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“遺伝子を改変”でがん治療する「CAR-T」 転移したがんにも効果期待


がん治療で期待される治療技術がある。遺伝子治療、ゲノム編集だ。遺伝子治療では、人工的に作られた正常な遺伝子を体内に入れて、これが異常遺伝子の代わりとして働く。ゲノム編集は、自分のDNAの欠陥部分をスポット的に修復するイメージだ。現在はまだ研究段階だが、大きな期待が寄せられている。

 では、実際にどんな研究が行われ、どのような治療効果が出ているのだろうか。

 遺伝子治療とゲノム編集の両方の技術を使った血友病治療の研究をしている自治医科大学医学部(栃木県下野市)の大森司教授の研究室を訪ねた。大森教授は、遺伝子治療とゲノム編集の両方の技術を並行して活用することで、より治療効果が期待できると話す。

 血友病とは、血液を固めるための凝固因子(肝臓で作られている)の遺伝子異常で、血が固まらないという出血性疾患だ。重症になると、凝固因子製剤を週に何度も注射する必要があるが、大森教授によると、

「負担が大きく、一生補充し続けるだけで治らない。根本的な治療が望まれる中、欧米の研究では、ここ1、2年で遺伝子治療がうまくいき始めている」

 凝固因子の正常遺伝子を外から入れると、「1回の投与で、出血しない期間が長く続くなどの治療効果があることが分かってきていて、患者さんの希望の光になっている」という。

 ゲノム編集ではキャス9(DNAの欠陥部分を標的として、自動的にハサミを入れて切断する機能がある酵素)などをデリバリーウイルスに入れて肝臓に運ぶが、遺伝子治療でも正常遺伝子をウイルスに入れて肝臓まで運ぶ。ウイルスに入れる中身が異なるだけでデリバリーの仕組みは一緒だ。大森教授は、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)と呼ばれるデリバリー技術を使って肝臓に届けている。ゲノム編集を遺伝性疾患の治療法として実用化するには、様々な臓器に道具をどうやって運ぶのかというデリバリー技術を「解決すべき問題の一つ」としており、その研究にも大森教授は力を入れている。

 がん治療でも、遺伝子を改変する技術は、すでに一部で実用化への動きが本格化している。

「CAR-T(カーティー)」と呼ばれる新たな細胞療法だ。

 T細胞と呼ばれる患者自身の免疫細胞を取り出して遺伝子を改変し、がんへの攻撃力を高めて体内に戻す。「T細胞に腫瘍(しゅよう)細胞を認識する遺伝子を導入するという点で、遺伝子治療(遺伝子細胞治療)と言える」と大森教授。同時にがん細胞には、T細胞による攻撃を妨害する仕組みがあり、これを受けたT細胞は攻撃を抑制するブレーキをきかせてしまう。「ブレーキをゲノム編集により破壊し、がんへの攻撃力を高めるというコンセプトが期待されている」とも説明した。

 同様のメカニズムの薬は、17年8月に米食品医薬品局(FDA)が急性リンパ性白血病、同10月には悪性リンパ腫のそれぞれ一部の患者の治療法として承認した。その一つであるスイス・ノバルティス社の「キムリア」の臨床試験(治験)では、8割の急性リンパ性白血病患者で、がん細胞が検出されなくなった。一方で、正常なリンパ球も攻撃されて減少するなど、過剰な免疫反応も一部で確認されたという。副作用をどう抑えるかが今後の課題だ。

 それでも期待は高まる。例えば、固形がんの場合、初期段階ならば、これからも外科手術で除去するのが最善だと、東京大学大学院理学系研究科(東京都文京区)の濡木理(ぬれきおさむ)教授も大森教授も話す。転移してしまった場合、体内のあちこちで異常を見つけ、全てにゲノム編集の道具を送り届けるのは簡単ではない。その場合、自身の免疫力を最大限高めるCAR-Tのような技術を使えば、複数のがん細胞があっても攻撃してくれるので、より現実的だという。

 日本では遺伝子治療もゲノム編集も動物実験の段階だが、遺伝子治療では一部の疾患においてヒトを対象とした臨床研究が始まっている。一方、ゲノム編集の研究では、まだヒトへは応用されていない。治療法が認められて製剤が作られ、それが認可されるまでには「通常10年単位の時間がかかる」(大森教授)。デリバリーの問題やオフターゲットが絶対に起こらないようにするなどの治療効率の向上、予期せぬ副作用の可能性、「デザイナーベビー」につながるヒト受精卵への技術の悪用を防ぐ倫理上のルール作りなどハードルはまだある。

 また、様々な要因で発生するがんは、喫煙や食生活といった後天的要因も大きいとみられており、遺伝子異常の矯正だけで、全てのがんに対処できるわけではない。患者が安心感と信頼感を持てる技術として受け入れられるかもこれからだ。

 いつまでに実用化できるのか。あくまでも研究者としての目標を聞いてみると、濡木教授は「早くて5年、遅くても10年以内には始められたらいい」。大森教授も、「やはり10年くらいでなんとかしたい。そういうメドを立てられるように一生懸命頑張ります」。

 がんに限らず、遺伝性疾患で苦しむ人は大勢いる。一人でも多くの患者が助かるよう、一日も早い技術向上と早期実用化に期待したい。(編集部・山本大輔)

※AERA 2018年2月12日号より抜粋

がん民間療法は「人の弱みにつけ込むインチキ商法」 医師たちが本音告白

もし自分や家族ががんと診断されたら、どうしたらいいか悩む人は多いだろう。では医師は、自分ががんになったら、どうするのか。AERAは、20代から60代までのがんの診療経験のある現役医師553人にアンケートをした。余命宣告や民間療法などについて、医師の本音を聞いた。

一喜一憂してしまいがちな「余命」についても、医師の見方は冷静だ。余命は平均値に過ぎず、「7カ月の余命」には数週間も1年以上のケースも含まれるという。そのうえで、85%が「余命宣告を受けたい」と回答した。

 時に患者や家族が頼り、悪徳商法も問題になる民間療法。「どう考えるか」という質問には、厳しい声が目立つ。

 否定的な医師らが口をそろえるのは、民間療法に「エビデンス(臨床結果などの科学的根拠)がない」という点だ。医師は臨床例で対処するトレーニングを積んでいる。「治療効果があるなら、標準治療や保険に組み込まれるはず」というのだ。

「うそっぱち」(内科・40代・女性)、「人の弱みにつけ込むインチキ商法」(内科・40代・男性)、「百害あって一利なし」(内科・50代・男性)という辛辣(しんらつ)な表現も並ぶ。背景に、患者が不利益を被った経験がある。

「病院での治療より民間療法を崇拝し、治療の妨げになった」(内科・40代・男性)、「悪徳民間療法にだまされて不幸な転帰になった患者を見てきた」(内科・60代・男性)などと訴える医師は少なくない。

 一方、「有効」と答えたのはわずか2%。「場合によっては有効」と回答した人は29%で、その大半が「プラセボ効果」「患者が死を迎えるとき後悔せず、やるだけのことはやったと思えるなら」「イワシの頭も信心から」などといった、心理面での効果に言及したものだ。

 東邦大学医療センター緩和ケアセンター長の大津秀一医師は言う。

「患者も家族も、わらをもすがる思いなので、頭ごなしに否定するのは逆効果の場合もある。『望むならどうぞご自由に』という医師もいますが、僕は『お勧めしない』ときちんと伝えるほうです。特に、お金が異常にかかる場合はよくありません」

 高額療法ではなくても、偏った食事療法も多い。

「玄米だけとか肉を食べないとか。肉は健康に悪いイメージがあるようですが、がん自体、筋肉や脂肪が減る傾向があり、多くの場合、たんぱく質摂取はむしろ必要です。肉を控えて状態が悪くなるケースもあります」(大津医師)

 順天堂大学病院呼吸器外科の鈴木健司医師も一部の医師が行うエビデンスの乏しい治療法について、こう忠告する。

「何人がその治療を受け、何人が生存したのか、科学的な数字を引き出すべきです」

 患者や家族が医師を悩ますケースについては、63%の医師が「ない」と回答。「ある」と答えた医師らの回答は、患者側の理解不足や感情の問題を指摘する声が目立った。人は因果関係を求めたがるが、「なぜがんになったのかという質問には、答えがない」(呼吸器内科・30代・男性)し、「なぜ治らないのかと詰め寄られ」(消化器内科・50代・男性ほか)てもどうしようもない。

「本人の怒りや認めたくない気持ちが強すぎて、治療するうえでコミュニケーションに支障」(麻酔科・40代・女性)をきたすこともある。患者と家族間で治療方針が折り合わないケースに言及する医師も複数いた。

 大津医師は、医師に遠慮して聞きたいことを聞けていない患者も多いのでは、と指摘する。

「痛みや吐き気があるのに、医師に病状を聞かれて『おかげさまで』とかしこまっていても、伝わりません。外来は特にせわしないですから、聞きたいポイントを事前に整理して、尋ねてはどうでしょう」

 昨今は、テレビ番組や雑誌記事にがん関連の情報があふれる。それらを医師がどう考えているかは、ぜひ一読してほしい。

「センセーショナルな見出しは問題。『これでがんが治った』などという詐欺まがいの記事はやめてほしい」(呼吸器内科・60代・男性)、「負担のある治療を受けてがんと闘う姿だけでなく、余命を受け入れて安らかに暮らす人の姿もクローズアップしてほしい」(救急医療科・50代・男性)

誰もががんにはなりたくないし、早期発見したいものだ。ところが、がんの早期発見のために検査を受けている医師は、決して多くない。これって医者の不養生ということ?

「確かに医師は忙しい。ただ、検診が有効ながんは限られていますし、同僚に身体を診てもらうのに抵抗がある医師も多いのかもしれません」(石見医師)

「進行が緩やかながんは、検診を受ける意味は十分ある。非喫煙者の肺がんが急増していますが、非喫煙者がかかりやすい肺腺がんの進行は比較的穏やかで、早期発見すれば根治の可能性は高い。X線での早期発見は難しいので、30代でも40代でも、3~5年に1度、CTを撮ることをお勧めします」(鈴木医師)

 医療の進歩で、がんで人が死なない日は来るのだろうか。医師らの回答は、「間違いなく来る」「たぶん来る」「来るかもしれない」が35%、「来ない」が40 %、「分からない」が25%。意見が分かれた。

「もしも20年前に同じ質問をしたら、ほぼ100%の医師が『来ない』と答えたでしょう。いまは、『来ない』とは考えない医師が60%もいることに驚いています。医療が加速度的に進歩していることの表れだと思いますよ」(佐野医師)

(編集部・熊澤志保)

ストレスががんリスク高める? がんセンターが疫学調査発表

ストレスが高いと長期的に感じている男性はそうでない男性に比べがんにかかるリスクが2割高まるとの研究結果を19日、国立がん研究センター(東京)がまとめた。部位別では肝がん、前立腺がんでストレスの影響が強くみられた。喫煙や飲酒などがんのリスク要因となる生活習慣の影響が排除しきれないことから、センターは「今後、さらなる検討が必要だ」としている。

 研究は全国10カ所の保健所管内の40~69歳の男女約8万人を対象に、平成2年以降の研究参加時と5年後の2回、日ごろ感じているストレスについて答えてもらい、ストレスのレベルを「低」「中」「高」の3グループに分けた。さらに平均で13年間、健康状態を追跡し、長期的なストレスレベルの変化とがん罹患の関連を検討した。

 その結果、調査開始時と5年後のストレスがいずれも高かった男性のグループが、いずれも低かった男性のグループより1・19倍、がんになるリスクが高かった。ストレスが多い人は特に肝がん、前立腺がんが多かった。女性ではストレスとがんの関連はみられなかった。研究結果は、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。

「がんで死亡」本当? 日本が国際基準づくりに取り残される恐れ

15年前に乳がんになった女性が別のがんになって死亡したら、死因は乳がんか別のがんか。そんな「がんによる死亡」の統計で、日本が“世界標準”から取り残される恐れが出ている。その国のがんの治療水準や罹患(りかん)の傾向などを比較するにはルールやシステムの国際標準化が不可避。専門家は「日本もルール作りに積極的に加わるべきだ」と話す。(社会部 道丸摩耶)

■新システムの導入めど立たず

 現在、日本のがん統計は平成28年から始まった「全国がん登録」が中心だ。全国の医療機関でがんと診断された全患者が国のデータベースに登録され、がんの患者数や罹患率が算出される。死亡については、死亡届の死因にがんと書かれていたり、がんの罹患歴があったりした場合に、一定のルールにのっとって、人口動態統計でがんによる死亡と集計される。

 しかし、がんを患っていた患者が感染症にかかって死亡した場合や、いくつものがんにかかった場合、肝炎から肝がんとなり肝不全で死亡した場合など、死亡に関連する多くの死因からひとつの「原死因」を決めるとなると、医師によって判断がバラバラになる可能性がある。そこで一定のルールのもとで「がんによる死亡」を判断するシステムが必要となる。

 国立がん研究センターがん登録センター(東京都中央区)の松田智大・全国がん登録室長によると、日本が採用しているのは、世界保健機関(WHO)の定義に従い、米国のシステムを参考にした独自の「ACSEL」。ところが、国際的には「IRIS」という新しいシステムがドイツなどの欧州を中心に広く使われ始めており、米国も自国のシステムからIRISに移ることを決めたという。

 IRISを導入すると、がんによる死亡をWHOのルールにのっとって同じシステムで判断するため正確な国際比較ができるようになり、各国のがん対策の課題や優れた点が明らかになる。ところが、日本では新システムを導入するめどは立っておらず、システム開発の中心メンバーにも日本人は入っていない。

■アジアの視点取り入れ目指し発信

 松田室長によると、日本は「胃がん」や「肝がん」の患者が欧米に比べて多く、死亡診断書への記載も必然的に多い。

 ところが、IRISが欧米中心で作られると、こうした日本やアジア特有の記載がシステムにきちんと反映されるかをテストする機会が少ない。将来、日本が新システムを導入した場合、語学の壁もあり、死亡診断書にある疾病名が正しく反映されないなど、WHOの定義に従った原死因が正しく判断されない恐れがある。そうなると、日本の治療水準や対策が正しく評価されないことになる。

 松田室長は「一度作られたものを後から変えるのは難しい。最初から開発のコアメンバーに入る必要がある」と指摘。平成29年12月、がん登録や統計のルール作りを行う国際がん登録協議会の理事長に就任し、アジアの視点を取り入れたルール作りを目指して発信を行っている。

自分で発見できる数少ないがんとは?

◆がん克服のポイントは、早期発見、早期治療

がんの治療に大切なのは、早期発見と早期治療である。この概念は、近年、徐々に広まりつつあると思います。

最近、がん検診の有力な手段として注目を集めているPETも、まさに、この早期発見の切り札とも言える検査です。

また、いろいろな最新機器を取りそろえて、がんの早期発見を呼びかける検診センターも増えていますし、都心部ではホテルに宿泊するようなちょっとリッチながん検診コースなどもあります。
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◆自分で発見できるがんがある!?

確かに、がん検診は医師が行いますし、医師の詳細な診察と正確な診断が、早期発見、早期治療に有効であることは間違いありません。

また、それと同時に、からだへの負担が少なく、小さい異常も見逃さない検査法は年々進歩しています。

以前は、とても太かった胃カメラも、ここ数年、かなり細くなりましたし、口からではなく鼻から挿入する経鼻胃内視鏡検査が一般的になりつつあります。また、前立腺がんの早期発見にPSAという腫瘍マーカーが用いられるように、血液検査の守備範囲も広くなってきました。

しかし、実は、このような最新の機器を使わなくても、自分で発見できるがんがあるということは、あまり知られていません。
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◆乳がんの自己検診

医師による検診でなくても、自分で発見できるがんの代表、それが、乳がんです。

乳がん検診では、医師による触診、マンモグラフィーというレントゲン検査、超音波検査が行われます。確定診断のためには、生検といって、腫瘤になっている部分の細胞を一部採取し、顕微鏡検査にてがん細胞の存在を確認する必要があります。

しかし、これと並行して、月に1回、乳がんの自己触診をしておくことは、非常に大切です。実際、入浴中や、就寝中に、自分で何気なく触ってみて、しこりに気づいたということで受診される方も少なくありません。これも、立派な早期発見、早期治療と言えるでしょう。
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◆自己検診の意味と注意点

私が研修医の頃、先輩の先生に教えられた話があります。乳がん検診の意味は、乳腺の触診の仕方を患者さんに体験してもらうことで、あとの11ヶ月を患者さん自身でやってもらうということにある、といっても過言ではない。

あくまで、雑談の中で出てきた言葉ではありますが、それほど乳がんの自己検診が重要であるということのあらわれではないか、と思っています。

とは言っても、過信は禁物。最近は、ライフスタイルの変化の影響で、女性の乳がんが増えています。月に1回の自己検診に併せて、年に1回のがん検診という組み合わせが、一番おすすめの乳がん対策です。

がんの標準治療実施率72%。医療水準の「均てん化」ってなに?

標準的ながん治療を受けた患者は72%。前回より4ポイント増。

NPO法人がんノートの岸田徹です。29日、国立がん研究センターからがん診療連携拠点病院を中心とする2013年治療実態調査が発表されましたのでレポートします。

がんによる死亡率において、2015年までの10年間の減少幅が15.6%にとどまり、国が掲げる20%減の目標を下回りました。

その状況を踏まえ「喫煙、検診、均てん化」の分野においてさらなる取り組みの強化が求められています。

「喫煙」「検診」については、みなさん誰もがご存じですよね?
でも「均てん化」ってなんでしょうか?

均てん化とは、がん対策情報センターが運営するがん情報サービスの言葉を借りると、「がん医療において、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術などの格差の是正を図ること」をいいます。

がん医療の「均てん化」が行われることで、患者は安心してどの病院でも同じ治療を受けることができます。

今回、がん診療連携拠点病院を中心とする全国297施設で2013年にがんと診断された患者45万3660名において

・標準治療、検査9項目の実施率
・標準治療を行わなかった場合の理由

の項目を国立がん研究センターが調査を行いました。

その結果、今回の調査では標準的ながん治療を受けた患者は72%となり、前回より4ポイント増となりました。
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標準治療の未実施理由を加味すると9科目中6科目で90%以上準拠

前回の調査で実施率の低さが問題となっていた臓器の枠を越えた横断的な指標における制吐剤の使用の有無について、昨年68.7%の実施率であったの対し、本年度は73.2%にまで上昇しました。

さらに、標準治療の未実施の理由を加味すると9科目中6科目で90%以上、標準治療に準拠しているという結果になりました。

例えば本調査における大腸がんの場合、標準療法実施56%に加え、未実施理由などを加味すると94%が標準療法に準拠されていることになります。

未実施理由は「患者家族の希望」や「臓器の障害」「合併症」などが挙げられ、患者の希望や体調に十分配慮された治療がされていることが見受けられます。

データを蓄積していくことが「均てん化」の評価にとって大切

今回の調査へのがん診療拠点病院の参加率は、昨年は55%であったのに対し今年は68%と上昇しています。

このような施設間のデータを蓄積していくことが均てん化の評価にとっては大切なことになります。

今回重要なのは適切な治療方針の検討が行われたのかどうかであり、施設間の格差に注目するものではありません。

それは標準治療を実施するか否かは、ステージや全身状態だけではなく様々な要素により判断されるためで、これらの結果についての解釈には注意を払う必要があるからです。

標準治療が基本ではありますが、患者の全身状態、患者の生活、心情、環境、家族、多くのことを検討した上で患者にとってベストと判断される治療が選ばれるべきですよね。

今後、より多くのがん種など、幅広いがん医療の均てん化評価を計画しているとの報告ですので、調査により多くの施設が参加し「均てん化」を通じて各地の治療に活かしていってほしいと思います。

結腸がんのリスクが倍になる可能性

歳を重ねていくと同時に、結腸がんになるリスクも増えていくと言われていますが、実は30歳以下でも、そのリスクが倍になることがあるようです…。
 大腸がんには2種類あり、結腸がんと直腸がんがあります。この大腸がんのリスクは、高齢者の間では低下してきているとの発表が最近なされています。ですが、この素晴らしい兆候の反面、悪いお知らせもあるのです。それが若者の間での大腸がん発症率に、急激な上昇が確認されているということなのです。それがたとえ20代という若さであっても…。 
 
 アメリカがん協会(ACS=American Cancer Society)の新しい研究によると、大腸がんのリスクが最も低かった1950年頃に生まれた人と比べて、1990年に生まれた人は大腸がんのなかでも結腸がんのリスクが2倍に増え、直腸がんのリスクは4倍にも増えることがわかりました。 
 
 実際、直腸がんと診断された10人に3人は、55歳以下の患者です。そして問題は、大腸がん検診が50歳以下の人には奨励されていないところにあります。

大腸がんと肥満

 現在、大腸がんの大半は、依然として50歳以上の人に発症しており、若者の割合はその10%に該当します。しかし、ACSの疫学者であり筆頭著者の公衆衛生学修士のレベッカ・シエゲル氏によれば、若者のグループの割合は劇的に高まっているということなのです。 
 
 その理由はまだ明らかになっていませんが、彼女は行動要因がこの上昇に部分的でも関係しているだろうと指摘しています。大腸がんのリスクを高める要因の中には、過剰な体重の増加・運動不足・赤身肉の大量摂取・野菜や果物・乳製品の低消費などが含まれます。 
 
 これらは同様に、単純に体重を増加させる要因でもあるため、大腸がんが肥満の蔓延と並行して増加したといっても驚く必要もありません。このことは、肥満傾向の高まりに拍車をかける同様の問題(運動不足や不健康な食生活)が、大腸がん発症率の上昇の原因にもなるという論理を裏付けることにもなるのではないでしょうか。

検診指針状況を改善も必要

 この研究は、若者のがん発症率上昇に関して憂慮すべきことであると指摘する一方、それだけでは国の検診指針状況を改善するのには十分にはなりません。しかしながらジエゲル氏は、ACSの委員会において現在推薦状を見直しているところだと指摘します。 
 
 検診を推し進めることと同時に、検診の効果を最大限に引き上げるよう努力していけば、被害を最小限に抑えることの両方のバランスを保てるはずだ、と彼女は付け加えています。 
 
 その一方で彼女は、便や直腸に血が混ざったり、筋痙攣、数日間続く排便パターンの変化など、直腸結腸がんの兆候について理解を深めるようにと訴えてもいます。※(無視してはいけないがんの徴候TOP10はこちら!) 
 
 さらに、「親や兄妹にポリープの病歴がある人、または家族内にがんを患った人がいる人は、遅くとも40歳までにがん検診を始めるべきだ」と、ジエゲル氏は言います。また、自分が炎症性大腸炎を患っている場合も、直腸結腸がんのリスクを高める可能性があることから、がん検診を受けるのが望ましいと言っています。

データが実証 高齢がん患者は「治療なし」も選択肢

コラム【Dr.中川のみんなで越えるがんの壁】

 がんの治療は、手術と放射線、抗がん剤が3本柱で、根治できるのは手術と放射線です。血液がん以外の固形がんを抗がん剤で根治することはまずできません。これがセオリーですが、75歳以上の高齢者はケース・バイ・ケースで“治療しない”という選択肢もあり得るということをご存じでしょうか。

 国立がん研究センターは今年8月、がん治療の実態調査を発表。それによると、ステージ4の大腸がんで治療しなかった人の割合は、40~64歳で4.6%でしたが、65~74歳で6.7%に上昇。75~84歳は14.7%に急増し、85歳以上は36.1%に上っています。

 ステージ4の胃がんはその傾向がさらに強く、75~84歳で24.8%、85歳以上では56%と2人に1人です。ステージ4の肺がんも同様で、85歳以上は58%が治療を受けていません。ほかのがんのステージ4でも、年齢が上がるほど「治療なし」が増えています。

 俳優の愛川欽也さんは2年前の4月、肺がんで亡くなりました。80歳でした。その前年の12月にがんが見つかったときには末期で、入院を必要とする治療を拒否。通院で受けられる放射線のみにとどめたのは、長寿番組への出演を切望したためと報道されました。愛川さんのケースは必ずしも「治療なし」ではありませんが、その根底にある考え方は共通します。よりよい生き方、自分が望む最期を全うするために、「治療なし」や「最小限の治療」を選択するのです。

 実際、国立がん研究センターの調査では、ステージ4の肺がんの場合、75歳未満だと抗がん剤治療を受けた方が有意に長生きでしたが、75歳以上では延命効果が認められませんでした。75歳以上の対象者は19人と少ないため、科学的に判断するには大規模調査が必要ですが、愛川さんのケースも加味すれば参考になるでしょう。

 特に前立腺がんと甲状腺がんでは、「治療なし」がモノをいいます。前立腺がんは悪性度が低いタイプが少なくなく、ガイドラインにも治療せず経過観察する「監視療法」が明記されているほど。1センチ以下の甲状腺がんも同様の考え方があります。そういう微小な甲状腺がんでリンパ節を取っても取らなくても再発率が変わらないことが分かっています。そして、「迷ったら積極的な方法をとらない」が医療の原則だと思っています。全ての治療にはマイナスの面もあるからです。

(中川恵一/東大医学部附属病院放射線科准教授)

がんを経験したからわかること。「AYA世代のがん」ってなに?

はじめまして、NPO法人がんノートの代表理事の岸田徹です。ぼくは5年前の25歳の時と、その2年半後の27歳の時に「がん」になりました。今はおかげさまで治療が奏功して大丈夫です(だと思っています)が、その経験から得られたものや伝えるべきことなどを出来るだけカタくならずにホウドウキョクのなかでお伝えしていきたいと思っています。

2017年のがん患者は約101万人!?

今回は日本のがんの現状について少しご紹介したいと思います。 国立がん研究センターは、今年の9月に2017年に新たにがんと診断される人は101万4000人とする予測を発表しました。

がんで死亡する人は37万8000人との予測、それぞれ過去最多を更新だそうです。

ただ、いかんせん、今年新たに約101万人ががんになると言われてみても今イチピンと来ない・・・。

101万人って、たしかに、多いんだろうとは思うけど、どれくらい多いんですかね~。

そこで、何気なく開いてみたデータ。
都道府県別人口データ!
なんか手堅い!(笑)

総務省統計局の平成28年都道府県別人口の動向によると、

100万人前後の都道府県は、

富山県:1,061,000人
秋田県:1,010,000人
香川県:972,000人
和歌山県:954,000人

となります。
1つの都道府県分の人口!!
が毎年がんになると考えれば、多そうな気がしませんか?
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AYA世代のがんとは!?

10月24日には6年間の国のがん対策の指針となる第3期がん対策推進基本計画が閣議決定されました。第3期のがん対策推進基本計画は、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」という目標のもと、「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」の三つを柱とする2017~22年度の6年間の計画です。

この中に、実は普段は見慣れない言葉があるんですよね。
それは、「AYA世代のがん」という項目。

AYAとは、Adolescent and Young Adultの略で15歳~39歳までの思春(Adolescent)・若年成人(Young Adult)のことを言います。

ヤングアダルトはよく聞くかもしれませんが、アドレッセントは馴染みがない言葉です。個人的にも。

まぁ、その世代の年代の人のことをAYA世代と呼び、その年代のがん患者や経験者のことをAYA世代のがん患者(経験者)というわけです。
今回の基本計画ではAYA世代のがんという言葉が初めて盛り込まれました。

なぜ盛り込まれたのか。
それは、「世代特有の問題」が浮き彫りになってきたからなんですね。

AYA世代は、さまざまなライフイベントがある世代です。
例えば、学校・受験・就職・就労・恋愛・結婚・出産などなど……。

第2期基本計画の中間評価にて、「AYA世代への対策については十分な取り組みが行われていないね」となっていたので、第3期ではちゃんと明記されるようになりました。

ただ、AYA世代はスポットが今まで当たっていなかったのにも理由があります。

その理由のひとつに、AYA世代のがん患者の数が挙げられます。

先ほど、約101万人が2017年に新たにがんになるとお伝えしましたが、AYA世代の患者はその約2%、約20,000人(※1)なのです。

AYA世代のがん患者は、全国に一定の割合で存在するけど、人数が少なく、医療機関も医療者も経験数も少ない。

そして上記のようなライフイベントを迎える上で世代特有の問題もありました。

今回、国の計画にも「AYA世代」という言葉が組み込まれましたので、若いがん患者は是非施策に注目していきましょう。

※1 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2013年)

AYA世代のがん患者の声を。

今、国や団体がAYA世代の患者への施策を少しずつ展開してくれています。

その中では例えば、若年がん患者の妊よう性(にんようせい)温存の問題も大きく取り上げられています。
妊よう性とは、シンプルにお伝えすると、妊娠のしやすさ、子どもをもつ(妊娠)ための能力のことです。

ぼくも治療によって、妊よう性が低下したひとりです。
そう。シンプルに治療による男性不妊ですね。(詳細はまた今後の記事にて!)

その時に欲しいと思った少しセンシティブな情報、患者側のまとまった情報、生活に関する情報は当時“ほぼ”ありませんでした。

「ほかに同じ治療をした人の性機能はその後どうなったの?」
「がんになっても恋愛できたの?結婚できたの?」
「そのあと社会復帰はどうしたの?」
「お金はどう工面したの?」
といったものです。

もちろん、医療の情報については、主治医や医療機関に訊けば教えてくれます。
しかしそれ以外の情報も患者にとっては必要で大事です。
だって、がんになっても生きていく上で生活とは切っても切り離せないものだから……。

そのために、生きていく上での悩みや問題を克服したり解決したがん経験者の生の声を伝えシェアする、インタビューWeb番組「がんノート」をぼくははじめました。

今から約3年前のことです。
今までですでに70回以上のがん経験者のネット生配信を行ってきました。そこからわかってきたこと、その他ニュースを織り交ぜながら、今後「がん」に関わることをメインに綴っていきたいと思います。

どんな「がん」にも共通する“危険信号”とは?

◆世に様々な「がん」はあれど……

がんは、体の中の様々な臓器にできる可能性があります。

「ということは、早期発見のために注意すべき初期症状も多種多様になるということ?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、がんの特性を考えれば、多くのがんにとって共通の初期症状の特徴があります。

ここでは、がんの早期発見に役立つ「がんに共通の危険信号」について、お話ししたいと思います。
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◆出血、もしくは血が混じる

がん細胞は急速に増殖するので血管が非常に豊富です。これらの血管は、「新生血管」と呼ばれ、がんの増殖には欠かせない大量の酸素と栄養素をがん細胞に届ける役割をします。

この新生血管は、通常の血管と少し構造が異なり血管壁がもろく、ちょっとした物理的刺激で破綻し出血します。食道や胃、大腸などの消化管では、食べ物や便が通過するときの刺激で、がんの表面から出血してしまいますし、気管や気管支では、怒責による血圧の上昇でも出血します。

そうなると、当然のことながら、便や痰に血が混じってきますし、症状が進行した場合には、血液そのものが、下血や喀血となって出てくることがあります。腎臓がんの症状のひとつは、「無症候性血尿」と呼ばれ、特に痛みもないのに、尿に血が混じるというものですし、女性の場合には、不正出血といって月経周期とは関係なく出血がある場合、子宮がんの可能性も考えなくてはなりません。

いずれも、体から血液そのものや血液が混じったものが出てくるということは、通常では見られない現象です。もちろん、何の心配もない場合もありますが、がんの初期症状の可能性も少なからずあると考えておいた方がよいでしょう。
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◆管が詰まることによる症状

がんは、その増殖によって固いできものを形成していきます。このできものが大きくなるにしたがって、通過障害をきたす場合があります。たとえば、大腸では、がんによって管が細くなり、便が詰まってしまうことがあります。また、少しわかりにくいかもしれませんが、肝臓や膵臓からの消化液の流れが、膵臓にできたがんによって閉塞してしまうこともあります。尿の流れが妨げられるような位置にがんができると、腎臓から尿がうまく流れない状態になってしまいます。

その結果、腸閉塞や、皮膚が黄色くなる黄疸、腎臓が腫れてしまう水腎症と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。これらはいずれも、ある程度の進展によって起こってくることが多いですが、できた場所と状態によっては、初期症状のひとつとして見られることがあります。

◆がんの早期発見のために

今回ご説明したように、出血や閉塞といった症状は、がんの部位によらず共通のものですので、ぜひそのような症状が出た場合には、医療機関を受診し、先生に相談してみられることをお勧めします。それとともに、もうひとつ、気をつけていただきたいことがあります。

極めて非科学的なのですが、私自身が患者さんとお話ししていて感じるのは、「何となく、いつもと違う感じがした」とか、「今回はまずい、と思った」といった風に、患者さんご自身が、「何か」を感じられていることも多いということです。もちろん、心配しすぎる必要はありませんが、こういった第六感も、時と場合によっては、早期発見の隠れた特徴かもしれません。症状にしても、直感にしても、もし、気になることがあれば、ぜひお近くの医療機関にご相談くださいね。

血液1滴でがん13種類診断 死亡率を劇的に減らす次世代の早期発見検査

 まさに驚異的な技術である。1滴の血液から何と、13種類のがんの有無が同時に診断できる検査法を、国立がん研究センターなどの医療チームが開発したのだ。 この検査法は、がんが分泌する微小な物質を検出する方法で、「腫瘍マーカー」を使う現在の血液検査と比べ発見率が極めて高く、ごく初期のがんも見つけられるというのが特長だという。その13種類は、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫だ。

 同チームは今後、がん患者らを対象とした臨床研究を進め、数年以内に国の承認を得る方針だといい、センターの落谷孝広・分子細胞治療研究分野長は「患者の体への負担が少ない比較的安価な検査になる。早期発見できれば、より効果的な治療ができ、医療費削減にもつながる」と話している。気になるその検査費用は、2万円程度になる見込みだ。

 日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡するというがんは、早く発見すればするほど、その後の生存率が高くなることは周知の通り。胃がんの場合、ステージIで発見できれば5年相対生存率は97.8%。IIになると66.7%、IIIでは半分以下の49.1%にまで落ち込んでしまう。今回開発された方法は、検査という壁を低くし、早期発見により死亡率を劇的に減らす可能性を秘めているのだ。

 「従来からの腫瘍マーカー検査は、主にがん細胞が死ぬ時に出るタンパク質を検出するもので、ある程度がんが進行しないと発見が難しいのです。しかも、正確性にも問題がある。ところが、次世代型とも言えるこの検査法は、初期のがんでも分かるため、その後の治療方法の選択肢も格段に広がる。もし実用化されれば、もはやがんは死の病ではなくなりますよ」(都内大学病院内科医)

 山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏も、こう驚きを隠せない。 「そもそも、がんの発生原因もいまだ不明なんです。それなのに、1滴の血液で13種類のがんが分かるなんて夢物語じゃないですか。もし本当だったら、私だって診て欲しい。ただし、この手の話は、まず学会で正式に認められてからですね」開発したチームは、がんが血中に分泌する「マイクロRNA」と呼ばれる物質に着目した。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターなどに冷凍保存されていた約4万3000人の血液を使い、前述の13種類のがんに特徴的なマイクロRNAを調べたところ、それぞれのがんに2~10種類の特有のマイクロRNAがあることが判明した。

 「この分泌量の変化を調べることで、どのがんも95%程度の確率で発見できたという。たとえば人工知能を分泌量の分析に利用すれば、精度をさらに高められる可能性もあります」(医療関係者)調査で使用された長期間保存の血液は、マイクロRNAが変質している恐れもある。そのため今後、新たにがんと診断された3000人以上の新鮮な血液を採取し、有効かどうかを調べる臨床研究を進めるという。

 「チームは、まず乳がんの検査法としての承認を目指したいとしている。検査によって、がんの有無、さらには“どのがんを患っているのか”までがほぼ確実に診断できるようになれば、患者への負担は相当減る」(医療関係者) がんの場合、自覚症状がなくても病気が進行しているケースは稀ではない。発見できたはいいものの、診断した医師に「もっと早い段階で来てほしかった」と言われ、ショックを受ける患者も多い。かと言って、一般的な健康診断レベルでさえ、発見するためには大腸がんなら便潜血検査、乳がんならマンモグラフィーなど、部位ごとの検査が必要となり、手間も時間もかかるのが現状だ。

 「そのため、がん検診ともなれば受診する人の割合は3割程度と低いまま。もちろん、その検診も、がんの種類ごとに受けなくてはならず、自費で受けるとかなりの額になる。結果、治療も後手に回ってしまうのです。そのため、もっと手軽に、できれば1度に複数のがん検診ができる技術が求められていたのです」(医療関係者)

 ただし、いざがんと診断された場合、治療についてはまだまだ進歩が求められているのも事実。内科医で関東医療クリニック院長の松本光正氏も、現状に対してこうした厳しい見方を示す。「確かに今回の開発は、科学の進歩でしょう。がん恐怖症の人には朗報ですが、では、見つかった後、治療法があるのでしょうか? がんの治療法はいまだ皆無の状態。診断技術は進歩しましたが、治療がないわけです」

 加えて、世田谷井上病院の井上毅一理事長はこう言う。「がんセンターの検査法に確実さがあるかどうかが問題です。部位にもよるが、がんであるかどうかは触診で分かる。いまはまず、医者としての能力も求められている。それに、がんセンターのような大きな病院はともかく、最初はどこでもやれるわけではない。おそらく実用化するには5年はかかるでしょうね」

 いずれにせよ、がん治療法の進歩とともに、新たな段階に入りそうな早期発見の診断法に期待したい。

【1分で判明!病気チェック】長時間のPC作業で心や体に異状 VDT症候群

★手のしびれやイライラ感などの症状が現れたら即受診を

「IT眼症」ともいわれ、長時間のディスプレイ作業によって目を中心に体や精神にも症状が現れる病態の総称。とくに老視がはじまる40代は要注意。仕事に欠かせないディスプレイ作業だからこそ、十分な対策が必要だ。

【6時間以上は要注意】

 VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)とは、コンピュータを使用するための表示装置のこと。PC、携帯電話、ゲーム機、iPadをはじめとする情報端末など、誰もがVDTに囲まれた生活をしている。

 厚労省が2年前に行った実態調査によると、VDT作業をする人が訴える症状では、目の疲れ・痛み(62・3%)、首や肩のこり・痛み(51・3%)、腰痛(18・5%)、頭痛(16%)と目の症状が最も多い。

 VDT症候群に詳しい神奈川歯科大学附属横浜クリニック・眼科の原直人教授は「VDT作業を平日に6時間以上している人の訴えが圧倒的に多い。大事なのは、そのまま放置して症状を悪化させないこと」と警告する。

【うつ状態にも】

 はじめは目の疲れや首・肩のこりだけでも、慢性的になると次第に“手のしびれ”などの神経症状が現れてくる。また、イライラ感などの精神症状が進展すれば“うつ状態”となる恐れもあるから要注意だ。

 原教授は「作業中の1時間に10分程度の休憩を挟むなど、VDT作業中の対策をすすめる。いつまでもPCになじめない人の精神的ストレスは大きい」と指摘する。

 症状は視覚系、筋骨格系、精神系と多岐にわたる。抑うつ症状が強いようなら早めに心療内科の受診も必要だ。

【PC用メガネを用意】

 長時間の連続作業の他に、原因で見落としやすいのは眼鏡の不適合だ。 「その中でも過矯正にはとくに要注意。日常生活の視力に合わせたメガネでVDT作業をすると、ディスプレイまでの距離が短いので目がピント合わせをしようと過度の緊張が続き、非常に疲れる。

 また、老視のはじまる40代は脳が指令を出しても目のピント合わせが追いつかず負担が大きくなる。症状が強く出やすい世代です」(原教授)

 老視の人の対策は、VDT作業時には「近々両用」や「中近両用」のPC用のメガネにかけ直すこと。コンタクトレンズの場合も同じで、コンタクトの上からメガネをかけて屈折調整してもいいという。

 「ドライアイは目の疲れにつながるのでヒアルロン酸入りの点眼薬をこまめに付けたり、目の周囲を温めると疲労やドライアイを防止できる」と原教授。

 仕事中の目のケアは忘れずに。

★「VDT症候群」チェックリスト

□目が非常に疲れる、痛い

□目が乾く、または涙が出る

□目がかすむ、ぼやける

□首から肩・腕がだるい

□首や肩のコリがひどい

□背中がだるい、痛い

□手指がしびれる

□頭痛、めまいがする

□いらいら感、不安感がある

※VDT作業をしていて、上記のような症状が慢性的に現れるようなら疑いがある。

神奈川歯科大学附属横浜クリニック・眼科/原直人教授作成

食べ物だけじゃない あの習慣が「がんのリスク」を高める

食道がんの手術後に難病を患い、中村勘三郎さんが急逝した(享年57)。また、お笑い芸人や俳優として活躍していた宮迫博之さん(42)が胃がんであることを公表している。がん治療が進んできたとはいえ、働きざかりを急襲する「がん」はやはり恐ろしい。がんの一因に食生活があると言われているが、食べ物だけではない。働きざかりにありがちな「不規則な生活」や「過労」も体の免疫力を失わせ、がんのリスクが高まるという。

 自律神経失調症などを引き起こすような「ストレス」も、がんへの道筋となることもある。働きざかり世代の生活習慣は、がんのリスクだらけなのだ。

 一方、がんは、早期発見、早期治療が重要だ。宮迫さんは今回、6年ぶりに検診を受けたことで、胃がんが発見されたという。国立がん研究センターの森山紀之がん予防・検診研究センター長はこう指摘する。

「日本人はなかなか検診を受けません。例えば乳がんの死亡率は、検診を7、8割が受けるアメリカやイギリスでは下がり、2割しか受けない日本人では上昇しているのです」

 森山センター長は、自身の机の横に小銭を入れる箱を用意している。気がついたときに小銭を放り込んでいると、1年で検診代がたまるという。

「パチンコや競馬代の一部でもいい。少しずつためて楽しみながら検診を受けてはいかがでしょうか」

 早期発見が、大切な家庭や職場を守ることにもつながるのだから。

その痛み大丈夫? 腰痛にがん、感染症の可能性も

「国民生活基礎調査」で、自覚症状がある病気やケガのうち、腰痛を訴える人は男性でトップ、女性では肩こりに続き2位。そのなかには、意外なところに原因があるケースも。

 ポピュラーな病気だが、東京慈恵会医科大学整形外科の曽雌(そし)茂准教授は、「慢性化している腰痛の8割は原因不明」と話す。

「残りの2割は筋肉や骨、椎間板、神経のどこかに原因が見つかりますが、検査をしても原因が見つからないことが多い」

 とはいえ、腰痛の中にも気をつけたい痛みはある。安静にしていても、どのような姿勢でも痛みが続く場合だ。がんや感染症の可能性も考えられる。

 腰や背骨から発生するがんは多くないが、内臓のがんが背骨に転移することはまれではない。特にがんが背骨へ転移し、腰が痛むときは、病状が深刻化していることが多い。

「がん以外の病気では、腎臓病や尿管結石なども考えられます。内臓の中でも背中に近い位置にある臓器に異常があると腰が痛むことがあるのです」

 整形外科の病気以外で起こる腰痛は、痛みだけでなく微熱や体重の減少、全身がだるいなど、他の症状も伴うことが多い。自覚しやすい症状なので、いつもと違う腰痛のときは内科で調べてもらうことが大切だ。

遺伝子検査で「ステージ-1」のがんを発見――最先端医療で見えた日本の医療鎖国


スティーブ・ジョブズを死に至らしめた病、「膵臓がん」。発病後の生存率が低く、再発リスクが高い、極めて困難なこの病気を克服した人物がいる。それは、ハイパーメディアプロデューサーこと、高城剛氏である。
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 なぜ高城氏は、がんで命を落とすことがなかったのか。その秘密は、いい意味でのミーハー心にあった。今、医療の現場は、ゲノム解析やAIの普及により、根本的に変わりつつある。そんな変化に興味を持ち、一冊の本にまとめると決めた矢先のことだった。自らが検体となり様々な検査を受けていたところ、超初期のがんが見つかったのだ。
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 リサーチを重ねる過程で、高城氏は偶然にも膵臓がんを発見し、発病リスクを極めて低く抑えることができた。その顛末を詳しく記したのが『不老超寿』(高城剛/講談社)である。不老“超”寿との表記は、「ハイパーエイジング」と高城氏が名付けたところからきている。ITを駆使した先端技術の医療のことを指す。今、医療の現場は「ハイパー」な進化を遂げているのだ。
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■遺伝子検査でステージ-1のがんを発見

 高城氏が診断された膵臓がんのステージは「-1」。普通、がんの進行具合はステージ1~4で表す。それがマイナスとはどういうことか? 高城氏が受けたがん検査は「ミアテスト」というものである。この検査は今までにない遺伝子の状態を調べるものだ。
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 カギとなるのは、血液中や唾液などに含まれる遺伝子の塩基情報である「マイクロRNA」(mi-RNA)である。このマイクロRNAは、「他の遺伝子の発現を調整するという役割」がある。つまり、がんなどの病気が発症すると、血液中のマイクロRNAの種類が変化する。この検査では、今まで見つけられなかった、ごく微少ながん細胞や転移の芽を発見することが可能だという。
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 このミアテストの結果は、高城氏が数ヶ月以内に膵臓がんを発症する可能性を示唆していた。膵臓がんといえば、進行速度が極めて速く、見つかった時点では手遅れになることが多い。幸いにも「マイナス」が付くほどステージは低くごく微少ながんであった。

■安価なビタミンCでも治療ができる

 ではこの微少ながんをどう治療したのか。医療行為という意味ではほぼ、ひとつだけ、「高濃度ビタミンC点滴」である。これは今や世界のがん治療では定着しつつある、治療法。抗酸化物質であるビタミンCを大量に静脈に投与すると、強い抗酸化作用を誘発し、がん細胞のみを死滅させることができるのだ。しかも正常な細胞は傷つけず、副作用などはほぼない。
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 その他にも、放射線曝露を抑えるため、飛行機での移動をなくす。仕事を減らすなど、体内外のストレスを減らす努力。そして健康的な食事。治療と同時にこれらを心がけた。 そして3ヶ月後…。再び、ミアテストでマイクロRNAの値を調べると、高城氏の膵臓がんの発症リスクは大きくレベルが下がっていたのだという。
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 一般的にがん治療といえば「抗がん剤」で、毛髪が抜けるなど副作用のリスクもある。しかし高濃度ビタミンC点滴なら、このような副作用に苦しむことはない。ではなぜ一般に普及していないのか。高城氏は次のように推測する。
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L-アスコルビン酸(ビタミンC)は、製造のパテント(特許権)がすでに切れている古い薬で、単価も非常に安い。それゆえいくら研究を重ねて治験データを集めたところで、それが利益に結び付くとは考えにくく、また本当に効果的であっても、あまり儲からないのであれば、ビジネスとして力を入れる理由がない。(中略)
いまや製薬会社が儲からないからと放っておいているものの中になにか光があるのではないか
 抗がん剤は世界中で年間数兆円も売り上げる。製薬会社にとってはいわば「金のなる木」である。安価なビタミンCががんに効くとなれば一大事である。そのため研究には熱心ではない。むしろネガティブキャンペーンを繰り広げているのではないかと、医療関係者は勘ぐっているという。
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■自分に最適な手段をさがそう

 高齢化の一途をたどる日本では、医療費は拡大し続け国家の財政を圧迫している。高城氏が受けたミアテストなどのように、「未病」段階で病気を防げれば医療費は大幅に削減できる。また治療法も、「日本の常識」ではなく「世界の常識」を取り入れれば、もっと費用を抑えることもできる。けれどもそれは、製薬会社の売り上げを減らすことも、また医療従事者の数を減らすことにもなりかねない。日本の医療業界の体質を変えなければ、数年ののちに社会保険は破綻する可能性があるにもかかわらず。

 本書ではITの力を医療に用いた最先端の医療を紹介している。けれども結果として目に付くのは、日本の医療業界が既得権益をかたくなに守ろうとする姿だ。その結果として国民の負担が増えるのが目に見えている。こんな時代に医療とどう向き合えばいいのか。高城氏は次のようにも語っている。
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「国際的な見地」と「個別化」
 厚生労働省に製薬業界や医療業界との癒着が絶対にないとは言い切れない。それなら他国へ目を向けるべきだ。海外の論文や治療法に目を広げてみること。そして「遺伝子検査」など最新のテクノロジーが導き出す、「体質」に合った治療を行うこと。この2点に注目すべきだと。
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 本書では、国内外で受けられる「最新三つ星検査」を網羅している。また細胞レベルで若返りに成功した人物を紹介することや、未来の医療の予測も記されている。これらは今、病に悩んでいる人には一縷の望みとなり、いずれ病に罹る人も知って損はない情報だ。テクノロジーと同時に進化した医療を本書から学ぶことは、転ばぬ先の杖となることであろう。

喫煙男性の肺がんリスク、ビタミンBサプリの多量摂取で上昇か

ビタミンB6とビタミンB12のサプリメントを長期にわたって多量に摂取した場合、男性の肺がんリスクが高まる傾向があることが分かった。特に喫煙習慣のある男性の場合、発症リスクはビタミン剤を取っていなかった人たちに比べ、2~4倍ほど上昇していたという。

米科学雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)」に先ごろ掲載された論文は、米国に住む年齢56~70歳の7万7000人以上の過去10年のビタミンBサプリメント摂取についてのデータを収集、分析結果をまとめたもの。

調査対象は、米国立衛生研究所(NIH)が実施しているサプリメントに関するコホート調査(長期にわたる観察研究)、「ビタミン・アンド・ライフスタイル(Vitamins and Lifestyle、VITAL)」の参加者だ。VITALは、ビタミンとミネラルのサプリメント摂取とがん発症リスクの関連性を明らかにする目的で行われている。

分析の結果、肺がん発症リスクが最も高かったのは、10年にわたりビタミンB6を1日当たり20mg以上、またはビタミンB12を同55マイクログラム摂取していた男性喫煙者だったということが分かった。喫煙習慣がある男性の発症リスクはビタミンのサプリメントを取っていなかった人たちに比べ、ビタミンB6を摂取していた場合は3倍、ビタミンB12を摂取していた場合は4倍に高まっていた。

また、非喫煙の男性が肺がんを発症する危険性は、これらのサプリメントを取っていなかった人の2倍だった。女性の肺がんリスクとこれらのサプリメント摂取の関連性は、確認されなかった。

調査では、対象者の年齢や人種、学歴、アルコール摂取量、体格指数、肺がんの家族歴など、結果に影響を与える可能性があるさまざまな要因についても考慮した。それらの要因を含めた分析結果でも、全体の傾向として見られる結果に変化はなかった。

結果をまとめた論文の主著者は発表文で、「データが示すのは、喫煙習慣がある男性が長期間にわたって多量のビタミンB6とB12を摂取し続けた場合、肺がん発症率が高まるということだ。懸念すべき結果であり、今後さらなる調査が必要だ」と述べている。

NIHが推奨するビタミンB6の摂取量は、19~50歳の場合は男女ともに1日当たり1.3ミリグラム。51歳以上の場合、男性は同1.7ミリグラム、女性は同1.3ミリグラムとされている。また、ビタミンB12の推奨摂取量は、14歳以上の男女ともに同2.4マイクログラムとされている。今回の調査で明らかになった肺がん発症の危険性を高める摂取量は、NIHの推奨量を大幅に上回っていた。

過去にはビタミンBサプリメントと肺がん発症の関連性について、喫煙習慣の有無にかかわらずリスクを低下させる可能性があるとの研究結果が報告されていた。だが、今回の調査よりも相当に小規模の調査だった。

一方、今回発表された結果については、観察研究の結果であり(この手法を用いた全ての結果と同様)、判明したのは因果関係を証明するものではなく、相関関係を示すものだという点に注意が必要だ。より多くの参加者を対象とした大規模な調査が現在、引き続き行われている。

座っているのはがん(癌)の原因!?

今、座っている貴方は、すぐに立ち上がった方がいいかもしれない……。アメリカがん研究所の会議で、座っている時間が長ければ長いほど、がん発症率・死亡率が上がるという説が発表された。

毎日体を動かすことががん予防に効果的ではあるが、例え毎日エクササイズしている人であっても、座りっぱなしの状態が長いと、癌発症率が上がるというから興味深い。

研究者ネヴィル・オーウェン氏によると、成人は平均9.3時間を座った状態で過ごし、6.5時間を軽い運動をして過ごしているそう。だが、この6.5時間をどんなにアクティブに過ごしたとしても、9.3時間が座ったままだと、がんになりやすいという。

意識して運動していても、大丈夫だとは言い切れないのである。がん予防の鍵は、1時間に1、2分、席を立つなり体を動かすこと。日々、長時間フライトの合間に席を立つのと同じ感覚で過ごせば良い。

アメリカでは、年間4万9000件の乳がん症例と4万3000件の大腸がん症例が、この運動不足に寄与するものだという。人々が座っている時間を短くするだけで、年間10万人近いがん患者数を減らすことができ、医療費も抑えられるとあれば、国民も国も万々歳である。

ガンにならずに済んだのに...という発症例は意外に多いと判明

やはり早めの治療がカギなのですね...

いまや先進国の死因トップを占め、多くの人の命を奪って人類最大の敵となっているガンに関する新研究論文で、意外にもガンにならずに済むケースは少なくないという指摘が出されていますよ。

若い人ほど、早期に手を打つことでガン患者となってしまうことを避けられる確率が高まるみたいですね。

International Agency for Research on Cancerが184か国で幅広く実施した調査によると、2008年にガンで死亡してしまった世界の750万人のうち、その実に150万人は、ガンに発展する前の段階の感染症を適切に治療しておけばガンにならずに済んだ可能性が高いとされています。

とりわけ四大要因に挙がっているのは、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルス感染症、ヘリコバクターピロリ菌胃炎で、早期の治療を怠ることで、肝臓ガン、胃ガン、子宮頸ガンなどへと発展してしまったケースが数多く確認されているみたいですよ。

ガン治療に関しては次々と新発見も続いており、まだまだこれから画期的な治療法の登場も期待できそうですが、やはり早い段階で手を打っておくのに越したことはなさそうです。

自分は若いから大丈夫さ~なんて決めてかからず、面倒くさがらずに検診もきちんと受けるようにしないといけませんね。

下咽頭がんは飲酒が原因 進行早いので違和感ならすぐ医者へ  

人間の咽頭は鼻に近いところから上中下に分類され、下咽頭は喉仏の後ろ側にあたる。食物は中咽頭から下咽頭を経て食道、胃へと流れていき、鼻腔からの空気は上咽頭、中咽頭、喉頭を経て気管から肺に入る。

ノドの奥の食道と気管の分岐に近いところにできるのが、下咽頭がんだ。下咽頭がんの危険因子は喫煙と飲酒で、特にアルコールが体内で分解されて生じるアルデヒドが強力な発がん物質となる。

 酒に弱いのに鍛えて強くなった人は、本来アルデヒドの分解能力が低く体内にアルデヒドを蓄積しやすいため下咽頭がんを発症しやすい。発症は50~60代の男性が60%を占め、女性より男性が圧倒的に多い。

 国家公務員共済組合連合会立川病院耳鼻咽喉科の佐藤靖夫部長に話を聞いた。

「咽頭のがんは、粘膜にできる“扁平上皮がん”がほとんどです。近くには喉頭や頸部リンパ節があり、進行するとそれらへの浸展も多く見られます。自覚症状が少なく、下咽頭がんの60%以上は、初診時にはすでに周囲組織への浸潤や頸部リンパ節に転移している進行がんです」

 下咽頭がんは早期ではほとんど症状がない。少し進行するとノドに違和感がある。違和感は錠剤や唾液を呑み込む時よりも、食事の時に強く感じることが多い。数か月経過してさらに進行すると、食事が呑み込めない(嚥下困難)や嚥下痛、声がれ、リンパ節転移による頸部の腫れなどが起こる。

 下咽頭がんは進行が早いので、発症リスクの高い常習飲酒・喫煙の中高年男性は、ノドの違和感を少しでも感じたら、面倒くさがらずに早めの耳鼻咽喉科の受診が不可欠である。

胃がんを自腹で予防する成功率が高いピロリ除菌療法は?

胃がん発症要因の一つと見なされているヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)。最近は一般にも認識が広まり、除菌療法を受ける人が増えてきた。ところが、ピロリ菌も並行して抗菌薬に対する「耐性」を獲得。除菌失敗例が増えつつある。

 保険診療での除菌療法は胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫などの治療に限られている。現在、製薬企業9社が共同で適応拡大を申請中だが、今のところ「感染」という事実だけで胃がん予防の除菌をするには自腹を切るしかないわけ。となれば確実に除菌できるに越したことはない。

 先日、世界五大医学雑誌の一つ「ランセット」にピロリ除菌の標準療法と他法との比較が報告された。台湾在住のピロリ菌感染者900人が参加した試験の結果、胃酸分泌を抑える薬(PPI)+抗菌薬2剤を同時に14日間飲む標準療法よりも、まず7日間、PPI+抗菌薬1剤を飲み、さらに7日間PPIと、それまでとは違う抗菌薬2剤を飲む「4剤順次投与法」の除菌率が勝っていたのである(82.3%と90.7%)。

また、4剤順次投与法の期間を5日間+5日間の合計10日間に短縮しても、除菌率は87.0%と標準療法を上回った。参考までに日本での標準的な除菌療法は、3剤併用、7日間の服用である。

 今回の報告は、2008年に欧州から報告されたメタ解析(複数試験の総合解析)の追試。4剤順次投与法が標準療法を上回ると東アジア圏で確認した意味は大きい。というのは、胃がんを引き起こすほど毒性が強いピロリ菌は東アジアに集中しているからだ。

そのせいか、世界の胃がん患者の実に3分の2が日本、韓国、中国の3カ国で占められている。ちなみに使用薬剤は若干異なるが、2012年11月には韓国からも、4剤順次投与法(5日間+5日間)を支持する試験結果が報告された。

 台湾の研究者は「4剤順次投与法が除菌治療の第1選択になる」としているが、日本では「保険適応の壁」があり簡単にはいかない。それなら自由診療を逆手にとって、医師の助言を受けながら効果的な方法を選ぶのがいい。

胃がん検診方法を見直すタイミングに-北大・浅香教授「胃がんを撲滅しよう」

北大大学院がん予防内科学講座の浅香正博・特任教授は13日、東京都内で開催された日本成人病(生活習慣病)学会学術集会で講演し、胃がんの原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ(Hp)菌感染であることから、現在のバリウムを使った胃部エックス線検査といった二次検診の方法を見直すタイミングに来ていると訴えた。

その上で、このままの検診体制を続ければ、「団塊世代が還暦を迎え、胃がん世代に突入した今、胃がん患者数は増加し、医療費増大は取り返しがつかなくなる」と警鐘を鳴らした。

 浅香教授は、「生活習慣病由来のがん予防は困難な半面、感染症由来のがんはワクチンや抗生剤投与などで予防が十分に可能である」と指摘。感染症由来のがんと言える胃がんの予防は当然ながら、一次予防が優先されなければならないとした。

さらに、国の今年度からのがん対策推進基本計画のがん予防の項目に、「Hpについて、除菌の有用性について内外の知見をもとに検討する」と明記されたことを重要視すべきだとした。

 また、現在の胃がん検診の方法を見直す理由として浅香教授は、胃がんによる年間の死亡者数が40年以上にわたり、約5万人と全く変わっていないことを指摘した。その上で、胃がん対策ではHp除菌を軸に、ペプシノゲン(PG)法やHp抗体検査を活用したリスク検診体制に移行すべきだと強調。

「Hp陽性の場合は除菌を行い、その後は内視鏡による経過観察を続けることにより、わが国の胃がん死は劇的に減少していくと考えられる。国策による胃がん撲滅プロジェクトを立ち上げる必要がある」とした。

『白い巨塔』モデル医師 「がん放置療法」めぐり近藤誠医師と大激論

がんには「本物のがん」と「がんもどき」があるという独自の「がんもどき理論」を展開する慶応大学放射線科講師の近藤誠医師。

この理論に対し小説『白い巨塔』の主人公・財前五郎のモデルとなったとされる日本外科界の権威、大阪大学第二外科元教授神前(こうさき)五郎医師が反論。撤回を求めるため、二人の直接対決が実現した。2時間半にもおよぶ大激論はどのような結末を迎えたのか。

 近藤医師の「対談承諾」を受けた時点で、神前医師は三つの条件を提示した。

(1)健康上の不安があるので、なるべく早く対談すること。

(2)対談結果に対してお互い、勝利宣言も敗北宣言もしないこと。

(3)科学的なすり合わせにより統一見解を出し、両者はその統一見解に従って、今後行動すること。

 とくに(3)について、神前医師は、「がんもどき理論を撤回してもらうために、統一見解を出すよう対談する。対談して、がんもどき理論の誤りを示せたとしでも、これまで同様にがんもどき理論を主張されては意味がない。

それは科学者として良心に反する、正しくないとわかっていることを主張する行為だ」と、絶対に承諾してもらわねばならない条件と固執した。

その背景には、94歳という高齢の今、自分が生きているうちに、「今後」の行動を近藤医師に約束してもらいたい、という思いがあるのだという。

当方ががその条件を近藤医師に伝えると、近藤医師は、(1)(2)は快諾し、(3)については、「そもそも統一見解を出すことが難しいだろうし、将来の行動を拘束するような約束はできない。人の見解や行動は変わる可能性がある」と反発。

当方が複数回、条件交渉を仲介し、(3)の条件は「もし見解が一致した部分があれば、その見解にもとづいて行動する」という妥協案でようやく対談の日取りが決まったのだった。

 そのため、容易に統一見解には行き着かない。丁々発止の議論は平行線のままかと思いきや、途中、近藤医師が神前医師の意見に唯一賛成する場面があった。

「私なら手術のとき、腹膜播種(はしゅ)の斑点を見つけたら、その時点で手術をやめる。がんに手を加えると増殖してしまう。そのままおなかを閉めると、割合がんはおとなしい。当時、変人扱いされたけど、僕はそういうアグレッシブな手術はしなかった。それは患者のためにならない」

 この神前医師の発言に、近藤医師は、「それは慧眼(けいがん)ですね。私も賛成です。腹膜播種があるのに手術してはいけない」と言って、自ら神前医師の手を取り、握手した。

まさに歴史的和解の瞬間かと思えたが、神前医師が「ただ、おなかを開けないとわからない」と付け加えると、「それには反対だ」と近藤医師は返した。見解が一致したのは、対談全体を通してこの1点のみだった。

 議論は、近藤医師の時間の都合もあり、2時間半をもって打ち切りとなった。

 神前医師はまだ続けたい様子だったが、無念さをにじませながらこう締めくくった。

「いろいろ話してみても、やはりがんもどき理論は架空の考え方であると思う。証拠が不確かで認めることはできない。ぜひとも科学論文として出して反論してほしい」

 一方、近藤医師は、「予想されたところではあるが、早期胃がんを手術する根拠、放っておけば転移して死んでしまうということは実証されなかった。がんのなかで、成長速度が違う証拠もない。

それをもっと謙虚に認めるべきだと思う。ただ、転移があるがんをむやみに手術してはいけないという点については一致できた。そこは有意義な話ができたと思う」と感想を述べた。

 最後まで見解をすり合わせることはできなかったものの、近藤医師は逃げることなく、神前医師の「果たし状」に受けて立ち、2時間半の議論を尽くした。

神前医師も自らの限られた時間を見据えながら、医師として使命を果たさんとしていた。まだまだ未解決なことは残っているとし、これからも近藤理論への反論を続けていくという。

「歯垢が多いと、がんで死亡するリスクが79%も上がる」―歯磨きのススメ

「食事の後は、歯を磨きましょう」子どものときからよく言われるこのフレーズ。でも、朝寝坊したり、ついつい面倒くさかったり……。社会人になっても、歯磨きの習慣がきちんと身に付いていない人は、意外に多いもの。

そこで、フランスの健康情報サイト『TopSante』のジャーナリスト、マリーロール・マクーク氏が、歯磨きの大切さを説明!さまざまな研究から、歯磨きの重要さが証明されています。

歯と歯茎の間に歯肉炎が起こりやすいのは知られていますが、アメリカのコロンビア大学の研究から、歯周病の原因となる細菌が歯肉の炎症から体内に侵入し、動脈壁で炎症を起こす原因となることが証明されおり、歯周病になると心血管疾患のリスクも上がることが分かっています。

また、スウェーデンのヘルシンキ大学とカロリンスカ研究所が行った研究からは、口の衛生状態が悪く歯垢(しこう)が多いと、がんで死亡するリスクが79%も上がることが明らかになっています。

さらに、カナダの糖尿病協会からは、歯茎が重大な炎症を起こしていると、糖尿病になるリスクが上がるという研究結果もあり、口内を衛生に保つことは、病気予防に役立つことが、各研究から分かっています。

他にも、歯磨きを怠ると、病気だけではなく口臭の原因にもなってしまいます。健康でおいしく食事を食べるためにも、歯磨きはとても大切!定期的な歯科検診はもちろん、検診時に正しい歯磨きの仕方を医師に聞くなどして、正しい歯磨き方法を身につけたいですね!

幼少時のCTスキャンで発がんリスク上昇、英国で18万人を追跡調査

CTスキャンを多数回にわたって受けた子どもは、後に血液がん、脳腫瘍、骨髄がんを発症するリスクが最大3倍になる可能性があるとする調査論文が、7日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に掲載された。

 調査を行ったカナダ、英国、米国の合同チームは、絶対的な発がんリスクは小さいとしつつ、CTスキャンによる放射線の照射量を最小限に留め、可能であれば代替の検査方法を用いる必要があるとしている。

 研究チームは、幼少時に受けたCTスキャンの放射線量が成長後の発がんリスク増加につながるという直接的な証拠を、この調査で初めて示すことができたと述べている。

 論文の主執筆者、英ニューカッスル大学(Newcastle University)健康・社会研究所(Institute of Health and Society)のマーク・ピアース(Mark Pearce)氏は、「最も重要なのは、臨床的見地から完全に正当化されうる場合にのみCTを使うことだ」と述べている。

 研究チームによれば、CTスキャンはここ10年、特に米国での利用が急増している。だがCTスキャンの電離放射線が引き起こす潜在的な発がんリスクは、特に放射線の影響を受けやすい子どもに多くみられるという。

 研究チームは、英国の1985年から2002年までの診療記録から、幼少期から青年期(22歳未満)までの間にCTスキャンを受けた経験がある人を選び出し調査を行った。

 対象者18万人弱のうち、1985年から2008年の間に白血病(血液や骨髄のがん)を発症した人数は74人、脳腫瘍は135人だった。

 研究チームの計算によると、累計30ミリグレイ(mGy)の放射線を照射された人は、5ミリグレイ未満の人と比べて後に白血病を発症するリスクが3倍高かった。脳腫瘍のリスクは、累計50~74ミリグレイの放射線を浴びた人で3倍になった。

 調査では、CTスキャンを受けたことがない子どもたちが持つ発がんリスクとの比較は行っていない。

 ピアース氏は「機器を改善して、CTの放射線量を減らすことが最優先の課題。放射線学会だけではなく、機器の製造メーカーも共に取り組むべきだ」と述べている。「電離放射線を使用しない超音波やMRI(磁気共鳴映像法)などの代替診断法を採用することも、状況によっては適切な場合がある」

肺がん治療薬イレッサ 2週間でがん細胞がほぼ消滅した例も  

日本人のがん死亡原因の第1位は肺がんで、毎年7万人近くが亡くなっている。肺がんには小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの4種類があるが、2000年代に入っても小細胞がんと、それ以外の非小細胞がんの2つに分類することだけで治療法が決定されていた。

1980年代以降、分子生物学が発達し、がん細胞の増殖や転移に関係する遺伝子の解明が進み、その働きを抑制する新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬が開発されてきた。

肺がんに関しては2002年にゲフィチニブ(イレッサ)、2007年にエルロチニブ(タルセバ)が保険承認されている。

 愛知県がんセンター中央病院副院長で呼吸器外科部長の光冨徹哉医師に話を聞いた。

「従来の抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も攻撃するので、治療による副作用が強く、がん細胞に対する効果も不十分でした。

分子標的薬はがん細胞で活性化している特定の分子をターゲットにするため、がんに特異的に作用し、効果が高く副作用が少ないのが特徴です。イレッサやタルセバはEGFR(上皮成長因子受容体)という遺伝子の変異に対する薬です」

当初からイレッサは肺がんのうちでも、日本を含むアジア人、女性、非喫煙者、腺がんに効きやすいことがわかっていた。中には2週間でがん細胞がほぼ消滅した例もある。

 光冨副院長が語る。

「2004年に、このような劇的な効果をもたらす肺がんには、ほぼ全例にEGFR遺伝子突然変異があることが明らかになりました。日本では肺がんの70%が腺がんですが、この半数近くにEGFR変異が認められ、変異は女性や非喫煙者に頻度が高くなっています」

がん治療 実は知らない「再発」・・・「再発がん」との向き合い方

「がん」は今や、日本人の死因として最も多いとされている。それだけに、この病気に関しては闘病記や食餌療法、病気との付き合い方についてのものまでありとあらゆる本が出版されてきたが、これまであまり取り上げられてこなかったテーマもある。

 その一つが、がんの「再発」だ。

がん再発の告知は、患者本人にも家族にも初発の告知よりも大きな衝撃や不安が伴うものだが、「再発がん」との向き合い方や治療法などについての本は少ない。

 『もしも、がんが再発したら』(国立がん研究センターがん対策情報センター/編著、英治出版/刊)は、がんの再発をどのように捉え、どのように治療していけばいいのかということについて書かれた本である。タイトルに「もしも」とあるように、実際の再発がん患者だけでなく、再発を不安に感じる患者に対しても参考になる体験談が盛り込まれている。

がんの専門家と体験者が2年もの検討を重ねた末に刊行されたということもあり、発売当初から関係者の間で反響を呼んでいる。今回は本書のなかから、「再発がん」の治療において重要になる点を一部紹介する。

■治療の目的は「初発がん」と「再発がん」で異なる
 多くの場合、転移・再発したがんの治療は、初回の治療とは異なる。
 初回の治療では、多くはがんが臓器の中にとどまっているため、根治を目標にして治療を行うが、再発がんの場合、局所再発などのケースを除きそれが困難となる場合が多く、がんの進行を抑えたり、がんによる症状を和らげたりすることが目標となる。

 がん治療には主に「抗がん剤治療」「放射線治療」「手術」「緩和ケア」があり、それぞれの特徴を踏まえたうえで、適切なものを単独か、あるいは組み合わせて行う。特に再発がんの場合、患者によって症状がかなり異なるため、どのようにがんと向き合いたいか、そのように生きたいか、といった「治療の目的」を担当医としっかりとすり合わせておくことが重要だといえる。

■「効く」「有効」「治る」医師の言葉のほんとうの意味は?
 がん治療において、医師と患者やその家族の間で治療に対する理解を深めることが大切になる。しかし、同じ言葉でも医師と患者が異なったニュアンスで受け取っているケースが多々あるのだ。

 たとえば医師から「効く」と言われると、患者や家族はがんがなくなったり、寿命が延びたりといった直接的な効果を想像しがちだが、医師は「がんが小さくなる」「がんの進行が抑えられる」といった意味で使っていることがある。こういった齟齬は「有効」「治る」などといった言葉でも生じる可能性あり、治療に関する会話がかみ合わなくなってしまう原因ともなる。

 そういったことをなくすためにも、医師が使っている言葉がわからなかったり、会話がかみ合っていないと思ったりしたら、遠慮せずに確認することが必要なのだ。

 本書には「治療法の選択」や「痛みや苦痛・不安との向き合い方」「未承認薬の使用」「補完代替医療」など再発がん患者やその家族が抱えがちな悩みのそれぞれに、再発がん患者の体験談が添えられ、解説されている。

 「これまでの治療は何だったのか」
 「あれほど苦しい思いをしたのに、また同じ治療をしないといけないのか」再発がんには無力感と絶望がつきまとい、苦しみを分かち合えない孤独感も強い。本書で語られている再発がん経験者の言葉はそんな孤独を少しだけ和らげてくれるかもしれない。また、患者本人だけでなく、その家族や友人など、患者を支える人々にとっても大いに役立つはずだ。

最新のがん治療 感染するとがん細胞を破壊するウイルス利用

がんの主な治療は手術、放射線、化学療法(抗がん剤)だが、画期的な治療法として世界で研究開発が進んでいるのがウイルス療法だ。

 がん細胞は正常細胞に比べてウイルス感染に弱く、感染するとウイルスが増殖してがん細胞を破壊することが知られていた。しかし、ウイルスの作用をコントロールすることが難しかった。

近年、遺伝子組み換え技術が発達し、がん細胞だけで増殖するウイルスを人工的に作ることが可能になった。

 1991年にアメリカで毒性を失くした遺伝子組み換えウイルスをがん治療に応用する概念が提唱され、日本でも2009年から最新型ウイルスで臨床試験が行なわれている。

 東京大学医科学研究所先端医療研究センター・先端がん治療分野(脳腫瘍外科)の藤堂具紀教授に話を聞いた。

「私が使用しているのは口唇に水疱を作る単純ヘルペスウイルスI型です。ウイルスから3つの遺伝子を取り除き、がん細胞だけでウイルスを盛んに増殖し、がんに対する免疫も引き起こす性質を持ったG47Δ(デルタ)というウイルスを作りました。

これはアメリカで開発された第2世代を改良した第3世代で、大量に使用しても毒性が低く安全性と効果を向上させたものです」

 将来はウイルスに様々な機能を持った遺伝子を組み込むことで、がんの特性に応じた治療ができるようになるかもしれない。

例えば、免疫を刺激する遺伝子を組み込み、がん細胞に対するワクチン作用を強力に引き起こしたり、血管新生を阻止する遺伝子を組み込み、腫瘍血管が豊富ながんに使用したりするなど、活用が広がる可能性がある。

 アメリカでは悪性黒色腫に対して、第2世代のヘルペスウイルス薬が来年にも薬として承認される見込みだ。日本も欧米に遅れることなく、がんのウイルス療法開発が進むことが期待される。

頻尿もわずらわしいけど「ガン」も怖い! 50代男性2人に1人が陥る「前立腺肥大」徹底解明(1)

猛暑続きだと、ビールの量も進みがち。しかし、夜中に尿意を感じ何度もトイレに起きる。勢いがない、残尿感がある…。こんな体験をお持ちの熟年者は少なくないはずだ。前立腺肥大症でも、そんな夜間尿意は起こりやすい。

 また、前立腺肥大がベースにあって、尿の溜まった量とは関係なく筋肉の収縮で尿を排出する『過活動膀胱』の頻尿もある。いずれも最近、中高年に増えている病気で、しっかりしたチェックと注意が必要だ。

 米国の医療機関の調査結果では、40代の約20%、50代では約40%、60代の約70%に前立腺肥大症が見られたという。加齢とともに増加する病気だが、40代の中年者でも「まだ若いから大丈夫」と安心はできない。

 厚生労働省の『国民生活基礎調査』(平成20年患者調査)では、'87年に13.4万人だった前立腺肥大症が約20年後の'08年に44.2万人。受診しない潜在患者を含めると200万~300万人と推測される。50代男性の場合、2人に1人は前立腺が肥大していることになり、中には人知れず排尿障害に悩んでいる人もかなりいるとみられている。

 前立腺は男性特有の臓器である。精子に栄養を与える前立腺液を分泌して精子の生命活動の源泉になっている。膀胱のすぐ下に位置し、中心部を尿道が通っているので、肥大すると尿道が圧迫され、尿が出にくくなる。

 しかし、なぜ肥大するのか。そのメカニズムについてはっきりしない面はあるが、男性ホルモンが発症の引き金になっているとの考え方が支配的だ。尿が出にくい閉尿状態が続くと「腎臓」の働きにも悪影が出る。早期発見、早期治療が肝要だと、と医療関係者は話す。

 都内に住む小林さん(49)は、夜の頻尿に悩んでいたひとり。
 泌尿器科を受診すると、結果は予想された通り前立腺の肥大だった。

 「とにかくトイレが近い。しかも残尿感があるし、尿の切れが悪く、トイレの後に尿道に残っていた尿が水滴のように出て、下着を濡らしちゃうんです。尿の出も悪くなったみたいで、勢いがない。

それでも先生に交感神経の働きを抑える薬を処方され、真面目に飲んでいるお陰で、前みたいな頻尿の回数が無くなって、夜も眠れるようになりました。ただ、QOR(生活の質)を変えるように言われ、今は取り組み中です」(小林さん)

 また、自営業Aさん(55)も同じような症状に悩まされ、医療機関を受診した。ただ、小林さんとは違う病名の診断が出された。『過活動膀胱』である。

 Aさんは、昼夜を問わずトイレに行く回数が多かった。それも突然、強い尿意を感じ、トイレに駆け込むという“尿意切迫感”に襲われる。頻尿、切迫性尿失禁症(我慢が出来ず尿を漏らす)も伴っていた。

 この病気は蓄尿障害の一種で、尿を溜めているときに膀胱の筋肉(排尿筋)が勝手に収縮することで起こると考えられている。

 この原因については神経系の病気など、諸説があるようだが、前立腺肥大症を主因とする見方が強い。理由は、前立腺の肥大化によって尿が出にくくなるため、排尿の度に何とか尿を出そうとする膀胱への負担が繰り返しかかり、膀胱の筋肉に異常が起きてしまうからである。

 つまりAさんの場合も、膀胱が肥大し、前立腺の刺激に過敏反応をするようになり、「また行きたい」を繰り返し、過活動膀胱になってしまったようなのだ。

 「医師には、一般的な前立腺肥大症の治療薬(α1遮断薬)を第一選択薬として処方されました。排尿障害や蓄尿障害も改善するということで飲み続けており、確実に良くなりましたよ。何より会社で打ち合わせ中に抜け出さなくて済むようになった事が嬉しい。夜の頻尿も見違えるように減りました」(Aさん)

異常タンパクからシグナル抑える/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(26)大江裕一郎>

 肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【分子標的薬って何?】

 がん細胞など、標的となる細胞にある特定の分子に作用して効果を発揮する薬が、分子標的薬と呼ばれています。分子標的薬には経口投与される小分子化合物と点滴で投与される抗体薬があります。日本で肺がんに使える分子標的薬を表にまとめました。

 肺がんに使われる分子標的薬は、がんの原因となっている遺伝子異常によりできる異常なタンパクからでる増殖信号(シグナル)を抑える薬、血管新生阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬に大きく分類することができます。

 血管新生阻害薬の標的はがん細胞ではなく、血管に作用する増殖因子や血管に発現している分子です。免疫チェックポイント阻害薬の標的であるPD-1もがん細胞ではなくリンパ球に発現している分子です。

 このなかで、特にがんの原因となっているEGFRやALKなどの遺伝子異常によりできる異常なタンパクからのシグナルを抑える薬が、肺がんの治療では特に高い効果を発揮しています。

 EGFR遺伝子変異は肺腺がんの40~50%、ALK融合遺伝子は肺腺がんの約5%の患者さんにみられる遺伝子異常です。それぞれの遺伝子異常により、異常なタンパクが生産され、そのタンパクから増殖信号が出続けるために細胞ががん化すると考えられています。

 この異常なタンパクの働きを抑える薬であるEGFR阻害薬やALK阻害薬をそのような患者さんに投与すると極めて高い抗腫瘍効果が得られ、60~90%程度の患者さんで腫瘍が劇的に縮小します。

 腺がんの患者さんの場合には、EGFR、ALKの異常があるかどうかの検査が非常に重要です。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。2014年、国立がん研究センター中央病院副院長・呼吸器内科長に就任。柔道6段。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本体育協会公認スポーツドクターでもある。

抗がん剤治療がおすすめ/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(29)大江裕一郎>

 肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【EGFR阻害薬が効かなくなったらどうするの?】

 EGFR遺伝子変異がある患者さんに、イレッサ、タルセバ、ジオトリフのいずれかのEGFR阻害薬を1次治療として使用した場合、60~70%程度の患者さんで腫瘍の大きさが劇的に縮小します。しかし、約半数の患者さんは1年以内に、ほとんどの患者さんが2~3年以内に効果がなくなるのが現状です。

 このようにEGFR阻害薬が効かなくなった患者さんのがん細胞を調べると、約半数の患者さんでT790Mというこれまでとは別のEGFR遺伝子変異が出現していることが報告されています。このT790M変異が出現することにより、イレッサなどが効かなくなると考えられています。

 このT790Mを持っている患者さんにも効果がある新しいEGFR阻害薬がタグリッソです。タグリッソはイレッサなどが効かなくなったT790M陽性の患者さんの60~70%に劇的な腫瘍縮小効果を発揮し、平均すると1年程度効果が持続します。

 イレッサなどが効かなくなった場合には、再度、肺がんの組織を採取してT790Mの検査をすることが必要になります。患者さんによっては再度生検を行うことが難しい場合があります。このような場合には、血液からでもT790Mの検査ができます。

 T790Mが検出されなかった場合やタグリッソも効かなくなった場合は、体力や合併症に問題がなければ抗がん剤治療を受けることをお勧めします。EGFR阻害薬だけの治療では必ずしも十分な延命効果を得ることができません。EGFR遺伝子変異のある患者さんには、免疫チェックポイント阻害薬は少し効きにくい傾向があります。免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤治療の次に検討するのが良いと思います。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。2014年、国立がん研究センター中央病院副院長・呼吸器内科長に就任。柔道6段。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本体育協会公認スポーツドクターでもある。

【1分で判明!病気チェック】睡眠時無呼吸症候群 ヤセ形の人も注意

たっぷり睡眠を取ったつもりでも全然、休息にならない辛い病気。意外と気づきにくいのはヤセ形の人。知らずに放置していると心疾患や脳卒中を合併しやすく生命に危険が及ぶ。日中、いつも強い眠気に悩まされている人は要チェックだ。

【危ない「あご」】

 睡眠中、喉の筋肉は緩む。このとき、首周りの脂肪や扁桃腺肥大などで気道が狭くなっていると重力で舌根やのどちんこなどが沈み込み、喉の空気の通り道をふさいでしまうのが、この病気の発症メカニズム。

寝ている間に無呼吸状態が何度も繰り返されるのだ。

 太り過ぎ(肥満)が最大の要因だ。が、国内有病率は人口の5-10%といわれ、超肥満大国の米国と変わらない。

 「もうひとつの要因はあごの骨格。日本人は欧米人に比べて気道のスペースが狭く、たとえヤセ形の人でもあごが落ち込み発症しやすい」と説明するのは、スリープ&ストレスクリニック(東京・大崎)の林田健一院長。

 要注意なのは、あごが小さく内側に引っ込んでいるような人だ。

【“うつ”の原因にも】

 最も分かりやすい症状は、毎晩、大音量のいびきとともに突然止まる呼吸。だが、本人は寝ているので妻や家族に指摘されなければ気づかない。

 独身や寝室に入れてもらえない家庭内別居の状態なら、日中の自覚症状に注目すべき。毎日、7時間以上寝ているのに、朝起きて頭が重い、疲れが取れない、仕事中に強烈な眠気に襲われるようなら十分疑いありだ。

 「抑うつ気分が現れることもある。うつ病と診断されている人の16-17%が睡眠時無呼吸症候群を合併していると指摘されています」

 この場合、無呼吸の治療で抑うつが治る人もいる。とくにヤセ形の人では、医師に症状をハッキリ正確に伝えないとうつ病に間違われるケースがあるので要注意だ。

【忍び寄る突然死】

 発見の遅れが問題になるのは、すぐに現れる症状だけじゃない。睡眠時の無呼吸は血圧変動や自律神経の働きに大きな影響を与える。知らずに放置したままだと、高血圧や糖尿病など生活習慣病全般にわたり発症率を高め、悪化させる。

 さらに怖いのは、「若い世代から脳卒中や心不全など脳心血管疾患を起こしやすく、亡くなる人も多い」。40-50代の突然死の原因になるのだ。

 病気の確定には、夜間1泊して脳波計で測る夜間睡眠ポリグラフ検査が必要。主な治療には、睡眠時に鼻マスクを付け空気を送るCPAP療法やあごの落ち込みを防ぐマウスピースが使われる。

 「肥満の人は体重を1割落とせば無呼吸が3割よくなる」と林田院長。 メタボと密接な関係にある睡眠時の呼吸、寝ている間も油断できない。

【「睡眠時無呼吸症候群」チェックリスト】

□「いびきがうるさい」と指摘されたことがある

□睡眠中、「呼吸が止まっている」と指摘されたことがある

□十分睡眠時間をとっても疲れが取れない

□朝起きて頭がスッキリしない、頭痛がする

□寝ていると口や喉が渇く

□睡眠中、何度もトイレに起きる

□肥満がある

□昼間、強烈な眠気に襲われる

・2つ以上該当するようなら診察を受けましょう

※スリープ&ストレスクリニック(東京・大崎)/林田健一院長作成

【1分で判明!病気チェック】早期受診で原因を特定「五十肩」  

四十肩」とも呼ばれるように、早ければアラフォー辺りから出現する肩痛の病気。

放置しても自然治癒するが、勝手な思い込みは禁物。肩痛は心疾患など別の病気によっても引き起こされるケースがある。早期の受診で原因をハッキリさせることが重要だ。

【簡易テストで分かる】

 正式な医学名は「肩関節周囲炎」もしくは「凍結肩」。発症から3段階の病期を経て治癒に至る。チェックリストの項目は、発症当初の最も肩の痛みが強い「急性期」にみられる主な症状だ。

 「診察時にも行われていて五十肩を調べるのに最もいいのはエルボープッシュテスト(図)。ほぼ一発で分かります」と話すのは、山田記念病院(東京・両国)整形外科の長谷川伸医師。

 痛みは、肩関節の中の腱板や関節包、じん帯に炎症が起こるためだ。が、どうして炎症が起こるのか原因が分かっていない。

 加齢とともに体が固くなると起こりやすいので、運動不足は要注意だ。

【左肩激痛は心疾患も】

 決して怖い病気ではないが、早期受診が大切。他の肩痛が出る病気を見落とさないためだ。

 「中には狭心症や心筋梗塞を発症して『左肩が痛い』といって整形外科を受診する人がいる。急に左肩が痛み出し、脂汗が出るほどの痛みだったら要注意です」

 耐えられない激痛は石灰沈着性腱板炎でも起こる。また腱板断裂の場合、痛みは五十肩と似て耐えられるが、治療をしないと放置したままでは回復しない。「五十肩のうち40%は腱板断裂を伴っている」という。

【早期治療で回復早く】

 急性期を過ぎると痛みが軽くなり、今度は肩が動かしにくい症状が強くなる「慢性期」に突入。その後は痛みが消え、肩の動きが回復し始める「回復期」を迎える。

 3つの病期の期間は人によって異なり、治癒するまで早くて3カ月、遅いと3年もかかる。

 治療内容も病期によって異なってくる。安静時の痛みが強い急性期の中期までは安静にして、痛み止めの内服や注射治療を行う。痛みが軽くなり始める急性期の後期になったら一転、運動療法を積極的に行って可動域を広げていくのだ。

 「治療を続ければ、それだけ回復も早くなる。痛みが軽くても腱板断裂の可能性もあるので検査だけは早めに受けましょう」と長谷川医師。

 50歳以上の5人に1人は経験する身近な病気。40歳を過ぎたら誰に起きてもおかしくない。

★「五十肩」チェックリスト

□肩を中心に首や腕にも痛みがある

□肩を動かすと痛みが増す

□痛みで肩の動きが制限される

□夜中に肩の痛みで目が覚める

□痛い方の肩を下にして寝られない

□椅子に座った状態で、両方の手首を重ね合わせて握り、目の高さまで持っていく。向かいに座った協力者に片方のひじに手を添えてもらい、その手を押してみる。肩の痛い方のひじは力が入らない

※2つ以上該当したら可能性が高い

※山田記念病院・整形外科(東京・両国)/長谷川伸医師作成

【1分で判明!病気チェック】汗かくと痛がゆく「コリン性じんましん」

よく知られたじんましんの一種だが、汗をかくことで発疹が現れるという面倒な特徴をもつ。年齢とともに次第に体質が変わっていけば自然に治癒するが、それまでは内服薬をうまく使った発疹のコントロールが大切だ。

【原因不明の体質変化】

 ひと言でじんましんといってもタイプは多い。

 食物や薬剤などで起こるアレルギー性もあるが、大部分を占めるのは非アレルギー性。実際、最も多い(約7割)のは原因・誘因が特定できない「急性じんましん」や「慢性じんましん」。

 次いで、寒冷、日光、圧迫などで誘発される「物理性じんましん」。そして、発汗刺激で生じる「コリン性じんましん」の順だ。

 「コリン性はじんましん全体の5%ぐらいで、多くはないが珍しくない。年齢的には若い世代に多いが、30代、40代でも見られます」と話すのは、社会保険中央総合病院・皮膚科の鳥居秀嗣部長。

 何が理由でこのような体質に変わるのかは不明だ。が、発汗時、神経末端から出るコリン作動物質に敏感に反応するようになるため発疹が現れると考えられている。

【ピリピリ】

 一般的にじんましんの病態は、赤くかゆみの伴う軽い皮膚の膨らみが地図状に広がる。が、コリン性の場合、見た目が少し違う。小さな細かい赤いブツブツが多発して、全体がつながることはない。 また、かゆいというより、ピリピリした痛がゆいという感じだ。

 「発汗が誘因になっても、汗疹(あせも)のように汗がたまる場所にできるわけではありません。腕などの上半身にできるケースが多い」

 他の皮膚病と違うのは特有の発疹が長くても数時間以内に消え、また発汗があれば出現を繰り返すことだ。

【ストレスでも発症】

 普段の生活では運動や入浴によって発疹が現れるのが典型的だが、精神的な緊張やストレスによる発汗(冷や汗)でも現れるので、サラリーマンにとっては厄介だ。

 コリン性じんましんでは、咽頭や喉頭に浮腫を起こして呼吸困難を招くような恐れはなく、治療せずに放置していても5-6年もして徐々に体質が変われば自然と治癒する。 

だが、じっとしていても汗が噴出すような夏季の期間は、気をつけていても発疹が出やすい。発疹を抑える対症療法として抗ヒスタミン薬が効くので、予防的に内服を継続することが賢明だ。

 「発病の原因が分からない以上、誰にでも起こる可能性はある。臨床的には神経質でストレスをため込みやすい性格の人に起こりやすい傾向があります」と鳥居部長。

 2-3人に1人は経験するといわれる“じんましん”。

 共通する予防策は、やはり仕事の疲れやストレスの解消だ。

★「コリン性じんましん」チェックリスト

□運動や入浴などで少しでも汗をかくと赤い発疹が出る

□精神的な緊張やストレスで赤い発疹が出る

□発疹は上半身に出やすい

□大きさ数ミリ-1センチ以下の小さい発疹が細かく多発する

□かゆみよりもピリピリ感、チクチク感がする

□発疹が現れている時間は通常、数分から30分以内

□まれに頭痛、めまい、悪心を伴うことがある

 3つ以上該当すれば可能性が高い

※社会保険中央総合病院・皮膚科/鳥居秀嗣部長作成

【1分で判明!病気チェック】基本治療は胆のう全摘出…「胆石症」でショック死も

成人の10人に1人が持つといわれる“胆石”。通称「サイレントストーン」と呼ばれ、発見されても半数以上は一生おとなしくしている。が、ひと度暴れ出すと七転八倒の激痛を繰り返す。炎症を起こすと命にかかわる恐れもある。要チェックだ。

【胃ケイレンも疑え】

 最も典型的な症状は、みぞおちや右脇腹、右背部に波打つように痛みが押し寄せる“疝痛(せんつう)発作”。体をエビのように折り曲げてしまうほど、とにかく痛い。

 「天ぷらや焼き肉、中華料理など脂っぽい物を食べたとき、2時間ぐらいの間に痛み出す。数時間内で治まるが、半数以上は1年以内にまた再発を繰り返す」と発作の特徴を説明するのは、町田市民病院(東京)・外科で肝・胆・膵を担当する薄葉輝之医長。

 ただ、人によっては激痛ではなく、“鈍痛”で現れるケースもある。自分では「胃ケイレン」の痛みだと思い込んでいる人も少なくない。胃の弱い人は胆石がないか、確認しておくことが大切だ。

【石が詰まって激痛】

 胆石は、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にある長さ10センチほどの洋ナシ状の袋「胆のう」の中にできる石。胆のうは、肝臓で作られ、腸内の脂肪分の消化吸収を助ける“胆汁”を濃縮・貯蔵している。石の正体は、その胆汁に溶け込んでいる成分(9割は水分)のバランスが崩れて結晶化して固まったものだ。

 胆のう内にできる石の約7割はコレステロールが主成分になっている。

 「胆のうは食後約1時間後に胆汁を絞り出すように排出をはじめ、約2時間後にピークに達する。その時に石も一緒に押し流されるように管の出口や途中で引っ掛かって疝痛発作を引き起こす」

 石が外れたり、腸へうまく排出されれば痛みは自然と治まる。が、胆のうに石がある限り、発作は何度でも繰り返す。

【ショック死の恐れも】

 また、怖いのは発作だけではない。胆石があると、胆のうや胆管に大腸菌などの細菌が感染して炎症を起こす「胆のう炎」を合併しやすい。39度近い高熱が出て、悪化すると細菌が血中に入り込み敗血症を起こしてショック死を招きかねない。発熱があったら要注意だ。

 胆石は一時的に薬で溶かしたり、体外衝撃波で砕く方法もあるが、もともと石を作りやすい体質なので、治療の基本は胆のうの全摘出。いまでは腹腔鏡を使って傷口の少ない手術が可能だ。

 薄葉医長は「胆のうは胆汁をためておくだけの臓器なので、なくても生活に支障はない盲腸のようなもの。発作を繰り返す人や胆のう炎を起したら早めにサヨナラした方がいい」と忠告する。

 食当たりと間違いやすい食後の腹痛、見逃すな。

【「胆石症」チェックリスト】

 □みぞおちから右脇腹にかけて痛む

 □背中の真ん中から右側に鈍痛がする

 □右肩にかけて放散痛がする

 □冷汗が出るほどの腹痛

 □脂っぽい物を食べた後、1-2時間で腹痛が起こることが多い

 □上腹部痛は数時間以内に治まる

 □上腹部痛を1年以内に繰り返す

 □悪寒、吐き気を伴う

 □高熱を伴う(胆のう炎症状)

 該当項目が多いほど疑いが強い

 *町田市民病院(東京)・外科/薄葉輝之医長作

【1分で判明!病気チェック】遺伝の確立50%とも…高血圧、8割以上が未治療  

毎年5月17日は『高血圧の日』。国内推定患者約4000万人、最も多い慢性疾患にもかかわらず実際、治療を受けている人は2割にも満たない(2005年患者調査)。怖いのは自覚症状もなくジワジワ動脈硬化を進行させていき、心臓病や脳卒中などの致命的な疾患を引き起こすことだ。

【“外ズラ”に注意】

 高血圧と呼ばれる基準値は一般に「140/90以上」、糖尿病がある場合は「130/80以上」だ。

 が、この数値は会社の健診などで測る診察時の基準。血圧は場所や時間帯でも大きく変動するので、たとえセーフでも安心するのはまだ早い。

 見逃しやすいのは、家庭で測ったときの数値。「135/85未満」、糖尿病があれば「125/75未満」でなければ高血圧の仲間入り。できれば起床時と寝る前の2回測って確認すべきだ。

 「夜間持続的に血圧が高いのが最もよくない。だから、夜間血圧を比較的よく反映する起床直後の血圧を測ることがとくに重要です」と話すのは、「はとり内科循環器科クリニック」の羽鳥裕院長。人は目覚めに備えて自然と朝方に血圧を上昇させる。脳卒中の発症で断トツに多いのも、午前7-8時台の時間帯だ。

【上180は「最悪」】

 「サイレントキラー」と呼ばれるように、高血圧の特徴は自覚症状がないところ。自分は血圧が高めなのか、早朝、仕事中、夜間いつ高いのか、実際に血圧計で測って把握するしか手がない。

 「頭痛、肩コリ、耳鳴り、動悸などの症状も指摘されるが、もし血圧が原因なら相当悪い。上180(下110)超えるようなら最悪の“ステージ3”。ただちに治療を開始しないと危険です」

 また、糖尿病があるなら輪をかけて要注意。腎症、網膜症、神経障害といった合併症予防のためにも「血糖管理と同じくらいに血圧コントロールが重要」になる。

【両親からの遺伝50%!?】

 高血圧の90%以上は原因不明の「本態性高血圧」だが、塩分の取り過ぎや肥満など危険因子は明らか。とくに目安として確認しておきたいのは遺伝的な要因。両親が高血圧なら素因を受け継ぐ確率は50%、片親にいれば30%、親にいなければ5%というデータがある。

塩分の摂取目安は1日10グラム(高血圧の人は6グラム)以下といわれるが、食パン1枚にすら2グラム含まれるので厳守は難しい。

 肝に銘じておくべきは、「薄味の食事」に加えて、余分な塩分を体外へ排泄する作用のある「カリウム」を多く含む食品を積極的に取ること(目安は1日3-4グラム)。たとえばホウレンソウ、春菊、ジャガイモ、大豆、海藻類、アボカド、バナナなどだ。

 羽鳥院長は「血圧管理があらゆる血管障害の病気の予防になることを忘れずに」と強調する。

 この機会に腕をまくって自分の血圧状態をキッチリ調べておこう。

【「高血圧症」チェックリスト】
 □親兄弟に高血圧の人がいる
 □親兄弟に脳卒中、心筋梗塞に罹った人がいる
 □たばこを吸う
 □毎日のように酒をたくさん飲む
 □しょっぱい濃い味の食べ物が好き
 □肥満度指数BMI(体重kg÷身長mの2乗)が25以上(正常は22)
 □野菜や果物をあまり食べない
 □いつもストレスを感じている
 □きちょうめんな性格で感情の起伏が激しい
 3つ以上該当するようなら要注意。血圧を朝晩2回測って確認してみよう
 *はとり内科循環器科クリニック(川崎市)/羽鳥裕院長

原発巣の種類により違う治療方法 転移性肺がん

転移性肺がんの治療について、岡山済生会総合病院(岡山市)の片岡正文診療部長・呼吸器病センター長に寄稿してもらった。

     ◇

 転移性肺がん(肺転移)は、大腸がんや乳がんのように他の部位に発生したがん細胞が、血管やリンパ管を通って肺に到達し増殖した病巣のことを言います。全身の臓器からの血液は、静脈を介し肺の微小血管を通るため、他の臓器にできたがんが肺に転移をおこしやすくなります。

 肺に転移がおきた場合、流れてきたがん細胞は通常1個だけではなく複数の細胞だと考えられます。したがって肺に転移が多発したり、脳や骨など全身の臓器に転移をおこしたりする可能性が高くなるため、治療はまず全身化学療法が中心となります。最近、がん細胞の遺伝子や免疫に関連する新しい抗がん剤が続々と開発、承認され、以前より化学療法の選択肢が広がり、より良い効果が期待でき、副作用も少なくなってきています。

 一方、転移性肺がんでも病巣を切除することでより良い結果が得られる場合もあります。転移性肺がんの手術適応を決めるうえでThomfordの基準がよく用いられます=表。このうち3の「肺以外に再発・転移がないこと」に関してですが、最近ではPET/CT、腫瘍MRIなど全身転移のスクリーニング検査が発達し、CTやMRIなどの精度も上がり、小さな転移の発見が可能となってきました。これらの検査は逆に他には転移はないであろうという診断にも役立ち、転移性肺がんの手術を決める上で重要な検査となっています。

肺への転移様式は原発巣のがんの種類によっても違いがあります。例えば胃がんや乳がんなどは肺転移が多発し、肺炎様に広がる特徴があるので切除の適応にならないことが多いのに対し、大腸がんでは肺転移の個数が少なく切除の適応を満たすことが多くなりますが、肝転移を伴う患者さんも多く、そのコントロールも重要な因子となります。当院で2002年から15年に行った転移性肺がん手術は196例で、そのうち大腸がんの患者さんが122人と62%を占めていました=グラフ。

 肺転移病巣の切除で原発性肺がんと異なるところは、切除範囲をできるだけ少なくすることです。これは肺転移が他の場所にも出てくる可能性があるため、切除範囲を少なくすることにより、再発時も再切除が行える可能性が高くなるからです。当院の経験では、大腸がん肺転移の手術を複数回(2回以上)行えた患者さんの5年生存率が80%と高く、再々発があっても再切除ができればよい結果に結びついています。

 また基準には当てはまりませんが、当院で大腸がんの両側の肺転移を切除した患者さんの60%以上の方が5年以上生存されており、両側でも転移の個数が少なければ切除の適応となると考えています。

 肺転移巣の切除の適応は患者さんごとに、全体の治療経過の中で有効かどうか、技術的、体力的に可能かどうかをそれぞれの臓器の専門家である主治医のチームと私たち呼吸器外科チームが十分相談し、患者さんや家族の希望を踏まえて方針を決めていきます。これには専門臓器や領域をこえた速やかで細やかな連携と、病院全体のがん診療に対する総合力や応用力が必要となります。私たちも常に進歩する他分野の治療を考えながら、転移性肺がんに対する手術の適応や方法を今後も継続的に進歩させていきたいと思います。

 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

重篤な副作用で死亡例も/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(13)大江裕一郎>

 肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【免疫チェックポイント阻害薬は他の治療と併用しても大丈夫?】

 治療効果を高めるために免疫チェックポイント阻害薬と、抗がん剤、分子標的薬、放射線治療との併用、他の免疫療法との併用や免疫チェックポイント阻害薬同士の併用などさまざまな研究が現在実施中です。しかし、これらはすべて研究中の治療であり、併用することの有効性、安全性はまったく分かっていません。

 抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ、キイトルーダの併用、抗CTLA-4抗体であるヤーボイとオプジーボの併用などは、現在大規模な臨床試験が実施中ですが、その結果はまだ分かっていません。効果が高まると期待して臨床試験を実施しても、副作用が予想以上に増強したり、効果が思ったほど高くないということは時々経験するので、試験の結果が出るまでは安易に行うべき治療ではありません。

 抗PD-L1抗体と分子標的薬を併用すると間質性肺炎や肝障害などの副作用が増強するとの報告もあるので、分子標的薬との併用も注意が必要です。オプジーボ、キイトルーダとも半減期が長く、投与を中止しても数週間は体内に残ります。オプジーボ、キイトルーダを中止した後に、タグリッソなどの分子標的薬を使うときにも注意が必要です。

 オプジーボを併用しながらリンパ球などを投与する細胞免疫療法を行って、重篤な副作用が出現した患者さんも少なくありません。中には重篤な副作用で死亡した患者さんも報告されています。このように安全性、有効性の確立していない治療を行うことは非常に危険です。また、オプジーボやキイトルーダを受けているときに、担当医に無断で他の病院で免疫治療などを受けることも絶対にやめてください。

 ◆分子標的薬 がんに関連する特定の分子(主にタンパク質)を標的に攻撃する。がん細胞にターゲットを絞って狙うことが可能になる。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。2014年、国立がん研究センター中央病院副院長・呼吸器内科長に就任。柔道6段。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本体育協会公認スポーツドクターでもある。

高額療養費制度で月25万円に/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(9)大江裕一郎>

 肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【高騰する肺がん治療薬】

 2017年2月に、オプジーボの薬価が半分になりました。

 オプジーボは患者さんの体重1キロあたり、3ミリグラムを2週間に1回投与します。1年間で26回投与することになります。これまでは体重60キロの患者さんの1回の薬剤費が約130万円で、1年間では約3500万円になりました。半額になっても年間1800万円近い薬剤費がかかります。

 では、オプジーボだけが高額なのでしょうか? オプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダも1年間使用すると約1400万円かかります。ALK阻害薬であるアレセンサーは1カプセル約6600円です。1日に4カプセル服用するので、年間約960万円かかります。新しいEGFR阻害薬であるタグリッソは1錠約2万4000円で、年間約880万円かかります。

 このように近年発売された肺がん治療薬はいずれも非常に高額になっていることは事実です。これは薬の研究開発に莫大(ばくだい)な費用がかかるためともいわれています。しかし年間約1000万円も自己負担できる患者さんは少ないでしょう。

 これらの薬は肺がんに対しては、健康保険の枠内で使用されます。オプジーボを使用した場合の患者さんの自己負担が3割だとすると年間500万円以上もの自己負担が生じることになります。実際の患者さんの負担額は、年齢、収入により異なりますが、高額療養費制度により月に8000円から25万円程度の負担になります。患者さんの自己負担は少なくなりますが、多額の公的資金が必要であることに変わりはありません。

 肺がんに対する有効な薬がたくさん開発されていますが、どれも高額な薬です。有効な薬があることは大変喜ばしいことですが、まずは受動喫煙を含めた喫煙対策をしっかりやって、肺がんそのものを減らすことがより重要です。

 ◆高額療養費制度 医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1カ月で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度。上限額は、年齢や所得に応じて定められる。いくつかの条件を満たすことにより負担をさらに軽減する仕組みもある。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。

化学療法より寿命延びる新薬/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(8)大江裕一郎>

 肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【新しい免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ】

 オプジーボに続き、第2の抗PD-1抗体であるキイトルーダが2017年2月に日本でも発売になりました。オプジーボがPD-L1の発現の有無にかかわらず非小細胞肺がんの患者さんに使用できるのに対して、キイトルーダはがん細胞にPD-L1が発現している非小細胞肺がんの患者さんに限って使用することができます。

 がん細胞にあるPD-L1とは免疫細胞に発現しているPD-1と結合する分子であり、PD-L1が強く発現している患者さんほど、オプジーボやキイトルーダが効きやすいといわれています。PD-L1の発現を調べるためには、気管支鏡などで肺がんの組織を採らなければなりません。

 オプジーボが化学療法の効かなくなった患者さんに対する2次治療以降でしか使えないのに対して、キイトルーダはPD-L1が50%以上の細胞で発現している患者さんに限っては化学療法の前に1次治療として使用することができます。キイトルーダが1次治療で使える患者さんは非小細胞肺がんの約30%といわれていますが、この患者さんに限ると化学療法で治療するよりも、最初からキイトルーダで治療した方が明らかに患者さんの寿命が長いことが示されています。

 オプジーボとキイトルーダの違いを表にまとめました。両者では使用できる患者さんの違いに加え、投与量の決め方、投与間隔が異なります。オプジーボの薬価は17年2月から、それまでの半額になりましたが、それでも年間1000万円以上かかります。体重あたりで投与量を決めるオプジーボより投与量が200ミリグラムに固定されているキイトルーダの方が、体重が重い患者さんには経済的ではあります。

 ◆PD-1、PD-L1 免疫細胞にあるPD-1という物質と、がん細胞にあるPD-L1という物質が結合すると免疫機能にブレーキがかかる。免疫機能のブレーキを解除しがん細胞への攻撃を高める抗体薬が注目されている。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。

小さくなった肺がん/肺がん治療最前線

<オプジーボだけじゃない(1)大江裕一郎>

 肺がんは、がんの部位別死亡率で男性の1位、女性で2位、年間約7万5000人が亡くなっています。転移しやすく、治りにくいがんといわれてきました。ところが最近、劇的な効果を発揮する免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」などが登場し、治療方法が飛躍的に進歩しています。肺がん治療30年のスペシャリスト、国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎先生(57)が、最新の肺がん治療を教えてくれます。

【著効したオプジーボによる免疫療法】

 3年前、60歳代の男性Aさんは検診のエックス線で、肺に異常を指摘されました。翌月には左足の動きが悪くなり、CT(コンピューター断層撮影)や気管支鏡検査で詳しく調べたところ、肺の非小細胞がんで脳に転移があることが分かりました。

 Aさんは、脳の転移に対するサイバーナイフ(放射線)の治療を受けた後に、抗がん剤治療を開始しました。幸いサイバーナイフ治療、抗がん剤治療ともによく効き、短期入院と外来で1年以上、抗がん剤治療を継続して、仕事もしながら元気に通院していました。しかし、1年前に残念ながら抗がん剤治療が効かなくなって、肺がんが大きくなってしまいました(図1)。

 そこで免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボに治療を切り替えることになりました。2週間に1回のオプジーボの点滴で、大きくなっていた肺のがんは見事に縮小し、オプジーボの投与前にあった足のむくみもすっかり良くなりました(図2)。心配されたオプジーボの副作用もほとんどなく、2週間に1回、元気に外来に通っています。オプジーボの効果は現在も継続しており、外来通院以外は全く健康人と変わらない生活をしています。

 オプジーボは全ての患者さんに効果を発揮するわけではありません。また、いろいろな副作用が出現することも、まれではありません。しかし、肺がんの約20%の患者さんには、Aさんのような劇的な効果を発揮します。さらにその効果が、患者さんによっては年余にわたり継続することが分かっており、中には治癒する人がいるのではないかと期待されています。

 ◆免疫チェックポイント阻害薬 人間には体内に入った細菌やウイルスを排除する免疫の機能がある。排除後も免疫の力が高まったままだと、正常な細胞まで攻撃することがあるため、免疫を抑制する機能があり、これを免疫チェックポイントという。この免疫チェックポイントに作用して免疫抑制を解除し、免疫を活性化させる薬を免疫チェックポイント阻害薬という。

 ◆大江裕一郎(おおえ・ゆういちろう)1959年(昭34)12月28日生まれ、東京都出身。57歳。東京慈恵会医科大学卒。89年から国立がんセンター病院に勤務。2014年、国立がん研究センター中央病院副院長・呼吸器内科長に就任。柔道6段。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本体育協会公認スポーツドクターでもある。

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