げてあげれば、ステージ4という段階でも、転移したがんでも治療が望めます。末期がんでも、可能性としては十分あります。IR700を付けた抗体を、今度は免疫細胞の邪魔をしている「制御性T細胞」に結合させます。そして近赤外線を当てて、「制御性T細胞」を破壊します。がん細胞の近くにいる免疫細胞は邪魔者がいなくなるので「眠り」から覚め、数十分のうちに活性化して、がん細胞を攻撃、破壊します。さらに活性化した免疫細胞は、血流に乗って全身を巡り、わずか数時間のうちに転移がんをも攻撃し始めるのです。

小林先生
放射線でも化学療法でも、これ以上は人間の体が耐えられないという限界があります。しかし光免疫療法には抗体の投与量限界も、照射量の限界もありません。がんが再発しても、何度でも治り切るまで出来る治療なのです。
.
「光免疫療法」にかかる費用は?

小林先生
IR700を付けた抗体が一番費用がかかる部分ですが、使う量が大したことないので、そんなにお金はかからない。近赤外線は、レーザー1台あればいくら使っても減るものではありません。

保険適用されないとしても、100万円~200万円のレベルになる見込みとのことです。抗がん剤治療で月に数百万円かかることも普通なので、従来のがん治療に比べれば、これは相当に低い額になります。(日本の場合は保険適用されれば、「高額療養費制度」もあるので、患者さん自身の負担額は数万円程度でしょう) 急増する医療費は、各国の大きな課題です。

特に日本の場合、国民の2人に1人ががんに罹患します。がん治療費にかかる社会保障費は、莫大なものになっています。「光免疫療法」が普及すれば、医療費の増加に悩む国の財政にとって、大きなメリットになるでしょう。

楽天・三木谷会長が強力サポート!

「光免疫療法」は、アメリカでは異例の速さで治験が進んでいます。アメリカ国立衛生研究所が治験を委託したベンチャー企業は、楽天の三木谷氏が取締役会長を務めています。

小林先生
三木谷さんは父上ががんを罹患されたこともあり、治療法について大変勉強されていた。その中で光免疫療法のことも知り、私を訪ねていらした。私からご説明して数十分で、サポートを即決されました。私たちはアメリカ政府の公的資金を使って治験を進めようとしていました。しかし、三木谷さんのサポートが始まってから治験のスタートまで、1年半しかかかりませんでした。公的資金であれば、さらに2年程度時間がかかったと思います。

日本での実用化は何年後?!

小林先生
当初はどの程度の患者さんに適用出来るか等はあるが、日本で治療として実現するのは3年~4年後でしょうか。治験自体がアメリカが1年半ぐらい先に進んでいるので、その時間差を埋められるかという点はありますが、三木谷さんは世界同時に実用化したい、と言われています。少しづつですけれども、カバーできるがんを増やしていくかたちを今は考えています。しっかり抗体の数と仕組みを揃えることが出来れば、かなりの方のお役に立つ治療法だと思っています。

■小林久隆先生 監修
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の主任研究員

効果と副作用、判断難しい抗がん剤 多職種集う専門チームが必要

チームで支えるがん診療をテーマに、がん専門薬剤師の立場から、倉敷中央病院(倉敷市)薬剤部の石原泰子薬剤師に寄稿してもらいました。

////////////

 「次の薬は、私に合えばいいなぁ…。これがいけんかったら、どうなるんじゃろ」

 胃がんのため、抗がん剤治療を続けていた60代の男性の言葉です。

 男性は、1年半ほど前に胃がんが見つかり、抗がん剤による治療が開始されました。主治医からは、予後は非常に厳しく、「年は越せない可能性もある」と、ご本人にもご家族にも伝えられていました。初めに使った薬では肝機能が悪くなったため、二つ目の抗がん剤が選ばれました。治療開始時には痛みがあり、医療用麻薬(オピオイド)も使っていました。そのような状況で、お薬の説明のため病室を訪ねたときに、薬剤師に向けて発せられた言葉です。

 抗がん剤は、効果と副作用を分けるのが難しいお薬です。そのため、副作用を上手にコントロールしながら、治療を継続していく必要があります。また近年は、抗がん剤の種類や副作用が多岐にわたること、外来での治療が可能になったこと、高額な抗がん剤が増えたことなどにより、患者さん一人ひとりの抱える問題がより複雑になっています。さらに、この男性のように、抗がん剤治療と同時にオピオイドで痛みの治療を行うことも、今では珍しくはありません。そのため、がん治療には多職種が集まった専門的なチームが必要です。

 倉敷中央病院では、薬剤師もそのチームの一員となり、患者さんとさまざまな場面で関わっています。

 入院中、男性に、つらい症状や痛みについて薬剤師が尋ねると、痛みはまだ取りきれておらず、昼間に眠気(副作用)を感じていると話されました。病棟の看護師にも男性の様子を聞いてみると、日中にオピオイドを頓服した後に、特に眠気が出ていることが分かりました。

 一方で、夜間は痛みで目が覚め、オピオイドの頓服をしているという状況でした。そこで、その症状を医師に伝え、痛みを和らげるためにオピオイドを増量するのではなく、別の作用をする痛み止め(NSAIDs=消炎鎮痛剤という種類のお薬)を追加することで、取りきれていない痛みを抑えることができるかもしれない、と相談し、処方してもらいました。その晩からそのお薬の内服が始まりました。

 翌日、薬剤師が男性を訪ねると、「昨日先生が出してくれた新しい痛み止め、よく効いたんよ。寝れたわ」とうれしそうに教えてくれました。このように、薬剤師は時に、医師や看護師と一緒に患者さんの症状やお薬について話し合うこともあります。

 冒頭の男性の言葉「次の薬は…」は、治療を受けられる患者さんが誰でも思うことです。男性の場合、二つ目の抗がん剤は効果があり、外来でオピオイドの量を減らすことができました。

 がん患者さんで、入退院を繰り返す方は少なくありません。外来で治療を行うときや、痛みが急激に増強して入院されたときには、その都度、薬剤師もお話をうかがいました。治療開始から1年近くたった頃、「年越せんって言われとったのに、(年も越して)もう秋になるがなぁ」と、ほほ笑んでおられました。退院するとき、男性はいつも、「またこれからもよろしくお願いします」と言って、自宅に帰って行かれました。

/////////////

 いしはら・やすこ 倉敷南高校、神戸薬科大学薬学部卒、神戸薬科大学大学院修士課程修了。2002年から倉敷中央病院勤務。08年9~12月、国立がん研究センター中央病院(東京)にて研修を受けた。日本医療薬学会がん専門薬剤師、日本臨床腫瘍薬学会外来がん治療認定薬剤師、日本病院薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師。

【衝撃】やはり「血液型が人の運命を左右する」ことが科学的に判明! B型の評価は死にたくなるレベル

 血液型ほど身近で謎に満ちたものはないだろう。そもそも、人によって異なる血液型を持つ理由さえ未だ分かっていないのだ。「血液型占い」や「血液型性格分類」は非科学的といわれているが、なんとなく「A型の人は几帳面」「AB型の人は天才肌で変わり者」だと思ったり、血液型占いが当たっているように感じられることは無いだろうか?そう、やはり血液型は人の運命を握っていたのだ! この度、血液が持つ驚きの影響力が“科学的に”明らになった。

■性交渉、妊娠、もの覚えから死に方まで

 まず血液型について基本的な情報をおさらいしておこう。実は、血液型は血液の種類を分類するものではない、ということをご存知だろうか? 一般に用いられるABO式血液型では、赤血球の表面抗原の種類で分類している。赤血球の表面にA抗原があるとA型、B抗原があるとB型、AとB両方の抗原があるとAB型、両抗原が無いとO型となるわけだ。ちなみに、日本人の血液型分布は大体、A型40%、O型30%、B型20%、AB型10%となっている。

 英紙「Daily Mail」(3月14日付)によると、日本人で2番目に多いO型が最も幸運な人生を送る可能性が高いようだ。他の血液型に比べ様々なメリットが明らかになっている。 トルコ・オルドゥ大学の研究者らが先週発表した研究によると、O型の男性は他の血液型よりも4倍もインポテンツになるリスクが低いことが分かったそうだ。男性器は人体で最も血液が集まる場所の1つであるため、血液の影響が出やすいと考えられている。しかし、なぜA型男性の方が勃起不全を患い易いかは分かっていない。

 また、O型はアルツハイマーなどの変形性脳疾患になりくいことが、英シェフィールド大学の研究で判明している。英国人189人の脳をスキャンしたところ、O型の人々には情報を処理する「灰白質」が多く見つかったそうだ。研究チームのアナレナ・ヴェネーリ氏によると、O型の人は幼少期に多くの灰白質が生成されるため、老年になってそれが失われても痴呆になりくいということだ。

 デンマークとスウェーデンの研究者が昨年発表した研究では、O型の人は他の血液型よりも30%も血栓ができにくいことが分かっている。一方、B型は再発性血栓塞栓症を極めて患いやすいそうだ。そのため、B型の人々は若く亡くなる可能性が高まるという。O型はマラリアに加え、胃がんや肝臓がんへの耐性もあることも各国の研究で明らかになっている。まとめると、O型の人は

・勃起不全になりにくい
・マラリアが重症化しにく
・アルツハイマーになりにくい
・血栓ができにくい
・がんになりにくい

 O型爆上げの内容になってしまい、A型、B型、AB型の読者に申し訳ないが、ここでO型にも良いことばかりではないことをお伝えしておこう。こと妊娠に関しては、O型よりもA型の方が有利なようだ。2011年、イェール大学の研究では、不妊治療を受けている30代半ばの560人の女性を調べたところ、O型の女性の卵子は質が悪く、A型女性の卵子量の2分の1しかなかったという。O型の女性は若いうちに卵子を消費してしまうため妊娠しにくい傾向があるとのことだ。

 血液型は我々の生老病死に大きく影響を与えている。これほど血液型が健康と密接に関係しているならば、現在のところ科学的には支持されていない「血液型ダイエット」にも何らかの効果があって良さそうなものだ。 ほとんどの日本人は自分の血液型知っていると思うが、イギリス人の成人の半数は自身の血液型を知らないという。もし、読者の中にも自分が何型か分からない方がいたら、これを機に調べてみては如何だろうか? 自分の血液がもたらす不幸な運命から逃れられるかもしれない。

血液がん治療薬、海外の死亡例報告せず

製薬会社セルジーン(東京都千代田区)が販売する血液がん治療薬について、海外で起きた原因不明の死亡事例4573例を副作用として報告しなかったとして、厚生労働省は14日、同社に医薬品医療機器法違反(副作用報告義務違反)に基づく業務改善命令を出した。1カ月以内に副作用報告が正しく行える社内体制を確立するなどの改善計画を厚労省に提出する。

 厚労省によると、報告もれがあったのは同社の血液がん治療薬「レナリドミド」「ポマリドミド」「デキサメタゾン」の3種。国内で販売された平成22年以降、27年までに把握した死亡原因が特定できない海外での死亡事例について、副作用として国に報告しなかった。「原因が特定できない死亡例は報告対象でないと思っていた」と説明したという。医薬品医療機器法は死亡事例は15日以内に報告することと定めている。

 27年12月に他社から移ってきた安全対策部門の社員が指摘したことで発覚。28年9月に厚労省に報告した。厚労省はいずれも病気の進行による死亡の可能性が高いとみている。

がん検診で見つかるガン 放っておいても自然に治る例多数

がん検診を受けると、「命を奪わないガン」をたくさん見つけてしまうことになるのだという。それが最も多いと考えられているのが、「前立腺がん」だ。「PSA(前立腺特異抗原)」という血液を調べる検診が普及した2000年頃から、新規患者が激増した。

 京都大学医学博士の木川芳春氏は、このような命を奪わない病変を「ニセがん」と呼ぶ。

「新規患者がうなぎ上りに増えているのに、死亡者の数が横ばいなのは、命を奪わない『ガンに似た病変』をたくさん見つける『過剰診断』が多いことを意味しています。日本では検診によって『ニセがん』をたくさん見つけることで、新規患者の水増しが行なわれているのです。私は、前立腺がんの半分以上は『ニセがん』だと考えています」

 前立腺がんでは、検診で見つかる早期がんのほとんどが、いわゆる「ニセがん」なので、それで死ぬことはない。つまり、1~3期の10年生存率が100%と異常に高いのは、早期に見つけて治療した成果ではなく、元々命を奪わない「ニセがん」ばかりを検診で見つけている結果といえる。

 こうした「ニセがん」は、「乳がん」「子宮頸がん」「甲状腺がん」などでも多いと指摘されている。これらのがんも、全症例の10年生存率が80~90%台と軒並み高い。数字がよく見えるのは、「早期発見、早期治療によりガンが治った」というよりも、前立腺がんと同様に、命を奪わないニセがんが多く含まれているからなのだ。医師で医療統計が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦氏もこう話す。

「がん検診で見つかるガンの中には、放っておいてもいいガンや、自然に治るガンが、かなりの割合で含まれています。このようなガンばかりを見つければ、当然、生存率は高くなります。昔に比べて生存率が高くなったように見えるのは、治療が進歩したからとは断言できないのです」

 一方、命を奪う「本物のガン」は進行が非常に速いため、定期的にガン検診を受けても、早期で発見することは難しい。そうしたガンは、周囲に広がっている3期や、転移のある4期の状態で見つかることが多いので、必然的に10年生存率が低くなる。

「食道がん」「肝胆膵がん」「肺がん」「卵巣がん」などで全症例の10年生存率が低いのは、進行が速い悪性度の高いガンが多いからだ。これらのガンは早期発見することも、完全に治すことも、まだまだ難しい。

 10年生存率からは、このような厳しい現実も読み取られるべきだろう。

75歳以上の肺がん手術の判断に関わる医療以外の大きな課題とは?

週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2017」で、高齢者(75歳以上)へのがん手術の実情と各病院の判断基準について、がんの中でもっとも死亡者数が多い肺がんを取材。他のがんでも、術後合併症の肺炎を懸念する医師が多い中、肺がん手術はそのリスクを回避できているのか? 実情を紹介する。

*  *  *
 全国4位となる322例(14年)の肺がん手術をおこなう順天堂大学順天堂医院は、80歳以上の肺がん手術は全体の約7%。平均より少なめだが、同院呼吸器外科教授の鈴木健司医師は、取材日の前週にも80歳と85歳の手術をおこなった。

 鈴木医師は、高齢者独自の基準を設けて手術の適応を決める必要があると話す。

「肺がんというと難治がんという印象がありますが、CT(コンピューター断層撮影)でたまたま発見されるような小さながんの場合、放置しても80、90代の患者さんの余命に関係しないこともある。手術をすべきかどうかを、しっかりトリアージ(ふるい分け)しないといけない。呼吸器外科医の重要な仕事の一つだと考えています」

 同科でも年齢だけで判断せず、全身状態や心肺機能、持病をコントロールできているかなどを総合して手術の適応を決める。また、肺葉をすべて切除する肺全摘は「右肺は70歳、左肺は75歳まで」と決めている。左右で違うのは肺の大きさが違うためだ。大きいほうの右肺を切除すれば、それだけ呼吸機能を失うので、左肺に比べ、適応の年齢を下げている。

 全身状態では、術前評価「パフォーマンスステータス(PS)」を前提にしつつ、診察前の患者の様子も重視している。

「診察室に入ってくる際、元気に歩いてくる患者さんは、多少PSが悪くても手術や術後が順調なことが多い。一方、PSが良くても肩で息をしているような患者さんは、経過が悪いことがあります」(鈴木医師)

 術後の合併症があっても、若い人であれば回復できるが、高齢者は長期生存に影響するという報告もある。鈴木医師が注視する持病は、間質性肺炎だ。肺の間質という組織に炎症が起こる病気で、高齢者に多い。この病気を持つ人が肺の手術をすると、術後合併症のリスクが極めて高くなる。このことから、患者を受け入れる病院は多くない。同科は慎重に手術すべきか判断して受け入れている。

「間質性肺炎を合併する高齢の患者さんの1割は、手術が成功しても何らかのきっかけで急性増悪という状態に陥ってしまいます。そうなると手の施しようがなく、40%は亡くなります。当科では周術期管理と手術の工夫で、手術死亡率を10%から2%にし、全体の死亡率を0.8%まで減らすことができました」(同)

 周術期管理とは、術前から術後までの一連の処置のこと。持病があり、加齢や喫煙などで呼吸機能が落ちている高齢者が、万全な状態で手術に臨むために必要なのが、持病のコントロールや呼吸機能を高める周術期管理だ。手術では、がんの場所によっては標準治療の肺葉切除だけでなく、小さく切る区域切除にする。また手術時間をできる限り短縮させたり、出血量を減らしたりすることで、患者の負担を減らしている。

 東海地方で4位となる191例(14年)の肺がん手術をおこなう聖隷三方原病院(浜松市)は、肺がん手術全体のおよそ1割が80歳以上という。同院の高齢者の肺がん手術の適応について、同院呼吸器センター外科部長の棚橋雅幸医師は、こう話す。

「当院では、からだに負担の少ない胸腔鏡手術を積極的に取り入れているため、以前より高齢者の手術適応は広がっています。基本的に高齢者の手術では、持病の有無、全身状態、認知機能、心肺機能などを重視し、年齢で区切ることはありません。ただ、進行肺がんの場合、体力のある若い人には、完全切除が見込めるなら積極的に手術をするという選択肢を勧めますが、高齢者では手術をせず、放射線治療などを勧める例もあります」

 棚橋医師によると、そもそも呼吸器内科から同科に紹介される高齢者は比較的元気な人たちであるため、ステージIであれば、ほとんどの患者が手術を受けられるそうだ。術前評価としては、やはり肺機能や心機能などを重視する。

「高齢になるほど肺に炎症の痕があったり、肺や血管がもろくなっていたりすることが多い。手術そのものは若い人よりも難しく、時間が長引くこともあります。手術による患者さんのからだへの負担や、QOL(生活の質)がどのようになるかを十分検討し、手術適応を判断しています」(棚橋医師)

 周術期管理については、おのおのの病院が独自のやり方で実施しているが、同科では専門の理学療法士5人が、術前から患者に関わり、呼吸訓練や排痰訓練などの周術期管理に当たる。理学療法士は手術直後にもベッドサイドで声をかけ、翌日から一緒に歩く訓練などを再開する。痩せていて栄養状態が悪い患者には、補助食品などを用いて栄養状態を改善させている。

 15年に同科が80歳以上におこなった手術件数は11件で、合併症は遅発性肺瘻(縫い合わせた気管支と残った肺のくっつきが悪い状態)が1人。治療を受け元気に退院したという。高齢者では傷の治りが遅いため、こういう合併症はまれに起こることがあるそうだ。

「手術で大事なのは元気に帰ってもらうこと。手術は成功したけれど、寝たきりや在宅酸素が必要になったということはあってはならないと考えています」(同)

 課題の一つは、自宅などに戻った患者の支援だ。医療だけでなく、社会全体の仕組みづくりが大事だと棚橋医師は訴える。

「家族や支える人がいればいいですが、独居などで誰の支援もない場合は、いくら手術が成功しても術前のようなQOLを保つことは難しい。患者さんのなかには、『家に帰っても誰もいないから、入院していたい』という高齢者もいます」

 高齢者の手術の在り方については、現在、日本呼吸器外科学会の学術委員会が高齢者の肺がん手術の安全性と有効性を評価する調査研究を開始している。前出の光冨医師は言う。

「今は、ご本人やご家族と相談しながら、最適な治療を常に模索している段階です。患者さんの身体能力やがんの進行度に応じて、少し手術を手控え、肺の切除量を減らす、あるいはリンパ節の切除範囲を狭めるなど、個別に対応することはあります。患者さんやご家族に訴えたいのは、『年齢だけであきらめないでほしい』ということ。手術をして元気に復帰した高齢者もたくさんいます」

 ほかのがんも含めて、医師たちが科学的根拠に基づいて、高齢者に治療法を提案できるよう、今後の研究に期待したい。

がんは遺伝する? 医学的に「がん家系」は実在するのか

◆3つの特徴が当てはまる人は「がん家系」?

「がん」という病気は、成育環境や生活習慣などの生活環境、また加齢でDNAに傷がつくこと、そして遺伝的要因という3つが原因となって発生します。家族や親戚にがんになる人が多い場合、「がん家系」という言い方をすることがあります。実際、がんの中でも大腸がん、乳がん、子宮体がん、卵巣がん、胃がんなどの一部については、遺伝が大きく関連している可能性があると言われています。

遺伝的要因が認められるがんには、「家族性腫瘍」と「遺伝性腫瘍」があります。家族性腫瘍は、原因が環境にあるか遺伝にあるかに関わらず、ある家族に集積して発生したがん(腫瘍)のことをいいます。家族集積を認めるがんは、がん全体の5~10%存在するとされています。

この「家族性腫瘍」のなかでも、遺伝性要素がとくに強いものを「遺伝性腫瘍」といいます。遺伝性腫瘍の家系、つまり医学的に正しい意味でのがん家系には、「家系内に若くしてがんにかかった人がいる」、「家系内に何回もがんにかかった人がいる」、「家系内に特定のがんが多く発生している」という3つの特徴があります。
.

◆がん発生とがん遺伝子の関係

人間の体は、およそ60兆個にもおよぶ細胞からできています。細胞の核の中には遺伝情報をうけもつDNAがあり、タンパク質をつくる元になる塩基配列が数万個も含まれています。それが遺伝子と呼ばれるものです。

遺伝子の塩基配列には、ときに変異が起こることがあります。塩基配列のある部分が入れ替わったり別のものになったり、欠けたりするのです。また、細胞が増殖するときにはDNAを複製していますが、そのときにコピーミスをすることがあり、それによって遺伝子変異が起こります。

遺伝子に変異が起こると、遺伝子を元につくられるタンパク質が本来とは異なる性質をもつようになります。さらに変異した遺伝子は、細胞の増殖を促しつづける状態になることが分かっています。このような遺伝子を「がん遺伝子」と呼びます。何年もかけて体内組織で増殖していったがん遺伝子が、体に害を与える「がん細胞」を形成するわけです。

がん細胞をつくりだす遺伝子の変異は、酸化効果や発がん物質、紫外線、ストレスなど、その人を取り巻く外的要因で引き起こされます。こうした要因のひとつに、親から子へと受け継がれた変異遺伝子もあります。しかしその遺伝子を受け継いだからといって、かならずしもがんが発生するわけではありません。

遺伝性腫瘍の中には、遺伝子検査によってみつかるものもあります。しかし、遺伝子検査ができるがんは限られていますし、すべてが説明できるわけではありません。また遺伝は血縁者すべてにかかわる問題を孕んでいるため、検査を受ける場合は細心の注意が必要だといえるでしょう。

◆最も効果的ながん予防法は、生活習慣の改善

家族性腫瘍の診断には医学的な基準があり、なかには遺伝子検査で原因が分かるものもありますが、がんの要因としての遺伝の影響は、それほど多いものではありません。

大腸がんを例にとると、全体のおよそ25%が家族性腫瘍であり、遺伝性と考えられるがんは5%ほどにすぎません。むしろ大多数のがんは、食生活や喫煙、ストレスなどの生活習慣の影響、ウイルスや細菌に感染することで起こります。

またがん遺伝子が発生する要因として、生活習慣などの環境要因が大きくかかわっているのです。そう考えると、いたずらに「がん家系」であることを怖れるのは現実的とはいえないでしょう。

それよりも、禁煙や飲酒を控える、緑黄色野菜や繊維質の豊富な食品をとる、紫外線を浴びすぎないなど、ふだんの生活でできることがたくさんあります。さらに感染症のがんであれば、ワクチン接種や細菌の除去などで直接対処できます。このようながん対策を行うほうが、はるかに有益だといえそうです。

監修:今村 甲彦

芸能人のみなさん、SNSで安易にがん検診を勧めないでください

 芸能人やメディアのみなさんにお願いがあります。ブログやSNS、ネット記事等で、がん検診を安易に勧めないでください。無条件にいいことだと思われていますが、がん検診にはデメリット(害)もあります。よかれと思ってしたことで、かえって多くの人に害を与えてしまうことになるかもしれないのです。

 ここ数年、がんにかかったことを公表する芸能人が相次いでいます。昨年6月9日、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが記者会見を開き、妻でフリーアナウンサーの小林麻央さん(34)が「進行性の乳がん」であることを公表し、大きな衝撃を与えました。この2月18日(土)にも、女優の藤山直美さん(58)に初期の乳がんが見つかったと報道されました。藤山さんは10年前から乳がん検診を受けており、今年1月の検診で要再検査となったそうです。

医療機関に乳がん検診を希望する若い女性が殺到 

 こうした報道があると、必ずと言っていいほどネットでは、がん検診の受診を促すメッセージが盛んに発信されます。北斗晶さんが乳がんを告白したときも、20代、30代の若い女性芸能人が相次いでブログやSNSなどで乳がん検診を呼びかけました。その影響で、医療機関には乳がん検診を希望する若い女性が殺到したそうです。

 芸能人のみなさんも、乳がんで命を落す人が一人でも減るようにと、良心から乳がん検診を呼びかけたのだと思います。ですから、その善意をとがめる気はまったくありません。

 しかし、乳がん検診の推奨年齢に制限があることを、みなさんはご存知だったでしょうか。乳がん検診は現在、乳房専用のX線装置であるマンモグラフィで行われていますが、国のガイドラインによると、マンモグラフィ単独法の推奨年齢は40~74歳、マンモグラフィと視触診の併用法は40~64歳とされています。なお、超音波検査をがん検診(対策型検診)として行うことは、どの年齢でも推奨されていません(国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」)。

 若い女性の乳がん検診は害の方が大きい

 なぜ、20代、30代には、乳がん検診が推奨されていないのでしょうか。それは、乳がん罹患率が高くない若い女性が乳がん検診を受けると、メリットよりもデメリット(害)のほうが大きいと判断されているからです。

 乳がん検診に、どんなデメリット(害)があるのでしょうか。まず挙げられるのが、「放射線被ばく」に伴う発がんリスクです。このリスクは若い女性ほど高いとされていますから、しこりが心配で乳がんの検査を受けるとしても、20代、30代は原則的に、放射線被ばくをするマンモグラフィは受けるべきではありません。

 次にあげられるのが「偽陽性」の害です。偽陽性とは、結果として乳がんではなかったのに、「要精密検査」とされてしまうことを意味します。乳がんの精密検査では、乳房に針を刺して組織の一部を採取する「針生検」が行われていますが、針で痛い思いをするだけではありません。深刻なのは「がんかもしれない」と心配になることで被る精神的な苦痛です。結果が出るまで不眠になってしまう人や、検査後もずっと不安に苛まれる人がいるのです。

米国では発見された「乳がん」の3分の1が過剰診断

 そして、もっとも深刻なのが、「過剰診断」の害です。これは「命を奪わない病変」をがんと診断してしまうことを指します。がんと言えばすべてが命取りになると思われていますが、そうではありません。自然に消えてしまうものや、ずっと大きくならないもの、大きくなっても命取りにならないものなど、さまざまな病変があります。

 乳がんでは、マンモグラフィ検診が普及した結果、「非浸潤性乳管がん(DCIS)」という超早期の病変がたくさん見つかるようになりました。この中には、放置すると周囲に広がって命を脅かすものもありますが、そのままじっとして広がらないものもあるそうです。しかし、現代の医学では、どの人がどちらなのか見分けがつきません。

 そのため、「がん」を見つけてしまった以上は、過剰診断だったとしても放置できないので、ほとんど全員が、手術、放射線、抗がん剤、ホルモン剤などの治療を受けることになります。つまり、無用な治療を受ける可能性を排除することはできないのです。

 実はここ数年、この過剰診断が予想以上に多いことが、欧米の研究で指摘され始めています。2012年に報告された論文では驚くべきことに、米国の検診でこれまでに見つかった乳がんのうち約3分の1が過剰診断で、過去30年間に約130万人もの女性が、無用な治療を受けたと推計されています(N Engl J Med. 2012 Nov 22;367(21):1998-2005.)

世界的に有効性が疑問視され始めている

 日本で、どれだけの過剰診断があるかは不明です。しかし、ある乳がんの専門医は私の取材に、「日本でも10~20%は過剰診断があるかもしれない」と明かしてくれました。現在、日本で乳がんと診断される人は1年に約9万人いますので、毎年9000人~1万8000人もの女性が、無用な治療を受けている可能性があるのです。

 過剰診断の害を被る可能性があるのは若い人だけではありません。高齢者は検診で早期がんが見つかったとしても、がんが進行して命取りになる前に、他の病気で亡くなる可能性があります。それに高齢者では、治療によって被るダメージが若い人より重くなりがちです。こうした理由から、乳がん検診では年齢に上限が設けられているのです。

 それだけではありません。ここ数年、欧米からは乳がん検診に死亡率を下げる効果はないという研究報告も相次いでいます。これを受けて日本乳癌学会も、2015年に改定した「乳癌診療ガイドライン」で、50歳以上のマンモグラフィ検診の推奨グレードをAからBに格下げしました。現在Bに格付されている40代は、今後推奨すらされなくなるかもしれません。

 拙著『がん検診を信じるな~「早期発見・早期治療」のウソ 』(宝島社新書)にも詳しく書きましたが、偽陽性や過剰診断の急増は乳がん検診だけでなく、前立腺がん検診などでも指摘されています。さらには、どのがん検診にも「命を救う」(寿命をのばす)という確たる科学的証拠はなく、世界的に有効性が疑問視され始めています(BMJ. 2016 Jan 6;352:h6080.)。

乳がん専門医も「そろそろ“がん検診神話”は捨ててほしい」

 こうした事実を知っている芸能人やメディアの方々は、恐らくほとんどいないのではないでしょうか。乳がん検診を推奨するのならば、少なくとも国や学会のガイドラインは踏まえておく必要があると私は思います。

 いまや、やみくもに乳がん検診を推奨する時代ではないのです。昨年12月11日付の「日経ヘルス」で、聖路加国際病院乳腺外科部長の山内英子医師も、次のようにコメントしています。
「そろそろ、必ず検診に行かねばならないという、“がん検診神話”は捨ててほしい。乳がん検診の場合、発症リスクの低い人が検診を受けることで、過剰診断や偽陽性、被曝のリスク、精神的な負担などの不利益が、検診による利益を上回ることも。発症リスクを考慮して、必要な人が、その人に合った方法で検診を受けてほしい」

 山内医師は、日本乳癌学会で理事を務める著名な専門医です。このとおり、がん検診に限界があることは、乳がんの専門医も認め始めています。がん検診を受けてはいけない人がいること、がん検診には深刻なデメリットがあること、そして「寿命をのばす」という確たる科学的証拠はないことを、ぜひ多くの人に知っていただきたいと思います。

がん患者に「第二の我が家」 NPO、ケア施設を開設

自分や家族ががんになったら――。2人に1人ががんにかかるといわれる今、こうした悩みが身近になっている。治癒率の向上や入院日数の短縮でがんを抱えながら家庭や職場で過ごす人も多い。先ごろNPO法人マギーズ東京が「自分を取り戻す居場所」を掲げて施設を開設。病院でも相談支援に力を入れ始めた。

 東京のゆりかもめ「市場前」駅から歩いて3分。東京湾に面した空き地の一画に木造のおしゃれな建物が立っている。昨年10月にオープンしたマギーズ東京だ。大きな窓からは日差しが降り注ぎ、室内にはゆったりしたソファや大きなテーブルが置かれている。長く訪問看護に携わり、マギーズ東京のセンター長を務める秋山正子さんは「家と病院の中間にある場所。患者や家族が自分を取り戻し、これからの生き方を考える第二の我が家を目指す」と話す。

 マギーズセンターの発祥は英国。がんを患った造園家の女性が、生きる希望を育む場所をつくりたいと考えた。1996年に第1号が誕生。彼女自身は完成を見ずに他界したが遺志は受け継がれ、英国内だけでなく海外にも広がっている。施設は寄付で運営され、利用は無料だ。予約もいらない。看護師と話したり臨床心理士、栄養士に相談したり。黙ってお茶を飲み、本を読むだけでもいい。患者や家族など月に約300人が訪れる。

「がんをきっかけに人間関係がぎくしゃくし、孤立感を募らせる人は多い。どう暮らせばいいのか、妊娠はできるのか。心配や愚痴を聞き、前に進む背中を押してあげたい」と秋山さん。各地のがん診療拠点病院でも、患者や家族の支援に力を入れ始めている。千葉県柏市の国立がん研究センター東病院は、3年前に相談支援体制を強化。それまでのソーシャルワーカーに加えて医師や看護師、薬剤師、管理栄養士など多職種が連携したサポーティブケアセンターを立ち上げた。

 「患者の療養生活をあらゆる側面から支援する」(坂本はと恵副センター長)。地域や企業の協力も得て、社会保険労務士による相談、化粧品会社のカバーメーク教室なども行っている。どの段階でどんな支援が必要かの研究もする。昨年は千葉県と組み、企業が医療者に何を望んでいるかアンケートを実施した。1位は「当面の治療期間や通院頻度を知りたい」だった。

 これらをもとにリーフレット「がんと診断されても、すぐに仕事を辞めないで!」を作成し配布を始めた。坂本さんは「がんと言われたらすぐに仕事を辞める人が多いが、それでは生活設計が難しい」と強調する。東京都のがん研有明病院も支援に力を入れる。玄関を入ると、右手にがん相談支援センターの看板、相談ブースがずらりと並ぶ。奥には本や冊子を置いた情報コーナー。「何かお困りの際には、がん相談支援センターに」の案内がある。

 緩和ケアセンタージェネラルマネージャーの浜口恵子さんによれば、専任のソーシャルワーカー1人、専門看護師4人、兼任の医療ソーシャルワーカー7人が相談にあたる。相談件数は昨年で約5000件。花出正美看護師長は「患者、家族は忙しい医師や看護師に遠慮して聞きたいことも聞けないでいる。主治医への相談の仕方、信頼関係の作り方をアドバイスすることが多い」と話す。
 「幼い子どもに話すべきか」「夫に『親に心配させたくないから話すな』と言われたが本当にそれでいいのか」。こうした悩みも寄せられる。「医療は急速に進歩したが、心や生活への支援はこれから」(秋山さん)だ。

■拠点病院にも相談窓口

 厚生労働省は地域がん診療連携拠点病院の指定要件として院内に「がん相談支援センター」を設置することを義務付けている。現在、全国に399ある拠点病院は専従のスタッフを置き、患者や家族、地域住民の相談を受けている。だが周知は不十分なうえ、病院によって内容にも差がある。 医療の進歩で治療しながら働く人が増え、就労への関心も高まっている。昨年10月に内閣府が働き方改革の一環として「治療と仕事の両立」を発表、国が策定するがん対策基本計画でも就労が重点課題になっている。厚労省がん・疾病対策課の小野由布子相談支援専門官は「まず相談窓口を知ってほしい。また一度離職すると再就職は難しい。不本意な離職は避けたい」と話す。

がん治療薬オプジーボ類似薬の「キイトルーダ」発売 100ミリグラム約41万円

 米製薬大手MSDは15日、がん治療薬「キイトルーダ」を発売した。小野薬品工業の「オプジーボ」の類似薬で、肺がんと悪性黒色腫への適用が認められている。薬価は100ミリグラム約41万円で、肺がんの場合、1日当たりの薬価は3万9099円(年1427万円)。

 キイトルーダは患者自身の免疫の力を使う新しいメカニズムで作用するがん治療薬。現在、ホジキンリンパ腫への適用拡大を厚生労働省に申請しているほか、膀胱(ぼうこう)がん、乳がん、胃がん、頭頸部がん、肝がん、多発性骨髄腫、食道がん、腎細胞がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がんなどを対象とした臨床試験も進められている。


都道府県によってかかりやすい「がん」があった! 国立がん研究センターの調査で明らかになった死亡率格差とは?

日本人の2人に1人がかかり、死亡原因のトップである「がん」。最近ではタレントの北斗晶さんが、闘病の末に芸能界復帰を果たすなど、早期発見や高度医療等により、必ずしも死に直結する病ではなくなったが、やはり、できることならばかかりたくはない。

そのがんについて、意外な事実が明らかになった。

 1月7日に発売された『がんで死ぬ県、死なない県(NHK出版新書)』(松田智大/NHK出版)は、がんの罹患や死亡率について、統計結果から「地域差」が存在しているとし、都道府県別にがんをひもといた、本邦初の一冊だ。
.
 根拠としたのは、著者である松田智大氏が所属する、国立がん研究センター公表のデータ。各都道府県が実施している「地域がん登録」をもとに、部位別の罹患率、死亡率をまとめたもので、2016年に初めて47都道府県分が出揃ったという。
.
この調査が画期的なのは、都道府県によって罹患しやすいがんが異なること、また、罹患後の死亡率にも罹患のしやすさとは異なる地域差があることを明らかにした点です。 例えば、新潟県は食道がん、鳥取県は子宮頸がん、石川県は咽頭がんに、それぞれかかりやすいことがデータの数値から読み取れる。
.
 また、がんになる人は突出して多くないものの、全国で最も死亡率が高く「がんで亡くなりやすい」のは青森県、そうかと思えば、全ての部位のがん罹患率が高めにもかかわらず、死亡率は全国トップで低い長野県のような地域もあり、「かかりやすい」=「亡くなりやすい」というわけではないということも分かる。

 一体なぜ、このような格差が生まれるのか。松田氏はこう解説する。

「地域」を見ることは、文化や環境要因を見ることにほかなりません。(中略)文化的な背景を持つ各地特有の要因が、がん罹患と密接に関係しているということなのです。 本書によると、塩分の濃いものを食べる、酒どころで飲酒量が多いなど、その土地固有の習慣は少なからず影響しているという。

食生活に限ったことではない。例えば、乳がんの罹患率が極めて高い東京都は、全国で最も出生率が低い。長期間分泌することで、乳がんリスクを高めるホルモン、エストロゲンが出産や授乳で抑制されることから、実は出生率と乳がんは強い関連性を持っているという。
.
 女性の社会進出が目覚しい首都圏では、子供を産まない選択も一般的であることを考えると、がん発症は地域の特徴的なライフスタイルに起因すると言わざるを得ない、と松田氏は解説している。
.
 死亡率に関しては、交通機関の不整備で物理的に検診へ行きにくい、がんと診断された患者が迅速に治療を開始できる仕組みが構築されていないなど、地域の行政や医療の課題もあるようだ。
.
事や生活習慣の見直しに加えて、本書で居住地のがん傾向を知り、地域の行政と医療へ今以上に関心を持つことが、がんにならないための有効な予防策と言えるだろう。

がん治療薬「年1427万円」で了承 オプジーボ類似薬のキイトルーダ

 厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は8日、米製薬大手MSDのがん治療薬「キイトルーダ」の薬価を100ミリグラム約41万円とすることを了承した。

肺がんの場合、1日当たりの薬価は3万9099円(年1427万円)で、類似薬である小野薬品工業の「オプジーボ」と同じ。肺がんと悪性黒色腫の患者計7300人が使用し、ピーク時年544億円の売上を見込む。

 キイトルーダは昨年9月に製造販売承認を得ていたが、オプジーボの薬価が100ミリグラム約73万円から約36万5千円に引き下げられるのを待って、ようやく薬価が付けられた。2月中旬にも発売される見込み。

 一方、厚労省は事前に検査薬を用いて効果が見込めるかどうかを調べてからオプジーボ、キイトルーダを使用することなどを定めた適正使用指針を同日の中医協に示し、了承された。

がんに対する新たな免疫療法 有効性の一方で副作用リスクも

 がんと免疫について、岡山赤十字病院(岡山市)の細川忍呼吸器内科副部長に寄稿してもらった。人間の体内は免疫システムによって常に監視されており、体内に存在する異物は排除される仕組みとなっています。微生物をはじめとした非自己の物質だけでなく、本来は自己の細胞であるがん細胞もその対象となります。

 体内では異常をきたした細胞が絶え間なく出現しています。自己の細胞は免疫細胞から攻撃を受けにくいのですが、その細胞に起こった変化を免疫システムが感知して体内から排除します。それを免れた異常細胞は徐々にその悪性度を強めながら、一方で免疫の監視から逃れる力を獲得していきます。そしてがん細胞はどんどん増殖し、体内に広がっていくのです。

 免疫監視からの逃避に重要な働きをするものが免疫チェックポイントと呼ばれる分子です。これは異常な免疫反応、過剰な免疫反応、遷延する免疫反応などが生体にとって不利に働かないように恒常性を維持するためのもので、がん細胞はこの分子を自身の生存のために有効に利用していることがわかりました。

がんに対する免疫療法

 がんに対する免疫力を強め、がんを駆逐しようとする試みが従来の免疫療法です。免疫細胞をいったん体外に取り出した上で賦活化して体内に戻す細胞移入療法や、がんに特異的な抗原をワクチンとして接種することで免疫力を高める腫瘍細胞ワクチンなどです。しかし、満足のいく効果は得られていませんでした。

 今回初めて有効性が示されたのが、先ほど挙げた免疫チェックポイント分子を阻害する薬剤です。薬によってがん細胞に対する免疫のブレーキがはずされ、免疫細胞ががん細胞を攻撃することができるようになるのです。

 日本で承認されているのは、抗PD―1抗体のニボルマブとペンブロリズマブ、抗CTLA―4抗体のイピリムマブで、現時点でニボルマブは悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、ペンブロリズマブは悪性中皮腫と非小細胞肺がん、イピリムマブは悪性黒色腫に対して使用が認められています。この新しい免疫療法は、手術療法、放射線療法、化学療法と同様に、がんの標準治療の一つとなってきています。

免疫チェックポイント、阻害剤の副作用

 免疫療法は、従来から「副作用がない」というイメージがあるかもしれませんが、決してそうではありません。報告では、全般的に副作用の頻度は抗がん剤に比べて少ないとされていますが、過剰な免疫反応によってもたらされる肺障害、大腸炎、肝炎、内分泌障害、神経障害など、今までのがん治療では経験したことのない新たな副作用に直面することとなりました。

 免疫関連有害事象が起こった時には、ステロイドホルモンなど免疫抑制を必要とすることもあるのです。副作用の早期発見と、速やかで適切な治療のために、治療を受ける患者さんにもよく知っておいてもらう必要があり、医療者側もがん治療の専門家のみならず、多くの専門科、多くの職種で対応する必要性がさらに高まってきています。

免疫療法の今後

 有望な治療である一方で、新たな種の副作用のリスクにさらされ、さらに非常に高価な薬剤でもあります。どのような患者さんに対して効果が期待できるか、副作用の危険性が高いのか、治療開始のタイミング、治療の継続期間、また他の治療と併用することで治療効果が高まるのかなど、解明されていない事もまだまだ多く存在します。現在もさらなる研究が日々進行している状況です。

 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 ほそかわ・しのぶ 丸亀高校、岡山大学医学部卒。金田病院、国立病院岡山医療センター、岡山大学医学部付属病院などを経て2005年から岡山赤十字病院。15年から現職。日本内科学会認定医、日本呼吸器学会指導医・専門医・代議員、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器内視鏡学会指導医・専門医、日本がん治療認定医機構がん治療専門医。医学博士。

性格と長寿の関係、悪口な人は心臓病・肺がんになりやすい

性格と長寿の相関関係をめぐっては多くの研究成果が報告されているが、画期的とされたのが2011年に米国で発表された「長寿プロジェクト(The Longevity Project)」である。この研究が注目されたのは、大規模な対象者集団を幼年期から晩年までの長きにわたって追いかけた「80年追跡研究」だったからだ。

◆「仕事人間」は長生きできる

 追跡研究は日本でも行なわれている。東北大学大学院医学系研究科教授・辻一郎氏の研究グループは1994年、宮城県大崎保健所管内の40~79歳の約5万2000人に対し性格や生活習慣を問うアンケート調査を実施。その後12年間にわたって生存状況を追跡した。

 辻氏らは「日常生活の中で大切なもの」を対象者に聞いた。そこでは、「仕事」と答えた人の死亡率が11%と最も低かった。死亡率が最も高かったのは、「名誉」と答えた人(28%)だ。辻氏は著書『病気になりやすい「性格」』(朝日新書)の中でこう記している。

「仕事に励んだことで『金銭』や『地位』『名誉』も得られるだろうし、それを目標に頑張る人もいるだろう。ところが、その3つが大切だと答えた人の死亡率は高かった」

 金銭や名誉ではなく、目の前の仕事のやりがいに燃える人の方が長生きする可能性が大きいということだ。

がん、心筋梗塞、脳卒中…日本「3大疾患」治療のお値段

■がん

 がん治療は、「手術」「抗がん剤」「放射線」が3本柱。一般的に治療費は100万~200万円といわれる。がんの種類、進行度、手術の難易度や患者の年齢などの条件の違い、治療方法、入院日数、検査・薬の種類によって変わる。

 たとえば大腸がんなら、結腸切除手術を受けて2週間入院した場合の医療費は40万円ほど(3割負担)。術後に抗がん剤治療を6カ月行うことになれば、薬剤の種類によって1カ月あたり「2万5000~10万円(3割負担)」×6カ月分の費用がかかる。

 ただ、保険適用内の治療であれば、公的助成の「高額療養費制度」を利用できる。乳がん治療を経験したファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は言う。

「病院や薬局などへの支払額が1カ月で一定額を超えた場合、超過分が支給されます。自己負担限度額は年齢や収入によって異なりますが、70歳未満で月収28万~50万円であれば、1カ月の限度額は〈8万100円+(医療費-26万7000円)×1%〉です」

 医療費が100万円(3割負担で約30万円)だとしても、月9万円弱+差額ベッド代等で済む。しかし、治療が1年続けば年間100万円強が必要だ。

 保険適用外治療の場合は全額自己負担。一部がんを除く重粒子線治療(平均309万円)、陽子線治療(平均268万円)などの先進医療は高額だし、国内未承認の抗がん剤は月100万円超えが多く、約646万円かかる薬剤もある。

「その場合、先進医療特約などが付帯した民間保険に未加入だと負担は大きい。しかし、加入していたとしても、その治療が保険金の支払い対象になっているかどうかはまちまちです。先進医療に特化した1カ月500円の医療保険もありますが、給付条件の確認が大切です」(前出の黒田氏)

■心筋梗塞

 心筋梗塞は、動脈硬化などによってできた血栓が、冠動脈に詰まって心臓に酸素や栄養が届けられなくなり、心筋の一部が壊死する病気だ。

 血流再開治療の「カテーテル治療」は1週間程度の入院を含めて約30万~40万円。外科治療の「冠動脈バイパス手術」になると、2週間弱の入院で約100万~150万円(いずれも3割負担の場合)。ただ、保険適用されるので高額療養費制度を利用できる。

 最近は、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った手術が広がっている。小さな穴を開けて内視鏡を使って行われるので、出血や術後の痛みが少ない低侵襲な手術とされる。

「ただ、保険適用外なので全額自己負担。最も簡単なものでも350万円程度かかる。開胸手術と比べて心臓の回復具合が明らかに上回るわけではないので、メリットを見極める必要がある」(心臓外科医)

■脳卒中

 脳卒中の大半を占める脳梗塞は突然起こる。状態に応じてさまざまな治療法があるが、基本的には保険適用の治療だ。

 発症後4時間半以内であれば、血栓溶解療法(t―PA)が検討される。20日前後の入院で、窓口請求額は治療費、入院費含めて約60万円。t―PAで十分な効果が得られない場合は血栓回収術となり約90万円。バイパス手術やステント留置術などになると高額で約120万円(いずれも3割負担の場合)。

「治療費だけでなく後遺症軽減のためにも早期来院早期治療が重要。そのために初期症状を見逃さない」(東京慈恵会医科大学神経内科・井口保之教授)

「ろれつが回らない」「言葉が出ない」「片方の手足に力が入らない、じんじんしびれる」「片方の目が見えない」など、突然こんな症状に襲われたら、様子見せずに救急車を呼ぶ。

 後遺症でリハビリが必要になった場合、慈恵医大では脳に刺激を加えて不自由な部分を動かす「磁気刺激療法」という選択肢がある。開発したリハビリテーション医学講座の安保雅博教授は「2週間の入院で診療費総額は約17万円。筋肉を柔らかくするボツリヌス注射をすることがあり、上肢なら1回で最大約7万5000円」だという。

 それも、毎日の適切なリハビリと組み合わせてこそ効果がある。

胃・大腸・肺 がん手術の有無による5年生存率の違いが判明

〈がんでも受けてはいけない手術〉と題された『週刊現代』6月25日号では、〈一部の医師は古い考えを捨てられず、「とにかく切りましょう」と主張するのだ〉と、安易に手術を選択することに警鐘を鳴らした。その上で、がん手術が失敗した事例、手術をしないで長生きした事例を挙げる。

 抗がん剤の開発などが進み、がん患者にとって手術が唯一の選択肢でなくなったのは確かだ。手術に少なからぬリスクが伴う以上。“切らないで済むならそうしたい”と考えるのは当然である。

 判断材料の一つは、手術するか否かで生存率がどう変わるかのデータだ。

 前出の『週刊現代』では〈手術なしで生存率90%超〉という小見出しが掲げられ、前立腺がんと喉頭がんで、「手術以外の方法を選んだ場合の5年後の生存率」を示している。

 60代でステージIの前立腺がんが見つかり、手術以外の治療を選んだ人の5年生存率は96%。喉頭がんでは95.8%となるとある。一方で、手術した場合の5年生存率は記述がない。五本木クリニック院長の桑満おさむ氏が説明する。

「『現代』に掲載されたのは、千葉県がんセンター研究所がん予防センターが公表している、『全がん協加盟施設の生存率協同調査』に基づいて算出された数字です。元データでは、『手術なし』の場合の5年生存率だけでなく、『手術あり』の数字も調べることができます」

 同データベースを使って、60代の患者が「手術なし」を選んだ場合と「手術あり」の場合の5年生存率をステージごとにまとめると、その違いが明らかになった。

5大がん47都道府県ランキング 「がん対策」ができている県できていない県

胃がんの対策ができている都道府県ナンバーワンは鹿児島、肺がんは長野、大腸がんは宮城。一方で肺がん、乳がん、子宮頸がんで最も対策が遅れているのは北海道──。これは本誌が47都道府県のデータを分析し、独自に算出したがん対策ランキングだ。あなたの地元の結果は?

 専門家の指導の下、本誌がなぜ、47都道府県のがん対策ランキングを算出したのか。まず、この経緯から説明したい。

 きっかけは今秋、高市早苗総務相から塩崎恭久厚生労働相に出された「がん対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」の結果報告書だ。

 日本では2007年に「がん対策基本法」が施行、それを受けて「がん対策推進基本計画(基本計画)」が作られている。

 このがん対策に対し、総務省が出した勧告の一つが、「がんの早期発見のための取り組みの推進」。つまるところ、「がん検診」をもっとしっかりやってよ、と厚労省に訴えたわけだ。

 勧告に先駆けて行われた総務省の調査では、17都道府県52市区のがん検診の取り組み状況をチェック。すると、がん検診の受診率向上で欠かせない、住民に受診を呼びかける「個別受診勧奨(コール)」や「再勧奨(リコール)」が徹底されていない地域や、正しいがん検診を実施するための精度管理ができていない地域などがあることがわかった。

「例えば、北海道のある医療機関では、胃がん検診を受けた人のなかで再検査が必要な『要精密検査(精検)率』が30%台でした。通常は11%以下なので、再検査の不要な住民にまで精検を受けさせている可能性がありました」(総務省行政評価局評価監視官)

 さらに、がん検診の受診率を算定する計算方法も、都道府県や市区町村でまちまちであることも判明した。

 そこで本誌では、がん政策ウォッチャーでNPO法人がん政策サミット理事長の埴岡健一氏(国際医療福祉大学大学院教授)の助言のもと、がん早期発見・早期治療の要であるがん検診の地域格差の実態をつかむべく、独自の調査と分析を試みた。

 詳しくは後述するが、「地域で行うがん検診が、がんの死亡率低下につながっているか」を指標とし、都道府県ごとにランキング。上位と下位各10位までの都道府県を挙げた。

 一般的にがん検診には、対象となる集団の死亡率を下げる「対策型検診」と、個人の死亡リスクを下げる「任意型検診」とがある。市区町村が住民検診の一環として行っているのは前者の対策型検診で、今回の分析もこちらを対象としている。具体的には、胃がんの胃エックス線検査や胃内視鏡検査、大腸がんの便潜血検査、肺がんの胸部エックス線検査、乳がんのマンモグラフィ検査、子宮頸がんの細胞診だ。以前は乳がん検診で視触診も行われていたが、今年度から推奨されなくなった。

 先の基本計画では、16年度末までに「検診受診率50%を達成(胃、肺、大腸は当面40%)」を目標に設定しているが、今も多くの地域が達成できずにいる。

 ちなみに欧米でも一部のがんで検診が行われているが、乳がんの検診受診率はアメリカやイギリスは約70%(国民生活基礎調査によると日本は約34%)、子宮頸がんも約80%(同約33%)。定義が違うので一概に言えないが、日本とは比較にならないほど高い。国立がん研究センター社会と健康研究センター部長の斎藤博氏は、次のように言う。

「ヨーロッパの国々では検診の導入後に乳がんの死亡率が30%以上下がるなど、成果を挙げています」

 欧米の例のように、がん検診でがん死亡率を下げるには、有効ながん検診を正しく実施する必要がある。だが、日本では検診受診率が低いばかりではなく、科学的根拠に基づかない前立腺がんのPSA(前立腺特異抗原)検査などを行う、100%受けるべき精密検査の受診率が低いなど、質の低い検診を行う地域もある。さらに、検診対象者の半数以上を占める職場の検診では、質を管理するしくみさえないという。

「質の悪い検診は不利益が大きく、効果も期待できない」(斎藤氏)

 前出の埴岡氏も言う。

「がん検診を行う市区町村とそれを支援する都道府県のなかには、さまざまな受診率向上策を打ち出しているところがありますが、それがどう早期発見・早期治療に結びついているのか、またそれががんの死亡率低下をもたらしているのか、結果を踏まえて検討、評価していないところが多い。そうした分析が市区町村の行うがん検診対策には不十分です」

 そこで、それをわかりやすく示そうとしたのが、本誌が今回、算出したがん対策ランキングだ。具体的には、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の「がん検診受診率」「精検受診率」「都道府県別死亡データ」と、同センターの「都道府県別がん死亡(2014)」を使用。5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)について都道府県ごとに偏差値を算出した。

 その上で、がん検診受診率と精検受診率の偏差値の平均を計算。この「受診率偏差値」と、死亡率の偏差値から平均を求め、順位づけをした。胃がん、大腸がん、肺がんでは性差があることから、本来は男女別にしたほうが望ましいが、今回は誌面の都合上、男女合わせたものにした。

 ここから見えてくるのは、「がん検診の成果(検診受診率や精検受診率)ががん死亡率低下に貢献しているか」だ。受診率が高くて死亡率が低ければ、がん対策がうまくいっていると推測でき、受診率も死亡率も高ければ対策が不十分と考えられる。一方、受診率も死亡率も低ければ別の要素が寄与している可能性があり、受診率が低くて死亡率が高い場合は、積極的な対策が必要と推測できる。

 この表の見方には次の注意も必要だ。

 がん検診は市区町村で実施しているもので、ある地域が頑張っても、隣の地域が足を引っ張れば結果は相殺されてしまう。地域の取り組みが都道府県の死亡率に反映されにくいという側面もある。また、がん死亡率は検診だけでなく、その地域の医療機関のがん治療の質やがん予防の取り組みなどにも左右される。沖縄県に胃がんが少ないなど、地域性もある。

 そんななかであえてランキングを作成したのには、こういうとらえ方ががん対策には必要だということがわかったからだ。埴岡氏がこう指摘する。

「国内では医療にまつわるさまざまな統計が報告されていますが、今はそれぞれの専門家が統計ごとに分析し、解釈するだけにとどまりがちです。そうしたデータに“横ぐしを通す”ことで、見えてくるものがあります。(このランキングは)100%完璧なものではありませんが、がん対策などの医療対策では本来、こうした分析を進めていくべきです」

 今回のランキングでは、がん検診の受診率だけでなく、精検受診率も加えた。これは、がん検診の受診者がいくら増えても、再検査が必要な人が精密検査を受けなければ、結局、早期発見・早期治療に結びつかないためだ。実際、基本計画の後に策定した「がん対策加速化プラン」でも、精検受診率が重視されている。

 さて、気になる結果を分析してみよう。

 がん対策ができているとトップ10入りしたのは、宮城だ。胃がんの精検受診率は94.8%で全国1位。大腸がん、乳がん、子宮頸がんでもトップだった。同県のがん検診の事情について、国立がん研究センターがん対策情報センターの松田智大氏はこう解説する。

「宮城は、胃がん集団検診の普及に尽力した“がん検診の父”と言われている宮城県対がん協会の黒川利雄医師の影響が大きく、がん検診に熱心です」

 山形、長野は四つのがんでトップ10以内に入った。

「山形は宮城と同様、質の高い検診をしっかり実施している」(松田氏)。がん対策の先進県で長寿県でもある長野は、本調査でも上位に入っていた。

 一方、がん検診の成果が実を結んでいないと考えられるのが、北海道。すべてのがんでワースト10入り。検診受診率、精検受診率ともに低めで、とくに子宮頸がんの精検受診率は43%と、宮城の半分以下。死亡率は3.7%と高くなっている。北海道は先の総務省の結果報告でも問題があった地域として名前が挙がっている。対策が十分でない理由として、「医療従事者の層が薄い、がん検診の専門医が少ない、土地が広いので全体に浸透させるのが難しいという声が上がっている」(総務省)という。

 一方、子宮頸がんを除く四つのがんで下位だった青森だが、前出の松田氏はこうフォローする。

「青森はもともと胃がんが多い地域で、がんに対する危機意識は強いほうです。ただ、ガマン強い県民性と言われていて、症状がないと医療機関を受診しないため、どうしても発見が遅れてしまう。今は市町村単位ではなく県主導で検診の精度管理を行おうとしているので、今後は大きく変わってくると思われます」(本誌・山内リカ、吉崎洋夫)

■5大がん別都道府県ランキングベスト10・ワースト10
【胃がん ベスト10】
1位 鹿児島県、2位 熊本県、3位 宮崎県、4位 長野県、5位 宮城県、6位 沖縄県、7位 山梨県、8位 富山県、9位 新潟県、10位 高知県

【胃がん ワースト10】
1位 和歌山県、2位 青森県、3位 茨城県、佐賀県、5位 秋田県、6位 栃木県、7位 大阪府、8位 三重県、9位 北海道、10位 岐阜県

【乳がん ベスト10】
1位 香川県、2位 鹿児島県、3位 宮崎県、4位 宮城県、5位 滋賀県、6位三重県、7位 山形県、8位 高知県、長野県、10位 鳥取県

【乳がん ワースト10】
1位 北海道、2位 静岡県、3位 佐賀県、4位 東京都、5位 兵庫県、6位 青森県、7位 石川県、8位 埼玉県、9位 京都府、10位 神奈川県

【大腸がん ベスト10】
1位 宮城県、2位 山形県、3位 熊本県、4位 福井県、5位 愛媛県、6位 石川県、7位 滋賀県、8位 長野県、9位 福島県、10位 富山県

【大腸がん ワースト10】
1位 沖縄県、2位 青森県、3位 和歌山県、4位 大阪府、5位 長崎県、6位東京都、7位 福岡県、8位 北海道、9位 神奈川県、10位 京都府

【子宮頸がん ベスト10】
1位 山形県、2位 鳥取県、3位 宮城県、4位 新潟県、5位 香川県、6位 青森県、7位 岡山県、8位 滋賀県、9位 福井県、10位 岩手県

【子宮頸がん ワースト10】
1位 北海道、2位 佐賀県、3位 埼玉県、4位 宮崎県、5位 愛知県、6位静岡県、7位 沖縄県、8位 山口県、9位 福岡県、10位 兵庫県

【肺がん ベスト10】
1位 長野県、2位 山梨県、3位 高知県、富山県、5位 新潟県、6位 熊本県、7位 岩手県、8位 宮城県、9位 宮崎県、10位 山形県

【肺がん ワースト10】
1位 北海道、2位 大阪府、3位 兵庫県、4位 青森県、5位 愛知県、6位 京都府、7位 三重県、8位 東京都、9位 福岡県、10位 奈良県

自治体が今注目する“八王子方式”「がん検診」とは?

日本では2007年に「がん対策基本法」が施行、それを受けて「がん対策推進基本計画(基本計画)」が作られている。このがん対策に対し、総務省が出した勧告の一つが、「がんの早期発見のための取り組みの推進」。つまるところ、「がん検診」をもっとしっかりやってよ、と厚労省に訴えたわけだ。

 では、どんながん検診対策が望ましいのか。

 今、全国各地から視察に訪れ、注目されているのが、東京都八王子市だ。胃がん、肺がん、子宮頸がん、乳がんの四つのがんで精検受診率90%以上を達成した。同市の医療保険部成人健診課は、「人口50万人都市でここまで精検受診率が高いのは、ほかにあまりないのでは」と自信を見せる。

 同市は、もともとがん検診に対する意識が高い医師会と連携。肺のエックス線検査や乳がんのマンモグラフィ検査では見逃しのないよう二重読影が基本だが、医師会内に専門の委員会が設置され、複数の医師が画像を囲む形でチェックしているという。

 そのうえで、再検査が必要な人には医師会から推薦を受けた医療機関が紹介され、受診の結果が把握できない場合は、専属の保健師が直接電話をかけるなどして確認をとる。

 10年からはがん検診に特化したシンクタンクと契約。その助言を受けてコール・リコールを実施。施策は事前に必ず対象となる年代の住民に意見を聞く。

「乳がんや子宮頸がんのがん検診受診勧奨ハガキは、年齢が低い人と高い人でメッセージを使い分けています。若い人はがんと自分が結びつかないので、若干、危険性を訴えるネガティブな内容のほうが受診率アップには有効でした。一方、年齢の高めの人には命を守ることの重要性を訴えた内容にしています」(同)

 こうした施策はすべてデータ化し、結果を評価するのも、八王子市の検診対策の特徴だ。

「基本コンセプトは、『一度検診を受けた方を逃さない』。自治体のがん検診は対象者をつかむことが難しい。ですので、一度検診を受けていただいた方をつなぎ留める。新規の受診者を獲得しつつ、そうやって2回目以降のがん検診受診につなげることが大事だと考えています」(同)

極度の糖質制限は危険 がん患者が取るべき「正しい栄養」

「がん細胞は炭水化物から合成されるブドウ糖を消費して増殖する。一方、人はブドウ糖がなくても緊急用の代替エネルギーである『ケトン体』をつくり出せる。なので、終末期のがん患者は、糖質制限食でがんを兵糧攻めにすべきだ」

 最近、こんながん食事療法が注目されているという。しかし、糖質は“宿主”の人間にとっても重要なエネルギー源。がん患者が制限して大丈夫なのか? 日本静脈経腸栄養学会理事長で藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座の東口髙志教授に聞いた。

■「糖を取らない」ではなく「うまくエネルギーに変える」

「以前からある食事法ですが、動物実験や臨床試験を広く行い、効果や安全性を繰り返し検証し、確かめられたとは聞いていません。何人かの終末期のがん患者さんに効果があったにせよ、全てに当てはまると考えるのは危険と思います」

 東口教授は、それまで平均余命35日だったがん終末期患者の生存期間を、体系的な栄養管理によって50日に延ばした臨床栄養学の第一人者。全国約1500の医療施設で活躍する「全科型栄養サポートチーム」の創設者でもある。

 東口教授によると、がんは自身が生き延びるため、患者本人のタンパクや脂肪を崩壊させてブドウ糖に変換し、それをエネルギーとして使う。

 がんはブドウ糖しかエネルギー源として使用できないので、ブドウ糖を得るためにがん患者の骨格筋や脂肪をどんどん溶かして、高度の“代謝障害”に誘導するという。

「がん細胞は、インスリンや種々のホルモンが正常に作用しないようにして使われない糖を乳酸に変換し、これを元にエネルギーをつくり上げます。この変化はがん患者さんが糖を摂取しなくても起こります」

 要するに糖質制限をする、しないにかかわらず、がん細胞は体の骨格筋や脂肪を崩壊させて、生み出されたエネルギーによりどんどんと増殖するのだ。

「糖はよほどたくさんの量を摂取しない限り、がんの発育を早めることはありません。糖質を過度に制限すると、むしろ正常細胞が必要とする糖を著しく減らすことになります。そのため、がんも正常細胞も糖を得るためにタンパクや脂肪が崩壊され、著しく減少し、患者さん自身ががんより先に滅びてしまうことになります。大事なのは『糖を取らないこと』ではなく、『糖を正常細胞がうまくエネルギーに変えられるか』です」

 食べ物は、体内で炭水化物からブドウ糖に変わる。それが血液とともに全身を巡る間に、インスリンの働きで細胞内に取り込まれ、ピルビン酸に変わる。

「この過程を『解糖系』と呼びます。この時、細胞内が酸素不足、あるいはミトコンドリア内にブドウ糖の代謝産物ピルビン酸が進入できないと、ピルビン酸は疲労物質の乳酸に変わります。この乳酸からエネルギーを産生するのが『嫌気性解糖』です。がん細胞はこの経路でしかエネルギーをつくり出せません」

■終末期の栄養管理のギアチェンジで1割超が蘇る

 一方、細胞内に酸素が十分あり、ピルビン酸が細胞内のミトコンドリアに取り込まれると、「好気性解糖」が始まる。好気性解糖は正常細胞での主なエネルギー生成経路で、「生体のエネルギー通貨」ATPを産生する。

「好気性解糖なら、ATPは嫌気性解糖の18倍も多くつくれますが、酸素が十分あってもがん細胞は好気性解糖を嫌う。ですから、がん細胞が増殖するには、正常細胞の18倍の栄養素が消費されます。そのため、栄養を補給しないと体がどんどんと弱ってしまいます」

 その理由はハッキリしないが、がん細胞が好気性解糖を行うとアポトーシス(細胞死)するという説もある。

「いずれにせよ、がん患者への食事は好気性解糖にプラスになる栄養素を取ればいいのです」

 では、具体的に何を取ったらよいのか?

「『ビタミンB1』はピルビン酸を変身させ、細胞内のミトコンドリア内の代謝経路(TCAサイクル)へ取り込まれる際の補助酵素として働きます。『コエンザイムQ10』はATP生産に必須の補助酵素。『L-カルニチン』は血液中に溶け出した脂肪酸をミトコンドリア内へ誘導することで、エネルギー変換への手助けをします」

 人の体内ではつくれない必須アミノ酸である「分岐鎖アミノ酸」(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)は、そのままミトコンドリア内に誘導され、好気性解糖と同様にエネルギーを産生する。「クエン酸」は乳酸をピルビン酸に戻す働きがあり、がん患者の強い疲労感を解消させるのにも役立つ。むろん、がんの種類や治療法の違いで必要となる栄養素は変わるが、共通するのは手術や抗がん剤治療の前に十分な栄養を補給しておくこと。

「血液中のタンパク質量を示す血清アルブミン値が高いほど、手術後30日以内の合併症発生率・死亡率は低くなります。また、栄養状態が良好な人ほど抗がん剤治療での副作用が少なく、治療が完遂されやすくなります」

 ただし、がん患者はエネルギー消費量が落ちてくる「終末期」になると、栄養や水分を減らす「栄養管理のギアチェンジ」が必要だという。

「がんの最終段階では栄養や水を細胞が受け付けなくなり、投与しても腹水や胸水、むくみとなり、患者を苦しめることになるのです。ただ、ここで栄養管理のギアチェンジをすると、患者さんは負担が減り、時にはもう一度、口からご飯が食べられるようになることがある。その段階で再度栄養補給を行うと、自宅に帰れるまで回復するケースも。その数は1割ほどです」

 がん患者の食事法は画期的新薬に匹敵する効果がある。覚えておこう。

がんなどの遺伝性疾患が不安なあなたが受けるべき「診療」

自分に、子どもに重大な遺伝性疾患があるかもしれない。その可能性が分かる技術はすごいが、人の心はそんな進歩に追いついているのだろうか。

 2013年、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査(正確には遺伝学的検査)の結果をもとに、乳がんになる前に乳房を切除したとして話題になった。同じ年には、母親の血液から胎児の染色体異常の疑いを高い精度で見つけることができる血液検査、いわゆる新型出生前検査が臨床研究として、国内の一部の医療機関で受けられるようになった。

 これら遺伝学的検査や出生前検査の技術が向上する一方、その結果をどう受け止めるべきなのか、患者の心のケアへの理解は遅れている。解決策として最近、聞かれるようになったのが「遺伝カウンセリング」だが、そもそも遺伝カウンセリングとは何だろうか。

●あくまでサポート役

「遺伝カウンセリングでは、検査の方法や手順を説明するだけでなく、遺伝とは何か、なぜ病気になるのか、そもそもなぜ検査を受けたいと思うのか。そして、検査を受けた後の選択肢、受けなかった場合の選択肢には何があるのか。そのようなお話をしながら、相談者が意思決定する過程をサポートします」

 こう話すのは、聖路加国際病院の遺伝診療部部長で女性総合診療部医長も務める山中美智子さん。聖路加国際病院で遺伝カウンセリングを受ける相談者は、遺伝性のがんが疑われる人、高齢出産などで胎児の先天性疾患を気にかける人が多い。ここ10年間で遺伝カウンセリングの件数はほぼ右肩上がりだ。

 遺伝カウンセリングは、いわゆるインフォームド・コンセントではない。インフォームド・コンセントは、医師が治療法などを説明して患者が同意することだが、遺伝カウンセリングは相談を通して本人が意思を決めることが大切にされる。検査を受けようか悩んでいる人が遺伝カウンセリングを受けて、検査しないと決断する場合もある。

「私たちが、検査を受けるべき、受けるべきでないと判断することはありません。相談者が抱えるさまざまな不安、疑問を整理するのです」(山中さん)

 実際の遺伝カウンセリングについて、遺伝性がんと出生前検査の二つに分けて紹介しよう。

 遺伝性のがんのうち、聖路加国際病院で多いのは乳がんと卵巣がんだ。これらのがんの5~10%は遺伝的な要因が強いとされている。その中でも多くの割合を占めるのが遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)だ。HBOCは、BRCA1またはBRCA2という遺伝子の変化(変異)が原因で発症する。

 日本HBOCコンソーシアムの資料によると、日本人一般女性が生涯で乳がんになる確率は約9%だが、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異があると41~90%になる。卵巣がんについても、日本人一般女性の生涯発症率は約1%だが、遺伝子に変異があると8~62%になる。アンジェリーナ・ジョリーが調べたのも、この遺伝子だ。

 HBOCの特徴には、40歳未満で乳がんを発症する▽両方の乳房でがんが発症する▽片方の乳房で複数回発症する▽乳がんと卵巣がんの両方を発症する、などがある。検査でHBOCと診断された場合、例えば現在は乳房の片方だけに腫瘍(しゅよう)があるが、将来的にはもう片方にも腫瘍ができるリスクが高いとして、両方の乳房切除も検討される。

●家族の病歴も徹底調査

 HBOC検査を前にしたカウンセリングでは、最初に家族の詳細な病歴を調べる。親、祖父母、それらのきょうだいについて、乳がんや卵巣がん、あるいは他のがんを発症した人がいるか。発症したのは何歳かなど、できるだけ情報を集める。こうすることで、遺伝的な影響が強いか判断でき、遺伝学的検査を受けるのが妥当か、相談者自身が考えられるようになる。

 さらに、検査結果が陽性(遺伝子に変異があること)の場合にはどのような対策があるかや、陰性でもHBOC以外の遺伝的理由でがんリスクが一般より高かったり、他の家族に陽性の可能性があったりするかもしれないことなども、検査前に説明する。その上で、相談者が検査を受けるか判断する。

 また、乳房や卵巣は女性のアイデンティティーや妊娠に関わるため、それらに対する不安に答えるのも遺伝カウンセリングの目的のひとつだ。

 カウンセリングの時間や料金は施設によって異なるが、聖路加国際病院では1時間半で3千円(予約制)。その後、HBOCの遺伝学的検査を受ければ約20万円。さらに、発症前の乳房を切除する手術には数十万円かかり、いずれも保険が適用されない。

 聖路加国際病院の場合、相談者の平均年齢は45歳。20代や70代の相談者もいる。「家族をがんで亡くしているから自分は遺伝性のがんかもしれないと不安になっている人、治療してから数年後にニュースなどをきっかけに相談に訪れる人もいます」(山中さん)。カウンセリングは基本的に一人で受けるが、希望すれば家族も同席できる。

●中絶阻止が目的でない

 もう一つの出生前検査は、生まれる前の胎児の状態を調べることで、広い意味では妊婦健診でおなじみの超音波検査も含まれる。ここで言う出生前検査では、染色体を調べるなどの遺伝学的検査を指すことが多い。

 その中でも新型出生前検査は妊娠10週から受けられ、比較的精度が高く、流産や感染症のリスクもないとして、海外では11年ごろから実施されてきた。

 しかし、規制がない日本にそのまま導入されると、妊婦が検査内容を正しく理解できずに混乱が広がりかねないとして、専門家団体は、検査前に遺伝カウンセリングを行うことを条件とした。13年から臨床研究として行われている。

 ただ、新型出生前検査でわかるのは、染色体異常の「疑いが高いかどうか」まで。染色体異常かどうかを確定するには、羊水検査を受けなければいけない。

 負担は経済面にも及ぶ。新型出生前検査の費用は約20万円、羊水検査は約10万円。羊水検査でもわかるのは、染色体異常や、先天性風疹症候群など一部の疾患だけで、全ての先天性疾患がわかるわけではない。

 聖路加国際病院の場合、妊婦健診を受ける人全員に出生前検査があることを案内。検査を受けたい人、検査について知りたい人に遺伝カウンセリングを予約してもらうという流れを取っている。新型出生前検査の場合、初回のカウンセリング費用は1万2千円。40歳以上の妊婦の半数近くが遺伝カウンセリングを訪れ、その約8割が何らかの出生前検査を受けるという。

「臨床研究開始後1年間の経過では、新型出生前検査を受け、羊水検査で染色体異常が認められた妊婦の97%は人工妊娠中絶を選んだ」という報道もあるが、この数字を見て単純に「多い」と感じてはいけない。遺伝カウンセリングを受ける妊婦は出生前検査や、その先にある人工妊娠中絶を視野に入れていることが多いからだ。人工妊娠中絶を考えていない妊婦はそもそも、出生前検査を受けることは少ない。

 山中さんは訴える。

「しばしば『検査を受けたほとんどの妊婦が人工妊娠中絶するなら遺伝カウンセリングはいらない』と言われますが、それは違います。私たちの目的は、人工妊娠中絶の阻止ではありません。本人がどうしたいのか、その人の価値観を大切にしながら意思決定のお手伝いをするのです。出産後や中絶後のフォローもしていきます」

●地域的な偏在も課題

 現在、遺伝カウンセリングを受けられるのは大学病院など、都市にある大規模病院がほとんど。学会認定の遺伝カウンセラーが一人もいない県があるなど、地域差もある。山中さんは、「遺伝性疾患をもちながら地域で暮らす人にも、遺伝カウンセリングのニーズがあるはずです。大病院で体制を整えるだけでは不十分で、地域の保健師や看護師にも、遺伝について学べる機会を提供していきたい」と話す。

 遺伝に関する病気の研究が進むにつれて、自分や子どもへの影響について、不安を感じる人はますます増えるだろう。遺伝について、気軽に相談ができる専門家を養成し、一刻も早く全国に行き渡らせることが必要だ。(サイエンスライター・島田祥輔)

白ワインで皮膚がんのリスクが上昇? 他のアルコールは影響なし

これまでに発表されてきた数多くの研究結果では、適量の赤ワインには心疾患のリスクをいくらか低減させると効果があるとの見解が示されてきた。そのワインについて12月上旬、気になる研究結果が発表された。白ワインには皮膚がん発症の危険性を高める恐れがあるというのだ。

米がん学会の学会誌にブラウン大学の研究者らが発表した論文によれば、毎日グラス一杯の白ワインを飲むことで、最も難治性の皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)を発症するリスクが13%高まる可能性がある。そして、驚くことに赤ワインには、そうしたリスクは存在しないという。ビールやその他のアルコールについても調べたものの、メラノーマとの関連が疑われるのは白ワインだけだった。

大規模な調査

調査結果は、18年間に及ぶ大規模な追跡調査によって得られた情報を分析したもの。調査対象者は医療関係者およそ21万人で、うち3分の2が看護師、3分の1が男性の医療関係者だ。また、対象の大半は白人が占めた(つまり、調査結果は白人以外の人種には該当しない可能性もある)。そのほか調査では、交絡因子として家族歴や喫煙の有無なども考慮した。

メラノーマが発生するのは、腹部や背中など日常的には日光に当たっていない部位である確率が「かなり高い」ことが分かった。この結果が示すのは、白ワインの影響は日光とは関連がないということだ。そのほか、飲酒量が多いほど発症の危険性が高まることが確認された。

メラノーマを発症する危険性が13%増すということは、白ワインを飲む人にメラノーマができる可能性が13%あるという意味ではない。この調査では、飲酒の習慣がなかった人(対象者のうち7万1,000人)の罹患率は0.61%。1日当たり10~20gのアルコール(グラス1杯以上のワイン)を摂取していた人(約2万6,000人)の罹患率は0.85%となっている。つまり生の数値データによれば、危険度の差は0.24%ということになる。

また、調査対象者の中で最も白ワインを多く飲んでいた人たちがメラノーマを発症する確率は、その他のグループより50%以上高かった。ただ、この数字が「相対的な」リスクであることを忘れてはならない。

赤ワインを選ぶ方が安心
複数残る「不明点」


この研究結果には、注意すべき重大な点がいくつかある。中でも最も重要なのは、がんが発症するメカニズムが解明されていないということだ。なぜ白ワインがメラノーマを引き起こすのだろうか?

論文の著者らは、発がん性のあるアセトアルデヒドの影響を指摘している。だが、この物質は赤ワインにも含まれている。白ワインの方が危険である理由は特定されていない。また、アセトアルデヒドがその他のがんではなく皮膚がんを発症させる理由も、特に日光に当たらない部位にできるがんを引き起こす理由も、不明のままだ。さらに、上記の飲酒の習慣があった2万6,000人のうち、どれだけの人たちが白ワインを飲んでいたかも明らかにされていない。

それでも「赤」が安心

米国立がん研究所は、アルコールとメラノーマを除いた複数のがんの関連性を警告している。特に、多量の飲酒をする人は発症の危険性が高まるという。今回発表された新たな調査結果もまた、同じ点を指摘している。筆者は白ワインとメラノーマ発症の明確な関連性を示していないこの調査について、いまだ少し懐疑的だ。だが、それでも年末年始の休暇中にワイングラスに手を伸ばす機会があれば、やはり白ではなく赤を選んでおくべきかもしれないと考えている。

がんの薬は大丈夫? 薬の“科学的根拠”を調査

薬の中には、効果がないわけではないが、科学的な根拠(エビデンス)が乏しいものがあるという。聖路加国際病院(東京都)の有岡宏子医師(部長)ら内科・予防医療チームは、様々な臨床研究の論文から薬のエビデンスを検証した。非常に信頼性の高い臨床研究で効果が確認された薬は「☆☆☆☆☆」、副作用が有効性を上回る薬は「☆」など、5段階で評価。エビデンスへの意見が医師の間で分かれる「☆☆」の主な薬の評価について、有岡医師に聞いた。

【循環器科】
循環器系の薬は臨床試験が比較的しっかり実施され、EBM(Evidence-Based Medicine)が確立されています。ただ、そのなかで☆☆が多いのは、不整脈の薬です。

 エビデンスを示すのが難しいのは、不整脈と一口で言っても原因やタイプが多様だから。ジゴシンは昔から経験的に使われてきましたが、エビデンスは乏しく、新しい薬剤が出てきてからは使う機会が減っています。アンカロン、タンボコールなどの抗不整脈薬は、不整脈のタイプや持病の有無などを考慮し、使います。

 なお、最近は薬のほかにも、心筋焼灼術(アブレーション、不整脈の原因の組織を焼き切る治療)も行われています。薬を飲み続ける必要がないので、有力な選択肢の一つですね。

【内分泌・代謝】
痛風の治療では、発作が起きたときに消炎鎮痛薬を使います。経験的に痛み止めの効果があることが知られているので、痛みのある人に痛み止めを使わないということが倫理的に選択しにくいことはあります。

 肥満の薬として米国などでは、食欲を抑えるサノレックスが非常に多くの人に使われています。ただ、効き目が徐々に落ちるうえ、薬をやめた後に体重がリバウンドしやすい。エビデンスがあっても、薬だけに頼るというのは考えもの。運動や生活の改善などとあわせて治療すべきでしょう。

【脳神経外科】
脳の病気は緊急性を要するものが多く、ランダム化比較試験をしにくい。記憶力低下などが起こるアルツハイマー病は、アリセプトなど抗認知症薬のエビデンスが高い一方で、認知症に伴う意欲の低下や不眠などの治療薬は☆☆です。ルボックスやレンドルミンなどは、患者さんと介護する家族の生活によっては必要な薬です。臨床研究はありませんが、専門医には支持されており、主治医とよく相談して必要に応じて使ってください。

顔面の片側に強い痛みが起きる三叉神経痛の治療には、ビタミンB剤などが用いられています。明確なエビデンスはありませんが、経験的に使われています。

【整形外科】
治療の柱は手術やリハビリテーション。骨粗鬆(こつそしょう)症を除けば、炎症をとったり、痛みを抑えたりするときに薬を使います。消炎鎮痛薬の有効性を比較した臨床研究は少なく、医師の経験で処方する例が多いように思います。

【婦人科】
更年期障害の薬物治療ではいくつかの臨床研究が実施されています。エビデンスレベルが☆☆なのは、症状が多彩であり、薬効の評価がしにくいという点があります。医師によって、治療方針が大きく異なる可能性が高いです。

【がん】
がんの薬物治療は循環器科と同様に、EBMが最も浸透した分野。どの抗がん剤をどのスケジュールで使えばよいかなどが常に研究され、論文がアップデートされています。医師と患者さんが最新のエビデンスに基づいて治療を行う考えを共有することが望まれます。

「糖質制限」で末期がん患者の8割が改善 衝撃の研究結果

「三大治療」と呼ばれる手術、抗がん剤、放射線によるがん治療は日進月歩だが、「末期がん患者の8割が改善された」という衝撃の研究結果が発表された別の治療法がある。意外なことにそれは、最新技術とは一切無縁の食事療法だった。

 主食のご飯やパン、麺など炭水化物に多く含まれる糖質の摂取量を減らす食事法「糖質制限」は、糖尿病患者などに効果があることで知られるが、がん患者への効果を示すエビデンスはこれまで存在しなかった。

 そんな中、糖質の摂取量をゼロに近づける“究極の糖質制限”になると、がん治療にも効果が見られたという臨床研究データが発表された。大腸がんや乳がんなどステージIVの末期がん患者を対象に、世界初の臨床研究を行なったのは多摩南部地域病院外科医の古川健司氏(医学博士)である。古川氏が語る。

「がん細胞は炭水化物から合成されるブドウ糖を栄養源としています。しかも正常細胞の3~8倍のブドウ糖が必要。ならば、それを断つことでがんの進行を抑制できないかと考え、2015年1月に研究を開始しました。

 19人の末期がん患者に抗がん剤などの既存の治療と、糖質制限による食事療法を3か月続けたところ、予想以上の効果が出た。がんの症状が消失した完全寛解が5人、がんが30%以上消失した部分奏効が2人、進行を制御した例が8人、一方で病状が悪化した例は3人という結果でした。完全寛解率28%、部分奏効や進行制御も含めた病勢コントロール率(治療効果のあった患者割合)は実に83%に達しました」

 患者の大半は三大治療では治る見込みが薄かった末期患者であることを考えると、驚異的な数字といっていいだろう。

夢の抗がん剤「オプジーボ」はどこまで値下がりするのか

高い治療効果から夢の新薬ともてはやされる一方で、高額ゆえに批判が集中する新型がん治療薬「オプジーボ」。体重60キロの肺がん患者が1年間使うと約3500万円かかるといわれる薬価は、年40兆円を超える医療費の増大に拍車をかけ、公的医療保険を破綻に追い込みかねないともっぱらだ。厚労省は特例で「最大25%引き下げ」を狙ったが、政府の経済財政諮問会議などは「まだ高い」とさらなる引き下げを迫っている。どこまで下がるのか?

「治療法のなかった腎細胞がんへの適応拡大も決まったこともあり、段階を踏む形で少なくとも30%以上は下がるのではないでしょうか?」 こう言うのは政治・医療分野に詳しいジャーナリストの村吉健氏だ。根拠は今年4月にC型肝炎新薬「ハーボニー」など6品目が特例拡大再算定に該当するとして、30%超の値下げとなったからだ。

「儲けすぎの薬に適用される特例拡大再算定は2種類あって、①年間販売額が1000億~1500億円でかつ予想販売額の1.5倍以上と見込まれる薬は最大25%、②年間販売額が1500億円を超え、かつ予想販売額の1.3倍以上が見込まれる薬は最大50%の値下がりとなります。厚労省はオプジーボを①に該当するとして最大25%の引き下げで幕引きさせる狙いでした。ところが政府内からもさらなる引き下げ要求が続出。落としどころは30%超の引き下げではないかと考えられているのです」(村吉氏)

 オプジーボをいまの価格で5万人のがん患者が1年間使えばその費用は1兆7500億円に達するとの試算もある。値下げは当然だが、問題はなぜオプジーボの価格はこれほどまでに高く設定されたのか、だ。

「2年前の発売当時、年470人程度の皮膚がん患者で採算が取れるように価格決定したからです。ところが、昨年12月に肺がんへの適応が決まり、対象患者数が一気に年1万5000人程度に急増した。このとき、C型肝炎新薬と同じように特例拡大再算定を適用していれば、4月に値下げできたのに、なぜか素通りした。そもそも皮膚がん患者より先に肺がん患者を対象に発売していれば、これほど価格が高くなることもなかった。それもあって儲けすぎとの批判が集中したのです」(都内の開業医)

■政府は年度内にも50%値下げで最終調整

 この批判に拍車をかけたのが全国保険医団体連合会(保団連)の調査。オプジーボ100ミリグラムの価格は英国で約15万円、米国で約30万円に対して日本は約73万円だと暴露したのだ。

「50%値下げしてもまだ米英より高いのですから政府内からの批判も当然です。しかし、本来なら怒るべき国民は声を上げない。オプジーボがいくらになろうが、医療費の月額上限を定めた高額療養費制度により、患者の負担は変わらないからです。それはとても危険なことです」(村吉氏)

 実は、オプジーボの価格は今後のがん治療の主力となる新型がん治療薬の価格の基準になる。少々の値下げで満足していたら将来に禍根を残す。

 例えば、9月に製造販売が承認されたキイトルーダ。オプジーボと同じ作用機序の新型がん治療薬で、対象となるがんも重なる。この薬は先の欧州腫瘍学会でオプジーボが結果を出せなかった初期の肺がんにも効果があると発表された。

「現行通りのルールなら、その価格は同じ作用機序のオプジーボの価格が基準となり、オプジーボより優れている点があれば加算し、さらに英米独仏の平均薬価を参考にして決められます。仮にオプジーボが50%引き下げられたとしても米国で1人年間約1500万円ともいわれるキイトルーダの薬価は日本でそれ以上に跳ね上がる可能性は十分あります」(村吉氏)

 新型がん治療薬はほかにも続々と申請されている。値下げしても安いとはいえないオプジーボを基準に承認され続ければ、日本のがん治療は世界一高価なものになりかねない。厚労省はここにきて年度内にも50%値下げで最終調整に入ったというが、果たしてそれで十分なのか。

「粗食がいい」は誤解 がんは賢く食べて抑える時代へ

末期がんというと、ガリガリに痩せた姿を思い浮かべる人が多いのではないか。この段階になると、体の中で代謝異常が起こって、筋肉などの合成以上に分解が進む、「悪液質」と呼ばれる状態に陥るからだ。

 しかし、この悪液質を制御することで、がんと共生し、天寿を全うさせる研究が進んでいるという。国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野の上園保仁分野長に聞いた。

「がん治療というと、がん細胞を殺すことばかりに目を奪われがちですが、必要十分な栄養を供給して、体内の代謝のバランスを取り戻すことが大切だと考えています。がん患者さんの多くは、がんが直接原因で亡くなるのではなく、栄養不良により免疫低下が起こり、感染症などで亡くなるからです」

 患者の栄養管理研究で知られる藤田保健衛生大学病院・外科・緩和医療学講座の東口髙志教授も近著「『がん』では死なない『がん患者』」(光文社新書)の中でがん患者のうち、がんが直接原因で亡くなる人は20%弱で、80%は栄養不良による感染症などで亡くなることを明らかにしている。

 また、東口教授は同書の中で、余命1カ月の寝たきりの咽頭がんの患者に適切な栄養管理を施したところ、急回復して退院。5年間自宅で暮らした末に笑顔で亡くなった例も紹介している。

 要するに、がんは賢く食べれば症状を抑えることが可能で、「がんは栄養を横取りするので粗食がいい」は誤解なのだ。

■食欲亢進ホルモンと同じ働きをする新薬開発も

「悪液質は重症の結核、糖尿病、エイズなど、がん以外にも見られる状態で、筋肉量が異常に減少し、痩せて衰弱するのが特徴です。ただ、がんは病期の移行スピードが速いため、がん悪液質はすぐに広がり、呼吸をするための肋間筋や咽頭・食道回りの筋肉が萎縮して、呼吸障害や嚥下障害などを起こすのです」

 がん悪液質は1年で5%以上の体重減に加え、倦怠感や食欲不振などが表れることを言い、比較的容易に治せる「前悪液質」や、亡くなる直前で治療がほぼ不可能な「抵抗性悪液質」との3段階に分かれる。

 日本では明治時代からその存在が知られていたが、その仕組みの解明が進んだのはここ10年ほど。

「がんになると、がんやがんに影響を受けた免疫細胞などから、さまざまな炎症性サイトカインが嵐(ストーム)のように分泌され、代謝異常が起こることが分かってきました。これが悪液質の引き金です」

 サイトカインとは、さまざまな細胞に働きかけてその働きを変えるホルモンに似た物質を言う。例えば、「インターロイキン6」は体内のタンパク質をアミノ酸などに分解する酵素のスイッチをオンにすることで、筋肉が急速に萎縮していく。

「ほかにも、副甲状腺ホルモンやLIFと呼ばれる炎症性サイトカインが悪液質の原因となることもあります。最近はサイトカインシグナルが脳に伝わることで脳が体に指令を行う、つまり、がん悪液質は脳の関与が濃厚といわれています」

 膵がんや胃がん、卵巣がんなどは悪液質になりやすいが、乳がんなどはそうでもないという。治療はどうなっているのか?

「①食欲維持②サイトカインストームの是正③筋肉の維持、が基本です。私たちが研究しているのは①で、LIF高値によって起こっているがん悪液質は、モデルラットでは六君子湯と呼ばれる漢方が有効であることを見いだしました。海外では食欲を増進させる薬剤として、マリフアナやサリドマイドを用いた研究も行われています。最近は食欲亢進ホルモンであるグレリンと同じ働きをする新薬開発も注目です」

 今年4月には悪液質の背景に、通常の脂肪組織から褐色脂肪組織と呼ばれる特殊な脂肪組織への急速な移行があるのではないか、とのスペイン国立がんセンターの研究が発表された。褐色脂肪細胞は脂肪を燃焼し熱に変える働きがある。

「これは新しい視点です。筋肉が急速に失われるのは老化によるサルコペニアも同じ。最近は老年学会などとの共同研究も進んでいます。いまや悪液質の研究は世界的な重大テーマになっています」

 がんは殺さずに共生する時代は目の前だ。

頭痛、うつ気分、だるさ…原因不明の不調、原因と解決はこれ

今、話題のキーワード「自律神経」。自律神経を整えることこそが、心身ともに健康に保つカギだとわかってきました。そこで今号では、自律神経のケア法を徹底的にご紹介。原因不明の不調を解決する手がかりも、見つかります!

* * * * *
 なんとなく「調子が出ない」日があったり、「何をやっても調子がいい」日があったり……。読者調査では、そんな好調・不調の波に、「自律神経が関係している」と感じている人が多かった。実際、この波を左右するメカニズムの一つに自律神経がある。

 自律神経とは、興奮・緊張させる「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」が、環境や状況に合わせて体内の働きを調節するしくみ。20年以上、自律神経の研究を続けてきた順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、「自律神経のバランスが整っていることは、健やかな体と心の“土台”となる」と、力説する。

 自律神経の働きが整えば、体の調子も良く、心もスッキリ。一方、バランスが乱れると、不調に悩まされやすくなるという。

●自律神経が乱れると体と心に不調をきたす

・不眠、イライラ
・PMS、更年期不調
・疲れ、だるさ、冷え
・免疫力の低下
・便秘、太りやすい

 現代は、便利な一方でストレスにさらされる機会が多くなっている。夜遅くまでスマホの明るい光にさらされ、自宅でも仕事のメールがチェックでき、気持ちが休まらない……。そんな環境から、「現代人はどうしても交感神経優位になりやすい。

 自律神経のバランスが乱れた結果、さまざまな不調が現れる。女性が最も気になるのは、お腹がぽっこり出る便秘や肥満だろう。「胃腸の働きを促す副交感神経が低いと、便秘になりやすい」(小林教授)。

 また、免疫力も落ちる。「自律神経のバランスによって、免疫細胞のバランスも変わることが明らかになっている。交感神経が優位なままだと、ウイルスやがん細胞に立ち向かうリンパ球が減ってしまう」とハーバード大学医学部の根来秀行客員教授は話す。

この人達にききました

小林弘幸教授
順天堂大学医学部
順天堂大学医学部卒業後、海外留学などを経て同大小児科外科講師、助教授を歴任して現職。同大に日本初の便秘外来を開設し、自律神経と腸の研究を進める。自律神経ブームの立役者で、関連著書多数。

根来秀行客員教授
ハーバード大学医学部
医学博士。パリ大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、事業構想大学大学院理事・教授。東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。腎臓、自律神経、体内時計、長寿遺伝子について国際的に研究を進める。睡眠アプリ「S l e e pdays」を監修、自律神経測定デバイスの開発にも携わる。

平尾誠二さん闘病の胆管がん 手術困難なケース多く 専門家が解説

20日に53歳で亡くなった神戸製鋼ラグビー部ゼネラルマネジャー(GM)の平尾誠二さんは、昨秋から胆管細胞がんで闘病していた。かかる人は多くはないが、昨年亡くなった柔道家の斉藤仁さんや女優の川島なお美さんら、若い世代にも発症が目立つ。専門家は「治療の難しいがんの一つ」と指摘し、検査の重要性を強調する。

 胆管細胞がんは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運ぶ管にできるがんだ。

 国立がん研究センターの推計では、新規患者は年間2万6500人(胆のうがんを含む)。がんの中では11番目で、大腸がんの5分の1以下だが、死亡者数で見ると6番目に跳ね上がり、治療の難しさを物語る。平尾さんが約1年の闘病で亡くなったように、長期の生存率も低いのが実情だ。

 その理由について、兵庫医科大肝・胆・膵(すい)内科の西口修平主任教授は「早期発見が非常に難しい」と指摘する。大阪市の印刷工場の従業員に発症が相次いだ問題では、原因は特定の化学物質とされたが、一般的には未解明だ。「特殊な例を除き、どのような人に危険性が高いのかも分かっていない」という。

 主な症状で、皮膚や目が黄色くなる「黄だん」が現れれば、すでに進行段階。周囲の膵臓や肝臓にも広がりやすく、唯一の根本治療である手術が困難なケースが多いという。

 一方で、早い時点で見つかり、手術でがんを取り除くことができれば、比較的良好な成績が示されている。

 「胆管細胞がんは60代に多く、平尾さんは早い」と惜しむ西口主任教授。詳しく調べるには磁気共鳴画像装置(MRI)などでの検査が必要だが、「健康診断などで、胆道の指標となるALPの数値に異常があれば放置せず、詳しい検査を受けてほしい」と早期発見の重要性を説く。(武藤邦生)

悪党の森喜朗氏回復 がん新薬オプジーボ、60kg患者は年間3500万円

 今、がん治療には大きな希望が生まれている。世界中が「夢の新薬」として「免疫チェックポイント阻害薬」(商品名・オプジーボ)に注目しているからだ。

 最近、この「オプジーボ」という言葉を耳にした人は多いかもしれない。10月上旬、新聞各紙が1面で一斉に〈オプジーボ25%値下げへ〉と報じた。オプジーボは画期的ながん治療薬だが、100mgで約73万円という価格の高さがネックだ。体重60kgのがん患者が1年間使うと年3500万円かかる計算になる。

 そこで国はオプジーボの価格を来春にも最大25%引き下げる方針を固めたのだ。医学界が大きな期待を寄せるオプジーボとはどんな薬か。

 従来のがん治療では、手術などの「外科療法」、放射線でがん細胞を破壊する「放射線療法」、抗がん剤を投与する「化学療法」が3大療法といわれてきた。ところが、最近では人間の免疫力を利用してがんを退治する「免疫療法」に頼る患者が増えている。

 オプジーボは免疫療法の一種だ。これまでの免疫療法では、人間が本来持つ免疫細胞の攻撃力を高めてがんを撃退する治療法だったが、オプジーボは、「逆転の発想」を取り入れた。

「患者の体内では、がん細胞対免疫細胞の戦いが繰り広げられます。この時、がん細胞は免疫細胞の攻撃力を弱める『ブレーキ』を踏んでいます。オプジーボは、このブレーキを無効にして、免疫細胞の攻撃力を復活させる働きがあるんです」(医療ジャーナリスト・田辺功さん)

 現在、オプジーボの保険適用は皮膚がんと肺がんの一種に限られている。その効果は絶大だ。悪性の皮膚がんでは、余命半年と思われた患者の体からがん細胞を消し去るなど、劇的な効果を上げている。また、米国の肺がん研究では、抗がん剤が効かない患者、または他の臓器から転移した末期の肺がん患者の死亡リスクを、既存の抗がん剤より4割減らした。

 日本の有名人でオプジーボに命を救われたのは、森喜朗元首相(79才)だ。

「昨年、森さんは肺がんの除去手術を受けた後、再発が見つかって抗がん剤治療を始めたものの副作用に苦しみ、体調が悪化していたそうです。ところが12月に保険適用されたオプジーボを投与すると、徐々に体力が回復した。今年初めは自力で階段も上れなかったが、春ごろから急激に改善して現在にいたります」(全国紙政治部記者)

 現在、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長として小池百合子都知事と「対決」する森さんからは、重い病を患った様子はうかがえない。

がん死亡率で2位に浮上! 突如の腹痛・めまいが襲う大腸の危険信号(1)

仕事のストレスで胃に穴が開きそう…。サラリーマンなどは、そう思うことが一度や二度はある。ところが最近は、この胃に穴が開く「穿孔」自体が減る傾向にあるという。それは、ピロリ菌除菌の普及や、不況で会食の機会が減って暴飲暴食が少なくなったことも影響している。 しかし、代わって今注目を集めているのが、大腸の穿孔だ。食生活や生活スタイルが変わり便秘が激増していることや、大腸内視鏡検査の普及などによって、目立つようになったのだ。

 日本消化器病学会の評議員を務める、世田谷医療クリニックの村林康三院長はこう言う。 「消化管で穿孔が多いところといえば、胃や十二指腸。ただし、胃や十二指腸は、胃液の消毒作用もあって細菌が繁殖しづらく、穴が開いて内容物が漏れても、すぐには重症の腹膜炎を起こしにくい。ところが、大腸の穿孔は大変危険です。

大腸は下水道と同じで、体内の排せつ物が移動する。病原性の細菌も繁殖しやすいため、中のものが漏れ出すと、すぐに重症の腹膜炎を起こしかねないのです」腹膜炎を起こすと、敗血症(感染症)からエンドトキシンショックとなり、死に至ることもある。

 では、大腸穿孔の原因となる病には、どのようなものがあるのか。 前出の村林院長が続ける。「潰瘍性大腸炎や虫垂炎(盲腸炎)など、腸に起こった炎症が悪化したケースが多いのですが、最近増えているのが動脈硬化の進んだ高齢者の大腸穿孔。動脈硬化が進むと大腸の血液循環が悪くなり、必要な酸素や栄養素が通わないため、大腸の粘膜に潰瘍ができる虚血性大腸炎になります。また、血管が詰まる腸間膜動脈閉塞性という病もある。そうなると、血液が通わなくなった腸が破れやすくなるのです」

 これに便秘が加わると、大腸穿孔のリスクはさらに高くなるという。 「例えば突然の腹痛や下痢、血便、さらに発熱、腹部膨満があったら要注意です。ただでさえ高齢者は大腸の働きが悪いうえ、水分を取らない生活をしていると、便が出ないばかりか、石のようにカチカチになる。これが大腸を圧迫して傷つけ、穴が開くことがあるのです」

 とはいえ、こうした高齢者に浣腸をすることは注意が必要だ。たまたま大腸が弱っている部分が肛門に近い場合、浣腸で圧力が高まり、簡単に穴が開いてしまう恐れがあるためだ。 また、大腸を襲う病としてやはり恐ろしいのは、がんだ。厚労省の『平成26年人口動態統計』のがん死因では、胃がんを抜いて大腸がんが2位となった。

 大腸がんで注意すべきは、突然襲う「めまい」。その要因に、腸の異変が関係している場合があるためだ。「めまいの原因はいろいろあるが、腸に関係しているのは、突然クラッとする立ちくらみのような症状を言う。消化管で持続的に出血して貧血に陥ると、脳への血流不足となり、突如めまいを伴う症状が出ることがあるのです。人間ドックを受診された男性で、『貧血気味』と感じている人、便潜血検査が“陽性”と出た場合は要注意です」(血液関係に詳しい専門家)

5年で4000例 腹水を“抜けば弱る”の常識を覆す最新治療法

 臨床現場での豊富な治療経験とちょっとしたアイデアから、画期的な新治療法が生まれることがある。例えば、がん患者らが苦しむ難治性の腹水治療だ。大病院や研究機関でないと最新治療はできないとの先入観はなくすべきだ。

 末期のがんや肝硬変などの患者を苦しめる原因のひとつが腹水だ。

 血管やリンパ管などからにじみ出した体液のことで、お腹の中にたまってお腹をパンパンに膨らませ、胃や肺などを圧迫する。その結果、腹部膨満感や食欲不振、呼吸困難などを招く。

 ところが「腹水は抜けば体が弱る」との「医学の常識」が壁となって治療が進まず、多数の腹水難民を生んでいるという。

「特に水分や塩分の制限やおしっこを促す利尿剤でも改善しない難治性腹水は、“治療法がない”“抜けば一気に弱る”と医師側が敬遠し、事実上ほったらかしです」

 こう言うのは「要町病院」(東京・池袋)の松﨑圭祐・腹水治療センター長だ。

 腹水治療はお腹に針を刺して腹水を抜く「腹水ドレナージ」が第一選択だが、抜き過ぎると危ないからと1回につき3リットル前後に制限されている。10リットル以上もたまってくる大量の腹水患者には、根本解決にならない。

「理由は、腹水にはがん細胞だけでなく、免疫に関わるグロブリンやアルブミンという体に有用なタンパク質が含まれているからです。腹水を抜けば、こうした貴重な栄養や免疫物質まで捨てることになり、急速に体力が低下するのです。さらには、腹水がたまりやすくなるという悪循環に陥ります」(都内の消化器専門医)

■末期卵巣がんの診断からの生還例も

 しかし、松﨑センター長が生み出した「KM-CART法」(改良型腹水濾過濃縮再静注法)なら、大量の腹水を抜いても迅速に全量濾過が可能となり、必要な成分を体内に戻すことで、患者は元気になるという。

「大量の腹水で他の医療機関から治療拒否された40代の卵巣がん4期の女性は、24.6リットルの腹水を抜いた上で、KM-CART法を行い、好結果を得ています。翌日には腹部膨満感や手足のむくみが取れ、2日後には退院。3年経った今も健在です」(松﨑氏)

 同センターは今年8月までの5年足らずで4000例を達成し、1回につき平均で6.5リットル、最大27リットルの腹水を抜いたという。通常は2泊3日で治療されている。

 そもそもCART法は、1981年に難治性腹水の治療法として保険承認された。

「濾過膜により、腹水からがん細胞や細菌などを取り除き、アルブミンとグロブリンの濃縮液を作って、患者の静脈内に戻す画期的な方法でした。しかし、①がん性腹水には細胞や粘液成分が多いため、1~2リットルで濾過膜が詰まって大量の腹水が処理できない②高い圧をかけて無理やり濾過するため、炎症物質が産出され、体内に戻すと高熱が出る、などの欠点があり、がん治療の現場から消えてしまいました」(松﨑氏)

 松﨑センター長は、心臓外科医時代の体外循環、濾過膜研究の経験を生かして、腹水を濾過膜の内から外へ押し出す方式から、外から内に吸引する方式に改める一方で、内から生理食塩水を勢いよく注入して濾過膜を洗浄する工夫を施した。

 その結果、炎症物質の産出が減り、処理時間も1リットル30分が9分に短縮され、発熱などの副作用も少なく、1回で20リットル以上まで安全に処理できるようになったという。

「国立がん研究センターやがん研有明病院から患者さんを紹介されるほど、安定した成績を挙げています。ただ、多くの医療関係者はまだまだ“CARTは危ない、効果がない”との思い込みがあり、患者さんに最新の治療法情報が届かないのは非常に残念です」(松﨑氏)

 患者は企業や大病院の「大きな声」ばかり聞くのではなく、自ら情報を求める努力が必要だ。

ガンは不治の病ではない。10年生存率は6割超え、働き続けることは可能

日本人の2人に1人はかかると言われているガン。“不治の病”というイメージはいまだに根強いが、「ガンと診断されてからも働き続けることは可能」という事実もある。治療技術が進歩している分、昔ながらの常識に促われたままでは見失うことも多い。現代のリアルなガンとの付き合い方を考えてみたい。

◆10年生存率は6割超え!ガンは不治の病ではない

 日本人の2人に1人はかかると言われているガン。“不治の病”というイメージはいまだに根強く、’14年の世論調査では、「ガン全体の5年生存率は50%を超える」ということを正しく認識していた回答者がわずか24.3%しかいないという結果に。実際には、5年はおろか10年後の生存率も6割近くに上る。

「にもかかわらず、国立がんセンターの調査では、ガンと診断された人の4割が、2回目以降の治療から姿を見せなくなってしまったそうです。それだけ、ガンと聞くだけで絶望してしまう人は多い。さらには、ガンと診断された人の2割が、最初の治療を受ける前に会社を辞めてしまうというデータも。治らないという思い込みがあるから、仕事も継続できないと決めつけてしまうのです」と話すのは、医療と雇用問題の双方に詳しいジャーナリストの松沢直樹氏。

 無論、4割は命を落とすという事実を軽く見るべきではないが、働き盛りである40代がまず認識すべきは「ガンと診断されてからも働き続けることは可能」ということだろう。

心臓発作や脳卒中によって体に障害が残るようなケースとは異なり、ガン自体は身体機能を制限しない。とりわけ、初期の段階で発見できれば、それまでと変わらずに働けることのほうが多いのだ。

「手術自体も、場合によっては有休で取れるくらいの入院期間で済むものもあります。会社員がガンになったら『休職して、完全に治してから戻ってくる』か『辞める』の二択しかなかった時代は過去のものになりました。つまるところ、現代の労働の大半は頭脳労働なので、脳機能に障害がなければ続けられるんですよ」と話すのは、数多くの企業で産業医を務める大室正志氏。

 症状が進むと、さすがにフルタイムで勤務するのは厳しくなってくるが、それでも仕事を続ける人は珍しくないという。

「とある大手企業が、ステージ4の甲状腺ガンの患者さんを管理職にヘッドハントした例もあったほど。もちろん病気のことは納得した上で、ですよ」(大室氏)

 ガン発見の精度が上がり、治療技術も進歩している今、昔ながらの常識に捉われたままでは見失うことも多い。まずは知識をしっかりと身に付け、ガンとの付き合い方を考えることが大切だと言えるだろう。

<ガン患者75人に聞きました>

Q1 発見されたときのステージは?

ステージ1…23人

ステージ2…21人

ステージ3…13人

ステージ4…3人

不明(無回答)…15人

Q2 ガンと診断されたきっかけは?

・体調不良…29人

・職場・自治体の健康診断…19人

・人間ドック…15人

・別の病気の治療…6人

・ガン検診…4人

・その他…2人

Q3 ガンの種類は?

1位 大腸ガン…16人

2位 胃ガン…15人

3位 膀胱ガン…8人

4位 肺ガン…6人

5位 前立腺ガン…5人

6位 肝臓ガン…4人

6位 甲状腺ガン…4人

8位 食道ガン…3人

9位 膵臓ガン…2人

9位 脳腫瘍…2人

その他…10人

【松沢直樹氏】
ジャーナリスト。非正規、請負などの立場で働く人の労働組合「インディユニオン」執行副委員長として労働相談などのサポートに当たる。著書に『うちの職場は隠れブラックかも』(三五館)

【大室正志氏】
産業医。同友会春日クリニック・産業保健部門に所属。メンタルヘルス対策など、企業における健康リスク低減に従事する

がんだらけ 医師を替え診断受けるうちに受容することも

日本人の死因1位のがん。体のあちこちに「転移」してしまうケースもある。「もう手術はできない」となった時に、どのくらいの痛みや苦しみが待っているのか──「全身がんだらけ」という死に方の実態に迫った。

 病院で検査をし、がんが体中に転移していると告げられたときの患者の心境について、作家で医師の米山公啓氏はこう説明する。

「いまはがんの情報があふれているので、全身に転移していれば“もう手の施しようがない”と、精神的ショックを受ける患者さんは少なくありません」

 手術を選択しても、なかなか気力は続かない。違う部位のがんで3度の手術を経験している元お笑いコンビ「ゆーとぴあ」のホープ氏(66)はこう表現する。

「8年前に大腸がんがみつかり、内視鏡手術で切除したのですが、その6年後に血痰が出るようになった。がんセンターで検査したら8センチ大の肺がんがみつかって、8時間の大手術。それで成功したのに、半年後に小腸と胃のがんが見つかりました。食事が喉を通らず、便も出なくなった。3度目の手術後は身体に10本以上のチューブをつながれ、もう生きたいとも思わなかった」

 元巨人軍投手で、現在はうどん店を経営する横山忠夫氏(66)は、17年前に末期の大腸がんを切除し、その半年後、肝臓への転移がみつかった。それも切除したが、それから1年も経たないうちに、今度は肝細胞がんがみつかったという。

「病院が悪いわけではないですが、2回の手術後は毎月血液検査を受けていたので、余命3か月から半年と告げられたときはショックだったし、『なんでだよ、ずっと病院に通っていたじゃないか』と悶々とした気持ちが何日も続きました」

“がんだらけ”という状況を、冷静に受け入れられる人は少ない。その不安はどうすれば乗り越えられるのか。

「最初は信じようとしない人もいるが、医者を替えて診てもらううちに認めざるをえなくなり、精神的にも安定してくる。つまり“受け入れる”ということです」(前出・米山氏)

温かい飲み物は体にいい? 熱すぎるとがんの危険因子に

■熱い飲み物が食道がんのリスクを上げる?
身体を冷やすのはよくない、できれば飲み物は、常温か温かい状態で飲むべき、という話は、健康でも美容でもよく目にするものだと思います。

一方で、「熱い飲み物で食道がんになりやすくなる」という話を聞いたことがある人も多いかもしれません。これはどの程度本当の情報で、どれくらいの熱さのものを指すのでしょうか? 国際がん研究機関(IARC)は、2016年、「非常に高い温度で摂取される飲み物」を食道がんの推定原因として分類しました。

1991年に「発がん性がおそらくある」と分類されていたコーヒーとマテ茶については、飲み物それ自体にがんを引き起こすという証拠は見つからなかったと報告されています。

この報告によると、「65℃以上の温度で飲み物を飲むことが食道がんにつながる可能性があり、コーヒーやマテ茶などの飲み物の種類は関係なく、重要な因子はその温度である」とのことです。

例えば、約70℃というかなりの熱さのお茶を飲む、中国、イラン、トルコ、南米では、がんのリスクが高く、60℃以下でお茶などを飲む欧州と北米ではがんのリスクが低いという様々な研究から示唆されています。

■そもそも食道がんとは
食道とは、口から胃までの間にある管で、食物の通り道になる部分です。食道では、食べ物は通過するだけで、胃のように消化されることはありません。この食道にがんが発生するのが食道がんです。食道の粘膜から発生するため、がんの部分に違和感やしみる感が初期症状として見られます。がんが進行すると、食道の周りにも影響が現れ、気管支への影響からは、咳、血の混じった痰、声がれ(嗄声/させい)などが見られ始めます。また、食道自体も内腔が狭くなるため、食べ物の通過が悪くなり、食べ物を詰まりやすくなったりします。

■危険なのは熱い飲み物だけではない? 食道に悪い刺激物とは
2009年の日本の研究報告(Ishiguro S他 Cancer letter)によると、飲酒については、アルコールを飲まないグループに比べると、1日当たり日本酒にして1合以上飲むグループから食道がんリスクが上がり、1合から2合のグループで2.6倍、2合以上のグループで4.6倍高くなると報告されています。

日本酒1合と同じアルコール量を他のアルコール飲料で換算すると、焼酎なら0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(240ml)、ウイスキーではダブルで1杯になります。

逆に言えば、日本酒1合までなら、食道がんの危険性は少ないのです(もちろん、飲酒をしない方がよりよいとも言えますが……)。

また、アルコールですぐに顔が赤くなる人も食道がんの危険性が高くなると言われているため、無理に飲酒を続けるのは避けた方がよいでしょう。

■タバコと食道がんの関係は?
喫煙についても高いリスクがあります。非喫煙者に比べ、現在も喫煙している人は平均3.7倍も食道がんの危険性が高くなるのです。過去に喫煙していて、今は止めている場合でも、3.3倍高くなることが報告されています。

しかも、喫煙の本数と期間によって決まる「喫煙指数」が高くなるほど、食道がんの危険性が高くなり、喫煙係数が20未満で2.1倍、20~29で2.7倍、30~39で3.0倍、40以上で4.8倍になります。つまり、熱いもの以上に、喫煙自体が食道がんのリスクになるのです。

■リスクを下げる方法は? 食道がんの予防法
野菜や果物を十分に食べていれば、食道がんの危険性が下がることが報告されています。2007年の日本の報告(Yamaji T他 Inter J Cancer)では、野菜・果物の摂取量に応じて3つのグループに分けて調査した結果、野菜・果物の高摂取グループでは、低摂取グループに比べ食道がんのリスクがほぼ半減していたと報告しています。さらに、野菜・果物の合計摂取量が1日あたり100グラム増加すると、食道がんのリスクが約10%低下したとのことです。

これらをまとめると、野菜や果物をあまり食べずに、70℃以上の熱燗にした日本酒を1合以上飲む喫煙者は、食道がんリスクが相当高くなると考えられます。当てはまるものが多い人は生活習慣を見直すなどして、上手に健康管理をしていきましょう。

従来薬と異なる作用機序 新薬登場でてんかん治療が変わる

発作による悲惨な事故の報道などから、偏見や誤解が多い「てんかん」。新薬が登場し、新たな治療の展開が期待されている。

 以下のうち、てんかんで正しい情報はどれか。わかるだろうか?

(1)発作で死んでしまうことがある
(2)こころの病気
(3)遺伝する
(4)発作中に舌を噛むので口の中にハンカチなどを入れるとよい
(5)発作が起きたら救急車を呼ぶ

 特に(3)~(5)は「イエス」と思っている人が多いが、実はすべて間違った情報だ。

「日本てんかん学会」理事長で、東京女子医大名誉教授の大澤眞木子医師は、「どの年齢でも起こるてんかんは、発作で死ぬことはまずなく、こころの病気でもありません。遺伝が原因のケースはごくわずかで、約5割は原因不明。発作中は口の中にものを入れる方が危険であり、ほとんどの発作は救急車を必要としません」と指摘する。

 7月に製造販売承認を取得した新薬(一般名ラコサミド)は、従来薬と違う作用機序を持つ。ほかの抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者に対し、従来薬との併用療法によって脳の一部が興奮して起こす部分発作を抑制する。

■適切な診断・治療を受けられていない

 てんかんの治療は、薬の効き目が悪ければ追加や変更が検討される。しかし、これまでの抗てんかん薬は、治療開始後、最初の薬で発作が消失した率は47%、2番目の薬では13%、3番目の薬、または抗てんかん薬の多剤併用では4%。一方、薬で発作が消失しない人が37%と、4割弱いた。

「彼らにとって新薬は期待ができる。しかし、4割弱に十分な効果が見られないのは、薬の作用機序が合っていなかったからだけではありません。適切な診断、治療が受けられていなかった人もいると考えられます」

 大澤医師によれば、てんかん発作には、本来の発作に加えて「偽発作」もある。また、「発作=てんかん」ではなく、てんかんにはさまざまなタイプがあり、その中にも脳内の異常な波で2次的に起こっている発作もある。

 だから、さまざまな検査が必要なわけだが、そもそも、てんかんとは気づきにくい発作もある。「単純部分発作」と呼ばれるもので、まずは感覚器の異常が表れる。

「光が見える、目がかすむ、音・声・メロディーが聞こえる、不快なにおいがする、体の一部がちくちくする、しびれなどがあります」

 次に、自律神経の症状だ。動悸、発汗、皮膚の紅潮もしくは顔面蒼白、発熱、寒け、頭痛、吐き気などが見られる。そして、運動機能の症状が出る。手足や顔がつっぱる、ねじれる、腕や足の一部がけいれんするなど。いずれも患者は意識があり、発作中の症状を覚えている。これらを念頭に、正しい診断に基づいて発作を抑えなくてはならない。

「診断後は、薬物治療に加え、発作の誘発因子を排除することも大切です」

 発作が起こりやすい条件は、「ほっとした時」「ぼんやりしている時」。入眠直後、寝起き直後、睡眠中、体温上昇時、深呼吸をした時などが該当する。緊張しているシーンでは起こりにくい。

 また、誘発因子は人それぞれで、急激な体温の上昇、発熱、テレビ画面や点滅する光、木漏れ日といった光刺激、月経前、さらには疲労やストレス、睡眠不足、薬の飲み忘れなどが絡み合って発作を起こしやすくする。

 新薬登場の意味は大きい。加えて、対策が十分に取れているかのチェックも不可欠なのだ。

がん治療の渡瀬恒彦、苦渋の十津川警部降板 後任は内藤剛志

伊豆半島の南部東側、白い砂浜と背後に迫る山に囲まれた下田の街。そこで、人気の2時間ドラマ『西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ』(TBS系)の最新作「伊豆・下田殺人ルート」(仮題)の撮影が進んでいる。

「十津川警部」といえば、渡瀬恒彦(72才)だ。1992年からおよそ四半世紀にわたって、これまで計54作品で演じ続けてきた。部下の「亀井警部補」役の伊東四朗(79才)との名コンビで、次回作もお茶の間に登場し、トラベルミステリーを解決していくはずだった。ところが、下田のロケに、渡瀬の姿はない。

《撮影現場が僕に力をくれます。ご心配おかけしましたが、「9係」、その後予定しているドラマにもご期待ください》

 連続ドラマ『警視庁捜査一課9係シーズン11』(テレビ朝日系、2016年4~6月)に出演中だった渡瀬は、女性セブン(6月9・16日号)に胆のうがんの闘病を、そう告白した。

「渡瀬さんは昨年の夏から秋にかけて体調不良を訴えて、都内の総合病院に入院しました。そのとき、胆のうに悪性の腫瘍が見つかったんです。主演ドラマが多く、もう何年も長期休暇を取っていなかった渡瀬さんは半年ほど仕事を入れず、抗がん剤の投与と放射線治療を受けたそうです」(芸能関係者)

 胆のうとは、肝臓の下にあり、肝臓でつくった消化液を溜める袋のような臓器だ。胆のうがんは自覚症状が出にくいので早期発見が難しく、見つかった時には多部位に転移していて手術ができない場合も多い。

「腫瘍が発見されてから渡瀬さんはあれほど大好きだったお酒を一切断って、栄養を考えて食事をするようになりました。服も着込んで、体を冷やさないようにする工夫もされているようです」(渡瀬の知人)

 渡瀬は復帰後の昨年12月、ドラマ『おみやさんSP』(今年2月放送)の撮影に臨んだ。その後は前出の『9係』にも出演し、見事に高視聴率をマーク。だが、がんを克服したわけではなく、撮影の合間をぬっての病院通いと投薬による治療を続けてきた。テレビ局関係者が言う。

「実は、最近もあまり体調がよくないそうなんです。まだ正式に発表はされていないですが、ライフワークのように演じ続けてきた十津川警部シリーズを降板したのは驚きでした。十津川警部シリーズの前作の放送は昨年4月。シリーズ開始から今までは必ず1年に1~3回のペースで放送してきましたが、今回はすでに1年以上空いています。

 何があったのかと思っていたのですが、渡瀬さんの体調不良と治療もあって、撮影スケジュールが合わなかったことが原因だったそうです。すでに『新・十津川警部』として次回作の撮影が進んでいるそうです。渡瀬さんから主役を受け継いだのは内藤剛志さん(61才)です」

 8月17日、『おみやさんSP2』が10月に放送されることが発表された。すでにクランクアップしているというが、撮影中にはこんなことがあった。

手術不能の肺がんに新薬登場 今後の治療はどう変わる?

手術ができない進行・再発肺がん(非小細胞肺がん)の新しい抗がん剤が承認された。これによって肺がん治療はどう変わっていくのか?

 今回の新薬は「ラムシルマブ(商品名サイラムザ)」。がん細胞に栄養を供給する血管が新しくできるのを阻害し、増殖を抑える。試験では新薬によって、「奏効率・病勢コントロール」「無増悪生存期間」「全生存期間」のすべてが延びた。神奈川県立がんセンター呼吸器内科医長の加藤晃史医師は「混沌とした戦国時代に、新薬がひとつの答えを出した」と話す。分かりやすく説明していこう。

■臨床の現場で効果を実感

 手術ができない肺がんは「抗がん剤(+肺がんのステージによっては放射線)」が標準治療だ。残念ながら初回の治療で治癒する人はまれで、99%が数年以内に再発する。

「そのため2次治療、3次治療まで見越して初回治療を行います」

 2次治療の王座のような立場にいた抗がん剤が「ドセタキセル」だ。単剤で用いられてきたが、別の薬との併用で全生存期間を延ばせないか? さまざまな薬の試験が行われてきたが、「これぞ」という結果が出てこなかった。

 そんな中、昨年、画期的な薬である免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」が登場。非小細胞肺がんは「扁平上皮がん」と「それ以外(非扁平上皮がん)」に分類されるが、前者に関しては免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いことから、これが主役になった。

 一方、後者の非扁平上皮がんに対しては主役になるところまでは至らず、加藤医師が言うように「混沌とした戦国時代」のような状況だった。

「ところが、今回の新薬をドセタキセルと併用すると、扁平上皮がんも非扁平上皮がんも全生存期間が延びると試験で証明された。1200人以上対象という肺がんでは最大規模の試験で、奏効率、病勢コントロール率はドセタキセル単剤より10%上昇。臨床の現場で『この薬はよく効く』と実感できるレベルです」

 無増悪生存期間は中央値が1・5カ月、全生存期間は1.4カ月延長した。現場では実感するのに心もとない数字とのことだが、全生存期間を確実に延ばせることを統計学的に初めて証明できた。

■話題の「免疫チェックポイント阻害薬」との使い分けは?

 ただ、2次治療を受ける患者は、1次治療の時より身体的ダメージを負っている場合がほとんど。効果が高くても、副作用が大きければ使いづらい。

「副作用は、日本人患者では発熱性好中球減少の頻度は上昇したものの、全体的にはドセタキセル単剤と比較して大差はありませんでした。QOL(生活の質)も、全体的にドセタキセルに新薬を上乗せした方が優位(QOLが高い)でした」

 手術ができない進行・再発の非小細胞肺がんでは、今、最も注目を浴びているのが免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブだ。前述の通り、扁平上皮がんの治療では免疫チェックポイント阻害薬が今後「主役」になるとみられているが、非扁平上皮がんは「2次治療はドセタキセル+新薬(ラムシルマブ)が第一選択になる」と加藤医師は指摘する。

「免疫チェックポイント阻害薬は効く人には非常に効くが、効かない人には効かない。すぐに薬の効果が出ないと危険な状態になる患者には、免疫チェックポイント阻害薬の使用がためらわれる場合もあります。ドセタキセルや新薬は、免疫チェックポイント阻害薬よりも副作用の出現の様相がある程度予測でき、管理しやすい点も大きいです」

■非小細胞肺がんとは

 肺がんは組織型で「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分類される。さらに、非小細胞肺がんは「扁平上皮がん」「腺がん」「大細胞がん」に分かれる。文中の「扁平上皮がん以外=非扁平上皮がん」は、腺がんと大細胞がんのこと。

高額がん薬、やめどき探る…専門医グループが臨床試験

 患者1人に年間3000万円以上かかるとされる肺がんの新薬オプジーボについて、専門医のグループが、薬の使用を減らすための全国規模の臨床試験を始めた。国立がん研究センターのグループも同様の試験を計画中で、高額な薬のやめどきを見つけ、薬剤費の増加の抑制を狙う。

 オプジーボの薬代は体重60キロで月約260万円。肺がん患者の約2割に有効とされ、効く人では長期間効果が続くが、どの患者に効くか事前に予測できない。効果が出る前にがんが大きくなる例もあるため、早期の効果判定も難しく、結果的に効かない患者にも高額な薬剤費がかかっていると指摘される。

 日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)の国頭(くにとう)英夫・化学療法科部長らの研究グループは今月、効かない患者を早期に見極めるための臨床試験を始めた。

 来年度末までに約35病院でオプジーボを使う患者300人を集め、2年間経過を観察し、早期に効果判定できる指標を探す。国頭部長は「高価な薬を浪費せず、コスト削減を目指す研究を行うのは医者の責任」と話す。

 国立がん研究センターなどのグループは、効果が出た患者が、投与をやめても効果が続くか確認する臨床試験を計画している。44病院で来年にも始める予定。同センター中央病院の大江裕一郎副院長は「薬がやめられるケースがわかれば、副作用や費用負担の軽減など、患者にとっての利点もある」と説明している。

オプジーボ がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを阻止して免疫細胞の攻撃力を回復させる新しいタイプの薬。2年前、皮膚がんの悪性黒色腫の治療薬として承認され、昨年末、患者が多い肺がんにも保険適用になった。

抗がん剤、同効果なら安い方 日赤医療センター、薬価抑制へ方針

 がん治療薬「オプジーボ」など高額薬による国の医療費増大が問題となる中、日本赤十字社医療センター(東京)が「同じ効果、同じ副作用なら価格が安い抗がん剤を使う」との院内方針を決めたことが21日、分かった。

化学療法科の国頭英夫部長は「国民皆保険制度のもと、日本では高額薬であっても医師は価格を気にせず処方してきた」と指摘。海外では同様の決定が報じられた後に薬価引き下げにつながった例もあるが、薬価を比較した上で使用する薬を決めるのは、国内で異例とみられる。

 国頭氏によると、同センター化学療法委員会が5月下旬に方針を決定。大腸がんの抗がん剤「サイラムザ」と「アバスチン」を比較し、価格が高いサイラムザについて、大腸がんに使用しないことも決まった。

 2剤はがん細胞が栄養を得るため血管を引っ張る動きを妨げる効果があり、他の抗がん剤と併用する。サイラムザは胃がん用に平成27年に発売され、今年4月、大腸がんに適応拡大。アバスチンは大腸がん用に19年に承認されており、国頭氏によると「大腸がんに対し、2剤は効果も副作用も変わらない」という。

 ただ、価格は体重60キロの患者が半年間使用するとアバスチンが150万円なのに対して、サイラムザは427万円と約2・8倍。そのため、センターは「他に薬がない胃がんにはサイラムザを使っても、大腸がんでは使わない」とした。

 米国では米紙ニューヨーク・タイムズが2012年10月、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターがアバスチンと効果や副作用がほとんど変わらない高額な新薬を使わない方針を示したと報じた。

米在住の大西睦子医師は「米国では一般的に新しい医療はより良いものと理解される。センターの決定は異例のことと受け止められた」と話す。同紙は翌月、「製薬企業がこの新薬を50%引きして医療機関に販売する」と報道。新薬の価格はその後、実際に下がった。

 日本では、上限を超えた医療費が医療保険から支給される「高額療養費制度」で患者負担が抑えられることもあり、同じ効果なら安価な薬剤を使うという考えは浸透していない。国立がん研究センター前理事長の堀田知光・国立病院機構名古屋医療センター名誉院長は「高額薬は増えており、医師も患者も保険財政の負担を考える時期に入ったのではないか」と話している。

前立腺がんが日本で増えた理由

 前立腺は骨盤のもっとも下、尿が 貯(た)まる 膀胱(ぼうこう)を支える位置にあります。また直腸のおなか側にあります。

 この前立腺にできるがん、前立腺がんは最近増加が著しいがんですが、昨年初めて、日本人男性が 罹患(りかん)するがんで最も多くなったことが、国立がん研究センターの調査で分かりました。

既に欧米諸国では前立腺がんは男性に最も多いがんで、死亡者も肺がんに次いで2位となっています。また、日本と同じ増加傾向がアジアの国々でも見られています。

 アジアではこれまで前立腺がんは少なかったので、人種による発がんの違いがあると考えられてきました。しかし、日本での前立腺がんの増加は人種、すなわち遺伝的な背景もさることながら食事の変化が大きいことを示しています。

 前立腺と乳腺はそれぞれ男性ホルモン、女性ホルモンにより成長する面で似ている臓器です。実はどちらも動物性脂肪の摂取がリスクを高めることがわかっています。

 例えば牛乳には動物性脂肪が多く含まれていますが、国別の牛乳消費量は乳がん、前立腺がんの頻度とよい相関関係があることがJane Plantというイギリスの科学者が見出しています。前立腺は、実はコレステロールを体の中でもっとも必要としている臓器です。大量のコレステロールを取り込んでいるうちに発がんの引き金が引かれると考えられています。

◆より悪性度が高くなる「老化」したがん

 前立腺がんは、肺がんやすい臓がんなどのがんに比べると進行が比較的遅いがんです。しかし、世の中には誤った理解、すなわち「高齢になるとがんの進みが遅くなる」と信じられている方も少なくありません。前立腺がんは実は30~40歳あたりでできて、長い年月をかけて大きくなっていくことがわかっています。

加齢とともに前立腺がんも老化していきますが、「老化」したがんは、より悪性度が高くなっていくのです。従って、70歳、80歳の方のほうが前立腺がんで亡くなることが多いのです。

 前立腺がんの早期発見は採血でPSAという項目を調べることで可能です。多くの自治体で前立腺がんの検診事業が行われていますので活用するとよいでしょう。

 では、アジアではどうしてこれまで前立腺がんは少なかったのでしょうか?

 日本の過去50年の食事内容の変化を見ても、アジアの国々は炭水化物摂取が多く、たんぱく質や脂質の摂取が少ない傾向がありました。しかしこの30年、日々の食事での脂肪摂取が激増するに伴い前立腺がんも多くなってきたと言えます。

◆予防に有効な豆腐やウコン

 前立腺がんの予防になると考えられている食材、あるいは食品に含まれる成分としては、トマト、ブロッコリー、大豆、わさび、そしてウコンの成分であるクルクミンがあります。

 たとえば、イタリアとフランス、隣り合った国ですが前立腺がんの人口当たりの患者数はフランスのほうが多いのです。これはイタリアの人々のトマト摂取が多いことも関連していると思われます。また、豆腐も前立腺がんの予防に有効です。夏のこの時期、冷ややっこは、前立腺によいですね。

 豆腐やウコンの成分は、ダイオキシンという発がん物質を体で受け止めるレセプターの働きを妨げることがわれわれの研究でわかりました。こういった野菜に含まれる体によい有効成分を機能性食品と呼びます。

多くの種類の野菜をとることでさまざまな機能性食品を摂取できますが、都会ではどうしても野菜の種類もレタス、キュウリ、キャベツ、せいぜいトマトくらいに限られてしまうことも多いと思います。昨年、日本でも消費者庁の働き掛けで、機能性食品が含まれたサプリメントの表示が始まりました。

 健康に良いという証拠がある機能性食品は、ラベルでわかるようになっています。ドラッグストアでご検討ください。
(堀江重郎・順天堂大学大学院教授・泌尿器科医)

末期癌の医師・僧侶が解説 ソクラテス「無知の知」の真意

2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月であることを自覚している医師・僧侶の田中雅博氏による『週刊ポスト』での連載 「いのちの苦しみが消える古典のことば」から、ソクラテスの「無知の知」という言葉の意味を紹介する。

 * * *
 ソクラテスは自身の裁判の最初に、本当の告発者は「風説を広めた人たち」だと言いました。なかでも、喜劇作者のアリストファネスによる戲曲『雲』の影響は大きかったようです。この喜劇の中で、ソクラテスは詭弁を弄して青年を腐敗させる者、として描かれていました。

 これらの讒謗に対抗する証人として、ソクラテスはデルフォイの神を立てました。

 かつて、友人のカイレフォンがデルフォイの神殿で「ソクラテス以上の賢者がいるか」と伺いを立て、「ソクラテスは万人の中で最も賢い」との神託を得ていました。

 これは間違いであろうと考えたソクラテスは、自分よりも賢い人を探し始めました。それぞれの分野で勝れた人たちに会って質問してみると、自分の専門とすることに関しては勝れた知識をもっていても、それ以外のことに関しては何も知らないことにソクラテスは気づきました。

 ソクラテスが質問したのは、徳について、そして善や美についてでした。皆、知らないのに知っていると誤解している。ソクラテスは、知らないことを知っている。この「無知の知」によってデルフォイの神託は正しかったことが明らかになり、後年、裁判で神託を用いたのです。

 フランシス・ハッチソンの言葉「徳は善の量であり、最大多数の最大幸福をもたらす行為が最善である」も、彼が美と徳の理念の起源を探究する中で到達した考えであり、古代ソクラテスの問いに対する近代啓蒙主義の答えであったとも解釈できます。
スポンサーリンク Ⅱ
最新記事
■ 互助会推薦 ■
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カテゴリ
スポンサーリンク sabu