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前立腺がん検診、受けるべき?<上>平均寿命の延長に寄与せず


先日シンガポールでアジアの泌尿器科医が集まる大きな学会がありました。やはり大きな話題は、アジアのどの国でも増えている前立腺がん死亡の対策です。前立腺がんについて、今回から3回に分けてご説明いたします。

 筆者はアジアの食生活が大きく変わり、脂肪の多い食事が増えてきたこと、そして大豆にがんの予防効果があることを報告して多くの国々の医師から声をかけられました。

 例えば牛乳摂取量は前立腺がん・乳がんの発生と密接な関係がありますが、日本では戦後、牛乳を飲む人が年々ウナギ登りに増えています。この傾向はほかのアジアの国でも見られています。

 欧米では男性がんのトップであることもあり、病期に応じたさまざまな治療法が開発されてきました。ロボット手術ダヴィンチや、転移がんに対する新しい薬剤が開発されています。

 特に転移がんに対する新しい薬剤の登場により、治癒はしないものの生存時間が大幅に伸びましたが、一方で薬剤が高額なため、保険財政に影響を与えつつあります。

◆もっとも費用対効果が高い予防と早期診断治療

 日本は幸い、どの薬剤も制限なく処方が可能ですが、ヨーロッパでは処方できる薬剤が制限されたり、アメリカでは治療回数が制限されています。また、アジアの国の多くは国民皆保険制度ではないので、高額な薬剤は富裕層しか享受できません。日本でも薬剤の費用がはたして「割に合う」ものなのか、薬剤の費用対効果が政府で検討されています。

 実際、日本ではロボット手術による前立腺がんの手術は年間1万2000件ありますが、この手術にかかる費用の総額よりも、これらの薬剤にかかる費用のほうが数倍高いのが現実です。しかし財政上もっとも費用対効果が高いのは前立腺がんの予防、そして早期診断・治療による治癒と言えます。

 PSA(前立腺特異抗原)という血液項目があります。PSAが高値になると前立腺がんがある可能性が高く、また治療によりPSAは下がります。現在70%を超える市町村はこのPSAを用いた前立腺がん検診を行っていますが、残念ながら受診率は10%程度です。アメリカでは70%を超える男性が1回はPSAを測定していると言われており、実際アメリカでは前立腺がんの死亡者は既に減少してきています。

◆国民の平均寿命の延長に寄与しない検診

 ところでこのPSAを用いた前立腺がんの検診を、税金を用いて一律に行うことは、日本でもアメリカでも勧められていません。この理由は、前立腺がんを早期に発見して治療しても、結局ほかの病気で死亡することが多いため、国民の平均寿命の延長に寄与しないこと、また早期の前立腺がんの治療は個人の余命に影響しないばかりか、治療の副作用が生活の質を落とすからというものです。

 また、PSAは必ずしも治療を必要とするがんを発見することに役立つわけではありません。しかし、国民全体といった大きな集団の健康を研究する疫学の見地からは正しくても、個人のレベルから見ると、検診を受けないで、転移があり治癒しない状況でがんが見つかると「早く検診を受けていれば」というジレンマに陥ってしまいます。

 過剰診断、過剰治療は避けつつ、前立腺がんで亡くならないためにはどうするか、これが世界の泌尿器科医の関心事です。
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