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寄生虫「アニサキス」の食中毒急増 その背景は

生の魚介類に付着する寄生虫「アニサキス」による食中毒の被害報告が急増している。魚を生で食べる習慣のある日本で多く、厚生労働省の統計では、ノロウイルス、カンピロバクターに次ぐ食中毒原因物質の第3位に。加熱するか、マイナス20度以下で24時間冷凍すれば問題はないが、冷蔵技術の進歩で鮮度のよい生食用の流通量が増えたことが、逆に被害増大につながっているようだ。激しい腹痛を起こすアニサキス。食中毒急増の背景を探った。(貝原加奈)

 アニサキスの卵は海中でふ化した後、魚などが食べるオキアミを経てアジやサバ、カツオ、イカ、サケなどの内臓に寄生。魚介類が死ぬと筋肉に移る。虫体は長さ2~3センチ、幅0・5~1ミリで白色の太い糸のよう。生食後、数時間から数日で発症し、みぞおちなどに激しい痛みを引き起こす。

 同省によると、アニサキスによる食中毒は2007年の6件から、16年には20倍を超える124件に増加。国立感染症研究所寄生動物部の杉山広前室長が05~11年の約33万人のレセプト(診療報酬明細書)を基に推計したところ、年間発生数は約7千件に上ったといい、統計は「氷山の一角」との指摘もある。

 神戸市でも、食品衛生法改正で、アニサキスを原因とする食中毒が届け出対象になった13年以降、13~15年に各2件、16年は1件が報告された。今年に入ってからは既に飲食店で3件発生。同市保健所は「冷蔵技術の発達で生の状態で流通させる商品が増えたことに加え、内視鏡検査技術や設備が整い、虫体摘出が容易になった」と説明する。

 内閣府食品安全委員会のまとめでは、アニサキスが検出される魚は、サバ類が最も多く(北海道を除く)、西日本や関東ではイワシ類、カツオ類も多い。水揚げ地の違いにより、生で輸送できる魚が違うからという。国内産のマサバ218尾のうち74・3%に当たる162尾から幼虫が検出されたとする研究結果もある。

 13年以降、毎年数件は被害が報告される兵庫県内でも悲鳴が上がる。神戸市内で飲食店を営む男性は「鮮度のよいものを仕入れており、まな板や包丁の消毒も気に掛けている。素早く内臓を出してさばく以外に防ぐ方法があるのか」と困惑する。県内の小売店は「アニサキスが寄生している恐れがあるので、生食用の魚はできるだけ冷凍で仕入れている」。冷凍処理していない魚は目視で確認し、見つければ取り除いているという。

 アニサキス被害の広がりを受け、サバ料理専門店の「SABAR(サバー)」神戸元町店(神戸市中央区)では5月下旬から、店頭に張り紙を掲示。冷凍処理したサバを使用しているため、被害報告がないことを強調した。梅林洋太店長(31)は、「水揚げしてすぐ船上で冷凍処理したサバなので、鮮度も味もよい。安心して足を運んでほしい」と安全をアピールする。

 同市保健所は「冷凍物を使わず、鮮度にこだわる飲食店の方が被害が出やすい」として、今月始まった食中毒予防特別期間に合わせ、消費者や事業者に注意を呼び掛けていく。

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