【親の介護】7割は「認知症になると親名義の不動産の売却ができなくなる可能性がある」ことを知らない
日本では平均寿命が年々のびてきており、「人生100年時代」が現実味を増しつつあります。
実際に、厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」によると、日本の昭和22年の平均寿命が「男性50.06歳、女性53.96歳」であったのに対して、2022年では「男性81.05歳、女性87.09歳」となっています。
高齢化社会が進む日本では、認知症者数も年々増加傾向にあり、厚生労働省の発表した資料では、「2025年には認知症を患う人が約730万人、約5人に1人にのぼる」と推計されています。
このように、認知症者数が増加をたどる今、新たな問題として「親が認知症になった時の不動産売却」が挙げられています。
実は、親が認知症になった場合、親名義の不動産の売却ができなくなる可能性があるのです。上記は意外と認知されておらず、「親の介護資金は親の遺産をあてにしている」と考えている人も多いようです。
そこで本記事では、2023年9月8日にリリースされた親の老後の実態調査をもとに、「親の介護にまつわるお金事情」について解説していきます。
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親が認知症になると親名義の不動産の売却ができない?
冒頭でもお伝えしたとおり、親が認知症を発症した際に意思能力がないとみなされると、不動産の売却だけでなく、定期預金の解約などができないケースがあります。
実際に、民法第3条2項において「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と記載がされています。
上記はいわゆる「資産凍結」という状態であり、第一生命経済研究所の調査内容では、2030年には「認知症者数の総資産額が215兆円に達する」と推計されており、今後の日本では認知症による資産凍結はさらに増加していくとうかがえます。
約7割が「認知症になると不動産の売却ができなくなる可能性がある」ことを知らない
前章では、親が認知症になった際のお金のリスクについて解説しましたが、果たしてどのくらいの人が「資産凍結」について知っているのでしょうか。
株式会社ファミトラは「親の老後のお金調査」を実施し、2023年9月8日に公表しました。
調査概要は下記のとおりです。
・調査方式:インターネット調査
・調査対象:N:406(40歳代〜60歳代の親がご存命の方)<40歳代30.8%・50歳代36.2%・60歳代33%>
・調査期間:2023年8月25日〜2023年8月27日
上記調査の結果、約7割の人が「認知症になると親名義の不動産の売却ができなくなる可能性があることを知らない」と回答しています(円グラフ参照)。
出所:株式会社ファミトラ「【敬老の日 調査】8割の人が「親の介護施設入居には親の資産をあてにしている」にもかかわらず、7割の人が「認知症になると親名義の不動産の売却ができなくなる可能性があることを知らない」実態があきらかに」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
さらに同調査では、約8割の人が「親の介護施設入居には親の資産をあてにしている」と回答しています。
親が認知症を発症し判断能力がないとみなされると「親名義の不動産が売却できなくなる可能性がある」ため、家族は介護に必要な費用を親の資産以外の手段で負担しなければならなくなります。
さらに、親が施設へ入所後も自宅を売却することができないため、空き家のまま維持しなければならないという新たな問題点も発生します。
上記から、親の老後を考え始める年代になったら、来たる時のために家族で今後について話し合うことが大切になるでしょう。
親の老後を考え始めるようになったら「家族信託」の検討も
本記事では、親の老後の実態調査をもとに、「親の介護にまつわるお金事情」について解説していきました。株式会社ファミトラの調査から、大多数の人が「親が介護を必要になった場合は親の資産をあてにしている」ことがわかりました。
しかしその一方で、約7割の人が「認知症になると親名義の不動産の売却ができなくなる可能性あることを知らない」という実態があります。親の介護が必要になった際の準備が、まだできていない人が多いとうかがえます。
親の老後を考え始める年代になったら「家族信託の活用」も視野に検討すると良いでしょう。家族信託とは、当事者が「家族」や「信頼できる第三者」との間で結ぶ、自分の資産の管理を委託する契約のことを指します。
おわりに
健康なうちに家族信託をしておくことで、認知症などによって判断能力が低下したあとでも、自宅を売却したり、親の資産で介護施設入居費用にあてることが可能となります。
親の介護において双方の負担なく行うためには、「事前の話し合い」が重要になってくるため、家族信託も含め今後の方針を前もって相談しておけると良いでしょう。