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帝王切開の割合2倍増、産科医の本音は?

先日厚生労働省の発表でこの20年で帝王切開術で出産する人の割合がほぼ倍増し、19%に到達した事が分かった。世界保健機関(WHO)が推奨する目安 の10~15%を大幅に超えているという。産科医としてこのセンセーショナルな話題の中身を検討してみたい。

■帝王切開率の上昇が意味する事とは
 厚労省による医療機関へのサンプル調査によると、帝王切開の割合は、1990年の10.0%から、02年に15.2%、11年には19.2%と着実に増え続けている。その理由としてまず一番に思い浮かぶのが、高齢出産や体外授精などのハイリスク妊娠の増加が関与しているのではないかという発想だろう。

 高齢出産の割合を調べてみると確かに1995年には10%程度、2005年には15%程度、そして近年は20%台前半と先ほどの帝王切開率の上昇と相関するかのように上昇している事に気付くだろう。

 ただ、それだけでは説明が付かない点もある。

 帝王切開率上昇の傾向は一般病院だけでなく一般診療所でも同様に右肩あがりとなっている事だ。

 近年、分娩時のトラブルにまつわる訴訟が増えた事などもあり一般診療所ではリスクのある分娩は病院に紹介する傾向が高まっている事を考えると、正常の妊娠経過と思われていた分娩でも緊急で帝王切開術となる確率が増えている事を意味しているのではないかと思う。

 やはりトラブルを回避したい医療関係者の思惑が働いているのだろうか。次のページではその原因を分析してみようと思う。

■「疑わしきは罰する」が鉄則?

 お産の経過をみていて気になる事が一つある。というのも午後5時頃のお産が妙に多いのだ。そういうお産に限ってしかも帝王切開術だったりする。

 その訳が最近小さなお産院にも当直に行くようになって筆者にも漸く分かってきた。

 「日中に一度胎児徐脈を認めたのですが、その後も分娩の進行を認めないので今からカイザーにしようと思います」

 つまり、現時点では母児共に元気であっても人手が少ない夜間に問題が起きると困るので日中の内に帝王切開にしようというのだ。こういった帝王切開の適応に戸惑いを感じる読者の方も多いかもしれない。ただそういった方も是非考えて頂きたい。

 万が一夜間に再度母児の状況が悪くなったとしても緊急で帝王切開術を施行するのに約1時間かかる事を。

 もちろん、間に合う保障は何処にもない。

 現在の日本において求められている安全性を担保するには、「疑わしきは罰し」て早めに帝王切開をするという判断にも一理ある事がご理解頂けると思う。逆に言うと現在の医療水準をもってしても、1時間先の事が分からないくらいお産の経過は読めないものなのだ。

■帝王切開率の上昇は日本だけではない!?

 ただ世界に目を向けてみると日本における帝王切開率が必ずしも高いわけではない事に気づく。欧米を中心に先進国では帝王切開率が20%以上となっている国も少なくなく、中国では分娩の半数近くが帝王切開とする報告もある。

 そもそもWHOの推奨する帝王切開率自体は、1985年に発表されたものである。すでに30年近く経過しており、ハイリスク妊娠が増えた現在においてどのくらい妥当な数字なのか再度検討する必要があるのかもしれない。

 ここまで書くとどうも筆者自身、帝王切開術を推進しているかのような印象を与えかねないがそういうわけではない。もちろん産科医なんて立ち会わずに、穏やかな環境でお産をするのが一番だとは思う。ただ一歩間違えれば大事に至りかねない危険が付き物であることも無視するわけにはいかない。

 そういった事も含めてきちんと理解した上で「どういうお産を希望するのか」各ご家庭で検討すれば良いと思う。

 最後になったが、産科医を代表して一つだけ強調しておきたい事がある。

 何も「訴訟を恐れて」帝王切開を選択するのではない。「訴訟に至るような不幸な結末」を二度と見たくないから帝王切開をするのだ!という事だ。

 自然分娩にせよ帝王切開にせよ、お産をされた妊婦さんに満足して頂けるようその時代のニーズに合ったお産のお手伝いをしたいと思う。

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