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パワハラ相談4割で増加=経団連が会員企業にアンケート


経団連が7日発表した「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」によると、5年前に比べパワハラの相談件数が増えたと答えた企業の割合は44.0%に上った。「増えた」との回答は、セクハラの11.5%や育児・介護休業などへのハラスメント4.0%と比べ目立っている。

 回答企業は、コミュニケーション不足や世代間ギャップ、管理職の理解不足を課題に指摘。研修や経営トップのメッセージ発信、あいさつの励行などを対応例として挙げた。

 パワハラをめぐっては昨年6月、大企業に防止措置を義務付ける改正労働施策総合推進法が施行された。経団連は「法施行を機に社会的関心が高まり、相談窓口の周知が進んだ結果だ」とみている。

 調査は9月から10月に会員企業全社に行い、400社が回答。回答率は26.9%だった。 

モラハラ加害者が陥る“正義依存症”。他人を責めるとき「爬虫類のような目をしている」


◆昔のことを思い出すと……

 こんにちは。DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。

 僕自身もDV・モラハラ加害者です。そのせいでたくさんの人を傷つけ、仕事や家庭が破綻寸前になり、ようやく自身の加害行為、それを生み出す加害的な思考・価値観を自覚しました。現在は日々自分の言動を改善しながら、妻と関係を再構築させてもらっています。

 この連載では、僕自身の経験や当事者会での気づきを共有していきます。職場や家庭でモラハラに苦しんでいる方々、無自覚に加害を行っている方々の参考になれば幸いです。

 これまで多くのDV・モラハラ加害者と話す中で、たくさんの共通点を見てきました。その1つが「シャワーを浴びているときに昔のことを思い出して恥や怒り、死にたさがやってくる」です。

◆自分を追い詰める声が聞こえてくる

 僕自身もそうです。頭の中で、自分に対する声が鳴り響いてくるのです。人によって表現は色々なのですが、例えば以下のような表現がよく出てきます。

「こんなものか」

「やりきったのか」

「もっとよく考えろ」

「もっと頑張らないと」

「休んでていいのか」

「恥ずかしい」

「成果を出せ」

「死にたい」

「恥ずかしい」

 食器を洗っている時、シャワーを浴びている時、ぼーっと歩いている時、自分を追い詰める声が聞こえてきます。自分の口から出てくることもあります。

 僕はよく「死にたい」という言葉が自然と出てきて、「いや、死にたくない」「死にたい」とブツブツ言っていることがありました。

 なんらかのアディクション・依存症になる人というのは、こういう病を抱えていることが多いと感じます。倒れるほどに予定を詰め込んだり、読みたくもないのにtwitterを開き続けたり、お酒を飲みながら漫画を読んで頭と目が限界まで疲れたら気絶するように眠る。

 何もない時間を作ると、死にたくなるからです。

 GADHAに参加する人の中にも、セックスやギャンブルなどの強烈な刺激によって自分の処理能力を限界まで使い続けていないと生きることに耐えられない人がたくさんいます。自己否定の感情に向き合うのが恐ろしいからです。

◆「このままの自分でいてはならない」という強迫観念

 自分の人生には、常に異常な成長欲求がありました。その優越欲求の背後にあるのは激烈な自己否定感。つまり「このままの自分でいてはならない!!」という脳内に響き渡る声がありました。

 自分はどんなに仕事ができても、能力を褒められても、人間としての魅力は全くないと思って生きてきました。自分の本当の姿を知ったら誰も自分を愛してはくれない、という不安が常にあるのです。

「自分は天才だ! なんてすごい人間なんだ!!」と思ったかと思うと、なにかで躓いたら「自分なんて生きる価値のない愚かな無力な人間だ、恥ずかしい……死んだほうがいい、死にたい」とうめきながら朝からアルコールに浸る自分はジェットコースターのような日々を生きていました。

 連続飲酒に至るまでアルコールを飲み続けていた時期の僕は、もう正気でいることに耐えられなかった。自分のダメさや弱さ、どうせ捨てられてしまうという恐怖、ハリボテの自信はいずれ全員にばれる日が来るという絶望があったのです。

◆成功者がするようなことをしてみたかった

 何か恋愛や仕事で嫌なことがあると、そういう不安や悲しみの感情に圧倒されていました。お金を月に何百万円と稼いでもまったく関係なかったどころか、稼ぐほどに大きくなる虚勢やフィクションが崩れ去るのが恐ろしくなっていきました。

「どうせ何もかもダメになる日がくるのかもしれない」と思うとお金遣いも異常に荒くなり、妻には心配され続けていました。高いホテル、レストラン、ガジェットなどに散財すると賞賛されるべき人間になった気がして頭が麻痺して不安にならずに済みました。

「成功者がするようなこと」をしたかったのです。今思えばその成功者というイメージはあまりにも薄っぺらなものでしたが、自分はそれでもよかった。どこかで愚かなことをしていると明確に気づきながらも、人にマウンティングを取りたかったのです。

 この頃には人に何かをおごりたがり、高いものをプレゼントしたがりました。相手のためなどでは決してありません。自分の権力を、パワーを証明するためにやっているだけなのです。案の定、妻はそれを感じ取り、決して僕からの贈り物に喜ぶことはありませんでした。

 妻が求めてもいないことをしては「なぜ喜ばないんだ!」と悲痛に叫んでいたのを思い出します。妻からすれば、僕はほとんど病気に見えていたと思うし、後からそう言っていました。

◆正しさへのアディクションとしての暴力

 被害者の方から「加害者は責めるとき異常な表情になり残忍な喜びの表情を浮かべる」と聞きます。僕も妻から、「爬虫類のような目、全く別人のような顔になる」と言われていました。

 このときの記憶は非常に曖昧になり、次の日には言った言葉もほとんど忘れてしまいます。よく加害者が記憶を飛んでいるのを「嘘ではないか」と思う方がいますが、少なくとも僕の場合は本当に記憶が飛んでいました。

 アルコールを飲んでいる時のブラックアウト、すなわち意識が飛んでいる状態に極めて近いのです。脳内麻薬が強烈に出ているのか、一種の解離状態になっていて、思い出せないがために反省もできないという最悪の状況になっていました。

 どんな時に加害者は人を責めるのでしょうか。それは、自分の弱さや愚かさに向き合いたくないときです。目の前の自分にとって不都合な現象の責任を誰かに何もかも押し付けたとき、自分がこの苦しい現実から遠く離れることができるのです。

◆人を罰して裁く快感と引き換えに失うもの

「無罪」になりたい。

 正しさを自分のものとしたとき、強烈な気持ちよさがあります。人を罰するとき、裁くとき、自分はとめどないドーパミンとアドレナリンに酔っていました。その時のことを思い出すと、何か胸に(今となっては恐ろしいので不快な)高揚感があります。

 人を支配し世界のすべての道理を自分と一体化させる時、人は抗い難いほどの快楽を覚えます。だから加害者は「自分が正しい」「相手が間違っている」「傷つけられたから自己防衛だ」と残忍にニヤついた笑いを浮かべながら攻撃をするのだと今では考えます。

 攻撃することで自分の弱さ、不完全さ、傷つきから目を背けているのです。

 だから、加害をやめたくてもやめられない。強烈な快感が忘れられない。それによって愛する人が離れてしまっても、それでもやめられない、どんどん悪化していく、自分もやめたいと思いつつ、快楽に抗えない。

 そうして、加害者は孤独になります。

◆DVやモラハラは自己否定を回避するための依存症

 星の王子さまに出てくる「飲んだくれ」の有名なセリフを思い出します。

「ここで何してるの?」

「飲んでんだ」

「なんで飲むの?」

「忘れたいんだ」

「何を忘れたいの?」

「恥ずかしいのを忘れたい」

「何が恥ずかしいの?」

「飲むのが恥ずかしい!」

 心の底から、この飲んだくれに共感できます。

 DVやモラハラを、行動に関するアディクションとして理解できると思います。そしてこれらの全ての始まりは強烈な自己否定、存在の不安からきているとも。

 でも加害者はそれを自覚もできない。もっとすごい自分、もっと特別な自分、いまここにいない自分を追い求めて必死に生きてきた。褒められたかった。賞賛されたかったのです。

◆目の前の人も、自分自身すらも直視できていなかった

 自分の弱さを「これは自分じゃない」と切り離し、攻撃し、捨てようとしました。でもそれは自分なので、攻撃して、責めて、変われ、さもなくば死ねという言葉は、全て自分の中で跳ね返り、頭の中でずっと反響します。

 ここもダメ、あそこもダメ、満足するな、もっと変われる、成長できる、努力が足りない、もっと頑張れる、こんなんじゃダメ、もっとすごい人がいる、と。

 生きてきた中で「いま・ここにいる自分」じゃない、何か理想や役割を僕の後ろに幻視されて、その差分を言及されてきました。そのような意味で、自分はいつも不十分な存在でした。

 このままの自分でいるのがずっと怖い。でももっと怖いのは、それを人にもやってしまっていたということです。僕も相手に、妻に、理想や役割を幻視して「目の前にいるあなた」をみることができませんでした。

 べき、ねば、正解、当然、普通、当たり前という言葉でもって「目の前にいるあなた」から現実を始められなかった。

「幻視した何か」から現実を構成し、現実と外れた「目の前にいるあなた」を責めた。幻視した自分と比較して自分を責めるのと同じように、幻視した理想と相手を比較して相手を責めました。

 だって現実の相手を見ていないから。二人で話しているのに現実の自分を見ていないというのは妻にとってどれだけ苦痛だったでしょうか。

 これこそが究極の存在の否定、加害です。

【えいなか】

DV・モラハラなどを行う「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。

現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

生まれつきの性格と諦めないで…専門医に聞く「“夫のモラハラ”への対処法」


なにかと“息苦しさ”が指摘される現代。その原因が夫との生活にあると、どうしても毎日がしんどくなってしまうことに……。そんなギスギスした関係を解きほぐすためのヒントを、専門医に教わりましたーー。

「私が声をかけるたびに、『うるさい。お前は文句しか言えないのか!』って、最近よく、逆ギレされます」(50代主婦)

「コロナで在宅時間が長くなった主人が、部屋の隅のちりを見逃さず、『お前は四角い部屋を丸く掃く』と。小姑みたい」(50代パート)

「ひとり暮らしの母の顔を見に、この冬は帰省していいものか、夫の意見も聞きたいのに、『実家のことは任せる』って聞く耳を持たなくて……」(50代アルバイト)

このように、夫との関係に悩む読者の声が、編集部には多く寄せられる。

コロナ禍の自粛生活で、夫婦が家で顔を合わせている時間は激増、それと比例してストレスも増えたと感じている人は多いようだ。

「加えて、夢中だった子育てが一段落したり、早期退職した夫が家でゴロゴロしていたり……。そんな状況下の妻がストレスをおぼえる“モラハラ夫”には共通項があることが多いんです」

こう話すのは、精神科医で岡田クリニック院長の岡田尊司先生だ。

「プライドが高すぎて、妻や家族の言葉に耳を貸そうとしない夫。あるいは、親切心で妻がかけたひと言を『けなされた』と捉えてしまう夫。そうした言葉や行為の背景には『パーソナリティ障害』が潜んでいることが多々あります」(岡田先生・以下同)

ウチの夫が「パーソナリティ障害」? それっていったいどういうことなのだろう。響きはなんだか深刻そうだけれど……。

「パーソナリティ障害は、その人の考え方や行動の“著しい偏り”のために、自分だけではなく、周囲の人も苦しむ状況をいいます。

正しい知識を得て対処すれば、過度に心配することはありません」

かつては“生まれつきの性格で、直らないもの”と位置付けられていたこともあるパーソナリティ障害だが、現在では“改善可能なもの”と考えられているという。

「じつは“モラハラ夫”と思われるご主人自身が、パーソナリティ障害に苦しんでいることも多い。妻はそれを受け止めて、本音を引き出してあげることで、解決への糸口にすることができるのです」

岡田先生が、モラハラ夫に見られがちなパーソナリティ障害のパターンを解説し、その対処法を教えてくれた。チェックリストで、自分の夫に当てはまると思う項目にチェックを入れてみよう。

【1】ひたすら自己チュー「自己愛性パーソナリティ障害」

□ 自分には世間の人が気づいていない才能や優れた点があると思っている

□ 大成功をして有名になったり、理想の恋人と出会うことを夢見てきた

□ 自分は人と違ったところがあり、特別な人間だと思っている

□ 周囲からの賞賛が、何よりの励みになる

□ 多少の無理でも、自分の望むことは大抵聞いてもらえることが多かった

□ 欲しいものを手に入れるためなら、ほかの人を利用したり、うまく言いくるめるくらいの 自信がある

□ 自分勝手で思いやりがないところがある

□ 友人や知り合いの幸せを見ると、内心妬ましく思うことがある

□ 態度が大きいとか、プライドが高いと思われている

5項目以上当てはまったら「自己愛性パーソナリティ障害」の可能性あり。

「パーソナリティ障害は、特徴から10パターンに分類されますが、もっともポピュラーなものとして挙げられるのが、『自己愛性パーソナリティ障害』です」

このタイプは、「自分は特別な存在である」という「過大なプライドや大きな理想」を持っていることが多いのだそう。

「自信家である一方、批判されると弱いので、相手がよかれと思って言ってくれたことも、『ダメ出し』と思い込んで、激高したりします」

このような夫の対処法はーー。

「自己中心的なふるまいをいきなり変えさせようとすると、大きな衝突を生み、関係性が崩れてしまうこともあります。まずは結婚当初を思い出して、夫の『支え手』となることを心がけましょう」

そして、ひとつの問題を「共有している」感覚を持つことが大事だという。

「まずは『あなたのこんなところは素晴らしい』と褒めておいて『ココをこうすると、もっといいんじゃない?』と、同時に要望を言うのがいいでしょう」

【2】細かすぎるチェック魔「強迫性パーソナリティ障害」

□ 細かいところにこだわりすぎてしまう

□ 完璧にやろうとして、時間が足りなくなってしまうことがよくある

□ 仕事や勉強に打ち込むあまり、娯楽や人付き合いは二の次になりがちだ

□ 不正やいい加減なことに対しては、許せないほうだ

□ 役に立たないとわかっていても、何かを捨てるのは苦手である

□ 自分の言うとおりにしない人とは、うまくやっていけない

□ お金はなるべく節約して、将来のために貯金をしている

□ 頑固だとよく言われがちだ

4項目以上当てはまったら「強迫性パーソナリティ障害」の可能性あり。

パートの合間に炊事……妻も忙しい中で家事もしているのに、「掃除の仕方が悪い」などとなにかと文句を言う夫には、うんざりだ。

「この手の夫は、会社では優秀で、真面目で責任感が強いタイプが多い。妻や家族にも自分と同じ基準を求めてしまうことで、双方が強いストレスを感じてしまうんです」

この「強迫性パーソナリティ障害」は、仕事も人間関係も「完璧」を目指しすぎるあまり、「うつ病や心身症、過労死に結びつきやすい」恐れもあるというから要注意だ。

「対処法としては、本人のルールに手を加えようとしないこと。基本は真面目なのですから、それを生かすべく、『掃除を分担制にする』など、妻がしてきた家事と同じ役割を持ってもらうことです。“妻と同じ目線になる体験”を通じて、夫が持つ固定観念はだいぶ変わることでしょう」

【3】腰が重たく無関心「回避性パーソナリティ障害」

□ 断られたり、けなされたりすると嫌なので、人付き合いの多い仕事には就きたくない

□ 自分に好感を持っていない人とは、あまり関わりたくないほうだ

□ 嫌われたらいけないので、親しい人とも自分を抑えて付き合うほうだ

□ バカにされたり仲間はずれにされたりしないか、いつも不安に思いがちだ

□ 人に会ったり出かける約束を、直前になってキャンセルすることがよくある

□ どうせ自分には魅力がないので、あまり人に好かれないと思っているほうだ

□ 新しいことをしようとすると、うまくいかないのではないかと不安になり、実行しないうちに諦めてしまうことがよくある

4項目以上当てはまったら「回避性パーソナリティ障害」の可能性あり。

親の介護に、ご近所づきあい……妻が日ごろ悩んでいることを、相談しても「お前に任せる」と突き放されたら、ショックだが……。

「自分が失敗したり、傷つくことを極端に恐れるために、ちょっとしたことからも逃げてしまう傾向があるのが、この回避性パーソナリティ障害のタイプです」

“無関心夫”は「とにかく逃げる」傾向があるというので、扱いは難しいそうだが、「こういう人だから仕方がない」と諦めてはいけない。

「何とかして、夫を引っ張り出すことが大事です。妻のほうでも『〇〇やってよ』ではなく『私も一緒にやるから、考えようよ!』と巻き込むことを心がけましょう」

これらのモラハラ夫には、複数のタイプにまたがる“複合型”のケースも見られるそうだ。

岡田先生によれば、現代人のほとんどは多かれ少なかれパーソナリティの問題を抱えているという。

「自分を知り、相手を知ろうとすることを心がける積み重ねが、多くの人が悩む“生きづらさ”を解消することにつながるのです」

もし、夫婦関係に悩んでいるのなら、「どうせダメ」と諦めず、岡田先生直伝の対処法を、一度試してみよう。

部活で起きる「男子への性的暴行」知られざる問題


部員に対する強制わいせつ罪で起訴されていた大阪市の私立高校野球部コーチだった被告(31)が9月13日、部員に性的暴行をしたとして、強制性交等致傷の疑いで大阪府警に再逮捕された。

同被告は8月にも同じ性的暴行の疑いで逮捕・起訴されており、被害にあった球児は50人以上いるとされる。被告は高校時代に甲子園出場経験があった。

■「気合入れのために」全裸ランニングのケースも

スポーツ環境におけるハラスメントを研究する明治大学政治経済学部の高峰修教授は「部活動顧問による性虐待の被害は女子がほとんど。被害対象が男子というケースはほぼ聞いたことがない」と驚きを隠せない。しかも約10年にわたり50人以上と、大量の被害生徒が出ていることは、非常に衝撃的だった。

日本の部活動の指導現場における男性間のセクシャルハラスメントは、一例ある。2005年に中国地方の私立高校野球部で、顧問教諭が部員を全裸でランニングさせた事実が報道された。

2002年から行われていた通称「フルラン」は、顧問が指導の際に暴力をふるったことによって明るみになった。暴行と強要の疑いで逮捕・送検され、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡されている。

加害教諭と被害生徒2人をヒアリングした高峰教授によると、雨中の練習後にふざけてベースランニングしていた部員に顧問が「どうせシャワーを浴びるのだから裸になってランニングしろ」と命じたのを機に、その後は「気合入れのために」全裸ランニングを数回やらせたという。

「最初は悪ふざけでやらせたことだったが、当然だが全裸で走ることに抵抗のある部員もいた。保護者が問題にして強要罪になったので、今回の性虐待と内容は違うが、同性の教え子に対し行ったセクハラ、強要という部分で既視感がある。ただし、今回の事件は明らかな性虐待。誰にも言えなかった生徒たちに与えた心の傷の深さは計り知れないし、将来にまで心理的に影響が及ばないか心配だ」(高峰教授)

高峰教授が憤るように、これだけ大量に、長期間にわたって性虐待が隠し続けられたのはなぜなのか。そこには、男子部員が被害を言い出しづらい5つの理由が横たわる。

束縛、モラハラ、目の前で自殺…「なぜ私と母を傷つけた父に瓜二つの男を愛してしまうのか」


幼い頃、父親の虐待に苦しんだシェリルは、大人になってからも自分に暴力を振るう男性とばかりつき合ってしまう。一方、トロイも酒に溺れてから怒りの衝動を抑えられなくなっていた。家庭内暴力(DV)被害者・加害者の双方が、長年抱えて来た辛い過去を語る。米誌の長編記事の第2話。

シェリル:もうこれ以上の恐怖、罪悪感、屈辱、そして責任を負いたくなかった。だから参加してみようと思ったの。自力でなんとかしようと頑張ってきたけど、負の感情はまだしぶとく残ってる。

シェリルは1950~60年代に少女時代を送った。当時、彼女は米オレゴン州ポートランド市郊外の中流階級地区に建つ家に住んでいた。家からは草原や果樹園が見渡せて、夏になると友人たちと裏庭に寝転んで過ごした。

だが、友人を家のなかに招待するわけにはいかなかった。父親がいつ癇癪を起こすか分からなかったからだ。シェリルが赤ん坊だったころ、母は泣いている娘を抱いて地下室にこもり、父の暴力から守った。少女時代の記憶はあまりない。しかしある晩、父が母に「この銃で子供たちを殺してから自分も死ぬ」と言ったことは覚えている。

彼女の3人のきょうだいは、父親が激昂するとたいてい家を飛び出したが、シェリルはひとり家に残って父と母の間を取り持った。父はシェリルが19歳のときに亡くなった。「すごく嬉しかった」と、彼女は当時を振り返る。その後すぐにシェリル一家は集まってお祝いのパーティーを開いた(シェリルは身元保護のため、記事中ではファーストネームのみの使用を求めた)。

恋人が目の前で銃自殺
父が亡くなり、これで人生も変わるとシェリルは期待していたが、思い描いたようにはならなかった。新しくできた恋人は、酒に酔うと彼女を殴った。その男と別れた後、同僚の紹介で別の男性とつき合いはじめた。ところが、しばらくするとその男は、自分がその場にいなかったときに口をきいた人間を全員教えるようにと言った。また、シェリルは趣味で空手を習っていたが、新しい恋人は別々に過ごすのを嫌がった。

「オレより大事なことって何だ?」とその男に詰問され、シェリルは絶望した。すべてを犠牲にして男の機嫌取りをしなければならない、あの暗い世界へ引き戻される気がしたのだ。シェリルは恋人に電話して、私たちはうまくいかないと思うと伝えた。電話を切ってしばらくすると恋人がやってきて、鼓膜が破れるまで彼女を殴り、首を絞めてきた。

翌日、シェリルから電話を受けた母親が警察に連絡した。母から「すべてお話ししなさい」と言われたシェリルは、刑事にこれまでの顛末を説明した。黙って聞いていた刑事の口から、こう言われたのをいまでも覚えている。

「逮捕は可能ですが、法的拘束力はかなり弱いです。司法の場で彼から受けた被害を話さなければならなくなりますが、向こうはそんなのぜんぶウソだと反撃してくるでしょう。最悪の場合、その男性が逆恨みして、あなたを殺そうとするかもしれません。それでも構いませんか?」

傍目からは、シェリルの人生に何か問題があるとはとても思えなかった。大企業で働く彼女の周囲の人間は皆「きみは仕事もできるし、自信もある」と声をかけてくる。ところがシェリルがつき合う男たちはいずれも父と瓜二つで、すべてを支配しないと気がすまず、彼女に暴力を振るった。

私の人生は行き詰っている。こうなったのはぜんぶ自分のせいなのかもしれない。精神的にあまりにも辛くて、もうこんな人生1日たりとも耐えられないと思う日もあった。シェリルは、自分の命を終わらせることを考えるようになる。

37歳のとき、シェリルはまた別の男性とつき合いはじめた。彼は手を上げなかったが、その予兆はあった。「その服を着ていくのか?」「お前は自分では何も決められない」とよく言われた。行く末を敏感に察知したシェリルは自分に言い聞かせた──同じ手は二度と食うものか。

彼との関係を終わらせるのに1年かかった。別れてから6週間後、彼はシェリルの家へ車でやってきた。そして車から降りると、シェリルの目の前で自分の頭を銃で撃った。

近所の人が彼を病院に運んでいる間、シェリルは家の外で警察が来るのを待っていた。どん底にたたき落とされたシェリルは、こう自問し続けた──「このまま死ぬか、それとももう少し踏ん張ってこれまでと違ったことをするか」。

こうした経緯でシェリルは、連邦司法センターの小さな一室でトロイという見知らぬ男性と向き合って座ることになった。初対面のトロイは、恋人に暴力を振るった過去があった。なぜそんなことをしたのか、シェリルはそれを理解しようとした。

「パパがお酒をやめられないのは私のせい」
トロイ:何をするのにも無鉄砲で、後先を考えずに行動してしまう。でも代理対話の話を聞いたときは、「わかった。とっとと終わらせよう」とは思わなかった。「よし、引き受けなくちゃ」と思った。恐らく「自分は正しいことをしている」という安心感のせいだと思う。

トロイはシングルマザー家庭のひとり息子として育った。礼儀正しく、人の注目を集めるのが好きだが、失敗は見られたくないタイプだ。10代で初めてアルコールに手を出したとき、酔っぱらって隣家のソファで気を失った。翌朝、目が覚めたときには、いったいどうやってそのソファにやってきたのか見当もつかなかった。

高校生になってからも何度か泥酔し、そのたびに体調を崩していた。気持ち悪くなるのはまっぴらだと思っていたが、クールなこと、人を笑わせることは大好きだったので、そのためならもっともっと酒をあおりたいと思っていた。

卒業後、トロイは建設業に就職した。1980年代後半のことだ。同僚はみな薬物やアルコールの問題を抱えているように見えた。やがて、必要以上の大金を稼ぐようになったトロイは、誰かが残した薬物を片っ端から試すようになった。

シングルマザーの家庭で育ったから、女性への尊敬の念は強いほうだと思っていた。しかしそれも酒を口にするまで。酒に酔うと、尊敬の念はすっかり消えた。1992年、トロイは結婚し、妻の連れ子の娘を養子に迎えた。ほどなくして2人の間にも娘が生まれる。手を上げるようなことは決してなかったものの、口論は絶えなかった。夫婦ゲンカを口実に家を飛び出しては酒を飲みに行くの繰り返し。娘たちの面倒も見なかったし、妻にお金も渡さなかった。

結婚生活は2001年に破綻し、その後トロイは路上生活を送りはじめる。数年後、新しい恋人ができたが、やはりケンカが絶えなかった。相手はトロイの飲酒癖を嫌っていた。彼女からそのことを問いただされると、トロイは決まってウソをついた。あるとき、いさかいの最中にトロイは彼女の首を絞めはじめた。

「自分はいったい何をしているんだ?」──我に返り、家から飛び出したが、すぐに警察に拘束された。

逮捕されたトロイは、もはや自分が何者なのかわからなくなっていた。自己憐憫に陥り、自分にあてがわれた公選弁護人に司法取引を迫られたことに腹を立てた。

だが、結局トロイはその提案を受け入れ、22ヵ月の懲役刑に服した。9歳の娘から、「パパがお酒をやめられなかったのは私のせい」と書かれた手紙を受け取ったときは、心が張り裂ける思いだった。トロイはアルコール依存症患者の治療を支援する団体「アルコホリクス・アノニマス(AA)」に入会し、出所後もそのまま残った。彼の早期釈放の条件には、薬物およびアルコール依存症の治療があったからだ。

それは12段階からなる矯正プログラムで、第5段階に達したトロイは身元引受人に、「自分の過ちの正体」を打ち明けた。法廷や保護観察官の前で何度も説明をしたおかげで自分がしたことを話すのには慣れていた。「印象を悪くしないよう、何を話さないべきか」を常に考えていたが、目の前にいるのは自分の身元引受人だ。トロイは初めて正直に話そうと思った。

「ひとりきりになりたければ、アルコール依存症になるのが手っ取り早い。そうすれば誰にも自分の問題を悟られずにすむから」──彼は引受人にそう語った。

その身元引受人も、過去に他者を傷つけて更生した経歴の持ち主だった。トロイは「俺だけじゃない、みんな何かしらの適応不全なんだ」と、救われた思いがした。そのときに自分を恥じる気持ちも消えたという。

AAは、アルコール依存克服のための行動の達成を何よりも重視する。トロイはこの目標を真摯に受けとめた。「とにかく何かを続けること。それが俺のアルコール依存症の治療薬になる」と思った。

治療プログラムのファシリテーターに、何か社会に貢献できる方法はないかと訊ねると、「DVセーフダイアログ(DVSD)」という団体の電話番号を教えられた。「修復的正義」と呼ばれている手法を最初に知ったとき、どこか虫のいい話のようにも思えた。とはいえトロイの望みはとにかく「酒を断つこと」であり、そのためならなんだって試してやろうと腹を決めた。(続く)

職場でも違和感なしの「電卓型ボイスレコーダー」が人気…ハラスメント防止にも役立つ?機能を聞いた



FC2 Analyzer

職場でのトラブルやハラスメント被害などは、その時の音声を録音しておくと問題の解決に役立つことがある。とはいえ、一般的なボイスレコーダーは目立ってしまいがちだ。そんな状況でも、違和感なく録音できるアイテムがある。それが、医療機器や録音機器を販売する、株式会社MEDIK(東京・中央区)が開発した「電卓型ボイスレコーダー VR-C003」。


電卓とレコーダーの“1台2役”を実現

クラファンでは目標金額の650%を達成

もともとは、商談での「言った言わない」を解決するため

電卓の操作音は録音される

パワハラ・セクハラの証拠も残せる

「お前は欠陥品だな」。モラハラ夫の恐怖の支配から抜け出したい。加害男性の特徴とは


親の反対を押し切ってモラハラ夫の元へ

「もう我慢の限界」「今すぐ離婚したい」「どうすれば夫を変えられるのでしょう」――。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に夫の暴言や悪態に悩む妻からの投稿が相次ぎ、悲鳴にも似た苦しみの声がつづられています。

言葉や態度などによるモラル・ハラスメント(精神的暴力)は「見えないDV(ドメスティック・バイオレンス、配偶者や恋人からの暴力)」とも呼ばれ、周囲に理解されにくい面があります。モラハラ夫にどう対応すればいいのか、公認心理師の小高千枝さんに聞きました。

「モラハラ夫を追い詰めてもっと酷くなった」というタイトルで発言小町に投稿したのは、専業主婦の「ヒヨコ」さん。

夫、1歳児との3人家族で、この投稿の1か月ほど前に、「毎日指摘ばかりの夫との生活」というトピを立てていました。「料理の品数が少ない」「洗った食器の置き方が乱雑」「離乳食の一口が多すぎる」など、夫から家事や育児の指摘に苦しみ、口出しをすればどなられるので我慢しているという内容です。

新たなトピは、その後の夫婦の状況を伝えています。

夫の言動に耐えかねた「ヒヨコ」さんは、いったん実家に身を寄せましたが、「夫が変わってくれるなら一緒にいたい」「夫も反省しているから」と、引き留める親の反対を押し切って自宅へ戻りました。

ところが、夫の態度は改められるどころか、家事に関する細かい指摘は続き、「最低な人間や」といった暴言を吐くなど、モラハラが悪化してしまったそうです。

「ヒヨコ」さんは、発言小町のユーザーに感想やアドバイスを求め、最後にこうつづっています。「正直離婚したいです…。今しがみついているのは、昔の旦那に戻ってほしいという期待、子供には父親がいてほしいという思い、たびたび言われる『お前は人として間違っている』のが、そうなのかなという迷いです」

モラハラ夫に悩んでいる女性からの投稿はこれだけではありません。発言小町には、怒鳴られたり、けなされたり、ののしられたりと、夫から深く傷つけられた出来事の数々が書き連ねられています。

「けんかになるたびに、『俺は子供がいればいいからお前はいらない、お前はクソみたいな人間だ』と罵倒され…」(「トピ主」さん)

「『誰のおかげで生活できていると思っているんだ!』『おれがいなかったら何もできないくせに』などは日常茶飯事」(「あいこ」さん)

「結婚二年目の夫婦です。夫から『子供を産んでないお前は欠陥品だな』と言われました」(「コウノトリ」さん)

「半年前に出産したものです。1か月の里帰りから帰ると、旦那に『お前の汚い乳飲ませるな』といわれました」(「にい」さん)

過去に付き合っていた男性からモラハラを受けた経験があるという「ありらん」さん。今付き合っている10歳年上の男性は優しい性格で、束縛をしたり、怒鳴ったりすることはありません。しかし、「この優しさは今だけで、時がたつとモラハラになるのかと、不安になります」と気にやんでいます。

モラハラの入り口に足を踏み入れた夫

厚生労働省によると、モラハラは言葉や態度、身振りや文書などによって、人格や尊厳を傷つけたり、精神的に傷を負わせたりする行為とされています。

公認心理師の小高さんは、「何げない一言で深く傷つく人もいますし、周囲が『そんなひどいことを……』と思うようなことを言われているのに気にしない人もいます。一口にモラハラと言っても、人それぞれ程度や状況は異なります」と説明します。

小高さんによると、夫婦間のモラハラについては、「相手をおとしめる」「過度に束縛する」「暴言を吐き脅威を与える」「経済的に追い詰める」などの行為が当てはまり、具体的には次のような暴言が想定されます。

「だれのおかげで飯が食えると思ってんだ」
「だから、お前はダメなんだ」
「今度やったら、殺すぞ」
「どこに行ってたんだ」

小高さんは「理不尽に夫がこのようなことを言い始めたら、モラハラの入り口に足を踏み入れている可能性がある」と警告します。

モラハラには、〈1〉無視をしたり、小言や悪口を繰り返したりする「蓄積期」〈2〉激しく怒鳴ったり、暴れたりする「爆発期」〈3〉謝ったり、優しい態度を示したりする「ハネムーン期」――の三つの時期を繰り返すモラハラサイクルがあります。

ストレス発散と感情のコントロールを繰り返すモラハラ夫は、「ハネムーン期」になると、「そんなつもりじゃなかったんだ」と言い訳をしたり、「この前は悪かった」と謝罪をしたり、プレゼントを用意して「いつもありがとう」と感謝を口にしたりして態度を一変させます。モラハラにおびえながら暮らしている妻は、夫のこうした変化にホッとします。「本当は優しい人」「やっぱり一緒にいたい」「きっと変わってくれるはず」と、夫を見直してしまいがちです。

そればかりか、夫のモラハラの原因が自分にあると考えてしまう妻も少なくありません。小高さんによると、モラハラ被害者の妻は「こんな夫を支えられるのは私だけ」「私がいないと夫はもっとダメになってしまう」と思い込み、達成感や自尊心を維持しようとする傾向が見られます。「私がダメだから……」「夫婦ってこういうもの……」と自らを戒め、「こんなダメな私を夫は認めてくれる」「私がもう少し我慢すればいい」などと考えてしまい、負の連鎖にはまってしまうのです。

モラハラの加害者になる男性について、小高さんは一例として次のような特徴を挙げます。

・立場の優位性を示したがる
・男らしさや頼りがいがあると見られたがる
・他者からの評価を気にする自分大好き人間
・立場の弱い人に威張る
・自分は特別、自分は正しいという意識が強い

小高さんは「モラハラ夫は、DVが犯罪であることを理解しているため、身体的暴力は振るわず、言葉で相手を支配しようとする賢いタイプが多いようです。学生時代に成績が良く、いい大学を出て、いい会社に入り、常に周囲から認められてきた高学歴男性という傾向が見られます。いつも褒められて育ってきたので、職場や家庭で注意や批判を受け入れられず、プライドを保とうと自分よりも弱い者へ暴言や怒りを発散し、自分の存在価値を確認しているのです」と特徴を分析します。

結婚前に、付き合っている男性にモラハラの傾向があるかどうか見極める方法として、小高さんは、飲食店などに出かけた際、男性が店員にどのような態度で接するかを観察することを勧めます。店員に威張った態度を見せたり、ちょっとしたミスに激高したりすることがあれば、モラハラの危険があります。他人の欠点ばかりを指摘したり、「有名人の知り合いがいる」と自分が特別であるかのように言ってみたりし、自らを大きく見せようとする言動も要注意です。

モラハラ夫の支配から抜け出す方法
小高さんのカウンセリングを受けているモラハラ被害者の女性の多くは、「離婚したい」「夫を治してほしい」と切実に訴えるそうです。ただ、子供のことや経済的なことを考えると、すぐに離婚するのが難しいケースも少なくありません。また、他人の性格や態度を変えるというのも簡単ではありません。「モラハラかもしれないと思ったら、まず、信頼できる身近な人に相談することです。状況を理解してくれる人がそばにいることは、とても心強く感じられるはず」と小高さん。

普段の服装や買い物にもケチをつけるモラハラ夫におびえ、ファッションやアクセサリーも夫の言いなりという被害女性もいます。小高さんは「夫に気付かれないように、バッグの中に忍ばせるポーチを自分で選んで購入したり、小さなアクセサリーを内緒で身に付けたりしてください。ささいなことかもしれませんが、夫の機嫌をうかがっているだけの日常を、自ら少しずつ変えることが大事です。モラハラ夫の支配から抜け出す自信につながります」とアドバイスします。

小高さんの相談者の中には、10年以上もモラハラ夫に悩んでいるという女性が何人かいます。最初に相談に訪れたとき、幼かった子供がもう中学生になったという人も。「カウンセリングを受ける中で自分の生きたい将来が明確になり、子供が大人になったら夫と離婚をする」と心を決めた女性は、「あと5年。もう少しでモラハラ夫から解放され、ようやく自分らしい生活ができる」と前向きに考えているそうです。

小高さんは「感情的になって離婚を切り出したり、反撃を試みたりすれば、逆上されかねません。今、モラハラに苦しんでいても、決してここで終わりだと思わず、幸せな未来を思い描いてください」とエールを送っています。

中谷美紀に「顔が気持ち悪い」「殺してやる」想像を絶する“スパルタ指導”、映画界にはびこる“異常な感覚”


 監督・榊英雄、園子温、俳優・木下ほうか、プロデューサー・梅川治男……日本映画界で名を馳せてきた男性たちの性加害報道が相次いでいる。

 これをきっかけに、映画界のハラスメント体質自体が問題視され、『万引き家族』などで知られる是枝裕和ら映画監督の有志らが、「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」とする声明を発表するなど、業界内からも意識改革が叫ばれている。こうした流れの中、以前では、“美談”として語られていた監督から俳優へのスパルタ演技指導も、今後は「ハラスメントではないか?」という厳しい目が向けられそうだ。

「じゃあ、脱げ」「じゃあ、踊れ」
 一連の性加害報道の始まりは、3月10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、「性被害」を題材にした映画『蜜月』の監督である榊の性行為強要問題を取り上げたことだった。

「この記事が世間で波紋を広げる中、SNSでは、日本映画界のパワハラ問題にもメスを入れるべきという論調が高まりました。具体的に名前が挙がった監督の一人が、井浦新と成田凌の出演映画『ニワトリ☆フェニックス』の公開を4月15日に控えていた、かなた狼監督です。

 成田が、前作『ニワトリ☆スター』公開時に、『A-Studio』(TBS系)で明かしたところによると、役作りのためのワークショップを行う中、かなた監督からの『恥ずかしいことはあるか?』という質問に、『別にないです』と答えると、『じゃあ、脱げ』『じゃあ、踊れ』と指示され、全裸でAKB48の『ポニーテールとシュシュ』を披露することになったそう。

 あまりの厳しい指導に『それ(ワークショップ)を2回、3回目に行く中で、車中でおしっこをもらしました。監督に会いたくなさすぎて』とも語っていたんです。成田は『宝物のような作品ですけど』と、出演を後悔しているわけではないとフォローしたものの、SNS上ではあまりにも非人道的な指導であると、物議を醸しました」(芸能ライター)

 このように、日本映画界では、俳優本人の口から、“監督によるスパルタ演技指導”のエピソードが語られることは珍しくないが、「あらためて振り返ってみると、俳優側からパワハラで告発されていてもおかしくないというもの、少なくとも、今の時代では、世間から問題視されるものが散見されます」(同・前)という。

 かなた監督以外にも、すでにSNS上では、さまざまな監督の名前が取りざたされている。特に目立つのが、CM業界の第一線で活躍し、映画界に進出した中島哲也監督。これまで中島監督は、『下妻物語』(2004年)、『告白』(2010年)、『渇き。』(2014年)など、数多くの話題作を世に送り出してきたが、『嫌われ松子の一生』(2006年)の主演・中谷美紀が明かした彼の撮影中の言動は「想像を絶するものがある」(映画ライター)という。

「下手くそ!」と罵られて
「中谷は同作で、数奇な運命に翻弄される主人公を演じましたが、2015年放送の『A-Studio』で語った撮影現場のエピソードは、映画の内容以上にショッキングなものでした。なんでも撮影中、中島監督から怒鳴られ続けた中谷は、睡眠時間が1日1時間の日が続いたこともあり、『「辞めろ」とか「殺してやる」とか毎日言われていたので、途中で本当に嫌になってしまって、涙が止まらなくなって』撮影を放棄したというんです。

 ほかにも、中谷は公開当時から、撮影時のエピソードを各所で披露しており、撮影放棄のきっかけになったのは、監督の『あんたの感情なんてどうでもいいから』という言葉だったこと、また『顔が気持ち悪い』と罵声を浴びせられたことなども、つまびらかに語っていました。それでも中谷はのちに、中島監督に再会した際、同作の撮影期間について『今では豊かな日々だったと思います』と述べ、『思い出深い……何かの折に思い出す作品ですし、一生、私の原点になる作品だと思います』と断言しています」(同・前)

 また『渇き。』で、謎の失踪を遂げた女子高生役を演じ、スクリーンデビューを飾った小松菜奈も、中島監督の現場で涙を流したことを明かしている。

「小松は、ウェブメディア『cakes』のインタビューで、中島監督から何度も『下手くそ!』と叱られていたと語り、『あまりに何度もダメ出しが入ったので、「どうしたら私に加奈子が演じられるんだろう?」っていう感情がガーッとこみ上げてきて、思わず現場で泣いちゃいましたね』と振り返っていました。ただ小松本人は、中島監督のことを『すごく優しい方だった』と受け止めているそうです」(同・前)

 『フラガール』(2006年)、『悪人』(2010年)、『怒り』(2016年)などで知られる李相日監督もまた、俳優への厳しい演出が疑問視されている。『怒り』で、当時未成年の広瀬すずは、沖縄の米兵に乱暴される女子高生という難役に挑んだが、李監督からの言葉に「恐怖」を感じたことを、2021年11月放送の『情熱大陸』(TBS系)で語っていた。

「同作のラストシーンを撮影した際、1~2回でOKが出たものの、李監督の顔は『全然OKじゃなくて』、その後、誰もいないところに呼ばれ、「すごく冷静なトーンで『この映画壊す気?』って言われた」といいます。広瀬はその時の感情を『もはや悔しいというより恐怖でした』と表現していました。しかし、そうした厳しい指導も、『全てが愛情』と、ウェブメディア『シネマトゥデイ』のインタビューで総括しています」(雑誌編集者)

 『許されざる者』(2013年)に、渡辺謙扮する主人公・釜田十兵衛とともに賞金首を追う青年を演じた柳楽優弥は、李監督からOKが出ず、1カットに100テイクを重ねることもあったと、2021年放送の『A-Studio+』で告白している。

Netflixはハラスメント研修を
「渡辺ほか、柄本明や佐藤浩市といった大御所俳優の前で、何十、何百テイクもやったという柳楽は、『結構やっぱ怖かったですし、俺、このまま死ぬのかな(と思った)』『緊張して震えてるのか、寒くて震えてるのか、わからないぐらい』と、かなり精神的に追い詰められていたようです。それでも柳楽は、ウェブメディア『MOVIE WALKER PRESS』のインタビューで、『厳しくしてもらえる現場にいられることが幸せだと強く思いました』と語り、李監督に感謝しているといいます」(同・前)

 中谷、小松、広瀬、柳楽の例からもわかるように、「俳優が語る監督の鬼指導エピソードは、“何度も怒鳴られ、けなされても、必死になって食らいついていくことで、役者として一皮むけることができた……”というパターンが定番」(同・前)だという。

「しかし、そのような美談によって、監督からの言動に苦しめられた俳優やスタッフの声がかき消されてしまう危険性もある。仕事中に罵声を浴びせられたり、『死ぬのかな』とまで追いつめられるというのは、やはり一般社会から見たら、あまりにも異様な光景といえるのではないでしょうか。

 最近では、Netflixが、現場でのハラスメント行為を防止するため、全ての関係者に『リスペクト・トレーニング』という研修を課すようになっています。ハラスメントに関する基本的な考え方を学ぶだけでなく、参加者が意見交換を行いながら、『何が問題となるのか』を共有していくという取り組み。今後、『リスペクト・トレーニング』を取り入れる作品は増えていくものとみられます」(前出・映画ライター)

 日本映画界は、ハラスメント体質から脱却できるのか……今こそ、膿を出し切るタイミングなのかもしれない。

パワハラされやすい人の2つの特徴


仕事や人間関係…しんどいことが多い、という人にぜひ読んでもらいたいのが、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』(わび著)だ。著者のわび氏は元幹部自衛官としてエリート街道をひた走っていたが、上司のパワハラと早朝深夜の激務が重なりメンタルダウン。

復職を果たした後、「出世ばかりが人生ではない」「人に認められるためではなく、もっと楽しく生きたい」と思い、転職。現在は外資系企業の社員として活躍している。

自衛隊などの社会人経験で身につけた仕事術、メンタルコントロール術についてツイートした内容が人気を集め、Twitterを開始して2年半でフォロワーは12万人を突破、10万超えいいねを連発し、ネットメディアにもたびたび取り上げられている。

仕事・人間関係で生き抜く知恵が詰まった本書の発売を記念し、今回は特別インタビューを実施。著者・わび氏にパワハラされやすい人の特徴について聞いた。(取材・構成/川代紗生)

パワハラされやすいのは「仕事ができない人」ではない

──まるで自伝を読んでいるかのようにぐんぐんと引き込まれて、あっという間に最後まで読んでしまいました。ひどいパワハラにあい、メンタルダウンして自殺を考える寸前のところまでいってしまう……というストーリーは本当に壮絶で。ただ、意外だったのは、わびさんのように幹部自衛官としてエリートコースを進んでいた人なのに、なぜパワハラされてしまったのだろう、と。

わび:「パワハラされやすいのは、仕事ができない人」という風潮がありますが、実はそうともかぎりません。

 運悪くパワハラ上司のもとで働くことになり、心身ともに壊れ、休職したあとで私がようやく気がついたのは、「自分がパワハラのターゲットになってしまったのは、仕事ができないからではなく、『何を言っても反抗しない』と思われていたからなんだ」ということでした。

 私自身も、その上司のもとで働き始めたばかりのころは、「指導していただいている」「ありがたい」と思って素直に話を聞いていました。

 今振り返ってみると、その真面目すぎる姿勢がよくなかったのかなとも思います。

 同期たちの中でトップクラスの成績だった、その地位をキープしたい、というプライドや執着もあったかもしれません。

 いずれにせよ、悪い意味で仕事に依存しすぎてしまっていたのだと思います。

──なるほど。

①「何を言っても反抗しない」と思われていないかどうか

② 仕事への依存度が高すぎないかどうか

 上司との関係性に悩んでいる人は、日頃からこの2つのチェック項目を持っておくといいかもしれませんね。

部下は否定されすぎると従順になる

──わびさんは、月200時間以上の残業や、上司からの理不尽な指導などを受けていたにもかかわらず、職場で倒れるまで1年半もの間、同じ環境で仕事を続けていました。「辞めよう」「この上司はおかしいかもしれない」と思ったことはありませんでしたか。

わび:不思議なことに、人って否定されまくると従順になるんですよ。一種の洗脳状態になってしまっていたんでしょうね。

 立場が上の人に「お前が悪い」と言われ続けると、相手が正しくて自分が間違っていると思い込むようになるんです。

 だからこそますます、「仕事ができない自分に対して指導してもらえてありがたい」と、相手の言葉を信じるようになってしまう。

──恐ろしいですね。わびさんは具体的には、どんな言葉を投げかけられていたのでしょうか。

わび:私の場合は、とにかく毎日のように「否定の言葉」をぶつけられていました。

 最初は仕事のやり方についてだけだったのが、徐々に、プライベートな出来事についてまで否定されるようになって。

 お弁当の中身や、家族や、子どもの名前にまで文句をつけられて。

──お子さんのお名前にまで? たとえば、どんな?

わび:「変な名前やな」とか、あとは、「お前なんかと結婚した嫁さん、可哀想やな」みたいなことも言われましたね。

──客観的にはどう考えてもその上司がおかしいとしか思えませんが、当時はなかなかそうは思えなかったんですよね。

わび:これが不思議なもので、否定されまくればされまくるほど私は従順になって、きちんと職場に行っていました。

 どんどん思考がおかしくなっていき、しまいには「どの種類の缶コーヒーを飲むか」すら、決められなくなったくらいです。

「このコーヒーにしたら怒られるんじゃ?」と考えてしまって、自分で決断できない。

「全部、仕事ができない自分が悪いんだ」「迷惑をかけないようにしなくちゃ」と追い込まれて、休むなんてとても考えられませんでした。

「35歳転職限界説」「メンタルダウン不採用説」というウソ

──仕事についても、理不尽な指導を?

わび:仕事も基本的に全否定でした。

「このやり方じゃダメだ」「お前は何回やってもダメなんだ」「前もダメだったよな」「お前のことだから、どうせ次もダメだろう」など、過去・現在・未来のすべてにおいて否定してくるんです。

──過去の失敗について言われるのも嫌ですが、未来の失敗を予言されるのも嫌ですよね……。そういった上司のもとで働くことになってしまった場合、どのように対処すれば良いでしょうか。

わび:一番の方法としては、物理的に距離をとること。

 パワハラのターゲットにされてしまったら、私のようにメンタルダウンして、元の状態と同じように働けるようになるまでに1年かかって……なんてこともありえます。

 まだ洗脳される前の段階で逃げないと、手遅れになる可能性もある。

──そんなにすぐに転職なんてできないよ! という意見もありそうですが。

わび:そうですね、たしかに、そういうご意見もあると思います。

 ただ、もしかしたら、「この会社を辞めたら他に行くところなんてない」という考え方こそが、パワハラ上司に洗脳された結果かもしれません。

「どうせどこに行ってもお前はダメだ」と言われ続けて、自信を失っていないか? 思い込まされていないか? と、あらためて自問自答する時間を持ったほうがいい。

 実は私も、インターネットでよく言われている「35歳転職限界説」などを信じ込んで、転職に踏み切れなかったんです。

「メンタルダウンした人は採用されにくい」という話も聞いていたので、休職したあとはよけいに不安でした。

 でも、いざ挑戦してみたら、3ヶ月ほどの勉強で、市役所に転職。その後は外資系企業に転職し、今もそこそこの年収でストレスフリーに働けています。

 私がこの本を書いたのも、そういった思い込みのせいで、行動する勇気が出ない人の背中を押したかったからなんです。

 行動してみたら案外、どうにかなることってたくさんある。

「自分には無理」「ここで働くしかない」という思い込みのせいで、仕事場にしか居場所がないというのが一番よくありません。

 重要なのは、「いつでも転職できる状態」をつくっておくこと。

 私も今現在も、常に転職活動をしていますが、それは一種の自衛手段なんです。

 上司の求める人生ではなく、他人の求める人生ではなく、自分の人生を生きるために、ひとりでも多くの人に「最強の技術」を使っていただけたらと思います。

重度のパワハラ経験者にしかわからない「それでも会社を辞められない理由」


「そんなにひどい職場ならさっさと転職すればいいのに」。いくら周りがそう思っていたとしても、パワハラを受け続けている間は、会社を辞めるという選択肢すら浮かばなくなる…。そう語るのは、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』著者・わび氏だ。冷静な判断ができなくなる前に、メンタルを病まないための自衛術を学んでほしいと上梓した本書の発売を記念し、今回は、『生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』著者のバク@精神科医氏と特別対談を実施。仕事や人間関係で病まないコツを、徹底的に語り合ってもらった。(取材・構成/川代紗生)

過労死レベルの状況で耐え続けた1年半

──コロナ禍の影響もあってか、仕事で追い詰められてもストレス発散の方法がなく、落ち込んでしまう人も多い、という話をよく聞きます。わびさん、バク先生のお二人も、メンタルダウンしてしばらく精神科に通ったご経験があるとか。

わび:私は月約200時間の残業と、パワハラが原因でしたね。

 自衛隊で幹部自衛官として働いていたのですが、当時、同期の中で成績がトップクラスだったこともあって、「周りの期待を裏切れない」というプレッシャーが強かったんです。

 ちょうどプライベートでは双子が生まれた時期で、もちろん子どもが生まれたことは喜ばしいことではあったんですが、職場でも家でも気が休まる暇がなく、ある日突然、ポッキリと折れてしまったんです。

 職場で倒れて、動けなくなってしまいました。

バク:私も昨日、今回の対談に向けてわびさんの『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』を読み直していたんですが、「いやいや、耐えすぎやろ」とツッコミを入れてしまいました(笑)。

 正直、精神科医として度肝を抜かれましたよ。たぶん普通の人だったら、もっと早くにギブアップしていたんでしょうね。

わび:そうですね。一度上司に相談したんですが、典型的なパワハラをする人だったので、まったく取り合ってもらえませんでした。

 結局、職場で倒れて病院に運ばれてようやく立ち止まることができた。1年半くらいはその環境で耐え続けていたと思います。

バク:限界をかなり超えたところまでがんばってしまったんですね。その分、回復にかなり時間がかかったんじゃないですか?

わび:メンタルダウン前と同じペースで働けるようになるまでは、1年以上かかりました。

 もう少し早く別の道を選べていれば……と今なら思えるんですが、追いつめられているときって、やっぱり冷静に判断はできないんですよね。

バク:たぶん、一般的には3ヶ月で過労死するレベルの職場だったのに、わびさんは体力があるばかりに長い間、耐え続けてしまったんでしょうね。

わび:それでもメンタルダウンしていた当時は、「たかが1年半程度のパワハラにも耐えられなかった自分はなんてダメなんだ……」と劣等感の塊で、本気で自殺を考えていました。

「そんなに大変なら転職すればいい」ができない理由

バク:私自身も

というか、もし渦中にちゃんと気がつけていたら、病気にもならないでしょうしね。

わび:うん、わかります。

 よく、パワハラされてボロボロになってもなお会社を辞めずに働き続けている人に対して、「そんな状況になる前に転職すればいいのに」という人がいるじゃないですか。

 でも、パワハラ地獄に陥ると、そのような選択肢がまったく出てこなくなるんですよ。

 たぶんこれは、重度のパワハラ経験者でないとわからない感覚だと思います。

 私なんて、パワハラを受け続けていたとき、「あの車にはねられたら、仕事に行かなくていいかな……」と考えてしまうくらい、思考回路がおかしくなっていました。

 上司に会うより、交通事故のほうがマシと本気で思うようになるんです。自分が飲む缶コーヒーの種類すら選べないんですよ、怖くて。「このコーヒーを選んだら怒られるんじゃないか」と不安になってしまって。

バク:人は怒られすぎると、怒られないようにしか動けなくなりますからね……。

わび:とにかく、まともな思考ができなくなっているから、「私の努力が足りないだけ」「私の代わりはいない」「いつかきっとわかってもらえる」と思い込んで、パワハラされているという紛れもない事実があっても、「全部私が悪いから」という原因に結びつけてしまうんです。

バク:私もメンタルダウンしたとき、「これって私が悪いんじゃなくて、環境のせいでは?」と気がついたのは、病気が治ってからでした。

 それまでは、とても「自分が悪いんじゃない、周りが悪いんだ」なんて確信は持てなかった。

 自己肯定感を低くする呪いの言葉って、心の奥底の柔らかい所に刺さったすごく細かいトゲみたいに、抜くのがめちゃくちゃ難しいんですよ。

 だからこそ、情報源をひとつに絞らないのがすごく大事で。

 ずっと同じ環境に居続けて、ずっと同じ人からの言葉を浴び続けていると、「正解」はそれしかないみたいに思い込んでしまう。他の選択肢が入り込む隙がなくなるんです。

 私がツイッターや書籍でこまめに発信しているのも、「もしかして、おかしいのは自分じゃなくて、上司なんじゃないか」「環境が合わないだけなんじゃないか」という考えが少しでも浮かんだその一瞬に、私の言葉が届いたらいいなと願っているからなんです。

 その瞬間に目に触れた「おかしいのはあなたじゃないよ」という言葉で、今本当に苦しんでいる人が、もしかしたら救われるかもしれない。

わび:うんうん。私もそれはすごく伝えたいです。パワハラって怖いですよ、本当に。

 一度メンタルが壊れると、ものすごく重い足かせを付けることになる。パソコンに例えるなら、メモリ不足で動作が遅くなる感じなんですよね。

 何かやろうとしてもよけいな不安が入り込んで、通常の何倍も時間がかかるようになる。

 そして、この足かせはなかなか外れません。

心が壊れる前にまず逃げよう

バク:一度メンタルが壊れてしまうと、落ち込むスイッチが入りやすくなる人もいますからね。よく「精神疾患は心の風邪だ」という表現をする人がいますが、私は「心の骨折」という表現の方が近いと思っています。

 骨がポキッと折れてしまったら、ギプスをつけていったん治ったとしても、またすぐに、元気モリモリ100%の力で動くのは難しいじゃないですか。

 リハビリしないと前のようには歩けないですよね。

 それと同じで、一度完全に心が折れてしまうと、全快するまでにはものすごく時間がかかるんです。

わび:本当にそう思います。心が完全に壊れる前に逃げないと。

 生きづらさを抱えてしんどくなってしまう人は、優しすぎるんですよ。

 人の気持ちを優先しすぎてしまうんです。

 人生の主人公は自分なのだから、まずは自分に優しくしてほしいですね。

 私自身は、これまでの経験を通して人間関係で疲れないために、

「執着しない」

「期待しない」

「皆から好かれるなんて無理」

 の3つのキーワードをいつも頭に置いておくようにしています。それでだいぶ、無駄に消耗することが少なくなりました。

 他人の行動や感情はコントロールできません。「ほどよく無関心」くらいがちょうどいいんだと思います。

メンタルダウンしたことがありますが、やっぱり渦中にいると「自分が悪い」としか思えないですよ。

「会社の窓口は信用してはいけない」パワハラ相談の5割がもみ消されているという驚きの事実


職場でパワハラを受けたらどうすればいいのか。労働問題に取り組むNPO法人POSSEの坂倉昇平さんは「会社の窓口に相談した場合、残念ながら5割は『無視』『放置』されている。被害についての録音や録画を残したうえで、社外の相談窓口に頼ったほうがいい」という――。

企業のハラスメント対策は信用できるのか

いじめ・パワハラ被害が深刻化している。厚労省が職場のいじめ・パワハラによって精神障害が発生したと認定した件数を見ても、この11年間で10倍に膨れ上がっている。そんな中、2022年4月から中小企業にもパワハラ防止法の本格的な適用が始まる(大企業は2020年6月から適用されている)。しかし、このパワハラ防止は、本当にうまくいくのだろうか?

筆者はNPOや労働組合の活動を通じて膨大な労働相談を受ける中で、このいじめやハラスメントが横行する深刻な労働現場の実態に向き合い、そこから見えてきた背景について、昨年『大人のいじめ』(講談社現代新書)にまとめた。

この記事では、同書の内容を踏まえつつ、昨年発表された日本経団連と厚生労働省による2つのハラスメント調査を参考にしながら、企業のハラスメント対策がどこまで信用できるのか、本当に有効なハラスメント対策とは何なのかを考えていきたい。

パワハラ防止法で可視化された被害者たち

2021年12月、経団連が職場のハラスメント防止に関するアンケート結果を発表した。会員企業に対して9~10月に実施したものだ。この結果、回答した企業の44%において、5年前と比較してパワハラの相談が増加していたことがわかった。

この数字は、ざっくり2つの観点から考えることができる。まずは、パワハラ行為そのものが、実際に以前より増加したという可能性である。これは厚労省のいじめ・パワハラ相談が一貫して増え続けていることから、明らかであると考えられる。

もう1つは、2019年にパワハラ防止法が成立し、翌年から大企業に対して適用されたことで、この1、2年で労働者に対して啓発的な効果があり、相談が増加したというものだ。特にパワハラに対する取り組みの数が多い企業に絞ると61.1%で、相談数が増えており、その影響は少なくないといえよう。

パワハラ防止法によって、これまで泣き寝入りするしかなかった被害者たちが、受けた被害が問題のある行為であることに自信を持ち、対応してくれる窓口があると知った意義は大きい。

しかし、問題はその後である。企業の相談窓口に相談したら、どうなるのだろうか。経団連の調査では、肝心のその後は調査されていないようだ。その先の実態がうかがい知れるのが、2020年に労働者に対して調査が行われ、2021年に発表された厚労省のハラスメント調査である。

企業は相談の半数を「放置」「無視」している

この調査によれば、労働者がパワハラを受けている(またはパワハラがあった可能性がある)ことを知ったあとの勤務先の対応について、なんと「特に何もしなかった」が47.1%に上っており、1位を占めている。ほとんど半分だ。

ちなみにほかの回答項目(複数回答あり)は「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談に乗ってくれた」(28.0%)、「あなたに事実確認のためのヒアリングを行った」(21.4%)、「行為者に事実確認を行った」(9.7%)などである。

事例によっては、被害内容がグレーゾーンに当たり、パワハラとまでは判断されないこともあるだろう(もちろん、企業側が被害を過小評価することは十分にあり得る)。しかし、相談者、行為者にヒアリングをするという、いずれも被害事実がパワハラであったかどうかを判断する手前のプロセスですら、それぞれ2割、1割程度しか行われていない。あろうことか相談者の要望を聞くという、ごく最低限の対応すら3割に満たない。約5割は「放置」や「無視」をされ、初歩的な段階で闇に葬られてしまうのだ。

筆者も相談で経験したことがあるが、加害者や関係者、会社で事実関係について口裏合わせをされてしまったり、証拠を改ざん・隠蔽(いんぺい)されたりというパターンも少なくない。

このように厚労省の調査を見る限り、企業の相談窓口の実態は、信頼して利用できるとは到底言えないのが現状だ。

会社がパワハラ相談を無視する実態については、私の著書『大人のいじめ』の一部を紹介した記事「たった1年で30人が離職…「黒字転換」した介護施設で起きていた“陰湿ないじめ”の手口」も読んでみてほしい。

コミュニケーション強化でパワハラは解決するか

ハラスメント「発生後」の相談窓口の対応に不安がある一方で、企業のハラスメント「防止」にはどのような課題があるのだろうか。

前述の経団連のハラスメント調査では、ハラスメント防止・対応の課題についても加盟企業に尋ねている。1位は63.8%が「コミュニケーション不足」だった。ついで、「世代間ギャップ、価値観の違い」(55.8%)、「ハラスメントへの理解不足(管理職)」(45.3%)と続く。大まかには、もっと社内のコミュニケーションや考え方、周知啓発を増やすことで、パワハラが減ると認識されているようだ。

本当に、パワハラ対策の課題はそこにあるのだろうか。そこで参考になるのが、前述の厚労省ハラスメント調査だ。この調査の質問の1つでは、現在の職場でパワハラを受けている労働者と、過去3年間にパワハラを経験していない労働者に、職場で起きている、ハラスメント以外の問題について聞いている。この回答から、パワハラの背景を推測できるのではないだろうか。

実はこの質問でも、パワハラを経験している労働者のほうが、上司とのコミュニケーション不足があったと回答する割合が2.5倍ほど高く、コミュニケーション不足との相関関係があるといえよう。ただ、パワハラの結果としてコミュニケーションがなくなるというケースも多いだろう。

むしろ、ここで注目されるのは、「残業が多い/休暇を取りづらい」という項目だ。パワハラを経験した職場とそうでない職場とで、約2.3倍の差がついているのだ。

ここから、長時間労働や休みを取れないなど、過酷な労働環境がパワハラをもたらしているという構造が浮かび上がってくる。実際、記事「先輩に顔面を10発殴られて転倒…それでも若手社員が“血で汚れたシャツ”で仕事を続けたワケ」ではわかりやすく、長時間労働や膨大な業務量によるストレスから、暴力を含むパワハラが横行していた。

日本社会に蔓延する「経営服従型いじめ」

筆者は著書『大人のいじめ』を通じて、いま日本中を覆い尽くしている、労働者をひたすら使いつぶすことで利益を上げる労務管理や経済の在り方が、パワハラを積極的に必要としてきたことを論じてきた。職場のストレスによる不満の矛先を経営者に向けさせないために、あるいは経営の論理を優先する働き方についていけない労働者を「矯正」「排除」するために、ハラスメントが「役立って」いるのだ。いわば、労働者を沈黙させ、「支配」するためのシステムである。筆者はこれを「経営服従型いじめ」と呼んでいる。

このような職場が蔓延する社会では、コミュニケーションや啓発によるパワハラ対策では、焼け石に水だろう。ちなみに、前述の経団連のハラスメント調査で、ハラスメント防止・対応の課題について「長時間労働」を挙げたのは、回答した企業のうち、わずか5%であった。

多くの大企業のトップたちは、自分たちが依存してきた低賃金・長時間労働からの転換には目もくれず、表面的な「対策」に問題を矮小(わいしょう)化しようとしている。それは、労働者を使いつぶすことで経済成長を目指してきた、これまでの資本主義の在り方に、これからも頼り続けたいからだろう。逆に言えば、ハラスメントを根本から減らしていくことは、職場の在り方を、経済の在り方を変えることにつながるのだ。

「会社が助けてくれる」幻想は一旦捨てよう

「会社が助けてくれるはず」という幻想は、一旦捨てたほうがいい。もちろん、真面目に対策に取り組もうという会社の存在は否定しないが、そんな「ガチャ」には期待できない。上からの「ハラスメント対策」は、まず疑ってかかるべきだ。

ハラスメント被害に対抗するためには、労働者としての権利を行使することだ。労働者からの強力な突き上げがあって初めて、ハラスメント対策や職場環境の改善に、企業も重い腰を上げるようになる。たしかに、「大ごとにしたくない」という被害者もいるだろう。そういう人でも、少なくとも権利行使のための準備はしておくべきだ。

ハラスメントの連鎖を断ち切れるのは労働者自身

具体的には、可能な限り被害の証拠を残すことだ。スマートフォンの録音アプリやICレコーダーで、加害者の言動の録音を取っておこう。メールやSNSによるハラスメントは、そのままデータやスクリーンショットを保存しておいてほしい。動画を撮影できるのなら、それもかなり大きな証拠になる。一方で証拠がなければ、パワハラの事実が認められることは、残念ながらかなり困難になってしまう。

そして、早めに会社以外の相談窓口に相談してみてほしい。たとえ、あとから会社に相談することになったとしても、その前に専門家の意見を仰いでおくに越したことはない。労働者側の立場で労働問題を専門とする弁護士たちもいる。あるいは、筆者が役員を務めている、NPO法人POSSEや総合サポートユニオンのような、職場の理不尽に対して声を上げる労働者をサポートする支援団体や労働組合もある。

ハラスメントの連鎖を断ち切ることができるのは、労働者自身の力だ。その行動は、会社に対する幻想を捨て去り、ハラスメントと労働者使いつぶしの資本主義で荒廃していく日本社会を変えていく一歩にもなるはずだ。

---------- 坂倉 昇平(さかくら・しょうへい) NPO法人POSSE理事 1983年生まれ、静岡県出身。ハラスメント対策専門家。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2006年、労働問題に取り組むNPO法人POSSEを設立。08年、雇用問題総合誌『POSSE』を創刊し、同誌編集長を務める。現在はPOSSE理事として、年間約5000件の労働相談に関わっている。共著に『18歳からの民主主義』(岩波新書)、『ブラック企業vsモンスター消費者』(ポプラ新書)。 


すさまじいネット中傷を受け比叡山で頭を丸めた女性が、涙する加害者たちに3時間かけて話したこと


天台宗照諦山心月院尋清寺の住職、髙橋美清さん© PRESIDENT Online 天台宗照諦山心月院尋清寺の住職、髙橋美清さんフリーのアナウンサーだった髙橋美清さんは、ストーカー被害に遭ったことをきっかけに、すさまじいネット中傷を受け、一時は命を絶つことを考えるほど苦しんだという。厳しい修行を経て天台宗の僧侶となった髙橋さんが、ネット中傷の加害者数人を特定し、対峙したのはなぜなのか――。

誹謗中傷の影響で、仕事も収入もゼロに

ストーカーの被害を受けていた髙橋さんだが、加害者がストーカー規制法で逮捕され、ほどなくして不慮の事故で亡くなってから一転、ネット上で加害者扱いされるようになり、すさまじいネット中傷を受けるようになった。

「フリーのアナウンサーとして仕事をしていた職場からは、『表に出るのはあなたのためにならない』という言い方で断りの連絡がありました。こういう時、フリーの立場は弱いですよね。あっという間に仕事がなくなりました」

収入はゼロになった。仕事先の関係者はもちろん、友達の多くも離れていき、中傷に加担する人までいた。人が怖くなり、家から外に出られなくなった。

「ある時、問題のある書き込みをネットから消してもらえるかもしれないと聞いて、法務局に相談に行ったんです。『該当する書き込みを持ってきてください』と言われ、自宅でプリントアウトしていると、厚さ30センチ以上になって、プリンターが壊れたほど。何とかコピーを持っていったら、『全部は無理です。どれにするか選んでください』と言われました。一部だけ消してもらってもあんまり意味がないのに、どこかひとごとなんです。それに、その頃はまだ、ネット上の中傷を取り締まる法律はありませんでしたから」

ひと度、自分の名前を検索すれば、10万件もの罵詈(ばり)雑言が並び、ウィキペディアには「○○が自殺したきっかけを作った人物」とまで書かれた。

わかっているが、見てしまう

「警察に相談に行ったときには、『そんなもの、見なければいいじゃないですか』と言われました。それはわかっているのですが、見てしまうんです。見るのをやめても、『誰かがあのひどい書き込みを見ているんだ』と思うと、耐えられない気持ちになってしまう」

「人殺し」「まだ首を吊らないの?」といったメールも届く。「そんな毎日が続くと、『本当に死んだほうがいいのかな』という気持ちになってしまうんです」

その頃の精神は、ボロボロを通り越してすりつぶされた状態だったと振り返る。

「だけど、『自分が死んだあと、飼っていた3匹の犬はどうなるんだろう』『母が亡くなったばかりなのに、娘まで死んだら残された父は大丈夫だろうか』などと考えました。それに、僧籍の身では自死はできません。そんな折、伝教大師のご遺誡(最澄が残した言葉)にある、『怨みを以て怨みを奉ぜば怨みやまず』という言葉が目に入ったんです。自分が怨みを持ったままでは怨みの連鎖は消えないという意味です。目に見えない人とやりあうことは、やめようと思いました」

死ぬか、生まれ変わるしか道がない

その頃、いじめが原因で自殺した子どもの報道があった。自分は大人だから、法務局にも行けるし弁護士に相談もできるけれど、子どもはそれができない。ネット中傷の恐ろしさについて、誰かが声をあげなければと強く思った。また、匿名で髙橋さんに送られてきたメールに書かれていた「お前を僧侶と認めない。なぜなら僧侶は人を殺さないからだ」という言葉も発奮材料になった。

「名乗らずに人を侮辱してくるような失礼な人にそんなことを書かれて、火がついちゃって、『じゃあ認めてもらおうじゃないか』と思ったんです」

髙橋さんは2011年に仏門に帰依する誓いを立てる「得度」をして僧籍は得ていたが、天台宗の総本山である比叡山延暦寺での60日間の修行、「行院(ぎょういん)」は行っておらず、正式な天台宗の僧侶と認められていたわけではなかった。得度した折に行院も行いたいと希望していたが、なかなか許可されなかったのだ。

そこで髙橋さんは師匠にあらためて全ての事情を話し、「今の自分には、死ぬか生まれ変わるしか道がない。行院を通して生まれ変わりたい」と伝えた。「絶対に山を下りません(行院の途中で断念しない)」と誓って許しを得、2017年に比叡山に入った。ネット中傷の被害を受け始めてから2年後のことだ。

そこでは、荘厳な世界を見聞きし、白いごはんと1杯の味噌汁のありがたさをしみじみ感じた。行院は通常、大学生から20~30代の男性が行うことが多い。52歳の髙橋さんにとって修行は過酷だった。60日間の修行の中で爪がはがれ、疲労骨折もした。それでも頑張れたのは、濡れ衣を着せられたまま死にたくないという思いだった。

誹謗中傷の加害者の口から出た「裁いてやろうと思った」の言葉

行院を行う年の1月1日に改名の届け出を出し、戸籍上の名前も変えた。かつての「髙橋しげみ」という名前を捨て、「髙橋美清」として生まれ変わった髙橋さんは、僧侶として生き直すと同時に、自分の誹謗中傷記事を書いたブログ主に、「あなたが中傷記事を書いた相手の髙橋です。あなたのしていることは人権侵害。弁護士立ち合いのもと、お会いしましょう」と連絡を取った。誰の心にも仏心があり、それと同時に餓鬼のような二面性もある。直接じっくり話せば、通じる部分もあるのではないかと考えたからだ。

複数に連絡をしたが、会えたのは4人。高学歴で、堅い仕事をしている人もいた。「交通費が出せないから行けない」と言う人もいた。「慰謝料30万円を払うから示談にしてくれ」という人もいた。彼らの言い分は一様に、「自分が(亡くなったストーカー加害者の)男性になり替わって裁いてやろうと思った」という、ゆがんだ正義感だった。

最澄様だったら、お薬師様だったら

髙橋さんは、相手に自分の現状を伝えた。見ず知らずの人から事実無根の書き込みをされ、傷つき、恐怖を感じ、外に出られなくなったこと。仕事を一気に失って全ての収入がなくなったこと。いま自分は生きているけれど、「髙橋しげみ」というアナウンサーは殺されたも同然であること。匿名で言葉の暴力をふるうことは、暗闇から無防備の相手にやりを突き付けるようなものだということ。

「わかってもらえるまで話さないと、また同じことを繰り返すんじゃないかと思ったんです。3時間ぐらいは話したと思います。最後はみんな泣いていました」

そして別れ際、「もう二度としないでくださいね」と言った後、こう伝えた。「あなたがあんなことを書いたおかげで比叡山に行く決心がつきました。そこは感謝しています」

髙橋さんは語る。「それが許すということなのかなと思うんです。私も短気で気が強いし、自分の思考回路や感情で考えると、恨む気持ちから抜けだせなかったと思います。そこで、『最澄様だったら、お薬師様だったらどうされるかな』と考えて、固まっていた心がふーっとほぐれていったんです」

木村花さんの事件に「もう黙っていられない」

その後も、ネットの誹謗中傷の被害は後を絶たない。心を痛め、命を落とす人もいる。「もう黙ってはいられない。何とかしなくては」と、髙橋さんが声をあげるきっかけになったのは、2020年5月。女子プロレスラーの木村花さんが亡くなったことだった。

「『こんなひどいことが続くなんて、もうだめだ』と思ったんです。しかも、花さんのお母様は、娘をこんなふうに亡くされたのに、そんな彼女までも中傷する人がいる。ネットで匿名の人から中傷されることが、どんなに大変なことか、つらいことか、もっと知ってもらわなくてはいけないと思ったんです」

髙橋さんは、ネットの誹謗中傷の体験を募っていたネットの媒体に連絡を取った。

「弁護士からは、『名前や顔を出すと、また同じことになるんじゃないか。誹謗中傷されるんじゃないか』と言われました。でも、顔や名前を出さなければ説得力がありません。それに、匿名で中傷してくる人たちと、何ら変わらないことになってしまう」

髙橋さんは自分の体験を包み隠さず話し、その内容は記事化された 

「匿名の人の話は聞かない」

2020年12月、群馬県伊勢崎市に天台宗 照諦山 心月院 尋清寺を建立してからというもの、さまざまな悩みを持つ人から手紙やメールが届くようになった。もちろん、困っている人の役に立ちたいと思うものの、1人では限界もある。見ず知らずの人が、刃物を持って訪ねてきたこともあるという。しかし、ストーカー被害や、ネットの誹謗中傷被害を受けた髙橋さんには、「危険を察知するセンサーのようなものが備わった」そうで、「危ない」と感じた時は対応を控えている。

「自分の身は自分で守らなければと思っています。そこで決めたのは、正々堂々と名乗らない方とは、付き合わないということ」

それでも、無記名の手紙が届くことがたびたびある。開けると、今の苦しみが延々書かれており「電話もメールも盗聴されているから手紙にした」とある。被害妄想が入っているのが、無記名の手紙に多い共通点だ。こうなると、カウンセリングやしかるべき医療機関での治療を要する。幸いなことに、信頼できる医療機関とのつながりもできた。悩んだ末、尋清寺のホームページに「精神科、医療施設等へのご相談をご提案することもあります」との一文を入れている。

一番の実害は仕事を失うこと

群馬県大泉町から連絡がきたこともある。大泉町は企業城下町で、ブラジルやペルーなど南米の外国人労働者や日系人が多い。それもあって、町では昔から人種差別の撤廃や人権擁護の取り組みに力を入れており、ネット中傷についても町独自の体制を整えたいとのことだった。

「役場が相談の窓口になるなら、警察、法務局、弁護士会、医師、ハローワークの方をメンバーに入れてほしいと伝えました。ネット中傷の一番の実害は、仕事がなくなることなんです。仕事がなくなれば社会と接点がなくなりますし、収入がなくなれば生活できなくなる。すると人は、死ぬ方向に向かいやすくなってしまいます」

「一隅を照らす」

中学校で生徒を前に、「君たちが何をしたか、仏さんは見ているよ」と話すこともある。ほとんどの生徒がスマホを持っている時代、少しでも加害者を減らすことができればとの思いからだ。

美清さんは講演のタイトルに必ず「一隅を照らす」という言葉を入れている。これも最澄の言葉で、「これ即ち国宝なり」と続く。一人ひとりが自分のいる場所で輝き、周りを照らしていくことで世の中が明るくなってゆく。そんな人こそ宝だ、という意味だ。

「今の世の中には、見えないものを怖がる心が無くなってしまったように感じます。そこで、コロナ禍が終息したら、子ども寺子屋を開きたいと考えているんです。まずは庭で草むしりをして、無心で汗をかいてもらって。そして、地獄の絵を見せようと思っているんです。むやみに驚かせるのではなく、やっていいことといけないことの境を伝えられたらと」

もともと音楽が好きだった美清さんは現在、天台宗の雅楽の会にも所属しており、ゆくゆくはこの寺で、音楽イベントや女性向けの座禅会を開催することも考えている。「ここが少しでも気持ちをリセットできる場所になればと思っているんです」

心が清らかであるか、自分自身に尋ねるとの意味でつけられた「尋清寺」。そのご本尊である薬師瑠璃光如来は、仏法という妙薬を持って人心を癒やすべく、今日も静かに微笑んでいる。

---------- 髙橋 美清(たかはし・びせい) 天台宗照諦山心月院尋清寺住職 1964年、群馬県生まれ。短大在学中からモデルとして活動した後、フリーアナウンサーに。群馬テレビのレポーター、日本テレビ「おはよう天気」キャスター、競輪のテレビ中継の司会者のほか、フィニッシングスクールを主宰し企業などのマナー研修を行う。2011年に得度、2017年に比叡山延暦寺で修行を行い、正式な天台宗僧侶となる。2020年12月、群馬県伊勢崎市に天台宗照諦山心月院尋清寺を建立。

パワハラ、なぜなくならない?臨床心理士が考えるパワハラが起こる原因


パワーハラスメントはなぜ無くならないのか

パワーハラスメントの数は減ったとしても、完全に防ぐことは困難なようです。その理由は、人を動かしているのは法律や制度、あるいは仕組みといった環境面だけではないからです。私たちは環境面よりも、信念や価値観などの認知、感情にもとづいて行動することが多いものです。パワーハラスメントが起きづらいように環境面を整えることは大切です。しかし、それだけでは足りないのです。

自信がなくて有能な部下をパワーハラスメントしてしまったAさん

A係長は劣等感があり自信がないタイプです。しかし、自信がないことを知られてしまうと、係長としての能力がないと思われそうだと感じ、自信があるような強気な態度に出ることがあります。A係長のもとに評判のよい有能な部下が配属されました。その部下は自分よりも能力や自信がありそうに見え、その堂々とした態度を見ていると気持ちがざわざわとします。

A係長は、部下の取るに足らないようなミスを見つける度に呼び出し、問い詰めるようになりました。A係長は、無意識のうちに自らのコンプレックスが刺激され、その反動としてパワハラ行為に及んでいることに気づけませんでした。

このように気が強い人がパワーハラスメントをするわけではなく、弱い一面を持っている場合があります。相手のミスを過度に指摘し攻撃することで、自分が優位に立っている感覚が得られます。弱みを見せないように心を守る防御として攻撃的な行動を取ってしまう人もいるのです。

自分なりの「正しさ」を押し付けることでパワーハラスメントしてしまったBさん

B部長は、社員は「こうあるべき」という理想がはっきりしており、業務のやり方や、マネージメントの在り方は、自分の方法が一番優れていると信じていました。自分の新人時代に、厳しい上司に育てられて成長できたという自負があり、同じように厳しく指導すると決めていました。

そのため、どのような部下にも厳しい態度で接し、部下から効率的なやり方や柔軟な方法を提案されても認めず、時代の変化やそれぞれの部下に合わせた対応をしませんでした。部下が様々な提案をしても首を縦に振らず、自分なりの「正しさ」に合わないものは認めないことで、部下の仕事は進まずに職員は疲弊してしまいました。

「正しくあること」は大切なことですが、その正しさが独りよがりになっている場合があります。法律や社会のルールなど、みんなで守ることはあります。しかし、個人的な価値観を押し付けて、人をコントロールすることはできません。現在は多様性が重視される時代です。様々な価値観が認められ、それぞれに合った対応をしていく「柔軟性」が求められているのです。

怒りの感情の後ろにある気持ちに目を向ける

コンプレックスが刺激されたり、自分の思い通りにならなかったりすると、人は怒りを感じます。このような場合、怒りの背後には、別の感情が隠れている場合が多いです。例えば、「不安」「恐れ」「焦り」「劣等感」などがあるでしょう。

背後に別の感情が隠れている場合は、その感情を癒さない限り、怒りは強いままです。不安や恐れなら安心させる、焦りなら落ち着かせる、劣等感なら自信を持たせることでしょうか。もし自分がパワハラをしている自覚があるのなら、背後にある気持ちに注目して自己対処することです。そうすることでイライラや怒りが小さくなるでしょう。

今回はパワーハラスメントについてお伝えしました。このように法律や制度など環境面が調整されてもパワハラはすぐになくなるわけではありません。そして、パワハラを受けている側が相手の心理や背後にある気持ちに気付いても、1人で対処することは難しい場合が多いものです。そのため、パワハラを受けていると感じたらあなたの健康が害される前に早めに相談しましょう。

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。

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