太っているのは遺伝のせい? 「肥満遺伝子」の秘密
「ダイエットしてもなかなか成功しない」そんな人は多いと思います。友達に教えてもらったとても効果的だといわれるダイエットをやってみたけれど、全くやせない……。そんな人もいると思います。
実は、やせやすい・太りやすいといった体質は遺伝しており、友達と同じやり方で確実にやせるとは限らないのです!
■体型は遺伝する。だから、太るのも遺伝する
目の形や髪の色。「お母さんに似てるね」などと、言われることがありますよね。親子なんだから顔や体型が似ているのは遺伝ですし、当たり前です。そして、体型が似ているということは、太る体質も似ていますし、遺伝しています。
太る体質が遺伝しているということは、両親から受け継いだ遺伝子に「太る体質です」と書き込まれているということ。では、その体質を決めている遺伝子はどのようなものでしょうか。
■遺伝子は両親からもらった身体の設計図
遺伝子は身体の設計図です。一人ひとり、遺伝子は違います。遺伝子が違うのは「その人の特徴」を表しているから。「遺伝子が違う」と聞くと、遺伝病を思い浮かべて「人と違ったら病気だ」と思う人も少なからずいるようですが、心配はいりません。
人間の遺伝子は、父親から1本、母親から1本を受け継いだ2本が1対になったものがらせん階段のように、くるくるとらせん状に丸まっています。まっすぐに伸ばすと170cmほどといわれています。
私たちの遺伝子は父親と母親の遺伝子を半分ずつコピーされていますので、私たちの身体は父親に半分似ていて、母親に半分似ているのです。遺伝子は2本が対になってらせん状に存在しているため「二重らせん」とも呼ばれます。
遺伝情報は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン(またはウラシル)という「塩基」と呼ばれる物質の配列によって決まります。2本の遺伝子は、お互いに解けないようにアデニンはチミン(またはウラシル)と結合し、グアニンはシトシンと結合すると決まっています。これによって、何らかの拍子に壊れてしまっても、片方が残っていれば反対側の配列がわかるようになっているのです。
そして、この2本はお互いに絡み合って存在していますので、塩基の位置が相互に入れかわることもあります。これが「個人差」を生み出すのです。
■遺伝子に書き込まれた体質を知る
「遺伝子上の個人差」とは、目の色や形、髪の色など、見た目の違いをもたらすものや、性格やかかりやすい病気などのこと。遺伝子上の個人差は1つの塩基の違いでもたらされることがあります。
この1つだけの塩基の違いを一塩基多型(SNP)と言い、違いがあることを「変異がある」と言います。「変異がある」と言われると、嫌な印象を持つ人もいるかもしれませんが、そうではありません。変異は誰にでもあります。変異があること=個性なのですから。
肥満に関係するSNPは現在、約50種類が知られており、人種によって変異がある人の割合は変わります。SNPはそれぞれが独立しています。1つも変異を持っていない人もいますし、約50種類のすべてのSNPで変異を持っている人もいます(すべての遺伝子を調べた人はいないので正確には断言できませんが)。
日本人ではβ2アドレナリン受容体、β3アドレナリン受容体、脱共役タンパク質1(UCP1)の3つのSNPが肥満と関連することがよく知られており、日本国内では、保険適応外でこの3つの判定を扱っている業者もあります。遺伝子は両親から受け継いだもので、一生変化することはありません。
そのため、何度、調べても、結果が変わることはありませんが、これらの業者に依頼した場合、独自のアンケート結果を加味して判定しているところもあるようなので、2社以上で判定を受けた場合には異なった結果が出る可能性もあります。
他のSNPでも、私たち女子栄養大学の研究チームでの研究成果として、アディポネクチンの2つのSNP、インターロイキン‐6、ABCA1などが影響していると考えられています。
■遺伝子が違えば、最適なダイエットも違う
自分の持つ肥満遺伝子に対応したダイエットを行えば、今までほど苦労をしなくても、今まで以上のダイエット効果を出すことができると期待されます。友達と同じダイエットをしても同じ効果が得られない理由は、肥満遺伝子にあるのかもしれません。