「作るための手続きが大変」という声も多い(イメージ)
「作るための手続きが大変」という声も多い(イメージ)© マネーポストWEB 提供

 個人情報の誤登録が次々と報告されているマイナンバーカード(マイナカード)。他人の年金情報が閲覧できる状態であったり、家族名義の銀行口座が紐付けられていたり、顔写真が別人のものとなっていたりなど、全国でトラブルが相次ぎ、自主返納をする人も増えているという。国民のマイナカードへの不信感は募る一方だが、政府は2024年秋までに現行の健康保険証を廃止し、マイナカードと連携した「マイナ保険証」に一本化する方針を貫いている。

マイナンバーカードに関するよくある質問。マイナンバーカード保険証利用のメリット

 もし、健康保険証が「マイナ保険証」に一本化されるなら、多くの国民がマイナカードを持たざるを得なくなる可能性が高いが、そもそも現時点でマイナカードを使う機会は、どれくらいあるのだろうか。

 総務省の公式サイトを見ると、「マイナポイントがもらえる!」「健康保険証として使える!」「本人確認書類になる!」「各種証明書をコンビニで取得できる!」「転出届がオンラインでできる!」「e-Taxをもっと簡単・便利に!」など、マイナカードの“便利な”使い途が紹介されている。しかし、実際にマイナカードを持っている人に聞いてみると、使用する機会はそれほど多くはないようだ。

 神奈川県に住む主婦のAさん(60代)は、こう話す。

「5000円分のマイナポイントをもらうためにマイナカードを作りました。それ以来、今のところ1回も使ったことがありません。健康保険証としての利用申込みと公金受取口座の登録で、それぞれ7500円分のポイントももらえるんですが、その2つはなんとなく不安もあったので、スルーしました。身分証明書も運転免許証があるので、マイナカードの出番はないです」

 マイナカードを使ってコンビニで発行できる各種証明書とは、住民票、印鑑証明書、戸籍証明書など。これらの証明書を発行する機会がなければ、その恩恵もなかなか受けられない。

ワクチン接種証明書のためにマイナカードを発行

 コンビニでは、マイナカードを使って「新型コロナウイルス感染症予防接種証明書」を発行することも可能だ。スマホ向けの「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」で証明書を発行する場合においても、マイナカードが必要となる。東京都に住む会社員のBさん(30代男性)は、証明書を取得するために、マイナカードを取得した。

「コロナが大流行していた頃、一部のコンサートでは、参加するためにはワクチン接種証明書が必要になるかもしれないと噂されていたことがあったんです。私は、とあるアイドルグループを推しているんですが、そのコンサートに行くのにワクチン接種証明書アプリが必須条件になる可能性もありそうだと思って、マイナカードを発行しました。でも、実際に接種証明書が必要なコンサートはなかったので、マイナカードも必要なかったですね。そのアプリ以外で使ったこともないです」

 2022年10月から実施された「全国旅行支援」で助成を受けるには、「ワクチン3回以上接種」、もしくは「PCR検査などの陰性」の証明書が必要となっていた(一部例外あり)。この助成のためにマイナカードを発行したという人もいる。都内に住む会社員のCさん(40代女性)はこう話す。

「全国旅行支援の助成を受けるために、マイナカードを作りました。作るのに時間がかかりましたが、ワクチン接種証明書アプリは結構便利だと思いましたね。でも結局、全国旅行支援のときにしか使っておらず、今後もあまり利用する機会はなさそうだなと思っています」

e-Taxなら完全に自宅で確定申告が完結

 どうやら普通の生活をしている分には、あまりマイナカードを使う機会は訪れなさそうだが、個人事業主などで毎年確定申告をする人にとっては、マイナカードが活躍する場面がある。パソコンやスマホで確定申告をする「e-Tax」を利用するには、マイナカードが必要となるのだ。

 都内の自営業のDさん(40代男性)は、一昨年の確定申告からマイナカードを活用しているという。

「e-Taxで確定申告をすると、税務署に行かなくて済むし、税金の計算も自動でやってくれる。入力の作業はちょっと面倒かなと思いますが、手書きで申告書を作るよりは楽です。私の場合は、別途に書類を税務署に送付する必要もなく、e-Taxなら完全に自宅で確定申告が完結する。毎年の確定申告にかかる時間が圧倒的に少なくなったという点で、マイナカードを作ってよかったなと思います。

 ちなみに、マイナ保険証は使っていないので、確定申告以外でマイナカードを使うことはまだないです」

 最大2万円のマイナポイントは付与される権利があるのは、今年2月末までにマイナカード発行の申請をした人であり、今からマイナカード発行の申請をしてもポイントはもえない。利用機会も少なく、ポイントももらえないとなれば、これから新たにマイナカード発行の申請をする理由が見つからないという人も少なくないかもしれない。マイナカードを国民に浸透させるのは、簡単ではなさそうだ。(了)