l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? 1回の投与に36.5万円!話題のがん治療薬「オプジーボ」と抗がん剤の違い


1回の投与に36.5万円!話題のがん治療薬「オプジーボ」と抗がん剤の違い

1回の投与に73万円を要し、厚労省による緊急引き下げで半額の36.5万円になった、がん治療薬オプジーボ。報道では、薬価にかかわる話題性が先行し、実際の効果や副作用といった具体情報についてはあまり分からないまま、「こんなに高いのなら夢の特効薬にちがいない」と思い込んでいる人もいるかもしれない。

今回は、オプジーボに詳しい佐々木治一郎教授(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター教授・北里大学病院集学的がん診療センター長)の近著『今こそ知りたい! がん治療薬オプジーボ』(廣済堂出版)を参考に、このがん治療薬の実態を紹介したい。

●オプジーボは新機軸の免疫療法

オプジーボは、主流の抗がん剤や分子標的薬とは異なる、免疫療法の薬剤だが、従来型の免疫療法とも異質な面を持っている。がん細胞の中には、天敵となるリンパ球の一種、キラーT細胞からの攻撃を回避する仕組みが備わっているものがある。これはがん細胞の表面にあるPD-L1というたんぱく質が、キラーT細胞の表面にあるPD-1というたんぱく質と結合することで、キラーT細胞を不活性化してしまうというもの。こうなるとキラーT細胞は、がん細胞への攻撃を行わなくなる。

オプジーボには、キラーT細胞のPD-1に先に結合しまうことで、がん細胞のPD-L1との結合を阻害する作用がある。これによりキラーT細胞は、その力を封じ込められることなく、がん細胞を攻撃できる。この薬剤は、がん細胞自体を攻撃するのではなく、がん細胞を攻撃する免疫システムの働きを強化するのもので、新機軸の免疫療法とされる。

●オプジーボの適用対象は?

オプジーボは、当初はメラノーマ(悪性黒色腫)の治療薬として承認された。このがんの想定患者数が非常に少ないことが、薬価が高額になる一因となった。その後、非小細胞肺がん、腎細胞がん、悪性リンパ腫、「再発又は遠隔転移を有する」頭頸部がんへと順次適用が拡大された。これ以外にも目下、様々ながんに対する臨床試験が行われており、適用拡大が進むとみられている。

●オプジーボの投与方法と期間は?

オプジーボは経口薬ではない。静脈への点滴注射で、約1時間かけて投与される。投与は通常は2週間おきになされるが、過去に抗がん剤治療の経験があれば20日おきになることもある。現状、いつまで投与の継続が必要であるか、明確な答えは出ておらず、「やめどき」の特定が急がれている。

●オプジーボの効果は?

発売からの年数が浅いため、がんが消失・寛解した割合や生存率といった大規模統計データの整備はこれからとなるが、臨床試験では効き目の現れた患者の生存期間が延長され、「完全奏功」(画像診断でがんが見られない)したケースもある。抗がん剤よりもがんを小さくする力が強く、また効果が長続きする点で、既存の薬物療法に対し大きなアドバンテージがある。ただし、効果が現れる人もいれば、効果が見えない人もおり、どのような患者に効き目がある・ないのかを解明する必要がある。

●オプジーボの副作用は?

薬の性質上、キラーT細胞が正常な細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患(間質性肺炎、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病等)のリスクはある。製造元の小野薬品工業によると、投与した患者の約半数になんらかの服作用があり、うち4人に1人の割合で重篤となり、また若干の死亡例も報告されている。そのため、オプジーボの治療が受けられるのは、こうした副作用に対応できる病院に限定されている。

こうしてみるとオプジーボは、一部ネットで流布されているように「副作用もない夢のがん特効薬」とまでは言えないことが分かる。しかし、今までの療法にはない明確なメリット・効果があり、この種の薬剤(免疫チェックポイント阻害薬)の分野で、近いうちにさらなるブレークスルーが起こる期待も大きい。オプジーボの長期的な影響についても未知の部分はあるが、もしもの場合の一つの選択肢として考慮する価値は十分にあるだろう。

(注:本記事は、2017年3月の時点での公開情報に基づいて書かれており、今後効果や副作用などに新たな知見が得られ、情報が古くなる可能性がある。)

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