ドラッグストアで販売されているたくさんの薬。これらの顆粒や錠剤の中には「なぜこれが市場に出回っているのだろうか?」と専門家が首をかしげるようなものもある。薬の裏も表も知り尽くした三者が、匿名だからこそ明かせる本音を語り合った。【全4回の第3回。第1回から読む】
【図解】「風邪ウイルスに効果のある薬はない」(総合感冒薬)「副作用や依存性が強すぎる」(睡眠薬・向精神薬)…医師や薬剤師や製薬会社研究職が飲ませたくない薬
【座談会に参加してくれた医師・薬剤師・製薬会社の3人】
A子/40代の薬剤師。処方薬局勤務で、ドラッグストアで働いた経験もある。
B男/50代の内科医。大学病院勤務ののち、クリニックを開業。
C美/40代の大手製薬会社研究職。
〈医師の診断のもと、薬剤師が処方した「病院で出してもらった薬」。一見、安心安全に思えるが、実は医療者たちが「本当はのませたくない」「自分だったら断りたい」と思いながら提供しているものも少なくない〉
B男:ぼくの病院には高血圧に悩んで降圧剤をのんでいる人も多いですが、私は絶対にのみたくないし、患者にも「できるだけのむのをやめた方がいい」と言っています。血圧の数値だけを見て、高血圧なら降圧剤をのめばいいと短絡的に考えている医師も患者も多すぎます。
A子:確かに、処方する薬の半分以上が降圧剤だった、なんて日もあるほどみなさん服用してますね。だけどそもそも、高血圧=危険という考えのもとすぐに薬が処方されるのがおかしい。服用を始めて急に血圧が下がって倒れたという事例もよく聞きますよ。まずは生活習慣を見直すことが重要です。
B男:本当にその通りで、高齢者の場合、薬の副作用でめまいやふらつきが起きて転倒することもあるので注意してほしい。薬が原因で大腿骨を骨折したり、頭部を打ってしまったりしたら、元も子もありません。
C美:副作用には本当に注意が必要です。特にACE阻害薬は空咳やのどの違和感の副作用が出やすいから、個人的には遠慮したい。
A子:生活習慣病でいえば、スタチンのようなコレステロールの薬も、処方しながらもなぜあんなに流通しているのか、理解できない。副作用で、筋肉が壊死する横紋筋融解症という病気になることがあるのにどうして医師たちってあんなに簡単に出そうとするんですか?
B男:いちばんの理由は数値が簡単に下がるからだと思うけれど、それだって高血圧と同じで基準値より高かったとしても、ただちに弊害があるわけではないですから、やっぱり医師の怠慢だと思う。薬さえ出しておけば収入になるし、患者も納得しますから。
しかも男性はコレステロールの数値が高いほど心筋梗塞などの大きな病気になるリスクが増えるといわれていますが、女性はあまり関係ない。それなのに抗コレステロール薬を服用する女性は多いです。
A子:それを聞くと、やっぱりいらないな、と思ってしまいます(笑い)。『ドネペジル』のような抗認知症薬も、スタチンと同じように処方しながら「これって本当に患者さんのためになるのかな?」と不安な気持ちになるんですが、おふたりはどう思いますか?
薬剤師仲間では評判があまりよくなくて……。認知機能の低下がみられる患者さんに使うと、落ち方が緩やかになる作用があるといいますが、認知症そのものが治ることはないし、ご本人は効果を実感できない。副作用で怒りやすくなったり、ひどい下痢や、めまいで転倒したりすることもあるので、デメリットが目立っている印象です。
C美:私も認知症の薬については、おかしいと思っています。昔、ある自治体が開催する認知症セミナーに行ったとき、同業他社の人が認知症の薬の説明をしていたのを聞いたことがあるのですが、そのときにびっくりしたのが、「抗認知症薬はできるだけ早くのみ始めて、ずっと続けないといけない。やめると一気に認知機能が落ちてしまいます」と話していたこと。そういう言い方って、脅しに近くないですか?
B男:その言い方は、ひどいですね。そもそも認知症の薬って医学界においても効いているかどうかは賛否両論あるんです。実際フランスだと抗認知症薬は副作用がある割には効果が少なく、薬の有用性が充分ではないと判断されて、2018年から医療保険適用外になっています。
A子:ますます、患者さんに出したくなくなっちゃうなぁ……。認知症もそうですが、やっぱり脳や精神に作用する薬は簡単に処方してはいけないと思う。にもかかわらず処方箋を見ていると、腰痛の人に整形外科でかなり強い睡眠薬や向精神薬が頻繁に出されているケースが珍しくない。確かに『エチゾラム』や『デュロキセチン』などは痛み止めとしても適応があるので完全に間違った処方とはいえないのでしょうが、薬物依存のリスクを天秤にかけてまで服用する必要があるのだろうか、と首をひねってしまいます。
B男:正直、多くの医師はそこまで患者に寄り添わず、効果が高いものや、患者に求められるものをそのまま出している。だけど、それらの薬はもっと処方に慎重になるべきなのは確かです。もし私が腰痛で出されたら、絶対に変えてもらいます。
C美:腰痛なら、のみ薬より患部に直接作用する貼り薬の方が効果的ですからね。社内でも、デスクワークで腰がつらいという先輩はよく湿布を貼っています。
A子:薬局にいると、湿布もよく出ます。だけどこれも鎮痛剤と一緒で、使いすぎは絶対によくないと思う。
B男:のみ薬と違って体への影響が少ないから安心だと考えているかたも多いかもしれませんが、副作用があるのは同じですからね。特に高齢の患者さんは「何かあったときのために」と貼り薬をほしがる傾向にあるけれど、特に『ロキソプロフェン』や『ジクロフェナクナトリウム』といった強い成分の湿布は長期間使用して、腎障害や消化性潰瘍になったという報告もある。
C美:のみ薬と同様に、限定的な使用に限るべし、ということですね。
※女性セブン2023年6月8日号