fc2ブログ
       

月19万円の年金で貯蓄3000万円でも「贅沢はできない」67歳男性が語る年金暮らしのリアル


金融庁の報告書に端を発して話題となった「老後2000万円問題」など、老後の心配事といえばやはりお金ではないでしょうか。自分の現役時代の負担に比べて、もらえる年金額に不満を持つ人も多いようです。

現役時代にいくら稼ぎ、貯蓄をしておけば安心した暮らしができるのか。All About編集部が実施したアンケート調査から、広島県在住67歳男性のケースをご紹介します。

回答者プロフィール

回答者本人:67歳男性

家族構成:既婚(子あり)

居住地:広島県

現役時代の雇用形態:正社員

現役時代の最大年収:1000万円

現在の貯蓄額:3000万円

現役時代に加入していた公的年金の種類と加入年数:厚生年金42年

現在受給している年金額(月額)

老齢基礎年金(国民年金):6万円

老齢厚生年金(厚生年金):13万円

障害基礎年金や障害厚生年金(障害年金):なし

遺族基礎年金や遺族厚生年金(遺族年金):なし

その他(企業年金や個人年金保険など):なし

「年金だけで暮らすにはもう少し必要です」

こちらの男性は、現在の年金額について「満足していない」と回答。「年金生活だけで暮らしていくためには、もう少し金額が必要です」と話しています。

男性は「基本年金だけで生活し、仕事はしていません。特別出費については貯金を切り崩しています」と、年金額が月19万円で貯蓄が3000万円あっても、働かずに年金だけで暮らしていくには足りないと感じているようです。

「貯蓄倍増計画のようなものを立てればよかった」

現役時代の後悔について伺うと「住宅ローンはすでに完済していますが、貯蓄額をもう少し増やしておきたかった」と回想する男性。

「子どもが社会人になり出費が減ったタイミングから定年退職までの期間が一番貯蓄を増やせる期間だと思います。実際にその期間にある程度の貯蓄や住宅ローンの返済を行ってきました。ただ、この期間にもっともっと有効に使って貯蓄を増やすために『貯蓄倍増計画』のようなものを立てればよかったです。おそらくお金は貯めようとしなければ貯まらないものだと思います」と、貯まりやすい時期に貯蓄をしていなかったことを後悔しているようです。

「年金生活者のための原資作りをずっとしてきたのに……」

現在の年金暮らしで工夫している節約術を伺うと「仕事での収入がない以上当然のことですが、年金のみの生活になっているので、特に贅沢をするつもりはありませんし、贅沢はできません。極力ムダな出費を抑えて地味な生活で乗り切ろうと思っています」とのこと。

今後については「自分たちは会社員時代に先輩の年金生活者のための原資作りをずっと行ってきました。自分たちが年金生活者になった時には年金の原資を担ってくれる若い人が税金の未納などによって原資作りがうまくいっていません。政府の行っている年金原資の適切かつ効果的な運用によって、物価高騰の折、年金見直しの中で少しでも増額されることを期待します」と語ってくれました。

※カッコ内の回答者コメントは原文ママです

※投稿エピソードのため、内容の正確性を保証するものではございません

年金を月12万円もらえる人は、現役時代にどのぐらいの収入がある人ですか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、現役時代にどのぐらいの収入があれば、将来、年金を月12万円もらえるのかについてです。

Q:年金を月12万円もらえるのは、現役時代にどのぐらいの収入がある人なのですか?

「会社員として働いて将来、年金を月12万円もらうためには、現役時代にどのぐらいの収入が必要ですか?」(20代・会社員)

A:年収の目安は279万5000円(月額23万2926円)です

会社員は、受給要件を満たすことで原則65歳から老齢基礎年金と、老齢厚生年金を受け取れます。老齢基礎年金は、未納期間・免除期間が全くない方は、月額6万6250円(令和5年度満額)が受け取れます。

老齢厚生年金は、現役世代の収入金額(給与など)と厚生年金加入期間によって、次の計算式で計算されます。

(1)平成15年3月までは、平均標準報酬額×7.5/1000×平成15年3月までの加入期間

(2)平成15年4月以降は、平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入期間(※)

※スライド率等については省略。乗率は昭和21年4月2日生まれ以降の人の新乗率を使用

では、将来毎月12万円の年金を受け取れる会社員の年収はいくらになるでしょうか。

前提条件は、平成15年4月以後に、20歳以降60歳未満まで40年間厚生年金に加入、ボーナス込みで40年間の年収の変更は考慮しません。老齢基礎年金は令和5年度で満額6万6250円を受給できるとします。

前提条件で考えると、将来、毎月12万円の年金を受け取るために、老齢厚生年金は月額5万3750円(12万円-6万6250円)、年間で64万5000円受け取る必要があります。

老齢厚生年金を月額5万3750円(年額64万5000円)受け取るための年収を、(2)の計算式で算出します。

●計算式

平均標準報酬額×5.769/1000×480カ月(加入期間)=64万5000円(年間の厚生年金受給額)

平均標準報酬額=64万5000円/(5.769/1000×480)≒23万2926円

平均標準報酬月額を年収に換算します。

23万2926円×12カ月≒279万5000円(年収)

したがって、老齢厚生年金を月額5万3750円(年額64万5000円)受け取るために必要な年収の目安は279万5000円(月額23万2926円)となります。

また、老齢厚生年金は、要件を満たす配偶者がいると配偶者加給年金を受け取ることができます。令和5年度の配偶者加給年金の金額は、39万7500円(昭和18年4月2日以後生まれの特別加算額を含む)です。配偶者加給年金は、配偶者が65歳になるまで加算されますので、メリットが大きいのではないでしょうか。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

専業主婦で毎月「5万円」の国民年金を受け取っていた妻が亡くなりました。「遺族年金」は受け取れますか?


遺族年金の種類

遺族年金とは、公的年金保険に加入している方や、年金を受給中の方(以下本人とする)が亡くなった際に、遺族へ支給される年金を指します。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、受給対象者が異なります。2つの違いについて、表1にまとめました。

表1

※日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」を基に筆者作成

なお子どもと孫は、18歳になった年の年度末までか、20歳未満かつ障害年金における障害等級が1級もしくは2級に該当している場合にのみ、受け取れます。

専業主婦の妻が亡くなったときに夫が受け取れる遺族年金はいくら?

今回は、専業主婦をしていた方が亡くなった場合を想定してみましょう。条件は、以下の通りとします。

__

・亡くなった妻は66歳の専業主婦で、過去に厚生年金に加入していない

・妻は老齢基礎年金を受給していた

・17歳、15歳、13歳の子どもが一人ずついる

・子どもは3人とも障害等級に該当しない

__

厚生年金に加入していなかったため、遺族厚生年金は受け取れません。老齢基礎年金は、子どもが全員19歳未満のため、79万5000円に子ども3人分を加算して計算します。

子ども2人目までは22万8700円ずつ、3人目以降は1人につき7万6200円が加算されます。このことから、遺族基礎年金を受給する1年目の金額は132万8600円になります。

また翌年の3月31日を過ぎて、1人目の子どもが「18歳になった年の年度末」を超えると対象外になりますので、2年目は2人目と3人目の子どものみが加算対象となり、子どもは2人いることとして加算されます。

そのため、2年目の受給額は125万2400円です。さらに2年たつと、2人目も18歳になった年の年度末を超えるため、4年目の受給額は3人目の子どものみが対象となり、子ども1人目として加算された受給額は102万3700円になります。

3人目の子どもも18歳の年度末を過ぎると、遺族基礎年金の受給条件を満たさなくなるため、支給されなくなります。今回の条件では、5年間で合計588万800円を受け取れる計算になります。

妻が生計維持をしていたと認められなければ受け取れないケースもある

たとえ子どもがいる配偶者という受給条件を満たしていても、遺族基礎年金を受け取れないケースもあります。遺族年金は、亡くなった本人が生計を維持していたと判断されたときに支給されるため、妻が生計を維持していたと認められない場合は、支給されない可能性があります。

妻に生計を維持されていると判断される条件は、同居、または別居している場合でも仕送りをしている、および認定対象者(この場合は夫)の前年の年収が850万円未満であることです。

子どもの年齢などによって遺族年金の金額は変動する

遺族年金は、子どもの年齢や、亡くなった本人が厚生年金に加入していたかどうかなどで、支給額が変わります。また、生計を維持されていた人の年収が850万円以上あると、遺族基礎年金は受け取れません。

生計を維持されている人の年収が850万円以上の場合は、万が一に備えて、生命保険などに加入しておくこともひとつの方法です。もしものときに備えて、家族で話し合っておきましょう。

出典

日本年金機構

遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

年金用語集 さ行 生計維持

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

知っておきたい「加給年金」の仕組み ! うっかり申請忘れで大損の人も ?


「加給年金」という仕組みをご存じだろうか。配偶者や子どもがいて一定の条件を満たしている場合、年金額が加算される仕組みのことだ。対象者であっても受給のための申請・手続きをしないと受け取れない。見過ごされがちな制度であるため、注意が必要だ。

本記事では、加給年金の基礎知識とともに、ほかにも忘れがちな申請について解説する。

■「加給年金」とは ?

日本年金機構の公式サイトでは、加給年金について「厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点 (または定額部分支給開始年齢に到達した時点) で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます」と説明されている。

冒頭でも触れた通り、この仕組みを活用すれば支給される年金額が加算されるため、年金生活を迎えて収入が減ったとしても、配偶者や子どもを支えやすくなる。

■加給年金の基礎知識

続いて、加給年金の基礎知識を説明していこう。

●どんな条件がある ?

加給年金の対象となるには、被保険者が生計を維持している配偶者や子どもがおり、さらに配偶者と子どもがそれぞれ一定の条件を満たしている必要がある。

例えば配偶者の場合は「65歳未満」であること、子どもの場合は「18歳未満」または「1級・2級の障害の状態にある20歳未満」であることが求められる。

また、配偶者や子どもに一定以上の所得があると、加給年金の対象とならない。具体的には、前年の年収が850万円未満であるか、所得が655万5,000円未満である必要がある。さらに、同居していることや、離れて暮らしている場合は仕送りをしていることなども求められる。

●どれくらいの金額を受け取れる ?

条件を満たしている配偶者がいる場合は、年間で22万8,700円に生年月日に応じた特別加算額 (3万3,800~16万8,800円) を加えた金額が加給年金として加算される。

条件を満たしている子どもがいる場合は、1~2人目の子どもの分はそれぞれ年間22万8,700円、3人目以降の子どもの分はそれぞれ年間7万6,200円が加給年金として加算される。

●手続きはどこで行う ?

加給年金の加算には手続きが必要となる。手続きは年金事務所か年金相談センターで行う。不明点がある場合、まずは年金に関する相談窓口である「ねんきんダイヤル」を利用したい。

ねんきんダイヤル:0570-05-1165

■手続きを忘れていたらどうなる ?

加給年金は手続きをしなければ受け取ることができない。手続きを忘れても5年前までの分であれば遡って請求することができるが、5年以上が経過してしまうとそれもできなくなってしまう。

■加給年金と振替加算

加給年金について知識を得たら、「振替加算」についても知っておきたい。

振替加算は、配偶者が65歳になったために加給年金による加算が打ち切られる代わりに、配偶者の老齢基礎年金に加算が行われる仕組みのことを指す。一定条件を満たしている人が対象で、振替加算の金額は配偶者の生年月日によって変わってくる。

■ほかに忘れがちな申請は ?

加給年金の制度を知らない人は多く、注意が必要なことは前述の通りだが、年金に関してはほかにも申請漏れに気を付けたい仕組みがある。それが「控除」だ。

年金は額面通りの金額を受け取ることができるわけではなく、所得税などが差し引かれて支給される。この所得税を算出する際、課税対象となる所得の金額が小さいほど所得税も少なくすむ。この課税対象となる所得を小さくできる仕組みが控除だ。

代表的な控除としては、扶養親族などがいる場合の控除のほか、医療費控除や生命保険料控除などがある。扶養親族などがいる場合の控除は「扶養親族等申告書」の提出により可能で、医療費控除や生命保険料控除には確定申告が必要となる。

これらの控除が適用されなければ、実質的に所得税を払いすぎることになるため、申請・手続きは忘れずに行おう。

■「年金+α」の視点を早いうちから持とう

「加給年金」と聞くと得をするように感じるが、この制度の趣旨はあくまで配偶者や子どもの生活の維持を助けるためのものであり、一定金額が加算されるからといって、老後の生活の安心度がそれほど高まるわけではない。

もちろん加給年金の申請を忘れないことは非常に重要ではあるが、リタイア後の生活のことを考えるのであれば、年金以外の方法で資産を増やす視点も大切だ。

資産を増やす方法の一つとしては、投資による資産運用がある。資産運用に関する知識がない場合はハードルが高いと感じる人もいるかもしれないが、金融機関の資産運用コンサルティングサービスを利用するといった方法もある。

個人個人に合わせてリスク許容度を加味した提案をしてくれるため、ぜひ利用してみてほしい。

■老後に備えるための資産運用の検討を

本記事では、主に加給年金の仕組みについて解説してきたが、最後に紹介したように「年金+α」の視点を持ち、老後に備えるための資産運用を考えることも意識してほしい。年金以外に頼れる収入の柱を作っておくことで、老後の資金に関する不安も解消しやすくなるだろう。

(提供:大和ネクスト銀行/ZUU online)

64歳の正社員、夫は72歳でほぼ国民年金のみ。65歳になり、年金受給を開始すると夫に振替加算がつく?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。

今回は、64歳の正社員の人からの質問についてです。

Q:私が65歳になり、年金受給を開始すると夫に振替加算がつきますか?

「私は64歳の正社員です。夫は72歳でほぼ国民年金のみ。私が65歳になり、年金受給を開始すると夫に振替加算がつくのでしょうか」(相談者)

A:相談者が65歳になったら、夫に振替加算がつくようになります

振替加算とは、厚生年金加入者に加算されていた加給年金額が、配偶者が65歳になることで打ち切りになり、それに代わって一定の基準により配偶者の老齢基礎年金に加算されるものを指します。

また相談者のように、加給年金がもらえる厚生年金加入者に、要件を満たす年上の配偶者がいるときは、加給年金は受け取れませんが、いきなり配偶者に振替加算がつくケースがあります。振替加算は1966年(昭和41年)4月1日生まれの人までが対象です。

相談者に厚生年金加入期間が20年(240カ月)以上あり、その時点で夫が妻(相談者)によって生計を維持されていれば、相談者が65歳(本来加給年金をもらえる年齢)になったとき、夫に振替加算がつくようになります。

なお、年上の配偶者が振替加算を受け取るときは、「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」の提出が必要です。また、この手続きは、振替加算が受け取れる相談者の夫が行うことになります。

必要書類は下記になります。

【1】受給する人の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書)

【2】世帯全員の住民票の写し(続柄・筆頭者が記載されているもの)

【3】受給する人の所得証明書、または、非課税証明書(いずれかひとつで、加算開始日に直近のもの)

これらの書類を添付して年金事務所に提出しましょう。この手続きをすることで、相談者が65歳に到達すると、現在夫が受け取っている年金に振替加算がつき、年金額が増えるという形になります。

監修・文/深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

「年金支給額」=「受け取れる額」ではない!? 支給額が「180万円」だと実際にはいくら受け取れる?


年金の手取り額を計算する方法

年金は、所得税や住民税における課税対象であり、さらに、国民健康保険や介護保険料なども差し引かれます。老後の生活に深くかかわるため、年金から引かれるお金と、計算方法を把握しておきましょう。

なお人によっては、年金以外に収入を得ているケースなどもありますが、今回は、年金からのみ収入を得ているとして考えます。

雑所得の金額を求める

年金収入から「公的年金等控除額」を引くと、雑所得としての所得金額を求められます。年金から雑所得の金額を求める方法は、公的年金から得る収入の合計額によって変わるため、注意が必要です。年金から得る収入の合計額に応じた雑所得の金額の求め方は表1になります。

表1

※年金以外の所得が1000万円以下の場合

※国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)No.1600公的年金等の課税関係」を基に筆者作成

保険料の金額を求める

年金受給者が支払う保険料は、国民健康保険料または75歳以上ならば後期高齢者医療保険料と、介護保険料です。それぞれの保険料は、自治体によって保険料率が異なります。同じ都道府県内でも、市町村によって変わることもあるため、ホームページなどで確認しておきましょう。

雑所得から基礎控除や社会保険料などを控除したあとに税金額を求める

基礎控除とは、所得金額に応じて、所得の合計額から控除できる金額のことです。年金収入のみの場合は、雑所得がそのまま合計所得金額となります。そのため、雑所得から基礎控除と社会保険料を引いて求めた金額を基に、所得税や住民税を求めます。

なお、所得税の基礎控除額と、住民税の基礎控除額は異なりますので、注意しましょう。表2は、所得税と住民税の基礎控除額です。

表2

※横浜市「住民税税制改正のお知らせ(令和3年度実施分)」を基に筆者作成

年金受給者の所得税は所得に応じて変動し、課税所得金額が195万円超330万円以下ならば、住民税率は10%です。また住民税には、均等割として5000円が加えられます。

年金が年額180万円だった場合に受け取れる金額

年金が180万円だった場合を例に、手取り額を計算してみましょう。条件は以下の通りとします。

__

・単身世帯で70歳

・東京都新宿区在住

・収入は年金のみ

・基礎控除、公的年金等控除額、社会保険料控除以外の控除は考慮しない

__

まず表1より、年金180万円の雑所得は、70万円です。国民健康保険料が年額8万5993円、介護保険料は年額8万4480円ですので、合計すると17万473円になります。

ここから所得税を求めるために、基礎控除の48万円、社会保険料の17万473円を雑所得から差し引くと4万9527円となり、1000円以下の端数を切り捨てたあとの所得税は、5%の2450円です。

住民税では基礎控除が43万円のため、保険料と合わせて控除すると9万9527円となります。住民税は、10%に5000円を加算した1万4952円です。

保険料17万473円と所得税2450円、住民税1万4952円を年金180万円から引くと、実際に受け取れる金額は161万2125円になります。月額にすると、約13万4344円です。

受け取れる金額は支給額より少なくなるケースがある

控除額より少ない金額の場合、年金は支給額とほぼ同じ金額が受け取れます。しかし、控除額を超える金額を受け取る場合は、所得税や住民税、保険料などが引かれるため、注意が必要です。

支給額を基に、年金受け取り後の暮らし方を考えると、想定よりもお金が少し足りなくなる可能性もあります。あとで苦労しないためにも、年金を受け取る前に、実際はいくら受け取れるのかを、おおよその金額を計算しておきましょう。

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1600 公的年金等の課税関係

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1199 基礎控除

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) 高齢者と税(年金と税)

総務省 地方税制度 個人住民税

横浜市 住民税税制改正のお知らせ(令和3年度実施分)

新宿区 保険料の計算方法について 保険料率等について【令和5年度の保険料率等】

新宿区 介護保険料の決まり方 65歳以上(第1号被保険者)の方の介護保険料(令和3年度~令 和5年度)第6段階

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

「年金が少なくて生活できない!」そうならないために、今から年金額の確認と対策をしよう!


会社員夫とパート主婦世帯のケース

Aさんは40代会社員、新卒で入社した会社で働いています。定年は60歳ですが再雇用で65歳まで働く予定です。妻は、現在は扶養内で働くパートですが、大学卒業後から結婚までの5年間会社員でした(当時の平均年収は約300万円)。

・Aさん夫婦の年金額を計算する。

年金には基礎年金と厚生年金の2種類があります。基礎年金は、20歳から60歳まで保険料をきっちり納めると65歳から約80万円の年金を受け取ることができます。Aさん夫婦は2人とも免除や未納はないため、基礎年金を約80万円受け取れます。

次に厚生年金を計算します。厚生年金は厚生年金に加入経験がある人が受け取れる年金で、金額は年収と厚生年金加入期間に比例し、下記の計算式から概算の年金額を算出できます。

(1) 厚生年金加入期間中の平均年収 × (2) 厚生年金加入年数 × 0.55%

Aさんは65歳まで働く予定ですから、(1)は入社から65歳までの平均年収です。(2)は入社から65歳までの年数42年(65歳-23歳)です。仮に(1)が500万円だとすると、老後の厚生年金は、

500万円×42年× 0.55% = 115.5万円

基礎年金80万円と合計すると、約200万円の年金になることが分かります。

一方、妻は扶養内で働いていますから現在は厚生年金に加入していません。結婚前は会社員として5年間厚生年金に加入していたため、老後の厚生年金は、

300万円×5年×0.55%=8.25万円

基礎年金と合わせて約88万円の年金になることが分かります。

夫婦合わせて年金は毎月約24万円ですが、 税金と社会保険料を差し引くと手取りは21~22万円程度になるでしょう。

フリーランスのおひとりさま世帯のケース

Bさんは、現在フリーランスとして働いている40代のおひとりさまです。大学卒業後10年間年収400万円程度で会社員として働いていましたが、退職後はフリーランスとして働いています。

・Bさんの年金額を計算する。

Bさんも年金に未納や免除はなく、基礎年金は約80万円です。一方、フリーランスは厚生年金に加入しません(できません)から、厚生年金加入期間は会社員時代の10年間のみとなります。老後の厚生年金を計算すると、

400万円×10年×0.55%=22万円

基礎年金と厚生年金を合計すると約100万円です。100万円なら税金はかかりませんが、社会保険料は納める必要があります。手取りとしては、月に7~8万円程度になるでしょう。

老後資金対策を考える

それでは、Aさん夫婦とBさんの老後資金対策を考えます。

対策その1 ~老後の不足額を計算する~

自分の老後の年金額が分かりました。生活するには、あと月にいくら必要か考えて老後のトータル不足額を計算します。95歳まで生きるとして、その不足金額を30年分します。その金額が老後のトータルの不足金額です。

対策その2 ~貯める~

iDeCoやNISAを活用して、老後の不足額を埋められるよう資産形成をすることが重要です。効果的に資産形成ができる制度があるのですから、利用しないともったいないですね。

対策その3 ~会社の制度を知る~

これは、Aさんの夫に当てはまることですが、会社に退職金制度や企業年金制度はないか確認してみましょう。自分の会社の退職金制度を知らない人は多いものです。まずは会社の退職金制度を確認し、できればその金額も確認しましょう。会社のシステムから金額をシミュレーションできる場合もあります。

対策その4 ~働き方を変える~

Aさんの妻とBさんは、厚生年金に加入していないため年金額が少なくなっています。Aさんの妻は扶養の範囲を超えて働くことで厚生年金に加入できます。扶養を超えて働くことで今の収入も増やせますし将来の年金額も増やせます。

Bさんの場合は法人化して厚生年金に加入する、フリーランスとして活動しつつも厚生年金に加入して働ける職場を見つけるなどの方法が考えられます。厚生年金に加入できるチャンスがあるなら、検討してみるとよいでしょう。

老後資金の対策は年金額を知ることから

老後の資金対策は、まずは年金額を知ることから始まります。この金額が分からなければ、準備していたとしても足りなかったり、多すぎたりということになります。ライフプランを作ってみると、老後への備えが多すぎて、現役時代はカツカツだけど、意外にも老後は余裕がありすぎる家庭は少なくありません。

このような家庭は、会社の退職金制度を知らなかったという家庭によく見られます。老後のために貯金しすぎて今が苦しいのは本末転倒です。年金額はねんきんネットでシミュレーションできますし、今回お伝えした計算式で概算金額を算出しても良いでしょう。まずは自分自身の年金を知ることからはじめましょう。

執筆者:前田菜緒

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

「月11万円」の年金を「60歳・70歳」で受け取ると、平均寿命までの総額はどれくらいの差になる? 男性は「早く受けったほうが得」という結果に


繰上げ受給のメリット・デメリットとは?

年金の繰上げ受給を選択すると、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて年金を受け取ることができます。通常よりも早く受給できるのがメリットです。

ただし、その分、年金額が減額されるのがデメリットです。昭和37年4月2日以降生まれの人は、減額率は「0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」の計算式で求めます。減額率は最大で24%です。

また、繰上げ受給をすると、国民年金の寡婦年金の受給ができなくなったり、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができなくなったりします。

繰下げ受給のメリット・デメリットとは?

年金の繰下げ受給を選択すると、66歳以後75歳までの間に繰下げて年金を受け取ることができます。早く亡くなってしまうと、年金を受け取る期間が短くなってしまうというのがデメリットです。

ただし、受給を遅らせた分、年金額が増額するのがメリットです。増額率は「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」の計算式で求めます。増額率は最大で84%になります。75歳に達した月(75歳の誕生日の前日の属する月)を過ぎて請求を行っても増額率は増えません。増額された年金は、75歳までさかのぼって決定され支払われます。

「60歳」「70歳」で受け取った場合は?

60歳に繰り上げて年金を受け取ると、減額率は「0.4%×60ヶ月=24.0%」です。65歳になった際に受け取る年金額が11万円の場合、「11万円×0.24=2万6400円」の減額になります。

そのため、1ヶ月に受け取ることができる年金額は月に8万3600円、年に100万3200円です。厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると男の平均寿命は 81.05 年、女の平均寿命は87.09年です。

そのため、平均寿命まで生きたとすると、男性の場合は21年間、女性の場合は27年間、年金を受け取ることができます。ということは、総受給額は男性の場合は2106万7200円、女性の場合は2708万6400円になります。

一方、70歳に繰り下げて年金を受け取ると、増額率は「0.7%×60ヶ月=24.0%」です。65歳になった際に受け取る年金額が11万円の場合、「11万円×0.24=2万6400円」の増額になります。

そのため、1ヶ月に受け取ることができる年金額は月に13万6400円、年に163万6800円です。平均寿命まで生きたとすると、男性の場合は11年間、女性の場合は17年間、年金を受け取ることが可能です。ということは、総受給額は男性の場合は1800万4800円、女性の場合は2782万5600円になります。

男性の場合は繰上げ受給のほうが306万2400円多く受け取ることができますが、女性の場合は繰下げ受給のほうが73万9200円多く受け取ることが可能です。では、65歳で受け取る場合はどうなのかというと、年に132万円受け取ることができます。

そのため、男性の場合は16年で2112万円、女性は22年で2904万円受け取ることが可能です。そのため、男性も女性も「60歳」「70歳」で受け取るよりも、総年金額は多くなります。とはいえ、寿命は分からないので、それぞれのメリット・デメリットなどを踏まえて受給開始時期を考えてみてください。

男性は「60歳」女性は「70歳」で受給したほうがお得

平均寿命まで生きたと仮定して、男性の場合は60歳で受給したほうが総額は306万2400円多く受け取ることができます。一方、女性の場合は70歳で受給したほうが73万9200円多く受け取ることが可能です。

とはいえ、いつまで生きるのかは誰にも分からないことです。繰上げ受給と繰下げ受給のメリット・デメリットなどを踏まえて受給開始時期を選択してください。

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給

日本年金機構 年金の繰下げ受給

厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

監修:高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

夫婦で年金月額「18万円」だった場合、定年後は月いくら稼げばいいですか?


夫婦の生活費はどれくらいかかるのか

最初に、一般的な年金暮らしの夫婦の生活には、どれくらいの生活費がかかっているのか、確認してみましょう。総務省統計局の「家計調査年報」によると、2022年における1ヶ月当たりの平均的な支出は、26万8508円となっています。

ただし、最低限の生活費で考えると、支出はもう少し小さくなるかもしれません。公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によると、老後に夫婦2人で生活するために最低限必要な生活費については、1ヶ月当たり20万円から25万円と答えた方が最多であり、回答者全体の27.5%に当たります。なお、平均値は23.2万円でした。

ここから、年金を含めて最低でも23万円程度、できれば27万円程度は、生活費として確保できるようにしておくべきだ、ということが分かります。

なお、同センターの調査には「わからない」との回答が全体の22.5%あります。「最低限の生活費」といっても必要な額は夫婦によってさまざまであり、なかなか一概にはいえない部分が多いことが分かります。

ゆとりある生活を送る場合は、さらにお金が必要になる

先に見たとおり、23万円から27万円程度のお金があれば老後生活ができるか、といえば、そうとはいいきれない部分もあります。先に見たものは、あくまでも最低限の生活費や、統計上一般的な生活費です。

人によっては老後、趣味を楽しんだりさらに知見を広げていったりしたい、と考えている方もいるでしょう。そういった場合には、先の金額では足りない可能性が高いです。

同じく、公益財団法人生命保険文化センターによれば、「ゆとりある老後生活費」として必要な金額は、平均37.9万円となっています。具体的な金額での回答は、1ヶ月当たり30万円から35万円未満と答えた層が最も多く、全体の20.5%でした。

ここから考えると、老後に趣味を楽しむなど余裕のある生活を望むのであれば、毎月の生活費は30万円程度を見込んでおいた方がよさそうです。

ただし、次いで多かったのは、50万円以上という回答で、全体の18%ありました。また、最も多かったのは「(金額が)わからない」という回答で、全体の22.5%となっています。

そのため、ゆとりある生活を送りたいのであれば、どのくらいの金額が必要になるか、個別の試算が必要です。

夫婦で暮らすために、定年後はいくら稼ぐべきか

夫婦で暮らしていくために、定年後はいくら稼ぐべきであるのか算出する方法は、そう難しくありません。現在の生活費、受け取る予定の年金額、定年後にたまっているであろう老後資金の額、そして何歳まで生きるか、といった情報から推測できます。

例えば、以下のような条件のもとに考えてみましょう。

・現在の生活費から考えて、老後の生活費は1ヶ月当たり22万円

・定年後に受け取る年金額と時期は、65歳から、1ヶ月当たり18万円の予定

・定年までには1000万円をためる予定

・夫婦で90歳まで生きる

すると、65歳から25年間の生活費は、6600万円だと分かります。それに対して年金収入は5400万円です。年金収入の不足する金額1200万円に対して、定年後の生活資金は1000万円しかなく、200万円の不足です。すると、毎月7000円程度を25年間稼げば、少なくとも90歳までは生活できる、という具合です。

とはいえ、90歳まで働きつづけるのは大変なものです。そこで「定年後に2年間フルタイムで働き、200万円を貯金してその後の生活に備える」などといった工夫もできます。

このように、今の生活を基準に考えていくことで、定年後いくら稼ぐべきかが分かってきます。

まとめ

一口に「1ヶ月当たりの年金が18万円」といっても、定年後に何円稼ぐべきなのかは夫婦のライフスタイルによって異なります。もし、定年後に何円稼ぐべきなのか不安になったときは、老後のライフスタイルから生活費を想定してみて、それを賄うために必要な金額を稼ぐように考えてみてください。

そうすることで、定年後にどれくらい稼ぐべきなのかという疑問を解消し、老後に備えていくことができます。その際は、少し余裕を持たせた金額にしておくと安心できるので、ギリギリの金額で試算しないことをおすすめします。

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要

公益財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?

執筆者:柘植輝

行政書士

夫婦で年金月額「18万円」だった場合、定年後は月いくら稼げばいいですか?


夫婦の生活費はどれくらいかかるのか

最初に、一般的な年金暮らしの夫婦の生活には、どれくらいの生活費がかかっているのか、確認してみましょう。総務省統計局の「家計調査年報」によると、2022年における1ヶ月当たりの平均的な支出は、26万8508円となっています。

ただし、最低限の生活費で考えると、支出はもう少し小さくなるかもしれません。公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によると、老後に夫婦2人で生活するために最低限必要な生活費については、1ヶ月当たり20万円から25万円と答えた方が最多であり、回答者全体の27.5%に当たります。なお、平均値は23.2万円でした。

ここから、年金を含めて最低でも23万円程度、できれば27万円程度は、生活費として確保できるようにしておくべきだ、ということが分かります。

なお、同センターの調査には「わからない」との回答が全体の22.5%あります。「最低限の生活費」といっても必要な額は夫婦によってさまざまであり、なかなか一概にはいえない部分が多いことが分かります。

ゆとりある生活を送る場合は、さらにお金が必要になる

先に見たとおり、23万円から27万円程度のお金があれば老後生活ができるか、といえば、そうとはいいきれない部分もあります。先に見たものは、あくまでも最低限の生活費や、統計上一般的な生活費です。

人によっては老後、趣味を楽しんだりさらに知見を広げていったりしたい、と考えている方もいるでしょう。そういった場合には、先の金額では足りない可能性が高いです。

同じく、公益財団法人生命保険文化センターによれば、「ゆとりある老後生活費」として必要な金額は、平均37.9万円となっています。具体的な金額での回答は、1ヶ月当たり30万円から35万円未満と答えた層が最も多く、全体の20.5%でした。

ここから考えると、老後に趣味を楽しむなど余裕のある生活を望むのであれば、毎月の生活費は30万円程度を見込んでおいた方がよさそうです。

ただし、次いで多かったのは、50万円以上という回答で、全体の18%ありました。また、最も多かったのは「(金額が)わからない」という回答で、全体の22.5%となっています。

そのため、ゆとりある生活を送りたいのであれば、どのくらいの金額が必要になるか、個別の試算が必要です。

夫婦で暮らすために、定年後はいくら稼ぐべきか

夫婦で暮らしていくために、定年後はいくら稼ぐべきであるのか算出する方法は、そう難しくありません。現在の生活費、受け取る予定の年金額、定年後にたまっているであろう老後資金の額、そして何歳まで生きるか、といった情報から推測できます。

例えば、以下のような条件のもとに考えてみましょう。

・現在の生活費から考えて、老後の生活費は1ヶ月当たり22万円

・定年後に受け取る年金額と時期は、65歳から、1ヶ月当たり18万円の予定

・定年までには1000万円をためる予定

・夫婦で90歳まで生きる

すると、65歳から25年間の生活費は、6600万円だと分かります。それに対して年金収入は5400万円です。年金収入の不足する金額1200万円に対して、定年後の生活資金は1000万円しかなく、200万円の不足です。すると、毎月7000円程度を25年間稼げば、少なくとも90歳までは生活できる、という具合です。

厚生年金に35年はいってます。60歳から年金をもらえますか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。

老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。

そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、厚生年金に35年加入している場合、60歳から年金をもらえるのかについてです。

Q:厚生年金に35年はいってます。60歳からを老齢厚生年金もらえる?

「厚生年金に35年はいってます! 60歳から老齢厚生年金をもらえますか? もらえれば、どのくらいもらえますか?」(けんさん)

A:老齢厚生年金は、生年月日にもよりますが、原則として65歳から受給開始します。手続きすることで60歳から受け取ることができますが、デメリットもありますので、慎重に検討しましょう

男性は昭和36年4月2日以降に生まれた場合、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた場合、老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができます。それ以前であれば、生年月日によって60代前半で「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる場合があります。

相談者が男性で昭和36年4月2日以降に生まれた場合は65歳からの受給となりますが、希望すれば、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に、繰上げ受給をしなくてはなりません。

繰上げ受給にはデメリットもあります。いったん繰り上げ受給すると取り消しできないうえ、1カ月早くもらうごとに、本来の年金額から0.4%減額されます。一生涯もらえる年金額が減額されてしまうため注意が必要です。

減額される年金額の計算式は、次のようになります。

・減額率(最大24%)=0.4%×繰り上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数

例えば、相談者が65歳から月額14万円(年額168万円)の年金を受け取れると仮定し、60歳から年金を受け取る(繰り上げる)とします。この場合の減額率は、24%となります。

・減額率=(5年間×12カ月=60カ月)×0.4%=24%

したがって、相談者が60歳から受け取れる年金額は、年額127万6800円(月額10万6400円)になります。

・年額=168万円×(1-0.24)=127万6800円

(月額=127万6800円÷12=10万6400円)

さらに、年金が減額される他のデメリットとしては、60歳以降に加入できるはずの国民年金の任意加入ができない、「事後重症(じごじゅうしょう)」(障害認定日後に障害の状態が重くなってしまうこと)による障害基礎年金を請求することができなくなる等があります。公的な保障を失うこともありますので、くれぐれもよく考えて、検討しましょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている

特別支給の老齢厚生年金ってなんでしょうか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。

今回は、特別支給の老齢厚生年金について解説します。

Q:特別支給の老齢厚生年金とはなんですか?

「特別支給の老齢厚生年金ってなんでしょうか?」(わんこ)

A:受給要件を満たした人が、65歳になる前にもらえる年金です

現在、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は原則として65歳からもらうことができます。

昭和60年に年金制度の法律が改正され、老齢厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。特別支給の老齢厚生年金制度は、この年金受給開始年齢を段階的にスムーズに引き上げるために設けられた制度になります。

以下の受給要件を満たすことで、受給開始年齢になると、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。

▼特別支給の老齢厚生年金に受給要件

・男性:昭和36年4月1日以前生まれの人

・女性:昭和41年4月1日以前生まれの人

・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)がある人

・厚生年金保険等に1年以上加入していた人。

・生年月日に応じた受給開始年齢に達している人

▼特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢

特別支給の老齢厚生年金の受給要件を満たした人は、画像の年齢になったときから年金をもらえます。「特別支給の老齢厚生年金」には、「報酬比例部分」と「定額部分」があります。世代によって、「報酬比例部分」と定額部分」をもらえる人、「報酬比例部分」のみもらえる人がいます。

詳しくは日本年金機構のホームページで確認できます。

日本年金機構のホームページより:特別支給の老齢厚生年金|日本年金機構
日本年金機構のホームページより:特別支給の老齢厚生年金|日本年金機構© All About, Inc.

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

障害厚生年金を受給しています。65歳になったら、老齢年金は繰下げできるのでしょうか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、障害年金を受給している場合の老齢年金の繰下げについてです。

Q:障害厚生年金を受給していますが、老齢年金は繰下げできる?

「現在、障害厚生年金(3級)を受給しています。65歳になったら、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は繰下げできるのでしょうか? 繰下げ可能だとしたら、繰下げ期間中は障害厚生年金の受給はストップされるのでしょうか?」(ポポさん)

A:障害厚生年金の受給権がある限り、繰下げはできません

相談者は老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ受給を考えているようですね。

65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までに、障害厚生年金や遺族厚生年金、遺族基礎年金を受け取る権利がある場合は、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の繰下げ受給の申し出はできません。

例外的に、障害基礎年金のみ受け取る権利のある人は、老齢厚生年金のみ、繰下げ受給の申し出ができます。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じてい

老齢厚生年金は67歳まで繰下げ予定。2年間で16.8%増額する? 65歳時点で48万円を超えていなければ満額増額対象になる?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。

老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は65歳での年金は約16万円で、老齢厚生年金を2年間、繰下げした場合の年金額についてです。

Q:65歳での年金は約16万円。老齢厚生年金は67歳まで繰下げ予定。2年間で16.8%増額する? 65歳時点で48万円を超えていなければ、増額した年金を満額もらえる?

「65歳での年金は約16万円です。老齢厚生年金は67歳まで繰下げを考えています。老齢基礎年金は6万5000円とすると、老齢厚生年金は2年間で16.8%の増額と考えてよいのですか? 65歳時点で48万円を超えていなければ、満額増額対象になりますか。

また、昭和33年12月生まれで特別支給の厚生年金をもらっていますが、誕生日前の11月までの支給で終了ですか?」(カリーナさん)

A:老齢厚生年金を67歳まで繰り下げるなら増額率は16.8%です。65歳で総報酬月額相当と老齢厚生年金の月額を合計して48万円超えていなければ増額した老齢厚生年金を全額受給できます

「カリーナ」さんは老齢厚生年金を67歳までの繰下げ受給することを考えているとのこと。65歳時点の老齢年金は月額で約16万円とのことですから、もし老齢基礎年金が月6万5000円であれば、老齢厚生年金は月額約9万5000円になります。

2年間繰下げすると、増額率は16.8%となり、老齢厚生年金の月額は11万960円になるでしょう(9万5000円×116.8%)。

もし「カリーナ」さんが厚生年金に加入して働き続ける場合、給与等によっては、老齢厚生年金が減額または支給停止となる場合がありますが、総報酬月額相当額(給与等と、年間ボーナスの12分の1の合計)と老齢厚生年金月額の合計が、

在職老齢年金制度の基準額である48万円以内におさまるように働ければ、増額した老齢厚生年金を満額受給できます。

最後に、特別支給の老齢厚生年金は、要件に当てはまった人は65歳の誕生月分まで受給することができます。

「カリーナ」さんの場合は、特別支給の老齢厚生年金を、65歳の誕生月である12月分まで受給し、65歳前に届く請求ハガキを返送すれば、翌年1月から本来支給の老齢基礎年金・老齢厚生年金を65歳から受給することになります。

老齢厚生年金を繰下げ受給する場合は、年金請求ハガキの「老齢厚生年金のみ繰下げ希望」欄に○をつけるのを忘れないようにしましょう。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

失業して年金と健康保険料を支払えなくなったら催促状がきました。延滞金がかかるのですが払わないといけないのですか?


失業して年金と健康保険料を支払えなくなったら催促状がきました。延滞金がかかるのですが払わないといけないのですか?

失業して年金と健康保険料を支払えなくなったら催促状がきました。延滞金がかかるのですが払わないといけないのですか?© ファイナンシャルフィールド

国民年金保険料を催促する書面が届いた場合の対処法

失業して無職になった人は、国民年金の加入手続きが必要です。国民年金の概要と、延滞金が発生するまでの流れや対処法は以下のとおりです。

国民年金とは

国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する公的年金です。無職の人は第1号被保険者として、納付期限(翌月の末日)までに保険料の全額を自分で支払う義務があります。なお、令和5年度の国民年金保険料は月額1万6520円です。

延滞金が発生するまでの流れ

保険料を納付期限までに支払わずにいると、電話や文書による納付勧奨、催告状、督促状の順に書面が届きます。督促状は最終的な通知です。そのため、督促状が届いても支払わずにいると、財産の差し押さえとともに延滞金が請求されます。

なお、督促状と財産の差し押さえは、連帯納付義務者(世帯主と配偶者)に対しても行われます。

保険料を催促する書面が届いた場合の対処法

延滞金が発生するまで支払いを放置していた責任は、被保険者にあります。そのため、請求された延滞金は支払わなければいけません。被保険者ができることとしては、納付勧奨、催告状、督促状のいずれかが届いた時点で支払いに応じることです。そのうえで、保険料の免除・納付猶予制度の利用を検討しましょう。

 

当制度は、失業などで支払えなくなった保険料を免除や納付猶予できる制度です。なお、免除や納付猶予された期間は受給資格期間に算入されますが(納付猶予期間は反映なし)、年金額は納付した場合の2分の1に減額されます。そのため、免除や納付猶予によって減額された年金額を増額させたい場合は、保険料の追納(後払い)制度を利用しましょう。

国民健康保険料を催促する書面が届いた場合の対処法

失業して無職になった人は、国民健康保険の加入手続きをします。国民健康保険の概要と、延滞金が発生するまでの流れや対処法は以下のとおりです。

国民健康保険とは

国民健康保険は、被用者保険や後期高齢者医療制度に未加入の人が加入する公的な医療保険です。都道府県と特別区を含む市区町村が保険者の市町村国保と、業種ごとに組織された国民健康保険組合が保険者の2種類に分かれています。

国民健康保険の保険料を支払う義務があるのは、世帯主です。また、保険料は各市区町村が世帯員の所得や人数などから独自に算出します。

延滞金が発生するまでの流れ

国民健康保険料を納付期限(納付期ごとに異なる)までに支払わずにいた場合に届くのが、督促状です。督促状に指定された期限までに支払わずにいると、その後の保険料に延滞金が加算されます(督促状の後に電話や訪問などによる催告を挟む場合がある)。

保険料を催促する書面が届いた場合の対処法

督促状に指定された期限までに保険料を支払わなかった場合には、保険料に延滞金が加算されます。延滞金を免れたいのであれば、督促状に指定された期限までに保険料を支払いましょう。


もし、失業などによる収入の減少で保険料が支払えないのであれば、保険料の軽減が受けられる場合がありますので、当該保険者にその旨を伝えて相談しましょう。

保険料が支払えないなら年金事務所や保険者に相談しよう

国民年金と国民健康保険を催促する書面が届いた場合は、延滞金が発生する可能性があります。延滞金は保険料の支払い義務の不履行に対するペナルティーです。そのため、延滞金が発生した場合は、原則支払う必要があります。


保険料が支払えないのであれば、その旨を最寄りの年金事務所や国民健康保険の保険者に伝えて、免除や軽減などの措置が受けられないか相談するようにしましょう。

出典

日本年金機構 日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)

日本年金機構 延滞金について

日本年金機構 国民年金保険料

日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度

厚生労働省 国民健康保険制度

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

年金が「月9万円」ほどで、老後が不安です。このままでは「老後破産」まっしぐらでしょうか? どうにか対策をご教示いただきたいです


65歳以上の単身無職世帯における毎月の平均支出額は約15万5495円

総務省が2022年に行った家計調査によると、65歳以上で単身無職世帯の消費支出と非消費支出の合計(月平均額)は15万5495円です。内訳は、消費支出が14万3139円、税金や社会保険料といった非消費支出が1万2356円です。

ただし、このうち住居費は消費支出の8.9%となっており、金額にすると1万2746円です。このように住居費が低い理由は、持ち家率が高いことだと考えられます。賃貸であれば家賃が発生することから、住居費はもっと高くなるでしょう。

仮に3万円住居費にプラスすると、平均的な支出額は18万円程度になります。仮に年金を月9万円しか受け取れないとすると、10万円近く足りなくなるでしょう。

足りない分はどのように補填するべき?

もしも年金だけでは収入が足りないのであれば、何らかの方法で赤字の分を補填(ほてん)するしかありません。まず考えられるのは、老後も何らかの形で働くことです。定年後も働く方法としては、再雇用と再就職が挙げられます。

再雇用は、これまで働いていた会社に定年後再び雇用してもらう方法です。2021年に高齢者雇用安定法が施行されたこともあり、企業が高齢者の雇用を促進する動きが強まっています。例えば、定年を70歳まで延長したり、65歳で定年を迎えた高齢者を再び雇用したりしています。この制度を活用し、70歳まで働くのもひとつの方法です。

ただし、再雇用された場合は現役時代よりも役職が低くなったり、給料が安くなったりする可能性があることを留意しておきましょう。

これまで働いていた会社とは別の会社に再就職する方法もあります。自分の希望や体力、健康状態を考慮し、適切な方法や職種を選ぶのもよいでしょう。仕事の探し方としてまず挙げられるのは、ハローワークによる紹介です。ハローワークには65歳以上のシニア層をターゲットにした窓口が設置されており、定年後の再就職について相談できます。また、シルバー人材センターを利用するのもひとつの方法です。

これらの方法で65歳以降は年金を受け取りながら働くことで、赤字分をある程度補填できるでしょう。

あらかじめ貯金などの対策を講じることも大切!

将来年金だけでは足りなくなることは分かっているのであれば、少しでも早く手を打ちましょう。例えば、比較的給料が高い現役時代のうちに貯金を始めましょう。つみたてNISAやiDeCoを活用するのもよいでしょう。

また、繰下げ受給の申請をすれば年金額を増やすことができます。繰下げ受給とは、年金の受給を66歳以後に遅らせることで年金が加算される制度です。66歳まで繰り下げると8.4%年金額が加算され、その後は1ヶ月毎に75歳まで0.7%加算されます。例えば、70歳まで年金の受給を遅らせれば42%加算されるので、月9万円の受給額が12万7800円になります。

年金だけでは足りない場合は事前に準備しておこう!

統計によると、老後は毎月15万~18万円程度の支出が発生すると予想できます。年金だけでは収入が心もとない、という人はなるべく早くから対策に取り組みましょう。

再雇用や再就職のための準備を始めることも大切ですし、あらかじめ貯金をしておくことも重要です。また、繰下げ受給を申請して年金額を増やすことも考慮に入れるとよいでしょう。

出典

総務省 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年) 家計の概要

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は


国民年金保険料の2年前納制度は、平成29年から始まった制度で、他の前納と比べてかなりお得になっています。

また、転職をして厚生年金に加入した場合は還付されます。

有利な国民年金保険料の前納制度についてご紹介します。

国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は
国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は© マネーの達人 提供

国民年金保険料2年前納制度と納付方法

国民年金保険料は、日本に住む20歳以上60歳未満の第1号被保険者(フリーランス、自営業とその配偶者、学生、無職の方等)が対象で、国民年金保険料を毎月1万6,520円(令和5年度の金額)払わなければなりません。

国民年金保険料は、口座振替、クレジット納付、納付書(現金)などで支払うことができ、それぞれ前納することができます。

前納の保険料を支払う期間は、

  • 2年前納(4月分~翌々年3月分)、

  • 1年前納(4月~翌年3月分)、

  • 6か月前納(4月~9月分、10月~翌年3月分)となります。

前納の申込は、口座振替の場合は引き落とされる口座の金融機関か年金事務所、クレジットカードでの場合は年金事務所へ2月末日までの申込をします。

納付書(現金)での場合は、市区町村にある「国民年金保険料2年前納納付書発行事前受付申出書」をあらかじめ提出する必要があります。

期間や払い方で割引率は異なる

国民年金保険料の前納は、前納する期間や払い方によって割引額が異なります。

口座振替の場合

令和5年度の口座引き落としの場合の2年前納制度の割引額は、1万6,100円です。

(令和5年度保険料1万6,520円×12か月)+(令和6年度保険料1万6,980円×12か月)=40万2,000円

40万2,000円−1万6,100円=38万5,900円

本来であれば2年で40万2,000円支払うべき保険料が、2年前納することにより1万6,100円安くなります。

6か月前納

1年前納

2年前納

令和5年度

9万7,990円

(-1,130円)

19万4,090円

(-4,150円)

38万5,900円

(-1万6,100円)

( )は毎月納める場合と比較した割引額です。

現金及びクレジットカードの場合

現金及びクレジットカード納付2年前納の割引額は、1万4,830円です。

(令和5年度保険料1万6,520円×12か月)+(令和6年度保険料1万6,980円×12か月)=40万2,000円

40万2,000円-1万4,830円=38万7,170円

本来であれば2年で40万2,000円支払うべき保険料が、2年前納することにより1万4,830円安くなります。

6か月前納

1年前納

2年前納

令和5年度

9万8,310円

(-810円)

19万4,720円

(-3,520円)

38万7,170円

(-1万4,830円)

( )は毎月納める場合と比較した割引額です。

2年前納した保険料の社会保険料控除となる金額

2年前納した保険料ですが、どの金額が確定申告等で社会保険料控除の対象となるのでしょうか。

控除の仕方は、2通りあります。

1つ目は、前納した全額を支払った年に控除する方法です。

例えば、2年前納で38万5,900円を支払った年に全て社会保険料控除の対象とします。

2つ目は、前納した保険料を3年にわたって、該当する年分の保険料を控除する方法です。

例として以下になります。

例:口座振替で2年分(令和5年4月分~令和7年3月分)38万5,900円を前納した場合

→3回に分けることになります。

【1】令和5年の対象となる控除額(令和5年4月分~令和5年12月分)の9か月

38万5,900円×9か月/24か月=14万4,713円

【2】令和6年の対象となる控除額(令和6年1月~令和6年12月)の12か月分

38万5,000円×12か月/24か月=19万2,950円

【3】令和7年度の対象となる控除額(令和7年1月~令和7年3月)

38万5,000円−令和5年分と令和6年分=4万8,237円

ただし、③の場合は金額は少ないのですが、また4月から前納すれば保険料の控除額は増えていきます。

国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は
国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は© マネーの達人 提供

前納した後に厚生年金に加入した場合

国民年金保険料を前納した後に、

  • 就職をして会社員になったり、

  • 個人事業だったのを法人化して厚生年金に加入した場合、

加入した月から厚生年金保険料を支払うことになります。

国民年金保険料は、厚生年金に加入した月の前月まで支払えばよく、それ以降の分は還付されます。

例えば、4月から翌年3月までの1年間の前納をした後に11月から厚生年金に加入すると、11月から翌年3月までの5か月分の国民年金保険料が還付の対象となります。

ただし、厚生年金に加入したら自動的に還付されるのではありません。

年金事務所での手続きが必要となります。

また、還付には時効があり、2年を過ぎると受けられないことになるので注意をしましょう。

2年前納のメリット・デメリット

国民年金保険料を2年前納するメリットの1つ目は、保険料の節約ができることです。

約1か月分が節約できます。

低金利の銀行に預けても、ほとんど利息はつきません。

それを考えると銀行にお金を預けておくよりも、いったん引き出して前納する方がお得になります。

2つ目のメリットは、社会保険料控除が収入に合わせて使えることです。

例えば2年前納をした場合には、全額を支払った年に社会保険料控除に該当させることも、翌年に該当させることも可能です。

つまり、

今年は収入が少なかったので控除は使わずに、翌年使う

というような方法が可能です。

2年前納しているので控除できる金額が大きく、課税される所得を減らすことができます。

デメリットは、前納してしまうとその期間は保険料の減免が受けられないことです。

思いがけず収入がなくなり、本来であれば申請をすることで国民年金保険料が安くなる減免を受けることができるのに、前納してしまうとできなくなります。

フリーランスや自営業の方は、収入が決まっているわけではないのでよく考えて前納することが必要です。

国民年金保険料2年前納制度は毎月払うよりもどれくらいお得になる?納付と控除の方法、途中で厚生年金に入った場合は

今後の収入等を考えて最適な期間と方法で前納しよう

国民年金保険料の前納制度には、2年前納、1年前納、6か月前納など種類があります。

また、前納をする方法も口座振替、現金、クレジットなどの方法があります。

2年前納は、金額も大きくなりますが、その分割引率も高く銀行等に預けておくよりもメリットが高いのが特徴です。

前納の期間は、ご自身で決めることができますので、今後の収入等を考えて最適な期間の前納をお勧めします。


ビートたけし 自身の年金受給額に驚がく「倒れたもん、めまいがして」 国民年金のみでひと月…


ビートたけし(76)が19日放送のテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」(日曜正午)に出演し、自身の国民年金の額を明かす場面があった。

 

 物価高騰が家計を圧迫する中、番組ではシニア世代のアルバイト事情を特集。長年培ったスキルを活かして収入を得るとともにやりがいを感じている人々や、海外に移住して働くシニアの姿が紹介された。

 

 少子高齢化を背景に、公的年金制度については“維持が難しくなる”“破綻するのでは”と不安の声が多い。たけしは「この間、国民年金で初めてこうやってビッて剥がして見たけど、ひと月6万円だったよ。

 

倒れたもん、めまいがして」と自身の受給額を告白。

 

お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンことパトリック・ハーランがすかさず「多くの国民はたけしさんに給付しなくてもいいんじゃないかと思ってるんですよ」と突っ込むと、たけしは「厚生年金とかはないからね、結局」と自身の年金事情を明かした。

 

海外に行くと「たけしはいつまで働いてるんだ?お金もう残しただろう。何でリタイアしないんだ」などと言われるという。

 

「俺、仕事あるし、お金残してないよ」と答えると驚かれるそうで、「欧米は特にいかに若くしてリタイアするぐらいの仕事をして、あとは悠々自適でゴルフやったりして、マイアミとかああいうところに住んでっていうのは夢だもんね」と海外のリタイア事情を説明。

 

 パックンが「たけしさんがよく行かれてるフランスとかは特にそうですね。定年退職の年齢を引き上げようとすると大規模デモが起きるじゃないですか。

 

働く人は退職する権利があるっていうのがフランスの思いですよね」と国民性の違いに触れると、たけしも「働くことを罪だと思ってる人いるよね」とうなずいていた。

年金の「繰下げ受給」は早く寿命を迎えると損? 70歳から受け取る場合、何歳まで生きると「損」にならない? 平均余命も踏まえ解説


繰下げ受給と繰上げ受給のメリット・デメリットとは?

繰下げ受給のメリットは、受け取る時期を遅らせれば遅らせるほど、もらえる年金額が増えることです。増額率の計算式は「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」です。つまり、1ヶ月につき0.7%、最大で84%の増額率となります。ただし、加給年金額や振替加算額については増額されません。デメリットは、受給開始後、早くに亡くなってしまった場合、受け取ることができる年金の総額が減ってしまうことです。

一方、繰上げ受給のメリットは、60歳から年金がもらえることです。デメリットは、早くもらえばもらうほど年金額が減額されることが挙げられます。減額率の計算式は「0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」です。つまり、1ヶ月につき0.4%、最大で24%の減額率になります。

また、「寡婦年金の受給資格がなくなる」「障害基礎(厚生)年金の請求ができなくなる」といったデメリットもあります。寡婦年金受給中の人や、持病がある人は気をつけましょう。このほか、国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなるといったこともあります。

繰下げ受給と繰上げ受給共に、請求した日の翌月分から年金をもらうことができます。ただし、一度、請求すると取り消すことができません。一生涯、増額または減額された年金を受け取ることになります。よく考えて請求するようにしましょう。

繰下げ受給の「損益分岐点」は?

先ほどの増額率の式に当てはめて、1年間繰り下げた場合の増額率は「12ヶ月×0.7%=8.4%」です。70歳まで繰り下げた場合は42%、75歳まで10年間繰り下げた場合は84%の増額率となります。

年金は原則65歳で受け取ることができます。そのため、65歳の時点で受け取る場合の年金を100%と考えて計算すると、「100%÷0.7%=142.85%」、「142.85%÷12ヶ月=11.904年」です。ということは、11年10ヶ月以上年金を受け取らないと、損をしてしまうことになります。

ということは、66歳から年金を受け取った場合の損益分岐点は77歳10ヶ月、70歳0ヶ月まで繰下げした場合は81歳10ヶ月、75歳0ヶ月まで繰下げた場合は86歳10ヶ月になります。

ちなみに、厚生労働省が公表した「令和4年簡易生命表の概況」によると、男性の平均余命は81.05歳、女性は87.09歳です。損益分岐点以上に長生きするのであれば、繰下げ受給はお得といえるでしょう。

繰下げ受給は損益分岐点以上長生きできればお得!

年金を繰下げ受給すると、もらえる年金が増額します。ただし、11年10ヶ月以上年金を受け取らないと、損をしてしまうことになります。

受給開始が66歳であれば77歳10ヶ月、70歳0ヶ月なら81歳10ヶ月、75歳0ヶ月なら86歳10ヶ月がそれぞれ損益分岐点です。損益分岐点以上長生きできればお得に、それよりも早く亡くなれば損をすると考えられるでしょう。

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給

日本年金機構 年金の繰下げ受給

厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説


ふるさと納税の納税控除上限額

ふるさと納税とは、納税者が自治体を指定して寄附することで、所得税の還付や住民税の控除を受けることができ、さらに、寄附先の自治体からお礼として特産品などの返礼品がもらえる制度です。その際に自己負担額2000円を除いた全額が控除されるための上限額は、納税者の収入や家族構成などによって異なることになります。

上限額を超える寄附をした場合には、超過額については、その全額を控除することができず、自己負担額が増加することになります。そして、ふるさと納税は寄附金として扱われ、所得税には「寄附金控除」が、住民税には「寄附金税額控除」が適用されます。

【図表1】

自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説
自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説© ファイナンシャルフィールド

総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について」より

自営業者の方のふるさと納税控除上限額

自営業者(個人事業者)の控除額は、その年の1月1日から12月31日までの事業所得等の所得金額を基に計算されます。そのため、その年ごとに売り上げの変動が激しい業種、業態などの場合には、現在進行中の年における売上等を予測する必要があり、前年の金額が参考とならないケースもあるため注意が必要です。

その上で、自営業者の納税控除上限額の目安(概算)は、所得が前年度と同等と仮定した場合、前年の「住民税決定通知書」(前年分について、毎年5月~6月ぐらいに、住んでいる自治体から送付される)に記載されている「住民税所得割額」の2割程度になります。

もう少し正確に算定する場合には、図表2の速算表に当てはめて算出することもできます。

【図表2】

自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説
自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説© ファイナンシャルフィールド

なお、個人事業者の場合には、給与所得者に適用される「給与所得控除」の制度がないため、一般的には給与所得者よりも納税控除上限額が高くなり、より多くの金額をふるさと納税で寄附することができます。

年金受給者の方のふるさと納税控除上限額

年金受給者が受け取る老齢給付などの公的年金は、雑所得に分類され、所得税や住民税が計算されます。ふるさと納税による控除は、納税している税額以上には適用できないため、仮に所得税が課税されない目安となる総収入108万円以下(65歳未満)、158万円以下(65歳以上)の場合には、寄附金控除を受けることができません。

【図表3:年金受給者の納税控除上限額(目安)】

自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説
自営業者や年金受給者はいくらまでふるさと納税できる? 注意点とあわせて解説© ファイナンシャルフィールド

※65歳以上の方で、公的年金以外の収入がないと想定した場合の目安の額です。

※配偶者が70歳以上または扶養親族が70歳以上の場合には、配偶者控除や扶養控除が増額されます。

なお、年金収入が400万円以下(それ以外の所得なし)で、寄附先自治体が5か所以内の場合、「ワンストップ特例制度」を利用することもできます。

まとめ

ふるさと納税は、節税の一環として紹介されることがありますが、寄附金として支払った金額のうち2000円を除いた金額が所得税や住民税から控除される制度です。

つまり、所得税や住民税について、本来負担する税金を別途「一部前払い」しているようなものです。その上で、自己負担2000円で返礼品がもらえることがメリットとなります。

自営業者の方でも、ふるさと納税の納税控除上限額は思ったより大きな金額となるケースがあります。ある程度資金的な余裕がある場合には、ぜひふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?

執筆者:高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

ねんきん定期便の金額が去年より減っているのはなぜですか? このまま減っていくのでしょうか?


令和5年9月送付分以降「これまでの加入実績に応じた年金額」の計算方法が変更

ねんきん定期便の年金額が昨年のお知らせよりも減った場合、「これまでの加入実績に応じた年金額」の計算方法が、令和5年9月送付分以降で変更されたことにより影響している可能性があります。

ねんきん定期便の「これまでの加入実績に応じた年金額」には、ねんきん定期便が作成された時点の年金加入実績から計算した年金額(年額)が記載されています。令和5年8月送付分までのねんきん定期便では、保険料納付済月数(免除月数を含む)の合計月数の小数第1位を四捨五入して算出した老齢基礎年金の見込額を、小数点以下切り捨てで表示されていました。

令和5年9月送付分からは、老齢基礎年金の受給額算出時と同じ端数処理の方法に統一され、保険料納付済月数は四捨五入せず、算出した老齢基礎年金の見込額を小数第1位で四捨五入した金額が記載されています。そのため、令和5年度の「これまでの年金加入期間」が令和4年度と同一の人(国民年金保険料を前納している、年金制度未加入など)は、「これまでの加入実績に応じた年金額」が令和4年度より減っている場合があるのです。

これは、計算方法の変更にともない年金額の見た目が一時的に減少しただけで、継続して減り続けるわけではありません。今後、保険料納付済月数が増えれば、原則として年金額も増えていきます。

年金給付水準の変化

ねんきん定期便の年金額の計算に用いられる年金給付水準が変化した場合も、年金額が減ることがあります。

ねんきん定期便の年金額は、作成年度の年金給付水準をもとに計算されています。年金給付水準は前年の全国消費者物価指数によって変動するものです。年金給付水準が下がると、次のようなケースでは表示される年金額が前年より減ることがあります。

__●50歳未満で「これまでの年金加入期間」が前年と同一の人(国民年金保険料の前納、年金制度未加入など)

●50歳以上で前年から国民年金に加入中の人(前年から納付状況に変化がない場合)

●50歳以上で、厚生年金保険に加入中かつ標準報酬月額が前年と同一の人__

過去の年金記録の訂正

ねんきん定期便に記載された年金記録に漏れや誤りがあることに気づいた場合は、「年金加入記録回答票」や「年金記録訂正請求書」を年金事務所に提出して、調査や訂正を請求できます。請求の結果誤りがあることが分かり、過去の年金の加入記録が正しいものに書き換えられると、それにともなって年金額(見込額)も増減する可能性があります。

50歳以上の「老齢年金の種類と見込額(年額)」は年金の加入状況に応じて増減する

50歳以上のねんきん定期便に記載された「老齢年金の種類と見込額(年額)」は、加入中の年金制度に60歳到達の前月まで継続加入することを想定して計算された数字です。そのため、前年のねんきん定期便作成時点から次のような変化があった場合には、「老齢年金の種類と見込額(年額)」が前年と比べて減ることがあります。

__●厚生年金保険の標準報酬月額が下がった

●前年あった賞与の支給が今年はなかった

●退職して厚生年金保険の資格がなくなった__

ねんきん定期便の金額減少は継続的なものではない可能性もある

ねんきん定期便に記載された年金額が減った場合、次のような理由が考えられます。

__●計算方法の変更にともなう減少

●年金給付水準の変化にともなう減少

●年金記録の訂正にともなう減少

●年金の加入状況の変化にともなう減少__

いずれにしても、年金額の減少は継続的なものではなく、それぞれの原因が起こったときだけの一過性のものである可能性もあるため、継続的に確認しておくとよいでしょう。

出典

日本年金機構 「これまでの加入実績に応じた年金額」は、どのように計算されているのですか。(50歳未満)

日本年金機構 「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和5年度送付分)

日本年金機構か ねんきん定期便に表示されている年金額が昨年の見込額より少ないのですが、どうしてですか。

日本年金機構 年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合

厚生労働省 年金記録の訂正請求手続

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

障害厚生年金を受給しています。65歳になったら、老齢年金は繰下げできるのでしょうか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。

老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。

そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、障害年金を受給している場合の老齢年金の繰下げについてです。

Q:障害厚生年金を受給していますが、老齢年金は繰下げできる?

「現在、障害厚生年金(3級)を受給しています。65歳になったら、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は繰下げできるのでしょうか? 繰下げ可能だとしたら、繰下げ期間中は障害厚生年金の受給はストップされるのでしょうか?」(ポポさん)

A:障害厚生年金の受給権がある限り、繰下げはできません

相談者は老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ受給を考えているようですね。

65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までに、障害厚生年金や遺族厚生年金、遺族基礎年金を受け取る権利がある場合は、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の繰下げ受給の申し出はできません。

例外的に、障害基礎年金のみ受け取る権利のある人は、老齢厚生年金のみ、繰下げ受給の申し出ができます。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

年金受給の「最高額」はいくら?もらう人の年収と職業は?


老齢基礎年金の最高額

日本年金機構によると、老齢基礎年金の満額は、2023年度で月6万6250円です。20~60歳の40年間、毎月欠かさずに年金を納付すれば、満額が受け取れます。さらに「付加保険料」を追加で納めると、受け取れる金額を増やせます。

付加保険料とは、国民年金に加えて月400円納めると、納めた月数×200円が加算される制度です。2年以上、付加年金を受け取ると、納付した付加保険料より多くの年金を受け取れます。

もし付加保険料を20歳から60歳まで納付し続けると、年額9万6000円が受け取れて、月額にして受給額が8000円増加します。

付加保険料で増加した分を加えると、2023年時点で老齢基礎年金の最高額は月7万4250円で、年間で89万1000円受け取れる計算になります。

老齢厚生年金の最高額

厚生年金は、給料を一定額ごとに区分した標準報酬月額と、税金が引かれる前の賞与から1000円未満を切り捨てた標準賞与額から求められます。

日本年金機構によると、標準報酬月額の上限65万円となるのは63万5000円以上であり、標準賞与額の上限は150万円で、標準賞与額の対象になるのは年3回までです。すべての上限額を足すと、年額が1212万円です。

つまり、老齢基礎年金と同様に20歳から、厚生年金の加入年齢上限である70歳までの年収が常に1212万円以上ある方が、厚生年金の上限額を納付しているため、老齢厚生年金も理論上は最高額になります。

年収1212万円以上の方は、標準報酬額が102万5000円です。50年間年金を欠かさず納めていたとすると、老齢厚生年金の最高額は年間337万815円。月額にすると、28万901円です。

老齢基礎年金と合わせると、理論上の老齢年金最高額は、月35万5151円になり、年間に換算すると426万1815円です。

なお、年齢や状況によっては年金額が変動するケースもあるため、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で、年金の見込み額を試算してみることをおすすめします。

年金の最高額をもらえる人はどんな職業?

年金の最高額をもらえるのは、理論上では1212万円以上の年収がある方です。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、年収1250万円以上の職業には、以下のような例があります。

__●外科医

●小児科医

●内科医

●精神科医

●産婦人科医

●パイロット__

医師やパイロットなど、特殊な資格や専門性が高い職業が、受け取れる可能性が高いといえるでしょう。

最高額の年金を受け取れる理論上の年収は1212万円

理論上は年収1212万円以上を50年間受け取れば、年金の最高額を受け取れます。年収1212万円以上の職業は、厚生労働省の職業検索サイトによると、医師やパイロットなどです。

しかし、実際に就職した初年度から、年収1212万円を超える方はあまり多くありません。実際に受け取る大まかな額を知りたい場合は、「ねんきんネット」などを活用してみてください。

出典

[日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について

](https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2023/202304/0401.html)

[日本年金機構 付加保険料の納付

](https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/fukanofu.html)

[日本年金機構 厚生年金保険の保険料

](https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html)

[日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

年金を月19万円もらえるのは、現役時代にどのぐらいの収入があるの?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、現役時代にどのぐらいの収入があれば、将来、年金を月19万円もらえるのかについてです。

Q:年金を月19万円もらえるのは、現役時代にどのぐらいの収入があるの?

「会社員が将来年金を月19万円もらうには、働いているときに、どのぐらいの収入が必要ですか?」(30歳・会社員)

A:年収の目安は677万3952円(月額56万4496円)です

会社員は、受給要件を満たすことで原則65歳から老齢基礎年金と、老齢厚生年金を受け取れます。老齢基礎年金は、未納期間・免除期間が全くない人は、月額6万6250円(2023年(令和5年)度満額)が受け取れます。

老齢厚生年金は、現役世代の収入金額(給与など)と勤続年数によって、次の計算式で計算されます。

(1)平成15年3月までは、平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの加入期間

(2)平成15年4月以降は、平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入期間(※)

※スライド率等については省略。乗率は昭和21年4月2日生まれ以降の人の新乗率を使用

今回は、将来年金を月19万円もらえる現役時代の収入について計算してみます。

例として相談者を2023年(令和5年)現在30歳、1993年(平成5年)生まれの方とします。20歳から国民年金に加入し、その後、22歳以降60歳まで(38年間)、厚生年金に加入した場合で計算してみたいと思います。

なお、相談者が会社に入社した年(22歳)は、2015年(平成27年)となりますので、老齢厚生年金を計算するときは(2)の平成15年4月以降の計算式のみを用います。ボーナス込みで、38年間の年収の変更は考慮しません。

この条件で考えると、相談者は、老齢基礎年金を令和5年度で満額約6万6250円受給できることになります。そのため、毎月19万円の年金を受け取るには、老齢厚生年金は月額12万3750円(19万円-6万6250円)受け取る必要があります。

老齢厚生年金を月額12万3750円(年額148万5000円)受け取るための年収を(2)の計算式で計算すると下記のようになります。

●計算式

平均標準報酬額×5.769/1000×456カ月(加入期間)=148万5000円(年間の厚生年金受給額)

平均標準報酬額=148万5000円/(5.769/1000×456カ月)≒56万4496円

平均標準報酬月額を年収に換算します。

56万4496円×12カ月≒677万3952円(年収)

このように、毎月19万円の年金を受け取る生涯平均年収の目安は677万3952円(月額56万4496円)となります。

ちなみに、もし専業主婦の配偶者がいた場合、配偶者の老齢基礎年金が年額で6万6250円受け取れ、夫婦2人の年金受給額は25万6250円になります。

さらに要件を満たせば、厚生年金加入者の老齢厚生年金に配偶者加給年金が上乗せされます。2023年(令和5年)度の配偶者加給年金の金額は、39万7500円(昭和18年4月2日以後生まれの特別加算額を含む)です。配偶者加給年金は、配偶者が65歳になるまで加算されますので、メリットは大きいです。

相談者が配偶者加給年金額を受け取れる場合、年金受給額は25万6250円にさらに加算されることになります。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

遺族年金をもらっていますが、月8万8000円の収入があります。厚生年金保険料は払わなければなりませんか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。

今回は遺族年金をもらっている人がパートをした場合についてです。

Q:遺族年金をもらっていますが、厚生年金保険料は払わなければなりませんか?

「私は遺族年金をもらっていますが、パートで月8万8000円の収入があります。厚生年金保険料は払わなければなりませんか?」(イヤイヤさん)

A:厚生年金の適用事業所で一定の要件を満たして働く場合、厚生年金に加入し、厚生年金保険料を支払うこととなります

遺族年金を受給していることと、厚生年金に加入する・加入しない、とは関係がありません。遺族年金を受給していても、原則として勤務先が厚生年金の適用事業所(厚生年金の被保険者が101人以上)で一定の要件を満たして働く場合は、厚生年金に加入して厚生年金保険料を支払うことになります。

具体的には、以下の一定要件をすべて満たした場合、厚生年金に加入することになります。

・週の労働時間が20時間以上

・雇用期間が2カ月以上見込まれること

・月収が8万8000円以上であること

・学生でないこと

もし、勤務先が厚生年金の適用事業所(厚生年金の被保険者が101人以上)であっても、厚生年金に加入したくない場合は、労働時間や収入を減らす必要があるでしょう。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

60歳以降に厚生年金に加入せず働きたい場合、週何時間までならOKですか?



年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、60歳以降に厚生年金に加入せず働きたい場合の注意点です。
年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、60歳以降に厚生年金に加入せず働きたい場合の注意点です。© All About, Inc.
老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、60歳以降に厚生年金に加入せず働きたい場合の注意点です。

Q:60歳以降に厚生年金に加入せず働きたい。週何時間以下ならいい?

「60歳以降は、厚生年金に加入せずにパートをしたいです。しかし働き過ぎると厚生年金に入らなければならないと思います。週何時間以下であれば、入らずにすみますか? パート先の会社規模にもよるのですか?」(58歳)

A:働く時間が週20時間未満なら加入する必要はありません

厚生年金保険とは、会社員や一定の条件で働くパート・アルバイト等の給与から天引きされる社会保険料の一つです。

厚生年金保険の被保険者数が101人以上の事業所(特定適用事業所)で一定の条件のもとで働くパート・アルバイトは厚生年金に加入しなくてはなりません。労使での合意があれば、100人以下の事業所でも適用されます。

パート・アルバイトが厚生年金に加入する要件とは以下のすべてに当てはまった場合です。

【1】週の所定労働時間が20時間以上であること

【2】雇用期間が2カ月以上、見込まれること

【3】賃金の月額が8万8000円以上であること

【4】学生でないこと

したがって、働く時間が週20時間未満なら加入する必要はありません。今後、さらにパート等の短時間労働者が厚生年金保険に加入することになる要件が引き下げられる予定で、2024年(令和6年)10月には「厚生年金保険の被保険者数が51人以上の事業所」となります。

相談者は厚生年金に加入せずパートをしたいとのこと。たしかに厚生年金に加入すると、給与から厚生年金保険料が天引きされますので手取り収入が少なくなりますが、将来もらえる老齢年金は増えることになります。

現在は、人生100年時代といわれるほどの長寿社会ですので、厚生年金に加入して老齢年金を多くもらえるようにしておくと、老後の年金生活が楽になりますよ。

監修・文/深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

「年収480万円」だと、老後生活は赤字になる!? 年金受給額・理想の貯蓄額を解説


会社員が加入する年金は国民年金と厚生年金

会社員などが加入する年金は「国民年金」と「厚生年金」の2つです。毎月支払っている保険料には国民年金と厚生年金の2つが含まれ、基本的には65歳以降に老齢基礎年金と老齢厚生年金が受け取れます。

本記事では、20~22歳までは国民年金に加入し、その後60歳までの38年間は会社員として働いて厚生年金を納めた場合について見ていきます。

年収480万円の場合受け取る年金額

老齢基礎年金は加入した期間に応じて支払われますが、今回のケースでは満額受け取ることが可能です。具体的には、令和5年4月分からの老齢基礎年金の満額である79万5000円を、毎年受け取れます。

老齢厚生年金は、報酬比例部分、経過的加算、加給年金の合算分が受け取れますが、今回はメインの報酬比例部分のみで見ていきます。

報酬比例部分は収入と加入期間によって受け取る年金の金額が異なりますが、年収480万円で38年間働いた場合、年間で受け取れるのは年間で102万4728円です。

つまり、22歳までは国民年金を、その後厚生年金に加入して年収480万円で60歳まで納付した人が毎年受け取る年金額は、老齢基礎年金の79万5000円と老齢厚生年金の102万4728円を合計した、181万9728円です。

老後の平均的な支出

老後の支出は家族構成や持ち家か賃貸か、お金の使い方などによって大きく異なりますが、今回は総務省の「家計調査報告 家計収支編2022年(令和4年)平均結果の概要」を参考にしていきます。

本調査によると、65歳以上の無職世帯において、単身の場合は月額15万5495円、夫婦のみの場合は月額26万8508円が、消費支出と非消費支出の合計額の平均です。

年金と支出を考慮した不足額

単身世帯の場合、月額の平均的な支出を年間にすると186万5940万円です。年収480万円の人が受け取る年金額の年額は181万9728円ですので、年間の不足金額は4万6212円です。仮に85歳まで生きたとすると、65歳からの20年分で92万4240円が不足します。

同じように夫婦のみの世帯の場合を計算すると、年間の平均的な支出は322万2096円です。受け取る年金は年収480万円の人の分に配偶者の分がプラスされます。仮に配偶者が専業主婦(夫)で、国民年金に加入すべき期間全てに加入して全額納付し、厚生年金には全く加入していなかった場合、配偶者の分の年金は老齢基礎年金の年額79万5000円です。そのため、世帯としては181万9728円と79万5000円の合計の261万4728円です。

平均的な支出に足りない分は年間60万7368円で、月間では5万円とちょっとです。単身世帯と同様に、夫婦がともに85歳まで生きた場合、20年間の不足金額合計は1214万7360円です。

理想の貯蓄額

今回のシミュレーションでは、年収が480万円の場合、単身世帯では生涯で約92万円、夫婦の片方が専業主婦(夫)の場合は約1215万円が不足します。理想の貯蓄額は一概には言えませんが、支出が平均と同じくらいの場合、最低でも今回の不足額プラスアルファ分は備えておきたいところです。

具体的に自身の家庭の状況と照らし合わせ、無理のない貯蓄計画を考えましょう。

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額

日本年金機構 は行 報酬比例部分

日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

総務省 家計調査報告〔 家計収支編〕 2022年(令和4年)平均結果の概要

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

65歳で定年を迎え退職をし年金が月に17万5000円ほど。年金額に影響のないパート収入は?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。

そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。今回は、年金受給額に影響のないパート収入についてです。

Q:65歳からは老齢年金が月に17万5000円ほど。年金額が減らされないパート収入は?

「65歳で定年を迎え退職をし年金が月に17万5000円ほどです。ここから健康保険料や税金を引かれると大変な生活です。今後はパート勤めを考えています。年金給付の金額に影響のないようにパートするには、月どのくらいの収入に抑えれば大丈夫ですか」(田中さん)

A:老齢厚生年金が月10万9000円と仮定すると、総報酬月額相当額37万1000円までは、老齢厚生年金が減額されることはありません

相談者は65歳以降、パートとして働く予定とのこと。厚生年金に加入しながら働いた場合、総報酬月額相当額(年間給与等+賞与の1/12)と老齢厚生年金の基本月額(年額の老齢厚生年金を12で割ったもの)を足した金額が一定額(48万円)を超えると、老齢厚生年金の一部、または全部が支給停止となります。これを「在職老齢年金」といいます。

60歳以降、「在職老齢年金」で調整されるのは、老齢厚生年金の部分だけです。老齢基礎年金(国民年金)は収入がいくら多くても、支給停止になりません。そもそも老齢厚生年金に加入しない働き方にすれば、老齢厚生年金が支給停止になることはありません。

では、相談者の老齢厚生年金が支給停止とならない収入はいくらでしょうか? 老齢年金額が17万5000円ということなので、仮に老齢基礎年金は満額の約6万6000円(令和5年度)、老齢厚生年金額が月10万9000円とします。

その場合、以下の計算のように、総報酬月額相当額が37万1000円までであれば老齢厚生年金額は全額支給されるということになります。

48万円-10万9000円(老齢厚生年金額)=37万1000円(総報酬月額相当額)

したがって、パート勤務でボーナス支給がないようでしたら、パート月収+通勤手当を37万1000円以内におさめればいいということになります。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

働くと年金がもらえない?!まだまだ「現役」が損するかもしれない年金制度の落とし穴



(画像=takasu/stock.adobe.com)
(画像=takasu/stock.adobe.com)© 働くと年金がもらえない?!まだまだ「現役」が損するかもしれない年金制度の落とし穴

日本の平均寿命は男女ともに80歳を超えていて、65歳でも「まだまだ現役で働ける」というくらい元気な人は珍しくありません。経済的安心のためにも、働けるうちは働きたいという人も多いのではないでしょうか。

しかし、働き方次第では年金がもらえなくなるので注意が必要です。

■働くと年金が停止になる?

年金には、「在職老齢年金」という制度があります。在職老齢年金とは、会社員として働き続けながら受け取れる厚生年金のことです。

しかしこの制度には落とし穴があります。ボーナスも含めた賃金と年金の合計額が一定基準を超えてしまうと、年金が支給停止または減額されてしまうのです。

総報酬月額相当額と老齢厚生年金の月額の合計が48万円を超えると、48万円を超えている期間は、超えた部分の年金の半額が支給停止されます。なお、この影響を受けるのは厚生年金だけで、国民年金(老齢基礎年金)について減額されることはありません。

■年金を減らさない働き方

実は、働き方次第で年金を減らさないことは可能です。

●年金を減らさない働き方1:厚生年金に加入しないで働く

厚生年金に加入しなければ在職老齢年金制度による年金の減額がありません。厚生年金に加入しないで働くためには、以下の3つの選択肢が考えられます。

・個人事業主として働く ・厚生年金に加入していない事業所(従業員4名以下の個人事務所など)で働く ・厚生年金加入が必要でない条件で勤務する

ただし、この方法を取った場合、自身で国民健康保険に加入しなくてはいけません。配偶者等の扶養家族がいる場合は、その分の保険料も払う必要が出てきます。収入・家族構成次第では保険料が高くなる点に注意が必要です。

●年金を減らさない働き方2:基準額以下となる給与で働く

基本月額と総報酬月額相当額の合計額が48万円以下であれば、厚生年金に加入していたとしても、年金は満額受け取れます。

■老後働く場合、制度を正しく理解しておこう

人生100年時代、年金だけでは老後の生活が心配で、より豊かな生活を送りたいと考えて、働く人も多いのではないでしょうか。

しかし、働き方によっては年金が減ってしまいますので、まずは在職老齢年金制度を理解しておくことが大切です。体力とも相談しながら、無理のない範囲で働き続けましょう。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー) 立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日商簿記検定1級、貸金業務取扱主任者(試験合格)

企業年金を受給している妻は、遺族厚生年金を受け取る場合、企業年金額が差し引かれますか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、企業年金を受給している場合の、遺族厚生年金の受け取りについてです。

Q:企業年金を受給している妻は、遺族厚生年金を受け取る場合、差し引かれますか?

「私は、企業年金を老齢厚生年金とあわせてもらっています。夫が亡くなったときには、遺族厚生年金がもらえると思いますが、その場合は、遺族年金額から企業年金の金額が引かれてしまうのでしょうか?」(匿名希望)

A:企業年金のうち、代行年金(国の代行部分)のみが、遺族厚生年金から差し引かれます

厚生年金加入者である配偶者が亡くなり、遺族年金を受給できるようになった場合、すでに自身の老齢厚生年金を受給している65歳以降の人は、遺族厚生年金から自分の老齢厚生年金額分を引いた差額を遺族厚生年金額として受け取ることになります。

自分の老齢厚生年金と企業年金を両方、受け取っている相談者の場合についてはどうなるのでしょうか? 遺族厚生年金から、まず相談者の老齢厚生年金額分が差し引かれます。その上で、企業年金の一部分が引かれます。

そもそも企業年金には、「代行年金(国の代行部分)」と「基金独自の上乗せ年金」の2つの要素から成り立っています。このうち代行年金(国の代行部分)の金額だけが、遺族厚生年金から、差し引かれるということになります。基金独自の上乗せ年金については、遺族厚生年金から差し引かれません。

たとえば、夫の遺族厚生年金が23万円で、相談者の老齢厚生年金が15万円、企業年金のうち代行年金(国の代行部分)が3万円なら、差額の5万円(23万円-15万円-3万円)を遺族厚生年金として受給できるということになります。

遺族年金請求者の企業年金の「年金証書」で、代行年金(国の代行部分)の金額がいくらなのか確認できます。または年金証書に同封されている問い合わせ先に確認してみましょう。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

給与からの天引き額が多すぎると思います。一生懸命働いているのに損をしていないでしょうか?


給与からの天引きされているのは社会保険料と税金

給与から天引きされるお金は、一般に、「社会保険料」と「税金」です。会社は、個人からこれらのお金を天引きし、個人に代わって保険料や税金を納付しています。

 

社会保険とは国民健康保険、健康保険、国民年金、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)の総称です。これらは、強制加入の保険であり、加入要件に該当した場合、必ず加入しなければなりません。

 

会社員であれば、健康保険、国民年金、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険に加入するのが一般的であり、「健康保険料」「厚生年金保険料(国民年金保険料を含む)」「介護保険料」「雇用保険料」を支払います。

 

なお、労災保険料は全額会社負担のため、給与から天引きされることはありません。

 

給与から天引きされる税金は、所得税と住民税です。所得税、住民税はいずれも所得(今回の場合は給与)に対して課される税金であり、所得が一定額を超える場合は納付する義務があります。

 

つまり、給与から天引きされているお金は、どれも強制的に支払わなければならないお金であるということです。


損をしたくなければ社会保険料を理解する

お金で損をしたくないのであれば、天引きされている(強制的に支払っている)お金について、よく理解するのが良いでしょう。

 

とはいえ、天引きされている保険料や税金は、しかるべき計算方法によって算出されているため、「損をしている」「得をしている」という考え方はなじみません。

 

とはいえ、社会保険についてあまりご存じない方は、損をしている可能性があります。社会保険の内容を、表1に簡単にまとめました。

 

※筆者作成

ここで押さえておきたい点は、それぞれの保険で「対応できるリスク」です。社会保険に加入しているということは、これらのリスクに対し、最低限の保障があるということです。

 

社会保険はあくまで最低限の保障ですので、足りない部分は民間の保険で補うことになります。逆にいえば、社会保険でカバーできない部分だけ、民間の保険に加入すれば良いということです。この点を押さえておかないと、保険をかけすぎてしまう(保険料を払いすぎてしまう、損をしてしまう)可能性があります。

まとめ

今回は、給与から天引きされているお金について、解説をいたしました。給与から天引きされているのは、社会保険料と税金です。会社員の場合、給与から天引きされる社会保険料と税金の内容は、以下のとおりです。

 

・社会保険:健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料

・税金:所得税、住民税__

 

これらのお金は、原則として、強制的に支払うものであり、金額も規定の計算方法によって算出されます。つまり、避けることはできません。しかし、これらのお金はただ支払って終わりではなく、それぞれ役割を持っています。

 

特に強調しておきたいのは、「あなたは社会保険に加入している」ということです。つまり、民間の保険に加入していなくても、最低限の保障はあるということです。

 

この点を認識していないと、不要な(民間の)保険に加入してしまう可能性があります。給与からの天引き額が多くて不安になる方は、一度この点を確認してみてはいかがでしょうか。

 

執筆者:中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

年金を長く多くもらう働き方、定年後は厚生年金に加入しない


「年金の常識」には間違いが多い。その一つは、「定年後も厚生年金保険料を長く払った方が得」というものだ。 定年後に再雇用などで働く多くの人は、厚生年金に加入して保険料を払い続けている。

 

年金受給が始まれば、60歳以降の加入期間に応じて受け取る年金が加算されるから得になると思い込まされている。

 事実は逆だ。加入期間延長で増える年金額より、支払う保険料の方が多くなる。図にあるように、Aさんは定年後も雇用延長で会社に残り、月給25万円で勤務している。63歳から65歳までの2年間は働きながら「在職老齢年金」の特別支給10万円(厚生年金の報酬比例部分)を受け取ることができる世代だ。

 しかし、65歳までの在職老齢年金は給料と年金の合計収入が28万円を超えると、超過分の半額が年金から減額される。

 

合計収入が35万円のAさんは、せっかく63歳で早くもらえる年金の特別支給が毎月3万5000円減額され、さらに給料から天引きされる年金保険料(月額約2万3790円)を合わせると、65歳までの2年間で約141万円の損失になる。

 そのうえ、加入期間延長によって65歳から年金に加算される金額はわずかに「月額約2600円」に過ぎない。余分に支払った保険料と在職老齢年金の損失を年金加算で取り戻すためには40年以上かかる。

「少ない給料から毎月2万円以上の保険料を払ってきたのに、年金が2600円しか増えないなんて」 そんな後悔はしたくない。対抗するには、「厚生年金に加入しない」働き方を選べばいい。社会保険労務士の北山茂治氏はこう言う。

「Aさんの同僚だったBさんは、定年後に社員として雇用延長するのではなく、会社と月額25万円の業務請負契約を結んだとしましょう。

 

自営業だから厚生年金保険料は天引きされず、63歳からの在職老齢年金の特別支給10万円もカットされずに全額もらえる。65歳からの年金額は加算されないが、保険料負担ゼロで特別支給も丸々もらえるBさんのほうが圧倒的に得になるのです」

 この2人が労働条件はそのまま70歳まで働いて年金生活に入ったケースで計算すると、Bさんは70歳時点で約267万円、90歳時点でも約75万円も得になる。年金を「長く、多く」受け取るには、定年後は厚生年金に加入しない働き方が重要なのだ。

ボーナスで厚生年金分が5万円も引かれていました。賞与が下がったりナシになったりしたら天引きはどうなりますか?


賞与が下がったりナシになったりすれば厚生年金保険料は下がる

賞与に対する厚生年金の保険料は、給与に対する分とは別に支給の度に計算されます。賞与がない場合、保険料は発生しません。賞与に対する保険料額の計算式は、次のとおりです。

賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率

標準賞与額とは、税引き前の賞与の金額から千円未満の端数を切り捨てた金額です。実際の賞与額と標準賞与額の差額は千円未満のため、原則として賞与の増減にほぼ比例して厚生年金保険料も増減することとなります。

賞与から厚生年金保険料が約5万円天引きされているケースの標準賞与額を令和5年度の厚生年金保険料の保険料(従業員負担分)9.15%から逆算すると、54万6000円または54万7000円(実際の賞与額は54万6000~54万7999円)と計算できます。

なお、ここでいう「賞与」とは、労働の対償として支給されるもののうち年3回以下のものです。名目がボーナスや賞与でなくても、この条件に当てはまるものは賞与として計上されます。具体的には、次のようなものが賞与として扱われます。

__・賞与(役員賞与を含む)

・ボーナス

・期末手当

・年末手当

・夏季・冬季手当

・勤勉手当

・繁忙手当

・もち代

・年末一時金

・上記のような名目で金銭でなく現物支給されるもの__

賞与ナシの会社は約3割に上る

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、令和4年度に夏季賞与が支給された事業所の割合は66.8%、同じく冬季賞与が支給された割合は70.5%です。賞与が支給されていない事業所は意外と多く、全体の3割程度を占めています。

事業所の従業員規模が小さいほど賞与ナシの割合が高く、従業員30人未満の事業所では令和4年度夏季賞与の支給割合が6割強にとどまっています。なお、産業別の賞与の支給事業所数割合は、図表1のとおりです。

【図表1】

厚生労働省「毎月勤労統計調査」をもとに筆者作成

賞与額が150万円を超えると厚生年金保険料は頭打ちに

賞与に対する厚生年金保険料の計算に用いる標準賞与額は、支給1回(同月に複数回支給された場合は合算)につき150万円が上限です。150万円を超える場合は150万円として保険料が計算され、それ以上は賞与額が上がっても保険料は上がりません。

令和5年度の厚生年金保険料の保険料率は18.3%なので、厚生年金保険料の上限額は150万円×18.3%=27万4500円です。このうち、2分の1の13万7250円が賞与から天引きされます。

賞与の額と厚生年金保険料はおおむね比例する

賞与に対する厚生年金保険料は、額面の賞与額から1000円未満を切り捨て、保険料率を掛けて計算します。賞与が支給されるたびに保険料を計算するため、賞与が出なければ保険料もかかりませんし、前回よりも支給額が減れば保険料も比例して下がります。保険料が決まる基本的な仕組みが、給与とは違うことを覚えておきましょう。

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料

日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)

厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年9月分結果速報等

厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年2月分結果速報等

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

自分が将来受け取る年金の額が全く分かりません。調べる方法や平均受給額を教えてください。


【調べ方1】ねんきん定期便をチェック

年金の見積額を把握する代表的な手段として、「ねんきん定期便」が挙げられます。名称のとおり、この郵便物は年金に関するデータが記載されているものです。

ハガキと封筒の2パターンがあり、どちらも自分で取り寄せる必要はありません。毎年の誕生月にハガキが届き、35歳や45歳といった特定の年齢になると封筒が送られてくるからです。情報量は封筒のほうが多く、納付額などの月別状況が全期間にわたって書かれています。しかし、年金の見積額を知りたいだけなら、ハガキをチェックするだけで十分です。

50歳未満と50歳以上でハガキのフォーマットは少し異なりますが、いずれも裏面に加入期間などを記した表がある点は共通です。そのデータの一つとして、現時点までの加入実績をもとに算出した受給額が載っています。

【調べ方2】ねんきんネットで試算

スマートフォンやパソコンで「ねんきんネット」にアクセスすると、年金の見積額を簡単に把握できます。これは日本年金機構が提供しているオンラインサービスです。利用に際して場所や時間の制限がないだけでなく、最新の年金記録を確認できる点も魅力となっています。未納付の期間をアイコンで表示するなど、視覚的に理解しやすい点もポイントです。

そして、ねんきんネットは将来の受給額を試算する機能も備えています。働き方の変化や未納付分の支払いを想定し、試算の条件を設定することも可能です。

ただし、ねんきんネットを利用したいなら、あらかじめ登録を済ませなければなりません。ユーザーIDを取得する方法とマイナポータルから登録する方法の2種類で行えます。

年金の平均受給額はどれくらい?

年金の1カ月あたりの平均受給額は、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」に載っています。令和4年12月に発表された令和3年度の上記資料によると、国民年金の平均受給額は同年度末の時点で約5万6000円でした。

一方、厚生年金の平均受給額は約14万6000円で、この金額には国民年金の受給分も含まれています。なお、上記資料には平成29~令和2年度のデータも記載されており、その期間に関してはどちらの平均受給額もあまり変動していません。

国民年金、厚生年金ともに変動の幅は1000円前後です。したがって、これらの金額帯を目安にしつつ、自分の将来の受給額を調べてみるとよいでしょう。

老後の見通しを立てるために早めの確認を!

年金の見積額が分かっていると、老後の生活資金が不足しないか検討しやすくなります。足りないと判断した場合、投資や貯蓄に力を入れるような対策も可能です。また、再雇用してもらうために、積極的にスキルを身につけるという手段もあります。ねんきん定期便やねんきんネットを利用し、将来の見通しを早く立てておきましょう。

出典

[日本年金機構 「ねんきんネット」の登録方法

](https://www.nenkin.go.jp/n_net/registration/summary.html)

[厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

](https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

高額療養費制度、70歳以上は「さらにお得」に!お金のもらい忘れに要注意



写真はイメージです Photo:PIXTA
写真はイメージです Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

大きな病気やケガをしたときにお世話になる高額療養費制度。実は70歳以上であればより補助の対象が大きくなるのをご存じだろうか。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第270回では、70歳以上を対象とした高額療養費制度について見ていこう。制度を知っていて自ら申請しなければ還付はされない。ぜひ内容を押さえて活用してほしい。(フリーライター 早川幸子)

現役世代の高額療養費にはない

70歳以上の人のためのお得な仕組み

 前回は、高額療養費がさらにお得になる「世帯合算」「院外処方」「クレジットカード」という3つのキーワードを紹介した。

 これらの裏ワザは、年齢や所得に関係なく誰でも利用できる。だが、70歳以上の高額療養費には、さらに自己負担が軽くなる次の2つの仕組みが導入されている。

(1)自己負担額のすべてを世帯合算できる

(2)外来(通院)のみの自己負担限度額が設定されている

 今回は、70歳以上の人が知っておきたい高額療養費の2つのお得なポイントを、現役世代の制度と比較しながら確認していきたい。

 高額療養費は、医療費が家計の大きな負担にならないように配慮された、公的な医療保険(健康保険)の制度だ。

医療費が一定額になるまでは、年齢や所得に応じて医療費の1~3割を支払うが、そのラインを超えた部分の自己負担額が軽減されるという仕組みになっている。この制度のおかげで、入院や手術などをして医療費そのものが高額になっても、患者が支払う自己負担額は一定の範囲に収まるようになっている。

 たとえば、70歳で年収500万円の人の場合、医療費が26万7000円までは、3割(8万100円)を自己負担するが、この限度額を超えた部分については、医療費の1%だけ支払えば良くなる。

 この高額療養費の自己負担限度額は、70歳を境に分類されている。それでは70歳以上については、どのようになっているのか。具体的に見ていこう。

●70歳以上は医療費の全額を世帯合算して高額療養費制度を利用できる。また通院のみの限度額が設定されている

●自分で申請しないと還付されないので、取り忘れに注意しよう

18年から高齢者の高額療養費所得区分は6段階に

一定の所得がある人は負担が引き上げられた

 下図の通り、70歳以上の高額医療費の所得区分は6段階となっている。

図表:70歳以上の高額療養費
図表:70歳以上の高額療養費© ダイヤモンド・オンライン

 70歳以上の人の高額療養費の所得区分が、6段階に分けられるようになったのは、2018年8月からだ。それまでは4段階で、所得の高い人の自己負担限度額も、現役世代より低く設定されていた。つまり、高齢者は所得に関係なく、一律に優遇されるような設計となっていたのだ。

 だが、超高齢化社会に対応するために、国は「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という負担と給付の在り方を見直し、「全世代型の社会保障に転換する」という方針を打ち出している。

 そのため、現在は、70歳以上の人も一定以上の所得があれば、相応の負担が求められるように変わっている。ただし、すべての高齢者の負担が引き上げられたわけではない。

高齢者負担の見直しに際しては、複数の政府文書で「低所得層への配慮」を行うことが約束されている。そのため、年金や給与の少ない高齢者が貧困に陥ることがないように、所得区分が「一般」「住民税非課税」に分類される人に対しては、引き続き、医療費の自己負担分を軽減する措置が行われているのだ。

 特に、住民税非課税世帯の中でも、収入が老齢基礎年金だけなど、所得が一定額以下の人に対しては、さらに1段階低い限度額が設定されている。

 このように、70歳以上の人の高額療養費は、現役世代に比べると、低所得層の自己負担限度額が低く設定されている。これに加えて、冒頭で示したように、「医療費の全額を世帯合算できる」「通院のみの限度額が設定されている」という2つの仕組みによって、高齢者の高額療養費は現役世代よりも有利な仕組みになっているのだ。具体的に見ていこう。

70歳以上の人の世帯合算には

「自己負担額2万1000円以上」の縛りがない

<お得なポイント:1>

 70歳以上の高額療養費は自己負担額のすべてを世帯合算できる!

 高額療養費は、原則的に、1人の人が、1つの医療機関に、1カ月に支払った自己負担額の合計が、決められた上限額を超えると適用される。ただし、「世帯合算」というオプションの制度があり、同一の健康保険に加入する家族の医療費もまとめて申請することができる。そのため、1人の人の医療費だけでは限度額に届かなくても、世帯合算することで高額療養費の適用を受けられるケースもある。

 ただし、70歳未満の制度では、合算対象となる医療費は「2万1000円以上の自己負担のみ」という縛りがある。そのため、医療費なら何でも合算できるというわけではなく、ある程度、高額な医療費を負担していることが利用できる条件になる。

 この「自己負担額2万1000円以上」という条件が、70歳以上の制度には、ない。保険適用された医療費の自己負担分は、金額にかかわらず合算できるので、高額療養費の適用が受けやすくなるのだ。

 70歳未満と70歳以上では、世帯合算の仕組みの違いが自己負担額にどのように影響するのか。年収が同じ500万円の人のケースで比較してみよう。

◆比較条件

 年収:500万円

 医療費の自己負担割合:3割

 高額療養費の限度額:【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】

 かかった医療費:夫/医療費25万円、3割負担分7万5000円

         妻/医療費6万円、3割負担分1万8000円

・70歳未満

 70歳未満の人は、自己負担額が2万1000円以上にならないと世帯合算はできない。そのため、妻の自己負担分は合算できず、このケースでは高額療養費は適用されない。夫婦の自己負担分の合計は9万3000円のままだ。

・70歳以上

 70歳以上の人は、自己負担した金額にかかわらず、世帯合算ができる。高額療養費の限度額は、【8万100円+(31万円-26万7000円)×1%=8万530円】。高額療養費の申請をすると、すでに支払っている9万3000円との差額の1万2470円が払い戻される。

 このように、年収や、かかった医療費が同じでも、世帯合算の仕組みの違いによって、70歳以上の人の自己負担額は、現役世代よりも1万2470円も安くなるのだ。

所得が「一般」「住民税非課税」の人は

通院のみの高額療養費の限度額がある

<お得なポイント:2>

 70歳以上の高額療養費には、通院のみの自己負担限度額が設定されている

 もうひとつ、70歳以上の人の高額療養費のお得な仕組みが、外来(通院)のみの限度額の設定だ。

 70歳未満の人の高額療養費は、通院・入院の区別はない。通院でも、入院でも、所得に応じて分類された5段階のいずれかが限度額になる。

 たとえば、70歳未満で、年収500万円の人の高額療養費の限度額は、【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】。個人ごと、医療機関ごと、1カ月ごとに計算した医療費が、26万7000円を超えなければ、通院でも、入院でも、高額療養費は適用されない。

 一方、70歳以上で、所得が「一般」と「住民税非課税」の人の高額療養費には、「世帯全体の通院+入院」の限度額のほかに、「個人ごとの通院」の限度額も設定されている。そのため、日常的な通院による医療費の負担も一定額までに抑えることができるのだ。

 鈴木太郎さん(73歳)のケースで考えてみよう。

◆試算条件

 医療費の自己負担割合:2割

 高額療養費の所得区分:一般

 高額療養費の限度額:通院(個人ごと)1万8000円

               通院+入院(世帯全体)5万7600円

 かかった医療費:A病院…医療費6万円、窓口負担額1万2000円

            B病院…医療費5万円、窓口負担額1万円

 鈴木さんは、1カ月にA病院とB病院に通院し2つの病院の窓口で合計2万2000円を支払った。世帯単位の限度額は5万7600円なので、これだけでは高額療養費の対象にはならないと思うかもしれない。

 だが、70歳未満で所得が「一般」の人には、通院のみの限度額が設けられており、鈴木さんの場合は1万8000円。そのため、世帯合算の申請をすると超過分の4000円が払い戻されるのだ。

 さらに、所得が「一般」の人の通院の自己負担額には、年間上限も設けられているので、1年間にかかる通院の医療費は1人当たり、最大でも14万4000円だ。

 また、同一月に、同じ健康保険に加入している家族の医療費も高額になった場合は、その自己負担分も世帯合算できる。

 たとえば、鈴木さん世帯の高額療養費の限度額は5万7600円なので、妻が入院して医療費が100万円かかった場合、最大でも自己負担するのは5万7600円でよい。そのため、夫が支払った通院の自己負担分1万8000円は、申請すると払い戻してもらえるのだ。

 今回、見てきたように、70歳以上の人の高額療養費には、「自己負担額のすべてを世帯合算できる」「外来(通院)のみの自己負担限度額が設定されている」という、現役世代はない2つの仕組みがある。だが、せっかくのお得な仕組みも、自ら利用しなければ、そのメリットを享受することはできない。まずは、毎月かかっている医療費や、自分の高額療養費の限度額を確認し、医療費が取り戻せそうな場合は、加入している健康保険に問い合わせてみよう。

私は昭和37年2月生まれの女性です。働かなくても特別支給の老齢厚生年金はもらえるのでしょうか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、働かなくても特別支給の厚生年金はもらえるのかについてです。

Q:私は昭和37年2月生まれの女性です。働かなくても特別支給の老齢厚生年金はもらえるのでしょうか?

「私は昭和37年2月生まれの女性です。現在働いて厚生年金保険料を支払ってますが、今年の11月いっぱいで雇用の更新がないと雇用主から話がありました。来年の2月で62歳になります。それで働かなくても特別支給の老齢厚生年金はもらえるのでしょうか?」(フシコ)

A:老齢年金の受給要件(納付期間10年)を満たし、厚生年金の加入期間が1年以上あれば、62歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れます。働いていなくても受給できます

老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、要件を満たすことで原則65歳から受け取ることができますが、一定の要件を満たした人は、60代前半で老齢厚生年金を受け取れます。60代前半でもらえる老齢厚生年金のことを、特別支給の老齢厚生年金といいます。

特別支給の老齢厚生年金がもらえる人は、次の要件を満たした人になります。

▼特別支給の老齢厚生年金の受給要件

・男性:昭和36年4月1日以前生まれ

・女性:昭和41年4月1日以前生まれ

・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)がある

・厚生年金保険等に1年以上の加入期間がある

・生年月日に応じた受給開始年齢に達している

特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢は、日本年金機構のホームページで確認できます。

生年月日と性別に応じた特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢/出典:日本年金機構のホームページ
生年月日と性別に応じた特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢/出典:日本年金機構のホームページ© All About, Inc.

相談者は昭和37年2月生まれの女性とのことですので、厚生年金の加入期間が1年以上あり、老齢年金の受給要件(納付期間10年)を満たしていれば、62歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れます。働いていなくても特別支給の老齢厚生年金は受給できます。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

62歳になると特別支給の老齢厚生年金をもらえます。遺族年金はもらえなくなってしまいますか?


老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、遺族年金をもらっている場合の特別支給の老齢厚生年金についてです。

Q:今現在61歳。遺族年金をもらいながら働いています。62歳になると特別支給の老齢厚生年金をもらえるのですが、遺族年金はもらえなくなりますか?

「現在61歳。遺族年金をもらいながら働いています。62歳になると特別支給の老齢厚生年金をもらえるのですが、特別支給の老齢厚生年金をもらうと遺族年金はもらえなくなりますか?」(チキクマさん)

A:65歳までは特別支給の老齢厚生年金と遺族年金のどちらかを選択して受給します

60代前半で遺族年金の受給権がある人が、特別支給の老齢厚生年金受給ができるようになった場合、特別支給の老齢厚生年金と遺族年金のどちらかを選択して受給することになります。特別支給の老齢厚生年金を受給している間は、遺族年金が支給停止になります。どちらか有利なほうを選択しましょう。

相談者「チキクマ」さんは働いているとのことですが、厚生年金に加入しているのであれば、特別支給の老齢厚生年金を選択する際、在職老齢年金制度に注意が必要です。特別支給の老齢厚生年金と月収やボーナスの金額の合計額が一定額以上の場合、特別支給の老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる可能性があります。

遺族年金を選択する場合、厚生年金に加入して働いていても在職老齢年金制度は適用されませんので、遺族年金が支給停止になることはありません。

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

60代女性、年金繰り下げで対策も「介護が怖い」 老後のお金、生涯かけて準備する時代に


給料は上がらないのに、平均寿命は延びるばかり。定年後も働けば「老後破綻」は回避できるというが、それで十分といえるのか。老後のお金は生涯かけて準備する時代に入ってしまった……。AERA 2023年10月30日号より。

*  *  *

 関東地方に住む女性(68)は、同い年の夫とともに年金「繰り下げ」を行っている。「繰り下げ」は、65歳からの受給開始が基本の年金を遅らせてもらうことで年金額を増やす手法だ。

「年金は終身でもらえます。毎月来る定期収入は1円でも多く増やした方がいい。それが繰り下げをする動機ですね。60歳代前半の生活からレベルを下げたくないとも思います。やっぱり月に40万円程度はほしいです」

自らは月10万円程度の団体の仕事をしていて、その仕事をやめるまでは繰り下げを続ける決意だ。夫は66歳で働かなくなってからは趣味に生きる生活だ。約1千万円の定期を解約し、毎月、一定額を取り崩している。それが尽きた時、夫は繰り下げ待機を止めるつもりという。

「お金の不安でいけば、介護が怖い。できれば在宅で長くいたいので、お金でいろいろなサービスを買えるようにしておきたいです。子どもに迷惑をかけたくないから、取れる選択肢は広げておきたいとも思います」

 確かに、必要になるかどうかはわからないものの介護にはお金がかかりそうだ。有料老人ホームなどを考えると、ピンキリだが入居の際の一時金だけで1千万円単位になるところもある。そこまでは望まなくても、それなりの準備が必要とするのは、老後資金に詳しいFPの井戸美枝さんだ。

「かかるお金も期間もばらついていますが、介護期間が10年以上に及び1千万円以上かかることもあります。生命保険文化センターの調査では、介護費用と住宅改修などを合わせたトータルの平均で約580万円としています。ほかに医療の備えも必要で、医療費の自己負担額と入院費で、こちらは250万円程度みておくといい。合わせて『医療+介護』で830万円程度を見ておくと安心と私は言っています」

人生100年時代「老後破綻」どう回避? 定年後も働くこと前提、年金と月10万円の「小さな仕事」で賄える
人生100年時代「老後破綻」どう回避? 定年後も働くこと前提、年金と月10万円の「小さな仕事」で賄える© AERA dot. 提供

 不安で言えば、年金も増えないどころか今後も実質減っていくことを知っておくべきだろう。年金額は毎年改定されるが、少子高齢化による年金財政の悪化で現在、「マクロ経済スライド」と呼ばれる、物価や賃金の上昇ほどには年金を上げない措置がとられているからだ。物価や賃金より伸び率が下回るのだから、「目減り」である。1、2年で済めばいいが、抑制期間が長引くと目減り度合いは大きくなる。

■手厚い備えを望むなら

 このほか、国の制度改正で、社会保険の保険料や自己負担が増える可能性がある。消費税の税率アップも複数回あるかもしれない……。これらを考えると、「働く」だけではお金が足りなくなる事態も十分考えられる。

「働く」以外で老後の収入を増やすには、先の関東地方の女性が実践している年金「繰り下げ」が有力手段となる。1カ月遅らせるごとに年金額は0.7%増え、70歳まで5年遅らせれば42%増、制度上最長となる75歳まで遅らせれば実に84%増となる。

 国が個人の自助努力を促すために、運用益を非課税にする新NISAなどの制度整備を進めているが、現役時代の今からこれらを利用してさらなる資産形成を目指すことも余裕のある限り行うべきだろう。

できればやりたくないが、どうしてもお金が足りないのなら、「節約」によるもう一段の家計のダウンサイジングに取り組む必要が出てくるかもしれない。

 やはり人生には「潤い」が必要──。手厚い備えを望む人ほど、こうした手段の中から自分のできることを選び、実行するようになっていくだろう。おそらく、それは一つではなく複数(ひょっとしたら全部)であるはずだ。

「働く」もそうだが、老後資金の世界は、現役時代をはるかに超えて生涯かけて準備しなければならない時代に入っている。年を追うにつれ、「マネー総力戦」の様相を強めていくとみられる。(編集部・首藤由之)

AERA 2023年10月30日号より抜粋

年金の平均額は「約15万円」! 70歳まで働くと、将来の年金額はどれだけ増える? その他のメリットも解説


70歳まで働くと受給年金は年額約20万円増える

会社員など厚生年金保険の加入者は、原則65歳から老齢厚生年金を受給できるようになります。国民年金(老齢基礎年金)も含めると、基本的な年金額の計算は以下のようになります。

年金額=老齢基礎年金+老齢厚生年金(報酬比例部分+加給年金額)

加給年金額は配偶者や子どもの年齢など一定の条件を満たすと特別に加算される年金額ですが、ここでは考慮しません。

2023年度における老齢基礎年金の満額は年79万5000円です。これまでに40年間(480ヶ月)分の保険料を不足なく納めていれば、これ以上増えることはありません。

つまり、高齢になっても働き続けることで増やすことができるのは厚生年金部分です。厚生年金部分の計算はやや複雑ですが、簡単に説明すると、働き続ける場合、受給できる年金額は以下の分だけ増えることになります。

報酬比例部分の増加分=平均標準報酬額×5.481(※)/1000×働いた月数

※計算を簡単にするため、2003年4月以降の被保険者期間の乗率を使用しています。

仮に60歳以降に10年間(120ヶ月)働いて、平均標準報酬額が30万円だった場合、約20万円(月額2万円弱)年金額が増加することが見込めます。

30万円×5.481/1000×120=19万7316円(年)÷12=1万6443円(月)

年金受給額が増える以外のメリットも

高齢になっても働くことのメリットとして、単に年金額が増えるだけではなく、年金に頼らずに生活できる期間を長くできることもあります。

年金は通常65歳から受給開始となりますが、働き続けることで年金の受給開始時期を66歳以後に遅らせることができます。これが年金の繰下げ受給です。年金の繰下げ受給をする場合、繰り下げた月×0.7%分年金額が増加します。これにより将来の経済的リスクを軽減できます。

例)年金受給額が月15万円(年180万円)で70歳まで繰下げ受給した場合

__0\.7%×60(12ヶ月×5年)=42%

180万円×1.42=256万6000円(年)÷12=21万3000円(月)__

※この場合、年金受給開始を5年繰り下げると、毎月約6万円増額されることになります。

繰下げ受給ではなく、在職中に年金を受給する場合には、年金の額と給与(賞与を含む)の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合もあるので注意が必要です。

年金額を増やしたいなら長く働くのがおすすめ

近年、年金問題が取り上げられることも多いですが、公的年金は、現時点で最も安定した将来に対する備えだといえます。本記事では、長く働いて年金受給の開始を遅らせるという比較的簡単な方法で年金の金額を増やす方法を説明しました。

老後も働くといっても、必ずしも現役世代と同じように働く必要はありません。自身の財政状況、生活スタイルや体力に合わせつつ老後も働き続けることは、将来のお金の不安を軽減する合理的な方法といえるのではないでしょうか。

出典

[厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況

](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106808_1.html)

[日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額

](https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-01.html)

[日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分

](https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html)

執筆者:御手洗康之

AFP、FP2級、簿記2級

厚生年金保険料、年収1000万円の会社員の場合どれくらい引かれる?


厚生年金保険料の仕組み

1.保険料

厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率(18.3%)をかけて計算され、事業主と被保険者(会社員)とが半分ずつ負担します(※1)。

表1

(出典:日本年金機構(※1))

2.標準報酬月額とは

毎月の厚生年金保険料の算出に用いられる標準報酬月額は、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定されます(※1)。現在、標準報酬月額は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています(※2)。

表2

厚生年金保険料、年収1000万円の会社員の場合どれくらい引かれる?
厚生年金保険料、年収1000万円の会社員の場合どれくらい引かれる?© ファイナンシャルフィールド

なお、報酬月額が63万5000円以上の方の標準報酬月額は32等級で、一律65万円となります。

3.標準賞与額とは

賞与から支払う厚生年金保険料の算出に用いられる標準賞与額とは、実際の税引き前の賞与の額から1000円未満の端数を切り捨てた額になります。そして、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限とされています。

なお賞与とは、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の回数で支給されるものとされています(※1)。

年収の内訳により異なる保険料

年収1000万円の毎月の給与分と賞与分の内訳によって厚生年金保険料がどのように変わるのか見てみましょう(※1、2)。

【ケース1】全額が給与であった場合

年収1000万円の内訳が全額給与であった場合、毎月の給与は平均で83万3333円となります。

この場合、標準報酬月額は32等級の65万円となりますので、被保険者が毎月支払う保険料額は5万9475円となります。

1年間に支払う保険料の総額は、71万3700円になります。

【ケース2】給与600万円/賞与400万円(年2回)の場合

年収1000万円の内訳が、毎月の給与50万円(年額600万円)、年2回支払われる賞与が各回200万円(年額400万円)であった場合の厚生年金保険料額を確認してみましょう。

50万円の給与は、標準報酬月額27等級の50万円となりますので、毎月支払う保険料額は4万5750円、年間で54万9000円となります。

一方、1回200万円の賞与に対する標準賞与額は上限の150万円となり、毎回支払う保険料額は13万7250円となりますので、年間では27万4500円となります。

毎月の給与から支払う保険料の年間合計額54万9000円と、2回の賞与から支払う保険料の合計額27万4500円を合わせると、1年間に支払う保険料の総額は82万3500円となります。

【ケース3】給与700万円/賞与300万円(年2回)の場合

年収1000万円の内訳が、毎月の給与58万3333円(年額700万円)、年2回支払われる賞与が各回150万円(年額300万円)であった場合の厚生年金保険料額を確認してみましょう。

58万3333円の給与に対する標準報酬月額は、30等級の59万円となりますので、毎月支払う保険料額は5万3985円、年間で64万7820円となります。

一方、1回150万円の賞与に対する標準賞与額は150万円となり、保険料額は13万7250円となりますので、年間で27万4500円となります。

毎月の給与から支払う保険料の合計額64万7820円と、2回の賞与から支払う保険料の合計額27万4500円を合わせると、1年間に支払う保険料の総額は92万2320円となります。

将来の老齢厚生年金に反映される額

将来受給することができる老齢厚生年金の額は、主として報酬比例部分により決まります(※3)。報酬比例部分の額は、下式により計算されます。

報酬比例部分=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数(注)

注:平成15年3月以前の加入期間に係る計算式は異なります。

平均標準報酬額とは、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間で割って得た額です。従って、1年間に支払った厚生年金保険料の算定基礎となった標準報酬月額と標準賞与額の総額が、1年間厚生年金保険料を支払った対価として、将来の老齢厚生年金に反映されることになります。

そこで、1年間に支払った厚生年金保険料が、将来の老齢厚生年金に反映される際の年金額を、前述のケース1~3の場合で計算してみましょう。

表3

厚生年金保険料、年収1000万円の会社員の場合どれくらい引かれる?
厚生年金保険料、年収1000万円の会社員の場合どれくらい引かれる?© ファイナンシャルフィールド

注:1年間厚生年金保険料を支払った対価として老齢厚生年金額に反映される額

まとめ

厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。

同じ年収1000万円の被保険者でも、毎月の給与と賞与の割合によって支払う厚生年金保険料の額は異なります。給与・賞与の額にもよりますが、年収の一部をボーナスとして受け取るよりも、全額を給与として受け取る方が、厚生年金保険料を低く抑えることができます。

しかしながら、1年間に支払う厚生年金保険料の額が、将来受け取る老齢厚生年金(報酬比例部分)の額に反映されますので、保険料を低く抑えると年金額が少なくなります。

出典

(※1)日本年金機構 厚生年金保険の保険料

(※2)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)

(※3)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額

執筆者:辻章嗣

ウィングFP相談室 代表

CFP(R)認定者、社会保険労務士

最新記事
★★互助会推薦★★
QRコード
QR
キャンペーン
admax
カテゴリ
ランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ