いまこうして読んでいただいている「夕刊フジ」。記事の文字一つひとつを、苦労なく追えているだろうか。
「老化」に直結する目の症状は、誰もが気になるところ。それだけに世間には、目にまつわるさまざまな情報が氾濫している。
そこで今週は5回にわたり、玉石混交の情報の中から、正しい情報と怪しい情報を選り分ける〝正しい目〟を養うための眼科治療の新常識と非常識を、二本松眼科病院(東京都江戸川区)副院長、平松類医師に解説してもらおう。
第1回は、「洗眼」について―。
◇
現在、中高年のみなさんが小中学校に通っていたころ、体育の授業で水泳があると、プールから上がったら水道で目を洗っていたと思います。
多くの学校には上に向いて二股に分かれた目を洗う専用の水道が設置されていて、行列を作ってまで目を洗っていたのではないでしょうか。
でもいま、どこの学校に行ってもあの水道を見ることはありません。
学校だけでなく、大人になった皆さんが行くスポーツクラブのプールにも、あの水道はないはずです。
みなさんが「よかれ」と思ってやっていた水道水での洗眼は、時代を経て「やらないほうがいいこと」に変わってしまいました。
水道水で目を洗うと、水道水に含まれる塩素で目の表面が傷つき、かえって感染症を引き起こしやすくなることが分かったのです。
なぜ昔は水道水で目を洗っていたのかと言えば、当時は「涙」は「水」と思われていたから。しかし、その後の研究で涙には脂分や、ムチンに代表される「目を保護する成分」が含まれていることが分かってきました。水道水で目を洗うと、こうした大切な成分までを流してしまうことになるのです。
© zakzak 提供 平松類医師
目にゴミや薬品が入るなどした「緊急時」であれば別ですが、そうでなければ水道水での洗眼は避けるのが得策。どうしても洗いたいときは、市販の目薬を使ってください。
ちなみにこの目薬。ドラッグストアに行くと多種多様な品ぞろえで出迎えてくれます。安いものもあれば、目によさそうな有効成分がたくさん入った高額商品まであり、まさに〝目移り〟してしまいます。
もし特定の商品にこだわりがないのであれば、一番安い目薬を選ぶことをお勧めします。
市販の目薬であれば、そこに求められる機能に大差はありません。それより重要なのは、買った目薬を後生大事に使い続けないこと―です。キャップを開けたら長くても1カ月以内に使い切ること。使い切れなければ躊躇(ちゅうちょ)せず廃棄しましょう。
1カ月で目薬を使い切るには、かなり大胆に、それこそ「ジャブジャブ」と使う必要があります。これまで「チビチビ」と使ってきた人には少し勇気のいることかもしれません。だからこそ、高額な目薬ではなく「安い目薬」でいいのです。
安いとはいえ水道水に比べれば高額です。そして、水道水よりよほど目に優しい「薬」なのです。
ただし、病気の治療で眼科から処方された目薬は、適正使用を守らなければなりません。ここだけは間違えないようにしてください。 (構成・長田昭二)
■平松類(ひらまつ・るい) 二本松眼科病院副院長。2005年、昭和大学医学部卒業後、同大医学部眼科入局。同大学病院や関連病院に勤務ののち、18年から現職。昭和大学兼任講師。医学博士。YouTube「眼科医平松類チャンネル」を毎日発信中。
人間は皮膚呼吸をしているので、全身の皮膚を何かで覆ってしまったら皮膚呼吸ができなくなって危険……。そう思っている人は多いはず。しかし、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は、それに医学的根拠はないと言います。皮膚呼吸について解説します。
* * *
その昔、テレビ番組で全身を金色に塗られた芸人が「皮膚呼吸ができなくて死にそうになった」と面白おかしく訴えたことが話題となりました。
まだ若かった私は笑いながらも「皮膚呼吸ができないのは怖い」と感じたものです。
その後、皮膚科医として20年近くキャリアを積むようになり、皮膚呼吸という言葉をいっさい聞くことなく仕事をしてきました。
確かに、全身の皮膚を覆うようにべっとりと金色の塗料を塗られるのは体に悪そうです。
でも、それだけで具合が悪くなるのだろうか?
そもそも人間に皮膚呼吸はあるのだろうか?
病院で患者さんを診続け、皮膚呼吸ができなくて病気になった人なんて聞いたことがありません。
そこで皮膚呼吸について今回は調べてみました。
みなさんも学生時代に習ったとは思いますが、皮膚呼吸をする生き物は確かにいます。
ミミズやヒルなどの小型の生物は、皮膚を通して酸素と二酸化炭素を交換するだけで生命維持が可能です。
一方、大型の生物は皮膚呼吸では不十分であり、ほとんどの血液の酸素化を肺で行っています。
人間はというと、皮膚呼吸をわずかにしていると考える学説もあるようです。しかし、呼吸と言えるほどのガス交換ではなく、たまたま皮膚で酸素と二酸化炭素を交換しているだけと考えるのが自然でしょう。
つまり、先の芸人のように皮膚がべっとりと覆われてしまっても窒息死することはありません。基本的には肺呼吸が妨げられない限り人間は問題なく生きていけます。全身やけどが命に関わるのは皮膚呼吸の問題ではなく、やけどにより皮膚のバリアーが破綻し体内の水分や栄養がとめどなく漏れ出てしまうためです。
というわけで、皮膚呼吸についてはそれほど深刻に気をつけて生活していく必要はなさそうです。
では、どうして全身に金色の塗料を塗られて芸人は気分が悪くなってしまったのでしょうか? 考えられる理由は、塗料の成分が大量に皮膚から吸収されたためです。
一般的に、塗り薬などは皮膚からの吸収によって病気を治療するわけですが、広い範囲に薬を塗ると血中内の薬の成分濃度が高くなることがあります。
私たち皮膚科医がよく診るケースとして、ビタミンD3が有効成分の塗り薬を広い範囲で使い続けると血中濃度が上がり、高カルシウム血症になる危険性があります。塗り薬を使う際は、塗る範囲や量に気をつけて、全身への副作用が起きないように注意しながら処方をしています。
そもそも体に塗っても害がないものかどうか、塗った場合に血中濃度が上がるかどうか、体内に吸収されても健康被害が起きないかどうか、事前に検査されたものしか皮膚に塗ってはいけません。
SNSなどでは、化粧をする際に皮膚呼吸を気にする人もいるようです。
血液の酸素化という本来の呼吸の意味を考えると、化粧をいくらしても問題はありません。化粧のせいで呼吸が苦しくなる心配はいらないでしょう。
また、化粧の成分が血中に入って体に害を与える可能性も極めて低いと思います。化粧は一般的に顔だけにすることが多く、それくらいの面積であれば大きな問題は起きないでしょう。
まれに、皮膚から吸収された成分が子宮にたまって不妊を起こす、いわゆる「経皮毒」と呼ばれるものを説明されている人もいますが、これはデマなので気をつけてください。
では、化粧をずっとつけっぱなしで大丈夫か、というと話が変わります。
私は患者さんに、家に帰ったらなるべく化粧を落としたほうが良いと指導しています。
理由は二つです。
肌への刺激と、かぶれが起きやすくなるからです。
化粧品の開発が進みいくら肌に優しいものが増えたとはいえ、一日じゅう毛穴を塞ぐのはよくありません。ニキビや湿疹の原因となります。さらに、油性成分のファンデーションはニキビを引き起こしやすいため、ノンコメドジェニック(ニキビになりにくい)テストを済ませている商品を選ぶと良いでしょう。
また、長時間化粧品が肌についている状態がつづくと化粧品に対するかぶれが起きる可能性も増えます。なるべく早めに化粧は落としてあげるのが正解です。
以上のことから、化粧のつけっぱなしはその後の皮膚トラブルにつながるため良くないのです。
皮膚が呼吸をして酸素と二酸化炭素を交換する機能はあったとしてもごくわずかです。「皮膚呼吸ができなくて具合が悪くなる」というのは都市伝説に近いものの、皮膚そのものを守るために、皮膚に塗るものはちゃんとしたものを選ぶのが大切でしょう。
足裏に起こりやすい皮膚の病変というと、「魚の目」「タコ」「イボ」があります。どれも同じようなものだと思っている人もいるかもしれませんが、それぞれ違うもので、間違った対処をすると、かえって悪化することもあります。以下では、きちんと見分けられるように、それぞれの特徴をご紹介していきます。
魚の目
魚の目は、長期間にわたって、皮膚の一点に圧迫、摩擦などといった刺激が繰り返し加わることで、皮膚表面にある角質層が厚く硬くなることでできます。
また、魚の目の場合は、角質が皮膚の内部に向かって、先の尖ったくさび状に肥厚していくので、中心に硬い芯ができるのが大きな特徴で、その名の通り、まるで魚の眼のような見た目をしています。
魚の目は、芯が皮膚の奥の神経のある層(真皮層)にまで達すると、歩くたびに神経が刺激され、強い痛みを感じることがあります。
一般的に魚の目ができやすいのは、小指や足指の上側(甲側)、足裏の指のつけ根の間などといわれています。
タコ
タコも、魚の目とできるメカニズムは同じですが、魚の目が一点に集中して、圧迫、摩擦などが加わったことできるのに対して、タコの場合は、比較的に広い範囲に、刺激が加わったことでできます。またタコの場合は、角質が外側に向かって、厚く、硬くなり、黄色みを帯びて盛り上がった状態になり、魚の目のような芯はできません。
タコは、表面の皮膚が硬くなるだけなので、あまり痛みを感じず、どちらかというと感覚が鈍くなったような感じになります。
一般的にタコができやすいのは、足裏や関節部分などの骨の上ですが、「座りダコ」や「ペンダコ」など、足に限らず、全身のどこにでもできます。
イボ
イボには、いろいろな種類のものがありますが、足にできやすいのは「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」です。これは、ヒトパピローマウイルスというウイルスが、皮膚の小さなか傷口から侵入し、感染すると考えられているウイルス性のイボです。
尋常性疣贅は、表面が盛り上がっていて、茶色の粒状にボコボコしています。手足にできることが圧倒的に多いものの、ひじやひざなど、外傷を受けやすい部分なら、どこにでもできます。
尋常性疣贅には、痛みもかゆみもありませんが、ウイルス性なので、削ったりすると、ほかの部位にも感染が広がってしまう可能性があります。このため、むやみに触らないようにしましょう。
30~40代になると、ほくろがあることで妙に老けて見えるように感じることも。「ほくろって予防できるの?」「とったらきれいになくなるの?」など、なかなか人に話を聞く機会のないほくろについて、お話を聞きました。
そもそもほくろとは?
ほくろは、良性の皮膚腫瘍です。数は個人差があり、まったくない人もいれば、全身で50個以上と多い人もいます。ほとんどは少年期から青年期にかけて増えますが、女性の場合、妊娠期や産後にホルモンバランスが変化する影響で増えることもあります。
ほくろによって、色素の量の違いなどから色が違ったり、表面が盛り上がったり、逆に平らだったりなど、さまざまです。
残念ながらほくろができないように予防をする方法はありません。
気になるほくろ、除去できる?
できてしまったほくろが気になる場合は、レーザーやメスでとることができるので、美容皮膚科に相談を。
小さなほくろはレーザーで蒸散させてとることができます(大きなものはメスでとります)。部分麻酔をするため、レーザー自体の痛みはありません。レーザー照射によってえぐれた皮膚はパッチを貼って過ごすと、2週間程度で新しい皮膚ができ、赤みや凹みは3 ~ 4カ月で気にならなくなります。
ほくろがガン化するって本当?
ほくろのほとんどが良性ですが、なかにはごくまれにガン化するほくろも。次の「悪性のほくろのサイン」がある場合は注意し、急にほくろが大きくなったときには、皮膚科を受診してください。
悪性のほくろのサイン
・ほくろの形が左右非対称
・ほくろのまわりがギザギザしている
・ほくろの色が均一でなく、濃淡が混じっている
・ほくろの直径が6mm以上ある
・少しの刺激で血が出る
・触ると硬い
上半身や顔にできる「赤ほくろ」って何なの?
30歳を過ぎて、上半身や顔に真っ赤な小さなほくろ状のものができてきたという人はいませんか? これは血管の成分が硬くなってできる良性の腫瘍で、原因は老化です。気になる場合には、普通のほくろと同様にレーザーでとることができます。
再生した新しい皮膚を保湿でしっかりガード
花王キュレル潤浸保湿フェイスクリーム
レーザー照射後の再生したての弱い肌を外部刺激から守るには、セラミドの働きを補い、バリア機能を助けてあげるのが◎。べたつかず軽い使い心地なため、夜だけでなく朝のメーク前にも使えます。キュレル 潤浸保湿 フェイスクリーム 40g〈医薬部外品〉 ¥2,530 ※編集部調べ(花王)
紫外線だけでなく可視光線もしっかり対策
ロート製薬アオハルリペルUVトーンアップクリーム
紫外線はもちろん、紫外線よりも肌の奥に届き、肌ダメージの原因になる可視光線(ブルーライト含む)もしっかり対策してくれる頼もしいUVクリーム。高保湿で化粧下地としても使えて便利。アオハル(R) リペル UV トーンアップクリーム 30g SPF50+ PA++++ ¥2,750 ※編集部調べ(ロート製薬)
※掲載中の情報はMart誌面掲載時のものです。
教えてくれたのは
アオハルクリニック院長・小柳衣吏子先生
順天堂大学医学部卒業。同大学病院勤務を経て、2011年にアオハルクリニック院長に就任。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。著書『美肌の王道』(日経BP)が好評。
取材・文/須賀華子 編集/倉澤真由美 構成/Mart編集部
2021年6月号
カラダの疑問に答えます「ほくろが増えるのはなぜ?」より
■悩む人が多い! 二の腕よりも出現率の高い「背中のブツブツ」
お風呂上がりに背中を鏡に映し見たら、背中にブツブツができている……なんて経験がある人もいるのではないでしょうか。顔のスキンケアも重要ですが、特に肌の露出の多い季節は、ボディケアも手を抜くわけにはいきません。
あまり知られていませんが、実は背中のブツブツは、二の腕のブツブツよりも出現率が高く、悩んでいる人が多いと言います。
しかし、対策としては念入りに洗う、薬用せっけんを使うなどしか行われていないのが現状なのだとか。そのため、あまり改善しないという人も多いのです。背中のブツブツは色々な種類の原因菌が入り混じっているため、適切な処置を行わなければ対応できないのです。
■背中にブツブツができるメカニズムとは?
背中のブツブツは、ニキビが大半と言われています。そして、体にできるニキビの多くは、マラセチア菌というカビの一種が皮脂を分解し、遊離脂肪酸という刺激物質を生成することで炎症を起こしてしまうのです。
背中は、皮脂の分泌量が多く、マラセチア菌の増殖が起こりやすい場所でもあるため、背中のニキビで悩む人が多いのです。
ちなみにこのブツブツの正式名称は、マラセチア菌が原因菌であることから、「マラセチア毛包炎」と呼ばれています。ほかにも、アクネ菌が原因の赤く腫れ、白から黄色の膿が溜まるニキビや、黄色ブドウ球菌が原因の表面に膿の溜まったくぼみができるニキビなどもあります。
背中にブツブツができている人の大半は、それをニキビと自覚していないのだとか。放っておくと、悪化してしまう場合も多く、とにかくできるだけ初期段階で適切な処置をとるというのが大切なのです。
■背中のブツブツ原因と対策
できてしまう原因は人それぞれ。原因に合った対策を行うことが大切です。
●1.寝汗
人は汗をかくとき、蒸発する汗から乾燥を防ごうと、一緒に皮脂も分泌されているのです。汗はいずれ蒸発しますが、皮脂はそのまま残ってしまうので、アクネ菌やマラセチア菌の恰好のエサになってしまいます。特に寝るときは要注意。
まずは、パジャマや下着、肌に触れるものを吸水性のよいものに変えてみましょう。汗をかいたら、下着や肌着はこまめに取り替えることも忘れずに。
●2.洗濯洗剤、柔軟剤
合成界面活性剤の入った洗剤や、柔軟剤の成分が肌に合わなかった場合、服に触れている部分の皮膚が肌荒れを起こし、ニキビになる場合があります。
成分表などをよくチェックして、できるだけ合成界面活性剤を使用していないものを選ぶようにしましょう。また、すすぎを念入りに行うなども対策の1つ。
●3.シャンプー、整髪料
シャンプーも、合成界面活性剤などが含まれているものがあるので、しっかりすすげていなかったりすると、背中にも付着して影響を与えてしまいます。髪の長い人は常に髪の毛が背中についているので、影響を受けやすいのも事実。
よくすすいだつもりでも、どうしても成分が残ってしまう場合があるので、必ず、シャンプーをしてから体を洗うようにしましょう。夏は暑いので、髪をアップにして背中を覆わないヘアスタイルにするのも良い方法。
●4.日焼け
皮脂は紫外線に当たると過酸化脂質が発生し、ドロドロの古い油のようになってしまいます。すると、皮膚に詰まりやすくなってしまいニキビの原因に。
なるべく、通年で日焼け対策を心がけましょう。背中は日焼け止めクリームが塗りにくいので、帽子や日傘を忘れずに。
●5.乾燥
肌が乾燥しているとバリア機能が低下してしまいます。すると、外部からの刺激を受けやすく、古い角質や皮脂が溜まりやすくなるため、ニキビの原因になってしまいます。
また、乾燥すると肌を守ろうと皮脂を多く分泌。普段から背中も顔と同じようにケアするのが大切です。
最近では、できてしまった背中ニキビ専用の商品が色々と出ています。そこで、背中のブツブツケアに最適な3品をご紹介します。
■背中のブツブツケアにオススメの3品
●小林製薬 セナキュア(医薬品) 100ml/1200円(税抜)
背中のブツブツの原因であるマラセチア菌やアクネ菌、黄色ブドウ球菌を殺菌。加えて、有効成分「アラントイン」が、赤みを改善し組織を修復してくれます。
弱酸性で低刺激。肌に優しい処方になっているのもうれしいポイント。また広範囲に塗布できるスプレーを採用しているので、手が届きにくい背中も簡単にケアできます。
●メンソレータム アクネス25 メディカルミスト(医薬品) 100ml/1200円(税抜)
大人ニキビにフォーカスしたミストタイプの治療薬。角質軟化作用(サリチル酸)が古い角質を取り除き、また、殺菌成分(エタノール)がニキビの原因菌を殺菌してくれます。
さらに、抗炎症成分ができてしまったニキビの炎症を抑える効果もあり、逆さにしても使えるので、どんな場所にもシュッとひと吹きでケアできて便利です。
●ユースキン ルドー 薬用アクネローション(医薬部外品) 150ml/1200円(税抜)
赤みのあるニキビの原因であるアクネ菌の生成を抑え、ニキビのできにくい環境を作ってくれるアクネローション。こちらもスプレータイプなので、デコルテ部分はもちろん、手の届きにくい背中にも使いやすいのが特徴です。
また、ニキビケアは保湿も重要と考え、潤い成分である「ダイズエキス(イソフラボン含有)」を配合しているので、水分量と皮脂量のバランスを整えて、すべすべ肌に導いてくれます。知らない間にできている背中のブツブツ。専門アイテムでしっかりケアして、夏のオシャレを思いっきり楽しんでみませんか?
帯状疱疹の原因
体の片側に起こる強い痛み、その部分にできる帯状の赤み、ブツブツ、水ぶくれが特徴の病気です。子どものころに水ぼうそうにかかったことのある人は、誰もがかかる可能性があります。
それは、症状が治癒してもそのウイルスが体内の神経節に潜んでいるから。これが、過労、加齢、病気などで免疫力が低下すると再び活動を始め、神経やヒフを攻撃し、帯状疱疹を発症させるのです。
放置すると、痛みが長引いてしまうことも……
症状が出たら、できるだけ早く治療を開始する、ということです。水ぼうそうのウイルスは、活発に活動し始めると、神経とヒフを攻撃し、それが長引くと、当然ダメージも大きくなります。
さらに、神経に傷が残ると長期間にわたり、痛みが消えなくなってしまうことも……。対処が遅くなってしまうと、このように患部の症状は消えても痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」に進行してしまう場合があるのです。
早期治療は、この帯状疱疹後神経痛予防にも役立ちます。
発症後72時間以内の治療が、最大のポイント
治療のベースは、抗ヘルペスウイルス薬の内服です。理想は、ブツブツした水ぶくれの発症後、72時間以内に十分な量の薬を服用すること。重症になると、入院による点滴治療が必要なケースもあります。
痛みや炎症が酷い場合には、消炎鎮痛薬やステロイドを併せて服用したり、激しい痛みには、神経周辺を直接局所的に麻酔する、神経ブロックを行うこともあります。
帯状疱疹の治療は、早めに行うことが大切です。痛みや、違和感があればすぐに皮膚科を受診しましょう。
日本のメダル獲得数が冬季オリンピックの最多となり、大盛況のうちに終わった平昌オリンピック。
多くの選手が活躍した一方で、こんなエピソードもあった。フィギュアスケート女子の長洲未来(24・米国)は、五輪女子史上3人目となるトリプルアクセルを成功させ、団体銅メダルに輝いたが、そのジャンプ以上に、内股に見えたタトゥーのようなものに、「あれはいったい何?」と、注目が集まったのだ。
それはキネシオテーピング療法で使われる「キネシオテープ」のことだ。アスリートの間での人気は高く、リオ五輪で、女子団体銅メダルに輝いた卓球・福原愛(29)も、ピンクのテープを足に貼っていたことがあった。
筋肉に直接テープを貼ることで、疲労した筋肉をサポートしつつ、最大限のパフォーマンスを引き出すように開発されているが、実はこのキネシオテープ、スポーツ選手だけでなく、一般の人にとっても非常に有効なテープなのだ。
キネシオテーピング協会の会長でキネシオ接骨院(東京都中野区)の院長である加瀬剛先生は、こう話す。
「キネシオテープは、私の父である加瀬建造が“キネシオロジー”(運動機能学)に基づき、筋肉の動きを研究して開発したものです。父がアメリカでカイロプラクティックを学び、実践していた当時、先天性股関節脱臼で苦しんでいた患者さんのために考案したのが、キネシオテーピング療法です。
それまでは捻挫の治療でも、患部を固定するのが一般的でしたが、キネシオテーピング療法で、患部の可動域がぐっと広がりました。また、痛みも改善されます」(以下・加瀬先生)
キネシオテープの効果は4つある。
【1】筋肉の機能を正す
筋肉に沿ってテープを貼ることで、筋肉の動きを正常な状態に戻す役割がある。
【2】痛みを軽減する
皮膚の表面には痛みを感じるセンサーのようなものがあるが、テープを貼ることにより、皮膚表面を持ち上げ、センサーを刺激しないことで、痛みを軽減する。
【3】血液、リンパ液の流れを促進する
テープを貼ることで皮膚表面が持ち上がり、血液、リンパ液の流れが促進される。
【4】関節の動きをなめらかにする
関節部分にテープを貼ることで、関節の動きをよくする。
つまり、肩こり、腰痛、関節痛など、ふだん私たちが感じる、日常的な痛みにも使えるわけだ。テープも、薬局やスポーツ店などで手軽に買え、コツを覚えれば、自分で簡単に貼れるのがうれしい。協会で講習会も開催している。
今回、取材に同行したカメラマンは、3日前に自転車で右肩を負傷し、右腕が上がらない状態だった。が、加瀬先生にテーピングをしてもらったところ、バンザイができるまでに右腕が上がるようになり、驚いていた。
地球温暖化が進んで、オゾン層が破壊されるとさまざまなリスクが人間に降りかかってくるという話はそんなに新しい話ではありませんよね。
その一つが、オゾン層を通り抜けてしまう強い紫外線の影響です。紫外線をオゾン層を通さずに直に浴びすぎてしまうと、メラノーマというほくろの癌や皮膚がんになってしまうという事はさまざまな研究で証明されている事実です。
太陽がこの紫外線の原因の大きなものなのですが、日焼けサロンのライト、皮膚科治療の際のライト、ブラックライトや最近はやりのLEDライトからも紫外線を浴びてしまうのです。
つまり、紫外線は私たちの生活のあらゆるところに散在しているという事。しかし、紫外線によって起こる皮膚がんは統計でいえば、1分間に1人は皮膚がんで亡くなっているほど、誰にでもリスクのある癌なのです。
20年間をかけて行われたオランダの研究で、子供から大人になるにかけてほくろがいくつ増えたかという事で、その人が皮膚がんになる確率を推測できるという事が発表されました。
この研究では133人の子供を20年にかけて研究し、お尻や下半身にほくろの数が増えた子供は、皮膚がんになる可能性が非常に高いという事がわかっています。133人のうち、15人が皮膚がんになってしまい、一番若い人では26歳でがんになり、そのうちの1人は38歳という若さで亡くなっています。
この研究は、両親が子供のほくろの増加を観察することが皮膚がんのリスクを低下させることにつながるだろうと伝えています。そして、新しいほくろが子供のお尻や下半身に多くできた場合は、早めに病院にかかることが大切だと言っています。
身近な癌だからこそ、早期発見をできるだけ促進して一人でも多くの人を救えると良いですね。
乳児への水疱瘡ワクチンが定期接種となったことで、広い世代に帯状疱疹が増加中だ。帯状疱疹は神経節に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫の低下により、活発化して発症する。激しい痛みと身体の左右どちらかに赤い斑点や水ぶくれが帯状に現われる。抗ウイルス薬で治療を行なうが基礎疾患のある人や高齢者は重症化リスクが高く、帯状疱疹後神経痛を患うこともある。
帯状疱疹は80歳までに7人に1人が発症するといわれ、身体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じ、その後数日して赤い斑点や水ぶくれが帯状になって現われる。水ぶくれは、やがてかさぶたになり、痛みも消える。ただし、水ぶくれが破れると他人に感染させることもある。
原因は子供の頃に罹る水疱瘡だ。水痘・帯状疱疹ウイルスは神経節に潜伏し続けるが加齢や過労、糖尿病やがんなどの慢性疾患により、免疫が低下するとウイルスは活動を活発化させて発症する。
ちなみに水疱瘡と帯状疱疹の流行は逆相関にある。2014年に水疱瘡ワクチンが乳児に定期接種されるようになると水疱瘡に罹る子供は激減したが、同時に各世代に帯状疱疹が増え出したのだ。
NTT東日本関東病院皮膚科の五十嵐敦之部長に聞く。
「水痘・帯状疱疹ウイルスは脊髄神経に潜んでいますが、宿主であるヒトの免疫が低下すると再び活動を始めます。そして、宿主がダメになるとウイルスも死に絶えるので、他人に感染し、新しい宿主を獲得しようと動き出します。水疱瘡に一度罹った大人は水疱瘡の子供と接触することにより、免疫力は上がりますが、ワクチン接種で子供の水疱瘡が激減したため、免疫力の再活性化が起こらず、帯状疱疹が増えているのです」
帯状疱疹は重症化すると帯状疱疹後神経痛の原因となる。糖尿病などの基礎疾患のある人や高齢者は重症化リスクが高い。他にも顔面に赤い斑点が生じた場合は視力や聴力、味覚などの感覚に影響が出たり、表情筋にマヒが起こるなどの症状が出る。
帯状疱疹の全身治療薬は現在、5種類の抗ウイルス剤が承認され点滴か内服で用いる。痛みが出ただけでは帯状疱疹の確定診断は難しいが、それでも赤い斑点が出てから48時間以内に服用すれば高い治療効果を得られる。強い痛みがある場合は神経ブロックを併用する。発症したら安静を保ち、水ぶくれは柔らかいガーゼなどを当て、他人にうつさぬように予防する。
「2016年に帯状疱疹予防に水疱瘡ワクチンが使えるようになりました。弱毒化したウイルスを用いた生ワクチンで、50代以降に1回接種すれば最低5年は帯状疱疹を予防できます。さらに2020年には不活化ワクチンが登場し、がんや膠原病で免疫が低下した、生ワクチンを使用できない方にも接種可能となりました」(五十嵐部長)
不活化ワクチンとはウイルスの感染能力を失わせたものを原料に作成したワクチンのこと。2か月間隔で2回筋肉注射すると予防効果は50~69歳で97.2%、70歳以上でも89.8%と高く、帯状疱疹後神経痛の予防効果も88.8%だ。ワクチン接種は自費だが、自治体によっては助成制度が敷かれている。
取材・構成/岩城レイ子
■皮膚の「できもの」……これ何!?
皮膚の「できもの」には実に様々なものがあり、ほくろのようによくあるものから、世界でも数例しか報告のないような「できもの」もあります。今回は、よく見かける「できもの」の一部をご紹介します。
■ほくろ(母斑細胞性母斑)
いわゆる「ほくろ」は「母斑細胞性母斑」という名前のできもので、身体を探せば数カ所はあると思います。
褐色~黒色、時に正常皮膚色の色素斑または腫瘤で、平たいものから盛り上がったもの、毛の生えたものなどがあります。大きさも様々で、ほくろと呼ばれる小さなものから、黒あざと呼ばれる大きいものもあります。
■青色母斑―青いホクロ―
「青色母斑」は直径1センチメートル以下の小さな結節で、病名の通り青色または青黒色をしています。真皮と呼ばれる皮膚表面より少し深いところにメラノサイト(色素細胞)が集まっているため、黒色や茶色ではなく、青く見えます。
手足の甲や顔などにできることが多く、悪性化することもあるので切除することが多いです。
■粉瘤―脂肪の塊―
「粉瘤」はとても頻度の高い良性皮膚腫瘍です。表皮嚢腫と呼ばれる袋状のできもので、中は白くドロドロとしたお粥状の物質で満たされており、臭いがあります。徐々に大きくなり、しばしば化膿するため早めの治療をお勧めします。頭の先から足の裏までどこにでもできます。
■脂肪腫―いわゆる脂肪のかたまり―
「脂肪腫」は脂肪細胞からできる良性のできもので、1センチメートル程度の小さなものから、10センチメートル以上ある大きなものまでサイズは様々です。皮下組織にあり、柔らかいできものです。
首・肩・背中などにできやすく、小さなうちは自覚症状もありませんが、徐々に大きくなるので手術を行います。
■稗粒腫―白いポツポツ―
「稗粒腫」(はいりゅうしゅ)は直径1~2ミリメートル程の小さく硬いできもので、白から黄白色。表皮のすぐ下にあるので皮膚から透けて見えます。内容物は真珠のように丸くコロッとした角質です。
目の周りにポツポツとできることが多く、次いで頬部、陰茎・陰部などです。赤ちゃんは自然に消えることもありますが、成人は自然にとれることはありません。
■血管腫・血管奇形
「血管腫」というと幼児期において最も多い腫瘍である乳児血管腫(苺状血管腫)を思い浮かべる方が多いでしょうか。
従来、血管腫や血管奇形は慣用的に混合されて呼ばれることが多かったのですが、現在国際学会では、血管性腫瘍である「乳児血管腫」と「血管奇形」(静脈奇形、動静脈奇形、毛細血管奇形、リンパ管奇形)を別の疾患として分類しています。
乳児血管腫の多くは小児期に自然に消退していく一方で、血管奇形は自然に消退することはなく、痛み、潰瘍、患肢の 成長異常、機能障害、整容上の問題等を来します。
■石灰化上皮腫―硬いおでき―
幼少児の顔、首、上肢にできやすく、皮膚の下に硬く触れます。大きさは通常3~4センチメートルまでのものが多く、皮膚表面は常色または、青白く見えます。時に押すと痛みがあります。治療は手術です。
■皮様嚢腫―生まれつきのふくらみ―
顔の骨はたくさんのパーツからでき上がっているのですが、お母さんのお腹の中で、赤ちゃんの顔の骨が組み合わさる時に皮膚が入り込んでできるとされるできもので、柔らかく1~4センチメートル程度の大きさです。
眉毛の外側にできることが多く、先ほどの理由で生まれたときから存在します。
「自分が背中に刺青を入れたのは20代の中ごろだった。ヤクザにとって刺青は、切り離せないほど重要。自分の体に『墨を入れる』ということは、それまでとは違う人生に進むということだ」
ヤクザにとっての刺青の意味について、このように強調するのは、首都圏で活動している指定暴力団幹部だ。
暴力団員にとって「刺青」とは?
タトゥーとも呼ばれ、ファッションの一部と考える若者もいる刺青だが、暴力団員などの反社会的勢力を連想する人も多い。実際に、暴力団幹部の多くは背中に刺青を入れており、暴力団社会で生きていく上では重要視されている慣習となっている。
冒頭の指定暴力団幹部が続ける。
「ヤクザとして刺青を入れるのは、この道で生きていく決意を固めたということ。カタギ(一般人)の社会には、もうこれで戻らないという気持ちで入れた。最近は、親分や兄貴分の名前を自分の体に入れる人もいる」
親分の名を広めるという目的も
暴力団では強制的に刺青を入れさせられるわけではなく、多くは自主的に入れているとされる。
その中でも前出の指定暴力団幹部が指摘するように、いまは若い暴力団員を中心に、人名を刺青で入れるのが流行っているという。
実際に親分の名前を体に入れている別の指定暴力団幹部が、詳しい事情を説明する。
「自分の場合は胸の中央、少し下の部分に組長の名前を入れている。これは子分としてこの道で生きていくことを示すもの。例えば、刑務所の風呂で裸になった時に、身体に名前が入っていると、周囲から『この人はあの親分のところの若い衆か』と認識されることになる。それと同時に、親分の名を広めるという目的もある」
痛みに耐えることにも意味がある
刺青は、針で肌を傷つけながら着色料で描いていくことになる。その処置は激痛を伴うようだ。
「刺青を入れるのはとにかく痛い。耐えられない限界の痛みのちょっと手前。かなりの激痛だ。彫師に入れてもらうのは1回につき2時間から3時間くらい。それを1週間に2日やるのが限界だ。人によっては、翌日に発熱して寝込んでしまうとか、腫れあがってしまうということもあると聞いている。この痛みに耐えることが『ヤクザになる』ということにつながってくる」(前出・冒頭の指定暴力団幹部)
そもそも刺青は、江戸時代には鳶職や火消し、博徒などの間で流行した。デザインは竜や鯉、鬼、生まれ年の干支にちなんだもののほか、流行していた芝居の登場人物も人気があったという。一方で、顔や腕にワンポイントで入れた刺青は当時の刑罰の一種でもあった。
現代の暴力団員が好むデザインは、竜、鯉、観音像などさまざま。竜や鯉については「昇り竜」や「鯉の滝登り」など、出世するとのイメージにつながることから人気があるという。観音菩薩像や動植物などを彫ることもある。これらは、一般的には「和彫り」と呼ばれている。上半身全体に入れたり腕だけなど様々だ。倶利迦羅紋々(くりからもんもん)という俗称もある。
「彫師は結構な忙しさだ」
彫師の元で、デザイン帳のようなものが提示されて選ぶこともあるという。料金は1時間につき、1万~2万円が相場のようだ。
若者に人気のタトゥーも、刺青と基本的に同じもので、針で肌に傷をつけて着色料を入れていく。一般的にはファッションの一種で「洋彫り」と称される。アルファベットやローマ数字を並べたものや、動植物、幾何学模様などこちらもデザインは様々だ。欧米の一部の人気ロックミュージシャンや俳優らがタトゥーを入れていることなどから、国内でも若者の間で流行している。
「いまは若者がファッション感覚でタトゥーを入れる。その人気のおかげで彫師は結構な忙しさだ。祭りで神輿を担ぐ際に格好良く見せたいという素人さんもいて、和彫りも人気があるらしい」(同前)
近年、行政や企業、一般社会でのコンプライアンス(法令順守、モラル順守)の強化などによって暴力団などの反社会的勢力の排除が進められる。温泉やサウナなどの施設では、「暴力団員はお断り」の注意書きとともに「刺青のある方は入浴不可」と書かれた看板もよく見かける。それでも、刺青は一般人にも広がりつつある。
「最後まで入れたかったが、カネがなくて」
長年にわたり暴力団を相手にした捜査を続けてきた警察当局のベテラン刑事は、刺青について「体には負担が大きい」と指摘する。
「刺青を入れると皮膚の機能が大きく低下し、内臓に負担がかかるとされる。ただでさえ、親分クラスになると毎晩、朝まで酒を飲んだりと病気がち。だから、事件を起こして刑務所に入ることで健康を取り戻す、というパターンの暴力団員も多い」
暴力団犯罪の捜査を指揮してきた警察幹部OBが体験を語る。
「かなり前のことだが、あるヤクザを逮捕したら背中の刺青が未完成だった。それで聞いてみたら、『最後まで入れたかったが、カネがなくて』と言い訳していた。恐らく痛みに耐えられなかったのではないか。『刺青を入れる時の激痛に耐えてこそヤクザ』と公言する者もいたが、そういうことだろう」
体への負担から健康を害する可能性もある刺青。それでも、刺青にこだわりを持つ暴力団員は多いのが実情だ。
「山中に埋められた腐乱死体でも刺青だけはキレイに…」警察幹部が明かした“ヤクザと刺青”の本当の関係 へ続く
針で皮膚に色素を注入して眉などを描く「アートメイク」で、無資格業者による健康被害が相次いでいる。化粧の手間が省けると女性に人気だが、「医療行為」に当たる。
昨年は無資格業者の摘発が最多となった。医師免許の有無を確認するなどの注意が必要だ。
アートメイクは、専用の針で皮膚のごく浅いところに色素を注入する。眉やアイライン、唇が主な施術部位で、3、4年保てるのが一般的という。
日本では、1990年代から広がり始めた。厚生労働省は、2001年にアートメイクが医療行為に当たるという見解を示している。
無資格業者の施術による健康被害は深刻だ。国民生活センターには相談が相次いでいる。
「自宅に業者を呼んで施術を受けたが、両まぶた、両頬の腫れがひかない」(50代女性、今年2月)、「眉の施術をしたが、1週間腫れ上がった状態が続いた」(30代女性、昨年11月)などだ。
センターによると、06年度~11年度に計121件の相談があり、皮膚の腫れや化膿かのうだけでなく、角膜の損傷といった深刻な被害もあった。95%がエステ店など無資格業者による施術だったと推測されるという。
警察庁によると、14年にアートメイク施術に関して医師法違反の疑いで摘発した事件は、前年比24件増の40件で、統計の残る10年以降最多だった。摘発したのは、いずれもエステ店でそのうち3店舗は「出張」形式で営業していた。
中には、10年ほど前から開業希望者向けの「スクール」を開き、計約550人に施術方法を教えていた店もあった。
東京都の女性会社員(34)は7年前に近所のサロンでアイラインのアートメイクの施術を受けた。経営者は「痛みはほとんどない」「アートメイクの資格を持っている」と説明したという。
しかし、施術を受けると痛みと腫れに苦しみ、アイラインも不自然な線を入れられてしまった。サロンに電話をしても対応がなされず、返金もされなかったため、病院に行きレーザー治療で線を消した。
「アートメイクが医療行為ということは知らなかった。お金もかかったし、嫌な思いもした。きちんと調べなかったことを今でも後悔している」と女性は話す。
医療機関で作る「日本メディカルアートメイク協会」の理事でシロノクリニック(東京)総院長の城野親徳さんは、「水で落ちないし、化粧も楽になると気軽に考えがちだが、アートメイクは入れ墨の一種。よく考えてから施術を決断してほしい」と話す。
同院にも無資格業者の施術で被害を受けた女性が訪れるが、ほとんどの人がアートメイクが医療行為ということを知らないという。協会では、施術を受ける前に医師免許を有しているか確認するように呼びかけている。
城野さんは「施術の際は麻酔をするし、施術後のケアも必要。知識のある医師から適切な施術を受けるようにしてほしい」と注意を促す。
ニキビができちゃった、新しくかったメイクが肌に合わなくて荒れてしまったなどという一般的な皮膚の問題は女子会の話題になることはあるでしょう。
しかし、背中などにイボができてしまったことってなかなか人には相談できない悩みではないでしょうか?
そこでWomen’s Health Magazineが、あまり友達には相談し辛いイボについてお医者さんの意見を元に原因と対策方法を教えてくれています。
●100種類以上
ニューヨークの皮膚科の先生によると、イボは130種類ものHPVウイルスが原因でできるみたいです。HPVが性器の周りにイボを作る原因となることは知っているかもしれません。
しかし、足裏、顔、手、指にできるイボもHPVが原因のことが多いみたいです。
●体の部位によってイボの原因は違う
1つ目で説明した通り、イボには100種類以上の原因菌があります。
なので、体の他の部位にあるイボが転移するということはほとんどないみたいです。だから、彼の指や体にあるイボが女性の性器のイボの原因になるということは心配しなくて良いみたいです。
●イボはうつりにくい
子供は免疫力が低いためイボができやすいみたいです。しかし、大人になれば他人のイボがうつるということは稀みたいです。なので、皮膚に傷がない場合は何かを触ったからイボができるという心配はそこまでしないで良いみたいです。
●イボは簡単に治せる
イボができると嫌かもしれませんが、イボは何週間か何ヶ月かすれば勝手に治ってしまうみたいです。
もしも恥ずかしい場所にできている場合は何週間も待てないと思うかもしれませんが、イボ用の塗り薬を毎晩塗ることでイボが治るのを早められます。
●イボが消えない場合は皮膚科へ
イボは自然治癒が可能ですが、なかなか消えない場合や同じ様なイボが複数で切るようであったら皮膚科にかかった方が良いみたいです。皮膚科では、イボを凍結させて成長を止まらせたり、他の薬を使って治療することが可能です。
どちらにせよ、イボができたらなるべく触らずにそっとしておくのが1番見たいです。正しいイボの知識を持てばイボができた時に焦らなくてもすむはず!
場所によっては気になる存在のホクロ。増えるのはよくない、と聞きますが、いつの間にかあちこちに増えていたとしたら……。
首や腕、背中など、自分では見えづらい場所にも増えているとしたら、何か病気も心配されるのでしょうか?
年々増えるホクロについて、病気の可能性や原因を、私のクリニック目白の平田雅子先生にお聞きしました。(以下、平田先生)
子供のころから年々増えてきているホクロということですと、単純黒子、もしくは後天性色素性母斑であろうと考えられます。
単純黒子は幼児期ごろより発症する直径数ミリの斑のこと。
後天性色素性母斑は直径1cm以下の斑になります。単純黒子は色素性母斑の初期段階のものと言われています。
たいていは黒色または黒褐色をしていて、盛り上がりのない平らなものです。
いずれにしても、メラニン色素を作る色素細胞の良性の腫瘍(しゅよう)です。あまり心配しなくて大丈夫でしょう。
私たちが成長するにつれて、それらは少しずつ大きさや色の濃さ、数が増えていきますが、60歳ごろより自然に数が減り、色も薄くなってくるはずです。
良性のものであれば治療の必要は無いのですが、もしも精神的にストレスを抱えていたり、気持ちの上で負担になるようなら、皮膚科や美容外科などに相談し、レーザー治療や切除手術などを受けることも可能です。
その場合、レーザー治療は保険適用外なので、費用的なことも含めて事前に医師とよく相談してくださいね。
本来、ホクロは背中や胸など体のどこにでも出るもので、紫外線とは関係が無いと言われていましたが、実際には日光が当たりやすい皮膚に生じることが多いのです。
それに、ホクロの出やすい人は紫外線にも弱い傾向があるので、なるべく紫外線対策をしておいた方が良いでしょう。
また、最近では、ホクロは遺伝的なものや紫外線の影響以外に、女性ホルモンの影響を指摘する声もあります。
ホルモンバランスが崩れると、メラニンを生成するメラノサイトが刺激され過剰に働いてしまうことがあるのです。
女性ホルモンは不規則な生活やストレスで簡単に乱れてしまうものなので、睡眠不足や冷えなどに気をつけ、ストレスをためないように工夫しましょう。
ただし、ホクロのなかには、ごくまれに悪性黒色腫(ホクロのガン)があります。
少しずつ大きさが増して直径7mm以上になるものや、色が濃くなったり、色に黒、茶、青、白などのムラが生じているもの、出血しやすいもの、あるいはホクロの形が不均衡である場合などは、念のために皮膚科で検査を受けておくことをおすすめします。
●しもやけの原因
しもやけは寒さや冷えによって血流が悪くなることで起こります。冬になると1日の気温の変化が激しくなり、昼と夜の温度差が大きくなるので、この時期に症状が現れます。
また、しもやけは冷え性の方に起こりやすいため、体質や遺伝も関係していると考えられています。もしも近親に冷え性や身体が冷えやすい方がいる場合には注意が必要です。
さらに手足の湿度も大きく影響しています。手足を濡れたままにしていると、乾く段階でしだいに皮膚の温度が低下し、しもやけを引き起こす場合があります。いずれにしても冷えが最大の原因です。
また、かゆみや痛みをともないます。その原因は、冷えで血流が悪くなっている血管が、急速に温度が上がることで血流が一気によくなり、神経が刺激を受けるためです。冷たい外気に触れていたのに、急に暖房の効いた部屋やこたつに入った場合などに生じます
●しもやけの症状
しもやけには手の指先や足先、耳たぶや鼻といった末端部分に生じる場合と、手足全体が腫れを起すような場合の2種類あります。
末端部分におこる症状は、赤紫の発疹が現れかゆみや痛みをともない、幼少期の子どもによく発症します。
手足全体が腫れる場合は、青年期から成人にかけた女性によく発症します。いずれも手足、耳たぶ、鼻に多くみられますが、時に太ももや臀部に発症することもあります。痛みやかゆみがひどい場合は、就寝できなくなることもあります。
重症化すると大変な事になる場合もあるので、適切な処置を早めに行いましょう。
●しもやけの予防
しもやけにかかると、痛みやかゆみでとても辛いので、予防するに越したことはありません。しもやけの予防は、長時間身体を冷やさないことが最も大切です。
冷えは血流を悪くさせてしまいます。寒さが厳しくなる季節には、厚手のソックスや手袋、マスクなどで冷えから身体を守りましょう。特に末端部分は露出しないように心掛けましょう。
また食生活も冷えに影響しています。身体が冷えやすい方はビタミンEが不足している場合があります。心臓から血液を循環させるためには欠かせない栄養素のひとつです。
食事で補えない場合はサプリメントで補給するように心掛けましょう。また併行してビタミンCを摂取すると吸収がよくなるのでオススメです。
●しもやけの治療
しもやけの治療にはさまざまな民間療法がありますが、それでもなかなか治らない場合は専門のクリニックを受診し、ドクターに診てもらうことが重要です。
たかがしもやけですが、放置していて重症化すると凍傷になり、最悪の場合手足を切断することにもなりかねません。あまくみず、早めに治療するように心掛けましょう。
(この記事の監修: 広尾プライム皮膚科 医師 / 谷口由紀 先生)
小児科医がTwitterで紹介した「はがれにくい絆創膏の貼り方」が大きな反響を呼んでいます。実際に編集部でも試してみました。
「関節部に貼る絆創膏がすぐ剥がれる場合はテープの一部をカット、もしくは切れ込みを入れると剥がれにくいですよ」とツイートしたのは、小児科医のDr.リノ(@awaguni_deko8)さん。 「よく知られた方法ですが、子どもや冬場にひび割れしちゃう人へオススメです」と、イラストを交えて紹介したところ、多くの“いいね”を集めています。
ねとらぼ編集部でもやってみた
やり方はテープ部の短辺にガーゼの淵まで左右にV字の切り込みを入れてから、関節部分を除くようにテープを貼るだけと非常に簡単。 ねとらぼ編集部でも実際に親指の関節を使ってこのやり方を試してみたところ、そのまま絆創膏を貼ったときと比べて、指の曲げ伸ばしがしやすく、曲げたり伸ばしたりを連続してもはがれにくい感じがしました。
またDr.リノさんは指関節以外にも、指先の絆創膏の貼り方、足の膝関節などに貼るときに活躍する大判タイプの絆創膏の貼り方、切り傷を早くきれいに治すための絆創膏の貼り方などを紹介。 季節柄指のひび割れに悩んでいる人や、子どもを持つ人などから「知りたかった」「助かりました」「早速実践しまーす」といった声が上がっています。【画像:はがれにくい絆創膏の貼り方】 画像提供:Dr.リノ(@awaguni_deko8)さん
初めてタトゥーを入れるとなれば、不安や疑問があるのは当然。痛みはどれくらいあるのか? 安全なタトゥースタジオをどう見分けたらいいのか? 料金はいくらかかるのか? など、後悔しないためにも必ず確認しておくべきことがいくつかあります。そこで、一生モノの「タトゥーを入れる前に知っておくべき23のこと」を<セブンティーン>からピックアップ。ビギナーはもちろん、すでにタトゥーが入っている人にも役立つケア方法を紹介します。
料金はさまざま
タトゥースタジオは、クライアントが選ぶタトゥーのサイズやデザインに基づいて、料金を設定する場合がほとんど。けれど、あなたが初心者だとわかると、中には値段をつり上げてこようとするスタジオも。入れてしまったあとでは交渉は難しいので、スタジオへ行く前に、電話で料金を見積もってもらうといいでしょう。事前にタトゥーの相場に詳しい人に話を聞いたり、不安な場合はスタジオの下見について来てもらったりするなど、前もってリサーチしておくことをおすすめします。
“激安”を求めないこと
たいてい、スタジオが料金表に提示しているのは「最低価格」。たとえば、小さなハートのタトゥーをひとつだけ入れるのであれば、その程度の値段と考えていいでしょう。ただ、いくつかのスタジオを比較して、あまりにも安い料金設定をしているところがあれば要注意。いい加減なところでタトゥーを入れれば、仕上がりに満足できなかったり、感染症を起こす可能性も否定できません。タトゥーは一生身体に残るもの。健康を考えれば、それなりの投資はするべきです。
特別なキャンペーンなどで、「決められたデザイン」を安く入れられる場合もあるかもしれませんが、すべてを格安でやってもらえるわけではないので、評判の良いスタジオやタトゥーアーティストにお願いできるように、お金を貯めることを考えましょう。
カイリー・ジェンナー、ジャスティン・ビーバー、マイリー・サイラス、セレーナ・ゴメス、デミ・ロヴァート、カーラ・デルヴィーニュ、ケイティ・ペリーなど、名だたるセレブにタトゥーを入れてきたスタジオ「Bang Bang」のアーティスト、キース・マッカーディさんも「好きなアーティストにタトゥーを入れてもらうお金がないなら、“ファストフード”で妥協するのではなく、入れてもらえるまで待つべき。待ったことを後悔することはないけれど、待たなかったことは絶対に後悔することになるでしょう」と言っています。
年齢制限
日本では各都道府県の青少年育成条例などに基づき、18歳(高校生不可)または自治体によって20歳未満へのタトゥーの施術が禁止されています。タイミングに備えてリサーチに専念しましょう。
スタジオを下見する
気になるスタジオを見つけたら、実際に依頼する前にネットの評判をチェックしたり、直接下見に行きましょう。自治体が定めたガイドラインを遵守しているかも必ず確認を。「クライアントにとって居心地のよいスタジオであるためには、清潔であることがとても重要」とマッカーディさん。「施術台をどのくらいの頻度で掃除しているか、施術と施術の間にはどんな掃除をしているか、身体のどんな場所にタトゥーを入れているのかなど、アーティストに聞いてみましょう」。
衛生的なスタジオで入れてもらう
タトゥーを入れることが、“髪色を変えるのと同じ”というわけにはいきません。まさに皮膚に傷を刻むわけですから、きちんとした予防策を取っていない店では、感染症にかかる可能性も。安全を考え、見た目も匂いも、病院並みに清潔なスタジオを選びましょう。
自分の目で確認する
タトゥー針の再利用はさまざまな感染の原因となり、HIVやB型肝炎などの深刻な病気に感染する危険性があります。「使われるタトゥー針が未使用・未開封であること」「新品の使い捨てカップにインクが入れられていること」「(アーティストが)施術中は常に手袋をつけていること」を、自分の目でしっかり確認しましょう。
ざらざらしていない台の上でタトゥーを入れてもらう!
木材などは多孔性の物質で完全に消毒するのは難しいため、タトゥーを入れるときの台としてはふさわしい素材とは言えないよう。「石や大理石のような多孔性物質も、タトゥー台の素材としてふさわしくありません。ステンレス、もしくはステンレスと同じくらい消毒しやすい物質であるべきでしょう」とマッカーディさん。
お目当てのアーティストやスタジオのSNSをフォローする
どこのスタジオにするかが決まったら、そのスタジオやそこで働くアーティストのインスタグラムをチェックして、どの人に施術を頼むかを決めましょう。実際タトゥーを入れてもらった人たちの口コミにも目を通して。
デザインのチェックは念入りに!
タトゥーを入れる前に、デザインの確認は念入りに行いましょう。普通、施術をする前にアーティストは実際の図案を起こして、クライアントと調整を行いますが、特に気をつけてほしいのは言葉のスペル(スペルミスのあるタトゥーを入れてしまう人は珍しくありません。十分ありえる失敗)。変更したいところや気になる点があれば、遠慮せずに伝えましょう。くれぐれも、それが一生残ることを忘れずに!
インクアレルギーに注意!
人によっては、タトゥーのインクでアレルギーが出ることも。そして、アレルギーが出るとひどいことになる場合も…。どうやって、事前に確認すればいいのでしょうか?
美容皮膚科医でタトゥー除去の施術を行なっているキャメロン・ロクサー博士によると、インクアレルギーは珍しいものではなく「インクの成分に対するアレルギー反応で、ひどい炎症を起こした患者さんを何人も見てきました」とのこと。心配な人はあらかじめパッチテストをするといいそう。「実際インクを『皮膚の下』に入れる場所でテストしてもらい、2~3週間ほど様子をみてみましょう」。
アレルギーがひどい人は、上記の写真のようにタトゥー周辺に痛みをともなう赤い炎症を発症する可能性が。ただし、医師に処方してもらうステロイド剤や、ヒドロコルチゾン配合の効きめの強い軟膏で治療はできるそう。ちなみに、写真の炎症もそれらの薬できれいに治ったとか。
「居心地が悪い」と感じたらスタジオを変える
たとえば、「デザインのここを変えてほしい」と頼んだのに、上から目線で言い返してくるようなアーティストなら、その人に頼むことはやめましょう。あなたが考えたタトゥーのアイデアを小バカにするようなスタジオで、わざわざ施術をする必要はありません。即、帰りましょう。
そもそも初めてタトゥーを入れるというのは怖いもの。その上さらに神経にさわったり、嫌な思いをさせられるなんて御免です。
「若い女性がタトゥーを入れたくて相談に行って、アーティストに横柄な態度を取られてしまうことは、この業界によくあることかもしれません。まるで、『若い女のアホなタトゥーになんかに、付き合っていられない』と言わんばかりにね。そういうのはフェアじゃないし、クライアントに『そのくらいがまんしろ』なんて僕は言いません。誰か別の『ぜひやりましょう』と言ってくれる人を探したほうがいいと思いますよ」とマッカーディさんはアドバイス。
大きなタトゥーの場合、一度では終わらないことも
大きなデザインやたくさん色を使うものの場合、完成までに何度か施術が必要になり、一度の訪問では終わらない場合も。フルスリーブ(腕全体)であれば、完成までに数ヵ月ほどかかるといいます。一方、シンプルなタトゥー、たとえば小さな黒い星印などはほんの5分で済むとか。完成までにどのくらいの時間がかかるのかもきちんと確認しましょう。
歯ブラシを片手に、歯の磨き方を指導する先生を一生懸命真似る児童。誰もが経験した虫歯予防週間(6月4日~10日)の一場面だ。 子どものうちは、毎日真面目に歯磨きをしていても、大人になるにつれて怠り気味になり、一杯やっては歯を磨かずに寝落ちる日々。いつしか歯の状態は悪化し、ある日激痛に耐えきれず、よく選びもせずに手近な歯科医院に駆け込む……。思い当たる読者も多いのではないか。
歯の治療がうまくいかない患者が広く関東各地から訪れる、横浜市の医療法人社団敬友会理事長を務め、歯科医師として自らも治療にあたる久保倉弘孝歯科医師は言う。
「患者さんの口の中を見ると、ブラッシングが不十分な方がほとんど。適切なブラッシングができているかどうか自分ではなかなか分からないものです。患者さんに実際に歯を磨いてもらい、歯科衛生士が磨き残しはないか、ブラッシングに無理な力がかかっていないか、歯間に歯垢(プラーク)や歯石が残っていないかなどをチェックして、適切なブラッシングを指導するのが重要なのです。できれば毎月、せめて3カ月に1回、歯科医院で定期メンテナンスを受けてもらいたい」
歯科の定期メンテナンスでは、歯や歯茎の検診を行い、歯科衛生士がセルフケアを指導するとともに、歯に付着した歯垢や歯石を除去するクリーニングを行う。こうして予防意識を高め、虫歯や歯周病になりにくい口腔環境を整えることが、歯を健康に保つポイントだという。
歯科先進国といわれるスウェーデンやアメリカに比べて、日本では高齢になっても歯の健康を保っている人は少ない。平成19年(2007年)の「歯科疾患実態調査」(厚生労働省)によると、80歳時の残存歯数は日本の9本に対して、スウェーデンは21本、アメリカは17本。注目したいのは、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けていた人の割合で、日本はわずか2%。これに対してスウェーデンでは約90%、アメリカでは約80%が定期メンテナンスを受けていた。
その後の「歯科疾患実態調査」で、平成28年(2016年)に平均残存歯数約15本と、劇的に改善した数字が示されているが、前出の久保倉歯科医師は残っている歯が健康といえるのかどうか疑問だという。 「これは長年の臨床経験からの実感です。残念ながら下手な歯科医師が歯を改悪することもあるのです」
★間違いたくない歯科医院選び
虫歯が進行して、細菌が歯根内の組織である歯髄にまで達してしまった場合、歯を削って感染した歯髄を抜き、詰め物を充填する「根管治療」を行う。いわゆる「神経を抜く」治療だ。 歯の健康を司る、本来は重要な組織である歯髄を抜くのは、細菌による感染の拡大を防ぎ、歯を抜かなくてはいけないような事態を食い止めるためで、虫歯治療の最後の砦といえる。
ところが歯科医師の多くは、この根管治療をうまく行えていないというから驚く。根管治療後が思わしくないと、歯の内部にまで繁殖した細菌が歯根の先にある「根尖孔」から歯を支える歯周組織にまで漏れ出し、土台となっている骨(歯槽骨)にまで至る。最悪の場合、歯を失うだけでなく、歯槽骨も溶かされ、周辺の歯も影響を免れにくい。
「もちろん、十分な根管治療を行うスキルがない歯科医師が問題なのですが、私は歯科大学による教育や、あまりにも安い根管治療の診療報酬も改善してほしいと思います」 適切とはいえない歯科教育によって、治療がうまくいかない上に診療報酬を低く抑えられているため、多くの歯科医師はできれば根管治療を避けたいと思っているという。根管治療がうまくいかない一因はここにあったようだ。
では、一体誰を頼ればいいのか?
「予防に勝る治療はありません。まず、予防を心がけてください。その上でどうしても治療が必要になったら、慎重に歯科医院を選んでください。治療計画や費用をしっかり明示してくれて、2・3回で根管治療を終える歯科医師が、よい歯科医師です。だらだらと長く治療を続ける歯科医院や、痛くもないのに『神経を抜きましょう』というような歯科医師は避けたほうがいい」(久保倉歯科医師)
歯を痛めた末の手近な歯科医院への“飛び込み”は、避けたほうがよいのは言うまでもない。
★よく噛めば脳は活性化する
「よく噛んで食べると脳の働きがよくなる」という。顎の筋肉を活発に動かすと、顎から脳につながる血管の血流がよくなり、脳の働きに好影響(記憶を司る海馬の活性化など)を与えるといわれているのだ。
さらに、よく噛むことで胃腸の働きも活発になり、消化吸収が促進される。また、唾液の中の酵素には発がん物質の発がん作用を消す働きがあることも知られている。唾液の分泌は活発な咀嚼で促される。
そして注目したいのは、噛むことが認知症の予防につながる点だ。
神奈川歯科大の山本龍生准教授らが平成24年(2012年)に、『アメリカ心身医学会雑誌』に発表した研究報告(愛知老年学的評価研究/AGES=高齢者を対象にした疫学研究。愛知県の自治体を中心に、65歳以上の4425人を対象に調査した)によると、歯がほとんどない(残存歯数が一桁)にもかかわらず義歯を使用していない人は、20本以上歯が残っている人より、認知症による要介護認定を受けた頻度が高く、そのリスクは1・85倍だった。
また、かかりつけの歯科医院について、「ない」と答えた人は、「ある」と答えた人より1・44倍発症リスクが高かったという。
山本准教授らは、これについて複数の理由を挙げている。(1)噛めないために脳の血流を促すことができない、(2)満足に噛めないために食生活が偏り、認知症リスクを下げる野菜や豆などを摂取できない、(3)歯周病による慢性的炎症で分泌されるサイトカイン(炎症性物質)が脳神経細胞に悪影響を与えている。
自分の歯をしっかり守って、よく噛むことが認知症の予防につながるのだ。
そもそも、なぜ人は「いびき」をかくのか。睡眠時無呼吸症候群の診断と治療に携わって25年、年間2万4000人を診療する「御茶ノ水呼吸ケアクリニック」(東京都千代田区)の村田朗院長はこう話す。
「いびきをかくのは、空気の通り道である気道が狭くなっているからです。人は寝ているとき、体を休めるために全身の筋肉が緩むわけですが、それは舌も例外ではありません。舌や口腔周囲の筋肉が緩み、重力によって下に下がることで気道が狭くなり、空気が通る際に気道の壁が振動することで音が発生するわけです」
この状態がひどくなり、気道が完全に閉じてしまうと空気が入らなくなってしまう。つまり、呼吸ができなくなってしまう。すると、脳が命の危険を察知して覚醒し、呼吸を促す指令を出して喉を開かせ、空気が入るようにさせる。だがそれも一時的であり、また気道が狭くなっていびきをかくようになり、やがて無呼吸状態を起こす。前出の村田院長によれば、これがいびきと無呼吸を繰り返す仕組みだ。
7時間の睡眠の中で、10秒以上にわたり呼吸が止まったり、止まりかけたりすることが1時間に5回以上繰り返す状態を「睡眠時無呼吸症候群」と言い、これらの回数が5回から15回未満だと軽症、15から30回未満が中等度、30回以上だと重症とみなされる。
ではなぜ、いびきをかく人とかかない人がいるのか。村田院長はこう説明する。
「最も大きな原因は顔の骨格です。日本人を含む東アジアの人は顔が上下に長く、奥行きが狭いという特徴があり、あごが小さい傾向にあります。あごが小さいと喉が狭くなりますからいびきをかきやすくなります。つまり、日本人はそもそもいびきをかきやすい性質を持っているのです」
こうした人種的な特徴に加えて、肥満のために喉に脂肪がついていたり、加齢や飲酒によって筋肉が緩みがちになったりすると気道が狭くなりやすくなり、発症リスクが上がるという。 また、喫煙している人は喉の炎症と粘膜の肥大を起こしやすくなり、結果、気道も狭くなりやすくなるそうだ。 患者の男女比について正確なデータはないというが、生理のある女性は女性ホルモンが呼吸を促すため無呼吸にはなりにくく、一方で閉経後は女性ホルモンの分泌が減るため男女間の違いはなくなるという。 村田院長が運営するクリニックにおける患者の男女比は7対3であり、20代から90代のうち多いのは40代から70代だという。
有病者の脳卒中リスク11倍に
この病気によって睡眠の質が低くなると、夜間頻尿や日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが起きやすくなるが、「本当に怖いのはさまざまな合併症にある」と、村田院長は次のように指摘する。
「いびきや無呼吸によって血中の酸素濃度が低下すると、心臓が無理に血流を増やして全身の筋肉や臓器に酸素を届けようとするため、心拍数や血圧が上昇します。すると、高血圧症や狭心症のほか、命に直接危険を及ぼす心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性も大幅に上がってしまいます。複数の研究データによると、睡眠時無呼吸症候群の人はそうでない人に比べて高血圧症と狭心症になるリスクがおよそ3倍、心筋梗塞は約4倍、そして、脳卒中を起こす可能性は11倍にも増えるという結果が出ています。最悪の場合は、睡眠中に不整脈が起きて突然死してしまうこともあります」
また、頭の血管が拡張することで、起床後に片頭痛と同じような痛みが起きやすくなったり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて血中糖度を下げるホルモンのインスリンが効きづらくなることで、糖尿病になりやすくなったりもするそうだ。
★鼻から空気送る治療が最も有効
診断までには2つのステップがある。まずは自宅でできる簡易検査を行い、異常が指摘された場合に精密検査を行うというもの。
簡易検査では、自分で小型の機器を使ってセンサーをつけ、睡眠時における体内の酸素飽和度を調べて無呼吸の有無を確かめる。精密検査は医療機関に1泊して臨床検査技師が全身の20カ所にセンサーをつけて呼吸の状態や脳波、心電図などを計測する。精密検査はポリグラフ(PSG)検査と言い、大学病院や睡眠障害を専門にするクリニックなどで行われている。この流れを辿った上で睡眠時無呼吸症候群だと診断されれば、健康保険を利用して治療を受けることができる。
治療方法としては、主に2つが挙げられる。無呼吸または低呼吸の回数が1時間に20回未満の患者を対象としたマウスピースを使う方法と、20回以上の人が適用となるCPAP(シーパップ)療法だ。
マウスピースを着けると下あごが上あごよりも前方に出るため気道が広がりやすくなり、いびきの軽減が見込める。ただし、無呼吸をなくすことはできず、中等度以上の患者への効果は低いという。 一方のCPAPとは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」の英語の略称であり、専用の機器を使って鼻から人工的に空気を送り、その圧力で気道を広げる治療方法。医療機関が提供する機器を患者が自宅で使用する。
「CPAPの仕組みはシンプルですが、これが睡眠時無呼吸症候群の治療では最も効果が高く、低酸素状態も無呼吸もなくなります。結果的に合併症のリスクがなくなります」(前出・村田院長) 費用はマウスピースの作製が約1万5000円で、CPAP療法が月に約5000円。いずれも人工的に気道を広げるものなので、継続的に治療を行う必要がある。
軽症患者を除けば治療のメーンはCPAPになるが、肥満や飲酒、喫煙によって症状がひどくなっている人は、減量や飲酒量の低減、禁煙を図ることで症状を和らげる必要がある。 また、仰向けでなく、横向きに寝ることも舌の位置がずれるため有効だそうだ。睡眠導入剤は筋肉を緩める作用があるため、症状をひどくする恐れがあることにも留意したい。
「生活習慣病が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まることは、一般の方にも少しずつ知られるようになってきました。しかし、睡眠時無呼吸も生活習慣病と同様に重い合併症を引き起こすことは、まだまだ知られていません。家族などにいびきをかいていることを指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を得意とする医療機関で、検査を受けることを勧めます」(同)
歯ブラシを片手に、歯の磨き方を指導する先生を一生懸命真似る児童。誰もが経験した虫歯予防週間(6月4日~10日)の一場面だ。 子どものうちは、毎日真面目に歯磨きをしていても、大人になるにつれて怠り気味になり、一杯やっては歯を磨かずに寝落ちる日々。いつしか歯の状態は悪化し、ある日激痛に耐えきれず、よく選びもせずに手近な歯科医院に駆け込む……。思い当たる読者も多いのではないか。
歯の治療がうまくいかない患者が広く関東各地から訪れる、横浜市の医療法人社団敬友会理事長を務め、歯科医師として自らも治療にあたる久保倉弘孝歯科医師は言う。
「患者さんの口の中を見ると、ブラッシングが不十分な方がほとんど。適切なブラッシングができているかどうか自分ではなかなか分からないものです。患者さんに実際に歯を磨いてもらい、歯科衛生士が磨き残しはないか、ブラッシングに無理な力がかかっていないか、歯間に歯垢(プラーク)や歯石が残っていないかなどをチェックして、適切なブラッシングを指導するのが重要なのです。できれば毎月、せめて3カ月に1回、歯科医院で定期メンテナンスを受けてもらいたい」
歯科の定期メンテナンスでは、歯や歯茎の検診を行い、歯科衛生士がセルフケアを指導するとともに、歯に付着した歯垢や歯石を除去するクリーニングを行う。こうして予防意識を高め、虫歯や歯周病になりにくい口腔環境を整えることが、歯を健康に保つポイントだという。
歯科先進国といわれるスウェーデンやアメリカに比べて、日本では高齢になっても歯の健康を保っている人は少ない。平成19年(2007年)の「歯科疾患実態調査」(厚生労働省)によると、80歳時の残存歯数は日本の9本に対して、スウェーデンは21本、アメリカは17本。注目したいのは、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けていた人の割合で、日本はわずか2%。これに対してスウェーデンでは約90%、アメリカでは約80%が定期メンテナンスを受けていた。
その後の「歯科疾患実態調査」で、平成28年(2016年)に平均残存歯数約15本と、劇的に改善した数字が示されているが、前出の久保倉歯科医師は残っている歯が健康といえるのかどうか疑問だという。 「これは長年の臨床経験からの実感です。残念ながら下手な歯科医師が歯を改悪することもあるのです」
★間違いたくない歯科医院選び
虫歯が進行して、細菌が歯根内の組織である歯髄にまで達してしまった場合、歯を削って感染した歯髄を抜き、詰め物を充填する「根管治療」を行う。いわゆる「神経を抜く」治療だ。 歯の健康を司る、本来は重要な組織である歯髄を抜くのは、細菌による感染の拡大を防ぎ、歯を抜かなくてはいけないような事態を食い止めるためで、虫歯治療の最後の砦といえる。
ところが歯科医師の多くは、この根管治療をうまく行えていないというから驚く。根管治療後が思わしくないと、歯の内部にまで繁殖した細菌が歯根の先にある「根尖孔」から歯を支える歯周組織にまで漏れ出し、土台となっている骨(歯槽骨)にまで至る。最悪の場合、歯を失うだけでなく、歯槽骨も溶かされ、周辺の歯も影響を免れにくい。
「もちろん、十分な根管治療を行うスキルがない歯科医師が問題なのですが、私は歯科大学による教育や、あまりにも安い根管治療の診療報酬も改善してほしいと思います」 適切とはいえない歯科教育によって、治療がうまくいかない上に診療報酬を低く抑えられているため、多くの歯科医師はできれば根管治療を避けたいと思っているという。根管治療がうまくいかない一因はここにあったようだ。
では、一体誰を頼ればいいのか?
「予防に勝る治療はありません。まず、予防を心がけてください。その上でどうしても治療が必要になったら、慎重に歯科医院を選んでください。治療計画や費用をしっかり明示してくれて、2・3回で根管治療を終える歯科医師が、よい歯科医師です。だらだらと長く治療を続ける歯科医院や、痛くもないのに『神経を抜きましょう』というような歯科医師は避けたほうがいい」(久保倉歯科医師)
歯を痛めた末の手近な歯科医院への“飛び込み”は、避けたほうがよいのは言うまでもない。
★よく噛めば脳は活性化する
「よく噛んで食べると脳の働きがよくなる」という。顎の筋肉を活発に動かすと、顎から脳につながる血管の血流がよくなり、脳の働きに好影響(記憶を司る海馬の活性化など)を与えるといわれているのだ。
さらに、よく噛むことで胃腸の働きも活発になり、消化吸収が促進される。また、唾液の中の酵素には発がん物質の発がん作用を消す働きがあることも知られている。唾液の分泌は活発な咀嚼で促される。
そして注目したいのは、噛むことが認知症の予防につながる点だ。
神奈川歯科大の山本龍生准教授らが平成24年(2012年)に、『アメリカ心身医学会雑誌』に発表した研究報告(愛知老年学的評価研究/AGES=高齢者を対象にした疫学研究。愛知県の自治体を中心に、65歳以上の4425人を対象に調査した)によると、歯がほとんどない(残存歯数が一桁)にもかかわらず義歯を使用していない人は、20本以上歯が残っている人より、認知症による要介護認定を受けた頻度が高く、そのリスクは1・85倍だった。
また、かかりつけの歯科医院について、「ない」と答えた人は、「ある」と答えた人より1・44倍発症リスクが高かったという。
山本准教授らは、これについて複数の理由を挙げている。(1)噛めないために脳の血流を促すことができない、(2)満足に噛めないために食生活が偏り、認知症リスクを下げる野菜や豆などを摂取できない、(3)歯周病による慢性的炎症で分泌されるサイトカイン(炎症性物質)が脳神経細胞に悪影響を与えている。
自分の歯をしっかり守って、よく噛むことが認知症の予防につながるのだ。
病気の治療には薬が欠かせない。しかし、市販薬や医者に処方された同じ薬でも、飲む時刻やタイミングで効き目がまったく違い、副作用の問題も起こる。 また、急な発作や病気が発症しやすいとされる“魔の時間帯”を知ることで、投薬のタイミングや治療を考える“時間治療”も重要だと言われている。薬をいつ、どのようなタイミングで飲めば、薬の効能が認められるのだろうか。
人間は、通常の生活を送っていれば、朝日が昇ると活動を始め、日が落ちると休むという“体内時計”を持っている。専門家に言わせると、最近、この体内時計が、薬物療法の新たな手段として脚光を浴びているというのだ。
医学博士の内浦尚之氏はこう説明する。
「人体の様々な機能は、ほぼ24時間を1単位としていることが、最近、分かってきました。体温や血圧は夕方頃に最も高くなりますし、尿量が多くなるのは午前中です。自分では意識しないうちに体の中にこうしたリズムが刻み込まれているのです。また研究報告として、実は体内時計を作っている遺伝子があるという事も判明している。これは人間が環境に適応するために、長い進化の過程で獲得したシステムと言えます。従って、薬も体内で作用する以上、体内時計の影響を受けるのです」
薬が作用するまでには、胃や腸から吸収される行程を通るが、胃腸のリズムによって吸収の早さや善し悪しが変化する。胃腸が活発に動く時間帯だと、早く吸収され効き目も早い。 だが、内浦氏は「吸収能力が低い時だと効果はその分、落ちる」と言う。さらにこう語る。「体の薬への反応性も、時間帯によって違います。ですから、薬を飲むとき、時間を考慮することによって、薬の効き目や安全性を高めることもできるのです」
もちろん、リズムという点で言えば、病気も体の機能が大きく関係するため、その働き具合によっては症状が悪化することもある。昔から「厄年」とか「厄の時刻」などと呼ばれてきた所以でもあり、病気になりやすい時間帯があることが経験的に知られている。では、病気になりやすい時間帯とは、どういう事を意味するのか。専門医に聞いてみると、病状は生体リズムと密接に関わっており、変化もするという。
放送メディアなどで講演活動をしている日本大学薬学部の高木千佳子教授は、こう説明する。
「狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、早朝から正午に発生しやすく、その理由は血圧の上昇が目覚めとともに著しいことや血液が固まりやすくなっていることが考えられます。そこで、早朝から午前中の時間帯の血圧をうまくコントロールすることが大切です。また、慢性関節リウマチで問題となる“朝のこわばり”は、関節周囲の炎症のむくみが朝方に強くなることにより起こります。
歯痛などの痛みも、夜間から早朝にかけて発現するし、消化性潰瘍も夜間に胃酸の分泌が増加するために起きます。ですから、こうした時間帯に薬を飲用すれば効果が得られると言えるでしょう」冒頭部分で“魔の時間帯”にも触れているが、病気は我々を「隙あらば」と狙っている。だが、この悪魔は絶えず動き回っている訳ではないようだ。活発に動き回る時間とそうでない時間がある事が、疫学的調査で分かってきたと言われる。ここで、様々な疾患についての“魔の時間帯”を見てみよう。
●急性心筋梗塞、狭心症など虚血性疾患
自律神経が副交感神経へスイッチする午前4~6時の間は、心臓の脈拍数や血圧が急上昇するため、心臓への負担大きくなり、不整脈が起こりやすい。ピークは、目が覚めてから2時間以内に起こることが多い。その次のピークは夕方だ。
●気管支喘息
朝4~5時という朝の目覚め前に発作が起きる事が多い。気管支の太さが夜眠ると細くなり、明け方が最も細くなる。明け方は免疫力が衰えている上、気管支粘膜の過敏性を刺激する朝の冷たい空気も引き金になる。就寝前に発作を抑える薬を飲むと効果が出る。
●胃潰瘍
胃酸の分泌は夜間に高まるため、胃潰瘍も夜中に出来やすい。夜中に食べると、さらに胃酸の分泌を高めることになる。潰瘍の薬は夜に服用したほうがよい。
●脳梗塞
心筋梗塞と同じように、脳の血管が詰まるために起きる病気。心筋梗塞と同様、早朝から午前中に起きやすく“魔の時間帯”と言える。
●がん細胞の増殖
細胞の増殖やホルモンの分泌など、体の代謝が最も活発になるのが夜間の睡眠中。昼間に傷ついた細胞などを整備する時間帯で、がん細胞もこの時に増殖する。
★勝手に飲み方を変えない!?
薬の正しい飲み方として、一般的には、体内の目的の場所で最も薬の効果が発揮されるように、形状や飲む時間帯と間隔、量などが工夫されている。そのため、「1回2錠、1日3回食後30分以内に水またはぬるま湯で飲む」などと、定められた用法、用量をきちんと守って服用することだ。 罹患者のほとんどは、こうした飲み方や、注意書きを読んで忠実に実践しているはずだ。ところが近年、薬物治療の効果を高めるため、1日の中で最も適切な投与時刻を設定する必要性が、クローズアップされている。
「薬の効果を上げる投与時間や投与方法を選べば、副作用が少なく、効果が高い治療が期待できる。ですから、新たに生体リズムという観点から医学を見直さなければならなくなってきています。薬の効き目はいろいろな要因で左右されますので、一概には言えませんが、薬を処方する医師もこれからは食後3回と言った固定した考えではなく、体のリズムに合った有効時間を選べるように方向転換していくようになるでしょう」(日本薬学会関係者)
大事なことは患者が勝手に薬の飲み方を変えるのは危険だということ。「この時間帯なら効き目がある」といった自己判断は絶対にやるべきではない。まずは、医師や薬剤師に相談してから服用することが肝心である。間違った飲み方をすると「毒」にもなる薬。正しい飲み方を知り、それを必ず守りたいものだ。
水分の“不足”も“過多”も避けるのが、暑い季節の上手な水分補給だ。汗などで水分が体外へ排出されているのに、摂取を怠れば脳梗塞や心筋梗塞など危険な病状に陥る。さらに水分の摂り方を誤れば、体への負担が増える。 喉の渇きから一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれずに水分が血中に流れ、低ナトリウム血症を起こして、意識を失うことがある。そのためバランスよく摂らなければならないのだ。
次第に気温が上がり、時には夏日を思わせる日もあるこの時期。少し体を動かしただけでも汗ばみ、喉の渇きで冷たい水が美味しくなり始める頃だ。 水分補給の重要性を予防医学の専門家、内浦尚之医学博士はこう説明する。
「水は大事です。喉の渇いている時に水分を摂らないと、人の体は動きにくくなり、酸素や栄養素を細胞へ届ける働きも鈍くなります。通常、摂取された水分は、血液の混ざった毛細血管を通り脳に運ばれます。その水分が不足すると血液の粘性が増し、流れが悪くなり、詰まりやすくなる上、そこから脳梗塞などへ繋がる可能性も出てきます。病気に罹りにくい健康な体をつくるには、水分補給は欠かせないのです」
散歩でも、ウオーキングでも、喉が渇いたと思ったら、ためらわずに必ず水分を補給することだ。
前出の内浦氏が、さらにこう語る
「水分は慌ててガブ飲みはしないほうがよいでしょう。よく1日に約1.5~2㍑の水を摂るべきという話を聞きますが、仮に2㍑の4分の1の500ミリ㍑しか飲まなくても、そう心配はいりません。どういうことかと言いますと、腎臓が体内の水分量をコントロールしてくれるからです。水分が不足すれば腎臓が尿を減らし、体内の水分をキープする。確かに量は体重の4%程度なので、体重50キロであれば2㍑となりますが、実際には一般的に食事から1日0.8~1㍑の水分を摂取しているため、意識して飲む水の量は1㍑前後が目安。喉が渇いていなければ無理に飲む必要はないのです」
ただし、「一度に飲む量は注意が必要」という。
「腎臓の尿の処理速度は、毎分16ミリ㍑が限界。そこへ炎天下で仕事をしている人などは水分を摂りすぎて、体内の電解質(ナトリウムとカリウム)のバランスが崩れてしまい、低ナトリウム血症を起こして意識を失ってしまうことがあるのです」(内浦氏) しかし、前述したようにいくら喉が渇いているからといって、一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれない水が血中に流れ、ナトリウム濃度が低下してしまうのだ。健康ライターの深見幸成氏はこう語る。
「こうした状態を放置すると、頭痛や食欲不振の症状などが表れ、重度の場合は痙攣や昏睡状態に陥ることもあります。加えて、水分の摂りすぎは、花粉症などのアレルギー症やアトピー性皮膚炎を悪化させることも分かっています。また、摂取する場合、水分の温度は冷たすぎず熱すぎない程度のものが好ましい。それも一気にガブ飲みするのではなく、少しずつ飲むこと。冷たい水は体を冷やすし、腹痛や頭痛、めまいを引き起こすこともあります。やはり常温か白湯がいいとされます。5~10度の水道水ぐらいが無難でしょう」
ここで、もう1つ重要なことは、寝る前と起床時の水分は健康の源といわれ、非常に大切だということだ。 人は寝ている間に、コップ1杯から2杯分の汗をかく。しかもその間、当然ながら水分は補給されない。その状態が、脳梗塞などを引き起こす原因ともなる。また、起床時の水分補給は、消化管を刺激して排便を促し、便秘解消にも繋がるという。 ちなみに寝ている間、体内では昼間に働いていた臓器や筋肉などを休めたり、肌の修復などが行われているが、水分が不足すると栄養が各所へ運ばれにくくなり、良質な睡眠とは言えない状態になる。
★飲むほど水分不足になる酒類
ところで、水分補給に最も向いていないのは、どんな飲み物なのか。ある専門家は「茶の葉が材料になっているのはNGです」とハッキリ言い、こう続ける。 「日本茶や紅茶、ウーロン茶は水分補給には適していません。いずれもカフェインが含まれているからです。カフェインには利尿作用があるため、飲むほど体内の水分が排出されてしまいます。水分補給が目的なら、茶の葉を用いない麦茶やコーン茶、ハーブティーを選ぶのが正解です」
また、コーヒーや栄養ドリンクも、カフェインが多く含まれるため、水分補給には適していない。やはり適しているとなると、白湯か常温水になってくる。冷水は、たくさん飲むと胃腸の働きが悪くなり、消化不良や下痢につながってしまうからだ。 しかし、適さないと言っても、喉が渇いて他に飲み物がない場合は、カフェインが入っていたとしても、何も飲まないよりはマシだ。
もう1つ、気温が高くなると飲みたくなるのがビールをはじめとするアルコール類。こちらも水分補給よりむしろ水分補給を招く場合が多い。
「ビールなどは、飲んだ分より多くの水分が排出されることが多い。利尿作用がある上に、肝臓で分解される際に大量の水分を使う。アルコールの度数の高い酒ほど多くの水分が使われ、飲めば飲むほど水分不足になります。そのため、アルコールと一緒に水を飲むのが理想的です。これでお分かりの通り、飲みすぎてしまった後は、体は相当な脱水状態になっています。だからこそ、寝る前に十分な水分補給をすることが必要なのです」(前出・深見氏)
今や我々の周囲にはコンビニをはじめ、自動販売機などで、ジュースや炭酸飲料が溢れかえっている。特に甘い炭酸飲料などは少量でも満足してしまうため、水分が不足がちになり、また余計に喉が渇くという悪循環にも陥る。 「甘い飲料水には注意が必要です。スポーツ飲料も気をつけたい。運動中や暑い時などは汗をかき体内の塩分を消費するため、水分と合わせてエネルギーの補給が必要になります。糖分や疲労回復効果のあるクエン酸などがふくまれていることから、一見すると水分補給に適していると思われますが、そこに含まれている糖分はかなりの分量です。運動量が多くない人は、糖分、ナトリウム過多となるので、気をつけましょう」(医療関係者)
これから季節は暑い夏に向かっていく。水分不足には十分に気をつけたい。
そもそも、なぜ人は「いびき」をかくのか。睡眠時無呼吸症候群の診断と治療に携わって25年、年間2万4000人を診療する「御茶ノ水呼吸ケアクリニック」(東京都千代田区)の村田朗院長はこう話す。
「いびきをかくのは、空気の通り道である気道が狭くなっているからです。人は寝ているとき、体を休めるために全身の筋肉が緩むわけですが、それは舌も例外ではありません。舌や口腔周囲の筋肉が緩み、重力によって下に下がることで気道が狭くなり、空気が通る際に気道の壁が振動することで音が発生するわけです」
この状態がひどくなり、気道が完全に閉じてしまうと空気が入らなくなってしまう。つまり、呼吸ができなくなってしまう。すると、脳が命の危険を察知して覚醒し、呼吸を促す指令を出して喉を開かせ、空気が入るようにさせる。だがそれも一時的であり、また気道が狭くなっていびきをかくようになり、やがて無呼吸状態を起こす。前出の村田院長によれば、これがいびきと無呼吸を繰り返す仕組みだ。
7時間の睡眠の中で、10秒以上にわたり呼吸が止まったり、止まりかけたりすることが1時間に5回以上繰り返す状態を「睡眠時無呼吸症候群」と言い、これらの回数が5回から15回未満だと軽症、15から30回未満が中等度、30回以上だと重症とみなされる。
ではなぜ、いびきをかく人とかかない人がいるのか。村田院長はこう説明する。
「最も大きな原因は顔の骨格です。日本人を含む東アジアの人は顔が上下に長く、奥行きが狭いという特徴があり、あごが小さい傾向にあります。あごが小さいと喉が狭くなりますからいびきをかきやすくなります。つまり、日本人はそもそもいびきをかきやすい性質を持っているのです」
こうした人種的な特徴に加えて、肥満のために喉に脂肪がついていたり、加齢や飲酒によって筋肉が緩みがちになったりすると気道が狭くなりやすくなり、発症リスクが上がるという。 また、喫煙している人は喉の炎症と粘膜の肥大を起こしやすくなり、結果、気道も狭くなりやすくなるそうだ。 患者の男女比について正確なデータはないというが、生理のある女性は女性ホルモンが呼吸を促すため無呼吸にはなりにくく、一方で閉経後は女性ホルモンの分泌が減るため男女間の違いはなくなるという。 村田院長が運営するクリニックにおける患者の男女比は7対3であり、20代から90代のうち多いのは40代から70代だという。
有病者の脳卒中リスク11倍に
この病気によって睡眠の質が低くなると、夜間頻尿や日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが起きやすくなるが、「本当に怖いのはさまざまな合併症にある」と、村田院長は次のように指摘する。
「いびきや無呼吸によって血中の酸素濃度が低下すると、心臓が無理に血流を増やして全身の筋肉や臓器に酸素を届けようとするため、心拍数や血圧が上昇します。すると、高血圧症や狭心症のほか、命に直接危険を及ぼす心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性も大幅に上がってしまいます。複数の研究データによると、睡眠時無呼吸症候群の人はそうでない人に比べて高血圧症と狭心症になるリスクがおよそ3倍、心筋梗塞は約4倍、そして、脳卒中を起こす可能性は11倍にも増えるという結果が出ています。最悪の場合は、睡眠中に不整脈が起きて突然死してしまうこともあります」
また、頭の血管が拡張することで、起床後に片頭痛と同じような痛みが起きやすくなったり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて血中糖度を下げるホルモンのインスリンが効きづらくなることで、糖尿病になりやすくなったりもするそうだ。
★鼻から空気送る治療が最も有効
診断までには2つのステップがある。まずは自宅でできる簡易検査を行い、異常が指摘された場合に精密検査を行うというもの。
簡易検査では、自分で小型の機器を使ってセンサーをつけ、睡眠時における体内の酸素飽和度を調べて無呼吸の有無を確かめる。精密検査は医療機関に1泊して臨床検査技師が全身の20カ所にセンサーをつけて呼吸の状態や脳波、心電図などを計測する。精密検査はポリグラフ(PSG)検査と言い、大学病院や睡眠障害を専門にするクリニックなどで行われている。この流れを辿った上で睡眠時無呼吸症候群だと診断されれば、健康保険を利用して治療を受けることができる。
治療方法としては、主に2つが挙げられる。無呼吸または低呼吸の回数が1時間に20回未満の患者を対象としたマウスピースを使う方法と、20回以上の人が適用となるCPAP(シーパップ)療法だ。
マウスピースを着けると下あごが上あごよりも前方に出るため気道が広がりやすくなり、いびきの軽減が見込める。ただし、無呼吸をなくすことはできず、中等度以上の患者への効果は低いという。 一方のCPAPとは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」の英語の略称であり、専用の機器を使って鼻から人工的に空気を送り、その圧力で気道を広げる治療方法。医療機関が提供する機器を患者が自宅で使用する。
「CPAPの仕組みはシンプルですが、これが睡眠時無呼吸症候群の治療では最も効果が高く、低酸素状態も無呼吸もなくなります。結果的に合併症のリスクがなくなります」(前出・村田院長) 費用はマウスピースの作製が約1万5000円で、CPAP療法が月に約5000円。いずれも人工的に気道を広げるものなので、継続的に治療を行う必要がある。
軽症患者を除けば治療のメーンはCPAPになるが、肥満や飲酒、喫煙によって症状がひどくなっている人は、減量や飲酒量の低減、禁煙を図ることで症状を和らげる必要がある。 また、仰向けでなく、横向きに寝ることも舌の位置がずれるため有効だそうだ。睡眠導入剤は筋肉を緩める作用があるため、症状をひどくする恐れがあることにも留意したい。
「生活習慣病が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まることは、一般の方にも少しずつ知られるようになってきました。しかし、睡眠時無呼吸も生活習慣病と同様に重い合併症を引き起こすことは、まだまだ知られていません。家族などにいびきをかいていることを指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を得意とする医療機関で、検査を受けることを勧めます」(同)
そもそも、男性特有の前立腺がどんな機能を持つ臓器か詳しく知らない人も少なくないのではないだろうか。前立腺がんの治療を専門にする東京慈恵会医科大学泌尿器科の頴川晋教授はこう話す。
「前立腺は尿がたまる膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように位置する臓器です。40歳以上の8割はこの臓器が大きくなる前立腺肥大症に罹ると考えられているため、年齢によって大きさや重さは異なりますが、20歳くらいの若い成人男性の場合だと大きさは栗の実ほど、重さは15グラムほどです。精液を構成する成分の3分の1を作っていることが大きな特徴で、射精された精子が女性の膣の中に留まりやすいよう、つまり、妊娠しやすいよう粘り気のある半固形の状態を保たせているのも、前立腺から分泌される成分なのです」
栗の実ほどの小さな臓器が、実は人間の命をつくるために大切な役割を果たしているわけだが、この前立腺に起こるがんが増えているというのだ。
国立がん研究センターによると、2000年に約2万人だった患者数は、2005年には倍増して4万人を超え、2014年には約7万4000人に到達、男性のがんの罹患数で4位に浮上した。
その後も増え続けており、2016年に施行された「がん登録推進法」に基づき厚生労働省が行った調査によれば、同年における患者数は約9万人で、男性のがんの多さでは2位。2020年以降には胃がんを抜き、男性が罹るがんのトップになると予想されている。
★有効な検査方法普及で患者増加
それでは、なぜ急増しているのか?
頴川教授は、(1)高齢化、(2)食事の欧米化、(3)効果的な検査方法の普及―の3点を理由に挙げる。
「他のがんと同じように、前立腺がんも加齢によって発症リスクが上がります。特に50歳以降に罹りやすくなると考えられており、現在、患者の罹患平均年齢は72歳です。長生きする人が増えることで、患者が増えているのは間違いないでしょう。一方、食事の欧米化の影響は厳密には分かっていませんが、動物性タンパク質の摂り方が変わったこと、つまり、魚を食べる量が減り、赤身の肉を食べる量が増えたことが影響している可能性があると考えられています。そして重要なのは、効果的な検査方法が普及して、見つかりやすくなったことです」
頴川教授の言うその方法とは、「PSA検査」と呼ばれるもの。PSAとは、前立腺から分泌されるタンパク質の一種であり、採血によってこの成分がどれくらい血液中に含まれているかを調べるのがPSA検査だ。
がんなどによって前立腺に異常が起こると、PSAが血液中に放出されて濃度が上がるため、前立腺がんの疑いがあるかどうかを調べるのに有効だという。
PSA検査は、元は法医学の見地からレイプ事件の検査などに行われていたが、’86年に海外で臨床に応用され、後に日本にも導入された。
頴川教授は、1992年に日本で初めて人間ドックのオプションにPSA検査を組み込んだ、検査普及の一端を担った医師でもある。現在は健康診断や人間ドックのオプションとして、2000円ほど追加料金を払えば受けられる。
診断するためには、MRIや前立腺の組織を調べる生検を行う必要があるが、前段階のスクリーニング方法が普及したことで、発見率が上がったというわけだ。
★早期発見により完治の可能性大
見つけやすくなったというが、前立腺がんを予防する方法はないのだろうか。胃がんについては、発症の主因となるピロリ菌への感染の有無を調べ、感染していれば除菌することで「ほぼ防げる」と、消化器内科医は口をそろえるが、前立腺はどうなのだろう。
「今までに予防医学を目的に様々な大規模研究が行われてきましたが、有効な方法は見つかっていません。そもそも、胃がんを除く多くのがんと同じように原因が解明されていないので、防ぐ方法も分からないのです。多くの病気と同じように、前立腺がんも早期発見が最も重要です」(前出・頴川教授)
頴川教授によれば、前立腺がんは進行すると骨に転移しやすく、骨への転移後は激烈な痛みが出やすい怖い病気だが、転移する前に見つかれば、完治する可能性は非常に高いという。
「私が若手の医師だった30年ほど前は、入院患者さんのおよそ4割に転移が見られましたが、検査方法の普及などによって、現在、東京慈恵会医科大学附属病院でいえばその割合は5、6%にまで減りました。前立腺がんは胃がんや大腸がんと同じように早期発見が行いやすく、また、早く見つかれば治せる可能性の非常に高いがんなのです」(同)
治療方法は、手術や放射線療法、男性ホルモンの分泌を減らしてがん細胞の増殖を防ぐことを目指すホルモン療法が挙げられる。これらの治療を行うことで、尿漏れや勃起不全(ED)、血尿、直腸障害などの副作用が起こる可能性はあるが、少なくとも早期発見・早期治療で死の危険性は減らせるわけだ。
また、前立腺がんは10年以上かけてゆっくりと進行していく特徴があるため、仮に見つかったとしてもがんの状態や症状の有無、患者の年齢や本人の希望によって、治療を行わず様子を見るケースもあるという。
PSA検査によって、病気の疑いがあるかどうかを調べられるというが、検査を受けたほうがいい目安となる症状はあるのだろうか。
結論から言えば、他のがんと同じように初期には症状が出ないことが多いため、無症状の段階から検査を受けたほうがいいそうだ。
病気が進行してがんが大きくなると、前立腺の中を通っている尿道が圧迫されるため、尿が出づらくなったり、残尿が増えることで頻尿になったりすることがある。がんが膀胱に侵食すると血尿を引き起こすこともある。
尿道に近い場所にがんができれば、初期であってもこれらの症状が起こることはあるが、前立腺がんの7割は尿道から離れた場所に起こると考えられているため、多くの場合、進行しないと症状は起きないという。
「前立腺がんは50歳頃から罹りやすくなりますが、55歳以上でも治療によって完治する可能性が高いため、55歳を超えたら必ずPSA検査を受けるようにしましょう。それ以降も年に1度のペースで検査を受けることをお勧めします」(同)
「男性がこれから最も罹るがん」とだけ聞けば怖い印象を抱きやすいが、「55歳を超えたらPSA検査」を胸に留めておけば、あまり死の危険を心配する必要はないのかもしれない。
まだ梅雨は明けないが、これから夏本番を迎えるこの時期、「なぜか咳が続き、治まらない」「風邪をこじらせてしまったのか」といった声があちらこちらで聞かれる。ある専門家は「今年は高温・多湿型の梅雨で長い。夏に暴れるウイルスの発生が早く、もう暴れ始めているんだと思います」と語る。
もともとウイルスを退治する薬がないため、騒ぎが大きくなるのだ。その上、原因が風邪の病原体となると、8~9割はウイルスの仕業と判断される。そして、治療しようと病院に行くと、主に抗生物質が処方される。しかし、ウイルスにはそれ自体に増殖力がなく、気道や鼻腔の粘膜の細胞の力を借りて増える。
「ですから抗生物質の効力というのは薄く、普通は放っておいても最長2時間程度で症状が収まってしまいます」(専門家)
本来、風邪症状を治す目的だと抗生物質はほとんど意味をなさない。むしろ自分で持っている免疫力を高め、ウイルスが排除されるのを待つしかない。もちろん、その間は安静を保ち、栄養と水分を補給しながら、体調を崩さないよう無理をしないことが大切だ。
東京都内で医療総合クリニックを営む久富茂樹院長はこう語る。
「一般的な療法を行った上で、気道に症状があれば、咳などを止める薬(鎮咳去痰薬)とか発熱には解熱薬などを内服する。人それぞれ薬に必要、不必要があるので、その判別は医師にしてもらうといいでしょう。ただ厄介なのは、暑さと湿気を好むウイルスが大暴れするのが、睡眠不足や疲れから免疫力が下がるこの時期からなのです。結果的には風邪を引きやすく、治りにくくなる。このことは複数の研究機関での調査でも明らかになっています。また、クーラーなどで室内と室外の気温差・湿度差が大きいと、身体を調整する神経でもある自律神経が乱れ、体温調節ができなくなり、免疫力が低下する。風邪になりやすくなり、これが喘息などにつながるのです」
世界保健機構(WHO)と世界気象機関(WMO)が、共同で’14年に作成した公衆衛生と気象に関する最新の発表報告によると、世界で喘息の患者は2億人を超え、増加の一途をたどっているという。
東京労災病院内科・呼吸器担当・酒井伸顕医師はこう説明する。
「地球の温暖化の一因とされるフロンガスや化学物質などの影響を、報告書では示しています。それに加え、中国から流れ込む汚染された空気やインフルエンザにも注意が必要です。また、日本でも地球温暖化の影響を様々な形で受けていますが、大気汚染物質やタバコの他に花粉や家ダニなど、我々の生活圏で発症する原因なども多く指摘されています。いずれにしても喘息症状は手当てが遅れると、狭心症や脳梗塞にもつながることが分かっており、軽く考えないでいただきたいですね」
また、酒井医師は自らの患者を例に、次のように説明を付け加える。
「私のところに、ある56歳の男性患者さんが受診しました。咳が止まらず、息切れがすると言って訪れたのですが、生活環境などを詳しく聞いたところ、ご自宅の目の前を交通量の多い国道が走っていた。調べると1秒間に吐ける空気の量は、通常の40%にもみたないものでした。高齢者のみなさんは、特に咳とともに息切れを訴えて受診します。そこで肺活量や肺機能も検査しますと、肺の奥の細い気管がやられ、炎症を起こしていることが多い。今回、訪れた男性患者さんも同じ状況でした。高齢者の場合、喘息は真っ先に心不全が疑われる怖い病気で、風邪をきっかけに発症するケースも多い。こうした症状は、適切な治療をせずに発作を繰り返すと、気管支の炎症部分が厚くなり、回復しづらくなります」
★“長引く咳”に要注意!
ある医療機関の統計によれば、日本の喘息による死亡者は、ステロイドなどの普及によって、’95年の約7000人のピーク時から徐々に減ってきてはいるが、今も年間1000人~2000人の方が死亡している。決して安心できない病気であり、放置は厳禁であることを肝に銘じておかなければならない。
咳と風邪の関係ではないが、もう1つ厄介なものがある。それは“長引く咳”である。くしゃみや鼻水に散々やられたが、それが収まったと思ったら咳だけが残った…。中には、そんな状態が2週間以上も続いてしまう場合がある。
この症状に陥ると、たいていは「しつこい風邪」と思い込む人が多い。しかし、前出の久富院長はこう警鐘を鳴らす。
「風邪だけで、そこまで長引くことはありません。つまり、風邪をきっかけにして別な疾患を発症している可能性もあります。7月に入ると、その手の患者さんが増えます。そこで、よく調査をすると咳喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)であることが分かります」
喘息は気道の粘膜に炎症が起こって敏感になり、ちょっとした刺激にも反応して、咳が止まらなくなる疾患でもあるのだ。
“ちょっとした刺激”というのは、冷たい空気、線香の煙、ラーメンの湯気なども上げられる。その咳は、一度出始めると暫く会話ができないほど止まらない。また、夜間や明け方に出やすく、そんな経験をお持ちの人はきっと多いはず。
さらにこんな現象もある。
「鼻水が垂れ、それが咽頭部分を刺激し、咳につながったり、鼻水がなくなっても咳が残り長引く。半数以上は咳喘息という印象だが、放置するようなことがあれば3割は気管支喘息に移行し、最悪は死に至る場合もある」(久富院長)
米ノースウエル・ヘルスプレインビュー病院の観察的研究から、専門家は次のように語る。
「あまり認識されていませんが、喘息にはいくつかの種類があり、それぞれに固有の特徴がある。患者を14年間追跡した結果、100人以上が成人後に喘息と診断されており(遅発性喘息)、約50人が小児期に喘息の診断を受けている。この遅発性喘息は様々な因子(大気汚染など)に起因するものが多く、肺機能が急速に低下します」
最後に、料理研究家の林康子氏が対策として次のようにアドバイスしてくれた。
「作り方は赤ワイン20㎖にショウガ汁3~4滴入れるだけ。風邪の引きはじめには抜群の効能があります。体外から侵入する病原体と戦う免疫細胞を活発にする食物のキムチもお薦め。質の高い栄養素です」
そもそも、男性特有の前立腺がどんな機能を持つ臓器か詳しく知らない人も少なくないのではないだろうか。前立腺がんの治療を専門にする東京慈恵会医科大学泌尿器科の頴川晋教授はこう話す。「前立腺は尿がたまる膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように位置する臓器です。
40歳以上の8割はこの臓器が大きくなる前立腺肥大症に罹ると考えられているため、年齢によって大きさや重さは異なりますが、20歳くらいの若い成人男性の場合だと大きさは栗の実ほど、重さは15グラムほどです。精液を構成する成分の3分の1を作っていることが大きな特徴で、射精された精子が女性の膣の中に留まりやすいよう、つまり、妊娠しやすいよう粘り気のある半固形の状態を保たせているのも、前立腺から分泌される成分なのです」
栗の実ほどの小さな臓器が、実は人間の命をつくるために大切な役割を果たしているわけだが、この前立腺に起こるがんが増えているというのだ。国立がん研究センターによると、2000年に約2万人だった患者数は、2005年には倍増して4万人を超え、2014年には約7万4000人に到達、男性のがんの罹患数で4位に浮上した。その後も増え続けており、2016年に施行された「がん登録推進法」に基づき厚生労働省が行った調査によれば、同年における患者数は約9万人で、男性のがんの多さでは2位。2020年以降には胃がんを抜き、男性が罹るがんのトップになると予想されている。
★有効な検査方法普及で患者増加
それでは、なぜ急増しているのか?
頴川教授は、(1)高齢化、(2)食事の欧米化、(3)効果的な検査方法の普及―の3点を理由に挙げる。
「他のがんと同じように、前立腺がんも加齢によって発症リスクが上がります。特に50歳以降に罹りやすくなると考えられており、現在、患者の罹患平均年齢は72歳です。長生きする人が増えることで、患者が増えているのは間違いないでしょう。一方、食事の欧米化の影響は厳密には分かっていませんが、動物性タンパク質の摂り方が変わったこと、つまり、魚を食べる量が減り、赤身の肉を食べる量が増えたことが影響している可能性があると考えられています。そして重要なのは、効果的な検査方法が普及して、見つかりやすくなったことです」
頴川教授の言うその方法とは、「PSA検査」と呼ばれるもの。PSAとは、前立腺から分泌されるタンパク質の一種であり、採血によってこの成分がどれくらい血液中に含まれているかを調べるのがPSA検査だ。 がんなどによって前立腺に異常が起こると、PSAが血液中に放出されて濃度が上がるため、前立腺がんの疑いがあるかどうかを調べるのに有効だという。
PSA検査は、元は法医学の見地からレイプ事件の検査などに行われていたが、’86年に海外で臨床に応用され、後に日本にも導入された。頴川教授は、1992年に日本で初めて人間ドックのオプションにPSA検査を組み込んだ、検査普及の一端を担った医師でもある。現在は健康診断や人間ドックのオプションとして、2000円ほど追加料金を払えば受けられる。診断するためには、MRIや前立腺の組織を調べる生検を行う必要があるが、前段階のスクリーニング方法が普及したことで、発見率が上がったというわけだ。
★早期発見により完治の可能性大
見つけやすくなったというが、前立腺がんを予防する方法はないのだろうか。胃がんについては、発症の主因となるピロリ菌への感染の有無を調べ、感染していれば除菌することで「ほぼ防げる」と、消化器内科医は口をそろえるが、前立腺はどうなのだろう。「今までに予防医学を目的に様々な大規模研究が行われてきましたが、有効な方法は見つかっていません。
そもそも、胃がんを除く多くのがんと同じように原因が解明されていないので、防ぐ方法も分からないのです。多くの病気と同じように、前立腺がんも早期発見が最も重要です」(前出・頴川教授)頴川教授によれば、前立腺がんは進行すると骨に転移しやすく、骨への転移後は激烈な痛みが出やすい怖い病気だが、転移する前に見つかれば、完治する可能性は非常に高いという。
「私が若手の医師だった30年ほど前は、入院患者さんのおよそ4割に転移が見られましたが、検査方法の普及などによって、現在、東京慈恵会医科大学附属病院でいえばその割合は5、6%にまで減りました。前立腺がんは胃がんや大腸がんと同じように早期発見が行いやすく、また、早く見つかれば治せる可能性の非常に高いがんなのです」(同)
治療方法は、手術や放射線療法、男性ホルモンの分泌を減らしてがん細胞の増殖を防ぐことを目指すホルモン療法が挙げられる。これらの治療を行うことで、尿漏れや勃起不全(ED)、血尿、直腸障害などの副作用が起こる可能性はあるが、少なくとも早期発見・早期治療で死の危険性は減らせるわけだ。
また、前立腺がんは10年以上かけてゆっくりと進行していく特徴があるため、仮に見つかったとしてもがんの状態や症状の有無、患者の年齢や本人の希望によって、治療を行わず様子を見るケースもあるという。 PSA検査によって、病気の疑いがあるかどうかを調べられるというが、検査を受けたほうがいい目安となる症状はあるのだろうか。
結論から言えば、他のがんと同じように初期には症状が出ないことが多いため、無症状の段階から検査を受けたほうがいいそうだ。病気が進行してがんが大きくなると、前立腺の中を通っている尿道が圧迫されるため、尿が出づらくなったり、残尿が増えることで頻尿になったりすることがある。がんが膀胱に侵食すると血尿を引き起こすこともある。
尿道に近い場所にがんができれば、初期であってもこれらの症状が起こることはあるが、前立腺がんの7割は尿道から離れた場所に起こると考えられているため、多くの場合、進行しないと症状は起きないという。「前立腺がんは50歳頃から罹りやすくなりますが、55歳以上でも治療によって完治する可能性が高いため、55歳を超えたら必ずPSA検査を受けるようにしましょう。それ以降も年に1度のペースで検査を受けることをお勧めします」(同)
「男性がこれから最も罹るがん」とだけ聞けば怖い印象を抱きやすいが、「55歳を超えたらPSA検査」を胸に留めておけば、あまり死の危険を心配する必要はないのかもしれない。
まだ梅雨は明けないが、これから夏本番を迎えるこの時期、「なぜか咳が続き、治まらない」「風邪をこじらせてしまったのか」といった声があちらこちらで聞かれる。ある専門家は「今年は高温・多湿型の梅雨で長い。夏に暴れるウイルスの発生が早く、もう暴れ始めているんだと思います」と語る。
もともとウイルスを退治する薬がないため、騒ぎが大きくなるのだ。その上、原因が風邪の病原体となると、8~9割はウイルスの仕業と判断される。そして、治療しようと病院に行くと、主に抗生物質が処方される。しかし、ウイルスにはそれ自体に増殖力がなく、気道や鼻腔の粘膜の細胞の力を借りて増える。
「ですから抗生物質の効力というのは薄く、普通は放っておいても最長2時間程度で症状が収まってしまいます」(専門家)
本来、風邪症状を治す目的だと抗生物質はほとんど意味をなさない。むしろ自分で持っている免疫力を高め、ウイルスが排除されるのを待つしかない。もちろん、その間は安静を保ち、栄養と水分を補給しながら、体調を崩さないよう無理をしないことが大切だ。
東京都内で医療総合クリニックを営む久富茂樹院長はこう語る。
「一般的な療法を行った上で、気道に症状があれば、咳などを止める薬(鎮咳去痰薬)とか発熱には解熱薬などを内服する。人それぞれ薬に必要、不必要があるので、その判別は医師にしてもらうといいでしょう。ただ厄介なのは、暑さと湿気を好むウイルスが大暴れするのが、睡眠不足や疲れから免疫力が下がるこの時期からなのです。結果的には風邪を引きやすく、治りにくくなる。このことは複数の研究機関での調査でも明らかになっています。また、クーラーなどで室内と室外の気温差・湿度差が大きいと、身体を調整する神経でもある自律神経が乱れ、体温調節ができなくなり、免疫力が低下する。風邪になりやすくなり、これが喘息などにつながるのです」
世界保健機構(WHO)と世界気象機関(WMO)が、共同で’14年に作成した公衆衛生と気象に関する最新の発表報告によると、世界で喘息の患者は2億人を超え、増加の一途をたどっているという。
東京労災病院内科・呼吸器担当・酒井伸顕医師はこう説明する。
「地球の温暖化の一因とされるフロンガスや化学物質などの影響を、報告書では示しています。それに加え、中国から流れ込む汚染された空気やインフルエンザにも注意が必要です。また、日本でも地球温暖化の影響を様々な形で受けていますが、大気汚染物質やタバコの他に花粉や家ダニなど、我々の生活圏で発症する原因なども多く指摘されています。いずれにしても喘息症状は手当てが遅れると、狭心症や脳梗塞にもつながることが分かっており、軽く考えないでいただきたいですね」
また、酒井医師は自らの患者を例に、次のように説明を付け加える。
「私のところに、ある56歳の男性患者さんが受診しました。咳が止まらず、息切れがすると言って訪れたのですが、生活環境などを詳しく聞いたところ、ご自宅の目の前を交通量の多い国道が走っていた。調べると1秒間に吐ける空気の量は、通常の40%にもみたないものでした。高齢者のみなさんは、特に咳とともに息切れを訴えて受診します。そこで肺活量や肺機能も検査しますと、肺の奥の細い気管がやられ、炎症を起こしていることが多い。今回、訪れた男性患者さんも同じ状況でした。高齢者の場合、喘息は真っ先に心不全が疑われる怖い病気で、風邪をきっかけに発症するケースも多い。こうした症状は、適切な治療をせずに発作を繰り返すと、気管支の炎症部分が厚くなり、回復しづらくなります」
★“長引く咳”に要注意!
ある医療機関の統計によれば、日本の喘息による死亡者は、ステロイドなどの普及によって、’95年の約7000人のピーク時から徐々に減ってきてはいるが、今も年間1000人~2000人の方が死亡している。決して安心できない病気であり、放置は厳禁であることを肝に銘じておかなければならない。
咳と風邪の関係ではないが、もう1つ厄介なものがある。それは“長引く咳”である。くしゃみや鼻水に散々やられたが、それが収まったと思ったら咳だけが残った…。中には、そんな状態が2週間以上も続いてしまう場合がある。
この症状に陥ると、たいていは「しつこい風邪」と思い込む人が多い。しかし、前出の久富院長はこう警鐘を鳴らす。
「風邪だけで、そこまで長引くことはありません。つまり、風邪をきっかけにして別な疾患を発症している可能性もあります。7月に入ると、その手の患者さんが増えます。そこで、よく調査をすると咳喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)であることが分かります」
喘息は気道の粘膜に炎症が起こって敏感になり、ちょっとした刺激にも反応して、咳が止まらなくなる疾患でもあるのだ。
“ちょっとした刺激”というのは、冷たい空気、線香の煙、ラーメンの湯気なども上げられる。その咳は、一度出始めると暫く会話ができないほど止まらない。また、夜間や明け方に出やすく、そんな経験をお持ちの人はきっと多いはず。
さらにこんな現象もある。
「鼻水が垂れ、それが咽頭部分を刺激し、咳につながったり、鼻水がなくなっても咳が残り長引く。半数以上は咳喘息という印象だが、放置するようなことがあれば3割は気管支喘息に移行し、最悪は死に至る場合もある」(久富院長)
米ノースウエル・ヘルスプレインビュー病院の観察的研究から、専門家は次のように語る。
「あまり認識されていませんが、喘息にはいくつかの種類があり、それぞれに固有の特徴がある。患者を14年間追跡した結果、100人以上が成人後に喘息と診断されており(遅発性喘息)、約50人が小児期に喘息の診断を受けている。この遅発性喘息は様々な因子(大気汚染など)に起因するものが多く、肺機能が急速に低下します」
最後に、料理研究家の林康子氏が対策として次のようにアドバイスしてくれた。
「作り方は赤ワイン20㎖にショウガ汁3~4滴入れるだけ。風邪の引きはじめには抜群の効能があります。体外から侵入する病原体と戦う免疫細胞を活発にする食物のキムチもお薦め。質の高い栄養素です」
想定外の台風被害に多くの人々が被害をこうむり、いまだに復興が進まない状況が続いています。台風襲来時は激しく気流が変化する影響で、ぜんそく、鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が悪化してしまうことが多いようです。東京では10月になっても2度の真夏日が観測されるなど暑い秋の始まりとなりましたが、さすがに朝晩の冷えは少しずつ進んで、冬の訪れの準備が必要な季節になってきました。
自己免疫疾患や糖尿病、脳血管障害などの基礎疾患があると寒冷により四肢末端の神経や血管の障害が起こりやすく、適切なケアをしていないと重篤な症状まで進行してしまうことも。患者さんご本人がそうした基礎疾患に気づいておらず、寒冷暴露による皮膚の症状から我々皮膚科医が診断し、治療が適切でないと指摘することもあります。【東邦大学医療センター大森病院皮膚科臨床教授・関東裕美/メディカルノートNEWS & JOURNAL】
◇「手の指が白く」…驚いて受診した女性の病名は
ある寒い朝、手の指がまだら状に白くなっていた、と40代の女性が驚いて受診に来ました。発症してから数時間がたっているそうですが、指は白いままでチクチクした感じがすると訴えています。これは「レイノー現象」と呼ばれ、寒さにさらされ指の細い動脈が急速に収縮することで起こります。温めると正常な皮膚の色と感覚が回復します。レイノー現象は膠原病(こうげんびょう)の患者さんでよく見られるため、この女性も原因となる基礎疾患を疑い、検査をしました。その結果、皮膚や内蔵が硬くなる「全身性強皮症」の初期症状だったことが分かり、治療につなげることができました。
◇「しもやけ」の原因は膠原病?
登山の遭難報道で時に聞かれることがある凍傷は、皮膚の直接冷却によって組織が凍結することによる末梢循環不全で起こります。血流が途絶すれば組織は腐ってしまいますから、救命されても壊死(えし)した部位を失うことになってしまうのです。 似た言葉に「凍瘡(とうそう)」があります。これはいわゆる「しもやけ」のことで、凍傷の一種とされています。寒暖の差がある初冬と春先に起こりやすく、血管が狭くなる狭窄(きょうさく)やふさがってしまう閉塞などの器質的障害はありません。小児期や女性に多くみられ、遺伝が関与することが多いようです。
しもやけは、時に「エリテマトーデス」や「強皮症」、「シーェグレン症候群」など自己免疫疾患(膠原病)の症状の可能性もあり、積極的な検査が必要な場合もあります。しもやけ予防には防寒と早期からの治療が大切で、局所の血流改善マッサージや炎症を取る目的でステロイド外用薬を使用すると軽快します。
◇糖尿病足病変…寒さで悪化することも
豊かな食生活に伴い脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの血管障害、糖尿病患者が増えてしまいました。現在は、これら生活習慣病の予防を多くの方が心がけていると思います。それでもなお糖尿病の足病変患者、いわゆる「足壊疽(えそ)」に陥って足を失うことになってしまう方が年間を通じ、当院皮膚科で入院加療されています。血糖管理がうまくいかないと末端の血管神経障害が日々悪化し、糖尿病足病変は次第に重症化してゆきます。
靴を長時間履く生活では荷重で「たこ」や「うおのめ」ができやすくなり、真菌(水虫)や細菌(黄色ブドウ球菌などの化膿菌)の感染も心配です。血糖管理が悪いと容易に感染を引き起こすようになり、小さな傷の修復も難しくなります。また、神経障害により足の感覚が低下することも多く、傷の悪化に気付かないまま放置し、足が腐ってしまう糖尿病性壊疽へと進行してしまうのです。寒冷時期には血管が収縮して末梢循環障害はより悪化しますから、小血管の血栓を生じるリスクもあります。ケアが不十分な患者さんには「適切な治療、自身の食事・運動療法で血糖管理に励み、四肢末端のマッサージと毎日の足洗浄、観察が必要」と指導しています。
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◇じんましんの原因にもなる寒風
「じんましん」というと、アレルギーなどが原因で起こるものというイメージがあるかと思います。しかし、それ以外にも日光や温熱、水との接触などで引き起こされる「物理性じんましん」というものもあります。冷たい風などが物理的刺激となって発疹やかゆみが現れる「寒冷じんましん」もその1つです。まれに常染色体の変異が優性遺伝することで家族性に発症するケースもあります。通常、じんましんなどのかゆみは患部を冷却すると和らぐことがありますが、こと、この寒冷じんましんには逆効果です。寒冷じんましんは、急激な冷却で重症化し、ショック症状をきたすことがあります。抗ヒスタミン剤の内服により、生活の質改善をすることができますので、適切な検査と指導を受けてください。
◇暖房器具の使い方にはご用心
寒い季節には安眠のため眠るときに暖房器具を使うこともあると思います。低温やけどは、あんかや湯たんぽ、こたつなどの比較的低温の暖房器具などで、時間をかけてゆっくりとやけどが進行した状態です。皮膚表面から真皮下方まで徐々に組織障害が進み、細胞が死滅するので潰瘍化してしまいます。血行が悪いと傷の治癒にはより多くの時間がかかり、治っても痕が残ります。小児や温度感覚が鈍くなってしまうことがある糖尿病患者さん、高齢者は、以下のような暖房器具対策が必要です。
・電気あんか、電気カーペット、電気敷毛布、湯たんぽなどは、直接体に接触しないように使用する
・電気あんか、湯たんぽなどは布などを巻いて伝わる熱を少なくして使用する
・長時間同じ部位に当てて使用しない
・就寝時に使用する場合は特に注意する
・痛みや違和感があるときは直ちに使用をやめる
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◇温湿度低下に合わせて保湿対策を
健康な皮膚の方でも、気温や湿度などの変化が激しい時期には加齢とともに皮膚バリア機能も正常に対応できなくなって、皮膚トラブルが多くなります。年間を通じて保湿と遮光を心がけることが最も大切なアンチエイジング。男女ともに日々のスキンケアを心がけたいものです。温度と湿度の低下にあわせて洗顔料や回数の調整、保湿対策に励みましょう。
医者は「大丈夫」と言ったが、症状は消えない。こういった場合の医者は、ヤブ医者か? 「知ってはいけない 医者の正体」の著者、二本松眼科病院(東京・平井)の平松類医師に聞いた。
眼科領域でよく聞くのは、白内障手術後の不満だ。白内障は目の中の水晶体が濁り、見えづらくなる病気で、手術では水晶体を「眼内レンズ」に替える。医者から「手術でよく見えるようになる」と聞いていたのに、患者は「よく見えるようになっていない!」と怒る……。本紙記者は患者から不満を聞く一方、眼科医からも「手術は成功しているのに文句を言う患者が多い」といった不満を聞いたことがある。
「医者の『よく見える』と、患者さんが望む『よく見える』に差があるのが問題。医者は『手術前よりよく見える』と伝えているが、患者さんは『メガネが不要になる』『老眼がなくなる』などと捉える。医者の言葉は患者さんに伝わらず、結果的に患者さんに不満が生じるケースは、眼科に限らず非常に多い」
■納得いく治療のためには“自衛”が必要
本来は医者がコミュニケーション能力を高めるべきだが、それを待っていたら患者はなかなか納得いく治療を受けられない。“自衛策”は、言い方の工夫だ。白内障の例なら「こう見えるようになりたい」「この見え方は困る」と伝える。
「冒頭の医者の『大丈夫』は、“自分が調べた範囲では問題がない”という意味で、“100%異常なし”ではありません。『ほかに考えられる病気は?』『ほかに受けた方がいい検査は?』などと聞いた方がいい」
「お変わりありませんか?」という医者の言葉も、医者と患者の認識のズレを生じさせやすい。患者は「症状が良くならない」という意味で「変わらない」と答えているのに、医者にとっての「変わりない」は「症状が悪化していない」の意味。何の手も打ってもらえない。具体的に「頭痛が続く」「不調が消えない」と伝えよう。
■医者の言葉をストレートに受け取らない
「様子を見ましょう」や「とりあえず治療しましょう」と言われ、戸惑ったり不信感を抱いたことはないだろうか? これらも医者の説明不足だ。正確には「今あせって治療をすれば、むしろ悪化する可能性がある。何もしないか弱い治療で様子を見よう」「現段階で原因は詳しく分からないが、症状があるのでとりあえずそれを抑える治療から始めよう/治療しながら病気を調べていこう」。こういった意味と知っていれば、前向きに治療に取り組めるはずだ。
平松医師が以前、目薬をさす群を2つに分けて、一方は目薬の一般的な説明、もう一方は治療目的、目薬の効用など詳細な説明をし、効果の違いを調べる研究を行った。すると、後者の群の方が効果が良かった。
「つまり、治療の意味を正確に把握し臨む方が、同じ治療でも高い効果が期待できる。さらに、プラセボ効果(偽薬でも効き目があると思い込んで服用していれば効果が見られること)もあります。医者はコミュニケーション能力の問題に加え、専門用語を多用しがち。意味が分からなければ、医者や看護師さんに確認する。また、実力がない医者ほど、専門用語を多用する傾向があります」
医者を質問攻めにしたら嫌われて治療がおろそかになるのでは……と考えて何も言えない人もいるだろう。しかし、そう考えることが、医者への信頼感がない証拠だ。
「別の信頼できる医師を探すことをお勧めします。確かに医者は多忙で、長時間かけて説明をする時間はない。しかしそれでも、何とか患者さんに病気や治療について理解を深めてもらおうとするもの。それができるのが、信頼できる医者です」
納得いく治療を受けるために。
歯ブラシを片手に、歯の磨き方を指導する先生を一生懸命真似る児童。誰もが経験した虫歯予防週間(6月4日~10日)の一場面だ。 子どものうちは、毎日真面目に歯磨きをしていても、大人になるにつれて怠り気味になり、一杯やっては歯を磨かずに寝落ちる日々。いつしか歯の状態は悪化し、ある日激痛に耐えきれず、よく選びもせずに手近な歯科医院に駆け込む……。思い当たる読者も多いのではないか。
歯の治療がうまくいかない患者が広く関東各地から訪れる、横浜市の医療法人社団敬友会理事長を務め、歯科医師として自らも治療にあたる久保倉弘孝歯科医師は言う。
「患者さんの口の中を見ると、ブラッシングが不十分な方がほとんど。適切なブラッシングができているかどうか自分ではなかなか分からないものです。患者さんに実際に歯を磨いてもらい、歯科衛生士が磨き残しはないか、ブラッシングに無理な力がかかっていないか、歯間に歯垢(プラーク)や歯石が残っていないかなどをチェックして、適切なブラッシングを指導するのが重要なのです。できれば毎月、せめて3カ月に1回、歯科医院で定期メンテナンスを受けてもらいたい」
歯科の定期メンテナンスでは、歯や歯茎の検診を行い、歯科衛生士がセルフケアを指導するとともに、歯に付着した歯垢や歯石を除去するクリーニングを行う。こうして予防意識を高め、虫歯や歯周病になりにくい口腔環境を整えることが、歯を健康に保つポイントだという。
歯科先進国といわれるスウェーデンやアメリカに比べて、日本では高齢になっても歯の健康を保っている人は少ない。平成19年(2007年)の「歯科疾患実態調査」(厚生労働省)によると、80歳時の残存歯数は日本の9本に対して、スウェーデンは21本、アメリカは17本。注目したいのは、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けていた人の割合で、日本はわずか2%。これに対してスウェーデンでは約90%、アメリカでは約80%が定期メンテナンスを受けていた。
その後の「歯科疾患実態調査」で、平成28年(2016年)に平均残存歯数約15本と、劇的に改善した数字が示されているが、前出の久保倉歯科医師は残っている歯が健康といえるのかどうか疑問だという。 「これは長年の臨床経験からの実感です。残念ながら下手な歯科医師が歯を改悪することもあるのです」
★間違いたくない歯科医院選び
虫歯が進行して、細菌が歯根内の組織である歯髄にまで達してしまった場合、歯を削って感染した歯髄を抜き、詰め物を充填する「根管治療」を行う。いわゆる「神経を抜く」治療だ。 歯の健康を司る、本来は重要な組織である歯髄を抜くのは、細菌による感染の拡大を防ぎ、歯を抜かなくてはいけないような事態を食い止めるためで、虫歯治療の最後の砦といえる。
ところが歯科医師の多くは、この根管治療をうまく行えていないというから驚く。根管治療後が思わしくないと、歯の内部にまで繁殖した細菌が歯根の先にある「根尖孔」から歯を支える歯周組織にまで漏れ出し、土台となっている骨(歯槽骨)にまで至る。最悪の場合、歯を失うだけでなく、歯槽骨も溶かされ、周辺の歯も影響を免れにくい。
「もちろん、十分な根管治療を行うスキルがない歯科医師が問題なのですが、私は歯科大学による教育や、あまりにも安い根管治療の診療報酬も改善してほしいと思います」 適切とはいえない歯科教育によって、治療がうまくいかない上に診療報酬を低く抑えられているため、多くの歯科医師はできれば根管治療を避けたいと思っているという。根管治療がうまくいかない一因はここにあったようだ。
では、一体誰を頼ればいいのか?
「予防に勝る治療はありません。まず、予防を心がけてください。その上でどうしても治療が必要になったら、慎重に歯科医院を選んでください。治療計画や費用をしっかり明示してくれて、2・3回で根管治療を終える歯科医師が、よい歯科医師です。だらだらと長く治療を続ける歯科医院や、痛くもないのに『神経を抜きましょう』というような歯科医師は避けたほうがいい」(久保倉歯科医師)
歯を痛めた末の手近な歯科医院への“飛び込み”は、避けたほうがよいのは言うまでもない。
★よく噛めば脳は活性化する
「よく噛んで食べると脳の働きがよくなる」という。顎の筋肉を活発に動かすと、顎から脳につながる血管の血流がよくなり、脳の働きに好影響(記憶を司る海馬の活性化など)を与えるといわれているのだ。
さらに、よく噛むことで胃腸の働きも活発になり、消化吸収が促進される。また、唾液の中の酵素には発がん物質の発がん作用を消す働きがあることも知られている。唾液の分泌は活発な咀嚼で促される。
そして注目したいのは、噛むことが認知症の予防につながる点だ。
神奈川歯科大の山本龍生准教授らが平成24年(2012年)に、『アメリカ心身医学会雑誌』に発表した研究報告(愛知老年学的評価研究/AGES=高齢者を対象にした疫学研究。愛知県の自治体を中心に、65歳以上の4425人を対象に調査した)によると、歯がほとんどない(残存歯数が一桁)にもかかわらず義歯を使用していない人は、20本以上歯が残っている人より、認知症による要介護認定を受けた頻度が高く、そのリスクは1・85倍だった。
また、かかりつけの歯科医院について、「ない」と答えた人は、「ある」と答えた人より1・44倍発症リスクが高かったという。
山本准教授らは、これについて複数の理由を挙げている。(1)噛めないために脳の血流を促すことができない、(2)満足に噛めないために食生活が偏り、認知症リスクを下げる野菜や豆などを摂取できない、(3)歯周病による慢性的炎症で分泌されるサイトカイン(炎症性物質)が脳神経細胞に悪影響を与えている。
自分の歯をしっかり守って、よく噛むことが認知症の予防につながるのだ。
「確かに、少量飲酒が体によいと結論づける研究は過去に複数出されてきました。しかしながら、飲酒量の質問内容などが詳細に欠けていたため、専門家の中には疑問を抱く人も少なくなかったのです。そんな中、2018年8月に信頼性の高い国際的な論文が医学雑誌『ランセット』に発表されました。その内容から、『少量飲酒が体によいとは言えなくなってきた』というのが、多くの研究者が抱いた印象ではないでしょうか」
そう答えてくれたのは、筑波大学地域総合診療医学の吉本尚准教授。吉本准教授は’19年1月、北茨城市民病院附属家庭医療センターに酒の悩みに対応する「飲酒量低減外来」を開設。精神科以外での専門外来を全国で初めて開いた医師でもある。
「少量飲酒が健康によい」と言われてきたのは、「アルコールが動脈硬化の進行を防ぎ、脳梗塞や心筋梗塞などの循環器疾患の発症リスクを下げる」とする研究結果があるためだ。吉本准教授が挙げた論文は、世界195カ国で実施された592の研究を統合したもので、500人以上の専門家が参加したという。
それによれば、心筋梗塞については、やはり少量の飲酒をしている人ほど発症リスクが低いことが確認された。具体的には、1日に男性で0・83杯、女性で0・92杯を飲んでいる人のリスクが最小だった。
しかし、よい影響は限定的だった。たとえ少量であっても酒を飲めば乳がんや口腔がん、結核にかかりやすくなってしまうため、「アルコールによる特定の病気の予防効果は、他の病気の発症リスクで相殺される」と指摘していたのだ。
健康への悪影響を最小化する飲酒量は「1日0杯」、つまり、まったく飲まないことが健康に最もよいとした。
「アメリカ心臓協会(AHA)も、酒を飲むことによる循環器疾患の予防効果を認めてはいますが、悪い影響のほうが多いため、予防のために飲むことは推奨していません」(前出・吉本准教授)
吉本准教授によると、飲酒は200以上の病気の発症リスクを高めたり、病状を進行させたりする他、「現代病」と言われるうつ病や認知症にも罹りやすくさせるという。「酒は百薬の長」と昔から言われてきたが、身体的な健康への影響に限って言えば、そうした考えは否定され、少量飲酒の効果も疑問視されているわけだ。
★ほどほどの量は1日平均で20グラム
「身もふたもない…」と感じたのは、酒を好む読者だけではないかもしれない。
前提として、酒を飲む・飲まないは個人の自由であり、心身がリラックスしてコミュニケーションを円滑にさせるというメリットに着目する人もいるだろう。大切なのは、健康を損ねにくい「ほどほど」の飲酒量を知り、自分で飲酒量をコントロールして、賢く飲むことではないだろうか。
参考になるのは、国の健康づくり対策「健康日本21」の中で、厚生労働省が取りまとめたアルコール関連の情報だ。厚労省は、国内外の研究結果をもとに飲酒のガイドラインを定めており、「節度ある適度な飲酒」として、1日の平均純アルコール量を20グラムとしている。20グラムとはおよそ、缶ビール500ミリリットル缶(ロング缶)1本、日本酒1合、アルコール7%の酎ハイ350ミリリットル缶1本、ウイスキーダブル1杯に相当する。近年増えているアルコール分の多い9%の酎ハイ(ストロング缶)だと300ミリリットルに当たるので、1缶もない計算になる。
なぜ「20グラム」なのか。厚労省によれば、40~79歳の男女約11万人を9~11年間にわたって調査した国内の研究で、1日の平均純アルコール量が23グラム未満で最も死亡リスクが低かったという結果が出たためだ。
★女性や顔が赤くなる人は注意を
ただし、女性はより少ないほうが望ましいという。
吉本准教授によると、女性は男性よりも肝臓が小さいため、アルコールの分解速度が遅く、また体内の水分が男性よりも少ないため、血液中のアルコール濃度が上がりやすい。結果、同じ量を飲んだとしても男性に比べて病気になる可能性が高まるという。
男性の2分の1から3分の2の飲酒量を適量とするのが世界的な水準だそうで、厚労省のガイドラインにもこれらは「付帯事項」として記載されている。
また、酒を飲むことで顔が赤くなるフラッシング反応を起こす人や高齢者も、基準より飲酒量を減らしたほうがいいという。
飲酒で顔が赤くなる人は、アルコールの分解がスムーズに進まず、発がん性物質であるアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすい傾向にあり、食道がんなどさまざまな病気が起こりやすくなるためだ。
一方、高齢者は若い人より身体機能が劣るので、飲酒によって転倒などのケガが起こる可能性が高くなってしまう。
このように1日における酒の「ほどほど」を知ったら、これを1週間の量に換算して自分なりに飲む量を調整するといいだろう。ビールをよく飲む人はまず頭の中でロング缶を7本並べてみる。そして、曜日に応じて分配するといった具合だ。吉本准教授も専門外来などで飲酒のアドバイスをする際は、週単位での調整を勧めているという。
ただし、飲まない日を増やしたことで、飲む日にたくさん飲んでいいわけではない。短時間での飲酒量(ビンジ飲酒)が増えると、急性アルコール中毒やケガ、事故を起こす可能性が高くなってしまうからだ。世界保健機関(WHO)は、1日の純アルコール量が60グラムを超えないよう推奨している。
吉本准教授らのグループが、国内の大学生2177人を対象にビンジ飲酒に関する調査を行ったところ、1年間に1回以上ビンジ飲酒をしていた人は、していなかった人に比べてケガを起こす確率が25・6倍高かった。
この調査でのビンジ飲酒の定義は世界的な基準にならい、「2時間での純アルコール量が男性50グラム以上、女性40グラム以上」とした。ビールを飲む男性であれば、飲む量が多い日であっても2時間でロング缶2本に抑えたほうがいいことになる。
健康を維持して長生きすることが、万人にとって幸せなわけではないが、関心のある人は自分が日頃、どれくらい飲んでいるかを確認し、「ほどほど」と比較して調整してはどうだろう。
健康診断で肝機能や尿酸値などの異常を指摘されたり、飲酒量が普段よりも増えてきたりして、酒との付き合い方を真剣に考えた方がいい場合は、内科医に相談するのも1つの手だ。
吉本准教授は「禁煙外来や睡眠外来のように、お酒の悩みを身近に相談できる文化をつくりたい」と話しており、そんな時代もそう遠くないうちに来るかもしれない。
水分の“不足”も“過多”も避けるのが、暑い季節の上手な水分補給だ。汗などで水分が体外へ排出されているのに、摂取を怠れば脳梗塞や心筋梗塞など危険な病状に陥る。さらに水分の摂り方を誤れば、体への負担が増える。
喉の渇きから一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれずに水分が血中に流れ、低ナトリウム血症を起こして、意識を失うことがある。そのためバランスよく摂らなければならないのだ。
次第に気温が上がり、時には夏日を思わせる日もあるこの時期。少し体を動かしただけでも汗ばみ、喉の渇きで冷たい水が美味しくなり始める頃だ。
水分補給の重要性を予防医学の専門家、内浦尚之医学博士はこう説明する。
「水は大事です。喉の渇いている時に水分を摂らないと、人の体は動きにくくなり、酸素や栄養素を細胞へ届ける働きも鈍くなります。通常、摂取された水分は、血液の混ざった毛細血管を通り脳に運ばれます。その水分が不足すると血液の粘性が増し、流れが悪くなり、詰まりやすくなる上、そこから脳梗塞などへ繋がる可能性も出てきます。病気に罹りにくい健康な体をつくるには、水分補給は欠かせないのです」
散歩でも、ウオーキングでも、喉が渇いたと思ったら、ためらわずに必ず水分を補給することだ。
前出の内浦氏が、さらにこう語る
「水分は慌ててガブ飲みはしないほうがよいでしょう。よく1日に約1.5~2㍑の水を摂るべきという話を聞きますが、仮に2㍑の4分の1の500ミリ㍑しか飲まなくても、そう心配はいりません。どういうことかと言いますと、腎臓が体内の水分量をコントロールしてくれるからです。水分が不足すれば腎臓が尿を減らし、体内の水分をキープする。確かに量は体重の4%程度なので、体重50キロであれば2㍑となりますが、実際には一般的に食事から1日0.8~1㍑の水分を摂取しているため、意識して飲む水の量は1㍑前後が目安。喉が渇いていなければ無理に飲む必要はないのです」
ただし、「一度に飲む量は注意が必要」という。
「腎臓の尿の処理速度は、毎分16ミリ㍑が限界。そこへ炎天下で仕事をしている人などは水分を摂りすぎて、体内の電解質(ナトリウムとカリウム)のバランスが崩れてしまい、低ナトリウム血症を起こして意識を失ってしまうことがあるのです」(内浦氏)
しかし、前述したようにいくら喉が渇いているからといって、一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれない水が血中に流れ、ナトリウム濃度が低下してしまうのだ。健康ライターの深見幸成氏はこう語る。
「こうした状態を放置すると、頭痛や食欲不振の症状などが表れ、重度の場合は痙攣や昏睡状態に陥ることもあります。加えて、水分の摂りすぎは、花粉症などのアレルギー症やアトピー性皮膚炎を悪化させることも分かっています。また、摂取する場合、水分の温度は冷たすぎず熱すぎない程度のものが好ましい。それも一気にガブ飲みするのではなく、少しずつ飲むこと。冷たい水は体を冷やすし、腹痛や頭痛、めまいを引き起こすこともあります。やはり常温か白湯がいいとされます。5~10度の水道水ぐらいが無難でしょう」
ここで、もう1つ重要なことは、寝る前と起床時の水分は健康の源といわれ、非常に大切だということだ。
人は寝ている間に、コップ1杯から2杯分の汗をかく。しかもその間、当然ながら水分は補給されない。その状態が、脳梗塞などを引き起こす原因ともなる。また、起床時の水分補給は、消化管を刺激して排便を促し、便秘解消にも繋がるという。
ちなみに寝ている間、体内では昼間に働いていた臓器や筋肉などを休めたり、肌の修復などが行われているが、水分が不足すると栄養が各所へ運ばれにくくなり、良質な睡眠とは言えない状態になる。
★飲むほど水分不足になる酒類
ところで、水分補給に最も向いていないのは、どんな飲み物なのか。ある専門家は「茶の葉が材料になっているのはNGです」とハッキリ言い、こう続ける。
「日本茶や紅茶、ウーロン茶は水分補給には適していません。いずれもカフェインが含まれているからです。カフェインには利尿作用があるため、飲むほど体内の水分が排出されてしまいます。水分補給が目的なら、茶の葉を用いない麦茶やコーン茶、ハーブティーを選ぶのが正解です」
また、コーヒーや栄養ドリンクも、カフェインが多く含まれるため、水分補給には適していない。やはり適しているとなると、白湯か常温水になってくる。冷水は、たくさん飲むと胃腸の働きが悪くなり、消化不良や下痢につながってしまうからだ。
しかし、適さないと言っても、喉が渇いて他に飲み物がない場合は、カフェインが入っていたとしても、何も飲まないよりはマシだ。
もう1つ、気温が高くなると飲みたくなるのがビールをはじめとするアルコール類。こちらも水分補給よりむしろ水分補給を招く場合が多い。
「ビールなどは、飲んだ分より多くの水分が排出されることが多い。利尿作用がある上に、肝臓で分解される際に大量の水分を使う。アルコールの度数の高い酒ほど多くの水分が使われ、飲めば飲むほど水分不足になります。そのため、アルコールと一緒に水を飲むのが理想的です。これでお分かりの通り、飲みすぎてしまった後は、体は相当な脱水状態になっています。だからこそ、寝る前に十分な水分補給をすることが必要なのです」(前出・深見氏)
今や我々の周囲にはコンビニをはじめ、自動販売機などで、ジュースや炭酸飲料が溢れかえっている。特に甘い炭酸飲料などは少量でも満足してしまうため、水分が不足がちになり、また余計に喉が渇くという悪循環にも陥る。
「甘い飲料水には注意が必要です。スポーツ飲料も気をつけたい。運動中や暑い時などは汗をかき体内の塩分を消費するため、水分と合わせてエネルギーの補給が必要になります。糖分や疲労回復効果のあるクエン酸などがふくまれていることから、一見すると水分補給に適していると思われますが、そこに含まれている糖分はかなりの分量です。運動量が多くない人は、糖分、ナトリウム過多となるので、気をつけましょう」(医療関係者)
これから季節は暑い夏に向かっていく。水分不足には十分に気をつけたい。
そもそも、なぜ人は「いびき」をかくのか。睡眠時無呼吸症候群の診断と治療に携わって25年、年間2万4000人を診療する「御茶ノ水呼吸ケアクリニック」(東京都千代田区)の村田朗院長はこう話す。
「いびきをかくのは、空気の通り道である気道が狭くなっているからです。人は寝ているとき、体を休めるために全身の筋肉が緩むわけですが、それは舌も例外ではありません。舌や口腔周囲の筋肉が緩み、重力によって下に下がることで気道が狭くなり、空気が通る際に気道の壁が振動することで音が発生するわけです」
この状態がひどくなり、気道が完全に閉じてしまうと空気が入らなくなってしまう。つまり、呼吸ができなくなってしまう。すると、脳が命の危険を察知して覚醒し、呼吸を促す指令を出して喉を開かせ、空気が入るようにさせる。だがそれも一時的であり、また気道が狭くなっていびきをかくようになり、やがて無呼吸状態を起こす。前出の村田院長によれば、これがいびきと無呼吸を繰り返す仕組みだ。
7時間の睡眠の中で、10秒以上にわたり呼吸が止まったり、止まりかけたりすることが1時間に5回以上繰り返す状態を「睡眠時無呼吸症候群」と言い、これらの回数が5回から15回未満だと軽症、15から30回未満が中等度、30回以上だと重症とみなされる。
ではなぜ、いびきをかく人とかかない人がいるのか。村田院長はこう説明する。
「最も大きな原因は顔の骨格です。日本人を含む東アジアの人は顔が上下に長く、奥行きが狭いという特徴があり、あごが小さい傾向にあります。あごが小さいと喉が狭くなりますからいびきをかきやすくなります。つまり、日本人はそもそもいびきをかきやすい性質を持っているのです」
こうした人種的な特徴に加えて、肥満のために喉に脂肪がついていたり、加齢や飲酒によって筋肉が緩みがちになったりすると気道が狭くなりやすくなり、発症リスクが上がるという。 また、喫煙している人は喉の炎症と粘膜の肥大を起こしやすくなり、結果、気道も狭くなりやすくなるそうだ。 患者の男女比について正確なデータはないというが、生理のある女性は女性ホルモンが呼吸を促すため無呼吸にはなりにくく、一方で閉経後は女性ホルモンの分泌が減るため男女間の違いはなくなるという。 村田院長が運営するクリニックにおける患者の男女比は7対3であり、20代から90代のうち多いのは40代から70代だという。
有病者の脳卒中リスク11倍に
この病気によって睡眠の質が低くなると、夜間頻尿や日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが起きやすくなるが、「本当に怖いのはさまざまな合併症にある」と、村田院長は次のように指摘する。
「いびきや無呼吸によって血中の酸素濃度が低下すると、心臓が無理に血流を増やして全身の筋肉や臓器に酸素を届けようとするため、心拍数や血圧が上昇します。すると、高血圧症や狭心症のほか、命に直接危険を及ぼす心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性も大幅に上がってしまいます。複数の研究データによると、睡眠時無呼吸症候群の人はそうでない人に比べて高血圧症と狭心症になるリスクがおよそ3倍、心筋梗塞は約4倍、そして、脳卒中を起こす可能性は11倍にも増えるという結果が出ています。最悪の場合は、睡眠中に不整脈が起きて突然死してしまうこともあります」
また、頭の血管が拡張することで、起床後に片頭痛と同じような痛みが起きやすくなったり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて血中糖度を下げるホルモンのインスリンが効きづらくなることで、糖尿病になりやすくなったりもするそうだ。
★鼻から空気送る治療が最も有効
診断までには2つのステップがある。まずは自宅でできる簡易検査を行い、異常が指摘された場合に精密検査を行うというもの。
簡易検査では、自分で小型の機器を使ってセンサーをつけ、睡眠時における体内の酸素飽和度を調べて無呼吸の有無を確かめる。精密検査は医療機関に1泊して臨床検査技師が全身の20カ所にセンサーをつけて呼吸の状態や脳波、心電図などを計測する。精密検査はポリグラフ(PSG)検査と言い、大学病院や睡眠障害を専門にするクリニックなどで行われている。この流れを辿った上で睡眠時無呼吸症候群だと診断されれば、健康保険を利用して治療を受けることができる。
治療方法としては、主に2つが挙げられる。無呼吸または低呼吸の回数が1時間に20回未満の患者を対象としたマウスピースを使う方法と、20回以上の人が適用となるCPAP(シーパップ)療法だ。
マウスピースを着けると下あごが上あごよりも前方に出るため気道が広がりやすくなり、いびきの軽減が見込める。ただし、無呼吸をなくすことはできず、中等度以上の患者への効果は低いという。 一方のCPAPとは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」の英語の略称であり、専用の機器を使って鼻から人工的に空気を送り、その圧力で気道を広げる治療方法。医療機関が提供する機器を患者が自宅で使用する。
「CPAPの仕組みはシンプルですが、これが睡眠時無呼吸症候群の治療では最も効果が高く、低酸素状態も無呼吸もなくなります。結果的に合併症のリスクがなくなります」(前出・村田院長) 費用はマウスピースの作製が約1万5000円で、CPAP療法が月に約5000円。いずれも人工的に気道を広げるものなので、継続的に治療を行う必要がある。
軽症患者を除けば治療のメーンはCPAPになるが、肥満や飲酒、喫煙によって症状がひどくなっている人は、減量や飲酒量の低減、禁煙を図ることで症状を和らげる必要がある。 また、仰向けでなく、横向きに寝ることも舌の位置がずれるため有効だそうだ。睡眠導入剤は筋肉を緩める作用があるため、症状をひどくする恐れがあることにも留意したい。
「生活習慣病が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まることは、一般の方にも少しずつ知られるようになってきました。しかし、睡眠時無呼吸も生活習慣病と同様に重い合併症を引き起こすことは、まだまだ知られていません。家族などにいびきをかいていることを指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を得意とする医療機関で、検査を受けることを勧めます」(同)
水分の“不足”も“過多”も避けるのが、暑い季節の上手な水分補給だ。汗などで水分が体外へ排出されているのに、摂取を怠れば脳梗塞や心筋梗塞など危険な病状に陥る。さらに水分の摂り方を誤れば、体への負担が増える。 喉の渇きから一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれずに水分が血中に流れ、低ナトリウム血症を起こして、意識を失うことがある。そのためバランスよく摂らなければならないのだ。
次第に気温が上がり、時には夏日を思わせる日もあるこの時期。少し体を動かしただけでも汗ばみ、喉の渇きで冷たい水が美味しくなり始める頃だ。 水分補給の重要性を予防医学の専門家、内浦尚之医学博士はこう説明する。
「水は大事です。喉の渇いている時に水分を摂らないと、人の体は動きにくくなり、酸素や栄養素を細胞へ届ける働きも鈍くなります。通常、摂取された水分は、血液の混ざった毛細血管を通り脳に運ばれます。その水分が不足すると血液の粘性が増し、流れが悪くなり、詰まりやすくなる上、そこから脳梗塞などへ繋がる可能性も出てきます。病気に罹りにくい健康な体をつくるには、水分補給は欠かせないのです」
散歩でも、ウオーキングでも、喉が渇いたと思ったら、ためらわずに必ず水分を補給することだ。
前出の内浦氏が、さらにこう語る
「水分は慌ててガブ飲みはしないほうがよいでしょう。よく1日に約1.5~2㍑の水を摂るべきという話を聞きますが、仮に2㍑の4分の1の500ミリ㍑しか飲まなくても、そう心配はいりません。どういうことかと言いますと、腎臓が体内の水分量をコントロールしてくれるからです。水分が不足すれば腎臓が尿を減らし、体内の水分をキープする。確かに量は体重の4%程度なので、体重50キロであれば2㍑となりますが、実際には一般的に食事から1日0.8~1㍑の水分を摂取しているため、意識して飲む水の量は1㍑前後が目安。喉が渇いていなければ無理に飲む必要はないのです」
ただし、「一度に飲む量は注意が必要」という。
「腎臓の尿の処理速度は、毎分16ミリ㍑が限界。そこへ炎天下で仕事をしている人などは水分を摂りすぎて、体内の電解質(ナトリウムとカリウム)のバランスが崩れてしまい、低ナトリウム血症を起こして意識を失ってしまうことがあるのです」(内浦氏) しかし、前述したようにいくら喉が渇いているからといって、一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれない水が血中に流れ、ナトリウム濃度が低下してしまうのだ。健康ライターの深見幸成氏はこう語る。
「こうした状態を放置すると、頭痛や食欲不振の症状などが表れ、重度の場合は痙攣や昏睡状態に陥ることもあります。加えて、水分の摂りすぎは、花粉症などのアレルギー症やアトピー性皮膚炎を悪化させることも分かっています。また、摂取する場合、水分の温度は冷たすぎず熱すぎない程度のものが好ましい。それも一気にガブ飲みするのではなく、少しずつ飲むこと。冷たい水は体を冷やすし、腹痛や頭痛、めまいを引き起こすこともあります。やはり常温か白湯がいいとされます。5~10度の水道水ぐらいが無難でしょう」
ここで、もう1つ重要なことは、寝る前と起床時の水分は健康の源といわれ、非常に大切だということだ。 人は寝ている間に、コップ1杯から2杯分の汗をかく。しかもその間、当然ながら水分は補給されない。その状態が、脳梗塞などを引き起こす原因ともなる。また、起床時の水分補給は、消化管を刺激して排便を促し、便秘解消にも繋がるという。 ちなみに寝ている間、体内では昼間に働いていた臓器や筋肉などを休めたり、肌の修復などが行われているが、水分が不足すると栄養が各所へ運ばれにくくなり、良質な睡眠とは言えない状態になる。
★飲むほど水分不足になる酒類
ところで、水分補給に最も向いていないのは、どんな飲み物なのか。ある専門家は「茶の葉が材料になっているのはNGです」とハッキリ言い、こう続ける。 「日本茶や紅茶、ウーロン茶は水分補給には適していません。いずれもカフェインが含まれているからです。カフェインには利尿作用があるため、飲むほど体内の水分が排出されてしまいます。水分補給が目的なら、茶の葉を用いない麦茶やコーン茶、ハーブティーを選ぶのが正解です」
また、コーヒーや栄養ドリンクも、カフェインが多く含まれるため、水分補給には適していない。やはり適しているとなると、白湯か常温水になってくる。冷水は、たくさん飲むと胃腸の働きが悪くなり、消化不良や下痢につながってしまうからだ。 しかし、適さないと言っても、喉が渇いて他に飲み物がない場合は、カフェインが入っていたとしても、何も飲まないよりはマシだ。
もう1つ、気温が高くなると飲みたくなるのがビールをはじめとするアルコール類。こちらも水分補給よりむしろ水分補給を招く場合が多い。
「ビールなどは、飲んだ分より多くの水分が排出されることが多い。利尿作用がある上に、肝臓で分解される際に大量の水分を使う。アルコールの度数の高い酒ほど多くの水分が使われ、飲めば飲むほど水分不足になります。そのため、アルコールと一緒に水を飲むのが理想的です。これでお分かりの通り、飲みすぎてしまった後は、体は相当な脱水状態になっています。だからこそ、寝る前に十分な水分補給をすることが必要なのです」(前出・深見氏)
今や我々の周囲にはコンビニをはじめ、自動販売機などで、ジュースや炭酸飲料が溢れかえっている。特に甘い炭酸飲料などは少量でも満足してしまうため、水分が不足がちになり、また余計に喉が渇くという悪循環にも陥る。 「甘い飲料水には注意が必要です。スポーツ飲料も気をつけたい。運動中や暑い時などは汗をかき体内の塩分を消費するため、水分と合わせてエネルギーの補給が必要になります。糖分や疲労回復効果のあるクエン酸などがふくまれていることから、一見すると水分補給に適していると思われますが、そこに含まれている糖分はかなりの分量です。運動量が多くない人は、糖分、ナトリウム過多となるので、気をつけましょう」(医療関係者)
これから季節は暑い夏に向かっていく。水分不足には十分に気をつけたい。
ニキビができちゃった、新しくかったメイクが肌に合わなくて荒れてしまったなどという一般的な皮膚の問題は女子会の話題になることはあるでしょう。
しかし、背中などにイボができてしまったことってなかなか人には相談できない悩みではないでしょうか?
そこでWomen’s Health Magazineが、あまり友達には相談し辛いイボについてお医者さんの意見を元に原因と対策方法を教えてくれています。
●100種類以上
ニューヨークの皮膚科の先生によると、イボは130種類ものHPVウイルスが原因でできるみたいです。HPVが性器の周りにイボを作る原因となることは知っているかもしれません。
しかし、足裏、顔、手、指にできるイボもHPVが原因のことが多いみたいです。
●体の部位によってイボの原因は違う
1つ目で説明した通り、イボには100種類以上の原因菌があります。
なので、体の他の部位にあるイボが転移するということはほとんどないみたいです。だから、彼の指や体にあるイボが女性の性器のイボの原因になるということは心配しなくて良いみたいです。
●イボはうつりにくい
子供は免疫力が低いためイボができやすいみたいです。しかし、大人になれば他人のイボがうつるということは稀みたいです。なので、皮膚に傷がない場合は何かを触ったからイボができるという心配はそこまでしないで良いみたいです。
●イボは簡単に治せる
イボができると嫌かもしれませんが、イボは何週間か何ヶ月かすれば勝手に治ってしまうみたいです。
もしも恥ずかしい場所にできている場合は何週間も待てないと思うかもしれませんが、イボ用の塗り薬を毎晩塗ることでイボが治るのを早められます。
●イボが消えない場合は皮膚科へ
イボは自然治癒が可能ですが、なかなか消えない場合や同じ様なイボが複数で切るようであったら皮膚科にかかった方が良いみたいです。皮膚科では、イボを凍結させて成長を止まらせたり、他の薬を使って治療することが可能です。
どちらにせよ、イボができたらなるべく触らずにそっとしておくのが1番見たいです。正しいイボの知識を持てばイボができた時に焦らなくてもすむはず!
病気の治療には薬が欠かせない。しかし、市販薬や医者に処方された同じ薬でも、飲む時刻やタイミングで効き目がまったく違い、副作用の問題も起こる。 また、急な発作や病気が発症しやすいとされる“魔の時間帯”を知ることで、投薬のタイミングや治療を考える“時間治療”も重要だと言われている。薬をいつ、どのようなタイミングで飲めば、薬の効能が認められるのだろうか。
人間は、通常の生活を送っていれば、朝日が昇ると活動を始め、日が落ちると休むという“体内時計”を持っている。専門家に言わせると、最近、この体内時計が、薬物療法の新たな手段として脚光を浴びているというのだ。
医学博士の内浦尚之氏はこう説明する。
「人体の様々な機能は、ほぼ24時間を1単位としていることが、最近、分かってきました。体温や血圧は夕方頃に最も高くなりますし、尿量が多くなるのは午前中です。自分では意識しないうちに体の中にこうしたリズムが刻み込まれているのです。また研究報告として、実は体内時計を作っている遺伝子があるという事も判明している。これは人間が環境に適応するために、長い進化の過程で獲得したシステムと言えます。従って、薬も体内で作用する以上、体内時計の影響を受けるのです」
薬が作用するまでには、胃や腸から吸収される行程を通るが、胃腸のリズムによって吸収の早さや善し悪しが変化する。胃腸が活発に動く時間帯だと、早く吸収され効き目も早い。 だが、内浦氏は「吸収能力が低い時だと効果はその分、落ちる」と言う。さらにこう語る。「体の薬への反応性も、時間帯によって違います。ですから、薬を飲むとき、時間を考慮することによって、薬の効き目や安全性を高めることもできるのです」
もちろん、リズムという点で言えば、病気も体の機能が大きく関係するため、その働き具合によっては症状が悪化することもある。昔から「厄年」とか「厄の時刻」などと呼ばれてきた所以でもあり、病気になりやすい時間帯があることが経験的に知られている。では、病気になりやすい時間帯とは、どういう事を意味するのか。専門医に聞いてみると、病状は生体リズムと密接に関わっており、変化もするという。
放送メディアなどで講演活動をしている日本大学薬学部の高木千佳子教授は、こう説明する。
「狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、早朝から正午に発生しやすく、その理由は血圧の上昇が目覚めとともに著しいことや血液が固まりやすくなっていることが考えられます。そこで、早朝から午前中の時間帯の血圧をうまくコントロールすることが大切です。また、慢性関節リウマチで問題となる“朝のこわばり”は、関節周囲の炎症のむくみが朝方に強くなることにより起こります。
歯痛などの痛みも、夜間から早朝にかけて発現するし、消化性潰瘍も夜間に胃酸の分泌が増加するために起きます。ですから、こうした時間帯に薬を飲用すれば効果が得られると言えるでしょう」冒頭部分で“魔の時間帯”にも触れているが、病気は我々を「隙あらば」と狙っている。だが、この悪魔は絶えず動き回っている訳ではないようだ。活発に動き回る時間とそうでない時間がある事が、疫学的調査で分かってきたと言われる。ここで、様々な疾患についての“魔の時間帯”を見てみよう。
●急性心筋梗塞、狭心症など虚血性疾患
自律神経が副交感神経へスイッチする午前4~6時の間は、心臓の脈拍数や血圧が急上昇するため、心臓への負担大きくなり、不整脈が起こりやすい。ピークは、目が覚めてから2時間以内に起こることが多い。その次のピークは夕方だ。
●気管支喘息
朝4~5時という朝の目覚め前に発作が起きる事が多い。気管支の太さが夜眠ると細くなり、明け方が最も細くなる。明け方は免疫力が衰えている上、気管支粘膜の過敏性を刺激する朝の冷たい空気も引き金になる。就寝前に発作を抑える薬を飲むと効果が出る。
●胃潰瘍
胃酸の分泌は夜間に高まるため、胃潰瘍も夜中に出来やすい。夜中に食べると、さらに胃酸の分泌を高めることになる。潰瘍の薬は夜に服用したほうがよい。
●脳梗塞
心筋梗塞と同じように、脳の血管が詰まるために起きる病気。心筋梗塞と同様、早朝から午前中に起きやすく“魔の時間帯”と言える。
●がん細胞の増殖
細胞の増殖やホルモンの分泌など、体の代謝が最も活発になるのが夜間の睡眠中。昼間に傷ついた細胞などを整備する時間帯で、がん細胞もこの時に増殖する。
★勝手に飲み方を変えない!?
薬の正しい飲み方として、一般的には、体内の目的の場所で最も薬の効果が発揮されるように、形状や飲む時間帯と間隔、量などが工夫されている。そのため、「1回2錠、1日3回食後30分以内に水またはぬるま湯で飲む」などと、定められた用法、用量をきちんと守って服用することだ。 罹患者のほとんどは、こうした飲み方や、注意書きを読んで忠実に実践しているはずだ。ところが近年、薬物治療の効果を高めるため、1日の中で最も適切な投与時刻を設定する必要性が、クローズアップされている。
「薬の効果を上げる投与時間や投与方法を選べば、副作用が少なく、効果が高い治療が期待できる。ですから、新たに生体リズムという観点から医学を見直さなければならなくなってきています。薬の効き目はいろいろな要因で左右されますので、一概には言えませんが、薬を処方する医師もこれからは食後3回と言った固定した考えではなく、体のリズムに合った有効時間を選べるように方向転換していくようになるでしょう」(日本薬学会関係者)
大事なことは患者が勝手に薬の飲み方を変えるのは危険だということ。「この時間帯なら効き目がある」といった自己判断は絶対にやるべきではない。まずは、医師や薬剤師に相談してから服用することが肝心である。間違った飲み方をすると「毒」にもなる薬。正しい飲み方を知り、それを必ず守りたいものだ。
血栓症とは、血液中にできた血栓が血管を詰まらせることにより引き起こされる病気をいう。心臓に出来ると心筋梗塞、脳なら脳梗塞、肺に出来ると肺塞栓と呼ばれている。夏に「倦怠感」「めまい」「頭痛」「ふらつき」「しびれ」を感じると、まずは熱中症を疑う人も多いが、実は「血栓症」だったという人も少なくない。
実際、国立循環器病研究センターによると、2008~2013年の6年間の脳梗塞患者の件数は3~5月(961件)、9月~11月(917件)、12月~2月(967件)に対して、6~8月(1004件)のほうが多かった。 「他にもあります。65歳以上の脳梗塞の患者2万1000人以上を調べた台湾の研究チームによると、平均気温が32度を超えると27度~29度の時に比べ、脳梗塞による死亡率が1・66倍に増えることが報告されています」
こう語るのは、都内で総合クリニックを営む医学博士・内浦尚之院長だ。
そもそも血栓はどうやって作られるのだろうか? その点について内浦院長は、次のように説明する。「正常な血管では、血管内で血液は固まりません。ケガをして血管から血液が外に流れ出て初めて固まります。ところが、血栓ができやすい血管は、主に3つの問題点があるといわれています。これは血管壁の状態が悪い、血液の流れが悪い(うっ滞)、血液の成分が変わる、ことをいいます」
一般的に、健康で若々しい血管はゴムのようにしなやかで、その内側もすべすべしているといわれる。ところが血管が老化すると、硬く脆くなり、内側がベタベタしてくる。
「老化した血管では、血液中の悪玉コレステロール等が血管壁にとりつき、その中に侵入しようとするため、それを排除しようと白血球の仲間が集まってきます。その後、白血球の仲間は、悪玉コレステロール等を食べた後に死んでしまう。その死骸と残ったコレステロールがプラークとなり、それが何らかの刺激によって破れると、その傷を修復するため血小板が集まってきてかさぶたを作る。これが血栓です」(前出・内浦院長)
ちなみに健康な血管は、出血が収まると傷口周辺の内皮細胞が増殖して血管壁は修復される。その後は血液中のピラスミンという物質などの働きで、血栓は溶かされ跡形もなくなるといわれている。 しかし、動脈硬化や老化が進んだ血管は、このシステムがうまく働かない。そのため血液が澱むことで血栓ができることもあり、その代表格が心房細動だ。
この病気は、脳梗塞(脳塞栓)を引き起こしやすい事で知られているが、それは、心臓が震えるだけで血液を外に出せないから。血液同士がぶつかり血栓となるからだという。
昭和大学横浜市北部病院循環器センター心臓血管外科・石野隆成医師はこう語る。「これから本格的な夏に入りますが、人は暑いと熱を放出するため血管が広がり、血圧が下がって血流が悪くなる。加えて、水分補給が十分でなく、脱水症状を起こすと血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが増すのです。重症例では、突然、失神や心肺停止を起こす。しかし、軽症、中等症では、呼吸困難、全身倦怠感、不安感、動悸、冷や汗などになるが、特有の症状はない。『なんとなく具合が悪い』と言った訴えもありますし、熱中症と間違えやすいこともあります」
★血液が固まりやすいのは早朝
こんな例がある。ある50代の男性は、以前から喘息で病院にかかっていた。猛暑のある日、「熱中症かもしれないのですが…」と来院した。病院ではさまざまな検査に加え、心不全のマーカーとなる物質の値を測定すると、やや高めの数値。肺血栓塞症か判断に迷う値だったが、念のため、さらに診察を加えた。
ところが、それまでは体調は悪いものの、自分で歩き、話も出来ていたこの男性が、待合室で突然、心肺停止に至った。幸いに病院の中だったので、命は助かったが、処置が数分遅れていたら難しかった、と担当医は語った。 最近は若い人でもコレステロールや中性脂肪の高い人が増えている。そういう人のほとんどは血液の流れが悪い。中でも、血流の澱みによって起きる血栓症は、動脈より静脈に多いといわれる。
飛行機などで同じ姿勢で座っていると発症する急性肺血栓塞栓症などは、血液が心臓から吐き出される動脈よりも、心臓に戻る静脈のほうが血流がゆっくりしていて、血栓ができやすい。
「血液の成分のほとんどは水分です。夏に大量の汗をかいた後に、利尿作用のあるビールや度数の高いお酒ばかり飲んでいると、血液が固まりやすい成分に変わってしまう。水分が抜けた分だけ血小板をはじめとした血液凝固成分の濃度も濃くなるからです。ですから、夏場にダイエットする人も注意が必要です。人間は1日に1~2㍑程度の飲み水が理想といわれていますが、それ以外に食べ物からも摂っています。ダイエットで食べない人は、その分、水分を多く摂らなくてはなりません」(健康ライター・深見幸成氏)
人間の血液凝固能力には日内変動がある。いつが固まりやすいのか?
「これは就寝してから長時間、体を動かさない早朝が、一番血液が固まりやすいといわれます。また、甘い物や肉類を過食したり、ストレスを感じたり、興奮したり、激しい運動をした後も血栓ができやすいことが分かっています。薬もピルやステロイドを使っている人は、注意が必要です」(同)もちろん、血管に圧力がかかり続ける高血圧、食事前後で血糖値が大きく変動する糖尿病、血液中に抗リン脂質抗体が増える膠原病などのほか、歯周病や風邪の人も血栓に罹りやすいといわれる。
また、血栓ができやすいということは、脳梗塞のリスクが高まることも意味する。
ろれつが回らない、言葉が出なくなる、顔に歪みが出る、片方の手足に力が入らないなどの症状が表れた場合、すぐに救急車を呼ぶようにしたい。または近くの内科、循環器科の医師などに相談することが大事である。
命を脅かす血栓には、くれぐれもご注意を。
生活習慣が乱れているとか、外食が多いとか、思い当たる人はちょっと目を通してほしい。パートナーとの夜をサポートするちょっと目からウロコな話があるのです。[取材協力/岸本良美(お茶の水女子大学寄附研究部門准教授)、岡田 弘(獨協医科大学越谷病院副院長)、桑原弘樹(桑原塾主宰。NESTA JAPAN PDA)]
亜鉛、抗酸化、葉酸。サプリでうまく摂取しよう
30代はパートナーと迎える人生の大きなイベントが目白押しの時期。そんな年代に必要とされる栄養素が3つありました。
1. 亜鉛~精子の力を高め活発にする栄養素
亜鉛といえば牡蠣やホタテなどに含まれる必須ミネラルの一種であり、筋肉や肝臓などに含まれる成分だが、実は精液の中にも多く含まれている。亜鉛は精子の生成を促すのに加え、運動率を高める役割も持つため、食品だけではなく吸収率のいいサプリで摂取するのもひとつの方法である。
しかし、島国で昔から海産物を食べる習慣があり、かつさまざまな国の料理を食べている日本人は比較的亜鉛が足りている民族。事実、「平成25年国民健康・栄養調査」を見ても30代男性で摂取基準10mgに対して平均摂取量は9.2mg。つまり充足率92%だから、大抵は少し意識的に摂るだけでOKということになる。
普段の食生活を見直して明らかに亜鉛の摂取量に問題があるようなら、食事やサプリで補う必要があるが、そうでなければ無理に摂ることもない。覚えておこう。
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2. 抗酸化~精子の量ではなく「質」を高める
「精子の数を増やすのと抗酸化力を高めるのに何の関係が?」と思う人も多いだろう。しかしこの両者には深い関わりがある。精子がストレスに弱いことはよく知られているが、実は体内の活性酸素から受けるストレスもかなりのもの。それは精子の質を低くする一因ともいわれているのだ。
精子が卵子と結びつくにはただ量が多ければいいってものではなく、濃度、運動率ともに高くないといけない。抗酸化力アップはそこに結びつくのである。具体的には、男性の体内の抗酸化力を高めると精子の中のDNAの損傷を防ぎ、質のいい精子だけが残る形となる。もちろんそれだけで即妊娠につながるわけではないが、妊活するなら精子の質を高めることは念頭に置いておいていい。
抗酸化サプリはコエンザイムQ10などが代表的。よく吟味しよう。
3. 葉酸~妊娠前からの摂取で障害を防ぐ
妊婦に必要な栄養素として知られる葉酸だが、具体的になぜ必要なのか? 女性だけではなく男性も知識として押さえておこう。胎児の神経の元になる神経管が作られるのは妊娠6週頃だが、この段階でビタミンの一種である葉酸が不足していると、胎児の背骨の一部が開いて中を通る神経の束が露出、神経が傷つく二分脊椎症になる可能性がある。
これを防ぐためには、妊娠の3か月も前から1日400マイクログラム(厚生労働省の推奨数値)の葉酸を摂る必要があるのだ。 葉酸はホウレンソウやレバーなどに含まれるが、調理過程で失われやすいのでサプリで摂るのが効率的。つまり、妊活中から葉酸サプリを摂るのは赤ちゃんの二分脊椎症予防のためにも必須というわけ。
ちなみに、アメリカなどでは穀物に葉酸を添加し、日常的な摂取が義務付けられているという。
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はじめてのサプリメント選び。2つのポイント
1. 産地(原料メーカー)がわかるものを選ぶべし
私たちがサプリを選ぶとき、その成分や成分の含有量ばかりに気を取られる傾向があるが、より気にするべきはサプリの原料の原産地がどこであるかという点だ。いくらパッケージに製造国が記載されていても、そこに使われている材料が書いていなければ、その材料は古い、質の悪いものであっても不思議はない。口に入れるうえでこんなに不安な話もないだろう。
結局、サプリは普段の食事の補助として摂るもの。スーパーで産地がはっきりした食材を選ぶのと同じで、サプリも出どころがハッキリしたものを選ぼう。
2. GMP認定工場製造製品を選ぶべし
医薬品のように厳格な基準がない食品の一種であるサプリは、パッケージにある情報だけではその中身がよくわからないものも多い。そこでわれわれ消費者にとってひとつの判断基準となるのがGMPマークだ。
GMPはGood Manufacturing Practice(適正製造規範)の略で、原材料の選定から製造、出荷までそのサプリの安全性と一定の品質が保たれていることを示す製造工程管理基準。国内では厚生労働省のガイドラインに基づき2つの第三者機関が申請に応じて審査、調査を行っている。 要するに、このマークがついていれば品質面ではお墨付きということ。自己責任で選ぶサプリ。こちらも選ぶ目線を養おう。
そもそも、なぜ人は「いびき」をかくのか。睡眠時無呼吸症候群の診断と治療に携わって25年、年間2万4000人を診療する「御茶ノ水呼吸ケアクリニック」(東京都千代田区)の村田朗院長はこう話す。
「いびきをかくのは、空気の通り道である気道が狭くなっているからです。人は寝ているとき、体を休めるために全身の筋肉が緩むわけですが、それは舌も例外ではありません。舌や口腔周囲の筋肉が緩み、重力によって下に下がることで気道が狭くなり、空気が通る際に気道の壁が振動することで音が発生するわけです」
この状態がひどくなり、気道が完全に閉じてしまうと空気が入らなくなってしまう。つまり、呼吸ができなくなってしまう。すると、脳が命の危険を察知して覚醒し、呼吸を促す指令を出して喉を開かせ、空気が入るようにさせる。だがそれも一時的であり、また気道が狭くなっていびきをかくようになり、やがて無呼吸状態を起こす。前出の村田院長によれば、これがいびきと無呼吸を繰り返す仕組みだ。
7時間の睡眠の中で、10秒以上にわたり呼吸が止まったり、止まりかけたりすることが1時間に5回以上繰り返す状態を「睡眠時無呼吸症候群」と言い、これらの回数が5回から15回未満だと軽症、15から30回未満が中等度、30回以上だと重症とみなされる。
ではなぜ、いびきをかく人とかかない人がいるのか。村田院長はこう説明する。「最も大きな原因は顔の骨格です。日本人を含む東アジアの人は顔が上下に長く、奥行きが狭いという特徴があり、あごが小さい傾向にあります。あごが小さいと喉が狭くなりますからいびきをかきやすくなります。つまり、日本人はそもそもいびきをかきやすい性質を持っているのです」
こうした人種的な特徴に加えて、肥満のために喉に脂肪がついていたり、加齢や飲酒によって筋肉が緩みがちになったりすると気道が狭くなりやすくなり、発症リスクが上がるという。また、喫煙している人は喉の炎症と粘膜の肥大を起こしやすくなり、結果、気道も狭くなりやすくなるそうだ。患者の男女比について正確なデータはないというが、生理のある女性は女性ホルモンが呼吸を促すため無呼吸にはなりにくく、一方で閉経後は女性ホルモンの分泌が減るため男女間の違いはなくなるという。 村田院長が運営するクリニックにおける患者の男女比は7対3であり、20代から90代のうち多いのは40代から70代だという。
有病者の脳卒中リスク11倍に
この病気によって睡眠の質が低くなると、夜間頻尿や日中の眠気、集中力の低下、疲労感などが起きやすくなるが、「本当に怖いのはさまざまな合併症にある」と、村田院長は次のように指摘する。 「いびきや無呼吸によって血中の酸素濃度が低下すると、心臓が無理に血流を増やして全身の筋肉や臓器に酸素を届けようとするため、心拍数や血圧が上昇します。すると、高血圧症や狭心症のほか、命に直接危険を及ぼす心筋梗塞や脳卒中が起こる可能性も大幅に上がってしまいます。
複数の研究データによると、睡眠時無呼吸症候群の人はそうでない人に比べて高血圧症と狭心症になるリスクがおよそ3倍、心筋梗塞は約4倍、そして、脳卒中を起こす可能性は11倍にも増えるという結果が出ています。最悪の場合は、睡眠中に不整脈が起きて突然死してしまうこともあります」また、頭の血管が拡張することで、起床後に片頭痛と同じような痛みが起きやすくなったり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて血中糖度を下げるホルモンのインスリンが効きづらくなることで、糖尿病になりやすくなったりもするそうだ。
★鼻から空気送る治療が最も有効
診断までには2つのステップがある。まずは自宅でできる簡易検査を行い、異常が指摘された場合に精密検査を行うというもの。簡易検査では、自分で小型の機器を使ってセンサーをつけ、睡眠時における体内の酸素飽和度を調べて無呼吸の有無を確かめる。精密検査は医療機関に1泊して臨床検査技師が全身の20カ所にセンサーをつけて呼吸の状態や脳波、心電図などを計測する。精密検査はポリグラフ(PSG)検査と言い、大学病院や睡眠障害を専門にするクリニックなどで行われている。この流れを辿った上で睡眠時無呼吸症候群だと診断されれば、健康保険を利用して治療を受けることができる。
治療方法としては、主に2つが挙げられる。無呼吸または低呼吸の回数が1時間に20回未満の患者を対象としたマウスピースを使う方法と、20回以上の人が適用となるCPAP(シーパップ)療法だ。マウスピースを着けると下あごが上あごよりも前方に出るため気道が広がりやすくなり、いびきの軽減が見込める。ただし、無呼吸をなくすことはできず、中等度以上の患者への効果は低いという。
一方のCPAPとは、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」の英語の略称であり、専用の機器を使って鼻から人工的に空気を送り、その圧力で気道を広げる治療方法。医療機関が提供する機器を患者が自宅で使用する。「CPAPの仕組みはシンプルですが、これが睡眠時無呼吸症候群の治療では最も効果が高く、低酸素状態も無呼吸もなくなります。結果的に合併症のリスクがなくなります」(前出・村田院長)
費用はマウスピースの作製が約1万5000円で、CPAP療法が月に約5000円。いずれも人工的に気道を広げるものなので、継続的に治療を行う必要がある。軽症患者を除けば治療のメーンはCPAPになるが、肥満や飲酒、喫煙によって症状がひどくなっている人は、減量や飲酒量の低減、禁煙を図ることで症状を和らげる必要がある。
また、仰向けでなく、横向きに寝ることも舌の位置がずれるため有効だそうだ。睡眠導入剤は筋肉を緩める作用があるため、症状をひどくする恐れがあることにも留意したい。「生活習慣病が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まることは、一般の方にも少しずつ知られるようになってきました。しかし、睡眠時無呼吸も生活習慣病と同様に重い合併症を引き起こすことは、まだまだ知られていません。家族などにいびきをかいていることを指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を得意とする医療機関で、検査を受けることを勧めます」(同)
「血栓症」とは、体の血液中にできた血の塊が血管を詰まらせることによって引き起こされる様々な病気をいう。
心臓にできると心筋梗塞、脳なら脳梗塞、肺にできると肺梗塞、下肢にできると下肢静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などと呼ばれるが、手当てが遅れると突然死を招きかねない恐ろしい疾病だけに、しっかりとした対策が必要だ。
「これから徐々に日差しが暑くなってきますが、今年のように春先から“夏日が多い”場合、用心が急がれます。暑さが続くと、『倦怠感』『めまい』『頭痛』『ふらつき』『痺れ』などを感じます。時には熱中症を疑ってしまうような人も多くなります。しかし、実は血栓症だったと言う人も少なくない。専門機関の調査では、脳梗塞患者が最も多かったのは6月~8月ということですから、まさにこれからという時期。最も気を付けなければなりません」
こう語るのは、東京都多摩総合医療センター血液内科、坂下陽医師だ。
国立循環器病センターによるデータでは、’08年~’13年の6年間の脳梗塞患者の発生件数は3~5月(961件)、9月~11月(917件)、12月~2月(966件)に対して6月~8月(1004件)が1番多かった。
「これらのうち、65歳以上の脳梗塞患者2万1000人以上を調べた台湾の医療機関の研究によると、平均気温が32度を超えると27~29度のときに比べ脳梗塞の死亡率が1・66倍に増えるということが報告されています」(坂下医師)
そもそも血栓はどうして作られるのだろうか?
「正常な血管では、血管内での血は固まりません。ケガをした際に血管から血液が出て初めて固まります。ところが、血栓ができやすい血管は、主に3つの問題点があるといわれています。血管壁の状態が悪い、血流の流れが悪い(うっ血)、血液成分が変わることの3つです」(同)
血栓は、動脈だけでなく、静脈にもできることがある。脚の静脈に血栓ができると、血流が妨げられ、脚に血液がたまる(深部静脈血栓症)。また、脚の静脈の血栓は、何らかの拍子に血管の壁から剥がれることがある。剥がれた血栓は血流に乗って心臓に運ばれ、さらに肺に入って血管をつまらせることがある(肺梗塞症)。
「ここに米国心臓学会の報告がありますが、それによると、米国では5分に1人が深部静脈血栓症や肺梗塞症によって死亡しているといいます。さらに心臓病の中でできた血栓は、血液を通して脳へ運ばれ、脳動脈を詰まらせ脳梗塞を引き起こす『心原性脳梗塞』を突然発症します。麻痺や意識障害を起こし、死に至る場合もある危険な病気です」
こう語るのは、日本血栓症協会の関係医師だ。さらに続けて、次のように説明してくれた。
「特に60歳以上の人に発症しやすく、心房細動(脈拍が不規則に乱れる不整脈)などの心疾患により不整脈が起こると、心臓の働きが悪くなり、血流が澱み、心臓内の血液が固まって血栓ができやすくなる。健康で若々しい血管は、ゴムのようにしなやかでその内側もすべすべしています。ところが、血管が老化すると脆くなり、内側がベタベタしてくる。そのため老化した血管では血液中の悪玉コレステロールなどが血管壁にとりつき、その中に侵入しようとするため、それを排除しようと白血球の仲間たちが集まってきます。しかし、白血球たちは悪玉コレステロールなどを食べ尽くすと死んでしまいます。その死骸と残ったコレステロールがプラークとなり、それが何らかの刺激で破れると、その傷を修復するため血小板が集まってきて瘡蓋を作る。これが血栓です」
ちなみに健康な血管は、出血が収まると傷口周辺の内皮細胞が増殖して血管壁は修復される。
その後は血液中のプラスミンという物質などの働きで、血栓は溶かされ、跡形もなくなる。
★夏場のダイエットも危険!?
「しかしながら動脈硬化や老化が進んだ血管は、こうしたシステムが上手くいきません。結局、血液が澱むことで血栓ができることもあって、その代表が前述したように心房細胞です。この病気は脳梗塞(脳塞栓)などを引き起こしやすいことで知られており、それは心臓が震えるだけで血液を外に出せないからです。血液同士がぶつかり血栓ができてしまうのです」(同)
脳卒中などの研究を進める医学博士・内浦尚之氏は、こうも説明する。
「若い人でもコレステロールや中性脂肪の高い人は血液の流れが悪くなります。そうなると血流に澱みが起こり、血栓症に繋がります。血栓は動脈より静脈に多い。飛行機内などで同じ姿勢で座っていると発生する下肢静脈血栓症は、血液が心臓から吐き出される動脈よりも、心臓に戻る静脈のほうがゆっくりしているからです。また、血液成分のほとんどは水分。夏に大量の汗をかいた後に、利尿作用もあるビールや度数の強いお酒ばかり飲んでいる人は、血液が固まりやすい成分に変わってしまう。そのため、突然、右手や右脚の動作が効かなくなることがあり、“一過性の脳梗塞”といわれる。これは数分後にもとの状態に戻ってしまうため、『何でもない! 大丈夫』と言う人が多いが、放って置いては危検なのです」
同様の体験をした場合、「どうしてその状態になったのか」を知る必要がある。2度目、3度目を体験した人は、次に本格的な「脳梗塞症」に見舞われる可能性が高いためだ。医療施設などでしっかりとした検査や治療が必要だという。
医療ジャーナリストの深見幸成氏は、こう語る。
「夏場にダイエットする人も注意が必要です。人間は1日に1~2㍑程度の飲み水が理想といわれます。それ以外に食べ物からも摂ったりしていて、ダイエットで食べない人はその分、水分を摂らなければなりません。人間の血液凝固能力は日々変動がある。よく言われるのが、長時間寝たあとの早朝に一番血液が固まりやすいこと。また、砂糖や肉を過食したり、激しい運動をした後に血栓ができやすいことが分かっている。薬もピルやステロイドを使用している人は、特に注意が必要です」
ある日、突然、喋ろうとしてもろれつが回らない、片方の手足の力が入らない、などの症状を自覚したら、直ちに医療機関で適切な治療を受けるべきだ。