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日本の名医】忘れえぬ母への想い…やさしい医療を★京厚生年金病院(東京都新宿区)緩和ケア科部長 川畑正博さん(58)

JR総武線と地下鉄4線が交差する飯田橋駅から徒歩3分の東京厚生年金病院。ここの緩和ケア科部長を務めるのが川畑正博医師だ。

 取材の前に、川畑医師を知る病院内外の数人に「どんな先生?」と訊ねたら、全員が口をそろえて「穏やかでやさしい先生」という答えを返してきた。会ってみると、なるほどその通り。「人格者」という言葉がそのまま当てはまる、人生の最期を託すにふさわしい雰囲気を持つ内科医だ。

 東大工学部から大学院に進んだが、「人と接する仕事がしたい」と考え、医学部に入り直す。医師になってからは主として肝臓疾患の分野で実績を重ねていく。

 そんな中、勤務する現在の病院に緩和ケア病棟が新設されることを知り、自ら手を挙げてこのポジションに就いた。

 「以前、私の母をがんで亡くしたのですが、その時は私自身に緩和ケアの知識がなかったことから、結果として苦痛を伴う検査などもさせてしまった。そのこともあって、患者さんが人生の最期を、可能な限り安楽に過ごすお手伝いをしたいと思うようになって…」

 現在、同院の緩和ケア病棟は17床。しかし、山手線の内側で同病棟があるのは、ここを含めて4施設だけ。圧倒的に受け皿が不足する中、川畑医師にかかる重圧は半端ではない。

休日返上で病院に詰めることも多いが、「苦しむことなく、ご家族に囲まれて安らかに人生を全うされる患者さんを看取ることができると、この仕事を選んでよかったとしみじみ思います」と笑顔を見せる。

 医学は、がんが引き起こす身体的な痛みや苦しみをほぼ確実に取り除けるまでに進歩した。そんな現代だからこそ、治すだけでなく「理想的な最期」をサポートする医師の存在はきわめて重要だ。

 母にしてあげられなかった“やさしい医療”を目の前の患者に-。川畑医師の思いが、これからのがん医療に与える影響は、決して小さくない。 (長田昭二)

 ■かわばた・まさひろ 1953年鹿児島県生まれ。東京大学工学部から同大学院電子工学専攻修士課程、同医学部を経て同大学病院第一内科入局。米ヴァンダービルト大学に留学した他、癌研究会附属癌研究所、東京厚生年金病院内科に勤務し、2003年から現職。医学博士。日本緩和医療学会暫定指導医。趣味は映画と美術鑑賞。


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