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血糖コントロールはしっかりでき低血糖は起こしにくい薬【進化する糖尿病治療法】


【進化する糖尿病治療法】

現在、日本の2型糖尿病の治療現場でもっとも多く使われている薬がDPP-4阻害薬です。糖尿病の薬には、膵臓からのインスリン分泌を促すことで血糖値を下げるインスリン分泌促進系と、インスリン分泌以外の作用で血糖値を下げるインスリン分泌非促進系があり、DPP-4阻害薬はインスリン分泌系になります。

世界で初めてDPP-4阻害薬がアメリカで承認されたのは2006年。日本では09年に承認され、国内では10年ぶりの新しい作用機序を持つ経口2型糖尿病治療薬として、注目を集めました。このDPP-4阻害薬登場以降、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬といった新たな作用機序の薬も登場し、今日まで糖尿病治療は大きく進歩してきたわけですが、今回はDPP-4阻害薬に絞ってお話ししましょう。

1970年前後に発見されたのが、インクレチンというホルモンです。インクレチンは膵β細胞に作用してインスリン分泌を促す働きがあり、食事をすると消化管から分泌されます。インクレチンはタンパク分解酵素DPP-4によって速やかに不活性化されてしまうため、このDPP-4の働きを阻害すればいいのではとDPP-4阻害薬の開発が始まりました。

マウスの実験で、DPP-4を阻害することで耐糖能(血糖値が高くなった時に正常値まで下げる能力)を改善することが証明され、2000年以降、DPP-4阻害薬の開発が加速していきました。

DPP-4阻害薬の特徴の一つが、「食後の血糖値が上昇しそうになった時“だけ”、インスリンの分泌を促進させる」点にあります。そのため、比較的低血糖を起こしにくい。特に単剤では起こすケースはまれです。

薬でインスリンを分泌させ血糖コントロールを行うということは、低血糖のリスクと背中合わせです。血糖コントロールをどこまで厳格にやるべきか……? その答えを見つけるべく、DPP-4阻害薬が登場するまでは、「血糖コントロールを厳格にした場合、合併症の発症を抑えられるのかどうか」という観点の大規模臨床試験が複数行われていました。

1998年発表の大規模臨床研究UKPDS33では、2型糖尿病患者に厳格な血糖コントロールを行うと、従来型の食事療法中心の治療を受けた群と比べて、細い血管が障害されて血流が悪くなる微小血管障害(網膜症、腎症、神経障害といった糖尿病3大合併症といわれる疾患)のリスクは下がるが、低血糖や体重増加リスクを伴うという研究結果でした。

同じく98年発表の大規模臨床研究UKPDS34は、肥満の2型糖尿病患者が対象。厳格な血糖コントロールを行った群は、従来の食事療法と比べて、合併症リスクが抑制されるとの結果が出ました。ただ、UKPDS33、34ともに追跡期間は約10年でしたが、厳格な血糖コントロールをした群は、介入直後にHbA1cが改善するものの、長期的に見ると血糖コントロールの維持は得られないとの結果でした。

2008年にも心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者を対象に厳格な血糖コントロールを行う研究ACCORDの結果が発表され、HbA1cを正常範囲の6%未満を目指したところ、体重増加に加え、重症低血糖が高い頻度で起こるという内容でした。

つまり、大規模臨床試験では、合併症回避のために厳格な血糖コントロールを行うべきという明確な答えを得られなかった。血糖コントロールをきちんとでき、低血糖を起こしにくい薬が長く望まれてきたわけですから、それらをかなえるDPP-4阻害薬が画期的な薬として医師や患者に受け止められたことは、容易に理解できるのではないでしょうか。また他剤と比べても副作用が少ないのも特徴でしょう。

現在、DPP-4阻害薬は9種類の商品が出ており、合剤なども含めるとかなりの数になります。糖尿病は合併症として腎障害がありますが、DPP-4阻害薬は、商品によって腎障害患者が使いやすいものとそうでないものもあり、患者さんの状態を見て使い分けています。

(坂本昌也/国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長)
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