あなたの健康はお金で買えますか・・・? 胃がん大腸がんより気づきにくい! 注意したい「頭頸部がん」
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胃がん大腸がんより気づきにくい! 注意したい「頭頸部がん」

頭部の鼻から喉にかけて発生するがんは頭頸部(とうけいぶ)がんと総称される。進行した頭頸部がんは5年以内に7割以上が死に至る。治療薬の進歩が乏しかったが、今年3月に免疫療法薬「オプジーボ」が承認され、注目を集めている。

 頭頸部がんは、口の中に発生する口腔がん、舌がん、鼻周辺に発生する鼻腔・副鼻腔がん、喉の周辺に発生する上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がんに分けられる。年間患者数は約4万7千人(厚生労働省患者調査・2014年)と言われ、過去30年で患者数は約3倍に増加している。

 主な原因は飲酒と喫煙。最近では子宮頸がんの原因でもあるヒトパピローマウイルスの感染による中咽頭がんの発生が増加している。初期の症状は声のかすれや飲食時の口や喉の違和感などありふれた症状だ。国立がん研究センター東病院頭頸部内科長の田原信医師はこう話す。

「胃がん、大腸がんのような定期検診もなく、初期症状に気づいても放置している患者さんが少なくありません。結果として初診時には半数以上の患者さんが日常生活に支障をきたす進行がんで見つかるのが実情です」早期では治癒を目指して手術か放射線治療が選択されるが、手術後にしゃべる、食べるという日常生活に不可欠な機能を喪失することもあるほか、患部が顔面付近であるため容貌が著しく変化することもある。

 手術を避けたい、あるいは不能な場合は、プラチナ製剤と呼ばれる抗がん薬・シスプラチンの投与と放射線照射を併用する化学放射線療法がおこなわれる。しかし、約半数が再発し、化学放射線療法では激しい副作用で後に約1割が死亡するとの報告もある。再発時は再度がんを切除することもあるが、それでも約半数は再々発。初期治療で抗がん薬を使わなかった症例では、シスプラチン、フルオロウラシルの2種類の抗がん薬に、抗がん薬の一種である分子標的薬のセツキシマブを加えた3剤併用療法もおこなわれる。

 ただ、シスプラチンなどのプラチナ製剤を含む治療が無効になると、他の抗がん薬を代わるがわる投与しても生存期間は6カ月未満だ。こうしたプラチナ製剤が無効の再発・転移性の頭頸部がんに対して今年3月に承認されたのが、免疫に作用する新たな治療薬のニボルマブ(商品名オプジーボ)である。

 以前からがん細胞に対しては体内の異物を排除する免疫が徐々に無効になることがわかっている。これはがん細胞自身が新たな分子を作り出し、免疫細胞表面の分子と結合して免疫作用を止めてしまうからだ。ニボルマブはこの結合を阻止し、免疫ががん細胞を常時攻撃できる状況を作る。 「再発頭頸部がんを対象におこなった国際臨床試験での1年生存率は、既存治療の16.6%に対し、ニボルマブでは2倍以上の36.0%という結果が得られています」(田原医師)

 千葉県在住で公務員の加藤俊子さん(仮名・31歳)は7年前に上咽頭がんと診断された。初診時は一目で頸部の腫れがわかるほどで、肺への遠隔転移も見つかった。病期は、最も進行しているステージIVだった。

 田原医師の下で化学放射線療法をおこない、いったんは肺転移も含めがんが消失するも約1年後に再発、肺転移も徐々に増大した。その後はフルオロウラシル、シスプラチン、タキソテールなどのさまざまな抗がん薬で代わるがわる治療したが、全て無効になり打つ手なしの状態だった。3月の承認直後にニボルマブを投与すると、肺転移の影響で生じていた息苦しさを感じるほどの咳が止まり、常用していた咳止め薬が不要になった。

「加藤さんの場合、1カ月後の画像診断で肺転移の明確な縮小は認められていませんが、咳の消失からニボルマブが有効である可能性が高いと考えられます」(同) ニボルマブは従来の抗がん薬と違い、がん細胞に直接作用しないため、画像診断でがん縮小が認められるまでに1~2カ月は要するが、いったん効果を発揮すればそれが長く持続する。ただし、注意も必要だ。

「確かに従来の抗がん薬に比べて有効性・安全性に優れ、進行した頭頸部がんが治癒する可能性すらあります。ただし、実際にがんが縮小するのは約10人に1人。過剰な期待は禁物です」(同)従来の抗がん薬はがん細胞だけでなく正常細胞にも作用し、吐き気や気持ち悪さ(悪心)を感じたり、脱毛といった不快な副作用が生じたりすることも多く、治療に不安を感じる患者もいる。ニボルマブではこうした副作用が少なく、これまで抗がん薬による治療を経験してきた患者が副作用の少なさを訝しがることもある。

 神戸大学病院腫瘍センター特命准教授の清田尚臣医師はこう語る。「患者さんが自覚できる副作用としては皮膚のかゆみ、倦怠感、悪心・下痢などの消化管障害などで、これらは概ね投与から3カ月以内に発生することが多いです。また、以前におこなった放射線治療の影響も受けているためか、頭頸部がんでは甲状腺機能低下症が目立ちます。ただし問題は、発生頻度が1%前後ですが、これまでの抗がん薬では経験しないような重篤な副作用が起こることであり、後手に回ると極めて対応が困難になる点です」

 とりわけニボルマブで注意が必要な副作用は、重症筋無力症、劇症1型糖尿病などの自己免疫性疾患である。活性化した免疫細胞が逆に正常細胞を攻撃することで発症するといわれている。自己免疫性疾患も含め、これまで知られている重篤な副作用としては、肝機能障害、大腸炎、複数の末梢神経が障害される「ギラン・バレー症候群」、空咳や息切れを伴い時に命にかかわる危険もある「間質性肺疾患」、視力障害を引き起こす「ぶどう膜炎」など多岐にわたる。

「自己免疫性の副作用は、投与開始から1~2年以降に突如発症することもあります。しかも従来の抗がん薬と違い、主治医だけで対応しきれない副作用も多く、われわれも各診療科の専門医師に相談が必要な場合も少なくありません。つまり医療機関の総合力が求められる治療であり、患者さんも総合病院でこの治療を受けることが望ましいです」(清田医師)

 非常に進行したがんを長期間安定させるというこれまでにない可能性を秘めている半面、未知の危険性もはらんだ治療であり、患者自身も投与中に何気ない症状に気を配り、かかっている病院とよく相談しながら受ける必要がある繊細な治療というのが実態のようだ。

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