l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? 苦手な上司や同僚のせいで腰痛が悪化? 慢性腰痛症の治し方


苦手な上司や同僚のせいで腰痛が悪化? 慢性腰痛症の治し方

好きな人と一緒の仕事は順調にはかどる。一方で、苦手な上司や同僚と一緒の仕事では、なぜか腰が痛くなってしまう。腰痛の症状が悪化し、ますます仕事が苦痛でたまらない……。そんな症状を訴える患者さんは少なくありません。

 このような症状は決してウソではないのです。本人は本当に腰の痛みを感じているのです。これは状況や気持ちによって腰痛を感じたり、全く痛みを忘れたりする「慢性痛」特有の脳の働きが原因なのです。

■回復しやすい急性痛・回復しにくい慢性痛

 急性痛とは、転倒して膝を擦りむいた痛みや、手術後に経験する痛みなどをさします。このような痛みの多くは一過性で、元の病気が回復すれば時間と共に痛みも消失していきます。たとえ痛みがあっても、その主な原因が炎症であるため、消炎鎮痛剤と呼ばれる一般的な痛み止めでだいたいが治まります。

 一方、慢性痛は、元々の痛みの原因が治り収束しているにもかかわらず、痛みを訴えるようになってしまった状態をいいます。ですから多くの場合、血液検査、MRIやCT検査を行っても異常が見つかりません。その結果、患者さんは異常がないことでさらに不安を覚え、何か病気が隠れているのではないかという心配や恐怖心で痛みに集中してしまうのです。

 また、天気や気持ち、ストレスによって、痛みの感じ方が変わるのも慢性痛の特徴。嫌なことをしようとすると痛みを感じるため、「勝手病」といわれてしまうことも。そのため患者さんは、本気で痛みを訴えても理解されないことに焦りと不満を感じます。そして家族や周囲の人々につらく当たってしまい、人間関係に悪影響を及ぼす場合もあります。何回も繰り返す腰痛や頭痛、肩こりは、慢性痛の代表例です。

■急性痛から慢性痛へ移行する2つの要因

 急性痛の時点では、炎症や原因となるはっきりとした病気があります。しかし、これが長期間治療しても治まらず、ずっと痛みを伴う慢性痛に移行してしまう場合、2つのポイントがあります。それが「発症因子」と「持続・増悪因子」です。

□1.慢性痛を起こす「発症因子」

 慢性痛が起きる発症因子は、痛みの原因となる傷、組織や神経の損傷による変化だけではありません。職場のトラブル、人間関係、介護、家族問題などの社会的なストレスも挙げられます。これは情動をコントロールする脳の一部、大脳辺縁系が関与していると考えられています。大脳辺縁系は記憶、情動、感情から行動につながる動機づけを起こします。さらに逃走反応や、外敵を攻撃するような原始的な防衛本能に関与します。

 大脳辺縁系はいろいろな情報とこれまで蓄積した記憶から、今起きていることが良いことか嫌なことかを評価します。その評価をもとに表情を変え、汗をかいたり心臓がドキドキしたり、体が固まるなどの行動を起こします。

 大脳辺縁系の働きによって、同じ程度の腰痛に対しても、異なる反応が選択されるのです。たとえば「この仕事はきつかったな」とか、「あの人は苦手だな」という記憶はしっかり大脳辺縁系に残っています。好きな人と一緒の仕事のときに感じていたものと同じ程度の腰痛でも、このようなネガティブな反応があるため、いっそうつらく感じるのです。

 特に慢性的に痛みが続いている場合には、「また腰が痛くなるのではないか?」と、考えてしまうクセがついています。このように痛みに対する感受性を自分で高めてしまうことも、発症因子のひとつなのです。

□2.慢性痛を長引かせ悪化させる「持続・増悪因子」

 発症因子によって、いったん慢性痛のスイッチが入ってしまうと、その痛みを維持・強化する因子の働きで、さらに痛みが強まってしまいます。それが「持続・増悪因子」です。たとえば、慢性痛に伴うストレスから起こる、不安やうつ症状。ヒトは不安やうつ症状によって、体の不調への注意が集中し、訴えがひどくなり、過度に痛みに捉われる傾向があります。

 こうなると痛みはますます増強し、行動や社会参加が制限され、痛みを引き起こす原因となる行動を避けようとします。そしていつまでも痛みが解決せず、先の見えない不安で、また痛みも増強していくのです。

 慢性腰痛症の場合、本当に腰が悪くて痛いのでしょうか。いいえ、ここまで読んでいただいたみなさんには、すでに慢性腰痛症は腰だけが悪い単純な病気ではないことをご理解いただけたと思います。

 では、慢性腰痛症の治療方法についてご紹介いたします。

■ペインクリニックで受けられる慢性腰痛症の治療方法・考え方

 ペインクリニックでは神経ブロック治療、薬物治療、心理療法などを組み合わせて、総合的に痛みを治療します。「痛いのだから痛み止め」などという単純な治療方法では、脳や神経の記憶に刻まれた痛みに対応できないからです。

□ペインクリニックの神経ブロック治療

 神経の伝達を遮断して、痛みの悪循環を断ち切る神経ブロック治療は、ペインクリニックの最も得意とするところです。慢性腰痛症では、腰部硬膜外神経ブロック治療や神経根ブロック治療が選択されます。

□ペインクリニックで受けられる薬物治療

 薬物治療では、一般的に痛み止めと呼ばれる消炎鎮痛剤のほかにも、抗不安薬や抗うつ薬、抗けいれん薬などを併用する場合もあります。これらを併用することは痛み増悪因子を抑制し、痛みの緩和に有効なのです。

□ペインクリニックで受けられる心理療法

 心理療法では、患者さん自身の痛みに対する考え方を前向きに変えていくことが重要です。たとえば、治療を受けて痛みが軽減したとします。しかし、その残った痛みを「まだまだこんなに痛みが残っている」ととらえるか、「痛みは確かに残っているが、以前よりはだいぶ良い状態に向かっている」と考えるか。この違いを見れば、同じ治療を行ったとしても、これからの治療成績が変わってくることがおわかりいただけるでしょう。

 慢性的な痛みの治療は、痛み止めだけでなんとかなるほど単純なものではありません。痛み専門の治療を行いつつ、患者さんの痛みに対する発想の転換をしていくことも大きなカギとなるのです。

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